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2011/09/13 第178回国会 参議院 参議院会議録情報 第178回国会 本会議 第1号
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2011/09/13 第178回国会 参議院

参議院会議録情報 第178回国会 本会議 第1号

#1
第178回国会 本会議 第1号
平成二十三年九月十三日(火曜日)
   午前十時四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第一号
  平成二十三年九月十三日
   午前十時開議
 第一 議席の指定
 第二 常任委員長の選挙
 第三 会期の件
 第四 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
 一、常任委員長辞任の件
 一、日程第二
 一、特別委員会設置の件
 一、日程第四
     ─────・─────
#3
○議長(西岡武夫君) 第百七十八回国会は本日をもって召集されました。
 第百七十八回国会の開会に当たり、一言御挨拶申し上げます。
 東日本大震災に遭われた皆様。
 これに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故。
 今なお、この国難に、御家族の安否、今は亡きお一人お一人への思いを胸に六か月。
 塗炭の苦しみにあえいでおられる皆様の御心中を推察し、政治の責任の重さ、そのことに心も体も潰れる思いであります。
 また、この度の近畿地方に代表される全国各地の記録的な豪雨の被害を受けられた皆様に、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 皆さん、今国会は野田政権発足直後の極めて重大な審議の場であります。
 この国会を契機に、私は、参議院議長として、皆様とともに、当然のことながら、衆議院と同じ審議時間を確保し、その質疑と提案、意見の開陳、また、予算措置を織り込んだ法案の提出を通じて、政権の施策の遅れを補い、国民の皆様方の負託にこたえる決意であります。(拍手)
     ─────・─────
#4
○議長(西岡武夫君) これより会議を開きます。
 日程第一 議席の指定を行います。
 議長は、本院規則第十四条の規定により、諸君の議席をただいまの仮議席のとおりに指定いたします。
     ─────・─────
#5
○議長(西岡武夫君) この際、常任委員長の辞任についてお諮りいたします。
 内閣委員長松井孝治君、法務委員長浜田昌良君、外交防衛委員長佐藤公治君、懲罰委員長大石尚子君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(西岡武夫君) 御異議ないと認めます。
 よって、いずれも許可することに決しました。
     ─────・─────
#7
○議長(西岡武夫君) 日程第二 常任委員長の選挙でございます。
 これより、欠員中の財政金融委員長、厚生労働委員長、農林水産委員長、経済産業委員長及び予算委員長並びにただいま辞任を許可されました常任委員長の選挙を行います。
 つきましては、常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(西岡武夫君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、
 内閣委員長に芝博一君を指名いたします。
   〔拍手〕
 法務委員長に西田実仁君を指名いたします。
   〔拍手〕
 外交防衛委員長に福山哲郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
 財政金融委員長に尾立源幸君を指名いたします。
   〔拍手〕
 厚生労働委員長に小林正夫君を指名いたします。
   〔拍手〕
 農林水産委員長に小川勝也君を指名いたします。
   〔拍手〕
 経済産業委員長に前川清成君を指名いたします。
   〔拍手〕
 予算委員長に石井一君を指名いたします。
   〔拍手〕
 懲罰委員長に今野東君を指名いたします。
   〔拍手〕
     ─────・─────
#9
○議長(西岡武夫君) この際、特別委員会の設置についてお諮りいたします。
