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2011/06/07 第177回国会 参議院 参議院会議録情報 第177回国会 法務委員会 第14号
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2011/06/07 第177回国会 参議院

参議院会議録情報 第177回国会 法務委員会 第14号

#1
第177回国会 法務委員会 第14号
平成二十三年六月七日(火曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十六日
    辞任         補欠選任
     川合 孝典君     江田 五月君
 五月二十七日
    辞任         補欠選任
     熊谷  大君     溝手 顕正君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         浜田 昌良君
    理 事
                中村 哲治君
                前川 清成君
                金子原二郎君
                桜内 文城君
    委 員
                有田 芳生君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                今野  東君
                田城  郁君
                那谷屋正義君
                丸山 和也君
                森 まさこ君
                山崎 正昭君
                木庭健太郎君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     江田 五月君
   副大臣
       法務副大臣    小川 敏夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  黒岩 宇洋君
       外務大臣政務官  徳永 久志君
       文部科学大臣政
       務官       林 久美子君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   植村  稔君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田村 公伸君
   政府参考人
       内閣官房内閣審
       議官       河内  隆君
       警察庁長官官房
       審議官      栗生 俊一君
       警察庁刑事局長  金高 雅仁君
       法務省民事局長  原   優君
       法務省刑事局長  西川 克行君
       法務省入国管理
       局長       高宅  茂君
       外務大臣官房審
       議官       佐藤  地君
       外務大臣官房参
       事官       石兼 公博君
       経済産業大臣官
       房審議官     朝日  弘君
       資源エネルギー
       庁原子力安全・
       保安院審議官   櫻田 道夫君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (布川事件の再審無罪判決に関する件)
 (取調べの可視化に関する件)
 (証拠開示制度の在り方に関する件)
 (警察による取調べの適正化に関する件)
 (被災地における相続放棄等の熟慮期間の伸長
 に関する件)
 (中国人観光客に対する査証の発給に関する件
 )
 (専門士の称号を付与された専門学校卒業生の
 上陸許可基準の見直しに関する件)
 (閣議決定の法的位置付けに関する件)
 (行政指導等に対する国家賠償法の適用に関す
 る件)
 (警察による不適切な取調べ及び証拠の保管に
 ついての検察の責任に関する件)
○情報処理の高度化等に対処するための刑法等の
 一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付
 )
○参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(浜田昌良君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、川合孝典君及び熊谷大君が委員を辞任され、その補欠として江田五月君及び溝手顕正君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(浜田昌良君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に内閣官房内閣審議官河内隆君、警察庁長官官房審議官栗生俊一君、警察庁刑事局長金高雅仁君、法務省民事局長原優君、法務省刑事局長西川克行君、法務省入国管理局長高宅茂君、外務大臣官房審議官佐藤地君、外務大臣官房参事官石兼公博君、経済産業大臣官房審議官朝日弘君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官櫻田道夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(浜田昌良君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○今野東君 民主党の今野東でございます。
 私は多くの仲間たちと取調べの全面可視化を求めてきたわけですけれども、そういう行動をしてきた者として、先月二十四日、特筆すべき動きがありました。
 一つは、東京地検特捜部が特別背任容疑で逮捕した容疑者の取調べを初めて全面可視化で始めたことであります。これについては、検察の在り方検討会議が可視化の範囲の拡大を提言したことを受けて、江田法務大臣が検事総長に全面可視化の試行を指示したということがこの初の試みにつながったことと思っておりまして、大臣の働きを評価したいと思います。
 またもう一つは、布川事件の再審判決です。今日がちょうど控訴の期日でありますが、水戸地裁は、捜査官らの誘導によって調書が作成された可能性を否定できないとして、長い間犯人とされてきた桜井さんと杉山さんの二人に無罪を言い渡しました。
 同じ日に起きたこの二つの出来事は、検察だけではなくて警察の取調べについても全面可視化の、全過程の可視化が必要であるということを強く印象付けたと私は感じたんですが、大臣はどんな感想を持たれましたでしょうか。
#7
○国務大臣(江田五月君) 取調べの可視化、録音、録画、これについては今、今野委員御指摘のとおり、このところずっと懸案になっておりまして、私が法務大臣になる前から、例の大阪の事件を発端として検察の在り方検討会議というものができまして、千葉景子元法務大臣を座長として鋭意検討を進めていただいておりました。その提言を三月三十一日に受けて、私が四月八日に検事総長に検察庁法に基づく一般的指揮というものを行って、その中で全過程可視化にもひとつ取り組むようにと試行のお願いをいたしました。
 また、裁判員裁判などを含めて、検察の方でも可視化に独自に取り組んでいることもあったり、あるいは法務省の大臣の下での勉強会で研究を進めてまいりまして、これらのことがずっと進んで、今、今野委員御指摘のとおり、最高検の指示に基づいて東京地検特捜部が特別背任事件の全過程の可視化をやってみようということになり、さらに、いわゆる供述弱者というんですか、障害者に対する可視化にも具体的に取り組むということになってまいりました。私としては、これらの試行が真剣に行われて、その結果がきっちり検証できるようにしていきたいと思っております。
 布川事件についても御指摘になりました。かなり古い時代の事件でございまして、当時の捜査の在り方についてはいろいろと反省をすべき点が当然あると思いますが、これは個別の事件ですので余り踏み込んだことを私が特に今の時期に申し上げるのは不適当かと思いますけれども、取調べというものがやみの中で、やぶの向こうで行われているという状況であってはならないということを教えているものだと思っております。
#8
○今野東君 布川事件は一九六七年に起きた事件でありまして、確かに古いことは古いんですけれども、古いことから新しいことを私たちは学ばなければならないと思っておりまして、是非、取調べの可視化、法務省の中でも全面取調べの可視化ということについて、なお進めていただきたいと思います。
 さて、この布川事件再審無罪判決から分かることでありますが、これは証拠の開示がなされていれば、当時二十歳の青年二人の人生を司法が四十四年間も奪うということはしなくて済みました。すぐ無罪と分かったのではないかということを私は思います。
 取調べの誘導をうかがわせる録音テープについては、捜査員が法廷でこれは存在しないとまでうそをつきました。また、現場で目撃したのは犯人とされていた杉山さんではないという女性の証言を記した捜査メモを検察側は持っておりました。さらに、事件現場に残されていた毛髪や指紋については二人のものはないとする鑑定書も検察側は持っていました。殺害方法が自白内容と矛盾する死体検案書もありましたし、編集の跡のある録音テープもあり、また内容が変遷する捜査段階の目撃者の供述調書もありました。なぜこれらの証拠は開示されなかったのか。事件に当たって成果を上げなければならないという検察の体質がこういう形で現れるのかなと思うしかありません。
 これらの証拠は、弁護団の粘り強い取組で事件から三十年以上も過ぎてようやく開示されたわけでありますが、この法務委員会でも、取調べの可視化とともに証拠の全面開示が必要だということは何人かの議員によって語られてきました。裁判員裁判の導入によってこの証拠開示は以前より進んでいるんでしょうか、現状をお聞かせください。大臣、お願いします。
#9
○国務大臣(江田五月君) 証拠開示の在り方については、確かに、この布川事件で見る限り、当時は様々な公訴側に不利な証拠が開示をされないというようなことがあったということがうかがわれます。しかし、そういうことではいけないというので平成十六年の刑事訴訟法改正がございまして、その前から証拠開示については様々な現場での議論があり、またいろんな実例もあったわけですが、十六年の刑事訴訟法改正によって大きく証拠の開示というものに踏み出して、現在の実務は争点整理や被告人側の防御の準備のためにかなりの程度に証拠は開示されておりまして、今、刑事裁判の現場ではいい運用がなされていると思っております。
 もちろん、まだまだ改善すべき点があれば、それは御指摘をいただいて改善していくということになると思いますが、あの当時とは大きく違うということは是非御認識をいただきたいと思います。
#10
○今野東君 更に指摘せよということですから指摘をさせていただきますが、今は弁護側が検察側に証拠開示させることができるようになったそうですけれども、いろいろ弁護士さんたちに聞くと、その手続上、目的や理由を詳細に明記しなければならない、で、大変なんだと、この詳細に明記しなければならないという作業が。何より検察側がどういう証拠を持っているか把握できない。把握できなければ、開示請求も非常にしにくいものになります。
 積極的に証拠開示をすべきだと指摘をさせていただきますが、そのことについては大臣はどうでしょうか。是非積極的な答弁をお願いします。
#11
○国務大臣(江田五月君) 手持ち証拠の開示の在り方についていろいろな議論があることは承知をしております。ただ、現在では、この争点の整理あるいは被告人の防御、こうしたものに必要な限度で、検察の手持ちのものをあえて隠すというようなことではなくて、むしろ積極的に開示をするようにも運用していると聞いておりますし、御指摘のようなことを踏まえて、もし改善すべき点があれば更に努力をしてまいります。
#12
○今野東君 大臣、以前よりは量が多くなったと聞いていて納得してもらっちゃ困るわけで、実は大臣もどういう状況なのかというのは御存じなんじゃないかと思いますけれども、全面開示をしていなければどういう証拠があるか分からないわけですから、これは全面的に開示をしてもらわなければならない。それがなければ公平な裁判なんて実現できないと私は思います。是非積極的に開示をしていただけますように、大臣も省内で発言をしていただけますよう、よろしくお願いします。
#13
○国務大臣(江田五月君) 更に申し上げますと、十六年の改正で範囲は大幅に拡充されていると私は思っております。これは本当にそう思っていて、証拠の証明力を判断するために重要な類型証拠であるとかあるいは被告人側が新たに明らかにしている主張に関連する証拠であるとか、こういうものについては、これは開示を相当と認めるときは開示しなければならないということになっておりますし、またそのことについて当事者間で争いがあれば裁判所が裁定をするということにもなっておりますし、公判前の整理手続の中でそうした議論も十分にしていると思いますし、最高検の裁判員裁判における検察の基本方針でも、可能な限り速やかに開示を、今の類型証拠あるいは主張関連証拠、こういうものについては開示をして、そして審理の見通しやあるいは被告人側の応訴態度等の事情を勘案しつつ、誠実かつ適切に対応することが望まれると、こういうことにされているわけでありまして、これは個別の事件で、もし誠実じゃないじゃない、適切じゃないじゃないかということになれば裁判所が裁定をするということになっているし、相当広い範囲の証拠開示は行っているものと思っております。
 なお、もちろん、いろいろ御指摘があればまたお教えいただきたいと思います。
#14
○今野東君 誠実かつ適切に開示をするというのであれば、これはいろんな条件を付けずに、新たな証拠、証言があればそれに基づいて出すとかいう条件を付けずに最初から全部出していただければ、それが誠実かつ適切だということだと思います。
 ここで余り時間を取りたくないので次に行きたいと思いますが、この布川事件も、まずは別件逮捕に始まって、長期間拘束する代用監獄、そして誘導や脅しで自白を迫る密室での取調べと、冤罪をつくってしまう三つの要件が整っています、そろっています。さらに、証拠構造はどういうふうになっているかというと、これは一九六七年の八月二十八日に独り住まいの六十二歳の大工の男性が殺されたという事件でありますが、しかしこの殺人事件と、犯人とされてきた桜井さん、杉山さん、二人を結び付ける物の証拠というのが全くありません。何で結び付いているかというと、警察の留置所で作られた二人の自白調書だけなんですね。警察が現場検証を行ったときに指紋が四十三個発見されました。四十三個のうち三十四個は対照不能、つまり不完全でよく分からなかった、対照できなかった。残り九個の指紋の中に二人のものはなかった。そのほか、足跡もない、盗んだ品物もない、被害者の家から盗まれた財布は発見されていない、盗んだお金もない。そうすると、警察は、盗んだお金は全部競輪で使ってしまいました、財布は川に投げ捨ててしまいましたという自白調書を作るんですね。ここのところを弁護団が指摘しても、判決は、確定判決の裁判官は、指紋がないからといって犯人ではないとは言えないと、この指紋がないという一点だけを取り上げて判決文を書いています。これは異様なことだと思います。こうして確定判決で有罪とした裁判所の責任もあるのではないでしょうか。
 昨年の足利事件の再審無罪判決は、ずさんな捜査を批判して裁判長が謝罪しました。今回のこの布川事件の再審判決は検察側の立証や捜査の是非には踏み込んでおりません。足利事件の再審無罪判決とは対照的です。
 こういう布川事件に対する姿勢というのは、裁判所はどういうふうに考えているんでしょうか。説明をお聞かせください。
#15
○最高裁判所長官代理者(植村稔君) お答えをいたします。
 これはどんな事件でもそうなんでございますが、個々の事件におきまして、判決の結論を導くためにどのような事項について裁判所としてどのような判断を示すのか、また、判決言渡しの際に、今委員も御指摘になりました足利事件の発言が出てまいりましたが、裁判長がどのような発言をするか、これらは全て裁判体に委ねられているところでございます。
 したがいまして、その内容につきまして私ども司法行政を担当しております最高裁の事務当局がコメントすることは適切でないと思いますので、差し控えさせていただきます。
#16
○今野東君 それでは、このような誤判防止に向けた姿勢というのがこの布川事件の報道を見て市民に問われておりますが、誤判防止に向けた姿勢、裁判所としてはどういうふうに考えているんでしょうか。
#17
○最高裁判所長官代理者(植村稔君) お答えをいたします。
 委員御指摘のとおり、無実の方が服役するというようなことは決してあってはならないことでございます。布川事件におきましては、強盗殺人事件という重大な事件について無罪が言い渡されたわけでございまして、私どもといたしましても重大に受け止めております。
 事件には一つ一つ個性がございます。したがいまして、証拠関係はいろいろでございます。ただ、どんな事件におきましても、当事者双方の主張に十分に耳を傾ける、そして当事者双方から提出された証拠を十分に吟味をする、そして最後は、立証責任は検察官が負っているわけでございますから、検察官が合理的な疑いを超える程度の立証を尽くしたと言えるかどうか、これを慎重に見極めて判断すると、こういうことが求められていると思っております。
