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2014/06/12 第186回国会 参議院 参議院会議録情報 第186回国会 法務委員会 第23号
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2014/06/12 第186回国会 参議院

参議院会議録情報 第186回国会 法務委員会 第23号

#1
第186回国会 法務委員会 第23号
平成二十六年六月十二日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十一日
    辞任         補欠選任
     堂故  茂君     森 まさこ君
     柳本 卓治君     馬場 成志君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         荒木 清寛君
    理 事
                山下 雄平君
                若林 健太君
                小川 敏夫君
                真山 勇一君
    委 員
                石井 準一君
                馬場 成志君
                溝手 顕正君
                宮沢 洋一君
                吉田 博美君
                有田 芳生君
                江田 五月君
                前川 清成君
               佐々木さやか君
                行田 邦子君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
       発議者      前川 清成君
   衆議院議員
       法務委員長代理  ふくだ峰之君
       法務委員長代理  西田  譲君
       法務委員長代理  遠山 清彦君
       法務委員長代理  椎名  毅君
   国務大臣
       法務大臣     谷垣 禎一君
   副大臣
       法務副大臣    奥野 信亮君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  平口  洋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       法務省民事局長  深山 卓也君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○会社法の一部を改正する法律案(第百八十五回
 国会内閣提出、第百八十六回国会衆議院送付)
○会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係
 法律の整備等に関する法律案(第百八十五回国
 会内閣提出、第百八十六回国会衆議院送付)
○会社法の一部を改正する法律案(大久保勉君外
 六名発議)
○児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び
 児童の保護等に関する法律の一部を改正する法
 律案(衆議院提出)
    ─────────────
#2
○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、堂故茂君及び柳本卓治君が委員を辞任され、その補欠として森まさこさん及び馬場成志君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(荒木清寛君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 会社法の一部を改正する法律案(第百八十五回国会閣法第二二号)外二案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省民事局長深山卓也君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(荒木清寛君) 会社法の一部を改正する法律案(第百八十五回国会閣法第二二号)、会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び会社法の一部を改正する法律案(参第一〇号)を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○小川敏夫君 民主党の小川敏夫でございます。
 今回の会社法改正案の中で、特別支配株主の株式売渡し請求について疑義がある、欠陥ではないかということでこれまでも何回か質問させていただきましたが、今日はその点に集中しましてまた質問させていただきます。
 私の方の、この改正案に対する、言わばこの仕組みの創設の点につきまして、一つは、他人の財産権である株式を強制的に取り上げることの合理性という問題がございました。そしてもう一つは、より具体的には、強制的に買い取られてしまう売渡し株主ですか、に対して代金の支払が確実になされるというその担保規定がないと、こうした観点から質問させていただきました。
 それで、まず、代金の支払の確実性がない、あるいは売渡し株主が株式売却代金を受け取れない場合が出てくるのではないかということについて、少しケースを想定して質問してみたいと思います。
 例えば、こういうような例があったとします。あるハゲタカファンドといいますか外資グループが、我が国の上場している会社、優良な小型会社なんでしょうね、これに言わば目を付けたかあるいは依頼されたかして、その会社の株式全株を取得しよう、そして、取得した後にそれを、その会社を求める会社に売却して利益を上げようと、このような事業計画で取り組むとします。具体的には、ハゲタカファンドは、自らが主体となるのではなくて、今の事業目的を達成するためだけの目的の子会社を設立して、その子会社においてこの株式の一〇〇%の収集を目指すと、このような想定でございます。
 子会社が一〇〇%の株式の取得を目指す。まず市場である程度買い集める、その次には公開買い付けを行って集めると。それの結果、一〇〇%は集められなかったけれども九〇%は集められたとする。そうしますと、今回のこの規定に従って、一〇%以下の株主あるいは株主たちに対して売渡し請求を行って、この手続に従って全株取得できるわけでございます。全株取得した後、これで一つの事業目的は完成しましたから、その取得した株式を求める会社に売却する、当然代金は受け取ると。
 しかし、受け取った後、それまでの資金は全てハゲタカファンドが出しておったわけですから、代金を全てハゲタカファンドにこれまでの精算として支払ってしまう、その結果、子会社はもぬけの殻になってしまったと。元々その対象会社の株式を取得することだけが事業目的でしたから、この後何の事業をやる予定もないし、全くのもぬけの殻の会社になってしまった、しかし、売渡し株主に対して株の代金が支払われていないというようなことをちょっと想定してみました。
 このようなことは起こり得るんではないでしょうか。
#7
○国務大臣(谷垣禎一君) まず、小川議員がこの問題について非常に詳細な吟味をされましていろんな御検討をされているということを民事局から報告を受けております。この詳細な検討をされていることにまず敬意を表したいと思います。
 それで、今、一つの事例を示されましたが、確かに、今のようなことがどれだけ起こるか分かりませんけれども、可能性としては今のようなことは全くないわけではないだろうと。どれくらいあるか分かりませんが、そういう事例は想定できないわけではないだろうと思います。
#8
○小川敏夫君 想定できないことはないとあっさり言われてしまっても困るんですけれども。
 しかし、売渡し株主からすれば、全く有無を言わせずに株式を取られてしまって代金が入ってこないと、現実には代金の回収ができないというようなことがあり得るとして、それをこの法律の中で対処できないというのであれば、これはやはり法律に欠陥があるということになるんじゃないでしょうか。
#9
○国務大臣(谷垣禎一君) 今の御議論の前提として、まず、代金が支払われなければどうなるのかと。健全性といいますか、きちっと支払を受けられるような配慮というのは法の立て付けとしていろいろしているわけですね。
 そして、確かに特別支配株主が対価を支払わずに、言わば、今の例では、言葉は悪いかもしれませんが、空っけつになっているという状況でございますね。それから、あるいは、似たような事例で、対価の支払前に空っけつになれば場合によっては破産するということも極端な事例としては考えられないわけではないだろうと思います。
 それで、代金が支払われなければ制度としては売渡し株主は売買を解除できるわけですが、この場合も、例えば株が善意の第三者に売られていたりすれば、株そのものは善意取得ということが生じますから、取り戻すことはできないというのはこれは事実だと思います。
 それから、特別支配株主が破産してしまったような場合も解除の効果を破産管財人に主張できないという場合もあり得るだろうと思います。そういう可能性は確かに私は存在するんだろうと思うんですね。だけど、株式売渡し請求については、先ほど申し上げましたように、できる限り代金不払という事態が起こらないようないろいろな配慮はしております。
 それで、その一番の配慮の、何というんでしょうか、中心的な制度は、売渡し株主に対する代金の支払は第一次的には対象会社の取締役がその売渡し請求に対する許可をするかどうかを判断することになっておりまして、その取締役ないし取締役会が持っている善管注意義務は、この法の立て付けから、少数株主の保護といいますか、少数株主の権利に配慮するということが善管注意義務の内容でございます。
 それで、善管注意義務の中身として、やはりいろんなことを配慮しなければならないわけでございますが、例えば今の場合には、外資のハゲタカファンドというようなことを今例として挙げられました。確かに、そういうところであれば果たしてその支払をきちっと確保できるのかどうかというようなことを配慮するのも取締役の善管注意義務の内容であろうと思います。日本の非常に信用のある、日本を代表するような一部上場企業であるならばそういう心配は余りないでしょうけれども、ハゲタカファンドのようなものが支配株主であるような、何というんでしょうか、ところが支配株主として売渡し請求を掛けてくるというような場合には、その取引の、取引というか、支払の確実性が担保できるかどうかということを配慮するのも、何というんでしょうか、善管注意義務の内容であろうと思います。
 それから、一般論になってしまいますが、結果として代金が支払われない場合には、個別解除、売買取引の債務不履行による個別解除というのができるのは大前提でございますが、代金の大部分が支払われないような場合には、取得の無効の訴えによって売買株式の取得を全体として無効にするということもあり得るだろうと思います。
 それで、そういう場合に、取締役が対価の支払の見込みについての確認を怠っていれば取締役に対する損害賠償責任、それから、代表取締役に不法行為が成立するような状況であれば、対象会社自身も代表者の不法行為について損害賠償責任を負うということも考えられると思います。
 ですから、様々な、何というんでしょうか、手法が、まだまだ申し上げるとこれちょっとえらく、全体の保護をする制度を全部申し上げますと長くなりますのでこのぐらいにいたしますが、様々な制度がその場合の救済策として用意されているということは申し上げたいと思います。
#10
○小川敏夫君 まず、対象会社の取締役会の承認ということがチェックということでありますけれども、九割の株を既に支配しておるわけですから、当然、取締役会の構成もその影響下にあると思うわけであります。言わば、例えの言葉は悪いかもしれないけれども、泥棒の手下に泥棒の見張りをさせるようなものだとも言えるんじゃないか。すなわち、取締役からすれば、自分を取締役の地位に据えた人間が支配株主ですから、その支配株主がやろうとしていることについて不承認ということはなかなかしにくいのではないかというふうに思っております。
