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2016/03/09 第190回国会 参議院 参議院会議録情報 第190回国会 本会議 第11号
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2016/03/09 第190回国会 参議院

参議院会議録情報 第190回国会 本会議 第11号

#1
第190回国会 本会議 第11号
平成二十八年三月九日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十一号
    ─────────────
  平成二十八年三月九日
   午前十時 本会議
    ─────────────
 第一 所得税法等の一部を改正する法律案(趣
  旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。
 日程第一 所得税法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 本案について提出者の趣旨説明を求めます。財務大臣麻生太郎君。
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(麻生太郎君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明させていただきます。
 本法律案は、経済の好循環の確立、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮、少子化対策・教育再生、地方創生の推進、国際課税の枠組みの再構築、震災からの復興支援等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。
 以下、その大要を申し上げさせていただきます。
 第一に、経済の好循環を確実なものとするため、法人税について税率の引下げ及び欠損金繰越控除制度の見直し等を行うことといたしております。
 第二に、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮のため、消費税の軽減税率制度の創設等を行うことといたしております。
 第三に、少子化対策及び教育再生のための三世代同居に対応した住宅のリフォームを支援するための住宅ローン控除の特例の創設、公益社団法人等に寄附した場合の所得税額の特別控除制度の見直し等を行うことといたしております。
 第四に、地方創生の推進のため、認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除制度の創設、外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充等を行うことといたしております。
 第五に、国際課税の枠組みを再構築するため、多国籍企業情報の報告制度の創設等を行うことといたしております。
 第六に、震災からの復興を支援するため、被災関連市町村から特定の交換により土地を取得した場合の登録免許税の特例の創設等を行うことといたしております。
 このほか、クレジットカードによる国税の納付制度の創設等を行うとともに、特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うことといたしております。
 以上、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を申し上げさせていただいた次第であります。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(山崎正昭君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。尾立源幸君。
   〔尾立源幸君登壇、拍手〕
#6
○尾立源幸君 皆様、おはようございます。民主党・新緑風会の尾立源幸でございます。
 私は、会派を代表して、所得税法等改正案について質問をいたします。
 まずは、アベノミクスについてお伺いをいたします。
 三月二日の参議院予算委員会で、安倍総理は、アベノミクスが失敗だという指摘は当たらないとおっしゃいました。答弁の中で、正規雇用者について、総理は、二十七年は二十六年に比べ二十六万人増えたと述べておられますが、民主党政権最後の年である二十四年の三千三百四十万人と比べると、安倍政権で三十六万人減少しています。
 総理は、雇用は百万人以上増えたとおっしゃいますが、増えている労働者の多くは非正規労働者であり、正規労働者は減少しているのです。労働法制を改悪し、非正規で働く不安定な労働者が増えたことで胸を張る。総理、あなたは誰の味方で、どんな社会をつくりたいのでしょうか。総理、お答えください。
 円安やGPIF、日銀の支えによる株高や度重なる法人税減税により、一部企業の業績は上がり、内部留保は二〇一五年十―十二月期で三百五十六兆円にまで積み上がっています。これは、一年前に比べて二十三兆七千億円もの増加です。
 一方で、円安の進行により輸入物価が値上がりしているのに、実質賃金が増えないため、国民の財布は痛め付けられる一方です。決まって支給する給与の実質賃金指数を見ると、四年連続対前年マイナスとなっています。
 月給は増えないのに物の値段は上がる。そんな状態で家計による支出が増えるわけがありません。GDPの六割を占める個人消費が十分伸びないから実質GDPも十分に上がりません。これではアベノミクスはうまくいっているとは言えません。
 総理に伺います。
 政府目標ともいうべき経済財政に関する中長期試算において、平成二十七年度の実質成長率の見込みは何%になっているでしょうか。また、この数字を達成するために二十八年一―三月期で前期比年率何%程度の伸びが必要でしょうか。また、それは達成可能でしょうか。もし無理な場合、アベノミクスがうまくいっているとおっしゃるのに、達成できない理由は何なのでしょうか。
 次に、安倍政権が犯そうとしている大きな罪である軽減税率について伺います。
 低所得者への配慮の観点からなどと言いながら、酒類、外食を除く食料品全般を八%に据え置くいわゆる軽減税率を導入して得をするのは誰でしょうか。
 軽減税率のために一兆円の財源が必要ですが、そのうち、所得が三百万円未満の方々が受けられる恩典は一千百億円に対して、所得が一千万円以上の方々には一千四百億円もの恩典があります。これでは、逆進性対策ではなく金持ち優遇と言わざるを得ません。
