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2014/01/29 第186回国会 参議院 参議院会議録情報 第186回国会 本会議 第2号
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2014/01/29 第186回国会 参議院

参議院会議録情報 第186回国会 本会議 第2号

#1
第186回国会 本会議 第2号
平成二十六年一月二十九日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二号
  平成二十六年一月二十九日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る二十四日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。神本美恵子君。
   〔神本美恵子君登壇、拍手〕
#4
○神本美恵子君 民主党・新緑風会の神本美恵子です。
 会派を代表しまして、安倍総理の施政方針演説に対する質問をいたします。
 東日本大震災と原発事故から間もなく三年。原発事故により避難生活を余儀なくされた避難生活の中で、配偶者が認知症を発症されたある女性の叫びです。
 三回目の避難先は仮設住宅。小さな部屋が二つずつ並ぶ、まるで鶏小屋のようなところでの生活。夫の入院、その看病で私自身も倒れそうである。ふるさとの家は廊下も部屋もヤギのふんだらけ。もし帰れても住むことはできない。国も県も町でさえもこの苦しみを分かっているのだろうか。仮設では主人を死なせたくない。私も絶対死にたくない。
 安倍総理の施政方針演説での、二〇二〇年、新たな東北の姿を、やればできるという掛け声が空疎に聞こえます。今も苦しい生活を強いられ、未来に希望を持つことができない被災地の方々のこうした声を総理は本当にお聞きになったことがあるのでしょうか。
 被災地における重要な産業である農業や漁業、観光業は、本格的な復興どころか、いまだ復旧の緒に就いた段階です。とりわけ、福島を始め原発事故の影響を受けている地域の現状は深刻であります。住まいの整備のみならず、復興が着実に進んでいない分野について、安倍総理はどのような現状認識と具体策をお持ちか、お示しをいただきたいと思います。
 次に、特定秘密保護法による生活への脅威についてお尋ねします。
 特定秘密保護法について、強行採決後の十二月九日の記者会見で、安倍総理は、通常の生活が脅かされるようなことは断じてあり得ないとおっしゃっています。しかし、それは法律が独り歩きする危険、特に治安、秘密に関する法律が独り歩きした戦前の教訓への無知をさらけ出しております。戦前、治安維持法に違反したとして逮捕されたのは七万件、しかし、裁判になったものはそのうちの一割でしかありませんでした。しょっぴくぞという威嚇効果が十分に発揮されていたわけです。
 安倍総理、戦前に吉田茂元総理が逮捕されたことを御存じでしょうか。一九四五年四月十五日、吉田茂さんは他の二人とともに特高によって逮捕されました。特高によれば、吉田一派は反戦分子であり、その後、二段階で近衛文麿元総理ら七人を検挙する計画でした。その罪状は、軍事上の造言飛語罪、軍機保護法違反罪でした。つまり、特定秘密保護法案に類似した軍機保護法違反で総理経験者も検挙するという計画を特高が持っていたのであります。
 今、幸いにして私たちは特高も憲兵もない社会にいます。しかし、特定秘密保護法を手にした公安警察などがテロ容疑名目でどのような動きをするか、国民の不安や疑念はこうした歴史の教訓を踏まえたものなのです。安倍総理はいかがお考えか、御認識をお聞かせください。
 次に、靖国神社参拝についてお尋ねします。
 総理、昨年末あなたは唐突に靖国神社参拝を行い、二〇一四年、新しい一年に向け、中国、韓国との関係改善の歩みを始めるべきときに、その機会を自ら潰したのであります。
 世界が驚き、批判の声を上げました。それは実に広範な世界の主要な国々からのものでした。中国や韓国、北朝鮮からの批判は予想されたでしょうが、ロシア、台湾、シンガポール、ドイツ、EU、そしてアメリカであります。台湾外交部は、日本政府や政治家は史実を直視し、歴史の教訓を学ぶべきだ、近隣国の国民感情を傷つけるような振る舞いをすべきではない、アメリカの在日大使館と国務省は、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに米国政府は失望しているとの談話を発表しました。
 靖国神社に関してまずお聞きしたいのは、憲法との問題です。日本国憲法第二十条及び第八十九条はいわゆる政教分離の原則をうたい、政治と宗教との関係を規定しています。今回、総理は、「内閣総理大臣安倍晋三」と札を掛けた花を参拝前に奉納され、その後、昇殿参拝されました。こうした行為は、憲法に照らし、政教分離の原則に違反する可能性があります。この点いかがお考えか、安倍総理からお聞かせください。
 私は、昨年末、民主党の未来に向けて戦後補償を考える議員連盟の一員として韓国を訪問し、歴史認識などについて韓国の議員の方たちと意見交換を行い、日常の対話の重要性について再認識をいたしました。
 安倍総理は、中国、韓国首脳に、対話のドアは常に開いていると語っておられます。では、そのためにどのように具体的な行動を取られるのでしょうか。一月二十三日付け朝日新聞のインタビューでケネディ駐日米大使が言及したように、歴史問題に向き合うしか近隣諸国との和解はないと考えますが、今回の靖国神社参拝を踏まえて、首脳会談実現に向けた具体的な計画を安倍総理からお示し願いたいと思います。
 私たちが心して思い起こさなければならないのは、一九四〇年に開催が決定していた東京オリンピックが日中戦争の激化で開催返上に追い込まれた歴史です。こうしたことが繰り返されないように、平和と国際協調の大切さをしっかりと確認し合わなければなりません。
 次に、従軍慰安婦問題についてお尋ねします。
 籾井NHK会長の発言は無知をさらけ出すもので、国家が主導した戦時性奴隷制度は、類似のものがあったとされるドイツ以外には、確認されているのは日本だけであります。何の根拠もない持論を公の電波で展開し、再び被害者を傷つけたことは本当に許せません。籾井会長は即刻辞任すべきです。籾井会長の発言に関する安倍総理の御見解を伺います。
 韓国を訪問した際、女性家族部の長官とお会いしました。長官は、韓国の元従軍慰安婦の方々、平均年齢が八十八歳となる五十一名のお一人お一人と会って話をされたそうです。そして、従軍慰安婦の問題は、過去の問題ではなく現在の問題であり、謝罪を求めるのは過去の過ちを二度と繰り返さないために必要なことだと述べられました。この問題に国際社会からも多くの懸念が発せられています。
 国連社会権規約委員会と国連拷問禁止委員会は、昨年、慰安婦問題について日本に相次いで勧告を行っています。内閣は、これらに対して、法的拘束力がないので従う義務はないとしています。それが国連人権理事国として取るべき態度でしょうか。安倍総理の御見解をお聞かせください。
 政府は、現在、女性・平和・安全保障に関する国連安保理決議一三二五の国内行動計画の策定に努力を重ねられていると承知しております。この安保理決議一三二五の精神に基づき、従軍慰安婦問題の解決に向けた具体的な行動の計画を安倍総理からお示しいただきたいと思います。必ず韓国政府との対話の糸口がここにあると私は確信しております。
 次に、憲法改正についてお尋ねします。
 安倍総理は、今国会を経済の好循環実現国会と銘打たれていますが、施政方針演説をお聞きすると、昨年秋の臨時国会で明らかになった特定秘密保護法成立を強引に押し切った手法を今後とも安倍内閣の常套手段として、これまで培ってきた国の基本路線を変更しようとしているのではないかと危惧されます。
 例えば、安倍カラーの政策を最も象徴している憲法改正に向けて、必ずや前に進んでいくことができると信じておりますと発言されています。集団的自衛権の行使容認に向けた解釈変更によって憲法改正へ進むもくろみが読み取れます。つまり、これは、憲法改正について国民の支持を得ることが難しいので、解釈によって実質憲法改正に踏み込む姿勢を明らかにしているのではないでしょうか。この点、安倍総理の率直な御見解をお示しください。
