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2009/06/30 第171回国会 参議院 参議院会議録情報 第171回国会 厚生労働委員会 第20号
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2009/06/30 第171回国会 参議院

参議院会議録情報 第171回国会 厚生労働委員会 第20号

#1
第171回国会 厚生労働委員会 第20号
平成二十一年六月三十日(火曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月二十六日
    辞任         補欠選任
     紙  智子君     小池  晃君
 六月三十日
    辞任         補欠選任
     蓮   舫君     谷岡 郁子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         辻  泰弘君
    理 事
                川合 孝典君
                中村 哲治君
                柳田  稔君
                衛藤 晟一君
                山本 博司君
    委 員
                足立 信也君
                家西  悟君
                梅村  聡君
                小林 正夫君
                下田 敦子君
                谷  博之君
                谷岡 郁子君
                森田  高君
                蓮   舫君
                石井 準一君
                石井みどり君
                岸  宏一君
                島尻安伊子君
                西島 英利君
                南野知惠子君
                古川 俊治君
                丸川 珠代君
                渡辺 孝男君
                小池  晃君
                福島みずほ君
       発議者      小池  晃君
   委員以外の議員
       発議者      岡崎トミ子君
       発議者      森 ゆうこ君
       発議者      谷岡 郁子君
       発議者      近藤 正道君
       発議者      亀井亜紀子君
       発議者      田中 康夫君
       発議者      川田 龍平君
   衆議院議員
       発議者      河野 太郎君
       発議者      山内 康一君
   国務大臣
       厚生労働大臣   舛添 要一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        松田 茂敬君
   政府参考人
       厚生労働大臣官
       房審議官     中尾 昭弘君
       厚生労働省健康
       局長       上田 博三君
   参考人
       独立行政法人労
       働者健康福祉機
       構横浜労災病院
       院長
       脳死下での臓器
       提供事例に係る
       検証会議座長   藤原 研司君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○社会保障及び労働問題等に関する調査
 (保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確
 保の促進に関する法律の一部を改正する法律案
 に関する件)
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律
 案(衆議院提出)
○子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討
 等その他適正な移植医療の確保のための検討及
 び検証等に関する法律案(千葉景子君外八名発
 議)
    ─────────────
#2
○委員長(辻泰弘君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十六日、紙智子君が委員を辞任され、その補欠として小池晃君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(辻泰弘君) 社会保障及び労働問題等に関する調査のうち、保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案に関する件を議題といたします。
 本件につきましては、南野知惠子君から委員長の手元に保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案の草案が提出されております。内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、まず提案者から草案の趣旨について説明を聴取いたします。南野知惠子君。
#4
○南野知惠子君 ありがとうございます。
 草案の趣旨及び主な内容について御説明申し上げます。
 保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案の草案趣旨でございます。
 ただいま議題となりました保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案の草案につきまして、その趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
 現在、医療をめぐっては、急激な少子高齢化の進行による医療ニーズの増大と多様化、医療の高度化、療養の場の多様化などの変化に的確に対応することが求められる中、地域医療は大変厳しい現状にあります。
 今後、地域医療を守り、国民に良質な医療、看護を提供していくためには、医師のみならず、看護師を始めとする看護職員が、チーム医療を担う重要な一員としてその専門性を発揮することが極めて重要であり、その資質及び能力の一層の向上や、看護職を一層魅力ある専門職とすることを通じた看護職員の確保が求められています。
 本案は、こうした必要性にかんがみ、国家試験の受験資格を改めるとともに、新人看護職員の臨床研修その他の研修等について定めるものであります。
 次に、本案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、保健師助産師看護師法において、保健師国家試験の受験資格及び助産師国家試験の受験資格について、文部科学大臣の指定した学校における修業年限を六月以上から一年以上に延長するとともに、看護師国家試験の受験資格を有する者として、文部科学大臣の指定した大学において看護師になるのに必要な学科を修めて卒業した者を明記することとしております。
 第二に、保健師助産師看護師法において、保健師、助産師、看護師及び准看護師は、免許を受けた後も、臨床研修その他の研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならないものとしております。また、看護師等の人材確保の促進に関する法律において、看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針に定める事項及び国の責務について、看護師等の研修等を明記し、病院等の開設者等の責務について、新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施及び看護師等が自ら研修を受ける機会を確保できるようにするために必要な配慮を明記するとともに、看護師等の責務について、研修を受ける等を明記することとしております。
 なお、この法律は、平成二十二年四月一日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の草案の趣旨及び主な内容であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 ありがとうございました。
#5
○委員長(辻泰弘君) 本草案に対し、質疑、御意見等がございましたら御発言願います。──別に質疑、御意見等もないようですから、本草案を保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(辻泰弘君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、本会議における趣旨説明の内容につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(辻泰弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#8
○委員長(辻泰弘君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省健康局長上田博三君外一名の政府参考人の出席を求め、その説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○委員長(辻泰弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#10
○委員長(辻泰弘君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案の審査のため、今期国会中、必要に応じ参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(辻泰弘君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○委員長(辻泰弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#13
○委員長(辻泰弘君) 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 まず、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案について、発議者衆議院議員山内康一君から趣旨説明を聴取いたします。山内康一君。
#14
○衆議院議員(山内康一君) ただいま議題となりました臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。
 現行の臓器の移植に関する法律は、平成九年十月に施行され、十一年余りがたち、これまでの間に、脳死下における臓器移植は八十一件が実施され、多くの命が救われるという実績を上げることはできましたが、年間症例数においては欧米諸国の数十分の一にも満たない状態が続いております。例えば、日本とアメリカにおける心臓移植の実施件数では、平成二十年の一年間で、日本が十一例であるのに対し、アメリカでは二千百六十三例と、約二百倍もの開きが生じております。
 一方、移植医療をめぐっては、病気腎移植の問題や臓器売買事件が明るみになりましたが、これらの問題の背景には、臓器移植を希望する患者の数に対して移植術に使用される臓器の圧倒的な不足がございます。このため、健康な体にメスを入れ、家族から臓器を取り出すという生体間の臓器移植が年々増加し、死体からの臓器移植の件数を大幅に上回る結果になっております。健康な体にメスを入れるような移植医療は、本来避けるべき医療であります。
 また、国内での臓器移植が期待できないとしまして、海外で臓器移植を受ける方も増えております。移植術に使用する臓器の不足は諸外国においても同様であり、一部の国では外国人への臓器提供に門戸を閉ざす措置を講ずるようになりました。
 昨年五月に開かれた国際移植学会では、イスタンブール宣言として、臓器売買、渡航移植の原則禁止を決定しました。この宣言では、自国民の移植は自国内で行うべきとし、移植ツーリズムを防止すべく自国内での臓器提供を推進するよう各国に要請しています。また、世界保健機関においても同様の方向で検討されています。国際世論の一部からは、日本は現在、大人、子供を問わず臓器移植が受けられない状態であり、その結果、他国に渡航し他国人の臓器を移植しており、たとえその国のルールに従った渡航移植であっても移植ツーリズムとみなさざるを得ないとも言われております。
 現行法では、本人の書面による意思表示が臓器移植に必要であるため、十二年にわたり意思表示カードの普及に努めてまいりましたが、内閣府の世論調査で示されるとおり、提供意思を記入したカードを常時所持していると答えた人は数%にとどまっており、臓器提供をしたい意思が反映されていないのが現状です。
 他方、一日千秋の思いで臓器の提供を待たれている多くの患者がおられます。これらの患者は、臓器を移植する機会があれば、普通の生活に戻れるほどの回復が可能であります。にもかかわらず、我が国の臓器移植に係る要件によって、諸外国のような臓器の提供を受ける機会が奪われ、命を落とされる患者が多く存在しているのは、真に国会における不作為の結果と言っても過言ではありません。
 現行法を改正するに当たり、国民に対し平等に、臓器を提供する権利と提供しない権利、移植を受ける権利と受けない権利をそれぞれひとしく保障することが必要であります。
 脳死につきましては、日本以外の先進国では脳死は人の死とされております。臨時脳死及び臓器移植調査会は、平成四年に脳死を人の死とすることについてはおおむね社会的に受容されていると答申しています。また、最近の世論調査では、脳死を人の死と回答する割合が約六割に達しております。しかし、日本では脳死は人の死であることに対しいまだ様々な考え方があり、脳死を受け入れられない方々が脳死判定を拒否できるように、本案では脳死判定をするかどうかを家族の判断にゆだねることとしています。
 脳死判定には、頭部外傷などの重症脳障害の患者の予後不良を診断するための脳波計などを用いて行う臨床的脳死判定と、脳死後の臓器提供を行う際のみに行われる法的脳死判定がありますが、これらをきっちりと区別する必要があります。臓器提供に係る法的脳死判定では、脳幹反射の消失や無呼吸テストなどの法的脳死判定基準に従い、主治医とは異なる二名の専門医が一度判定を行い、六時間後に二度目の法的脳死判定を下した場合のみを脳死を人の死としています。すなわち、脳死が人の死であるのは、本案の場合も現行法と同じく臓器移植に関する場合だけに適用されるものであり、一般の医療現場で一律に脳死を人の死にするものではありません。
 今回、本案においては、臓器移植法における本人の生前の意思を尊重する理念を生かしつつ、臓器の提供が認められる要件について、新たに本人の意思が不明の場合にも年齢を問わず家族が書面により臓器の提供を承諾した場合を加え、諸外国と同様に臓器移植が認められる要件をそろえようとするものであります。
 本案の概要につきまして御説明申し上げますと、第一に、臓器を提供できる要件について、本人が生前に書面によって臓器の提供意思を表示している場合に加え、本人が臓器の提供を拒否する意思を表示している以外の場合で、遺族が書面により承諾している場合とすることとしております。
 これにより成人の移植機会が増加するとともに、小児にも臓器移植を受ける機会が生まれるものと考えます。
 同時に、家族が法的脳死判定後にも臓器提供をしたくないときには、その権利は保障され、そのような場合に臓器提供されることはなく、その後の医療保険の適用も保障されています。
 第二に、本人が臓器提供の意思を表示する場合において、親族に対して優先的に臓器を提供する意思を表示することができることとしております。
 第三に、虐待を受けた児童から臓器が提供されることがないよう、適切な方策を検討し、必要な措置を講ずることとしております。
 第四に、国及び地方公共団体は、移植医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずることとしております。
 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から一年を経過した日から施行することとしております。
 以上が、本案の提案理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
#15
○委員長(辻泰弘君) 次に、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案について、発議者岡崎トミ子君から趣旨説明を聴取いたします。岡崎トミ子君。
#16
○委員以外の議員(岡崎トミ子君) ただいま議題となりました子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案につきまして、発議者を代表して、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。
 現行の臓器の移植に関する法律は、一九九〇年から議論されたいわゆる脳死臨調を経て、一九九四年に議員立法として衆議院に提出され、最終的に一九九七年、参議院において、当時の先輩諸氏の英知を集め、臓器提供をする場合に限り脳死を人の死とする、生前に法的脳死判定を受け入れる意思表示をした場合に限り法的脳死判定を実施する、脳死判定には二人以上の医師が立ち会う等、幅広く国民的な合意を得られる形に修正し、成立いたしました。法律の施行後十二年がたとうとする中、衆議院においてこれまでに四つの改正案が提出され、六月十八日の衆議院本会議でいわゆるA案が可決されたところであります。
 しかしながら、臓器の移植及びこれに使用されるための臓器の摘出は人間の尊厳の保持及び人権の保障に重大な影響を与える可能性があります。小児の脳死判定、臓器の摘出及び臓器移植については、長期脳死児の例が知られるところとなり、中には数回の無呼吸テストを経てもなお長期間にわたり心臓が拍動を続け成長する例が報告されるなど、その脳死判定基準などについて専門家の間でも大きく意見が異なっております。また、被虐待児からの臓器提供の防止についても、虐待を行った親が証拠を隠し、虐待の事実が発覚しにくいなどの事情があり、多くの小児科医から、臓器摘出までの短い時間で正確な判断ができるかどうか、また虐待を隠すために臓器提供を行うことはないか等の不安の声が寄せられております。
 日本小児科学会が二〇〇七年に実施したアンケート調査では、小児のドナー候補が被虐待児であるか診断が適正に行えるかという問いに対して、はいと答えた医師は一二・三%にすぎず、いいえが三三・八%、分からないが四九・九%という結果となっています。さらに、新生児を含む小児の脳死診断は医学的に可能と思うかとの問いに対しては、はいが三一・八%、いいえが一五・八%、分からないが四八・二%という結果となっています。さらに、臓器提供は提供する側の小児にとって有益な医療行為ではないことから、臓器摘出に関し親による意思表示の代理、あるいは親の関与がどこまで認められるものかという問題もあります。
 こうした問題意識を背景として、拙速な小児の臓器移植の拡大については、医師や専門家のみならず、国民の間からも、懸念の声が聞こえております。このような状況の中で、小児の特異性を踏まえた脳死判定及び臓器移植に関する課題について対応策を確立しないままに小児の臓器移植が開始されるとなると、大きな社会的問題が生ずるおそれがあります。