 それから、チェックするといいましても、例えば代金が確実に支払われるかどうかということをチェックするといっても、支払う意思があるかないかという内心の意思まではチェックできないわけでして、そうすると具体的に資力があるかないかというようなことで客観的な状況で判断するしかないと。
 例えば、私が挙げたような例ですと、ハゲタカファンドは資力がたくさんありますから、その子会社が資力があるということで資金の、預金残高証明書などを持ってくることは大変簡単なものでして、資金があるという、形の上ではそうした代金支払能力があるということを、また実際あるんでしょうね、ファンドという大きな資力があるところが背景にあるわけですから。
 ですから、まず、人的な関係から対象会社の取締役会の承認が効果を発揮するとはなかなか思えないと。それから、対象会社の承認について、承認をできないような事情を発見することも難しいのではないか。あるいは、客観的には承認せざるを得ないような状況を子会社がつくってきたときには全くの無力じゃないかと思っております。
 それから、取締役は善管注意義務があるから、その善管注意義務違反ということで賠償責任を負うというようなこともありましたけれども、しかし、例えば会社の価値が五百億円あれば、少数株主一割、一〇%とすれば五十億円の価値があるわけですが、じゃ、仮に取締役に善管注意義務違反があったとして五十億円の賠償能力が取締役個人にあるのかどうか、恐らくないのではないかというふうに考えますと、やはり対象会社の承認ということは実効性がないんではないかと、このように思うわけですが、いかがでしょうか。
#11
○国務大臣(谷垣禎一君) 今おっしゃった中で、九割を支配している株主がいるんだから、対象会社の取締役は実際上その影響下にあるというふうに小川委員は見ておられる。
 しかし、この制度の立て付けとして、確かに支配株主は大きな力を持っていることは、これは事実でございます。しかし、この制度として、取締役ないし取締役会に許可の承認を委ねたのは、善管注意義務の対象は九割の支配株主にあるのではなくて、一割の少数株主を保護するということに善管注意義務の対象がある。だから、あくまでそこは損害賠償義務を負う。それが十分な資力を持っているかどうかということはまた一つの問題でございますが、今そこはないんではないかとおっしゃいました。これは事実問題になりますね。それで、今のようなことで、仮に取締役会、あるいはそこに代表取締役がいるというようなことになりますと、会社自体の不法行為になってくるような場合も想定し得ると思います。そうすると、当該会社自体が損害賠償責任を負うということになるわけですね。
 小川委員は、支配株主が株を売却した場合のことをおっしゃいましたが、支配株主が売却する以前ですと、当然その支配株主が支払わない場合には債務名義を取れば会社の株に掛かっていくことも、つまり全部十割取得することになりますから、掛かっていくということができるということになるわけですが、売っ払ってしまっているとそれはできないわけですね。しかし、その場合に、取締役の善管注意義務違反、場合によっては故意、過失があって、不法行為があって、そこに代表取締役があるような場合には、会社自体も、何というんでしょうか、損害賠償責任を負うということが、これはあり得ると思います。そういう場合には、そこに債務名義、不法行為責任で掛かっていくこともできるということになると思います。
 これは挙げていけば切りがありませんが、いろんな手法が私は用意されていると思います。
#12
○小川敏夫君 代金が支払われるかどうかということは、判断する上において、子会社の資力はどうかと。じゃ、株の価値が五十億円だと、子会社が百億円の預金残高証明書を持ってきてこのとおり売買代金を用意しているといった場合に、これで支払に不安があるということで、これは取締役会は不承認にすることができるんでしょうか。
 もう既に特別支配株主が少数株主の株を買い取る代金額以上の資金の用意をしているということで、預金残高証明書を持ってきて資力があることを示したと。こうした場合には、もう代金の支払能力がないということで不承認というふうにはできないんじゃないかと思うんですが、これを不承認とするためには、じゃ、どういうことで不承認とするんでしょうか。
#13
○国務大臣(谷垣禎一君) 一番、残高証明書等々できちっと資金があるというのは、これは大事な要素だと思います。
 しかし、取締役の善管注意義務の内容として、実は背後にいる者が、つまり悪名、ハゲタカというふうにファンドもいろいろでしょうけれども、悪名高いかどうかここはなかなかちょっと表現は難しいですけれども、ハゲタカファンドであるとかあるいは外国の資本であったりする場合に、その支払をきちっとできるか担保することは当然取締役の善管注意義務の内容であるというふうに思います。
#14
○小川敏夫君 しかし、内心の意思まで分かりませんよね。この人が本当にお金を払うつもりなのか、お金は持っているけれども払わないで逃げちゃう人なのかというのは、これはそういう内心の意思までは分からない。みんな払うと言うに決まっていますよ、許可を求めてくるんだから。払うと言っている、払うだけの資力もあると、しかし、なおかつこの人は払わないと言うんだったら、それだけの根拠がなくちゃいけない。それはなかなか証明するのは難しいんじゃないでしょうかね。
#15
○国務大臣(谷垣禎一君) 結局、会社法の立て付けというのをどう考えるかということになってくると思いますが、全体の経済取引の言わば生理現象のようなものがまずうまく動いていくということを法は考えなければいけないと思います。そして、やっぱり全体の生理現象とちょっと違うような病理現象というのが確かに出てくることは事実でございます。
 私は、今まで全体の生理現象みたいなもので見ますと、何というんでしょうか、今までの手法でいわゆるキャッシュアウトというものをやってきた例が幾つかございますね。それで、そういうものは、今委員が御心配になったようなことが必ずしも起きていないということは事実だと思います。
 ですから、全体としてはうまく生理現象として回転していくんだと思います。それで、病理現象のようなものが起きてくるのは事実でございますから、それは担保するものを幾つか用意していることは事実でございますけれども、病理現象のところの配慮を余り多くすると全体の生理現象が回らなくなるということがあるのではないかと私は思っております。
 それで、先ほどから申し上げていることは、病理現象的なところにはかなりいろいろな手当てをしているということを申し上げているわけでございます。
#16
○小川敏夫君 かなりいろいろな手当てをしているというのが全然手当てになっていないから、私はその手当てが及ばない例を今挙げているわけですけれども。
 大臣の今の答弁の中で、今までも、キャッシュアウトという言葉で総称されましたけれども、この売渡し請求と同様の効果を発生する制度があって、問題が起きていないというようなお話がありました。私は、それは全株取得条項付種類株式という制度のことだと思いますが、実は、全株を結果的に集めるという意味では同じかもしれませんけれども、少数株主の保護という面では相当に違っております。例えば、全株取得条項付株式、これを、じゃ、手続を少し解析しますと、まず定款変更をしなくてはいけない。その場合に、定款変更に異議がある株主は買取り請求ができるんじゃないでしょうか。
#17
○国務大臣(谷垣禎一君) 確かにおっしゃるとおりでございます。買取り請求ができると、こういう仕組みになっております。
#18
○小川敏夫君 つまり、今回のこの売渡し請求では、代金請求は特別支配株主という、対象会社とは別人格の支配株主にしか請求できないわけです。対象会社に請求する道は何にもないわけです。
 しかし、この全株取得条項付種類株式の手法の場合には、まず、そういう種類株式に定款変更する際に、少数株主は異議があれば買取り請求ということで対象会社に対して株の買取りをする、すなわち代金を対象会社に支払ってもらうという、そういう道を選ぶことができるわけです。これがまず違う。
 それから次に、全株取得条項付種類株式にして、今度はこれを実行する際、これは、会社が全株取得しちゃうと株主が一人もいなくなっちゃうから、物すごく大きな単位株にして、その大きな単位株に満たない株は端株にしてしまうわけです。その端株を言わば会社が売却して、その売却代金を株主に支払うと。その端株を会社が自分で自ら取得すれば、その株式は自己株式になるから、残りの大株主が実質的に一〇〇%持っていることになると。あるいは、端株をその大株主が買い取れば、そのことによってまた一〇〇%になるわけです。
 その端株の売却ですが、端株を売却する際には、価格決定について裁判所が関与するんじゃないですか。
#19
○国務大臣(谷垣禎一君) おっしゃるとおり裁判所が価格を許可するということになっていると思います。
#20
○小川敏夫君 つまり、こちらの株式売渡し請求に関しては、価格は買い取ろうとする支配株主が指定するわけでして、それで、少数株主がその価格に異議があったら、少数株主の方から裁判所に申立てしなさいと。裁判所に申立てをしても別に手続は止まらないから、裁判所の決定が出る前に支配株主が示した価格で取りあえず株式の権利は移転しちゃうわけです。ですから、裁判所のチェックという面において、全株取得条項付種類株式を利用する場合には少数株主を保護する手だてがあったんだけれども、今度のこの株式等売渡し請求についてはそれがないわけです。
 それから、全株取得条項付種類株式について、少数株主の株を端株にしてそれを売却すると。それを売却する事務を扱うのは、これは会社ですね。
#21
○国務大臣(谷垣禎一君) それはそうだと思います。
#22
○小川敏夫君 これ民法の一般理論で、会社は少数株主が持っている株を少数株主のために売却してやるという一つの管理事務を行うわけです。そうすると、これは民法の一般理論として、あるいは、当然その売却代金は少数株主に渡さなきゃならない義務があるわけですよ。当然ですよね。会社は少数株主のためにその株を第三者に売ってやったんですから、第三者からもらった株式代金は少数株主に渡さなきゃならない義務があるわけで、これを渡さないで使っちゃったら横領になるんじゃないですか。
#23
○国務大臣(谷垣禎一君) 横領ないし背任になる可能性は十分あると思います。
#24
○小川敏夫君 つまり、そのことによって少数株主は保護されているわけですよ、代金が。支払わなきゃ、自分の端株を売っ払っちゃった事務を行った会社の人間は刑事事件にも問われるということで、これはそこまでなかなかやるにはいかないと。
 じゃ、翻って、こちらの株式等売渡し請求を見ましょう。特別支配株主が買い取ると言った、売買代金を支払うか支払わないかの単なる一取引関係ですよ。特別支配株主が株を買い取った後に代金を支払わない、これ横領になりません。単なる債務の不履行ですよ。これが犯罪になるためには、初めから代金を払わないつもりであれこれ工作をしてやった場合には詐欺になるかもしれませんが、ただ単にその株式代金を株式を買った後支払わない、売渡し株主に対して株代金を払わないというのは単なる債務不履行ですよ。ですから、実質的に売渡し請求に応じた少数株主はそういった面でも保護されない。
 すなわち、大臣は今までの例で問題が起きないと言っておるけれども、確かに少数株主の株が結局、支配株主なりそういったところに一〇〇%まとめられちゃうという意味では同じ効果は出すかもしれないけれども、しかし、これまでの全株取得条項付種類株式の場合には、まず定款変更の際に株式買取り請求をして、自分の株の買取り者は会社です、株主じゃありませんという選択権があると。それから次に、端株になってその株が第三者に売られた場合には、当然に株の代金は少数株主に支払われるものであって、それを払わなければ、今度は会社のその事務を扱った人間が横領になる可能性があると。これは単なる債務不履行とは違って、相当な言わば株を端株として売っ払われちゃった代金支払を確保するという意味ではかなり強力な保護手段だと思うんです。
 そういう保護手段が伴っている、あるいはその法律の仕組みからそういうふうになっている上でのキャッシュアウトという一つの仕組みであったわけで、今回は少数株主の株を一〇〇%支配株主に集めるといっても、まず、会社にそれを保証してもらう方法、会社に代金を支払ってもらうという方法は何にもないわけですよ、株を買った人間は支配株主という会社とは別人格の人間ですから。その人間が払わなくたって、これは単なる債務不履行ですから、横領にも背任にもならないと。
