2015/09/09 第189回国会 参議院
参議院会議録情報 第189回国会 本会議 第39号
#1
第189回国会 本会議 第39号平成二十七年九月九日(水曜日)
午前十時一分開議
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#2
○議事日程 第四十号平成二十七年九月九日
午前十時開議
第一 公認心理師法案(衆議院提出)
第二 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び
派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を
改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第三 労働者の職務に応じた待遇の確保等のた
めの施策の推進に関する法律案(衆議院提出
)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
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#3
○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。日程第一 公認心理師法案(衆議院提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。文教科学委員長水落敏栄君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔水落敏栄君登壇、拍手〕
#4
○水落敏栄君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。本法律案は、衆議院文部科学委員長提出によるものであり、近時の国民が抱える心の健康の問題等をめぐる状況に鑑み、心理に関する支援を要する者等の心理に関する相談、援助等の業務に従事する者の資質の向上及びその業務の適正を図るため、公認心理師の資格を定めようとするものであります。
委員会におきましては、趣旨説明を聴取した後、心理専門職の国家資格化の意義等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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#5
○議長(山崎正昭君) これより採決をいたします。本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#6
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#7
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 二百三十六
賛成 二百三十六
反対 〇
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
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〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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#8
○議長(山崎正昭君) 日程第二 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)日程第三 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案(衆議院提出)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長丸川珠代君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔丸川珠代君登壇、拍手〕
#9
○丸川珠代君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。まず、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法律案は、派遣労働者の一層の雇用の安定、保護等を図るため、特定労働者派遣事業の制度を廃止するとともに、労働者派遣の役務の提供を受ける者の事業所その他派遣就業の場所ごとに派遣可能期間を設ける等の所要の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、参考人から意見を聴取するとともに、愛知県に委員を派遣し、地方公聴会及び現地調査を実施したほか、全ての労働者派遣事業を許可制にする意義、派遣労働者の正社員化に向けた取組、新たな期間制限の在り方と過半数労働組合等からの意見聴取の実効性、派遣労働者の雇用安定措置の在り方、派遣労働者の育児休業取得の促進策等について、安倍内閣総理大臣にも出席を求め質疑を行いましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
