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2011/01/27 第177回国会 参議院 参議院会議録情報 第177回国会 本会議 第2号
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2011/01/27 第177回国会 参議院

参議院会議録情報 第177回国会 本会議 第2号

#1
第177回国会 本会議 第2号
平成二十三年一月二十七日(木曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二号
  平成二十三年一月二十七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(西岡武夫君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件
 去る二十四日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。中曽根弘文君。
   〔中曽根弘文君登壇、拍手〕
#4
○中曽根弘文君 私は、自由民主党を代表して、菅内閣総理大臣の施政方針演説に対し、質問をいたします。
 質問に入る前に一言申し上げます。
 菅再改造内閣は一月十四日に認証式を経て発足をいたしました。この日は宮中の歌会始の日でした。また、昨年九月の内閣発足のときは、天皇陛下が葉山で御静養中でありましたにもかかわらず、陛下にお戻りいただき、認証式が行われました。いずれも、天皇陛下の御日程に十分な配慮もなく、自らの一方的な都合で政治的日程を優先したのであります。
 民主党政権では、一昨年十二月、中国の習近平国家副主席来日時に、当時の小沢一郎幹事長が慣例を無視して、宮内庁への申入れ期限一か月を切っているにもかかわらず、同副主席の天皇陛下への御引見を強引に実現させました。また、平成二十一年十一月十二日に国立劇場で挙行された天皇陛下御在位二十年記念式典では、両陛下のすぐおそばの席にいた菅副総理が居眠りをし、さらに先日の宮中の講書始の儀の席では、仙谷官房長官が居眠りをしていた様子がテレビで放映されました。
 総理大臣や官房長官のこのような行為は、一般の式典や行事においても大変失礼なことでありますが、まして厳粛な皇室行事等においてこのような態度を取ったことは許されざることであり、我が国の総理大臣や閣僚を務める資格に欠けると言わざるを得ません。
 御高齢にもかかわらず、天皇陛下には、日々国民の安寧を願われ、数々の御公務をお務めいただいております。このような非礼とも言える態度は、総理、前官房長官のみならず民主党の姿勢にも共通するものであり、今後二度とこのような非礼のないよう猛省を促す次第であります。
 さて、来年は二〇一二年問題の年であると言われています。
 特に、世界の政治体制にとっては大きな転換点になります。アメリカ、ロシア、フランス、韓国では大統領選挙が執り行われ、中国では胡錦濤体制から次の指導者へと体制が変わります。また、金正恩氏への権力の継承を進めている北朝鮮では二〇一二年を強盛大国の大門を開く節目の年としています。
 過去の歴史を見ても、各国のリーダーは、選挙の年には自国の利益を極大化することを国民に訴え、対外的に厳しい姿勢を取ることで自らの求心力を高めようとし、そしてリーダーが替われば世界の秩序が変わり、現在進んでいるパラダイムの転換は一層加速していきます。
 今年はこうした世界的大転換の年を一年後に控えた大事な年であり、我が国はこれを念頭に体制づくりをしておかなければなりません。
 日本の政治が不安定飛行を続けるうちに諸外国はすさまじいスピードで変化を遂げ、新しい時代の枠組みを構築しつつあります。しかしながら、日本はいまだに重苦しい閉塞感に覆われ、新しい時代のスタートが切れずにいます。国民は、民主党の政治と金の問題をめぐっての党内の権力闘争の様子には飽き飽きしています。また、国民を脇に置き去りにして政権を維持することが目的と化したような今の民主党政権に国民はうんざりしています。
 国会はこれまで以上に機動的で大局的な議論が求められており、我々はそういう国民の声にこたえられる政治を行わなければなりません。
 また、政府には国家の将来を見据えた真に国民のための政策立案を行う責任があります。しかしながら、菅政権は、憲法、外交・安全保障、経済、福祉や教育など、国家運営の要諦において日本をどのような方向へ導こうとしているのかが不明確であります。
 我が党は、一昨年、新しい綱領を発表し、自由と民主主義の揺るぎない信念の下、新しい時代に対応して常に進歩する保守政党であることを宣言いたしました。そして、守るべきものを守り、秩序の中に進歩を求める、自助自立を基本としながら共助、公助で支え合う社会、努力する者が報われる社会、温かい絆のある社会をつくっていくことを国民の皆様に約束をしております。
 民主党の目指す国家はどのようなものなのか、総理御自身の考える国家像とはどのようなものなのか、まず総理の政治哲学、国家観をはっきりとお聞きしたいと思います。
 昨年秋の臨時国会で我々は、民主党政権の政策の問題点を厳しく指摘し、我が党のビジョンを示すなど、充実した政策論議を目指していました。しかし、閣僚の失言、暴言、恫喝とそれに伴う釈明、謝罪が繰り返されるていたらくでした。さらには、尖閣諸島沖での中国漁船の衝突事件への民主党政権の誤った対応と不誠実な説明が原因で多くの審議時間がその問題に割かれる結果となり、政府自らが熟議の国会とは程遠いものとしてしまいました。
 国会に対する冒涜とも言える不遜な態度を取り続けた仙谷前官房長官に対する問責決議可決と更迭は当然であり、今国会においては各閣僚の皆さんは、そのようなことのないよう、心してその職務に当たっていただきたいと思います。内閣の責任者として菅総理より、前国会で相次いだ内閣の失態への反省と再発防止への決意をお伺いいたします。
 我々自由民主党は、国民の声に謙虚に耳を傾け、参議院における野党第一党として国会における議論を充実させる責任を自覚し、具体的な対案も示しながら論戦に挑む決意です。ただし、その前提として、政府からもしっかりと方針をお示しいただく必要があります。
 しかし、菅総理は、TPP、社会保障制度改革、政治改革について、各党の協議という言葉を乱発され、自らの理念を具体化するための方針や政策を示すことなく、各党に丸投げされました。御自身が国づくりの理念とおっしゃっている以上は、まずは政府が法律や予算といった具体的な形にして国会に提案し、賛同を求めるのが筋ではないでしょうか。政府・与党が何ら具体的な方向性も示さず各党協議を求めるのは、これらの問題に関する責任回避と政権延命のための時間稼ぎとしか考えられません。自分たちに何の具体案もないのであれば、早々に政権の座から降りていただきたいと思います。
 野党に何でもかんでも責任をなすりつけるのではなく、まず政権与党の責任を果たすことが第一で、建設的な政策論議が行えるようリーダーシップを発揮すべきではありませんか、お考えを伺います。
 今回の改造内閣を枝野長官は実務強力推進内閣と言っているようですが、私たちから見れば、前内閣同様に、閣僚としての資質に甚だ疑問を持たざるを得ない方々が入閣をしております。
 まず一人目は、江田法務大臣であります。
 江田大臣は、昨年七月までの三年間、参議院議長を務めておられました。申すまでもなく、議長とは国権の最高機関、立法府の長であり、公平無私な国会運営の責任を負う職務であります。しかし、昨年の通常国会の会期末に当たっての運営は、我が国の議会政治の歴史に汚点を残すひどいものでした。
 昨年六月に、我が党は菅総理大臣問責決議案と江田議長不信任案を提出いたしました。しかしながら、民主党が数の力でこれを処理する最後の本会議開会に応じず、したがって請願処理や調査会報告も行えず、任期を終えて勇退する議員が本会議場で謝辞を述べる機会を奪うなど異常な事態にしたのに対し、議長として収拾に乗り出さないまま放置し、通常国会が終わりました。これらの点からも、江田大臣が公平公正であるべき法務をつかさどる役職に就任するのは適当でありません。
 二人目は、与謝野経済財政大臣であります。
 与謝野大臣は、「民主党が日本経済を破壊する」という著書を著すなど、民主党の経済政策を痛烈に批判してきた議員であります。その方を経済財政担当大臣として入閣させたことに国民はあきれ返っています。与謝野大臣は、自民党公認で小選挙区に出馬し、比例区で復活当選できたのですから、今回の行動は与謝野氏に投票した人に対する裏切りであり、直ちに自民党に議席を返上すべきであると思います。
 かつて、比例区で復活した民主党議員が離脱したときには、当時の菅代表代行は議席を党に戻した上で行動すべきだと発言されました。そういう経緯がありながら与謝野氏を入閣させたことについての任命責任についてどうお考えですか、お答え願います。
 政策の異なる与謝野氏を入閣させるのであれば、民主党政権と同氏との間で政策合意があってしかるべきであります。総理、与謝野大臣を入閣させるに当たってどのような政策合意があったのか、なかったのか、合意内容を国民の前に明らかにしていただきたいと思います。
 次に、外交・防衛問題について伺います。
 私は麻生内閣で外務大臣を務めましたが、私なりに考える外交の基本原則は五点あります。
 まず第一に、外交は、我が国の国益を守り増進し、国家の主権が侵害され、かつ威信が損なわれることのないように行うべきものであります。
 昨年起きた尖閣諸島沖での衝突事件で、ビデオテープを速やかに公開せず、船長釈放の責任を那覇地検に全てなすりつけ、一地検に外交判断を行わせた菅政権の処理方法は明らかに間違いであり、決定的に国益を損ない、外交史にも大きな汚点を残しました。
 第二に、外交や安全保障は、与党も野党もなく、党利党略を離れ、国家本位で推進していくものであり、国民の理解と結束が必要であること。
 第三に、基本的に国力以上の外交はできないということです。
 国力とは何か。私は、一般的には軍事力、経済力、技術力、文化力などを総合したものだと考えます。したがって、強力な外交を推し進めるためには、我が国においても防衛力だけでなく、同時に経済力や技術力、文化力などのソフトパワーも高めることが必要であります。
 第四に、外交は継続性が重要であるということです。
 鳩山前総理は、普天間飛行場の移設先について、選挙の票欲しさに、国外だ、最低でも県外だと発言しました。この過去の経緯も全く無視した唐突な発言で日米の関係を悪化させたのみならず、諸外国にも日本の外交全体に対する不信感を生じさせてしまいました。これは我が国外交の大きな損失であります。また、安全保障面でも国民に大きな不安を与えました。
 五番目は、外交とは歴史をつくっていくものであります。我々はその一ページ一ページに参画しており、厳しい緊張感と責任感を持って外交に当たらなければならないということであります。
 外交とはどうあるべきと考えておられるのか、総理並びに外務大臣のお考えをお伺いいたします。