 災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る災害対策特別委員会を、
 沖縄及び北方問題に関する対策樹立に資するため、委員二十名から成る沖縄及び北方問題に関する特別委員会を、
 政治倫理の確立及び選挙制度に関する調査のため、委員三十五名から成る政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会を、
 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会を、
 政府開発援助を始めとする国際援助・協力に関する諸問題を調査するため、委員三十名から成る政府開発援助等に関する特別委員会を、
 消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため、委員二十五名から成る消費者問題に関する特別委員会を、
 また、東日本大震災からの復興に当たり、その総合的な対策樹立に資するため、委員四十名から成る東日本大震災復興特別委員会を、
それぞれ設置いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(西岡武夫君) 御異議ないと認めます。
 よって、災害対策特別委員会外六特別委員会を設置することに決しました。
 本院規則第三十条の規定により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。
    ─────────────
   議長の指名した委員は左のとおり
○災害対策特別委員
      加賀谷 健君    小見山幸治君
      高橋 千秋君ツルネン マルテイ君
      那谷屋正義君    平山 幸司君
      平山  誠君    牧山ひろえ君
      吉川 沙織君    青木 一彦君
      加治屋義人君    金子原二郎君
      岸  宏一君    佐藤 信秋君
      松下 新平君    若林 健太君
      秋野 公造君    渡辺 孝男君
      上野ひろし君    山下 芳生君
○沖縄及び北方問題に関する特別委員
      相原久美子君    川合 孝典君
      郡司  彰君    今野  東君
      田城  郁君    田中 直紀君
      外山  斎君    徳永 久志君
      猪口 邦子君    宇都 隆史君
      島尻安伊子君    中川 雅治君
      長谷川 岳君    橋本 聖子君
      古川 俊治君    木庭健太郎君
      横山 信一君    江口 克彦君
      紙  智子君    山内 徳信君
○政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員
      足立 信也君    石井  一君
      植松恵美子君    梅村  聡君
      江田 五月君    大石 尚子君
      風間 直樹君    佐藤 公治君
      鈴木  寛君    中村 哲治君
      平田 健二君    藤本 祐司君
      松井 孝治君    松浦 大悟君
      松野 信夫君    安井美沙子君
      愛知 治郎君    石井 準一君
      磯崎 仁彦君    岩井 茂樹君
      岡田 直樹君    岡田  広君
      佐藤ゆかり君    西田 昌司君
      藤川 政人君    丸山 和也君
      宮沢 洋一君    吉田 博美君
      荒木 清寛君    長沢 広明君
      西田 実仁君    小野 次郎君
      桜内 文城君    井上 哲士君
      藤井 孝男君
○北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員
      有田 芳生君    大塚 耕平君
      大野 元裕君    加賀谷 健君
      風間 直樹君    榛葉賀津也君
      徳永 久志君    広野ただし君
      柳田  稔君    横峯 良郎君
      衛藤 晟一君    関口 昌一君
      塚田 一郎君    丸川 珠代君
     三原じゅん子君    山谷えり子君
      浜田 昌良君    柴田  巧君
      中山 恭子君    森田  高君
○政府開発援助等に関する特別委員
      石橋 通宏君    大久保 勉君