 じゃ、これまでの全株取得条項付種類株式によるキャッシュアウトの場合には余り問題となるような例が起きてこなかったからといっても、やはり仕組みが違うんです。今回は、そうした少数株主を言わば当然保護されるような、あるいは自分で守る道が閉ざされちゃっているんですよ。何にもないんですよ。だから私は言っているので。今までの例で問題が起きなかったからというのは私は違うと思いますが、いかがですか。
#25
○国務大臣(谷垣禎一君) 今委員が取り上げられた例もいろいろメリット、デメリット、双方あるんだと思います。
 大きな意味でいえば、今回導入する手法も従前使われていた手法も、何というんでしょうか、一〇〇%子会社をつくるというか、そういうキャッシュアウトの大きな意味での共通性はございますが、細部を見れば確かに違いがございます。
 それで、今幾つかお挙げになったのを全部網羅的に私がお答えできるかどうか分かりませんが、全部取得条項付種類株式の場合は間に対象となる会社が入るじゃないかと。その取締役が途中でその金を猫ばばしてしまえば、背任ないしは横領、つまり刑事事件になるという、そういう罰則付きで担保が付いていると。しかし、今回取り入れる株式売渡し請求の場合にはそういう刑事事件にはならないじゃないかと。それはおっしゃるとおりです。
 ただ、逆に言えば、直接、何というんでしょうか、対象会社が当該代金を少数株主に支払わないとか、そういうリスクは、間に入る者がいないわけですから、直接義務を対象者がしょっていると。どちらがリスクが大きいのかというのは、ここはなかなか判断の難しいところじゃないかと私は思います。いろいろな場合でいろんなことがあり得ると思います。
 それから、先ほどおっしゃった中で、対価の適切性を裁判所が入って判断するのと、事後的に対価の決定を求めるような場合では、止まらないこともあって、手続が進んでしまうんじゃないかということをおっしゃったわけです。
 これも考えようでございまして、確かに裁判所が入ることによって対価の適切性というものを担保する仕組みがそこにあることは私は事実だと思います。しかし、いわゆるキャッシュアウトをやっていく過程の中で、そういう、何というんでしょうか、裁判所の許可を求めるというのは相当タイミングが遅れていくということがあるわけです。今回の制度の方が、そういう意味では、健全にいった場合には早く金の受渡しが行われる、価格が決定して対価の支払も早く行われるというメリットがあると思います。それは少数株主にとっても、何というんでしょうか、早く資金を回収できるというメリットがあるわけですね。
 ですから、それぞれの制度、若干違いがございますが、メリット、デメリットというのはそれぞれにあるのではないかと私は思います。
#26
○小川敏夫君 今度の制度を使った方が早くできると。それは早くできますよね。早くできるのはいいけれども、株を強制的に取られてしまう人の代金の支払がなされないリスクが発生してしまってまで、そういうリスクがあることまで背負って早くやる必要はあるんでしょうか。
 例えば、大臣、そもそもこの売渡し請求を導入する、この制度の導入に何か公益性があるんですか。
#27
○国務大臣(谷垣禎一君) 度々、当委員会の御質疑の中でも、どういうことが今度の制度のメリットかということを申し上げました。この間も前川委員にもかなり詳細にお答えしましたので、それを今もう一回引用することは差し控えたいと思いますが、そういうことを通じて全体の経済システムが健全に動いていくというか、何というんでしょうか、適切に動いていくというのは、私は大きな、何というんでしょうか、公益性の内容になるのではないかと考えております。
#28
○小川敏夫君 つまり、今回の制度の導入の効用は、そのことによって企業が長期的視野に立った運営を考えることができると、こういうようなことじゃなかったでしょうか。
 私は、いや、前回も確かに前川委員の質問でこの制度の趣旨を聞きました。甚だ抽象的ですよ。要するに、企業のこれからいろいろ計画を立てるのに、長期的な視野を立てるのにやりやすいからだと。そんな漠然とした、そして企業だけの利益のために個人の財産が強制的に取られてしまうと、しかもその代金が支払われないリスクをその取られてしまう株主側に負わせるというのは、これは制度の在り方として余りにもおかしいんではないかと思いますが、どうでしょう。
#29
○国務大臣(谷垣禎一君) 確かに、いろいろなキャッシュアウトをやるときの事情はそれぞれの企業によって様々でしょうから、抽象的に申し上げると、前回、前川委員にお答えしたようなことになると思います。それぞれの事情はもう少し個別的にいろいろあるんだろうと思いますね。
 それで、今までの過去の例を見ますと、こういうキャッシュアウト等々を行うときはかなり個別的な事情が対外的には公表されているわけでございますので、私はこの前申し上げたようなことが制度の立て方の説明として決して抽象的ではないと思います。現実に行われるときは、それをもう少し個別に敷衍した内容が出てくると思います。
#30
○小川敏夫君 企業の長期的な経営展望と、じゃ、どういう経営内容にするのか、それは企業のケース、ケースでしょうけれども、でも、そういうのを総称して長期的展望と言うんだから、やっぱり抽象的じゃないですか。
 それから、間違いなく言えることは、企業の都合ですよね。企業の都合のために、今までの制度よりも今回の制度の方が早くできると。それ、企業の都合じゃないですか。そのために少数株主の利益が損なわれる、少数株主にリスクが負わされるというのはおかしいですよね。やはり企業の都合でやるんだから手間暇も企業が負いなさい、それに伴うリスクも企業が負いなさいというのが本来の在り方じゃないでしょうか。
#31
○国務大臣(谷垣禎一君) 企業の利益だと、企業の都合じゃないかということですね、分かりやすく言えば。しかし、それは、企業の都合というか、要するに、支配株主であろうと少数株主であろうと、やっぱり企業を健全に動かして、何というんでしょうか、長期的に投資効果が上がるようにというのがそれぞれの株主の考え方であると思いますから、長期的に企業が健全にあるいは好調に運営して投資効果が上がっていくということは、単に企業の都合というだけではなくて、それは株主の、何というか、投資目的にも合致するものだと思います。ですから、問題は、むしろそのときのいろいろな少数株主の利益を保護する制度がどこまで整っているかということになると思います。それで、そこは、先ほど、委員と私の間に若干見方の違いがどうも、こうやっておりますとあるようでございます。
 そこで、結局、企業の都合なんだから企業が責任を取れという趣旨のことをおっしゃいました。恐らく、例えば今までの従来の全部取得条項付種類株式の場合、キャッシュアウトという大きな目的は同じだけれども、今回の場合は背後にある株主であると。それから、全額、ちょっと名前がすらすら言いにくいんですが、全部取得条項付種類株式のときは、その主体になってくるのは当該企業であると。そこは、当該企業に責任を負わせている体制の方が、主体であったり何かの体制の方が結局のところ少数者の保護のために適切だという多分委員の御判断があるのではないかと想像するんですが、私は、確かに、じゃ、当該会社が新日鉄であるとかトヨタであるとかいうことを想定すれば、それは法人の方が、そういう法人は十分資力があって、背後にいる株主より信頼できるということもあり得るかもしれません。
 しかし、やはり背後にいる者も法人である場合もあり得るのだし、法人だから個人だからということで、何というんでしょうか、資力とか資産状況というのは法人と個人で特に区別する理由は私はないのではないかというふうに考えております。
#32
○小川敏夫君 私は、企業の都合でやるんだから、事務も手間も、そしてリスクも企業が負えと、こういった趣旨の質問をしました。
 今の大臣の答弁の初めの方で、いや、企業の都合といったって、企業がそういった発展していけば株主のためになるんだというような答弁でしたけれども、それは全然違いますよ、大臣。だって、少数株主はその企業の株を取られちゃうんだから。少数株主はその企業の株主じゃなくなっちゃうんだから、企業がどんどん発展しようが、全く関係ないですよね。要するに、株主として残った支配株主は、企業がどんどん発展していくならそれは万々歳ですけど。だけど、企業が発展していけば株主もいいでしょうという論理は、私は全く当てはまらないと思いますよ。
 それから、ちょっと何か大臣、法人とか個人とかいろんなことをおっしゃられたんだけれども、じゃ、ここでちょっと気持ちを切り替えて、こういう例をまた考えました。
 ある老舗旅館が地方にどんとあって、大変地方の名士だと。相当な大型旅館で、そこの当主は外見上大変に名士で資産家のように見えると。しかし、昨今に漏れず経営の内情は大変苦しいという大型旅館の会社とその株主である人がいた。苦しんで、その人が副業でラーメンのチェーン店でも始めた。そうしたら、そっちの方はどんどんどんどん発展しちゃって大変に成績が上がったと。そこの株はオーナーが九〇%を持って、あとチェーン店の店長に少しずつ株を持たせたと、こんな例をちょっと想定しました。
 そこへ、ラーメンチェーン店はいいなというので、MアンドAが入って、もっと大手の流通がそのラーメンチェーン店を売ってくださいと言ってきた。ああ、いいよと。じゃ、その売った資金を、大きな資金を苦しい自分の代々やっている旅館営業の方に回そうと思って売ったと。店長は、嫌だと、いや、冗談じゃないよ、自分でこれだけ築いてきたんだから、そんな大手のところの傘下に入れるかと。
 だけど、大手の方は、いや、一〇〇%の株にしてくれなきゃ買い取りませんと。で、ちょうどうまい具合にこの条項があったので使うと。そのオーナーは売渡し請求のこの仕組みを使って、店長が持っている株を、少数株主を全部集めて、それでその集めた代金をMアンドAに来た大手のところに支払ったと。当然、その株の代金はオーナーのところに来たわけです。
 それで、そのお金を、また株の代金をきちんと店長に払えばいいんだけれども、払う前に、いや、もう代々やってきた本業の旅館が苦しいのでそっちの方に回しちゃったと。あるいは、旅館の会社の借入金債務について、当然オーナーは連帯保証しているでしょうから、持っていたところを債権者に差押えされちゃったというようなことで、結局少数株主の方には株の代金は払われなかったと。
 じゃ、そんなのおかしいじゃないかといってオーナーの方に言おうというけれども、オーナーは見かけ上大変な名士で、見かけ上資産家なんだけれども、実は不動産は全部銀行の担保に入っていて、内情は全然すかんぴんに近いというようなことをちょっと想定してみました。
 結局、特別支配株主が見かけ上資産があるようにあっても、実は他に大きな負債を負っているというような場合に、やはり売渡し請求を求められた少数株主は代金を支払ってもらえないようなリスクが生じちゃうんじゃないかと。だけど、これを事前に防止することはできないんじゃないでしょうかねと私は思うんですが、どうですか、こんなような例の場合。
#33
○国務大臣(谷垣禎一君) いろいろ例をお考えになるので、私ちょっと頭の中で十分こなせているかどうか分からないんですが、老舗旅館で苦しいというのは、私の地元でも時々ありそうな事案のような気はいたします。
 ただ、やはりそれは、なかなか老舗旅館で経営が苦しい、実際上資産家に見えても担保をたくさん取られているというようなことは、それはありそうなことだろうと思います。しかし、その場合も、結局、それを売り渡す場合、少数株主に全部自分が取得すると言ってくることに関しては、やっぱり取締役ないし取締役会の善管注意義務が働くわけですね。そのとき、今のような場合ですと、取締役ないし取締役会というものがどういう者で構成されているのかよく分かりませんが、その構成によってもいろんなことがあり得ると思いますが、しかし、そういうような企業ですと、かなり同族会社というような場合が想定されるのかなと。そういう場合、しかし、実際その人たちが善管注意義務を負っていくということに、そういう責任も生ずる、そういうものだからしっかり判断して、そこで機能してもらうことを、会社のガバナンスが働くことをやっぱり制度としては考えているということではないかと思います。
 それから、今のような事例の中で、事前開示された対価の見込みの内容に虚偽とかそういうものがあれば、売渡し株主は差止めもできるという仕組みが入っていたと記憶いたします。
#34
