2015/07/08 第189回国会 参議院
参議院会議録情報 第189回国会 本会議 第31号
#1
第189回国会 本会議 第31号平成二十七年七月八日(水曜日)
午前十時一分開議
━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三十二号平成二十七年七月八日
午前十時開議
第一 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区
域法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
一、政策評価制度に関する決議案(松村祥史君
外十六名発議)(委員会審査省略要求)
一、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派
遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改
正する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────
#3
○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。この際、お諮りいたします。
松村祥史君外十六名発議に係る政策評価制度に関する決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(山崎正昭君) 御異議ないと認めます。よって、本決議案を議題といたします。
まず、発議者の趣旨説明を求めます。松村祥史君。
─────────────
〔議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔松村祥史君登壇、拍手〕
#5
○松村祥史君 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、維新の党、日本共産党、日本を元気にする会・無所属会、次世代の党、生活の党と山本太郎となかまたち、無所属クラブ、社会民主党・護憲連合及び新党改革・無所属の会の各派並びに各派に属しない議員糸数慶子君の共同提案に係る政策評価制度に関する決議案につきまして、発議者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。まず、案文を朗読いたします。
政策評価制度に関する決議案
政府は、平成十三年の中央省庁等改革を機に、政策評価制度を全政府的に導入し、平成十四年からは、行政機関が行う政策の評価に関する法律、いわゆる政策評価法を施行するとともに、平成十七年には、同法に基づく施行後三年の見直しを行っている。
このような政策評価制度の歩みにあわせ、参議院改革の一環として創設された行政監視委員会及び本会議においては、平成十五年及び平成十七年に、それぞれ決議を行ったところである。
本年は、平成十七年の政策評価法見直しから十年が経過するとともに、独立行政法人通則法の改正に伴い、政策評価と独立行政法人評価について、それぞれ独立した審議体制が発足したほか、地方創生推進の観点から、地方公共団体はPDCAサイクルの整備が求められている。
また、国際連合の評価グループなどが、本年を、評価と証拠に基づく政策形成を提唱する「国際評価年」として指定し、昨年十二月の国連総会でも、国単位での評価能力の向上についての決議が行われている。
このような状況を踏まえ、政府においては、国民目線に立って、行政について不断の見直しを行うとともに、国民への説明責任を果たす観点から、今後とも、政策評価制度の実効性を高め、国民の行政への信頼向上を図るため、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
一、政策評価の結果を政策に十分反映するためには、時宜に適した政策評価の実施と的確な政策効果の把握が重要であることに鑑み、事後評価においては、適切な目標設定と達成手段を事前に明示し、数値や明確な根拠に基づく評価を実施するとともに、事前評価においては、政策の効果と政策費用の的確な把握を徹底するよう、最大限努めること。なお、政策効果の把握のため、政策目標や測定指標に影響を与える様々な要因について、踏み込んだ分析をするよう十分配意すること。
二、目標管理型の政策評価については、目標の適切な設定が評価の良否を左右することから、各府省は、適切な目標設定の下で意義ある評価が行われるよう、事前分析表の作成段階において設定される目標や測定指標の改善を図ること。なお、測定指標については、国民生活及び社会経済に及ぼす影響を客観的・定量的に示すことができるよう、更なる開発・設定に努めること。
三、PDCAサイクルを通じた行政運営の向上、説明責任の徹底の観点から、政策評価と行政事業レビューとの役割分担、有機的連携を一層強化することにより、メリハリのある分かり易い政策評価を推進するとともに、事務事業レベルまで含めた政策の体系化、一覧性の確保をさらに推進すること。
四、主要な評価方式である総合評価については、政策体系のより上位の政策等の評価に用いることが想定されており、制度改善など政策の大幅な見直しへの活用が期待されることから、評価手法の開発や外部シンクタンクの活用などの改善方策を検討し、一層の活用を図ること。
五、総務省が担う総合性・統一性確保評価については、府省横断的政策の評価という極めて重要な役割を果たしていることから、適切なテーマの選定、量的拡大、実施体制の強化、外部シンクタンクの活用などにより、その充実・強化を図ること。
六、総務省の客観性担保評価活動については、政策評価制度全体の質の向上に大きな役割を果たすことが期待されており、今後とも、政策評価法第十二条及び政策評価に関する基本方針の趣旨を十分勘案し、一段の見直し・改善に努めること。
七、地方創生推進諸施策の実施に当たっては、従来の関連諸施策の十分な検証が不可欠であることから、総務省は、政府内における第三者的な評価専担組織の立場から、地方公共団体における中心市街地活性化、地域再生、都市再生などの地域活性化策の実施状況、効果の発現状況、国の支援施策の活用状況等について、早期に調査・検証を行うこと。
八、政策評価推進機能を担う総務省においては、地方人口ビジョンや地方版総合戦略の策定等を行う地方公共団体がPDCAサイクルを十分活用できるよう、国の関係部局及び地方公共団体への評価手法等の情報提供等の支援に努めること。
右決議する。
以上でございます。
政策評価制度について、更なる改善を行い、実効性を高めることにより、評価と証拠に基づく政策形成がなされるよう、本決議案を提出した次第であります。
何とぞ皆様の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
─────────────
#6
○議長(山崎正昭君) これより採決をいたします。本決議案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#7
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#8
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 二百三十六
賛成 二百三十六
反対 〇
よって、本決議案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────
#9
○議長(山崎正昭君) ただいまの決議に対し、総務大臣から発言を求められました。総務大臣高市早苗君。〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(高市早苗君) 政策評価制度に関する決議に対しまして所信を申し述べさせていただきます。ただいまの御決議につきましては、その趣旨を踏まえ、今後、本年四月に発足した政策評価審議会の委員等の知見も活用しながら、政策評価制度の実効性を高めるなど、国民の行政への信頼向上のために一層努力してまいります。(拍手)
─────・─────
#11
○議長(山崎正昭君) この際、日程に追加して、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(山崎正昭君) 御異議ないと認めます。厚生労働大臣塩崎恭久君。〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(塩崎恭久君) ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。労働者派遣制度は、我が国の労働市場の中で、労働力の迅速かつ的確な需給調整を行うという重要な役割を果たしています。
一方で、業務単位で期間制限を設けている現在の制度は分かりにくいとの指摘もなされており、労使双方にとって分かりやすい制度とするとともに、派遣労働が雇用と使用の分離した形態であることに伴う弊害を防止する必要があります。
このため、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方の下に新たな期間制限を設けることとするほか、労働者派遣事業の質の向上を図り、派遣労働者の正社員化を含むキャリア形成を支援する等の仕組みを設けることで、派遣労働者のより一層の雇用の安定、保護等を図ることとし、この法律案を提出いたしました。
以下、この法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明いたします。