 また、軽減税率で税収不足が生じ、トータルの税収を確保するためにヨーロッパのように標準税率を高く設定しなければなりませんし、中小企業にとって事務手続が非常に煩雑になるという問題点もあります。さらに、対象品目の線引きも困難で、新たな利権を生じさせるおそれが大いにあります。だからこそ、私たちは、一貫して軽減税率ではなく消費税の払戻しである給付付き税額控除の導入を主張してきました。
 軽減税率で社会保障財源に一兆円もの穴が空きます。こんな大きな財源不足で、社会保障をどうするのですか。社会保障の充実を成し遂げる気がないと考えられますが、総理、いかがですか。
 そもそも、税の世界には公平、中立、簡素という基本原則があります。軽減税率が公平、中立、簡素のそれぞれにどのようにのっとっているのか、お答えいただきたい。やはり軽減税率は導入すべきではないと考えますが、総理の見解をお聞かせください。
 消費税の一〇%への引上げについて伺います。
 総理は、これまで、リーマン級の経済ショックや大災害が起こらなければ予定どおり引き上げるとおっしゃっておられました。しかし、最近になって、世界経済の大幅な収縮を引上げ延期の条件に挙げ出しました。
 伊勢志摩サミットに向けて、国際金融経済分析会合を来週から五月まで開催されるそうですが、この会合はどのような人たちを招き、何を目的に開催するのですか。また、結局、そこで世界経済は縮小しつつあると言うのではないですか。総理の答弁を求めます。
 五月十八日には一―三月期のGDP速報値も出ます。少なくとも、二〇一五年度の成長率について、政府の見通しが達成できるような良い数字にはならないでしょう。その直後に、伊勢志摩サミットで世界経済の安定のために内需拡大が必要などと言って、またもや経済対策、補正予算を組むと言い、世界経済が不安定だから消費税の引上げができないと言って解散・総選挙をしようとしていませんか。消費税の引上げ延期は世界経済の安定に資するものとお考えでしょうか。総理のお考えをお聞かせください。
 ちまたでは、五月二十七日に消費税の引上げ延期を発表するなどとする報道もありますが、消費税引上げ延期の条件は何でしょうか。また、延期の理由として挙げている世界経済の大幅な収縮とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。前回の引上げ延期の際は解散・総選挙をされましたが、仮に今回引上げ延期をするならば、改めて解散・総選挙が必要でしょうか。それとも、夏に予定されている参議院選挙で争点にすることで十分だとお考えでしょうか。また、仮に消費税の引上げ延期を行うとすると、財政健全化計画への影響についてどのようにお考えでしょうか。総理に明確にお答えいただきたい。
 消費税率の引上げの前提として議員定数の大幅な削減という形で身を切るべきと考えますが、総理はこの点をどう考えますか。野田総理と約束した国会議員の定数削減についても、いつの間にか十削減にすり替えて、さらにアダムズ方式の導入時期をめぐり、総理が総裁を務められる自民党が全体の足を引っ張っているという論調の報道が多く出ています。衆議院の定数削減について、いつまでにどの方式で幾つ削減するかを、お得意の私が決めるで、総理から自民党総裁として表明をいただきたい。
 さて、真の社会保障・税一体改革について述べます。それは、消費税を含む税制改革と社会保障給付の充実を一体で行うことに加えて、社会保障給付と税制を一体化させることです。例えば、勤労所得税額控除がその例として挙げられます。これは、所得税の納税者に税額控除を与え、控除し切れない方や課税最低限以下の方には現金給付を行うものです。このように、社会保障給付と税制を一体化することは、制度の効率化にもつながり、まさに社会保障・税の一体改革と言えるものであります。
 軽減税率をやめて、消費税の払戻しである給付付き税額控除とともに勤労所得税額控除や子育て世帯を対象とする児童税額控除の導入を進めるべきと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 さて、もう一つ軽減税率の問題点を指摘したいと思います。それは、税の相談、徴収に当たる国税の現場についてです。今後、業務量が増加することは確実であるにもかかわらず、国税職員についての定員査定は二十八年度も純減となっており、過去五年で延べ五百九十七人も削減されています。もちろん、現場の職員さんたちは真面目に懸命に与えられた職務をこなそうとするでしょう。しかし、業務量が増える一方、職員数が減る中で、それは人間的な職場環境と言えるでしょうか。
 また、大きな問題として実地調査率の低下が挙げられます。平成元年度の実地調査率は、法人税であれば八・五%、所得税であれば二・三%であったものが、平成二十五年度には、それぞれ三・〇%、一・〇%と低下しているのです。多くの納税者は真面目に納税してくださっていますが、所得税に至っては百年に一回の調査割合です。あってはならないことですが、不届き者が出てきてもおかしくありません。
 国税は、関税を扱う税関とともに、国の財政基盤である税による歳入確保という非常に重要な役割を果たしており、職員の皆さんも、使命感を持って高い士気の下、懸命に業務に取り組んでおられます。国税の場合は、人員を増やすことで税収増という効果も見込めます。ここは是非、緊急増員を含め、体制の整備が必要だと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 ここまで、軽減税率の問題点についてるる指摘をしてきました。改めて、私たちは、無責任で問題だらけの軽減税率を前提とする消費税の再増税には断固反対し、軽減税率の即時撤回を求めます。
 最後に、改めて租税特別措置、いわゆる租特の問題を指摘します。
 租税支出という観点及び政策の効果を検証するために、私たちは、租税特別措置透明化法を成立させ、様々な租特の適用実態を明らかにしました。
 先日、二〇一四年度の適用実態が国会に報告されましたが、その中身は驚くべきものでした。二月十四日付けの朝日新聞でも報道されましたが、企業向け租特により一兆二千億円という巨額の減税がなされており、しかも、資本金百億円超の企業への減税額が七千三百六十五億円と、全体の六二%を占めています。また、安倍政権になってからの税制改正で減税規模が拡大しており、その規模は、民主党政権時に比べて二・三倍にも大きくなっています。その上で、一社で千八十三億円もの減税を受けている企業があることも明らかになりました。
