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2013/06/06 第183回国会 参議院 参議院会議録情報 第183回国会 法務委員会 第9号
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2013/06/06 第183回国会 参議院

参議院会議録情報 第183回国会 法務委員会 第9号

#1
第183回国会 法務委員会 第9号
平成二十五年六月六日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月四日
    辞任         補欠選任
     江田 五月君     岡崎トミ子君
     蓮   舫君     松野 信夫君
     中原 八一君     山本 一太君
 六月五日
    辞任         補欠選任
     岡崎トミ子君     江田 五月君
     松野 信夫君     那谷屋正義君
     尾辻 秀久君     石井 浩郎君
     山本 一太君     高階恵美子君
 六月六日
    辞任         補欠選任
     那谷屋正義君     藤本 祐司君
     石井 浩郎君     青木 一彦君
     高階恵美子君     中原 八一君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         草川 昭三君
    理 事
                前川 清成君
                磯崎 仁彦君
                岸  宏一君
                真山 勇一君
    委 員
                有田 芳生君
                池口 修次君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                那谷屋正義君
                藤本 祐司君
                青木 一彦君
                石井 浩郎君
                礒崎 陽輔君
                高階恵美子君
                中原 八一君
                長谷川大紋君
                魚住裕一郎君
                森 ゆうこ君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     谷垣 禎一君
   副大臣
       法務副大臣    後藤 茂之君
       外務副大臣    松山 政司君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  盛山 正仁君
       外務大臣政務官  若林 健太君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  永野 厚郎君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   岡 健太郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田村 公伸君
   政府参考人
       法務大臣官房司
       法法制部長    小川 秀樹君
       法務省民事局長  深山 卓也君
       法務省刑事局長  稲田 伸夫君
       法務省入国管理
       局長       榊原 一夫君
       外務大臣官房参
       事官       新美  潤君
       外務大臣官房参
       事官       山田 滝雄君
       厚生労働大臣官
       房審議官     鈴木 俊彦君
   参考人
       東京大学大学院
       総合文化研究科
       教授       早川眞一郎君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会ハーグ条約に
       関するワーキン
       ググループ委員  磯谷 文明君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会両性の平等に
       関する委員会特
       別委嘱委員    吉田 容子君
       一般社団法人レ
       フト・ビハイン
       ド・ペアレンツ
       ・ジャパン代表
       理事       明尾 雅子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約
 の実施に関する法律案(内閣提出、衆議院送付
 )
    ─────────────
#2
○委員長(草川昭三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 昨日までに、蓮舫君、中原八一君及び尾辻秀久君が委員を辞任され、その補欠として那谷屋正義君、高階恵美子君及び石井浩郎君が選任をされました。
    ─────────────
#3
○委員長(草川昭三君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省入国管理局長榊原一夫君、外務大臣官房参事官新美潤君、外務大臣官房参事官山田滝雄君及び厚生労働大臣官房審議官鈴木俊彦君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(草川昭三君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ─────────────
#5
○委員長(草川昭三君) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○前川清成君 おはようございます。
 今日から私たち参議院でいわゆるハーグ実施法の審議が始まります。大臣も御案内のとおり、私、おとなしい性格ですので、争点対立型の、例えばですが、自民党が野党のときにどうしてハーグ条約の審議を拒否し続けていたんだとか、そんなことは後日に譲って、今日は、新しい仕組みが家庭裁判所で始まろうとしていますので、制度の全体を概説するような、そういう質疑をさせていただきたいと思います。
 昨日、質問通告をさせていただきました。その際、基本的には法務大臣にお答えいただくんでしょうが、条文の主語が外務大臣になっているところ、あるいは制度の主体が外務大臣になっているところは外務省にお尋ねをするのかなと。あるいは、申立書の記載事項等々、裁判実務に関するようなことは最高裁にお答えいただくのかなと。その点にはこだわらないというふうに留保を付けさせていただいて質問通告をいたしましたが、一点気掛かりなのは、昨夜から今朝にかけて何度か答弁者の変更があるんです。どなたにお答えいただいても結構なんですが、どうぞ譲り合いの精神は余り発揮なさらずに、結論のところをまずは明確にお答えをいただきたいと思います。
 それで、最初に外国返還援助申請という仕組みについてお尋ねをしたいと思います。
 これを、今日は外務副大臣に御出席いただいていますので外務副大臣になろうかと思いますが、この五条の一項と二項で、外国返還援助申請というのがあれば外務大臣は地方公共団体の長などに対して情報の提供を求めることができるとあります。二項において、求めを受ければ遅滞なく外務大臣に情報を提供しなければならない、こういうふうになっておるんですが、この五条一項及び二項に基づいて外務大臣あるいは外務省はどのような仕事をされるのか、御質問いたします。
#7
○副大臣(松山政司君) 前川委員にお答えをいたします。
 ハーグ条約締約国は、同条約上、子の所在特定のため全ての適当な措置をとる義務を負っています。したがって、これを受けて実施法案第五条第一項及び第二項は、本法案に定める援助を実施する旨の決定、申請の却下等の判断に必要不可欠と考えられる情報について外務大臣がその提供を求めることを可能としています。また、同条第三項において、条約上の義務を確実に履行するため、中央当局による所在の特定が十分でない場合、都道府県警察に所在を特定するために必要な措置をとることを求めることができる旨規定をしています。さらに、中央当局が提供を受けた情報につきましては、漏えい等がないよう十分配慮をして厳格に情報を管理する必要がありますことから、この四項で所在の特定により得た情報の開示については裁判所等に限定する旨規定をしているところでございます。
#8
○前川清成君 副大臣、申し訳ありません、三項、四項はこれから順番にお答えしていただきますので。今は一項と二項についてお尋ねをしました。
 それで、今の一項、二項についてですけれども、例えばですが、日本人のお母さんが子供を連れてアメリカから帰ってきましたと、しかしアメリカ人の夫にはどこに暮らしているか秘密にしていると、それで、そんな状況の下でこの新法の四条に基づいて外国返還援助申請があれば、外務大臣は日本中の、およそ千八百でしたでしょうか、市町村長に対してお母さんと子供の住民票はどこにあるのか答えろというふうな照会をなさるんでしょうか。
#9
○副大臣(松山政司君) 五条の第一項の「政令で定めるところにより、」というところでありますけれども、この政令におきまして法務大臣に対する出入国管理に関する情報、そして市町村長に対する戸籍や住民票の写しの提出等々、国の行政機関等に対して具体的に求める情報とその手続を規定することを想定をいたしております。
#10
○前川清成君 副大臣、済みません、政令に定めるところじゃなくて、五条の一項は法文で「地方公共団体の長」と明記してあるんですが、政令をまつまでもなく、外務大臣は市町村長に対して情報提供を求めることができると、市町村長が持っている所在確認に関する最も重要な情報としては住民票上記載の情報と、こういうふうに解釈すべきじゃないんですか。
#11
○委員長(草川昭三君) 松山外務副大臣、どうですか。
#12
○副大臣(松山政司君) そのことも含めて今後政令で定めていくことにしておるところでございます。
#13
○前川清成君 政令じゃありませんよね、法律に書いてあるんだから。
#14
○副大臣(松山政司君) 具体的にその手続等々をこれから規定していくということを想定をいたしております。
#15
○前川清成君 最初からスムーズにいかなくてちょっと残念なんですが。
 確認の確認ですが、国法体系において頂点に立つのは憲法で、その下にあるのが法律で、その下にあるのが政令でいいですよね。
#16
○副大臣(松山政司君) はい、そのとおりであります。
#17
○前川清成君 そうであると、今のお答えはちょっと考え直していただかないといけないと思います。
 その上で、第三項についてですが、この第三項の条文を読むと、外務大臣は都道府県警察に対して情報の提供を求めることができると書いてあります。例えばですが、全国の千八百の──副大臣、よろしいですか、聞いておいていただかなくて。
 全国の千八百の市町村に外務大臣は全部照会すると。ある、例えばどこかの市町村長から住民票上の記載がありますよと回答があれば、それが本当かうそか調べてこいというふうに警察に指示すると、こういう意味ですか。
#18
○副大臣(松山政司君) その具体的内容を政令でこれから定めるということを政令で決めています。よろしいですか。
#19
○委員長(草川昭三君) それでいいんですか。
#20
○前川清成君 ちょっと今の答えは納得できません。
 法律の第三項に、都道府県警察に対し、当該情報を提供して、これらの者の所在を特定するために必要な措置を求めることができると、こう書いてあるんです。それにもかかわらず、具体的な内容は何も決まっていませんと、これから政令で決めるということなんですか。
#21
○副大臣(松山政司君) 外務大臣が同条第一項及び第二項の規定によって情報を収集した結果、子が国内にいることは判明したが、その具体的な所在を特定することができない場合においては、外務大臣は都道府県警察に対して、当該情報を提供し、行方不明者発見活動に関する規則第三十条の規定に基づいて行方不明者発見活動の手続等々を取るよう依頼することを定める予定であります。
#22
○前川清成君 いや、その今お答えいただいたことは法律に書いてあるので結構なんですけれども、もう一度言いますよ、二回目ですよ、いや、ごめんなさい、三回目ですよ、副大臣。
 外国返還援助申請がありますでしょう。申請があると、どこに住んでいるのか外務大臣は全国全ての市町村長に照会するのかどうか。で、例えば回答があれば、それに対して本当かうそか警察に確かめさせるのか。この二点。質問通告していますよ、これ。
#23
○委員長(草川昭三君) 松山外務副大臣、答弁してください。
#24
○副大臣(松山政司君) そのとおりであります。
#25
○前川清成君 物すごい警察国家になるんですね。
 委員長、速記を止めていただけませんか。
#26
○委員長(草川昭三君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#27
○委員長(草川昭三君) 速記を起こしてください。
#28
○副大臣(松山政司君) 所在を特定するために十分でない場合、だから全てが警察に行くわけではありませんことを申し上げておきます。
#29
○前川清成君 それじゃ、私が今お尋ねしたケース、住民票上の記載がありました、じゃ、どういう場合はそこで終わって、どういう場合はこの三項に基づいて警察に対する照会を行うんですか。
#30
○副大臣(松山政司君) 子が国内にいたことは判明したが、その具体的な所在を特定することができない場合、その場合、外務大臣は都道府県警察に対して情報を提供して、行方不明者発見等々に関する第三十条の規定に基づいてその発見活動の手続を行うことができるということでございます。
#31
○前川清成君 ごめんなさい、質問に答えてくださいね。通告している問題ですから。
 私が言っているのは、住民票上の記載があるんですよ、あったら、次はどうするんですかという質問。
#32
○委員長(草川昭三君) 松山外務副大臣、答えてください。
#33
○副大臣(松山政司君) いや、五条についてという通告は受けておりますけれども、余り込み入った詳細な通告は受けておりません。後ほどまた……
#34
○前川清成君 これ、どこが込み入っているんですか、これ。僕、何も細かなこと聞いていませんよ。条文の意味を聞いているんですよ。これで細かな通告を受けていないと言われたら、どんな通告をやるんや。
 委員長、速記を止めてください。全部時間動きますから、これで。(発言する者あり)
#35
○委員長(草川昭三君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#36
○委員長(草川昭三君) 速記を起こしてください。
#37
○副大臣(松山政司君) 今お尋ねの、住民票があった場合でもその場所にいないということが想定されますので、その場合は、住民票があってもその場にいないということが想定されますので、それでも場所が特定できない場合は警察等々に依頼をすることができるということでございます。
#38
○前川清成君 この通告ですけれども、行き違いが起こらないように私は文書で通告しています。五条についてお尋ねするというのは通告しています。もしも不明な点があったらお問い合わせくださいねというのも親切に書いているんですよ。ところが、外務省からは何のお問い合わせもありませんでしたよ。それで通告を受けていないなんというのは、ちょっと国会の審議をなめているんじゃないですか。
 それと、今の答えですが、結局、これは確定してくださいね、住民票上の記載があっても住民票上の住所に住んでいない人はいるんです、現実の問題として。例えば、私の住民票上の住所は奈良県奈良市ですが、月曜日から金曜日は東京都千代田区麹町に住んでいます。ということは、住民票上の記載が見付かったとしても全県、都道府県警察に対して照会すると、こういうことですね。
#39
○副大臣(松山政司君) 住民票がはっきりしておりましてもその場におられないということが、場所が特定することができない場合、具体的な所在を特定することができない場合は、外務大臣は都道府県警察に対して情報を求めることができるということでございます。
#40
○前川清成君 何かこれだけで全然前に進まないんであれなんですけどね。まあいいです。
 それで、じゃ、五条の四項ですが、五条の四項で、外務大臣は次の場合に限って申請者に情報を提供すると、こう書いてあって、子の返還の申立て云々かんぬん、家事の調停の申立てをするためとあるんですね。申立てをした後じゃなくて、これから申立てをする、しようと思っている場合に、相手方の住所が分からないと困るから外務大臣に返還援助を申し立てて情報提供を求めるんだろうと、こういうことで、この仕組みには私はそれなりに合理性があると思うんですが。
 例えばですが、アメリカ人の夫の暴力に耐えかねて日本に逃げてきました、夫には住所を秘密にしていますと、夫はこの手続を行うことによって、秘密にしていたお母さんと子供の所在場所を知ってしまうと、すると、お母さんはまたDV被害に遭うかもしれない。どうしたらいいんですか。
#41
○副大臣(松山政司君) お尋ねの四項でございますが、情報の提供が可能な場合を限定しているのは、外務大臣が子の住所又は居住を特定するに当たって個人情報を厳密に管理する必要があるためでございます。
 具体的には、例えば、子又は子を連れ去った者がDVや虐待の被害者である場合、その居住地が加害者に知られることによって更なる危害が及ぼされるといった、委員御指摘のような事態が生じさせないように注意をする必要がございます。
#42
○前川清成君 副大臣ね、ちょっと後ろでちょろちょろするから僕の質問聞いていただけないのよ。ちょろちょろするねんやったら、後ろ、出ろ、おまえら。
 副大臣、聞いてくださいね、あなたのおっしゃっていることはそのとおりなんだけど、僕はそこから先を聞いているんですよ。
 例えば、DVの被害者が加害者から隠れて暮らしていると、そういう場合に秘密の住所を漏らされたら困ると。だから、例えばですけれども、二十八条については、それに配慮する、例えば二十八条の一項四号あるいは一項六号、二十八条の二項、配慮する条文があります。
 ところが、外国返還援助に関しては、七条に拒否事由が書いてあるんですけれども、DVのお母さんに配慮したような規定がありません。今副大臣は、被害者の所在を知られたら困るような場合には云々とおっしゃったけれども、その実定法上の根拠はありませんよ、七条には。どうなるんですか。この条文のとおりだったら、DVの加害者であろうと誰であろうと、これから返還申立てをするとなれば必ず情報提供しないといけないんでしょう。しかも、住民票上の住所だけじゃなくて、警察にまで行かせて確認した上で提供してしまうんですよ。これは余りにも被害者に対する配慮がないんじゃないんですか。
#43
○副大臣(松山政司君) そのような状況の可能性がある場合は、情報の保護等々に関しても、いろんな意味で極めて強い懸念がある状況のときには、その所在等を知られることがないように中央当局としてもしっかり配慮していかなければならないというふうにしているところでございます。
#44
○前川清成君 じゃ、ついては、その法律上の根拠をお答えください。
#45
○副大臣(松山政司君) 中に明記していますように、開示するときは氏名だけでございまして、住所は開示をしないということにいたしております。
#46
○前川清成君 ですから、法律上の根拠。
#47
○副大臣(松山政司君) 法律の第四条の一項にそのように明記をいたしておるところでございます。
#48
○前川清成君 四条の一項のどこをどう書いているんですか。
#49
○副大臣(松山政司君) 失礼しました。五条の四項でございます。
#50
○前川清成君 四条の一項と五条の四項と全然違うんですけど、どっちなんですか。五条の四項とおっしゃるんなら、五条の四項を引用して説明してください。分かりません。
#51
○副大臣(松山政司君) 五条の四項の一でありますが、「第二十六条の規定による子の返還の申立て又は子との面会その他の交流の定めをすること若しくはその変更を求める家事審判若しくは家事調停の申立てをするために申請に係る子と同居している者の氏名を必要とする申請者から当該氏名の開示を求められた場合において、当該氏名を当該申請者に開示するとき。」というふうに明記をしているところでございます。
#52
○前川清成君 僕がお答えすべきじゃないけれども、今の副大臣のお答えを善解すると、四項の一号に当該氏名とは書いてあるけれども、住所は書いていないでしょうと、こういうことですね。
#53
○副大臣(松山政司君) はい、そのとおりでございます。
#54
○前川清成君 そうしたら、自分と同居して子供までもうけた人の名前を知らない人なんて余り世の中にいないと思うんだけど、この四項の一号でわざわざお母さんの名前を教えてあげるというのはどういう立法の趣旨なんですか。
#55
○委員長(草川昭三君) 外務省、答えられますか。じゃ、ちょっと時間──いいですか。
#56
○副大臣(松山政司君) お父さん、お母さんにかかわらず同居している方の氏名ということでございます。
#57
○前川清成君 意味が分かりません。
#58
○委員長(草川昭三君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#59
○委員長(草川昭三君) 速記を起こしてください。
#60
○副大臣(松山政司君) 五条の四項でございますが、外務大臣から第二項の規定により提供された情報及び前項の規定による都道府県警察の措置によって得られた情報の提供は、次に掲げる場合に限り行うことができるということで一を明記しておるところですが、「第二十六条の規定による子の返還の申立て又は子との面会その他の交流の定めをすること若しくはその変更を求める家事審判若しくは家事調停の申立てをするために申請に係る子と同居している者の氏名を必要とする申請者から当該氏名の開示を求められた場合において、当該氏名を当該申請者に開示するとき。」ということで規定をさせていただいているところでございます。
#61
○前川清成君 委員長、ちょっと答えさせてもらえませんか。全然答えていないですよ。これでは続けられません。
#62
○委員長(草川昭三君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#63
○委員長(草川昭三君) 速記を起こしてください。
#64
○副大臣(松山政司君) 大変失礼しました。
 名前におきましては、どのような方が同居しているかということも分かりませんので、同居している方の氏名については開示をするということで、ただし、住所については公開はしないということで、いろんな方の、同居している方々の名前というものは少なくとも開示をするということで、求められたときにはそのように規定をしているところでございます。
#65
○前川清成君 副大臣、ちょっと落ち着いてゆっくり考えていただきたいんですけど、アメリカで国際結婚していました、日本人のお母さんが子供を連れて日本に帰ってきました、お父さんとしては子供に会いたい、でも日本のどこにいるか分からない、ついては外務大臣にお願いをして外国返還援助をすると、こういうことでしょう。外務大臣としても可能な限り協力しようということで、市町村長そのほかに照会していくわけですよ。
 そうであれば、子供はほとんどの場合お母さんが育てていますよ、ほとんどの場合。だから、お母さんの名前だけ答えるんだったらこの四条以下の条文というのは余り意味がないんです。そうじゃなくて、例えば裁判所でも、その後、申立てをするにも裁判所の管轄を決めないといけませんよね。だから住所が要るんですよ、そうでしょう。でも、私が申し上げたようなDVの被害者で隠れている場合もあるわけですよ。そんな場合に、やみくもに住所を知らされたら、お母さん、困ってしまうわけですよ。だから全体としてどういう仕組みをつくるかなんです。私の言っていること、お分かりになっていませんよね、きっとね。
 ついては、七十条、これは法務大臣でも最高裁でもどちらでも結構ですが、七十条に返還申立書の記載として、二項一号に「当事者及び法定代理人」と書かれています。ここで言う当事者は、普通は申立人の住所と氏名、相手方の住所と氏名ですけれども、通常の場合は。七十条二項一号に言う当事者というのは今私が申し上げた理解でいいのか、そうじゃなくて、松山外務副大臣がおっしゃったように名前だけなのか、どちらでしょうか。
#66
○国務大臣(谷垣禎一君) これは、この条文は申立てを家庭裁判所に提出しなければならないわけですが、これは当事者及び法定代理人、これ名前だけでここは、申請書はいいということだと思います。
#67
○前川清成君 名前だけでよければ、管轄はどうやって決めるんでしょうか。
#68
○国務大臣(谷垣禎一君) これは二か所管轄がございますが、東京と大阪でございますが、東日本、西日本、これは裁判所が職権で調査をするということだと思います。
#69
○前川清成君 いやいや、大臣、本当にそれでいいんですか。申立書は、申立人も相手方も名前だけ、住所は書かない。送達もできませんし、管轄も決めれませんよね。全県、例えば今おっしゃったような五条の四項に基づいて外務大臣の協力を求めてかなと思っていましたが、しかし、今の副大臣の答えだと、住所は答えさせない、そうなると管轄の決めようがないと思います。ここは住所と氏名だというふうに決めておかないとこれから先の裁判が動かないと私は思いますが、違いますか。
#70
○国務大臣(谷垣禎一君) 申立書は、先ほど私が御答弁いたしましたように、当人の氏名を明記すればよろしいと、それから住所は申立書には書く必要はないという立て付けでございます。ただ、実際にそれで申請がありました後、裁判所が職権でそれを調査して管轄を決めると、そういう仕組みになっております。
#71
○前川清成君 それでしたら、七十条の四項で不備を補正することを命じなければならないとあるんですが、ここで言う不備は住所は含まないと。申立人は自分の名前と相手方の名前と、それだけ書けばいいと、一号に関してですよ。管轄についても送達先についても裁判所が職権で全部調べてくれると、こういうことで、今日は最高裁もお越しいただいていますよね、本当にこれでいいんですか。今の大臣の答えだと、これでこれから先、実務動きますよ。
#72
○最高裁判所長官代理者(岡健太郎君) お答えいたします。
 今、法務大臣から御説明があった趣旨は法律の規律ということでございまして、当然、当事者の特定のためには、委員御指摘のとおり基本的には氏名及び住所ということになるかと思います。その辺りは最高裁規則で規定する事項というふうに整理されております。ただし、住所が分からないときにどうするかどうかということはまた別の問題としてあるかと思います。
#73
○前川清成君 ですから、申立書には相手方の住所も名前も書かないといけないと、こういうことですよね、法律であろうが規則であろうが。そうなると、松山副大臣、先ほどの話に戻るんですが、お父さんがこれから申立てをしようとしている、しかし住所が分からないと、連れ去ったお母さんの住所が分からないというようなケースにおいては、五条の第四項に基づいて住所を教えてあげるんですね。
#74
○副大臣(松山政司君) 氏名のみでございます。
#75
○前川清成君 そうしたら、法務大臣にお尋ねしますけれども、最高裁規則か法律かはともかくとして、例えば訴訟であっても、訴状には原告の住所と氏名を書きます。訴状でも、原告、被告の住所、氏名、会社だったら所在地です。離婚の申立書であっても、申立人、相手方の住所、氏名を特定します。したがって、私は、この二十六条以下の返還申立事件においても、当然のことですが、申立書に当事者の住所、氏名を書かないと実務は動かないと思います。
 そこで、今、先ほどそういうお答えが最高裁からあったんですが、もしも、もしも申立てをした、しかしお母さんの、相手方の住所が分からない。しかし、今の松山副大臣の答えのとおり、お母さんの名前は教えてあげるけれども、お母さんの所在は教えないと。すると、それから先、裁判は動かない。ついては、申立てをしたお父さん、相手方の住所が分からない場合にはどのようにすればいいのか、法律上の根拠を教えていただきたいと思います。
#76
○委員長(草川昭三君) どちらが答えますか。
#77
○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほどから私が御答弁申し上げておりますのは、法律上、申立書に記載を要求されているのは私が申し上げたとおりでございます。その後、実務的にどうしていくかは、まだ私どもの方で最高裁判所が規則をどういうふうに作られるかは十分に伺っておりません。これは裁判所が裁判所の権限でおやりになると思います。
 それで、今のような、前川先生がお問いかけになったような実際に住所が分からないということはあるいはあり得るかもしれません。あるいは、その規則で、これは裁判所に御答弁いただいた方がいいと思うんですが、実際上、書いてくれというような規則をお作りになるのかもしれません。そこは私よくまだ承知をしていない、御答弁ができないところでございます。
 その上で、仮に、何でしょうか、今のように住所、居所が分からないという場合があるとすれば、恐らく、これはその申立代理人がどう判断するかでありましょうけれども、実際上、ある程度推測をして東京に申し立てるか大阪に申し立てるか、そしてあとは職権でまた調査をするということになるのではないかと思います。しかし、その辺りの、実務上どういうふうにやっていくかは、この法律の上ではまだきちっと設計されていない。規則等々を待って判断するということになると思います。
#78
○委員長(草川昭三君) ちょっと待ってください。
 最高裁、何か今の大臣の答弁に附帯して答えられることがあったら最高裁の方から聞きます。
#79
○最高裁判所長官代理者(岡健太郎君) 申立書において相手方の住所が分からないという場合には、一つの手段としては、裁判所の方から中央当局の方に、これは五条四項第二号に書いてあるところでございますけれども、その手続を行うために申請に係る子及び申請に係る子と同居している者の住所又は居所の確認を求めると、そういう形で協力依頼をする予定でございます。
#80
○前川清成君 谷垣大臣に申し上げたいのは、例えば申立ての書式がB4なのかA4なのかとか、そういう本当に実務的なことは最高裁が規則で決めればいいと思いますけど、居所が分からないと。非常にセンシティブな情報であるお母さんの住所についてまで、あとは最高裁が規則で決めたらいいというのは、ちょっと余りにも僕は最高裁に対して荷が重いんじゃないのかなと。むしろ、今最高裁の方に答えがありました。言葉は悪いけれども、大体の当たりを付けて申立てをするんだと。実際にそこに住んでなかったら、五条の四項の二号に基づいて裁判所が外務大臣に協力を求めると。協力を求められた外務大臣は、それに対して、市町村長等々に照会をして、市町村長から答えが戻ってきたらそれを家庭裁判所に知らせると。全体としてのスキームをやはり法律を作る段階で決めておく必要が私はあると思いますが、もしも大臣の方で答弁を補充されるのであればお願いしたいと思います。
#81
○国務大臣(谷垣禎一君) 今のような規則で具体的なことを決めていく、恐らく私、ちょっとここははっきりは、今ぼやっとしたことを申し上げてはいけないんですが、民事訴訟においても法で決められているのは当事者の氏名であって、住所は規則に委任されていたのではなかったかと思います。それで、したがいまして、この法律は、住所、居所等が分からない場合に申立てを行うということも想定している法律だと思います。その場合は、先ほど最高裁の家庭局長がお答えになったような手続を想定しているのだろうと、このように考えております。
#82
○前川清成君 大臣は弁護士でもいらっしゃるのでそのような形式的なことをおっしゃると。例えば訴状で、私が民事訴訟法に被告の住所は書かなくてもいいって書いてあるんだと言って裁判所の窓口に持っていったら、岡さん、きっと、おまえあほかって言われますよね。やっぱり実際のこれからの手続を念頭にした議論をしていただいたらどうかと思いますし、民事訴訟だって、例えば公示送達のように相手方の住所が分からないようなケースも想定してやっているわけですから、全体としてのスキーム、私は大事じゃないかと思います。
 いずれにしても、ここまで五分ぐらいで終わるのかなと思っていたんですが、もう四十分過ぎてしまいましたので、早くメーンディッシュに行きたいと思うんですが。
 日本法は、離婚後、単独親権というふうに決めています、日本民法の御案内のとおり八百十九条ですが。世界的には離婚後も共同親権の国が多いのか、特に条約に加盟する主要国においてはどうなのか、これも明らかに通告をしておりますので、副大臣、お願いします。
#83
○副大臣(松山政司君) 現在、ハーグ条約の締約国数でありますが、八十九か国でありますけれども、当省にて今現在把握しておりますのは八十八か国でございます。残り一か国については調査中でございますが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア等の主要国を含む七十四か国において、離婚後に両親が共同で親権を有することが認められる制度が採用をされております。
#84
○前川清成君 ちょっとごめんなさい、最後がはっきり分からなかったんですが、アメリカやイギリスは共同親権なんですか。
