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2015/08/28 第189回国会 参議院 参議院会議録情報 第189回国会 本会議 第37号
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2015/08/28 第189回国会 参議院

参議院会議録情報 第189回国会 本会議 第37号

#1
第189回国会 本会議 第37号
平成二十七年八月二十八日(金曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三十八号
  平成二十七年八月二十八日
   午前十時開議
 第一 女性の職業生活における活躍の推進に関
  する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第二 個人情報の保護に関する法律及び行政手
  続における特定の個人を識別するための番号
  の利用等に関する法律の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
 第三 瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改
  正する法律案(末松信介君外十一名発議)
 第四 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の
  規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の
  輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする
  貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置
  を講じたことについて承認を求めるの件(衆
  議院送付)
 第五 農業協同組合法等の一部を改正する等の
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員、裁判官訴追委員
  及び同予備員辞任の件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員等各種委員の選挙
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 関口昌一君から裁判官弾劾裁判所裁判員を、脇雅史君から裁判官訴追委員を、石井準一君から同予備員を、それぞれ辞任いたしたいとの申出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(山崎正昭君) 御異議ないと認めます。
 よって、いずれも許可することに決しました。
     ─────・─────
#5
○議長(山崎正昭君) この際、欠員となりました
 裁判官弾劾裁判所裁判員、
 裁判官訴追委員、同予備員各一名の選挙
を行います。
 つきましては、これらの各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することとし、また、裁判官訴追委員予備員の職務を行う順序は、これを議長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(山崎正昭君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、
 裁判官弾劾裁判所裁判員に佐藤正久君を、
 裁判官訴追委員に石井準一君を、
 同予備員に塚田一郎君を、
それぞれ指名いたします。
 なお、裁判官訴追委員予備員の職務を行う順序は、塚田一郎君を第一順位といたします。
     ─────・─────
#7
○議長(山崎正昭君) 日程第一 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案
 日程第二 個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長大島九州男君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔大島九州男君登壇、拍手〕
#8
○大島九州男君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果の御報告を申し上げます。
 まず、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案は、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって豊かで活力ある社会を実現するため、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め、国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、基本方針及び事業主の行動計画の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置等について定めようとするものであります。
 なお、衆議院におきまして、女性の職業生活における活躍の推進は、男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとり行われるべきものであることを明確にするとともに、男女の人権が尊重される社会の実現を目的に追加すること等を内容とする修正が行われております。
