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2010/04/06 第174回国会 参議院 参議院会議録情報 第174回国会 法務委員会 第8号
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2010/04/06 第174回国会 参議院

参議院会議録情報 第174回国会 法務委員会 第8号

#1
第174回国会 法務委員会 第8号
平成二十二年四月六日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月一日
    辞任         補欠選任
     梅村  聡君     前川 清成君
 四月五日
    辞任         補欠選任
     石井  一君     姫井由美子君
     平田 健二君     松野 信夫君
     前川 清成君     外山  斎君
     山崎 正昭君     古川 俊治君
 四月六日
    辞任         補欠選任
     松野 信夫君     平田 健二君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         松 あきら君
    理 事
                今野  東君
                松岡  徹君
                松村 龍二君
                風間  昶君
    委 員
                千葉 景子君
                外山  斎君
                中村 哲治君
                姫井由美子君
                平田 健二君
                松野 信夫君
                簗瀬  進君
                青木 幹雄君
                浅野 勝人君
                古川 俊治君
                丸山 和也君
                森 まさこ君
                仁比 聡平君
   国務大臣
       法務大臣     千葉 景子君
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)    中井  洽君
   副大臣
       法務副大臣    加藤 公一君
   大臣政務官
       内閣府大臣政務
       官        泉  健太君
       法務大臣政務官  中村 哲治君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田村 公伸君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(
 内閣提出)
    ─────────────
#2
○委員長(松あきら君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、梅村聡君、山崎正昭君、平田健二君及び石井一君が委員を辞任され、その補欠として外山斎君、古川俊治君、松野信夫君及び姫井由美子さんが選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(松あきら君) 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○松野信夫君 民主党の松野信夫です。刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。
 何となく久しぶりに古巣に戻ったような気分で、しっかりとこの法案について質疑をさせていただきたいと思います。もちろん、与党ですから反対するというわけではありませんが、様々な課題、疑問点、危惧する点はございますので、こういう点を中心に御質問をしたいと思います。
 まず、刑事訴訟法の関係では、これは公訴時効を延長したり、あるいは特に重い犯罪については廃止をする、こういうような内容になっているわけでございます。
 まず、これは千葉法務大臣にお伺いをしたいと思います。
 公訴時効というものがなぜ存在をしているのか。学説的にはこれはいろいろあります。実体法説、あるいは訴訟法説、あるいはその競合とか、また新説等もあるようでございますが、大まかに言えば、実体法的には、犯罪が発生してから長期間経過すると被害者あるいは社会の処罰感情というものが次第に希薄化するのではないか、処罰の必要性というものが予防の見地からもだんだんと希薄になる、この点。それからもう一点は、証拠がどうしても長期間の経過によって散逸をする、適正な刑事訴訟が行われないおそれが出てくると。そしてまた第三点としては、一定期間犯人が処罰されない、こういう状態が続くわけでありますので、そういう事実状態を尊重すると。こういうような、主にこの三点ぐらいが学説的には公訴時効の理由だと、こう言われていると思います。
 ところが、私もいろいろ調べたんですが、政府としてこの公訴時効の存在理由、これをきちんとどうも明らかにしたようなものがなかったものですので、この際、千葉法務大臣に、政府として刑事司法の中でこういう公訴時効がある理由あるいは趣旨、これをどのようにとらえておられるのか、この点、まずお伺いいたします。
#5
○国務大臣(千葉景子君) 松野委員からの御質問にお答えをさせていただきたいと思います。
 今、公訴時効制度の趣旨、それぞれの意義につきましては委員が御指摘になったとおりであろうというふうに思っております。一つには時の経過によって証拠が散逸をする、そして被害者を含む社会一般の処罰感情が希薄化してくる、それから一定の事実状態を尊重するというようなことが時効制度の趣旨ということで挙げられております。
 政府としてといいましょうか、やはり時効制度というのは、この趣旨でも示されているように、処罰の必要性、それから反面、法的な安定性、この調和を図るところにこの公訴時効制度の趣旨があるのではないかというふうにとらえております。これが基本的な法、この制度、あるいは所管をする私の基本的な認識だというふうに受け止めていただければというふうに思います。
#6
○松野信夫君 そういたしますと、今回の法改正というのは非常に大きな改正を伴っております。単に公訴期間が例えば十年ぐらい延長されるというのであれば、今御指摘ありました例えば証拠の散逸とか処罰感情の希薄化とか、そういうのは説明としては十分理解できるわけですけれども、今回の法改正の特徴というものは、一部の重罪、死に至らしめたような例えば殺人とか強盗殺人とか、そういうような非常に重い犯罪についてはこの公訴時効というものを廃止してしまう、時効制度そのものをなくしてしまう、いつまでも追いかけることができると、こういうことでありまして、時効制度に関しては非常に大きな大転換であります。
 そうすると、今言われたような時効制度がある理由というものがそのまま、今回のこの時効を一部廃止するという場合でも、その趣旨、理由というものは引き続いて維持されるんだろうか、あるいは一部廃止ということが伴っているものですから新たなやっぱり理由付けというものが法理論的にはどうも必要であるんでないかと、そういうふうな気がいたしますが、今回の法改正に伴って時効制度の趣旨、理由、これに変更があるというふうにお考えでしょうか、ないというふうにお考えでしょうか。
#7
○国務大臣(千葉景子君) 先ほど申し上げました公訴時効制度の趣旨、これには私は基本的にこの趣旨自体に今回の改正によって変更を加えるものではないというふうに解釈をさせていただきたいというふうに考えております。
 ただ、申し上げましたように、この時効制度、公訴時効制度の趣旨というのが処罰の必要性と法的安定性の調和を図ろうというところに基本的な理念があるとすれば、殊に人を死亡させた犯罪、この公訴時効についてはこういうバランスを考えたときに特別の取扱いをすることができるのではないかというふうに考えております。
 一般に、生命法益が侵害されたという場合、他の法益とは異なって、時間の経過とともにこれが回復するという余地はございません。そういう意味では、法益侵害による害悪や影響が減少することなく長期にわたって残存するということからして、処罰感情の希薄化の度合いとかあるいは事実状態の尊重の必要性というのが他の法益と比較して軽くなっていくと、こういうことではないかというふうに思います。
 また、殺人事件の凶器に付着した遺留物のDNA型鑑定等、各種の鑑定結果が証拠として重要な意味を持つというようなことも多くなってまいりまして、新たな科学的鑑定技術の進展等によって時の経過を経ても劣化しない有力な証拠が獲得できる可能性も強まってきております。そういう意味では、長期化することによって証拠の散逸ということも比較的にまたこれも比重が軽くなってくる。
 そういう意味では、処罰の必要性と法的安定性という面では、処罰の必要性というところに比重が重くなり、そして法的安定性というところの比重がいささか弱まっていくと、こういうことではないかと思います。公訴時効の趣旨そのもの自体は、私はこの改正によって基本的に変更されるものではないというふうに理解をいたしております。
#8
○松野信夫君 ただ、公訴時効の趣旨は、証拠の散逸とか、あるいは処罰感情の希薄化とか等々言われていますので、それがそのまま時効制度を廃止するといつまでも追及できるというので、どうもちょっと正直、私としてはバランスというか、しっくりしないところも正直ございます。
 また、バランスの点でいいますと、特にこれはもう質問するわけではありませんが、例えば強盗殺人、強盗致死は今回の法改正で時効制度は廃止です。だけど、他方、いわゆる強姦致死、強姦致死は廃止ではないんですね。従来強姦致死は十五年の時効のところが今度三十年になる、強盗致死は廃止で強姦致死は三十年と、この辺のバランスは果たしてどうなのかなと。先ほど大臣もDNA鑑定のお話されましたけど、DNA鑑定の点で申し上げれば、強姦致死ということであれば、案外精液等が残されていてDNA鑑定などやりやすい犯罪類型でもあろうかなと思いますので、正直私の方は、その辺のバランスが果たしてどうなんだろうかという疑問は持っているということだけは御指摘しておきたいと思います。
 それで、次に、今回の法改正の一つの特徴は、法改正時点で時効が完成していなければ新法が適用されると。だから、例えば殺人事件でまだ時効が完成していないというとこの犯人はいつまでも追及されるという格好になるわけで、これはいろいろ議論があるところであります。
 憲法三十九条の規定に違反するのではないか、こういうような指摘ももちろんあるわけで、確かに、犯罪行為を行った時点ではこの犯罪については何年たったら刑事責任は問わないと、こういうふうに規定していた。ところが、途中で、例えば殺人の場合ですと、何年たったら責任を問わないというのでなくて、いつまでも責任を問うと、こういうふうにがらりと変わってしまうわけですので、これは果たして許される範囲内なのか。私も、延長するというならまだしも、廃止までして永久に訴追ができるということは、元々時効制度というのは立法者はつくっていたわけでありますので、その立法者の意思に反しても少しどうなのかなという気がしております。
 恐らく法制審の中でもいろいろ慎重論があったと思いますが、今回、その点を言うならば乗り越えて今言った遡及効を適用するというふうになった理由はどういうことでしょうか。
#9
○国務大臣(千葉景子君) 今御指摘がありましたように、この今回の法改正では、現に公訴時効が進行中の事件に改正法を適用するということとしておりまして、これについては、今これも御指摘あったように、憲法第三十九条とのかかわりで問題はないかという御指摘があることも承知をしております。
 ただ、もう委員も御存じのとおり、憲法第三十九条が禁止しているというのは、実行のときに適法だった行為を後から処罰する、あるいは刑罰を後から重くするということが基本的なこの三十九条が禁止していることであろうというふうに理解をいたします。その趣旨は、犯罪を犯した場合の刑罰に関して事前に告知をして、行為者の予測可能性を保障しようとしたものと考えられております。
 公訴時効については、必ずしもこのようなこととは直接かかわらないのではないだろうかというふうに思います。しかも、一定期間逃げ切れば処罰されなくなるというふうに考えて、こういうことがあるかどうかはあれですけれども、あえて犯行に及ぶとか、あるいは時効完成を心待ちにするような犯人の期待、こういうところまで法的な保護に値するのかどうかと、こういう問題もあろうかというふうに思っております。
 法制審議会においてもここが大変大きな議論になったこともこれも事実でございまして、これももう御承知のところではあろうかと思いますけれども、このような問題点について最終的には活発な御議論があった上で三十九条違反にはなるものではないと、こういう結論に達したと承知をいたしております。
 そして、逃げ得を許さないと、こういう意思をきちっと明確にすることが必要だ、こういう法制審でも御議論がまとめていただいたということでございますので、今回、そういう意味で三十九条違反にはならず、やはり逃げ得を許さないという意味からも遡及的な適用を認めるという法制度にさせていただいたということでございます。
#10
○松野信夫君 今大臣の方から逃げ得を許さないと。その気持ちは分からないではない。
 ただ、今回の法制審の議論あるいは法案の提出に至った流れ見てまいりますと、犯罪被害者の会あるいは遺族の方々の声が物すごく強く出されて、逃げ得は許しちゃいけないというような声にかなり押された形で、私は正直、もう少し憲法論に立った議論というもの、あるいは法理論をきちんと法制審なり法務省内でこれはもう少しやるべきではないのかなという気がしております。
 実際、今回の公訴時効の改正の前、これは二〇〇四年、平成十六年に公訴時効、このときは例えば十五年を二十五年にするというような形で延長したわけですが、その平成十六年のときの法改正ではこの遡及効のところは適用していないわけです。遡及効は適用しないでいるにもかかわらず、今回はその壁を乗り越えて遡及効を適用すると、こういうふうになぜわずか五、六年の間に態度を変えてしまったのかなという気がしておりまして、この点について、大臣、何か御所見があればいただきたいと思います。
#11
○国務大臣(千葉景子君) 平成十六年の改正、これは、凶悪犯罪を中心とする重大犯罪に対して、事案の実態及び軽重に即した適正な対処を可能にすることを目的として、時効制度、公訴時効制度そのもののまず前に法定刑を加重したと、それが一つの大きな内容でございました。そして、この法定刑を加重した上で、重い犯罪について公訴時効期間の延長という手直しをしたと。この法定刑を加重するというところにまず大きな改正のポイントがあったかというふうに思っております。
 その後、今回の改正までには、やはり多くの国民の意識、やはり凶悪な犯罪に対してきちっとした処罰を求めると、こういう声が、意識が大変高まったということが言えようかというふうに思っております。
 平成十六年の改正というのは、将来に向けて効果的な刑事政策の実施を図ろうと、こういうことに主眼を置いていた。今回の改正というのは、これまで発生した事案の的確な処罰をやはり妨げない、きちっと処罰をしてほしいと、こういうことに対して対応していこうというものであって、改正の趣旨というのがいささか異なっているのではないだろうかと私は認識をいたしております。
 そういう意味で、国民の処罰を求める、これは被害者ばかりではなくて、様々な調査等を踏まえましても国民的に処罰を的確にという世論が大変高まっているということも踏まえながら、公訴時効制度についての、今回はそこを主眼にした改正をさせていただくということになったものでございます。
 そして、遡及処罰につきましても、これまで進行してきたそういうもので、時効があるためにこれからもう公訴提起ができない、処罰は不可能になるということを避けるということも踏まえて、進行中のものについては遡及的な適用も選択し、政策として取り入れていくと、こういうまとめをさせていただいたということでございます。
#12
○松野信夫君 平成十六年の改正は法定刑の延長の部分もあったという御指摘ですが、しかし、法技術的には公訴時効について遡及効をするとかしないとか、それはもう十分法技術的には可能なわけで、前回、わずか五、六年前には遡及はしないというふうにしておいて五、六年たったら突然遡及するというのは、正直私はどうなのかなという気がいまだに氷解できておりません。
 更に申し上げると、今回の改正は、公訴時効の分だけではなくて刑の時効、もう有罪判決が出て確定してあと刑を執行すると、この刑の時効についても改正がなされているわけですね。これもやはり延長されたりしているわけですが、この刑の時効の方は遡及効を適用してないんですよ、今回の法改正は。ところが、公訴時効の方は遡及効を適用するという仕組みになっています。
 だけど、よくよく考えますと、刑の時効というのはもう有罪判決が確定しているわけですよ。もう有罪判決が確定していますから、間違いなくこれはもう刑の執行をしなきゃいけない、そう簡単に許しちゃならないという要請は刑の執行の方が強いと思うんです。公訴時効の方はまだ有罪判決の前の話ですから、推定無罪が働いている場面での世界ですから、バランス的に考えますと、公訴時効については遡及効を適用する、刑の時効については遡及効を適用しない、ちょっとこのバランスは私はいかがなものかなというふうに思うんですが、この点については大臣はどのようにお考えでしょうか。
#13
○国務大臣(千葉景子君) 今御指摘がございましたけれども、公訴時効の方については実際にこれを適用する事例というのが考え得るわけですけれども、確定した、言渡しがあった刑の時効の方は、実質的に適用される場面といいましょうか、それが考えられないということも一つあろうかというふうに思っております。
 そういう意味では、何というんでしょうね、制度が全く公訴時効の問題とそれから刑の時効というのは違うものでもございますので、バランスを欠くということにはならないのではないかというふうに私は認識はいたしております。
#14
○松野信夫君 時間もありますので余りこればっかりやれませんけれども、少し私は、今申し上げたようにバランス的にはどうなのかなという、率直に申し上げるとまだまだ疑問が氷解できないところではございます。
 それで、何でこうなったかとつらつら考えると、今回の法改正は少し急ぎ過ぎではないのかなと、もう少し十分、法制審あるいは省内でのいろんな検討が必要だったのではないかという気がこれは率直にしております。
 元々、少し歴史をひもときますと、前自民党政権時代に森法務大臣の下でこの私的研究会が設置されて、公訴時効の見直しというのがこれが始まりました。ただ、御承知のように政権交代がありまして、それで民主党政権になって、昨年の十月二十八日に千葉法務大臣が法制審に諮問したわけですね。方向性は白紙だと、こういうふうになっていたわけですけれども、法制審自体はこれは正直異例とも言えるぐらいの速さで今年の二月二十四日に答申がなされて、その答申のそのまま今回の改正法案になったということでありまして、正直、もう少し慎重な議論、私は言うように、法理論上のバランスも含めた検討というのがもっとなされるべきではなかったかなという気がしておりまして、少し急ぎ過ぎているのではないか。
 また、その平成十六年の改正からわずか五、六年しかたってないわけですので、この間の公訴時効を延長した効果等々をもう少し時間掛けて検証するという道もあったのではないかなというふうに思いますが、この点はどのようにお考えなんでしょうか。これは加藤法務副大臣の方にお願いします。
#15
○副大臣(加藤公一君) 松野先生のお尋ね、少しまとめて御説明をさせていただきたいと思います。
 もちろん大変重要な改正でありますので、不必要に急いだというつもりは毛頭ございませんけれども、適切なスピード感を持って作業を進めてきた結果、今国会に本法案を提出をさせていただいたということであります。
 我々が感じております適切なスピード感でございますが、これまでの意見募集手続の結果であるとか、あるいは各種の世論調査の結果などに照らしますと、人の命を奪った殺人などの犯罪については、時が経過したからといって一律に真犯人が処罰されなくなってしまうというのは不当ではないか、その刑事責任の追及というのはより長期間にわたってなされるべきじゃないだろうかという意識が国民の皆様の間で広がっているというふうに理解をできるところでございます。
 この公訴時効制度に対して国民の皆さんの意識の変化というものがございまして、それと現行制度との間に若干のずれといいますか、乖離が生じてきているという問題意識を持ってきたところであります。これらにつきましては、決して慌てるということではありませんが、やはり適切なスピード感で速やかにかつ適切に対応していくということがやはり政治における使命であろうというふうに認識をいたしております。
 また、あわせまして、もうこれは申し上げるまでもなく、御存じのとおりでございますけれども、現在まだ未解決の凶悪事件、殺人等の凶悪重大事件というものも残念ながら存在をいたしてございます。公訴時効が進行中ということでありますが、その事件の御遺族の方などを含めまして早期の解決を望んでいらっしゃる方々がいらっしゃるわけでありますが、その皆さんを中心になるべく早くルールを変えてもらいたい、こういう御要望があったこともまた一方では事実でございます。
 先ほど御指摘いただきましたように、十月に白紙の状態で法制審に千葉大臣から諮問をさせていただいたわけでありますが、その後、法制審の部会、刑事法部会におきましても、延べ八回にわたって合計二十五時間ほどの審議が行われたというふうに聞いてございます。様々なお立場、御意見がございますので、それぞれの皆さんから御議論に御参加をいただいたり、あるいは多角的な見地から審議が進められてきたということを聞いているところでありまして、もちろん、いついつまでにということを申し上げて大臣から諮問したわけではありませんけれども、比較的順調に、かつ十分な議論がなされたということで、二月に答申をいただいたわけであります。