      大久保潔重君    大野 元裕君
      武内 則男君    谷  亮子君
      轟木 利治君    友近 聡朗君
      中谷 智司君    姫井由美子君
      藤谷 光信君    舟山 康江君
      水戸 将史君    米長 晴信君
      赤石 清美君    有村 治子君
      岩城 光英君    大家 敏志君
      川口 順子君    中原 八一君
      中村 博彦君    野上浩太郎君
      福岡 資麿君    松山 政司君
      水落 敏栄君    魚住裕一郎君
      竹谷とし子君    小熊 慎司君
      荒井 広幸君    吉田 忠智君
○消費者問題に関する特別委員
      植松恵美子君    江崎  孝君
      大河原雅子君    金子 恵美君
      金子 洋一君    斎藤 嘉隆君
      谷  亮子君    中村 哲治君
      難波 奨二君    林 久美子君
      松浦 大悟君    石井みどり君
      上野 通子君    片山さつき君
      世耕 弘成君    中西 祐介君
      藤井 基之君    牧野たかお君
      松村 祥史君    森 まさこ君
      山田 俊男君    山本 香苗君
      山本 博司君    松田 公太君
      大門実紀史君
○東日本大震災復興特別委員
      池口 修次君    大久保潔重君
      岡崎トミ子君    金子 恵美君
      小西 洋之君    行田 邦子君
      斎藤 嘉隆君    田城  郁君
      田中 直紀君    谷岡 郁子君
      轟木 利治君    平山 幸司君
      広田  一君    藤原 正司君
      藤原 良信君    増子 輝彦君
      米長 晴信君    愛知 治郎君
      赤石 清美君    岩城 光英君
      上野 通子君    岡田  広君
      川口 順子君    熊谷  大君
      佐藤 信秋君    佐藤 正久君
      高階恵美子君    長谷川 岳君
      牧野たかお君    森 まさこ君
      山田 俊男君    石川 博崇君
      谷合 正明君    渡辺 孝男君
      小熊 慎司君    松田 公太君
      山下 芳生君    藤井 孝男君
      吉田 忠智君    亀井亜紀子君
    ─────────────
#11
○議長(西岡武夫君) これにて休憩いたします。
   午前十時十分休憩
     ─────・─────
   午後三時一分開議
#12
○議長(西岡武夫君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 この際、日程第三 会期の件は、議が調わないため、これを取り上げないことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(西岡武夫君) 御異議ないと認めます。
     ─────・─────
#14
○議長(西岡武夫君) 日程第四 国務大臣の演説に関する件を議題といたします。
 内閣総理大臣から所信について発言を求められております。これより発言を許します。内閣総理大臣野田佳彦君。
   〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇、拍手〕
#15
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 第百七十八回国会の開会に当たり、東日本大震災、そしてその後も相次いだ集中豪雨や台風の災害によって亡くなられた方々の御冥福をお祈りします。また、被害に遭われ、不自由な暮らしを余儀なくされている被災者の方々に改めてお見舞い申し上げます。
 この度、私は、内閣総理大臣に任命されました。政治に求められるのは、いつの世も、「正心誠意」の四文字があるのみです。意を誠にして、心を正す。私は、国民の皆様の声に耳を傾けながら、自らの心を正し、政治家としての良心に忠実に、大震災がもたらした国難に立ち向かう重責を全力で果たしていく決意です。まずは、連立与党である国民新党始め、各党各会派、そして国民の皆様の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。
