くにさくロゴ
2016/01/07 第190回国会 参議院 参議院会議録情報 第190回国会 本会議 第2号
姉妹サイト
 
2016/01/07 第190回国会 参議院

参議院会議録情報 第190回国会 本会議 第2号

#1
第190回国会 本会議 第2号
平成二十八年一月七日(木曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二号
  平成二十八年一月七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告及び演説に関する件(第
  二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の報告及び演説に関する件(第二日)
 去る四日の国務大臣の報告及び演説に対し、これより順次質疑を許します。前川清成君。
   〔前川清成君登壇、拍手〕
#4
○前川清成君 奈良県選挙区の前川清成です。
 会派を代表して質問いたします。
 質問に先立って、北朝鮮の核実験に対して断固抗議をいたします。そして、政府の対応を総理に伺います。
 さて、新しい年、参議院での最初の質疑です。まず総理にお尋ねしなければならないのは、臨時国会のことです。
 憲法第五十三条は、臨時国会に関して、いずれかの院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならないと定めています。そして、参議院においても、昨年十月二十一日、総議員の四分の一を超える八十四名の議員が議長宛てに召集要求書を提出しています。それにもかかわらず、なぜ、昨年、臨時国会の召集を決定しなかったのか、そして、それはいかなる憲法解釈に基づくのか、お答えをください。
 安倍総理が憲法と法の支配に不誠実ではないか、安保法案をめぐっても大きな議論となりました。集団的自衛権の行使は憲法に違反すると歴代自民党政権も繰り返し述べており、戦後七十年間確定した憲法解釈です。ところが、安倍内閣は、一昨年七月一日、この憲法解釈を閣議決定だけで、つまり自分たちだけで変えてしまいました。集団的自衛権を行使したいが、憲法が邪魔になる、そこで、憲法によって縛られているはずの国家権力自らが自分たちだけで憲法の意味を変えてその縛りを緩めてしまう、もしこれがまかり通れば、憲法は存在しないのと同じです。
 私はその立場には立ちませんが、集団的自衛権の行使が必要ならば、まずこの国会で正々堂々と憲法改正を提案するべきです。そして、国会で議論を尽くした後、主権者である国民の国民投票を仰ぎ、国民もまた集団的自衛権が必要との判断を示したならば、改正された新しい憲法の下で安保法案を提出する、これが法の支配です。総理、安保法案は順番も間違えていたとお考えになりませんか。
 総理は、選挙前いつも経済優先を唱えながら、二〇一三年の参議院選挙が終わるや、特定秘密保護法、二〇一四年の衆議院選挙が終わるや、安保法案を強行採決しています。
 総理は、四日の年頭会見、夏の参議院選挙において憲法改正を訴えると述べておられますが、現行憲法のどこをどのように変えるのか。そして、安倍政権は公明党との連立を維持しながら憲法改正を目指すのか、あるいは、おおさか維新とともに憲法改正を目指すのか、総理に伺います。
 憲法が国家権力を制限しているのは、国民の自由や平等を保障するためですが、昨今のヘイトスピーチは少数者に対する露骨な差別です。そこで、昨年五月、私たちは、ヘイトスピーチを禁止する議員立法を提出しました。法務委員会における質疑では、与党議員もヘイトスピーチを野放しにできないと述べています。そう言いながら、与党は法案の採決を拒否したために成立には至っていません。
 総理、何をためらっておられるのですか。むしろ、今国会でヘイトスピーチ禁止法を成立させて、国家の品格を示すべきです。我々の議員立法に修正すべき点があれば、是非御指摘をください。
 さて、今般の補正予算には、アベノミクスの効果が及んでいないことを理由に、かつ個人消費を下支えする名目で、低所得の高齢者一千百三十万人に対して、一回限り、一律三万円を支給する臨時福祉給付金が盛り込まれています。しかし、アベノミクスの恩恵が及んでいないのは高齢者だけですか。地方に、中小零細企業に、全ての働く人々、とりわけ非正規労働者に、一人親家庭に及んでいますか。総理に伺います。
 また、一回限りのばらまきが消費を下支えするでしょうか。二〇〇九年、麻生内閣は総額二兆円を定額給付金としてばらまきましたが、内閣府の家計調査を踏まえた分析によると、そのうち消費に回ったのは二五%にとどまっており、個人消費を僅か〇・二%押し上げたにすぎません。太平洋に目薬でした。
 麻生大臣、臨時福祉給付金としてばらまく三千六百億円のうち、どれだけが消費に回るのか、そしてどの程度GDPに寄与するのか、結論だけではなく、その根拠も併せてお答えください。
 財政法二十九条は、特に緊急に必要となった経費を支出するために補正予算を編成することができると定めています。補正予算に盛り込んでまで大急ぎで今年五月、六月にばらまく理由は七月の参議院選挙対策ですか。総理、お答えください。
 参議院選挙対策といえば、軽減税率にも言及せざるを得ません。低所得者対策を名目に軽減税率の導入が与党間で合意されましたが、例えば飲み水に関して、高所得者はペットボトルのミネラルウオーターを購入することが多いと思います。低所得者は水道の水で辛抱しています。それにもかかわらず、ミネラルウオーターは八%、水道水は一〇%ですか。なぜ軽減税率が低所得者対策になるのか、財務大臣に伺います。
 食品全てが対象ならば、一匹百円のサンマも、百グラムで何十万円かするキャビアも軽減税率です。高所得者は食費に関してもより多くのお金を割くことができます。軽減税率を食品全般に適用する結果、高所得者の方がより多くの恩恵を受けます。軽減税率は決して低所得者対策にはなりません。
 そこで、総理に提案をいたします。
 本当に生活に困っておられる方々に限って直接現金を継続的に支給する、いわゆる給付付き税額控除を実施してはいかがでしょうか。既にアメリカ、イギリス、フランス、スウェーデンなど十か国以上で採用されています。より少ない予算で効率的な低所得者対策になります。継続的に給付することで個人消費も下支えします。
 麻生大臣、軽減税率の対象として食品が選ばれたのはなぜですか。毎日の暮らしに欠くことができないからでしょうか。そうならば、地方では自動車がないと仕事にも買物にも病院にも行けません。自動車やガソリンも生活必需品です。そのガソリンには、消費税のほか揮発油税、地方揮発油税、石油石炭税が課せられており、ガソリン価格を一リットル百二十円で計算した場合、合計は五〇・七%にも達します。キャビアが八%で、おじいさん、おばあさんが病院に通うためのガソリンは消費税と合わせて約六割です。麻生大臣、キャビアとガソリン、どちらが命を支えていますか。
 以上のとおり、軽減税率に関しては、何が公平公正か、一義的に線引きすることは不可能です。その結果、またしても各業界団体の陳情合戦を招き、癒着と利権の温床になります。総理、それでも軽減税率ですか。
 地方では生活必需品というべき自動車に課せられる自動車取得税に関して、二〇一三年、与党税制改正大綱では、消費税を一〇%に引き上げる際に廃止することが明記されました。しかるに、今般の与党合意では、自動車取得税は廃止されるものの、地方財源への配慮を名目に環境性能割なる新税が、やはり自動車取得時に課せられます。これでは名前が変わっただけです。地方財政に配慮することは当然ですが、自動車取得税の総額は一千九十六億円です。
 これに対して、消費税が八%から一〇%に引き上げられる際、地方消費税も一・七%から二・二%へ、地方交付税は一・四%から一・五二%へ引き上げられます。この結果、地方の財源は二兆一千億円も増加します。したがって、名前を変えて自動車取得税を存続させる必要はありません。総務大臣に伺います。
 昨年、国内の新車販売台数は五百四万台と、リーマン・ショック直後の水準まで落ち込みました。消費税が一〇%に引き上げられた後、さらには生産年齢人口の減少が今後も続く中、国内の新車販売台数についてどのように予測しておられますか。万一、自動車産業までが空洞化してしまったならば、我が国の経済、雇用に対する影響は極めて甚大です。名前を変えた新自動車取得税を導入するべきではありません。経済産業大臣の見解を伺います。
 軽減税率が導入されたら一兆円程度の税収が失われます。その穴埋めには、社会保障を充実し低所得者対策に充てることが予定されていた四千億円が使われますが、軽減税率が低所得者対策にはならないこと、既に述べたとおりです。総理、本末転倒ではないでしょうか。そして、まだ足りない六千億円はどうするのでしょうか。財務大臣、財源をお示しください。
 総理、そもそも何のための消費税引上げだったのでしょうか。二〇一二年、民主、自民、公明三党は、消費税を引き上げ、その増税分は全て社会保障費に充てると合意をしました。少子高齢化が進展した結果、社会保障の財布は毎年五十兆円も赤字を積み上げています。このままでは、年金も医療も介護保険も続けていくことができなくなってしまいます。
 ごく一部の富裕層は、年金がなくても医療保険がなくても困りません。これに対して、大部分の国民にとって、年を取っても病気になっても失業しても安心して暮らしていけるために社会保障が大切です。大切な社会保障を守り、そして充実させるための消費税引上げでした。軽減税率で税収が侵食され、その分社会保障が削られたときに最も困るのは低所得者です。総理、社会保障はこれからも続けていくことができるのですか、そしてそのための財源をどうするのか、御説明ください。
 その上で、総理に提案があります。
 消費税引上げに当たって国民の納得が得られないのは、せっかくの消費税が何に使われているか分からない、つまりは税金の使い道に関する不信があるからではないでしょうか。ついては、消費税として支払った分がそのまま社会保障として返ってくることがガラス張りになるように、消費税一〇%分全額を社会保障特別会計に組み入れて、他の一般財源と区別してはいかがでしょうか。
 最後に、もう一度総理にお尋ねします。
 二〇一二年十一月十四日、当時の野田総理は、党首討論において、消費税を引き上げる、つまりは国民に痛みをお願いする以上、国会議員も身を切るべきだ、二〇一三年の通常国会で議員定数を大幅に削減すると約束するなら、衆議院を解散してもよいと提案し、安倍総裁は議員定数の大幅削減を約束したため、野田総理は約束どおり十一月十六日に衆議院を解散しました。
 既に三年が過ぎています。私は総理をうそつきと言いたくありません。いつまでに約束を果たすのか、お答えください。
 なお、答弁次第では再質問の可能性があることを付言し、代表質問といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#5
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 前川議員にお答えをいたします。
 北朝鮮の核実験に関するお尋ねがありました。
 今回の核実験の実施は、我が国の安全に対する重大な脅威であり、断じて容認できません。強く非難します。安保理決議の明確な違反であり、国際的な不拡散体制への重大な挑戦です。
 私より直ちに、緊張感を持って情報収集、分析に努めること、国民に対して的確な情報提供を行うことなどを指示し、二度にわたり国家安全保障会議を招集しました。北朝鮮に対して直ちに厳重な抗議を行うとともに、国連安保理の緊急会合開催を要請しました。
 会合終了後には、安保理議長より、北朝鮮の核実験を強く非難し、新たな安保理決議に盛り込まれる更なる措置について直ちに作業を開始する旨のプレスステートメントが発出されました。
 本日早朝にオバマ大統領と日米首脳電話会談を行い、今般の北朝鮮の挑発行動は許容し得ないものであり、国連安保理における対応を含め日米両国が国際社会を主導していくことで一致するとともに、米国があらゆる手段を用いて日本を防衛するとの確固たるコミットメントを再確認しました。
 今後の対応については、我が国が非常任理事国を務める国連安保理を始めとして米韓中ロなどの関係国と連携し、国際社会が一致してこの問題に対応するよう努めるとともに、我が国独自の措置の検討を含め北朝鮮に対して毅然かつ断固たる対応を行ってまいります。
 国会の召集についてお尋ねがありました。
 一般的な考え方を申し上げれば、臨時会の召集要求について定める憲法第五十三条後段は、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定するにとどまり、召集時期については何ら触れられておらず、当該時期の決定を内閣に委ねております。
 基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないと解しておりますが、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会とで異なるところはないため、あえて臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えておりません。
 昨年の臨時国会召集の要求に対しては、政府としてこれに適切に対応するため、現下の諸課題を整理し、補正予算、来年度予算の編成などを行った上で、新年早々、本通常国会の召集を図ったものであり、迅速かつ適切に対応していると考えております。
 なお、国会閉会中でも衆参両院の予算委員会に私も出席いたしましたが、衆参合わせて六十時間を超える閉会中審査において、TPP、COP21など、当面する政治課題につき政府としても説明責任を果たしてきたところであります。
 平和安全法制についてお尋ねがありました。
 憲法の範囲内で必要な法整備を進め、国民の命と平和な暮らしを守ることは政府の最も重要な責務であり、これは憲法改正とは全く別の問題であります。
 憲法の解釈について最高裁判所は、砂川判決において、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得ることは国家固有の権能の行使として当然のことと言わなければならないと述べています。
 一昨年の閣議決定において限定的な集団的自衛権の行使を容認しましたが、それはまさに、砂川判決の言う必要な自衛の措置に限られるものであります。憲法の解釈を最終的に確定する権能を有する唯一の機関は最高裁判所であり、平和安全法制は、その判決の範囲内のものであり、憲法に合致したものであります。憲法改正を必要とするものではありません。
 また、平和安全法制は、さきの通常国会で戦後最長となる延長を行い、二百時間を超える充実した審議の結果、野党三党の皆さんの賛成も得て成立したものです。より幅広い合意が形成されたことは大きな意義があったものと考えています。
 このように、平和安全法制は、その内容と手続のいずれにおいても、現行憲法の下、適切に制定されたものであります。
 憲法改正に関するお尋ねがありました。
 憲法改正には、言うまでもなく、衆参各議院で三分の二以上の賛成を得て国会が発議し、国民投票で過半数の賛成を得る必要があります。そのため、できるだけ多くの各党各会派の支持をいただき、そして国民の理解を得るための努力が必要不可欠であります。
 どの条項をどのように改正するかについては、国会や国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくるものと考えております。引き続き、新しい時代にふさわしい憲法の在り方について、国民的な議論と理解が深まるよう努めてまいります。
 法務委員会において継続審査中の法案についてお尋ねがありました。
 一部の国、民族を排除しようという言動のあることは極めて残念であり、あってはならないことと考えております。御指摘の法案は議員提出によるものであり、政府としては、今後の国会での議論の状況を見守ってまいります。
 いずれにせよ、今後とも一人一人の人権が尊重される豊かで安心できる成熟した社会を実現するため、教育や啓発の充実に努めてまいります。
 年金生活者等への臨時給付金の意義についてお尋ねがありました。