#85
○副大臣(松山政司君) そのとおりでございます。
#86
○前川清成君 その上でお聞きしたいんですが、アメリカで暮らしていた日本人のお母さんと子供がアメリカ人の夫と離婚して日本に帰ってきましたと。これは、共同親権だというのであれば、連れ帰ったことは、一方ではお父さんの親権の侵害になるかもしれないけれども、他方で、共同親権なんですから、お母さんも親権者なんですから、親権の行使に当たると。このようなケースでは二十七条で言うところの子の返還請求というのは認められるんですか。ごめんなさい、二十六条ですね、これは認められるんですか。
#87
○委員長(草川昭三君) どっちが答えますか。
#88
○国務大臣(谷垣禎一君) これは、今アメリカ法では両親、離婚した後も双方が親権を持っておりますけれども、お母さんの方が連れ帰ってきたということになりますと、お母さんとしては権利行使になるかもしれませんが、父の親権は侵害している、監護権を侵害しているということによってこの法律の適用が出てくるということだと思います。
#89
○前川清成君 そうなんですよね。これが僕はちょっと心配なんですが。
 二十七条を見ますと、一、二、三、四号に該当する場合には子の返還を命じなければならないとあるんですね。第三号で、今言ったところのお父さんの親権、ここでは「監護の権利」というふうに書いているんですが、監護の権利を侵害していると。そうなると、お母さんは自分も、お母さん自身も監護権者なんだと、親権者なんだと。だから、自分も権利を行使しているんだけれども、アメリカから連れ帰ったばっかりに子供をアメリカに送り返さなければならなくなってしまうと。ちょっとお気の毒なように思うんですが、いかがでしょうか、大臣。
#90
○国務大臣(谷垣禎一君) これは、ハーグ条約及びこの法律の考え方の今先生がおっしゃったことは基本にかかわってくると思うんですね。
 それで、この法律は、こういう形での子供をどちらで、父親、母親が対立する場合、そして連れ去った場合にどういうルールで解決するかということを決めた条約、法律でございまして、問題は、この常居所地国ということがございますが、常居所地国で今のような問題を判断しようと、どちらが今後監護していくのかといったような問題は常居所地国に戻して判断をしようという、全体でルールを作っているということでございます。
#91
○前川清成君 ですから、大臣、くどいようですけれども、私が冒頭申し上げたケースではアメリカへ返すと、こういうことですよね。
#92
○国務大臣(谷垣禎一君) はい、原則そのとおりでございます。もちろん、二十八条等々の要件がございますからいろんなことがございますが、原則としてはそのようになっております。
#93
○前川清成君 それでは、ちょっと事例を変えて申し上げたいんですが、お父さんはアメリカ人、お母さんは日本人、ここまでは一緒ですが、日本で結婚して日本で暮らしておられました。日本で子供が生まれたので国籍法に基づいて日本の法律が適用されます。ただ、離婚をしました。お父さんだけアメリカへ帰ってしまいましたと。お母さんは引き続き日本で子供を育てておられると。離婚のときに、親権者はお父さんで監護権者は母と決めました。これは離婚の実務では大臣も御存じのとおりよくあるとおりです。お父さんは親権者だけれども監護権者はお母さん。こういうようなケースでは、別にお母さんは子供を連れ去っていないんです。今までどおり同じところで暮らしているんです。
 しかし、二十七条の一号、十六歳に達していなくて、二号、日本国内で引き続き暮らしていると。日本も条約に入っていると。第三号で、お父さんの親権を侵害していると。こうなると、今までどおり日本でお母さんは子育てをしていたとしてもアメリカに返還しなければならないというふうに二十七条の要件上はなってしまうんじゃないかと思いますが、いかがですか。
#94
○国務大臣(谷垣禎一君) 今の二十七条の四号に、当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時に、常居所地国が条約締約国、あっ、ちょっと私これ今誤解して読みました。要するに、今の前川先生の設例の場合には、違法な連れ去りというのがない事案ではないかと思います。したがいまして、仮にこのような訴えを起こしても、それは当てはまらないということだろうと思います。
#95
○前川清成君 私も結論はそれが正しいと思うんですが、二十六条の条文は、日本への連れ去り又は日本における留置、引き続きそこにとどまる、これによって監護の権利を侵害された者はと、こうあるんです。で、繰り返しになりますが、二十七条は、一、二、三、四号がいずれも該当する場合には返還を命じなければならないと、こう書いてあるんです。
 くどいようですが、大臣がおっしゃっている結論、私は正しいと思います。日本で生まれて日本で育ったんだから、日本法に基づいてその子供の今後のことを決めればいいと思うんですが、二十七条の条文だけを見ますと、あるいはこの法律の体系だけを見ますと、日本で結婚して、日本で育って、引き続き日本にいてたとしても、日本で留置しているので、お父さんがアメリカに帰ってしまったならば子供はアメリカに送らなければならないというふうになるのが法律の建前ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#96
○国務大臣(谷垣禎一君) 前川先生は余りにも、私、当然の前提としていたことをお問いかけになりましたので、今どこを見ればそれにお答えできるか、ちょっと探していたところでございますが、やはりこの法律は、二条を御覧になりましても、連れ去りとか留置とか、不法な連れ去り、不法な留置、こういうことが定義してございまして、そういった不法な連れ去り、不法な留置ということがこの法律を適用する前提になっていると思います。
#97
○前川清成君 今お答えいただいた点は私は極めて大事なことではないかと思いますし、国際結婚が破綻した、で、お子さんを国内で育てておられるお母さん方にとっても大変気掛かりな点があるのではないかと思います。
 もしも、私の見落としだったら本当にそれは結構なことなんですが、今、私が設例として申し上げたようなケース、日本で結婚して日本で引き続きお母さんが育てているというふうなケースはアメリカに送らなくてもいいんだというようなことがはっきり書いていないのであれば、そこは私は何らかの措置が必要ではないのかなと、こう思います。もしその法文上の根拠があれば、是非教えていただきたいと思います。
#98
○国務大臣(谷垣禎一君) そもそもこの法律の第一条に「この法律は、不法な連れ去り又は不法な留置がされた場合において」と、こういうことを書いてございます。それから、二条に、先ほど申しましたように不法な連れ去り、不法な留置ということが定義をされておりまして、そういうことによってこの法律が運用されるということであると考えます。
#99
○前川清成君 じゃ、その上で、大臣、よろしいですか。これ、もしあれだったら最高裁でもいいんですが。
 八十八条、これはどのように理解すればいいのか。その二十七条の一号から四号が全て該当したとしても、この八十八条の条文によって日本の裁判所は返さないという判断が許されるのかどうか、お教えいただきたいと思います。
#100
○委員長(草川昭三君) どこが答弁ですか。
#101
○国務大臣(谷垣禎一君) これは、先ほど申しましたように、この全体の手続は不法な連れ去りあるいは出国ということが二条にも書かれてありましたけれども、そういうことが前提になっておりまして、そういう不法な連れ去りないし出国というようなものがあった中において、子の意思を尊重する必要があるということでこの八十八条が設けられておりますので、先ほど来の前川先生の御懸念にこれが抵触するということはないと思います。
#102
○前川清成君 もうさっきの話と切り離してお聞きしているんですが。
 もうちょっと具体的にお尋ねをいたしますと、二十八条の一項の五号、子が常居所地国に返還されることを拒んでいたら、二十八条で「子の返還を命じてはならない。」と書いてあるんです。子供が明確に拒んでいたら返還を命じてはならないんだと。ところが、八十八条は、子の意思を把握するように努めて、「その意思を考慮しなければならない。」と、こう書いてあるんです。ですから、二十八条の五号で、明確に帰るの嫌だと、こう言っていたら返還を命じられないんだろうと思うんですけど、八十八条というのは、一体どの程度のところを射程に入れて、あるいはどういう目的で、あるいはどういう政策的な考慮でこの条文が入っているのか、二十七条の請求原因との関係でお尋ねをいたしております。
#103
○国務大臣(谷垣禎一君) 今おっしゃいましたように、二十八条の五号では、子が帰りたくないと、こう言っている場合には返せないと、こういう規定でございます。そして八十八条の場合は、そのほかのいろいろな事由、子の意思というのが、帰るのを拒んでいるというだけではなくて、全体的にいろいろ親子関係とか判断しなければならない場合に、子がどのように考えてきているか、子がどのように感じているかということを尊重せよという、ですから、今の二十八条の場合だけに係るのではなく、広く係る規定だというふうにできているということであります。
#104
○前川清成君 ですから、その八十八条は、例えば子供は帰りたくないとは言っていないと。帰ろうかな、どうしようかなと言っている場合も含めて、家庭裁判所にある種裁量権を与えた条項と、こういうことでよろしいんですか。
#105
○国務大臣(谷垣禎一君) 裁量権といえばそうかもしれません。ちょっと言葉の厳密な定義は、私、分かっているかどうか分かりませんが、子供の意思というのはなかなか、余り小さければ親の言いなりになっているということもあるかもしれませんし、なかなか明確に自分の意思を表現できない場合もあるかもしれないと。しかし、裁判所は、そういった知恵を十分に使って子供の意思を推測して、子供のための最善な利益を考えろと、こういう趣旨ではないかと思います。
#106
○前川清成君 よく分かりました。
 その上で、ちょっと管轄について申し上げたいと思うんですが、三十二条です。三十二条の一項で、平たく言うと、西半分が大阪家裁で、東半分が、東日本が東京家裁と、こういうふうになっているんですが、同種の規定は、大臣も御存じのとおり、民事訴訟法の六条一項で、知的財産権に関しては、やはり東は東京地裁、西は大阪地裁と、こういうふうに定めています。会社とかそういうのの、ごめんなさい、九州の方も北海道の方もいらっしゃるのにあれですが、経済の中心ということでいえば、東京と大阪に集中するというのは、ある種合理性があるんじゃないかなと。そして、その知財部の専門性を高めていくというのは私も合理性があるのではないかなと思いますが、事国際結婚も会社や経済活動のように東京、大阪に集中しているのかと。
 調査室の資料なんですが、厚生労働省の人口動態統計を見ますと、例えば先ほど申し上げたように、日本人のお母さんが子供を育てているということで、お母さんが日本人、夫が外国人というケースですと、やはり一番多いのは東京です。しかし、八番目には沖縄が出てくるんです。これはやっぱり、全く推測ですけれども、アメリカ軍基地があって、たくさんのアメリカ人が来ているということだろうと思いますし、九番目は福岡です。そうなりますと、例えばアメリカ人の夫と結婚してアメリカに行っていたと。でも、実家のある沖縄に帰ってきたお母さん、アメリカ人の夫から訴えられたと。こうなると、谷町四丁目にある大阪家裁まで出ていかなあかんと。これは手続的にも大変なんですね。きっと頭のいい大臣ですから、いや、電話会議システムありますよというふうなことをおっしゃるのかもしれないけれども、私は、せめて沖縄とか、あるいは九州、福岡とか、その辺に管轄を設けてもよかったんじゃないのかと。これ法務省は、いや、これは大変専門性が高いんですと言うんですけれども、そんなに専門性は高くないですよね。
 だから、私は、これは裁判官の手間というか、裁判官が面倒くさいと、だから東京と大阪に集中させるんだということを優先するんじゃなくて、実際に応訴の負担があるお母さんの利益を考えて、東京、大阪だけではなく、もう少し管轄を広く考えたら、広くというのは管轄の場所を多く、数多く考えればよかったんじゃないかと、そういうふうに思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。
#107
○国務大臣(谷垣禎一君) 前川委員は私の答弁も先取りされてお考えのようでございますが、これはやはり専門性、確かに今までこういう、この種の事案が全く裁判所も経験がなかったということもございます。それから、外国法制、他の締約国の運用の実態、こういったものの知見が必要でございますので、まずはやはり専門的な知見を蓄積したいということで東京、大阪、二つにしたわけでございます。
 それで、その背景に、子の返還申立事件の事件数がどのぐらいあるかと。これはあくまで想定でございまして、実際にそうなるかどうかはまだ定かではないわけでございますが、年間数十件程度であろうというふうに見込んでおります。そうしますと、分散をしますと、本当にその蓄積ができなくなってしまうのではないかという、こういう立て付けにしているわけでございますが、しかしながら、本法律が施行された後の実際の事件数、あるいはその運用状況いかんによってはまた考えていかなければならないことがあるかもしれないと、このように考えておりまして、当面はこういう体制で進めさせていただいて知見の集積等を図っていきたいという、こういう考えでこの制度をつくっているわけでございます。
#108
○前川清成君 是非、何年間か集積していただいて見直していただいたらと思いますが、裁判所も、これの集中部はつくるかもしれませんが、専門部まで、年間数十件ですから、専門部まではきっとつくらないと思います。そうであれば、知見の集積というのは、こういう時代ですから、電子メールもあれば、あるいは裁判官の皆さん方、優秀ですから、余りそういうことを優先するよりも、やっぱりお母さんの事情を優先させてあげるべきじゃないかなと思います。
 予定の時間は今来たんですが、先ほどのロスタイムが少しありますので、あと一問か二問だけお尋ねをしたいと思います。
 私は、今の大臣の御答弁ですが、新しい事件だからといって、日本の優秀な裁判官が別にその法解釈に悩むとか、そういうことは一切ないと思います。今までの事件の延長だと思います。
 むしろ、私は思うのは、例えば二十八条の一項の四号で、常居所地国に子供を返還したら子の身体に害悪を及ぼすというような事実をどうやって認定するのか。世界中の国々ですから、日本の裁判所が、例えば東京家庭裁判所の裁判官室で地球の裏側の国の事情、あるいはその国でお父さんがどんなことをやってきたのか、お母さんとどういう夫婦関係だったのかと、これは分からないですよね。そっちの認定の方が私は大変難しいと思うんです。それをどういうふうにして認定するのかで、八十三条で家庭裁判所は必要な調査を外務大臣に嘱託することができると、こういうふうになっています。
 ついては、松山副大臣、申し訳ないんですけれども、外務省として、あるいは外務大臣として、家庭裁判所から地球の裏側の、今申し上げた二十八条の返還拒否事由について嘱託を求められた場合にどのような調査をすると。例えば、大使館の誰々さんが、どのような方法で、どういうふうに調査をして、どういうふうに家庭裁判所に報告をするのか、そのための準備として今どこまで整っているのか、お答えをいただきたいと思います。
#109
○副大臣(松山政司君) お答えいたします。
 八十三条におきましては、家庭裁判所による調査の嘱託先として外務大臣というふうに挙げられておりまして、これは子の返還の申立事案に関する手続におきまして、常居所地国での子の生活環境等に関する調査は、ハーグ条約の第七条二項のdの規定に基づきまして中央当局間での子の社会的背景に関する情報交換によることが想定されていることから、調査嘱託の典型例として、家庭裁判所が外務大臣に対して常居所地国での子の生活環境等についての調査を嘱託することが想定されるものでございます。
 具体的にどのような情報がどのような機関から得られるかということにつきましてですが、個別の事案によって異なりまして一概に申し上げることはできませんけれども、我が国のこのハーグ条約締結の準備段階において主要締約国の中央当局との間で協議を行った結果、調査に対する協力につきまして前向きな回答もおおむね得られているところでございます。
#110
○前川清成君 今の答えも私は大変不満です。結局のところ、家庭裁判所は外務大臣に調査を嘱託したら、日本の外務大臣はその国の、世界中の国々の外務大臣にお願いしますと、丸投げしますと、こういうことですよね。
 私たち民主党は余り国益国益と言わないんですが、自民党の皆さんは二言目に国益国益とおっしゃる。そうであれば、日本国民を守るために、日本の外務省が、日本の外務大臣が、何をするのかは当然に準備しておくべきじゃないですか。今のお答えは丸投げしますとしか聞こえませんから。
 今のお答えについても私は大変不満であるということを申し上げて、本当はまだまだやりたいんですが、ロスタイムもこれぐらいにしておかないと後で委員長に叱られてもいけませんので、私の質問は取りあえず終わらせていただいて、また是非いつか質問したいと思います。
 ありがとうございました。
#111
○磯崎仁彦君 自由民主党の磯崎仁彦でございます。
 審議の対象となっておりますのは、いわゆるハーグ条約を国内において実施するための法案ということでございます。国内において実施するに当たりましては、子の連れ去りの大きな原因の一つでありますDVあるいは児童虐待、こういった場合における連れ戻し、これを拒否できるようにするために、先ほど前川先生からもお話ありましたように、法の第二十八条の規定をいろいろ工夫するなど幾つかの懸念に対しては対応策が取られているんだろうなというふうに思っております。ただ、その前提に立ちましても、やはり実際今までと違った取扱いがなされるわけでございますのでいろいろ不安を持っている方も多々いらっしゃると、そういう意味で何点か私の方から質問という形で確認をさせていただければというふうに思っております。
 まず、第一点目は、第二十六条の規定でございますけれども、これはまさに条約に基づく子の返還ということで、「日本国への連れ去り又は日本国における留置により子についての監護の権利を侵害された者は、子を監護している者に対し、この法律の定めるところにより、常居所地国に子を返還することを命ずるよう家庭裁判所に申し立てることができる。」ということで、連れ戻しを申し立てることができるという基本的な規定でございますけれども、ここで、その常居所地国に子を返還するというのはどういうことを言っているのか、お答えをいただきたいというふうに思います。
#112
○国務大臣(谷垣禎一君) このハーグ条約は、こういう国際結婚の破綻によって、子の監護の状況等に不当な連れ去り等があって争いがある場合に、どこの国の法廷でその問題の解決を図るかという、そのルールを定めたものでございまして、つまり、不法な連れ去りが行われる前の、常居所地国といっておりますが、そこの裁判所で問題を解決しようというハーグ条約の趣旨によってルールを作っていこうと、こういうことでございます。
 そこで、常居所地国に子を返還するというのは、子を申立人に引き渡すという、必ずしもそういうことだけを意味しているのではなくて、何らかの方法で常居所地国に子を戻すということを意味しているわけでございます。
 実際には、返還後の子の状況についてどうなるか、いろんな場合が、一定の在り方が要求されているわけではございませんが、子が申立人に引き渡されない場合には、子を連れ去った相手方が子を連れ帰った上で子と同居する場合、あるいは子のおじいさん、おばあさん、祖父母が事実上の監護をする場合もあり得ると思います。それから、子が場合によっては福祉施設に入所するというようなこともあるかもしれません。多様な場合があり得ると存じます。
#113
○磯崎仁彦君 私が一番お伺いをしたかったのは、あくまでも常居所地国に子を返還するということで、申立人に必ずしも引渡しをするということまでこの法律が求めている、条約自体が求めていることではないということで、今、大臣からお話ありましたように、連れ帰った親が一緒に付いていって住むということもあれば、施設に入ることもあるということで、必ずしも申立人への引渡しを意味しないということ、これを是非確認をしたかったという趣旨でございます。
 二つ目は、申立ての相手方が子を監護している者という規定になっております。申立人にとってみれば、例えば誰が連れ帰ったかという、その人は容易に特定できるし、認識をしていることが多々あろうかと思いますけれども、誰が今、子を監護しているのかということにつきましては、これは恐らく先ほどの前川先生の質問にも関連するところだと思いますけれども、なかなか申立人は把握をすることが難しいのではないかというふうに思われますけれども、まずはどのような理由で、連れ帰った者を相手方にするということではなくて、今、子を監護している者を相手方にするという、こういう規定になっているのか、そのことをちょっとお伺いをしたいと思います。
#114
○政府参考人(深山卓也君) 御指摘のとおり、この法律案では、子の返還申立事件の相手方につきましては、子を監護している者にその資格を認めております。
 これは、子の返還拒否事由について主張を適切にすることができ、また裁判の結果、子の返還が命じられた場合に、子を返還することができるのは現に子を監護している者であることから、このような立場にある者に返還のための裁判手続における相手方としての地位を認めるのが適当だという判断でこうなっているものでございます。
 したがって、子を連れ去った親が現在は子を監護していない場合、例えば親戚に預けて自分は別のところにもう行ってしまっていて、今監護しているのは連れ去った親ではない場合ももちろんあり得るわけですが、そういう場合には連れ去った親は相手方にならないということになります。
 子を監護している者が誰なのかということは、最終的にはもちろん家庭裁判所で認定して判断することになりますけれども、その前提として、現在我が国で子を監護しているのは誰なのかということが、連れ去られた親が分かるかどうかというお話もありました。この点につきましては、まず中央当局である外務大臣が援助申請を受けて子の所在把握をいたします。その際に、子が、例えば連れ去った親ではなくて、その親のおじいさん、おばあさんのところの、ここで、今こういう形で監護されているという情報を把握して、子の位置、場所を特定するという過程で原則としては分かるという仕組みになっております。
#115
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 それでは続きまして、私は、この一連の手続の中でやはり中央当局である外務省あるいはその在外公館が果たす役割というのは非常に大きいものがあるんだろうというふうに思っております。恐らく、大きなどういう働きを、動きをするかというのがキーになってくるというふうに思っております。
 その意味で、本法案は、子が連れ去りをされた、あるいは留置されている場合のいろんな取扱いを定めているわけでございますけれども、基本的にはやはりその子供が連れ去りという事態が起こらないような予防といいますか、そういった事態が起こらないようにするということも一つ重要なことだろうというふうに思っております。
 その意味で、在外公館において、例えば邦人の保護をどう行っていくのか。特に、大きな国であればそういう支援をする団体というのはたくさんあるというふうに思いますけれども、例えば小さい国になりますとそういう団体というのはなかなか存在することも難しいというふうに思っておりますので、そういうDVなり児童虐待とか、そういった状況になった場合に、恐らく在外公館というものが最終的には駆け込み寺というかそういったことになる可能性が非常に大きいのではないかというふうに思っております。
 衆議院の法務委員会におきましても、例えば日本語で相談窓口を、アジア人女性センター等に総領事館から業務委託を開始したといったような答弁もございましたけれども、今申し上げましたような、例えばDVであるとか児童虐待から避難とか保護を求める、そういった相談ということだけではなくて、一時保護でありますとかあるいは同行して支援をするとか、そういったことに対して、例えば在外公館がどこかと支援契約を結んで、在外公館もいろんなフォローをするし、例えばどこかに委託をしてそういうことをやるという、そういうお考えがあるかどうか、お伺いをしたいなというふうに思っております。
#116
○政府参考人(山田滝雄君) お答えを申し上げます。
 在外公館としては、ハーグ条約の下で邦人の方々を支援するためにできる限りのことをしたいというふうに考えております。
 先生御指摘のとおり、既にニューヨークとロサンゼルスでは現地で非常に活発に活動をしておられます支援団体がございます。これらと契約を結んでおりますが、今年度中にはあとできれば四つぐらいをめどに支援団体との関係強化を進めていきたいと思います。
 また、支援団体だけに頼るのではなくて、外務省自身も、在外公館に出ていく特に領事についての今研修を強化しております。また、現地にそういう支援団体があるもの、ないもの、いろいろございますけれども、そういった現地の事情に応じて在外公館自らが法律の専門家の方々との関係を強化していく。それから、必要があれば、支援団体に頼るのではなくて、自ら付添いをし、自らシェルターに御案内をするとか、そういったことも自分でやるというようなことを含めて、あらゆる手だてを尽くして邦人の方々の支援に尽くしてまいりたいというふうに考えております。
#117
○磯崎仁彦君 今御答弁いただきましたように、可能な限り邦人保護という観点で努力をしていただければというふうに思います。
 それでは次の質問でございますが、子供がこの手続によりまして常居所地国に返還をしたと。そのときに、言ってみれば引き離された親にとってみれば、その常居所地国に戻った子供がその後どういう、きちんとした生活をしているんだろうか、安定した生活を送っているだろうかということは当然のことながら気になることでございますし、その後、例えば恐らく常居所地国における法律に従って最終的には子供の監護を誰が行ったらいいのかという、そういう手続も行われる可能性があろうかと思いますけれども、やはり中央当局として、子供を常居所地国に返したという、外務省にとってみれば、その後、その子供がきちんとした生活をしているのか等々につきましては、やはり帰ったら終わりということではなくて、きちんとしたそのフォローといいますか検証といいますか、そういったものも必要だというふうに認識をしておりますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
#118
○政府参考人(山田滝雄君) 常居所地国に返還された場合におきましても、子供さんは二重国籍という形態が多いかと思いますけれども、日本の国籍も有しておられます。したがいまして、在外公館としましては、邦人保護の観点から、その方がきちんとした状況に置かれているのか、例えば暴力を受けていることはないかとか、そういうことにきちんと目を光らせて、そして必要があれば必要なアクションを取りたいと思っております。
 また、日本におられる親御さんから面会の要請があれば、また必要があれば私どもの判断で領事面会の要請をするとか、それから、さらに現地での裁判ということになるかと思いますけれども、そういう場合には現地における法制度というのをきちんと調査し、また所得が低い方については司法補助制度などもほとんどの国でございますので、そういうものについても、情報を私どもとしてもきちんと把握し御説明申し上げると、そういった形であらゆる支援をしていきたいというふうに考えております。
#119
○磯崎仁彦君 是非とも支援をお願いをしたいというふうに思います。
 次は法律、法の二十八条のところでございますけれども、これも先ほど前川先生から、第二十八条の一項の四号、これは子を返還する拒否事由について記載をしているわけでございますが、「常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。」、この場合には返還を拒否することができるという事由として規定をされているわけでございますけれども、これが、いわゆるDVとか虐待とか、帰った場合にはそういう状況が発生をするということを懸念される場合には拒否をすることができるということかと思いますけれども、実際、常居所地国においてDVが行われていた、あるいは児童虐待が行われていた、そういった証明といいますか、これ実際、返還を拒否する側の方がいわゆる挙証責任を持っているということになろうかと思いますので、この証明ができるかできないかによって、引き続きとどめることができるのか、返還をしなければいけないのかという大きな境目になるわけでございます。ただ、やはり、身一つでからがら例えばアメリカから日本に帰ってくるということも往々にしてあるわけでございますので、なかなか、虐待を受けていた、児童DVの被害に遭っていたという、そういう証拠を求めるというのは難しい点があるんだろうというふうに思っております。
 その点、例えば、まず家庭裁判所が職権で調査をするという規定はございます。さらに、先ほど、これも前川先生から話ありましたように、外務大臣に嘱託をすることができるという規定もございます。ただ、本当にこれで十分なのかどうなのか、実際、これらの情報収集がきちんとできる状況になっているのかどうなのかということについて御質問をさせていただきたいと思います。
#120
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 今委員から御質問ございましたとおり、例えば一つの例として、外国から日本人の元配偶者、一つの例でいえば、お母様が子供さんを連れて命からがら日本に連れて帰ってきたと。それに対して、元のお父さん、アメリカ人のお父さんが、例えば戻すようにとハーグ条約について言ってきたと。その場合は、今委員御指摘のとおり、基本的にハーグ条約というのは不法な子の連れ去りについて、それを戻すか戻さないかということでございますので、一義的な戻さないための挙証責任、それは連れて帰ってきた、今の例でいえばお母さんの方にあるという委員の御指摘のとおりでございます。
 そして、裁判はこの場合日本で行われるわけでございますが、確かに、実際、前に住んでいた相手の国、例えばアメリカあるいはヨーロッパの国、そこで実際どうだったのか、DVがあったのか、それを証明するのを遠隔地の日本でやるのにいろいろ苦労があろうという御指摘はごもっともだと思います。一義的には、まずこれは当然御本人、さきの累次の委員会の答弁でも御説明いたしましたけれども、例えば事前に在外公館で御相談を受けていれば、そこで在外公館が記録を作って、それを、必要があれば、御本人の御要望があればそれを証拠として裁判所に提出していただくこともできるわけですが、それで足りないような場合、そういうような場合、これは条約ですと七条の二項のdに書いてございますけれども、中央当局経由で裁判所が必要な情報を得ることができるということでございます。
 具体的にどのような情報がどういう機関から得られるか、これは個別の事案、そしてまた相手の国によって異なりますので、アプリオリに一義的には言えないと思います。ただ、私ども、この条約の締結の準備段階におきまして主な主要国の中央当局にいろいろ問合せをしたり意見交換を行ったプロセスでは、各国とも、当然ハーグ条約の当事国として調査に対する協力を受ければ前向きに協力したいという、おおむねそういう回答が得られております。
 そして、蛇足でございますけれども、もうこの条約、既にできて三十年、そして現在八十九か国の国が当事国となっておりまして、この中央当局間の協力の積み重ねというのも、日本はまだ入っておりませんけれども、数多くあると思います。そういう意味から、まさに今回御審議いただいて御了解いただければ、日本もいずれ締約国になるわけでございますけれども、そういう前提で各国と今申し上げたような中央当局間の協力、情報収集についても努力していきたいと考えております。
#121
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 今、中央当局間ではこれまでも積み重ねがあるというお話があったんですが、やはり中央当局間を超えて、在外公館が直接、例えば学校であるとか警察であるとか、そういうところにやはり問合せをするというのは、これはなかなか難しい障壁があるんでしょうか。
#122
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 まず、先ほど申し上げましたように、在外公館が自ら有する情報を御本人からの御要望により裁判の資料のために提供することは可能だと思います。他方、在外公館が独自に調査を行う、これはどこまでできるか、これは個人のやはり情報の保護等の関係があるので、そこはなかなか容易ではないところがあると思います。
 例えば、この条約及び法律で担保といいますか、つくられておりますとおり、日本の中で調べる、そこで日本の中央当局、例えばこの法律ですと外務省でございますけれども、それが法律の根拠に基づいて各省あるいはその他の団体に情報提供を申し出る、これでしたらもちろん相手も情報を提供してくれると思うんですが、例えば逆の立場をお考えいただいて、全く今委員が御質問の場合と逆の立場で、日本から外国に連れ去りがあったような場合ですね。例えばそれについて申立てがあって、日本にある在京の例えば各国の大使館が、日本のお役所とか市町村の役場とか、あるいは病院とか学校に、とんとんと戸をたたいて、実はこういうのがあるんですけれども教えてくださいといっても、やはりなかなかそれは、日本の行政府あるいは民間団体も含めて、外国の大使館から何の法律の根拠もなく個人情報にかかわるようなことを教えてくれといっても、なかなかお教えにくいと思うんです。
