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1951/09/21 第11回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第011回国会 法務委員会 第3号
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1951/09/21 第11回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第011回国会 法務委員会 第3号

#1
第011回国会 法務委員会 第3号
昭和二十六年九月二十一日(金曜日)
    午前十一時十一分開議
 出席委員
   委員長 安部 俊吾君
   理事 田嶋 好文君
      鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君
      高橋 英吉君    花村 四郎君
      牧野 寛索君    眞鍋  勝君
      山口 好一君    大西 正男君
      石井 繁丸君    梨木作次郎君
      佐竹 晴記君
 委員外の出席者
        法制意見長官  佐藤 達夫君
        民事法務長官  田中 治彦君
        検  事 
        (法務府局民事長)村上 朝一君
        検     事
        (法務府民事局
        第三課長)   川島 一郎君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 会社更生法案(内閣提出、第十回国
 会閣法第一三九号)
 住民登録法施行に関する件
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○安部委員長 これより会議を聞きます。
 まず会社更生法案を議題といたします。本案は現在委員会に閉会中その審議を付託されておるものでありまするが、本案審査のため、経団連、商工会議所、弁護士会連合会等より本案に対する意見を求めたいと思うのでありまするが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○安部委員長 御異議なければさよう決定いたします。なおその取扱い方に関しましては、委員長に御一任をお願いいたします。
    ―――――――――――――
#4
○安部委員長 住民登録法施行に関する件を議題といたしまして、本件の取扱いについて協議いたしたいと存じます。鍛冶良作君。
#5
○鍛冶委員 住民登録法実施にあたりまして、基本方針を定めるために、過日来いろいろ研究いたしました結果を説明申し上げたいと存じます。
 住民登録法の施行に関しては、別に住民登録法施行法の立案を要するのでありますが、最も問題になるのは施行の当初において最初になすべき登録をいかなる方法でなすべきかという点であります。よつて去る九月五日住民登録法施行に関する件について開会いたした閉会中の審査小委員会においてこの点に関し各方面の意見を聞き、さらにこれ等の意見を参考として検討を加えた結果、ここに提案いたしました実施基本方針案を立案したのでありますが、本案は住民登録法施行の際最初になされる登録は、一齊調査及び一齊届出に基いてすることに基本方針を決定しようとするものであります。
 申すまでもなく住民登録法は、市町村において、その住民全部を登録し、登録された者は地方自治法第十条の規定による住民としての資格を有し、この住民たる資格に基いて、選挙権その他各種の権利義務を有するものであることを公に証明し、選挙人名、学齢簿、予防接種台帳等の調製、地方税の賦課徴収、生活保護法による保護の実施、主食の配給等各種の行政事務の適正で簡易な処理に資することを目的とするものであります。
 従いまして、住民登録法の実施は、国民のすべてにとりまして、その権利義務に至大なる影響があるばかりでなく、地方自治及び国政全般に及ぼす影響の重大性もまたこれを看過することができないのであります。
 以上のような住民登録法の実施の重大性にかんがみまするときは、同法施行の当初においてまず住民の居住状況を正確に把握することが最も緊要であると申さなければなりません。けだし最初の登録は本制度の基礎となるものでありまして、その成果いかんはその後におけるこの制度の運命を左右するといつても過言ではないからであります。
 従いまして最初の登録をいかに実施するかにつきましては、まず第一に住民に対し一定の期間を設けて届出の義務を課し、その自発的な届出を待つてこれに基いて住民票を作製するという方法が考えられます。しかしながらこの方法では市町村の住民全部が漏れなく正確な届出をするということは到底期待できないのでありまして、このことは大正三年における寄留法施行以来の歴史に徴しましても明らかであります。
 次に考えられます方法は、現行の寄留簿及び世帯台帳を基礎として、これに基いて住民票を作製するということでありますが、寄留簿も世帯台帳もともにその数字が不正確で、いわゆる幽霊人口を包蔵しており、また氏名、年齢等の記載事項もでたらめといつてもいいほど乱雑をきわめている現状にかんがみまして、この方法をもつてしては、とうてい所期の目的を達成することのできないことは明白であります。
 従いまして、最初の登録を正確に実施いたしまするためには、市町村が法施行の時を基準として積極的に住民の居住状況を一齊に調査するとともに、住民にも届出をさせまして、この調査と届出によつて判明しました正確な事実を住民票に登載することが、もつとも適当であると考えられるのであります。
 以上簡単でありますが、この基本方針案の概略を説明いたした次第であります。
 何とぞこの案に御賛成のほどを希望いたします。
 それでは住民登録法実施基本方針案というのをお手元に差上げましたので、これを朗読いたします。
   住民登録法実施基本方針案
  住民登録法の的確な実施を図るため、同法施行の当初、市町村の住民について最初になすべき登録は、同法施行の日の現在において市町村の区域内に住所を有する者について登録事項に関し一齊調査をなし、且つ、住民に一齊届出をさせ、この一齊調査及び一齊届出に基いて住民票を作製することを基本方針とする。以上でございます。
#6
○安部委員長 ただいまの住民登録法実施に関する基本方針案について何か御意見なり御質疑はありませんか――御発言がなければ、ただいまの鍛冶良作君御提案の基本方針案に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○安部委員長 御異議なければ、ただいまの住民登録法実施に関する基本方針案を委員会の基本方針と決定いたしたいと存じます。
#8
○安部委員長 次に法務行政に関する件を議題といたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。鍛冶良作君。
#9
○鍛冶委員 田中民事法務長官あるいはその任に当る課長から――どなたからでもよろしゆうございますが承りたいのは、いわゆる登記所、法務局の出張所でありますが、これが全国にわたつてたいへん大きな整理をされるという何か内示を出されたようでありますが、これに関する今までの実際の問題として、まずどういうことでそういうことが出て、どれだけのものを整理しようと考えて、どういう方法で通知をせられたか、これを承りたい。
#10
