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1951/08/17 第11回国会 参議院 参議院会議録情報 第011回国会 本会議 第2号
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1951/08/17 第11回国会 参議院

参議院会議録情報 第011回国会 本会議 第2号

#1
第011回国会 本会議 第2号
昭和二十六年八月十七日(金曜日)
   午前十時六分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二号
  昭和二十六年八月十七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。和田博雄君。
   〔和田博雄君登壇、拍手〕
#4
○和田博雄君 私は日本社会党を代表いたしまして、昨日の本議場におきまする吉田総理大臣の演説に対しまして、若干の質問を試みたいと思います。
 終戰以来六年、我々日本人は営々としてポツダム宣言を忠実に履行し、占領政策に対しましては歴史上稀に見る協力をいたして今日に至つたのでありますが、アメリカを中心としまする連合諸国の努力により、漸くにして近くサンフランシスコにおいて講和條約調印の会議が持たれるに至りましたことは、諸君と共に同慶に堪えないところであります。併しながら締結される講和條約の内容、形式の如何によりましては、日本の将来の独立と繁栄とは制約され、日本の運命にも又重大なる影響を持つことを考えますときに、且つ又、現在におきまする国際情勢の中には極めて複雑多岐なるものがありまして、日本の講和が、世界の平和、なかんずくアジアの平和に至大の関係を持つことを考えまするときに、我々は條約草案及びこれと一体をなしておりまするところの日米安全保障條約が内包する各般の問題につきましては十分なる審議を行い、政府も又真に真実を大胆率直に語り、この国会を通ずる国民的討議の帰趨を背景として、サンフランシスコ会議において国民外交を果敢に展開すべきであると私は固く信ずるものであります。(拍手)然るに、政府は国会を開くことすら躊躇逡巡するがごとき態度に出で、一たび国会を開くに決するや、その会期は僅かに三日であり、而も昨日の首相の演説は條約草案成立の外面的経過に過ぎず、條約草案の内包する外交、政治、経済についての具体的抱負経綸を欠き、将来に対する指針をも示されなかつたことは、私の頗る遺憾とするところであります。(拍手)
 私の質問の第一点は領土に関するものでございます。日本社会党は、今日まで機会あるごとに、領土については、大西洋憲章において連合国が承認せる領土不分割の原則がとられなければならないことを主張し来たつたのでございまするが、條約草案中にはこの点に関し見るべき改善は施されてはおりません。
 我々はヤルタ協定に責任を負うべき根拠を発見することに苦しむのであります。従いまして、歴史的、地理的且つ民族的に根拠ある南樺太及び千島列島の領土権が日本に確認さるべきであり、いわんや歯舞諸島及び色丹列島は北海道の一部であることを確信するものでありまするが、去る七月十四日、日本社会党は、條約草案に対する要望の一つとしてこの点を強く米ソ両国に要望をいたしました。政府はこの点についてどういう考えを持つているのであるか。且つ従来の交渉の経過を私は先ず聞きたいと思うのであります。
 北緯二十九度以南の琉球諸島と孀婦岩以南の日本諸島(小笠原諸島、火山列島を含む)と、沖の島、南鳥島の諸島は歴史的にも我が国のものであり、これらの地域の住民は純粋に日本民族でありまして、且つその住民は住民投票によつてその帰属を決すべきことを決議いたしているのであります。且つ又インドはいわゆる小笠原、琉球を日本に返還すべきことを主張しており、インドネシアは住民投票によつて領土の帰属を決定すべきことを主張して、極めて日本にとつて友好的な態度をとつているのが現状であります。吉田総理は昨日これら南方諸島の帰属の問題に触れられまして、草案第二條に掲げられた樺太、千島、台湾等に対する規定が、すべての権利、権限及び請求権を放棄することになつているのに反し、南西諸島及びその他の南方諸島の処理を規定しております第三條が特にかかる規定なく、信託統治制度の下に置くための国際連合に対する合衆国の如何なる提案にも日本が同意する云々と規定しておる点を挙げられまして、これを論拠として、国際間の平和と安全上の利益のために合衆国の行う戰略的管理を條件として、本土との交通、住民の国籍上の地位その他の事項について、これら諸島の住民の希望に副うために実際的な措置が案出されることを希望する余地を残すと言われました。
 そこで私は吉田総理に端的にお尋ねいたしたいと思います。これら諸島の領土権は以上の理由で日本にありと主張されるのでありますか。領土の問題が、草案が一たび発表されまして、国民的な輿望として大きく浮び上つて来ますと、政府当局はいち早く法的な解釈を一方的に與えて、如何にも領土の権利が、これらの南方諸島についての領土権が日本にあるかのごとき宣伝をいたしたのであります。その論拠は昨日吉田総理が挙げられたその点であるのかどうか。明確にしてもらいたいと思います。又條約草案には信託統治の理由について何ら明示されておりません。総理は昨日、「国際の平和と安至上の利益のために米国が行う戰略的管理を條件として」云々という極めて意味深長な発言をなされたのでありますが、これがこの條約における信託統治の理由と一体これを理解して我々はいいのかどうか。この点もお答えを願いたい。私は、これらの諸島の領土権に関しては、私が先に述べましたごとく、澎湃として湧き起つているところの国民的熱望と、インドその他の友好的な主張を背景として、もつと強力に日本の正しい主張をして、重なる法的の解釈によることなく、日本の領土権を草案中にはつきりと明記すべき態度をとつて、私は会議に臨むべきであると思いますが、(拍手)総理は如何なる考えを持つておられるのであるか。この点をお聞きいたしたいと思います。
 私の第二の質問は安全保障に関してでございます。私は、條約草案中、安全に関する第五條、第六條の規定と、條約調印直後日米間に締結されまする安全保障條約こそは、今回の講和條約の中心課題であり、それだけに国民の関心も又この一点に集中されていると考えます。本草案はその前文におきまして、「日本国としては、国際連合への加盟を申請し、且つ如何なる場合にも国際連合憲章の原則を遵守し」云々と規定し、なお又第五條(a)の(I)、(II)におきましては、日本は国際連合憲章第二條の平和的手段による国際紛争の解決と不可侵的義務を受諾すべきことを規定しているのでございます。このことは日本国憲法よりしても当然とするところでございまするが、第五條(b)におきましては、「連合国は、日本国との関係において国際連合憲章第二條の原則を指針とすべきことを確認する」と規定して、消極的な態度をとつているのであります。勿論このことは、総理のいわゆる講和條約は敗戰国たるの事実を解消するわけには行かないという事由によることとは思いますが、世界の平和と日本の安全とのためには、こういう点こそ和解と信頼との実を示して、連合国側においても日本の憲法の自主性を尊重して、積極的なる態度をとり、義務として受諾されんことを私は衷心から希望するものであります。(拍手)この点に関しまする政府の見解と従来の交渉の経過とをはつきりと明示されたいと私は考えます。なお又第五條(a)の(III)におきましては、日本は、国際連合が憲章に従つてとる如何なる行動についても国連にあらゆる援助を與える義務を受諾することになつているのでありますが、首相は、国連のとる軍事的警察的行動と日本の憲法との関係を如何ように理解し、如何ようなる態度をとられんとするのであるか。この点も併せて伺つておきます。
 吉田首相は昨日の演説におきまして日米間に締結さるべき安全保障條約に触れられ、ダレス構想を繰返すと共に、それが條約の形態としては未だ完成されていないことを語る一方、講和條約調印直後に締結さるべきことをも暗示せられ、又外国新聞も今までのところ同様のことを報道していることは、諸君の御承知のところと思います。條約草案第六條には、占領軍の撤退後三又は二以上の連合国が日本との協定によつて日本国の領域に駐兵できる旨を規定しておるのでございます。日米安全保障條約は講和條約草案の重要なる一部と言つても過言ではないのであります。そこで私は次の諸点を総理にお伺いしたいと思う。
 一体どういう経過でかかる駐兵條項が條約草案の本文の中に挿入されるに至つたのでありますか。過去におきまする吉田首相の国会における答弁におきましても、その他の発言におかれましても、この点に関する限り一度もこれが條約の不可分なる一部として條約草案中に挿入さるべきことを言われたことは私はなかつたと記憶いたします。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 ダレス氏は過般記者団との会見におきまして、安全保障條約の問題に関し日本憲法の改正問題が起ることを暗示したのでありまするが、本條約を締結すれば、日本の再軍備との関連において当然に日本憲法の改正が約束されたものになるかのごとき虞れがあると私は思うのでございまするが、本條約の締結と憲法改正との関係についてはつきりとした御答弁をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
 私は外国軍隊の日本駐兵は單に日本の安全保障の問題たるにとどまらず、国民の精神、国民の道徳、国民経済等に影響するところは極めて広汎且つ深刻なものがあると考えます。インドはこの点に関しまして、「引続いて特定国が日本を占領するものと了解される虞れがあるから反対である」と言い、エジプトは、エジプトと英国間の協定に基くスエズ運河地帶駐屯の経験を挙げて、「日本は将来後悔することになるであろう」と指摘して、これに反対をいたしております。(拍手)誠に特定国の軍隊の日本駐屯は日本の独立を危くする虞れのある重大な問題であり、外国軍隊駐屯下における独立は真の独立とは私は言えないと思います。(拍手)一たび駐屯すれば、これが撤退は決して容易でないことは、過去における歴史が明示して余りあるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)かく考えて来まするときに、外国軍隊の日本駐屯に関するこの條項は條約中から当然私は削除されて然るべきものだと思いまするが、(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)政府はこの点に関して如何にお考えになつておるか。所見をお伺いいたしたいと存じます。
 我が日本社会党は、日本の自衛の具体的方法や手段は、完全なる講和の締結のあとで日本が自由意思によつて決定すべきものであり、日本の安全保障に強化された国連の普遍的安全保障によるべきものであるとの理想を掲げて主張し来たつたのであるが、当面の日本の安全保障については国連総会の議決による具体的な措置を主張しておるのであります。私たちは第二次世界大戰の防止に努めなければなりません。勿論世界戰争は不可避ではない。ヨーロツパにおいても、どこの国においても、不可避であるとは考えておりません。併し戰争はやはり我々民衆の努力によつてこれを防止できるのであります。そうすると共に、日本がみずから戰争の渦中に巻き込まれるようなことは、これを政治家としては避くべきであろうと私は思います。我々は特定国の外国軍隊の駐兵は希望いたしません。併し安全保障條約が本條約草案の骨子の一つである以上、政府はたとえこれが條約の形態としては未完であつても、その内容を明らかにして、国民の批判に訴え、そうして講和会議に私は臨むべきであると考えます。(拍手)