第一に、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止し、労働者派遣事業を全て許可制とすることとしております。
第二に、厚生労働大臣は、労働者派遣法の規定の運用に当たり、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮しなければならないものとするとともに、業務単位の期間制限を廃止し、同一の派遣労働者に係る期間制限及び派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの期間制限の二つの期間制限を設けることとしています。また、派遣元事業主は、同一の派遣労働者に係る期間制限の上限に達する見込みがある派遣労働者に対して、派遣先への直接雇用の依頼等の雇用の安定を図るための措置を講じなければならないこととしております。
第三に、派遣元事業主は派遣労働者に対し、計画的な教育訓練等の実施や均衡待遇を確保するために考慮した内容についての説明をしなければならないこととするとともに、派遣先は、賃金の情報提供、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用に関して配慮しなければならないこととしております。
最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、平成二十七年九月一日としております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────
#14
○議長(山崎正昭君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。羽生田俊君。〔羽生田俊君登壇、拍手〕
#15
○羽生田俊君 自由民主党の羽生田俊です。私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について、安倍総理大臣並びに塩崎厚生労働大臣に質問いたします。
現在、我が国の労働人口のうち、役員以外の雇用者は約五千二百万人です。そのうち非正規雇用者の数と割合は年々増加し、現在ではおよそ二千万人、全雇用者の三分の一以上となっています。その中で派遣労働者は百二十万人であり、平成二十年度の二百二万人をピークに徐々に減っています。実態として、派遣以外の非正規雇用、つまり、パート、アルバイトなどの方が数としてははるかに多く、また増えているわけであります。
したがって、派遣労働のみを取り上げて正社員との関係について論じても、木を見て森を見ずというそしりを免れません。むしろ、非正規雇用全体を考えたときに、正社員を中心としたいわゆる日本型の雇用慣行というものが変わってきている、従来の正規、非正規という区分自体の持つ意味が変わってきているというのが正しい現状認識ではないでしょうか。
こうした構造的な変化に対応して、労使双方のニーズが満たされるよう、多様で柔軟な働き方、雇い方ができる雇用制度をつくっていかなければなりません。我が国の雇用制度は将来どうあるべきか、我が国の雇用制度の将来像について、総理の御見解をお伺いいたします。
次に、政府が派遣という働き方自体をどう捉えているのか、伺います。
今回の改正では、厚生労働大臣がこの法律を運用するに当たって考慮する事項として、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするという考え方が初めて明記されました。また、正社員と派遣労働者の数の動向等を踏まえ、労働者の能力の有効発揮と雇用安定に資する雇用慣行が損なわれるおそれがある場合、改正後の規定について速やかに検討を行うという見直し規定が附則に置かれています。
一方で、厚生労働省が派遣労働者を対象に行った調査では、正社員として働きたいという人は四割、今のままの働き方でよいという人も四割と、両方の意見が拮抗しています。派遣で働きたいという声が相当数ある以上、派遣労働は柔軟な働き方の一形態として将来にわたって認めるべきものだと考えます。もちろん、同様に正社員になりたいという人の希望も尊重する必要があります。
正社員になりたい人は正社員になれる、派遣で働きたい人は派遣で働ける、それが理想の姿であり、その理想に向けて、我々も政府も努力していかなければなりません。多様で柔軟な働き方は、憲法が保障する職業選択の自由を体現するものであり、活力ある経済の源にもなるからです。
政府も、決して、正社員だけが正しい働き方であり、派遣労働は我が国の雇用慣行を破壊するものだと考えているわけではないと思います。ならば、こうした規定を置いた趣旨がどのようなものか、派遣という働き方を政府はどう認識されているか、総理の御見解をお伺いいたします。
本法案は、これまでの政令で定める二十六業務という区分を廃止し、全ての業務に共通する派遣先の事業所単位の期間制限と、派遣労働者個人単位の期間制限を設けることなどを主な内容としております。
この二十六業務については、区分が分かりにくい、時代に合っていないなど、多くの批判がありました。こうした硬直的な制度を改めることによって、会社側と労働者側の双方にとって、より柔軟なニーズに合った働き方が可能となると考えています。
この二十六業務の問題も含め、政府としては、今回の改正が実現することで、会社側のメリット、労働者側のメリット、それぞれどのようなものがあるとお考えでしょうか。厚生労働大臣の御見解を最後にお伺いして、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#16
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 羽生田俊議員にお答えをいたします。雇用制度の将来像についてお尋ねがありました。
我が国の労働環境は、少子高齢化や経済のグローバル化といった大きな動きの中、雇用の安定を図りつつ、働き方の多様なニーズや経済社会の変化に的確に応えていかなければならないという変革期にあると認識しています。このため、時代の変化に合わせ、働く方一人一人がワーク・ライフ・バランスを確保しながら、ライフスタイルや希望に応じ、社会で活躍する場を見出せる雇用制度の実現を目指していくことが重要です。
安倍内閣としては、非正規雇用の方々のキャリアアップを支援し、処遇改善や正社員への転換を進めるための労働者派遣法改正や、高度専門職が創造性を存分に発揮できるようにする新たな制度の創設を始め、柔軟で多様な働き方を可能とする取組を進めてまいります。
検討規定の趣旨と派遣労働の認識についてお尋ねがありました。
労働者派遣制度は、働く人にとって、勤務地、時間等の希望を満たす職に就きやすい、企業にとって、専門性を備えた人材を迅速に確保できるといった労使双方のニーズに対応し、労働力のマッチングシステムの一つとして重要な役割を果たしています。
一方、派遣先において、正社員から派遣労働者への置き換え、すなわち常用代替を防ぐことが課題とされてきました。このため、改正案では、派遣先に対し、事業所単位の受入れ期間制限を課すことにより常用代替を防ぐこととしています。御指摘の規定は、例えば常用代替が常態化するような状況にも対応できるように設けたものです。
また、派遣という働き方は、賃金水準はパートなど他の非正規雇用より高いものの、正社員に比べれば低い傾向にあり、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があります。このため、改正案により、正社員を希望する方にはその道を開き、派遣を選択する方には待遇の改善を図るなど、それぞれの方の選択が実現できるよう環境を整備してまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(塩崎恭久君) 羽生田俊議員から、今回の改正案の企業及び働く方のメリットについてお尋ねがございました。現行の期間制限については、いわゆる専門二十六業務に該当するかどうかが分かりにくいため、今回の改正案で、業務による期間制限の区分を見直し、分かりやすい制度となる点が労使双方にとってのメリットと考えます。
これに加えて、派遣で働く方にとっては、派遣元が計画的な教育訓練や雇用安定措置を行うことで、正社員を希望する方にはその道が開かれ、派遣を選択する方には待遇の改善が図られることになります。(拍手)
─────────────
#18
○議長(山崎正昭君) 津田弥太郎君。〔津田弥太郎君登壇、拍手〕
#19
○津田弥太郎君 民主党の津田弥太郎です。私は、会派を代表し、ただいま提案のありました天下の悪法、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、断固反対の立場で質問を行います。
安倍総理、昨年の通常国会を思い出してください。あなたの内閣は、八十一本の法案を新規に国会に提出し、実に七十九本を成立させました。成立できなかった二法案はいずれも厚生労働省の所管でありますが、中でも、衆議院段階で本会議の趣旨説明、質疑さえできなかった法案、すなわちスタートラインに立つことさえできずに廃案となった法案がございました。その法案こそ、まさに本日議題となっている労働者派遣法改悪案にほかなりません。
その後、同法案は臨時国会で再び廃案となり、国権の最高機関から明確に不信任を突き付けられたのであります。良識の府に属する我々は、よもや政府が性懲りもなく三度目の法案提出を行うことになるとは夢想だにしませんでした。政府の信じ難い暴挙に対し、怒りを禁じることができません。
冒頭、安倍総理にお尋ねします。本法案は、なぜ二度にわたって廃案になったのでしょうか。その理由と責任の所在について明確な答弁を求めます。
