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2009/03/13 第171回国会 参議院 参議院会議録情報 第171回国会 予算委員会 第13号
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2009/03/13 第171回国会 参議院

参議院会議録情報 第171回国会 予算委員会 第13号

#1
第171回国会 予算委員会 第13号
平成二十一年三月十三日(金曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月十二日
    辞任         補欠選任
     石井  一君     川合 孝典君
     川崎  稔君     福山 哲郎君
     島尻安伊子君    北川イッセイ君
     鰐淵 洋子君     澤  雄二君
     仁比 聡平君     山下 芳生君
     松下 新平君     荒井 広幸君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         溝手 顕正君
    理 事
                犬塚 直史君
                小林 正夫君
                前川 清成君
                峰崎 直樹君
                森 ゆうこ君
                岩永 浩美君
                坂本由紀子君
                鶴保 庸介君
                荒木 清寛君
    委 員
                相原久美子君
                尾立 源幸君
                大石 尚子君
                大河原雅子君
                大久保 勉君
                大塚 耕平君
                川合 孝典君
                郡司  彰君
                自見庄三郎君
                下田 敦子君
                鈴木  寛君
                富岡由紀夫君
                広田  一君
                福山 哲郎君
                藤末 健三君
                藤本 祐司君
                牧山ひろえ君
                蓮   舫君
                泉  信也君
                市川 一朗君
                岩城 光英君
                木村  仁君
               北川イッセイ君
                佐藤 信秋君
                関口 昌一君
                南野知惠子君
                林  芳正君
                山田 俊男君
                山本 一太君
                加藤 修一君
                草川 昭三君
                澤  雄二君
                山下 芳生君
                近藤 正道君
                荒井 広幸君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        村松  帝君
   参考人
       株式会社第一生
       命経済研究所主
       席エコノミスト  熊野 英生君
       慶應義塾大学経
       済学部教授    駒村 康平君
       東洋大学経済学
       部教授      高橋 洋一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○平成二十一年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○平成二十一年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○平成二十一年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(溝手顕正君) ただいまから予算委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 平成二十一年度総予算三案審査のため、本日の委員会に株式会社第一生命経済研究所主席エコノミスト熊野英生君、慶應義塾大学経済学部教授駒村康平君及び東洋大学経済学部教授高橋洋一君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(溝手顕正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(溝手顕正君) 平成二十一年度一般会計予算、平成二十一年度特別会計予算、平成二十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、本日は構造改革について参考人の方々から御意見を伺うことといたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙中のところを本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表しまして厚く御礼申し上げます。
 当委員会は、目下、平成二十一年度総予算三案の審査を進めておりますが、本日は参考人の方々から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 どうぞ意見をお述べいただくときは着席のままでお願いをいたしたいと思います。
 それでは、熊野参考人からお願いいたします。熊野参考人。
#5
○参考人(熊野英生君) 第一生命経済研究所の熊野でございます。
 御説明の方は着席して差し上げたいと思います。
 資料についてはこちら、構造改革についての振り返りということでお話を差し上げたいと思います。
 まず、目下の経済情勢と絡めまして、何が構造改革によって変化し、何が変わっていなかったのかと、こういう対立点、総括について御説明したいと思うんですが、昨日、内閣府からGDP、昨年の十―十二月期の改定値が出ました。マイナス三・二%、これは前の四半期に比べて十―十二月が三・二%低下したという話なんですが、実はこれはユーロ圏あるいはアメリカ、この欧米の成長率の落ち込みよりも日本の方がマイナス幅は大きゅうございます。これは資料の左の図にございますけれども、日本は実は当初は金融機関のダメージが小さいので景気悪化の度合いも軽いのではないかと、これが実は円買いにつながりまして昨年の十月から急速な円高になってきましたけれども、GDPの話もあるんですが、ここに来て、金融のやられ方は小さかったんですが、逆に貿易の悪影響は日本は意外に大きいと。NIES諸国、貿易のウエートが大きい国々と同じように日本はダメージが大きいということで、円は買われていたのが売り戻される、つまり円高から円安へと戻っているというのが今の為替相場の状況です。
 実は、この姿に構造改革における変化がかなり効いているんではないかというのが私の理解です。それは、景気回復が、今景気後退期ですけれども、一つ前の景気回復が二〇〇二年の一月から始まったんですが、これはまさに構造改革がキックオフされた直後だと思います。そこから現在に至るまでの成長の質が構造改革に伴いまして変容してしまったと。
 私どもエコノミストですからGDPの評価で物事の変化を評価するんですが、これは右側のグラフにございますけれども、GDPを構成する輸出とか設備投資とか、いろいろな要素、コンポーネントと言いますけれども、コンポーネントがあるんですが、実は二〇〇一年の末から現在に至るまで、昨年の十―十二月に至るまでの経済成長率の内訳の伸びたところを見ますと、実は大きな偏りがございます。これは輸出あるいは民間設備投資、つまり企業部門、とりわけ輸出セクターが伸びた部分がGDPを牽引していました。GDPが二〇〇一年の末から現在まで伸びたプラス幅のうち輸出と設備投資が何%ぐらいプラス幅を占めていたかという寄与度で見ますと、実に九九%。つまり、個人消費とか政府消費、政府投資あるいは住宅投資など内需部門についてはほとんどゼロ成長だったというのが実態ではないかというふうに思います。つまり、構造改革、前回の景気拡大期というのはもう専ら輸出セクターが牽引役になっていて景気悪化を脱したんですけれども、実はそれは内需がほとんど足踏みをしたままで外需が伸びただけだったと、つまり成長の牽引役に大きな偏りがあったということが言えると思います。
 つまり、変化したところと変化していないことを対比させてみますと、これは一ページ目の下のところにございますけれども、外需を追い風にしたことが得られたこと、変化したことだと。しかしながら、変化しなかったこととしては、内需の弱さが今もって改善されてないということが構造改革を経て現在見て取れることだと思います。
 次に、御説明は二ページに参りたいと思います。
 なぜ内需が拡大しなかったということに関しては二ページの話とオーバーラップします。二ページ目は労働市場について注目したものです。
 日本の失業率は、二〇〇二年、二〇〇三年にピークを、ピークというか最も失業率が悪化したんですが、五・五%ですね、ここから実は二〇〇七年、八年にかけて大きく失業率が低下してまいりました。直近では四・一%と、アップダウンはあるものの、まだかつてのピークに比べると非常に低い失業率を保っていると考えられます。つまり、構造改革によって失業率は低下した、つまり雇用者の数が増えたという、こういう成果があったというふうに総括、評価できると思います。
 しかしながら、その一方で、労働市場においては大きな変化がございました。これは非正規雇用、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、こうした正社員以外の人々が実にこの七年間、二〇〇二年から直近まで、二六%から三二%まで六%ぐらいパーセンテージ、シェアが上がっております。つまり、失業者を吸収したのは専ら非正規雇用の分野であったということが言えると思います。
 ただ、この非正規雇用を増やしてきたということは、実は、労働コストの面ではそれが低下したんですが、所得の面でも同時に低下した。つまり、賃金というのは企業にとってはコストであるんですが、家計にとっては総需要の基になる所得になるんですけれども、この労働コストについては、例えば卑近な例で時間給で表してみますと、非正規雇用の人たちの時間給は、去年の六月のベースの調査では、大体ざっくり言うと一時間当たり千二百円、これに対して正社員については二千四百円、倍ぐらい違うんですね。
 つまり、ウエートが二六%から三二%に増えたということは、それだけ時給の低い労働者の数が増えたということなので、その効果によって全体の労働コストが下がってきた、労働コストが下がるから企業は人を雇いやすくなる、したがって失業率が低下したと。よくワークシェアリングという話が言われますけれども、日本にワークシェアリングというのは正式な形ではないんですが、意図せざる結果としてワークシェアリングと同じような形で非正規雇用の人たちが失業者を吸収するということは起こりました。
 こういう非正規雇用の人たちが増えたことに対しては経済論壇を始めとしていろいろな議論があります。例えば、時給が低い人たちが増えないと、日本は海外に比べると労働コストが高過ぎて日本から海外へ産業空洞化が起こる、企業が移転してしまうんじゃないか、だから非正規雇用化は正当化されるべきだという意見があるんですが、私は少し意見を異にします。
 なぜならば、私がいろいろ輸出企業の経営者から聞いている話はそれと少し違います。日本の労働コストが高いから海外に移転するというよりは、日本の内需にいつまでもしがみついていても輸出企業は、製造業は成長しない。したがって、インドや中国、ベトナムの方が内需の成長ペースが高い、つまり労働コストではなくて市場の成長力に注目しながら海外へ進出企業は増えている、つまり、非正規雇用が増えるということは裏表の関係として日本の内需の成長力を落としていると。折しも、二〇〇五年以降は日本の人口の減少がだんだん広がってきた時期です。つまり、労働の単価が低いとその分だけ人口減少に引きずられる形で内需の成長力は弱くなる、したがって企業は成長力の乏しい日本から海外へ行ってしまうと。
 つまり、これは恐らく中長期的な構造改革として、正社員を増やす、つまり時給の倍ぐらい違うその倍の部分というのは、これは人的資本というんですけれども、スキルの部分、あるいはいろいろな労働のクオリティーに対する高い対価を得る、そういうふうな正社員、つまりスキルを高めるような形で賃金を上げていくことが恐らくは内需の成長力を復活させ、海外に出ようとしている企業を国内に押しとどめ、それが日本の経済活性化につながっていくと。そういうふうなビジョンからいうと、二〇〇二年から現在に至るまでの労働市場における構造改革というのは課題が残っているんではないかということが言えると思います。
 ちょっと駆け足で申し訳ないんですけれども、三ページ目をお開きください。
 次は、経済政策と密接に絡む金融についてお話をしたいと思います。
 今、企業の資金繰りはかなりタイト化しているというふうに言われます。私も、地方の経営者といろいろ話してみると、何とか助けてくれというような悲壮な声をよく耳にします。しかしながら、その一方で、金融機関は実はかつて貸し渋りという話が話題になった九〇年代の後半や二〇〇一年、二年などと比べると、圧倒的に経営体質が変わっております。それは不良債権が極めて少なくなったと、昔から考えますと不良債権がほとんどなくなっているという状態だと思います。
 これは恐らく構造改革の成果だと思います。金融再生プログラムが二〇〇二年の十月から施行されました。ただ、私は、金融再生プログラムだけではなくて、その前の二〇〇一年の四月にオフバランス化、不良債権のオフバランス化を目標にしました緊急経済対策のところから恐らく本格的な不良債権処理が進んだんではないかと思っているんですけれども、こういう成果として、少なくとも金融機関が経営がぐらぐらするということは現時点ではほとんどなくなったわけなんですけれども、ただその一方で、不良債権を抱えていなくても、金融仲介機能が景気が悪くなると同時に悪くなってしまうと。
 つまり、景気循環が悪くなる方向に行くと同時に金融も慎重化してしまって、金融の作用というのが景気悪化をかえって助長してしまう、そういう状況に陥っていると。そういう意味では、不良債権処理については解決したんだけれども、金融仲介機能についてはまだまだ機能不全が続いている、正常化ではないと。
 一方、これは金融政策にも密接に絡んでいます。二〇〇一年から量的緩和政策が行われたわけですけれども、今金融政策についての議論はいろいろ評価は分かれているんですが、一つの見方として、余り量的緩和は成果を上げなかったんじゃないかと。なぜかというと、幾ら金融市場にお金を積んだとしても、それが市中に流れていかない、つまり金融仲介機能の不全によって金融政策は実は制約されていたんではないかということが今一つの見方としてあります。
 実は、私もそういう見方をしているんですが、今は日銀の金融政策は白川方明日銀総裁の下、この機能不全に新たにチャレンジするような信用緩和政策を行っていると。そういう意味では、実は日本銀行の政策も、金融仲介機能の機能不全に対して何とかこれを改善しないといけないという課題をずっと引きずっていたということが言えると思います。
 総括しますと、金融政策については、構造改革の前までは金利を動かしていたので実は伝統的な政策手段しか持っていなかったと。しかしながら、構造改革を経て、つまり金利をゼロに下げた後、何ができるかということを二〇〇一年以降日本銀行は考え始めたので、いろいろな政策ツールが出てきて、この一部については欧米の中央銀行にも今非常に参考にされていると。そういう意味では、金融政策というのが構造改革の時期にいろんなツールに進化したと。金融政策の教科書に書いていないようなことがいろいろ出てきたということはプラス評価なんですが、それはなぜそういうふうになったかというと、依然として金融仲介機能が機能不全のまま。日本銀行の金融政策によると、恐らく、二〇〇六年にゼロ金利政策を解除したんですが、その後、金融政策の正常化はままならず、もう一度金融機能不全の中に追い込まれてしまったと、それが現状であると思います。
 つまり、これも先ほどの不良債権問題の総括と同じように、現時点で変化していなかったことというと、金融機能が正常化できず金融政策についてもそれにつれて正常化できていないということだと思います。
 最後に、簡単に財政についてお話をしたいと思います。
 構造改革路線、小泉政権下の骨太の方針の下では、もうこれ以上新規国債発行イコール財政赤字がどんどん増えるような状況でなくなったということは、これは評価できると思います。つまり、歳出が自動的に増えていくような仕組みをそうでないような形に流れを変えたというふうなことは非常に評価できると思います。
 ただ、そうでありながら、財政赤字の規模というのは依然として元本が新たに増えていく、つまりプライマリーバランスの赤字状態を抜け出せず、つまり元本が減っていかないと政府債務自体は減っていかないんですけれども、そこまで財政収支を改善させることはできなかったという面があると思います。
 それを政府債務の世界で見てみますと、これは四ページ目の右の上なんですけれども、小泉政権下においてもやはり財政赤字が増える効果などによって政府債務の残高は増えてまいりました。そういう意味では、フローの部分の赤字幅を縮小できたんだけれども、ストック面では巨大な政府債務にはまだ歯止めが掛からなかったと、これが課題だと思います。
 この課題の副作用というのが何かというと、それは恐らく、金利が今後上昇していけば財政負担が自己実現的に増えていってしまうという、そういう潜在的なリスクを抱えているということだと思います。
 政府の債務については主に十年物の国債で借り換えられていますから、金利が高かった時代のものがだんだん金利が低い時代に借り換えられるので、恐らく二〇〇五年ぐらいまでは金利が低下する効果によって利払い負担は自動的に縮小するような形だったんですが、二〇〇五年以降その効果はほとんど出尽くしてしまっておりまして、今後は、もしも限界的に金利が上昇するとその分ビビッドに利払い負担が増えていくと。そういう意味では、政府債務に関しては、これからは昔よりもよりコントロールが難しい状態になっていると。
 そういう意味では、変わったことと変わらないことでいいますと、骨太の方針などによって財政赤字の拡大に歯止めは掛かったんだけれども、政府債務の残高は依然として大きく、課題としては潜在的な金利上昇のリスクは残る状態になっていると、これが課題だと思います。
 以上で私の御説明を終わりたいと思います。
#6
○委員長(溝手顕正君) ありがとうございました。
 次に、駒村参考人にお願いいたします。駒村参考人。
#7
○参考人(駒村康平君) 慶應義塾の駒村でございます。着席させていただいて報告させていただきたいと思います。
 資料を配付しております。私が依頼された内容は構造改革、社会保障制度の視点から報告させていただきたいと思います。
 めくっていただきまして、構造改革と社会保障制度の現状。私、社会保障を専門にしておりまして、特に所得保障が研究の中心になっております。そういう立場から構造改革を評価しますと、この構成した要素は規制緩和と小さい政府路線だと思います。経済学をやっている身から見れば、規制緩和によって市場による資源の効率的な配分を可能にするということは、それはそれである程度正当化できるだろうと思います。
 一方で、社会保障における小さい政府と。ここで言う小さい政府というのは社会保障給付における小さい政府という理解をしていただければと思いますが、国民や企業の負担を小さくして自己責任で様々なリスクに対応する、こういう社会を目指そうというものだったと思います。
 こういう物の考え方は効率性や成長を重視する考え方であろうと思いますけれども、経済、社会の安定性や所得の再分配、こういった部分では軽視されたものだろうと、こういうふうに思います。
 次のページを見ていただきたいと思います。
 社会保障制度における構造改革。この改革の目的というのは、少子高齢化への対応、財政赤字への対応、企業の競争力の強化あるいはグローバル経済への対応といったものが目的だっただろうと思います。そのもたらした影響については、将来じわじわと出てくる部分ともう既に発生している部分に分けて見ることができるだろうと、こういうふうに思います。
 次のページを見ていただきたいと思います。
 将来に与える影響ということでございまして、この図は二〇〇六年を基点にして、その前に既に行われている二〇〇四年の年金改革、二〇〇五年の介護保険改革、二〇〇六年の医療保険改革と、三つの小泉政権下で行われた改革が将来どういう影響を与えてくるかということを図にしたものでございます。これは、厚生労働省の政策統括官室の中の資料を組み合わせることによって入手はできるものでございます。
 何にも改革をしなかった場合、当面の政策目標であります二〇二五年、これについては、年金については四十七兆円が七十五兆円へ、医療については二十七・五兆円が五十六兆円へ、福祉、介護、その他で十五兆が三十二兆円という具合に増えるだろうと。これは今の給付水準を維持するということで、年齢構成、高齢者の数が増えてくるということの効果だということになるわけです。
 これに対して、真ん中の、改革後の二〇二五年の姿というようなものが報告されております。それによりますと、年金は六十五兆円へ、医療が四十八兆円へ、福祉その他介護で二十八兆円へということに圧縮されていると。
 この合計額は二十二兆円ということになります。これは単年度ベースで、一年間で、累積で二十二兆円ではなくて、一年間の部分で二十二兆円抑制しているということでございますので、当然、財政赤字から見ればその一部が国庫負担でありますし、負担する世帯から見ればこれは負担軽減ということになりますけれども、逆に、給付を受ける世帯から見ればこの分だけ下がることを織り込んで老後の準備をしなければいけないということを意味しているわけです。