○小川敏夫君 大臣も、そういう中小ですと同族会社が多いと。まあ多いと思うんですよね。ですから、この場合、ラーメンのチェーン会社という会社自体は非常に優良な会社かもしれないけれども、その取締役は特別支配株主本人かその家族か何かがやっていて事実上すかんぴんだというような場合があるわけでして、むしろそういうことの方が多いんじゃないかと。
 ですから、私は、取締役に善管注意義務があるから、それで取締役も賠償責任を負うから大丈夫だ大丈夫だと大臣は繰り返し言われるけれども、まず取締役自身に資力がないんじゃないかと、それから、やっぱり取締役の善管注意義務が発生するというにはそれなりの法律要件がありますから、そう簡単に私はできるものじゃないと思うんですがね。
 ですから、私は、対象会社の取締役に善管注意義務があるからというのは、少しはチェック機能はあるかもしれませんけれども、本質的には取るに足らないものだと思います。どうでしょうか。
#35
○国務大臣(谷垣禎一君) 結局、今のような事例ですと、同族が例えば取締役であったり善管注意義務を負うと。しかし、オーナーそのものもその土地では資産家だけれどもいろんな借財をしょっているというような事例は、現実には企業の価値自体も相当多分経営の過程の中でいろいろあるような事例が多いんじゃないかと思うんですね。だから、その企業価値と切り離して想定しても、ちょっとなかなかどういうふうに御答弁したらいいのかなと思っちゃうようなところも確かにあることはございます。
 しかし、仕組みとしては、そういう仕組みを利用して、会社の資産等々、会社の取締役はやはり資産価値も考えながらやっていくと、こういうことではないかと思います。
#36
○小川敏夫君 例えば、今の例ですよ、だから、旅館は苦しくてもラーメン屋ははやっている、非常に優良会社なんですよ。だからMアンドAに来たわけです。そういう想定なんですけれども。この特別支配株主は、ですから事実上すかんぴんだと、でも代金どうやって支払うのと言われたときに、いや、私が持っている株とそれから少数株主から買い取った株をこういう超優良会社に売るんです、間違いなくこれだけの代金が入りますから、一〇〇%分入りますから、そのうちは一割をお支払いするだけですから、何の支払能力に問題がありませんといったら、問題ないと言わざるを得ないんじゃないでしょうか。
#37
○国務大臣(谷垣禎一君) それはまたいろいろ、今の取締役が承認するときの話ですね。
#38
○小川敏夫君 そうです。
#39
○国務大臣(谷垣禎一君) いや、それですぐ全部、取締役の善管注意義務が果たされたということにはならないのではないかと思います。
 それからもう一つ、今委員の設例を伺っていて、そういう、いろんな問題を指摘されました。それは、従来の全部取得条項付種類株式でやるような場合でも、やはりそういった言わば設例に対する危険性は同じようにあるのではないかなと思います。
#40
○小川敏夫君 それは違うでしょう。
 だって、大臣、従来行われていた全株取得条項付種類株式の方法を想定しますよ。まず、この少数株主の店長は、買取り請求によって優良会社に対して代金を支払う請求をするという道を選択することができるんです、これが第一の一つ。それからもう一つは、会社が店長の少数株式を売った代金については払わなければ横領になるんですよ。これ決定的に違いますよ。この法律は払わなくたって単なる債務不履行で、さようなら、いなくなっちゃったら終わりという話ですから。ですから、決定的に違う。だから、私はしつこく言っているわけです。
 何の手だてもないじゃないですか、こうやって、結局は。もらった代金をこっちの少数株主には払わないで自分の方の借金の方に回しちゃった、あるいは、回す気はなかったんだけど、債権者に差押えされちゃったからどうしようもなくなっちゃったなんというんだったら、違うじゃないんですか、どうしようもないんだから。
 私は、これまでの全株取得条項付種類株式では少数株主が保護されるような仕組みが事実上あったんだけど、今回のこの売渡し請求については全くないから重ね重ね質問させてもらっているわけです。
#41
○国務大臣(谷垣禎一君) 確かに、株式売渡し請求では、少数株主が売買価格決定の申立てをしたような場合でも対価は特別支配株主から支払われることになるわけですね。
 それで、しかし、資力の不安等、今のようなかなり、ほかにぱっと流用しちゃったというようなことも含めて資力の不安等の問題は、これは完全親会社となる株式会社やあるいは支配株主の側で生ずることもありますけれども、対象会社の側で生ずるということも私は十分あり得るんだろうと思います。
 だから、株式買取り請求をした場合、対価の支払対象が対象会社であることが少数株主にとって常に有利だとは言えないと思うんですね。やっぱり、そのとき、その会社会社、その人その人の資産状況等々によって変わってくるのではないかというふうに考えます。
 それから、株式買取り請求は、株式交換の効力発生日の前日、前日でしたか、前日までに行う必要がございますので、株式売渡し請求においても早い段階で少数株主が特別支配株主の資力などに不安を覚えるようなことが出てくる、そういう状況でありますと、そういう状況にもかかわらず対象会社が株式売渡しを承認してしまった、現実に対価が支払われなかったと、この場合には、対象会社の代表取締役の不法行為による損害賠償責任が成立して、対象会社自身も代表取締役の不法行為については少数株主に対する損害賠償責任を負うということは、これは状況によっていろいろでございますが、十分あり得るのではないかなと思います。
#42
○小川敏夫君 ちょっと私の質問に、ぴりっとした直接かみ合う議論じゃなかったけど、でも、大臣がお話ししました、対象会社に買取り請求して代金請求をする場合に常に対象会社がいいとは限らないと。確かにそのとおりですよ。だけど、いい場合もあるんだから、それを選択できる道があるんだと言っているわけです、全株取得条項付種類株式の方法を使った場合には。今回のこの特別支配株主による売渡し請求の場合にはその選択する道すらないと言っているわけです。
 それから、大臣が言われたように、代表取締役が不法行為があればというのは、確かにそういう論理は成り立ち得るかもしれないけれども、それは代表取締役に不法行為責任が認められた場合だけの話であって、だから大臣もいろいろなケースがあると言いますけれども、まさに不法行為が認められた場合にしかできない話であって、全ての場合にそうした保護規定が適用されるわけじゃないわけです。
 今度は、次の、またもう一つ別の事例を言わせてもらいますけれども、ある大変成功した会社を持っている実業家の方がいて、亡くなられたと。相続人は奥さんと子供二人と思ったら、婚外子が一人いたと。そうすると、奥さん五割、子供が二割、二割で、婚外子が一割と。奥さん、どうしてもあんな、私の夫婦生活を、夫婦関係を壊した女の子供になんか絶対に会社の株を渡してやるものかといって子供たちの株を二割ずつ自分に集めて、この状況を使って取り上げてやった。しめたものだと。代金は払わなくちゃいけないけど払わないわよ、取れるものなら取ってみろと。たまたまその奥さんは不動産は子供の名義にしてあって、ほかに目ぼしい財産はないと。じゃ、婚外子の方は、弁護士に相談したんだけど、法律上請求する権利はあるよ、だけど、強制執行して取ろうにも、あの奥さん、どこにお金を持っているのか全然分からないから強制執行しようがないんだよと。
 こんな場合であったらどうしますか。
#43
○国務大臣(谷垣禎一君) 今委員のお話を伺っていますと、今のような、じゃ夫婦関係がどうであって亡くなってどうというのは、あらゆる場合に生ずるんだと思うんですね。今回の事例だけではなくて、いろんなケースに今のようなことは生ずると思います。
 それに対して全部、じゃ個別の対応が可能かというと、実際にはそれは難しいんだろうと思います。それは、ですから一般的な手法として用意されているいろいろな民事訴訟や損害賠償訴訟や、あるいは債務不履行責任を問うというやり方でやっていくというのが、最後はそういう問題になってくると思います。
#44
○小川敏夫君 大臣、そういう争いは一般にはあらゆるものがあると思いますよ。だけど、この法律で何が問題かといえば、一番基本は同時履行が普通なんですよ。物を売るときには代金をいただくと。代金をもらわなければ物は渡さないよというのがこれが全ての基本なんですよ。それがあるから、今回でいえば、株を売る人は代金の取りっぱぐれを自分で守ることができるわけです、金をくれないなら渡す必要ないんだから。
 ところが、この法律は、金もらわなくても法律が強制的に権利を移転しちゃうんですよ。だから問題が生ずるんですね。妻と婚外子の子供のいさかいなんというのはたくさんあるでしょうけど。まさに法律的に強制的に無理やり移転しちゃうと。もしこの法律の規定がなければ、これは、どうしても婚外子の株を取り上げたければ頭を下げてお金払って買うしかないわけで。だけど、しめた、こんな規定があったのかと。それを強制的に取得したと。お金は払えない。なぜ払わないの、払いたくないからだと。それじゃ困るよといったら、いや、困れば困るほどうれしいんだというようなことになったら、それは請求権としては幾らやっても裁判勝ちますよ。勝ったって、そのお金隠されちゃったんだったら強制執行やれない、取れないしね。
 やっぱり根本の問題は、同時履行の抗弁権という、自分で自分を守る手だてをこの法律で奪っちゃった上に、しかし取りっぱぐれを防止する確実な手だてがないからこういう問題が起こるでしょうということを様々指摘しているわけで。
 大臣はいろいろ言う、取締役の承認があるよと。でも、それは確かに役に立つものであることは認めるけれども、決して一〇〇%でもないし、数字的には言わないけど、ごく少ないケースでしか役に立たないと。代表取締役に不法行為があれば、不法行為責任で会社にも行きますよと、そういうケースがあるかもしれないから、それで救済されるケースも少しはあるかもしれないけど、でもそれは少しであって、やっぱり救済されないケースがある。基本的には救済されないケースがかなりあり得るんじゃないかと。
 そうすると、企業の都合でこうした少数株主の株を買い取りやすくするための手続を設けたんだと、そういう企業の都合のために設けたと言いながら、結局は十分な少数株主の方の手だてがないということで度々質問をさせてもらっただけで、それに対して、それをきちんと明快に、ああ大丈夫ですよというこの説明は、もう何回も何回も繰り返したけど、少し役に立つ話しか出ていなくて、大部分、抜本的に役に立つような方法はないので。
 だから、これはやはり、この法律は少数株主の保護ということについての配慮を全く、全くと言うと、じゃちょっとあれだから、ほとんど欠いた欠陥法案じゃないかと私は指摘をしているわけですけど、いかがでしょう。
#45
○国務大臣(谷垣禎一君) 今の小川委員のお話を伺いまして、これは初めからの当委員会のこの法律の議論の言わば対立点ということになるだろうと思いますね。
 結局のところ、民法上の原則として認められている同時履行というものが、今回の制度では認められていない。結局、大量に処理をしたり、あるいは迅速に処理をしたり、そういう意味での柔軟で敏速な企業経営の要請にどのように応えるのか、また、それに対して、委員のお考えは、ちょっと荒っぽいまとめ方をすると、ここまでやるのはやり過ぎだと、まあ単純に言えばそうおっしゃっているように聞こえるわけですね。
 それは、結局、会社経営等々における、先ほど私が申しましたような柔軟、敏速な運営とかそういうものに、先ほどの委員のお言葉を使えば、ある程度の公共性というものをどの程度認めるのかということになってくると思います。そこは多分、委員と私と若干スタンスが確かに違うなと思います。
 その上で、先ほど来私が申し上げているのは、今回の議論でもいろいろ申し上げましたので、全てにわたって申し上げることはいたしませんでしたけれども、少数株主の保護を講ずる手段がいろいろ講じられているんだということを申しました。中身はもう繰り返し申し上げませんが、その中核になっていることの一つは、対象会社の取締役の売渡しの承認という、許可といいますか、そういう仕組みが一つやっぱりあるよと。それで、その周りにいろいろな制度がまたひっついているよということを申し上げたわけでございますので、かなりそこのところは全体の、委員と私との判断というか見方が少し違っているのは事実だろうと思います。
#46