 もちろんその中では、今回の法案とは違う御意見を持った皆さんからの御意見というものもその審議の過程で意見聴取をされたと聞いておりますし、また、広く国民の皆さんからも意見募集手続もなされたというところであります。
 また、この間、併せて内閣府が実施をいたしました基本的法制度に関する世論調査というのもございまして、その結果についても十分に御検討をいただいたところでありまして、それらの結果を踏まえまして、その法制審での議論も踏まえまして、千葉法務大臣の下、私ども政務三役で慎重に検討を行い、また松野先生含め、法務省の政策会議におきましても様々御示唆に富んだ御意見をちょうだいをしたことを含めまして今回の法案を提出をさせていただいたという経緯でございますので、どこまでが議論が進めば十分かというのはなかなか難しいところではありますけれども、私どもといたしましては、大変多くの御議論をいただいた上で結論を出させていただいたという認識でございますので、御理解をいただければと思います。
#16
○松野信夫君 今回の法改正は公訴時効そのものを廃止してしまうという大改革なんですよね。
 公訴時効の歴史をひもときますと、元々は刑事訴訟法の旧法とか旧々法とか、そのもっと前に治罪法というのがあって、そのときから公訴時効制度というものがあって、もうかれこれ百三十年近く我が国の司法制度の中では存在をしていたわけであります。初めて一部時効制度を廃止する、まさに大変革なわけであります。
 ところが、正直、今度の通常国会に間に合わせるということで、正式にはまだ法制審の答申がなされる前から、法務省の政策会議でもう何か法案ができているみたいな話でいろいろと議論があったりして、ちょっとその辺もどうかなという気は正直しておりました。
 また、私は何人もの刑事法の学者の先生方から言われたんですが、法制審の刑事法部会のメンバーが結局前政権とほとんど変わりがないということで、特定の大学の先生、委員に、あるいはそれのお弟子さんとかその仲間によって大体占められていてしまって少しメンバーが固定化し過ぎている、率直にそういうような意見も聞きましたので、政権交代も成りましたので、法制審のメンバーから少し入れ替えて徹底した議論をしていただくということも今後是非御検討をいただきたいなという気がしておりまして、加藤副大臣の方から十分な審議があったというお話ですが、私はまだまだ必要だと。
 例えば、ドイツはこれは法改正いたしまして、ドイツは殺人については全部廃止したわけじゃないんです。ドイツでは、民族殺とかあるいはテロみたいな特に悪質な殺人についてはこれは廃止いたしました。だけど、このときももう大議論を全国でやって、全国規模で学者が意見は述べる、連邦議会では、党議拘束を外したんです、党議拘束を外して討論や議決を行って、結果的には二百五十五対二百二十二という、割合、比較的僅差で通ったというようなこともありまして、ドイツと別に比較したからどうだというわけではありませんけど、率直に言うと、もう少し議論が必要ではないかという気持ちはあります。
 それで、非常に残念なことに、民主党が野党時代にまとめた案はどうも余り一顧だにされなかったなという率直な感想を持っておりまして、民主党は野党時代に刑罰のあり方検討プロジェクトチームというのをつくって、これは仙谷由人さんが座長で、私が事務局長として取りまとめさせていただいたんですが、その案は、法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案については、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を一回認める、こういう制度を提案させていただいたんです。
 これはNC閣議にかけて通っているわけですが、どうも、しかしこれはほとんど一顧だにされずにあっさり否定されたようにも思っているんですが、ここの点はなぜ採用されなかったんでしょうか。この点はいかがでしょうか。
#17
○副大臣(加藤公一君) 一顧だにしなかったということはもちろんございませんで、松野先生が事務局長をお務めいただいて、大変短期間で集中的に御議論、御検討をされて一つ結論を出されたということは承知をしておりますし、私もその任期も議席をお預かりしておりましたので、その間の経緯というものも承知をいたしてはおります。
 ただ、今回、今、松野先生からのお話のありました案というものにつきましては、捜査機関の負担というのは余り増えないように抑えられる、なおかつ重大な事案については刑事責任を追及する機会をできるだけ確保しようと、こういうバランスでお考えになられたものと思いますし、それはそれで一つの有益な案であるというふうには私どもも理解をいたしておるところでありますが、一方で、この間の意見募集の手続であるとかあるいは世論調査の結果などを見ますと、殺人などの凶悪重大な犯罪については、やはり真犯人の逃げ得は許すべきではないという声が大変強いところでございまして、是非そういう声にも今回の改正においてはこたえてまいりたいというふうに私どもも考えているところであります。
 その観点からいたしますと、一つ、これは当時私も前任期中気が付いておりませんでしたけれども、御提言のあった案でいいますと、事件そのものが発覚をせずに時効が完成をしてしまったというケース、その後に事案が明らかになる、あるいは真犯人が発覚をするという場合には、残念ながら対応できないということになってしまいます。
 御記憶かと思いますが、以前、足立区で小学校の女性の先生が殺されていたという事件がございましたけれども、真犯人が自宅の庭に遺体を埋めていたということで、時効が完成した後にそのことが明らかになったという件がございました。こういうケースにおきましては、残念ながら御提言の内容では対応できないという問題がございます。
 それからまた、この案も法制審などでも御議論をいただいておりましたし、また多方面からも私どもも御評価について承ったところでありますけれども、その中の御意見といたしましてこのようなものがございました。
 どういうのかといいますと、例えば公訴時効そのものを延長するかどうかということ、非常に重要な問題でありますけれども、それが、ある段階で証拠が残っているかという言わばある種の偶然に左右されるような事情で、また検察官あるいは裁判官などの裁量で決定されるということが本当に公平公正なんだろうかというような疑問点が指摘をされておりましたり、あるいは法制審の議論などでは、個々の事案ごとにその犯情などを考慮して時効中断という不利益処分を科す、しかし対象者の言い分は聞く機会がない、その意味でいうと、手続が保障されないまま一方的にその手続が進められるということは本当にいいんだろうかという御議論もございました。あるいはまた、確実な証拠があるから時効が中断、事実上延長されるということになると、その段階でそもそも有罪の心証が形成をされてしまって、実際、本当の公判が始まったときに悪影響を及ぼすんではないかと、こんな御議論もあったところでございまして、決して一顧だにしなかったわけではありませんけれども、様々な御意見をいただきながらまた十分に検討させていただいた上で、今回の改正案の内容というふうに結論を付けさせていただいたところでございます。
#18
○松野信夫君 私、個人的には、まあ私が取りまとめた責任者というわけでもありませんけれども、この民主党の野党案はなかなか優れているなというふうに我ながら正直今でも思っておりまして、もちろん、犯罪被害者の皆さんあるいはその遺族の皆さんの要望、そして捜査機関の負担、この辺のバランス、また一方では社会正義を実現しなきゃいけない、逃げ得は許しちゃいけない、だけれども、一方、冤罪を生んではこれは元も子もない、被告人の権利はこれはしっかり守った上で刑事司法を実現しなきゃいけない、こういう調整というかバランスをしなければいけない。その辺のバランスを、ある意味では検察官が証拠をにらみながら、これはやっぱり許しちゃいけないというのは時効を中断してまででも頑張らなければいけない、その辺は検察官にゆだねるという手法も悪くはないのではないかといまだに正直思わないではないんですが、一応そういうことであります。
 それで、次に、せっかく今日中井国家公安委員長にもおいでいただいておりますので質問をさせていただきたいと思いますが。
 時効が延長される、あるいは廃止されるということになりますと、当然、犯罪が発生してから長期間にわたって捜査というものが行われる、これは十分に予想されるわけであります。余り捜査が長引いてもう時効ぎりぎりとか、あるいはもうかなり二十年も三十年もたってから強制捜査に及ぶというと、率直に言うと、私はやっぱり冤罪の危険性というものがこれは指摘できるのではないかなと。冤罪発生の危険性、これは短い場合だってそれはもちろんありますけれども、特にその危険性というのはやっぱりあるのではないか。
 私は、今回、時効延長とか廃止とかいう議論でありますが、本来あるべき姿というものは、事件が発生した直後にしっかりとした初動捜査を行って早期に検挙すると、これがやっぱり何といっても大事であって、時効を延長したから、あるいは廃止したからといって率直に急に検挙率が上がるとかいうのも、それはなかなかそう簡単ではない。やっぱりいろいろ統計取ってみますと、三年以内に検挙できない事件というのはどうしても長期化してしまうという統計もあるようでありますので、私は、早く、早期に初動捜査力を高めて検挙するというのが第一であって、余り時効が延長されるからといって、それに頼っているようではこれはよろしくないのではないかと、率直にこう思っておるんですが、中井大臣のお考えはどうでしょうか。
#19
○国務大臣(中井洽君) 久しぶりに民主党の法務部会へ戻ったような気で、先ほどから松野さんの御高説を聞かせていただいておりました。
 今回のこの法案につきまして、私は民主党時代から賛成でありまして、また、今回、こういう国家公安委員長という立場になっていろんなことを思います。
 しかし、松野先生御指摘のとおり、事件の発生後、初動捜査というのが一番大事であることはもう言うまでもありません。現在、可視化方向に向かって進みますと同時に、初動におけるいろいろな科学的な捜査の向上、こういったことについて私の下に勉強会を開いて更なる研究をいたしているところであります。
 今後、今まで以上に科学的な捜査あるいは初動での証拠固め、こういったものを充実させて、早期解決というものに全力を挙げていきたいと考えております。
 同時に、今回のこの件につきましては、やはり犯人を安易に安らかに、安心させてはならない、やはりプレッシャーを掛けるべきである、被害者意識、被害者の方々の本当の思い、こういったものも大切にということで、政府として法案化に向かったところであろうかと考えております。
 これらを受けて、捜査当局としましては、とにかく長期化しておっても犯人追及、そして逮捕、これに向けて全力を挙げろ、こういう国民のお声だ、このことを十分に受け止めて、なお一層事件解決に向かって努力をしたいと考えております。
#20
○松野信夫君 是非中井大臣に頑張っていただきたいと思いますが、どうしても長期化するといろいろな問題が出てくると思います。
 お手元に、これは二〇一〇年、今年一月十六日の読売新聞の記事、そして三月二十日の朝日新聞の記事を配付させていただいておりますが、まず読売新聞の記事の方は、これは時効一か月前に逮捕したんですけど、結局、嫌疑不十分ということで不起訴になったわけであります。どうもこれ、新聞記事によりますと、この捕まった方々はかなり厳しく刑事あるいは検察官から取調べを受けたということで、二十日間勾留されたようですが、「二十日間は二十年くらいの気持ちだった。何でこんな目に遭うのかと思った。あれだけ攻められたら、ウソを言ってでも楽になりたいと考えた。」というようなことで、かなり取調べが厳しかったというようなことをしてありまして、こういうような事件が時効直前に続出するようであれば、これは大変な問題になりかねません。
 こういうのをしっかりと防止するという意味では、やっぱり可視化以外にはないなとこれはもう率直に言わざるを得ないわけで、特にこの事件のようなケースですと、もう時効直前だと、結局、供述に頼らざるを得ない、自白に頼らざるを得ない、そうすると無理な取調べをせざるを得ないと、こういう傾向が私はますます強くなる、そうするとますますやはり取調べをきちんと可視化しておかなければならない、このように思います。
 それから、次の新聞記事は、じゃDNAがあるじゃないかと、DNAという非常に強力な客観証拠があるということがよく指摘されますが、このDNAだって、この三月二十日の新聞記事にありますように、これは人為ミスで別人のデータをDNA型の記録データに登録していたということで、別人に対して逮捕状だとか、あるいは捜索、差押えをやったと。
 これはやっぱり人間がやることですから、一つ一つデータ登録するのも人間がやることですから、間違ったデータを登録したということはこれからもあり得るわけで、そうだとすると、やっぱりDNAがあるから万全だということにもならないわけで、この点からもやはり取調べの可視化というのを是非進めていかなければならないのではないかということでございます。
 それで、ちょっとこれは実務的な観点でお聞きしたいんですが、供述調書を取っておく、しかし長期間経過をしてしまいますと、供述した人も亡くなっていたり、あるいは取調べをした捜査官側も亡くなっていたりということが当然あり得るわけですね。そうすると、これは刑訴法の三百二十一条の例外的な書面ということで、そういう書面がどんどんと公判に提出されてどんどんと証拠採用される、法廷で反対尋問もできないと。こうなると、私はやっぱり冤罪の可能性というものが高まるのではないかと。
 その辺については、一定のやっぱり仕組みとして冤罪を防止する仕組みというものを考えていかなければいけないのではないか。その一つが、何度も申し上げるように、取調べの可視化でありますし、また、この三百二十一条書面を二十年も三十年もたった後に持ち出されてどんどん採用されるという仕組みも、これも少し改めなければいけないのではないかと思いますが、この点はどのようにお考えでしょうか。
#21
○副大臣(加藤公一君) 松野先生御指摘のとおり、刑訴法三百二十一条第一項第二号、第三号というところで、仮にその供述人である参考人の方が亡くなっていたという場合に、その参考人の供述調書が証拠能力が認められるということは御指摘のとおりあり得るわけでございます。
 ただ、これは時の経過の問題とは必ずしも関係なく、現行制度でも同じ事態は起こり得る問題でございまして、確かに時間がたてばその可能性が高まるということは科学的にあり得るかも分かりませんが、現行制度でも同じ事態というのは当然起こり得ることでございます。その場合には、もう申し上げるまでもなく、その反対尋問ができないことも含めて、その事情も含めて、その供述調書の証明力の判断に当たって裁判所において適切にしんしゃくされると、こう理解をすべきではないかというふうに思ってございます。
 もとより、挙証責任そのものは検察官が負っているところでありますので、万が一その調書しか証拠がないということであれば、これはなかなか現実問題として公判を維持していくというのは難しいんじゃなかろうかというふうにも思いますし、それ以外の証拠も含めて裁判所において判断をされるわけでありますから、一方的にこの件についてのみ考えて被告人の防御の観点から大きな問題があるというふうには認識をしていないところでございます。
#22
○松野信夫君 ただ、一般の事件でももちろん起こり得ることではありますが、今回のように時効が延長されたり廃止されたりということになりますと、例えば犯罪発生直後に関係者の証人の尋問調書、供述調書が作られている、だけど実際に犯人が捕まったのが二十年も三十年も後と。そうすると、二、三十年前の関係者の供述調書辺りが出てくるということはこれは大いに確率としては高くなると思いますので、これについては一定の何というかチェックを入れるということも私は仕組みとしては必要になってくるのではないかなという気がして、場合によっては、例えば、五年ぐらいたったら裁判所において証拠保全手続のような形で実際に尋問までしておく、単に供述調書だけではなく裁判所で証拠保全的な取調べまでして確認をしておくとか、そういうようなことも場合によっては必要なのかなという気もしております。ただ、これはもう御指摘だけであります。
 それで、次に中井大臣の方にお聞きしたいと思いますが、国松長官の狙撃事件でございます。
 これは去る三月三十日に時効が来たわけでありまして、このことは大変残念なことで、ついに真相が必ずしも解明されないままに時効になったと。これは警察のトップがねらわれるという前代未聞の事件で、それは警視庁挙げて捜査やったと思いますが、結果は時効ということであります。
 ただ、それはそれで残念なんですが、更にまた残念なのは、時効後に警視庁の公安部長が、この国松長官狙撃事件はオウムの組織的なテロだというような意見を述べられておるわけでございます。これは、時効完成した後、結局これは起訴できなかったわけですね、時効完成後に特定の者あるいは特定の団体に対してあれが犯人だというふうに名指しで認定するというのは、これは私は極めて異例なことだし、こんなことが次々に起こるようであればこれは大変な問題だというふうに私は認識しておりますが、中井大臣はどのようにお考えでしょうか。
#23
○国務大臣(中井洽君) お答えする前に、先ほど二件の件で御指摘をいただきました。
 茨城の牛久事件の問題につきましては、やはり証拠とそれから名指しでの自供が一件あったということで取調べをし送致をいたしましたが、残念ながら不起訴に終わったわけでございます。
 なお、重々にもう一度県警の方、調べておりますが、今のところ公安委員会に無理な自白を強要するような取調べをやったという報告は上がっていません。この点だけは御報告を申し上げておきたいと思います。
 また、神奈川のDNAの誤情報の問題、これはもう全く御指摘のとおりで、起こしてはならない情けない事件でございます。
 DNA鑑定の必要性、重要性にかんがみまして、今一斉に検体の蓄積、これについて方法を改めて二度とこういうことが起こらないようにやってまいりますので、今後とも御指導のほどをお願いいたします。
 御質問のオウムの問題、国松長官狙撃事件の時効に関してのコメントの問題でございます。
 私も、報告を聞く前に、記者会見でこの件についてマスコミから質問を受けました。とっさに悔しさの余りだと申し上げましたが、そういう面も強くあったのではないか。何せ、御指摘のように、長官が狙撃されて、結局犯人を挙げられなかった捜査当局としての悔しさがにじみ出ている、こういう会見であったかと思っておりますし、また反省点等もいろいろと述べられて、今後のこういうテロ事件に対する捜査の在り方に対して大いなる警鐘を発していると私どもは考えています。
 しかし、先生御指摘の人権問題というようなことも含めまして、過般、公安委員会でも議論のあったところでございます。しかし、公安委員五人の先生方の御意見は様々でございましたが、ああいう観察処分を受けている団体ということも含めて、ああいう発表の仕方もこの際やむを得なかったということが大方の空気でございまして、私はそれを了といたしているところであります。
#24
○松野信夫君 大臣は了としておられるかもしれませんが、私は余り了とできないなと、率直に申し上げるとそういう気持ちでありまして、本来ならばきちんと捜査をして起訴にまで持ち込むということが当然であって、それができなかったということで、できなかったにもかかわらず特定の人に対して犯人だと言うのは、これは率直にいかがなものか、あるいは負け惜しみじゃないかというふうに言いたくもなるような気がしておりまして、起訴できなかったというのは、やっぱり謙虚にこれは反省をすると。反省をするということこそ私はやっぱり必要なことであって、その反省、もちろん反省はしておられるんだろうとは思いますけれども、他方で、その特定の者を犯人呼ばわりするというのは、それはそちらの人から言わせれば、起訴でもされて正式公判でもなれば公判で堂々と反論するなり自分は犯人ではないといろいろ活動できますけど、そうでもないのに一方的に言われるというのは、これは正直私は行き過ぎだというふうに思っております。
 それで、このことは、警察と検察と裁判、これとの関係から見ても、私は、警察が起訴権限を持たないわけです。起訴権限持っているのは御承知のように検察です。検察が起訴もできなかったものに対して、捜査機関である警察が特定の者に対して犯人だと犯人呼ばわりするというのは、それは検察から見てもこれは面白くない話で、面白くないというか、権限を何か侵害されるようなことにもなりかねませんし、裁判所から見ても、まだ推定無罪が働いているわけですから、それまた行き過ぎだというふうに思います。
 だから、これは、法務大臣としてもこれは簡単に了としちゃいかぬと思います。ある意味ではこれ検察の見識が問われることでもあるんではないかというふうに思いますが、ちょっとこれ、法務大臣はどのようにお考えでしょうか。
#25
○国務大臣(千葉景子君) この事件については、検察のところで起訴をするか起訴をしないかという判断をする、そこまで至らない状況でございます。そういう意味では、警察の方でどういう御趣旨で、そしてまたどういうことでああいう会見なり話をなさったかというのは、私もなかなかその真意のほどは計り知れないところがあるわけですけれども、法の手続からいえば、最終的には検察が起訴をし、そして裁判所で最終的な判断は下されるということでございますので、そういうところはやはりきちっと手続は尊重していく、踏まえていくということは一般的に必要なことだろうというふうに私は認識はいたしております。
#26
○松野信夫君 同じ閣僚でなかなか答弁しにくいところがあるのかなという気はいたしますが、私は余りこういうことが、つまりこういうことというのは、時効完成後に一捜査機関が、あいつは犯人だけれども起訴まで持ち込めなかった、だけど犯人であることは分かっていると、そんなことを許しておくと、これはもう司法国家としては成り立たない話です。推定無罪もへったくれもないということになりかねませんので、ここは慎重にお考えをいただきたいと思います。
 それで、せっかく中井大臣お見えいただいていますので、捜査本部の今後の在り方についてもお尋ねしたいと思います。
 これまでですと、特定な重要事件、重大事件が発生しますと県警辺りに捜査本部が設置される。私も聞きましたら、これは時効が完成するまで捜査本部というのはずっと存続されるんだそうですね。そうしますと、仮に重大な殺人事件が発生して捜査本部が設置される。今後は殺人の場合はもう公訴時効廃止ですから、捜査本部は一体どうなるんだろうか。また、当然警察官も人間で、それは転勤もあったりしますので、その辺の捜査記録の保管とかあるいは引継ぎとか、その辺はどのようにお考えでしょうか。
#27
○国務大臣(中井洽君) 先ほどの警視庁公安部長の記者会見の在り方については、先生から御指摘があったということをまた公安委員会に伝えて、警視庁の方へも申し送りをしていきたいと思っております。当人はかなり反省をして言ったつもりであるようでありますが、こういう記者会見の在り方についても指導をしていきたいと、このようにもあえて申し上げるところでございます。
 今御指摘の捜査本部につきましては、県警本部長が事件の重要性にかんがみてそれぞれの署に置くわけでございまして、そう幾つも幾つも看板ばっかり掛かって解決できないということでは、これはもう捜査当局の信用にかかわります。そういうことのないように全力を挙げていきたいと思います。同時に、捜査本部は事件が解決するまではこの本部の看板は外しません。そういったことで頑張ってまいりたいと思います。
 同時に、これまた御指摘の証拠物件をどう保管するか、このことは非常に悩ましい問題でございます。各都道府県あるいは検察当局、十分相談を申し上げて、長期間で事件が解決した、しかし証拠はなくなっていた、こういうことがないように方策を考えていきたい、このように思っております。
 また、DNAにつきましては、今捜査として継続中の事案に関しまして、早急にDNA鑑定ができるものはして、そして今年の予算で、補正予算で冷凍庫を各本部に配置をいたしたところでございますので、このDNAの検体だけでもきちっと保存をして、証拠がなくなるということがないように既に通達を発しているところであります。
#28
○松野信夫君 捜査記録あるいは証拠物の保管、これは今回、公訴時効の延長、廃止になった場合、大変大事な問題になるというふうに思います。と同時に、例えば検体を使ってDNA鑑定をする、あるいは血液鑑定する、いろいろと科学的な捜査を行う、それはそれで大変結構なことですけれども、科学というものはもう一度検証できるというところにポイントがあるわけで、検証ができないものは科学でないんですね。だから、例えば犯人の何か体液が残されている、それを使ってDNA鑑定したりいろんな鑑定をする、だけれどもその検体は全部使ってしまいましたのでもう何も残っておりません、だけれどもこの鑑定、例えば科捜研辺りでやったのはちゃんとやりました、しかしそんなことを言われてもこれ検証ができないと、こういうものは通常科学とは言わないんですね。
 だから、きちんと記録なり証拠物を残していただくというのは大事なことです。しかし、科学というのにちゃんと堪えられるように、例えば体液なり血液なりそういう残されたものの鑑定が、これが正しかったかどうか検証できるだけの分量をちゃんとやっぱり保存して残しておくと、これを是非実行していただきたいと思うんです。
 残念ながらもう死刑執行されてしまいました事件ではもうそういう検体が残ってないというような、これは飯塚事件ですけれども、そういう事件もありますので、必ず、保管も大事ですが、検体もちゃんと検証できるように残しておく。この辺についての大臣のお考えを。
#29
○国務大臣(中井洽君) 御指摘、確かに承りました。十分な量がある検体とわずかしかない物件とあろうかとは思いますが、できる限りお話があったことを実証できると、そういう体制で保管ができるよう公安委員会として各都道府県県警に通達をしていきたいと思います。
#30
○松野信夫君 それから、これはこれからの検討課題でありますが、例えば殺人事件で公訴時効が廃止されると。先ほどのお話ですと、ずっとその捜査本部は設置するということのようでありますが、しかし、いろいろデータ見ますと、毎年毎年五十件ぐらい殺人事件でも時効にこれまで掛かっていたというようなことでありますので、そうすると、そういうのがどんどんどんどんと積み重なると、時効が廃止されたからといって、それじゃ事件発生して百年もそれ以上も捜査本部を置いて、あるいはその記録をきちんと保管していくのか。
 これはもう今でも何か民間の倉庫を借りて記録の保管とかをしているというふうに私も聞いておりますので、ますますそういう可能性があるとなれば、時効は廃止された、しかし、例えば事件発生から七、八十年か百年か、ちょっとそこはまだ直ちには断ずることできませんが、どこかで一定のけじめを取って、それは警察の人員も当然一定の限界はありますので、どこかで私はやっぱりけじめというものを付ける必要があるのではないかと思いますが、大臣はどのようにお考えですか。
#31
○国務大臣(中井洽君) 時効、この廃止、あるいは延期、延長ということは捜査当局にとって決して生易しいことではありません。しかし、先ほど申し上げましたように、国民の、犯人を徹底的に追及して起訴しろ、逮捕して起訴に持っていけ、こういう強いお声を十分わきまえて全力を挙げて頑張っていく、これしか今申し上げることはありません。
 お話の民間倉庫を借りて証拠物件を保管する等は、警察そのもので保管できないほど大きな物体とか、こういうことに関しては許されていることであります。したがって、船舶であるとか、あるいはもう入り切れない車両であるとか、そういう部分については一部民間との契約ということはやっておりますけれども、現在、証拠の保管は検察庁そして警察、ここにおいて保管をいたしているところでございます。
 なお、これからのことについては、先ほど申し上げましたように、いろんな方法を考えていかないと十分保管体制が取れるかどうかということについてきちっとお約束することができない、こう考えております。これから予算を含めていろんな御相談に乗っていただきながら対応をしていきたいと考えております。
#32
○松野信夫君 それでは最後に御質問させていただきたいと思いますが、今回、公訴時効が延長されたり廃止されたりということになります。
 私は、もう何度も申し上げるように、刑事司法というものは、一番大事なのはやっぱり冤罪を発生させないと、ここがやっぱり一番の大事なところであります。
 ところが、公訴時効が延長、廃止されれば、どうしても捜査が長期化したりする観点で、場合によっては供述に頼る、あるいは関係者の供述しかもう証拠が余り残っていないというような事件も当然あり得るわけで、そうだからこそ、冤罪を防止し適切に犯人の処罰というものをしていくためには、やはり何といっても可視化が必要だということを重ね重ね申し上げたいと思います。
 今回、法改正で公訴時効の廃止、延長ということになったとしてもますますこの可視化の必要性は私は高まると思いますので、可視化に向けた両大臣の御決意というかお考えを是非開陳していただければというふうに思いますので、法務大臣の方からよろしくお願いします。
#33
○国務大臣(千葉景子君) 今、今回の公訴時効の延長あるいは一部の廃止ということに関して、より一層捜査の可視化ということが大変重要なことではないかという御指摘でございました。
 当然のことでございますけれども、この公訴時効が延長あるいは廃止をされるということによって、確かに証拠の散逸ということが全く考えられないわけではありません。よりそういうことが多く懸念をされる。そういうときに供述に頼るということにもなることもあろうかというふうに思います、供述調書ですね。
 ただ、先ほどからお話がありますように、じゃそういう証拠が非常に乏しいということになったときに、その供述調書だけに頼るようなそういう捜査やあるいは起訴などがされてはこれまた困るわけで、やはり十分なまずは証拠の収集、客観的な証拠、供述に頼らない、そういうものをやはり早期に収集をする、そしてその裏付けをきちっとしていくということがまず大事だろうというふうには思います。
 ただ、御指摘のように、それにプラスして捜査の可視化ということが大事なことは、これは、この公訴時効の延長それから廃止ということと直接かかわらずとも、捜査一般として私は大事なことであろうというふうに思っております。そういう意味で、今勉強会そして実施に向けた様々な問題点の整理などを精力的に行いながら、そしてでき得る限り早期にそれをまとめて皆さんに御提起をし御議論をいただきたい、こう決意をして取組を続けているところでございます。
#34
○国務大臣(中井洽君) 可視化の必要性につきましては、私自身が十分認識をして、この六か月、発言し行動をしてきたつもりでございます。
 しかし、公安委員会五人のメンバー含めまして、全国の公安委員会の公安委員の先生方あるいは都道府県警察含めて、正直言いまして賛成者はおりません。アンケートも取りました。御意見も聞きました。これらの方々に十分御納得をいただいて実行するというのは並大抵のことではないと認識をいたしております。
 民主党のマニフェストには、可視化とともに治安の維持向上ということも書かれているわけでございます。先生御指摘のような、自供だけ、自白だけ、これをもって逮捕していく、こういう事件をなくしていく、このことが一番必要なことであろうかと。したがいまして、可視化に伴って捜査の高度化、科学化をどうするか、こういったことを含めた勉強会を私の下で、また警察庁の下にも専門家だけでの勉強会、これらを開催をいたしまして、既にもう三回、四回と勉強の定例会を行っているところでございます。
 今後、法務大臣共々十分協議をし、連携を取り合って、できる限り早くそういう方向へ皆さんに御報告ができるように私なりに努力をしていきたいと考えております。
#35
○松野信夫君 せっかく政権交代が実現したわけですので、この刑事司法の場面でも、なるほどやっぱり政権が替わった、この一番の象徴は私はやっぱり可視化法案を成立させることだというふうに強く確信をしておりますので、是非その方向で取組をお願いをしたいと思います。
 民主党は脱官僚依存ということを言っているわけでありまして、刑事司法においても脱供述調書依存というのを是非進めていただいて、今、千葉大臣が言われたように、客観証拠をしっかりと集めるということで進めていただくよう強くお願いして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
#36
○松岡徹君 民主党の松岡でございます。
 今同僚の松野議員の方からるるありまして、私も同じ思いでございまして、そのことは今日は深くはできませんが、その中で幾つか私なりに是非とも大臣の考え方を聞かせていただきたいと。すなわち、今回の公訴時効を撤廃するという法案についての趣旨にかかわるものでありますし、それによって、克服していこう、あるいは整備していこうという今後の課題にかかわることだというふうに思っておりますので、幾つか御質問をしたいと思います。
 毎年といいますか、死刑に当たる事件について時効を迎えています。なぜこのような時効を毎年迎えることになっているのか。それは先ほど松野議員からの指摘もありました。初動捜査の問題とか様々な捜査の側の力量不足もあるかもしれません。それ以外もあるかもしれません。
 そういった現状を踏まえた上で、千葉大臣がこの法律を、改正案を提案するに当たって、被害者の遺族の方々を中心として世論とか声が高まってきているとおっしゃっておりますので、この被害者とは一体だれなのか、遺族とはだれのことを言っているのかという、まずその認識だと思います。そして、彼らが一体何を求めているのかということであります。世論が求めているものは何なのか、公訴時効を撤廃すれば事足りるという話なのかどうかという視点です。
 そういうことからすると、先ほどから質問のところでもありました、被害者、遺族の人たちの思い、あるいは世論の高まり、それを、社会正義の実現、あるいは逃げ得を許さないということをおっしゃっていました。
 改めて、その被害者あるいは遺族とはだれのことを指すのか、そして被害者、遺族が一体逃げ得を許さないでほしいということだけを言っているのか、被害者、遺族の人たちの思いといいますか、そのことをどういうふうに理解をされているのか、大臣の見解といいますか考え方をお聞かせいただきたいと思います。
#37
○国務大臣(千葉景子君) 今回の公訴時効の延長あるいは一部についての廃止、この大きな改正の背景には、今お話がありましたように、被害者やあるいは家族等々、あるいはそれを超える国民の意識、それの変化ということが大変大きく私もこの背景に置かれているというふうに感じております。
 被害者、遺族というのは何かというお話でございますけれども、これはまさに犯罪の、命を奪われたその御家族であるとかあるいは御遺族であるとか、こういうことになろうかというふうに思いますけれども、今回、そういう皆さんのみならず、やはり国民的にも、重大な犯罪についてはきちっと処罰を最後まですべしと、こういう意識が強まっているということも確かだというふうに思っております。
 ただ、御指摘のように、それじゃ、その被害者や遺族の皆さんがそれだけを求めておられるのか、あるいはそれで事足りると感じておられるかといえば、私も、必ずしもそういうことではないというふうに思っております。
 むしろ、その精神的な本当に苦痛あるいは負担、こういうものをどうやってサポートしたり救済をしていくのか、いろんな問題が私は更に存在をしているだろうというふうに思っております。むしろ、もう改めて何か掘り起こされるよりは、少し静かにまたこれからの生活を営ませてほしいと、こういうお声があることも、これも私もよく分かります。
 そういう意味では、公訴時効を延長すれば、あるいは廃止をすればそれで被害者、遺族の皆さんの気持ちがこれだけで本当に何か救われるということでは私はなくして、様々な被害者の皆さんのための施策、こういうものをより一層強化していくことが必要であろうというふうに思っています。
 この間も、例えば平成十七年十二月に閣議決定された犯罪被害者等基本計画、これを基本にしながら、犯罪被害者の皆さんに対する様々な救済策やあるいはサポート体制、こういうものを講じていることももう御承知のとおりでございます。ちょうどこれが、基本計画が五年間でございますので、今後、この計画の改定に向けた作業も進めていかなければなりません。そういう中で、一層充実した被害者保護の在り方について検討がなされるべきものだというふうに思っております。
 なお、これに基づいて法務省でも、被害者の皆さんの救済あるいは保護、サポート施策、こういうものをこの間講じてきているということも御承知のところであろうというふうに思いますので、今後とも、ただ公訴時効を延長あるいは廃止をするということのみならず、被害者の皆さんの本当に保護、救済により一層力を入れていかなければならないというふうに私は感じております。
#38
○松岡徹君 私も、犯罪被害者とは一体だれなのか、身内、家族を殺された遺族が犯罪被害者の遺族だということになるのか、あるいは殺人未遂で、そのときの事件の傷が原因で体が不自由になって今なお苦しい生活をしているという方もおられます。あるいは、性犯罪なんかは心の殺人だと言われています。こういった人たちの被害者の声といいますか、やっぱり世論は、一つは、逃げ得は許さないというのはこれは当たり前の話だと思うんですよね。その中でも時効制度を取ってきた我が国はどういうふうに対応してきたというのがあります。そのときに、毎年、去年でも六十件を超える死刑に当たる事件の時効を迎えるということがありますし、年間数十件、そういう時効を迎える事件があります。
 なぜこんな事件、時効を迎えてしまうのか、ということは捜査の側の機能が弱っているのではないのか。すなわち、社会正義を貫くということは、犯罪を犯した者の逃げ得を許さないということは、やはりしっかりと捜査をしていく、そして犯人を検挙していくということが大事だと思うんですね。それをしっかりしてほしいというのは当然のことでありますから、そこの課題は何なのか、なぜ今これだけ毎年時効を迎えている事件があるのかということもしっかり見なくてはならないと思うんです。
 あるいは、あわせて、そのときにそれが大きなプレッシャーとなって冤罪を生むことがないような一方の制度を整備していくということも大事な社会正義を貫く課題だと私は思うんですよね。
 もう一つは、当然それを強く望むのは、その社会正義が貫かれたということによって被害者の人たちが持つ心の安らぎといいますか、あるいは安心といいますか、よりどころといいますか、そういったものが生まれると思うんですね。
 しかし、被害者の方々が、あるいは遺族の方々が望んでいるのは果たしてそれだけなのか。私たちの社会は、社会正義を貫くといったときに、不幸にしてそういう事件に遭った、巻き込まれた、それによって生まれる様々な被害を全く顧みない社会でもいいのか、社会正義が貫かれたということになるのかどうか。そういう意味では、今、千葉大臣がおっしゃったように、犯罪被害者の救済基本計画の五年目の見直しのときにしっかりとそのことを反映していってほしいと思うんです。
 ただ、私が冒頭言ったように、被害者とはだれなのか、遺族とはだれなのか、そしてその人たちの思いとは何なのか。社会正義を貫いてほしいということと併せて、犯罪被害者が社会の中で放置されているというか見放されていると。私たちもこの間、被害者の方々の意見も様々聞いてきました。例えば、犯罪被害者の家族がその地域で冷たい目で見られていくとか誤った世間の見方にさらされているということがありますし、あるいは子供が、自分の父親が犯罪に巻き込まれたことによってすぐに経済的な理由で子供が進学を断念するとか、そういうふうなことが起きていっているとか、様々な影響が生まれてきていますね。
 こういったものにどうこたえるかといいますか、手を差し伸べるかというのが、やっぱり社会正義を貫くという意味では大事な一方の視点だと思うんですね。そのことをしっかり持ってほしいという思いなんです。すなわち、犯罪被害者、遺族の方々の声をどう受け止めるのか。社会正義を貫くという、犯罪者の逃げ得は許さないということに力を入れてほしいけれども、あわせて、不幸にしてそんな事件に巻き込まれた遺族の人たちがその事件によって社会的な様々な苦境に立たされるということについてどう回復をできるような社会にしていくのか、これも併せて社会正義を貫く重要な課題の視点だと思うんですね。
 そういうことからすると、是非、例えば松野先生の質問にもありましたけれども、性犯罪の被害者の方々は、例えば強姦致死の場合は今回は対象にならないんですかね。あるいは性犯罪の場合は、強姦致死に至らなくても心の殺人を負って様々な、ひっそりと暮らさざるを得ないということがあります。確かな、それこそDNAという残留物が、犯人と特定できるようなものがあるにもかかわらず、それは時効を迎えてしまうということがいいのかどうかということもあります。
 こういった死刑に当たる事件以外の部分のそういった被害者の声とか事件に対する対応というのをどう考えておられるのか、今後検討するという立場におられるのか、是非ちょっと千葉大臣の考え方を聞かせていただきたいというふうに思います。
#39
○国務大臣(千葉景子君) 今御指摘がありました性犯罪等につきましては、私も大変深刻な問題だというふうに認識をいたしております。この間も多くの方々からこの被害の深刻さ、先ほど松岡委員がおっしゃいましたように、本当に心の殺人なんだというような、本当に心痛い、こういう指摘も私も承知をさせていただいております。
 そういう意味では、被害の重大性というのは私も理解をしているところでございますが、今回の法改正というのが、言わば人の命を奪った殺人等で死刑というような法定刑があるというところを公訴時効を廃止をする、あるいは延長すると、こういう考え方で整理をさせていただいておりますので、この性犯罪ということ、直に今回の改正で対象にすることができなかったというものでございます。
 この性犯罪等については、公訴時効というこういうことばかりでなくて、非常に、先ほどお話があったように、犯罪をきちっと処罰をするということのみならず、そのケアとか、あるいはそれによって負った精神的な大変なる被害、こういうものに対して社会がどうやって本当に受け止めていくかということなどが大変大きな課題であろうというふうに思います。
 そういう意味では、決して、今回はこの公訴時効という面では確かに改正の中には入ってはおりませんけれども、こういう総合的な性犯罪被害、これに対してどう対処をしていくのか、こういうこと全体の総合的な検討の中で、私は是非公訴時効等の問題も改めて議論をしていかなければいけない、そういう課題だというふうに認識をしております。
#40
○松岡徹君 もう時間が参りましたので終わりたいと思いますが、社会正義、今回の公訴時効を撤廃するのは、国民世論や被害者や遺族の人たちの、逃げ得は許さない、あるいは社会正義を貫く制度としてつくりたいというのなら、社会正義を貫く制度、社会的な制度とすれば、公訴時効を撤廃すれば済むのかというふうな視点で私は申し上げたわけであります。
 公訴時効を撤廃する場合、当然その社会正義を貫くべき捜査の側がどんな体制やあるいはどんな部分が克服されるべき課題なのかということをしっかりと示さなかったら、公訴時効の撤廃をしたからといって社会正義が実現されるわけではないわけですから、社会正義を実現するための制度とすればどんな課題があるのかということをやっぱり併せて引き続き検討すべきだというふうに思っています。捜査の側がやっぱり捜査力を高めていくということも大事な課題でありますし、それに併せて、社会正義をというのなら冤罪を生み出さないような制度設計をどうしていくか。それは先ほど松野先生が言ったように、可視化を併せてやっていくという制度も、これは公権力を行使するに当たって公正に公平に権力を行使していることを証明するもの以外の何物でもないわけですから、そういう意味では、そういう部分も併せてこれからの重要な課題として、あるいは当面する緊急の課題として是非とも心に留め置いて、実現に向けて、先ほど聞かせていただいた千葉大臣の決意を是非とも具体化するように私たちも努力することを申し上げて、終わりたいというふうに思います。よろしくお願いします。
#41
○古川俊治君 これから自由民主党の古川俊治から質問させていただきます。
 今回の公訴時効の廃止ないしは延長ということは、やはりDNA鑑定の進歩、そして普及という点が非常に大きな一因であろうと考えております。
 それで、DNA鑑定についてまずお伺いをしたいと思っているんですけれども、足利幼児殺人事件が起こりました。これがDNAの問題性というのを提起した非常に大きな事件になったわけなんですけれども、この事件に関しまして、ようやく菅家さんが晴れて無罪になりましてああいう形になりましたが、考え方として、DNA鑑定自体に間違いがあったのか、あるいは、それは正しかったんだけれどもその評価手続に間違いがあったのか、この二つの考え方があると思うんですが、警察としてどう考えられましたか、中井大臣。
#42
○国務大臣(中井洽君) 当時のDNA鑑定は、あれはあれでその時代で最先端の鑑定であったんだろうと、こう聞いております。ただ、誤差といいますか、率は千分の一・二。千分の一・二ということですから、十万人の人口がいらっしゃれば百二十人同じ型の方がおったということになるんですが、当時、DNAに関する認識、知識、こういったものが足りなくて、千分の一・二というのはすごい確率だみたいな思い込みもあって突っ込んでしまったというような反省がございます。また、裁判におきましてはもう証拠にならないという厳しい御指摘もいただいているところでありまして、私といたしましては、当時DNA鑑定は間違った、こう思わざるを得ないと思っております。
#43
○古川俊治君 この検察庁の報告書のところに、当時のMCT一一八型ですよね、それの検査法ですけれども、科学的原理に妥当性が認められる以上、その鑑定手順、技量等にも特段の問題はなかったものと思われると書いてあるんですよ、最初にね。
 これはなぜなんですか。何で科学的原理に妥当性があれば鑑定手順と技量等にも特段の問題はないんでしょうか。その点、御説明をお願いします。
#44
○国務大臣(中井洽君) 国家公安委員会でありますから、個々の県警本部の事件あるいはその後の検査、こういったことについて口出しするということはできない仕組みになっているのは先生御指摘のとおりであろうかと。
 こういう報告書が上がってきて、私ども、これを詳細にお聞きをしたわけでございますが、私個人は、こういう報告書で当時としては正しかったと言われても、それは結局間違いで冤罪を起こしたじゃないか、ここは素直に認めるべきだ、こういったことを申し上げ、そういうふうに私自身は認識をして今日おるところであります。
#45
○古川俊治君 では、これちょっと千葉大臣に伺いたいんですが、最高検の報告書で、本件で実施されたMCT一一八型検査法は、科学的原理の正確性が認められる上、本件具体的な実施方法も、DNA鑑定の経験を有してその鑑定に関する論文を執筆するなどしていた科警研の技官が、検査機器の作用が適切な状態において云々かんぬんと書いてあって、その鑑定手順、技量には特別の問題はなかったものと思われると書いてあるんですね、この十三ページですけど、最高検の報告書で。
 これはなぜなんですか。その技官が論文を書いていて、試薬がチェックされていたということから、慎重に実施したとか、その鑑定手順、技量には問題がなかったって結論にしているんですね。その点の理由付けについて、なぜなんでしょうか。これ正しい文章になっているんでしょうか、論理の飛躍があったとしか思えないんですけれども。
#46
○国務大臣(千葉景子君) この最高検の検証結果報告、これは、再審の判決において、捜査段階で実施されたDNA型鑑定のその科学的原理の正確性自体を否定したものではなくて、最終的にDNA型の異同識別に利用したとされるデータが一部しか証拠として提出されていないことなどを理由に証拠能力を否定していると。この再審判決の基本的な考え方といいますか判断、これに基づいて最高検察庁として検証をさせていただいたということと承知をいたしております。
 ただ、少なくとも、そのDNA型鑑定の正確な理解やあるいはそのときの正確性、そういうものを、知識を十分に備えないままに鑑定結果を過大に評価をしたことというのがこの冤罪、誤判を生んだ大きな背景にあるということは最高検察庁でも指摘をさせていただいているということでございますので、決して、DNA鑑定そのものが十分なものだったと、それを過大評価をし過ぎたという認識に立っているものだというふうに私はこの検証については受け止めているところでございます。
#47
○古川俊治君 問題なのは、その科学的捜査、つまりその検査方法が常に正しいと信じることの問題性を私は申し上げているんですね。技量に特別な問題はない、結果として出てくるデータ、その評価する前のデータ自体が適正に作られているものなのかどうかというのは常にブラックボックスなんですね。それを証明するのは、これ先ほど松野委員がおっしゃいましたけれども、もう一度検証ができるかどうか、その一点に懸かっているわけですよ。
 これに、検察官の報告にありますけれども、本件DNA型鑑定の正確性はネガフィルムを画像解析装置に取り込んで解析したことによって担保されている、ネガフィルムや画像解析データの大半が残存していないため、正確性について現時点で検証することはできないと書いてあるんですね。そのとおりなんですよ。
 だから、最初の結論、推論自体が間違っていますね、これ、科学的に言えば。そういう認識を持っていただかないとこれはまずいわけでありまして。先ほど、千人のうち一・二人ですか、そうすると足利市内に百人いるというお話でしたよね。ただ、確率的にいって、(発言する者あり)十万人いたらですね。千人いて一・二人の人がいる、それが偶然複数いたから当たらなかったと考えるよりも、いいですか、これそういうお話ですから、それだけの特定の可能性というのは千人に一・二じゃ足りないということなんですよ、今おっしゃっているのはね。
 もっと今の方法のように何兆何億分の一と指定しなきゃいけないというふうに大臣はお考えのようですけど、それよりも、この事件を普通に見たら、鑑定が間違っていて、千分の一・二に指定した方が間違っていると。だって、確率からいったらそれは千分のあと九百九十九の方が大きいわけですから、そちらに落ちてしまったと考えるのが普通なんですよね。
 私は、この電気泳動像と論文にあったものを見たことがあります、これはかなり法学会では有名になりましたから。ただ、今の基準から考えてしまうからかもしれませんけど、とても科学的に信頼性に堪えるようなデータじゃないです。これ見たことございますか、このネガフィルム。論文に幾つか載っていますよ。それを元々問題にする方がどうかと思うんですよね。
 ですから、私は、その点で警察の、これから新しい方法いろいろ出てくると思いますけど、どんなに科学的進歩というものが進んでいっても、結局検証の可能性が出てこなかったら無理だと。今のショートタンデムリピート法、多型を見る方法ですね、STR法は四兆七千億分の一と書いてありますけど、それであってもその信頼性というのは必ず再検できるかどうか、その点に懸かっておりますので、その御認識を是非持ってください。
 これと同様に、実は、先ほどこれも松野議員のお話にございましたけれども、昨年十一月に横浜市内で起きた窃盗事件に関しまして、DNA型データベースに別人が登録されていたと、で、誤認逮捕されたという事件が報道されたんですね。これについて警察としてどのような再発防止策をお考えなんでしょうか。
#48
○国務大臣(中井洽君) 県警から報告を受け、どうしてそういう誤ったデータが入れられたのかということを詳しく承知をいたしております。
 その原因となりましたDNA検体を採取いたしまして乾かすまでの間で間違えたようでございます。今、綿棒でこの粘膜を取って、それが乾いてからという形になっております。そういう間違いはこれからもあるということを考えて、綿棒での採取をやめて、採取したら直ちにもう密封して送れる、こういう制度に変えようということで全力を挙げて体制変更に取り組んでいるところであります。
 二度とこういう単純な、残念な間違いが起こらないように鋭意監督をしてまいります。
#49
○古川俊治君 これは、そういう体制を取ると、綿棒を使うのではなくて直接密封できるようにするという方法を取ればいいという結論はどういった過程から出てきた結論なんでしょうか。
#50
○国務大臣(中井洽君) 現在の間違いが、県警、警察署において検体を取って、そして乾かしている間に取り違えたと、こういうことでありますから、全国のそういうことがあるかどうかのチェックをして、どうもそこのところで送る前に間違えていると、封筒に入れ間違えていると、こういうことがありますから、私どもはそれを直ちにという形で変えようとしているわけでございます。
#51
○古川俊治君 そうではなくて、それは大臣がお考えになったことじゃないと思うんですよ。何か委員会をつくって話し合ったとか、どういうふうなことからそういう方法を取ろうということが持ち上がってきたかというふうにお聞きしているんです。
#52
○国務大臣(中井洽君) 国家公安委員会というのは、個々の問題についてどうだこうだ、こうだああだと指揮命令したり、こういうふうに変えろと指図したりするような仕組みではないことは先生御承知のとおりであります。今回の事件のこの間違いの残念さ、こういったことを十分警察本部の方で調べて、そして体制をつくり直してこういうことでやりたいということでありますので、公安委員会としては了承をしたところであります。
 ただ、こういう事件があったとはいえ、DNA鑑定というものの大事さ、これは変わらないわけでありまして、今後とも間違いのないような運用というものを鋭意心掛けていかします。
#53
○古川俊治君 こういう実は検体の間違いという、検査対象の人の違いというやつですね、実はこれは警察だけじゃなくて医療現場で物すごくたくさん起きていたんですね、前から。
 そのときに我々がやったことは、これは行政、民間一体となってやったんですけれども、人が間違えるということを前提にシステムを組み直すというやつなんですよ。ですから、密封したところで、これは医療機関で取るものなんて常に密封されていますから、送るんですけど、それでも間違いはいっぱい発生するんですね。それは、そこからのまた手違いで起こってくるんですよ。ですから、人の業務がある限り必ずミスが起こりますから、それを前提としてどうやってそれをチェックしていく、ミスにそれを結び付けない、そういう体制を取るかというのが必要でありまして、そこからいくと、これ他の産業界でずっと進んでいるところがありますから、こういう安全体制について、警察も是非それを参考にしてシステムをつくり上げられるといいと思います。
 これは既にもう忙しくなって、今二万件ぐらいあるんですかね、年間に処理数が。そうすると、必ずそういう間違いはある程度起こってきますから、それを前提に考えて、これ一例でこういうふうにすればないはずだというんじゃなくて、やはりチェック体制というものをダブルに取る、トリプルに取るという方法をお考えいただいた方が私はいいと思うんですけど、大臣、ちょっとお考えをひとつ聞かせていただきたい。
#54
○国務大臣(中井洽君) 御意見、確かに承りまして、公安委員会の中で検討して、警察へ十分伝えてまいります。
#55
○古川俊治君 では、大臣、結構です。ありがとうございました。
 それでは、次に、今医療のお話を申し上げましたけれども、今回の法案のことで、実は私は医療過誤について大変懸念をしていることがございます。
 業務上過失致死の公訴時効がすべて五年から十年に延長されるというのが今回の法案でございますけれども、私は、医療事故における刑事司法の在り方というものについて長らく実務と研究やってきたんですが、福島県の大野病院事件という事件がございました。あれは医療従事者が、産科医が、一人で頑張っていた福島県のとある病院の先生が、もう公的な処分も済んでもう一回復帰してさあ頑張ろうというときに突然逮捕されたという事件なんですね。それで、警察がそこで表彰されたなんということがございまして、大変な医療界では問題になった事件なんですね。結局無罪になりましたけれども、そういった医療への過度の刑事司法の介入というものが勤務医を萎縮させて、また負担を重くさせて、地域医療の崩壊の主な、本当に主要な一因になったということはかなり言われているわけであります。
 警察がよく捜査しても、その結果が医療に過誤がないと分かれば結局嫌疑が晴れるし、起訴されないんだからいいじゃないかという意見が結構あるんですけれども、それは全く医療の実態を分かっていない人たちの意見で、被疑対象になること自体が非常に負担なんですよ。それでもう医師、患者関係が破壊されるし、一人一人呼び出されるんですね、関係者が。それで取調べ受けるんですよ。そのときに非常に不信感を持つんです、お互いに、あいつ何か言ったんじゃないかなとかですね。それがチーム医療を破壊して、これが延々と長年続いていくのが医療過誤の取調べの実態なんですね。私はそういったことを長年たくさん経験してきました。
 実は、この三月の二十九日に、世田谷区の長谷川病院というところで子宮外妊娠の事件が業務上過失致死の疑いで書類送検されたという報道を私、目にしたんですね。この事件の発生日は二〇〇五年四月十四日なんです。発生からそうすると、起訴日、この三月二十九日ですから、既に四年十一か月半を経過しているんですね。そうすると、この事件というのは、要するに公訴時効になっちゃうからしようがなくて警察の捜査やめて書類送検したというような事件なわけですよね。実際のところ、私、今までも、四年十か月以上、あと二か月足らずになって結局不起訴になったという事件を過去にも弁護士としても数件経験しております。
 法務省に事例があっただけでも、私がちょっと聞いたところ、もうごく一部ですけれども、平成十三年十二月の二日の事件は起訴まで四年五か月掛かっているんです。それから平成十三年八月十九日の事件は四年十一か月、それから平成十五年六月六日の事件は四年十か月掛かっていますね。二十二例中三例がもうこういう状況です。そのほかに不起訴になった事件もっとたくさんありますから。
 そうすると、実際、業務上過失致死の時効が五年であることが捜査をようやく打ち切ると、医療過誤のですね、という限度になっているわけですよ。これ十年に延ばされて、延々と医療現場に警察が立ち入ってくるという上限が十年続いたら、本当にこれ地域医療の重く負担になってつぶれちゃいますよ。
 この点について、大臣、どうお考えになったでしょうか、また、どう対策をお考えになるつもりか、その点についてお願いします。
#56
○国務大臣(千葉景子君) 今、古川委員、もう御専門でございますので、御指摘をいただきました。医療過誤事件、医療関係の事件というのは、非常に医師がこれによって訴追される可能性などがあると心理的に大変萎縮効果を与える、あるいはさらに捜査の手が入れば萎縮効果を与えると、こういう御指摘が、もう私もそれはそのとおりではないだろうかというふうに思います。
 ただ、今回の問題については、ちょっと医療関係事件だけなかなか除外するという形にはどうしてもならないというふうに思います。それは、業務上過失致死罪のうち医療過誤事件だけ公訴時効について特別の取扱いをするなかなかその理由というのが合理的に説明できるだろうかと、医療過誤のみを切り取って除外するということが大変難しいということもございます。
 ただ、御指摘のところは、本当にこれからの医療の発展とか、あるいはチーム医療の崩壊などをもたらすようなことがあってはならないということは私も理解をさせていただけるところですので、今何をできるかということについては確たるまだ検討をさせていただいている状況ではありませんけれども、先生のその御指摘は踏まえて、また今後十分に議論をさせていただきたいというふうに思います。
#57
○古川俊治君 多分これ大臣は御存じじゃないと思いますけれども、厚生労働の方で、医療過誤の報告の在り方、医師法二十一条という一つの条文がありまして、医療に関する異状死を届けなきゃいけないと、これはこの医療の業務上過失致死と並んで大きな問題になっているんですが、その点に関して既に厚労省は新しい法案の案を出していて、民主党の方はもっと医療に有利な案を提案しているわけですね。これは、刑事司法を明らかに特別扱い、医療についてはしている法案なんですよ。それは、特別な理由がある、まさに今大臣は表立って合理的な理由が説明できないと言っていますけれども、もうそういう事情にあるということは一般的な認識になっているわけですね。ですから、医療について特別な立法をしようというふうな話合いが今、国会の中でも進んでいるわけです。これはもう与野党共通ですから、意識は。
 そうすると、この点についても、ちょっと私、法制審議会の方の審議を見ましたけれども、私がさんざん騒いでましたから、事務局の方からちょっとそういう意見があるって提言してもらったんですけど、一言、医療事故について外すのという理由付けは表立ってできない、そういう意見だけで一蹴されているんですよ。業務上過失致死については、そのほかにも類型ありますよ。私も、監督責任なんていう、ちょっと裁量の入り込んだものについて、本当に細かい事例、多種多様ですから、あれについて時効を一律に延ばすというのはどういうことかと思ったんですけれども、いろいろ注意義務というのは専門家になればなるほど変わってきますから、日進月歩の科学の進歩によって。
 あのパロマの一事件があったというんですね、理由付けが。あれが結局、ようやく一つだけ残っていて、ああいうことじゃ困るから全部延ばすと。パロマの一つの事件のために医療過誤が全部十年も掛かられる、これは余りにもバランスが失した議論ではないか、そういう気がするんですが、この議論についてどう思いますか。
#58
○国務大臣(千葉景子君) 先ほど、古川委員の御指摘の中で、厚労省といいますか、そちらで医療事故についての様々な取組がされていることは私も承知をしております。
 それから、違った意味では、今度は一般的に死因を究明すると、こういう作業も、死因究明のシステム、これを充実するという、これも一方でなされております。その中でも、やっぱり医療に関しては一般的な死因究明とは違うだろうと、こういうこともあって、厚労の方で今議論をしていただいているということがありますので、私は、今回の公訴時効というところについては直ちに今回の改正から特別な取扱いをするというところに至りませんでしたけれども、厚労の議論、そして総合的に医療に関する考え方、こういうことを踏まえて、そういう中で改めて議論をさせていただく必要があるのではないかというふうに思います。
#59
○古川俊治君 大臣、これは御存じないかもしれませんけど、診療録あるいは診療に関する諸記録というのがあるんですよ、医療においてはですね。例えばカルテとか、それが診療録ですけど、あとレントゲン写真とか、そういうのが診療に関する諸記録です。
 その保存期間って何年か御存じですか。
#60
○国務大臣(千葉景子君) 済みません、承知しておりません。
#61
○古川俊治君 これは、診療録が五年で、ほかのものは二年です。
 だから、公訴時効が十年になっても、どうやって立証するかという問題ができてくるんです、そこにですね。情況証拠だけじゃとても医療の内容なんか分かりませんし、医療について、日進月歩です。これは、民事の中でさえ、十年前の事件というのは余りにも医療のレベルが当時と違っていて、鑑定が難しくてできないという意見が鑑定書なんかはすごく多いんですね。ましてや、証拠は失われていくんですよ。
 これ、診療録もない、あるいは画像もないのに、何で十年に延ばす意味があるんでしょうか。その点についてどうお考えでしょうか。
#62
○国務大臣(千葉景子君) 私もまだ、今御指摘をいただいて十分に頭の整理が付いているとは言えませんけれども、確かにそういう証拠が、本当に保存期間がなくなって、その後どうやってじゃ立証の手段、そういうものを求めるんだと、こういうところ、今御指摘をいただいて私も改めて認識をした部分もございますので、また勉強させていただきたいと思います。
#63
○古川俊治君 私は、これ一律に全部扱っていく、取りあえず、余りにも形式的な法制審の議論の中では、業過は全部一緒という形で十年にするんだという御判断ですけれども、これは余りにも粗い議論で、もう業務上過失致死なんというのは、できたときから考えますと、刑法が作られたときから考えると、余りにいろんな類型で現代社会は進歩しているんですよ。ですから、いろんな類型が起こってきて、そこには一律に当てはめると弊害が起こってくるんですね。それに対して、国会はやはり立法の背景事実によって特別に処置をしていくというのが本当、本来の立法府の在り方だと思うんですよ。
 ですから、この医療過誤が一つの例ですけれども、実態に合っていないですね、大体証拠が五年しか保存されないわけですから。そういうものについて、一律だから全部やるんだという話は余りにも粗い議論なので、今後十二分にもう一度検討していただきたいというふうに申し上げておきます。
 例えば、殺人についてもそうなんですけれども、これから時効を廃止するということになりますと、十代で殺人を起こした人が九十歳になって、おまえ、十代のときに起こしていたんだよと、七十年前のことを言われるわけですよ。もうそれはDNAが一致したか何かと言われたときに、覚えていないですね、その細かいことなんて。どうやって立証するんですかね、それ。その点について、ちょっとドイツなんかで本当にそういう事例で問題になった例がありますから、大臣、どうお考えですか。
 これだけ長期になって、やっぱり立証可能性という点から、一律に延ばせばいいという点を、そういう主張でございますけれども、法務省としては、やはり立証して、そこに処罰を考えるという前提がなきゃいけないわけですから、その証拠の保持、これも時効の一つの考え方でもございますが、その証拠の妥当性、保存の妥当性あるいは維持の妥当性、こういうことから考えてどうお考えでしょうか。
#64
○国務大臣(千葉景子君) 公訴時効を廃止をした、しかし、やはり公訴提起するためには、当然のことながら裏付ける証拠、こういうものがきちっと備えられてなければこれはできないことでございます。そういう意味では、長くなればなるほど証拠の散逸というのがやはりどうしても強くなるというのは、私は当然のことだろうというふうに思います。
 そういう意味で、例えば公訴時効廃止になっても、もう証拠が全く存在しない、あるいはほとんど立証することができないような、そういう状況にあるというときには、例えばそこで捜査を打ち切って不起訴処分をするとか、そういうことも私は当然あるものだというふうに思っております。
 そういう意味では、やはりあくまでも証拠をきちっと備えた上で捜査あるいは公訴がされるべきだというふうに思いますので、そういう意味では、やはり制度としては公訴時効を、やはり逃げ得は許さない、そして正義をきちっと貫くということは基本ですけれども、やはり立証できないようなことについてまで私はいつまでも、何というんでしょうね、そのまま放置をしておくということは私は避けるべきだというふうに思います。
#65
○古川俊治君 これは一律にして作った後、是非、例えば医療過誤なんかについては特別の立法を作ったっていいわけですから、事情が悪ければ、そういう形で処理していただきたいし、こうした時効を廃止することによる合理的な弊害というのもまた出てきますから、その点についても今後十二分な手当て、法的、法令的な手当てをお考えいただきたいというように思いますので、是非これからも検討を進めてください。
 以上です。
#66
○委員長(松あきら君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時九分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#67
○委員長(松あきら君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 本日、松野信夫君が委員を辞任され、その補欠として平田健二君が選任されました。
    ─────────────
#68
○委員長(松あきら君) 休憩前に引き続き、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#69
○森まさこ君 自由民主党の森まさこでございます。
 公訴時効の改正について、我が自民党の作った案ほとんどそのとおりということで、閣法で出していただいて本当にありがとうございます。
 民主党さんは選挙の前、政策集に、検察官の請求に係らしめるという違った案だったわけでございますが、今回自民党政権時代に検討された内容をそのまま閣法として作っていただいて、本当に、犯罪被害者の方々の意見も聞いてまいりましたのでよかったなと思っているところでございます。今朝方、自民党内でも党内手続が終了いたしまして、元々自民党内で作ってきた案でございますので賛成ということで決定をいたしております。
 詳しく申し上げますと、昨年一月、森英介前法務大臣の下に凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方に関する省内勉強会を設置するとともに、早川忠孝法務大臣政務官を座長とするワーキンググループを設置し、公訴時効の在り方等について検討を進め、昨年七月十五日に「凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方について 制度見直しの方向性」と題する取りまとめを行っております。また、時を同じくして、自民党の中では六月から七月にかけて司法制度調査会の下に公訴時効のあり方に関する勉強会を開催し、私が事務局長を務めさせていただきまして法務省内勉強会と並行してこの問題を検討してまいりました。
 公訴時効の見直しについては、既に一昨年五月ごろから被害者の団体の方々が、我が党司法制度調査会犯罪被害者保護・救済特別委員会、こちらも私が事務局長を務めておりましたが、こちらの会議に意見書等々を提出され、また一昨年の十二月には全国犯罪被害者の会(あすの会)から、森英介前法務大臣に時効廃止のあすの会大会決議が提出されておりました。ところが、政権交代されて、九月には法制審への答申をいったん見送るということが起きてしまいまして、やはり民主党の政策集に書いてあったものと違った内容ということであったからだと思われますが、犯罪被害者団体の方々からは大変心配する声が寄せられていたところであります。
 冒頭も申し上げましたとおり、結果としては我が党が元々練っていたこの案になったということで、私たちは法案そのものには賛成をいたします。
 党内手続では、私が事務局長で、座長を務めておりましたのは元法務大臣の南野知惠子議員でございまして、元々南野前大臣のときに、一つ前のこの公訴時効の延長、二〇〇五年に行われた公訴時効の延長もしていたという経緯もございますので、私どもは、犯罪被害者の救済のためにこの公訴時効を撤廃、延長するという法案には賛成をいたします。いたしますが、午前中の審議でも民主党の先生から出されていたように、我が党内では長い間のいろいろな議論を行った上で、いろいろな論点についての幅広い意見を聞いた上で出した結論でございますが、民主党政権に替わってからは非常に速いスピードで、そしてその議論の経過も、それほど多くの議論を経たと思われない中で、また民主党のそれまで掲げていた政策と違った選択を大臣がなさったわけでございます。やはり司法制度の変更というものは非常に大きな影響を国民に与えるものでございますので、慎重な議論、そして国民、世論を巻き込んだ議論というものが必要とされると考えております。
 先般も私、選択的夫婦別姓についても大臣に御質問したときにも申し上げましたけれども、やはり国民のほとんどが選択的とはいえ夫婦別姓については反対の方が多いという中で、もっと議論を煮詰めてからそういった改正というものには取り組んでほしいと、私は元々夫婦別姓には反対でございますが、賛成でも反対でもいろんな意見を聞いていただきたいということを申し上げました。
 そういう意味で、一つ目の質問は、この短い時間で大臣が、自民党の練り上げた案、そして法制審が答申をした案に決められたその理由というものをお聞かせいただきたいと思います。
#70
○国務大臣(千葉景子君) 森委員にお答えをさせていただきたいと思います。
 この公訴時効見直しにつきましては、今、少し性急なことではないか、少し議論が足りないのではないかというお話でございましたが、もう御指摘をいただきましたように、この問題は前政権の下でもいろいろ御議論をいただいてきたということもございます。それから、それに対して民主党の中でもこの間大変議論を活発にさせていただいて、そしてその中でもかなり多方面の皆さんからの御意見もちょうだいをして、一定のやはり見直し、少し中身は違いますけれども、見直しという方向を出させていただいてきたと。そういう意味では、既にいろいろな議論がそれぞれの場所で展開をされてきていたという、そういう下地というものはあろうかというふうに思っております。
 そして、そういう上に立って、大変多くの皆さんから、犯罪被害者の皆さんのみならず、国民的ないろんな層からも、公訴時効の見直しを、そして一定の延長やあるいは廃止なども含めて見直しをすべしと、こういう御意見も多々いただいてまいりました。
 そういう意味では、決して性急なことではなくして、やはりそういう声にいち早くおこたえをしていく、こういうことも政治の責任ではないだろうかと、こういう考えの下に、しかしそうはいっても、政務三役だけで決定をするということでは皆さんからの御納得いただけるものではございませんので、そこで法制審に議論をお願いをさせていただいて、そしてそこでも多方面からのいろいろな角度からの御議論をいただこうということで、私としては前提を立てずに法制審に諮問をさせていただきました。そして、その後、世論調査やあるいはパブコメに準ずるような様々な意見をいただくような機会をつくらせていただいて、そして、先ほど言いましたように、多くの皆さんの期待にはやはりきちっと議論ができた以上はできるだけ早くおこたえをしていこうということで、今回の法案の取りまとめ、そして国会での御議論をいただくという運びになった次第でございます。
 そういう意味で、議論は十分にいろんな形で尽くされているというふうに思いますし、そしてそれにプラスして、政治の責任として多くの皆さんの御要請にもできるだけ的確におこたえをしていくということと併せまして、今回の御提案ということにさせていただいた次第でございます。
#71
○森まさこ君 政権交代してから約半年ですけれども、その間に議論をしていただいたということですが、結論自体は大賛成でございますので、私はそのことについては、今後また議論を深めなければいけないという意味ではなく、ほかの問題もございますので、やはり司法制度を変えるということについての国民的な議論というものについての認識をお伺いをしたつもりでございます。
 本日も日本人の死刑執行が中国において行われたということですけれども、死刑制度の廃止ということについても民主党さんはマニフェストに掲げられておりますので、そういった大きなこの国の根本を変えていく問題、先ほどの夫婦別姓の問題、そういうことについての、やはりたくさん数を持っておられますので国会に出ればすぐ通ってしまいますけれども、やはりしっかりとした議論を経ていただきたいという意味で申し上げました。
 この公訴時効の廃止、延長については、福島県におきましても時効が進行中の事件がございまして、郡山市大槻町で十年前に十七歳の女の子が河川で絞死体で発見されたという悲惨な事件でございますが、まだ犯人が見付かっておりません。こういったことから、被害者の方々のやはり公訴時効についての撤廃についての期待というものは寄せられておりますので、この法案については賛成をしていきたいというふうに思っているところでございます。
 特に、この委員会の本日の冒頭でも公訴時効の趣旨というものを大臣もお述べになりましたけれども、時効制度の存在理由は、一つには処罰感情の希薄化、それから二つ目には犯人が一定期間処罰されていない事実状態の尊重、三つ目には証拠の散逸等が語られておりますけれども、特に人の命が失われる事件におきましては、やはり時の経過とともに御遺族の処罰感情が薄くなるということはないのであって、かえって深まるといったことも多いというふうに認識しております。そして、犯人を処罰して社会秩序の維持、回復を図るということを優越させるべきだというような世論の意見もございます。その反面、先ほど三つ目に言いましたけれども、証拠の散逸という問題がございます。またさらに、この時効を撤廃をいたしますと捜査をずっと続けていかなければいけないという、その捜査コストの問題があると思います。
 先ほどの民主党さんの主張は、一方でこの捜査コストの問題、又は日弁連等が主張しております防御権の問題、そういったことも配慮しての民主党さんの意見、公訴時効については検察官の請求に係らせるというものが一つあったと思いますが、それを、大臣が就任会見のときにもおっしゃっておられた、この防御権を侵害するという危惧もなくはないなという気もしますとおっしゃられたんですけれども、今回はそのような限定を付けずに公訴時効を撤廃するということを選択されました。
 その上で、それではその捜査コストについてはどのような手当てをなさっていくのかということについての御意見をお伺いしたいと思います。
#72
○国務大臣(千葉景子君) 公訴時効の廃止あるいは延長ということになりますと、捜査体制、あるいは事件記録、そして証拠品等の保管、こういう面で大変捜査実務に影響があるのではないかというふうに思われます。今御指摘のように、言わば捜査資源といいましょうか、それが大変重たくなるということになろうかというふうに思います。
 公訴時効の廃止が仮になされたとしても、永久に捜査を継続しなければならないということではないというふうに考えております。捜査というのは基本的には公訴の提起、そして遂行のために行うものですから、例えば犯罪のときから長期間が経過して犯人が当然死亡していると、こういうことが認められるような、そういう事情が明らかになったときなどは、公訴提起の可能性がなくなったわけですので不起訴処分などによって捜査を終結すると、こういうことも考えられると思います。
 また、捜査体制については、事案によって異なりますので一概には言えないと思われますけれども、事件発生直後と同じ体制でずっとその捜査を継続するというわけでもないだろうというふうに思っております。これは警察の方でも様々な対応を取られるということをお聞きをいたしております。捜査の進展等に応じて体制を少し縮小をする、そして、また新たな証拠等が発見をされたり、あるいは情報が寄せられたという段階で、また元の、あるいは体制をもう一度整え直すと、こういうことも工夫としてあり得るのではないかというふうに思っております。
 また、事件記録や証拠品については、適切に保管することはまず大前提ではございますけれども、例えば捜査の過程で押収したけれども事件とは無関係だというようなものについては証拠品の還付等を行うということも当然これは必要なことであろうというふうに思っております。
 そういう意味では、この捜査資源の適正な配分、これに十分に配慮をして、必要な証拠品等の保管や継続、これもどういう範囲で行っていくかということなども十分に精査をしていただいて、そして適切な捜査が行うことができるよう努めていく必要があるものと考えております。そういう意味では、捜査資源、必ずしも公訴時効を延長あるいは廃止したからといって、過大な、あるいは過度なことになりませんように努めていくということを是非私どももしっかりと心掛けていかなければならないというふうに思っております。
#73
○森まさこ君 是非お願いしたいと思います。
 次に、遡及効についてお伺いをしたいと思うんです。
 この改正した法律を遡及をするということがこの法案の中に書いておりますが、確認のために御質問をいたしますけれども、遡及をするといった場合に、二つの場合が考えられると思います。もう既に時効が完成をしてしまった過去の事件、それと今現在時効が進行中の事件と、この遡及効の範囲はどこまで及ぶのでしょうか。
#74
○国務大臣(千葉景子君) 今分けて御質問をいただきました。
 今回の改正では、現に時効が進行中、こういうものについて遡及適用をするという改正でございます。既に時効が完成をしたというものにつきましては、ある意味では刑罰権がそこで消滅をしているという評価をされますので、それをまた改めて時効を進行させるということは慎むべきであろうと思いますし、それこそ憲法の三十九条ということにも抵触するおそれがあるのではないかというふうに思っております。
 進行中のものについては、三十九条の要請する実行の段階で処罰されなかったもの、あるいはそれをその後に重く処罰をするというようなことは禁じていると、こういう趣旨であろうというふうに思いますので、進行しているもの、これについてまでこの三十九条が禁じているということまで含まれているものではなかろうというふうに理解をいたしているところでございます。
 特に、進行中のものであれば、あとわずかで時効が完成すると、こういう言わば犯人の期待、こういうものを保護するという必要というのは低いのではないかというふうに思われますし、それによって結局は処罰を免れるというようなことになることは慎まなければならない、こういうことであろうというふうに思いますので、憲法の趣旨から考えましても、それから正義、そして逃げ得を許さないと、こういう趣旨と併せて考えてみますときに、進行中のものは遡及を認める、しかしいったん完成したものについては、刑罰権が消滅をした以上、改めてそれをまた掘り起こすと二重処罰のようなことにもなってしまいかねませんが、三十九条の趣旨からいってもそれは認めないと、こういう整理をさせていただきました。
#75
○森まさこ君 これをあえて質問したのは、法律の施行がいつになるのかちょっと分かりませんが、ほんの数日のことで施行の前に時効が完成してしまう事件と施行の後まで時効が続いていた、そこにほんの数日差があっただけで、片方の時効が完成した方はもうその後は捜査できない、その被害者の方はもう時効だということであきらめざるを得ないわけです。ところが、施行をまたいで時効が進行している場合には、今度は時効が撤廃されますから、ずっと捜査が続けられる、ずっと犯人を捜して犯人が見付かった暁には刑事裁判にかけられるという、こういった犯罪被害者の期待が保護されるわけです。
 ですので、先ほどは大臣の方は、犯人の方の期待とかそれから刑罰権の消滅といった被疑者、被告人の立場で御説明なさいましたが、私の問題意識は被害者の方の立場なんです。被害者の方に、そこに差ができてしまうではないかと。やはり、施行がいつかによってたった数日のことで差が設けられるということに一つ問題意識を持っているわけなんでございますが、それについては大臣はどんなふうにお考えになりますか。
#76
○国務大臣(千葉景子君) 制度を変えるということになりますと、施行の前と後で結果として差異が出るということは確かにあろうというふうに思っております。
 被害者の皆さんにとっても、ほんの数日の違いで処罰を免れるような結果になってしまったり、あるいは、それからもきちっと捜査をして処罰を求めることができると、こういう立場になる差が出てしまうということ、これは形式的にはあり得ることだというふうに思っております。
 ただ、是非私もそういうことをできるだけ避ける意味でこの法案審議をいただきまして、今公訴時効にかかり、もうあとわずかでと、あるいは何か月でとか、そういう皆さんもいらっしゃいますので、できるだけそういう皆さんに目の前で公訴時効が来てしまったというようなことがないような施行をすることができたらと、こういう思いでこの議論を国会で今ちょうだいをしているところでございます。
#77
○森まさこ君 それでは、今現在、時効が進行中で完成間近という事件はどの程度あるんでしょうか。
#78
○国務大臣(千葉景子君) 一番近く時効が、これまでの年数ですと、公訴時効が完成をするとなるのが東京の八王子市内のスーパーにおける強盗殺人事件、これは東京都八王子市内のスーパーマーケット事務所において女性三名が射殺された事件でございまして、時効の完成が本年の七月三十日ということになります。
 それから、東京葛飾区における上智大生殺害事件、これは東京都葛飾区内の民家において上智大学四年生が殺害され放火された事件で、これは平成二十三年、来年の九月に時効が完成をするということになります。
 それから、世田谷における一家殺害事件、これはもう御存じのところではございますけれども、東京都世田谷区内の民家において一家四人が殺害されたもの、この時効は、今の時効年数でいきますとちょっと先になりますが、平成二十七年十二月三十一日ということでございます。
 主な時効を迎えようという事件はこういうものがあろうかというふうに思います。
#79
○森まさこ君 今お尋ねしましたのは、同じ質問を私が昨日レクに来てくれた法務省官僚の方に質問をしたわけなんですが、そのときに法務省の方のお答えは、私は驚いたんですが、最も近いのが七月三十日の八王子スーパー事件なんですというふうにおっしゃいました。それで、私は、七月三十日、今四月ですから三か月、四か月ぐらいあるんですけれども、ほかにないんですかというふうに申し上げたんです。
 と申しますのは、私の問題意識は、公訴時効が完成する数というものが、統計によりますと、一番近い統計で平成二十年が六十二件、その前の年が五十八件、その前は五十四件と、このぐらいあるんです。そうしますと、大体一か月に四、五件、一週間に一回は、殺人事件だけでですよ、公訴時効が完成をされていると、そういうことになるんですが、つまりは、法務省さんのお答えは、マスコミで騒がれている大きな事件だけを認識して、そこまでに施行をさせればよいというようなお考えで動いているように受け取ったんです。
 ただ、私は、大きく報道されている事件も、またこの福島県の新聞にしか載っていない事件も、人の命が失われている事件は同じです。ですから、私は、施行がいつごろになるか、なるべく早くしてほしいという思いと、それから、施行の前と後で、ほんの数日で変わってしまう方々がいるんではないかということで申し上げました。大臣は官僚からそれだけの資料しかいただいてなかったのかもしれませんけれども、先ほどは答弁で、なるべくそういう方々を救いたいというふうに御答弁をいただきましたので、是非このことについては前向きに御検討をいただきたいということをお願いを申し上げておきます。
 それから次に、交通事故について質問をいたしますけれども、いろんな被害者団体の方から我が党もヒアリングをいたしました。その中で、全国交通事故遺族の会、交通死被害者の会、交通事故被害者遺族の声を届ける会等々、交通事故による死亡事件の、また死傷事件の被害者の会の方々の御意見も聞いてきたところでございます。
 その中で、特にひき逃げ事件の被害者の方々からは、ひき逃げという悪質な行為によって人が死亡したという結果は同じであるので、是非時効を撤廃してほしいというような御意見が寄せられておりました。これについては大臣はどのようにお考えになったでしょうか。
#80
○国務大臣(千葉景子君) 御指摘のように、ひき逃げ事件等大変悲惨な事件が後を絶たない、そういうことがございます。
 ただ、今回の改正で考えておりますのは、その行為によって因果関係として死亡という、そういう因果関係のある構成要件ですね、それに限定といいましょうか、それを基準にして行わせていただいております。ひき逃げというのは、基本的には救護義務違反というような形になります。その結果死亡するということが構成要件になっているわけではございませんで、むしろ死亡した事例についてひき逃げ、救護義務違反をすると加重要件になっていると、こういう犯罪類型でございます。
 そういう意味では、御趣旨、それからひき逃げ事件で被害を受けた皆さんにとっては大変なことではございますけれども、仮にその救護義務違反のみならず、危険運転致死でありますとか業務上過失等がありますと、自動車事故危険運転などがありますと、それはその犯罪が併せて処罰の対象となりますので、そちらの意味では公訴時効の延長ということが制度的には担保されるということになります。
 そういう意味で、救護義務違反というその犯罪類型自体は人の死ということと因果関係を持っていない犯罪類型でございますので、それはそれだけで公訴時効延長の対象にはしていないという整理でございます。
#81
○森まさこ君 分かりました。この法案によれば、危険運転致死の場合は現行で公訴時効が十年のものが二十年になり、自動車運転過失致死の場合は現行でたった五年だったわけですがこれが十年になるということで、延長はされておりますのでそのこと自体は本当に評価をしておりますが、遺族の方々の更なる声ということでお届けをしておきます。
 そしてまた、今出てきたこういった過失致死の事件、傷害致死の事件は過失犯ということで今回は撤廃をされていないんですが、人が死んだという結果が出ていて、果たしてそれが過失致死なのかそれとも故意を持った殺人なのかということについては、犯人が逃亡をしておりますと更にその判断は難しいわけでございます。ですので、現場の状況等、又は目撃者の話から総合して、捜査機関がこれは傷害致死であると認定して捜査をしたり殺人であると認定して捜査をしている、それだけの違いなんですね。そうすると、捜査機関によってまたそこも差異が出てきます。傷害致死というふうに認定をしますと公訴時効は撤廃をされず、ある期限が過ぎたらもう公訴時効が完成してしまうわけなんです。
 そこのところの問題意識、過失犯と故意犯のこの区別というのは裁判になってからはっきりするわけではなくて、公訴時効の場合は捜査機関によって、また少ない証拠の中で決められてしまう、逃亡している場合は特にですね。それについては大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。
#82
○国務大臣(千葉景子君) 確かに、今御指摘がありますように、一つの行為あるいは結果を評価するときに、故意犯なのかあるいは過失犯なのかということは、個々のやはり証拠関係とかあるいは様々な裏付け等を含めて判断をされるということになりますので、客観的に何かそこに基準を設けるというのはなかなか難しいことであろうというふうに思っております。
 今回、やはり過失犯というのを除外しておりますのは、あくまでも今回は、故意によって人の死をもたらしたという、こういう重大、悪質な犯罪について、少なくとも多くの被害者の皆さんあるいは国民的な意識としても、やっぱり処罰を免れてはならぬのだ、こういう判断あるいは御意見、こういうことをでき得る限りそんたくをさせていただいたということもございます。
 判断で確かに過失犯ということになりますと適用がされないということになるところは御指摘のとおりだというふうに思いますけれども、ただ、過失犯でありますと罰金とか、それから非常に形態も多様な形になりますので、なかなかそこも公訴時効について延長する、あるいは廃止をするというところまでにはやはり全体のコンセンサスというものはなかなかないのではないかというふうに思っております。
#83
○森まさこ君 分かりました。
 難しい問題ではあると思いますが、私の手元にあります二十一年十月二十五日の毎日新聞によりますと、京都社長暴行死ということで、四人組の男に殴られた社長さんが死亡したというわけでございますが、御遺族の方は、死ぬまで殴っておいてどうして殺人ではないのかということで、時効を迎えてしまうことに対して疑問を呈しておられます。それ以外にもいろいろな事件が載っております。
 今回の法案は、やはり目の前の犯罪被害者を救済するという意味で早く法案成立すべきだと思いますけれども、今後検討すべき問題として問題提起をしておきたいと思います。
 次の質問に移らせていただきますけれども、足利事件の菅家さんの事件がありましたけれども、この事件でも公訴時効のことがずっと話題になってまいりました。と申しますのは、菅家さんの事件は既に時効が完成をしております。これ、再審請求中に時効が完成してしまったというふうに聞いております。ですから、この度菅家さんが無罪が決定したわけでございますが、それでも真犯人の捜査というのはもう行うことができないわけでございます。菅家さんは折に触れて、やはり真犯人が許せない、真犯人がのうのうと生活をしているということを許せない、やはり時効を撤廃して真犯人を捕まえてほしいということをおっしゃっておられました。また、被害者の方々も同じ気持ちだと思うんです。
 じゃ、真犯人はどこにいるのかということが非常に気になるわけでございますし、私自身も、幼い女の子を次々に殺したと思われる犯人がまたどこかにいるかと思うと、大変なこれは社会不安でもあるというふうに思うんです。
 先ほどの大臣の御答弁では、もう既に時効が完成をしてしまったものについては、これは遡及をしませんというふうに御決断なさったということですが、その中でも特にこのような冤罪事件の場合、これが冤罪であったということが発覚する場合というのは今後も起こり得ると思います。今も時効が進行中の事件はこの法律によって救われるわけですが、過去の時効が完成したものでも、その後、実は今訴えられている方が、被疑者、被告人が真犯人ではなかったということが判明した場合、この場合に公訴時効、これをまだ時効が進行しているというふうに認めるというようなことはお考えになったことはありますでしょうか。
#84
○国務大臣(千葉景子君) 今御指摘いただいた問題、確かに公訴時効が完成して、そしてそれは、ひいては本当に実際の犯人は結局はどこに行ってしまったんだろう、どこにいるんだろう、あるいは結局は逃げ得になってしまった、こういう結果にはなるのだろうというふうに思います。
 ただ、そうはいいましても、いったん処罰をすべき公訴権が消滅をしたという状況の中でそれを改めて時効を進行させるあるいは公訴時効をまた復活をするということは、先ほど申し上げましたように、憲法の三十九条等の趣旨からいってもいささか抵触をする、こういう私はやはり危惧があるのではないかというふうに思います。
 ただ、やはり何があっても冤罪を起こしてはならない。これは、反対側を考えれば本来処罰すべき者を取り逃がしているということになるわけですので、やはりそういうことがないように、まずは初動なりあるいは早期に何か思い込みをすることなく客観的な証拠、こういうものをできる限り収集して、そして徹底した捜査をしていただくということがやはり一番それを防ぐ大きなポイントであろうというふうに思います。
 そういう意味で、確かに途中で本当に公訴時効が成立をしてしまったという場合、その後ひょっとして犯人が見付かったというようなことについて、大変何かそれで何も対応できないのはいかがかという気持ちは私もよく分かりますし、ありますけれども、やはりこれは一番最初に申し上げましたような公訴時効の意味、趣旨、これが証拠の散逸であるとか、あるいは一定の事実状態を尊重する、あるいは被害感情がある意味では希薄化されて現状の今の平穏な状態、これをむしろ大事にしなきゃいけない、こういうことも併せて、ここはなかなか難しいところですけれども、一つの区切りをしなければいけないのかなというふうに思います。
#85
○森まさこ君 先ほど捜査コストのときに一つ聞き忘れてしまったんですけれども、今後いろいろな工夫をなさっていくというお話ですが、そうはいっても、先ほどのような統計を見ますとこれは結構数があるわけでございます。やはりこの手の財政面の手当て、一つ心配なんですけれども、今後の予算要求等に、この捜査に関して予算要求に組み込んでいくということをお考えでしょうか。
#86
○国務大臣(千葉景子君) 様々な問題があるんですけれども、まずは例えばDNA鑑定、こういうものについてできるだけきちっとした保管をしていくということで、平成二十二年度の予算案で検察庁における証拠品保管用冷凍庫の整備費用として約二千六百九十万円計上をいたしております。
 それから、警察庁におきましても、やはり一定の予算を計上をするとともに、捜査コストをできるだけ後ろへ送らないという意味で、犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に対する研究会などを警察庁の方でも立ち上げて、でき得る限り捜査を早期に行うように、証拠の収集などが的確に行えるようなそういうための措置とかあるいは予算、こういうものをまず一定計上させていただいているというのが現状でございます。
#87
○森まさこ君 分かりました。
 次に、犯罪被害者保護全般についてお伺いしますけれども、公訴時効を撤廃、延長してほしいというのは被害者団体のかねてよりの願いであったわけですけれども、犯罪被害者の保護というのはそれだけにとどまるものではないと思います。
 最近ではいろいろな裁判参加制度等も充実してきましたけれども、被害者の方からお話をお伺いしますと、捜査を待っている間に情報がほとんど公開されないということで、大変御遺族また被害者の方々が、そのことがとても苦しいんだというようなお話がございました。また、犯罪被害者の方々からの要望書にもこれは載っておるんでございますが、捜査段階においてその捜査の状況をなるべく、捜査に支障のない範囲でよろしいので、被害者、御遺族の方には公開をしていくということ、これについては御検討をいただけないでしょうか。大臣、お願いします。
#88
○国務大臣(千葉景子君) この間、犯罪被害者の皆さんに対するやはり施策というのが大変重要なことだということで、犯罪被害者対策基本法、それに基づく様々な施策が講じられてまいりました。そして、今お話があったように、情報、これがなかなか得られないと、こういうやはり大変厳しい御指摘があったところでございまして、それは私も承知をいたしております。
 警察などにおきましては、殺人等の大変重大事犯の被害者あるいはその御遺族に対しまして、その意向に反しない限り、面接、電話等の方法によって捜査状況などを御報告をさせていただいているというふうにお聞きをいたしております。
 また、法務省におきましても、少し違う観点ではありますけれども、例えば被害者の皆さんの参加の制度ですとか、あるいは記録の閲覧や謄写、そして被害者の皆さん等に対する通知の制度、こういうものなどを施行いたしまして、でき得る限り情報等が被害者の皆さんなどにも的確にお伝えできるような、そういうことを努力をさせていただいております。
 今後とも、また犯罪被害者基本計画、これの改定、見直し時期にもなろうかというふうに思いますので、そういう中でも、より一層情報を得て、本当に安心をしていただけるようなそういう体制整備、より一層進めていかなければいけないというふうに思います。
#89
○森まさこ君 ありがとうございます。見直しに向けてまた前向きに検討していただけるという御答弁をいただきまして、ありがとうございます。
 また、もう一つ、犯罪被害者保護の中で、遺族補償、また被害者補償についてお伺いしますが、内閣府、大変お待たせをいたしましたけれども、犯罪被害者の方に対する金銭的な補償という面についても今後更に充実をしていただきたいと思っています。また、今回、殺人の罪については時効が撤廃をされるわけでございますが、それ以外の時効が延長される罪、延長されない現行案どおりの犯罪もございますが、時効が完成をしたときの被害者に対する補償というものについても充実をしていただきたいのですけれども、内閣府の御見解をいただきたいと思います。
#90
○大臣政務官(泉健太君) 御質問ありがとうございます。
 今、我々もちょうど第二次の基本計画ということで、有識者の皆さんに基本計画策定・推進専門委員等会議で検討を進めていただいておりますけれども、あと、委員御指摘になられたとおり、様々な団体からの要望の中で、やはり一括でいわゆる給付をされる以外にもいろんな給付の方法があって、生活を継続的に安定させるような給付にも取り組んでほしいと、そういうような要望もございます。そういったものもいただきながら、我々、なるべく皆さんが生活するにおいて不安を解消できるような取組というものを進めていきたいというふうに思っております。
 ちょうど多くの皆様の取組があってこの給付金については充実はしてきておりますけれども、自賠責と最高額において横並びになったというだけであって、実態ではまだまだ進んでいない部分もございますので、是非これからも御指導いただきながら充実をしていきたいと思います。
#91
○森まさこ君 是非よろしくお願いします。
 私どもも、自民党政権時代に地下鉄サリン事件の被害者の会の方から御意見をちょうだいして、我が党の犯罪被害者問題プロジェクトチームにおいて被害者補償の仕事をした経験がございますが、やはり被害者の方々のケアということも大きく犯罪被害者救済の中に含めていただいて、内閣府と法務省で連携をしていただいて、全体的な犯罪被害者救済ということを一層進めていただきたいと思います。
 お願いを申し上げまして、質問を終わります。
#92
○委員長(松あきら君) 泉内閣府大臣政務官は退席していただいて結構です。
#93
○風間昶君 公明党の風間です。
 午前中の質疑、また今ほどの森さんの質疑をお伺いしまして、相当、済みません、私の質問がラップするものですから、ただ、私は松野先生とか森さんと違ってちょっと専門的でないので、むしろ分かりやすくちょっと説明をお願いしたいなというふうに、御答弁はそうしていただきたいと思います。
 この公訴時効の見直しにつきましては、公明党はもう度々見直しの必要性をずっと指摘してきました。問題は、十六年に改正して時効を延長した、そのときに恐らく廃止の議論は全く出なかったんではないかというふうに思うんですけれども、何で今この時期に再改正、改正が必要と判断したのか。これはなかなか、いろんな理屈付けられると思いますけれども、端的に言ってこれが再改正の理由ですというのがあれば教えていただきたいと思いますけれども。
#94
○国務大臣(千葉景子君) 今御指摘がございましたように、平成十六年にも確かに改正をいたしております。そして、今日午前の御答弁でも申し上げたんですけれども、この平成十六年改正というのは、法定刑の重大犯罪に対して重くすると、こういうことがむしろ中心でございまして、それとバランスをやはり取るということで公訴時効についても一定の延長をしたというのが十六年の改正だったというふうに思います。
 そういう意味では、このときに公訴時効そのものについて本当に十分な議論ができたのかどうかというのは、必ずしもそうじゃなかったようにも思います。むしろ、刑罰を重くする、それに基づいて公訴時効もやはり延長するという、こういう議論ではなかったかというふうに思っております。
 今回は、先ほどから申し上げておりますように、国民の皆さんの意識、それから犯罪の被害者の皆さんのやはり声、こういうものに対してこたえていく必要があると、こういうことが一番の大きな私はやはりポイントであろうというふうに思っております。公訴時効制度そのものを否定をするということではありませんけれども、その中で、少なくとも人の命を失わせしめたと、こういう重大な問題については、その被害を受けた方、あるいは国民的な処罰の感情、こういうものをやはり十分にそんたくをして制度に生かしていかなければいけないと、こういうことで今回の改正はなされる、そういう運びになったと考えていただければというふうに思います。
#95
○風間昶君 まさに今回は国民の意識、また国民の一部を成される被害者の方々の声ということを今大臣御説明ありましたけれども、去年の十一月に内閣府が死刑制度、公訴時効制度、更生保護に関する国民意識の調査をされておりますが、この中に公訴時効制度に対する意識というのが四項目あったうちの一項目に入っているわけでありますけれども。
 去年の十一月二十六から十二月の六日、二週間で行っているんですが、そもそも内閣府が世論調査を行うのは、私の知る限りでは、各省からこういうテーマでお願いしたいということをたしか内閣府にお願いをしてされることになっているんだろうというふうに私は思っているんですが、これは法務省からの依頼はされたんですか。されたとしたらいつされたんですか、これは。
#96
○副大臣(加藤公一君) 私の方から御説明をさせていただきたいと思います。
 御指摘の内閣府における世論調査でありますが、様々な調査主題について準備がされていたところでありますけれども、法務省から内閣府に対しまして、公訴時効制度を新たに調査主題に加えるということで質問票の案を送付いたしましたのは昨年の九月の二十九日というふうに記録が残ってございます。
#97
○風間昶君 九月二十九日、ということは、新しい政権になって大臣及び政務の方は替わられたけれども、役所的には替わっていないわけですから、役所の方が仕掛けた話だととらえていいんですか。
#98
○国務大臣(千葉景子君) これは、確かにこの間法務省で検討を進めてきていたという下地もございます。是非世論調査をという話がございまして、私どもも当然のことながらいろんな皆さんから御意見をいただいておりましたし、各党会派でも御議論が進んでいる、そういう意味では世論調査をするということは大変時宜を得たことではないかということで、そういうことが上がってきたときに、政務三役としてもそれは是非やるべしと、こういう判断をさせていただいたということでございます。
#99
○風間昶君 先ほど、松野委員からの質問でも法制審の話を出されまして、十月に法制審の諮問、それから数回行われて、今年の二月の二十四日でしたっけ、答申が出されて、それで法案になったと。法案は三月でしたかね、提出されたのは。甚だ急ぎ過ぎではないかという御意見が松野委員の方からありました。私もやっぱりそういう気がするんです。
 二月の六日に内閣府の世論調査を発表して三月法案提出というのは、先ほど大臣は民意の表れだと、民意の表れというか国民の声を聞くとおっしゃっていて、二月六日に世論調査を発表されて直ちに三月法案提出ですから、私は非常にそういう意味では拙速だなと、何かある種の目的があってこんなに急いでいるのかなというふうに勘ぐらざるを得ない、そのように思うわけでありますが、指摘だけしておきます。
 もう一方で、省がやっておりました法制審の、依頼しておりました法制審の答申を受けてパブリックコメントをやられていますよね。まずは一回目、去年の五月から六月、一か月掛けて、当面の取りまとめを受けて実施していますね、パブリックコメント。それで二回目に、去年の十二月の二十二日から一月の十七日に最終取りまとめに対してパブリックコメントを実施したと思っていますが、この寄せられた意見の中に、先ほど松岡委員も心の殺人という、うまい言い方しますね、性犯罪は心の殺人というふうに言いましたけれども、性犯罪についてのコメントがあったんでしょうか。あったとすればどのようなものがあったのか、教えていただきたいと思いますけれども。
#100
○副大臣(加藤公一君) 風間先生の御指摘の二回の意見募集手続がございました。
 二十一年の五月から六月にかけまして実施をした手続におきましては、強姦罪は公訴時効の廃止の対象とすべきであるという意見が複数見られた一方で、強姦罪については、被害者が時の経過とともに記憶を風化させようと努力してきたものを公判で証言してもらうなどしてフラッシュバックさせてしまうことも考えられるから、一概に大幅に公訴時効期間を延長すべきだとは思われないという意見も見られたところでございます。
 後段の十二月二十二日から一月十七日まで実施をいたしました意見募集手続での意見でありますが、こちらは、強姦罪、強制わいせつ罪についても公訴時効を廃止すべきである、どんなに過去の犯罪であってもきちんと処罰されることは、被害者などの尊厳の回復につながるとともに、すべての女性、子供にとって安全感などをもたらし、再犯の可能性が高い人物の再犯を抑制する効果もあるなどの意見が見られました。その一方で、強姦罪などについては、強姦なのか和姦なのかは微妙な問題があるなどの特殊な要因がある以上、公訴時効は廃止すべきではないという意見もあったところでございます。
#101
○風間昶君 済みません、数は分かりません、今のお話ですと数は分かりませんが、廃止すべきだというのが前半五月のときは多かったのか、あるいは二回目の十二月のときに廃止すべしという方が多かったのか、教えてください。
#102
○副大臣(加藤公一君) 誠に恐れ入りますが、データとして今委員御指摘のような集計をしていないようでありまして、ちょっとお答えをすることが困難でございます。
#103
○風間昶君 何で集計しないんですか。そういう声があったということだけ、ただ拾い上げただけということですか。
#104
○副大臣(加藤公一君) 意見募集手続でございまして、世論調査のように何かデータを取るということを目的としていないものでありますので、かくかくしかじかこういう意見があったという、その生の御意見というのはちょうだいをして参考にさせていただいておりますが、御指摘のような集計には至っていないというところでございます。
#105
○風間昶君 先ほども森さんあるいは松岡さんからもありましたこの強制わいせつあるいは強姦致死の部分については、極めて強盗殺人や強盗致死に比べて法定刑が軽い、公訴時効廃止の対象にもなっていない。これは女性の立場からするともう到底納得できないという声が多いんですよ。
 強姦致死罪の最高刑は無期懲役だそうで、殺人より軽いのはおかしくないですか、ましてや強盗致死罪は死刑か無期懲役だけなのにと。ナイフ突き付けて財布奪って強盗やれば五年以上、ナイフ突き付けて押し倒して尊厳踏みにじって強姦すると三年以上と。
 強盗の方が重くて強姦の方が軽いということについては、これはもう本当に大きな問題だと思います。ましてや、人権大臣とも、自負しているかどうか分かりませんが、多くの人が認めている千葉大臣でございますから、この問題について、先ほどは総合的な検討の中で議論する課題だというふうにうまく逃げましたけれども、そうではなくて、むしろ、御存じのように、御自身が平成十六年のときの法務委員会で御質問もされておりましたように、そのときに、この刑法、刑事訴訟法の改正論議の後に、附帯決議に、性的自由の侵害に係る罰則の在り方については、被害の重大性にかんがみ、さらに検討することというふうに決議されているのは御承知のとおりだと思います。
 確かに、検討はされて三十年ということに変わりましたけれども、私は、やっぱり多くの被害者の方々の側に立てば、この強姦致死あるいは強制わいせつなどによる致死については、今後これを三十年にとどまらずもっときちっと進めていくような議論を開始すべきだと思いますが、どうですか。
#106
○国務大臣(千葉景子君) 御指摘のこと、私も、これまでも、やはり性犯罪等々について大変日本の社会の中ではその扱いが軽過ぎるのではないかと、こういう認識は当然持たせていただいております。そういう意味では、公訴時効というそういうことの前に、やはり刑罰自体が、強姦罪、強姦致死罪などについては、ある意味では、バランスからいっても、それからその被害の重大性からいってもいささか軽いのではないかなと、こういう認識は私も持っております。
 そういう意味では、刑罰の重さ、そしてそれに伴う公訴時効の問題、あるいはその被害の救済、こういうものを含めてやはりきちっと議論をしなければいけない、私もそういう認識でございますので、どうぞこれからもまた御指導いただければ大変うれしく思っております。
#107
○風間昶君 ですから、今後適用していくような議論を開始すべきだと思いますがいかがですかというふうにお聞きしております。
#108
○国務大臣(千葉景子君) 今申し上げましたような刑罰の問題等も含めまして、性犯罪に対するいろんな多角的な議論を、もう既にこれまでもされておりますけれども、より一層加速をしていく必要があるというふうに思います。
#109
○風間昶君 分かりました。
 法案の提案理由で、大臣は、近時、被害者の遺族の方々を中心として、殺人等の人を死亡させた犯罪についての見直しを求める声が高まっておりというふうにおっしゃっています。そして、同時に、今回のこの法律案が出されるに至る経過の理由になっていると私は思いますが、事案の真相を明らかにし、刑事責任を追及する機会、チャンスをより広く確保する方向で見直す必要があるというふうに書いてあります。
 ということになると、素人的に考えると、そうなれば、チャンスが多くなるということは検挙率は上がるのでないかというふうに私は思うわけです。そういう思いでいいのかどうか、それについてどう思われるのか。また、じゃそうでないとするならば、刑事責任を追及するチャンスをより広く確保するということによってどういう効果が出てくるのかということをどのように御説明をしていただけますでしょうか。
#110
○国務大臣(千葉景子君) これはなかなか一概には言えないというふうに思いますけれども、公訴時効が廃止をされる、あるいは延長されることによってそれだけ捜査することのできる時間が広くなるわけですので、そういう意味では犯人に対する検挙が可能な時間的な余裕というのが広がっていくということは言えるというふうに思います。
 ただし、逆に言えば、公訴時効が延長される、そうすると捜査に対して大変時間が実行のときから延びるわけですので、証拠が薄くなっていくとか散逸していくとか、逆にそういうことも当然考えられるわけで、必ずしも公訴時効の廃止、延長がなされたからといって飛躍的に検挙率が上がるというものではないというふうに思います。ただ、その可能性、それは私は広がっていくものだというふうに思っております。
 今回は、そういう意味では、可能性をやはり広げることによって重大な、人を死亡させるような、そういうことを犯した者については決して処罰を免れるようなことはないんだということを明確にし、そしてその抑止効果等を上げていくと、こういうところが大きなポイントであろうというふうに思います。
#111
○風間昶君 今一概に言えないがと言いながらも、大幅な検挙率向上とも言えないが可能性としては広がると、こういう御答弁でございました。
 一月の末でしたか、メディアの報道で、時効を見直すことで犯罪を許さないという強い姿勢を示すという意義は大きいと、そこでさらに、再犯や類似犯罪を防ぐという意義もあるというふうに書いてありました。これはまさに今大臣がおっしゃった抑止力ということになるのかなというふうに思いますが、時効を見直すことが再犯や類似の犯罪を防ぐ抑止力になるという意見がメディアから出ています。
 犯罪被害者の方の中にも同じような主張をされている方がおりますが、このことについて、今の大臣の御答弁からはアグリーでいいんでしょうか。受け入れられるんでしょうか、このマスコミの報道を含めて。
#112
○国務大臣(千葉景子君) 基本的に、今マスコミの報道等御紹介をいただきましたけれども、この公訴時効延長、廃止をすることによって、やはり一定の期間逃げると処罰はされないんだということに対して、そんなことはないぞという明確なメッセージを出すことによって、抑止効果あるいは新しいまた犯罪を起こす一定の抑止効果というものには私はつながるものだというふうに思います。
#113
○風間昶君 遺族の方々のまさに悲痛な声というのは極めて重要な意見で、そういう意味でこの法律改正というのは適正だというふうに思うんですが、一方で、だけれども法学の基本に照らして、加害者を裁くときに被害者の状況を考慮するのが正しいのかという意見もあるやに聞いています。すなわち、今回の改正が一方の声に引っ張られての改正という、そういう意見を持っている人もいます。
 そのことを考えると、バランス論になるんですけれども、今回の改正というのは法学の基本を踏まえて国民の声とのバランスを取った改正になっているととらえていいのかどうか、教えていただきたいと思います。
#114
○国務大臣(千葉景子君) なかなか法学的にというのは、私もそこまでの造詣がございませんけれども、一つは、被害者の声、国民的な意識ということと、それから、多分冤罪があってはならない、それから被告人の、被疑者の防御権、こういうものをやはりきちっと保障する、それが損なわれるようなことがあってはならないと、こことの私は両面をきちっとバランスを取っていかなければいけないということであろうというふうに思っております。
 そういう意味で、確かに公訴時効が延長され、あるいは廃止をされるということになりますと、過去の相当古いことに記憶が定かではなくなるとか、あるいはそこにかかわっていた参考人あるいは証人あるいは証拠となるものが失われて、なかなかその防御をすることがしにくくなると、こういうことも私は否定はできないというふうに思います。
 そういう意味で、そこをできるだけそんたくをして、そして防御権の制約あるいは防御権を行使することができないような、そういう状況になりませんように、そこは十分に配慮をしていかなければならないというふうに思います。
#115
○風間昶君 済みません、十分に配慮していかなきゃならないということはどういうことなんでしょうか。済みません、具体的な法律がもし成立したときに、今の大臣のお言葉は具体的にどういうふうにとらえたらいいんでしょうか、私分からないので、教えてくれませんか。
#116
○国務大臣(千葉景子君) 制度的にということはなかなかございませんけれども、例えば、参考人の方が亡くなってしまったと。そうすると、供述を記載した書面、それを証拠として使わざるを得なくなる、反対尋問も受けない、その証拠能力がどれだけ高いものか、その辺りのやっぱり判断を裁判所等も十分に評価をしていくということになるのだろうというふうに思います。
 制度としてその防御権を何とか保障するということは、これは刑事手続ですべて自白法則とかあるいは様々なことが保障はされておりますけれども、実際に証拠の問題あるいは参考人の問題等々考えますときには、やはり防御権の行使が非常に弱くなるということについてより一層配慮はしなければいけない、こういうことだろうというふうに思います。
#117
○風間昶君 よく分からないんだな、制度の話になると。分かりませんが、次の問題に行きます、ちょっと納得できていないのであれですけれども。
 今回、時効廃止となる範囲に、まだ時効が成立していないのも遡及適用されるということで、時効の廃止や撤廃を運動されている多くの被害者あるいは遺族の方々にとっては、非常にその方々の思いにこたえることになると思うんですけれども、一方で、先ほど遡及については、松野委員あるいは森委員の質問でありましたように、違憲の可能性について、違憲であるというふうに示唆する弁護士の先生方もおいでになるという御意見で、そのとき大臣は憲法三十九条に抵触しないというふうにおっしゃいました。この憲法の解釈は分かったんですが、国民の側からすると、今回の法改正が国民の声を聞いての改正ということになれば、この遡及を求めていく声が国民の側にあったのかどうかということが非常に私は関心持っているんですが、このことについてはどのようにとらえているんでしょうか。
#118
○国務大臣(千葉景子君) これも国民のいろいろな調査等を考えますと、もう間もなくといいますか、時効にかかってしまう、こういう犯罪に対して、このままもう処罰の機会を逃してしまうというのはどうなのかという御意見があることは事実でございます。そういう意味では、進行している今の時効については、進行中のものについてはやはりそれを延ばしていく、こういうことが国民のある意味では声、意識ではないだろうかというふうに受け止めております。
#119
○風間昶君 ちょっと待ってください。
 少なくとも内閣府のやった世論調査では遡及時効についての問いは発してないわけですよね。今大臣がおっしゃった、進行中のものは遡及適用するという声はあったというふうに。どこからあったんですか、じゃ。
#120
○国務大臣(千葉景子君) 先ほどの世論調査では項目として立ててはおりませんけれども、寄せられる意見、あるいは報道などの中でいろいろなインターネットなどを通じた意見を求めているその結果、あるいは法制審議会などの中でも、そういう意味ではいろいろな分野の方からの御意見をお聞きをしてこの点についてもお取りまとめをされたということでございますので、そういう意味では、国民のいろんな方面からこの遡及適用ということについて積極的な考え方、御意見があるということは確かなのではないかというふうに思います。
#121
○風間昶君 じゃ、済みません、ちょっと細かなことで、ちょっと僕よく分からないんで教えていただきたいんですけれども、現行の刑事訴訟法第二百五十条改正がポイントなんですが、その第一項に「人を死亡させた罪」って書いてあるんですけれども、人を死亡させたというのは、単純に考えると殺人かなと思うんですが、どんな犯罪なんですか。ちょっと、新しいこの法律改正で飛び込んできた言葉だから私分からないんでお聞きしているんですけれども、人を死亡させた罪というのはどんな犯罪なのか、ちょっと国民に分かるように説明していただけませんか。
#122
○副大臣(加藤公一君) 先生御指摘のように、故意あるいは過失を問わず、犯罪行為による死亡の結果が構成要件となっている犯罪ということでありますので、典型的には殺人、強盗殺人などが当然それに当たるということになります。
#123
○風間昶君 そうしますと、いわゆるひき逃げ、道路交通法百十七条に規定されております救護義務違反の罪は、人を死亡させた罪に当たらないことになるんでしょうか。
#124
○副大臣(加藤公一君) 御指摘の救護義務違反、ひき逃げでありますけれども、この救護義務違反の罪そのものは、そのことによって人を死亡させたという因果関係があるということではなくて、救護義務違反によって被害者の方が亡くなられたときには、単に刑の加重の要件としているだけでございますので、それそのものが人を死亡させた罪ということには当たらないということでございます。
#125
○風間昶君 そうすると、この救護義務違反の罪については、ひき逃げということが最初にあるわけですから、その行為の悪質さから考えれば私は公訴時効の見直しすべきではないのかと思うんですけれども、なぜ今回この救護義務違反でひき逃げの犯人に対しては、加害者に対しては見直しの対象に入れなかったのか、理由を教えてください。
#126
○副大臣(加藤公一君) この救護義務違反、いわゆるひき逃げが発生をするということになりますと、自動車運転過失致死罪なりあるいは危険運転致死罪なりがあって、それに加えてひき逃げ、救護義務違反が発生をするというふうに理解をいたしますと、その自動車運転過失致死罪あるいは危険運転致死罪につきましては、今回の法改正によって公訴時効の期間を倍に延長するということにさせていただいております。
 救護義務違反そのものは、先ほど申し上げましたように、それ自体が人を死亡させた罪ということには当たっておりませんので、今回、その時効の見直しの対象外というふうにさせていただいたところでございます。
#127
○風間昶君 もう一つ、過失致死罪についても、人を死亡させた罪であるんだけれどもこれまでと同様の取扱い、見直ししないということになりますけれども、これはどんな理由なんですか。
#128
○副大臣(加藤公一君) 今回の改正案につきましては、人を死亡させた犯罪という特定の罪種の公訴時効について特別の取扱いをするということにいたしておりますけれども、この公訴時効期間を定めるに当たって犯罪の重大性を示す法定刑による基準というのを基本としておりますが、人を死亡させた犯罪について、いわゆる人の命を奪ってしまうということで取り返しが付かない、その特殊性にかんがみて特別の取扱いをしようとするところでありますから、この法定刑を基準とするということには基本的に合理性があるというのがまず大前提でございます。
 そこで申し上げますと、この過失致死罪につきましては罰金刑ということになってございますので、懲役刑や禁錮刑にも当たっておりませんので、当罰性が比較的低い類型であろうというふうに理解できるところでございます。非常に件数も少ないということもございますし、また、実際の過失致死そのものの事案ということになりますと、例えばお母さんがお子さんと一緒に横になっていらっしゃって、寝ている間にたまたまお子さんを亡くしてしまった、つぶしてしまったようなケースであるとか、あるいはたまたま自転車などの事故で被害者の方が亡くなられてしまったようなケースであるとか、こういうものが含まれるということでございますので、以上のような理由で今回は見直しの対象とする必要性が乏しいという判断をさせていただいたところでございます。
#129
○風間昶君 人を死亡させた罪でありながら、時効を廃止するものとそうでないものとこういうふうに分けていることが、いわゆる件数が少ないからだとかたまたまのあれだったとかということは、私は余り説得性に、十分なものにはならないんでないかという私は気がします。
 そもそも、だから時効を廃止する犯罪の範囲をこのように定めているのは何でなのかなということが気になってしようがないんですけれども、犯罪の範囲を今回は死刑というところで切っているからこうなるんであって、本来はそうじゃないんじゃないかというふうに私は思うんですが、どうでしょうか。
#130
○副大臣(加藤公一君) 今回いわゆる公訴時効制度を廃止をするという対象にしておりますのは、先生おっしゃられるとおり、人を死亡させた罪のうち法定刑で死刑が定められている罪種ということにさせていただいております。かなり特別な取扱いでもございますし、先ほども申し上げましたように取り返しの付かない事件であるということ、そしてまた各種世論調査やあるいは被害者の皆さんの御意見等も踏まえて、やはり時効制度の趣旨から見ても、これはバランスという議論、午前中からございましたけれども、やはり長期間にわたってその罪を償える状態をつくるべきではないかと、こういう御意見があったところでありまして、その限定にさせていただいているというところでございます。
#131
○風間昶君 ですから、狭い範囲の中だけで今回この法改正を無理やりやったというふうに思わざるを得ないような部分があって、もっと広範囲の部分で検討しないといずれ壁に突き当たるんでないかというふうに私は危惧するものでありますが、その部分についてはお考えがありましたらどうぞ。
#132
○委員長(松あきら君) 加藤副大臣、指名されてからお願いします。
#133
○副大臣(加藤公一君) はい、失礼しました。
 廃止以外でも、もう先生もよく御理解をいただいているものと思いますけれども、今回公訴時効期間を倍に延長するというものもあるわけでございまして、たまたま単純な過失致死については対象外になっておりますけれども、先ほど来御議論のある強姦致死についても例えば十五年から三十年とか、あるいは危険運転致死についても十年から二十年、自動車運転過失致死についても五年から十年というふうに延長もしてございますので、いや、もっと広く議論しろと言われれば、それはそれで一つの御意見として私どももまた勉強させていただきたいとは思いますが、廃止のみならず公訴時効期間を倍に延長するというものもセットで御提案をさせていただいているというところで御理解をいただきたいと思います。
#134
○風間昶君 分かりました。
 次に、先ほど松野委員も、公訴時効は遡及適用する、刑の時効は適用しないということで非常に明確な立て分けをされていましたけれども、公訴時効そのものは国民の関心高いんですが、刑の時効というのはほとんど知られていないように私は思います。そういう意味で、今回この公訴時効の改正で刑の時効の改正を行うんであれば、私は公訴時効の見直しの対象範囲と刑の時効の見直しの範囲を同じにすべきだというふうに思います。
 そういう意味では、公訴時効の見直しは人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの、ただし死刑は除くと言っておきながら、刑の時効の改正については人を死亡させた犯罪に限っていないというのはなぜか分からないんです。そのことを分かるように教えてくれませんか。
#135
○副大臣(加藤公一君) 公訴時効の期間につきましては、一個の構成要件に該当する犯罪を基準として定められているところであります。刑の時効は、確定をした刑の執行に関する問題でございまして、これは一たん刑が確定した以上はその言い渡された刑の重さ、軽重というものを基準とするのが適当ではないかというふうに思います。
 現実、例えばこんなケースが発生をし得るという例を申し上げたいと思うんですが、例えば併合罪の関係にあるような複数の犯罪事実について一つの刑が言い渡されたということになりますと元々の法定刑では判断しかねるわけであります。つまり、その併合罪関係にある複数の犯罪事実について一個の刑が言い渡されたときに、その中に人を死亡させた犯罪というのが含まれていたといたしましても、その刑のうちその犯罪の分がどれだけかというのは分からないわけでございますので、どうしても罪種によって区別するというのはなかなか難しくなる、やはり確定した刑の重さというものを基準とする以外にないんではないかというふうに考えているところであります。
#136
○風間昶君 分からないからあいまいにするんではなくて、分かるような努力をどのようにするかということがまた私はあなたの役割ではないかと思いますが、どうですか。
#137
○副大臣(加藤公一君) 分かるようにできるかどうかというのはちょっとにわかにはお答えし難いところでありますが、複数の犯罪事実について刑が一つ言い渡されるというのはこれは間々あることでございまして、その複数の犯罪事実それぞれにどれだけの刑を科すかというように判決が今下されるわけではございませんので、先生の御指摘のように整理をしようと思うと相当大掛かりな国中挙げての大議論になるんじゃないかとは思いますが、それはそれとして、可能性があるやなしやも含め、今後私なりに勉強させていただきたいと思います。
#138
○風間昶君 この法案の中身の直接的なあれじゃないんですけれども、四百九十九条の改正で、今回、「検察官又は司法警察員」と司法警察員も手続ができるようになったことは、より現場に即した法改正だなというふうには印象を持っています。
 たまたま今公安委員長がおいでになったんで、これは通告していないんですけど、今度はだから検察官だけじゃなくて司法警察員も御自身の判断で破棄できるようになるわけでありますから、そのルールづくり、基準というのをきちっと作るべきだと思いますけれども、国家公安委員長、突然の質問で恐縮ですが、お答えできるならば答えてください。できないならば厳しい人だなと言わざるを得ないわけで。
#139
○国務大臣(中井洽君) 突然のお尋ねでございまして、十分なお答えになっているかどうか分かりませんけれども、司法警察員にも還付の権限が認められている以上、その執行法の一形態である還付公告も行うことができるというふうに考えております。
#140
○風間昶君 先ほども法務大臣の方からも、事件と無関係な資料は還付する、あるいは森委員の質問にも、捜査コストの観点で適切に処理をしていく工夫が必要だというふうなお話ありました。
 どちらにしても、私の印象では、検察が、あるいは警察、検察よりも警察の方が証拠物品はもう莫大に大きいと思いますし、なおかつ、犯罪者が残していったものよりも被害に遭われた方々に関連するものがかなり多いんではないかというふうに思います。そういう意味では、ある意味では御遺族の方の形見になるようなものもあるんでしょうから、何回も議論されていますように、証拠品の管理、保管、あるいは記録づくりといった部分は、これは一元的に警察の方が膨大な僕は基準を作ってやっていかなきゃならない問題だと思いますが、一方で、法務省の方も、検察の方でその証拠のものについてどういうふうにこれから、公訴時効廃止になると長くなるわけですから、していくかということが議題になろうかと思いますから、そういう意味では、警察庁と法務省がかなりの部分で連携していかないとこれはややこしくなっていくなというふうに思えてなりません。
 そういう意味では、諸外国の例もきちっと取組を調査した上で反映させていくべきだというふうに思いますが、両大臣にお伺いして質問を終わりたいと思いますけれども。
#141
○国務大臣(千葉景子君) 御指摘のように、証拠関係については、警察から検察庁に事件が送致をされるということに伴って証拠品も一緒に送られてくるということですので、その前段、捜査の間の期間から考えますと、あるいは検察庁に送致をされるかどうかというところまでを考えますと、やはり警察がかなりの数の、それから膨大な証拠品を保管をするということになろうかというふうに思っております。