 アベノミクス三本の矢の政策により、デフレではないという状況をつくり出す中、全国各地で前向きな動きが見られています。具体的には、有効求人倍率が全ての都道府県で上昇し、全ての都道府県で税収が増加しています。また、中小企業についても、安倍内閣発足以降、中小企業の業況DIは一七ポイント、資金繰りDIは一一ポイント改善しました。雇用・所得環境についても、就業者数は百十万人以上増え、有効求人倍率は二十三年ぶりの高水準となり、最低賃金を三年連続で大幅に引き上げる中で、パートで働く方々の時給がここ二十二年間で最高の水準となるなど大きな改善が見られています。
 今後とも、GDP六百兆円の実現に向け、あらゆる政策を総動員していくこととしており、現在の景気動向を踏まえれば、今年前半にかけての個人消費の下支えを行い、経済の下振れリスクにも速やかに対応していくことが必要であります。
 現役世代には賃金引上げの恩恵が及びやすい一方、こうした恩恵が及びにくいのが高齢者であります。こうしたことを踏まえ、アベノミクスの果実を活用し、低所得の高齢者に対し一人三万円の臨時的な給付金の支給を行うことといたしました。
 一年余り前、私は消費税の引上げの延期を決断しました。延期をした以上、給付と負担のバランスの観点から、消費税の引上げを前提とした施策を全て行うことはできません。そこで、年金生活者支援給付金については先送りする苦渋の決断をしました。しかし、子育て世代を含む現役世代への支援は、消費税引上げの延期にかかわらず、昨年四月から子ども・子育て支援新制度を開始するなど着実に進めてまいりました。
 先送りの決断をした年金生活者支援給付金については、一昨年の総選挙のとき、私は、経済を成長させていけば税収は上振れしていく、その果実はしっかりと社会保障の分野に投入していきたいと申し上げました。そのお約束のとおり、税収増というアベノミクスの果実が生まれた今、その果実を活用し、臨時的な給付金の支給を行うこととしたものであります。これは、社会保障・税一体改革の一環として平成二十九年四月から始まる年金生活者支援給付金の前倒し的な位置付けにもなります。
 その同じ総選挙の際、十二月一日に行われた党首討論会において、当時の海江田代表は、先送りした年金生活者支援給付金について、このような政策は財源を見付けて行っていくべきとの趣旨を発言されたのであります。
 今回の給付金は、今年前半にかけての個人消費の下支えの観点や実務上の対応可能性を踏まえ、年金生活者支援給付金の対象よりも幅広い方に対し一回限りの措置として支給するものであります。ばらまきとの指摘は全く当たりません。まして、選挙対策という批判は全く的外れであります。海江田前代表の発言を踏まえれば、まさに天に唾するものであるどころか、天に対してブーメランを投げているようなものであります。
 もちろん、若い世代への支援も極めて重要であります。若者を含む現役世代については、賃金引上げや最低賃金の引上げを推進していきます。非正規雇用労働者のキャリアアップや待遇改善に向けた取組もしっかりと進めてまいります。さらに、アベノミクスの果実も生かして、平成二十七年度補正予算や平成二十八年度予算において、保育サービスの充実や低所得の一人親家庭、多子世帯に対する支援など、公費ベースで〇・七兆円の子育て支援の拡充を行い、幅広い支援を行ってまいります。
 給付付き税額控除についてお尋ねがありました。
 三党合意を経て成立した税制抜本改革法において、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮の観点から、給付付き税額控除は、総合合算制度、複数税率と並ぶ検討課題の一つとして掲げられています。
 こうした中で、軽減税率制度は、給付付き税額控除とは異なり、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により導入を決定しました。これに伴い、他の二つの施策は、消費税率引上げに伴う低所得者対策としては実施することはないと考えています。
 消費税の軽減税率制度について、癒着と利権の温床になるのではないかとのお尋ねがありました。
 税制は国民生活に直結するものであり、多様な御意見に耳を傾けながら検討する必要がありますが、税制をゆがめることがあってはならないと考えております。
 軽減税率の適用対象については、税制抜本改革法第七条に基づく消費税率引上げに伴う低所得者への配慮との趣旨を踏まえ、日々の生活の中での消費、利活用の状況、所得の低い方ほど収入に占める消費税負担の割合が高いといういわゆる消費税の逆進性の緩和、社会保障財源となっている消費税収への影響などの観点を総合的に勘案して設定すべきものと考えており、癒着と利権の温床になるとの御指摘は当たらないと考えております。
 軽減税率制度が低所得者対策となるかについてのお尋ねがありました。
 先ほど申し上げたとおり、低所得者対策としての検討の中で、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、買物の都度、痛税感の緩和を実感できることが特に重要であるとの判断により軽減税率制度の導入が決定されたものであります。
 また、今後、軽減税率制度の導入に当たっては、与党及び政府の税制改正大綱を踏まえて検討を行い、安定的な恒久財源を確保することにより、社会保障と税の一体改革における二・八兆円程度の社会保障の充実に必要な財源は確保する考えであります。御指摘は当たらないものと考えております。
 社会保障の持続可能性と、そのための財源についてのお尋ねがありました。
 世界に冠たる国民皆保険・皆年金を始めとする社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくため、消費税率の引上げによる増収分の全額を社会保障の充実、安定化に充てるとともに、不断に制度の重点化、効率化を行うことが必要と考えています。また、今後、軽減税率制度の導入に当たっては、政府及び与党の税制改正大綱を踏まえて検討を行い、安定的な恒久財源を確保することにより、社会保障と税の一体改革における二・八兆円程度の社会保障の充実に必要な財源は確保する考えであります。
 消費税の使途の明確化についてお尋ねがありました。
 消費税率の引上げによる増収分は、全額社会保障財源化し、社会保障の充実、安定化に充てることとしております。また、国の消費税収の使途については、法律や予算総則に明記するなど明確化しております。一方で、一般会計の歳出予算の約三割を占める社会保障予算を切り出して特別会計で経理することについては、かえって予算の全体像が分かりにくくなるというデメリットがあり、慎重に検討していく必要があると考えます。
 いずれにせよ、今後も消費税の使途について国民の皆様の御理解が得られるよう丁寧な説明を行ってまいります。
 議員定数削減についてお尋ねがありました。
 議員の定数に関する問題は、議会政治の根幹に関わる重要な課題であることから、御指摘の党首討論においても述べたとおり、小さな政党にも配慮しながら、各党各会派が真摯に議論を行うことが重要であると考えています。
 衆議院の選挙制度の在り方については、衆議院議長の下に設置された第三者機関、衆議院選挙制度に関する調査会で議論が行われてきたところであり、各党各会派において、今月出される答申の内容をしっかり受け止め、十分な議論を行い、早期に結論を得ることによって国民の負託にしっかり応えていくべきであると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(麻生太郎君) 臨時給付金の経済効果についてのお尋ねがあっております。
 賃金引上げの恩恵が及びにくい高齢者にも恩恵が及ぶようにしたい、また、これにより今年前半にかけての個人消費の下支えを行い、経済の下振れリスクに対応することも必要であろうと考えております。今般の給付金は、こうしたことを踏まえ実施するものであります。
 本給付金は、低所得の高齢者を対象としたものであり、一般的に言えば高齢者は他の年齢階層に比べて消費性向が高い傾向にあることから、本給付金は消費や経済に一定の効果があるものと期待をいたしております。
 なお、本給付金の定量的効果だけを取り出して示されていないものの、内閣府におきまして、補正予算全体として実質GDPは〇・六%程度、その内訳として、民間最終消費は対実質GDP比で〇・一%程度押し上げられるものと見込まれております。
 次に、軽減税率制度の低所得者対策としての効果や、ミネラルウオーターと水道水の適用税率についてのお尋ねがあっております。
 今般の政府税制改正大綱におきましては、ほぼ全ての人が毎日購入しておられます酒類及び外食を除く飲食料品等を軽減税率の適用対象といたしております。これにより、低所得者ほど収入に占める消費税負担の割合が高いといういわゆる消費税の逆進性を緩和することができ、低所得者対策としての効果があるものと考えております。加えて、日々の生活の中で買物の都度、痛税感の緩和を実感していただけるとの利点もあろうと存じます。
 なお、御指摘のような、ミネラルウオーターは軽減税率の対象となる一方、水道水は標準税率となっております。水道水につきましては、御存じのように、公定料金として利用者に過重な負担とならないよう配慮されていることなど、ミネラルウオーターとは異なる事情があるものと基本的に考えております。
 軽減税率の適用対象として食料品を選んだ理由についてのお尋ねがありました。
 酒類及び外食を除く食料品については、ほとんど全ての人が毎日何らかの飲食料品を購入していること、全体としてその消費税負担が逆進的であること、食品表示法等により線引きを合理的かつ明確に示すことで、消費者及び事業者にとって比較的分かりやすいものにできることが考えられるなどの事情を総合的に勘案し、軽減税率の適用対象としたところであります。
 なお、ガソリンを含め個別の品目を見れば、飲食料品以外にも日々の生活の中で幅広く消費されているものが多いということ自体は御指摘のとおりであります。しかしながら、そうした品目を適用対象とすることになりますと、特定の物品のみを対象とすると代替品との間にゆがみが生じます。こうしたゆがみを解消しようとすれば際限なく対象が広がり、社会保障財源となっている消費税収を減少させるおそれがあることなどを踏まえて、適切ではないというように考えております。
 最後に、消費税の軽減税率制度の導入に当たっての財源確保についてのお尋ねがありました。
 政府及び与党の税制改正大綱において、消費税の軽減税率制度の導入に当たっては、財政健全化目標を堅持するとともに、社会保障と税の一体改革の原点に立って安定的な恒久財源を確保するとの観点から、平成二十八年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずることなどとされていることを踏まえ、今後、政府・与党でしっかり検討を進めてまいりたいと考えております。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(高市早苗君) 前川議員から私に対しましては、自動車取得税の廃止と環境性能割の導入についてお尋ねがございました。
 自動車税及び軽自動車税における環境性能割につきましては、税制抜本改革法第七条を踏まえ、グリーン化機能を維持強化するため、自動車の環境性能に応じた税率が課される環境税制として新たに導入するものであり、名前を変えて自動車取得税を存続させるものではございません。
 なお、消費税率の引上げによる増収分は全額社会保障財源に充てられることとされているため、自動車取得税の廃止に当たりましては、安定的な地方財源の確保が必要だと考えております。(拍手)
   〔国務大臣林幹雄君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(林幹雄君) 前川議員より、国内新車販売台数の見通し及び自動車取得税の廃止についてお尋ねがございました。
 国内の新車販売台数の見通しについては、本年後半には、消費税率引上げ前の駆け込み需要により販売増加につながる可能性があります。一方で、その後の反動減や人口減少などの要因で販売減少につながる可能性もあり、今後とも注視が必要です。いずれにしても、国内の新車市場は、自動車の国内生産を支える基盤です。市場活性化のため、ユーザー負担の軽減や新技術への支援、次世代自動車向けのインフラ整備などに全力で取り組んでまいります。
 次に、自動車取得税の廃止についてですが、創設される環境性能割は、平成二十七年度の自動車取得税の税収に比べ二百億円程度税収規模が縮小する見込みです。すなわち、一定程度ユーザーの負担軽減が図られています。また、経済産業省としては、平成二十九年度税制改正においても、与党税制改正大綱等を踏まえ、更なるユーザー負担の軽減に取り組み、国内の自動車需要を喚起できるよう努めてまいります。(拍手)
#9
○議長(山崎正昭君) ただいま理事が協議中でございます。しばらくお待ちください。
 前川君から再質疑の申出があります。これを許します。前川清成君。
   〔前川清成君登壇、拍手〕
#10
○前川清成君 総理の御答弁に対して、幾つも幾つも申し上げたいことがございますが、時間の都合がございますので、二点に限ってだけ再質問させていただきます。
 まず一つは、憲法五十三条、確かに総理がおっしゃるとおり、召集時期については定められておりません。しかし、通常国会を早く開いたならば臨時国会を開かなくても構わないなどとはどこにも書かれていないはずであります。総理の憲法解釈を是非お述べいただきたいと思います。
 あわせて、自民党が公表されておられます改正草案は、二十日以内に召集しなければならないと書かれています。これは、総理のおっしゃった合理的な期間を数字で示されたものだと思います。今回のことは明らかに憲法違反です。
 もう一つ、選挙制度に関して強行採決が許されないのは当然です。しかし、特定秘密保護法も安保法案も、野党の大半が反対し、圧倒的多数の国民が反対する中で強行採決しておられます。総理の御答弁はつじつまが合っておりません。
 以上申し上げて、再質問といたします。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#11
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 前川議員の再質問にお答えをいたします。
 基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないと解しているわけであります。この合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会とで異なるところがないため、あえて臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えておりません。
 そしてまた、先ほど議員定数についての姿勢について再質問がございました。
 他の法案の審議との違いについて申し上げますと、これは当時の野田総理との党首討論でも申し上げたわけでありますが、まさに選挙制度に関わることあるいは議員定数に関わることは、これは民主主義の土台づくりでありますから、これは与党が単に多数を制しているからそのままやっていいということではなくて、少数政党にも配慮していく必要があると、このように述べていたわけでございます。
 まさにそのお約束どおり、我が党としては、我が党の既に案として三十減という案をお示しをしているわけでありますが、しかし同時に、全ての政党も含めてしっかりと協議をしていきたいということで協議を行ったところでありますが、残念ながら協議がまとまらずに、先ほど申し上げましたように、議長の下につくられた議論の場において、現在、各会派について慎重な議論が行われている、この第三者機関において、調査会で議論が行われてきているところでありまして、今月提出される答申の内容をしっかりと受け止めて、十分な議論を行い、早期な結論を得ることが大切であると、このように考えているわけであります。
 いずれにいたしましても、まさに民主主義の土台をつくるわけでありますから、各会派においてしっかりと議論をしていくことが必要と考えているところでございます。(拍手)
    ─────────────
#12
○議長(山崎正昭君) 末松信介君。
