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2011/04/13 第177回国会 参議院 参議院会議録情報 第177回国会 国民生活・経済・社会保障に関する調査会 第5号
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2011/04/13 第177回国会 参議院

参議院会議録情報 第177回国会 国民生活・経済・社会保障に関する調査会 第5号

#1
第177回国会 国民生活・経済・社会保障に関する調査会 第5号
平成二十三年四月十三日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十三日
    辞任         補欠選任
     藤末 健三君     増子 輝彦君
 四月十二日
    辞任         補欠選任
     高橋 千秋君     徳永 エリ君
     平山  誠君     金子 洋一君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         山崎  力君
    理 事
                梅村  聡君
                舟山 康江君
                関口 昌一君
                古川 俊治君
                山本 博司君
                寺田 典城君
    委 員
                金子 洋一君
                郡司  彰君
                佐藤 公治君
                谷  亮子君
                津田弥太郎君
                徳永 エリ君
                藤田 幸久君
                増子 輝彦君
                松井 孝治君
                柳澤 光美君
                石井 準一君
                岸  宏一君
                中原 八一君
                牧野たかお君
                松村 祥史君
               三原じゅん子君
                竹谷とし子君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        近藤 俊之君
   参考人
       日本女子大学人
       間社会学部教授  岩田 正美君
       独立行政法人労
       働政策研究・研
       修機構副主任研
       究員       周  燕飛君
       鶴岡手をつなぐ
       親の会会長    橋本 廣美君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国民生活・経済・社会保障に関する調査
 (「持続可能な経済社会と社会保障の在り方」
 のうち、セーフティネットと生活・就労支援の
 課題について)
    ─────────────
#2
○会長(山崎力君) ただいまから国民生活・経済・社会保障に関する調査会を開会いたします。
 議事に先立ちまして、去る三月十一日に発生いたしました東日本大震災以降、初の調査会開会でもございますので、震災によりお亡くなりになられた方々に対して御冥福をお祈りし、謹んで黙祷をささげたいと思います。
 御起立をお願いいたします。黙祷。
   〔総員起立、黙祷〕
#3
○会長(山崎力君) 黙祷を終わります。御着席をお願いいたします。
    ─────────────
#4
○会長(山崎力君) 委員の異動について御報告いたします。
 去る二月二十三日、藤末健三君が委員を辞任され、その補欠として増子輝彦君が選任されました。
 また、昨日、高橋千秋君及び平山誠君が委員を辞任され、その補欠として徳永エリ君及び金子洋一君が選任されました。
    ─────────────
#5
○会長(山崎力君) 国民生活・経済・社会保障に関する調査を議題とし、「持続可能な経済社会と社会保障の在り方」のうち、セーフティネットと生活・就労支援の課題について参考人の方々から御意見を聴取いたします。
 本日は、日本女子大学人間社会学部教授岩田正美君、独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員周燕飛君及び鶴岡手をつなぐ親の会会長橋本廣美君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 御多用中のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございますが、まず岩田参考人、周参考人、橋本参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきます。その際、今回の大震災に関し、それぞれ専門のお立場からお考えを付け加えていただければ幸いです。その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず岩田参考人にお願いいたします。
#6
○参考人(岩田正美君) 岩田でございます。どうぞよろしくお願いします。
 今日、私が報告いたしますのは、最後のセーフティーネットと言われる生活保護の近年の動向とその課題ということについて申し上げたいと思います。(資料映写)
 先生方御承知のことと思いますけれども、日本の生活保護の特徴というのは、四六年に旧法ができて、五〇年に新法になったまま今日まで大きな原理、枠組みは変わっておりませんが、その中で四つほど大きな特徴があります。
 一つは、一般扶助と言われる性格でして、これは無差別平等原則とも言われますが、貧困であれば稼働層でもこの制度を利用できるという、こういうことになっております。
 それから、扶助は今八つございますけれども、八つの扶助の組合せで全ての生活の側面をカバーする、これはオール・オア・ナッシング・アプローチと私は呼んでおりますが、つまり生活保護の制度にキャッチしてもらうと全てが来るんですけれども、生活保護から出てしまうと何にもなくなってしまうという、そういう性格を持っています。
 それから三つ目は、生活保護は最後の手段ということで、保護の補足性ということがありまして、家族の扶養であるとか労働能力の活用のほか、他法他施策が優先ということになります。
 それから、生活保護は複数の制度に分かれていないんですね、中は四つの扶助があるんですけれども。ほかの国は、こういう性格の、公的扶助といいますけれども、税金で一定の貧困層に対してなされる制度は幾つかあるのが普通なんですけれども、日本の場合、この一つの非常に大きくがっちりできた制度で運営されてきたという、こういう特徴があります。
 これも御承知のとおりですが、社会保障の発達がその後、生活保護というのは戦後いち早くできまして、戦後の混乱期の国民生活に非常に大きな役割を果たすわけですが、その後、国民皆保険・皆年金の実現と成熟、あるいは介護保険制度の導入、福祉サービスの発達、雇用の拡大と企業福利の発達ということがありまして、生活保護は非常に大きく役割を変えていきます。それまではさっき申しましたように稼働層にも対応していたんですけれども、ほとんど非稼働層といいましょうか、高齢者とか傷病者の特に単身世帯へ対応するという、こういう制度に変わっていきます。
 ちょっとこの図を見ていただきたいと思います。
 これは、ブルーの線が稼働能力を持っている世帯ですね、稼働している世帯ですね。これ、稼働しているというのは、例えば日雇労働とかパートタイマーとかそういう形で、何か稼働はしているんですけれども、収入が低くて、その差額を生活保護で賄って最低生活をようやく達成しているという、こういう世帯。ピンクの方は、これは非稼働の、働けない、病気であるとか高齢であるとかそういう世帯になりますが、ちょうどこの六四、五年を契機にして大きく二つの位置が逆転してまいります。これがずっと最近まで続いてきたわけです。
 これはこれまでの経緯なんですけれども、これから近年の生活保護が更にそこからもう一つ大きく変わってきたということで、このグラフを見ていただきたいと思います。最近の生活困窮者の増大ということが生活保護にどういう影響を与えたかという図です。
 一番上の赤いラインで書いてあるものがこれは保護率で、これは対千人ですね、パーミルという記号でよく表しますけれども、向かって右側がパーセントが書いてあるものになります。そして、青が保護人員の毎年毎年の月平均の数です。それから、緑色は世帯数なんですね。
 一九五二年、統計がきちっと取り出した一九五二年から二〇〇九年までをここに出しておりますけれども、それで見ていただくと分かるように、保護世帯の数は、どちらかというと減るというよりはちょっとずつ増えたんですね。この理由は、単身世帯が増えたということです。ですから、世帯の数は増えるんですけれども、保護人員は一遍ぐっと下がっていきます。保護率も下がっていきます。一遍、オイルショックの後、二回のオイルショックの後ちょっと上がるんですけど、その後また今度はずっと下がって、保護率も大変低くなってきますが、それが九〇年代の終わりから特に二〇〇〇年以降急激に増えております。二〇一〇年で、もう少しこれが上がって百九十万以上になっておりまして、二〇一一年一月、直近の速報でもうちょっとで二百万人という数になっております。それはちょうど五〇年代の水準に近づいているということになります。私も、九〇年代以降、生活保護の人口がだんだん増えていくという経過を見ていて、初めはそれでもオイルショックの後ぐらいかなと思っていたんですけれども、今もうそれを超して五〇年代の高度経済成長の直前の状況に近づいているということです。
 どうしてかということなんですけれども、これは言うまでもなく、いろんな形で雇用状況が変わってきまして、非常に非正規雇用が拡大しているということが一番にあるわけですが、これは非正規雇用それ自体がいいとか悪いとかというよりも、非正規雇用が拡大しますと、これまで企業福利の中にカバーされていた人たちが縮小して、その枠外に押し出されている人たちが増えてきます。同時に、社会保険へカバーされない人々が増えてきます。それから、先ほど申しました単身化というのは、これは貧困な人たちだけではなくて、一般的に今大変増えていっております。特に都市部では単身世帯の割合が大変増えておりますので、家族扶養が弱体化しているということで、最後のセーフティーネットが機能してしまう人たちが結果的に増えてきたと考えていいだろうと思います。
 それでは、どういう世帯が今生活保護を利用しているのかという、この円グラフを見ていただきたいと思いますが、これは世帯類型なんですけれども、まず全体の七五%以上が単身世帯です。ですから、母子とか家族がそろっているという世帯は非常に少数です。現に保護を受けている世帯類型で見ますと、四二%が高齢者世帯ですね。母子世帯は八%程度です。それから、傷病それから障害で三三%。その他の世帯というのはこのいずれの世帯類型でもないということを示しておりまして、これは非常に雑多なわけですが、この中に場合によっては働いている世帯、働ける世帯が交じるというふうに考えることができますが、ここが一七%とちょっと増えております。
 これは、さっきのは今保護を受けている人全体の中でどういう性格の世帯があるかということを言っているわけですが、これは保護開始のきっかけですね、保護開始のきっかけが何であったかという、そういうことを示しております。凡例で見ていただくと分かりますように、元々非常に大きいのは傷病によって保護を受ける、病気になったとかそういうことが多いんですが、二〇〇八年から二〇〇九年にかけて急激に増えているのは失業や収入の低下、稼働収入の低下という、これがぐっと伸びて、今傷病による保護開始を超えてきたということがあります。二番目が貯蓄等の減少なんですね。貯蓄が減ったとかもうなくなっちゃったというのがミカン色の部分がそうです。これは、ある程度ストックで頑張っていた世帯がもう頑張れなくなったというようなことを示していると思われます。
 つまり、少し要約しますと、現在の保護世帯が増加した一つは、単身高齢者の傷病や貯蓄の減少などによるものがもちろんあります。高齢者のうち生活保護を受けている層の四割は年金があります。年金額が最低生活に満たないために、その差額が生活保護で出ているということになります。それから、生活保護を受ける場合は医療保険に加入しています。未加入だったのは一割程度なんですね。ですから、社会保険にある程度カバーされていてもそれで十分ではないという世帯が一固まりいると。それからもう一つ、近年多くなった稼働収入の低下とかあるいは失業とかいうその他の世帯の増加ということになります。
 そこで、次に第二のセーフティーネットと近年ずっと言われてきたものと生活保護の関係を見ますと、これは、生活保護はなるべくちっちゃくて、社会保険によってまず予防されて、真ん中に、今その他の世帯という類型で御覧いただいたような、ちょっと働いているとか働けるとかいう世帯に求職者支援を拡大して、真ん中に第二のセーフティーネットを持ってくることによって生活保護へ掛かる負荷をちっちゃくしようと、こういう政策がずっとなされてきているわけですが、これがその理念図なわけですが、実際はこういうふうな感じなんですね。実際は、求職者支援が生活保護の上に、生活保護に落ちるのを予防するようにまだ十分できていなくて、まだ生活保護の方が頼りになってしまうという、そういう現状があります。