 委員会におきましては、参考人から意見を聴取するとともに、行動計画の策定に当たり雇用管理区分ごとに実態把握をする必要性、男女間の賃金格差是正に向けた取組、地方及び中小企業における女性活躍の推進等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了した後、生活の党と山本太郎となかまたちの山本委員より、国及び地方公共団体は、女性の職業生活における活躍を推進するため、職業指導等の措置を講ずるに当たっては、配偶者からの暴力、ストーカー行為その他の事由により女性の職業生活における活躍に支障が生じている場合については、状況に応じて必要な配慮がなされるものとすることを内容とする修正案が提出されました。
 次いで、順次採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し附帯決議を行いました。
 次に、個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案は、個人情報の保護及び有用性の確保に資するため、特定の個人を識別することのできる符号を個人情報として位置付けるとともに、個人情報の復元ができないように加工した匿名加工情報の取扱いについての規律を定め、個人情報等の取扱いに関し監督を行う個人情報保護委員会を設置するほか、預金等に係る債権の額の把握に関する事務を個人番号利用事務に追加する等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、参考人から意見を聴取したほか、財政金融委員会との連合審査会を行うなど、慎重な審議を行いました。
 委員会における主な質疑の内容は、現行の個人情報保護法の問題点及び改正の目的、マイナンバー制度の本格的施行に向けた取組状況、日本年金機構における個人情報漏えい事案への対応状況等でありますが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了した後、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び次世代の党を代表して藤本理事より、特定個人情報の取扱いに係る研修の実施、個人情報保護委員会による検査、日本年金機構に係る経過措置等を内容とする修正案が提出され、これに対し質疑が行われました。
 次いで、討論に入りましたところ、日本共産党の山下理事より原案及び修正案に反対、生活の党と山本太郎となかまたちの山本委員より原案及び修正案に反対の旨の意見がそれぞれ述べられました。
 次いで、順次採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも多数をもって可決され、本法律案は修正議決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#9
○議長(山崎正昭君) これより採決をいたします。
 まず、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案の採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#10
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#11
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十一  
  賛成            二百三十  
  反対               一  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#12
○議長(山崎正昭君) 次に、個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。
 本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
 本案を委員長報告のとおり修正議決することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#13
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#14
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十九  
  賛成            二百十二  
  反対              十七  
 よって、本案は委員長報告のとおり修正議決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#15
○議長(山崎正昭君) 日程第三 瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正する法律案(末松信介君外十一名発議)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。環境委員長島尻安伊子君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔島尻安伊子君登壇、拍手〕
#16
