くにさくロゴ
1951/08/17 第11回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第011回国会 本会議 第2号
姉妹サイト
 
1951/08/17 第11回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第011回国会 本会議 第2号

#1
第011回国会 本会議 第2号
昭和二十六年八月十七日(金曜日)
 議事日程 第二号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時三十二分開議
#2
○議長(林讓治君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(林讓治君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。北村徳太郎君。
    〔北村徳太郎君登壇〕
#4
○北村徳太郎君 九月初めの平和條約調印式に吉田首相がみずから出席されますことは、その職責上当然ではございますが、まことは御苦労千万でございまして、その労苦に対して、私どもは心からこれを多とするものでございます。(拍手)
 今回の講和会議は、三十年前のヴエルサイユ会議とは異なりまして、わが史上かつてない、わが国が敗戰国として連合国の間に引出されるのでありそうして、たださえ超過人口に悩む日本が、今回領土の四割五分を失う條約に調印するのでありますから、かつて西園寺全権、牧野全権等がパリ会議に列席されたときとはまつたく異なつた心境でこれに臨まれることは当然であります。それだけに国民は、吉田首相らがこの会議に臨んで、日本は敗れたりといえども、名誉ある歴史と伝統を有する民族としての凛乎たる態度を保持し、日本民族を代表して堂々たる進退を示されんことを、私は強く期待するものでございます。(拍手)
 敗戰後六年、日本民族独立への切実なる悲願が今やようやく達せられようといたしております際、私どもは全国民とともに、講和に関連する疑問点を国会において明確に解明し、平和会議と国民とをこの国会論議を通じて直結させますことが民主主義の正道であることを痛感いたします。(拍手)国家の独立、民族の同胞愛、経済の自立の見地から、以下質疑を行わんとするものであります。
 第一に領土問題でありますが、わが党が、領土問題につきましては、早くから具体的に、かつしばしばその所信を表明して参りましたことは、御承知の通りであります。これは正義と世界平和のために絶えざる努力を拂われて来ました米国が、おそらく今回の対日講和においてもその信念に基き、かつしばしば言明されて参りました。いわゆる公正にして永久的な平和への高い人道的精神に基いたものであり、また従つて大西洋憲章を一貫する精神が十分尊重されておるものと信じたいのであります。でありますがゆえに、今日まで、わが党は、日本民族の熱烈なる要望を率直かつ明白に表明いたしまして米国の信念と良心に訴えて来た次第であります。国民の一部には、敗戰のみじめさに引続き、さらに六年の長きにわたる占領の管理から今ようやく独立と自由が許されるという喜びのために講和草案をあるいは冷静にかつ十分に検討していないものもありましうし、また一方、政府側だけの、やや甘い宣伝に酔わされているものも少くないと思うのでありますが、わが民族の将来を思いますときに、領土の四五%を剥奪されることは、民族死活の問題であることは申すまでもございません。そもそもポツダム宣言は、大西洋憲章及びカイロ宣言を受けて成立いたしておるのでございまして、それらの憲章及び宣言の精神は、あくまで領土的野心の皆無であることと、住民の意思の尊重ということが核心となつておることは、周知の通りであります。そこで、わが党は、千島列島、奄美大島、琉球諸島、小笠原諸島等が民族的にも歴史的にも日本領土たることをあくまで主張するものであります。(拍手)しかるに、今回の講和草案では、これらの地域が日本領土から除外されていますことは真に遺憾にたえません。百十万に及ぶこれら地域の住民たるわが同胞が、明け暮れ号泣して自分たちが日本の所属であることを血の叫びをもつて訴えていることは首相も十分御承知の通りであります。
 以上申し上げました地域以外なお歯舞、色丹が現に占領されておりますことも、私どもの容認しかねるところであります。しかし、国際情勢上どうしても国連信託統治とすることが必要である部分につきましては、それは認めなければならないでありましよう。但しこの場合、その信託統治地域に一定の期限を付し、期限到来とともに当然日本の手に返ることに確認されたいのであります。(拍手)かく申しますのは、今回の講和草案の前文に平等の主権が認められており、従つてこの主権という言葉の内容には領土の完全性が当然入るべきもので、固有の領土はそのまま認めらるべきはずであると考えることが通念であると信ずるからであります。
 吉田首は、領土問題に関しては、折衝にあたり、何でも唯々諾々であつたと伝えられておるのでありますが、私は、それはデマであると信じたい。ただ、民族の生存上の運命に関する重大な領土問題について、国民の悲痛な訴えがほとんど通じていないのではないか。これに対して、政府は一向に熱意を示していないのではないか。この国民の大きな疑問に対し、この際納得の行く説明を伺いたいのであります。(拍手)
 特に吉田首相は、昨日の演説中に、南方諸島については権利、権原、請求権の放棄をうたつていない、だから領土権確保に関し融通性のあるもののような口吻を漏らされていますが国連憲章第七十七條によれば、信託統治に付せられる地域は、本国より分離されたる地域云々と規定されております。分離とは領土権の喪失を意味すると解する向きもありますが、一体これらの地域の領土権の確保がいかなる根拠によつて可能であるのであるか、またこのことに関して何らかの了解が関係国との間にあるのであるか、これを明らかにされたいのであります。(拍手)
 第二は賠償問題についてであります。賠償の義務をどの程度に負うべきか、これは講和成立後の日本経済にとつて容易ならぬ重大問題であります。政府は、明確なる見通しのもとに、詳細にこれを国民に理解させる義務があると思うのであります。草案の第十四條による賠償、特に生産賠償、役務提供賠償のごときは、将来長く日本経済を貧血せしめ、経済自立を危殆に瀕せしむるものであり、かりにこれがある一国と約束された場合には、相次いで同様の要求が続出するおそれがあり、まさに堤防の決壞同様、日本経済は賠償の大出水におぼれざるを得なくなるでありましよう。(拍手)従つてこれは日本経済自立上の重大問題であるのみならず、わが民族生存上の問題で、国民の大きな不安がここに凝集されているのは当然であります。はたして、ある特定国または数箇国と特殊な約束をしようとしているのであるか。またこの問題から深く憂慮されますことは、独立後の国民負担の重加もしくは資本蓄積を著しく阻害するのではないかの点であります。これまた政府の明快な答弁を要求する次第であります。(拍手)
 質問の第三点は、在外資産に関する点であります。條約中に私有財産権の放棄が規定されておりますが、私有財産権不可侵の原理は、米英法を貫く法理念として嚴として存し、またへーグの陸戰法規にも、明瞭に私有財産権が保護されておのであります。従つて、私どもは、條約中、何ゆえこのような国際法上の例外を特に認めねばならぬのであるか、これが疑問であり、かりにこれは敗戰国だからやむを得ぬといたします場合、しからば国家はその個人に対して補償すべきであると思うのでありますが、政府は、この場合の補償について、一体どう考えておるのであるか。たとえば、事情が必ずしも同一では、ございませんけれども、イタリアの講和の場合には、財産権を放棄せしめられた個人に対し、国家補償が條約に明らかに規定されておるのであります。日本政府としてこの問題をいかに処理しようとしておるのであるか、懇切な説明を求める次第であります。(拍手)
 第四に、市場制限の問題について伺いたいと思います。講和草案中には、日本経済への抑制制限等は本文にはないようでありますが、造船活動の制限に関して、別にひそかに一札を入れる、との説も伝えられております。また日本の市場制限に関しては、條約案第八條に規定するサソジェルマン・アン・レーイの諸條約による権利利益の放棄は、コンゴ盆地におけるがごとく、日本の商業上の権益を事実上喪失せしめるものであり、国民のはなはだ不安とするところであります。その他、はたして別段の秘密了解事項等があつて日本経済の活動を抑制し、市場の制限が行われるのではないか、これまた国民の憂慮するところでございますから、これらの点を明確にお答えを願いたいと思うのであります。(拍手)
 なおこのことに関連いたしまして、さらにお尋ねしたいのは、日本経済自立のためのアジア地域との協力に関する問題及び東南アジア開発の諸問題であります。戰前八百万トンの商船隊を持つていた日本は、今やわずかにその一割にも満たない海運力しか有していないのであり、かかる立場からいたしましても、短距離貿易が戰前以上に重要であり、特に資源地帯を失つた日本の現状から、アジア地域の通商関係は、日本経済自立のために必須の要件であります。また日本がこれらの地域に対して相当貢献をもなし得ると信ずるのであります。しかるに、この地域の諸国家から、今回の講和に関して同調的態度がとられていないことは、まことに重大な問題であると思うのであります。