 なぜかといいますと、生活保護は先ほど言いましたように無差別平等で非常にがっちりした制度で、しかも中に八つの扶助を全部持っていますので、これを利用すると生活の安定度が非常に高いんですね。それに対して求職者支援は、生活給付、住宅手当というのがくっついていますけれども、条件が非常に細かくそれぞれありまして、情報がきちっと伝わっていないということもありますけれども、それと初期に貸付制度がやはり中心だったというようなこともあって、これが生活保護の歯止めとして真ん中にぐっと入ってくるというまでにはまだ至っていないというような、こういう現状ではないかと思っています。
 それから、真ん中にちょっとクエスチョンマークを書いたのは、こういうものからみんな何かこう、何というんでしょうね、キャッチされないでこぼれちゃうという層がまだあるということです。
 こういうことを見てきますと、現在の生活保護の問題点として三つ挙げられると思います。
 一つは、生活保護は現状を見ますと異なった二つの対象へ同じ対応をしているんですね。つまり、高齢層と障害者層という非稼働層と稼働可能層に対して同じ制度が同じように対応するという枠になっています。
 それから二番目は、先ほど申しましたオール・オア・ナッシング・アプローチによって、保護から抜け出た後の対応が薄いんですね。そうしますと、生活保護にいた方がいいものですから、これは貧困のわなといいますけれども、だんだんに保護から抜け出て一気にいろいろな扶助がなくならないような制度設計になっていないものですから、生活保護が頼りになってしまうという状況があります。
 三番目は、先ほど申しました社会保険や求職者支援対策とのリンクが弱いんですね。これは、一つは支給水準に一定の合理的な、何といいますか、関係がないということと、それから、社会保険には一定の労働時間の限定がありますけど、生活保護の場合は何時間働いていても収入が低ければ当然生活保護は出てきますので、そういう労働時間の限定というものが合理的に設計されていないんですね。ですから、それぞれの制度がばらばらになっているということが挙げられると思います。
 じゃ、どうしたらいいかということですが、これは私の考えですが、共通に住宅扶助というものがあって、これが今求職者支援の中では住宅手当という形でやや広くなっていますが、これを独立させまして、民間賃貸住宅に住んでいる低所得層にもう少し一般的な形で出ていける、これだけで、これと年金でやれば生活できるという、そういう高齢者もいると思いますが、この住宅扶助とそれから長期保護ですね、障害を持っていたり、それから高齢者の場合は年金と医療扶助というような、こういうタイプのものと、それから求職者扶助ですね、今の求職者支援法のパターンをもう少し生活保護の生活扶助とレベルをリンクさせていくような求職者扶助という制度に少し整理をしていくというようなやり方が考えられるだろうと思います。これは、ほかの先進諸国のタイプは大体こういうふうに分けていくというのが普通になります。
 最後に、今回の三つぐらいの非常に困難な要素を抱えた災害によって今後生活困窮とか生活保護がどうなるかということを、今から簡単に言えるようなことではないんですけれどもちょっと申し上げたいと思いますけれども、今回は非常に大規模であると同時に、非常に長期化する可能性が高いわけですね。最も大きな問題は生活基盤が徹底的に破壊されてしまっているということです。生活基盤というもの、これは家を失う、職を失う、家族を失う、地域を失うという形でいいますと、こんなに徹底的に非常に大きなエリアで生活が破壊されるというのは戦争以外に確かになかったのではないかと思います。とりわけ、一つ一つの生活が壊されたというより地域丸ごととか親族丸ごと破壊されますので、日本の福祉とか社会保障にとって非常に大事だった家族や親族のネットワークというものは、非常に今後頼りにできない状況になる可能性があります。
 一般的に復興対策は当然地域社会全体を焦点に当てざるを得ませんので、個々の個人とか家族生活の多様性がありますけど、そこへの配慮というのはどうしても遅れがちになるだろうと思われますので、そこの問題が一つ出てくると。
 これに対して生活保護はどういう役割をするだろうかということですが、既に厚生労働省の方でも生活保護が出ていかなきゃならない場合はきちっとやるようにというようなことを言っておりますけれども、さっき申しました他法他施策優先原則というものがあるものですから、義援金とか様々な生活再建法というものが出てきますとそっちが先行します。ですから、そこの程度がどういうふうになるかということが非常に大きな問題になっていく。
 それから、これまでの阪神・淡路大震災等で繰り返し言われていることは、生活基盤が根こそぎ崩れても、現在、この大震災が起こる前の一月に生活保護が二百万人に達しようというような状況に日本はあるんですね。そこにこれが出てきましたから、つまり元々貧困だった層がこの中にいるわけです。こういう層はとりわけ復興の波に乗りにくい、取り残されてしまう、例えば仮設から出られないとか、そういうふうに多分なりやすいだろうと思われます。こういう層にどういう対策を今後やっていくかといいますか、これを最初からある程度予測したプランニングというのが恐らく大変大事だろうと思います。
 私からの報告は以上でございます。
#7
○会長(山崎力君) どうもありがとうございました。
 続いて、周参考人にお願いいたします。
#8
○参考人(周燕飛君) 周燕飛です。今日はどうぞよろしくお願いします。
 今日は、ここでお話をさせていただく機会をいただいたことは非常に光栄に思います。本来ならば、私はまだ母子世帯の研究始まってそれほど長くないのでここで話しする資格はないんですが、御要請を受けまして、私がこれまで研究したことから得られた知見を一部御紹介させていただきたいと思います。
 話のテーマなんですが、母子世帯の母の就業と経済的自立なんですが、特に、働いているのに貧困という現状に注目してお話をさせていただきたいと思います。
 まず、二つ面白い順位を御紹介したいと思います。(資料映写)
 この数字を見ていただければ分かるように、OECDの二十四か国中で上から二位なのはシングルマザーの就業率なんですね、八四・五%。ルクセンブルクよりは下だけなんですね。もう一つは、下から二番目の順位は母子世帯の貧困率。厚生労働省の調べによると、五四・三%の母子世帯は中位所得の半分未満の生活をしているという調査があります。
 厚生労働省の二〇〇六年の調査によると、母子世帯の七五%が年収二百七十万円未満なんですね。生活保護を受給している母子世帯の平均毎月受給している生活扶助額は約二十二万円なので、つまり生活保護基準以下に生活している母子世帯の母は半数以上あるんですね。少し前の推計データですと、ワーキングプア、つまり生活保護水準以下の収入で生活している働く母子世帯は全体の四割程度あります。
 国民生活基礎調査に基づいて再計算すると、母子世帯の子供の貧困率は二親世帯の約六倍ですね。これはかなり深刻な状況です。
 諸外国に比べると、日本の一つの特徴としては、働く母子世帯の貧困率は極めて高いことです。最近のOECDの国際比較を見ていただければ分かるように、日本では母子世帯の母は、有業の場合は貧困率は五八%なんですね。無業の場合は僅かに、六〇%、二%高いので、それほど差がないんですね。
 しかし、諸外国のデータを見ていただければ分かるように、母が働いている場合は母子世帯の貧困率が急激に下がります。アメリカとかイギリスとか、母親のジョブレスあるいは不完全雇用、一年のうち半分しか働かないとかパートタイマーで働いているとか、そういったことが原因で貧困になっているケースが多いんですが、日本では母子家庭の母がフルタイムで働いても貧困というのは一つの普遍的な特徴とも言えます。
 では、どうして母子世帯の母は働いているのに貧困なのか。主な要因は三つあります。
 一つは、母子世帯の母の稼働能力が低いんですね。二〇〇六年現在、シングルマザーの平均勤労年収は百七十一万円で、その同じ時期の女性全体の勤労収入の約半分にすぎないんです。母子世帯の母の半数弱は実はパートタイマーとして働いておりまして、時給が低いというか、収入が低い状況であります。
 もう一つの要因は、財産所得や養育費など補填的な収入が非常に少ないことですね。母子世帯の平均の預貯金は、五十万円未満は全体の四八%。本人の名義の持家持っている人は一〇・九%。別れた夫から養育費もらっている人は一九%、その平均額は四・二万円と、非常に低い金額になっております。
 さらに、もう一つの要因は、所得再分配は進んでいないことです。ここの図ちょっと見にくいかもしれないんですが、OECDの三十か国を比較してみたんですが、その中で唯一日本だけは再分配した後に子供のある世帯の貧困率が逆に上昇しているんですね。子供のある世帯の貧困率は、母子世帯が一番大きな部分を占めていると思います。
 では、この三つの原因を見て、どのように母子世帯の貧困を解消するか、軽減するかという方策を考えなければいけないですが、その一つ一つ考えますと、まず稼働能力をどう高めるかということなんですね。
 私から見ると、まず母親に正社員の仕事に就けるような就業促進が必要ではないかなと思います。厚生労働省の母子世帯調査によると、正社員の一時間当たりの賃金は非正社員よりは四割から七割高いんですね。しかも、その正社員の平均収入は二百五十万円あります。もし、それをいろいろ非労働所得も入れていれば、かなりの可能性で母子世帯は貧困から脱出できると思います。仮に、今のシングルマザーの正社員の比率は、二〇〇六年時点の四二・五%から例えば六〇%まで引き上げることが成功すれば、母子世帯の貧困率が最大で八ポイントも改善することができると思います。
 問題は、どうすればその母子世帯の母の正社員就業を促進できるか。
 私はいろいろ統計分析したんですが、母親が正社員に就く可能性を高めるいろいろの要因があります。例えば、その中で重要なのは母親の学歴。特に母子世帯の母の場合は、中卒とか高卒とか、そういう低位学歴層の人が非常に多いんですね。その中で短大卒以上の学歴を持っている母親の方が正社員に就く可能性が非常に高くなります。さらに、学校を卒業した後に少なくとも一度は正社員の就職を経験していた人は正社員になりやすい。さらに、専門資格を保有している、例えば看護師とか調理師とか介護福祉士とか、そういった専門資格を持っている母親の方は正社員就業になる可能性が高くなっています。
 ただ、調査によると、実はシングルマザーの半数以上は当面の間、つまりクール三年から五年の間には正社員就業自体を希望すらしていないんですね。なぜそういうことになっているかというと、実は育児制約が非常に大きな障壁になっています。大体平均的に八歳から九歳の子供を抱えている母子世帯の母なので、子育てしながら正社員就業するというのが非常にきついと判断する母親が少なくないんですね。特に母親と同居をしていないとか、自分の祖父母と同居をしていない母子世帯とか、あと子供の年齢が低い母子世帯の母ほど正社員就業の希望を持ちにくいということが分かっています。
 実は、厚生労働省も母子家庭の母の正社員を促進しなければいけないという問題意識は非常に持っておりまして、これまでに多くの政策を打ち出しているんですね。
 主に二〇〇三年に母子寡婦福祉法改正以降に導入された制度なんですが、ここでその中の主な五つをピックアップしているんですが、最もよく知られているのは高等技能訓練促進費なんですが、この制度は、二〇〇三年に導入されて二〇〇八年に大幅に拡充されたんですね。今の制度の概要としては、二年以上養成学校に通学する場合には、その養成期間全部の期間の生活費及び入学支援修了一時金を助成するという制度なんですね。金額もかなり大きくて、月額が七万円から最大十四万一千円までという金額を出してくれるので非常に、利用した場合は母子家庭の母にとっては有り難いという意見が多いんですね。
 もう一つは、自立支援教育訓練給付金制度なんですが、母子世帯の母の場合は、多くはパートとか余り就業していなかった人も多かったので、雇用保険に加入していない人が多いんですね。そういった場合は教育訓練給付金が受けられないんですが、この制度を利用すれば、雇用保険に加入していなくても教育訓練給付金を得られると。ただ、この制度は二〇〇七年に半分にカットされていたんですね。二〇〇七年以前は費用の四〇%を助成していたんですが、その後は二〇%になって、なぜそうなったかというと、雇用保険に合わせるということだったんですね。
 あとは常用雇用転換奨励金制度なんですが、この制度は二〇〇八年、既に廃止されて中小企業雇用安定化奨励金制度に移行されていたんですね。これは、母親に対してというよりも、事業主、母子世帯の母を雇用している事業主に対して奨励金を支給するというものなんですね。
 さらに、母子世帯の母が休職している際には、一人一人に対してきめ細かな支援を行うというのが、母子自立支援プログラム策定事業という事業がありまして、社会福祉法人とかに委託して、そういう何か策定員が、母子自立支援員がハローワークと連携して、お母さん方の個別の事情に合わせてきめ細かな支援を行うというのがこの制度なんです。
 さらに、多くの母親からの意見もありまして、職業訓練中に託児サービスがないと受けられないよということもあって、二〇〇九年にこの制度が無料あるいは低料金で職業訓練中にも託児サービスを利用できることになりました。
 これらの制度の中でどれが母子家庭の母の正社員就業に最も有効なのか。私もいろいろ研究してきたんですが、結論からいうと、正社員就業に最も有効なのは一番目の高等技能訓練促進費制度なんですね。平成二十一年度の実績では千五百九十人が資格を取得しておりまして、そのうちの約七割は正社員就業を果たしています。最も多くの人を取得していたのが看護師あるいは准看護師の資格なんですが、中には取得の数が少ないんですが正社員就業率一〇〇%の資格、例えば理学療法士とか言語聴覚士とか、そういった資格もあります。
