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2013/06/11 第183回国会 参議院 参議院会議録情報 第183回国会 法務委員会 第11号
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2013/06/11 第183回国会 参議院

参議院会議録情報 第183回国会 法務委員会 第11号

#1
第183回国会 法務委員会 第11号
平成二十五年六月十一日(火曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十日
    辞任         補欠選任
     田城  郁君     有田 芳生君
     熊谷  大君     礒崎 陽輔君
     渡辺 猛之君     石井 浩郎君
 六月十一日
    辞任         補欠選任
     石橋 通宏君     松野 信夫君
     直嶋 正行君     池口 修次君
     長谷川大紋君    三原じゅん子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         草川 昭三君
    理 事
                前川 清成君
                磯崎 仁彦君
                岸  宏一君
                真山 勇一君
    委 員
                有田 芳生君
                池口 修次君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                松野 信夫君
                石井 浩郎君
                礒崎 陽輔君
                尾辻 秀久君
                長谷川大紋君
               三原じゅん子君
                魚住裕一郎君
                森 ゆうこ君
                井上 哲士君
       発議者      前川 清成君
       発議者      小川 敏夫君
       発議者      森 ゆうこ君
   国務大臣
       法務大臣     谷垣 禎一君
   副大臣
       法務副大臣    後藤 茂之君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  盛山 正仁君
       外務大臣政務官  若林 健太君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  永野 厚郎君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   岡 健太郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田村 公伸君
   政府参考人
       内閣府大臣官房
       審議官      杵淵 智行君
       警察庁長官官房
       審議官      山下 史雄君
       警察庁刑事局組
       織犯罪対策部長  室城 信之君
       金融庁総務企画
       局参事官     小野  尚君
       法務省民事局長  深山 卓也君
       法務省刑事局長  稲田 伸夫君
       法務省人権擁護
       局長       萩原 秀紀君
       法務省入国管理
       局長       榊原 一夫君
       外務大臣官房参
       事官       新美  潤君
       外務大臣官房参
       事官       山田 滝雄君
       文部科学大臣官
       房審議官     常盤  豊君
       厚生労働大臣官
       房総括審議官   生田 正之君
       厚生労働省社会
       ・援護局障害保
       健福祉部長    岡田 太造君
       中小企業庁事業
       環境部長     鍜治 克彦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約
 の実施に関する法律案(内閣提出、衆議院送付
 )
○民法の一部を改正する法律案(前川清成君外六
 名発議)(参第六号)
    ─────────────
#2
○委員長(草川昭三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、田城郁君、熊谷大君及び渡辺猛之君が委員を辞任され、その補欠として有田芳生君、礒崎陽輔君及び石井浩郎君が選任されました。
 また、本日、石橋通宏君及び直嶋正行君が委員を辞任され、その補欠として松野信夫君及び池口修次君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(草川昭三君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案の審査のため、本日の委員会に警察庁長官官房審議官山下史雄君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長室城信之君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省人権擁護局長萩原秀紀君、法務省入国管理局長榊原一夫君、外務大臣官房参事官新美潤君、外務大臣官房参事官山田滝雄君、文部科学大臣官房審議官常盤豊君、厚生労働大臣官房総括審議官生田正之君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長岡田太造君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(草川昭三君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ─────────────
#5
○委員長(草川昭三君) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○有田芳生君 おはようございます。民主党・新緑風会の有田芳生です。
 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約についてお尋ねをいたします。
 作家の丸谷才一さんが、同じような文章を書くなということがアドバイスの一つだったんですけれども、つまり、自分がこれまで書いた文章をまた同じように書いてもそれはつまらないだろうと、あるいは、他人が書いた文章を、同じようなことを書いてもそれは読む人にとっても余り興味も湧かないんではないかということをしばしば丸谷さんはおっしゃっておりました。
 それと同じく、このハーグ条約についても、先日、参考人質疑を含めて五時間半の議論がありました。この委員会でも、弁護士である前川委員を始めとしての法律的な鋭い質問が具体的に各党の委員からもなされておりましたので、今日は少し違った側面から御質問をさせていただきたいというふうに思います。
 ハーグ条約というのは、御承知のように、子供の権利、福祉を守らなければいけないと、そういう立場から作られたものだと思います。このハーグ条約については、一九八〇年の十月に採択をされて、八三年に発効をしております。採択をしてから三十三年ですが、まず外務省にお聞きをしたいのは、三十三年も経過をしてようやく加入をするという、これまでなぜ加入をしてこなかったのか、その理由についてまずお話しをください。
#7
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、ハーグ条約、一九八〇年に採択され、八三年に発効いたしました。日本はハーグ国際私法会議におけるハーグ条約の制定プロセスにも参加しておりまして、政府としては、当時からこの条約の意義、重要性を認識してきたわけでございます。そうした中で、いつ締結するか、時間が掛かったわけでございますけれども、継続的な検討課題の一つになってきたわけでございます。また、条約の締結について懸念する意見があったことも事実でございます。そういうような意見も踏まえつつ、是非について検討する必要がございました。
 加えて、仮にハーグ条約を締結した場合に、新たな裁判手続の導入、まさにこの委員会でもいろいろ御審議いただいているわけでございますけれども、中央当局の制度設計の在り方など、これまで我が国になかった全く新しい制度というのを導入することが必要であるということで、たくさん論点がございました。そういう論点の検討に時間を要したことから、国会提出に時間が掛かったということがあると思います。
 あと、更に申し上げれば、全体として波はございますけれども、過去二十年、三十年間の趨勢として国際結婚そして国際離婚というのがやはり増えているという傾向があると思います。そういう中で、私ども日本国民として周りを見ましても、国際結婚あるいは国際離婚、あるいは子の連れ去りの問題というのは身近な問題に結果としてなりつつある、そのような状況の中で、国境を越えた子の不法な連れ去りという事案が、これも御審議いただいている中で御説明申しておりますように、たくさん起こり続けているわけでございます。そういう状態の中で、締結しない状況が続くことは我が国国民にとっての大きな不利益であり、国際社会における我が国の姿勢も問われかねないということから、昨年そして今年と国会に提出して御審議いただく経緯になったと承知しております。
#8
○有田芳生君 国際結婚がこれまで非常に少なかったということについては後ほどまたお聞きをしたいというふうに思いますけれども、要するに、法曹関係者の間でもなかなか関心がそこに行かなかったということが指摘もされております。
 ただ、私たち日本として注意しなければいけないと思いますのは、例えば児童の権利条約であるとか男女差別撤廃条約、あるいは、谷垣大臣に二回お聞きをしましたけれども、ヘイトスピーチにかかわる人種差別撤廃条約、そうしたものがやはり国内法にどのように生かされるのかということについて、例えば勧告を受けても日本がそれになかなかきちんと真っ正面から応じないという意味を含めて、国際的な批判がこれまでもいっぱい出てきておりました。そういう意味では、このハーグ条約について、条約の精神をどのようにこれから生かしていくのかということは非常に重要な問題だというふうに思っております。
 そこで、厚労省にまずお聞きをしたいんですけれども、日本人と外国籍との結婚、離婚というのがやはり一九八〇年代に入ってから諸外国との関係においても非常に増えてきたというふうに理解をしますけれども、結婚より離婚が増加をしたという数字を見ておりますけれども、その傾向、つまり、もう一度繰り返します、日本人と外国籍との結婚、離婚の数について厚労省からまずお聞きをしたいと思います。
#9
○政府参考人(生田正之君) お答え申し上げます。
 直近の平成二十三年、二〇一一年の人口動態統計によりますと、夫妻の一方が外国人でございます婚姻につきましては二万五千九百三十四組でございます。これは日本における全婚姻件数の三・九%に当たります。それから、夫妻の一方が外国人である離婚につきましては一万七千八百三十二組でございまして、日本の全離婚件数の七・六%でございます。
 傾向につきましては、十年前と比較いたしますと、夫妻の一方が外国人の婚姻件数につきましてはマイナス一万三千七百九十三件と減少をいたしております。特に最近五年間は減少を続けてございますけれども、離婚件数につきましては、この二年間は減少をしておりますが、過去十年で比較いたしますと、プラス四千百六十二件ということで増加をいたしております。
 それから、厚生労働省で、こういった離婚あるいは結婚につきましての理由につきましては現在把握をいたしておりません。
#10
○有田芳生君 つまり傾向的には、一九八〇年代、九〇年代、そして今に至るまで、結婚件数よりも離婚件数が増えてきているということだろうというふうに思いますけれども、ここでは法務省にお聞きをしたいんですけれども、日本籍と外国籍との離婚について、その理由というのはどういう傾向があるんでしょうか。
#11
○政府参考人(深山卓也君) 国際離婚の理由そのものを正確に把握しているわけではないんですけれども、司法統計によりますと、家庭裁判所における渉外婚姻関係事件、これはどちらかの少なくとも一方が外国人の婚姻関係事件ですけれども、の申立ての動機のデータがございまして、その動機として多いものは、男女若干違いますが、性格が合わないというのが一番男女共通で多くて、そのあと多い理由としては、暴力を振るわれる、それから異性関係がある、さらには生活費を渡さないと、こういったものが渉外的な婚姻関係事件の申立ての動機として多いものとして挙げられております。
#12
○有田芳生君 もう少し具体的に、もしお示しいただければですけど、性格の違いというのは日本人同士もあるわけですけれども、暴力というのはどのぐらいの割合で存在するものなんでしょうか。
#13
○政府参考人(深山卓也君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、男女それぞれで申立ての動機で暴力を振るわれるという事由がどれくらいかというのは違っております。女性の申立ての場合には、申立ての理由として暴力を振るわれるというものを挙げる割合というのは大体三分の一ぐらいに上っています。これに引き換え、男性、夫の側からの申立事件については一割五分という程度でしょうか、非常に少ないわけでございます。
#14
○有田芳生君 さらに法務省にお聞きをしたいんですが、このハーグ条約に直接かかわっての話ですけれども、諸外国の中央当局が把握をしている連れ去りの事件数ですけれども、まず、国内への連れ去り事案について、どういう数字が諸外国では出ておりますでしょうか。
#15
○政府参考人(深山卓也君) ハーグ国際私法会議の事務局が実施した二〇〇八年の統計によりますと、ハーグ条約締約国のうちG8構成国を例にしますと、中央当局が把握している国内への子の連れ去り事案の申立件数は、アメリカで二百八十三件、イギリス、これはイングランド、ウェールズですが、で二百件、ドイツで百十五件、フランスで七十六件、イタリアで五十三件、カナダで四十九件でございます。
#16
○有田芳生君 さらにお聞きをしたいのは、国外への連れ去り事案について、まあアウトゴーイング事案というんでしょうか、その数字について教えてください。
#17
○政府参考人(深山卓也君) 同じく二〇〇八年の統計でございますが、国外への子の連れ去り事案の申立件数は、アメリカについては三百九件、イギリスについては百五十八件、ドイツについては百四十六件、フランスは六十八件、イタリアは百二十七件、カナダは四十六件でございます。
#18
○有田芳生君 今数字をお示しいただきましたけれども、国内への連れ去り事案、さらには国外への連れ去り事案、いずれもアメリカ、イギリス、ドイツが他の諸国に比べて多いわけですけれども、その理由というのは何か分析されていますでしょうか。
#19
○政府参考人(深山卓也君) このハーグ国際私法会議の事務局の統計は数字だけの発表で、その多い理由を事務局として分析したものではございません。ですから、あくまで推測になりますが、一つは人口の問題、それからヨーロッパでは国際結婚が日本などよりずっと多いというような事情等々が影響しているんだろうと思います。
#20
○有田芳生君 さらに、今お示しいただいた数字の中で、中央当局が司法判断に至った割合というのはどのぐらいあるものなんでしょうか。
#21
○政府参考人(深山卓也君) 今お話しした二〇〇八年の統計資料によりますと、中央当局に子の返還の援助申請がされた子の連れ去り事案のうち、司法判断に至ったものは全体の約四四%でございます。
#22
○有田芳生君 そうすると、これから日本がハーグ条約に加入をして国内的に具体的に様々な対策を取っていく上で、年間にどのぐらい司法判断に委ねられるという、そういう想定されているんでしょうか。
#23
○政府参考人(深山卓也君) これからの話ですので子の返還申立事件の正確な数を予測するのはなかなか難しいんですけれども、現在、年間数十件程度になるんだろうというふうに思っています。
 その算定根拠につきましては、先ほどお話ししたとおり、諸外国の中央当局が把握している国内への子の連れ去り事案の申立件数、二〇〇八年のものですけれども、アメリカは二百八十三件と突出しておりますが、その他は多い国でも二百件以下で、そのうち司法判断にされる割合が全体で四〇%程度ということ。それからもう一つは、我が国が諸外国からこれまで指摘されている日本国内への子の連れ去り事案の件数は累計で二百件程度にとどまっていると。この二つのことから、冒頭に申し上げた年間数十件程度、百件には行かないというふうに予想しているわけでございます。
#24
○有田芳生君 日弁連が二〇一一年の二月にハーグ条約に関する意見書を公表されておりまして、そこでは条約締結に当たって、子供の意見を適切に聞く法制度の整備、さらには個人通報制度の導入、あるいは関係者に対する国際人権法の研修の措置が十分にとられるというような条件整備を求めているわけですけれども、先日の議論の中でも、返還の代替執行の中でソーシャルワーカーよりも例えば児童精神科医がかかわるというようなことが大切ではないかという指摘が幾つかありましたけれども、外務省にお聞きをしますけれども、裁判手続にソーシャルワーカーよりも更に児童精神科医などの専門家が必要だという意見についてはどのように判断なさっていますでしょうか。
#25
○政府参考人(新美潤君) 委員御指摘のとおりでございまして、まさに子の返還の代替執行を行う際におきましては、子の心理的負担を最小限に抑える必要にも鑑みまして、児童心理にかかわる専門的知見を有する専門家を代替執行の場面に立ち会わせるといったような措置も必要だと思っております。
 したがいまして、ソーシャルワーカーに限らず、具体的にいかなる人材がこうした事案に対応し得るのかという問題については、引き続き関係機関と協議しつつ検討してまいりたいと思っております。
#26
○有田芳生君 これは、言うはやすく、現場では非常に大変な問題をこれから抱えていくことになるだろうというふうに思います。子供の心の問題というのは、もうこのハーグ条約にかかわることだけではなく、本当に日本全体でいじめ、それから虐待を含めて、子供の心をどのように安心したものに整えていくのかという、大人の責任、私たちの責任というものがあるというふうに思います。
 私は、この児童精神科医について物すごく印象的な記憶があります。それは一九九七年、ですから平成九年ですけれども、神戸でいわゆる少年事件がありました。神戸少年事件と言われて、当時逮捕された少年が十四歳、小学生二人を殺害するという深刻な日本中を震撼させた事件がありました。あれからもう長い時間がたちますけれども、私は当時、神戸少年事件を取材をしていてびっくりすることがありました。
 後に精神鑑定が行われて、異例な形で精神鑑定主文が発表されたときに、つまり、事件の原因は何かということを少年の精神鑑定をやった結果、主文の中にはこういう表現があります、度重なる体罰の悪循環と。何で事件が起きたかというのはそんな単純なことではなくて、未分化の性衝動と結び付いたというような、かなり詳しく分析がなされたんですけれども。そこで、度重なる体罰の悪循環ということにかかわって、当時十四歳の少年は、実は小学校三年生のときに体罰によって心を、非常にトラブルを起こしてしまって、御家族が精神科医のところに連れていくんですけれども、十分な治療をすることができなかった、そのことも後の事件の遠因になったというような分析がなされておりましたけれども。
 私がびっくりしたというのは、その神戸少年事件が起きた一九九七年の後に、当時、平成九年段階ですけれども、この日本全体、一億二千万人を超える人口の中で、少子化が進んでいるとはいえ、子供の心の専門医、児童精神科医も含めた子供の心の専門医というのは日本全体で何と二百人もいなかったんです。子供たちが本当に様々な問題を抱えているにもかかわらず、それだけの数しかいないということにびっくりしました。それから十年たって再び私は厚労省に直接足を運びまして、十年間の変化、どのぐらいあるだろうかとお聞きをしたところ、十年たっても同じような数字でした。
 じゃ、それから、一九九七年の神戸少年事件から数えても長い時間がたちましたけれども、今、厚労省にお聞きをしたいんですけれども、子供の心の専門医、この日本でどのぐらいいるんでしょうか。
#27
○政府参考人(岡田太造君) お答えいたします。
 児童思春期の精神科医療を担います全てのちょっと医師の数ではございませんが、主な関係学会は二つございまして、二つの関係学会が認定医制度というのを設けております。その状況を御説明させていただきたいと思います。一つは、日本児童青年精神医学会認定医が平成二十五年四月一日現在で二百六名の方がいらっしゃいます。それから、日本小児精神神経学会の認定医、これは平成二十五年三月八日現在でございますが、二百七十八名でございまして、若干重複される方がいらっしゃるようですが、合計で四百人以上の方がいらっしゃるというふうな状況でございます。
#28
○有田芳生君 神戸の事件以降、様々な努力でそれだけ増えてきてはいるんですけれども、やはり子供が抱える問題の現実、あるいはこれからハーグ条約に基づいて子供のケアをしていくときには、やはりまだまだ、ハーグ条約のテーマだけではなくて、日本全体に子供の心の専門医というのは、たった四百人ぐらいでは非常に貧弱、貧困であるというふうに思います。
 この子供の心の専門医が何でそんなに少ないかといえば、やはり、例えば子供の心の問題を取り組もうとすれば、長い時間を掛けて子供と対しなければいけない、あるいは親御さんとも時間を掛けて話をしていかなければならない、そうすると、率直なところ、児童精神科医の方々にお話を聞いても、とても生活が成り立たない、診療報酬の問題などが背後に控えているというふうにお聞きをしました。
 そういうことがまた背景にあるんだと思いますけれども、じゃ、文科省にお聞きをしますけれども、今全国の大学医学部、どのぐらいあるんでしょうか。その中でまた児童精神科医を養成する講座というのは具体的に幾つあるんでしょうか。
#29
○政府参考人(常盤豊君) お答え申し上げます。
 大学の医学部につきましては、全国七十九ございます。その中で、大学の医学部医学科における児童精神医学に関する講座ということでございますと、東京大学、浜松医科大学、名古屋大学、香川大学、北里大学の五大学で設置をされております。
 ただ、これらの講座以外におきましても、医学部には精神医学講座あるいは小児医学講座というようなものが設けられておりますので、その中でも児童精神医学に関する教育研究等が行われているという状況でございます。
#30