 一体駐兵の條件は如何なるものであるか。兵力、基地、駐屯の期間はどうか。経費の負担関係は如何になつておるのであるか。聞くところによれば日米折半とのことであるが、果して然るか。日本の再軍備との関係は如何になつておるのであるか。日本側の義務、外国出兵等に関する取りきめはどうなつておるのであるか。軍の編成、規模、訓練は如何なるものであり、又政府はこれに対してどういうお考えを持つておるのであるか。一体批准條項は昨日の総理の演説によりますれば入ることになるであろうと言つておるのであるが、果してそうであるかどうか。こういう諸点については私は少くともでき得る限りこの点を明らかにして、政府は全く大胆率直に、国民と共に、日本が置かれておるこの地位に伴うところの問題を解決し、そうして一歩でも日本の立場をよくするように努力すべきであると思うのでありまするが、(拍手)この点に関する政府の態度は全く私は秘密外交的であり、問題を回避するがごとき態度は私はこの際断じてとるべきではないと思うのでありまするが、(拍手)私は以上述べた諸点についてはつきりと御答弁をお願いいたしたいと思います。(「一番重大な問題だ」と呼ぶ者あり)
 私の質問の第三点は世界の情勢と調印の相手国に関してであります。
 日本社会党は今日まで外交方針としましては、あらゆる国と友好関係を結び、殊にアジアの諸国とは将来親善関係をますます濃厚にして、アジアの諸国の自由と繁栄との中に我々の自由と又繁栄とを求めんとして来たのであります。かかるが故に、講和に関しましては、完全なる主権を回復し完全なる独立を得るためにも、極東委員会構成の十三カ国との完全な講和を主張し来たつたのであります。然るに政府は「全面講和は望ましいが、多数講和も又止むなし」という極めて消極的なる態度を従来堅持して参つたのでございます。而して今日講和に対する世界各国の態度は果してどうでありまするか。米英を中心として本草案に賛成するもの、そうしてソ連、中国のごとく本草案に反対するもの、又インドやビルマやインドネシアのように、アジアの平和と独立とを心から欲するが故に本草案に対して重要なる修正をその立場から申込んでおるもの、この三つのグループに私は大別できると思います。従来不参加を伝えられていたソ連も米国の招請に応じました。ソ連参加に関する観測は種々あり得ると私も思いますが、併し少くとも他の参加諸国の同一の場においてソ連に対しても日本側において主張し得るの機会ができたことだけは確かであります。かかる状況の下において、政府は、今回の会議に参加し、且つ調印する国家は如何なるものであるとの見通しを持つておるのでありますか。この点は国民のはつきりと知りたいところであると思います。又政府としても国民に明示するの義務があると私は考えるのであります。それと共に、私は政府としては従来のごとく一辺倒の態度をとることなく、米国に対しても、ソ連に対しても、或いは東南アジアの諸国に対しても、日本の立場や要求を十分に理解させ、これを主張する態度、即ち單に全面講和は望ましいとする消極的な態度をこの際一擲して、積極的に、全面講和の達成に対して、私はこの唯一の機会をとらえて、敢然として、国民の熱望を背景として、(「そうだ」と呼ぶ者あり)私は鬪うべきであると思います。(拍手)この点について吉田総理のお考えをお伺いいたしたいと存じます。
 今回の條約草案の欠陷は、何と言つても日本の平和と自立とにとつて重要な問題が未解決のままにあとに残された点にあると私は考えるのであります。その一つは中国の問題だと私は思います。吉田総理は昨日の経過報告におきまして、アリソン公使の談として、中国代表問題に関し米英両国案を調整するために多大の苦心が拂われたことに言及しておられるのでありますが、これも又米英両者の間においてこの点に関しては激烈なる討論が交され、又あらゆる努力が拂われたことを知つております。併し我々が知りたいことは総理は国を緘してその内容については一言も言われておりませんが、我々国民の知りたいことは、かかる形式的なことではなくして、かかる儀礼的なことではなくして、その内容であり、事の真相であると思うのであります。(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり)この解決の仕方こそが、日本の将来にとつてもアジアの平和にとつても重大な関係を有することは、ここに改めて私は申述べるまでもございません。
 従いましてこの際はつきりと吉田総理にお答え願いたいことは、英米間の中国代表問題は如何ように調整されたのであるか。英米間の話は全く未解決のままであとに残されたのであるか。それとも一つの妥協点に達して問題をあとに残したのであるか。巷間伝えられるごとく條約締結後日本に中共と国府とのいずれを選ぶかの選択権が與えられたのでありますか。若し選択権が日本に與えられだとするならば、それは恐らく何らの制約もないもので私はなければならないと思う。その点に関しては如何になつておるのでありましようか。本来かかる問題は連合国側において明確に解決をして、そうして講和を結ぶのが私は本筋だと思います。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)これは連合国側が中国におけるいわば内乱の処理を日本側に下駄を預けたような関係に私はなつておると思います。(拍手)これらの事柄は、本来ならば私は連合国側においてはつきりときめて、そうして日本との講和というものを取結ぶべきであると私は思うのであります。併し不幸にして現実はそうでなく、そうして今のごとき解決になつたとするならば、吉田総理は一体日本の将来のためにいずれを選ばんとされる心づもりであるのか。その点をお答え願いたいと思う。(拍手)
 私の質問の第四点は、本草案と日本の経済自立の可能性及び生活水準との関係の問題でございます。
 私は本講和草案が真に国民的な支持を得るためには、條約草案の形式内容が共に合理的であることも必要でありますが、それと共に、この條約が日本経済や国民生活にもたらす影響が十分に明らかにされ、これに対する政府の具体的な対策が樹立されて、勤労大衆の生活水準の低下を防ぎ、失業の増大を防ぎ、大衆の生活を保障されておることが私は最も必要だと思うのであります。それ故、本来ならば政府は條約草案と同時に、これに伴うところの予算や経済、貿易、労働その他の政策を明示して国会の審議を求め、国民の批判を待つべきものと私は信ずるのであります。(拍手)然るに総理の演説を見ましてもわずかに抽象的に日米経済協力その他に触れた以外はどこにもこれらのことを見出すことができないのは甚だ私は残念に思います。昨年八二%まで回復しました国民の生活水準は、今年に入つてからは、インフレにより六九%まで下降しております。生産の増大自体も少しくこれを分析して見れば多くの問題を包蔵しております。貿易も、数量指数で見まするときは、昭和九―十一年に比べて、輸出は二九%、輸入は三三%という極めて小さな規模のものであります。我が国経済の正常な循環を確保しまして、本当に自立を達成しまするためには、かかる小規模な貿易規模における均衡に甘んずべきでないことは申すまでもございません。この点におきまして、昭和二十五年度の輸出において二八%、これは金額指数であります。又輸入において二一%を占めている東南アジア諸国が、この講和について不満を持つていることは、我々として極めて関心を持たなければならない点だと考えます。中共貿易の中絶以来、日本の海外市場として政府が唯一の頼みとしたのは、この東南アジアの国々ではなかつたですか。これらの国々が講和に対する不満から、経済的にも日本との関係が不利になるならば、アジアの広大なるところの市場は中共貿易の中絶と相待つて閉ざされる結果にならぬと誰が断言できますか。(拍手)私は、日本の自立が達成されるためには、日本人が生きて行くためには、平和に生きて行くためには、アジアとの関連を離れては極めて困難であり、不可能でさえあるということをしばしば日本社会党は繰返し、私もこの壇上から今年の一月の質問において繰返しました。日米経済協力の推進も、政府が盛んに唯一の頼みとしておられる日米経済協力の推進も、アジア諸国において勃興しているところの民族主義を無視してこれが円滑に達成できると若し政府自身が考えておられるならば、このくらい私は認識不足はないと思うのであります。(「そうだ」「いいぞ」と呼ぶ者あり、拍手)世界の半分は貧乏であります。世界の半分が貧乏である限り世界の平和は確保できないのであります。だからこえ、七月に行われましたフランクフルトのコミスコ大会においても、世界の社会民主主義者は、この点に関する限り一人として異議ある者なく、アジアの貧困を救い、アジアの開発のためには、社会民主主義による開発推進以外にはないという結論に到達いたしているのであります。私はこの点に関しては諸君が冷静に世界の情勢に……(「宣伝はやめろ」と呼ぶ者あり)そうして対処されることが、政府においては私は最も必要だと思います。(「質問をやれ、質問を」と呼ぶ者あり)なお又、駐兵費、賠償費、再軍備費等をも賄うとなれば、財政負担は著しく増大することになると思います。これらは、財政の規模を拡大させず、インフレを避けんとすれば、必然的に国民生活に直結するか、或いは日本の将来を培う基盤である教育費等のごとき文化費に圧迫を加える結果にならざるを得ないと私は思います。現に六三制の危機すら伝えられているではありませんか。対日援助費も来年は打切られるはずであります。私は総理がこれらの点を十分に考慮されて、講和後における日本経済の自立の規模、財政規模を示すと共に、勤労階級の生活水準を明示されて、そうして国民の将来に対して希望を與えている六三制のごときについては、この際、明確に態度を示して、国民に一つの安心感を與えるべきであることを確信いたします。
 引揚問題につきましては、日本社会党は、先般フランクフルトで行われました大会においても関係諸国を説いて、これが促進の決議案を採択させましたが、国民の熱烈な希望が容れられて、本條約草案において第六條の改正となつたことは、私も、政府と共に、国民と共に同慶に堪えないととろであります。併しこれが実現方につきましては今後一層の努力を拂つて、改正された條約草案が單なる草案に終ることなく、この点については政府は具体的に努力すべきことを私はこの際要請しておきたいと思うのであります。
 なお今一つ、我々が看過できないのは、賠償問題であろうと思います。賠償の具体的な分量、或いは規模、期限等については、今後の折衝に待つべきこととなつております。日本は軍国主義の下に被害を與えた国々に賠償をすべきことは、私は当然だと思う。併しながら日本の国民が生きて行くためにも、この賠償は合理的なものであり、そして、なお且つ我々が平和を乱すことなく、それらの諸国の平和的な繁栄と、その流れに沿つた線においてこの賠償が行わるべきことは、私は全的には否定できないと思うのであります。この意味において、私は賠償の問題に関して、政府において今後の交渉等につきましては十分なる確信と十分なるところの理解を向うに與えて、賠償問題が日本のために又賠償を要求する国々のためにも円満に解決されることを希望いたしておきます。
