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2009/06/09 第171回国会 参議院 参議院会議録情報 第171回国会 財政金融委員会 第19号
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2009/06/09 第171回国会 参議院

参議院会議録情報 第171回国会 財政金融委員会 第19号

#1
第171回国会 財政金融委員会 第19号
平成二十一年六月九日(火曜日)
   午後三時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月五日
    辞任         補欠選任   
     喜納 昌吉君     主濱  了君
     平山 幸司君     水戸 将史君
     荒木 清寛君     加藤 修一君
 六月八日
    辞任         補欠選任   
     主濱  了君     喜納 昌吉君
     牧山ひろえ君     藤原 良信君
     加藤 修一君     荒木 清寛君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         円 より子君
    理 事
                尾立 源幸君
                大久保 勉君
                大塚 耕平君
                小泉 昭男君
                椎名 一保君
    委 員
                池口 修次君
                川上 義博君
                喜納 昌吉君
                富岡由紀夫君
                藤末 健三君
                藤原 良信君
                水戸 将史君
                峰崎 直樹君
                山下八洲夫君
                末松 信介君
                鶴保 庸介君
                中山 恭子君
                林  芳正君
                藤井 孝男君
                森 まさこ君
                荒木 清寛君
                白浜 一良君
                大門実紀史君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        大嶋 健一君
   参考人
       株式会社三國事
       務所代表取締役  三國 陽夫君
       全国銀行協会会
       長        永易 克典君
       社団法人生命保
       険協会会長    松尾 憲治君
       社団法人日本損
       害保険協会常務
       理事       志鎌  敬君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○資金決済に関する法律案(内閣提出、衆議院送
 付)
    ─────────────
#2
○委員長(円より子君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、平山幸司君及び牧山ひろえ君が委員を辞任され、その補欠として水戸将史君及び藤原良信君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(円より子君) 金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び資金決済に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、株式会社三國事務所代表取締役三國陽夫君、全国銀行協会会長永易克典君、社団法人生命保険協会会長松尾憲治君及び社団法人日本損害保険協会常務理事志鎌敬君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございますが、三國参考人、永易参考人、松尾参考人、志鎌参考人の順序でお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁は、いずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 それでは、まず三國参考人にお願いいたします。三國参考人。
#4
○参考人(三國陽夫君) 三國事務所の三國でございます。本日は、お招きいただきましてどうもありがとうございます。
 三國事務所は、八三年七月より丸二十六年間にわたり、日本企業の社債について、三國債券格付情報を国内及び海外の投資家向けに購読料をいただいて提供してまいりました。格付ランクの情報、そして格付理由を説明する財務諸表分析のリポートを提供しております。その立場から、今回の金融商品取引法改正案のうち、信用格付業者に対する公的規制の導入について意見を述べさせていただきます。
 今回、公的規制として登録制の導入、登録業者への規制、監督、無登録業者の格付を利用した勧誘の制限をうたっております。登録制の導入は、金融行政による信用格付の利用に呼応するものであると理解しております。
 私どもの三國格付は、投資家向けに格付情報を提供する役割に徹しております。したがって、社債発行会社に対して発行時に格付を付与するなどの金融行政上の役割は担っておりません。つまり、三國格付は、当初より金融行政による格付活用の枠組みの外側に存在してまいったことをまず申し上げておきます。
 本来、格付は、投資家が社債を購入、保有、売却するときに参照するものであります。格付は格付会社の一つの意見ですが、投資をするかしないかという投資判断についての意見ではありません。社債の元本金利の支払を約定どおりにできるかどうかという信用リスクについての意見であります。格付会社は投資家に信用リスクについての意見を提供し、投資家はそれを参考にします。この点においては、社債発行会社から依頼による依頼格付であろうと私どものような発行会社の依頼によらないいわゆる勝手格付であろうと、違いはないと考えられます。
 依頼格付とは、社債発行会社が自社の社債に格付を付けるように格付会社に依頼し、格付費用を負担するものです。そして、勝手格付とは、投資家が投資対象となる社債に格付を付けるように格付会社に依頼し、格付費用を負担するものです。しかし、どちらの格付の場合も、投資家が格付を参照するという点では同じです。
 そこで、投資家の利用に絞って幾つかのポイントを申し上げます。
 第一に、格付が扱う信用リスクの判断は、本来投資家が自分で下すものであります。投資家が自分で信用リスクを判断し、自分で投資を決めるからこそ、自分で責任を取ることができます。具体的には、社債の信用リスクが現実となり、債務不履行になり損失が発生した場合に、投資家が自分で投資の判断を下していればこそ、自ら納得して損失を受け入れ、自己責任を全うすることができるわけです。
 ここで、社債の債務不履行と申しますと、皆さんは、社債が債務不履行になり個々の投資家が損失を負担するようなことは日本でも現実に起こっているのかと疑問に思われるかもしれません。私どもが格付を始めた八三年時点では、確かに社債の債務不履行による投資家の損失負担のケースは戦後一件も起きておりませんでした。
 ところが、その翌年の八四年には早くも社債の債務不履行による投資家の損失負担が発生いたしました。しかし、八四年から九六年までの間に発生した七ケースは、専ら海外で起債された日本企業の社債の債務不履行であり、主として海外の投資家が損失を被りました。
 しかし、九七年にヤオハンジャパンという会社が国内で公募発行した転換社債の債務不履行が起こり、投資家が損失を被りました。そして、その後、今日までに全部で十二ケースの投資家の損失負担が発生しております。特に注目していただきたいのは、国内公募社債の債務不履行による投資家の損失自己負担の十二ケースのうち半分の六ケースが昨年半ばから今日までの十二か月間に起きていることです。投資家が自己責任を取って損失を自分で負担することが極めて身近な出来事になりつつあるわけです。
 さて、信用リスクは投資家が自分で判断できないのでそれを格付会社が代行するのだという見方があります。そうではありません。もし自分で判断できないというのであるなら、そういう方は社債に投資するのではなく、預金や投資信託で資金を運用するのが妥当です。投資家が社債の信用リスクを判断できないのでその判断を格付会社が代行するのであるなら、投資家は格付会社の格付に依存するしかないということになります。この時点で格付は投資家にとって一つの意見ではなく、従うべき専門家の意見、言わば保証に近いものになります。投資家は自分で考えずに格付に従えばよい、あるいは従うしかないということになります。これでは、投資家が自分で判断する余地をなくしてしまうという意味で自己責任の前提を崩してしまいます。
 そこで、次に申し上げたいのは、専門の格付会社の役割は何なのかということです。
 格付会社の役割は、数多くの社債発行会社について長期間にわたって信用リスクのユニバースあるいは信用リスクの体系を描き、比較感を提供することにあるのだと私は考えております。
 例えば、私ども三國格付の例で申しますと、現在約千二百社を対象としております。その格付ランクはトリプルAからトリプルCまで七ランクに分布しています。投資家は、同じ業種の会社の格付と財務内容を比較し、会社間の格付の違いを理解します。また、同じ格付ランク、例えばトリプルAの会社を相互に比較していくと、トリプルAという格付ランクの意味が理解できます。さらに、私どもは八三年から格付しておりますので、投資家は同じ会社の格付が長い間にどのように変わってきたかという歴史をたどることができます。
 私が内外の投資家に格付情報を長年にわたって提供してきた実感から申し上げられることは、投資家が個別の社債や個別の会社の信用リスクを判断するときに、その背景となる同じ業種、同じ格付、時系列という三次元の比較感を提供することが専門の格付会社の最大の役割だということを理解していることです。
 第三に、格付会社の一つの意見という立場をどうしたら守れるかということを申し上げたいと思います。
 私どもの三國格付は、金融行政に利用されることを目的とせず、その枠組みの外で投資家向けに格付情報を提供してきました。したがって、一つの意見にすぎない立場は明白です。しかし、金融行政で利用される格付あるいは登録業者の格付にはお墨付きが与えられ、一つの意見以上の格付であると受け止められる危険性が常に潜んでいます。格付が一つの意見以上のものになり、強い存在感、強過ぎる影響力を持つことになると、多様な意見を排除してしまい、一つしか意見がないという極めて危険な状況が生まれてしまいます。このことは、一昨年来のアメリカのサブプライムローン関連商品の格付の問題が明らかにしたとおりであります。
 それでは、現実にどうしたらよいかということであります。例えば、社債が発行されたときには、登録格付業者による取得格付が存在し、登録とは無関係な例えば三國格付が存在し、あるいは格付ランク以外の形で提示される信用リスクについての様々な意見も存在するという状況があってよろしいのです。むしろ、こうした多様な意見が共存していることこそが大事だと考えております。
 その意味で、今回の登録制の導入が、登録業者以外の意見の存在をいささかも排除することがあってはならないと考えます。登録業者の格付が権威ある唯一の意見ということになりますと、投資家が自分で考えて判断するという健全な市場の成立にとって最も大事な投資家の行動を阻害することになってしまいます。