○田中説明員 今のお尋ね、法務府は地方法務局並びにその出張所の廃止を具体的に考えているかという御質問と承知いたしましたが、私ども当局におきましては、現在のところ法務局支局、出張所の廃止ということを具体的にはまだ考えておりません。全然まだそういうことを考えていないのであります。たまたま最近私どもの手元に各地方から出張所の廃止をされては困るという陳情が参つております。どういうようにしてその陳情が参つたか、私どもにはよくわかりませんでしたが、たまたま御承知のように政府におきましては機構の改革と人員の整理ということを考えておりまして、私どもの所管であります法務局におきましても、またその一環として整理を考えざるを得ないと思います。私どもの法務府におきましては、政府の部内といたしまして、この整理に協力をするという面を一つ考えなければならないと同時に、もしそれを整理されれば所管事項にどう響くかということも考えなければなりません。私ども考えましたところでは、法務局は御承知のように非常に人手が少く、現在でも登記が遅れる、台帳の事務が遅れるという御非難をこうむつて、極力それに対処をしておるような実情にありますので、事務当局の意見といたしましては、一人の減員も非常に困ると考えて、極力整理を除外していただくように努力いたしておる次第であります。事務当局としては資料を整え、そしてその意見を付して行政管理庁との折衝をして来たのですが、その結果はまだどういうように整理がやられるかよくわかつておりません。たまたまそういつたことが各地方にも新聞で伝わつた結果、平素非常に仕事が忙しく夜まで仕事をしておる状況で、そういう職員の気持に動揺を與えたのではないかと思うのです。そこで私どもとしては、内部では動揺しないように極力努力をするから、減員ということを考えないで、平常通り事務を執行するようにということを部下に伝えて督励したのでありますが、何といたしましても整理、それからまたその仕事、この二つの面から考えて多少の動揺はまたいなみがたい実情であつたのではないかと考えております。その結果私どもといたしましては、こういうことをまた一面考えなければなりません。極力減員ということはないように努力しておりますが、一面で先ほど申し上げたように整理には協力をしなければならない。そこでそういう事態はないとは考えますが、事務当局といたしましては積極、消極両面から考えて、もしかりに万々一最悪の場合があつたら、われわれは法務局の仕事をどう整理し、また同時に機構をどうかえて行くか、それからまたもう一つは人員の合理的な配置をやらなければならない、こういうことを考えて、事務当局としてはその資料の収集を各地方法務局長に頼んだことがあるのです。これはほんとうの事務的なもので具体的にどの出張所を廃止し、どの出張所をどうするかということではないのであります。たまたまそんなことが伝わつて、法務局の職員から各市町村にもそれが伝わり、各市町村並びにその住民に非常に大きな利害関係を持つものでありますから、そんなことで陳情があつたのではないかと想像するのであります。
#11
○鍛冶委員 私の承つておるのでは、地方法務局長が各出張所に対して、お前の方を廃止するよりほかないのだが、それでよろしいか、それについてどういう準備ができているかということを聞いて行つたので、それでみんなあわてたので、私は聞くのです。そこであなた方は地方法務局長に対してどういう命令を出したのか、それを具体的に聞きたいのです。今のことでは抽象的でちよつとわかりかねます。
#12
○田中説明員 先ほど申し上げた通りのことであります。ただ整理に協力する場合、万々一整理になつたときにどうするかということを、われわれとして事務的に今から準備をしなければ間に合わない、と申しますのは、かりに一つの出張所の人件費を削るといたしましても、そこの土地の交通の状況なり住民の状況、登記の状況まで、各般のものを考慮に入れなければできない。これを準備するには私どもの従来の経験から行きますと約半年かかる。その時間をにらみ合つて、その資料を収集したいということであつたのであります。私どもが局長に伝えましたのは、われわれとしては今度の整理には除外されるように極力努力しているのであるからそういうことはないと思うが、万々一事務の整理をし事務の簡素化を行い、その上にさらに減員があつた場合には、人員の合理的な配置をしなければならない。その結果出張所をもし廃止するというならば、お前の管内ではそういうものがあるかどうか。その地元における交通、住民の分布状況、事件の数、そういうものを勘案して意見があつたら意見を送つてくれ、こういうことを局長に伝えたのであります。今鍛冶委員の仰せになるようなこととは少し違うのであります。あるいは誤解をしてそういうように伝えているものがあるかもしれませんが、私どもの意図したところとは違うようであります。
#13
○鍛冶委員 それでは本庁において考えられたことと、地方局長が言うたことと違つたのかもしれませんが、実際において結局おれの県では幾つ整理されることになるようだ、そうしてみるとお前のところは整理になるのだが、そのときは事務がどうなるか、仕事がほかへ移つたらどうなるかという、そこまで聞きに参つておるのであります。もしそうであるといたしますれば、たいへん大きな影響がありますから、これは各局長に影響のないように、いま一ぺん注意をしていただくことをまずもつてお願いしておきます。そこでさらに私は基本的に承りたいのでありますが、この二年ほど以来いわゆる土地改革が行われまして、一切の土地所有が変更したわけであります。この登記ができなくて、地方においてたいへんな混乱を起しておつたことは、これは申し上げるまでもなかろうかと思います。昨年来農地委員の制度をやめて、今度は農業委員制度になりましたが、これに対して全国の農地委員が一齊に反対しまして、猛烈なる反対運動をやつた。その具体的の例はいまだに登記さえできておらぬじやないか、そのままでこの委員会をやめてどうするか、こう言つて来たことをわれわれは最も痛く耳に残つておるところでありますが、これらの仕事は完全にできておりますか、いかがですか。まだ私はできておらぬのではないかと思うがどうですか。
#14
○田中説明員 今正確な数字は持つておりませんのですが、今鍛冶委員が御指摘になりましたように、登記所で引受けました自作農の関係では御承知のように非常な数字が出て、これに忙殺された。これは今日現在ではようやく少くなりまして、未済というものはほとんど小さい数字しかないと見ておりましたが、ただ耕地整理に伴う登記のそれが各地にありまして、そういつたものが多少未済として残つておるのではないかと考えている次第であります。
#15
○鍛冶委員 そうならばよろしいのですが、実際まだそうではないと私は聞いております。そうするとこの問題が非常に複雑で仕事ができませんために、登記事務が非常に混乱いたしまして、ところが登記事務は農地改革だけの登記だけではございませんで、それに伴う一般の登記がございます。これがほとんど顧みられていません。私はここではあまり言いたくないが、まことにどうも地方の各登記所において、そのために忌まわしい現象があることまで知つておる。これは思想上混乱した一般の場合であつたからでもありましようが、いずれにいたしましても、現在のあの登記所における員数では、とうていあの大きな仕事を背負い切れないのではないか、その意味において遠いところでは登記所を増してもらうとか、増さないならば人員をふやしてもらうとか、それらのことをやつてもらわなければ、これは実際にマツチして来ないのではないか、かように考えておつたのでありますが、そこへ持つて来てあべこべにこれを品整理する整理すると言つたつて減らせということで、まことに驚き入つたことと思うのでありますが、これは現在のままでやつて行けるかどうか、まず私は承りたい。いわんやこれを減らしてはたしてやれるというお見込みがあるかどうか、この点をここでひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