 特に、この中で、年金のマクロ経済スライド、つまり高齢化のペースに応じて年金を一部引き下げていくと。これはまだ機能をしておりませんけれども、これが起動し始めると累積で年金額が一律に一五%ほど下がる、実質ベースで下がるということが決まっておりますので、これが起動し始めると特に基礎年金の実質価値が現在の六・六万円から五・七万円程度まで下がっていく、満額で五・七万と。そこから医療と介護の天引き、保険料天引きということになりますので、実質の手取りの満額年金というのは五万前後まで下がってくるのではないかと、こういうふうに思います。
 これはあくまでも実質ベースの話でございまして、名目ベースでは経済成長を若干加味したり物価部分を加味したりして少し上がるということは入っておりますけれども、実質ベースは下がっていくということは非常に重要なこと。特に、基礎年金というある意味セーフティーネットを支えて所得保障政策の中心部分になるものがこういう形で生活保護との逆転現象が更に拡大するということは、これは年金への加入魅力も含めて、あるいは老後の生活保護利用者の数の増加も含めて、所得保障政策上重要な問題を生み出すのではないかと、こういうふうに思います。
 では、次のページを見ていただきたいと思います。
 一方、直ちにもたらした問題点というのは、こういった所得保障、こういった社会保障改革と同時に行われていった様々な規制緩和、特に雇用に関する派遣あるいは非正規労働者の増加といった現象においてどういう問題が将来起きてくるんだろうかということでございますけれども、まず問題点として押さえておくべきなのは、現在の日本の所得保障制度、社会保障制度は社会保険方式というのを中心にしておりまして、公的扶助というのはその役割は極めて限定的なものであるというのが一つでございます。
 こうした社会保険中心型で成立した背景には安定した雇用システムや安定した経済成長というものがあり、これが非常に社会保険制度と親和的であったわけです。八〇年代後半まではこの仕組みは動いていたものだと、こう評価していいかと思います。しかしながら、九〇年代半ば以降に正社員が人数ベースで減り始めて非正規労働者が増え始めますと、この社会保険から漏れ出てくる部分が大きくなってくると。こうなってきますと、事実上セーフティーネットがないような働き方をしている労働者が出てくるということになってくるわけです。
 次のページ、最近の社会保険料の事業主負担の金額若しくはその割合がどういうふうに変化していったのかを見てみたいと思います。
 基本的には社会保険料は労使で折半するということになっておりますので、折半以上ということになっておりますので、五〇%以上を企業が負担するのが普通の姿だと思いますけれども、一九九八年以降、正社員が明確に減り始めたのが九七年からでございますので、それ以降、社会保険料収入に占める事業主負担割合は急激に下がっていく、これは割合も金額も下がっていくということが確認できるわけでございます。
 その次です。その次のページは、国民年金の一号加入者の就業状況でございます。これも社会保険庁の資料から取ってきたものでございますけれども。
 国民年金の一号というのは、通常、加入者は自営業だと思われていますけれども、現実においては自営業はむしろ少数派になっておりまして、かなりの部分が不安定労働者が占めていると。つまり、国民年金というのは自営業者年金という意識でつくられてきたものが、実質的には不安定労働者年金になっているということでございます。
 結局どういうことなのかと申し上げますと、社会保険、つまり厚生年金や健康保険、雇用保険も含めますけれども、こういうところにカバーされてきたのは基本的には正社員と。しかし、正社員が減り始めて非正規労働者が増え始めますと、その人たちはこういう国民年金や国民健康保険に加入すると。これについては世帯負担でもありませんし、所得比例でもない、労使折半もない、こういうことでございまして、結局払えなくなってくる。一部には払わない人もいるかもしれませんけれども、払えない人が増えてくる。その保険加入者の就業構造が変化することが間接的に国民年金や国民健康保険の空洞化の要因ではないかと、こういうふうに思うわけです。
 国民年金の空洞化率が高いところほど、そういう地域ほど国民健康保険の空洞化率も高いわけでございますので、両者には共通要因があるというふうに見た方がよいかと思います。その共通要因は、まさに雇用の流動化というものがあるだろうと思います。
 次のページには、就業形態別の納付状況でありますけれども、自営業は、完全納付を見ても割と多く、しっかり納めているわけですけれども、常用雇用、本来は厚生年金にカバーされているものが企業単位で入っていなかったり、あるいはパートや無職の人は御覧のとおり非常に納付率が下がっていくということが確認できていると。こういう意味で、空洞化の原因というのは、まさに非正規労働者、失業者の増加だというふうに言えるのではないかと、こういうふうに思うわけです。
 次のページを見ていただきたいと思います。
 こちらが国民健康保険の方でございますが、左の図は、これは頭数ベースではなくて納付額ベースの未納率です。頭数ベース、つまり何人払っていないかというベースで見るともう少し高くなります。入ってくるはずの保険収入と実際入ってきた保険収入のギャップという点で、金額ベースで未納率をカウントしていますけれども、これは世帯ベースで見ればもう少し高くなってくるわけで、一部に報道されていましたけれども、二〇%という姿になってきますけれども。この金額ベースで見ても失業率との関連性は強いのではないか。
 右の図は、都道府県別データを取ったものでありますけれども、失業率が高いところはやはり国民健康保険の未納率も高い傾向があるのではないかというふうに思われます。国民健康保険の場合は、生活保護を受ける以外は免除というものはございませんので、結局、収入はゼロになっても払わざるを得ない。その結果未納になるということになってくるんだろうと、こういうふうに思うわけです。
 さて、こういう状況の中で、低所得者、私の場合はこれは低所得者というよりは貧困世帯というふうにもう呼んでおりますけれども、が増えてきているという状況をどういうふうに考えるか。次のページには、所得格差論から貧困論というふうに分けて考えております。
 構造改革の中で、所得階層の上下のばらつきが大きくなること、つまり格差については、それ自体は、その原因それから評価については識者によって分かれることはあります。これは、例えば人口構成が高齢化したから格差が広がったんだと、世帯構成が細かくなったから格差が広がったんだという議論、あるいは良い格差と悪い格差もあるじゃないかという議論もあろうと思います。
 しかしながら、貧困世帯層の増加、ここで言う貧困世帯層というのは、生活保護基準以下の生活をしていながら生活保護によってカバーされていない世帯の増加というのは、その原因にかかわらず、放置することは許されるべきではないと思います。良い貧困という概念は存在しないと、こういうふうに思います。
 さて、では次のページを見てみたいと思います。実際に貧困世帯がどのように増えているかというのを見たのがその次のページです。
 これは、全国消費実態調査、隔年版、これは四万サンプルぐらいの個票データによって構成されておりまして、これについて一戸一戸世帯に生活保護基準を実際に当てはめて、生活保護基準を下回っているにもかかわらず生活保護を受けていない世帯がどのくらいいるのかというのを推計した数字でございます。
 どこまで正確に生活保護制度を再現するかによって数%ぶれは推計上出てくるところはやむを得ないと思いますけれども、二〇〇四年と一九九九年、同じルールで計算をしてみました。定義としては、世帯主が就労していて、世帯の合計所得が生活保護基準以下にもかかわらず生活保護をもらっていない、世帯単位のワーキングプア、ワーキングプア世帯ということです。個人単位ではないです。そういう意味では、より深刻な厳しい基準で見ているというものでございます。
 これがどういうふうになっているかというと、一九九九年から二〇〇四年の間でやはり若年世帯を中心に上がってきているというのが確認できるということでございます。この世帯は、繰り返しますけれども、ほとんど生活保護にアクセスできない。若い世帯で、例えば就労可能な人が家族にいるというケースは実質においては生活保護にほとんどアクセスしていないというのが現状でございます。これだけの人が取り残されているということが現状かなと思っております。
 次のページを見ていきたいと思います。
 こういった大人の所得の状況が子供の可能性にどういう影響を与えているのかというのを少し見たものでございます。
 左の絵が、これは共に東京二十三区で大体二〇〇五年、共に二〇〇五年の数字を使っておりますけれども、左の数字が二十三区別の、縦軸に子供の虫歯の状態、治療が終わっていない虫歯の状態を指数化したものです。横軸が二十三区別の平均所得を盛ったものです。これも小さい子供が少ない区もありますので少しばらつきがありますけれども、おおむね右下がりの関係になっている。親の所得が良ければ子供の少なくとも歯の健康状態には差が付いていると。子供の健康状態に差がよく出てくる部分は、よく言われるのは、御両親の経済力は歯に出ると言われておりますけれども、それがまさに出ていると。大人の所得と子供の健康の関係というのは余り日本では確認されていない、海外では確認されておりますけれども。確認されておりませんけれども、日本でもあるのではないかと思います。
 右側は、よく御紹介されます二十三区別の就学援助を受けている世帯の割合と子供の成績ということでございます。これを通じても大人の経済力が子供の可能性を左右するのではないかということが予測できるわけです。
 次のページを見ていただきたいと思います。
 これは、世代間でどのくらい親子の貧困率あるいは格差が継承されるかというものを示している国際的な研究を表にしたものであります。
 世代間で親がリッチであればあるほど息子もリッチになる、親が貧しければ貧しいほど子供も、息子も貧しくなるという、この場合は息子という、父親と男の子の相関を取ったものでありますけれども。これも、取り方もいろいろ計算法ありますので低い推計と高い推計というのが出ますけれども、これの数字が大きくなればなるほど親子での世代の貧困率あるいは格差の継承が強いということを意味しております。
 日本についてはいい研究がございませんけれども、おおむね社会保障がしっかりしている国では格差の継承は少なくて、社会保障が比較的小さい国の方は格差の継承が強いんだという傾向が確認できるわけです。日本は今どういう状況になっているかはまだ分かりません。これからどういう状況になるかも分かりません。しかしながら、こういう問題が今後起きてくる可能性があるだろうと、ここが大変心配をしているところでもあります。
 最後に、評価をまとめてみたいと思います。
 やはり高齢化社会の中で社会保障制度を維持するためには経済成長が不可欠であることは間違いないと思います。そういう意味では経済の可能性を高めていくということはある程度必要なのかもしれませんけれども、それとともにセーフティーネットを非常に限定的にしていくというのが、その組合せは誤った組合せだったと思います。もし市場を流動化していくならば、同時に分厚いセーフティーネットを用意すべきであって、それは北欧諸国でも行われて、雇用規制を緩やかにするのと引換えに、同時に所得保障を充実していくということが行われていくわけです。そういう意味では組合せを間違っているんではないかと思います。
 現実は、低所得者は社会保険から脱落をしていく、そして高所得者の一部はいかに社会保険から逃げ出そうかということを考えているという状況だと思います。
 課題としましては、これから良い社会保障制度をつくり上げることによって社会の連帯を逆に強化すると、制度が連帯をまた強めるという機能も期待できると思います。そういう方向に向かうべきではないかと思います。
 それから、新しい環境、特に雇用の流動化に対応した社会保障制度、社会保険制度にしなければいけない。社会保険のアクセス保障と最低所得保障の確立は不可欠だろうと思います。
 非正規労働者でも夫婦で子供を持つことができるような、低所得者向けの児童手当や住宅手当というものが必要ではないかと。社会保険と社会手当、失業扶助、生活保護から構成される重層型の社会保障制度が必要になってくるんではないかと。貧困の連鎖と社会の分断を回避して分厚い中流階層を再生できる仕組みに向かうべきではないかと、こういうふうに思います。
 どうもありがとうございました。
#8
○委員長(溝手顕正君) ありがとうございました。
 次に、高橋参考人にお願いします。高橋参考人。
#9
○参考人(高橋洋一君) 東洋大学の高橋でございます。座らせて話をさせていただきます。
 私の話は二つほどあります。一つは二十一年度予算の話、あともう一個は構造改革の話と、分けて話をさせていただきます。
 一番目の予算の話ですけれども、これはまず景気の現状からお話ししなければいけないと思います。
 景気の現状は御承知だと思いますけれども、昨年十―十二でマイナス一二%、今年一―三も、これはまだ数字が出てこなくて、五月ぐらいに出ますけれども、マイナス五から一〇ぐらいの間というふうなことが言われています。こうなりますと百年に一度ということになります。
 そこから、それを足下としまして、百年に一遍の危機であったらどうなるかと。百年に一遍の危機というのは大恐慌しか研究がないんですけれども、一番早く景気が回復した国でも三年です。悪いときは五年です。仮に三年としましょう。景気が悪くなっているのは一年前ですから、要するにあと二年ぐらい悪いという形になります。そういう形にしますと、先ほどの足下の数字から計算しますと、一、二年の間で実は需給ギャップ、これは潜在GDPと実際のGDPの差ですけれども、これは八十兆円ぐらいになります。仮に二年ですぐ回復する、これは多分ほとんどない話で、あと一年で回復するという形にしても、四十兆以上あります。
 そうなりますと、この経済状況、需給ギャップが四、五十から八十という数字ですと、実はこれがなぜ重要かといいますと、それに応じて失業率が増えるというのがあります。これはオーカンの法則といって、これはほとんどの世界の経済学者が認めるところです。需給ギャップが大きくなってから半年、一年後に失業率が増えるということです。
 それで、そのくらいの大きな需給ギャップでどのくらい失業率が増えるかと計算しますと、大体六から一〇%の間です。過去最悪は実は五・五%です。という意味で、日本はほとんど確実に過去最悪に突入という、それも過去最悪もかなり突破しちゃうと。仮に失業率が八%としますと、ある地域によっては二〇%近くなっても不思議じゃない。あと若者、これも二〇%ぐらいになっても不思議ではないという形になります。
 これを平たく言っちゃうと、底入れの時期というのが大体二〇一〇年の終わりぐらいでしょう。二〇〇九年の成長率が大体マイナス五とか六というふうになるということになります。これがもし正しければ、本当はこれは正しくなくて外れてほしいんですけれども、どうもその路線に乗っていて、その路線に行きそうな予感もします。こうなりますと大きな失業問題というのが後で発生するということです。
 政府の仕事というのは何かというと、恐らく私は失業を食い止めるということだと思います。失業というのは何にも増して大きな社会ロスですし、格差を物すごく広めます。そのやり方として一番簡単というか、いいのは、実はパイを大きくすることであります。要するに、パイを大きくするというのはかなりの程度この問題の解決になるということであります。
 それで、この需給ギャップを埋めるために何をすべきかというか、逆に言うと、このギャップを埋めなければただ失業がちょっと後で増えるということだけになりますけれども、オーソドックスなセオリーとしては財政金融政策のフル稼働です。これはだれが何と言おうとも、これが一番簡単です。ただ、従来の伝統的な政策でありますと、日本の現状を考えた場合、財政問題とか金利の問題というのがあります。ですから、ここは百年に一遍の非伝統的なものが多分必要。ということは、財政問題に影響が少ないもの、金利に対する影響が少ないものというのを選ぶべきではないかなというふうに思っております。
 先ほど八十兆というふうに申しまして、ここにならないかもしれませんけれども、実はこのくらい用意しないと結構危ないというふうに私は思っておりまして、その手段として、金融政策使うものですと、これは量的緩和するというのはあります。それと、これは私がいろいろなところで言っていて、その主導者とか言われるんですけれども、実はそうではなくて、この需給ギャップを埋めるための一つの手段として、実は政府支援というのがある。それとあと、これは従来から申し上げている埋蔵金というのもあります。要するに、この三つの手段で組み合わせて何とか需給ギャップを埋めるというのが私は必要ではないかと思っています。
 もちろん、このお金の使い方、これはまさしくいろいろと政府とか議会で決めていただくべき話でありますと思いますので、私は特に言及しません。国民が望むのであれば何でも結構です。要するに、いずれにしても優先すべきなのは、需給ギャップというのを埋めて失業の発生を食い止めるということだけであります。
 これ、量的緩和の話と政府支援の話、何か全然違うような話というふうに思うかもしれませんけれども、基本的には同じです。要するに日銀券が出るのか政府紙幣が出るのかと、これだけの話です。いずれにしても、お金を刷りますと、これは長い目で見れば通貨発行益というのがありますから、それを還流するという形によっていつでも需要を喚起するというのができます。
 あともう一個、似たようなやり方というか、これは全く同じなんですけれども、国債を出して、中央銀行がその国債の部分だけ市中から買い入れるというのも同じです。
 ここで、三番目のやり方は、実は大恐慌で、昭和恐慌のときでして、高橋是清がやった政策です。高橋といっても私の親戚ではありません。
 いずれにしても、この三つのやり方というのが大きな需要をつくれるというふうに思います。それと、あと埋蔵金の話も、この際、大きな危機ですから、全部吐き出す覚悟でやっていただいていいのではないかなというふうに思っております。
 政府紙幣の話がこれだけ先行しておりますけれども、私から言わせるとこれは一つの思考訓練でありまして、いろんなことを考えるときの一つの手段として思っております。
 ただ、実際、現状で、今の制度の中でできなくはないというわけです。これは通貨法というのがありまして、ある閣僚の方がこの政府紙幣の話をもって一両二両という単位、円ではないんだと言ったのがありますけれども、通貨法によりますと日本国政府の発行する通貨の単位は円でございますから、一両二両というと実はこれは偽札ということになって違法行為になります。
 通貨法で何が書いてあるかというと、通貨というのは日本銀行券と実は政府の発行する貨幣と書いてあります。それで、貨幣は実はコインを想定しておりますから五百円以下なんですけれども、記念事業として千円、五千円、一万円が出せます。さらに、特別法を出せばもうちょっと高額なのが出せます。それで、発行枚数は政令で決める、材質も政令でと書いてあります。ということは、いろんなこういうふうな極端な例を想定している法律ではないというのは私は知っておりますけれども、ただ、それで、少なくとも表面上それほど違法な話ではないと思います。
 こういうのを活用してやるという手は、実は私はいつも頭の中では考えておりました。例えば、今でしたら天皇御成婚五十周年なんて、実はこれは財務省で毎年記念通貨を出しておりますから毎年理由を考えるわけです。それで、これで財政収入の一助にはいつもなっているわけですけれども、それをちょっと大きくやるということです。
 これに対する反論というのは通貨の信認が減るとかインフレになるというんですけれども、言ってみると、これからデフレになって大変なときですから、そのくらいでもしないと本当に困ってしまうと。あえて言うと、デフレというのは氷ぶろだと思います。このような、先ほど申し上げたいろんな手段というのは百度の熱湯かもしれません。ただし、百度の熱湯を入れなきゃ、氷ぶろの中につかっていたら死んじゃいますので、ですから何とかした方がいいというのが私の考え方であります。
 いずれにしても、重要なのは需給ギャップを埋めるということですので、そのためにいろんな諸準備をしておいた方がいいということだと思います。特に、量的緩和でやると、普通の債券を買うというよりかは、例えば中小企業の手形を買って、そういうことを言いますと日本銀行は損が出ると言うんですけれども、逆に言うと、これは言い方を変えると中小企業が損しても日本銀行はいいのかという議論になりまして、政策に損はいつも当たり前でありますので、そんな大胆なことも考えてもいいのかなと思います。実際、中小企業の信用保証枠がありますので、それの活用というので十分対応できるのではないかなというふうに思っております。
 こういうような観点からいいますと、二十一年度予算というのは全く力不足であるというふうに言わざるを得ません。
 この政府の公式見解ですけれども、一月十九日の閣議決定の経済見通しで、何と二〇〇九年度が実質成長率ゼロ%ですけれども、これはあり得ません。先ほど申し上げたように、いろんなげたがありまして、この一月の当時でげたはマイナス二%。げたというのは四月以降横ばいであったと仮定するというときにどのくらいになるかという計算ですけれども、これはマイナス二%ぐらいというふうに、今ですとマイナス三、四になっているはずですから、それは高度成長並みの成長にならない限りゼロ%にならないです。そのちょっと後に日本銀行が出した見通しではマイナス二%ですけれども、これはほとんどげたを形式的に書いているようなものであります。政府と日本銀行の間でこれだけ差があるというのも私は不思議でしようがなくて、こういう国難のときにほとんど話合いが行われていなかったのではないかなと思って、非常に危惧しております。
 いずれにしても、この二十一年度予算ということについては、今の段階では来年度の経済対策について言えば実はすごく不足していて、いずれにしろ、何かのことをしないと多分失業が上がるということになるだけだと思います。
 それとあと、構造改革についてお話を二番目にさせていただきます。