 さらにわが平和的生存権について、日本の人口問題、資源問題等は、国民がひとしく深く憂えておるところであります。以上の諸問題の解決なくして恒久平和の実現はおぼつかないのであると思うのでありますから、国連憲章の精神にのつとつて、本條約の前文に日本の平和生存権に関して何らかの挿入はできないものでありましようか。これも率直に思うところを述べて、政府の所見を伺いたいのであります。(拍手)
 最後に私は、日米安全保障條約の性格並びにその内容に関しまして、所見を述べつつ質疑を進めたいと思うのであります。伝えられますところによりますと、本年一月ダレス氏来朝に際し、わが外務当局は、米国と対等の形で締結する双務的な相互防衞協定を期待し、あらかじめその用意をしていたとのことであります。しかるに、第一次吉田ダレス会談において先方から切り出されたのは、慈惠的な、従つて片務的な駐兵協定であつたというのであります。それを首相は、単に国民の厭戰気分や財政負担の顧慮からこれを受諾して、国家の名誉と実質的な完全独立についてはその考慮を欠いたと伝えられているのであります。従つて、その内容については、第一に、駐兵に期限がない。第二に、費用負担が明確でない。第三に、大部分が合同委員会にまかされることになつておる。第四には、改訂、更新の手続が明確でない。すなわち要約いたしますると、この保障條約における日米の法律関係がきわめてあいまいであり、委員会にまかせられても、事実上日本独自の見解に基いて対等性が確保できるかどうかが問題であります。
 いうまでもなく、国と国との関係は公の関係であり、特に弱い方は必要な事項を証文に明記して子孫に引渡すべきであると思うのであります。伝えられる原案によりますと、米国の駐兵は恩惠的のものであり、日本の防衞は、米国にとつては事実上好意的行動であつて、法律的の義務ではない。日本の地位は、この條約の性格からいたしますると従属的であり、また不安定なのであります。かような地位を、独立後の日本が自由意思で決断し、自由意思で選択したとあつては、私は、過去の歴史に対しても、また私どもの子孫に対しても、顔向けができない思いがするのであります。(拍手)
 首相は、昨日の演説で、本年二月のダレス特使との会談で、双方の問にそ
 の構想に関して意見の合致ができた次第はしばしば説明したと言われたのでありますが、私どもは、いまだかつて首相から納得の行く説明は一度も開いたことがないのであります。同じく、昨日首相は、この構想は最近ようやく條約案としてまとまりましたと明言されたのであります。しからば、その條約案の内客はいかなるものであるか。さらに前来私が述べ来りました疑問点及び便宜供與と称するその具体的内容はいかなるものであるか、詳細首相の所見を伺いたいのであります。(拍手)
 また條約案の第六條には外国軍隊の駐屯を規定しているのでありますが、本條項は、わが国の主権に対する一種の制限ではないかが疑問であります。
 要するに、以上指摘の諸点は、おそらく国民の最も聞かんとするところであり、今次国会開会の主要な意義の一つはこの点の解明に存すると信じますので、首相の明快な答弁を期待する次第であります。(拍手)
 なお本問題とともに注目すべきは、條約前文の「いかなる場合にも国際油合憲章の原則を遵守すること」及び第五條の「国際連合にあらゆる援助を與え」の二つの字句であります。前文にいう「いかなる場合にも」とは国連参加の場合をも含むのかどうか。また「援助」とは、出兵、基地提供、軍隊の駐屯または通過の許諾までも含まれるのであるかどうか。これらの條項からすれば、日本の再軍備及び憲法改正は不可避であると思考されるのでありますが、この際、この重大問題について首相がその所信を明らかにせられんことを望むのであります。(拍手)
 なお再軍備問題に関しては、吉田首相は、今日までほとんど意思表示をされていません。むしろ意思表示をしたとすれば、それは単に否定的な立場を表明したにすぎないのであります。(拍手)もし防衞がやむべからざるものとするならば、われわれの妻子眷属をアメリカの兵隊さんに守つてもらい、これらのことを他国の好意にゆだねて、自分の方は手をこまねいて見ているというような独立国がどこにあるか。すなわち、今回の日米保障條約と日本再軍備問題との関係、これに伴う現在の実情、将来の見通し並びに従つて生ずべき憲法問題等についてこの際首相の明答を得たいのであります。(拍手)
 次に私はわが党が昨年春以来熱心に提唱し、また努力を傾けて参りま、た超党派外交について、一言いたしたいのであります。われわれは、講和に先だち、わが国内の挙国的受入れ態勢を早く整備することが急務であると痛惑いたしましたればこそ、ときには忍びがたいほどのことも忍び、事講和に関する限り党派を越えてひたすら日本民族独立への一致の努力を盡したいとの念願をもつて、吉田首相にもしばしばこれを申し入れ、また数回にわたり、この国会の議場からもその必要性を力説したのでありますが、政府はこれに耳を傾けず、特に吉田首相は、木で鼻をくくつたような態度を改めない。むしろ超党派外交の主張を潮笑する態度さえあつたのであります。しかして、現内閣の今日までの行き方は、表には民主主義の看板を掲げつつ、うちには国会を軽視し、(拍手)その行動は著しく独善的、独裁的でありましたが、(拍手)いよいよ調印式となつて俄然態度が一変して、調印式にぜひ参和してくれとのことであります。
 申すまでもなく、超党派外交の必至は今日にあるのではありません。今日に至るまでの過程において重大な意味があるのであります。(拍手)しかも、この大切な今日までのプロセスにおいて遂に一言の相談もなく、事がきまつて、いよいよ調印式とい段階に入つてから、これに連判をせよというのであります。戰勝国側の顔ぶれを見て、にわかに心境に変化を来したのかと思いますが、戰勝国が與党、野党そろつて来るのは当然で、それは先方には栄光の日であるからであります。また戰勝国が戰敗国に與野党顔をそろえて来てほしいと望むのは、これも当然で、後日の虫封じとして、(拍手)また栄光をいや増す上からも必要でありましよう。(拍手)しかし、われわれに理解のできないのは、首相の態度のこの急変ぶりであります。
 ダレス氏は、数次の来朝において、虚心坦懷にわれわれの要望を聞くの雅量を示されました。従つて、この草案作定に先だち、つとに私どもが唱道した通りに、もし早く、各政党はもとより、朝野結束して国民の合理的要望を十分に説明することができたとするならば、必ずや了解せられる点がさらに多大であつたと信ずるのであります。(拍手)特に領土、安全保障、賠償、経済條項についてこの感を深くするのであります。しかるに内閣は、われわれの熱心な呼びかけに応ぜず、独善独断をもつて、全国民の真実な声が、かえつて中間においてはばまれたうらみさえあるのであります。(拍手)
 ダレス氏は、本條約は関係国において一〇〇%の満足はないとしても、九五%の満足は得られるであろうと説明されましたが日本国民の真情を率直に表明いたしますならば、六五%もしくは七〇%の達成度と考えざるを得ないのであります。(拍手)この差の二、三十パーセントこそは、超党派外交、挙国講和受入れ態勢の必要を提唱したわが党の熱意をしりぞけた吉田内閣の独善と秘密と怠慢に基くと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)わが管は、この一事を、今にして国家のために一大痛恨事とするものであります。しかるに、今に至つて、すでに取返しのつかぬ、手遅れになつてから急に連判を求められることは、まつたく解しがたいところであり、われわれの超党派外交とは、調印式で連判するだけのこととは思つていないのであります。(拍手)
 最後に、平和條約締結に関するわが党の基本的精神を一言いたしたいのであります。本平和條約締結の趣旨は、自由と人格の理念及びその生活の具現であります。日本の完全独立を前提とした、日本及び世界の平和と繁栄が目的であると信ずるのであります。私どもは、この意味において、講和締結方式よりも、講和の内容を重視するものであります。日本民族の独立は世界の平和の一要件として実現されなければなりません。それはもとより日本民族の民族的利己主義の具現であつては断じてならないのであります。われわれの自由と独立は、おごそかに神に発するものであつて、それは単にアメリカとかソ連とかからの贈りものであろべきではないのであります。(拍手)