次に、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案について申し上げます。
本法律案は、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにすること等により、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を重点的に推進しようとするものであります。
なお、衆議院において、派遣労働者について、派遣先に雇用される労働者との間において均等な待遇及び均衡の取れた待遇の実現を図るものとし、三年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講ずるものとすること等の修正が行われております。
委員会におきましては、発議者及び修正案提出者を代表して衆議院議員井坂信彦君より趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明を聴取した後、雇用形態の相違による待遇格差の現状、労働者の職務に応じた待遇の確保のための具体的な方策、衆議院における修正の趣旨等について質疑を行うとともに、参考人より意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
両法律案について質疑を終局しましたところ、自由民主党及び公明党を代表して大沼みずほ理事より、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について、施行期日を平成二十七年九月一日から平成二十七年九月三十日に改める等の修正案が提出されました。
次いで、討論に入りましたところ、民主党・新緑風会を代表して白眞勲委員より、両法律案及び修正案に反対、維新の党を代表して川田龍平委員より、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案の原案及び修正案に反対、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案に賛成、日本共産党を代表して小池晃委員より、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案の原案に反対、社会民主党・護憲連合を代表して福島みずほ委員より、両法律案及び修正案に反対の旨の意見がそれぞれ述べられました。
討論を終局し、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について採決の結果、本法律案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
次いで、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案について採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、両法律案に対しそれぞれ附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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#10
○議長(山崎正昭君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。石橋通宏君。〔石橋通宏君登壇、拍手〕
#11
○石橋通宏君 民主党・新緑風会の石橋通宏です。私は、会派を代表し、ただいま議題となりました労働者派遣法一部改正案原案並びに修正案及び同一労働同一賃金法案に対し、いずれも断固反対の立場で討論を行います。
今回の労働者派遣法改正案は、そもそも異常な法案です。前回の改正は、たった三年前の平成二十四年。初めて派遣労働者の保護を前面に打ち出して、当時野党の自民党、公明党も賛成して成立し、まだその運用は始まったばかりです。しかも、その最も重要な改定である労働契約申込みみなし制度は、長い準備期間を経て、この十月一日からようやく施行されるところでした。
ところが、安倍政権は、あろうことか、業界団体の規制緩和の要望に応え、昨年、法案を国会に出してきました。二度にわたって廃案になったにもかかわらず、政府は今国会に、ほぼ同じ内容の法案を、しかも施行日を九月一日に設定して出してきました。何が何でもみなし制度の根幹である期間制限違反をなきものにしたいという決意の表れであり、そのことは、九月一日を過ぎた今、施行日を何と九月三十日に修正してきたことからも明らかであります。