 そしてまた、逆に戻していただくと、したがいまして、逆の場合で日本の在外公館が外国でどこまでできるのかというのは非常に限界があると思いますので、もちろんできる限りの協力はしたいと思いますけれども、一義的には、この条約及び法律の枠組みでつくられております中央当局間同士、つまり相手の国であれば日本の中央当局からその相手の中央当局、国の中央当局に頼んで、まさにその管轄の下にあるその国の中央当局に調べていただくというのが一義的には手続になると考えております。
#123
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 そういう意味では、まずは中央当局間で緊密な連絡を取っていただいてということをお願いをしたいと思います。
 それでは、次の質問に移らせていただきますが、子の返還の強制執行についてでございます。
 子の返還の強制執行につきましては、やはり子供に与える影響が非常に大きいということで、この審議の過程におきましても、一定額の金銭を支払うことによって間接的にその履行を確保するという間接強制にとどめるべきという意見もあったというふうに聞いておりますけれども、最終的には子の返還の代行執行が認められるというのがこの法律の立て付けになっているわけでございます。
 ハーグ条約におきましては子の利益が最も重要であるという規定が当然あるわけでございますので、子の返還の代替執行においては、子の利益の保護の観点からどのような配慮が準備をされているのか、お伺いをしたいというふうに思います。
#124
○大臣政務官(盛山正仁君) 今、磯崎委員がいろいろよく御理解いただいているとおりでございますが、この法律案では、常居所地国への子の返還の強制執行として、まず間接強制という方法、そしてさらに代替執行という方法、この二つを百三十四条に規定しておりますが、用意してございます。
 そして、子の返還というのは、子に与える心理的負担、これをいかに軽減すべきかという観点から、現在、子を監護している者によって自発的に返還されること、これが望ましいと、そういうふうに考えておりまして、この法律案では、子の返還を命じられた者に、まず間接強制によって返還義務の履行を心理的に促すと。それによっても履行されない場合に限って代替執行の申立てをすることができるものと百三十六条で規定しております。
 次に、子の返還の代替執行においても、裁判所は、子の利益の観点から、返還実施者として相当である者により返還が実施されることを確保する、あるいは執行官による威力の行使も子への影響に配慮して限定的に用いるといったようなことを百三十九条、百四十条で規定しているところであります。
 このように、この法律案では、子の返還の強制執行の場面におきまして、子の利益を守るための様々な配慮を規定しているというところでございます。
#125
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 これも既に衆議院の方の法務委員会におきましては、例えば、今お話がありました子の返還の代替執行につきましては、それに対応した執行マニュアルといいますか、そういったものを作成をするということが御答弁されておったかと思いますけれども、このマニュアルの作成におきましては、子供への心理的な影響とか、やはりそういうものを十分に配慮する、そういったことを踏まえたマニュアルを作る必要があるだろうというふうに思っておりますので、このマニュアルを作成するに当たりましては、例えば虐待とかDVとか子供への心理的な影響、こういったことを十分に踏まえることのできる専門家というものがマニュアル作りに参加をすべきだというふうに思っておりますが、その点、いかがでございましょうか。
#126
○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) お答えいたします。
 今回の法案におきましては、子の返還の執行手続において、子の心情、福祉に十分配慮するとの観点から、執行官の権限について細やかな規定が置かれています。したがいまして、裁判所としましては、法案が成立した場合には、具体的な執行場面で適切な運用が確保できるようにマニュアル作成等を努めてまいりたいと思っております。
 お尋ねのマニュアルの作成の関係でございますが、委員御指摘のように、専門的知見を反映したものとなりますように、中央当局を含む関係省庁とも十分な協議を行うとともに、家庭裁判所におりますこの分野におけます専門家の意見を取り入れるなど、いろいろの工夫をして、専門的な知見を反映したものとなるように工夫をしてまいりたいというふうに考えております。
#127
○磯崎仁彦君 いわゆる子供に対する今連れ帰っている親からの監護を解くための行為は、法律におきましては、子供がその連れ帰った者とともにいる場合に行われなければいけないというのが規定でございます。
 そうなると、子供の前で引き剥がすということになるわけでございますので、子供への影響というのは非常に懸念をされると。それだけにいろいろ配慮が必要だということを先ほど御説明をいただいたわけでございますが、法におきましては、外務大臣は、子の返還の代替執行に関し、立会いその他必要な協力をすることができるという規定はございますけれども、これも先ほどマニュアルのときに申し上げましたように、子供の監護を親から引き剥がす場合には、そういった専門家といいますか、児童精神科医であるとか児童カウンセラーというか、やはりそういう人の立会いというものがないと、なかなかやはり子供への影響というのは計り知れないんではないかなというふうに思いますが、この立会いにつきましてはどのようにお考えでございましょうか。
#128
○政府参考人(深山卓也君) 子供の利益の保護の観点から、代替執行の場面で、事案に応じて、今御指摘のような適切な専門家を立ち会わせる必要があるというのは、委員の御指摘のとおりだと思っております。
 このような観点から、この法律案におきましても、今まさに御指摘がありましたけれども、子の安全な返還の実現について条約上の責務を負っている中央当局、要するに外務省ですけれども、が立会いその他の必要な協力をするということがされておりまして、この一般的なルールの下で、外務省において適切な専門家を子を解放する場面に立ち会わせるという措置がとれるよう、現在、検討が具体的に進んでいるものと承知しております。
#129
○磯崎仁彦君 子の返還の代替執行の場合には、裁判所が指定する返還の実施者が債務者に代わって子を監護しながら返還を実施するということになっております。
 そして、返還実施者につきましては、典型的には申立人自身が返還実施者として想定されているようでございますけれども、やはりこの返還実施者、申立人自身が、先ほど来、一番やはり問題なのは、DVなり児童虐待なり、そういう懸念が少しでもある場合には、申立人自身を返還の実施者として指定することは妥当ではないというふうに認識をしておりますけれども、この点はどのようにお考えでございましょうか。
#130
○政府参考人(深山卓也君) この法律案では、代替執行の申立てにおいて、申立人が返還実施者としてふさわしい者を特定して申立てをすると、こういうことになっておりまして、それを裁判所が子の利益に配慮して、その者を返還実施者として指定することが子の利益に照らして適当かどうかという判断を加えた上で、今御指摘があったような、子供に虐待を加えたような申立人であるというようなことになりますと、当然のことながら子の利益に照らして不適当でございますので、こういう場合は申立てそのものを却下するという明文の規定がございまして、そういう形で、裁判所が適切な者が返還実施者になるように申立ての審理の際にセレクトしていくと、こういう仕組みになっております。
#131
○磯崎仁彦君 確かに二十八条の第一項の四号では、そういう虐待の懸念がある場合には拒否できるというふうになっておりますけれども、そこまでいかないような場合でおそれがあるといったような場合にも、私は申立人を返還実施者として指定するのは妥当でないというふうに思っておりますので、その辺の御配慮は是非ともお願いをしたいというふうに思います。
 最後、面会交流についてもお伺いをしたいと思いましたが、時間の関係もございますので、最後に、このハーグ条約、子の利益に資するというのが目的でございますので、是非ともそのような運用がされますことを切にお願いをしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#132
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 いよいよハーグの質疑に入るわけでございますが、子の監護をめぐる問題を解決する上で最も重視すべきなのは子の利益だと思います。しかし、具体的に何が子の利益になるかという判断は、人によって、あるいは国や文化によっても異なります。この点、このハーグの定めるルールは、個別具体的な子の利益についての判断までは踏み込まないで、国境を越えた不法な子の連れ去りは、それ自体子に有害である、そうやって子の返還を原則として個別具体的な子の利益は子が元いた国で判断をするという、そういう立て付けになっているわけでございますが、この理念は正しいとして、他方の親の監護権を侵害してでも帰らざるを得なかった親の事情、こういうことを考えると、本当に子供の利益のために機能し得るのか、むしろ、海外で弱い立場に置かれている人を更に追い詰める結果となるのではないか等、懸念も生じているところでございます。
   〔委員長退席、理事磯崎仁彦君着席〕
 法務大臣は原則返還というこの条約の仕組み、どのような御所見を持っているのか、また、条約の締結に当たっては想定される懸念事項についてできる限りの措置を講じる必要があると考えますが、法務大臣の御見解をお尋ねいたします。
#133
○国務大臣(谷垣禎一君) 今、魚住委員が指摘されましたように、こういう国際結婚が破綻して不法な連れ去りがあった場合に、常居所地国で問題を解決していこうという、そういう、各国でまちまちであるとなかなかうまくいかないので、そういう条約を作ってそのルールの下で解決していこうというのがこのハーグ条約でございますし、この法律もそういう精神でできている。
 その際に考うべきことが、今御指摘のように、子の利益を最重視していこうということだろうと思います。しかしながら、実際に婚姻の破綻にはいろんな原因がございますので、一律に、じゃ常居所地国に戻すといっても、これは多様な場合があり得る。ですから、二十八条に返還拒否事由がいろいろございますが、これはいろいろな御懸念もあり、どういうふうに判断していくかということについては、様々なお立場からの意見もあるだろうと思います。
 それで、もちろん子供の利益が第一というのは当然でございますが、こういったいろいろな様々な問題を適切に解決するためには、法務省としても中央当局、外務省との連携や裁判所との協力体制をつくっていかないと、抽象的に子の利益が第一といってもなかなかいかないだろうと、このように思っておりまして、これを通していただいて実施していくまでに関係方面との、何というんでしょうか、意思疎通、腹合わせ、それを十分にやっていきたいと、このように考えております。
#134
○魚住裕一郎君 懸念事項がたくさんあるわけですから、しっかりその腹合わせといいますか、対処の仕組みをつくっていただきたいと思います。
   〔理事磯崎仁彦君退席、委員長着席〕
 DVの被害者が最も恐れるのは、自分と子の所在が加害者に知られてしまうことでございます。先般からずっと議論をされてきているわけでございますが、子の情報提供要請、そしてまた、それを答えるかどうかという機関の中では、国や地方公共団体の機関のほか、民間の会社とか、あるいは学校や医療機関もあるかもしれない。また、DV被害者を受け入れている民間シェルターも想定されるところでございますが、これまでの国会の審議において、直接シェルターに情報を求めるのではなくして、まず各都道府県に設置されている配偶者暴力相談支援センターを通じて情報提供を求め、同センターを通じて情報が得られない場合においても、民間シェルターのネットワーク団体を通じて情報提供を求めることを検討する、こういう旨の外務大臣の答弁がなされているわけでございます。これは四月四日の衆議院本会議であったわけでございますが。
 先日、参議院の外交防衛委員会におきまして、この配偶者暴力相談支援センターあるいは民間のシェルターのネットワーク団体を通じて情報提供を求めたとしても、中央当局にそのシェルターの場所を回答したのでは、これらの機関が間に入った意味がなくなってしまうんではないのかと。それで、裁判所からの送達先も、シェルターではなくしてこれらの機関に対して行うべきではないかというような議論が先月なされていたところでございます。これに対して外務省からは、この配偶者暴力相談支援センターあるいは民間シェルターのネットワーク団体の協力が得られることを前提としてどのような方法が可能であるか考えていきたい、裁判所、法務省ともよく相談して検討してみたいという、そういう旨の外務省の御答弁があったわけでございますが、外務省、その後どうなっていますか。何か、実際、最高裁は相談を受けていないような回答があったわけでございますが、事前の質問通告に対して、その点について外務省から御答弁をいただきます。
#135
○政府参考人(新美潤君) お答えを申し上げます。
 今委員からも御指摘がございましたとおり、子の所在の特定の問題、大変難しいところであると思います。まず、ハーグ条約の仕組み、そして条約上の義務としまして、子の所在の特定のために全ての適当な措置をとるということが義務付けられております。したがって、日本もハーグ条約に御承認をいただきまして入る以上、子の特定のために全ての適当な措置をとらなければいけない。他方、とることによって、結果として今御指摘がありましたようなDVの事案について、DVを受けて帰ってきた子供あるいはシェルターに一緒におられる方、その場所が特定されることによって危険があるのではないかということでございます。
 そして、今の委員の御質問でございますが、まさにシェルターネットでございますね、あるいは配暴センターというようなところを通じて間接的に情報を取る、あるいはやると。これは、今委員も御指摘されたように、協力が得られることを前提としてと申し上げましたのは、やはり条約上の義務がございますので、それは協力いただいて、それで仕組みがうまく回るということであればうまくいくということでございます。そういう意味で申し上げているわけでございます。
 具体的に、最高裁あるいは法務省、あとどういう仕組みをつくるのかというのは、これはまさに今回の条約の、そして関係法令、実施法案の御承認をいただいた上で、政令や規則を作るプロセスにおいて決めていきたいというふうに考えております。
#136
○魚住裕一郎君 いや、だから、懸念があるから、できる限りこの採決する前にしっかり詰めておきたいというのがやはりDV被害者とかそういう人たちの感覚だと思うんですよ。でき上がってから相談しますよと言ったら、やっぱり不安じゃないですか。だからしっかりやれというふうに言っていて、その先どうやって相談して具体的に進めていますかという確認を今したわけでございますが、通った後じゃ、これは答弁にならないよ。
 では、子の就学に関する情報の提供も想定されているようでございますが、あるいは医療機関についても個別に情報提供ということがあると思いますけれども、でもそれになってしまうと、子供を学校に行かせることが、ちゅうちょしてしまうんではないのか。あるいは病院に行くこともちゅうちょしてしまうというようなことも考えられるわけでございますが、こういう情報についても都道府県や地方自治体を通じて情報提供を求めるべきではないかという声がございますけれども、中央当局としてどのように考えるか、お伺いをしたいと思います。
#137
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 条約の実施法案の五条、これはまさに中央当局たる外務大臣が、援助の申請が残された親の側からあったときに、必要と認められたときには関係機関や団体に対して情報提供を求めることができるということが規定されているわけでございます。そして、その具体的方法については、条約あるいは法律で規定はされておりませんけれども、やはりその情報提供を求めた後で問題になりませんようにそれがきちっと個別に書面に残る形で情報提供を求めるということをまず考えております。
 その上で、今委員から御指摘がありました保秘の問題、つまり情報が漏れてはいけない、これは、まず私どもといいますか政府側としては当然最大限の注意を払うわけでございまして、当然、国家公務員法、もし秘密を漏らせばこれは懲戒、罰則の対象になりますし、中央当局自身も、独立した部屋あるいは独立したキャビネ、ほかの人が入れないといったような、万が一にも中央当局が得た情報というのが外部に漏れることがないように全力を尽くしたいと思っております。
 そしてもう一点、今、これも委員の御指摘の一部かと思いますが、学校やあるいは医療機関、こちらが情報提供をした向こう側から漏れてしまう、これも避けなければいけないわけでございまして、ただ、これ私どもとしてはお願いするしかないわけでございますけれども、御懸念は十分分かっておりまして、関係機関あるいは関係省庁、地方公共団体と、その保秘、秘密が漏れないように、そしてどういう手続で情報の提供を求め得るかということについても調整をしていきたいと思っております。
#138
○魚住裕一郎君 それで、先月二十一日の先ほど紹介した外交防衛委員会での答弁にもあったわけでございますが、提供を求める情報の範囲でありますとかその手続、政省令あるいはガイドライン等で定めるということのようでございますが、やはりDVの支援に携わっている者との協議が不可欠であろうと考えておるわけでございますが、そういう旨、外務大臣も、男女共同参画局あるいは全国女性シェルターネットとの連携は重要であるということで、連携について検討するということであったわけでございますが、外務当局もそのとおりでいいわけですね。
#139
○政府参考人(新美潤君) まさにそのとおりでございます。若干過去の大臣答弁等の繰り返しになるかもしれませんけれども、ガイドラインの策定に当たりましては、内閣府男女共同参画局及び全国女性シェルターネット等とも連携をしつつ作業を進めていきたいと考えております。
 そして、DV被害者への配慮の重要性、これは十分いろいろ御指摘いただきまして分かっておりまして、この両者との連携は重要と考えておりまして、策定に当たっては意見交換をしていくつもりでございます。
#140
○魚住裕一郎君 先ほど在外公館における邦人の支援ということが質疑になっていたところでございまして、ニューヨークやロサンゼルス、業務委託をして日本語で相談できるようになったということで、非常に多数の利用があるようで、先般の報道でもあったところでございますが、また今年度中に更に四公館、更に来年度も予算措置をしてやっていきたいということでございます。非常に大事なことでございまして、しっかりやっていただきたいと思っているわけでございますが、ただ、いろんな支援団体があるし、余り活発ではないという、そういう地域もあろうかと思っておりますが、どの国でどの程度の支援が受けられるか、これをホームページ等で公表を求めたいと思いますが、どうですか。
#141
○政府参考人(山田滝雄君) まさに国によっていろいろ事情が異なりますので、支援団体の活動状況も違います。今お話がありましたニューヨークのアジア人女性センター、それからロサンゼルスのリトル東京サービスセンター、これらは非常に活発でございまして、私どもも業務契約を結ばせていただいておりますけれども、まだ二年ぐらい、一年、二年のお付き合いですが、この間に、ニューヨークでは私どもとの契約に基づいて二百八件、それからロサンゼルスでは六十件の邦人からの相談があったと。もう日本語で二十四時間対応していただいておりまして、それで包括的な支援をしていただいていると。法律的な御支援、それだけではなくて、心の問題でカウンセリングとか付添い、それからシェルターの紹介、そういったいろんな御支援をしていただいております。
 もちろん、私ども自身も、領事の研修の強化、それから、独自に法律の専門家の方々、その他こういった問題の専門家の方々との関係を強化しておりますけれども、関係団体との関係、ますます広げていかなければいけないと考えております。委員御指摘のとおり、今年度中にアメリカとカナダにおいて、まずできれば四公館程度で新しく契約を結びたいと思っております。
 それから、更にこういったネットワークをどんどん広げていく必要がございます。国によって事情は違いますので、そういった事情の違いというのを皆様に私どもとしてきちんとお伝えをしていくという努力、今ホームページという話もございましたし、外務省もホームページを持っておりますので、そういうことの活動も考えられると思います。今後、きちんと検討してまいりたいと思います。
#142
○魚住裕一郎君 DV被害を受けておる女性の立場からすれば、ホームページで検索してどういう状況になっておるかと調べるのが一番簡便かと思うので、まずそこからやっていただきたいなと思います。
 なお、国とか地域によってはいい団体が見付からないということがあると思います。また、法的問題については、より踏み込んだ支援も求められるところでございまして、そこで、DV問題に詳しい弁護士などと領事館が顧問契約を結んで、そしてその弁護士が法律相談や法的支援を行うという体制を講じてほしい、その方が簡便ではないのか、その業務委託するというよりも、そういう意見もあるわけでございますが、この点について、外務省、どうお考えですか。
#143
○政府参考人(山田滝雄君) 既に、領事が現地の法律の専門家の方と相談できるような体制は整備しつつあります。これを更に拡充して、より現地の事情に即して邦人の皆さんの利益に資するような形の支援体制を講じてまいりたいと考えております。
 また、御指摘のございましたホームページの活用、これはきちんと考えたいと思っております。
#144
○魚住裕一郎君 次に、返還拒否事由に関してお話を承りたいと思います。
 返還拒否事由の中で、返還することによって子が心身に害悪を受けるというのがあります。
 実は、児童虐待防止法にも、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力ということで子に心理的外傷を与えるという、そういうふうに認定をされるということになるようでございますが、返還拒否事由として、家庭内でDVが行われているというそれだけでは、この国内実施法における子の心身に害悪を与えるというふうに認定できるのか、この点について確認をしたいと思います。
#145
○政府参考人(深山卓也君) 家庭内暴力は、子供に対する暴力と配偶者に対するものとございます。子供に対するものは、もちろんそれは最も典型的な子供の利益を害する場合です。
 配偶者に対する暴力につきましては、これが子供に心理的な悪影響を与えるかどうかというのがまさに御指摘のとおり重要でして、このハーグの実施法は、ハーグ条約に従って、子の利益、最大の利益を追求するというポリシーでできておりますので、配偶者に対する暴力であっても、例えば子の面前でされる場合、あるいは面前でなくても、配偶者が家庭内暴力で精神的に不安定になって、その結果、子供にそれが悪影響が及ぶ場合というように、子供の立場から見て、配偶者への暴力が子供への悪影響が及んで子供の利益を害するという場合には、返還拒否事由に当たり得ると。返還拒否事由は総合的な判断ですから、一つのことだけで必ずしも決まりませんけれども、当たり得るということになると思います。
#146
○魚住裕一郎君 子に心理的外傷を与えることとなるというような表現は、やはりPTSD、心的外傷後ストレス障害、こういうことを連想をされるところでございますけれども、海外の裁判例においても、母が父から日常的に暴力を受けているといったような場合、返還されればPTSDを起こすだろうということで、鑑定人の証言に基づいて返還が拒否されたという事例があるようでございますが、国内実施法の規定はPTSDなどの疾患を発症することまでは求めていないと思われますが、法務省に確認をしたいと思います。
#147
○政府参考人(深山卓也君) この法律案の二十八条第二項第二号に、相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けることという表現がございます。これは、子供が直接暴力等を受ける場合でなくても、子供の心に傷を負うような一方の親から他方の親への暴力等があったことを示す概念で、症状としてのPTSDを現実に発症したかどうかということは求められておりません。そこまで行かない場合でももちろん含まれます。
#148
○魚住裕一郎君 また、返還拒否事由の中で、常居所地国において子を監護することが困難な事情ということがあって、子を連れ去った親が元の居住国に戻った後の生計維持が困難な事情がある場合、返還を拒否できるわけでございますが、大体、妻が夫の国に戻ってその地で破綻した後も生計を営むということは大変難しいと思われるわけでございますが、そこで、いろんな事情考慮の中で、就労可能な在留資格を取得する可能性の有無でありますとか、あるいは子とともに安定した生計を維持できるその保障の有無、こういったことも考慮しなければならないと考えられますけれども、このような点についても考慮されると考えていいのか、確認をしたいと思います。
#149
○副大臣(後藤茂之君) 魚住委員にお答えを申し上げます。
 二十八条第二項第三号におきまして、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くことになる重大な危険があるかどうかについての考慮事項として、今御指摘のありましたような、申立人又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情というふうに定めております。これにつきましては、申立人の側の事情といたしましては、例えば薬物中毒の状況があるなど、申立人によって子の監護が明らかに子の利益に反するようなものがあるということは一つございます。
 一方で、今委員から具体的に御指摘がありましたような相手側の事情として想定されるものの中には、例えば幾つか挙げさせていただきますと、相手方が常居所地国において適法に入国できないとか滞在できないとか、あるいは当該国において逮捕状が出ていて、入ってしまうと刑事訴追されて身柄を拘束されるおそれがあること、その他相手方当該国において生計を維持することが著しく困難であるというふうに判断されるような場合については、これは御指摘のように返還を拒否する事由になるということでございます。
#150
○魚住裕一郎君 次に、証拠の収集についてお聞きしたいと思います。
 先行委員の質問により、かなり細かく議論をされたわけでございますけれども、本当もう逃げ帰ってくるような状況になってくると、ほとんど証拠がない。やはり外国にある資料として、警察やあるいはDVの救済機関に対して相談した場合の相談記録でありますとか、あるいは病院の診断書とかカルテとか、いろいろ考えられるわけでございますが、多分、この資料は入手してもその元いた国の言葉、言語で書かれているんだろうと思います。
 当事者に資力がない場合、現在、民事法律扶助制度の対象となるわけでございますが、翻訳に係る立替え限度額は十万円。先般、法務大臣、このハーグ関連の案件については大量の法的文書の翻訳が必要となるという、特殊性を踏まえた検討が必要であるという、現在関係機関と協議を行っているという御答弁なされたわけでございますが、うちの大口衆議院議員は百万程度に増額すべきではないかという、そんな趣旨で質問をされたと、こう思いますが、現在までの協議の状況、またこの点に関する大臣の御答弁がございましたら求めたいと思います。
#151
○政府参考人(小川秀樹君) 現在までの協議の状況について、私の方からお答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、翻訳費用の立替えの基準につきましては、法律的な文書を相当量翻訳する必要性が想定されるというハーグ関連事件の特殊性を踏まえた検討が不可欠であるということでございまして、この点を踏まえて現在も関係機関との協議を行っているところでございます。当事者が経済的な事情を理由に不十分な準備状態で審理に臨まざるを得ないような事態が生ずることは避けなければならないということでございまして、翻訳費用の立替えの基準につきましては現在そういった観点からの協議を進めております。
 関係機関との協議が今後も必要である現時点では確定的な金額をお答えすることはできませんが、本日の委員の御指摘も踏まえて、引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
#152
○魚住裕一郎君 終わります。
#153
○真山勇一君 みんなの党の真山勇一です。よろしくお願いいたします。
 ハーグでこの条約が採択されてからもう今年で三十三年ということで、かなりの時間がたっているわけです。この間、日本でも国際結婚が増えるのと同時に、やっぱり不幸にして離婚も増えているということで、子供の連れ去り、連れ去られ、そういうことがたくさんケースとして多く出てきております。
 そういうこともありまして、今回のこのハーグ条約の締結、そして今回の実施法案、これが成立するということになれば、そうした国際間の子供をめぐる問題についての解決策が見出されるんじゃないかということで大変期待も多いと思うんですけれども、その一方で、やはり国際的な条約、そして交渉ということで、法律の違いとか習慣の違いとか文化の違い、いろいろあって、本当に、私もこれ今回初めてこのハーグ条約というのを実際にやってみて、いかにやはり問題点がたくさんあるか、複雑か、難しいかということを今実感しているわけです。それで、そうした中で、懸念ですとか不安もやっぱり一方であるんじゃないかというふうに思っています。
 ただ、まず法務大臣に是非お伺いしたいのは、この間、やはり外国から見ると、日本というのは子の連れ去りを許してきた。三十三年そのままになってしまったということなので、許してきたために、海外から批判の目で見られている部分があって、子供拉致国家という、ちょっと、少々過激な言葉なんですけれども、こうしたことでも表現されているようなことがあるわけです。
 こうした日本のこれまで条約の締結、実施が遅れたということ、そして、そのために多少国際的に日本のそうした評価が損なわれた部分もあるというふうに言われているので、その辺りのまず大臣の率直な感想から伺いたいというふうに思います。
#154
○国務大臣(谷垣禎一君) 今、真山委員がおっしゃったような批判、そういう御議論が、私、一部あることは承知しております。ただ、どの程度それが子供拉致国家というようなことで日本の評判が損なわれたかどうか、私は定かに把握しておりませんが、もしそういうことであれば大変遺憾であると思っております。
 そして、何よりも、これだけ国際結婚も増えてまいりましたので、幸せな家庭になっていただきたいけれども、うまくいかない場合も増えてくると。そうすると、それをどうやって、特に子供の監護等をめぐって解決のルールを決めておかなければならないというのは、国際的な世論というだけじゃなしに、日本の在り方としてももう避けて通れないことになってきているのではないかと、このように考えております。
 もちろん、今委員がおっしゃったように、こういう国際的な婚姻の破綻にどう対応していくかというのは悩みは当然いろいろございますけれども、まずはこの法律を通していただいてきちっとした解決を、道筋を付けていきたいと、このように考えております。
#155
○真山勇一君 まさに大臣がおっしゃるとおりだと思うんですね。新しいルール作って、それをどうやって実際に実施法という中で運用していくかということ。これは先ほども出ましたけれども、まさにそういう意味では、日本が世界から注目をされていると言っても大げさじゃないような新しい段階であるというふうに思うんです。
 そこで、少しこれから具体的な問題をお伺いしたいと思うんですが、まず最初に、このハーグ条約の場合は連れ去った側と連れ去られた側という二つの親の問題があるわけですけど、まずその連れ去った側の方からのことでちょっとお伺いしたいんですけれども、ハーグ条約の実施法案には、子の返還拒否事由の範囲、これがどうも不明確で、そしてあるいは場合によっては恣意的に思えるような部分があるというふうに言われています。そのために、政府は形だけ条約を今回批准しても、返すべき子供も一切返さないかもしれないんだというようなことが外から、海外から心配する声もあり、そうしたことを指摘している識者もいるわけですね。
 政府は、こうしたことから、返還拒否事由、その理由、返さないという理由について意図的あるいは恣意的に解釈あるいは運用するということをせずに、ハーグ条約で定められた子供のことをまず第一に考えるという、そういうことを前提に定められた義務、それを忠実に守る意思というのは、この法案の審議、そして成立に向けての今の時期に意思がおありかどうかということを確認したいと思います。
#156
○国務大臣(谷垣禎一君) 締結した条約は誠実に守っていくと、これは憲法の要請でもございますし、我々行政府にいる人間としては当然のことだろうと思います。したがいまして、この法律もハーグ条約の趣旨にのっとってきちっと運営していくのは当然のことでございます。
 ただ、こう御答弁申し上げながら、法務省という役所は難しゅうございまして、いろんな基本法を所管しているといいながら、ほかの官庁のようにそれを執行、実施していくのがその役所であるというわけでは必ずしもなくて、これはやはり裁判所がこれを運用してくださるわけでございまして、当然適切な運用をしていただけるものと、それでまた法務省としてもその協力はできる限りしていかなければいけないと、このように考えております。
#157
○真山勇一君 そういうことで、子供を連れ帰った親というのは、いろんな意味で、これからどんなふうに守られていくのか、かなり不安もあると思うんです。連れ帰った親が子供を元住んでいたところへ返さなくてはならなくなるということでお尋ねをしたいんですが、返還すると危機が、危険が及ぶ場合というのがあると思うんですね。そういう場合はきっちりと返還を拒否して、例えばその理由がDV被害であるということならば、そういうことの被害から守らなければならない。
 ただ、その子供を実際に連れて帰ってくるという場合、そのほとんどにはもうそれなりの事情があるというふうに思うんです。しかし、それにもかかわらず連れ戻さなければならない、元へ戻さなくちゃならないというときに、いわゆるDVですとかそれから虐待、そうしたものから逃げてきたけれども、そこを政府としてはこうした人たちをどうやって守っていくつもりなのかというところをちょっとお伺いしたいと思います。
#158
○政府参考人(深山卓也君) 一方の配偶者から深刻な虐待とか家庭内暴力を受けて、やむなくお子さんを連れて帰ったというケースも御指摘のようにあると思います。そういう場合には、子の返還拒否事由の存否を判断する過程でそのような事情が考慮されて、子供を返す返さないという裁判にそれが反映するという形になると思います。
 もう少し具体的に申し上げますと、配偶者から家庭内暴力を受けた親御さんが子供とともに常居所地国に戻ると、配偶者が再度暴力を受けて子の心身に悪影響を及ぼすというような事情がある場合には、返還拒否事由の相手方及び子が常居所地国に入国した場合に、相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれがある場合に該当し得ることになりますし、あるいは、また少しケースは違いますけれども、常居所地国に子供さんが戻ると適切に監護する者がいない場合などもやはり返還拒否事由に当たるという形で、子供さんの利益を返還をして害する場合には、返還拒否事由の判断の中で、そのような事情が考慮されて結論として返すに及ばないという裁判所の判断に至ると、こういう形でこういう方々が守られていくということになるんだと思います。
#159
○真山勇一君 それで、返すことを拒否しようということをするならば、その子供を連れ帰った親の方は相手国、つまり元いた、子供とともに住んでいた国のところでDV被害があったということを証明しなくてはならないのかどうかということと、もし証明する必要があるとすれば、当然その証明のために必要な病院の診断書ですとか例えば警察などの、何というんですか、被害に遭った記録、相談記録、そうした証拠集めということもしなくてはならないと思うんですが、それは連れ去られたその国側の中央当局というところにお願いする必要があると思うんですけれども、そういう認識でよろしいんでしょうか。
#160
○政府参考人(新美潤君) 御指摘のとおりでございまして、一義的には、このハーグ条約、不法な子の連れ去りがこの条約の対象となっております。そして、不法な子の連れ去りは原則元の常居所地国に戻すと。ただし、もうこの委員会で累次御議論いただいておりますとおり、一定の要件を満たす場合は戻さなくていいと。そして、その一義的な説明、挙証は、まさに子供を不法に連れてきたとされている当事者の方にあるわけでございます。
 同時に、委員御指摘のとおり、その外国、元いた国から離れてその国にいる状況で、自分が元いた国、子供あるいは元夫と暮らしていたときにどういう状況にあったかということを御本人一人の能力で調べることには限界があるということもございまして、条約上は中央当局経由で相手の中央当局からいろいろな情報について情報を収集できるということに、条約上の仕組みになっております。
#161
○真山勇一君 相手側の中央当局、こちらとして相手側の中央当局にお願いしてそういう情報が集められればそれはいいと思うんですけれども、ただ、こういうものというのは、こちらの日本側の事情を考えた場合、プライバシーの問題ですとか、それからやはり連れ戻されちゃ困るからというようなことで日本の場合でもなかなか難しい面があるんですが、相手の国の機関がいろんな証拠などを集めるということを真摯に真面目に対応してくれればいいでしょうけれども、なかなかそういうことがいろんな問題に阻まれてできないというようなとき、日本の中央当局というのが相手側にどれぐらいの程度でそのお願いをしていくか、あるいはもう何としても強い意思を示すかということなんですけれども、自国のそういう被害に遭っている親御さんたちのために保護をする、先ほど在外公館、そういうところにも体制をつくっているというお話だったんですけれども、そういう場合でも、やはり難しいからここで諦めなさいというようなことがなく、きちっと日本の国民を守る覚悟というのは、今回のこの条約を契機にしてやっぱり覚悟というのは必要だと思うんですけれども、その辺りはいかがでしょうか。
#162
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 今先生の御指摘の点については、まさにまだ日本がハーグ条約に入っておりませんので、実際入ってからという話ですので、仮定の話しかできないわけでございますけれども、一つは、先ほども御答弁申し上げましたが、まだハーグ条約に入っていない現段階でハーグ条約に既に入っている主要国について中央当局といろいろ意見交換を行っている限りでは、調査に対する協力について前向きな回答がおおむね得られているということが一点。
 そして二点目は、今、この条約ができて既に三十年、そして八十九か国の国が入っているわけでございますけれども、いまだこの三十年間、一つの国も脱退はしておりませんし、そして、私どもが承知している範囲では、今委員から御指摘がありましたような中央当局間の協力という問題についても、それがうまくいかなくてこの条約のシステムが動かなくなっているというような、そこまでの批判は聞いておりません。
 したがって、実際入ってからでございますが、特に覚悟という御質問でございましたので、当然、我が国としましては、仮に相手国の中央当局が非協力な態度を取る場合であっても、まずこの調査が条約上規定され想定されている措置であるということ、そして我が国の裁判所の職権による調査嘱託であることを踏まえつつ、相手国の制度上許容される限りの協力が得られるよう最大限の努力を行う所存でございます。
#163
○真山勇一君 ありがとうございました。
 やはり中央当局ということで、外務省としてはこのハーグ条約の、こうした子供の連れ去りというような、また新しい、かなり新しい一つの仕事の分野になってくるんではないかという私は気がしております。普通のいわゆる在外公館として在留邦人の保護とはまた違った、もっと更にそれよりも、やはり子供というものがいるわけですから心の通った対応というものが求められてくるのかなというふうに思っております。是非それはしっかりとやっていただく方向で進めていただきたいというふうに思っております。
 そして、次は、今度は連れ去られた方のケースでちょっとお伺いしていきたいというふうに思うんですが、これは国境を越えたということももちろんあるんですが、そうではなくても起こる問題ということで、私も今回、このハーグ条約の問題をいろいろ調べた過程でお話を幾つか、かなり伺ったんで、是非お伺いしたいと思うんですけれども。
 いわゆるDV関係なんですけれども、連れ去られて、この場合は必ずしも外国人同士の両親ということじゃなくて、日本人同士でもそういうケースが起こると思うんですが、日本の現行のDV保護法というのは、規制の仕方が、DVということの決め方が非常にちょっと曖昧なところがあるということで、警察とかの被害者機関でDVを受けたという申立てをすれば、その事実がはっきりと確認ということがなくても住所などを伏せるということも可能で、そうしたことで、なかなか捜す方としては、先ほども話出てきましたけれども、住所とか連絡先が分からない、教えてもらえないということが起きてくるわけですね。
 そうしたやり方が、総務省の通達一つでこういうやり方がまかり通っているというふうにも言われているわけなんですけれども、ある日いなくなってしまって会えなくなってしまうということがあるんですが、この辺りもう少し、例えばDVの事実関係というものを認定を厳密にする、あるいは虚偽であるのかどうか、こうしたことも含めて厳密に認定をするということを考えるというようなことは、今回のこのハーグ条約の実施に当たってということで考えはあるのでしょうか。
#164
○政府参考人(深山卓也君) 今お話に出ましたいわゆるDV防止法、配偶者暴力防止法の保護命令の手続で、保護命令が出る出ないというところで、虚偽の申立てに基づいて出てしまうケースがあるんではないかという御指摘だと思います。
 ただ、この保護命令の制度は、確かにこれが出されますと、被害者等へ接近すること自体が禁止される、あるいは住居から退去を命ぜられると、こういうことですので、相手方に与える影響が非常に大きいということで、発令に当たっては口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋期日を経なければならないということが法律上の原則とされておりまして、その相手方の言い分や提出証拠を見ないで、一方だけの言い分で発令されてしまうというような仕組みには制度上なってはおりません。
 ここからは運用の話ですけれども、恐らく裁判所においてもこのような制度の下で運用がされているので、適切な判断が結果としてされているんだろうと思いますし、この配偶者暴力防止法の保護命令の手続だけを取り上げて、ほかの裁判手続と比べて事実認定を厳格化する、あるいは立証の程度を上げるというのは、これはなかなかちょっと難しいんではないかというふうに思います。
 ただ、もちろん、判断ですから間違えることもあり得るわけです。まず、保護命令が出た場合でも、これが間違いではないかということで、不服がある場合には高等裁判所に即時抗告をすることができますし、即時抗告には期間制限がありますけれども、後になって虚偽であることが判明したという場合には、一定の事由が必要ですけど、再審の申立てで一旦出た保護命令を争うというようなことも可能になっております。
#165
○真山勇一君 確かにこの子供の連れ去り、連れ去られの中ではDVの被害というのが一番理由としては大きな部分になると思いますので、これをどういうふうに判断していくかというのは、この法律を生かすかどうかという大事な私はポイントでないかというふうに思っておりますので、是非、本当にDVの被害に遭っている人にとっては大変なことで、これを無視して事が進むようなことがあってはならないというふうに思っていますし、逆にそうではないケースの場合はまたそれなりのきちっとした運用というものが必要だというふうに思いますので、この辺りは時間がありましたら是非また引き続きお尋ねしたいというふうに思っております。
 私の質問を終わります。ありがとうございました。
#166
○森ゆうこ君 私も、やはりDV被害者の懸念について、ここは、この法律案の審議の中でできるだけその懸念についてこたえていくべきであるという立場から質問をさせていただきたいと思います。
 幾つか確認をさせていただきたいと思いますが、中央当局は、連れ去られた親から返還援助申請、面会交流援助申請があった場合、子の所在を特定するため国内の関係機関等に情報の提供を求めることができるとされ、そして、情報の提供を求められた者は、遅滞なく当該情報を外務大臣に提供するものとするとされております。
 しかし、このハーグ条約は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約でございますので、刑事罰を科すことを目的としているものではございません。民間の会社等も含めて、情報提供の義務付けが正当化される根拠はどこにあるのか、外務省に確認したいと思います。
#167
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 今委員から御説明ございましたように、この条約はまさに民事上の条約でございまして、そしてこの条約の作り立てといたしまして、まさに不法に連れ去られた、国境をまたいで、そういった子を基本的に元に戻すと。そして、戻すためには、まず、その不法に連れ去られた先で一体子供がどこに行って誰に事実上監護されているのかということを明らかにしないと、原則でございますけれども、返すことができないということでございます。
 そして、中央当局、日本の場合は外務省、外務大臣になっておりますけれども、もちろん中央当局だけで、その条約上の義務、すなわち子供を原則返すために、まずその子供あるいは子供を事実上監護している者の居場所を確定するということはなかなかできないわけでございまして、そのことから、条約上の義務を担保するために法律で、主として関係行政機関、地方公共団体等についてその情報の提供を義務付けることができるという規定を法律で設けたわけでございます。
#168
○森ゆうこ君 条約の義務を果たす、それが情報提供の義務付けが正当化される根拠であるということですね。
 さはさりながら、DV被害者の方からは情報が外務省に集積されることについて大変懸念の声が上がっておりまして、この間の審議の中でもそのことが指摘をされております。民間のシェルターへの情報提供の要請は慎重に行うべきであると考えておりまして、これまでの審議におきましても、配偶者暴力支援センター、シェルターのネットワーク団体、個別のシェルターではなくてネットワーク団体を通じて行うことを答弁をされております。
 DV被害者にかかわる情報が外務省に集積されることについて大変懸念が多いわけですけれども、このような懸念に対してどのように対応すべきとお考えでしょうか。
#169
○大臣政務官(若林健太君) 条約実施法案では、中央当局たる外務大臣は、残された親の側から子の返還を実現するための援助申請があった場合、必要と認めるときは、関係機関や団体に対し、子の所在の特定のための情報を求めることができる旨規定をしているわけであります。今、先生が御指摘のとおりでございます。
 他方、この規定に基づき提供された情報については、裁判所が手続を行うときに住所が必要な場合などの限定された場合を除いて中央当局は開示してはならないと、こういうふうに規定をされています。これにより、返還請求に係る子及び同居している者の個人情報が守られる仕組みとなっているというふうに理解をしています。
 特に、これらの者がDV被害を受けている可能性がある場合の個人情報の保護に関しては極めて強い懸念があると理解しており、こうした場合に、返還申請者にその所在を知られることのないよう中央当局として情報管理に十分配慮していきたいというふうに考えております。
#170
○森ゆうこ君 なかなか難しい話でございまして、その情報の管理というものを徹底していただきたいとともに、情報の提供の要請自体も慎重にやっていただきたいと重ねてお願いを申し上げたいと思います。
 五条の三項の関係でございますけれども、国内の関係機関から十分な情報が得られない場合には警察に所在特定のための必要な措置をとることを求めることができるとなっております。最初から警察に対する措置を求めない理由は何でしょうか。
#171
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 この実施法の仕組みといたしまして、委員御指摘のとおり、まず最初から警察というふうにはなっておりません。それは、日本国内に居住されている方々は通常は住民基本台帳法等の規定に基づいて住民基本台帳に名前あるいは住所が記載されている等、地方公共団体がそれぞれの地方公共団体のあるところに住んでいる人々についての情報を有しているだろうということから、所在の特定に当たりましては、まずこれらの機関等に対して情報提供を求めて実際の所在を確認するということが最も効率的と考えているわけでございます。
 ただ、先ほどの他の委員の方の御質問からもございましたとおり、その住民基本台帳に、本当にそこに住んでいるか、そこに名前があるところに住んでいるとは限らないわけでございまして、したがって、そういう場合も含めて、いろいろ関係省庁あるいは地方公共団体等に聞いても所在を確認することが困難な場合等も含め、もう一つの手段として、これはまさに条約実施法五条三項でございますけれども、外務大臣が都道府県警察に対して情報収集を求める、ただ、この場合は警察庁の方で行方不明者発見活動に関する規則に基づいて行方不明者発見活動の手続を取るということを考えているということでございまして、まずは基本的には住民台帳等、地方公共団体、関係省庁に聞いた上で必要があれば今申し上げた警察のという、二段階になっているわけでございます。
#172
○森ゆうこ君 済みません、それで、行方不明者、まあ行方不明者と言っていいと思いますけれども、今のお話なんですが、じゃ、それについては具体的にはどのような措置がとられることになるんでしょうか。
 それから、警察署への掲示、あるいはインターネットへの掲示等、行方不明者に係る資料の公表は求めないということだというふうに思うんですが、この点は大変重要な点だというふうに思いますので、是非確認をさせていただきたいと思います。
#173
○政府参考人(新美潤君) まず、どういう情報を調べるかということでございますが、これは実際、条約、そして実施法を御承認をいただいた上で、いろいろ規則等、政令で定めることになっておりますが、例えば既に他国の例といたしまして、これはハーグ国際私法会議の事務局等が各締約国のプラクティスとして作っている報告書等では、住民登録だけではなくて例えば出入国、移民関連情報、あるいは社会保障関連情報、あるいは場合によっては行方不明捜索情報、これは警察の協力が必要でございますけれども、等々について調べるということがあると聞いております。
 そして、二点目の御質問、警察で調べた場合、警察署への掲示とかインターネットへの掲載等、そういうふうにする、資料の公表を求める、これは問題があるのではないかということでございますけれども、御指摘のとおりでございまして、まず大原則として、先ほども出ました都道府県警察に関する行方不明者発見活動に関する規則では、警察署長は、行方不明者の発見のために必要であり、かつ、届出人の意思その他の事情を考慮して適当と認めるときは、行方不明者の氏名、年齢その他の事項を記載した資料を作成し、警察署の掲示場への掲示、インターネットの利用その他適切な方法により公表されるとしているわけでございますが、しかしながら、この委員会でも何度も御議論をいただきましたとおり、対象となる子供等の個人情報、プライバシーの保護の観点等から、警察等に対して発見活動の依頼を行う場合には、子供等の生命に危険が及んでいるような緊急かつ特段の事情が認められる場合を除きましては、同条に基づく行方不明者に係る資料の公表は行わないように求める予定でおります。
 このような運用が望ましいとの考え方につきましては、既に警察庁とも認識を共有しておりまして、今後そのような運用が行われるよう、周知徹底を含め準備をしてまいりたいと思っております。
#174
○森ゆうこ君 子供の情報がいきなり外部に掲示されたりとかそういうことがない、ネットもしないと、資料の公表は求めないということを今確認したわけですけれども、そうすると、警察が実際にやる発見活動というのは、具体的にどういう、どのような措置なんでしょうか。
#175
○政府参考人(新美潤君) 本来、警察からお答えすべき話かもしれませんけれども、今申し上げたような掲示場への掲示、そしてインターネットの利用というのは、原則公表するということは行わないという前提で、当然、警察は都道府県警察そして警察署等のネットワークがあると思いますので、そこで可能な警察が持っている情報で調べるということだと思います。
#176
○森ゆうこ君 何かはっきり分かりませんので、次回、警察の方も呼んで、ここ結構重要なところですので、確認をさせていただきたいと思います。
 子の所在の発見の過程で連れ去り親の所在が確定された場合、その常居所国においては、子供の父母間における子の連れ去りが犯罪とされている国もございます。
 条約に加入すると、子供を連れて日本に逃げ帰っても所在を特定されて逮捕されるのではないかという懸念も生じますけれども、子供の所在の発見の過程で連れ去ってというか、本人の立場からすれば逃げ帰ってきた人たちのその所在が確定された場合、日本で勾留されて、常居所地国に引き渡される可能性はあるんでしょうか。法務省。
#177
○政府参考人(稲田伸夫君) お尋ねは刑事手続にかかわることだろうと思いますが、ハーグ条約にいたしましても、この法律案におきましても、いずれも子供の連れ去りに関する民事上の側面について定められておりますので、刑事的な側面につきましては従来と同じ取扱いになるものというふうに理解いたしております。
 そこで、その従来の取扱いについて一般論で御説明申し上げますと、当該連れ去り行為が犯罪に当たるものとして外国から逃亡犯罪人引渡しの請求があった場合には、我が国の逃亡犯罪人引渡法、あるいは我が国が一部の国との間で締結している犯罪人引渡しに関する条約に従いまして、子の引渡しの可否、当否が判断されることになります。
 この場合、逃亡犯罪人引渡法はその引渡しを拒否する理由を幾つか定めておりますが、その中には、当該行為が請求国及び我が国の双方の法令によって一定以上の重い刑、法律上は三年以上の拘禁刑に該当する犯罪であることが要件になっておりますので、それ以下の罪、あるいはどちらかの国で犯罪に当たらなければその求めには応じられませんし、また、逃亡犯罪人が日本国民である場合には引き渡すことができないこととされております。
 ただ、我が国が、犯罪人の引渡しに関する条約、これはハーグ条約ではございませんが、逃亡犯罪人の引渡しに関する条約を締結する国との間では、この要件が一定の部分で緩和されております。
 なお、この条約、我が国が締結しておりますのは現在はアメリカと大韓民国だけでございますが、どのように緩和されているかと申しますと、双罰性と申しまして、先ほど、両国において一定の重い罪に当たるということが要件とされているところが少し緩和されておりまして、国によって若干違いますが、一年以上の懲役にそれぞれ当たる、あるいは一年を超える懲役に当たるというふうにされているところがございます。それともう一点は、日本国民を引き渡すか否かは我が国の裁量によるものとされております。
 したがいまして、この両国、先ほど申し上げました犯罪人引渡条約を締結している韓国あるいはアメリカからの請求につきましては、個別の事案の事情に即しまして日本国民の方については引渡しをするか否かを裁量によって判断するということになろうかと思います。
 以上です。
#178
○森ゆうこ君 そうすると、今問題になって、いろいろ例が出てきたのもアメリカから逃げ帰ってきた方たちの話でして、アメリカとは犯罪者引渡条約が締結されているということですから、そのハーグ条約の締結に基づいて子供を所在を特定するという活動がこれからされるわけですから、その過程において、親が連れ去ってきたというか連れ戻してきたと、一緒に逃げてきた親の所在が確定された場合、私が先ほど質問したような懸念が否定できないということですね。そこだけちょっと確認させてください。
#179
○政府参考人(稲田伸夫君) 私がお答えするのが適当かどうか分かりませんが、先ほど申し上げましたように、アメリカとの間では日本人を引き渡すか否かは我が国の裁量によるということで、引き渡してはいけないということにはなっていないわけでございますので、その点は個別の事案の中で検討されることになろうかと思います。
#180
○森ゆうこ君 次回まだあると思いますので、もう少し詰めたいと思います。様々な懸念が寄せられているところでございます。
 ところで、子の返還拒否事由について確認をさせていただきたいと思います。
 民主党政権時の平成二十三年五月二十日、この条約の締結に向けて準備をすることが閣議了解されまして、その際、条約を実施するための法律案の作成に当たっては関係閣僚会議了解事項に基づくこととされておりました。その事項の中に返還拒否事由として、子に対する暴力等、それから相手方に対する暴力等、それから相手方が子とともに帰国することができない事情等、そして包括条項を盛り込むこととされておりましたけれども、今回、今審議しております法律におきましては、返還拒否事由の有無を判断するに当たっての考慮事項とされるにとどまっております、二十八条でございますけれども。その経緯、そしてその理由について確認をさせてください。
#181
○国務大臣(谷垣禎一君) 森委員の御指摘によりまして、私も実は今までこの関係閣僚会議の了解事項を拝見してなかった、初めて拝見いたしました。そして今委員がおっしゃったような事項が子の返還拒否事由として列挙されていると。報告を聞きますと、これは諸外国の裁判例において考慮されている事件を類型化して、このような了解事項にしたというふうに報告を受けております。
 そこで、この了解事項を、先ほど委員がおっしゃったような二十八条二項で考慮事項としている理由でございますが、法制審議会のハーグ条約部会における審議で、関係閣僚会議の了解事項自体をそのまま返還拒否事由として明示するということになると、条約に明示的な規定のない返還拒否事由を設けることになって、条約に反するというそしりが出てくるかもしれないという御議論があったようであります。
 そこで、本法律案では、了解事項の内容を踏まえつつ、条約との適合性に配慮して、了解事項を返還拒否事由の要件として明示するのではなくて、二十八条一項四号に規定する子の返還拒否事由の有無を判断する際に考慮すべき事情として第二十八条第二項に盛り込むと、こういう経緯であったようでございます。
 それから、もう一つ付け加えますと、申合せ、申合せというか了解事項の中にも、具体的な法律案の作成に当たっては法制的ないろいろな事情も考慮して考えろということがたしか書いてあったと思いますが、そういうことの結果としてこのような形になっているということでございます。
#182
○森ゆうこ君 それぞれの項目が、私の感覚からすると、それ一つ一つが返還拒否事由に当たってもいいというふうに私は思いますけれども、しかし、そういう御議論があり、二十八条ではそのような形になってしまっているわけでございますが、随分工夫されたんだなというふうに思います。
 それで、もう時間がございませんので、もう一つだけちょっと確認させていただきたいんですけれども、先ほど来、子の面前におけるDVは児童虐待に当たるんじゃないか、まあこれは日本ではそういうふうになっておりますが、それが果たして諸外国でそれが共有されているのか、子に対する直接の暴力じゃなくて、配偶者に対して子の面前で行う暴力はこれも大変なことであるということで、これが児童虐待に当たるという認識が諸外国で共有されていればいいんですけれども、そこの点について確認をさせてください。
#183
○政府参考人(鈴木俊彦君) お答え申し上げます。
 我が国では、先生御指摘のとおり、児童虐待防止法におきまして、子供の目の前で配偶者に対する暴力が行われる、こういったように直接児童に対して行われた行為ではございませんけれども、児童に著しい心理的外傷を与える、そういったものはいわゆる心理的虐待に当たるというふうにされております。
 こうしたドメスティック・バイオレンスに伴います児童虐待について、諸外国の状況でございますけれども、必ずしも私ども全てを把握しているわけではございません。承知している範囲内で申し上げますと、例えば、イギリス、オーストラリア、カナダなどについては我が国と同様の取扱いが行われているというふうに承知をいたしております。
#184
○森ゆうこ君 時間なので終わります。
#185
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 日本人の国際結婚が増えまして、その中で破綻も増加をするという中で、子の連れ去りというのは大変深刻な問題になっております。国際的なルールと国家間の協力は必要だと考えております。条約から実施法案、衆議院から含めまして大詰めの議論になっておりますので、私は主に運用の問題についてお聞きをしたいと思います。
 まず、その運用に当たっての基本姿勢でありますが、やはり、子の最善の利益の尊重が最優先して運用されるべきだと考えますけれども、この基本姿勢について、法務省、外務省、それぞれまず確認をしたいと思います。
#186
○国務大臣(谷垣禎一君) 井上委員のおっしゃったとおりだと思います。子の最善の利益を一番の基本としてこの運用をしていくべきであろうと思います。また、本法律案の中にも、子の返還申立事件の手続が子の利益に配慮した裁判手続となるように子の意思を把握するように努めろとか、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないという規定が入っておりますのも、その精神が法の中に組み込まれている一つの表れだろうと思っております。全く御指摘のとおりだと思います。
#187
○大臣政務官(若林健太君) 委員の御指摘のとおり、条約の前文において、「子の監護に関する事項において子の利益が最も重要であることを深く確信し、」、こう書いてありますように、この条約は子の利益を最重要視しているというふうに理解をしております。
 国境を越えた不法な連れ去りによる一番の被害者は子供自身だと。ハーグ条約は、子が元々居住していた国、すなわち子供が慣れ親しんできた生活環境がある国において子の監護に関する事項を決定するための手続を行うことがその子にとって最善であると、そういう考え方に立って、まずは子供が不法に連れ去られた状況の原状回復を図ろうとするものであるというふうに理解しています。このルールは、今や国際的なものとして確立されているということであります。
 ただし、いかなる場合であっても子供が元々居住していた国に返還されることが子供の最善の利益になるとは限りません。ハーグ条約においては、返還により子供の心身に害悪を与える重大な危険がある場合などの一定の場合には子の返還を拒否できるものというふうにされているわけで、こうした観点からも、この条約は子供の利益を最重要視した条約であるというふうに理解をしております。
 我が国におけるハーグ条約の運用においても、条約の基本理念にのっとりまして、子の利益を最重要視して取り組んでまいりたいというふうに思っています。
#188
○井上哲士君 今後、政令や規則、そして体制づくりなどありますし、実際の様々な運用の場面で子の最善の利益というのを本当に最優先にするということを貫いていただきたいと思います。
 その中で、今の答弁の中にもありました問題でありますが、返還拒否事由の要件の問題であります。
 先ほどの大臣の答弁で、直接盛り込まずに、考慮事項として子が申立人から暴力を受けるおそれなどの項目を挙げたお話がありました。DV被害者への配慮をしたものでありますし、こういう仕組みは諸外国にはないという答弁もあったわけですが、一方で、やはり要件に明記をされないと、考慮事項ではどれだけ裁判で実効性があるんだろうかという声もお聞きするわけでありますが、この法案のように考慮事項を別途具体的に規定している他の法律の例はどういうものがあるのか、それらが実際の裁判の中でどのように取り扱われているか、いかがでしょうか。
#189
○政府参考人(深山卓也君) 御指摘の考慮要素を法律に明記した例といたしましては、借地契約における土地の賃貸人が契約の更新を拒絶する場合に必要となる正当の事由の考慮要素を明記した借地借家法の第六条や、家庭裁判所が離婚した夫婦の財産分与の額や方法を定める際の考慮要素を明記した民法第七百六十八条第三項などを挙げることができます。
 こういった立法例は、抽象的な法律概念の判断において、一般的に重要と考えられる考慮要素を明記して法適用の明確化、予測可能性の向上を図ったものでございまして、これらの法律を適用する裁判所においても、これらの法律の趣旨を踏まえた判断が現にされているものと思っております。
 この法律案の二十八条第二項各号に定める考慮要素は、同条一項四号の返還拒否事由の有無を判断するに当たって重要なものを明示したものでございますので、裁判所においてもその趣旨を踏まえた判断がこの法律でもされるであろうと考えております。
#190
○井上哲士君 その考慮要素の一つに、常居所地国において子を監護することが困難な事情というものがありますが、その更に具体的な中身として、相手方が帰国後に適法な滞在資格が得られないおそれとか、当該国において生計を維持することが著しく困難ということも示されているわけですね。
 先ほども質問があったんですが、帰国後に就労可能な滞在資格が得られないおそれというのは、まさにこの生計の維持の困難にも当たると思うんですが、ちょっと先ほどの答弁がはっきり聞こえなかったものですから、この点は具体的にどうか、就労可能な滞在資格が得られないおそれの場合。それから、先ほど適切に監護する者がいない場合も示されましたけれども、例えば、子が返還された場合に、子が里親とか施設に託されるという可能性があるという場合はいかがでしょうか。
#191