#16
○田中説明員 鍛冶委員の今御指摘になりましたように、地方法務局出張所の仕事に対してたいへん御理解のあつたことは、私ども非常にありがたいと拝聴したのであります。地方法務局出張所の実情を簡単に申し上げてみますと、御承知のように昔は登記所と言いました。それは裁判所の中にありました。そこで裁判所が独立するときに登記所だけは法務府にわかれて参りました。わかれるときにわかれ方が少しまずかつたことがあり、と申しますのは、人割、引受ける分は、登記をする現場職員だけを引継いだのです。従いまして管理職員いわゆる庶務、会計事務を担当する人間は引受けてない。これを裁判所からもらつていなかつた。そこで登記をやる人間が庶務までやらなければならなくなつて来たので、分離直後は非常に困つたのであります。御指摘になりましたように、いろいろの事務が滞りをいたしまするし、いろいろの問題があつたことは、御指摘になつた通りであります。その後自作農ができまして、このために非常に事務が先ほど申し上げた通り増加いたしまして、そのため臨時の定員をいただいておりました。ところが自作農を実施してみたところが、私どもの予想したところとは違いまして、初めのころは登記がそれほどでなかつた。そこで自作農の定員をどう使つて行つたかと言いますと、分離直後にもらうべかりし管理職員がないものでありますから、そこへ自作農の定員を組みまして、ようやく独立した司法事務局の体裁を整えてやつて来たのであります。ところが漸次自作農に関する登記がふえて、そうしてこれを増置しなければならなくなつて来たので、登記所といたしましては非常にまた一時困つて参りました。これが夜遅くまで仕事をさせ、日曜も勤務させるような状況で、ようやくそれを済まして来たのでありますが、そこへ昨年土地台帳、家屋台帳をさらに引受けることになつた。そこでこのときに人間がどうなつたかと言いますと、私どもとしては増員を求めたのであります。増員を求めましたというのは、税務署時代に台帳関係で使つておつた定員は二千何百の人間を使つておつたのであります。従いまして私どもがそれに対応するような増員がほしかつたのでありますが、たまたまその当時自作農の登記はだんだん進んで参りました。関係方面からの要求もあり、非常に急いでやつた結果、その当時はその方の手がだんだんすいて来たおつた実情にあつた。そこでどういうふうにいたしましたかというと、自作農でもらつておつた定員をそれに振りかえるということをやりまして、土地台帳、家屋台帳関係に振りかえて行つたのであります。この人間の数というのは自作農関係で千百六十九人の定員をもらつておつた、振りかえた数は千七百七十五人、下まわつている数であります。これを税務署時代の人数を申し上げてみますと、つまり土地台帳、家屋台帳でやつておつた税務署時代の人数は二千六百二十二名であります。それを自作農から振りかえて私どもがもらつた数字というのは一千七百七十五名しかないのです。極力私ども折衝したのでありますが、残念ながらこの数字しか認められなかつた次第なのであります。これは自作農から振りかえた人間です。そこで先ほど申し上げましたように、いやしくも昔の登記所時代と違いまして、司法事務局となり、法務局と発展して、土地台帳、家屋台帳を加え、そうして戸籍の指導をやる。登記はもちろんさらにそれに加わりまして訟務の仕事をしておる。御承知のように国を当事者とする訴訟これを従来は法務府において処理をしておりましたが、事件が非常にふえまして、ことに公団関係の跡始末の問題が非常に一時に殺到したものでありますから、これも法務局で処理をしなければならぬ、つまり訟務の仕事を加え、さらに人権擁護の仕事も加わつて、そして法務局として発展した独立の官庁となり、従いましてその人事と会計と庶務、これに要する人員がさらにいつたわけなのであります。この人間が思うようにとれておりません。従つて先ほど申し上げたように、自作農の人間を振りかえて、これをそのまま使つておるのであります。その結果はどういう結果になるかと言いますと、言うまでもなく登記事務の方の人間を使う、登記事務の十分な人手が足りなくて、従つて登記事務が滞つて来るという事態を生じまして、御承知のように昨年来各方面から非常な御非難をこうむつております。新聞にも投書され、弁護士会で御調査になつた結果も非常な御非難を受けたのであります。行政管理庁の監査を受けたときも、行政管理庁から人手が足りないのではないか、人間の配置をもう少し考えなければならないという勧告さえ出ておる実情であります。ことに大都市におきましては登記が非常に複雑になり、むずかしい登記がしかも件数が非常に多いのであります。従つて農村あるいは山間の出張所においては――中都市以上の地方法務局あるいはその支局においては事務が非常に滞つて来たのであります。私ども当局としては先ほど仰せになりました通り、これは国民の利害に非常に関係を持ちますのと、もう一つは台帳関係が各市町村の課税の基準になり非常に利害関係が深いために、督励いたしまして、ようやく通常の事務が運べるところまでは来たのであります。これ以上働かせることは私どもとしてはできません。病気で倒れ長期の欠勤をしておる者が、各地にあるような実情であるのであります。これが法務局の今日までの時に従つての実情を簡単に御説明したところであります。
 そこで出張所を減すというようなことは、私どもの今の考えとしてはとうてい考えられない。先ほど御指摘にななりました通りに、これはその住民あるいはその市町村に非常に関係があり、そしてまたこの時代になりますと、こういつた仕事というものはサービスをしなければならない役所になりますので、できれば私どもとしては出張所もふやしたいのです。ふやさなければならない。その上に先ほど来申し上げた通り、増員をしなければならない実情にあるのであります。現に私どもは来年度予算において相当の数字の増員を要求しておるのでありまして、出張所をふやし、人手もふやして、そして事務の円滑な処理をして行きたいと考えております。私どもとしても、事務を放棄する、あるいは回避するということはとうてい考えられない。したくないし、また私の立場から言いますと、先ほど申し上げた通り、非常に無理な仕事を重ねてやらせて参りました。土地台帳を引受けるときに、私局長の会同の席上で言つたのですが、一人の増員もない。ないけれども重要な仕事であるから部下を督励してやつてくれということを頼んだ。そうして台帳を引受けてやつて見ますと、御承知のように非常に未整理が多い、未済事件が私どもの考えた数字より猛烈に違いまして、非常な未済の数字を引受けたのであります。のみならずその整理が、ひどい例を言いますと十年間くらいは地図の手入れがない。そういうようなものが山積しておる。そういう仕事を一人の増員もなしに部下を督励してやらせる。そして時間外勤務手当をもらわない出張所員を時間外まで働かせて今日まで来た私の立場としては、これ以上働けということは言えない。言いたくない。そしてまた私の立場としては言える義理ではありません。だからこの際どうしてもむしろ逆に増員を求めて、国民一般の方々、市町村の方々の御期待に沿いたいとさえ考えておる次第であります。
#17
