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2015/05/20 第189回国会 参議院 参議院会議録情報 第189回国会 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会 第5号
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2015/05/20 第189回国会 参議院

参議院会議録情報 第189回国会 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会 第5号

#1
第189回国会 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会 第5号
平成二十七年五月二十日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月十三日
    辞任         補欠選任
     野田 国義君     礒崎 哲史君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         鴻池 祥肇君
    理 事
                大野 泰正君
                舞立 昇治君
                森 まさこ君
                尾立 源幸君
                平木 大作君
                藤巻 健史君
                辰巳孝太郎君
    委 員
                金子原二郎君
                関口 昌一君
                西田 昌司君
                宮本 周司君
                山田 俊男君
                山本 順三君
                吉川ゆうみ君
                石上 俊雄君
                礒崎 哲史君
                江崎  孝君
                広田  一君
                安井美沙子君
                魚住裕一郎君
                中山 恭子君
                中西 健治君
                吉田 忠智君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        山内 一宏君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関
 する調査
 (「デフレからの脱却と財政再建の在り方など
 経済状況について」のうち、経済の再生と財政
 再建の在り方)
    ─────────────
#2
○会長(鴻池祥肇君) ただいまから国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十三日、野田国義君が委員を辞任され、その補欠として礒崎哲史君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(鴻池祥肇君) 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査を議題といたします。
 本日は、「デフレからの脱却と財政再建の在り方など経済状況について」のうち、「経済の再生と財政再建の在り方」について委員間の意見交換を行います。
 本調査会では、「デフレからの脱却と財政再建の在り方など経済状況について」のうち、「経済の再生と財政再建の在り方」についてこれまで三回にわたり九名の参考人から御意見を伺い、また政府及び日本銀行から説明を聴取し質疑を行うなど、調査を進めてまいりました。
 本日は、中間報告書を取りまとめるに当たり、これまでの調査を踏まえ、委員各位からの御意見をお述べいただきたいと存じます。
 議事の進め方でありますが、まず、各会派一名ずつ指名させていただき、その後は会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと思います。
 発言を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようお願い申し上げます。
 また、発言の時間が限られておりますので、委員の発言は五分以内となるように御協力をお願いいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、発言を希望される方は挙手をお願いいたします。
 西田昌司君。
#4
○西田昌司君 自民党の西田でございます。
 私は、まず、デフレの原因、これは、バブルが終わった後、各企業、バランスシート改善のために投資じゃなくて借入れをどんどん減らしていったと。そこから、当然、需要が少なくなりますから経済は悪くなるんですが、同時に、この時代からグローバル化が一挙に進んで、企業は国内よりも海外で投資を行う、雇用と所得が海外に移転する、その結果、国内の内需がどんどんどんどん減ってくるという、そういう構造が、今も続いていますが、あったと思います。
 そして、こうした時期には、むしろ政府が、民間需要が海外に行っていますから、政府の方が主導的に雇用をつくったり、また雇用をつくり出すインフラ整備をすべきだったと思うんですけれども、残念ながら、この二十年間、それと全く逆のことを政府もしてきてしまいまして、公的な予算を逆に削減して、削減した結果、内需もまた削減されてくると。そして、経済が悪くなりますから税収まで落ちてくると。こういう悪いことが次々次々繰り重なってきたと思っているんです。
 さてそこで、それを改善するためにはそういう状況を直していかなければならないということでありますから、まずは企業の海外移転を阻止しなければならないんですけれども、これは、企業は自由ですからね、出ていってしまうところはなかなか無理に止めることはできないと。しかし、海外に行かなくても、国内でしかできない事業とかそういう仕事があるわけですし、特に東京、首都圏から海外に行くんじゃなくて、むしろインフラや情報網の整備をすることによって国内にとどめて、より海外よりも安全で有利な条件で工場操業などができるような、やっぱりそういう条件整備を国の力でやっていくことが必要だと思います。
 それから、公需を中心とした内需は依然として多いわけですが、医療、福祉、こういう高齢化に伴う社会保障というのも、その負担が問題視されていますけれども、依然としてやっぱり需要としては大きいわけですね。日本の場合には、いわゆる中福祉でありながら低負担と。今日の財政が悪くなった一番の原因は、予算のうちに社会保障費が三十兆円ある、ところが赤字国債も三十兆円あるというところから象徴されていますように、要するに、この社会保障費の分を賄うだけの負担をお願いできていなかったと。消費税を上げるということは既に決まっていますけれども、ここでもう一度、国民の負担率、所得に対する負担率は国際水準に戻していくという、やっぱりそういう大きな国民の世論を上げていくことが私は必要だと思っています。
 しかし、その前に、まずはデフレから脱却をするということが大事でありますから、今、せっかくアベノミクスということで金融の方もかなりゆるゆるにしていただいております。ですから、この時期を、この低金利水準で資金量が豊富に使える時期をしっかり使って、この数年間でしっかりとした公共事業投資、またインフラ整備などを行っていく。しかも、それは短期的な補正予算の話ではなくて、ここ五年、十年の間に必ず大きな災害や様々なしなければならないインフラの架け替えの需要などあるわけですから、これをインフラだけにとどまらず、各省庁に、この十年にしなければならない、日本の国をもう一度首都圏からそれぞれの地方に分散型の社会をつくるためにはどうすればいいのかと、それがまた、ひいては防災にも役立つわけでありますから、そういった観点から長期的な歳出の計画を作らすと。それをこの十年間に積極的に行い、そして国民負担率を経済が上がってきたときにしっかり増税ということも含めてやっていけば、私は間違いなく日本の経済はデフレから脱却し、そして経済も良くなり税収も増えますから財政再建もかなうと。
 是非、こういう議論を与野党問わず、我々参議院のこの調査会で一致した意見として政府にも要望させていただけるようになればなと思っておりますので、よろしくお願いします。
 以上でございます。
#5
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 次に、尾立源幸君。
#6
○尾立源幸君 民主党・新緑風会の尾立でございます。
 まず、私から少し、現在行われている経済金融政策、批判的な立場からの意見を申し上げたいと思っております。
 やはり、国会というところはいろんな意見があって、現在の政策に大賛成という方もいればそうじゃないという人もいると、しっかりこれは議事録にとどめていただきたいという思いで意見を申し上げたいと思います。
 これは以前にも申し上げましたが、経済政策や金融政策の本当の評価というのは、やっぱり最終的な全て政策が終わってからでないと私は正しい評価はできないんだと思っております。そういう意味で、今政策実行中でありますその過程で多少株価が上がったり下がったりいろいろありますが、そのこと自体に本質的な意味はなくて、やっぱり最終的に失敗をしてしまったら経済財政は破壊されて国民負担ということに行き着くわけですので、そんなことにならないためにもこの政策の出口戦略というのが非常に重要だというふうに常々思っております。
 そして、その出口議論について国会でオープンな形で議論ができないというのがなかなか、こういう状態は私は良くないと思っております。もっとやはり、これは将来の国民生活に直結する大きな政策ですので、しっかり出口も含めた忌憚のない意見交換ができるべきだというふうに思っております。
 そして、現在はQQEということで、異次元の量的・質的緩和という中で大量の国債購入をしておりますけれども、これも私はあくまでも一時しのぎ、時間稼ぎだと思っています。このしっかり時間を稼いでいる間に、日本の、我が国の将来の成長に資するような構造改革や規制緩和というのをしっかり行うことが大切であると思っております。
 一時的に、先ほども申し上げましたように、株価が上がると何となく気持ちがいいものですけれども、これはあくまでもモルヒネ効果だと私は思っておりまして、このモルヒネは切れれば切れるほど欲しくなるという中毒症状があるので、こんなことを私は繰り返してはならないと思っております。
 そして、今のようにQQEということで意図的に金利の上昇というのを政策的に抑え込んでいるわけですけれども、この長期国債の大量購入をいつまで継続するのか、なかなかこれも結論が出ない、この調査会でも出ないわけなんですけれども、必ず持続可能性については私はどこかで行き詰まりが出てくるんではないかと思っております。
 さらに、後世に負担を残さないためにも財政再建を進めなければならないと思っております。今、政府の方では、実質二%、名目三%の経済成長率を前提に試算をしております。堅めのケースもやっておりますけれども。この高めの経済成長率においても、国、地方合わせて、二〇二〇年にはプライマリーバランスのマイナスは九・四兆円ということであります。この実質二パー、名目三%というのは、ある意味、バブル期のあの頃でこのぐらいの成長率ですので、毎年バブルが続くことが前提となったような試算というのは、私は本当に国民に対して、まあ意気込みとしてはいいんでしょうけれども、本当の姿を表しているかというと、私はそうでないと思っております。
 一方、そんな中で、消費税の再増税はしないとおっしゃっておりますので、マイナス九・四兆円というこの財政赤字を本当に歳出削減だけで解消できるのか、非常に疑問であると思っております。
 そして、まず経済成長しながら、最終的には財政再建と低金利政策ということを両立をさせていかなきゃいけないわけです。これ、いつまでにできるのかというまた疑問もございます。経済成長に伴って金利が上昇すれば、日銀が保有する国債の評価損もこれ出てまいります。そうなると、中央銀行や通貨の信認を損なう、これは大問題も起こってくるものだと思っております。
 財政再建の手法としては、増税、歳出削減かインフレタックスというのが手段にあるわけですけれども、増税、歳出削減が不十分であれば、最終的にはインフレタックスを採用することになってしまう。しかし、そのインフレタックスというのは、まさに国民に負担を押し付ける行為なわけで、これは私は非常に危険な方法だと思っております。
 最後に、地道な歳出歳入改革や社会保障改革が必要だということについて言及したいと思っております。
 これまでの社会保障制度というのは、右肩上がり、人口増を前提としたシステムでありますので、現状ではもたないと思っております。例えば、年金についても、これまでのような賦課方式から積立方式に移行して、年金の過去債務、推計によりますと一千兆というふうにも言われておりますが、こういうものを世代別にしっかりと国民の前に情報開示をし、本当の負担の在り方を真摯に議論することこそ国会で私は求められると思っております。
 以上でございます。
#7
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 続いて、平木大作君。
#8
○平木大作君 公明党の平木大作でございます。
 大変示唆の多い、また学びの多い調査会だったなというふうに思っております。
 私の方からは、幾つかのテーマについて端的に意見を表明させていただきます。
 まず初めに、成長戦略についてでありますけれども、これは、もう申すまでもありませんけれども、この調査会で対象といたしましたデフレの脱却、また財政再建についても、その成否を大きく左右する大変重要なテーマであるということを改めて認識をいたしました。当然、こういったテーマを議論する上での前提としてしまってはいけないわけでありますが、同時に、経済成長は必要不可欠であるということ、これが改めて確認されたと思っております。
 参考人の皆様からは、現政権の成長戦略に関して、期待はしている、でも取組のペースが遅いのではないかですとか、様々耳に痛い御指摘もいただいたかなというふうに思っております。
 引き続き、ここについては、間断なく経済成長に乗せるための施策を打っていく必要があるわけでありますけれども、議論の中で一点興味深かったのは、経済成長を議論する中において、格差ですとかあるいは所得の再分配といったことの重要性が指摘されたことかなというふうに思っております。この格差が経済成長に及ぼす影響、その是正、そういったものも今後テーマとして取り上げてはいかがかなということを考えました。
 二点目に、財政再建についてであります。
 ここについて、何よりも今求められているのはやはりスピード感、取組におけるスピード感であると思っております。私も質問の中で、十八年前、私自身が学生時代からこの財政再建は課題として取り上げられていたということを触れさせていただきましたが、二十年前から課題として取り上げられているにもかかわらず、今まだ実感として大変な事態に至っていない。これが、恐らく財政再建になかなか本腰で取り組めない大きな要因であるというふうに思っております。やはり二十年前と今は大きく状況が変わっているということ、これを改めて確認をする必要があるのではないか。
 参考人の先生からも御指摘いただきましたが、二十年前というのは団塊の世代の皆様が働き盛りで納税もされていて社会保険料も納められていた、今はこれが受給の世代になってきて、さらに十年後には今度介護の対象になってくる、ここをしっかりと踏まえなければいけないということと、日本のこの潜在的な成長率自体が二十年前と比べて大きく落ち込んできている、成長頼みの財政再建という議論であってはいけないんだということを御指摘いただいたんじゃないかと思っております。
 また、財政再建のような不人気な政策というのは、当然、安定政権でなければなかなか取り組めませんので、現政権は必ずここにしっかり取り組んでいかなきゃいけないんだろうということで御指摘いただいたと思っております。
 この議論の中でも、一点、大変興味深いなと思いましたのは、税と社会保障の一体改革、これが非常に意義のある取組だったんじゃないかということを御指摘いただきました。
 これ、まず一点目に、国民生活に直結する課題であるから、これは野党とか与党とか、そういった立場を超えて合意ができたということ、そして増税という負担増と併せてその受益を明らかにして一体で議論したということ、そして三点目に、それまで医療ですとか介護、年金、こういう主な受益者を高齢者としてきた社会保障の三分野に加えて、子育てという四本目の柱を加えることで若い世代への受給といったものもパッケージで加えて議論した、これは今後の財政再建の議論においても非常に参考になるケースであるなということを改めて思いました。
 最後に、金融政策についてでございますが、これについては、アベノミクスの経済政策において、この第一の矢である金融政策が果たした役割というのは私は非常に大きいというふうに思っております。
 ただ、同時に、日銀の黒田総裁にも来ていただきましたが、この日銀の今の金融政策自体が非常に明確なコミットメントを出して、そして人々の期待、予想物価上昇率に働きかけると、こういうそもそものこの政策の性格を考えたときに、なかなかそのやっているさなか、まだ結果が出ていないところで出口について当事者が語るというのはやっぱり難しいんだなということを改めてこの調査会においても確認をいたしました。
 かといって、この出口について全く議論をしなくていいという話ではないというふうに思っておりますので、この調査会の役割、つまり、リスクをじゃ、どうやって最小化していくのかということについては、しっかりこの調査会が提言していくことの重大さということが改めて確認できたんじゃないかなと思っております。
 今後、まだこれ三年の調査会のうちの二年目でございます。更に議論を深化させていく上で、ちょっと留意した方がいい点があるかなと思っております。
 それは、この議論の中でも、これ参考人の皆様の御意見の中でも、いわゆる事実として述べられていることと、意見として述べられていることが割とごっちゃになっているなと。ここは参考人の先生の中でもちょっと混ざっているなと感じたところがございました。
 一例といたしまして、例えば日銀の国債保有、日銀の場合は、国債の保有については、先日、黒田総裁からもございましたが、償却原価法を用いていると。つまりは、金利が高騰した際においても会計上は損失としてこれ計上する必要がないんだということが表明であったわけであります。これは事実としてしっかり確認しなければならない。その上で、それは会計上あくまでも計上していないだけでありますので、では、そこにどんなリスクが潜んでいるのか、どう対処すべきなのか。こういう形で、事実とその見方ですとか対処の仕方というのは分けて議論をしていかないと、来年も同じ議論をまた繰り返すことになってはいけないなということだけ最後に述べさせていただきます。
 時間が参りましたので、私からは以上とさせていただきます。ありがとうございました。
#9
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 続いて、藤巻健史君。
#10
○藤巻健史君 維新の党、藤巻です。
 私は、この二十数年来の日本経済の低迷は、過剰なる円高、実力以上の円高だったと思うんですね。それを解消するということが日本の経済再生になると常々思っておりました。もし金融政策を取るのであるならば、伝統的金融政策に固着するべき、すなわち金利の上下に徹底するべきで、マイナス金利を採用するべきだというふうに思っておりましたが、異次元の量的緩和で伝統的な金融政策をやめて、量的緩和政策になったわけです。
 量的緩和政策についての評価なんですが、これについては、尾立議員の先ほどの発言にまさにそのまま同じでございます。要は、評価というのは事後的に評価されるべきものであると考えています。
 これだけお金をじゃぶじゃぶにしているのですから、当然、今日現在の景気はいいに決まっています。余ったお金が土地と株に回り、土地と株の値段が上がることによって資産効果で景気が良くなる。これはまさに一九八五年から二〇〇〇年のバブル期に生じた現象でございます。かつ、円安になって、そして景気が良くなるということで、景気がいいのは当たり前です。まだインフレ率が二%に行っていないとか景気が悪いというような反論もありますけれども、それは単なる時間の問題で、いずれ良くなるに間違いないというふうに思います。零細企業が悪いといっても、景気の回復というのは所詮大企業からスタートするし、金持ちの消費から始まるわけで、時間が掛かるという意味では、ギャップはあるかもしれませんけれども、いずれ良くなるのは当たり前の政策だと思っております。
 ただ、量的緩和をなぜ今までの過去の政府がやっていなかったか、アメリカの共和党がなぜあんなに反対するのか、白川前日銀総裁があれだけ反対するのか、ECBが量的緩和をしようとしたときにドイツがなぜあれだけの反対をしたかということを考えれば、それは事後的にハイパーインフレという現象を起こすというのが歴史的事実だからであります。量的緩和、特に日本の場合には、百五十三兆円の国債発行のうち百十兆円も買っているというまさに財政ファイナンスそのものであり、財政ファイナンスであればハイパーインフレになるというのは歴史の証明することであります。
 もし日銀が出口でインフレ率を二%、三%に抑えられるのならば、それは結果として量的緩和というのは成功すると思いますけれども、それは過去に実行できた国はありません。もしそれが二%、三%で終わらずに五%、一〇%というハイパーインフレになってしまえば、それはまさに国民にとって地獄の生活が待っているということであります。
 まさに先ほど西田議員が国民の負担率を、税金負担率、租税負担率を上げなくてはいけないというふうにおっしゃっていましたけれども、まさにこれは、インフレというのはインフレタックスでございまして、国民から国への富の移行という意味でまさに税金と同じということでございます。ということは、要するに、重課税にするかどうかの岐路に今立っているというふうに考えています。穏やかなインフレであれば穏やかな増税であり、ハイパーインフレになれば重課税ということで国民は大変なことになるということでございます。
 出口がはっきりしていないという以上、私は量的緩和というのはもう早めに撤退するべきだと思っています。ルビコン川を渡ってしまった以上かなりのダメージは避けられないと思いますけれども、大ダメージにしないためにも量的緩和というのは早く撤退するべきだと思います。まさに戦争のときに、パールハーバー、とんでもないことをしてしまった、早く撤退すべきところをどんどんどんどん中国奥地まで行ってしまったという現象に似ているのかなと思います。早めの量的緩和をやめるということが重要かと私は思っております。
 以上です。
#11
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 続いて、辰巳孝太郎君。
#12
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎です。
 アベノミクスでマネタリーベースは二倍になった、長期金利は低下したと。株価も上がっておりますが、しかし、それで恩恵を受けているのは大企業と大資産家ということでございます。
 この二年間で、金融資産を一億円以上保有する富裕層というのが二四%増えまして百万世帯を超えたということでございます。銀行の貸出しというのは増えないと。つまり、企業はお金を借りない、設備投資になかなか回さないというのが現状だと思います。追加緩和で更に国債を買い増してETFの購入やGPIFによる株式購入など、官製相場という異常な状態になっていると言わなければならないと思います。
 物価についてですが、物価は確かに上がっていると。しかし、その物価の上昇に賃金の上昇が追い付かずに実質賃金が二十三か月連続で減少と。年度ごとで見てみましても、二〇一四年度で四年連続で減少しているということでございます。この落ち込みというのは、リーマン・ショック後の二〇〇八年度を超えるものとなっています。個人消費は当然落ち込んでおります。アベノミクスは物価の上昇を期待して消費を喚起するものとしていますけれども、賃金も上がらずに年金は下がるとなれば、物価が上がれば買い控えが起こる、個人消費が落ち込むのは当然の現象だと言わなければなりません。
 二〇一三年の骨太方針でこう書いてあります。「今後、物価の上昇が想定される中、賃金や家計の所得が増加しなければ、景気回復の原動力となっている消費の拡大は息切れし、景気が腰折れすることにもなりかねない。」と。まさにこの懸念が現実のものになっていると言わなければなりません。経済の好循環は起こっていないということではないでしょうか。
 特に賃金ですが、上がっているのは輸出大企業と金融と保険業とゼネコンだけです。中小零細・小規模企業になればなるほど、いわゆるアベノミクスの恩恵というのはありません。中小企業は非正規雇用労働者の割合が多く、小売業やサービス業などが多いため消費税の増税の反動減の影響を受けやすいからだと思います。
 財政再建、税金の取り方についてはどうかといいますと、やはり昨年の四月からの消費税の増税の影響は甚大。逆進性がある消費税ですから、日銀も、個人消費が冷え込んで、これは想定以上の落ち込みだと言っております。一方で、法人税率というのは下げ続けている。しかし、この税金を下げ続けても、結局、大企業の内部留保に積み増しをされているのが現状で、効果のない政策をいつまで続けるのかと、税負担の公平性からも間違っていると言わなければならないと思います。
 やはり、経済や社会の土台をつくっていくことこそ大事だと思います。日本の再分配機能は非常に弱いということも参考人から指摘をされました。これは、低所得者が救済されずに放置をされているということでもあります。OECDは、トリクルダウンを否定して、同時に、この貧困を放置すれば低所得者は教育に投資できずに、結果的に国の成長が阻害されるという報告も出しました。まともな経済政策に立ち戻る必要があると思います。
 これから、第三の矢として、非正規雇用を増大させる労働者派遣法改正や、賃金を全体的に引き下げ、長時間労働を増大させる残業代ゼロ法が狙われております。労働者の権利、賃金が奪われ非正規雇用が増えれば、内需が中心の日本経済に大打撃となるのは目に見えております。
 金融頼みのアベノミクスをやめて、国民の暮らしとまともな雇用、経済を支える中小企業に軸足を置いた経済政策への転換が必要だということを述べて、私の意見といたします。
#13
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 続いて、中山恭子君。
#14
○中山恭子君 次世代の党、中山恭子でございます。
 経済の再生と財政再建の在り方について、日頃から考えていますことを申し述べます。
 デフレ脱却について、金融政策は十分熟慮された中ででき得る限りの政策を取っていると考えますが、財政政策はまだまだ不十分であると考えます。予算編成に当たり、社会保障費が放漫になっていること、公共事業費が極端に低く抑えられていることがデフレからの脱却が緩やかなものとなっている大きな要因であると考えております。
 社会保障費につきましては、コンクリートから人へといったキャッチフレーズの下、乗数効果がほぼなく、消費性向のある項目へ予算配分を行い、自然増との名の下で社会保障費抑制の努力を行ってこなかったことが、財政赤字を膨大なものにしてしまい、デフレ脱却の財政政策を取るゆとりをなくしてしまったと言えると考えます。
 したがって、社会保障制度の抜本的改革が喫緊の課題であると考えます。この制度改革のためには、法制度そのものの改革が必要であることはもちろんですけれども、社会の在り方を変えていくことも大切です。例えば、定年制の廃止や家族を社会の基底に置いた三世代住宅を一般化することなど、検討し実施していくことが必要であると考えております。
 公共事業費は、平成十年度には十四・九兆円が計上されていました。今年度当初予算では六兆円、約四割まで落ちています。六割減、平成十年度の半分以下です。この額は、三十七年前の昭和五十三年度の五・八兆円を僅かに超える水準です。平成十年度に比べて公共事業の必要性が減ったわけではなく、その必要性は一層増しているにもかかわらず、半分以下の予算しか組めていないというのが実情です。
 IMFの二〇一四年十月、世界経済見通しでは、インフラの必要性のある国ではインフラ推進の適当な時期である、公共投資は生産の要である、公共投資の拡大は、特に経済に余剰能力があり投資効率が高い場合、短・長期的に生産高を押し上げる、公共インフラ投資は正しく行われるならば元が取れるだろうと指摘しております。
 デフレからの脱却を確たるものとするため、また美しく豊かな日本を次世代に継承するためにも、共同溝や三世代住宅の建設など必要な公共事業費を大幅に増大すべきと考えています。
 ありがとうございました。
#15
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 続いて、中西健治君。
#16
○中西健治君 無所属クラブの中西健治です。
 この調査会、大変有意義であったというふうに思います。会長、そして理事の方々、もちろん参考人の方々にこの場を借りてまた御礼を申し上げたいというふうに思います。
 多くの参考人の方々の意見を拝聴した上で、幾つか端的に述べさせていただきたいと思いますが。
 まず、日本銀行の金融政策についてでありますが、日銀は、物価安定目標の達成時期、まあ後ずれはさせていますけれども、二〇一六年度の前半に達成見込みであるということを言っているわけであります。そして、それに向けて、今年の秋口からは原油価格の下落の影響も剥落してくるということでありますので、秋口からは物価の上昇というのが目に見えて分かってくるはずであるということがメーンシナリオということになっています。
 であるならば、参考人の方々もおっしゃっておりましたけれども、やはり出口政策について、少なくとも議論の中身というものは早めに提示していく必要があるのではないかと思います。時期尚早、時期尚早と言っている間に二〇一六年度になってしまうということにならないようにしなくてはいけないということを申しておきたいというふうに思います。
 それから、財政健全化についてでありますが、政府は夏に財政健全化策というのを取りまとめるということでありますけれども、この財政健全化策、目標だけではなくて、やはりルールを定めるべきなんではないかというふうに思います。橋本内閣のときに財政健全化法という法律もあったかと思いますけれども、やはり、法律を作る、ルールを定めていくということが必要なのではないかと思います。
 一つ例を挙げますと、毎年補正予算というものが組まれますけれども、補正予算は本来、もう皆さん御承知のとおり、財政法では、本当に真に緊要な支出が見込まれるときということになっておりますが、毎年それだけ真に緊要な支出が必要となるのかどうかということ、そうした要件の厳格化ということが必要なのではないかと考えております。
 そして、もう一つ、税制そして社会保障制度についてでありますが、参考人の方の御意見の中で一つ非常にショッキングだったなというふうに私自身が感じたのは、日本で増税に抵抗感が大きいのは社会の信頼感がないからである、アジアの中でも社会の信頼感が最低であるというデータがあるということを御紹介いただきましたけれども、やはりそれは政治に対する不信ということも大きな原因になっているんではないかと思いますが。
 そうした中で、世代間の対立ですとか所得階層間の対立ですとか、そうしたことを助長するような税制度、社会保障制度というのではなくて、それを緩和していくような社会保障制度、特に現物給付などを例に挙げられていたかと思いますけれども、そうした議論を中心に行っていくべきなんではないかというふうに思います。
 そうしたことを今後の議論でも、この場でもやっていくべきではないかということを申し上げたいと思います。
 以上です。
#17
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 続いて、吉田忠智君。
#18
○吉田忠智君 社会民主党・護憲連合の吉田忠智でございます。
 各界のその道の新進気鋭の方々に来ていただいて、本当に有益な話を聞くことができました。会長始め理事、関係者の皆様に感謝を申し上げたいと思います。
 意見を聞いた上で、現下の経済状況や財政についての思いを申し上げたいと思います。
 まず、日本経済の現状でありますが、安倍政権が進めている経済政策、異次元の金融緩和、それから機動的な財政出動、成長戦略、規制緩和、進められているわけでありますが、異次元の金融緩和、前例のない取組が行われている中で、私は一定程度効き目は出ていると思います。株高、円安誘導、原油価格の下落によって、円安によってかなり国民の皆さんの不満は物価が上がって高まっていたわけでありますけれども、原油の下落によってややそれが和らいでいる、燃料費が下落してやや和らいでいる感はありますけれども、昨年の四月の消費税増税も効いておりまして、富裕層やあるいは輸出大企業にはかなり恩恵があって、一定程度そういうところから景気回復をしているんじゃないかという国民の皆さんの見方はありますけれども、全体には及んでいない。中小企業、業種間にも格差がありますし、また大半の労働者の皆さん、また地方には波及していないということでありますから、これからいかにそういうところに景気回復を及ぼしていくかということが極めて大事だと。ボトムアップの経済政策をどのように打っていくのか、そのことが改めて問われていると思います。
 よくCEFと言いますけれども、ケア、医療や健康分野、あるいはE、エネルギー・環境分野、F、農林水産業や観光分野など、そういうところにしっかり重点投資をして、そういう分野を担う中小企業にもっともっと後押しをしていくこと、また、最低賃金の引上げや公契約法の制定、公契約条例の制定など、できることをやっぱりしっかりやることが必要だと、そのように思っております。
 規制緩和でいいものと悪いものが私はあると思っております。セーフティーネットを壊すような規制緩和は行うべきではありません。電力システム改革などはしっかり進めていくべきだと思いますけれども、例えば労働法制の規制緩和、改悪、労働者派遣法の改悪や残業代ゼロ制度など、そういうのはやっぱり進めるべきではないと思っておりますし、医療改革についても、気を付けないと、これは国民皆保険制度を壊していくことになりますから要注意、教育改革についてもそのように考えて、安易に進めることは問題だと思っております。
 それから財政についてでありますが、国、地方を合わせて一千兆を超える借金、GDPの二倍の借金というのは異常な数字であることは改めて申すまでもありません。しかし、ギリシャやスペインなどと日本は違う、だからこそ野方図にこれまで放置されてきた面はあると思います。
 私は、理由は三つあると思います。日本の個人の預金総額が一千四百兆、ちょっと数字は変わったかもしれませんが、まだ国債総額よりも上回っていること。それから、国のバランスシートでいいますと、道路や建物や土地など固定資産がざっくり言って五百兆、それから政府金融資産がざっくり言って五百兆、合わせて一千兆ちょっと、ですから資産と負債がバランスしているわけですね。三つ目の理由は、日本の国債の保有は国内が九〇%を超えている。その三つの理由によって放置されてきた。一方で、そんなに深刻になることはないわけであります。
 いずれにしても、この負債をそのまま放置するわけにいきませんから、しっかり道筋をつくっていかなければならないと思っております。その方法は三つしかない。歳出の削減、税収の増、そして税制改革による負担を求めていく。
 もう消費税は限界のところに来ていますから、やっぱり所得やあるいは資産の分野における応能負担をしっかり徹底していくことが必要だと思っております。また、経済成長に伴う税収増というのはそんなに多く見込むべきではないと思っております。また、歳出削減につきましても、やはり財政規律は私は日本は緩んでいると思っています。基金の問題も指摘をされておりますし、省庁によって類似の事業がありますから、そういうダブりを解消することによってかなり削減ができるのではないか。また、社会保障につきましても、ぎりぎりのところで不公平税制を是正を、正して、もうこれ以上出ないというところからやっぱり社会保障の削減というのは行うべきである、そのように考えております。
 それから、一つ私は印象として、事実かどうか分かりません、私政府に入ったことがありませんから、感じるのは、財政運営戦略は内閣府が担っています。それから歳出歳入の執行は、管理は財務省が担っています。私は、責任が分散しているのではないか、財務省が強大な権限を持ちながら実際責任を回避しているのではないかという気が強くしておりまして、そういう、まさに中長期的に日本の財政を担う、そうしたところがしっかり一か所でグリップできるような体制をしていかなければならない。
 しかし、いずれにしても、それは私たち政治家、国会議員に最後は帰するところでありますから、国会がしっかりしなければならない、そのことを最後に申し上げたいと思います。
 ありがとうございました。
#19
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 以上で各会派一名ずつの御発言は終わりました。
 他に御発言希望される方は挙手をお願いいたします。
 山田俊男君。
#20
○山田俊男君 大変難しい勉強をさせていただいたというふうに思っております。的を得ているかどうか心配でありますけれども、率直に申し上げたいと思います。
 今、金融、財政、成長のアベノミクスの推進は、株高、円安、輸出増加、税収の増大、そして社会保障経費への財政支出、雇用の改善、所得の増加等、一定の効果が出ていると、こんなふうにまあまあ評価、一定の評価できるのかと思います。ところが、どうしても波及が遅れている分野があります。例えば国土に張り付いた第一次産業がそうでありまして、この点は、先日の本調査会でも、日銀の黒田総裁は、アジア開発銀行総裁としての経験からしても、農地基盤の整備とインフラの整備の必要性について言及されていたかと、こんなふうに思います。
 私は、デフレ脱却、財政再建、そして成長への歩みというときに、弱者や、金融、財政が行き届かないところへの一定のセーフティーネットが準備されなくてはならないと、こんなふうに思います。それが十分であるのかどうかは、財政対策や成長戦略に乗れるのかどうかのバランスで決まりますし、業種ごとに決まりますし、それから、その地域や産業が抱えている事情にもよるんだと思います。その議論がしっかり位置付けられることが必要だというふうに思っておりまして、先般、前回の本調査会におきます財務省や内閣府の資料にはその視点はそれなりに盛り込まれていたのかとは思います。
 私がこの当たり前のことをあえて言いますのは、どうも、例えば農業の分野について、TPP等の市場開放や岩盤規制を打ち破る等の激しい言い方で、我が国の歴史的な所産でもある農地の所有に踏み込んだ規制改革や、ややもすると、個々の地域の中で、個々の農地に張り付いた農業者の農地利用を墨守するJAや農業委員会等の改革があれだけ激しく打ち出されたり、それから、企業の農地所有による農業参入が成長の目玉戦略として国家戦略特区等の推進で喧伝されているということ等々について大変心配しているからであります。その一方で、生産者の米価は、四十年来です、まさに四十年来、過去四十年来最低の米価水準に今なっているわけでありまして、まさに、米作農家を中心にして農業者はデフレそのものの中であえいでいるんじゃないかと、こんなふうに思います。
 家族農業が地域の安定や国の安定を維持していることについての国民的な合意があるのかないのかとも関係するかというふうに思いますけれども、農地の農業者による所有の形態は、ヨーロッパでも米国でも極めてこれは、農地は農業者が所有するという形で一般的でありまして、守るべき基本事項として国民的に合意されているわけであります。そして、その形を維持するために、農業者に対するセーフティーネットが措置されています。
 例えば、農業者に対する直接支払や交付金、不足払い等の措置が、国民的な合意の下にヨーロッパや米国では講じられているわけであります。我が国も講じられてはいる、最近になってですね、講じられてはいるが、極めて対象も含めて限定的でしかないというふうに思います。農産物の販売額、農業者の所得、国の予算に占める農業予算の割合においても、我が国はEUにも米国にも劣っているわけであります。
 金融、財政、成長戦略で一定の前進があるというときに、それを評価しつつも、国土や条件が十分整っていないという地域に対するセーフティーネットが講じられなければならないと、このことを、どうも若干的外れの側面もあるかというふうに思いますけれども、強く申し上げたいというふうに思います。
 以上です。
#21
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 宮本周司君。
#22
○宮本周司君 自民党、宮本周司でございます。
 先ほど来、各会派、諸先輩方の見識高い御意見を拝聴し、また私も、多少抽象的ではあるかもしれませんが、田舎、地方の方で小さな企業を経営してきた身として、一言申し上げたいと思います。
 まず、我が国は、本当にもう世界に類を見ないぐらいのスピード、規模で、やはり少子化、高齢化に伴いまして社会保障費が急増してきたと。現在、社会保障関係費で大体一般会計歳出の約三分の一を占める、それがもう財政悪化の主たる要因となっていると言っても言い過ぎではないと思っております。
 二〇一七年春、消費税一〇%増税ということが決定する中で、当初は、社会保障との一体改革がこれは叫ばれておりました。ただ、現実論、これは当然我が党も反省すべきところはあるかもしれませんけれども、この部分が多少後れを取っている、これも現実かなと思っています。ですから、改善するためには、当然、歳入の拡大、歳出の削減、年金、医療、こういった社会保障が大体毎年一兆円規模で拡大していることを鑑みれば、こういった政治的なアプローチというのは急務だとは思いますが、もう一つやっぱり肝要なのは、これを力強く推進していく上で、受け止めるだけの国民の意識もしっかりと高めていく必要があるんじゃないかということに言及もしたいと思います。
 先般、新聞、報道等でも、一千兆円を超える規模の債務を抱える我が国の財政事情も明らかになったところでございますし、当然、一朝一夕に健全化できるという類いでないというところにも理解が働いていると思います。でも、それであるがゆえに、長期間の時間が掛かるということがあるがゆえに、やっぱり喫緊の課題であるというその危機意識が生まれにくくなっているのかな、今すぐ何かしなきゃいけないというこの意識が希薄化しているのかなということを最近感じているところでございます。
 当然、財政再建策におきましては、歳出のカットとか増税とか、国民皆様方にとって痛みを伴う、若しくは、言い換えれば不人気な政策というものは、これは実施をしなければいけないというのは現実論としてあるとは思うんですが、やはり、過去からなかなかこの痛みを伴った改革、若しくは政策ということが具現化しにくかったということも事実であると思っています。国民一人一人がやっぱり意識的にこの財政再建に関する情報を取りに行くということをしない限りは、やはり、その必要性を実感するということ、またその機会も得にくいんじゃないかなと思っております。
 現状をしっかりと理解をする、そして将来に向けて、これは子供たちの未来も含めた将来像をしっかりとイメージを丁寧に共有をしていくということも、我々政治、国会の方からもアプローチをし、共有化を進めていくことが必要であると考えております。また、国民一人一人がやはり財政再建の必要性を実感し、ある程度負担増も伴うと、そこに対する抵抗感も和らぐような、そういった政策という、また情報の発信というものも必要だと考えております。
 中長期にわたる目標、計画、これをしっかりと設定し、着実に進めていく、親方日の丸が最後は何とかしてくれるだろうというこの安易な考えも少しずつ現実論として御理解をいただく、そして何よりもオールジャパンで我が国の財政の健全化を成し遂げるんだという国民意識を醸成をしていく、こういったことが必要なんではないかなと思います。
 ただ、私も経済人の端くれでございますので、やはり、経済再生、経済成長、これなくして健全化は図れないんじゃないかなというところに考えが及んでいるわけでございます。景気回復、経済成長によってやはり非正規から正規の方へ雇用の在り方をシフトしていく、当然、個人所得の増幅に伴う所得税収の増大であったり、若しくは公的事業を民間の方に委託することによって雇用の機会を更に創出したり、若しくは企業利益を誘導する、こういったことを、今各都道府県また市区町村ごとで計画若しくは実施されようとしております地方創生の事業推進と連携させていくということも図っていかなければいけないんじゃないかなと思っています。
 当然、企業、事業所側も自律的また持続性ある成長をしていく、これが望ましいことであると思いますし、経済政策また中小企業支援におきましても、新たな価値を創出する方向性若しくは新たな売上げをつくっていくための政治的な助成、こういう在り方が必要であると思っています。
 ただ、グローバル経済圏で活躍をする大企業であったり中堅企業と、ローカル経済圏、地方、地域に密着して事業を展開する中小・小規模、これはやはり分けた二層性の考え方を用いなければいけないと思っておりますので、地方創生同様に、こういった経済政策も画一的なものではなくて、その地域性であったり事業規模を鑑みた形の個別具体的若しくはカスタマイズ可能な在り方、そういったフレキシブルな経済政策というものも今後模索、検討する必要があるんじゃないかなと思っています。
 日本、特に世界の中では労働生産性が低いということも指摘をされているところでございますが、悪いところ若しくは効果が出ていない、そういった日本の企業文化を改善をしていく、このことも急務だと思っておりますし、足りない労働力に対しましては、高齢者若しくは女性層を活用できる、例えば、これまではアルバイトやパートで掛け持ちをするという労働者側の感覚もありましたが、それを企業側、市場の方でも求めているんだよという、労働力をシェアしようという考え方を企業側から、雇用者側から発信するということも一つではないかなと思っています。
 再生医療、ロボット分野、今後、何十倍、何百倍という形で市場が拡大するということが期待されているこういった最先端の技術、物づくり日本の真骨頂を発揮できるこの部分、技術開発だけじゃなくて、今同時に出口戦略も設けながら革新的なイノベーションを誘導していく、こういったことを総合的に取り組むことで財政再建を図っていきたい、このように考えているところでございます。
 ありがとうございました。
#23
○会長(鴻池祥肇君) どうもありがとうございました。
 舞立昇治君。
#24
○舞立昇治君 自由民主党の舞立昇治でございます。
 これまでの円滑な調査会の運営に関しまして、会長始め委員の全ての皆様に感謝申し上げたいと思います。
 それでは、今日は最後の意見発表の場ということで、私からも発言させていただきます。
 これまで、日銀の量的・質的金融緩和とその効果、そして金融政策の在り方、そしてデフレ脱却、成長戦略、日本の財政事情と財政再建への取組について議論し、様々なお話、貴重な御提案をいただいたと思っております。
 こうした議論の中で、私といたしましても改めて、デフレ脱却なくして経済成長なし、経済成長なくして財政再建なしという思い、やはり短期的にはデフレから完全に脱却したと言える環境、そして持続的な経済成長ができる土台を整備していくことが最重要課題だと再認識したところでございます。
 その上で、地方の成長なくして地方創生なし、地方創生なくして国の未来なしというやはり決意が芽生えてきまして、中長期的にしっかりと地方に対する財政措置をしながら政策を前に進めていくことが重要と考えたところでございます。この点、マクロ金融、経済、財政政策、これら三つをしっかりとバランスよく一体的に実行していくことが何より重要であるということが分かりました。
 現在の金融経済政策は私は比較的順調に進んでいると考えておりますが、そうした中で、この夏に予定される二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化を目的とする財政再建計画の策定が、この優先課題でありますデフレ脱却や経済再生の流れに水を差すことにならないかどうかが非常に重要な分岐点になると考えております。
 先日の西村副大臣からの答弁で、歳出削減ありきでの財政再建ではないと言われたことは評価しておりますし、現在、政府や経済財政諮問会議が検討している財政健全化の三つの柱、つまり、一番目、デフレ脱却、経済再生、二番目、歳出改革、三番目、歳入改革、その項目立て、優先順位は妥当なものだと考えております。
 以前から主張していることでございますけれども、既に日本は歳出改革を相当やってきて小さな政府となっております。社会保障以外の歳出が先進国でも最低水準まで落ち込んでいる中では、この歳出改革をやるに当たっては、主に社会保障費の自然増や効率化、重点化すべきと考えられる改革をやる以外は、余り私としては大きな額の捻出は期待できないと考えておりますし、社会保障以外に必要以上に切り込んでいけば、今度こそ地方そして日本は立ち上がれなくなるんじゃないかという懸念でいっぱいでございます。そして、この社会保障の効率化に当たっても、高齢者の方のみならず現役世代や次世代まで大きな影響を与えるだけに、相当慎重に広く理解が得られる形で進めていかなければならないと考えております。
 こうした中で、やはり三番目の歳入改革が鍵となってくるわけでございますが、税の部分は与党の税制調査会での影響を受けるにいたしましても、やはり税以外の、税外収入を財政健全化に用いる議論、もっとやっていいんじゃないかと。余りに政府、経済財政諮問会議でその議論が低調なのが私は残念に思っております。
 消費税は当面一〇%で固定するといたしましても、それでこの先も大丈夫なのかどうか考える期間をある程度確保する必要があると考えておりまして、そうはいっても五年後にはどうしてもプライマリーバランスを黒字化したいということなので、デフレ脱却や経済成長による税収増、そしてその経済成長に水を差さない歳出改革案を作成し、さらには租税特別措置で捻出できる大義名分があるものはできる限り捻出し、それでも足りない分についてはまさに税外収入の出番で、恐らく確実にその出番は私は必要であると考えておりまして、今から本格的に検討に着手するよう当調査会として政府や経済財政諮問会議に申し入れるべきだと考えております。
 いつも例に出して恐縮でございますけれども、今、外為特会の二十二兆円の積立金から例えば十兆円、そして労働保険特会ほか幾つかの特会から合わせて数兆円程度、そして、もう財投会計におきます地方への財政投融資、手を引く。地方はもう自ら資金調達できる環境ができております。その地方への財投から手を引くことで五十兆円程度、これだけでも少なくとも六十兆円以上積み上がります。ほかに、有価証券も現金化できるものは可能な限り現金化する。
 これ仮称ですが、プライマリーバランス黒字化と持続可能な財政運営に対処するための財政調整基金みたいなものを、一つのパイをつくりまして、来年からでも再来年からでもいいですし、はたまたプライマリーバランスの黒字化目標に足りない、財源不足の詳細が分かる二〇一九ですとか二〇二〇年からでもいいですけれども、できる限り早く、毎年の予算編成で、国債の縮減との見合いで必要な財源不足を補えるような取崩し基金の形で用いればいいかなと思っております。
 仮に百兆円捻出できれば、毎年十兆円取り崩したとしても十年は活用できます。はたまた五十兆円程度であれば、毎年五兆円で十年程度は活用できると思います。その間に、経済成長は順調に進んでいるか、社会保障の改革は効果を出しているか、消費税の再引上げが本当に必要かどうか等々について十分検討する時間が確保できるんじゃないかと考えております。
 長々と話してしまいましたけれども、まとめますと、現在の金融、経済財政政策は、選択肢が余りない中で何とか総合的、一体的に考慮、実行され、全体としておおむね順調にいっていると思いますが、これから超高齢化、人口減少社会の厳しい坂を上っていかなければならない正念場のところ、プライマリーバランス黒字化目標の達成のために、財政原理主義に固執し、一律、一方的な現場を無視したむちゃな歳出改革をやってしまわないように、また昔のデフレに戻らないようにすることが何より重要であることを胸に刻んだ上で、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化やそれ以降の財政健全化策を考えるまでのつなぎの役割として、国民生活や経済にできる限り支障を生じないよう、何とか先人の皆様たちが積み上げてきた世界一とも言われる日本国のこの資産の一部を今こそ有効活用し、デフレからの完全な脱却、そして持続的な経済成長、そして実りある地方創生を着実かつ計画的に実現していくべきだということを申し述べまして、私からの意見発表とさせていただきます。
 ありがとうございました。
#25
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 他に御発言もないようでございますので、本日の調査はこの程度といたします。
 各委員先生方には、貴重な御意見、熱心にお述べいただきまして、誠にありがとうございました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時散会
ソース: 国立国会図書館
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