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2009/07/01 第171回国会 参議院 参議院会議録情報 第171回国会 国際・地球温暖化問題に関する調査会 第9号
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2009/07/01 第171回国会 参議院

参議院会議録情報 第171回国会 国際・地球温暖化問題に関する調査会 第9号

#1
第171回国会 国際・地球温暖化問題に関する調査会 第9号
平成二十一年七月一日(水曜日)
   午後一時三分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月二十五日
    辞任         補欠選任
     大島九州男君     木俣 佳丈君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         石井  一君
    理 事
                島田智哉子君
                主濱  了君
                富岡由紀夫君
                川口 順子君
                小池 正勝君
                加藤 修一君
    委 員
                郡司  彰君
                長浜 博行君
                広中和歌子君
                増子 輝彦君
                峰崎 直樹君
                佐藤 正久君
                島尻安伊子君
                西田 昌司君
                丸山 和也君
                山下 栄一君
                山本 香苗君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        藤崎  昇君
   政府参考人
       外務大臣官房参
       事官       山田  彰君
   参考人
       龍谷大学経済学
       部教授
       同大学大学院経
       済学研究科長
       同大学大学院ア
       ジア・アフリカ
       総合研究プログ
       ラム委員長    大林  稔君
       JETROアジ
       ア経済研究所地
       域研究センター
       長        平野 克己君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○国際問題及び地球温暖化問題に関する調査
 (「日本の国際社会における役割とリーダーシ
 ップの発揮」のうち、アフリカをいかに助ける
 かについて)
    ─────────────
#2
○会長(石井一君) ただいまから国際・地球温暖化問題に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る六月二十五日、大島九州男君が委員を辞任され、その補欠として木俣佳丈君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(石井一君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国際問題及び地球温暖化問題に関する調査のため、本日の調査会に外務大臣官房参事官山田彰君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○会長(石井一君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○会長(石井一君) 国際問題及び地球温暖化問題に関する調査を議題といたします。
 まず、「日本の国際社会における役割とリーダーシップの発揮」のうち、アフリカをいかに助けるかに関して、アフリカ援助の在り方について参考人から御意見をお伺いし、政府から報告を聴取した後、質疑を行います。
 本日は、龍谷大学経済学部教授・同大学大学院経済学研究科長・同大学大学院アジア・アフリカ総合研究プログラム委員長大林稔参考人及びJETROアジア経済研究所地域研究センター長平野克己参考人に御出席をいただいております。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、調査会のために御出席をいただきまして、ありがとうございました。
 どうか、御両人の忌憚のない御意見を賜りまして今後の調査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず、二名の参考人からお一人二十分程度御意見をお述べいただき、外務省から十分程度報告を聴取した後、午後三時ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力をお願い申し上げます。
 なお、発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、参考人から意見を聴取いたします。
 まず、大林参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。大林参考人。
#6
○参考人(大林稔君) 今日は、お呼びいただいてありがとうございます。
 ちょっと座ってやると元気が出ないので、マイクが通るようにしますので、立ってやってもよろしいでしょうか。
#7
○会長(石井一君) 結構でございます。
#8
○参考人(大林稔君) それでは、早速報告をさせていただきます。
 私、冒頭にありますけれども、大学に勤務しておりますが、今年の春までNGOの代表を務めておりました。このNGOは、TICAD、アフリカ開発会議に向けてアフリカの市民社会とパートナーシップをつくるというのを目的にしておりまして、アフリカのNGOのネットワークとともにODAの共同の評価を行う、それから、それに基づいて日本政府に提言を行うというふうな事業を行ってまいりました。それで、それに基づいて更にTICADW会合についてもアドボカシーをするということで、丸五年間一生懸命やって、先日解散したところでございます。
 まず、現在の危機のところから少しお話をしたいと思います。
 これは、アフリカの経済の動向については、後ほど山田さん、それから平野さんの方からより詳しい御説明があると思いますので私の方からは簡単に申し上げますが、過去十年間、大体、非常にアフリカとしては五、六%という高い成長率を記録しております。これは、七〇年代以降、アフリカとしては初めての経験でありまして、八〇年代から九〇年代ぐらいは十五年近くマイナス成長を毎年続けるという大変な事態がありました。そういうところから見ると、隔世の感があるわけであります。例えばタンザニアは、二〇〇〇年以降、毎年七%ぐらい成長しております。一人当たりの所得は、これ、複利で計算しますと五〇%ぐらい増加したことになります。
 しかし、こうしたアフリカの比較的中期的な高成長は、グローバルな経済危機のために一時頓挫することになります。今年の成長率は、大体、IMFが三%以下になるだろうというふうに言っております。これによってミレニアム開発目標に関しても非常に達成が難しくなっております。
 この危機の前からアフリカに関しては、いろいろな諸指標が最も不利な、達成率が低い、恐らく二〇一五年に目標を達成することは全指標にわたって難しいのではないかと言われていたわけですが、ここの表、一番下の棒を見ていただくとお分かりいただくと思いますが、絶対的な貧困と飢饉で苦しむ人たちというのはわずかしか減少していない、更にここに危機が追い打ちを掛けるという状況であります。
 さらに、今回の危機によって、恐らく生存、つまり命が危うくなる人が随分いるのではないかというふうに見積もられております。ユネスコは、今回の経済危機でアフリカの四億人近い貧困者一人当たりが四十六ドルぐらいの所得減になるだろうと推定しております。二十万人から四十万人ぐらいの子供がこの飢饉の直接の結果として栄養失調で亡くなるおそれがあるというふうに推定しております。というふうな状況が背景としてあります。
 さて、私たちも大いに期待を持ってかかわった第四回のアフリカ開発会議ですが、大きな成果があったというふうに考えております。過去のTICADに関して私も毎回評価をずっと行っているんですけれども、恐らくTICADWというのは、できた最初の会議以降、一番大きな成果があった会議だというふうに思います。
 一番大きな成果というのは、まず三つありますが、一番大きいのは、具体的に新規で、要するに真水で援助を増しますというふうにはっきり公約しました。これ、実はいろいろずっと今までのデータを見てみますと、真水ではっきり政治的な公約をしたのは初めてなんですね。それまでいろいろ、こういうプログラムがあります、こういうプログラムを発表しますといいますが、言わば従来の援助の延長線上で数字を組み替えていたんですが、新規で純増を発表したのは初めてであります。
 それから、これも非常に大きいんですが、NGOとかアフリカ側がずっと要求してきましたフォローアップ、一回やった後、それっきりではなくて、定期的にその成果を点検しましょうというフォローアップを制度化したということも、これも非常に画期的なことだったというふうに思います。
 最後に、市民のパートナーシップが第一歩をしるしたというのも、非常にこれは私たちから見ると大きな出来事だったわけであります。
 アフリカと日本のNGOは共に大きなネットワークをつくって、特にアフリカのNGOが、日本だけに関心を持ったNGOが総数で三百ぐらいが集まってネットワークを組んだというのは初めてですから、これがTICADに代表を送り込むというのももちろん初めてであります。ということで、これが共同声明を本会議場で発表することができたと、これが実際にどの程度議論の流れに影響を与えたかは別として、それ自体が大きな出来事であったというふうに思います。
 ちなみに、このパートナーシップというのは現在も様々な形で続いております。私たちの組織が解散した後もそれの後継組織が幾つか立ち上がって、いろいろな共同評価とか、それから市民交流とかアドボカシーとか、様々な活動を現在もアフリカの市民と日本の市民が一緒にやっているということがあります。
 さて、この経済危機に対して、もちろん日本政府も非常に危機感を持ち、アフリカ政府も危機感を持ったためにフォローアップ会合が去年あったわけであります。ここでいろいろと議論になったわけですね。
 TICADの日本の公約なんですが、簡単に言うと、やや成長の加速化に重点が置かれた。これは、当然、当時、アフリカが比較的高度成長を遂げていたためにこれを加速化しようというのが主要なテーマになります。まあ、我々NGOから見ると、人間の安全保障とか地球環境というのはちょっと比重が軽くなっているというので、我々、アドボカシーでもうちょっとこちらをメーンにしてくれと言った記憶がありますけれども、残念ながらそういうことにはなりませんでした。そういう状況でありました。
 それで、片や、先ほどのアフリカの経済危機を受けて先日のTICADフォローアップ会議では、これ、山田さんの方から御発表があると思いますけれども、新規の支援策が発表されました。ただし、これについては今のところ追加資金か否かまだはっきりしないんですね。予定していた資金を組み替えただけなのか分からないので、その辺は山田さんにお伺いしたいというふうに思います。
 さて、これは我々NGOの立場から考えると、こういう、先ほど申し上げたようなアフリカの最底辺にいる人たちに非常に甚大な影響を与えている現在の危機の状況下では、やはりTICADで決まったことが若干軸足を変更する必要があるだろうというふうに思っております。言わば、成長の加速化はこのぐらいにして、こんな感じで人間の安全保障とか地球環境の方に軸足をシフトするということがアフリカの人たちにとって必要な時期であろうというふうに考えております。
 ということで、じゃ具体的にどういうことをやれば軸足を移すことになるのか。さらに、昨今議論されているアフリカの援助の効率化というのを同時に達成することができるのか。一般にこういう場合にNGOはお金をもっと増やしてくださいというふうに言うんですが、実は私とか私のかつていた団体は、お金を増やすのももちろんですけれども、むしろそれ以上に重要なのはアフリカに対する援助を効率化してほしいということをずっと言ってまいりました。
 ただし、効率化というのは二つの意味、私たちが使う効率化とOECDのDACなどで使う効率化というのは若干違いはあります。つまり、私たちの効率化というのは投下資金援助当たりの貧困者に対するインパクトを増やすということなんですね。DACなどで議論していますのは、どっちかといいますと、アフリカ政府と日本政府との間の調整をうまくやるという議論だろうと思いますが、私たちが言っている効率というのは貧困者から見た効率であります。
 そういう意味で、こういう非常にアフリカの多くの人が危機に脅かされている中で日本がするべきことというのは、やはりアフリカの最後のセーフティーネットになるということじゃないかというふうに思います。アフリカで危機に脅かされて、様々な形で職を失い、あるいは農業がうまくいかない、あるいは干ばつにさらされる、そういう人たちに対して、どういうことがあっても日本がいる以上は死ぬことはないというふうなメッセージを発することだろうというふうに思います。
 これは、日本政府が何年か前から言っております人間の安全保障という概念にもぴったりくるものだろうというふうに思います。つまり、個人やコミュニティーに焦点を当てて、政府の発展とか国民経済の発展あるいは国家の安全よりも、一人一人の人が安全である、一人一人の人が生存することが重要なんだと、一人一人の人権が重要だというのが人間安全保障の考え方だと思いますが、そこにのっとった考え方だろうというふうに思います。
 さて、なぜこういうことを申し上げるかというと、実はアフリカというのは最も生存を脅かされている貧困者が多い大陸であります。これは、ザ・ワールズ・モスト・ディプライブドというFAO系の研究所が発表した報告書があるんですが、それによりますと、ここは貧困者それから飢餓で苦しむ人を三段階に分けております。最も貧困な人、これは普通、貧困者というと、国際的には一日一ドル以下ということになりますけれども、一日〇・五ドル以下。それからカロリーでいいますと、それはまあ後で言いますが、一ドル以下じゃなくて〇・五ドル以下ですね。実は一ドル以下でいきますと、南西アジアとか東アジアを含めた中国、インドがあるものですからアジアが一番多いんですけれども、〇・五ドル以下、極貧ですね、これで計算しますと、このとおり、アフリカは七六%の人口を占めております。つまり、本当に生存が脅かされている人というのは、アフリカに絶対的にも数量的にも、それから割合的にも集中しているということが分かります。
 それから、餓死のおそれのある人、これもそうですね。これは実は全世界的な統計がないんですが、これもこの報告書によりますと、大体、飢餓の状況というのは一日千八百キロカロリー以下であります。死の危険があるウルトラハンガーという規定をつくっております。これは千六百キロカロリー以下です。ほかのレポートでは千四百キロカロリーです。昨日、うちの娘に聞いたんですが、私なんか千六百ぐらいですよと言っていましたが、彼女はダイエットをしておりますので。それから、私、お父さんどのぐらいでしょうと言ったら、二千ぐらいじゃないかと言っておりましたけれども、ただし、あなた余り動かないからねというふうに言っておりました。
 つまり、アフリカの貧困者というのは肉体労働者です。農業で食べていく人たちですから、当然我々よりかなり多いエネルギーを消費するわけです。WHOは千六百以下で、ほかのレポートでは千四百以下になりますと飢餓で死ぬおそれがあるというふうに言っております。こういう人たちが圧倒的に多いのもアフリカであります。ケニアでは大体二七%ぐらいがこのウルトラハンガーに相当すると言われております。また、ブルンジ、私、三年間、国連で滞在したことがありますが、ここでは六〇%がウルトラハンガーに分類されております。
 世界的に見ても、この地図を見ていただいてお分かりのように、この黒いところがエクストリームリーアラーミングな、非常に危機にさらされている食料事情に、栄養状態にある人たちが集中しているところです。これ、縦しまのところがアラーミングなんですけれども、これはインドなんかも入っているわけですけれども、御覧のように、アフリカが最もアラーミング及びエクストリームリーアラーミングが多い地域だということは言えるというふうに思います。
 さらに、ザンビアでこういう調査をした人がいるんですが、ウルトラプアとかウルトラハンガーの人たちも、自力で立ち上がる人が、できる人とできない人といるというんですね。一番問題なのは自力で立ち上がるのが難しい人です。どういう人かというと、簡単に言うと、僕らが考えて通常の労働能力を欠いた人です。これ、日本も一緒ですね。
 つまり、障害者とか、それから老人と子供しかいない世帯、あるいは病気がちである人、それから高齢者、そうした人たちばかりの世帯、あるいは恒常的に飢饉にさらされてウルトラハンガーの状態が数年続いていると労働能力が失われてくる、こういう人たちですね。こういう人たちは大体、貧困者、ウルトラプアの中でも三分の一ぐらいがこうだというふうに言われております。特にアフリカで多いのは、エイズのために働き手がいなくなった世帯です。高齢者と子供しかいないという世帯ですね。こういう人たちがウルトラプアの中でも最も深刻な人たちです。
 実は、難民とか避難民というのもある意味でこれに該当します。これも、労働能力を政治的、制度的に奪われているわけですね。実際に現地で労働することができないというふうなことであります。
 これに恐らく加えられるのは、遠隔地で孤立している人々であります。アフリカでは多くの村が、幹線道路に行くのに十キロとか、場合によっては百キロとか歩かないと行けない、そういうところに生きている人たちがたくさんいるわけであります。こういう人たちは、社会サービスが届かない、それから市場に行き着くこともなかなか難しい。したがって、いったん病気になる、干ばつになると危機にさらされる。先日、こういうところに行ったジャーナリストが言っていましたが、ここで骨を折ったら死ぬしかないかもしれないと言っておりましたけれども、そういうところに住む人の方が実はアフリカは数が多いということであります。
 じゃ、ふだん彼らはどうやって生きているのかというと、コミュニティーに頼っているわけです。親族とか村の人に頼っているわけですが、村自体も貧しいんですね。そういうところでは、村自体の貧困を支える能力というのが、村全体が貧困で非常に厳しいという状況です。現在の危機の中で彼らを支える能力自体が失われつつあるということです。
 これは、こういうところを、貧困者を支えている人たちを、コミュニティー能力を調べに行った人たちが書いた論文で、「ウイ・アー・オール・プア」というタイトルがあるんですけれども、貧困者はだれですかと聞き取りに行ったら全員ですと言われたというんですけれども、アフリカではそういう村が多いということです。
 実は、こういう人たちに援助が届かないんです。私は長年、アフリカで開発機関にいたり、あるいは研究者として調査をしてまいりましたが、実際に援助というのは、僕らが常識で考えて最も対象としているはずだと思っている人に実は最も届いていないんですね。
 これは幾つか理由がありますが、大きな理由は二つです。
 一つは、援助の多くが経済成長を対象にしているということです。これは、中国を御覧いただいても、一九七八年に改革・開放が始まって現在三十年ぐらいたっておりますけれども、所得は大体三、四倍になっていると思いますけれども、その間に格差も四倍ぐらいになっております。貧困者の所得というのは余り増えておりません。貧困者の数は激減しておりますけれども、最低限の極貧者の所得というのは余り増えていない。
 これは、クズネッツ曲線というのがありまして、経済学では大体、成長の初期には必ずむしろ不平等が拡大するということが言われておりますが、初期というのはどのぐらいかというのが問題ですね。つまり、貧困者にとっては今日夕飯何を食べられるかというのが問題なんですが、こういう場合の初期というのは早くて十年、中国のケースを見ていると恐らく三十年とか四十年、場合によっては孫の世代ということになります。いわゆる均てん、トリクルダウンということが言われますが、成長の果実が最も底辺に落ちてくるのは早くて十年、遅いと五十年ぐらい掛かるということになります。
 もう一つは、いろいろな研究によりますと、少なくともアフリカでは援助が経済成長に点火したという実証はされていないんですね。これは、アフリカを入れない、東アジアを入れても、実は援助が経済成長を起こしたという証拠は、余りはっきりした証拠はありません。経済成長が起こっているところではインフラ援助が有効に働くということは実証されていますが、インフラ援助が経済成長を引き起こすという証拠は今のところありません。
 もう一つは、これは非常に大きなことなんですが、ODAというのは基本的に間接援助です。間接援助というのは何かというと、政府への引継ぎ、つまり政府がこういうことができるようになるために政府を訓練し、スターター、スタート時にちょっと手助けしてあげるというのが基本的な考え方であります。したがって、プロジェクトが終わると日本は引き揚げる、ほかのドナーも引き揚げるわけですね。
 残念ながら、政府の能力強化というのはなかなか進んでおりません。様々な援助のフォローアップの調査を見ますと、必ず一番問題になるのは、アフリカではプロジェクト進行中はうまくいっていたけれども、日本が引き揚げた後、数年後には元に戻っていたとか極めて弱体化していたと、こういうのが多いです。
 一番見やすいのは、井戸とかそういうものを造って帰ると放置されているというふうなものですが、そうでなくて、お役人を訓練した場合でもそうです。立派な貧困対策室をつくっても、十年ぐらいして行ってみるとほとんど何もなくなっているということが非常に多い。あるいは、訓練した優秀な役人は外へ転出してしまっているというケースが多い。世銀も十年間ぐらい多額の能力構築支援を行ったけれども、内部の監査によると、他地域に比べてアフリカは極めて成果が低いというふうに言っております。
 これがほとんどのODAの最も最大の問題になっております。道路を造っても穴が空いてしまう、社会保障の訓練をしてもしばらくすると元へ戻ってしまう、こういう状況であります。
 さて、じゃ貧困削減支援といったものはなぜ届かないのか。こういうのがあるじゃないか。実はこれも余り届いていないんですね。なぜかというと、ここでも先ほど言ったような政府支援というのが問題になっております。様々なレポートで日本の専門家とか協力隊の方が貧困者を一生懸命支援している図が出ておりますが、五年後、十年後にそこを訪ねてどうなっているかというと、必ずしもそれが政府の衛生機関あるいは農業普及機関、そういったところに引き継がれないで元に戻ってしまうというケースが多いのであります。
 さらに、もう一つは、労働できる人を主に対象にしているんですね。例えば、貧困削減で代表的な事例で言えば、農業生産の支援とかマイクロクレジットとか職業訓練とか、FFWというのはフード・フォー・ワークですね、これは公共事業を行う代わりに食料をあげるというふうなやり方ですが、これ全部、働けないと駄目なんですね。先ほど言ったような人たちはこれに参加ができない。
 それからもう一つは、ODAというのは、残念ながらどうしても割合便利のいいところになっちゃうんですね。これは、専門家を送る、何かあったときにどうするんだ、そういう問題があります。協力隊ですらそうであります。首都に集中する。これはタンザニアでのプロジェクトの図ですけれども、御覧いただくように、この四角い囲みはダルエスサラーム市であります。首都ですね。首都というのは、正式にはドドマが首都ですが、経済的な首都ですが、ここにプロジェクトが集中している。ほかも比較的大きな都市とか幹線道路に沿ったところにプロジェクトというのは点在しております。
 しかし、じゃ、どういうふうに今からアフリカの経済危機にある人たちへの支援に軸足を移せるのかというと、やり方は実はあるんですね。
 これは、一つは、いい例は人道援助です。これは、緊急援助の場合にすぐにぱっと目に浮かぶと思いますが、難民が発生する、あるいは干ばつで国内避難民が発生する、そうした場合に人々を救うということが直接の目的になっております。ここでは政府の支援が直接の目的ではありません。政府が三年難民を支援して、政府に引き継いで後は知らないということはあり得ないわけですね、これは国際社会の責任ですから。政府とあるいは一緒にやりながら、とにかく難民を支援することが目的であります。
 それから、難民ではありませんけれども、例えばユニセフのワクチンの接種、これはもうワクチンを接種してポリオを減らすということが目的なんですね。ですから、もちろん政府と一緒にやるけれども、政府の能力がないから途中で帰っちゃうとか、政府にやり方を教えて後はさようならということはあり得ないわけですね。そういう意味で実際にやっているわけです。
 それからもう一つは、NGO、前回のこの委員会だったと思いますが、私たちの友人のワールド・ビジョンとか幾つかの団体が、CanDoとか呼んでいただいたようで、そこでお話をさせていただいたと思うんですが、彼らの援助のどこが違うかというと、いろんな違いがODAとありますけれども、一つの大きな違いは、目的が貧困者を直接救うというところにあるんですね。
 これは、そのためにもちろん彼らも政府と協力します。当然、現地のNGOと一緒にやります。だけれども、本当の目的は現地の人たちを救うことですから、彼らと一緒にやることが目的ですから、政府への引渡し期限が近づいたから帰ってしまうということはないわけですね。当然、自分たちの存在がいつの日かなくなればいいとNGOってみんな思っているわけです。現地の政府が、現地の市民社会がそういうふうにできるようになるまで、言わばつなぎですけれども、つなぎだからといって、まあ、つなぎって長いんですね、結構。先ほど言ったように、アフリカの状況を見ますと、中国で考えても三十年たってまだこの状況ですから、普通のプロジェクトのサイクルって三年ですから、延長しても五年とか六年ですから、それで簡単に帰るというわけにはいかないということです。
 援助の中でもそれは知られておりまして、実際にNGOの自己資金というのは、ODAに比べてそれの一四%ぐらいの資金が別にあって南に流れているわけであります。ドナーも、日本も含めてODAのうち大体六%ぐらいをNGO経由で支出しております、ちなみに日本は一・一%ですけれども。実際に、NGOとかあるいはこういった直接貧困者に働きかける援助の効率が明らかに一般のODAより高いのも実証されております。
 そういう意味で、軸足を移す一つの具体的なフレームワークとして、人間の安全保障計画というのを提案したいというふうに思うわけであります。
 これは、先ほどから言っていますように、貧困者支援を直接の目的にするということですね。もちろん、市民社会と政府とパートナーシップをやる。現地は当然、これ、もう現地のNGOを中心にやるわけで、もちろん政府の衛生局や何かも手伝ってもらわなきゃいけませんが、彼らを支援することが目的ではないんですね。本当の目的は、彼らと力を合わせて現地の一番困っている人たちの生存を保障するということです。ですから、これの査定、評価というのは予算を幾ら使ったかじゃないということになります。つまり、目標を立てて、何人人を救えたのか、本当は死んでしまった子供を何人死なないで済ませたのか、そういうことを毎年国民が査定して、その効率を見ていくという計画であります。
 具体的に何をするかというのは、実はそんなに新しいことではありません。住居とか保健・衛生とか清潔な水とか、そういったものを提供していく。恐らく必要なのは、その中で現金給付というのも若干必要になってくると思います。これは、もちろん日本ではそうですから、貧困者に若干の現金を給付するということも場合によっては必要だろうというふうに思います。もちろんこういうイニシアチブは日本だけではできませんので、国際的に呼びかけていったらよろしいと思います。
 そろそろお時間ですので、私はこういったやり方というのは日本の憲法の精神にもこたえているし、日本の国民の期待にもこたえると思います。
 ちなみに、外務省さんがやった調査ですけれども、ODAの必要な分野上位三項目というのは、保健・医療、貧困対策、感染症ですね。同じ調査で不必要な分野三項目というのがあるんですが、これが文化紹介、経済成長、インフラというふうになっているんですね、これは恐らく霞が関の常識とかなりずれているのかなというふうに思いますけれども。
 それから、アフリカの人たちに対する期待というのは、これは随分大きいものがありますから、これによって日本のODAの株というのは随分上がるんだろうというふうに思います。実際に貧困者を助けていたコミュニティーにとっては大変な朗報ですから、日本がそういうことをやっているというのは非常に外交的にも大きなことであろうと思います。
 さて、ちょっと、こんなこと可能かという声があると思いますので、人材については飛ばしますけれども、これは、いるとだけ申し上げておきますけれども、幾らでもおります。こういうことをやりたくて、でも、できない、NGOの受皿が少ないので渋々普通のところに就職している人は今現在NGOに勤めている人の百倍ぐらいおりますから、幾らでもおります。
 お金ですけれども、こういう自立困難世帯、労働力を欠いた世帯に言わば生活保護を与えた場合、どのぐらいのお金が掛かるかという試算した人がいます。これは実際にプロジェクトでもやったんですが、ザンビアでやったところ、ザンビアが受け取っている援助全体の四%ぐらいで済むというんです。そんなに少ないのかと思うかもしれませんけれども、これは日本でも、巨大なダムとか高速道路と生活保護のお金と比べてみると比較的分かりやすいのかと思います。
 アフリカ全体でこれを仮に強引に試算してみますと、大体、アフリカに日本が二〇〇七年で投下している援助資金の七四%ぐらいがアフリカに対するODAの四%に相当します。日本は倍増するわけですから、そうすると、単純に言って、これ倍増。少し年限が過ぎていますから、二〇〇七年ですから、恐らく今の二〇一〇年規模ぐらいで五割ぐらいの資金を日本が全部そういう分野に投下すれば、先ほど言った貧困者の中の更に厳しい三分の一の層の生存を確保することは可能だということですね。
 ということで、ちょっとお時間超過しましたけれども、こうした計画は実現可能であり、人材もあり、お金もあり、あと残って必要なのは日本の政府の政治的な意思だけであるというふうに思います。
 ありがとうございました。
#9
○会長(石井一君) 次に、平野参考人から御意見をお述べいただきます。どうぞ。
#10
○参考人(平野克己君) お話をさせていただきます。
 まず、アジアの経済の絵から見ていただきたいのですが、これは世界の製造業の総生産のうちで、ここにかいてありますのは、日本と中国がどれだけのパーセンテージを占めてきたかということの推移です。全般的に世界経済は物づくりがアジアにシフトしてくるという動きをずっと示してまいりました。これが近年に中国に集中していく。二〇〇七年、ついに日本の比率を中国が超えるという事態になりました。
 一方で、中国は日本に比べて資源効率が十分の一であるというふうに言われています。つまり、同じものをつくるのに中国では十倍の資源が掛かる。となりますと、当然ながら、資源の中長期的な予想、これは需給が堅いというふうな予想が今世界中のファンドマネジャーたちに共有をされていて、それで昨今の資源高、異常な高騰が起こったというふうに説明をされています。
 この資源と実はアフリカの経済は非常に深く結び付いております。このグラフは青い線がアフリカ全体の、まあサブサハラ・アフリカですが、GDPの合計です。赤い線は資源として原油価格を代表に挙げて、その価格の推移です。この原油価格の推移とアフリカのGDP、これ、どれぐらい関係しているのかというのでこの相関というのを取ってみますと、〇・九〇二という数字になるんですが、これはどういう数字かというと、中東で〇・八六なんです。サウジアラビアで〇・九〇一なんです。つまり、サブサハラ・アフリカというのは世界で一番資源にその経済の状態が影響される地域なんですね。
 アフリカというと、コーヒー、ココアとか農産物の輸出地というイメージがおありかもしれませんが、実は輸出の半分は原油、工業部門全体で約七割を占めます。農業の比率というのは一〇%から一五%ぐらいですから、圧倒的に産油大国、資源大国なんです。
 先ほど大林さんのお話にもありましたけれども、一九八〇年から二〇〇二年まで、名目で見てほとんど成長しませんでした。これは資源の低価格時代ですね。この間、実はアフリカの人口はほぼ倍に増えておりますので、一人当たり所得はほぼ半分になりました。これがいわゆるアフリカ問題。よく言われる言い方は、貧困問題のアフリカ化。世界の貧困問題がアフリカに局所化していくという現象でした。ですから、七〇年代の後半から、世界の開発にかかわる人たち、開発経済学を中心として、ほとんどアフリカしか議論してこなかったという時代が続いてきました。
 そのアフリカの資源輸出、一体どこが買っているんだろうかというので、中国とアメリカと日本について、ちょっと小さいかもしれませんが、数字を並べてみました。原油に関して、この鉱物性燃料のところですが、アメリカ、これ、二位が中国なんですが、この数字が実は突出をしています。資源高の時代、アフリカにはどんどん投資が入って新しい産油国がどんどん登場してまいりました。アフリカの原油輸出はすごい勢いで伸びました。ここで一番そのアフリカの原油を買っていたのはアメリカであり、次が中国なんです。その結果として、今、アフリカの経済を見るに当たって最も重要な国がこの二か国ということになりました。
 それから、先に言っておきますと、一番下の自動車で日本の数字がちょっと突出をしています。それからもう一つ、プラチナでも日本が相当に買っています。これについては後でお話をいたします。それから、もう一つの特徴は、中国が実に多彩な原材料をアフリカから調達をしているということです。
 この原油についてですが、アメリカはまずどこから今原油を買っているんだろうと作ってみたのがこのグラフです。中東の比率がどんどんどんどん減っていて、アフリカの比率が急速に増えています。これは何を意味しているかというと、当然、ブッシュ政権はそういうふうにすると明言していたわけですけれども、アメリカは現在、かつて中東に展開していたのと同じような安全保障政策をアフリカに展開しなければいけないニーズに迫られているということなんです。これは軍事を含めてです。現在、アメリカはオバマ政権になった後もアフリカでの軍事的な展開、軍事的なネットワークづくりを非常に積極的に進めています。最後にお話ししますが、これは実は国際テロ対策と深くかかわっております。
   〔会長退席、理事主濱了君着席〕
 次に、中国です。中国自身、アメリカもそうですが、日産三百万バレルの石油生産を持っている国ですが、現在、その倍ぐらいの消費量がありますので、アフリカの原油輸入は急速に今伸びています。ここに挙げた四つの国、サウジアラビア、アンゴラ、ロシア、イランというのが、これが四大原油輸出国、中国に対してですが、なんですね。
 この中にアンゴラというアフリカの国があって、今やアンゴラは中国にとっては欠かせない原油供給地になっています。実は、この中国がアンゴラから買っている原油量と大体ほぼ同じぐらいの原油量をアメリカはアンゴラから買っているんです。つまり、アンゴラという国は米中のアフリカにおける結節点なんですが、非常に面白い、興味深い国なんですけれども、今日はこのお話は割愛をさせていただきます。
 ただ、こういった資源で成長していくということに関して学界には定説があります。それはどういうことかというと、資源に依存した成長はむしろ開発にとってはマイナスの効果を及ぼすという、これが学界の定説なんです。これを最近は「資源の呪い」、リソースカースという言い方をします。
 この議論、実は古くて、一番最初に言われ始めたのは、北海油田が発見された後でオランダの工業化が後退してしまったという現象から指摘されるようになりました。これはオランダ病といいます。原油生産、石油が出たので、オランダの通貨が高くなってしまって、ギルダーが高くなってしまって国内の資源が石油部門に移ってしまった、結果として工業化が後退したという、そういう現象なんですが。
 このほかに、この下に書きましたレント経済。これは、経済が汗水垂らしてプロフィット、利潤を求めて動く経済ではなく、権益ですね、資源権益をだれに渡すかということを中心として動くようになる。これは主に中東の国をモデルとしてつくられた議論なんですが、これ、レンティア国家といいます。レンティア国家の特徴というのは、現状維持的で、それで税に対する関心が極めて薄いので、透明性がなくなって議会がほとんど無力化するというようなことが言われています。
 アフリカについてのこういった議論というのは現在、日本の新聞でも時々触れられていますが、破綻国家とか収奪国家という言われ方をします。まとめて、リッチカントリー・ウイズ・プアピープル、貧困者が構成する豊かな国家、そういうふうな形になりやすいというふうに言われております。
 実際に、これは世界銀行が作成しておりますガバナンス指標のうちの一つ、行政効率を示す指標ですが、この下に、チャド、ナイジェリア、スーダン、アンゴラ、赤道ギニアという幾つかのアフリカの国のこの指標を挙げてみました。この指標の数、実はこの今挙げたアフリカの国はアフリカの中で最も成長率が高かった国なんです。最も成長率が高かったんですが、このガバナンスの指標というのは世界で最悪のグループにいます。世界最悪の国はどこかというと北朝鮮なんですが、北朝鮮のグループの中にこういったアフリカの高成長国も含まれているんです。
 行政効率がこんなに悪く、また汚職も非常に蔓延しているのになぜこんな高成長ができるのか。例えばアンゴラなどは年平均で四〇%近い成長をしてきましたから異常な高成長なんですが、これが先ほど申し上げた「資源の呪い」の姿でもあり、アフリカの経済成長の実態でもあるということなんです。
 次に、日本とアフリカの関係を見てみたいと思います。
 ここに挙げましたのは、一九六五年から作ってみた日本の総輸出と総輸入に占めるアフリカの比率の推移を見たものです。まず目に付きますのは、実は七〇年代にかなり大きな比重があったということなんです。アフリカとの貿易関係というのは、実は日本経済のそのときそのときの姿を映し出す鏡のようなところがあって、この時代、七〇年代に高い比率を持っていたというのは、大きく分けて二つの要因があります。
 一つは、日本の輸出においてまだ高度化が進んでおらず、例えば軽工業品の比率が高かったこと。それからもう一つは、まだ日本の産業のアジア地域展開が始まる前だったということなんです。
 一九八五年のプラザ合意を契機として日本の企業は大々的にアジアに展開をしていきます。その後、日本の貿易構造は劇的な変換を遂げて、いわゆる水平分業、お互い、部品をアジアの国同士でやり取りをする、製品をアジアの国から日本企業が作ったものを逆輸入するという動きが日本の貿易の中で高い比重を示すようになりました。これが現在、日本の貿易の主体になっていますが、その中で、アフリカから買う原材料の比重がどんどんどんどん下がっていったということなんです。
 TICADの初めては一九九三年ですが、TICADV辺りは最低のところまで行っていました。つまり、日本の貿易それから投資においてもアフリカが占める比率はほぼ一%という状態だったんです。ですから、以前のTICADにおいては、特に日本の企業、財界はほとんど関心を示しませんでしたし、日本のメディアもカバレッジはほとんどありませんでした。
 それが、ちょっとその昔に比べると、見にくいですが、ここに来てぐぐぐぐっと上がって、三%が見えるようになってきています。ですから、TICADWにおいては、ほぼ初めて日本の企業の積極的な参加があり、これまでのTICADと比べると破格のメディアのカバレッジがありました。私が受けた取材の中でもほぼ半分は中国関係でした。日本にとって非常に重要な国益の懸かっているエリアとアフリカがここでオーバーラップをしてアフリカに国益が発生したというふうに私自身は理解できるのではないかというふうに思っております。
 その中の一つの典型的な現れとして、これは日本とアフリカの一番伸びている貿易項目三つを挙げました。一番伸びているのは日本のプラチナの輸入なんです。オレンジで書いた線です。次が日本の自動車の輸出です。もう一つは、日本の自動車のアフリカからの輸入なんです。つまり、自動車の双方向貿易なんです。もう一つ、スーダンから買っている原油というのがありますが、この三つは非常に日本の姿を示す典型的な現れだと思います。なぜならば、日本はプラチナは宝飾用に買っているわけではなく、排ガスの浄化装置として、触媒として買っております。つまり、この三つはすべて自動車絡みなのであって、日本のリーディングインダストリーが自動車産業に限定化されていく、そこに非常に集中していくという現象をアフリカにおいても反映しているということなんです。
   〔理事主濱了君退席、会長着席〕
 このことは、アフリカ貿易においてもう一つの大きな特徴、TICADなどでもほかのアフリカの国からあるときは批判を受ける特徴を生み出します。それは何かというと、南アフリカへの集中です。世界のプラチナ資源のほぼ九〇%は南アフリカにあります。ですから、世界中の自動車産業を持っている国は南アフリカからプラチナを買っています。しかし、日本の自動車産業が一番大きいので、日本が一番プラチナを買っているということなんです。自動車産業に集中した貿易の伸長というのは、当然これは南アフリカに集中をしてまいります。なぜならば、アフリカで造られている自動車の九〇%以上は南アフリカで造られているからです。ちなみに、アフリカにある最大の自動車工場は南アフリカにあるトヨタの工場です。
 次に、投資を見てみたいのですが、今申しましたとおり、日本のアフリカの経済関係が南アフリカに集中しているという傾向は、過去にはこのような形で見られました。アフリカに対する投資の多くのところが南アフリカに投下をされる。二〇〇〇年前後の南アフリカへの投資というのは、これは、その主体はトヨタの生産倍増計画です。当時、日本からの最大投資案件でした。これは二〇〇六年に、今はやっぱりトヨタの投資がありますが、二〇〇六年以降は南アフリカ以外の地域に対する投資が急増をしています。
 これは何かというと、資源開発投資です。この図で幾つか代表的なアフリカに進出している日本企業を挙げてみました。この中、これは各社、各社で非常に面白い活動をなさっているんですが、今ここで注目をしてみたいのは比較的新しい投資、つまり資源関係です。赤道ギニアにおける天然ガス、ナミビアにおける天然ガス開発、あるいは南アフリカにおける三菱商事のクロム鉱山開発、それからモザンビークにおけるアルミ精錬、マダガスカルにおけるニッケルなどです。
 最大の実態を持っているのは南アフリカのトヨタなんですが、こういうことについてちょっとお話をしてみたいと思います。
 日本がアフリカに持っている直接的なつながり、日本のアフリカ政策において現実的な課題として考えていかなければいけないものということについてまずお話をしてみたいんですが、まず、その貧困削減ということを前面に掲げて日本のODA政策を局限化できるかということなんですが、私は実は否定的なんです。貧困削減を進めることは、これは先進国あるいは人類の務めでもありますし、悪いことだと申し上げているんではないんです。ここに書きましたとおり、ODAにおいては常々、ほかの国においても見られることなのですが、政策目標と政策手段の間に不均衡が起こりがちな政策だということなんです。
 アフリカでは、一日消費一ドル以下の世界銀行の言う絶対貧困層がざっと見て四億いますが、この四億の貧困層を公平に救っていく、公平にネットワークを掛けていくだけの財源が世界全体のODAにもないという現実があります。ざっと見て、最低で三千七百億ドル掛かるんですが、今、世界のODA総額は三百億ドルに満たないという現実から見れば、理念として掲げることはいいけれども、政策目標としてODAにそれを背負わせるのは、それはJICAにとってもかわいそうでしょうし、当然、政策としての評価の仕方もそれは均衡を欠くだろうというふうに考えています。
 一方で、日本がアフリカにおいてどうしても我が国のために守らなければいけないものがあるだろうというふうに考えています。まずは、ここに書きましたレアメタル、レアアースの確保です。このレアメタル、レアアースというのは、名前のとおり量が少ないですから金額として貿易に占める比率が大きいわけではありませんが、しかしながら、先端技術産業においては絶対不可欠のものであることは御承知のとおりだろうと思います。
 日本は、このレアメタル、レアアースをいろんな国に依存はしておりますが、主に二つの国に依存しています。一つが南アフリカで、もう一つが中国です。南アフリカとのこのレアメタル、レアアースの取引というのは、ほぼ資源メジャーが絡んでいるプライベートベースなので資源が途絶するという心配がありません。価格の心配だけです。一方、中国に関しては、既に御承知のとおり、中国は国内でのレアメタル、レアアースの開発を外国企業に対しては禁止をしております。輸出についても、国内需要の拡大に合わせて徐々に制約を掛けてきています。
 先端技術産業は、人口が減っていく我が国にとって次のリーディングインダストリーです。中国からの供給がもし途絶するようなことがあれば、日本の先端技術産業には選択肢は二つしかありません。一つは、中国に生産基地を移転することです。もう一つは、代替供給地を探すことです。この代替供給地を探すということで、現在、JOGMECさん、経産省を中心としてアフリカへの投資と探索技術の提供が始まっているということもお聞き及びかと思います。
 このことはどういうことかというと、中国が成長してくれることというのは、日本の経済にとってもこれは間違いなくプラスです。つまり、成長していく中国と将来にわたってどうやって我が国が資源を分け合っていくか、中国との経済関係を資源を含めて安定化させるかという課題であろうと思っています。
 加えて、さきに述べたとおり、物づくりで生きている東アジア経済圏において、資源国、資源地域たるアフリカとの安定した関係をどうやって構築していくかという国際関係、国際政策、その重要な課題にアフリカが入ってきたということであろうというふうに考えております。
 そこで、日本のODAについて見てみたいのですが、これは、日本のODAのネット額における地域配分を東アジアとサブサハラ・アフリカと中東において示したものです。現在、日本のODAのネット額における地域配分で一番多いのがサブサハラ・アフリカになりました。
 ODA大綱においては、旧大綱においても新大綱においても、日本の援助政策は、我が国にとって極めて重要な地域である東アジアを中心とし、その他地域にも配慮すると書いてあります。しかし、現実には既にODA大綱の世界はもうなくなっているわけで、日本の援助もまたアフリカが中心になっております。アフリカが中心になるということは、現在まだ円借款がそこまで拡大をしておりませんので、無償援助が中心になってきているということです。つまり、日本のODAの姿は、これまでの若干欧米ドナーとは特殊だった姿から、欧米ドナーとほぼ同じような構成を持つ、そういったODAに急速になってきています。これを進めたのがTICADでありました。
 ちなみに、東アジアに対するODAが減ってきているのは、当然、東アジアが成長してODA被援助国からむしろ援助国になってきているということもありますし、もう一つは、円借款の返済時期がやってきて、貸しても貸してもどんどん返ってくるということがあります。
 現在、日本の円借款は、ネットで見るともうマイナスになっています。グロスではちゃんと世界銀行と同じぐらい出しているんですが、とにかくまじめに返してくださる。これは日本の円借款がいかに成功したかということのあかしでもありますが、皮肉なことに、これが日本のODA総額を増やせなくなっているという現実があります。そこから出る日本のODAをもし増やそうとするならば、円借款の出口をアフリカで見付けるということになります。
 その中で一体どのような新しい援助、具体的な政策が考えられるかということなんですが、これはTICADWでも言われた、また、初めて窓が開いた官民連携であろうというふうに考えております。TICADWによって初めて企業と連携する、あるいは特定企業一社とも連携することが可能になりました。そのニーズが実際、アフリカにはあるのです。実際、先ほど見ていただいたアフリカに進出している日系企業はそれぞれにその問題を抱え、それと格闘されています。
 どういうことかといいますと、アフリカでは著しい貧困がある、つまり、社会が常に不安定である、政府の力が非常に弱い、したがって政治的に不安定である、そういった中で大規模な投資の安定を図っていかなければなりません。その中で一体何が行われているかというと、CSR活動です。アフリカの投資は非常に規模が大きい。逆に言うと、受入れ国の規模が小さいので、国家規模の、例えばGDPの半額とか財政と同額の投資が行われます。
 ですから、これはメガプロジェクトと呼んでいますが、メガプロジェクトには必ずCSRが伴います。それは、政府がそれをやってくれないので、アジアのように、インフラも投資者が造る、それから、従業員の子供の教育のための学校も建てる、クリニックも建てる、感染症対策もするということ、それはもうアフリカの投資では常識になっておりますが、こういったCSR活動について、国連の開発機関ですとか、それから各々のドナーの援助機関がパートナーとして参画するということが一般に行われるようになりました。
 こういった活動は、言ってみればアフリカで強いられて、そこに公的サービスが空白なので、行わなければいけないCSRコストを官民共同で担うということでもありますから、アフリカに対する進出コストを下げるということにもなる。それによって投資促進をするという、そういった方向性が欧米にも、また官民一体である中国にも当然ながら見られます。
 もう一つ、更に進んで官民連携の中では、私はこれをODAイノベーションと呼んでおりますが、日本ではほとんど考えられたこともないような、新しい、全く発想を異にしたODAプログラムが組まれているということを現地で実感をいたしました。
 今申し上げましたCSR支援から始まって、具体的な一つの例として、時間がないので、この真ん中にある需要主導の技術援助、DFIDのお話をしたいんですが、DFIDは御承知のとおりイギリスの援助省ですけれども、これが二〇〇六年に始めましたリージョナル・スタンダード・プログラムという援助事業があります。これは、一言で言いますと、現地で今非常な勢いで拡大しているスーパーマーケットチェーンと組んで、スーパーマーケットの納品者リストの中に進出国の生産者を入れるための技術援助をするというプログラムです。
 今、途上国では消費のスーパーマーケット化というのが急速に進んでいます。先行したのはラテンアメリカで、今、アジアでも相当に進んでおります。アフリカでももうすぐ総消費の五〇%がスーパーマーケットで消費されるようになるんではないかと言われています。逆に言いますと、スーパーマーケットの納品者リストに入れない生産者は現金所得の道が絶たれるということを意味しています。イギリスはそこのところをきちっと調査をしていて、そこの間をつなぐための技術援助をしようと、それがこのプログラムです。
 このプログラムの優れているところの一つは、これまでの技術援助と違って、どこまで技術を教えればその生産者、農民が所得を得られるかが明確に分かっているということなんです。その基準はだれが示してくれるかというと、カウンターパートである民間企業、スーパーマーケットチェーンが示してくれます。この基準のものをこのロットでそろえてくれば我が社が購入しますという約束を前提にして行われている。
 これまでの技術援助は、どこまで技術を教えれば買ってくれる人が現れるのか、言ってみれば、需要者をカウンターパートに持っていなかったので所得実現の道は持っていませんでした。民間と組むことによってそれが可能になっているというのがこのプログラムのイノベーションたるところだろうというふうに思っております。
 最後に、アフリカの貧困の話をどうしてもしなければいけないと思うのですが、まず、まとめとして、アフリカには実は産業革命が起こるための準備ができていません、これは農業と工業の関係なんですが。
 したがって、意外な感を持たれるかもしれませんけれども、感じられるかもしれませんけれども、アフリカでは、実は非常に物価が高いんです。ざっと粗く平均しますと、アジアの倍の価格がします、特に食料において。これは双方に行かれた経験のある方は御存じのことだろうと思います。結果として、実は平均賃金がすごく高い。例えば、ケニアは中国に比べて人やGDPは半分ですが、製造業の平均賃金は中国の六倍ぐらいします。アフリカでは全般に賃金が高いので、それで投資誘因が、特に日本企業にはないんですね。結果、さきに見ていただいた、資源の価格が高くなって成長しても、その成長効果が貧困層に行かないということが起こります。
 これを御説明したいのですが、まず、これは食糧穀物の土地生産性を見たものなんですけれども、一番下の赤い線、アフリカを見ていただくと、ほとんど変化しない、伸びていない。世界のほかの地域が伸びることによって世界との差が開いていくという、そういった経路をずっとたどってきていることがお分かりになると思います。
 今、アフリカで食糧穀物を作っている人口というのは、ざっと見て半分なんです。アフリカで農民は六〇%なんですが、そのうち八割は食糧を作っていますので、半分はここにいるんです。半分の人を投入して世界平均の三分の一しかできませんから、もしアフリカで、大学の教授も、それから政治家も、それからお役人も、全部がそれを辞めて農民になったとしても世界平均に届かないということを意味します。ということは、アフリカの食糧自給がいかに道が遠いかということなんですが、それがこのグラフです。
 これは、赤い線というのは、彼らの生産量に輸入とそれから援助を加えて数字を出して、そのいわゆる食糧依存率の推移を見たものです。特徴は、激しい変動があるということですね、まず一つ。これはアフリカの農業がいかに不安定な天候に依存しているかということなんですが、その傾向線を点線で出してみますと、実は都市化の傾向線とほぼ一緒なんです。二年で一%増えるという数字なんです。つまり、アフリカでは都市化、つまり農業を捨てて都市に人が出ていってしまうとそれが養えない。アフリカの食糧農業は大体二〇%の人しか養えないんです。これに依存率を加えると都市化率になるという非常に簡単な関係が見られます。
 つまり、経済成長が起こって、あるいは資源ブームになって都市にどんどん人が入ってきます。都市にドルが外からじゃんじゃん入ってきます。都市は一遍に豊かになる。高級車がどんどん売れるようになります。当然、食料もどんどん買います。買いますが、そこに入っていったお金がアフリカの農村に行かないんです。アフリカの四億貧困層の八〇%は農村在住者なんですが、そこに一向に経済成長のお金が回らないというのがアフリカの経済の簡単に言った実態です。これが産業革命の基盤がないと申し上げたこと、農業と工業の間に連関が働いていないということの簡単な御説明なんです。
 結果として、アフリカの食糧穀物輸入は急速に増えています。アフリカは一体何を買っているかというと、小麦と米を一番買っているんですが、米というのは国際流通量が少ないので、アフリカの占める比率というのは大変な数字になっています。現在、世界全体で売買されている、国際市場で売買されているお米の四分の一はアフリカが買っています。アフリカは国一つ一つが小さいので国で見ると目立ちませんが、ばんとまとめて見るとこの数字になります。
 世界で一番穀物を輸入している国は言わずと知れた我が国日本ですが、大体二千六百万トンぐらい年間に買います。アフリカ全体を合わせると五千万トンぐらい買っています。世界の米市況、それから小麦市況、小麦では大体一五%をアフリカが買っているんですが、特に米、これが安定的に推移できるかどうかは、実は一に掛かってアフリカの需要をどこまで抑えられるかに懸かっているんです。言ってみると、いつアフリカの需要爆発によって破綻してもおかしくない。日本においても、それから日本に続く穀物輸入国である韓国においても、もう人口が頭打ちになっていますから輸入量は増えていないんです。しかしながら、アフリカはどんどん増えています。実は、世界の穀物市況というのは非常に危険な状態にあるということなんです。
 これが最後です。
 まとめてみますと、今世紀におけるアフリカ問題というのは、前世紀におけるアフリカ問題と幾らかちょっと性質が変わってきたというふうに考えています。
 第一には、安全保障問題です。
 アメリカの議会の報告書を見ますと、彼らは、彼らの大テーマの一つである国際テロ対策においてアフリカを非常に重視しています。なぜならば、国際テロが一番頭を出しているところはアフガニスタンであり、イラクであり、それからパキスタンだろうと言っていますが、彼らに兵たんを与えているのはアフリカだと言っています。国際テロが組織を固め、資金を回し、それから人員を訓練しているのはどうもアフリカだというふうにアメリカは認識しています。それもあって、アメリカはアフリカの軍の再編成に非常に熱心に取り組んでいます。
 それから、もう一つの資源問題ですね。中国の急成長によって、二十一世紀世界は二十世紀末よりはるかに多くの資源を当面必要とします。そうしますと、これまで掘らずに来たアフリカの資源をどうしても掘らなければいけない。それが対アフリカ投資を急速に増やしているんですが、その中で日本もやはり参画をしていかなきゃいけない。日本の商社もレートカマーで、世界的な規模から比べれば言ってみれば規模の小さい企業ですが、それでも先ほど見ていただいたとおり健闘している。それの支援をやはり国家としてやっていかなければならないだろうというふうに思っています。
 その究極は、人類は果たして貧困問題をなくすことができるのか。世界経済が必要としているアフリカは二十一世紀になって初めてグローバリゼーションを受けましたから、必要とするようになったアフリカの中で、アフリカはそこで入ってくる資金を貧困問題解決に回すことができるような経済を構築できるかどうかということが一つのかぎであろうというふうに思っています。それを日本は助けることができるかどうか。
 その一つのアイデアとして申し上げたいのは、日本がかつてアジアの地域ドナーから世界のドナーになったときに「東アジアの奇跡」という報告書を世界銀行に委託して作りました。それはアジアの発展モデルを普遍化するための仕事であったわけですが、これからの二十一世紀において必要なものの一つはこの資源国バージョンを作ることではないかというふうに思っています。資源収入を国家建設につなげていく、国家の福利厚生につなげていくということのモデルというのはちゃんといるわけで、それはノルウェーであり、カナダであり、オーストラリアです。こういった国の発展経験を、東アジアのときに日本及び東アジアをきちっと調べたように、日本が支援をしてそこを一つの提言としてまとめていくということはこれから非常に重要な意味を持つのではないかというふうに考えております。
 ありがとうございました。
#11
○会長(石井一君) 次に、山田外務省参事官。
#12
○政府参考人(山田彰君) それでは、簡潔に御報告申し上げたいと思います。
 皆様のお手元に「TICADW(第4回アフリカ開発会議)フォローアップ」という資料が配ってあります。TICADWのフォローアップについてはここに詳細に書いております。
 これには立ち入りませんけれども、日本は、アフリカ問題の解決なくして世界の安定と繁栄なしとの考え方から、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップを基本哲学とするTICADプロセスを基軸としてアフリカに対する協力を積極的に実施してきています。
 皆様御承知のとおり、昨年、横浜で開催されたTICADWは、三千名以上の参加規模、レベル等において歴史的な会議でありました。同時に、先ほども少し御紹介がありましたが、TICADWはこれまでの三回のTICADにも比べていろいろな意味で画期的であったような気がしております。
 従来、欧米ドナーを中心に対アフリカ支援は貧困対策としての基礎生活分野の支援のみを重視する傾向が比較的強かったと思います。しかし、TICADWにおいては、「元気なアフリカを目指して希望と機会の大陸」という基本的なメッセージの下、教育、人材育成、保健・医療、水といった基礎生活分野の支援を通じた人間の安全保障の確立と並んで、インフラ整備、農業・農村開発、経済成長の加速化を大きな柱の一つとして掲げ、貿易・投資の促進等を通じた経済成長により貧困を削減するという考え方を示し、国際的な支持を得ました。
 この場合、国際的な支持を得たというのは、先進国あるいは日本だけが言っているわけではなくて、むしろアフリカの人々から、基礎生活分野の支援を通じた人間の安全保障とともに貿易・投資を通じて経済成長を加速化していきたい、そういう声が非常に強かったということです。
 現在、TICADWで日本が表明した二〇一二年までの対アフリカODA倍増、最大四十億ドルの円借款供与、アフリカ向け無償・技協倍増等の約束の実現に向けて具体的な支援策の着実な実施に取り組んでいます。
 先ほど、大林先生からも御紹介あったように、TICADWの一つの大きな特徴は、フォローアップメカニズムを非常に強化したことです。従来なかったようなシステムを作り、報告書を作り、このフォローアップに向けて現在、外務省、JICA、関係機関の同僚は膨大な作業に日々取り組んでいるという状況です。
 それから、在京大使それから関係者等は定期的に関係省庁・機関の人たちを交えて会合を開いて、TICADWを一時的な、一過性なもののイベントにしない、これを継続的なものとして進めていくという形を取っています。
 三月にはボツワナでTICADWフォローアップ閣僚級会合が開かれました。その際には、中曽根外務大臣、福田前総理大臣、御法川外務大臣政務官の出席を得て、現在の世界的な金融経済危機が日本経済に影響を与える中でも日本がTICADWで行った約束を着実に実施するという考えを強調してアフリカ諸国から高い評価を得ました。そして、現下の危機に対処する支援として、当面、約二十億ドルの無償資金、技術協力のできる限りの早期実施、社会的弱者への影響を緩和するための約三億ドルの食料・人道支援及び世界エイズ・結核・マラリア基金への約二億ドルの拠出を表明いたしました。
 先ほど、これが追加的なものかどうかという御指摘がありました。強いて言えば、これは、従来TICADでやったコミットをできるだけ早くやる、前倒しする、そういう性格のものだというふうに考えています。
 ロンドンで開催されたG20金融サミットにおいても、麻生総理から対アフリカ支援にかかわる力強いメッセージを表明して、日本はしっかりとコミットを守っていくと、ほかの先進国ドナーもアフリカ支援に対するコミットを守っていくべきだというメッセージを発出していただきました。もう間もなく行われるイタリアのラクイラ・サミットでも同様のメッセージを発出していきたいというふうに考えています。
 外務省としては、今年度の国際協力重点方針において対アフリカ支援の重要性を強調しています。アフリカのインフラ、農業、保健、教育、水・衛生、気候変動等、各重点分野におけるプロジェクトの発掘、形成のために、今年の六月までに計約百件の協力準備調査を既にアフリカ諸国に派遣いたしました。
 それから、貿易・投資の促進については、昨年秋、三件十二か国の貿易・投資ミッションを派遣いたしました。今年度も引き続き貿易・投資ミッションを派遣するなどして、現在の厳しい状況ではありますけれども、アフリカとの経済関係の強化に努めたいというふうに考えています。
 二〇〇八年のアフリカ向けODA実績は、総額は十七・五億ドル、対前年比で約六〇%以上増加しています。TICADWで表明した公約達成に向けて順調に増加していますが、アフリカ援助に対しては依然としてやはり非常に困難があると思います。金額を増やすだけではなくて、そのための我々の、外務省、JICAにおける体制の整備、それなどは引き続きやっていく必要があると思います。
 これからも、皆様の御理解とお力添えを得て、世界銀行、アフリカ開発銀行、それから国連諸機関などのような開発パートナー、それからアフリカ各国できめ細かい援助活動を実施している我が国及びローカルのNGOと連携しながらアフリカ支援を積極的に推進していきたいというふうに考えています。
 なお、アフリカ支援の倍増に向けて努力していく一方で、ほかの地域に対してそれぞれの重要性に見合った支援を続けていく必要があると思います。先ほど平野先生の方から、アフリカ援助が増えて、東アジア、アジアに対する援助の額が相対的に下がってきたという御指摘がございました。まだまだ私は欧米並みというところまでは至っていないと思います。ただ、アフリカ支援が非常に増えてきたということは間違いないんですけれども、特に東アジア諸国等に対しては円借款を中心にして引き続き積極的な支援を行っていく所存です。
 さらに、アフガニスタン、パキスタン、それから最近、島サミット等も行われましたけれども、依然として支援を必要としている国々がたくさんある。そうした中で重要性に見合った支援を続けていくためには、ODAの全体のパイの拡大というのがやはり非常に必要であると思います。
 これから外務省としては、援助の中身、いかに効率化していくかということで、先ほど大林先生の方から、そのDAC諸国で言った、相手国との関係でいかに効率化していくか、それから、より必要としている人に届く支援、そのためには、外務省、政府の援助の改善も必要でしょうし、それから日本のNGOが更に力を強くする。そして、依然としてまだ、アフリカで活動しているNGOはかつてに比べると非常に増えたと思いますが、まだ必ずしも非常に多くの数おられるというわけではないので、NGOとの連携も深めてODAを強化していきたいと思います。
 そのためには、やはりODA予算全体の増額が必要になってくるというふうに日々感じている次第でございまして、この点について先生方の御支援と御理解を是非お願いしたいというふうに思っております。
 以上です。
#13
○会長(石井一君) ありがとうございました。
 それでは、質疑に入りたいと存じます。
 今日は大変有益な参考人の意見が述べられましたが、かなり時間がオーバーをいたしまして質疑の時間が多少狭まっておりますので、その点も念頭に、簡潔に次々に御質疑を願えれば大変有り難いと存じます。どうぞよろしくお願いします。
 川口元外務大臣。
#14
○川口順子君 真っ先に質問をさせていただくわがままをお許しいただきたいと思います。
 大変に興味深いお話をお三方から伺いまして、特に大林先生と平野先生、お立場が逆なので非常に興味深く伺わせていただきました。
 質問、二つございまして、まず大林先生に。先ほど援助の効率化というお話ありました。山田参事官からも効率化を目指すというお話ございましたけれども、大林さんの目から御覧になって、日本のODAは効率化という観点からどういうふうに評価をなさるかというのが一点です。
 それから、二点目は山田参事官になんですけれども、先ほどの大林先生と平野参考人との意見の違い、要するに、人間の安全保障、個人を対象にして支援をするのがいいのか、あるいは、やはり経済あるいは国の枠組みということを同時にやっていかなければいけないというのか、その二つの考え方の実はバランスが難しいんだと思うんですけれども、そのバランスについて日本政府としてはどのようにお考えかということで。
 それから、もし何か御意見ございましたら、平野参考人からも今の二点についてお伺いをしたいと思います。
 以上です。
#15
○参考人(大林稔君) 先ほどODAの効率化についてDACの考え方とは違うというふうに申し上げたので、その点はお分かりいただけたと思います。そういう意味で、僕らから見た、貧困者の方から見てどうなのかというと、これは実は他のドナーとの比較というのはないので、あえてNGOとの比較をしたいというふうに思います。