○鍛冶委員 ただいまの御答弁まことにわれわれの意を強うしたのですが、しかるにこういうことが起つたことはまことに遺憾と思う。今例を申しますと、この間司法書士の広告がありましたのでそれを見ますと、今までのように何十日かかつても登記のできないようなことはいたしません。一日か二日で必ずやつてあげますから私の方へ頼みなさい、こういう広告が出ておつた。登記の実情がいかなるものであるか、この一例をもつてしてもわかると思います。そのために非常に忌まわしいことまでしばしば耳にしておる。このような実情にあるのに、登記所の数を減らし、人員を減らすなどとは考えも及ばないことだと思いますから、この点極力あなた方の方でもやつていただきたいと思うのであります。そして先ほど申しましたような地方住民に不安を与えるようなことは一掃していただきたいと思います。私の富山県のごときは減らすどころではない、中新川郡の水橋町では前から登記所を設けてもらいたいということを言つておりまして、今にもできるかと思つておつたところが、隣の常願寺川一つへだてた岩瀬、これは富山市ですが、この岩瀬の登記所がなくなるというので、岩瀬ではたいへん驚いておるようなわけでありまして、こういうことは地方住民に及ぼす影響は非常に大きいものがありますから、法務府としては断固たる態度で実情を訴えられまして、住民に安心を与えられるような手を打つていただくことをお願いいたします。
#18
○田中説明員 今のお言葉、たいへんありがたく承りましたが、もう一つつけ加えて法務局の登記のことを御報告をしておきたいと思います。民事局では何といつても登記が滞ることは非常に困るのであります。昨年民事局では登記について、すべてを含めた様式をつくりまして窓口に備えておるのであります。どんなしろうとの方がおいでになつても、その用紙にお書き込みになりさえすれはすぐに登記ができるような設備をしたのであります。これは全国の出張所、登記所に行つてごらんいただけばすぐおわかりになると思います。これは私どもとしてはえらそうなことをいえば、ほんとうに公僕としてのあり方であろうと考えてやつたのであります。従つてほんとうをいえば、私どもこれを公表して皆さん方にそれを利用していただくべきであろうと思うのですが、残念ながら人手が足りないために、もしそういうことがどんどん利用されるということになると、その窓口で一人なり一人の人がその相談に応じて親切に指導しなければならない。その人間がないためにそういうことをやれば登記が一方で滞つてしまうのです。だからそういう人手がないために、せつかく考えたことでさえこれを徹底させることができないような実情にあります。これは先ほど申し上げたことを一つの例で申し上げたいのでありますが、先ほど申し上げたように、私どもとしては増員を求めてでき得べくんば執務量を増加したいとさえ考えておるのであります。そうしてまた今仰せになつた通り、私ども事務当局としては、登記所の要員を今度の整理の対象から除外してもらうように、極力法務府としては総裁初め主張しておりますし、資料も提出しております。しかしながら万々一この定員の幾分かでも減員になつた参り、あるいは登記の方の人間をそのままにして管理要員の方の減員が万々一あつたとするならば、フルに使つておつて、しかも現場要員を使つてようやくしのいでおるような現状でありますから、もうそういう事態が生じたときには私ども事務当局としてはどうしても職員の配置転換を行つて、合理的な処置をせざるを得ないのであります。そういうことになれば、あるいはその配置としても、その土地の状況、交通状態その他各般の事情を考慮して、あるいは廃止する、あるいは停止する、あるいは統合するというような処置に出ざるを得たいのではないかということを、非常に心配していることをつけ加えて申し上げたいと思います。
#19
○梨木委員 今の問題でありますが、東京都下では登記の申請をいたしましてそれを受付けてから平均幾日ぐらいで登記は完了しておりますか。
#20
○田中説明員 先ほど申し上げましたように、大都市におきましては非常に事務が渋滞いたしまして、名前を言つてもいいのですが、たとえば中野の登記所では、受付けてから謄本を出すまでに四十日かかりました。つまり四十日分の事務の滞りがあつたのでありますが、私ども非常に心配いたしまして本部からも応援を出し、あるいは法務局からも応援を出しまして、それこそ日に夜をついで仕事をさせまして、七月初旬にようやく普通の状態にもどしまして、今日現在では正確な数字を今持つておりませんが、いくら長くても三日ないし四日で片づいているんじやないかと思つております。
#21
○梨木委員 実は私も今例に出された中野でちよつとそれを経験したので驚いたのでありますが、大体一月から四十日もかかることになりますと、それでは一体家屋とか土地の取引はどういうぐあいにやつているかと聞きますと、司法書士が受付けてその司法書士の証明で取引をしているということを聞きました。こういうことになりますと、あたかも司法書士が地方法務局の出張所のような形になつて、私設の法務局ができるというようなまことに驚くべき現象が起きておるというように私ども直感したのであります。事実このように登記が遅れるために起つて来いろいろな弊害もあるだろうと思うのでありますが、登記が遅れるために取引は突風的にはどういうぐあいに行われているか、家屋とか土地、たとえば家屋を抵当にとられて金を借りますような場合、一月もしなければ登記ができないようでは実際その衝に当つておる人たちは、非常に不便を感じておるだろうと思うのです。こういう事態の中にどのように土地家屋についての取引をやつておるか、そこから起る弊害も看過できないと思うのでありますが、おわかりであつたらちよつと聞いておきたいと思います。
#22
○田中説明員 今梨木委員の仰せになりました通り、登記が滞つたために、ことに四十日も滞つたためにいろいろの弊害が生じたことも私ども聞いて存じております。これは非常に申訳ない事態だと思います。先ほど申し上げた通り、その事務処理を督励いたしまして、今日では常道にもどつておると存じます。ことに最近御承知の住宅公庫の関係でも登記を非常に急がれるので、放つて置けば弊害が出ますから、現在ではそういう弊害を除くためにも督励いたしまして、常道にもどして大体御不便はない状態じやないかと思います。
#23
○鍛冶委員 さつき万々一人員整理がやむを得ないことになればやむを得ないと言われたが、人員整理をせぬでも今困つておるのでしよう、したらどうにもならぬのじやないですか。人員整理なんということはほかと違つて絶対にいかないんじやないですか。やられればしかたがないと言われると、やればしかたがないから何とかできるように聞えますが、私は現在でさえできないから、この上整理されたら絶対いかぬのだと、こういう御意見でなければならぬと思いますがいかがでしようか。
#24
○田中説明員 仰せの通りであります。だから今だつてできないから首切りなり減員なりを一人だつてやつてもらつては困るということで一生懸命やつているということを申し上げたのでありますが、一生懸命にやつてはいますけれども、それでも政府の方針としてそういうことが決定されれば、そういう仮定に立てば、そういうことでもして処理をして行くよりほかに方法がないということを申し上げただけなのであります。
#25
○鍛冶委員 佐藤法制意見長官に質問いたしたいと思います。現在なお日本は占領軍の占領治下にありまするので、日本における占領軍としてはいわゆる占領政策上のいろいろな政策を行つておられるものと申さなければなりません。そこでいよいよ講和条約ができましたので、その批准が済みますと、この占領政策が終了するのじやないかと思いまするが、いわゆる占領政策の終了するときはどういうときに終了するとお見込みになつておるか、まずその点をお聞きしたい。
#26
○佐藤説明員 ただいま鍛冶委員のお示しの通りに、講和条約が批准されまして、講和条約に示されました多数の各国の批准がまとまつて効力を発生するという時期に、占領政策は終了するというふうに考えております。
#27
○鍛冶委員 抽象的にはその通りだと思いますが、具体的にこれで占領政策をやらないことになるという、意思表示なり何かあるものじやないかと思います。この点はどうお考えになりますか。
#28
○佐藤説明員 その点は、占領当局側の措置の問題になると存ずるのでありますけれども、法律的には、そういう意思表示がなくても結果は先ほど申し上げた通りになるというふうに考えます。
#29
○鍛冶委員 どうも抽象論としてはそれでよいのですが、実際上において重大なる関係のあるものですから、向うの方でもうこれで占領政策がいらぬことになつたから帰る、それで行けばこれは別問題ですけれども、これ以上占領政策をやらぬでもよいときが来た、そうしてみれば、占領政策が済んだ、なくなるのじやないか、こういう目途はどこかにつけなければならない。ただアメリカで批准の効力が発生するのは、アメリカへ批准書の着いたとき、こう聞いておる。その時日はこちらではわからない。これは何か具体的に見通しがないものですか。
#30
○佐藤説明員 だんだんお尋ねの趣旨がわかつて参りましたが、それじやいつの瞬間に講和条約の要求する批准書が到達するかという時期は、日本にあつてはわからぬわけでありまして、おそらくアメリカの当該事務の関係者から、ただちに通報があるということは当然のことであると私ども考えております。
#31
○鍛冶委員 そうすると、事実上そういうことはないかもしれませんが、批准ができたから、もう占領政策はなくなりましたとこちらから言えるものですかどうですか。それとも向うが、なくなつたからおれはやめると言つてやめられるまで黙つて見ておるものですか。
#32
○佐藤説明員 なかなか大き問題と拝承しますが、結局講和条約が完全に効力を発生いたしますれば、占領状態がなくなることは当然であります。その後において占領政策というものがあり得ないことも当然のことと考えるわけであります。その後は、結局効力発生までは一応占領状態が続き得るということになるわけであります。ただその間において、占領当局者が占領政策をどの程度に緩和するかということは、もちろん先方の方針によつてきまることでありますが、理論上はただいま申し上げたようなことになると考えております。
#33
○鍛冶委員 これはどうしてもはつきりしておいてもらわなくちやならぬ重大問題だと思う。
 そこで次いで承りたいことは、いわゆるポツダム宣言に基く占領政策実施のために、日本で施行されておりますポツダム政令なるものがたくさんある。これは占領政策上必要なるがゆえに、日本政府に命じて出された命令であろうとわれわれは解釈しておるのであります。もしそうだとすれば、占領政策が終了したる場合には、その政令は無用なものになる、こう言わざるを得ぬと思うのであります。そこで無用なものになるということをわけて考えてみますと、占領政策のために必要だからといつてやつたんだ、占領政策がなくなつたから無用である、無用であると同時に、占領政策がなくなつたのだから、その法律自体も無効にすべきものじやないか、こう考えるのでありますが、この点は、政府としていかなる見解を持つておられるか。この間のときにこれに対する質問があつたそうでありますが、私不幸にして出られませんでしたから、あるいは重複する点があるかもしれませんが、あとで聞きたいことがありますから、まず大前提としてこの点を承つておきたい。
#34
○佐藤説明員 お示しのポツダム命令の根拠になつておりますものに、昭和二十年の勅令五百四十二号という緊急勅令がございまして、それに基いて諸般のポツダム命令が出ておるわけでございます。その五百四十二号なるものは、占領軍最高司令官の要求を実施するために必要な命令を定めることができるといつておるのでありますから、占領状態が終止いたしますれば、その五百四十二号が将来に向つて働く余地のないことは当然のことであると存じます。ただその緊急勅令に基いて、すでに発せられ働いているところの諸般の命令が、占領状態の終止と同時に、当然効力を失つて消滅してしまうものであるかどうかという点は、これはもちろん政策上の問題としては別でありますけれども、純理上の問題としては、学問的に言えば、一般の委任命の関係に関するいろいろな議論と同様の議論がそこに出て参りまして当然中には死なないという説も立ち得る、あるいは当然に死ぬという説も立ち得るかもしれません。私の考えでは、そういうように学問上は、二通りの考え方が成り立つことであるように思つております。但しこの事柄の実体といたしましては、今まで出ております政令の中にも、御承知のように警察予備隊令、公益事業令というような、今後といえどもその中味については存続させる必要のあるものが若干あるわけであります。従いましてそれらの点と、それから最高司令官なり、占領軍の存存を当然前提として立法せられている政令あるいは勅令、これはもう働きようのない当然役に立たぬもの、そういつたものと、それからその中間にあるものが若干あるだろうと私は思うのであります。従いまして、われわれとしては、学理上の理論をここで考えるよりも、単刀直入に、どうしても将来実体を存続させる必要があるもの、それから当然消滅するもの、あるいは必要のないものというように立法上振りわけをしていただいて、国民にはつきりわかるようにしたいと考えまして、目下各省に手わけをいたしまして、その実体について検討をしているという状態であります。
#35
○鍛冶委員 ただいまのお答えで判然いたしましたことは、占領政策のために出ていることは間違いない、占領政策がなくなれば当然なくなるのはあたりまえだ、但し続いて効力のあるものもあるし、当然なくなるものもあるから、続いて効力のあるものに対しては、続いて効力をあらしめなければならない、そういうことに承つたのでありますが、なるほど効力がなくなれば困るものは、続いて効力あらしめなければならぬであろうが、廃止するというもの、――廃止にならぬものでも、黙つておれば廃止になるべきものだ。そういうものである以上は、日本政府として、占領政策がなくなる以上は、それじやこれは廃止になる、これは廃止になるべきものであるが、これからひとつこの通りのものを置くというふうな意思表示をしてもらわなくては、根本論として成り立たぬものではないかと思うのであります。今ちよつとおつしやつたようですが、今後残るべきものに対して、どのような意思表示をせられるか、政府としてこれを明白にしていただきたいと思います。
#36
○佐藤説明員 今後残るものと申しますと、その実体を残して置かなけれげならぬというもので、第一に例をあげますと、この間もここで法務総裁から大要の御説明がありましたが、団体等規正令の跡始末です。これは内容にもつと調整を加えて残したいというのですが、そういうふうな大幅の調整を加えて残したいというものについては、この間仮称として独立の公安保障法という仮の名前で申しておりましたが、そういう形の一本の法律に書き改めて国会の御審議に付する、それからそれ以外の多少変更を加える必要のあるものは、同様の方法をとることが適当であると思います。たとえば一番いい例は、物価統制令というようなものがポツダム政令で出ております。これは物価政策上、今後はそんなものは必要がないということになれば別ですけれども、やはり公定価格なり何なり、物価統制に必要であるということであれば、あのポ政令というものはそのまま中味は使えるわけなのです。そういうものはもう当然生き伸びるというようなことは、私の考えから言えば法律で宣言をしておき、宣言的の条文として定めておくというふうに考えます。そういうものが非常にたくさんありますれば、それらを一括して一本の法律でうたつていただくというような方法があるだろう、そういう漠然たる考えを持つております。これは先ほど申しましたように、各省でいろいろ調べておりますから、その結果を持ち寄つてもらいまして、内容を大きく改めるグループはどのくらいあるかということを勘定して、なるべく手ぎわのいい立法をしたいというふうに考えておる次第であります。