 これが明らかになったことは、全て私たちが提案した租特透明化法が成立した成果でありますが、まだ十分ではありません。現状では、例えばこの千八十三億円の減税を受けている企業グループが、昨年や一昨年はどのぐらい減税を受けていたかという経年変化が分かりません。
 租特は税による支出であり、国民の理解、納得を得ることが不可欠です。そのため、私たちは今国会で改正案を提出する予定であります。租特の利用状況や利用の偏りを把握するために、経年変化を把握する手段として毎年固定の企業コードを付けることが必要だと考えますが、いかがでしょうか。財務大臣の見解を伺います。
 以上、アベノミクスの失敗を認めること、軽減税率をやめること、そして、一部の大企業のためではなく国民のための税制を構築することを提案して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#7
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 尾立源幸議員にお答えをいたします。
 雇用についてのお尋ねがありました。
 雇用を増やし、雇用を守ることは政治の最重要課題であります。
 安倍内閣の三年間で雇用の環境は確実に好転しています。生産年齢人口がこの三年間で三百三十五万人と、政権交代前の三年間の約二倍減少する中でも、正規雇用労働者の全体的なトレンドは好転し、平成十九年の第一次安倍内閣以来八年ぶりに、平成二十七年は前年比で二十六万人増加しました。
 この三年間で正規雇用労働者は三十六万人減少したとの御指摘でありますが、今申し上げたような生産年齢人口のトレンドの中の数字であり、更に言えば、民主党政権の平成二十一年から二十四年の三年間では五十五万人減少しています。
 また、百万人以上増えた雇用の多くが非正規雇用労働者であるとの御指摘でありますが、平成二十四年から二十七年の三年間で就業者が百五万人増加する中で、非正規雇用の増加については、景気回復に伴い、パートなどで働き始めた方が増加したこと、六十五歳までの雇用確保措置が実施され、高齢層で雇用が増加したことが大きな要因と考えています。
 非正規雇用についても、不本意ながら非正規の職に就いている方の割合は前年に比べて低下し、働き盛りの五十五歳未満では、平成二十五年から十二四半期連続で非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回っていますなど、いわゆる非正規雇用を取り巻く環境は着実に改善しています。
 ちなみに、民主党政権時代における平成二十一年から二十四年についての雇用者数の伸びは、安倍内閣の平成二十四年から二十七年の伸びを大幅に下回っており、自営業者などを合わせた就業者数の伸びは、民主党政権時代においてマイナスであったことを申し添えておきます。
 私たちは、この春に取りまとめるニッポン一億総活躍プランでは、いわゆる非正規雇用の方の待遇改善を更に徹底するため、働き方改革の一つの柱として、同一労働同一賃金の実現に踏み込んでまいります。
 若者もお年寄りも、女性も男性も、難病や障害のある方も、それぞれの事情に応じて働き方を選び、何度でもチャンスがある社会、すなわち一億総活躍社会の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
 平成二十七年度の実質成長率の見込みについてのお尋ねがありました。
 平成二十七年度の実質GDP成長率については、本年一月に閣議決定した政府経済見通しにおいて一・二%程度と見込んでおり、この見通しを達成するためには、本年一―三月期に前期比一・九%、年率に換算すると七・七%の成長が必要になると見込まれます。
 昨年十―十二月期の実質成長率は、記録的な暖冬の影響などを背景に、前期比マイナス〇・三%となりましたが、名目雇用者報酬は前年同期比一・八%増、設備投資も小幅ながら二期連続プラスとなっております。二〇一五年暦年で見れば、名目GDPは二・五%のプラス成長、実質GDPは〇・五%のプラス成長となっており、名目成長が実質成長を上回る健全な姿を実現しています。
 また、名目GDPは、政権交代後、二十七兆円増加しています。さらに、企業収益は過去最高となり、有効求人倍率は二十四年ぶりの高水準となり、就業者数は百十万人以上増加しています。こうしたことを総合的に踏まえると、ファンダメンタルズは良好であり、その状況に変化があるとは認識しておりません。
 いずれにせよ、あらゆる政策を総動員していくことで潜在成長率を押し上げ、実質二%程度、名目三%程度を上回る経済成長を実現し、GDP六百兆円を実現してまいります。
 軽減税率制度の導入についてのお尋ねがありました。
 軽減税率制度は、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、消費税の逆進性を緩和しつつ、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により、消費税率一〇%への引上げに伴う低所得者対策として導入を決定いたしました。
 軽減税率制度の財源については、今般の税制改正法案において、平成二十八年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずること等が規定されており、今後、この規定に沿って、政府・与党で歳入歳出両面にわたってしっかりと検討してまいります。また、これにより、社会保障と税の一体改革における二・八兆円程度の社会保障の充実に必要な財源は確保する考えです。
 税制抜本改革法において、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮の観点から検討課題とされていた軽減税率制度、給付付き税額控除、総合合算制度の三つの中から、先ほど申し上げた理由により、軽減税率制度をベストなものとして選択いたしました。
 そうした中で、公平、中立、簡素という税の三原則に関するお尋ねについては、いわゆる消費税の逆進性が緩和され、いわゆる垂直的公平に配慮している、また対象品目を酒類、外食を除く飲食料品とし、通常の飲食料品を全て含むこととすることにより、可能な限り経済取引に対して中立的で簡素な仕組みとなっているという評価もし得るものではないかと考えています。
 消費税率引上げについてお尋ねがありました。
 国際金融経済分析会合は、伊勢志摩サミットに向けて、世界経済、国際金融、エネルギー等、幅広く世界の経済金融情勢について、コロンビア大学のスティグリッツ教授など国内外の有識者の方々の見解を伺うものであります。現下の経済状況についても率直な意見交換を行いたいと考えています。