○有田芳生君 そこに示されているように、児童精神科医を専門的に養成する講座、これだけ全国七十九の医学部、医科大学があるにもかかわらず、たった五つなんですよね。そういうところも、これはハーグ条約の問題をきっかけになんですけれども、やはり関心を広げていただいて、子供たちの心を専門的に治療するような医師の養成というものをやはり十分に手厚くつくっていくということが非常に大事な、なかなか日常的には目に見えない分野ではあるんですけれども、そういう課題があるんだということについて強調しておきたいというふうに思います。
 そして、ハーグ条約ですけれども、初めにもお話ありましたけれども、八十九締約国ですけれども、今後の日本の課題として非常に重要な問題にもなってきますので、そのうちアジアの締約国というのは幾つ、具体的にどの国が加入をしているんでしょうか、外務省にお聞きをいたします。
#31
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 アジアにつきましては、シンガポール、スリランカ、タイ、韓国、これは去年入りました、そして中国のうち香港とマカオのみでございます。
#32
○有田芳生君 八十九か国のうちアジアでは五か国ということになりますけれども。
 じゃ、厚労省にお聞きをしますけれども、国内で日本人夫と国際結婚した女性の国別の比較を少し詳しく、比率と件数について教えていただけますか。
#33
○政府参考人(生田正之君) お答え申し上げます。
 平成二十三年の人口動態調査でございますけれども、日本におきまして日本人の夫と外国人妻の婚姻件数は一万九千二十二組でございますが、これを妻の国籍別に見ますと、最も多い国は中国でございまして、八千百四組、四二・六%でございます。次いでフィリピンが四千二百九十組、二二・六%、韓国・朝鮮が三千九十八組、一六・三%、タイが千四十六組、五・五%でございまして、アジアが非常に多くて、今申し上げた国の合計で大体八七%となります。
#34
○有田芳生君 引き続き、厚労省にもし分かれば教えていただきたいんですが、それだけ国際結婚の中でアジアの比率が高くなっている現実がありますけれども、国内でドメスティック・バイオレンス、DVで一時保護される割合というのはどのぐらいかは把握されておりますでしょうか。あるいは、もし分かれば、それが日本人の女性と比較して外国人女性はどうかというのは、もし分かれば教えていただきたいんですが。
#35
○政府参考人(生田正之君) DVにつきましては、婦人相談所で一時保護というものをやってございますけれども、その数は分かりますが、日本人に占める相談所で保護した人の割合とか、あるいは外国人に占める保護した人の割合というのはなかなか分からないところですけれども、客観的な数だけ申しますと、一時保護された女性につきましては二〇一〇年で四千五百七十九件でございまして、うち日本人女性が四千二百三件、それから外国人女性が三百七十八件でございます。
 以上でございます。
#36
○有田芳生君 その中で、具体的に調べてみれば分かるんですが、特に日本人夫と外国人女性との間で結婚した場合に様々なトラブルが起きる、先ほど、離婚の理由として性格の不一致であるとか、二番目に暴力であるとか、そういうことがお示しいただきましたけれども、日本人夫が外国人女性に対しての暴力を振るう比率というのは一般的には多いという中で、特にアジア人と結婚した場合、例えば差別的な言辞も含めて、そういった意識が反映しているというケースをしばしば聞きますけれども、それは、法務省あるいは厚労省でしょうか、そういった傾向については何か把握されておりますでしょうか。
 つまり、これからそういった問題を含めて、離婚ということになる、あるいは離婚に至らないまでも、日本から子供を連れ去るということがそういった理由に基づいて起きる可能性はあるというふうに思いますので、そこの現実というものは何か把握されておりますか。
#37
○政府参考人(生田正之君) 厚生労働省の方で具体的に、外国人の方の連れ去りに関連して今委員から御指摘があったような状況について現段階では把握しておりません。
#38
○有田芳生君 傾向的にも何かそういったものがあるとかというのは理解はされていないんでしょうか。
#39
○政府参考人(生田正之君) 恐縮でございますけれども、具体的な数字がございませんで、はっきりお答えすることは難しいです。
#40
○有田芳生君 それでは、少し具体的な問題に入りたいと思うんですが、ハーグ条約の第二十八条二項、返還拒否事由にかかわってなんですけれども、暴力的な問題などについての議論は前回の法務委員会でもテーマになりましたけれども、宗教的な問題についてどうなのかということについて少し具体的にお聞きをしたいというふうに思います。
 私がここで指摘をしたいのは、世界基督教統一神霊協会、いわゆる統一教会、皆様方御承知のように、例えば歌手の桜田淳子さんが合同結婚式に参加をされたのは一九九二年でした。一九六〇年からずっと合同結婚式というものが行われていて、そこに日本人女性も参加をするということがあります。
 この間、外務省あるいは文科省の方にもお聞きをしたんですけれども、日本人女性信者が韓国で韓国人男性とどのぐらい結婚をしているかということをお聞きをしましたら、そういう統計は把握していないというふうにおっしゃっておりました。だから、この委員会でも聞いても分かりませんということになりますよということですので、私が結論だけをお伝えしますと、統一教会の日本人信者の女性が韓国人の男性信者と合同結婚式で結ばれた人たちというのは今七千人を超えているんです、七千人。そして、実際にお子さんたちがどのぐらいいるかというと、一万人を超えております。
 そして、これは皆さんもう御承知のように、一九八〇年代に国会でも統一教会による霊感商法というのが問題になって、各種の悪徳商法の中でも最も悪質であるというような警察庁の答弁があったように、日本にとっては、統一教会というのは霊感商法などの社会問題を引き起こしている団体だという理解が広まっているというふうに思います。
 しかし、そこに加入をされた日本人信者の皆さんは、さっき言いましたように、韓国でもう七千人以上の方が嫁いでいて、一万人以上のお子さんたちがいる。私も何度も韓国に行って取材をしました。農村地帯に多くの日本人女性たちが行っております。非常に貧しい中で信仰を持って頑張っている方々がいらっしゃいます。
 と同時に、これはなかなか知られていないんですけれども、韓国においては、統一教会に入ればお金を持った日本人女性が結婚してくれるということで、信仰がないのに韓国の男性たちは合同結婚式に参加をして、信仰の厚い日本人女性信者たちと結婚をするというケースが圧倒的に多いんですよね。その中で様々なトラブルが起きているというのが現実なんです。去年は合同結婚式で、参加をした日本人女性が向こうの信仰のない男性信者とのトラブルで残念なことに殺人事件まで起きてしまうというようなことまで起きておりますように、様々なトラブルが韓国でも起きているんですよね。
 そういう中で、子供を連れて日本に戻ってくる女性たちもいらっしゃいます。あるいは、子供が生まれていなくても日本に戻ってくる人たちがいる。そうした場合、韓国もハーグ条約に加入をしておりますから、今後、子供の連れ戻しについてやはり日韓の間で問題が出てくる可能性がこの統一教会をめぐってでもあるというふうに私は考えているんですよね。
 そうした場合、法務省にお聞きをしたいんですけれども、宗教上の評価の違いが子の返還拒否事由、二十八条第二項の中でどのような評価をされるんでしょうか、教えてください。
#41
○政府参考人(深山卓也君) 宗教上の評価の違いあるいは宗教上の問題といっても、具体的ケースは様々な現れ方があると思いますので、一概にどういう形で考慮されるということを断定するのはなかなか難しいんですけれども、結局のところは、返還拒否事由の一つである常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があることと。子の返還拒否事由の有無を判断するに当たって、宗教上のいろいろな評価の違いや問題が考慮されることになると思います。
 もう少し具体的に想定を交えてお話しすると、もちろん子供にも親御さんにもそれぞれ信教の自由はございますので、信仰が違うということそのものが返還拒否事由になることは想定し難いわけですけれども、例えば具体的事案において、信仰と生活が不可分一体であるというような場合に、親子で信じる宗教を異にするに至ったためにおよそ返還後に申立人が子を監護することが期待できないと、もう宗教が違うから監護を十分しないというようなことが予想されるといった場合、あるいは、宗教上の問題に起因して子への虐待あるいは配偶者への家庭内暴力等々が存在する場合、さらには、先ほどのお話にもちょっとありましたが、貧困のために常居所地国に戻ってもそれゆえに十分な監護ができない事情があるといったような具体的な事情が存在する場合には、こういった事情は法律案の二十八条第二項各号の考慮事由に該当し得ると思っております。
#42
○有田芳生君 確かに、今お聞きをしているのは特殊なことかも分かりませんけれども、日本人の国際結婚ということでは、やはり日本人女性が七千人以上韓国人に嫁いでいて特定の信仰を持っている。しかも、そのお子さんたちが一万人を超えている。さらには、日本にとっては、霊感商法というようなことも含めて、やはり脱会をしなければいけないとか、そういった矛盾を抱えている人たちも現実にいらっしゃいます。
 そして、韓国から日本に戻ってきてもう信仰をやめようという人たちに対して、宗教団体の組織ですから、韓国から組織命令で日本にやってきて、住んでいるところでハンドマイクを持って様々な騒ぎが起きると。そういったことも現実に起きているということも事実ですので、特殊なんだけれども、それだけの数がいらっしゃるということは、今後のハーグ条約を具体的にどう充実させていくかということにおいて、日本の一つの特殊事情だということについては留意していただきたいというふうに思います。
 それで、次に法務省にお聞きをしたいんですけれども、日本国内で、今の問題にもかかわるんですけれども、裁判で親権が論点になれば一体どのぐらいの時間が解決まで掛かるものなのでしょうか。
#43
○政府参考人(深山卓也君) 親権あるいは子供に対する監護権が争点となる裁判といたしましては、親権者の指定を含む離婚の裁判、あるいは子の監護者の指定を含む家事審判等がございます。それで、まず離婚の裁判のうち親権の指定をすべき子がある事案の第一審における平均審理日数は十・七か月です。また、監護者の指定が問題になる家事審判事件の平均審理期間は六・二か月ということになります。
 ということで、事件類型によって若干の差はありますけれども、こういった統計上の数値から見ますと、我が国において親権や監護権が争点となる裁判をする場合には一般的には半年から一年弱程度の時間が掛かる事案が多いということが言えると思います。
#44
○有田芳生君 今のは国内の半年から十か月という数字をお示しいただいたんですが、海外ではどういう時間が掛かるものなのでしょうか、もし分かればですけれども。
#45
○政府参考人(深山卓也君) 海外の同種の裁判の審理期間というのは、数値を把握しておりません。
#46
○有田芳生君 もし仮に、半年あるいは十か月も掛かるとなれば、例えばアメリカあるいは韓国で裁判に例えばお母さんがかかわらなければいけない、そうしたとき大変な負担になりますよね。そのときに、前回も話題になりましたけれども、司法補助制度などは翻訳料が十万円ぐらい出るということでしたけれども、そういう司法補助制度とは全く別で、例えばアメリカで裁判になる、イギリスで裁判になる、韓国で裁判になる、まあ韓国だったら近いからまだ何とかなる可能性はあるのかも分からないけれども、アメリカとかイギリスで半年、一年と、もし仮に裁判になったとき、その渡航費用とか、あるいは向こうでその裁判にかかわる居住費用とか、そういうものの何か補助というものは考えていらっしゃるんでしょうか。
#47
○政府参考人(深山卓也君) 今お話に出た渡航費用や滞在費用、居住費用が掛かるケースというのは、一般的に考えますと、裁判所が子の返還命令を発令してそれが確定をして、それに従って渡航をせざるを得ないという場合だと思います。そうなりますと、その渡航費用というのは、子の返還を命ずる裁判に基づいて義務者が義務を履行するための費用ということになって、これは法律上、相手方、つまり渡航する側が自分の義務を履行するための経費として負担せざるを得ない建前になっております。
 また、渡航した後の居住費用ですけれども、これは、ハーグ条約自身は子を常居所地国に返還するところで手続を終わりますので、その後の、当該常居所地国に生活をしながら子の監護権をめぐる裁判をやっていくというのは、これは滞在費用は通常の生活費ということになります。したがって、やはり渡航した側がそこでの生活費を自分で工面をするということにならざるを得ません。
 こういうようなことで、特に遠くの国に行く場合には経費が掛かるものですから、裁判によらないで話合いで任意に返還をするということ、これが第一義的に期待もされていますし、そういうケースもほかの国でも相当数あるんですが、そういう話合いで一定の約束をして子の返還をする場合には、渡航費用や裁判をするための滞在の経費なども、相手方が例えば負担を一部するとか全部するという合意をした上で任意で返還をすると、こういうようなケースもこれまでの締約国でしばしば見られるというふうに聞いております。
#48
○有田芳生君 子供の権利、福祉を守っていくためにこのハーグ条約を日本国内でも充実させていくことが、今お話しになった渡航費用の問題、さらには、今日お聞きをしました児童精神科医を、このハーグ条約にかかわってだけではなくて、日本で本当に今困っている、あるいはこれから様々な精神的な問題を抱える子供たち全般を本当に健全に、日本の未来、日本の宝としての子供たちを守るためにも、様々な課題をこのハーグ条約をきっかけに充実させていかなければいけないというふうに私は考えております。
 そこで、最後に谷垣大臣にお聞きをしたいんですけれども、そういう視点で、このハーグ条約というのは、国際結婚の当事者だけの問題だけではなくて、国際司法協力の促進であるとか、あるいは国際問題の早期解決を図っていくという、そういう観点からもこのハーグ条約をきっかけに充実させていかなければいけない課題があるというふうに思いますけれども、大臣、最後に総括的に、どのようにお考えかということをお示しください。
#49
○国務大臣(谷垣禎一君) 有田委員の今の御質疑を伺いながら、統一教会の例など、なるほど、いろんな多様な問題があるなと改めて感じさせていただきました。
 国際化に伴って人間関係に交流が密になれば、そこに当然紛争も生じてくるのはやむを得ないことでございまして、ハーグ条約はその一つの局面であるということだろうと思います。そういう場合にきちっと国際的な解決のルールをつくっていくというのが、紛争を解決していくというだけじゃなしに、未然に防止する上でも役に立つのではないかと思います。
 こういう観点を考えますと、当然、このハーグ条約関連法案をどう実際に適用していくか、運用していくかといっても、国際的な、何というんでしょうか、協力なり連携というものが必要なことは言うまでもございません。
 事柄は、私法、いわゆる私法、民事法の分野だけではないんだろうと思いますね。例えばテロとどう国際的に協力して対処していくかと。あるいは刑事司法の上でもいろんな協力が必要になってきているのではないかと。それから、冒頭にお触れになりましたが、昔の国際法の教科書を読みますと、領土とか主権とかいうようなことはたくさん書いてございましたが、最近は、何というんでしょうか、人権、国際人権法みたいな分野も非常に教科書の記述だけでも多くなっております。したがいまして、あるいはさらに、司法協力みたいな分野、司法制度を、どう途上国により良い司法制度を支援して提供していくかというようなことを含めまして、非常に国際的な視野がこの分野でも必要になってきているんだということを、この度法務大臣になりまして痛感しております。
 まだまだ足らない部分が山ほどございますが、そういう方向にきちっと対応できるように努力を積み重ねたいと、こう感じております。
#50
○有田芳生君 終わります。
    ─────────────
#51
○委員長(草川昭三君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、長谷川大紋君が委員を辞任され、その補欠として三原じゅん子君が選任をされました。
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#52
○磯崎仁彦君 自由民主党の磯崎仁彦でございます。
 六日の日に引き続きまして質問をさせていただきたいと思います。ちょうど六日の午後に四人の参考人の方にいろいろ貴重な御意見を伺いましたので、その御意見も踏まえながら今日は質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に質問させていただきたいのは、今回のハーグ条約というのは、基本的には子供を連れ去った場合に、常居所地国、ここに戻すというのが基本的な考え方でございますので、その後、誰が監護権を持つのがふさわしいかという本案的な審理については、これは基本的には切り離して考えなければいけないというのが基本だと思っております。
 ただ、六日の日に、東京大学の早川眞一郎参考人からお話がありました内容は、日本においてはいわゆる自力救済、これがなかなか徹底をされていないんだという御主張がございました。子の奪い合い紛争が日本の裁判所に持ち込まれた場合には、その手続が人身保護であれ家事審判であれ、この自力救済禁止という考慮がなかなかその結論に決定的な影響を与えないんだと、そういうのが今の日本の実態だというお話がありました。
 ただ、まさに今申し上げましたように、ハーグ条約のエッセンスというのは、自力救済を禁止をする、連れ帰った場合にはまず戻すというのが、これが基本的な考え方でございますので、このハーグ条約に加盟をして日本でその国内法を実施をしていくと、基本的には、連れ帰った場合には拒否事由がない限りはまず連れ戻すんだという、これが基本的な考え方になりますので、言ってみれば、国内における離婚後の子供の連れ去りといいますか、こういった自力救済について、やはり日本においてもそういうものは基本的には認めるべきではないだろうという、そういうことに波及をしている可能性は十分にあるんだろうなというふうに思っております。
 ただ、やはり他方で、早川先生が言われておりましたのは、日本の国においてなぜそういう自力救済というのが徹底をしていないかといえば、言ってみれば他力救済、自分で救済しなくてもそういう救済をする仕組み、すべがあるんだという、これがなかなか環境として日本の場合には整っていない、そういう御意見があったわけでございますけれども、この点についてどのようにお考えでございましょうか。
#53
○国務大臣(谷垣禎一君) ただいまの早川参考人の御議論を私も議事録で拝見をしたところでございます。それで、国内でも夫婦間のトラブルに起因して子を連れ去る例というのがあるということは承知しております。そういう中で、中には子の利益の観点から極めて問題があって適切でないというものもあるだろうと思います。
 他方、こういう事態に至る原因とか経緯、あるいは連れ去りの対応にも様々なものがあると思われまして、中には家庭内暴力から免れるために、確かに自力救済を禁ずるというのは近代法の基本でございますが、やむを得ないものも中には私はあるんだろうと思います。
 それで、今我が国でも、国内で家庭内暴力の被害者の保護や支援を行う機関としては、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律に基づきまして配偶者暴力相談支援センターがあるわけでございまして、ここが適切に機能を発揮していただくということが望ましいことであると私も思っておりますが、確かに、委員のおっしゃるように、自力救済を禁ずるためにはいろいろな仕組みが整っていかなきゃいけないというのは、基本論としてはおっしゃるとおりだと思います。しかし、他方、結局この問題で議論になりますのは、法律がどこまで家庭に立ち入るかというもう一つの問題がございまして、ここが、何というんでしょうか、一刀両断になかなか解決しにくいというところがあるんだろうと思っております。
 したがいまして、先ほど申し上げた配偶者暴力相談支援センターの運用等と、その根拠法を含めまして、運用を私どももよく注意しながら、今申し上げた家庭にどこまで法が入るべきかということもよく見ていきたいと、このように思っております。
#54
○磯崎仁彦君 まさに大臣おっしゃるように、いろんな事案、それぞれの原因等があると思いますので、その事案事案に適切な判断をということかと思います。
 次の質問でございますけれども、ハーグ条約は国境を越えた不法な連れ去り、留置があった場合に原則として子を常居所地国に戻すということですので、国内の親子法制とは基本的に切り離して今回は考えていると、これが基本的な考え方だと思います。
 ただ、とはいえ、やはり子供が外国に連れ去られて日本の方に連れ帰ったような場合には、最終的にどの親が子を監護するかということについては、それが子の利益にかなうかという判断は日本の法律に基づいて最終的には決定をされるということになろうかと思います、日本に子を返還をされた場合にはですね。その場合には、これも早川参考人が言われていたとおり、子の監護に対する本案の処理についても、当然のことながら、外国から日本に連れ戻した場合には、日本において誰がその監護を行うのがふさわしいのかという、そういう本案の審理が行われる。
 当然のことながら、外国も、日本の法制がどうなっているのかということについては、これまで余り注目がされなかった中で、やはりハーグに入ってそういう戻しというものが日本にも発生をするということになると、いろんなネットワークを通じて日本の法制度の在り方というものが海外にも知れるようになると。そうなると、日本の国の法制というのは基本的には日本の国で考えるとはいいながら、いろんなやはり何といいますか、海外の目にさらされることも多くなるというのが現実かと思います。
 そういったことに対して、おのずから、好むと好まざるとにかかわらず、日本のいわゆる親子法制の在り方というものが注目を浴びて、どうするのかというのが検討の土俵にのってくる可能性が多分にあろうかと思いますけれども、この点についてはどのようにお考えでございましょうか。
#55
○政府参考人(深山卓也君) 今委員御指摘のとおり、日本の親子法制がハーグ条約の加盟に伴って諸外国から注目されるようになるというのは御指摘のとおりだと思います。
 それで、離婚後の親子法制は、日本の場合には単独親権ということで、ほかの先進国の多くとやや異なっております。このような点も、現在、法務省でも諸外国の法制調査などをして共同親権制度の導入についての基本的な検討を開始しておりますけれども、ますます諸外国からこの親子法制の違いについての指摘がされるという場面が増えるのではないかと思っております。
#56
○磯崎仁彦君 続きまして、本ハーグ実施法におきましては、最終的には子の返還について強制執行が認められているということでございます。ここでは当然のことながら子の利益というものが重視されなければならないわけですから、裁判所の執行官が親から子を引き離すということについても、いろんな注意点を定めて、これを実際、実施に当たっては注意点として通知をしていくということが検討されているやに聞いております。