さて、労働者派遣は労働者供給事業の一形態ですが、戦前は許可制であった同事業は、昭和二十二年に制定された職業安定法において、一部の例外を除き禁止されることとなりました。
その趣旨は、GHQ労働課の担当官によれば、次のとおりとされています。重要です。封建制度が生んだ最も非民主的な制度を改正し、労働者を鉄か石炭のように勝手に売買取引することを日本からなくして、労働者各人が立派な一人前の人間として働けるように計画されたものである。
このように、雇用と使用が分離する間接労働には根源的な人権侵害の可能性があるため、昭和六十年の労働者派遣法の制定により、専門的な知識を必要とする業務などに限り労働者派遣が認められた後も、各方面からその抑制が求められたのであります。
しかるに、自民党政権は、これまで数次の法改正を行い、派遣会社の主張に沿った規制緩和を推し進めてきました。この流れを断ち切り、初めて労働者保護の視点に立った規制強化の法改正を行ったのが、まさに平成二十四年の民主党政権でありました。にもかかわらず、自公政権は完全に先祖返りをしようとしているのです。うそで塗り固めたいわゆる一〇・一ペーパーを厚労省が作成し、法案の早期成立の流れを無理やりにつくろうとしたことも、政権中枢の意を受けたものと言えるでしょう。
総理、そもそも一〇・一ペーパーは政府の公式文書でしょうか。塩崎大臣は既に謝罪を行っていますが、あなた自身は責任を感じていないのですか。安倍総理の明確な答弁を求めます。
さて、本法案は、生涯派遣で低賃金を合法化し、派遣労働者をまさに地獄に突き落とすものであります。私たちは、派遣労働で働く多数の当事者を党内会議にお招きをし、法改正に対する悲鳴の声を政府の担当者に伝えてまいりました。一方、政府は、法案に賛成する派遣労働者の具体的存在を一人も明らかにしておりません。安倍総理、今回の法改正に関し、政府として何人の派遣労働者にヒアリングを行い、そのうち約何割の賛成を得ているのでしょうか。明確な答弁を求めます。
また、各省庁では現在何人の派遣労働者が働いていますか。これまで、各省庁で働いていた派遣労働者の中で正規の職員に転換できた方は一体何人いるのですか。併せて安倍総理からお答えをいただきます。
今回の法改正は大幅な規制緩和です。正社員を減らし、派遣労働者を増やすものだと私たちは確信をしております。ところが、総理は、派遣労働者を増やすべきだとは全く考えていないと言っておきながら、派遣労働者の増減の見通しについて、景気、雇用失業情勢、労働者の意向等に影響を受けるため、予想することは困難として明らかにしていないわけであります。増やすべきではないが、法改正によって増えるかどうかは分かりませんというのでは、余りにも無責任であります。
それでは、景気等の前提条件を現状に固定した場合、派遣労働者と正社員の増減はどのように見込まれていますか。総理、逃げずにお答えください。
さて、今回の派遣法改正には、産業競争力会議の民間議員、悪名高き竹中平蔵氏が強い影響力を発揮しました。議場に御参集の皆様は、政商という言葉を御存じかと思います。広辞苑によれば、政府や政治家と特殊な関係を持って利権を得ている商人であります。人材ビジネス大手のパソナ会長として、安倍内閣の雇用の基本方針、すなわち労働市場の流動化を高め、人材移動の促進を推し進める竹中平蔵こそは、まさに政商にほかならないではありませんか。
総理、国会議員以上に重要政策の決定に影響力を持つ産業競争力会議の民間議員に対しては、国会議員同様の資産公開を検討すべきとの強い意見がありますが、その是非について明快な見解を伺います。
さて、法案の最大の問題点をこれから指摘いたします。
今回の政府案では、業務単位の期間制限を廃止することで、専門性もなく、特別な雇用管理も必要としないあらゆる一般業務について、事実上、企業は派遣労働者を使い続けることが可能となります。これは、臨時的、一時的という派遣法の大原則を根底から覆すものであります。
さらに、派遣労働者の実態を一顧だにせず専門二十六業務を廃止することは、専門的な高いスキルを生かし、正しく専門二十六業務として長期にわたって働いてきた方々を失業の危機に追いやっているのです。この点に関し政府は、世の批判をかわすため、平成二十四年の派遣法改正時の民自公三党提案の附帯決議に基づくものだと必死の言い訳をしています。まさに、唖然、茫然、愕然であります。
本来の附帯決議の趣旨は、専門二十六業務については、その内容に不適切なものがあり、追加する業務、削る業務について精査をし、適正化を図るというものであります。そのことは過去の政府答弁でも明らかにされており、今後、政府の勝手な言い訳は、私、津田弥太郎が一切認めません。
さて、法案が成立した場合、各企業は、同一業務について切れ目なく永続的に派遣労働者に任せることが可能となります。もちろん派遣労働者の比率に上限がないのです。つまり、社長以外の全員が派遣社員という企業が生まれかねないのであります。派遣先は派遣元との契約を解約するだけで、気に入らない労働者を即座に職場から追い出すことが可能となります。ここまで悪徳経営者を喜ばせる労働法制の大改悪は、我が国の歴史上かつてなかったものであります。総理、そうした企業があり得ないとするならば、その根拠となる条文を明確にお示しください。
法案のもう一つの大きな問題点は、均等待遇原則の欠如であります。
均等待遇は労働者派遣の肝であり、世界の常識でもありながら、今回の政府案では極めて不十分な検討規定が附則に盛り込まれているにすぎません。これまで総理は、均等待遇の前提は職務給であり、職能給が採用されている日本では困難との答弁をされています。それでは、我が国と労働市場の構造が近いと言われながらも均等待遇原則を採用している韓国は職務給が徹底しているのでしょうか。安倍総理の明確な答弁を求めます。
また、政府が約束した諸外国の制度調査は一体いつまでに完了するのですか。塩崎大臣、その期限を明確にお答えください。
次に、政府が本法案の長所としている点について、欺瞞的実態を明らかにいたします。
第一に、キャリア形成を支援する仕組みについてであります。
安倍総理御自身が派遣労働者の正社員化を目指すと発言されながら、目指すべき正社員の定義さえ明らかとなっていないのであります。総理、正社員の定義について、この場で明確にお示しください。
第二に、派遣元事業主が派遣労働者に行う教育訓練についてであります。
全国展開をしている派遣会社が全国一か所で教育訓練を行うことは、現段階で否定をされておりません。東京在住の派遣労働者に対する教育訓練が大阪で行われるならば、自腹で交通費を支払ってまで一体何人が参加するのでしょうか。まさに絵に描いた餅と考えますが、塩崎大臣の見解を求めます。
第三に、派遣事業を全て許可制にすることについてであります。
政府は、義務違反に対する許可の取消しを含めた指導をすることで、雇用安定措置により派遣労働者の雇用を守ることができると説明しています。しかし、一人でも派遣労働者の雇用の継続を図れなかったら、雇用安定措置の義務違反として許可の取消しができるのでしょうか。また、派遣労働者をないがしろにして事業の拡大に傾注し、派遣労働者を増やし続ける派遣会社に対し、許可の取消しができるのでしょうか。許可制とすることで本当に全ての派遣労働者の保護が図れるのか、塩崎大臣、根拠に基づくお答えをいただきたい。
最後に、昨年の臨時国会では、公明党が法案修正に動き、今回、その内容が閣法に盛り込まれました。この点は一定の評価をいたします。百年に一度の悪法を三十年に一度の悪法に変えようとする必死の努力であります。しかし、悪法はあくまでも悪法であり、法案の成立を許すわけにはまいりません。
我が国の雇用現場を崩壊させる本法案については、断固成立阻止を宣明し、私、津田弥太郎の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#20
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 津田弥太郎議員にお答えをいたします。労働者派遣法改正法案が廃案となった理由及び責任の所在についてお尋ねがありました。
昨年の通常国会に提出した改正法案は、条文の一部に誤りがあったこと等により、審議未了で廃案となったものと認識しております。また、昨年九月、条文誤りのあった箇所を訂正し、改めて臨時国会に改正法案を提出しましたが、衆議院の解散により廃案となりました。
今回の法案は、正社員化を希望する方にはその道を開き、派遣を選択する方には処遇の改善を図るためのものであり、是非とも本国会において成立させていただきたいと考えております。
いわゆる十月一日ペーパーについてのお尋ねがありました。
御指摘の資料は、厚生労働省において、議員から個別に御質問等があった場合に補足的に説明するため作成したものであり、正式見解を示した文書ではないと承知しています。
当初作成された資料に不適切な表現や正確性を欠く表現が用いられ、これにより誤解を招いたことについては、私としても遺憾であります。本件については、厚生労働大臣から担当局長等に厳重注意をした上で、改めて正式な資料を作成し、謝罪したと承知しております。
派遣労働者のヒアリングについてのお尋ねがありました。
改正法案の要綱は、公労使三者で構成される労働政策審議会で審議されており、派遣労働者も構成員に含む労働組合等の代表が参加した上、おおむね妥当と認めるとの答申をいただいたものと承知しています。
なお、改正法案の考え方について、国会への提出と後に二回、計四人の方に厚生労働大臣よりヒアリングを行い、このうち二人の方から法案の目指す方向性に賛同する旨のコメントがあったと聞いております。