 最後に私の吉田総理に質問いたしたいのは講和と日本の民主化に関するものでございます。私は平和の基礎の一つは日本の民主化の徹底にありと信ずるものでございます。日本の民主化の促進と徹底こそが、今後日本に対する世界における民主主義国の友好的なる態度を決定する一つの要因だろうと考えます。殊に本條約の前文におきまして、日本は国際連合へ加盟するの有無にかかわらず、国際連合憲章の原則を守り、世界人権宣言の目的を実現するために努力し、国際連合憲章第五十五條及び第五十六條が定め、且つすでに降伏後日本の体制によつて始められた安定と福祉の條件を、日本国内に作り出すために努力する意思を宣言することになつております。これはイタリアの平和條約と違つて、義務ではなくして、日本の意向の表明という形式をとつておるものでありまするが、やはり私はこれは一つの重要なるところの誓約であると思います。然るに私は、最近における政府の施策を見るとき、農地改革を打切つたり、基本的人権を蹂躪したり、或いは労働諸法の改惡を企図したり、極めて日本の民主化の促進のために遺憾に感ずる点が多々あるのでありまするが、極く最近における一層の反動化の傾向を見まするときに、私は、かかることこそが世界の信を裏切り、不信を抱かせるもとであり、講和後における日本の外交政策を行う場合において甚だしく私はこれは障害となることだと考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)吉田総理は、日本の民主化の徹底と、そして国民福祉の向上について、如何なる具体案を持つて世界の信頼に応えられんとするのであるか。この点を私はお伺いいたしたい。
 諸君、私は今まで講和條約草案及び安全保障條約案の内包する問題について吉田総理に質問をして来ました。私は、この際、総理におかれては極めて率直大胆に御答弁を願いたいと思うのであります。私は、今直面しておりまするところの問題は、これを蔽い隠すには、そしてこれに対する国民の眼を蔽い隠すには、余りに深刻であり重要であると私は思うのであります。我々は勿論政府とは立場を異にします。併しこの大きな問題に対しては、やはり我我は真正面から取組んで、そうして講和会議においては、総理は国民的な感情、国民的なる意思を背景として、そして外交を展開されんことを私は心から希望いたすものであります。いわば世界史の審判の前に立つておられるところの老宰相でございます。我々はその健鬪を祈ること誠に切なるものがござります。併しながら我々は、他面、事態の真相に眼を蔽い、事態の真相を誤まつてはならない段階だと考えるのであります。総理の講和会議に臨む決意は如何なるものでありましようか。この際はつきりと私はそれを国民の前に明示されんことを希望いたしまして、私の質問はこれで終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 政府は国会の開会を躊躇いたしたのではございません。これは昨日も申しました通り、平和條約草案なるものはわずかに昨日に至つて確定をしたというような状態であつて、且つ又初めから招請状その他に明記してある通り、八月十三日には多分確定案が各国政府に送付することができるであろうということが書いてありましたが、にもかかわらず、関係国の多いこと、或いは関係事項の多いために、予定の通り十三日にも確定がせずして、十六日でありますか、十六日の朝に至つて初めて日本政府もこの確定案を受取つたというような状態でありまして、この條約の作成ということは、昨日も縷々申しました通り決して容易なことではないのであります。又確定をしない條約案を基礎として国会に報告等はでき得ないために、條約の草案の決定の経過を見合いつつ国会開会の期日を決定いたしたのであります。又国民に対し、若しくは国会に対して、今日の講和條約なるものが、現在の講和條約なるものが何らの秘密もなく、又何ら打明けて諸君に明示しなかつたことはないのであります。まだ案文ができ上らない條約或いは保障條約などに、何と申しますか、安全保障條約等についても、もう構想だけでもあらかじめ諸君に明示しておるようなわけで、仕合せにしてこのたびの條約は、何ら秘密もなければ、又国会その他において、外国に対してはとにかくとして、国会その他、国民に明示のできないような事項は全然ないのであります。これは、はつきり申しておきます。
 領土権の問題についてお尋ねでありますが、日本の領土権は、これはミズーリ艦上における降伏條約にも明らかに書いてあります通り、無條件降伏をいたして、日本は主なる四つの島及びこれに属する諸小島以外は領土権を放棄することを承諾することになつておるのであります。故に原則としては四つの大きな島及びこれに属する小さい島だけが日本領土として確定いたしたので、その他の領土の放棄は、すでに日本が無條件降伏として終戰のときに承諾いたしたところであります。故にその原則は講和條約を以て動かすことはできませんが、併し、昨日も申した通りに、千島とか樺太とかいうような領土に関する領土権放棄と違つた形で以て琉球その他小笠原等については違つた文句を使つておる。これは大いに意味あることである。と申すのは、今日まで日本政府として米国政府或いはその他と交渉をいたした経過から考えて見て、かくのごとく言い現わし方を違えておるのは、その間において大いに意味があることである。或いは樺太とか或いは千島と同じように扱わないアメリカの意思が明らかになつておるのであると申すゆえんであります。これは、ここにはつきり申しますが、従来琉球その他小笠原等は、これは戰略的の要地であつて、アメリカとしては、領土が欲しいから、或いは又その他の意思で、経済上等の意思によつてこの小さな島を得んとするはずはないのであり、又そのためではないということは、はつきり当局者が申しておるのであります。然らば何がためか。若し軍事上の要地を逆に他の日本を敵とする国が占領いたした場合には、或いは又ここに軍事施設を設けたならば、日本の安全は非常な脅威を受けるじやないか。これは米国政府としては甚だ不安に堪えないところである。アメリカがこれに軍事施設を施すが、併しながらこれはもともと領土的の野心ではないということは、しばしば明言いたしておるところであります。又信託統治そのものの過去の歴史については御承知の通りであります。即ち戰争によつて領土は獲得しない。然らばドイツその他が持つておつた領土はどうするか。それは、その住民の利益のために或いは福祉のために、或る国がこれを代つて信託統治するということになつておるのであつて、目的は領土の獲得ではないのであります。その国のその住民の利益或いは福祉のために、これを或る国が代つて統治を信託されるというのが目的であり、その起源であります。従つて琉球、小笠原等についてもこれを信託統治に付するということは、その住民の利益、福祉を土台に置いて、これを考慮のうちに入れての統治であります。故に、私は昨日も申した通り、その住民が日本に帰属することを希望しておる、或いはこういう條件で日本との関係を維持し、若しくは信託統治国との関係を作りたいという考え、その考えは十分取入れて信託新治に関する規約なり條約なりを作るであろうと想像するゆえんはここにあるのであります。歴史上の由来から考えても、又アメリカとの交渉の経過から考えて見て、私は昨日の演説の通りに確信いたすものであります。(「幾ら言つても聞かない」と呼ぶ者あり)
 又安全保障についての駐兵或いは軍備等の関係についてお尋ねでありますが、これは安全保障條約については、昨日も申した通り、構想はきまつております。併しながらその委細の細かい條項については、或いは駐在地をどこにするか、或いはその期限とか、(「何が細かいか」と呼ぶ者あり)或いは又駐兵の費用というような細かい規定については、今なお交渉ができ上つておらないと、こう申すのが事実であります。いずれ、これは批准の場合に国会の協賛を経るはずであります。(「きめてからか」と呼ぶ者あり)
 又軍備について、私はしばしば申しておる通り、再軍備はいたさない、再軍備は今日いたすべきものではない、いたすことはできないと申しておるのであります。従つて、軍備に関しては何ら米国政府とも話合いがないのであります。これは再軍備については日本国民の自由意思に委ねられることになつて、政府間においては何らのその間に秘密協定もなければ義務もないのであります。従つて今日は憲法改正という問題はないのであります。(「じや全貌を示せ」「隠すな」「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)全面講和、多数講和について再びお話がありましたが、これは私もしばしば申す通り、できればこの際平和が打立てられることを希望いたすのでありますが、(「できるか」と呼ぶ者あり)現在の現状におきまして、共産主義者等のために妨害を受けて、(「やりたくないのだろう」と呼ぶ者あり)今なお全面講和はできないのであります。(拍手)全面講和ができて、この講和條約によつて日本の独立が、或いは又他国との間の国際関係が確立いたされるならば結構であります。不幸にして共産党のごときものが存在するために、この講和條約は(「その通り」と呼ぶ者あり)多数講和しかできないのであります。(「嘘をつけ」と呼ぶ者あり、拍手)而してどれくらいな国家が講和條約に調印するか。これは今後の変化にもよりましようし、もうすでに変化を生じておることは、インドその他において多少の意見のあることは御承知の通りであります。又参加しないだろうと考えられたソヴイエトが参加するというような変転極まりない今日の事態でありますから、(「当り前だ」と呼ぶ者あり)海外の状況について何らの機関を持たず、又信ずべき情報等を持ち得ない日本政府としては、これだけの国家が参加するであろうかというような具体的にここで報告をするような確実な情報は持つておりませんが、併し米国政府その他からの聞き得るところによれば、五十カ国でありますか、その多くは、或いは大多数が参加し得るであろうと私は想像いたします。
 さて、英米間において中国の問題が取上げられて、これは長らくの間紛争の的になつておつたということは事実でありましよう。又これがイギリスとしては現在の中共政府を認め、アメリカとしては台湾にある国民政府を認めておる。互いにその従来の行きがかりがあるために、直ちにこれを調節することができなかつたことも事実でありましよう。この調節を考えておるならば、講和條約の成立或いは結集までに至るのに時間がかかるのと、日本に対する対日講和條約は成るべく早くこしらえ上げたいという希望と、この二つの條件から遂に一応棚上げするという形になつたのが本態であろうと思います。日本に選択権を委ねるとか委ねないとかいうことは、日本政府の承知いたさないところであります。
 引揚者の問題については、先ほどその実現をということ、御尤もであります。政府としてはあくまでもその実現に努力いたす考えであり、又あらゆる機会においてその実現を迫る考えであります。