 また、生体移植等の在り方について、いわゆるA案においては全く触れられておりませんが、非常に重要な点であることは間違いありません。一九九一年にWHO、世界保健機関の総会で議決されたガイドラインでは、人権を侵害する可能性が高い生体ドナーについて許容される場合を限定しておりますが、来年二〇一〇年の総会で議題となる予定の決議案及びガイドライン改定案は、弱者の犠牲の上に成り立ちかねない生体ドナーを保護する観点を更に鮮明にするものであります。生体移植については、ドイツを始めとする多くの国では法律で規制されているところ、我が国においては厚生労働省のガイドラインレベルで規制されているのみです。諸外国に比べ生体移植に対する依存度は高くなっているにもかかわらず、生体移植の在り方について十分な検討がなされてきたとは言えません。脳死下における臓器提供が八十一例にとどまる一方で、腎臓移植においては、生体間移植への依存率が八四・一%と、スペインの二・九%、アメリカの四二・七%に比べ突出した数字になっており、本来、移植医療のあるべき姿ではないはずの生体移植が行われているという実態があります。こうした環境が続く限り、脳死下の臓器提供の是非についての真剣な議論が阻害され、脳死移植は増えないといった指摘もされているところであり、生体移植の在り方について早急な検討が求められております。
 さらに、国民の脳死下臓器移植に対する理解を深めるとの目的の下に設置された脳死下での臓器提供事例に係る検証会議については、八十一例の実施例に対して報告書が公開されているのは三十四例にとどまり、この三月にようやく五十五例目の検証が実施されたところです。関係者のプライバシーを理由に情報開示が制限されるなどの運用から、国民への情報提供が進まない一因となっているとの懸念もございます。
 そこで、本法律案においては、今後我が国が子供の脳死及び臓器移植についてどう対応していくべきか、広い視野から総合的に検討しなければならない問題について、臨時子ども脳死・臓器移植調査会を内閣府に設置して一年を掛けて検討し、必要があると認められたときは措置を講ずることといたしました。あわせて、生体移植に関する制度等の在り方についても、一年を目途に検討を行うこととするとともに、適正な移植医療の確保のための検証等を進めることとしております。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、脳死した子供の身体からの移植術に使用されるための臓器の摘出その他子供に係る臓器の移植に関する制度については、子供に係る脳死の判定基準、臓器の提供に関し子供の自己決定及びその親の関与が認められる場合並びに虐待を受けた子供の身体からの臓器の摘出を防止するために有効な仕組みの在り方を含めて検討が加えられ、必要があると認められるときは所要の措置が講ぜられるものとしております。そして、この検討を行うに当たっては、学識経験を有する者による専門的な調査審議が行われるとともに、広く国民の意見が反映されるよう配慮されなければならないこととしております。
 この調査審議のため、内閣府に、この法律の施行の日から一年間、臨時子ども脳死・臓器移植調査会を置くこととしております。調査会は、委員十五人以内で組織し、委員は、子供に係る脳死及び臓器の移植について優れた識見を有する者等の学識経験者のうちから内閣総理大臣が任命することとし、その人選に立法府も責任を持つため、任命については両議院の同意を得ることとしております。そして、調査会は、脳死した子供の身体からの移植術に使用されるための臓器の摘出その他子供に係る臓器の移植に関する制度について調査審議を行い、その結果に基づいて内閣総理大臣に意見を述べることとしており、内閣総理大臣は、当該意見を受けたときは、これを国会に報告するものとしております。
 第二に、死亡した者の身体からの組織の摘出及び当該組織の移植に関する制度、生体からの臓器及び組織の摘出並びに当該臓器及び組織の移植に関する制度等については、この法律の施行後一年を目途として検討が加えられ、必要があると認められるときは所要の措置が講ぜられるものとしております。
 第三に、臓器の移植に関する法律の一部改正であります。
 国は、臓器の移植に関し、臓器を提供する意思表示の有効性、脳死の判定の適正性及び当該判定に関する意思表示の有効性等の調査及び分析を通じて、移植医療の適正な実施を図るための検証を遅滞なく行い、その結果を個人情報の保護に留意しつつ公表するものとしております。
 また、脳死の判定等に関する記録の保存期間を二十年とするとともに、国は、移植術を受けた者の適切な健康管理に資するため、その者の健康に関する情報に係るデータベースが整備されること等により、その者その他関係者がその者の当該移植術後の健康状態を的確に把握することができるよう必要な措置を講ずるものとしております。
 このほか、死体からの臓器の摘出及び当該臓器を使用した移植術は、厚生労働省令で定める基準に適合する病院又は診療所において行わなければならないこととしております。
 なお、この法律は、原則として、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 臓器の摘出及び移植は、臓器を提供するドナー、移植を受けるレシピエントなどの尊厳の保持、人権保障に重大な影響を与える可能性があり、広く国民的な合意を形成していくというプロセスが非常に重要であると考えます。
 衆議院では四つの改正案が出され、審議の過程の中で、現行の制度の下において生じている問題点、新たな改正が実現したときに懸念される問題点等、多くの懸案事項が明らかとなりました。
 他の医療と移植医療が根本的に異なるのは、臓器を提供するドナーの存在があって初めて成り立つ医療行為であるという点です。多くの課題を解決しないままに強引に結論を導き出すのであれば、ドナーとなろうという方々の理解を得られないのはもちろんのこと、医療の現場等にも大きな混乱を招きかねず、さらに終末期の医療におけるみとりの在り方等に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
 懸案事項が多い一方で、早期に結論を出すことが求められております。課題を先延ばしにすることなくしっかりと結論を出せるよう、本法律案では一年間と期間を区切っております。この間に、子どもの脳死臨調の場でしっかりと検討、検証するのはもちろんのこと、政府、国会においても精力的に検討を進め、広く多くの関係者を始めとする国民の声を聴き、議論を重ねていくことが重要です。広く合意形成を図りつつ、すべての命がひとしく尊重されるように、立法府としての結論を出すことが肝要であると考えます。
#17
○委員長(辻泰弘君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。
 次に、我が国における臓器移植の経緯、現状等について政府から説明を聴取いたします。
 なお、政府参考人の発言は着席のままで結構でございます。厚生労働省健康局長上田博三君。
#18
○政府参考人(上田博三君) 健康局長の上田でございます。
 お手元の資料に基づきまして、法案の審議の前に、我が国における臓器移植の経緯、現状、政府の対応状況等について御説明をいたします。
 まず、最初に目次が付いておりますが、もう一枚開けていただきますと、「脳死とは」という資料がございます。まず、脳死について御説明をいたします。
 社会通念上、死とは、いわゆる三徴候死でございます呼吸の停止、心臓の停止、瞳孔の散大、これは対光反射の消失ということも言われますけれども、この三つの条件で通常判断をされております。それがこの左側の呼吸循環停止により判定された死ということで、この三徴候死によって一般的には死は判断をされているわけでございますが、真ん中の段でございますけれども、脳死は、一般に脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止した状態と定義をされております。
 脳幹とは、延髄など呼吸や血圧の調整など生きていくために不可欠な働きをつかさどる部分でございます。脳死に至った場合、自力で呼吸することができず、人工呼吸器によって呼吸が行えるわけでございますけれども、この人工呼吸器によって多くの場合のケースでは数日あるいは、最近では人工呼吸の管理が非常に進歩しておりまして、脳死という判断をされても心停止まで百日を超える例もあるというふうに聞いております。
 右の段に参考で載せておりますが、植物状態というものがございますが、脳死と植物状態は全く異なる状態でございます。植物状態では、この図のところの白く塗った部分でございますが、いわゆる延髄などの脳幹の機能が残っておりまして、自ら呼吸できる、いわゆる自発呼吸がある場合が多うございまして、意識も回復することがございます。
 このように脳死というものは、全脳機能が不可逆的に停止をして、人工呼吸の助けをなくしては状態が維持できないという状況でございまして、一方植物状態というのは、多く自発呼吸がございますので、補助的に人工呼吸器を用いることはあっても、基本的にこの自発呼吸があるかないかということが大きな一つのポイントでございます。また、脳死の場合には、全脳機能、この延髄とかそういう脳幹を含む、真っ黒にかいておりますけれども、この全体が機能を不可逆的に停止をした状態だということで、植物状態の場合にはこれが、こういう機能が一部残存をし、またこの延髄などの脳幹の部分は機能が生きて残っていると、こういう状態で、これは厳に区別されるべきものだというふうに考えております。
 次に、もう一枚開けていただきますと、臓器移植法が成立するまでの経緯について御説明をいたします。
 現行の臓器移植法でございますが、まず我が国における移植法制につきましては、現行の臓器移植法の前に、死体からの臓器移植に関して昭和三十三年に角膜移植に関する法律が、その後昭和五十四年に角膜及び腎臓の移植に関する法律が定められたところでございます。脳死体からの移植に関しましては、現行法の制定に至るまでさかのぼれば、平成元年に法律ができまして、二年の三月に第一回が開催されまして、平成四年一月二十二日に取りまとめられました臨時脳死及び臓器移植調査会、いわゆる脳死臨調の答申など様々な脳死、臓器移植に関する議論がなされてきたわけでございますが、こうした議論を踏まえまして、そこにございますように、平成六年四月、中山太郎議員を始めとする先生方によりいわゆる旧中山案が衆議院に提出をされましたが、この法案の扱う問題が個人の死生観等に深くかかわることなどから、国会におきましてもその扱いについて賛否両論がございまして、平成八年六月に、本人意思が不明なとき、家族の書面による承諾で可能とすると、この部分を削除する修正案が提出をされるなど、成立に向けた動きがございましたが、同年九月の衆議院解散に伴い廃案となったわけでございます。
 その後、同年十二月に、同じく中山太郎議員を始めとする先生方により、前述いたしました修正案と同一の内容の法案、いわゆる中山案が衆議院に提出をされまして、脳死を人の死としない金田案との間での議論の末、参議院において脳死に関する様々な意見があることを配慮し、法第六条、現行法の第六条第二項において、臓器移植に際しては脳死を人の死と認めることを明記するなどの修正等を踏まえまして、平成九年六月十七日に現行法が成立し、同年十月十六日に施行されたところでございます。
 現行法は、国民の理解を得つつ、適正な形で移植医療を実施するため、本人の意思表示と家族の同意を臓器提供の重要な要件としております。この法律に基づき、現在、臓器移植が行われております。
 なお、腎臓と角膜の移植については、従前の経緯を踏まえまして、心停止下については、臓器移植法の附則によりまして、家族の承諾のみで現在も移植が可能となっているところでございます。
 次に、資料の三ページから、臓器移植法に関する法律の要点を簡単に申し上げます。
 経緯でございますが、今申し上げましたように、平成九年六月十七日に成立をいたしまして、四か月後の十月十六日に法律が施行されました。
 臓器移植法の要点は三つございまして、まず臓器の範囲と、臓器の摘出に関する事項と、その他の事項というふうに分けておりますけれども、この臓器移植法で取り扱う臓器というのは、人の心臓、肺、肝臓、腎臓、その他厚生労働省令で定める内臓ということで、この厚生労働省令で定めております内臓は膵臓と小腸を規定をしております。それから眼球でございます。この中で、どうしても脳死下でしか得られない臓器としては人の心臓ということになります。
 それから、二の臓器の摘出に関する事項でございますが、現行法の六条で定めておりまして、ア、イ、ウの部分でございますが、ちょっと読み上げますと、「医師は、本人が臓器提供の意思を書面により表示しており、かつ、遺族が拒まないときには、移植術に使用するため、死体(脳死した者の身体を含む。)から臓器を摘出することができるものとする」、「イ アの「脳死した者の死体」とは、臓器が摘出されることとなる者であって脳死と判定されたものの身体をいうこと。」、「ウ 臓器の摘出に係る脳死の判定は、本人が脳死判定に従う意思の表示があり、かつ、家族が脳死判定を拒まない場合に限定すること。」と、このような形で摘出に関しての条件を六条で定めております。それから、先ほど申し上げましたが、附則で、エのところでございますが、当分の間の経過措置として、眼球、これは角膜ですが、又は腎臓の摘出については、従前どおり、遺族の同意のみによって心停止後の死体から摘出を認めることになっております。
 その他の事項でございますが、まず、国及び地方公共団体は、移植についての国民の理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない、これは三条でございます。それから、臓器の摘出に係る脳死の判定、臓器の摘出又は移植術を行った医師は、それぞれの記録を作成しなければならないこと、これは四条でございます。それから、臓器の売買等を禁止したこと、これは脳死下に限らず生体の場合もそうでございますが、十一条で規定をしております。それから、エでございますが、業として死体から摘出された臓器のあっせんをしようとする者は、臓器の別ごとに厚生労働大臣の許可を受けなければならない、これが十二条でございます。それから、法施行後三年をめどに制度全般について検討を加え、必要な措置が講ぜられるべきものとしたこと、これが附則の二条でございます。
 次に、四ページを開けていただきますと、臓器の移植に関する法律の施行規則の概要を載せておりますが、まず臓器の範囲は先ほど申し上げたとおりでございます。
 脳死の判定の基準でございますが、いわゆる竹内基準によって規定をされております。具体的には、そこにございますように、五つの項目について確認をし、少なくとも六時間経過した後に再び同じ項目について確認することにより実施すると。ただし、この場合は、竹内基準の経緯から、六歳未満の者はもう前提から除かれております。それから、低体温の方は脳幹の反射などが非常に弱くなるというようなこともございます。また、薬物中毒の方もそういう反射が鈍くなるということで、この方はまず判定対象から除外をされております。
 五つの条件というのは、いわゆる深昏睡、ディープコーマと呼ばれるもの、それから瞳孔の固定ですね、それから脳幹反射、これはいずれも脳の機能を見ているものです。それから平たん脳波、脳波が平たんであること。それから、先ほどのように、延髄などがもう機能を停止しているということで自発呼吸の消失と。この自発呼吸の消失については、後ほどちょっと述べますけれども、若干患者さんの方に負荷を掛けるという可能性があることから、この確認は最後に要するということになっております。それから、脳死判定に当たっては、聴性脳幹誘発反応の消失についても確認するように努めるものとするということになっております。
 それから、次の(3)でございますが、脳死判定等の記録につきましては、医師が作成すべき次の記録等について記載すべき具体的な項目として、そこに挙げたようなものを挙げております。
 それから、四番のあっせん機関については、厚生労働大臣の許可の手続について規定をしていると。
 その他、使用されなかった部分の臓器の処理方法について、これは流用は不可でございまして、焼却をしなければならないということなどの規定を施行規則で設けているところでございます。
 さらに、ガイドラインというのがございまして、五ページ目でございますが、臓器移植法に基づきまして臓器の移植に関する法律施行規則を定めたわけでございますが、さらに脳死判定基準、それから脳死判定等の記録に関する詳細な事項を規定する、そして臓器移植の運用に当たっての必要な事項を定めるということで、臓器移植に関する法律の運用に関するガイドラインというものを定めております。それが五ページでございます。最初にこれ出ましたのは、平成九年十月八日付けの通知でございます。
 このガイドラインにおきましては、臓器提供について意思表示ができる年齢として、民法の遺言可能年齢等を参考として、十五歳以上と決めております。この臓器移植法そのものでは年齢制限についてはまさに自分の意思が表示できるということを前提にはしておりますけれども、法律で年齢を決めるのではなくて、このガイドラインで現行十五歳以上とすることが決められているわけでございます。
 それから二つ目の丸でございますが、遺族及び家族の範囲については、個々の事案に即し、家族構成等に応じて判断すべきものということで、これは当然、脳死判定等には遺族及び家族の同意等が必要なわけでございますが、その範囲について決めておるものでございまして、原則として配偶者、子、父母、孫、祖父母及び同居の親族と。それから、全体の調整を喪主がこれも遺族の総意を取りまとめると、こういうふうなことをガイドラインで決めさせていただいております。
 それから三つ目でございますが、臓器提供施設の基準につきましては、適正な脳死判定を行う体制がある施設であって、高度の医療を行う大学附属病院などの四つの施設とすることになっておりまして、そこにございますように、大学病院のほか、日本救急医学会の指導医指定施設、日本脳神経外科学会の専門医訓練施設。これは、A項となっていますのは、この中でもレベルの高い施設だということでございます。それから、救命救急センターとして認定された施設というものが臓器提供施設となれるということをこのガイドラインで決めているわけでございます。これについても後ほどまた詳しく述べさせていただきます。
 それから、またこれも追って詳細について述べさせていただきますけれども、臓器移植法に基づく脳死判定を行うまでの手順についてもこのガイドラインで定めているところでございます。
 それから、脳死判定に係る個々の具体的検査手法につきましては、厚生労働省厚生科学研究費特別研究事業、脳死判定手順に関する研究班の平成十一年度報告書でございます法的脳死判定マニュアルに準拠して行うことを決めさせていただいております。
 そのようなことがこのガイドラインで決めているわけでございますが、下から二つ目でございます移植施設でございますけれども、これは移植施設についても、後ほど述べますけれども、限定を掛けておりまして、移植関係学会合同委員会において選定された施設に限定をするというようなことをしているところでございます。
 次に、六ページから七ページにかけまして、脳死下での臓器提供の実施状況、本法が施行後の脳死下での臓器提供の実施状況について御説明をいたします。
 まず、臓器移植には脳死下、それから先ほどから言っております心停止下、それから生体からの提供、この三つの形があるわけでございますが、移植できる臓器としては、現在、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、角膜となっておりますが、先ほど申し上げましたように、医学的な特性から心臓は脳死下のみからしか臓器提供が可能ではありません。
 そこの一にございますように、臓器移植法が施行された平成九年十月以降の実施状況でございますが、脳死判定が行われた事例は八十二例でございますが、そのうち臓器提供に至った事例は八十一例ということで、一例は諸般の事情で提供が、何といいますか、臓器そのものに少し提供をするには問題があったということで提供に至らなかった事例でございます。
 なお、本年一月には、ここに書いてございませんが、我が国で初めての心肺同時移植が行われたところでございます。
 そこで、臓器別で、二のところの表を見ていただきますと、これまで、心臓の移植が六十五件、肺の移植は五十一件、肝臓の移植が五十九件、腎臓の移植は七十三件、膵臓の移植が五十七件、小腸の移植は四件、角膜の移植が二十九件となっております。このように、徐々にではございますが、脳死下からの移植医療の実績が積み重ねてきておりますけれども、現在におきましても移植を待っている方が多くございます。
 そこにございますように待機患者というふうになっておりますけれども、平成二十一年三月三十一日現在で社団法人日本臓器移植ネットワークに登録されている移植希望者数は、心臓が百二十八名、肺が百十一名、肝臓が二百三十九名、腎臓に至っては一万名を超える方等々ということで極めて多くの待機患者がおられまして、これと脳死からの臓器提供の数を見ると、非常に待機患者の方が上回っておりまして、中には、このままで行くと十年を待たなきゃいけないというふうなケースも想定をされるわけでございます。