 菅総理は、日米同盟は我が国の外交・安全保障の基軸であり、これを深化させると述べていますが、これは鳩山前総理の対等な日米関係という考え方からの路線の変更なのか、具体的な説明を総理に求めます。
 また、鳩山前総理が掲げ、昨年六月、そして十月の所信表明演説で菅総理も触れた東アジア共同体構想について、今回の施政方針演説では言及していませんが、菅政権では参議院選挙のマニフェストにも掲げたこの公約を取り下げるということと理解してよろしいのですか。また、今後、アジア外交の方針がどう変わるのでしょうか。菅総理にお伺いいたします。
 さらに総理は、先日の都内での講演で、一国平和主義を否定し、世界平和のために我が国として貢献していかなくてはならない、民主党政権になって国連PKOへの派遣人員が五十人強から三百八十人を超える状況になっていると得意げに述べていますが、民主党政権は、世界各国から感謝され、高い評価で、その存続が強く要請されていたインド洋での海上自衛隊による補給支援活動を打ち切ってしまいました。
 この活動は二年間で約二十二億円という規模の支援額ではありましたが、国際的に日本がテロと闘う姿勢を効果的にアピールできる活動でありました。
 活動を打ち切った民主党は批判をかわすために、アフガニスタン支援として約四千五百億円の巨額な支援を表明しましたが、既に自公政権時代に同国にはありとあらゆる民生支援を行っており、これ以上危険地帯において日本が実施できることは限られています。
 補給支援活動を中止して一年になりますが、アフガニスタンへのその後の支援活動状況はどうなっているのか、それに要した費用は幾らか、具体的に説明をいただきたいと思います。
 インド洋は我が国の船舶も多く航行する地域であり、この地域での活動は我が国の国益にもかなうものであり、私はインド洋での補給支援活動を再開すべきと考えます。総理のお考えを伺います。
 次に、普天間基地移設問題について伺います。
 沖縄の普天間基地移設については、私は一昨年の二月に外務大臣としてヒラリー・クリントン国務長官と、米国海兵隊及びその家族のグアム島への移転についての協定に署名をした当事者でありますが、民主党政権になって、基地移設問題が暗礁に乗り上げ、後退したことは非常に残念であります。ロードマップで規定しているこの海兵隊の移設計画も、さらには千代田区とほぼ同面積で東京ドーム二百十個分の面積に相当する米軍施設・区域の土地の返還も遅れることになります。
 鳩山前首相の熟慮に欠けた一言で、普天間の騒音や危険の除去が進まないばかりか、返還される広大な土地の沖縄県発展のための活用も見通しが立たなくなり、民主党政権は取り返しの付かないことをしたのであります。
 政府は、沖縄県民に期待させておきながら、結局、自民党政権と同じ名護市辺野古に移設する案で米国と合意をいたしました。まさに迷走であり、政府の体を成しておりません。こうした混乱の結果、普天間飛行場は今の場所に固定化するという最悪のシナリオが現実のものとならないか、大変危惧をいたしております。
 この混乱に対して誰がどう責任を取るつもりですか。危険性の除去ができないまま、いつまでも御理解いただくの繰り返しでは解決できません。この問題を今後どのように進めていくつもりなのか、総理の見解を求めます。
 いずれにしても、普天間基地周辺の危険を除去するためには、一日も早く日米合意案を実現することであり、政府の一層の努力を求めます。
 日本を取り巻く情勢に目を転じれば、中国の名目上の国防費の規模は公表ベースで過去二十年間で約十八倍にもなっています。先日の講演の中で、総理は、中国の透明性をやや欠いた国防力の強化や海洋活動の活発化に対し懸念を抱かざるを得ないと表明されていますが、懸念とは具体的にどういうことを指し、また、どのような対策を取るべきと考えているのか、伺います。
 次に、北朝鮮問題について伺います。
 申すまでもなく、我が国にとって北朝鮮は安全保障上最大の懸案国であり、両国の間では、核・ミサイル問題、そして、国民の最大の関心事である拉致問題があります。
 前原外務大臣は日朝間の協議について、過日の記者会見では、二〇〇二年の日朝平壌宣言の内容をお互いに確認し合いながら、直接的な対話をしっかりと進めていきたい、六者協議の開催の是非にとらわれずに、日朝の話合いというものは行われるべきと発言をされています。
 政府は日朝二国間協議を進めようという方針なのでしょうか。韓国の示した懸念についてどうお考えですか。
 菅内閣は北朝鮮問題にどのように取り組んでいくのですか。特に、拉致問題の取組についてお考えを伺いたいと思います。
 私は、初当選以来、長年、予算を見てきましたけれども、民主党政権が初めて概算要求段階から取り仕切った二十三年度予算案ほど未来が見えず、理念がなく、その場しのぎの予算案はありません。
 過去最大規模の九十二・四兆円という予算ですが、公共事業を始め多くの分野で削減されている中、ばらまきマニフェストの四K、すなわち子ども手当、高校授業無償化、高速道路無料化、農家の戸別所得補償の三・六兆円が計上されております。
 しかしながら、これらは直接給付型で乗数効果が低く、ある民間シンクタンクの分析では、この予算がGDPに与える効果はたったの〇・〇二%にすぎません。
 この予算が景気回復に資するという点はどのように分析していますか、国民に分かりやすく御説明ください。
 四十四兆円という多額の国債の二年連続発行により、国、地方の借金は八百九十一兆円に上り、財政健全化の道筋はかけらほども見えません。それどころか、子供たちの未来に多額の借金を背負わせる児童虐待予算とまで酷評されています。
 相変わらず所得制限を課さずに続行される子ども手当については、半分が貯蓄に回り、子供をもう一人持とうという決断にはつながっていません。
 川崎市を始め幾つかの自治体は、財政事情の悪化もあり、地方に負担を押し付ける子ども手当に反対し、予算計上を見送っております。
 我が党は、子ども手当は廃止し、地方で自由に使い道を決められる子育て交付金をつくり、子育てママの職業復帰支援、育児休業手当の拡充などを推進してまいります。
 政府は、子ども手当に関する地方負担に関して本当に地方の声を聞かれたのか、それでもスキームを変えずに実施する考えなのか、総理に伺います。
 農家の戸別所得補償に関してでありますが、TPPを急ぐなら、強い農業基盤づくりが喫緊の課題であるはずです。しかしながら、本予算に盛り込まれた規模拡大への加算はたったの百億円にすぎません。
 我が党は、戸別所得補償制度を廃止し、農業・農村の多面的機能を評価した日本型直接支払の地域政策と、人や経営に着目した担い手総合支援を推進し、農業農村整備事業も拡充し、農地利用の集積を進めます。
 効果がないどころか、米価の下落を招いている戸別所得補償は即刻やめるべきでありますが、総理のお考えを確認いたします。
 二十三年度予算では、基礎年金の国庫負担二分の一が何とか維持されました。しかし、その財源として、埋蔵金、中でも鉄道建設・運輸施設整備支援機構の余剰金一・二兆円が充てられたことは大きな問題で、この理念のない埋蔵金悪用には到底賛成することはできません。
 余剰金は旧国鉄の二十四兆円の借金返済と鉄道関連の整備に充当すべきであり、我が党はその趣旨の法案を臨時国会に提出いたしました。なぜ国庫負担二分の一の財源として鉄運機構の余剰金を充てる必要があるのか、明確に御説明ください。
 菅内閣には、財政健全化への取組も全く感じられません。財源確保は、ばらまきマニフェストをやめることや、公務員人件費の削減などで捻出すべきであります。将来世代にツケを先送りしないように、財政再建への責任を明確に示す必要があります。
 我々は、昨年の臨時国会に財政健全化責任法案を提出し、財政の立て直しを早期かつ抜本的に実施する強い姿勢を示しました。政府内からはこの法案に賛成してもいいとの声も聞こえてきます。その場合、民主党のマニフェストに根本から矛盾が生じますが、お考えはいかがでしょうか。
 経済政策に関して伺います。
 菅内閣では、元気な日本の復活、平成の開国、最小不幸社会の実現といったスローガンは並べられていますが、何ら具体的政策はありません。今日の国際化した経済においては、特に成長著しい新興国との連携を念頭に、我が国の成長戦略が必要ですが、全く戦略が描かれていません。
 最近では、中国や韓国はもとより、米欧などの各国が政府主導で積極的な輸出促進策へと大きくかじを切るなど、国家主義的な動きが高まっています。
 かつて、大航海時代の重商主義国家は覇権を拡張し国家主導の通商戦略を推進しましたが、最近の中国などにも同様の傾向が見られます。通貨戦争、資源獲得競争が激化し、通商政策に国家戦略が密接に絡み合う二十一世紀の新たなグローバル競争時代が始まっております。
 もはや、子ども手当などの社会主義的な分配政策に固執し、政府がその帳じり合わせばかりに力を注いでいる余裕はありません。
 海外経済交流、海外投資をどのような国家戦略の下で進め、政府援助や投資の財源確保、人材配置等についてどのような予算的枠組みで推進するのかなどの総合戦略の在り方が今問われています。
 菅総理、新重商主義ともいうべき近年の厳しいグローバル競争の展開において、日本経済はどのような方向に進むべきか、お考えをお聞かせください。
 菅政権の経済政策では、成長より雇用に力点を置いているようです。
 昨年六月に閣議決定された新成長戦略でも、総理は第三の道として雇用回復こそがデフレ脱却につながるとの持論を展開されました。しかし、現実には雇用と成長の因果関係は全く逆であり、経済成長があってこその雇用の回復であります。企業に活力を与えず、雇用支援策だけを行うのでは、臨時雇用は生み出しても、持続的雇用回復への道筋が定着することはありません。
 したがって、現下、最大の経済問題であるデフレに対する構造的な対策を実行すべきであり、それが有効需要を生み、雇用回復につながります。
 しかしながら、先般の総理の施政方針演説では、デフレ対策に触れておらず、財政演説と経済演説の中で、デフレ脱却に向けて日本銀行と一体となって政策努力を行ってまいりますと述べているのみであり、具体的な処方箋は何一つ説明されていません。
 それどころか、法人税五%引下げのための財源あさりの増税や唐突な理念なき環境税の導入、最低賃金の拙速な引上げや製造業への派遣禁止などのアンチビジネス政策は、まさに国内雇用の空洞化を招くデフレ促進策であります。総理はこのことに全く気付いていないようであります。
 成長ないところに雇用なしとの正しい経済認識を持って、政府は経済政策を成長路線に転換すべきであると私は考えます。総理の見解をお聞きいたします。
 次に、教育について伺います。
 教育、人材育成は、個人の人格形成のためのみならず、国家の発展にとって欠くことのできない重要な課題であります。したがって、教育は、誰が総理になっても、どの内閣においても、内閣の最重要課題とすべきものであると私は思います。
 中国春秋時代の政治家管仲の著と伝えられる「管子」の中の一節にも、「一年の計は穀を樹うるに如くはなし、十年の計は木を樹うるに如くはなし、終身の計は人を樹うるに如くはなし」という言葉がありますが、教育はまさに未来へ向かっての投資であります。
 昨年六月の菅総理の所信表明演説では、教育については、「人材は成長の原動力です。教育、スポーツ、文化など様々な分野で国民一人一人の能力を高めることにより、厚みのある人材層を形成します。」とのたった一言でした。また、昨年十月の所信表明演説には教育という言葉はどこを探しても出てきません。今回の施政方針演説でも、幼保一体化や小学校一年生の一学級三十五人以下、高校授業料の実質無償化の実施について触れただけで、こうした政策のバックボーンとなる教育哲学や、どのような人材を育てるのかという理念が全く述べられていません。教育こそ我が国の明るい未来の創造につながる投資であり、教育を軽視する国家に未来はないと言えます。
 菅総理は国家の最重要事項である教育について全く関心がないのではないかと思わざるを得ませんが、教育に対する哲学や理念などをこの機会に是非伺いたいと思います。
 今から十二年前、私は、小渕総理の富国有徳という理念の下、文部大臣として教育改革に取り組み、教育改革国民会議を設置し、教育基本法の改正についての検討をスタートさせました。そして、平成十八年に、教育基本法に関する特別委員長として戦後初めて教育基本法の改正を成し遂げることができました。
 新しい教育基本法では、幼児期や家庭教育の重要性などとともに、公共の精神、伝統と文化の尊重、道徳心や我が国と郷土を愛する態度なども盛り込んだ、国家の大事業である人材育成の根幹を示す基本法を作ることができました。まさに、道徳心の高い教育・文化国家、道義国家の形成につながるものであります。
 菅総理はかつて、国旗・国歌法の制定や教育基本法の改正に反対されましたが、なぜ反対されたのか、また現在も同じ考えなのか、御説明願います。
 イギリスのブレア元首相は就任時に、一に教育、二に教育、三に教育と、有名な言葉を言いましたけれども、これは、国の立て直しには教育改革が何よりも重要だという考えを表明したものであります。同様に、現在、諸外国においても人材育成の重要性を強く認識し、教育への投資を増やしております。
 教育は、知育、徳育、体育と言われ、そのどれもが重要であります。学力向上のために十分な対策を取らなくてならないのは当然であります。しかし、今の社会情勢を見ると、特に重要なのは私は徳育であると思います。残念ながら我が国では、民主党政権による事業仕分などで道徳教育の予算を削減するという、とんでもない誤った政策を取っています。道徳心、倫理観の豊かな人材を育成するための投資を惜しんではなりません。
 私が教育問題担当の総理補佐官を務めていましたときに、道徳は教科になっていないので教科書もなく、先生方がそれぞれ工夫して教えていましたので、道徳の補助教材となる心のノートを作成し、全小中学生に無償配付をしました。教師が教室でそれを持って教え、児童生徒がいつでもどこでも自分で読んで学び、かつ家庭で親がこれを用いて子供に道徳を教えられるとの、そういう目的で作成したものであります。
 ところが、民主党政権になって事業仕分の議論などもあって無償配付を廃止してしまいました。子ども手当というばらまきの財源捻出のために最も重要な道徳教育の予算をカットすることは、まさに愚の骨頂であります。
 親が子を虐待し、子が親を殺す、さらに、最近は高齢で亡くなった親を家の中に放置し年金までだまし取るという事件が後を絶ちません。現在の日本は、大人から子供まで道徳心が薄れ、日本の心も次第に失われつつあります。その中で道徳教育関係の予算は、一昨年の自民党政権時代は約十三億四千万円でありましたが、民主党政権下では、今年度は何と六億三千万円とされ、自民党政権時代の半分以下にまで大幅に縮減されています。
 政府はしっかりと予算をつぎ込むべきと考えますが、総理はこの予算の削減と道徳教育の必要性についてどのようにお考えなのか、お伺いをいたします。
 民主党は一月十三日の党大会で、岡田幹事長が提案した二〇〇九年総選挙のマニフェストの見直し方針を了承いたしました。このことは、財源の手当てができず、さきの総選挙で国民に約束したことが不可能であることを認めたものであります。
 総理は、民主党に投票された国民に何と説明するのでしょうか。マニフェストを見直すならば、政治責任を明らかにしなければなりません。速やかに解散・総選挙を行い、国民に信を問うべきであります。総理の決断を求めます。明快な答弁をお願いいたします。
 次に、憲法審査会について伺います。
 平成十九年から衆参両院に憲法審査会が設置されましたけれども、民主党等の反対でこの審査会の開催のめどすら立っていません。法律で規定されている憲法審査会を早急に始動させて、この中で憲法改正に向けた議論を行っていくべきであります。
 民主党党首でもある菅総理のリーダーシップの発揮を強く求めます。見解を伺います。
 民主党政権の進める政策には、与えられた時間ではまだまだ言い尽くせない点が数多くあります。問題点も数多くありますが、最後に一言だけ重要な点を指摘したいと思います。
 今の政治に最も欠けているものは何か。それは信頼であります。民、信なくば立たずという言葉を閣僚のみならず国会議員一人一人が肝に銘じなければなりません。
 今、我が国はまさに、再生か、衰退かの瀬戸際にあり、国会は日本の将来像を示し、国民の総合力を糾合していく責任があります。
 我々自由民主党は、揺るぎない信念と強い使命感を持って真の保守政治を守り、日本を立て直す覚悟であります。
 国際社会から信頼される国づくり、誇りの持てる国づくり、そして活力あふれる国づくりのために全力で取り組んでいくことを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
#5
○内閣総理大臣(菅直人君) 中曽根弘文議員の御質問にお答えをいたします。
 聞いておられる国民の皆さんにも、できるだけ分かりやすいように、私の考え方も含めながら、質問によっては一部をまとめてお答えするということもお許しをいただきたいと思っております。
 まず最初に、皇室を敬う気持ちについての御質問をいただきました。
 天皇陛下を始め、皇室の方々には強い尊敬の念を私自身抱いております。また、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である天皇陛下を敬う気持ちを持っていることは、これは多くの国民の皆さんも全く同感だと思いますけれども、私や民主党の仲間もそのことは皆さんと同様に感じているところであります。また、天皇陛下に御公務をお願いする際には、陛下の健康状態などに配慮しつつ、国政上の重要性を勘案した上で宮内庁と相談して進めているところであります。
 政治哲学、国家観について質問をいただきました。
 中曽根議員も御指摘のとおり、現在、すさまじい勢いで国際情勢が変化をいたしております。そのような状況の中で、過去二十年にわたる我が国の閉塞感を打破すべく、私は今回の施政方針演説の中で、平成の開国、最小不幸社会の実現、不条理を正す政治の三つの理念を掲げ、国際的にも国内的にも活力に満ち、かつ、絆のある社会を目指しているところであります。
 私が目指す国家像という御質問でありますけれども、最も特徴的な私ないし民主党の考え方は、地域主権国家という考え方であります。政治も経済も中央が決め地方が従うという中央集権的な国家観とは明確に一線を画します。国としてのまとまりは持ちながら、人々が郷土愛に満ち、誇りを持って地域に根差した活動を自ら行う、その中にこそ絆の社会が実現できるのだと私は信じているところであります。また、自国の利益を追求することは当然としつつ、国際社会との共生を目指して役割を果たす、開かれた国益を追求する国を目指してまいりたいと考えます。
 次に、前国会の運営についての御質問をいただきました。
 今回の内閣改造と党人事は、今日の日本が置かれた危機を乗り越えていくため、内閣と党の両方を強化するために行ったものであります。その上で、前国会の運営について言えば、民主党や私自身を含めて、閣僚であった者にも反省すべき点はあったと思っております。
 同時に、野党の要望に配慮して長時間の審議時間を確保するなど、我々としては熟議を行うために努力をしたつもりでありますけれども、結果的には相当激しいやり取りが行われたことも事実でありまして、その点は、やはり熟議というのは片方だけではできないわけでありますから、与野党含めて、是非お互いに反省すべきところは反省して、熟議の国会になるよう一緒に努力をしていくことをお願い申し上げます。
 そのような認識の下、国民利益を優先し、国民が期待する国会運営の在り方について岡田幹事長が協議、検討を呼びかけたものであります。また、超党派有志議員が新しい国会の在り方を検討されるなど、新しい機運も生じつつあります。熟議の国会の運営については、各党各会派で御協議をいただきますよう、重ねて心からお願いを申し上げます。
 政権与党のリーダーシップの質問をいただきました。
 重要な政策課題については、政府・与党は既に基本方針や方向性を明確にいたしております。包括的経済連携に関しては昨年十一月、横浜APECの前に基本的な取組方針を閣議決定をいたしております。
 社会保障制度改革についても、内閣と与党で五つの基本原則をまとめて昨年十二月に発表いたしました。具体的には、高齢者だけではなく若い世代も含めた全世代対応型の保障が第一点、第二点には子ども・子育て支援による未来への投資、第三は地方自治体による支援型サービス給付の重視、第四は制度や行政の縦割りを超えた包括的支援、第五は次世代に負担を先送りしない安定的財源の確保であります。さらに、今年六月までにはその全体像と消費税を含む税制抜本改革の基本方針をお示しをいたします。
 国民の関心が高く生活に直結する社会保障制度や税制については、自民党や公明党の皆さんも党派を超えた議論が必要だと既に提案をされているところであります。中曽根議員からも今、自由民主党が具体的な対案を示しながら論戦に臨むという決意を表明をしていただきました。大いに歓迎いたしたいと思っております。議員定数の削減など、国会改革、政治改革の議論も含め、今の現実を直視し、どう乗り越えていくか、是非各党各会派の意見を持ち寄り、熟議の国会としようではありませんか。
 次に、与謝野大臣の起用と入閣について御質問をいただきました。
 与謝野氏の起用は、社会保障と税一体改革という国民利益で一致し、改革の志を同じくするという認識に基づいて私の方から就任をお願いしたところであります。無所属の議員の方であり、総理たる私と改革の最重要課題に関する問題意識が一致していることをもって私が閣僚にお願いしたわけでありまして、無所属の方でもありまして、政策合意という党と党の間の契約といったようなものは必要があるとは思っておりません。
 また、私の過去の発言などに対する批判は真摯に受け止めますけれども、国民利益のための改革を実現するという大義において与謝野大臣を大臣に起用したことは私が過去に発言した例とは異なるものと、このように認識をいたしております。
 次に、あるべき外交についての御質問をいただきました。
 二十一世紀の国際社会は、新興国の台頭など、様々な要因により、二極構造の時代とは比較にできないくらい複雑化しております。また、新興国の台頭やIT技術の発展に伴う金融経済関係の緊密化など、かつてない世界の変化が生じております。このように、今日の世界は歴史の分水嶺とも言える時代にあります。各国にとり外交の重要性は一層高まっており、これまで以上に高い構想力と対応力が求められております。
 我が国周辺には依然として不確実性、不安定性が存在している中、平和と安定を確かなものとし、我が国の国益を増進するとの観点から、現実主義を基調に、世界の平和創造に能動的に取り組む外交・安全保障を推進をしてまいりたいと思います。
 そのために五つの柱を提示をいたしております。その第一は日米基軸、第二はアジア外交の新展開、第三は経済外交の推進、第四は地球規模の課題への取組、そして第五は安全保障環境への日本自身の的確な対応、この五点を基本的な考え方として提示をいたしているところであります。
 さらに、外交についての御質問にお答えをいたします。
 私の内閣では、日米同盟を外交・安全保障の基軸とし、安全保障、経済、人材交流の三分野で同盟深化を進めることと、オバマ大統領の間でもこの点は合意をいたしております。この方針は鳩山内閣のときも基本的に同じであったと認識しております。昨年の参議院マニフェストでも緊密で対等な日米関係を掲げています。民主党の主張する緊密で対等な日米関係は、同盟の弱体化を意味するものでは全くありません。
 東アジア共同体構想は開かれた地域主義という考え方に基づくものでありまして、これからも引き続き、東アジア共同体構想を含め、APECや東アジア首脳会議、ASEAN地域フォーラムなどの地域協力の枠組みを活用して、重層的な協力関係を強化してまいります。
 我が国の対アフガニスタン支援に関する質問をいただきました。
 アフガニスタンの安定と発展は、我が国を含む国際社会全体が対処すべき最重要課題の一つであり、国際社会における責任を果たすため、我が国としても最大限の支援を行っております。
 我が国は、二〇〇九年からおおむね五年間で最大約五十億ドル程度までの支援を表明しております。このうち、テロ対策への補給支援を停止した二〇一〇年一月以降、約六・七億ドルの支援を実施いたしました。例えば、警察支援など治安能力の向上のための支援、第二には元タリバン兵士の社会への再統合支援、三番目には農業・農村開発など持続的、自立的発展のための支援、こうした内容になっております。これらの支援に対しては、アフガニスタンのみならず国際社会から大変高い評価をいただいていると認識をしております。現時点において、インド洋での諸外国のテロ対策への補給支援の再開が必要とは考えておりません。
 他方、国際社会によるテロ対策の取組は重要と考えており、引き続き我が国として積極的、主体的に貢献してまいりたい。この関連でアデン湾における海賊対策にも取り組んでいるところであります。
 次に、普天間飛行場移設問題について御質問をいただきました。
 普天間飛行場の移設問題については、昨年五月の日米合意を踏まえ、沖縄に集中した基地負担の軽減を図るべく全力を挙げて取り組んでおります。
 昨年九月、沖縄政策協議会を再開し、沖縄の方々とも様々な意見交換を進めてきております。また、昨年十二月に私自身沖縄を訪問したのを始めとして、関係閣僚等も訪沖するなどして、あらゆる機会をとらえ、政府の考え方を丁寧に説明すべく努力をいたしております。
 沖縄において普天間飛行場の移設問題について厳しい声があることは十分承知をいたしておりますけれども、引き続き沖縄の方々の御理解を得るべく全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 中国軍の動向に関する質問をいただきました。
 我が国を含む地域、国際社会が懸念を抱いているのは、防衛計画の大綱においても述べましたように、中国の国防費の継続的な増加、軍事力の急速な近代化、周辺海域における活動の拡大、活発化などの動向についてであります。
 我が国としては、引き続き中国軍事力の動向を注視するとともに、安全保障分野における対話や交流を通じ、国防政策の透明性向上を積極的に働きかけてまいります。また、防衛当局間の海上連絡メカニズムを含む日中間の重層的な危機管理メカニズムの構築を進めていくことも重要だと考えております。
 次に、対北朝鮮政策についての御質問をいただきました。
 北朝鮮の核及びミサイル開発は我が国の安全保障上の脅威であり、北朝鮮に対しては挑発的行為を繰り返さないよう強く求めているところであります。また、韓国や米国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、非核化等のための具体的行動を求めていく考えであります。
 我が国として北朝鮮との対話を拒むものではありませんが、延坪島の砲撃事件等も踏まえて、北朝鮮との対話は現時点ではまず南北間で行われるべきであると考え、この点については日米韓の立場は一致していると認識をいたしております。
 同時に、我が国は引き続き日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決を図るとともに、不幸な過去を清算し、国交正常化を追求してまいります。特に、拉致問題は我が国の国家主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であります。昨年十二月には拉致被害者の御家族とお会いをして、拉致問題解決に向けた決意を新たにしたところであります。国の責任において全ての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するため政府としてやれることは何でもやる、こういう覚悟で臨んでまいりたいと思います。
 次に、来年度の予算の経済効果について御質問をいただきました。
 来年度予算については、財政規律を維持しつつ、元気な日本復活特別枠の活用などにより、新成長戦略に資するような措置に重点配分をすることで成長と雇用を重視したものとなっております。
 政府としては、二十三年度は世界経済の緩やかな回復が期待されている中で、予算、税制等による新成長戦略の本格実施等を通じて雇用・所得環境の改善が民間需要に波及する動きが徐々に強まると考えており、来年度の日本経済の成長の好循環に向けた動きが進むことが見込めることなども勘案し、来年度の実質経済成長率を一・五%と見込んでいるところであります。
 なお、御指摘の試算の詳細は承知をいたしておりませんが、例えば子ども手当は人口減少や高齢化が進む中で子供の育ちを社会全体で支えるために導入するものでありまして、予算の効果はそのような政策的な効果も併せて判断すべきものと認識をいたしております。
 さらに、子ども手当についての御質問をいただきました。
 少子化が進展する中で、安心して子育てができる環境整備が課題となっており、子ども手当は、一人一人の子供の育ちを社会全体で応援するという観点から導入したものであります。
 平成二十三年度の子ども手当については、国と地方の協議の場や厚生大臣と地方六団体の会合等において地方団体と意見交換をした上で決定したものであります。この結果、二十三年度の子ども手当の費用負担については、現行どおり児童手当分を国、地方、事業主が費用を負担し、それ以外の費用については全額国庫負担とすることにしたところであります。
 一方、地方団体からの御意見も踏まえ、保育料や学校給食費について子ども手当から納付することができる仕組みを設けました。地方が地域の実情に応じた子育て支援サービスを拡充するための交付金を設けるといった見直しを行うことといたしております。この子ども手当を含む予算を児童虐待予算と言われるのは、私は全く同意ができません。
 農業者戸別所得補償制度に関する御質問をいただきました。
 戸別所得補償制度は、農業が食料の安定供給や多面的機能の維持という重要な役割を担っていくことを評価し、意欲のある農業者が農業を継続できる環境を整えるものであります。全国一律の交付単価としたことにより、構造改革を進め、強い農業基盤づくりに効果を有すると考えております。また、意欲のある農業者を育成し、農業の生産性向上を加速化することが必要であることから、新たに規模拡大加算を導入をすることといたしました。
 なお、米の取引価格については主産地で上昇に転じる動きが出ており、これまでの下落基調とは少し変わってきていることから、戸別所得補償制度が米価下落を招いているとの指摘は必ずしも当たらないと認識をいたしております。
 次に、基礎年金国庫負担と鉄運機構の剰余金について御質問をいただきました。
 鉄道建設・運輸施設整備支援機構の特例業務勘定の利益剰余金については、事業仕分の御指摘等を踏まえて、国家戦略、財務、国土交通の三大臣合意により、平成二十三年度内に一・二兆円を国庫納付にするとともに、JR北海道、四国、九州の三島会社に対する支援など、所要の鉄道関連施策を講じることといたしております。
 一方、平成二十三年度の基礎年金の国庫負担については、年金法の規定に基づき、臨時の法制上及び財政上の措置を講ずることにより二分の一を維持することとされており、このための臨時の財源の一部として、一般会計に国庫納付される利益剰余金を用いることといたしたものであります。
 次に、財政健全化責任法案について御質問をいただきました。
 民主党は、昨年の七月の参議院選挙マニフェストにおいて財政健全化への道筋を掲げました。その主要な内容は、まず第一に、二〇一一年度以降、中期財政フレームに沿って財政を運営すると。この中では、二〇一五年度までに基礎的財政収支の赤字を対GDP比で二〇一〇年度の二分の一以下にする、そして二〇二〇年度までに基礎的財政収支の黒字化を達成するなど、財政健全化の目標の設定をいたしました。また、第二にペイ・アズ・ユー・ゴーの原則を導入し、第三に税制の抜本改革の実施、第四に超党派の協議機関の設置をこの中で盛り込んだものであります。
 これらのことは、自由民主党が提出されている財政健全化責任法と共通しているものと認識をいたしております。この点については、我が党との間あるいは他の野党も含めて、十分に議論することが可能であると考えております。また、昨年私が掲げた参議院マニフェストとも矛盾はしないものと、このように考えております。
 次に、日本経済の総合戦略についての質問をいただきました。
 日本経済の総合戦略としては、昨年六月に新成長戦略を策定をいたしました。海外との経済交流や経済投資については、特に成長著しいアジアの活力を日本国内に取り込むことに重点を置き、以下を始めとする施策を強力に実行していくことといたしております。
 第一に、官民連携により、日本が強みを持つインフラ分野での海外展開を推進する、いわゆるパッケージ型インフラ海外展開であります。私自らベトナムの首相に働きかけた結果、原子力発電施設の海外進出が初めて実現するなど既に成果が次々と上がってきております。今後、国際協力銀行、JBICの機能をこうした分野にしっかりと振り向けられるように改革をし、さらには、国際協力機構、JICAの海外投融資の再開、こうした関係政府機関のファイナンス面での機能強化に取り組んでまいります。
 第二に、日本に立地する企業の競争力強化と外資系企業の立地促進のため法人実効税率を引き下げ、アジアの拠点となる、そういう地域として推進をしてまいりたいと、このように考えております。
 第三に、昨年十一月に閣議決定いたしました包括的経済連携に関する基本方針に基づき、EPA、FTAの締結を推進してまいります。
 これらの戦略を裏付けるため、平成二十三年度予算においては、元気な日本復活特別枠による配分を含め、新成長戦略関連施策に重点配分をするとともに、所要の税制改正案を策定をいたしたところであります。
 次に、第三の道、経済政策についての御質問をいただきました。
 私が日本経済の立て直しのキーワードとして雇用を言うのは、雇用の創造こそが国民に安心と生きがいを与え、消費を増やし内需を増やす契機となるからであります。
 中曽根議員からは、雇用と成長は順番が逆ではないかという御指摘もいただきましたが、よく聞いていただきたいと思いますが、確かに、成長をすることによって雇用が生まれるという分野があることは、もちろんそのとおりであります。しかし、逆に言えば、例えば介護の分野のように、潜在的な需要がありながら供給がないためにその潜在的な需要が顕在化していない。これは医療分野にもありますし、子育ての保育分野にもあります。そういったところについては、給料に対する支援も含めて雇用を生み出すことが逆に失業率を低下させ、デフレ脱却の道にもなりますし、新たに仕事に就いた人は収入がありますから何がしかの税金を払い、そして消費にもつながってまいります。そういった意味で、需要を拡大をするためには、そうした雇用という面に注目をすることが特に必要だということを申し上げているところであります。
 こうした考え方に基づいて雇用を創造すれば、今申し上げましたように、所得が増え、消費が増え、経済が活性化していくと考えております。
 平成二十三年度予算では、元気な日本復活特別枠を活用し、新成長戦略関連施策に重点配分をするとともに、税制面でも、先ほど申し上げたように、法人税率を引き下げ、雇用促進税制の創設を行うことにいたしております。また、昨年十一月には、デフレ脱却・成長促進の総合的な国内投資促進策を取りまとめたところであります。こうした我が政権の方針に対して、産業界もそれに呼応して、十年後の設備投資を約百兆円とするという目標が産業界からも示されたところであります。
 これらにより雇用の空洞化を防ぎ、我が国経済を本格的な成長軌道に乗せることを目指しており、アンチビジネス政策であるとの指摘は全く当たらないと考えております。
 次に、教育に関して幾つかの御質問をいただきました。
 教育に対する理念、道徳教育について、まず私の考え方を申し上げます。
 教育については、学校、家庭、地域が連携協力して社会全体で子供を育む体制をつくることが大切だと考えております。社会性や思いやりなど豊かな人間性を育む道徳教育も重要と認識しておりますが、道徳の涵養も単に学校教育という限定された範囲でとらえるのではなく、地域や社会での活動の中で育てていくという視点が重要であると考えております。また、高等教育については、グローバル化が進む中で国際競争力の強化が重要であります。
 次に、国旗・国歌法、教育基本法について申し上げます。
 国旗と国歌はいずれの国でも国家の象徴として大切に扱われているものであります。日本においても、日の丸・君が代が国旗・国歌として定着していることは多くの国民が認めているところであります。こうした国民感情を尊重し、本内閣においても敬意を持って対応すべき事項と当然ながら考えております。
 なお、私が国旗・国歌法に反対したという、その理由についてお伺いがありました。
 当時、民主党は、国旗を法制化するという修正案を提出しておりました。国歌についてはいろいろ議論がありまして、必ずしもその時点では法制化ということに我が党の方針としてはなっておりませんでした。
 しかし、この国会においては、残念ながら、我が党が提出したまず国旗法制化を採決してほしいというふうに要請をしたんですけれども、採決がなされないまま国旗・国歌一体の法案が出されまして、我が党として、それぞれの議員に判断を任せるということで採決をいたしまして、私としては、国旗については法制化に賛成でありましたが、国歌については議論があると思いましたので、私個人としては反対をしたところであります。
 また、教育基本法に反対したとの御指摘もありましたが、これも、当時、民主党は改正案に対し、明日を担う人材を育てることこそが最重要課題であると位置付け、現行法にはなかった学ぶ権利の保障などを盛り込んだ日本国教育基本法案を提出していたわけであります。その中には、国として郷土を愛するということも含まれておりました。しかし、残念ながら我が党の案について賛成をいただけなかったということもありまして、私としては我が党案が最善だと思っておりましたので、そのときの政府案には反対をいたしました。
 しかし、いずれにしても法律が制定をされている中で、法律を、された経緯はそうでありますけれども、既に制定された国旗・国歌法及び教育基本法を遵守してまいることは当然のことだと、私もそれをしっかりと遵守してまいりたいと考えているところであります。
 次に、マニフェストの見直しについての質問をいただきました。
 マニフェストは国民との約束であり、引き続きその実現に向けて努力を行っていくことは当然の義務だと考えております。一方で、〇九年総選挙以降の状況の変化や国民の声に対応する必要もあります。この間で、既に相当程度は実行いたしました。子ども手当は一万三千円から三歳児まで二万円になり、農業の戸別所得補償も今回拡大をし、多くの課題で取り組んできたことは御承知のとおりであります。しかし、暫定税率の問題のように、これは環境税導入との関係もありますけれども、当時の主張どおりにできなかったこともあります。
 そういう〇九年総選挙以降の状況の変化や、国民の声に対応する必要もあると考えておりまして、今年九月で衆議院議員の任期の折り返し点を迎えることから、状況の変化も踏まえつつ、党として一度マニフェストの検討を行いたいと考えております。検証の結果、仮にマニフェストの見直しが必要ということであれば、その際には国民の皆様に丁寧に説明することで理解を得たいと考えております。
 なお、現下の喫緊の課題は、経済回復、国民生活の安定に向けて平成二十三年度予算を一刻も早く成立させることだと考えており、現時点で解散の考え方は全く持っておりません。
 最後の質問だと思いますが、憲法についての御質問をいただきました。
 憲法の在り方については、これまでも民主党内で議論し、二〇〇五年には憲法提言をまとめているところであります。憲法審査会の始動の問題も含めて、今後も党内でしっかり議論をし、その上で与党、しかる後に与野党間でしっかりと協議をして決めていくべきものと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣前原誠司君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(前原誠司君) 中曽根議員への答弁の前に一言申し上げます。
 去る二十四日の参議院本会議における私の外交演説につきましては、もとより参議院を軽視する意図は全くございませんでしたが、丁寧さを欠いたものであり、ここにおわびを申し上げます。今後は丁寧な演説に努めてまいります。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 中曽根議員の御質問にお答えをいたします。
 あるべき外交についての御質問がございました。
 外交の目的は、国益を追求して国力を高めることだと考えております。
 私は、議員のお父様の中曽根外交四原則というものはいつも肝に銘じて外交を行っております。ギャンブルをしないこと、国力以上のことはしないこと、国際的な時流をしっかりと見ること、そして内政と外交を混同しないこと、この四つについては肝に銘じて行っておりますし、今議員から御指摘のございました継続性やあるいは歴史をつくるという観点は極めて大事な点だと考えております。
 その前提に立って、国力を増進するための経済外交、これをしっかりやっていくということ、また、経済外交をしっかりやっていく上での大きな基盤は日本の安全また地域の安定でございますので、その基軸となる日米同盟関係をしっかりと強化をしていくということ、また、日本の近隣の国々あるいは価値を共有する国々との関係強化というものをしっかり行ってまいって、御質問のありました国益を追求し国力を高めることを、今おっしゃった五原則も含めてしっかりと取り組んでまいる所存でございます。
 以上です。(拍手)
    ─────────────
#7
○議長(西岡武夫君) 輿石東君。
   〔輿石東君登壇、拍手〕
#8
○輿石東君 民主党・新緑風会の輿石東です。
 政府四演説に対し、会派を代表し、質問をいたします。
 質問に先立ち、一言申し上げます。
 鳥インフルエンザの拡大が大変心配されます。対策の更なる強化を要請しておきます。
 さて、私たち民主党が歴史的政権交代を成し遂げて迎えた二度目の新しい年、平成二十三年を、菅総理は我が国の内閣総理大臣としてどのようなお気持ちで迎えられたのでしょうか。政権獲得は最終目的ではなく、国民のために政治を行う手段であります。私たち民主党は、政権の座にあることをもってよしとするのではなく、新しい国づくりへと邁進しなければなりません。我が国のリーダーである菅総理には、旧弊を打破し、何よりも未来を切り開く挑戦者であることが期待されております。国家の先頭に立つ菅総理は、国民にとって明るい希望と安心を抱かせる存在でなければなりません。総理には、山積する内外の諸課題に向けて果敢に挑戦していただきたいと冒頭申し上げます。
 昨年の通常国会冒頭の代表質問で、私が、「いよいよ新政権の下で新しい政治を実現していく年、二〇一〇年を迎えました。」と申し上げてから一年が過ぎました。この間、新しい政治は一歩ずつ着実に実現されてきたと考えますが、旧来の政権では成し得なかった政治の息吹は正確に国民に届いているのでしょうか。
 昨年末、岡田幹事長は「民主党政権十五カ月の成果」を発表されましたが、民主党がマニフェストで国民に約束した、政治主導による、国民の生活が第一の政治をどのように実現されてきているのか、改めて菅総理から国民の皆さんに御説明願います。
 菅総理は、年頭所感の中で、国づくりの方針、理念として、平成の開国、最小不幸社会の実現、不条理を正す政治の三つを挙げられ、今年前半までに開国と農林漁業の活性化を両立させる政策を提示したい、今年半ばまでに社会保障制度の全体像と併せ、消費税を含めた税財政の抜本改革の姿を示したいと述べられております。これら二つの課題はいずれも、国民の間でも、あるいは各党の中でも意見が分かれる難しいテーマであります。また、現在の日本のみならず、将来の日本がどうあるべきかが問われる重要なテーマでもあります。菅総理は、これらの大きな課題を自らに課されましたが、いわゆるねじれ国会という現状において、限られた期間の中でどのような形で議論を進め、国民に納得いただける結論を得ていこうとしているのか、お伺いいたします。
 また、総理は、三つの方針を結ぶのは支え合い、分かち合いの絆だとされ、日本の絆を大きく育てる一年にしたいとも述べられました。確かに、国を形作り、政治を動かす力となっているのは絆であります。しかし、今、人々を結び、支え合っている絆が揺らいでおります。親子、兄弟、夫婦という家族の絆、町内、学校、職場という地域社会の絆、地方自治体や国との絆、ひいては国と国との絆。多くの絆が現代社会にあって、時に緩み、時に綻び、そして時に失われと、様々に変容し、暮らしや社会生活が立ち行かない場面も随所に見られてきているのが現状ではないでしょうか。とりわけ、党内の支え合い、分かち合いの絆による結束こそが大事であることは言うまでもありません。私たちの生活や社会の、血液にも神経にも例えられる絆を大きく太く育てるにはどうすればいいのか。国民一人一人の問題であると同時に、菅総理にとっても喫緊の課題でありましょう。
 私たち民主党の政治の根本は、国民の生活が第一ということであります。この理念に立てば、何よりも国民一人一人がそれぞれの立場を理解しようとする思いやりと、そこから始まる国民との信頼関係を揺るぎないものとすることが重要であります。そして、全ての人が出番と居場所のある幸せな社会を目指さなければなりません。総理の御所見を伺います。
 我が国経済は、平成二十年秋のリーマン・ショック後の急速な景気後退以降、緩やかながら回復の道をたどってきました。しかしながら、エコポイント制度の縮小を始め、政策効果の衰えや打ち続く円高の影響もあって、現在は足踏み状態に陥っているように見受けられます。ユーロ圏の通貨危機が収まらないなど欧米経済も不安定さを増し、中国など新興国の経済にもバブルの兆候が見られるなど、国際的な経済環境も予断を許さないものがあります。
 そこで、まず日本経済の現状をどのように理解されているのか、今後の動向をどのように予測しておられるのか、海外諸国の景気動向と併せ、総理の基本的な認識を伺いたいと思います。
 平成二十三年度予算は、政権交代後、民主党政権がゼロから取り組んだ最初の本予算であります。有言実行内閣を標榜する菅内閣として、強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に実現するための基礎となるものであります。
 そこで、改めて平成二十三年度予算編成の基本理念、目指すべき目標、重点配分や重要政策の優先順位、本予算に対する評価を伺いたいと思います。
 国民のための政策を継続的に実施、実現させていくためには、強い財政、健全な財政が不可欠であります。
 政府は、昨年六月、財政運営戦略を策定し、財政収支の赤字をGDP比で五年以内に半減させ、十年で黒字化させるという目標を設定しました。その上で、財政規模や新規国債発行額について、当面の基本ルールとして中期財政フレームを定め、予算編成を行うものとしております。
 財政運営戦略において我が国が設定した目標は、諸外国と比べるとむしろ低いものとなっておりますが、それでも我が国財政の現状を考えますと、財政赤字の縮減は簡単なものではありません。
 平成二十三年度予算においては、新規国債発行額は約四十四兆三千億円となり、中期財政フレームは守られたものの、税収見込額は約四十一兆円にとどまり、二年連続で借金が税収を上回るという異常な事態となっております。
 改めて、我が国財政の持続性についての認識、財政健全化の目標とその手法についての決意を伺います。
 昨年の十二月十六日に閣議決定された平成二十三年度の税制改正大綱によると、法人実効税率や中小企業の軽減税率の引下げなど企業減税を行う一方で、給与所得控除、成年扶養控除、相続税の見直しなどによって高額所得者を中心に個人への増税が盛り込まれております。しかし、まだ必ずしも今後の全体の方向性が明確にされているとは言い難いと思います。
 少子高齢化社会の進展の中で、中長期的な税制度、税構造の在り方をどのように考えているのか。また、このことは日本社会の根幹にかかわる問題であるだけに早急に検討を進めていく必要があると思いますが、そのための方策とスケジュールを明らかにしていただきたいと思います。
 一昨年の政権発足以来、厳しい経済財政状況の中で、民主党政権は、国民と約束したマニフェストの実現に向け懸命に努力をしてはいるものの、いまだ目標の達成に至っていないものが多いのも実情であります。
 一方で、事業仕分によって一般会計、特別会計、独立行政法人などに関する様々な事業の問題点が公開の場で明らかにされ、国の政策にかかわる予算や機構について国民の関心が高まるとともに、無駄な経費に対する切り込みも期待されているところであります。
 そこで、窮屈な財源の中で今後マニフェストの主要事項の実現をいかに図っていくのか、あるいは一定の見直しを行っていくのか、今後の展望についても伺います。
 昨年の六月に、政府は新成長戦略を策定しました。そこでは日本経済再生のための七つの戦略分野が掲げられ、復活のシナリオが明記されております。特に、菅総理自ら、一に雇用、二に雇用、三に雇用と力説されているように、雇用の確保や人材育成の問題は喫緊の課題であります。地方における雇用状況の厳しさ、高校生、大学生の内定取消しなどを含む若年雇用の低迷、非正規雇用をめぐる諸問題など、問題は山積しております。
 一層の雇用情勢の改善を図る上で思い切った政策が必要と考えますが、具体的な戦略を含め、見解を伺います。
 総理が昨年十月一日の所信表明演説で、TPP、環太平洋パートナーシップ協定への参加を検討すると表明して以来、日本全国、参加の是非をめぐる大きな議論が沸き起こっております。
 経済界を中心に、今から交渉に参加しなければ蚊帳の外に置かれるとして、一日も早い交渉への参加を促す声がある一方、安易に貿易を自由化すれば、農林水産業は壊滅的な打撃を受け、安全な食料の安定した供給という食の安全保障や優良な環境の維持という点から大きなマイナスとなるという声も聞かれておるところであります。
 もちろん、菅内閣は農業を重要な産業と位置付け、その担い手たる農家に対して既に農業者戸別所得補償政策を実施しております。平成二十三年度においては、農業者戸別補償制度を拡充するとともに、農地の集積による規模の拡大など農業活性化のための施策を進めていくものと考えております。しかし、貿易拡大による経済的効果についても、様々な試算が行われ、不安が高まっているのも事実であります。
 そこで、総理が農林水産業の厳しい現実をどう受け止めておられるのか、農林水産物の貿易に与える影響をどのように考えているのか、今後のスケジュールも含め、見解を伺います。
 現在、借金の返済を除いて考えた場合、歳出総額の約四割が社会保障関係経費であります。日本社会の高齢化が進み、社会保障経費の自然増が毎年一兆円を超える中で、今後の国民の老後の安心を確保するためには、しっかりとした年金制度の構築とそれを支える財源の確保が不可欠であります。二十三年度予算においては基礎年金の国庫負担割合を二分の一に維持するために必要な約二兆五千億円の財源を鉄道建設・運輸施設整備支援機構の剰余金などいわゆる埋蔵金を繰り入れることによって捻出しましたが、長期的に安定した年金制度を維持するためには、基礎年金の国庫負担割合と財源の確保について速やかに検討していくことが必要であります。
 こうした中で、今年に入って総理は、税と社会保障の一体改革に乗り出すことを明確に打ち出しました。この問題はまさに政権の命運を懸けた大仕事であり、野党側の協力をいただかなければなりません。今月十四日に行われた内閣改造で、かつて自民党政権で経済財政関係の要職を歴任した与謝野馨氏を菅内閣の経済財政担当大臣として迎え入れたのも、この問題に懸ける総理の決意の表れだと思います。
 しかし、民主党は、政権を獲得したさきの総選挙で、衆議院の任期中に消費税を上げることはないということを一貫して主張してきており、果たしてそれが守られるのか、不安の声が聞かれるのも事実であります。
 今後の改革のスケジュールについて、ここでできる限り詳しく説明をいただきたいと思います。
 次に、外交・防衛問題についてお尋ねをいたします。
 昨年後半には、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件、ロシア大統領の北方領土訪問など、我が国と中国やロシアとの間に摩擦が生じました。さらに、中国の軍事力増強や北朝鮮による韓国の延坪島砲撃事件に象徴されるように、北東アジアの安全保障をめぐる状況は不透明感が増しております。
 しかも、来年、二〇一二年には、米国、ロシア、フランス、韓国の大統領選挙や中国の新体制の発足が予定され、北朝鮮の権力継承の動きも注目されるなど、国際社会は新たな枠組みづくりの時期を迎えております。
 こうした中、我が国としては、国際社会の新たな枠組みづくりに積極的に参画し、国民の安全と繁栄を確保し、世界の平和と発展に寄与していかなければなりません。
 菅総理は今月二十日に行った演説の中で外交全般についての方針を示されましたが、これも踏まえて以下の点について質問をいたします。
 まず、我が国外交の基軸となる日米関係についてお尋ねをいたします。
 今後の日米関係は、日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2において日米の共通の戦略目標の見直し、再確認がなされ、菅総理は今春に予定されている訪米に際し、二十一世紀の日米同盟のビジョンを打ち出す予定とのことであります。
 こうした中で、日米関係の確固たる道筋を付けるために総理としてはどのような方針で臨まれるのか、考えをお聞かせください。
 また、日米関係は、このような安全保障分野だけではなく、経済、文化などの面においても深めていく必要があります。このような分野での協力の強化について具体的にどのように進めるべきか、総理の御意見を伺います。
 オバマ大統領が提案した核なき世界の具体化を進めることは、唯一の被爆国である我が国の責務であります。菅総理は訪米に際し、オバマ大統領の広島・長崎訪問、核軍縮を推進するための国際会議の広島・長崎共同開催を提案すべきだと思いますが、見解を伺います。
 日米同盟を考える上で、普天間飛行場移設問題の解決が重要であることは言うまでもありません。もちろん昨年五月の日米共同発表における合意は国同士の約束であり着実に実施しなければなりませんが、その前提として沖縄県民の理解が不可欠であります。したがって、この問題については、期限を切ることなく、県民の御理解をいただくためにたゆみない努力を払うことに尽きると思います。
 具体的には、訪米に際し、普天間飛行場の米軍ヘリコプター部隊の本土移転訓練を提案するなど、目に見える形で沖縄県の基地負担軽減に努めるべきだと思いますが、問題解決に懸ける総理の決意を伺います。
