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2012/04/12 第180回国会 参議院 参議院会議録情報 第180回国会 内閣委員会 第6号
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2012/04/12 第180回国会 参議院

参議院会議録情報 第180回国会 内閣委員会 第6号

#1
第180回国会 内閣委員会 第6号
平成二十四年四月十二日(木曜日)
   午後一時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月十日
    辞任         補欠選任   
     斎藤 嘉隆君     平野 達男君
 四月十二日
    辞任         補欠選任   
     長浜 博行君     植松恵美子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         芝  博一君
    理 事
                大久保潔重君
                大野 元裕君
                岡田  広君
                山谷えり子君
    委 員
                一川 保夫君
                植松恵美子君
                岡崎トミ子君
               はた ともこ君
                松井 孝治君
                水岡 俊一君
                有村 治子君
                山東 昭子君
                中曽根弘文君
                松村 龍二君
                宮沢 洋一君
                浜田 昌良君
                川田 龍平君
                糸数 慶子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        五十嵐吉郎君
   参考人
       国立感染症研究
       所インフルエン
       ザウイルス研究
       センター長    田代 眞人君
       名誉世界保健機
       関(WHO)西
       太平洋地域事務
       局事務局長
       前自治医科大学
       地域医療学セン
       ター教授     尾身  茂君
       一般社団法人日
       本経済団体連合
       会専務理事    久保田政一君
       同志社大学法学
       部教授      川本 哲郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○新型インフルエンザ等対策特別措置法案(内閣
 提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(芝博一君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十日、斎藤嘉隆君が委員を辞任され、その補欠として平野達男君が選任されました。
 また、本日、長浜博行君が委員を辞任され、その補欠として植松恵美子君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(芝博一君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
 新型インフルエンザ等対策特別措置法案の審査のため、本日の委員会に、参考人として国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長田代眞人君、並びに名誉世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局事務局長・前自治医科大学地域医療学センター教授尾身茂君、同じく一般社団法人日本経済団体連合会専務理事久保田政一君及び同志社大学法学部教授川本哲郎君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(芝博一君) 異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ─────────────
#5
○委員長(芝博一君) それでは、新型インフルエンザ等対策特別措置法案を議題といたします。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 なお、議事の進め方でございますが、最初に、田代参考人、尾身参考人、久保田参考人、川本参考人の順にお一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず田代参考人にお願いをいたします。田代参考人、よろしくお願いいたします。
#6
○参考人(田代眞人君) 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの田代でございます。よろしくお願いいたします。
 時間がありませんので、手短に要点をお話ししますけれども、まず、三年前、ちょうど今ごろですけれども、豚由来のH1N1の新型インフルエンザが出現しまして、その後、一年間にわたって世界的な大流行を起こしたわけですけれども、結果的には比較的軽微な健康被害に終始して、社会的に大きな混乱その他も生じなかったということです。
 その理由としましては、私の考えでは、何か行政対応が適切であったとか、準備が十分であってそれがうまく機能したとか、そういうことではなくて、全く我々と関係ないラッキーな幸運が重なった結果であるというふうに評価しております。
 その理由としましては、ウイルス自身がそもそも弱毒型であった、心配されていましたH5N1のような強毒型のウイルスではなかったということです。これがもしH5N1のような強毒型のウイルスだった場合にはどうなるかと、こういうことを十分に検討する必要があると思います。
 それから二番目には、小児を除いて多くの成人が同じ亜型、H1N1型であります過去のスペイン風邪のウイルス、九十年前のウイルス及びその子孫のウイルスです、その数か月前まで流行していましたソ連型と言われるウイルスですけれども、これに何回も感染している経験がありましたので、これに対する免疫を多かれ少なかれ持っておりました。それが交差防御反応として働いたために、新型ウイルス、同じ亜型に対しても対応できた、体の方で対応できたということです。ですから、結果的には重症者、死亡者も少なかったと。もしこれがH5N1で、誰も免疫を持っていないようなウイルスが入ってきた場合にはどうなったろうかということを十分に検討する必要があります。
 それから三番目の幸運なこととしましては、メキシコが初発地であって、アメリカ合衆国が最初にこの被害を受けたと。そういうことで、北米で起こりましたので、アメリカの疾病対策局その他が迅速に対応して、ウイルスの性状の解析、それからその情報の世界的な共有、ワクチンの開発、診断方法の開発、そういうことが非常に効率よく対応ができたということがあると思います。これがもし途上国の、それもへき地でこういうことが最初に起こった場合には、二か月、数か月、こういう情報が我々のところに来るのが遅れて、もっと大きな健康被害、社会的混乱が起こったものと考えられます。
 それから四番目としまして、多くの国がWHOの勧告に従いまして、H5N1を主に対象としたパンデミック対策、計画を多かれ少なかれ作っておりました。もしこういう準備がなくて、丸腰のままのところで、たとえ弱毒のウイルスであろうとこういうウイルスが新型インフルエンザとして流行した場合にはどうなっていたかと考えますと、かなり大きな問題があったろうというふうに推定されます。
 それから、パンデミックがスタートした後、そのウイルスの抗原性がほとんど変化しなかったと。これは季節性のインフルエンザとは大きく違っていました。現在においても、三年後においても、三年前に開発したワクチンが有効であります。これも非常に幸運なことでした。
 それから、パンデミック発生後、ウイルスの病原性が強くならなかったと。これは九十年前のスペイン風邪のときには、第一波は比較的健康被害が少なかったんですが、第二波、第三波では病原性が強まったために大きな健康被害が出たと言われております。そういうことが今回は生じなかったということもラッキーな点であります。
 それから、インフルエンザのウイルスに対して、タミフルその他の抗インフルエンザ薬が有効でありました。薬に対する耐性のウイルス、薬が効かなくなるようなウイルスが幸いにして余り出現しなかったと。一%ぐらいは出現したんですが、それがそれ以上広がらなかったということも非常に幸運なことであったと思います。
 こういうことで、先ほどお話ししましたように、パンデミックに対する何か準備とか対応が適切であったというよりは、むしろ我々がタッチできない、そういう幸運が重なったために結果的には軽微に抑えられたのではないかというふうに思います。したがって、この経験をもって、パンデミックというのは大したことないとか、そんなに厳しい準備をする必要がないとか、そういうような誤解が生じる、若しくはそういうことが生じているということを非常に危惧しておるわけです。
 一方、この三年前のパンデミック以後、現在に至るまでも、鳥における強毒型のH5N1のインフルエンザの流行というのは相変わらず続いております。このパンデミックとは全く独立に鳥の間で流行が続いていまして、人における感染患者、死亡者の数もコンスタントに増えております。しかし、国内においてはメディアが全くこのH5N1の流行、その健康被害については報道しておりません。どういう理由か分かりませんが、全く知らされていない。ですから、多くの国民はH5N1をもう既に忘却して、過去のものであると、大したことないというふうに誤解をしています。これは大きな問題であるというふうに思います。
 それから、前回の三年前のパンデミックの反省として、いろんな反省点がありますけれども、一番基本的な問題は、国内における健康危機対応の体制に大きな欠陥があるということが明らかになったと思います。この危機管理体制に問題があったということですけれども、その教訓として、様々な対応が行政によって取られましたけれども、これに対してきちっとした法的な根拠がほとんどなかったということです。
 総理大臣をトップとします新型インフルエンザ対策本部がつくられましたけれども、この設置についても何も法的根拠がなかったと。そこから出された指令についても、それに対して効力が非常に曖昧であったということが大きな問題だと思います。それと同時に、責任体制、責任の所在が不明であったと。様々な人が様々な発言をして非常に混乱が生じた、誰も責任を取っていないと、そういうことが反省としてあると思います。それから、専門家の位置付け、それの意見をどういうふうに採用して政策に反映させるかと、このプロセスについても非常に曖昧でありました。きちっとした規定がされていなかったということがあると思います。
 こういうことから、前回のパンデミックの反省として、私は法的基盤に立った危機管理体制の再構築ということが絶対に必要であるというふうに考えております。
 それから、鳥の強毒型のH5N1のウイルスについても様々な誤解があるというふうに聞いておりますので、それについても一言お話をしたいと思います。