 次、七ページでございますが、横の表になっております。
 脳死下での臓器提供者数の推移でございますが、第一例目の臓器提供に至ったのは平成十一年二月でございます。この年には四例の提供がございました。その後一けた台で推移しておりましたが、平成十八年からは十件以上の提供数が毎年続いているところでございます。平成二十一年は、まだ年の途中でございますが、五例となっているところでございます。
 それから、八ページでございますけれども、生体間の移植の状況で、肝臓と肺と腎臓の状況をお示ししております。
 まず、肝臓移植、腎臓移植については、脳死下での臓器提供移植と比べて生体間移植の件数が非常に多い傾向になっておりまして、この肝臓のところで見ていただきますと、脳死はほとんど見えないぐらいの高さになっておりますけれども、平成十九年における生体間移植の件数を見ますと、肝臓移植は四百三十三件、腎臓移植は一千三十七件、肺移植は九件となっているところでございます。
 生体からの臓器移植に関しましては、やむを得ない場合に例外として実施されるものであること、臓器提供の任意性を確保するため提供者の自由意思を適切に確認すること、文書による説明及び同意を得ることなどを先ほどのガイドラインで定めまして、この下で実施をされているところでございます。そのほかにも、生体移植に関しましては日本移植学会倫理指針においても定められているところでございます。
 次に九ページでございますが、先ほど申し上げました、臓器移植法において一定の要件の下で医師が死体から臓器の摘出ができることを、脳死下でできることを認めている臓器提供施設の条件でございますけれども、同法の施行に当たりまして、臓器移植が国民の理解を得つつ望ましい形で定着するようにと、一定の要件を満たした施設においてのみ、法的脳死判定を受けた者からのみ臓器の摘出ができることとしているところでございます。
 具体的には、臓器移植法に基づく脳死した者の身体からの臓器提供を行う施設については、ガイドラインにおきまして、当該施設全体で合意がまず得られていること、適正な脳死判定を行う体制がある施設であって、救急医療等の関連分野において高度の医療を行う施設である、一つは大学附属病院、日本救急医学会の指導医指定施設、日本脳神経外科学会の専門医訓練施設、救命救急センターとして認定された施設の四類型を指定をしております。
 臓器提供施設の数でございますけれども、平成二十年九月の状況でございますが、厚生労働省がこういう四類型の施設に対して実際的に臓器提供ができるかどうかということを確認をしておりますが、臓器提供施設として必要な体制を整えていると回答した施設は、この四類型に当たる施設が四百七十四ございますが、そのうち三百三十八施設が提供できると答えているところでございます。
 それから、一方、十ページでございますけれども、脳死下での移植実施施設、今度は移植そのものを行う施設でございますけれども、脳死した者の身体から摘出された臓器の移植の実施についてガイドラインにおいて移植関係学会合同委員会において選定された施設に限定することにしておりますが、そこに挙げておるような施設でございます。選定されている施設の数でございますが、臓器別で、これ重複がございますが、心臓移植は六、肝臓移植は十三、肺移植は七、膵臓移植は十四、小腸移植は九施設となっているところでございます。
 これらの選定された施設に対しまして、社団法人臓器移植ネットワークにおける移植実施施設として登録をされまして、その施設に脳死下からの臓器が配分をされるということになります。
 それから、十一ページでございますが、日本臓器移植ネットワークの活動を示す体系図を示しております。実際の臓器の摘出から移植に至るまでの関係各機関のかかわりをこの表で見ていただければというふうに思いますが。
 まず、死体から摘出された移植術に使用される臓器のあっせんについては、厚生労働大臣の許可の下、社団法人日本臓器移植ネットワークにおいて実施されておりまして、ネットワークには、そこの上にございます東日本、中日本、西日本の三つの支部がございます。
 臓器提供から移植に至るまでにおけるネットワークの役割について説明いたしますと、ネットワークにおきましては、ネットワークに所属する移植コーディネーター、これは本部あるいは支部に所属をしておりますけれども、こういう方々と、都道府県にも移植コーディネーターという方がおられまして、この支部の移植コーディネーターと都道府県の移植コーディネーターが連絡調整の下で、臓器提供施設などの医療機関からネットワークに寄せられたドナー情報を基に、このコーディネーターが出向きまして、家族への法的脳死判定、臓器提供に関する説明を行うとともに、あらかじめ本部の方に登録されておりますレシピエントの中から適合する方を選定をいたしまして、臓器摘出チームの派遣から、臓器摘出、臓器移植の実施に至るまでの一連の手続の円滑な実施を行っているところでございます。
 それから、次、十二ページに参りますが、角膜については少し例外的な扱いをしていると申し上げましたが、角膜移植については、全国五十四、これは都道府県の数を超えていますが、県によっては二か所以上のアイバンクがあるところがございますので、五十四か所にあるアイバンクにおきまして角膜提供のあっせんを行っているところでございまして、平成二十年度末時点において角膜移植希望者は二千七百六十九名、角膜提供登録者は、この方は百二十一万七千六百三十一名となっておりまして、角膜移植術は累計五万件ばかり実施をされているところでございます。
 次に、十三ページでございますが、ここからが諸外国の状況ということで、論点となっております脳死を人の死とするかどうかということについて平成十三年の資料で御説明をしたいというふうに思います。全体を見れば多くの国々は脳死を人の死とすることが定着をしている状況にあると承知をしているところでございます。
 具体的に申し上げますと、アメリカ合衆国の多くの州におきましては、脳死を人の死とする大統領委員会の人の死の判定に関する統一法案がモデル法案となりまして、これに倣って脳死に関する法律が存在をしております。カナダにおきましては、臓器移植に関する法令の中で脳死を人の死と定義をしております。イギリスにおきましては、法令の規定はございませんが、元々慣習法の国でもございまして、脳死を人の死とする王立医学会の見解を慣習法上認めておりまして、社会的にもこれが受け入れられております。スウェーデンでございますが、死の定義について、人の死の決定のための基準に関する法律により、脳の全機能が完全かつ元には戻らない状態で停止することとされていると、このようなことで海外は運用をしているような状況でございます。
 十四ページでございますが、我が国と海外の臓器移植法制の比較ということで、こういう表でございますが、我が国の臓器移植法は、現行は本人の書面による意思表示を前提として家族の書面による同意を臓器提供の重要な要件としているわけでございまして、日本の臓器移植法は、そこにございますように、まず本人と遺族の承諾がないと駄目だということを原則にしているわけでございます。
 一方、諸外国の臓器移植法制を見ますと、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、オーストラリア、大韓民国などの諸外国におきましては、本人の意思が不明の場合に遺族の承諾による臓器の摘出が可能とされているところでございます。制度としましては、遺族が拒否しても本人が承諾していれば臓器の摘出は可能とされている国もありますが、これ例えばフランスなどがそういう傾向もありますけれども、実際には遺族が拒否した場合には臓器が摘出されていない状況にあるということでございます。
 それから、十五ページから十七ページでございますが、世界の臓器提供者について説明をさせていただきます。
 まず十五ページでございますけれども、脳死下での臓器提供は海外では広く行われておりまして、人口百万人当たり、スペインでは三十四・三件、アメリカでは二十四・六件、韓国では二・九件、これに対して日本は脳死下からの臓器提供は百万人当たり〇・一件という状況でございます。
 それから、次のページでございますが、脳死下での臓器提供を含む、これ、脳死下と心停止下から両方合わせたいわゆる死体からの百万人当たりの臓器提供数、二〇〇七年のものでございますけれども、人口百万人当たり、スペインでは三十四・三件、アメリカでは二十四・六件、韓国で二・九、日本は心停止下を含めても〇・八件ということになっているわけでございます。
 また、脳死下及び心停止下の状況比較でございますが、次の十七ページでございます。脳死下及び心停止下での臓器提供と生体からの臓器提供を比べましたものが次の十七ページでございますが、欧米諸国では脳死下及び心停止下での臓器提供が多く、アジアでは生体間移植が多いと、こういう傾向がこのグラフから見て取っていただけるというふうに思います。例えば、日本の場合には、死体からは〇・八ですけれども、生体からは百万人当たり十一・一でございますが、スペインの場合には、死体からが三十四・三で、生体は、これは約四ぐらいということでございましょうか、こういう傾向が見て取られます。
 それから、十八ページから二十ページでございますが、これは問題になります海外への渡航移植の現状について御説明をいたします。
 まず十八ページでございますが、心臓については割と海外で移植をされた方の実施数が比較的正確に把握をされているというふうに考えております。心臓移植については、研究班の報告でございますが、一九八八年から二〇〇五年までの十八年間で海外で移植を受けた方は百二名となっておりまして、一九九七年に現行の臓器移植法が施行されましたが、九八年から二〇〇五年までの八年間で海外で心臓移植を受けた方は六十五名となっております。
 次に十九ページでございますが、肝臓と腎臓についての海外渡航移植者の状況でございます。これについては、心臓ほどデータが正確でないので、こういう調査の回答の一つの結果だというふうに受け止めていただきたいんですが、ここにございます研究班報告によりますと、調査した百二十施設において外来通院している移植患者、肝臓の移植患者でございますが、二千九百八十三名ございますが、そのうち渡航移植を受けて通院している方が二百二十一名ということになっております。それから、腎臓につきましては、調査した百三十八施設におきまして外来通院している移植患者が八千二百九十七名おられますが、そのうち海外渡航移植をされた方というのは百九十八名となっているわけでございます。
 次に、二十ページでございますが、小児の海外渡航の心臓移植の状況とその渡航先でございますが、赤がアメリカでございますけれども、圧倒的にアメリカに渡航をしているという現状でございます。
 これも年代別に見ますと、一九八八年から二〇〇五年までの十八年間で十八歳未満の方で海外で心臓移植を受けた方が五十八名、それから九七年の臓器移植法の施行以降でございますが、二〇〇五年までの八年間で海外で心臓移植を受けた小児の方というのは四十二名となっております。
 次に、二十一ページから最近の国際的な動向について簡単に御説明を申し上げます。
 まず、二十一ページでございますが、イスタンブール宣言でございます。まず、世界的な臓器移植の不足からくる社会的、倫理的問題の改善に向けて、国際移植学会が中心となりまして、昨年五月、トルコのイスタンブールでサミットが開かれたわけでございます。ここで、死体ドナーを自国で増やして自国での臓器移植を増やすように呼びかけること、そのために国際協力をすることなどを内容とするいわゆるイスタンブール宣言がまとめられたところでございます。宣言の骨子はそこにあります一、二、三ということで、一番重要なものは二の、今読み上げたところでございます。
 それから、二十二ページになりますが、今度はWHOの動きでございますが、本来ならこの五月のWHOの総会で議決、決議がなされるところだったんですが、新型インフルエンザの影響を受けて、この議決そのものが来年の総会、五月の総会に延期をされたというふうに聞いております。このWHOにおきましても様々な議論がこれまでされておりますし、既に臓器移植に関する指針というものがWHOでは定めておりますが、これを改正をする、で、新たに決議をするということで、臓器売買や渡航移植、いわゆる移植ツーリズムへの対応について議論が行われる見込みでございます。
 現在示されている指針改正案の概要でございますが、臓器等と引換えに金銭を授受することその他あらゆる商取引を禁止すること、それからドナーとレシピエントに対し継続的な調査を行うこと、それからドナーとレシピエントのプライバシーを確保した上で臓器の提供及び移植の実施について透明性を確保することなどが主な改正の内容ということでございまして、二十二ページの下の方にそのことを書かせていただいています。
 それから、これはまだ、その二十三ページから二十五ページまでは今申し上げました改正案で、決定のものではございませんけれども、ちょっと英文で恐縮でございますけれども、正確を期すために英文でここに掲載をさせていただきまして、これが現在改正案の原案となっているものでございます。
 それから、二十六ページに参りますが、脳死判定基準について御説明をいたします。
 現在の脳死判定基準でございますが、昭和六十年度の厚生省研究班によりいわゆる竹内基準が示されまして、その後、平成四年の脳死臨調の答申や平成六年の臓器提供手続に関するワーキング・グループにおいて、当時の医学水準から見てこの基準が妥当であるとの結論をいただいていると考えているところでございます。
 臓器移植法に基づく脳死判定の標準的な手順等については臓器の移植に関する法律施行規則及びガイドラインにおいて定められているところでございまして、具体的には、先ほど申し上げましたが、法的脳死判定マニュアルにのっとって行うことになっております。
 臓器移植法に基づく脳死判定は、前提条件として、脳の器質的な障害により深昏睡及び自発呼吸を消失した状態と認められ、これは前提条件のところにそれが、今の二十六ページに書かれておりますけれども、脳の器質的な障害により深昏睡及び自発呼吸を消失した状態と認められ、かつその器質的脳障害の原因となる疾患が確実に診断をされていて、その原疾患に対して行い得るすべての適切な治療を行った場合であっても回復の可能性がないと認められた者について行うこととしているわけでございます。
 その判定項目といたしましては、その判定基準のところに、下の方に書いておりますけれども、深昏睡それから瞳孔散大・固定、脳幹反射の消失、平たん脳波、自発呼吸の消失と、この五項目で、これを六時間以上あけて二回検査をすることで法的脳死判定を行っているわけでございます。
 なお、ちょっと二十六ページの二つ目のカラムで除外例を書いておりますが、脳幹の反射などが非常に判定しにくいものとして、急性薬物中毒それから低体温それから代謝・内分泌障害それから十五歳未満の小児、これは医学的なものではなくて、ガイドライン上、本人の意思表明ができるかどうかということで除いておりますし、知的障害者もこの十五歳未満の小児と併せて判定基準から除外を現行しているところでございます。
 それから、これが現行の六歳以上の方については、今現在実際には行っているのは十五歳以上ですが、六歳以上についてはこのいわゆる竹内基準が適用できるものだというのが医学界ではおおよそ認められたことではないかというふうに考えておりますが、六歳未満などの小児の脳死判定基準につきましては、厚生科学研究等におきまして、基本的に現行のこの厚生省基準を踏まえつつ小児の特性に配慮した考え方で策定すると、このような研究報告が取りまとめられているところでございます。
 次、二十七ページでございますが、もう少し具体的に脳死下での臓器提供の流れを御説明をいたします。
 臓器移植法に基づき、脳死をされた方の身体からの臓器提供を行うことができる施設において器質的脳障害の原因となる疾患が確実に診断をされ、その疾患に対して行い得るすべての適切な医療を行った後に主治医が臨床的に脳死と診断した場合には、家族などの脳死についての理解の状況等を踏まえて、ドナーカードの所持など臓器提供に関して本人が何らかの意思表示を行っていたかどうか把握できたときに、これは具体的に言うと、臨床的脳死だという状態になったときにこの患者さんはドナーカードを持っていませんかというふうなことを聞いてみるとか、そういうふうなことでドナーカードを所持していることが把握をできた場合に主治医などが、まず脳死下での臓器提供の機会があるということ、その手続に際しては臓器移植ネットワークなどの移植コーディネーターによる説明があるということをお伝えをして、説明を聞くことについて家族の承諾が得られた場合に初めて社団法人日本臓器移植ネットワークに連絡をし、コーディネーターが派遣をされるということになります。
 その後、家族の心情に十分配慮しながら移植コーディネーターによる説明が行われまして、臓器提供についての家族の意思が確認できた場合には、その段階において初めて臓器移植法に基づく脳死判定が行われることになります。先ほど申し上げましたように、臓器移植法に基づく法的脳死判定は二回にわたって行われ、一回目の検査終了時から六時間以上経過した時点において行う二回目の検査において不可逆性が確認された時点が死亡だという判断になるわけでございます。
 その後、レシピエントが決まり、臓器移植を実際行う施設に連絡を行うことになりますが、その後、患者さんのところには臓器摘出チームが到着をし、臓器摘出が開始をされると、こういう手順になっているわけでございます。
 それから、二十八ページでございますが、現行の移植医療の普及啓発について簡単に御説明をいたします。
 現行法では、臓器を提供するには本人の意思表示をあくまでも尊重するという枠組みがございますので、そしてまた、併せて家族の同意も必要だということになっております。臓器提供者の意思を明らかにする方法として臓器提供意思表示カード、いわゆるドナーカードがございまして、これまで約一・二億枚が配られております。なお、このドナーカードには提供を拒否する場合についても意思表示をする欄が設けられているところでございます。
 このほか、社団法人日本臓器移植ネットワークと連携しながら、国民に対する普及啓発としては、政府広報それから各種パンフレットの作成、配布、それから臓器提供意思登録システムの整備などを行っているところでございます。
 それから、二十九ページにありますが、臓器移植に関する世論調査について簡単に申し述べます。
 これは、平成二十年九月に行われた世論調査でございますが、臓器移植に関する世論調査は平成十年より二年ごとに実施されておりまして、直近のものは二十年九月に実施され、同年十一月に結果が公表されております。
 平成十八年に実施されました前回調査からの動きのあったものについて説明いたしますと、まずドナーカードを知っていたとする回答が、そこの最初の二のところの、知っていた、知らなかったところでございますが、十八年から二十年に比べまして七一・一%と、前回より四・七ポイント増加をしております。認知度は若干増加したんではないかと思っています。ドナーカードの所持状況も、七・九から八・四%というふうに増加をしております。
 しかし、その次の欄でございますが、ドナーカードの記入状況を見ますと、カード所持者のうち五〇・三%と、前回より記入している方が一〇ポイント減少しているということで、全体として記入している方が三・八%ということで、若干減少しているという現状でございます。
 それから、臓器提供に関する意思については、脳死下、心停止下とも提供したいという回答が増加をしているというのが下の二つ目の丸のところのデータでございますが、提供したいという回答が増加をしております。
 それから、十五歳未満の方の臓器提供については、できないのはやむを得ないとする回答が二一・二%ある一方、できるようにすべきだという回答が六九・〇%、これはいずれも微増にはなっておりますけれども、こういう状況でございます。
 それから、少し蛇足になりますが、三十ページは、臓器移植について、保険適用についてでございますが、平成二十年度の診療報酬改定を受けまして、これまで先進医療の対象とされていました生体間の肺移植については新たに保険適用となったところでございます。