 構造改革というのは何かって、よく分からないんです。私は構造改革を担当していましたけれども、いろいろな話をしたときにも当たり前のことと言っておりまして、あえて言うと、PM、総理のトップダウンでやることですから、私の認識では構造改革というのは三つしかありませんでした。不良債権、道路公団民営化、それと郵政民営化だけです。
 社会保障は、いろいろと諮問会議でやりましたけど、実は何もできなかったです。その意味で、社会保障についていろいろと構造改革が足りないという意見はよく分かりますけど、いろんなことをやったと言われると、何もやっていなかったのに何を言われているのかよく分からないというのが実態のところであります。
 郵政の話について申し上げますと、私は不良債権も道路も郵政もみんなかかわっておりましたけど、郵政のことで申し上げますと、最近ちょっとおかしな話があると思います。
 一つはかんぽの宿ですけれど、この話について言うと、これは元々はいろんな公的な施設の問題というので問題意識がありました。二〇〇四年の基本方針ではそれを検討するという話にしていましたけれども、元々二〇〇一年のときに行革の話でこれを整理することになっていたんですけれど、あのときに郵政が公社になったというので一応除かれたという経緯があります。ただし、この法案を用意しています二〇〇四年のときですけれど、これは年金国会です、皆さん御承知だと思いますけど、年金というのでグリーンピアというのが大きく問題になりまして、それで二〇〇四年の頭のころ、たしかこのグリーンピアについて法人つくって五年で処分するという話が出ていたと思います。
 ですから、私はかんぽの宿をやるときに、どうせ次の年に同じ法律が出るのは分かっていましたのでそれと同じにせざるを得なかったということで、五年というので、特別法人をつくるかつくらないかって議論はありましたけど、そこまでつくることはないということで、持ち株会社で五年の処理というので法案を実は作った経緯があります。これは衆参で余り議論が行われなかったので、たしか質問は一回ぐらいしかなかったので。ただ、そのときいつも、想定問答で、この五年の意味とか、どうして持ち株会社というのは、元々グリーンピアも同じというのを書いた記憶があります。
 それと、あと中央郵便局の話ですけれど、これも私自身がいろんなプランを作った経緯で申し上げます。それで、その後の話は知りません、正直言えば全く分かりませんけれど、その後私もちょっと興味を持って見ていました。
 昨年の六月ぐらいに計画が発表になって、九月たしか二十六日に再開発計画を東京都に出していると思います。九月二十四日に実は鳩山大臣が総務大臣になっております。普通はこの総務大臣になったときに事務引継というのが一週間ぐらいありまして、いろんな案件を説明します。当然これは入っているはずです。私自身も総務大臣の補佐官をしていましたけど、そのとき、もし問題があれば、この案件、後で聞くというふうに言います。それと、そのときに意見があるときには、これちょっと待ってくれと必ず言います。ですから、この話についてもし言うのであれば、その去年の九月に、就任直後に言われていれば、その後の再開発計画の中で議論が行われたと思います。
 もちろんあれが文化財であるかどうかって議論がたくさんありました。私自身も、あの東京都の駅の周り見ましたし、明治記念館はたしか文化財という形で、それとあと工業倶楽部、あそこは下だけちょっと残して、それとあと銀行協会、これも下だけ残してと。正直申し上げまして、文化財の議論があるかどうかって知っていますけれど、高層にほとんどしているという認識がありました。でもこれは、いずれにしてもその後議論が行われるのではないかと思っておりました。部分保存という形で、高い高層ビルが建てられればすごく収益が上がるというのは分かっていまして、いずれにせよこれは郵政にゆだねる問題であるというふうに思っていましたけど、どうも今の議論を見ていますと、非常にちょっと遅いというか、あれを余り遅く言うと実はビジネスができなくなるというのを私は危惧しております。
 それとあと、かんぽの宿の話でも、二千四百億円が百億円になってどうのこうのという議論がありましたけれど、あれについて私、中でデュープロセスといって一回資産査定をやっております。それとあと、内部でやっているのもあれだというので外部に委託してやれとも言われましたので、これは外部に委託をしています。その辺りをお調べになっていただいたらいいと思いますけれど、大体収益還元法というのでやりますので似たような数字が出てきたという記憶があります。
 問題は、どうしてこんなのがこんなに高いお金掛かっているのかというのが不思議でしようがなかったです。言ってみると公共事業的な発想で、最初からお金を使うというのが目的で建てたようなところもなきにしもあらずというふうに思っております。言ってみると、二千四百億円が百億円になったというよりかは、百億円のものに二千四百億円を使った形跡もあります。
 いずれにしても、どっちでも適切な入札が公正に行われれば、この価格についてとやかく言うということは実はできません。高い低いって、もしか低いと思ったら入札してくれとしか言いようがないんです。
 問題は、この公正なものに、手続が行われていたか行われていなかったかですが、私は総務省の感覚からいきますと、実はこの資料というのはあるはずですよね、それで報告を求めるんですから。それでしたら、告発か何かをすべきような話じゃないかなと思います。それでもし何もないのでしたら単なる言いがかりにもなりますし、告発するのでしたらこれは立派な話だと思います。要するに、公務員の方というのはこれは告発義務がありますので、この辺をすっきりしてやっていただくというのが是非必要じゃないかなと思います。
 いずれにしても、構造改革といろいろ言われますけれども、私、少なくとも思うに三つぐらいしかやったことがなくて、本当に不十分で、何も社会保障はやらなかったのかと言われると、全くそのとおりですと申し上げざるを得ません。トライをしたのはあります。例えば、社会保障個人番号、それと混合診療、それとあとマクロ管理とやりましたけれども、ほとんど全部何もできていないです。特に社会保障個人番号は、二〇〇一年から提案しておりましたけれども、もう六連敗だったとたしか思います。毎年毎年言って全部没だったです。そのぐらいほとんど諮問会議というのはもう力がなかったというふうに私は非常に思っております。
 以上でございます。
#10
○委員長(溝手顕正君) ありがとうございます。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○峰崎直樹君 民主党・新緑風会・国民新・日本の峰崎でございます。
 今日は、三人の参考人の方が、本当にそれぞれすばらしい参考になる、我々にとって審議に参考になる提起をしていただきまして、本当にありがとうございました。
 それでは、ちょっと今聞いて直ちにこれから質問を組み立てていかなきゃいかぬということと、ちょっとなかなかすぐはいかないんですが。ちょっとだけ私の、今日資料も後で一枚用意させていただきました、それについてもお聞きしたいと思っておりますが。
 まず最初に、現下の日本経済のお話がございましたけれども、実は私たちを取り巻いている世界の今の経済・金融状態というものは一体どんな状況になっているんだろうか。つまり、サブプライムローンをきっかけとしてこういった金融危機が起きたわけでありますが、その原因、及び現在においてそれがどのような幅と広さを、深さを持っているのか。この点について、できれば、時間がやや、私の場合は五十九分あるんですが、簡潔にやるために、お三方というよりも、熊野参考人及び高橋参考人に、この二点ちょっとお聞きしたいと思っております。
#12
○参考人(熊野英生君) では、私の方から世界経済と日本経済のかかわりについて申し上げたいと思います。
 世界の景気悪化は、経済悪化は、これは戦後最悪である可能性は非常に濃厚だと思います。特に著しく需要が落ちていることが目立っています。これは、例えば日本の製造業ですと、この半年間に三割生産水準が落ちているんですが、これは三割も需要が落ちるということは通常では考えられないことですから、ここで何が起こっているかというと、買手がいないのではなくて、金融制約が極めて大きくなったんではないかというふうに考えております。
 リーマン・ブラザーズの破綻が去年の九月十五日にございましたけれども、これは氷山の一角として、リーマン・ブラザーズ証券が破綻したんですが、ほかにも同じようなことがあるんではないかという疑心暗鬼が、実はこれはアメリカだけではなくて、ヨーロッパとアメリカ、あるいはヨーロッパやアメリカから新興国に行っているお金の流れを急激に収縮したと。
 そうすると何が起こるかと。例えば、東欧諸国なんというのは一番そうなんですけれども、ヨーロッパのお金が東欧に入るから、東欧ではそもそも貿易赤字なんだけれども、資本流入、投資資金によって国内の設備投資をどんどん増やしてきたと。中国の場合は証券投資よりも直接投資なんですけれども、つまり、金融の流れのマネタリーな移動が実はマネーの少ない国に需要を生んでいた。したがって、リーマン・ブラザーズ・ショックが起こると金融の流れが悪くなって投資が寸断されて、本来は需要があるところの機能が麻痺したと。海外から来るマネーがなくなるとこれは金融引締めが急激に行われたということと同じですから、こういう効果によって、世界経済はこれまでは相互に手をつないでいたような状態なんですけれども、一斉にみんなが手を放してしまったのでお互いの動きがぐらぐらしてしまったと、これが恐らく世界経済が急激に落ちた原因だと思います。
 こういう状況下では、多分三つのグルーピングができると思います。一つは先進国。自国の金融機関がやられていて自国の消費あるいは投資ができない国。あともう一つは、海外のマネーや貿易に強く依存していた新興諸国というのは、海外からのマネーの動きが寸断されたために非常に苦しいと。一番目は欧米経済、アメリカやヨーロッパだと思います。二番目は、恐らく東欧とかアジアの幾つかの国々、あるいは中東もそういう傾向があると思います。三番目に、少し違うんですけれども、輸出への依存度が割に小さくて国内の需要が増えていく、自然に増えていく、これは中国とかインド。中国は実は貿易依存度非常に高いんですが、内需のパワーも非常に強いと。
 恐らくこの三つのグルーピングの中で一番最初に回復していくのは、内需の拡大力が非常に強い中国やインドやベトナムだと思います。しかしながら、残りの二つのグループ、欧米経済やあるいは新興諸国の中で海外のマネーに依存した国、こういう国はかなり長い間停滞を続けていかざるを得ないと。日本はそういう中では非常に特異な国です。金融のダメージは相対的に少ないんですが、貿易に対する依存度は非常に強い。
 したがって、日本の今後の経済というのは恐らく二つのシナリオがあって、一つは、今までどおり欧米中心の輸出、あるいは欧米への依存度が強い国との輸出をパイプを広くしたまま。このときはそのダウンサイドのリスクに日本経済は引きずられてしまうと思います。ですから、逆に日本が中国やインドやベトナムなど内需の拡大するような国々に輸出をシフトさせる、あるいはそういう国と経済連携を取っていくならば、日本のマイナス幅というのは割に小さくコントロールできるのではないかと。
 私は、百年に一度の経済危機がやってくるという話には、半分そうだと思うんですけれども、半分は疑いを持っています。恐らく、百年に一度かどうかというのは分からないと。私の見方ですと、これからの日本経済は、悪い流れに巻き込まれていくと百年に一度のことに本当になってしまうと思います。一方、成長する経済の方に自分たちの需要先をシフトしていくと、実は欧米よりも早く景気回復するようなチャンスがあると思います。
 あと一つ、最後に一つだけ。もう一つ、処方せんみたいなものと絡めて言いますと、日本経済がこれから自己実現的に悪くなろうとするときにはもう一つ経済政策が大きな影響力を持っていまして、これは家計と企業だと思うんですけれども、企業については金融不安があるので設備投資ができない。設備投資は中長期的な日本経済の成長を支えるものです。したがって、金融不安、資金繰り難、資金の逼迫が早く解消されないと企業の設備投資はなかなか回復しないと。したがって、金融対策、金詰まり対策を政府が非常に効果的にやると日本はこの設備投資が抑制されるダメージから割に早く立ち直るかもしれない。
 あともう一つ、家計に関しては雇用対策だと思います。高橋参考人もおっしゃっていましたけれども、これからは失業率の上昇というのは多分避けられないと思います。これに対して、今は非正規雇用を中心に切られているんですけれども、正社員が切られにくいように何らかの手当てをしてやる、あるいは非正規雇用がもう一回、正規雇用でもいいですけれども、失業者がもう一回労働、正規雇用としてエントリーできるような形にして、企業の中から外へ出たらもう一回中に入る、それによって雇用の悪化を歯止めを掛けると。
 つまり、設備投資は金融対策を即効的にやることが効くと思いますし、雇用対策を即効的にやると家計消費のシュリンクを止められると。
 実は、世界経済どうなっているんだというふうに御質問だったと思うんですけれども、今非常に悪い流れがあるので、この悪い流れに引きずられるとこのまま日本経済の停滞というのは長引くでしょうし、いい流れに日本の企業の体質転換が進み、さらに経済政策として金融対策と雇用対策が極めて即効的に効けば、百年に一度の大きさだから大胆にやらないといけないということも考え方としてあるんですけれども、私、エコノミストとしてのプライオリティーは早く効かせることと。つまり、経済は生き物ですから、早く悪い流れを寸断するような雇用対策と金融対策が取られれば、日本経済は必ずしも悪い流れには行かないのではないかと、そういう見方をしております。
#13
○委員長(溝手顕正君) 高橋参考人、恐れ入りますが、時間が限られておりますので、できるだけ簡潔に。
#14
○参考人(高橋洋一君) はい、分かりました。
 世界経済は確かに非常に悪くなりそうです。これは、いろいろなマーケットの中の、先行きの情報というのがマーケットの中にありますから、それを見ますとかなり分かります。経済活動の全体というのは、実は集約すると、例えば物価の動きとか、そういうので結構集約されますけれど、これを見ますとかなり世界の全体が悪くなるというのはあります。ただし、日本はとりわけその中で悪くなるという可能性が高いと思います。
 今までの百年に一遍という大恐慌の研究でいいますと、この脱出の時期を分けるのは政策対応です。政策対応によってほとんど違うという形が出ておりますので、一刻も早く財政金融政策のフル活動をして需給ギャップをなくして正常ルートに戻すというのが必要だと思います。特に財政政策の場合は、各国協調してやらないとこれは効果が外に漏れます。それですから、各国協調して是非やることが必要と。一般的に金融政策の場合は、国内にとどまりますから独自にやると。とにかくこの大恐慌というのは、特色はお金が一瞬に縮まっちゃうんです。ですから、そのお金をだれかが供給しなきゃいけないということに尽きると思います。
#15
○峰崎直樹君 ちょっと各論の方に入っていきますが、先ほど熊野参考人と今高橋洋一参考人のお話の中でちょっと評価が違う点があるんです。それは、量的緩和政策について、熊野参考人は金融政策において効果がなかったんではないのかというふうにおっしゃっています。熊野参考人はこの量的緩和政策は本当にそういう意味で失敗だったというふうに判断しておられるかどうかということと、そして高橋参考人は、先ほど来の金融の問題でいえば、量的緩和政策についてはそれをもう一遍戻すべきだということをおっしゃっておられます。
 そこで、熊野参考人にも、端的で結構でございますので、これは失敗だったかどうかということと、それから高橋参考人には、たしか私、二〇〇二年の経済財政白書の中だったと思いますが、このいわゆる量的緩和政策について、ポートフォリオ・リバランシング効果というのがあるということが書かれてあったんですが、本当にそれは、ポートフォリオ・リバランシング効果というんですか、どういうものなのかということも含めて、ちょっと私どもなかなか理解しにくい用語だったんですが、多分いろんなポートフォリオを組み直したりすることによって、そこで裁定が働いたりいろんなことで多分ゼロ金利が効果はあるんですよということだったんだと思うんですが、量的緩和が。
 そこら辺も含めて、お互いにどういうふうに思っていらっしゃるか、これやや意見が違っていらっしゃるので、これをまずお聞きしたいと思います。
#16
○参考人(熊野英生君) 量的緩和政策は、金融不安がメルトダウンする、金融機関の破綻がばたばた起こることに関してはそれを封印しました。そういう意味では、ダウンサイドリスクについては成功したんですが、デフレ払拭、つまり物価が正常な形で緩やかに上がりながら名目成長率が上がっていくようなことには成功しなかったと思います。
 私は、これは金融仲介機能が不全のままで、量的緩和政策というのは、例えば長期国債を買い切る、あるいは長期金利をなるべく時間軸効果によって日銀が緩和を長く続けるというコミットメントをつくる、約束事をつくることによって低下させるということだったんですけれども、長期金利が低下したくらいでは物価も上がらないし、名目成長率も増えなかったと。
 そういう意味では、金融仲介機能、つまり金融機関が短期金融市場から例えば三十五兆円のお金をたくさん取っていって貸出しをする。今貸出しは平成四年以来の非常に高い伸びなんですが、もしも量的緩和政策が信用面で金融仲介機能を改善していたならば、もう二〇〇六年とか二〇〇五年の段階で五%、六%貸出しは伸びていたんですけれども、多分そうはならなかったということは、そのアップサイドの部分がなぜできなかったかというと、金融仲介機能が不全だった。これは恐らく、金融政策だけではなくて自己資本比率規制や金融行政についてもまだまだいろいろ対応を取っていれば、そういうのに早く脱却できたんではないかというふうに総括しております。
#17
○参考人(高橋洋一君) ポートフォリオ・リバランスの話というんですけれど、これはありていに言うと、金融機関から国債を取って現金を渡して何かに使えと、こういう話でして、これは実はそんなに大きな効果がないというふうに私も思っております。というか、この量的緩和はどうして効果があるかと、先ほどちょっと申し上げましたけれど、量的緩和という形でやりますと、実は予想のインフレ率というのは高くなるんで、それで、それが結果、実質金利が低くなるというのが一つのロジックになります。それで、量的緩和をやった以降、これは効果が出るのは実は半年とか一年後なんですけど、それ以降失業率は実は低下しています。それで、景気動向指数を見ると完全に上がっています。
 ですから、その意味で、一九九〇年代後半以降の景気動向指数を見事に金融政策で説明ができます。要するに、あとはアクセルの吹かし方の問題です。多少効果がなかったとすればアクセルを吹かさなかったということになるかと思います。
 ちなみに、二〇〇六年の三月ですか、解除をしていますけど、このときに竹中大臣は反対をたしかしておりますが、そのとき私が申し上げたのは、あと一年かそこらしたら景気が悪くなると申し上げましたけど、実はそのとおりになっております。
#18
○峰崎直樹君 ちょっとそこを深掘りさせていただきたいんですが、高橋参考人。
 あれは今度の日銀の総裁が、私どもの委員会の中で実は承認をするかしないかという人事の承認のときに、ゼロ金利政策及び量的緩和政策が世界のサブプライムローンをきっかけとするそういう国際的ないわゆるバブルを非常にもたらした一因があったかもしれないと、そういう言い方をされていたんですが、日本がある意味では被害者ではなくて加害者であったんではないのかという指摘がございます。
 これについてはどのように思っておられるのかということと、ゼロ金利のために、日銀総裁のたしか答弁の中で、この間、いつからというふうに取ればですが、たしか単年度三十兆円近い利息収入が入ってこなくなってきていると、そのことが先ほど来問題になった、熊野参考人がおっしゃっていた内需の拡大ということに、非常にやはり個人消費を冷やしてしまったという側面も指摘をされています。
 こういったことを考えたときに、このゼロ金利政策を改めて高橋参考人はどのようにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
#19
○参考人(高橋洋一君) ゼロ金利政策が世界のバブルを起こしたというのはいろんな方が言うんですけど、実はその数字、どの程度の量が外に出たという話は実は聞いたことがなくて、国際機関とかOECDなんかでもたしか二けたぐらい違う数字を言っております。
 それで、もし本当にそういうことがあり得るんであれば、何らかの形で日本の円が、海外の投資ということですから、日本の機関投資家の中で大きな損失が出ていても不思議はないんですけれども、私が実は金融庁の顧問をしているときにそれを全部調べましたけれども、大きな損失が実はなかったので、要するに、その話についてはなかなか確証が得られなかったというところがあります。
 あと、もし本当にそれほど効果があるんでしたら、今やっていただけたらいいですね。世界中をバブルにすれば非常にいい景気対策になって、恐らく日本が世界を救ったと言われると思います。
 以上でございます。
#20
○峰崎直樹君 雇用の問題は非常に重要であるということで、実は〇二年ぐらいからゼロ金利になったら雇用が増えていったんだよと、しかし雇用の中身がいわゆる正規雇用じゃなくて非正規雇用になっていると。これには、日本の雇用慣行の中でいわゆる正規職員というのを解雇するのは非常になかなか裁判の判例があって難しいと、こういうことをよく言われるわけなんですね。
 私はちょっと、デンマークという国だったと思いますけれども、駒村参考人にお聞きしたいんですが、非常に解雇が実に容易にできるんだと。しかし、解雇された人たちが、実は非常にセーフティーネットが豊かで、そして失業給付も、それから職業訓練も、他への転換も実にきめ細かな指導が行き届いていて、労働者が、自分が、産業構造が転換をする、グローバル社会の中で転換できない、そうしたらそれを転換するためにそれをある程度変えていく、積極的労働市場政策というふうに呼んでいいんでしょうか、スウェーデンのように、そういうふうに受皿をちゃんとやっておくと、そういう意味では、別に解雇が直ちに失業になり、保険が切れたら生活保護に行くというような、そういう悲惨さみたいなものがないというふうにちょっとお聞きしたんですが。