 尖閣諸島の事件以降、ぎくしゃくしてきた日中関係は、昨年十一月の首脳会議を契機に関係改善が軌道に乗りつつあります。しかし、昨年、我が国を抜いて世界第二位の経済大国となったと見られる中国は、同時に軍事大国に向かっているのではないかとも懸念されております。したがって、いわゆる一衣帯水の間柄である我が国としては、戦略的互恵関係の発展を図り、相互の利益を土台に、より良い関係を築いていく努力が何よりも大切であります。
 今後、国際社会における中国の位置付けをどのように認識し、戦略的互恵関係を具体化させていくのか、総理の御認識を伺います。
 北朝鮮については、六か国協議が中断したまま、ウラン濃縮による核兵器の開発が進んでいるのではないかと懸念され、また、後継者問題も不透明であります。哨戒艦沈没事件や延坪島砲撃事件など、瀬戸際外交を続ける北朝鮮の暴発を防止し、朝鮮半島の安定を図るためには、何よりも韓国との協力が大切であります。さらに、我が国単独、米中ロ韓など関係国との協議、国連など多国間の場を使った取組や北朝鮮との協議再開などを通じ、拉致問題などの諸課題を解決していく必要があると思います。見解を伺います。
 政府は、昨年十二月十七日、民主党政権として初めて防衛計画の大綱を改定し、中期防衛力整備計画が策定されました。基盤的防衛力構想から転換し、動的防衛力を構築することを明らかにしたこと、南西地域重視の姿勢を示したことなどが特色として挙げられます。動的防衛力とは何か、なぜこのような転換が必要だったのか、分かりやすく御説明いただきます。
 また、北東アジアの緊張が引き続く中、防衛力の着実な整備を進めるとともに、防衛交流を通じた近隣諸国との信頼醸成、国際平和協力活動への更なる貢献が欠かせません。総理の認識を伺います。
 最後に、新しい年、平成二十三年、この一年を、子供たちが夢を持って成長できる、若者や現役世代が希望を持って働くことができる、そして高齢者が安心して暮らすことができることを国民一人一人が実感できるように、私たち民主党は菅内閣とともに一丸となって国民のための政治に邁進することを表明し、代表質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
#9
○内閣総理大臣(菅直人君) 輿石参議院会長から御質問をいただきました。
 まず、新政権の下での新しい政治についての御質問をいただきました。
 マニフェストに掲げた政策の実現を始め、政権交代以来の民主党政権の取組は私は決して間違っていなかったと、このように確信をいたしております。その中で、国民の生活が第一という理念の下に、子ども手当、高校無償化、農業の戸別的所得補償など、従来の政権では考えられなかった政策を実現をしたことは、まさに民主党政権が誕生したこと、それによる大きな効果であったと、このように思っております。
 一方、御指摘のように、国民にそうしたことが十分届いているかという点については反省すべきところがあり、発信力を更に高めてまいりたいと考えております。引き続き、国民生活の向上に向けた政策実現に全力で取り組むとともに、その目的、意義について分かりやすく国民の皆様に説明するよう努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、ねじれ国会の現状における議論の進め方について御質問をいただきました。
 平成の開国は経済連携の推進と農林漁業の再生が突破口になる、このように考えております。国民の皆様はこの問題に高い関心を寄せておられます。各党の意見を持ち寄り、この国会で議論を始めたいと考えます。
 社会保障の問題は国民生活に深くかかわり、長期的視点に立って検討することが必要な重要な課題であることから、これも超党派での議論が必要だと思っております。立場を超えた幅広い議論に立った国民の理解と協力が得られるよう、国民的な議論をオープンに進めてまいりたい、このように思っております。
 国民の皆様は、今の危機を脱して将来の日本をどう築いていくのか、そうした建設的な議論が国会で行われることを望んでおられます。野党におかれましても超党派の議論が必要であるということを認めておられるわけでありますから、国会の質疑や党首討論を通じて、その期待にこたえていくべく、熟議の国会を実現をしようではありませんか。
 次に、絆を育てることについての質問をいただきました。
 輿石議員が指摘をされるように、我が国では個人が社会から切り離される社会的孤立の問題が徐々に意識されるようになってまいりました。例えば、今どきの就職活動はインターネットだけで行うことも珍しくないそうです。関心のある企業のサイトに登録する、数日後に不合格の知らせがメールで来る、パソコンの画面だけを見詰めながら誰とも会話を交わさないうちにどんどん将来への自信を失っていく、こんな学生さんが結構多いとも聞いております。
 一方で、私が会った新宿のハローワークのジョブサポーターの方は、担当した学生さんから、この方に出会ってつらい状況を乗り越えて就職先を見付けることができたと、こういうお礼の手紙を受けて本当に涙を流すように喜んでおられました。私はこの話を聞き、絆の重要性を改めて認識をした次第であります。
 政府としては、開国によって経済再生を追求するのと同時に、雇用の創造、子育て支援、女性の社会参加の応援、新しい公共を推進するための税制改革など、様々なレベルで絆が育つよう手を打ってまいります。それによって、単なる経済活性化ではなく、絆のある社会を実現したい、この点は輿石議員と全く同じ問題意識だと思っております。共に政策実行に邁進してまいりたいと思います。この取組は大変な挑戦でありますけれども、困難を共に支え合えば喜びも分かち合える、このように認識をいたしております。
 また、党運営についても、全員参加の挙党一致で臨むことが大変重要だと考え、その方向で努力をしてまいりたいと思っております。
 次に、国民の生活が第一という民主党政治の理念に基づく社会づくりについて御質問をいただきました。
 民主党は、一昨年の総選挙で国民の生活が第一を掲げ、政権交代を果たしました。その理念は今も変わらない国民との約束であると認識しております。
 今国会で審議をお願いしている予算案も、子ども手当の一部増額、高校実質無償化、待機児童対策など国民生活のための施策を多く盛り込んでおり、是非とも成立させなければなりません。また、社会保障制度改革について各党に議論を呼びかけるのも、中長期的な視点で国民生活を第一と考えているからこそ、この問題は避けられない課題だということでお呼びかけをさせていただいております。
 国民生活のために特に重要であり、私が最も重視しているのが雇用対策であります。それは、単に生計を得るというだけにとどまらず、人は働くことによって居場所と出番を見付けることができるからであります。また、既に自殺・うつ対策を強化しておりますが、新しい特命チームでは、改めて孤立の実態と要因を全世代にわたって調査するなど、孤立した人を温かく包み込む社会的包摂戦略を進めることといたしております。
 なお、居場所と出番という観点については、輿石議員から出番の重要性についても御指摘をいただき、ありがとうございました。先ほど述べた絆をつくり出す取組と併せて、全力で実行してまいりたいと考えております。
 日本経済の現状と今後の動向について御質問をいただきました。
 世界経済は失業率が高水準にあるなど、引き続き深刻な状況にありますが、景気刺激策の効果などもあって、我が国の景気は緩やかに回復をしてまいっております。こうした中、我が国の景気は足踏み状態にあるものの、一部に持ち直しに向けた動きが見られます。ただし、日本においても失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にあります。
 今後の見通しについては、世界経済の緩やかな回復が期待される中、雇用・所得環境の改善が民間需要に波及する動きが徐々に強まることから、景気は持ち直していき、平成二十三年度の実質経済成長率は一・五%になると見込んでおります。
 二十三年度予算における基本理念などについて御質問をいただきました。
 リーマン・ショック後の経済低迷の中、政権交代をしてから、まずは景気回復を最優先課題として経済財政運営に取り組んでまいりました。そこで、二十三年度予算は、昨年からの経済対策を引き継ぎ、雇用と需要の創造に力点を置き、法人実効税率の五%引下げや新成長戦略に沿った重点分野への重点配分を行ったところであります。
 マニフェスト施策については、子ども手当や農業戸別所得補償制度を拡充するほか、求職者支援制度を創設いたしました。この結果、二十三年度予算は、公共事業を削減する一方で、社会保障関係費を五%、科学研究費補助金を三割増やすなど、めり張りの利いたものとなったところであります。さらに、地域が自由に活用できる一括交付金を創設し、当初は二十八億しか出てこなかった財源を、各大臣に努力をお願いし、来年度は五千百二十億円規模で実施することといたしました。
 財政規律については、財政運営戦略に基づき、国債費を除く歳出の大枠約七十一兆円以下、国債発行額約四十四兆円以下を堅持をいたしました。
 以上のように、来年度予算は、財政規律を堅持しつつ、新成長戦略やマニフェスト施策、地域主権改革を着実に実施することにより元気な日本を復活させる予算ができたと、このように考えております。
 財政の現状認識と健全化に向けた決意について御質問をいただきました。
 我が国の財政の現状は、主要先進国の中で最悪の水準にあることは認めざるを得ません。国債発行に過度に依存することは困難であり、財政健全化はどの内閣であっても逃げることができない課題であります。このような認識の下、財政運営戦略において財政健全化の道筋を示しました。その中で、二〇一五年度までに基礎的財政収支の赤字対GDP比を半減し、二〇二〇年度までに黒字化するとの財政健全化目標を掲げ、中期財政フレームを毎年ローリングしながら目標の達成を目指すことといたしております。
 政府としては、財政健全化を経済成長、社会保障改革と一体的に実現することが重要と考えており、今後も引き続き、新成長戦略と財政運営戦略を一体的に推進し、成長と雇用拡大を実現していくとともに、社会保障と税の一体改革を着実に進めながら、一歩一歩、目標の達成を目指してまいりたいと考えております。
 次に、税制の今後の在り方について御質問をいただきました。
 平成二十三年度税制改正は、現下の厳しい経済状況や雇用情勢に対応して、経済活性化や税の再分配機能の回復、地球温暖化対策などの課題に優先的に取り組むとともに、納税者、生活者の視点などに立った改革に取り組み、全体として税制抜本改革の一環を成す緊要性の高い改革を実施するものであります。
 今後、社会保障の安定強化のために必要となる財源の安定的確保と財政健全化を同時に達成するため、税制の抜本的な改革を行う必要があると考えており、社会保障改革と併せて一体的に検討を進めていくことといたしております。まずは、これから四月ごろまでに、あるべき社会保障の姿、方向性を明らかにし、六月までに社会保障制度と税制の改革案について具体的にお示しする必要があると、このように考えております。