各省庁で働く派遣労働者数と正規職員への転換についてお尋ねがありました。
御通告いただいた後の集計であり、現時点で把握できた限りでは、平成二十六年四月一日時点において、国の行政機関の内部部局で受け入れている派遣労働者数は二百六十一名、このうち昨日までの間に同一省庁において正規職員として採用された方はありません。国家公務員の定員管理が厳しく行われていることや、原則、競争試験を経る必要があることなど、民間企業とは異なる事情がありますが、いずれにせよ、国家公務員として採用を希望する方に対しては、派遣労働者であるか否かにかかわらず、国家公務員法に基づき適切に対応してまいります。
派遣労働者と正社員の増減の見込みについてのお尋ねがありました。
今回の改正案においては、希望する方の正社員化を進めるため、派遣元に対し、派遣期間が満了した場合の雇用安定措置や計画的な教育訓練を義務付けるとともに、派遣先に対し、派遣で働く方への正社員の募集情報の提供を義務付けるなど、これまでになかった新たな措置を盛り込んでおり、これをしっかり実施していくこととしています。
派遣労働者や正社員の増減については、まさに景気や雇用失業情勢、労働者の意向等を受けて変化することから、これらを一律に固定するという仮定で見通しを立てることは困難と考えています。
いずれにせよ、安倍内閣としては、経済の好循環の実現と働く方の雇用の安定や所得環境の改善に引き続き取り組んでまいりたいと考えています。
産業競争力会議の民間議員についてお尋ねがありました。
産業競争力会議の民間議員については、それぞれの所属する組織の立場を離れ、公共の利益のために同会議に参画していただくとともに、最終的な政策決定は内閣の責任で行っているところであります。このため、国会議員と同様に民間議員の資産公開を検討すべきとの御意見は適切ではないと考えます。
派遣社員への置き換えや派遣契約の解除についてのお尋ねがありました。
今回の改正案では、派遣先の事業所単位で受入れ期間の上限を三年とした上、延長する場合には現場の実態をよく知る過半数組合等からの意見聴取を義務付け、派遣労働者への置き換えを防ぐこととしており、そのための規定を法第四十条の二に設けています。
さらに、同条において、意見聴取の実効性を確保するため、派遣先に対し、反対意見があったときは事前に対応方針を説明することや意見聴取の記録を周知する義務を新たに課し、労使間で実質的な話合いができる仕組みをつくることとしています。
このように、今回の改正は、社長以外の全員が派遣社員という企業を生じさせるようなものではありません。
なお、平成二十四年改正により、派遣先に対し、自らの都合により派遣契約の中途解除を行う場合には新たな就業機会の確保等を義務付けており、派遣労働者の保護を図っています。
韓国における職務給の状況についてお尋ねがありました。
韓国では、二〇〇七年に施行された非正規労働者保護関連法において、派遣労働者を含む非正規労働者の賃金等の労働条件について、雇用形態を理由とする差別的処遇が禁止されていると聞いています。しかしながら、この制度の運用状況や職務給の普及状況等には不明な点も多いことから、韓国を含め、諸外国における均等・均衡待遇の確保の在り方について調査研究に取り組んでまいります。
正社員の定義についてお尋ねがありました。
労働関係法令上、正社員という確立した定義はありませんが、一般的には、労働契約の期間の定めがない、所定労働時間がフルタイムである、直接雇用であるといった状況にある方を正社員と呼んでいます。
今回の改正案では、こうした意味での正社員を希望する方について、その道が開けるようにするため、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置や計画的な教育訓練を新たに義務付けるなど、派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化することとしています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(塩崎恭久君) 津田弥太郎議員にお答え申し上げます。諸外国の調査研究についてのお尋ねがございました。
諸外国における均等待遇の制度や運用状況等には不明な点も多いことから、均等・均衡待遇の確保の在り方について検討するため、調査研究に取り組んでいきたいと考えているところでございます。
諸外国の調査研究につきましては、今年度から、労働政策研究・研修機構におきまして、EU等における均等・均衡待遇に関する制度運営の状況等についての調査研究を行うこととしており、来年三月をめどに結果を取りまとめる予定とされてございます。
派遣労働者に対する教育訓練についてのお尋ねがございました。
今回の改正案では、派遣元に対して計画的な教育訓練を義務付けることとしております。この教育訓練は、対象となる派遣で働く方が希望すれば受講が可能であることが必要であり、多額の交通費が掛かるような、実際に受講できない訓練の機会を提供した場合には、教育訓練の実施義務を果たしたことにはならないと考えております。
雇用安定措置と許可取消しについてお尋ねがございました。
雇用安定措置は、派遣期間の上限に達する見込みのある全ての派遣で働く方の雇用の継続を目的として、派遣元に対して一定の措置を講ずることを義務付けているものでございます。この義務に違反した派遣元の許可を取り消すかどうかについては、義務違反の態様、規模等を総合的に判断して決定することとなりますが、義務違反を把握した場合には、許可の取消しも含めて厳しく対処していきます。
派遣事業の許可制についてのお尋ねがございました。
労働者派遣法では、派遣で働く方の保護と雇用の安定を図るための規定を整備しております。今回の改正案では、これらの規定を一層強化し、現在約四分の三が届出制となっている労働者派遣事業について、業界の健全化と義務の履行の確保を図る観点から、全て許可制とすることとしております。こうした保護規定に違反し、派遣で働く方をないがしろにする派遣元事業主に対しては、許可の取消しも含めた厳正な指導を行うこととしており、これを通じて派遣労働者の保護を図ってまいります。(拍手)
#22
○議長(山崎正昭君) ただいま理事が協議中でございますので、しばらくお待ちをいただきたいと思います。答弁の補足があります。内閣総理大臣安倍晋三君。
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#23
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほどの津田弥太郎議員の御質問、法案はなぜ二度にわたって廃案となったのか、その理由と責任の所在について総理の見解を伺うという中におきまして、昨年の通常国会に提出した改正法案は、条文の一部に誤りがあったこと等により審議未了で廃案となったものと認識していますとお答えをいたしましたが、補足をいたしますと、条文の一部に誤りがあったということは政府の責任であると、こういうことでございます。(拍手)─────────────
#24
○議長(山崎正昭君) 長沢広明君。〔長沢広明君登壇、拍手〕
#25
○長沢広明君 公明党の長沢広明です。私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。
世界に例を見ない少子高齢化、人口減少社会が急速に進展する日本にあって、若い世代を始めとした皆様が希望と生きがいを持って働ける労働環境をつくることは喫緊の課題です。
非正規雇用で働く人がこの二十年間で増加しています。本法律案は、非正規雇用の一形態である労働者派遣について、現行制度の問題点を見直し、労働者と経営者の双方にとって分かりやすいルールに変更するとともに、派遣労働者の雇用の安定や正社員化に向けたキャリアアップ支援に取り組むものであると評価しています。
現在、派遣労働者として就業している人の中には、特に短い有期契約を繰り返し更新して働いているような場合、雇用が不安定な状態に置かれ、能力開発やキャリアアップの機会にも恵まれないという問題に直面している派遣労働者も少なくありません。
しかしながら、現行制度には派遣労働者の能力開発に関する定めがなく、雇用安定の取組も不足しています。また、若者や女性などが柔軟な就業機会と捉えて派遣労働を利用する一方、不本意ながら派遣で働かざるを得ない人も少なくないのが現実であります。労働者派遣を多様な働き方のニーズに応え安心して働ける制度に改善しつつも、希望する方には正社員への道を開くことが重要です。
そこで、初めに労働者派遣制度の位置付けについて確認をさせていただきます。
労働者派遣制度は臨時的、一時的な働き方との位置付けを原則としており、今般の改正でこのことが明文化されます。雇用政策全体の中において労働者派遣制度をどのように位置付けているのか、また、派遣制度の位置付けを踏まえて、今般の改正案はどのような意義と目的を持つのか、安倍総理に御見解をお伺いします。
次に、改正による派遣労働者への影響について伺います。
今般の改正については規制緩和との指摘もありますが、派遣労働者保護の観点から、全ての労働者派遣事業を許可制とするなど、規制強化の内容も盛り込まれています。
労働者派遣は、制度が複雑であるため、その見直しの方法も分かりづらい面があり、現に派遣労働者として働いていて、制度見直しに対して漠然とした不安を抱いている方々もいるでしょう。政府は、改正によって、今後、派遣労働者の働き方にどのような変化があると考えているのでしょうか。また、これまで公明党が主張してきた派遣労働者の処遇改善はどのように前進するのでしょうか。改正法による派遣労働者のメリットを含め、国民の皆様に分かりやすい説明を塩崎厚生労働大臣に求めます。