 実際に援助を受ける側から見ると、非常に日本の専門家とかそういった方々はモチベーションも高い、やる気もあると、そういう気迫に満ちた方がたくさんいらっしゃる。実際、私たちのNGOにもそういう方はたくさん入っていたわけですけれども、そういう方々の熱意が実際に届いていくのかっていうと、そこが、そういう意味での効率は非常に低いと思います。
 まず、貧困者から見てどうかというと、先ほども御指摘したように、実は貧困者に届くという援助はしていない。それ、仮に、衛生プロジェクトがあって貧困者に支援をしているけれども、それは政府が支援をするのを訓練しているんであって、たまたまそこに日本人がいるだけなんですね。ですから、終われば帰ってしまうわけですから、まあもうちょっといてくれればいいのにというのが現地からいえば本音だというふうに思います。それが一つ。
 それから、JICAの方とかいろんな、JICAの人もうちのメンバーにたくさんいたんですけれども、その点で、非常に行政的な意味で援助の効率がどうして上がらないのか、様々な方の御苦労が抜本的な援助の改革にどうしてつながっていかないのかということについて言うと、二つあると思います。
 一つは、評価の役割です。評価というのは、人間でいうと学ぶということですね。だから、例えば、歩いていて廊下でつまずくと、次はつまずかないように足を上げるというのが評価でありますが、日本の評価は実はインテグレートされていないと思いますね。つまり、僕らも随分評価にかかわりましたけれども、制度とか枠組みを改革するという提案をするとまず受け入れられない、削られてしまう、ちょっとしたことの提言であれば受け入れられるんですが。ということは、結局、どの専門家が悪いみたいな話になってしまうんですけれども。
 あるいは、一般的な心構えの話であればオーケーなんですが、無償という枠組みはおかしいとか、ノンプロ無償ってもう要らないとか、あるいは政府への受渡し期間三年というのはおかしいとか、カウンターパート制度を変えなさいとか、こういう抜本的な枠組みの提言というのはまず受け入れられない。それは結局、役所の仕事の仕方なんですね。お客様が普通は民間企業は神様ですから、貧困者に不満があれば変えなきゃいけないということになるんですが、お役所の場合は、神様はマニュアルであり前例ですから、前例どおりやるということになりますから、当然評価というのは余り尊重してくれないんですよね。
 評価予算って結局何かと。これは外務省のお役人の方が言っていたんですが、一種のアリバイでしょうかというふうに言っていましたけれども、評価をするということが大事であってですね、評価が。そういう意味では、日本の援助というのは、スキームが、新しいスキームはできますけれども、古いスキームをなくしたという話はないんですね。構造調整があれば構造調整に無償ができる、貧困削減があれば貧困削減無償ができるけれども、抜本的には変えない。これが一つですね。つまり、さっきの、人間でいえば毎回同じところでつまずいているということですね。学習能力が弱いということですね。
 もう一つは、アカウンタビリティー。つまり、説明責任が現地の貧困者あるいは日本国民に向いていないんですね。彼らにどういうふうに説明しようかというよりも、JICAだったらJICAの本部に、あるいは外務省に、外務省の本省に、外務省は財務省に説明責任が向いておりますので、何か新聞で取り上げられるとそのためのリポーティングが増えるんですね。その結果、膨大な作業をやっております。
 JICAの現場の事務所というのは、最近、緒方さんになってから随分増えまして充実したんですが、ほとんど全員事務所に遅くまで閉じこもっておりまして、日本に資料を書いているんですね。ですから、膨大な仕事が、人々の、お客さんのための仕事ではなくて、東京へのリポーティングになっていると。そういうところに非常に無駄が多いんじゃないかというふうに思います。
#16
○政府参考人(山田彰君) 個人を対象にするか、国全体の経済成長を図るかと。私は、日本の援助は、アフリカに限らずアジアにおいても、欲張りなようですけれども、やっぱり両方を目指してきたんだろうと思います。
 日本の援助の特徴というのは、それはいい面でもあるんですが、いろんな意味でバラエティーに富んでいる。分野でも、援助スキーム、援助の制度においてもバラエティーに富んでいるということだと思います。それは、アジア、東アジア諸国においては相当成功してきたというふうに考えています。
 しかしながら、アフリカにおける援助というのは、ほかの欧米諸国のドナーが長年掛かってもなかなか成果を上げられなかった、そういうところです。アフリカにおいても、我々はむしろ今までは基礎生活分野中心であって、それも十分一過性のものに終わる。あるいはドナーが、先ほど指摘がありましたように、引いてしまったらそれが根付かないというところにどうやって根付かせていくかということを我々はもう一度今チャレンジしているような感じになっています。
 したがって、二つの柱というふうに考えておりますけれども、経済成長の加速化と基礎生活分野の支援を通じた人間の安全保障の確立、両方を重視していこう。そのときには恐らく援助のやり方が違ってくるんだろうと思います。例えば、経済成長の加速化については円借款は特に有用なスキームになると思います。基礎生活分野の支援については無償資金協力や技術協力、特に、よりコミュニティーに根差した開発をしていく。JICAの支援もかつてに比べれば、大林先生はきっとまだまだだと言われると思いますが、よりコミュニティーに近づいてコミュニティーの人々の意見を酌んで援助プログラムを作っていこうというふうになっています。
 しかしながら、日本だけでアフリカの全体の貧困層を救うということは、やはり日本の現在のリソース、それは予算面でも人員面でも難しいというふうに考えています。それであるとすれば、幾つかの国で成功例をつくっていく、それをアフリカ自身が学んでいく、そういうふうな形で貧困削減につなげていくというのが一つの方法ではないかというふうに考えています。
 それから、先ほど評価はアリバイづくりでインテグレートされていないという話がありました。私は、経済協力、二十年以上働いております。私は、日本のODAというのは、もちろんいろいろ改善すべきところがまだまだたくさんあると思いますが、ほかのドナーと比べて決して引けを取るということはないと思います。日本の援助が主として行われたところで、アジア諸国で一定の経済成長、発展が行われたのは、日本の援助の仕方がやはりかなり優れた部分があったからではないかというふうに考えています。
 そして、その制度を見直すということが後ろ向きだというふうなことがありました。少なくとも我々は、できるだけ少しでも前に行きたい。ただ、日本の国内でいろいろな日本の国内の法制度あるいは行政制度の中のある種の制約の中で動くときには、いろいろな改善は本当に一歩一歩しか進まないと思います。
 評価で行われた提言は、恐らくその翌年にすぐ変革されるということはなかなかないと思います。ただ、長期的に見れば、日本の援助制度というのはいろんな意味で改善されてきて、あるいはその国際的な潮流を、国際的な意見を踏まえてより新しいものになってきたと思います。もちろん、今が百点というわけではありませんし、いろいろな提言を出されてその場で受け入れられなかったということが五年後、十年後に実現していた、私が例えば前のポストから次のポストに数年ぶりに帰ってきたときに新しいやり方が出てきたということはあるわけであって、決して前進を怠っていると言うつもりはございません。
#17
○参考人(平野克己君) 今、川口先生からいただいた御質問は、開発や援助の根幹にかかわっているところだと私は実は認識をするのですが、そもそも開発政策って一体何なのか、開発途上国って一体何なのかということだろうと思うんです。私も、大林さんと言っていることが全く違うことを言っているわけではなくて、開発に協力すること、あるいは自国の開発を進めることの究極の目標は貧困をなくすことだということは、これは揺るがない原則だと思っております。
 ただ、貧困をなくすときに、日本であれば何をするかというと社会政策をするわけですが、社会政策では貧困をなくせない国のことを開発途上国と呼ぶ。社会政策で救えない貧困に対して行う政策が開発政策と言うというふうに思っています。そうしますと、開発援助の効率、エイドエフェクティブネスと言うんですが、これはもうずっと五十年ぐらい計測の研究が進んでいて、いまだに援助と経済成長の間に関係はないというのが出てくるんですが、なぜそれじゃ経済成長で測るのかというのは、今申し上げた定義に基づいて経済成長効果を測るのだというふうに思っています。
 経済成長効果をもって援助の効率あるなしを測るならば、一番簡単なのは、経済成長というのは生産が増えることですから、生産者をカウンターパートに組むことだというふうに私は思います。生産者をカウンターパートに組むことによって、先ほどは需要者をカウンターパートに組むODAイノベーションのお話をしましたが、生産者と組めば確実に生産増産効果が得られます。つまり、確実に援助効果が取れるようになるのです。それは官民連携の一環であるというふうに思っています。
 私、こうは申しましても、開発援助において社会政策的なプログラムが意味がないと申し上げているのではありません。一番効果が見えやすいのは社会政策的なプログラムなんです。学校を建てたり衛生の促進をしたりというプログラムです。ただ、この場合の効果というのは、一体何人にそれが配られたかということを調べることであり、例えば何人の子供を学校に収容できたかということを調べることであって、それによって例えば所得がどれだけ上がったかという目標をそこに課してはいけないということを先ほど申しました。そうすると、それをやっている事業、例えばJICAは、過重な目標の設定によって常にマイナス評価にさらされるということになってしまいます。
 援助が政策であるということが目的と手段の間にきちっとしたバランスを取るということだろうというふうに思っているんです。
 ありがとうございました。
#18
○会長(石井一君) 増子輝彦君。
#19
○増子輝彦君 民主党の増子輝彦でございます。
 今日はありがとうございます。三人の参考人の方に御礼申し上げたいと思います。
 ただ、今日、別室でODA特別委員会が同時刻に開催されておりまして、遅れましたことをおわび申し上げたいと思います。
 平野参考人にお聞きしたいと思います。
 先ほど二十一世紀のアフリカ問題、特に資源問題、二十一世紀の日本資源安全保障ということで大変重要な指摘がございました。実は、私もかねてより日本のエネルギー資源という問題にとっては極めて重要な問題であり課題であると。エネルギーは、御案内のとおり、化石燃料から非化石燃料、資源エネルギーへ転換という大きな今、時期を迎えております。しかし、資源問題だけは、なかなか日本はこれを自国でやることは不可能に近いという状況にございます。
 昨年、実は南アフリカ・ケープタウンで、IPU、世界国会議員会議がございました。私はそこに参加をしてまいりました。それはなぜかといいますと、資源問題に大変興味を持っておりましたので、現地の状況を、現地で頑張っている日本企業の方々とも懇談をしたいということを含めて実は行ってまいりました。
 御存じのとおり、中国は大変自国で資源をたくさん持っているにもかかわらず、今アフリカに大変な力を注いでいると。五十三か国のアフリカに胡錦濤主席始め多くの首脳が代わる代わる一年の間に一度は訪問をして資源外交を進めているという現状がございます。
 それに比較して、我が国がこの資源外交については極めて弱いという状況の中で、一昨年、経済産業大臣として当時、甘利大臣が初めて訪問して資源外交を少しやってきたという程度でございます。
 そういう中で、日本が資源外交、特にアフリカを中心としてやっていくときに、私は、単なるお金で資源を買うということだけではなくて、今ODAを中心とした様々なアフリカが抱えている課題をどのような形の中でやっていくかということが極めて重要な課題だろうと。
 今、平野参考人からもお話がございましたとおり、インフラ整備、学校建築だとかあるいは道路整備だとか、様々な実はアフリカの抱える課題があるわけでありますから、現地で頑張っている日本企業の方々も、中国と全く同じやり方ではない方法、日本独自のやはりそういうODAを含めた外交戦略を取るべきだという強い意見もお聞きしてまいりました。
 そういう意味では、平野参考人に改めてお聞きしたいと思いますが、この資源的な問題を日本が常に抱える中で、安定して資源を確保しながら、なおかつ価格の面を含めながら、どのような形でアフリカとODAを使いながら有効な方法でやっていくかということについてお考えがございましたら、それを教えていただくなり、御見解をお聞かせ願えれば大変有り難いと思います。
#20
○参考人(平野克己君) 今の御質問に関して具体的な極めて目の前に私たちの迫った事例として、住友商事が中心になって進めているマダガスカルでのニッケル一貫生産プロジェクトがあると思います、アンバトビープロジェクトと呼ばれるものですが。
 これは、現下では日本最大のアフリカ投資です。ニッケルをあそこで掘って製品にして世界に出すというプロジェクトですが、残念なことに、このプロジェクトが実際に動き出してすぐマダガスカルでクーデターが起こってしまいました。現在、日本は、また周辺のアフリカの国もクーデター後の政権を承認していないという状態に至っています。
 このアンバトビーが立ち上がったときに当時の政権と住友商事がお約束をしたこと、それは、住友商事は貴国の発展全般に対して責任を取るステークホルダーになりました、ですから、特に私たちは日本の経験を踏まえて教育支援をこのプロジェクトが利益が生まれる前から支援したいと思いますというふうに社長自らおっしゃって、住商文庫というのをまず寄贈されました。
 実は、政府がそういった形で、ないに等しい状態ではありながら、私たちの研究所で来月には一隊を住商さんの中に、マダガスカルに行きたいと思っております。これは住商さんと一緒にお話をしながら進めているのですが、あそこでマラリア対策、当然住商さんおやりになっていますけれども、マラリア対策の有効な手法は何かというのを私たちの、研究者として、実験経済学という手法を使って開発をするというのを一緒にやろうと思っております。
 これは、住友化学がお作りになっているオリセットネットをどうやって効率的に使うかという話なんですが、実はこれは、マラリアの感染率が減ることによって実は大変な教育促進効果があるということをきちっと数字で出して、住商のこのプロジェクトの中で大々的なCSRとして使っていただこうと。クーデターが起こってはしまいましたけれども、その政権いかんにかかわらず、マダガスカルの国民から歓迎をされ、どのような政情不安定の中でもマダガスカルの中で例えば襲われることのないような安定した事業運営をしていく一つの必要な防衛策としてCSRを使っていただこうという、そういう考えです。
 もちろん、今御質問のあった資源戦略として、先ほども申しましたJOGMECさんが中心となってやっている、中国でしか今のところ取れない、ないと言われているレアアースを南部アフリカのマンガン鉄鉱脈から取るという、これは日本の理論なんですが、今進めているという極めて直接的なこういった関与の仕方、これは現地の政府もとてもウエルカミングなんですね、日本が本気を出してやってきてくれると。日本が、国益が懸かっています、利益が懸かっていますという、そういう言い方というのは、実は現地ではすごくウエルカミングで、ということは、日本は簡単には引かないんだな、国内の財政事情でいなくなっちゃうということはないんだなと。中国の強みというのは、中国はもう繰り返し繰り返し、中国はアフリカを必要としますということを繰り返し発言しているんですね。
 そういった日本との言ってみれば実利を背景とした関係が安定した関係をアフリカとの間に築き、その中に資源の安定供給があるという、少し大きな枠組みで設定していくこと、その中でODAが使われていくことが日本の経済安全保障に大きく資するものだというふうに考えております。
#21
○会長(石井一君) 山下栄一君。
#22
○山下栄一君 今日いろいろお話を聞きながら、いろいろ感じることがたくさんあったんですけれども、今日はアフリカ援助ということなんですけれども、私は、国が、政府がアフリカにかかわるときは、ちょっと、ほかの地域と同じパターンでやっていいのかなという、そういうことをお話を聞きながら感じました。
 アフリカという地域は、人類誕生の地であるというふうに教わっているわけですけれども、ところが、十九世紀以降、いわゆる先進国と言われるところがアフリカに侵入し始めたと。で、植民地化したりしたわけですけれども、同じことを繰り返さない、二十一世紀ですね、そういうかかわり方をしなくちゃならないと。既存の字句、尺度で、例えば開発という言葉とか経済成長という言葉とか、こういう我々が今まで学んできたこの字句、尺度でアフリカを応援するということでいいのかなということを非常にお話を聞きながら感じたんですけれども、アフリカから学ぶといいますか、アフリカから学ぶことが多くなっているのではないかという、そういう価値観の転換みたいなことでかかわり方を考え直す必要があるのではないかと。
 特に、政府がかかわる場合はちょっと丁寧にやらないと、本当にそれはアフリカの人たちにとってプラスになっているのかというふうな、そういう視点も必要ではないかと。未開発と開発は、開発の方がそれはプラスじゃないかと。本当にそうですかと。文明社会は西洋方式でいくと開発、未開発は遅れているというようなイメージなんですけれども、未開発の方が、未開といいますかね、未開は悪であるという、本当にそうなんですかねというふうな、そういうこともアフリカに対するかかわり方のときは必要ではないかと。だから、経済成長とか開発という言葉が、ちょっとアフリカ地域には非常にそういう尺度で考えるやり方はどうかなということをいろいろお話を聞きながら感じた次第でございます。
 キーワードはやっぱり人間の安全保障と。それから、NGOの役割が大事だと。政府のかかわり方というのは時の政権によっても変わるでしょうし、ころころ変わってしまうと。だけれども、アフリカにかかわるときは、私はあえて援助と言いませんけれども、かかわるときはやっぱり息の長いといいますか、その地域のこと、文化もよく分かっている、そしてアフリカに命を懸けているNGOの方々がかぎを握っているなと。そこを大事にし、そして人間の安全保障という視点を大事にしながらアフリカとのかかわりは考える必要があるのではないかと。
 アフリカから学ぶという視点の上で何ができるかと。援助という言葉が正しければ、応援ができるかというふうな考え方が、非常にアフリカとのかかわり方においてはそういう視点が大事だなというふうなことを今日お三人の方からお話聞きながら、ちょっとほかの地域と同じやり方で政府開発援助みたいなそういう振り方、振り方というのはおかしいですけれども、そういうことを考えていると、十九世紀のヨーロッパが失敗したような、本当にアフリカの人たちにとってプラスになることは一体何なのかというふうなことをやっぱりもう一度考えることが大事なのではないかというふうなことをお話聞きながら感じた次第でございます。
 こんな考え方についての御感想をお三人の方からお聞きできればと思います。
#23
○参考人(大林稔君) 私も全く同感だと思います。
 先ほど平野さんもおっしゃいましたけれども、結局、経済成長というのは援助で起こせない。アジアでも、援助が経済成長を起こしたかというのは確証がないんですね。つまり、経済成長を起こしていたので、民間投資があって経済成長があったために援助が効率的に利用されたというのが事実に近いのであろうというふうに研究者の間では一般的に思われております。
 それから、政治に関しても、結局どこの国の政治も外から変えることはできない。言わば、経済は民間の仕事であり、政治は人民の仕事であります。むしろ、やっぱり御指摘のあったように、アフリカで一番問題は、一般の人が自分たちで自分たちの生活をつくり、それから、自分たちの政治を選んで自分たちの経済をつくっていくことが妨げられているというのが非常に大きいと思うんですね。
 先ほど平野さんから御指摘があったように、結局、アフリカの経済というのは資源を買っている先進国の都合で上下しているわけですね。政治も、結局は資源に支えられた政治家が援助を与えられ、そういう人たちが民衆の意思に反して居座ってしまう。この間、ガボンのボンゴさんという大統領が亡くなりましたけれども、これはアフリカ有数の産油国で、四十六年間政権におりましたですね。やっぱりこういうことは、ガボン国民が望んだわけではなくて、言わば産油国から石油を買いたい人たちが望んだ。そういう人たちからお金を、言ってはなんですが、支えられた、大量の援助を受けた人たちがそうやって生き残っていくわけですね。
 そういう意味では、私たちが援助でできることというのは、成長も起こせないし、政治も直せない、結局、邪魔をしないことだと思うんですね。なるべく悪いことはしない。少なくとも、日本の会社が行って資源収奪だと言われるようなことはさせない。それから、民衆がちゃんと食べられなくて、自分たちの意見が言えないとか、自分たちの力が発揮できない、そういう状況を最低限少しでも改善していくということがせめてできることであり、またそれに関しては確実にできるという実証があるというふうに思います。
 そういう意味では、アフリカから学ぶことということですけれども、実はアフリカ人の方がすごく一生懸命やっているというのは我々もTICADWのときに非常に学んだんですね。アフリカのNGOなんかないでしょうというふうに僕らが始めたときに言われて、実際に行って調べたり話すと、アフリカの方がNGOは実はしっかりしているし、数も多いんです。
 アフリカのNGOを、これは外務省さんからも少しお金をいただいたんですが、日本に呼んできて話をしたんですが、すごい優秀な人ばかりで、立派な人ばかりで、我々の事務所を見せたら、こんなところで日本のNGOは仕事をしているのか、偉いなと言われて、日本のNGOに金をくれというのはやめようというふうに、むしろ我々が助けてあげなきゃいけないし、我々の方がプロだと言われて、非常に全くそのとおりだと思って、それ以来アフリカから学ぶようにしているんですが、実はジャーナリストにしてもNGOにしてもアフリカの方が、言わば恐らく、明治期の日本の言論人とか、そういう人たちのように気概があって優秀な人たちがたくさんいます。そういう意味では、民衆レベルでも本当に目をみはるような篤農家とか、そういう人たちがたくさんいます。
 そういう力をやっぱり邪魔しない、そういう人たちが力を発揮する、邪魔しているものを少しでも除去していくというのがせめて我々にできることかなというふうに思います。
#24
○参考人(平野克己君) 私は、アフリカの農業プロジェクトに三年間従事していたことがありまして、いろんな国の田舎の地べたをはいずり回っていた時代があります。そのときに確信をしたのは、アフリカ人は絶対に豊かになろうとしている、豊かになりたいと思っている、子供を学校に入れたいと思っているんです。これを開発と呼ぶのです。開発に対する疑問を持ったら私たちのこの分野では仕事はできません。
 それから、アフリカに優秀な人たちがたくさんいることは事実ですね。それの能力の発揮が妨げられていることも事実です。ただ、一番優秀なアフリカ人に会いたければアメリカに行くのが一番いいんですが。
 もう一つ、アフリカは貧困の地です。貧困であるということはどういうことかというのも長いアフリカとのかかわりでたくさん見てまいりました。貧困であるということは人間の悪徳がそこにすべてあるということだなというふうに実感しております。貧困であるがゆえに、アフリカ人のそのずるさ、それからその残虐さ、これもすごいものがあります。アフリカはもう汚職の巣窟です。
 実は、心情的には私はアフリカが余り好きではありません。特に、最近のアフリカはどんどん悪くなりました。社会の根幹が崩れていくような、アフリカがそれまでアフリカを支えてくれたコミュニティーを壊していくような動きが残念ながらここ数年見られるような気がします。
 アフリカに幻想は持てないのです。アフリカの本当の隠された能力を発揮していくためには、彼らを今覆っている暗い殻を何とかして破ってあげなければいけない、そういうふうに考えるべきだと私は思っております。
#25
○政府参考人(山田彰君) 開発というものをどういうふうに考えるかというのは、開発援助に携わる者が常に持っているものだと思います。開発が本当に未開発よりいいのかという質問は、我々の中では意味があると思いますけれども、アフリカの人たちにそういう質問をぶつければ、きっと、おまえは何を言っているんだ、豊かな人だからそんなこと言えるんだ、おれと一緒に暮らしてみろ、そんなことがよく言えるなと、そういうような反発を、現にそういう反発を受けることもあるわけです。今、平野先生がおっしゃったように、アフリカの人は豊かになりたい、自分たちの力をもっと発揮したい、みんなそういうふうに思っているわけであって、それにやはり我々はこたえていく必要があるのかなというふうに思います。
 それと、援助では経済成長は起こせないとおっしゃられましたが、正確に言えば、援助だけでは経済成長は起こせないというふうに思います。経済成長、あるいはその社会の発展でもいいんですけれども、それを起こすのはやはり究極的にはそこに住んでいる人たちの自助努力によるものしかないと思います。
 日本の政府開発援助は、常にその一番基本的な理念として、途上国の自助努力を助けるということを置いてきました。ODA大綱にもそれは明記されています。今は、国際的にはオーナーシップという言い方をして、その自助努力を助けるという言い方が言わば主流になりました。しかし、この考え方は、日本が戦後ずっと言ってきたときに常に国際社会の主流であったというふうには考えておりません。長らく、やっぱり特に欧州諸国なんかは、一種のチャリティーというか、慈善的な精神で、上から与えるんだという精神があったと思います。我々は、その自助努力を助ける、そこに住んでいる人のオーナーシップを重視して、それの対等なパートナーとして一緒に汗を流して働くんだと、そういう支援をやってきたつもりです。
 もちろん、アジアでの、かぎ括弧付きかもしれませんが、成功が直ちにアフリカに受け入れられるほど簡単なものだとは思っていません。アフリカは我々にとってやっぱりまだまだ経験が少ない地です。専門家も非常に少ないです。しかし、援助を行うに当たっては、その国、その地域のやっぱり文化をよく学びながら、謙虚な気持ちで相手国の人々の自助努力を助ける、そういう精神で日本の援助はやってきたし、これをこれからも続けていくということが重要だろうと思っています。
#26
○会長(石井一君) 加藤修一理事。
#27
○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。
 三人の参考人の皆さん、有益なお話を伺いました。大変にありがとうございます。
 平野参考人にお伺いしたいわけですけれども、ふだん余り耳慣れない言葉を聞いたわけでありますけれども、それは「資源の呪い」という言葉ですけれども、また、先ほど汚職の巣窟であると。アフリカは、そういった意味では、政府のガバナンスということはどうあるべきかというのは非常に大事だなと、そう思っております。その「資源の呪い」ということについては、学界では資源依存型の経済成長は開発にとってはむしろマイナスであると、このように論文には示されているわけなんですけど、そういった意味では、資源国がどういう在り方をするかというのは極めて大事だと思います。
 それで、二〇〇二年のときにブレア首相がアフリカでたしかEITI、地下資源とかそういう鉱物の関係、ガス、石油の関係でありますけれども、採取産業の透明性のイニシアチブ、EITIということを提唱して、それがかなりアフリカの中でも進んでいるやには聞いているんですね。多国籍企業がその収支の関係を明確にすると。政府にどれだけお金を出したか、政府はまたどれだけもらっているかという、そういった透明性の関係についてしっかりとしたイニシアチブを取るように国際社会の中で明確にしていこうと、そういうレポートをしっかり出して、監査もしていかなければいけないと。
 それが貧困撲滅にどうお金を使うか等々含めて、経済開発にはどういうふうに使われるかということを含めてしっかりとした対応ができるようにそういうイニシアチブがつくられたというふうに聞いておりますが、そういった面についてはどういうふうに現在、平野参考人はとらえられているかということが一つでございます。
 それから、大林参考人にお願いしたいんですけれども、先生の配付資料の十一ページに「進まない政府の能力強化」ということで、日本が引き揚げてしまうと元に戻ってしまうというような表現があったりしたわけでありますけれども、これ、相互審査メカニズムというか、APRMということがアフリカの諸国間で言われていて、相互にガバナンス関係含めて相互審査メカニズムということをしっかりやっていこうということで、これは多分、日本政府も大変な関心を持ってやっているように聞いておりますけれども、こういうことがどれだけ機能しているかというのは、ある意味では非常に大事だと私は思っております。
 ただ、先ほどの汚職の巣窟というふうな言葉が返ってまいりますと、余り進んでいないんだなというふうにとらえざるを得ないんですけれども、そういった面についてはどういうふうな状況になっているかということ含めて是非教えていただきたいと思います。
 それから、外務省の山田参事官には、日本は国連の腐敗防止条約、これは日本は批准していないと私は現段階で認識しておりまして、これはやはりどれだけ実効性が上がるかどうかというのは当然あると思いますけれども、やはり国連の腐敗防止条約については日本は批准すべきではないかと思いますし、あるいはOECDの関係については、外国公務員贈賄防止条約、これについては日本政府は批准していると思うんですね。ただ、実効性の点ではまだまだ、こういった面については日本政府としては積極性がもっと必要ではないかなと私は思っております。
 それと、アフリカ当該国がやはり果たすべき問題は、先ほど申し上げました相互審査システムというか、そういうことですけれども、APRMと言っているアフリカ・ピア・レビュー・メカニズム、こういうものが当該国において積極的に相互に行われることが非常に大事なわけで、これは日本政府もこの辺についてはよく分かっていると思いますので、こういったことについて、今後更に機能が向上するように日本政府としても果たしていかなければいけないなというふうに考えておりますけれども、この辺についてもしお考えがあれば教えていただきたいなと思います。
 以上です。
#28
○会長(石井一君) それじゃ、時間が大分追ってまいりまして、あとまだ二人の質疑者があります。多少延長いたしますが、ひとつ簡潔にお答えをいただくことにしまして、まず大林参考人。
#29
○参考人(大林稔君) まず、プロジェクトの持続性と言われている問題についてお話しします。
 APRMですけれども、これはAUの中で、アフリカ連合の中でガバナンスを国同士で相互にチェックしてよくしましょうというものですが、おっしゃるとおり、余りそれほどの進展が見られていない。制度ができたということは非常に大きな前進だと思いますけれども、必ずしも所期の効果を今のところ上げていないと言われております。
 恐らく最大の問題は、これが現地の政府間だけなんですね。議員さんとか市民社会とかは参加が非常に弱い。そうしますと、やっぱり大統領同士ですと余り強いことを言いたがらないんですね。ジンバブエの大統領がかなりいろいろ問題があると言われても、その人を非難をすれば自分にいずれ返ってくるかもしれないというふうなことがありますので、一種の大統領の仲よしクラブ的になっておりますものですから、そういう意味では、もっといろんな、ステークホルダーというんでしょうか、人たちが参加して、各国の国民の全般がかかわるような形にしないと、大統領同士で相互審査といってもなかなかうまくいかないというのが現状だと思います。
 それから、持続性の問題で一つ追加で言いますと、これはかなりプロジェクトベースの話で、行政が改善されないとかなんとかというより、核心はお金です。これに尽きます。例えば、日本がお金を支援をして、衛生保健を改善しようというのでプロジェクトをやって専門家を送って、各地でこういうふうにやるんですよというふうに村を回ってあげると。しかし、日本がいる間は、車が行っています、しコピー機もあるし、トナーもあるし、電気も来ているし、電話も来るんですが、日本が帰っちゃうと、公務員の給料は遅配であるし、モチベーションがわっと下がってしまう。田舎に行こうと思っても、もらった車が壊れると修理できない、ガソリン代は出ない、コピー機もトナーが来ないのでそれっきりとか、簡単に言うとごくそういうことなんですよね。
 ですから、これは本当に経済が順調に回り出して税収が上がってきて、それがうまく回れば結果的にはうまくいくんですが、税収が停滞しているときに、あるいは下がっているときに追加の仕事のやり方を教えたりあるいは追加の道路を造ってあげても、結局、経常経費が出なくなれば元へ戻っちゃうという非常に単純なことなんだと思います。これは、道路についても同じように経常経費が出なければ維持できないと。同じように行政サービスも経常経費が出なければ元へ戻ってしまうということなんだと思います。
#30
○参考人(平野克己君) ブレア首相のEITIについてですが、これは私も大変注目すべきイニシアチブだと思っておりましたが、なかなかその参加国が増えないという現状です。
 今、民間経済がどんどんアフリカに入ってきて、一つの方法、道筋として、ソブリンファンドの設立というのが特にアフリカの資源国で進んでいます。つまり、今使い道がないんならベンツを買ったりしないで、取りあえずは次の世代に残して運用したらどうですかというのが徐々に増えてきているように思います。これは私は望ましい方向ではないかなと思っています。
 現在、アフリカにそれでもそういった状態の、言ってみればバッドガバナンスに投資が入っていっているというのは、バッドガバナンスを乗り越える力、ガバナンスあるいはガバナンスの不在の中でも自活できる力がインベスターの方に付いてきているからだなというのが私の感想なんですが、そういった企業、インベスター等の接触の密度が高くなってくるに従ってアフリカのガバメントの方も徐々にルール化が進んでいる。特に大統領アドバイザーに様々な民間部門の、これはNGOも含めてですけれども、人たちが入ってくることによってガバメントの意識が徐々に改善してきているというのもまた実感しております。
#31
○政府参考人(山田彰君) 国連の腐敗防止条約については、国内法の担保等があってまだ批准されていないと承知しておりますが、詳細についてはちょっと私、承知しておりませんので、また後ほど御報告したいと思います。
 外国公務員の贈賄防止条約等については、日本政府としてはできるだけのことをやっているつもりですが、まだまだ積極性が足りないという御指摘がございました。日本として、もちろん日本の関係者、日本人がこうした条約に違反するようなことがあったときに積極的に条約にのっとって摘発するということが必要だろうと思います。ただ、現在行われているアフリカの汚職のような問題は、日本人だけが襟を正せば解決するという、そういう問題でもないような感じがいたします。
 先ほど、ピア・レビュー・メカニズムの話が出ました。確かに、AUは最近、アフリカにおける非民主的な政権の交代について従来よりは厳しい立場を取るようになってきているように感じます。すなわち、クーデターで成立した政権については従来よりも厳しく見ると、そういうふうな形になっていると思います。ただ、それがその国の個々の汚職等に対してどれだけ有効かというと、大林先生が言われたような事情がございますし、また、ピア・レビュー・メカニズムがそこまでの範囲に責任を持てるだけの状況にはなかなかなっていないというふうに感じます。
 アフリカのような国では、ピア・レビュー・メカニズムも一つですけれども、やはり国内でそれぞれの市民社会、あるいはメディア、議会、そういうところが力を持たなければなかなかそういうものは直っていかないんではないかという感じがしております。
#32
○会長(石井一君) 峰崎直樹君。
#33
○峰崎直樹君 三人の方、ありがとうございました。
 時間もありませんので、一点だけお聞きします。
 世界銀行、あるいはアフリカ開発銀行ですか、こういうものがございますが、たしか世銀は貧困国対策の問題に随分力を入れてきたというふうに思いますが、皆さんの立場から、今、我が国に対する要望というのはよく分かりましたが、我々もやらなきゃいかぬことがあるんですが、世銀とかあるいはアフリカ開発銀行とか、そういったところに対して何か、こういうことをやってもらいたいとか、こういうふうに変えるべきではないかということがあれば教えていただきたいと思います。
#34
○参考人(平野克己君) 世界銀行は、八〇年代にはもう完全にアフリカシフトです。報告書もそれから援助論も、アフリカを考えて世界銀行のスキームが作られ、世界銀行というのは私たち日本にとってもほかのドナーにとってもそういった意味でいうと開発に対するシンクタンクですから、世界銀行がそういう議論を主導しているという位置関係がずっと続いていると思います。
 世界銀行にこうしてもらいたいということよりも、世界銀行の中に蓄積しているノウハウをいかに日本がきちっと吸収していくかということが重要だと思っておりまして、というのは、世界銀行のチーフエコノミストってかなり重要な位置にいる人なんですが、あのスティグリッツもいたところですけれども、今度、北京大学の教授が就任をいたしました。中国が急速に、彼らが必要としている援助ノウハウ、それから開発途上国に対する、特にアフリカに対する知識を世界銀行とタッグを組みながら吸収をしていこうとしているのだなということを強く感じております。
 もう一つついでに申しますと、日本はネットは既にマイナスですが、グロスでは円借款をまだ出しております。この量というのは世界銀行を一時超えたんですが、今、世界銀行少ないですけれども、まあ言ってみれば世界銀行と日本しかいないんですね。バイのドナーで有償援助をやっているというのはもうほとんど日本しかいませんので、そういった意味でいうと、世界銀行と話さなきゃいけないことって実は日本にはたくさんあるんだろうと思っています、無償の話は当然ほかのドナーと調整しますが。というように考えております。
#35
○参考人(大林稔君) 実はAfDBに、アフリカ開発会議にうちの娘が勤めているんですが、余り悪口言いたくないんですけれども、やっぱり最大の問題は官僚機構だということですね、もう本当に。これは国連にいたので分かりますけど、やっぱり国際機関というのは国が関与していますから、官僚制が自乗化されたような感じになりまして、本当にお役所です。そういう意味で、よく上から研究者が考えたことを押し付けるというふうに言いますけれども、無理からぬところがあると思うんですね。
 やはり、そういう意味では、官僚制をどう変えるかというのは本当に世界が一番悩む大きな問題だと思うんですけれども、恐らくやはり一番大きなやり方は、拝む神様を変えるというところじゃないですかね。先ほども言いましたけれども、やっぱり本当のお客さんは貧困者ですから、そこを、そのためにどういうふうに仕事を再編成するか、仕事を評価していくのかというふうにやっていかないと、これは世界の開発にかかわる、官僚制全体にかかわる問題ですけれども、そこを乗り越えないとなかなか抜本的な改革は難しいのではないかと思います。大変な影響力を持った組織であり、言っていることは大変よろしいこともたくさん言っておると思います。ですから、そこをやはり現実の力に転化するにはそういう大きな努力が必要だと思います。
#36
○政府参考人(山田彰君) 世界銀行、アフリカ開銀とは、特に円借款の供与については、今やっぱりなかなか、日本単独で出すというよりも、そういう機関の知見を活用して協調融資、一緒に出すと。それによって彼らの持っている知識、ノウハウ、そういうものを活用しながら相手国の開発を共に考えていくということで、従来以上に日常レベルの接触、協議というのが増えているというふうに感じております。
#37
○会長(石井一君) 広中和歌子さん。
#38
○広中和歌子君 済みません。もう時間もないようですので。
#39
○会長(石井一君) 最後にさせていただきます。
#40
○広中和歌子君 ここに伺う前に、ユニセフ議連で黒柳徹子さんの話を聞いてまいりました。まさに大林参考人がおっしゃるウルトラハンガーというんでしょうか、もうどうにも救いようのない立場で苦しんでいる人たちが本当に大勢いるという中において、山田参事官にお伺いいたします。
 日本の援助はバラエティーに富むとおっしゃいますが、どうしてNGOを通じての、要するに末端に行くような援助にもっとお金を出さないんでしょうか。今、全ODAの中で、NPOを通して、いわゆる小規模支援ですよね、そういうのは百五十億、つまり一%というような御指摘が大林さんからもあったわけですけれども、本当にそこのところをもっともっと増やしていく必要があるのではないか。
 それから、先ほど平野さんもちょっと触れていらっしゃったけれども、ペーパーワークが非常に多くて、いわゆるアカウンタビリティーのために非常に多くの精力が取られているということも含めて、もうちょっと非官僚的に、もっと民間を使った支援というものを増やしていくことが必要ではないかということをまず申し上げたいし、そういう方向に行くのかどうかということです。
 それからもう一つ。これを見ますと、アフリカにおいて道路の建設というのは非常に必要だと私も思います。インフラ整備は必要だと思いますけれども、しかしながら、私もケニアで高速に乗ったことがあるんですが、一年前にできた道路というのがもうそろそろ壊れ始めているというように、高規格道路ということでやっていても、現実にでき上がるものは、表面だけは要するにケーキの表面みたいにきれいなんですけれども、実際にはすぐ壊れやすいと。あるいはオーバーロードということもあるんじゃないかとは思いますけれども、そういうことで、ガバナンスが十分に取られていない中でこうしたインフラ整備を続けていくということ、これはかなり問題ではなかろうかと思います。
 それから、ついでに、これは個人的な意見ですけれども、アフリカの支援もいいんですけれども、アフリカがこんなにぐちゃぐちゃにされちゃったのは主にヨーロッパの責任ですよね、植民地時代の。そこにおいて日本がアフリカに対して、非常に今TICADでアフリカ支援に力を入れているということ、まあ人道的でいいような気もするんですけれども、ちょっとよろいの下に何かが見えてくるような、そういう気もします。つまり、資源をねらっている、あるいは国連におけるボートというんですか、投票をねらっている、そんなふうに見えてしまうんですけれども、もしお考えがあればお伺いしたいと思います。
#41
○政府参考人(山田彰君) NGOに対する支援というのは、もっともっと増やしていくべきだと思います。
 私は、日本のNGOの方と付き合って二十年以上になりますし、私自身もNGO、NPOのメンバーとして十年以上経験しておりますけれども、やはりまだまだ日本のNGO自体の財政的あるいは人的な基盤が非常に弱い、それがもっともっと強くなってほしいというふうに思っています。そのためには、もちろん外務省として支援できることはできるだけ支援していきたいですし、すべきだと思いますが、同時に、その社会全体がそうしたNGOがそれこそ自立できるような基盤をつくっていかなければならないのではないかという気がいたしております。
 特にアフリカにおいては、先ほど申し上げたとおり、最近は数が増えてまいりましたけれども、まだまだ例えばアジア諸国なんかに比べれば、一部の国では非常に活発に活動されておられますけれども、多くの国で、特に日本のNGOに関して言えばそんなに活発に活動しているというわけではないんだろうというふうに思います。
 それから、アフリカのNGOの方々と接触するためには、それに対応した我々の大使館であるとかJICA事務所の人員がいないと、そうしたコミュニティーに接触してより深く入り込んでいくというのは、言うのは易しいんですけれども、非常に手間暇が掛かる。それはいいことなんですけれども、その手間暇を支えるだけの体制を整えていかなければならないのではないかなという感じがいたしております。
 それから、道路ですけれども、道路は日本国内ではよく箱物だとか無駄な道路とかいうふうに言われて評判が悪いんですが、アフリカのような地域に行けば貧しい人も、道路はやっぱり生活の基盤だと、これはむしろベーシックヒューマンニーズだと、町に物を売りに行くためにも、学校に行くのに道路がないということを言われるわけです。
 一方で、アフリカの状況というのは、やはり自然環境、それからオーバーロードの問題もおっしゃいましたけれども、ほかの地域にも増して非常に厳しい状況です。もちろん、我々はいろんな形で相手国政府にできるだけメンテナンスをするように指導するし、あるいはそのために必要な建機なんかを場合によっては供与することもあります。
 ただ、それは、これもなかなか言うはやすく行うは難しで簡単に解決できないことだと思いますけれども、道路を建設することによって経済的な効果はやっぱり生まれるわけであって、そこから少しでもやっぱり道路のメンテナンスに配慮するようにということを根気強く指導するというか、根気強く学んでもらうということが非常に大事ではないかと思います。
 それから、そでの下によろいが見えるのではないかと。私はODAの目的というのは、ODA大綱に書いてあるとおり、世界の平和と安定をもって、それをもってそれが日本の平和と繁栄につながるんだと、まず相手国の開発に資する、相手国の国民の生活、福祉の向上に資することによってそれが巡り巡って日本に返ってくることだと思います。
 日本の援助は、じゃ、しかるにどういう評価をされているか。もちろんまだまだ百点とは言えないかもしれません。しかし、アフリカの人たちは日本が言わばまじめに援助してくれるということによって総じて高い評価をしてくれていると思います。それによって日本の評価、日本人の評判、それに高い評価が現実に与えられております。それが資源の獲得にとって有利になったり、あるいは国連投票にいい結果が生まれればもちろんそれにこしたことはないわけであって、最初にそれが目的であるのではなくて、相手国の開発に貢献する、それによって彼らとの関係が深まる、そういう関係を我々は目指していますし、それに近いものに少なくとも今はなっているのではないかというふうに思います。
#42
○広中和歌子君 衣でした。失礼しました、よろいと言っちゃって。
#43
○参考人(平野克己君) 一点、今、広中先生の御発言の中で気になったことがありましたので、それについてちょっとお話をさせていただきたいと思います。
 アフリカの今の現状はヨーロッパのせいだというのはアフリカの政府の人がよく言うんですよね。実は、植民地時代というのは長く見て六十年ぐらいなんです。独立してからもう五十年たっているんですね。一般のアフリカ・ウオッチャー、世界のアフリカ・ウオッチャーの共通して抱いているのは、それはもう通用しないよと、君らの責任だよと。
 植民地支配ということでいうと、その前の奴隷制はちょっと別ですが、支配でいうとアジアの方がはるかに過酷だったんですよ、どれだけ現地から収奪をしていったかとかという率でいいますとね。
 ヨーロッパはむしろアフリカ植民地で大損をこいているんです。出る一方だったんです。赤字経営だったんですね。それを考えると、独立してからの五十年のアフリカの行政の仕方、これに多くの責任がやっぱりあるよねというのが、つまり、逆に言うと開発のオーナーシップをやっぱり持っていただくということにつながるんだろうと思います。
#44
○参考人(大林稔君) 二点だけ申し上げます。
 まず道路ですが、道路で経済成長が起こるかどうかというのは民間の問題です。造っても、現に先生、ケニアにいらしてお分かりだと思いますけれども、大きなトラックは通りますが、交通量は非常に少ないですね。首都周辺は多いです。だけど幹線は余り多くないですね。
#45
○広中和歌子君 モンバサに行く道路はすごかったですよ。
#46
○参考人(大林稔君) あそこは多いですけれどもね。ですから、全般に言うと利用率は低いというふうに言われております。
 貧困との観点からいくと、貧困者から見て一番問題なのは、はるかかなたに道路はできるけれども、たどり着けないということですね。ですから、僕らが前から言っているのは、道路を造るときは必ず、その十分の一の予算でいいから、農村への道路整備、アクセスできる道路整備をしてくれと言っているんですが、なかなかこれが進まないというのがあると思います。
 それからもう一つ、日本の援助の評判です。五年前にTICADのことで現地のNGOとかと協議を始めたときに、現地のNGOとかでTICADのことを知っている人はいなかったんです、ほとんど。アフリカのお役人とも話したんですが、知っていたのは外務省の方で、場合によっては外務省の担当局の人だけという場合も多かったですね。現実にはそういう感じです。
 それで、多くのアフリカの人と話すと、日本の援助は商業目的でしょうって言うんですね。全然そんなことないですよと。最近ちょっと、さっきのお話がありまして、商業目的がにわかに出てまいりましたが、TICADWの準備のころはそういう動機は全然ない時期で、トヨタがあれだけ走っているじゃないかとか言うんですが、トヨタの人に聞くと、とんでもない、とても小さなマーケットで、ほとんどヨーロッパから来た中古じゃないですかという状況です。
 そういう意味では、日本の援助が社会部門にかなりやってられるのも非常に確かなんですけれども、それがなぜ見えないのかというのは、やっぱり届いていないということが一番大きいんだと思いますね。やっぱり日本人が末端の村に行って、だれも来ないようなところには必ず、困った人がいれば日本人がいるということが日本の援助の一つの柱になっていくということが結果的には日本国民とアフリカの人たちとの友好とか連帯も保障するものだろうというふうに思います。それは決して大統領の歓心を買うということとは違うというふうに思います。
#47
○会長(石井一君) それでは、本日の質疑はこの程度で打ち切らせていただきたいと存じます。
 一言ごあいさつ申し上げます。
 大林、平野両参考人におかれましては、長時間貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。
 大変興味深い議論で、まだ議論が尽きないようでございましたが、今日の御意見を十分、傾聴に値するものが多く、今後の参考にさせていただきたいと存じます。調査会を代表し、厚く御礼を申し上げます。
 それでは、速記を止めていただいて。
   〔速記中止〕
#48
○会長(石井一君) 速記を起こしてください。
 次に、アフリカをいかに助けるかについて委員間の意見交換を行います。
 議事の進め方でございますが、去る六月二十四日に行った調査の概要と論点整理について調査室長から説明を聴取した後、これと本日の調査を踏まえて委員間で意見交換を行っていただきたいと存じます。
 調査室長。
#49
○第一特別調査室長(藤崎昇君) それでは、前回の調査会における調査の概要を報告いたします。
 前回は、アフリカ援助の現状と課題について、NGOや企業の関係者など現場で活躍されている方々をお招きし、説明を聴取するとともに、それに対する質疑を行いました。その際の論点及びそれに関する主な意見を整理し、御参考までに紹介いたします。
 なお、この論点整理の趣旨は、本日の意見交換に当たり、対象となっているテーマについての議論を深めていただくための材料提供を行うということで、調査会で示された意見を踏まえ、論点とそれに関する意見を簡明に取りまとめたものでございます。
 それでは、申し上げます。
 お手元に資料を配付しておりますが、援助活動を行うに当たっての課題について関係する意見を整理いたしました。その際、便宜、開発援助全般にかかわる言わば総論的なものと、参考人の方々が取り組んでいらっしゃる個別の分野とに分けて整理いたしました。
 まず、総論的なもの、開発援助全般に関して申し上げますと、まず、援助を行う視点というようなことで題を付けておりますけれども、これは、行政が十分機能していない状況下では諸問題に自ら対処するための能力の向上が不可欠であり、教育、環境、保健を包括的に組み合わせた援助を行う必要がある。
 次に、援助を効果的に行うためには、相手国政府のガバナンスの改善が不可欠であり、現地の市民やNGOによる監視能力の向上に向けた援助を行う必要がある。同様に、TICADの基本原則であるパートナーシップの中にNGOを位置付け、会議への参加のみならず、援助の実施に当たっても現場を熟知したNGOを関与させる必要がある。
 それから、我が国政府の取組姿勢に関しましては、経済成長を貧困削減に結び付けるには格差社会の是正が不可欠であり、基本的な社会サービスの整備など、貧しい人々に焦点を当てた援助を行うべきである。そのため、ミレニアム開発目標達成を軸としたODAの指針を示すことが重要である。また、我が国は、先進国に求められているODAのGNI比〇・七%目標を達成するための道筋を示す必要がある。
 次に、参考人の方々が関与されている個別分野での援助について申し上げますと、まず、栄養改善への取組に関しては、飢餓の影響を最も受ける子供の栄養改善が重要であり、母親による栄養管理を可能にするような環境整備に向けた援助を行う必要がある。それから、栄養改善に重点を置いた援助を行うため、これを保健の分野に位置付けた上で学校給食の普及など、分野横断的な援助を行うことが必要である。それから、食糧の増産だけでなく、流通等も含めた援助を行い、貧しい人々にも食料が行き渡るよう格差社会の是正が必要である。
 次のエイズへの取組に関しましては、理科的な知識の普及とともに、患者との共生が可能な社会をつくるという意識の育成が重要であり、話合いの機会の設営など、地域住民が協力して問題への理解を深めることができるようにするための援助が必要である。
 母子保健への取組に関しましては、妊産婦死亡率引下げには、妊産婦の健康改善、道路や医療施設の整備、医療従事者の育成など、ハード、ソフト両面にわたる援助が必要である。また、妊産婦死亡率の引下げには時間を要する。このため、事業の継続性に配慮し、政府とNGOとの連携の下で人材の育成を行うなど、地域住民が自立して取り組めるように援助を行っていく必要がある。
 最後の起業に関しましては、ビジネスへの参加機会を増やすには、これに関する知識、マナー、ノウハウなどについての教育が必要であり、施設の設置や講師の派遣を検討すべきである。ビジネス立ち上げに必要となる小規模の投資資金を貸し付ける援助を検討すべきである。一村一品運動を進めるに当たっては、商品の市場調査の実施や輸送コストの引下げなど改善すべき点がある。
 以上でございます。
#50
○会長(石井一君) それでは、これから自由な意見交換を暫時行わせていただきたいと存じます。
 今の調査室長の報告をベースに、本日の調査会の議論と併せて、どちらからでも、どなた様からでも結構でございますが、御発言をお願い申し上げます。
#51
○西田昌司君 ちょっと今日は遅れてまいりまして、同じ時間にODAの特別委員会がありましたので、そのときにも同じような実は質問をしまして、先ほど広中先生おっしゃいましたように、僕はやっぱり、そもそもヨーロッパの植民地時代に統治機構自体が全部つぶれちゃって、社会の土台がないところにたくさん援助を行っても結局は砂に水が吸い込まれてたまらないのと同じような現象を起こしているんじゃないかと思うんです。ですから、先ほどの参考人の答弁は僕もちょっと腑に落ちないところがありまして。
 それで何が言いたいかと申しますと、ここにも効果的な援助ということで、「相手国政府のガバナンスの改善が不可欠であり、」ということが書いてあるんですが、もっと言うと、要するにアフリカには国民国家と言えるような国がほとんど存在し得ていないような状況ですよね、特にサブサハラですと。
 ですから、日本が本来すべきなのは、もう片方でアジア諸国に対しましては非常に日本のODAが成功して良くなってきたと。というのは、元々ヨーロッパが、欧米が植民地にしていたところを日本がある意味解放して、日本がその後統治をしたと。その間にかなり土台をつくってきて、日本が戦争に負けて、彼らもまた独立をして、ODAを日本がしてということがあるんですけれども、要するに元の土台をかなり日本がかかわってアジアの場合はやってきたと思うんです。
 ですから、アフリカの方も、そういう意味でいうと、ヨーロッパがかなりつぶしてしまっているんですけれども、そういう成功例を見ながら考えていくと。いかにして、アフリカでそういう日本がかつてできたような国民国家をつくるような仕組みですね。ですから、教育からいろいろあるんですけれども、何かそういうところに視点を当てたODAの在り方をしないと、援助をしないと、ヨーロッパがやっているからとか、それから中国が資源をねらっているからというようなのでは多分どちらも成功しないんだろうなと思いましてね。
 ですから、せっかく日本が片方でアジアでやってきた成果があるわけですから、その辺のことを踏まえた何かアフリカにおけるODA、特にTICADを主催したというのは本来そういう考え方があったと思うんですけれども、何かその辺がこのごろちょっと見えてこないなという気がしまして、是非そういう点を提言としてまとめていただけたらなと思います。
#52
○峰崎直樹君 アフリカに一度も行ったことがないし、余りこういう海外のことも経験がないので、もしかしたら的外れなことを言っているかもしれませんが、お聞き願いたいと思います。
 一つは、先進国のODAのいわゆるGNI比〇・七%目標というんですが、これはGNIだったでしょうか、GNPだったでしょうか、GDPだったでしょうか。これは、日本は最近、諸外国からのいわゆる資本所得というのが非常に増えていまして、それだけに、GDPでも、むしろGNPの方がいいのかなと思ったり最近はしているんですが、GNIだと、これ、国民総所得ですから金額的に少なくて済むというふうにならないかなと思っているんですが、これはどうしたらいいかということ。
 関連して、ODA財源。もうずっと私もこの場では何度も言っていますし、今日は広中和歌子国際連帯税の議連の会長代理もおられますが、そろそろやはり我々は、このODA財源のある意味では一つの基本として国際連帯税の問題を真剣に考えていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。
 つい最近、立命館大学の三木先生から、今、国際連帯税を市民社会の中に入れるその委員会が開かれておりまして、そこでトービン・タックスを実現できる技術的な基盤というのが非常に整ってきているというような指摘なども受けておりますので、この点は、これはアフリカということだけじゃなくて、国際社会に対する貢献ということで是非お願いしたいなと。
 あと、二点目なんですが、もちろん教育という問題、人材育成ということが中心なんですが、私、実は最近、貧困とか格差の問題なんかを考えるに当たって、日本の、これは日本のことしかもしかしたら問題意識を持っていないからかもしれませんが、要するに人間関係というかコミュニティーというもの、つながりといいますか、これは結いだとか講だとか、日本的には非常に古いことを言われているんですが、絶対水準が低いとかあるいは格差が大きいとかというところが問題なんじゃなくて、それも問題なんですが、そういう人たちとそういう人たちの、人と人のつながりみたいなものが断ち切られちゃうというのが一番重要。
 何でそういうことを言っているかというと、ここで、例えば「ビジネス立上げに必要となる小規模の投資資金」と書いてあります。これ、マイクロクレジットのことを言っているんだろうと思いますが、その場合でも、あのグラミン銀行の受皿というのは、五人共同体つくらせて連帯責任を持たせていますよね。日本でいう結いとか講とかというところに該当するんだと思うんですが、そういういわゆる受皿ですよね。
 個人じゃなくて、やはりそういう一つのつながり、共同体という、共同体と言っていいのかどうか分からないんですが、そういう視点をきちんと入れておかないと、なかなかこの格差だとか貧困だとかというものを引き上げていくときの受皿みたいなものは、もう少しそういうつながりがあるネットワークじゃないかなという感じがちょっとしていますので、そういった視点は、効果的な援助あるいは援助の視点辺りのところにそういう視点が入ってくると非常に私自身は理解しやすいなと、こう思っているんですが、もしかしたら的を外れた話をしているのかもしれませんが、そんな印象を持ちましたので、二点だけ申し上げました。
#53
○佐藤正久君 ガバナンスとか格差という表現があるんですけれども、やっぱりどうしても中東とかアフリカというと、腐敗とか貧困とか格差ってどうしてもあると思うんですよ。
 相手国政府のそういう腐敗防止等も含めたガバナンスの改善というのは、言うのは簡単なんですけれども、実はアジアもそうなんですけれども、中国と韓国のコンプライアンスがめちゃくちゃという話もよく聞くんですよ、現場の方で。日本企業が向こうにいい支援をやろうと思っても、もう競争で負けてしまうと。その原因には、日本の場合は非常にコンプライアンスが厳しいと、本社の方から厳しい枠をはめられてしまうと。他方、中国と韓国はもうばんばんばんばん入っていくと。
 やっぱり、支援する側のそういうコンプライアンス意識がないと、幾ら向こうの政府の方にしっかりやりなさいと、ガバナンスが大事ですと言っても、なかなかそこは片手落ちなような気がするんですよね。そういう相手政府のガバナンスの向上ということと同時に、やっぱり支援するドナー側のそういう意識というのも併せて変えていかないと、援助の視点の中で相手の行政のことを言うだけではなく、先進国とか支援側の方に対する働きかけというのを併せてやらないと、アフリカをいかにして助けるかということを言うというのは片手落ちなような気がします。
 競争社会ではありますけれども、やっぱり支援する側のある程度のルールづくりというものもやらないとアフリカを助けることにはならないというふうに思いますので、その辺りの視点なんかも入れていただきたいなと思います。
 二つ目には、やっぱりどうしても、今日の参考人からの意見がありましたけれども、人の少なさ、日本の場合。中国と比べても、大体支援の現場の数というのはもう多分何十分の一ぐらい。日本が例えば一つの国に看護師の方を年間やっと頑張って十人送ったとしても、例えば当然中国の場合は三百人と、けたが全然違うわけですから。そこまでは行かないにしても、やっぱりもっと人を増やさないと、NGOの方を含めても、現場、現場に日本人の顔がないと幾ら頑張っても非常につらいなと。やっぱりこの人の問題というのは本当に大きな問題だと思いますので、効果的な援助と、あるいは政府の取組姿勢の中にも人の話は入れておかないといけないのかなと。非常にアフリカは遠い国というイメージがありますけれども、非常に大事な国でもありますので、その辺りは調査会としては入れておいた方がいいんじゃないかなという感じがします。
 以上です。
#54
○広中和歌子君 人材ということをおっしゃったので、別の視点から。
 アジアの独立運動とかなんかの指導者、ガンジーを始めとして多くのそういう植民地時代の指導者たちは、欧米で、特にヨーロッパで勉強をしていますよね。で、帰って、全く別の視点で、これじゃ駄目だということで、独立運動を始めとして国をつくることにリーダーシップを発揮したんだと思います。
 アフリカなんかでも、ワンガリ・マータイさんという有名な、あのもったいない運動の方ですけど、あの方なんかもアメリカで教育を受けて、そして植林運動を始めてというようなことで、現地の教育も大切ですけど、いっそのことアフリカ人の優秀な人を日本に連れてきて日本で教育しちゃって送り返すというようなことも、どれだけの方がいらっしゃるか分からないけれども、やってみる価値はあるんじゃないかなと思います。
#55
○小池正勝君 今もお話が出ていましたけれども、昨年、TICADWをやって、洞爺湖サミットをやって、アフリカの問題というのは大きく世論を喚起したわけですよね。助けていかなければならない、それもみんな共通認識だと思うんです。
 そのときに、確かにODAの額を増やす、倍増する、もちろんそれも公約ですからどんどんやっていけばいいし、それは必要なんだろうと思うんですが、額とか人の人数とかで比べ、それだけ比べると、それは人数は中国にははっきり言ってかなわないというのは現実認めざるを得ないと思うんですよね。そういうことよりは、もちろんそれも大事には違いないんだけれども、日本が得意な分野というのでこれだけ協力している、できるんだ。例えば、母子保健の母子手帳の話とか衛生、まさにミレニアム目標の話が書いてありますが、こういうことで日本はどんどんどんどん貢献できるし、人間の安全保障ということを考えれば極めて大切。お子さんが死んでいく、それを救えるというのは日本は高い技術を持っているわけですから、そういった分野でもっともっと貢献していくということを僕はどんどんやっていくべきではないかなと、そう思っています。
#56
○会長(石井一君) 今日、理事会で議論を少ししたわけですが、結局、今日のこの調査会を終えた後に、これ、広範でなかなかリポートとしてはまとめにくいけれども、一応調査室の方で原案をまとめて両筆頭理事に提示して、それで、場合によっては最後の回にそれを提出してオーケーする前に事前に協議してもらうということになっておるわけですが、そういう意味を含めて、何か御意見があれば、主濱理事それから川口理事に御発言をいただいて一応今日はこれで閉めたいと思いますが、いかがですか。
 それでは、川口理事、お願いします。
#57
○川口順子君 国際問題に関して、今日はアフリカですけれども、幾つか異なるテーマをやってきて、どういうふうにまとめたらいいかと実は頭を悩ませております。
 アフリカ一つ取っても、実はアフリカと簡単に片付けてしまっておりますけれども、アジアに中国とバングラデシュが共存しているのと同様にアフリカにも様々な国があって、南アから非常にもっと貧しい、一番貧しい国がどこかちょっと私、知りませんが、そういう国があって、それをそこに共通する要素をどうやって出していくか。下手をすると、群盲象をなでるようなことになってしまうんじゃないかという危惧を持ちながら今申し上げているわけですけれども、ここでもそれぞれ一テーマ二時間ずつしかやりませんでしたので、十分に詰めることができなかった。
 先ほど来ありましたけれども、例えばアジアとアフリカを比較した場合に、私は非常に面白い統計を前に見たことがありまして、一九五七年にガーナとそれからマレーシアは同時にイギリスから独立をした。そのときの一人当たりの国民所得は実はガーナの方が高かった。それは一九五七年なんですけれども、それから五十年以上経て、実はもうマレーシアとガーナは一けたけたが違うということになっているわけでして、これが果たして、先ほどありましたけれども、植民地主義の影響であったのか、あるいは、その後の政府なり、あるいは様々なほかの条件であったのかということを考えざるを得ないというふうに私は思っております。
 それで、そういうようなことを考えながら調査室とちょっと御相談をしながら、全般にわたって、私の今、頭の中の整理では、今、日本がそれぞれのテーマについて何をやっているかということはきちんと踏まえておかなければいけない。それから、何をやるべきかということについて、これは皆様の今もう非常に参考になる御意見をいただきました。それから、参考人の方々の非常に斬新なといいますか、今までに、過去にとらわれない御発言というのもいただきましたので、そういうことを交ぜながら、いい報告書が作れて、それで皆様に御議論をいただけるようになればいいと思っております。
 以上です。
#58
○会長(石井一君) それでは、川口理事が総括していただいた方向で理事会を中心にまとめまして、皆さんと相談をいたします。
 恐らく、あと一回で今国会での調査会は終了することになろうかと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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