#18
○今野東君 それは当然のことでありまして、その誤判防止に向けた姿勢については新たなことが出てこないわけですが、誤判防止に向けた決意というのは裁判所はあるんでしょうか。
#19
○最高裁判所長官代理者(植村稔君) 今委員御指摘のとおり、誤判をしてはいけないというのは全く当然のことでございます。事件を担当しております全裁判官が今回の事件を重大に、真摯に受け止めて、一つ一つの事件の判断に当たっていかなければいけないと思っております。
#20
○今野東君 これ以上話しても多分それ以上の話は出ないんでしょうから、それはこれでやめますが、選挙違反に関する冤罪事件であります。
 鹿児島の志布志事件が、それについてはこの委員会でも随分議論をしましたから記憶に私たち新しいんですが、この春の統一地方選挙についてであります。埼玉の深谷市議選に絡んで、埼玉県警は、当選した市会議員とその妻を公職選挙法違反の供応買収容疑で逮捕しました。二十数人を飲食接待したという疑いです。先月二十七日には二人は釈放されているんですが、この事件をめぐっては、接待を受けたと疑われた住民が会費を払ったのに払っていないという調書に署名させられたと抗議しております。
 埼玉県警は、四月下旬から出席者を任意で事情聴取したようですが、県警の捜査はあらかじめ事件の構図があって、そこにはまる供述を無理やり得ようとしているということが分かります。志布志事件の再現のようなことをやっています、埼玉県警は。会費については、払ったと言っているのはあなただけだと捜査員がうそを言ったり、子供の名前を出されて、お子さんを呼んで事情を聴きましょうかと言ったり、あしたの新聞にあなたの名前がでかでか出ますよとか、会費を払いましたと主張し続けた人については十二日間も聴取を続けたということでありまして、これは任意捜査の限界を超えています。
 平成二十年一月、警察捜査における取調べ適正化指針というのが出されました。この取調べの適正化指針そのものも弁護士の立会いに触れていなかったり、問題があるとは思っていますけれども、取調べ適正化指針、それでもそれは捜査の中で生かされるべきことではないかと思いますが、全く生かされていない。
 警察庁は、暴力的、威圧的な取調べをしないように徹底を図ったんじゃないでしょうか。なぜこういうことが続発するんでしょうか。今日は警察庁の刑事局長でしょうか、おいでいただいております、どうぞお願いします。
#21
○政府参考人(金高雅仁君) 御指摘の事件捜査に関しまして、虚偽証言を強要した疑いがあるという報道がなされたことは承知しております。
 当該公職選挙法違反事件は現在捜査中でありまして、更に捜査を尽くす必要がございますけれども、警察庁としては、これと並行して、報道されたようなことが事実であるか否か明らかにすべく、埼玉県警察に対し速やかに厳正な調査を行うよう指示したところでございます。
#22
○今野東君 この事件にかかわりなくとも、これは調査中なら調査中でそれはしようがないんでしょう。だけど、東大阪で暴力団まがいの取調べというのもありました。こういう取調べのやり方が減っていないことは事実です。それについてはどう考えるんでしょうか、刑事局長。
#23
○政府参考人(金高雅仁君) お答え申し上げます。
 先ほど言及がございました警察庁が策定いたしました取調べ適正化指針、これに沿って現在取調べの適正化のために努力を続けているところでございます。
 この中身につきましては、一つは監督制度ということになります。取調べの適正化に資するために、捜査に携わらない総務、警務部門が取調べをランダムに視認するほか、必要な調査を行うということによってチェックをするという制度でございます。取調べ官も緊張感を持って取調べに当たるようになるなど、一定の成果は出てきているのではないかというふうに考えております。
 また、取調べに当たる捜査員の意識の向上ということもございますが、これも各種の研修あるいは会議の指示などを通じましてその徹底に努力しているところでございますが、引き続き努力が必要というふうに認識しております。
#24
○今野東君 成果は上がってない、だからそれについてどうなっているんだって聞いているんですよ。
#25
○政府参考人(金高雅仁君) 先ほど御答弁申し上げましたけれども、埼玉県警察の件につきましては事実の有無も含めて今調査中という状況でございます。
 それから御指摘の大阪東署の事件、これについては大変遺憾なことであると。全国を挙げて努力している中であのような取調べが行われたということにつきましては、警察庁としても大変重く受け止めているところでございます。
#26
○今野東君 遺憾なことだけでは駄目なんですよ。そういう取調べを、脅迫まがいの取調べをしないようにどう取り組むかという姿勢を聞いているわけなんですよ。
 さて、福岡県では川崎町の町議選で町議会議長の支援者二人が有権者にやはり飲食接待をしたとして、五月の二十五日に公職選挙法違反の容疑で逮捕されております。当の議長は、二十八日、車の中で自殺しました。議長の自宅にメモが残っておりまして、証言強要を繰り返し、事件に結び付けようとしている、また今日も十時から、苦しいと書かれてありました。さらに、特定の刑事を名指しして、取調べ中に突然私の口を上下に引き裂くような暴力的なことになり、本当に怖かったとも記されていたということです。
 この取調べの適正化指針では、監督の対象となる行為として一番最初に、真っ先に被疑者の身体に接触することを挙げています。我が国は一九九九年に拷問禁止条約に加盟しています。これは国際社会で禁止している拷問であります。いまだにこういう取調べが行われていることは、やはり捜査の全過程を可視化する必要があるなと強く改めて思うわけでありますが、警察庁の取調べの可視化への取組はどのようになっているんでしょうか。そしてその前に、こうした福岡の事件についても調査をしているのかどうか、お答えください。
#27
○政府参考人(金高雅仁君) 今御指摘のありました福岡のケースについても、警察庁から直ちに調査をするように福岡県警に指示をしているところでございます。
 それから、警察におきます取調べの可視化に向けた取組という点についてでございます。平成二十年九月から裁判員裁判対象事件を対象として取調べの録音、録画の試行を実施しているというところでございまして、さらに昨年の二月、国家公安委員長が主催する研究会が設けられまして、治安水準を落とすことなく可視化を実現するための研究を推進中という状況でございます。
 この研究会では本年四月に一年間の議論を整理した中間報告が取りまとめられたところでございまして、その中では、既に可視化を実現している諸外国においては我が国にない様々な捜査手法があるということ、それから我が国における取調べはこれらの国に比べ真相解明上の意義、役割が大きいというようなことが明らかにされたところでございます。
 今後、この研究会におきまして、これまでの議論を踏まえつつ、取調べの高度化、可視化の在り方、捜査手法の高度化等について具体的な検討が行われるというふうに承知しております。
#28
○今野東君 警察庁の取調べの可視化についてお尋ねすると、大体いつもそのような答えになっているんですが。
 それでは、取調べの可視化が必要だというのは冤罪を生まない大前提だと思いますけれども、こういう、今もって、つい先月です、こうした事件が、人の口を上下に引き裂くような、捜査官が、取調べ官がそういうことをするということが私はあってはならないと思っているんですが、適正な取調べということについて、警察庁はどのような心構え、決意を持っているんでしょうか。
#29
○政府参考人(金高雅仁君) 適正な取調べというのは、委員御指摘のとおりだと思います。
 万が一にも、身体に触れて強制的なものがあってはなりませんし、取調べそのものも、任意性を十分に確保した取調べということが求められているというふうに認識しております。
#30
○今野東君 被疑者の体に接触することはなりませんしと言っても、接触することをしているんですよ、拷問を、こういう。
 決意を言ってください。こういうことがなくなる、なくすような決意を。どのような取調べをしていくのか。
#31
○政府参考人(金高雅仁君) 繰り返しになりますけれども、その事実について今調査をしています。委員が御指摘になったようなメモがあることは、事実ございます。その事実の有無については今調査をさせていただいているということでございます。
 決意ということでございますが、これはもう当委員会始め国会でもいろいろ御指摘をいただいておりますし、そもそも警察においての取調べというものが任意性、信用性を十分に確保したものでなければならぬということは当たり前のことでありますので、各都道府県警察、現場に対して、私どもも精いっぱい指導を続けていきたいというふうに思っております。
#32
○今野東君 当たり前のことが当たり前にできていないからこういう事件が続発するわけで、それを乗り越えて、決意、どういうふうにするんだと聞いているんです。
#33
○政府参考人(金高雅仁君) 今御指摘になられました事実については、本当に事実があったのかということについて今調査をしているところでございます。
 ただ、例えばその大阪の事案等もございましたし、警察庁からも相当強い指示、指導が各都道府県警察に向けて行われているところでございます。各都道府県警察もそれを重く受け止めて、個々の捜査員に対して意識改革等を徹底するように努力をしているところでございます。
#34
○今野東君 強い指導をしているのに、何でこういう脅迫しているような捜査になるんでしょうね。そこのところはどうお考えになりますか。
#35
○政府参考人(金高雅仁君) 指摘されたような事実があったとすれば、これはもう大変な問題だというふうに思います。ただ、その調査に関しましては今進行中でございまして、万が一そういう事実があったとすれば、なぜその取調べ官がそういう行動に出たのかということを、これはもう真に明らかにして、それを踏まえた対策が必要というふうに思っております。
#36
○今野東君 それでは、埼玉と福岡の件については、調査はいつまでにすることになっているんですか。
#37
○政府参考人(金高雅仁君) 今調査が進んでいるところでございますが、可能な限り速やかにというふうに指示をしております。
#38
○今野東君 いつまで、いついつまで調査をして報告をするようにと言うべきじゃないですか。
#39
○政府参考人(金高雅仁君) 期日というものを明確にすることはなかなか難しいところございますけれども、最大限の努力をして速やかにと、厳正にということで調査をしてもらっているところでございます。
#40
○今野東君 期日を指定するのに、そんなに難しいことでしょうか。それは、私たちの市民の感覚だととても難しいこととは思えません。期日はちゃんと示すべきです。いつまでに調べますか。
#41
○政府参考人(金高雅仁君) 例えば、埼玉のケースにつきましては、取調べを受けた方々が二十数名いらっしゃいます。その方々からまず聴き取り、どういう調べだったのかということをお聴きした上で調査が始まっておりますけれども、関係者もそのぐらいおりますし、ある程度の日数は掛かるものというふうに思っております。
 ただ、今問題になっていることでございますので、本当に可及的速やかにということで努力をしたいというふうに考えております。
#42
○今野東君 こういうことが今後も多分出るんだろうと思います。その場合には、やっぱり期日をきちんと指定して、三か月以内に調べろとか半年以内に調べろとか、そうやって報告を求めるべきなんじゃないんでしょうか。それは一年も二年も掛けてずっと出さないというやり方だってあるわけですから、今の調査をせよというやり方だとすればね。
#43
○政府参考人(金高雅仁君) 三か月とか半年とかそういう単位ではないというふうに思っております。逐次私どもの方にも途中経過を、報告を求めておりますし、私どもからも逐次指導をしながら調査が進んでいるという状況でございます。もっと早い、一月、二月という単位ではない早い段階で明らかにしたいというふうに考えております。
#44
○今野東君 いや、そういうふうにできるんなら、一か月なら一か月って指定すればいいと思うんですけれどもね。何かどうも納得できないんですが、まあいいです、今日のところは。ほかのことも質問したいので。
 さて、今日この委員会で、情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案、趣旨説明が行われるわけですけれども、それに先立って、大変申し訳ありませんが、この法案の基本的なところ、伺っておきたいと思います。
 まず、今なぜこの法案が出てくるのかということであります。二〇〇八年に日本は、マネーロンダリングの国際監視機関、FATF、ファトフと読むんでしょうか、資金洗浄に関する金融作業部会の相互評価で不十分と判定されました。この相互評価は三年に一回行われるんだそうですね。ですから、今年二〇一一年は相互評価の年になります。
 とすれば、是正する措置を講じておかなければならない。そのためにこういう法案を成立させておかなければならないというふうに考えているのかと思いますけれども、そういう動きの中で法務省としてはいわゆるコンピューター監視法を上程したんだろうかと思っておりますが、どういう環境の中でこの法案が、またどういう必要があって出されるのか、お聞かせいただきたいと思います。
#45
○国務大臣(江田五月君) 一般的には、現代社会において世界的な規模のコンピューターネットワークが形成されておる。そして、コンピューターは広く社会に普及して、日ごろの社会生活上のインフラとしてもう欠かせないものになっているというのが、これが今の現代という姿だと思っております。
 そのような中で、こうしたコンピューターネットワークにとって許容することができないコンピューターウイルスによる攻撃、あるいはコンピューターネットワークを悪用した犯罪などサイバー犯罪というもの、これも多発をしておると。適切に対処するための法整備というものが喫緊の課題となっていると。これは一般的な状況として、そうしたものがずっと続いていると思います。
 そして、このサイバー犯罪というのは、性質上、容易に国境を越えて犯される、犯され得るものであって、そういうことに対して国際的に対処しようということで、サイバー犯罪条約、これが非常に重要になっておりまして、実は我が国は、平成十三年十一月、ということは今からほぼ十年前になりますか、この条約に署名をしているという事実もございます。条約の署名からは既に相当な期間が経過をしておると。
 そうしたような背景があって、実はこの情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部改正案は、以前、更に別のものと併せて国会で御審議をいただいたという経過もございます。その経過の中でいろんな議論があって、私も当時はそうした幾つかの犯罪類型の中の共謀罪ということについていろんな議論をさせていただいて、これは結局は廃案ということになりましたが。今回は、そういう共謀罪部分はこれは外して、サイバー犯罪のことあるいは強制執行妨害の関係、こういう、当時は私どもも含めて大方の理解というものは私はあったんじゃないかと思うんですが、そういうものを切り出して今回提案をさせていただいているわけでございまして、今の情勢、あるいはサイバー犯罪条約署名以来随分日がたっている、こうしたことを考えて、こうした事態に適切に対処するために今回の法案を提出をさせていただいたと、参議院でも是非御審議をいただきたいと、こういうことになっております。
 強制執行妨害の点はありますが、今の委員の御質問はサイバーの関係だけでしたので、そちらは省きます。
#46
○今野東君 今、サイバー、インターネットについては容易に国境を越えるのだという大臣の発言がありました。
 まず、基本的なところを押さえておきたいんですが、サイバー社会というのは市民社会とは違いますね。全く違います。市民社会には国境がありますが、サイバー社会には国境がありません。そこで扱われているのは目に見えない無線です。つまり、市民社会の法律をそのまま適用することはなかなか難しいし、できない。
 市民社会には私たちの人権を守るための世界人権宣言がある。国際人権規約もあります。各国には憲法もあります。しかし、サイバー社会にはそれに相当するものがありません。国境がある市民社会で法律が対象としているのは有体物です。形を備えているものです。それに対してサイバー社会では国境がなく、そこで扱われているものは目に見えない無線。私たちがそれを感じ取るためには、コンピューターを通した可視化が必要になります。そして、国境がありませんから、全ての無線情報がどの国においても捕捉可能です。
 つまり、サイバー社会を規律するためには、その在り方に即応した法体系を我々の市民社会法とは別個のものとして構築しなければならないのではないんでしょうか。そこのところをきちんとしておかないと、私たちは多くの矛盾を抱えてしまうことになります。
 今回、この委員会でこれから審議されるであろう法案では、コンピューターを用いた犯罪に様々な捜査手法を導入しようとしていますが、それは市民社会からのものであって、サイバー社会に対応したものではないという大問題があります。まず、この法案の前に、サイバー社会の在り方を定めるサイバー社会基本法を制定するということの方が先なんじゃないんでしょうか。それが必要なんじゃないでしょうか。
#47
○国務大臣(江田五月君) 今野委員のなかなか含蓄に富む哲学的なお話が今ございました。私に十分理解ができているかどうか必ずしも自信ないんですが、しかし、私は、確かにサイバー空間というものが現実のこの空間とかなり違う特徴を持っているというのは事実だと思います。サイバー空間の中では、ともすれば必ずしも十分な根拠のない情報が情報を呼んで、いろんなびっくりするようなことを生み出しているといったこともございます。私なども2ちゃんねるの世界ではかなりいろいろやっつけられているんじゃないかと思いますが。しかし、他方、私は、市民社会というのは国境があって、そしてこれは有体物で見えるものだというのも、これもまたいろいろ変化をしてきているんではないかということも感じます。
 実は、もう今からかなり前のことになりますが、私はアメリカへ行ってジョンズ・ホプキンス大学で話を聞いておりましたら、そのジョンズ・ホプキンス大学の学生たちが、今から十何年も前です、北京の天安門広場で一生懸命頑張っておった学生のところにファクスでどんどん世界の情報を入れていたんだというようなことも聞いたことがございます。
 ですから、そういうことを考えたら、市民社会というものを構成する市民というのも、実は今、国境というのは随分下がった中で、お互い地球市民と言うと、地球市民なんていうものはまだ全然概念として成立していないという、そういう意見も当然ありますが、しかし、何かそういうものが今生まれてきていて、そうした地球全体の市民のつながりの中にコンピューターネットワークというものが一つのインフラになっているというようなことも、天安門のときにはファクスでしたが、今はもうファクスじゃありません、そういう時代になっていることも事実であって、市民社会というものをしっかり成り立たせていく上で、このサイバーというある種のインフラストラクチャーをしっかりと安心できる安定的なものに維持していくように、そこに大変な害悪を及ぼす可罰性のある行為があれば、これはやはり刑法体系の中で処理していく必要はあると思っております。
 サイバー基本法というものは、これまた十分委員の深い学識を披瀝いただいて勉強させていただきたいと思いますが、取りあえず今はこのサイバー法案というものを提案をしておりますので、これについての御議論をいただければ幸いでございます。
#48
○今野東君 私は順番が違っていると思います。この法律の前にサイバー社会基本法、市民社会も変わっているということであれば、もちろんそれに合わせた規律というのを整備していかなければなりません。しかし、サイバー社会がどのようなものかというものを私たちが基本的にきちんととらえるという意味でも、そこのところを、基礎を、基本法を作っておきませんと、順番が違っていて土台がないのに柱だけ立ってしまう、そういうことになってしまうのではないかと大変危惧しております。
 この改正提案の中で、私、最も問題がある規定は、恐らくこれからも議論されるだろうと思いますけれども、コンピューターウイルス作成・供用罪の新設なんですね。市民社会を規定する刑法では、社会に実害を与えるものの作成そのものは処罰されておりません。つまり、作成そのものでは社会的実害は存在しないわけですね。それが使用されて初めて実害は発生します。
 一つ例を挙げますと、刑法百四十四条、浄水毒物混入罪というのがあります。ここでは、毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者を処罰の対象としています。しかし、毒物その他人の健康を害すべき物についての規定は存在していません。つまり、毒物その他人の健康を害すべき物の作成は処罰されていないわけです。
 なぜサイバー犯罪についてのみ特別な扱いをしなければならないのか。もし処罰するとすれば、その理由を明らかにすべきではないでしょうか。その処罰の根拠をお聞かせください。
#49
○国務大臣(江田五月君) まず、前提として、現代刑法において作成罪が処罰されるということはないんだと、こういうことを言われたわけですが、それは私はいささか見解を異にいたします。
 例えば、通貨偽造の罪、これは偽造通貨を作成することで既遂になっておりますし、文書偽造も同じです。そうした偽造された通貨や偽造された文書を行使をすれば今度はその行使が罪になる。その行使によって、例えば詐欺をすれば虚偽公文書作成・同行使・詐欺というような罪になって、これが観念的競合とかあるいは牽連犯とかというようなことになって、一罪として科刑されるというような仕組みになっているのだと思います。
 作成という、コンピューターウイルスを作成するという行為によってでき上がったコンピューターウイルスというものは、コンピューターネットワークの社会の信頼を害すべきものを新たに存在するに至らしめる行為であって、これは言ってみれば害悪の根源を作り出す行為であって、それ自体当罰性が十分に認められる。
 ただ、作成されたことですぐにコンピューター秩序が壊れているかというと、それはまだそこまでは至っておりませんが、しかし、今の現行刑法体系の中には危険犯というものも、いろいろほかの場合にもございます。具体的危険犯もありますし、抽象的な危険犯もあります。そういうことを考えれば、刑法体系全体の中でこのコンピューターウイルス作成という行為を可罰性あるものとして切り出すことは刑法体系とそごするというわけではないと思っております。
#50
○今野東君 今大臣が偽造が存在するとおっしゃいました。この偽造は処罰されています。しかし、これは正当なものが存在する中での偽造行為が犯罪とされているのであって、作成そのものが問題とされているわけではないのではないでしょうか。
#51
○国務大臣(江田五月君) 現行刑法は行為を罰するということになっております。過失犯が行為があるのかどうかという議論はございますが、この場合でも過失の行為、注意義務に違反した行為、これを取り上げて処罰をするということであって、このコンピューターウイルスを作成するという行為に着目してこれを構成要件とするということがおかしいというわけではないと思います。
 もちろん、それは作成された結果のウイルスが存在するところまで行かないとこれは既遂犯にはならない、実行の着手で既遂になりますかね、いやいや、そうじゃないですよね、と思いますが、しかし作成行為自体を取り上げるということはおかしいわけではない。
#52
○今野東君 そこのところは、しかし、きちんと議論を、これからいろいろ出てくるのだろうと思いますから、その議論を待ちたいし、期待をしたいと思います。
 この法案は、共謀罪法案と同様、その中から抜き出したものであるというふうに私は思いますが、今回の改正案はどうも立法理由が明らかではありません。この際だから改正してしまおうというのでは後々の社会に混乱を残します。従来、議論されてこなかった強制執行妨害罪関係についてもそういう立法事実が存在するのかどうか、これも含めて考えるべきだと思います。
 今、五分だけ残っているんですが、私どうしてもここのところをちょっと大臣に確認しておきたくて取っておきました五分と言ってもいいんですが、最後にちょっと全く別のことですけれども、お伺いします。
 福島第一原発の事故なんですが、現時点で教訓化すべきことはたくさんあります。その一つが、稼働中の原発について監視、規制する機能を持つ原子力安全・保安院を経済産業省に置いているという機構上の問題。よく近ごろ言われておりますけれども、原発を推進する業務と、監視し規制する業務を経済産業省という組織に置いている。これは、どうしても規制する、監視するという方が甘くなってしまうし、現にそうなっていてその中でこの原発の事故というのは起きました。
 こういうことは、法務省にもあります。入管行政です。入国管理局に、不法に入国する人を取り締まるという業務と、難民として逃れてきた人を保護するという言わば矛盾する業務をやらせている。こういうところから、難民認定数が毎年毎年非常に少なくて、日本が難民鎖国と言われているその現状が残念ながら生まれているのではないかと思います。
 難民認定は、内閣府の外局に難民認定委員会を置いて、より公正を保ち、保護するというところに視点を置いてこうした認定業務を行うべきだと思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいんですが、それでは政務官にお話しいただいて、後に大臣にお願いします。
#53
○大臣政務官(黒岩宇洋君) 今私が担当させていただいておりまして、そして前中村政務官の時代からこの難民認定業務についての勉強会というものも開いていることもありますので、私の方から端的に答弁させていただきます。
 今、今野委員の御指摘、まさに〇九年のインデックスにもありまして、当然、このインデックスを踏まえて、難民認定行政を法務省から切り離していくという、そして難民認定委員会を設置していくという方向性は今踏襲しておるところでございます。ただ、その前段階として、難民行政のまずは十分な制度設計そのもの、そして組織体制の構築及び人材確保等の検討というものを今させていただいておるところでございます。
 しかし、あくまでも今、今野委員御指摘の方向性に向けまして、本当にまさに速やかに今具体的な作業に取りかかっているという状況でございます。
#54
○国務大臣(江田五月君) 国家というのは一つの権力でございまして、その権力をいろんな形でチェックしていくシステムをつくっていくというのは非常に重要なことで、今、今野委員もそういう観点から問題提起をされていることだと思います。
 原子力についてお話ございました。私は細川内閣のときの科学技術庁長官を務めておりまして、今回のこの福島原発の事故を見て、本当にざんきの念に堪えぬところもございます。しかし、一方で、当時は科学技術庁という役所の中に原子力局と原子力安全局というのがあって、その外に原子力委員会と原子力安全委員会というのがございました。そういうある種のチェックを、ダブルチェックと言っておったんですが、そういうものでやっていたんですが、そして商業炉についてはこれは通産省が所管をするというようなことで、その間の連係プレーがどうだったかということもあって、たしか橋本行革で今のシステムになったと思いますが、経産省に原子力安全・保安院と、安全・保安院といいながら、やはりこれは商業炉を推進をしていく局、機構なんだろうと思いますね。
 これでいいのかというのは今まさに議論になっているところでございますが、似たようなことが法務省の中にもあるという御指摘、これは民主党の、今の政策提案も我々受け止めながら検討をしてまいりたいと。検討状況については、今、黒岩政務官の方から申し上げたとおりでございます。
#55
○今野東君 ありがとうございました。終わります。
#56
○森まさこ君 自民党の森まさこです。よろしくお願いします。
 最初に、前にこの委員会で大臣の方に、SPEEDIの情報が国民にずっと非公開であったこと、知る権利を害さないんでしょうかという質問もいたしましたけれども、先日の予算委員会で、実は三月十一日の震災当日に災害対策本部と保安院がそのSPEEDIの予測図を自ら指示をして作らせていたということで、それが住民には知らされていなかったために被曝をしてしまった子供二百五十人を含む七百人余りの方が浪江町だけでもいたわけですが、そのことを指摘させていただきまして、被曝をしてしまったことは事実としてあるものですから、それをやはり早く内部被曝の健康診断、診査をしてほしいということを申し上げましたら、翌日に早速経産省の方から、浪江町のその当時避難中だった住民に対してホール・ボディー・カウンターによる被曝検査を実施するということを決めていただきました。
 一つ一つの事柄、質問しないと解決していかないということ、非常に残念なんですが、昨日には保安院の方で放射性物質の放出量が四月に発表された二倍の七十七万テラベクレルというような発表もございました。情報がやはり後出しであり、小出しであり、被災地の思いとしては非常に傷つけられる事態だということは申し上げておきたいと思います。
 本日は、被災地の相続放棄の熟慮期間の伸長についてお伺いをしたいと思います。
 三月十一日に発生した東日本大震災から間もなく三か月を迎えますけれども、死者の数が一万五千人を超えまして、ただいま避難者が九万八千九百五十五人ということです。また、福島第一原発の事故は進行中で、多くの被災者は生活再建の見通しも立たないなど、混乱状態が続いています。
 日本弁護士連合会が三月下旬から実施している被災者向けの電話相談では、遺言、相続の相談は当初一日一件程度であったんですけれども、四月中旬から増え始めまして、五月は多いときで一日十件に達しているということです。これは、四十九日の法要を終え、遺産の処分などを考え始める人が出てきたというふうに考えられます。
 民法九百十五条によりますと、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから三か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければなりません。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができるわけですけれども、家庭裁判所でこの伸長、伸ばす申立てを経ない限り、単純承認したものとみなされてしまうわけです。
 そうすると、震災が発生してから三か月を経過した、早い方では六月十一日、六月中旬ごろには多くの被災者が相続を単純承認することになってしまいますけれども、被相続人に債務がある場合など相続人に不利益な場合もありまして、やはり相続人に十分な熟慮期間を保障する必要があると思うんです。少なくとも、被災地の現状からすると三か月は余りにも短いというふうに申し上げたいと思います。全ての仮設住宅が供給されるのは一体いつになるのか、八月末ではまだまだ私は無理だというふうに考えております。
 またさらに、相続する財産のことを念頭に置いたときに、では、土地、原発立地地域のあの土地を国が買い取るとか、それから借り上げるとか、またそういったことについても何も決まっておりませんし、それから、二重ローン問題も指摘されておりますけれども、その二重ローンの問題の解決、債務免除をするとかそういったことについての立法措置もまだまだ俎上にものっておりません。
 私は、やはり一年程度伸長していただきたい。こういった特別立法が全てでき上がって、自分の財産がどうなるのか見通しが付くという、そういう時期を考えますと、一年伸長するというこういう特別な立法をしていただきたいというふうに思いますが、法務大臣の御見解をお聞かせください。
#57
○国務大臣(江田五月君) 福島第一原発の事故以来、事故の状況あるいは放射性物質の飛散の状況などいろんなことが、当時分からなかった、それが後からいろいろ分かってきて、委員御指摘のような問題点もあり、これをいろいろと改革をしていく、改めていく努力も我々続けているところで、本当に委員の現地を踏まえた御指摘には感謝をしております。
 そんな中で、今相続の放棄の期間の問題をお挙げになりました。相続の放棄あるいは単純承認、これに三か月という期間を付し、さらに家庭裁判所によって伸長することができるという制度になっていることの意味は、これはもう委員よく御承知のとおりですが、相続の効果の帰属が不確定な状態が続くというのは、やはり他の相続人や利害関係人の利益を害したり、あるいは法律関係の早期安定についての公的な要請に反したりするおそれがあるということでこういう制度になっているわけではございますが、さはさりながら、委員が今現場で、現地でお感じになっている状況を見ると、それは相続財産の調査をするようなそんな事態なのかという思いもよく分かりますし、また家庭裁判所へ行くなんて、そんなことを求めるのも無理だということもよく分かるわけではございます。
 ただ、ここが難しいところで、法務省としては、やはりこの法的安定の要請といったこともまた無視できないということもございまして、やはり個別の事案において不当な結論とならないような手段を何か講ずるということになれば家庭裁判所の手続ということになっていくんですが、ということを考えて、どうもいろんな懸念がありますので、内閣としての対応は、まあはっきり言ってなかなか困難だと。ただ、今、各政党の皆さん方が国会の場でいろいろと御努力をいただいているということは存じておりまして、これに対して、私ども、一定程度の懸念も申し上げると同時に、知恵もいろいろ絞りながら協力をさせていただければと思っているところでございます。
#58
○森まさこ君 自民党は、原発地域については特別立法案というものを党内で決めまして、原賠法の賠償を国がまず先に仮払いをする。それから、そのほかにも県の方に基金を設けまして様々な生活又は事業の支援をしていく。また、二重ローン問題についても、私が所属しております超党派の勉強会において、二重ローン問題の解決に債務免除等の施策を盛り込んだ法案を提言しております。まだこういった目の前の財産に関する課題が法案を準備しているとかそういった状況であるのに、相続を放棄するかしないかという期限だけが、今日は六月七日ですけれども、六月十一日、目の前に迫ってきているということについては、大変私は心配であるというふうに申し上げます。
 この後の質問で死亡の質問をしますけれども、自殺者も今段階で大変多く出ております。私は、やはり後から後悔することのないように、法でできることをできる限りしていただきたいということを強く申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
 次に、震災以後の被災地での死亡について御質問をしたいと思います。五月のたしか二十七日の、この法務委員会で御指摘をさせていただきました、食べ物や水がないことにより衰弱して死亡する餓死又は衰弱死というものについての質問でございます。
 これについては、当時、厚生労働副大臣がここにいらっしゃいまして、こういったものがありますかというふうにお伺いしたら、今そのことは把握しておりませんというお答えでしたけれども、後から厚生労働省の役人の方が私の事務所にいらっしゃって、そういう事実はありませんというお答えでした。
 ただ、私はその御質問をさせていただいたのは、自分の地元である福島県の南相馬市内の病院の病院長が震災直後からずっと警察の嘱託で死体検案をしておりまして、その病院長さんが自分で、私と直接会って話したときに、自分は十名以上の餓死者、餓死と衰弱死と、どっちかと言ったら、後から運ばれてきて、それは医師でもはっきり分からないけど、どう考えても食料と水がなくて亡くなったという方が十名以上いましたと、大変もうがりがりに痩せてですね。そういう方について自分はこの死体検案書に、衰弱死であるとか、それから、最後には水分が非常になくなると心筋梗塞になるようなんですが、心筋梗塞と直接死因に書いても、備考欄のところに大変衰弱していると、生前の体重から激減しているということを書いたり、そういうことをしましたというふうに私は聞いたものですから質問したんですけれども、厚生労働省は把握していなかったということなんですね。
 ところが、ここに二つの書面がございます。一つは、南相馬市から私がいただいた震災直後の衰弱死の方の一覧表です。衰弱死又は全身衰弱又は備考欄に衰弱という記載がある方が八名、南相馬市だけで八名いらっしゃいます。
 ところが、二つの書面のうちもう一つの書面は、私が、厚労省がないと言うものですから質問主意書を出したんです。内閣総理大臣菅直人というふうに答弁書をいただきましたけれども、今朝いただきました。六月七日付けの、私の書面による質問主意書に対する内閣の回答は、平成二十三年三月十一日から同年四月十一日までの間に死体見分を行った御遺体のうち、お尋ねの餓死、衰弱死はないと書いてあります。
 なぜこんなことが起きるのか、私もおかしいなと思っていろいろと調べました。同じ法務委員会の委員でいらっしゃる民主党の有田先生もツイッターでいろいろと調べてくださったことを書き込んでいただきましたけれども、警察庁、厚労省に問い合わせても、ないという返事であったということが書かれてあります。私が問合せをしても警察庁も厚労省もないと言ったんです。国会議員が正面から省庁に聞くと真実が明らかにされないというのは霞が関の病理とも思われますけれども、私も弁護士でありますので在野経験が長いわけですから、視点を変えて、この医師が死体検案を行った後、その検案書がどこに行くのかということで、それを追跡してみました。
 ここに死体検案書の実際に使われている用紙がございますけれども、医師が死体検案をしてこの書面に死因を書いた後、どこに行くのか。市町村の役場に行くということなんです。そうしましたら、五月二十六日の質問の翌日、五月二十七日に南相馬市が電話してきて、南相馬市にはそのような衰弱死ありません、分かりませんと、そういう事実は把握しておりませんという御回答でした。よく聞いてみましたら、市役所は死亡したかどうかだけを戸籍に書いて、原因などはよく見ません、それは法務局に送るんですということでした。
 大臣、この死体検案書が法務局に送られるということを御存じだったでしょうか。
#59
○国務大臣(江田五月君) 私も初めからそういう書類の流れというものを全部知っているわけではございません。しかし、これは、森委員、現場でいろいろ見聞きしておられることに基づいた御質問なので、恐らくその御質問には十分な根拠もおありなんだろうと思います。
 そういうことを踏まえて聞いてみたんですが、死亡届には一般的には死体検案書というものが付いて、これは医師が検案をして、一枚の紙になって二つの書類がある、それが市区町村に提出をされます。そうすると今度は、それが一体となったままでその亡くなった方の本籍地の市区町村に送られます。そこで本籍地にある戸籍簿に死亡の事実と届出の人や何かでしょうかね、記載をされます。それがある程度たってから、おおよそ一か月ぐらいかと思いますが、その戸籍のある市区町村を所管している法務局の、これが地方法務局の本庁であったりあるいは出張所であったり支局であったりというところへ届けられるということになって、その段階で法務省としてはこれを受け取るということになりまして、そのときには死体検案書もくっついた紙が届くということになるんだということを勉強しました。
#60
○森まさこ君 私も、この死体検案書が市町村の役場から一か月後には法務局に行くということを分かりまして、それではということで、二十七日、翌日の、これ決算委員会ありましたので決算委員会の後、自民党の幹事長室に法務省に来ていただきまして、法務局にあるんじゃないかと、三月十一日のものは一か月後で四月になったらもう法務局に行ってるんじゃないのということで問い詰めておりました。そうしましたら、その最中に南相馬市からまた電話が掛かってきまして、南相馬市にありますというお答えがいただいたわけなんです。
 実は南相馬市にあったんですね。一か月たっても法務局に送らなかった。法務省さんも、いや、本当は一か月後に来るはずなんですが、ないみたいなんですということ。私は、問合せをしている方は、どこに聞いてもない、ない、ない。書いた本人は書いてる、書いてる。おかしいなと思って、何か隠蔽されているような、そういう意識になって一生懸命聞いてたわけです。そうしたら、法務省さんが法務局にないと言っていることは正しかった。南相馬市に本当はあった。実際に南相馬市にあって、それじゃ、私は南相馬市に、昨日はないと言ったんだけど、あると言うんでしたら、その中に三月十一日から現在までの餓死とか衰弱死とか衰弱とか書いてあるものを一体何人いるのか教えてくださいよと言ったら、いや、と言っているから、教えられないようなことを言っていますから、じゃ、分かりましたと、市長あてに私が文書でお問合せしますと言って文書で問合せ文を送りまして、そして返ってきたものがこれでございます。南相馬市だけで八名の方が衰弱死又は衰弱ということで、南相馬市内の病院長さんが御自分で死体検案書に書いたものなんですね。
 この内容を見ますと、本当に残念な内容でありますし、同時に自殺の数も調べていただきましたら、短い期間で自殺も南相馬市で五名ございました。この時期に南相馬市に応援に来てくださった監察医の方々、四月二日から十日に入られた方はそのような事実はないとおっしゃっていたようなんですけれども、亡くなった方は全て三月なんですね。三月十一日に震災があって、それから食べ物がなくなって、何も食べ物も水もないと一週間や二週間ぐらいで非常に衰弱するということでございます。
 実際に、三月二十六日に餓死寸前の方が発見をされております。三月二十九日の地元の新聞に載っておりますけれども、警察が大変忙しかったので、地元に残っていた市民がパトロール隊を結成して見回っていたところ、避難してきた車の中で三月十七日から飲まず食わずでいたという方が、三月二十六日に、男性の五十一歳の方でございますが、衰弱状態で発見されました。
 このパトロール隊の隊長に私も話を聞きましたけれども、何人もそういった衰弱状態の方々を自分たちは救助していますと。ただ、亡くなった方というのは医師とか警察の方に行くので、私たちは、亡くなった方もいるだろうとは思っていますが、本当に衰弱状態で餓死寸前のような方をたくさん三月には助けましたということなんですね。
 私も、三月、何回も南相馬に入りました。当時はテレビ局もマスコミも一切南相馬市の中にいなかったんです。私は、二トントラックで水と食料を積んで、夫が運転して運んでいったわけですけれども、そのときに、助手席で私はビデオカメラでその当時の状況を写してきて、どこのテレビ局も原発地域の中の映像というのは当時テレビで映しておりませんでしたので、私の撮ってきた映像をテレビ局にお貸ししてテレビ局から放送してもらったんですが、その映像を見ていても、その当時、店ももう全く開いていません、人も全然外歩いていません。そういう中で、食料、水が大変切れて、避難所以外の御自宅にいる方は食料と水を手に入れる手段が全くなく、ガソリンもなかったので、車でどこかに取りに行くとか車で避難をするということもできなかったということを申し上げておきます。
 南相馬市は屋内退避という政府の指示で、そういう地域でおりましたが、屋内で退避せよと言われても屋内で生活ができないんですと、そういう悲鳴がたくさん送られてきました。この死体検案書を書いた病院長さんは、その当時津波で亡くなった方も地震で亡くなった方もいらっしゃいますけれども、その中で食料や水がなくて亡くなっていったという、そういう命があるということを自分は伝えたいと。それは、森さん、国会議員じゃないと、国会でないと明らかにできないと思うので頼みますというふうに私は言われました。このことが明らかになった以上、私たちはその亡くなった方たちのやはり命を無駄にしないように、二度とこのような悲劇が起こらないようにしていく責任があると思うんです。
 どうしてこの衰弱死や餓死ということが統計上上がってこないのか。厚労省のこの死体検案書の記入マニュアル、これを読みますと、ここに書いてある死因の記入例ですね、ここには餓死という欄がないんです。死因分類表というものの中には餓死という欄がないんですね。ですから、医師がここに、記入マニュアルに書いてないけれども思い切って書こうということでもなければ、備考欄に書こうということでもなければ、備考欄に書いても統計に上がってこないわけですから、統計には上がってこないんです。
 私、これ大臣に一生懸命にお話ししているのは、この死体検案書というのが市町村の戸籍係で死亡の事実だけチェックされたら全部法務局に行っているものですから、やはりこの死因の書き方ということは法務省も全く関係のない話ではないと思うんです。これを改善していこうと思ったら法務大臣のお力も借りないといけないと思っているから質問しているわけでございますけれども、この日本における餓死は、人口動態統計で読み取ろうと思ったら、餓死という欄がないわけですから、栄養失調とか栄養欠乏とか食料の不足という欄で拾うしかないんです。
 ところが、厚労省が出している死因分類表には、私が持っているこの二枚の細かい表でございますが、それさえも載っていないんです。それは全部その他のところにくくられているんです。ここに書いてない、省略されているその他のところを細かく細かく、私のようにどこかに餓死がないかなと思って調べてみますと、Eの四十と四十六のところに栄養失調、Eの五十のところに栄養欠乏、Xの五十三に食料の不足と、やや関係があるかなというような、そういう記載例があるだけなんです。
 私は、この記載例について改善をして、このような事例があった場合に統計に載るようにしていったらどうかと思うんです。震災後の場合もそうですけれども、実際には虐待の場合に、親が虐待で餓死をさせたという事例もありましたし、何件かやはり今後統計上も餓死というものをピックアップしていかなければならない事例が出てくるというふうに思います。
 我が国においては、死体検案の場合に、またそれが解剖等、行政の死体検案とそれから司法の検視がありますけれども、両方を合わせてでも解剖率は二%と非常に低くて、マンパワーの面でも指摘されておりますし、オートプシーイメージングという、Aiという機械で、そのマンパワーを補うために機械で、これは死亡時画像判断というふうに訳されておりますけれども、画像で判断をして、死者は語ると申しますけれども、どういった理由で亡くなっていったのかということを分析をしてその後の予防に生かしていくということを、私も所属をしております異状死議員連盟でもかねがねこれは訴えさせていただいておりますが、まだこの導入はかなっておりません。
 先ほどのお医者様のおっしゃる、食料がなく水がなくこの日本において死んでいった命があるということを、これを念頭に置きまして、法務局に戸籍係から送られて、その後ずっとそこに保管をされっ放しでありますこの死体検案書、これについての記載の方法について改善していくべきではないかということについて法務大臣の御見解をお聞かせください。
#61
○国務大臣(江田五月君) 委員の問題提起は大変重要なことだと思います。
 私も、今思い出すんですが、三月十一日のこの大震災発生以後、時々官邸で会議もやっておりましたが、そのときに私どもが一番まずしなきゃいけないことは、とにかく人命を助けるということだと。あの震災の中で、本当に大勢のまだ生きている命が実は私どもの手が届かないところにあった、これ本当にいっぱいあったんで、そこへどうやってアクセスしてどうやって助けるかという、そのために自衛官の皆さん十万人に出ていただいて、本当にあの皆さんも大変だったと思います、そういう努力をして、幸い助けられた命もたくさんございました。しかし、それだけたくさんの命を助けることができても、なお助けることができなかった。それは餓死、衰弱死、あるいは大変寒い時期でしたから、そうした寒さで亡くなる、いろんな方があって本当に悲惨な状況であったと思います。そうしたことを後の資料にしっかりと残していくことができるようにするにはどうしたらいいのだと、これは今私たち本当に考えていかなきゃいけないことだと思っております。
 ただ、誠に申し訳ない言い方になってしまって恐縮なんですが、私の手元にも今、死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル、今委員がお挙げになったものだと思いますが、これは厚生労働省医政局と書いておりまして、法務省の所管でないので、是非厚労省においてそうしたことも真剣に検討していただければ私としては大変うれしいということを申し上げて、お答えとしておきます。
#62
○森まさこ君 ありがとうございました。終わります。
#63
○金子原二郎君 私は、観光客の誘客についてお尋ねしたいと思いますが、三月の議会でもお尋ねしたんですが、御承知のとおり、地方は大変厳しい環境に置かれております。特に国内の旅行客というのは激減でございまして、特に少子化と不景気によって、なかなか国内での観光客を増加させるというのは非常に厳しい状況にあると。
 そういう中で、政府といたしましては、海外に、特に外国人の観光客を誘客しようということで積極的に今日まで取り組んでやってまいりました。おかげで、特に外国人のお客さんということになりますと、今百万人を超しているのは、たしか韓国、台湾、最近中国が入ってきているわけですね。中国の場合は、非常にビザの発給条件の緩和によって数字が随分変わってきているわけなんですね。
 実は、二〇〇九年ですか、中国人の観光客のビザの発給の開始をやりましたね。二〇〇九年の統計で見てみますと、団体観光ビザ発給数が約三十七万九千人、個人は僅か七千七百人なんです。ところが、二〇一〇年の七月に個人の観光客へのビザの発給の要件緩和をやりましたら、二〇一〇年の統計を見てみますと、団体が六十五万三千人、そして個人が五万二千人になっているんですよ。もう飛躍的に中国からの観光客が増加しておると。ところが、残念ながら、今回のこの福島原発の問題を含めて、震災で今非常に減少いたしております。
 そういう中で、今回、政府が沖縄だけ観光数次ビザを認めるということで先般発表がありまして、いよいよ七月一日からこれを実行に移すということで、これは非常に、我々もかねてから観光の数次ビザとかビジネスビザを国に要望しておる中でこういうものが今回実現に至ったということで、大変私どももほかの地域の皆さん方も期待しているんですよ。
 ここに至った経緯と、それから中身について是非御説明いただきたいと思います。
#64
○大臣政務官(徳永久志君) 昨年六月に閣議決定をされました新成長戦略におきまして観光立国の推進がうたわれております。そうした中で、外務省といたしましてもこれまで中国人観光ビザの見直しについて累次行ってきているところは、先生今御指摘をいただいたとおりであります。そうした中で、沖縄県の方からも中国人観光客に対するビザ緩和について度重なる熱心な御要望をちょうだいをしたところでもあります。政府内でも鋭意検討いたしまして、沖縄振興の観点から今回の措置を決定をいたしたところであります。
 中身につきましては、このビザにつきましては、まず十分な経済力を有する中国人個人観光客とその家族で、ビザ取得後の最初の訪日日程に沖縄県が含まれる者に限り発給されるものであります。有効期間は三年で、その間であれば何回でも訪日ができます。また、一回の滞在期間は九十日というふうにしているところであります。
 以上です。
#65
○金子原二郎君 ということは、沖縄に最初入ってくると、あとは何回でも、日本の国のどこに入ろうと自由だと。言うならば、沖縄にまず入りなさいと、入った後は九十日以内の観光ビザを発給しますという、そういう内容というふうに理解していいんですね。
#66
○大臣政務官(徳永久志君) はい、そのとおりでございます。
#67
○金子原二郎君 このビザの緩和というか、できるだけ私たちはノービザということを今までお願いしてきたんですけれども、なかなかそのビザの緩和ができないというのは、一番の今までの理由は、法務省において、入国後の不法滞在、これが非常に心配されるということで、なかなかまた外国人犯罪につながるということで今までこういった条件緩和というのは非常に難しかったわけなんですね。そういう中で今回こういうビザの条件緩和をしたということで、例えば、二〇一〇年の実績で入国後不法滞在した方というのは大体どれぐらいの数字の方がいらっしゃるんですかね。
#68
○国務大臣(江田五月君) 二〇一〇年、すなわち平成二十二年ですが、委員先ほどお挙げになりました団体観光査証の入国者が六十三万八千人、そのうち、これは電算上でございますけれども、同年中に不法残留になった者は五十五名、六十三万八千人中五十五名。
 個人観光査証については、これは平成二十二年十二月まで、これは要件緩和前と後とがありますが、要件緩和の前一年間にお見えになった中国人が二万一千人、これもあくまで電算上ですが、不法残留となった者は一名。要件緩和後、二十二年十二月までは約三万二千人、そのうち不法残留となった者は九名でございます。一名が九名というので、率からいえばすごい率ですが、絶対数からいうと本当に僅かな数字しか不法残留にはなっていない、しかもこれは電算上のものであるということを申し添えておきます。
#69
○金子原二郎君 今まで私たちは何回となく、特に中国人のビザの緩和、ノービザ化ということを国に対して強くお願いしてまいりました。そういう中で、特に法務省入国管理事務所の皆さん方から一番我々に答えとして返ってきたのは、要するに、不法入国が多いとか犯罪が多いとかということでなかなか緩和できないんですよねという話だったわけなんですね。
 ところが、実質的に緩和してみて今お聞きしたその数字を聞くと、もう本当にごく僅かなんですね。ごく僅かということは、何ら、逆に言うと、より一層のビザの緩和をしてもそれほど我々が懸念していたことは起こらないというふうに考えていいと思うんですね。
 だから、何で今回沖縄だけなのか。どうして全国で、今非常に中国人の客をどう誘客するかということでみんな積極的に努力しているんですよ。一番弊害になっていたのはビザの問題であることははっきりしているわけなんですよ。だから、ビザが緩和されたことによってもう飛躍的に数字が増えているわけなんですよ。沖縄を通ったら全部ほかのところはノービザでいいですよと。そうしたら、最初からノービザにしたらいいじゃないですか、どうですか。
#70
○国務大臣(江田五月君) 日中関係といいますか、中国人の日本における観光の在り方というものも時代の変化によって次第に変わってきているものだと思います。
 平成二十二年に緩和をされた。それまで、いや、中国人が不法残留されては困るんですと、こう言ってまいりました。これは、長い間自民党の皆さん中心の政権の中でそうした懸念というものがずっと残ってきたのかと思いますが、もちろん、その間にも次第にそうしたことはなくなってきて、そして、私どもが政権担当するようになっていろいろ調べてみると大丈夫だということで、一度、去年、二十二年に緩和をし、更に今回一層の緩和をしたということだと御理解いただきたいと思います。
 いや、だけど、初回の旅程、旅行日程の中に沖縄が含まれておると、これ、最初例えば成田に来てもいいわけです、沖縄へとにかく行ってくれる、そういう旅行日程になっていればいいんで、あと二回目からは今度沖縄でなくてもいいわけで、随分緩和していますから、全国、まあやっぱり沖縄は一生懸命今来てくださいと言っていますから、是非沖縄には行ってほしい。しかし、その上で、全国どこにも、中国の皆さん、大いに旅行して日本を楽しんでいただきたいと思っております。
#71
○金子原二郎君 確かに、沖縄に一回入ってくるとそれ以外のところは自由にこれから入れるようになるんですがね。ただ、最初からやっぱり目的を持って皆さん入ってきますから、全体的に全国的にノービザ化でするとそうしないとでは随分違うし、それから、要するに誘客運動、お客さんを引くための各県が運動するときに、やっぱり全然相手に対する訴え方が違うわけなんですね。非常にもう今は自由に入れるようになりましたというのと、一回沖縄に入ったら自由ですよというのでは全然違うわけなんですから、そこは私は、もうこれだけ緩和してやるのに、そんな差を付けること自体がかえっておかしいと。
 せっかくここまで、民主党政権になってああよく変わったなと僕は感心しているんですよ。もう、なかなか今までできなかったことをどんどんやっていただいているから、ああ、これはいいなといって、非常に積極的に取り組んでいるこの姿勢は大変評価しています。評価していますから、来年はちょうど四十周年ですからね、日中四十周年、これを機に、今回の場合は外務省が決定したの、法務省が決定したの、今よく言われるように総理が決定したの。じゃなくて、恐らく外務省と法務省の中で話合いしながら最終的な決定がなされたんだろうと思うんですが。
 もう是非これは、特に、先般、温家宝が見えて、今後、日中友好をますます進めていこうというようなお話がありました。各県で青年交流とかもいろいろ積極的にやっておりますが、やっぱり交流で集める人と自由に来るのでは随分違います。やっぱり自由に多くの方々が日本に入ってきて、そして日本を見ていただく、日本のことを、文化を知っていただくということはこれからは大変大事なことですから、単なる観光客の誘客化だけではなくして、より中国との友好関係を深めていくためには、今はもう日本人は中国においてはたしか十五日間ノービザ化されていますんで、もう是非これは、今の法務大臣のとき、そして外務大臣松本さんのときにやるというふうに決めていただければ、いや、これはもう地元から拍手喝采だと思いますので、いかがですか。
#72
○国務大臣(江田五月君) 大変な激励をいただいて、ありがとうございます。
 これは、ただ、委員も御存じのとおり、この措置に対する一定程度の国民の皆さんからの批判や懸念もまたあるのも事実で、やはり実績を重ねながら、こういうことだから大丈夫だという、そうやって次第に交流を友好的なものに深めていかなければいけないことだと思っておりまして、今回の沖縄特例というものを更に一層これからも有効に、この中国人観光客、いや観光客だけじゃなくて、もっと自由な行き来というものがいろんなところでできるようにということに、みんなが安心する形、納得する形で広げていきたいと。
 是非とも野党の皆さんの御理解もお願いをいたします。
#73
○金子原二郎君 別に与党とか野党関係なくして、それぞれの地域の皆さん方が大変これは期待をしているわけでございますので、是非、来年は四十周年ですから、恐らく半年間この状況を見て、また国としてもいろいろ御判断をなさるというふうに思っておりますが、是非来年はこのノービザ化が実現することを期待しまして、要望ということにいたしたいと思います。
 そこで、今度は、緩和されますといろいろな手段によって日本にお客さんが入ってくるようになってまいります。最近、非常に九州とか各県で多いのがクルーズ船なんですね。これは非常にまとまって人が入ってまいります。
 実はある県では、クルーズで入ってきた方々が到着して入国手続に時間を掛けておると時間がなくなりますから、もう入国した時点でスムーズ、すぐ市内に入れるようなことにしようということで、実は平成十七年ぐらいからですか、県の職員さんを派遣して、そしてこの入国管理がスムーズにいくようなそういう形をつくり上げていた。これは陸での入国管理の関係と船での関係と両方あるんですけど、それが急に、実は先般もこれは質問をしたんですが、時間がなかったので十分な回答を得ていないのでまた改めて質問させていただくんですが、急にそれが変更になりまして、非常に難しいということになったということで、先般、私、この問題について質問をいたしました。
 今後、前向きで要するにこの問題については対応したいということで法務大臣からも御答弁をいただいておったんですが、その後どうなったか、ちょっとその辺についてお伺いしたいと思っています。
#74
○国務大臣(江田五月君) 長崎県からこの入国審査に関する御協力の申出をいただいておりまして、まず三月の段階で、福岡入国管理局から長崎県に対し、長崎県職員に御協力いただける事項等についていろいろ御説明させていただいたと承知をしております。
 ところが、東日本大震災の影響でしょうか、予定されていた大型クルーズ船の運航が中止されるなどして具体的な協議がちょっと進められない状況がございましたが、最近になってまた定期の大型クルーズ船の入港計画も具体化してきているという状況があるので、五月に福岡入管から改めて協議の機会を申し入れて、六月早々により具体的な協議を行っているところだと理解をしております。
 入国審査というのが国の仕事なので、ここのところはやっぱり国がやらなきゃという部分がありますが、しかし、せっかくの協力のお申出をちょうだいしているので、長崎県の皆さんのお気持ちを最大限生かした形で御協力いただけるように、県と福岡入管との協議を進めさせるようにいたします。
#75
○金子原二郎君 今まで全くなかったというのなら分かるんですよね。実際やっていたわけなんですから。それはやるときから国の専管事項ということは分かった上でやっていたわけなんですから、それが急に変更になったというのは、それはちょっとやっぱり我々も理解に苦しむことでございますので、是非前向きで取り組んでいただきたいということと、今長崎県の場合は民間の定期航路を来年から走らせようという話が出ております。
 民間は大変なリスクを持ってやる中で、やっぱり入国管理というのがスムーズにいかないと、せっかく民間が力を入れてやっても結果的にはうまくいかないということになりますので、これについても国としての今後対応を強くお願いして、御答弁をちょっといただいて、私の質問を終わりたいと思っております。
#76
○国務大臣(江田五月君) 長崎県においては、ハウステンボスが本年十一月ですか、上海―長崎航路の運航を計画して、その後これを定期便化するということを目指しておられるということを聞いておりますので、今の委員の御指摘をしっかり受け止めながら、十分な協議をさせていただきたいと思います。
#77
○金子原二郎君 終わります。
#78
○木庭健太郎君 まず最初に、専門学校、専門士という問題で、先月の三十日ですか、外国人が日本で就労するための学歴要件の緩和という問題、日本の専門学校の卒業生に与えられる専門士の資格を、これを追加するという方針を固めて、省令の改正を六月下旬にも施行をするということでございますが、まずこの見直しに関する目的と、これまでの経過を事務当局から伺いたいと思います。簡潔にお願いします。
#79
○政府参考人(高宅茂君) お答えいたします。
 従来、我が国の専門学校を卒業して専門士の称号を付与された外国人の方、この方が在留中にそのまま就職するという場合には就労資格、技術とか人文知識等がございますが、そういったところでの在留資格変更を認めてきたところでございます。
 ただ、日本に新たに来るという場合については、委員御指摘のとおり大卒等の学歴を求める要件がございまして、その結果、専門士の方が日本に引き続きいれば許可されるんですが、一旦出国して戻るという場合には許可がされないという構造になっておったところでございます。
 そこで、今回の改正といいますのは、その留学生の就職支援あるいは留学生の受入れ促進を図ると、こういう観点から、新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策においても、留学生支援のために、専門学校を卒業した留学生が単純出国してしまった場合でも、既に取得している専門士の資格をもって就労可能な在留資格を申請することについて検討することと書かれておりますとおり、いわゆる留学生支援という観点から、大学等の卒業でなくても、専門士でもっても許可できるようにすると。
 具体的には、専門学校を卒業して専門士の称号を付与された外国人の方が、在留資格は技術であると、技術というのは理科系でございますが、あと人文知識、国際業務、文科系でございますが、こういったことの在留資格で上陸許可を受けることができるよう法務省令の改正を検討しているところでございます。
 改正案につきましては、四月二十五日から五月二十四日の間にパブリックコメントを実施し、現在その結果を分析中でございますが、できるだけ早期に検討をして結論を得たいと思っております。
#80
○木庭健太郎君 パブリックコメントは大体どんな感じでございますか。
#81
○政府参考人(高宅茂君) パブリックコメントで寄せられた意見につきましては、現在整理中でございますので個別具体的な意見について御紹介するということは差し控えさせていただきますが、今回の措置について賛成、反対、両方の立場からの御意見をいただいているところでございます。
#82
○木庭健太郎君 おっしゃるように、確かに大卒の者に限られたものが専門士へ広がると、そのこと自体は、また経済対策というようなことも含めて、やり方としてはそれなりに一つの評価できるものなのかもしれませんが。
 ただ、心配するのは、要するに専門学校になると非常に分野も多いし、専門士といってもいろんな専門士が誕生するわけであって、したがって、どんなことを皆さんが心配されるかというと、確かに先ほど言われたように就労資格というのがきちんとあるわけですよね、こういう業界はできるけれども、この業界はできないとか。そういうのはあるんですが、専門士一般の形としてこういう形で緩和するということを言われてしまうと、業界の人たちの中には、これをきっかけに今後自分たちの業界、分野でも外国人がどんどん入ってくるような要件緩和につながっていくんじゃないかと、そんな心配を非常にされているところも多いと思うんです。
 つまり、何を申し上げたいかというと、やっぱりこういうことをやるときは、専門士が育った後のいわゆる就職する、就労する先の問題、つまり、それぞれの業界で様々な意見を持っていらっしゃると思います。私が直接聞いたのは美容業界からなんですが、美容業界にとってみると、今は確かにこれ制限されて、外国人が来ることはできません。でも、これを開くことで多大な影響が将来に出るんじゃないかという極めて危惧をされていて、そんな団体もいることは事実であって、私が申し上げたいことは何かというと、やっぱりそういった団体の、専門学校だけの話を聴くんじゃなくて、そういった業界の意見もよく聴いていただき、またそういうものとかかわる省庁との連携も是非取っていただきたいし、その上でこういうものをやるというふうに、一つの事情聴取じゃないですけど、いろんなところの意見は是非聴いていただきたいと、こういう思いをいたしておるんですが、大臣の意見を伺っておきます。
#83
○大臣政務官(黒岩宇洋君) 済みません、私の方がちょっとこれ所管しているもので、簡単に答えさせていただきますけれども、今、木庭委員御指摘のように、理容業界や美容業界の方、若干の不安の声があるということは承っておりますが、御承知のように、理容師、美容師の方たちは現行制度でも、これ専門学校を卒業しても、元々この理容師、美容師を就労を目的としての在留資格というのはいずれも該当しませんので、今回の措置によって新たに就労の道が開かれるということはございません。
 そして、その後の懸案事項については、まさに委員御指摘のとおり、外国人労働者の受入れについては、その範囲や条件を定めたり、そして変更したりすることについては、国内外の情勢を踏まえながら、そして特に我が国の産業及び国民生活に与える影響、その他の事情を勘案する必要があると認識しております。
 そして、法務省としては、やはり常に関係省庁と連携しながら、その都度、適切な判断、対応をしていくという、こういう所存でございますので、御理解いただきますようお願いいたします。
#84
○木庭健太郎君 要するに、そういう一つの資格変更みたいな問題だけでも、携わる方たちにとってみると、何を一体やるんだと危惧されるわけですよね。ああ、これはもう資格開くんだ、そういうふうにとらえてしまうんですよ。そこは丁寧な説明がいると思うんです、今おっしゃったような。そういうものがどうも欠けているなという気がとてもいたしましたので、是非そういった点も今後もきちんと御説明もいただきたい、意見も交換していただきたいということを強く要望をし、被災地の問題については、先ほど森委員から民法九百十五条の関係についてお話が相続についてありました。
 私は、大臣、それは一応法律的な建前とかいろんな意味で、九百十五条の問題について法務省そのものがやることがどうなんだろうかというその思いはそれはそれで理解できるんですが、民法に対する特例というような問題になってくると、これ、やっぱり法務省においても必要かどうかということは、我々もそれはいろいろやります。でも、議員立法という形でなじむのかなという気もちょっとするものですから、この辺は少し、まず九百十五条という問題になると、先ほどのような、法務省べったりとは言いませんが、そういう見解じゃなくて、やはりそういったものもどうなんだということは検討ぐらいは是非していただきたいと思うんですが、いかがですか。
#85
○国務大臣(江田五月君) 法務省べったりというわけでもないんですが、やはり民法の具体的な条文にもう直接にかかわることでございますので、民事基本法を所管するという意味でいえば、多少はやはりそこはかみしもを着たということにならざるを得ない部分が正直言ってございます。
 そうでありたくないなと思いながら、しかし、やっぱりこれは、民事基本法ということになれば法制審議会にもかけるなどなどいろんなことが出てまいりますので、是非ひとつそういう、しかし、これは今現場の皆さん、被災地の皆さんにそこまで言うのはどうかという思いもありますので、これは国会というのは立法機関ですので、是非ひとつ立法府において立法府の役割というのをここは果たしていただければ、私どもは異存がございません。
#86
○木庭健太郎君 もう一つ、今度は相続の問題とは逆の問題にちょっとなってくるんですけど、それは何の問題かというと、今度は民法三十条の関係の問題ですね。つまり、今回の大震災で所有者が行方不明になる、家族が死亡、行方不明のため相続人がいないというような土地、これがもうかなり出てくるということが予想される。自治体はそのような土地、今後、復興の問題が起きてくると、これを一時的に管理するというようなことも検討もされていると。
 ただ、これも、民法三十条ちょっと御説明をいただきたいんですが、現在の民法上はこの被災者が行方不明になった場合どういう取扱いになるか、確認のためちょっと伺っておきます。
#87
○政府参考人(原優君) 民法上、ある人が行方不明になった場合には失踪宣告という制度がございまして、通常の場合にはその失踪宣告期間は七年ということですが、今回の震災みたいなケースの場合には、特別失踪期間ということでその期間が一年に短縮されております。
#88
○木庭健太郎君 そういうものも含めて、これは一年で短縮できるということでよろしいんですね。
#89
○政府参考人(原優君) 民法上、特別失踪の場合には失踪期間一年に短縮されているわけでございます。
#90
○木庭健太郎君 ということは、今回の場合は特別失踪であるということでよろしいわけですか。
#91
○政府参考人(原優君) はい。失礼いたしました。特別失踪に当たると考えております。
#92
○木庭健太郎君 そうすると、やはりそのいろんな関係でいくと、今お聞きしたとおり、こちらはそういう形のものが実際にあってできる。ところが、先ほどあった九百十五条についてはそういったものは、特別の事情ということは勘案されないわけですから、確かに大臣おっしゃるように、議員の皆さんでお考えになられてということもあるんですが、まあ先ほど、出てくれば反対する意思はありませんという表明でしょうから、是非我々としてはそういうことも検討させていただいて。
 ただ、もう少し私が言いたいのは、やはりこれから何か月かたって、民法上の問題、いろんな問題で、特別立法しなければいけない問題というのをもう一回これいろんな整理をしなければならないんじゃないかなという時期に来ている。それは二次補正の問題、もちろんあります。でも、それとともに、やっぱり法的裏付けを幾つか付けてあげなければ対応できない問題が起きてきているというふうな気がしてなりません。
 そういった意味では、そういった立法の関係についてもう一回法務省としても、今回のいろんな問題の中で、こういう点についてはやはり新たな措置が要るのかどうかというようなことについても御検討もいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#93
○国務大臣(江田五月君) 法務省というのは様々な基本法を預かっておりまして、特例を作るというのはなかなか大変なことでございますが、そうしたことでなくて、今回の震災に対応するための様々な特別立法が必要だということはよく分かっておりまして、これは国会における検討とも十分協力をしながら対応していきたいと思います。
#94
○木庭健太郎君 さて、もう一つは、今日が期限だという布川事件の問題でございます。
 控訴についてどうなったかとまだちょっとお伺いしていないんですが、控訴を断念するというような新聞報道だけはございましたが、まず大臣にやはり冒頭お伺いしておきたいのは、この布川事件で控訴を断念してもし無罪が決定すると、最近どうなのかというのは、戦後の事件で死刑か無期懲役が確定後、再審で無罪となったのは、足利事件に続いて今回がもう七件目になるわけでございます。
   〔委員長退席、理事金子原二郎君着席〕
 そういったのも含めて、大臣は今回の判決、そして七件目になるということについてどう受け止めていらっしゃるか、伺いたいと思います。
#95
○国務大臣(江田五月君) 委員今御指摘のとおり、今日がこの布川事件の控訴の期限で、まだ控訴するかどうかの検討をしているところだと聞いておりまして、結論は聞いておりませんが、もし控訴しないということになれば七件目になると。
 確かに、いずれの事件もかなり古い時代のことではありますが、しかし人の一生を大変大きく左右してしまったと、我が国の刑事司法において、ということがあったということは、これはもちろんそれぞれ個別の事件ですし、それぞれの事件ごとの特性はあると思いますが、十分私ども国家の刑罰権というものを預かっている立場として反省をしなければいけないものだと思っております。
#96
○木庭健太郎君 そして、先ほども御指摘もあったんですけど、今回の無罪確定するかどうか、もう少し時間が掛かると、今日中ですけれども。
 ただ、今回の無罪判決ということについて、どっちかというと、法務や検察の幹部の皆さん、少し、今はもう随分いろいろ変えているので、あの事件はそれこそ今大臣おっしゃったように昔の事件なのでと。六〇年代の捜査でそういった、これまで、例えば村木さんの事件とかそんなのと比べれば、極めて、いい言葉で言えば冷静に受け止めていらっしゃるというふうな感じになると思う。
 ただ、私どもは今回の事件について、やや、もうちょっとこれは法務省としても検証すべきだと思うのは、例えば何かと申し上げますと、先ほども御指摘がありましたが、今回の判決というのはどう言っているかというと、これまで弁護側が求めたのは、判決の中でですね、一つは、冤罪の原因が何だったのかというようなことまで是非判決の中でという思いが弁護側はあったようでございますが、なぜこういう誤審が繰り返されたのかというような踏み込みについては今回の判決の中にはないんですよね、一つは。要するに、どうしてこういう無罪という結論が出されたのかというその中身の検証というのが、それは裁判でやっていただければ一番いいんですが、裁判の中ではっきり出てきていないというのが今回の布川事件の判決の結果なんですよ。その意味で、今回の問題の一番争点になっておるのは証拠という問題なんですよ。証拠をどうするかという問題でさんざんもめているのに、でも判決はそこの部分についてはやや抜け落ちていると我々は認識している。
 したがって、今回の問題というのは、ある意味では、検察当局にとってみて、また法務省にとってみて、二度とこういった問題を繰り返さないという意味では、法務省自ら、検察自らもう一回この事件についてきちんと調査検討する必要があるように私は感じるんですが、法務大臣はどうお感じでしょうか。
#97
○国務大臣(江田五月君) 今回の再審判決の中身についていろいろと論評することは、これは差し控えておきたいと思います。判決の中で踏み込んで被告人の席に座らされた者に対して謝罪をする判決もあるでしょうし、そういうことのない判決もあるでしょう。それはいろいろなものがあって、それぞれ個別の事件だと思っております。
   〔理事金子原二郎君退席、委員長着席〕
 さらに、今申し上げましたとおり、まだ今この段階では控訴するかどうかを検察において検討中でございますので、これについてもなお物が非常に言いにくいところで、個別の事件ということになってしまうんですが。
 ただ、私は、いささか申し上げにくいことでありますが、私自身もう国会に出てきて随分長いので、その前のことまであれこれ言っても始まりませんが、実は裁判官をしておりまして、裁判官がそれぞれの事件で、まあいろいろあります、ありますが、それぞれやはり裁判官が一生懸命に事件に取り組んで結論を得るために努力をしてきた、その昔の同僚がやっていることでございまして、私自身は国会議員になってから再審事件の、弁護士ではございますが、弁護団に加わるということは控えてまいりました。そういう思いで一つ一つの事件は見ていると。したがって、私自身の個人の気持ちからしても、個別の裁判体の事件については、その裁判にかかわった検察官や弁護士のいろんなやり取りの中で裁判所が判断をしたことであって、それをいろいろ論評したくないと。
 ただ、そこで後からそういうことが繰り返されないためにいろんな検証をやるということは必要な場合があって、今回の事件についてもあるいはそういうことが必要かもしれません。
#98
○木庭健太郎君 要するに、今回の事件の場合も弁護士や桜井さんたちが言っているのは、本当に証拠が全面開示されていればすぐ無罪と分かったはずだという話もありましたし、検察官が証拠を独占し、見立てに合った証拠しか出さないのが冤罪の原因だというような指摘もこれあって、確かに全面開示の問題について、大臣がおっしゃったのは、この証拠の全面開示含めて、きちんとした証拠という問題でいうと確かに二〇〇四年の刑訴法の改正で随分この公判前整理手続における検察の証拠開示、これがルール化された、これはもう極めて大きな前進ですよ。
 でも、大きな前進だけれども、やはり何か不正な証拠に目をつぶりがちなというのはやっぱりあるんであって、もっと極端な言い方するならば、村木事件というのはまさにもうこの後に起こったような話で、こんなことも起こり得るというようなことがあるならば、やっぱりその証拠開示の在り方というのは更に徹底しなければならないだろうと、私はそう思いますし、特に私が申し上げたいのは、国民の信頼を取り戻すために、今、例えば検察改革の一環でやっていらっしゃるのが、検察官の倫理規程というようなことをきちんとやろうかという話になりつつあるわけですね、これ、大臣の指導性で。
 例えば、そういった中に、今一番問題になるのは、すぐ被告人に有利な証拠というのは何か隠蔽しようみたいな体質みたいなものがあるわけであって、それを防止できるような、どんな文言になるかは分かりません、でもそういったものも例えばこの規程の中に盛り込むとか、証拠開示の促進について検察庁として全体に指導するとか、やはり公益の代表者としての検察官の証拠開示の在り方について積極的に検討を進めるべきだと思いますが、法務大臣の見解を伺いたいと思います。
#99
○国務大臣(江田五月君) 検察というのは、あくまでこれは公益の代表者として裁判所に刑罰権の行使を求めるのであって、公益の代表者ですから、間違って国の刑罰権が行使されるようなことになってはいけない、これはもう当然のことでございまして、検察があえて有罪判決を得るために被告人の方に有利な証拠は隠すとか自分たちが不利の証拠は隠すとか、そういうことがあってはいけないことはこれは言うまでもないことでございます。
 ただ、検察が持っている証拠の中には、本当にこれは千差万別、様々なものがありまして、その中には現に公判請求されている事件とのかかわりは薄いが、しかしいろんな人の名誉やプライバシーを傷つけかねないといったものも含まれているのも事実であって、そうしたことを総合的に考えながら、平成十六年の証拠開示についての刑訴法改正というものが行われてきたのだと思っております。
 そのときにもいろんな議論があって、全面、とにかくすべて洗いざらい出せという意見もあったんですが、やっぱりそこは一定程度、公判前整理の中などで議論をして、争いがあれば裁判所が裁断をするというような手続になっております。
 そうしたことを口実にしながら、検察があえて自分に有利な判決を得るためにアンフェアなことをやるということがあってはならないと。そのために今最高検においても、検察の基本規程という言い方だったと思いますが、検察官が守るべき倫理水準について、これを全検察、特に若い検察官の皆さんにも議論の中へ入ってもらいながら、みんなで納得できる、その代わり決めたらちゃんと守っていく、そんなものを作るように今努力をしているところでございます。
#100
○木庭健太郎君 ただ、あの改正というか、新たな証拠開示の在り方をやったんですが、結局、例えばその証拠開示、弁護側どうすればよいかというと、やっぱり弁護側は独自に調査して証拠開示請求しなくちゃいけませんよね。それから、公判前整理手続を経ない事件は制度の適用ありませんよね。そういった問題もあるし、あのときも議論になりましたが、じゃせめて全証拠リストはどうなんだという議論もあってみたり、様々な意見があったことは事実なんで、その中で整理してああいう形が一回出た。
 でも、やはり今回のこの無罪判決、先ほどから申し上げているように、確定するかどうかという問題は今日決まっていくでしょうが、是非申し上げたいのは、せっかくこれ法務大臣が法制審の方にいろんな、例えば供述調書の過度に依存しない捜査、公判の在り方の見直しとか、五月十八日ですか、被疑者の取調べの可視化の問題について法制審に諮問を行われたわけですね。諮問を行っていらっしゃるんですが、この中に証拠のこういう開示の在り方という問題については入っているんでしょうか。入っていないならば追加でも是非やっていただきたいと思いますが。
#101
○国務大臣(江田五月君) これは、検察の在り方検討会議の中で議論が行われました。行われましたが、甲論乙駁、なかなか議論に一定の方向というものが出てこず、その在り方検討会議の提言の中では、新たな検討の場において関連する議題として議論、検討することを期待したいというような結論となっているところでございます。
 証拠開示制度の在り方ももちろん新たな刑事司法制度をどういうふうにつくっていくかということに関連するわけでございますが、というわけで、この検討の対象となり得るものだというふうには考えておりますが、これが具体的にどういう検討につながっていくかということについては、これは法制審議会においての御議論を待つというのが今のところでございます。
#102
○木庭健太郎君 そして、可視化の問題、大臣の指導性でお取り組みになられたと。でも、今回のこの事件、布川事件見ると、何がよく分かってくるかというと、やっぱり一部可視化では問題があるということが今回の事件はもうはっきりしてきたということが一番この事件で大事な点なんだろうと思います。
 その意味では、大臣もいろいろお取り組みをなされたこの全面可視化という問題、まあ全面可視化というのがどれを取って全面とおっしゃるかというのはありますが、やはり捜査が始まってから終了するまでのきちんとしたもの。対象をどうするかという問題はいろいろ私もあるとは思っております。ただ、そういった一つの事件についてきちんとやるという問題についての是非全面可視化、可視化をなさるのであり、その結論を得られるのであればそこの方向へ持っていっていただきたいと思っておりますし、そこで最後に、そのこととともに求めておきたいのは、どうしても警察の方はなかなか難しいからということの中で、検察だけに限ったような何か可視化の問題へ特化されるような危険性があるような気がしてなりません。
 是非、可視化の問題に取り組むならば、警察の取調べ段階からこういった問題も含めて、直接指揮ではないとおっしゃるかもしれませんが、やはり法務大臣の責任としてそこまで踏み込んでいただいて、様々な検討をしていただき、早い時期に結論を出していただきたいと思いますが、大臣から答弁をいただいて、質問を終わります。
#103
○国務大臣(江田五月君) これはなかなか難しい宿題でございますが、まず一部可視化は、いろいろ編集などされますと本当にどういう取調べだったか分からないといったこともございますが、一部の場合でも、その部分が客観的に明らかになることによってどういう取調べであったかということをうかがい知ることができる場合もございますので、一部可視化は頭から駄目だというようには私どもは思っておりません。
 しかし、私が今、試行をお願いしているものの中には全過程の可視化をちゃんとやってみてくださいよということは言っているわけですから、どうぞ余り皮肉めいた笑いでなくて、ひとつそこはしっかり私の意のあるところは御理解をいただきたいと思います。
 さらに、警察段階でございますが、私どもは刑事訴訟法の捜査を担当しておりますので、この刑事訴訟法上の捜査というものは警察によってそのかなりの部分が担われていることも事実ですので、その限りでは私どもと無縁のものではありませんが、しかし、実際に行っているのはこれは国家公安委員会でございますし、国家公安委員会委員長の下での今いろいろな調査も行われているところでございますから、そういうものが法制審議会にしっかりと出されて、そこで十分な議論を行われるものだと思っております。
#104
○木庭健太郎君 終わります。
#105
○桜内文城君 本日は、江田法務大臣が所信表明でも述べられました法の支配、そして法律に基づく行政というテーマで質問させていただきます。
 まず最初に、今日は外務省あるいは内閣官房の方も来ていただいていますので、閣議決定の法的な位置付け等についてお聞きしたいと思っております。特に、今回具体的に取り上げたいと思っておりますのは、昨年八月十日に内閣総理大臣談話として閣議決定されたものについて、これを題材にお尋ねいたします。
 先般、日韓図書協定が両院で可決成立したところでございますけれども、その基となりましたものが今申しました昨年八月十日の閣議決定、内閣総理大臣談話であります。この中で、法的に憲法あるいは法律との関係でどうなのかというくだりがございます。ちょっと読み上げますと、「日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたいと思います。」、こういった文言がございます。