キャリアアップ支援についてお伺いします。
公明党は、従来から派遣労働者へのキャリアアップ支援の重要性を指摘しており、今回の改正案に派遣期間を通じた計画的な教育訓練の実施などのキャリアアップ措置が盛り込まれたことは評価したいと思います。さらに、派遣先が派遣労働者を正社員として雇用する場合に支払われるキャリアアップ助成金の拡充が図られています。
しかしながら、労働の現場において、名ばかりの教育訓練が行われるおそれや、支援の形骸化を不安視する声も聞いています。これらのキャリアアップ支援によって、派遣労働者の正社員化、賃金上昇など、どの程度の効果が上がったのかを把握しつつ、実効性を担保していくことが必要です。キャリアアップ措置の実効性をどのように担保していくのでしょうか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
常用代替の防止について伺います。
労働市場において、派遣が野方図に拡大されて若者の就職先が派遣しかないというような状況は当然あってはならず、常用代替を防止する観点は重要であると考えます。見直しによって、正社員が行っている業務が派遣労働者に取って代わられるのではないかと懸念する意見もあります。今般の改正に当たり、常用代替防止という基本的な観点は維持されるのでしょうか、確認します。
また、派遣先事業所単位の期間制限に関し、派遣先が受入れ上限である三年を延長しようとする際には、過半数組合か過半数代表者の意見を聞くこととしています。この趣旨は、一つには常用代替の防止を図るものと理解していますが、この手続については、現場の実態を踏まえ適正に運用されるべきであると考えます。厚生労働大臣の見解を求めます。
派遣労働者個人単位の期間制限について伺います。
改正案では、有期雇用の派遣労働者個人が同じ職場で働ける期間を三年としています。まず、その目的についてお伺いします。
また、現行法では、派遣元は派遣期間終了後の派遣労働者の雇用継続を図る責務がありませんでした。今般の改正で、期間制限を迎える派遣労働者に対しては、その雇用を継続させるための措置として、派遣先への直接雇用の依頼又は新たな派遣先の提供などを講じる雇用安定措置が新たに派遣元の義務とされます。この措置により、期間制限を迎える派遣労働者の生活をどのように守れるか、具体的な答弁を厚生労働大臣に求めます。
以上、改正案に盛り込まれた処遇改善、キャリアアップ支援、雇用の安定などの取組についてお伺いしました。
大切なことは、これらの派遣労働者保護のための措置の実効性を政府がどう担保するかだと考えます。また、附則に均等・均衡待遇の在り方を検討することが明記されました。更なる派遣労働者の処遇確保の在り方についての検討も急がなくてはなりません。
最後にこの点についての安倍総理の御決意をお聞きして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#26
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 長沢広明議員にお答えいたします。労働者派遣制度の位置付けと改正案の意義についてのお尋ねがありました。
労働者派遣制度は、働く人にとって、希望を満たす職に就きやすい、企業にとって、必要な人材を迅速に確保できるといった労使のニーズに対応し、重要な役割を果たしています。一方、派遣という働き方では、賃金水準はパートなど他の非正規雇用より高いものの、正社員に比べれば低い傾向にあり、また、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があります。
このため、改正案では、正社員を希望する方についてその道が開けるようにするため、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置や計画的な教育訓練を新たに義務付けるなど、派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化することとしています。また、自らの働き方として派遣を積極的に選択している方については賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、待遇の改善を図っていきます。
安倍内閣としては、こうした仕組みを通じ、働く方それぞれの選択がしっかり実現できるような環境を整備してまいります。
改正案に盛り込まれた措置の実効性及び派遣労働者の処遇確保についてのお尋ねがありました。
今回の法案では、正社員化を希望する方にはその道を開き、派遣を選択する方には処遇の改善を図るため、必要な措置を新たに派遣元に義務付けることとしています。あわせて、労働者派遣事業について、現在の一部届出制を全て許可制とし、必要な措置を講じない派遣元に対しては厳正な指導等を行い、義務の履行をしっかりと確保してまいります。また、派遣労働者の一層の待遇の改善を図ることも重要と認識しています。
政府としては、均等・均衡待遇の確保の在り方について、諸外国の制度や運用状況等に不明な点も多いことから、調査研究に取り組むとともに、有識者の意見も聞きながら検討を進めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(塩崎恭久君) 長沢広明議員にお答えを申し上げます。今回の改正案による派遣で働く方の働き方の変化とメリットについてお尋ねがございました。
今回の改正案では、派遣元に対し、計画的な教育訓練や雇用安定措置を義務付けることとしております。これにより、派遣として入職した後に、ステップアップして正社員になったり、派遣労働者として複数の派遣先を経験しながら専門性を磨き、積極的にキャリアアップを図るような働き方が可能になると考えております。
そのほかにも、今回の改正案では、賃金、教育訓練及び福利厚生面で均衡待遇を強化することとしており、これらを通じて、派遣で働く方のキャリアアップや雇用の安定、保護がより一層図られることになります。
キャリアアップ措置の実効性の担保についてお尋ねがございました。
今回の改正案においては、派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に対して、計画的な教育訓練を実施するほか、希望する方へのキャリアコンサルティングを実施しなければならないこととしております。これらの義務については、事業の許可・更新要件にキャリア形成支援制度を有することを追加するとともに、取組内容を事業報告事項とすること等により実効性の担保を図っていきたいと考えております。
なお、これらの措置の効果については、派遣元事業主において自発的に公表いただくことが派遣で働く方からも選択されやすくなり有益であることから、その自発的な取組を促してまいります。
常用代替防止と過半数労働組合等からの意見聴取手続についてのお尋ねがございました。
派遣労働については、派遣先での正社員から派遣労働者への置き換えを防ぐことが課題とされてきたことから、今回の改正案でも、引き続きこの常用代替防止という基本的な考え方を維持することとしております。
具体的には、同じ事業所における継続的な派遣労働者の受入れについて、三年という期間制限を課し、三年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合には過半数労働組合等からの意見聴取を義務付けることで常用代替防止を図るための手続の実効性を担保することとしております。
さらに、過半数労働組合等からの意見聴取に際しては、派遣先に対し、意見聴取の参考となるデータの提供、意見聴取の記録の周知、反対意見があったときの対応方針等の説明などを新たに課すことにより、実質的な労使間の話合いができるような仕組みを構築することとしており、義務違反に対して厳正に指導を行うこと等により制度の適正な運用に努めてまいりたいと考えております。
個人単位の期間制限の目的と雇用安定措置についてお尋ねがございました。
今回の改正案では、派遣労働への固定化を防止するため、有期雇用の派遣で働く方について、個人単位の期間制限を設け、派遣で働く方には三年ごとの節目節目で自身のキャリアを見詰め直していただき、キャリアアップにつなげていただきたいと考えております。
また、個人単位の期間制限の上限に達する派遣で働く方について、派遣元に雇用安定措置を新たに義務付けることとしており、これによって、派遣で働く方が期間制限の上限に達すると同時に職を失うことなく派遣先で直接雇用されることや派遣元で無期雇用されることなどが見込まれるため、派遣で働く方の生活が守られるものと考えております。
以上でございます。(拍手)
─────────────
#28
○議長(山崎正昭君) 清水貴之君。〔清水貴之君登壇、拍手〕
#29
○清水貴之君 維新の党の清水貴之です。会派を代表して、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、総理並びに厚生労働大臣に質問いたします。
まず、安倍総理に伺います。
衆議院において、維新の党を中心として、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案、いわゆる同一労働同一賃金法案を提出しました。同法案は、衆議院で与党も賛成の上で可決され、参議院に送付されています。