 ただ、この制度は弱点があります。なぜならば、先ほど申し上げたように給付が非常にジェネラスなんですね。もしこれを大勢の母親に適用しようとすると膨大な財源が必要となります。実際、私計算してみたんですが、一人当たり最大五百十二・六万円が必要です。そのためなのか、支給件数は実は少なかったんですね。二〇〇五年から二〇〇九年の間に累計で一万件程度支給しておりまして、児童扶養手当の受給者の〇・二%しかないんですね。ですから、この制度は有効ではあるんですが、やはり薄く広く配分する制度ではなくて、どっちかというと厚く少数の人に配るという制度なんですね。
 したがって、正社員就業の効果が比較的に弱いものですが、より多くの母親が受けられる費用の安い助成金や、あるいは貸付けタイプの自己啓発・職業能力開発も必要と思います。
 あと、もう一つは補填的な収入を増やす方法なんですが、ここで私は養育費の徴収強化に注目したいと思います。
 アメリカとかに比べると、日本の母子世帯は養育費を受給しているのが僅か一九%なんですね。八割の母子世帯は離婚によるものなので、仮に養育費の受給率がアメリカ並みの水準になった場合は、母子世帯の平均年収は六・四%上昇すると考えられます。
 問題は、アメリカ並みの養育費徴収は可能なのか。もし御興味あれば、この下夷先生の本を読んでいただきたいんですが、アメリカの制度は個人のプライバシーへの非常に強い関与が必要です。例えば、ひどいところは、お父さん、元旦那さんの写真を張り出して指名手配みたいな感じで養育費を徴収する州もあります。日本ではそれほど強く関与することはやっぱり抵抗が強いということなんですね。
 しかし、養育費は何とか確保したいということで、近年いろんな政策は導入されました。例えば養育費の手引とか、あるいは養育費相談支援センターとか、主に相談員を養成する機関なんですが、そういった制度は導入されてはいるんですが、効果はまだ確認できていない。
 日本では養育費をアップする方法は、では、ないのでしょうか。私が考えるには、やっぱり養育費の取決めや受給を取り持つ仲介機関は必要ではないかなと思います。実は、日本の母子世帯の母のかなりの部分で、相手とかかわりたくない、あるいは相手に支払意思や能力がないと思ったといった理由で養育費を受け取っていないんですね。そういった場合は、やっぱり専門の機関がちゃんと相手の所得調査を行ったり、養育費を受け取ったりする仲介をすれば、かなり養育費の徴収がアップするんではないかなと思います。
 あと、元の夫による実物サポートも今余り受け入れられてないんですが、それを今後増やすことで母子家庭の母の経済的な困難はある程度解消できるんではないかなと思います。
 さらに、よく母子家庭の別れた元夫からの意見もあるんですが、僕は養育費だけ払って子供との交流は全くさせてもらえない、義務は果たしているんですけど、権利はもらっていないと。ですから、元夫と子供との交流の機会を確保することによって養育費の支払う意欲を高めることができるんではないかなと思うんですね。母親から抵抗があるんですね、余り別れた夫と会いたくないとか。そういった場合はやっぱり仲介機関があればそれをある程度、交流も円滑にできるんじゃないかなと思います。
 更に重要なのは、税や社会保障を通じて母子世帯の貧困度合いを軽減することではないかなと思います。やはり母親の就労や私的扶助に頼るだけでは限界があります。そのためには、税や社会保障を通じて母子世帯への所得移転が必要と思います。
 具体的な方策としては、例えば負の所得税が一つなんですね。アメリカとかイギリスはそういった制度があります。こういった制度は低所得の勤労者世帯への所得控除なんですね。利点は母親の就労意欲を損なわないと。もし払うべき所得税が控除額よりも低い場合は、その使い切らなかった部分は現金の形で受け取ることができるという制度なんですね。
 もう一つは、児童扶養手当の役割強化なんです。今は児童扶養手当は所得制限があって、最大で四万一千円ぐらいもらえるんですが、そこは私はやっぱり子供の年齢に応じてめり張りを付けるべきだと思います。例えば、子供が中学生、高校生とか、教育費がかさむ時期においては金額を増やしたりとか、そういった必要があるんではないかなと思います。
 あともう一つは、児童扶養手当の受給資格には所得審査があるんですが、その所得は世帯所得というのがなっていて、親と同居をしている場合はなかなか受けられにくいということがよく言われているんですね。しかし、同居をすることは母子家庭の母の就労には非常に有利なんですね。子供を面倒見てもらえると。お母さんが一人で子育てするよりも祖父母と一緒に同居をした方がかなり楽なんですね。ですから、将来的には親と同居をしても児童扶養手当の受取が不利にならないように何とか工夫できないかなと思います。
 以上まとめると、ワーキングプアという状態から抜け出すためには三つ条件があります。一つは、母親の稼働能力を高めること、もう一つは、養育費など補填的な収入を増やすこと、さらに、税や社会保障を通じて低所得者の勤労者世帯への所得再分配を促進することが必要不可欠だと思います。
 今回の大震災で深刻な影響を受けた地域、東北三県なんですが、そういったところにも多くの母子世帯が住んでおります。人口、全体の割合としては全母子世帯の四%から五%程度なんですね。ただ、特徴的にはやはり経済基盤の弱い世帯が多くて、特に父子世帯に関しては経済基盤の弱い父子世帯が多いことが見られます。
 今回の震災はそういう一人親世帯にとってより深刻であると思います。なぜならば、彼ら、彼女たちは元々経済基盤が非常に弱いんですね。さらに、震災によって全てを失ってしまいますので、そういった状況で生活保護を頼らざるを得ない一人親世帯が一時的に増えるものと考えられます。さらに、当面の間に子供を連れてどこか避難している一人親世帯が少なくないと思います。そこではやっぱり働きながら子育てする必要が出てきます。祖父母と同居せずに全く知らないところで子育てすることは今まで以上に大変だと思います。さらに、一般世帯に比べると、一人親世帯は避難先から地元に戻る際のハードルも高いと考えられます。
 こういった被災した一人親世帯への支援の在り方なんですが、まず、被災した一人親世帯に関しては必要性がもし認められれば、通常よりも簡易な手続で期限付、例えば六か月間の生活保護を与えるべきであります。ただ、もちろんその後はちゃんとした審査を行い、継続か打切りかを総合的に判断すべきだと思います。生活保護の場合は、四分の三が国が負担して四分の一は自治体、地方自治体が負担しているので、避難先ばっかりに生活保護費の財政負担が集中しないように国が何かの配慮がないと、もう母子世帯の受入れを難色示す自治体も出てくるんではないかなと思います。
 さらに、避難の長期化が予想される場合には、避難先で子育てしながらも働けるように支援すべきと思います。例えば、保育所を優先的に入れるとか、仕事のあっせんだとか。さらに、将来見据えて避難先から地元に戻りたい一人親世帯に対しては、その支援を行うべきですね。支援はもちろん、住居、仕事と育児という三つ、三本柱で行わなきゃいけないんですが、地元の復興状況、情報を提供したり、仮設住宅を優先的に入居させたり、最も重要なのは、やはり新しい雇用先を確保してあげたりする、そういった支援は是非とも必要だと考えます。
 以上をもちまして、私の発表を終わらせていただきたいと思います。
#9
○会長(山崎力君) ありがとうございました。
 次に、橋本参考人にお願いいたします。
#10
○参考人(橋本廣美君) 橋本です。よろしくお願いいたします。
 この度、参議院の調査会の参考人として選任をいただき、御意見を申し上げできる機会を得ましたことは、誠に有り難く、また大変光栄に存じております。
 私は、現在、知的障害児者の親たちが集まって、鶴岡という地方の小都市で、知的障害児者本人はもちろんのこと、親や家族も安心して暮らせるよう願い、活動をしている橋本廣美という者です。
 私たちはまさに、本日の案件であります障害者のセーフティーネットを目指して全日本手をつなぐ育成会を頂点とし、各県、各市町村において組織しているうちの一つの団体です。これまでの対外活動は、対応する市役所へ要望することが多かったのですが、今日意見を述べさせていただく参議院という立法府は、その機関の権能の大きさ、また国民生活に与える影響力の大きさを考えると感慨もひとしおです。
 ただ、参考人をお引き受けした後、調査会からの資料が届き、今回もですが、これまでの参考人の肩書を見て、余りにも著名な方ばかりで頭の中が真っ白になりました。それでも、仲間から障害者と毎日一緒に生活をしていなければ分からないことがあるからということで後押しをされ、少数派の障害当事者の代表として勇気を振り絞って出てまいりました。
 また、現在、内閣府において障害者権利条約を基本として障害当事者の視点から社会施策全般を見直すため、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会において法律改正の議論が本格化しています。そんな制度改革の議論の真っただ中にあり、もろもろの意味合いを胸に秘め、率直に申し上げさせていただきたいと思います。
 今日、セーフティーネットというと、雇用形態の多様化に伴って、非正規雇用などによる生活不安などを想定されますが、障害者の生活実態からすると、社会保障と家族の扶養によって維持されているのが現実であり、それ以前の状態においてセーフティーネットが必要であります。
 障害者には種別、いわゆる精神、身体、知的、発達障害という大枠がありますが、生まれながらの障害、高齢障害、途中障害、また状態の軽重など多種多様であり、個別的に比較すると切りがありません。そうしたことから、ここでは障害という個性を抱えての生活者が、地域生活の中でどうしたら障害者のセーフティーネットになるかという視点で、次の三点について申し上げます。第一は、一生涯にわたる支援について。第二は、障害者雇用の義務化について。第三は、障害者の制度改革についてであります。
 まず、若干私の体験や経過を申し上げます。平成元年に息子が小学校の特殊学級への入学と同時に親の会に入会し、現在に至っております。当時、精神薄弱者福祉法制定から約三十年が経過していましたが、地域においては、福祉といえば老人福祉、障害者といえば身体障害者としか思われていない状況でした。特に、知的障害児者に対する偏見はまだまだ克服されていない中、町中で子供や親に向けられる冷たく突き刺すような視線を感じずにはいられませんでした。これが心のバリアです。障害児者にかかわる国の法律においては全てで精神薄弱児者という表記となっていましたので、親とすれば国からも差別を受けているのではないかと思えるような気持ちになっていたことを覚えています。
 国の知的障害者へ対する施策は、入所施設、医療機関支援の割合が大きなウエートを占めていて、在宅で頑張っている多くの障害者や家族には手を差し伸べてもらえず、家族任せの地域福祉と言わざるを得ない状況でした。また、対応する行政においても、障害者に対して人権を尊重した積極的な姿勢が見受けられない時期にあったと思います。そのため、会の活動において、地域で障害者を支える仕組みに展望が見出せず、親亡き後はという会員の声が依然として根強くありました。
 そして、この二十年余りの中で、様々の障害者にかかわる制度ができ、措置から契約、支援費制度から障害者自立支援法と、障害者の取り巻く環境も大きく変わっていくこととなります。
   〔会長退席、理事関口昌一君着席〕
 それでは、第一の一生涯にわたる支援について申し上げます。
 障害者福祉においては、障害のあるなしにかかわらず、みんなが支え合う共生社会の実現を目指すとしています。しかし、現実は、障害特性が理解してもらえず、いじめや差別があったり、うまく判断ができなかったりと、困難な場面が待ち受けています。それは、知的障害者の場合は、言葉でうまく自分の意思を伝えることができなかったり、相手の言っていることがよく理解できなかったりと、コミュニケーションをうまくできないことが大きな要因となっています。もし、そんなとき、障害者に寄り添ってくれる人やちょっと支えてくれる人がそばにいてくれたら、地域で生活をしているという実感を持つことができます。
 人間は一人では生きていけないとよく言われますが、障害者の場合は、特に人の支援がないと生活をしていけません。障害という個性のため、全てのライフステージで支援が必要となります。障害者が地域で生活をするということは、家族やグループホームの世話人、隣近所、職場、友達、障害福祉サービス事業所等々、多くの方たちとつながり、かかわりの中で成り立っています。しかし、障害者本人自ら、これら多くの人々とのつながりを構築することはできません。そのためには本人を取り巻く人々とネットワーク化させるコーディネート役が必要となります。それが介護保険でいうケアマネジャーの存在です。
   〔理事関口昌一君退席、会長着席〕
 制度的に高齢者と障害者が違うのを分かりつつ、地域においては同じようにヘルパー利用をしていますので、介護保険と比較させていただきます。
 介護保険では、介護保険サービスを利用する際、要介護者一人に対して必ずケアマネジャーが配置されますが、障害者が障害福祉サービスを利用する場合は、必ずしもケアマネジャーのようなコーディネートをする人は配置されていません。以前からこの障害者のケアマネジメントについて議論がされていますが、私たちの思いがなかなか形となって制度化になっていません。障害者制度においても、きちっとケアマネジメントする支援者の配置を明記するべきであると思います。高齢者の場合は高齢に伴い何らかの支援が必要になったときからのかかわりですが、障害者の場合は違います。障害者一人一人のかかわりは長期間となります。
 親は、子供が生まれて、その子に障害があると知らされたとき、とても大きな衝撃を受けます。絶望もします。そこから立ち上がり、克服し、子供と一緒に歩もうとする気持ちへ切り替えなければなりません。そんなとき、生まれてから亡くなるまでの生涯にわたった障害者のケアマネジメントを専門的、体系的に支援する体制があれば、安心して暮らせるセーフティーネットになると思います。