 又賠償問題についてお尋ねでありますが、これは戰争中に不必要な或いは合理的でない攻撃、損害等を與えたことは、これは事実として認めざるを得ないと思います。これに対して適当な賠償をなすことが日本としても当然すべきことであろうと思いまするが、併しながら日本の現在の経済状態から申して、この損害のすべてを賠償するということはできないことである。即ち日本の経済の自立を妨げざる程度において賠償のできるものはしたいというのが我々の考えるところであり、又国民もそう考えているだろうと思います。(拍手)
 民主化の徹底についてはお話の通りであります。この民主化の徹底は飽くまでも日本国民がこれに終始一貫この徹底に努力することによつて、日本国に対する国際間の信用が高まることだと考えますから、これは議会における各政党におかれて十分に御協力を願いたいと思います。
 その他の問題については所管大臣からお答えをいたします。(拍手)
#6
○議長(佐藤尚武君) 和田博雄君、再質問よろしうございます。
   〔和田博雄君登壇、拍手〕
#7
○和田博雄君 吉田総理の率直な答弁、殊に再軍備に関する答弁は、私も了承いたしました。この前の国会における私の質問につきましても、総理は、再軍備は日本としてはやらないということをこの壇上で言明されたのであります。今、再び言明されました。私はこの態度を最後まで守り抜いてもらいたいと思います。(拍手)
 ついては補足的に一つ御質問申上げたいことは、南方の諸島についての只今の総理の御答弁でございますが、私は戰略的な管理という、そういう理由からアメリカがこれらの国を信託統治ということにされているように、総理の昨日の報告からは察知いたしたのであります。戰略的に一つの国を信託統治しまするためには、恐らく国連憲章によつて安保理事会の承認を私は必要とするのじやないかと思うのであります。従いまして、そういう手続をとる煩を避けて、日本との條約においてその問題を解決して行こうという態度のように私には理解されるのであります。従いまして、私はこの問題については、政府当局において、殊に総理において非常に苦心されたところだと私も思います。併しながら、それであればあるだけ、領土権については、むしろ、はつきりと日本にあるということを明示しておいたほうが、世界に対して公平な立場であり、私はアメリカ側の主張といえどもむしろ通りやすいのじやないかと信ずるのであります。日本としては、この点に関する限り何ら遠慮すべきことはないと思います。正正堂々と領土権を明示して、その上でそれらの国の信託統治の問題を解決すべきが筋だと私は考えます。その点についてもう一度はつきりと御答弁をお願いいたしたいと存じます。
 又、大蔵大臣とこれは安本長官にお尋ねいたしたのでありますが、御答弁がありませんから、重ねて私は答弁を求めます。この條約草案についていろいろの私は経済的な問題が現に起つているし、又将来も起るだろうと思う。一国の大蔵大臣としては、これらの問題を如何に処理し、どういう構想によつて国民の生活の安定を期そうと思つているのであるか。又経済的な大きなインフレーシヨンの波を、ただ單に勤労階級の負担や農民の負担においてなさずに、合理的に解決して行こうとしていると思うのであるが、それらの具体的な構想は、少くとも私はこの條約草案がサンフランシスコにおいて議せられる場合においては、日本側としても十分なるところの腹がまえがなければならないと思うのであります。それらの点についてやはり大蔵大臣としては、この際、明確にその構想を話されて、国民にそれを知らしておく必要が私はあると思う。どうかその点についての一つ御答弁をお願いいたしたい。(拍手)
 安本長官については、私はいろいろと質問したいことはありまするが、ただ一点、政府は自立計画を今まで立てて来られた。併しその自立計画は、いわば私をして言わしめれば、これは自立計画でないと思う。今完全に過去における自立計画は崩壊したと私は思う。今度新たに来るところの條件、それらを勘案して、日本政府としては少しく長期の見通しを持つた計画を持つべきであろうと私は思うのであります。而して経済政策の基調としては、自由放任なる主義ではなくして、やはり計画性を持つた、計画的な経済を少くともやつて行くという立場における自立経済の計画でなければ、運営が私は不可能だろうと思う。そういう点について、国民に、殊に経済的な基盤の弱い日本の産業人に、日本の経済の将来の見通しについて的確なるところの示唆を與えるということは、これは当然に私は政府のなすべき重要な役割だと思う。然るに講和條約が歴史の日程に上つて以来、一体そういう点について政府は何を発表し、どうしようとしているか。ちつとも我々にはわからない。こういうようなお先真つ暗なことで、而も世界的な変動を受けで価格が下り、滯貨ができれば、やれ滯貨金融であるとか、やれ何であるとか、目先のことだけ追つている経済政策を続けて行かれたのでは、私はたとえどんな講和ができても、日本の国は安定しないと思う。その点について我々は、やはり完全雇用を目的とし、而も国民の生活を安定し、産業の能率を高める、大きな経済目標をここに立てて、そうして日本の持つている資源を総動員して、我々はこの大きな変革に財政的に対処するだけの具体的な案を持つ、その心がまえをすべき時であろうと思う。それらの点について大蔵大臣と安本長官の明快なる答弁を願います。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 南西諸島等についてのこの條約に規定してありますところによりましても、即ち南方諸島並びに沖の鳥島、南鳥島を、「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下に置くこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」ということが書いてありますので、即ち米国政府は国際連合に提案する考えを以てこの規定ができていると思います。その提案が如何なるものであるかということは今なお明白でありませんが、併し只今私の申した通りの考えで以て、即ち米国としては、これは領土という考えよりは、むしろ戰略に重きを置いての構想で提案せられることと私は承知いたします。而してその主権がどうとはつきりせしむべきではないか――はつきり申せば、先ほど申した通り無條件降伏條約によつて、日本の四つの島及びこれに付属する島以外の主権は放棄せざるを得なくなつているのでありますから、放棄したという原則については、この講和條約によつて動かすことはできないのであります。(「太平洋憲章」と呼ぶ者あり)でありますが、併しながらアメリカ政府が日本に対する好意から考えまして、どれだけ後退するかと申しますか、日本に讓るか、主権をも讓るかということは、今後の処置の内容によつて明白になることであつて、暫らくこれは将来の経過について御覧を願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。
 本草案が調印批准になりましてからの後の我が国財政経済に及ぼしまする影響の主なるものは賠償問題でございます。これは先ほど総理からお答えになりましたように、この額はきまつておりません。現在の状態におきましては賠償の能力がないと認められているのであります。併しその後におきまして関係国との折衝に相成りますので、どれだけの賠償になるかということは今から申上げられません。
 次に問題になるのは駐兵の問題でございます。これは今内容を検討いたしておりますので、駐兵に対する日本の分担金がどの程度になるかはわかりませんが、私は日本の国民生活を切下げなければならんというふうな場合は起らないと思います。今までも終戰処理費を負担しておつたのであります。御承知の通り本年の七月から米軍の進駐に対しましてはドル拂いの制度が開始せられました。終戰処理費は減つて来たのであります。今後におきましても、今までのように千億円を超える駐兵費の負担はないものと私は確信しております。
 第三の問題は、連合国人のこの日本、この四つの島におきまする戰争中の財産の返還並びに補償の問題でございまするが、これは草案にありますように、七月十三日の閣議決定に基きまして計算するところでは二、三百億円程度でございました。一年に拂う必要はございませんので、来年度は百億円ぐらいと考えておりまするが、こういう問題もあります。併し草案より別個に外債の問題がございます。利子を加えますると四億ドル余り、千五百億円に上つております。而して期限の到来したもの、又利子を支拂わなければならない義務の発生したものを合せますと、千億円ばかりあるのであります。こういう問題も考えなければなりません。而も又国内的に申上げますると、戰争によりまして相当の痛手をこうむり、まだ十分癒えておりません。和田君のおつしやる通りに、国民生活水準は戰前のそれに対しまして七十前後、八十になつたかと思えば七十になるというような状態であります。こういう場合におきまして、而も対日援助が打切られた場合におきまして、日本が自立して行くということはなかなか困難なのでありまして、この草案に対しまして、すぐ案を出せと申されてもなかなかできるものではございません。そんなに生やさしい問題ではないと御了承を願いたいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。
 講和條約の成立後における真の独立を得るために経済の自立が必要だということに関連して、非常な御心配の御意見が出ましたことに対しては敬意を表します。我々もこの点は一番重大に考えておりまするので、経済自立をなし得るや否やということは、一に国内資源の開発又貿易の振興によつて生産を増強しつつ、国内における生産を高め、輸出を増加するということにあると思います。今御質問によりますると、経済自立計画というものを立てたが、これは変更する時期に来ておるというお話があります。今年の一月二十日に発表いたしました経済自立計画の内容は、お話のように、国民生活の水準を昭和二十八年度には八九に持つて行く、産業の生産指数を戰前の四〇%増の一四〇、鉱工業生産を一三〇に持つて行くということが目標になつておる。この目標に対してすら、当時社会党の皆さんは、こんなうまいことができるかということの御質問でありまして、私どもも非常に控え目に国際情勢を勘案しつつ立てた案であります。然るに事実を以てお答えをいたしまするならば、御承知の通り、その後における国際情勢は逆に、或いは偶然と申してもよろしいが、ともかくもこの計画の数字を上廻つたことはお認めを願いたい。(拍手)今年の三月、四月、五月以降における生産指数の増強は、はつきりとして、すでに五月は一四〇になつておる。これは事実であります。但しあなたが御承知の通り、生産指数の増強の裏におきまして、国際価格の上昇により、国民生活水準が或る程度価格の上昇によつて下つたことも認めます。併しながら恐らくは今後における状況は、私どもは一時的な現象で一喜一憂はいたしませんが、併し恐らく今後における国際的な協力関係、殊にあなたが御指摘になりました東南アジア開発、東南アジア地区における貿易関係というものは、我が党、我が政府が絶えずこの場合においても主張したものであります。而も最近においてマーカツト声明におきましても、東南アジア地区の開発というものは、この地区における国及び民族との共存共栄の精神を基調として開発し、その地区における資源を日本に持つて来て未稼動工場を動かして商品化する、現に全民族のために生産を増強する方向に向つて進みつつあることは事実であります。その地区における貿易関係の相談も具体的にそろそろ進みつつあります。こういう事態からいたしまして、私は恐らく将来に向つて生産が増強して行くであろうということの見通しは私はあると思う。決して手放しの楽観はいたしません。これは現状から然りであります。而して生活水準の問題にいたしましても、あなたが御指摘の通り、去年の六月から朝鮮事変勃発以来相当下つておることは事実であります。生産が上つても賃金水準が上つても実質賃金が下つたことは事実であります。併し今日御覧を願いたい。今日生活必需物資関係は、あなたが御指摘のように滯貨金融なんかで問題にいたしておりますように、繊維製品、味噌、醤油、油、ゴム、皮革等は暴落いたしまして、去年の五月、六月頃の価格になつておることは率直に認めなければならないと思います。そういう関係から、生産資材の価格は石炭とか鉄鋼においても又高くなつておるものが相当ありますが、こういうものと相互関係をよく考えて行きますときに、生活永準というものと生産指数の上昇とが表裏しまして、今後又漸次回復するのではないかと考えております。こういう面に向いまして、私どもは現在立てられておる経済自立計画の生活水準を落さないで生産を増強して行きたいということは、先ほど総理からもお答えがありました。この点に向つては日本の経済自立に向つて今後万全の努力をいたして行きたいと思います。池田君がお話になつたように、講和條約が結ばれてすぐ経済が回復できるという手品が使えるというなら結構でありますが、そこにはおのずから時間的な努力と目標を立てることが当然であると思います。(拍手)