労政審で審議すべき政省令事項が四十一項目もあること、さらには、準備と周知のために相当な時間が必要なことを考えれば、円滑な施行は不可能です。現場は大混乱に陥ります。それでも数の力で押し切ろうとしているのです。かつてここまで露骨に、労働者を救済直前に裏切って切り捨てて、違法派遣を使って利益を上げてきたブラック企業を救済する悪法があったでしょうか。
委員会質疑で、塩崎大臣は何十回も答弁不能に陥り、審議をストップさせました。与党自らが修正案を出さざるを得ず、三十九項目にも及ぶ附帯決議が採択されたことからも、本法案がいかに欠陥だらけで廃案にすべき法案であるかは明らかであります。
問題点を挙げれば切りがありませんが、以下、五点に絞り、反対の理由を申し述べます。
第一に、本法案は、派遣の期間制限を事実上撤廃し、これまで基本原則であった常用代替防止原則を有名無実化して、派遣の自由化に道を開き、正社員から派遣への置き換え及び固定化を招くもので、断じて容認できません。
歯止めなどありません。過半数労組代表等が反対しても、聞く必要はなく、受入れ開始時には意見聴取の必要すらないのです。そもそも、期間延長しなければ例外業務以外の一切の派遣労働者を受け入れることができなくなるために、事実上、延長しないという判断は困難なのです。
つまり、事業所単位への改悪によって期間制限は実質的になきものとなり、企業は、経営判断で好きなように正社員を派遣労働者に置き換え、三年ごとに労働者を入れ替えながら永久に派遣を使い続けることが可能になってしまいます。まさにこれは、業界による業界の利益のための法案なのです。
第二に、雇用安定化措置義務は、抜け穴だらけで実効性がなく、派遣労働者の雇用が今まで以上に安定化することは到底期待できません。
政府は、安倍総理を先頭に、繰り返し、正社員化を実現する法案だと宣伝してきました。しかし、これは全くのうそです。法案には、正社員化などどこにも書いてありません。意味のない直接雇用の申入れが雇用安定化措置の選択肢にあるだけで、それすらやる義務はないのです。派遣元事業主は、そもそも本来業務である新たな派遣先の機会提供さえしていればよく、しかも、義務規定の対象者は限定的で、大半は努力規定のみ。かつ、義務規定逃れも簡単にできてしまいます。そんな穴だらけの雇用安定化措置に何の意味があるのでしょうか。
第三に、教育訓練提供義務も、キャリアアップや処遇改善を保障する規定になっておらず、かつ派遣労働者の権利として確保されていないため、実効性がありません。
条文には御丁寧に、派遣就業に必要な技能及び知識を身に付けることと規定されていて、何を提供するかの判断は派遣元事業主に委ねられています。派遣労働者本人の希望や選択を尊重する義務などどこにもありませんし、塩崎大臣も、何をするかは経営者の判断と答弁で認めてしまっているのです。派遣労働者の皆さんが全く期待できないと訴えておられるのも当然のことです。
第四に、この法案では、派遣労働者の賃金アップも処遇改善も実現されず、不合理な労働条件格差も職場差別も野放しのままで放置されるため、労働者に何のメリットもなく、派遣への固定化だけが進んでしまいます。
なぜなら、均衡ある待遇への配慮のみを規定した条文は現行法から全く変更されておらず、派遣労働者の権利を強化する改正などどこにもないからであります。派遣元事業主は今、正社員よりずっと安くて便利で楽ですなどと宣伝広告を打って競争していますが、塩崎大臣は、そんなふざけた広告を禁止すべきという政治的意思さえ示しませんでした。つまり、政府は最初から、派遣労働者の処遇改善も権利や尊厳の保護も本気で実現するつもりなどなかったのです。
第五に、本法案によって、専門二十六業務が一律に廃止され、これまで派遣の中では比較的雇用が安定し、かつ処遇も良かった専門業務の皆さんが、かえって雇用の危機に瀕してしまいます。
既に多くの専門業務の方々が、三年後の契約打切りの通知を受け、衝撃を受けておられます。そもそも労働者派遣制度は、専門職や真に臨時的、一時的な業務に限って例外的に認められるべきものなのです。それを今回、専門業務という区分を撤廃してしまうことは、派遣制度のあるべき姿を根底から覆す大改悪であり、絶対に廃案にすべきです。
以上、労働者派遣法改正案原案に対する反対理由を申し上げました。
なお、修正案についても、施行日を九月三十日に設定した暴挙も含め、諸問題の根本的な解決にはなっていないため、反対です。
また、同一労働同一賃金法案についても、衆議院での修正の結果、派遣労働者への適用に関する規定が、均等ではなく均衡待遇でもよしとされたこと、立法による措置が担保されなくなったこと、かつ、一年以内ではなく三年以内の措置と大きく後退してしまったことなどから、法案の実質的な意義が失われてしまったため、反対です。
同志議員の皆さん、圧倒的多数の当事者の方々が本法案に反対しています。それは、将来を見通せない雇用の不安定さと、頑張っても報われない低賃金と不合理な処遇格差と全く理不尽な職場差別の中で苦しい毎日を過ごし、それでも一生懸命に働いておられる派遣労働者の皆さんです。反対しているのは決して法案の中身を理解していないからではありません。この法案がいかに欠陥だらけで、派遣労働者の権利、地位の向上や雇用の安定にはつながらず、むしろ企業が今まで以上に派遣労働者を雇用の調整弁として自由に使い、正規雇用を減らし、労働コストの削減で利益を出すことを可能にする法案だということを理解されているからこそ反対されているのです。