 あの三月十一日から、はや半年の歳月を経ました。多くの命と穏やかな故郷での暮らしを奪った大震災のつめ跡は、いまだ深く被災地に刻まれたままです。そして、大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、被災地のみならず、日本全国に甚大な影響を与えています。日本の経済社会が長年抱えてきた課題は残されたまま、大震災により新たな解決が迫られる課題が重くのしかかっています。
 この国難のただ中を生きる私たちが、決して忘れてはならないものがあります。それは、大震災の絶望の中で示された日本人の気高き精神です。南三陸町の防災職員として、住民に高台への避難を呼びかけ続けた遠藤未希さん。防災庁舎の無線機から流れる彼女の声に勇気付けられ、救われた命が数多くありました。恐怖に声を震わせながらも、最後まで呼びかけをやめなかった彼女は、津波にのまれ、帰らぬ人となりました。生きておられれば、今月、結婚式を迎えるはずでした。被災地の至る所で、自らの命さえ顧みず、使命感を貫き、他者をいたわる人間同士の深い絆がありました。彼女たちが身をもって示した危機の中で公に尽くす覚悟、そして、互いに助け合いながら寡黙に困難を耐えた数多くの被災者の方々、日本人として生きていく誇りと明日への希望がここに見出せるのではないでしょうか。
 忘れてはならないものがあります。それは、原発事故や被災者支援の最前線で格闘する人々の姿です。先週、私は、原子力災害対策本部長として福島第一原発の敷地内に入りました。二千人を超える方々が、マスクと防護服に身を包み、被曝と熱中症の危険にさらされながら、事故収束のために黙々と作業を続けています。そして、大震災や豪雨の被災地では、自らが被災者の立場にありながらも、人命救助や復旧、除染活動の先頭に立ち、住民に向き合い続ける自治体職員の方々がいます。御家族を亡くされた痛みを抱きながら、豪雨対策の陣頭指揮を執り続ける那智勝浦町の寺本真一町長も、その一人です。
 今この瞬間にも、原発事故や災害との戦いは続いています。様々な現場での献身的な作業の積み重ねによって、日本の今と未来は支えられています。私たちは、激励と感謝の念とともに、こうした人々にもっと思いを致す必要があるのではないでしょうか。
 忘れてはならないものがあります。それは、被災者、とりわけ福島の方々の抱く故郷への思いです。多くの被災地が復興に向けた歩みを始める中、依然として先行きが見えず、見えない放射線の不安と格闘している原発周辺地域の方々の思いを、福島の高校生たちが教えてくれています。
 福島に生まれて、福島で育って、福島で働く。福島で結婚して、福島で子どもを産んで、福島で子どもを育てる。福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢なのです。
 これは、先月、福島で開催された全国高校総合文化祭で、福島の高校生たちが演じた創作劇の中の言葉です。悲しみや怒り、不安やいら立ち、諦めや無力感といった感情を乗り越えて、明日に向かって一歩を踏み出す力強さがあふれています。こうした若い情熱の中に、被災地と福島の復興を確信できるのではないでしょうか。
 今般、被災者の心情に配慮を欠いた不適切な言動によって辞任した閣僚が出たことは、誠に残念でなりません。失われた信頼を取り戻すためにも、内閣が一丸となって原発事故の収束と被災者支援に邁進することを改めてお誓いいたします。
 大震災後も、世界は歩みを止めていません。そして、日本への視線も日に日に厳しく変化しています。日本人の気高い精神を称賛する声は、この国の政治に向けられる厳しい見方にかき消されつつあります。政治が指導力を発揮せず、物事を先送りすることを日本化すると表現して、やゆする海外の論調があります。これまで積み上げてきた国家の信用が今、危機に瀕しています。
 私たちは、厳しい現実を受け止めなければなりません。そして、克服しなければなりません。目の前の危機を乗り越え、国民の生活を守り、希望と誇りある日本を再生するために、今こそ、行政府も、立法府も、それぞれの役割を果たすべきときです。
 言うまでもなく、東日本大震災からの復旧・復興は、この内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題です。これまでにも政府は、地元自治体とも協力して、仮設住宅の建設、瓦れき撤去、被災者の生活支援などの復旧作業に全力を挙げてきました。発災当初から比べればかなり進展してきていることも事実ですが、迅速さに欠け、必要な方々に支援の手が行き届いていないという御指摘もいただいています。