   〔末松信介君登壇、拍手〕
#13
○末松信介君 自由民主党幹事長代理の末松信介でございます。
 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました安倍内閣総理大臣の外交報告及び麻生財務大臣の財政演説について質問をいたします。
 参議院自民党として本年最初の質問となりますので、国政上の課題に対する安倍総理の基本姿勢を伺いたいと思います。まずは、第三次安倍改造内閣の目玉である一億総活躍社会の実現に向けた、いわゆる新三本の矢から質問をいたします。
 最初の矢は、GDP六百兆円に向けた経済政策です。
 今から六十年前の昭和三十一年、経済白書は、もはや戦後ではないと書きました。前年の実質GNPが戦前を超えたことによって、戦後復興が終わったとみなされた記念すべき年だったのです。当時の名目GNPは約九兆円でした。
 それから六十年がたち、我が国経済は大きな成長を遂げ、今日の繁栄を築いてきました。途中、失われた二十年と言われた停滞もありましたが、今、総理が進めるアベノミクスによって、我が国の経済は再び成長軌道に乗ろうとしております。内閣発足から約三年で日本の株価は二倍以上になり、アメリカやドイツがこの間一・五倍に伸びたのと比べても顕著であります。
 また、労働市場では完全雇用が実現されました。有識者や専門家の間では、どんなに景気が良くても失業率は三・四%以下にはならないと言われてきました。しかし、現在の日本の失業率は、二〇一五年十月の値で三・一%と、超完全雇用状態にあります。日本は、世界の先進工業国で、唯一、完全雇用を実現した国とも言えるのです。
 物価も、食品とエネルギーを除く消費者物価指数は、五年前のマイナス一%からプラス一%に改善、実質賃金も四か月連続プラスとなり、失われた二十年の中でようやく経済再生への一歩を踏み出すことができたところであります。
 しかし、中小企業が大半を占める地方には、景気回復の実感はいまだ伝わっておりません。個人消費を本格的に回復させるために、大企業の賃上げ機運を中小企業や地方にも波及させる必要があります。そのためにも、より一層緊張感を持った、そして謙虚な経済政策、政権運営が求められると思います。
 以上の問題意識より、本年最初の質問として、総理の日本経済に関する現状認識と、GDP六百兆円に向けた具体策についてお伺いをいたします。
 次に、希望出生率一・八に向けた少子化対策です。
 今から二年ほど前、私が参議院外交防衛委員長を務めておりました頃、スウェーデン議会のウルバン・アーリン外務副委員長と会談する機会がありました。アーリン氏は、今ではスウェーデン王国議会議長になられました。つい先日来日され、総理も懇談されました。
 スウェーデンは人口九百六十万人という小さな国ですが、一人当たりのGDPは世界で七位と、同二十七位の我が国を大きく上回り、ボルボ、イケア、H&Mなど、世界的な企業が生まれています。私がアーリン氏に、日本は人口減少社会です、人口が少なくても、質の高い、強い国家をつくるにはどうしたらよいかと尋ねると、女性の労働市場への進出が大切であるとの答えが返ってきました。
 スウェーデンでは、男女の労働者比率はほぼ同数、男女の給与格差は一〇〇対八八だそうです。それに対し、我が国は一〇〇対七一と、大きな差があります。さらに、育児休業の取得率は男女共に八割程度、育児給付も充実していて、子育てしながら働ける仕組みが整っています。こうした結果、スウェーデンは世界的にも出生率回復の成功例になっています。
 もちろん、スウェーデンの十倍以上の人口を有する我が国では、同じ政策を取ったとしても、その効果の現れ方、スピードは大きく異なるでしょう。しかし、世界の先進事例も参考にしながら、我が国なりの工夫をしなければならないと思います。
 希望出生率一・八に向けた少子化対策と女性活躍の更なる推進について、総理の方針をお伺いします。
 次に、第三の矢である介護離職ゼロについて伺います。
 親の介護のために仕事を辞めるいわゆる介護離職をゼロにするためには、解決すべき深刻な問題が存在をしております。それは、介護の働き手不足です。既に、介護施設の中には、職員不足でフル稼働できず、ベッドを空けてしまっているところも出てきています。
 その介護人材の不足をもたらす大きな要因として、処遇の問題、そして一七・七%という施設系介護職員の高い平均離職率が挙げられます。施設系介護職員の平均賃金は二十一・九万円。全労働者平均三十二・四万円と比較しても十万円以上も低くなっております。親の介護のために仕事を辞める介護離職をゼロにするためには、まずは介護現場で働く方の離職率を下げる介護職離職をゼロにする必要があります。そのためにも、賃金や就労環境の向上が必要であります。
 また、施設で働くのは介護職員だけではありません。施設には、看護師、事務職、送迎ドライバー、給食スタッフなど、様々な職員の方がおられます。こうした方々の処遇には介護報酬の在り方いかんが大きな影響を及ぼします。
 介護離職ゼロに向けた介護人材確保と介護施設の充実方策について、総理のお考えをお伺いいたします。
 次に、震災復興について伺います。
 東日本大震災から間もなく五年となります。私は神戸の出身ですので、同じ被災地として東北の皆様の苦労は痛いほど分かるつもりです。
 折しも、今年三月で五年間の集中復興期間が終わり、次の五年間である復興・創生期間に入っていきます。被災地の自立と地方創生のモデルとなるような復興をという願いを込めた命名とのことですが、この復興・創生期間においてはどのような課題に重点的に取り組んでいくのか、総理の具体的な策をお伺いをいたします。
 次に、消費税の軽減税率について伺います。
 来年四月の消費税率一〇%への引上げと同時に、食料品と新聞に軽減税率を導入することになりました。我が国では初めてのことですので、事業者にも消費者にも混乱が生じないように、しっかりと準備をする必要があります。
 特に、食料品を扱う中小の商店やスーパーなどに対しては、丁寧な説明と支援策が必要です。インボイス制度の導入までは経過措置がとられることになっていますが、実施状況を慎重に検証しながら、問題があれば柔軟に対応していく姿勢が必要と思います。
 軽減税率導入に伴う中小事業者への支援について、基本的な方針を財務大臣にお伺いをいたします。
 次に、総理の外交政策について伺います。
 昨年末には、岸田外務大臣が訪韓し、慰安婦問題について最終的かつ不可逆的に解決するという日韓合意が行われました。安倍総理自身の強いリーダーシップの下、様々な意見があることを承知の上での大変大きな決断であったと評価をいたします。
 今回の合意をきっかけに、日韓両政府は真摯な姿勢で未来に向けた関係構築に取り組んでいただきたいと思います。総理の今回の決断に至った経緯、そして今後の展望についてお伺いをいたします。
 また、昨日午前、北朝鮮が初めて水爆の実験を実施したことを発表しました。これは明確な安保理決議違反です。政府も国家安全保障会議を開催し、対処しています。拉致問題を引き起こし、いまだ解決していない状況下で、こうした実験を行いました。まさに危険国家であり、国民を守らなければなりません。
 日米韓を中心とした国際社会との連携体制の下、断固たる姿勢で対処すべきと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 折しも今年は我が国の国連加盟六十周年に当たる記念の年であり、ちょうど今月から安保理の非常任理事国になりました。五月には伊勢志摩サミットも行われます。このように我が国の外交にとって大変重要な局面を迎えておりますが、これら諸課題に対する外交の基本方針を総理にお伺いいたします。
 次に、TPPに関連して、強い農業の実現について伺います。
 政府は、農産品の輸出額を一兆円にするという目標を二〇二〇年から前倒しで達成することを表明しています。
 農産物の輸出でよく成功例として挙げられるのがオランダです。我が国の九州と同じ面積で人口も一千六百八十万人の国が、農産物の輸出額はアメリカに次いで世界第二位、二〇一四年、円に換算して十一兆二千億円と、日本の三十倍以上に及んでいます。しかし、今から四十年ほど前には、輸出額はほとんど差がなかったとも言われています。オランダの成功の要因は、市場の開放と土地の集約だとも言われています。
 また、更なるジャパン・ブランドの推進も重要です。例えば、我が兵庫県のコウノトリ育むお米は、コウノトリの餌となる生き物を増やし、その生き物が害虫等を食べてくれるため、農薬の使用が抑えられ、コウノトリも育めるという優れた仕組みで栽培されたお米ですが、減農薬や無農薬のお米ということもあり、国内外から非常に高い評価を得ています。我が県では、全国の七割以上を産出している酒造好適米の山田錦についても、芳純な酒ができると評判が高く、世界的な和食ブームを背景に需要が伸びております。
 それ以外にも、インフラ整備を含めた政府全体での取組も重要です。現在、全国各地からの貨物を夜の間に沖縄に運んで、そこから香港などアジア各地に届ける沖縄貨物ハブという仕組みができています。このルートを使えば、今朝取れた野菜が明日の午後には現地のレストランや食卓に並ぶのです。もちろん、野菜以外の地方産品もアジアに翌日配達できるというのは大きな強みであります。二〇〇九年に始まった取組ですが、今では年間の取扱量が二十万トンまで成長しています。こうした仕組みが更に有効に機能するためには、全国各地から拠点となる空港まで、トラックなどによる陸路の輸送を強化する必要があります。したがって、道路の整備も欠かせません。
 我が兵庫県内にも、山陰近畿自動車道、大阪湾岸道路西伸部、播磨臨海地域道路といった高速自動車道、地域高規格道路の事業計画が存在し、各々の超党派の国会議員連盟が存在します。全国各地にこうした社会資本整備の需要が存在していますが、国として一つ一つ着実に対応していくことが重要ではないかと思います。
 TPPに負けない強い農業の実現のため、政府を挙げた支援体制の整備について、改めて総理のお考えをお伺いします。
 先ほども申し上げたとおり、昭和三十一年という年は、我が国が戦後復興の完了を宣言した年であり、念願の国連加盟を果たした年でもあります。当時、私は満一歳、安倍総理は二歳でした。それから六十年という節目を機に、現在の我が国を築いた先人の苦労に思いをはせるとともに、我が国が内政、外交共にますます繁栄していくことを祈念し、私の年頭の質問を終わります。
 御清聴大変ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#14
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 末松信介議員にお答えいたします。
 日本経済の現状と名目GDP六百兆円実現の具体策についてお尋ねがありました。
 アベノミクス三本の矢の政策によってデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは二十八兆円増え、就業者数は百十万人以上増加し、昨年の賃上げ率は十七年ぶりの高水準となるなど、経済の好循環が確実に生まれています。この流れを更に加速し、日本経済を上昇気流に乗せるため、戦後最大のGDP六百兆円という目標に向かって新たな第一の矢を放っていきます。
 具体的には、賃上げを通じた消費の拡大や民間投資拡大に向けた生産性革命により経済の好循環を力強く回し続けます。最低賃金についても、年率三%程度を目途に引き上げ、全国加重平均で千円を目指します。
 また、TPPについて、総合的なTPP関連政策大綱に沿った施策を展開するとともに、地方創生も本格化させます。
 さらに、希望出生率一・八や介護離職ゼロという新たな第二、第三の矢の目標に向けた施策を強力に推し進め、安心できる社会基盤を築くことにより成長と分配の好循環をつくり出します。あらゆる政策を総動員していくことで潜在成長率を押し上げ、GDP六百兆円を実現してまいります。
 希望出生率一・八の実現に向けた少子化対策と女性活躍の更なる推進についてお尋ねがありました。
 希望出生率は、結婚して子供を産みたいという人の希望がかなえられた場合の出生率であり、二〇一〇年実施の調査では約一・八でした。子供を産みたいのに何らかの事情で産めない方の事情を取り除いていくことにより、この希望出生率を実現したいというのが基本的な考え方です。この希望出生率一・八の実現のため、夢を紡ぐ子育て支援をしっかりと実行してまいります。
 具体的には、若者の雇用の安定と待遇の改善、結婚、妊娠から子育ての各段階の負担、不安を解消するための支援の充実、待機児童解消を確実にするため、保育サービスの整備量を四十万人から五十万人に上積みし、保育人材の確保などを図っていくこととしており、今回の補正予算及び来年度予算に必要な措置を盛り込んだところであります。
 御紹介のあったスウェーデンのように、女性の就業率、出生率を共に高める鍵は、多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることです。昨年十二月に閣議決定した第四次男女共同参画基本計画の推進や女性活躍推進法の着実な施行により、女性が仕事と子育てを両立できる環境を整備してまいります。
 具体的には、ワーク・ライフ・バランスに配慮している企業の公共調達における優遇、官民における女性登用や男性の育休取得の計画的推進などに取り組みます。少子高齢化という構造的な課題に真正面から立ち向かい、府省庁の枠組みを超えて、これまでの発想にとらわれず、大胆に施策を実施してまいります。
 介護離職ゼロに向けた介護人材確保と介護施策の充実方策についてお尋ねがありました。
 介護人材の確保については、基金の活用により都道府県の取組を支援するとともに、介護報酬により処遇改善を実施し、介護職員の離職防止と就業促進を進めてまいります。
 このため、今回の補正予算及び来年度予算では、介護福祉士を目指す学生に返済を免除する奨学金制度の拡充、一旦仕事を離れた人が再び仕事に就く場合の再就職準備金の創設、介護ロボットの活用促進やICTを活用した生産性向上の推進などに必要な措置を盛り込んだところです。介護基盤の整備については、介護施設・在宅サービス及びサービス付き高齢者向け住宅を合計で約十二万人分当初の予定より整備量を上積みし、約五十万人分とすることとしております。今後とも、介護離職ゼロの実現に向けて果敢に挑戦してまいります。
 東日本大震災からの復興についてのお尋ねがありました。
 東日本大震災からの復興は安倍内閣の最重要課題であります。地震・津波被災地域では、これまで高台移転、災害公営住宅共に九五%以上で事業が開始し、水産加工施設の八五%で業務を再開するなど、復興は新たなステージを迎えています。本年四月から始まる後期五か年の復興・創生期間においては、住宅再建をしっかりと進めるとともに、被災地のなりわいの再生や心身のケアを着実に進めてまいります。
 また、福島の原子力災害被災地域については、本格復興再生の段階に向け、引き続き国が前面に立って取り組んでまいります。さらに、被災地を地方創生のモデルにする決意の下、被災地企業による新たな取組の支援や観光復興の取組の強化などに取り組んでまいります。
 東北の復興なくして日本の再生なし。安倍内閣においては、閣僚全員が復興大臣であるとの意識を共有し、被災者の方々の心に寄り添い、従来の発想にとらわれることなく、スピード感を持って全力で復興を加速化してまいります。
 昨年末の日韓合意についてお尋ねがありました。
 慰安婦問題については、昨年十一月にソウルで行った日韓首脳会談で、本件が日韓関係の発展に影響を与えているとの認識を踏まえ、できるだけ早期に妥結すべく協議を加速化するよう指示することで朴槿恵大統領と一致しました。
 その指示を踏まえ、局長協議を始め議論を重ねた結果、昨年末の日韓外相会談で岸田外務大臣が尹炳世外交部長官と膝詰め協議を行い、今回の合意に至りました。さらに、その後に行った日韓首脳電話会談において、私から朴槿恵大統領に、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認いたしました。
 八月の総理談話で申し上げてきたとおり、我々は、従来、歴代の内閣が表明してきたとおり、反省とおわびの気持ちを表明してきました。その思いに今後も揺るぎはありません。