○政府参考人(深山卓也君) まず、御質問のあった前者の適法な在留資格あるいは就労可能な在留資格がない場合のことについてですけれども、こういった事情で常居所地国で子供を監護することができないという場合には、二十八条二項の子の返還拒否事由の考慮事情のうち、第三号の相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情に該当し得るものと考えられます。
 結局、このような事情は、最終的には返還拒否事由の子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があるという判断をする上での重要な事情になると、こういうことでございます。
#192
○井上哲士君 次に、海外で暮らす日本人同士の夫婦が離婚をして一方が日本に連れ帰ったという場合も、これはハーグ条約の対象になると考えるんですが、そのことの確認と、一方で、申立人がこのハーグ条約の仕組みを使って相手を捜し出したけれども、そして常居所地国で例えば監護権の判断を受けた後で、その後、実際には日本に帰って生活をするとか、いろんなケースがあると思うんですね。ですから、海外で暮らす日本人同士の夫婦が離婚をして一方が連れ去ったという場合、どのケースはハーグの対象になり、どのケースはならないのか、そこのちょっと線引きを示していただきたいと思います。
#193
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 まず、基本的な考え方といたしまして、ハーグ条約には当事者の国籍に関する規定は置かれておりません。したがって、委員の前半の御質問のように、日本人同士で海外で結婚して、そして海外に居住しているという場合、そこで当該子供が元々居住していた国と日本との間でお互いがハーグ条約の締約国で条約が効力を生じていれば、日本人同士の、今委員が御指摘になっている場合、一般論としてハーグ条約の適用を受けることになります。
 その上で、各論でございますけれども、これも委員の御質問で、そういう場合で一方の親が日本に子を連れ帰ったということで、その後、残された親、この場合、今の御質問ですと申請者ということになると思いますけれども、日本に戻ってきたという場合にハーグ条約の対象になるのか、これはいろんな場合があると思います。
 したがって、それを網羅的に申し上げることは困難かもしれませんけれども、申請者が日本に戻ったのが一時的なものではなくて、例えば住所あるいは居所を日本に移しているということになりますれば、これはまさに御指摘の点だと思いますけれども、子供の所在地そして申請者の住所、双方が例えば日本、同じ締約国の中にあるということになると思います。こういう場合には、条約による保護、援助は、子が親と異なる締約国にいるということを前提にしておりますので、外国返還にかかわる援助の申請については却下されることになると思います。
#194
○井上哲士君 次に、日本国内から母子が外国に避難をした後に、父親の方から返還の申立てがあって、そして子が外国から日本に返還をされたという場合についてお聞きをいたします。
 子とともに返還される外国人女性の母が日本で適法に滞在、就労ができる在留資格を保障しないと適正な監護権や親権の係争ができないということになるわけで、こういう場合はそういう適法な滞在、就労ができる在留資格の保障が必要かと思いますが、この点、いかがでしょうか。
#195
○政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。
 個々の事案ごとの具体的な申請内容に応じ、入国の可否を適切に判断し、適当と認められる場合はその入国を認めることとなります。また、在留資格については、その入国目的に応じて適切な在留資格を付与することとなりますが、離婚訴訟等を行うことを目的として入国を希望する場合は、一般的に、在留資格、短期滞在で入国を認めることとしております。
 また、就労の点についてでございますけれども、個々の事案に応じまして適切に判断していくことになろうかと思っております。
#196
○井上哲士君 先ほどの日本の返還拒否事由の考慮事項の中にも、適法な滞在資格というのがあるわけですね。逆に、日本が、子とともに返還される外国人に対して適法な滞在資格を与えないということになりますと、相手側からの返還拒否事由にも当たりかねないということになるわけですから、ここはしっかり判断をしていただきたいんですが。
 例えば、その場合に、母子が日本から外国に避難をしたという際に、既に在留期間が過ぎていたという場合もよくあると思うんですね。そうなりますと、これは退去命令とか出ていますから、再入国の拒否事由に当たると思うんですが、そういう場合でも、子の返還命令が出たという場合については合法的に滞在、就労ができる在留資格をやっぱり保障すべきだと思うんですが、これは可能でしょうか。
#197
○政府参考人(榊原一夫君) 不法滞在で退去強制された外国人などは、原則として、出国後一定期間本邦に入国認められませんので、委員御指摘のような事情に当たると思いますけれども、このような場合でありましても、その入国目的等に照らしまして法務大臣がその外国人の入国を認めることが相当と判断する場合には、入管法第五条の二の上陸拒否の特例や第十二条の上陸特別許可の規定に基づき入国を認めることとなっております。
 そういった場合で、日本での裁判に参加することが必要であるというふうな場合には入国を認めることになろうかというふうに考えております。
#198
○井上哲士君 法務大臣の判断だそうですから、適切によろしくお願いいたします。
 次に、在外公館における邦人保護の問題です。
 これもるる質疑があったわけでありますが、このハーグ条約の内容についての周知徹底や在外公館での邦人保護や支援を実効あるものにすることが一層求められておりますが、現地の支援機関との日常的な関係構築はもちろんですが、具体的な業務委託とか財政支援が必要だと思います。
 先ほど来の答弁で、アジア女性センター等に日本語の相談窓口を業務委託した、また包括的な支援も委託をしているということがあったんですが、具体的にどういうことを委託しているのか、例えば同行支援とか通訳支援も含めて委託をされているのかと、この点。それから、今後、当面四か所、北米中心に増やしていくというお話がありましたけれども、ほかの地域も含めてどの程度まで広げていく計画があるのか、併せてお願いをしたいと思います。
#199
○政府参考人(山田滝雄君) 御答弁申し上げます。
 ニューヨークのアジア人女性センター、またロサンゼルスのリトル東京サービスセンターですが、これらの団体は日本語で二十四時間対応していただいていると。それで、その支援の内容は極めて包括的でございまして、今お話がありました同行支援、シェルターの紹介、通訳、それから法律的な支援、こういったものを含めて全てやる能力を有しておられます。
 現行予算の中で何とかやりくりしまして、今年度中に更に北米を中心に四か所程度増やしていきたいと考えておりますし、また、ほかにもこのような機関がないか、今調査をしているところでございます。
 国によって事情は異なりまして、例えば豪州、ニュージーランド等では、例えば裁判の場合に言葉の問題のある方については先方の政府が通訳を提供するとか、こういうサービスをしてくれるところがあります。欧州もまた若干事情が違って、これほどアクティブな団体が必ずしもある国が多いわけではないというふうには聞いております。ですから、その国々の事情に合わせて、また必要があれば大使館自らが付添い等のサービスもするということも考えながら、できる限りのサービスをしていきたいと考えております。
#200
○井上哲士君 これも先ほどありましたけれども、法律相談とか法律支援の問題ですけれども、DV問題などに詳しい弁護士を紹介するというような答弁も衆議院でも行われておりますが、これ費用がなければ依頼ができないわけで、やはり日本国内にいる場合と同程度の法律支援が結果として受けられるということが必要だと思うんですね。現地でのいろんな法律扶助の制度を紹介するというお話もありますが、いろんな言葉の問題もありますから、きちっとそれが使えると、外国のそういう法律扶助の制度が使えるというところまで援助するということが必要かと思いますが、その点を確認をしておきたいということと、それから、先ほど弁護士と領事館が顧問契約を交わすのはどうかということに対して、領事が弁護士とよく相談をするということがあったんですが、その弁護士とこの問題の対象者が直接相談や法律的な支援を受けられるような形が取れないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
#201
○政府参考人(山田滝雄君) 今、各国におけます法律扶助制度、これについても調査をしております。私どもが承知している限りでは、ハーグ条約を締結しているほとんどの国において各々の国の法律扶助制度がございます。
 ですから、在外公館においては、まずきちんとそういった各国の扶助制度をよく調査して、邦人の方が必要がある場合はそうした公的な法律の弁護士費用の扶助制度、それから、無料法律相談制度などをきちんと御紹介できるようにすると。それから、現地において、領事だけではなくて館全体としてきちんと体制を組んで、そして、家族法の専門家の方々といつでも連絡が取れるような体制を取っておいて、必要に応じてきちんとお金を払ってアドバイスも受けるというような、そういう体制の制度、こういうことを今やっております。そういうことを通じて、万遺漏なきよう最大限の御支援をしていきたいというふうに思っております。
#202
○井上哲士君 なかなか直接弁護士とということの答弁がなかったんですが、これも含めて是非御検討いただきたいと思います。
 最後に、返還命令の代替執行についてですけれども、非常に慎重な配慮が必要だということも議論がありました。ソーシャルワーカーの立会いというような答弁があるんですが、ソーシャルワーカーというのは必ずしも子の福祉であるとかDVや児童虐待の専門家ではないと思うんですね。やはり児童精神科医などの本当の専門家の立会いを原則とするということが必要かと思いますが、この点はいかがでしょうか。
#203
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 累次御答弁申し上げておりますとおり、子の返還の代替執行を行う際には子供の心理的負担を最小限に抑えるという必要性にも鑑みまして、子の福祉に関する専門的知見を有する専門家を代替執行のために立ち会わせるという措置を検討しているわけでございます。
 そして、それに対応し得る人材でございますが、過去の答弁等でソーシャルワーカーについて言及したわけでございますが、委員御指摘のとおり、単にソーシャルワーカーに限られるものではございませんで、例えば児童虐待の支援業務に携わるなど専門的な知見を有する人材であることが望ましいと思います。
 ですから、そういう人材、あるいはそういう知見を持っているソーシャルワーカーということもあり得ると思いますけれども、まさにそういう合目的的に一番適当な、どういう人材が対応するのかというのは、これから引き続き関係機関とも協議しつつ、本日の委員会の御指摘も踏まえて検討していきたいと考えております。
#204
○井上哲士君 終わります。
#205
○委員長(草川昭三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩をいたします。
   午後一時二分休憩
     ─────・─────
   午後二時開会
#206
○委員長(草川昭三君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 本日、石井浩郎君、高階恵美子君及び那谷屋正義君が委員を辞任され、その補欠として青木一彦君、中原八一君及び藤本祐司君が選任をされました。
    ─────────────
#207
○委員長(草川昭三君) 休憩前に引き続き、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、四名の参考人から御意見を伺います。
 本日御出席いただいております参考人は、東京大学大学院総合文化研究科教授早川眞一郎君、弁護士・日本弁護士連合会ハーグ条約に関するワーキンググループ委員磯谷文明君、弁護士・日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会特別委嘱委員吉田容子君及び一般社団法人レフト・ビハインド・ペアレンツ・ジャパン代表理事明尾雅子君でございます。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、早川参考人、磯谷参考人、吉田参考人、明尾参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いを申し上げます。
 それでは、早川参考人からお願いいたします。早川参考人。
#208
○参考人(早川眞一郎君) 御紹介いただきました早川でございます。
 本日はこのような発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 私は、民法、国際民事法の一研究者として、ハーグ条約につきまして十数年前から少しずつ研究をしてまいりましたが、一昨年から昨年にかけまして、法制審議会のハーグ条約部会で実施法案の作成に関与する機会を得ました。また、ハーグ国際私法会議のこの条約に関する運用のフォローアップミーティングに出た経験もございます。
 本日は、これらの経験を踏まえまして、研究者としてのできるだけ客観的な観点でこの実施法案について若干の私見を申し述べたいと存じます。
 二つの点について申し上げます。一つは、実施法案の中の子の返還拒否を定めた規定についてでございます。もう一つは、ハーグ条約への加盟及び実施法案の施行が国内事案の取扱いに与える影響についてでございます。
 まず第一の、返還拒否を定めた実施法の規定についてでございます。
 この条約の主眼が、国境を越えた子の違法な連れ去り、留置があった場合に、その子を原則として元の国に迅速に返還する仕組みにあること、そして、条約上、例外的に返還をしなくてよい場合が幾つか定められていることは御承知のとおりでございます。
 この条約の規定を受けまして、実施法案二十八条には返還拒否事由が定められております。二十八条第一項は、基本的には条約に定められた返還拒否事由の規定をほぼそのままの文言でリストアップしたものでございますけれども、それに加えて、同条二項を用意したことが条約と比較したときのこの実施法案の一つの特色かと思います。この二十八条第二項でございますけれども、「裁判所は、前項第四号に掲げる事由の有無を判断するに当たっては、次に掲げる事情その他の一切の事情を考慮するものとする。」と定めて、一号から三号まで三つの事情を挙げております。
 この前項第四号というのは、条約では十三条一項bが規定します返還拒否事由、ちょっと読みますと、常居所地に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くことになる重大な危険があること。通常、重大な危険の抗弁と呼ばれているものがこの十三条一項bの返還拒否事由でございます。条約自体にはこのようなやや抽象的な規定しか置かれておりませんで、あとは解釈に委ねられているわけですけれども、実施法案の第二十八条第二項はそこを少し踏み込んで、具体的な考慮要素を例示列挙するという工夫をしているわけでございます。
 そこで、この規定が置かれた経緯、それからこの規定の役割等につきまして簡単に触れておきたいと思います。
 日本がハーグ条約を締結することについては、かねてより次のような慎重論が唱えられておりました。すなわち、国際結婚をして外国で生活をしている日本人女性が結婚の破綻に伴い子供を連れて日本に帰ってくるというケースのうち一定の場合、とりわけ、例えばその女性が夫から家庭内暴力を受けていてやむを得ず日本に逃げ帰ってきたような場合等につきまして、その場合にまでこの条約に基づいて一律に子を元の国に返還しなければならないとするのは適切ではないのではないかという、そういう慎重論でございます。
 条約十三条一項bの規定、すなわち実施法案でいいますと二十八条一項四号になりますけれども、この規定の解釈上は、このような母親に対する家庭内暴力の場合に返還拒否ができるかどうかは、その具体的なケースにおいて、子供を常居所地に返還することが子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があると、先ほどの重大な危険ですけれども、これがあるかないかによって決せられるわけですけれども、子自身ではなく母親への暴力でありますとこの抗弁は無関係であるという解釈もあり得なくはないわけでございます。
 そこで、実施法案の第二十八条二項二号は、母親への暴力のおそれが少なくとも考慮要素には入るのだということを示すことによって、この点に一定の配慮を示したものと言うことができます。ちなみに、この規定の背景には、児童心理学等の最近の知見に基づきまして、母親への暴力を目撃したりすることが子供にとって心理的なダメージを与える子の虐待であるという理解があることも指摘しておきたいと思います。
 このほか、二十八条の二項の一号の方ですけれども、これは子自身への暴力のおそれがあること、また同三号は、元の国に返還した場合に、申立人又は相手方が自ら子を監護することが困難であることというのをそれぞれ考慮要素にするということを示しております。
 これらの二十八条二項の規定によりまして、条約の抽象的な基準に一定の具体的、代表的な例を与えるということで、解釈、適用をより予測可能性のある安定したものにするという役割が果たされるということが期待されます。
 条約自体には存在しないこのような規定を法案に入れたことが条約の趣旨に反するのではないかという懸念を持つ方がいらっしゃるかもしれません。しかし、二項の各号はあくまでも考慮要素を例示したものにすぎませんから、この法案が条約違反でないことは明らかかと思います。もっとも、実際の事件でこの規定をどのように解釈、運用していくかは実施法施行後の重要な課題の一つだと思います。裁判官が家庭裁判所調査官、弁護士等の関係者とも協力して、条約の精神、趣旨を生かしつつ、バランスの取れた解釈、運用を積み重ねていくことが期待されます。
 なお、スイスが二〇〇七年に制定した条約実施に関する法律にも条約十三条一項bに関する解釈規定が入れられています。この規定は、その内容自体は日本の実施法案とはかなり異なるものでありますけれども、条約十三条一項bの重大な危険の抗弁について加盟国がその国内法によってより具体的な基準を設定しようとするという点で、広い意味では日本の実施法案二十八条二項と軌を一にするものであります。スイス法の規定の説明は時間の関係で省略いたしますけれども、実施法二十八条二項と共通する発想による立法が外国にも既に存在するということを一言付け加えておきたいと思います。
 次に、第二の点、すなわちハーグ条約への加盟、それから実施法案の施行が類似の国内事案の取扱いに与える影響についてでございます。
 ハーグ条約及びこの実施法案は、国際事案、つまり子の連れ去り、留置が国境を越えて発生した場合についてのみ適用されるものですから、条約が発効し実施法が施行された後も、国内事案についてはこれまでと同様の法的処理がなされることになります。そうしますと、国際事案と国内事案とで取扱いがかなり異なることになる可能性があります。すなわち、例えば親の一方が他方の同意を得ずに子を連れ去った場合に、国際事案ではハーグ条約に基づいて原則としてその連れ去りは不法なものとされ、迅速に子の返還が命じられるのに対しまして、国内事案では必ずしもそのようなことにはなりません。
 このような違いについて、それがアンバランスで不適切である、問題であるというふうに考えるかどうかは見方によって異なります。
 一方で、ハーグ条約はどの国の裁判所が監護の本案について判断すべきかを決めるものにすぎないと考えますと、日本の中だけで起きた連れ去りについては元の場所に子供を戻さなくても結局日本の裁判所が判断をするわけですので、国際事案と国内事案とで取扱いが違うのは当然のことであって特に問題とするには当たらないという考え方が一方ではあります。しかし他方、子の連れ去りが起きること自体が子の福祉に対する害悪である、それを抑止、予防すべきだという条約の発想を重視いたしますと、国内事案におきましても子の連れ去りはやはり抑止、予防すべきであって、そのためには相手方の同意を得ない連れ去りは国内事案でも原則として違法と評価し、子を元の場所に連れ戻すことにすべきだということになるかと思います。
 どちらの見方にもそれぞれ一理ありますけれども、私自身は、中期的、長期的には国内事案についても徐々に国際事案に近い考え方の方向に動いていくのではないか、それが子の福祉のためにはいいのではないかというふうに考えております。
 この点についてちょっと補足しておきたいと思います。
 子の奪い合いにつきましての現在の国内事案の処理は、現実に子を育てている親の方が裁判でも監護権を得やすい傾向にありまして、そのことが言わば自力救済としての子の連れ去りを助長していて、結局、子の福祉が全体として害されると、こういう状況になっております。
 したがいまして、国内事案においても自力救済をできるだけ禁じて、ハーグ条約の適用される国際事案と同様に、連れ去りをしても原則として元に戻されるという何らかの仕組みを導入するのが望ましいのではないかと考えております。また、実際にも、国際事案においてハーグ条約による返還の事例が蓄積してくれば、相手方の同意を得ずに連れ去るということは違法であって許されないのだという意識が日本の社会にも徐々に浸透していって、国内事案についても同様の感覚を持つ市民が増えてくる可能性が高いのではないかと考えております。
 もっとも、国内事案についても自力救済を禁じる、そのためには、その前提として、例えば母親が家庭内暴力を逃れるために子を連れて別居したいと考えるようなときに、それを迅速、容易に実現できる実効的な法的手続が用意されていること、言い換えれば、自力救済に訴える必要がない程度に法的環境が整えられているということが必要であることは言うまでもありません。
 ところが、日本では、現在はそのような法的環境が整備されている状態ではありません。ドメスティック・バイオレンスに遭っている日本人女性が自分と子供を守るために逃げ出してしまうのは現在の日本の常識ではやむを得ないことですけれども、ハーグ条約に加盟している欧米諸外国の多くでは、自力救済を禁じる前提として、行政機関や裁判所に助けを求めれば直ちに救済してくれるという体制を整えています。具体的には、妻が逃げ出さなくても夫の方に別居命令や扶養命令を出し、それに従わなければ刑罰を掛けるという、そういうような仕組みが用意され、また実効的に機能しているというふうに聞いております。日本の現状はそこからまだ程遠いというところであります。
 日本の家族法は、この問題に限らず、一般に、欧米諸外国の家族法と比較すると法としての力が弱く、特に家庭内の弱者保護の役割を十分に果たせていないのではないかと指摘されることがありますけれども、立法、司法、行政の担い手がそれぞれの立場で長期的な視野の下、日本の家族法のこのような弱点を検討し改善していくことが必要なのではないかと考えております。
 日本がハーグ条約に加盟して実施法が適用されるようになりますと、具体的な事件の処理を通じまして日本の家族に関する法と裁判についての情報が世界中の条約加盟国に直接、間接に伝えられてモニターされるという状態になります。また、逆に、条約加盟諸国の家族に関する法と裁判についての情報が日本にも続々と入ってくることになると思います。
 このようにして、日本の家族に関する法と裁判はハーグ条約を介して諸外国の家族に関する法と裁判のネットワークに組み入れられ、言わば国際化の波に洗われることになります。ハーグ条約加盟と実施法の制定、施行を一つのきっかけとして、世界各国の家族法との交流が進み、そこから得られた刺激と糧を基に日本の家族法がより良い方向に発展することを法律家の一人として、また一国民、一市民として願っております。
 以上でございます。御清聴ありがとうございました。
#209
○委員長(草川昭三君) ありがとうございました。
 次に、磯谷参考人にお願いをいたします。磯谷参考人。
#210
○参考人(磯谷文明君) 今御紹介いただきました磯谷と申します。
 今日は発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。私は、レジュメをお配りしております。基本的にこれに沿った形でお話を申し上げます。
 最初に、本日私がお話しすることは、日弁連を代表する意見ではなく、あくまでも私見であるということを申し上げたいと思います。
 さて、私は、今回のハーグ条約の締結は、懸念は多々あるけれども、やはり必要であると考えております。
 ハーグ条約を締結していない現在、国境を越えた子供の移動にルールはありません。この状況は既に多くの悲劇を生んでいます。私は、現在、外務省から委託を受けて、国際的な子の連れ去り事件に関する電話相談を担当しています。この電話相談は二人の弁護士が担当していて、私が日本にいる親からの相談を、もう一人の弁護士が外国にいる親からの相談をそれぞれ受け付けております。
 私が担当するようになった昨年八月から一昨日までに、日本にいる親からの御相談が三十九件ございました。内訳を御紹介いたしますと、外国から日本に子供を連れ帰ってきた親からの相談が十四件、日本から外国へ子供を連れ去られた親からの相談が十九件でした。そのほか、日本から外国へ子供を連れ去られそうだという親からの相談も六件ありました。限られた期間の限られた方法による相談ではありますが、意外に日本から外国へ子供が連れ去られるケースが多いことが分かります。
 相談者の性別ですが、男性が二十名、女性が十九名でした。つまりほぼ同数でしたが、外国から子供を連れ帰ってきたケースの相談者はほとんど女性で、子供が元いた国のほとんどはいわゆる欧米系の国でした。外国へ子供を連れ去られてしまったケースの相談者の多くは男性でしたが、女性も三名ほどおりました。子供を連れ去られた先の国は実に様々で、現時点でハーグ条約に加盟している国もあれば、そうでない国もありました。
 守秘義務の関係で個別の相談内容に触れるわけにはまいりませんが、子供を連れ去られた親の声はどれも悲痛極まりないものでした。幼い子供を突然奪われた母親は、子供の所在も分からないまま、子供がいると思われる国に行って必死に助けを求めましたが、日本がハーグ条約に加盟していないため、何もできないと断られたと言っていました。現状では、このような親が利用できる迅速かつ有効な手だてはありません。
 それでは、子供を連れ帰ってきた親は安泰かといえば、実際の相談を聞いてみますと、必ずしもそうではありませんでした。元夫による再連れ去りにおびえる親、国外に出ると逮捕されるのではないかと恐れる親、元夫からインターネット上に様々な書き込みをされて苦しむ親。いずれも、国境を越えた子供の移動にルールがないことから、解決の手だてを見出せていない現状がうかがわれました。
 電話を受けてきて、とても気になることがあります。それは決して電話口に現れることがない子供たちのことです。国境を越えた子供の移動にルールがないことから、子供を連れ去られた親と子供との関係は、事実上、生き別れに等しい状態になります。父親や母親のぬくもりを知らずに成長する子供たちのことを思うと胸が痛みます。こういった現実を踏まえますと、国境を越えた子供の移動にルールを設けることが必要だと痛感します。
 ところで、ハーグ条約のことを知ってから、ずっとハーグ条約と子供の最善の利益との関係をどう考えればいいのか、ハーグ条約は時に子供の最善の利益を害することがあるのではないかという疑問を抱き続けてきました。例えば、母親が父親に無断で子供を連れて帰国したとします。ハーグ条約は強制的に子供を元の国に戻します。しかし、結局、元の国における裁判で母親が単独の監護者となり、子供は母親とともにその母国に戻ることを認められたとします。そうすると、条約が子供を元の国に戻したのは無駄だったのではないか、かえって子供に負担を掛けてしまったのではないかと思われるのです。
 考えてみますと、子供の最善の利益は、子供の人格がそれぞれ異なるように、本質的に一人一人の子供によって異なるはずです。迅速な返還が子供の利益だとか、逆に、主たる監護者と引き離されるのは子供の利益に反するなどと断定的に言われることがあります。もちろん、それ自体誤りというわけではありませんが、そこで議論が終わるはずはありません。そういったことも考慮しつつ、ほかの誰でもない、その子の最善の利益を探求することが求められていると考えられます。
 しかし、子供の最善の利益を探求するとして、それを判断すべきは誰でしょうか。この点、ハーグ条約は大きな決断を迫ります。つまり、子供の監護をめぐる、子供にとってとても大切な問題に関して、子供の最善の利益は子供が生活してきた国、子供の常居所地国に判断してもらうという決断です。相手の国を信頼して大切な判断を委ねるという考え方、これがハーグ条約の要と言える考え方だと思います。私の国を信頼していただく代わりに、あなたの国も信頼しましょうという関係です。この考え方は、決して子供の最善の利益を二の次に置いているのではなく、子供が生活していて情報も豊富にあると思われる相手国の判断に委ねることで、より適切にその子の最善の利益を考えてもらうというものだと思います。
 相手国に子供の最善の利益に関する判断を委ねるという基本方針については、条約そのものが例外を設けています。それが返還拒否事由であって、これは子供を常居所地国へ返還すること自体が子供の利益に反する場合を定めるものと考えられます。このような場合には、もはや子供の監護については常居所地国で判断してもらうのが子供の最善の利益だという、先ほどの理屈が成り立たないものと考えられるからです。したがって、返還拒否事由に関する審理は、監護に関する判断であってはなりませんが、それと別の次元において、しかし、まさに子供の最善の利益を考慮してなされる必要がありますので、当然、きめ細かな検討が必要だと考えます。返還拒否事由を制限的に解釈すべきだという議論があることは承知をしておりますが、私は賛成しかねるところでありまして、子どもの権利条約三条一項に照らし、子供の最善の利益の観点から誠実に審理をすべきだと考えます。
 このように考えますと、ハーグ条約は、もちろん子どもの権利条約と矛盾しているものではなく、子供の権利、子供の最善の利益と適合的なものだと言えます。そして、ハーグ条約を誠実に実施すること、返還拒否事由の審理も含めて誠実に実施することが子供の権利の点から非常に重要であると考えております。
 そうはいいましても、ハーグ条約の実施に懸念がないわけではございません。最大の懸念は、子供虐待やドメスティック・バイオレンスなど返還拒否事由に関する証拠資料を適切に集められるかという点です。この点、衆議院法務委員会での審議において、外務省が主要締約国の中央当局と事前に協議をしてくださったことが紹介されておりました。心強く感じる一方で、具体的なケースで実際にどの程度動いていただけるのか、不安もないわけではありません。もちろん弁護士も代理人として全力を尽くしますが、子供の権利擁護という観点から日本の中央当局の機能に期待をしております。
 ハーグ条約の実施に関する私の懸念の多くは、特にDVの被害者やその支援をされている弁護士さんと共通のものですので割愛させていただきまして、ハーグ条約の誠実な実施という観点から、六点、意見を述べさせていただきます。
 第一点は、子の所在の確認です。
 実施法では申立書の公示送達を認めておりませんので、中央当局の調査によっても子の所在が確認できませんと、返還命令手続を進めることができません。したがって、中央当局による子の所在確認は非常に重要であります。この点、DVの問題などに懸念を示す向きがあることは承知をしておりますが、実施法は、申立人側への開示は返還命令が確定し、強制執行のために必要になった場合に限られるとしておりますし、その場合であっても裁判所は開示を認めないことも可能としております。ここまで守っているのですから、子の所在確認はしっかりと行っていただきたいと思いますし、関係機関の協力もお願いしたいところでございます。
 第二点は、中央当局による申立人に対する管轄教示であります。
 御承知のとおり、中央当局は子の所在が分かってもその段階では申立人に告げませんので、申立人は管轄裁判所が分からないまま申立てをせざるを得ないことになります。私は、以前、外務省に対し、せめて申立人に管轄裁判所くらいは助言してほしいと求めましたが、外務省は消極的です。この点、衆議院法務委員会でも議論されたようですが、議事録を拝見する限り、裁判所の自庁処理を期待するような結論にとどまったように読めます。しかし、本当に簡単なことをしない結果、手続的なロスを生じる問題ですので、是非適切な運用を検討していただきたいし、今後の運用状況によっては将来的な規律の見直しも御検討いただければと思っております。
 第三点につきましては時間の関係で割愛させていただきます。
 第四点は、強制執行です。
 実施法百四十条は執行官による解放実施について定めていますが、その三項は、解放実施行為は、子が債務者、つまり子供を連れ帰ってきた親とともにいる場合にのみ可能だとしています。しかし、これではあえて修羅場を招くことになるのではないでしょうか。逆に、子を監護している親が子を抱えて離さないような場合、執行官が威力を用いることが子の心身に有害な影響を及ぼすおそれがあると判断しますと、結局、執行不能に終わってしまうように思われます。申立人が苦労して返還命令を勝ち取ったのに、執行段階で、お母さんが子供を手放しませんでした、諦めてくださいでは、諸外国が納得するでしょうか。子を連れ帰ってきた親がいなくても、例えば子供の通う保育園などで執行する可能性を認めてよいのではないかと思います。