 この内閣がなすべきことは明らかです。復興基本方針に基づき、一つ一つの具体策を着実に、確実に実行していくことです。そのために、第三次補正予算の準備作業を速やかに進めます。自治体にとって使い勝手の良い交付金や復興特区制度なども早急に具体化してまいります。
 復旧・復興のための財源は、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合うことが基本です。まずは、歳出の削減、国有財産の売却、公務員人件費の見直しなどで財源を捻出する努力を行います。その上で、時限的な税制措置について、現下の経済状況を十分に見極めつつ、具体的な税目や期間、年度ごとの規模などについての複数の選択肢を多角的に検討します。
 省庁の枠組みを超えて被災自治体の要望にワンストップで対応する復興庁を設置するための法案を早急に国会に提出します。被災地の復興を加速するため、与野党が一致協力して対処していただくようお願いをいたします。
 原発事故の収束は、国家の挑戦です。福島の再生なくして日本の信頼回復はありません。大気や土壌、海水への放射性物質の放出を確実に食い止めることに全力を注ぎ、作業員の方々の安全確保に最大限努めつつ、事故収束に向けた工程表の着実な実現を図ります。世界の英知を集め、技術的な課題も乗り越えます。原発事故が再発することのないよう、国際的な視点に立って事故原因を究明し、情報公開と予防策を徹底します。
 被害者の方々への賠償と仮払いも急務です。長期にわたって不自由な避難生活を余儀なくされている住民の方々、家畜を断腸の思いで処分された畜産業者の方々、農作物を廃棄しなければならなかった農家の方々、風評被害によって故なく廃業に追い込まれた中小企業の方々、厳しい状況に置かれた被害者の方々に対して、迅速、公平かつ適切な賠償や仮払いを進めます。
 住民の方々の不安を取り除くとともに、復興の取組を加速するためにも、既に飛散してしまった放射性物質の除去や周辺住民の方々の健康管理の徹底が欠かせません。特に、子供や妊婦の方を対象とした健康管理に優先的に取り組みます。毎日の暮らしで口にする食品の安全、安心を確立するため、農作物や牛肉等の検査体制の更なる充実を図ります。
 福島第一原発の周辺地域を中心に依然として放射線量の大変高い地域があります。先祖代々の土地を離れざるを得ない無念さと悲しみをしっかりと胸に刻み、生活空間にある放射性物質を取り除く大規模な除染を自治体の協力も仰ぎつつ国の責任として全力で取り組みます。
 また、大規模な自然災害や事件、事故など、国民の生命、身体を脅かす危機への対応に万全を期すとともに、大震災の教訓も踏まえて、防災に関する政府の取組を再点検し、災害に強い持続可能な国土づくりを目指します。
 大震災からの復旧・復興に加え、この内閣が取り組むべきもう一つの最優先課題は、日本経済の立て直しです。大震災以降、急激な円高、電力需給の逼迫、国際金融市場の不安定化などが複合的に生じています。産業の空洞化と財政の悪化によって、国家の信用が大きく損なわれる瀬戸際にあります。
 日本経済の立て直しの第一歩となるのは、エネルギー政策の再構築です。原発事故を受けて、電力の需給が逼迫する状況が続いています。経済社会の血液ともいうべき電気の安定的な供給がなければ、豊かな国民生活の基盤が揺るぎ、国内での産業活動を支えることができません。
 今年の夏は、国民の皆様による節電のおかげで、計画停電を行う事態には至りませんでした。多大な御理解と御協力、ありがとうございました。我慢の節電を強いられる状況から脱却できるよう、ここ一、二年にかけての需給対策を実行します。同時に、二〇三〇年までをにらんだエネルギー基本計画を白紙から見直し、来年の夏を目途に新しい戦略と計画を打ち出します。その際、エネルギー安全保障の観点や費用分析などを踏まえ、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成の在り方を幅広く国民各層の御意見を伺いながら冷静に検討してまいります。
 原子力発電について、脱原発と推進という二項対立でとらえるのは不毛です。中長期的には原発への依存度を可能な限り引き下げていくという方向性を目指すべきです。同時に、安全性を徹底的に検証、確認された原発については、地元自治体との信頼関係を構築することを大前提として、定期検査後の再稼働を進めます。原子力安全規制の組織体制については、環境省の外局として原子力安全庁を創設して規制体系の一元化を断行します。