 私は、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかないと考えております。今回の合意はその決意を実行に移すために決断したものであります。慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決される今回の合意を踏まえ、日韓両国で力を合わせて日韓新時代を切り開いていきたいと考えております。
 北朝鮮の核実験に関するお尋ねがありました。
 今回の核実験の実施は、我が国の安全に対する重大な脅威であり、断じて容認できません。強く非難します。安保理決議の明確な違反であり、国際的な不拡散体制への重大な挑戦です。
 私より直ちに、緊張感を持って情報収集、分析に努めること、国民に対して的確な情報提供を行うことなどを指示し、二度にわたり国家安全保障会議を招集しました。北朝鮮に対して直ちに厳重な抗議を行うとともに、国連安保理の緊急会合開催を要請しました。
 会合終了後には、安保理議長より、北朝鮮の核実験を強く非難し、新たな安保理決議に盛り込まれる更なる措置について直ちに作業を開始する旨のプレスステートメントが発出されました。
 本日早朝にオバマ大統領と日米首脳電話会談を行い、今般の北朝鮮の挑発行動は許容し得ないものであり、国連安保理における対応を含め日米両国が国際社会を主導していくことで一致するとともに、米国があらゆる手段を用いて日本を防衛するとの確固たるコミットメントを再確認しました。
 今後の対応については、我が国が非常任理事国を務める国連安保理を始めとして米韓中ロなどの関係国と連携し、国際社会が一致してこの問題に対応するよう努めるとともに、我が国独自の措置の検討を含め北朝鮮に対して毅然かつ断固たる対応を行ってまいります。
 本年の外交の基本方針についてお尋ねがありました。
 議員御指摘のとおり、本年は我が国の国連加盟六十周年に当たる年であり、国連安保理の非常任理事国入り、G7伊勢志摩サミットの開催など、日本外交が世界を引っ張っていく一年となります。この重要な年に、私は、経済や安全保障の観点から国益を増進するとともに、北朝鮮情勢を始めとする国際社会が直面する様々な課題について世界と緊密に協力し、リーダーシップを発揮し取り組んでいく決意であります。
 農産物の輸出についてお尋ねがありました。
 第二次安倍内閣の発足以降、我が国の農林水産物・食品の輸出は着実に増加いたしました。昨年は、十一月までで六千七百億円、政権交代前からおよそ五割増えて、過去最高の輸出実績を上げています。
 このような状況やTPP参加国の関税が撤廃されることを踏まえ、総合的なTPP関連政策大綱において、平成三十二年の農林水産物・食品の輸出額一兆円目標の前倒し達成を目指すことを目標として掲げました。また、大綱においては、この目標の達成に向け、米、牛肉、青果物等の重点品目ごとの輸出促進対策の推進、検疫手続の円滑化など、輸出阻害要因の解消、訪日外国人旅行者への地域農林水産物の販売促進、地理的表示の活用等によるブランド化の推進など、輸出の拡大に向けた多様な取組を行うこととしています。さらに、物流インフラでもある道路については、ネットワークとして適切につながることにより農産物の輸送の効率化などの効果の発揮も期待されます。
 今後、戦略的輸出体制の整備も含め、政府全体で大綱に即した取組を強力に推進することにより、可能な限り早期の一兆円目標達成を目指します。そして、これを通過点として更に輸出を拡大させることを通じ、強い農業の実現を図ってまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(麻生太郎君) 消費税の軽減税率制度の導入に向けた事業者支援についてのお尋ねがあっております。
 軽減税率制度の導入、運用に当たりましては、混乱が生じないよう万全の準備を進めなければなりません。政府部内に必要な体制を整備するとともに、軽減税率制度及びインボイス制度の導入に向けた事業者の準備状況等を検証しつつ、必要な対応を行うことといたしております。
 その一環として、事業者に対する制度の周知徹底、相談への対応を丁寧に行う、中小の小売事業者等が複数税率に対応するために必要なレジの導入やシステムの改修などについて資金的支援を実施するための経費を予備費や補正予算で手当てをいたしております。
 政府といたしましては、平成二十九年四月の軽減税率導入に向けて、事業者への対応をしっかり行ってまいりたいと考えております。(拍手)
    ─────────────
#16
○議長(山崎正昭君) 長沢広明君。
   〔長沢広明君登壇、拍手〕
#17
○長沢広明君 公明党の長沢広明です。
 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました海外出張報告及び財政演説に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 昨日、北朝鮮が水爆実験を行ったと発表しました。国際社会に対する重大な挑戦であり、断固非難するものであります。政府においては、昨日来、NSC開催、国連安保理の緊急開催要請など迅速な対応を進めていますが、国民に対しての適切な情報提供を図りつつ、引き続き毅然たる姿勢で臨むよう強く求めます。冒頭、この点について、総理の見解を求めます。
 二〇一六年、安倍連立政権四年目の年がスタートしました。政権発足以来、安倍政権は、国民の負託に応え、いわゆる三本の矢の経済政策を中心に、日本再建に向けて全力を挙げ、デフレからの脱却はもう一歩のところまで来ました。雇用を取り巻く環境も大きく改善、賃金も確実に上昇し始めています。
 こうした中、昨年十月、安倍総理は、新三本の矢、一億総活躍社会の実現を掲げて内閣を改造し、新たな目標を掲げて前進することを表明されました。そこで打ち出された希望出生率一・八、そして介護離職ゼロ。分かりやすい目標設定であるだけに、その実現可能性などを疑問視する声もありますが、総理の強い決意と実行力でこうした疑念を断固振り払い、政府・与党結束して国民のための政治を更に前に進めていこうではありませんか。
 私が政治家として最も大切にしているのは現場です。日々の暮らしの現場、汗水流して働く農家や中小企業の現場、医療や福祉の現場、そして自然の猛威がもたらす災害の現場等々、あらゆる現場に足を運びながら、そこで課題をつかみ、政策を積み上げ、一人一人が輝き活躍できる社会をつくっていく、それこそが一億総活躍社会への道のりであり、自公政権の政治姿勢そのものであるべきと考えます。
 安倍総理自身、国内、海外で様々な現場の声に耳を傾けながら政策を進めておられます。公明党も、原点である現場主義に徹しながら、誰もが輝ける社会づくりに取り組んでいく決意です。
 まず、安倍総理に、一億総活躍、日本再建に向けた決意を伺います。
 安倍総理は、国際的な様々な課題に対する日本の役割を積極的に果たしていくための首脳外交をすさまじい勢いで展開されています。中でも、日韓首脳会談を踏まえ、昨年末の十二月二十八日の日韓外相会談及び首脳電話会談を通じて、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決することで合意したことは、関係改善への大きな一歩となったことは間違いありません。今後は、両国がこの合意に基づいて不退転の決意で実現していくことが何よりも重要であると考えます。
 今年は、日本でサミットや日中韓首脳会談など重要な国際会議も開催されますが、これからの外交政策について、総理の決意を伺います。
 消費税の軽減税率制度については、自民、公明両党において真摯に議論を重ね、平成二十九年四月から、酒類及び外食を除く食料品全般を対象とした軽減税率制度を導入することを決定いたしました。社会保障と税の一体改革を着実に進めるために消費税率の引上げは避けて通れない一方で、せめて生活に必要な食料品だけでも税率を軽くしてほしいという庶民の切実な願いに応えたのが、軽減税率の導入です。総理は、最善の結果が得られたと評価しておられますが、制度導入の意義、利点についてどのようにお考えか、国民にお示しください。
 軽減税率の円滑な導入に向けては、国民理解を深めるとともに、事業者、特に中小・小規模事業者への支援が欠かせません。相談窓口の設置、レジシステムや業務システムの改修支援などに早急に取り組むべきと考えますが、総理の見解を求めます。
 今般の補正予算案は、安倍総理の掲げる一億総活躍社会の実現、TPP関連政策大綱の実現、そして災害復旧、防災・減災事業、復興の加速化等が中心となっています。また、地方創生の本格展開、消費喚起や投資促進、生産性を高めるための施策にも配慮しています。さらには、全体で三・三兆円規模ですが、それらの財源は税収増や前年度剰余金で賄い、一方で新規国債の発行額を四千四百四十七億円減額するなど、財政健全化に向けた取組とも整合的です。この結果、平成二十七年度のプライマリーバランス赤字半減目標は堅持される見込みとのことですが、今般の補正予算案の意義、目的及びこれまでの財政健全化への取組について、麻生副総理兼財務大臣の答弁を求めます。
 一億総活躍社会について、具体的に質問します。
 第一の矢、希望を生み出す強い経済についてですが、個人消費の喚起、拡大は経済と社会保障の好循環を強固なものとする上で欠かせません。
 最低賃金を始めとする賃金の引上げを広く国民全般に行き渡らせていく施策の強化と併せ、賃金引上げの恩恵が及びにくい方への支援として、補正予算案に年金生活者等支援臨時福祉給付金が盛り込まれました。給付金の目的、意義を国民に分かりやすく説明すると同時に、対象の方々にきちんと行き渡るよう実施面においても万全を期していただきたい。総理の答弁を求めます。
 昨年四月の政労使会議において、下請企業である中小企業や小規模事業者に対し、適正価格での取引を促す取組について合意をしました。中小企業の元気こそ日本の力です。そのため、大企業は、下請企業の価格転嫁を含めた取引価格の適正化、中小企業等の生産性向上や技術・製品開発への支援など、合意を踏まえた取組を進めていくべきです。経済の好循環へ向け、下請企業への支援策について、総理の答弁を求めます。
 第二の矢、夢を紡ぐ子育て支援に関してですが、子育て世代と一口に言っても、一人親家庭や多くの子を抱えて経済的負担の大きい多子世帯など、その置かれた環境は様々です。少なくとも、生まれ育った環境によって子供の将来の可能性が狭められてしまうようなことのない社会を実現していかなければなりません。希望出生率一・八を実現するためにも、家庭のニーズを酌み取ったきめ細かな施策の推進が必要です。特に、一人親家庭等を支援する児童扶養手当については、公明党がかねてから主張してきたとおり、当初予算にて第二子、第三子の加算額がそれぞれ倍額されることとなりました。一人親家庭、多子世帯への支援、子供の貧困対策について、補正予算案での対応を含め、どのように取り組んでいくか、総理の答弁を求めます。
 第三の矢、安心につながる社会保障については、高齢化が本格化する中、誰もが安心して暮らせる社会をつくり上げるためには、地域における介護サービスの整備が欠かせません。利用者やその家族の目線に立って在宅サービスや施設整備を充実していくことがまず求められています。その上で、そうしたサービスを担う人材の確保や、利用者となる、例えば認知症の方やその家族への支援についてもきめ細かな目配りが必要と考えます。介護人材の確保と認知症の方やその家族への支援について、総理の答弁を求めます。
 TPPの国内対策について伺います。
 TPP協定が日本経済にとって大きなメリットがあることは間違いなく、これを最大限に活用するために中小企業や地場産業などの海外展開を積極的に支援すべきです。
 一方で、農林水産業への影響については、生産者から不安の声が聞かれます。日本の農業は、TPPのみならず、高齢化など厳しい状況に置かれており、意欲のある若者が安心と希望を持って取り組めるよう万全の対策が必要です。
 中でも中山間地域は、農業産出額の約四割を生産し、洪水や土壌の流出を防止するなど重要な役割を果たす一方、急傾斜地が八割を占め規模拡大による生産性向上が難しいなど、より厳しい状況にあります。営農を支える地域政策として、直接支払を着実に実施するとともに、高収益作物の導入や農地集積など所得向上に向けた産業政策の一層の充実が求められます。今後、中山間地域を始め日本の農林水産業をどのように維持発展させるのか、総理の答弁を求めます。
 次に、災害対策について伺います。
 本年は東日本大震災の発災から五年を迎え、復興は新たな段階に入ります。新たな復興・創生期間においては、地元の声をしっかりと受け止めながら、生活再建、町づくりが加速するよう、引き続き政府の力強い支援が欠かせません。まずは総理に対し、復興の更なる加速化に向けた決意を伺います。
 一昨年の御嶽山噴火や昨年の集中豪雨などの被害の爪痕は、いまだに住民の心に残されています。中でも昨年九月の関東・東北豪雨においては、堤防の決壊や河川の氾濫など甚大な被害が出ました。私も、鬼怒川が決壊した茨城県常総市に直ちに向かい、国と関係自治体との調整等に当たらせていただきました。
 今般のような想定をはるかに超える水害を防ぐためには、ハード、ソフト両面にわたる対策を併せて行う必要があります。特にハード面では、全国の堤防の高さが足りない箇所のかさ上げやコンクリートブロックによる補強などが必要です。また、ソフト面では、住民がより迅速に災害へ対応できるよう、例えばスマートフォンなどによる洪水予報の自動配信、こうしたことを円滑に行うための支援、最大級の豪雨に備えたハザードマップの見直しなどが重要です。先般、大規模水害対策の新ビジョンが策定されましたが、水害などの災害対策についてどう取り組むのか、石井国土交通大臣の答弁を求めます。
 一方で、今後起こり得る首都直下地震や南海トラフ巨大地震などに備えた老朽インフラ整備の推進など、防災・減災対策は極めて重要です。避難経路や支援物資の輸送経路である道路や橋の修繕、補強、生活インフラである水道施設の耐震化対策などは特に急がれる課題です。
 また、地震大国であり海洋国家である日本において、海上から医療支援を行うことのできる病院船、災害時多目的船の必要性がより高まっています。大規模災害が発生し、陸路での医療活動が困難になるような緊急時に備え、海路からの支援を可能にする災害時多目的船の早期運用に向けた実証訓練や計画策定を早急に進めていくべきです。
 以上、今後の災害に備えた国の体制づくりについて、総理並びに国土交通大臣の見解を求めます。
 世界を見れば、テロへの対応、難民問題など多くの課題が山積しておりますが、今後も日本が世界の平和と安定に一層貢献していくことが重要です。総理自らが先頭に立って積極的な平和外交を進めていかれることを御期待申し上げ、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#18
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 長沢広明議員にお答えをいたします。
 北朝鮮の核実験に関するお尋ねがありました。
 今回の核実験の実施は、我が国の安全に対する重大な脅威であり、断じて容認できません。強く非難します。安保理決議の明確な違反であり、国際的な不拡散体制への重大な挑戦です。
 私より直ちに、緊張感を持って情報収集、分析に努めること、国民に対して的確な情報提供を行うことなどを指示し、二度にわたり国家安全保障会議を招集しました。北朝鮮に対して直ちに厳重な抗議を行うとともに、国連安保理の緊急会合開催を要請しました。
 会合終了後には、安保理議長より、北朝鮮の核実験を強く非難し、新たな安保理決議に盛り込まれる更なる措置について直ちに作業を開始する旨のプレスステートメントが発出されました。
 本日早朝にオバマ大統領と日米首脳電話会談を行い、今般の北朝鮮の挑発行動は許容し得ないものであり、国連安保理における対応を含め日米両国が国際社会を主導していくことで一致するとともに、米国があらゆる手段を用いて日本を防衛するとの確固たるコミットメントを再確認しました。
 今後の対応については、我が国が非常任理事国を務める国連安保理を始めとして米韓中ロなどの関係国と連携し、国際社会が一致してこの問題に対応するよう努めるとともに、我が国独自の措置の検討を含め北朝鮮に対して毅然かつ断固たる対応を行ってまいります。