 来年度予算の早期成立こそが最大の景気対策であります。日本経済のファンダメンタルズは確たるものと認識しており、現時点において新たな経済対策や補正予算を編成することは考えておりません。
 来年四月の消費税率一〇%への引上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するためのものであり、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施します。経済の好循環を力強く回していくことにより、そのための経済状況をつくり出していきます。なお、解散については全く考えておりません。
 お尋ねの世界経済の大幅な収縮については、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態を説明する中で申し上げたものであり、それが実際に起こっているかどうかは、専門的見地から行われる分析も踏まえ、そのときの政治判断において決められる事項であると考えています。
 なお、仮に消費税率引上げを延期する場合の様々な影響等については、その時々の経済状況等にもよることから、一概に申し上げることはできません。
 衆議院の定数削減についてお尋ねがありました。
 私としては、今回の調査会答申を尊重するとの立場から、定数十削減については、先月公表された平成二十七年国勢調査の結果に基づく区割りの見直しを行う際に併せて実施するとの方針を既にお示ししております。この定数の十削減は、中間年に行われる簡易国勢調査に基づいて行うこととなるため、調査会答申の指摘にのっとり、制度の安定性を勘案し、その影響が最小限になるような方法による必要があると考えています。
 今後、各党各会派が答申を尊重し、真摯に議論を行い、早期に結論を得ることによって国民の負託にしっかり応えていくべきであると考えています。
 給付付き税額控除などについてお尋ねがありました。
 軽減税率制度は、給付付き税額控除、総合合算制度と並び、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮の観点からの検討課題の一つでありました。
 給付付き税額控除は、所得が低い方に焦点を絞った支援ができるといった利点はあるものの、消費税そのものの負担が直接軽減されるものではなく、消費者にとって痛税感の緩和の実感につながらないという問題、所得や資産の把握が難しいといった問題等があるものと承知しています。他方、軽減税率制度は、給付付き税額控除とは異なり、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により導入を決定しました。
 軽減税率制度の導入に伴い、給付付き税額控除は、消費税率引上げに伴う低所得者対策としては実施することはないと考えております。
 なお、子育て支援や就労意欲の向上といった一定の政策目的の下、税額控除を行った上、控除し切れない部分を給付するといった措置については、諸外国で導入されている事例も見られるものの、給付付き税額控除と同様の所得や資産の把握が難しいといった問題や、過誤・不正受給といった支給の適正性の確保の問題に加え、既に実施されている同じ政策目的の措置との関係をどのように整理するのかといった課題などがあるものと承知しています。
 国税庁の体制整備についてお尋ねがありました。
 平成二十八年度予算においては、国家公務員全体で大幅な定員純減となる中、国税庁の定員については、歳入官庁としての重要性も踏まえ、僅かな純減にとどめるなど、厳しい行財政事情の下、配慮を行っています。
 また、国税庁においては、簡易な誤りについては、電話や書面により納税者の自主的な見直しを促しているほか、当局として申告内容の確認を要する場合は、納税者に税務署への来訪を求め、必要な是正を行うなど、実地調査以外の手法も適切に組み合わせるなどにより、限られた定員の下で効率的な事務運営を図っております。
 税務行政を取り巻く環境は、経済取引の国際化などにより一層厳しさが増しており、政府としては、今後とも、効率化を図りつつ、必要な定員を確保し、税務執行体制の整備に努めてまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(麻生太郎君) 租税特別措置の適用実態調査についてのお尋ねがあっております。
 この調査は、租特の利用状況を明らかにして政策の企画立案に役立てていくことを目的といたしておりますことから、こうした目的に照らして、個別企業名まで公表する必要はないという整理が平成二十二年の立法当時からなされておりますのは御存じのとおりです。
 このため、適用額の上位十社を示す際にも、いわゆる個別企業名ではなく、毎年度ランダムに割り振ったコード番号を用いております。
 御指摘のように、企業固有のコード番号を割り当てて、それを継続的に使用してまいりますことは、個別企業名を類推しやすくなり、また、企業イメージの悪化など、競争上の不利益を生じさせかねないことから、適当ではないと考えております。(拍手)
    ─────────────
#9
○議長(山崎正昭君) 竹谷とし子君。
   〔竹谷とし子君登壇、拍手〕
#10
○竹谷とし子君 公明党の竹谷とし子です。
 私は、自由民主党、公明党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問させていただきます。
 初めに、消費税の軽減税率制度導入について伺います。
 今回の税制改正において、明年四月の消費税一〇%時に、加工食品を含めた暮らしに身近な食料品を広く軽減税率の適用対象とすることが決められています。
 民主党政権下の二〇一二年六月、民主、自民、公明の三党は、消費税率を一〇%に引き上げ、その増収分全てを社会保障の充実、安定に使う社会保障と税の一体改革に合意しました。それに基づいて修正された税制抜本改革法において、消費税引上げで負担が大きくなる低所得者の対策として、総合合算制度、給付付き税額控除、軽減税率の三つを総合的に検討し、対策を講じることとされています。選択肢の一つである給付付き税額控除は、給付の前提となる所得や金融資産の把握が現状では制度上も人員上も困難なことは民主党政権下の財務大臣の発言でも明白であり、一年後に導入することは非現実的です。
 そこで、三つの選択肢の中から、社会保障のためにやむを得ない引上げだとしても、せめて毎日の生活に欠かすことができない飲食料品などの税率は低く抑えてほしいという庶民の率直な思いに応え、さらに、日々の痛税感を和らげるために軽減税率制度を導入することが決定されました。日々の痛税感を和らげることは、税率引上げ時の景気への影響を抑える効果も期待できます。消費税の軽減税率制度は、世界の多くの国々で導入されている標準的とも言える制度であります。
 今回の軽減税率導入に際しては、区分経理、納税事務を負ってくださる事業者の方々の負担が大きくなり過ぎないよう、インボイス制度導入までの間、これまでの帳簿方式を基準にした簡易な制度にし、さらに、レジの導入やシステム更新の助成、相談窓口の設置など予算面で最大限配慮がなされ、これから具体的に様々な支援がなされていくと考えますが、事業者の方々にも軽減税率制度導入の意義をしっかり御理解いただき、来年四月に向けて御準備いただくことが、制度を支え、長い将来を考えたときに消費者の安心感につながると思います。
 軽減税率制度導入の意義について、さらに円滑導入に向けての決意を安倍総理に伺います。
 平成二十八年度税制改正は、企業の収益力を高め前向きな国内投資や賃金引上げを促すこと、また結婚、子育ての希望を実現しにくい状況を克服し、子育てに優しい社会をつくることなどを目指し、決定されました。
 今回の改正による法人税率引下げは、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革し、稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減することにより、企業に対して、収益力拡大に向けた前向きな投資や、継続的、積極的な賃上げが可能な体質への転換を促すことを通じ、民需主導の経済成長を図っていくという意思を改めて示したものと思います。
 本格的な景気の好循環をつくり出すためには、地域の雇用を担い、雇用の約七割を占める中小企業の業績が改善することが必須です。三月一日に財務省が発表した直近の法人企業統計では、景気の先行指標と言われる設備投資が前年同期比で八・四%増加しています。これを企業規模で見ると、資本金一千万円から一億円の中小企業で前年比一七・五%と顕著な伸びを示しており、中小企業が経済成長を牽引し始めていると言えます。この流れを今こそ力強く後押しし、加速させなければなりません。
 中小企業の法人税率は大企業より低く設定されていますが、赤字企業はその恩恵を受けません。赤字企業も含めた中小企業の設備投資を支援するため、今回の税制改正では、固定資産税の新規購入に係る設備投資減税ともいうべき特例措置が初めて創設されます。また、外形標準課税の拡大に当たっては、中堅企業の負担を抑える配慮措置を抜本的に拡充して、今後二年間、現行制度より中堅企業の負担が拡大しないことが確保されています。いずれも与党内で議論した結果、与党税制協議会において決定されました。
 また、販売促進手段が限られる中小法人を支援するため交際費課税の特例の適用期限を二年延長することや、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の期限を二年延長することが規定されています。
 さらに、与党税制改正大綱において、地域社会に貢献する重要な存在である個人事業者の事業承継時の負担軽減措置の創設等について今後検討されることが規定されました。
 そこで、地域の経済、雇用を支える中堅企業、中小・小規模事業者を守る意義とそのための今回の税制改正内容について財務大臣に伺います。
 次に、法人税率引下げについて伺います。
 従前は三四・六二%だった法人実効税率は、平成二十七年度に三二・一一%、今回の改正で、平成二十八年度に二九・九七%、さらに平成三十年度には二九・七四%まで引き下げられます。目標としていた二〇%台を改革二年目にして実現することになりました。
 また、今回の法人税改革では、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという考え方の下、租税特別措置の見直しや建物と一体的に整備される建物附属設備等の減価償却方法の定額法への一本化、中堅企業に配慮した外形標準課税の拡大、欠損金繰越控除の見直し等を実施することで法人実効税率引下げの財源を確保することとなっています。社会保障給付の財源を確保するために消費税率を引き上げて国民の皆様に御負担をいただかざるを得ない現下の厳しい財政事情や、企業部門の内部留保、手元資金が増えている状況に鑑みれば、財源なき法人税率引下げは国民の理解を得られません。課税ベースの拡大等により法人税率引下げの財源をしっかり確保することは、バランスが取れた妥当な決定であり、消費税率の引上げを引き合いに出しての批判は全く当たりません。
 同時に、経済再生には、法人税率引下げだけではなく、あらゆる方策を取っていくことが必要だと考えます。
 法人実効税率二〇%台の実現を受けて、経済の好循環の定着に向け、経済界には、増大した手元資金を活用して、賃上げや投資拡大、さらに中小の取引先企業への支払単価改善などに積極的に取り組むよう求めることも必要だと考えます。
 そこで、改めて、今回の法人税率引下げの意義、及び、働く人の賃金引上げや中小企業の利益増大を実現させ、景気の好循環を実現するための取組と総理の決意を伺います。
 次に、新たな国際課税ルールを策定する、いわゆるBEPSプロジェクトに関連して伺います。
 企業活動がグローバル化する中、一部の多国籍企業が行っていた過度な租税回避行為を防止すべく、国際課税ルールを見直し、各国税務当局が協調して対処することを目的として、OECD租税委員会が取りまとめた税源浸食と利益移転行動計画を受け、昨年十月、最終報告書がG20財務大臣・中央銀行総裁会議に提出されました。このプロジェクトは、麻生財務大臣がG7やG20などの場で議論を積極的に主導し、OECDなどの場で議論を先導してきたものと認識しています。
 今回の改正で、国際課税の適正化に向けて、多国籍企業のグローバルな活動や納税実態の把握のため、各国が協調して情報収集し、共有する報告制度の枠組み等を構築することになります。企業の課税逃れを防ぎ適正化することは、国民の利益を守ることにつながります。
 改めて、このBEPSプロジェクトの意義と日本国民にもたらされる利点、そして今回の改正に盛り込まれた内容について財務大臣に伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#11
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 竹谷とし子議員にお答えをいたします。
 軽減税率制度の導入の意義と円滑導入に向けての決意についてお尋ねがありました。
 軽減税率制度は、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、消費税の逆進性を緩和しつつ、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により、消費税率一〇%への引上げに伴う低所得者対策として導入を決定しました。
 また、平成二十九年四月の軽減税率制度の導入に向け、混乱が生じないよう、政府に必要な体制を整備するとともに、事業者の準備状況等を検証しつつ、軽減税率制度の円滑な導入及び運用に資するための必要な対応を行うこととしております。
 その一環として、制度の周知徹底、相談への対応を丁寧に行うとともに、中小の小売事業者等が複数税率に対応するために必要なレジの導入やシステムの改修等に対して資金的に支援することとしており、予備費や補正予算で手当てを行っているところであり、これらの適切な運用により、しっかりと事業者に対応してまいります。
 また、いわゆるインボイス制度については、事業者の準備に配慮し、その導入時期を平成三十三年四月とし、それまでの間、簡素な方法によることとしております。
 いずれにせよ、事業者の皆様の御理解を得ながら軽減税率制度が円滑に導入できるよう、事業者の準備状況の検証をしつつ、政府として万全の準備を進めてまいります。
 法人税改革など、経済の好循環を実現するための取組についてお尋ねがありました。
 今般の法人税改革は、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から行うものであり、来年度からの法人実効税率二〇%台の実現といった事業環境の整備と併せて、未来投資に向けた官民対話などの場で経済界に対して積極的な取組を要請してきております。
 これに対し、経済界からは、設備投資については、昨年、政府による政策対応を前提に、二〇一八年度に八十兆円まで拡大との意欲的な見通しが示され、また、賃上げについても、先週、過去二年の大幅な賃上げの流れに続き、三度目の流れをしっかり実現できるよう呼びかけを継続していきたいとの回答をいただいたところであり、企業の実際の取組につながることを期待しております。
 あわせて、政府としては、例えば、下請等の中小企業の取引条件の改善に取り組んでいるほか、中小企業の生産性向上に向けた設備投資支援として固定資産税の大胆な減税等を行っており、また、最低賃金についても年率三%程度を目途に引き上げ、全国加重平均で千円を目指してまいります。
 今後とも、経済の好循環を確実なものとし、アベノミクスの成果を国民の皆様に一層実感いただけるよう、各種の政策にしっかりと取り組んでまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(麻生太郎君) 中堅・中小企業に関する税制改正の内容についてのお尋ねがあっております。
 中堅・中小企業は地域で雇用を支える重要な役割を担っておるのは御存じのとおりでありまして、今回の税制改正でも十分な配慮を行ったと思っております。
 具体的には、法人税改革を進める中で、中小零細企業は法人事業税の外形標準課税の拡大や欠損金繰越控除の見直しの対象からは除外いたしております。また、中堅企業につきましても、外形標準課税の拡大により負担増が生じる場合は、その一部を軽減いたします。
 さらに、中小企業の設備投資の支援として、課税標準額を三年間、価額の二分の一にする固定資産税の特例を新たに設けるほか、法人税におきましても少額の資産を取得した場合の損金算入の特例など、中小企業向け政策税制を引き続き維持するということといたしております。
 また、BEPS、ベーシック・エロージョン・プロフィット・シフティング、通常BEPSと言われる税源浸食、利益移転というこのプロジェクトの意義と利点、今回の税制改正に盛り込まれた内容についてのお尋ねがあっております。
 このプロジェクトの意義は、各国が税制の調和を図り、ビジネスの実態に即した国際課税ルールというものを構築することで、各国税制や国際課税ルールの隙間を利用した多国籍企業によります租税回避を防止するということであります。このプロジェクトの実施により多国籍企業の租税回避を防止することで、租税回避を行っておりません日本企業の国際的な競争条件が改善いたしますし、日本企業及び日本国民の利益につながるものと考えております。
 なお、二十八年度税制改正において、このプロジェクトを踏まえまして、多国籍企業グループの各国ごとの活動状況に関する情報を国際的に共通の様式に基づき報告するなどの制度を整備することといたしております。(拍手)
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#13
○議長(山崎正昭君) 小池晃君。
   〔小池晃君登壇、拍手〕
#14
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 私は、会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、安倍総理に質問します。
 一昨年の消費税増税は、家計と消費を直撃しました。先週の予算委員会でも指摘しましたが、家計消費支出は、増税直後にとどまらず、二年近くがたった今も低迷しています。私の質問に対して総理は、消費税増税後の家計消費が予想以上に落ち込み、予想以上に長引いていると述べました。
 二年前の国会で私たちは、八%への増税は家計消費に重大な打撃を与え、経済の悪循環の引き金を引くことになると警告しました。当時総理は、一時的な影響にすぎないと繰り返しましたが、その見通しが誤っていたことを認めたことになります。総理はその責任をどう認識しているのでしょうか。
 今回、食料品などへの税率を八%とすることをもって軽減税率と称しています。しかし、税率が引き下がるわけではありませんから、せいぜい据置税率と呼ぶべきものであります。そして、一部の税率を八%に据え置いたとしても、消費税率全体を一〇%に引き上げれば逆進性が強まるのではないかという予算委員会での私の質問に、麻生財務大臣は当然のことだと答弁しました。
 さらに、公明党の斉藤鉄夫税調会長は、経済誌のインタビューで、将来消費税率は一三から一五%、ひょっとすると欧州のように二〇%になっているかもしれない、そのときでも食べ物は八%に据え置かれる、将来この幅は大きくなる、そのときに初めて軽減税率の意味が出てくると述べています。
 財務省の大臣官房審議官も、福井県で、消費税率一二%の議論になっても身近な飲食料品は八%のまま、国民理解はある程度得られ、引き上げやすくなる、税率を上げる決断をする政権はやりやすくなるだろうと述べたと地元紙で報道されています。
 与党や財務省幹部の言うように、今回の軽減税率は消費税率を一五%や二〇%に引き上げたときに初めて意味が出てくるというのであれば、現時点では意味のないものということになります。総理も同じ認識でしょうか。今回の軽減税率の導入は、一〇%を超える更なる消費税増税のための準備なのですか。はっきりお答えいただきたい。
 消費税にとって価格転嫁の問題は制度に内在する致命的欠陥です。弱い立場の中小零細事業者は消費税の価格転嫁ができず、制度導入以来苦しめられてきました。二年前の消費税増税の影響について日本商工会議所が昨年六月に行ったアンケート調査でも、売上高一千万円以下の事業者のうち、半数は価格に転嫁できず、四分の一は全く転嫁できなかったと答えています。
 このような欠陥の上に、更に中小事業者に追い打ちを掛けるのが軽減税率の導入に伴うインボイスの導入です。膨大な事務負担が中小事業者に襲いかかります。新たな事務負担に耐えられず、廃業や倒産に至る事業者が増えることは間違いないという事業者の声に、総理はどう答えるのでしょうか。
 消費税増税は、貧困と格差に追い打ちを掛けるものです。来年四月に再増税を強行するなら、三年間で五%から一〇%へ、総額十三兆円、国民一人当たり八万一千円、一世帯当たり十八万四千円ものすさまじい負担増を押し付けることになります。冷え込んだ消費に取り返しの付かない打撃となることは明らかではありませんか。
 総理は、リーマン・ショックや大震災のような事態でなければ予定どおり増税すると言いますが、既に家計消費の落ち込みは極めて深刻であり、直ちに増税中止の決断をすべきではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
 安倍政権は、法人実効税率を二〇%台に引き下げようとしています。昨年末の与党大綱では、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革し、稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減することで企業に投資や賃上げを促すとされました。しかし、黒字企業に減税し、赤字企業に増税するのは、税制の原則である応能負担を正面から否定するものであります。
 安倍政権がこれまで行った法人税減税の効果はどうか。この三年間で実効税率は三七%から三二・一一%に下がりましたが、法人企業統計によれば、大企業の給与も実質では年間九万円減っています。内部留保は三年間で四十兆円も増えましたが、有形固定資産は増えるどころか逆に減っています。
 二〇一五年度の上場企業の配当総額は十兆円を超え、自社株買いは五兆円に上ります。一月からの株価下落を受け、株主還元のための自社株買いはこれから急拡大すると見込まれています。余剰マネーが膨れ上がる一方、実体経済にも家計にも回っていません。こうした中で、法人減税に一体どのような効果があるのか、お答えをいただきたい。
 政府は、法人実効税率の引下げで税収が減る分は、課税ベースの拡大、すなわち租税特別措置などの見直しで財源を確保するとしました。
 しかし、今年度の税制改正でも聖域とされたのが研究開発減税です。先日公表された政府資料によれば、二〇一四年度の減税額は六千七百四十六億円、全体の〇・一%にも満たない資本金百億円超の企業分が五千四百二十三億円と、全体の八割を占めています。中でも、トヨタ自動車一社に一千八十三億円も減税されており、たった一社で全体の六分の一を占めています。これらを公正で妥当なものだと総理は考えるのでしょうか。
 日本経団連の税制改正の責任者は、昨年三月の専門誌のインタビューで、実効税率引下げによる減税と租特見直しによる増税の影響を経団連の主要企業ごとに試算し、差引きで減税になるよう、少なくとも増税にならないようにしたと述べています。
 中堅企業や中小企業が外形標準課税の課税強化、消費税の増税で苦しむ中で、経団連言いなりに制度設計を進め、アベノミクスの下で史上最高の利益を上げ続けている大企業に減税をばらまく、こうしたやり方のどこに道理があるというのでしょうか。
 法人実効税率引下げは、経団連が従来から求めていたアジア近隣諸国並みの二五%への引下げの要望を安倍政権が丸のみしたものです。しかし、法人税引下げ競争に対しては、OECDからも、際限のない税収の減少と福祉切捨て、庶民増税につながる懸念が指摘されてきました。これから急速な少子高齢化を迎えるアジア近隣諸国に対し、減税競争の引き金を引けば、近隣窮乏化策となるのは明らかではありませんか。
 アジアに競争と分断をもたらす法人税引下げ競争を防止する国際協調のためのイニシアチブこそ、日本の果たすべき役割ではありませんか。そのためにも、法人税減税は中止すべきであります。明確な答弁を求めます。
 格差拡大、貧困の広がりの一方、富裕層には富が一極集中しています。アベノミクス三年間のこれまでの株価上昇で、含み資産が百億円以上増えた人が二百人に達しています。
 先日、二〇一四年分の申告所得の政府統計が公表されました。それによれば、所得階層別の所得税負担率は、申告所得五千万から一億円までの個人で税負担率が二八・七%となり、それを過ぎると下がり始め、百億円超では一七%となっています。超富裕層ほど税負担率が低下するという逆転現象は依然として放置されています。これは、株式譲渡益の所得税率一五%、住民税を含めても二〇%という優遇があるからです。欧米並みの三〇%に引き上げ、格差是正を進めるのは急務の課題ではないでしょうか。
 我が党は、大企業と富裕層優遇の不公平税制を改め、消費税に頼らない税財政の再建策も提案をしております。アベノミクスによるバブルとトリクルダウンの政策を中止をし、家計と中小企業への支援で内需を拡大し、格差と貧困を是正する経済政策への抜本的な転換を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#15
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 小池晃議員にお答えをいたします。
 一昨年の消費税率引上げの影響についてお尋ねがありました。
 一昨年の消費税率八%への引上げが消費に大きな影響を与えたのは事実です。だからこそ、我々は一〇%への引上げを一年半延期しました。この間、我々はしっかりと三本の矢の政策を進めてきました。その結果、名目GDPは二十七兆円増加し、企業収益は過去最高となり、昨年の賃上げ率は十七年ぶりの高水準となるなど、成長軌道に戻ってきています。
 なお、足下の個人消費については、記録的な暖冬といった天候要因等を背景に力強さに欠けていますが、雇用・所得環境の改善が続く中で更に持ち直していくことが期待されます。
 今後は、より力強い賃金上昇の実現を促すとともに、消費の底上げ効果が発現するよう、最低賃金の引上げを含め、各種政策にしっかりと取り組み、経済の好循環を回すことによってデフレ脱却を確かなものとしていきます。
 軽減税率制度の導入の意義についてお尋ねがありました。
 消費税の軽減税率制度については、税制抜本改革法第七条に基づく消費税率一〇%への引上げに伴う低所得者への配慮として導入することとしたものであり、更なる消費税増税のための準備との御指摘は当たりません。
 軽減税率制度は、給付付き税額控除といった給付措置とは異なり、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により導入を決定しました。
 また、年収の低い方の飲食料品等の消費支出に占める割合は高収入の方よりも高くなっており、消費税が有しているいわゆる逆進性の緩和の観点からも有効であると考えています。さらに、日々の生活の中で痛税感の緩和を実感していただくことで、消費者の消費行動にもプラスの影響があるものと期待できるのではないかと考えています。
 消費税の価格転嫁とインボイス制度についてのお尋ねがありました。
 消費税については、中小企業を含む事業者の方々が消費税を円滑かつ適正に転嫁できることが重要であり、消費税転嫁対策特別措置法等に基づき、政府一丸となって取り組んでいるところです。
 この結果、中小企業庁が本年一月に実施したアンケート調査によれば、事業者間取引において、全て転嫁できていると回答した事業者が八五・八%であった一方、全く転嫁できていないと回答した事業者が三・四%となっております。しかしながら、これでよいということではなく、消費者向け取引を含め、小規模事業者の方までしっかり転嫁できるよう引き続ききめ細かく対応してまいります。
 いわゆるインボイス制度については、事業者の準備に配慮し、その導入時期を平成三十三年四月とし、それまでの間、簡素な方法によることとしております。
 また、軽減税率制度の導入に向け、制度の周知徹底、相談への対応を丁寧に行うとともに、中小の小売事業者等が複数税率に対応するために必要なレジの導入やシステムの改修等に対して資金的に支援することとしており、予備費や補正予算で手当てを行っているところであります。
 いずれにせよ、軽減税率制度が円滑に導入できるよう、事業者の準備状況の検証をしつつ、政府として万全の準備を進めてまいります。
 消費税率引上げについてのお尋ねがありました。
 日本経済のファンダメンタルズは確かなものと認識しています。一昨年の消費税率八%への引上げによって、個人消費は二四半期連続で前年に比べ二%を超えて落ち込むなど、予想を超えた影響を及ぼしました。デフレ脱却を確かなものとするため、我々は一〇%への引上げを一年半延期し、しっかりと三本の矢の政策を推し進めてまいりました。
 その結果、個人消費は二〇一四年十―十二月期には前期比プラス〇・七%となり、その後も底堅く推移してきました。昨年十―十二月期には記録的な暖冬の影響もあって落ち込みましたが、八%への引上げ時と比べ、名目雇用者報酬は二・八%の伸び、失業率は〇・四%ポイントの改善、有効求人倍率は一・〇八倍から一・二八倍に上昇するなど、雇用・所得環境の改善が続く中、個人消費も持ち直していくことが期待されています。今後も賃上げの流れを続け、雇用や所得の拡大を通じた経済の好循環を回すことによってデフレ脱却を確かなものとしていきます。
 来年四月の消費税率一〇%への引上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するため、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施します。経済の好循環を力強く回していくことにより、そのための経済状況をつくり出していきます。
 法人税改革などの効果についてお尋ねがありました。
 安倍内閣においては、所得拡大促進税制などの政策税制の活用や法人実効税率の引下げに取り組んできており、そうしたことも一つのきっかけとして、二年連続の大幅な賃上げが実現するなど、経済の好循環が確実に生まれてきたものと考えております。
 今般の法人税改革も、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から行うものであります。経済界も、法人実効税率二〇%台の実現といった事業環境の整備を受けて、賃上げや設備投資に積極的に取り組んでいく旨を表明しており、企業の実際の取組につながっていくことを期待しております。
 研究開発税制についてお尋ねがありました。
 研究開発税制は、その要件を満たせば幅広く利用できる制度であり、利用件数を見ると中小企業にも幅広く利用されております。御指摘のとおり、大企業の利用金額が大きくなっていますが、これは研究開発投資に積極的に取り組んだことの表れでもあると考えております。
 また、この制度については、平成二十七年度税制改正で一定の見直しを行っており、引き続き様々な観点から取扱いについて検討してまいります。
 法人実効税率の引下げについてお尋ねがありました。
 安倍内閣では、法人実効税率を国際的に遜色のない水準まで引き下げることを目指して法人税改革を進めてきたものであり、諸外国との税率引下げ競争の引き金になるものとは考えておりません。
 来年度には目標としていた二〇%台を実現しますが、課税ベースの拡大等により必要な財源はしっかりと確保しており、大企業に減税をばらまくとの批判は当たりません。
 株式譲渡益に対する課税についてお尋ねがありました。
 金融所得に係る分離課税の税率に関しては、平成二十六年から上場株式等の配当及び譲渡益について、地方税を含め一〇%の軽減税率を廃止し、地方税を含め二〇%の本則税率としたところです。これにより、御指摘の所得税の負担率は高所得者ほど上昇する傾向が見られ、所得再配分機能の回復に一定の効果があったのではないかと考えています。
 今後の税率の水準については、経済社会の情勢の変化や税制全体の在り方の中での位置付け等も踏まえつつ検討する必要があるものと考えております。(拍手)
#16
○議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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