○島尻安伊子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、瀬戸内海の現状等に鑑み、瀬戸内海の環境の保全上有効な施策を一層推進するため、瀬戸内海の環境の保全に関する基本理念を定め、基本計画について記載事項の拡充及び定期的な見直しの明確化を図り、並びに府県計画の策定時における協議会の意見聴取等並びに基本計画及び府県計画の達成に必要な措置に係る地方公共団体への援助について定めるとともに、漂流ごみ等の除去等について定めるほか、栄養塩類の管理の在り方に関する検討等を定める等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、発議者を代表して末松信介君から趣旨説明を聴取した後、埋立ての規制強化の必要性、栄養塩類の減少についての認識等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#17
○議長(山崎正昭君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#18
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#19
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十二  
  賛成           二百三十二  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#20
○議長(山崎正昭君) 日程第四 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。経済産業委員長吉川沙織君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔吉川沙織君登壇、拍手〕
#21
○吉川沙織君 ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件につきまして、審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本件は、北朝鮮への全ての貨物の輸出及び北朝鮮からの全ての貨物の輸入につき、平成二十七年四月十四日から平成二十九年四月十三日までの間、引き続き、経済産業大臣の承認を受ける義務を課する等の措置を講じたことについて、外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づいて国会の承認を求めるものであります。
 委員会におきましては、最近の北朝鮮をめぐる情勢についての政府の対応、対北朝鮮制裁措置の今後の方向性、制裁効果を高めるための省庁連携の必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、採決の結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#22
○議長(山崎正昭君) これより採決をいたします。
 本件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#23
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#24
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十九  
  賛成           二百二十九  
  反対               〇  
 よって、本件は全会一致をもって承認することに決しました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#25
○議長(山崎正昭君) 日程第五 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長山田俊男君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔山田俊男君登壇、拍手〕
#26
○山田俊男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、最近における農業をめぐる諸情勢の変化等に対応して、農業の成長産業化を図るため、農業協同組合等についてその目的の明確化、事業の執行体制の強化等の措置を講ずるとともに、農業委員の選任方法の公選制から市町村長による任命制への移行、農業生産法人に係る要件の緩和等の措置を講じようとするものであります。
 なお、衆議院において、附則に、政府は、この法律に基づく農業協同組合及び農業委員会に関する制度の改革の趣旨及び内容の周知徹底を図る等とする旨の規定を追加する修正が行われております。
 委員会におきましては、富山県において地方公聴会及び現地調査を実施するとともに、参考人を招致してその意見を聴取したほか、安倍内閣総理大臣にも出席を求め、質疑を行いました。
 委員会における主な質疑の内容は、准組合員の事業利用に関する調査と今後の進め方、農協、経済連、全農の組織変更の是非、全国農協中央会の一般社団法人化の是非、全中監査の公認会計士監査への円滑な移行措置、農業委員の選任における透明性の確保、農地利用最適化推進委員の役割の明確化等でありますが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、民主党・新緑風会を代表して柳田委員より反対、日本共産党を代表して紙理事より反対する旨の意見がそれぞれ述べられました。