 一億総活躍に向けた決意についてお尋ねがありました。
 国民一人一人が家庭で、地域、職場でそれぞれの能力を発揮して輝くことのできる社会、若者もお年寄りも、女性も男性も、難病や障害のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが活躍できる社会をつくる、そのために一人一人の希望を阻むあらゆる制約を取り除いていきたい、こうした思いから一億総活躍社会の実現という目標を掲げました。その実現のため、戦後最大のGDP六百兆円、希望出生率一・八、介護離職ゼロという三つの明確な的を掲げ、新しい三本の矢を放ちます。
 これまでも子育て支援施設や介護施設を訪れ、また、地域で農業を営む方や中小企業で働く方からもお話を伺ってまいりました。意欲ある誰もが頑張ることができる環境をつくる、そして頑張った人たちが報われる真っ当な社会をつくり上げることこそが政治の役割であります。未来に向かって挑戦あるのみ、必ず実現できるという強い意思を持って、内閣の総力を挙げて一億総活躍社会の実現に向け取り組んでまいります。
 韓国との関係及び今後の外交政策についてのお尋ねがありました。
 韓国とは、昨年末の合意により慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを踏まえ、日韓両国で力を合わせて日韓新時代を切り開いていきたいと考えています。
 本年は、G7伊勢志摩サミットや日中韓サミットが日本で開催され、国連安保理の非常任理事国を務めるなど、日本外交が世界を引っ張っていく一年となります。経済や安全保障の観点から、国益を増進し、北朝鮮情勢を始め国際社会が直面する様々な課題について世界と緊密に協力し、リーダーシップを発揮して取り組んでいく決意であります。
 消費税の軽減税率制度についてお尋ねがありました。
 消費税率一〇%への引上げに伴う低所得者への配慮の観点から、軽減税率制度を平成二十九年四月に導入し、ほぼ全ての人が毎日購入している酒類及び外食を除く飲食料品等の税率を八%に据え置くこととしております。これにより、いわゆる消費税の逆進性を緩和することができ、また、日々の生活の中で買物の都度、痛税感の緩和を実感していただけるものと考えております。
 また、軽減税率制度の導入に当たり混乱が生じないよう、政府に必要な体制を整備するとともに、事業者の準備状況等を検証しつつ、軽減税率制度の円滑な導入、運用のための必要な対応を行うこととしております。
 その一環として、制度の周知徹底、相談への対応を丁寧に行うとともに、中小の小売事業者等が複数税率に対応するために必要なレジの導入やシステムの改修等について資金的支援を実施するための経費について、予備費や補正予算で手当てしております。平成二十九年四月の軽減税率制度導入に向け、政府として万全の準備を進めてまいります。
 年金生活者等への臨時福祉給付金についてのお尋ねがありました。
 GDP六百兆円の実現に向け、今年前半にかけて個人消費の下支えを行い、経済の下振れリスクにも対応することが必要です。現役世代には賃金引上げの恩恵が及びやすい一方、こうした恩恵が及びにくいのが高齢者です。年金額については、デフレの影響もあり、特例水準の解消も含め、伸びませんでした。また、一般的には、高齢者層は他の年齢層に比べ消費性向が高い傾向にあります。
 こうしたことを踏まえ、アベノミクスの果実を活用し、低所得の高齢者に対し一人三万円の臨時的な給付金の支給を行うこととしました。これは、社会保障・税一体改革の一環として平成二十九年四月から始まる年金生活者支援給付金の前倒し的な位置付けにもなります。給付金を支給するに当たっては、対象者への適正かつ迅速な支給が可能となるよう適切な広報活動を展開するとともに、給付事務を担う市町村を支援してまいります。
 下請企業への支援策についてのお尋ねがありました。
 日本の物づくりを支えてきたのは、きらりと光る技術やアイデアを持った中小企業・小規模事業者の皆さんです。中小企業・小規模事業者が賃金を引き上げられるよう、中小企業の取引条件の改善や生産性の向上などを促していきます。
 取引条件の改善については、大企業に対して政労使合意の遵守や仕入価格の上昇を踏まえた価格転嫁などに取り組むよう要請するとともに、下請代金法に基づく立入検査を行ってきました。今後、本年度末までに産業界に対する大規模な調査を実施します。これにより、取引条件の改善の状況や課題を具体的に把握するとともに、中小企業の取引条件改善に向けた機運を高めます。調査結果を踏まえて必要な対策を講じてまいります。
 中小企業の生産性の向上については、これに取り組む中小企業を対象とする生産設備の固定資産税の大胆な減税などを通じて支援してまいります。あわせて、大企業と取引先企業との協力により、生産性向上や技術・製品開発など、高付加価値化の取組が進められることを期待しています。
 一人親家庭、多子世帯への支援などについてのお尋ねがありました。
 子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。経済的にも様々な困難を抱えている一人親家庭や子供の多い世帯にはきめ細かな支援が必要です。このため、昨年十二月に、一人親家庭、多子世帯等自立支援プロジェクトを取りまとめました。就業による自立に向けた支援を基本としつつ、総合的な取組を充実することとしています。
 具体的には、一人親世帯などを支援する児童扶養手当では第二子以降の加算分を倍額にし、幼児教育無償化に向けた取組の段階的推進、奨学金の充実などの教育費負担の軽減、一人親を対象とした就職に有利な資格の取得を促進するための貸付事業の創設などに取り組むこととし、今回の補正予算及び来年度予算に必要な措置を盛り込んだところであります。今後とも、一人親家庭の自立の促進や子供の貧困対策に全力で取り組んでまいります。
 介護人材の確保と認知症の方やその家庭の支援についてのお尋ねがありました。
 介護人材の確保については、基金の活用により都道府県の取組を支援するとともに、介護報酬により処遇改善を実施し、介護職員の離職防止と就業促進を進めてまいります。このため、今回の補正予算及び来年度予算では、介護福祉士を目指す学生に返済を免除する奨学金制度の拡充、一旦仕事を離れた人が再び仕事に就く場合の再就職準備金の創設、介護ロボットの活用促進やICTを活用した生産性向上の推進などに必要な措置を盛り込んだところです。
 また、認知症の方やその方を介護する家族への支援については、昨年一月に新たな総合戦略として新オレンジプランを策定し、これに沿った取組等を進めています。
 来年度予算でも、介護に関する地域の窓口である地域包括支援センターの相談機能を充実させ、消費税増収分を活用した認知症の初期の段階から支援するチームの設置やボランティアによる認知症の方への居宅訪問を推進するなどの必要な措置を盛り込んだところであります。今後とも、介護人材の確保と認知症の方やその家族への支援にしっかりと取り組んでまいります。
 我が国の農林水産業の維持発展についてお尋ねがありました。
 農は国の基であり、中山間地域を含め美しい田園風景を守ることは政治の責任であります。このため、安倍内閣では、農地集積バンクの創設、輸出促進や六次産業化、農協改革など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。
 その中で、中山間地域において付加価値の高い農産物の生産や地域ブランドの確立等に取り組む意欲ある生産者を積極的に支援してきております。また、農業、農村の多面的機能の発揮のため、平成二十六年度から中山間地域等直接支払などの日本型直接支払制度を実施しております。
 さらに、総合的なTPP関連政策大綱においても、中山間地域において収益力の高い農業経営を目指す担い手への支援など、攻めの農林水産業に転換していくための体質強化対策や重要五品目の経営安定対策を講じていくこととしたところです。
 これらの対策を着実に実行することにより、農林水産業を成長産業化させ、中山間地域も含め、若者が自らの情熱で新たな地平を切り開いていける、そういう夢のある分野にしていく考えであります。
 東日本大震災からの復興の加速化についてのお尋ねがありました。
 東日本大震災からの復興は安倍内閣の最重要課題であります。津波被災地域では、これまで高台移転、災害公営住宅共に九五%以上で事業が開始し、水産加工施設の八五%で業務を再開するなど、復興は新たなステージを迎えています。私もほぼ毎月被災地を訪れ、一歩ずつではありますが、着実に復興が進んでいることを実感しています。
 本年四月からは、いよいよ後期五か年の復興・創生期間が始まります。今般の補正予算や平成二十八年度予算においても、住宅再建や復興町づくりの着実な推進など、復旧復興を加速することとしています。引き続き、地元の声に丁寧に耳を傾け、町づくりやなりわいの再生、心身のケアなどきめ細かな対応を進めてまいります。
 東北の復興なくして日本の再生なし。安倍内閣においては、閣僚全員が復興大臣であるとの意識を共有し、被災者の方々の心に寄り添い、従来の発想にとらわれることなく、スピード感を持って全力で復興を加速化してまいります。
 今後の災害に備えた国の体制づくりについてのお尋ねがありました。
 大規模地震に備える防災・減災対策は極めて重要であります。首都直下地震、南海トラフ地震対策については、法律に基づく基本計画において、期限を定めた定量的な減災目標を設定するとともに、ライフラインやインフラの耐震化等についての具体的な目標を定め、これを推進しているところです。
 また、インフラ老朽化対策については、インフラ長寿命化基本計画に基づき、管理者ごとに行動計画を策定するとともに、地方公共団体に対して財政支援、研修等の人的支援を行うなど万全を期してまいります。
 さらに、大規模災害時における船舶の活用については、自衛隊の艦船、民間船舶を活用した医療機能を補完するための実証訓練を実施しており、来年度以降も引き続き取り組んでまいります。
 多様な災害が頻発する我が国において、国民の生命と財産を守るため、今後とも、平時から防災・減災対策、発災時の災害対応に全力で取り組んでまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(麻生太郎君) 補正予算の意義、目的及び財政健全化の取組についてのお尋ねがあっております。
 安倍内閣は、一億総活躍社会の実現という新たな目標の下、少子高齢化という構造的課題に正面から取り組むということといたしております。本補正予算は、その第一歩として、保育や介護のための施設の整備や人材確保など、緊急に必要な対応を行うものであります。
 また、大筋合意に至りましたTPPの効果を経済再生、地方創生に直結させるため、攻めの農林水産業への転換を後押ししてまいります。災害復旧や復興など、必要な対応も同時に行うことといたしております。
 一方で、安倍内閣は、発足以来、経済再生を進めながら、歳出改革など財政健全化にも着実に取り組んできております。この補正予算におきましても、国債発行額を二年連続で減額、基礎的財政収支の赤字半減目標の達成も見込み得るものとなっております。今後とも、二〇二〇年度における国、地方の基礎的財政収支の黒字化に向けてしっかりと取り組んでまいる覚悟であります。(拍手)
   〔国務大臣石井啓一君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(石井啓一君) 長沢広明議員にお答えをいたします。
 まず、水害などの災害対策への取組についてお尋ねがありました。
 昨年九月の関東・東北豪雨では、記録的な大雨により鬼怒川の堤防が決壊をいたしました。私自身、被災直後に現地に入り、倒壊、流失した家屋の様子を目の当たりにいたしました。この教訓を踏まえまして、施設では守り切れない大洪水は必ず発生するとの考えに立ち、社会全体で洪水に備える水防災意識社会を再構築する必要があると決意を新たにいたしました。
 具体的には、ソフト対策については、スマートフォン等による洪水予報の提供など、より実効性のある住民目線のものへ転換をし、ハード対策につきましては、従来の洪水を河川内で安全に流す対策に加え、越水等が発生した場合でも決壊までの時間を少しでも引き延ばす堤防構造の工夫等、危機管理型ハード対策を組み合わせて講じます。
 このような災害は他の大河川でも起こり得ることから、これらの取組を水防災意識社会再構築ビジョンとして、全ての国管理河川とその沿川の市町村においておおむね五年間で実施をいたします。スピード感を持って、洪水に備えるハード・ソフト対策を推進してまいります。
 また、今後の災害に備えた国の体制づくりについてお尋ねがありました。
 頻発する災害から国民の命と財産を守ることは、社会資本整備を担う国土交通省の最重要の使命であると認識しております。とりわけ、事前防災・減災対策等に取り組むことにより、災害被害を未然に防ぐことが重要であります。
 こうした観点から、切迫する大規模な地震・津波災害等に備えるため、南海トラフ巨大地震対策計画等に基づき、避難路、避難場所の整備、緊急輸送道路における耐震化などの実効性のある対策を強力に推進をしてまいります。また、今後一斉に老朽化するインフラにつきましても、インフラ長寿命化計画や維持管理の統一的な基準、マニュアルにのっとり、計画的な定期点検や修繕、地方公共団体に対する財政支援や研修等の人的支援を着実に実施をしてまいります。さらに、災害発生時においても、迅速な住民避難や事業継続等を可能とする社会全体の危機管理体制、バックアップ体制の構築も重要であります。
 現在、国土交通省の公共事業関係費の半分以上を防災・減災、老朽化対策等に重点化しており、引き続き、国土交通省の総力を挙げて国民の安全、安心の確保に取り組んでまいります。
 以上でございます。(拍手)
#21
○議長(山崎正昭君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十一分休憩
     ─────・─────
   午後一時一分開議
#22
○議長(山崎正昭君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の報告及び演説に対する質疑を続けます。井上哲士君。
   〔井上哲士君登壇、拍手〕
#23
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 質問に先立ち、昨日、北朝鮮が行ったとする、水爆だとする核実験を厳しく糾弾します。この暴挙は、地域と世界の平和と安定に対する重大な逆行であり、国連安保理決議、六か国協議の共同声明、日朝平壌宣言にも違反しており、断じて許されません。国際社会が一致して、政治的、外交的努力を強め、北朝鮮に核兵器を放棄させるための実効ある措置をとることを強く求めます。
 日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
 今年は日本国憲法公布七十年です。個人の尊厳を守るために憲法で権力を縛る、この立憲主義の大切さを国政に携わる者は改めて胸に刻むことが必要です。
 安倍政権は、昨年の九月十九日の未明、憲法、法律の専門家がこぞって憲法違反と指摘した安保法制、戦争法案をこの議場で強行しました。しかし、国会内で数を頼んで強行しても、国民は決して認めていません。学生、市民、ママたち、学者、文化人、宗教者、労働者と広がった空前の運動は、直ちに、違憲の戦争法は廃止に、立憲主義を取り戻そうの声を上げ、四日の国会召集日も四千人近い市民が国会に駆け付けました。
 戦争法は廃止すべきです。総理は、この国民多数の声をどう受け止めているのですか。
 安倍内閣の憲法無視の姿勢は一層強まっています。沖縄で、県民の度重なる審判を無視し、私人の権利救済のためにある行政不服審査制度を悪用して工事を再開するなど、辺野古新基地建設を押し付けることは、憲法に定める地方自治の本旨を踏みにじるものです。
 さらに、政府は、野党議員による憲法五十三条に基づく臨時国会召集要求を握り潰しました。臨時国会は、閉会中審査では代えられません。召集拒否は、内閣は臨時会の召集を決定しなければならないとした憲法に明白に違反しているではありませんか。立憲主義、民主主義否定を重ねることは許されません。