#37
○鍛冶委員 今朝の毎日新聞を見ますと、すべてのものに対して政府としては何か経過法的のものをつくる考えであるということが出ております。私もそうあらなければならぬと思つております。そこでもう一ぺん今おつしやつたことを私の頭に入れるために具体的に承るのですが、当然なくなるものはなくなるし、これはなくなつたものだ、こう承知してもらえるものと心得ます。その次は、変更して残すものは、こういうふうに変更するという法律案を国会に出されるものと解釈してよかろうと思います。これが第二点であります。第三は、そのまま置こうと思われるものは、これに対してもこのまま置くという何か経過法を国会に出されるものであるかどうか。この三つにわけて、もう一ぺん明確にしていただきたいと思います。
#38
○佐藤説明員 今なくなる方のことを私申し上げませんでしたが、なくす方のもの、なくなる方のものと、まあ言い方はいろいろありますが、要するになくなるものにつきましては、御承知の通りこれとこれとこれは廃止するというふうにはつきり書いていただく。それから残るものについては、先ほども私が申し上げたところと鍛冶委員の今おつしやつたところと同じであります。その通りであります。
#39
○鍛冶委員 そこで内容を変更して国会の決議を求められるものは、これは国会で審議をすることですから問題がありません。内容を変更しないでそのまま置かれようと思うものについて特に私は承りたいのですが、これに対しても、このものは今までと同じような法律として、あるいは法律第何百何十何号ということになりましようが、そういうふうにして今後やり、また国会にかけられるのですか。
#40
○佐藤説明員 ただいま申しました各省での研究が出て参りまして、その結果どのくらいの数になるか、これは非常に常識的な話で恐縮でありますが、そういうことにもなるので、非常に数が少いということであればお示しのような方法もとれましよう。しかしながら、相当に数があるということになれば――ちようどこれは新憲法ができましたときに、昭和二十二年法律第七十二号という法律を特に御制定いただきまして、旧憲法時代にたくさん出ておる命令の中で法律を要する事項をきめておる問題で、そういうものの効力関係のことを明らかにするための法律七十二号というものを出していただいたのでありますが、この法律の措置におきましては、その命令の数が非常に多かつたものでありますから、おのおのの件名をあげないで一括して扱つたということでございます。従いまして、そういうふうに名前をあげずにたとえばこれこれは廃止するが、それ以外のものはという形で一括する方法があり、それからさらに、次に掲げる命令はというように件名をずつと横に並べて、その形で一括して取扱うということも考えられます。それから数が非常に少いという場合であれば、一々これを一法律で手当するということも考えられます。そういういろいろな方法がありますが、その中で最も適切な方法を選びたいというふうに考えておる次第であります。
#41
○鍛冶委員 まことにくどいようですが、要するに内容同一のものが残つても、一ぺんは必ず残すか残さぬかということを国会へかける。政府としては残す意思でかけられるであろうが、国会へその点をかけて、その上できめられるもの、かように解釈してよろしゆうございますか。
#42
○佐藤説明員 これは法務総裁の話では、いずれ閣議にでもはかつて政府の態度をきめようということを言つておられました。従いまして、きようの閣議にかかつたか、あるいはこの次の閣議か存じませんが、おそらく閣議で御相談になつてその方針を確認されることと思います。その意味で、政府の方針がそういう方向にきまつたということを今申し上げる立場に私はございませんけれども、私はその方面のことを補佐する立場におりますから、その面から申しますと、そういう方針で行くであろうというふうに考えております。
#43
○鍛冶委員 現在の段階では、あなたとしてはそれ以上お答えができないようでありますからこれ以上申し上げませんが、これはまことに重大なことでありますから、方針が確定いたしました上で、もう一ぺんあらためて政府の確信のほどを承りたいと思います。きようはこの程度にいたしておきます。
#44
○梨木委員 ポツダム政令の問題でありますが、今の御説明を聞いておりますと、ポツダム政令は、占領が終結した後においても必ずしもその効力がなくなるわけではないというような見解をおとりのように聞いたのであります。しかし私どもの考えではポツダム政令というものは占領下における特別な立法措置であります。占領下におきましては、最高の権力は連合国最高司令官が行使しておつたのであります。最高の権力は連合国にあつたものだとわれわれは考えております。従つて、その状態のもとにおいてつくられた法律というものは、それは明らかに占領ということを前提にしておるのであります。ところが、この占領状態がなくなつて、日本が完全に主権を回復したときにおきましては、その以前における、占領状態を前提として立法というものは明白に無効であります。そう考える限りにおいては、われわれは、講和ができた後においても占領を前提としたところの法律をまだかかえ込んで来ておるというようなことは許されないことです。そこに占領状態のもとにおける主権が制限される、事実は主権はないわけであります。しかし日本の場合におきましては、一応最高司令官の権力のもとに、制限された形において日本の政府の主権の行使を認める、そういうような形において占領管理が行われておつたことは御承知の通りであります。しかし、ともかく講和ができてこの占領状態がなくなつたときにおきまして、これは別に明白にきちんと区切らなければ、いつまでたつても占領状態が続いておるというようなことになるわけであります。このことは、日本が完全に主権を回復した後におきまして、法理論的にも必ず問題になることであります。従つて、占領状態のもとにおいて、占領を前提としたこのようなポ政令というものはこの際一切無効であるという前提の上に立つてこのポ政令を処理して行かないと、将来法的な体系の上において非常に混乱が起ると考えるのでありますが、この点についてもう一度伺いたい。くどいようでありますが、占領状態のもとにおいては日本は主権がないのであります。そのもとにおいてつくられた法律というものは、これは占領軍の法律なんです。そんなものが、講和ができた後においてまだ法律的な効力があるというようなことを考慮するということ、それ自体が法的には容認できない考え方であると思うのでありますが、どうお考えになりますか。
#45
○佐藤説明員 学理上といいますか、純粋の理論上の問題としては、これはいろいろな説が私は立ち得るであろうと思います。決して一つのみが立ち、それ以外の説は立ち得ないというものでないと思いますので、そういう事柄、そういう性質のものについては、結論は、今梨木委員のおつしやる通り法律をもつてはつきりけじめをつけて置くということが至当であるということを、先ほどから申し上げております。
#46
○梨木委員 そういたしますと、長官もいろいろな議論が成り立つということをお認めのようであります。そこでこの間私の方の議員細川嘉六君や河田賢治君、砂間一良君、上村進君、これらの人たちが公職追放の処分に付されたわけでありますが、これは明らかに今度の逮捕と関連いたしまして、この事実を前提にして公職追放をなされたものであるとわれわれは考えておるのであります。これが裁判で無罪になつた場合におきまして、これの救済方法というものは一体どういうことになるのか。現在におきましては、御承知のように、裁判所は、これについての救済を求めましても、占領軍の命令でやつたものであるから、日本の裁判所には裁判権がないということで訴訟を却下しておるわけであります。しかし講和ができた後におきまして、われわれはこういうものは占領を前提として行われた処分である、従つてこれが無罪になりまして、明らかにそういう事実がなかつたということになりまするならば、これについての救済の方法というものは認められなければならぬと思うのであります。これはどういうふうにお考えでございましようか。
#47
○佐藤説明員 無罪となつた場合の救済の方法ということになりますと、問題は非常に具体的になりますけれども、それらのものを大きく含めて、このポ政令関係あるいは占領中における諸般の措置ということに関連して、占領終止後における今の訴訟の問題、その他経過的な問題は、これは非常に広い範囲においていろいろな問題があるわけであります。それは私どもは目下連日のように研究をしておるという段階でございます。
#48
○梨木委員 もう一点お伺いしたいのであります。これは長官といたしまして、今は全然救済方法がないわけではありますが、現在の状態におきまして何かこれを救済する方法を認めなければならぬと思うのであります。これはいかがでしようか。こういうような講和条約が効力を発生した後におきましては、私がさつきとつた議論でこれは無効であるという前提をとりますれば、これはまた別であります。しかしまた講和が効力を生ずるまでの占領状態のもとにおいても、これは日本におきまして国会というものを認め、国会議員というものは人民によつて選挙されたものでありますが、これを政府の認定によつて追放しておる。もちろん今度の場合、認定については司令部の承認を求めたとは言つておりますが、しかし政府の認定ということが大きな前提となつております。こういうものにつきまして何か救済方法を認められない限りは、国会というものがありましても、反対党が政府の行政的な措置によつてどしどし片つぱしから追放にさせられるようなことが認められることになりまして、これは日本の民主主義自身がまつたく無視されるという結論になるのでありますが、この点についての救済方法をどうお考えになつておりますか、御意見を聞きたいと思います。
#49
○佐藤説明員 おつしやることはよくわかりますが、要点は、今日の段階における救済方法ということになりますと、われわれ法律屋として考えますことは、梨木さんがさつきおつしやつたように、裁判所に訴えることが一番であります。現在のところ日本の裁判所にはその権限がないということになつておりますから、問題はその点にあるということに尽きると思います。
#50
○梨木委員 じや次に伺います。講和が効力を生じた後におきまして、御承知のように、今度の講和にはソ同盟や中国は参加しておりません。そうするとポツダム宣言や、カイロ宣言、特に直接的に日本はポツダム宣言を受諾しておるのでありますから、ポツダム宣言の問題についてお伺いいたしたいのであります。今までのわれわれの考えは、ポツダム宣言というものが日本の占領管理の法的な基本になつておると思うのであります。このポツダム宣言というものの日本人民に対しての効力、それから同時にこれに基いて発せられておる降伏文書の効力をどういうふうにお考えでありましようか。
#51
○佐藤説明員 非常に傾聴すべき重大な御質問だと思います。ただ惜しむらくは御質問の時期が少し早過ぎるのでりまして、講和条約がいよいよ実施になるあかつきにおいてそういう御質問があれば、非常に意義深いことであると思います。
 ただいまの段階において法律的にお答えいたしますとすれば、平和関係を規律する約束というものは、この間調印された平和条約ばかりではないのでありまして、あの平和条約自身が予想するように、個別的の平和条約というものを前提としているわけであります。従いましてあの講和条約の会議において調印されなかつた国との間におきましても別個に平和条約が締結されることは、理論上当然予想されるわけであります。そういう理論上から申しますと、今のような事柄はわれわれとしては今お答えする段階ではないことになると思います。
#52
○梨木委員 最後に事務的なことを伺いたいのでありますが、今ポツダム政令はどれくらいありますか。
#53
○佐藤説明員 その中には政令、府令、省令とありますが、それらのものを全部ひつくるめますと、百五十一件。一つや二つの違いは御容謝願いたいと思います。
#54
○佐竹(晴)委員 関連してただ一点お尋ねいたしておきたいと思いますのは、先ほど梨木君の発言の中に、日本は占領中は主権がなくなつた。従つて占領中の諸法規は占領軍の意思によつてつくられたものであるから、日本の法律ではない。主権を回復した後においては占領中の法律は一切無効である。こういつたような前提に立つてものを解釈いたしますうことには、私は重大なる難点があるのじやないかと思われる。こういう議論が出て来るのは、おそらく日本は無条件に降伏したんだから、日本は主権がなくなつて、向うさんの言う通りしなければならぬ。従つて向うさんの言う通りつくつたのであつて、今度主権が回復して日本が新しく法律をつくらぬ限りは、前のものは無効だ、こういつた見地に立つのではないか。しかし私が非常に疑問に考えているのは、ポツダム宣言によれば、第十三項に「吾等ハ日本国政府が直に全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス。」無条件降伏したものは軍隊であつて、政府でないことは明らかであります。しかして降伏文書の中にも「下名ハ茲ニ日本帝国大本営並ニ何レノ位置ニ在ルヲ問ハズ一切ノ日本国軍隊及日本国ノ支配下ニ在ル一切ノ軍隊ノ聯合国ニ対スル無条件降伏ヲ布告ス」、先へ参りましても、「軍隊が無条件ニ降伏スベキ旨ノ命令ヲ直ニ発スルコトヲ命ズ」とあつて、無条件降伏ということは軍隊に関する限り使つております。軍隊でない、日本政府というものについてはある程度の権限が与えられておる。従つて日本にはやはり国会というものもあれば、政府というものもあつて、政治をとつておる。従つて占領軍の最高司令官がどのようにこれをやろうといつても、国会がこれを否決すればやれません。国会がこれを可決せぬ限り司令官といえどもやれなかつた。司令官がいかにやろうといつても、日本政府が予算を組まなければやれなかつた。だから、向うさんの言う通りであるから、無条件に向うの言う通りになつておるのであつて、日本の責任でないとかいう問題では私はあるまいと思う。従つて私どもの考えることは、日本は主権がなくなつておるけれども、その主権がなくなつたということは、根本がなくなつておるのじやない。ただ条件を付せられておる。完全なる主権でないというだけのことであつて、主権が制限されて、制限された主権は、本来これは主権でないといえばそれはそうです。しかし何も国に主権がなくなつたのだから、日本の国会においてかけた、あるいは日本政府が発したすべてのものは一切無効であつて、従つて主権が回復した以上は、これは別個に出さぬ限り無効だ、こういつたようなことになれば、たとえば治安維持法のごとき、これを廃止されておる。それは占領中に廃止されたのだから、占領がやまつたら復活するかという議論も出て来なければならぬと思う。従つてあなたの御答弁は先ほどぬらりくらりなさつておるから、政府としても主権はどんな形にあるかぐらいのことは、これはもう御研究になつておる結果であろうと存じますので、確固たる信念で政府としてもお示しを願つておかなければならぬ。もしきよう答弁の限りでないといえば、この点は私は重大問題であると存じますので、御研究を願いたいと存じますが、さしあたり先ほどの御答弁を聞いてみますと、私どもははなはだ不安を感ずる。私どもはまたこれに関連いたしましてはいろいろ組織的に分類をいたしまして、私どもも検討を加えておるものもありますけれども、きようちようど持つておりまんせので、ただその一点だけお伺いして、政府の御方針を承つておきたいと思います。
#55
○佐藤説明員 御忠告がありましたが、この主権の問題につきましては、これはもうあまりに明らかなことでありまして、これから研究するも何もないのであります。あまりに明らかでありますために、私はそれを問題に取上げなかつたということであります。すなわち主権がないのではないので、もちろん制限はされておるけれども、そういう制限された主権であるということは、これはもうはつきり申し上げる。言うまでもないところであります。
#56
○梨木委員 佐竹委員は今ぼくの言つたことを誤解されておるようであります。だから、私はまず最初にポツダム宣言というものは講和ができたらどういう効力を依然として持つておるのか、われわれはだから、ポツダム宣言というものは実際は講和条約の中にまた引継がれなければならぬ、ところが今度できましたサンフランシスコにおける講和条約の中には、ポツダム宣言の特に日本の非武装化と民主化の問題についてこれを引継いでおらない。その中に非常な問題がある。だからこれを引継いでおらないような講和条約ができた後におけるポツダム宣言、特にこれはまだこれに調印しておらない国との間における法的効力の問題が出て来るのであります。この問題が非常に重要であります。だから先ほど佐竹委員の言われたような治安維持法の復活はどうなるかという問題がやはり出て来る。ポツダム宣言の効力は講和条約に引継がれていなければならぬ、こういう議論も出て来るのであります。これが一つ。それから私が先ほど申しましたように、ポツダム政令というこの効力の問題、これは御承知のように、これは占領下における特殊な立法措置であります。日本の国会を経たものでないのであります。これは特に占領下における連合国最高司令官の要求に基いてつくられたものであります。ここに私は問題を限定しておるのでありますから、治安維持法のごとく法律によつて廃止されたものとは別なんであります。この点は誤解のないように、私はポツダム政令という占領下における連合国最高司令官の要求に応じてつくられた特殊な立法についての法理上の効力の問題を論議しておるということを御了解願いたいと思います。
#57
○鍛冶委員 大体明白になりましたが、しかし先ほどからの議論からいえば、占領政策上できた法律である以上は、占領政策がなくなつたら効力を失うべきことは当然である。当然失うというのではありません。効力をなくするというのがあたりまえである、こういう建前はかわらないと思います。その意味において同じものを残そうとして国会にかけられるものとわれわれは解釈して、先ほど来質問してお答えを願つております。従いましてもう一つ気になりますのは、先ほど言うように、残るものは一切これこれはなくなつてこれくは残る、あとはみないるんだ、こういう方法はよろしくない。新しい政策がなくなつたら、この法律を日本の法律として今後やるんだ、こう言われているのですから、新しい一つの立法提案である、こういう考えのもとに、おのおのの各委員会にそれを分類してかけらるべきものだと私は解釈いたします。これは今あなたの方で確定しておらぬようだから、御答弁は願いませんが、私はできないように考えますから、今御答弁願えればなおけつこうです。御答弁願えぬならば、ぜひそうありたいものであるという私の希望であることを述べておきたい。
#58
○大西(正)委員 今梨木君の質問に関連いたしまして、私も申し上げたいのでありますが、今梨木君の御議論によるというと、講和条約が有効に発生しても、ポツダム宣言に基く内容の効力は存続するのだというふうな御意見のように承つたのでありますが、これに対する長官の御答弁がありませんでしたが、それを黙認されるんでありましようか。それともそうではないとお考えでありましようか。
#59
○佐藤説明員 私の申しますことは、学説上の問題としてはこの際論ずる実益がないんで、立法的にすべてを解決したいというのが真意でありましてその一点に尽きます。但し今の梨木さんのお話にしていろいろ御意見を述べろとおつしやるならば、私は今拝聴しておりました感じから申しますというと、ポツダム政令というものはあたかも何か最高司令官令といいますか、司令部令といいますか、何かそういう外国の一つの法形式といいますか、特殊の占領法形式というもののようにお考えになつてすべてを論じておられるように拝聴しておるのであります。その点については私どもはもちろん政府においてもそういう考え方は全然とつておりません。くだいて申しますと、先ほど触れましたように昭和二十年勅令五百四十二号というのは、当時の憲法に基いて制定されました緊急勅令であり、そうしてそれは国会において承諾を得ましてりつぱに法律となつておるものであります。純粋な国内法でありましてその国内法においてひとしく国内法であるところの政令その他の命令に委任をしておるわけであります。その委任に基いて出ております政令というものは、われわれはお話をするについて便宜上ポの字をつけて、ポ勅令とか、ポ政令とか、その他ポ勅とか、ポの字をつけておりますけれども、決して官報に載つておる形は、ポツダム政令第一号とか、ポツダム政令第何号というふうには出ておりません。これは普通の一般の政令と何ら異なるところはないのであります。法形式の面においては純粋の国内法であると考えております。但しその内容に盛り込まれます事項は、これは司令官の命令である。司令官の言われることは忠実に守らなければならないというだけのことであります。その点におきましても、基本的の考え方が梨木さんのおつしやるところとわれわれ政府が今まで考えておりましたところは全然違う、あまりに違い過ぎますから、私は黙つて拝聴しただけなんであります。
#60
○大西(正)委員 私どもの個人的な見解でありますが、ポツダム宣言というものは日本の降伏条件であつて、講和の条件ではないと思うのです。同時に、講和条約が成立をすれば、今後の日本を規定して行くものは講和条約が根本であつて、その講和条約が発効するとともにポツダム宣言なるものは効力を失うものだ、かように考えるのであります。但しポツダム宣言は、日本が降伏をして、講和条約が調印されるまでの間においては有効に存在したものでありまして、従つてその間に有効に廃止をされた治安維持法なんというものは、ポツダム宣言が失効をしても生き返つて来るものではない、かように考えておるのであります。同時に占領下においてつくられました今のポツダム政令その他にいたしましても、これは日本が制限された主権のもとにおいて占領下にできたものであります。従つて講和条約が締結されて、そうして日本が真に自主独立の国家となつたあかつきにおきましては、法律上の議論がどうあろうといたしましても、――同じ内容であつてもどうでもいいのですが、それをあらためて国民の自由意思に基いて制定すべきであると考えるのであります。この点はひとつ政府におかれましても、法律上の議論にとらわれずに、国民感情をよく織り込まれんことを切望申し上げる次第であります。
#61
○安部委員長 本日はこれにて散会いたします。
    午後零時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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