 障害者の健康管理に関して若干触れておきます。
 措置制度においては、知的障害者更生施設で、法的に、利用者に対し年二回の健康診断の実施が義務付けられていました。ところが、平成十八年の障害者自立支援法が施行された生活介護事業には、嘱託医を配置し障害者の健康管理や療養上の指導を行うとなっていますが、就労継続支援事業においては健康診断の義務付けがなくなりました。
 私の息子が通っているサービス事業所も、措置制度までは健康診断を定期的に実施していましたが、新法で就労継続支援Bに移行した翌年の平成二十一年には年一回の実施となり、平成二十二年には事業所での健康診断を取りやめました。くしくもその年、利用者ががんの悪化により亡くなるということがあり、もし健康診断の実施を継続していたら体の異常が発見されたかもしれません。
 知的障害者の場合、コミュニケーションの不得手から、体の不調を理解してもらえないことがあります。また、こだわりのある自閉症者の場合、家族でも健康診断の場所へ連れていくことが困難なときもあります。障害者の健康診断を、顔なじみの支援員がいて、通い慣れた事業所でゆったりとした気持ちでできれば、障害者も安心だと思います。
 生活において健康は何よりも優先することです。給付によって健康管理に差があってはならないと思います。自立訓練や就労継続支援の利用者についても健康診断の実施について義務付けるべきだと考えます。
 また、現在行っている国の制度について若干触れてみます。
 各ライフステージで相談支援や連携強化を図っていくため、地域自立支援協議会の設置を進めています。しかし、その事務局となる相談支援センターの力量に差があり、形だけでき上がっていて、その役割を十分果たせていないところもあります。そのため、障害福祉においても地域間の格差が生じているのが現実です。各地の支援協議会がどのように運営や活動をしているか、実態について検証を行い、福祉先進地のレベルに引き上げるべきです。また、福祉施策を充実していくためには財政負担が大きな問題となりますが、市町村では財源の裏付けがないと前に進んでくれません。国として、地域間の格差を是正するため、早急に手だてをするべきだと考えます。
 次に、第二の障害者雇用義務化について申し上げます。
 障害者の就労支援は障害者雇用促進法によって保護、保障されております。法律で義務付けられている障害者雇用率は民間が一・八%、地方公共団体二・一%、教育委員会二・〇%となっていますが、私の住んでいる山形県の民間の雇用率は、平成二十二年六月一日現在で一・五八%と、全国平均の一・六八%よりも低い状況にあります。現在、山形県では四つのブロックに分け、それぞれの圏域に就業・生活支援センターが設置され、障害者の就労促進に向けた支援や就労後の支援等を行っておりますが、達成できていないのが現状です。地方においては、就労する場、企業の数が絶対的に少なく、企業側の障害者に対する理解もまだまだ進んでいないのが起因していると思います。
 国は、法定雇用障害者数に満たない企業に、障害者雇用納付金制度ということで納付金を徴収しております。その納付金は罰金ではなく、支払っても障害者の雇用義務を免れるものでないと言っております。でも、それ以上のことはありません。そのため、納付金を納めることで企業の義務を帳消しにしているとしか思えません。国は、促進法の一部改正で精神障害の雇用対策や在宅就業障害者への支援など、障害者の就労に向けて取組を強化していますが、雇用率は下回ったままです。
 この法律では、障害があるがゆえに特別な配慮をすることを認め、その事柄を規定しているものです。配慮を認めないような状況がいつまでも続くということは、法律そのものの否定、信頼を失うことになってしまいます。国も企業も、障害者だから我慢してねとでも言っているようです。障害者の就労におけるセーフティーネットとしての障害者雇用促進法がその役割を果たしていません。国として、障害者雇用納付金制度を期限を切って廃止するなどの積極的な対策が必要と考えます。
 次に、第三の障害者の制度改革について申し上げます。
 日本は国連の障害者の権利条約に署名をしております。条約に賛同し、条約を批准する意思のあることは表明していますが、批准には至っておりません。障害者の権利条約にある合理的配慮は、障害当事者のことだけを考えた配慮でなく、障害のある人もない人も含めた人の暮らしを考えた配慮であるということで、国民生活のセーフティーネットを支える仕組みの基本になると思います。
 障害者の権利条約は、現在、推進会議等で議論している障害者制度改革の大きな柱となっております。そして、障害当事者も参画しての制度改革はこれまでなかったことです。障害者の権利条約の批准に向け、先生方のお力添えで早期に国内法の整備が図られますよう、よろしくお願いします。
 終わりに、去る三月十一日の東日本大震災について触れさせていただきます。
 大地震とその後の大津波は、太平洋沿岸部の町の様子を一変する大災害となりました。そして、大津波は福島第一原子力発電所をも襲い、大変な大事故となり、被災から一か月が過ぎましたが、多くの方たちが避難生活を余儀なくされております。この災害で私どもが日ごろから心配している障害者固有の実態が発生していましたので、参考までに申し上げたいと思います。
 連日、被災地の様子が報道されていましたが、その映像から災害弱者、特に、家族は避難所になじめない子供のため、寝泊まりをしたというのです。ただでさえ大変な避難所生活で、障害児を抱えての生活がどんなに過酷かと思いを巡らせずにはいられませんでした。また、支援物資が避難所に届いても、福祉施設や事業所でとどまっている障害者には行き渡っていないとのことでした。余りにも被害が大きく、さらに広範囲であったこと、そして道路や通信が断たれたことにより、救助、救援に時間を要しました。岩手県や宮城県では四十か所で福祉避難所が開設したと聞いております。
 この度の東日本大震災は、世界史上に残る大災害でありますが、被害地の日本人の沈着冷静な態度、行動が世界中の国々から感嘆の声となって上がりました。そして、多くの国から支援をいただいていることは、まさしく世界に誇れる日本人の心の評価をされているからだと思います。必ずや、世界中の人々が驚くような復興を成し遂げることと思います。
 是非、復興計画の中に、日本の心にふさわしい、誰もが安心して暮らせる生活基盤、例えば、集合住宅で一階が障害者用にバリアフリー、二階に支援センターやヘルパーステーションを完備し、地域で障害のあるなしにかかわらず、共に支え合うことができる新しい形の町づくりとなることを強く願っております。
 日本の福祉政策が世界に誇れるものとするため、先生方におかれましてもこれから更なる御尽力を賜りますようお願いを申し上げ、これで私の意見発表を終わります。
#11
○会長(山崎力君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださるようにお願いいたします。
 なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるよう御協力をお願いいたします。
 それでは、質疑のある方の挙手をお願いいたします。
 藤田幸久君。
#12
○藤田幸久君 今日お越しいただきました三名の先生方、本当にありがとうございます。
 まず、岩田先生にお伺いをさせていただきたいと思います。
 お話伺って、目からうろこが落ちるような実態を聞かせていただきましてありがとうございます。
 ただ、よく考えてみますと、基本的にやっぱりこの数年間、可処分所得が減ってきたということが一番大きな理由ではないかなと。生活保護のいわゆる制度の問題と、社会的にそういった面から政策的に対応していく面と両方あるのかなと思ったんですけれども、それで、その可処分所得については、企業それから経済関係全体にかかわることでございますので、そういった面で、今日おっしゃっていただいた以外にこういう対応が必要だという御提案があれば教えていただきたいということが一つと、チャートの十二ページに当たるんですかね、オール・オア・ナッシングによって、保護から抜け出た後の対応が薄いという、このオール・オア・ナッシングであるがゆえに生活保護の部分にかなりの負担が行っているのかなという気がいたしまして、その部分が多分ほかの福祉、社会保障の先進国に比べて日本が薄いのかなと。そこを変えることがかなりこの生活保護に対する対応として有効なのかなという気がいたしましたので、それについてお知恵があれば。
 それともう一つ、それに関連して、生活保護の制度の実態としてマイナス面も私も聞いたことございまして、生活保護二世とか三世になっている方も結構いらっしゃると。つまり、ほかの国においては、生活保護を受けている方に関して三年後とか五年後に所得チェックをして、そして、もし資格状態が喪失した場合には抜けていただくとか、それからアメリカは期限付で生活保護の制度があると。したがって、いわゆる実際的な所得はあるけれども生活保護を受けているような方々に対しては、逆にチェックをすることによって財源もうまく活用するというような制度がほかの国にはあるというふうに聞いているんですけれども、そういった点での改善面がないのかどうかということをお聞きしたいと思います。
 それから、周先生に、大変いろんなことを教えていただきましてありがとうございました。
 聞いてみますと、父子家庭も所得が低いということも含めて、これはシングルマザーとシングルファーザーとある意味では同じなのかなという面もかなりあるのかなと思ったんですが、結局はやはり不可分所得を増やすということが重要だということと、やはり弱い立場にある人々に対して、この負の所得税というようなこともおっしゃっておられますけれども、いろんな意味でのアファーマティブアクションといいますか、是正措置を講ずることによってかなりの部分が解決できるという気もいたしますので、そういう点からの何か対応策がないのかということをお聞きしたいと思います。
 最後に震災における一人親世帯ということを触れていただきましたが、ということは、シングルマザーであれシングルファーザーであれ、あるいは急にシングル兄貴とかシングル妹と一緒になった人たちはもっと大変なのかなと、この震災においては、急にそういうもう一人の家族の人と生活をする。したがって、そういうシングル何とか、ファーザーであれマザーであれ兄弟になった場合に、その部分に対するアファーマティブアクションというかを積極的にやっていくことが重要かという印象を持ったのですが、そういうことについて教えていただければ有り難いと思います。
 それから、橋本さんから身につまるお話をいただきましてありがとうございます。
 私の友人が精神障害者の活動に触れて、自分で商店街の店舗を一軒借りて精神障害者支援の活動をしている人がおります、茨城でございますけれども。そこで感じることは、日本の政策というか、弱い立場の方々については先に置いていってしまうという傾向があって、ヨーロッパなんか割と弱い不利な立場の人をまず支援をするという社会の雰囲気があると思います。私も難民支援活動をやっていたんですけれども、例えば病気を持っている方、ハンディキャップを持っている方はまずおいておいて、健常な人からまず受け入れるという政策がずっとあったんですけれども、そういうことが、こういう今日お話しになったような方々の状況についても非常によく当てはまるかなという気がするんですけれども。
 したがって、政策的に今後大きな目標として、ハンディといいますか、そういう持っている方を優先して支援をするというふうに大きく変えていかないと、なかなか今日お話しになったようなことについて支援をするのが難しいのかなと。そういう、もう大きく考え方そのものを変える時期に来ているのかなという印象を持って聞いておりましたので、そういうことについて、もしお聞かせいただければ有り難いと思います。
 以上です。
#13
○参考人(岩田正美君) 一番最初のところがちょっと私理解が十分できていないんですが、可処分所得が……
#14
○藤田幸久君 収入が……
#15
○参考人(岩田正美君) 減るという。
#16
○藤田幸久君 急に最近増えてきたという表をお示しいただきましたですよね。四ページですか。
#17
○参考人(岩田正美君) これですね。
#18
○藤田幸久君 はい。四ページ、五ページ辺りの。
#19
○参考人(岩田正美君) はい、そうですね。失業と稼働収入の低下という。
 これは生活保護の統計の中で開始、廃止の理由というものを、もうちょっと細かくあるんですけれども、これをまとめて出した図です。大変煩雑になります。ですから、稼働収入が低下するというのは、もちろん生活の側から見れば使える収入が減っていくということですから、当然可処分所得が低下しているというふうにお考えになってよろしいかと思いますけれども、失業だけではなくて、働いているけれども収入が低くなるというような理由ですね。
 もう一つは、やはりストックが減ってきているということは、これはかなり重要なことだと私は思っています。ストックですね。だから、失業したり収入が減ったからといってすぐ生活保護に頼るわけでもないし、生活保護行政がうんと言うわけではもちろんありません。特に貯蓄や土地、資産があればそれはお断りになるのが普通ですから、開始理由としてこういうのが挙がっているということは、オレンジ色の貯蓄の減少というのは結構多いんですね。ですから、ある程度頑張ってやったんだけれどももう駄目だという人も増えてきたという二つの理由だと思います。
 それから、生活保護の設計の問題と世代的再生産についての御質問と思いますが、生活保護制度というのは、さっきお話ししましたように、ほかの社会保障ができる前に要は完成されてしまったので、非常にいい制度としてできてしまったんですけど、ほかの制度とのつなぎが余り良くないんですね。