 そういう意味では、私は、雇用の規制緩和のときに、これも構造改革の中に入るのかもしれません。この規制緩和をやる前に、そういうセーフティーネットというものがどういう仕組みになっているのかということで、駒村参考人、先ほどお話しになったときに、日本という社会は、一九八〇年ごろまでは正規雇用労働者が労働に従事し、そして企業内の社会保障、あるいは家族、家庭が、日本型福祉社会と言われたあれですが、そういうもので実は非常にある意味では安定的だった時代がある、それが崩れてきたわけですね。
 そうしたときに、そのセーフティーネットを張り切れていないという問題が実は大変大きい問題としてあるんで、だから、そういうセーフティーネットなしに、はい、サーカスやりなさいと、こういうことで実は規制緩和が進められてしまったのかなと。
 そこら辺について、駒村参考人、雇用の質が、雇用が増えた増えたと高橋参考人はおっしゃったんですが、これはよく竹中平蔵さんなんかもおっしゃるんですけれども、私は、そこのいわゆるセーフティーネットが十分に張らない前にそういう規制緩和をしたことの誤りというのがあったんじゃないかと思えてならないんですが、その辺りはどのように考えておられますか。
#21
○参考人(駒村康平君) 最初にデンマークの例があったと思いますけれども、確かにデンマークの産業構造や労使の関係を見ますと、今お話であったようなシステムが回るという条件は整っているものだと、こういうふうに思っております。
 日本については、労使の集約度を考えても、あるいは産業構造を考えても、なかなかデンマークモデルをそのまま日本に入れることは難しいだろうと思います。そうは言うものの、今御質問がございましたように、八〇年代から九〇年代にかけて、特に九七年を境に、あるいは九五年の経団連の雇用の在り方の見直しの報告を受けて、さらに、アジア通貨危機以降の九七年以降は正社員が減っていくという社会になっていく。そこの辺りから明らかに社会保険の空洞化、これは、劣化した、社会保険に入れないような、落ちているような労働者が出てくるというのが明らかに分かってくるわけですね。
 先ほども高橋さんがおっしゃいましたけれども、様々な産業の規制緩和や派遣労働者の拡大、こういったものがどの程度あったかというのは、直接それに影響を与えたかというのはまた議論があるところだとは思いますけれども、少なくともそういう状況が起きているならば、直ちに社会保険の方を適用拡大をするというのはすぐやるべきだったんだろうと思います。
 ほかの先進国も、皆保険、皆年金の国は必ずしもそれほど多くはないにもかかわらず、働いている方は基本的には社会保険に入ってもらうという国は多いわけですけれども、そういった国でも、雇用の流動化、非正規労働者の増加、業務請負の増加というものは増えてくる中で、社会保険から落ちる人間が増えてきたと。そこを直ちに社会保険を適用するように対応したと。つまり、雇用の流動化に対応するような、雇用の変化に対応するように、後追いでもよかったわけですけれども、そこを追いかけて社会保険の見直しというのをやるべきだったんじゃないかと、こういうふうに思っております。
 必要な変化に対応しなかった、やらなかったということで責任は問われると思います。
#22
○峰崎直樹君 今の視点で、高橋参考人、もし何かお考えがあればお聞きしたいんですが。
#23
○参考人(高橋洋一君) 実は私、正直申し上げて、よく知りません。元々財務省でしたし、諮問会議でこれほとんどやったことなかったですね。それで、あえて言えば厚生労働省の中で、ここで議論が行われていたというように私は記憶しています。
 社会保険については、ちょっとやろうと思いましたけれど、なかなかうまくできなかったという記憶があります。それで、次期の安倍政権にそういうのを引き継いだという記憶はあります。
#24
○峰崎直樹君 それじゃ、社会保障のことはまた後で駒村参考人にしっかり聞きたいと思うんですが、実は、日本経済新聞、これは昨日及び一昨日に、「「金融不安」緩和に期待感」ということで、ニューヨークの株が四か月ぶりに大幅に上がったというときに、バーナンキ米FRBの議長は、ワシントンで講演をなさって、時価会計の問題点を特定するとともに早期に改善していくべきだということを主張されています。
 実は、私ども民主党は今、この時価会計の問題について、非常にこれは弊害があったんではないかと。「資本主義は嫌いですか」というベストセラーになっている竹森俊平さんの本がございます。この中にも、二〇〇五年のいわゆるカンザス連銀主催のカンファレンス、そこで、ヒュン・ソン・シンとか、あるいはラグー・ラジャンとか、そういう中で、実は、いたずらな、言ってみれば金融の自由化というものを徹底的に進めて、そしてその結果、今日こういう、世界にCDSの規模が六千兆ドルというふうにもお聞きしております。六千兆ドルじゃないですね、六千兆円ですか、とにかく、もう兆の単位を超えて京の単位に迫るような、そういう証券化商品、金融商品がどんどん広がっていったんですね。
 その一つの大きな要因の中に、確かにそういうデリバティブを駆使する、金融工学を使ってそういうものを作り出していく、普通の庶民でいえば、先日、公認会計士協会の方々は、私たちにもこの金融商品がどういう仕組みになっているか分かりませんと、どう評価していいか分かりません、専門家がこれはもう判断するしかないんですと、そういう商品が上がっていた。そのときに、実はいわゆる時価会計主義に変わったんですね、その一九九〇年代に、アメリカも、そしてEUも日本も徐々に時価会計に戻していくわけですね、取得原価から。
 そのときに、先日ちょっとある人たちと話したときに、いや、私は取得原価主義で、時価に直せばこのぐらいの含み益が今金融商品には生じているよということを会計表示すればいいじゃないかと。表示して、それをPLやBSに取り込まない、こういうふうにするべきなんではないんですかという話をしたら、いやいや、それは時価会計と余り変わりませんよというふうにおっしゃったんですが。
 高橋参考人にちょっとお聞きするんですが、熊野参考人にもお聞きしたいんですが、この時価会計主義をいわゆる金融商品、証券化商品に取り込むことによって非常に大きな変化が私は現れたんじゃないかと。そして、こういう膨大な金融資本主義と言ってもいい中で、金融工学を駆使して作り上げた証券化商品が今日のこういう危機を招いていったわけですけれども、そこには招いた原因があるんですが、その一つの要因として今時価会計という問題が非常に大きな影響を与えたんではないかというふうに思うんで、その点、時価会計主義というものを見直す必要があるのかどうか。
 これは単純に、銀行が今不良債権を抱えたから、株の値段が下がっちゃったから、それを何とか阻止するために時価会計をストップしろと、そういう意味で言っているんじゃないんです。これは、資本主義と言われるものは価格メカニズムが非常に重要な指標だと言われている。その価格メカニズムを、実はこういう時価会計ということで利益を先取りしてそれをぽんと上げちゃうというやり方が今日の金融危機を招いた一つの大きな要因になっているとすれば、これは、今度の四月二日ですか、G20の場でもこの時価会計主義について見直すべきではないかというふうに私たちは、まだ私たちじゃありません、私自身は考えているんですが、その辺りどのように考えておられるか。駒村参考人ももし、首をちょっと振っておられたんで、後で御三方、これに対する見解がおありになればお聞きしたいと思います。
#25
○参考人(高橋洋一君) 時価会計についてですけれど、先ほど金融工学という話が出たんで、私、実は大学でそれを勉強した者なんですけれど、率直に言うと、これほとんどの人が分からないというのは事実だと思います。分からないものを評価するというのはこれはおかしい。という意味で、その分からないものを時価会計をやるということというか、そもそも、そういうふうに会計で評価とかいろんなことをやるということ自体、実は余りやめた方がいいかなという気は多少しております。そういう意味では本当に分かっているものだけをやると。
 これで分かっているものといいますと、金融工学の中身を分かっているのは本当に何人かしかいないわけで、そういうふうな、ほとんど分からないのにもかかわらず、あたかも分かっているようにうそをついている人間がたくさんいるというふうに私は思っております。元々、金融工学自体は数学ですから、それについていい悪いという話が出なくて、それを悪用する人間がいる、それで悪用される人間がいるというふうに、共に両者とも実はほとんど分からないでやっているという現状だと思います。
 ですから、分からないのに、正直に分からないという意味で、時価会計を分からなくてやるというのは変だというふうに思っております。もし規制を言うとすれば、こういうのを一個の取引所か何かでまとめてやった方が実はいい規制になると思うんで、その規制のやり方としてはちょっと今までが変だったというふうに思っております。
#26
○参考人(熊野英生君) 時価会計につきましては見直しの余地は大いにあると思うんですが、時価会計自体をやめることはできないと思います。
 例えば、企業が破綻したとき、リーマン・ブラザーズが破綻したというのでもいいんだと思うんですけれども、もしも簿価でやっていると、破綻したときに一気に資産の価格が落ちますから、株主や債権者はそこでその目減りの分のダメージを受けてしまうと。あらかじめ時価で評価していた方が株主や債権者のダメージは少なくなるので、時価会計主義自体の考え方は、考え方としては、もしものときのことに対しては非常に有効というか、そちらの方が保護には資するんではないかと思うんですが。
 問題は、この時価会計主義が行き過ぎているところであると思います。例えば証券化商品は、これは流通市場がなくて、買ったらそのまま持っておくものです。どうやってこれを時価にしているかというと、市場で取引するいろんな指数を基にしてみなし時価をつくっているんですね。これが本当に価値の保全に役に立つかというとそうではないですし、金融不安で欧米の金融機関が破綻する前にその指標を使いながらリスクヘッジをしていたんですが、それが失敗したために損失がたくさん出たみたいな話もあるので、私は、市場性のない、つまり流通市場のない証券化商品にまで強引に時価会計を当てはめることは行き過ぎだったのではないかと思って、この部分については何らかの見直しが必要だと思います。
 しかしながら、株についてはまた別だと思います。例えば、株価が下落したときに、みんなが危機だから時価会計主義はやめてしまおうとやると、これはよくプットオプションと言われるんですけれども、下がったら下値の部分は政府が面倒を見てくれると。だから、平時においては活発に損失を恐れずに徹底的にリスクを取る、困ったときは政府に助けてもらうと。つまり、時価会計、株が下がったときに株価の損を除外して軽減するということを危機時にやってしまうとインセンティブのメカニズムが大きくゆがんでしまうので、そこは微妙に、慎重に考えた方がいいと思います。
 ただ、時価会計にもいろんな種類があるんですが、例えば、株の減損会計で株価が全体的に半分以下に下がっているときに、半分に下がったらそれは損失を出さないといけないと。これは少しルールが、最初にあらかじめ危機に対応しないルールが減損に適用された部分があると思いますから、こういう減損についてはまた見直しが必要だと思います。
 私は、時価会計主義というのは余りに行き過ぎたので弊害が出ているんですが、株などについては平時のルールとして守るべきところは守りながら改革していくことは必要なのではないかと思います。
 あと一点、CDSの話をおっしゃったんですけれども、これはCDSのちょっと概念を多分間違っていると思うんですけれども、CDSの破綻したときの保険なんですね。つまり、A社が破綻したときに百億円損失が出ると。その損失を保険を取るんですから、百億円以上増えていかないんですね。さっき六千兆円とおっしゃいました。あれは派生商品で残高がないので、取引額なんですね。つまり、何で取引がこんなにあるかというと、売った人が買っているので、ネットアウトするともっともっとサイズは小さくなると。専門家が書いている本ではあるんですけれども、CDSに関しても実務家から見ると誤解が多少あったりするので、証券化商品というのはそのぐらい難しいものだと思います。
#27
○参考人(駒村康平君) 金融商品や時価会計については私は専門外でございますので余りよく分かりませんけれども、企業年金の問題も考えて議論があったときにも、最近は経営が非常に短期的な視野で行わなければいけなくなっている一つの要因ではないかという話はよく聞くことがあります。ただ、余り詳しく存じ上げておりませんので、この場ではこれ以上の発言は。
#28
○峰崎直樹君 私は、世界のバブルを引っ張っている一つの流動性の中には、年金の基金、これが恐らく数千兆円単位で動いているというふうにも言われていまして、それが通常の利益よりも高い利益を求めていくわけですね。大学の基金なんかもそうだったと思いますが。そういったものが、今回、慶應義塾大学も何か損をなさったとかというので、決して駒村先生に言っているわけじゃないですが、大学なんかでも基金を運用していて、それで大失敗したということがありました。
 そこで、熊野さん、CDSの組成の仕組みは私もそれは存じているんですが、累計してネッティングすればもっと減ると思うんです。ただ、問題は、日銀におられたので、これだけは、私は今回の世界のバブルをもたらした一つの、いろんな要因があるんだろうと思いますけれども、いわゆる証券化商品で、それを複雑なものを組み立てて、これは幾らですよということでこれをまた売り歩いていく。そうすると、直ちにそこで、利益を先取りしていくわけですね。それを先取りしてそのレバレッジを掛けて、十倍、二十倍、三十倍に掛けていく。このいわゆる膨大な、ある意味では利益をあらかじめ持っちゃって、それをみんなに販売をしていくということは、結果的にそこで流動性をつくっているんですよ。信用創造をしているんだと思うんですよ。それが実は非常に巨大に広がっていったという点で、時価会計でなかったらこれはできないんですよ。PLやBSに計上できないわけですから。いわゆる含み益で行けば将来この商品は幾らの価値はあると思いますよということは表示できても、それを利益に取り込んで、直ちにそれが配当やあるいは様々なものに変わっていかないわけです。時価会計はそれを取り込んで変えていったわけです。その金額が膨大になったんじゃないんですか。
 そういう意味で、この「資本主義は嫌いですか」で書いているように、韓国系の経済学者のヒュン・ソン・シンという人が、そういう意味で、この時価会計というものがもたらした、それが時価会計といわゆるバランスシート会計が通じて、流動性をどんどんここで供給していったと。これが実は今回の一つの大きな要因になっているんじゃないですか。
 もう一つ、実は、熊野さん、インセンティブシステムというのがここにも書かれているんですね。要するに、そうして、大学、金融工学を使って証券化商品をつくった、そして利益を上げた。そうしたら、利益に対して、あなたは本俸プラス利益の何割ですよと。そのときに、損をしたときのことは、要するに証券化商品というのはずっと先の商品ですから、損をしたときに、じゃあなたはこれだけの、過去にさかのぼってその支払った報酬を返してくださいという、それはないんですよ。ということは、もう非常に片面的なんですね、これ。要するに、もうかることに、とにかくもうかるものなら何だって手を出して、そしてそこで失敗したら、ああごめんなさいねと言ってその会社を辞めればいいと。そうすると、一年に何十億なんというふうな報酬をもらってもう一生安泰だという人が出てきて、そこでもう、二十代、三十代で、もう辞めて私は一生これから安泰して世界旅行でもやりますわと。これが今日、実は世界の証券、いわゆる投資銀行の中の人たちの中を支配したんじゃないでしょうか。
 だから、こういうインセンティブシステムというものもやはり含めて、私はG20の場でもこういうことも多分改革の提案になるんだろうと思うんですが、そういう意味で、先ほどの言った流動性の問題ですね、あるいは与信の量を増やしていくという意味で、もうここにも書いてあるんですけれども、要するに、今までマネーサプライ、M2プラスCDだけを見ておったんじゃ駄目ですよと。要するに現先で、いわゆる自分たちの持っている証券商品を担保にして、そしてお金を借りて、そういう現先を通じて実は流動性や信用創造が行われている。そこが全部FRBとか、日本でいえば日銀のアンコントローラブルなところに置かれていたというところを直さないとどうにもならなくなっているんじゃないかというふうに思うんですが、熊野参考人、何か意見があったら教えてください。
#29
○参考人(熊野英生君) インセンティブ構造に問題があったことは私もそのとおりだと思います。これは時価会計かどうか分からないですけど、経営者が多額の報酬を得ているときに、なぜ株主は配当を増やせと言わないんでしょうか。これはやはりガバナンスの問題、金融機関が巨額な報酬を得ていたそういうガバナンスの問題が株主との間でうまくできていなかったんではないかと、そういうインセンティブ構造の課題はあったと思います。
 過剰流動性と時価会計の話なんですが、これは微妙な話で、バブルが発生しバブルが崩壊したということは動いている行為なんですが、その行為がなぜ行われたかというと、道具が悪いのか、つまり時価会計という道具が悪いのか、それをやってしまったヘッジファンドとか投資家が悪いのかというと、私はヘッジファンドや投資家が規制されずにやってきた部分が非常に大きいんではないかと。
 例えば、G7でも、サブプライムローン問題が出てくるまでは、特にアメリカは金融規制に対してヘッジファンド規制を含めて極めて消極的でした。サブプライムローン問題が出てきて初めてヘッジファンドなど周辺にある銀行以外の金融部門に対する、これは投資銀行を含めてもいいんですけれども、そういう部門に対するいろいろな規制を初めてやっていきました。そういう意味では、時価会計というツールが悪い部分だけではなくて、やはりヘッジファンドの規制が非常に遅れてしまったのではないかという部分は非常に大きいんではないかと思います。
 あともう一つは、世界の金融政策で、世界の経済を、金融政策が緩和すればそれで景気が回復するという、そういう論調がここ何十年か、十年ぐらいは物すごく強まっているんですが、例えば日本銀行が消費者物価がプラスになるまで流動性を供給しますというと、これは日本国内の非常に苦しい企業にとっては恩恵であるんですが、海外の投機筋からいうと、これはしばらく日銀のお金で投機し放題だということで、国内的にはプラスだったんですが、海外から見るとこれは悪用するチャンスだったと。これは日本銀行が悪かったかどうかよく分からないですが、非常に緩和的な政策をずっと続けるということを表明すると副作用があったので、副作用が起こらないような金融政策の運営が必要だったかもしれないと思っています。
#30
○峰崎直樹君 もっと本当は高橋参考人にもお聞きしたかったんですが、時間がもう二十分になってまいりましたので、次の社会保障のところに行かせていただきたいというふうに、もっともっと本当に時間があればやりたいと思うんですが。
 そこで、駒村参考人にお聞きしたいんですけれども、税金と社会保険料というのはどう違うのかなというふうに、まずそこの辺り、基本のところですね。
 税と社会保険料、今まで僕は公助が税で共助が保険で、そして私的負担が自助だと、こういうふうに整理をしてきたんですけれども、先ほどお話があったように、一九八〇年代まではいわゆる保険という社会保障を中心にしながら、実は国民の生活のかなりの部分は正規雇用とそれから社会保障の部分である程度事実上でき上がっていたんです。円滑に、円滑と言っていいかどうか分からない、僕は非常に小さい政府だったと思うんですけれども、それができ上がっていたと思うんですけれども、それが崩れてしまった。恐らく、私も、産業構造が昔の重化学工業ではなくてポストインダストリアルの時代に入ってきている、サービス業を中心にした時代に変わってきているということとグローバリズムが非常に大きな影響力があったと思うんですが。
 そうした中で、先ほどの話でいくと、一年保険料を納めていかなければ失業給付できないよというような、今度半年になるということで、それでも百四十八万人しか救わないということになってくるんですが、よくよく考えたときに、そういうものより、例えば保険料を全く払っていない方々に、じゃ保険のたまった、六兆円ぐらいあるんですね、高橋参考人いろいろと書いておられます。埋蔵金の一つと言っていいのかどうか、これは後でまた高橋参考人にお聞きしたいと思うんですが、そういうものも、もう既に百年に一度の危機なんだからというよりも、僕は、百年に一度の危機と言ったのはちょっと言い間違えました、これは、ある意味ではセーフティーネットの構造が崩れてきている時代だから、そこはもう税だとか社会保険料だとかという一つの違いを乗り越えて支給するような方法を考えた方がいいんじゃないのかというふうにもちょっと聞こえたんです。
 そこで、税、社会保険料の違い。それから、言葉で言うと救貧機能、貧乏を救う、それからもう一つは防貧、貧困に陥るのを防ぐ、防貧機能と救貧機能と、こうよく言われるんですね。そういったことについて、駒村参考人に、ちょっと先ほどの、現状の問題点を解決する方策としてその辺りをどのように考えたらいいのかをちょっとお聞きしたいと思うんですが。
#31
○参考人(駒村康平君) 税と社会保険の違いでございますけれども、表面的に言いますと、国税で見れば、片や財務省、片や厚生省の管理だというのが表面的なお金の管理の部分でございます。そうではなくて、もう少し踏み込んで見ていくと、社会保険というのは払った人が給付と負担が対応するような形でもらえるものだと。それから、一定の社会的なリスクをヘッジするものが社会保険であると。そういう意味では、防貧といえば防貧、一つの防貧機能、あるいはリスクに備えるという機能を持っていると思います。
 それに対して税というのは、社会保障の中ではやはり公的扶助、あるいは生活保護というもの、あるいは福祉と言われているものに使われる場合が多いわけですけれども、セーフティーネット、あるいは所得再分配、救貧機能というものを持っているだろうと思います。
 さて、今のお話は雇用保険を中心にした話だと思います。雇用保険について考えていきますと、雇用保険に集まっている六兆円、これをその救貧の方に使えないかという考えでございますけれども、二つのアプローチがあると思います。