 総理は、海外出張報告で、世界の平和と繁栄のために我が国がどのような貢献ができるのか訴え、大きな成果を上げたと述べました。しかし、その中身は、新日米ガイドラインと戦争法の具体化と一体の、専ら軍事による平和というものであり、原発の輸出推進です。
 総理は、十一月の日米首脳会談で、米軍が南シナ海で行った航行の自由作戦への支持を表明しました。その上で、南シナ海での自衛隊活動について、情勢が日本の安全に与える影響を注視しつつ検討すると述べました。オバマ大統領が共同の警戒監視活動への参加を求めたと報じられていますが、総理とオバマ大統領との間でどんなやり取りがあったのですか。情勢次第で警戒監視活動への参加もあり得るということですか。
 さらに、総理は大統領に、武器輸出やODAにより関係国を支援する考えを示しました。実際この間行われたのは、オーストラリアの次期潜水艦の共同開発の計画提案や、インド、インドネシアへの飛行艇の輸出、ベトナム、フィリピンへの武器輸出協定の協議など、日本製武器の売り込みです。紛争の地域の当事者に武器を輸出することがなぜ平和の貢献になるのですか。逆に地域の緊張を高めるだけではありませんか。
 十月の一日には防衛装備庁が発足しました。経団連は、防衛装備庁の政策に対して産業界の考えを反映させるためとして提言を発表し、安保関連法の成立で自衛隊の国際的な役割の拡大が見込まれる下、武器輸出を国家戦略として推進すべきであると強調しています。憲法九条を持つ日本の国家戦略の基本は平和外交であり、紛争を助長する武器輸出とは反するものです。総理は、この提言に基づき武器輸出を国家戦略として推進するつもりですか、お答えください。
 総理は、インドとの間で原発の輸出を可能とする原子力協定締結へ原則合意しました。福島第一原発の事故の原因究明も収束もできない日本が原発を輸出することは、世界の繁栄への貢献どころか、新たな安全神話の輸出にほかならないではありませんか。
 被爆七十年のこの年に行われた暴挙に、被爆者からも、広島、長崎の市長からも厳しい批判の声が上がっています。インドは核保有国で、核不拡散条約にも不参加です。インドとの協定締結は核兵器開発に手を貸すことになりかねず、被爆国日本がインドの核保有を認めたと国際社会にメッセージを与えることになります。日印原子力協定は中止すべきです。
 一億総活躍社会と補正予算案について聞きます。
 まず問われるべきは、アベノミクスの三年間が何だったのかです。
 三年間で大企業の経常利益は六割も増え、内部留保は三百兆円を超えました。ところが、国民の所得や消費は実質では三年前を下回ったままです。非正規雇用は初めて四割を超えました。社会保障の削減は暮らしを直撃し、さらに消費税八%増税により、二〇一四年度のGDPはマイナスになりました。ところが、一五年三月期決算では、上場企業は最高益を更新しました。日本経済は一九五五年以降に七回マイナス成長に陥りましたが、マイナス成長なのに企業収益が増益になるという異常な事態は初めてのことです。
 なぜ大企業の増益が内部留保に回るだけで経済に還流しないのか。労働法制改悪で正社員が非正規に置き換えられるなど、企業の収益が家計に回る回路が断たれてきたからです。今必要なことは、大企業を応援をすればやがて国民は潤うと言いながら、貧困と格差拡大をもたらしたアベノミクスを一億総活躍などと目先を変えて続けるのではなく、国民の所得を増やし、暮らしを応援をすることに抜本転換することではありませんか。答弁を求めます。
 まず、消費税増税の中止です。
 八%増税の際、消費の落ち込み等について総理は、この消費税はワンショットでございますと答弁し、一時的な影響との楽観的認識でした。実際は、今も深刻な影響を及ぼしていることをどう反省していますか。
 政府・与党は一〇%増税に固執し、軽減税率の実施で負担が下がるかのような誤解が意図的にばらまかれています。しかし、五兆四千億円のうち一兆円の軽減であり、四兆四千億円もの大増税です。一部税率を据え置けば、こんな大増税をしても国民生活に影響がないと考えているのですか。国民生活を本当に心配するならば、増税そのものを中止すべきではありませんか。
 一方、六十五歳以上の低所得者への一人三万円の臨時給付金が盛り込まれました。アベノミクスの果実の均てんによる消費喚起だと言いますが、国民の多くはアベノミクスの果実などとは無縁です。
 厚労省の国民生活基礎調査の相対的貧困率は一六・一%で、八五年の調査開始以来最悪となり、高齢者世帯とともに青年や若い母子家庭の貧困問題は深刻です。なぜ高齢者だけが対象なのですか。年金を削り介護や医療の負担を上げておいて、参院選前に給付金を配るというのは、選挙対策のためのばらまきそのものではありませんか。
 次に、賃上げの問題です。
 一億総活躍社会の実現への緊急対策にも賃金引上げを通じた消費の喚起が盛り込まれました。ところが、政策は賃上げとは逆行しています。
 労働者派遣法の強行に続き、残業代ゼロ法案が狙われています。賃下げと低賃金労働、不安定雇用を増やす労働法制の改悪はやめ、非正規から正社員への流れをつくる雇用のルール確立に転換すべきであります。
 法人税減税で大企業の内部留保が増えても賃上げにはつながりませんでした。さらに、法人税を二・三七%も引き下げ、その財源として外形標準課税を強化することは支離滅裂です。外形標準課税は、赤字で苦しむ中堅企業にも増税になります。さらに、給与総額などに応じて課税されるため、雇用と賃金の抑制につながります。賃上げに相反するではありませんか。大企業優遇の法人税減税の中止を求めます。
 総理は年率三%を目途に最低賃金の全国平均時給千円を目指すとしましたが、これでは達成は二三年頃になり、政労使合意も達成できません。また、最低賃金の地域間格差の広がりが地方の経済格差と人口流出にもつながっており、全国一律の最賃制が求められています。最低賃金は、緊急に大幅引上げを図ること、地域間格差を是正すること、賃金助成や税、社会保険料の減免など抜本的な中小企業支援と一体で行うこと、これが必要です。答弁を求めます。
 日本経団連は、十月十三日に「新内閣に望む」との文書を発表し、消費税増税や法人税引下げ、原発再稼働、TPP協定の発効、一層の労働法制の規制緩和などを求めました。その上で、見解を発表し、企業献金は企業の社会貢献の一環として重要だとして、会員企業に献金実施を呼びかけています。
 第二次安倍政権発足後、自民党への企業献金は年々増え、電力会社や原子力関連企業からの献金は二〇一二年の約三億円から一四年の約七億円に急増しました。まさに政策を金で買うものです。総理はこれが企業の社会貢献だと言うのですか。
 大企業が今果たすべき社会的責任は、内部留保の一部を使った賃上げや正社員化、まともな下請単価への是正ではありませんか。自民党への政治献金は断り、大企業の社会的責任こそ果たせと求めるべきではないですか。答弁を求めます。
 次に、TPPの問題です。
 大筋合意はされましたが、秘密交渉で日本が大幅譲歩した合意内容は日本語概要しかなく、日本語全文は公表されていません。これでは国民も国会も検証できません。交渉の全容や合意の日本語全文を国会に直ちに示すよう強く求めます。
 内容も示さないまま、補正予算にTPPの緊急対策費が盛り込まれました。政府の発表したTPPの影響の試算には驚きました。二年前の政府の試算と全く違っています。TPPによる国内総生産の伸びは前回試算の三・二兆円から今回は十四兆円へと四倍以上に膨張、一方、農林水産物の生産額の減少は、二年前の三兆円から千三百億円ないし二千百億円へと大幅に緩和しています。
 どうしてこれが信用できるでしょうか。研究者や関係団体が厳しく批判しているように、対策効果を過大に見積もり、農業への影響は過小に見積もったものにほかなりません。影響を小さく見せ、国内対策を急いで国民の批判をそらし、参議院選挙を乗り切ろうというやり方は決して許されません。
 TPPはまだ協定の正文も確定しておりません。農業と食の安全、経済主権を売り渡し、国民生活全体に深刻な影響をもたらすTPPは今からでも撤退すべきです。
 最後に、選択的夫婦別姓についてです。
 最高裁判決は不当にも夫婦同姓の強制は合憲としましたが、制度の在り方については、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄と述べ、議論を促しました。個人の尊厳に基づき、国民、女性の願いに応えた民法改正が求められています。答弁を求めます。
 夏には参議院選挙が戦われます。立憲主義、民主主義否定の暴挙を重ねる安倍政権を国民は決して許さないでしょう。日本共産党は、先日発足した戦争法の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合を始め広範な人々とともに政治の歴史的な転換に力を尽くすことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#24
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上議員にお答えいたします。
 平和安全法制についてお尋ねがありました。
 平和安全法制は、さきの通常国会で戦後最長となる延長を行い、二百時間を超える充実した審議の結果、与党のみならず野党三党の皆さんの賛成も得て成立したものであり、より幅広い合意が形成されたことは大きな意義があったものと考えています。
 また、平和安全法制に対しては、世界の多くの国々から強い支持と高い評価が寄せられています。これは、この法制が決して戦争法などではなく、戦争を抑止する法律であり、世界の平和と安全に貢献する法律であることの何よりのあかしであります。
 国民の命と平和な暮らしを守るために必要不可欠なこの法律を廃止することは全く考えておりません。引き続き、国民の皆様の更なる御理解をいただけるよう丁寧な説明に努めていく考えであります。私は、時が経ていく中において、間違いなく御理解、御支持はより一層広がっていくものと確信しています。
 国会の召集についてお尋ねがありました。
 一般的な考え方を申し上げれば、臨時会の召集要求について定める憲法第五十三条後段は、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定するにとどまり、召集時期については何ら触れられておらず、当該時期の決定を内閣に委ねております。
 基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないと解しておりますが、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会とで異なるところはないため、あえて臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えておりません。
 昨年の臨時国会召集の要求に対しては、政府としてこれに適切に対応するため、現下の諸課題を整理し、補正予算、来年度予算の編成などを行った上で、新年早々、本通常国会の召集を図ったものであり、迅速かつ適切に対応していると考えております。
 なお、国会閉会中でも、衆参両院の予算委員会に私も出席いたしましたが、衆参合わせて六十時間を超える閉会中審査において、TPP、COP21など、当面する政治課題につき政府としても説明責任を果たしてきたところであります。
 南シナ海における警戒監視活動についてお尋ねがありました。
 昨年のAPECの際に行われた日米首脳会談において、私から、南シナ海における米軍の航行の自由作戦を支持する旨述べるとともに、現状を変更し、緊張を高める一方的行為全てに反対である旨伝えました。これに対し、オバマ大統領から、航行の自由作戦については日常の行動として実施していく旨の発言がありました。
 南シナ海における警戒監視活動を検討するとオバマ大統領に表明した事実はありません。航行の自由作戦は米国が行うものであり、自衛隊の活動とは別のものであります。我が国がこれに参加することはありません。また、現在、自衛隊は南シナ海において常時継続的な警戒監視活動を行っておらず、そのような具体的な計画も有しておりません。
 いずれにせよ、南シナ海における自衛隊の活動については、南シナ海情勢が我が国の安全保障に与える影響を注視しつつ、航行の自由、そして法の支配が貫徹されるように、様々な選択肢を念頭に置きながら十分な検討を行っていきます。
 防衛装備の海外移転についてお尋ねがありました。
 防衛装備の海外移転については、我が国として、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念と、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持してまいります。防衛装備移転三原則の下、海外移転が許されるのは、平和貢献・国際協力の積極的な推進又は我が国の安全保障の観点から積極的意義がある場合に限定されています。
 積極的に武器輸出する方針に転換したというものではなく、政府としてこれまで同様、厳正かつ慎重に対処する方針に変わりはありません。このため、我が国が紛争当事国に防衛装備を移転したり、地域の緊張を高めるといった御指摘は全く当たりません。また、御指摘のように、武器輸出を国家戦略として推進するといったことは全く考えておりません。
 日印の原子力の平和的利用に関する協定についてお尋ねがありました。
 日本は、唯一の戦争被爆国であり、核兵器廃絶に向けた国際社会の取組を主導していきます。インドとの協定交渉においても、これを十分に考慮し、米仏がインドと締約した協定以上の内容を目指して交渉してきました。
 仮にインドが核実験を行った場合には、日本からの協力を停止します。インドによる核実験モラトリアムの継続が協力の前提となることは、私からモディ首相に対し明確に述べています。この協定の具体的な文言については引き続き調整中でありますが、かかる我が国の立場はインド側も了解しており、今般の原則合意もこれを踏まえたものであります。
 この協定は、原子力の平和利用についてインドが責任ある行動を取ることを確保するものであり、このことは、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにつながります。これは、核兵器のない世界を目指し、不拡散を推進する日本の立場に合致するものであり、本件協定の締結が核兵器開発に手を貸すことになりかねず、インドの核保有を認めることになるとの指摘は全く当たりません。
 なお、インドに限らず、すべからく原子力に関わる国際協力については、福島の教訓を国際社会と共有し、安全神話に陥ることなく、世界で最も厳しいレベルの安全性を追求するとの方針で行ってまいります。
 安倍内閣の経済政策についてお尋ねがありました。
 安倍内閣においては、デフレ脱却に向け、アベノミクス三本の矢の政策を進めることにより、名目GDPは二十八兆円増え、企業の収益は過去最高となりました。そして、政労使会議の開催や成長志向型の法人税改革を通じ、好調な企業の収益を雇用・所得環境の改善につなげることにより、就業者数は百十万人以上増加し、有効求人倍率は二十三年ぶりの水準となり、賃上げ率は二年連続で大きな伸びとなるなど、経済の好循環を生み出しました。
 こうした中で、格差が固定化しないよう、最低賃金を三年連続で大幅に引き上げ、パートタイム労働者と正社員との均衡待遇を推進するなど、様々な取組を行ってきた結果、パートで働く方々の時給はここ二十二年間で最高の水準となりました。また、不本意ながら非正規の職に就いている方の比率は低下しているなど、非正規雇用を取り巻く環境は着実に改善しています。さきの通常国会で成立した労働者派遣法改正法においても、正社員を希望する方にその道が開けるようにしたほか、今後とも、非正規雇用労働者のキャリアアップや待遇改善に向けた取組を進めてまいります。
 そして、今般、国民一人一人が、家庭で、地域で、職場でそれぞれの能力を発揮して輝くことのできる社会、すなわち一億総活躍社会の実現に向けた挑戦を開始しました。誰にでもチャンスのある社会を目指すとともに、経済成長の成果が広く国民に行き渡るよう、内閣を挙げて全力で取り組みます。