○小川敏夫君 同じことを何回も繰り返してもしようがありませんが、例えば全株取得条項付種類株式によるキャッシュアウトですと、定款変更の際に株式買取り請求をするという場合には会社が責任を負うわけです。それから、今度、端株処理の際に、会社が少数株主のためにその端株を売却すると、その売却代金は正当な売却代金をしっかり取って、それを少数株主に売り渡す責任が会社にあるわけです。だから、会社が善管注意義務を欠いて少数株主に代金を支払えないようなことがあれば、これは会社が賠償責任を負うわけです。
 つまり、明文の規定で、会社が少数株主に対して責任を負いますよという明文の条項は入っていないけれども、事実上その対象会社が少数株主に対して、保証という言葉は使っていないけど、保証に準じた責任を負っているわけですよ。あるいは、この株式代金について実際上払う義務が負わされるケースがあるわけです。
 それで、私は法務省との修正協議の際に、だったら今回もこの強制売買について、対象会社は取締役会の承認をするというだけでなくて、承認した以上、法律上、当然にその株の売買代金の支払債務を保証するという法定保証の規定を設けたらどうですか、そうすれば少数株主のこの代金の請求権は相当程度保全されるんじゃないですかと。会社が保証するということは、私はそれで十分だと思うんです。ただ、株式の価値は対象会社の価値に準じてあるわけですから、対象会社が無価値で資力がないんだったら、そんな会社の株式だって価値がないわけですから。
 ですから、対象会社が保証するということは、私は非常に有効的で十分な少数株主の保護規定になるというふうに思ったので提案したんですけれども、何か私からすれば取るに足らない理由でそれは駄目だと言われたんですけれども。どうでしょう、もう一度、対象会社が取締役会で承認する、善管注意義務を負っている上で承認するというのだったら、承認する以上、責任も持ってこの株の売買代金について法律上当然に保証するという規定を設けて、少数株主の保護をする手だてを設けたらどうですかと私は提案したんですが、法務省の事務方からは断られましたが、大臣、いかがでしょうか。
#47
○国務大臣(谷垣禎一君) 委員との間で民事局、大分いろいろもんでいただいているという報告を受けております。大変そこは緻密にいろいろ委員もお考えになっているというふうに報告を受けております。
 ただ、先ほど、当該会社、取締役の責任、善管注意義務等々である程度、保証ではございませんが、ある程度会社ないし会社の執行者が責任を負う体制はつくってある。しかし、それはやはり全体の会社法システムの中でうまく、それを一歩進めて保証にせよ、法定保証みたいな形にしろというのが委員の御主張ですが、やはりそれは全体の会社法の中の制度とうまく調和するものでないと私は具合が悪いんだろうと思います。
 確かに、委員のおっしゃるような制度を設けるようなことにしますと、売渡し株主が一定程度きちっと保護されることはこれは事実だろうと思います。しかし、会社法は、あくまで対象会社のやっぱり株主と債権者の地位というものは、会社法の理屈の中ではこれは截然と分けております。そして、やはり株主の権利というのは常に債権者に劣後するという形を取っているわけですね。それはやはり会社の制度としては当然そうなければならないものだと私は思いますが、これを保証をするということになりますと、対象会社の株主が債権者と同等の地位になっていくと。これは、ほかにもいろいろ問題点はございますが、やはり会社法の体系の中でそこはちょっと難しいんじゃないかと、民事局から報告を受けまして私もそのように感じております。
#48
○小川敏夫君 大臣、株主が債権者に劣後するというのは会社を清算する場合ですよ。今回は会社が長期的視野に立って経営計画を進めていく上において行うことでしょう。その会社の事業計画の一環として、結局は特定支配株主が少数株主の株を買い取ることを会社が承認するわけです。会社の事業の一環として承認するわけですから、別に会社の清算の場合の優先順位は関係ないですよ、会社のあくまでも事業計画を進める上での必要なことなんだから。私は会社の清算における優劣でもって言うのはおかしいと思いますよ。
#49
○国務大臣(谷垣禎一君) これは清算の場合だけに出てくることではなくて、基本的な制度の在り方として、私は、株主は言わば会社内部の人間ですから、債権者に劣後するということで全ての制度をつくっていくというのが会社法の基本的な仕組みなのではないかと考えております。
#50
○小川敏夫君 時間が来ちゃったんですけど、会社の事業計画の判断の中で、会社がしかし失敗して破綻しちゃえば債権者も債権回収不能になるわけで、成功すれば当然債権は満足な支払を受けられるわけでして、言わば債権者だってそうしたリスクを承知の上で取引しているわけですから。今回だって、会社はそうした債務を負いたくなければ承認しなけりゃいいので、会社は積極的に承認するという、何も自動的に何もしないのに負わされるわけじゃないんだから。会社が、取締役会が承認するという行為があるから、承認する以上、保証しなさいと言っているわけですから。そうした大きな事業計画の中で生ずるこれは一つの債務ですよ。単に株主に対して債権者に優先して配当する云々という、そんな清算の論理じゃないと思いますが、時間がなくなっちゃったので、答弁はじゃ結構ですよ。
 私の質問、これで終わります。
#51
○行田邦子君 みんなの党、行田邦子です。よろしくお願いいたします。
 会社法の審議も大分進んできているわけでありますけれども、今日は副大臣、政務官にも後ほどお聞きしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 まずは支配株主の異動を伴う第三者割当て増資について大臣に伺いたいと思います。
 この度の改正法案の中には、大規模な第三者割当て増資について株主総会の決議を必要とする制度を設けていますけれども、これまで第三者割当て増資については様々な問題点が指摘されてきました。いろんな投資家が損害を受けるといったケースも指摘されてきたわけでありますけれども、まずは大臣に伺いたいと思いますのは、この制度を設けるに至った問題意識を伺いたいと思います。
#52
○国務大臣(谷垣禎一君) 現行法では、公開会社は払込金額が引受人にとって有利な金額である場合、いわゆる有利発行、このいわゆる有利発行でない限りは、定款に定められた発行可能株式総数の枠内で取締役会決議によりましてこの発行を決定することができるという仕組みになっております。それから、発行する株式の割当てにつきましても株主総会決議を必要とはしていない、取締役がこれを決定することができるという仕組みになっているわけですね。
 そこで、支配株主の異動は、これは当然のことながら株式会社の経営にとっては極めて大きな意味を持ちます。会社の在り方にとっては重大な影響を持つものでございますから、新たな支配株主が現れることとなるような株式の割当てについては既存の株主に情報開示がないといけないんじゃないか、情報開示を充実させるとともに株主の意思を問うための手続が必要ではないかという議論が従前からございました。
 そこで、今度の改正法案では、株式割当てによりまして株式引受人となった者が株式の発行の結果として公開会社の総株主の議決権の過半数を有することとなる場合には、株主に対してその引受人に関する情報を事前に開示しなさいと。それから、総株主の議決権の十分の一以上の議決権を有する株主から反対の通知があった場合には、その引受人に対する株式の割当てについて株主総会の決議による承認を要すると、こういうことにいたしまして、従前の指摘されていた問題点を、何というんでしょうか、克服しようということでございます。
#53
○行田邦子君 大臣が御答弁されたように、支配株主の異動を伴う、議決権の過半数を有する株主が異動する、変わるということは、これは株式会社にとっては大変に大きな影響を及ぼすことだと思います。にもかかわらず、これまでの会社法の規定によりますと、既存株主の意見を聞く機会もなく、また反対といって異を唱える機会もなかったということであります。
 そこを問題を解決しようということでありますけれども、確かにそれはそのとおりだと思いますが、それだけではなくて、既存株主の持っている株の希薄化という問題も指摘をされているところであります。
 例えば、東京証券取引所におきましては、もう既に二〇〇九年からの規程によりまして、発行済株式に係る議決権の総数の二五%以上を発行するような増資を行う場合については株主総会を経るか、あるいは第三者の意見を聞くというような規程になっています。また、欧米などでは、実質的には、増資を行うときには株主総会の決議が必要であったりとか、あるいは一定以上の希薄化がなされる場合には、やはりこれも株主総会の決議が必要であるというような運用になっているわけでありますけれども。
 そこで局長に伺いたいと思うんですけれども、今回のこの新しい制度におきましては、支配株主が異動するような、そのような大規模な第三者割当て増資を行う場合には規定が設けられていますけれども、一方で、いわゆる希薄化、発行済株式総数の一定割合以上の発行を基準とするような、そのような規定を設けなかった理由は何なんでしょうか。
#54
○政府参考人(深山卓也君) 今委員から御紹介があったとおり、東証のルール、規制では、既に二〇%以上の、二五%ですか、量の募集株式の発行をするときには株主総会の決議あるいは第三者の意見の入手というのが必要とされているところです。
 ただ、今回のこの制度は、先ほど法務大臣から御答弁があったとおり、募集株式の発行のうち支配株主の異動があるもの、これが類型的に公開会社の経営の在り方に極めて重大な影響を及ぼすと、これまでの制度ではその場合でも別に株主総会決議は不要でしたけれども、この場合について、株主に対する情報開示の充実と、一定の場合の既存株主の意思を問うという制度を設けたものでございます。
 つまり、規律の対象となる支配株主の異動を伴う株式の発行の範囲というものをどう定めるかという議論になりまして、客観的、形式的な基準によって定めるべきであるということから、単に発行済株式総数の一定割合以上の株式が発行されたというだけでは、支配株主の異動が生ずる場合もあれば生じない場合もございますので、その委員が御指摘のような発行済株式総数の何十%という基準を取らずに、支配株主の異動を伴う場合に限定をする趣旨で引受人の議決権の保有割合が総株主の議決権の二分の一を超えることとなる株式の発行について対象を限定したと、こういうことでございます。
#55
○行田邦子君 今局長が、単に発行済株式総数の一定割合以上の増資を行うというだけではというような御答弁されましたけど、それ自体も私は、一定割合以上の増資ということであれば、これは既存株主にとっては影響があるというふうに思っておりますので、今回の改正法案の中には支配株主の異動を伴う場合に限っての制度でありますけれども、今後も一定割合以上の希薄化率の場合についての規定というのを検討すべきであることを申し上げておきたいと思います。
 そして、この新しい第三者割当て増資に関する規制なんですけれども、例外規定が設けられています。二百六条二の四なんですけれども、当該公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため緊急の必要があるときはこの限りではないというふうになっています。会社の存立を維持するため緊急の必要があるときは例外というふうになされているわけでありますけれども、具体的にどのようなケースが想定されるのか、またその緊急性を証明するためにはどのような資料を示す必要があるのか、お答えいただけますでしょうか。
#56
○政府参考人(深山卓也君) まず、前者の方の具体的にどういう場合のことを言っているのかということですけれども、総株主の議決権の十分の一以上の議決権を有する株主から反対の通知があったときは総会の決議による承認を得るというのが原則とされているわけですけれども、当然のことながら、株主総会を開催するためにはある程度の期間が必要になります。総株主の議決権の十分の一以上の議決権を有する株主から反対の通知があったので総会の決議を常に要するということにしますと、公開会社が経済的に窮境にある場合、必要な資金調達が間に合わずに倒産をしてしまうと。倒産してしまいますと、かえって株主の利益を害するということになるおそれがございます。そこで、委員が指摘された二百六条の二の第四項ただし書では、当該公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため緊急の必要があるときに反対通知があっても総会決議による承認を要しないという例外を設けたものでございます。
 こういった趣旨ですので、具体例としては、資金不足によって倒産の危機が迫っていると、こういう状況にある場合が典型例でございます。
 また、この緊急の必要性というのは一体どうやって立証するのかというお尋ねでした。これは、判断するのは公開会社の取締役が判断をすることになりますけれども、この証明の必要が生ずるのは株式発行の差止め請求がされた場合です。つまり、総株主の議決権の十分の一以上の議決権を有する株主から反対通知があったにもかかわらず公開会社が株主総会の決議を経ないで株式の発行をしようとするときには、それによって不利益を受ける株主は差止めの請求をすることができます。
 この差止めをめぐる裁判、これは保全処分、仮処分になることも多いと思いますが、の裁判手続の中で公開会社の側は緊急の必要性があったから総会決議は飛ばしたんですということを裁判所に対して主張を立証していくと。その際の証拠として考えられるものは、例えば、その財務に関する資料ということになりますので、貸借対照表、損益計算書あるいは資金繰り表といったようなものになると思われます。
#57
○行田邦子君 私は、例外規定を設けたことは理にかなっているとは思うんですけれども、ただ、例外規定の解釈が曖昧であったりとか、また拡大解釈をされることによっての運用がなされると、この制度自体の意味がなくなってしまうのではないかなということを危惧しております。実際に、第三者割当て増資で過去問題になったケースとしては、資金繰りが厳しいからということで大規模な第三者割当て増資をして、そのことによって、結果的に既存株主が損害を被るといったケースも問題になったわけでありますので、この例外規定の運用をしっかりと行っていただきたいと思います。
 それでは、次の質問なんですが、平口政務官に伺いたいと思います。組織再編等の差止め請求制度についてでございます。
 組織再編等の差止め請求なんですけれども、これまでは、会社法では略式組織再編については株主の差止め請求権が規定されていました。会社法上に規定されていました。けれども、通常の組織再編については株主の差止め請求権が規定されていなかった。それを今回規定しようとしているわけですけれども、なぜこれまで通常の組織再編においては規定してこなかったのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
#58
○大臣政務官(平口洋君) お答えをいたします。
 総株主の議決権の十分の九以上を有する株主との間の組織再編をこれを通常、略式組織再編と、このように言っておりますが、委員御指摘のとおり、現行法では略式組織再編については差止め請求を認めており、それ以外の通常の組織再編についてはこのような規定はないと、こういうことでございます。
 これはなぜかというと、略式組織再編におきましては被支配会社の株主総会の決議を要しないことから、被支配会社の少数株主にとって、株主総会決議の取消しの訴えを提起することによって組織再編の効力を争うということができないという、これに対しまして、通常の組織再編の方では株主総会決議が必要とされていることから、株主総会決議の取消しの訴えを提起することによって再編の効力を争うことができると、こういうことからでございました。
 しかしながら、通常の組織再編においても、それが法令、定款に違反する場合に株主に大きな不利益を与えるおそれがあることは略式組織再編と同様でございまして、決議の取消しの訴えによる事後的な救済方法では一旦は株主に不利益が生ずるような事態は避けられないということでございます。そしてまた、事後的に組織再編の効力が否定されるということは法律関係を不安定にすると、こういうふうなおそれもある、こういうことでございまして、改正法案では、法令、定款違反の組織再編によって株主が受ける不利益を事前に回避する手段としてこのような組織再編の差止めを株主が請求することができるというふうに明文の規定を設ける、こういうことにしたものでございます。
 以上でございます。
#59
○行田邦子君 ありがとうございます。
 略式組織再編については株主が株主総会において意見を述べる機会がないから、それで会社法においてこのような差止め請求権を認めているということで、一方で通常の組織再編については株主総会で株主は意見を述べることができるので会社法上規定してこなかったと。けれども、例えば法令違反やまた定款違反がある場合等、分かっているにもかかわらず差止め請求ができないというのは、これは理にかなっていないということでの今回の改正法案というふうに理解をいたしました。
 それでは、ちょっと時間も残り僅かですので、次の質問、一問飛ばさせていただきたいと思います。
 社外取締役の選任の義務付けについて伺いたいと思います。参議院の法案提出者に伺いたいと思います。
 この義務付けなんですけれども、これについて様々な意見があるわけでありますけれども、会社法で規定するのではなくて証券取引所の上場規程で義務付けることで十分でないかと、それが筋ではないかといった意見をなされる方もいます。それについてどのようにお考えでしょうか。
#60
○前川清成君 ありがとうございます。
 まずは、会社の機関設定という会社の最も重要な事項ですから、法律で定めることは当然だろうと思います。
 それと、おとついの出入国管理法に関する質疑でも申し上げたんですけれども、日本の会社もアメリカやそれぞれの国に進出する、海外の国も日本に進出してくるわけです。そんな場合に、日本の会社に関するルールが会社に関するルールを定めてあるであろう会社法を見ても分からないと。場合によっては法務省の通達を見ないといけない、場合によっては判例を調べなければいけない、場合によっては上場規則を調べなければならないとなりますと、それはやっぱり日本の市場というのは閉ざされた市場だというふうな評価を受けてしまって、私は、海外からの投資を呼ぶことはできない、やっぱりグローバルな社会にあっては世界の国々に対して日本の会社に関するルールは会社法でお示しする必要があると、そんなふうに考えております。
#61
○行田邦子君 日本の会社を規定するのは、それはしっかりと誰が見ても分かるように法律で規定すべきだという法案提出者のお考え、よく分かりました。
 それでは、もう一問質問させていただきたいと思います。
 社外取締役の義務付けについて否定的あるいは消極的な方からよく意見がなされるんですが、人材の確保が難しいと、だからこれは義務付けというのは難しいという意見がなされますが、それについて法案提出者はどのようなお考えでしょうか。
#62
○前川清成君 この点は五月十三日の当委員会における参考人質疑で東京証券取引所の静さんがおっしゃっていたんですけれども、全国に上場会社が三千四百ある、つまりは三千四百人の社長さんがいて、この三千四百人の社長さんもいつかは退任をされると。ですから、人材としては十分だし、それに対するマッチング、これをやれば供給源が足りないということはないということをおっしゃっておられました。
 それともう一つ、私は今から二十五年前に弁護士になったんですが、その当時弁護士は一万三千八百人でした。現在三万三千六百人おります。公認会計士さんも平成二年当時一万一千四百人でしたが、現在三万三千人いらっしゃいます、ごめんなさい、これは公認会計士さんと会計士補さんの人口であります。
 弁護士や公認会計士に会社のもうかる仕組みが分かるのかというふうな御意見もあろうかと思いますが、社外取締役の議論が何で出てきたかというと、例えばオリンパスであったり、あるいはエリエールであったり、あるいは西武であったり、これ枚挙にいとまがないんですが、粉飾決算が行われている。日本の上場会社の会計、公開されているのと中身がえらい違うやないかと。その結果として、海外の投資家から信頼をなくしてしまった。
 この趣旨から考えますと、例えば弁護士であれば、その会社にしがみつかなくても食べていける、つまりは不正をただすことができる。逆に、その会社にしがみついて不正を隠蔽してしまうと、弁護士の資格を失ってしまう。それこそ元のもくあみもなくて食べていけなくなる。ですから、私は、弁護士や公認会計士というのは社外取締役の供給源として極めて重要ではないかと、こんなふうに考えております。
#63
○行田邦子君 ありがとうございます。
 実は、つい先日なんですけれども、私のもう昔からの知り合いが、今度一部上場企業の社外取締役になるということでした、銀行の頭取をなされていた方なんですけれども。確かに、こういう、私よりもう大先輩なんですが、人材というのは社外取締役に適任だなということを実感いたしました。御本人もそのことに気付いていなかったようなんですけれども、まだまだ社外取締役としてしっかりと働ける方というのが、人材が日本にはいるというふうに私も確信をしております。
 そこで、最後の質問なんですが、副大臣に伺いたいと思います。副大臣の企業経営の御経験からも伺いたいと思いますけれども、この度の議員立法では社外取締役選任の義務付け、そして閣法におきましては、これは義務付けにはなっていませんけれども、大きな流れとしては日本企業において社外取締役を置いていくという方向になっていくかと思います。そうすると、日本の企業の取締役会の在り方というものも変わってくるかと思っております。
 これまでは内部の、社内の人間が業務に精通していて、そこから取締役に上がっていくと。取締役会の機能というのは主に細かな業務執行の意思決定機関であったと思います。ところが、外部の目線、外部の視点といったものを重視される社外取締役を置くと、そこに求められていることというのはやはり執行側をしっかりと監督するという機能ではないかなというふうに思っているんですけれども、副大臣はどのようにお考えでしょうか。
#64
○副大臣(奥野信亮君) 私の経験も含めて申し上げさせていただきますと、今、行田委員がおっしゃったこと、まさにそのとおりだろうと私は思っております。
 従来の取締役会というのはどういう役割を持っていたかといえば、業務執行機能を果たすということが一つ、それからもう一つは、代表取締役の、何というんですか、判断をきっちりチェックするという機能を持っていたはずです。しかし、取締役に上げてもらったのは代表取締役に好かれてというか認められて上げてもらったわけですから、取締役は代表取締役に対して物が言えないというのが日本の企業の中の一つの流行といいましょうか、そんなことでありました。
 しかし、それではやっぱり駄目なんだということでだんだん世の中が変わってきて、取締役と業務執行を分けようよと、こういうことになってきたわけでありまして、業務執行と取締役を分けて、業務執行は業務執行の方がやりなさいと、取締役は業務執行を監査、監査と言ったら悪いかもしれませんが、要するに業務執行の妥当性をチェックしてくださいと、こういう機能分担になりつつある過程だろうと思います。
 ですから、取締役会の機能というのは業務執行の妥当性をチェックする、そしてコーポレートガバナンスをしっかりと根付かせるんだと、こういう役割を持っているんだろうと思います。ですから、理想的にいうと、私は取締役というのは社外取締役がいいと思います。最近も株主総会通知がたくさん来ていますけれども、それを見ますと、やはり今おっしゃったように銀行の代表取締役経験者が社外取締役に入っているというケースもたくさんあります。ただし、今、前川さんが言われたように、弁護士だ公認会計士だというところについては、ただ肩書を持っているからそれを入れるのがいいんだというふうにはならないと思います。
 そういったことを含めて考えながら、時間を掛けながら、この日本の草食人種にふさわしいやり方というのをこれから進めていくには、一気に社外取締役を入れるんじゃなくて、徐々にそういう雰囲気をつくり、そういう制度をつくり上げていくという方が妥当ではないかなと、私はそう思っております。
#65
○行田邦子君 この度の会社法の改正が是非、日本株、日本市場への信頼、投資家からの信頼を更に得る、そしてそのことが日本経済を更に元気にしていくことにつながるよう期待をいたしまして、私の質問を終わります。
#66