 格付においては、前提とする環境、すなわちあり得る最悪な経済環境をどのように設定できるかが大事であります。経済が順風なときには、企業はまずつぶれません。昨年の秋以降のように急転直下して逆風が吹き荒れる経済環境となったときに、企業の信用リスクは問われます。そのときになって慌てて格付を下げても間に合わず、投資家の役には立ちません。したがって、格付では常に最悪の経済環境を設定して社債の元利支払能力を考えることが重要なのです。
 設定の仕方は、格付会社によって、あるいは投資家それぞれによって違います。例えば、私どもは、八〇年代末の日本のバブルの生成と崩壊、そして今回のアメリカの住宅バブルの生成と崩壊をあらかじめ読み取り、それに沿って最悪の環境を設定して格付をしてまいりました。
 三國格付では格付対象としておりませんでしたが、アメリカのサブプライム関連投資商品の格付は高過ぎたと言われております。高い格付が付いた理由は、アメリカの住宅価格は将来にわたって上昇を続けると設定したことにあると言われております。住宅価格は一九三四年以来毎年上昇してきたので、最悪の環境になっても住宅価格の上昇は続くと想定されていたのですが、現実には住宅価格は下落してしまったのです。格付会社が妥当な前提条件を設定できるかどうかによって、投資家の役に立つ格付が提供できるかどうかが決まってくるということでございます。
 最後に、格付会社の監督、規制について申したいと思います。
 昨年来の議論として、問題がある格付会社が放置されるのはいかがなものか、厳しく監督して規制すべきであるというものでございます。私は、規制、監督することではなく、規律が働くようにすることが必要だと考えます。この規律を与える役割は、基本的に市場が果たすことであります。
 社債投資の場合、企業内容開示制度によって発行会社の財務データはだれでも速やかに入手できます。また、財務諸表分析は百年以上の歴史があり、既に日本でも広く理解されています。したがって、多くの意見が出され、社債の市場価格が形成される条件は整っています。多くの意見が存在することは、格付会社の格付が規律の下に置かれることにほかなりません。つまり、意見が切磋琢磨するのを当然のこととして、その中で格付が投資家によって参照されていくなら、市場に働く規律の下で格付が提供されていくことになります。
 今回の格付会社の在り方を見直す国際的な動きにおいても、様々な仕組みを持った投資商品ではなく公募発行される通常の社債の格付については大きな問題は発生していないことを申し上げて、私の話を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#5
○委員長(円より子君) ありがとうございました。
 次に、永易参考人にお願いいたします。永易参考人。
#6
○参考人(永易克典君) ただいま委員長から御指名をちょうだいいたしました全国銀行協会会長の永易でございます。
 本日は、金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び資金決済に関する法律案の御審議に際しまして私どもの意見を述べさせていただく機会をいただき、心より感謝申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は、特に私どもと深くかかわりのある金融商品取引法等の一部を改正する法律案における金融ADR制度について一言申し上げたいと存じます。
 近年、金融機関が取り扱う金融商品・サービスは多様化、複雑化しており、金融分野における消費者トラブルは増加傾向にございます。また、今後も新たな金融商品が開発されてまいりますし、販売形態、販売経路も更に多様化していくものと見込まれます。そのような状況の中においても、お客様が安心してお取引を行い得る環境並びに困ったときに気楽に相談できる環境を整備していくことは、様々な商品を取り扱う我々金融機関の責務と考えます。そうして、そうした環境整備が信頼と活力ある金融市場の構築につながるものと考えます。
 今回法案に盛り込まれました金融ADR制度におきましては、お客様からの苦情やトラブル事案に対する金融機関の取組をより実効性のあるものとし、お客様の信頼感、納得感をより高めるために、次に述べるような各種の措置が講ぜられているものと理解しております。そして、いずれの措置も、私ども銀行界として十分に理解し、真摯に対応していく必要がある重要な事項であると認識しております。
 まず、法案には、お客様の信頼感をより高めるため、紛争解決機関の中立性、公正性を確保するための措置が盛り込まれております。
 具体的には、一定の要件、例えば紛争解決等業務の公正な実施に支障のない役職員の構成、法令に適合し、紛争解決等業務を公正かつ的確に実施するために十分な業務規程の策定などの要件に基づいて主務大臣が紛争解決機関を指定することが定められております。加えて、監督御当局による指定紛争解決機関に対する報告徴求や立入検査、業務改善命令等の監督規定も盛り込まれております。
 このように、公的な指定を受けた機関が紛争解決を担い、かつ第三者、それも公的な立場からの監督が入る枠組みが法的に担保されることは、紛争解決の業務プロセス等により高い中立性、公正性を確保する上で重要な措置と考えております。
 次に、紛争解決の実効性を高めるための措置として、各金融機関が指定紛争解決機関と契約を締結する際、各金融機関に対して、苦情処理・紛争解決手続の応諾義務、手続における事情説明・資料提出義務、紛争解決委員の提示する和解案を尊重する義務等を課することとなっております。このように、金融機関側に義務を課すことは、紛争解決の迅速化にもつながり、紛争解決の実効性やこの制度を利用される方の納得性が高まるものと考えます。
 全銀協といたしましても、今回の法案の趣旨を十分に理解し、お客様の立場に立ち、利便性の高い、中立性、公正性、実効性ある金融ADRを創設、運営してまいりたいと考えております。これまで以上に信頼性ある紛争解決に向け、より安心、安全な金融市場の構築に取り組んでまいりたいと考えております。
 では、ここで全銀協のこれまでの取組について簡単に御説明させていただきます。
 銀行界では、かねてより、全国五十一か所にある各地銀行協会内に銀行とりひき相談所を有しており、ここを窓口とし、お客様から苦情、要望、相談への対応を行ってまいりました。この相談所は、昭和三十年に東京に金融相談所として第一号を設置し、その後、銀行よろず相談所等に名称を変更しつつ全国に拡充していったものであります。平成十八年四月には、さらに名称を現在の銀行とりひき相談所に変更しております。
 この銀行とりひき相談所では、年間約四万から五万件の相談、要請、苦情を取り扱っておりますが、苦情対応の手続では解決できない紛争事案につきましては、昨年の九月まではすべて全国の弁護士会仲裁センターや他の苦情・紛争解決支援機関に移送する対応としておりました。
 こうした中、金融に対する信頼感の向上に向けた自主的な取組を進めるために、銀行界として独自の紛争解決機関を設置、運営していく必要があると判断し、昨年十月に紛争解決機関であるあっせん委員会を設置し、金融商品取引法上の認定投資家保護団体の認定を取得いたしました。
 あっせん委員会は、苦情対応の手続では解決できなかった案件の解決を支援する仕組みであります。委員の方々は、手続の中立性、公正性を確保する観点から、弁護士、学識経験者、消費者問題専門家、全銀協役職員等から構成されており、銀行の役職員や全銀協会員銀行の顧問となっている弁護士は選任できないこととなっております。
 また、この委員会における手続においては、案件の当事者となった銀行は、正当な理由がある場合を除き、手続の参加、資料等の提出及びあっせん案の受諾が義務付けられており、手続の実効性を担保する措置が講ぜられております。
 昨年十月の設置以降、今年三月までの半年間で計二十六件のあっせん申立てを受けており、四月以降もそれを上回るペースで申立てを受けております。ただし、何分にも昨年十月に設置したばかりの機関であり、取扱件数はまだ多くはありませんが、お客様の利便性が高く、より信頼される紛争解決機関とすべく、運用体制の改善に取り組んでいるところでございます。
 なお、現在、銀行の窓口におきましては保険や投資信託なども販売していることから、これらの商品にかかわる苦情、紛争にも適切かつ迅速に対応できるよう、他業態のADR機関とも連携を密にしております。本日、生命保険協会さん、日本損害保険協会さんも御出席されておりますが、生命保険協会さん、日本損害保険協会さん、そして日本証券業協会さんと綿密な連携体制を整備し、保険や投資信託といった商品に関する苦情、紛争につきましても、各商品に対する専門性を考慮し、各協会のADR機関に移送することとしております。
 今後も、銀行が販売する様々な商品に関する苦情、紛争への対応について、利用者の目線に立ったより利便性の高い制度とするよう取り組んでまいりたいと考えております。
 今回御審議いただいている法案の内容は、これまでの全銀協の取組と方向性を一にするものと考えます。全銀協の紛争解決機関はまだ歴史も浅く、今後更なる改善を必要とするものでありますが、当法案の内容、趣旨を十分に理解した上で、より高い中立性、公正性、実効性を備えた紛争解決機関となるよう努めていきたいと思います。また、この紛争解決機関をより多くの方に知っていただき、そしてより活用していただくために、広報活動にも力を入れていきたいと思います。
 最後に、繰り返しにはなりますが、本法案は信頼あるより安心、安全な金融市場の発展に向けて誠に重要なものであると認識しております。本法案を御審議いただいております諸先生方に御礼を申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#7
○委員長(円より子君) ありがとうございました。
 次に、松尾参考人にお願いいたします。松尾参考人。
#8
○参考人(松尾憲治君) 生命保険協会長の松尾でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 先生方におかれましては、生命保険業界に対しまして御理解と御支援を賜り、誠にありがとうございます。また、この度は金融商品取引法等の一部を改正する法律案の御審議に際しましてこのような意見陳述をする機会をちょうだいいたしまして、重ねて感謝を申し上げます。
 社団法人生命保険協会につきましては、昨年創設百周年を迎えましたが、その間、一貫して生命保険事業の健全な発展に取り組み、生命保険事業は国民の確かな安心と豊かな暮らしのためになくてはならない社会的インフラとして、国の社会保障制度とともに国民生活の安定に貢献をしてまいりました。
 現在の社会環境におきましても生命保険の社会的役割は一段と増しており、生命保険協会及び生命保険各社は共に社会からの信頼にこたえるため、常にお客様視点に立脚した業務運営を心掛けておるところでございます。とりわけ消費者保護の観点からは、苦情や紛争における対応を含め業界を挙げて様々な取組を行い、お客様からの信頼の維持、確保に努めてまいりました。
 さて、本日は、今回の法律案のうち生命保険業界に関係の深いADR、すなわち裁判外紛争解決制度について、これまでの生命保険業界における取組を中心に申し述べさせていただきたいと存じます。
 まず、今回の金融商品取引法等の一部改正による金融ADRの制度化に関しましては、金融商品・サービスに関するトラブルの処理、紛争解決について、利用者の信頼感、納得感、そして制度の実効性の向上を図るため、業界団体等による紛争解決機関を主務大臣が指定し、紛争解決の中立性、公平性を確保しつつ、金融機関に手続応諾義務、事情説明・資料提出義務、結果尊重義務を業法上定めていくものでありまして、我が国の金融分野におけるADRを確固たる制度として位置付け、顧客保護の観点から本制度のより一層の充実が図られていくものと理解をしております。