 昨年七月に麻生財務大臣が、ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた、あの手口を学んだらどうかと発言されています。それと同じ手法、手口と理解してよろしいのでしょうか。安倍総理、お答えください。
 また、解釈改憲や憲法改正に前のめりになっている安倍総理及び政府の方針について、連立を組む内閣の一員として、太田国交大臣の所感もお聞かせください。
 次に、総理が精力的に行ったという中東・アフリカ外交についてお尋ねします。
 総理は、オマーン、コートジボワール、モザンビーク、エチオピアの四か国を訪問され、最終日に、「一人、ひとりを強くする日本のアフリカ外交」というスピーチをされました。
 私は、一人ひとりを強くするために、まず必要なことは、その人が生きるための基本的な衣食住が満たされ、基本的な人権が守られているのかを知ることから始まるのではないかと思います。訪問されたアフリカ三か国を見ると、一日一・二五ドル以下で暮らしている人の割合である貧困率は、コートジボワールは約二五%、エチオピアは約三〇%、モザンビークは実に約六〇%です。総理が訪問された国々あるいはアフリカの人々の暮らしについて総理がどのような認識をお持ちなのか、お伺いをいたします。
 今回アフリカで行われている政府と企業とが一体となった開発は、目新しいものではなく、現地では中国の二番煎じと呼ばれ、かつての日本の東南アジア進出を想起させるものです。私には、日本もまた、金もうけを追求する企業のためのフロンティアとしてアフリカを見ているのではないかと思えるのであります。
 モザンビークには、様々な天然資源が豊富にあり、既に日本企業も進出しています。今回、日本はモザンビークの北部にあるナカラ回廊と呼ばれる幹線道路網を含む総合開発のために七百億円の政府開発援助の供与を新たに約束しました。しかし、この地域では、二〇〇九年に決定した、このナカラ回廊の走るモザンビーク北部三州、日本の耕地面積の三倍に当たる一千四百万ヘクタールの農業地域を対象地域にした日本・ブラジル・モザンビーク三角協力によるアフリカ熱帯サバンナ農業開発プロジェクト、プロサバンナ事業と呼ばれるプロジェクトが進んでいます。そこには四百万人以上の住民がいて、そのほとんどが小規模農民です。
 昨年、TICADXの直前の五月にモザンビークの広範なる農民・市民社会組織二十三団体から、九月には日本の市民社会三十六団体から、事業の民主的手続や法の遵守に疑問を呈する緊急停止の要請が出されています。総理は、この度の訪問で、モザンビークの大統領にこうした懸念の声をどのようにお伝えになったのか、お伺いします。
 さらに、現在、プロサバンナ事業のブラジル側コンサル機関が、開発プロジェクトが進んでいる同じ地域を対象に三十万ヘクタールの土地への二百億円規模の投資を世界中から集めています。住民のための政府開発援助事業を請け負いながら、同じ地域で投資集めをするという利益相反状態にあります。プロサバンナ事業は、日本、ブラジル、モザンビーク政府による三角協力によるものですから、日本政府がこの状況を放置すべきではないと考えます。住民の利益を無視し、世界の巨大アグリビジネスの便宜を図るようなODAの在り方は間違っていると言えるのではないでしょうか。
 たくさんの企業を引き連れ、大規模開発に巨額の借款による援助を表明した今回の総理のアフリカ訪問で、地道な援助を続けることで培われてきたアフリカの人々との信頼関係は失われていないのでしょうか。新たな開発によって腐敗と人権侵害が拡大するのであれば、それは積極的であれ何であれ、平和主義の実現のためではなく、総理の独り善がりにしかすぎないのであります。安倍総理のお考えをお聞かせください。
 次に、人口減少問題についてお尋ねします。
 総理は、経済対策により持続可能な経済成長を確保してまいりますと明言しています。しかし、現在我が国の置かれている状況、急激な人口減少を迎えることを考えた場合、持続可能な成長は幻想ではないのか、疑問を持たざるを得ません。
 人口減少は、当然のことながら六歳から十四歳までの就学人口、そして十五歳から六十四歳までの生産年齢人口の減少を伴ってまいります。
 就学人口の減少が激しい地域では、学校の統廃合が進められ、そのため、地域社会の中心としての小学校の消滅が現実化しています。小学校は、子供を通じ住民同士が身近に顔を合わせ語り合うことができ、あらゆる地域活動などを行う際に使われる拠点です。それだけに、学校の統廃合等により学校が消滅すれば、地域のコミュニティーもなくなり、その地域はますます人口減少につながっていきます。
 二〇一三年三月時点の住民基本台帳によると、生産年齢人口は初めて八千万人台を割り込み、全体の六二%まで縮小したと報道されています。生産年齢人口の減少は日本経済の潜在成長率を押し下げる要因となります。また、これらの世代は働き、税金を納めていますので、この世代の減少は経済的にも大きな影響を与えます。
 一方、六十五歳以上の人口は増え続けており、高齢者を支える働き手の数は、二〇一〇年段階では二・八人で一人を支え、二〇六〇年には一・三人で一人を支えるようになり、年金問題など社会保障の在り方にも大きな影響を与えます。
 このように、人口減少の問題は日本の方向を考える上であらゆる分野に影響を及ぼす重要な大きな問題として横たわっているのですが、残念ながら総理の施政方針演説からはそうしたことが聞き取れませんでした。これからの日本は経済の好循環によりバラ色と聞こえましたが、本当にそうでしょうか。人口減少問題について、安倍総理の御見解をお聞かせください。
 次に、教育についてお尋ねします。
 安倍総理が掲げる教育再生とはいかなるものでしょうか。
 民主党は、経済格差や貧困の連鎖を防ぎ、教育格差を生まないために、チルドレンファースト、社会全体で子育て・教育を支える政策を進めてきました。しかし、安倍政権になってからの施策は、希望する全ての子供たちに後期中等教育の機会と学習権を保障するための高校授業料実質無償化制度への所得制限の導入、少人数による一人一人の子供たちに行き届いたきめ細かな教育を実現するための三十五人以下学級の計画的、段階的実施の中断、そして二〇一四年度予算での教職員定数の縮減などであります。実に、この定数縮減は一九五八年の義務標準法制定以来初めてのことであります。これらの施策を後退させ、教育条件、環境整備のための予算を減らすことが、安倍総理の言う教育再生なのでしょうか。
 総理は、施政方針演説で、国際的な学力調査で日本の学力が過去最高となったのは、全国学力テストを受けた世代で、公教育の再生の成果だと述べています。余りにも表層的、短絡的な評価ではありませんか。
 学力とは何か。一九九六年、ユネスコは、学習の四本柱、知ることを学ぶ、為すことを学ぶ、共に生きることを学ぶ、人として生きることを学ぶを提起しました。今年度から悉皆調査に戻され、学校ごとの結果公表も可能とされようとしている全国学力テストで測られる学力とは、四本柱のうちの知ること、つまり知識習得の部分だけではないでしょうか。
 言うまでもなく、教育の目的は、教育基本法第一条、人格の完成を目指すものであります。人格の完成を目指す教育は、地域に暮らす様々な人々との現実生活に根差して、異文化や価値の多様性、人権、平和、民主主義を尊重し、次の世代の共同体を担う成熟した市民を育てることと考えます。共に生きる、人として生きることを学ぶことこそが、今日ますます重要になっていると考えます。
 過度の競争が子供に重い負担を強いて、いじめ、精神障害、不登校、自死などを助長している可能性があり、見直すべきとの勧告が国連子どもの権利委員会から繰り返し日本政府に対して表明されていることを総理は御存じでしょうか。一面的な学力測定で、過度の競争や序列化を招く悉皆調査による全国学力テストは廃止すべきと考えますが、安倍総理の御見解をお聞かせください。
 また、教育再生を最重要課題に挙げるのであれば、全ての子供が家庭の経済状況にかかわらず最良の教育を受けることができるよう、国の責任で十分な教育予算を確保し、公教育の充実に努めるべきであると考えますが、安倍総理の御見解をお聞かせください。