#11
○和田博雄君 私は今周東長官の答弁では甚だ不満であります。簡單に再質問いたします。(「まだ時間があるよ」「五分あるよ」と呼ぶ者あり、拍手)
#12
○議長(佐藤尚武君) 和田博雄君。
   〔和田博雄君登壇〕
#13
○和田博雄君 私は周東長官にまじめな答弁を求めたのである。生産が上昇するということはこれは私は上昇すると思う。併し上昇がどういう形において行われ、その上昇が実際国民生活水準の上昇に役立つものであるかどうかということが重大なのです。フランスといえども、外国といえども、やはり生産は上昇しておる。一四〇%にもなり、一五〇%にもなつておる。併しその増産されたものが、真に国民の経済の基礎を養い、国民生活が豊かになるような方向に行かずに、料理屋が建つたり、待合が建つたりする無駄な方向に浪費されて行くところに問題がある。そういう点については私は、はつきりとその点は長官は認めてもいいと思う。殊に私は心配なのは、日本の経済が戰争というものによつて栄えるというのではなしに、戰争の要素がなくなつても、平和の経済においても日本が成り立つて行くような、そういうことを私は希望しておるのであります。どうかそういう点に関して十分に考慮を拂つて頂きたい。私は講和條約が済んで、すぐあと急に激変するとか何とかいうことを申上げておるのじやない。やはり国内の経済を扱う以上は、少くも長期にものを見て、そうしてあらゆる要素を勘案して、私はしつかりした計画を立つてもらいたいということを言つておる。どうぞそのことを御答弁願いたい。(拍手、「不まじめな答弁をするな」「生意気だぞ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(周東英雄君) 再質問の形でお話になりました点については勿論でありまして、私の申上げたのは、あなたのお話になる国民生活必需物資の生産数量が増加し、その原材料がたくさん入つて来ておるということを申上げたわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そのために、御指摘の点につきましては十分考慮して、長期的の経済の自立をなし得るように計画を進めて参るつもりであります。(その内容をはつきりしろ」と呼ぶ者あり、拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(佐藤尚武君) 木内四郎君。
   〔木内四郎君登壇、拍手〕
#16
○木内四郎君 講和が今日のような形におきまして今日の段階に参りましたたことは、昨日吉田首相からもお話がありましたように、ダレス氏の非常な苦心によることは勿論、アメリカ政府の非常なる好意の結果であることは、我々は勿論これを銘記しなければなりません。併しながら同時に、事態がかくのごとき段階に来たことについては、客観情勢が非常に変つて来たのである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)我々が無條件降伏をした日から今日に至る間において、非常な客観情勢の変化があつて今日に至つたのであるということを我々は忘れることができないと思うのであります。又これを他の方面から見ますれば、国内におきましては、吉田首相初め政府におきましても非常な盡力を私はされたことと思うのです。又我々野党の立場におきましても、微力ながらあらゆる努力をいたしまして、有利な條件によつて講和ができるようにという努力をいたして参りました。(拍手)私どもは確信を以てこれを断言することができます。又国民各階層もいろいろな努力を直接間接にして来たことを私は信じて疑いません。或いは極端に言えば、三原則を唱えられる社会党も直接間接に貢献されて来たことだろうと思うのです。(笑声)而も只今我々の前に示されました條約の草案につきましては、すでにダレス氏も言つておられるように、戰勝国さえもそれを修正することができないというのでありますので、敗戰国であるところの我が国の全権団がこれに調印を拒否するというようなことは到底考えられることではありません。(「そんなことはない、拒否していいよ」「それじや行く必要はない」と呼ぶ者あり)而してこの條約の草案におきましては、昨日も説明されたように、勿論、戰争の責任にも或いはこの監視につきましても触れておりません。或いは無條件降伏についても触れておりません。確かに和解と信頼の條約であることは疑いませんが、而もなお敗戰国であるところの我が国にとりましては、今後百年と申しませんでも、非常に長期に亘つて、我が国の進路と運命に重大なる関係を持つものであるということは申すまでもありません。又国民生活を長きに亘つて規正するところの重要なる問題であるということも申すまでもありません。そこで、こういう重要な問題でありまするからして、この問題につきましては、政府も、與党も、野党も、真正面から真剣に取組むべきものであつて、この問題を政争の具に供するというようなことが絶対にあつてはならんと思うのであります。(拍手)そこで我我は米国や英国の超党派の外国の例を引くまでもなく、我が党は終始、外交問題殊に講和の問題につきましては、超党派的に取扱うべきことを主張して参つたのであります。然るに政府が理解ある態度を示さないために、さつき申しましたように、野党も、或いは與党も、政府も、最善を盡しておつた。併しその間に連絡が十分でなかつた。(笑声)そこで、いわゆる或いは独善外交とか、ワン・マン外交とかいうようなことをいろいろ言われたことは非常に私どもは遺憾に思つておる。又政府の態度にも非常に遺憾な点を感じておるのであります。併し今日になつて我々はこの際あえてこれを深く責めようとはいたしません。今日は、この際は朝野力を合せまして、このスタート・ラインに立つて、このスタート・ラインから祖国の再建を図りたいと思います。(拍手)
 又全権問題につきましても、幾たびか政府或いは與党の態度が変転いたしました。これにつきましては我々にとつて誠に不可解且つ不満な点が多いのでありまするが、政府というよりも吉田首相が我が党の主張を容れられまして、この臨時国会を開いて従来のいきさつを説明するという態度をとられるようになつた今日、私はこれも又多きを言うことを差控えます。我々が臨時国会の開会を当初から強く要望いたしましたのは、国民と講和とを直結したい、この念願に出たのにほかならないのでありまして、国民をして條約の内容、交渉の経緯等を深く理解させて、その上で條約を受諾することが民主主義の原則にかない、且つ国際的の信用を高めるゆえんであると信じたからであります。我々は先ほど申しましたように、過去のことは余り問いたくない。若し政府が誠意を以て説明され、納得をすることができまするならば、全権を送ることに決してやぶさかでありません。私は、吉田首相の昨日の説明で、又今日の御答弁によりまして、或る程度わかりましたけれども、更に講和と安全保障の問題につきまして二、三の点について質問をいたしたいと思います。(「しつかりお尋ねなさい」と呼ぶ者あり)
 吉田首相は、「日本は軍備がない。国際情勢は決して安心できない。この際にアメリカの軍隊が撤退して行けば、そこに真空状態ができるから、外部からの攻撃に対する防衛手段として、日本に合衆国の軍隊の駐屯することを希望する。これに応じて合衆国が平和と安全のために日本に駐屯することに同意する」という構想に、ダレス氏と意見が一致した。そうして條約の草案ができた。けれども、まだ、まとまつておらぬということを言つておられます。併しこの段階で或いはきまつたこと、きまつておらないのだから、きまつたことというわけには参りませんが、(笑声)併しこの内容につきましては、新聞等が報じておるところによつて見まして、二、三をお尋ねいたしたいと思うのでありますが、さつきも簡單にお話がありましたが、日米合同委員会においてこの駐兵をやめる、終止する、その終止は日米合同委員会できめるというようなことが新聞によつて報じておられるだけで、駐兵の期間というものについては何ら触れておられないように新聞などで報じております。併し若し期間に全然触れておらん、期間の定めがないということであれば、安全保障として非常に不安定ではないか。(「不安全保障」と呼ぶ者あり)いつ何どき向うの好意による駐兵がやめられて、引揚げられて行かれることになるかわからんということがありはしないか。(笑声)或いは又他の面から言えば、これがいつまで続くかわからんという面もあるのでありまして、非常に不安定ではないかと思う。(「再軍備」「再軍備論ですか」と呼ぶ者あり)又一定の地域と施設を無償貸付するというようなことが載つておりますけれども、その費用の分担についでは先ほど来も質問がありましたように、(「小さなことだそうだ」と呼ぶ者あり)触れておりません。一体どの程度我が国において負担するのか。国民は講和になりましたならば、本年度の終戰処理費は千二十七億ですか、これは相当減るというふうに思つておるのではないか。さつき大蔵大臣は(「一千億円以下に」と呼ぶ者あり)生活水準を下げるほどになるとは思わぬということを言われたけれども、国民はむしろこの講和によりまして相当に負担が減るのじやないか、終戰処理費の負担が減つて来るのじやないか、仮に駐兵されてその費用を負担しても相当減るのじやないかということを考え、且つ期待しておるのでありますが、その点は一体どういう見通しであるのでしようか。それから更に新聞の報ずるところによれば、駐留の兵力、或いは貸與する地域及び施設は、日本及び太平洋地域の安全保障に必要な限度とするというようなことが報じられております。勿論我が国は現在軍備もありませんし、国力は確かに貧弱である。併しながらこの地理的な條件、或いは工業力、人口、そういう点から見ましたところの戰略的の価値というものは相当高いものがあると思うのであります。