 御高承のとおり、我が国の金融分野におけるADRにつきましては、平成十二年の金融審議会答申を受け金融庁に金融トラブル連絡調整協議会が設置され、この中で検討が進められてまいりました。本協議会には業界団体も参加させていただき、関係各方面の有識者の方々と金融ADRの改善、発展に向け有効な意見交換をさせていただいておりますが、苦情、紛争解決に取り組む各業界団体では、本協議会での議論も踏まえ、この九年間、それぞれ自主的に取組の改善を行ってきたものと認識をしてございます。
 生命保険業界におきましても、ADRの充実につきましては、利用者保護の一層の推進に資するとともに、生命保険事業の健全な発展や信頼性の向上につながるものと認識し、従前より真摯に取り組んでまいりました。
 具体的には、平成十三年四月に業界のADR機関として裁定審査会を生命保険協会に設置し、契約者等との紛争解決に当たっております。裁定審査会は、契約者等と生命保険会社との当事者双方で一定程度話合いをしたにもかかわらず解決に至らなかった場合に、所定の手続に沿って無料で紛争を申し立てることができる制度でございます。昨年度の申立て実績は八十二件でございます。
 また、金融トラブル連絡調整協議会の座長メモや金融審議会の報告書でも触れられているとおり、ADRの運営に当たっては中立性、公平性の確保が極めて重要であり、裁定審査会においても、この点を踏まえ、中立性、公平性の確保を図っております。
 具体的には、裁定審査会のメンバーにつきましては、弁護士四名、消費生活相談員四名、事務局代表として協会のプロパーでございます生命保険相談室長の計九名から構成され、法律と消費者の立場の両面から公平な事実認定に努めております。また、当審査会の運営に関しましては、金融トラブル連絡調整協議会で策定をされました苦情・紛争解決支援モデルに基づき規程を整備し、会員各社に対しては、参加義務、協力義務、結果尊重義務を課し、ADR機関として必要な実効性を担保しております。さらに、裁定審査会の監視機関といたしまして、学者、弁護士、医師、消費者代表など外部有識者で構成する裁定諮問委員会を設置し、裁定審査会の運営状況を外部専門家の立場からチェックしております。また、これらの中立性、公平性の確保に加え、生命保険協会では苦情から紛争までの一連の解決支援手続が利用者にとって利用しやすいように制度的な整備を進めていることから、ADRに必要な専門性、効率性も併せて確保しているものと認識をしてございます。
 このように、現在生命保険協会で運用しておりますADRは、今回の法律で指定紛争解決機関が求められている中立性、公平性や結果尊重義務等の各種義務規定の整備など、基本的な機能、制度の枠組みを満たしているものと認識をしております。
 また、このような法律で求められております基本的な機能、制度の枠組みに加え、当協会では、金融ADRについてはお申出をされた個人の利用者保護だけでなく全体的な利用者保護にもつなげていくことが重要であると考えており、会員各社の経営改善に向けた取組のサポートとなる活動も行っております。
 具体的には、裁定審査会事案の内容、結果、また広くお客様からの相談、苦情について四半期ごとあるいは半期ごとにその状況を取りまとめ、協会ホームページに公表するとともに、会員各社にフィードバックし、改善に向けた取組を促しております。また、裁定審査会事案を含め、お客様から寄せられた声については協会の「消費者の声」事務局で集約、分析し、会員各社の経営改善に生かす仕組みを取り入れております。
 生命保険協会のADRにつきましては、業界が設立したADRだからこそ誤解を受けないように、以上御説明させていただきました取組を講じることで常に中立公正な姿勢を保ち、透明度を上げて運営を行っているところでございます。
 生命保険協会のADRに関する取組の概要は以上のとおりでございますが、これまでの金融ADRに関する多方面からの議論も踏まえ、本年四月より生命保険協会のADR体制を更に強化いたしましたので、簡単に御紹介をさせていただきます。
 第一に、弁護士委員、消費生活相談員委員を各一名増強し、委員を九名体制としました。これによりまして審査体制の充実を図りました。
 第二に、利用者の利便性向上に向け、全国五十三か所の地方連絡所でテレビ電話を利用できる環境を整えました。従来、地方における利用については地方連絡所を通じ電話等で申立人へ事実確認等を行っておりましたが、テレビ電話の導入により実際の面談と同様なヒアリングを行うことができるようになりました。
 最後に、第三に、処理の迅速化に向け、保険会社から提出文書の様式を定型化するなど資料を整備し、運用の改善を図っております。
 一方、会員各社におきましても、生命保険事業は消費者からの信頼が存立基盤であることから、近年、苦情対応の強化に向け、社外弁護士等による審査制度を設置するなどの取組を進めており、苦情段階での解決にも注力をしてございます。
 今後も、金融ADR制度という新たな枠組みの下、一層の実効性向上を目指し、生命保険商品の特性も踏まえながら自主的取組を進めてまいる所存でございます。
 最後に、今回の法律案について一言所見を述べさせていただきたいと存じます。
 今回の法律案における金融ADR制度は、私ども生命保険業界のこれまでの取組の延長線上に位置付けられるものと理解しており、法制化されることによってより広く消費者にも安心感を与えることができるのではないかと考えております。生命保険業界といたしましては、この法律案が国会での御審議を経て速やかに成立されることを望んでおりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 私からの説明は以上でございますが、私どもも、生命保険業界といたしましても、金融ADRを通じ、生命保険事業の更なる発展、信頼の維持向上に取り組んでまいりたいと存じますので、引き続き御理解と御支援を賜りますようによろしくお願いを申し上げます。
 以上で私の意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。
#9
○委員長(円より子君) ありがとうございました。
 次に、志鎌参考人にお願いいたします。志鎌参考人。
#10
○参考人(志鎌敬君) 日本損害保険協会の志鎌でございます。
 本日は、このような機会を設けていただきましてありがとうございます。また、日ごろより損害保険業界に対しまして御理解と御支援を賜り、誠にありがとうございます。
 初めに、私ども日本損害保険協会の活動について触れさせていただきます。
 日本損害保険協会は、日本国内の損害保険会社を会員とする事業者団体でございます。現在、会員数は二十六社でございます。会員会社の業務品質の向上を支援する取組や、損害保険に関する消費者への情報提供及び防犯・防災対策等の社会的ロス改善の取組、あわせて、社会の安全、安心に貢献する取組など幅広い活動を行っております。
 この三年間は、特に社会からの信頼にこたえるために、業界全体の業務品質向上の取組に注力をしております。例えば、委員の過半数を外部の有識者で構成する「消費者の声」諮問会議を二〇〇六年度に設置し、いただいた提言に基づき、募集文書等の表示に係るガイドラインや保険約款のわかりやすさ向上ガイドラインといった各種のガイドラインを策定するなどの取組を展開しております。
 会員各社では、これらのガイドラインに基づきまして、パンフレットなどの募集文書や保険約款の見直しを行うことにより、お客様にとって一層分かりやすい損害保険の実現を目指しております。自ら策定したルールによって自らを律しているこれらのガイドラインは、日本損害保険協会の自主規制機能と言えるかと思います。
 このほかにも、損害保険募集人の資質向上を図るための仕組みづくりや、相談・苦情対応機能の強化を図る取組等を進めております。
 続きまして、金融ADR制度に関連し、日本損害保険協会における相談、苦情及び紛争対応の現状について申し述べたいと思います。
 私どもでは、東京の本部相談室と全国十か所の支部及び全国四十八か所の自動車保険請求相談センターに合計百十二名の相談員を配置しております。二〇〇八年度に全国で受け付けた件数は、相談が約七万六千件、苦情が約二万一千件、合計で約九万七千件でございました。相談、苦情の大半は相談員の説明により御理解いただいておりますが、相談員の説明でも御納得いただけない場合は保険会社に解決を要請いたします。二〇〇八年度に保険会社へ解決要請を行った事案は約千五百件でございました。これらのうち約八割は当事者間で解決に至っておりますが、それでも解決に至らなかったものについては、紛争として所定のスキームで解決を図る体制を整備しております。
 損害保険業界として設置している紛争解決体制、すなわちADR機関といたしましては、私どもの損害保険調停委員会のほかに、財団法人交通事故紛争処理センター及び財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構の全部で三つの機関がございます。近年では、私どもを経由せずに直接各機関に申立てのあった事案も含めて、この三機関を合わせますと年間七千件を超える紛争が解決されております。これら三機関は、専門性に応じたすみ分けを行うことにより、迅速かつ公正な解決が図られるようにしております。
 私どもの調停委員会は、他の二つの機関では扱わない自動車保険の車両保険や火災保険などの主として保険契約者と保険会社間の紛争を対象としております。現在、調停委員会は東京と大阪の二か所体制としておりまして、いずれも弁護士二名それから消費生活相談員二名、学識者一名の合計五名体制によって審査を行っております。このメンバーは、保険会社とは一切関係のない中立的な立場の方々でございます。
 事案審査に当たっては、必要書類を事前に確認した上で、実際に当事者を個別に委員会に招いて意見聴取を行っております。こうした手続への参加や調停結果の尊重につきましては、保険会社側に片務的な義務を課しておりまして、お客様に安心して御利用いただけるよう中立公正な運営を徹底しております。
 なお、二〇〇八年度の扱い件数は三十九件でございました。扱い件数はここ数年、対前年比一・五倍ペースで増加をしてきておりますが、まだまだ認知度合いは十分でないと考えております。本年度からは、私どもを通じて苦情のお申出をいただいた事案のうち、調停委員会の対象となると思われる事案のお客様に対しまして積極的に調停委員会を文書で御案内し解決に向けてサポートする等、更なる活用促進を図っているところでございます。
 次に、私どもに寄せられる相談、苦情の活用につきまして御紹介いたします。
 私どもでは、会員各社の業務改善に生かすため、お客様の声をより広く積極的にとらえることとしております。こうしたお客様の声は、宝の山として様々な形で集計、分析を行いまして、会員会社へフィードバックして各社の業務品質の向上に生かしております。また、私どもの各種の事業や業界ガイドラインの修正に反映させるなど、いわゆるPDCAサイクルの一環としても活用しているところでございます。
 最後に、これまで述べましたような私どもの取組の実態も踏まえまして、金融ADR制度について若干所感を述べさせていただきます。
 先ほど御説明申し上げましたとおり、日本損害保険協会のADRである損害保険調停委員会は、中立性、公正性を十分に確保し、会員会社に対する片務的な義務を課すなど公明正大に運営しているところでございますが、今般の法案はこうした点が法律上担保される内容となっているものと認識しております。業界団体が運営するADRということで、中立性、信頼性に対して疑念を抱く消費者がいらっしゃるのであれば、この法律に基づく指定機関となることによりその信頼性は大きく高まるものと考えております。さらに、こうした仕組みを業界単位で設けていこうとする今般の法案は、既存の資源や制度を有効に活用するものである上に金融業界全体の信頼の確保にもつながるものであり、消費者にとっても金融システム全体にとっても大きな意義があるものと感じております。
 私どもといたしましては、法制化の有無にかかわらず、相談、苦情、紛争解決体制の一層の強化と周知を図っていく方針ではございますが、法案が成立しましたら速やかに対応を協議し、法律の理念及び求める要件に即した体制整備を進めてまいりたいと考えております。