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 会社法の改正案につきまして、五月の十五日それから五月の二十日の質疑で私は、略奪的ファンドと会社法の規制について、あるいはステークホルダーの利益保護の枠組みを構築すべきではないかという趣旨の質問をさせていただきました。つまり、不公正ファイナンスとか略奪的ファンドと呼ばれるそうしたやからが、我が国で上場企業から第三者割当て増資を引き受けて企業の支配権を握って、その企業から資金を吸い上げるといったケースが増えている、深刻な事態をもたらしているという中でこの規制をどう考えるのかという問題です。
 そこで、今日は第三者割当て増資について少しお尋ねしたいと思うんですけれども、改正案の二百六条の二で、この第三者割当て増資に当たっての既存株主保護の規定が新設されるということになっています。これは、ちょっと簡潔に言いますと、公開会社が第三者割当ての増資を行うときに、募集株式の引受人が全ての株主の議決権の二分の一を超えるということになるような募集を行う、そのときには、株主に対する通知や公告などの情報開示、そして一〇%以上の株主が反対するという場合には株主総会の決議による承認を必要とする、そういう趣旨の規定なんだろうと思うんです。
 そこで、まず民事局長にお尋ねしたいのがこの要件なんですね。そういう第三者割当てによる新株発行を行った、増資を行った後に二分の一を超える株主が生まれるといいますか、それが第三者になるという場合に限るんだという、この二分の一を超えるという基準にしたのはなぜなんでしょうか。
#67
○政府参考人(深山卓也君) まず、現行法の立て付けから御説明をしたいと思いますが、現行法におきましては、もう御案内のとおりですけれども、機動的な資金調達を行うためにいわゆる授権資本制度が取られております。公開会社では、払込金額が引受人にとって特に有利な価格であるいわゆる有利発行でない限りは、定款に定められた発行可能株式総数の枠内で取締役会決議によって株式の発行を決定することができると。また、発行する株式の割当てについても、株主総会決議を要するものとはされておらず、取締役がこれを決定することができるものとされていると、これが現行の状態です。
 ところが、こういう現行法の下で大規模な募集株式の発行がありますと、支配株主の異動ということが生ずることがもちろんございます。ところが、支配株主が異動するということになりますと、公開会社の経営の在り方に根本的な重大な影響を与えるということになり得ることですので、そういった株式の割当てについては、既存の株主に対する情報開示を充実させるとともに、その意思を問うための手続を設けるべきであるという指摘、これはかねてよりされておりました。
 そこで、こういった指摘に応えるというのが今回の改正法の内容でございまして、株式の割当てにより株式の引受人となった者が株式の発行の結果として公開会社の総株主の議決権の過半数を有することになる場合、つまり支配をする場合に、株主に対して、その引受人の氏名等々の情報や引き受けた株主の議決権の数などの事項を通知すると、また、それを前提として、十分の一以上の議決権を有する株主から反対の通知があった場合には、その引受人に対する割当てについて総会決議による承認を要すると、こういう制度を設けたものでございます。
#68
○仁比聡平君 全体の趣旨や枠組みというのは今局長が御説明になられたことなんだろうと思うんです。大臣も、先ほど行田委員への御答弁でそうしたお話がありました。
 もう一度、私、絞って伺いますけど、その要件を二分の一超としたのはなぜなのか。この五〇%以上の新たな第三者といいますか、既存の人がたくさん受けてということもあるのかもしれませんが、その支配権の移動ということの基準を二分の一を超えるというところに置いた根拠というのは何なのかということなんです。
#69
○国務大臣(谷垣禎一君) これは、先ほど深山民事局長が御答弁いたしましたように、要するに、支配株主の異動は大変公開会社の経営へ大きく影響を与えると。そこで、一定の場合には情報開示が株主に対して必要だ、場合によっては株主の意思を問うことも必要だと。そこで、どういう場合にするかということですが、基準は客観的、形式的な基準でなければいけないと。
 それで、改正法案では、引受人の議決の保有割合でどうするかということを決めようとしているわけですが、法制審議会の議論の中で、規律の対象となる議決権の保有割合についてはいろいろな議論がございまして、三分の一超にすべきであるという、こういう御意見も確かにございました。しかし、多数意見は、一律に支配権の移動があったと言えるための基準としては三分の一超では足りないと、過半数とするのが適切である、こういう御意見が多数意見でございました。そこで今回のような内容といたしたという次第でございます。
#70
○仁比聡平君 今大臣から御答弁の中に触れられました、三分の一超とすべきではないのかという意見に私は実は賛成なんですね。というのは、三分の一超の株式を保有するということになれば、会社の重要事項についての求められる特別決議が成立しないという拒否権を持つことになるわけですよね。
 となれば、会社の一般的な経営というのはもちろんのことですが、こうした第三者割当て増資が行われる場面がどういう場合が想定されるかということを考えると、わざわざ、先ほども御議論がありましたけれども、四項ただし書に、会社の事業継続のために緊急の必要のある場合についてのただし書が置かれているように、会社経営がとりわけ資金繰りなどの面において深刻な状況にあるという場合に、第三者の資本を会社に増資をすることによって何とかその危機を乗り切ろうというような場面が想定もされるわけじゃないですか。
 こういうときに、第三者割当てを引き受けて会社に参加してくる、これ略奪ファンドの場合は介入してくるわけですけれども、そうした場合に、五〇%超の支配比率を確保する必要はないんですよね。特別決議を拒否できるというその三分の一超の支配率を有すれば、実際に、私が取り上げてまいりました、APFというファンドに介入され今深刻な事態になっている千葉県の昭和ゴムなどの事例でいいますと、第三者割当てによってAPFグループが三五・七九%の支配率を持つことになった、そのことによって、その悪質ファンドの代表が社外取締役になり、その弟はCEOになりなどの過半数の役員を老舗であるその事業会社に送り込むということになったわけです。現実に経営権はそこで確保できるわけですね。
 そこで行われたのは、会社資産を、もう余り繰り返しませんけれども、悪質な手口で流出させたということであって、結局、この第三者割当て増資を、このAPFグループが行ったものをトータルで見れば、虚偽の増資だったということです。会社を立て直し事業を本当にうまく発展させていくための資本の提供ではなくて、そうやって増資によって介入することによって経営権を握って事業会社の資産を食い物にするという、私は虚偽の増資だと思うんですね。こうしたやり口、手口が行われるんだというのが現行の第三者割当てのありようなんだと思うんですよ。現実に上場会社で、今も上場廃止されていないわけですけれども、この会社、だから、現実にこういう行動が言わば野放しになっているわけですね。
 これを今度の法改正で既存株主を保護しようという方向の改正をするということは私はつまり賛成なんですが、なぜその基準が五〇%超なのかと。特別決議を否決できるという、つまり、会社が重大な状況にあるときに、その将来を左右するような決議は三分の一超あれば否決できますから、そうすれば会社の支配権は握れるじゃないですか。だったらば、その三分の一超を握る第三者割当て増資をやるというときには、既存株主の保護はこれはする必要があるんじゃないでしょうかという問題意識なんですけど、大臣、いかがでしょう。
#71
○国務大臣(谷垣禎一君) これは、日本はある意味でアメリカの会社法制度と共通なところがございまして、ヨーロッパはまたちょっと違う立て付けをしているんだと思います。余り私、そういう日本やアメリカの会社法の流れの中で今まで取締役会だけでできるとしていたのを、少しヨーロッパに近づけたというか、そういう方に振ったんだと思いますが、余り知ったかぶりして申し上げてもいけませんので、不足のところは事務方に補ってもらいたいと思います。
#72
○仁比聡平君 局長にその点もちょっと伺えればお伺いをしたいと思っていますので、今日、お手元に法務省に御準備をいただきましたアメリカのこの問題での法制について資料をお配りしています。
 私なりにちょっと勉強をしてみますと、やっぱり法制度というのは、お国、お国という、お国柄というのがあるもので、アメリカでこうした問題がどういうふうになっているかというと、私もちょっとにわか勉強ですから、局長が違うとおっしゃるなら教えてもらいたいと思うんですけれども、今申し上げたような既存株主の権利侵害というのは、増資をする場合にも、発行される新株を既存株主にも割り当てると、第三者にも割り当てるが現在の株主にも割り当てるという増資の仕方をすれば起こらないわけですね。
 それで、アメリカ法制でいうと、株主利益を侵害するような株式発行は信認義務違反であるという考え方が古くから確立をしていて、私が申し上げているような株式の不公正発行は、これ信認義務違反である。したがって、アメリカ法制でいう集団訴訟、クラスアクションの対象とされるんだと。その下で、研究者によりますと、株主の新株引受権は、遅くとも一八〇七年には慣習法上当然であると認められ、一九二二年には最高裁判例においても確認されているということなんですよ。
 イギリスあるいはヨーロッパでいいますと、一九七六年にEU会社法第二次指令というのが採択をされていて、ここでは新株引受権を会社法に明記するということになっているそうです。そして、二〇〇六年に成立といいますか、イギリス法制ですから、改正とか成立とかいろいろあるんでしょうけれども、二〇〇六年のイギリス会社法によれば、既存株主にその持分割合に応じて第三者と同等か、それよりも有利な条件で割り当てなければ第三者割当て増資はできないという明文の規定が置かれることになっているんだということです。
 つまり、明文規定があるイギリスでも、それからアメリカ法制でも、実際には、既存株主が第三者に先んじて、あるいは第三者よりも有利な条件でその持分割合に応じて新株を引き受ける権利がこれが確立しているわけですね。
 私は、こうした考え方を日本の会社法においても、今回の改正案がそうなっていないのはなっていないんですが、これ導入すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
#73
○政府参考人(深山卓也君) まず、最初にお答えをしなくちゃいけないのは、諸外国の法制というのはなかなか十分理解するのは難しいので、私がこれからお話しすることもやや文献等に基づく概略的なお話です。
 それから、委員が示された資料、これはアメリカの法制として我々が御提供申し上げたものですが、アメリカの会社法で最も使われているデラウェア州の会社法の規制のことを書いておりまして、御案内のとおり、州ごとに違います、会社法制もですね。ですから、デラウェア州法は最も著明な会社法ですけれども、デラウェア州法では、定款に記載された範囲内の数量の株式の発行であれば、取締役の決定で、つまり株主総会の決議を経ることなく発行できる。日本は、これは授権資本の枠内で、つまり発行済株式の最大四倍までしか枠がありませんけれども、デラウェア州法はどうもその枠すらない。機動的な資金調達に極めて傾いた形の法制のようです。他方で、証券取引所の規則でこういう規定がされていると。証券取引所の規制は、東証でも、類似の規制が日本でもされているということです。
 ですから、アメリカは、先ほどちょっと言われた信認義務違反になる不公正発行、これは、我が国の新株発行の差止め事由でも不公正発行がございます。そこでいう不公正発行というのは、現在の経営陣が専ら経営支配を維持するため、そういう目的でやる新株発行というのは、経営を委ねられた人が自分で株主をつくり出す。自分を支持する株主をつくり出す行為ですから、これはまさに不公正発行で差止めの対象になるという、そういう意味での不公正発行ではないかと、それも推測ですけど、思います。