 人類の歴史は、新しいエネルギー開発に向けた挑戦の歴史でもあります。化石燃料に乏しい我が国は、世界に率先して新たなエネルギー社会を築いていかなければなりません。我が国の誇る高い技術力を生かし、規制改革や普及促進策を組み合わせ、省エネルギーや再生可能エネルギーの最先端のモデルを世界に発信します。
 歴史的な水準の円高は、新興国の追い上げなども相まって、空前の産業空洞化の危機を招いています。我が国の産業を牽引してきた輸出企業や中小企業がまさに悲鳴を上げています。このままでは、国内産業が衰退し、雇用の場が失われていくおそれがあります。そうなれば、デフレからの脱却も被災地の復興もままなりません。
 欧米やアジア各国は、国を挙げて自国に企業を誘致する立地競争を展開しています。我が国が産業の空洞化を防ぎ、国内雇用を維持していくためには、金融政策を行う日本銀行と連携し、あらゆる政策手段を講じていく必要があります。まずは、予備費や第三次補正予算を活用し、思い切って立地補助金を拡充するなどの緊急経済対策を実施します。さらに、円高メリットを活用して、日本企業による海外企業の買収や資源権益の獲得を支援します。
 大震災前から、日本の財政は、国の歳入の半分を国債に依存し、国の総債務残高は一千兆円に迫る危機的な状況にありました。大震災の発生により、こうした財政の危機レベルは更に高まり、主要先進国の中で最悪の水準にあります。国家の信用が厳しく問われる今、雪だるまのように債務が債務を呼ぶ財政運営をいつまでも続けることはできません。声なき未来の世代にこれ以上の借金を押し付けてよいのでしょうか。今を生きる政治家の責任が問われています。
 財政再建は決して一直線に実現できるような単純な問題ではありません。政治と行政が襟を正す歳出削減の道、経済活性化と豊かな国民生活がもたらす増収の道、そうした努力を尽くすとともに、将来世代に迷惑を掛けないために更なる国民負担をお願いする歳入改革の道、こうした三つの道を同時に展望しながら歩む厳しい道のりです。
 経済成長と財政健全化は、車の両輪として同時に進めていかなければなりません。そのため、昨年策定された新成長戦略の実現を加速するとともに、大震災後の状況を踏まえた戦略の再強化を行い、年内に日本再生の戦略をまとめます。
 こうした戦略の具体化も含め、国家として重要な政策を統括する司令塔の機能を担うため、産官学の英知を集め、既存の会議体を集約して、私が主宰する新たな会議体を創設します。
 経済成長を担うのは、中小企業を始めとする民間企業の活力です。地球温暖化問題の解決にもつながる環境・エネルギー分野、長寿社会で求められる医療関連の分野を中心に、新たな産業と雇用が次々と生み出されていく環境を整備します。また、海外の成長市場とのつながりを深めるため、経済連携の戦略的な推進、官民一体となった市場開拓を進めるとともに、海外からの知恵と資金の呼び込みも強化します。
 農業は国の本なりとの発想は、今も生きています。食は、いのちをつなぎ、いのちを育みます。消費者から高い水準の安全、安心を求められるからこそ、農林漁業は新たな時代を担う成長産業となり得ます。東北の被災地の基幹産業である農業の再生を図ることを突破口として、食と農林漁業の再生実現会議の中間提言に沿って、早急に農林漁業の再生のための具体策をまとめます。
 農山漁村の地域社会を支える社会基盤の柱に郵便局があります。地域の絆を結ぶ拠点として、郵便局が三事業の基本的なサービスを一体的に提供できるよう、郵政改革関連法案の早期成立を図ります。
 また、地域主権改革を引き続き推進します。
 東日本大震災と世界経済危機という二つの危機を克服することと併せ、将来への希望にあふれ、国民一人一人が誇りを持ち、この国に生まれてよかったと実感できるよう、この国の未来に向けた投資を進めていかなければなりません。
 かつて我が国は、一億総中流の国と呼ばれ、世界に冠たる社会保障制度にも支えられながら、分厚い中間層の存在が経済発展と社会の安定の基礎となってきました。しかしながら、少子高齢化が急速に進み、これまでの雇用や家族の在り方が大きく変わり、人生の安全網であるべき社会保障制度にも綻びが見られるようになりました。かつて中間層にあって、今は生活に困窮している人たちも増加しています。
 諦めはやがて失望に、そして怒りへと変わり、日本社会の安定が根底から崩れかねません。失望や怒りではなく、ぬくもりある日本を取り戻さなければ、希望と誇りは生まれません。