 安倍内閣は、教育再生のもう一つの側面として、教科書検定基準の見直し、道徳の教科化を進めようとしています。これは、戦前の、国家に奉仕する人間づくりのための国定教科書や修身科の復活につながるのではないかと私は危惧しております。安倍総理の御認識を伺います。
 昨年の十二月、中央教育審議会は、今後の地方教育行政の在り方についての答申を行い、教育委員会制度について、首長と教育長の権限を強化するとしています。
 そもそも、教育委員会制度は、政治的党派性や政治イデオロギーから教育が中立的に運営されるよう、首長から独立した合議制の執行機関に位置付けられ、政治的中立を確保しつつ公正な教育行政を行うことが要請されています。
 一九七六年の最高裁判決にもあるように、教育には政治的影響が深く入り込む危険があることから、教育行政の中立性を制度的に担保することが求められ、今日まで六十五年有余を経ています。教育基本法第十六条においても、「教育は、不当な支配に服することなく、」と、その中立性が制度的に強く要請されているところであります。
 さらに、公正さと政治的中立性を確保するため、地方自治法で規定される行政委員会に位置付けられているのであります。そして、教育委員は、教育行政に公正な民意を反映することを踏まえ、地域の教育をめぐって大所高所から意見を闘わせるために地域の各界各層から選ばれた多様な人材によって構成され、地域の教育政策の基本方針を決定する仕組みになっております。
 教育委員会は、首長、教育長の権限強化ではなく、政治的中立を担保し、合議制の執行機関としての機能強化を図るべきであると考えます。安倍総理が施政方針で述べている教育委員会制度の改革は、どういう方向で改革をされるのでしょうか。総理の見解をお伺いしたいと思います。
 施政方針では、若者を伸ばす教育再生と称し、英語教育の強化などを始め、子供たちへの学力向上が提起されていますが、教育の向上には、本人の努力はもちろん、学校、家庭・保護者、地域との連携が欠かせません。特に、いじめなどの問題の解決や子供たちの安全を確保するには、地域などとの連携協力が必要になっています。
 今のような少子化の時代、子供たちに特に必要なことは、人とのコミュニケーション能力、共に生きる力を育て伸ばしていくことです。そのためには、地域の人とのつながりを深めながら、子供たちが地域に愛着を持てるような活動や体験を意図的に仕組んでいくことが必要です。
 人間形成に欠かせない学校教育は、今日、公教育制度として機能しながら、地域との密接なつながりにより、充実した教育活動が可能になっています。その中で、地域住民の方々が有する経験や知恵は学校教育推進にとって有力な力となり、それが、自分たちの学校、この町の学校という愛着を生み、長期にわたって学校を支える強力な力となるものと考えられます。施政方針は、こうした視点を欠落して教育の再生を提起していると指摘せざるを得ません。安倍総理の御見解をお聞かせください。
 今、政府は、国家戦略特区における規制緩和の一つに、公立学校運営の民間委託を認める公設民営学校の設置を検討することを正式に決定しています。これは、教育を民間にとってのビジネスチャンスとして積極的に教育の私事化を進めようとしているものです。こうした動きは、ますます子供たちと地域を、学校と地域を遠ざけることにならないか、憂えているのは私だけでしょうか。安倍総理の御見解をお聞かせください。
 次に、雇用分野について質問をいたします。
 安倍総理の雇用制度改革は、新たな成長分野での雇用機会の拡大を図る中で、成熟分野から成長分野への失業なき労働移動を進めるため、雇用政策の基本を行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型へと大胆に転換するとしています。就労者の約九割が雇用者である雇用社会日本において、新たな成長分野での雇用機会の拡大に先行して雇用労働分野の規制緩和を進め、労働者に犠牲を強いて世界で一番ビジネスがしやすい国にすることが幸せな国民、労働者の暮らしにつながるのか、大変疑問であります。雇用の規制緩和がもたらす労働者の犠牲について、安倍総理の御見解をお示しください。
 ILOのガイ・ライダー事務局長は、雇用の規制緩和を成長をもたらす魔法のような解決策として捉えるのは間違っている、雇用の規制緩和や流動化が成長につながったケースもないと述べています。
 雇用労働分野の規制緩和が経済成長をもたらすのか、私には疑問であります。それどころか、労働者を痛め付ければ消費が縮小することは明らかであり、デフレ解消と矛盾する政策ではないでしょうか。
 いわゆるブラック企業問題、長時間労働など、労働者の雇用環境は悪化しており、特に過重労働、低賃金、不安定雇用の結果生じている過労死、自死は大きな社会問題であり、社会の損失ではないかと思います。総理はいかがお考えでしょうか、お伺いいたします。
 質問を終えるに当たって、ノンフィクション作家の保阪正康さんが色紙に揮毫する言葉を安倍総理にお伝えしたいと思います。
 それは、「前事不忘 後事之師」という言葉であります。これは、日中国交正常化交渉時、当時の周恩来首相が挨拶の中で使われた言葉でもあります。読んで字のごとく、前のことを忘れず、後の戒めとするという意味ですが、私は、二度と危うい歴史を歩んではならない、そのためにも、歴史を直視し、戦禍の記憶を記録に残し、次代を担う世代に議論を通じてしっかりと伝えていく必要があるという思いが込められた言葉だと思います。
 どうか総理には、この「前事不忘 後事之師」を受け止めていただきたい、そのことをお願いしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#5
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 復興に対する現状認識と具体策についてお尋ねがありました。
 復興の加速化は安倍内閣の最重要課題の一つです。総理就任後、毎月被災地を訪問し、多くの声に耳を傾けながら、全力を尽くしてまいりました。
 一年半前、見通しすらなかった高台移転や災害公営住宅の建設は、六割を超える事業が開始しました。瓦れき処理も、三月末までに宮城、岩手で完了する見込みです。今年は、地震、津波からの復興では住宅再建等の工事が本格化し、また、福島の復興再生では早期帰還や長期避難者の生活拠点の整備に向けた各種事業が本格化するなど、大変重要な一年となります。
 復興は着実に進んでおりますが、いまだ二十七万人を超える方々が避難先でこの冬を迎えております。福島の復興再生もまだまだ課題が山積しております。被災者の方々が一日も早く普通の生活に戻られるよう、住宅再建の加速化、なりわいや産業の再生、避難者への生活支援など、きめ細やかな対応を行いながら、復興を更に加速させてまいります。
 特定秘密保護法の運用に関する国民の不安についてのお尋ねがありました。
 特定秘密保護法は、国民の安全を守ることが目的であり、これによって国民の日常生活が脅かされることはありません。むしろ、特定秘密の指定等についてルールを定め、秘密の取扱いの客観性と透明性が高まります。
 特定秘密保護法に関する様々な御意見については真摯に受け止め、今後とも、同法について国民の皆様に丁寧に説明を重ねるとともに、その適正かつ効果的な運用が図られるよう施行準備を進めてまいります。
 靖国神社参拝と憲法の関係についてのお尋ねがありました。
 私は、靖国神社を参拝し、国のために戦って尊い命を犠牲にした方々に対して、尊崇の念を表し、御霊安かれなれと御冥福をお祈りしました。この参拝は、私人の立場で行ったものであって、また、供花代を公費から支出しておらず、憲法の政教分離原則に反する可能性があるとの御指摘は当たりません。(拍手)ありがとうございます。
 日中・日韓関係についてお尋ねがありました。
 中国、韓国との間で意思疎通を図っていくことは、アジア太平洋地域の平和と安定にとって有意義であり、大局的な見地から関係を発展させていくことが重要です。
 韓国については、ダボス会議で、朴槿恵大統領の講演を聞きに行き、会場で尹炳世外相を始めとする韓国政府幹部の方々と挨拶し、握手を交わしました。
 中国については、我が方から、不測の事態の発生を回避するため、防衛当局間の海上連絡メカニズムの運用を早期に開始することを中国側に提案し、その回答を促しています。
 このように、私の方からは中国、韓国には積極的に働きかけております。困難な課題があるからこそ、前提条件を付することなく、率直に話合いを行うべきなんです。私の対話のドアは常にオープンであり、両国にも同様の態度を求めたいと思います。
 靖国神社への参拝では、二度と人々が戦争の惨禍に苦しむことがない時代をつくるとの決意を込めて不戦の誓いをしました。中国、韓国の人々のお気持ちを傷つけるつもりは全くなく、両国に対しては、これからも謙虚に、礼儀正しく、誠意を持って説明をしてまいります。(発言する者あり)静かにしていただければ、もう少し聞こえると思います。
 籾井NHK会長の発言についてお尋ねがありました。
 放送機関のトップが行った個別の発言について、政府としてコメントすべきではないと考えます。籾井会長を始めNHKの職員の皆さんには、いかなる政治的な圧力にも屈することなく中立公平な放送を続けてほしいと願う次第であります。
 国連社会権規約委員会と国連拷問禁止委員会における慰安婦問題に関する勧告についてのお尋ねがありました。
 これらの勧告は、我が国の考え方が全く反映されておらず、また、事実誤認に基づく一方的なものであり、法的拘束力を有するものではありません。
 国連安保理決議一三二五号に基づく行動計画についてのお尋ねがありました。
 女性・平和・安全保障に関する行動計画の策定は、女性の力の更なる活用といった現代的課題について、国際社会との協力や途上国支援の強化を目的とするものであります。慰安婦問題等の過去の問題を扱うものではありません。
 憲法改正に向けた姿勢についてのお尋ねがありました。
 自由民主党は、立党以来、憲法改正を主張しており、昨年、憲法改正草案を発表し、二十一世紀にふさわしいあるべき憲法の姿を広く国民に示し、憲法改正を正面から訴えてまいりました。今後、憲法審査会などの場においてしっかりとした議論を行うことにより、新しい時代にふさわしい憲法の在り方について国民的な議論を更に深めてまいりたいと考えています。この議論の深まりを踏まえて、私としてはしっかりと着実に憲法改正に取り組んでまいります。
 先般訪問したアフリカ諸国と、そこでの人々の暮らしについてお尋ねがありました。
 アフリカは、紛争や貧困等の人間の安全保障に関わる様々な課題を抱えている一方で、近年は高い経済成長を遂げ、国づくりの途上にあります。アフリカは、活力に満ちあふれ、大きな可能性を秘めている日本外交のフロンティアであります。
 さきのアフリカ訪問では、各国の首脳と、アフリカの開発や成長、平和と安定のため、活発な議論を行いました。各国首脳からは、一様に、アフリカの経済成長に向け、日本企業による投資促進への強い期待が示されました。特に、日本企業の投資がもたらす人材育成、品質や労働倫理の向上といった面につき高い評価を得ました。昨年のTICADにおいて、あるアフリカの首脳が、日本の企業は、日本だけの企業が職場に倫理を持ち込んだと、このように評したのを今でも印象的に覚えているところであります。同時に、投資と成長の前提として平和と安定が重要であるとの指摘もありました。
 我が国としては、一人ひとりを強くする日本のアフリカ外交の方針の下、さきの訪問で私から表明した、紛争、災害への約三・二億ドルの支援とともに、昨年六月のTICADXで表明した貢献策を着実に実行し、官民で連携し、アフリカの質の高い成長の実現に貢献してまいります。
 モザンビークでのプロサバンナ事業についてお尋ねがありました。
 ゲブーザ・モザンビーク大統領との会談においては、私から、プロサバンナ事業に関して、モザンビーク政府による市民社会や農業組織との対話の努力を評価しており、日本としても彼らの理解を得ながら小規模農家が裨益する形で支援を実施していきたい旨申し上げました。この事業は、持続可能な農業開発を通じた地域住民一人ひとりの生計向上を目指すプロジェクトであり、事業の実施に当たっては、不法な土地の収奪等が起こらないように特に留意し、小規模農家へ最大限配慮した支援を行ってまいります。神本議員、独り善がりは私ではありません。
 持続可能な成長という観点から、人口減少問題についてのお尋ねがありました。
 人口減少問題は、喫緊に取り組まなければならない課題であると認識しております。少子化対策をしっかりと進めるとともに、女性、若者、高齢者など、あらゆる人が社会で活躍し、その可能性を発揮できるチャンスをつくることにより、強い日本、強い経済を実現してまいります。
 今般、こうした人口減少などの構造変化を見据えつつ、日本経済の中長期的な発展を実現するため、経済財政諮問会議の下に「選択する未来」委員会を設置したところであります。今後、その議論を踏まえ、人口減少による問題の克服に向けた取組を進めてまいります。
 全国学力調査と家庭の経済状況にかかわらない教育機会の確保についてお尋ねがありました。
 国として、全ての子供たちの学力向上を図るため、全ての市町村、学校等において、全国的な状況との比較により課題を把握し、その結果を学校の指導改善に生かすことが重要であります。このため、全国学力調査を、過度な競争が生じないよう配慮しつつ、継続的に悉皆で実施してまいります。
 また、子供たちが家庭の経済状況にかかわらず最良の教育を受けられるようにすることは重要であります。このため、高校無償化制度に所得制限を導入し、それによる財源で低所得者層への支援策を充実するほか、奨学金や授業料減免等の拡充を通じて家庭の教育費負担の軽減を図ってまいります。
 教科書検定基準の見直しと道徳の教科化についてのお尋ねがありました。
 教科書検定基準の見直しは、改正教育基本法の趣旨を踏まえて、バランスの取れた教科書で子供たちが学べるようにすることを目指すものであります。教科書の著作、編集を民間に委ね、各発行者の創意工夫を凝らした多様な教科書の発行を期待するという教科書検定制度の趣旨を変えるものではなく、戦前の国定教科書の復活につながるとの心配は及びません。
 また、道徳については、公共の精神や豊かな人間性を培うため特別の教科として位置付け、教育の目標、内容の見直しや教員養成の充実などを図ることにより今後の時代に求められる道徳教育の実現を目指すものであり、戦前の修身科の復活につながるものではありません。
 教育委員会制度の見直しについてお尋ねがありました。
 昨年四月の教育再生実行会議の提言においては、教育長を地方教育行政の責任者と明確に位置付けるとともに、教育の政治的中立性や継続性、安定性を確保するための制度上の措置を講ずるとされています。この提言等を踏まえ、与党の御意見もいただきながら、責任の所在が曖昧な現行の教育委員会制度を抜本的に改革してまいります。
 地域との連携及び国家戦略特区における公設民営学校についてお尋ねがありました。
 学校と地域の連携は重要であり、保護者や地域の方々が学校の運営や教育活動に協力する取組を進めることなどにより、社会総掛かりで質の高い公教育を実現してまいります。
 また、公設民営学校は、国家戦略特区法に基づき、既存の学校では対応し切れない多様な教育を提供する観点から、公立学校の管理を民間に委託することについて検討を行っているものであります。その検討に当たっては、公立学校としての教育水準の維持や学校と地域の連携を含めた公共性の確保を図ることを前提としています。
 雇用制度改革についてお尋ねがありました。
 日本再興戦略における雇用制度改革は、個人がそれぞれのライフスタイルや希望に応じて社会での活躍の場を見出せるよう、柔軟で多様な生き方が可能となることを目指しているものです。規制緩和が労働者の犠牲をもたらすとの御指摘は当たらないものと考えます。
 雇用分野の規制緩和や労働者の雇用環境の改善についてお尋ねがありました。
 安倍内閣の基本方針は、成熟産業から成長産業への失業なき労働移動と多様で柔軟な働き方を実現することにより雇用を拡大することであり、デフレ解消と矛盾する政策との御指摘は当たらないと考えます。