 消費税率の一〇%への引上げについてのお尋ねがありました。
 アベノミクス第二ステージでは、これまでの三本の矢の政策を一層強化して束ねた新たな第一の矢によって名目GDP六百兆円を目指します。より強化した経済政策の下においても、経済再生なくして財政健全化なしという方針に変わりはありません。今後も、賃上げの流れを続け、雇用や所得の拡大を通じた経済の好循環を回すことによってデフレ脱却を確かなものとしていきます。
 消費税率の引上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会から国の信認を確保するためのものであります。その増収分は全額社会保障の充実、安定化に充てることとしており、所得の再分配に資するものです。
 来年四月の消費税率一〇%への引上げは、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施します。経済の好循環を力強く回すことにより、そのための経済状況をつくり出してまいります。
 年金生活者等への臨時給付金の意義についてのお尋ねがありました。
 GDP六百兆円の実現に向け、今年前半にかけての個人消費の下支えを行い、経済の下振れリスクにも対応することが必要です。現役世代には賃金引上げの恩恵が及びやすい一方、こうした恩恵が及びにくいのは高齢者です。
 一年余り前、私は消費税の引上げの延期を決断しました。延期をした以上、給付と負担のバランスの観点から、消費税の引上げを前提とした施策を全て行うことはできません。そこで、年金生活者支援給付金については先送りするという苦渋の決断をしました。先送りの決断をした年金生活者支援給付金については、一昨年の総選挙のとき、私は、経済を成長させていけば税収は上振れしていく、その果実はしっかりと社会保障の分野に投入していきたいと申し上げました。そのお約束のとおり、税収増というアベノミクスの果実が生まれた今、その果実を活用し、臨時的な給付金の支給を行うこととしたものであります。これは、社会保障・税一体改革の一環として平成二十九年四月から始まる年金生活者支援給付金の前倒し的な位置付けになります。
 今回の給付金は、今年前半にかけての個人消費の下支えの観点や実務上の対応可能性を踏まえ、年金生活者支援給付金の対象よりも幅広い方に対し一回限りの措置として支給するものであります。ばらまきとの指摘は全く当たりませんし、まして選挙対策という批判は全く的外れであります。
 若者を含む現役世代については、賃金引上げや最低賃金の引上げを推進していきます。また、平成二十七年度補正予算や平成二十八年度予算においては、保育サービスの充実や児童扶養手当の多子加算の倍増など低所得の一人親家庭、多子世帯に対する支援、さらには幼児教育無償化の段階的拡充など、公費ベースで〇・七兆円の子育て支援の拡充を行っているところであります。これにより、希望出生率一・八の実現に向け、結婚、妊娠、出産、子育てに関する希望がかなう社会づくりを進めてまいります。
 雇用のルールについてのお尋ねがありました。
 非正規で働く方の待遇の改善、正社員を希望する方への正社員への転換など、働く方々がその能力を発揮できる社会をつくることは重要であります。現在提出している労働基準法改正案は、長時間労働を是正するとともに、多様で柔軟な働き方を推進するものであり、さきの通常国会で成立した労働者派遣法改正法は、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を選択される方について、その待遇の改善を図るものです。
 今回の補正予算及び来年度予算でも、非正規から正社員への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金の拡充など、企業における正社員転換や待遇改善の強化を進めることとしています。
 このように、一人一人が活躍し、それぞれの能力を発揮できる社会、一億総活躍社会の実現に向けて取り組んでいるところであり、法改正が賃下げと低賃金労働、不安定雇用を増やすとの批判は全く当たりません。
 法人事業税の外形標準課税についてのお尋ねがありました。
 今般の法人税改革は、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から行うものです。外形標準課税の拡大は資本金一億円以下の中小企業を対象外としており、また、二十七年度税制改正において、外形標準課税に所得拡大促進税制を導入し、賃上げへの配慮も行っているところであり、御指摘は当たりません。
 最低賃金についてのお尋ねがありました。
 最低賃金は、決定に当たり、労働者の生計費や賃金、企業の賃金支払能力を考慮することとされております。そして、これらの地域差など、地域の実情を考慮して、都道府県ごとに定められております。
 政府としては、アベノミクス第二ステージにおいて、戦後最大の名目GDP六百兆円を目指す中で、最低賃金を年率三%程度を目途に引き上げ、全国加重平均で千円を目指します。このような最低賃金の引上げに向けて、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善等を図ります。
 企業の社会的責任についてお尋ねがありました。
 二十年近く続いたデフレからの脱却を確実なものとすることができるかどうか、日本経済は今、大きな岐路に立っています。経済の好循環が力強く回るようにするためには、企業が過去最高の収益を背景に、三巡目のしっかりした賃上げ、下請取引条件の改善、設備投資の拡大、非正規雇用労働者の正社員転換、待遇改善などに取り組むことが期待されます。
 私はこれまで、政労使の合意を踏まえ、未来投資に向けた官民対話などの場で企業の積極的な取組を要請してきました。昨年、経済界からはこれに呼応し、今年を上回る賃上げを呼びかける、設備投資は三年後までに経済界全体で十兆円増加する、非正規雇用労働者の総合的な処遇改善を推進する旨の発言があり、その実現を期待しています。
 政治活動に対する献金の在り方については、長年の議論を経て、企業・団体献金は政党等に対するものに限定されるなど種々の改革が行われてきました。許してはならないのは、個人であれ団体であれ、お金でもって政策をねじ曲げようとする行為であります。その意味で、企業、団体が政党等に献金すること自体が不適切なものとは考えておりません。
 いずれにしても、この問題は、民主主義の費用をどのように国民が負担していくかという観点から、各党各会派において十分御議論いただくべきものと考えます。
 TPPについてお尋ねがありました。
 大筋合意の内容については、これまでもTPP協定の全ての章の概要資料や関税交渉結果等を公表するとともに、国民への丁寧な説明に努めています。協定の最終的な条文は確定していませんが、その日本語訳については鋭意作業を進めており、可能な限り早期にお示しできるようにしたいと考えています。
 昨年末には、TPPにより我が国が新たな成長軌道に乗ることで実質GDP約十四兆円の拡大が見込まれるとの経済効果分析を公表しました。農林水産物については、個別品目ごとに十分に精査し、積み上げた数値を組み入れています。TPPの経済効果は、関税の撤廃、削減にとどまりません。新しいルールが自由で公正な競争を促し、イノベーションを活発にする。全く新しいビジネスも生まれてくる。今回の分析は、TPPが開くチャンスに果敢に挑むことでもたらされる経済効果の一端にすぎません。政策を総動員して最大限の経済効果を実現してまいります。
 国民の批判をそらし、参議院選挙を乗り切ろうとしているとの批判は全く当たりません。そのようなうがった見方にとらわれて批判だけしているのか、前に出てチャンスをつかむのか、未来がどちらにほほ笑むのかは明らかではないでしょうか。
 選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。
 選択的夫婦別氏制度の導入の問題は、我が国の家族の在り方に深く関わるもので、国民の間に様々な意見があることから、最高裁判決における指摘や国民的な議論の動向を踏まえながら慎重に対応する必要があると考えております。(拍手)
    ─────────────
#25
○議長(山崎正昭君) 大野元裕君。
   〔大野元裕君登壇、拍手〕
#26
○大野元裕君 民主党・新緑風会、大野元裕でございます。
 私は、会派を代表し、総理による最近の海外出張に関する報告に対し、質問をさせていただきます。
 北朝鮮政府が昨日発表した水爆実験とされる件につきまして、我が国政府はいかなる事実を把握し、どのような対応を行っていくのか、冒頭、それぞれ御説明をください。
 憲法第五十三条の規定に基づき二回にわたり要求された臨時国会は、結局、召集されませんでした。TPP、消費増税、GPIFにおいて国民の資産が三か月で約八兆円毀損した問題、国民の皆様に見える形で審議をするべき喫緊の課題は山積をしていました。
 また、本院では、環境委員会並びに厚生労働委員会の委員長が空席となったにもかかわらず、国会で選出すべき委員長不在が継続をいたしました。さらには、国会同意人事、公務員給与法案はたなざらしにされ、決算審議も滞りました。それでも、安倍政権は国会召集要求を約三か月にわたり無視し続けました。
 なぜ政府は、国会が喫緊の課題に対しその責任を果たそうというのに、憲法の規定を無視し、臨時国会召集要求をないがしろにし続けたのか、総理の御見解を問います。
 菅官房長官は、十月八日の記者会見において、本件について、総理の政治日程、外交日程を最優先しなければならないと述べておられます。国権の最高機関たる国会が臨時国会の開会を求めているのに、総理の政治日程及び外交日程が憲法の規定に優先させることができる、その法的根拠を教えてください。
 野党は幾度も総理の外交日程には最大限配慮すると申し上げてまいりました。それにもかかわらず、政府は外交日程を理由に国会の開会要求を受け入れなかった。それはつまり、国会開会中、総理は外遊を行わない、野党も総理の外交日程に配慮する必要はない、それが政府の基本姿勢と私は理解しますが、この点、総理に確認をさせてください。
 アジアに関する取組についてお伺いします。
 総理からは、日中韓サミット出席報告、中韓首脳との二国間会談について報告がありました。それを受け、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されるという合意に至ったことは率直に喜ばしく、安倍政権下で悪化した日韓関係が未来志向に変わることを期待しています。
 その上でお伺いします。今回の日韓合意の法的位置付けを教えてください。特に、六五年の日韓基本条約を補足する合意なのか等、この条約との法的関係について問います。
 我が国政府は一貫して、請求権、財産権を含む法的問題については解決済みと主張してまいりましたが、その立場は、総理、変わらず維持されておりますか。
 かつて野田政権下でアジア女性基金のフォローアップ事業について検討した際、安倍政権の閣僚であった自民党の議員の方々は、国会の質疑において、政治的にも解決済みである、あるいは、人道的な見地から知恵を絞っていきたいということは、決着しているわけじゃないと聞こえるではないか、こう発言してこられました。この安倍政権の閣僚の方々の見解に従えば、政治的解決や人道的な見地から知恵を絞ることも許されません。ならば、今回の合意はどんな合意なんですか。総理、教えてください。
 法的責任を果たすことなく、韓国側が設置する基金に日本のみが、しかも税金から拠出するということは、この基金の支出行為に対して我が国が発言権を留保しているという理解でよろしいでしょうか、教えてください。この基金への十億円の拠出は、慰安婦像の撤去が前提でよろしいですか。総理、お答えください。
 岸田外務大臣、大臣は、慰安婦像の適切な移動がなされると述べられました。慰安婦像が現在の位置になければ撤去されずともよいということを韓国側に対して表明されたのでしょうか。また、どこに移動するか、大臣、確認を取られておられますね、教えてください。
 総理は、私たちの子や孫、その先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかないと述べられました。しかし、私は、韓国政府が謝罪を求めたのは、日本国民ではなく日本政府と理解をしていました。韓国政府は、総理、日本国民に謝罪を求めていたのですか。今回の合意がなければ、今も将来も、日本政府ではなく日本国民が慰安婦に謝罪する責任を負い続けると総理はお考えだったのですか、お答えください。
 東アジア首脳会議では、南シナ海の一方的な現状変更に関し議論が行われたとの報告がなされました。この会議の際に行われた日米首脳会談においては、自衛隊の南シナ海における活動について、情勢が日本の安全保障に与える影響を注視しつつ検討を行うとの表現がありました。この表現は、昨年七月二十一日、中谷防衛大臣が、南シナ海における自衛隊の警戒監視について述べた際に使われた表現とほぼ同一です。能力支援や共同訓練の強化はともかく、南シナ海における警戒監視、国会でも議論されていない件について、オバマ大統領に対し、総理、表明されてしまったのではないのですか。そうでなければ、明確に否定をしてください。
 我が国の安全保障に鑑みれば、南シナ海における一方的な現状変更を許すような状況を東シナ海に持ち込ませてはなりません。昨年の通常国会において政府・与党が強行採決した安保法制は、尖閣諸島等の領土、領海を守ることに対応する法律ではありません。自民党は衆議院議員選挙の際の領海警備法案という公約をほごにし、総理は、尖閣等のグレーゾーンに対しては、法律ではなく運用で十分対処できるとされました。しかし、年末には武装した中国公船が我が国領海に立ち入り、南シナ海でも緊張が継続しています。政府が運用で十分とするのに対し、民主党は、政府が安保法制を提出する半年も前の一昨年末から領域警備法を国会に提出し、政府の対案をずっとお待ち申し上げておりました。しかしながら、政府・与党は三度もこの法案を廃案にしました。領土、領海を守る法律から逃げて逃げて逃げ回ってきたのはあなたたちです。我々は、今国会でもこの法律を提出するつもりです。
 改めて総理に伺いますが、領域警備について与野党で真摯に議論し、縦割り行政を克服して、日本の領土、領海を守るための法律を制定する必要性、お感じになりませんか。
 総理は、日印原子力協力原則合意に関し、万が一、インドが核実験を行うようなことがある場合には、日本からの協力を停止すると報告をされました。ところが、当時の日印会談の概要、両国の共同声明には、インドが核実験を行った場合の協力停止措置については一切盛り込まれておりません。なぜ国会に報告したこの措置が共同声明等に盛り込まれていないのか、実際にインドに対しこの点を明確に説明したかについて、総理、お答えください。
 インドとの原子力平和利用に関する二国間協定を締結したアメリカやフランスは、IAEAによる保障措置への協力を求めており、これは総理が言及した核実験禁止よりもはるかに厳しい条件です。唯一の被爆国として、国際的な不拡散体制を推進してきた我が国の総理としては、他国よりもより厳しい立場でNPTを無視し続けてきたインドに対して臨まなければならないはずです。
 総理は、なぜ他国よりもはるかに緩やかな条件を挙げてインドに対する原子力協力を国会に報告したのでしょうか。インドがIAEAによる査察を断り、北朝鮮と同様に、多くの国が制裁を科してもなお、我が国は核実験を再開するまで協力を継続することになるのでしょうか。明確にお答えください。
 仮に他国と同様な保障措置を結んでいる若しくはその合意があるのだとすれば、なぜそのことが共同声明や日印外相の会談の概要に記されていないのか、総理、お答えください。
 四日、総理は、先ほどのインドによる核実験がある場合には日本の協力を停止すると明言をされました。その後、外務省に本件について二回にわたって確認をしたところ、協力停止措置に関する報道はあるかもしれないが、協定の中身についてお話しすることはできず、政府要人がそのことについて話したことはない、これが政府の立場であるとの回答がありました。官僚は総理すら政府要人と認めていないのかもしれません。外務大臣はもしかすると驚きかもしれませんが、私にとっては、政府のたがが緩んでいること、全く驚きではありません。外務省が否定する以上、本当にインドに協力停止措置を明言したかどうか、これすら疑わしくなります。