 これは鳥における強毒型のウイルスです。これはどういうことかといいますと、鳥、主に鶏と七面鳥ですけれども、これに感染しますと全身感染を起こして、ウイルスが血流中に入って全身に広がって、通常、感染した鳥は四十八時間以内に一〇〇%死亡します。これが強毒型の鳥のインフルエンザウイルスです、インフルエンザです。
 これに対して、弱毒型というのは、感染を受けた鳥の中でウイルスは呼吸器の、呼吸器ですね、上気道と、それから消化管の表面の上皮といいますけれども、そこの細胞だけに感染が終始しまして、通常は不顕性感染です。そういう感染した鳥がいても我々は気が付きません。我々になじみ深い季節性のインフルエンザ及び過去の新型インフルエンザ、三年前のインフルエンザも含めてですけれども、これは全て鳥の弱毒型のウイルスに由来するインフルエンザだったわけです。ですから、人における病気は呼吸器の病気でした。我々になじみ深い病気でした。
 これに対して、今心配されているH5N1というのは、鳥において全身感染を起こす強毒型であるばかりでなく、人においても強毒型です。感染した人の数は非常に、まだ鳥型ですから少ないわけですけれども、WHOで確認している限りでも二〇〇三年以来六百人の患者が出ております。恐らくこれは氷山の一角で、その十倍以上の患者が既に発生していると思いますが、そのうちの六〇%の方が亡くなっています。それは全身感染を起こしています。ウイルスは呼吸器だけにとどまらないで、血流中に入って、脳とか肝臓、腎臓その他に行っております。それから、妊婦さんの場合には胎盤にも感染して、胎児にも感染が行っております。こういうことは通常のインフルエンザでは起こり得ません。
 さらに、ウイルスの感染によって体の中でそれに対する生体防衛反応が起こりますけれども、これが過剰に起こるためにサイトカインストームと言われる自殺行為ですね、体の中における、そういうことが生じて、非常に予後の悪い多臓器不全ということが生じます。その結果、六〇%の方が死亡しているわけですけれども、その九〇%は四十歳未満の小児と若年成人であります。この理由についてはよく分かりませんが、季節性のインフルエンザでは高齢者が主に健康被害の強いハイリスクのグループと言われていますが、それとは全く違うパターンを示しております。
 こういう意味で、H5N1の強毒型の鳥インフルエンザというのは、人においては、ウイルスはインフルエンザウイルスではありますが、人における病気はインフルエンザではありません。非常に重篤な病気であるということをきちっと認識していただく必要があります。
 多くの専門家を含めて、鳥のH5N1のインフルエンザは、どだいインフルエンザであると、季節性のインフルエンザに毛の生えた程度だという発言をしている人がいますが、これは大きな間違いです。そういう認識を持っているということ自体が、まず危機管理の一番根本が緩んでいるというふうに私は考えております。
 それでは、H5N1がヒト型になる可能性があるのかどうかということについても、ヒト型にはならないと言っている人もいるわけですけれども、これはつい昨年に二つのグループから研究結果が出まして、現在の鳥型のウイルスは、鳥型であるために人への感染効率は悪いんですけれども、ここに遺伝子の突然変異が数か所、ほんの数か所ですね、二、三か所起こると人から人に効率よく伝播できるようなウイルスになり得るということが報告されました。この論文の公表については、アメリカの政府がテロリストに悪用される危険があるから発表を差し止めろというような動きがありました。それについては今回直接関係ありませんので、それ以上お話しいたしません。そういうことで、H5N1がヒト型になってパンデミックを起こす危険というのはある、高いということです。
 それから、H5N1がヒト型になった場合に現在の強い病原性がそのまま維持されるかどうかということですが、ヒト型のウイルスになるために必要な遺伝子の変化する場所と、強い病原性を規定している遺伝子の場所は違うところにあります。ですから、ヒト型になったから自動的に病原性が弱毒化するという可能性はほとんどないというふうに考えられます。その辺もきちっと認識しておく必要があります。
 現在の致死率は六〇%ですけれども、実際はもっと、実際の数はよく分かりませんけれども、六〇%の方が亡くなってしまうと恐らく大流行には行かないと思います。みんな寝込んでそのまま亡くなってしまいますから、それ以上広がりません。病原性がある程度低下した場合、恐らく一〇%ないし二〇%くらいの致死率まで低下した場合には、これは潜伏期を含めて感染患者は外を出歩くことになります。そうすると、一気にパンデミック、大流行が起こる可能性があります。
 その場合にどのくらいの健康被害が出るかということですが、いろんなエスティメーションがありますけれども、日本では二%の致死率といっていますが、これは決して最悪ではありません。幾つかの世界のシンクタンクでは、五%から一五%ぐらいの幅、特に途上国においては致死率は高い、健康被害はより大きいだろうと言われています。たとえ、これが五%の死亡、致死率だとした場合に、これ大変な問題になります。日本でも数百万人の死亡が最悪の場合想定されます。
 ただし、この数値は準備計画が何も実施されなかった場合、若しくはワクチンが十分に供給されなかった場合、抗ウイルス剤が間に合わなかった、有効に使われなかった場合、こういう最悪の場合を想定しておりますが、果たしてこの様々な対策が有効に間に合うかどうか、これはひとえに事前準備と実際の起こったときの緊急対応が実施できるかどうか、これにディペンドしているわけです。それから、さらに新型インフルエンザの場合には、第二波、第三波、これがやってくると、こういう危険があります。
 そういうことで、先ほどお話ししましたように、対策については様々な準備がまだまだ不足しておりますし、それから、前回のパンデミックのためにかえってリラックスをしてしまったということも心配されます。私としましては、是非ここで新型インフルエンザ対策の再構築を強く訴えたいと思います。
 その新型対策の一番大きな目的は、同時に大勢の患者さん、重症患者さんが出て医療対応の能力を超えてしまうと、こういう事態になると、全て社会が崩壊します。ですから、パンデミック対策の目的は健康被害を最小化にすると。ゼロにはできません。最小化にするということと、二次的に起こる社会機能、経済活動の破綻を防ぐと、この二点にあります。
 このためには、強い危機管理体制の発動が必要になる場合を想定して、そういう事態にならないことが一番いいわけですけれども、そういう場合を想定して、それに対する十分な事前準備をしておく必要があると思います。
 以上です。
#7
○委員長(芝博一君) ありがとうございました。
 それでは次に、尾身参考人にお願いをいたします。尾身参考人、お願いいたします。
#8
○参考人(尾身茂君) 参考人として、特別措置法案について私の考え方を述べさせていただきます。
 未知の感染症の大流行に関して我々が心すべき最も重要な点の一つは、特に流行の初期段階においてはワクチンや治療薬が存在しないことが多いことであります。こうした状況において我々が取り得る最も有効な公衆衛生学的手段は、感染者とその他の人々との物理的な接触をできるだけ避けることであります。こうした古典的公衆衛生学的手法が感染流行初期において極めて効果的であることが経験的にも理論的にも分かっております。
 それで、今日私がお配りさせていただいたこのスライドですね、三枚刷りのを見ていただければと思います。
 この最初のスライドは、一九一八年のスペイン風邪が起きたときのアメリカの二つの都市、フィラデルフィアとセントルイスの感染症対策の違いによる致死率の違いを示したものであります。フィラデルフィアにおいては、学校閉鎖、集会の制限などをほとんど行いませんでした。一方、セントルイス、赤い方ですね、赤い方は、特に感染流行の初期にかなり果敢に学校の閉鎖あるいは集会の制限などを行ったために、致死率が極めて低く推移したということがあります。これは、大変古典的な公衆衛生学的な方法の有効性を示す図であります。
 次のページを見ていただきたいと思います。
 今先ほど田代参考人の方から、先般のインフルエンザではいろいろな学ぶことがあり改善すべきことがあるというのは、私も大賛成であります。それから、確かに今回は比較的弱毒であって、言わばラッキー、幸運な部分があったということも私も大賛成であります。と同時に、今回の日本のパフォーマンスをほかの国と比較してみることもこれからの対策を考える上で重要であります。
 このスライドは、世界の死亡率を人口十万当たりで比較したものでありますけれども、日本はほかの諸国、カナダ、イギリス、メキシコ、アメリカ、その他の国に比べて致死率が一桁、あるいは一桁以上低いということであります。この理由については様々なことがありますが、主に三つの要素があったというふうに考えます。
 一つは、医療関係者が頑張って、日本の医療制度が他国に比べてやや良かったということ。それから、国民の意識が極めて高かった、例えば幼稚園の生徒などでも手洗いをしたということ。それから三番目ですけれども、流行の初期に学校閉鎖などを、いろんな批判はあったけれどもかなりアグレッシブにやっていただいたと。そういうことがこの低い死亡率に関与している可能性が否定できないと思います。
 三番目のスライドですけれども、これは先般の新型インフルエンザの流行のパターンを示したものですけれども、赤く囲まれているところがいわゆる関西地区、大阪、兵庫での感染で、その後一度下火になって日本全国に広がったわけでありますが、これは、国立感染症の研究所によりますと、実は後で分かったことでありますけれども、この最初の山、大阪、兵庫の流行の原因であったウイルスはこの時点でもう既に制圧されて、その後の、茶色の方ですけれども、感染は、その他のウイルス、サブタイプが十ぐらいありましたが、その他が別のルートでその後入ってきて起こった感染でありまして、私の知る限り、このように、あるウイルスが制圧されたということは余り今までなかったと思います。これは、公衆衛生学的なかなりアグレッシブな方法がかなり制圧に近い効果を生んだということの一つの表れだと思います。
 したがって、今申し上げましたように、極めて重篤な感染の流行に遭遇した場合は、学校閉鎖、集会の自粛など、人々の移動の自由を一定程度制限することが国民の命を守るためにどうしても必要になってまいります。ただし、人の権利を制限する場合には、私は以下の四点を考慮することが極めて重要であると思います。
 一点目。人の移動の制限など権利の制限は必要最小限にすること。
 二番目。未知の感染症の流行では、特にその初期においては感染力、致死率など、言わば疫学的情報が極めて限られています。こうした場合には、最悪の状況を想定し対策を取ることが求められます。
 三番目。しかしながら、新たな疫学情報が明確になり次第、適宜対策のレベルを下げるなど、エビデンスに基づいた迅速な対応が求められます。
 四番目。いずれの場合にも、先ほど田代参考人からもありましたけれども、限られた情報を基に対策レベルの変更の必要がありますが、そのためには専門家の意見が十分反映される制度の確立が求められると思います。
 以上から明らかなように、極めて重篤な感染症に遭遇した場合、国民の生命を守るためには、政府関係者、医療関係者のみならず、国民各自もそれぞれの立場で協力することが求められると思います。
 今回の法案で、私は、四つの点が評価されるのではないかと医療関係者の立場から思います。
 一番目。人の権利の制限、先ほど言った移動の制限などは、なるべく必要最小限にするということが明記されている点。
 二点目。新たな疫学情報が得られた場合には、専門家等との意見交換を通して対策のレベルを下げることが明記されていること。
 三番目。このような場合には医療関係者等に協力の要請を求める必要があると思いますけれども、その場合に、何か医療関係者などで事故等があった場合に法的な補償がされるということが明記されていること。しかも、要請をして、その要請に従わなかった場合の罰則規定が規定されていないこと。