 今回の講和において、ややもすれば甘い宣伝が行われ、また党派的の見地から、この條約の寛大にして、政府に宣伝価値ある部分を特に強調して自画自讃したきらいがあるのでありますが、現実はまことにきびしく、ここに反動的事態をさえ惹起するのおそれなしとしないのであります。イタリアは講和條約に際して、国民は国旗に喪章をつけ、教会は弔いの鐘を打鳴らし、粛然として調印の日を迎えたと伝えられています。もちろんイタリアと日本とは違いますが、日本国民は、嚴正な反省と、静かにして力強い決意をもつていよいよ国民的希望に描く新しい国への前進の足並を、今こそそろえねばならないと思うのでございます。(拍手)また同時に、われわれの独立の日は、日本民族が自己の全存在をかけて世界史の中に新たに登場する日であり、終戰以来の外側から與えられた民主主義を、自己自身の尊嚴において内から生れしめ、これを開花せしむる民族スタートの日としなければならないと信ずるのであります。今私は、この壇上から全国民にこのことを訴え、かつこの機会に、日本との早期講和に多大の盡力をされました連合国当局者各位に敬意を表するとともに重ねてわが吉田首相の健闘を祈つて、私の質問を終ることにいたします。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#5
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 全権としてサンフランシスコの講和会議に臨席いたす心構えについての御忠告は、つつしんで承ります。御希望になるべく沿うようにいたしたいと考えます。
 領土問題に関して御質問でありまするが、この領土放棄については、すでに降伏條約において明記せられておるところであります。すなわち、日本の領土なるものは、四つの大きな島と、これに付属する小さい島とに限られておるのであります。すなわち、その以外の領土については放棄いたしたのであります。これは嚴として存する事実であります。ゆえに、琉球等の西南諸島及び小笠原等についての信託統治の問題は、これはすでに日本の領土権を離れておる。その離れた領土に対して、米国として将来国際連合に提出さるべき信託統治の約束についてはいかなる措置をとるかということは、これは米国政府が国際連合に提出いたす措置がどうであるかということによつて決定せられるのであります。すなわち、すでに一応領土権は離れたのでありますが、それをどの程度まで、米国政府が、将来米国の好意によつて日本にもどすかという問題がここにあるのであります。ゆえに領土問題について、あまり多くをこの際述べるということはよろしくないことである。あまり突き進んで議論をするというのは好ましくないことで米国の好意連合国の好意を日本としては信頼して受けるのが、これがこの際処する外交と私は考うるのであります。
 また信託統治なるものは、御承知の通り、これはその土地の住民の利益を考え、その土地の国民、その土地の住民の安全なり幸福なりを考えて講和條約を締結するということで、信託統治の性質がそうなつておるのであります。いわんや、米国がこれを統治する場合においては、信託統治をなす場合においては、住民の幸福は十分に考慮することと私は考えるのであります。これはしかし将来に属することでありますから、なおしばらく時の経過をごらん願いたいと思います。
 安全保障條約については、これは私が従来しばしば国会においても述べたことであつて、何らの秘密はないのであります。すなわちダレス氏と私との間においては、いわば互いに日本の安全を危險現して将来日本の安全が――日本の近辺において一種の真空状態が生じた場合にどうするかという懸念をお互いに持つた結果、駐兵をしよう、駐兵をしてもらいたい。共産主義のごとき脅威があるものでありますから、日本といたしましては、この危險状態を守るにはどうしたらいいか。ここにおいてか、ダレス氏においても、私においても、暗々裡に希望が一致して、この安全保障條約になつたのであります。今日いずれの国といえども、共産党のごとき脅威が存する以上は、すなわち集団的攻撃の危險がある以上は、集団的に防禦することを考えるのが、これが普通であります。(拍手)ゆえに、安全保障條約を、平和を懸念する日米の間において結ぶということに何のふしぎがあるか、当然のことであると私は考えるのであります。(拍手)
 再軍備については、ダレス氏との間においても、また日米両国の間にも何らの秘密協定はないのであります。日本が再軍備するかしないかということは、一に日本国民のみずから決定すべきところであつて、何らの義務も負つておらないのであります。何らの秘密協定もないのであります。(拍手)従つて、将来日本が再軍備をし得る力を持てばとにかく、再軍備をするだけの力がない、またするべきすべての手段が盡されないという今日においては、安全保障條約等によつて日本の独立を守る、これは当然の話であります。これがおかしいとか、これを不都合であるとか考えるのは共産党くらいなものであると思うのであります。(拍手)
 超党派外交については、私はかつてこれがいけないと申したことはないのであります。超党派外交は、あたかも全面講和と同じように、できればけつこうであるが、しかしながら、これにぜひとも加われと言つて他党を誘い入れるということはできないから、できればけつこうであるということを絶えず申しておるのであります。超党派外交がこの際といえどもできれば、はなはだけつこうであると思うのであります。ゆえに、全権を送る場合においても、超党派外交、超党派的全権団を送ると申しても、私の従来の言論とは何ら矛盾するところはないのであります。その他民族の生存権とか、あるいは日本の民主政治の徹底等についての御意見は、ごもつともであり、私において同感であります。但し、今日まで政府といたしまして、この條約のためにことさら宣伝をいたしたことはないのであります。條約の性質、真実を――條約のいかなるものであるか、その性質を国民に明らかにすることは、政府として当然努むべきことであると考えましたから、條約の性質、経過等については、なるべく多くの機会において、外務省としても、また政府としても、国民にでき得るだけの説明をするということはいたしましたが、特にこの條約の非をおおうて、そしてことさらにこれがいいということを申して国民に誤り伝え、誤解せしめたことは断じてないことを、ここに申し述べておきます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#6
○国務大臣(池田勇人君) 総理に対しまする御質問のうち、草案の五章に規定いたしまする請求権並びに財産権につきましての御質問にお答えいたしたいと思います。
 まず第一、賠償の範囲でございます。お話のように、第十四條におきましては日本国が戰争中生ぜしめたる損害及び苦痛に対する賠償の責任を規定しておりまするが、後段におきまして、日本国の存立可能な経済を維持すべきものとすれば、現在においては賠償能力に欠けていると規定しております。しかして第一項におきまして、もし賠償するとすれば、連合国との間におきまして金銭賠償でなしに役務賠償と相なつておるのであります。しかして、この問題は、批准後において関係国と相談することに相なつておるのであります。私は、前文に規定しておりまするように、現在におきましては、日本の経済を存立可能ならしむるためには賠償すべき資源はないと考えておるのであります。ただお話の通りに、民族的利己主義によらず、共存共栄の趣旨から、役務賠償につきましては、ある程度の負担をしなければならぬと覚悟いたしておる次第でございます。
 次に在外財産の補償について、イタリアとの比較を申し述べられましたが、お話の通りに、イタリアの講和條約と今回の草案は違つております。イタリアは金銭賠償の責めを負つておるのでありまするが、わが国は、今回は金銭賠償の責めを負つておりません。従いまして、私有財産の制限につきましてもおのずから異なるのであります。講和條約後におきまして、在外財産の補償を政府がするかしないかは、他の戰争被害者との権衡並びにわが国の財政状況を見きわめまして愼重に研究しなければならない重大問題と考えております。今これをどうするかという結論に達しておらないことを遺憾といたします。
 次に、市場の制限について秘密協約があるかという話でございます。新聞には、船舶の建造その他についていろいろな問題が出ておりまするが市場の制限、いわゆる経済制限につきましては、草案以外に全然秘密協約はございません。(拍手)
    〔北村徳太郎君登壇〕
#7
○北村徳太郎君 ただいまの私の五箇條にわたる質疑に対して、十分に明快な答えがなかつたことを遺憾に思うのであります。この国会を通じて、国民が重大なる日本の歴史的なこの事態に臨んで、知らんとするところを議会において明らかにすることは、当然私どもの責任であり、同時に政府の責任でなければなりません。(拍手)これに対する答弁はきわめて不親切であり、少しも内容に触れていない。ことに具体的に私が質問いたしました安全保障條約については、ほとんど触れていない。(拍手)はたして期限がついておるのかどうか、あるいは委員会にまかせられる範囲はどうであるか、更改その他解約の條件はどうであるか、費用の分担はどうであるか、具体的な質問をしておるにかかわらず、首相はこれに何も答えていない。(拍手)これでは国民の疑問をますます深まるばかりであります。領土問題についても、平和條約においてのみ領土権は変更せられる。その他のことで云為せられるべきではない。従つて、私どもは、民族の一つの大きな主張としてこれを主張することに何らさしつかえはないのみならず、この際これをなすのが当然であると思うのであります。その他、ただいまの首相の答弁、超党派外交につきましても、私が申しましたように、超党派外交とは、調印式に万年ペンを持つてついて行くことではない。(拍手)今日までの重大なる講和條件の内容に協力することが超党派外交でなければならぬ。かような意味において、首相の御答弁はきわめて不満足であります。重ねて私は、具体的にお尋ねした安全保障條約に関する内容に触れて御答弁を求めます。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#8