 社会保障制度については、全世代対応型へと転換し、世代間の公平性を実感できるものにしなければなりません。具体的には、民主党、自由民主党、そして公明党の三党が合意した子どもに対する手当の支給や、幼保一体化の仕組みづくりなど、総合的な子ども・子育て支援を進め、若者世代への支援策の強化を図ることが必要です。医療や介護の制度面での不安を解消し、地域の実情に応じた質の高いサービスを効率的に提供することも大きな課題です。さらに、労働力人口の減少が見込まれる中で、若者、女性、高齢者、障害者の就業率の向上を図り、意欲ある全ての人が働くことができる全員参加型社会の実現を進めるとともに、貧困の連鎖に陥る者が生まれないよう確かな安全網を張らなければなりません。
 本年六月に政府・与党の社会保障・税一体改革成案が熟議の末にまとめられました。これを土台とし、真摯に与野党での協議を積み重ね、次期通常国会への関連法案の提出を目指します。与野党が胸襟を開いて話し合い、法案成立に向け合意形成できるよう、社会保障・税一体改革に関する政策協議に各党各会派の皆様にも御参加いただきますよう、心よりお願いをいたします。
 日本人が希望と誇りを取り戻すために、もう一つ大事なことがあります。それは、決して内向きに陥らず、世界に雄飛する志を抱くことです。明治維新以来、先人たちは果敢に世界に挑戦することにより繁栄の道を切り開いてきました。国際社会の抱える課題を解決し、人類全体の未来に貢献するために、私たち日本人にしかできないことが必ずあるはずです。
 新たな時代の開拓者たらんという若者の大きな志を引き出すべく、グローバル人材の育成や自ら学び考える力を育む教育など人材の開発を進めます。また、豊かなふるさとを目指した新たな地域発展モデルの構築や、海洋資源の宝庫と言われる周辺海域の開発、宇宙空間の開発利用の戦略的推進体制の構築など、新しい日本のフロンティアを開拓するための方策を検討していきます。
 国民の皆様の政治、行政への信頼なくして国は成り立ちません。行政改革と政治改革の具体的な成果を出すことを通じて、信頼の回復に努めます。
 既に、終戦直後の昭和二十一年、国民の信頼を高めるため、行政の運営を徹底的に刷新する旨の閣議決定がありました。六十年以上を経たにもかかわらず、行政刷新は道半ばです。行政に含まれる無駄や非効率を根絶し、真に必要な行政機能の強化に取り組む、こうした行政刷新は不断に継続、強化しなければなりません。政権交代後に取り組んできた仕分の手法を深化させ、政府・与党が一体となって、国民の生活が第一の原点に立ち返り、既得権と戦い、あらゆる行政分野の改革に取り組みます。
 真に国民の奉仕者として能力を発揮し、効率的で質の高い行政サービスを実現できるよう、国家公務員制度改革関連法案の早期成立を図り、国家公務員の人件費削減と併せて公務員制度改革の具体化を進めます。
 政治改革で最優先すべき課題は、憲法違反の状態となっている一票の格差の是正です。議員定数の問題を含めた選挙制度の在り方について、与野党で真剣な議論が行われることを期待します。
 我が国を取り巻く世界の情勢は、大震災後も日々変動し続けています。新興国の存在感が増し、多極化が進行する新たな時代の呼びかけに対して、我が国の外交もしっかりとこたえていかなければなりません。
 我が国を取り巻く安全保障環境も不透明性を増しています。そうした中で、地域の平和や安定を図り、国民の安全を確保すべく、平時からいかなる危機にも迅速に対応する体制をつくることは、国として当然に果たすべき責務です。昨年末に策定した新防衛大綱に従い、即応性、機動性等を備えた動的防衛力を構築し、新たな安全保障環境に対応していきます。
 日米同盟は、我が国の外交・安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域のみならず、世界の安定と繁栄のための公共財であることに変わりはありません。
 半世紀を超える長きにわたり深められてきた日米同盟関係は、大震災でのトモダチ作戦を始め、改めてその意義を確認することができました。首脳同士の信頼関係を早期に構築するとともに、安全保障、経済、文化、人材交流を中心に、様々なレベルでの協力を強化し、二十一世紀にふさわしい同盟関係に深化、発展させていきます。
 普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄の皆様に誠実に説明し、理解を求めながら全力で取り組みます。また、沖縄の振興についても積極的に取り組みます。