 強制執行が実効性の高いものでないと、執行前の自発的な解決にも支障が生じます。是非、実施後の運用を精査した上で見直しの要否を検討していただきたいと思います。
 第五点は、子供が日本から国外に連れ去られたケース、いわゆるアウトゴーイングケースにおける中央当局の対応です。
 実施法十五条一項を見ますと、外国の中央当局から情報提供を求められた場合、日本の中央当局がこれに答えるには双方当事者の同意が必要とされています。例えば、日本国内で日本人夫から外国人妻が暴力を受けたとして子供を連れて国外に逃げたとします。この外国人の母親が日本で受けたDVを証明するために自国の中央当局を介して日本の中央当局に情報提供を依頼しても、日本人夫が同意をしなければ日本の中央当局は情報提供を拒否することになります。
 これは、一見、日本人に有利なように見えますが、裏を返せば、いわゆるインカミングケースにおいて外国の中央当局が同じ対応を取れば、DVのために日本に子供を連れ帰ってきた母親が日本の中央当局を介して外国の中央当局に情報を求めても、外国にいる夫が同意しないことを理由に拒否されることにならないでしょうか。この点も心配であります。
 第六点は、面会交流事件です。
 面会交流に関しては、今回若干の特則を置いたほかは基本的に現在の家事事件手続法の枠内で行うことになりましたので、法制審議会でも余り突っ込んだ議論はしてこなかったと記憶しております。しかし、面会交流は、返還手続と異なりハーグ条約発効前のケースにも適用されますし、中央当局が子の所在確認をやってくれることになっておりますので、かなり需要が多いのではないかと予想しています。一方、現在の家庭裁判所における面会交流の調停や審判は比較的のんびりゆっくりやっておりますし、調停で合意しても実効性に課題がございます。
 私は、ハーグ条約の問題と国内法の問題は基本的に切り離して考えるべきだとは思っておりますが、面会交流については特別の手続を設けなかったことから、かえって国内手続の課題が世界にさらされることになり、結果的に影響が避けられないのではないかと考えております。
 時間がないところ恐縮ですが、最後に日弁連等の準備状況につきまして簡単に御説明をさせていただきます。なお、冒頭にもお話ししましたが、私の発言は日弁連を代表したものではございませんので、その点はお含みおきください。
 日弁連といたしましては、ハーグ条約事件に適切に対応できる弁護士を確保し、当事者が容易にそのような弁護士にアクセスできるように準備を進めているところでございます。まず、ハーグ条約事件を担当する弁護士向けのマニュアルを作成するとともに、十一月には全国の弁護士を対象とする研修を予定しております。また、中央当局その他の関係機関を通じて弁護士の紹介要請があった場合を想定し、弁護士の紹介システムを準備しているところであります。条約実施後も情報収集を行い、弁護士間での経験交流を図り、全体的な質の向上を図っていくことになると考えております。
 以上でございます。御清聴ありがとうございました。
#211
○委員長(草川昭三君) ありがとうございました。
 次に、吉田参考人にお願いいたします。吉田参考人。
#212
○参考人(吉田容子君) 弁護士の吉田です。
 本日、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私からは、今、磯谷参考人からもございましたが、ハーグ条約に関する懸念、とりわけDV事案ということを念頭にお話をさせていただきたいと思います。
 まず、DVの実態や、その被害者や子供に与える影響について少し資料を見ながらお話をさせていただき、その後、本実施法についての意見を述べたいと思います。
 まず、DVの実態として御理解いただきたいことなのですが、これは様々な複数の異なるタイプの暴力が相手を支配するために使われるということです。
 お手元に資料を配付させていただきました。資料一を御覧いただけますでしょうか。そこの六ページをまず御覧いただきたいのですけれども、そこには、DVというのが身体的暴力だけではなく、精神的、性的など様々な形で複雑に重なり合って、長期にわたり反復的に行われることが特徴とされています。家族、家庭という閉ざされた関係の中で毎日毎日、大小の暴力、様々な形の暴力を受けるたびに、被害者は加害者に逆らうことができずに譲り、従う割合が増えていきます。その中で心理的に追い詰められること、行動を制限されること、性的に支配されることなど、全てがDVの形態になります。
 それから、八ページも御覧いただきたいのですが、ここには、暴力が存在する関係には一方が相手方を支配する主従関係が成立するという指摘がございます。つまり、DVというのは、一つ一つの暴力とか暴言等々の行為ではありません。そうではありませんで、関係性、主従関係、支配をするという関係性を見る必要があるという指摘だと思います。これが重要なことだと思います。
 それでは、このようなDVがいかに多いのかについて少しだけ説明させていただきますが、これについては今の資料一の七ページを少し御覧いただきたいのですが、公的な資料としては内閣府の男女間における暴力に関する調査というのがございます。これ、三年置きになされています。資料一の七ページを見ますと、これは平成十七年実施の調査なんですが、身体的暴行、心理的攻撃、性的行為の強要がいずれも相当数あること、これらのいずれかを受けたことがある人が女性で三三・二%、男性でも一七%ほどいることが分かります。
 それから、資料二を御覧いただきたいのですが、これは最新の調査結果です。その中で三ページを御覧いただきますと、女性の約三人に一人が身体的暴行、精神的脅迫、性的行為の強要などのいずれかを受けているということが分かります。そして、五ページを御覧いただきますと、命の危険を感じたことがある女性が二十人に一人いるということがお分かりいただけるかと思います。
 命の危険というのは大げさではないかと言われることも時々あるのですけれども、実際に毎年多くの女性が死んでおります。昨日でしたか、栃木県の真岡市で七十歳の女性が殺された事件について、娘さんの夫が逮捕されたという報道がありました。また、五月の二十三日ごろですけれども、神奈川県の伊勢原市で女性が元夫に殺された事件がありました。このように、残念なことなんですが、DVが命にかかわる重大な結果を引き起こすということが珍しくないわけです。
 資料三を御覧いただきたいのですが、これも公的な法務省の関係の資料でございます。そこの図のA、C、D、E辺りを御覧いただきたいのですが、平成二十二年の殺人事件のうちに妻が夫によって殺害された事件が百十四件ございます。また、妻が夫の暴力によって死亡した事件、傷害致死ですね、傷害致死の事件が十一件ございます。つまり、年間百二十五人、三日に一人の割合で妻が夫からの暴力によって命を奪われています。この中には、先ほど申し上げました妻の母親を殺害した事件であるとか、あるいは離婚後の殺人や傷害致死の事件は含まれておりません。そうであっても三日に一人ということになります。命の危険というのは決して大げさなことではないということがお分かりいただけるかと思います。
 なお、この資料を見ますと、暴行罪や傷害罪についても、夫婦間で引き起こされる事件のうち、実に九五%は妻が被害者だということが見て取れます。これは警察で事件化されたものだけの統計ですが、それでも計算しますと、一日七・五人もの女性が夫から暴行、傷害の被害を受けているということが分かります。
 このように頻発しているDVが、じゃ、女性や子供にはどのような影響を与えるのかということが問題になると思います。
 資料一、もう一度御覧いただきたいんですが、九ページないし十二ページを見ますと、ここには被害女性の被害、身体的外傷だけじゃなくてストレスによる内科的な影響、あるいはうつ状態、PTSD、複雑性PTSDなど、長期にわたる深刻な被害となることが指摘されています。さらに問題は、子供にも被害が及ぶということです。資料一の十二ページないし十四ページに子供への影響がありますので、ここは後ほど是非詳しく御覧いただきたいと思います。
 かいつまんで申し上げますと、DV家庭では、子供が直接の虐待を受けていることが多いということが明らかになっています。例えば、子供が泣くだけでいらいらして暴力を振るう、子供の成績や生活態度などが思ったとおりにならないと暴力を振るったり、あるいは子供をおとしめるような暴言を言うということがあります。このような経験をした子供は、ひたすら感情を押し殺して無気力になったり、あるいは怒りを内にためて周囲に暴力的になることもあります。
 また、直接子供に向けた暴力でなくても、DVに子供をさらすことが子供への虐待であるということは、児童虐待防止法二条四号が規定するところでございます。
 時々、妻は殴ったけれども子供に暴力は振るわなかったんだという主張を聞きます。ただ、家庭という狭い空間、最も子供が守られる、安らげるはずの場所で家族に向けた暴力が繰り返されているという状況ですから、子供の基本的な安全感や信頼感が奪われるということは明らかであるというふうに思います。
 子供さんはDVを目撃し恐怖の体験をするわけですから、例えば物が壊れる音を聞く、人の叫び声を聞く、それだけで動けなくなることもあります。また、心から安心することができないために、人とうまくかかわれないなど対人関係に問題が生じたり、あるいは落ち着きがなくなって学習に集中できないなどの行為もあります。また、残念なことに、暴力で問題を解決している親の姿を見ることになりますので、暴力のある家庭を再生産するといった暴力の連鎖を呼ぶこともあります。
 このように、DVというのは子供に、その家庭にいる子供に深刻な被害をもたらすだけではなく、将来の子供自身が築くであろう家庭にまで深刻な影響を及ぼすものであります。
 続いて、資料四も御覧いただきたいのです。
 これは、脳の研究からも、DVが子供に重大な影響を与えるということを解明したものです。最新の脳の画像撮影技術を用いましたこの研究によって、二ページ目辺りですけれども、脳の画像撮影技術を用いたこの研究によって、DVを日常的に目撃した子供は対照群に比べて目で見たものを認識する脳の視覚野の一部の発達が阻害されること、これが分かったということです。家庭の中でどなられたり、おとしめられたりした経験というのは子供の脳に深刻な影響を及ぼします。友田先生は、DVを見た嫌な記憶を何度も思い出すことで、脳の神経伝達物質に異変が起き、脳の容積や神経活動が変化して様々な精神症状を引き起こすのではないかというふうに述べていらっしゃいます。
 さらに、外国人として生活する立場の弱さについても述べたいと思います。
 ハーグ条約で問題となるのは国境を越える子の移動ですが、いわゆる移住した外国人というのがDV被害を受けやすく、かつ支援を受けにくいという指摘があります。資料五を御覧いただけますでしょうか。
 これは、米国で日本人DV被害者が直面する問題を分かりやすくまとめたものです。私自身が日本にいる外国人女性や子供たちからの相談をよく受けるんですけれども、資料五にある事情というのは日本でもよく似ていると思います。すなわち、外国人女性やその子供たちはDVや虐待の被害に遭いやすいんですが、これはその国での語学力の差、言葉での会話であるとか読み書きが自由にできないというような差、そのために十分な経済力を得ることができないこと、人種、民族あるいは文化、習慣の違い、それからその国の社会制度や支援制度を知らないこと、夫の本国で生活する場合が多く、その場合には女性たちは親族や友人などが少なくて周囲に相談する人がいない、それから夫の協力がないと安定した在留資格の取得や更新ができないなどの事情に起因しています。そのため、たとえ深刻な被害を受けても支援にたどり着かないということが多いのです。このことは、ひいて、子供にも重大な影響を及ぼすということは先ほど述べたとおりです。したがって、もちろん当該居住国での外国人女性の保護の充実が必要ですが、日本の在外公館による邦人保護の強化というのも必要だと思います。
 さらに、DVから逃れるために帰国した母子にとっては、外国で起きたDV被害ですから、自分が被害者であることを証明する資料、例えば医師の診断書、警察への相談記録、周囲の人のDV目撃情報などをきちんと入手することは非常に難しいです。そうでなくてもDVは家庭内の出来事ですので客観的な資料の収集が難しいのに、ましてや外国での被害の場合はなおさらです。このような事情も考慮する必要があります。子供の利益を守るために、裁判所や中央当局はできるだけ多くの資料を集めるべきだと考えます。
 以上のことから、今後更に必要と考えられる措置をまとめたのが資料の七になります。済みません、時間の関係がありますので、ごく簡単に要点だけ申し上げます。
 まず、一のところですけれども、在外公館の職員に対して先ほど申し上げたようなDVの実態や母子への影響を含めたきちんとした研修を実施することは当然必要だと思いますけれども、ただ、研修をすれば直ちにDV、虐待相談にその職員が対応できるというふうには残念ながら思いません。現地支援機関との間で日常的な関係を構築するだけでなく、具体的な業務委託を行うことが必要であると思います。しかも、ニューヨークやロサンゼルスでは既に業務委託を始めたというお話もございますけれども、相談だけではなく、一時保護や同行支援、通訳支援等についても業務委託を実施すべきであるというふうに考えます。
 それから、法律相談、法的支援についても、DVや虐待に詳しい弁護士を紹介するだけではやはり足りないと思います。在外公館がその当該弁護士と契約を交わし、その弁護士が直接相談や法的支援を行うことが必要だと思います。医療の提供についても同じでして、DVや虐待に詳しい医師と在外公館が契約を交わし、その医師による医療の提供を行うことが必要であると思います。
 また、本条約及び本法による返還は子の利益のために行われるものです。そうだとすれば、返還後も政府として子の福祉を見守り、必要な援助をすべきであると考えます。返還先国において子が安全で安定した生活を送ることができるように、最低三年間の継続した支援と実態把握を行うべきであるし、その方策としてはやはり現地専門機関に業務委託をすべきものと考えます。
 これらの支援の具体的内容を検討するために政府にはワーキングチームを設置していただきたいのですが、その際、中央当局あるいは外務省だけではございませんで、むしろ厚生労働省あるいは内閣府の男女局なども含め、それから民間支援機関も含め、いわゆるDV、虐待の専門家によるワーキングチームを設置して検討し、そして本法施行と同時に支援を実施していただきたいと思います。
 それから二番目、中央当局の体制について一言申し上げたいのですが、外務省は子の心身についての専門家としてソーシャルワーカーを採用する予定というふうにおっしゃっています。ただ、ソーシャルワーカーというのは、一般には直ちに子の福祉及びDV、児童虐待の支援に精通する専門家ではないと思います。真のこのような専門家の配置がとても重要ですので、民間支援機関や家裁における実務経験がある専門家を公募するなど体制の充実を図っていただきたいと思います。
 それから、子及び子と同居する者の住所等に関する情報の提供についてなんですけれども、これについては、DV被害者とその子の保護のためのガイドラインの作成が必要ですし、その作成に当たっては、中央当局や法務省だけでなく、内閣府男女共同参画局、それから民間の支援団体のネットワークを含めた十分な検討を行っていただきたいと思います。
 さらに、中央当局による資料の収集なのですが、先ほども申し上げましたけど、返還命令の申立てを受けたTPが常居所地国でのDVや虐待の証拠を集めるのはなかなか難しいことがございます。日本国の中央当局は、自ら在外公館を通じるなどして必要な情報を収集して裁判所に提供すべきものと考えます。これは、決して連れ帰った親の肩を持つということでは全くございません。そうではなく、本条約の趣旨である子の利益を守るためには事実に基づく判断が必要です。事実を判断するためには、できる限り、可及的たくさんの証拠を集めるべきだと、こういう趣旨でございます。
 それから、子の返還の代替執行の際の子の心情への配慮なんですが、最高裁は代替執行に対応した執行マニュアルを作成するというふうにおっしゃっています。このマニュアル作成作業には、子の心身への有害な影響、虐待、DV等の専門家として、これらの分野に造詣が深い児童精神科医などを加えていただきたいと思います。そしてまた、代替執行の現場にも、ソーシャルワーカーの立会いではなく児童精神科医の立会いを求めるべきだと考えます。
 それから、本邦に在留する外国人住民と子供の保護支援の強化も必要です。国籍や在留資格にかかわらず、被害があればきちんと保護をするということをまずやっていただきたい。それから、国外に母子が移動し、その後に子が日本に返還される場合もこれから出てくると思いますが、その場合に、子の母である外国人女性が日本に戻り、適法に在留し就労するとともに、監護の本案について十分に主張立証活動ができるように必要な施策をしていただきたいと思います。
 最後に、国境を越えた子の移動の実態、本法に基づく子の返還並びに面会交流の実情について、いまだ国内ではしっかりした調査がなされていないというふうに考えます。定期的に調査、検証をお願いするということでございます。
 以上です。ありがとうございました。
#213
○委員長(草川昭三君) ありがとうございました。
 次に、明尾参考人にお願いをいたします。明尾参考人。
#214
○参考人(明尾雅子君) 一般社団法人レフト・ビハインド・ペアレンツ・ジャパン代表理事の明尾雅子と申します。
 私自身、元夫に七年前にカナダから息子を日本に連れ去られ、その後、団体を立ち上げました。私の団体は、主に海外から日本に子供を連れ去られた親たちが子供に会えるようにサポートする活動を長年行ってきました。国会議員の先生方、日本が世界から子供拉致帝国又はブラックホールという不名誉な呼ばれ方をされている事実を御存じでしょうか。
 資料一を御覧ください。私たちが活動を通じて分かったこと、すなわち行政、司法が異常なまでに親子の引き離しを行っている実態について、まずお話ししたいと思います。
 子供を連れ去られた別居親が子供に会おうとしても、日本の警察が不当に介入して会えなくなるケースが多くあります。ここでは二つの例を紹介いたします。
 最初の例は、フランス人の父親が娘の誕生日にプレゼントを渡すため、わざわざフランスから日本を訪れたケースです。娘の家を訪れてドアホンを押したところ、たった五分で埼玉県警の六台のパトカーがやってきて、十人の警察官で父親は取り囲まれました。このため、娘に会うことはもちろん、プレゼントを渡すことすらできなくなりました。もちろん、父親は一切違法なことはやっておりません。
 もう一つは、日本人のケースです。父親は親権者であり、家庭裁判所の審判に従い、家庭裁判所調査官の天下り機関であるFPICの立会いで子供と面会していたところ、母親の虚偽の通報を真に受けてやってきた五人の警察官に子供の面前で拘束され、警察署に連行されるということが今年一月に起こりました。もちろん彼は違法なことは一切やっていないため直ちに釈放されましたが、愛する父親が警察官に連行される姿を面前で見せ付けられた子供には一生消えない心の傷を残したと思います。少しでも子供の気持ちを察すれば、全く非のない父親を子供の面前で捕まえることなどできなかったはずです。
 この父親は元々単独で三歳の息子を育てていたのですが、別居中の母親によって通っていた保育園から子供を誘拐されました。連れ去った者勝ちのルール、すなわち継続性の原則により、家庭裁判所は子供の父親への返還を認めませんでした。しかも、彼が子供との面会交流の審判を勝ち取るまで、連れ去られてから一年九か月も掛かったのです。審判内容は、親権者でありながら月一回二時間、第三者機関の立会いでというものです。
 別居親が面会交流を家庭裁判所に申し立てても、そのうち審判で実際に面会交流で認められるのは僅かに半分です。また、審判で認められても、面会時間が一か月に一回二時間程度というのが標準的なものだと言われています。これは、子供の生活時間の僅か〇・三%にしかすぎません。欧米諸国では離婚後も子供が父母の間を行き来しながら半分ずつ暮らすのを原則とするのと対比すると、日本の家庭裁判所は親子の分離を前提に運用しているとしか考えられません。警察署に面会交流を妨害された父親は、子供に会うためには再びゼロから家庭裁判所での調停を始めなければなりません。それも守られる保証もないのです。
 子供との面会を妨害するのは警察だけではありません。学校や保育園も同様です。学校の行事に参加しようとしても、子供を連れ去った同居親が参加に反対すると、親権者であっても行事に参加できないのが通常です。校長先生が敷地から出ていけと言うのです。また、子供の情報の開示を教育委員会に求めても、子供の情報は開示されません。
 資料の二ページを御覧ください。これは、私が親権者として子供の情報開示を求めた結果があります。ほとんどの事項が黒塗りされているのが分かるかと思います。信じられないかもしれませんが、連れ去りされると親権者であっても子供の情報からも遮断されてしまうのです。
 そして、行政による親子の引き離しの最たるものがでっち上げDVです。これは、警察に自分はDVの被害を受けたと相談すれば、警察はDVが本当にあったのかなかったのかを一切調べることなく子供の場所を隠してくれる制度があります。住民票の秘匿から始まって、子供の連れ去り親に生活保護費の支給、住居の世話、あるいは健康保険の加入など、一切の面倒を見てくれます。子供も保育園に確実に入れます。しかし、恐ろしいことに、子供は偽名を強要されることもあります。連れ去りをする親は子供を自分の持ち物と勘違いした身勝手な親だと思いますが、平気で偽名を強要するという虐待行為までもやってのけるのです。
 ところで、DV防止法のどこを見ても住民票を隠してよいなどとは書かれていません。住民基本台帳法では、本当にDVをしている親でもなければ、親が子供の居場所を捜すため住民票を取得する正当な理由があります。それを総務省局長らの通達だけで不可能としているのです。そのほかの支援措置も通達だけで行われています。オウム真理教の逃亡犯がこの支援制度を悪用して健康保険に偽名で加入していたことは記憶に新しいところです。
 最大の問題は、自称DV被害者が支援措置の申出を取り下げない限り永遠に支援措置が続けられるということです。
 裁判を通じてDVがなかったことが明らかになった親も多くいます。しかし、これらの場合でも子供の居どころは秘匿にされたままです。通達だけでなされたこれらの支援措置を解除する方法が全くないのです。現場の警察官の中には、でっち上げDVだと分かっていても上からの命令なのでせっせと親子の引き離しに加担させられているとはっきりおっしゃる方もいらっしゃいます。これは明らかな欠陥制度であり、直ちに改善していただくことを強く求めたいと思います。
 ところで、海外から日本に子供を連れ去った母親は必ずと言っていいほど夫のDVを主張しますが、海外のDV防止法は極めて厳格に運用されており、被害者は徹底的に保護されます。仮に夫から暴力を受けたのであれば、警察はDVがあったことを確認し、DVをした夫を拘束し、保護命令を出します。二十四時間体制で対応してくれます。また、DVシェルターも充実しています。したがって、仮にDVを受けたのなら現地でDV保護措置を受ければいいだけで、子供を連れて日本に逃げてくる必要はないのです。これは私がカナダでDVシェルターに入った経験からはっきり言えることです。
 最後の資料なんですけれども、最後じゃないですね、四番目ですね。これは、私がDVシェルターに入ったときに、英語のまず一ページ目、その次に訳したものが載っております。最後の方ですね。
 実際、アメリカ政府は、アメリカから日本に連れ去られたケースでDVは確認されていないと明言しています。DVに対しては、海外の制度のように加害者を拘束しないと根本的に解決しないのです。これに対して日本のDVの支援措置は、子供を連れ去るためのあらゆる支援を行うという制度となっており、かつ通達だけで曖昧な運用が行われているため、連れ去り親にとって、自称被害者を名のっただけで悪用が容易な制度となっていることを是非御理解いただきたいと思います。
 これまでの衆議院における審議を見ておりますと、日本は、最初の子供の連れ去りは不問にされるが、連れ戻すと逮捕される。そして、家庭裁判所はほぼ例外なく連れ去った方に親権を与えるということは明らかにされたと思います。それだけで止まらず、私が今述べたように、海外から連れ去られようが日本国内で連れ去られようが、一度連れ去られると日本の行政や司法が我が子に接触することを妨害してきます。そして、でっち上げDVのように、子供の連れ去りを正当化し、子供たちを隠す制度まで用意しているのです。残念ながら、国家ぐるみで子供の拉致を行っていると言われても仕方がないように思われます。私は、衆議院での審議では、日本に連れ去られた子供を返還させるかどうかの議論に終始し、肝心な点が議論されてこなかったことを残念に思います。
 ハーグ条約国内実施法について、これまで議論されてこなかった二つの論点について次に述べたいと思います。
 第一は、日本から海外に子供を連れ去られたケースです。
 最近は日本から子供を連れ去られるケースも徐々に増え、海外から日本に連れ去られるケースに匹敵するぐらいの数になっています。実は、この場合、連れ去られた親にとって最も過酷な運命が待ち受けているのです。
 イギリス人の夫に子供をイギリスに連れ去られた母親のケースをお話しします。このケースでは、イギリスの裁判所は、ハーグ条約の考え方に沿って子供を日本に返還するように命じました。その結果、日本の家庭裁判所で子供の親権などが争われることになったわけです。しかし、裁判所は、母親が求める面会交流の申出を既に却下し、間もなく母親から親権を奪い、養育費だけを支払わせるという決定を下そうとしています。その結果はお分かりかと思いますが、母親は養育費を払い続け、無権利者となった母親は子供と永遠に会えなくなることを意味します。イギリスにとどまっていれば共同親権ですので、母親と子供が引き離されることはなかったのです。
 こういう事態となったのは、日本が離婚後、単独親権制度を取ることと、同制度を背景に、連れ去った者勝ちの判断をする家庭裁判所の運用があることが原因です。ハーグ条約の加盟と共同親権とはまさに車の両輪であり、一方が欠けると、このケースのように親子の引き離しが必然的に起こってしまうのです。
 ちなみに、日本の家庭裁判所における母親の代理人は法制審議会で国内実施法の起草にもかかわっています。その弁護士は、この母親が過酷な状況に置かれているにもかかわらず弁護士として何もできることはないこと見ても、いかに法制審議会で議論がされていないかとよく分かります。
 第二は、ハーグ条約では子供と接触する権利、すなわち面接交流権が権利として保障されていることです。
 ハーグ条約第二十一条を資料として入れています。資料の三ページを御覧ください。同条第二項では、「中央当局は、接触の権利の行使に対するあらゆる障害を可能な限り除去するための措置をとる。」と書かれています。国内実施法では子供と接触する権利の保障に関する規定が完全に欠落していると考えます。先ほど述べたとおり、日本では、面会交流できるかは家庭裁判所の運用に委ねられ、権利として保障されているわけではありません。また、中央当局である外務省には面会交流の妨害を除去する権限は与えられていません。むしろ、警察を始めとする諸機関が面会交流を妨害している実態もさきにお話ししたとおりです。
 ハーグ条約に加盟しても子の連れ戻しに関する規定が過去に遡及しない以上、既に子供を連れ去られた親にとって子供と接触する権利が唯一かつ重要な権利です。それゆえ、子供と接触する権利を曖昧なまま置いておくのではなく、法律に権利として明確化し、それが妨害されたときの救済措置、すなわち実効性の付与を強く定めておく必要があるはずです。
 日本も一九九四年に批准している児童の権利に関する条約では、子供が双方の親から分離されないことや、離れて暮らしている親子が定期的に直接に接触する権利を尊重することが定められていますが、私は全くと言っていいほど守られていないと思います。ハーグ条約の加盟以前に、児童の権利に関する条約に沿った家族法の改正と司法、行政機関の適正な運営を確保することこそがまず求められます。
 現在の日本では、社会の最も基本的単位である家族が司法、行政機関により解体させられている現場を、私たちの団体ではその活動を通じて見てまいりました。司法、行政機関が児童の権利に関する条約に規定されているような子供の利益を無視した誤った運用をしているとしたら、それを正すことができるのは法律だけであり、その意味で立法府の役割は極めて重要と考えます。
 先日、アメリカ議会下院の公聴会で、日本のハーグ条約の実効性に疑念の声が強く出され、議員から日本への制裁措置の適用を求める声もあったと聞いています。このような事態の背景の根源は、家庭裁判所の運用に委ねられることによって日本の親権制度が曖昧なままに放置されていることがあるとともに、共同親権制度、すなわち、いつまでも子供が両親により等しく育てられ、親がいつまでも我が子を育てる権利が明確に保障されていなかったことにあると思います。
 最後になりますが、本当に国会議員の皆様が日本の将来を考えておられるのなら、日本の将来をつくる子供たちの利益のために親子が引き離されることのないような親権制度に改めることを強く求めますとともに、これらのことを国会決議を通じて明確に意思表示をしていただくことを強く要望して、私の意見陳述を終わりたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
#215
○委員長(草川昭三君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言をお願いします。
#216
○前川清成君 民主党の前川清成でございます。
 四人の参考人の先生方、お忙しい中、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 まず最初に、磯谷参考人と吉田参考人に管轄に関してお伺いをしたいと思います。
 磯谷先生は東京弁護士会で、吉田先生は京都弁護士会ですので、どの程度不便さをお感じになっているのかよく分かりませんが、御案内のとおり三十二条の一項は、粗っぽく言いますと、東日本は東京家裁、西日本は大阪家裁に専属管轄を決めております。
 ところが、先ほど来何度かそれぞれの参考人からお話がありました、日本人のお母さんが外国で暮らしていたけれども、日本へ子供を連れて逃げ帰ってきたと、こういうふうなケース。つまりは、夫婦のうち一方が外国人の婚姻件数で、うち妻が日本人という場合ですけれども、厚生労働省の人口動態統計によりますと、確かに一番多いのは千七百六十三件、東京であります。二番目は七百六十四件、大阪です、これは二〇一一年の統計ですけれども。しかしながら、八番目には沖縄県、妻が日本人という国際結婚の件数が三百八件、九番目は福岡県で二百件あります。
 例えばですが、夫のDVに耐えかねて沖縄の実家へ帰ってきたと、で、夫の方から子の返還申立事件が提起されたと。この場合、お母さんは沖縄の実家で暮らしていたとしても、沖縄から谷町四丁目の大阪家庭裁判所まで応訴しなければならないと。私はこれは大変な御負担ではないのかなと思っています。もちろん、電話会議システムがあるのでそれを使えばいいのかもしれませんが、それにしたって、一度も裁判所に行かずに済むというわけにはいかないと思います。
 この大阪と東京に管轄を集中した理由について、今日午前中も対政府質疑をやったんですが、新しい類型の事件がスタートするので知見を集中させたいと。ついては、年間数十件と予測される子の返還申立事件については東京と大阪に集中させるんだというふうな大臣の御答弁でありましたけれども、私は、日本の優秀な裁判官を前提にすると、これまでの通常の民事事件に比べて格段に法律の解釈等々においてこの子の返還申立事件が難しいとは思わない。仮に百歩譲ったとしても、せめて沖縄であるとか福岡であるとか、東京、大阪に集中するのではなくて、もう少し管轄を数多く認めてもいいのではないかと。
 御案内のとおり、民事訴訟法で、知的財産に関する訴訟については東京、大阪に集中していますが、それは企業活動がある種、大阪、東京に集中しているし、そういう背景と今回の子の返還申立事件とは私は同じように考えることはできないと、こういうふうに思っていますが、まずは弁護士でもあるお二人の参考人にこの管轄の問題について御意見を承りたいと思います。
#217
○参考人(磯谷文明君) ありがとうございます。まさに管轄の問題は、法制審の審議の中でも大変大きな問題として検討されました。
 私ども日弁連といたしましては、八庁、高裁所在地の八庁プラス那覇家庭裁判所ということで、合計九庁ということを主張したわけですけれども、最終的には、残念ながら全体の御理解をいただくというところには至らなかったということでございます。
 今回の資料、この緑色の資料のところにも入っておりましたが、日弁連で以前、全国の弁護士にアンケート調査をしたところ、かなり、確かに東京、大阪は多いのですけれども、全国的にやはり同じような問題が起きているということ。それから、先ほど御紹介した外務省のパイロット事業で法律相談を今やっておりますが、これもまた、不明もかなり多いんですけれども、つまり自発的に県をおっしゃらない方も多いんですが、やはり全国にあるということから、本来はもう少し広げてもよかったのかなというふうに思います。
 ただ、一方で、専門性の確保というところもこれまた理解ができるところでございますので、残念ではありましたけれども、私どもとしては、最終的には今回の案どおりでやむを得ないというふうなところで落ち着いた次第でございました。
#218
○参考人(吉田容子君) 御質問ありがとうございました。
 今、ほとんど磯谷先生がおっしゃったんですけれども、一つだけ付け加えるとすれば、返還事案については東京、大阪でありますけれども、面会交流については原則として現在の家庭裁判所、相手方の住所地ということでやっていまして、東京、大阪でもできますということになっておりますので、確かに不便はございますけれども、現時点ではやむを得ないのかなというふうに思っております。
#219
○前川清成君 それで、引き続いてなんですが、私はこの子の返還申立事件の困難さは、磯谷先生あるいは吉田先生のお話の中にもありましたけれども、地球の裏側まで行って証拠を収集しなければならないことではないかと思っています。
 御案内のとおり、例えば二十八条の一項の四号、常居所地国に子を返還することによって子の身体に害悪を及ぼすこと、これを抗弁として提出しようと思えばそのための証拠を出さなければならない。六号においても同じでしょうし、あるいは二項の各号に記載してあることも同じではないかと思います。これは現実の問題として、例えば日本で受任を受けた日本の弁護士が、地球の裏側にまで行って証拠を収集することができません。
 そこで、私は、八十三条に家庭裁判所は必要な調査を外務大臣に嘱託することができるという条文がありましたので、これを期待をいたしましたところ、今朝の午前中の答弁で、外務副大臣は、私は外務副大臣に対して、家庭裁判所から調査を嘱託されたときに備えてどのような準備をしていますか、その在外公館にどのような人たちがいて、どのように調査をして、そしてどのように家庭裁判所に回答するんですかというふうにお尋ねをいたしましたところ、各国の中央当局へ問合せをするんだと。丸投げをするんですかとまで言いましたが、丸投げをするというような趣旨の御答弁でした。私は、大変がっかりをしております。本来は、管轄を絞るのではなくて、先ほどどなたかから、自国の国民の利益を守るんだというお話がありましたけれども、この八十三条に基づいて外務省がそれなりの準備をしておく必要があるのではないかと、こういうふうに思っております。
 七十九条一項によりますと、家庭裁判所は調査官に事実の調査をさせることができるという条文もありますが、しかし現実の問題として、東京家裁、大阪家裁の調査官をブラジルに行ってもらうと、南アフリカに行ってもらうと、これは非現実的ですので、やはりこの八十三条の活用というのが大事ではないかと思いますが、弁護士でもあるお二人の先生方にこの点の御見解をお聞きをいたしたいと思います。
#220
○参考人(磯谷文明君) ありがとうございます。
 今、前川先生のおっしゃったことに全く同感でございます。もう何も付け加えることがないというふうなことで、私の方も非常にこの点が最大の問題だというふうに思っておりますので、是非一緒に知恵を絞っていただければ大変助かります。
 以上でございます。
#221
○参考人(吉田容子君) ありがとうございます。
 私も全く同感でございまして、それで、私の方の資料の七の四のところにも少しそのことを書かせていただきました。衆議院での答弁を拝見しますと、外務省は調査嘱託を受けて、今先生がおっしゃったように、相手国の中央当局に、まあ丸投げといいますか、お願いをするということ以上の答弁を全くなさっていなかったように思います。ですから、そこである一定の答えが返ってくればそれはもちろんいいわけですけれども、それで足りないことは十分考えられるわけですから、私も先生と全く同じで、在外公館を使うなりして主体的に証拠等を集めるべきであるというふうに思います。
#222
○前川清成君 次に、早川参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、早川先生とは二十六年ぶりに再会をさせていただいて、この分野でも大活躍されていることを大変うれしく思いましたが、早川先生が最後に、この法律の発展を法律家の一人として祈っていますというふうに結ばれました。
 今お二人の参考人から御発言がありましたように、管轄であるとかあるいは外務省の調査、様々な問題があると思いますので、是非、研究者としてのお立場も踏まえてこの法律の見直し等々も御研究いただきたいと思いますが、一点、早川参考人のお話の中で、国内事案との違い、アンバランスなんだというお話が、少しお触れをいただきました。
 この点で、今日、これもまた午前中の対政府質疑なんですが、第四条に基づく外国返還援助を外務大臣に申し立てた場合に、第五条一項で、外務大臣は市町村長に同居者等々を照会することができるという条文があります。これで、例えばですが、全国千八百の市町村の市町村長に住民票を照会するんですかというふうにお尋ねをいたしましたら、外務副大臣はそのとおりだと、こういうふうにおっしゃいました。第三項で、照会を受けたけれども更に不十分な場合には都道府県警察に対して必要な措置を求めることができるという条文があって、住民票にあったとしても必ずしもそこに住んでいるわけじゃないので、外務大臣としては警察の方に照会するというふうに御発言になりました。
 私は、ちょっとその答弁は修正していただく必要があるのではないかなと、こういうふうに思っているんですが、もしもその答弁のとおりであるとしたら余りにも、日本人同士で、例えば日本人の夫と日本人の妻、日本人のお母さんが、日本人の妻が子供を連れてどこかへ行ってしまった場合、現実には裁判所も警察も、まあ捜索願ぐらいは受け取ってくれるかもしれませんが、何もしてくれないと、基本的には。ところが、一方の当事者が外国人であって、外務大臣に対して外国返還援助をすると、そこまでのことをしてしまうのかと。ちょっと制度として余りにも、何というんでしょうか、大胆過ぎるんじゃないのかなと、こういうふうに思っているんですが、早川先生、この外務副大臣の答弁が必ずしも正しいというふうに私も思っておりませんので、それにこだわらずに、この五条の仕組みについてどのように考えればいいのか、ちょっと時間が余りないんですが、お教えいただけたらと思います。
#223
○参考人(早川眞一郎君) どうもありがとうございました。久しぶりにお目にかかって私もうれしく存じます。
 今の御質問の件ですけれども、私はその午前中のやり取りを拝聴しておりませんのでちょっときちんと理解できませんでしたけれども、考え方としては、国内事案と国際事案がアンバランスに過ぎるのではないかという点の御質問かと思います。
 その点につきましては、先ほど申しましたように、最終的には国際レベルまで、国際事案レベルまで国内事案を持っていくのが理想的なのではないかと私自身は思っておりますけれども、これはやはりいろいろな制度上の仕組みとか枠組みもございますので、簡単に一足飛びにというわけにはいかないだろうと思います。その点で、その外務副大臣の御答弁、ちょっと私はきちんと聞いておりませんので分かりませんけれども、それぞれの立場でいろいろなことを考えていかなければならないというふうに考えております。
 具体的にはちょっと今の点についてはきちんとお答えができませんけれども、最終的には、先ほど先生おっしゃいましたように、この条約の加盟をきっかけとして国内事案についても子の福祉を図るような方向へ全体として動かしていきたいというふうに考えております。
#224
○前川清成君 早川先生におかれましては、ちょっと前提が不十分なままお尋ねをした非礼をお許しを願いたいと思います。また、時間が過ぎてしまいましたので、明尾参考人には質問をさせていただけませんでした。そのこともおわびを申し上げて、私からの質疑は終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#225
○磯崎仁彦君 自由民主党の磯崎仁彦でございます。
 今日は、四人の参考人の皆様方、それぞれの立場で意見をいただいたというふうに思います。非常に参考になりました。
 まず、早川参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。これまでのいろんな長い間の研究、それから、実際国内法にかかわったというその経験を踏まえてのお話をいただいたというふうに思っております。
 二つの点から御指摘をいただきまして、一つが二十八条の子の返還拒否事由について、これは二項については配慮規定ということで、踏み込んだ規定という、そういう表現があったかと思いますが、いずれにしましても、実際どのような適用をしていくのかというのはこれから非常に重要だという御指摘がありましたが、まさにそのとおりだというふうに思っております。
 私は、二点目の国内事案への影響ということについて御質問をさせていただきたいと思いますが、このハーグ条約というものは当然のことながら国境をまたぐ子の移動というのが前提になっているわけでございまして、私はこのハーグにつきましても、必ずしも申立人の手元に戻すということではなくて、いわゆる常居所地国、その国に戻すというのが基本的な考え方ということです。したがいまして、連れ戻ったお父さん、お母さんが一緒になって常居所地国に行くということもこれもあるわけでございますので、例えば国内事案の場合で同居していたところから国内で離れてしまったと、そのときに、必ずしも同居のところに戻すということはハーグの場合でも当然前提をされていないということですので、ハーグの事案の場合と国内事案とでは、離れたという意味では同じなものの、必ずしも元に返す返さないということでは、ちょっとその事案の内容が違うように思うんですが、この点いかがでございましょうか。
#226
○参考人(早川眞一郎君) 御質問ありがとうございます。
 おっしゃるとおりでございます。おっしゃるとおりだと思います。私は、先ほど時間もございませんでその点は触れませんでしたけれども、まさにそのとおりでございまして、ハーグ事案では、相手の手元に戻す、申立人の手元に戻すのではなくて、基本的に常居所地に戻して向こうの裁判所で監護権の本案を審理すると、こういう手はずでございますので、おっしゃるとおりだと思います。
#227
○磯崎仁彦君 それからもう一点、恐らくいろんな日本の家族法も国際的な法にさらされてというお話があって、その中で、最後に明尾参考人がハーグと共同親権は車の両輪というお話がありました。
 早川参考人、例えば、これからこのハーグ条約、実際に運用されていく中で、日本の進むべき方向といいますか、それにつきまして、例えば共同親権ということも念頭に入れたそういう方向に向かっていった方がいいのか、それとも日本の今離婚後の単独親権ということも、これはもう全く別次元の話であって、何といいますか、ハーグが実際に運用されていく中でも、グローバルな中でも親権の在り方というのは、これは日本の独自の考え方として考えていくべきなのか、その共同親権の在り方、そっちの方向ということについてはどのようにお考えでございましょうか。
#228
○参考人(早川眞一郎君) 御質問ありがとうございます。それは大変難しい問題で、鋭い御質問だと思います。
 ハーグの条約に入ってこれをきちんと履行していく上では特に共同親権が必要というわけではないと、これは多分皆さん意見一致しているところだと思います。ただ、何といいますか、その背後にある考え方としては、子供は親が別れても両方の両親と接触を持ってやっていくのが正しいということでございますので、どちらかというと共同親権、実質法的には共同親権と整合性が強い、考え方としては整合性が強いんではないかと、ハーグ条約は、と思っております。
 しかし、そのことだけで日本の共同親権をどうすべきかということを決めるわけにはもちろんいきません。したがって、それはほかの要素も考えつつ慎重に検討していく必要があるだろうと思います。
 ただ、世界の潮流としては共同親権の方向へ動いていますので、やがては日本もそうなっていくのではないかというふうに個人的には予想しております。
#229
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、磯谷参考人にお伺いをしたいと思いますが、参考人の方からは、まさにハーグ条約と子供の最善の利益とは何かという非常に根本的なお話をいただいたというふうに思っておりますが、今回ハーグ条約というものが取った子供の利益というものは、相手国、いわゆる常居所地国に戻して、その国のいわゆる裁判というか取扱いの中で誰が親権者として望ましいのかというのは決めていく、これが子供の最善の利益というふうに考えてのハーグ条約と。
 ただ、やはり拒否事由ということを設けたということはなかなか理屈が成り立たないんだというお話がちょっとあったように思うんですが、その中で、拒否事由を判断するに当たって、やはり拒否事由が非常に大きくなれば本来のあるべき子供の利益、戻すというのが子供の利益ということからすれば、かなり例外的な事由が大きくなるわけでございますので、この拒否事由の判断に当たってはどういうことを心掛けたらいいのかと、非常に丁寧にきめ細かな判断というふうなお話があったかと思いますが、その点についてちょっともう少し深くお話をいただければというふうに思います。
#230
○参考人(磯谷文明君) 御質問ありがとうございました。
 先ほど、相手国、常居所地国において監護について審理してもらうのが子供の最善の利益だというお話と、それから返還拒否事由についても子供の最善の利益というところ、若干私の言葉足らずだったかと思いますが、私としては、いずれも子供の最善の利益を図るという意味で一貫しているんだろうという理解でございます。
 今の御質問の返還拒否事由の部分をどういうふうに考えるべきかというところでございますが、私が申し上げたいのは、やはりこれも非常に丁寧に考えるべきだということであります。ただし、これはどちらの親が監護者として適当かというところではなくて、あくまでもその国に戻すこと。ただ、その国に戻すというのは非常に抽象的な話ではなく、この子が実際に一人で戻るわけにはなかなかいきませんでしょうから、じゃ、具体的にどういうふうに国に戻るのか、そのことがまたこの子にとってどうなのかというふうなことをやはり考える必要があるだろうと。
 私どもは、何年か前ですけれども、外国のハーグ条約の判断をされている裁判官などにも来ていただいてお話を聞きましたが、やはりそこは実は相当細かく、例えば子供の心理の専門家の方のお話を聞いたりということで、非常に微妙なケースについては時間も掛けて判断されていると伺っています。そういう丁寧な判断を期待したいというふうに思っております。
#231
○磯崎仁彦君 その点に関しまして、今回のハーグ条約の国内実施法におきましては、最終的には、間接強制をしてもなかなか実効を得られない場合には子の返還の代替執行ということまで認めていると。その代替執行の場合には裁判所が指定する返還実施者、これを選ぶけれども、これは典型的には申立人自身が想定をされているということでございます。
 ただ、やはり、先ほどからお話を伺っておりますと、やっぱりDVなり虐待なりの事案というのが少なからずあるということで、そこでストレートに認定をされた場合には拒否事由に該当して戻さないということになるわけですけれども、若干の疑念がありつつもなかなか拒否事由までには該当しなかったというときには、返還実施者に申立人自身が指定をされるということもあり得るかと思いますけれども、ただ、やはり子供の利益というのを考えた場合には、DVなり虐待なりの疑念が少しでもある場合にはやはり申請人自身を返還実施者に指定するということは避けるべきではないかなというふうに思いますが、この点についていかがでございましょうか。
#232
○参考人(磯谷文明君) ありがとうございます。
 私も同意見でございます。執行の段階で返還実施者は基本的には申立人を想定しているということで、もしそこでその候補者となった方が適格でないということになりますと、これは申立ては却下されるというふうに伺っておりますし、それは適切な運用であろうというふうに考えております。
#233
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 続きまして、吉田参考人、ありがとうございました。先ほど来お話を伺っておりまして、例えばガイドラインにきちんと専門家を入れるべきである話であるとか、あるいは在外公館の役割等々につきましては、私も午前中に政府の方に質問をさせていただきまして、もう一歩踏み込んだ答弁もという気持ちはしましたけれども、これからきちんとフォローしていく必要があるなというふうに思っております。
 そこで、先ほど前川先生からも御質問があった件ですけれども、やはり、DVなり児童虐待で命からがらというか、戻ってこられた方にとってみれば、なかなかやはり証拠というのを持ち合わせないままで戻ってくると。そうなると、先ほどお話にありましたように、外国でもDVなりの資料の入手というのは非常に困難だというお話がありました。
 ただ、やはり午前中の外務省の答弁におきましても、中央当局ですかね、当局間のその協議で、先ほど前川先生は丸投げ的なというお話ありましたけれども、協議の中できちんとやってもらいたいということをお話があって、一歩進めて、じゃ、例えば在外公館が直接何か調べるということ、そこまではなかなか難しいんでしょうかという質問をさせていただきました。そのときに、やはりいろんな意味で、個人情報の保護の話であるとか、なかなか在外公館が直接に例えば学校とか警察とかそういうところに行って調査をするというのは、そういう壁があるんですという、そういう御答弁もあったわけですけれども、その点についてはどのようにお考えになられますでしょうか。
#234
○参考人(吉田容子君) 私のイメージでは、先ほどお話もございましたけど、裁判所からの調査嘱託を中央当局にするわけですけど、その先なんですね。その先が、相手国の中央当局にお願いしますではなくて、自ら中央当局、在外公館を通じてやるということなんです。
 それで、今の個人情報のお話については、当然本人の同意は、主にTP側だと思いますけど、TP側の同意を得ることは可能ですし、通常の調査嘱託、いろいろ国内の事案でも必要であれば取っておりますので、そういうことでカバーできると思っています。
#235
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 時間もありますので、最後、明尾参考人に御質問をさせていただきたいと思いますが、明尾参考人の方からは、日本のDVの法制の在り方と外国の在り方の大きな違いがあるんだという、そういうお話がありました。
 海外の場合にはいろんなシェルターなり保護策ということもきちんと整えられているというお話がありましたけれども、ただ、やはり現実としては、DVなり児童虐待ということを理由として恐らく子供さんを日本なりに連れ帰ってきているという現状があるんだろうなというふうに思うんですが、例えば外国において、特にアメリカなり西欧の国が中心だと思いますけれども、そういう整備がされているというふうに明尾参考人言われるわけですけれども、ただ、やっぱりそういう現状がある中でも連れ帰ってきているという片方の現状もあるわけですので、これについてはどのようにお考えでしょうか。
 もう少し、例えば、現地といいますか、そっちの方できちんとやるべきことをやって、そこで耐えるだけ耐えてというか、そういうことをお考えになっての先ほどのお話なのかどうなのかということをちょっとお伺いをしたいんですが。
#236
○参考人(明尾雅子君) 私の経験からまいりまして、いろいろなケースを私はカナダで見てきたんですけれども、まず私の友人なんですけれども、御主人に殴られたということで、あちらでいうナイン・ワン・ワンに電話をしました。すると、警察がすぐ彼女のところに取調べに来まして、その場で手錠を掛けられまして刑務所に送られました。私もそういうふうなことを見ていて、その彼女はその後に、やはりあちらの女性団体の支援の下にDVシェルターに入ることができました。
 私自身もそうなんですけれども、結局、やはり警察が介入してきて、ちゃんとした取調べをした上でこれはDVだというふうにするのがあちらのシステムであり、あとは、私の住んでいたところはカナダですので、そちらの女性センターには二十三か国の女性が働いておりまして、それぞれの言葉をしゃべる国の人、その女性たちがDVを受けた人たちの支援を行っているということが現状ですね。私の場合も、日本語がしゃべれるそこに働いている人にお世話になったということです。
 ですので、私としては、DVがあった場合には、現地でそのDVがあったかどうかというのは、私が実際にシェルターに入ったように、証明はすぐ出せます。警察に出向けばちゃんとファイルナンバーをもらってその証明も取れますので、それをやった上で、あちらで、その本国で裁判をするなりなんなりするのが、私の経験から申しましてそれが賢明だと思います。
#237
○磯崎仁彦君 時間ですので終わりたいと思いますが、DVというのは、何となくとらわれというか、そういうのもあるので、なかなか通報まで行かないで、次は次はというふうに思っているうちにどんどんというのも話として聞くものですから、ということで質問をさせていただきました。
 ありがとうございました。
#238
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。今日は四人の先生方、ありがとうございます。
 まず、早川参考人にお聞きしたいと思います。
 先ほど、ハーグの国際私法会議運用フォローアップの会議に出席もされたというふうにお聞きをしたわけでございますが、数年に一回開催しているようでございます。現在、国際的にどのような事項が課題として認識されているのか、そしてまた、DVの問題への対処も課題となっているようでございますけれども、どういう議論がなされているのか、日本におけるこの懸念を払拭するような議論、DVについて特に考慮すべきといった議論がなされているのかどうか、この辺について御教示をいただきたいと思います。
#239
○参考人(早川眞一郎君) 御質問ありがとうございます。
 私は二回ほどその会議に行っただけですので全体をフォローしているわけではありませんけれども、前回に参りましたときには、いろんなことが問題になりましたけれども、一つ大きな話題になりましたのは、今日は話に出ませんでしたけれども、欧州人権裁判所がノイリンガー事件判決で、一旦スイスが出した返還命令を事実上ひっくり返すような、そういう判決を出したということが直前にございまして、それについて、これがハーグのこのシステムを根本から覆すものではないかという懸念が一部にありまして、大きな議論になっておりました。それは要するに、あれは特殊な事例だということで一応その場は議論は収まっておりますけれども、その点については今後も検討が必要だということで話が終わっております。
 それから、DVにつきましても、私、今ちょっと手元に資料がないんですけれども、その最新の会議ではDVに関するワーキングペーパーも出まして、それはハーグ国際私法会議のホームページで今でも取ることができると思いますので、詳しくはそれを御覧いただければと思いますけれども、DVへの対処の仕方というものがこのハーグ条約の運用において非常に大きな問題であるということは共通認識だろうと思います。そして、それをどういうふうに対応したらいいかということについて、現在、各国の専門家が英知を集めて検討中であるという、そういうところかと思います。
 具体的な話は、ちょっと今手元になくて申せませんで、申し訳ありませんが。
#240
○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
 続いて、吉田参考人に聞かせていただきたいと思いますけれども、本当に、お話を伺って、DVがここまで、子供の脳の中まで影響があるのかと思うと、本当ぞっとするわけでございますが。
 DVは一般的に密室で行われますし、立証は非常に難しい。このため、やはり国内実施法においてDVを考慮するという規定を置いたとしても、被害者にとっては本当にそれが機能するのかなという、そういう懸念を持つんだろうと思います。
 他方で、既に条約が実施されている国においては、DVは子の返還拒否の常套手段といいますか、そういうように言われているところもありますし、また、国内の家事事件についても、DVがないにもかかわらずDVの存在が主張され容易に認められるというような批判もある。DV冤罪あるいはでっち上げDVとか、そういう言葉が出てくるような状況があると思います。
 そのDVの認定を適切に行うためにどういう方策があるのか、ここが一番難しいところがあろうかと思いますし、また、その認定の仕方によっては、結局は裁判所も条約事案においては自国民びいきみたいな、そういう形に批判にさらされるんではないのかなと思うわけでございますが、このDVの認定について御所見承りたいと思います。
#241
○参考人(吉田容子君) ありがとうございました。
 非常に難しい御質問だと思います。通常の立証、証拠方法としては、例えば診断書や録音テープだとか、何らかのメールであるとか、そういう言わば客観的なものがあればこれ一番いいわけなんですけれども、そういうものはない、あるいはあっても持ってこれないということは、国内の場合でも同じなんですけれども、あります。そういう場合、でも、最終的にそのようなものがないからといってDVがないことにはならないわけで、その場合は、もう率直に言えば、両者の言い分を丹念に聞いて、それで間接的な事実と突き合わせをして、どちらに信憑性があるのかということしかないんだろうと思います。
 ただ、そのときに、一つ申し上げたいのは、確かにDV冤罪なんという言葉がよくあるんですけれども、ただ、先ほど見ていただきましたように、毎年百何十人が、百二十人ぐらいが死んでいるし、それから、先ほど三分の一ぐらいが女性の場合はDVの被害経験があるというふうに申し上げましたけど、あれは多分八〇年代からいろんな行政での実態調査をやっているんですが、ほぼ同じくらいの数字が一貫して出ているんですね。しかも、その被害者、私ども被害者によく接するんですが、被害者御自身がなかなかDVと認めないようなDVすらあるということなので、つまり堅い数字で出ているのでないかというふうに思います。
 ですから、まず申し上げたいのは、あり得るんだと、もちろん全てあるとは申しませんけれども、最初からそんなのはほとんどないんだから特別な例外だけでしょうという発想じゃなくて、あり得るんだと、あるかもしれないしないかもしれない、どちらでもありますよというような姿勢で供述を丹念に見ていただくことかと思います。
#242
○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
 次に、明尾参考人にお願いをしたいと思いますが、先ほどハーグと共同親権は両輪だという話があったわけでございますが、今朝の外務省の答弁では、ハーグ加盟国八十九か国、そのうち一か国は調査中でございますが、八十八か国中七十四か国、アメリカは州によって変わるようでございますが、イギリスもドイツもフランスも共同親権だということのようでございまして、だんだん、このハーグによって国内手続の課題が世界にさらされるという意見もあったわけでございますが、そういうことでそういう方向性に行くんだろうなと、共同親権の方向に行くんだろうなというふうに私も思っているわけでございますが。
 取りあえず、今日は参考人が経験された中での御意見をお聞きしたいと思いますが、日本に子を連れ去られた外国人の親の支援を行っているわけでございますが、現在、未締結ということ以外に、外国人の親が日本の対応に不満を抱いているということはどういうことがあるのか。また、締結をした後も望まれる支援というものはどういうものがあるのか、御教示いただきたいと思います。
#243
○参考人(明尾雅子君) まず、アメリカからは非常に批判を受けております。というものは、まず、アメリカから日本に連れ去られた子供に関して、今までアメリカに連れ戻されたケースは一件もないということです。さらに、ここで問題になるのは、あとは、要は、連れ去られた後に捜そうと思っても、子供も奥さんにしても、配偶者の行方も分からなくなってしまうという事態が起こっております。ましてや、戸籍制度がありまして、戸籍は漢字ですので、アメリカ人なりなんなり英語の人たちが戸籍を入手するということも不可能に近いですし、そういうところにやはり不満がありまして、さらに、まず面会すらできないと、子供の居所も分からないと、そういう批判を外国から受けているのが現状ですね。
 そして、そこで障害となるのは、日本が単独親権制度を取っているということがやはりアメリカから、ほかの国から、ほかはほとんど共同親権ですので、そこが更に非常に温度差があるということになります。
#244
○魚住裕一郎君 終わります。
#245
○真山勇一君 みんなの党の真山勇一です。よろしくお願いいたします。
 参考人の皆様、本当に長時間でお疲れでございますけれども、よろしくお願いいたします。
 私、四人の方にお伺いしたいんですが、まず早川参考人から伺いたいと思います。
 先ほどもちょっと出ましたけれども、監護権、親権の話を伺いたいと思うんですけれども、早川参考人はハーグ条約の部会などにも参加されていて大変多角的に広いところからいろんなことを検討されているというふうに思います。私は、今回のハーグ条約の中で、国内実施法で問題になってくるのは、一つは子の監護権、親権の問題と、それからもう一つはやっぱりDVをどうするかという辺りが一番大きな問題、いろいろあるけれども、ここら辺が大きいかなというふうに思っています。
 早川参考人にお伺いしたいのは、例えば、先ほど監護権のことが出まして、日本は今単独親権ですけれども、共同親権の方になっていくだろうと予想されるということをおっしゃいましたけれども、例えば、外国なんかも見ても共同親権になったということはごくごく最近というふうに私伺っておりますが、やはり子供はどっちかの親のところにいるという方が昔は多かったということで、海外の国々も、やはり以前はかなり単独親権ということだったのが、ハーグ条約というのは三十三年前ですけれども、その辺りから徐々に共同親権になったというように伺っているんですが、外国がこういうふうにやはり単独親権から共同親権へ移ってきた。日本はやはり、今の時点でいろいろな政府の答弁聞いていますと、なかなか単独親権捨て難いと、そう簡単に共同親権には行かれないというまだ雰囲気が強いんですが。
 海外がどうやって単独から共同に移行するふうなこと、その過程で何かいろんな大変なことがあったのかどうかということと、日本がそれから学ぶべき、いずれやはり、早川参考人がおっしゃっているように、グローバルスタンダードでいえば単独親権から共同親権に移っていくのかなと、私もそんな気がしているので、移るに当たっての例えば何か障害とか、どういう辺りがなくなれば日本もできるかという、そういう早川参考人の御意見を伺いたいと思います。
#246
○参考人(早川眞一郎君) 御質問ありがとうございました。大変難しい問題できちんとお答えできないと思いますけれども、感想だけちょっと申し述べたいと思います。
 外国も、おっしゃったようにそれほど昔ではないんですね、比較的新しくて。なぜそうなったかというのは、これもまたいろんな議論があるところかと思いますけれども、やはり社会の情勢で、例えば男女のジェンダーの問題が背景にあり、それからやはり子供についての、子供の権利といいますか、あるいは児童心理といいますか、子供にとって何がいいのかということについての知見の変化といいますか発達があり、いろんな要素が絡まってこういうことになったんだろうというふうに思います。
 それで、日本と外国との違いの一つ、そう重要な違いではないかもしれませんけれども、例えば親権をもらえなかった父親、単独親権のときに親権をもらえなかった、まあ父親がもらえないことが多い、母親が単独親権になる場合が多いわけなんですけれども、父親たちの活動といいますか、父親たちが、自分たちも別れた後も子供と会い、あるいは子供と暮らしたいんだということを言う圧力団体が、日本にももちろんあるんですけれども、外国はそれが非常に強かったというふうに聞いております。なぜそれが強かったのかはまたちょっと難しい問題で、さらに、私はよく分かりませんけれども、そういうようにいろんな社会情勢があり、それで一気に変わってきたということだろうと思います。
 日本でどうなるかは予測は全く私には付きません。なかなか法はすぐには、一朝一夕には変わらないもので、各国の文化を背景にしておりますのでそう簡単には変わらないだろうと思うんですけれども、今回のハーグ条約で、先ほど申しましたけれども、言わば世界との家族法分野での交流というのはかなり強まりますので、そこでいろいろな海外の知見、刺激というのが入ってきて徐々に日本の中の意識も変わってくるのではないかという気が、やや希望的観測ではありますけれども、しております。
 したがって、私が生きている間かどうかは分かりませんけれども、そのうちには共同親権への動きというものが出てくるのではないかなというふうに期待しているところでございます。お答えになっていなくて申し訳ありませんけれども。
#247
○真山勇一君 よく分かりました。ありがとうございました。
 続きまして、磯谷参考人にお伺いしたいんですが、電話相談の話を大変興味深く伺いました。やはりそうやって実際に生の声を聞いておられるという説得力のある解説、分析だったというふうに思うんです。
 その中でちょっとお伺いしたいのは、やはり今度、どういうことが原因かなということを、ちょっと私気になるのは、参考人のお話ですと三十九件という数が出ていたんですが、多分もっとたくさん過去にいろいろ扱っていらっしゃると思うので、そういうことも含めてお伺いしたいんですが、連れ去りの、現実的にそういうことに遭っている人のその理由ですね、こういうものも電話相談のときに当然伺っているのかなと。どういうものがやっぱり多いのかな、どういう分析をされているのかなというのを一つ伺いたいということと、それからもう一つ、先ほども磯谷参考人御自身がおっしゃっていましたけれども、子供の声というか子供の姿、私もそれ思うんです。
 これ、子供の連れ去りという、ハーグ条約がそういうことなのに、子供のものが余り見えないで、やはり中心は父親と母親というか、そういうふうになってしまっているので、例えばこういう電話相談をしているときに、何か子供の声が聞こえるようなものというのはなかったのか。例えば、子供から、子供が電話掛けてくることというのはないんでしょうね。やっぱり年齢的にも問題かもしれません、十六歳以下ですから。でも、何かその辺のものを現場としてつかんでおられるのか。もしつかんでいるとすれば、非常に貴重な、やはり子供が何を思い、何を考えて、何を言いたいのかということはとても何か私は興味があるので、もし何かあったら教えていただきたいと思います。
#248
○参考人(磯谷文明君) 御質問ありがとうございます。
 まず、こういった事件になってしまうその背景ないし理由というところですが、日本に連れ帰ってきた親たちの話を伺いますと、やはりDVを主張される方もいらっしゃいます。また、DVといっても、言わば言葉の暴力といいますか、いつもひどいことを言われていてということだとか、そういったようなことも含まれておりますが、でも、やはり結局は夫婦関係がそういったことによってうまくいかなくなって連れ帰ってきたということがほとんどであります。
 大体、連れ帰ってきた方はいろいろ背景事情をお話しになることが多いです。それに対して、連れ去られてしまった、つまり、日本にいて、そして今子供が外国に例えば奥さんに連れていかれちゃったというような場合は、なかなかその理由はお話はいただけません。と申しますか、一つは、その御本人もよく分からないとおっしゃる方がまず相当数います。心当たりはないのに突然、帰ってきたらいなかったとか、確かに夫婦の間でいろいろ一悶着、二悶着はあったけれども、でもまさか連れ去られるとは思わなかったというふうな形で、強いて言えば心当たりがないというようなお話をされることが多くて、そういう意味ではやはり背景はつかみにくいだろうと思います。
 それから最後の御質問、子供の姿というところはもう誠におっしゃるとおりなんですけれども、残念ながら、こういった電話相談ないしは普通の日常の弁護士業務の中でも、子供の姿を直接というのは実はなかなかないです。親を介していろいろ聞いたりということになってしまいがちであります。そういう意味では、連れ去りあるいは連れ去られた事件の中で子供がどう感じているのかというところは、むしろ本当にしっかりとした調査をしていただければなというふうに思います。
 以上でございます。
#249
○真山勇一君 ありがとうございました。
 そういう現場のお話を伺っていて、やっぱりこれからのこのハーグ条約を実際に運用していく面のヒントになるようなことがいろいろ今お話しの中にあったんじゃないかというふうに思っております。ありがとうございました。
 続きまして、吉田参考人にお伺いしたいんですが、吉田参考人もDVということについての非常に綿密な細かな分析をいただきまして、本当にありがとうございました。
 私も、申し上げたように、今回のこの中ではやっぱりDVというのは非常に重要な要素の一つだというふうに思っていますので、お伺いしたいのは、吉田参考人のお話の中で非常に興味深かったのは、普通、DVというと身体的な問題とか性の問題なんですけれども、そうじゃなくて、精神的な問題もそうだし、特に関係性で主従関係。つまり、よく普通のDVのいろんな出来事を追っかけてみると結構そういうことがある。つまり、本当は何で逃げ出さないのかというところなのに逃げ出せないのは、やはり主従関係というのが裏に、背後にあるような私気がしているんですね。実は、私も取材の仕事をしていてDVの方を取材すると、何でそれほどのことまで遭っているのに逃げないのというと、やっぱり何か元へ戻ってしまって、その裏側にそんなことも感じます。
 そういうようなこと等含めまして、それと同時に、今日本でのDVの基本になっているDV法、いろいろちょっと問題点もあるということを指摘されているので、吉田参考人が感じているそういう問題点というものを含めましてお伺いしたいというふうに思います。よろしくお願いします。
#250
○参考人(吉田容子君) ありがとうございます。
 DV法の問題ということなんですけれども、幾つかあるんですけれども、そもそもDV防止法ということになっておりますけれども、とにかくあの法律の立て付けとしては、生命、身体に害悪を及ぼすような、あるいは心身に害悪を及ぼすような暴力はとにかく最低一度は受けてくださいと、その後であれば相談とか、済みません、変な言い方で、とか、あるいは保護命令なども場合によってはいけますよということなんで、完全な防止ではまずないということが一つあるかと思います。
 それから、相談なんかの対応の場合のDVの定義よりも保護命令の対応するDVの定義が一段狭くなっているんですけれども、実際のところ、なかなか、先ほど御質問ありましたけれども、証拠の関係が難しいところがありまして、つまり、かなり高度のDVでなければ保護命令が出ないという立て付けになっております。
 ですから、しばしば誤解があるんですけれども、保護命令の申立てをしてそれが認められませんでしたということがDVがなかったというふうに裁判所が認めたというふうに誤解がすごくあるんですけれども、あれはそうではありませんで、実際に裁判官から私も直接聞くんですが、確かに暴力はあったと思う、だけど、生命、身体に対する将来の、今後また危害があるんだというところの疎明がなかなか難しいので、やむを得ないけれども今回は取り下げてくれというような話はよくあるんですね。ですから、そこが非常に誤解を受けるという問題があると思います。
 それから、同じような話なんですが、私がしばしば思いますのは、今の行政の中で保護命令が出ればDV被害者と扱いますと。でも、保護命令がないとただの相談者みたいなところがありまして、保護命令制度をつくったことはよかったと思うんですけれども、本来のDVの防止あるいはDV対策ということが少しおろそかになっていないのかなというところがあります。
#251
○真山勇一君 ありがとうございました。
 最後に、明尾参考人にお伺いしたいんですが、もうまさに明尾参考人は、今いろいろなことを例を挙げて述べていただきましたけれども、レフト・ビハインド・ペアレントというのは、これ要するに置き去りにされてしまった親という、そういう意味だそうですね。その団体の今お仕事をされているということなんですが、明尾さんには、ですから、実際にそのまさに渦中の人なわけですね。
 伺うところによると、お子さんに会えないという状態というふうに伺っていますので、実際の当事者としてのその辺の、なぜそういうことになってしまったのか、御自分がという話、もちろんプライバシーの問題がありますのでお聞かせいただけるところで結構です。そういう話と、それから、御自分のケースの中で特にやはりこれだけは訴えたいということがありましたら、それをお話ししていただければと思います。
#252
○参考人(明尾雅子君) まず、私から、今思い起こせば、当時はハーグ条約という言葉も、七年前でしたので私自身も分かっていませんでした。元夫は無断で子供をカナダから日本に連れ去ったんですけれども、そのときも意味が分からなかったんですね。なぜ、子供が十一歳までカナダの学校に行って、カナダが好きだと言った子供を日本に連れ去ってしまったのか、それがどうしても不可解だったんですけれども、今ハーグ条約で問題になっていることで初めて分かったことは、日本の司法が要は彼にとって有利だったということですね。
 それは今、皆さん、私の周りにもいるんですけれども、まず連れ去った者が勝ちということです。それが母親でも、おなかを痛めた子供でも、連れ去った方に親権が行きますし、たとえ私が子供に会おうとしても、会わせてくださいと。ましてや、日本の今の面会交流の、今日述べましたように、実際に会えている人は半分以下ですね、お子さんに会えているのは。それで、会えるのは月一回二時間程度というのが現状です。私が今思うのは、それを知った上で元夫が日本に連れ去ったというふうに考えております。
 私としては、最後に国会議決を求めるのは、まず、でっち上げDV、それをやめていただきたい。なぜかといいますと、何の証拠もなくDVがありましたというふうに言うと、そこでまずDVが要は承認されてしまうんですね。承認されてしまったDVというのは、今度その解除の仕方がないんですね。それもずっと更新されるので、それが例えば裁判所で幾らDVがなかったというふうに証明されても、それはDVの措置をした本人がDVはこれはなかったということを認めない限り解除のしようがないということです。まずそれを国会議員の方にもお知らせしたいということと、あともう一つ、やはり今、子供を連れ去った者勝ちですね。一回連れ去る、例えば奥さんが実家に戻るということはそれは許されることですけれども、その奥さんから今度連れ戻すといったときには警察に逮捕されるというのが実情です。そして、面会交流に関しての強制化を求めます。そして共同親権。この四つを私から国会議決を求めるということで、終わらせていただきます。
#253
○真山勇一君 ありがとうございました。
#254
○森ゆうこ君 生活の党の森ゆうこでございます。
 今日は、四人の参考人の皆様、大変ありがとうございました。午前中の質疑の前に先生方のお話を聞いていた方がよかったなというふうに思いました。大変ありがとうございました。
 早川先生にまず伺いたいんですけれども、この国内実施法の作業に当たり、返還拒否事由の設定の関係なんですけれども、当初、法律で返還拒否事由を明記した方がいいのではないかという閣僚会議の話もあったわけですけれども、それを、返還拒否事由の有無を判断するに当たっての考慮事項になったことについて午前中に質問しましたところ、やはり条約よりかなり詳しい条文を国内法に書くことは条約違反ではないかというふうに疑われるということがございまして、今回のような規定になったという御答弁がございました。
 その点について、先生も先ほど同じようなお話がございましたが、しかしスイスは少し踏み込んだというようなお話もございましたので、もう一度その辺のところを御説明をいただければというふうに思いますし、この点について、磯谷先生も何かコメントがあれば、是非よろしくお願いいたします。
#255
○参考人(早川眞一郎君) 御質問ありがとうございます。
 今の点でございますけれども、確かに法制審議会の審議の段階では、ある特定の事項があればそれでもう返還拒否事由にするという、独立の返還拒否事由をつくるという案も出されたことがあったかと思います。しかし、それはやはり条約の仕組みからいって条約違反だと言われる危険があるのではないかということで、それはやめにして今回のような形になったと。
 したがって、今回のような言い方であれば、それは単に考慮要素を挙げているだけですので、少なくともその仕組みとしては条約違反とは言われない。もちろん、運用の仕方によっては適切ではないんじゃないかと言われる可能性はもちろんあり得るわけですけれども、しかし法文の作りとしてはこれで問題がないんではないかというふうに考えております。
 スイスの件に関しましては、細かく言い出すとちょっと切りがないのであれですけれども、スイスは少し違うやり方をしておりまして、それは、ちょっと今持ってきたんですがうまく出てこないので申し訳ありません、幾つかの条件を全て満たすとこれで返還拒否事由になるというふうに決めているんですね。しかし、それは非常に厳格な要件を三つでしたか挙げておりますので、普通に考えても、つまり条約だけを解釈しても、一応そういう場合には、スイスの条文でもって返還拒否事由になるというような場合は、条約を適用した場合にも返還拒否事由として普通は判断されるものであろうという場合が多いだろうという観点から見ますと、意見はいろいろですけれども、条約違反とまでは言えないんじゃないかというふうに私自身は、スイスのものですけれども、考えております。そんなところでよろしいでしょうか。
#256
○参考人(磯谷文明君) 余り付け加えるところはございません。
 私も、審議の中で、もう当然ながら条約を超えてはいけないという大前提がございます。その中で、要件という形で定めてしまいますと、もうこれは批判をされるときには避けられない。しかし、考慮要素という形でやって、そして実際の裁判でどういうふうな判断をするかというところにつきましては、恐らくそう、それもそれぞれの裁判所の事実認定ですので批判もされにくいんだろうというふうに考えまして、安全なやり方だったというふうに思っております。
#257
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 吉田参考人に伺います。
 今後更に必要な措置ということで具体的な細かい提案をちょうだいいたしまして、本当にありがとうございました。
 先ほど明尾参考人から厳しい御指摘もあったわけですけれども、でも、やはり、やむにやまれず子供を連れて逃げ帰ってきたという方たちにとっては、このDVの問題、そして、それが返還拒否事由として認められるかどうかということがやっぱり何よりも心配、何よりもこのハーグ実施法について皆さんが心配していらっしゃることだと思うんですね。
 子の面前でのDVは、我が国でも、先ほどお話がございましたように、児童虐待防止法二条四号で児童虐待でございますけれども、これが共有されているのかどうか、他の諸外国においてこういう考え方が、ということについて御見解をお持ちでしたら是非お願いしたいと思いますし、また、このDVから逃げ帰ってきた人たちを保護すると、また逆の立場に立てば、先ほどの明尾さんのような話で大変悩ましいところなんですが、ここをしっかりとやっていくことについて、なおも御提言があればちょうだいしたいと思います。
#258
○参考人(吉田容子君) ありがとうございました。
 一点目の、児童虐待防止法の二条四号と同じようなもの、考え方が諸外国にあるかという御質問なんですが、大変申し訳ありませんけど、正確にはちょっと存じ上げませんけれども、ただ、元々ハーグ条約が作られたころは恐らくDVという概念自体がなかったんだと思いますけれども、その後、子どもの権利条約もできましたし、恐らく、済みません、恐らくとしか申し上げられませんけれども、ある程度そういう考え方があるのではないかと、これは推測ですけれども、思います。
 それから第二点なんですけれども、確かにこの条約はなかなか悩ましいところがあるわけですけれども、私自身は、やはり子供を中心に考えた場合に、一度、仮に返還するにしろ、しないにしろ、やっぱり、例えば返還するのであれば、その後の状況というのをきちんと考えて、一体どういう状態になるのかということを具体的にイメージできるまできちんと事実関係を明らかにすべきだと思うんですね。その上で、あくまで本当に子供さんにとっていいという、ベストチョイスであるというふうに確信を持って判断をしていただきたいというふうに思っています。というところで、済みません。
#259
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 明尾参考人に伺います。
 午前中に私が質問したんですけれども、アメリカでは父母間の子の連れ去り、これは重大な犯罪で、州によって違うと思いますけれども、カナダではちょっとどうなのか少し分からないんですが、アメリカでそうであるように、このハーグ条約締結国において父母間の子の連れ去りが重大な犯罪であると。
 そうしますと、このハーグ条約を締結する、子供を返還申請があったときに捜す、中央当局が捜す、その過程で連れ去った方のもう一方の親の所在も分かると。そうすると、犯罪者引渡条約等の関係もあって、そもそも連れ去ってきたことが犯罪ですから、これは子供を戻せと言われるだけではなく犯罪者として引き渡せということになりはしないかと、そういう懸念もあるわけですけれども、こういう点についてはいかがお考えでしょうか。
#260
○参考人(明尾雅子君) 私が知っている限りで、日本の警察というのは民事不介入だというふうに言われているんですけれども、済みません、アメリカのことはよく分からないです、私、カナダの案件はちょっと分かるんですけれども。
 あちらの新聞にやっぱり載った事例があるんですけれども、フランス系のカナダ人のお母さんが、自分のフランスの国に子供を連れ去りました。そのときに、その彼女のお母さんと彼女は、フランスで子供を連れ去って隠れていたんですね。そのときに新聞に載ったのは、カナダ警察がフランスまで行って居場所を捜し当てまして、もちろん彼女も逮捕されましたし、一緒に住んでいた彼女の母親も逮捕されて、子供と一緒にカナダで元の居住国に連れ戻したという事例があります。
#261
○森ゆうこ君 ほかの先生方で今の件について何か御所見をお持ちの先生は、いらっしゃれば是非。
 一方、ハーグ条約を締結していないので、例えばアメリカから日本に対して犯罪だと、その犯罪者の引渡しを要求するというか、これは父母間であっても子供の連れ去りは犯罪なのであるという要求があるけれども、ハーグ条約を締結した後は、むしろ戻ったときに犯罪者となるという危険性が、これが返還拒否事由の一つに考えられる可能性もあるというようなお話もあって、ここはちょっとまたいろいろもう少し周辺の事項を調べてみないと少し分からないところなんですが、いずれにせよ、今回初めてこういう国内実施法を作るということで、調べてみますと、調べれば調べるほどこれは難しいなと。だからこそ、衆議院で一年ごとに見直すという特別な附帯決議というものが付いたというふうに思っておりますので、先生方、もう時間なんですけれども、一言ずつ、この点について更に改善とか検討すべき問題があるということがございましたら、是非一言ずつお願いいたします。
#262
○参考人(早川眞一郎君) ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、非常に難しいし、また、このタイプのハーグ条約は初めて、このタイプというのは、中央当局をつくって行政協力をするハーグ条約は日本はこれが初めてでございますので、実際に始めてみるといろいろ課題が出てくるのではないかというふうに思います。しかし、それはやりながらどんどん改善していくという方向でやっていっていただければと。私どもも、よくその様子を見て検討したいというふうに思っております。
#263
○参考人(磯谷文明君) 今の、引渡しをしたとき、引渡しといいますか、日本に連れ帰ってきている親が外国に子供を戻したときに犯罪になって逮捕されたりするんじゃないかという点については、大変懸念をしているところでございます。
 実際にハーグの引渡しの返還命令の事件になって、これはかなり認められる可能性が高いというふうなことになりますと、恐らく、TP側の代理人としては、円満な形で戻すように、調停ないし和解という枠組みを使って円満に戻すことを考えるだろうと思います。そのときにどういうふうな条件を設定すれば犯罪化されないか。端的に言えば、一緒に戻ったときに身柄拘束されないかというところは、とても関心はあるんですけれども、これは国もいろいろありますし、一般的には、もちろん父親の方がもう処罰を求めないという意思表示を明確にしていれば多分大丈夫なのではないかとは思うのですけれども、それ以上のところ、確たるところは言えない。もうこの辺りは実は非常に今悩んでいるところで、外務省などとも御協力いただきながら情報収集をしたいというふうに思っております。
#264
○参考人(吉田容子君) 今の点なんですけれども、確かにLBPの方が刑事処罰を望まないということであれば国家権力の抑制ということはあるのかもしれませんが、基本的には、しかし、刑事処罰をするかどうかというのは国家権力の問題ですから、当事者間の調停とか和解で解決できる問題ではないのではなかろうかという気がまず一ついたします。
 それからもう一つ、少し刑事の問題と離れるかもしれませんが、TPが戻る場合には、TPにとって、多くの場合は外国人ですから、当然、在留資格が必要になります。果たして、長期に在留して、しかも就労とか、要するに経済的な保障がされるような在留資格を得ることができるのかどうかというような問題がありまして、といいますのは、この条約は、とにかく戻って、そして常居所地国で監護の本案をしなさいよということになっていますから、監護の本案を適正に行うためには、当然そこで武器対等といいますか、適正に争えるような状態でなければいけないというのはもう当然のことでございますけれども、その根っこのところに在留資格の問題あるいは経済力の問題がありまして、そこのところは正直何の手当てもないのではないかというふうに思っておりまして、非常に重要な問題かと思います。
#265
○参考人(明尾雅子君) 当団体では、アメリカのやはり子供に会えない団体と提携していろいろ情報を得ているんですけれども、今回のこのハーグ条約に関してアメリカ側の発言は、まず、日本のハーグ条約については骨抜き、歯抜きという条約というふうに言われて、かなり批判を受けております。さらに、二年前、津波の前なんですけれども、実際にアメリカは、ハーグ条約に批准しなかったら日本に対して経済的措置をとるというふうに言っておりました。
 今回、アメリカ側が言っていることは、日本のDVに関してのいろいろな論争を呼んでいるんですけれども、アメリカ側の方は、アメリカ人が日本人女性をDVしてそれで逃げたというふうな形で、非常に怒っているというふうなことが今の現状です。それは多分、私がやはりあちらのアメリカの新聞なりを読んで、そういうふうな非常に批判を受けているということをまず申し上げたいと思っております。
#266
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
#267
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。
 まず、明尾参考人と吉田参考人にお聞きいたします。
 DVから日本に子供を連れ帰ってきていると、その場合に非常にその証明が難しい、どうするのかというのは、これも一貫した国会の審議のテーマでもあるわけですが、そういう中で、明尾参考人が、外国でそれはきちっと証明できるんだというお話は大変参考になったわけですが、これ、バンクーバーのケイト・ブース・ハウスというシェルターなんですかね。その辺のカナダのシステム、公的なものなのか、民間がどうなっているのかとか、それからどの程度の都市にあるのかとか、費用の問題等々、教えていただきたいなと思っております。同時に、一方で、こういうのが整っていても、やっぱりここにアクセスできない方も相当いらっしゃるんじゃないかなというふうに思っておりまして、その辺の実態はどうお考えかというのが明尾参考人です。
 吉田参考人については、この問題で、資料五で外国でDVを受けている方の実態も詳しく出していただいていますが、こういう方々が実際証明できるような向こうの実態があるのかどうか、その辺りを教えていただきたいと思います。
#268
○参考人(明尾雅子君) 私、アメリカのことはちょっと分からないんですが、カナダに関してはそういうふうな、まず、DVシェルターというふうに言わなくて、トランジションハウスと言いますけれども、そこには割と簡単に入れます。なぜかといいますと、住所は秘匿してあるんですけれども、インターネット上にまず電話番号が載っています。費用は一切掛かりません。大体一か月ぐらいそちらの方に滞在した後に、次の、いわゆるこちらで、日本で言う母子寮というところに入れるシステムがあります。その場合にも費用が掛かりません。
 そういうところが多々あるのかというふうな御質問なんですけれども、私からすると、道路を歩いていても、そういう虐待を受けた場合に駆け込むところは非常に目に付きました。私がそういうふうな状態じゃなかったときには気が付かなかったんですけれども、そこに行くと、それぞれの、老人虐待とか子供虐待とか女性虐待とかそういう機関が多数あり、医療費もそこで全て無料で受けるというふうなことがあります。ということでよろしいでしょうか。
#269
○参考人(吉田容子君) 御質問ありがとうございました。
 米国やカナダでどのような証拠収集方法があるのかという御質問には、済みません、私、端的に答えることができないんですが、ただ、資料一の八ページを少し御覧いただきたいんですが、ここにパワーとコントロールの車輪というのがあります。これ、元々この車輪はアメリカのどこかの州のDV介入プロジェクトがつくった車輪なんですね、DVの構造を示すものとして。
 これ、御覧いただいたら分かりますように、一番外側は身体的暴力になっていて、これは比較的、たまたまその場に居合わせれば見えるよねというところが外側ですね。でも、そこに誰かが居合わせなかったら、あるいは写真とか、何かそういうものが残らない限りはこれすら見えない。さらにその内側は、全くこれは見えないものです。なので、こういうところを、やはりこれ、つまりアメリカでも同じような問題が証拠収集の関係ではきっとあるんだろうと思います。
 だからこそ、先ほども申し上げましたけれども、そうはいっても周りに間接的な証拠が少しずつちりばめられているかもしれないので、そういうものを丹念に見て、先ほども言いましたように、たくさんの人が死んでいる、アメリカは日本よりもっとたくさん死んでいるはずです。つまり、制度があったからといってそれが機能しているとは限りません。なので、十分暴力があり得るんだということを前提にして、丹念にいろんな間接的証拠を集めていくしかないのではないかと思います。
#270
○井上哲士君 ありがとうございます。
 磯谷参考人にお聞きしますが、最初の御意見いただいたときに、第三の音声の送受信というところを飛ばされたんですが、この点、お話しいただいたらと思います。
#271
○参考人(磯谷文明君) お話しする機会をいただきましてありがとうございます。先ほど飛ばした、レジュメの方でいきますと第三点というところでございます。
 これは、要するに今回の手続の中で、必ずしも裁判所に来ていなくても、遠隔地の通信手段を使って手続に参加をするというふうなことが定められて、それはよかったと思うんですが、問題は、外国にいる当事者がそういう手段で手続を進めることができるか、手続に入ってくることができるかという点について、少なくともこれまでの国の、政府の方の御説明というのは、いや、それは国家の主権の問題があるので難しいというお話なんですね。
 しかし、実はそれはLBPにとって利益になることなわけですよね。つまり、わざわざ日本にお金を掛けて来なくても、自分の国にいる中で通信手段によって意見を言えるということは利益になることで、それをその国が反対をするということは恐らく余りないのではないかと思っていて、ですから、抽象的に国家の主権というふうなことであるとすれば、そこは締約国の間で議論をすることで、そういった方法を使っても効率的に審理ができるようにできるんではないかと、こういうふうなお話でございます。
#272
○井上哲士君 ありがとうございます。
 次に、早川参考人にお聞きしますが、最初のお話の中で、連れ去りをなくしていく上で自力救済の仕組みというのが必要で、それが日本はなかなか整っていないという外国との比較のお話がありました。ちょっとこういうお話は私初めて聞いて大変参考になったんですが、もう少しこの点を詳しくお話をいただけないでしょうか。
#273
○参考人(早川眞一郎君) ありがとうございます。
 私、ちょっと言葉足らずだったかもしれませんけれども、日本では自力救済が言わば認められているけれども、それは望ましくないんではないかというのが私の話の全体の趣旨でございます。自力救済というのは、要するに、例えばDVに遭った女性が子供を連れて逃げると。子供を連れて逃げるのを取りあえず私は自力救済と呼んでいるわけです。
 要するに、じゃ、諸外国ではどうなっているかというと、これは国にもちろんよるんですけれども、そういう場合に、自分で、言わば法的な手段を使わずに逃げるのではなくて、法的な手段を使ってその立場から救済をしてもらえることができると。言わば他力救済の手段が整備されていれば自力救済はしなくていいだろうと。自力救済をすると、やはり一般的には自力救済というのは望ましくない、現代の社会では望ましくないというふうに考えられているわけですから、自力救済しなくていいような環境をつくる方向を考えるべきではないかというのが先ほど申し上げたかったことでございます。
#274
○井上哲士君 ありがとうございました。
 吉田参考人にお聞きいたしますが、吉田参考人、人身売買をなくすという点でも尽力されまして、かつて法整備のときにも随分御意見をお聞きしたんですが、そういう人身売買などで日本国内に連れてこられている女性のいろんな救済を日本にある在外の大使館などといろいろやってこられた経験があると思うんですが、そういう角度から、日本の在外公館が邦人保護のためにやるべき中身として参考になるものとか、そういうものがあれば、いかがでしょうか。
#275
○参考人(吉田容子君) ありがとうございます。
 国名を出していいのかどうか分かりませんが、日本にある、人身取引に関しては、特にタイ大使館が、タイとあとコロンビア大使館が非常に尽力をされていました。そこには本当に被害に詳しいケースワーカーの方がいまして、いつでもそこに当事者が、被害者が何かのルートで電話を掛ければ、わざわざその大使館の方から迎えに行くなりしてそこでちゃんと保護をするというようなことをしていましたし、それから相談だけじゃなくて一時保護、それから帰国費用の支援までしていたということがございます。
 そういう点で、先ほどからもちょっと申し上げましたけれども、日本の在外公館も、何か通り一遍にこの国の制度はこうですよとか、いや、弁護士さんがここにいますよということじゃなくて、本当にちゃんときちんと受け入れられる、もちろん大使館の中にきちんとしたケースワーカーを置かれるのが一番いいかもしれませんが、まあ全部というわけにもいかないでしょうから、地元の本当に経験のあるNGO、NPOを使って、そういうところの方がその国の制度も詳しいはずですので、そこに是非委託をして、日本政府が、そこできちんと相談とか一時保護とか同行支援とか、あるいは帰国支援も必要になる場合もあるかもしれません、そういうことをきちんとしてやっていただきたいなというふうに思います。
#276
○井上哲士君 ありがとうございます。
 もう一点、吉田参考人にお聞きしますけれども、先ほど来ハーグ条約と共同親権のことが話題になっておりますけれども、この点は吉田参考人、どのようにお考えでしょうか。
#277
○参考人(吉田容子君) ハーグ条約は御承知のとおり、不法な連れ去り又は留置があった場合に子を返還する、それによって国際裁判管轄を常居所地国に確保するという、そういう手続の条約であります。したがって、親子法制の在り方は本来、各締約国に委ねられていることで、別問題だというふうに思っています。
 日本で昨今、共同親権あるいは共同監護という議論があることは承知しておりますけれども、まず親権という言葉がありますけれども、オヤケンと書きますよね。だけど、今の民法の普通の教科書を見ますと、あれは親にとっては権利であり、むしろ義務である、義務の方の側面が強いんだよと、あるいは義務、責任といいますけれども、ということもありますし、その中身もどうなんだという議論がされています。だから、まず共同、共同という前に、まずその親責任、私は責任だと思いますけれども、そういうところを見据えてきちんと考えるべきなのかと思います。そういう意味でいきますと、今、共同親権あるいは共同監護という言葉、いろいろ言われていますけれども、その内容が使う人によって様々であって、はっきりしていないような気がします。
 それから、諸外国は共同親権だというふうなお話もありますけれども、これもいろいろ制度が様々ですし、それから、一回そういう制度をつくってみたけどちょっと具合が悪いなということで見直しをしている国も既にございます。
 さらに、弁護士の間でも賛成意見と反対意見、様々あります。
 それから、更に言えば、結局、係争案件、つまり裁判手続によって、つまり、法律の規定に従わなければ自分たちの離婚もなかなか決められない、そういう父母を想定せざるを得ないんですが、そのような方たちが子供の養育監護についてだけ協力し合えるのかというのは、私ども実務家の感覚としてはなかなか難しいと思います。とりわけ今日お話ししたようなDV案件はたくさんありますので、そういう場合には居所すらなかなか知られたら不安で仕方がないということになりますので、共同で監護するのは大変難しいと思います。
 ですから、法制度を論じるときに私は思うんですが、ある意味では理想論かもしれないんですが、理想論だけで論じるのはちょっとどうなのかなと、実際の法律の適用の結果、何が起こるのかということを具体的に想定、想像して、その上で慎重に考えるべきだというふうに思います。
 以上です。
#278
○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。
#279
○委員長(草川昭三君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会をいたします。
   午後四時三十分散会
ソース: 国立国会図書館
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