○国務大臣(吉田茂君) お答え申します。
 安全保障條約は昨日私が演説においてはつきり申した通り、構想がダレス特使との間において話されただけであつて、いまなおできておらないのであります。完成いたしておらないのであります。協議中であります。ゆえに構想だけ申し述べたのであつて、従つて御質問に答えるだけの、ただいま段階になつておりません。
 また、ただいま超党派外交についての御質問がありましたが、これはただいま申した通り、私はかつてこの超党派外交なるものがいけないと申したことはないのであります。いずれのときといえども、これが実行、実現ができる機会があるならばいたしたいと考えるのであります。ゆえに、この際講和全権の選出についても民主党の協力を求めているわけであります。(拍手)
    〔北村徳太郎君登壇〕
#9
○北村徳太郎君 ただいま首相は、安全保障條約については今何にもわかつていないというような御答弁でありましたが、ダレス氏が今年ロスアンゼルスで演説いたしました演説の内容によると、自分の提示した條件全部に対して吉田氏は快く承諾を與えたと演説いたしておるのであります。従つて、かようなわれわれ国民にとつてきわめて重大なる案件について、何にもできていない――これはむしろ日本が希望するならばという條件がついておつたようであります。従つて、向うから押しつけたものではない。日本から希望したものである。そうして、そのことが具体的に話が済んだという段階において、まだ何にもできていないというならば、ただわけもなく白紙委任状を渡したのであるかどうか。(拍手)それでなければ国会を欺瞞するものといわなければなりません。私は明確な答弁をもう一度求めます。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#10
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。私は白紙委任状を渡したことはかつてないのであります。互いに構想を話合つて、その構想に従つて、これから條約の成文を案出するのであります。
#11
○議長(林讓治君) 淺沼稻次郎君。
    〔淺沼稻次郎君登壇〕
#12
○淺沼稻次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日本会議場においてなされた、講和條約草案作成に至るまでの経過報告に関する総理大臣の外交演説に関し、次の数点について質疑を試みんとするものであります。
 われら日本国民が待望しておりました対日講和会議は、いよいよ九月上旬、米国サンフランシスコにおいて開催されることになりました。講和会議は、言うまでもなく戰争に対する終止符を打つことであります。民族独立の機会であります。戰争によつて失われたる国家の自主性を回復することであります。われらは、この講和会議を前にいたしまして、過去六箇年間に日本はいかようにかわつたかということをはつきりつかみ、反省をいたしまして、将来に対処する必要があろうと存ずるのであります。
 すなわち、わが国は、終戰と同時にポツダム宣言受諾という客観的な事実と、国民の戰争に対する鋭い批判の上に、平和と無血の間に偉大なる変革を遂げて今日に至つたのであります。最近になりましてから、反動的な空気が濃厚にはなつておりますけれども、政治的には、天皇の持つておりました統治権の大部分を国民が掌握いたしまして、主権在民の大原則を打立てたのであります。経済的には、旧財閥の解体が行われ、事業者団体法、独占禁止法、集中排除法の制定によりて、資本家の活動にある程度の制限を加え、労働者の団結権、団体交渉権、罷業権が憲法で保障されるに至つたのであります。農村においては、封建制度打倒のための農地の改革が行われました。また憲法の大改正を行いまして、平和憲法を制定して、その前文において「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しましようと決意」をし、憲法九條においては、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。国の交戰権は、これを認めない。」という戰争放棄の規定をいたしまして今、日本には一人の兵隊もございません、一つの武器も持つておらぬのであります。身に寸鉄もまとつておらないのであります。
 ただ、この六箇年の間にかわらざるものがあるのであります。それは無條件降伏條件に調印をいたしました日本の国でありまするから、やむを得ないとは存ずるのでありますが、まだ日本は連合国の管理の中に、あるのであります。占領が継続されておるのであります。しかしながら、われらは、同じ民族として北海道、本州、四国、九州並びに周辺の小島の上に日本国家として地域血縁社会を形成し、二千数百年にわたつて運命を共同にして生活して参つたのであります。戰争には敗れたのでありますけれども、一日も早く日本の自主性を回復し、日本のことは日本人同士できめて行きたいという自主独立の精神は、われら同胞の心かちの念願であつたと思うのであります。
 講和会議は、日本が連合国の管理下から離脱し、解放せられ、占領を離れ、自主独立の国家として国際場裡に再出発する機会でありまするから、われわれは一つの感激を覚えるのであります。しかしながら、一方世界には、国際連合必死の努力にもかかわらず、戰争の姿を見るのであります。平和か戰争かということが全人類の大きな課題になつております。われわれは、この戰争か平和かという課題の中に独立と平和を求めて進んで行かなければなちぬのであります。わが日本国の外交の基調は、わが講和会議に対する態度は、国家の独立と、世界平和と、さらに国民生活安定を基準にして、これに対処して行かなければならぬと思うのであります。(拍手)私は、かかる基本的態度をもちまして、講和会議の内容について二、三の点を質問して参りたいと思うのであります。
 まず講和会議の見通しに関する問題であります。講和会議は、昨日も報告がありました通り、米英を中心にして進められて参つておるのでありますが、最近ソ連が参加することを明確にいたしました。われらは、日本の安全保障の上にも、経済自立の上にも、日本と戰争した相手国全部との間に、いわゆる全面的な講和が結ばれることが望ましいと主張して参つたのでありますから、ゾ連の参加は一つの明るさを加えたと思うのであります。しかし、一面会議の複雑性を増したことも注目しなければならぬと思うのであります。ソ連の参加はアメリカの招聘に応じた結果でありますが、ソ連が、いわゆる四箇国方式をやめてアメリカの方式に賛成を表したとも見えるのであります。米ソの講和條件の内容には非常なる差異がございます。これがいかように調整されるか、あるいはソ連がいかような出方をするか、またインド、インドネシア、ビルマ、フィリピン等アジア諸国がいかようなる態度をとるか、大きな課題でなければならぬと思うのであります。これに対して政府はいかなる見通しを持つておりますか、この際お伺いしたいと存ずるのであります。
 また米英両国は、中国の講和会議参加に関しては、国民政府を選ぶか、あるいは中共政権を選ぶかということは、日本に選ばしめるといもことになつておるのでありますが、これは中共政府を承認しておる英国と、中共を侵略者と規定しておる米国との不一致なるところを、日本に決定を求めておるのであります。従いまして、この決定には無理があると思うのであります。これに対して、吉田総理は、その当事者としていずれを選ばんとするか、この際私は承つておきたいと思うのであります。
 さらに、日本をめぐる国際情勢は、日本の平和と独立のために検討しなければならない大きな課題であろうと思うのであります。ソ連が講和会議に出席することになつたが、米ソ二大陣営の対立というものは深刻なものがございます。朝鮮の動乱は未解決であります。戰争が完全に終結をしない間に新たなる戰争の芽ばえを見るのであります。冷たい戰争の中から熱い戰争の姿を見るのであります。この国際情勢の認識をはつきりつかまずしては講和会議に対処できないと思うのでありますが、この国際情勢に対する総理大臣の見識を私は伺つておきたいと思うのであります。(拍手)
 昨日、吉田総理は、講和條約の最終案には和解と信頼の精神が貫かれていることを高調されました。また和解と信頼が根本方針とはいえ、日本が敗戰国であるということもこれを考えなければならぬ、こう言われたのでありまするが、まさに私はその通りであろうと思うのであります。しかしながら、この原則を私どもは認めつつ、今われわれ国民の聞かんとするところは、ただいま北村徳太郎君によつていちいち聞かれたのでありまするが、まだ十分なる答弁を承るわけには参りません。