 ただ、より重要な点は、総理が誇られた成果が有効に機能しないのではないかという点です。総理は、インドが核実験を再開する場合の日本の協力停止は、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させ、不拡散を推進することになると誇らしげに胸を張られました。昨日の岡田代表の衆議院での質疑でもこの合意の不明確さが指摘をされましたが、総理の胸を張られた協力停止について政府が一丸となってこれを維持しなければ、実効性は持たされず、メッセージにすらなりません。
 総理、合意文書に明記されず、両国首脳会談の概要でも触れられず、総理が発言されてもなお外務省が否定する日本側の制裁措置をいかにして担保し国民の理解をお求めになるつもりなのか、明快な答弁を求めます。
 総理は、複数の国において、新たに成立した安保法制について御説明を行われたようですが、具体的にどんな説明を行われたんですか。特に、集団的自衛権行使に関する部分については、前国会の審議を通じて、ホルムズ海峡における機雷掃海は総理御自身が取り下げられました。米艦防護は、中谷防衛大臣が退避邦人の乗船は必ずしも必要ないとされました。弾道ミサイル対処中のイージス艦防護は、弾道ミサイル対処中の船に限られず、横須賀に配備された全ての米艦を対象とすると中谷大臣はお認めになり、限定的な集団的自衛権行使を限定する例としては成立していません。
 具体的な事例抜きに、他国にどのように集団的自衛権行使を説明していかれるおつもりですか。あるいは、これとは別に、集団的自衛権行使の具体例を他国に説明されているんでしょうか。総理、教えてください。
 一昨年末、特定秘密保護法は、多くの国民が注目する議論を巻き起こしました。国の安全保障において秘密があることは理解します。しかし、国会として監視、検証するべき点があることもまた当然です。それにもかかわらず、政府提出の特定秘密指定管理簿のうち本院の情報監視審査会において複数の委員が特定秘密の指定について疑義があるとした案件につき、政府は提出に難色を示しました。政府が提出に難色を示した国家安全保障会議及び警察庁指定の特定秘密各一件は、与党多数で否決され、審査会として提示要求すらできなかったんです。審査会に提示できないならば、政府による疎明という制度が保障されています。それにもかかわらず、これでは政府・与党が結託をして都合の悪い秘密を隠すのではないかという法案審議の際の懸念を再び惹起するではないですか。政府としては、謙虚に国会における審議に資するよう協力し、特定秘密の指定の客観性を保証するべきと考えますが、総理の御見解を問います。
 さて、本年はさる年です。猿といえば、見ざる聞かざる言わざるの三猿が思い浮かぶかもしれませんが、国会、少なくとも野党は政府にとって都合の良いように見ざる聞かざる言わざるを押し通すことができる機関ではありません。政府に都合が悪いからといって国会を召集せず、民主主義をないがしろにし、数の横暴で特定秘密の要求すらさせず、説明責任すら果たさない政府の立場は、総理がしばしば言及される建設的な議論を阻害するものにほかなりません。
 今国会においては、政府と国会が真摯に議論をできるよう、政府として法と民主主義の原則に基づき御対応いただけるよう切に希望し、民主党を代表しての質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#27
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大野元裕議員にお答えをいたします。
 北朝鮮の核実験に関するお尋ねがありました。
 昨日、北朝鮮は四回目となる核実験を実施した旨の発表を行い、我が国においても、気象庁が北朝鮮付近を震源とする自然地震ではない通常の波形とは異なる可能性のある地震波を探知いたしました。政府としては、これら諸情報を総合的に勘案した結果、北朝鮮が核実験を実施したものと判断しています。
 今回の核実験の実施は、我が国の安全に対する重大な脅威であり、断じて容認できません。強く非難します。安保理決議の明確な違反であり、国際的な不拡散体制への重大な挑戦です。
 私より直ちに、緊張感を持って情報収集、分析に努めること、国民に対して的確な情報提供を行うことなどを指示し、二度にわたり国家安全保障会議を招集しました。北朝鮮に対して直ちに厳重な抗議を行うとともに、国連安保理の緊急会合開催を要請し、本日の会合後には、北朝鮮の今次核実験を強く非難し、新たな安保理決議における更なる措置につき直ちに作業を開始する旨のプレスステートメントが発出されました。
 水爆実験を成功させたとの北朝鮮の発表については、米国、韓国を始め関係国と緊密に情報交換を行い、現在、その評価を鋭意進めているところであります。
 今後の対応については、我が国が非常任理事国を務める国連安保理を始めとして米韓中ロなどの関係国と連携し、国際社会が一致してこの問題に対応するよう努めるとともに、我が国独自の措置の検討を含め北朝鮮に対して毅然かつ断固たる対応を行ってまいります。
 国会の召集についてお尋ねがありました。
 昨年の臨時国会召集の要求に対しては、政府としてこれに適切に対応するため、現下の諸課題を整理し、補正予算、来年度予算の編成などを行った上で、新年早々、本通常国会の召集を図ったものであり、迅速かつ適切に対応していると考えております。
 国会閉会中でも衆参両院の予算委員会に私も出席いたしましたが、衆参合わせて六十時間を超える閉会中審査において、TPP、COP21など、当面する政治課題について政府としても説明責任を果たしてきたところであります。それぞれの政党がただ批判に明け暮れるのではなく、政策の選択肢を国民にしっかりと提示する、そのことによって国民への責任を果たしていかなければなりません。是非、この通常国会では具体的な政策の違いを国民の前で明らかにしながら正々堂々の議論を行わせていただきたいと考えております。
 国会と外交日程についてお尋ねがありました。
 外交日程については、それぞれの外交日程の意義や重要性、その時々の国会の状況等を勘案しつつ、国会の審議に大きな影響が出ないよう、よく御相談しながら適切に検討してまいります。
 慰安婦問題に関する合意の法的位置付けについてお尋ねがありました。
 日韓間の財産・請求権の問題については、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定により法的には完全かつ最終的に解決済みであるということが日本政府の一貫した立場であり、今回の慰安婦問題に関する合意によってもこの立場に何ら変更はありません。
 慰安婦問題に関する合意の性格についてお尋ねがありました。
 これまで、慰安婦問題の解決の性格については、人道的見地からの解決か政治的見地からの解決かといった様々な見解があったものと承知していますが、いずれにいたしましても、今回の合意をもって、もはやこの問題は最終的かつ不可逆的に解決されることとなりました。
 したがって、今回の合意は、解決の性格に関する議論に終止符を打つ、最終的かつ不可逆的な解決であります。
 慰安婦問題に関して設置される財団についてお尋ねがありました。
 今回の日韓両国政府の合意では、韓国政府が財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力して事業を行うことが確認されました。その上で、事業は両国政府間で合意された内容の範囲で実施することとなっています。
 今回の合意においては、日本側は韓国政府が元慰安婦の方々の支援を目的として設立した財団に資金を拠出し、韓国側は、日本政府が日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧、威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても適切に解決されるよう努力する内容となっており、日韓それぞれがこの合意を着実に実施することとなっています。
 慰安婦問題に関する謝罪についてお尋ねがありました。
 今回の合意に至るまでの交渉経緯については、韓国との関係もあり、つまびらかにすることはできません。八月の総理談話で申し上げてきたとおり、我々は、従来、歴代の内閣が表明してきたとおり、反省とおわびの気持ちを表明してきました。その思いに今後も揺るぎはありません。
 私は、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかないと考えております。今回の合意はその決意を実行に移すために決断したものであります。慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決される今回の合意を踏まえ、日韓両国で力を合わせて日韓新時代を開いていきたいと考えております。
 南シナ海における警戒監視活動についてお尋ねがありました。
 昨年のAPECの際に行われた日米首脳会談において、私から、南シナ海における米軍の航行の自由作戦を支持する旨述べるとともに、現状を変更し、緊張を高める一方的行為全てに反対である旨伝えました。これに対し、オバマ大統領から、航行の自由作戦については日常の行動として実施していく旨の発言がありました。
 南シナ海における警戒監視活動を検討するとオバマ大統領に表明した事実はありません。航行の自由作戦は米国が行うものであり、自衛隊の活動とは別のものです。我が国がこれに参加することはありません。また、現在、自衛隊は南シナ海において常時継続的な警戒監視活動を行っておらず、そのような具体的な計画も有しておりません。
 いずれにせよ、南シナ海における自衛隊の活動については、南シナ海情勢が我が国の安全保障に与える影響を注視しつつ、航行の自由、そして法の支配が貫徹されるように、様々な選択肢を念頭に置きながら十分な検討を行っていきます。
 領海警備法の制定についてのお尋ねがありました。
 政府においては、昨年五月十四日、武力攻撃に至らない侵害に際し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するため、海上警備行動、治安出動等の発令に係る手続の迅速化のための閣議決定を行ったところであります。また、様々な不法行為に対処するため、警察や海上保安庁などの関係機関が各々の対応能力を向上させ、情報共有を含む連携を強化するほか、各種の訓練を充実させるなど、各般の分野における必要な取組を一層推進しているところです。
 これらにより、現下の安全保障環境において、武力攻撃に至らない侵害に際し、切れ目のない十分な対応を確保するための体制を整備したところであり、現時点では新たな法整備が必要であるとは考えていません。
 日印の原子力の平和的利用に関する協定についてのお尋ねがありました。
 この協定は、原子力の平和的利用についてインドが責任ある行動を取ることを確保するものであり、このことはインドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにつながります。これは、核兵器のない世界を目指し、不拡散を推進する日本の立場に合致するものであります。
 仮にインドが核実験を行った場合には、日本からの協力は停止します。インドによる核実験モラトリアムの継続が協力の前提となることは、私からモディ首相に対し明確に述べています。かかる我が国の立場はインド側も了解しており、今般の日印の共同声明等では、こうした点も踏まえ、原則合意に至った旨を明らかにしたものであります。
 日印の原子力協定とインドが米国、フランスと結んだ協定との比較についてのお尋ねがありました。
 日本は唯一の戦争被爆国であり、核兵器廃絶に向けた国際社会の取組を主導してきています。インドとの協定交渉においてもこれを十分に考慮し、米仏がインドと締結した協定以上の内容を目指して交渉してきています。我が国のインドとの原子力協定は、インドによる核実験モラトリアムの継続、IAEAによる保障措置の適用等を含む約束と行動と呼ばれるインドの政策を前提としており、かかる考え方は日印首脳会談後の共同記者発表時等でも明らかにしています。
 日印の原子力協定は、米仏がインドと締結した協定以上の内容を目指して交渉してきましたので、それより緩いのではないかとの御指摘は全く当たりません。
 日印の原子力協定の協力停止をいかに担保するのかとの質問がありました。
 先ほども述べたとおり、仮にインドが核実験を行った場合には、日本からの協力は停止します。インドによる核実験モラトリアムの継続が協力の前提となることは、私からモディ首相に対して明確に述べています。協定の具体的な文言についてはインドとの間で引き続き調整中ですが、かかる我が国の立場はインド側も了解しており、今般の原則合意もこれを踏まえたものであります。
 平和安全法制に関する外国への説明についてお尋ねがありました。
 政府としては、一昨年七月の閣議決定や昨年九月の平和安全法制成立を始め様々な機会を捉えて、諸外国に対し外交ルートを通じてその内容を詳細に説明してきています。その上で、私自身も、外国訪問や各国要人の訪日の際にその内容について直接丁寧に説明してきています。
 具体的には、平和安全法制の下では、例えば国連PKOへのより幅広い参加が可能になることや、新三要件という厳格な要件が満たされる場合にのみ集団的自衛権の行使が限定的に容認されるといった基本的考え方を説明し、先方の関心に従い、様々な具体例についても必要に応じ説明してきています。
 これに対し、米国はもとより、豪州、ASEAN諸国、ヨーロッパ諸国を始め多くの国々から理解と支持をいただいております。
 情報監視審査会への政府の対応についてお尋ねがありました。
 国会の審査会における審議の在り方については、政府としてはコメントを差し控えさせていただきたいと考えます。
 国会の審査会は行政における特定秘密保護法の運用を監視する役割を担っており、審査会の調査に対しては誠実に対応してきたものと考えますが、今後とも、審査会の役割を十分に尊重し、適切に対応してまいります。(拍手)
   〔国務大臣菅義偉君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(菅義偉君) 私の記者会見の発言についてお尋ねがありました。
 御指摘のありました記者会見時点では、まだ臨時国会の召集要求書は提出されておりませんでした。
 その上で、一般的な考え方を申し上げれば、臨時国会の召集要求について定める憲法第五十三条は、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定するにとどまっており、当該時期の決定を内閣に委ねられているように思っています。基本的には、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないと考えます。
 政府として、臨時国会で審議すべき事項や外交日程など諸課題を整理し、補正予算、来年度予算の編成などを行った上で、新年早々、本通常国会の召集を図ったものであり、適切に対応しているというふうに考えます。(拍手)
   〔国務大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(岸田文雄君) 私には、慰安婦像の撤去についてお尋ねがございました。
 今回の合意は、私と尹炳世長官が共同記者発表の場で発表した内容に尽きるのであり、それ以上でもそれ以下でもありません。
 今回の合意では、韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧、威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力するとされており、これに尽きます。少女像の移転先などは合意されていません。(拍手)
#30
○議長(山崎正昭君) ただいま理事が協議中でございます。しばらくお待ちください。
 これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時九分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト