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2015/05/18 第189回国会 参議院 参議院会議録情報 第189回国会 本会議 第18号
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2015/05/18 第189回国会 参議院

参議院会議録情報 第189回国会 本会議 第18号

#1
第189回国会 本会議 第18号
平成二十七年五月十八日(月曜日)
   午後零時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十八号
  平成二十七年五月十八日
   正午開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(米国公式訪
  問に関する報告について)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の報告に関する件(米国公式訪問に関する報告について)
 内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。内閣総理大臣安倍晋三君。
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#4
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、四月二十六日から五月三日まで、日本の総理大臣として九年ぶりに米国を公式訪問しました。その概要を御報告いたします。
 ワシントンDCでは、一連の公式行事に出席をし、オバマ大統領と首脳会談を行いました。
 会談では、二国間の取組に関して、新ガイドラインの下、同盟の抑止力、対処力が一層強化されることを確認するとともに、米軍再編を着実に進めていくことで一致しました。
 また、TPPにおける日米間の交渉の前進を歓迎し、日米が交渉全体をリードし、早期妥結に導いていくことで一致いたしました。
 地域情勢については、日米が中核となり、法の支配に基づく自由で開かれたアジア太平洋地域を維持発展させていくことで一致しました。また、いかなる一方的な現状変更の試みにも反対することを確認しました。
 さらに、北朝鮮、ウクライナ情勢、イラン等への対応でも連携していくことを改めて確認しました。
 気候変動、感染症対策といったグローバルな課題についても連携していくことで一致しました。
 米国議会では、日本の総理大臣として史上初めて上下両院合同会議で演説を行いました。
 演説では、かつて戦火を交えた日米両国が、戦後、和解を達成して、今や、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値に基づく揺るぎない同盟で結ばれていること、アジア太平洋の平和と繁栄を確保していく上で日米同盟が今後とも主導的役割を果たしていくこと、二十一世紀において世界が直面するテロ、感染症、気候変動などの諸課題に対し、日米両国が希望の同盟として、手を携えて取り組み、世界をより良い場所にしていくことを内外にアピールすることができたと考えています。
 今回の訪米では、ワシントンDCに加えて、ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルスを訪問しました。
 それぞれの都市において、学生、有識者、企業関係者など幅広い層との交流を行い、政治、経済、文化・教育など広範な分野における日米交流の進展を確認するとともに、将来に向けて一層の協力を推進していくことで一致いたしました。
 また、日米間の重要な紐帯である日系米国人と親しく交流し、関係を一層強化しました。
 このように、今回の訪問は非常に有意義な訪問になったと考えています。
 今後とも、オバマ大統領と協力し、日米両国の希望の同盟の下、アジア太平洋、そして世界の平和と繁栄のために、より一層の貢献を行っていく所存であります。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(山崎正昭君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。関口昌一君。
   〔関口昌一君登壇、拍手〕
#6
○関口昌一君 自由民主党の関口昌一です。
 自由民主党、公明党を代表し、ただいま議題となりました安倍総理大臣の訪米報告について質問いたします。
 私は、平成十八年から十九年にかけて、第一次安倍内閣で外務大臣政務官を拝命し、北米担当も務めてまいりました。今回の総理の訪米について非常に関心を持って拝見しておりました。
 結果としては、戦後七十年の節目に当たって、まさに歴史的なと言ってもよいでしょう、大変すばらしい成果を上げられたと思います。特に、総理のアメリカ議会での演説には歴史的な意義があったと思います。
 我が国の総理として初めて上下両院合同会議で演説を行ったことはもちろんでありますが、それ以上に、日米関係の過去、現在、未来を世界史の中に位置付けたという点で意義のある演説でありました。演説を終え、議場を引き揚げようとする総理の周りで、多くの議員が演説をたたえ、握手やサインを求められたそうであります。かつての敵国同士が、共通の基本的価値観の下で確固たるパートナーとなり、より良い世界のために協力している、この揺るぎない事実を世界に示したという点で大きな意義があったと思います。
 我が国は、米国のみならず、アジアの多くの国々とも戦争の悲劇を乗り越えて前向きな協力関係を築いてまいりました。世界を見渡しても、ヨーロッパの各国は、まさに戦争の教訓からEUという共同体にまで発展する力強い関係を築き上げました。
 つまり、対立の固定化ではなく、和解と協力が世界のあるべき方向性であり、いずれはそのようになっていくべきと考えます。今回の演説は、そうした希望をも持たせるものでありました。対立を固定化するような不幸な歴史観ではなく、対立を乗り越え、協力関係を築けるのだという希望に満ちた歴史観を、安倍総理には、今後とも是非世界に発信していただきたいと思います。
 さて、今回の訪米では、この演説以外にも、二国間の課題の進展や、地域情勢やグローバルな課題への対応での連携を確認した日米首脳会談のほか、各地での訪問行事がありました。この中で私が注目したのは、日系アメリカ人との関係強化のための日程であります。
 総理は、ロサンゼルスにおいて、日系人部隊の記念碑への献花や、全米の日系人が集まるイベントへの出席を通じて日系アメリカ人との連携強化を試みました。これは、これまでの総理が十分に行えていなかった、しかし日本の総理として果たすべき役割だと私は考えます。
 日系アメリカ人との連携強化といっても、一部の国が行っているように、過剰な民族意識を植え付けてアメリカ社会に亀裂を生むようなことはあってはならないと思います。日系アメリカ人の方々も、アメリカ人である以上はアメリカの国益を第一に考えるのは当然のことであります。
 しかし、総理も演説で言及された故ダニエル・イノウエ上院議員のような日本の良き理解者を増やしていくことは大切なことだと思います。日米からも共に尊敬されるような人材を育て、各分野で活躍できるよう応援していくことは、日米両国にとって大変有意義なことだと思います。
 日本の総理がロサンゼルスの日本人コミュニティーを訪問したこと自体、小渕総理以来十六年ぶりだそうであります。これまで総理主導では余り行われていなかった日系アメリカ人との連携強化の契機となったことも、今回の訪問の大きな意義ではなかったかと考えます。
 このように、日米関係において大きな歴史的意義のあった訪問だと思いますが、最後に、安倍総理に対し、今回の訪米に対する総理御自身の総括と今後の日米関係についての御所見をお伺いし、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#7
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 関口昌一議員にお答えいたします。
 今回の訪米の総括と今後の日米関係についてお尋ねがありました。
 今回の私の米国公式訪問は、戦後七十年の節目にふさわしい非常に有意義な訪問になったと考えています。
 特に、議員御指摘のとおり、米国議会での演説では、かつての敵国同士が、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値の下で強固な同盟のきずなで結ばれ、その日米同盟が、二十一世紀においては希望の同盟として、世界が直面する諸課題に手を携えて取り組み、より良い世界を実現するために協力していくとのビジョンを示すことができたと考えています。
 また、首都のワシントンのみならず、ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルスといった各地を訪問し、学生、有識者、企業関係者など幅広い層との交流を行えたことも有意義でありました。
 特に、御指摘の日系アメリカ人との交流では、様々な困難を乗り越え、日米両国の懸け橋となって関係発展に貢献されてきたことに心から敬意を表し、日系アメリカ人との深いきずなを将来の世代にも確実に引き継いでいく、その決意を新たにいたしました。
 このような多くの成果を通じ、まさにこれから日米の新しい時代がスタートしたと思ってもらえるような大変意義深い訪問になったと考えております。(拍手)
    ─────────────
#8
○議長(山崎正昭君) 蓮舫君。
   〔蓮舫君登壇、拍手〕
#9
○蓮舫君 民主党・新緑風会の蓮舫です。
 私は、会派を代表し、ただいまの安倍総理の訪米報告に対して質問させていただきます。
 まずは、総理、訪米お疲れさまでございました。
 日本の首相の上下両院合同会議での演説は、戦後七十年という節目で初めて実現するもので、歴史的なものでした。御自身の意見を正々堂々と英語で述べられたことに対しては、同じ日本の一政治家として祝意と敬意を表します。訪米後にもSNSを通じてオバマ大統領と総理が直接連絡を取るなど、新しい手法による両首脳の交流が日米の更なる発展にもつながるものと評価をします。
 一点残念なのは、お友達の参議院議員が総理に成り済まし可能な総理アカウントで発信していたことも明らかになりました。アメリカ大統領との交流にはこうしたことのないよう、本人同士の付き合いを深めていただきたく思います。
 私どもは、外交において、国益にかなうことであれば全面的に協力してまいります。
 さて、総理の訪米報告に対する質疑ですので、できるだけ褒め上げたいと考えましたが、評価できるのはここまででした。
 総理にとっては、大統領からの歓待、議会での演説など、心地よいものが多かったとは思いますが、その成果は日本国民にとっては決して心地よいものではなく、一政治家として強く危惧をします。
 まずは、アメリカ議会での演説です。日本で法案も出されず、国会で一言も説明なく、国民に全く見えない安全保障法制をこの夏までに必ず実現すると議会で約束。提出されていない法案を期限を定め成立するという公言。つまり、国会は単なる追認機関でしょうか。国会軽視も甚だしいです。衆参で多数を占める自民党政権のおごりはどこまで行くのか、総理に説明と反省を求めます。
 総理自身、この法整備は戦後初めての大改革ですと発言されました。憲法を変えることなく、一内閣の閣議決定で憲法解釈を変更、法整備に突き進むという、立憲主義の否定に寄りかかった法案こそ、私たちには初めての経験にほかなりません。
 初めての大改革の審議がなぜ夏までに実現と公言できるのか。強行採決してでも通すという意思表明でしょうか。総理の描く夏までの法案成立の道筋をお答えください。
 そもそも総理は、夏までとの決意を示した根拠として、さきの総選挙で安保法制を整備することを明確に公約として掲げ、国民の皆様の審判を受けたと答弁されました。しかし、さきの総選挙の自民党のポスターのキャッチコピーは、景気回復、この道しかないでした。安保法制、この道しかないではありません。お忘れでしょうか。
 総理が公約に掲げたという安保法制は、二十四ページもある政策集の後ろから二枚目、ずらっと並んだ二百三十六項目の中の一つにすぎません。アベノミクス、経済再生を大々的に問うた選挙で、マニフェストの端にほかの政策と同列で併記されたにすぎない安保法制整備が国民に特に強い支持を受けたという根拠は何か、総理の説明を求めます。
 さらに、看過できないのは日米防衛のガイドラインの改定合意です。
 日米同盟は最も大事な二国間関係です。日本周辺の安全保障環境が多様化、複雑化する中、日米関係を深化させることは重要です。私たちの政権時にも、宇宙やサイバー空間など、新たに防衛が必要な分野について再改定する合意もしました。
 ただ、安倍総理の下で改定された新指針は、四日前にようやく閣議決定された安保関連法案の成立が前提です。日本が直接攻撃を受けていないが、集団的自衛権を行使、米軍と共同作戦を行う、周辺事態の概念を捨て地球規模に自衛隊の活動範囲を広めることに、日本防衛を主眼にした従来の枠組みが、世界どこでも米軍への軍事協力ができる内容となりました。これは、憲法の平和主義に基づく専守防衛の放棄にほかなりません。
 自分の行いたい安保方針に自信があれば、堂々と憲法改正を国民に訴え、国会で審議をし、国民に賛否を問うべきではないでしょうか。総理の答弁を求めます。
 また、仮にこの法案が通らなかった場合、新ガイドラインはどうなるのでしょうか。アメリカと協力する内容を決めた、その後法案提出をした、既に約束をしてしまった既成事実があるから法案を通すというのであれば、それは主権国家の否定です。アメリカとの合意の前に、日本国民への説明、国会での審議、その後にガイドラインの改定を行うべきだったのではないでしょうか。
 通らなかった場合のリスクについてオバマ大統領に説明はされたのか、総理の答弁を求めます。
 総理はアメリカ議会で、希望の同盟と提案をしました。いい提案です。外交も大事ですが、ただ、総理、国内も見てください。全ての日本人が今希望を持っているでしょうか。アベノミクスで豊かになった人の声だけを見聞きするのではなく、全ての国民の声を聞いてください。経済的な理由で結婚もできない、子供を持つことができない若い人たちを、子供が保育所に入れず仕事を諦めざるを得ない女性たちを。子供を育てても、就職先が一生派遣、不安定雇用で親は幸せでしょうか。何が何でも憲法を変えずに集団的自衛権に一直線よりも、国民に希望を与える政治が最優先だと私どもは考えます。
 アメリカ議会で総理は、女性に力を付け、もっと活躍してもらうため古くからの慣習を改めようとしていますと。評価します。ただ、自らが提出した女性活躍推進法案は廃案になりました。言うことと行動が違い過ぎるんじゃないですか。
 また、女性活躍というなら、政策をつくる女性議員を増やすことも望まれますが、春の統一地方選挙、驚きました。青森、千葉、奈良、島根、香川、この五県議会議員選挙で、民主党は女性候補を立てましたが、自民党は女性候補者ゼロです。総理は、どこで女性が活躍する法律や条例を誰が作るというのでしょうか。
 また、配偶者控除の見直し、検討を指示と総理は声高に言われました。今や共働き世帯の方が片働き世帯より多く、時代、環境変化とともに税制も見直すべきであり賛成ですが、その後、進展は一切ありません。配偶者控除廃止で生まれる財源は六千億円、三党合意で約束をした育児支援に必要な財源は三千億円捻出できます。なぜ実現しないのでしょうか。
 法案、女性政治家支援、税制改革、言うだけ言って実現なし、何が輝く女性でしょうか。都合のいいときだけ笑顔で女性の活躍と言うのはもうやめてください。女性をと口にする時間があるなら、シングルマザーに、DV被害者に、低賃金で働かざるを得ない女性たちに希望を持たせる政策を実行すべきです。今後の女性政策について、総理の明確な方向性をお聞かせください。
 アメリカ議会で総理の思い出を語るのも結構ですが、日本の最大の政治課題であり、世界の関心も高い財政再建についてなぜ一言も触れなかったのでしょうか。もはや日本の財政は成長による税収増だけで克服できるものではありません。ましてや、救急車の有料化などという小手先の政策で解決できるものでもありません。しかも、総理は、今年二月、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化を国際公約と言ったことはなく、コミットしただけだと公言し、発言が後退しました。財政再建も、安保一直線を優先し、先送りでしょうか。
 私たちは、財政健全化に向けた提言、提案を作成しています。どうぞ、逃げずに議論していこうじゃないですか。財政再建の実現への道筋について答弁を求めます。
 来年夏には参議院議員選挙があります。参議院では、これまで全党全会派による議論を行いましたが、自民党の党内人事の影響でほごになりました。一票の格差是正を実現する前向き、積極的な案はいまだに自民党から提出されていません。「全ては国民のため、党派の違いを超えて、選挙制度改革、定数削減を実現させよう」、今年二月の総理の施政方針演説の言葉がもはやむなしく響くだけです。
 やるべき課題は先送り、向き合う課題は目をそらす、全てを自己都合に解釈、ひたすら自分の望む集団的自衛権行使に暴走する。優先順位が違います。選挙制度改革について、総理の考えをお聞かせください。
 褒めることから始めた代表質問です。最後も評価して終わりたかったのですが、安倍総理のおやりになることで評価できるものはありません。
 最後に、私が懸念していることがあります。自民党が放送局の幹部を呼び付け、特定の番組についてヒアリングを行いました。総理も、自身が出られた番組で、編集されたVTRにクレームをあたかも当たり前のように付けられました。また、最近では、国会内の議員の発言を議事録からなかったことにする、そういう削除要請もされています。報道も国会内質問も自分の都合のいいことだけ認めるかのような過度な規制の在り方、権力の在り方に危機感を強く覚えます。
 総理大臣ならば、耳に痛いことも聞き入れる度量を示してもらいたいと強く願い、また、安保法制の国会審議については、拙速に進めることなく、慎重審議を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#10
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 蓮舫議員にお答えをいたします。
 米国議会演説での平和安全法制の成立時期に関する発言及び平和安全法制の成立への道筋についてお尋ねがありました。
 先般、米国上下両院の合同会議における演説で、平和安全法制の成立をこの夏までにと申し上げ、私の決意をお示ししました。これは初めて申し上げたものではなく、昨年来、記者会見や国会答弁の中で、今通常国会での成立を図るとの私の決意を繰り返し申し上げております。
 そもそも平和安全法制の整備は、平成二十四年の総選挙以来、これまで三回の選挙で常に公約に掲げ、一貫して訴えてきた課題であります。特に、さきの総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げ、国民の皆様の審判を受けました。法整備の方針を閣議決定した上で、選挙において速やかに整備することを公約した以上、選挙戦直後の今通常国会においてその実現を図ることは当然のことであります。
 このため、昨年十二月二十四日、総選挙の結果を受けて発足した第三次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見において、平和安全法制は通常国会において成立を図る旨申し上げ、国民の皆様に私の決意をお示ししました。本年二月の衆議院本会議においても、二度にわたり、今国会における成立を図る旨、答弁をしています。
 米議会での演説においても、改めてこのような私の決意を申し上げたものであり、国会軽視との指摘は全く当たりません。
 もとより、法案の国会審議の在り方については国会が御判断される事柄であり、政府として成立の道筋について申し上げることは差し控えたいと思います。
 いずれにせよ、多くの国民の皆様、そして与党のみならず野党の皆様、法案の趣旨を御理解いただき、幅広い御支持が得られるよう、分かりやすく丁寧な説明を心掛けてまいります。
 平和安全法制に関し、さきの総選挙で国民の強い支持をいただいたと考える根拠についてお尋ねがありました。
 さきの総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、平和安全法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げました。
 選挙戦において、累次にわたり行われた党首討論会では、毎回この点について非常に活発な議論が行われました。平和安全法制は総選挙での主要な論点の一つであり、国民の皆様から強い支持をいただいたと考えています。
 新ガイドラインと憲法改正についてお尋ねがありました。
 新ガイドラインは、日米いずれの政府にも立法上、予算上、行政上その他の措置を義務付けるものではなく、法的権利又は義務を生じさせるものでもありません。
 自衛隊の派遣については、我が国として、憲法及び法令に従い、自らの国益に照らして主体的に判断することは当然であり、自衛隊の活動が米軍とともに際限なく拡大するというものではありません。
 また、新ガイドラインにも明記しているとおり、我が国に対する武力攻撃への共同対処が引き続き日米の安全保障、防衛協力の中核的要素であることには変わりがありません。
 さらには、我が国の防衛の基本的な方針である専守防衛については、政府としてこれを維持することに変わりはなく、新ガイドラインにおいても、日本の行動及び活動は専守防衛等の日本の基本的な方針に従って行われる旨を明記しているところであります。
 この新ガイドラインは、昭和四十七年の政府見解の基本的な論理の枠内で導き出した現行憲法の解釈の下で策定したものであります。
 なお、憲法改正の是非については、国民的な議論の深まりの中において判断されるべきものと考えています。
 新ガイドラインの平和安全法制の整備についてお尋ねがありました。
 新ガイドラインは、日米防衛協力について日米両国政府の意図を表明した文書です。したがって、新ガイドラインの下で行われる取組が、各々の憲法及びその時々において適用のある法令に従うことは当然でございます。
 繰り返しになりますが、新ガイドラインは、日米いずれの政府にも立法上、予算上、行政上その他の措置を義務付けるものではなく、法的権利又は義務を生じさせるものではありません。
 今般のガイドライン見直しに関しては、中間報告の公表を始め、国内外に必要な説明を行ってまいりました。今後とも、内外に対し透明性を持って丁寧な説明に努めてまいります。
 日米首脳会談においては、平和安全法制の整備に関して、私からオバマ大統領に対し、法制の整備につき精力的に作業中であることを説明し、同大統領から、日本の取組を支持する旨の発言がありました。
 いずれにしても、自衛隊の活動がいかなる場合であっても憲法及び関係する法令に従う必要があることは、日米両政府の共通の理解であります。
 なお、平和安全法制の整備については、国会において、国民の命と幸せな暮らしをいかに守るのか、また国際社会の平和と安全にいかに貢献していくべきか、法案の中身について十分に議論をいただきたいと考えています。
 女性の活躍推進についてお尋ねがありました。
 安倍政権では、全ての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、輝くことのできる社会の実現を最重要政策の一つとして取り組んでいます。
 このため、保育待機児童の解消など、女性が子育てと仕事を両立しやすい環境の整備に取り組むとともに、企業にも情報開示などにより女性登用の促進を働きかけてきました。さらに、国連総会での演説や国際シンポジウムの開催により、国際的にも女性の活躍推進をリードし、国際社会から高い評価を得ています。
 こうした取組の結果、働く女性の数はこの二年間で八十万人以上増え、上場企業の女性役員の数も大きく増加し、八百人を超えています。本年の国家公務員総合職採用者に占める女性の割合は初めて三割を超えました。この機運を更に加速するため、今国会に提出している女性活躍推進法案の早期の成立を目指してまいります。
 また、様々な立場の女性を支援するため、ストーカー総合対策やDV被害者の保護、自立支援を推進するとともに、一人親家庭の支援策の取りまとめにも取り組んでまいります。
 さらに、配偶者控除の在り方については、働き方や家族の在り方についての国民的議論を行いながら判断していくべき問題ですが、現在、政府税制調査会の専門家に具体的な制度について御議論をいただいているところであります。
 なお、先般の統一地方選挙において、民主党が女性候補を出し自民党が出していない県議選は五県でありましたが、民主党の女性候補者がゼロであったのは自民党よりも大変多く、十八県議選であったことを承知しております。自民党では、道府県議会議員選挙で積極的に女性候補者の擁立に取り組み、前回と比較して六〇%増となりました。
 女性の政治参画の推進は党派を超えた課題であり、女性候補者の積極的な擁立等に引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
 財政健全化についてお尋ねがありました。
 経済成長だけで財政健全化が達成できるとは考えていませんが、経済成長がなければ財政健全化ができないことも事実であります。このため、安倍内閣としては、経済再生と財政健全化の両立を目指しています。
 二〇二〇年度の財政健全化目標はしっかりと堅持します。その目標達成に向け、デフレから脱却し、経済再生により税収を増やすのみならず、無駄削減など徹底した行財政改革もしっかりやるなど、歳出歳入両面にわたり取り組んでまいります。社会保障についても、効率化、合理化や重点化を進めてまいります。
 本年六月末頃までに目標達成に向けた具体的な計画を策定します。この目標については、私が国際公約と申し上げたことは一度もなく、また、今般の米国議会での演説において財政健全化には触れていませんが、財政規律を守る姿勢にはいささかの揺るぎもありません。目標達成に向け、最大限努力してまいります。
 参議院の選挙制度改革についてお尋ねがありました。
 参議院選挙制度の改革は議会政治の根幹に関わる重要な課題であることから、小さな政党も含め、各党各会派が真摯に議論を行うことが重要であります。
 現在、議員による協議機関で平成二十八年の参議院通常選挙での新制度実施に向けて様々な議論が行われておりますが、私からも党に対ししっかりと議論を進めるように指示しているところであり、党内で意見集約に向けた議論が行われているところであります。各党各会派において具体的な議論も進め、しっかりと結論を得て国民の負託に応えていくべきものと考えます。(拍手)
    ─────────────
#11
○議長(山崎正昭君) 小野次郎君。
   〔小野次郎君登壇、拍手〕
#12
○小野次郎君 維新の党の小野次郎です。
 私は、総理の訪米報告に関して、党を代表して質問させていただきます。
 日本の独立と主権を守り、国民の生命と安全を保障することについては、政治家であれば与党も野党もなく、最も重い責任を自覚しなければなりません。新たな安全保障環境の中で求められている切れ目のない安全保障の体制整備については、我々維新の党も積極的に参画し、貢献する強い決意を持っています。
 しかし、この体制整備に当たっては、民主主義国家としてしっかりと守らなければならない幾つかの大原則があります。
 それは、まず第一に、我々日本という国がよって立つ日本国憲法、特に戦争放棄と専守防衛を掲げる憲法第九条を遵守することです。次に、国の存立に関わる安全保障に関しては、国権の最高機関である衆参両院における十分かつ慎重な審議に基づき、政権交代があっても揺らぐことのないような手順を踏んで体制整備を進める必要があります。さらには、全国民の生命と安全に関わる安全保障の基本方針が、どんな危機にあっても所期の目的を達するためには、あらかじめ大多数の国民から理解と支持が得られる内容になっていなければならないことは論をまちません。
 今、切れ目のない安全保障の名の下、安倍内閣が進めている集団的自衛権行使を前提にした安全保障法制の整備は、歯止めもない、際限もない軍事同盟路線という疑念を差し挟むものであります。以下、多くの国民の抱くそうした疑念や不安を率直に安倍総理にお尋ねいたします。
 まず、安全保障法制の整備に関して遵守すべきものとして私が掲げた三つの大原則について、安倍総理の認識をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、政府は、新たな脅威の例として国際テロやサイバーテロを掲げますが、こうした非対称的脅威に対しては、軍事力のバランスを前提にした集団的自衛権の行使容認によっても抑止力の向上を期待することは難しく、我が国が攻撃を受ける危険が低下する可能性も少ないと考えますが、総理の御認識を伺います。
 次に、アメリカとの間では日米安保条約があるにもかかわらず、総理としては、我が国が集団的自衛権行使を改めて表明しない限り、現状ではアメリカは日本を本気で防衛する責任感と意欲に欠けているとお考えなのですか。率直な認識をお伺いいたします。
 次に、昨年の閣議決定と今般国会提出された法律案に使われている存立危機事態の要件は、石油供給の断絶など経済的な支障が甚大であれば、我が国に対する直接の武力攻撃のおそれがなくても石油輸入を妨げた当該外国などに対して集団的自衛権行使による武力行使を認める趣旨なのか、御認識をお伺いいたします。
 この点に関して、これまでの憲法第九条の解釈に沿って新たな自衛権の定義を考えるのであれば、政府の提案されている存立危機事態の要件では十分な歯止めになっていません。私は、これを排除しなければ、我が国に戦火が及ぶ明白な危険があるという更なる限定を要件に加える必要があると考えますが、これに対する御見解をお伺いいたします。
 これまで日米ガイドラインは、我が国と極東アジアを対象とする安保条約の運用に関する両国政府間の取決めであると理解されてきました。しかし、今回の改定によって、グローバルという総理のお言葉にもあるように、全地球規模の日米軍事協力を約束する文書にその性格が変質したと理解すべきなのか、御認識を改めて確認させていただきます。
 また、総理は、安全保障法制の国会提出前の時点でありながら、訪米中に、法案をこの夏までに成立させると発言されました。この点について、野党各党が国会軽視あるいは国会無視であると強く批判する中、国民世論の大勢も法案に反対であるか、若しくは法案の慎重審議を求めています。こうした極めて厳しい環境の中で、円満で充実した法案審議を進めるために総理はどのような方策をお持ちなのか、お伺いいたします。
 確かに、普天間基地の辺野古移転は、長い年月を掛けてたどり着いた結論ではあります。しかし、現時点において沖縄県民の多くが、また、昨年暮れに選出された沖縄県知事もまた依然として強く反対している事実は政府も重く受け止めるべきです。総理は、訪米に際して、そうした沖縄県内の強い反対意向を率直にアメリカ側に伝えたのか、お伺いいたします。
 今後、沖縄県側と十分に話合いを持つべきことはもちろんのことです。いかなる場合にも、辺野古移転を急ぐ余り、力ずくで工事を強行して、反対する方々の中からけが人や逮捕者を出す事態は絶対に避けなければなりません。最後に、総理がそうした細心の注意を払うお考えをお持ちかどうかお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#13
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 小野次郎議員にお答えをいたします。
 平和安全法制の整備に当たっての方針についてお尋ねがありました。
 政府が法制の整備を行うに際して憲法を遵守することは当然であり、今般の平和安全法制の整備は、昨年七月一日の閣議決定を含むこれまでの憲法解釈の基本的な論理の枠内のものであります。
 昨年七月一日の閣議決定は、安全保障環境の大きな変化を踏まえ、昭和四十七年の政府見解の基本的な論理の枠内で導き出されたものであり、憲法解釈としての論理的整合性と法的安定性は維持されています。また、昭和四十七年の政府見解は、砂川事件の最高裁判決で示された考え方と軌を一にするものであります。
 もとより、安全保障政策の推進には国民の皆様の理解と支持が不可欠であります。国民の皆様に法制の全体像をお示しするため、十四日、関連法案を一括して閣議決定したところであります。国会において十分な御審議をいただきたいと思います。
 政府としては、多くの国民の皆様、そして与党のみならず野党の皆様に法案の趣旨を御理解いただき、幅広い御支持が得られるよう、法案の国会審議においても分かりやすく丁寧な説明を心掛けてまいります。
 国際テロやサイバーテロに対する抑止力についてお尋ねがありました。
 我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、国際テロやサイバーテロの脅威は容易に国境を越えてやってきます。もはやどの国も一国のみで平和を守ることはできません。
 一般に、テロリストに対しては、国家に対応する場合と比べて相対的に抑止力が効きにくいと言われており、集団的自衛権の行使を容認することが国際テロ・サイバーテロ対策を直接強化するための主たる方策であると考えているわけではありません。
 他方、今般の安全保障法制の整備は、グレーゾーンから集団的自衛権に関するものまで、我が国が切れ目のない対応能力を向上するとともに、米国や域内外のパートナーとの連携を強化し、国際社会の平和と安全のために積極的に貢献することを目指すものであります。こうした体制を築き、対外的に明確なメッセージを発することは、国際テロやサイバーテロのリスクを下げていくことになると考えています。
 また、国際テロやサイバーテロが武力攻撃の一環として行われることもあり得、そのような場合には、抑止力を向上することにより紛争は未然に防止され、テロのリスクを下げることになると考えています。
 米国の日本防衛への責任感と意欲についてお尋ねがありました。
 米国は、累次の機会に日米安保条約の下での米国のコミットメントを確認してきており、昨年のオバマ大統領の訪日の際も、先月の私の米国公式訪問の際にも、オバマ大統領から直接、米国のコミットメントの確認が表明されました。日本政府として、米国が条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いています。
 存立危機事態の要件についてお尋ねがありました。
 我が国に対する武力攻撃が発生していない場合であっても、例えば、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国において生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こるなど、単なる経済的影響にとどまらず国民生活に死活的な影響が生じるような場合には、状況を総合的に判断して、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に至る可能性はあり得ます。そして、新三要件を全て満たす場合には、我が国による自衛のための武力の行使を行うことが可能となります。
 いかなる事態が存立危機事態に該当するか、すなわち、新三要件の判断に当たっては、事態の個別的、具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することとなります。
 なお、ここで言う我が国に戦禍が及ぶ蓋然性とは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提として、その影響や被害が我が国に及ぶ蓋然性を意味しており、我が国が爆撃の対象となるような場合に限られるものではありません。
 いずれにせよ、我が国が武力の行使を行うのは新三要件を満たす場合に限られますが、これは憲法上の明確かつ厳格な歯止めになっていると考えます。
 日米ガイドラインの性格についてお尋ねがありました。
 日米ガイドラインは、我が国の平和と安全の確保を中核的要素としています。このことは、これまでの一九九七年のガイドラインの下でも、先般合意された新ガイドラインの下でも全く同じです。
 新ガイドラインにおけるグローバルな協力は、二〇一〇年のハイチ地震への対応や、ソマリア沖やアデン湾での海賊対処における協力等に見られるような日米両国が積み重ねてきた実績を踏まえて記載したものであります。
 このグローバルな協力については、自衛隊が特定の活動を行うことを米国に約束するものでは全くありません。日米両国がそれぞれの主体的判断により、憲法の範囲内で、その時々に適用のある法令に従って活動を行うこととした場合に、それぞれの活動を効果的に進めていくとの趣旨です。
 このように、新ガイドラインがグローバルな日米の軍事協力を定める文書にその性格が変質したということでは全くありません。
 米議会での私の演説における、平和安全法制の成立時期に関する発言内容及び法案審議に関する考えについてお尋ねがありました。
 今般、米国上下両院の合同会議における演説で、平和安全法制の成立をこの夏までにと申し上げ、私の決意をお示ししました。
 そもそも平和安全法制は、平成二十四年の総選挙以来、これまで三回の選挙で常に公約に掲げ、一貫して訴えてきた課題です。特に、総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、平和安全法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げ、国民の皆様の審判を受けました。法整備の方針を閣議決定した上で、選挙において速やかに整備することを公約した以上、選挙直後の今通常国会においてその実現を図ることは当然のことであります。
 もとより、法案の国会審議の在り方については国会が御判断される事柄であり、政府として成立の道筋について申し上げることは差し控えたいと思います。
 いずれにせよ、政府としては、多くの国民の皆様、そして与党のみならず野党の皆様に法案の趣旨を御理解いただき、幅広い御支援、御支持が得られるよう、今後の法案審議においても分かりやすく丁寧な説明を心掛けてまいります。
 さきの訪米時における普天間飛行場の辺野古移設に関するやり取りについてお尋ねがありました。
 日米首脳会談において、オバマ大統領に対し、先般の翁長知事との会談で承った辺野古移設に反対するとのお考えも率直に話した上で、辺野古移設が唯一の解決策との政府の立場は揺るぎなく、沖縄の理解を得るべく対話を継続する旨をお伝えしました。また、私から、引き続き沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいくとの考えを伝え、米国の協力を要請しました。これに対し、オバマ大統領から、沖縄の負担軽減について引き続き協力していく旨の発言があったところです。
 沖縄との十分な話合いなどについてお尋ねがありました。
 最も大切なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければならないということであります。
 先日は翁長知事にお会いし、率直な話合いをしました。引き続き、私を含め、政府のあらゆるレベルにおいて、沖縄の現地で、また東京において、地元の皆様の率直な御意見に耳を傾け、丁寧な説明に努め、対話を行いつつ、負担軽減のための様々な取組について連携を深めてまいります。
 また、辺野古移設への抗議行動について、表現の自由や国民の知る権利は最大限尊重されるべきものですが、法令に反する行為や、危険を伴う行為を無制限に行うことが認められないことも当然です。このような観点から、現場における安全と法令遵守の確保のため、関係機関において適切に対応してまいります。(拍手)
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#14
○議長(山崎正昭君) 井上哲士君。
   〔井上哲士君登壇、拍手〕
#15
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私は、会派を代表して、安倍総理の訪米報告に対して質問いたします。
 総理は、上下両院合同会議での演説で、我々は冷戦に勝利したと述べました。しかし、これまで歴代総理は、冷戦終結や冷戦構造の崩壊と述べてきました。なぜあえて勝利と述べたのですか。日本も冷戦に参加して戦っていたという認識ですか。
 東西冷戦は、軍事ブロックの対決による果てしなき軍拡競争であり、軍事対軍事の悪循環の中、旧ソ連は莫大な軍事費増大の下で崩壊しました。一方、今日、軍事ブロックの解体と機能停止が進み、それに代わり、外部に仮想敵を設けない地域の平和協力の枠組みが広がっています。東南アジア友好協力条約は、独立、主権の尊重、内政不干渉、紛争の平和解決、武力行使の放棄、効果的な協力などの基本原則を掲げ、ASEAN諸国の行動規範から国際条約として今日発展しています。
 ところが、新たに合意された日米防衛協力指針、ガイドラインでは、日米軍事同盟の役割を、日本防衛はおろか、従来の周辺事態も大きく踏み越え、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域にまで広げました。こうした軍事同盟の拡大ではなく、東南アジア友好協力条約のような軍事によらない平和協力の流れを広げることこそ、日本は努力すべきではありませんか。
 総理は、この演説で、アメリカのリバランス政策を徹頭徹尾支持するとした上で、日本は、将来における戦略的拠点の一つとして期待されるグアム基地整備事業に二十八億ドルまで資金を提供しますと述べました。これまで、アメリカの領土にあるアメリカの基地に他国が費用負担するなど前代未聞だとの批判に、沖縄の負担軽減を早く進めるためだと答弁をしてきたことと全く違うではありませんか。
 アメリカの軍事戦略に加担し、巨額の費用負担をすることは、ますます地域の緊張を高めるだけではありませんか。答弁を求めます。
 前ガイドラインは、日米軍事協力を強化する一方、日本の全ての行為は憲法上の制約の範囲内において行われるとしていました。ところが、新ガイドラインには憲法上の制約という言葉がなくなり、日米の行動は各々の憲法に従って行われるとの言葉に変わりました。昨年の閣議決定により、アメリカとの地球的規模の軍事協力に地理的にも内容的にも制約がなくなったという認識ですか。
 憲法の制約とは、国家権力を縛るというものです。それを縛られる側の権力が閣議決定で取り払うなど、立憲主義を踏みにじるものです。しかも、政府は、閣議決定の内容の行使には国会での法改正が必要だと繰り返し答弁をしてきました。にもかかわらず、総理は、国会に関連法案の提出もしないうちに、夏までに法案の成立を実現させると米議会で演説しました。
 総理は、決意を述べたものだと言いますが、外国の立法府での総理の演説は、単なる決意ではなく、事実上の対米公約ではありませんか。国内でも繰り返し述べてきたと言いますが、幾ら繰り返しても国民の世論の多数は反対であります。この国民の声も国会をも無視し、期限を区切ってアメリカに約束するというのは、国民主権と議会制民主主義を否定するものではありませんか。
 総理は、衆議院本会議で、先週提出された安保関連法案を戦争法案と呼ぶのは無責任なレッテル貼りだと答弁しました。首脳会談後の記者会見でも、安保条約の改定時に、日本はアメリカの戦争に巻き込まれるという批判があったが、その間違いは歴史が証明していると述べました。
 しかし、アメリカのベトナム侵略戦争は、在日米軍基地が出撃基地となりました。九〇年代以降、自衛隊はアメリカの要求に付き従い、ペルシャ湾への掃海艇派遣、アフガンの空爆を行う米軍艦船へのインド洋での給油支援、イラクでの掃討作戦を行う武装米兵の輸送など、安保条約の下でアメリカの無法な戦争と占領に加担してきたというのが歴史の事実ではありませんか。
 提出された平和安全法制なるものは、これまでのアメリカの戦争への支援にとどまらず、集団的自衛権の行使、従来の戦闘地域での軍事支援、治安維持活動等、これまでは憲法上できないとされてきたことを可能にするものです。その行使を決めるのは、時の多数派である政府です。アメリカが世界で行う戦争に、いつでも、どこでも、どんな戦争でも、切れ目も歯止めもなく自衛隊を支援、参加させるためのものであり、まさに戦争法案にほかなりません。このような法案に平和、安全との名前を付けることこそが国民を欺くものであり、無責任ではありませんか。
 日本共産党は、戦争法案反対の一点で、立場の違いを超えて国会内外で力を合わせ、戦後最悪の憲法破壊の企てを阻止するために全力を挙げるものであります。
 総理は、米議会の演説で、自由、民主主義、基本的人権、法の支配が日米の共通の価値観だと述べました。一方、沖縄の米軍新基地について、オバマ大統領に対し、翁長沖縄県知事が反対していることを伝えた上で、辺野古が唯一の解決策との政府の立場は揺るぎないと強調しました。これに対し翁長知事は、沖縄復帰の日の会見で、復帰後も真の民主主義は実現していないと述べました。選挙で何度も新基地反対の審判を下してきた沖縄県民は、昨日、三万五千人の県民集会を開き、我々は決して屈しないと決議しました。
 この民意を無視し、日米合意を優先する対米従属の姿勢が総理の言う民主主義なのですか。新基地の建設を断念し、普天間基地を直ちに無条件で閉鎖、撤去することを強く求めます。
 日米共同ビジョン声明は、TPP交渉の大きな進展を強調し、早期妥結を目指すとしました。一方、首脳会談直前に行われた甘利大臣とフロマン通商代表の会合での具体的内容は一切明らかにされておりません。政府は、既に牛肉、豚肉の関税の大幅引下げを認め、残った論点はアメリカ産米の特別輸入枠の大幅拡大だけだと伝えられております。大きな進展とは具体的に何なのか、明らかにしていただきたい。
 しかも、内閣府副大臣が、アメリカの国会議員同様に、TPPの交渉中の条文案を日本の国会議員に公開すると一旦述べながら撤回したのは重大です。言明どおり、公開するよう強く求めるものです。
 自民党は、TPPについて、農林水産分野の重要五品目等の聖域を最優先し、それが確保できない場合には脱退も辞さないと公約し、総理は国会で、守るべきものは守ると繰り返してきました。ところが、米議会での演説では、単なる経済的利益を超えた長期的な安全保障上の大きな意義があると述べながら、公約である聖域確保には全く触れませんでした。
 一方、オバマ大統領は共同会見で、米国では多くの日本車が走っている、日本でももっと多くの米国車が走るのを見たいものだと強調し、アメリカの多国籍企業のために日本市場の一層の開放を求めました。
 安全保障上の意義を理由に、公約や食と農業を守ることよりも、アメリカの要求を優先しようとしているのではありませんか。TPP推進で国内農業を破壊することは食料安全保障をも危うくすることをどう認識しているのですか。
 日本の食と農業を破壊し、経済主権を売り渡すTPP交渉からの撤退を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#16
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上哲士議員にお答えをいたします。
 米国議会での演説についてお尋ねがありました。
 米国議会での演説では、私は、かつて戦火を交えた日米両国が、戦後、和解を達成し、今や、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値に基づく揺るぎない同盟で結ばれていること、そして、我が国は、戦後、西側世界の一員として、米国とともにアジア太平洋地域や世界の平和と繁栄に一貫して貢献してきたこと等を述べてまいりました。
 このような観点から、演説では、日本は、米国、そして志を共にする民主主義国家とともに、最後には冷戦に勝利しましたと述べたところであります。
 軍事のない平和協力を広げることについてお尋ねがありました。
 我が国を取り巻く安保環境が一層厳しさを増す中、我が国は、近隣諸国との対話を通じて友好協力関係を発展させるとともに、日米同盟の一層の強化を通じて紛争を未然に防止すること、すなわち抑止力を高めることとしています。
 実際、私は、就任以来、地球儀を俯瞰する観点から積極的な外交を進め、いかなる紛争も、武力や威嚇ではなく、国際法に基づいて平和的に解決すべきとの原則を国際社会に対して主張し、多くの国々の賛同を得てきました。外交を通じて各国との友好協力関係を発展させていくことが重要なことは論をまちません。今後も積極的な平和外交を進めてまいります。
 米海兵隊のグアム移転についてお尋ねがありました。
 沖縄に駐留する米海兵隊のグアムへの移転事業に対する我が国の協力は、米軍のアジア太平洋地域における抑止力を維持しつつ、沖縄の負担を軽減するためのものです。米国のリバランス政策の重要な一部を成すグアムの戦略的拠点としての発展、強化に対する我が国の貢献は、アジア太平洋地域における米国の抑止力の維持に大きく寄与するものと考えています。
 先日の米議会における私の発言は、このような従来の政府の見解に沿ったものであり、何らのそごもありません。また、グアムへの我が国の貢献は、安全保障環境が一層厳しさを増す中で、我が国及び地域の安全に寄与するものであり、ますます地域の緊張を高めるだけとの指摘は全く当たりません。
 新ガイドラインについてお尋ねがありました。
 新ガイドラインについては、日米両国の全ての行動及び活動は各々の憲法に従うことが明記されています。昨年七月の閣議決定及びそれを踏まえた今般の平和安全法制には、自衛隊の派遣に関して明確かつ厳格な要件が示されており、米軍との協力に制約がなくなったということはありません。
 いずれにせよ、自衛隊の派遣について、我が国として憲法及び法令に従い、自らの国益に照らして主体的に判断するものであります。
 米国議会での演説における平和安全法制の成立時期に関する発言についてお尋ねがありました。
 米国議会における演説で、平和安全法制の成立について、この夏までにと申し上げ、私の決意をお示ししました。
 そもそも平和安全法制は、平成二十四年の総選挙以来、これまで三回の選挙で常に公約に掲げ、一貫して訴えてきた課題であります。特に、さきの総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、平和安全法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げ、国民の皆様の審判を受けました。法整備の方針を閣議決定した上で、選挙において速やかに整備することを公約した以上、選挙直後の今通常国会においてその実現を図ることは当然のことであります。
 このため、昨年十二月二十四日、総選挙の結果を受けて発足した第三次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見において、平和安全法制は通常国会において成立を図る旨申し上げ、国民の皆様に私の決意をお示ししました。本年二月の衆議院本会議においても、二度にわたり、今国会における成立を図る旨、答弁しています。
 米議会での演説においても、改めてこのような私の決意を申し上げたものであり、事実上の対米公約、国民主権と議会制民主主義を否定するものとの指摘は全く当たりません。
 政府としては、今後の法案審議において、多くの国民の皆様、そして与党の皆様、野党の皆様に法案の趣旨を御理解いただき、幅広い御支持が得られるよう、分かりやすく丁寧な説明を心掛けてまいります。
 我が国における自衛隊の国外派遣についてお尋ねがありました。
 これまでの自衛隊の国外派遣は、我が国自身の主体的な取組として法令に従って国会の御承認を得て行ってきたものであり、国際社会からも高い評価を得ています。したがって、我が国が安保条約の下で米国の無法な戦争と占領に加担してきたとの御指摘は全く当たりません。
 平和安全法制という名称についてお尋ねがありました。
 国民の命と平和な暮らしを守り抜く、その決意の下、日本と世界の平和と安全をより確かなものとするために閣議決定した法案が平和安全法制であります。自衛隊が歯止めなく活動を広げていくというのは全く的外れな議論です。新三要件による厳格な歯止めは法律案の中にしっかりと定められています。さらに、国会の承認が必要となることは言うまでもありません。
 自衛隊が海外で行う後方支援や国際平和協力活動は、いずれも集団的自衛権とは関係のない活動です。あくまでも、紛争予防、人道復興支援、燃料や食料の補給など、我が国が得意とする分野で世界の平和と安定にこれまで以上に貢献していくものであります。
 日本が武力を行使するのは日本国民を守るため、日米の新ガイドラインの中にもはっきりと書き込んでおり、日米の共通の認識です。したがって、戦争法案といった無責任なレッテル貼りは全くの誤りであります。
 普天間の辺野古への移設についてお尋ねがありました。
 沖縄における選挙の結果については、いずれも真摯に受け止めています。
 最も大切なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければならないということです。これが大前提であり、かつ政府と地元の皆様との共通認識であると考えています。
 辺野古への移設により、普天間は全面返還されます。沖縄の皆様の願いを現実のものとするため、一日も早い返還を実現する、これがこの問題の原点であると考えています。したがって、辺野古移設が民意よりも日米合意を優先する対米従属であるといった指摘は全く当たりません。
 政府としては、引き続き、安全確保に留意しつつ、辺野古への移設事業を進め、普天間の一日も早い返還を必ずや実現することが重要であると考えています。
 TPP交渉の大きな進展についてお尋ねがありました。
 日米首脳会談では、私の訪米前に甘利大臣と米国フロマン通商代表の間で行われた日米閣僚協議において、米を含む農産品と自動車について協議が行われ、依然として課題が残っているものの、二国間の距離が相当狭まったことを確認したものであります。
 引き続き、TPP協定の早期妥結に向けて、日米両国がリーダーシップを発揮して取り組んでまいります。
 TPP交渉の内容の開示についてお尋ねがありました。
 そもそもTPPは、交渉中の情報が外部に漏れないようにするという厳しい保秘契約に各国が合意しているものであります。米国の法制度は、連邦議員の守秘義務や外国との通商に関する権限に関して、我が国と制度が大きく異なります。このため、我が国において米国と同様の開示を行うことは困難であります。
 いずれにせよ、政府としては、これまでも国会等で丁寧な説明を心掛けてきたところでありますが、秘密保持の制約の下で、TPP交渉の現状等について、今後もできる限り丁寧に説明していく所存であります。
 TPP交渉の意義及び交渉からの撤退についてお尋ねがありました。
 我が国の同盟国である米国や、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々とともに新たなルールをつくり上げ、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にも、またこの地域の安定にも資する戦略的意義を有しています。また、成長著しいアジア太平洋地域の市場を取り込むことで、六次産業化など抜本的な農政改革と相まって、我が国の農業にとっても発展の機会が広がると考えています。
 我が国としては、こうした観点から、衆議院、参議院の農林水産委員会の決議をしっかりと受け止めながら、国益にかなう最善の道を追求して、全力で交渉に当たってまいります。
 このため、アメリカの要求を優先しようとしているという御指摘は全く当たりません。また、こうした中で、交渉からの撤退について言及することは不適切であると考えます。(拍手)
#17
○議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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