 第一には領土に関する事項でありまするが、領土については、わが党は、昨年の九月、講和條約の内客に対する要望書を決定、領土に関しては、連合国の共同宣言が指示したように、連合国が領土の拡張を求めない原則と、住民の意思に基かない領土の変更はこれを行わない原則を尊重の上に、南樺太、千島列島、歯舞諸島、色丹諸島、沖縄島を含む南西諸島、小笠原島諸島、硫黄島、大東島、鳥島諸島などの帰属が最終的に決定することを要望し、これらの島々が日本に所属することは、日本民族の平穏なる生活を保つ上に欠くことのできない基礎的條件たるとなして、これらの諸島と日本本土との歴史的関連、経済的緊密性から日本の領土権を主張して参りました。
 しかし七月十三日に発表されました草案には、見るべき改革が行われておらないのであります。そこで、われわれは、さらに要望書を作成いたしまして、政府並びに関係諸国に要請をして参つたのであります。すなわち、われわれはヤルタ綱領の責任を負うべき根拠を発見することができない。従つて歴史的、地理的かつ民族的に根拠ある南樺太及び千島諸島の領土権が日本に確認されることを希望する。なお歯舞諸島並びに色丹島は北海道の一部であることをわれわれは確認するものであります。(拍手)北緯二十九度以南の琉球諸島と、孀婦岩以南の南方諸島、小笠原島、西ノ島、火山列島、それらに沖ノ鳥島、南鳥島の諸島は歴史的にわが国土であつて、これらの地域の住民は純粋に日本民族であつて、その住民は住民投票によつてその所属を決すべきことを決議しておるのであります。同胞の熱望にかんがみて日本の領土権が確認されることを要望する、こういうような要望書をつくりまして、政府にも提出し、関係諸国にもこれを提出して参つたのであります。
 しかるに、領土問題に関して、吉田総理大臣は、第二條の規定と第三條の規定を対比いたしまして、第二條の規定に、千島、台湾等の領域に対してはすべての権利、権原を放棄することになつているにもかかわらず、南面諸島その他南方諸島の処理を規定する第三條には特にこのような規定がない、こう言いまして、米国が行う戰略的管理を條件として、これら諸島と本土との交通、住民の国籍上の地位その他について住民の実際的措置が希望される余地あること、こう解されまして、あたかもこれらの領土に対しまして日本の主権がまだ残つているかのごとき印象をわれわれに與えたのであります。ところが、本日北村君の質問に対しましては、すでに領土権はなくなつているのだ。それで、昨日われわれに與えた暗示というものは、今この席上においてそれが否定されている結果になつていると思うのでありまして、私は非常に遺憾と考えるのであります。そこで、政府が将来に一つの光明があると確信をいたしますならば、政府独自の考え方か、関係方面と話合いの上の解釈であるか、この際承つておきたいと思うのであります。(拍手)
 領土に関する国民の感情は、特別深刻なるものがございます。今週の処置によつて日本から離れまする人口は、約百十万を数えておるのであります。この百十万の同胞が、かりに一時的にしろ、日本の行政と日本の国籍から離れて参るのであります。現に現地にある者、またこれら諸島の出身者にとつては、まさに深刻な大問題になつておるのであります。奄美大島は、十四歳以上の者が住民投票を行いまして、九九・八%が日本に帰属を念願しておるのであります。私は先日奄美大島の老政治家にお目にかかりましたが、その政治家は、自分の代において、あらゆる努力を拂つて日本帰属のために努力をする、さらに自分ができなければ息子に、息子ができなければ子孫に、そうやつて、あくまでも日本とともにやつて参りたいと言つておりましたが、まさに深刻なものがあろうと思うのであります。小笠原、硫黄島の諸君は、いまだに島に帰つておらないのであります。領土権の問題は、その取扱いいかんによりますならば、講和をいたしました国と国との間に大きなくさびを入れることになるのでありまして、愼重なる態度をもつて扱わなければむらぬと思うのであります。その関連について、吉田さんのお考えを承つておきたいと存ずる次第であります。
 第二には安全保障に関する点でありまするが、われらは独立後、日本の安全保証については、第一には、国連の強化により、世界平和と各個の安全が保障されることを望んでおるのであります。第二には、日本の国連加入が関係諸国の努力によつて急速に実現を期せられ、日本の安全保障は、国連の平和的規模による集団的保障を要望しておるものであります。第三には、当面の安全保障は、国際連合総会の決議による具体的処置を要望して参つておるのでありまするが、政府は、日本独立後、占領軍撤退に伴う日本防衛、治安維持のために、アメリカとの間に日米安全保障條約を結び、それにゆだねるよう昨日報告されたのであります。総理は、平和條約調印直後日米間に締結する安全保障條約については、本年二月のダレス特使との会談で、双方との間にその構想に関して意見の一致を見出すことができた次第はしばしば説明した通りである、こう言つて、さらに繰返して、日本は軍備がないから、自衛権はあつても、自衛権を行使する有効な手段がない。世界には今日なお無責任な軍国主義の跡を絶えない。こういうような情勢の中で、平和條約が成立しても占領軍が撤退した後、日本に真空状態ができると危險である。かかる危險に備えるため、日本は外部からの攻撃に対する防衛手段として、日本に合衆国軍隊の駐屯することを希望する。この日本の希望にこたえて、合衆国は平和と安全のために、日本と日本の近辺に軍隊を置こう、という構想であります、こういうぐあいに報告されて、しかも先ほど北村さんからも言われたのでありまするが、しばしば報告されたといつておるのであります。寡聞にして、われらは聞いておらないのであります。
 また安全保障條約は、日本からの希望でアメリカ軍隊が駐屯することになるようでありますが、今日に至るまで吉田総理はこれを希望し来つたと報告しております。吉田個人が希望することは別でありまするけれども、一体日本国民及び日本国家が、いかなる機関において希望したかということを、私は伺いたいと思うのであります。(拍手)われわれは、これがために国民投票を行つたということを聞きません。また国会の審議に付せられまして、そうして国会において審議されたということを聞かないのであります。まさに独善、独断外交といわざるを得ません。昨日の演説で批准條項がついておるということはわかりましたが、その駐屯の期限、費用、駐屯の場所等について伺つておらないのであります。駐屯は期限がないと言われております。もし、かかることになり、日本の防衛がある特定国によつてなされるようになりますならば、国家の性格を変更する結果になつて、重大なる問題であろうと思うのであります。(拍手)私は詳細なる説明を求あなければなりません。
 さらに、日本の再軍備を伝え、憲法改正を伝えておるのであります。国民は、吉田さんの発言のその衣の下には、何らか憲法改正、再軍備の、いわばよろいがあるのではなかろうかという心配をしておるのであります。この点を明確に願いたいと存ずる次第であります。日本の個別的、集団的自衛権に制限が設けちれなかつたことは幸いであると私は思うのでありますが、自衛の方法や手段は、日本が完全なる独立後において、日本人の自由意思によつて決定さるべきものであろうと思うのであります。
 さらに第三は賠償の点でありますが、賠償には具体的な限度や分量が規定されておりません。従いまして、條約締結後、日本みずから当該国との間に交渉をして規定いたすということになつておるのであります。七月十三日発表の草案よりも、昨日発表されました草案の方が強化されておるのであります。この強化されておりまする案をわれられが写本の国民生活、日本の産業について考えてみまするならば、実に重大なる結果を招来すると思うのでありまして、これには日本国民としては愼重なる態度をもつて対処して行かなければならぬと思うのであります。戰争中に日本が近隣諸国に加えた損害、苦痛に対する責任は重大であります。この責任が追究されることはやむを得ないと私は信ずるのであります。しかし、講和條約成立後は一体どうなるかと考えてみまするならば、幕末よりも狭い領土になるのであります。しかも三倍、八千四百万の人口をかかえてわれわれは生活をして行かなければならぬのであります。またわれわれは、資源が欠乏しておる。またわれわれの生産能力も、そう十分とは言えないのであります。かような点を体してこの賠償問題に対処しなければならぬと思うのでありますが、これに対する政府の態度をお聞きしたいと思うのであります。
 第四点は捕虜問題に関する事項でありますが、これはわれわれの要求並びに留守家族の方々の要求がいれられまして、そうして講和條約條項の中に入るようになつたのであります。まことに喜びにたえません。しかし、先ほど北村さんからも質問がありました通りに、在外資産の問題が残つておるのでありますから、この点について政府は最大なる考慮を拂つていただきたいと思うのであります。
 第五は経済自立に関する問題でありますが、草案第十二條には、相互主義の原則が確立されておるのであります。しかしながら、今日の日本の政治的経済的実力からいえば、相互主義の原則が、ともすればゆがめられる結果となるのであります。現に英国は、日本の海外市場進出について微妙な利害関係を持つて、日本に最悪国待遇を與えることを留保しておるようであります。またわが国の戰後疲弊した資本力及び生産施設を考慮すれば、巨大な資本力と優秀なる技術を有する諸外国との平等なる立場における競争はきわめて困難であります。万一、他国がわが国に対して関税上の差別待遇をとつた場合には、わが国の民族資本は非常な苦しい立場に立つのでありまして、われわれは民族資本擁護の立場から、これらに対する一つの手段を考えておかなければならぬと思うのであります。こういう希望をわれわれは持つております。従つてわれわれは、講和條約締結に際しては、この貧弱なる民族資本の擁護と、日本の経済の自立ということについて具体的な考慮が必要であつてこれなくしては国民生活の安定はないと思うのであります。これらの点について総理大臣の考えを伺つておきたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、現在わが国と中国との貿易は杜絶状態にあるのであります。わが国と中国とは、文化を交流し、経済的にも有無相通じて来たのであります。わが国は中国から製鉄用の石炭、鉄鉱石、油肥原料、塩等の輸入をはかり、日本からは綿製品、機械器具、化学製品あるいは雑貨等を輸出いたしまして、日本の経済発展に資するところ大なるものがありました。この中国との通商杜絶によつて、一部の原料及び製品をアメリカ及び東南アジアから仰いでおるのであります。これは私はやむを得ないとは存ずるのでありまするが、経済の原則に反するものであるといわなければならぬと思うのであります。たとえば、以前はトン当り十一ドル三十セントでありました開らん炭を輸入して参つたのでありますが、これを米炭に切りかえるとすればトン当り二十九ドルでありまして、しかもそのうち十八ドルを船賃に支拂わなければならぬ。さらに船賃は、朝鮮動乱以来三、四倍はね上つておるのであります。昭和九ー十一年における輸出金額の百分率をとらえてみると、わが国のアジア近隣諸国に対するそれは四四でありましたのが、昭和二十五年においては一六、昭和二十六年においては一四となつておるのであり幸して、急落しておるのであります。こういう見地よりいたしまして、私は中国との貿易を考慮しなければならぬと思うのでありますが、これに対して政府はいかなる態度をとるのか、この点をお聞きしておきたいと思うのであります。(拍手)
 さらに第六点は、講和全権選任にあたつて政府のとりました態度であります。従来吉田内閣は、講和会議はわが自由党内閣の手で、ということをスローガンとして対処して参つたのであります。それは昨年、参議院議員の選挙当時、苫米地民主党最高委員長が東北地方遊説中、超党派外交を提唱したところが、吉田総理は、苫米地氏に何がわかるか、勉強して来いと放言をされたのであります。また幣原衆議院議長が超党派外交を提唱されたときも、自由党は至つて冷淡であつたのであります。吉田総理も非常に消極的であつたのであります。ところが、今回講和條約草案が発表されるや、突如としてわが党並びに民主党に働きかけ、全権委員の選出まで依頼して参つたのであります。わが党は、内閣の態度の急変を納得しかね、かつ調印は行政府たる政府の責任において行うことが当然なりと信じて、お断りをしたのでありますが、民主党との間には、まだ交渉が続けられておるようであります。アメリカの超党派外交の提唱者であるダレス氏は、その著「戰争と平和」の中において、超党派外交を唱えるならば、飛行機が陸を離れるときに乗らないで、おりるときに一緒というのは無理であると言つておるのでありますが、政府の超党派外交に対する態度はまさにこの通りであると私は言わざるを得ないと思うのであります。従いまして、いかなる環境よりかような変化になつたか、お伺いをしたいと思うのであります。
 第七点は、臨時国会の召集の時期と、国会解散についてであります。私どもは、去る七月の中旬、共産党を除く野党連合の名において、第一には講和会議を前にして外交折衝について報告を求めること、第二には内外の諸情勢に対応する補正予算の提出と、二つの目的をもつて、八月十日までに臨時国会を開いてもらいたいと、憲法の規定に基きまして衆参両院とも定員の四分の一の署名を得て、臨時国会の要求をなしておるのであります。政府はこの要求に答えず、国会議員中より選ぶ全権委員の承認を求めるために便宜的国会を開いたのであります。内外の経済情勢に対応するため、米の消費価格引上げに伴う給與ベースの引上げ、地域給の改正等々を含む補正予算提出のためには、いつ臨時国会を開くか、お伺いをしたいと思うのであります。特に補正予算編成の中心にある大蔵大臣が全権の一員として渡米せらるるようでありますが、これがために補正予算編成にさしつかえないか、また政務の参上にさしつかえはないか、私はこの点を伺つておきたいと思うのであります。
 またわが党は、さきに、講和会議は民族百年の大計を決する重大なる会議であるから、講和会議前に国会を解散して国民の輿論に問い、総選挙の結果新たに成立せる内閣がこれを担当すべきであるといつて主張して参つたのであります。しかしながら、これは政府のいれるところとならず、不自然にも二年七箇月も前に成立せる吉田内閣が担当することになつたのであります。これはやむを得ないと存ずるのであります。調印は政府の責任において行うのであるが、批准前に国会を解散して国民の輿論に問うことが当然だと思うのであります。政府に、はたして批准前に国会解散の意思があるか、この際問うておきたいと存ずるのであります。
 最後に、講和会議に首席全権として出席せらるる吉田総理に、私は一言申し上げたいと存ずるのであります。わが日本は、軍国的指導者のために誤れる戰争をしてこれに敗れ、無條件降伏をいたして今日に参りました。これは、だれか立つて、やはり戰争の跡始末をしなければならないのであります。今は、吉田総理が総理大臣の地位にある関係よりいたしまして首席全権としてアメリカに参るということは当然であると思うのであります。従つて、私ども心から御苦労様と申し上げたいのであります。しかし、総理大臣を筆頭とする全権団は、何も調印のためにのみ私は行くのではなかろうと思うのであります。聞くところによりまするならば、講和会議の席上において、吉田総理は三十分間の発言の機会が與えられておるということを承つております。このときは、外交的儀礼にとどまらず、日本国民の要望を率直に披瀝をいたしまして世界平和を祈念する公平なる世界の判断に訴うべきであると存ずるのであります。発言を通じて、日本の立場を世界に訴うべきであると思うのであります。
 以上申し上げまして私の質問を終わたいと思うのでありまするが、答弁によりましては再質問の権利を留保しておくものであります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#13
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 サンフランシスコ会議の見通しいかん、ソビエト政府が参加したが、そのために会議の見通しいかんというお尋ねのようでありますが、ソビエト政府の参加について、またいかなる事情で参加をし、今後いかなる行動をとるかということは、日本政府としては存じておりませんが、しかしながら、従来の経過から考えてみて、英米を主体とするこのサンフランシスコ会議の経過は必ず順調に参ると私は信じて疑わないのであります。
 中共政府及び国民政府については、日本政府に選択権があるようなお話でありましたように伺いましたが、御承知の、ごとく、中共は英国政府の承認するところであり、国府は米国政府の承認するところであつて、互いに従来の行きがかりがあるために、いずれの国を参加国にするかということについては、自然両国政府の間にいろいろないきさつがあつたことと考えます。このいきさつを解消するために時間を費すよりも、効日講和会議をなるべく早くこしらえ上げたい、実行したい、実現したいという希望から両国政府の意向が一致して、中共と国府といずれを参加国にするかということの問題はしばらく後日に延ばすというがために、條約にあの、ごとき規定ができたものと私は了解いたしております。
 また領土権についてお話がありました。これは私がここでもつてしばしば申しておる通りに、領土権としては、ポツダム声明にある通り、日本は四つの島と、これに属する小さな島とをもつて領域とするということを規定し、これを無條件に了承いたしたのであります。この日本国としての義務は、講和條約によつて変更せられないのであります。ただ西南諸島、すなわち琉球その他の島の領属については、米国政府の申出としては信託統治にする、信託統治にするがために国際連合に対してする提案については、日本政府においてこれを了承する、これに承諾を與えるというこの了解が入つておるのでありまして将来領土権をどうするかということは規定してないのであります。すなわち、樺太等の領土権に関する規定の仕方と違つておる。ここにアメリカ政府の日本に対する考えがある、こう私は考えるのであります。すなわち、国民の熱誠なる要請にこたえて米国政府としては、この領土権の将来については、とくと熟考するという用意のあることと私は了解いたしますから、昨日の演説において、報告において申した通りの言い表わし方を用いたのであります。