 以上、簡単でございますけれども、あとの三十一ページからは現行の臓器移植法の法律の本文と、それから施行規則、それからガイドライン、四十ページからガイドラインを添付をさせていただいております。
 以上、簡単でございますけれども、我が国の現状について御説明をさせていただきました。
 ありがとうございました。
#19
○委員長(辻泰弘君) 以上で政府からの説明聴取は終わりました。
 これよりただいまの説明に対する質疑を行います。
 質疑のある方は、順次挙手の上、委員長の指名を待って御発言願います。
 なお、政府参考人、質疑者ともに発言は着席のままで結構でございます。
#20
○谷博之君 いろいろと説明をいただきまして、ありがとうございました。若干分からないというか説明をいただきたいところがあるので、ちょっと幾つかお聞きしたいと思っておりますが。
 今、説明もいただいた一番まず最後の部分の保険適用の問題なんですけれども、附則の第十一条に、この条文を読みますと、いわゆるドナーとレシピエントとのその関係について、少なくともドナー側の保険の適用によってその医療が、費用負担が行われているというふうに読めるんですけれども、現実には、この費用負担については法的脳死判定がなされた後のドナーの方に対する処置について、この附則の第十一条ではレシピエント側の医療保険の適用について触れられているかどうかについては、今申し上げたようにドナー側の医療保険で適用、負担されているというふうに書いているように読めるんですけれども、このことについて説明をいただきたいということが一つです。
 それから、前後しますけれども、意思表示の確認の方法についてなんですけれども、例えば御本人がドナーに登録をして臓器提供する意思表示をしていると。そのカードも持っているけれども、例えばこういう緊急な状態になったときに、本人のもちろん意識もないわけですが、そのカードが、実は家族、周りの方が分からないところに保管をしていたと、例えば自宅のどこか引き出しの中に入れていたとか、そういうものが後になって出てきた場合に、これらについてそれはどういうふうな措置をするということになるのか。
 それから三つ目は、無呼吸テスト、先ほど説明ありましたけれども、こういう無呼吸テストに代わる、特に脳幹、呼吸の中枢器官の状態を調べる、例えば別の検査でいうとSPECTという検査方法が法的脳死判定段階ではなくて臨床的脳死診断の一環としても考えられるのではないかというふうに思うんですが、これについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 それから、最後になりますけれども、衆議院の委員会でも第六条の二項の問題が議論をされています。臓器移植に限って脳死を人の死と認めるということのA案提案者からの説明はあったわけですが、この「身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」というこの部分が今回削除されているわけで、しかし衆議院の委員会における議論の中ではこれを復活させてもいいというふうな法案提出者の答弁も出てきています。そして、直近の動きを見ておりますと、Aダッシュ案というのが何か出そうで、そして、この部分を、六条の二項をもう一回ここに復活させるというふうな動きがあるやに聞いていますが、これは法案提出者に聞くべき質問なのかもしれませんけれども、こういう動きがあるのかどうか、これ分かる範囲でお答えいただければ有り難いと思っております。
 以上、四点です。
#21
○政府参考人(上田博三君) まず、保険適用についてはちょっと混乱させる資料を出して失礼をいたしました。
 この三十ページの資料は生体間肺移植についての資料でございまして、脳死者からの移植に係る医療費につきましては、臓器移植に至るまでの脳死判定、脳死判定後の患者さんの処置、臓器を摘出する際の係る費用についてはすべて医療保険でまず賄っておりますけれども、これはレシピエント側への請求となります。
 それから、ドナーカードについての御質問ございました。
 これはガイドライン等でも書面で確認をするというふうになっておりますので、現実に本人が記載したものがなければやはり脳死判定に進めないということに現行法はなっておりまして、たんすの中に入っている、後で出てきたと、もうそれはちょっと時期が遅いということになりますので、できるだけ運転免許証なんかと一緒に携帯をしてもらうということを我々としてはお願いをしたいということで、まさにその場にカードがなければ、署名したカードがなければ、それは後から出てきてももうそれは脳死判定に進めないということでございますので、そういう運用をしているということでございます。
 それから、無呼吸テストとSPECTでございますが、ちょっと私もここは余り専門でないんですが、SPECTそのものは脳への血流を評価をする検査だというふうに思っておりまして、そのことをもって直ちに無呼吸テストに代えられるものではないということで、やはり脳死というのは植物状態と違いまして自発呼吸がないということが大前提でございますので、そういう点では無呼吸テストはやはり脳死判定では必須のものだというふうに考えておりまして、SPECTをもしやるとすれば、追加的な検査として、脳血流を補足するものとしてやるべきものではないかというふうに私は理解をしております。
 それから、最後のいわゆる衆議院で通過した案につきましては、これは衆議院の方でかなりの多数で可決をされましたので、それは我々としては尊重しなければいけないと思っておりますが、なかなか個々のことにつきましては私の口からお答えするよりは法制局なり提案者からお答えをいただいた方がいいと思うんですが。ちなみに、過去の経緯だけで申し上げますと、先ほどのお示ししました資料の成立の変遷というところがございますが、資料の二ページでございますけれども、当時の参議院の修正というのは、脳死に関する様々な意見があることに配慮して、脳死移植に際して脳死を認めると、こういう修正をした折に現下A案で入っている部分が削除をされて成立をしたと。それが今回A案では復活をしていると、このような状況にあるというふうに考えているところでございます。
#22
○谷博之君 ちょっと重ねてお伺いしたいんですが、その一番最初の質問で私は附則の第十一条のことを申し上げました。この条文の内容は、今説明がありましたように、レシピエント側の医療保険で負担されるということになっているようですけれども、現実にはこの書きぶりが非常にドナー側の医療保険で負担されるという内容になっているように私ちょっと感ずるんですが、この附則の条文で今申し上げたような御答弁があったようなことというのはこれ理解できるんでしょうか、これ重ねてお伺いしたいと思います。
 条文上、レシピエント側の保険適用には今申し上げたように触れていませんけれども、これは、大臣告示か何かでそういうふうなことになっているんでしょうか、もう少し重ねてお伺いしたいと思います。
#23
○政府参考人(上田博三君) ちょっと検討させてください。時間をいただけますでしょうか。
#24
○委員長(辻泰弘君) はい。
#25
○谷博之君 それからもう一点、先ほどの説明の中で、いわゆる意思表示のドナーカードのことですが、ちょっと逆にお聞きしたいんですけれども、いわゆる移植を拒否していると、私は移植はしませんということの拒否をしたそういうカードが後で出てきた場合、例えばたんすの中に入っていたと、にもかかわらず、それが実際、先ほどのような説明で移植がそういう場合もしやれるのかどうか、もしやったときにはどう扱われるのかということについて。
#26
○政府参考人(上田博三君) 現行法上は本人の臓器提供の意思が明確に書面でないと駄目なわけですから、現行法ではあり得ないんですが、一部腎臓とか角膜の場合には家族の承諾だけでいいということで、そういう問題が場合によっては生ずるかもしれないんですが、脳死下に関しては、現行法上はもうあくまでも本人の意思が明確に書面でなければいけない、それも現物がなければいけないということで運用していますので、そういう問題は生じないというふうに思っております。
#27
○谷博之君 じゃ、先ほどの件で答弁お願いします。
#28
○政府参考人(中尾昭弘君) 保険適用の問題でございますけれども、これは保険局のマターになりますので、私どもの方で必ずしも正確に把握しているわけではございませんが、診療報酬の点数表上、この移植に関するドナーの臓器の摘出経費はそのレシピエント側の点数ということで保険点数の中で取り扱われているという現状でございます。
#29
○谷博之君 じゃ、確認。ちょっと委員長、もう一点だけ確認させて。
 じゃ、この附則の十一条の内容でそのことが読み取れるということでいいわけですね。
#30
○政府参考人(中尾昭弘君) 済みません。私、保険局の担当でございませんので、正確なところはまたきちんと調べますけれども、今の扱いはそのような形で保険点数上なっているということで承知をしております。附則十一条との関係につきましてはちょっと改めてきちんと整理をさせていただきたいと思います。
#31
○小池晃君 WHOの臓器移植の指針の改定問題についてちょっとお聞きをしたいんですけれども、それとそれに関する決議について。
 一つは、ここで言っている移植ツーリズムとか臓器売買というものについては、厚生労働省としてはどういう定義というふうに考えているのか、これが一点です。
 それから二つ目は、ここで抑えるべきというふうにされているのは、金銭をもって売買をする、あるいは強制を伴うものなどであって、海外に行って臓器移植を受けるということを抑制するという趣旨ではないんではないかというふうに読めると思うんですけど、その点についてどうお考えか。
 それから最後は、むしろこの指針の改定なり決議というのは、生体移植についての安全管理とかあるいは人権の保護ということも書いていますし、それから、臓器以外の組織などの売買についてもこれは一定の規制を設けるべしというふうになっているんですが、むしろこのWHOの指針なり決議なりが採択されると、我が国においてこういった部分での法整備が求められることになるのではないかと思うんですが、その点についての見解を。
 以上三点、お伺いします。
#32
○政府参考人(上田博三君) まず、WHOのガイドラインの性格でございますけれども、これは条約ではございませんので、あくまでもガイドラインということでございます。それから、WHOというのは、御存じのように、先進国から発展途上国まで幅広く同じルールでできることをやるということがございますので、必ずしも強制的な法的措置を求めなければいけないものではないということです。それから、途中でおっしゃいました、いわゆる透明性とかそういうものを確保するべしということはまさにおっしゃったとおりでございます。
 それから、一番最初におっしゃった渡航移植の問題でございますけれども、まず、やはりその前に、臓器売買、これはやっぱりあってはならないことだと。これは恐らく世界中、共通認識でありますので、そこに何らかの対価が発生をして臓器移植が行われることは、これはもう厳に慎む、そこは恐らくだれも変わらない。
 移植ツーリズムについては、今回のWHOの決定がされても、それを全く禁止をするというものではないんだろうと。ただ、できるだけ自国民のための臓器は自国で確保してほしいという思想を前提にして、その延長を突き詰めていくと、何といいますか、移植ツーリズムは余りよろしくないんではないかということが出てくるという、こういうふうな理解だというふうに考えておるところでございます。
#33
○福島みずほ君 A案に関して言えば、本人の承諾がない、あるいは意思がないという場合に、遺族が書面により承諾すればオーケーになると、これがやはり大きなポイントだと思うんですね。
 それで、遺族、家族ということで、条文上は遺族、別のところは、今日の趣旨説明では家族と言っていて、法律家の立場からすれば、遺族、家族、現在だって規定はあるけれども、現在は本人の承諾があって、家族の承諾、遺族の承諾があるからいいんだけれども、本人の承諾がなくて遺族の承諾があれば取り出せる、これがやっぱり非常に、だれを家族と言うのか、だれを遺族と言うのか。ガイドラインにはありますけれども、質問のその一は、範囲が不明確なわけですね。家族、遺族って法律用語ではありませんから、だれをもって言うのか。家族の中にも対立があるかもしれない。お父さんはオーケー、お母さんはノー。子供たちにも対立があるかもしれない。
 ですから、家族、遺族の承諾と言った場合に、現行法ではA案よりもより位置付けは低いですけれども、遺族、家族の承諾と言った場合に、家族で後悔している遺族がいるのか、あるいは遺族に対するケアというのはやっているのか。
 二つ目は、脳死の宣告に対して、家族が法的な脳死判定を拒否する場合というのはあるのか。撤回した場合などは現実にあるのか。あるいは、遺族間でもめる。例えば、家族ってたくさんいますし、法定相続人という概念ではないですから、病院に駆け付けた順で意見が対立するかもしれませんし、遺族間で対立するとか、今までの移植の例でもそういうものがあるのかどうかということを教えてください。
 また、もし分かれば、脳死で臓器移植した人に関して、交通事故が多いんじゃないかと一般的に言われているんですが、年齢や、交通事故とか、実際どういう人が脳死判定を受けて移植されているのか、もし分かれば教えてください。
 二点です。
#34
○政府参考人(上田博三君) まず、この移植法でも家族、遺族というふうなことは用いられております。ただ、それは、ほかの法律の例えば民法とか、それとは全く完全に一致しているかどうかというのは私は十分説明はできないんですけれども、少なくともガイドラインでこの家族、遺族というものの範囲というのは、特にこれは家族の同意がなければ脳死判定に進めませんので、そういう点ではこの家族は規定をしておりまして、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び同居の親族ということで、同居の親族というのは例えばおいとかめいとか、同居をされていればそういう血族、姻族の関係の方も入るんだろうということで、幅広くそういうものをとらえて、ただ、最終的には、喪主、祭祀の主宰者となる方が全体の家族なり遺族の総意を取りまとめると、こういうふうな形でお願いをしているわけでございます。
 実際にこういう中から、実際の問題として、いろんな経緯はあるにせよ、お一方でもやはり私は絶対に駄目だと反対する方が今のこの遺族なり家族の中に出てくれば、それはそもそも脳死判定には進まないというのが現行上の運用でございます。
 それから、どのような方が脳死になったかということについては、これはちょっとむしろ専門家に聞いていただいた方がいいんですが、大人と子供では若干違うようでございまして、大人の場合には要するに、そもそも脳出血などの脳血管障害などで脳そのものが障害を起こしてしまって一次的に脳障害から脳死になる方が多いんですが、子供さんの場合には、いわゆるおふろでおぼれ死んだといったような事故あるいは交通事故、こういう方の方が多くなるという傾向がございまして、そういうふうな傾向があるということでございます。
#35
○委員長(辻泰弘君) あと御質問の中で、臓器提供の遺族の方の後悔、ケアの部分に対応しているかというのと、それともう一つ、脳死判定された後に拒否できるかどうかという、した場合があるかと、その質問、二点ありました。
#36
○政府参考人(上田博三君) まず、脳死判定後に拒否できるかどうかについては、できます。これ、拒否をされればもうそこで中止になるということでございます。
 それから、もう一つ、家族のケアにつきましては、これはそれぞれ今まで八十一ないし二の方があるわけでございますけれども、実際には移植コーディネーターがドナー家族の承諾を得た上で葬儀に参列するなど、その後、もちろんその家族との関係ございますけれども、そこで一定のコンタクトができるようになれば、その後、家族訪問を行ったりドナー家族の相談支援、これは心情的なものを含めてその後ずっと、後ちゃんとフォローをするというその仕組みはできております。ただ、ドナー家族の方で、いや、もうそれはお断りになられた場合にはそこで打ち切ると。それはドナー家族の心情に十分配慮した上で対応するということになっております。
#37
○丸川珠代君 ありがとうございます。
 資料の十七ページの世界の臓器提供者数、生体と死体というので比べてあるグラフの点で、先ほどはざっくりと欧米においては死体からの移植が多いというふうに御説明をいただきましたが、グラフの中ほど、カナダ、スウェーデン、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドにおきましては生体からの移植の方が多くなっております。この点、制度上それから社会通念上の比較においてどのように、なぜ生体の方が多くなっていると分析されておられるでしょうか。
#38
○政府参考人(上田博三君) 我が国では、全体として例えばスペインなどでは移植に関しての医療機関の中あるいは社会の活動が非常に高いということで死体からも生体からも非常に提供者が多いわけなんですが、特に日本とかアジアの国ではまだ脳死下からの提供者数が必ずしも多くないという中で、実際に臓器移植を何とかしなければいけないということで生体からの提供が増えていると、こういう関係にあるんではないかというふうに理解をしています。
 ただ、国によってそれぞれの体系とか社会の状況とか、あるいは宗教的なものが違いますので、ちょっと私どもも個々分析をしたわけじゃございませんけれども、この表で見ていただくように、こんなに大きな差があることは事実でございます。
#39
○山本博司君 公明党の山本でございます。
 十二年前にこの法律の附帯決議が八項目あると思いますけれども、その今現状をどういうふうに評価をしていらっしゃるか。特に、先ほどもドナーカードの普及とか、またコーディネーターの資質の向上と育成という形の項目がこの附帯決議でも出されておりますけれども、現状としては大変厳しい状況の中だと思いますけれども、こういう部分をどう評価をしているかということが一つでございます。
 そして、それ以外の中でもこの附帯決議の評価、これを、報告をするとかという項目もあったと思いますけれども、こういう点に関して簡潔にお答えをいただければと思います。
#40
○政府参考人(上田博三君) ドナーカードは、先ほど申し上げましたように、一・二億枚が配られたわけなんですが、現状、必ずしも十分それが保持されていないと、あるいは先ほど申し上げましたように記入がされていないということがございます。
 それで、現在、運転免許証なりあるいは健康保険証にシールで張ったり、あるいはそこに記載欄を設けて、健康保険証ならそれはなくさないし常時持っているわけですから、あるいは医療機関にかかる場合は必ず健康保険証を出してもらえるということで、そこに記載をする形で、やっぱりその辺の努力が足りない。
 それから、これは国民も医療機関も恐らくそうなんでしょうけれども、もう少しこういうことに対して、もちろん我々の努力が一番足りないと言われればそれまでなんですけれども、ドナーカードの普及ということについてもうちょっと努力をしなければいけないんですが、多少そういう、健康保険証にそういう記載欄を設けるようなことでこれからやっていくとともに、医療機関の協力を得て、ドナーカードあるいはその先の含めた臓器移植に対しての医療機関の考え方、対応みたいなものをこれから変わっていけば、その辺は変わるんだろうというふうに思っています。
 それから、まず国会報告、その後の臓器移植法の附則に基づく国会報告でございますが、これは年一回、実施件数と生存率と生着率を毎年報告をさせていただいているところでございます。
#41
○蓮舫君 二点御質問させていただきたいんですが、一点目は、まずイスタンブール宣言以降なんですが、ドイツとかアメリカとかいわゆる先進諸国において、海外から渡航してきて臓器移植を行いたいという者に対しての対応はどのようになってきたのか、それを教えていただけますか、まず。
#42
○政府参考人(上田博三君) ちょっと私も個々の条件について在外公館の方で調べていないんで、正確なことは言えないんですが、新聞情報などでは、幾つかの国で海外からの、何といいますか、移植希望者については、例えば費用面なんかで制約を加えるというような動きがあるというふうに聞いておりますけど、ちょっと全体をまだ把握をしておりません。
#43
○蓮舫君 ドイツでは、もう海外の移植渡航者に対して移植は提供できない、自給自足という流れになってきていると私は認識をしているんですが、今回、審議をさせていただくいわゆるA案を見ますと、もちろん臓器移植に対して子供さんの脳死認定というのは慎重に行わなければいけないとは思うんですけれども、A案では、今十五歳未満は臓器提供を国内で禁止されているものを開放する、臓器移植が行えるようになる。他方、参議院に提出された法案では、臨時子ども脳死・臓器移植調査会を内閣府に設置して一年掛けて検討すると。一年後の検討いかんにもよるんですけれども、当面、一年間は現行法のままですから、十五歳未満の臓器移植はできない。
 海外でも今自給自足の流れになってきているんで、そうすると救える命が救えないという懸念があるんですけれども、厚労省としてはA案あるいはこの法案、参議院に出された法案に対してどのような考え方をお持ちか。
#44
○政府参考人(上田博三君) 非常に難しい御質問なんですが、A案が相当の多数で衆議院で可決されたことはこれは尊重しなければいけないと思っているんですが、やはりこの問題は人の生死観とかそういうものに係る非常に重要な問題でございますので、ちょっと今、行政の側からそれぞれの個々の案について、あるいは今回出た対案についてちょっとコメントすることは、できたら控えさせていただきたいと。我々としては、立法者の皆さん方がお決めいただければ、それに対してもう全力でその実現に対して努力をしたいというふうに思っているところでございます。
#45
○古川俊治君 一点ちょっと、先ほどの谷先生の御質問とも関連をするんですが、現行の臓器移植法の六条二項についてちょっと伺いたいんですが、「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」の部分がこの度、A案では削除をされたという経緯があるわけですけれども、現行のこの法文の私は文理解釈をいたしますと、その身体から移植術に使用されるためのまず臓器が摘出されるということが前提になっていて、そしてそこに、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものが脳死体というふうに読めるんですね。
 ところが、これは法律の下位の規定となっておりますガイドライン、恐らく告知の形の法形式で出ていると思うんですが、そこの第九条には、実は脳死、臓器摘出に至らなかった場合についてもこれ死亡と扱うということになっておりまして、現行八十一例あるうちの一例はそういった例だというふうに伺っております。
 そうすると、文理解釈上、実はここと現行法の六条二項のこの前置きの部分とは矛盾するんではないかという気がするんですが、その点はいかがなんでしょうか。
#46
○政府参考人(上田博三君) ちょっと済みません、確認のためなんですが……
#47
○古川俊治君 現行では臓器摘出をしなかった人でも、法的脳死判定を二回やると、その時点で亡くなってしまうんですね。そうすると、臓器摘出しなくても脳死したことになっちゃうんで、それは先ほどの御説明からいうと六条二項と、ちょっと文理解釈とは違うんではないかということを申し上げているんです。
#48
○政府参考人(中尾昭弘君) 六条二項の解釈でございますけれども、これまでの解釈では臓器摘出の目的を持ってその判断をすると。つまり、その目的のところで、その臓器摘出の目的があればこの六条二項の適用があると、こういう理解をしておりますので、結果としてそれが移植に至らない場合におきましても、その目的において臓器摘出を目的としているということなので、ここの範疇に入るというような理解をしておるところでございます。
#49
○古川俊治君 そうすると、現行のA案でも移植の目的を持って意思表示をするわけですので、そこのところは戻しても戻さなくても変わらないという理解でよろしいですね。
#50
○政府参考人(中尾昭弘君) これは提出者の方にまたどのような御意図かということは確認をしていく必要があろうかと思いますけれども、おっしゃるようなことではないかと思います。
#51
○古川俊治君 できれば、私は法律家の一人として意見を申し上げますと、この法案はぎりぎりのところで、四・五対五・五で通る、通すという法案ではなくて、やはり衆議院のときと同じように、少なくとも六対四、それ以上の差をもって安定した法適用、運用がなされるようにしたいというふうに考えております。
 以上です。
#52
○森田高君 先ほどの蓮舫議員の質問に続いて事実関係の確認をさせてもらいたいんですが、英、仏、独、他国への渡航移植の状況の表を見ても、かつては英、仏があったんですが、英、仏はもう消えてしまっていると。ドイツも今年からどうも渡航移植に対して非常にかたくなな姿勢に変わりつつあるということが報道されているという認識は私も持っているんです。
 他方、合衆国は医療先進国としての役割を果たすために、五%ルールというものを、自国内のガイドラインなのか何か分かりませんけれども、一つの目安として、他国からの移植希望者に門戸を開いているということが言われています。もちろん、合衆国でも移植待機者は多数いるわけですが、先進国としての役割を果たすということで、五%提供されているんだろうと思っています。
 先ほどからの日本人の心臓移植の渡航者の一覧表を見ましても、国内で行われている同数に近い人が渡航移植で心臓移植を受けているということになりますね。そうなると、アメリカ合衆国の心臓移植者、年間千件なのか二千件なのか五百件なのか、ちょっと細かい数字を持ち合わせていないんですが、向こうの五%ルール、つまり全世界に門戸を開いている中で日本人の心臓移植を受ける渡航者というのはその中の何%あるいは何十%を占めているのかということに関して知見をお持ち合わせかどうかということをまず聞きたいなというふうに思います。
 それともう一点なんですが、経済的に、例えば合衆国に行って心臓移植を受けようとすると一億円以上のお金が募金なりで集めないといけないと。国内での移植待機者、心臓はとりわけ、百二十八名という表がありましたけれども、その多くは多分、何でこんなに百二十八名しかいないかといえば、多分経済的理由を、大きなハードルがあって、そこを乗り越えることができないだろうと、そこでやっぱり初めからあきらめてしまう人も相当いるんじゃないかということが推測されているんですよね。
 もし、これが国内で心臓移植ができるようになったら、もちろん健保適用もされてくると思いますので、患者さんの実質的な負担額というのは、推定されるのはどれくらいなんだろうということをお聞かせいただきたいと思います。
#53
○政府参考人(上田博三君) 済みません、一点目の米国の状況については、先ほどの日本人の割合がその五%ルールに対してどれぐらいになるかというのはちょっとよく承知をしていませんので、機会を見て調べてみたいというふうに思います。
 なお、これも新聞情報なんですが、米国でもその五%ルールを撤廃する施設が出てきているというふうなことも何か流れておりますし、かつ日本人についてはプレミアムが付くというようなこともあるようでございますので、ますます渡航をして移植を受けることについては厳しいのではないかというふうに思っています。
 それから、心臓移植を日本で行う場合の費用ということでございますけれども、これは恐らく高額療養費が適用されますのでその上限で止まるんだというふうに思いますけれども、額としては相当の額が要るんだろうというふうに思います。
#54
○森田高君 ありがとうございます。
 手元に阪大の福嶌先生からいただいた資料があって、例えば合衆国での心臓移植の件数は、一九九九年から二〇〇四年まで二千百二十件行われていますので、単純計算すると、五年間、一年間当たり四、五百件だろうと。そうすると、その五%は単純計算でその二十分の一ですから二、三十件という話になるわけですよ。日本から現実に十何人の方が年間行かれている年もあるわけですから、もしかすると過半数を日本人が占拠している可能性があるという可能性をまず指摘したいなと思います。
 もう一点。経済学的には、やはり阪大の先生からの意見ですけれども、大体実額で数百万円。だけれども、高額医療費が適用されますので所得にもよりますけれども月々十万円程度の自己負担で、差額ベッド代を払うかどうかは別として数十万円程度。それが術後何か月病院に滞在するかということを考えていっても、百万円、二百万円の世界で済むわけですから、一億円対二百万円で救える命を救える可能性がこれは経済的にも多分言えるんだろうなというふうにも思うということを指摘させてもらいます。
#55
○小林正夫君 二点お聞きをいたします。
 人が死んだことの受入れ、こういう点で質問をしたいんですが、私の経験で言うと、母が亡くなったときに心電図が止まってぴいっと、こういうふうになったと。ああ、これで人が亡くなったんだなというふうに私は受け入れたんですが、脳死の場合に、ここの一ページに書いてあるように、全脳機能の停止ということが書いてあるんですが、心電図のように頭に何か付けておいて、脳波がぴいっとなくなったと、したがって今の段階で脳が死んだと、そういうふうなことが目に見えて何か分かるような医学的な装置というか器械があるのかどうかということが一つです。そういうものがあれば、確かに脳は死んだんだなということで受け入れやすいのかなと思うのが一つです。
 それと、ドナーカードの関係なんですが、一億二千万枚のカードが配られているけれども、実際にそれを持っている人は少なかったり、あるいは意思表示をした人の数は少ないと、こういう御報告だったと思うんですが、私、ある方から提言を受けたのは、今あるあの黄色いカードですね。あれは非常に大衆的でどこでももらいやすくて非常にいいなという意見がある反面、自分が臓器移植を提供するしないという重たい判断をする、その意思を示すカードとして、何かもう少しカード自体に重みを持つというか、カード自体に何か工夫を凝らした方がいいんじゃないだろうかという、こういう意見もいただいているんですが、このドナーカードの在り方について今日までに何か検討された経過があれば教えていただきたいと思います。
#56
○政府参考人(上田博三君) まず一点目の、ある瞬間で脳死、要するに全脳が機能停止、不可逆的な機能停止になるということを判定する装置というのはなかなか難しいんではないかというふうに思います。
 確かに、脳波計というのは一つの脳死判定の重要な要素でありまして、それで平たんな脳波が観測されれば脳の活動が停止しているということでそれは分かるわけなんですが、心電図のように急に止まるという、急に変化するという、その瞬間をとらえるのはなかなか難しいんではないかというふうに思いますので、やはりこれは、先ほど申し上げました無呼吸テストなどを総合的に判断をして、様々な痛みの刺激なんかで脳が反射をするかというようなことを厳密にやるより今の時点では私は仕方がないかと思うんです。まだ午後にも専門家の先生おられますので、是非そこでそれは聞いていただきたいと。
 それから、ドナーカードについては、御指摘の点は非常に考えておりまして、いろんなデザインのカードの作成も随分行ってきたのと、あとは、インターネットで臓器の移植の登録システムを構築をして運用もしているんですが、ちょっと御指摘の点は、確かに持っていて一種の誇りに思うというか、何か温かみのあるというか、何かそういうふうにカードにした方がいいんじゃないかという御提案はちょっと真剣に受け止めてみたいというふうに思います。
#57
○小林正夫君 ありがとうございました。
#58
○家西悟君 それでは、ちょっと視点を変えまして、ドナー側ではなくて、レシピエント、要するに提供を受ける側の問題でちょっとお尋ねしたいんですけれども。
 希望していても臓器提供を受けれない事例というのがあると思います、年齢とかそういうのを除いて。例えば、HIV感染者であるとした場合に、臓器の提供は、私、これたしか受けれないというふうに聞いたように思います。親族の生体肝、例えば肝臓も悪いと、肝硬変等々で肝移植が必要であるとなった場合、脳死者からの提供、他人さんからの提供ではなくて、生体肝、しかも親族でなければならないというふうに聞いたように思うんですけれども、その辺は具体的にどうなっているのか、教えていただければと思います。
#59
○政府参考人(上田博三君) 済みません、ちょっと現時点で分かりません。また改めて報告いたしますけれども、やはり臓器移植ネットワークの中で優先順位を付けることになっておりますので、その中でどういう運用をしているかということを調べてみたいというふうに思いますけれども、ちょっと今御指摘にあったような、確かに心臓については、HIVの抗体が陽性の方は心臓のドナーには、レシピエントには、違うなこれ、済みません、今のはドナーの方で、ちょっと間違えました。
 ちょっと調べさせていただきたいというふうに思いますけれども、そこは何らかのやっぱり合理的な基準がなければ、公平で合理的な基準がなければいけないというふうに思います。
#60
○家西悟君 再度。
 この辺が今、脳死移植のこの移植法の関係で、皆さん、ドナーに対しての摘出するのは議論されているわけですけれども、提供を受ける側の議論がどうも希薄というか、こういう基準があってこういう人たちは駄目なんだというのがどうも抜けているように私は思えてなりません。
 でも、多くの人たち、提供を希望される方、多いわけですね、この六ページの資料なんかを見ると。そして、この中の人たちが一人でも多く提供を受けれるような体制ということで今議論が進んでいるように思うわけですけれども、どうしてもその中から対象から外れてしまう事例というのはどうなのかというのはどうしても私にとっては関心のある部分ですので、教えていただければと思って質問をさせていただきました。
 また後日でも、後刻でも結構でございますので、少し具体的に教えていただければと思います。
 以上で終わります。
#61
○委員長(辻泰弘君) ただいまの件は後ほどお示しいただくということでお願いをいたします。
#62
○政府参考人(上田博三君) 承知しました。
#63
○委員長(辻泰弘君) その他御質疑のある方、挙手をお願いいたします。──よろしいですか。
 それでは、以上で政府からの説明に対する質疑を終了いたします。
 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十五分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#64
○委員長(辻泰弘君) ただいまから厚生労働委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 両案審査のため、これより、脳死判定から臓器移植に至る医学的プロセス及び検証会議における検証結果について、独立行政法人労働者健康福祉機構横浜労災病院院長・脳死下での臓器提供事例に係る検証会議座長藤原研司参考人から説明を聴取いたします。
 この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。
 藤原参考人には、御多忙中のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 本日は、脳死下での臓器提供事例に係る検証会議における検証結果について、参考人がお持ちの豊富な識見を交えつつ御説明いただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日の会議の進め方について御説明いたします。
 まず、参考人から三十分ないし四十分程度で御説明をいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、参考人、質疑者ともに発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、藤原参考人にお願いいたします。藤原参考人。
#65
○参考人(藤原研司君) 今御紹介ありましたように、平成十二年三月に脳死下での臓器提供事例に係る検証会議が設置されまして以来、現在まで座長になってまいりました横浜労災病院に勤務しておる藤原と申します。
 私が検証会議の座長をお引き受けしました理由は、日本肝臓学会と日本移植学会及び日本肝移植研究会の代表者から構成されています脳死肝移植適応評価委員会の委員長を私、肝臓学会の理事で内科医であるという、こういったことで平成九年以来、九年間にわたって務めさせていただいておりましたが、検証会議が設置された当時にはこの適応評価委員会がちょうど軌道に乗り始めていた時期でもありまして、しかもこの検証会議設置の目的というのが、その一年半前から始まった脳死臓器提供のちょうど四事例でしたでしょうか、に関して公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会で公開して検証されていたことがドナーとレシピエントのプライバシーを侵害する点で問題があると伺いまして、座長が果たすべき責任は重大だなと随分悩みましたのですが、肝臓の移植もほかの臓器移植と同様に社会的観点からは共通する医療行為であると理解したからでございました。
 この検証会議の構成メンバーでございますが、法律学者がお二人、生命倫理学者が一名、臨床心理人間学分野の専門家が一名、それから心臓病の子供を守る会の代表者が一名で、それから有識者が一名。医師としましては、我が国の脳死判定基準を作成しました元脳外科医の竹内先生でございますが、竹内先生を始め、救急医療専門医、脳神経外科専門医、精神神経疾患専門医、それから日本医師会代表及び私を含めて六名でございまして、合計十二名の委員から構成されてございます。
 この検証会議における作業概略をまず申し上げますと、まずは脳死臓器事例に関しまして、数人の専門家から構成されている医学的検証作業グループ、これが提供施設を訪れまして臓器提供施設から提出された検証資料に基づいて調査をしまして、救命救急が医学的にどのように行われたのか、法的脳死判定の基準と記録の妥当性はどうだろうか、そしてそれについて取りまとめて報告書案が作成されまして、さらに臓器あっせん業務がルールに従って適正に行われたかを第三者的な観点から検証し、その結果合意されたものについて臓器提供までの経緯を添付して、脳死判定日それから提供施設と臓器提供者の年代と性別を含めて記者会見で発表しまして質問を受けてまいりました。この際に、レシピエント、ドナー、家族の意向によりましては、日時、提供施設、年代、提供者のですね、お年、それから性別などを公表しないことももちろんございます。
 この検証審議の流れについて申しますと、一回の会議に上げられました事例数は、各事例の内容によっても調査の進捗状況あるいは検証された結果のいかんによっても異なりますけれども、大体一回に二事例から四事例でございます。
 検証会議での具体的な審議の進め方は、参考資料として事例ごとに臓器提供の経緯、それと臓器提供の経過概要、それから臓器提供の法的必要書類等、それに社団法人日本臓器移植ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果報告書案、これがまず配付されましてそれぞれの資料に沿って審議されますけれども、まずは救命治療に関して竹内先生から先ほど申しました医学的検証作業グループの開催状況が報告されまして、その上で検証資料に沿って臨床経過や画像写真をも含めて詳細に説明され、その結果をまとめた、先ほどの繰り返しになりますが、報告書案が提出されて各委員からの質疑を受けるという、こういう流れになります。
 そして次に、それら事例の臓器あっせん業務につきまして、日本臓器移植ネットワークの医療本部長と実務者から提示されました臓器移植の経過や法的に必要な書類等を基に説明を受け、また当該ネットワークの中央評価委員会というのがございますが、そこにおいて検証されておりますけれども、その結果も踏まえまして各委員からの質疑を受け、全行程が適正であったか否かを検討いたします。そして最後に、各事例につき再度総合的な質問を受けて、必要に応じて審議をし、さらに当日の検証事例をめぐり挙げられました問題点、もしあればですね、これを集約して今後検討すべき課題として行政あるいはネットワークの方に提言をいたすと、こんな流れでございます。
 我が国で脳死臓器提供を承諾した事例数、御存じかもしれませんが、本年の二月十日現在で八十二例です。そのうち、脳死判定後に医学的な理由によって臓器提供されなかった方が一名、ほかの八十一例の方々からは一臓器から七臓器を御提出いただいております。一番多い方では臓器を二つに分けるとかですね、そんなこと。肺であれば二つに分ける、肝臓も分割するといったそんなことで、一番多い方で十種類の臓器をいただいたと、こんなようなことでございます。
 では、検証会議でこれまで検証されました事例において、脳死判定から臓器移植に至る医学的プロセスに関しまして具体的に申し上げさせていただきます。
 まず、医学的にも法的にも我が国における脳死判定の基準となっている竹内基準、これについて御説明いたします。
 竹内基準では、自発呼吸の停止、瞳孔散大、深昏睡、深い昏睡ですね、それから脳幹反射の消失、平たんな脳波、これを認め、これらが六時間後にも変化しない場合に脳死と判定しますと。ただし、この基準に沿って脳死を判定するには、四つの条件を満たす必要がある。まず一つは、必要条件として前提条件を完全に満たすと申しましたが、具体的には、器質的脳障害によって深昏睡及び無呼吸ですね、呼吸停止を来して、その原疾患が、元の疾患が確実に診断されている。そして、現在行い得るすべての適切な治療をもってしても回復の可能性が全くない症例、これが完全に満たされなきゃいかぬ、これ必須条件ですね。それから、次に除外例を確実に除外する。後で申しますが、具体的にはですね。生命徴候を確認することがその次と、さらに脳死を判定するための必須項目の検査がすべて判定基準と一致していること。もし、これらのうちの、先ほど申し上げた必須条件、一から三まで、これが満たさない場合には脳死判定は開始してはならぬと。それから、この必須項目の検査が、結果が一致しないなという疑問がありますと、その時点で脳死判定を中止にすること、こういうことになっておりますが、こういったことも検証会議では実際検証いたしてございます。
 除外例について、じゃ、どういうものが除外されるかと。皆さん方御存じかもしれませんですが繰り返しますが、まずは六歳未満の子供であること。脳死類似状態、脳死と同じような、似たような状態を来し得る疾患というのは幾つかありますが、例えば急性薬物中毒、それから直腸や食道などの深部温が、これが三十二度以下の、低体温という言葉で医学的には言いますが、の場合。それから、代謝、内分泌障害など、こういった症例、これが類似の状態を来し得るという、これも除外しなきゃいかぬ。それから、これは当然のことですが、今のルールでもってしますと、十五歳未満の小児、それから知的障害者など本人の意思表示が有効でない意思表示は有効とできないじゃないかと思われる症例、これももちろん含まれてございます。
 それから、生命徴候という言葉を使いました。確認すべき生命徴候、生きているという証拠ですね。これは、深部温が三十二度以上ということですね。深部温というのはわきの下で測る温度とは違うということですね。それから、血圧は収縮期血圧で九十ミリHg以上。それと、心拍と心電図で重篤な不整脈がないこと。この三つが生命徴候として挙げられてございます。
 それから、必須検査項目という言葉で表現したものは、深昏睡と、両側の瞳孔径、目の黒いところですね、これが四ミリ以上であるということ。そして、その瞳孔が固定されているということを認めること。それから、光やったときの、対光反射と言いますけど、対光反射や角膜反射などの脳幹、これは七項目あるんですね、具体的にちょっと申しませんですが、これが失われているということです。それから、繰り返しますけれども、脳波が平たんである、平たん脳波を認めて、そして自発呼吸がないというこの五項目ですね、必須検査項目。これは必ずやらなきゃ駄目だ。
 それから、その他注意しなきゃいかぬ事項としましては、この法的脳死判定をする際に注意する事項としては、まず脳死判定の観察時間が、一回目と二回目の間が六時間以上であるということですね。それから、脳死判定時刻の二回目の判定時刻が死亡時刻になるということですね。それから、脳死判定医は、倫理委員会で選任された脳神経外科医、神経内科医、救急医又は麻酔・蘇生科・集中治療医ですね。そして、かつ学会の認定医、それぞれの学会認定医、専門医とありますけれども、学会の認定医又は専門医の有資格者でなきゃいかぬ。そして、できたら脳死判定の豊富な経験者である。その臓器移植には具体的にかかわらない者でなきゃいかぬ。そして、判定するには二名以上で行うこと。そのうちの一名は少なくとも第一回目と二回目の判定を継続して行わなきゃいかぬ。そして、御家族の希望があれば立会いの下で行うことと。こんなようなことが守るべきその他の事項として挙げられてございます。
 こういったようなものに沿いまして検証会議がこれまでに検証作業を行ってきたのでございますが、若干問題になった症例がもちろんございまして、それを二つだけ御紹介いたしますが、一つは、本年の三月二十一日、開始された第三十回の検証会議で済ませた五十一例の、五十一例ございますが、その中の一つでございますが、この事例につきましては、医学的、法的な面で、脳死判定の手順とは記録、保管などにおいて手違いがあった。ただし、脳死判定の結果に及ぼす事態ではないと結論いたしておりますが、この御紹介する一例目というのはちょうど第二十二回検証会議で検証したものでございますが、この検査手順を定めた、これは法的脳死判定マニュアルというのがございますが、これに沿った検査が行われていなかった。
 何か。このマニュアルでは、器質的脳障害の診断のためにCTという画像検査、こういったものは必ずやらなきゃいかぬというふうにされておりますけれども、この事例におきましてはこのCT等の画像診断が厳守されていなかったと、これが検証過程において確認されました。そのために、臨床経過、症状から、この患者さんのですね、医学的に脳の器質的病変の有無を検証を行いまして、まあまあ、法的脳死判定についても詳細に検証しまして、総合的に判断して法的脳死判定は妥当であったという結論を出してございます。
 ただし、マニュアルに準拠して検査が行われていなかったことにつきましては、この当該施設に対して体制や手続等について万全を期するように、これは臓器対策室長名で通知しまして、その上で各臓器提供施設長にも脳死判定記録書式例の見直しを指示いたしました。
 それから、もう一例挙げますと、これは第二十八回の検証会議での検証事例でございますが、御存じの方もおろうかと思いますが、脳死記録が紛失したという事例でございます。脳波記録ですね。脳波記録というのは、臓器移植法上も保管義務のある脳死判定する際の重要な資料でございます。
 検証会議としましては、まず通例の事例と同様に救命治療、法的脳死判定等についての適切性と妥当性について検証を行って、そして臨床症状とその経過を見ると、脳の二次的な器質的病変があったことだけはまず間違いないと判断いたしました。
 さらに、この通常の検証作業に用いる資料に加えまして、脳波記録の紛失に関する当該病院の調査報告書を詳細なものをいただきまして、それに見られた事実関係、あるいは添付されたいろんな記録を入念に確認しまして検討いたして、その結果として、脳波記録そのものは確かにないけれども、脳波が測定されていたということ、その脳波が平たんであることに関するカルテ上の記載、その他の所見から併せて、脳死状態は適切に判断されたという結論に検証会議として達しました。
 しかし、保管義務のある記録を紛失したことについては、当該施設において再発防止が図られる取組を徹底するように検証会議として意見を述べてございます。
 それから次に、日本臓器移植ネットワークによる臓器あっせん業務に関する検証結果について申し上げます。
 さきに述べましたように、事例ごとに当該臓器移植ネットワーク職員から各種の資料を基に説明を受けた後に、ネットワークの中央委員会、繰り返しになりますが、における検証結果も踏まえまして、全プロセスが適正か否かを検証いたしますが、まず初動体制の状況、つまり家族からのドナーカードの提示があって、家族への臓器提供に関する説明依頼を受けることになりますが、その後の院内体制がどうであったかを確認いたします。
 続きまして、コーディネーターによる法的脳死判定を行う前の御家族への説明及び支援状況について、十分な説明がなされていたか、御家族が考えるための時間が確保されていたか、またその御家族の心情に配慮しつつ説明がされていたのかということをすべて検証いたします。
 そして、臓器のあっせん業務そのものについては、ドナーの提供臓器や全身状態の医学的検査やレシピエントの選択手続などにつきまして検証し、そして、法的脳死判定終了後にドナー家族への脳死判定結果や摘出手術の説明が適切に行われたかどうか、臓器搬送の連絡調整や搬送の実施が適正に行われたかも検証いたします。
 また、臓器摘出後に御遺体のお見送りや家族の承諾を受けた上での葬儀への出席、これがあったかどうか、御家族の心情を踏まえた臓器提供終了後の連絡状況についても、これも検証いたします。
 特に重要視していますことは、あっせん手続を全体を通して家族の心情に配慮した上での説明と支援の状況でございまして、検証会議では、ドナー家族が本人の意思を尊重して臓器提供を決断したときの心理状況、そしてその後の人生に及ぼした影響について調査することというのは、臓器移植医療においては極めて重要であるという点で合意されまして、精神科医と臨床心理士で構成しました心情把握班を平成十四年に立ち上げて作業を行ってきました。
 現在まで、ドナー家族のうち年月も既にたっている二十五家族に連絡して同意が得られた九家族について、この心情調査班が直接面接し、調査を済ませたところでございます。
 その結果、臓器提供を決断した当時の心情としての共通に語られた内容というのが、ドナーの意思を尊重したいという非常に強い思いであったということでした。また、御家族が臓器提供を決断する過程において、それぞれの家族の価値観や生命観によって本人らしい生き方として決断する、あの生き方を守ってやろうと決断する家族もあれば、その臓器提供決断後もなお迷いがあるという御家族もありまして、臓器提供の決断時におけるいろんな面のサポートが極めて重要であるということがうかがえました、この調査結果から。
 これらの結果から、検証会議における作業に際しましても、ドナー家族に対する理解を深めるための資料として検証の実際的なプロセスの中で活用することといたしてございます。
 最後に、私、検証会議の意義はどういう意義かということ、これは私の個人的な意見も加わっているんですが、私、臓器移植というのは、患者対医療者だけではない、第三としてドナーという者が存在して初めて成立する治療法ですね。特に脳死臓器移植というのは人間の善意を弱者救済に生かす医療行為であって、他人の臓器をいただいてまで生きる気しないという、そういった方の生命観とか死生観を持った患者さんに強制するものではないんだということですね。しかし、希望者だけを対象とする医療行為とはいっても、どうしても国の仕組みというのはいろんな形で要件となりますし、国民の理解がなければ更なる発展は望めない特殊な医療であると私は考えます。
 したがいまして、検証会議が日本の文化と日本国民の幸せを守るべく、レシピエント、ドナーとその御家族の立場、行政の立場、時代背景を多面的に踏まえまして、第三者的に公平に臓器移植について検証する意味があるというふうに私は考えてございます。
 以上、脳死判定から臓器移植に至る医学的プロセス及び検証会議における検証結果について、若干個人的な意見も一部に加えて御報告申し上げました。
 以上でございます。
#66
○委員長(辻泰弘君) ありがとうございました。
 以上で参考人の説明聴取は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は、順次挙手の上、委員長の指名を待って御発言願います。
#67
○小林正夫君 いろいろお話をありがとうございました。
 全く医学的には素人なものですから、初歩的な質問になって大変恐縮なんですが、脳死の状態から生き返った人はいないんだと、こういう話も聞いたことがあるんですが、今日午前中に、脳死により判定された死とはこういうものだということで厚生労働省の方からお聞きをいたしましたけれども、全脳機能の不可逆的停止になった人は、要は生き返った人はいないのでしょうか。まず、そのことをお聞きいたします。
#68
○参考人(藤原研司君) 脳死という概念は、これは臨床的な概念であるということですね、まずは。そして、今おっしゃっている生き返った方というのは、植物状態という、つまり脳幹部の機能を含めてすべて失われたものとは別だということですね。そういうことがあって、脳死の今、日本で使用している竹内基準に沿った方で生き返った方はいなかったということは、あの前の法律ができるプロセスの中でこれは検証されているところなんですね。
 脳死と今申し上げた植物状態を識別するという意味で、少しくどくなりますけれども御説明しますと、人の死というものについて若干御説明させていただいてよろしゅうございますか、それも含めてお話し申し上げたいと思うんですが。
 脳死を人の死と認めるか、脳死臓器移植を認めるか否かというのは、先ほど申しましたように、やはりその集団の文化というもの、いろんな人間観が基盤ともちろんなりますですね。国によって異なるなんということは当たり前のことなんです。
 それで、特に人の死というものの定義を、これ非常に古来からいろんな定義があって、今用いられている死の三徴というのがありますね。心拍出が停止して、自発呼吸が停止して、対光反射が停止して瞳孔散大、これは大体十九世紀とされるんです。国際的にこれが広く使われるようになったんですが、一九五〇年代ごろから人工呼吸器の普及に伴います、人工呼吸器ですね、呼吸運動が人工的に確保されますと、人間としての個体死とは一体何だろうかが問題になって、それで一九六八年、脳死判定基準というものがアメリカに登場したんです。そして、その六年後には我が国でも発案されておりまして、竹内基準というのがちょうど一九八五年に作られたわけですが、これは、繰り返しになりますが、最も世界で厳格なというふうに言われています。そして、八八年の日本医師会生命倫理懇談会では、脳死を個体死と認めた。
 そして、それを受けまして、その二年後に設置された臨時脳死及び臓器移植調査会、この脳死という定義に当てはまった事例を二年間にわたって検証しておりますが、例外が一例もなかったというんです。で、脳死は人の死と答申しまして、五年後に法律が、脳死の、臓器の移植に関する法律がまず成立したわけですね。ただし、今と同じように、この答申書、御存じのように第四章に脳死を人の死とすることに賛同しない立場でというのが加えられていますですね。科学主義の持つ危険性、理性主義への反省もある、人間機械論の矛盾、西洋主義への反省、いろんな思想的立場の議論も述べられていますけれども、このような確かに人の生命にかかわる法律の賛否であるだけに、党派あるいは派閥を超えて個々人の人間観を尊重した判断にゆだねられましたですね。
 それで、もう一度御質問に、この今の話から、私の御説明からお分かりのように、少なくとも調査した範囲内では、当時、法律ができる前段階としての調査に関していえば、脳死というあの定義にはまったもので生き返った人はいなかった。恐らく植物状態との、植物状態というのはちょっと障害されている場所が脳死とは全部満たしていないことがあるという、そういうことですので。よろしゅうございますか。
#69
○小林正夫君 はい、よく分かりました。
 そこで、午前中にも質問をしたんですが、人の死を受け入れる側の立場から見ると、心臓が止まって心電図が止まる、こういうことを見てこの人は死んだんだなと、私もそういう体験をしてきたんですが、脳が死んだということが、心電図と同じように何か頭に機械を付けておいて、脳が死にました、これをもって死にましたという、グラフが動かなくなるとか、そういうような目で見て脳が死んだんだということの確認というのは今の技術だとか医療の中ではできるんでしょうか。
#70
○参考人(藤原研司君) 繰り返しになりますが、先ほどの基準にはめますと、かなりこれはできるだろうと。
 それで、日本の文化という点で、日本人というのは、確かに死の三徴で、これはもう大分慣れていますからね。これはもう御臨終なりそうだと、家族がこういうふうにまくら元集まりますね。そうすると医者は死の三徴に沿って御臨終ですと、こう言うわけですね。そうすると家族はわっと泣き崩れる。そして、手を握って、しばらくたつと体が冷たくなって硬くなっていく。そのある一定の時間、全プロセスを通して日本人というのは死を受け入れられるんですね。
 確かに、脳死状態、先ほど申したような状態の方は、手は温かい、心臓も動いている、どう見てもいつもの顔と同じ、たたくと何かぱちくりする、そういう反射機能は残っていますからね。これを死だと言われてもなかなか日本人というのは受け入れ難いという、そういう国民性があるということは私も理解はできます。
 これは余談になりますが、米国人の中で私は、米国はもう脳死というとすぐそれで御臨終になっちゃうんですね。日本人というのはこうなんですよと説明しましたら、アメリカ人も同じですよ、皆悲しいんだということを話してございました。
 こんなところでございますか。
#71
○小林正夫君 ありがとうございました。
#72
○森田高君 藤原先生、今日は御多忙中、大変ありがとうございました。また、長年の御尽力に対して心から敬意申し上げたいと思います。
 それで、今ほど小林先生が言ったことでも、先生の御答弁でもありましたけれども、三徴候が死の概念として定着したのが十九世紀、これはちょっと初め、冒頭、余談になってしまうんですけれども、その後、科学技術の進歩は目覚ましく、呼吸器のことをおっしゃったし、あるいは人工心肺もありますから、心臓が動く、つまり循環状態が維持されるということが生であるならば、現代の人類は、科学技術が進みましたので、循環状態だったら人工心肺を回し続けることで無限にそれの時間を確保することができる。
 だから、何を言いたいかといえば、科学技術の進歩と精神性のやっぱり進み具合は多分違うんだろうと思うんですが、ある程度人類もそれにキャッチアップする努力、つらい気持ちを乗り越えて努力する必要があるのかなということを、ちょっと先生のお話を聞きまして思った次第です。
 それで、現実、五十数例の検証会議での事例検討の中で二例、例外的な事案があったということをお話しいただいたんですよね。CTが必須であるというのにかかわらず、その画像診断が残されていなかったというのが一件と、脳波記録そのものが紛失されてしまったということで、これはそのときの検証会議で、これからこういうことを防ごうということを具体的に考える上でどのような議論が交わされたかということをまず冒頭伺いたいと思います。
#73
○参考人(藤原研司君) 先ほど申しましたように、CTについては臨床的な経過とか症状の状態すべてを総合的に判断して脳死と判断したこと自体は、確かにCTはないけれども医学的には問題ないだろうという、こういうような判断ですね。
 そしてまた、脳波がないということについては、これは法的脳死判定、脳死というものを法律的に日本は死とするからには、これは医学的な観点とは別に法的な観点でのプロセスであり、必須条件ならば満たさなきゃいかぬということで違反になるんだということを踏まえて、先ほど申したように、それぞれの施設に対して、最初のCTのないところについては厚生労働省の臓器対策室の室長の方から、それから脳波のなかった施設に対しては検証会議という立場から通知をしたところでございます。
#74
○森田高君 例えば、CTに代わる、例えば代替でMRIとかほかの画像診断も全く抜けていたという話になるのか、その辺のことも含めてなんですが。
 ただ、これら、脳死判定が行われてこれから臓器提供あるいは臓器移植にかかわる病院というのは通常四類型の病院で、非常に医学の、日本の中に数ある九千程度の病院の中でもトップクラスの病院がそこに携わる資格があるんだろうと思うんですが、そういう病院、例えば今日であれば電子カルテなんかが非常に発達していますから、どこかでチェックリストを掛けていって自動的にシステムエラーを防止するとか、そういうような対策も取れるんじゃないかなと思いますし、脳波にしても、取る段階ではアナログ情報だけれども、それがデジタル記録になってサーバーに残ればこれは絶対に紛失することはなくなるわけですから、そういうことも含めて、四類型の病院だったらハードウエアで対応できることも相当あるんじゃないかなと聞いていて思ったものですから、そういう対策をどんどん講じていくことでシステムエラーが減っていくと。
 システムエラーと言ったら大変失礼で、大変厳密な判定にかかわって、厳格な仕事をされている方々が重層的にかかわっていって、現在も、今までもずっとそういう脳死判定がされてきたということは重々承知しておりますんでエラーと言うつもりはないですが、少しでもそういうものの疑念を払拭するためにも必要かなと思いましたんで伺った次第です。
 これからのそういう病院の中での記録の仕方とか、あるいは電子カルテなんかがいいとか悪いとかいうことに関しても、先生の今までの知見、併せて何か見解を伺えれば幸いでございます。
#75
○参考人(藤原研司君) おっしゃっていただいたとおりで、先ほどの繰り返しになりますが、医学的な観点からはこれを法的に脳死であるとしても矛盾点はないけれども指導だけはしっかりしなきゃいかぬということで、これは意見書なり、そういうものを届けてございます。
#76
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 脳死下の臓器移植に対する国民の理解を広げる上でも検証作業というのは大変大事だと思いますし、やられているお仕事に心から敬意を表したいと思うんですが、八十一例、既に脳死下臓器移植が行われているわけですよね。そういう中で、既にいろいろと今まで検証したものでもCTがないとか脳波が残されていないという、そういうかなりちょっと問題じゃないかなと思う事例もあるんですが、問題は五十五例の検証しかまだできてないということなんですよね。
 五十五例ということでいうと、これ三年か四年ぐらい前の症例までさかのぼるんではないかなというふうに思うんですけれども、なぜこれがこういう段階でとどまっているのか、その理由など、ちょっと教えていただければというふうに思いますが。
#77
○参考人(藤原研司君) これは、何年前のやつだから順番にやってくるという、検証していきますというような、そういう単純にいかないことがある。ついせんだっての三月のときの検証会議で、五十二、三、四、五例目という、やりましたんですが、そのもっと前のものでまだ検証してないものもございます。ですから、五十五例までといっても、実際は五十一しかやっていない。
 なぜかというと、なかなかすべて、御家族とかの都合とかいろんなこと、それから実際の作業班がうまく、数人で専門家が行くんだと私申しましたんですが、必ずしもスムーズにいかないことがあるとか、いろんな事情ございまして、それで、もうすぐにでもリアルタイムで検証すればいいんじゃないかというお考えあろうかと思うんですが、私どもの立場というのは、これまでの中で起こった事実関係について、医学的に、法的に、そしてまた一つの流れとしてあっせん業務に至るまで、それが適切か、妥当かという観点に関してやるという、そしてそこで立ち上げた問題については、国であったりあるいはネットワークの方に提言するという、こういう操作ですので、いっときも早くやるという、そういう観点では必ずしもないということでございます。
 これでお答えになっているかどうかなんですが、もっと早くやれということにも取れますが。
#78
○小池晃君 リアルタイムですぐにやるというのは、それは恐らく無理だろうと思うんですけれども、今のお話でいっても、ということはもっと昔の、かなり前の事例もまだ検証されてないということがあるというふうにお聞きをしたわけですよね。御家族の事情とかいろいろあると思うんですが、やっぱり中心になるのは、医学的な対応がきちっとマニュアルどおりに行われていたのか、脳死判定要件をきちんと満たしていたのかというところが最大のやっぱり検証の課題になると思うんで、それが、医療機関が協力をしないというような実態があるんでしょうか。そうでなければ、なかなか進まないということがいま一つ私にはよく飲み込めないんですけれども。
#79
○参考人(藤原研司君) ちょっとごめんなさい。具体的なプロセスは臓器対策室が中心に行っていますので、ちょっとお待ちください。
 お答えします。
 これまで提供施設が断ったということは一事例もないんだそうです。遅れている、まあ遅れというのは一体どのぐらいを遅れと言うかなんですが、一番新しいのでも二年も三年もたつということはないですね。例えば四十八例目の、先ほど申し上げた脳波のあれも実際はこれ十九年と、十八年五月のものを検証会議では十一か月遅れた十九年四月に検証会議の作業を行っていますし、ですから、実際起こったときから一年以内ですね、これは。それを遅れていますと言われますと、なぜと聞きたくなるんですが、ちょっとそこは控えさせていただきます。
#80
○小池晃君 先生にいろいろと言っても仕方がない問題なのかもしれないので。
 ただ、八十一例で五十五例の検証ということは、二十六例やられていないのがあるわけですから。そうすると、単純に計算しても平成十九年、それで、かなり最近のものもやっているとすれば、二、三年あるいは四、五年前のものでやられていないものがあるんだろうとは思うんで、これはちょっと今後、厚生労働省にもやはりきちっと言っていかなきゃいけないかなというふうに今お話をお聞きして思いましたし、しかも、その中で公開されているのは三十四例なんですよね。
 やっぱり検証作業で一番大事なのは、国民にしっかり検証の結果を示していくことではないかなと。プライバシーの問題なんかでなかなか困難な面もあるかもしれませんけれども、その公開の点なんかではいろんな支障が何かあるのかないのか。もし何か政府の対応に必要なことがあるのであれば言っていただければと思うんですが、いかがでしょうか。
#81
○参考人(藤原研司君) 確認しましたんですが、家族が発表するのを難色を示すということ、それ以外の理由はないということです。
#82
○小池晃君 ありがとうございました。
#83
○谷博之君 今日はありがとうございました。
 今までの質問の流れにちょっと関連するんですけれども、我々が医療の面では分からないというか、そういうところ、立場はあるんですけれども、臓器移植に、提供に、そういう意思表示をしてドナーに登録するというときに、そういう方が臓器提供というそういう状況になったときに、これ、医療の面では恐らく、できるだけ新鮮な臓器をいわゆる移植するというのが第一義的な条件だろうというふうに我々は考えているんですけれども、そういう中で、当然そこのところが、いわゆる早過ぎる脳死判定の危険性というのが絶えず指摘されるというか、そういう議論があると思うんです。
 それをどうするかということで、今、藤原先生がいろいろと御説明をいただいたわけなんですけれども、今申し上げたように、いわゆる今までの臓器移植法がずっとこの間、例えば世論の理解を求めるそういう活動をし、そしてまた、臓器移植法の立法化によって、まあ八十一例が多いか少ないかは別として、いろんな実績を積み重ねてきたと。ある意味では、今は第三段階に来ているんじゃないかなというふうに私は思っていますけれども、そういう段階で社会的な合意を得るために、つまり臓器移植における多くの危険性を、リスクを回避する歯止めとして、私はやっぱりこれからも、本人の意思といいますか、本人が臓器を提供するというそういう意思をしっかり持っているということがいろんな危険性を回避する歯止めになるんじゃないかなというふうに私はちょっと考えたりしているところがあるんですけれども、今回は、法改正によってそこのところが変わってくるわけ、A案という案ではそういうことになっているわけですけれども、先生はいわゆる本人の同意、本人の意思、こういうものについて、これからもそれが必要であるか、あるいはそうではなくても家族の同意でそれは対応できるというふうに考えておられるのか、そこのところの考えをちょっとお聞かせください。
#84
○参考人(藤原研司君) 私、検証会議の座長というのは、余り個人的な意見を述べないということで、できるだけ公平な立場で申し上げる立場とは思いますが、今のお話ちょっと伺いますと、本人の意思があるのかないのかということがこれからの移植医療にとってどう考えるかと、こういう私の個人的な考えを聞かせろと、こういうことでしょうか。
 検証会議の座長というニュートラルからちょっと離れて、私、繰り返しますけれども、自分でも、脳死肝移植適応評価委員会の委員長をやってきたとかいろんな意味でこの臓器移植の重要性ということを私なりに身に付けてきたつもりでおりますし、そのときに本人の意思というのが、先ほど申し上げた心情調査なんかやっても、どれをもって、どれを一番重要と考えるかということについては、全員の考え方、私は全部違うと思うんですね。恐らく、本人の意思を尊重するのかしないのかということを、例えば私個人の話しますと、私は本人の意思を尊重したい。
 例えば、私自身もドナーカードを持っています。だけれども、こんな体の中から利用していただけるものなんというのはほんのわずかだろう、だけれども、それでも私の臓器を使ってやってくれるならやってほしいよと、こういうふうに思いますし、あるいはもう一つの考え方としては、そういう意味では本人の意思は生かしてほしいなという気がありますし、それに対して、乳児とか十五歳未満が本人という形で今認められないんですね。あれは、遺産相続とかいろんな観点から本人というものを幾つにするかというのは相当、前の法律のときに議論があったというふうに私、本当かどうか、間接的に伺っていますけれども、その年齢が本当に動物的な年齢だけで測れるのかという問題、本人の意思ということにはまず根底にあるかと思います。それと、問題となる乳児とか幼児とか、こういうものとの関係ですね。
 恐らく、本人の意思ではなくて御家族の意思だということになった場合の本人はどういうふうになるかと、こういうふうな御質問にも受け取れるんですが、私は御家族の子供に対する強い思いと、そして子供がだれかの体の中で臓器の一部でも生きていてほしいという御家族、当然ありますね。その言葉に表現しない乳児の意思というとらえ方って、御家族を介して取れるわけですね。
 ですから、私が自分で本当に、私の孫のような者が同じ状況になったときには、親の気持ちも、そして私自身は、繰り返しになりますが、移植医療の重要性を評価している分だけ私ならきっと生かしてやりたいとか、そういうふうに思うだろうというふうに、何か答えにならないようで、非常に御質問自体が私難しくて、本人の意思についてと言われましても一律にお答えできなくて申し訳ございませんが。
#85
○谷博之君 ありがとうございました。
#86
○古川俊治君 ありがとうございます。
 ちょっと脳死の問題から若干離れるんですが、藤原先生の本当の御専門は肝臓病でありますので、その観点からの、実は生体肝移植は既に年間四百、五百という例数が行われているわけですね。それで、一方でこの臓器提供の待機者、これは二百三十何人という今数字が上がっておりますけれども、渡航かあるいは脳死体を待っているということになると思うんですけれども、先生は肝臓病の専門としてやられていて、例えばもう移植以外に救命手段がないと御判断された場合に、この生体肝の移植あるいは脳死、海外渡航、それを待つということの選択について何か御経験あるいは知識などありましたら伺いたいと思っているんですけど。
#87
○参考人(藤原研司君) 生体肝移植と脳死肝移植の違いについての私の個人……
#88
○古川俊治君 臨床現場では、本当のところ、どういうふうにその振り分けがされるのかというところです。
#89
○参考人(藤原研司君) はい。
 先生御存じのように、我が国で脳死臓器移植がかなり長い間できなかったということから、生体肝移植というのがかなりの数行われてきました。ある議員さんからそのお父様に上げたという、これはもうどなたも御存じ。私は、ああいうことを見ていまして、結論としては、本来はやはり脳死者からの臓器提供が一番理想的だ。
 なぜなれば、あの生体肝移植も、移植ドナーとなった方が、それは肝臓というのは再生機能といって一部取っても元の大きさに戻る、そのスピードが非常に速いですね、先生。ところが、その間のある期間は結構あれで不便なんですよ、ドナーとなった方がですね。例えば食べ物が詰まったような感じになるとかですね。
 しかも、生体肝移植の場合には、レシピエントとして受けた患者さんがその手術してくれた病院に通いますね。それで、そのときにドナーとなった方も、大分元気になっていても、ちょっと具合が悪いなんてことも相談できるんですよ。ところが、万が一、この生体肝移植受けた患者さんが亡くなったと仮定しますね。そうなると、ドナーの人が相談する相手がいなくなっちゃうというんですね。手術した方のところに二人現れると、ああ、あんたの場合にはこうだったし、左葉取ったし、あるいは右葉の一部取ったから、だからこうなんだからこうですよと説明があると、ドナーも多少納得する。
 そういうことがなくなるというような、現実にはそういった不便さもあるということからしますと、私はやっぱり、それは生体肝移植、我が国の医療技術が私は世界一だと思っています、移植医も。ですから、生体肝移植のたしか問題あったのは一例しかなかった。それでもあってはならないというふうに私は考えますし、そうしたときには、やはり脳死者からの善意の臓器を活用していくのがこれが一番私は理想的な移植医療であるというふうに考えますが、その一方では迷いもございます。どうしてもうちのおやじ、生きていてほしい、おれの肝臓やってもいいから生きていてほしい、こういう家族の思いですね。
 そんなことですので、結論から申しますと、私は本当に、脳死臓器提供者が我が国で多いかどうか分かりませんというお話ありましたんですが、こんな少ない国はないですねということだけは申し上げておきたいと思います。
#90
○南野知惠子君 ありがとうございます。本日はいろいろと御教示いただきまして、有り難く感じております。
 大変難しい課題であろうかというふうに思いますが、先生が先ほど一回だけお触れになられたかなと思います。その脳死という問題を抱えた方から、本当に自分がドナーになるよと決めるときにはもう自分の判断ができない方たちもおられます。その段階でその方がドナーになっていただけるような形で家族を説得しなければならない場合もあろうかなと思います。そこで大きな活動をするのがコーディネーターの方だと思っております。
 先生から一言だけお触れいただきましたが、コーディネーターの資質として、またコーディネーターはどのようなところにポイントを置いて両者の中に自分の感情を移入していかなければならないのか、又はその方がドナーになるよと決めていただくように家族の方たちにもお話が必要だろうと思います。また、その話を始める時期もその方によって大きな問題点になってくるだろうと思いますが、コーディネーターのことについて先生の何かございましたら教えていただきたい。
#91
○参考人(藤原研司君) 我が国のコーディネーターの方々、現在の社団法人日本臓器移植ネットワーク、非常によく努力されております。しかし、人数にまだまだ限りがありますし、その意味で、専属できるコーディネーターの養成が急がれるということにまずなります。
 そして、そのコーディネーターたちが、患者、家族、特に、どうなるか分かりませんが、乳児からの、親御さんに何か言うときに、一体どういうような心情がこの御家族にあるだろうかということを、しかも、それはその時点と時間がたっていったときはかなり人間の、先ほど申しました心理が違うということで、心情の、この調査班のまとめて検証会議で御報告いただいておるんですが、そのことも検証過程でネットワークのコーディネーターの方、この先ほど本部長と申しましたこの方はコーディネーターでもございますし、そこで私ども、こういう点もこういうふうなことがありますということで若干学んでいただいているという、こういうふうなことでございます。
 必要なことだけは誠にそのとおりであり、その際のコーディネーターたちの物の考え方をもっともっと養成したいといいますか、いろんな意味で提言できるような検証会議でありたいということでございます。
    ─────────────
#92
○委員長(辻泰弘君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、蓮舫君が委員を辞任され、その補欠として谷岡郁子君が選任されました。
    ─────────────
#93
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 今、藤原参考人の貴重なお話、大変ありがとうございました。
 私も専門家じゃありませんので、もう本当に素朴な疑問ということで、今の脳死判定基準のお話を聞かさせていただいた次第でございます。
 その中でも、やはり、特にお子様、脳死の判定後も心臓が動き続けて成長をされている小児の例とか、長期脳死ということがよく取り上げられていると思うんですけれども、その存在に関してはどう思われるのか。
 また、A案になりますと、こうした子供たちの小児の脳死判定ということが出てくるわけでございますけれども、これは現行のそうした今の基準で大丈夫なのかどうか、この辺、私もよく分からない部分がありますので、御見解といいますか、教えていただければということでございます。
#94
○参考人(藤原研司君) 一般に脳死という状態、今のですね、陥ると大体一週間から十日で心停止にまで至るんだというふうな理解ありますが、まれに長期になるものがあるんではなかろうかと、こういうふうな御質問にも受け取れるんですが、そういうことでよろしゅうございますか。
 今、この小児とか乳児、子供たちの、特に六歳未満はやってはならないということになっていますが、それについて、このような条件下でやれば、例えば一回目と二回目の間隔を二十四時間置きなさいとか、ある一定の条件を満たすと、まずそれは適切な判定につながるという。
 一つは、これ平成十一年度の報告書として厚生省の厚生科学研究費特別研究事業、小児における脳死判定基準という、これは竹内基準をお作りになった竹内先生中心に、あのときの中核でお仕事をされていた方々も含めたこういうものがあって、あるいはこれは十八年度として、一昨年の三月末に報告書として小児脳死判定基準の再検討という、この二つを見ますと、それぞれの年齢に応じた一つの条件下でなされると、少なくとも、全員について脳死という判定が大きな間違いないんじゃないかという可能性があるという、こういう報告になっていますので、恐らく今後こういったものを基に国としてもいろんな調査をした上でやるんではないかというふうに私は理解しておりますが。
 これ以上のことはちょっと申し上げられませんですが。
#95
○山本博司君 それともう一つ、こうした脳死判定の定義とか判定をより厳格化していると、要するに移植の方々の数が増えていくという、こうした意見もあるわけでございますけれども、こういう意見に対してはどういうふうな認識でいらっしゃいましょうか。やはり、そういう部分のハードルをきちっと明確に示していくことが移植する方々が増えていくというふうな、こうしたことに関してはどういうふうに認識されていらっしゃいましょうか。
#96
○参考人(藤原研司君) 結論から申しますと、非常に難しいんで、私なかなか答えられないというのが私の答えです。
 というのは、脳死判定を厳しくやれば国民は安心して、じゃ、やるのかというふうに、本当にそうなるかどうか分からない。いろんな意味がある。
 あるときに、私は医学部の学生にこの脳死臓器移植のことを講義したことがある。この中でドナーカードを持っているのがいたら手を挙げろと言ったら一人も挙げなかった。ドナーカードもネットワークが努力して、コンビニにも置いている、いろんなところに置いている、免許証にも。でも、知らない人、関心のない人がいる。この事実をどういうふうに受け止めるか。日本の法律が変わったから、じゃ、やるのか。私はそうは、なかなか難しい問題があるだろうと思いますね。
 国民一人一人が医療というのはこういうものなんだと、七〇%の人が満たされているんではなくて、特に二十一世紀は人間の世紀と言われるだけに、その外れにいて、ほんのわずか一〇%に満たないような人たちの幸せも守ってあげるというのが私は今後の医療の在り方だろうというふうに思いますし、そういうものを総合的にとらえていかないと、今のどれがどうということにはなかなかお答えできない。よろしゅうございますか。
 いろんな観点からこの問題は分析しなきゃならぬじゃないでしょうかというのが私の意見でございます。だから、こういうふうにして広げ、法律変えたから、じゃ、いいんですよなんて、そんな単純にはいかないんじゃないでしょうか。
 じゃ、何をしたらいいか。私は、やはり報道関係の方々も、それから、それこそ皆さん方、先生方がこういうものが医療なんですよということを是非国民に教えていただきたいものだなというふうに、むしろ私の方からお願いしたいです。
#97
○山本博司君 ありがとうございました。
#98
○梅村聡君 藤原参考人、今日はどうもありがとうございます。
 今、法的な脳死判定基準については話題が出ましたけれども、同時に、その判定される医師の方、先ほどの御説明の中では、脳神経外科、麻酔科、神経内科等々の専門医であり、しかも豊富な経験を有する方が法的な脳死判定ができる方というふうな御説明がありましたけれども、一つは、この中に出てきた診療科が選ばれた理由、そしてまたその診療科であることが担保される脳死判定の技術、そういうものがあれば教えていただきたいということが一点であります。
 そしてもう一点は、豊富な経験ということがございますけれども、現実に八十二例、一例は提供がなかったということで八十一例ですけれども、ではその豊富な経験とは具体的にどのレベルなのか、それをどう担保していくのか。この二点についてお伺いしたいと思います。
#99
○参考人(藤原研司君) 前の法律ができたとき、今の法律といいますか、どういう審議されたかは私もその場にいないので何ともお答えできないんですが、だからどういう人を、それはほかの、例えば私、内科で救急で脳死状態の人を診るなんということはまずないですね。経験ゼロではないですけれども、緊急に呼ばれたことはありましたから。やはり、先ほどこういう人にという専門医たちが、経験数はそれは多いですよね。
 今お話の中にあった、たかだか日本の国でこれしかないのに、その経験豊富な人がやったがいいという意味ですね。脳死臓器提供という観点ではそうかもしれないけれども、それこそいろんな、交通事故で担ぎ込まれた類似の者とか、そういう者に臓器移植やらなくとも、いろんな対処をしたという経験、つまり脳死状態と向き合った経験と、そういう意味に私はとらえたんですけれども。
 それは、結論は、その当時の審議を御覧になっていただいて、もしこういう点とこういう点が問題だからというふうなお話もいただいた方がむしろお答えしやすいんですが。
#100
○梅村聡君 具体的には、やはり法的な脳死判定を受けた方の脳死という問題と、それから今よく言われている、ほぼ脳死と判断をされた、つまりこれは法的脳死判定をされる医師の方以外の方が、例えば小児の問題なんかで小児科のドクターがほぼ脳死ですという言い方をされている方、こういう方もテレビ、新聞等ではよく出られていますよね。だけど、脳死判定を受けた脳死の方とほぼ脳死と言われたということでは全くこれ違う話であって、これをごっちゃにして国民の方にこの議論がとらえられると、それは非常に混乱のもとに私はなると思っているんです。だから、そういう意味で、法的脳死判定をきちんとこの基準の中でされることと、この判定者の方にされることと、そうではない、ほぼ脳死と言われる場合との差をやはりきっちり議論をしなければいけないと思っているんです。
 そのためには、この判定者の方の基準、あるいはこれをきっちり担保する、判定を担保するということが私は重要だと思いますので、この診療科を選び、その専門医の方でなければ判定ができないと決められたその理由を、ありましたらということで質問をさせていただいたわけなんです。
#101
○参考人(藤原研司君) 繰り返しになりますが、私、そこに居合わせていなかったし、いろんなそれこそ報道関係の議事録もちょっと見せていただいたことあったんですが、その辺のところは私確認してございません。ちょっと臓器対策の方がもし御存じならばと思うんですが。
 それじゃ、ちょっと適切な確認できませんので、私のまた私的な意見申しますと、今の医学、医療というのは物すごく進歩しているんですね。ですから、先ほど、小児科の先生はどうだろうか、いやいや脳神経外科の大人ばっかり診ている医者よりも小児科の方がひょっとしたら分かるんじゃないと、こういう御質問にも取れますよね。確かにそうかもしれません。
 今、小児科の医者も、医療が進んでいるだけに、もう日進月歩ですし、相当幅広く学ばなきゃできない。それで、小児の外科をやっている方とか、同じ小児科の中でもいろんな専門性の方がどんどんできている。専門医というのはもう限りなく増えていくんだという、こういう時代になっているんですね。その時代に見合わした判定医をやるべきじゃないでしょうかと、こういうような御意見ですね。確かに、そういった観点で今後は仕組みも変えていくべきじゃないかと、私個人は思います。
#102
○丸川珠代君 丸川珠代でございます。
 本日は、お時間をちょうだいしまして、このような機会においでをいただきましてありがとうございます。また、これまでの御尽力にも敬意を表したいと思います。
 そして、私はドナーの家族の立場でもし考えるとするならばという問題意識でお伺いをしたいんですが、拍動があると、やはり脳死と言われてもなかなかそれが死に至るものであるということを納得するのが難しいであろうというのは想像に難くないのですが、実際に検証をされた事例の中に、臨床脳死という判断をされて、臓器提供の意思もあるんだけれどもできる限り心臓の停止に近い状態までもう少し判定を待ってくれないかというふうにおっしゃったドナーの遺族の方がいらっしゃるかどうか、あるいはもう法的に脳死と判定されて、臓器提供の意思もあるけれども、臓器摘出をする、その作業そのものをもう少し心停止に近い状況まで待ってくれないかといったような御要望というのがあったかどうかという点を伺いたいのがまず一つ目と、それから、必須項目をもって、これが脳死ですということをどういうふうに説明されているのかという点ですね。
 実際にこれをもって全脳の機能が不可逆的に停止をしますと、これは元へ戻りませんと、不可逆であるということが心臓が動いているけれども納得させる説明の在り方というのはどういうふうにしていらっしゃるのか、ちょっと伺いたいんですが。
#103
○参考人(藤原研司君) 今の御質問は、コーディネーターが具体的にどう説明するかということですか。まあ私の立場は、検証会議で僕もそのコーディネーターと一緒に付いて回っているわけじゃないので正確なお答えはできないというのが答えなんですが。
 その場合に、繰り返しになりますが、コーディネーターの方が本当に御家族の心情を察してお話ができるような形で、検証会議では、こちらにお見えいただくネットワークの方々にサジェスチョンをしたり、こういうのはどうなっているんですかというような御質問をすることはしばしばございます。
#104
○丸川珠代君 一つ目の質問に関してのお答えをいただけますでしょうか。
#105
○参考人(藤原研司君) もう一回。
#106
○丸川珠代君 臨床脳死という状況になって、臓器提供の意思があるんだけれども脳死判定そのものをなるべく心停止に近い状態まで待ってくれないだろうか、あるいは法的脳死と判定されて、臓器提供の意思もあるけれどもできる限りもう少し心停止に近い状態まで待ってくれないかというようなことがあったかどうか。
#107
○参考人(藤原研司君) 恐らく、検証会議には脳死臓器提供された事例だけが挙げられるんですが、私、別の、例えばネットワークの方々との話とか、あるいは肝臓の移植医の話もずっと聞いていますし、確かに今おっしゃったように、もうちょっと待ってくださいと、その方々は恐らく脳死臓器提供にはならない可能性があると思いますし、また仮に心停止になってからでも移植、移植だけは確かにやってあげたいけれどももうちょっと待ってくださいというときには、それこそ死の三徴を迎えた方からでは臓器によっては本当に有効活用ができるということありますので。ですから、どうでしょうか、検証会議の立場よりは私、一医師としての立場で申しますと、ケース・バイ・ケースで考えていけば一番重要なことは御家族なり御親族のお気持ちですね、これを大事にするというのが私は一番重要だろうなというふうには思います。
 お答えになりませんでしょうか。特に母親だったりすると余計、もうちょっとこの子がかわいそうだから待ってくださいと言いますよね。でも、この子の腎臓がどこかで生きていてもほしいしねというのは、そんなようなことだろうと思いますし、ケース・バイ・ケースということでよろしいんじゃないでしょうかね。
#108
○丸川珠代君 ということは、少なくともその検証の中にそういった情報は盛り込まれていないというふうに理解していいということですね。
#109
○参考人(藤原研司君) ネットワークの方で具体的にそういうものについてどういう取組をされているかを挙げられた書類とその事例に関してしか私、検証していませんので、ネットワークの内部事情についてはちょっと踏み込んでおりませんですが、細かいことまでは。
 よろしゅうございますか。確かに、その検証プロセスのときにネットワークの方に伺うこともありますけれども、それからネットワークの方、そうすると、あっ、あの後、こういうふうに言ったとき、そのときの細かい気持ちまでは私ももう忘れましたという人もかなりいるようなんですね。それは確かに、事例ごとの中にそういう記載があったのを私、そういえば見たこともございますが、それがすべてにうまくいっているかということについてはちょっとお答えできませんですが。申し訳ございません。
#110
○谷岡郁子君 藤原先生、今日はありがとうございます。検証会議の記録などもちょっと見させていただいて、幾つか質問させていただきたいと思います。
 最初の質問は、検証会議のドナー家族の小委員会を、心情小委員会ですか、つくられてお調べになったと。それは八十一例のうちの幾つぐらいを調べられたのか。そして、たくさん、全部断られたケース等もあろうと思いますけれども、それはいかなる理由によるのか。また、その調べられた家族の中で、非常に様々な形でドナーの家族になったことによっていろいろなトラブル、苦痛等が起こったことがあれば、それについて教えていただきたいと思います。
#111
○参考人(藤原研司君) 心情調査を立ち上げて、会いたいと言っても、遺族、家族によってはもう思い出したくない、嫌だと言って断るのもあるというふうには聞いております。そういうことですね。ですから、まだ九例までしか面接できていないというのもそういうことだろうと思います。
#112
○谷岡郁子君 九例ですか。
#113
○参考人(藤原研司君) 二十五、先ほど申しましたね、二十五例に連絡して九例に会えたということでした。
#114
○谷岡郁子君 そうしますと、それで、その段階に至る前の時点でも多分、ドナーカードを持っていないというような理由だとか、ドナーカード自身で拒否しているというような部分と、家族の了承が得られないという形でドナーになっていただけないということが多分ネットワークの方であろうかと思うんですけれども、だから法的脳死判定へ行けないでいる段階ということだろうと思うんですけれども、そういう例が多分多いので日本では非常にドナーが少なくとどまっていて、移植が多分できていないということが挙げられるんだろうと思うんですが。
 その割合としてどうなんですか。両方の掛け算だろうとは思うんですけれども、臓器を譲りたいというドナーカードの意思表示がないからというのと、あるんだけれどもその家族が了承しないからというのは、どちらの問題が大きいというふうに考えられますか。
#115
○参考人(藤原研司君) ですから、家族の物の考え方。本人がこう言っているんだからあげましょうという家族もあるし、本人はこう言っているけれども、もうそんな煩わしいこと嫌だという家族もあって、どれが日本人の主体を占めているかという問題については、ちょっとお答えできないですね。
 いかがですか。むしろ皆さん方、移植医療というものにもし直面した場合に、御自分、そのときは自分ではどうするだろうかと。恐らく、皆さん一人一人お考え違うんじゃないでしょうかね。この辺がやっぱり医療であり、特にこういう心の問題に入ってくる医療行為というのは特にそういう面が難しいんじゃないでしょうか。
#116
○谷岡郁子君 ありがとうございます。本当に難しい質問をして申し訳ないというふうに思っています。
 ただ、私としては、今後、衆院通過案ということで考えますと、家族が今度はドナー本人の意思すら分からないところで全面的に決めなければならないということになると、その家族の負担というものは増しこそすれ減少することはないという状況の中で、御家族の気持ちというものがかなり責任を負わされるということにおいて大変だなという思いがありまして御質問差し上げました。
 全く変わるんですけれども、随分今、現在の医療というのは進化している。その中で多分マッチングというものは進められているというふうに思うんですけれども、今拒絶反応だというものの言わば管理というものと、そしてマッチングに対しては、どの程度の母数に対して例えば必ずレシピエントがいるというような状態になっているのか、その辺についてお聞かせいただきたいと思うんです。
#117
○参考人(藤原研司君) ネットワークに届けられている登録者数、非常に多いということですね。それで、実際そこに登録して、ドナーが現れたときにうまくいく人もあるし、それがもううまくいかなくてどんどん亡くなる方もおるし。じゃ、それが何%日本の国にいるんですかということには、ちょっと全体の実態調査なんというのは、恐らくこれ至難の業じゃないでしょうかね。
#118
○谷岡郁子君 むしろ反対に、ドナーの提供者が一人いたとして、その人の心臓なり臓器なりが必ず使われる確率。今はドナーが少なくてレシピエントが多いということの中でマッチングする相手が見付かるかもしれませんけれども、将来、例えばこの法案が通ってドナーがすごく増えた場合に、レシピエントのマッチングというか、一体その確率としてどのくらいなのかという、前は、拒絶反応のコントロールがうまくいかない時代は随分細かいところまで合わせなきゃいけなかったと思うんですけれども、今はどのようになっているのかなという素朴な疑問であります。
#119
○参考人(藤原研司君) 私さっき一つ言い落としたのは、例えば肝臓について取り上げた場合に、この肝臓だと自分の患者さん、レシピエントにはちょっと向かないなという医者の判断もあるだろうし、ある医者によっては、いやいや、これは脂肪が少したまっているけど、いや、うちでは是非使わせていただきたいと、そんなようなこともあって、つまり、ドクターの、手術するドクターの考え方、あるいは技量というと大変申し訳ないんですが、考え方にもよって相当違うと思うんですね、マッチングとおっしゃった。
 でも、はっきりすることは、私は、臓器提供者が存在した場合には、その臓器が今言ったような理由さえなきゃ、この肝臓はどう見ても駄目だ、先ほど一例だけ脳死判定後に駄目だったという方いると申しましたんですが、やはりそれは全部に関して臓器移植には使用になれなかったということですので。ですからマッチング、そういうものを除けば、少なくとも一臓器か七臓器かぐらいは全部使用されているという点では、私は普及すればどんどん数は増えていくだろうというふうに期待しています。
 ただし、法的なプロセスがどうなるかには相当問題あるしということだろうと思うんですが、マッチング一つ取り上げてもいろんなファクターで考えなきゃいかぬということが私の結論ですけど、よろしゅうございますか。
#120
○足立信也君 民主党の足立信也です。
 一問一答でいいですか。二点あるんです。
 先ほどのドナーカードを持っている人がその表示が生かされたかという等々のことはネットワークの分析で、四類型の病院にどれだけ運ばれて、本人の意思とは別に家族の意思で拒否されたということはデータがありますので、それは是非とも後で渡したいと思いますし、検証会議の座長の藤原先生に質問してもなかなか難しい話ですので、それはネットワークのデータがあるということをまず申し上げます。
 それから、私が聞きたい二点なんですけど、一点目は、検証会議の結果の公表という話なんですけど、今三十五例公表されておりまして、それができない理由は、もうひとえに家族のプライバシーの保護だということなわけですが、先ほど小池委員の質問にもあったんですけど、今新たに参議院で提出されている法案では、プライバシーの保護を図りつつ公表というのが中に書かれてあるんですが、私は、三十五例全部見てはいませんが、二、三見ますと、かなり分厚い報告ですね、あれが詳細に書かれておりますね。これ、名前を消したところで、病院を消したところで、ほとんど分かると思います、読めば。
 それであるのに、プライバシーに保護しつつ公表を全部図るというのは私は不可能な話だと思っておりますが、その点を藤原先生はどう思われているのかというのがまず一点で、まずは。
#121
○参考人(藤原研司君) これは、検証会議の中で審議した結果について共同記者会見で発表するときの資料、届出があってからの流れというものと、あとは私が言葉で説明するという、こういうふうにやっているんですが、確かに、今おっしゃるように、その資料をよくよく見ると、何月何日どうだというと、物によっては特定できちゃうんですね、人によっては。そういうことはあり得るということを知っている御家族が恐らく今回のいろんな調査にも応じられないと言ったんじゃないかなというふうにも推察しますんですが、どうもお答えになっていませんですか。
#122
○足立信也君 ですから、プライバシーに保護しつつと言っても、全部公表というのはまずできないだろうという御意見で、多分一緒だと思います。
 二点目は、一般論で申し上げて大変申し訳ないんですけれども、どうも脳死がいわゆる三徴候死、これは先生、先ほど対光反射消失もおっしゃいましたが、厳密には瞳孔の拡大と心肺停止ですね。どっちが前にあるんだろうというのがやっぱり誤解されている部分がかなりあって、この点を言いたいんですけれども、例えば、私も同じような専門の科でしたので、それほど数は経験しているわけではありません、脳死については。例えば、私が昭和六十年、科学万博があったときのことを申しますと、あのときに私は救命救急センターに一年間勤めておりまして、科学万博の来客者、いわゆるDOA、デッド・オン・アライバル、心肺停止状態、これ十五人おりました。瞳孔も拡大しております。その時点で全員死亡というふうにはできません。生きていると判断して蘇生行為を始めます。その中で、蘇生できなかった方あるいは脳死状態になった方がその後にいらっしゃる。
 この前、我が党の勉強会で東京マラソンの例を出した方がいらっしゃいましたが、心肺停止して瞳孔も拡大している、じゃ死体かという認識は医療者にはありません。つまり、三徴候の方が前にあって、蘇生の結果で脳死という方の方が私は多いのだろうと思っています。
 年間百万人ちょっと亡くなるとして、一%約一万人が脳死という過程を経ていると言われるものの中には、実は、脳死があって三徴候の死があるよりも、脳死状態の前に三徴候があったという方の方がむしろ多いのではないか。そこで、一般常識として、そこで医師が全員死体だと書くかと、書きません。
 ということを先生は、それほど脳死の患者さんは御覧になっていないとさっきおっしゃいましたが、私の感覚としてはむしろ、前後関係でいくとそういう関係の方が多い、今私が申し上げたように、と思うんですが、いかがでしょう。
#123
○参考人(藤原研司君) 先生のお話は、三徴候がまずあって、その後に脳死に陥ることがあるという、御専門の立場からそうだという意味ですか。
#124
○足立信也君 そういうケースもかなりあるということです。
#125
○参考人(藤原研司君) 確かに、人工呼吸器とか人工心肺みたいなものを使うとそういうことはあり得るなというふうに私も思います。
 特に、脳死状態に陥った患者で、私がかつてその受持ちをやっていたものは相当以前なんですが、解剖をやったら、脳がもう水のように流れ出て全く残っていないなんということもありましたし。ですから、脳死が先か死の三徴が先かというのも、今の時代、その辺の議論は、むしろ頻度としてどっちが多いかという議論を根底に置かないと恐らく物が見えてこないという気がいたします。
#126
○足立信也君 同感です。
 ありがとうございました。
#127
○委員長(辻泰弘君) その他、御質問、御意見等ある方ございましたら挙手をお願いいたします。──よろしゅうございますか。
 それでは、以上で参考人に対する質疑は終了いたします。
 藤原参考人には、長時間にわたり御説明をいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして心より厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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