 それから四番目には、ワクチンの財源が明らかになっていること。
 この四点は私は評価してよろしいのではないかと思います。この法律が適切に運用されることを期待しております。
 以上であります。
#9
○委員長(芝博一君) 尾身参考人にはありがとうございました。
 それでは、続きまして久保田参考人にお願いをいたします。久保田参考人、お願いいたします。
#10
○参考人(久保田政一君) 経団連の専務理事の久保田でございます。
 今日は、新型インフルエンザ対策につきまして、経団連の意見を述べさせていただくこういった機会いただきまして、誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 お手元に一枚物で今日述べさせていただくものの骨子を配らせていただいておりますので、御参照いただきながらというふうに思っております。
 経団連では、数年前からこの問題について、会員企業、それから政府並びに専門家の方々と意見交換を行ってまいりました。今年の二月には「新型インフルエンザ対策の早期確立を求める」と題する提言も取りまとめまして、この法案の法制化、早期を求める提言を取りまとめまして関係方面に働きかけているところでございます。
 先ほど来話出ております、二〇〇九年の春、メキシコで発生した豚由来の弱毒性の新型インフルエンザ、瞬く間に世界に広がり、大流行いたしました。我が国におきましても、感染拡大を防止するために、教育機関がそれぞれの判断で休校を決定しましたし、医療機関においてもインフルエンザ罹患者とそれ以外の患者の接触を避けるなど、各主体が様々な取組を行ったというふうに記憶しております。企業におきましても、出張を自粛するとともに、家族に罹患者が出た場合には自宅待機を命ずるなど、いろいろ知恵を絞ったところでございます。
 幸いなことに前回は比較的軽微な影響にとどまりましたけれども、感染拡大を完全に防ぐことは非常に難しいという経験を踏まえまして、より毒性の強い鳥由来の新型インフルエンザが発生した場合に十分に備えておくことが不可欠であろうというふうに考えているところでございます。
 今回の政府の取組につきましては、レジュメの一、法制化に対するスタンスにもありますとおり、我が国の健康危機管理体制の構築に法的な基盤を与えるものということで歓迎しているところでございます。是非とも、実効性ある対策を規定する新法が早期に策定されますよう御尽力賜りたく、お願いいたす次第でございます。
 経済界といたしましても、危機発生時における国民の生命、健康の保護、国民生活及び経済社会の安定確保のために最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。そのためにも、新法の策定と併せて、法律では規定し切れない実務的な課題について早急な対応をお願いしたいというふうに存じているところでございます。
 この点、レジュメの二の、新型インフルエンザ対策の確立に向けた課題に従いまして六点ほど申し上げたいと思います。
 第一は、社会機能の維持にかかわる事業者を明確化していただきたいという点でございます。
 今回の法案では、パンデミック時における社会機能維持のために、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会を始めとする公共機関及び医療、医薬品、電気、ガス、輸送、通信など、公益的事業分野の中で特に限定された事業者を公共機関に指定することが規定されております。しかし、これら指定公共機関のみでは日常の国民生活に必要な財・サービスの提供を維持することは困難であるため、その外縁部を構成する社会機能維持事業者を別途明確に定義する必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
 二番目は、二の、ワクチン接種等に関する環境整備のところでございます。
 企業の事業継続計画、BCPは、新型インフルエンザへの罹患を予防するワクチンを事前に接種することを前提としています。現在の政府の行動計画では、新型インフルエンザが海外で発生したとき、国家備蓄しているプレパンデミックワクチンを可及的速やかに医療従事者や社会機能維持事業者に接種するというふうにされているところでございます。このワクチン接種の優先順位、実施者、医療従事者の協力の確保、備蓄、接種手段、費用負担等の実務的な手続を事前にしっかりと準備しておく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
 また、ワクチン接種によって重篤な副反応が生じた場合の国の補償につきましては、高いレベルに設定すべきであるというふうに考えております。
 さらに、海外での発生後、速やかにプレパンデミックワクチンを接種するとともに、水際対策を強化しようとも、流行の第一波には間に合わないという指摘もございます。そこで、現在、医療従事者等に限定されているプレパンデミックワクチンの治験数や対象者を順次拡充していく取組が必要ではないかというふうに考えております。治験の結果、国が適切と認めた場合には、未発生期の段階から社会機能維持事業者へのプレパンデミックワクチンを解禁すべきではないかというふうに考えているところでございます。
 第三は、三の、パンデミック時における法令の弾力運用でございます。
 パンデミック時には従業員の最大四〇%が欠勤するという想定が行われております。こうした状況下において、国民生活に不可欠なサービスを提供し続けるために、例えば時間外労働に関する規制や事業法に基づく点検、検査の届出などについては平時と異なる弾力的な運用が必要となります。したがいまして、法令等の弾力的な運用が必要となる項目を事前にリスト化するとともに、定期的に見直しをすることが必要だというふうに考えております。また、法令等の弾力運用に関して、地方公共団体とも連携協力する仕組みについても準備しておく必要があるというふうに考えております。
 第四は、BCPの実効性確保のところでございます。
 危機発生時に事業を継続していくためには、自助、共助、公助のベストミックスが必要です。そこで、国や地方公共団体、各企業の役割分担を具体的に定めて、あらかじめ企業のBCPに反映していくことが必要だというふうに考えております。
 五は、五にあります政府の指揮命令系統の一元化、適時適切な情報発信でございます。
 危機発生時における政府の初動体制や指揮命令系統が混乱することは、国家の危機管理上あってはならないというふうに考えております。また、せっかく事前に準備した対策が有事において脇に置かれては意味がありません。危機管理法制が確実に遵守されるような体制整備が必要というふうに考えております。これに併せまして、人的な被害や社会的なパニックを最小化するための迅速かつ正確な政府広報も重要な課題です。企業としても事業を継続する上で重要な判断要素になるため、しっかりとした対応が望まれるところでございます。
 最後の六の、国外における在留邦人に対する適切な対処のところでございます。
 発生当事国における邦人保護に万全を期すため、平時より、在外公館における抗インフルエンザ薬の備蓄、危機発生時における在留邦人への配布方法、迅速なワクチン接種体制等、医療を含めた現地対策を講じておくべきだというふうに考えております。また、発生当事国からの出国手段、迅速な検疫、医療提供体制、利用宿泊施設、子弟の就学先等の確保についても万全を期すべきだというふうに考えております。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
#11
○委員長(芝博一君) 久保田参考人にはありがとうございました。
 次に、川本参考人にお願いいたします。
#12
○参考人(川本哲郎君) 同志社大学法学部の川本でございます。
 まず最初に、このような機会を与えていただいたことに御礼を申し上げます。
 私、同志社大学の法学部で刑事法を学んだ人間です。最初、心神喪失とか責任能力とか、そういうところに関心を持っておりました。そこから精神医療の勉強をしていたところ、当然、精神医療の方では強制入院というのがございますので、この診断、判断に誤りがあれば当然人権侵害を生むということで、今現在はもう精神医療審査会というのが設けられています。私はその委員をもう十年以上務めております。そうこうしているうちに、今度は感染症、実はその強制入院が認められるのは精神医療と感染症だけでございます。つまり、他人に対する危害を加えるということで、本人の意思、同意がなくても強制的に入院させるという制度を取っているわけです。
 そこで、感染症についてもやっぱり国は配慮しようということで、感染症法を改正されて、そこで感染症診査協議会というのができまして、その委員になりまして、そうこうすると、今度は京都府と京都市が新型インフルエンザの対策の専門家会議をつくりたいと。それで、私に依頼がありまして、それで国の行動計画を検討するということになって、それを見ておりましたら、どうも人権の保障ということについてはまだまだ不十分だと思って見ておりましたら、実はこの専門家というのは、今、私が自己紹介をこうしているのは、専門家というのがほとんどおられないんです。つまり、新型インフルエンザと法というようなテーマを研究している法律学者は、私を除いておられないというのが日本の現状だろうと思います。これは一つまた問題ですけれども、またその点については後で触れさせていただきます。
 それで、どなたかが私、書かれると思ったんですけれども、どなたも書かれないもので、仕方がないので自分で書いたと、こういう次第でして、レジュメの一番下に私がこれまでに書いた論文を出しております。一番最初は、イギリスの資料を見ましたら、イギリスではかなり政府がその当時から取組を進めておりまして、人権に関する取組ですね、取組を進めておりましたので、それを参考にして論文を書きました。さらに、先ほど出ておりました大学の休校の問題というのも、自分が大学の教員なものですので、それについても調べました。そのときに新型インフルエンザがはやりました。したがって、もう生の素材が豊富にあるという状況でしたので、更に考察を進めるということで現在に至っております。
 それで、もう少し申し上げると、京都産業大学に私、この三月まで奉職していたんですけれども、そこで鳥インフルエンザ研究センターというのをつくりました。鳥インフルエンザの専門家がおられたもので、理系と文系の融合研究をしたいというお誘いを受けて、私がそれに入ってこのような研究をしたということでございます。
 それで、その研究で私、国、厚生労働省、文部科学省、法務省、東京都庁、沖縄県庁、京都府、京都市というような地方自治体、さらには、一番最後の方に出てきます論文で、精神科病院、それから刑務所、そういうようなところを合計十二か所、もちろん国立感染症センターも伺いました。そういうところで現場の声を聞かせていただきました。そうしますと、やはり、国の基本方針がどれだけ浸透しているかということについては、この間の新型インフルエンザのときの経験を振り返りますと、まだまだ改善すべき点が多々あるのではないかということに気付いた次第でございます。
 それで、人権の問題ですが、ほとんど議論はされておりません。当然、今までお話があったように、インフルエンザがはやれば、それをいかにして抑え込むのかが優先課題になるのは当然のことですので、病気の対策が優先されるのは当たり前だと思いますが、それにしても人権については余りにも軽視されているのではないか。それで、今度の特措法、さらには厚労省の行動計画を見せていただいても、ほとんど進展はございません。最初から人権という点では変わりはない、むしろ後退しているかも分からないというふうに私は感じております。