 一つは、生活保護の方を拡大して、失業保険が切れてしまった人に、今生活保護の中で十分ではない雇用訓練などを組み合わせて、しかし一定の制限、時間的な制限は行う、しかし資産制限は行わないというような形で緩い生活保護をつくることによって、実質的にそこを救うという方法はあるかと思います。もう一つは、雇用保険の方を緩く条件を付けて、深刻な労働者に対して受給期間を延ばしたりするということも一個の手だと思います。
 さらには、国によってはこの中間形、つまり失業扶助というものがありまして、これは失業をして失業保険が切れた者に対して税を財源にして給付を行うというものもあるかと思います。これはそんなに多くの国であるわけではありませんけれども、また工夫をしないと長期失業につながってしまう可能性もありますけれども、こういう時期になればこれも考えなければいけないと思います。
 ただ、それに保険を使うかどうかというのは、緩い保険というものを付けていくといわゆる保険原理を弱くさせますので、そこはやや問題もあるかもしれません。ただ、現状を考えていきますと、保険対象者をもっと増やしていくと。それから、公務員のようにもう保険から外れている人間もいますので、社会の連帯という目で見れば、余りこういう時期に厳密な保険原理を気にする、あるいはモラルハザードをどこまで気にするかというのもあるとは思いますけれども、こういう時期は考えてみなければいけないテーマかと思います。
 以上です。
#32
○峰崎直樹君 ちょっとお三方に一枚の資料を参考にしていただきたいんですが、先進諸国の高齢化率と一般政府財政の比較ということで、通常よく言われているように、租税負担あるいは社会保険料負担と合わせてこれが国民負担と。余り表現は良くないんですね、公的負担と言うべきなんだと思うのですが、このいわゆるGDPに対する比率がここに書かれてきているわけです。これはOECDその他いろんな資料から参考にさせていただきました。
 これで見ると、日本の税負担というのはアメリカより低い。ひどいものですね、これ。特に個人所得税が五%となっているんですが。そして、社会保険料負担は一〇・一%ということで、これはアメリカやイギリスよりもちょっと高いんですけれども、そのうち使用者負担幾らと書いてあります。
 何が言いたいか。もう余り時間がありませんから、このことで大きい政府とか小さい政府、中福祉中負担論は総理がおっしゃっているので本当はそこを聞きたいんですが、その下の、その数字の中で十二番ですね、Bというのは何でしたっけ、財政支出総額は三八・二ですが、うち社会保障料の支出が一七・七で、引くと二〇・五と、こういうふうになります。十四番の数字を横にずっと見てください。日本二〇・五、アメリカ二〇・四、イギリス二四・一、ドイツ一九・六、フランス二五・三、スウェーデン二六・六。
 これは、社会保障関係の支出を除いた財政支出の総額ということで、この真ん中にあります囲みの中において、政府による消費と投資は一番、これが二〇・五に対応するものです。社会保障給付は必要原則による家計への再配分と、こう書いています。これが現代国家の機能なんじゃないかと。右側にずっと行くほど、これはスウェーデンのように高福祉高負担、左側に行けば行くほど、アメリカや日本のように、私は日本もそうだと思っているんですが、低福祉低負担。
 次の右下を見ていただきたいんですが、これは医療費です。所得階層別に見た医療費がアメリカと日本でどんなに違うのかというのを見たんですが、日本の一九九九年、ちょっと古いですけれども、医療サービス支出は所得階層によってほとんど変わりません、比率は。ところが、アメリカの医療サービスは、まさに高額所得者は高い医療費を、そして低所得者はほとんど医療は非常に低い医療と。これは通常、階層消費と、こう呼ぶんだそうでありますが。
 まず、ちょっと駒村先生にお聞きしたい。お三方もそうなんですが、こういうふうに医療費を市場原理に任せてしまうと、アメリカのような構図ができ上がっちゃいます。つまり、命の値段も金次第と。隣の日本の、世界でも最も優れた制度だと言われている日本の国民皆保険で、医療費は、だれでもどこでもいつでも、これは医療サービスが受けられますよと、最近はそれがどんどん落ち込んでいますけれども、どちらが望ましいと思われますか。お三方、これだけちょっとお答えください。
#33
○参考人(駒村康平君) お答えします。
 アメリカ、見てのとおりの状況で、所得階層によってアクセスできる医療費に差があると。又は、医療費がGDPに占める割合が一五%、もう少しこれは上がっているものだと思います。この一方で、無保険者が大量にいるということも周知の事実だと思います。
 医療保険というものを自己責任、あるいは医療給付というものを自己責任という考えでいく国か、あるいは日本みたいに医療サービスというのはある程度アクセス保障をしている国なんだというふうに考えるか、これは社会の連帯感の差だと思います。私は日本型の方が当然よろしいかと、こういうふうには思っております。
#34
○参考人(熊野英生君) アメリカの場合は制度が余り大きくないので、全部自分でやらないといけない。とっても面倒くさくて、使いこなし能力がなければその恩恵にあずかれないので、非常に面倒くさいと。私は、そういう意味では日本の制度の方が、一般的に言って日本型の方が世界のスタンダードに近いんじゃないか、その最先端を行っていると思っています。
 ただ、日本の場合も、じゃ、これでいいのかというと、改革は必要だと思います。今介護の現場では、公的なプライスが抑えられているので、介護で働く人たちもなかなか給料が良くないと。したがって、今、介護の専門学校も閑古鳥が鳴いているという話を聞きます。これは、介護については、最低限のところを官で面倒を見て、アップサイドの部分については自由にすることによって介護のビジネスを拡大させると。これは、もしかするとアメリカ流かもしれないので、日本は今のベースを守りながら、アメリカの民間ビジネスとしての医療の可能性を引き出していく、これが一つの未来像ではないかと考えています。
#35
○参考人(高橋洋一君) 日本とアメリカは全く好対照で、アメリカは右上がり、日本は全く水平ということですけれど、私は、混合診療を入れたときに、水平だけどある一定以上、ここは国民のコンセンサス、例えば二千万円以上だったら上がってもいいと、そういうふうに思っておりました。
#36
○峰崎直樹君 ありがとうございます。
 つまり、最低限の保障をどこに置くかということによっても違うんだろうと思うんですが、私はこの日本型のラインでいくのがいいなと思っているんですが、それ以上に、何が言いたいかというと、先ほどの真ん中の図は、小さい政府にしようとしても政府による消費と投資というのはこれはどこの国でも大体削っても削ってもここは同じだというんです。最後は社会保障をどういうふうに配分するかによってその国の性格変わってくる。
 そこで、お聞きします。
 今医療のお話をいたしました。私は、教育も、それからいわゆる現物サービスのところ、介護を今おっしゃいました、医療、介護、教育、保育、こういったところは国民が求めるものに対して、基本的にはどんな所得階層の方であれそのニーズにはきちんと応じていくべきだと、こういう考え方に僕は立つべきではないかと思ったんですが、熊野参考人が今おっしゃられたのは、基礎的なところは国がやって、その上は市場原理に任せていいんじゃないかと。高橋参考人は、例えば二千万円以上の人だったらもっと高い医療を受けていいんじゃないかとおっしゃっていましたけれども。
 私は、やはりそこのところは、つまり、特に教育はそうなんですが、日本の教育は私はアメリカ並みの医療サービスと同じ構造になっていると思うんですよ。高額所得者の子弟は高い教育を受けて、非常に低い人は、ほとんど高等学校もろくに出られないようなそういうところに終わっちゃって、これが貧困あるいは格差をどんどん実は再生産しているわけです。
 だから、それではなぜ教育はそうなっていったのか、医療はなぜ守られたのか。私はこれは保険原理が働いていたと思うんですよ。つまり、保険料を払っているんだから、大蔵省に対して、このことに対して、財政支援していますけど、大蔵省も地方自治体もやっていますが、しかし基本的には国民のこの皆保険である保険者の権利としての水準が守られているからこうなっているんだと。教育というのは保険原理じゃなくて全部財政でやっているわけでしょう、教育保険て聞いたことないです。だから、教育はもう日本はいつの間にかこの階層消費になっちゃったわけですよ。
 どうでしょうか。そういう意味で、この分野は市場原理に余り任せない方がいい分野だというふうに、私は今四つ挙げました。皆さん方の中でそうだなと思われるかどうか、そこら辺を駒村参考人、熊野参考人、高橋参考人にお聞きしたいと思います。
#37
○参考人(駒村康平君) まず、これから日本の高齢化というのは世界にまれなスピードで行きますので、好むと好まざるとにかかわらずある程度大きい政府の方に行くだろうと。それはある意味そのことでお金が掛かってくるだろうと思います。それに加えて、今御指摘の各対人社会サービスと言われているものをどこまで公がやるのかという厳しい選択になってくるだろうと思います。
 したがって、これは費用の裏付けというものが必要であるわけでして、すべてのものについてそれだけ大きい費用を裏付けるという国民の選択があればいいわけですけれども、現実問題としては、このすべてについて十分な公のものでやっていくということは難しいだろうと思います。そういう意味では、基礎的な部分は必ず公でやっていく必要はあるだろうと思います。
 ただ、その上でも、今、熊野さんがおっしゃったように、介護みたいに比較的利用者と提供者の間の情報の非対称性が弱いものは民に任せていってもいいかと思いますけれども、医療みたいな分野はかなり情報の非対称性がある可能性もあるわけですね。オプションでこの部分を乗っけていいですかいけないですかというのは、これはなかなか患者では判断しにくい部分があると。そういうところはやはり公できちんと賄っていくべきじゃないかと思います。
 そういう意味では、基礎的な部分、それから将来、ここで差を付けてしまうと、ここを節約してしまうと将来かえってお金が掛かるような部分、つまりこれは保育とか就学前教育、こういう部分は実は投資としては非常に有効な部分でございますので、こういう部分はきちんと公でやっていくと。一方、個人の選択がある程度利く分野については民の部分を入れていくのも仕方がないのかなと、こういうふうに思います。
 以上です。
#38
○参考人(熊野英生君) 日本は、歳入面では小さな政府で歳出面では大きな政府という非常にいびつな状態です。これはいつか解消しないといけないと思います。
 私は、消費税を福祉目的税化するというのは早晩必要だと思います。ただ、そのときには、どれぐらいのミニマムが本当に適正なのか、それは社会保障でも医療でも教育でもいいと思うんですけれども、それぞれに最低限のベースラインを明示した形で、便益に対してはそれなりの負担が必要だというのを示しながら増税に踏み切るということがいつかは必要だと思っています。
#39
○参考人(高橋洋一君) 抽象的な話をしてもあれですから、例えば、私がかかわった骨太二〇〇六の話をしますと、これ社会保障とその他分野を分けていまして、基本的には社会保障は自然体です。一兆六千というふうに、減ると言っていますけれども、実はそれはほかの埋蔵金で埋めるという話をしていますので、実際問題は自然体で伸ばすと。自然体で伸ばすということは、社会保障分野については、実は市場原理とかそういう話については余り考えていなかったというものの裏側だと思います。
 要するに、その先の話になったときには、その後で財政の話とかそういうような話がありますので、こういうのは多分五年とかそういうのでいつもロールオーバーして、よく国民の望むところはどこかというので判断すべき問題だと思いますけれども、当面は、そもそも市場原理とかそういうのを入れてどうのこうのという話ではないなと思っています。
#40
○峰崎直樹君 大分時間が少なくなりました。駒村参考人だけにお聞きします。
 ベーシックインカムという言葉がございますが、最近その入門書も何冊か読んでみて、これについて、駒村参考人、これを将来的に検討すべきテーマだというふうに思われますでしょうか。
#41
○参考人(駒村康平君) ベーシックインカムというのは非常に興味深い考え方だと思います。
 しかしながら、これは、ベーシックインカムの水準によっては、このベーシックインカムを主張している方には二通りの方がいて、一つは十分な所得保障をということを考えているわけですけれども、これは高くベーシックインカムを設定すればするほど、その分だけの財源を集めなければいけないということはあります。消費税でベーシックインカムという意見もありますけれども、これも高い消費税を設定しなければいけない。ベーシックインカムを市場原理から主張する方もいます。ベーシックインカムを入れることによって、あらゆる労働法制が要らなくなっちゃうとか、あらゆる給付が要らなくなっちゃうということがいいんだという意見もあります。
 私は、この意味では、ベーシックインカムの現実的な議論というのはまだ十分練れていないと。そういう中で、ベーシックインカムを当てにするのは早計かと思っておりまして、私は、基本的には、雇用のより良い機会の、雇用をいかに保障していくのかと、そして最低賃金、あるいは最低賃金を上げると、非正規労働者でも様々な手当をもらえば家族を持てるというような社会が現実的な社会保障制度だと思っております。
 ベーシックインカムというのは面白いアイデアですけれども、理想は遠いと。それから、具体的な案、議論というのはまだまだ進んでいないと、こういうふうに思っております。
 以上です。
#42
○峰崎直樹君 最近、与党も野党も給付付き税額控除という話をやっています。今、私たちの税の中で所得税を考えるときに、必ず所得に様々な控除がございます。この控除が実は高額所得者には相当大きな、効いてくるわけですね。つまり、それだけの現金を事実上取らないで実は支給しているわけですね。
 そういったことも併せてそれらを大きな財源にしながら、どういう形のあれを組めるのか。つまり、税における所得再配分機能というのを、私はどういう形でかもう少し高めるとすればそういう形ではないかなというふうに思っている一人でございますので、意見だけ申し上げて、最後に高橋参考人にお尋ねというか感想をお聞きしたいんですが。
 最近、中谷巌さんが「資本主義はなぜ自壊したのか」という本を書かれました。お読みになられたでしょうか。私も、大学の先輩なものですから、前はなかなかおっかなくて取っ付きにくいなと思っていたんですけれども、最近これを読むことあったんですが、この方はやっぱり何に一番、つまり自分が間違えていたなと思ったのは、経済の領域のことだけをずっと考えていたけれども、経済というのは社会全体の中にあるんだと。つまり、財政があり、政治があり、社会があり、そして経済という領域があると。この三つをバランスよくというか、考えて市場というものを運営していかないと良くないなというふうに書かれているんですが、高橋参考人、本当は竹中平蔵さんにお聞きしたいなというふうに思っていたんですけれども、高橋参考人やあるいは熊野参考人、駒村参考人、時間がもう二分ですが、その範囲内で感想があればお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
#43
○参考人(高橋洋一君) 先ほど、私は構造改革をかなり具体的に定義しましたので、そういう観点からいうと、中谷先生、何をやったのか私にはよく分からなかったので、何をやったか分からないときは何を反省したかよく分からないという意味で、正直言って私にはちょっとぴんとこなくて、抽象的な話が多くて、それは、私はいつも問題を具体的に解決するように具体的な話しかしませんので、その点でいうと、ちょっと擦れ違いがあったというような感想でございます。
#44
○参考人(駒村康平君) 私はそれを読んでおりませんのでコメントできませんけれども、経済学者として、もう一つの竹森先生の中に書いてある議論の方で大変重要なことがあると思うのは、経済学者というのは市場が有効であることを証明することが経済学者の仕事かのように言われていますけれども、フリードマンの恩師は、市場がいかに利かない分野もあるんだと、そこを明らかにすることも経済学者の仕事だと思っております。そういう意味では、いい方向というか、調整されたのかなと思っております。
 以上です。
#45
○参考人(熊野英生君) 私も実は読んでいませんで、余り読む興味がないと。私は首尾一貫している人が好きなので、高橋参考人はそういう意味では非常に私尊敬しているんですけれども、そういう人の方が読む価値があるのじゃないかと思います。
#46
○峰崎直樹君 ありがとうございました。
#47
○鶴保庸介君 峰崎先生のやや専門的というか、財政金融委員会かと思うような議論も飛び出してきましたけれども、私の方は、今日は構造改革を議論にということでございますので、ちょっと大づかみの話をまずさせていただいて、日ごろ思っている疑問点なんかもちょっとぶつけさせていただきたいと思います。
 今、お三方の参考人のお話、大変ためになる話だったと私も考えておりますけれども、ちょっとその話を聞いてもよく分からないというのがやはり構造改革なるものの実体であります。一体構造改革というのは何なのか、何を目指してしているのか。それが分からない限り、構造改革が良かったのか悪かったのか、それからどういう方向でこれから改革をしていくべきなのかなんという話はできないわけでありまして、お三方にまずそのことだけを聞いておきたい。
 特に、不良債権等々の消化問題が構造改革の一つだったというお話も飛び出しました。じゃ、その不良債権の評価をやっぱり、これは景気対策としては良かったということは間違いないと思いますけれども、構造改革の目的の一つとして考えていいものかどうか、この辺りも考えなきゃいけないなと思います。
 その辺りの日ごろのお考えをお三方それぞれ聞かせてください。
#48
○参考人(熊野英生君) 私も実は、構造改革についてという今日のテーマをいただいたとき、何が対象なのか、どこまでが範囲なのか、よく分かりませんでした。一つ言える話は、やはり小泉政権下で行われたいろいろな歳出削減をコアにしたいろいろな政策だと思います。
 多分、三つ要点があると思います。一つは国債三十兆、もう一つは不良債権処理、あとは民営化であります。これら三つに共通するのは、もはや右肩上がり、これは政府の支出も右肩上がりで拡大基調ではやっていけないので、そこに歯止めを掛けようというのが恐らく小泉構造改革のエッセンスだったと思います。
 そういう意味では、国債三十兆の部分は達成されたんですが、その犠牲としていろいろなところに副作用が出てきて、今のいろいろな社会保障問題を含めて、地方の経済に対して公共事業が必要か否かみたいな副作用が出ているのではないかと思います。そういう意味では、構造改革路線というのは右肩上がりにストップを掛けることには一応成功したんだけれども、その後更に前進していくことについては道半ばなのではないかと思います。
 不良債権処理については、これはちょっと観点は違うんですが、不良債権を処理さえすれば金融機能が健全化すると思われていたのがこれまでなんですが、現状、なぜ貸し渋りみたいな恐怖感が中小企業の金融機関にあるかというと、もう一回金融機関は金融を引き締めるのではないかという、そういう恐怖感が心理の面で非常に根強いので、中小企業に安心感を与えるような何か仕組みが必要だと考えられますし、金融機関の側はちょっとでも不良債権が増えてしまうといけないんだと思って、不良債権をすごく抑え込むように、融資についてもリスクに過敏になっていると。ですから、金融機関も中小企業もリスク過敏になっている状態を変えないと、恐らく構造的な改革、金融における構造改革は成功しない、これも道半ばで終わっているのではないかと。
 あとは民営化だと思いますけれども、民営化についても、すべて政府のセクターで抱え込んで、税収が右肩上がりのときは大丈夫だったんですけれども、それではいけないということで民営化したと。これも、民営化する行為に関しては成功したと思うんですが、じゃ、民としてうまく自立してやっていけるかどうかについてはまだ道半ばではないかと思います。
 そういう意味では、構造改革路線というのは幾つもの宿題を抱えている。つまり、今後の経済政策でいいますと、短期の上では経済成長を復活するということですが、景気が回復した後にはもう一回この構造改革の宿題に取り組まないといけない、中長期は構造改革で積み残された問題をまだやっていかないといけないというのがロングランで見たときの現在の位置付けだと思っています。
#49
○参考人(駒村康平君) 私も、この御依頼をいただいたときに、構造改革とは一体何なのかというのを非常に悩んでおりました。官邸のホームページから小泉改革の評価などを出した資料などを読ませていただいて、私なりにまとめさせていただいたのが今御議論があった不良債権の問題。これはバブル以降の後始末の問題でございまして、私は、これは専門外なんでコメントできる情報はないんですけど、あと二つは規制緩和と財政改革だと、こういうふうに思っております。
 規制緩和の方は、このことによってどれだけ直接的にあるいは間接的に労働の質の悪化が生まれたのかというのはなかなか検証しづらい部分もあろうとは思いますけれども、現実に起きている部分にこの構造改革が対応はしなかったと。これは、先ほど申し上げた、起きている原因、構造改革引き起こしたかどうかまで議論があるところですけれども、起きている雇用の質の悪化に対してセーフティーネットが事実上なくなっている状態に対応しなかったということは問題だったと思います。
 そのほか、規制緩和で特区を突破口にして指定管理者制度などが入っていって公共サービスが変わっていくわけですけれども、この公共サービスも劣化していく可能性もあるわけですけれども、これに対してもきちんと対応したのかどうなのかというのが、一つこの小泉改革の、だから私としては、構造改革というのは小泉政権下で行われた一連の政策であると、こういうふうに把握して今回報告をさせていただきました。
 最後に、財政問題でございますけれども、確かに財政の収支はある程度改善しております。一方で、先ほど申し上げたように様々なプログラムが入っていると。これは、医療、介護、年金の三つの社会保障改革でありますけれども、これは将来的に厳しい給付カットを内蔵しているというものでありまして、これは、先ほど高橋さんからお話があったようにまだ動いてはいませんけれども、動き始めるとかなり厳しいカット、しかしそれは財政改善効果もあるだろうと、こういうふうに評価をしております。