 私からの御説明は以上でございます。ありがとうございました。
#11
○委員長(円より子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○大塚耕平君 民主党の大塚でございます。
 今日は、四参考人におかれては、御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございました。
 今日は、一問一答ではなくて、少し変則的ですが、あらかじめお渡しをしてあります私なりの見解と質問を冒頭に朗読をさせていただきまして、後はそれぞれお願いをした時間内で御回答を賜りたいというふうに思っております。
 まず、今回の審議に限らず、国会の法案審議に利害関係者が参考人として出席していただきその意見を聴取させていただくことは、法案の内容を適切に把握し、賛否の判断、あるいは成立後の運用を考える上で、非常に重要なことだと考えております。
 当委員会においては、銀行、証券、生保、損保等に関する法案審議が断続的に行われていますが、近年、利害関係者からの率直な意見聴取が必ずしも十分に行い得なかったという心象を抱いております。その背景には、過去十数年来、不良債権処理や金融不祥事、あるいは業務の実情等をめぐって、議会、行政、業界の間に時に緊張関係が生じていたことなどが影響をしているものと思料いたします。
 日本の金融産業は、欧米諸国や中国との競争に直面するとともに、規模の割には十分なプレゼンスを発揮できておらず、また様々な構造的問題を抱えております。こうした状況下、議会、行政、業界の三者は、今まで以上に十分な意思疎通を図り、日本の金融産業の戦略的かつ健全な発展を図る必要があります。そうした観点から、今後は業界団体の責任者が参考人として積極的に関係法案の審議に出席していただくことを期待したいと思います。
 金融産業は経済全体の牽引役、下支え役であると同時に、金融機能には極めて強い公的側面があります。そのことは、今回の金融危機における欧米諸国の政府の対応を見るまでもなく、議会、行政、業界の共通認識と考えています。したがって、業界を代表する立場の責任者は、金融産業に関する政策への提言や注文、あるいは議会からの質問への回答を提示することが重要な職責の一つと認識しております。
 もちろん、議会としても、あくまで業界団体の責任者の立場で意見聴取を行う場合と、個社の問題に関連して参考人出席を願う場合を峻別し、適切な対応に努めるべきであることは言うまでもありません。
 また、業界団体の責任者におかれては、議会が世情や国民の声を集約し、それを利害関係者に伝える機能を果たしていることも改めて認識していただきたいと思います。
 大企業においては、往々にして社内からは経営幹部にネガティブインフォメーションが伝わりにくくなりがちです。そうした弊害を是正するためにも、議会における参考人としての意見陳述、議員との意見交換の場を有効活用し、金融産業や個社の健全な運営に努めていただきたいと思います。
 業界団体の責任者は個社の経営幹部として多忙を極めていることは理解しておりますので、議会としてもそのことに十分に配意する一方、業界団体の責任者も議会の要請に最大限の配慮をしていただくことを要望しておきます。そのことが、結果的に、議会、行政、業界の円滑な意思疎通に寄与し、経済危機等に際して金融産業を公的に支援していくバックグラウンドとインセンティブにつながるものと思います。
 以上の点に関して、三人の参考人に所感と今後の姿勢をお伺いしたいと思います。
 次に、金融ADRに関しては今るる御説明をいただきましたが、改めて二、三お伺いをいたします。一昨年四月にADR促進法が施行され、銀行、生保、損保はそれぞれあっせん委員会、裁定委員会、調停委員会を運営していますが、その現状と本法案が成立した場合の今後の改善点等について、改めて御所見をお伺いいたします。
 ADR促進法において当事者間の対等中立性を前提としている一方で、保険の業界誌には以下のような記述がありました。いわく、業界が自主的に設置した裁判外紛争解決機関の最大の特徴は会社側に課した片面的拘束力である、この精神の根底には、消費者は一個人であり企業の組織力には到底かなうものではないというバランス論から成り立っていると明記されております。このように、生保においては自発的に片面的拘束力を重視している中、この点に関する銀行、損保の考え方及び本法案成立後の三業界の方針について、やはり三人の参考人にお伺いいたします。
 昨年六月に成立した改正金商法がこの六月一日に施行されました。銀行、証券、生保、損保の役職員兼務が可能となったほか、顧客の事前同意なしに顧客情報を共有できるようになるなど、金融コングロマリット化が進んでいます。
 こうした状況下、英国保険業における商品推奨の理由を説明するステートメント・オブ・デマンド・アンド・ニーズや顧客への適合性と投資リスクを説明するスータビリティーレターという文書の交付のような仕組みの有無、運用、本法案成立後の対応並びに将来的に金融産業全体の横断的ADR構築を目指すべきかどうかの認識について、三人の参考人にお伺いいたします。
 また、銀行に関しては、とりわけ不動産等に関連した提案融資をめぐるトラブルが後を絶ちません。全銀協参考人には、本法案成立後のADR組織が融資トラブルをどのように扱うのか、あるいは融資トラブルを未然に防ぐ工夫の現状と今後についてお伺いいたします。加えて、金融コングロマリット化の進展に伴い、銀行の優越的地位の濫用や利益相反リスクが高まる可能性についての認識及びそうした弊害に対する防止措置、弊害が顕現化した場合の金融ADR等を活用した是正措置について、考え方をお伺いいたします。
 ところで、昨年来の金融危機は、欧米の大手金融コングロマリットが投資リスクを的確に把握できなかったことが原因の一つであります。そのため、世界の潮流は金融コングロマリットに懐疑的な方向に進み始めている中で、日本では逆に今月から金融コングロマリット化を進める法律が施行されたことになります。世界と日本の動きのそごについて、やはり三人の参考人に御所感をお伺いいたします。
 銀行に関しては、貸し渋り、貸しはがし、中小企業融資が伸びないこと等の問題点が当委員会でも再三指摘されています。一方、銀行が不良債権化の予想される融資を安易に行えないという事情も理解できます。
 こうした状況下、この問題に関する解決の糸口を探ることは日本経済の低迷を打開する上で重要な課題であります。地域経済や中小企業の疲弊が融資を行えない原因の一つであるとすれば、政府の国土政策や産業政策について、議会の審議において銀行の立場から積極的に注文を付け、意見具申をしていただくことが、公的機能を担った銀行業界の経営幹部、現時点においては十分な納税責任を果たしているとは言えない業界団体の責任者として当然の責務であると考えております。
 生保、損保に関しても、公的保険制度の信頼性が揺らぐ中、その代替機能を果たすことや、保険の専門家として議会に対して適切な意見具申をしていただくことが、公的機能を担った保険業界の経営幹部として期待される役割だと考えております。
 最後に、三國参考人には、格付機関の登録制の是非に関して基本的な御認識を簡単にお伺いをいたします。
 今後とも、各参考人には、議会の法案審議と日本経済の発展のために適切な協力と貢献をしていただくことをお願いして、私の質問とさせていただきます。
#13
○委員長(円より子君) それでは、まず永易参考人からお願いいたします。
#14
○参考人(永易克典君) 大塚先生の全銀協に対する御質問は七点あるかと思います。まず、順に意見を述べたいと思います。
 まず、議会、行政、業界の円滑な意思疎通に寄与していく、こういうためには今後の姿勢等々意見ということでございましたけれども、私どもの銀行は経済を支える重要な社会的、公的役割を担っていると認識しております。それゆえに、政府の経済対策とも歩調を合わせて日本経済に貢献していく使命を負っていると考えております。
 特に、足下における経済、金融の危機的環境下では、政治、行政との連携は極めて重要と認識しております。また、日本が他国に負けない金融産業をつくり上げるための制度、環境を整備するためにも、立法、行政と協力していかなければならないということも十分認識しております。
 全銀協会長は、業界団体の代表としてそうした任務に当たっております。先生御指摘のとおり、国会を始め様々な公の場で提言や主張を述べさせていただくとともに、各方面からの声をしっかりと聞き、業界活動、ひいては個別銀行の経営業務にも役立ててまいりたいと思っております。
 二点目、銀行のあっせん委員会についての御質問でありますけれども、若干陳述書でも述べましたが、現在、全銀協が行っておりますあっせん委員会については、昨年十月に設置したばかりでございます。したがって、実績は少ないんですけれども、紛争解決機関における信頼性、紛争解決機関を利用されるお客様の納得性、これを高めるために運用を行っているところでございます。
 今回の法律成立後は、紛争解決機関は主務大臣による指定を受けることになり、そして公的な監督下に置かれることになります。全銀協といたしましても、指定機関にふさわしい体制と組織を構築し、お客様からの信頼性ある、使い勝手の良い、中立性、公正性を具備したものにしていきたいと考えております。
 三点目でありますけれども、片面的拘束力についての銀行の義務についての御質問だったと思います。
 私どもも、お客様と各銀行との紛争解決において銀行側に一定の片面的拘束力を課すことは、紛争解決の実効性を高め、お客様の納得性、納得感ある解決とする上で極めて有効であるというふうに考えております。そのために、現在の全銀協のあっせん委員会の運営におきましても、今回の法案と同様、銀行にあっせん手続の参加義務、あっせん手続に対する資料等の提出義務、あっせん案への尊重義務といった義務を課しております。そして、こうした規則を遵守しない銀行が認められた場合、あっせん委員会は全銀協理事会に報告し、理事会は当該銀行に対して改善措置を求めるとともに、その概要を公表できるということにしてございます。
 四点目は、イギリスの文書交付のところでございますが、リスク商品販売についてでございます。
 本邦においても、銀行の窓口では投資信託などといった投資性商品を販売する際に、金融商品取引法に基づき、お客様の適合性を確認し、当該商品のリスクなどを含めた重要事項を説明した上で、それらが記載された資料を契約締結前交付書面としてお客様にはお渡しすることになっております。
 また、今後、更なる金融商品の多様化、高度化を想定いたしますと、利用者の利便性向上の観点からも業態横断的な金融ADRの設置は望ましい方向性であると考えております。ただ、その検討に際しましては、衆議院の附帯決議にもございましたように、今後の各業態別金融ADRの運用状況が検証され、お客様の御意見等も考慮しながら、将来的に中長期的な課題として検討されていくテーマであると思っております。
 五点目でありますけれども、融資トラブルのADR活用について申し上げます。
 まず、お客様との間で融資事案に関するトラブルを未然に防ぐ工夫として、やはりお客様とよくコミュニケーションを取り、その特性や個別の事情等を十分に踏まえた上で、御融資の条件等をきめ細かく御相談、御説明させていただくと同時に、御提案時から契約に至るまでのプロセスをきちんと書面に記録化することが重要ではないかと考えております。なお、本法案でのADR組織におきましても、融資トラブルも他のトラブルと同様取り扱う予定でございます。
 お客様からの相談、苦情は、今後のサービス改善に向けたヒントが数多く含まれていると認識しております。お客様から寄せられました苦情を商品、サービスの向上に活用していく取組を更に強化し、こうした面からもお客様の利便性向上や信頼性の確保に努めてまいりたいと考えております。
 六点目でございますけれども、金融コングロマリット化のお話でありますが、金融コングロマリット化は、基本的にはお客様へ総合的な金融サービスを提供するという意味で利用者利便に資するものであると考えております。一方、銀行の優越的地位の濫用や利益相反リスクが高まる可能性については、銀行界といたしましても、お客様の利益を不当に害することがないよう万全を期す必要があると認識しております。
 各金融グループが利益相反管理方針を定め一元的に管理するなど、適正な経営管理体制やコンプライアンス体制を構築し、グループ内で役職員一同がこれを遵守する必要があると考えます。仮に問題が発生した場合には、グループ内でしっかりと対応するとともに、各業態ADRを活用し、専門的な部分については他業態ADRと連携し対応していくことになると思います。
 七点目ですが、そもそも日本の金融コングロマリット化は逆行しているのではないかという御質問だったと思います。これについての所感を申し述べます。
 今般の金融危機では、欧米の一部投資銀行等におきまして、過度のレバレッジや審査規律の軽視など、リスクの把握、管理が必ずしも十分ではなかった点が問題であったと認識しております。今般、六月一日より銀証ファイアウオール規制の緩和が施行されたわけですが、金融機関が多様な業務を手掛け、総合的な金融サービスを提供すること自体はお客様のニーズに合致するものであり、その重要性は金融危機を経ても変わらないとの認識でございます。
 この点、我が国は依然欧米に後れを取っております。適切なリスク管理体制の整備を十分に行い、引き続き総合金融機能の強化を努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
 私からは以上でございます。
#15
○参考人(松尾憲治君) お答えを申し上げます。
 まず、一点目の議会への積極関与についての所感と今後の姿勢につきましては、生命保険事業の社会的役割、責任の大きさを踏まえますと、業界外の方々への情報提供、意見交換の機会を一層増やしてまいる必要があると、このように認識をしてございます。
 このような観点から、生命保険協会といたしましては、学識経験者、弁護士及び消費者団体の方々など、外部からの声を直接お聞きする仕組みを設け、生命保険各社の経営及び協会の活動に反映させる取組を推進してございます。
 先生に御指摘をいただきました議会、行政、業界の円滑な意思疎通の重要性につきましても強く認識をしているところでございまして、今回のような重要法案は生命保険業界への影響が大きいことから、このような機会をちょうだいし、生命保険業界の実情や見解を述べさせていただくことは大変有意義なことであるというふうに存じております。
 次に、二点目のADRの現状と本法案が成立した場合の今後の改善点等につきまして申し述べさせていただきます。
 生命保険協会は、業界のADR機関でございます裁定審査会を平成十三年四月に設置し、以降、金融トラブル連絡調整協議会での議論やその中で策定をされましたモデルを踏まえ、自主的に体制整備を進めてまいりました。この結果、今回の法律で指定紛争解決機関に求められる基本的な要件を現状で満たしているものと認識してございます。
 これまでも業界のADRにつきましては適宜適切に改善を行っており、本年四月にも、今般の金融ADR制度導入を視野に入れ、裁定審査会の利用促進、利便性向上に向け、委員の増員やテレビ電話の導入など体制強化を行ったことにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
 今後も、ADRの一層の実効性向上を目指し、金融トラブル連絡調整協議会での議論や、裁定審査会を監視いたします機関でございます裁定諮問委員会での意見やアドバイスを踏まえながら、積極的に改善に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 続きまして、三点目の片面的拘束力を重視したADR運営と本法案成立後の方針につきまして申し述べさせていただきます。
 先ほど先生よりお話がございましたとおり、生命保険協会のADRにつきましては、従前より、顧客保護の一層の充実の観点から、会社側に参加義務、協力義務、尊重義務を課し、片面的拘束力を重視した運営を行っております。生命保険協会といたしましては、法案成立後、政省令等の内容も確認しながら、指定紛争解決機関の申請に向け検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、四点目の、英国のステートメント・オブ・デマンド・アンド・ニーズやスータビリティーレターの交付のような仕組みの有無という点でございますが、我が国の保険商品には、同様の仕組みとして意向確認書面が導入をされてございます。これは平成十四年に金融庁に設置をされました保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チームにおける検討の結果、英国の例を参考に導入をされたものでございます。
 保険商品の内容を丁寧に御説明することは当然でございますが、意向確認書面を活用しながら、お客様ニーズに合致した保険販売を推進しており、今後もこの販売プロセスを徹底してまいりたいと考えております。
 次に、業態横断的ADR構築の検討につきましては、利用者の利便性や安心感、納得感といった観点から、選択肢の一つとして認識しており、本法案の附則にも明記されましたように、今後の法制度の運営状況も踏まえ、検討を行うことが重要であると考えてございます。
 金融審議会を始め、これまでの議論でもございましたが、検討に際しましては、金融商品の複雑性をかんがみ、専門性や迅速性を確保することや、これまでの業界団体における取組や枠組みを十分に活用することなど、効率性、合理性を考慮する必要があることは、是非御理解を賜りたく存じます。
 なお、業態横断的ADRを有効に機能させるための前提としては、まずは裁定の担い手でございます各業界団体が、今回の法制度の趣旨を踏まえ体制を整備し、ADR機能を標準化していくことが重要であると考えております。
 最後に、五点目の金融コングロマリットについてでございますが、昨今の金融サービスの高度化、多様化や、各国の金融機関の国際的業務展開などを踏まえ、ファイアウオール規制の見直し等がなされており、我が国の金融機関のビジネスチャンスが拡大するといった点で一定の意義があるというふうに考えてございます。
 一方、新たなビジネスに取り組む際には、当然ながら、金融機関は経営全体でリスク管理を徹底する等の措置を講じることが重要であるというふうに考えてございます。
 以上でございます。
#16
○参考人(志鎌敬君) まず一点目の、関係法案の審議への積極的な参加という御指摘でございますけれども、損保協会におきましては、金融審議会や金融トラブル連絡調整協議会での論議に積極的に参加し、業界を取り巻く状況あるいは業界としての意見を申し述べてきたところでございます。
 しかしながら、先生御指摘のとおり、グローバルな競争に直面している日本の金融産業の発展のためには、私ども損保業界も議会、行政とこれまで以上に緊密な意思疎通を図らせていただくことが重であると認識しており、今後ともできる限り積極的に参画してまいりたいと考えております。
 次に、調停委員会の現状と今後の改善点、それから片面的拘束力に関する考え方及び法案成立後の方針という御指摘でございますが、まとめて御回答させていただきます。
 調停委員会は、原則としまして、私どもが受け付けて会員会社に解決を要請したものの、一定期間、二か月を想定してございますけれども、これを経ても解決できなかった事案で、なおかつ自動車保険の賠償責任に係る被害者の方からのお申立てや自賠責保険の保険金支払に係る事案を除くもの、すなわち保険契約者と保険会社間の紛争を対象としております。
 委員会のメンバーは、保険会社とは一切関係のない中立的な立場の方々で、保険会社側には手続への参加や調停結果の尊重についての片務的な義務を私ども課しておりまして、お客様に安心して御利用いただけるよう中立公正な運営を徹底しております。この片務的義務は、業界団体ADRがその実効性と信頼性を確保する上で不可欠なものであると認識しております。
 なお、二〇〇八年度の扱い件数、先ほど申し上げましたように三十九件ということでございましたけれども、今後はより多くの紛争解決に資するよう、潜在的なニーズを掘り起こすほどの一層の周知と利用の促進が必要であると考えております。あわせて、より一層のアクセス性の向上、効率的な運営方法なども模索する必要があると考えております。
 それから四点目の、英国の事例とそれから将来的な横断的ADR構築を目指すべきかどうかという点でございますが、損害保険各社では、現在、これも生保さんと同様でございますけれども、契約時にすべてのお客様に契約の概要やデメリット情報などの注意喚起情報を記載した書面を交付していまして、重要な事項を説明するとともに、契約内容確認書面などのツールを用いまして、契約内容がお客様のニーズに合ったものか否かをチェックするようにしております。
 これらの書面は、お客様の御意見、御要望をお聞きしながら必要な改善を図っているところでございますけれども、今後とも、お客様の声に基づくPDCAサイクルにより必要な見直しを行ってまいりたいと考えております。
 続きまして、横断的ADR構築を目指すべきかどうかという点でございますが、消費者利便の向上を図るという観点からは、例えば受付窓口を統一化して各業界へ対応要請を行うということを検討することは非常に意義があるものと考えております。ただ、損害保険の場合は、苦情の大多数は交通事故に係るものでありまして、実際の損失額を見積もる必要性、あるいは被害者などの契約者以外の利害関係者の存在等、他の金融商品と性質が異なる部分もございます。
 こうした専門性、対象範囲の広さを勘案しますと、ADRとして求められる専門性を横断的に確保することは難しいものと考えられ、既存の各業界団体のADR機能を統合した横断的なADRは必ずしも効率的なものとはならない可能性もあります。どのような形が最も消費者にとって望ましいのか、様々な観点から検討すべきではないかと考えております。
 最後に、金融コングロマリット化に関してでございますけれども、昨年、特に秋以降は世界の経済情勢は想像を超えるスピードで変化し、この三月末の会員各社の決算は非常に厳しい内容となったわけでありますが、このような状況においては、綿密なリスク管理を一層進め、また様々なシナリオを想定して対応を行い、財務内容の健全性を維持していくことが重要であると考えております。
 事業の方向性に関しては各社の経営判断によることとなりますが、コングロマリット化を進めるに当たっては、このようなリスク管理の重要性がますます高まってくるものと思われ、より精緻なリスク分析に基づいた管理体制の構築が必要となってくるものと考えます。
 私からの説明は以上でございます。
#17
○参考人(三國陽夫君) ありがとうございます。二点ばかり簡単に申し上げます。
 今回の登録制導入は、金融行政による信用格付利用に呼応するものであると理解しております。
 私どもの格付は初めから金融行政の枠の外に存在しておりますから、したがって、金融行政がどのように使われているか、金融行政にどのように使われているか、そのために登録が必要かどうかについて、当事者ではございませんので、特段の意見はありません。
 それでは、登録制を必要とする金融行政による信用格付の利用についての意見ということでございましたら、行政が利用する格付を指定することは、指定された格付にお墨付きを与え、一つの意見以上のものであるという位置を与える危険性を常にはらんでいると考えております。一つの意見であるという位置を守ることが格付会社の生命線であるなら、お墨付きを得ることは難しい問題を含んでいるのではないかと考えております。
 以上です。
#18
○大塚耕平君 終わります。
#19
○椎名一保君 自由民主党の椎名一保でございます。本日は、参考人の皆さん、お忙しい中お越しいただきまして、どうもありがとうございます。順次質問をさせていただきます。
 今般の世界的な金融危機ですが、私は、優秀な人が集まっていると言われていた金融の世界でなぜこのようなことが起きたのかということによく思いを巡らせるのですが、金融工学という高度な道具をつくったのはいいんですが、大局観を失って、大きなリスクには目を向けることなく、結局は道具に使われ、道具に振り回されてしまったのではないかと思います。道具に使われてしまった典型的な例が格付ではないでしょうか。例えば、証券化商品の格付は、証券化された個々の住宅ローンの返済能力や商品のストラクチャーを基に決められたモデルに基づいて機械的に決められていたと聞いております。
 そこで、三國さんにお伺いしたいんですけれども、三國事務所は発行体、社債の格付がメーンで証券化商品に対する格付は行ってこなかったと聞いております。三國参考人は、今回、格付会社の評判を大きく落としてしまった証券化商品への格付についてどのような御所見をお持ちなのか、また格付が本来あるべき姿についてどのようにお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。
#20
○参考人(三國陽夫君) まず、証券化商品の格付が今回アメリカで非常に大きな問題になったわけでございますが、そのときに幾つか問題があったと思います。一つは、今回の場合は、サブプライムローンを組み込んだ仕組み債というんでしょうか、その格付において格付が高過ぎたという問題があったわけですけれども、これは二つ問題があります。
 一つは、サブプライムローンというのは、そもそもプライムローンではない、要するに審査に合致しない、そういう不良債権の一歩手前みたいな債権でございます。ただ、それが融資としてある意味では成り立ちましたのは、アメリカでは住宅価格がバブル現象を起こしていたものですから、バブルの中では借換え、借り増しというんでしょうか、そういうことを繰り返せば債務不履行になりにくいという、そういうことがございましたものですから、したがって格付が高い格付を取ることができたということになっていたわけでございます。
 ところが、先ほども申し上げたように、アメリカの住宅価格というのは一九三三年から七十五年間にわたってずっと上がり続けておりまして、それが二〇〇五年、六年辺りですとまだ永遠に上昇し続けるというような、そういう錯覚もあって高い格付を与えてしまったという問題があるわけです。ですから、先ほど申し上げましたように、格付の場合、最悪の経済環境を設定して、そしてリスクを考えて絶えず見ていかなきゃいけないというのがまずあるわけです。
 それから、二つ目の大きな問題は、社債の格付との最大の違いであると思いますが、社債の格付の場合は、発行会社が、公開している企業が普通でございます。ということは、社債発行の場合に必要な財務データというのが、企業内容開示制度で虚偽記載は刑事罰の対象になるということもありまして、正確な開示がされている。それから、今度財務諸表の分析を行いますけれども、財務諸表の分析というのは百年以上の歴史がありまして、一応ある意味じゃ金融界にいらっしゃる方々でしたら財務分析の意味が分かるということは、それぞれが財務諸表を見て、そして分析をして、そして一つの意見を持てるということでございます。
 ですから、絶えず、私ども社債の格付をしておりますけれども、いろんな方々から、高過ぎる低過ぎる、いろいろ意見をちょうだいして切磋琢磨できるチャンスがございます。
 ところが、このサブプライムローンの場合は、先ほど先生もおっしゃったように、金融工学を使ってという言葉がありましたけれども、まず最初に原データ、住宅ローンの原データのところは、これは簡単にだれもが手に入るものではなかったということ、それからその虚偽記載等についてきちっとした開示体制が整っていなかったということ。二つ目は、そのデータを解析する場合、コンピューターモデルを使ってやったわけですけれども、そのコンピューターモデルというのは格付会社の方しか基本的に理解できない、一般の方々はすぐ分かるというものではなかったということは、その格付自体が一つの意見ではなくて唯一の意見になってしまったということで、結局その格付に対していろんな批判が出てこなかったということ、それと、それから自分たちの意見を持たないということによりまして、依存体質、依存するというんでしょうか、格付に依存せざるを得ない、ほかに判断のしようがなかったということで、高い格付を付与した場合にみんながそれをわっと使ってしまったと、そこにまた金融行政が格付を利用しているということもありましたということでございます。
 以上でございます。
#21
○椎名一保君 ありがとうございました。
 続きまして、永易参考人、松尾参考人、志鎌参考人にお伺いいたします。
 今回の金融危機では、トリプルAという金融工学という道具を用いて決められる記号に世界中が振り回されてしまったわけですけれども、投資家はトリプルAに振り回されて多額の損失を被ったという点では金融危機の被害者とも言えますが、投資家が自らリスク判断をせず、やみくもに高格付の商品を買い求め金融危機に加担していたという面も否めないと考えます。我が国におきましても、その被害は限定的だと言われておりますが、一部の金融機関がサブプライムローン商品によって多額の損失を被ったとも聞いております。高いリスク管理が求められる金融機関がこのような事態に陥ったことは非常に残念であり、大いに反省してリスク管理能力を高めていただきたいと思います。
 この点について、お三方に、個別金融機関のトップのお立場からでもいいんですが、現在どのような取組が行われているか、お伺いしたいと思います。
#22
○参考人(永易克典君) 先生御指摘のとおり、今回のサブプライムローン問題、それから証券化商品問題、どんどんどんどん広がっていったわけですが、欧米金融機関ほどではないにしろ、本邦、私ども自身もそうなんですけれども、金融機関でやはり多額の損失を被ったことは、御指摘のとおり非常に残念なことであります。
 これに対する方策でありますけれども、我が国では昨年来、金融庁と各金融機関との間でいろんな意見交換をしながらリスク管理上の課題について討論をしてまいっております。また、日本銀行との間でも、日本銀行さんも証券化商品に投資する場合のリスク管理についてという小冊子を公表されております。現実には、当局と民間がいろんな議論をしながら更なるリスク管理のレベルアップというのをどうしたらいいんだろうということで昨年来ずっとやってきたということであります。
 ただ、これは全銀協ベースというよりは三菱東京UFJ銀行の頭取として申し上げたいのは、やはりリスク管理方法は各個別銀行の業務内容や規模等によって非常に変わります。例えば、私どもの例で申し上げれば、実は証券化商品、サブプライムローンの証券化商品といってもいろんな種類がありまして、最初は一次証券化というのがされているわけです。この世界ですと、原債権が見えるんです。私どもは基本的に、トリプルAというのもありますが、実は原債権までチェックして購入したというのが大半でございました。ただ、にもかかわらず証券化商品全体が崩れますとあのような損失が出るということはございます。
 そういう点では、原債権まで入っているにもかかわらずそういうことになったのかとも言われますけれども、したがって、逆から言うと、それは減損にはなりますが、最後まで持っていれば返ってくるというふうにある面では確信しております。それでないやつはもう売っ払いまして損を確定しておりますが、減損した上で持っているというのもございます。これは、例えばCLOとかいって企業のやつが原債権になっているところは一本一本見ていますので、これがデフォルトすることはあり得ないというような形で持っているやつもございます。
 いろいろ申し上げましたけれども、マーケットセクションでいろんなことを考えていた。ただ、こういうものは信用リスクが片一方にあるわけですから、そのセクションからも見ないといけないという形ではダブルチェックシステム、これは私どもでも昨年の下期以降やっておりますし、実は相当大きい金額になったものですから私自身も、そのチームに私も入ってやっています。だから、ある程度は自信がある世界と、はっきりこれは失敗したと、それははっきり早くブックオフしようというのを峻別しながら今やっているところでございます。
 将来に向かってリスク管理というのは常にレベルアップさせていかないといけないと強く思っています。本当の私どもの銀行なりの、ほかから借りてくるのではなくて、そういうリスク管理体制を構築したいというふうに思っているところでございます。
#23
○参考人(松尾憲治君) お答えいたします。
 生命保険会社の資産の運用というのは、ある意味では各社各様のところがございますので一概には申し上げられませんけれども、全体的に申し上げまして、生命保険の運用は、御存じのとおり、生命保険の負債というのは長期でございますし、あるいは円建てでございますし、それから固定の利率というような特徴を持ってございますので、それを踏まえた、ALM運用と呼んでおりますけれども、そういう運用を基本にしてございます。したがいまして、今回のサブプライムローン商品等についての投資比率というものは低いということでございまして、直接的な影響というのは限定的でございます。
 当社の場合で申し上げますと、私どもは直接サブプライムローンの証券化商品については持ってございませんでしたけれども、一部委託をしてございますヘッジファンドで一億円入っていたというような程度でございますので私どもは少ないと思いますけれども、各社そのようなレベルかなというふうに思います。
 先ほども申し上げましたけれども、生命保険契約の特性を踏まえまして、市場環境が変化をいたしましてもお客様に保険金や給付金を確実にお支払いできるよう、基本的にはALM運用の観点から、主に円建て公社債等の安定収益資産の運用を中心といたしまして負債の平均残存率とのマッチングを図りながら安定的かつ長期的な収益の確保に努めている、そういう運用をしてございます。
 ただ、一方で、価格変動リスクのある資産、株式等を持ってございますので、それに備えるための価格変動準備金でございますとか、あるいは運用が予定利率を下回るリスク等に備える危険準備金等の内部留保の積み増しが一定程度認められてございます。加えて、自己資本の充実など財務の健全性の向上に努めているところでございます。
 また、昨日より適用されてございます保険会社向けの総合的監督指針の一部改正におきまして統合的リスク管理等に関する規定が新設をされましたことや、現在見直しが検討されてございますソルベンシー規制の見直しの方向性等を踏まえまして、生保各社共に更なるリスク管理の高度化に向けて取り組んでいく所存でございます。
 以上でございます。
#24
○参考人(志鎌敬君) 私、個社の立場は持っておりませんので、協会の立場での御回答とさせていただきますけれども、損害保険業界におけるリスク管理でございますけれども、金融の自由化、国際化の進展に伴う経営環境の変化は激しく、会員各社が抱えるリスクはますます多様化、複雑化をしているかと思います。こうした環境の下、お客様及びマーケットから信頼を得るためには、厳格なリスク管理を行い、健全な事業運営を行うことが必要であろうと考えます。
 損害保険会社では、主に保険引受リスク、資産運用リスク、オペレーショナルリスク等のリスクが存在していると思われますが、会員各社では、これらのリスクを正確に把握し綿密な分析評価を行った上、組織横断的かつ経営判断に直結した管理体制としているものと思われます。
 また、各社においては保有リスク量が経営体力に見合っているかを検証するために様々なシナリオに基づいたストレステストを実施しておりまして、このような取組を通じて財務内容の健全性を維持していくことが重要であると考えております。
 以上でございます。
#25
○椎名一保君 ありがとうございます。
 金融ADRに対しての取組、御決意は先ほど来しっかりと承りました。詳細は省きますけれども、枠組みをつくられても、申し上げるまでもありませんけれども、きちっと機能をさせていただきたいと、そのことをお願い申し上げまして、終了させていただきます。
 ありがとうございました。
#26
○荒木清寛君 公明党の荒木清寛です。よろしくお願いします。
 それではまず、永易参考人、松尾参考人、志鎌参考人に、金融ADRにつきまして同じ質問をさせていただきます。
 金融ADRの運営には相応のコストが掛かるわけですけれども、現在の、先ほどのそれぞれの取組においてはこのコスト負担はどのようになっているのか、教えてください。また、新たな金融ADRにつきまして、今後、コストを全額業界団体側で負担をした場合に、利用者にとりましてこれが中立性、公正性が適正に確保されていると言えるのかどうか。逆に言いますと、利用者にとってそうした中立性の信頼を得るためにはどう今後運営していくべきなのか、教えてください。
#27
○参考人(永易克典君) コスト負担につきましては、全銀協あっせん委員会で今度の金融ADRを通じてもコストは金融機関側が資金負担をしておりますし、していくものというふうに思っております。
 その場合に、独立性、中立性、公平性、これはいかがなものかという御質問かと思いますけれども、本法律に基づいて整備される新たな金融ADR制度は、やはり主務大臣が紛争解決機関の指定をされますし、監督がなされるというような仕組みになっております。やはり中立性、公正性が確保されるものと認識しておりますし、さらに、先ほどもちょっと御説明いたしましたが、紛争解決委員には弁護士等がおりますし、かつ、当事者との利害関係を有する者、もちろん銀行なんかも当然そうなりますけれども、こういう者は排除するなど、委員の判断に金融機関の恣意が及ばないように制度上の手当てがなされていると考えております。したがって、独立性は担保されているものというふうに理解しております。
#28
○参考人(松尾憲治君) お答えをいたします。
 生命保険協会のADR機関でございます裁定審査会の運営コストに関しましては、現時点におきましては会員各社より徴収をいたします協会会費の中で全額賄ってございますので、利用者の負担はございません。
 今後の費用徴収につきましては、利用者における費用を無料としていることが裁定審査会の利用促進、アクセスの容易性につながっているという現状もございますので、こうしたことを踏まえつつ、今後、業界としてどのような形にするのかということを検討していかなければいけないと、このように認識しているところでございます。
 一方、ADRに必要な中立性、公平性、独立性につきましては、以下の取組を通じまして十分にその機能を確保しているものと認識をしてございます。
 まず、裁定審査会の委員の構成でございますけれども、先ほども申し上げましたけれども、弁護士四名、消費生活相談員四名、それからこれは協会のプロパーの事務局代表の生命保険相談室長の九名で構成をしてございまして、専門性の高い外部の委員が法律と消費者の立場の両面からの審理を実施してございます。
 また、裁定結果につきましては、消費者と企業側の双方に裁定理由を明確にした上で提示をしてございまして、当事者双方に理解、納得いただける形で裁定を終了していることと存じます。
 加えまして、裁定審査会の運営状況をチェックする機関といたしまして、学者、弁護士、医師、消費者代表等の外部有識者により構成をいたします裁定諮問委員会を設置し、裁定審査会における判断の妥当性を含め、運営内容を第三者の視点から検証を行っているところでございます。
 以上、御説明を申し上げましたけれども、当協会におけるADRは中立公正でかつ透明度の高い運営を行っているということは、是非御理解をいただきたいと存じます。
 以上でございます。
#29
○参考人(志鎌敬君) コストがどのぐらい掛かっているかという御照会をいただきましたけれども、まずコストについてでございますけれども、私ども日本損害保険協会におきましては、本部のそんがいほけん相談室、それから全国の十か所の支部の相談室、それから全国四十八か所の自動車保険請求相談センターで相談・苦情対応を行っておりまして、またADRであります損害保険調停委員会で紛争対応を行っているという、このすべて、相談・苦情対応それから紛争解決対応をすべて合わせますと、年間およそ約八億円程度の費用を要しております。
 それから、先ほど損保業界には三つのADRがあるというふうに申し上げましたけれども、財団法人の交通事故紛争処理センター、こちらの方の運営費は年間約十億円でございます。それから、財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構の運営費は年間約五億円であると承知しております。いずれの機関も利用者は無料ということで、消費者の皆様の利用料金は発生いたしておりません。
 また、いずれの機関も、先ほど申し上げておりますけれども、審査に携わる委員は弁護士、学識経験者等、保険会社とは一切関係のない中立的な立場の方々から構成されている上に、保険会社は調停、裁定結果を尊重、遵守する片務的な義務を負うなど、中立性、公正性は十分に確保されており、コスト負担による公平性への懸念は全くないと考えております。
 以上でございます。
#30
○荒木清寛君 松尾参考人に関連してお尋ねしますが、新たな金融ADRでは、金融機関に対しまして、手続応諾義務、事情説明・資料提出義務、結果尊重義務といった義務が片面的に企業側に課せられるという規定が措置されております。
 そこで、従前の生保協会のADRの取組の中では、こうした当該義務の履行といいますか確保は十分にされていたのかいなかったのか、この点はどう認識しておられますか。
#31
○参考人(松尾憲治君) お答えをいたします。
 今回のADR制度の中で金融機関に求められております手続応諾義務、事情説明・資料提出義務、結果尊重義務につきましては、生命保険協会におきましては従来より協会の規程に基づきまして会社に片面的拘束力を課してございます。
 具体的には、相手方会社に対し裁定手続に参加することを要請したときは、相手方会社は、訴訟や民事調停により解決を図ることを文書の届出により明確にし、裁定審査会が相当の理由があると認めた場合を除き裁定手続に参加しなければなりません。また、相手方会社は、事情聴取や関係書類の提出など裁定審査会の運営に協力しなければならず、そのような手続を経て下された裁定審査会の裁定結果についても尊重しなければなりません。また、結果尊重義務に違反をすれば会社名等を公表できることとしてございまして、一定の牽制策も講じてございます。
 なお、裁定審査会が発足をいたしまして八年が経過いたしますが、違反事例はございませんで、金融ADRに求められる片面的拘束力を重視した運営が適正に行われているものと認識をしてございます。
 以上でございます。
#32
○荒木清寛君 志鎌参考人にお尋ねいたします。
 やはり金融ADRの件ですが、損保業界は他の業界と比べまして苦情の数が多いと認識をしております。この点、業界としてそうした苦情を減らす努力が不十分ではないかという見方もできようかと思いますけれども、日本損害保険協会で受けました苦情の最近の推移と、なぜ損保業界は苦情が多いのか、お聞かせください。
#33
○参考人(志鎌敬君) 先生御指摘のとおりでございまして、損保業界、苦情件数は多いわけでございますが、まず損保協会の苦情受付件数の推移を申し上げますと、二〇〇六年度は一万四千七百二十七件、それから翌二〇〇七年度は一万七千四百四十六件、二〇〇八年度、昨年度は二万五百二十六件という状況でございます。また、このほかにも、苦情ではなくていわゆる一般相談というんでしょうか、苦情相談、そういったような相談も合わせ毎年約十万件前後のお客様の声をいただいているという状況でございます。
 損害保険におきましては、苦情の大多数が交通事故に関するものでございます。実際に、二〇〇八年度は全体の苦情のうち四分の三以上、約七七%が交通事故に関するものでありました。交通事故におきましては、一つの事案で加害者とそれから被害者といった異なる立場の方々が生じるということから、必然的に苦情件数が多くなるという特性があろうかと思います。
 また、お客様の声をより広く集約し業務改善に生かすために、損保協会では二〇〇六年の十月から苦情の定義、従来は苦情の定義を、協会に来た苦情に対しまして会員各社に解決要請を行ったものという狭い定義でございましたけれども、これを、お客様から少しでも不満足の表明があったもの、各社に解決要請をしろと言われなくても少しでも不満足の表明があったものはすべて苦情ととらえるように定義を拡大をしております。そして、極力広く積極的に苦情をとらえていこうという徹底を図っております。苦情が増加傾向にありますのは、こうした取組の表れでもあるかと考えているところでございます。
 さらに、会員各社の契約申込書に添付される重要事項説明書に私どものそんがいほけん相談室の、私どもはフリーダイヤルを引いておりまして、これらを掲載して広く、むしろ積極的に周知を図っているということも多くの声が寄せられる背景の一つかと思っております。
 以上でございます。
#34
○荒木清寛君 三國参考人にお尋ねいたします。
 先ほど、投資というのは投資家が自分で判断をする、すべきものであって格付会社の意見というのは一つの意見なんだ、こういうお話でございました。そういう意味では、今後、登録格付会社であれあるいは無登録格付会社であれ、そうしたものを利用しないで投資をする投資家の保護というのはどう考えていったらいいのか、何か取り組むべきことがあれば教えていただきたいと思います。
#35
○参考人(三國陽夫君) お答えいたします。
 先生の御質問についてでございますが、格付会社の格付を参照する、あるいは投資家が自分だけで判断をする、その場合においても一番大事なことは、社債の場合でございましたら企業内容開示制度というんでしょうか、財務諸表がきちっとした形で出てくる、虚偽記載は刑事罰で禁じられておりますという一つのディスクロージャーの制度がある。それからもう一つは、そのディスクロージャーの制度を通じて財務分析をいたしますけれども、この財務分析というのはもう百年以上の歴史がございまして、ある程度の方々は御存じの方でございます。ですから、そういう能力が備わった人たちにしてみれば、開示を見ながら自分の頭で判断し、格付も参考にしながら投資をできると。それがもしできないという場合でしたら、それはもう社債を買うんじゃなくて預金に預けるとか投資信託をお買いになるとか、そういうことになるかと思います。
 ですから、基本的に日本の金融資本市場において社債投資ということを考えた場合に、企業内容開示制度が整備されているということが一番大事なポイントではないかと思います。その点につきましては、もう私ども格付を始めて二十六年ぐらいになりますけれども、その間物すごく精度が上がるという、いろいろ絶えず問題は出てきておりますけれども、なかなか充実してきた方向に流れてきているとは思っております。
 よろしゅうございましょうか。
#36
○荒木清寛君 最後に、資金決済法案につきまして永易参考人にお尋ねいたします。
 今回の法案では、銀行以外の者が登録制の下で資金移動業者として為替取引を行うことができるようになりますが、この点は銀行界としてはどう評価しますか。
#37
○参考人(永易克典君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、現在我が国では、ただいま現在ですけど、企業や個人の間で行われる送金取引、資金の決済にかかわる為替取引、これは銀行法によって銀行以外の者は行うことはできないとされておりますが、今回の法律により新たに資金移動業が定義され、銀行以外の事業者による為替取引が可能になるわけでございます。
 一般論といたしまして、為替取引というのは経済活動の基礎を成す社会インフラでございますし、取引の確実性が欠ける場合や事業者が破綻した場合、この社会的、経済的影響は非常に大きいものがあると考えます。本件は、新たなサービスにより消費者の利便性向上につながるのはもう間違いないであろうというふうに考えておりますが、片一方の利用者保護の措置が非常に大事であろうというふうに考えております。ただ、法案ではその点は十分配慮されておると銀行界としては見ておるということでございます。
 以上です。
#38
○荒木清寛君 ありがとうございました。
 終わります。
#39
○大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。
 本日は、お忙しいところありがとうございます。私のお聞きしたいことは既に各委員からもありまして、かなり重複しておりますので、日ごろお世話になっております全銀協と生命保険協会だけに絞って伺いたいというふうに思います。
 まず、全銀協の永易さんにお聞きしたいと思いますけど、漏れ聞くところによると、永易さん、あれですか、私が何を質問するのか大変心配、緊張なさっていたということをお聞きしましたけど。
#40
○参考人(永易克典君) そのとおりでございます。
#41
○大門実紀史君 大丈夫ですよ、リラックスしてくださいね。多分、貸し渋り、貸しはがし、この間いろいろあったのでだと思いますが、それは個別にそれぞれ私の部屋に来ていただいて相談しておりますので、特に三菱UFJは大変対応が良くてすぐ来ていただいておりますので、むしろお礼を申し上げたいというふうに思うところでございます。
 銀行業界全体の対応について、ちょっとダブらない範囲でお聞きしたいと思いますが、ADRも結構なんですけれども、皆さんが紛争の種をつくらないというのがまず最優先のことだと思うんですね。それなしに幾らADRつくったって、違うんじゃないかなと。
 そういう点で、実践的な話をお聞きしたいと思いますが、この間、私、過日もこの委員会で取り上げたんですけど、住友信託銀行あるいはあおぞら銀行が、販売スタッフ、セールススタッフの有期雇用契約ですね、労働契約にノルマを達成しなかったら首ですよと、ちょっと前代未聞の契約を結んでいるということを取り上げたんですけど、これは金融庁も大臣もちょっとひどいんじゃないかということで今対応してもらっている最中なんですが、要するにこういうノルマ主義がいろんな問題の背景にあったわけですね。リスクをちゃんと説明しないで売っちゃおうと、そこから金融被害が広がってきたという、根底にある問題でございます。これ、主要行向けの監督指針にも反するということで今対応してもらっているところなんですけれども。
 是非全銀協として、これ監督指針に違反することでございます。そういうノルマ主義、それが給与とか賞与と連動してはいけないと、過度にしちゃいけないと。ですから、首を切るなんというのはもっとひどい、連動しているわけですから。それと、手数料収入に偏重して稼げとなっていると。これも監督指針違反でございますので、監督指針違反の事項でございますけれども、是非全銀協として、各行にこういうことのないように注意喚起を是非してほしいなと思いますが、いかがでしょうか。
#42
○参考人(永易克典君) ちょっと具体的な名前が、個別銀行の名前が出ましたが、個別の事案についてはお答えすることは差し控えさせていただきますが、一般論として、やはり目標未達成を理由に雇い止めをするというようなことは有期雇用社員の方々の就労や生活に大きな影響を及ぼすことから、やはり原点の労働基準法、労働契約法、派遣法等の関係法令をしっかりと守っていくことが重要であると思います。
 先生御指摘のリスク商品の販売につきましては、お客様保護の観点から適切な説明を行うことが重要だということが原点でございます。そして、しかし営業を担当する社員等の給与体系等が、本件もそうだと思いますけれども、過度に成果主義に偏重した場合は、やはりもうけたいですから、収益獲得に傾斜した営業姿勢と当然のことながらなりやすくなると。結果として、商品販売においても非常にその人に合った適切な説明、こういうものが不十分になるという懸念があると考えます。
 金融庁の監督指針のお話もありましたが、この監督指針はこうした問題が生じないよう策定されたものと全銀協としても認識しており、銀行界としても遵守してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
#43
○大門実紀史君 ありがとうございます。
 ちなみに、東京三菱UFJにはそういう形は導入されていないという認識でよろしいですか。
#44
○参考人(永易克典君) 基本的には営業をする人は直傭に変えましたので、有期雇用のこういう形はないと思っております。
#45
○大門実紀史君 次に、生命保険協会の松尾さんにお聞きしたいと思います。
 松尾さんは明治安田生命御出身ということで、私とは因縁の深いところでございますけれども、四、五年前ですかね、保険金不払問題でこの委員会でさんざん取り上げさせてもらって、ちょうどあのころ金子さんですか、社長さんが、金子さんがこの協会の会長になるならないというところだったんですね。なるべきじゃないと、させるべきではないということを申し上げて、御辞退されたようでございました。松尾さんは、去年、協会の会長さんになられたということで、本当に無事御就任されて、お祝いを申し上げたいと思います。私の大学の先輩にもなるわけでございます。是非頑張ってもらいたいと思いますが。
 ただ、銀行の先ほどの話とは違っても、やはり生命保険業界でもこういうノルマ主義というのが今どうなっているのかなという気がしておりますし、いろんなことをやって、すべてこのノルマ主義から発生するんですよね、リスクをちゃんと説明しないとかいうことから始まるわけですから。そういう点で、生命保険業界として今このノルマ主義に偏重しないようにどういう努力をされているか、お聞きしたいと思います。
#46
○参考人(松尾憲治君) お答えをいたします。
 業界全体としての状況を把握しているわけではございませんけれども、一般に申し上げまして、生命保険会社の営業職員につきましては有期雇用という形はございませんで、いわゆる正規の雇用というもので採用してございます。そのような中で、御指摘にございましたように、銀行で言われれば手数料、私どもで申し上げれば新規契約の業績に偏重したノルマ主義というものは、やはりお客様の信頼を損ない、結果として営業職員あるいは会社にも大きなマイナスをもたらすというような認識をしてございます。
 昨今、各社の取組でございますけれども、これは大きくかじを切っているというふうに思っております。
 具体的な例として私どもの例を申し上げますけれども、お客様の満足度をどうやって上げていくかということをメーンのテーマにいたしまして、昨年度から、いわゆる基幹チャネルと申しますが、この営業職員のチャネルの抜本的な改革を行ってございます。具体的に申し上げますと、新規契約を獲得するということから、より一層アフターサービス重視の営業政策に大きくかじを切ったというところでございまして、これらと併せまして、営業職員の給与につきましても固定的な給与を引き上げる、かつ、それによって処遇の安定化を図りまして、一段とお客様へのアフターサービスを実施しやすい、そういう体制を整備しているところでございます。
 協会の各社におきましても、ここ数年、お客様へのアフターサービス重視の営業政策、これを強めてございますし、またそれに沿った営業職員の処遇も見直しをしているところでございまして、業界全体としてそうした方向に取組が進んでいると、このように理解をしているところでございます。
 また、生命保険協会といたしましては、お客様へのきちっとした販売時の御説明というものが非常に重要であるということも考えまして、営業職員の資質の向上というような観点から、これまで業界共通の教育制度の抜本的な見直しといたしまして、アフターサービスも含めました生命保険募集人に必要な知識を毎年継続的に教育する制度、これを導入したところでございます。
 以上のような取組を通じまして、先ほど御指摘ございましたように、ノルマ主義ということではなく、お客様のアフターサービスを重視した、お客様の満足度を上げていく、そういう政策を強めているというところでございます。
 以上でございます。
#47
○大門実紀史君 最後に、もう一度永易さんにちょっと大きな話をお聞きしたいと思います。
 先ほど大塚さんの質問の最後のところとダブるわけでございますが、私もきちっと聞いてみたいと思うんですけど、要するに世界全体の流れは、こういうマネーが、マネー資本主義といいますか、マネーの世界が巨大化してそれを何とかしていこうという方向にもかかわらず、日本はこれからマネーの世界を大きくしようというふうなところについてどう思うかということだと思うんですが、この法案について言えば、私はこの利用者保護の点では大変評価しているんですけど、商品取引所にわざわざ投機マネーを招き込む結果になるというところで、後々大変な事態を招くんではないかなということで問題意識を持っているわけですけれども、先ほどの全銀協会長としての永易さんのお話でございますと、今回の金融危機は、欧米の一部の投資銀行がレバレッジ等、要するにやり過ぎがあったと。もちろん日本の銀行もということもちらっと言われましたけれども、私はそれだけではなくて、だれが彼らに対してマネーを提供したのかと。いろいろ言えばいろいろあるんですけれども、欧米の責任だけではないと、日本も関与していると。日本の銀行も関与しているということも思うわけですけれども、要するにこれからそういう、実体経済と金融との在り方にもかかわるんですけれども、今までの考え方でいいのかと。
 先ほど、まだ日本は欧米に比べて遅れていると、ですから今回の商品取引所の問題も世界でランクが下がっているとか訳の分からない話がすぐ出てくるわけですけれども、そうじゃないんじゃないかと私は思っておりまして、こういう、ちょっと大きな話ですが、経済の在り方そのものとして金融が肥大化してきていると、これはいいことなのかどうか。私はいいとは思っておりませんが、もう少しその辺の考えを最後にお聞きしたいと思います。
#48
○参考人(永易克典君) 非常に大きいテーマなので、私の個人的な意見が全銀協の意見でも何でもないんですけれども。
 私は、頭取になったときに、どういう銀行にしたいかといったときに二つ挙げました。これは、品格のある強い銀行にしたい。もう一つは、グローバルベースでも名誉ある地位を占める銀行としたい。特に、私どもの銀行というのは、東京銀行さんも入っているし、世界でやっぱり勝負していく、ある面ではナショナルフラッグを背負って金融業をやっていく、そういう存在になりたい。ただ、品格のある形でやりたいということを述べたわけであります。
 今のグローバルプレーヤー、メジャープレーヤーといったところは相当傷んでおります。先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、大きい方向感は、コングロマリット化、シティだけはちょっと大失敗をしましたので違う方向に行きました。それを強く言われているんだと思いますけれども、ほかのJPモルガンにしろ、BOAにしろ、欧州系の強いところにしろ、これはまさにコングロマリット化を進めております。
 例えば、私どもがモルガン・スタンレーと資本提携をして戦略的アライアンスをやりました。これは何かというと、モルガン・スタンレーにとっても私どもと組む価値は非常にあるんです。これは、我々の商業銀行機能というのは向こうはないわけですから、逆に投資銀行機能としてモルガン・スタンレーは世界のナンバースリーに入る力を持っていると、これを融合するアライアンスによって、グローバルベースで本当に勝負したいという気持ちであれはやったわけで、コングロマリット化が逆方向だという意見には私はくみしません。大きい方向はそちらに行っておると。ただ、いろいろ反省すべきところがあるから、これはちゃんと正すべきは正すべきであるということだと思っております。
 以上です。
#49
○大門実紀史君 終わります。
#50
○委員長(円より子君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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