 人権の問題というのは、差別とかそういうものが重要課題であることは、これは全国民が知っていることだと思います。実は、人権感覚が試されるのは、こういうような非常にマイナーな問題ではないか。イギリスなんかはやっぱりその点では非常に伝統がある国だなというふうに私は思っております。したがって、まだ大きな課題があるということです。
 それで、ちょっと時間の関係で、まず法案について法律家としての意見を述べさせていただきます。
 法案を作られる、私は前向きに対策を取られるということにはもちろん大賛成です。ただし、先ほど来申し上げているように、それに対する手当てというか、人権の面の手当てなんかが必要であるというふうに思っております。
 まず一つ、行動制限が有効だというのを承認しましても、その行動基準の明確化ですね、例えば四十五条の三項であるとか四十九条の二項であるとか、特に必要があると認めるときにはという文言を置かれています。財産の問題にしても、まず最初は要請から入ります。要請の次に強制というふうに行くと、その条件が、特に必要があると認めるときにはと書いてあるんですね。これに対して反対される方はおられないわけですけれども、特に必要があるというのはどういう場合なんだろうか。それをその下位の法令で決めていただかないと、法律ができたとしても適正な運用はできないだろうと思います。それがまず第一点です。
 あと、国と地方自治体、医療がこの法律を基にいかに連携できるのか。先ほど申し上げたとおり、現場、最前線の医療、行政を担っておられる方には非常に大きな戸惑いがあるというふうに感じておりますので、そこの手当てが必要である。
 そして、六十二条、補償をされる。これも大賛成です、もちろん反対するものではございません。ただ、補償というのは、もう原発の補償で広く周知されているところだと思いますが、その範囲をどうするのかというのが実は問題でありまして、補償をするかしないかという問題ではなくて、どこまで補償するかということをどれだけ明確化できるかというのが実は一番大事な問題だろうというふうに思います。
 それともう一つ、これは法律家の立場から申し上げて、この法律には、行動制限が規定されているとか、あるいはそういう財産の徴収とか、そういうものがあるにもかかわらず、不服申立ての規定が全く置かれておりません。ほかのところでということなのでしょうけれども、ちょっとバランスを失しているのかなというふうに思います。つまり、人権侵害が起きたときに、先ほど申し上げたとおり、精神医療については精神医療審査会、感染症については感染症診査協議会というのが置かれているわけですね。それがこの法律には全くないという、ちょっと奇妙な感じがしたという次第です。
 時間がだんだんなくなってまいりましたので先を急ぎますが、あと今後の課題を、私のこの数年の研究で気付いた課題を列挙いたしますと、第一に、やはり省庁間の連携、これはもう完全にその縦割り行政の弊害が出ております。つまり、法務省管轄の刑務所の中で新型インフルエンザが発生したときに、厚生労働省がどこまで指導をして責任を持ってくれるのかということをお考えいただけばはっきりすると思います。それはもう全く法務省の責任で行うということになっております。そして、精神科病院と刑務所、ここなんかが本当に見捨てられるところなので、こういうところにまで目配りできるかどうかというのが私は本当の人権感覚だろうというふうに思っています。
 そして、研究者の養成です。これは法律学の任務でもあるとは思いますが、先ほど申し上げたとおり、こういう学問を担う人材を養成しないことには、これ、私だけが申し上げていれば、批判がないわけですね。ですから、それは非常に重要なことだろうということを国にはお願いしたい。
 そして、人権の救済については、もうちょっと感染症診査協議会を活用していただいてはどうかというふうに思っております。ちょっともう時間の関係で詳しく申し上げませんが、精神医療審査会と感染症診査協議会の開催の仕方は異なっております。その理由は定かではございません。
 次に移りますが、現場のお話を聞くと、この間の新型インフルエンザの対策でフロントのところで一番役に立ったと私が感じているのは、専門家同士のリンクを張られたということだろうと思います。情報交換をされたわけです。つまり、地方自治体の保健衛生課長とか、そういう方たちがリンクを張って情報交換をされたんですね。これが、やっぱりインターネットの時代ですから、非常に私は有効だったというふうに思っておりますので、今後やはりそれを更に向上させるような努力をお願いしたいと。
 そしてさらに、ここも、次もほとんど触れられるところがないわけですが、コミュニティーの重要性ということです。これは、イギリスはコミュニティーが崩壊しておりますので、インフル友達をつくろうと。自分が倒れて誰も助けてくれないときに、インフル友達、インフルエンザの友達をつくりましょうというのを、これ、ちゃんとホームページで呼びかけております。日本ではそういうことはございません。それはコミュニティーがしっかりしているからだろうと思います。ただ、残念ながら、私も京都市でそれにかかわっておりますが、コミュニティーの安全、安心町づくりというのが中心課題でありまして、そこにインフルエンザが登場するということはございません。ここのところももうちょっと考えていただくといいかなと思っております。
 そしてさらに、広報ですね。専門家、特にお医者さんのおっしゃることがどれだけ伝わるのかというのが行政、国の重要な任務であろうと。私の見たところ、インフルエンザでいろんな説明がありますけれども、国民のどれだけの方がそれを理解されているのかというのは非常に心もとないところがありますので、是非しっかり広報をやっていただきたいということです。
 ということで、まとめとしましては、もう少しきめ細かな対応をお願いしたいと。だから、基本方針に対して私は異を唱えるものではございません。こういう法律を作って更に検討を重ねていっていただくというのは非常に結構なことだと思っておりますが、それをどうやって詰めていくのか、実際にどうやって運用していくのかということを更に考えていっていただきたいというのが私の感想でございます。
 以上です。
#13
○委員長(芝博一君) 川本参考人には大変ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終了いたしました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#14
○はたともこ君 民主党のはたともこでございます。
 大変御示唆に富む御意見、御見解を賜りまして、参考人の先生方、今日は本当にどうもありがとうございます。
 今回のこの特措法について、私は、二〇〇九年のH1N1、そして二〇一〇年に発生いたしました宮崎口蹄疫、さらには昨年、二〇一一年の大震災、原発事故等、我が国の経験、体験の反省と教訓を踏まえて作られた法案であるというふうに理解をしております。また、そうでなければならないというふうに考えております。
 ところが、この特に二〇〇九年のH1N1について、四月四日の参議院の予算委員会におきまして、当時の厚生労働大臣、舛添要一先生が、この法案は二〇〇九年の教訓を十分に生かしていないのではないか、また法案作成の段階での議論が不足しているのではないか、万機公論に決すべしと発言をされました。
 私は、この舛添先生の御意見も踏まえて、法案成立後に策定される政令、あるいは政府、都道府県、市区町村が策定する行動計画、また各種ガイドラインにおいて、これらの策定作業の中で現場の意見、また批判者の意見、さらに関係団体の意見をよく聞いて、取り入れるべきものは取り入れていかなければならないというふうに考えております。
 そこで、参考人の先生方お一人お一人に伺いたいと思います。
 二〇〇九年H1N1の教訓として、この法案にまだ十分生かされていないこと、先ほど川本先生の方からはかなり具体的にお話がございましたけれども、その点と、そしてさらに、今後更に留意すべきこと、また法案成立後の政令、各種行動計画、ガイドライン等の策定のやり方についてどのような御意見をお持ちか、それぞれの先生方にお聞かせいただきたいと思います。
 そしてもう一点、これは田代先生に伺いたいと思っておりますが、田代先生にはこの法案作成に当たって重要かつ貴重な御提言をいただき、本当にありがとうございます。
 私は、田代先生の御提言の中で、特に事前対応、事前の監視体制として、野鳥、家禽そして豚のサーベイランスの重要性、それについて農水省、環境省、厚生労働省、文部科学省との連携が不可欠であるとの御指摘に注目をいたしました。三月二十二日の本委員会で中川担当大臣にも質問させていただきました。
 そこで、野鳥、家禽、豚のサーベイランスの重要性、特に豚のサーベイランスの重要性について改めて先生から教えていただきたいと思います。そしてさらに、関係省庁の連携の重要性についても教えていただきたいと思います。
 以上でございます。
#15
○委員長(芝博一君) それでは、参考人の先生方、順次お願いをいたします。
 田代参考人、お願いいたします。
#16
○参考人(田代眞人君) ありがとうございます。
 今の御質問ですけれども、現在の法案で何が不足しているかという点も含めてですけれども、まず最初、川本先生からお話がありましたけれども、縦割り行政を克服するというのが僕はこの特措法の大きな目的ではないかと思っておりますが、これが十分に克服されているかどうかということについてまだ十分な説明がなされていないというか、書かれていないように思います。
 これまでは新型インフルエンザ対策というのは厚労省を中心にして行ってきましたけれども、これは社会の危機管理、危機対応については厚労省が中心ではありますけれども、それだけでは当然対応し切れません。したがいまして、政府全体で対応する必要があるということが一番大きな問題だと思います。特に、事前準備についてはここには十分に書かれていないということも私はちょっと危惧されます。幾ら緊急対応の体制を取っておいても、事前準備がなければ何もできません。絵にかいたもちで終わります。ですから、事前準備の具体的なことについてもこの法案できちっと対応していただければというふうに考えております。
 それからもう一つは、緊急事態において様々な要請、指示その他がなされるように書かれておりますけれども、医療従事者、それから社会機能維持に必要な職種、その人たちが仕事を続けていただく、社会機能の維持のためにやっていただくということは非常に大事なことで、我々としても是非そういうことをお願いしたいと思いますが、ただし、そういう方たちが感染を受ける危険があります。強毒型のウイルスの場合には、重症化したり死亡したりするリスクを背負って働かなければいけないわけです。そういうときに、国が丸腰で行けということは絶対にあってはいけないことだと思います。
 どういうことをすべきか。これは私は個人的には、プレパンデミックワクチンの事前接種で最低限の免疫、交差免疫みたいなものを付けておくということが必要だろうというふうに思っておりますが、こういうことについても是非きちっと議論をいただきたいというふうに思っております。
 それから、省庁間の関連につきましても、今御質問がありましたように、新型インフルエンザというのは、ウイルスは鳥又は豚から人に入ってくるわけです。今回の三年前のパンデミックの我々の大きな反省点は、メキシコにおいて出現した豚由来のウイルスを動物の段階で事前に見付けることができなかったと、これは大きな反省でありますし、それを解決するためにどういうことが必要かということを今世界中で検討しております。
 日本においても、鳥のウイルスについては農水省が一生懸命やっております。野鳥については環境省がやっております。しかし、豚についてはどこもやっていません。むしろ、これは日本だけの問題ではありませんが、豚については、主に農業関係のセクターが風評被害を警戒して、手を出すなと、そういう強い圧力がどこの国についてもあります。日本において是非そこを克服していただきたいと。