 政府としては、過重な労働による健康障害や若者の使い捨てが疑われる企業等は社会的に大きな問題であると考えており、昨年九月には、賃金不払残業や過重労働が疑われる企業等に重点的な監督指導を行ったところであります。将来を担う若者などが生きがいを持って働くことができる環境をつくっていくために、今後ともしっかりと取り組んでまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣太田昭宏君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(太田昭宏君) 憲法改正についてお尋ねがありました。
 一昨年十二月二十五日の自公政権合意には、憲法につきまして、「憲法審査会の審議を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深める。」と書かれており、憲法審査会を通じて、国会で、また政党間で十分な論議が行われるのが基本と認識しているところであります。
 以上です。(拍手)
    ─────────────
#7
○議長(山崎正昭君) 溝手顕正君。
   〔溝手顕正君登壇、拍手〕
#8
○溝手顕正君 自由民主党の溝手顕正でございます。
 明日質問に立つ予定の吉田博美議員と二人で分担して、自由民主党を代表いたしまして、安倍総理の施政方針演説について質問をいたします。
 本年、平成二十六年はうま年であります。安倍総理は年男で、今年還暦を迎えられるとのことであります。私も同じうま年生まれであります。総理とは一回り違うわけですが、同じうま年同士として、安倍総理にとって今年が良い年になりますよう応援していきたいと思っております。
 昨年一年間、総理は休む暇もなく文字どおり駆け抜けてこられましたが、今年のお正月は少しはお休みになられたでしょうか。
 本日は参議院での今年最初の質問ですので、まず総理の初夢についてお伺いいたしたいと思います。もし、お正月にゆっくり休まれて、良い初夢を見られたのであれば、ここで御披露いただきたいと思いますし、もちろんここでは言えないような夢もあるでしょうから、無理にとは申しませんので、よろしくお願いを申し上げます。
 さて、昨年一年間、安倍内閣の下で三本の矢による経済再生が強力に進められた結果、我が国の経済は上向き、自信をなくしていた国民の気持ちも少しずつ前向きになってきました。
 総理は、先週、スイスで開かれたダボス会議に出席し、日本の総理として初めてとなる基調講演を行いました。それだけ日本経済が世界からも注目されているというあかしだと思います。
 バブル崩壊以降、日本経済に対する内外からの期待がこれほど高まったことはないでしょう。私は、これこそが安倍政権一年の最大の成果だと思っております。政権交代の成果でもあります。総理御自身は、就任以来の一年余りの政権運営をどう評価されているのでしょうか。また、今年一年をどう展望されているのでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
 次に、今年の日本経済について伺います。
 政府は、二十六年度の名目成長率が三・三%になるという見通しを立てております。実現すれば、名目GDPは五百兆円、税収入は五十兆円という大台の達成が見込まれます。これは、平成十九年度以来、七年ぶりの数字であります。
 日本経済は長期低迷が続いていましたが、三%成長が続けば、二年後の平成二十八年度にはGDPは過去最高の五百三十兆円、東京オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年にはおよそ六百兆円になります。本来、日本経済にはこのくらいのパワーがあるはずです。政府は、是非、こうした具体的な成長目標を内外にアピールして、国民に、そして世界に日本経済の復活を約束していただきたいと思います。
 総理が施政方針でおっしゃったように、日本人が自信を取り戻し、二〇二〇年、そしてその先の未来に向けて進んでいけるようなビジョンを示すのが政府の役割であります。
 一方で、経済成長に関しては、民間では政府より厳しい予測も目立っております。消費税の引上げによる影響をどう考えるかというその差だと思います。総理はどのようにお考えでしょうか。こういう理由で民間予測の一部より高い成長率を達成できるという御説明をお願いをいたしたいと思います。
 私としては、消費税引上げによる個人消費の落ち込みを抑えるためには、給与の引上げが鍵になると考えております。また、中小企業への影響を抑えるために転嫁対策を万全にすることも重要であります。これらについて、具体策をどうするのか、お聞かせをいただきたいと思います。
 また、何よりも重要なのは、消費税の引上げについて国民的な理解を得るための努力であります。増税分が全額社会保障の充実、安定のために使われます。増税になった分がどこかに消えていくわけではなく、社会保障として返ってくるのであります。今後、ますます高齢化が進む中で、社会保障に伴う負担を受け入れてもらうことは大変に重い政治課題であり、現在の政治家に課せられた最大の課題だと言ってもよいでしょう。
 安倍政権であるなら、自由民主党政権であるなら安心して預けられると思っていただけるよう、政府としても丁寧に説明を行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 消費税引上げに関してもう一つ伺っておきたいことがございます。
 今回、政府は、住民税非課税世帯の二千四百万人に対し、一人一万円を給付するといいます。低所得者対策の必要性はもちろんのことですが、住民税非課税世帯が二千四百万人もいるということ自体が我が国の深刻な所得格差を示しており、大きな問題ではないでしょうか。一方では、非課税世帯が余りにも多いことについて、課税の範囲が本当にこれでいいのかという気もいたします。
 このように、住民税非課税世帯が非常に多いことは様々な観点から考えるべき問題を含んでいると思いますが、総理としてはどうお考えになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
 更に申し上げれば、今回の簡素な給付措置では、年金生活者と給与生活者との間で、給与生活者の方が不利になってしまうという問題もあります。つまり、同じ収入でも、年金生活者は給付がもらえ、給与生活者は給付がもらえない場合があるのです。
 この例に限らず、我が国の社会福祉政策では、頑張って働いている現役世代が不利な扱いを受ける場合が多いと指摘されております。若い世代が希望を持てる社会に、そして働く意欲を持てる社会にするため、改善すべき大きな問題だと思います。政府としてはどう対応していくのか、お考えを伺いたいと思います。
 将来に希望が持てる社会という意味では、もう一つ、財政問題について伺いたいと思います。
 国の借金が一千兆円を超えたということは周知の事実でありますが、このまま借金が膨らみ、将来の世代が借金を返すためだけに働くというような国になってはなりません。
 二十五年度補正予算案では国債を追加発行せず、二十六年度予算も国債発行を前年度より減らすなど、財政健全化に向けて着実に前進していることは評価できます。二十七年度までにプライマリーバランスの赤字を半減するという財政健全化目標も達成できる見通しとなっていると思います。しかし、三十二年度に黒字化するという目標の達成はまだ厳しいと伺っております。
 将来にできるだけ負担を残さないように、我々世代の責任として財政再建を更に進めていく必要があると考えますが、総理の御決意をお伺いいたします。
 次に、成長戦略について伺います。
 政府は、先週、成長戦略の実行計画について閣議決定をいたしました。また、今国会には成長戦略関連の法案が三十三本も提出されると聞いております。アベノミクスの三本目の矢である成長戦略がいよいよ実行段階に入るわけです。
 総理は、ダボス会議で、今後二年間で岩盤規制を打ち破ると宣言されました。総理自身がドリルになるという表現は、自ら先頭に立つという意気込みの表れだと思います。
 私は、成長戦略に関し、三つのことを申し上げたいと思います。
 一つは、成長戦略は大企業だけのものではないということであります。規制改革を実行される中で、大企業はもちろんですが、中小企業やベンチャー企業がより活動しやすい環境を実現し、活力ある経済を実現してほしいと考えております。この点で現在検討している具体策があればお聞かせください。