この法案は、今の派遣労働者の皆さんの希望を奪うだけではなく、これから社会に出る若者や企業で活躍したいと願う女性たちの正社員への希望をも奪い、一生派遣で不安定かつ低賃金の労働に押し込み、一部企業のもうけのために彼らの将来を犠牲にしてしまう大改悪です。
それだけではありません。今後、正規雇用が減り、不安定かつ低賃金の派遣労働が増大すれば、個人消費は一層減退し、貧困と格差が拡大して社会が不安定になり、貴重な人材まで失われ、少子化が加速し、地方経済は更に疲弊します。それがなぜ与党の皆さんに分からないのでしょうか。
労働は商品ではありません。労働者は物ではないのです。労働者の犠牲の上に我が国の発展などありません。派遣労働者を犠牲にした企業の成長などあってはならないのです。世界一労働者が安心して働いて安心して暮らしていける国をつくることこそ私たち政治家の責任であり、私たち民主党は、派遣労働者の皆さんを含む全ての勤労者の皆さんとともに、その実現に向けて全力を尽くしていくことをここに改めてお約束をし、私の反対討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)
#12
○議長(山崎正昭君) 福岡資麿君。〔福岡資麿君登壇、拍手〕
#13
○福岡資麿君 自由民主党の福岡資麿です。私は、自由民主党、公明党を代表して、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論いたします。
労働者派遣制度は、働く人にとっては自由度が高く柔軟な働き方を可能とする制度であるとともに、派遣先企業にとっては専門性のある労働者を臨機応変に活用できるという長所があります。そのため、労働力の需給調整に大きな役割を果たしており、もはや我が国の産業界で欠くことのできない制度となっております。
しかしながら、制度の詳細が分かりにくいという批判もあり、解釈の混乱も見られるのが現状です。こうした状況を是正し、労働者にとっても企業にとってもより分かりやすい制度にするとともに、派遣労働者の保護と雇用の安定を強化しようとするのが本法案の趣旨であります。
私が本法案に賛成すべきと考える主な三つの理由を申し上げます。
第一の理由は、今回の改正が派遣で働く人の待遇改善に資するためであります。
本法案では、個人単位で三年という派遣期間の制限を設けた上で、上限に達する派遣社員が希望した場合には、派遣先企業への直接雇用の依頼、新たな就業機会の提供、派遣会社自身での無期雇用の機会の提供など、雇用を継続するための措置が派遣会社に対して義務付けられます。
これまで、派遣期間終了後の雇用継続を図る義務がなく、派遣で働く人の雇用が不安定となる原因となっていました。本法案はこの点を改善するものであり、義務に違反する派遣会社に対しては、許可の取消しも含む厳しい措置がなされます。
また、派遣会社には、派遣先企業で同種の業務に従事する労働者との均衡を考慮しつつ、賃金を決定し、教育訓練、福利厚生を実施する配慮義務が既に課されていますが、今回の法案では、均衡を考慮した待遇の確保の際に考慮した内容を派遣社員の求めに応じて説明する義務が課されます。これによって、均衡を考慮するという配慮義務がこれまで以上にしっかりと履行されるようになることが期待できます。
さらに、派遣社員のキャリアアップ推進のため、派遣会社に対して、計画的な教育訓練や希望者に対するキャリアコンサルティングを行う義務が課されます。厚生労働省の調査では、派遣で働く人には、将来的に正社員となることを希望する人と派遣のまま働き続けたいという人がそれぞれ約四割います。それぞれの人が自らの希望に応じたキャリアアップができるように支援するのがこの改正です。
派遣先企業に対しては、自社の社員に対する教育訓練を実施する場合に、同種の業務に従事する派遣社員にも教育訓練を実施する配慮義務が課されます。あわせて、社員食堂、更衣室、休憩室などの福利厚生施設を派遣社員にも利用できるようにする配慮義務も課されます。派遣先企業が正社員を募集する場合には、一年以上受け入れている派遣社員に周知する義務も課されます。
このように、本法案は、様々な観点から派遣社員の待遇を改善するとともに、雇用の継続を支援しようとするものであり、派遣で働く人にとって大きなメリットがあると考えます。
本法案に賛成する第二の理由は、本法案が派遣先企業にとってもメリットがあるためであります。
本法案では、これまで分かりにくいとか実態に合っていないと指摘されていた二十六業務の区分を撤廃し、全ての業務に対して同じ派遣期間の制限が設けられます。