 討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対して附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#27
○議長(山崎正昭君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。徳永エリ君。
   〔徳永エリ君登壇、拍手〕
#28
○徳永エリ君 民主党・新緑風会の徳永エリです。
 私は、会派を代表いたしまして、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案に反対の立場から討論させていただきます。
 安倍総理は、四月二十九日に行われた米国連邦議会上下両院合同会議において行った演説の中で、この二十年、日本の農業は衰えました、農民の平均年齢は十歳上がり、今や六十六歳を超えました、日本の農業は岐路にある、生き残るには今変わらなければなりません、私たちは長年続いた農業政策の大改革に立ち向かっています、六十年も変わらずに来た農業協同組合の仕組みを抜本的に改めますとおっしゃいました。まるで農業協同組合に問題があって農業が衰えたと言わんばかりであります。
 これまで、国、地方公共団体、農協は、規模拡大や流通の合理化など農政の推進を一体となって行ってきたわけで、その責任を農協だけに押し付けることは間違っています。しかも、政府から提出された改正法案は、在日米国商工会議所や規制改革会議が推し進めようとする、企業と投資家が岩盤規制によって参入できなかった農業に参入し、新たなビジネスチャンスとするための法案であり、農家や農村の活性化どころか、家族経営農家の切捨て、農村コミュニティーの崩壊につながりかねません。
 平成二十四年十二月の安倍政権の発足以降、突然の水田農政の転換、米の直接支払交付金の半減、廃止、史上最悪の米価の下落、衆参農林水産委員会の国会決議に反する交渉内容がメディアにより次々と明らかにされているTPP交渉、そして、今回の改正案は、農協と農業委員会の改革、企業の農地取得に係る農業生産法人の要件の緩和を一体的にセットで行うものであり、農業、農村の現場は先の見えない不安から大変に混乱をいたしております。
 参議院の農林水産委員会における富山県での地方公聴会、二度行われた参考人質疑においても、ほとんどの公述人、参考人がこの改正法案に反対又は慎重な立場で発言をされました。政府が法改正の目的としている農業所得の向上については具体的な方法が明らかにされず、連合会が地域農協の自由な経済活動を阻害しているということについても、そんな事実はないと日本農業新聞のアンケートでも地域農協の組合長さんの九五%が否定しています。政府からも具体的な例示は全くありませんでした。改正法案は、そもそも法改正に必要な立法事実や根拠に欠けます。
 改正法案の内容について、具体的な問題点を指摘いたします。
 第一に、農協の准組合員に対する利用規制につながりかねない規定を設けたことであります。
 改正法案には、准組合員の事業利用に関する規制の在り方について、准組合員へのサービスに主眼を置いて正組合員である農業者へのサービスがおろそかになってはならないとして、五年間の調査と検討を行うとの規定が附則に置かれています。しかも、在日米国商工会議所は、イコールフッティングの観点から、准組合員の利用規制を行うことを政府・規制改革会議に強く要請していた経緯があります。
 しかし、実際に准組合員の利用規制が行われれば、いずれ信用、共済事業が農協から切り離されてしまいかねません。本来、農協が一番やらなければならない営農指導事業の予算が確保できなくなるおそれがあります。また、人口の少ない地方の町では、信用、共済事業、厚生病院、高齢者福祉施設、ガソリンスタンドなど、採算が取れず民間企業がやろうとしない事業を農協が引き受け、地域の生活インフラを支えています。准組合員は、利用規制が掛かるとその事業が利用できなくなってしまいます。
 准組合員も正組合員も法律上は同じ組合員であり、改正案でもそれは何ら変わっておりません。五年間の調査、検討により決定するとされていますが、准組合員の利用規制につながる規定を設けた改正案を認めることはできません。
 第二に、准組合員の利用規制と関連して、農協を株式会社などに組織変更する道を開こうとしていることであります。
 協同組合は、共通する目的のために個人等が集まる営利を目的としない組織です。株主、投資家の利益の最大化を追求する株式会社とはその目的、理念が全く違います。誰も望んでいないのに、何のために組合の事業を株式会社等に変更する規定を置くのか、全くもって理解できません。
 政府は、農協が持つ地域の生活インフラとしてのサービス提供を継続できるようにと、准組合員以外でも利用できる選択肢を増やしたと説明します。しかし、農協が株式会社になれば、採算が取れない事業や支店はいずれ撤退、閉鎖となり、地域の生活インフラが失われてしまうことになります。
 特に、過疎地域などで、農協が運営する厚生病院が組織変更により社会医療法人になった場合、病院を維持していけるのか、医師を確保できるのか、大変に心配な状況です。地方の町村で厚生病院が維持できなくなってしまったら、これは命の問題であります。
 第三に、農業委員の公選制を首長の選任制に変更するとともに、農地利用最適化推進委員を新設しようとしていることです。
 政府は、選任制の下でも農業者等から推薦、公募により候補者を求めるとしていますが、定数を超える候補者がいる場合など、市町村長の裁量の下で恣意的な選任が行われる可能性を排除できません。恣意的な選任が行われれば、農地を守る農業委員会の使命を果たすことができなくなってしまいます。改正法案では、地域の代表性を担保することが明確にされていません。