 それから、私は文科省のコントリビューションも非常に大事だと思います。これは、日本においては、鳥インフルエンザ若しくはインフルエンザの専門家というのはほとんどが大学におる研究者です。ですから、そういう方たちを巻き込んで、この法案の趣旨が貫徹できるように、そういう体制を事前に構築していただきたいと思います。
 以上です。
#17
○委員長(芝博一君) それでは、引き続き、尾身参考人、お願いいたします。
#18
○参考人(尾身茂君) はた委員の御質問にお答えします。
 私も、はた委員のおっしゃる、批判的な意見を十分尊重するということは大賛成であります。その上で、私は御質問の二〇〇九年の経験をいかに生かすかという点では、四つ重要な点があると思います。
 一つは、先ほどから少しもう触れられましたけれども、意思決定のプロセスが、いろんな意見を聞いて最終的には一つのところに集約するというシステムがありませんでした。様々な人が様々なことを責任体制のはっきりしない中で行われたから、恐らく国民の方も混乱したと思います。そういう意味では、いろんな人の意見を聞くというシステムをつくることは大事でありますけれども、最終的には意思決定は一人でいいと思います。ただし、そのときに、最終的な非常に重要な決断は政治家の先生にやっていただかなければいけませんが、その前に、専門家の人たちが十分議論をするそのシステムをつくって、最終的な専門家の意見を政治家の先生に、総理大臣にですね、に言って、最終的な決断をするという、そういうシステムをしっかり取っていただくことが重要だと、一点目です。
 それから二点目ですけれども、一点目と多少関係ありますが、リスクコミュニケーション、広報の問題でありますけれども、これもどうしても官僚的な文になってしまいますので、一つ目は、一般の国民に易しくデータを翻訳して、しかも責任ある特定の人がいつも答えるということが重要だと思います。これはWHOでよくやっている方法であります。
 それからもう一つ、これはマスコミの方にも、私は前にも申し上げましたが、マスコミの方にも御協力願えればと思います。マスコミの方々はどうしても事件を追うという、何かがない、マスクがないということで、専門家の人に少し時間を与えていただいてじっくり説明をする、特にこれNHKなんかがやっていただきましたけれども、もっと私は、危機管理のときにはしっかりした専門家が分かりやすい言葉で国民に語られるような仕組みをつくっていただければと思います。
 それから三点目は、先ほど川本参考人の方から、幾つかきめの細かさということの中で、いわゆる人々の自由を制限するときには基準を明確にしてほしいということですけれども、実は私がもう強く思っていますのは、例えば水際作戦というのは、ある一定の条件では必要だと思いますけれども、一体どういう条件に水際作戦がどの程度必要かということですね。ある程度、五つ、数個のシナリオ、パターンを決めて、こういう場合には例えば停留をするとかしないとかということをあらかじめ決めておくことが非常に大事だと思います。
 それから四点目、最後でありますけれども、最後の、はた委員からの、策定をする際にどういう方法を考えなければいけないかということですけれども、実は今、日本の場合にはほかの国に比べていいところが一つありますね。ITの非常に発達しています。最終的に国の計画などを策定するときには、地方の例えば保健所長さんだとか保健所の人だとかそういう人の意見を聞くことが非常に大事ですけれども、そのときにわざわざ東京まで集まってくる時間はないんですね。したがって、そういうときにはうまいITを使ってテレビ会談なんかをして、最終的に判断するときに、全部の県に聞く必要はありませんけれども、ピックアップをして地元、現場の意見を聞き、国の策定をするということが大事だと思います。
 以上であります。ありがとうございました。
#19
○委員長(芝博一君) ありがとうございます。
 続きまして、久保田参考人、お願いいたします。
#20
○参考人(久保田政一君) ありがとうございます。
 まず、私どもの基本的な考え方、今回のこの法制化というのは、インフルエンザ対策を更に強化するための基本的なフレームワーク、あるいは法的根拠をきちっと法制化するものだというふうに考えていまして、これは是非早期に法案化して、法案にしていただきたいということですけれども。
 先生御指摘のとおり、それがいかにワークするかということが一番重要なことでございまして、企業の立場からいきますと、そういったパンデミック時においていろいろな制約の中でいかに事業を継続していくことができるか。とりわけインフラの関係の業種ですね、電力だとかガス、石油とかですね。それから、食料を供給しているスーパーとかコンビニとか。そういった業種の方々は非常に問題意識高くて、いろんな制約の中でいかに供給を途絶えさせることなくやっていけるかということを必死に考えているわけですね。
 そういう中で、平時に想定している法律では対応できない問題も出てきます。これは今回の東日本大震災のときにもそういうことがいろいろありましたので、事前に分かる範囲で緊急時にはそういった法令について弾力的な運用をするとか、いろいろあらかじめそういう対応を考えるとか、それに合わせて企業が今度ビジネス・コンティニュイティー・プランを作るとかいうことが必要だと思っていまして、ですから、法案が通った後、政省令の作成においてよく関係者と相談をさせていただきながら、具体的にそういった緊急時でも最小限対応できるような措置をとっていきたいと、こういうふうに考えているところでございます。
#21
○委員長(芝博一君) ありがとうございます。
 続きまして、川本参考人、お願いいたします。
#22
○参考人(川本哲郎君) 大体のことは先ほど申し上げたんですけれども、補足させていただくと、この間のときの教訓が全然生かされていなかった一つに、先ほどもちょっと出てきましたけれども、風評被害というのがあります。これは一九九六年ですか、O157のときに同じようなことがあったんですね。つまり、大阪の堺ではやりました。大阪の堺の人はホテルに行ったらやっぱり宿泊を拒否されるということがそのときからあったんです。それが全く生かされていない。そのことについて触れられたマスコミというのもほとんどないんですね。喉元過ぎれば熱さを忘れるというのはもうこのことかというので、是非それは生かしていただきたいし、また風評被害自体も余り専門的に検討されている方がおられないというのがありますので、その点も改善が必要じゃないかなと思います。
 それと、その次は、先ほどもマスコミのことが出ておりましたけれども、情報の出し方は、先ほど私は丁寧にやっぱり説明していただきたいというのはお願いしたんですけれども、誤った情報が出てくることがあると。それのうちの一つが、たしかこの間のときは、三年前は、六十歳以上の高齢者は免疫があるからかからないんだというのが新聞に出たことがあるんですね。大きく出たので、私なんか該当しますから、ああ、そうなんだと思っていたら、しばらくしたらあれは間違いだったというまた報道が出るんですね。そうすると、国民としたらもうどうしていいのか分からないというふうになります。したがって、そういう情報のコントロールというのも重要な課題だろう。
 あともう一つ、この間で余り出てこないのがバイオテロですね。先ほどちょっと研究に関しては出ておりましたけれども、アメリカなんかはかなりそれにセンシティブ、敏感なわけですが、日本ではバイオテロについての、まあ研究はされておりますけれども、これ調べてみたら、アメリカのインフルエンザ関連の論文の何本かはバイオテロの雑誌に載っているんですね。だから、そういうのは日本では余り見られないから、それも大事だろうと。
 そして、最後は、やはり現場の意見を、これは今出ておりましたけれども、現場の意見をやっぱり聞いていただきたい。フロントの行政や医療の最前線におられる方の苦労というのはかなりのものがあります。もう国民から罵倒されるわけですね。そういう方をやっぱり守っていくというのは、これは非常に重要なことだろうと。
 以上でございます。
#23
○はたともこ君 ありがとうございました。
#24
○委員長(芝博一君) 以上をもちましてはたともこ君の質疑を終了いたします。
 続きまして、山谷えり子君。
#25
○山谷えり子君 自由民主党、山谷えり子でございます。
 どうもありがとうございました、貴重な意見。
 平成二十一年の反省から、基本方針、法的根拠を作ること、また責任体制しっかりしていかなければならないという、これは大切だという問題認識は私ども国会議員と参考人の先生方同じかなと思っております。ただ、具体的な運用をワークするかという点になると、まだまだ疑問があるという点も恐らく同じではないかというふうに思います。
 まず、田代先生と尾身先生にお医者様の立場からお聞きしたいんですが、今日の話では出てきませんでしたけれども、一億二千万人分のワクチンを生産するために、現在、新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金というのが四事業者に、指定の四事業者に出されておりまして、ワクチン生産体制づくりが行われております。しかしながら、細胞培養法という新しいシステムでもワクチンができるまで六か月近く掛かると。そうすると、もう流行が終わってしまうのではないかという心配があるわけですが、これで本当にワークするのでしょうか。
 それから、尾身先生のこの資料で、一つの山があって、その後の国内感染は別系統のウイルスによりもたらされたと。次々と変化していくというような想定の場合、もっともっと今のような生産体制でやって無駄が、壮大な無駄が出るのではないかというような懸念についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
#26
○委員長(芝博一君) まず最初、田代参考人、お願いいたします。
#27
○参考人(田代眞人君) ありがとうございました。
 まず、パンデミックのときのワクチンの製造体制ですけれども、現行の発育鶏卵を用いた季節性ワクチンと同じ方法で作りますと、これは大量の卵、一億個以上の卵の供給に左右されますので、そのためにはひな鳥を一年前から農家と契約しておかなければいけません。それは不可能です。ですから、最悪の場合には、国民全員分のワクチンを作るには一年半掛かります。それを半年に短縮するために細胞培養ワクチンという方法を今開発しているわけです。これは、新型ウイルスが出現してから最初に供給されるまでには恐らく三か月から四か月だと思います。その間はワクチンはありません。本格的なワクチンはありません。その後、二か月ないし三か月で国民全員分のワクチンを急いで作ると、そういう計画です。
 前回のパンデミックの場合には、幸いなことに国内で大流行したのは四月にパンデミックのウイルスが出現してから半年くらいたってからだったわけですから、培養ワクチンを導入した場合には辛うじて間に合う可能性があります。ただし、最初の三か月は丸腰です。そこをカバーするためにどうするかというと、先ほど尾身参考人が言われたように、様々な公衆衛生学的な介入をして流行を少しでも後ろに持っていく、流行を平たん化すると、それが非常に有効だと思います。時間稼ぎです。
 それと同時に、現在一番心配されているH5N1については、現在、鳥の間で流行しているウイルスをもとにしたプレパンデミックワクチンというのが開発されています。国内でも備蓄されています。これを最初の三か月の間にうまく活用して使うと、そういう戦略を導入する必要があると思います。
 以上です。
#28
○委員長(芝博一君) 引き続いて、尾身参考人。
#29
○参考人(尾身茂君) 山谷委員の御質問にお答えします。