 他方で、ヨーロッパですが、これも今委員が御指摘のとおり、詳細は承知していないんですけれども、イギリス、ドイツ、フランスでは、法律上原則として株主が株式の割当てを受ける権利があるんだと、こういう原則的な立場に立って、この権利を排除するには、国によって少しずつ違いはありますけど、株主総会の決議が必要とされていると。元々イギリスは英米法でアメリカに近い法制だったものが、これも御指摘のEU指令によって、EUの統一的なルールということで、大陸法のほかの国々が株主の割当てを受ける権利というのを原則として認めているということから、そういう指令が出され、イギリスもそれに従った法的な手当てをして、現在ではヨーロッパの諸国は、今私が申し上げたように、株主割当て権があることを前提として、それを排斥する第三者割当て増資をするには株主総会の決議が必要だと、こういう建前になっているということです。
 それで、我が国の話ですけれども、我が国はアメリカ法の影響を受け、御案内のとおり、授権資本制度が取られるまでは、増資をするには定款変更が必要で特別決議が必要だったというのが戦前の日本の法制、これはドイツからきっと来たんだと思われます。その後、授権資本制度を取って、機動的な資金調達に傾いた法制を取って現在まで来ました。つまり、最高四倍までの授権資本の枠内で取締役会の判断で公開会社では増資ができるということです。
 そのことのやはり問題点が、機動的な資金調達というのはそれは悪いことではないけれども、支配権が移るというような重大な既存株主にとっての影響がある場合には、そこはやはり今回のようなことを設けてはどうかという議論が学界、実務界に徐々に高まってきて今回の改正に結び付いたと思っておりますが、そのときの割合で三分の一というのも一つの基準ではないかと。
 それは、特別決議を阻止できる、拒否権を持つというのはおっしゃったとおりだと思います。ただ、我が国で一般に会社法上支配権と言ったときには、五〇%基準、要するに過半数支配をすれば普通決議は自分だけで決められますので、普通決議事項も全部自分で決められるという意味で五〇%ということで、今回そういう仕切りにしていますが、その支配というのは、厳密に考えていきますと、確かに三分の一でもある程度の大きな力を持つ、過半数ではもちろんいわゆる会社支配ができる、三分の二を超えれば完全な特別決議を自分だけで成立させることができるというふうに、支配の程度というのは割合に応じていろいろだと思いますが、取りあえず今回は、いわゆる会社を支配する五〇%基準をもって、今まで四倍までの範囲で自由にできた公開会社の増資にこういう枠をはめていこうと、こういうことで議論がまとまったということでございます。
#74
○仁比聡平君 少し踏み込んでといいますか、お話を伺えたんですけれども、とはいえ、結局、三分の一超で特別決議の拒否権を持つというのは、言ってみれば国連の安保理理事国のようなものだと。
 どうしてこういうことが問題になってきたか、あるいは、ニューヨーク証券取引所の規制だとか東証の規制というのが出てきたのかと。これ、東京証券取引所の規制とニューヨークの証券取引所の規制って、私は同じとは思えないんですね。ニューヨークの規制は、これ、二〇%超の株式発行の場合は株主総会の承認を必要としているんです。だけれども、東証の規制の方は、独立した第三者委員会などからの客観的な意見の入手であればいいという話で、これも私、これから勉強していきたいと思うんですけど、例えば社外役員などが集まっている委員会みたいなのをつくればそれでオーケーというようなことにどうやらなっているようで、ですから私が繰り返し取り上げているような事案がずっと横行するわけですよ。
 その上にあるように、希釈化率が三〇〇%を超えるときって、先ほどの授権資本制度の枠は四倍というけど、とんでもないじゃないですか、この三〇〇%って。こんなような本当にひどい第三者割当てが現実に起こってきたからこうした規制をせざるを得なくなっているんですけど、それでも、こうしたMアンドAで第三者割当てが株主の権利を著しく毀損するということがあらわになって、社会問題にもなって、日本の市場で大問題だということになりながら、二〇〇九年にこれ東証の規制が行われているんですね。
 私が知るところでは、既にその前に、二〇〇六年の三月に、東証が、二〇%超の第三者割当て増資について株主総会の事前承認を求めようと、そういう規制をつくろうということを提案をしたことがあるようですが、そのときに猛然と反対をしたのが経団連などの上場企業の側だということです。会社法が授権資本制度で認めているのに証券市場が規制するのは越権行為だといったことがその当時唱えられたということなんですけれども。
 授権資本制度による機動性というのは、これは会社法制としてそれはそれなりの存在理由があるんだと思うんですが、何しろ市場はどんどんどんどん変化して、金融工学だとかMアンドAだとか、そういうような手法、手法というか術策が様々に行われるようになって、それが経済を前に発展させるんだったらいいけれども、こうやってファンドによる略奪というのはこれ食い物にするという形で行われるわけじゃないですか。ここに規制が掛からないようなことだと、英米ではそれはできないという下で、日本の企業が言わばターゲットにされると、そうなってくると思うんですよ。
 私は、そんなことにならないように、今回の改正ではそうなっていませんが、あの英米や世界の規制をよく日本の法務省としても研究して、一層より良く改正をしていくべきだと思いますが、大臣、最後伺って、質問を終わります。
#75
○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほど民事局長が御答弁を申し上げたように、従来の我が国の考え方は、株主は余り自分の会社の持ち株比率の動向等には関心がそれほどないんではないかということの前提の上に、機動的な資金調達という方に重きを置いていたと。しかし、先ほど来御議論のように、いろいろな問題が出てきて、やはり支配株主が変わるようなときには情報も出さなきゃいけないと、ある程度の手続も必要だろうというので今度の改正になったわけでございます。
 そこで、今、仁比委員もいろいろな問題点の御指摘をされました。私どもも、この改正が起こりましたら、改正の後、やはりこの趣旨を踏まえた適切な運営を図っていかなきゃなりませんし、それとともに、今までの流れからちょっと反対の方向に少し振ったわけですが、こういったことが更にどういう効果なり問題を生じているかはよく研究していきたいと思っております。
#76
○仁比聡平君 終わります。
#77
○委員長(荒木清寛君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#78
○委員長(荒木清寛君) 速記を起こしてください。
    ─────────────
#79
○委員長(荒木清寛君) 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 提出者衆議院法務委員長代理遠山清彦君から趣旨説明を聴取いたします。遠山清彦君。
#80
○衆議院議員(遠山清彦君) 公明党の遠山清彦でございます。
 ただいま議題となりました法律案につきまして、その趣旨及び内容について御説明申し上げます。
 児童ポルノの所持、提供等の行為については、これが真に悪質な児童に対する性的虐待行為であるという基本的認識や、児童ポルノが広く流通している現状に対して有効な規制を及ぼさなければならないとの思いが、これまでも与野党の垣根を超えて共有されてきたところでありまして、平成十一年の法律制定時、また、平成十六年の改正時と、いずれも超党派の議員立法により、累次、規制が強化されてまいりました。
 そして、前回、平成十六年の改正法附則に、法律の施行状況や児童の権利の擁護に関する国際的動向等を踏まえて三年を目途として検討すべき旨の見直し条項が置かれたことから、各党において、児童ポルノ等に関する規制の在り方全般について真摯な議論がなされ、平成二十年六月には自公案が、平成二十一年三月には民主党案がそれぞれ提出されました。その後の平成二十一年七月には、自民党、公明党、民主党の議員による実務者会合において修正協議が行われ、大枠で合意を見ることとなったものの、残念ながら超党派の議員立法として提出するには至りませんでした。
 その後も、自民党及び公明党の共同で、また民主党から、それぞれ単純所持罪等の処罰に係る改正案が提出されましたが、いずれも衆議院解散により廃案となり、昨年の五月に自民党、公明党、日本維新の会が共同で提出した改正案についても衆議院法務委員会において審議がなされていないという状況でありました。
 このような経緯に加えまして、前回の改正から十年が経過し、この間のインターネットの発達により児童ポルノ被害に遭う児童の数が増え続けていること、児童ポルノ単純所持罪を設けるべきとの国際社会の強い要請があること等に鑑みまして、今国会において、衆議院法務委員会の理事会の下に、委員会を構成する各会派の理事会メンバーから成る児童ポルノ禁止法改正に関する実務者協議会が設置されることになりました。
 同協議会におきましては、昨年、自民党、公明党、日本維新の会より提出された改正案に加え、平成二十一年の実務者会合において大枠で合意を見た案を中心に、現在の目で見て真に児童の権利の保護に必要な規制を加えるとの観点から、三回にわたり真摯かつ熱心な議論が行われた結果、内容において合意に至りました。
 次に、本法律案の内容について御説明申し上げます。
 第一に、児童ポルノの定義及びその所持に係る罰則に関し、改正を行っております。
 その一は、児童ポルノの定義を改正しております。すなわち、いわゆる三号ポルノについて、その定義をより明確にするため、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているとの要件を付加しながら、その性的な部位については性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいうものといたしました。
 その二は、児童買春、児童ポルノの所持その他児童に対する性的搾取及び性的虐待に係る行為の一般的な禁止規定を総則において設けることといたしております。
 その三は、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持について罰則を設けております。すなわち、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処することといたしております。
 また、所持罪の新設に当たり、施行前から所持している児童ポルノについて罰則の適用前に適切に廃棄等の措置を講じていただけるよう、所持罪は改正法施行の日から一年間は適用しないものとしております。
 その他、児童ポルノの製造の罪について盗撮の場合にも処罰範囲を拡大するほか、適用上の注意規定を明確化するとともに、その具体化を図っております。
 第二に、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度を充実及び強化しております。すなわち、心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体として、厚生労働省、法務省、都道府県警察、児童相談所、福祉事務所を例示し、措置を講ずる主体及び責任を明確化することとしております。
 これに加えて、社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春や児童ポルノに係る行為により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとすること等としております。
 第三に、インターネットの利用に係る事業者の努力規定を設けております。すなわち、インターネットの利用に係る事業者は、捜査機関への協力、管理権限に基づく情報送信防止措置その他インターネットを利用した児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものといたしております。
 以上が、本法律案の趣旨及び内容であります。
 本法律案は、去る六月四日、衆議院法務委員会において、委員会提出の法律案とすることと決し、翌五日、衆議院本会議で可決したものでございます。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
 以上です。
#81
○委員長(荒木清寛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後零時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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