 例えば、親が子を抱きかかえて離さない場合には原則として強引に引き離さない。あるいは、その子供が拒絶をしたら無理やり連れていかない。他方で、寝ている幼児を抱き上げて連れていくのは可能だといったような考え方が出されるというふうに聞いておりますけれども、他方で、例えば国内で離婚をして子供さんを国内で、言ってみれば連れ去った、連れ去ったという表現が妥当かどうかは別ですけれども。こういった国内の離婚のような場合には、基本的なルールといいますか、こういったのが定められていないというふうに認識をしておりますが、ハーグの実施法においては今のような基本的なルールというものが定められて、それに従って子供の引き剥がしというものがなされると。ただ、国内法については明確なルールがない。こういったアンバランスについて、国内についてもこのハーグの考え方に準拠したようなルールを定めるような、そういった検討は今なされているのでしょうか。いかがでございましょうか。
#57
○政府参考人(深山卓也君) 国内の子の引渡しの強制執行につきましては、現在の実務では、もう御案内のとおりですが、間接強制の方法によるほか、一定の場合に直接強制の方法によることも認められております。
 直接強制につきましては、執行実務においても、子の人格の尊重といった観点から、可能な限り子の利益に配慮した執行が行われているものと承知をしておりますが、今まさに委員の御指摘のとおり、ハーグの実施法では、代替執行の在り方について非常に細かな子の利益に配慮した手続ルールを設けております。
 国内事案についての強制執行については、こういった細かな明文規定が子の引渡しの場面について特にあるわけではございません。したがって、ハーグ条約の実施を契機として、その規定の整備が国内事案についても要るかどうか、あるいはそのときどういう整備をしたらいいのかと。これ、全く同じではありません。相手の国に戻すというハーグの世界と、相手方に渡すという執行の内容が少し違うというようなこともありまして、似ている面もあるけれども違う点もあるので、規定の要否やその在り方について今後検討が必要になると思っております。
#58
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 確かに違いはあろうかと思いますので、その違いを踏まえて御検討いただければというふうに思います。
 それでは、次の質問でございますが、最高裁判所の資料によりますと、今申し上げました国内の事案における直接強制による子の引渡しの実施の件数等を見てみますと、平成二十二年、これ、総数が百二十件あって完了したのが五十八件、不能が四十三件、取下げが十九件ということで完了率は四八%という数字でございます。二十三年度は同じような数字で完了率が四三%、平成二十四年度は総数が百三十一件で完了したのが五十二件ということで完了率は四〇%ということで、実際、強制執行になった場合に、子供の引渡しというものが現実としては五〇%も満たされていないというのが統計の数字としてはあるわけでございます。
 そうなりますと、今回、ハーグ実施法、これは国内事案と国境を越えての戻しということで事案の違いはあろうかと思いますけれども、例えば、当然のことながら子の利益が尊重されるということになりますので、何が何でも引き離すということは、これはあってはいけないわけでございますけれども、ただ、他方で、例えば戻すことが妥当というふうに判断をされたと。ただ、最終的に、引渡しがなされるのが強制執行になった場合というふうに限定をされてですけれども、やはり半数以上がなかなか引渡しができない状況の下で終わっているという、こういった状況について、やはり法律を執行するという、条約に基づくということからすれば、可能な限り子の利益を考えつつも返還がされるというのが望ましいかと思いますけれども、これについては何か具体的な手当てというのはあるんでしょうか。いかがでございましょう。
#59
○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) お答えいたします。
 確かに委員御指摘のとおり、国内の事案におきましては、強制執行の完了率が五割程度にとどまっております。これは、子の引渡しを命ずる審判等の実現を図るべき要請がある一方で、委員御指摘のように、子の利益への配慮が不可欠であることに鑑みまして、債務者への説得を基本としつつ、有形力の行使がやむを得ない場合も慎重に運用を行っていることによるものであるというふうに考えております。
 ハーグ条約実施法案におきましても、子の返還を実現すべき要請がある一方で、子への利益の配慮が不可欠でありますので、執行官の権限につきまして細やかな規定が置かれています。
 裁判所といたしましては、個別の事案におきまして十分に事前準備を行って債務者への説得に努めるとともに、執行官を対象とする研修や協議会などを通じてノウハウを共有するとともに技能を高めるなどして、子の利益を保護しつつも子の返還の実現を図ることができるように努めてまいりたいというふうに考えております。
#60
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 時間ですので、最後、もう質問はできませんが、是非ともお願いをしておきたいことがございます。
 前回もやはりこの質問の中でも、今回のハーグ条約の実施に当たっては、中央当局、在外公館の役割というのは非常に大きいということを申し上げました。
 前回、井上委員も質問をされましたし、また吉田参考人も指摘をされていることですが、子供を例えば日本から外国の方に返還をした場合には、その後、やはりその常居所地国において本案の審理が行われるということになるケースが多いかと思います。その場合には、やはり連れ帰った親がその審査の中でいろいろ証言等々をすることもあろうかと思いますが、そのときに、在留資格がきちんと認められるであるとか、あるいはそれぞれの国において親子法制がどうなっているのかということについて、いろんな面でやはり在外公館の役割というか、求められるものというのは非常に大きいかと思いますので、是非とも中央当局あるいは在外公館、非常に大きな役割を担って、できるだけ邦人保護という意味でサポートをしていただきたいということを、これはもうお願いをさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#61
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。先週の六日に続きまして質問をさせていただきます。
 今、子の返還の強制執行ということが議論になっておりましたけれども、今回、子の返還の代替執行、間接強制にとどまらずに新たな制度としてこの代替執行というのを設けるわけでございますが、もう一度確認でございますが、この制度を設けるに至った理由について御説明をいただきたいと思います。
#62
○政府参考人(深山卓也君) 子の返還を命ずる裁判の強制執行に関しまして、法制審議会のハーグ条約部会において議論がされました。
 当初は、子の利益の観点から、間接強制のみにとどめるのが相当であるという意見もございましたが、部会における多数意見は、やはり間接強制は、子の返還を命ぜられた者に財産がない場合には心理的強制として機能しないということや、子の利益を考えて返還を命ずる裁判がされているにもかかわらず、相手方が間接強制によっても裁判を履行しないという状況を放置するしかないということになると、子を常居所地国に返還することが子の利益にかなうというこの条約の基本的な目的を達成するという観点からやはり問題があると。
 さらには、間接強制よりも強制力の強い執行方法が存在することこそが任意の返還を促す効果があると、こういった指摘が様々されまして、また、民事執行法等の手続法の専門の学者からは、常居所地国に子を返還する義務というのは、子の返還を命ぜられた者とは別の第三者が行うことが可能な義務であるということで、代替執行の方法によることが考えられるのではないかというような様々な議論がありまして、子の返還の強制執行の方法として、間接強制に加えて代替執行の方法を採用することとなったものでございます。
#63
○魚住裕一郎君 外国では、子の奪取について厳しい態度を取るということが多いわけでございますが、他方で、子供の利益については非常に敏感で、特に有形力の行使については慎重であるとも聞いているわけでございますが、常居所地国への返還について、他の締約国においてはどのような方法が取られているのか、特に、子に対する有形力の行使について知るところをお示しください。
#64
○政府参考人(深山卓也君) 他の締約国における子の返還の裁判の執行方法は、もとより国によって異なっているわけですけれども、調査を行った範囲では、金銭的な負担を課して心理的に強制するいわゆる間接強制の方法以外に何らかの強制的な手段のある国が多くなっております。例えば、履行しない者を履行するまで身柄を拘禁するというようなことができるとする国、これは英米法系の裁判所侮辱の制度を使うわけですが、そういう国や、あるいは執行官や警察官が子を監護している者から子を解放して申立人に引き渡すことができるものとするような国もございます。
 さらに、お尋ねの有形力の行使をどこまで認めているかということですが、こういった間接強制以外の強制的な手段を認めている国でも有形力の行使については一律ではございませんで、必ずしも全てについて正確に把握できているわけではありませんけれども、有形力の行使は認める国と認めない国に分かれております。例えば、これは外務省を通じて調査したところによりますと、タイとかハンガリーとかコスタリカという国では子に対しても有形力の行使が許容されています。これに対してポルトガル、モロッコ、セルビア等々の国では有形力の行使はこれは許されないというふうになっているというふうに分かれている状態でございます。
#65
○魚住裕一郎君 具体的に執行する場合は執行官という形になると思うわけでございますが、家裁の専門的知見を十分に反映する形でマニュアルを作っていきたいという御答弁があったと承知をしておりますが、専門的知見については児童精神科医の知見が有用であるという、そういう意見もあるわけでございますが、このマニュアルの作成に当たっては万全な対応を行ってほしいと思うわけでございますが、どのような対応を考えておいでになるのか、最高裁にお伺いをいたします。
#66
○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) お答えいたします。
 マニュアルの作成に当たりましては、中央当局を含む関係省庁と十分に協議を行うとともに、今委員から御指摘のありましたように、家庭裁判所におりますこの分野における専門家の意見も十分反映する形で進めてまいりたいと考えておりますが、さらにこのほかに外部の専門家も含めて専門的知見をどのような形でマニュアルに反映させるのがよろしいのかということについて、引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。
#67
○魚住裕一郎君 これは百四十二条で「外務大臣は、子の返還の代替執行に関し、立会いその他の必要な協力をすることができる。」というふうに規定されているわけでございますが、どういうような協力関係を想定をしているのか。例えば、ソーシャルワーカー等の子の福祉に関する、そういう知識を有する職員が立ち会うというようなことも考えられているようでございますが、中央当局というか外務省としてのこの協力関係、ちょっと想定しづらいんでございますが、教えていただきたいと思います。
#68
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 裁判所が代替執行を実施する際の中央当局、外務省の協力といたしましては、一つは、連れ去り親が子を解放する場面に中央当局の職員が立ち会う、そしてもう一つは、返還実施者が安全に子供を返還できるよう国内での移動に中央当局の職員が同行するということ等を考えております。
 こうした場合における中央当局の職員につきましては、今委員からも御指摘がありましたが、まさにその必要とされる専門的な知見、代替執行を行う執行官との協力の在り方、そして現場における当事者の心理的なサポートの方法等について検討が必要と思っておりまして、これはもう既に最高裁判所を始めとする関係機関と協議を重ねつつ検討を行っているところでございます。
#69
○魚住裕一郎君 次に、面会交流援助についてお聞きをしたいと思います。
 親と子の交流が保障されているのであれば、子をめぐる紛争というのも解決しやすいと思いますし、また、ある意味では、子の奪取という強硬手段、これを予防することにつながるというわけでございますが、ただ、面会をして、持っていかれてしまうんではないのかという、そういう疑念というか、当事者のみではなかなか円滑な実施が難しいと想定されるわけでございます。
 外務省では、家庭問題情報センターあるいは日本国際社会事業団等の団体と話合いを進め、いずれは面会交流の支援について業務委託も想定しているようでございますけれども、これは、こういう団体は結構、国内事案、もう手いっぱいではないのかというふうにも考えられるわけでございまして、こういう団体がハーグ事案まで受け入れられる余地があるのか、また、外国語への対応とか国外への連れ去りの防止等の対応、かなり国内事案とは異なる困難も想定されるわけでございますが、対応は可能なのか、外務省にお伺いをしたいと思います。
#70
○政府参考人(新美潤君) 今委員から御指摘がございましたとおり、この面会交流の実現のために、仲介を行うために国内の面会交流支援機関、例えば民間紛争解決手続事業者、いわゆるADR機関と言われているものでございますけれども、あるいは弁護士会等が設置する民間の裁判外紛争解決支援機関、あるいはこれも委員から御指摘がございました家庭問題情報センター、FPICと呼ばれておりますけれども、等があると承知しております。
 外務省としては、これまで既に幾つかの機関、具体的には主としてFPIC、そしてISSJという日本国際社会事業団という団体がございます、こういう機関と、ハーグ条約に国会の御承認をいただいて入った場合、面会交流についていろいろ御支援、協力をできるかということを既に意見交換を行っております。
 委員御指摘のとおり、これらの団体は主として国内事案が中心に今までやってきたわけでございますけれども、もちろんいろいろ制約はあるけれどもハーグ事案についても対応をすることが可能である、あるいは協力をしていきたいというようなお答えもいただいておりますし、あるいは日本国際社会事業団、これはISSJという団体でございますが、これは元々、ISSというのはスイスに本部がある団体でございまして、ISSJは日本支部でございます。この団体は、国際結婚をめぐる問題の相談をいろいろ従来から行っているということで、私どもとしてもいろいろ支援をしていく必要はあると思いますけれども、そういう前提で一定の御協力、対応はできるのではないかと考えております。
#71
○魚住裕一郎君 そういう機関にお願いをする場合、やっぱりそれなりの費用が掛かるんではないのかなと思うわけでございますが、その業務委託の場合、当事者の費用負担、どういうふうにお考えなのか、確認をしておきたいと思います。
#72
○政府参考人(新美潤君) お答え申し上げます。
 この面会交流を行う場合の費用の問題、確かに重要な問題だと思います。国内の事案の場合は一義的に、当事者負担原則と言いますが、当事者の方が御負担になるのが原則でございまして、ハーグ国際事案においても基本的にはやはり当事者に御負担をお願いするということになると思います。
 ただ、やはり国際事案でありますと、例えば通訳の問題、あるいは国際電話とか、要するに国際事案であることで渡航でいろいろ御負担が掛かるということは想定されるわけでございまして、これは私ども御承認をいただきまして中央当局としていろいろ活動する上で、一定の形で、例えば業務委託等の形でそういった費用の負担ができないか、あるいは負担をするという方向で今調整をしているところでございます。
#73
○魚住裕一郎君 だんだん時間がなくなってきましたんではしょって質問をさせていただきますが、安全な面会交流ということが大事でございまして、第三者の立会い、きちっと連れ去られないようにするということが大事だと思いますけれども。
 そういう観点から、これは弁護士会なんでしょうね、外務省のパブコメにも、あるいは法務省のパブコメにも、弁護士会からの意見というのがあるようでございますが、公的な面会交流センターの設置が必要ではないのかと。専門家がいる、それから安全な設備を備えて、そして低額で利用できる施設が身近にあることが望ましいんではないのか、だから公的なこういう面会交流センターということを考えてくれないかというような意見でございますが、この意見について、大臣あるいは外務副大臣、御所見を承りたいと思います。
#74
○国務大臣(谷垣禎一君) 離婚後、親子の面会交流が適切に行われるようにするというのは極めて大事だと思います。それで、これは当事者が、両方の親が協力しないとなかなか円滑に進まない、きちっと合意をして円滑に進むということが大事ですが、どうやったらそれができるようにしていくかということです。
 それで、法務省としても、離婚届に面会交流等の取決めの有無をチェックするとか、そういういろんなことを考えてきました。また、これは厚労省がやっておられるわけですが、去年から都道府県等が事業実施主体になって、面会交流の取決めがあって、そして父母の間で合意がある非監護親等を対象にして活動費の支援を行うというような仕組みがスタートしております。
 ただ、今、魚住委員がおっしゃったような、それを超えて国なり地方自治体が何らかの箱といいますか、施設を造り、人も配置してということになりますと、実はまだ議論がほとんど進んでおりません。一体その経費負担はどうするのか、また、さらに言えばそこにどこまで行政が関与するのか、すべきかというようなことについて、まだほとんど議論をされておりません。今の段階ではまだ検討事項が多過ぎると言うしかちょっとお答えができない状況でございます。
#75
○魚住裕一郎君 次に、日本からの連れ去りについて若干お聞きしたいと思います。
 先ほどアジアの中で締約国になっていない国々のお話がありましたが、そういう国々に連れ去られた場合、中央当局の支援、連れ去られた側にとっては最も頼りになるのは日本の中央当局になるわけでございますが、十分な支援を行うことが期待されるわけでございますが、外務省としてはどのような対応を考えているのかお知らせください。
#76
○政府参考人(新美潤君) まず、ハーグ条約に入っている国については、これは日本国返還援助というのを中央当局に申請できるわけでございまして、その上で中央当局が援助の実施を決定した場合、連れ去り先の国の中央当局に返還申請をすると。そして迅速に手続が進められるよう相手中央当局と緊密に連携を行うということでございます。
#77
○魚住裕一郎君 非締約国、中国あるいはフィリピン、多いわけでございますけれども、多いというか、事案として連れ去られ事案が多いんでございますけれども、まだ入っていないよということなんでございますが、こういう場合、子の発見とか返還についてどういう対応を取ることが可能なのでしょうか。そしてまた、こういう中国とかフィリピンとか、やはり入ってくださいよと、日本は入りましたと言って働きかけていくことが大事だと思いますが、この点、どうなっているでしょうか。
#78
○政府参考人(新美潤君) まず、ハーグ条約にまだ入っていない国との関係で子の連れ去り等が行われた場合どうするのかという問題でございますけれども、ハーグ条約の未締結国との間では条約上の手続を利用することができませんので、そういう現状ではそれぞれの国内法令に従って友好的な解決が図られるよう政府として可能な限りの支援を行うというところが限界でございます。例えば、在外公館において現地の弁護士や法律事務所等を紹介して、現地の法律に基づいた手続を対応できるようにするとか、子が連れ去られたその国の制度の活用を推奨するということかと思います。
 そして、ただ限界ございますので、まさに委員から御指摘ございましたとおり、あるいは先ほども御紹介ありましたように、中国あるいはフィリピンといったような子の連れ去りが多い国について、まだ条約に入っていないわけでございまして、私どもが把握しているところでは、フィリピンについては、詳細は不明ですけれども、関係省庁間では条約の締結について検討中であるという情報は接しております。中国については残念ながら、香港、マカオについては条約の適用がありますが、それ以外にはありませんが、こういった未締結国に対しては、我が国がハーグ条約に入りました暁にはこの条約の重要性というのを説明しまして、そういう国についても入ることを働きかけていくということが必要だと考えております。
#79
○魚住裕一郎君 終わります。
#80
○真山勇一君 みんなの党の真山勇一です。よろしくお願いいたします。
 今回のこのハーグ条約実施法案をめぐる審議、これをずっと行ってきてやはり感じるのは、実際の締結ということを前にしまして、やはりいろいろな課題がまだまだたくさんあるということが改めて浮き彫りになったというふうに私は感じております。
 先日の四人の参考人のお話というのは大変有益なお話だったというふうに思っておりまして、私はその中から、その四人の方の共通項として浮かび上がってきたものの一つに、子の連れ去りということ、これが起きるような最大の理由というのがDVにあるんではないかなという、そういう気がしております。母親への暴力あるいは子への暴力ということなんですけれども、ハーグ条約を実際に運用していくに当たってやはり鍵になることがこのDV、元々の原因とか理由というものにどういうふうに対応していくかということによって法律が実際に実効ある運用ができるかどうかの鍵になると。今回の場合、やはり私はDVというふうに思っております。
 そういうことから、やはり国内への連れ帰りですとかあるいは日本から海外への連れ去り事案、こうしたものが一体どのぐらいあって、その内訳、特にDVがそのうちどういうふうな件数があるのかなという、そういう実態把握が大変大事だと思うんです。
 もう一回、法務省に改めて、大臣がお答えしていただけると有り難いんですが、もう一回改めて、その実態把握をしているのかどうかということと、現時点で把握している実態、数字についてお伺いしたいと思います。
#81
○政府参考人(深山卓也君) 国境を越えた子の連れ去り事案につきましては、その夫婦間の問題でもありますことから、政府としてこれまで正確な件数を把握しているわけではございません。
 日本人による外国から日本への連れ去りにつきましては、平成二十三年十二月までに外務省が外国政府から指摘された件数の累計は分かっておりまして、これは約二百件でございます。他方で、日本から外国への子の連れ去りの件数を把握することはなお一層困難なんですけれども、日本弁護士連合会が行った調査、あるいは外務省が行ったアンケート調査等によりますと、日本からの連れ去りと日本への連れ帰りというんですか、の件数はほぼ同じ件数であろうというふうに考えられますので、日本から外国への子の連れ去り事案の件数も逆の場合のほぼ同数、そういう意味では相当数に上るものと推測されます。
 このうち、連れ去りに至った理由が家庭内暴力の原因のものの割合を把握しているかということなんですが、その理由について実態を把握しているわけではございませんので、相当程度あるとは思いますけれども、家庭内暴力が原因である場合がどの程度かという正確な割合は把握しておりません。
#82
○真山勇一君 ありがとうございました。
 やはり夫婦間の問題ですし、いろいろなプライバシーの問題ですとか、それから微妙な、やっぱりDVというのをどういうふうに判断するかというのは大変難しいことがあると思います。把握をしっかりすること、正確にすること、それからそういうことはやっぱり困難があるということだと思います。
 しかし今回、三十三年、締結されてから大分長い時がたっているんですけれども、今回こういうことで日本もいよいよ国際社会の、子の連れ去りということでは仲間入りをしていくわけですから、この辺りもやはり今後、是非正確に把握をしていっていただきたいと思いますし、これを把握することが子の連れ去り、連れ帰りというものを防ぐやっぱり大きな要因になってくるのではないかなというふうに思っております。
 やはり今、なかなかその把握ができないということの一つに、DV、家庭内暴力の事実認定というのは非常に難しいのではないかということが感じられるわけです。実は、先日の六日の法務委員会でその辺をお伺いしたところ、こういう御答弁を政府委員の方からいただきました。まとめて申し上げますと、現行のDV保護法では、証拠がはっきりしない、本人からの口頭での申出のみであるという場合では保護命令が出せないのでありまして、一旦保護措置がとられた場合でも即時抗告などの方法でこれを取り消してもらうことが可能であるというような答弁をいただいているんです。
 つまり、現行のDV保護法で運用を適正にしているということの御答弁だというふうに思うんですけれども、ただ、先日の参考人の話もそうですし、それから私のところにもいろいろな方からいろいろな話が入っている中で見ると、必ずしも、本当にDVに遭っている方を保護するということはもちろん大事なんですが、そうでないのに何でこういうことが起きてしまうのかというケースが大分たくさんお話として伺っているんですね。
 その辺りをちょっと御紹介させていただきたいんですが、これは神奈川県の男性からなんですけれども、こういうことです。別居を強いられてから八か月、妻とは全く接触していなかったにもかかわらず、妻は私からDVを受けているという一方的な主張で小学五年生の長男と小学二年生の長女を連れてDV保護シェルターに隠れてしまいました。私は、妻がシェルターに入る前に、警察に子供と引き離されていること、妻から言葉の暴力を受けていること、妻の浪費癖などを相談しました。現在、家裁で離婚及び子供との面会交流について係争をしておりますが、現在の妻の主張は、私には子供を連れ戻すおそれがあるから住所を秘匿していると主張が変わってきていますということなんです。
 それからもう一つ、栃木県の男性のケースなんですが、離婚に向け協議を開始するやさきに妻は子供を連れてDV保護シェルターに避難してしまいました。私は警察署に行き、DVの事実はなかったこと、離婚に向けて協議を開始するはずだったことなどを伝えました。すると、警察官は、そんな話は初めて聞いた、このような状況では怒るのは当然、この法律はいつも必ず後でトラブルになる、警察に言われても困るから代理人を立ててうまいことやってくださいと言われました。この訴えてきた人の感じでは、警察でもこの法律の不備は認めているのではないかと思いますということなんです。
 こういうことを見ていますと、この事例から、DV保護法が必ずしも十分な裏付けで正しく運用されているのかどうかという、非常にその辺疑問を感じるんですけれども、この辺り、本当に正しく運用されているのかということと、こういう事案があるんでしたら、こういうことをしっかりと調査する、必要な措置というのをとるお考えというのはないかどうか、お答えいただきたいと思います。
#83
○国務大臣(谷垣禎一君) いわゆる配偶者暴力防止法、これでいろんな手段が用意されておりまして、地方裁判所、地裁としては保護命令を発することができるわけですね。そのときにちゃんと、保護命令のときに限りませんけれども、ちゃんと事実認定をきちっとしてやっているのかというお問いかけだろうと思うんですね。
 それで、この保護命令なんかを出す場合には、刑罰でもってその命令の実効性を担保するという仕組みになっております。それで、そうなりますと、やはり保護命令を受ける相手に対しては、やっぱりきちっと、何というんでしょうか、手続を保障していかなきゃいけないということで、今のこの現行法も相手方の手続保障の観点から、保護命令の発令に当たっては口頭弁論あるいは相手方が立ち会うことができる審尋、問いただすわけですね、審尋の期日を経なければならないという、これが原則だということになっております。それで、相手方の主張内容も確認した上で、その要件があるかどうかを判断するということになっております。
 それから、期日が指定された場合に申立人の主張を記載した書面等の写しをあらかじめ相手方に送付するということにもなっておりますし、相手方としては発令の可否を争うための準備をすることも可能であるというふうになっております。それから、さらに、即時抗告によって上級審の判断を求めることも可能ということになっておりますから、私、手続としては、きちっと相手方、連れ去られた、相手方の、ドメスティック・バイオレンスをやったと言われている相手方の権利を十分保障する内容になっていると思います。
 その上で、今委員がおっしゃったようなことがあり得るとすれば、この事実認定の難しさというものがあるいはあるのかもしれないと思います。ただ、これは、これを出される裁判所がどういうふうに訴訟指揮をされて決定を出されるかということに関連してまいります。今、私の法務大臣としての立場からは、裁判所がこの運用を適切に行っていただいているものと考えるという以上の御答弁はなかなか難しいんですが、どういう運用かは我々もよく勉強させていただきたいと思っております。
#84
○真山勇一君 そういう今認識をお持ちということなので、できればこのハーグ条約の実施に当たって、こういうケースが多く出ているとやはり運用上に支障を来すのではないか、あるいは運用に問題があるんじゃないかということなので、この辺りの、例えば法務省として実態調査みたいなものをしていただくというようなお考えはあるかどうか、その辺伺いたいと思いますが。
#85
○政府参考人(深山卓也君) 事実認定が間違っているかいないかについての実態調査と申しましても、これは司法の世界の判断を行政がその当否を調査をするというのは、なかなか憲法上の問題などもありまして難しい面があると思います。
 したがって、法務省は制度を所管している立場ですので、制度上の改善策が考えられるのではないかというような御指摘や問題提起については今後とも真摯に受け止めていかなくちゃいけないと、こう思っております。
#86
○真山勇一君 ちょっと難しい、立場の違う御質問で済みません、ありがとうございました。
 それからあと、さらに、やはり今申し上げたようないろいろな、何でこんなことが起きてしまうんだろうかというような、そういう例を幾つか御紹介したんですが、こういうふうな突然、その協議中あるいは本人に自覚がないのにこういう配偶者が子供とともにどこかへ行ってしまう、隠れてしまう、特に多いのはやはり保護シェルターというところに入るケースがかなりの数であるんですけれども、その背景としてやはりある問題点がちょっと指摘されているわけですね。
 こうしたことも言われているのでこれをちょっと確認させていただきたいのですが、このDV保護法の運用、これに当たって、まず子供を連れ去ってからうそでもいいからDVを申し立てなさいと、あるいは離婚したいと思ったら相手を挑発して一発殴らせなさい、この間もちょっとそんなお話出ていましたけれども、その上で子供を連れ去ってDVを申請すればあなたは保護され親権も取れるぞというようなことを主張する、活動している弁護士さんもいらっしゃるというふうに聞いているんですけれども、いわゆる今回ハーグ条約の実施が現実のものになってきますと、こうした問題もこれまで言われていたということよりも、更に一段とやはり明るみというか表に出ることもあるんではないかというふうに思いますけれども、こうしたことについて法務大臣は承知していらっしゃるかどうかということと、そういうことが、もしこういうことがあったとするならば、やはり今後何かこれに対する体制というものを取った方がいいというふうにお考えかどうか、その辺りを伺いたいと思います。
#87
○国務大臣(谷垣禎一君) 今のような、委員が指摘された、相手方に一発殴らせておいてからやればうまく勝てるというようなことを言う弁護士がいると、そういうことを確かにおっしゃる方があるんですが、私自身は、現実にそういうことがあるのかないのかということも、そういうことがあるのかといろいろ聞きましたけれども、必ずしもあったという心証を持っているわけではございません。
 それで、結局、今のようなことを議論される背景といいますか、恐らく真山委員のお気持ちの中にも、先に連れ去っていった、つまり自力救済といいますか、そういうものをやった者の、何というんでしょうか、連れ去り勝ちというような事態が現実に起こっているんじゃないかというような見方、それから、虚偽の主張に基づいて家庭内暴力、その事実が認定されている、ぬれぎぬといいますか、そういうものがあるんじゃないかという問題意識をお持ちの向きもあると思うんですね。
 それで、ただ、ここはやっぱり家庭裁判所の事実判断にかかわってくる問題でございますから、先ほど深山局長が申しましたように、行政府としては単純に物を言ってはいけないところだと思います。
 ただ、私は、家庭裁判所がどういうふうにこれを判断しているかということで、片っ方の親が子供を監護していると、その監護、今現実に連れ去ってきて監護しているということじゃなくて、その監護に至る経緯はどういうものであったのかと。同意なく連れ去ったとすれば、それは一体どういうことであったのかとか、それから、双方の子供に対するやっぱり愛情の度合いとか、あるいは子供をきちっと育てていこうということに対する熱意、あるいは面会交流に対する姿勢も前向きか後ろ向きかと、こういうことも判断材料になっているのではないかと思います。あとは、養育していく能力、環境、それからやっぱりこの間うちから御議論ではございますが、子供の心情ということも大事だろうと思うんですね。そういうことをやはり総合判断をしておられるんじゃないかというふうに私は思っております。
 ただ、先ほど民事局長が答弁しましたように、私どもは制度を所管しておりますので、制度として更により良い仕組みがあり得るのかどうかということは常によく見ていかなければいけないと思っております。
#88
○真山勇一君 ありがとうございました。
#89
○森ゆうこ君 生活の党の森ゆうこでございます。先週に引き続き、質問をさせていただきます。
 このハーグ条約に基づく国内実施法に関しましては、様々な懸念がやはり存在するということでございます。非常に難しい問題が調べれば調べるほど噴出してくるというふうに感じているところでございます。
   〔委員長退席、理事磯崎仁彦君着席〕
 子供の所在発見と警察の活動について、先週は警察庁お呼びしていなくて大変失礼をいたしました。確認をさせていただきたいと思います。
 五条三項において、中央当局は、国内の関係機関から得た情報では子の所在を特定できない場合に、警察に対して所在特定のために必要な措置をとることを求めることができるとなっております。警察に対しては、先週の外務省の答弁で、行方不明者発見活動に係る措置を求めることが想定されているようですけれども、警察署への掲示、インターネットへの掲示等、行方不明者に係る資料の公表は求めないと御答弁をされました。
 この場合、行方不明者発見活動として警察は具体的にどのような措置をとることになるのか、子の所在発見のために改めて何か措置をとるということはあるのか、警察庁に伺いたいと思います。
#90
○政府参考人(山下史雄君) お答えいたします。
 お尋ねの場合におきましては、行方不明者発見活動に関する規則の規定に基づきまして、各都道府県警察におきまして、各種警察活動を通じて子等の所在特定のための措置をとることを予定をしてございます。
 規則におきましては、「警察職員は、警ら、巡回連絡、少年の補導、交通の取締り、捜査その他の警察活動に際して、行方不明者の発見に配意するものとする。」というふうに規定をしてございます。こうした活動を通じまして、子等の所在特定のための措置をとるということを予定してございます。
#91
○森ゆうこ君 特別なことをするということではないということと、もう一回、先週は外務省は、警察署への掲示、それからインターネットへの掲載等、そういう資料の公表は求めないということだったんですけれども、警察の方もそれでよろしいですね。
   〔理事磯崎仁彦君退席、委員長着席〕
#92
○政府参考人(山下史雄君) お答えをいたします。
 対象となる子等の個人情報やプライバシー保護の観点から、発見活動に際しましては、原則として当該子等に係る資料の公表を実施しない予定でございます。
#93
○森ゆうこ君 次に、改めて、海外におきましては、夫婦間といいますか、父親と母親の間における子供の連れ去りが犯罪ということになっている国もございます。各在外公館のホームページでもそのことに関して注意喚起がなされております。
 例えば、アメリカの場合は、連邦法によって罰金若しくは三年以下の禁錮又はその併科とありますけれども、私もネットでちょっと調べたんですが、州法に別途規定がある場合もあるようでして、非常に重い罪ということになっている場合もあるようでございます。
 州法で特に重い刑罰が科せられている場合はあるんでしょうか。また、そのような場合、注意喚起は行っているんでしょうか、外務省お答えください。
#94
○政府参考人(山田滝雄君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、連邦法と州法の場合で規定が異なっているケースがアメリカでは多々見られます。
 連邦法では、御指摘ございましたように、実子誘拐罪で三年以下でございますが、私どもがかかわりましたある事案におきましては、その関係する州法では親権妨害罪で十二年六か月以下という極めて厳しい禁錮刑を科し得るという、そういう規定がございました。
 こういう州法と連邦法の乖離につきましては、既に外務省のホームページ若しくは在外公館のホームページで注意喚起はしておりますけれども、ハーグ条約にもし加入させていただけるということになりましたら、改めて注意喚起の在り方を丁寧にしていきたいというふうに考えております。
#95
○森ゆうこ君 是非そのようにお願いしたいと思います。
 やはり共同親権制度というものもあり、夫婦間、父母間であっても、相手の監護権を侵害するということで非常に重大な犯罪ということを認識すべき必要があるということだと思います。
 子の連れ去りによって海外において逮捕状が出ている、あるいは刑事訴追を受けている日本人の数を把握していらっしゃいますか。特にアメリカについてはいかがでしょうか。
#96
○政府参考人(山田滝雄君) アメリカの場合は、かなり数多くのケースがあるんだというふうに承知をしております。
 例えば、FBIのホームページには子の連れ去り罪で刑事訴追を受けておられる方のリスト、顔写真が掲載をされておりまして、その中には何名かの日本人の方が含まれております。また、別途政府間のルート等で、アメリカが逮捕状を出しているかどうかというところまでは分からないところもありますが、その可能性があるんではないかというふうに思われるケースもかなりの数承知しております。
 これはアメリカ側の捜査機関の判断でございますので、その総数ということになりますと、ちょっとアメリカ側の事情を全部知っているわけではありませんが、ただ、私どもとしては、今後、適切な邦人保護を行う観点からも実態の把握に最大限努めてまいりたいというふうに考えております。
#97
○森ゆうこ君 警察庁に伺います。
 国際刑事警察機構を通じて誘拐犯として国際手配されている事案も生じているということですが、実情はどうでしょうか。
#98
○政府参考人(室城信之君) お答え申し上げます。
 国際刑事警察機構の加盟国の警察は、事務総局に要請をし、被手配者の逮捕と身柄の引渡しなどを求める赤手配、被手配者の所在発見等を求める青手配等の国際手配を行っているところであります。このうち、日本人が誘拐等で赤手配をされている事案は六件把握をしているところであります。
#99
○森ゆうこ君 日本人の子の奪取に係る犯罪につきまして外国から直接捜査について協力を求められた場合、我が国としてはどのような措置をとることになるのか、法務省にお聞きしたいと思います。
#100
○政府参考人(稲田伸夫君) 一般的な取扱いについて御説明を申し上げますが、外国からいわゆる捜査共助の要請がありました場合には、国際捜査共助等に関する法律などがございますし、また、我が国は一部の国との間で刑事に関する共助に関する条約を締結しておりまして、この法律あるいは条約に基づいてこの共助を行うか否かを判断することになります。
 この場合、国際捜査共助等に関する法律では、共助に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本の法令によっても罪に当たることを求めるいわゆる双罰性が要件とされているところではございます。ただ、他方で、先ほど申し上げましたように、条約を締結している国、現在ではアメリカでありますとか韓国、EUなどの国と条約を締結しておりますが、それぞれの条約ごとに若干の差異はあるものの、捜査共助の要件が一定程度緩和されておりまして、例えば米国との間では、令状による差押え等の強制措置が求められる場合以外にはこの双罰性は不要であるというふうに条約上はなっておるところでございます。
 いずれにいたしましても、これら法律、条約の要件を満たした場合、共助に必要な証拠の収集に関しまして、例えば関係者の取調べ、実況見分や検証、あるいは任意又は差押え等による書類その他の物の取得などを実施し、それらの結果得られたものを要請国に提供することができることとなっているところでございます。
#101
○森ゆうこ君 今の問題に関連してですけれども、今審議をしておりますこの実施法上の五条の手続により、外務大臣あるいは警察が得た子、子と同居している者の所在に関する情報が提供される可能性もあり得るのか、外務省と警察庁にそれぞれ伺います。
#102
○政府参考人(新美潤君) 外務省についてお答え申し上げます。
 今委員から御指摘ありましたハーグ条約実施第五条の手続により外務省が提供を受けた情報につきましては、この同条の第四項におきまして、当該情報を提供し得る場合について限定的に定めております。それ以外の場合に情報を提供することは許されません。これは、例えば子供又は子供を連れ去った者がDV被害者であるような場合に、その居住者がDV加害者に知られることによって更なる危害が及ぼされるというような事態等を生じさせることのないよう、その所在に関する情報については厳格に管理をするためでございます。
 この同条の四項には外国捜査機関への提供は規定されておりませんので、外務大臣から中央当局として外国の捜査機関に情報を提供することは想定しておりません。
#103
○政府参考人(山下史雄君) お答えをいたします。
 ハーグ条約実施法第五条三項等の規定に基づき警察が入手する子等の所在に関する情報というのは、あくまでハーグ条約実施法の用途に資することを目的としております。相手国やICPOへの提供等、そういったことでの使用をすることは想定をしてございません。
#104
○森ゆうこ君 大臣に伺います。
 今お話、いろいろ議論させていただきました。日本がハーグ条約を締結した場合、海外における日本人に対する刑事訴追への影響について、外務大臣は四月四日の衆議院本会議において、日本への子の連れ去り事案について刑事訴追されるか否か等は当該国の関係機関の判断によるが、条約に基づく子の返還手続が利用可能となることで、残された親が告訴しない、あるいは告訴が取り下げられて刑事訴追されなくなるといったことはあり得る旨の答弁をしております。
 子の連れ去りによって、海外において日本人に対して逮捕状が出る、あるいは刑事訴追されるといった事態について、政府としても、今やり取りをさせていただきましたけれども、今後注視していく必要があると考えますが、法務大臣の御見解はいかがでしょうか。
#105
○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほどからの御議論のように、子の連れ去りが犯罪になる、逮捕される、勾留されるということがあり得る、しかも、かなり重罰をもってそういうことが掛かってくるという場合があり得るわけですね。
 それで、今、外務大臣の御答弁のようなことも十分あり得ると思いますが、今度の法律に関連して言えば、二十八条第二項第三号で返還拒否事由の判断においても考慮することが必要になることでございますので、先ほど来、警察も外務省もそれぞれ情報をきちっと収集するのに努めるということでございますが、私どもも御一緒になってその情報をきちっと把握して、何というんでしょうか、この手続が誤りのないようにしていくように努めたいと思っております。
#106
○森ゆうこ君 今大臣から御説明があったんですが、法務省にもう一回確認させていただきたいんですけれども、海外においては告訴を取り下げることを条件にして子供を返還する、訴追しないという当局の保証の下に子供を返還するといった例もあるようでありますが、このような条件や保証は本当に守られるとは限りません。我が国の場合、どのような運用が想定されているんでしょうか。
#107
○政府参考人(深山卓也君) 今御指摘のとおり、他の締約国では、アンダーテーキングと呼ばれていますけれども、事前に、子の返還申立事件が係属する裁判所に対して一定の義務を負う、例えば告訴を取り下げるとか刑事訴追を求めないといった約束を裁判所にして、裁判所がそれを考慮して返還の可否を決めるというようなことが現実にあるというふうに聞いております。
 我が国でこの手続が実施された場合にも、そういう約束を申立人がする、あるいは述べるということはもちろんあり得ることだと思いますが、それが法的に必ずそうなるという担保がない点も御指摘のとおりでございますので、どこまで信用できるのかというのはそれぞれの局面で違うでしょうけれども、本当に取下げになるか、あるいは逮捕状が撤回されるかという点について、最終的にはその家庭裁判所がどういう認定をするかということに懸かってくると思います。したがって、そういう申出があったということを、それだけで信用して返還の可否を決めるということではなくて、個別の事案でそのような約束がどこまで信用できるかということも含めた判断を裁判所がしていくということになるんだろうと思います。
#108
○森ゆうこ君 最後に、大臣に質問をさせていただきます。
 この法律の目的、第一条に規定されております子供の利益に資することを目的とするということになっております。改めて、親子法制の違い、あるいは、やはりただでさえ夫婦間の紛争といいますか、それが国境を越えてということで大変困難なんですけれども、何よりも子供の利益に資することということで、大臣としてはどのような御所見か最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#109
○国務大臣(谷垣禎一君) 子の利益というのは一般的に言うのは大変難しいと思いますが、あえて抽象的に申し上げれば、親の利害とか親の思惑というのではなくて、そういった親の都合や思惑を捨象して、子供自身の一番良い育ち方をしていくにはどうしたらいいかということが子の利益ということなのではないかと思います。
 これを具体的にどう生かしていくかというのはそれぞれ個々別々でございますし、また、家族の在り方というのはそれぞれの国の価値観や何かも大きく反映するところがあって、必ずしもぴたりと各国で一致するわけでもないと思います。
 しかし、こういう国際化時代でございますから、この法律はこういうことでスタートして運用させていただきますが、より改善点がないのか、時世の変化があるのかどうかというようなこともよく見ていく必要があろうかと思っております。
#110
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 前回に続きまして、運用の問題を中心に質問をいたします。
 まず、中央当局の情報収集にかかわって最高裁にお聞きいたします。
 裁判所の嘱託によって外務省が相手国の中央当局に情報提供を要請をいたしますが、その結果、調査嘱託を採用した情報について十分なものが得られないという場合があると思います。そういうときは裁判所として日本の外務省に独自の資料収集を求めるということも必要かと思いますが、この点はいかがでしょうか。
#111
○最高裁判所長官代理者(岡健太郎君) お答えいたします。
 裁判所が外務大臣に対して裁判の資料を依頼する方法といたしましては、法八十三条の調査の嘱託によることとなります。裁判所から調査の嘱託を受けた外務大臣においては、その裁量により様々な方法で得られた情報を回答されることになると考えられます。
 裁判所といたしましては、裁判所からの調査の嘱託に対しては、外務省においてできるだけ有益な資料が得られるよう法の趣旨に沿った適切な対応がされるものと考えております。
#112
○井上哲士君 そうした裁判所の要請にこたえられるように体制と対応を是非外務省に強く求めておきます。
 その上で、外務省にお聞きしますが、在外公館及び中央当局が、今後、この本実施法に係る具体的な業務を遂行することになります。その際、DV被害者とその子の保護の立場から適切な支援を担保する必要があります。
 例えばDV被害者が相談に来た際の対応、それが連れ帰りというような事態にならないようにする。そしてまた、そういう方には特別に、こういうハーグに我が国は加盟したということを、一般論じゃなくてしっかり周知するということも必要だと思いますし、これはハーグ条約によって常居所地国に戻ってきた片親の方に対する、例えば在留資格であるとか就労であるとか法律的なアドバイスであるとか、こういう支援は今まで全くやったことがない初めてのことなわけですね。
 そういうことでいいますと、連れ帰りになる以前の段階から、返還をされた場合も含めて、どういう支援をするかというガイドラインがしっかり決められることが必要だと思います。その点の認識及びその作成に当たっては、厚生労働省とか男女共同参画局とか、それから民間の支援団体のネットワーク機関とか様々なところ含めたワーキングチームを作成してガイドラインを作ることが必要かと思いますが、この点についていかがでしょうか。
#113
○政府参考人(新美潤君) 今委員から御指摘ありましたように、二点あると思います。
 一つは、まず、中央当局として、主として日本で中央当局が活動する上で、DVの被害者の方に対していろいろ保護を行う、そこについてのガイドライン、今御指摘ありましたが、まさにそのDV被害者を保護していくためにどういう配慮が必要かということにつきましては、知見を有する関係者、関係省庁、そしてDVの被害者の支援団体の方々等とも協議をいたしまして、中央当局として適切に対応できるよう考えていきたいと思います。
 もう一点、在外、むしろその子供あるいは家族が元の常居所地国に戻ってからの対応につきましては、これは、今まだハーグ条約には入っておりませんけれども、邦人保護という観点からまさに在外におけるDV被害者の方の保護、相談等については、在外公館の事務として今までもやってきたわけでございます。
 そういう観点から、まだハーグ条約には入っていない現在で、邦人保護という観点から昨年四月に家庭問題対応全般についてのマニュアルというのを整備したところでございますが、ハーグ条約締結の観点からは、今後、条約発効までに具体的な条約の実施、運用の整備にかかわる検討が進められていく中で、必要に応じてマニュアルの修正を行うということを考えております。
 また、こうした機会に、関係省庁あるいは支援団体の知見を活用していきたいと考えております。
#114
○井上哲士君 次に、出国禁止命令に関連してお聞きします。
 子の返還を申し立てられたことによって、相手方が更に海外に連れ出すというケースもあるでしょうし、同時に、その申立人が住所などを知って今度は子を連れ去ってしまうと、こういう危険もあるわけですね。
 百二十二条で出国禁止命令が定められておりますが、一方の当事者の申立てというふうになっておりますから、今のようなケース、返還の申立人もそれから相手方もいずれもこの百二十二条に基づく申立てができると、こういうことでよろしいでしょうか。
#115
○政府参考人(深山卓也君) 御指摘のとおりでございます。
#116
○井上哲士君 そこで、じゃ、そういうことが外国にいる親からの面会交流援助についてどうなるのかという問題です。
 この面会交流援助について面会の命令が出ますと、百四十九条二項の準用規定によって、この六十二条四項二号に基づく返還命令の場合と同じように、申請者は住所の閲覧、謄写ができるようになりますから住所が分かるわけですね。そうしますと、その面会の場だけではなくてそれ以外、その場も含めて申請者が子を国外に連れ出すんじゃないかと、こういう危惧がありますし、そういう心配の声をお聞きをしているわけですね。
 ところが、この百二十二条の出国禁止命令は子の返還の申立事件についての規定ですので、この面会交流援助については適用されないということになっていますが、私はいろんな危惧の声を聞きますと何らかの法整備が必要かと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
#117
○政府参考人(深山卓也君) 今御指摘のあったとおり、出国禁止命令の制度は子の返還の申立事件が係属している場合にのみ用いることができますので、面会交流の事案では用いることができません。これは、面会交流を行うための家事調停事件とかあるいは家事審判事件、国内の事件ですが、こういったものは性質上、相応の時間を掛けて話合いや審理が行われるというのが通常ですので、こういう話合い等が行われている間、子の出国を禁止するということになりますと、場合によっては年単位で紛争が係属することもありますので、子の出国の自由、これも一つの憲法上の人権ですので、に対する過度の制約となりかねないという配慮から面会交流の事案では用いることができないということになっているものでございます。
 ただ、そうはいいましても、面会交流をすることになったら、その機会を利用して子を連れ去るおそれがあるんじゃないかと、あるいはそういう事案もあり得るのではないかという御指摘でございます。
 この御懸念につきましては、中央当局である外務省において、適切な第三者の仲介を得るなどして安全な形で面会交流が実現するように、事案事案に応じて連れ去りができにくい第三者を関与させた面会交流をそういう危険がある事案については行っていくという形で対処をしていくという予定になっているものと認識しております。
 法務省としても、外務省等々の関係機関と協力をして今実務上の問題点の協議を既に進めておりますけれども、その中でもこういった細かな配慮についても更に議論していきたいと思っております。
#118
○井上哲士君 私は、やはり法的な担保も必要かと思っておりますが、そういうことが起こらないような様々な取組を求めておきたいと思います。
 次に、最高裁に代替執行についてお聞きいたします。
 国内における子の引渡しの直接強制の執行について、様々な議論はありますけれども、一定の要件の下で今直接強制が行われておりますが、ハーグ条約に関する件の場合はこの本法案で、先ほども議論ありましたように、細かな規定がありますが、国内では明文規定がありません。
 まず、これまで国内事案についての強制執行はどういうふうにやってきたのか、例えば最高裁規則などがあったのか、執行官の判断でやられていたのか、そこの実態と、それから、この本法案が成立しますと国内事案のそういう強制執行の取扱いをどのように対応していくのか、二点、いかがでしょうか。
#119
○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) お答えいたします。
 国内の子の引渡しの強制執行につきましては、動産の引渡しの強制執行に関します民事執行法百六十九条を類推適用するとの解釈に依拠しまして直接強制の方法により行われているところでありますけれども、子がかかわる執行の特質に配慮した明文の規定がない中で、やはり現場の執行官は、子の利益にも配慮した適切な執行を実現するために苦心をしてきたというところであります。
 実際の運用におきましては、直接強制とはいえ、債務者が任意に子を引き渡すよう説得することを基本として有形力の行使を極力控えるとともに、有形力の行使が必要となる場合にも、子の人格の尊重や子の心身への影響も考慮してその程度や方法等について慎重な配慮がなされてきたというふうに考えています。この件につきましては規則等あるいは通達等はございませんが、むしろ現場における執行官等の協議会という形で適切な運用を確保してきたというところでございます。
 ところで、ハーグ条約実施法におきましては、子の利益を保護するという観点から執行官の権限について細やかな規定を置いておられますので、これらの規定は、同じく子を対象とする執行である国内の子の引渡しの強制執行においても十分参考になるのではないかというふうに考えております。
#120
○井上哲士君 この間の答弁では、ハーグ条約事案については執行官のマニュアルが作成されるというふうになっております。先ほどの民事局長の御答弁と今の御答弁でも参考にするということでありますが、一定の違いもあるという御答弁もあったわけですが、このハーグ条約に基づくマニュアルはそのまま適用するのか、また別途国内事案についてもそのようなものを今後まとめる予定があるのか、いかがでしょうか。
#121
○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) このハーグ条約に関しますマニュアルにおいてはやはり執行官の権限について細かな規定が法律で設けられますので、その趣旨を実現するものとなるように作ってまいるということになります。そうしますと、子の利益に十分配慮しながら執行を行うという観点では、国内の事案においても子の配慮という部分について共通する部分がかなり出てくるのではないかというふうに思っています。
 国内におきましては既に百二十件、毎年申立てがあるという実績がございますし、協議会等を通じて運用の改善を図ってきているところでありますが、今後、国内について別途マニュアルを作るかどうかという点につきましては、ハーグ条約の下における運用などを見ながら検討してまいりたいというふうに考えております。
#122
○井上哲士君 いずれの場合もまさに、今もありましたように、子の最善の利益がしっかり確保されるような運用を求めたいと思います。
 最後に、大臣にお聞きいたします。
 衆参を通じて、条約実施法全てを通じて最後の質問ということになりますので、これやはり初めての制度でありますから、いろんな議論がありましたけれども、今後様々なやはり気が付かなかった問題も出てくると思います。子の最善の利益に基づく適切な運用を確保するとともに、運用状況についてしっかり調査、そして検証し、国会にも報告していただいて、この運用を通じて明らかになった問題をやっぱり速やかに是正をすると、こういうことが必要かと思いますが、今後の運用と、そして見直しについての御所見をいただきたいと思います。
#123
○国務大臣(谷垣禎一君) 今、井上委員御指摘のように、初めての経験でございますから、やってみたら思わざるところというのも出てくる可能性もございます。
 ですから、しかるべき時期に、中央当局の仕組みはこれでいいのか、あるいは裁判所の運用がどうなのかということをきっちり調査、検証いたしまして、その結果に基づいて制度の見直しが要るのか要らないのかと、こういったことも考えていくのが当然であろうというふうに思っております。
#124
○井上哲士君 終わります。
#125
○委員長(草川昭三君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#126
○委員長(草川昭三君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。
 この際、真山君から発言を求められておりますので、これを許します。真山勇一君。
#127
○真山勇一君 私は、ただいま可決されました国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案に対し、民主党・新緑風会、自由民主党、公明党、みんなの党、生活の党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読させていただきます。
    国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行後、当分の間、一年ごとに、国境を越えた子の連れ去り事案の実態及び本法の運用実態を調査、検証し、その内容を国会に報告するとともに公表すること。また、本法の施行後三年を目途として、本法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#128
○委員長(草川昭三君) ただいま真山君から提出をされました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#129
○委員長(草川昭三君) 全会一致と認めます。よって、真山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。
 ただいまの決議に対し、谷垣法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。谷垣法務大臣。
#130
○国務大臣(谷垣禎一君) ただいま可決されました国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#131
○委員長(草川昭三君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#132
○委員長(草川昭三君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
 午後一時十分に再開することとし、休憩をいたします。
   午後零時十分休憩
     ─────・─────
   午後一時十分開会
#133
○委員長(草川昭三君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣府大臣官房審議官杵淵智行君、金融庁総務企画局参事官小野尚君、法務省民事局長深山卓也君及び中小企業庁事業環境部長鍜治克彦君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#134
○委員長(草川昭三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#135
○委員長(草川昭三君) 民法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#136
○有田芳生君 民主党・新緑風会の有田芳生です。
 第三者保証を禁止する民法の改正、これが明らかになってきたときに、新聞だけではなくテレビなどでも大きく話題になりました。それだけではなく、町場でも酒場でも非常に大きな話題になったということは、この民法改正というのが非常に私たち市民にとっても国民にとっても身近なものであり、多くの人たちが納得する方向での改革だということが広く知られるようになったことだというふうに思います。
 是非ともこれを実現しなければならないという立場から質問させていただきたいんですが、まず最初に、この民法改正案を提出した理由は何か、そのことからまず御説明をいただきたいと思います。
#137
○小川敏夫君 お答えいたします。
 中小企業等が金融機関等から融資を受けるに当たりまして、当該企業の経営者本人のほか、その家族、親族、従業員等が連帯保証人あるいは保証人となることを求められることが実務上多くなされておりますが、こうしたいわゆる第三者保証につきましては、まず一つとして、金融機関等は、本来、当該企業の収益性、事業の採算性を査定して融資すべきでありまして、経営に関与していない第三者の資産を債権の引き当てとすべきではないということ。二番目としまして、保証人は主債務者からの懇請に基づいて、対価を得ることもなく、やむなく、かつリスクを客観的に判断し得る状況にないままに保証契約を締結することがほとんどであること。三に、上記のような事情によることから、保証人は保証契約により負うこととなる責任を十分理解しないままに保証契約を締結していることが多いと見られること。四番目に、客観的リスク判断もなく、かつ負担する責任についての理解も不十分であることから、保証人としては予期せぬ債務の履行を求められ極めて酷な状況となることが多く、そのために保証契約が、自殺、連鎖倒産、サラ金からの借入れ、夜逃げ、家族離散など、保証人とその家族の生活を破綻させる原因となっていることが多く見られるなどの問題があると認識しております。
 このような第三者保証の不当性を踏まえ、金融実務上では、金融庁の監督指針や中小企業庁による通達により企業に対する融資や信用保証において第三者保証を原則禁止とする取組がなされているところであります。また、法制審議会において現在審議されている民法債権法改正におきましても、個人保証の制限が取り上げられているところであります。
 今回の改正により、単なる行政上の取締りではなく、民法改正によって企業等に対する事業融資における第三者保証を原則無効とすることを広く国民に対し明らかにすることによって、保証債務被害を減少し、本来あるべき事業融資を確立するということを期したものでございます。
#138
○有田芳生君 私自身、かつて保証人になってくれということがありまして、それをきっかけにして人間関係にひびが入るというようなことも経験しましたけれども、それだけではなくてもっともっと深刻な事態がこの社会に、人間破壊というような実態も含めて生じている。そのことについては後ほどまたお聞きをしたいと思いますが、しかし、金融機関の方からすれば、第三者保証が禁止されてしまうと貸し渋りが生じるんではないかと、そういうような懸念もありますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
#139
○森ゆうこ君 有田委員にお答えをいたします。
 金融庁による監督指針等の下、第三者保証を原則として徴求しないとの運用は既に金融実務においても定着しているところであります。本改正は、金融庁の監督指針等の趣旨を推し進め、民法上無効としたものであります。
 また、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の平成十六年改正により、法人がなす動産の譲渡や債務者が特定していない将来債権の譲渡について登記によって対抗要件を備えることが可能となったこと、中小企業者が保有している在庫や売掛債権を担保として金融機関が融資を行う際、信用保証協会が債務保証を行う流動資産担保融資、いわゆるABL保証制度を中小企業が進めてきたこと等によりまして、現在の金融実務においては、平成二十年以降、公的金融機関が第三者保証人を徴求することはなくなり、さらに、平成二十三年七月以降、民間の金融機関においても第三者保証人を徴求することが原則として禁じられ、その一方で新たな融資手法による人的保証に頼らない実務慣行が確立されつつあります。
 したがって、本改正により第三者保証を原則禁止としたとしても、そのことが貸し渋り等を助長する新たな要因となったり、中小企業の資金調達の状況に大きな変化をもたらしたりするようなことはないと考えております。
#140
○有田芳生君 この問題の議論というのは、例えば本人が保証人になってもいいと言うならば構わないじゃないかというようなことも含めて様々な議論がありますけれども、次にお聞きをしたいのは、第三者に限らず経営者本人の保証債務も制限すべきではないかと、そのような意見もありますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
#141
○前川清成君 まず、結論から申し上げれば、私は将来的には本人保証も制限するべきだと思っておりますし、それは今の与党の基本的な政策の方向だろうとも思います。
 ただ、今回は、現実の実務において経営者本人の保証が広く行われている、今直ちに経営者本人の保証も禁止してしまったならば信用の収縮が起こってしまうのではないかということで、あえて今回は見送ることとさせていただきました。ただ、昨日の参考人質疑の中にもありましたが、経営者御本人も家族もいらっしゃいます。あるいは、経営者御本人が連帯保証責任を負うことによって全てを失ってしまう、再チャレンジができないと、こういう事態は避けるべきではないかと思っています。
 それと、もう一つ、社会の変化というのも是非先生方にお考えをいただきたいと思います。
 かつて日本がまだまだ発展途上国だった、高度経済成長でこれから上っていったと、そういう時代であれば、例えばですが、アメリカやヨーロッパに日本のお手本があって、それをまねすることでそこそこの経済成長を得ることができたと思います。しかし、今、日本はあらゆる分野でトップランナーを走っています。そうだといたしますと、今、日本はお手本がない、お手本がないけれども、世界で日本しかできない、日本しか作れない、そういう技術、あるいはそういう商品を作り出していかなければ今の豊かさは維持することはできません。
 飛行機で三時間行けば月給三万円で働く十億人の労働者がいるわけですから、日本でしか作れないもの、日本でしかない技術、そういうのを開発しようとしますと、当然のことながらリスクを伴います。リスクに挑戦した結果、経営者本人が連帯保証で全てを失ってしまうとなると、誰もリスクに挑戦しようとしません。それでは今の豊かさを維持することができないのではないかと。
 私は、日本の経済成長を考えるに当たっても、経営者本人の保証、これは制限していかなければならないというふうに考えております。
#142