 まず最初に明確にしておきたいことは、先ほどの、山で幾つかのウイルスが、サブタイプが来たということは、これは遺伝子的にそうであって、いわゆるワクチンの効き目だとか、タミフルに対する、効き目は一緒であります、そのことは。それで、そのワクチンを作るのに、今、田代参考人の方から御指摘がありましたように、数か月掛かることがもう間違いありません。これはどこの国でもそうです。
 したがって、一番大事なことは、初期の対応のときに、ワクチンができるまでに何とか初期の対応でしのぐということが是非そこで、場合によっては学校閉鎖、場合によっては水際作戦、あるいは、これはもちろん人権の侵害というのを最小限にやる、このことしか実は闘うすべがないんですね。これが公衆衛生、感染症対策の最も大事なことなんだけど、国民はほとんどすぐにタミフル、ワクチンということに関心が行くので、実はこのことが感染症対策上は極めて有効な方法であるということは是非、その運用においては人権の問題を考慮するというのは当然でありまして、このことは是非私ははっきりと申し上げたいと思います。
 それと、したがって遅れ、その間はワクチンあるいは薬がない、この間はそういう公衆衛生学的な方法でしのぐと同時に、ワクチンが出ても一遍に全ての国民に渡るほどのワクチンはできないんですね、ロットは少しずつ出てきますから。そういう意味では、どうしても実態的には優先順位、誰を先に打つかという議論は、これは避けて通れないんですね。
 したがって、そのときにどういう判断基準でやるかというと、新しい感染症のときには、どこのグループが一番致死率が高くて、どこのグループが感染すると亡くなってしまう、このことは最初は分かりませんけれども、だんだんと分かりますから、そういうエビデンスを基に最終的な判断をするということが必要だと思います。
 以上であります。
#30
○山谷えり子君 重ねて尾身先生にお伺いしたいんですが、WHOで非常にたくさんの経験を積んでこられたということなので。
 そうしますと、どこの国も国民全員に打つような体制を想定している、あるいはその事業者をあらかじめ指定している。それから、どこかで流行始まって先にできるかもしれませんよね、ワクチンを、それをお互いに分かち合うとか、そういうシステムはどうなっているんでしょうか。
#31
○参考人(尾身茂君) もちろん、国によってそういうことを前もって計画を立てている国がございまして、私は日本もそれをやるべきだと思います。
 新しい感染症が、いわゆる多少なりとも国民が部分的にでも免疫を持っている場合と、全く新しい感染症の場合では、明らかにワクチンがそもそもないわけですね。全く新しい場合は、初めて新しい病原体が同定できてから作るということになりますから、もうこれはどう考えても、どんなに技術があっても、ある程度のタイムラグが出てくるんですね。そういう場合にはどうしても、先ほど私が申し上げたように、誰を先に優先順位を持ってやるという議論は避けて通れない。そのときに合理的な意思決定のシステムをちゃんとふだんからつくっていくということが大事だと思います。
 以上であります。
#32
○山谷えり子君 経団連の久保田さんにお伺いします。
 確かに政省令の作成の段階には意見交換十分にしながら現実を踏まえたものを作っていくということが大事だと思うんですけれども、経済界でもいろいろ事業によってサービスはいろいろ違うと思うんですけれども、例えば経団連あるいは経済同友会とか、いろんなところで何か作業部会みたいなのをつくってやり取りするとか、どういうシステムが一番問題を反映しやすいとお考えですか。
#33
○参考人(久保田政一君) ありがとうございます。
 私ども、いろいろな政策イシューによっていろんな委員会がございます。
 私どもの例でいきますと、国民生活委員会というのがあって、国民生活全般に非常に甚大な被害を及ぼすような問題について検討する委員会がありまして、このインフルエンザにつきましてはこの委員会でずっと検討しております。当然、委員会ですとかなり人数も多いものですから、もう少し専門的なものは部会とか、さらに、先ほど申しましたように、特にいろいろなインフラを担うところは非常に熱心ですし、一番重要なものですから、そういうところはまたワーキンググループというような形で専門家に集まっていただいてこれまでも議論しております。
 ですから、そういうフレームワークでまた今後いろいろ意見交換させていただければ有り難いというふうに思っております。
#34
○山谷えり子君 川本先生、本当に急なことで、ありがとうございました。本当に、おっしゃるように、不服申立ての規定がないとか、特に必要とされる場合とは何かとか、補償の範囲どうするかとか、具体的に見えないところがいっぱいございます。
 これからの審議にそうした部分を生かしながら役所とやり取りをしていきたいというふうに思うんですが、厚生労働省の行動計画でむしろ人権の部分が後退しているのではないかというのは、どの辺のことで思われたんでしょうか。
#35
○参考人(川本哲郎君) ちょっと今、具体的に出ないんですけれども、結局、従来、もう一般論としては最小限の制限みたいなことは書いてあったと思うんですけれども、これは二〇〇九年に先ほど申し上げたようないろんなことがあったと、それを基に何かを付け加えられたということはほとんどなかったように思うんですね。ですから、全体としたら、医療の方の充実というのはその前を参考にしてかなり改善されたと、人権の方は後回しになっているというのが私の感想でございます。
#36
○山谷えり子君 どうもありがとうございました。
#37
○委員長(芝博一君) 以上をもちまして山谷えり子君の質疑を終了いたします。
 続きまして、浜田昌良君。
#38
○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。
 本日は、四人の参考人の皆様、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。
 三年前のときはちょうど自公政権でプロジェクトチームの一員だったもので、そのときには尾身先生にも田代先生にもお世話になりました。ありがとうございました。そのときの経験から、やっぱりこれは法制度が必要だということで、この法案、私、必要だと思っております。
 それから、今回、有事法制における私権制限、人権制限の問題について、やっぱり慎重にという議論もあって、衆議院では行われなかったこの参考人質疑が参議院では行われたということは、参議院の良識としてすばらしいことだと思っております。
 そういう意味で、今日は、この参考人、昨日の夕方にどうするかという議論をしたんですが、私、政府の進め方にちょっと異論を挟んだんですね。今日は、田代先生も尾身先生も久保田先生もよく昔から知っていますので、立派な先生方で異論はなかったんですが、議論の焦点がいわゆる有事法制のときの人権制限、私権制限であれば、法律学者が入っていないとおかしいじゃないですか。それが案に入っていなかったんですよ。それで、急遽、本当に今日は川本さん申し訳なかったんですが、急に夜の六時ごろ電話いたしまして、今日の授業をキャンセルしていただいて来ていただきまして、本当に御礼を申し上げます。
 今日、来てもらってよかったと思っています。我々が気が付かなかった点、こういう補償の問題、また不服申立て問題、これについては大きな問題ですから議論したいと思っておりますし、かつ、先ほど、はた委員がおっしゃいましたように、この前の予算委員会で舛添議員自身が、当時の大臣ですよ、こうおっしゃっているんですよね。
 この度のインフルエンザ法案というのが衆議院通りました。私これ、読んでみました。しかし、残念ながら、私が新型インフルエンザに大臣として対応したときの経験、それが十分に生かされていない。つまり、もっと言うと、この法律が危機管理に逆行する面があると、こうおっしゃったんですよ。これ、問題発言だと私思ったんですけどね。かつ、我々は立法府としてこれはきちんと修正を加えるべきだということを申し上げると、こうおっしゃったんですよ。そういう意味で、私は当初附帯決議か何かで押さえようと思っていましたが、必要であるものは修正するべきだと考えております。
 なぜ舛添さんがおっしゃったか。これ、まず尾身さんにお聞きしたいんですけど、二点彼言っているんですよ。それは何かというと、三年前も、強毒と思ったら弱毒だったんですよ。よって、当初のいろんなものが逆に、決めたものが足かせになってしまった。先ほど尾身先生の、発表でも、レベルが変わったら段階を変えるべきだと、これはおっしゃるとおりなんです。
 ところが、この法律上、そういうものの規定がないんですね、明確に書いていない。この政府の対応計画というのが法六条の三項にあるんですが、段階ごとにこういうことを書きなさいというだけであって、レベルが変わったらどうだという明確な規定がないんですよ。私は、全ての政府なり県なり市町村の計画については、レベルが強毒の場合と弱毒の場合で対応が違うのを書き分けるべきだということについてどうお思いかが一点なんです。
 もう一点、舛添さんがおかしいと指摘しているのは、これはかなりやっぱり、知事とかの権限を強くしているんですよ。特に、大阪で学校閉鎖するかというので市と、政令市と府がもめたんですね。そのこともあったので、知事に権限与えた。ところが、知事は素人なんです、重要なのは現場の医者なんですと。現場の医者の意見を反映させるというのがほとんど入っていないんですよ。唯一、有識者の、医者の意見を反映させるというのは政府の行動計画のところに一項目入っていまして、六条の第五項があるだけで、実際の要請とか指示をするときにその有識者なり現場の意見を反映させるという規定はないんですよ。それについてどういうことをやっていけばいいか。その二点について尾身先生にお聞きしたいと思います。
 続きまして、川本先生にも質問しておきますが、川本先生、本当にありがとうございました。
 おっしゃるとおり、この条文って雑な条文です。初めて読んでみたら、よくこんな法案通ったなと思うぐらい、先ほど、特に必要であれば要請をして、特に必要であれば指示をするというだけじゃなくて、本来この条文の中心である緊急事態宣言ってあるんですが、その宣言の定義に政令丸投げが二か所もあるんですよ。その他政令で定める要件という、何も書かない要件が二つも出てきて、これに当たったら緊急事態だという。これはちょっとね、私権制限するんだからもう少し条文に書くべきですよ。というぐらいの条文なんで、まあ附帯決議でもよかったんですけれども、そういう粗い条文です。
 その中にあって、今日御指摘いただきました二点、本当だなと思いましたのは、一つはこの不服申立てのやり方なんですが、先生の方から感染症診査協議会という仕組みもあるという話をされまして、これが、この仕組みが使えるものなのかどうなのかが一点。もう一点は、補償される場合の範囲、確かに風評被害を含め重要だと思っています。その仕組みをあらかじめ、例えば今原発災害が起きていますが、原発の場合は原発の紛争審査会という規定がもうあるわけですね。ああいうものの規定まで必要なのかどうなのか、この二点についてお聞きしたいと思います。
 以上でございます。
#39
○委員長(芝博一君) それでは、まず尾身参考人。
#40
○参考人(尾身茂君) 浜田委員からの御質問にお答えします。
 まず一点目の、弱毒であったと、想定されたのが実はそれほどでなかったという、そのときの対策のレベルをどうするかという話で、実は前回、三年前の新型インフルエンザのときも、当初は、本当に最初の当初のころはアメリカから来る情報とメキシコから来る情報で少し食い違いがあって、当然そのときに一番の最悪の状況を想定して取った対策が私は妥当だったと思います。