 二つ目に、成長戦略は日本企業だけのものでもありません。我々自由民主党は、政権公約で世界で一番企業が活動しやすい国を掲げました。世界で一番と言うからには、外国人にとってもビジネスがしやすい環境をつくる必要があります。世界から企業が集まってこそ本物の国際競争力が生まれます。この点で我が国はまだ遅れていると言わざるを得ません。
 外国人が日本でビジネスをする際の障壁は、我々日本人には気付きにくいものであります。例えば、会社をつくるときの諸官庁への届出、事業を行う許可の申請など、我々日本人にとっても大変ですが、外国人にとっては細かい部分で更にハードルが高いものになっております。
 当事者である外国人の意見を聞くため、アドバイザー会議をつくるなど、外からの視点を入れてその改革を進めるべきだと考えますが、いかがでございましょうか。
 三つ目は、成長戦略は、企業だけでなく個人が潤わなくてはなりません。支持者の方々とお話をしていると、企業の減税ばかりではなく、個人の所得を増やしてほしいという意見をよくいただきます。これも国民の偽らざる声であり、特に消費税引上げを機に、そうした声が更に強くなるに違いありません。
 企業減税も規制改革も、最終的には国民のためになってこそ意味があります。そこが見えにくくなれば国民の支持は得られません。安倍政権の成長戦略が個人所得の向上にどうつながっていくのか、分かりやすい説明をお聞かせください。
 日本経済に関しましては、もう一つ大きな問題があります。それは、昨今の貿易赤字であります。かつては黒字が当たり前であった我が国ですが、東日本大震災以来、大幅な貿易赤字が続いています。特にこの一年余りは、円安の影響で輸入価格が上がる一方、輸出が回復しておらず、赤字幅が増え続けています。昨年の貿易赤字は十一兆円と過去最大でありました。
 この原因として、製造業の海外移転が進んだ結果、円安になっても輸出が増えなくなったとも言われております。一方で、円安が続けば製造業の国内回帰が強まるという見方もあります。
 政府は、この大幅な貿易赤字、そして経常赤字を一時的なものだと考えているのか、あるいは今後も続く構造的な問題だと考えているのか、どちらでしょうか。また、構造的な問題だとお考えなら、どのように対応するお考えでしょうか、伺いたいと思います。
 燃料の輸入額が増えていることも貿易赤字の一因であります。燃料の輸入量を減らすこと、輸入価格を下げること、この両方を追求していく必要があります。
 燃料の輸入を減らすためには、現実問題として、原発再稼働の問題に決着を付けるしかありません。今すぐ別のエネルギー源を見付けることは不可能であります。原発がなくても電気は足りているではないかという声もありますが、その裏では、膨大な燃料費を海外に払い続けているわけであります。今の状態をいつまでも続けるわけにはいきません。政府の原発再稼働に関する方針はいかがなものでございましょうか、伺いたいと思います。
 燃料の輸入価格に関しては明るい兆しもあります。シェール革命によって国際的なエネルギー事情は大きく変わろうとしています。燃料の価格低下、調達先の多様化、新たなエネルギー資源の開発、海運、造船を始めとする関連産業の発展など、我が国にとって大きなチャンスでもあります。また、エネルギー革命は、経済や安全保障環境にも大きな変化をもたらす可能性もあります。こうした変化に我が国としても適切に対応しなければなりません。
 省庁の縦割りを超えた政府全体としての戦略が必要だと考えますが、政府にその戦略があるのか、お伺いいたします。なければもちろんつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、地方財政の問題について質問をいたします。
 私は広島県の三原市で市長をしておりました。東京などの都会のマンションと比べ、田舎の家は一軒当たりの行政コストが非常に掛かります。これまで日本のインフラ整備は、人が住んでいる限りはどんな山奥でも電気、水道、道路を引こうとしてまいりました。これはある意味では平等ではありますが、そのために効率的な行政運営を犠牲にしてきた面もあると思います。今後、更に過疎化が進めば、こうしたインフラを整備し、維持するコストが負担し切れなくなることは明らかであります。したがって、生活のインフラを町の中心部に集約していくことは不可避であると考えます。
 こうしたことを言うと、もちろん強い反対もありますが、これが我が国の現実であります。生活インフラの集約化、効率化について国としての明確な方向性を示すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 また、地方交付税についても伺います。
 地方交付税の財源は、所得税、法人税、消費税などの一定割合だということで法律で定めております。つまり、所得税や法人税の税収が変われば地方交付税の総額も変わります。
 しかし、成長戦略の文脈で法人税減税などを議論する場合に、それが交付税に与える影響については余り考慮されていないように受け止めております。もちろん、実際には十分理解されていることだと思いますが、地方行政出身者としては気になるところであります。法人税を下げたら自動的に交付税が減るということでは地方が困ります。そうした点は議論されていると思いますが、念のため伺いたいと思います。
 次に、第一次、第二次安倍内閣が共に重要課題と位置付ける教育再生について伺います。
 総理は、世界トップレベルの学力と規範意識を身に付ける機会を保障することが教育再生の大目標だと、国会でも教育再生実行会議でも繰り返しおっしゃっています。
 この目標のうち、学力の面で、国際学力テストで日本の子供たちの成績が向上するなど、既に脱ゆとり教育の成果が出始めております。次は規範意識や道徳心の育成について本格的に取り組む時期ではないかと思っております。内閣の重要課題としてこれをどのように進めていくのか、お考えを伺います。
 歴史や文化の教育も重要課題と考えます。
 先日、政府が高校日本史の必修化を検討しているという報道がありました。小中学校でも歴史は学びますが、高校生という、世の中のことがある程度分かる年齢になってから改めて我が国の歴史を学ぶことは非常に意味があると思います。是非必修化を行ってほしいと考えますが、総理としてはどのようにお考えか、お聞かせください。
 また、歴史と併せて、年中行事、風習、食文化など日本文化を学ぶことも必要だと考えます。そうした内容を教育課程に入れることを検討してはどうかと考えますが、いかがでしょうか。御見解をお聞かせください。海外に旅行あるいは赴任してみて、自らの知識不足を感じ、恥ずかしい思いをしないようにしたいものであります。
 次に、教育委員会改革について伺います。
 昨年、教育再生実行会議が、教育委員会の責任体制を明確化し、首長の権限を強めるという教育委員会の改革案を打ち出しました。いじめや危機管理といった問題は、学校現場では日々起こっています。月に一度か二度、数時間集まるだけで非常勤の教育委員会が最終責任を持つというのは、現実的ではありません。こうした現状を考えると、教育再生会議の改革案は正しい方向性だと思います。
 責任体制の明確化に加えて、いじめ問題への対応などを見ると、学校や教育委員会の透明化も必要だと考えます。身内をかばい、不祥事を公にしない学校や教育委員会の体質は、関係者以外との接触が少ないという閉鎖性や、県内の同じ大学の出身者ばかりという同質性など、様々な問題があると考えます。
 このような学校や教育委員会の体質をどのように変えていくのか、具体策を伺います。
 憲法改正について伺います。
 先週の日曜日になりますが、我々自由民主党は第八十一回となる党大会を開催いたしました。そこで採択した運動方針では、憲法について、主権在民、平和主義、基本的人権の尊重の基本原理を継承しつつ、時代に即した現実的な改正を行う、党是である憲法改正の実現に向けて、党全体として積極的に取り組むとしております。
 一方で、連立与党を始めとする各党の皆様、そして何よりも国民の皆様の御理解と協力がないと憲法改正は成し遂げることができないことは言うまでもありません。憲法のどの部分をまず変えるべきかという論議も、まだまとまっているとは言えません。