これまで、二十六業務は無制限、その他の業務は原則一年で三年まで延長可能というアンバランスな制度でしたが、これが是正されて、より使いやすい制度になります。また、本法案では、事業所単位で三年の期間制限が設けられ、過半数労働組合等からの意見聴取の手続を経て、三年ごとの更新が可能となります。こうした制度改正によって、業務の実態に合わせた、より効率的な派遣制度の活用が可能となります。
今回の改正で、全ての社員が派遣に切り替わるのではないかという批判をする人もいますが、そのようなことはありません。企業にとって派遣社員というのは一般の非正規雇用より割高であり、あえて派遣を使う意味のある業務にしか使いません。実際、我が国の雇用者数は、正規が三千三百万人、非正規が二千万人でありますが、そのうち派遣は百万人で、全雇用者の約二%です。このような派遣が全雇用に占める割合からすると、全て派遣になるということは想定できません。
今回の改正は、派遣で働く人の待遇を改善しつつ、企業にとっても使いやすい制度にするという、非常にバランスの取れたものであると考えます。
私が本法案に賛成する第三の理由は、本法案が人材派遣業界の適正化に資するためであります。
本法案では、これまで届出制と許可制とに分かれていた労働者派遣事業が全て許可制となります。平成二十五年の集計では、届出だけで開業できる特定労働者派遣事業者は全国で約五万七千ありましたが、そのうち実際に人材派遣を行った実績があったのは約二万七千と、半数に満たない数でした。このように有名無実の業者が多数乱立する状況では、事業者の質の確保や派遣労働者の待遇の確保が十分とは言えません。本法案では、人材派遣事業を全て許可制とし、派遣会社が雇用管理を適切に行う能力があるかどうかをチェックします。こうすることで有名無実の派遣会社が乱立する事態が改善されると考えます。
また、本法案では、人材派遣会社を構成する業界団体に対して、派遣事業の適正な運営の確保や派遣労働者の保護等が図られるよう、構成員に対する助言、協力その他の援助を行う努力義務を課します。これによって、業界団体を通じても派遣会社の業務の適正化が図られるものと考えます。
このように、本法案は、派遣社員として働く人、派遣先企業、人材派遣業界の三者にとってメリットのある改正であり、分かりにくいと言われる制度の明確化、運用の適正化に大きく資するものとなっています。
以上が、私が本法案に賛成すべきと考える理由であります。
今回の改正案をめぐっては、派遣労働イコール悪といった感情的な意見であったり、一生派遣といったレッテルにより議論されることがあるのは大変残念でありますが、御参会の皆様におかれては、冷静かつ責任ある御判断をお願いして、私の討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
#14
○議長(山崎正昭君) 川田龍平君。〔川田龍平君登壇、拍手〕
#15
○川田龍平君 維新の党の川田龍平です。私は、維新の党を代表し、政府提出の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案に反対、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案、いわゆる同一労働同一賃金法案に賛成の立場から討論を行います。
二〇一二年三月、前回の労働者派遣法改正の際、私はこの場所に登壇をし、質疑をさせていただきました。その際、私は、労働者の同一労働同一賃金を実現し、派遣労働者が正社員と同等に評価される社会をつくるべきであると申し上げました。また、賃金だけではなく、派遣労働者の健康管理面でも十分な保護が図られるべきだと申し上げました。
あれから三年半、派遣労働者の待遇は一向に改善されず、一時的、臨時的な働き方として正社員への移行が進んだことを示すデータはありません。十分な能力、意欲を持っており、派遣先の正社員と同じ仕事をしていながら、派遣労働者であるということだけに起因して、低賃金、通勤手当がない、さらには忌引さえももらえないなどの劣悪な待遇に置かれ、差別されている派遣労働者がいます。また、派遣先でセクハラ、パワハラの被害に遭っても、間接雇用のために声を上げられない派遣労働者も依然として存在をしています。
我が国の経済が成熟する中、労働市場の実態も国民の意識も大きく変わってきました。労働者派遣法は、国民がライフスタイルに合わせた働き方を選択でき、しかも派遣労働者と正社員との間で均等な待遇がなされる方向に改正するべきです。そして、同一労働に同一賃金が支払われるためには、国による一定の方向付けが必要です。
そこで、私たち維新の党は、派遣労働者も正社員と同じ仕事をしたら同じ賃金が得られるという同一労働同一賃金を実現すべきと考え、昨年来、衆議院においていわゆる同一労働同一賃金法案を提案してきました。しかし、これに対し政府は、日本の労働慣行との違いを理由に、一貫してこの考え方に慎重な姿勢を崩しませんでした。