 ところが、今反省すべきことは、その後、それほど強毒でなかったということがだんだんと分かってまいりまして、そのことはみんな認識をしておりましたが、その情報を基に対策のレベルを下げるというところにいささか時間が掛かり過ぎたというのは事実であります。
 その理由は幾つかありますけれども、いろいろ先ほどの意思決定の問題もありますが、もう一つは、実は先ほども申し上げましたけど、どの程度のときに、どの程度の感染力あるいは病原性のときにどのぐらいの対応策をやるという、イメージでもいいですけれども、そういうことが当時はなかったわけですね。したがって、そういう様々な理由でレベルを下げるのに時間掛かって、したがって、そこで不要な資源が使われたということがあったと思うので、したがって、今回の最大の教訓を早いうちに、そのシナリオ、大体五つか六つぐらいのシナリオで、大体、これは完全に正確に当てることはできない、このぐらいのときにはこういうイメージというようなことをやるべきで、厚生省の方あるいは国の方でもう既にそのことを議論し始めているというふうに私は理解しているので、それを早く終了していただければと思います。
 それから、二番目の知事あるいは市町村の、この話は私は、どちらかということは私の立場で申し上げる立場ではありませんが、浜田委員おっしゃるように、私は、最終的には現場の意見を聞くというときは、行政官あるいは市長あるいは知事、選挙で選ばれた人と同時に実際に従事する人、及びやや距離を持ってこのことを客観的に見れる専門家ですね、こういう人たちをしっかり巻き込むデシジョンメーキングのプロセスが必要で、是非やっていただきたいと思います。
 以上です。
#41
○委員長(芝博一君) 引き続いて、川本参考人、お願いいたします。
#42
○参考人(川本哲郎君) まず第一に、感染症の診査協議会で可能かという御質問でしたが、これはやっぱり難しいと私は思っております。特に、それに関連して二〇〇九年の事例を申し上げると、感染症診査協議会ができて、三日を超える入院の場合に協議会を開けということになっております。そこには必ず法律家が一人加わることと。それで何年かやっておりまして、年間の件数が少ないものですから問題なかったのですけれども、SARSのときとかはちょっと危機的だなという感じがいたしておりました。
 新型インフルエンザはそれの対象に入っておりまして、実際に京都市では第一回目に診査協議会を開きました。それから後、何十人と出てくるわけですから、私はすぐ国に聞いてくださいというふうにお願いしたら、国の方からはファクスで結構ですという答えが返ってきました。ファクスが毎日、私の家のファクスが作動するわけですね。こんなのでどうするのかと思ったら、しばらくしたらそれも必要はないと。つまり、インフルエンザの場合、規模が大きいものですので、診査をするというのがちょっと別の体制を考えていかないと、今やっているような現行のような丁寧な診査にはなじまないというふうに思っております。
 二番目ですが、補償についての規定が必要かというお尋ねでしたけれども、これはこの法律の中に書き込むかどうかはおいておいても、いずれほかのところでは必ず必要になってくるものだというふうに思っております。
 それと、もう一つ答えさせていただくと、学校閉鎖の問題です。これ、先ほど知事の権限ということですけれども、京都府は二〇〇九年に大学に対して閉鎖の要請を行いました。京都大学だけが要請には従わなかったんです。それで私、後で見たら京都大学の判断が正しかったなと思うんですけれども、一日だけの閉鎖の場合はそれほど問題にはならないだろうと思いますが、危機管理の面で申し上げると、アメリカなんかでは強毒性がはやればやっぱり三か月は閉めるんだろうと。
 じゃ、そのときの教育体制どうするのかということを検討しているんですね。ところが、日本では全然そんなものは出てきませんので、学校閉鎖についても私は異論はありますけれども、学校閉鎖は認めるにしても、やっぱりそれの方法というのはちゃんと考えておかないと、いろんな問題は出てくるだろうというふうに思っております。
 以上です。
#43
○委員長(芝博一君) 浜田昌良君、以上でよろしいですね。
#44
○浜田昌良君 はい。
#45
○委員長(芝博一君) 以上をもって質疑を終了いたします。
 引き続きまして、川田龍平君。
#46
○川田龍平君 みんなの党の川田龍平です。
 私はふだん厚生労働委員会なんですが、是非この法案についてはしっかり審議したいという立場で、内閣委員に異動をさせていただきました。
 そして今日、参考人質疑をしていただきまして、委員の皆様には本当に突然のお願いの中、お越しくださいまして、参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
 そして、委員長それから理事にも、本当にこういった参考人の機会を設けていただきまして、ありがとうございます。そして、浜田委員には、本当に今回人権の観点ということで是非とも川本参考人ということで強く推薦されまして、こういった委員会での参考人の質疑の場を設けさせていただきまして、本当にありがとうございました。
 私からも早速ですが川本参考人に是非お尋ねしたいと思います。
 薬害エイズで私はHIVに感染していることで、やっぱり差別を受けてきた当事者として、是非、川本参考人が論文で引用されています、かつてハンセン病やエイズなど感染症対策の分野で、感染に対する社会的な不安や恐怖の感情が病と闘う当事者への強い偏見と差別を生み出し、合理的な対策の遂行を困難にしてきた、その苦い経験を思い出してほしいとの見解を、先生も同意されておりますが、私も強く同意するところです。感染症蔓延の際の弱者保護、パンデミック時の人権侵害が余りにも論じられていないと先生は論文で述べられています。
 今回の福島東京電力原子力発電所事故の際の福島の方への差別と同様ですが、そうならないためには法学的にどのような配慮が求められるでしょうか。また、薬害エイズは製薬会社や官僚による情報の隠蔽や癒着が原因でしたが、パンデミックの際の情報の公開についてどうあるべきかを法学的見地から御意見をお願いいたします。
#47
○参考人(川本哲郎君) 御質問ありがとうございます。
 難しい問題で、まず福島は、やっぱり先ほど申し上げたとおり、風評被害そのものが非常に難しいわけですね。それで、その研究自体もそれほど活発ではないと。だから、もうちょっとその風評被害のメカニズムとかその防止策とか、そういうものの研究から始めていかないといけないなというふうに思っております。ただ私、本当に残念だったのは、O157とか、何回もあるのに、全く忘れられてしまって出てこないというのではちょっとひど過ぎるというふうに思っているところです。
 そして、その次の情報公開に関しての御質問ですけれども、これも、今の私の感想でいくと、やはりコンプライアンス、コンプライアンスというのは法令遵守というふうに訳されているんですけれども、どうもこれは不十分で、法令遵守というと法律さえ守っていればいいみたいなイメージがありますが、ですからエシックスコントロールという、倫理管理というふうに言うわけですけれども、そちらの方が実態を表していると思いますが、そういう企業内の倫理とかをどうやって確立していくのかというのが今の情報公開に何かヒントになればというぐらいしか思い付きません。申し訳ありません。
#48
○川田龍平君 ありがとうございます。
 また、川本参考人は、先ほども述べられていましたけれども、論文で、学校閉鎖についてその弊害も存在する一方、学校閉鎖の効果については否定的な見解もあることを指摘されていますが、引き続き検証を行い、ある程度確定的な結論が得られるまでは安易な行動制限は慎むべきではなかろうかとも述べられています。
 この考えに関連して伺いますが、憲法学では、憲法上の人権であっても公共の利益や他者の人権との衝突を避けるために一定の制限を受けるとされていますが、人権を制限する場合には、その目的を達成するために必要最小限の制限に留め置かなければならないという考え方が基本になっていると伺っております。この必要最小限ということを考えると、その人権制限が目的の達成にとって効果がない場合には、そもそもそのような制限をする必要はないということになりますので、必要最小限という要請の中には、その人権制限には効果がなければならないという意味が含まれると考えてよろしいでしょうか。
#49
○参考人(川本哲郎君) その問題に関しましては、私、先ほど申し上げたとおり、精神医療なんかを考えると、他害のおそれ、つまり伝染病にかかってそれを人にうつす、その可能性の確率というものが一つ問題なんだろうと思います。したがって、精神医療で問題になるのは、精神障害にかかっておられる方が本当にそんなに危険なのかという判断が難しいわけですね。それに比べると感染症は、かかっておられるかどうかというのは判断は確実だと思うのですが、先ほども出ていましたようにウイルスのパターンとかいろいろあるわけなので、場合によったら無駄な拘束をしているということはあるかもしれないと。
 ただ、これは、私はずっと勉強してきて思うのは、かといってかなり引いてしまうと、先ほど尾身先生のお話にあったように、チャンスを逃してしまうということもあり得るわけですね。だから、思い切り網を掛けて、かなり無駄であったなと思うぐらいの方がいいのかも分からないというところがあるので、かなりこれは政治的に難しい判断を迫られる問題なんだろうと思います。
 したがって、そのときにはベストと思われる政策を決定して、後でどんどん検証していってそれを生かしていくというのが必要ではないかと思います。
#50
○川田龍平君 この法案には、学校閉鎖のほかにも様々な人権制限を定めていますが、政府の新型インフルエンザ対策には否定的見解を示されている方も少なくありませんが、川本参考人のお話からしますと、この対策の効果について、賛否双方の意見を踏まえて十分な検証を経た上での人権制限を行うべきということもあると思いますが、医学だけでなく法律学の立場から是非求められていると解したんですが、その意見について是非お述べいただければと思います。
#51
○参考人(川本哲郎君) まず一つ、学校閉鎖について私が、学校閉鎖の問題自体も重要なんですけれども、それよりも私が法律学者として危惧したのは、議論がされていないということだったんですね。結論は、議論した上で、やはり学校閉鎖が有効なので、しかも大規模にやるべしということになれば、それはそれで結構だと思うんですけれども、全くそういう議論をせずに、特にそういうことを法律家の方で余り調べていないと、お医者さんの方でそういうデータを出されて、それがエビデンスに基づいているというんならもう全国民が信用しているみたいな、そういう状況はやはり改めていただきたいなと思います。
#52
○川田龍平君 最後に、この新型インフルエンザ等緊急事態宣言の要件は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速な蔓延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態とされ、具体的要件は政令に委任し、法律上は抽象的な定めがなされるにとどまっています。
 過剰な人権制限とならないようにしなければならないと考えますが、この点について、具体的にどういうことが必要と考えるか。この緊急事態宣言は事後報告で足りるとありますが、これだと十分な検証のための審議にはつながらず、事前の承認は無理としても、事後の承認が必要と規定すべきではないかと考えますが、川本参考人の意見を伺います。また、法案では、制限の期間が二年、延長には国会の報告は必要となっていますが、短く定めて、延長には国会の承認を求めるという規定にするという慎重さが必要だと思いますが、参考人の考えはいかがでしょうか。
#53