 実際、これに基づいて協定が署名され、先般国会を可決成立していったわけですけれども、なぜ国会での議決を必要としたかといえば、それは、まず財政法九条一項というのがありまして、そこでは、国の財産は、法律に基づく場合を除くほか、ちょっと飛ばしますけれども、適正な対価なくしてこれを譲渡してはならないという規定がございますので、やはり国会の議決が何らか必要であるということでございます。
 そして、もう一つ言えば、これは日韓の協定でございますので、一九六五年の日韓基本条約、これに基づくいわゆる日韓間の請求権及び経済協力協定、そこで両国、政府間ですね、それから国民間の請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決されているということですので、新たに日本政府が一方的に引渡しの義務を負う、そのためにはやはり国会の議決を経る必要があるというこの二点であります。
 ここでお聞きしたいのは、内閣法四条一項で閣議決定というものが定められております。例えば、政令ももちろん閣議決定を経て決められているわけですけれども、当たり前ですけれども、政令あるいは閣議決定というものは、まさに内閣の行政権あるいは執行権とも申しますか、法律の範囲内で法律の執行のためにこれが行われる必要があります。しかしながら、今挙げた昨年八月十日の閣議決定の内容は、言わば財政法九条一項、そして日韓請求権及び経済協力協定をオーバーライドするものであるというふうに言えるかと思うんですけれども、まず外務省に対してその点を確認させていただきます。
#106
○政府参考人(石兼公博君) 昨年八月十日の総理談話についてのお尋ねでございます。
 御指摘の総理談話につきましては、これは朝鮮王朝儀軌等の図書の引渡しを行いたいとの政府としての考えを述べたものでございます。
 他方、先生御指摘のとおり、国の財産を無償で譲渡することに該当するので、そのための協定を国会の承認をいただいた上で韓国との間で締結する必要があって、両国政府間で署名を行った上で、国会で御審議をいただき承認をいただいたと、このような次第でございます。
#107
○桜内文城君 要は、内容的には、その後、協定が国会に提出されてきたということを見ても分かるとおり、財政法九条一項、そして日韓請求権及び経済協力協定をオーバーライドしているということだと思います。
 こういったものが、憲法でいいますと、憲法四十一条、国会は唯一の立法機関であるということですけれども、いずれにしましても、政令あるいは国会提出の条約あるいは法律案、これはもちろん新しい法律案ですので、既存の法律をオーバーライドする内容が含まれていてもこれはもちろん結構なわけですけれども、今回私が取り上げていますこの八月十日の閣議決定というのは、政令と同じく一般に対して、一般人といいますか一般国民に対して発出されておるものでありまして、こういった場合に、この閣議決定の一部内容が、今申しましたとおり憲法や法律をオーバーライドする、このような場合の閣議決定の法的な効力というものについて内閣官房あるいは内閣法制局等でどのようにお考えなのか、お尋ねいたします。
#108
○政府参考人(河内隆君) 閣議決定一般についての御質問にお答えさせていただきます。
 内閣法におきましては、内閣がその職権を行うのは閣議によるものと規定されており、閣議決定は内閣の最高意思決定手続でございます。内閣は、日本国憲法におきまして、法律を誠実に執行し、国務を総理する職責を有するものであるということを前提にしておりますことから、内閣の意思決定でございます閣議決定も、当然憲法や法律の範囲内におけるものでございます。したがいまして、御指摘のような閣議決定が憲法や法律に違反するという問題は生じないものというふうに理解しております。
 以上でございます。
#109
○桜内文城君 生じないものというか、今るる申し上げたように、実際に憲法四十一条やあるいは財政法九条一項あるいは日韓の請求権及び経済協力協定をオーバーライドしているわけですよ。こういった法の支配といいますか、法律に基づく行政というものが余りにも軽んじられているのではないかというふうに言わざるを得ません。
 江田法務大臣にも、これまでのやり取りをお聞きになって、所感をお聞きします。
 今、この民主党政権になりまして内閣法制局が国会の場に出てくることがほとんどなくなりましたので、こういった法律論、特に法律と閣議決定の関係ですとか、こういったものをなかなか国会でお尋ねする機会がありません。閣議の一構成メンバーでもいらっしゃいます、そして法の専門家でもいらっしゃいます大臣にお尋ねいたします。
#110
○国務大臣(江田五月君) 内閣の構成メンバーではございますが、昨年八月はまだメンバーでありませんでした。それから、法律の専門家というほどのことはございませんが、あえて委員の御指摘の法律の仕切りに従ってということで答弁すれば、この事項は法務省の所管外であるということしか言えません。
 ただ、閣議決定というのは、かなり幅広く内閣が行政権を行っていく上での意思決定を方向付けるものでございまして、そういう閣議決定をし、そしてこの図書協定について両院の承認もいただいて、これに従って韓国に朝鮮王朝儀軌を引き渡すということは、私はそれはそれで問題はないと思っております。私が参議院で議長をしておりました当時に、公明党の議員の皆さんだったと思いますが、大変熱心にこのことについての御説明もいただいて、私はなるほどなと納得をしております。
#111
○桜内文城君 私は、今般可決成立した協定自体がいいとか悪いとか言っているわけではありません。その協定が実際に閣議決定をされた上で国会に提出されてきたと、今般の協定ですけれども、これについてはどうこう言うつもりはありませんけれども、その前の、昨年八月十日の閣議決定というものが憲法や法律を乗り越えているということは否めない事実でありますし、そういった法律に基づく行政というものを軽視するような行政がこの民主党政権になりまして多々散見されるということを指摘させていただきます。
 次に、国家賠償法、これは法務省の所管だということでお伺いいたします。
 まず、浜岡原発の停止要請ですけれども、これは行政指導というふうに国会答弁等でも言われております。行政指導というのが現在、行政手続法三十二条におきまして一般原則として規定されておりますけれども、その一般原則の中では、当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないですとか、あるいは行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現される、こういった任意性ですとか、まさに行政機関としての法の執行、法律に基づく行政の所掌事務の範囲を逸脱してはならないということが述べられておるところであります。国家賠償法との関係ですけれども、国家賠償法一条では、もちろん不法行為等と非常に似通った要件が定められているわけでありますけれども、公権力の行使ですとか、あるいは故意又は過失、そして違法性、こういったものが規定されております。
 行政指導の場合、今回の浜岡原発の例でも見られますように、その任意性といったときに、まあ実際に要請しているにすぎませんので決定は先方の方だということかもしれませんけれども、実質的な意味で強制力がなかったのかといえば、今回のような要請の場合、やはり完全に任意とは言えないのではないかという疑いが私は否定できないと考えております。
 そしてもう一つ、法が想定する行政機関が行える所掌の範囲かどうかという点につきましても、原発の停止要請を行うためには、現行法では原子炉等規制法六十四条三項等がありますけれども、この原子炉等規制法の六十四条三項の要件に該当しない、実際に事故が起こっていない場合ですので、と思われるんですけれども、こういった法の想定する範囲を超えた行政指導というものがある場合に、これが国家賠償法の適用となり得るのか否か、これについて、この国家賠償法を所管する法務大臣にお伺いいたします。
#112
○国務大臣(江田五月君) これもなかなかお答えをしにくいものでございまして、浜岡原発の停止の要請は、これは私の理解では原子力発電というものを所管をしている経済産業大臣が要請をされたものだと思います。そうしますと、これは法務大臣の所掌の事務とはかなり違っておりまして、そのことについていろいろ申し上げるわけにはいかない。しかし、一般論として、行政指導に携わっている者が違法な公権力の行使としての行政指導を行った場合に国家賠償法との関係いかんということになれば、これは個別事案ごとの裁判所の判断ということで、そういう場合もあるだろうと思います。
 ところが、ここでまたもう一つ難しい問題が出てまいりまして、法務大臣というのは、国家賠償請求訴訟において国を代表する立場になるので、国を代表して適切な民事訴訟の結論をいただくための訴訟追行行為をしなきゃならぬということですから、今ここでそれ以上踏み込んだ答弁をすることは差し控えておきたいと思います。
#113
○桜内文城君 ありがとうございます。行政指導の名の下に、これが全く国家賠償請求の対象にならないというようなお答えでなかったので安心いたしました。
 実際、今回のこの浜岡原発に関しては、やはり経済的な損失というのが中部電力に生じます。それで、実際そのほかもクエの養殖とかに原発の温水を利用しておったとか、そういった面でいろんな意味での経済的損失が生じるわけで、これを誰がかぶるのかという点でいいますと、実際、経済産業大臣の方から、原発停止に伴う追加的な費用負担について中部電力から具体的要請があれば、金融支援策など最大限検討していきたいと。ただ、これもいいのかどうか、これも行政指導みたいな話だと思うんですけれども、法に規定なくこうやって経済産業大臣が経済的損失の一部を補填するかのごときコメントを既に述べられているということからすると、行政指導といえども、やはり厳密にぎりぎりいきますと国家賠償法の適用対象になる場合も十分あり得るんではないのかなという意見を述べさせていただきます。
 これに関連して、最後の質問ですけれども、福島第一原発事故によります原子力災害につきまして、実際、原子力災害対策特別措置法というものがございます。これに基づいて緊急事態宣言でありますとかその他実際の対策がなされるということで、マニュアルがこの法に基づいて規定されております。原子力災害対策マニュアル、これは、各省庁横断的に相当細かく、現地対策本部にどういったポストの人が行くのか、記者会見の頻度、あるいはどこでやるのか等々、相当細かく決められておりますが、そしてまた、災害対策基本法三十四条に基づいて防災基本計画、この中にやはりSPEEDIの結果の公表ですとか、あるいは文部科学省、今日政務官来ていただいていますので申し上げますが、例えば原子力研究開発機構等の専門家をちゃんと呼んできちんと対策を立てろということでありますが、ほとんどこれは無視されているんですね、このマニュアルというものが、実際の経緯を聞いてみますと。
 こういった事故後の対応について、法に基づくマニュアルに従って行われていない、このような場合、国家賠償法の対象に十分なり得るんじゃないかと考えますけれども、これはいかがでしょうか、法務大臣。
 そして、SPEEDIの公開。それから、原研が地震後十日間にわたって、東海村にあります原子力科学研究所、約千四百人研究者等がいるわけですけれども、十日間にわたって千人以上自宅待機を命ぜられている。本当はまさにこの日のために国家が養ってきたわけですよ、彼らを、専門家として。十日間も休ませる、全くマニュアル無視だと私は考えますけれども。
 国家賠償法については法務大臣、そして文部科学省として、SPEEDIの結果の公表の遅れによる被曝の損害ですとか、原研のそのようなマニュアル違反についての見解をただします。
#114
○大臣政務官(林久美子君) 桜内先生にお答えをさせていただきます。
 ただいまマニュアル違反という御指摘がございましたけれども、少し経緯をお話しさせていただければと思うんですけれども、今回のSPEEDIに関しましては、まずマニュアルに沿ってしっかりとデータを、それに沿ってきちっとセンターなどにマニュアルどおり報告を、試算をして提供するようにということで、マニュアルどおり行動させていただきました。
 あと、原研の話なんですが、日本原子力研究開発機構防災業務計画というものに基づいて事故発生直後から、実はもう当日東京を出発をいたしまして、しっかりと国や地方公共団体の要請に基づいて専門家やモニタリング要員を現地へと派遣をいたしております。ピーク時には一日に百名を超える人員を福島に従事をさせているということも御理解をいただければと思います。
 余り詳しくは申し上げませんけれども、SPEEDIの件、そしてこうした原研の職員の件等についてマニュアル等の趣旨に沿って対応してきたというふうに認識をいたしております。
 今回の事故対応の徹底的な検証が今後行われる中で、文科省や原研の対応の在り方についてもしっかりと考えてまいりたいというふうに思います。
#115
○委員長(浜田昌良君) 江田法務大臣、簡潔な答弁お願いします。
#116
○国務大臣(江田五月君) マニュアル違反は国家賠償に当たるかという、そういう御質問かと思いますが、ちょっとこのどこの部分がどうというのが分かりませんのでお答えしにくいんですけれども、ただ、このマニュアルについては、これは法務省が所管というわけではありませんので差し控えますが、外部交流電源が長時間にわたって全く失われるという、そういうシビアアクシデントは想定しなくていいというようなことになっていたことは、これは私はやっぱりそんなことに従って行動したんじゃ駄目なんだということが今回はっきり示されたのではないかと思っております。
#117
○桜内文城君 終わりますが、何かいろいろと報道等を聞いておりますと、全て原子力災害に関する賠償等を東電におんぶにだっこというような印象がございます。国家賠償法の適用も含め、これから議論をさせていただきたいと思います。
 終わります。
#118
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私からもまず布川事件の問題についてお聞きいたします。
 桜井さんと杉山さん、警察の取調べで自白を強要され、そしてそれが根拠に無期懲役の判決を受け、二十九年間を刑務所にとらわれたわけですね。人生台なしになりました。そして、証拠の隠蔽ということもあった。今日が控訴期限、まさか控訴があるとは思っておりませんが、やはりこういう判決があり、こういう事態をつくり出したことに対する大臣の受け止めをまずお聞きしたいと思います。
#119
○国務大臣(江田五月君) まさに今日が控訴期限で、まだ控訴するかどうかについての結論を得ているところではございませんということで、個別事件ですのでそれ以上のことを述べるのは差し控えておきますが、委員御指摘のとおり、いろいろな言われるようなことがあって、お二人に長い長い大変な困難を与えたということは、これは遺憾なことだと思います。
#120
○井上哲士君 これは過去の問題ではありませんで、この間も志布志事件、富山事件、そして村木さんの無罪事件など、様々捜査当局の取調べが問題になってまいりました。
 昨年、大阪東署の警察官が取調べのときに大変な暴言を吐いたということは、当時の録音テープも公開をされまして衝撃を与えましたし、この委員会でも質疑がありました。この警察官には四月の二十八日に大阪地裁で罰金三十万円の有罪判決が下りました。
 ところが、この判決から僅か五日後の五月の三日に大阪でまた事件が起きているんですね。関西空港署の巡査部長が逮捕したウガンダ国籍の容疑者の男に対して取調べ中に暴行を加えたということが、男の弁護士の苦情申立書で発覚をいたしました。それによりますと、巡査部長は耳を引っ張ったり足をけったりして、さらにペンケースを口に押し付けて、覚醒剤をのみ込んだのならこれものんでみろと迫ったとされております。
 今、大阪府警はこの巡査部長を特別公務員暴行陵虐容疑で事情聴取していると承知しておりますけれども、なぜあの東署の事件を起こして一番襟を正さなくちゃいけない大阪でこういう事件が続いているのか、いかがでしょうか。
#121
○政府参考人(金高雅仁君) 大阪東警察署事案の発生を受けて、警察捜査への国民の信頼を回復するということで全国警察で努力をしているさなかに、関西空港警察署の捜査員が取調べ中の被疑者に対し暴行を加えたという事実が発生したことは、誠に遺憾でございます。
 現在、大阪府警で特別公務員暴行陵虐の容疑でこの警察官に対して捜査をしているところでございますが、現在までのところ、覚醒剤を袋に入れたものを大量にのみ込み体内に隠匿して密輸をしたという事案、大変重大な事案でありながら、否認をした、あるいはその態度につい腹を立てて手を出してしまったというようなことを供述しているというふうに報告を受けておりますけれども、いずれにいたしましても、徹底した捜査で原因、動機を明らかにした上で、それを踏まえて厳正に対処すべきだというふうに考えております。
#122
○井上哲士君 この巡査部長本人も、取調べに同席していた部下の巡査長も、そして通訳の人も暴行を認めていると報道されておりますけれども、それで事実でしょうか。
#123
○政府参考人(金高雅仁君) そのとおりでございます。
#124
○井上哲士君 申立書によりますと、別の日の取調べでは、平手で額を押して、たたく権利がある、おまえには人権がないと、こういうふうに暴言を吐いたとしているわけで、極めて重大な取調べだったわけですね。