 次に、マニフェストについて御質問をいただきました。
 マニフェストについては、政権交代以来その実現に努め、多くの事項について、先ほど来申し上げていますように、実施をし、あるいは着手をいたしております。マニフェストは国民との約束であり、引き続きその実現に向けて努力を行っていくことが基本だと考えております。
 同時に、本年九月をもって衆議院の任期の折り返しを迎えることから、党において、マニフェストで既にできたもの、今着手しているもの、今後について検証が必要なものなどについてトータルの検証作業を行いたいと考えております。検証の議論は、透明性の高い議論が必要です。大きな方向性を変えるものではありませんが、見直しが必要という判断になれば、国民の皆様に丁寧に説明することで理解を得たいと考えております。
 次に、雇用情勢を改善するための対策についての御質問をいただきました。
 最小不幸社会を実現する上で最も重視するのが雇用であります。働くことで居場所と出番を見付けることができるわけです。雇用の創造により失業率が低下すれば、賃金上昇圧力となります。また、消費が刺激され、需要が回復すれば、更に雇用が創造されるという好循環が生まれ、経済が活性化し、デフレからの脱却が見えてまいります。こうした考え方の下、二十三年度予算・税制では、雇用をつなぎ、つくり、守るための施策を盛り込んだところです。
 具体的には、ジョブサポーターを二千人に倍増するなどにより新卒者の就職支援を強化するとともに、求職者支援制度を創設し、雇用保険を受給できない方にセーフティーネットを広げるなど、雇用をつなぐことが重要であります。また、グリーン・ライフイノベーションを強力に支援するとともに、法人実効税率の五%引下げや雇用促進税制の創設、インフラ整備や海外投融資支援によるアジアの需要の取り込みなどにより雇用をつくることも同時に重要です。さらに、非正規労働者の正社員化の支援や低炭素産業の立地支援の拡充、雇用保険の基本手当の引上げなどにより雇用を守ることが同時に必要です。こうした取組を戦略的に進めていくことにより、雇用の創造が起点となって家計の所得、支出の増加にもつながるよう、経済の好循環を確かなものとしてまいりたいと考えております。
 次に、貿易の自由化と農業活性化のための施策についての御質問をいただきました。
 貿易が自由化すると農業は危ういという声がありますが、私はこうした二者択一の発想は取りません。我が国の農業は、過去二十年間で生産が二割減少し、若者の農業離れが進み、農業従事者の平均年齢は六十六歳に達しておりまして、その再生は待ったなしの大きな課題だと考えております。昨年の視察で夢とやりがいに満ちた農業の現場に接し、私は確信をいたしました。商工業と連携した六次産業化や農地の集約による大規模化の推進などの取組を広げれば、日本でも若い人たちが参加する農業、豊かな農村生活が可能であるということを確信をいたしました。
 この目標に向けた政策の柱が農業の戸別所得補償であります。来年度は対象を畑作に拡大するとともに、大規模化の支援を厚くしてまいります。また、安全でおいしい日本の食の魅力を海外に発信し、輸出につなげる。中山間地域の小規模農家には、多面的機能の発揮の観点から支援を行う。引き続き、内閣の食と農林漁業の再生実現会議で集中的に議論をし、六月をめどに基本方針、十月をめどに行動計画を策定してまいりたいと考えております。
 次に、社会保障と税の一体改革のスケジュールについて御質問をいただきました。
 社会保障改革を進めていくに当たっては、議論の順序が重要であると考えております。まず、あるべき社会保障の姿をしっかり議論し、社会保障制度の維持強化に必要な財源と税制改革を一体的に考えるというスタンスで取り組んでまいりたいと思います。そのため、政府・与党で議論を進め、社会保障改革の全体像と財源としての消費税を含めた税制抜本改革の基本方針を六月までに示したいと考えております。
 本年六月までの具体的な手順としては、まず、あるべき社会保障の姿について四月ごろまでにその姿、方向性を明らかにする。そして第二に、それを踏まえて、社会保障の具体的な制度改革案と消費税を含む税制抜本改革案の一体的作成を四月から六月をめどに行う。そして三番目に、以上の取組と並行して、改革の検討を集中的に行い、かつ、国民的な議論をオープンに進めていくため、社会保障改革に関する集中検討会議を開催するなど、改革について国民の理解を得ながら推進するための情報発信に精力的に取り組んでまいります。
 なお、この改革により消費税を引き上げることになる場合には、税制改正を実施する際は国民に信を問うと申し上げたその考え方は変わっておりません。
 日米同盟の深化の方針について御質問をいただきました。
 日米同盟は我が国外交・安全保障の基軸であり、日米同盟を二十一世紀にふさわしい形で、安全保障、経済、文化・人材交流の三本柱を中心に深化、発展させてまいりたい、オバマ大統領とも合意をいたしているところであります。その際、御指摘のとおり、日米安保協力を着実に強化していくのみならず、まず貿易・投資等の自由化に関する協議、さらにはクリーンエネルギー、高速鉄道等でのパートナーシップの推進、さらには両国の様々な層における相互理解、交流の促進など、幅広い分野で緊密に協力をしていくことが重要だと考えております。
 核軍縮、核不拡散と私の訪米について御質問をいただきました。
 我が国は、オバマ大統領がプラハ演説で提唱された平和で安定した核兵器のない世界に向けた取組を強く支持をいたしております。また、昨年は、オバマ大統領の指示もあったと聞いておりますが、ルース駐日米大使の広島・長崎訪問があり、原爆の惨禍を二度と繰り返してはならないという我が国の強い願いについて理解を深めていただいたと思っております。私が訪米の際にオバマ大統領との間で、二国間、アジア太平洋地域のみならずグローバルな課題の中で、この核軍縮、核廃絶についても議論ができればと思っております。
 オバマ大統領の広島、長崎の訪問ということについては、個人的には大変好ましいことだと思いますが、それぞれの立場がありますので、こちらからというよりも全体の動きを慎重に見てまいりたいと、このように思っております。
 輿石議員の御指摘も踏まえつつ、今後も唯一の被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、米国とも緊密に連携しながら、国際社会の取組の先頭に被爆国として立ってまいらなければならないと考えております。
 普天間飛行場移設問題の解決に向けた決意に関する御質問をいただきました。
 普天間飛行場の移設問題については、昨年五月の日米合意を踏まえ、沖縄に集中した基地負担の軽減を図るべく全力を挙げて取り組んでまいります。
 負担軽減の具体策としては、例えば嘉手納飛行場の更なる騒音の軽減を図るため、航空機訓練の移設先として新たにグアムを追加することについて、先般、日米間で合意をいたしました。また、在沖縄海兵隊のグアム移転事業の着実な実施、米軍施設・区域の返還の更なる進展などの各種負担軽減策についても、米国と協議をしながら実現をしてまいりたいと思います。
 沖縄において普天間飛行場の移設問題について厳しい声があることは十分承知しておりますが、引き続き沖縄の方々の御理解を得るべく全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 日中関係の在り方について御質問をいただきました。
 中国は、我が国とは一衣帯水の重要な隣国であり、日中関係はアジア太平洋地域、ひいては世界にとっても重要な関係だと認識をいたしております。同時に、中国には国際社会の責任ある一員として建設的な役割を果たすことを期待をいたしております。
 今年は辛亥革命から百年の節目に当たることもあります。我が国としては、アジア太平洋地域の平和と繁栄、経済の分野での協力関係の進展を含め、大局的な観点から幅広い分野での協力によって戦略的互恵関係を更に深めてまいりたい、このように考えているところであります。
 北朝鮮政策についての御質問をいただきました。
 北朝鮮に対しては、韓国哨戒艦沈没事件、延坪島砲撃事件やウラン濃縮活動といった挑発的行為を繰り返さないよう強く求めてきているところです。また、韓国や米国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、様々な場を活用して北朝鮮に対して非核化等のための具体的行動を求めてまいります。
 同時に、我が国は、引き続き日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決を図るとともに、不幸な過去を清算し、国交正常化を追求してまいります。
 特に、拉致問題は我が国の国家主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であります。昨年十二月に拉致被害者の御家族とお会いをして、拉致問題解決に向けた決意を新たにしたところであります。国の責任において、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するため、政府としてできる限りのことはやっていきたい、このように考えているところです。
 防衛力の在り方と国際協力についての御質問をいただきました。
 政府は、近年の我が国周辺の国際情勢の複雑化や国際協力における軍事力の役割の多様化など、日本を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ、昨年末、安全保障と防衛力の在り方に関する新たな指針として新防衛大綱を決定したところであります。
 この新大綱においては、防衛力の存在自体による抑止効果を重視した従来の基盤的防衛力構想によることではなく、従来にも増して即応性や機動性を備え、高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力を構築することといたしました。また、この動的防衛力は、我が国の安全を確保するだけでなく、地域の安定化やグローバルな安全保障環境の改善のための活動を能動的に行うためのものであります。
 政府としては、この新大綱に沿って関係国との信頼・協力関係を強化し、国際平和協力活動にもより積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上、輿石議員に対する答弁とさせていただきます。(拍手)
#10
○議長(西岡武夫君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(西岡武夫君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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