 以上です。
#50
○参考人(高橋洋一君) 構造改革とは何かといつも聞かれて、正直言って私もよく分からないというか、一回、そもそも私は、小泉政権の中でやっているときに、構造改革何ですかと聞いたことがあるんですけど、そんなの当たり前のことをやるだけだよと言われて、ああそうかと言って、あとはよく分からなかったというところが正直言ってあります。
 ただ、その中で、要するに小泉・竹中構造改革とよく言われますから、そこで、ですからイニシアチブ持ってやったものという意味で私は先ほど不良債権の話、道路の民営化、郵政の民営化というのを挙げました。そこでやろうと思ったことというのは結構たくさんありました。例えば規制緩和の話とか社会保障、ただこれは、そんなことできなかったという印象で私はいます。
 それと、あと小泉政権下全部の話といえば、それはたくさんあると思うんですけれど、例えば財政の話というのは、これは財務省が非常に強いですから、多分どんな政権でもいつも言っているような話のように私は感じました。要するに、いつもほとんど財政再建とずっと言い続けておりますので、財政問題大変だ大変だと。もちろん、この問題、一朝一夕に解決できないので、ずっと言っていくというのは当たり前ですから、特段強く、マスコミの報道なんかで印象が違うかもしれませんけど、財政問題に強く焦点を当てたというのはなかったのか。やろうかなと思ったのは、社会保障のマクロ管理というので多少一部強いのがあったと思います。ただし、これはほとんど議論だけで終わったというふうに思っております。
 それで、結果的に安倍政権のときに何が積み残したのかなということで言われたので、申し上げたのはまず労働の話。正規、非正規の話とか、これについてはほとんど手付かずです。それで、結果的には諮問会議で八代先生を呼んだというのはたしかそういう経緯だったと思います。
 それとあとイノベーションの話とか、それとあとオープンネスの話、この二つについてはほとんどできていなかったと。これは具体的にどんな政策かというのは、例えば技術革新の話とかオープンスカイとか、こういうふうな政策ですけど、こういうものについてはやった方がいいんじゃないでしょうかと申し上げた記憶はあります。
 その意味では、先ほどいろいろと話があって、小泉政権の話というのは、全部というと、ほとんど担当大臣でなかったら知らないのもたくさんある。もちろん小泉さんは知っているはずですけれど、でも御承知のとおり、閣議でいろんなサインしているのをみんなほとんど中身覚えていませんので、それをどこまでやっているかというのを認識を持ってやっているかというと、先ほど挙げた不良債権と道路の民営化と郵政の民営化、この三つだったというふうに思います。
#51
○鶴保庸介君 まさに今、高橋さんおっしゃったことなんですね。構造改革何か分からないというような、お三方それぞれ言われた。しかし、小泉総理がこう言われたというんですね。当たり前のことをやるだけだって。でも、その当たり前のことというのはそれぞれ各人各様考え方が違う、そしてまた、その当たり前のことの順番というのを何を優先順位にしてやるのか分からない。これが今の政治の一番の問題だと、私前々から思っているんです。
 ですから、一番聞きたいのは、構造改革とは何かという私の質問の仕方が悪かったんですけど、何のためにやっているかを是非お三方に聞きたい。手短で結構ですから、この話は私の質問の後の質問者にも多分影響する話だと思いますので、何のために構造改革をしていると、お考えを、ありますか。どうぞ。
#52
○参考人(熊野英生君) 多分、当たり前のことをやるというのは、このまま昔と同じ流儀でやっていると駄目なので、低成長の中で国民に対する便益を最大化するためには、今までと違うやり方で何の分野でもやらないといけない、変えること自体に意味があるんではないかということで行われたのが、構造改革の方針、中身だったと思います。
#53
○参考人(駒村康平君) 私は、経済の面に着目しますと経済成長のためだと、こういうふうに思っています。パイ、配分はともかく、日本経済全体の大きさを大きくしたいというのが構造改革の目的だったんじゃないかと私は評価しております。
 以上です。
#54
○参考人(高橋洋一君) 政策は何のためにやるかというと、やっぱり国民の生活の向上だと思います。それで、やはり経済成長の形をどのような形で達成するか。この民営化とかそのような一連の流れというのは、大体において、もし民営化すべき分野がしてなかったらした方がいいというのは多くの経済学者のコンセンサスと思いますけれども、そういうのでやったというふうに思っております。
#55
○鶴保庸介君 その便益の最大化であるとか経済成長であるとか生活の向上というのはよく分かるんです。ただ、国民生活の向上という高橋参考人のお話ですけれども、これもやっぱり抽象的ですよね。経済的なところに力点を置くのか、それとも、その人その人の生きがいなるものに力点を置いて、人としての幸せとかいう部分に価値を置いてやっていくのかという部分は非常に大事な部分だと思いますから、ちょっとその辺り、高橋参考人、もう一度お聞かせいただけますか。
#56
○参考人(高橋洋一君) これ、政府でできることがどこまであるかという議論に大きくかかわるんではないかなと思います。個人の話とか、そういうことというのは非常に多様、価値というのは多様でありますね。ですから、かなり難しい。
 先ほど私がちょっと申し上げましたけれど、政府でかなりできることというのは、例えば規制があったらなくして長期的な成長率を高める、あと短期的には、需給ギャップがあれば何らかの形でそれを埋めて失業をなくす、こういうことはできますので。ですから、小泉改革のときにはそんなに、需給ギャップというのは縮小していくことだったのでそんな短期的な話は考えたことはなかった、それほど考えていませんでした。一部にちょっと政策金融やったときには、実は金融危機があったときにどのようにやるかというので危機対応スキームはつくりました。
 ですから、そういう意味で、先の話は考えておりましたけれども、目先の話では余り景気対策というのは、徐々に景気が良くなっているという意味では余り考えてなかったと思います。あと、ですからそのときには、長期的な、規制をなくしてなるべくパイを大きくするとか、それと不要な規制をなくして仕事を増やすとか、そういうふうな観点で行われたと思います。
#57
○鶴保庸介君 そうだと思います。政府が考えられること、これは多少モデレートな部分でなければいけないと思います。しかし、そんな中でも、政策の選択をするときに何から一番先にやらなきゃいけないか、そしてそれを国民に理解をしてもらうという部分においては、国民の望むところの最大公約数的なものというのは、時の政府、政権が理解をし、把握をしながら先に進んでいかなければこれは政策にならないと私は思うんですね。
 その辺りは何か御感想というか、反論でもいいですから、何かおありであれば、高橋参考人、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
#58
○参考人(高橋洋一君) 別に反論というのはないですけれど、私は郵政の民営化やっていて、幾らやっても先に行かないなと思っていて、それで、正直言って、この参議院で否決されたときに私はこれで仕事が終わったと思って喜んだんですけれども、そうしたら直ちにこれを民意に問うということでびっくりしまして、それから以降、いや、これが民主主義かと思いまして、その後いろんな経緯があって。それ、珍しいと思いました。その一点だけを問うてやったわけですね。それで、ある意味で、こういうやり方があるのかというのですごく驚いた印象があります。
 これこそ一つの、もちろんその結果とかやり方とかそういうふうに賛否がいろいろあると思いますけれども、それはまさしく民意に、分からせるように、それでどうやって分からせるかというのは最終的にはやっぱり選挙というのでやっちゃったのかなと思って、これはもうすごく、私の人生の中で非常に驚いたことの一個でありました。
#59
○鶴保庸介君 少々抽象的な話になってしまいましたから、ちょっと具体論に即して聞きたいんですね。
 例えば、今、構造改革と言われる議論で出てくる事例の一つに、政府部門の整理縮小なんというのが結構あります。これは財政的なものもインセンティブ、モチベーションの一つにあるんでしょうけれど、これはしかし、国民の幸せにどれだけ直結するか、国民生活の便益にどれだけ直結するかというと、これは実を言うと賛否両論、見方には裏表があると私は思うんですよね。
 こういう話をしたときに、これは、じゃ熊野参考人かな、便益、国民の便益とおっしゃった、いや、じゃ駒村参考人にお聞きしましょう。経済成長とおっしゃった。政府部門の整理は経済成長に寄与するとお考えですか。
#60
○参考人(駒村康平君) これはなかなか難しい質問だと思います。確かに、価格メカニズムが働く部分のウエートを大きくするという意味では経済成長に寄与する可能性はありますけれども、必ず経済成長に、政府部門をちっちゃくすれば経済成長につながると言えるかどうか。例えば、北欧でも公的部門は大きいわけですけれども、国際競争力が十分ございますので、そう言い切れるかどうかというのは分かりませんけれども、可能性はあるという程度だと思います。
#61
○鶴保庸介君 とすれば、経済成長においての、経済成長を目的とする構造改革の優先順位というのは当然これ低くなるというふうに私は考えるべきだと思うんです。
 経済成長というもの、あるいは国民の経済的な豊かさを目的にするのであれば、ほかにしなければいけないことは実を言うとたくさんある。その中の一つに、その考え方を突き詰めていった中で、当然その政府部門の整理合理化といいますか、そういうことも視野には入ってくるんでしょうけれども、今やらなければいけないことの中にどれだけそこのプライオリティーが高いか。これ、やっちゃいけないと言うんじゃないですよ。私は個人的にはもっともっとやるべきだと思いますけれども、今、構造改革と言われているものの議論が余りに錯綜して、何でもやれと、まさに高橋さんおっしゃったみたいに何でもやれと、当たり前だと思うことを何でもやれという中に、その何でもが、もう一瞬、一見これとこれは整合性が取れているのかと思いたくなるようなものまでが混じってきているように私は思うものですから、その辺の整理を是非これからも議論しながら進めていきたいなというふうに思います。
 そうはいえども、幾つか財政的な経済的な話もありましたので、ちょっと残りの時間そんなところをお話を聞きたいと思うんですが、まず金融の問題で、不良債権の処理についての議論はお三方それぞれ異口同音にお述べになられました。確かに、不良債権処理が構造改革の一つの目玉として進み、そのおかげで景気対策、景気が浮揚する一助になったという話はそのとおりだと思いますが、しかし、そこで一つ疑問が起こるんです。
 熊野参考人にお伺いします。不良債権がオフバランス化をして、金融機能がもっと健全化しているその中で、なぜ仲介機能が不完全なのか。そして、それが今不景気のもとになっているというお話でしたから、熊野参考人はその辺りはどういうふうに分析なさっておられますか。
#62
○参考人(熊野英生君) 一つは、やはり金融機関と企業経営者のマインドがいまだに萎縮していて、金融機関が貸してくれないんじゃないかという疑心暗鬼が大きいということと、金融機関側も損失が一円でも増えることを恐れていると。そういうリスク過敏の不安感がまだ残っている部分があるのではないかと思います。
 あと、システムについては株価の下落が銀行の含み損という形で自己資本に跳ね返ってきて、これ六掛けで自己資本にマイナスが算入、ティア2のところに算入されるんですが、これ例えば八%の自己資本ルールでやると百割る八が十二・五なんで十二・五倍のリスクアセットを落とさないといけない。あるいは、リスクアセットについても企業の格付によって、企業の格付が悪くなると貸せなくなってしまうと。そういうふうな、バーゼル2と言ったり自己資本比率規制と言ったりするのですが、その仕組み自体が今余りうまくいっていない、その部分もやはり金融がうまく今仲介機能を果たせない一つの要因ではないかというふうに思っています。
#63
○鶴保庸介君 それは、端的に言うと、金融のシステムそのものを微調整すれば景気は良くなると、こういうことと理解していいんですか。
#64
○参考人(熊野英生君) 日本は自己資本比率規制をやめることは、国際的な枠組みの中であるのでできないと思います。こうなると、次善の策として考えられるのは公的資金の注入。これ金融機関が受け取らないと言っていても、ある程度金融機関がそれを受け入れて自己資本をかさ上げしながら融資を活発にしていくと。そういう政府の介在の力をより大きくする形で融資が増えるようなそういう形にしていくメカニズムがなければ、今は余りポジティブには金融が働いていないので、この状況を改善することはなかなか難しいと思います。
#65
○鶴保庸介君 私が問題にしたいのは、一部の論者が言うところは、今の不景気は完全な需要不足であると。高橋参考人さっきおっしゃいましたデフレギャップが物すごく、八十兆ですかね、ほどあってという話がありましたけれども、そういう需要不足の時代にいかに金融機関のその分、もちろんこれは必要ですよ、車の両輪でやっていかなきゃいけない。でも、その論者が言うところの意見は需要不足にあるわけですから、お金が幾らあっても借りてくれないわけですよね。借りてくれるようにするためにはどうすればいいかというところが今議論の論点、力点があるように思うんですよ。そこのところはどういうふうに理解をすればいいのか、熊野参考人、もう一回ちょっとお願いできませんか。
#66
○参考人(熊野英生君) 私は、需給ギャップが大きいのでそれを財政支出で穴埋めよという考え方には余り賛成しません。これは、計算上はそういうふうになっていますけど、実際は、今経済の落ち込みが非常に大きくて、この需給ギャップの大きさがずっと永続するわけではなくて、むしろこれを歯止めを掛けるような、つまり財政を支出するよりは今の流れを早く止める方がプライオリティーとしては高いんではないかと、それによって需給ギャップの大きさというのは全然変わってくると思います。
 今需要がないというふうに思われているんですが、私は、経済の金融を専門にしている者としては、必ずしもそうではないんではないかと思います。需要が消えたのではなくて、金融に対する不安、金融制約が非常に大きいと。
 昨日もある輸出企業に話を聞いたんですけれども、今は設備投資のチャンスだ、あるいは事業を拡大するチャンスだ、しかしながら社債、CPの市場では機能不全が起こってお金が調達できないから、本来はチャンスなんだけど動きが取れないと、そういうふうな、特にまだ国際的な競争力が非常に強い分野については金融不全の部分というのが需要を束縛していると。
 私は、金融機関の融資姿勢が非常に円滑になって、企業経営者もおそれよりはリスクをチャンスに変えるような、そういう行動ができるような金融環境になれば需要はかなり大きく広がりますし、ある程度の需要の補てんというのは必要かもしれないですけれども、そういうふうに民のポジティブな投資の力を引き出すことが結果的には必要となる財政支出の規模を小さくするというふうにも考えています。
#67
○鶴保庸介君 そこのところは重要だと思いますので、駒村参考人、高橋参考人にもちょっと御意見聞きたいと思うんです。
 今需要サイドにそう問題はなく、ないとは言わないけれども、まあまあプライオリティーはどっちかというとシステムの問題があるという話がありました。
 どうでしょうか。今、若い人たちにいろんな話をしますよね。欲しいものあるかと言ったら、大体若い子は余りそんな欲しいもの別に、特に物として、耐久消費財のようなものは別に物としてはないとか、それから、実際言われている話は、豊かになり過ぎて物に対する意欲もなくなったし、生き方もすごく内向的な生き方になって、活発に何かしましょうとか冒険をやりましょうとか、若い人たちにアンケート調査を取ったら、海外旅行へ行きたいかと取ったら、何か物の本を読みましたら、余り海外へ行ったりしたくないと、安定志向で余り、あえて言うならハワイだカナダだというようなところは行ってもいいけどというような実を言うと時代なんだろうと思います。
 必ずしも彼らがすべての日本の状態を表しているとは言いませんけれども、だんだんだんだんそういうところもあるのかなということが経済の議論の前提にありますから、駒村参考人、高橋参考人、この辺り、御意見をいただきたいと思います。
#68
○参考人(駒村康平君) 私は、マクロ経済、金融政策というのは余り得意にしておりませんので余りコメントはできないんですけれども、御指摘のように、確かに物の購買、購入意欲が落ちている、あるいは百年に一度というこの情報自体が非常に家計を防衛的にしている部分があるかと思います。それ自身がやはり更に内需を引き下げているんではないかと思います。
 もう一つは、やはりお金そのものも余裕がない世帯も増えていると。これも一つの景気の足を引っ張っているわけですから、低所得者にお金が回るという仕組みは非常に重要だと思いますし、百年に一遍というのが余り出過ぎると非常に防備的になるのかなというふうに、そこがまた日本の景気の悪化を加速しているんじゃないのかなというのが、専門外でございますので、そのぐらいの印象を持っております。
 以上です。
#69
○参考人(高橋洋一君) 需要がほっといても回復するんでしたら多分何もする必要がなくて、全く結構な話だというふうに思います。ただし、こういうふうな不況のときには、やっぱりだれかが率先してやらなきゃいけないというふうに思います。要するに、民間の方を待っているというんでしたら多分何もしなくていいんですけど、それですと恐らく失業率が高まるというふうに思います。
 それで、需要がないじゃないかというと、それは需要を見付けるのに非常に大変なことはそのとおりであります。それから、政府の方で需要をつくるというのは至難の業であると思います。ただ、でもその中でみんないろいろ工夫して、エネルギーのこととかいろんなことをやるわけですよね。取りあえずいろんなことをトライしてみたいと思います。
 それとあともう一つ、本当に政府の方で決めることができなければ、実は、これを国民にゆだねるという意味で、減税なり給付金とか、こういう政策というのが実は望ましいというときもあります。要するに、政府の方で何も知恵がないというんでしたらそれを国民にゆだねた方がいいと思います。
 それで、そういう形でしてでも需給ギャップを早く、本当に回復するのがもう明々白々でしたら私も何も言いませんけれども、どうもそういうふうにならないんで、どちらかというと失業の率が高くなりそうだということですから、予防的な意味でも大きな対策を打つべきであるというふうに思っております。
#70
○鶴保庸介君 需要サイドで、物の話をしたときにはちょっと分かりやすいからそう申し上げたんで、ちょっとそればかりですべての経済を理解するというのは難しいんでしょうけれども、乱暴な議論になると思うんですが。
 欲しいものがないからという話、でもそうはいえども頑張らなきゃいけないと高橋参考人はおっしゃいました。そのとおりだと思います。じゃ、頑張るために何をしなきゃいけないかと。この論点は、国会の中でも、今、予算、その補正やりました。どっちかというと財政出動をしていくべきだという議論の方が今声は大きいと思います、この不景気を脱却するために。じゃ、しかし、そこで何をしてもいいのかという話ではもちろんない。何をするべきなのかというその選択をしなければいけないときなんだろうと。
 そこで、さっきの需要サイドの話をちょっと戻って考えるんですね。本当に需要に、生み出すことのできるものに投資をするべきではないかという議論が当然あります。そして、それは何なのか、そういう議論が余り、実を言うと大きな議論が余りこの国会の中でもされていないような気がしますので、熊野参考人と高橋参考人、ちょっとお二人、申し訳ありませんが、御意見を賜りたいというふうに思います。
#71
○参考人(熊野英生君) 幾つか論点があったんですけど、頑張るためには何をしないといけないのか。国民一人一人でいうと、自分が正社員になってどんどん給料が増えるんだと、そういう自分が働く未来を考えてバラ色のビジョンが描けるので支出を増やすと、そういうプロセスではないかと思います。何をして良いか悪いかについては、今百年に一度かもしれないけれども、そうじゃないかもしれないので、思い切ってやるんだけれども後戻りできるような、つまりスクリーニングとしては一回やっちゃったらもう後戻りできないような、例えば巨大な財政赤字を増やしてしまうとか、それはもう後戻りできない、増税しない限り、そういうのについては慎重に考えながら何ができるかを考えていくんじゃないかと思います。
 需要を創出するというのは、私は、グリーンエネルギー、これは太陽電池とか、あるいは太陽光発電、あるいは電気自動車というのは非常に可能性があると思います。政府がこれをやるかどうかはこれは深い議論をしないといけないですけれども、その枠組みづくり、税制優遇とかは必要だと思います。
 例えば、電気自動車が普及すると、今まで三台持っていた人でも、四台目を買おう、今までは四台目を慎重に考えていたんですけれども新しい車を買ってみようじゃないかと。今もハイブリッドカーは生まれています。
 さらに、これは副次的効果が非常に大きく、排気ガスを出さないと、例えば港区、千代田区、中央区などで完全に電気自動車が走ると多分大気汚染がなくなるので、ここに職住接近が来て東京の地価も上がると。恐らくこれは、バンコクでも北京でも東南アジアでこういう町づくりは輸出できるので、日本で電気自動車のシステムができると恐らくそれは輸出競争力にもなると。
 あとは、これは道路交通法などを変えて、無人運転ができるような形にするとそこで事故が少なくなると。もう既に一九七〇年代より三分の一に交通事故は減って、更に半分にしようという計画がありますけれども、これを具体的に実行するためには電気自動車にして電気制御にするとか、そういうふうなシステムをどんどん変えていくようなこと、ビジョンが描けると思います。
 そういう意味では、需要はないわけではなくて、需要は民と官がうまくマッチングさせて新しいビジョンを描くと。恐らく政治の世界もそういうふうな遠い先を見ながら民の力を引き出していくことが今必要なんではないかと。潜在的な需要はまだまだあるというのが私の考え方です。
#72
○参考人(高橋洋一君) これ、先ほどの重複になるかもしれませんけれども、それこそ、どういうふうな分野を決めるかというのは政府なり議会できちっと議論すべき問題で、それを私ごときがいろいろ言うのはあれかもしれませんけれども、今、先ほど申し上げたエネルギーの関連の分野は、これはかなり有望であるということは多くの人が認めるところだと思います。
 いずれにしても、どんな支出でも、これはBバイCという形で見て効果があればそれは何でもいいんだというふうに言われます。それで、全部並べてみて、いろんなところから並べて一番いいのから取っていけばいいというふうにまず思いますけれども。
 そのほかにあと、例えば教育の投資というのもこれかなり有望であると思います。今のように、例えば補助金、団体経由で配るのではなくて、いっそのこと個人に向けて、国民皆奨学金とかそんなような制度をつくったら結構すっきりする話になります。
 それとあと、農業も、いろんな団体にあげるんじゃなくて各個人に全部、個人なり企業に直接あげるような仕組みをつくってやるというのも輸出産業をつくる一つのやり方であります。これは今のお金の流れをちょっと変えるだけでして、いろんなことができます。
 それとあと、埋蔵金の話なんかでも、実は、これを政府が持っているよりか、それを全部吐き出して国民にゆだねちゃった方が実は良い結果にもなるというふうにも思います。もし本当に政策で何もないのでしたら、政府の持っている資金をすべて国民にゆだねちゃうと。そうしますと、先般、定額給付金の話でやったら急にビジネスができるんですね。二万円ぽっちでもああいうビジネスができるわけですから、仮に二十万円やったら、これは一大ビジネスが実は出てくる可能性もあります。
 実は、ほかの国でも、配るとそれに応じて、要するにお金を持っているところにみんな顔が向いていろんなことが出てきますので、そういう意味で、いろんなチャネルで工夫をされたらいいんじゃないかなというふうに思っております。
#73
○鶴保庸介君 いろいろお話を聞いておったんですけれども、高橋先生にちょっともう一個、じゃ、更問いじゃないですけれども。
 そのいろいろおっしゃったものの判断基準というのは高橋さんの中ではありますか。どういうことで考えていらっしゃいますか。熊野参考人の方からはちょっとさっき、大きな財政赤字が出るものは良くないとかというお話がありましたので、その点だけちょっと。
#74
○参考人(高橋洋一君) すべての投資に多分適用できる話としては、これは多分、公共投資でも何でも結構なんですけれども、社会的な便益が大きいやつであればすべて実は正当化されると私は思っております。あとは、財政の制約とかそういうのでどこまでやるかという議論はあります。
 ただ、そのとき、事前に、今やっている、これは公共投資だけじゃなくてもBバイCというのは計算できますから、それで見て横ぐしで入れて、例えば三以上のものを全国から持ってこいといえばそれを持ってきて、それは投資しても全く損はない話であると思います。
#75
○鶴保庸介君 そこなんですね。さっきの元の話に戻りますけれども、需要を生み出すためにという話、そこに財政政策の原点があって、しかし、いざ出すときになると今度は社会的便益の話にちょっと話の質が変わっている気がするんです。どうなんでしょうね、そこのところの理解、ちょっと私が足りないのかもしれないので。どうしましょう、高橋さんに、じゃ教えていただきましょうか。
#76
○参考人(高橋洋一君) それは社会的便益を満たしていることにこしたことがないという意味でして、そういうのからやった方がいいと思います。
 それで、ただ、経済対策を考えるときに、非常に早くやらなきゃいけないんですね。早くやらないとその分だけ需給ギャップが大きくなって、その分だけ失業が増えます。ですから、例えばアメリカなんかで政策をやるときに、今やれば失業何社、何万人減りますと、こういう説明をしますから、そういう意味で早くやった方がいいんです。
 それで、それだけの余裕がなければ、仕方がないので、これはばらまきというふうに言われるかもしれませんけれども、支出の主体を国民にゆだねるという形の方がよくなります。
#77
○鶴保庸介君 じゃ、今度は社会的便益の中身ですけれども、その社会的便益というのは何ですか。いわゆるBバイCのことをおっしゃっておられるんですか。
#78
○参考人(高橋洋一君) そのとおりです、はい。
#79
○鶴保庸介君 その社会的便益が、じゃ政府部門においても当てはまるかという議論をちょっとしたいと思います。
 ちょっと駒村参考人に、長らくこの話を避けてきたのは、ちょっと御意見を聞きたいんですね。
 社会福祉政策というものをBバイCで評価するとなると、いろんな考え方はあります。ありますけれども、直接的には、例えば介護だったら、この間どなたか、民主党の先生が、下田先生が質問なさっておられましたけれども、直接的には介護福祉士の給料であるとか職員の雇用であるとか、こういうものなんですね。恐らくそれだけではないんだろうと思うんです、社会福祉に投入しようと、力を入れようと言われる方々の思いというのは。
 そうすると、しかしBバイCでどこまでそれを測るんだという話をしたときに、恐らく参考人にもその御意見がおありだろうと思いますので、その辺りをちょっとお聞きしたい。
#80
○参考人(駒村康平君) 確かに測定しにくい分野であることは間違いないと思います。
 介護福祉士が今足りないあるいは賃金が低い、こういうところへ労働条件を有利にしてあげれば、それだけ新しい、この人たちがお金で物を買うわけですから、それは景気には影響を与えるだろうと思います。
 この一方で、どういう具合に賃金を上げていくのか、良い条件を付けるのかというのは、最終的には、いい介護サービスをやったらば今度は介護を受けている人がこれは満足感が高まるという意味で、ここが測定しづらい部分ですけれども、意味が出てくるだろうと思います。
 ただ、今のところ、良い介護という測定方法も技術もない、それに対する報いるシステムもないというような状況でございますけれども、それはこれからつくっていく必要があるだろうと思います。良い介護、質の良い介護を出すことによって、経済的には測定しづらい部分、これは国民が介護保険料等で最後には評価してもらうしかないわけですけれども、そこの便益を上げるということは可能かと思います。ちょっとそれは極めて、御指摘のとおり、間接的な効果しかないかもしれません。
#81
○鶴保庸介君 我々が考えるべきことで、結論を参考人の先生方にゆだねるつもりはないんですが、やはり事ほどさように厳しいと思うんです、苦しいと思うんです、そのどれを選ぶかという部分についても議論はいろいろあると。BバイCというお話ももちろん出ます。出ますけれども、社会的便益をどう考えるかによってやはりいろんな考え方がある。
 私は、もう時間がないからこの話は私の方からしますけれども、個人的には、もう個人の幸せとか豊かさとか、そういう哲学の部分を時の政権はやはりしっかりと前面に出して、それにそぐう形のもの、例えばやる気がある社会であるとか敗者復活のあるようにしなきゃいけないとか、そういうことを、抽象的ではあってもその正当性の根源になるようなものが必要なんじゃないか、そういうふうに私は思います。
 そこで、高橋参考人、ちょっと余り時間がないんですが、雇用の部分で、やはりいわゆる経済理論では新古典派経済学と言われる方々に依拠している部分が構造改革論者と言われる方々には多いというふうに言われておりますけれども、そこにはやはり一つの誤謬があると、完全雇用というものを前提にしているという議論があります。
 経済の理論の話ですから余り難しい話をされても困るのですけれども、高橋さんがどういうそれについて御意見をお持ちか聞いておきたいと思います。
#82
○参考人(高橋洋一君) 先ほどちょっと言いましたけど、小泉さんのときに失業率が下がっていったのでそれほど意識しなかったんですけれども、それで私さっき強烈に新古典派じゃなくてオールドケインジアンみたいな話を持ち出したと思うんですけれども、やっぱりギャップが大きくなったら、これはやらないと要するに失業が増えると。私は失業のコストについてちょっと普通の人よりかは過大に見ているかもしれませんけれども、その失業というのは非常に大変な話ですし、格差問題もすべての問題にかかわるし、人的資本の損失というのは大変なんですよね。ですから、私はそこを非常に重視しておりまして、例えば政府のなすべきことというので二つ挙げろと言われたら、物価の安定と失業率です、私は。そういうくらいに思っておりまして、ですから、そういう意味で私の優先順位は極めて高い、失業に対する対策は高いです。
#83
○鶴保庸介君 そうだと思います、経済政策の目的というのは伝統的には経済分配、富の分配と、そしてさっき言われたことだと思いますから。こういう目的をきっちりしながらやらなきゃいけないと思います。
 もう実を言うと聞きたいことがたくさん今頭の中を去来するんですけれども、これだけどうしてもということだけ、じゃ一つだけ、最後。
 突然国民年金の話をして申し訳ないんですけれども、駒村さん、ちょっと今日質問が少なくて申し訳なかったんですが、よく言われる年金の話で、未納率が増えるといけない、それが不安定化して年金の根幹が揺るいでしまうという話がありますけれども、そうはいえども、最近の議論の中には、未納は別にそんなに怖い話じゃないと。全体で見ると、国民年金の納付者というのは全体の三分の一ぐらいで、それで未納するやつはこれぐらいでということを考えてみると数%程度なんだと。税金も入っておるし、年金というのは揺るがないんだという議論もあります。駒村参考人に最後にその話を、ちょっと唐突ですけれどもお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
#84
○参考人(駒村康平君) 御指摘のとおり、未納の現状、数字は全年金加入者に占める割合は一〇%程度だと思います。その程度だと、二十五年の規定もありますけれども、年金財政がすぐに揺らぐということはないわけで、払わない人はもらえないということだけ、この部分においてはそのとおりであって、未納イコール年金財政破綻ではないだろうと思います。
 ただ、一方で、この未納の方は、当然生活保護というものを使える資格が出てくるわけですから、年金は問題ないとしても、生活保護の方に入ってきてしまうという意味では、社会保障全体で見れば大変大きな問題だと、こういうふうに思っております。
#85
○鶴保庸介君 ありがとうございました。
#86
○荒木清寛君 公明党の荒木清寛でございます。
 今日は、お三方、長時間大変にありがとうございます。
 まず、熊野参考人と駒村参考人に同じことをお尋ねしたいんですが、先ほど熊野参考人のお話の中で、スキルを高める形で賃金をアップすることが重要だ、このような御指摘がありました。これは私もワーキングプア対策としては大変重要な視点だと思いますし、実際様々な政策が行われてきたわけですけれども、この点では余り効果が上がっていないわけですね。したがって、そのことを実現するために具体的にどういうことを今後政府は行っていくべきなのか、お二人それぞれにお尋ねいたします。
   〔委員長退席、理事岩永浩美君着席〕
#87
○参考人(熊野英生君) 今の政府の雇用対策は非正規雇用と正規雇用という二つのカテゴリーしかないんですが、恐らく、今百万円を企業は受け取って非正規雇用を正規雇用にできるんですが、そこにもう少し、今は技能労働者ではないですけれども、技能労働者を育てるというときには社会保険料負担などを含めて負担する、そういう技能労働者の予備軍をつくっていくようなサポートもやっぱり必要なんではないかと思います。
 あともう一つは、技能労働は極端にミスマッチが大きいんですね。ですから、セーフティーネットだけではこのミスマッチは何とかできないので、政府のいろんなチャネルもあると思いますけれども、インターネットなどを使い、民の力で技能労働者のミスマッチをなくしていくような情報の透明性、これを確保していくことが一つの政策の指向性だと思っています。
#88
○参考人(駒村康平君) 御指摘のとおり、スキルアップを進めていく政策は極めて有効だと思っております。一つは、積極的に新しい技術を手に付ける、それからもう一つは、衰退産業から動かしていくというのがあるだろうと思います。
 ただ、いわゆる北欧で行われている積極的労働政策というのは、北欧というのが極めて資格社会であるというので、その資格と賃金を労使の中できちんと協定で結んでいくというのがその背景にある、これがうまくいくコツだと思います。
 そういう意味では、日本ではそういう形には今なっておりませんので、役に立つスキルとはどういうものなのか、役に立つ資格とはどういうものなのか、これは政府が分かるわけではないと思いますので、労使できちんと選んでいくと。そのうちで、これは公定化していこうと、これは決めた以上は賃金にちゃんと反映していきましょうと、非正規労働者でも、過去にこういう経験があった場合はこれはスキルとして評価してあげましょうと、こういうスキルの階段をつくっていく。これは労使でつくっていき、それを公定化していくというのが政府の役割だと、こういうふうに思っております。
#89
○荒木清寛君 次に、駒村参考人にお尋ねいたします。
 先ほど鶴保委員からお話があった点の続きにもなりますけれども、提出された御資料の中にも基礎年金改革についての問題点を指摘をされております。
   〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕
 私も、よく国民年金満額もらっても無年金の人の生活保護の方が多いではないか、こう言われますと、なかなかどう答えていいか、思うわけでございます。したがって、私は、過去の年金改革は年金改革として、更なるバージョンアップというか充実が必要だと思うんですね。そのことについての御見解と、特にその中で、そういうこともあるので、基礎年金を全部税金でやったらどうか、こういう提案もありますね、そのことについての御見解もお願いいたします。
#90
○参考人(駒村康平君) 御指摘のとおり、基礎年金にマクロ経済スライドを掛けた、これは間違いだと思っております。
 一方で、年金財政全体を見れば、基礎年金にマクロ経済スライドを掛けなければ厚生年金の方に倍掛かるということになりますので、一気に下がっていくことになると思います。そうなると厚生年金に入るメリットもなくなっちゃうということになりますので、ここは基礎年金に相当する部分の財政は別枠にしなければいけなくなってくると。
 ただ、このときに、基礎年金に相当する、つまり定額で皆さんに一律で出すという制度を維持するのか、それとも最低保障型に切り替えて、報酬比例年金はあるけれどもそれが不十分な方にはこの最低保障年金を出していくと。これはいわゆる北欧型モデルと言われている方に、あるいは実質的には生活保護や様々な手当という形で低所得者を優遇した形でやっていくかというのは、これは選択肢だと思います。
 私は、財政事情を考えていきますと、全額一律に出すというのはかなり難しい状況。実際には北欧、スウェーデン、フィンランドにおいてもかつては基礎年金部分を全額税方式でやりましたけれども、やはり高齢化の負担、その他現物給付のことを考えていくとかなりそれは難しいということで、ポイントを重点を置いていくと。ただし、どんなことが起きても生活保護以下には基礎年金もならないんだという最低保障年金、全員にあげるというわけではないかもしれませんけれども、そこを税財源でやっていくというのは一つの選択肢かとは思います。
 以上です。
#91
○荒木清寛君 よく勉強させていただきます。
 それで、次に高橋参考人にお尋ねいたします。
 先生の金融政策についての本は私も読みまして、私のような者には大変勉強になりましたし、また定額給付金について一定の評価をしていただいている点は我が意を得たりと、こういう思いでございます。
 ただ、参考人の主張というのは、今の日本経済の停滞というのは金融政策の失敗が一番大きな原因だと、こういうお話だと思うんですが、一般的に言われているのは、経済は好調だったけどアメリカの破綻の影響でこうなったんだということで、この点はかなり参考人の主張は異説というか、主流の主張とは違いますですよね。
 それと、日銀が政策を誤った原因として、財務省と日銀の妙な意地の張り合いがあるとか、あるいは日銀の強烈なエリートの矜持ですとか、そういう御指摘もあるわけで、確かにそういうこともあるんだろうとは思いますけれども、それだけで果たしてそうした金融の専門家の集団が金融政策を間違えるんだろうか、こういうふうにも思うわけなんです。
 そこで、参考人には改めて、参考人のお考えではどうして日銀がそうした判断を誤ったというふうに考えておられるのか。それと、金融政策は日銀に任せられているわけでありますけれども、政府として、また国会としてこうした金融政策について行うべき点があればこの点もお聞かせをいただきたいと思います。
#92
○参考人(高橋洋一君) ちょっと書き方が悪かったかもしれませんけれども、一番最初に、日本銀行が判断を間違って景気が下っているときに後ろから押されたというのが真意でございます。たしかそういうふうに書いているんですけれども、ただその前半だけを強調しちゃって、それですべてと言われると実は全然そうじゃなくて、間違っていて景気が下り坂になっているときに外的ショックがあって、その外的ショックというのは実はさっきの輸出の話とかそういうのが大きいというのは、それはそのとおりだと思っております。
 それで、判断を間違えたのはなぜかと。そのときに私、実は総務省にいたんですけれども、消費者物価統計というのがゼロ以上に安定的になれば実は量的緩和解除と言っていたんですけれども、そのときに〇・五だったんですけど、はっきり申し上げましたけど、これは〇・五というのは改定したらマイナスですと言っているんですけどね。言っていて、マイナスですから違いますよと言うんですけど、それで解除しちゃったんで、私はそこはすごく不思議だったんです。それで、結果的にその後七月、八月ぐらいだったんですけど、改定してやっぱりマイナスだったんですよ。
 ですから、それはマイナスになります。それはなぜかというと、統計の上方バイアスはちょっと技術的な話があるんですよね。それを言っているんですけど、それにもかかわらずやったんで、私はすごく不思議だったんで、それは多分、間違いを犯したというのは、何かとにかく正常化という言葉で利上げしなきゃいけないということだったと思います。普通ですと、ゼロから二%の間に保つというんでしたら、本当の数値で一%ぐらいでないと何もしないですね。それを、見かけ上〇・五、それで実質はマイナス〇・一だったんですけど、そのときにやるということについては私はよく分からなかったです。それは、ですからその意味ですごく不思議だと思いましたので。
 それで、何をしたらいいかということですけど、目標が、これ日本銀行といっても行政機関の一個なんですよ。それなのに目標がはっきりしていないんですよ。普通の国でしたら目標というのははっきりしているんです。行政機関だったら当たり前なんです。例えば、ゼロから二と言っているのを目標ですかと聞くと、目標じゃないと答えるんですよね、日本銀行。これはおかしいです。ですから、政府なりがきちっと目標を与える。あと、国会がというんでしたら、承認するとき、あなたの目標は何ですかというふうに聞かなきゃいけないと思います。普通の国でしたら、この議会のときに目標はどうしますかと聞きますね。そして、目標を与えたら後はもうお任せしますと、その代わり目標がうまくいかなかったときにはきちんと説明してくださいという言い方になります。
#93
○荒木清寛君 少し時間がありますので、もう一度熊野参考人に戻ってお尋ねいたしますが、私も、今回の日本の景気低迷がヨーロッパあるいは欧米に比べて落ち込んでいるというのはアメリカ向けの自動車の輸出に余りにも依存し過ぎたということかと思います。そこで、先ほど言われた内需拡大する国への輸出へシフトするために今すぐ取るべき政策といいますか、ものがあるんであれば是非お教えいただきたいと思います。
#94
○参考人(熊野英生君) 今どこの国に進出すればチャンスがあるかというのは、多分先見的には分からないと。あと、恐らくこれは、グローバル化している民間企業が活動するというのは政府の役割とは少し離れた部分なので、政府は直接的に支援をするというよりも、新興国経済がどうなっているかということに関して、新興国経済にも政府の関係者いろいろいると思いますので、官と民の情報交換を非常に密にして、直接投資とか海外進出とかそういうふうなことができるようにするというのが一つの解ではないかと思います。
 はっきり言いますと、経済対策で有望なところに企業が進出することを後押しするというのはなかなか難しいと。一つは、経済産業省さんがやろうとしている、海外でもうけたときの利益を国内に戻してきて投資ができると。あの政策、あの税制的な改正というのは非常に評価できると思います。
#95
○荒木清寛君 終わります。
#96
○山下芳生君 お三方ありがとうございます。日本共産党の山下芳生です。
 最初に、駒村参考人にお伺いいたします。
 格差と貧困は違うと、貧困は放置すべきではないという御意見に共感をいたしました。その点で、今子供の貧困が増大していることを危惧しておりますが、三点お伺いいたします。
 一つは、子供の貧困がどのような面で今現れているか、先ほどは健康面、学力の面を御紹介いただきましたけれども、より詳しく、あるいはほかにもあれば教えていただきたいと思います。二つ目は、そのことが子供の発達や成長にとってどんな影響を与えるのか。それから三つ目に、そのことが日本社会の現在と将来にとってどのような事態をもたらすのか、お考えを聞かせてください。
#97
○参考人(駒村康平君) 子供の貧困に関して三つ御質問がありまして、一つは健康、それから学力、もう一つはもちろん情緒面だと思います。
 やはり、虐待を経験した世帯で生きていけば、生まれた子供はやはり虐待をまた引き起こす確率が高いという研究もございますし、あるいは生活習慣にかかわる部分もあるかと聞いております。やはり貧困世帯で育った子供の生活習慣、生活習慣という言葉はいいかどうか分かりませんけれども、やはり情緒的な部分、判断的な部分でやや誤ったというか、という判断をするという研究もございます。
 これは次のむしろ発展のところに着目した答えにした方がいいと思うんですけれども、これはアメリカなんかでも研究がございますけれども、良好な保育環境で育った子供たちとそうではない環境で育った子供たちにおいて、その後の離婚や失業率や犯罪やそういった社会問題を発生する確率との間の関係を見たところ、やはり良好に育った子供たちの方が、何十年後の追跡調査を行ってもかなりの差が出てくると。そういう意味では、子供の良好な育成環境の保障というのは、しかもこれを普遍的に保障するということは非常に効率的な社会投資だと、こういうふうに思っております。
 こういう状況を逆に放置しますと、まさに貧困の連鎖というもの、あるいは格差が階層化する社会というもの、それは強いて言えば社会の分裂というもの、あるいは社会の様々な部分で高所得者と低所得者が分離して生活するということは社会連帯が壊れていく、あるいは社会的な取引コストと言われているセキュリティーコストみたいなものがどんどん掛かっていく、社会保障は節約できたけれども代わりにセキュリティーコストが掛かってしまうという社会になってしまうんじゃないかと心配しております。
 以上です。
#98
○山下芳生君 ありがとうございました。
 次に、熊野参考人と駒村参考人に伺います。
 お二人に共通した問題意識が雇用だと感じました。安定した雇用の破壊、正規を減らして非正規を増やしてきたということが、熊野参考人は低賃金化を招き内需を冷え込ませたと指摘をされましたし、駒村参考人は社会保険から漏れるセーフティーネットがない労働者を増やしたと指摘をされました。私もそう思います。
 御存じのとおり、安定した雇用の破壊というのは自然現象ではありません。労働法制の規制緩和の結果であります。特に一九九九年、派遣労働の原則自由化、二〇〇四年、製造業への拡大が大きかったと私は感じております。
 ならばこうした行き過ぎた労働法制の規制緩和を元に戻す、私は少なくとも九九年以前に戻すことが大事だと思っておりますが、こういうことが日本経済の再生のためにも、また安定した連帯感のある社会の実現のためにも第一義的に重要だと考えますが、お二人の御意見を伺いたいと思います。
#99
○参考人(熊野英生君) 実は経済の制度というのは難しゅうございまして、派遣の緩和が行われたことによって今三百八十万人の派遣業のビジネスが成り立っているんですね。これは派遣を禁止して派遣業がなくなるかというと、恐らくそれはすぐに三百八十万人という人が路頭に迷う、あるいは雇用の受皿がなくなってしまうと。ここはやはりもっと漸進的に、派遣の待遇を良くすることに併せてやはり正規雇用の受皿をつくってやると。そういう意味では、非正規雇用から、あるいは派遣業からなるべく正規雇用にスイッチするような形の新しいパイプをつくることが、単なる法改正だけでなくて必要なのではないかというふうに考えます。
#100
○参考人(駒村康平君) 経済成長が極めて鈍化していく中で、すべての人に良好な雇用慣行、特にかつての日本のような年功賃金、終身雇用を保障するというのはかなり難しい状況になっているだろうと思います。そういう意味では、非正規、派遣をどこまで認めるかというところは議論あるかもしれませんけれども、非正規という働き方は今後もある程度存在するだろうと思います。
 問題は、一回非正規になったらそれでおしまいということではなくて、今、熊野さんがおっしゃったように、非正規と正規の間に連続的なパイプをつくってあげるというのがまず一個あると思います。その上で、どうしてもその非正規という働き方を選ばざるを得ない方に関しては、先ほどもお話ししたように、様々な社会手当を乗せることによって家族を持てるという程度の所得保障は必ずやっていくべきだと、こういうふうに思っております。
#101
○山下芳生君 駒村さん、熊野さんに最後に御質問いたしますけれども、社会保障の財源の議論を聞いておりますと、政府・与党からは消費税の増税ばかり聞こえてまいりますが、しかし、これは内需をかえって冷え込ませるということになります。駒村参考人の先ほどの資料の中に、社会保険の負担に占める企業負担が急速に低下しているという貴重な御指摘がありましたけれども、ここを見直すことも重要な財源になるのではないかと考えますが、熊野さん、駒村さん、お二人のお考えを伺いたいと思います。
#102
○参考人(熊野英生君) 社会保障の財源はなかなか難しくて、全部税金でやってしまうと保険の方がより少ないコストで全体を運営することが、保険というのは予想される支出に対して確率を掛けて負担があるので、一対一の対応ではないので、すべてをすぐに税金でやるというのはどちらかというと余り効率的ではない部分があるんですが、私は、福祉目的税は行く行くはそれはやっていかないといけないと思います。ただ、増税だけあれば、これは税制全体で考えるべきだと思うんですけれども、所得税をある人たちに対して減税して、消費税の引上げも行うと。
 今、実は高齢化によって非勤労者の人たちが非常に多くなっていて、この人たちは所得税の負担感が実は余り大きくないので、そういう意味で消費税率を上げることは何が何でも良くないということではなくて、問題はバランスだと思いますから、人口構成のバランスが変わったのに合わせて消費税率を上げて所得税率を下げるような、そういうファインチューニングが必要なんではないかというふうに考えています。
#103
○参考人(駒村康平君) この企業負担分が下がっていくというのは、企業は労使折半をやめているというか、労使折半をしなくてもいい労働者を増やしているんだと。つまり、非正規労働者を増やしたことによってこれが起きているんだろうと思います。
 企業の労使折半については、折半以上をやっている国も当然あります。ただ、この折半部分については、なかなか学問的には難しいところがございまして、企業が代わりに払っているものは結局だれが払っているんだと。これは労働者の分を立て替えているにすぎないんじゃないかという研究もありまして、帰着と転嫁で極めて難しい問題でございます。ただ、表面的には企業には、あらゆる労働者の分について、これは雇用形態にかかわらず、基本的には社会保険、つまり健康保険、厚生年金に入るんだという仕組みにして、それについてはとにかく半分は、これは雇用保険も含めて半分はとにかく必ず企業が負担するということで、企業の役割はまず果たしていただくということが大事だと思います。
 その上で、ほかの財源政策でございますけれども、所得保障、所得再分配部分についてはやはり税金かなと。これは所得税みたいなものが、あるいは相続税みたいなものがよろしいかと思っております、再分配機能を持たすために。それから、リスクで分かっている部分については社会保険が扱えばよろしいかと思います。
 問題は、これから進んでいく、非常に高齢化の部分について、世代間で薄く広く負担していただけるような消費税というものは考えなければいけないと思いますけれども、これは逆進性がありますので、これは同時にこの逆進性を緩和するための様々な措置がセットで行われなければいけない。これは給付という方法もあれば、税金の複数税率という方法もあるかと思いますけれども、それは考えなければいけないと思いますけれども、いずれこれを考えなければいけないだろうという時期が来ているんじゃないかと思っております。
 以上です。
#104
○山下芳生君 ありがとうございました。
#105
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。最初に、熊野参考人にお尋ねをいたします。
 先ほど雇用の問題で、企業が海外に流出する理由として、労働力のコストというよりも、むしろ内需が非常に日本の場合低い、それが一つの大きな理由になっているのではないかというお話がございました。それに関連してお尋ねをいたしますが、今、派遣法をどう改正していくのかという議論の中で、派遣の対象業務をもっと限定をしようと、こういう議論がございまして、その一つの大きな柱として、いわゆる製造業への派遣を禁止する、とりわけ登録型の派遣を禁止する、した方がいいかどうかという議論がございます。それに対して有力な反対論が二つありまして、一つは、雇用が喪失、失われるのではないかという話が一つと、もう一つ、こちらの方が更に大きい理由だと思うんですが、そういうことをすると企業が海外に出て行く、こういう議論がございます。この二つの言わば反対論に対して熊野参考人はどんな御意見をお持ちでしょうか。
#106
○参考人(熊野英生君) 直接的な明快なお答えは難しいんですが、既に派遣業が製造業の現場で物すごく普及している段階で、突然それを法改正でやめてしまうというところが少し現実ではないと思います。それは、やはり縮小するとどういう部分を優遇するかみたいなバランスの取り方が難しいんじゃないかと思います。
 あともう一つ、派遣業がないと、じゃ製造業が成り立たないかというと、それは違うと思います。もう既に、中国でつくった方が安い、あるいはベトナムでつくった方が安い部分については海外に移転しているんですね。国内にある雇用というのは、やっぱり技能労働を重視しながら戦略的に考えないといけない、付加価値部分については日本に残しているんですね。
 ということは、国内ではやはりそういう技能労働の分野に単純労働からスイッチしていくような、そういうパイプを増やしていく、あるいはそういうのを、これはどうやってやればいいか難しいんですけれども、税制とかいろいろな仕組みで後押ししてやると。そうすると、国内の付加価値が大きくなり、国内で安い労働力に依存しなければいけないというようなことではなくなると思っています。
#107
○近藤正道君 今ほどと同じ質問なんですが、最初から言えばよかったんですけれども、駒村参考人、社会政策という観点からどんなふうに、今の製造業への派遣禁止という問題についてはどういうふうな御意見をお持ちでしょうか。
#108
○参考人(駒村康平君) 今の熊野さんのおっしゃる部分もありまして、私もいきなり禁止というのは難しいかなと思います。ただ一方で、労働コストがどれだけ本当に国際競争力に影響を与えているのかというようなところも悩ましい部分があるかと思います。
 実際に、企業が直面している様々なコスト、それによって海外移転をどのくらい企業が決めているかというのは様々な考え方、議論がありまして、実際に議論になったのは私が知っているのは北欧のフィンランドのケースですけれども、企業の負担が、表面的な負担が大きいから、では、ノキアの例ですけれども、ノキアという会社は海外に企業を移しますかといったときに、今のお話と同じですけれども、フィンランドでは国内には非常に高いレベルの労働者がいると、これがノキアのまさに競争力を維持しているんだと、そのコスト分だけで産業立地を決めるわけではないという話もございますので、コスト面で産業立地が決まるわけではないと私も思いますけれども、既にある派遣業についてはどうするか、正直なところ悩ましいところでございます。
 日雇派遣みたいなめちゃめちゃなものは問題外だと思いますけれども、まず、すぐできることは社会保険の適用の拡大と、それから能力開発、先ほど言った技能評価のシステムを入れるということ、そして低賃金、福利厚生がないということを補うためには、ここに対して家族手当それから住宅手当みたいなものをちゃんと上乗せして、仮に派遣でも不安のない生活ができるような、サポートする仕組みをつくらなきゃいけない。これは逆に言うと、派遣という流動的な市場にメカニズムを使うことによって、日本人全体が様々なコストダウンでメリットを得ているのを彼らだけにこのコストを集中させるのではなくて、社会全体でそれに対してちゃんと保障してあげるという工夫が必要だと思います。
 以上です。
#109
○近藤正道君 高橋参考人にお尋ねをいたします。
 先ほど、郵政民営、かんぽの宿のお話がございました。高橋参考人がこの五年間で売却というところにかかわっていたこととか、あるいはそのことについて国会で余り質問がなかったという、そういう話も興味深く聞かさせていただきました。
 今ほど、先ほど少しお話もありましたけれども、法律を実際作った立場から見まして、その後、かんぽの宿についてはいわゆる改革利権だとかいろんなことを今言われておりますけれども、想定内の話と、ここは全く考えていなかった、想定外だったと、こんなことまでやるとは思わなかったみたいな、そういう点がもしございましたら、とりわけ想定外、ここは全く考えていなかった、ここは是非国会でよくこれからも調査をしていただきたいと、こういう点ございましたら御指摘をいただきたいと思います。
#110
○参考人(高橋洋一君) 私は制度設計までだったので、要するにこういうのをどこに持ち株会社に持たせて、その後何年でやりなさいと、それだけの話だったんですね。それ以外のところについては、実は契約とか、そういうふうに経営の話だと理解しておりましたので、その範囲では、一般的にはバルクとかそういうのは知っていましたから、それはそれで全然想定内でございます。それをどのように売るかとか、そういうようなことについては、実はこれは経営が判断すべき話だと思っていたので、そこにゆだねるというふうに正直言って思っていました。
 ただ、いろいろと報道で言われている話ですと、売り方に不公正があったかどうかというのが多分ポイントになろうかと思うんですよね。ですから、そういうことであれば、先ほどちょっと言いましたけど、総務省でも、もし事実とかそういうのを知っていたら、告発したらいいんじゃないのと。要するに、こういう話というのは早くすっきりするのが一番いい話で、若しくは駄目だったら全部やり直すとか。それで、少なくともこういうふうな制度設計するときに、前提として、不正な話があるということは実は想定していません。ですから、本当に不正な話があったら、それはまさしく想定外ということになろうかと思います。ただし、その不正な話について、だれがどういうふうな形でチェックしてやるとかいうのは、これはやっぱり主務官庁というのが結構私は大きいんじゃないかなと思います。もちろん国会もそうですけれども。
 ですから、要するに、いずれにしてもそれは早くすっきりしてやるのが一番いいと思いまして、それ以外に、価格についてどうのこうのと、若しくは公正なやり方でしたら価格について高い低いなんて幾らでも議論ありますので、すべてきちんとしたフェアなもので行われていたら、買った人は安く買ったと言うし、売った人は高く買ったと言うだけの話なんで、それについてなかなか意見は言いづらいんですけれども、ただ、やり方としてアンフェアかどうかというのは非常に大きなポイントで、もしアンフェアなことがあるんであれば、それは想定外ということになります。
#111
○近藤正道君 終わります。
#112
○荒井広幸君 お三方には、食事の時間も済みません。最後ですから、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、駒村参考人にお尋ねしますけれども、先ほども関連の話が出ていましたけれども、基礎年金の税額負担方式、税額を負担すると、税で。これについては、例え話が先生と私非常に似ておりまして、一言で言えば、税方式にすれば建て直すようなもので、みんながずぶぬれになっちゃうと、これは非常に問題が大きいと。かといって、先生の言葉を借りれば、政府案では修理する程度だと。私も似たようなことを言っておりまして、実は茶の間を修理する程度になりかねないんじゃないかと、そういう意見もあると、私はそこに若干賛成するところもあるんですが。
 それは、いわゆる若夫婦の部屋や両親の部屋を直すなどの大型リフォームも必要じゃないかと、そういうような例えをされていますが、大型リフォームというと、例えば先ほどもイメージありました北欧型、いろんなイメージがあると思いますが、改めてお聞かせください。
#113
○参考人(駒村康平君) 年金政策というのは、現状、現在の給付を行いながら、しかし雇用の変化、生活の変化、あるいは高齢化が進むための、高齢化へ対応するための財政の持続可能性、最低保障という部分を同時に達成していかなければいけない、社会の変化に対応していかなければいけないわけであります。そういう意味では非常に時間の掛かる、つまりリフォームの連続になっていくんだろうと、こういうふうに思います。
 このときに、どっちに向いてリフォームをしているのかと。当面、理想な制度はどういう方向なのかというのはつくらなきゃいけないと思う、出さなきゃいけない。それは、私、先ほど申し上げたように、働き方への中立性、生き方への中立性、最低保障の保障、それから財政の持続可能性と、この三つの基準で理想の姿をつくっていかなきゃならない、その一つの典型としてフィンランド型、スウェーデン型があるんだろうと思います。
 その仕組みにどうやって実際に持っていくのかというのは、いろいろ難しい部分もある、実際にその移行が難しいんだと思います。今は基礎年金で全員に国庫二分の一を充てている部分を、高所得者から引き抜いて低所得者に集中していくという方法もあれば、適用拡大をどんどんどんどん進めていって、厚生年金に、所得比例年金型に皆さん基本的には入っていただくような社会を目指して、そしてそこで不十分な方には当面は社会手当、生活保護の条件の緩い版を出していきながら、最終的にはそれを最低保障年金という形に切り替えていくというような、何か設計図をかいて、その設計図に向かって進んでいるんだというのが大事であって、そのときそのときに、こっちつっついてみましょう、あっちつっついてみましょうというリフォームは良くない。目標を決めたリフォームが必要。それが何年かやってみたら大型リフォームになっているというのが理想かと思っております。
 以上です。
#114
○荒井広幸君 続きまして、熊野参考人にお尋ねをいたします。
 先生の物の本で読みまして、いわゆるニュービジネスを活性化させるためには、スキルを持った人材、働き手が一つのところで長年を掛けてスキルを上げていくと、こういうことが必要ですけれども、今まで、先ほどるるお話がありましたけれども、コスト、人件費を下げるために企業は手放していったと。どんどん非正規に流れていったと。正規が残れなくなってきていると。こういうことを考えますと、今後の物づくりを含め、新しいニュービジネスのチャンスということも含めて危ういなという感じは私も持っておりました。
 どのように、ニュービジネス分野が成長するためには、雇用というものを企業に対して定着していくようにするか、その辺の工夫、御意見がありましたらお願いしたいと思います。
#115
○参考人(熊野英生君) 民間のビジネスは常に逆境を自分のパワーに変える、リスクをチャンスに変えるということなんですが、今自動車メーカーや電機メーカーが副業を認めています。これは極めてその当該企業、業界にとっては苦しいことなんですが、これでもしも、例えば自動車メーカーのかんばんシステムのプロが保険会社とかいろんな金融機関にやってきてそのスキルを伝授すれば、これは非製造業のスキルは劇的に上がると思います。私も親族が製造業をやっている関係から、製造業がいかに効率的かというのを身にしみてよく知っております。
 それに対して、金融機関、国内のサービス業というのは物の配置とかいろんな作業のリードタイムというのが非常にルーズで、私は製造業のいろんな技術を非製造業に流用するだけで、これはセブンイレブンがかんばんシステムをベースにしながらPOSシステムをつくったという有名な話がありますけれども、こういうふうな事例は幾多まだまだあると思います。ですから、今製造業の人たちが副業を認められるとかいろんな意味で雇用調整に遭っているということは、うまくやれば、これはサービス業に来れば日本のサービス業の生産性を上げるようなチャンスだと思います。
 あと、もっと持続的に産業をどう育成するかと。これは反対論も実は多いんじゃないかと思いますけれども、私は富裕層ビジネスというのが一つのポイントだと思います。今社会保障などいろんな制度では所得の高い人も低い人も一律なんですが、私は所得の高い人には要らないんじゃないかと、ある程度制約してもいいんじゃないかと思うんですが、こういう人たちは逆にお金をたくさん払って高いサービスを得た方がいいと。
 私は高級ホテルの研究を一時やったことがあるんですけれども、高級ホテルほど日本人がパワーを発揮できるところはないと。海外のホテルに行くと、ホテルマンというのは個人のきめ細かいサービスに依存するところが多いんですが、日本人は対価をもらわなくても手厚いサービスをして、私は日本のサービスの質というのは世界一だと思っています。ただ、これをビジネスに変える分野がないと。これは恐らく、富裕層ビジネスで高いサービスに高い対価が与えられるような形で産業育成をしていけばいいと思います。恐らく、富裕層ビジネスをやればトリクルダウンで中堅層にだんだんその恩恵は行くと。ブランド品も、昔は一部の富裕層ビジネスなんです。今は普及しています。こういうビジョンがあると思います。
#116
○荒井広幸君 ありがとうございました。
 高橋参考人にお尋ねします。
 無利子無税国債と、それから私は、赤字国債と建設国債のほかにいわゆる目的国債、それは先ほどのお話がありましたが福祉目的、もう一つは環境目的、この国債を立てまして、安い調達金利で、そして一人一人の志を投資してもらう、こういう意味合いの私は国債を委員会でもかなり提案しております。
 高橋参考人がおっしゃる政府紙幣発行とまた違う角度ですが、将来の償還もあるわけですから、無利子無税国債と私が申し上げました福祉と環境の目的国債、ちょっと聞いてどのように評価されますか。
#117
○参考人(高橋洋一君) 非常に面白い話だと思います。ただ、何点か注意が多分必要で、国債ということですと、多分大量に発行するというので資金調達コストというのを安くするというのが一つの目的なんですけれども、このような目的関係というのは実はレベニューボンドというタイプの債券でして、実はこういう業務をやるんでしたらより身近な方がいいので、これを地方でやるというのはよくありな話であります。
 要するに、地方でやって、それを歳入とかそういうのをリンケージ、形にしてみんなに参加させるというのはよくある手なので、国の中にごっちゃにやりますと何が何だか分からなくなりますので、よりやれば、地方のためにこのようなものを生かして、それを特定の目的で、よくある形ですと公共事業の特定のものについてこのレベニューボンドというのはよくあるパターンですから、そういう形でやるとよりいいような効果があるんじゃないかなというふうに思います。
#118
○荒井広幸君 大変お三方にはありがとうございました。
#119
○委員長(溝手顕正君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 次回は来る十六日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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