パートタイム労働者や契約社員については、正社員との均等・均衡待遇が法律に規定されていますが、派遣労働者については、今般の政府提出の改正案をもっても均衡の配慮義務という不十分な内容にとどまっています。また、パートタイム労働者や契約社員についても、近年、法律の規定が整備されたとはいえ、なお実態上の格差が残っており、これを埋める必要があります。同一労働同一賃金法案は、これらの非正規雇用労働者の待遇面での課題に対し、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を推進しようとするものであります。
衆議院における表現の一部修正については、完全に納得できる内容ではありませんが、それでもなお法案の趣旨は変わるものではありません。派遣労働者の待遇について、均等の文言が初めて入ることで改革が一歩でも前に進むことを心から期待するものです。
派遣労働者の同一労働同一賃金が実現すれば、企業は必ずしも安くない派遣を濫用的に利用できなくなり、正社員で働きたい方々にとってはその選択肢が増えることにつながります。また、自ら望んで派遣労働者として働く方々にとっても、その待遇が確保されることにより安心して働くことができるようになります。
日本の雇用慣行に一定の課題があることは多くの国民が実感し、政府もこれを認めています。ワーク・ライフ・バランスを取りつつ労働生産性を上げることが我が国に求められている今日、日本型雇用慣行の利点を維持しつつも、職務で賃金が決まるジョブ型雇用を広め、多様な働き方を認めるべきと考えます。
一方、政府提出の労働者派遣法の改正案については、厚生労働委員会で九回にわたり審議を行いましたが、法の本来の趣旨である常用代替の防止とならないばかりか、派遣労働の濫用につながりかねないなど、本改正案が抱える問題点や矛盾が次々と明らかになりました。
まず、改正案の基となった規制改革会議の提言ですら、個人単位の期間制限では人を交代させることにより永続的に派遣を使い続けることができるという問題があり、これに対処するため、EU諸国のような均衡処遇の原則を導入することや、有期雇用派遣労働者に係る雇用保険料の使用者負担を引き上げることで派遣労働の濫用防止を図ることを併せて検討すべきとしていました。しかし、改正案においてはこのような派遣労働の濫用防止策が取られていません。その理由について委員会で質疑を行いましたが、大臣からは納得のいく説明は得られませんでした。
ほかにも、例えば派遣先への直接雇用の依頼については、派遣元へのメリットに乏しく、派遣先も簡単に受け入れず、実効性が疑問です。また、新たな派遣先の提供という措置は、元々派遣元業の本来業務であり、新たな措置と呼べない、言わば当たり前の行為であって、雇用安定措置の実効性は極めて疑わしいものです。また、正社員化ではなく、派遣就業に必要な技能及び知識を得ることだけを派遣元に求めている教育訓練にしても、さらには派遣元での無期雇用にしても、実効性が低く、長期雇用につながるものとは決して考えられません。さらには、優良な特定労働者派遣事業の許可制への移行に当たって十分な配慮が担保されていないことも問題の一つと考えます。
そして、改正案の最大の問題点は、現在、二十六業務として働いている派遣労働者を雇い止めの危機にさらしてしまうことです。新たな個人単位の期間制限を一律に適用することで、二十六業務として長期間安定して働いてきた方々の雇用の場を失わせることは大問題です。派遣労働者の方々からも非常に多くの不安の声が届いています。このことを制度の見直しに伴う痛みとして看過することはできません。現在、二十六業務として働いている方々の雇用の安定のための特例を求める必要性について、委員会で私は大臣に提案しましたが、受け入れられませんでした。
さらに、添乗員など、独自の労働市場を形成しており、派遣法制定当時から、三十年前、期間制限は必要ないとされてきた業界にも大きな影響を生じさせるなど、極めて乱暴かつ強引な改正です。専門二十六業務一つ一つの多様な実態を十分に把握せず、派遣労働者の声をしっかりと聞いていません。
そして、厚労省が行った専門二十六業務派遣適正化プランについて、どういう効果があって、どういった問題があったか、十分に分析評価ができていないうちにもう別の仕組みに切り替える、朝令暮改の労働行政、これでは、現場で働く方々に対して改正の趣旨について理解を得ることができるとは到底思えません。
日本経済新聞社が八月に行った調査で、派遣社員の七割が反対という結果も出ていることからも、改正案の内容が労働行政が保護するべき現場の当事者のニーズとそごを来していることは明らかです。今回の改正案は廃案とし、現場の実態を踏まえた労働者派遣制度の改正について再度検討をするべきです。
なお、自由民主党及び公明党によって修正された部分についても、議論で明らかとなった改正案の多くの問題点や矛盾点を解消するものではなく、賛成できません。とりわけ、修正された施行日までの日数が極めて短いことは、周知徹底が間に合わず、現場の混乱が予想されます。そもそも、施行日が過ぎても修正しないまま審議打切りの動議で委員会採決に持ち込むなど、修正案は委員長にも提案が遅れ、内容もひどいですが、委員会運営も目に余るものがありました。