 再軍備について、また再び御質問でありますが、再軍備については、私はいまなおその時期にあらずと考えておるのであります。日本の経済力その他が整わない間に再軍備をいたすということは、かえつて日本国民の希望に反することと考えるのであります。しかしながら、長く外国の力によつて日本の独立を保つということは、これは国民の感情が許さないことも御同感であります。しかしながら、今現在において再軍備ということは、いかにしても実行できがたいことと考えますから、私は再軍備については考えておりません。従つてそのような議論にお答えする必要はないと思います。
 次に、この国会の開会の時期について、はなはだ遅れたような話でありますが、しかしながら、これは政府としては、講和條約なるものの草案がいつきまるか、いつ確定するか、八月十三日と書いてありますが八月十三日において、はたして草案ができ上るかどうかについては、ワシントンその他における協議あるいは交渉の進行と見合つて、いつごろ草案ができ上るかということについては、政府としては深甚なる注意を拂つておつたのでありますが、とにかく十三日前後にでき上るだろうという確信を得たために、十六日もしくは十七日、八月中旬に国会を開催する、すなわち昨日も申した通りに、草案は昨朝に至つて初めて確定いたしたのであります。すなわち最終時期まで、政府としてはこの国会の開会の時期については深甚なる注意を拂つて来ていつにしたらよかろうか、結局十六日くらいと考えていたしたのでありますが、仕合せに十六日の朝に至つて確定いたしたのであります。故意に遅らしたのでもなければ、逡巡いたしたわけでもございません。
 次の臨時国会をいつにするか、これは補正予算等に支障なからしむるようにいたす考えでありまするから、御安心を願いたいと思います。
 また講和條約批准前に解散するか、これは断じて解散いたしません。お答えといたします。(拍手)
    〔淺沼稻次郎君登壇〕
#14
○淺沼稻次郎君 ただいま総理大臣の答弁を伺つたのでありますが、必ずしも満足というわけには参らぬのであります。
 第一に、私がさらに念を押しておきたいと思いますることは、領土に関する事項でありまするが、どうも私の聞違いではないと思うのでありまするが、北村君に対する答弁と、また先ほどここで言われました総理の答弁の間には非常に食い違いがあるような気が私はするのであります。すなわち、きのうの報告の際におきまして、領土権があるということを暗示されたのであります。きようはまた、領土権がないということを強く言い切つておるのでありまして、これは私は、日本を離れますところの百万島民にとつては実に重大な問題であろうと思うのでありまして、この点、明白に願いたいと思うのであります。
 それから内政に関する問題で、臨時国会の召集が遅れた、こういうことに対する答弁がございましたが、私はそういうことを聞いたのではないのであります。私どもの理解に苦しむのは、臨時国会を召集いたしまして、そうして今この会議が進められておるのでありますが、この臨時国会というものは、われわれの要請したものとは雲泥の差があるのであります。すなわち、われわれは二つの項目をもちまして、外交の経過報告並びに補正予算、こういう二つのものをもつて要求をしたのであります。しかも政府は、これにこたえて開いたようには言つておるのでありますが、事実は全権委員を選ばなければならない。全権委員を国会議員として選ぶならば、国会法第三十九條の規定に基いて承認を求めなければならぬということであつてその便宜的国会であろうと思うのであります。従いまして一旦吉田さんが開くと言いながら開かず、また開いたというぐあいで、この臨時国会を開くにつきましても非常なジグザグをきわめておると思うのであります。従いまして補正予算は間に合うようにやつておると言つておるのでありますが、ぜひとも間に合うように私はやつていただきたいと、こう考えて、少くとも九月の末期には臨時国会が開かれるような段取りをとつていただきたいと思うのであります。
  さらに解散の問題については、断じてやらないと声を強うしたのでありますけれども、日本民族の百年の大計を決するこの講和條約の内容というものを、二箇年七箇月前にできた吉田内閣が担当するところに不自然があると私は思うのであります。(拍手)そればかりではない。もし調印をして帰つて参りますならば、調印後において、あらゆる條約の制定をやつて参らなければなりません。また国内的な改革も行われて参らなければならぬのであります。それを同じ吉田内閣の手によつてやるところに不合理があるから解散をすべきである、こう言つておるのであります。この点もお答え願いたいと思うのであります。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#15
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 私の領土権に対する説明が、昨日と今日と違つておるとは、本人たる私においてそう考えておりません。断じて違つておらないのであります。
 また臨時国会についてのお話でありますが、この国会は、サンフランシスコ講和條約会議のために開かれたのでありまして、補正予算等は提出いたしておりません。すなわち、社会党の要請あるいは希望通りに、それを全部取入れて開いたのではないのであります。政府といたして、講和條約会議に臨む……(発言する者多く、議場騒然、聽取不能)ということから開いたのであります。
 また解散については、これは絶えず申しておるのでありますが、この講和條約なるものは、終戰直後以来の問題であります。国民が、何らこの点においても、講和條約について関知いたしておらないわけではない。終戰以来六箇年の間、国民の念頭にあるのは、この講和條約であつたろうと思います。この講和條約を頭の中に置いてそうしてかつての総選挙が行われて自由党が絶対多数を得たものであり、自由党がすなわち講和條約をになうに足る政党と国民が認められて、われわれが絶対多数を得たと確信いたしまするから、批准前において解散を行うことは断じていたさないと申すゆえんであります。(拍手)
#16
○議長(林讓治君) 風早八十二君。
    〔風早八十二君登壇〕
#17
○風早八十二君 私は、日本共産党を代表して、米国対日講和條約草案並びに日米安全保障協定草案に関し吉田総理に質問するものである。今から六年前、一九四五年九月二日、ミズ━リ艦上で降伏文書に調印がなされたとき、日本国民すべてが腹の底から深く決意したことは、二度と再び侵略戰争を企ててはならないということである。(拍手)しかるに、この草案のどこに、戰争を繰返さない、平和の保障があるか。あるものは中ソ両国に対する━━━━ではないか。どこに民族独立の保障があるか。あるものは━━━━ではないか。何が和解の條約だ。これこそ日本の━━━━ではないか。日本帝国主義者は、過去十五箇年にわたつて中国を侵略し、一千万人以上の中国人民を━━し、十八兆円に上る損害を與えておる。インドに至るまでのほとんどすべてのアジア諸国を━━━━━━━━━ほしいままにしておる。アジア諸国は、日本に何を望んでいるか。日本軍国主義の絶滅である。ポツダム宣言もまたこれを要求しておる。しかるに、日本の現状はどうか。現に全国至るところに軍事基地は拡大され、警察予備隊は公然軍隊化し、軍需工場は復活され、拡張されている。さらにサンフランシスコ会議を前にして十九万の追放者を解除し、━━━━━━━━━━━━━━━━━しておるではないか。この草案は、かかる公然たる日本の再軍備━━━━━の復活を禁止しないどころか、かえつて━━━━━━━━━━おる。これではアジア諸国と手をつなぐことはできない。だからこそ、アジア諸国は、平和の立場からこぞつて米国草案に反対しているのである。かかる條約に調印することによつて、どうしてアジア及び世界の平和と親善を実現することができるか。吉田総理の明快なる所見をただすものである。
 第二に、米国草案は日本民族の独立の保障ではない。日本を━━━━にするものである。最終草案には、日本人民の━━━━━━━━━━特に主権に関する一條を加えた。しかしながら、草案と同時に結ばれる軍事協定により━━━━━━━━━━━━━主権の條項もまつたく空文ではないか。(拍手)日米軍事協定は━━━━━━━━━━━━━━━━━━ことを認めておる。さらに駐屯軍の━━━━━━━━━━━━━━━━のである。これこそ、かの━━━━一九四七年のアメリカ・フイリピン━━━軍事協定に輪をかけた屈辱的なものではないか。━━━━━━━━━━━━━━━━━これを見ても、この講和は史上空前の屈辱講和である。これはしかも明らかにポツダム宣言の蹂躪である。米国の信託統治に断固反対し、日本の復帰を叫んでおる奄美大島人民の憤激も、この米国草案に対する日本人民全体の憤激の現われではないか(拍手)上がるに吉田総理は、みずから進んで━━━━━━━━━━━━━━━━━━、あえて調印におもむかんとしている。かかる恥ずべき條約に調印しなければならない理由は、一体どこにあるのか。日本民族の名誉と誇りにかけて、吉田総理の責任ある答弁を求めるものである。