○有田芳生君 私は最初に、この第三者保証を禁止する民法改正が町場でも非常に話題になっているということをお伝えをいたしました。それは取りも直さず、やはり私たちの社会生活の身の回りで様々な問題が生じている、その反映としてあちこちで話題になっているんだろうというふうに判断をいたします。
 そこで、最高裁にお聞きをいたしますけれども、第三者保証にかかわる被害に関して破産件数はどのぐらいあるのか、それを推移とともにお示しいただきたいと思います。
#143
○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) お答えいたします。
 最高裁で把握している統計によりますと、平成二十四年に自然人、個人について破産が申し立てられた件数は約八万三千件でございます。この件数は、平成二十年に約十三万件でございますので、ここ数年は若干減少傾向にございます。ただ、このうち破産に至った原因については統計を取っておりませんので、お尋ねの保証債務が主たる原因となった破産の事件数がどれぐらいあるかということについては把握しておりません。
#144
○有田芳生君 人間の生き死ににかかわる原因を探るというのは非常に重要な課題だというふうに思いますけれども、今破産申立てに至った原因については統計を取っていないというお話でしたけれども、それはなぜ取らないんでしょうか。
#145
○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) 統計データにつきましては、やはりある程度客観的に識別ができると、一義明確性といったものが必要かと思いますが、この破産の原因につきましては、それが保証債務が主たる原因となっているのか、あるいは御自身の借入金になっているのかと、いろいろと判断を必要とするものが出てくると思います。それから、どれくらい詳しくその原因を分析していくのかといった点もございまして、その辺りについては統計を取っていないということでございます。
#146
○有田芳生君 発議者の方から何か追加することはないでしょうか。
#147
○前川清成君 ありがとうございます。
 まず第一点に、今最高裁の方から自然人の自己破産件数が八万三千件というお話がありましたが、貸金業法が改正される以前、二〇〇三年は二十五万件でしたので、本当に隔世の感があると思います。
 その上で、破産原因は調査していないということですが、弁護士会は各地の地方裁判所の御協力をいただいて、確定した破産事件の記録の調査をしております。私も、若手の弁護士のころにはそれに参加をさせていただきました。記録を見て、破産申立書を見て、その中で何が原因で破産したかというのを確定することができます。それを統計を取っているわけですが、昨日の参考人、新里参考人のお話によっても二五%が保証債務が原因だということでございました。今およそ八万件が自己破産ということですから、その四分の一ですので、毎年毎年、自己破産の件数が減ったとはいえ、毎年二万人の方々が保証が原因で破産をしておられると。私は、その数自体は物すごいものがあるのではないかと、こんなふうに思っています。
#148
○有田芳生君 最高裁にもう一点確認をしたいんですけれども、今、前川委員のお話にありましたように、弁護士会が調査をしてそういう数字が出ているということが明らかになっているわけですけれども、最高裁がそういう弁護士会等と協力をし合って、そういった統計について精密な理由を明らかにしていくという方向性は考えられないんでしょうか。
#149
○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) 弁護士会の調査は、確定した破産の記録について、これはたしかサンプルに基づいて原因を調査したんだろうと思います。これにつきましては、裁判所の方も、弁護士会からのお申出に対して御協力をするということでその原因の調査に協力いたしております。そういう形の調査というのは今後もあり得るんじゃないかと思います。
#150
○有田芳生君 次に、内閣府にお尋ねいたします。
 今、破産件数についてお聞きをしましたけれども、第三者保証にかかわる被害について、命にかかわる、自殺者、これはどのぐらいの方がそういう決断、行為を取られたというか、その数については把握されていますでしょうか。
#151
○政府参考人(杵淵智行君) お答えいたします。
 警察庁の自殺統計では、第三者保証に係る自殺者数の項目はございませんが、関連するものと考えられるものとしては、連帯保証債務による負債を原因、動機とするものの項目はございます。
#152
○有田芳生君 今すっきりとお答えいただいたんですけれども、弁護士会でもこういう問題は恐らく調査をされているんでしょうか。いかがでしょうか。
#153
○前川清成君 ごめんなさい、私も弁護士会会長をまだしたことがありませんのでよく分かりませんが、これは警察の記録に基づかないとなかなか調査できないと思いますので、恐らく弁護士会ではやっていないと思います。
#154
○有田芳生君 最後に金融庁にお尋ねをしたいと思いますけれども、第三者保証に関してこれまで政府はどのような対応をされてきましたでしょうか。少し詳しく教えていただければと思います。
#155
○政府参考人(小野尚君) お答え申し上げます。
 金融庁といたしましては、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立を図るため、平成二十三年七月に金融機関向けの総合的な監督指針を改正いたしまして、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を認めない旨を明記したところでございます。
 この監督指針の改正は、経営者以外の第三者の個人連帯保証につきまして、直接的な経営責任がない第三者に対し債務者と同等の保証債務を負わせることが適当なのかという御指摘等も踏まえ、行ったものでございます。
 他方、第三者の個人連帯保証を一律に禁止しますことは中小企業における円滑な資金調達の支障となるおそれがあるため、必要最小限度の例外を認めることとしております。具体的な例外の範囲につきましては、一つは実質的な経営権を有しておられる方、二つ目は事業に従事する配偶者の方、三番目は事業承継を予定されている方、四番目は自ら連帯保証の申出を行った方など、経営者に準ずる者に限定することとしているところでございます。
 これは、第三者保証人の徴求を原則として禁止している公的保証機関でございます信用保証協会と同様の取扱いでございまして、金融の円滑化に支障を来さないために最低限必要なものとの考えに基づくものでございまして、このような対応によりまして第三者保証人の原則禁止ということと金融円滑化のバランスの確保を図っているところでございます。
#156
○有田芳生君 第三者保証を禁止する民法改正というのが、一人一人の人生、生活に大きな影響を与えるというレベルだけではなくて命そのものを守ることに深くかかわっているということは、この民法を改正することが日本社会の質をより人間的なものに変えていくものだというふうに私は考えておりますので、何としてでもこの民法改正を実現しなければいけないと、そのことを強調いたしまして、少し時間がありますけれども質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#157
○磯崎仁彦君 自由民主党の磯崎仁彦でございます。時間も限られておりますので、早速質問に移らさせていただきたいと思います。
 まず最初に、私ども自由民主党におきましても、大きな方向としては、私どもの政策集でありますJ―ファイルの中で、個人保証に依存しない中小企業金融の促進という、このことを掲げておりますので、大きな進むべき方向としては基本的には同じ方向を向いているということはまずお話をさせていただきたいと思います。ただ、その前提に立って、やはり今回の法案につきましては幾つか懸念すべきところがあるということで質問を進めさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、先ほどお話ございましたように、今まさに法制審議会の民法部会の中で議論が行われている内容でございます。今年の二月の二十六日に決定をした民法の改正に関する中間試案におきましては、保証人保護の方策の拡充ということで幾つか論点があるその中で、個人保証の制限、それから契約締結時の説明義務、情報提供義務、それから主たる債務者の履行状況に関する情報提供義務、その他の方策ということについて、この大きな四つの項目いずれにつきましても更に検討を進める必要があるという、そういう中間試案になっているというふうに認識をしております。
 そういった意味では、まだまだ議論すべきことがあると、議論がまだ最終的な局面には至っていないという中での今回の中間試案というふうに私は理解をしておりますが、この段階で第三者保証の禁止のみを取り上げて民法改正をする、そういった改正案を今回提出をされたそのことの理由について、まずお聞かせをいただきたいというふうに思います。
#158
○小川敏夫君 委員御指摘のとおり、法制審議会の中間試案におきましては引き続き検討ということになっております。前向きなニュアンスも感じるんでありますが、しかし、まだ検討ということでございますので、結論を得るまでには大分時間を要するのかなと、それから結論そのものもまだ確定的ではないのかなというような受け止め方をしておりますが。
 この第三者保証につきましては、やはり被害といいますか、あるいは大きな不利益を被る保証人が出るということが現に生じておりますので、やはりそうした被害あるいは思わぬ不利益が生じることを防止するというのはやはり急いだ方がいいのではないかということを考えまして、様々な保証の形態がありますが、特にこの法案のこの形態の第三者保証につきましてはやはり速やかに対応したいと、このような考えで提案させていただいた次第でございます。
#159
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。確かに第三者保証をめぐって非常に悲惨な状況が起こっているのも事実かと思いますので、可及的速やかに対応すべきというのはそうだと思いますけれども、ただ、後ほどお話をさせていただきますように、やはり、今回の法案という、この法案によってどういう状況が発生するかということも恐らく十分に加味をしなければいけないなというふうに思っておりますので、それについては後ほどまた御質問をさせていただきたいと思います。
 二点目は、今回提案理由にあります、金融実務について既に定着をしているという、そういう表現がございました。そのところをちょっと読ませていただきますと、このような保証契約、とりわけ経営者本人以外の第三者を保証人とする第三者保証の不当性に関しては既に広く認識されるに至っており、平成十八年以降、中小企業庁においては信用保証協会が行う保証において第三者を保証人として求めることを原則として禁止しており、また、平成二十三年には金融庁の監督指針によって実質的に第三者保証が禁止されるなど、既に第三者保証を徴求しないことは金融実務においても定着しているところですと。これが提案理由の一つにもなっていると。
 これは冒頭発案者からお話があったとおりでございますが、この中で私は、今回の法案の内容と今の金融実務の、全く同じ内容で今回提案がされているということであれば、金融実務において既に定着をしている、この提案理由はまさしくそのとおりだろうというふうに私は思います。
 ただ、やはり、先ほど金融庁さんの方からもお話ありましたように、中小企業庁における取扱いにおきましても、金融庁の監督指針におきましても、監督指針は基本的に中小企業庁の取扱いを引用しているわけでございますが、先ほど言われたように、例えば実質的な経営権を有している者、あるいはその配偶者、それから事業承継予定者、あるいは自ら進んで支援をする、こういった人については例外ということでこの中小企業庁の取扱いの中では扱っていると。
 したがいまして、今回発議者が提案をされているいわゆる経営者の範囲と今実務的に扱われているいわゆる経営者の範囲、この中には、どれほど違うかというのはこれはあるかと思いますけれども、全く同じ状況で実務が行われているわけではないという、そういう現実があるというふうに私は思っておりますが、この点についての認識はいかがでございましょうか。
#160
○前川清成君 ありがとうございます。
 それで、御質問にお答えする前に一点だけ今の小川発議者の御答弁に追加させていただきたいんですが、先ほど申し上げたとおり、二五%、自己破産者の二五%が保証、連帯保証が原因でございます。ということは、毎年毎年二万人の方々がこれ破産しているということです。あるいは、ずっと三万件、三万人自殺者が超えておりました。去年、ようやくこれが三万件を切ったわけですが、うち八千人程度が経済的な理由を原因とする自殺者でございます。そのうちの連帯保証が何件なのか私ちょっと手元に資料がありませんが、やっぱり何千人かの方々がこの連帯保証が原因で自らの命を絶っておられると、これが毎年毎年起こっていくわけですから。法制審は二十七年まで審議を続けて、それからもう一度パブリックコメントを取ると、こういうことになっていますので、民法の改正自体は何年も先になってしまいます。そうであれば、毎年毎年何万人もの破産者や何千人かの自殺者をそのまま放置していいのかということは、恐縮ですが追加をさせていただきたいと思います。
 その上で、お尋ねをいただいたのは、金融庁の監督指針と今回の提案との間に差異があるではないかと、こういうことかと思います。その点は、磯崎委員の御質問にもありましたが、程度の問題としてはほぼないのではないかと思います。これは、金融庁の監督指針は、例えば実質的な経営権を有している者とか、あるいは事業承継予定者とか、自ら申し出た者についてはどんどん第三者保証をさせなさいよという監督指針ではなくて、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする方針と、これがあって、ただし例外的な場合として、これこれこういう場合には本人の自発的な意思を確認した上でやむなく取ってもいいですよと、こういう趣旨だというふうに私は理解をしております。
 昨日、千葉銀行、参考人でお越しになりました。ちょっと数字が不正確かもしれませんが、貸し先がおよそ三万三千あって、その中でいわゆる第三者の連帯保証を徴求しているのが五十五件というふうにおっしゃっておられたと思います。そうであれば、今の実務においても九九・何%かは第三者保証を取っていないんだと。
 そうであれば、今回、民法という基本法ですので、先生も御案内のとおり、民法の中に、例えばですが、経営者本人の健康上の理由のため事業承継予定者が連帯保証人になるとか、こういったことを書き込むわけにはいきません。やはり基本的な概念を書き込むというのが基本法だろうと思いますので、そんなこともあって今回のこういう書きぶりにさせていただいたということで御理解をいただけたらと思います。
#161
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 民法の中にということになると、逆に、後で申し上げますように、民法の中で規定すべきものなのかというふうな話になるわけですが。
 その前に、私は、やはり金融実務ということでなぜその例外を認めなければいけないのかという、やはりそこにある程度の重さはあるんだろうなというふうに思っております。それはなぜかと申し上げますと、昨日、参考人、三名の方に来ていただきまして御意見を伺いました。日弁連の弁護士の先生、それから貸し手側、借り手側、この三者の方でございますが、やはり発議者の皆さんも同席をされていて聞かれたように、やはり全国地方銀行協会の大久保参考人、それから神奈川県の商工会の関戸参考人、お二人からやはりいみじくも話として出ましたのは、この提案をされている法案、これを実行することによって、やはり先ほど有田委員からも懸念といいますか質問がありましたように、やはり貸し渋りなり金利の上昇、こういったことが起こる懸念があるという、そういう話が貸し手からも借り手からもあったというのは間違いない事実でございます。
 こういったことについて、やはり金融というものに対して少なからぬ影響が出るんではないかなということを懸念をしております。この点については、再度ということになりますが、いかがお考えでございましょうか。
#162
○前川清成君 昨日、磯崎議員もお聞きになったと思いますが、商工会連合会の方も、あるいはこれは中小零細企業者の方々、皆さんそうだと思いますが、保証人になりたいと、こう願っておられるわけではありません。自分の友人を、自分の親戚を、自分の兄弟を保証人にしたいと、こういうふうに願っておられる方はお一人もいらっしゃらないと思います。できれば他人に迷惑は掛けたくない、保証人などはお願いしたくはないと、これが本音だろうと思います。
 しかしながら、金融庁もいらっしゃっている中で誠に恐縮ですけれども、やはり金融機関の貸し渋りに対する強い懸念、金融機関に対する不信感というのがあって、今の現行の仕組みの中でもなかなか金を貸してくれないと、それなのに保証という一つの信用補完作用がなくなってしまうと更に貸してくれなくなると、この点を借り手の側は心配しておられるのではないかと思います。
 貸し手の側、これはどうしてもお金を貸す方というのは保守的になるんですよね。今までどおりやっていて返ってこなかったら責任は問われませんけれども、新しいことをやって貸倒れが生じると責任、個人としての責任を問われかねないと、だから、今までどおり、今までどおり、今までどおりをやりたがるわけです。
 しかし、昨日も私、少し申し上げましたけれども、やはり金融機関というのはなぜ公的存在なのかと。倒産していても税金でけつを拭いてくれるのは金融機関ぐらいです。そうであれば、やはり新しい時代、つまりは、保証や担保に依存した金融ではなくて、当該事業の収益等を着目した、そういうリスクを取る金融に向かって一歩踏み出していく必要があるのではないかと。そのためには、なかなか金融機関自らは自分から前へ踏み出すことはないと思います。こういう法律を作ることによって背中を押してあげると、それが私はむしろ金融機関の新しい時代のためにも必要なのではないかと、こんなふうに考えております。
#163
○磯崎仁彦君 先ほど来発議者の方から、自殺者の八千人近くが経済的理由により自殺の道を選んでいる、あるいは倒産をしている八万件のうちの二割、二五%ですか、二万件ぐらいがこれまた第三者保証によって破産をしているという、やはりこの数字については非常に重く受け止めなければいけないなというふうに思っております。
 ただ、他方で、やはり私は昨日の話を聞きましても、例えば事業をこれから継続をしていきたい、あるいは新しいベンチャー企業を起こしていきたいと、こういった中で、特に、今事業を行っていて例えば運転資金が欲しい、これから継続していきたい、そういった場合において、なかなか今回の法律が通ることによって融資を受けられない。これはもちろん、第三者の保証によって非常に悲惨な目に遭うというのもこれも事実かと思います。ただ、やはりお金が借りられないということによって、事業を何とか継続していきたいけれども継続できない、あるいはそのことによって自ら命を絶つということも、これも皆無ではないというふうに思っております。
 そういった意味では、私は、どっちがいいかという比較ではなくて、今回の法案を通すことによって融資の道が閉ざされるという、そのことについてもやはり非常に重いものとして受け止めなければいけないんではないかなというふうに思いますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
#164
○前川清成君 先ほども御説明申し上げましたが、平成二十三年以降、金融庁の監督指針が変更されて以降、原則として第三者保証は禁止されているわけです。先ほども申し上げましたが、およそ三万三千件のうちいわゆる第三者保証、この法律で禁止の対象になる貸し先が五十五件、つまりは、今九九・何%は第三者保証なしで金融仲介が行われているわけであります。片や毎年毎年二万件の自己破産が生じてしまう、何千件かの自殺者が生じてしまうと、このバランスをどう見るかという話ではないかと思います。
 それと、ここまで言うとお叱りを受けるかもしれませんが、あえて申し上げたいと思いますが、第三者保証というのは、結局のところ他人の財布、他人の資力を当てにして融資を受けるということですよね。それが幾ら自らの事業を継続するためとはいえ正当な期待と言えるのかどうかと、ここもお考えいただく必要があるのではないかと、私はそう思います。
#165
○磯崎仁彦君 時間の関係もありますのでちょっと質問をはしょらせていただきますが、今発議者の方から他人の資力を当てにしてというお話がありました。
 今回禁止をするというふうにされておりますのは、まさに第三者保証ということでございます。これは昨日の参考人にも私伺ったことでございますが、他人の資金なりを活用するという意味では、これは物上保証という制度もあるわけでございます。そういった意味では、当然のことながらその範囲が違うという、物上で保証に提供したその範囲内ということで、範囲が異なるということはあろうかと思いますが、例えば、今回この法案によりましてかなり広い第三者保証というのは禁止をすると、そうなると金融機関どう考えるかといえば、当然リスクを取るというのも金融機関の一つの使命だといえばそうかもしれませんけれども、例えば、じゃ第三者保証が取れないのであれば、物上保証の方に目が向いて、そちらの方が今よりも広がっていくと。これも企業自身の採算性なり収益性というものを担保にしてお金を貸すということではなくて、他人の物を担保に、言ってみれば広い意味での保証のようなものですから、これについて、そちらの方に第三者保証を禁止することによって流れてしまうような、そういう懸念についてはどのようにお考えでございましょうか。
#166
○森ゆうこ君 物上保証について、今回これを制限しないと、かえって今議員が指摘されたような弊害が起こるのではないかという御懸念でございますけれども、今回の法案のポイントは、保証債務の様々な被害、弊害をなくする、できるところから早急にという考え方がございます。
 いろいろなことは今後検討するということは先ほど他の発議者もお答えをしたところでございますが、一番大事なポイントは、今、磯崎議員もお述べになりました保証債務のその範囲ということなんですね。今回、第三者保証を原則禁止したその最大の理由は、安易に、まあ安易にといいますか、迷惑掛けないから頼むと言われて保証契約を締結した結果、保証債務が予期しない過大なものとなってそれがその第三者保証人の生活に破綻を来すと、破産に追い込まれる、あるいは自殺する、そういう悲惨な結果になると、こういうことはすぐさま対応しなければならないという問題意識から生じているところでございます。そういう意味では、物上保証では債務の引き当てはその担保物に限られて物上保証人が責任を負う範囲が明確であるということから、今回の法案では規制の対象にしなかったところでございます。
 物上保証においては、不動産という高額な資産が債務の引き当てになって、物上保証人も、署名をするだけの保証人とは異なり、手続に時間を掛けて慎重な、より慎重な判断をするものというふうに思われますので、今回の法案では入れませんでしたけれども、これも引き続き検討すべきものと考えております。
#167