パートタイム労働者や契約社員については、正社員との均等・均衡待遇が法律上に規定されていますが、派遣労働者については、今般の政府提出の改正案をもっても、均衡の配慮義務という不十分な内容にとどまっています。また、パートタイム労働者や契約社員についても、近年、法律上の規定が整備されたとはいえ、なお実態上の格差が残っており、これを埋める必要があります。
同一労働同一賃金法案は、これらの非正規雇用労働者の待遇面での課題に対し、労働者の職務に応じた待遇の確保などのための施策を推進しようとするものです。
衆議院において一部表現の修正が行われていますが、この法案の趣旨は変わるものではありません。派遣労働者を含む非正規雇用労働者について、いち早く実効性のある待遇確保のための方策を検討し、非正規と正規の均等待遇、同一労働同一賃金の実現を目指すべきだと考えますが、総理の見解はいかがでしょうか。
次に、改正案における期間制限の見直しについて伺います。
改正案では、現在の業務単位の期間制限を派遣労働者個人単位の期間制限と派遣先事業所単位の期間制限に変更することとしています。
改正案の第二十五条では、厚生労働大臣は、派遣法の規定の運用に当たっては、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮することとされています。
しかしながら、派遣先単位の期間制限における過半数労働組合などからの意見聴取手続が期間延長の抑止力にならないことは、衆議院において度重なる指摘があったところです。その中で、現行制度上の意見聴取手続において派遣期間の延長に反対意見を出した組合が僅か一・二%であるとの指摘がありましたが、これに対し塩崎厚生労働大臣は、反対意見を出したのが一・二%なのは大多数が延長に同意をしているからという解釈を示されました。これは、意見聴取手続が期間延長の抑止力にならないことを自認した答弁なのではないでしょうか。
ましてや、改正後の延長手続は、仮に組合が反対意見を出しても使用者の判断で期間延長が可能であり、なおかつ、その延長は三年にとどまらず、六年、九年と永続的に期間延長が可能となります。派遣就業は臨時的、一時的なものであるという原則をわざわざ法律に追加しながら、企業は事実上何年でも派遣労働者を受け入れ続けられるというのは大きな矛盾です。
意見聴取手続が期間延長の抑止力となるという具体的な根拠について、塩崎厚生労働大臣の説明を求めます。
このような改正案の仕組みでは、企業は派遣労働者を使いやすくなり、派遣の雇用枠がいたずらに拡大されることになりかねません。この点、派遣労働者の同一労働同一賃金が実現すれば、企業は必ずしも安くない派遣を濫用的に利用できなくなり、正社員が行う業務が増えることになります。このことは、正社員で働きたい方々にとってはその選択肢が増えることにつながります。また、望んで派遣労働者として働いている方々にとっても、その待遇が確保されることにより、安心して働くことができるようになります。
企業の派遣の利用に対する規制については、派遣労働者の同一労働同一賃金の実現によって、企業が派遣を濫用的に利用することを防ぐ法施策を取るべきではないでしょうか。総理の御意見をお聞かせください。
改正案は、企業は派遣労働者を使いやすくなるにもかかわらず、派遣労働者は三年ごとに派遣先を去らなければならないという内容になっています。このため、現在二十六業務として働いている派遣労働者を雇い止めの危機にさらしてしまうという大きな問題を有しています。
二十六業務を基準とする期間制限に問題がなかったわけではなく、その見直し自体に反対するものではありません。しかしながら、新たな個人単位の期間制限を一律に適用することにより、二十六業務として長期間安定して働いてきた方々の雇用の場を失わせることは大問題であります。この点は衆議院の議論でも各党から繰り返し指摘がなされました。また、派遣労働者の方々からも非常に多くの不安の声が上げられています。
政府は、個人単位の期間制限である三年の節目を派遣労働者がキャリアを見詰め直す機会とすると説明していますが、二十六業務の派遣労働者の方々が望んでいるのは、正社員になれるならともかく、そうでないなら、高い専門性を生かして現在の職場で安定的に働き続けることではないでしょうか。仮に、節目で自身のキャリアを見詰め直して、なお現在の職場での就業継続を希望しても、改正案の仕組みはそれを許さず、二十六業務の派遣労働者として働いてきた方々に対する影響が非常に大きなものとなっています。二十六業務の派遣労働者に対し、一律で三年の期間制限を設けることについて、それが派遣労働者のためになるという合理的な説明を塩崎厚生労働大臣に求めます。
その上で、今まさに二十六業務として働いている派遣労働者について、改正法施行三年後ないしそれ以前の雇い止めが懸念されています。このことを制度の見直しに伴う痛みとして看過することはできません。与野党、政府の垣根を越えてこの問題を直視すべきです。法改正を理由とした雇い止めを防止し、二十六業務として長期間安定して働いてきた方々の雇用の場を失わせることがないような具体的な対策が必要です。現在二十六業務として働いている方々の雇用の安定のための対策について、総理の見解を伺います。
最後に、雇用安定措置の実効性について伺います。
政府は、先ほどの二十六業務の問題など、改正案の影響による雇用の不安定化に対しては、派遣元事業主に課す雇用安定措置によって解消すると説明をしています。また、雇用安定措置によって、正社員になったり、別の会社などで働けることができるようにするという説明もありますが、雇用安定措置の個別の内容を見ると、本当にそのようなことが可能なのか、実現可能性に大きな疑問があるものばかりです。雇用安定措置によって派遣労働者の雇用の安定が本当に守れるのか、総理の見解を伺います。
さらに、派遣労働者の雇用が継続されるための措置としているものの、実際に派遣労働者の雇用継続について、どこまでの義務が派遣元事業主に課されているのかがはっきりしません。雇用安定措置の義務というのは、派遣元事業主に対して派遣労働者の雇用継続についてどこまでの義務を課すものなのか、塩崎厚生労働大臣の説明を求めます。
我が国の経済が成熟する中、労働市場の実態も、国民の働き方に対する意識も変化しています。そのような中で、国民の働き方の選択肢を増やすことは必要ですが、その選択肢は本人が真に希望して選ぶに値するものでなければなりません。そのためには、派遣労働者と正社員との間で均等な待遇を保障する必要があります。
我が国においても派遣労働者を含めた同一労働同一賃金が実現することこそが、あるべき労働者派遣制度につながるものであることを再度申し述べ、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#30
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 清水貴之議員にお答えをいたします。非正規と正規の均等待遇等についてお尋ねがありました。
同一労働に対し同一賃金が支払われるという仕組みは、働く方の職務を明確にし、困難度等に応じて賃金を決定するものであり、一つの重要な考え方と認識しています。これについては、中高齢期に多くの支出が必要となる生活実態に適合した賃金体系や、経営環境の変化に対応した柔軟な配置転換など、労使双方にメリットのある我が国の雇用慣行の特徴を維持できるかといった意見もあります。
このように、賃金体系を含む雇用管理の在り方の根本的な見直しは、労使双方に大きな変化をもたらす問題であり、労使において十分議論を行っていただくことが重要であります。
政府としては、諸外国の制度や運用には不明な点も多いことから、均等・均衡待遇の確保の在り方について調査研究に取り組むとともに、有識者の意見も聞きながら検討を進めてまいります。
同一労働同一賃金と派遣労働の濫用防止についてのお尋ねがありました。
同一労働同一賃金については、さきに申し上げたとおり、調査研究に取り組み、検討を進めることとしています。その間、派遣労働者が安易に利用されることのないよう、今回の改正案では、派遣先に対し、教育訓練や福利厚生施設を派遣労働者に利用させることや、自社の賃金水準に関する情報を派遣元に提供することを新たに義務付けます。また、派遣元には、賃金等の内容について派遣労働者に説明することや計画的な教育訓練を新たに義務付けることとしており、これらを通じ、派遣で働く方の待遇改善にしっかり取り組んでまいります。
専門二十六業務に従事している方の雇用の安定についてお尋ねがありました。
いわゆる専門二十六業務については、これまで期間制限の対象外でしたが、多くは有期の雇用契約であり、雇用契約が終われば雇い止めの可能性がある上、キャリア形成の機会も乏しいという状況にあります。
このため、改正案では、キャリアを見直す機会となるよう、派遣労働者ごとの個人単位で同じ職場への派遣は三年までとし、雇用が途切れないよう、派遣元に対し、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする雇用安定措置を新たに義務付けることとしています。これにより、不安定な派遣就労に固定化するのではなく、雇用を維持しつつ、キャリア形成を図り、雇い止めを未然に防止してまいります。
なお、改正法案の施行に合わせ、全国の労働局に専用の相談窓口を設置し、雇い止めの不安を感じている方にはしっかり対応してまいります。
雇用安定措置の実効性についてお尋ねがありました。
一般に、派遣という働き方は、派遣期間が終了すればそのまま職を失うこともあるなど、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があります。このため、今回の改正案では、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合、派遣先に直接雇用を依頼するなど、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする雇用安定措置を新たに義務付けることとしています。