 それで、生活保護に入ってきますと、国民健康保険からも脱却しますし、年金制度からも脱却してしまう。年金を受けている場合は別ですけど、まだ加入している場合ですね。だから、そういうものを全部脱ぎ捨てて生活保護に来るわけですね。ですから、非常に特殊な層をつくってしまうわけです。
 そうすると、そこから出るときに今度、つまり生活保護という着物を着ていたのを全部脱いでしまいますから、また一個ずつ着なきゃならないということになりまして、問題は、それを上手に抜け出ていくときに、生活保護の方に安泰しなくても徐々に抜け出ていくことによって生活がよりしっかりしていくというような段階的な制度設計をする必要があるわけです。
 このために大事なのは、八つの扶助をもう少しばらして使うということだと私は思っています。例えば、さっき申し上げた住宅扶助をもう少し低所得層全体のじゃ住宅手当として、住宅手当は残るとか、あるいは高齢者の場合だと住宅手当と年金と医療扶助だけ残るとか、何かこういうような設計をしていくということが大事かと思います。
 それから、世代的再生産ですが、生活保護の廃止理由というのはもちろん死亡とかそういうのが多いんですね。今、高齢者もそうですし、傷病者が多いのでどうしてもそうなるんですが、したがって、やや長期になります。問題は、今増えているその他の人たちを上手に労働自立のような形でどうやって廃止に持っていくかという問題になっていくと思うんですが、このときにそのような世代的再生産を生み出さないためにはどうしたらいいかということになります。
 現実に、世代的再生産というのは私はあると思っています。ただ、収入・資産チェックは毎月やっています。稼働層については現在、日本でももちろん大変厳しくやっております。これ、包括的に調査するような手法を取っていますので、各福祉事務所は貯金、給与所得、資産その他を調べられるような同意書を取っておりますので、かなり厳しくやっていると思います。
 それで、問題は、生活保護の家庭の子供さんたちが、全てとは言いませんけれども、やっぱり十分な教育程度を身に付けられないまままた社会に出て同じように繰り返して、モデルとして生活保護を受給する生活のようなものしか見ることができないような環境にあるというような場合に、就労して早くに病気になって戻るということがあるんですね。まだ若いのに腎透析になるとかですね。
 そういうようなケースは私も耳にしたことがありまして、これは個々のケースによって随分違いますが、こういうものをどういうふうによって防いでいくかというのは、特に子供さんが含まれている、非常に少ない世帯ですけど、母子世帯の八%プラスアルファぐらいですけど、こういう世帯に対しての子供に対する支援というのが今、学習支援のような形でかなりなされつつありますけど、そういうものをもうちょっと学校なんかも巻き込みながらやっていくということが大事ではないかと思います。これは幾つかの地域でかなり成果を上げているように聞いております。
 以上です。
#20
○参考人(周燕飛君) 御質問と御指摘、どうもありがとうございました。
 二点の御質問と御指摘あったと思いますが、まず一点目の父子家庭についてなんですが、先ほど申し上げた、被災した東北三県の父子家庭は非常に多くの方々が所得が非常に低いということになっているんですが、ただ、全体的に見ると、母子家庭に比べると父子家庭の経済状況は比較的にいいんですね。全国の調査ですと二百万円未満の所得層が父子世帯の場合は一六%程度なので、父子家庭が、もちろん中には非常に所得の低い人もいるんですが、母子世帯ほど深刻ではないんですね。
 そういう意味では、母子家庭は経済的な問題は一番大きくて父子家庭は家事ができないとか子育てが大変とか、そういった面の生活困難がより顕著に出ているんではないかなと思います。ただ、同じ弱い立場の人に対しては、父子家庭であろうと母子家庭であろうと、やはり何らかの支援が必要と思います。
 先ほど御指摘されたように、もちろん税制、例えば負の所得税とか所得移転をもっと増やせば一気に貧困問題は解消するんではないかと。もちろんそれはそうなんですけど、問題は、税制改革は非常に難しいというか、大きな、たくさんのことと絡んでしまうので、なかなか改革が進まない。例えば、負の所得税の議論だって昔から別になかったわけではなくて、日本でもそれを導入したらどうかという議論が昔からあるんですね。ただ、その導入に当たって、例えば国民に社会保障番号を付けたりとか、悪用がないように制度設計しなければいけないとか、そういうような問題はまだクリアできていないですね。実際、アメリカもこの制度は多くの貧困層を救済できてはいるんですが、悪用が非常に多いんですね。それも結構問題になっていまして、さらに、母子家庭の場合はこの制度、かなり恩恵を受けてはいるんですが、これで決定的に貧困から抜け出すということは確認できていないですね。
 ですから、母子家庭とか父子家庭の低所得層に対しては、もちろんこういった税制面のアファーマティブなアクションはもちろん必要だとは思うんですが、それと併せ持ちの形で就業支援とか補填的な収入、私的扶助も増やすという方向で同時にやらないと貧困問題の解消はなかなかできないんじゃないかなと思います。
 あと、二点目の御指摘なんですが、今回の災害によって、シングルマザーだけではなくて、シングルファーザーとかシングル兄とかそういった、あるいは震災の孤児とかいっぱい生まれてくることは当然あると思うんですね。そういった方々に対して、もちろん経済的な支援はまず第一必要だと思うんです。ただ、やはり経済的な支援だけでは足りないんですね。特に、子供を養育している場合は、その子供が地域の社会と溶け込んでいく、社会的排除をされないようなサポートも必要ではないかなと思います。どうやってうまく、例えば避難先であれば避難先のソーシャルネットワークの中に取り込んでもらえるかとか、そういった面ではボランティアとか地域の力を使ってサポートをしていく必要があるんではないかなと思います。
 以上です。
#21
○参考人(橋本廣美君) 日本の場合、弱い立場の人を置いてきたということですけれど、経済成長において、やっぱり置いてきたんでなく追いやってきたという感じだと思うんです。ですから、なかなか、追いやられていた障害者は地域で普通の市民から離れた存在、見慣れた存在にはなっていなかったということで、それが自立支援法なりに変わって、地域でも就労の支援においても本人を中心にいろいろ施策を考えられてきたということで、ようやく弱い立場の人も、いわゆる社会においてもそういう目に触れることもできますし、知ることもできるようになってきたのかなという感じを持っております。
 自立支援法に代わって、今度、障害者総合福祉法ということで今議論をされておりますので、是非、その福祉法の中で、当然そういう部分も含めていろいろ議論をされておりますので、ますます良くなっていくのかなという感じは持っております。期待もしております。
 以上です。
#22
○会長(山崎力君) それでは、続きまして関口昌一君。
#23
○関口昌一君 今日はお忙しい中、参考人の皆さんにいろいろお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。
 私、かねがね生活保護制度の在り方というのに非常にいろいろ考えを持っておりまして、特に、厳しい財政状況の中、さらにその申請者が、先ほど岩田参考人の中だったかな、二百万人超えるような話が出てきたということ。それで地方自治体も大変な財源の確保で苦しんでいるということ。さらに、年金の受給者かな、給付額と逆転しているような現象があるということ。さらに、先ほど震災の問題出てきたんですけれども、地方自治体によってはもう地方負担分の四分の一が対応を取るのが大変な問題になってきているということ、こうしたことを含めてちょっと質問したいと思うんですが。
 私は、財源の確保の中で安定的な社会保障を継続していくためには、この震災の問題が起きる前から社会保障費の消費税の対応という、目的税化という話も出ていたんでありますけれども、まずこの生活保護費について、これは国のナショナルミニマムという考え方になりますと、今、国が四分の三と地方が四分の一負担ということでありますが、本来国が全額負担すべきではないかなという考えを前々から持っておりました。
 さらに、もう一つは外国人の皆さんに対しての支給の問題。これも私は、生活保護法の二条でいきますと、考え方は日本国籍を有する者であるはずという考えでありますが、行政上の措置によって外国人の皆さんに対しても永住者など一定の要件を満たす者に対しては生活保護が支給されているということ。平成二十一年度においては、世帯主が外国人で生活保護を受けた方が六万人を超えているような現状であるということなんですが、私はもう、こうした状況の中、現在の行政上の取扱いをもう一度考えて対応した方がいいんじゃないかなという考えを持っております。
 さらに、生活保護と国民年金の給付額の逆転現象について、この今の支給額の問題ですね。これはちょっと長い恒久的な政策として取り組んでいくんだったら、やっぱりもうちょっとこの在り方を、給付の額も考えていくべきではないかなという考えを持っているのでありますが、この点について岩田参考人、周参考人のお考えを聞かせていただきたいと思います。
#24
○会長(山崎力君) 一旦これでよろしいですか。
#25
○関口昌一君 はい。
#26
○会長(山崎力君) それでは、今回は周参考人からお願いいたします。
#27
○参考人(周燕飛君) 生活保護に関して私は岩田先生ほど専門家ではないので、私の知っている範囲のことを申し上げると、例えば外国人に対する生活保護の支給なんですが、一時期結構、中国から来た人で自分の親戚何十人も生活保護を受けさせるというような不正受給があったようなんですが、ただ、そうですね、日本に暮らしている外国人にとっては、例えば永住者に関しては生活保護を支給するという意味では、私は非常にすばらしい制度だと思うんですね。
 ただ、制度にもっと審査が必要な場合は結構多いんですが、でも実際、今ケースワーカーのワークロードが非常に重くなっておりまして、場合によっては一人百ケースとかそういうところも少なくはないというふうに言われているので、結局、一つ一つちゃんと事案を審査する時間も余裕もないことがあるので、その中ではやはり悪用が生まれているんではないかなと思うんですね。ですから、一つは、制度を完成させるには、もっとケースワーカーのワークロードを減らしてちゃんと審査、公正に受給できるようにする制度が必要ではないかなと思うんですね。
 もう一つ、働いている人に対して生活保護を、制度上昔からできるようにはなっているんですが、実際は、もし稼働能力があると判断される場合は、今まではほとんど受給することはできなかったんですね。しかし、それは近年、派遣村以来は特にそうなんですけど、すごい派遣切りとかが増えたことで、就労能力があると判断しても生活保護を受けやすくなったことは事実なんですね。そういった場合はやはり岩田先生がおっしゃったようにモラルハザードが起きやすいんですね。働くよりも生活保護にとどまった方が楽だと。オール・オア・ナッシングというような状況ですと、やはり人間はできれば働きたくないというようなそういう習慣があるので、そういうふうにはなりやすいんではないかなと思うんですね。
 ですから、きちんとそういう段階を踏んで、母子家庭もそうなんですけど、私の研究によると、母子世帯の母の場合は、生活保護を受給している母の方が受給していない母よりも正社員就業を希望する人のパーセンテージは一四ポイントも低いんですね。つまり、生活保護という制度があればもう正社員就業なんか希望しない方がいいというふうに判断する母親も少なからずはいると思うんですね。
 そういった場合はやはり、母子世帯の母に対しては、一気に正社員就業とかすると生活保護が全部なくなるというような制度にしないで、段階的に、例えば最初の半年間は半額支給とか、そういう生活基盤が安定するまでのサポート、生活保護のサポート制度は非常に必要不可欠であるにもかかわらず、現状では、例えば収入が一定のレベルに達するともう生活保護の基準を超えているから完全に外されるとか、一旦外されると今度申請は大変だということもよくあるので、結局お母さん方の就労インセンティブが低下するという問題があるんですね。
 以上です。
#28
○参考人(岩田正美君) 水準の問題は非常に難しい問題なのでちょっと後回しにしますが、最初に財政的な問題で言いますと、国のナショナルミニマムを規定した唯一の制度ですので、基本的には国が十割負担という形でやるのが望ましいわけですね。これは制度設立のときに、しかしそれをやると、行政的には地方自治体がやるものですから非常に安易に生活保護を出しちゃうんじゃないかという危惧で、少し負担してほしいというようなそういう形になったわけですが、私は少なくとも都道府県レベルの負担にとどめるべきではないかなというふうには思っていますが、十割負担であっても、事務費が掛かりますので、やっぱり地方政府は非常に大変だと思います。
 外国人への準用の問題ですけど、これはとりわけ戦後の、戦前から日本におられた外国人を主な対象としてこの準用規定が決まっていくわけですが、この問題をどういうふうに考えるかというのは、外国人労働力を今後日本の社会の中で一体どのように位置付けていくかということと非常に深くかかわっていると思います。ですから、拡大していく方向に行くとすれば準用ということは認めざるを得ないというふうに思います。これはもちろん、それと社会保険や何かのカバーの問題が掛かってきます。
 水準の問題なんですが、実は基礎年金というのは、基礎年金という言葉からあたかもミニマムを保障するかのように思われていますが、基礎年金を導入したときの議論を見ていますと、繰り返し、これはミニマムとはそういう意味で生活保護と同じようなミニマムではないということを答弁として言われているんですね。それで実は、そういう意味で憲法二十五条の生存権にダイレクトに関連するのは生活保護水準なんですけれども、年金というのは、しかも生活費だけで、考え方としては、ストックは高齢期までに形成されているというふうに考えておいて、その上に、基礎年金があって更にその上に立つ年金プラス貯蓄があるというふうに、多分こういうふうな考え方で設計されていたと思います。ですから、最初からリンクしてないんですね。五万円、夫婦で十万円ですから、リンクしてないわけですね。それで、今日、年金だけではなくて最低賃金、最低賃金と生活保護も地域によっては逆転してしまうという、こういう現象が起きます。
 このような生活保護水準を真ん中に置いて様々な所得保障の水準が非常に微妙な関係に置かれているというのは、どこかで整合性を付けるべきだと私自身は思います、どこかで。
 そのときに、何が参照基準となるかということなんですね。実は、今の生活保護も相対基準で決められて、改定されておりますので、要するに、例えば全国消費実態調査の下から十分の一の辺りでどうかというようなことを参照しながら決めているということになります。そうすると、全部相対なんですよね。だから、例えば、年金の方が低いから、じゃ年金に合わせようか、また賃金の方が低くなるから賃金に合わせようかというと、どんどんどんどん下がっていくという可能性も出てくる。そこで、何というか、最低限というのは何かというような参照基準を別途、現実の制度とは別のところで議論しておおよその基準を持つという必要がどうしても出てくるだろうと思います。これは、現在のような相対的な決め方だけではなくて、理論生計費といいますか、積み上げていくというような、そういう方法も導入して基準を決めていくということが必要ではないかと思います。
 よろしいでしょうか。
#29
○会長(山崎力君) それでは、続きまして竹谷とし子君。
#30
○竹谷とし子君 今日は三人の皆様にお話を伺いまして本当に参考になりました。ありがとうございました。
 まず、岩田先生にお伺いしたいことなんですけれども、生活保護の問題点ということで三つ、資料の方で指摘をしていただきましたけれども、社会保険や求職者支援対策とのリンクが弱いというふうに御指摘いただいている件について、これをどのようにリンクをさせていけばいいのかという具体的なお考えがありましたらお伺いしたいのと、もう一つ岩田先生にお伺いしたいのが、震災の件についても触れていただきました。ここで、仮設から将来的に出られない方々、そういった方々を想定したプランニングが必要だという示唆をいただいたと思いますけれども、このプランニングは誰が行っていけばいいか、どのようなプロセスでこのプランニングをしていけばいいかということについてお考えを伺えればというふうに思います。
 そして、周先生にお伺いしたいんですけれども、シングルマザーの所得についてなんですが、所得再分配後にマイナスになってしまうと、日本の場合、そういう問題点があるということを教えていただきましたけれども、これはなぜこのような形になっているのか、それ改善するにはどこから手を付ければいいかということについて、もし御研究なさったことがあれば教えていただきたいというふうに思います。
 そして、橋本会長にお伺いしたいんですけれども、本当に障害者のお子さんを持つ親御さんの御苦労、私にも友人がおります。また、私、高校生のときだったんですけれども、両親の知り合いでダウン症のお子さんをお持ちの御家庭があって、離婚されて父子家庭になって、夏休みなど、お父さん働いている間預けるところがないということで、私が夏休み中ずっと預かっていて、四六時中、ダウン症の小学生の男の子だったんですけれども一緒にいたことがあります。
 そのときに、すごく純粋というか、優しいところがある、いろんな個性をお持ちのお子さんがいらっしゃると思うんですけれども、その子はそうだったんです。
 雇用の問題について、橋本会長からお話がありました。企業に対して義務化をもっとさせるべきという御提言いただきましたけれども、障害者の方々もいろんな障害の内容、度合いがありますので一概には言えないかもしれないんですけれども、障害者の方が働くに当たって、向いているというか適合しやすい仕事の内容というのはどういうものがあるかということを教えていただきたいと思います。
 新聞とかでも見たことがあるんですけれども、例えば高齢者の方々の介護で、アルツハイマーなどが進んでいらっしゃる方に、本当に優しく障害を持っている方が接することで高齢者の方も心が癒やされたりとか、そういうお手伝いをしているというような話も聞いたことがあるんですけれども、そういった障害者に向いている、障害者でもやりやすい仕事、そういったものがあれば教えていただければというふうに思います。
#31
○会長(山崎力君) それでは、順番変えまして、まず橋本参考人からお願いいたします。
#32
○参考人(橋本廣美君) 雇用のことについては、ちょっと何か厳しい言い方になって大変申し訳なかったんですが、今まで促進法の改正などでいろいろな取組を、例えばハローワークで就労支援チームをつくったり、就労・生活支援センターを全国に展開させてというふうな形でいろいろな取組をしていただいて、障害者の雇用促進のために取り組んでいただいているということについては本当に感謝を申し上げておきたいと思います。
 ただ、その中にあって、今回向いているという仕事は何かというような御質問であったわけなんですが、何か実際に鶴岡の方でもヘルパー、高齢者に対する、行政の方ではヘルパー三級の取得ですかね、それの施策を展開して、何人かヘルパーの資格を取って、実際に高齢者の介護の現場の方にも出たという話は聞いております。でも、実際に今はどうなっているかというのはちょっと把握はしていないんですけれども、やっぱり向いている向いていないというのはかなり個人差があることだと思います。
 自分の息子もダウン症ということで、今はサービス事業所においてパン作りをしております。ただ、それも集中して何時間もというふうにはいかないもので、その辺はいろいろ支援をいただきながら、短時間の中で、いわゆる就労支援Bですので一般の就労とは全然違うんですけれども、そういう子も、そういう働くという部分では、今回の自立支援法の中で、今まではただ通所更生という形でそこに行くだけで、何か作業というか、何かそんな感じであったんですが、やっぱり就労ということで意識改革がされてきました。ただ、一般就労という部分では、何がというのはちょっと一言では言えないような状況だとは思います。
 ただ、働く先の方の会社側の支援というか、なかなか一から十まで手を添えてというわけにはいかないと思うんですが、そこに働く仲間たちの手助けというか、声掛けというか、それが非常に重要で、要は、障害者というのはなかなか、例えば八時間なら八時間そこにいるということが大変厳しい場面もあると思います。今はこの支援法改正、雇用促進法改正で短時間のということも取り上げられていますけれども、その短時間であってもそこにかかわる人たち、その会社の人たちというのを声掛けなりいろいろしていただくことによって、向いている向いていないは別にして、継続した仕事に就けていくのかなという感じは持っております。
 以上です。
#33
○参考人(岩田正美君) リンクの問題ですけれども、例えば雇用保険からもう給付する期間を過ぎちゃってまだ失業しているという場合に、求職者支援法が出てきますね。このリンクはいいんですけれども、求職者支援法の、例えば生活給付と住宅手当がありますけど、この場合の資格要件ですとか金額が、住宅手当は生活保護の住宅扶助と金額がリンクしているんです、同じなんですが、生活支援の方ですね、生活給付の方は金額が違うんですね。支援法の方は十万円と十二万円という金額なんですけれども、生活保護の場合は級地によって違うわけですけど、その金額と微妙ですけれども違って、非常に大ざっぱですね、求職者支援法。
 ところが、原理的にいいますと、求職者支援法は全額税金でやって、保険ではありませんので、これは第二の生活保護なわけです、公的扶助なわけです。ですから、公的扶助としてやる以上、一定の整合的な形をつくる必要があります。
 それからもう一つは、労働時間の問題。さっき言いましたように、日本の生活保護は、例えば、極端に言いますと、週四十時間働いていようと収入が低ければ受けられるんですね、現実にはあり得ないですけれども。そこで、例えば、社会保険の給付対象になるのは、一定の労働時間が期待されている場合にそこに加入、カバーされますから、それで支給されてきますね。だから、例えば週四十時間働くとかあるいは少なくとも週三十時間以上働く人たちは生活保護の対象じゃなくて求職者支援の対象であるとか、あるいは週二十五時間以上働く人は税金でやるセカンドセーフティーネットの方で求職支援、職業訓練とか就業あっせんのサービスとともに生活保護が出ると。
 生活保護の場合は、例えばもっと短時間の就労しかできない傷病者、高齢者、あるいは何らかの理由で非常に長期の、何か短期雇用にしか就けないような条件のあるような人の最後のセーフティーネットとして機能するというようなやり方を例えば諸外国ですとやっているんですね。だから、働けるというのは週何時間以上働いていると働けるとみなすというような、そういう労働時間で区切っているんです。それが日本の場合余りはっきりしていないんです。社会保険同士でもはっきりしていないわけです。
 それから、もうちょっと言いますと、年金と、さっきのちょっと御質問にありました基礎年金と生活保護のリンクというのはだから制度上ないんです。ないけど、つくってもいいんですね。だから、高齢者とか障害者の長期保護はむしろ年金だと呼んでもいいわけです。これはもうイギリスなんかそういう言い方していますけど。だから、最低所得保障という、高齢期の最低、この場合はもちろん資産調査してからですけど、そういうやり方しています。
 ですから、そういう全体としての整合的なリンクで、一定の、働いているとか働いていない判定とか支給水準を合わせていくという、誰も何かの制度によって得したり損したりしないような形にするという、そういう意味です。
 ちょっと復興の話が私は聞き取れなかったんですが、先生、済みません、もう一回。
#34
○竹谷とし子君 済みません。
 仮設に入って、後々、弱者であるほどその仮設から出られなくなるということで、その方々を、将来的にそういう方々が出てくるということをあらかじめ想定したプランニングをした方がいいということを御示唆いただいたというふうに思ったんですけれども、具体的にそのプランニングは市町村がやるのか、都道府県がやるのか、国がやるのか、どういった立場の人がそのプランニングをしていけばいいのかということですね。
#35
○参考人(岩田正美君) そうですね、それぞれいろんなレベルでの議論は必要だと思いますが、最終的には、その地域の産業構造とか就労の状況というのを一番知っているのは基礎自治体ということになりますので、そこがまずしっかり住民の生活破壊の状態とか、再建へ向かえる人と向かえない人の仕分とか、そういうのはそこがやるのが一番現実的だと思います。
#36
○参考人(周燕飛君) 先ほど御指摘されたように、子供のいる世帯については所得再分配した後の方が貧困率が上がっている。それは何を意味しているかというと、やはり低所得層の中には自分が支払った税金とかよりも受け取った給付の方が少ないという世帯が相当の割合でいるということを示しているんですね。
 ですから、これからどうやって所得再分配後の貧困率を下げるかという方法を考えなければいけないんですが、主に二つあると思うんですが、一つは直接の給付を増やすこと、もう一つは間接の給付を増やすことなんですね。
 直接の給付といえば、まず思い付くのは生活保護の生活扶助なんですね。あるいは、母子家庭とか父子家庭、一人親家庭を対象とする児童扶養手当、さらに全ての子供のいる家庭を対象としている児童手当、この三つあるんですが、私個人的には、余り母子家庭の中に生活保護の受給率をもっと増やすべきということは考えていないんですね。
 今、現状では母子家庭の一四%程度は生活保護を受給しています。ただ、生活保護には多くの問題があります。先ほど御指摘もあったように、世代間の継承はよく言われているんですね。母親が生活保護を受けているとその子供も相当の割合で将来大きくなって生活保護の世話になると。さらに、生活保護を受けることは、実はその子供の養育にも余り良い影響がないというような研究成果は実はアメリカとか外国ではよくあります。生活保護を受けている家庭で育てられている子供は学校で問題行動を起こしたり、成人した後は低賃金の仕事に就いたり高校を中退したりする確率が高いというふうによく言われています。
 ですから、働く能力、稼働能力のある母親に対しては、私は、なるべくこれからもし支援するならば児童扶養手当というところで重心を移るべきだと思います。今の現状では児童扶養手当は金額は非常に低く設定されていまして、まあ所得制限はあるんですが、母と子供二人という典型的な母子世帯の場合は三百六十万円という年収制限があるんですね。それを超えると児童扶養手当は受給できないんです。その金額も今の現状では四万一千円という、非常に中途半端というかそれだけでは生活できるという程度の金額ではないんですね。それに対しては、生活保護は非常に何というかジェネラスに支給されているという御指摘もある中で、この差がどうやって埋めるか、ある程度今後もし財源が許すならば、この児童扶養手当というところでもっと注目していただきたいんですね。
 児童扶養手当は生活保護と比べると母親の就労インセンティブが損なわれないですね。さらに、その資力調査というか、家族に電話掛けて本当に困っているか資産調査したり、家族にその調査をしてちゃんと扶養してもらえないということを確認しなければいけないことによって、お母さんとか子供が受けるスティグマが児童扶養手当にはないんですね。ですから、実は母子世帯の七割は今児童扶養手当を受けているんですよ。だから、多くの母子世帯の母にとってはこれは非常に頼りになっている制度で、今後とも私はこの制度、もっと大きな力を発揮できるといいなと思っています。