○磯崎仁彦君 ありがとうございました。
 もう時間でございますので質問を終わらないと駄目なんですが、今日お話を伺った中でも、あるいは昨日の参考人の話を伺っても、私はやはり、冒頭申し上げましたように、基本的には個人保証に依存をしない、そういった金融というものを求めていくという、この方向性は間違いなく進めていかなければいけないというふうに思っております。ただ、中間試案の中でも継続というふうになっておりまして、まだまだやはり議論が私は不足しているところがあるだろうと。
 そういった意味では、この段階で、しかも経営者を代表者に限るという、こういう中ではやはり金融に対して大きな影響が出かねないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#168
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 発議者の皆様、御苦労さまでございます。敬意を表します。
 この現在の保証契約の問題点といいますか懸念というか、我が党も共有をするものでございますし、また、かつてというか今も登録してございますが、弁護士をやっていて、その悲惨な事案といいますか、そういうものも承知をしているわけでございますが、ただこれ、今回余りにもちょっと狭いなというのは、まあ率直な意見でございます。
 その上で、その上でというか、まず根本的に聞きたいんですが、普通、この民法の原則、契約の自由の原則とか私的自治の原則があって、そこの、何といいますか、この原則をフォローするのが民法だと思っておりまして、だから、能力が足りないよというのであれば成年後見とかそういう形になっていくわけでありますし、ただ、不具合が出てくる、当事者だけに任せておけばということで行き過ぎた場合、例えば利息制限法を作るとかあるいは借地借家法とか、だけど、基本的にはやっぱり契約自由の原則の下でこの民法というのはあるんじゃないのかと思っておりまして、まあ一般法、特別法の関係になると思いますが、今回、民法そのものをいじるという形になるわけでございまして、そこまでドラスチックにやるのはいささか行き過ぎではないのかと思っておりますが、発議者のお考えをお聞きしたいと思います。
#169
○森ゆうこ君 御質問ありがとうございます。
 先ほど有田議員からも御指摘があったんですけれども、法制審議会の中間試案というものが発表されてこの問題がテーマになったときに非常に社会的な関心を呼んだと。それだけ国民生活に非常に影響を与えるものであるというふうに考えております。
 今回の改正が対象とする貸金等債務における第三者保証は、社会一般において日常的に用いられている人的担保の典型的な方法でございます。これについて私法上の効力を原則的に無効とすることは、先ほども申し上げましたが、国民生活に与える影響は決して小さくありません。
 したがって、今回設けようとする規定は国民にとって広く知らしめるべきでありまして、民事上重要な規律として位置付けられると考えており、民法において定めることが望ましいと考えたことから、民法に新規定が追加されるよう民法の改正案として提出したものでございます。
#170
○魚住裕一郎君 ということは、その利息制限法とか借地借家法はあんまり知らしめなくてもいいと、国民の生活において余り大きな影響を与えないというふうにお考えなんですか。そうじゃないんじゃないですか。
#171
○森ゆうこ君 ほかのものは影響を与えないということではございません。
 ただ、貸金業法などの各種業法の改正により、先生がいろいろと先ほどお述べになりましたように対応することも考えられますけれども、これらは規律の対象が限られております。各業法による行為規範の対象外にある貸金業者に対する規制として不十分でありますし、また国民に対する分かりやすさという面でどうなのかなという懸念もございますので、今回、このような形で提出をさせていただいたということについて御理解を賜りたいと思います。
#172
○魚住裕一郎君 いやいや、別に私、貸金業者の話をしているわけじゃないんです。利息制限法、私と発議者の間でもお金の貸し借りやって利息制限法は掛かるんじゃないんですか。業者じゃなくても掛かるんですよ。あるいは、借地借家法だってそうですよ。一般人の民間人同士というか、それを業としている者じゃなくてもやるわけでございまして。やはり広く、業者用のあれじゃないわけですから、重要なことであれば、逆に特別法をきちっと出して特別法で知らしめた方がより国民に周知になるんじゃないですか。もう一回。
#173
○前川清成君 ありがとうございます。
 二点申し上げたいと思います。
 まず一点は、保証の効力の制限について民法で制限することについては、先生も御案内のとおり、平成十六年に民法の改正を行いました。その際に、これまでは包括根保証が有効であったわけです。一旦保証人になると、未来永劫、そして金額が幾ら増えても全て債務を連帯保証しなければならないという包括根保証が平成十六年までは有効でした。その包括根保証が余りにも行き過ぎだということで改正をいたしております。民法の条文で申し上げますと、四百六十五条の二以下でございます。したがいまして、私は、民法で保証の効力を制限するというのはむしろこれまでの立法の例に倣うものではないのかなと、こういうふうに考えております。
 それと、やはり私法の基本法、それぞれの契約の効果について定めるのは原則民法ではないかと。確かに、先ほどもお話が出ていましたが、金融庁の監督指針で第三者保証は禁止していますが、仮にこれに違反して第三者保証の契約が結ばれたところで私法上は有効なわけです。取締りの対象になるかもしれませんが、契約上の効力としては生じます。そうであれば、やはり民法で無効であることを明記しておくべきではないかと、こんなふうに考えております。
#174
○魚住裕一郎君 契約自由の原則の下、不具合があれば裁判所なり、あるいは公序良俗違反とか取り組んできたわけでございまして、今の包括の根保証等についてはそういう努力の上で法改正というのがあったというわけでございますが、やはりこういう立法措置をするといった場合、何かこう、立法作業の美しさといいますか、法律の美しさという観点からすれば、やっぱり一般法、特別法という観点でやった方が私はいいのではないのかなという意見でございます。
 それで、先ほど御紹介がございましたけれども、法制審においても改正に向けた検討が行われているということでございますが、この検討状況を踏まえて、あるいはその改正の方向性と整合性等も考慮する必要があると思うわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
#175
○小川敏夫君 法制審の議論の方、引き続き検討ということになっておりますが、ニュアンス的には、やはり保証に関して、第三者保証等に関しましては制限的に向かっているのかなという感じは持っておるわけでございます。
 そうした意味で、方向性的には今回の私どものこの提案の法案も同じ方向を向いているとは思うのですが、ただ、法制審議会の方で結論が出ていないときに私どもが先にこの第三者保証を取り出して無効とするということになっておるわけですが、この点はやはり、この第三者保証によって被害あるいは悲惨な状況、思わぬ不利益等を被る、先ほど前川発議者の方からもありました、自殺者も多数生んできたようなこういう状況を見まして、やはり少しでも早くこの分野からでもきちんと対応したい、無効とするべきものは無効とするという対応をしたいと、このような考えでございます。
#176
○魚住裕一郎君 もうほぼ質問は出尽くした感がございますけれども、昨日の参考人の御意見の中で、これは銀行の方でございますけれども、大口預金者から、子供が新たに飲食店を開業するに当たって、子供が飲食店を開業するに当たって、親としては直接的に資金を援助するのではなくて、自立させるために自分で銀行から借入れをさせて、その返済をさせたいと、子供が自らですね。そのときに親としては保証してフォローしたいということが紹介あったわけでございますが、これも今回禁ずるわけですよね。それでいいわけですか。
#177
○前川清成君 はい、そのとおりでございます。
#178
○魚住裕一郎君 また、創業しようと、今も同じでございますけれども、今度は関戸さんの、商工会の連合会会長さんの、創業しようとする者は信用力がない、親兄弟の連帯保証によりこの信用力を補完して融資を受けるケースがあると、だから、そういうような場合は、今回、資金調達の道がなくなってしまうのではないのかというのがありましたが、法人は除外しておりますが、逆に言えば、保証会社を通じた取組になるわけであって、保証会社を援助する法律ということになりかねませんね、これ。
#179
○前川清成君 ちょっと先ほどの答弁が、理由も言えという御趣旨であったと思いますので、もう少し補完をさせていただこうと思いますが。
 まず、大口預金者がいて、子供が飲食店を開業する、直接金をやると頑張らへん、ついてはおまえが自分で借りろ、その保証人になったるわと、こういうケースをどうするんだというお尋ねでございましたけれども、しかし、世の中に、魚住先生、そういう例が一体どれぐらいあるかということなんだろうと思います。ほとんどのケースは、そういう美しいお話じゃなくて、やむにやまれず保証人を、言葉は悪いですが、押し付けられていると。極めてレアケースを前提に、こういう場合どうするんだということで私は制度全体のことを議論するのはいかがかなと、こういうふうに思っております。
 それと、創業しようと思うけれども信用がない、だから、その信用を補完するものとして第三者が連帯保証をするのはどうかということでございましたけれども、昨日も私はちょっと申し上げたんですが、創業するから信用がない、それはそのとおりだろうと思いますが、それは過去の担保主義というか実績主義、その裏返しではないのかな。
 これから日本が様々な分野でイノベーションを遂げていくためには、新しい事業の収益性等々に目利きをした融資の在り方というのも追求していく必要があると思いますし、と同時に、創業する者が信用がないので第三者が保証ということでリスクをかぶる、それが本当に公平なのかと。金融機関は金利というもうけを得るわけです。しかも、金を貸す、融資をすることのプロなわけであります。そうであれば、私は、その創業のリスクを第三者の保証人に押し付けるのはむしろ不公正であって、金融機関が目利きをして金融機関がリスクを取るべきだと、そんなふうに考えております。
 それと、決して今回は保証会社を応援するというつもりは全くありません。先生御案内のとおり、信用保証協会というのがあって、それが実務において大きな役割を果たしております。信用保証協会の連帯保証まで禁止をするというのは信用収縮が大きいですし、あるいは信用保証協会を除外する理由もないというふうに思いますので、例外事由として代表者本人と法人というのを付け加えさせていただいたと、そういう趣旨でございます。
#180
○魚住裕一郎君 あとは価値判断の問題かなというふうに思っているわけでございますが、先ほど有田委員の質問の中で金融庁の御答弁があって例外というものが紹介されたわけでございますが、今質問させていただいた部分もこの例外にきちっと入っているということを考えると、ちょっといささかドラスチック過ぎる提案だなというふうに判断をせざるを得ないということを申し上げて、質問を終わります。
#181
○真山勇一君 みんなの党の真山勇一です。
 発議者の皆さん、どうも御苦労さまでございます。質問させていただきます。よろしくお願いします。
 健全で活発な、健全かどうかというのはちょっと分からないですが、活発なやはり経済活動をするという上で資金を集める保証人の制度というのは本当に大切だと思います。特に、資金集めにいろいろ苦労する中小企業にとっては本当に大切なことだと思うんですが、その一方で、借りることによって本人あるいは保証人に深刻な事態、破産とか、あるいはもう深刻な場合は自殺という事態が出てきてしまうわけですね。そういうことを起こさないために、防ぐために、その方法として今回の御提案というのは一つの方向を示すものであり、私たちみんなの党もその趣旨には賛成をしております。
 しかし、そうはいっても、やはり中小企業にとっては、ここまで保証の範囲というのを限定してしまうと、貸し渋りが起きないというよりは起きる心配の方がどうしても大きくなって、その部分をやはり慎重に考えていかなくちゃならないというふうに思うわけなんです。その辺りがちょっと懸念があるので御質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 もういろいろ出たので、こちらでまずちょっとお尋ねしたいのが、中小企業庁とそれから金融庁の方にお尋ねしたいと思うんですけれども、中小企業庁は、平成十八年三月に信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止という通達を出しているというふうに理解しております。それから、金融庁は、平成二十五年三月、それから四月というふうに二回、経営者以外の第三者の個人連帯保証を禁止するという通達を出しているというふうに私は理解しております。
 これらの通達あるいは通達を出したことによる、実際に運用をして、その効果、影響、こういうものがどうなのか、まず教えていただきたいと思います。
#182
○政府参考人(鍜治克彦君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、信用保証協会の関係でございますが、平成十七年の中小企業政策審議会の部会で取りまとめられました取りまとめの中におきまして、第三者保証人に関して一義的には保証人として徴求すべきではないということとされましたことを受けまして、委員御指摘の通達が発出されたわけでございます。その後、平成十八年四月から、信用保証協会におきましては第三者を保証人としては原則的に徴求しないこととしてございまして、平成二十四年度の第三者保証人の徴求割合は二%と、こうなってございます。
 あわせまして、経産省が所管してございます日本政策金融公庫中小企業事業というのがございますが、こちらでも従前から第三者保証人を原則として徴求しておりませず、平成二十四年度の徴求割合はゼロ%となってございます。
#183
○政府参考人(小野尚君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、私ども金融庁におきましては、平成二十三年七月に私どもの監督指針を改正いたしまして、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を認めない旨を明記したところでございます。この目的は、先ほども御答弁させていただきましたように、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立を図るということが目的でございます。
 私どもといたしましては、先ほど申しましたように、原則禁止ではございますが、一方で例外ということで幾つか規定を設けております。一つは、実質的な経営権を有している者、事業に従事する配偶者、事業承継を予定している者、自ら連帯保証の申出を行った者でございます。特に、この自ら連帯保証の申出を行った者につきましてでございますが、これにつきましては更に規定がございまして、自ら連帯保証の申出を行った者との間で連帯保証契約を締結する場合は、保証人の自発的な申出であることの客観性を確保する観点から、保証人になろうとする者が金融機関から特段の説明を受けた上で自発的な意思に基づき申出を行った旨が記載され、自署、押印された書面の提出を受けていることを確認することが求められております。
 このような例外規定もございますところでございますが、いずれにいたしましても、私どもとしましては、この監督指針にのっとりまして、このようなきちっとしたチェックが行われているかどうかにつきまして検査・監督でチェックしているところでございまして、仮にこのような保証に関する問題を含めまして金融機関による不適切な顧客対応があった場合には、事実関係等を確認し、必要に応じまして金融機関に対しまして改善指導をするなどの対応を図っているところでございます。
#184
○真山勇一君 ありがとうございました。
 第三者保証を限りなくゼロ、なくすことはできないと、やっぱりその辺りというのはいろいろ事情があって難しい面があると思うんですけれども、今お話を伺っていますと、中小企業庁も、それから金融庁も、私は、限りなく第三者保証というものをなるべく避ける方向で進んでいるし、借りる側もやはりそうした認識を持っているからだと思います、このかなり低い数字になってきているというようなことが考えられるわけなんですけれども。昨日、参考人のところでも銀行関係の方から、やはり現状では、経営とか実際に関係ない個人が第三者保証を引き受けるケースというのが数字が具体的に示されて、〇・二%程度というふうな話が出ていました。
 やはり、この数字、現場もこういう低い数字が出ているということは、ある程度健全に、ある程度健全にもうこの第三者保証じゃない保証ということが進んでいるというふうにもこの数字では理解ができるんですけれども、やはりよほど慎重に審査され、そして資力要件というのが大丈夫だというようなことで融資されているのではないかというふうに思うんですが、その辺りの数字、現実の数字を見ていただいて、発議者の方にお伺いしたいんですが、この数字を現状どういうふうに御覧になっているか。
#185
○森ゆうこ君 今ほどお話がございましたように、昨日も参考人質疑におきまして千葉銀行の大久保参考人も述べられていたわけですけれども、経営に実質的に関与していない第三者への保証の徴求は約三万三千件の融資のうち僅か五十五件にすぎないと、非常に例外的なところになっていると。しかも、相続が発生している場合等、極めてレアケースだというふうに承知をいたしております。したがって、今回の法案に関しての今の状況といいますか、経営者以外の第三者へ保証を徴求しないという融資慣行が既に確立しているというふうに理解をしておりまして、ここでこの改正を行ってこれを確固たるものにすると。
 参考人からも御指摘があったんですけれども、要するに原則禁止であると、特例で認める場合に、じゃ、それが各銀行の規定といいますかマニュアルではどうしても融資できない特別な例だということを果たしてその保証人となろうとする人が理解しているのか、そこまできちんと説明がされてその上でやっているのかと。それは、これまでの御経験上、やっぱり迷惑掛けないからと、迷惑掛けないからということで本当に善意で保証人になって、昨日は、うまくいったケース、これが排除されるのは困るといった例はありましたけれども、逆に言うと、それで破綻をして、債務、巨額の債務を負わなければならなくなると、こういうことをやはり早急に防ぐべきであるという、これが最大の目的でございますので、是非御理解をいただきたいと思います。
 もう一回数字でお答えをしますと、内閣府、平成二十三年版自殺対策白書から、二〇一〇年の自殺者総数三万一千六百九十人のうち、その原因、動機を特定できたのは二万三千五百七十二人、そのうち経済・生活問題が原因とされるのは七千四百三十八人でございまして、自営業者、家族従事者等二千七百三十八人、被雇用者八千五百六十八人と、こういうこともございまして、この保証人の問題が悲惨な結果をもたらしているということですので、是非御理解をいただいて、この法案に賛成を賜りたいとお願いを申し上げます。
#186
○真山勇一君 やはり融資、そういうことで困って行き詰まってしまうという中小企業経営者、そうした人たちが、今、森委員の方からお話あったように、やはり数ありますので、それを私も無視はできないというふうに思っております。やはりどれだけそういう人たちを救っていけるかということをやっていくのが一つの私たちの義務であり、政治の役割というふうに私たちもとらえております。
 ただ、その反面で、やはり実際に、貸し渋りの面というのはどうしてもこれだけだとなかなか防ぐということが難しいんじゃないか。ですから、この第三者保証を禁止するというふうなことと同時に、例えばセーフティーネットですね、貸し渋りをより防ぐための、例えばそのセーフティーネットなども必要かどうかということは考えられなかったでしょうか。
#187
○森ゆうこ君 第三者保証にかかわる悲劇を防止する方策として他の方法もということのお尋ねかというふうに思いますけれども、例えば今、昨日も少し参考人から言及があったかと思うんですけれども、たとえ保証契約の締結に際して例えば第三者の立会いを義務付けるというようなことをしたとしても、金融機関が保証人となろうとする者に対して説明義務を十分に履行していることの担保にはなるかもしれませんが、第三者からは、保証人となろうとする者が本当に真に自発的な意思で保証契約を締結したかどうかまでの判断はできないのではないかというふうに考えます。また、このように保証人となろうとする者が真に自発的な意思で保証契約を締結したかどうかの確認は不可能でありますので、この法案では第三者の自発的意思がある場合に第三者保証を認めることはしておりません。
 あと、セーフティーネットというか、保険加入というようなことも考えられるのかもしれませんけれども、そのような保険商品があるかどうかということは承知していないんですけれども、仮にあったとしても、主たる債務者は事業資金を必要として金融機関等から借入れを行うのでありまして、保険料を支払う資力の兼ね合いで加入できる保険にも限度がございます。そうしますと、主債務者が経済的に破綻した場合に支払われる保険金が主債務額を下回る場合には、結局、保証人が残った債務について保証義務を負担することになりますので、保証人の保護としては十分とは言えません。
 他に、中小企業者が保有している在庫や売掛債権を担保として、動産及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律に基づく登記によって対抗要件を具備した譲渡担保による優先的債権回収、あるいは先ほど御説明を申し上げましたABL等を活用していただくようなことが考えられると思うんですけれども、先生、いろいろ御懸念がありますけれども、今後いろんなものを検討していく必要があると考えております。
#188
○真山勇一君 ありがとうございました。
 それから、もう大分このこともお聞きしていることなんですけれども、もう一回ちょっと改めて伺いたいんですけれども、今回のこの第三者保証の件は民法を変えるということで、民法といいますといわゆる基本法というふうに言われているものなので、それを変えるということの影響が大き過ぎるというような意見もあるわけなんです。ですから、民法でなくてほかの法律ということで考えるということはなかったのかどうかという点と、それから、やはり今法制審議会が進行中であるということで、法制審議会の意見、パブリックコメントなど、そういうものを踏まえながら今後ももう少し慎重に審議、議論を進めるということも必要ではないかというふうに思うんですが、その辺りについていかがでしょうか。
#189
○小川敏夫君 この第三者保証の禁止を特別法か民法か、どちらも法律ですから法律としての実効性は同じであるというふうに思うわけでありますが、でも、民法の債権法の規定の中で保証という項目がそもそも存在しております。そうすると、そこで比較的細かな規定があるわけでございますので、そうすると保証の中の一つの類型だけを特別法に出して決めるというのはちょっと落ち着きが悪いかなと。保証を全部抜き出して特別法なら分かりますけれども、民法の中に保証に関する規定が結構細かくある中で、今回の規定も、一つの規定ですけれども、言わば民法の中に規定した方が据わりがいいのかなというふうにも思っております。
 また、法制審議会の方は、この第三者保証に関しましては、やはり抑制的にという方向性は私どもと一致するんだなというふうな感じを持っておりますが、先ほども述べましたように、やはり現実に悲惨な例というもの、思わぬ不利益を被って人生が変わってしまうという第三者保証の保証人になられた方の広い意味での被害というものが現に発生しておるわけでございますので、そうした被害を防止したいということを優先させていただいたということでございます。
#190
○前川清成君 それと、小川先生は元法務大臣でいらっしゃって、法制審に諮問する側でいらっしゃったので言いづらいかもしれませんので私の方から申し上げたいんですが、本当に長く続いたこの戦後の体制の中で、基本法を作るのが法制審だというふうなある種の誤解が私たち国会議員の側にも生まれているのではないかと。
 釈迦に説法ですが、憲法四十一条で、国会こそが国権の最高機関であって唯一の立法機関でありますから、法制審が議論をしているから国会で議論をしてはならないなんということはあり得ないだろうと私は思います。私たちは、選挙民に選ばれて法律を作るために国会にやってきているわけですから、法制審が議論をしていようがしていまいが、国民の生活のことを考えて法律の提案をさせていただいて、そしてそれについて様々な意見を忌憚なく述べ合うと、私はむしろ当然だと思っております。
#191
○真山勇一君 釈迦に説法じゃなくて、私は本当に法律の素人なもので、同じ法曹界でも違う放送界という話をしましたけれども、今の発議者の前川委員のお話、私も本当にそのとおりだというふうに思っております。私がこの世界に入ったのも、やはり国民のための政治をやらなくてはいけない、そのための、それを守るためにはやっぱり立法府である国会で法律を作らなければならないという思いを、今また改めて伺って、そういう思いを強くいたしました。
 この今回の趣旨というのは私どもも本当に十分理解しているし、とにかく悲惨なことを防ぐ、それが、やはり弱い者、弱い人たちのために政治をやるということは大事だと思うので、私たちもこれをなくすための方向で、できれば一緒にやれる方向を見出していきたいというふうに思っております。
 どうもありがとうございました。
#192
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 長引く不況の中で、中小事業者の自殺という痛ましい事態の要因の一つが中小企業金融における個人保証制度であることは繰り返し問題になってまいりました。この制度の下では、もう会社だけではなくて経営者自身も保証人も全財産を失うことになって、家族や保証人に迷惑を掛けたくないということで自殺をすると、そして生命保険を当てにすると、こういうことも多々起きてまいりました。
 私たちは、中小企業の融資に対する個人保証制度、その廃止ということを目指しつつ、当面は政府系金融機関の融資については個人保証を廃止すべしということもこの間、提起をしてきたところでございます。
 その立場から幾つか質問をいたしますが、まず法務省に、今日も議論になっておりますが、今法制審でこの個人保証制度の見直しの議論がされておりますが、そういう議論をするに至った今の現状といいますか、背景といいますか、その点はいかがでしょうか。
#193
○政府参考人(深山卓也君) 我が国におきましては、保証制度は、特に個人保証に関してですけれども、債務者の信用を補完する機能を有するということから広く用いられておりますが、一方で、個人の保証人が想定外の多額の保証債務の履行を求められて、生活が破綻して破産に追い込まれたり、あるいは自殺に至るというような事例が後を絶たないといった問題が強く指摘されております。
 また、保証制度につきましては平成十六年の民法改正において見直しがされたところでございますが、その附帯決議におきましても、更なる保証人保護の保護策というのが検討課題として指摘されておりました。こういった背景事情の下で、法制審議会の民法部会におきましても、保証人保護の方策の拡充が重要な課題、論点の一つとして取り上げられて現在に至っていると、こういうことでございます。
#194
○井上哲士君 先ほど来の議論からいいましても、やっぱり今のままでは駄目だというのはこれは共通の認識だと思うんですね。
 それで、例えば欧米などでは、日本のように過度にこういう個人保証に依拠している状況でないと。日本のように、保証人になったばかりに自殺したり、経営者も全ての財産を失うような状況はないと思うんですが、こういう諸外国の状況などはどのように法務省としては把握をされていらっしゃるでしょうか。
#195
○政府参考人(深山卓也君) 保証制度自体は、これは法務省で把握している主要国では一般的に存在する制度で、日本に固有のものではございません。
 主要国の保証制度の内容につきましては、法制審議会の民法部会の調査審議の過程で、各国の法律の規定の翻訳あるいは文献、判例の調査などをして、その内容を把握した上で公表しております。また、平成二十三年度には、これは委託研究の形で、諸外国における保証制度の内容に加えて、その実際の運用状況につきましても外部の研究者の協力を得て調査を行っておりまして、その結果も公表しているところです。
 こういった調査の結果として把握している各国の制度、これは詳しく言うと時間が非常に掛かりますが、ごくかいつまんで幾つか具体的に申し上げますと、まず、フランスでは、保証契約は保証人が手書きをした書面によることを要するとされているほか、保証人の資力に見合わない過大な保証を無効とする制度や、主債務者が不払に陥った場合に債権者がその旨を保証人に通知しなければならないという制度がございます。これらは皆、保証人の保護策です。
 次にドイツですけれども、ドイツでは、保証契約は書面によることを要するとされているほか、保証人による巨額の債務の保証を公序良俗違反として無効とする判例法理が形成されております。
 アメリカ合衆国ですけれども、アメリカでは、保証契約は書面によることを要するとされているほか、債権者が一定の情報を保証人に告げなかった場合に保証人が保証契約を取り消すことができるという制度がございます。
 ということで、それぞれ少しずつ各国違いますけれども、保証人保護の様々な方策が取られていると。ただ、いわゆる第三者保証を一律に無効とする制度が採用されている国というのは、調べた中では存在はしておりません。
#196
○井上哲士君 諸外国と比べましても日本の保証人保護が大変遅れているなということを今聞きながら思っておりましたが、そこで発議者にお聞きいたしますが、個人保証制度そのものをなくしていこうということの方向性ということについてはどのような認識でしょうか。
#197
○小川敏夫君 やはり個人保証そのものが、保証人の全財産がその範囲に入ってしまう、あるいは今の我が国の制度ですと、もう判こを一個押しただけで自分の全財産がそうしたリスクに掛かってしまうというような問題等がございますが、基本的には、人のために全部の、自分の全財産を預けるということがどれだけの合理性があるのかなということ、そうした現実的なことを考えますと、方向的にはやはり廃止すべきものではないかというふうに思っております。
 ただ、現状、これまでの我が国の経済、経営環境の中で、特に中小企業等が、経営者が個人保証をしてその会社の融資を得るというのがほとんど慣行といいますか、あるいはもう当然のことと、金融機関の方から当然のこととされて、応じなければ融資を受けられないというようなことがございました。これを是とするわけではございませんが、ここまでいきなり全く禁止しますと、またハレーションが起きるのかなというふうにも思います。
 そうした意味で、私どもとしては、個人保証というものはやはり廃止すべきという方向性を維持した上で、必要最小限の範囲で例外的に認められるものがあるかどうかを議論するというのが一つの前提かなと思っております。
#198
○井上哲士君 個人保証制度の廃止ということを方向性として持ちつつ、やはり現実を見た上での御提案だということだと思うんです。
 一方で、二〇〇九年の民主党のマニフェストでは、政府系金融機関の中小企業に対する融資について個人保証を撤廃するとしておりました。今回の法案は、政府系金融機関にとどまらず全ての金融機関を対象にする一方、代表者については個人保証を認めているということで、ちょっとこのマニフェストとはニュアンスが違うと思うんですが、こう変わった理由はどういうことなんでしょうか。
#199
○小川敏夫君 まず、〇九年のマニフェストでは、政府系金融機関の中小企業に対する融資について個人保証を撤廃するという約束でございましたが、その約束だけでは少し狭いんではないかと。すなわち、政府系金融機関の中小企業に対する融資だけではなくて、やはりそれ以外の金融機関の融資、あるいは金融機関とは言わない貸金業者ですか、こうした融資についてもやはり網を広げるべきではないかということで、その部分は網を広げたわけでございます。
 ただ、法人の代表者による個人保証につきましては、ただいま述べましたように、これまでのそうした中小企業に対する金融機関の貸し入れの慣行といいますか、先ほど言いましたような状況があることを踏まえて、今それをすぐに廃止というのはやはり混乱があるかなということも考えまして、その点は除外したということでございます。
#200
○井上哲士君 今の状況、慣行などを見て代表者については個人保証を認めたということでありますが、一方、昨日の参考人のときにも若干お聞きしたんですけれども、経営者の個人保証が再チャレンジであるとかそれから事業継承に障害をもたらしたり、起業意欲をそいでいるという指摘がかなりございます。そこまでやらなければ起業できないのかというようなことも含めてあるわけで、こういう弊害についてはどういう御認識でしょうか。
#201
○前川清成君 先ほども申し上げたように、私は、将来的には個人保証、経営者本人の保証も撤廃あるいは制限する方向で立法がなされなければならないというふうに思っています。
 先ほども申し上げましたが、新興国が追い上げてくる中で日本が今の豊かさを維持する、今の輝きを維持するためには、やはりオンリーワンのものを求めていかなければならない、誰かのまねをしているだけでは豊かさを維持できない。そうであれば、当然のこととしてリスクを伴うわけでありますから、リスクを追い求めた結果、丸裸になってしまう、再び立ち上がることができない、これでは私は今の豊かさを維持することができないと思いますし、お父さんが苦労して起業された、会社をつくり上げた、息子さんはいい学校を出て大きな会社に勤めて安定した仕事に就いておられると、お父さんも年を取ったから跡を継いでほしいけれども、跡を継いだら、いざ会社が倒産したら丸裸になって自分だけではなくて家族全員が路頭に迷ってしまうと、これではなかなか事業承継もうまくいかないのではないか。
 中小企業庁の方で事業承継税制等様々な取組をなさっていますけれども、この連帯保証の制限も私は事業承継の大きな問題点の一つではないかなと、そんなふうに思っております。
#202
○井上哲士君 そういう弊害が指摘される一方、今の現状からいえば、代表者の個人保証については残るということになりますと、そこに対するいろいろなやはりこの保護といいますか、必要性があると思うんですね。
 金融庁にお聞きいたしますけれども、こういう企業の代表者についても、例えば資力の範囲でのみ責任を負うであるとか、裁判所の判断で保証債務の減免を認めるであるとか、やはり経営者にも一定の財産が残るようにするということの必要性が議論をされているかと思うんですけれども、これについての認識はいかがでしょうか。
#203
○政府参考人(小野尚君) お答え申し上げます。
 中小企業の経営者による個人保証、いわゆる経営者本人保証につきましては、中小企業の経営の規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がございます一方、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、中小企業の活力を阻害する面もありまして、個人保証の契約時及び履行時などにおきまして様々な課題が存在するところでございます。
 このため、中小企業庁と金融庁の共同で設置いたしました、有識者により構成されます「中小企業における個人保証等の在り方研究会」におきまして、本年一月から四月にかけまして計六回にわたり議論を重ねまして、先般、五月二日でございますが、報告書を公表いたしまして、中小企業の経営者による個人保証に関しまして、その契約時や履行時などにおける課題について対応の方向性が示されたところでございます。
 対応の方向性といたしましては、例えば、個人と法人の一体性の解消などが図られている場合等につきましては保証を求めない可能性を検討する、あるいは、保証債務の履行時におきまして、経営者の手元に残す資産の範囲に関しまして、破産手続における自由財産の考え方を踏まえつつ、帰責性等を勘案して、一定の経済合理性が認められる場合には一定期間の生活費相当額を残すなどのインセンティブを付与する仕組みを検討するなどが示されたところでございます。
 報告書におきましては、このような方向性を具体化したガイドラインが策定されることが適当であると提言されているところでございまして、今後、この研究会から示されました対応の方向性に沿いまして、保証人の負担軽減と中小企業の円滑な資金調達の確保のバランスに十分留意しつつ、本年のできるだけ早い時期にガイドラインを策定すべく検討を進めてまいりたいと存じます。
#204
○井上哲士君 経営者による個人保証が残るとやはり相当の様々な問題がある、一層の保護が必要だということが議論をされているわけでありますが、一方で、範囲が狭過ぎるんじゃないかという議論も出ております。
 現行の金融庁の監督指針の取扱いのような例外規定をなぜ残さなかったのかと。まあ、ほとんどそれはレアケースだということも御答弁はあるんですが、だとすれば、それを残すという選択も逆にあったのかなと思うんですが、そのようにされなかった理由はどういうことでしょうか。
#205
○前川清成君 先ほどもお答えしたかと思うんですが、民法という私法の基本法の中にどのように書き込むかというのが大変難しいのではないかと。いろいろ議論はいたしましたけれども、経営者本人としての表現は代表者という書き方が一番落ち着きがよかったのではないかなと、こういうふうに思っております。
#206
○井上哲士君 提案者はサラ金の金利規制の際にも様々御尽力されたわけですが、ちょっと性格は違いますが、当時も、あれをやると必要な資金が得られなくなるとか、逆にやみ金がはびこるというのが随分業界筋やその支援を受けている方からあったわけでありますが、施行されて一定期間がたちましたけれども、そういう現状についてはどういう認識をされているでしょうか。
#207
○前川清成君 ありがとうございます。
 九年前はサラ金の金利を引き下げたいというのが立候補の動機でございましたけれども、その当時、二九・二%という高金利で毎年二十五万人が自己破産していたわけですが、その金利を引き下げると、今、井上先生がおっしゃったように、借りたい人が借りれなくなる、その結果としてやみ金がはびこるという業界の主張とその御用学者たちの主張もございました。
 ただ、これは金融庁の調査かと思いますが、完全施行の直前の平成二十二年の三月に、サラ金の利用者に対して全て希望どおりの金額が借入れできましたかというアンケート調査をいたしましたところ、八三・二%の方が希望どおり借入れをしています。希望どおりの金額が借り入れることができなかったという方は一六・八%でした。この借りれなかった一六・八%の人が路頭に迷ったかどうかですけれども、一六・八%の方々のうち六二・三%の方は支出を控えた、諦めたというふうにお答えになっています。やみ金から借り入れたという方は僅か三%しかいらっしゃいません。したがいまして、必要な方が借りれなくなったという事実は当てはまっていないのではないかなと、そういうふうに思います。
 それと、やみ金がはびこったかどうかですけれども、例えば二〇〇五年の時点でやみ金の検挙件数は三百三十九件でした。それが、二〇一一年では三百六十六件、検挙人員が二〇〇五年で七百六人だったのが六百六十六名、二〇〇五年で被害人員が十七万三千三百九十九人だったのが二〇一一年で五万人、被害金額が二〇〇五年で二百三十七億七千八百四万円だったものが百十七億五千五百十六万円というふうに、むしろやみ金被害というのは減少しているというのが客観的な真実ではないかと思います。
#208
○井上哲士君 ありがとうございました。
 現行の融資慣行などは見据えつつも、その枠のみで考えるのではなくて、やはり制度をきちっとまともにすることによって、そういうものを変えていくということが必要なんだろうと思います。
 一方で、やはり貸し渋りということに対する懸念が出されているわけですが、法人の代表者に対象を狭めることでお金が滞るんじゃないかという懸念について、また、そうならないように、今金融庁などにどういう指導が求められているのかと、この点いかがでしょうか。
#209
○森ゆうこ君 貸し渋り等の懸念に関してでございますが、先ほども申し述べましたように、昨日の参考人からの意見陳述でも、最近の状況において言えば、約三万三千件の融資のうち僅か五十五件に、第三者への保証の徴求はその五十五件にすぎないということがございますので、貸し渋りについては十分、その懸念には当たらないというふうに思っております。
 また、実質的経営者ということで、今回のこの法案で第三者保証を認める経営者を法人の代表者とあえて狭くとらえたのは、この実質的経営者を除外した理由は、法人の代表者以外の者について、経営者という曖昧、不明確な概念に基づいて実質的に経営に関与しない第三者までもが保証人とされること、これを防止するということが目的でございます。
 いろんなお話が出ておりますが、配偶者であるとか、また事業承継者でありますとか、そういう方たちというのは、むしろ、この保証被害の深刻さに鑑みますと、経営者との関係性がより深い、他の人よりもより深いということから情義性、未必性、無償性、軽率性がより認められやすい対象者であるということから、例外として認めるべきではないと考えております。
 もう少しかみ砕いて申し上げますと、つまり、決して迷惑掛けないからというふうに言われて依頼を受けると断りにくいという、これが情義性。そして、保証契約の時点では財産の拠出等の目に見えた負担は求められず、また保証債務履行請求がなされることなく済むことも多いため、将来の負担を現実的なものと考えずに保証契約に応じてしまう未必性というものが考えられますので、認めておりません。
 金融庁に対しては、原則禁止しているわけですので、この趣旨が徹底するように更に監督を強化すべきであると思いますし、まずはこの法案を成立させていただいて、法律でこのことをきちんと明確化する必要があると考えております。
#210
○井上哲士君 終わります。
#211
○委員長(草川昭三君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 本案の修正について真山君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。真山勇一君。
#212
○真山勇一君 ありがとうございます。
 私は、ただいま議題となっております民法の一部を改正する法律案に対し、みんなの党を代表いたしまして修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。
 これより、その趣旨について御説明申し上げます。
 事業用の貸金債務に関して、当該事業を行う主債務者と人的な関係のある個人が金融機関との間で保証契約を締結したことにより、保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ、破産や自殺などの生活の破綻に追い込まれるような事例が報告されているという事実認識及びこの問題に対して抜本的な対策を講じる必要性があるという点につきましては、民法の一部を改正する法律案の提案者に賛同するところです。
 しかしながら、第三者による個人保証の制限について、現実に中小企業などから、民法の一部を改正する法律案の施行により金融機関からの融資を受けることが困難になることに対する懸念が示されていることも事実です。今現状において、中小企業などが、金融機関と第三者との間で保証契約を締結することによって信用補完を行い、金融機関から融資を受けている実例が存在している実態を踏まえて、まずは、金融機関に対する業者規制を行うことなどにより金融機関が過度に保証に依存しない融資慣行を確立するための措置を講ずることを先行した上で、本法の施行へとソフトランディングを果たしていくべきと考えます。以上の理由から、本修正案を取りまとめた次第でございます。
 以下、主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、この法律は、別に法律で定める日から施行することとしております。
 第二に、別に法律で定める日については、この法律の公布後二年を目途として、この法律による改正後の民法の規定による保証契約に係る措置が講ぜられたとしても事業を行うために必要な資金の確保等に支障が生ずることがないよう、金銭の貸付けを業として行う者に対する規制その他の必要な措置を講じ、当該措置の実施の状況等を勘案して定めるものとしております。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 ありがとうございました。
#213
○委員長(草川昭三君) これより原案及び修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに民法の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、真山君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#214
○委員長(草川昭三君) 多数と認めます。よって、真山君提出の修正案は可決をされました。
 次に、ただいま可決をされました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#215
○委員長(草川昭三君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決をされました。
 以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#216
○委員長(草川昭三君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
 本日はこれにて散会をいたします。
   午後二時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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