 ただ、公訴時効が延びたりあるいは廃止されることによって、やはり捜査に対してその証拠をいかにきちっと保管をするか、それから、逆に言えば、コストの面からいえば、不要になったものをいかにきちっと還付をしたりするかということ、これはその後の公訴提起やあるいは起訴などにおいても大変重要な問題になるわけですので、是非警察庁とも十分な連携を図って、証拠がきちっと保管をされ、あるいは不要なものがきちっと処理をされ、そして逃げ得を許さない適切な起訴、そして処罰、こういうところに持っていくことができるように是非きちっと努力をしていきたいというふうに思います。
#142
○国務大臣(中井洽君) 二つあったかと思います。一つは、家宅捜査等をしたときにすべて持っていく今のやり方、そして不必要なものも含めて証拠としてとどめ置いておるという在り方、これについては私もこの半年間で何回か注文を付けているところでございまして、証拠になるものだけ持っていけというやり方が果たしてできるかどうかということもあります。これらの点も踏まえて、可視化の勉強会におきましても御議論をいただくべき課題かと、このように考えております。
 それからもう一つは、現実に、検察へ送致した、しかし証拠は警察に預かっておいてくれと言われているものがかなりある。これをなくさないように、毀損しないように保存する義務があるわけでございまして、これをどこで預かるんだと。警察で預かってはいるんですが、もう満杯状況にあります。
 この時効がなくなる、あるいは延長されるというのに伴って、御心配いただくような点も本当に私どもは危惧をいたしております。法務省、検察庁と十分相談をいたしまして、間違いのないように図っていく努力をしてまいります。
#143
○風間昶君 終わります。
#144
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 これまでの議論、とりわけ午前中の松野議員や古川議員の質問を聞いておりまして、重要な論点についてこの委員会で慎重に、そして十分な議論を続けていく必要があるということを私は改めて今日感じております。今日から実質審議に入ったわけですけれども、その点を委員長並びに委員各位に強くお願いをしておきたいと思います。
 まず、公訴時効の存在理由について千葉大臣にお伺いをしたいんですけれども、松野議員からもありましたが、我が国の公訴時効の沿革というのは、江戸時代からというお話もあるぐらいで、明治初期にさかのぼります。日本国憲法はもちろんのこと、大日本帝国憲法もなかった時代からの制度で、その存在理由については様々な議論がなされてきたわけですけれども、私は、今言わばこうした議論を乗り越えることが求められている、立法者の意思として、一体公訴時効の存在理由というのはどこにあるのかということがまず問われているのではないかなと思うんですね。
 この点にかかわって、時が経過しても処罰感情は薄らぐことはないという被害者の皆さんの強い批判は、私はそのとおりだと思っています。特に、被害者の生命が奪われた事件において、例えば子供を突然奪われた遺族にとって、生きていればあの子が何歳になるというふうに思い返して、亡くなった子供さんがいらっしゃらないことが時を重ねるほどに人生に重くのしかかってくると。それは私どももよく理解のできることでありまして、言わばそうした回復不能な被害者のあるいは遺族の被害及び被害感情と、周りの人々あるいは社会にとって時が事件を風化させることがあるということを、これは混同することは間違いだと思うんですね。
 そうしたことを考えますと、少なくとも、一般化して被害者の被害感情の希薄化ということを公訴時効の存在理由として挙げるのはおかしいのではないかと私は思いますけれども、大臣、いかがでしょう。
#145
○国務大臣(千葉景子君) 今御指摘がありましたように、この間、公訴時効の存在する趣旨、これについては、これも度重ねて恐縮でございますけれども、時が経過をすることによってやはり証拠が散逸をする、それから、今御指摘のあるように、被害者を含む社会一般の処罰感情が希薄化する、それから、犯罪後、犯人が処罰されることなく一定の期間が経過した場合には、そのような一つの安定した事実状態、こういうものを尊重すべきだと、こういうことがこれまで公訴時効の存在の意義というふうに言われてきたことは、これは間違いのないところだというふうに思います。
 ただ、確かに、被害者の皆さんの被害感情が希薄化するという理由が本当に今でも通用するものかどうか、あるいは社会の、風化というんでしょうか、事件に対する、そういうこと、風化はさせてはならないと、こういうところもやはりもう少し考えていく必要があるのではないかというふうに思います。
 これまでの、一般的に言われている公訴時効の趣旨というのが決して現段階で全く意味のない、否定されるものではないというふうに思いますけれども、御指摘の、被害感情などはより一層増すことはあっても希薄化することなどはないのではないか、こういう多分お気持ちもあると思いますし、それから、風化をさせないというような観点もあろうというふうに思います。
 そういうことも十分にこれから、いろいろな制度あるいは施策、そういうものの中で念頭に置いていく必要は私もあるのだろうというふうに思います。
#146
○仁比聡平君 公訴時効は、申し上げるまでもありませんけれども、一定期間が過ぎると公訴が提起できなくなるという意味において、国家の刑罰権の行使の一局面であるその公訴の提起についての言わば条件なわけで、このことと被害者あるいは遺族の被害感情というのがどのように結び付くのかというのは、これは難しいいろんな議論があるんだろうと思うんですね。
 午前中、松野議員の質問にお答えになる中で、その被害感情が希薄化する度合いあるいは事実状態の尊重という度合いが他に比べて生命侵害事犯についてはこれは軽くなっていくのではないか、証拠の散逸の比重はこの間の捜査の方法などによって軽くなっていくのではないかなどの御答弁がありまして、この御答弁がどのように今度の改正と結び付いているのかというのが私にはよくまだ分からないんです。被害感情の希薄化というのが、これは、そうではないでしょうという現実の被害者の方々の声があると。そのことについて、その希薄化の程度というのはほかの事案に比べて軽くなっていくというふうにおっしゃっているんですが、なくなっているというお話ではないわけですよね。
 公訴時効を生命侵害事犯については廃止すると、死刑の対象になる事件については。この廃止するというところとこの公訴時効制度の趣旨についての大臣の御答弁はどんなふうにつながっているんですか。
#147
○国務大臣(千葉景子君) 今申し上げましたように、公訴時効の趣旨、大きく三点ほど挙げられておりますけれども、これ自体は、今でもその意義といいましょうか、それは私は認められるものだというふうに思います。
 ただ、やはり人の命というもう回復できないこういう被害については、この被害感情というものが希薄化するということについては、ほかの犯罪類型より非常に重いものがあるだろうと、そんな簡単に希薄化するというようなものではないのではないかと、こう思います。
 そういう意味で、今回の改正におきましては、この取り返しの付かない、それから回復不可能な人の命を奪う、そして、しかも一つの基準とすれば死刑に該当すると、こういうような罪について公訴時効を廃止をして、そして国が処罰をする権利といいましょうか、刑罰権を存続をさせるという選択をさせていただいたということでございます。
#148
○仁比聡平君 まだよく分からないんですけれども、ちょっと別の角度から。つまり、被害感情というのは多様であるという、そうした観点でもう少し認識をお尋ねしたいんですが。
 遺族の悲しみは多様であり、価値観や目標は決して一つではないというお立場から、公訴時効の廃止に反対をされる被害者団体があることは大臣も御存じのとおりだと思います。
 その中で、裁判は被害者の心情によって決められるわけではないと。事件の解決とか事件処理というものが必ずしも被害者にとっての問題解決と一致するとは思えないと。加害者が検挙され、事件が明らかになることが被害から立ち直るという期待感を感じる意味でも重要なことではあるが、捜査が長期に及ぶと被害者遺族が受ける様々な負担は一般市民の想像をはるかに超えるつらさを感じるものだと。一定の期間で区切って、周囲や地域社会が回復を支援する体制を支えていることが被害者の回復の効果をこれは現に上げているということだと思うんです。その中で、自らの決定で捜査が続くことが負担だということが、廃止をされると口に出して言い出しにくくなる。悲しい、苦しい期間を更に延長させることで被害者遺族が心から良かったと喜べるものかどうかを考えてほしいと。
 こうした被害者の感情あるいは多様性について大臣はどのようにお考えになって今回の法案を提出されたのかという点をお尋ねします。
#149
○国務大臣(千葉景子君) 御指摘のとおり、そのような御意見をお持ちの被害者の方がいらっしゃることも私も承知をしております。直接お話も伺う機会はこの間もございました。逆に、公訴時効を何とか撤廃をし、あるいは延長するなどして、刑罰権、これを失わせるようなことはしてほしくないと、こうおっしゃる皆さんも、その内心というものは非常に多様な感情をお持ちなのではないかというふうに思います。
 そんなに一律に、一方の被害者の方は公訴時効は延ばしていつまでも処罰をしてほしい、それから、それだけでは決して被害は回復されないんだと言う方でも、じゃ処罰を免れるということがもう本当に簡単にできるようなことであっていいのかといえば、必ずしもまたそう思っておられるかどうかと。非常に複雑なものをそれぞれの被害者の皆さんがお持ちだというふうに思います。
 だからこそ、今回は、この公訴時効の延長そして廃止ということについては、一つの人の命という回復し難いこういうものについて、やっぱりこれを処罰を免れるというようなことがあってはならないんだということで、人の命を失わせしめた死刑にも該当するというような犯罪について公訴時効を廃止をするということにさせていただきましたが、当然のことながら、これだけで被害を受けた皆さんの救済になるなぞと考えているわけではございません。様々な被害を救済をする社会のサポートの体制や、あるいは今でも寄り添ってその皆さんとその痛みを分かち合いながら、また一人一人人間として生きていくことのできるような、そういう体制をサポートしている、あるいは経済的にもそれを支えていく、こういうような体制も併せながらやはり本当の意味での被害の救済というのは図られていくものだというふうに私は思います。
 ただ、その犯罪に対して、やっぱり人の命を失わせしめたというふうなことについては、逃げ得は駄目だぞと、そして厳しくやっぱり責任を問われるんだということだけは明確にしておくということが今回の公訴時効廃止そして延長の大きな私は基本だというふうに考えております。
#150
○仁比聡平君 今のお話を伺いましても、結局、生命侵害犯の中で死刑に当たる罪については言わば一律に対応するというのがその公訴時効を廃止するという議論になるわけで、そうしましたときに、私が御紹介をしたような多様な被害者のその思いというものはどうなるのかという点は疑問として残り続けることになるんだと思うんですね。
 別の角度から指摘をされているテーマですけれども、今も大臣の答弁の中で逃げ得は許さないという御発言がありました。この逃げ得は許さないという考え方というのは、それが真犯人に向けられる非難である限り、これは国民的正義にかなうものだと思います。ただ、問題は、現実の刑事訴追の対象になるのは真犯人ではなくて被疑者、被告人であるということ。この被疑者、被告人にはもちろん無罪推定が働くのであり、しかも我が国の刑事司法にあっては、そうした刑事訴訟において、無辜の民、罪のない方がその被疑者、被告人として重大な人権侵害を受けてきたという現実があるということだと思うんですね。
 その点でまず、公訴時効の完成間際の起訴による冤罪事件についての認識を国家公安委員長とそして大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども。
 今日午前中、今年明らかになった牛久強盗致死事件の冤罪のお話がございました。それはもう今日お話がありましたからこれ以上は重ねませんけれども、佐賀県の北方事件という連続女性殺人被告事件があります。これは一九八九年に発覚した女性三名に対する殺人被告事件ですが、この起訴は時効完成間際の六時間前、あと六時間で時効が完成するというそういう時間に起訴をされたわけです。この点について、一審の佐賀地方裁判所は無罪、控訴審の福岡高等裁判所は検察官控訴を棄却すると上告ができずに無罪が確定するという、そういう経過になった事件です。
 この起訴の証拠とされたのは、事件発生当初に作成された被告人の上申書なんですね。これ以外には証拠がなかったと言われています。この被告人の上申書、いわゆる自白がここにあるわけですが、この証拠採用を却下するという地方裁判所の決定は、大きく二点紹介しますが、このように述べています。平均十二時間三十五分の長時間の取調べが連日十七日間にわたって行われ、昼食も夕食も取っていない被告人を午前零時過ぎまで取り調べるなど、任意取調べの限界を超え、令状主義を甚だしく逸脱する重大な違法性があると。もう一点は、上申書のほとんどは、取調べ官から被告人に具体的な指示があって書かされたことは合理的に考えられると。そういう任意取調べの名を借りた違法な強制捜査、そして取調べ官の誘導と強制による虚偽の上申書の作成を裁判所が認めて無罪と結果としてなっているわけです。
 この事件は、たとえ結果として無罪あるいは不起訴となったとしても、捜査や訴追の対象とされることがどれだけ被疑者、被告人の人権侵害を重大に引き起こすかということを示していると思うんですね。実際、この北方事件では、起訴の十三年前の上申書によって、四年九か月間も長期間、筆舌に尽くし難い身体的、精神的な苦痛を余儀なくされているわけです。
 こういう公訴時効完成間際の起訴による人権侵害が起こらないように、これどうするのかと。このことを、北方事件の検証も含めて、まず中井国家公安委員長、これどうするのかという点についてはどのようにお考えですか。
#151
○国務大臣(中井洽君) 県警察本部において、この件で文書にして検証が行われたという報告は私のところへはまだ上がっておりません。
 しかし、この事件を含めて、先生の御指摘のような時効成立寸前ということではなしに、幾つかの取調べにおいて、御指摘いただいたような十数時間の連続した取調べ、あるいは夜中にまで及ぶ取調べ、あるいは取調べ中、時刻が来たにもかかわらず食事をさせないというようなやり方等々に対する反省が警察全体で行われておりまして、これらについては厳にやってはならない、そして十分人権を尊重した中で捜査、取調べに当たると、こういうことを既に通達し、また何度かチェックを繰り返しているところでございます。
 そういった意味で、反省も含めて、これからも十分対応をしていきたいと考えています。
#152
○仁比聡平君 そうはおっしゃるが、現にそうした公訴時効間際の事件が起こっているじゃないかというのが、今日午前中、牛久の事件を通じて松野議員も指摘をされたことではないかと私は思うんです。
 初動捜査が重要だと、ここで真相に迫らなければならないと、私もそれはそのとおりだと思います。けれども、志布志事件にせよ、あるいは氷見事件にせよ、この北方事件にせよ、この初動捜査で、客観的な証拠に基づかないたたき割り、自白を強要する、そうした見込み捜査と自白偏重の捜査が、千葉大臣、逆に真犯人を取り逃がしていると。そういった違法で思い込みのそういう捜査を廃して、証拠に基づく捜査を徹底するということが真犯人に接近するという、そういう可能性を私は高めるものだと思うんですね。
 大臣は、この公訴時効を廃止するという提案をされるに当たって、そのことをどのようにお考えになったのか。つまり、この北方事件の当時は、殺人罪等の時効は十五年です。これが二十五年に延長されました。これを更に廃止をするということになれば、これは一層その危険性、冤罪の危険性は増えるのではないか、あるいは永久化するのではないか、こうした指摘に対しては大臣はどのようにお考えなんですか。
#153
○国務大臣(千葉景子君) 今御指摘がございますように、今、公訴時効が決められていても確かにその間際に何とか公訴提起をするというような事例がないわけではございませんし、それから、今の公訴時効の範囲内でも、やはり初動で見込み捜査あるいは客観的な捜査、証拠、そういうものの収集をなくして自白や供述に偏重するようなそういう捜査がなされていれば、これは当然、冤罪に通じたり、あるいはそれが逆に裏から見れば本当の犯人を取り逃がしていると、こういうことにつながるわけですので、そういうことがあってはならないというのは私はもうそのとおりだというふうに思います。
 そして、公訴時効が延長、廃止をされることによってその危険性、そういうものが増すのではないかという御指摘だというふうに思います。
 それは、確かに少し長くなれば、例えば、これも申し上げておりますように、どうしても証拠が、初動で集まらなかったような証拠がその後どんどん見付かるなんということはなかなかないわけですし、あるいはまた供述というものも、その供述をした人が亡くなられたり、あるいは記憶が薄れたりと、こういうことにもなる。そういう意味では、確かに時効が廃止をされるということによって、捜査の幅も広がる代わりに、そのような冤罪やあるいは証拠の散逸、そういうものの可能性もまた高くなるという、そういうこととやっぱり裏腹だというふうに私は正直思います。
 そういう意味では、やはり何といっても、自白に偏重することなく、供述に偏重することなく、客観的な証拠、裏付け、そういうものをきちっと当初から収集をする、そういう捜査を徹底をするということが私は一番やはり大事なことだろうと。これは、時効があろうと、あるいは廃止をされて長くなろうとも、ここは原則、原点は私は共通だというふうに思います。
#154
○仁比聡平君 これまでのようなお話の中で、どうして重大事件については廃止という制度設計になるのかということは、まだやっぱり私納得がいかないんです。
 検察官の請求によって裁判所の判断で公訴時効を中断するという考え方を取らなかった理由について、今日、松野議員から問われて午前中御答弁があったことを踏まえてお尋ねしたいと思うんですけれども、事件が発覚していないケースについて、先ほど副大臣は足立区の事件を取り上げられました。これ時効完成して、遺体は白骨化して発見されたわけですよね。もちろん被疑者の、被疑者といいますか、時効は完成はしていますけれども、の自白はあるでしょうけれども、これ、自白以外に、犯行の態様とかあるいはよく犯情と言われる部分、至る経緯、こうしたものを立証をするそういう証拠というのはこの事件についてはあるんですか。
 私、この事件の事実を、今日も御答弁でこの法案に関して御答弁がありましたから、どんな事実をもって、この事件はつまり時効が完成していなければ起訴し有罪に立証できたんだという確信をお持ちなのか、これ私どもの委員会に是非提出をいただきたいと思うんですが、いかがでしょう、大臣。──じゃ、もう一度説明しましょうか。
#155
○国務大臣(千葉景子君) ちょっともう一度。
#156
○仁比聡平君 つまり、どんな事実関係があるから事件が発覚していないケースについて検察官の請求に係らしめるのは良くないとおっしゃっているのかと。この足立区事件の詳細について、私どもにこれを明らかにしていただけないか、委員会に提出していただけないかということです。
#157
○国務大臣(千葉景子君) 副大臣が答弁をさせていただいたことは、その足立区の事件が必ずしも、じゃその後公訴を提起できた事件かどうかと、そういう具体的なことを申し上げたわけではなくて、例えとして、公訴時効が成立をした後発見されるようなそういう事件があったとすれば、中断論というのはそれに適用できませんねと、こういう例として申し上げたものであって、必ずしもその事件が、当然公訴が提起をされることができたのか、それだけの証拠がそろっていたのかということについては、具体的に決して断定したわけではないというふうに思います。
#158
○仁比聡平君 であれば、この検察官が請求するという制度を、仕組みを取り得ないという理由として答弁の中でお使いになられるべきじゃないですよ、副大臣。だって、現在の、現行の時効期間は、こうした事案については二十五年でしょう、時効期間は。この間、事件が発覚しなかったというケースを想定して御答弁されたわけでしょう。たとえ遺体が発見されて自白があったとしても、それ以外に証拠が見付かりますか。私はよく理解がいかない。
 もう一つ、もう時間が参りましたから問題提起だけして次回に譲りたいと思いますけれども、一定の司法判断を求めるということにすると後の公判に悪影響を与えやしないかという趣旨の御答弁がありましたけれども、それは刑事裁判で身柄拘束あるいは保釈などなど、一つの実体判決に至るまで裁判所の判断が行われるというのは当たり前です。そうした先行する司法判断があってもそれに左右されることはないということが裁判の独立であって、そのことを前提に日本の司法制度というのは組み立てられているのであって、先ほどおっしゃられたことは私は理由にはならないと思うんですね。
 最後に、選ばれなかった事件、検察官の請求、裁量に係らしめるということになるとどうなのかというお話ありましたけれども、元々日本の制度というのは起訴便宜主義で、検察官の裁量といいますか、検察官の判断によって起訴、不起訴を決めるわけですよね。先ほど来御議論のあります医療過誤だとかあるいは交通事故だとか、この業務上過失致死事件の態様というのも、悪質さというのもそれぞれですし、証拠がどうなっているかというのもこれはそれぞれなんですから、それぞれの状況において裁判官の判断を求める、そのことによって公訴時効を中断するという、これはそれなりに合理的な考え方なんじゃないかなと私は思っているということを申し上げまして、時間が来ましたから質問を終わります。
#159
○委員長(松あきら君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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