以上、政府提出の労働者派遣改正案にどうしても賛成できない理由を申し上げました。
国民のためにならない労働者派遣法の改正案に正義はありません。義を見てせざるは勇なきなり、与党の皆さんも、自らの信念を曲げることなく労働者派遣法と安保法案に対して反対の意思を示していただきたいと思います。
私の討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)
#16
○議長(山崎正昭君) 小池晃君。〔小池晃君登壇、拍手〕
#17
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。私は、会派を代表して、労働者派遣法の一部を改正する法律案について、反対討論を行います。
本法案は、昨年二度も廃案となった上に、衆議院では自公両党が採決を強行して参議院に送付してきたものです。本院の審議でも次々に法案の矛盾と問題点が指摘され、しばしば審議が中断し、九月一日の施行日を過ぎて会期末が迫った昨日の審議でも、新たな疑問と問題点が噴出していました。この審議経過一つを取ってみても、本法案には重大な問題があり、廃案にすべきものだと言わねばなりません。
反対する最大の理由は、一九八五年の労働者派遣法成立以来三十年間、職業安定法第四十四条で禁止された労務供給事業の例外として、臨時的、一時的業務に限る、常用雇用の代替とはしないとしてきた派遣労働の大原則を投げ捨て、その制度的保障だった業務ごとの期間制限をなくし、派遣労働者を切れ目なく受入れ可能としたことであります。
今までの労働者派遣法では、同一の職場で働く派遣労働者のうち、原則一年、最長三年の期間制限を一人でも超えたら、その職場では派遣労働者の受入れはできず、派遣先企業が業務を続けようとすれば、直接雇用労働者を雇い入れなければなりませんでした。
ところが、本法案では、派遣元で無期の雇用契約を結んだ派遣労働者を期間制限の対象から外してしまいました。有期契約の派遣労働者についても、事業所単位の受入れ期間を三年としてはいますが、過半数労働組合等からの意見聴取さえすれば際限なく延長できる仕組みとなっています。個人単位で見ても、有期雇用の派遣労働者は三年を上限としつつ、課を変えれば使い続けられるため、いつでも、どこでも、いつまでも派遣先企業が派遣労働者を使い続けることを可能にしています。
一方で、曲がりなりにも派遣先に課せられていた直接雇用義務はほとんど消滅します。派遣期間抵触日を超えた場合の労働契約申込義務を削除するなど、派遣先を縛る規定はことごとく撤廃され、派遣先企業の雇用責任を免罪するものとなっています。形の上ではみなし雇用制度を残してはいますが、本改定によって実態としてはほとんど適用されなくなります。
政府は雇用安定措置が正社員への道を開くと繰り返しますが、実際には派遣元から派遣先にお願いするだけであり、派遣労働者が直接雇用される保証などどこにもありません。塩崎恭久厚生労働大臣も、雇用されるかどうかは経営判断だと認めざるを得ませんでした。
政府はキャリアアップ措置があるとも言いますが、派遣社員が正社員になれないのはキャリアがないからではありません。正社員よりも優秀な派遣労働者が物のように使い捨てにされているのが実態です。派遣を安上がりな雇用の調整弁とすることを許す法制度にこそその原因があるのであり、実効性のないキャリアアップ措置などは慰めにすらなりません。本法案が常用代替を劇的に拡大する大改悪であることに疑問の余地はなく、断じて認めることはできません。
反対理由の第二は、派遣労働者の待遇を改善するものでもなければ、正社員との均等待遇を実現するものでもないことです。
法案の均衡処遇確保措置には何の実効性もありません。なぜなら、派遣元企業は均衡処遇を考慮した内容を労働者に説明さえすればよく、派遣先企業は、同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金の情報提供、教育訓練、福利厚生施設の利用に関して配慮さえすれば、それが必ずしも実現しなくてもよいという代物だからであります。これでは、派遣労働者の八六%が年収三百万円という低賃金の是正も、正社員との賃金格差解消も、世界では当たり前の均等待遇原則の実現にも程遠いものだと言わざるを得ません。
日本経済新聞社などの調査では、派遣労働者の六八%が、派遣社員の根本的な地位向上にならない、派遣社員が固定化するという理由で本法案に反対しています。正社員になりたい、労働条件改善と安定雇用をと望む派遣労働者の切実な声を踏みにじる本法案は、断固として廃案にすべきものであります。
反対理由の第三は、十月一日から始まるみなし雇用制度を骨抜きにするため、その直前に、なりふり構わず駆け込みで施行させようとしていることであります。