それに、殊に今申しましたように、この安全保障が單に日本のみならず太平洋地域の安全保障ということになりまするならば、これは單に我が国の安全保障だけではないのでありまするからして、日本の希望又は依頼というようなことによつてこれが駐兵するのであるというのでは、どうも適当ではないように思うのであります。(「憲法違反」「軍事協定は憲法違反だ」と呼ぶ者あり)そういう点はどういうふうに考えておられるか。又、これも又新聞の報道でありますが、大部分は合同委員会によつて決定するということになつておる。そうすると、この日米合同委員会というものが非常に大きな権限を與えられることになるのじやないか。この組織とか権限というようなものは一体どういう程度にされるつもりであるか。それから批准條項が含まれていることにつきましては、昨日吉田首相から説明されましたけれども、この條約の改訂或いは更新その他の手続等についても何か規定が一体あるのかどうか。又更に日本が自助及び相互援助の條件を備えたとき、国連憲章による地域的安全保障に発展せしむるための暫定措置だというようなことが言われておる。さつき吉田首相は再軍備は絶対にやらんということを言われました。それに関連いたしましてお尋ねいたしたいのでありますが、自助、みずから助ける、それまでの間の暫定的措置であるということが書いてある。そうして、一方、外電は日本に或いは十五個師或いは二十個師を常置するというようなことが報道せられている。こういうことは全然誤解或いは誤電であるのかどうか。今のこの自助というようなことと再軍備というようなこととの関係について御所見を承わりたいと思うのです。なお再軍備をしないのだから憲法第九條の改訂は必要でないというお話でありましたが、再軍備でなくても、外国の軍隊を我が国に置く場合におきましても、第九條の戰争放棄の規定とその関係においていろいろな議論が繰返されておりますが、この点に関する首相の明快なる御所見を承わりたいと思います。(「同感」と呼ぶ者あり)
 領土の問題につきましては、日本の主権が四つの大きな島と連合国の決定する諸小島に限局される、これを無條件に承認したことはもう申すまでもありませんが、併しながら先ほども御質問があつたと思うのですが、このヤルタ協定等につきましては、何か交渉をされた経緯があつたでありましようか、どうでありましようか。若し伺えたならば伺わせて頂きたいと思うのであります。又その後に、我が国が無條件降伏をいたしました後に作られた大西洋憲章の精神によりましても、この民族的に且つ歴史的に我が国の版図と認められるようなものは、即ち千島、琉球、奄美大島、小笠原等を保有したいというこの国民的の希望は、決して無理なものではないと思うのであります。殊に歯舞、色丹島の地位についてもこれを明確にしておかなければならんと思うのでありまするが、この歯舞、色丹などにつきましても、一体、政府はどういう態度をとられるおつもりでありましようか。これも伺つておきたいと思います。なお、この南方の諸小島につきまして、法律上の解釈につきましては、確かに和田君と吉田首相の応答によりまして或る程度明らかになりましたけれども、これは想像が多分に加わつておりますので、こちらではこう解釈するという、そういう想像でありまするが、我々野党の者はとにかくとして、政府にあられるかたとして、何かこれを裏付けをされるところのお話合い或いは文書というようなものがあつたのでありましようか、どうでありましようか。若しお差支えなければ私はお伺いしたいと思います。(「差支えない」「遠慮は要りません」と呼ぶ者あり)
 賠償問題につきましては、現在十分力がないという規定になつたのでありまするが、併し同時に、いわゆる生産賠償、在外資産の賠償引当という二種類が挙げてあります。具体的には金額、限度というようなものがきまつておりませんが、少くも先ほど来お話がありましたように、南方諸国などにおきましては條約に対する不満もある。殊にこの賠償問題などについて債務は負つておるが果せない。私は今日は能力がないと思うという大蔵大臣と同様な意見でありまするが、そのままにしておいたならば、どうもやはり将来の両方の関係に惡い影響があるのじやないか。そこで、債務があるというならば、一体これはどういうふうにして処理されるつもりか。そういう点につきましても政府のお見通しを伺つておきたいと思います。なお、賠償問題に関連いたしましては、中間賠償計画によつて撤去されたところの生産施設、或いは今後没収されるところの、この條約によつて沒收されるところの在外の民間資産に対して政府はどういう態度をとられるおつもりか。或いは補償されるか。若しこれを行う、とするならば、一体どのくらいになる見込であるか。これは財政の負担の上において近き将来にどういう影響があるだろうかということを伺いたいと思います。在外資産は人によつては四十兆以上もあるというようなことを言つておるのでありますが、この在外資産、中間賠償によつて撤去された生産施設に対する補償、それからなお戦時中日本が接収した連合国財産で返還すべきもの、及び損失補償に対する見込、これは先ほど大蔵大臣が言われましたが、こういうものを通じまして、近き将来に財政上どういう影響を来たすでありましようか。終戦処理費の減額、それからさつき申しましたところの駐兵の費用、一方において減額、一方において増額、又賠償の増額その他についてどういうことでありましようか。それを伺つておきたいと思います。
 なお、さつきからこの民主化の問題についてお話がありましたが、條約の條文の前文におきましては、先ほど和田君が申されたように書いてある。国内において始められた安定と福祉の條件を更に続けて行かなければならんということが書いてある。民主化することは吉田総理も非常に賛成であるということを言われた。その通りであると思うのでありますが、何分にもこの四つの島に八千万人の人口を擁して生存して参らなければなりません。この際に、勿論民主化もしたい。生活の水準も上げたい。併しこの八千万の人間が四つの島に生きて行く途、即ち人口問題、或いは貿易の問題につきまして、何らか交渉の過程においてお話合いがあつたでありましようか、どうでありましようか。又政府はどういうふうに考えておられますか。民主化をして非常に生活水準を上げる目的を一方に持ちながら、実際問題として非常に困難に直面しています。これをどういうふうに扱つて行かれるおつもりであるか。この点も政府の所信を伺つておきたいと思います。勿論、対外関係その他いろいろな点がありますので、非常にデリケートな点がありまするから、この際この席でお答え願うことは困難な問題もあるかと思うのでありますが、できるだけ(「ノーノー」と呼ぶ者あり)差支えのない限り親切なる御答弁を願います。なお、ここで御答弁できない場合には、他の機会において御説明を願います。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 安全保障協定の問題については、先ほど申した通り、構想についての話合いを第一といたしたまででありまして、その構想に基いて、爾来成文化しようとして、ワシントンにおいて国務省或いは軍部の省あたりにおいて相当話が進んだように聞いておりましたが、又時々問題の経過に従つて、日本政府の所見等も聞いて参りましたが、併し先ほど申す通り、これが成文化されるまでに話が進んでおらないのと、又成文化するまでの準備が両国政府の間に調わなくて議論になつておるところなどがありますために、未だ成文化しておらないのであります。従つて新聞の報道等については幾多の誤解があると私は想像いたします。只今お話の合同委員会というような組織がどうかというようなことも、これはありました。ありましたが、然らばその合同委員会にどういう権限を與え、どういう人を入れるかというような詳細の点になると、なかなか議論がまとまらぬために、合同委員会という話は出ましたが、遂に結論を得るに至らなかつたということもあります。又期間はどうするか。期間などの問題は、これは抽象的に申せば必要のあるまでということであつて、その必要は、外国と申すか、対外事情によるところでありまして、その事情がはつきりしない限りは期間も言えないという、決定できないということにもなりますし、又どの地点に駐兵せしむるか、費用はどうかというような細目の点については、今なお議論が決定いたしておらないのであります。結論まで到達いたしておらないのであります。従つて二十個師団を日本に送るというようなことは、これは私は到底考えられないことと思います。現にヨーロツパにさえも送り得る最大限は十個師団と聞いておりまするから、日本だけに二十個師団を送るというようなことは、これは事実ないことと私は断言いたします。又太平洋の防備と関連すれば、日本の安全保障問題ばかりではないじやないかということになりますが、若しそういう場合があれば、これは別な協約或いは條約によるべきものであつて、現在我々の考えているところは日本の安全をどうするかというのに限られているのであります。
 領土問題についてお尋ねでありますが、これは一応今まで述べ来たつた通りであります。但しヤルタ協定に対してどういう態度をとつたか。これは日本政府の今日は、日本国の今日は外交停止の状態にあるのでありまするから、又ヤルタ協定の調印参加国でもないのでありますからして、これに対してとやかく抗議若しくはその他の措置をとつたことはありません。今後は別といたしまして、今日まではない。歯舞、色丹或いは琉球、小笠原等の主権問題については、今日まで日本政府としては、総司令部に対して、歴史上その他の関係、従来の関係、経済関係などについては、詳細なる調査報告書を出しております。提出いたしております。この参考に供したのでありますが、その結果であると私は想像いたしますが、琉球、南西諸島等についての條約に現われた言い現わし方については、樺太その他についてとは言い現し方が違つていることはしばしば申す通りであります。
 一応お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#18
○国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点は、賠償の額並びに方法でございまするが、御承知の通りに最後案が昨朝来ます前の草案では、賠償は主義上支拂うべきものであるが、日本といたしましては連合国に対して適当に賠償を行い、且つ、同時にその債務を履行する能力に欠けていることが承認される、こういう原文であつたのが、昨朝になりまして、日本国の資源は賠償を履行するためには十分でない、こう原文が書き直りました。而して前の案では、もつとも、日本国は勤労、労務を提供して、沈船の引揚げとか製造その他に対して協力すべきであると、こう書いてあります。今度の文は「もつとも」がなくなりまして、前の沈船引揚げその他労務を提供することが適当であるということに書いてあるのであります。従いまして我々といたしましては、日本の力が許す限りにおきまして、草案十四條の1に書いてあるような方法で、できればいたしたいと考えているのであります。おのずからこの限度方法につきましては相手国と相談の上、きまることと考えております。