 取調べの問題はこれだけじゃありません。先ほども議論がありましたけれども、四月の二十八日には、福岡県の川崎町議会の議長が公選法違反の事件に絡んだ取調べの中で自殺をするという事件が起きました。そして、取調べ中に口を上下に引き裂くような暴行、暴力的なことがあったというメモがあったという事実も先ほど認められました。そして、埼玉県の深谷の市議選でも供応買収容疑で市議らが逮捕された。この事件で取調べを受けた支持者二十人から、様々な自白の強要があったと、こういうことも言われているわけですね。
 私は、この一連の大阪の問題、そしてこういう深谷市の問題、川崎町議会の問題、それぞれ事実調査をしているというお話がありましたけれども、やはり様々な問題があったと、だからこそこれだけ集中して出てきていると、こういうふうに思うんですね。
 志布志事件、そしてあの富山事件で深刻な反省をしたはずであります。それがそうなっていない、こういうことが続いていると、こういうことについては警察庁はどうお考えなんでしょうか。
#125
○政府参考人(金高雅仁君) 福岡の事案と埼玉の事案につきましてはまだ現在調査中ということで御理解いただきたいと思いますけれども、東署の問題それから関空警察署の事案につきましては、誠に遺憾なことというふうに警察庁としても重く受け止めておるところでございます。
 年間百六十数万件の取調べが行われておりますけれども、それに当たる一人一人の警察官の意識改革、これに引き続き努力をする必要があるというふうに受け止めております。
#126
○井上哲士君 先ほど、反省をしているふりしかなかったんだという声も上がりました。
 富山事件と志布志事件の警察捜査の問題点について、警察庁は二〇〇八年の一月に報告書とそして取調べの適正化指針を出しております。各警察署に取調べ調査官を置くことにしたわけですね、監督官を置いたと。この監督官は、警察署で行われる取調べの状況を取調べ室の外から随時視認をして、体に接触したり人の尊厳を著しく害するような言動をすることなどの監督対象行為があれば、その中止を求めることができると、こうされております。
 まずお聞きしますけれども、この大阪の二つの事件、そして福岡、埼玉の各事件では監督官による取調べの視認はされていたのかどうか、そしてその際にこういう問題のある監督対象行為というのが認められていたのかどうか、お答えください。
#127
○政府参考人(栗生俊一君) お答えいたします。
 御指摘のあった事案の取調べにつきまして、いずれも監督官又は監督補助員による視認はなされておりました。しかしながら、大阪の東署の事案については視認をするということはできなかったわけでございます。その他の、その余の事件につきましては、現在調査をしているところでございます。
#128
○井上哲士君 監督対象行為は認められたんですか。
#129
○政府参考人(栗生俊一君) お尋ねが監督官による視認によって監督対象行為を発見することができたかというふうに私、理解いたしましたので、視認という行為は行いましたけれども発見することはできなかったという意味でございます。
#130
○井上哲士君 二〇一〇年の全国の被疑者取調べの件数と視認の回数、それから取調べにかかわる苦情の申出件数、そして監督対象行為というのはそれぞれ何件になっているでしょうか。
#131
○政府参考人(栗生俊一君) お答えいたします。
 まず、二十二年中の被疑者取調べの件数は約百六十七万八千件でございます。次に、取調べ室の視認の回数は約二百五十一万一千回でございます。また、被疑者取調べに係る苦情の申出の件数は四百七十四件でございます。最後に、監督対象行為の件数は三十件でございました。
#132
○井上哲士君 つまり、百六十七万八千件の取調べで問題が発見されたのは三十件と、つまり〇・〇〇一八%なんですね。誰がこういう数字を信じるのかということなんですね。実際、関空の事件では巡査部長本人も同席した部下も通訳も認めているわけですね。その認めているような行為すら発見できなかったと。
 これは視認ですけれども、特に問題がないと認めた場合には十数秒ぐらいしか見ないことがあるとお聞きしていますけれども、そういうこともあるんですか。
#133
○政府参考人(栗生俊一君) 具体的な秒数ということはちょっと私、今直ちにここでお答えすることはできませんが、警察署内の調べ室が複数ございまして、それを、通常警察署の警務部門にいる監督官などが順次回ってまいりますので、大体一、二分ぐらいではないかと思われます。
#134
○井上哲士君 つまり、本当にちらっと見るだけなんですよ。ですから、先ほど言ったように、〇・〇〇一八%というようなことになっていると。結局、身内による監督という形では、こういう暴行とか脅迫的取調べはなくせないということを見事に示していると思うんですね。
 大体あのときの警察庁の適正化指針自身が、なぜああいう富山事件とか志布志事件が起きたのかと、その一番の問題、なぜ無実の者が虚偽の自白を余儀なくされたのかと、ここに踏み込んでないんですね、検証してない。形だけそういう身内の検証というやり方を取った、ここに私は事件が続いている一番の問題があると思うんですね。やはりこれは外部の目を入れる必要があると、やはり警察においても取調べの全過程の可視化ということをする必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
#135
○政府参考人(金高雅仁君) 取調べの可視化、全過程の可視化につきましては、取調べの検証機能があるということは、先ほど申し上げました国家公安委員長主催の研究会の中でもそういう御意見が出ております。
 ただ一方で、その真相解明機能に及ぼす影響でありますとかプライバシーの保護という問題も指摘をされているところでございまして、この研究会で今後可視化の在り方について更に具体的な検討が行われるものというふうに承知をしております。
 警察庁としては、その議論を踏まえまして、一線における捜査の実情を勘案しながら対応したいというふうに思っております。
#136
○井上哲士君 真相解明機能と言われましたけれども、大阪東署の取調べは、おまえの人生めちゃくちゃにしたるぞとか、殴るぞ、おまえなめとったらあかんぞとか、こういう暴言を吐いているんですよ。密室の中でやっているから、こういう本当に稚拙で暴力的な取調べしかしない。何でこれで真相解明ができるんですか。結局、密室における取調べというところにつかっているから、私は、結局こういう真相解明機能自身を警察が失っていると、こういう事態だと思いますよ。
 法務大臣にお聞きしますけれども、私は、こういう警察の脅迫的な取調べを許してきた検察の責任も大きいと思います。
 この大阪東署の暴言による取調べの事件は、大阪地検は、特別公務員の暴行陵虐事件ではなくて脅迫罪で起訴しました。そして、しかも、略式起訴、非公開のにしたんですね。ところが、簡易裁判所が異例の略式不相当という決定を出して正式の裁判になりました。かつ、検察は罰金二十万円しか求刑しなかった。裁判所は三十万という判決を下したわけですね。
 私は、起訴の在り方、そしてこの刑、罰金についても、二度にわたって裁判所も検察の甘い姿勢について厳しい警告をしたと思うんですが、まずこういう略式起訴が正式起訴に裁判所の判断でなったということや、そして、判決が求刑よりも上回ったということが重なったような例がほかにあるのかどうか、そして、こういう甘い姿勢が警察の様々な問題の取調べを許しているという指摘についてどうお考えか、いかがでしょうか。
#137
○国務大臣(江田五月君) 個別の事件についての言及は差し控えておきたいと思いますが、一般に申し上げて、略式請求をしたら不相当ということで正式裁判になったというようなケースは、これはもちろんございます。また、求刑を上回る判決になったということも、これもございます。
 その上で、確かに検察の公訴の提起の仕方、略式という、あるいは求刑、これが裁判所でそのまま認められなかったという事例が幾つかあるのは事実でございますが、しかし、私はやはり個別の事件について、その評価というのが様々な角度があるんだろうと。検察において法と証拠に照らして適切と思ったけれども裁判所の判断が違ったと、これは裁判というものがきっちり機能しているということであって、そうした一つ一つのことについて、検察として事後的な反省はしなければいけませんが、そういうことがあったから検察けしからぬということに必ずしもなるかといいますと、それは場合によるんだろうと思っております。
#138
○井上哲士君 大阪地検特捜部がああいうフロッピーディスクの改ざん事件を行って、そして非常に問題な自白強要の取調べをしていた。その地検が大阪府警の行ったことにこういう甘い対応をしたということを、やっぱり府民は厳しく見ていますよ。
 さらに、これだけじゃないんですね。二〇〇二年四月の平野区マンション母子殺害事件で、現場付近の灰皿から採取したたばこの吸い殻七十二本のうち七十一本を警察が紛失をしていたということが最近明らかになりました。この七十二本のうち一本から被告人と同一のDNAが検出されたということを根拠にして被告人を有罪として、二審は死刑判決までしていたんですね。ところが、最高裁が、残りの七十一本の吸い殻も鑑定が必要だということで判決を破棄をして、弁護側が証拠開示請求をしたことによって実はなくなっていたということが分かったという大変なことですよ。
 警察は、この起訴直後の二〇〇二年十二月に吸い殻を紛失をしていて、そのことを二〇〇四年一月に大阪地検に報告しております。ところが、検察は、弁護側の証拠開示請求に対してもずっとこの紛失の事実を隠したままにしておりました。
 なぜ隠していたんですか。
#139
○国務大臣(江田五月君) この事件は、これももちろん現在公判係属中でございますから、詳細についてお答えをすることは差し控えますが、検察当局においては、一審の段階で証拠開示すべき具体的な必要性等が弁護人から明らかにされなかったということで、吸い殻を証拠として開示しなかったというものだと承知をしております。
 ただ、もちろん、それがその後、様々な経過を経て、今委員が御指摘のようなてんまつになってきていることはそのとおりで、ただ、あくまでも具体的な事件、今生きている事件でございますので、それ以上のことは差し控えます。
#140
○井上哲士君 私は、問題なのは、捜査機関がこの収集した証拠を私物のように扱って、自分たちに有利なものだけ使うということだと思うんですね。この大阪の場合は、残りの七十一本は証拠品ではなくて採取物という取扱いで、いつの間にか誤って廃棄をしてしまったと、こういうことになっているんですね。
 ですから、捜査側に有利な証拠以外は価値を認めないということをやっていた、同じことを私は検察は追認をしたと、開示の必要がないということで追認をしたということだと思うんですね。
 今日の議論でも、大臣は証拠開示についてはこの間の法改正でうまくいっているかのように言われましたけれども、やはりこういうことが起きているんです。やはり、きちっと全面的に開示をするということを制度化するということが必要だと思いますけれども、最後、答弁をお願いします。
#141
○国務大臣(江田五月君) 繰り返すようになりますが、この委員御指摘の事件は、これは十六年の刑事訴訟法の施行の前のことだったと思います。十六年刑訴法施行の際に、施行といいますか、その刑訴法改正の際にいろんな議論が行われまして、全ての証拠を開示すべきだという意見もありましたが、しかし証拠にいろんなものがあるので、そこは一定の限度で、しかし最大限この開示をして、さらに弁護側と議論になるときには裁判所が裁定という、そういう仕組みにして今日まで来ておりますし、今現に私はかなりの程度の証拠開示が行われているものと思っておりますが、もちろん、まだまだこれは、議論について御指摘ありましたら、当然、よりいいものにする検討はいたさなきゃいかぬものだと思っております。
#142
○委員長(浜田昌良君) 井上哲士君、おまとめください。
#143
○井上哲士君 終わりますが、これ、最高裁判決で残りの吸い殻も鑑定が必要だということを言ってから、弁護側が証拠開示請求をするまで一年間、地検は紛失したことを更に隠していたんです。ですから、全く改善されていないということを申し上げまして、終わります。
#144
○委員長(浜田昌良君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#145
○委員長(浜田昌良君) 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。江田法務大臣。
#146
○国務大臣(江田五月君) 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 近年、コンピューターが広く社会に普及し、その機能も高性能化が一層進んで複雑かつ多様な情報を処理することが可能になっているとともに、世界的な規模のコンピューターネットワークが形成され、コンピューターとそのネットワークが極めて重要な社会的基盤となっております。このような情報技術の発展に伴い、いわゆるコンピューターウイルスによる攻撃やコンピューターネットワークを悪用した犯罪など、サイバー犯罪が多発するとともに、証拠収集等の手続の面においても、コンピューターや電磁的記録の特質に応じた手続を整備する必要が生じております。加えて、サイバー犯罪は、容易に国境を越えて犯され得るものであり、国際的な対策が極めて重要となっているところ、平成十六年四月に国会において承認されたサイバー犯罪に関する条約は、国際的に協調してサイバー犯罪に効果的に対処する上で重要な意義を有するものであります。
 また、厳しい経済情勢が続く中で、暴力団等の反社会的勢力が組織的に関与する悪質かつ巧妙な強制執行妨害事犯は依然として後を絶たない状況にあるところ、強制執行手続の適正の確保を図り、権利実現の実効性をより一層高めるためには、この種の事犯に適切に対処することが必要であります。
 そこで、この法律案は、このような近年におけるサイバー犯罪その他の情報処理の高度化に伴う犯罪及び強制執行を妨害する犯罪の実情に鑑み、これらの犯罪に適切に対処するとともに、サイバー犯罪に関する条約を締結するため、刑法、刑事訴訟法、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律その他の法律を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、情報処理の高度化に伴う犯罪に対処するとともに、サイバー犯罪に関する条約を締結するため、実体法及び手続法の整備を行うものであります。
 すなわち、実体法の整備としては、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、不正な指令を与える電磁的記録等を作成、提供する行為等を処罰する不正指令電磁的記録作成等の罪を新設するとともに、電気通信の送信によるわいせつな電磁的記録の頒布等を新たに処罰の対象とするなどしております。
 また、手続法の整備としては、電子計算機の差押えに当たり、電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で作成、変更をした又は変更、消去ができる電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから当該電磁的記録を複写することができるものとすること、電磁的記録の保管者等に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録等させた上、当該記録媒体を差し押さえる記録命令付差押えを新設することなどのほか、通信履歴の電磁的記録の保全要請に関する規定や、電磁的記録の没収に関する規定等の整備を行うこととしております。
 第二は、強制執行妨害行為等についての罰則の整備を行うものであります。
 すなわち、現行刑法の関係罰則では処罰が困難な、封印等が不法に取り除かれた後における目的財産に対する妨害行為、目的財産の現状の改変等による妨害行為、執行官等の関係者に対して行われる妨害行為、競売開始決定前に行われる競売手続の公正を害するような行為等の強制執行を妨害する行為を新たに処罰の対象とし、その法定刑を引き上げるとともに、報酬目的で又は組織的な犯罪として行われる場合に刑を加重することとしております。
 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
#147
○委員長(浜田昌良君) 以上で趣旨説明の聴取は終了いたしました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ─────────────
#148
○委員長(浜田昌良君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#149
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#150
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十分散会
ソース: 国立国会図書館
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