塩崎大臣がみなし雇用は直接雇用に結び付くと認めたように、期間制限違反の労働者が正社員になる道が開かれます。だからこそ、自民党も公明党も、三年前、この制度の創設に賛成したのでしょう。それを今になってやめてしまうのは、労働者と国民への背信行為ではありませんか。この法案が派遣労働者保護法ではなく、派遣企業保護法であることをこれほど露骨に示すものはないではありませんか。
法案の附則九条の経過措置の「従前の例による。」の解釈をねじ曲げ、本法案施行前に派遣契約を結んだ労働者に、みなし雇用制度の対象となるべき専門業務偽装などの期間制限違反があっても適用しないとされたことも重大であります。三年前に成立した法令を前提として契約した派遣労働者には、既にみなし雇用の権利が発生しています。本法案は、実現まであと一歩まで近づいた労働者の権利を新法施行によって奪うという、過去に例を見ない悪辣非道なものだと言わねばなりません。
与党が強行した九月三十日への施行日修正では、到底円滑な施行などできません。仮に成立しても、労働者派遣の仕組みを大転換するため、四十一項目以上の省令、指針を労働政策審議会で検討しなければならず、それを労働者や事業者に周知徹底する期間は僅かしかありません。大混乱を招くことは必至であります。立法府として極めて無責任であり、重大な禍根を残すものであります。
また、与党は、採決直前になって、施行日のみならず内容の修正まで提案し、審議もせずに強行しました。こんなやり方で衆議院に回付することが、仮にも良識の府のやることでしょうか。法案への賛否を超えて、立法府としての責任放棄のそしりを免れない暴挙を認めてよいのでしょうか。そもそも、与党が内容上の修正を求めるという異例な事態は、本法案が欠陥法案であることを自ら示すものにほかならないではありませんか。
以上述べてきたように、本法案は、法案自体も、またその審議経過も理不尽の極みと言うべきものであります。これほどあからさまに、これほど労働者の権利を踏みにじり、これほど骨の髄まで企業側の要求に応える法案を私はかつて見たことがありません。
労働者派遣法を強行し、憲法違反の戦争法案の強行までたくらむ、そのような政治が、今、国民の大きな不安と怒りを呼び起こしています。国会を取り巻く人々の波は日増しに広がり、安倍政治を許さないというデモや集会が連日のように全国各地で行われています。こうした声に耳を傾けようともせず暴走を重ねる政治は、必ずや主権者国民から厳しい審判を受けることになるでありましょう。
日本共産党は、安倍政権を打倒し、国民とともに新しい政治を築き、人間らしい雇用をこの国で実現するため、全力を挙げる決意です。
生涯派遣、正社員ゼロ社会に道を開く改悪派遣法案は、改めて断固廃案にすることを強く強く求めて、反対討論を終わります。(拍手)
#18
○議長(山崎正昭君) これにて討論は終局いたしました。─────────────
#19
○議長(山崎正昭君) これより採決をいたします。まず、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
本案を委員長報告のとおり修正議決することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#20
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#21
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 二百三十六
賛成 百四十三
反対 九十三
よって、本案は委員長報告のとおり修正議決されました。(拍手)
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〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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#22
○議長(山崎正昭君) 次に、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案の採決をいたします。本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
#23
○議長(山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。〔投票終了〕
#24
○議長(山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。投票総数 二百三十五
賛成 百六十
反対 七十五
よって、本案は可決されました。(拍手)
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〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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#25
○議長(山崎正昭君) 本日はこれにて散会いたします。午前十時四十九分散会