 次に駐兵の費用につきましては、先ほど総理がお答えになつた通りにまだきまつておりませんが、私といたしましては、従来終戰処理費もだんだん減つて来ております。先ほど答えましたように、今年の七月からは終戰処理費の相当部分がアメリカの負担になつて、ドル拂いになつているのであります。而して講和後におきます状態といたしましては、我々の考えるべき問題は、イギリスにおきまして米国の空軍が駐屯している場合の例も考えなければならんと思うのであります。その他のことは一応私は研究いたしまして、今後の折衝に応じたいと考えております。従つてその額は申上げられませんが、我々は成るべく少いことを欲しているのであります。
 次に在外財産の額とその補償の問題でございまするが、御承知の通り在外財産の調査は、終戰後我々が手足を持つていないために非常に困難であります。私として責任ある数字は申上げるわけには行きません。而も又その数字はわかりませんが、それなら、わからない数字でも、或る程度基準を置いてこれを負担するかどうか。在外財産が、條約によつて在外財産を取られた場合におきまして、その原所有者に対して補償するかという問題になりますと、その額が厖大でございまして、我が国の財政力、又他の戰争に基く損害との均衡から申しまして、余ほど重大な問題であると考えているのであります。従つて財政力或いは負担の問題から十分検討しなければならんと思つております。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(佐藤尚武君) 佐々木良作君。
   〔佐々木良作君登壇、拍手〕
#20
○佐々木良作君 私はこの條約の問題につきまして、領土の問題、或いは安全保障の問題等の具体的な問題について種々の疑いを持つておりますし、不安を持つておりますために、その具体的な問題について十分にお伺いしたいのでありますけれども、私に許された時間は十五分間であります。この重大なときに私どもには十五分しか與えられないことについて、先ず最初の疑問が私はあるわけであります。(「議運できまつている」と呼ぶ者あり、拍手)併しこれは一応別にいたしまして、今のような具体的な問題に触れる時間がありませんために、私は次の三点についてお伺いしたいと思います。第一点は、講和論議に対する政府の態度についてであります。それから第二点は、主権の回復、或いは国の独立という意味についてであります。第三点は、将来地理的に飽くまでも日本は東亜の、アジアの中におりますけれども、将来このアジアの地域におきまして日本はどういう地位になるのか。どういう状態になるのか。この三点につきまして、私はむしろ私の質問というよりは、私が抱きますところの不安、将来に対する不安につきまして、総理にはつきりとお伺いいたしまして、総理から、むしろ私よりも国民が持つている不安に対してお答えを十分願いたい。こういうふうに考えるのであります。
 最初は講和論議に対する政府の態度に対する問題でありますが、先ほど私が申上げましたように、この段階におきましてもなぜ私どもは十五分しかここで許されないのであるか。或いは皆さんは、自由党のかたがたは議運の問題だと言われるかも知れない。それは嘘であります。そういう形式的のことではなくて、十分に、講和論議に対して十分に時間を與えられる。これには院の内外を通じてなぜ十分な講和論議が鬪わされてはならないか。私どもは第二次大戦、大東亜戦争に入る直前のあの状態を私は思い出しました。あのときに満州のどこかの生命線、日本の生命線というのが感じられる。そうして、この生命線が云々された場合には、何としても一億起つて何とかせざるべからず。この戰争という問題に対して、ちよつとでも国民の中から批判の声があれば一言の下に国賊として排斥された。戦争突入の直前におきまして、戰争に対して批判するか或いは戰争を回避しようとする言論が完全に封鎖されたことを私は思い出しました。そうして現在私どもは、この内容がいいか惡いかは別といたしまして、講和條約の内容がいいか悪いかは別といたしまして、そのことを院の内外を通じまして講和論議が如何に十分に活溌に行われておりますか。講和論議を行う場合に、或いはこの講和條約に対して少しでも批判的な意見を言う場合には、実際に私自身が、或いは国民自身がどれだけ恐いような、何だか不安な感じを持たなければ言えないという状態になつておる。私はこの状態を除去して、言論を、直面しておる講和問題に対する言論の自由の獲得、この不安をなくすることが、終戰後與えられたところの日本の国民の民主化、日本の国の民主化の最大の目的であつたのではなかろうかと思うのであります。(拍手)従いまして、私どもが、今民主党から自由党からと、いろいろ全権を送るとか送らぬとかの問題がありますが、この送る送らぬの前に、全権の皆さんが行つて何をするのか、そうして我々は果して本当に全権を送り得る資格をこの五年間のうちに獲得したかどうか。先ずその批判から始まらなければならないと私は思います。アメリカに行つて帰つて来て大きなことを言つておるというふうに考えられるかも知れませんけれども、私はロスアンゼルスを立つ直前に、あそこにおりまして、最も痛切に感じたことがあります。それはこの対日講和の問題が非常に問題となつて来て、私どもの頭から去らない状態にあつた際に、私は特に向うにおりまして熱望したところのものは、日本の国の中から、日本の国民の人々からこの講和條約に対して、ここはいいけれども、ここに将来の不安がある。この将来の不安については、我々はどう考えたらいいのだろうか。講和会議で、これについてどういうふうな問題にされるのであろうかという、この講和会議に対する悪い面、不安な面の問題が、国民の中からともかく出て来て、その声が講和会議を構成するところの平和を愛好する人々、世界の関係列国に十分伝わつて、その内容を通して講和会議が十分になされて欲しいと思つた。その意味におきまして、私はこの現在行われておる講和論議が、議会の内外を問わず、ともかくも将来ここに不安があるという点が国民の中からともかく出て来て、その出たものが、諸外国、平和を愛好するところの諸外国の人々から十分にガラス張りの中で見えるような状態にして欲しいと思つた。それであるのにもかかわらず、遺憾ながら私どもが向うにおつて感じましたことは、国会を開くことにしたとか、開かぬことにしたとか、その会期を一日にしたとかせぬとか、或いは超党派外交のために全党派から一人々々の代表を出すのだとか出さぬのだとか、そういう、まあ、言い換えて見るならば、飽くまでも民族的な講和問題が、一つの国内的な政争の坩堝の中にある、手段化しておるという以外には何らの印象を受けなかつた。若し私が……アメリカの人々、或いはこの講和会議に列席するところの他の人々が、私と似たような感じを若し受けられたならば、日本は未だ講和会議に出席するところの資格なしと判断した場合には、我々は何と答える。(「全くその通りだ」と呼ぶ者あり)その意味でも私は総理に申上げたいと思います。全権は一体何をしに、何の相談をしに行くのか。これは私の妙な質問ではありません。国民自身がわからぬのだと思います。はつきりとただ判こを捺して来るのだという話があるかと思えば、意見を述べ得るチヤンスが幸いにも與えられた、こういう話がある。そうして又同時に超党派の外交の問題を思い起せば、超党派外交というものは本来民主党の専売特許のものであつたのが、突如としてこの講和会議に臨む態勢のときに、各党の一人々々を出すとか出さぬとかいう問題が出て来た。若しこれが実質的な超党派、或いは実質的に全国民を代表する全権を作るということではなくて、ただ各党の代表を寄せ集めて、全国民の代表であるという形式を持とうとするのであるならば欺瞞である。(「そうだ」と呼ぶ者あり)若し実質的に本格的に全国民の代表を送ろうとするのであるならば、講和論議に対するところの発言が十分に行われなければならない。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)特にこの国会におきまして、開かれておるこの臨時国会におきまして、講和論議が十分に行かれなければならない。この論議を以て、この論議を背景として、全権は初めて行くことができると私は考えるのであります。(拍手)この重大な講和会議に臨む態勢として、国の中にいろいろな意見がまちまちに出ては困るというような或いはお考えがあるかも知れない。それは私の考えでは恐らく間違いだと思います。一つの意見に全体を統一しなければならない。而もそれを強制的に、ものを言わせずに、強制的に統一しなければならないとするならば、大東亜戰争に突入するときの、戰争一本に統一するのと同じであります。(「フアシズムだよ」と呼ぶ者あり意見は必ずまちまちな意見が私はあるはずだと思います。そうして総理は、それはちつとも講和論議に対して抑圧をした覚えはない、外でも中でも十分に言わせている、こう答えられるでありましよう。答えられるかも知れませんが、現実に国民の中に入つておらんから、今講和論議を云々すると叱られる(「武装警官に」と呼ぶ者あり)という気持をはつきり持つておる。これでは私は本当の講和全権として送り或いは講和会議に臨むところの日本人の資格について、若し疑われた場合に、答える術がないような気がするわけであります。この臨時国会を通じて、或いはこの段階におきまして、今の講和論議に対するところの政府の態度について十分に一つお考えを願いたい。これに対する政府の、総理の御所見を伺いたいと思います。私はその場合に、内閣の総理であつても、自由党の総裁であつても、今の場合に十五分しか與えられないということは、或いは会期の運営の問題であると言うかも知れませんが、これは手続の問題、若し吉田総理がやろうと思えば全部できる範囲の問題であると私は考えるが故に、総理のお考えを質すわけであります。もうすでに五分しかありませんから端折つて申します。
 二番目に、今の主権の回復と独立の意味について。これは私、結論ではありません。私自身がわからない。それは同様に国民の不安だと思います。国民が非常に不安に思つておること、わからないから不安に思つているのだろうと思います。その意味でお答えを願いたいと思います。先ほどの応答を聞いておりますと、この講和條約に防衛協定が付く、或いはそののちにすぐにも結ばれるかも知れないという話であります。私は現実に、あらゆる立場を離れまして、現実に日本がこの占領下から離れた場合に、実質的な真空状態が来て、そうしてその真空状態に対する国防的な不安を決して持たないものではありません。私は同様に非常にその不安を持つものであります。併しながら、総理は繰返し先ほどの和田君の質問にもお答えになつて、再軍備はしないと言明され、そうして占領が一時なくなつて、真空状態ができる間、この真空状態を守るために防衛協定を結んで、ここで守つてもらうのだとおつしやる。そうするならば、この防衛協定は大体いつまで続くのか。その辺の話はまだ十分に話ができていないと言われるかも知れないけれども、それであるならば、できていなくて見通しが付かないのであるならば、そこに問題がある。我々はそこに不安があるということを国民と共に十分に知らなければならない。そうして、そのための我々は防衛措置を考えなければならないと思う。ともかく真空状態ができて、真空状態の間を防衛協定によつて守つてもらつて、それはいつまでの期限かわからなくて、そうして、そうすると真空状態の期限の認定は我々日本人の国民の決定の範囲内に属しておるのかおらないのか。(拍手)そうして、我々の国民の決定の範囲内に属していないとするならば、主権が回復したとなぜ言い得るか。(「あり得ない」と呼ぶ者あり、拍手)これは決して私だけの不安ではありません。国民自身それを不安に思つておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうして、これは私は決して防衛協定が無意味であるとか何とかいう意味ではなくて、実際に私は不安を感じておるのですけれども、不安を感ずれば感じるほど、なぜそんなら一面において、これほどいい條約はない、これほどいい講和條約はないと言つて宣伝をする一面、独立が回復される、独立が回復されると言つて、片方において盛んに宣伝されるのか。実質の面においてはわからん面がある。わからん面があるならば、はつきり国民と共に考えたいと思うのであります。(拍手)その意味におきまして、この防衛協定を中心として、期限の問題と関連を持つ主権の問題とは一体何か。そうして真空状態の解消の決定は我々がするのか。日本人がするのか。日本人でない者がするのか。その辺の事情を国民の前に明らかにして頂きたいと私は思います。
 第三点、先ほどの和田君の質問その他にもたくさん入つておりますが、この條約文そのものではなくて、我々が受ける印象、特にアジアを取巻く、日本を取巻くアジアの諸国の国民を見ると、これが或いは日本の今度の條約の寛大さに対するやきもちであるかも知れません。私はそれに対しても疑問は持つておりますが、ともかく日本を取巻くアジアの諸国は、ともかく一応これに対して非常な批判的な態度をとつておることは事実であります。アジアの全諸国が批判的な態度を持つておる。條約が日本にとつて、同じ地理的條件にある日本にとつてのみ最上のものであるとどうして言い得るのであろうか。むしろ私は日本だけが何だかアジアの地位から切離されて、そうして別な欧米勢力、と言つては語弊があるかも知れませんが、地理的な、別に、或る力から、それの一つの防波堤のような恰好に取残されてしまうような危険を感ずるわけであります。(「まさに然り」と呼ぶ者あり)これは間違いならば非常に私は結構だと思いますけれども、それならばインドだのビルマだのは、ただ賠償が欲しいということだけだろうか。ただ賠償が欲しいということだけならばどうも合点が行かん。そうして朝鮮問題を眼の前に見たところの戦争に対する一つの危険を彼らが感じておるのではなかろうかという不安を禁じ得ないのです。そうして東亜の諸国の国民が戰争に対するそのような危険を感じておるとするならば、我々はアジアの一州、アジアの一国でありますから、地理的に同様な條件にあるわけでありますから、その戰禍を我々は免れることはできない。そうすると日本も、我々も、同じような不安を感ぜざるを得ないと思うのであります。その辺をどうか明瞭に一つ国民の前に明らかにして、若し不安があるならば、その不安を国民全部のものとして、不安の克服に国の人々の全部が邁進できるようにお話を願いたいと思うわけであります。
 時間が参りましたのでこれで終りたいと思いますが、ただ最後に一点だけ大蔵大臣にお伺いしておきたいと思います。聞くところによりますと大蔵大臣は、全権の一員としてアメリカに今度講和会議に行かれるそうでありますが、私はアメリカにおります際に、日本の経済を自立する、日本の経済が成立つためには、自然的な條件で行くならば、アジア大陸との経済の交流なくしてはあり得ないことを言いました。その場合に、大概私の会いましたところのアメリカの人々は、それは当然である。自然的條件として当然であるという答えが出ました。併しながら、自然的條件、経済の自然的流れのままに大陸経済と日本経済は食つつかざるを得ない。東南アジア経済とは食つつかざるを得ない。併しながら、それは特別な政治的な理由によつて、大陸との間が一時的に若し遮断され、政治的な理由によつて遮断されるとするならば、その穴埋めは、コンマーシヤル・べースとか、普通経済的な要請でないところの、政治的な理由によつてその穴埋めがされなければならない。若し大陸との経済交流を閉ざして、切つて、そうして東南アジア経済、或いはアメリカ大陸経済との交流を以て、而もコンマーシヤル・ベースでそれは行えるということは考え得られないと思います。経済的、自然的な流れで行くならば、当然アジア大陸との交通、経済交流が行われなければならない。これを政治的な理由で切られるならば、その穴埋めは当然に政治的に又穴埋めがされなければならない。大蔵大臣が全権でアメリカに行かれるのでありますならば、講和会議に臨まれるのでありますならば、この講和会議以前の、占領下にありますところの日本の場合には、それは特別な突つ張りを私どもも期待することはできないことはなかつたと思います。併し本当に言われるところの独立が行われる場合に、実際に切離されて、日本の独立が行われる場合に、而も政治的な要請はそのままにして、大陸との経済交通を遮断して、而も政治的なその穴埋めが行われないとするならば、私は日本の経済自立はそれだけで不可能になつて来ると思う。この全権として行かれる、特に経済の全権として行かれるところの大蔵大臣が、占領が終つて後の、独立国になつた後の日本の経済自立の途を、特に貿易、諸外国との関連の上で、どの地点に求められ、どういう構想を持たれるのか。その背景をどういう背景に持つて講和に臨まれるのか、その点を一つ明らかにして頂きたいと思います。これは私どもだけでなくて、日本の経済界のすべての疑問であり、不安であると思います。そのような意味におきましてこの点を明らかにして頂きたいと思います。
 時間が参りましたので、私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(吉田茂君) お答えをします。
 このたびのサンフランシスコの会議なるものは、これは調印署名の会議であります。ここにおいて更に講和條項なるものを論議する会議ではないのであります。この会議において調印が終つて、なお国民がその條約に満足せざる場合には、批准を拒むという手続があるのであります。私がしばしば議会において申しておりました通り、講和会議は、終戰後六年の間の、この間の期間が講和会議であるのであります。国民の議論を、国民の講和に関する要望、要請、希望をことごとく自由に発露することについて、私は一度もその制限を希望し若しくは遠慮するようなことは申しておらないのであります。(拍手)共産党の諸君の質問にさえも確答いたしておるのであります。又、ダレス氏は特に講和條約草案の作成以前に二度も三度も見えて、朝野の各党の、各政党の意見までも聴取せられたのであります。ダレス氏としては、又米国政府としては、日本側の意見は十分聴取したつもりでおると思います。又聴取した事実があるのであります。又日本政府としても、遠慮なく今日まで諸問題について意見を開陳したのであります。即ち日本側の意見は十分聽取されたと言うべきであると私は信ずるのであります。(拍手)
 又、安全保障條約は誰がするのか。これは日本国がするのであります。日本国民の意思の結集が即ち安全保障になるのであります。この安全保障條約ができることが、これが日本の主権若しくは独立と何ら関係はないのであります。日本の主権独立によつてできるのであります。これは従来しばしば申すのでありますが、集団的攻撃がある場合に集団的防禦をなすのは、これは今日の常態であります。これをなしてどこが悪いかと言わざるを得ないのであります。これをなしていかんと言うのは、共産党の諸君だけであると思うのであります。(拍手)要するに安全保障條約にしても講和條約にしても、日本国民がこれをいたすのであつて、日本国民の総意の結果が講和條約になるのであります。これが調印されて、日本国民がこの條約を受入れられないならば、批准を拒むという手続があるのであります。
 以上お答えします。(拍手)
   〔国務大臣池川勇人君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(池田勇人君) 講和條約締結後の日本の自立に関しまして御心配な点は御尤もでございます。従いまして講和條約後、独立国家となつた場合におきましては、中共の貿易が非常に重要であり、而もこれが政治的にとめられておるから、何かアメリカから政治的にその不足の穴埋めをという議論のようでありますが、我々といたしましては、中共との貿易ができることは、経済的観点からのみ見れば非常によろしうございます。併し国際関係のことは経済的のことからだけ見るわけには参りません。今朝の外電によりますと、英国の或る長官は。ロシアとの貿易に対しまして意見を述べられたと聞いておりますが、そういう考え方はございましよう。而して日本政府といたしましては、中共貿易の再開はベターでございます。望ましいことではありますが、併しそれにこだわらなくても、対日経済援助によれば、東南アジア或いは韓国の開発等に行くならばやつて行けないことはないのであります。で、私は今までの経験から鑑みまして、日米経済協力をこれ以上に進め、而も又世界の平和の観点から、東南アジアの開発、東南アジア諸民族の生活水準の向上に努めて行くならば、おのずから日本国民の生活水準の向上ができ、世界の平和に貢献でき得ると考えておるのであります。で、重ねて申上げまするが、中共との貿易再開はベターでございますが、これによらなければ日本の自立はできないとは限らないのであります。(拍手)
#23
○議長(佐藤尚武君) 佐々木良作君。
   〔佐々木良作君登壇、拍手〕
#24
○佐々木良作君 私は今の総理の御答弁に対しまして非常に遺憾に思います。大体共産党の諸君……少しアジり過ぎるのです。それでむしろ総理が挑発されたのじやないか。私は非常におかしく思うのであります。私の感ずるのは、先ほどから繰返して申しておりますように、不安を持つておる。第一に講和論議に対してものを言えば……、ものを言えば何らか圧迫を感ずるような空気が国の中に充満しておる。これを何とか解消されたいということ。それから二番目、三番目も、決して私は集団保障がいいの惡いのといつたことを言つたのじやない。こういう不安を伴つておるし、こういう不安を国民の連中に抱いておる者があるが、この不安に対してどう答えられ、そうしてこの不安を解消されるところの総理の発言の内容は何かということを私は明らかにして頂きたいと思つたのであります。恐らくここで私が今申上げても十分なお答えは得られないと思いますが、ただ再質問という意味で繰返し申上げておきたいことは、この講和問題は、日本民族の歴史の決定を、必ず批判を持たざるを得ないものでありますが、この際にどうか感情的にならずに、私の持ちますところの不安或いは不満は、或いはそのまま国民の相当の部分の不安であり不満であると思います。これに対して如何なる場合、如何なる場所でもいいと思いますから、十分にこの不安を解消されるところの度量を持たれ、努力をされんことを特に切望いたしまして、私の再質問に代える次第であります、(「答弁の必要なし」「必要なし」「進行々々」と呼ぶ者あり)
#25
○議長(佐藤尚武君) 国務大臣の演説に対する質疑はなおございますが、これを明日に讓り、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十八分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
ソース: 国立国会図書館
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