 今後とも、世界の成長センターとして期待できるアジア太平洋地域とは、引き続き政治・経済面での関係を強化することはもちろん、文化面での交流も深め、同じ地域に生きる者同士として信頼を醸成し、関係強化に努めます。
 日中関係では、来年の国交正常化四十周年を見据えて、幅広い分野で具体的な協力を推進し、中国が国際社会の責任ある一員として、より一層の透明性を持って適切な役割を果たすよう求めながら、戦略的互恵関係を深めます。
 日韓関係については、未来志向の新たな百年に向けて一層の関係強化を図ります。北朝鮮との関係では、関係国と連携しつつ、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決を図り、不幸な過去を清算して国交正常化を追求します。拉致問題については、我が国の主権にかかわる重大な問題であり、国の責任において、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くします。
 日ロ関係については、最大の懸案である北方領土問題を解決すべく精力的に取り組むとともに、アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係の構築に努めます。
 多極化する世界において、各国との確かな絆を育んでいくためには、世界共通の課題の解決に共に挑戦する大きな志が必要です。こうした志ある絆の輪を官民の様々な主体が複層的に広げていかなければなりません。
 大震災からの復旧・復興もそうした取組の一例です。被災地には、世界各国から温かい支援が数限りなく寄せられました。これは、戦後の我が国による国際社会への貢献と信頼の大きな果実とも言えるものです。我が国は、唯一の被爆国であり、未曽有の大震災の被災国でもあります。各国の先頭に立って核軍縮、核不拡散を訴え続けるとともに、原子力安全や防災分野における教訓や知見を他国と共有し、世界への恩返しをしていかなければなりません。
 国と国との結び付きを経済面で強化する取組が経済連携です。これは、世界経済の成長を取り込み、産業空洞化を防止していくためにも欠かせない課題です。包括的経済連携に関する基本方針に基づき、高いレベルの経済連携協定の締結を戦略的に追求します。具体的には、日韓・日豪交渉を推進し、日・EU、日中韓の早期交渉開始を目指すとともに、TPP、環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加についてしっかりと議論し、できるだけ早期に結論を出します。
 資源・エネルギーや食料の安定供給の確保などの面でも経済外交を積極的に進めます。また、途上国支援、気候変動に関する国際交渉への対応、中東・北アフリカ情勢への対応や脆弱国家対策といった諸課題にも我が国として積極的に貢献していきます。
 政治とは、相反する利害や価値観を調整しながら、粘り強く現実的な解決策を導き出す営みです。議会制民主主義の要諦は、対話と理解を丁寧に重ねた合意形成にあります。
 私たちは、既に前政権の下で、対話の積み重ねによって解決策を見出してきました。ねじれ国会の制約は、議論を通じて合意を目指すという立法府が本来あるべき姿に立ち返る好機でもあります。
 ここにお集まりの国民を代表する国会議員の皆様、そして国民の皆様、改めて申し上げます。
 この歴史的な国難から日本を再生していくため、この国の持てる力の全てを結集しようではありませんか。閣僚は、一丸となって職責を果たす。官僚は、専門家として持てる力を最大限に発揮する。与野党は、徹底的な議論と対話によって懸命に一致点を見出す。政府も企業も個人も、全ての国民が心を合わせて、力を合わせて、この危機に立ち向かおうではありませんか。
 私は、この内閣の先頭に立ち、一人一人の国民の声に、心の叫びに真摯に耳を澄まします。「正心誠意」行動します。ただ国民のためを思い、目の前の危機の克服と宿年の課題の解決のために、愚直に一歩一歩、粘り強く、全力で取り組んでいく覚悟です。
 皆様の御理解と御協力を改めてお願いして、私の所信といたします。(拍手)
#16
○議長(西岡武夫君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(西岡武夫君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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