 また、なぜ農業委員の数を減らし推進委員を新設するのか、その目的も明らかになっておらず、役割分担や両者の連携の在り方も必ずしも明確にはなっておりません。
 推進委員については、八月二十日の委員会で、どんな人が推進委員になるんですかと質問したところ、政府から、農地転用に積極的な不動産デベロッパーや地上げ屋のような方が委嘱される可能性は低いと考えている旨答弁があり、その点について更に質問をすると、実際の選任はそれぞれのところで行うので断言はできない旨答弁があり、推進委員に不動産デベロッパーのような人が委嘱される可能性が排除できていません。
 第四に、農業生産法人の要件を緩和しようとしていることです。
 政府は、構成員要件を緩和しても農業者が議決権の過半数を持つことで農外企業に支配されることはないとしています。しかし、安倍政権では、企業の農業参入を進めようとの姿勢が明確であり、緩和がもう一歩進めば、資本力のある企業が農地を大規模に買い占める事態となる可能性があります。しかも、外国資本による買収も否定できません。企業が農地を所有し、企業が給料を払って農業者を雇い、農業経営を行う。現代版の地主と小作の復活ではありませんか。
 そして、農業に参入しても、もうからなければやめてしまうのが企業であります。農地が荒廃し、我が国が誇る美しい田園風景を壊してしまうことになりかねません。
 以上、まだまだ問題はありますが、改正案への反対理由を述べさせていただきました。
 総理は、昨年一月二十二日のダボス会議で演説をされ、民間企業が障壁なく農業に参入し、作りたいものを需給の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってくる、そうおっしゃいました。
 民間企業の参入障壁は、小規模家族経営農家を守ってきた農業協同組合、農業委員会、そして農地法であり、今回の法改正は、総理や政府がどんなに美辞麗句を並び立てても、これらを弱体化させ、企業参入を促進させることが本当の目的であることは、農業関係者、そして与野党の農林水産委員はみんな分かっています。本当に不安に思っています。
 この法案が成立すれば、農業、農村に企業による競争と効率の市場原理主義が持ち込まれ、家族経営農業や地域コミュニティーの崩壊につながりかねません。日本の農業の未来に大きな禍根を残すことになります。議員各位の心ある判断を願いながら、私の反対討論を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
#29
○議長(山崎正昭君) 儀間光男君。
   〔儀間光男君登壇、拍手〕
#30
○儀間光男君 おはようございます。維新の党の儀間光男でございます。
 維新の党を代表して、ただいま上程されました政府提出の農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案について、賛成の立場から討論をいたします。
 今回の改正法案は、意欲ある農業の担い手がより活躍しやすい環境をつくり出すため、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行うものであり、農業の成長産業化を目指すものでございます。
 農協制度の見直しについては、地域の農協が意欲ある担い手と力を合わせ、創意工夫で六次産業化や農産物の海外への輸出も行い、農業所得の向上につなげていこうとするものであります。
 農業委員会制度の見直しについては、農地利用最適化推進委員の制度を新たに設け、農地中間管理機構の活動とも相まって、農地を集約し、農業の大規模化を進めていこうとするものであります。
 また、農業生産法人制度の見直しは、役員の要件などを緩和することで六次産業化を進めていこうというものでございます。
 これらの改革は、いずれも農業の成長産業化のために必要なものであり、言わば市場競争型の産業政策であると理解をいたしておりますが、私は、本院の農林水産委員会に籍を置いてから、常々、持論として、海外という巨大マーケットがありながら、なぜかしら内向きの農業政策を展開し、ビジネスチャンスを逃していると指摘をしてきた経緯がございます。
 今回の改革で強い農業が実現すれば、六次産業化や優れた国産農産物を海外に輸出していくことも可能となり、現在、カロリーベースで三九%しかない自給率も高めていくことができると考えておるのでございます。
 したがいまして、私は、今回の農協、農業委員会、農業生産法人の改革を通じて、意欲ある農業の担い手が活躍できる環境を整備し、六次産業化や農産物の輸出も可能となるような農業の成長産業化を実現していくことはどうしても必要なことであるという立場であります。
 特に、今般の改正法案は、我が党が基本政策としてうたっている農業改革、成熟国型農業への転換を図るという政策目標とも合致する面がありますので、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案が成立されることによって、我が国の農業が進化を図ることができればと願うものでございます。
 一方で、我が国の耕地面積の約四割は中山間地域であり、こういった地域では、大規模な農業経営といってもこれはなかなか難しく、こうした地域を中心に、我が国の農業を支えているのは小規模ないわゆる家族農業であるというのもまた現実でございます。
 また、中山間地域の農業は、食料の供給のみならず、国土の保全、治山治水、自然環境の保全、里山の景観といった多面的な機能を有しており、これが我が国の誇るべき特徴でもあると考えます。そして、このような多面的な機能を支えているのは家族農業であるとも言えます。
 二〇一四年は国連が定めた国際家族農業年でありました。我が国の農業は、家族農業がその形を変えないまま生産性を向上してきたという世界的に見てもまれな国であり、このことは国連の世界食料安全保障委員会の報告書においても非常に高く評価されているところであります。
 私は、今回の改正法案について、農業の成長産業化の実現のために必要な改革であるという面から賛成の立場でありますが、その一方で、国土を守る、自然環境を保全する、治山治水といった多面的な機能を維持する観点から、中山間地域の農業を守ることもこれまた必要であり、そういった地域において日本の農業を支える家族農業を守っていくための政策も忘れてはならないと考えます。
 農業の担い手を育成し、農業の成長産業化を後押しするための市場競争型の産業政策と中山間地域も含めた農業の多面的な機能を維持するための共同共存型の地域政策とがバランスよく車の両輪として進められていくことが、日本の将来の農業に対して私は最も重要なことであると考えるのであります。
 中山間地の農業の有する多面的機能を維持するための地域政策としては、今回の農協、農業委員会、農業生産法人の改革とは別に、中山間地域等直接支払や日本型直接支払などの政策が進められております。今回の農協、農業委員会、農業生産法人の改革によって、六次産業化や農産物で海外にも打って出ることができるような強い農業をつくる産業政策が強化されることにより、地域政策と産業政策の二つの政策はより力強く推進され、地域農業全体の発展が図られるものと確信をいたしておるのであります。
 なお、今回の改正法案は、農業の成長産業化を後押しする重要な産業政策として期待をするものでありますが、本法案は、衆議院において我が維新の党の提出の修正案により修正されたほか、衆議院農林水産委員会で実に十五項目、参議院農林水産委員会で十六項目に上る附帯決議が付されております。このように異例とも言える多くの附帯決議がなされたことをどう捉えるのか、これはやはり、この法案に対しての、私たち議会を含め、関係者の不安の表れであろうと考えられます。
 本法案が目指す改革を通じて農業の成長産業化を実現するために、政府におかれましては、本法案に対する関係者の不安を取り除くため、現場の関係者に対する丁寧な説明をとことん行っていくことを切望いたしますとともに、政権与党の公明、自民党両党に申し上げます。
 あなた方は、この法案を推進し、賛成するはずの立場でありますが、どうしてその旨をこの本会議で討論し、意見開示をしないのでしょうか。不思議でたまりません。どうぞ、願わくば政権与党として最後の最後までその責任を全うすることを期待申し上げて、私の討論といたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
#31
○議長(山崎正昭君) 紙智子君。
   〔紙智子君登壇、拍手〕
#32
○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農業協同組合等の一部を改正する法律案の反対討論を行います。
 安倍総理は、強い農業をつくる、農家の所得を増やすために農業組織を変えると言われました。しかし、地方公聴会、参考人から出された意見は、不信感、疑問、不安ばかりで、与党推薦の参考人からも賛同する意見は出ませんでした。とりわけ、安倍総理は、農家の所得を増やす改革だと強弁しましたが、米価暴落、農産物価格の低迷に苦しむ農家は、所得が増える改革だとは誰も思っていません。
 私は、二〇〇一年から農水委員会に所属していますが、これほど賛成論が出ない改正案は初めてです。農家から見て異質な改正案は、一定時間審議したからといって納得を得ることはできません。農家を置き去りにした改正案を採択することに強く抗議するものです。
 以下、反対理由を述べます。
 反対する第一の理由は、自主自立が基本である協同組合の原則を踏みにじり、官邸主導の改革を押し付けるものだからです。協同組合は自主自立が基本です。農協組織を改革する必要があるなら、関係者の自主性に任せるべきです。
 質疑を通じて明らかになったことは、農業組織の要望から出た改革ではなく、財界、アメリカの要望に応えた改悪案だということです。地方公聴会、参考人質疑において、JA全中で自己改革案をまとめられたJA富山の会長は、改革先にありき、従来の改革とは全く違うと言いました。同じく、JA全中で自己改革案をまとめられたJA広島の会長は、だまし討ちに遭ったようだと発言しました。日本の農業を担う全国青年協議会の会長は、青年部の意見を聞かず、規制改革会議で勝手に進めてしまったため、不満とか不安が染み付いていると言いました。不信感、怒りは収まっていません。
 何のための改革なのか。それは、参考人にも指摘されたように、戦後民主主義を否定する安倍総理の戦後レジームからの脱却、世界で一番企業が活躍しやすい国にするための改革だということです。誰のための改革なのか。それは、農協金融の規制緩和を求めるアメリカと財界の強い要望に応えた官邸主導の改革だということです。
 今回の改正案に対して、国際協同組合同盟、ICA理事会は、脱協同組合化し株式会社にしようとしている、明らかに協同組合原則を侵害するものと懸念を表明し、必要な改革はJA自ら実施するよう対応を求めました。協同組合の育成に携わり、国際基準を策定している唯一の国際機関であるILO、国際労働機関は、各国政府に、協同組合の自治を尊重すること、自治的、自主管理の企業体である協同組合を政策的、法的に支援することを求めています。自主自立であるべき組織に国が過剰に介入することは、協同組合原則をないがしろにするものであり、断固容認できません。
 また、本改正案は、家族農業と地域を支える総合農協に企業の論理を持ち込み、営利企業化を進めるものとなっています。
 農協の目的から非営利規定を削除し、新たに、農業所得の増大、高い収益性を実現し、営利を追求することを求めています。また、組合の理事の過半数は、認定農業者や販売、経営のプロにすることを求めています。既に株式会社も認定農業者になれますので、企業支配が強まる可能性があります。加えて、農協、全農、経済連の株式会社化を促す規定を初めて導入しました。農協に対する全中監査を廃止し、新たに公認会計士監査、企業論理の監査を義務付けました。
 参考人質疑で、会社法の専門家は、この改正案は会社法に近づけたいという意図がすぐ読み取れると言われましたが、家族農業や地域の支えである協同組合を変質させ、株式会社に近づけるものと言わざるを得ません。
 准組合員の事業利用に規制を掛ける見直し規定も問題です。参考人からは、准組合員は、食と農の理解を広げてくれ、我々を応援してくれる存在だ、我々も今まで以上に恩返しをしなければならないとの意見が出されました。また、五年後の見直し規定の削除を求める強い要求も出されました。
 地域の銀行や商店、病院が減り、農産物の直売所、信用、共済事業、ガソリンスタンド、福祉事業など、農協は農村地域において総合的な業務を行っており、なくてはならない存在です。准組合員は農協経営や地域経済の支え手となっているのです。利用を規制すれば総合農協の経営は成り立ちません。財界や大企業が信用、共済事業をビジネスチャンスとして狙っています。規制先にありき、規制することを法律で縛るのではなく、協同組合の自主性に任せるべきです。
 反対する第二の理由は、農地の番人である農業委員会制度を骨抜きにするからです。
 政府は、農業委員選挙は無投票が多い、農業委員会の活動が評価されていないから公選制を廃止すると言います。しかし、根拠にしているアンケートの回答者は、僅か二百人の大規模農家であることが明らかになりました。また、一九五〇年代にも任命制にする改正案が出されましたが、三年間の議論を経て、当時の農水大臣は、農民の意思と希望を反映し得る公選制の長所、役割を認めたと判断し、公選制を維持したことが明らかになりました。法案提出後の五月、北海道農業会議などは、公選制は農業委員会に不可欠との要望を出しています。まともな議論もせず、公選制は廃止すべきではありません。
 公選制を廃止し、市町村長の任命制に変えれば、恣意的な選任になりかねず、既に現場は混乱しています。また、目的規定から農民の地位の向上に寄与する、業務から農業、農民に関する意見の公表、建議を削除することは、農業委員会の農民の代表機関としての権限を奪い、農地の最適化、流動化のみを行う行政の下請機関に変質させるものです。農業委員は、農家の財産、農地の権利を扱います。この改悪では、地域から信頼され、人と農地と地域を守る農業委員会になりません。
 反対する第三の理由は、農地法の一部改正で農地を所有できる法人の要件を緩和し、企業による農業、農地支配を一層進めるものだからです。
 企業はなぜ農業生産法人に参入するのでしょうか。農業技術と農地を持っていない企業にとって、農家を出資母体として、その農家の土地を使うことで初期のコストを圧縮することができます。食品関連企業は食材調達の安定化を図るために参入しています。また、二〇〇九年の農地法の改正で企業はリース方式で農業に参入することが可能になりましたが、千六十社の株式会社が参入し、既に九十社が撤退したことが明らかになりました。農業と農村地域に与えた影響の検証をすることもなく、企業の参入を更に緩和することを認めるわけにはいきません。
 今、多くの農家は、TPP交渉において譲歩案を提案し、妥結に前のめりになっている政府の姿勢を強く批判しています。政府は、農家の声を束ね、TPP反対を訴えてきた農協組織を政治的圧力で解体しようとしています。
 今回の改悪案は、協同組合の自主性を奪い、家族経営を基本にしている日本の農業と農村の将来に重大な禍根を残すものです。農業組織の解体ともいうべき本法案の採択に強く抗議することを表明して、反対討論とします。(拍手)
#33
○議長(山崎正昭君) これにて討論は終局いたしました。
    ─────────────
#34
○議長(山崎正昭君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#35
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#36
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百三十  
  賛成            百五十四  
  反対             七十六  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#37
○議長(山崎正昭君) 本日はこれにて散会いたします。
   午前十時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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