 間接給付は、先ほど御説明した負の所得税は非常にまだまだ多くの問題があるんですが、例えば悪用されたとしても多くの人が例えばこれで救済できるならば、一定割合はそれを容認するしかないような感じでも制度の導入を試みるべきではないかなと思います。
 アメリカも実際多くの母親が、この制度がなかったときにはAFDCとかTANFとかそういう制度が、日本の生活保護に近い制度があったんですね。そのときは結構多くの母親が就業しないことを選択していたんですが、やはりこのEITCというか、それに導入するようになってから母子世帯、無職の母子世帯の母の多くは働きに出たんですね。ですから、非常にお母さん方の就労インセンティブを損なわないと同時に、貧困も救済、ある程度は軽減できるという意味では非常にすばらしい制度と思います。
 さらに、所得再分配の計算の数字、計算する際には考慮されてなかったのかもしれないんですが、母子世帯とか低所得世帯への実物給付も重要の役割を果たしていると思います。現状では、母子世帯にもいろいろ、例えば安い、市営住宅とかそういう、公営住宅の優先入居とか保育料の減免とか医療費の減免とか、そういう制度があるんですね。ただ、この制度は、母子家庭の母にとってもっと利用しやすいようにとかそういった工夫があれば、生活費が低くなることでより質の高い生活を得ることができると思いますので、そういった方法で所得再分配後の母子世帯とか低所得世帯の貧困を軽減することが、貧困率を下げることはできるのではないかなと考えております。
 以上です。
#37
○会長(山崎力君) ありがとうございました。
 それでは、寺田典城君。
 ちょっと済みません。時間が押しておりますので、誠に恐縮ですが、参考人の皆様、御答弁の方をなるべく手短にまとめていただければ幸いでございます。
#38
○寺田典城君 岩田先生に周さんに橋本さん、どうも大変勉強になりました。重複して質問もあり得ると思うんですが、何というんですか、例えば今、高齢者の場合は介護保険制度とか、その中で生活保護を受けながら介護も受けられるとか、いろいろ社会保険の中でとか、いろいろ制度的にはケアマネジャーがおったりしてそれなりの機能は私はしていると思うんですが。
 私が今一番心配しておるのは、これ岩田先生にお聞きしたいんですが、生活保護の制度、まあ介護も地方自治体が四分の一負担するんですが、生活保護も四分の一負担ということで、非常に地方自治体にとっては負担の問題がありますから、相当厳しく査定しながら認定するかしないかという、措置するかしないかとかというその形になっているんですが、その中で、やはり生活保護制度というのは非常にがんじがらめの固定された、ある面ではいい面もあるんですが、広がりのない制度だと私はそのように解釈しています。広がりのないというんですか、可能性のないというか、それはそれとして制度が今までなされてきたからですが、岩田さんから言わせますと、要するに貧困のわなに陥るという、保護から抜けた後の対応が薄いというような形で出ると思うんですが。
 それで、私の関心あるのは、所得格差が、母子家庭もそうなんですが、子育て格差というんですか、子供をしっかり育てれないというかそういう問題、それから、ある面では所得格差が教育格差に確実につながっているという、それが繰り返すと次の世代もある面ではまた生活保護を受けるとかワーキングプアとか、そのような形に繰り返してなってくるのが相当データ的にも出てますし可能性も強いということで、そういう次世代が、次の世代が、社会である面ではワーキングプアというか生活保護にもならないような、私はならない、一人でもそういう人方を社会にもっと活躍できるような育て方というんですか、教育の仕方というか制度の在り方というか、これは私はもっと強く制度的にも勉強していかなきゃならないんじゃないのかなと、そう思っております。
 私は、二月ごろだったですか、ある母子寮だとかそういう、母子家庭の中の寮だとか、それから保護者がいないというか、子供を預かる愛児園みたいな、子供を預かる、預かっているところの、ある面では高等学校に入るときの学力格差だとか子供の格差とか何かを聞いても、やっぱり普通の人方よりもレベルが、レベル差があるということを悪い意味で取らないでください。現実としては、高等学校の偏差値の低いところに入っちゃうというふうな形も多うございまして、それをどうしたらいいんでしょうというふうな話をよく現場の人方からそういうお聞きもしてきました。その辺について、お二方にもう少し突っ込んだ考えがあったら御指導、教えていただきたいなと。
 それと、障害というか、知的障害というんですか、そういう持っている方については、やはりある面では保護者というんですか、をひとつサポートするというか、それのサポートの在り方なんかがある面では障害者の自立支援の道にもずっと大きくつながってくると思っていますし、今の制度の中で一番、もう少し具体的に突っ込んで、何というか、至っていない面が何であるかということをもう一度教えていただければ、御意見いただければ幸いと思います。
 以上ですが。
#39
○参考人(岩田正美君) 所得格差が子育て格差になっていくというのは、これは生活保護だけじゃなくて、もちろん貧困の再生産ということは常にあります。
 それで、どうしたらいいかということですけれども、子育てしている家庭を孤立させないということが一つだと思います。地域の中で孤立させないということですね。だから、例えば子供への補習だとかというのを地域がいろんなセットしてやっているのが、今、釧路であるとか、東京でも江戸川区とかいろんなところで行われています。大学生のボランティアとかですね。これ、戦後すぐ行われたようなのと非常に近いような形で今行われています。
 しかし、勉強で高校まで行けたとしても、その後の就業への見通しがないと駄目なわけですね。ですから、的確な一生食べていけるスキルやキャリアプランというのをきちっと立てられるような環境、あるいは就労環境を整えないとどうやっても駄目だと私は思います。それは非常に深刻だと思います。
 それから、もちろん学校教育がそういう就業問題、まあ私も大学の教師していますけれども、学生が出た後どうやって生きていくのか、どういう職業に就いていくのかというのをもっと真剣に考えるべきだというふうに思っています。非常に大きな問題だと思います。
#40
○参考人(周燕飛君) 御質問、どうもありがとうございました。
 所得格差が世代間で継承されないためには何が必要なのかというと、一言で言えば、機会の平等を確保しなければいけないんですね。あと、親の所得とか、親が一人か二人かによって子供の機会が奪われたりとか、そういった事態は絶対許せないというか、そういった事態をもし許してしまえば、貧困は簡単に世代から世代へと継承されてしまいます。
 ですから、どうすれば子供が親の所得、まず所得は関係なくちゃんとした教育を受けてちゃんとした職就けるかと。私は今、日本、大きな問題は公的教育が非常に弱いというところにあるんではないかなと思います。子供の母親とか父親がお金がなければ塾にも行けなかったりとか、いい学校に通えなかったりするといった現状によって、所得の低い家庭に生まれた子供は学力の低い学校しか行けなかったり、いい教育受けられなければ将来もいい職就けられないというような悪循環になってしまうんですね。
 私、最近増えているいい取組があるんではないかなと思って、中高一貫の都立高校とか結構増えていて、そこに受験する家庭、低所得層の家庭も結構増えていて、将来的には、例えばそういった高校の取組が増えていれば、子供さえ頑張れば別に親の所得に関係なくちゃんとしたいい学校に入れる、ちゃんとしたいい職に就けるという機会が確保できるんではないかなと思います。
 あともう一つ、シングルマザーの場合は、子育ては一人でやっているというようなネックがあります。それの場合は、やっぱり子供の教育面では二親と一親は大分違うんですね。母親しかいない場合は、子供は甘えたりとかちゃんとした教育というか学習習慣が付けられなかったりするので、そういった場合はやっぱりそういった状況に対応して、地域、学校、もっとフォローしていく必要があるんではないかなと思います。
 以上です。
#41
○参考人(橋本廣美君) 今の制度で至っていない面ということでの御質問だったと思うんですけれど、やっぱり障害基礎年金、先ほどから就労、所得格差ということを言われていましたので、所得格差の面からいくと、障害基礎年金というのは一級、二級ありますけれど、やっぱり低いという。
 地域で生活する場合、どうしても、グループホームなりに入った場合、十万から十一万くらいの、これは山形県の鶴岡の場合なんですが、そのくらいが大体のいわゆる所得という格好になっております。基礎年金だけで賄い切れない部分は、生活保護という形とか働いて差額を上乗せをして、所得として十万から十一万がなければ地域でも生活していけないという実態にありますので、やはりその所得という部分についても、障害基礎年金の部分についても、働きたくても働けない子もいるわけですので、その辺のその保障という部分はやっぱり大きな問題であるかとは思います。
 以上です。
#42
○会長(山崎力君) それでは、舟山康江君。
#43
○舟山康江君 今日は参考人の皆様、ありがとうございました。橋本参考人にお聞きしたいと思います。
 鶴岡市は、障害者福祉も含めて高齢者福祉、福祉につきましては全国的にも相当進んだ取組がいろいろなされていると思っておりますけれども、参考人は手をつなぐ親の会鶴岡ということで全国組織の一地域の組織に属されておりますけれども、そういう全国のいろんな自治体の障害者施策の取組に比べて、鶴岡での取組でもし特筆すべきこと、また特筆すべき成果などがありましたら教えていただきたいと思います。
 先ほど竹谷委員の質問の中で、例えばヘルパー三級の資格を取るためにそういうことを応援していると。これも一つ大変面白い取組というか、かなり障害者の皆さんの自信にもつながるいい取組ではないのかなと思いますけれども、ほかに何かございましたら、参考までに教えていただければと思います。
 以上です。
#44
○参考人(橋本廣美君) 知的障害者の親という立場で先ほど意見言ってきましたけど、鶴岡の場合は、確かにいわゆる障害者福祉という面では平成七年の福祉計画から始まっていろんな取組をされてきました。特に鶴岡の場合は、知的障害者に限らず精神障害者の部分、それと身体障害者の部分、それぞれ行政としていろいろ取組を強めてこられていただきました。
 精神障害の部分についても、今度は病院の移転という問題がありまして、その辺も地域でという部分をやっぱり考えていかないとということで、行政側の地域住民に対する説明などを本当に丁寧にしていただいて、ようやくその精神障害の部分も病院が建つことになっておりますし、知的障害者の場合も、親の会でいろいろ声を上げて、いわゆる鶴岡市の障害者の拠点施設ということで、資料にもあったかと思うんですが、ゆうあいプラザ「かたぐるま」という部分を造っていただいて、そこは何も知的障害者ばかりじゃないですね、身体の方もいれば精神の方も、そこで会議等が開けるような、誰でも利用できるような、そんな仕組みになっておりまして、そこに団体事務局というのがあります。そこには発達障害の人たちもその事務局に足を運んだり、そういうふうな形で利用しておりますので、そういう面で、ほかの市町村には、山形県の場合ですけれども、ほかの市町村にはない取組をしてきたなということで感謝をしているところです。
 以上です。
#45
○会長(山崎力君) 続きまして、三原じゅん子君。
#46
○三原じゅん子君 本日はありがとうございます。
 それでは、周参考人に一点お伺いしたいんですが、OECDで二十四か国中就業率が二位だということは、これは喜ぶべき数字であるのではないかと思いますけれども、しかし、ワーキングプアということで、今の日本の雇用状況を表しているとも思われますが、これが、七五%が年収二百七十万円以下ということはやはり問題視していかなければならない事態ではないかと思っております。
 そこで、稼働能力を高めるという方法が、基本的に正社員としての就業ということ、これが一番有効であると、そしてこれに関して、希望すらしていない母親が多いというのは育児制約だけの理由なのかということ、緩和をして自己啓発していくということであれば、これが果たして改善されていくのかというふうに思っております。
 そして、先ほどから重複するかもしれないんですが、やはりシングルマザーの偽装離婚ということに関することというのが問題になるのではないかと思っております。そのチェック機能として、先ほどおっしゃったように、当然行政側の問題として、ケースワーカーの増員ですとか、段階を追っての支給を減らしていったりとか、そういう形で就労を促していくということももちろん必要なことなんだと思うんですが、諸外国でこういう不正受給というようなことというのが問題視されていて、制度とかあったら、例えばそういうことでカバーができるような、そういう制度があるのか、あるいはそれが日本で適用されるような制度というのがあるのかどうかということをちょっと教えていただきたいと思います。
#47
○参考人(周燕飛君) 御質問、どうもありがとうございました。
 まず、母子世帯の母の半数は正社員すら希望していないということなんですが、私、先ほど育児制約を強調したんですが、実際、母親の能力不足というのも一つの要因です。私の研究によると、やはり母親の学歴が低かったり専門的な資格を持っていなかったり正社員働いた経験がなかったりする方が、自分はそもそも正社員になることは無理だろうと判断して諦めている人が多いんですね。ですから、そういった能力を高めてあげることによって希望をまた持って正社員就業を目指すという方も出てくるんではないかなと思います。