 総理は、施政方針演説で、憲法改正には一言触れられただけでした。しかし、本来総理は、憲法改正について、私のライフワークだ、何のために政治家になったのかと語るなど、強い意欲をお持ちのはずです。総理は、今後、憲法改正に向けた動きを具体的にどのように進めていくお考えか、伺います。
 次に、普天間問題について伺います。
 昨年末、沖縄県の仲井眞知事は、普天間飛行場の五年以内の運用停止、早期返還について、政府挙げて取り組んでほしいと要請し、普天間飛行場の移設先である辺野古沿岸部の埋立てを承認いたしました。これは、安倍総理を始め、政府を挙げての取組の熱意が知事に伝わったものだと考えます。
 一方で、先週、名護市長選挙が行われ、移設に反対する現職候補が勝利いたしました。地元自治体の協力を得ることが難しい状態になったわけですが、しかしながら、基地負担の軽減には強い決意で取り組み、普天間基地の固定化は絶対にあってはなりません。総理は、今後、どのようにこの問題を進めていくお考えか、伺います。
 総理は、施政方針演説で、東京オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年について何度も言及されました。
 私は前回のオリンピックのとき大学生でありました。当時、まさかもう一度東京でオリンピックが見られるとは思っておりませんでした。前回の東京オリンピックが開催されたのは一九六四年、今からちょうど五十年前であります。当時の我が国は、人口九千七百万人、GDPは三十兆円でした。国家予算は三兆円台であります。来年度は、社会保障関係費だけで三十兆円を超えます。当時のGDPより多い金額であります。五十年間でGDPは十六倍、国家予算は三十倍、社会保障関係費は実に七十倍になりました。当時とは全く違う状況で次のオリンピックが開催されます。
 我々は、超高齢化社会の中で新しい国の形をつくっていかなければなりません。それには大きな困難も伴うでしょう。
 今、東京都において都知事選挙の最中であります。その中で、国の根本的な政策ともいえる原発問題が争点として取り上げられています。
 エネルギー問題は、原発即廃止で解決できるというような単純なものではないと考えます。更に十分な検討と時間が必要だと考えております。
 どんな状況に直面しても、歯を食いしばって努力をし、あらゆる困難を乗り切ってきたのが日本人であります。震災からも戦争からも不死鳥のようによみがえり、繁栄を築いてきました。先人の偉大な努力に学び、新たな困難を乗り越えていくことが我々に課せられた使命だと考えます。
 本当の意味で戦後を脱却し、新しい日本の行方を示すことが安倍総理に求められていることだろうと考えます。その使命を先頭に立って実現をしていく御決意をお伺いいたしまして、私の代表質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#9
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 溝手顕正議員にお答えをいたします。
 まず、初夢についてお尋ねがありました。
 初夢を話しいる間に忘れけりと申します。今年のお正月は、どんな夢を見たかを忘れるぐらいぐっすりと眠ることができました。十分な休養を取ることができたのではないかと思います。心機一転、全力で国政に当たってまいります。
 溝手会長におかれましては、同じうま年生まれの年男として、いかなる障害も駿馬のごとく一緒に乗り越えていきたいと思います。なお一層の御理解と御支援をお願いを申し上げる次第でございます。
 就任一年余りの政権運営の評価と今年一年間の展望についてお尋ねがありました。
 一年前を振り返れば、遅れる復興、長引く経済の低迷、教育の危機、さらには外交上の地位の低下、日本は数々の危機に直面をしていました。言わばノーアウト満塁でマウンドに立った私は、三本の矢の政策を始め、私の信じる球を目いっぱい投げ込んでまいりました。
 一年がたち、景気回復の裾野は着実に広がっています。復興も一歩一歩進んでいます。今年のダボス会議では、オープニングの基調講演に日本の総理大臣として初めて招待されました。今や日本の復活に世界が注目しています。これも、溝手会長を始め自民党、公明党による強固な連立与党の御支援と御協力のたまものであり、是々非々の考え方の下、政策協議に応じてくださった責任野党の皆様のおかげであります。そして、何よりも安倍政権を支えてくださった国民の皆様のおかげでございます。改めて、この場をお借りいたしまして御礼を申し上げたいと思います。
 ノーアウト満塁の危機は何とか乗り越えることができました。今年は攻守交代であります。デフレからの脱却、復興の更なる加速化、教育の再生、外交・安全保障政策の立て直しに向けて攻める番であります。まずは、景気回復の実感を全国津々浦々に至るまで収入アップという形で届け、経済の好循環の実現を目指してまいります。日本を取り戻すため、溝手会長を始め皆様の御協力を改めてお願い申し上げます。
 政府の経済成長予測と民間予測との差についてのお尋ねがありました。
 平成二十六年度の経済については、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減に留意が必要です。しかし、好循環実現のための経済対策や政労使の取組など各種施策の推進等により、年度を通じて見れば、二十五年度に続き堅調な内需に支えられた景気回復が見込まれると考えております。この結果、二十六年度の実質GDP成長率は一・四%程度、名目成長率は三・三%程度となると見込んでいます。
 御指摘のとおり、民間機関の平均的な見方は政府より低めの見込みとなっていると承知していますが、政府としては、経済の好循環が徐々に実現していくことで、このような成長率になると見込んでおります。
 消費税引上げに伴う対策についてのお尋ねがありました。
 本年四月に消費税率が引き上げられた後も我が国経済が持続的な成長を確保するためには、企業収益の拡大を賃金上昇につなげ、これを個人消費の増加につなげる経済の好循環を実現していくことが重要であります。
 具体的な賃金の水準は個別労使間の交渉を通じて決定されるものでありますが、昨年末に取りまとめられた政労使会議における共通認識も踏まえ、今後、労使間で真摯な議論が行われ、賃金上昇が幅広く実現するものと期待しています。私たちの政策で初めて賃上げの機運が盛り上がってきました。この道しかありません。
 また、消費税率引上げの中小企業への影響を抑えるため、消費税の円滑かつ適正な転嫁等を確保することが重要であります。今後も、転嫁拒否等に対する監視、取締りや事業者等に対する指導、周知徹底等に努め、政府一丸となって万全の転嫁対策を講じてまいります。
 消費税率引上げによる増収分は、全額社会保障に充てることとしております。こうした点について、国民の皆様に御理解いただけるよう、政府として引き続き丁寧に説明してまいります。
 住民税の課税範囲の在り方及び若い世代が希望を持てる社会についてのお尋ねがありました。
 政府としては、デフレ脱却・経済再生に向け、企業収益が雇用拡大や所得上昇につながる経済の好循環を実現し、若い世代を含め、国民生活に経済成長の恩恵が幅広く行き渡るようにしてまいります。
 また、社会保障制度については、急速な少子高齢化が進む中、子ども・子育て支援を充実するなど、若い世代の納得感が得られる全世代型の社会保障へと転換することで、世代間の公平を確保しながら、世界に冠たる制度をしっかり次世代に引き渡してまいります。
 個人住民税の課税範囲は、地域社会の費用について、住民がその能力に応じて広く負担を分かち合うことを基本とし、低所得者への影響にも留意しつつ決められているところであり、今後ともこうした考え方に基づき対応してまいります。
 財政再建に向けた決意についてお尋ねがありました。
 政府としては、経済再生と財政健全化の双方の実現に取り組んでおります。平成二十六年度予算においては、一般会計の基礎的財政収支について、中期財政計画の目標を上回る五・二兆円の改善を実現し、新規国債発行を一・六兆円減額するなど、財政健全化に向けて着実に前進してまいります。
 引き続き、二〇一五年度における国、地方の基礎的財政収支の赤字対GDP比半減、二〇二〇年度における黒字化目標の達成に向けて、歳出歳入両面の取組を強力に進めてまいります。