○参考人(川本哲郎君) やはり法律家の立場とすれば、ここはまた最終的には政治的決断ですから難しいとは思いますが、法律家の立場でいうと、やはりプロセス、手続ですね、そういうものをしっかり定めていただかないと問題は出てくるだろうというふうに考えております。
#54
○川田龍平君 ありがとうございました。
#55
○委員長(芝博一君) 以上をもって川田龍平君の質疑を終了させていただきます。
 続きまして、糸数慶子君。
#56
○糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。
 今日は、お忙しい中、四人の参考人の貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 本年一月三十一日に厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議におきまして、新型インフルエンザ対策ガイドラインの見直しに係る意見書が取りまとめられたわけですが、これは平成二十一年に発生いたしました新型インフルエンザから得られた知見、それからその教訓を踏まえてガイドラインの見直しについて意見を取りまとめたものというふうに承知しておりますが、その点につきまして、まず田代参考人に対して御質問させていただきます。
 水際対策についてでございますが、水際対策は効果が薄いといった意見もあるわけで、飛行機やあるいは宿泊施設における停留は国民の活動を大きく制限するものであり、必要最小限のものでなければならないわけですが、ガイドラインの見直しに係る意見書にも、この水際対策について、合理性がなくなった場合、その停留措置を縮小することが記載されています。
 水際対策は、国内発生をできるだけ遅らせるための効果があるにしても、国民を何日間も引き止めておくということは多大な人権制限につながるおそれがあるわけですが、その停留の措置は、実施するものであれば、科学的知見に基づいて必要最小限の範囲で行わなければならないと考えますが、田代参考人の御意見をお伺いいたします。
 もう一点ございますが、この新型インフルエンザが蔓延すると学校あるいは保育所などが臨時休業となる場合が想定されるわけですが、その場合、保護者が仕事を休むことができればよいわけですが、どうしても仕事を休めない保護者も存在すると考えられます。その場合においての対応、今般のガイドラインの見直しでどのようになったのか、まずお伺いいたします。
#57
○参考人(田代眞人君) おっしゃられたように、まず水際作戦で空港における停留、検疫、これについては必要最低限、効果が認められると判断された場合に限る必要があると思います。前回の場合の教訓もそうですし、我々も事前からそういうことは判断していましたけれども、これで完全に国内に入ってくることを防ぐということは期待できないと。
 前回のフォローアップの成績を見ましても、最初に成田でカナダから帰ってこられた学生さんたちが停留されましたけれども、そこからはそのウイルスは国内にはもう広がっていないということが確認されています。ですから、効果そのものはあったと。ほかの人に接触することを遮断したことで、尾身参考人が言われたような効果はあったと。ただし、その後国内には、どこから入ってきたか分かりませんけれども、いろんな空港から、海外から、もう何回も繰り返し別のウイルスが入ってきているわけです。ですから、これを完全に、この水際作戦で国内に入ってくるウイルスをゼロにすることはできません、期待できません。
 ただし、先ほど言いましたように、少しでも国内での流行の広がりを後ろに持ってくる、時間稼ぎをする、それからいっときに医療の対応の能力を超えて大きな患者、重症の患者が大量、多数出るという、そういう事態を回避するためには、ある程度は必要だと思います。どこでその有効性を判断して、もはやこれをやってもしようがないかという、その方針の切替えをするかということについては具体的なことはまだ検討されていませんけれども、そういうことを考慮してフレキシブルに方針を変更していくという、そういうことはきちっと合意されております。
 それからもう一つ、休校の問題ですけれども、これも検討委員会で随分ディスカッションをされました。確かに、感受性者が大勢集まる学校とか幼稚園、保育所、そこでウイルス、新型ウイルスは増幅していくことは間違いありません。そこで、子供たちがそれを家庭に持って帰って、そこから社会に広がっていくと。それは、ある程度はそういうプロセスで行くと思います。そこを完全に学校を休校にしてそういうリスクを減らすということ自身は効果があるという、そういう報告もあるわけですけれども、それによって、今おっしゃられたように、保護者が仕事を休んで子供の世話をしなければならないという、そういう事態が生じてきます。そこをどういうふうにするか。
 ただ、これは休業補償をするというだけでは問題が解決しません。仕事を休むことによって、その方たちが社会で果たしている機能というのが低下するわけです。例えば看護師さんについて見れば、ほとんどの方が女性です。お子さんを持っておられる方が多い。その方たちは、じゃ、学校を休みにして、子供の面倒を見なきゃいけないから第一線の医療の仕事を休みますと、そういうことが果たして可能かどうかですね。ですから、これも非常に大きな問題で、どこでその判断をするか。
 先ほど大学の休みの話が川本先生からありましたけれども、海外では学校を閉鎖した場合に教育のバックアップをどうするかと。そのテレビのプログラムを既に作成しているとか、様々なそういう対策が取られております。そういうことも一つは学校を休校にした場合の対応として考えておく必要があるかと思います。
 以上です。
#58
○糸数慶子君 時間の関係もございますので、参考人に続けてお伺いしたいと思います。
 尾身参考人にお伺いいたしますが、平成二十一年の新型インフルエンザでは日本の死亡率は諸外国に比べて低かったわけです。先ほどもお話ございましたが、尾身参考人御自身の論文の中でも学校閉鎖を挙げています。確かに、学校閉鎖は死亡率を抑えること、大きく貢献しておりますが、一方で、過剰であったという批判もあるわけですが、国民の権利を制限するその対策、必要最小限とすべきだと思いますが、それについて御所見をお伺いいたします。
 次に、久保田参考人に続けてお伺いしたいと思います。
 新型インフルエンザが国内に蔓延すると、各企業の従業員、最大四〇%が欠勤することが想定されるわけですが、その状況になった場合、最低限の社会経済機能の維持を図らなければならないわけですけれども、経団連としてどのような準備をされているかということと、それから、平時からその体制の確立、それから訓練が本当に必要だと考えますが、各企業において現状はどうなっているのか、経団連はどのような準備をしているか、お伺いします。
 最後に、川本参考人に対してですが、やはり新型インフルエンザ対策と、それに伴う人権制限及びその経済的損失について川本参考人の御所見をお伺いするのと同時に、本法案に対する評価と、あるいは改めて政府に要望すること、本法案の施行に際しての要望を改めてお伺いをしたいと思います。
#59
○委員長(芝博一君) まず、尾身参考人、お願いいたします。
#60
○参考人(尾身茂君) 危機管理において最も重要なことの一つは初期対応なんですね。初期対応が比較的適切に行われますと、いずれ感染の流行の山は来ますけれども、先ほど田代参考人から話がありましたが、時間が稼げる、この間にいろんな対応が打てるという意味で、先ほど私が申し上げている公衆衛生対策、例えば学校閉鎖等が最小限、もちろん先生たちがおっしゃるように、これはもちろん最小限のレベルでやるということで、ただ、一つ先ほどからお話が出ている教育の問題、機会の問題ですけれども、比較的、私は、小学校、中学校の学校閉鎖は大学生あるいは職業人の休業よりもやややりやすいというか、社会にとってやや理解を得やすいというのは、実は夏休みがありますね。もちろん感染が夏休みにぶつかっては、まあいずれどこかで休むのであれば、その間休んで、夏休みに補習をするということも現実的な対応ではないかと思います。
 先ほど田代委員の方から、インフルエンザにおいては小学校、中学校がいかに大事かということは、そこの人たちは、動きの多い人たちがほぼ八時間以上同じスペースでいて、その人たちが感染すればほぼ確実に、家に帰って妊婦のお母さん、体の弱いおじいさん、おばあさんに感染する率が高くて、したがって死亡率が高くなるということであるので、人権を守りつつ最低限のことをやる。ここは言ってみれば、公衆衛生学的な感染症対策のアプローチと、それから人権の問題という微妙なバランスが問題で、その都度適切な判断をする必要があると思います。
#61
○委員長(芝博一君) 続いて、久保田参考人。
#62
○参考人(久保田政一君) ありがとうございます。
 先生御指摘のとおり、実際、例の豚インフルエンザのときでも、保育所、学校閉鎖に伴って、パートの方中心に従業員の確保だとか、それから欠勤者の多い店舗等によって応援人員の確保とか、実際そういう問題が起きまして、それで今回、四〇%の欠勤率前提にということになると、これなかなか非常に厳しい問題がありまして、そういった前提の中で、最小限、供給を途絶えさせないためにはどういうセクションにどれだけの人数が要るのかとか、そういうところの計算からやっておりまして、そして、そのための具体策を政府関係者といろいろ詰めているところでございます。
 その中の一つ出てきている議論は、そういう必要最小限の人員に対してプレパンデミックワクチンの事前接種をどうするかという問題、これは課題として大きく取り上げられておりまして、これはまた企業それから業種によってもいろいろな考え方はございます。まずやはりその安全性の確保とかそういった問題がありますので、この辺については国が指導する形で治験の対象や数を拡大して、安全性が確認できたら国としてそういった指示を出すとかというふうなことも必要かなというふうに考えておりまして、いずれにしましてもこれからの課題が大きいというふうに考えているところでございます。
#63
○参考人(川本哲郎君) 第一の方は、私は、要は行政、国、地方自治体の説明責任がまず一つ大事だろうと思っています。必要最小限というのに反対する人はおられないんですけれども、実際に必要最小限を国が出したときに国民がどう受け止めるかですね。つまり、必要最小限じゃないのじゃないかという疑問が起きるときが問題なわけですから、そこは丁寧なやっぱり説明をふだんから心掛けていただくということだろうと思います。
 それと、保護者の休業の問題は、これは危機管理の問題で、実際に職場の中で四割の人が休んだらどうなるかというようなことは通常では考えられないことですけれども、それが想定外というふうにいくとこれはまずいわけで、企業の方あるいは国、地方自治体の方でもやはりそのことは危機管理の問題として考えていただきたいというふうに思っております。
 第二の御質問ですが、法案の評価。先ほどちょっと申し上げたとおり、私、これ前向きにとらえていただくのは大賛成です。ですから、こういう法案は作っていただきたいと思うんですけれども、ただ細部の詰めですね。ともかく作ればいいというものではないわけですから、そこをしっかりやっていただきたいというのが私の要望でございます。
 以上です。
#64
○糸数慶子君 ありがとうございました。
#65
○委員長(芝博一君) 以上で参考人に対する質疑は終了をいたしました。
 参考人の方々に一言御礼の御挨拶を申し上げます。
 本日は、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 それでは、これにて本日は散会をいたします。
   午後二時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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