 もう一つは、偽装離婚に関してなんですけど、確かに御指摘のとおり、生活保護とかあるいは児童扶養手当を受給するためには、本当はそんな仲悪くない夫婦でも別々に住んでどっちかを申し込むというケースは確かに一定の割合でいると思われています。
 ただ、それは、何か外国ではこういうことが起きてないんですかと言われると、外国でも同じようなことは起きています。私は二、三年前にアメリカに一年間訪問研究させていただいたんですけど、隣に住んでいたのが母子世帯なんですね。アメリカは非常に母子世帯が多くて、離婚した後でも、本当はパートナーができていたにもかかわらず、報告しないで国からいろいろ支援を受けたりする人は本当にかなりの割合でいます。
 だからといって、こういった人たちを全部、一々全部捜し出して不正をなくそうというのが、コストベネフィット、コストパフォーマンスで考えれば合理的ではないんですね。なぜならば、そういう不正の人を出すにはたくさんの人員を投入していっぱい調査しなければいけないんですね。それはかなりのコストが掛かるんで、かといって全く何もチェックしないのも不正受給をただただいっぱい増やすだけで、そこで何か均衡点があるんですね。ここまで人数を増やしてここまでチェックすれば、ある程度、例えば五%ぐらいの不正は許してあげましょうというような制度設計は一番合理的だと思います。
 ですから、日本は今明らかにケースワーカーが足りないんですね。だから、もう少しコストパフォーマンスを考えていれば、もうちょっとケースワーカーを増やして、明らかな、簡単にすぐ調べれば、例えば電話一本で一緒に住んでいるにもかかわらず偽装離婚をしているとか、簡単にチェックできるようなケース、不正受給は絶対減らすべきだと思います。
 以上です。
#48
○会長(山崎力君) それでは、続きまして山本博司君。
#49
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さん、大変ありがとうございました。大変貴重な御意見、本当に参考になった次第でございます。
 それで、岩田参考人と橋本参考人にお聞きを申し上げたいと思います。
 まず、生活保護の点の脱出戦略ということでお聞きをしたいんですけれども、確かに住宅扶助とか様々な社会保険等の連動ということが必要だと思いますけれども、ちょうど私、釧路の自立支援プログラムの現場を見させていただきました。なかなか就労の意欲が少ない方々に対しましての中間の施設の場ということで、こういう障害者の介助であるとか、また様々なこういう社会法人のものに関しまして取り組んでいる姿というのは大変参考になって、脱出戦略の一つの糸口かなという感じがあります。
 また、ケースワーカー、先ほどありましたけれども、全然足らない状況の中でそういう支援もやはりやらないといけないんではないかと思っているんですけれども、この脱出戦略、具体的にもう少し、どんな形が、こういう釧路形式も含めてどういう道筋なのかということを教えていただければということでございます。
 それから、橋本参考人に対しましては、大変私、橋本会長のお話、心がしみる思いがいたしました。私も手をつなぐ親の育成会の一員でございますので、同じ立場として、本当にこうした障害を持っていらっしゃる方々の支援ということで、この文面に関しましても、本当にきちっとした形のまとまった中に心がこもる内容で、本当に感動いたしました。
 そういう中で、やっぱり一生涯にライフステージごとの支援が必要だということで、特に成年後見人制度、やはりこの問題がやっぱり問題があるのではないかなというふうに思っております。特に日本では、高齢者介護も含めて、ドイツと比べて十分の一ぐらいの成年後見人制度の利用ということも含めて、選挙権の問題が剥奪されるとか、いろいろこうした課題があるのではないかなという思いがいたします。そういうことも含めて、その辺りのことをお示しをいただければと思います。
 以上でございます。
#50
○会長(山崎力君) 岩田参考人だけでよろしいですか。
#51
○山本博司君 ええ。もし周参考人もありましたら。
#52
○会長(山崎力君) それでは、まず岩田参考人からお願いいたします。
#53
○参考人(岩田正美君) 生活保護法の下での支援といいますか、というのは、日本の場合の特徴として所得保障の機能を果たす行政官と支援をする人が一緒なんですね、日本の場合は、建前上。つまり、福祉事務所のケースワーカーと称している人たちなんですが、ケースワーカーとは何かということから見ますと、ケースワーカーというよりは公務員で、三年ごとに例えば替わるとか、そういうのが基本です。ですから、そこに余り大きな就労支援や例えば子供の支援なんかを期待するというのは私はもう無理だと思っています。
 釧路の成功は、もちろんその中に非常に優秀な公務員がいたということもあるんですが、そこと組める非常に優秀なNPOが存在したということに尽きます。そして、釧路はもう失業率も保護率も非常に高い市ですので、言わば福祉で町おこしをしたようなところなんですね。ですから、どこでも参考にはならないとは思いますけれども、一つの非常にいい例だと思いますが、その場合には、当事者の人たちを含めたNPOと、それからソーシャルワーカーの専門的なトレーニングを受けた人と行政の三者がやはり協力するというような体制が必要で、行政はもう今生活保護が増えていますので、審査していろんなチェックをして出すというところだけで手いっぱいだと思います。
#54
○会長(山崎力君) 周参考人、ございますか。
#55
○参考人(周燕飛君) 私も基本的には岩田先生と同意見なんですが、日本のケースワーカーの場合は公務員という身分もあって、やはり人件費もあるのでそれほど増やすことはできないし、彼らに期待して就労支援とか生活支援を全般的にやることはまず無理なことだと思うんですね。だから、限られた人員と予算の中でどうやってその就労支援を強化するかというと、私はここで非公務員というか民間への委託も一つの手ではないかなと思うんですね。そこでコストを下げてより多くの人を採用して一人一人のケースのロードを減らしていくという方法が考えられるんではないかなと思います。
 釧路の事例は、実は母子家庭への支援に関して、生活保護を受給している母子家庭への彼らの取組が母子家庭白書にも載るぐらい有名な話なんですね。例えば、就労していない母子家庭の母を、就労意欲を高めるためにカフェテリアで働いたりとか社会福祉法人でボランティアをやったりとか、それは非常に有益な取組で、まず社会へ踏み出す第一歩として非常に重要だと思うんですね。
 そこで、どうして釧路だけが成功してほかの地域ではそんな取組がなかなかできないのか。ただ、実はそこはキーパーソンがあるんですね。釧路の場合は行政が非常に熱心で、よく母子世帯の調査もやったりとかNPOの組織と緊密に連携したりとか、そういう行動力のあるキーパーソンが一人でも二人でもいれば結構事がよく動くんですね。ですから、母子家庭に限らず低所得層への支援を行うときには、やはりもっと行動力ある、しかも経験あるそういうキーパーソンを育てていくことが非常に重要だなと思います。国としては、将来例えばどこかでそういったノウハウを蓄積して、キーパーソンを育てる機関とか養成機関があるといいんじゃないかなと思います。
 以上です。
#56
○参考人(橋本廣美君) 成年後見制度ということでありますけれども、鶴岡、地方においては同じかとは思うんですけれども、なかなか親離れ、子離れができない、そういう生活実態にあるかと思うんです。今までいわゆるサービスということでいろんな福祉サービスを利用していくという部分の理解不足というか、措置の時代が長かった人ほどやっぱりそういう部分では親離れ、子離れができていないという、そんな中で鶴岡においてもいわゆる成年後見制度の勉強会はしているところであります。
 ただ、実際に自分の子をどうするかという部分のプランまではやっぱりなかなかできない、そんな状況であります。ただ、実際には、庄内という地方、エリアなんですけれども、そこの社会福祉士の方たちがグループをつくって成年後見人として取り組んでいるということもありますので、今後そういう、よりいわゆる障害者のための、親のためのじゃなくて本人のためのということでのそういう成年後見人制度についてもうまく取り入れていかなければならないのかなということは感じております。
 その選挙権がなくなるということについては、これはやっぱりおかしいのではないかというものは十分感じておりますし、今議論されております障害者制度改革においても、その部分は十分いろいろな部分で反映されて、障害者だから成年後見人制度を利用すると選挙権がなくなるということはなくなるのかなという感じを持っております。
 以上です。
#57
○会長(山崎力君) それでは、金子洋一君。
#58
○金子洋一君 民主党の金子洋一と申します。
 ちょっとこれ、周参考人のお話の中では負の所得税という名前で出ておりましたけれども、給付付税額控除についてちょっとお尋ねをしたいと思っております。
 と申しますのも、周参考人のお話の中では、アーンド・インカム・タックス・クレジットのようなもの、あるいはワーキング・ファミリー・タックス・クレジットが取り上げられておりまして、つまり、形として台形になっているというものを前提としてお考えになっていますけれども、つまり、低所得から若干働き出すと急にクレジットが上がって、しばらくの間同じ数字が続いて、ある程度所得が高くなると落ちてくるという台形の形のものをお考えになっているようですけれども、確かに稼働能力を高めるという意味で非常にそれがいいと思いますし、私も賛成をしておりますけれども、それだけで必ずしも生活保護の部分を代替できるかというと、その辺り、私、若干疑問がありますので、その点について周参考人の御意見を伺いたい。
 また、これとまた全く逆のお尋ねの仕方になって恐縮なんですが、岩田参考人には、生活保護の問題点というところで、稼働可能層と高齢者層や障害者層に同じ対応をしていると、かつ保護から抜け出た後の対応が薄いということを御指摘になっていますが、これはまさに給付付税額控除の仕組みを導入することによって稼働可能層に対しては十分な対応ができるのではないかなと思うんですが、その辺りについて御意見をいただければと思います。
#59
○参考人(周燕飛君) 御質問、どうもありがとうございました。
 実は私、例を挙げている、アメリカのEITCとイギリスのWFTCという二つの制度を挙げているんですが、二つの制度、微妙に違うんですね。アメリカの制度は全ての低所得層を対象にしているんですね、ワーキング・ファミリー。でも、イギリスの制度は、十六歳未満の子供を持っている家庭で、しかも労働時間の制約があります、例えば週十六時間以上働いているとか。まあ制度設計が若干、ちょっとターゲットも少しは違うんですけど。
 日本だったら、日本の国情に合わせて、例えば少子化が非常に深刻だから、このEITCとかそういう負の所得税を通じてもっと子供のいる家庭を補助をしてあげて、子供を産むようなインセンティブを与えるというような制度設計、あらかじめできるんですね。例えば、ゼロ歳から三歳の子供がいる場合はより高い税率で負の所得税を掛けてあげるとか、そういうインセンティブを設定することは、国が自分の実情に合わせて柔軟につくればいいんではないかなと思うんです。
 ただ、EITCの場合は、やっぱり所得を把握することが非常に難しいという欠点がありますね。例えば、自営業をしている場合は源泉徴収していないので、幾ら稼いだというのが自分で申告する場合は、やはり不正受給が増えてしまう可能性はあるんですね。その点の対応に関しては各国を悩ませる問題の一つなんです。
 国立社会保障研究所の阿部彩先生は、海外、アメリカの文献を中心に、EITC制度はどのくらい貧困を削減させるかをサーベイした論文があるんですね。それによると、やっぱりEITCが非常に有効なのは、今まで全く働かないで家にいる人たち、その人たちを労働市場に引っ張り出すという意味では非常に有効な制度なんですが、やはり、何というか、労働時間を増やすかどうかと言われるとそうでもないんですね。働く時間をいっぱい増やすとEITCが減るから、負の所得税、逆に減るから、労働時間を減らすインセンティブが逆にあるんですよ。ですから、この負の所得税を通じて貧困撲滅というか、生活保護の代替になることは全く期待しない方がいいかもしれないですね。ですから、あくまでも低所得層を救済する一つの手段にすぎなくて、それだけで貧困が絶滅するということは考えにくいんではないかなと思います。
 以上です。
#60
○参考人(岩田正美君) 少なくとも、生活保護の中で働ける層、あるいはちょっと働いている層については、こういう負の所得税も含めた、就労とリンクした形の所得保障の方にシフトしていって、高齢者や障害者の場合は、当然もうそこから出るということはあり得ないわけですから、余り細かなチェックや、もちろん資産状況のチェックみたいなのは必要でしょうけれども、就労支援みたいなものよりもむしろ福祉サービスとリンクさせていくという、そういう何か違う形に分けていくのが一番合理的だろうと思います。
#61
○会長(山崎力君) よろしゅうございますか。
 それでは、他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑を終了いたします。
 岩田参考人、周参考人及び橋本参考人におかれましては、御多用中の中、本調査会に御出席いただき、誠にありがとうございました。
 本日お述べいただきました御意見は、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表して厚く御礼申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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