 安倍政権の成長戦略に関するお尋ねがありました。
 日本のイノベーションを支えてきたのは、大企業の厳しい要求に高い技術力で応えてきた中小・小規模事業者です。こうした中小・小規模事業者支援策として、ものづくり補助金を商業、サービス業にも広げるとともに、中小企業投資促進税制を拡充します。あわせて、個人保証偏重の慣行を改めてまいります。
 外国人にとってもビジネスをしやすい環境をつくるとの観点からは、世界で一番企業が活動しやすい国を実現し、対日直接投資を促進していくことが重要です。先般の経済財政諮問会議において、私から甘利大臣に対し、外国企業の意見も聞きつつ、課題を整理するよう指示したところであります。
 また、御指摘のとおり、景気回復の実感を賃金上昇の形で国民の皆様に届けることが重要です。これまでに、所得拡大促進税制の拡充を決定するとともに、政労使会議において、労使は企業収益の拡大を賃金上昇につなげていくとの共通の認識を醸成することができました。
 具体的な賃金の水準は個別労使間の交渉を通じて決定されるものでありますが、今後は、こうした共通認識を踏まえ、労使間で賃上げの実現に向けた十分な議論が行われ、賃金上昇が幅広く実現するものと期待しています。
 貿易赤字、経常赤字についてのお尋ねがありました。
 貿易収支や経常収支は、世界経済の動向、その他様々な要因により影響を受けるものであり、これらの動向については、その背景を含め慎重に見極めていく必要があると考えております。
 確かに、このところの我が国の貿易収支は燃料輸入の増大などにより赤字が続いておりますが、政府としては、この状態が恒常化するとの見通しは現在持っておりません。一時的なショックや外的なショックがあった場合でも、持続的に成長する強い経済を実現することが重要であり、デフレ脱却・経済再生に向けた取組を鋭意進めてまいります。
 原発再稼働に関するお尋ねがありました。
 国民生活と経済活動を支える、責任あるエネルギー政策を構築することが何よりも重要です。電気が足りているとの指摘もありますが、これは、発電所の定期検査の繰延べや老朽火力発電をフル稼働させた結果であり、電力需給は予断を許さない状態が続いていると考えます。
 また、電力供給における海外からの化石燃料への依存度が、第一次石油ショック当時よりも高いという現実から目をそらすわけにはいきません。資源のない日本は、昨年、化石燃料の輸入に二十七・四兆円も支払っており、原発がないことにより三・六兆円も多く支払っております。また、中東情勢が不安定になれば、たちまち石油価格が暴騰し、供給停止もあり得ます。
 福島の事故も経験し、国民の皆様が原発の安全性に不安を持つのは当然であります。福島の事故の教訓を踏まえ、安全を確保することが大前提です。その前提の下、独立した原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の安全基準に基づいて徹底的な安全審査を行い、これに合格した原発について再稼働を判断していくこととする方針であります。
 近年のエネルギー環境の変化についてお尋ねがありました。
 北米に端を発したシェール革命は、経済成長や産業構造に大きな影響を与えるとともに、国際的なエネルギーの需給構造をも大きく変化させようとしています。こうした変化に対応するため、縦割りを超えて、政府を挙げた戦略的な取組が必要です。こうした観点から、政府全体の中長期的なエネルギー政策の方針を示すため、与党ともしっかり調整した上で、エネルギー基本計画を決定してまいります。
 人口減少下における生活インフラの集約化、効率化についてのお尋ねがありました。
 地方の活性化は安倍内閣にとって最重要のテーマであり、人口減少が進む中においても元気な地方をつくっていく必要があります。このため、地域の中心部への医療や福祉施設等の誘導により生活機能の集約を進めるとともに、それと連携した公共交通の再生を推進することで、インフラ整備・維持の効率化を図りながら町全体の活性化につなげてまいります。
 法人課税の改革と地方財政への影響についてのお尋ねがありました。
 本年、更なる法人税改革に着手するに当たっては、法人税の三四%が地方交付税の原資となっていることを踏まえ、地方の安定的な財政運営の確保の観点も勘案して、しっかりと検討してまいります。
 規範意識の育成、我が国の歴史や文化の教育についてお尋ねがありました。
 規範意識や道徳心の育成については、道徳を特別の教科として位置付け、道徳教育の目標、内容の見直しや教員養成の充実など、抜本的な改善、充実を図ってまいります。
 また、高等学校における日本史の必修化については、日本人としてのアイデンティティー、日本の歴史と文化に対する教養などを備え、グローバルに活躍できる人材を育成する観点から検討を進めてまいります。
 さらに、日本文化に関する教育については、改正教育基本法を踏まえ、教育課程の改善を図ったところですが、来年度から全国の小中学校に配付する道徳教材に年中行事や風習、食文化についても盛り込むなど、一層の充実を図ってまいります。
 教育委員会や学校の改革についてお尋ねがありました。
 昨年四月の教育再生実行会議の提言においては、教育長を地方教育行政の責任者と明確に位置付けるとともに、教育の政治中立性や継続性、安定性を確保するための制度上の措置を講ずることとされています。この提言等を踏まえ、与党の御意見もいただきながら、責任の所在が曖昧な現行の教育委員会制度を抜本的に改革してまいります。
 また、この提言においては、教育行政や学校の閉鎖性を改め、社会総掛かりで教育再生を実行していくこととされています。これを踏まえ、教育委員会と首長部局との交流人事等を推進するとともに、学校に関する情報の積極的発信や学校運営への地域住民の参画など、学校と地域の連携を進めてまいります。
 憲法改正に向けた具体的な進め方についてお尋ねがありました。
 自由民主党は、二十一世紀にふさわしいあるべき憲法の姿を憲法改正草案として発表し、広く国民に憲法改正を訴えてきました。これを一つの契機として国民的な議論が始まったものと認識しております。
 今後、まずは、言わば憲法改正の土俵とも言える国民投票制度について、その残された宿題を解決し、その上で、国民的な議論の深まりや憲法審査会における検討を踏まえ、しっかりと着実に憲法改正に取り組んでまいりたいと考えております。
 普天間飛行場の移転についてお尋ねがありました。
 住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければなりません。これは、安倍内閣の基本的な考え方であり、政府と地元の皆様の共通の認識であると思います。
 政府としては、引き続き、地元の皆様の御理解を求めながら、速やかな返還に向けて取り組みます。同時に、移設までの間の危険性除去が極めて重要な課題であり、オスプレイの訓練移転など、沖縄県外における努力を十二分に行います。沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、できることは全て行うとの姿勢で基地負担の軽減に取り組んでまいります。
 新しい日本を先頭に立って実現していく決意についてお尋ねがありました。
 私は、政治家として大きな挫折を経験しました。だからこそ、私は、再び総理大臣として、日本のために全てをささげる覚悟であります。
 日本は、現在、少子高齢化を始め困難な課題に直面しています。成熟した日本が改革を進める、これは大いなる挑戦であります。しかし、日本の先人たちは、欧米列強が迫る焦燥感の中で見事に明治維新を成し遂げ、さらに、戦後の焼け野原から高度成長を実現しました。日本なら必ずやできるはずであります。その大きな自信を胸に、私は先頭に立って、二〇二〇年をチャンスとして、その先を見据えた新しい日本を切り開いてまいります。
 以上であります。(拍手)
#10
○議長(山崎正昭君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(山崎正昭君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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