労働者派遣事業について、現在は約四分の三が届出制となっていますが、改正案では、全て許可制とし、必要な措置を講じない派遣元に対しては厳正な指導等を行い、義務の履行をしっかりと確保してまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(塩崎恭久君) 清水貴之議員にお答えを申し上げます。意見聴取手続の実効性についてのお尋ねがございました。
現行の意見聴取では、一・二%しか延長に反対しておらず実効性がないとの御批判ですが、これについては、延長することに問題がないためにこのような数字になっているという解釈もあると考えております。
また、今回の改正では、過半数労働組合等からの意見聴取に際し、現行制度にはない、事業所内の派遣労働者数の推移等の資料の提供、意見聴取の記録の周知、反対意見があったときの対応方針等の説明などを新たに義務付けることとしておりまして、労使間でより実質的な話合いが行われる仕組みをつくることにより、これまで以上に現場の実態を踏まえた適切な判断が行われるものと考えております。
個人単位の期間制限が派遣労働者のためになる理由についてお尋ねがございました。
現在、いわゆる二十六業務の派遣で働く方であっても、有期の雇用契約で働いておられる方が九割弱となっており、雇用の安定やキャリア形成が十分に図られているとは言い難いものと承知をしております。このため、いわゆる二十六業務の派遣で働く方についても、有期の雇用契約で働く方については、同じ職場への派遣は三年を上限としつつ、派遣元に対して新たに雇用安定措置や計画的な教育訓練等を義務付けていることから、現状よりも雇用の安定やキャリアアップにつながるものと考えております。
雇用安定措置の義務の範囲についてのお尋ねがございました。
今回の改正法案では、個人単位の期間制限の上限に達する派遣で働く方が引き続き就業することを希望する場合には、雇用安定措置として、派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、派遣会社での無期雇用、その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置のいずれかの措置を講ずることを派遣元に新たに法的に義務付けることにより、派遣で働く方の雇用の安定を図ることとしております。
仮に、雇用安定措置の義務の対象となる方に対して、どの措置も全く講じない場合や、新たな派遣先の提供に関して不合理な内容の派遣先の提供しか行わない場合などには、義務を講じたとは認めないこととしております。その場合には、最終的には許可の取消しも含め、厳正な指導や行政処分等を行うことで履行の確保を図ってまいります。(拍手)
─────────────
#32
○議長(山崎正昭君) 辰巳孝太郎君。〔辰巳孝太郎君登壇、拍手〕
#33
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、労働者派遣法改定案について、総理並びに厚生労働大臣に質問いたします。業績が悪いからの一言で切られる、私にも日々の暮らし、家族があり、安定した生活を求めている、ある派遣労働者の声です。今でも多くの派遣労働者が、派遣は低賃金で不安定、法改定で直接雇用の道が閉ざされると怒りの声を上げ続けています。
元々、労働者供給事業は職業安定法第四十四条で禁止されています。これは、戦前、人貸し業の中間搾取が労働者を苦しめ、「蟹工船」にも描かれたようなひどい無権利状態を招いたからです。直接雇用の大原則はこの反省から生まれました。
ところが、一九八五年の労働者派遣法制定以降、当初十三業種に限られていたものが、九九年には原則自由化、二〇〇三年には製造業にまで広げられました。派遣労働者の数は二〇〇八年度に過去最高の三百九十九万人に達し、全世界の派遣事業収益の四分の一を日本が占め、ILOが指摘するとおり、日本は世界最大の派遣市場を持つ国となりました。その結果、リーマン・ショックを理由に次々と派遣切りが行われ、社会問題ともなり、不十分ですが派遣法の見直しも行われたのです。
ところが、本法案は、そんな反省もなく、規制緩和を更に進めるものであります。総理、あなたの目指す世界で一番企業が活躍しやすい国とは、今や四割にまで広がった非正規雇用、低賃金、不安定雇用を更に広げることですか。そんなことをすれば、格差と貧困をより深刻にし、日本の活力を奪い、国内需要までも冷え込ませることになるのではありませんか。お答えください。
現行派遣法には、常用雇用の代替はしてはならないとの大原則があり、派遣は臨時的、一時的業務に限るとされてきました。これは、企業にとって原則一年、最長で三年を超えても必要な業務は派遣ではなく直接雇用すべきだということです。ところが、改定案では、同じ業務であっても、人さえ替えればずっと派遣を使い続けることができます。総理、常用代替の禁止は、この法案によって事実上実効性を失うのではないですか。
また、別の部署に異動させれば永続的に同一の派遣労働者を雇い続けることができます。派遣先にとって、ずっと派遣を使うことができれば正社員を雇わなくていい、まさに正社員を派遣で置き換えることができるのではありませんか。
改定案では、同一事業所での派遣労働者の受入れ上限は三年としています。しかし、過半数労働組合等から意見聴取をすれば三年を超えて派遣労働者を受け入れることができます。政府は、この意見聴取に常用代替に対する歯止め効果があるとしています。しかし、過半数労働組合等が受入れに反対しても、対応方針等の説明を行えば半永久的に派遣労働者の受入れが可能ではありませんか。これのどこが歯止めになるのですか。
政府は、派遣労働者が就業継続を希望する場合は雇用安定措置をとるとしています。その一つが派遣元の派遣先への直接雇用の依頼の義務付けです。本年二月の施政方針演説において総理も、その取組によって正規雇用を望む派遣労働者の皆さんにそのチャンスを広げますと断言しています。
しかし、あくまで依頼の義務付けです。チャンスを広げると言った総理は、一体どれだけの派遣先企業がこの依頼に応えて派遣労働者を正規雇用すると見込まれているのですか。また、正規雇用、直接雇用のために派遣先企業には一体何を義務付けたのですか。総理、具体的にお示しください。
法案では、正社員への道を後押しするため、派遣元に義務付ける教育訓練等によってキャリア形成支援を行うとしています。三年ごとにキャリアの見詰め直しを行うことが処遇の改善に結び付くと言いますが、なぜ派遣労働者だけが三年ごとにキャリアの見詰め直しを迫られなければならないのですか。総理、お答えください。
また、現行法では期間制限のない専門二十六業務の方にも期間制限が課されます。このことで、既に雇用契約の打切りを言明する企業も現れ、ベテラン派遣労働者などを中心に大きな不安が広がっています。
派遣労働者には正社員と同等以上の技術や経験を持つ方がたくさんおられます。正社員を希望する派遣で働く方、この方については道が開けるようにすると繰り返し言うのなら、そういう方々にとって必要なのは、派遣元による教育訓練等の義務化などではなく、派遣先での正社員化、直接雇用の義務化ではありませんか。総理、お答えください。
次に、違法派遣があれば派遣先が直接雇用する労働契約申込みみなし制度の問題です。
このみなし制度は、本年十月一日施行で、専門二十六業務の偽装や期間制限違反など、違法な派遣があれば派遣先に直接雇用を義務付けるもので、派遣切りを契機に二〇一二年に盛り込まれました。総理は、このみなし制度によってどれだけの労働者が直接雇用になると考えていますか。
しかし、本法案が成立し、九月一日施行となれば、専門業務偽装、期間制限違反などはそもそも発生しなくなり、みなし制度は発動されません。これでは、直接雇用の道が開かれるはずだった派遣労働者は救済されないではありませんか。十月一日の施行まで三年も待たせた挙げ句に、違法を合法に変える法改定であり、労働者への背信行為です。
総理は、円滑に施行するためだと言いますが、日本経団連は、二〇一三年の政策提言、今後の労働者派遣制度のあり方についての中でも、みなし制度については、その施行前に制度自体を廃止すべきであると要求をしてきました。本法案は、この声に応えるものにほかならないのではありませんか。また、厚労省は、訴訟につながるおそれを九月一日施行の根拠ともしています。しかし、訴訟につながるような違法派遣の根絶に力を尽くすことこそが労働行政の役割ではありませんか。
政府は、附則において、雇用慣行が損なわれるおそれがある場合は、速やかに新法の規定の検討を行うと定めました。厚労大臣は、雇用慣行が損なわれるとは、正社員から派遣への置き換えが常態化する場合と答弁しました。これは、置き換えが常態化するまでは容認するということですか。厚労大臣、これでは常用代替の禁止原則を堅持することにならないのではないですか。お答えください。
結局、幾ら本法案が、派遣就業が臨時的、一時的なものであると明記しても、また派遣元に雇用安定措置を義務付けても、派遣先に負わせる直接の義務は何一つありません。これは、もはや派遣労働者を保護する法案でも何でもありません。派遣先企業免責・救済法ではありませんか。
政府は、この法案を突破口に、岩盤規制の打破として残業代ゼロ法、解雇の金銭解決など、労働者が持つ当たり前の権利をずたずたにする規制緩和路線を更に進めようとしています。今、政府が行うべきは、直接雇用、正社員が当たり前の社会、欧州では当然の同一労働同一賃金が徹底される社会の実現です。
日本共産党は、安倍政権の暴走をストップするため、そして希代の悪法を三度廃案にするため、全ての労働者とスクラムを組んで闘うことをお約束し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#34
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 辰巳孝太郎議員にお答えをいたします。非正規雇用と格差等についてお尋ねがありました。
政権交代後、有効求人倍率が二十三年ぶりの高水準となるなど、雇用環境が改善している中、最近の非正規の増加については、高齢層やパートなどで働き始める方の増加といった要因が大きく、また、不本意ながら非正規に就いている方は前年に比べ減少するといった状況にあります。派遣で働く方は非正規の六%ですが、今回の改正案は、正社員を希望する方にその道を開き、派遣を積極的に選択する方には待遇の改善を図るものであり、格差と貧困を広げたり、国内需要を冷え込ませるといった御指摘は当たりません。
安倍内閣としては、三本の矢の政策を更に前に進め、経済再生を図る中で、働く方々の雇用と生活の安定を図りつつ、それぞれの選択がしっかり実現できるよう環境の整備に取り組んでまいります。
常用代替とその歯止め等についてお尋ねがありました。
派遣労働については、雇用主責任を負わない派遣先で安易な派遣の利用が進み、正社員から派遣労働者への置き換えが生じることのないよう、これを防ぐことが課題とされてきました。このため、今回の改正案では、派遣先の事業所単位で受入れ期間の上限を三年とした上、延長する場合には現場の実態をよく知る過半数組合等からの意見聴取を義務付け、派遣労働者への置き換えを防ぐこととしています。現場を重視する我が国の労使関係を踏まえれば、派遣先が労働者側の意見を無視して一方的に受入れ期間を延長することは想定しにくいものと考えています。
なお、意見聴取の実効性を確保するため、派遣先に対し、反対意見があったときは事前に対応方針を説明することや意見聴取の記録を周知する義務を新たに課し、労使間で実質的な話合いができる仕組みをつくることとしています。
雇用安定措置と派遣先の関係についてお尋ねがありました。
一般に、派遣という働き方は、派遣期間が終了すればそのまま職を失うこともあるなど、雇用の安定が図られにくい面があります。このため、改正案では、個々の労働者の雇用が途切れることのないよう、派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合に派遣先への直接雇用の依頼などの雇用安定措置を新たに義務付けることとしています。
派遣先における労働者の構成は、景気や技術の進歩、労働者の意向等も踏まえ、経営判断により決定されるものであり、派遣元からの依頼により直接雇用される人数がどうなるかを予測することは困難ですが、正社員への移行を一歩でも前進させるため、これまでになかった仕組みを設けるものであります。
また、派遣先には、直接雇用の依頼があった派遣労働者に対し労働者の募集情報を提供することを義務付けるとともに、その派遣労働者が従事していた業務に新たに労働者を募集する場合には、その方の雇入れを努力義務とし、正社員として雇用する場合のキャリアアップ助成金の活用等を進めることとしています。
安倍政権としては、雇用の安定や所得環境の改善に取り組んでいるところであり、これと併せ、希望する方の正社員化を推進することとしています。
派遣労働者のキャリア形成と派遣先の役割についてお尋ねがありました。
一般に、派遣という働き方は雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があります。このため、改正案では、キャリアを見直す機会となるよう、派遣労働者ごとの個人単位で同じ職場への派遣は三年を上限とした上、派遣元に対し、計画的な教育訓練やキャリアコンサルティングを新たに義務付けることとしており、これまでになかったこうした仕組みにより、派遣で働く方のキャリアアップを支援することとしています。
また、派遣労働者のキャリア形成については、雇用計画の当事者である派遣元が一義的な責任を負うべきものと考えられます。このため、この派遣元の責任を強化し、派遣期間が満了した場合に、派遣先に直接雇用を依頼したり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置を新たに義務付けることとしています。
なお、派遣先に対しても、直接雇用の依頼があった派遣労働者に対し労働者の募集情報を提供するなど、新たな義務を課すこととしています。
労働契約申込みみなし制度についてのお尋ねがありました。
平成二十四年の法改正により、派遣先において、派遣受入れ期間の制限に反するなど違法な派遣の受入れがある場合に、その派遣労働者に直接雇用の契約を申し込んだものとみなす制度が設けられ、本年十月からの施行が予定されています。これは、期間制限違反等を防止する観点から設けられる仕組みであり、この法案成立後も、改正後の期間制限に違反する場合には当然適用されるものです。したがって、みなし制度が発動されないとの御指摘は当たりません。
なお、本制度は違法行為の抑制を目的とする仕組みであることから、その施行後に、どのくらい違法な派遣受入れが行われ、その結果どの程度直接雇用となるかを予測することは困難であります。
また、施行日については、派遣労働者の雇用の安定や保護の強化を図るという改正内容をなるべく早期に実現するとともに、労働契約申込みみなし制度を円滑に施行できるよう九月一日としているものであり、みなし制度を廃止すべきとの要求に応えるものとの御指摘は全く当たりません。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(塩崎恭久君) 辰巳孝太郎議員にお答えを申し上げます。違法派遣の根絶についてのお尋ねがございました。
御指摘のように、違法な派遣の根絶に力を尽くすことは労働行政の重要な役割であると考えております。
違法派遣については、都道府県労働局において派遣元や派遣先に対する指導監督等を実施しており、悪質な事業者については行政処分等の厳しい対応を行っています。これらを通じて、今後とも違法な派遣の根絶について力を尽くしてまいりたいと考えております。
常用代替の防止についてのお尋ねがございました。
今回の改正案では、常用代替を防ぐため、事業所単位で三年という期間制限を設けた上で、三年を超えて派遣で働く方を受け入れようとする場合には過半数労働組合等からの意見聴取を義務付け、反対意見があったときは対応方針等の説明を新たに法的に義務付けることとしております。
その上で、附則第二条第二項では、常用代替が常態化するまで容認するのではなく、常態化のおそれがある場合に速やかに検討を行うこととしたものであり、常用代替の防止の原則は維持することとしています。
以上でございます。(拍手)
#36
○議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。─────・─────
#37
○議長(山崎正昭君) 日程第一 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長大島九州男君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔大島九州男君登壇、拍手〕
#38
○大島九州男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果の御報告を申し上げます。本法律案は、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため、公立国際教育学校等管理事業に係る学校教育法等の特例措置その他の国家戦略特別区域に係る法律の特例に関する措置の追加等を行うとともに、経済社会の構造改革及び地域の活性化を図るため、民間事業者による公社管理道路運営事業に係る道路整備特別措置法等の特例措置その他の構造改革特別区域に係る法律の特例に関する措置を追加しようとするものであります。
委員会におきましては、各特区制度の違いと特徴、公設民営学校を設立する意義と問題点、保育士試験を国家戦略特区に限らず全国で年二回実施する必要性、外国人家事支援人材に対する適切な労働環境の担保等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党の田村委員より反対、生活の党と山本太郎となかまたちの山本委員より反対の旨の意見がそれぞれ述べられました。
次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告いたします。(拍手)
─────────────
#39
○議長(山崎正昭君) これより採決をいたします。本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#40
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#41
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 二百三十六
賛成 百五十九
反対 七十七
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────
#42
○議長(山崎正昭君) 本日はこれにて散会いたします。午前十一時五十一分散会