 第三に、米国草案は━━━━━━━━━━━━━━━━━されておる。軍需工場における軍隊的職階制の復活と強化は、第二次大戰中の監獄部屋とかわらない。労働三法を改悪するのみならず、ゼネストの全面禁止を含む治安維持法の━━━━が用意されておる。民主的権利の剥奪に伴つて、人民の経済生活は耐えがたいほど窮乏の度を深めておる。一千数百万に及ぶ失業者。半失業者に加えるに、行政機関、国鉄、全逓など現業中心に、第一期だけでも七十四万名の首切りが用意されておる。かようにポツダム宣言に明記した民主的諸権利と生活の安定はすでに踏みにじられておる。
 しかるに、日米軍事協定の結果はますます人民の負担を増大しておる。米軍とその所属員は一切の税金を免除される。しかも驚くべきことには、米軍駐屯費はその半額を米国が負担するといつておるが、われわれの計算では、従来の終戰処理費の倍額、二千億円以上を日本が負担することは明らかである。━━━━━━━━━━━━━━━━━。この費用だけでも、合算すれば五千億にも及ぶのてある。これらの厖大なる軍事費の一切が人民の負担となる。この耐えがたい負担に反抗する人民を抑圧するために、法務府特審局を中心こ、━━━━━━━━━━━━━━あるのである。米国草案は、まさに━━━━━━━━━━━━━━━━。
 吉田総理は、━━━━━━━━━━━━━━━の草案を、比類なき寛大な條約とほめたたえている。なるほどアメリカは日本に賠償能力なしと述べているが、━━━━━━━━━━━━━━━━━この賠償能力なしと述べさしたにすぎないのである。(拍手)すでに今日までの終戰処理費五千億は、賠償を償つているばかりでなく、━━━━━━━━━━━━━━━━。(拍手)日本国民の生活を動物的状態にまで陷れ、国民の年々の蓄積と肉体とをあげて━━━━━━━━━━━━━━━━。(拍手)吉田総理は、このような━━━━━━━━━━━━━米国草案を、なお寛大な條約と称し、━━━━━━━━━━━━━━━━調印を強行せんとしておるのである。吉田総理の責任ある答弁を求めたい。
 第四に、日米安全保障協定について質問する。そもそも米国対日草案のほんとうのねらいは、この日米軍事協定、しかも国民の前に公表をはばかる協定を結ばんとする意図に盡きるので、ある。これは日本再軍備とともに、明らかに憲法違反である。(拍手)だからこそ、この協定を国民の前に隠蔽しようとしておるのだ。総理は憲法違反のこの責任をいかにしてとろうとするか。この━━━国民の前に隠蔽するために、政府はソ同盟、中国の対日本侵略の危機というものを仮定して、日本を━━━━━━━━━━━━━━に仕立て上げようとしている。内外帝国主義者が、いわゆる真真空状態云々のデマを振りまくことに狂奔しているのも、そのためである。
 だが、事実を見よ。国連総会、各種委員会においてすでに一貫して平和の提案をしておるのはソ同盟である、これに対して常に拒否権を発動しているのはだれだ。国連総会及び各種委員会において、しばしば━━━提案を試みているのはだれだ。ソ同盟は、これに対して一貫して拒否権を発動しておるではないか。歴史的事実について見ても、ソ同盟、中国は、かつて一度で外国に侵略をしたことがあるか。反ソ強硬論者のタフト上院議員でさえ、私はソビエトがアメリカと戰争をやろうとしているという結論を出させる証拠を持ち合せない、これはタフト上院議員の名言である。社会主義、人民民主主義の建設は平和によつてのみ栄える。従つて、平和を守ることにあらゆる努力を惜しまない。しかして、平和を守ることは、資本主義諸国の働く人民大衆の利益と完全に合致している。対日講和に関しても、中ソ両国は、真に日本人民大衆の平和と幸福増進の立場に立つて、しばしば公式の声明をやつている。(拍手「ノーノー」と呼ぶ者あり)
 虚心坦懷に、ソ同盟や中国の対日講和の草案を見よ。それは外国軍隊の撤退を保障する講和、日本人民を戰争挑発の危險から守る講和、軍国主義復活を防止して、アジアに平和をもたらす講和日本人民の完全なる独立を保証する講和、平和民主独立日本のために必要にして適正なる自衞権を認める講和、日本人民を重税と搾取、徴用と監獄から解放する講和、日本の国民経済の植民地的隷属を排除し、平和産業の無制限な発達を約束する講和、約束するだけではなく、現実に外国貿易の自由を與え、アジア大陸の広大な市場を提供する講和、それこそ日本並びにアジアの全人民ひとしく待ち望んだ講和である。(拍手)全世界の平和愛好者の希望する対日講和は、中ソ両国のこの対日提案以外にはない。━━━━━━━━米国草案と対置せられる中ソ両国のこの対日草案、しかも実現の根拠なき空文ではなく、人類発展史を画する中ソ友好同盟の実力によつて実現し得るものである。中ソ友好同盟こそは、世界人民大衆の平和運動の中核であるとともに、米国草案のアジアヘの波及を防衞して排除する嚴然たるとりでである。米国草案の前提とする中ソ両国の侵略の危險という仮説は、まつたく何の根拠もないデマである。世界平和の━━━たることをみずから暴露するものであることは明らかである。
 顧れば、明治二十二年から三年にかけて、半植民地的不平等條約撤廃運動が白熱化したとき、自由党の前身たる愛国公党の総裁板垣退助は何と言つたか。外交は各国と対等の権利を保全すべきだ、外交はわが国の自主独立をほかにしてこれを修むべきにあらず、あるいは強国にこびて弱国を侮り、あるいは大国に利して小国を害し、あるいは一国に歓心を買わんと欲して他国の感情をそこない、信義を破り、へんぱに陷り、嚴然みずから守るところなきはわが党のとらざるところなり、こう言つておるではありませんか。これを同じ土佐の後輩吉田総理の態度と比較してみよ。まさに天と地との相違ではないか。これでは同じ自由党でも、片方は愛国公党、━━━━━━━━━━━━。(拍手)吉田総理は、二年前の年頭の辞で、労働者を不逞のやからと呼んだ。同じ年の九月に、外人記者団に向つて、労働者があばれるから、進駐軍はいつまでもいてもらいたいと言つた。この態度こそは、この━草案を比類なき公正と言わせるのである。(拍手)戰後、イタリアの講和條約締結のときは、イタリア国民は弔旗を掲げた。しかるに吉田総理ちようちん行列のお祭り騒ぎでこの全権を送ろうとするのは何事であるか。(拍手)大隈の片足は何で飛んだか。吉田総理は、もしも日本人であるならば、まさにこの際漸死すべきではないか。
 日本及び世界の平和愛好人民大衆は、アメリカ草案には絶体に反対である。特に日本の総評を含めた組織労働者六百万は、これに反対するとともに、ストライキに訴えてもアメリカ草案を粉砕せんとしているではないか。(拍手)フイリピンにおいては、米国草案の起草者ダレス氏の官僚が焼かれた。しかし、それだけではない。今や米国草案そのものが、全世界の平和愛好人民の手によつて焼き捨てられる日が近づいておるのである。米国草案は、現実においてすでに━━しておる。また米国草案の調印をでつち上げる意味でのサンフランシスコ会議も、それ自体失敗しておる。
 政府は、その報道機関を通じて、━━━━━━━━━━━━━━━━と、相もかわらぬ低級なデマを飛ばしておる。しかし、草案はすでに失敗しておる。ソ同盟の会議参加は、まつたく新たなる歴史的任務を持つものである。この歴史的任務こそは、二つの世界の平和的共存の実現である。朝鮮問題、アジア問題のみならず、世界問題の平和的解決のかぎは、現段階において日本問題の平和的解決にあり、日本問題の平和的解決、これすなわち対日全面講和以外にあり得ない。今や対日全面講和は、空想でも理想でもなく、わめて現実性を持つて目の前に迫つておるのである。(拍手)ソ同盟政府の会議参加は、この客観的基礎の上に立ち、すみやかなる講和の達成をはからんとする積極的熱意を証明するものにほかならないのである。(拍手)わが党は、日本及び世界の平和の陣営の声を代表し、米国草案調印を━━━━━━━なりと宣言する。米国草案に、吉田総理がたとい調印したとしても、その運命は知るべきである。日本人民は、みずからの手によつてこれを無効に帰せしめるであろう。━━━━━━米国草案を拒否するところの日本人の気概と愛国心の一かけらも持たない吉田総理は、もはや日本人民の代表たる資格はない。われわれは日本人民の名においてわれわれは平和愛好勢力の名において、吉田総理の退陣を要求する。吉田総理の明快なる答弁を求めるものである。(拍手)
#18
○議長(林讓治君) ただいまの風早君の発言中、不穏当な言辞がありましたら、速記録を取調ぺの上、適当の処置をとることにいたします。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#19
○国務大臣(吉田茂君) ただいまの風早君の御質問は宣伝の演説にほかならないと考えまして、あえて答弁の責任をとりません。(拍手)
#20
○議長(林讓治君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。
 明十八日は定刻より本会議を開きます。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時二十三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト