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2009/04/09 第171回国会 参議院 参議院会議録情報 第171回国会 法務委員会 第7号
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2009/04/09 第171回国会 参議院

参議院会議録情報 第171回国会 法務委員会 第7号

#1
第171回国会 法務委員会 第7号
平成二十一年四月九日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月三十一日
    辞任         補欠選任
     相原久美子君     今野  東君
     風間 直樹君     松浦 大悟君
     塚田 一郎君     山崎 正昭君
 四月八日
    辞任         補欠選任
     松浦 大悟君     外山  斎君
 四月九日
    辞任         補欠選任
     外山  斎君     大島九州男君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         澤  雄二君
    理 事
                千葉 景子君
                松岡  徹君
                松村 龍二君
                木庭健太郎君
    委 員
                小川 敏夫君
                大島九州男君
                今野  東君
                外山  斎君
                前川 清成君
                松野 信夫君
                簗瀬  進君
                青木 幹雄君
                秋元  司君
                丸山 和也君
                山崎 正昭君
                仁比 聡平君
                近藤 正道君
   国務大臣
       法務大臣     森  英介君
   副大臣
       法務副大臣    佐藤 剛男君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  早川 忠孝君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   小川 正持君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山口 一夫君
   政府参考人
       警察庁刑事局長  米田  壯君
       法務大臣官房司
       法法制部長    深山 卓也君
       法務省刑事局長  大野恒太郎君
       法務省入国管理
       局長       西川 克行君
   参考人
       東京大学大学院
       法学政治学研究
       科教授      大澤  裕君
       弁護士
       國學院大學教授  四宮  啓君
       共同通信社会部
       編集委員     竹田 昌弘君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (裁判員制度実施をめぐる問題点に関する件)
 (出入国管理法にいう「特別に在留を許可すべ
 き事情」に関する件)
 (偽造パスポートによる不法入国に対する法的
 措置に関する件)
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(澤雄二君) ただいまから法務委員会を開会をいたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 昨日までに、風間直樹君、相原久美子君及び塚田一郎君が委員を辞任され、その補欠として外山斎君、今野東君及び山崎正昭君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(澤雄二君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に東京大学大学院法学政治学研究科教授大澤裕君、弁護士・國學院大學教授四宮啓君及び共同通信社会部編集委員竹田昌弘君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(澤雄二君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ─────────────
#5
○委員長(澤雄二君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題といたします。
 本日は、三名の参考人から御意見を伺います。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の調査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、大澤参考人、続いて四宮参考人、竹田参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。
 それでは、大澤参考人からお願いいたします。大澤参考人。
#6
○参考人(大澤裕君) おはようございます。東京大学で刑事訴訟法を教えております大澤でございます。本日はどうぞよろしくお願いをいたします。
 裁判員制度は、来月二十一日に施行が予定をされております。裁判員制度は、従来、ほぼ完全に法律専門家の手によって担われてまいりました我が国の司法に国民が直接参加する機会を開くという点で画期的な制度であり、また、刑事司法の在り方に改革を迫り、それを加速させる役割を果たしたという点でも有意義な制度であると考えております。施行を間近に控え、改めて様々な不安、問題点が指摘をされておりますが、本日は、今申し上げたような裁判員制度の積極的意義と密接にかかわる若干の点について意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、最も基本となる問題は、国民に多大な負担を掛けるにもかかわらず裁判員制度を導入することの目的でございます。この点について裁判員法の一条は、御案内のとおり、制度の目的として「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資する」ということを掲げております。しかし、この文言の言わんとするところは必ずしも明快とは言えません。
 裁判員制度が仮に司法に対する国民の理解増進と信頼向上のための手段、あるいはもう少し言い方を変えると体験学習の場にすぎないのだとすれば、それは国民の多大の負担を正当化する理由としては薄弱であり、裁判員制度を重大事件の刑事裁判に導入するその理由もはっきりしなくなると思われます。
 しかし、裁判員制度は、司法制度改革審議会の言葉を引用させていただけば、統治主体、権利主体である国民は、司法の運営に主体的、有意的に参加し、国民のための司法を国民自らが実現し支えなければならない、そういう基本的な考え方から発した制度でございます。裁判員としての司法参加は、それ自体が主権者たる国民の公共的な責務という一面を有しているように思われます。
 もとより、国民主権だから、あるいは民主主義だからといって、当然に国民の意思が司法に直接反映されなければならないということにはこれはなりません。多数者の意思を物差しとする民主主義と、法と証拠を物差しとし多数者意思によっても奪えない価値を守ろうとする司法との間には、これは解消することのできない緊張関係が存在するからであります。
 しかし、司法も国家の作用であります以上、その存立の淵源は主権者である国民にたどられるはずであり、そのような国民は、司法の成果を受益するというだけではなく、司法がその本来の機能を十全に果たす上で必要とする場合には自らそれを担う責務を負っている、そのように言えるかと思われます。裁判員制度はまさにそのような責務が現実のものとなった制度であり、それゆえに国民主権、民主主義の原理と結び付いた重要な価値が見出されると考えられます。
 そして、国民にこのような公共的な責務を果たすことが求められるのは、それにふさわしく、その必要がある領域でなければならないと思われます。刑事裁判は、従来においても法律専門家の努力によって国民の信頼を得てきたと言えますが、専門家だけの閉ざされた世界における努力の反面として、過度に精緻化をし、国民から分かりにくい部分を持つようになっていたとも思われます。刑事裁判は、社会の安全と国民の権利という国民だれにもかかわる問題を扱う場であり、国民の関心を集める対象であると言えます。この点でそれが真に十分な機能を果たしていくためには、国民の理解に裏打ちをされた、そういう意味での信頼が不可欠であり、専門家のみにゆだねられた従来の刑事裁判には限界が現れつつあったということであるかと思われます。
 また、先ほど申し上げたような事柄の性質上、専門家のみで担うことに限界があるという場合には、国民が責務を分担するのにふさわしい領域とも言えるように思われます。刑事裁判、その中でも重大事件のそれが対象とされたということは、それが国民の公共的責務とするのにふさわしく、その必要がある領域であったということであるかと思われます。その中には死刑事件等も含まれますが、そして死刑事件については特に判断の困難さと負担の大きさということが指摘されるところでありますけれども、これも死刑という究極の刑罰を国民の意思として存置するということを前提とする以上、その裏腹として担うべき国民の責任というべき側面があるように思われます。
 裁判員が参加する裁判は、裁判員が主体的、実質的に関与できるよう、裁判員に分かりやすく負担の少ないものであることが求められます。従来の我が国の刑事裁判は、間隔を置いた公判と書面の多用を特色とし、公判の形骸化という批判を招くこともありました。これに対し、裁判員が参加する裁判は、争点を明確化し最適な証拠を用いて集中的に行われるということが必要不可欠であり、この点で裁判員制度は従来の公判審理の在り方に反省を迫り、公判の活性化ということに重要な役割を果たすものと言えます。
 もっとも、裁判員が参加する裁判は、先ほど申し上げましたように、重大事件の刑事裁判でありますから、刑事訴訟法の第一条が規定しておりますように、被告人を始めとする個人の基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正に実現する、そういうものでなければなりません。この点で、集中的な審理というものが、その反面として裁判の適正さを犠牲にした拙速な裁判に陥らないかということも問題となります。
 御承知のとおり、集中的な審理ということはこれまでの刑事裁判においても理想とされておりましたが、その実現には様々な困難がありました。その理由の一つは、検察側と被告人・弁護人側との攻撃、防御の準備に大きな開きがあったということではないかと思われます。
 起訴前の被疑者に国選弁護の制度が存在をしなかった、そのような下では、重大事件を含め、弁護人が選任され防御がスタートラインに着くのは起訴後のことであるということが多かったように思われます。また、起訴前の非常に詳細な捜査を通じ徹底した証拠収集を遂げた検察側に対し、被告人・弁護人側は、独自の証拠収集能力において劣っている上に、法律上、第一回公判期日前に検察側から開示を受け得る証拠というのは検察官が証拠調べ請求をする証拠に限られ、それ以外のいわゆる検察官手持ち証拠と言われるものについては開示は検察官の裁量にゆだねられておりました。このような状況の下でいたずらに審理を急ぐといたしますと、被告人・弁護人側の防御が追い付かず、まさに裁判の適正さが害されるおそれがあったと言わなければなりません。
 しかし、司法制度改革を通じ、起訴前の被疑者に国選弁護制度が整備をされ、捜査から公判まで一貫した防御活動が可能となる、そのような制度が整えられました。また、第一回公判期日前に争点と証拠の整理を行う公判前整理手続というものが設けられ、その過程を通じて、第一回公判期日前に被告人・弁護人側が検察側から開示を受け得る証拠の範囲というものは大きく拡大をしました。具体的には、検察官が証拠調べ請求をする証拠に加え、検察官手持ち証拠のうちでも検察官請求証拠の証明力を判断するのに必要な一定類型の証拠、さらに、被告人・弁護人側からの主張の開示を受けた後については、そこで明らかにされた主張に関連する証拠について相当と認められる範囲で開示が受けられることとなりました。このような条件整備を前提にしても、なお集中的な審理によって裁判の適正さが損なわれるかどうかということがここでの問題かと思われます。
 具体的な問題の一つは、検察官手持ち証拠の全面開示あるいはそれに準じるような制度が取られない限り証拠開示がなお不十分ではないかという点であります。しかし、証拠開示は防御の準備のための効用という側面があることはもちろんでありますが、それがもたらす弊害の側面にも留意が必要であるように思われます。
 この点では、証人威迫や罪証隠滅を誘発するおそれというものが古くから指摘をされてきたところでございますが、さらに、我が国の捜査は広範かつ詳密であり、捜査を通じて収集され検察官の手元に集約をされるそのような証拠の中には、結果的に事件に無関係であるそのような情報や個人のプライバシーにかかわるデリケートな情報も少なからず含まれていると言われております。そのような手持ち証拠について、資料の性質や防御上の必要性を問うことなく一律に全面的な開示とすることには割り切り過ぎのところがあるように思われます。
 また、捜査の過程では、犯罪事実を積極的に立証する、そのための証拠のほかに、被告人の弁解に備え、それを弾劾するための証拠も集められていると言われます。このような証拠まで先に全面開示をしてしまうということになりますと、そこから証拠のすき間をねらった弁解をする、そういうものが意図的に作出される、そういう危険が生じてくるように思われます。被告人の弁解は無数に考えられ、そのすべてに備えて逐一捜査を遂げておくということは不可能でありますから、弾劾目的の証拠まですべて開示対象とすることは、当事者主義の下での当事者の創意と努力の意味を失わせ、公判における当事者間の負担のバランスを失わせることにもなりかねないように思われます。
 公判前整理手続における証拠開示制度は、これらの点を慎重に考慮した上、従前よりも開示される検察官手持ち証拠の範囲を拡大する形で立法されたものであり、バランスの取れた制度であるように思っております。
 これに対し、全面開示の弊害を防止しつつ、証拠の開示請求を容易にし、また証拠の埋没を防止する、そのような方策として証拠の標目開示という提案がなされることもあります。しかし、標目は、証拠の内容が分かる程度まで記載内容を詳細にすれば、弊害の危険については証拠自体を開示するのと差がなくなってまいります。逆に、記載内容を限定すれば、証拠の内容が分からずその有用性が失われます。被告人・弁護人側が明確な防御方針を定めるということを前提に、開示請求に当たっての証拠の特定についての要求について柔軟な運用がなされれば、公判前整理手続が定める仕組みによって開示請求に大きな支障は生じないように思われます。
 公判前整理手続に関連する具体的な問題のもう一つは、争点整理の過程において被告人・弁護人側にも主張の明示が求められ、争点整理後の証拠調べ請求は原則として許されないこととされている、この点で防御に不利益が生じないかという点であります。
 しかし、被告人・弁護人側からも主張と証拠が明らかにされない限り、争点、証拠の整理とそれに基づく審理計画の策定は不可能となります。また、争点整理をした後の新たな証拠調べ請求を無制限に認めるということになれば、審理計画を立てても無意味となり、裁判員が参加する裁判では裁判員に大きな負担を掛ける結果ともなりかねません。
 もとより、検察側の主張と証拠が明らかにならないということであれば、被告人・弁護側において防御方針を定めるということはできず、その主張と証拠を明らかにすることもこれはできません。しかし、公判前整理手続において被告人・弁護人側から主張と証拠を明らかにすることが求められるのは、検察側の証明予定事実とそれを証明するための証拠の取調べ請求及び開示がなされ、さらに検察官請求証拠の証明力を判断するのに必要な一定類型の証拠について相当と認められる範囲での開示がなされた後のことであります。これらの開示を前提とすれば防御方針を定めることは決して不可能ではなく、この段階で主張と証拠を明らかにするということを求めても直ちに防御上の不利益をもたらすとは言えないように考えております。
 もちろん、言われますように訴訟は生き物でありまして、公判前には予想もされなかった証言等が公判において出てくるということもあり得ます。そのような場合に新たな反証を認めないということは、これは明らかに不当です。しかし、争点整理後の証拠調べ請求の制限というのはあくまでも原則であり、やむを得ない事情がある場合、すなわち証拠調べ請求しなかったことに帰責事由がないと言い得るような場合には例外が認められ、新証拠の取調べ請求も認められることとなります。公判において予期せぬ事態が生じた場合というのは基本的にこれでカバーされると考えられます。
 さらに、やむを得ない事由がない場合には証拠調べの請求権は失われますが、そのような証拠であっても裁判所の職権による取調べの可能性というのはなお残されております。処罰は犯罪事実に基づいてなされるべきで、訴訟のやり方がまずかったから、だから処罰されるという事態は、これはやはりあってはならないことだと思います。そのような事態には職権証拠調べの柔軟な対応によって対処し得るものと考えております。
 以上、網羅的ではございませんが、意見を述べさせていただきました。
 御清聴ありがとうございました。
#7
○委員長(澤雄二君) ありがとうございました。
 次に、四宮参考人にお願いをいたします。四宮参考人。
#8
○参考人(四宮啓君) 初めに、法務委員会で意見を述べる機会を与えていただきましたことを澤委員長始め皆様に感謝申し上げたいと思います。
 私は、弁護士として、またこの裁判員制度の設計等にもかかわらせていただいたということから、今日、施行を前にして皆様に御意見を申し上げたいと思います。
 今、大澤参考人からもお話がありましたが、施行が迫りますと、なぜ国民が参加をしなければならないのかという質問が、また声が大きくなってきたように思います。そこで、お手元に、私の場合レジュメと三枚のスライドを用意させていただきましたので、これに従って意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず初めに、なぜ裁判員制度が導入されたのかということでございます。今、大澤参考人からもありましたので、私の方では私なりの見方を申し上げたいと思いますが、まず一枚目のスライドでございます。
 今度の司法制度改革、これはもう先生方十分に御理解賜っていることと思いますけれども、私なりに一言で申し上げれば、この社会をより自由でフェアでそして責任あるものにするために何をすべきかということで始まったものと理解をしております。そのために必要なのは、やはりルールであろうと。そのルールは、しかも知っているルール、つまり客観的で皆が作ったルール、つまりこの国会で作っていただく法律であります。そして、トラブルの解決も国民に見えるところで、見える形で解決する透明なプロセス、これは司法ということになろうかと思います。
 そこで、法の支配というものを社会にあまねく行き渡らせるために今までの日本の司法制度を抜本的に見直したのが今度の司法制度改革であったと思います。
 この法の支配というのは、よく言われておりますし、司法制度改革審議会の意見書にも書かれておりますけれども、個人が尊重される、そしてその尊重される個人が社会の在り方を決めていくという国民主権、こういうものを内容とするのだと言われておりました。
 そこで、二枚目のスライドですが、その法の支配を実現するためにどのような仕組みをつくったらいいかということで今度の改革が行われておると理解をしております。
 この法の支配の考え方から申しますと、一つ目のその内容である個人の尊重。これは言うなれば、トラブルに巻き込まれたときに国民は法を使ってその一人一人の権利を尊重していく。法を使う国民という言い方をさせていただいておりますが、そのために法テラスや知財高裁、裁判迅速化法などなど、日本の司法制度の仕組みをこの国会で変えていただきました。
 もう一つの内容である国民主権ですけれども、これは言わば、直接トラブルに巻き込まれたわけではないけれども、私たちの社会で起こったこと、私たちの社会の正義が損なわれたときに、その回復に社会のメンバーとして一肌脱いでほしいという呼びかけであったと思います。これを私、法を担う国民というふうに言わせていただいておりますが、これが今日のテーマである裁判員制度であろうと思います。
 しかし、法を使うにしろ担うにしろ、いずれも私たちは素人だと国民の皆さんはおっしゃるかもしれない。そのとおりだと思います。そこで、その国民をサポートする法律家も、質、量共に備えたものを国民の皆さんのそばに用意する、サポーターを用意する、それが法曹養成制度の抜本改革、つまり法科大学院の創設であったと理解をしております。
 このように、法の支配を実現する新しい仕組みとして、今度の司法制度改革は有機的に関連付けられた一つの家のようなものだというふうに思っておりますし、この裁判員制度はその中でも極めて重要な柱の一つであると理解をしております。
 裁判員制度は、もう一つ、刑事の仕組みを大きく変えるということ、これも大澤参考人から今お話がありました。どのような変化が起こっているかを三枚目のスライドで示させていただきました。
 裁判員制度を導入するためにどうしても必要なものということで、この下の段、立法化と書きましたが、ここの制度が法律的に手当てをされております。被疑者段階からの弁護制度、国選弁護制度、それから公判前整理手続における検察官手持ち証拠の開示、そして裁判が始まってからは連日開廷するという要請であります。
 ところが、平成十七年からこれらの制度は既に始まっておりますけれども、これ以外のものにも変化が始まっております。それが上の段、非立法化と書いたところの変化でございます。
 まず、取調べの録画。これは全部の録画にはまだ至っておりませんけれども、一部ではございますが、検察、警察でそれぞれ始まっております。今まで透明化が全く行われていなかった部分への透明化が始まっていると理解をしております。
 保釈。保釈もなかなか弁護士のサイドから見ますと十分に行われていないという理解が多うございました。しかし、少しずつ保釈を認めるケースが増えておりまして、それも公判前整理を有機的に行うために必要だという理解が裁判所の方にも広がっているということでございます。
 公判が始まりましてからの証拠ですけれども、今までたくさんの調書と呼ばれている紙が使われておりました。しかし、裁判員が来ることをにらんで、原則として、人、証人や被告人から話を聞いて、調書が必要でなければそれを証拠としないという運用がかなり実務で広がってきております。その他、被告人の服装や私たち弁護士、検察官の法廷の技術などにも大きな今変化が訪れています。
 立法化もしないのになぜこのような変化が始まっているかと。それは、私が見るところ、裁判員が来るからだと思います。裁判員、つまり国民は刑事裁判に何を求めるんだろうか、それはやはり透明でフェアでそして迅速なものということだと思います。そうすると、この国民が求めるものをやはり手続という面でも変えていかなければならない、そのような理由から私は大きな変化が既に始まっているのだと思います。この流れを是非前進させていきたいというふうに考えております。
 三番目に、ではこれから円滑に施行するためにどうしたらいいか、どんな点に気を付けたらいいかという点ですが、模擬裁判がこれまでに六百件以上行われたと言われております。私は、この間の、まあこれは当たり前だといえば当たり前ですが、法曹三者が国民のために準備をしてきている、その努力には敬意を表したいと思います。
 二点だけ申し上げたいと思います。
 一つは、公判前整理手続の在り方であります。私自身も三件ほどこの手続を弁護士として経験をいたしました。今までになく証拠の開示が行われる、これは事実であります。検察官が裁判所の取調べ請求をしなかったものも我々が手にすることができるようになりました。しかし、それは十分かというと、弁護士の立場からすると必ずしもそうは言えない。
 御案内のとおり、おととしから去年にかけて最高裁判所で証拠開示を促すような決定も出されております。しかし、私の経験でも、今も、その決定を経たからかもしれませんが、我々が求めるものについて不存在であるという回答が出ることが多うございます。このようにされてしまいますと、せっかくの証拠開示制度、つまり公判を充実した迅速なものにするためのおぜん立てとしての証拠開示制度、公判前整理手続、その実質が損なわれる場面があるように私は弁護士としては危惧をしております。そこで、できる限り、つまり裁判員が法廷に来てから混乱しないように、証拠開示制度を充実したものにしていただきたいということであります。
 もう一点は、評議です。この評議の在り方についても裁判所の努力は大変なものがあったと思います。その成果が一つ報告として、「模擬裁判の成果と課題」という報告書にまとめられております。私が何件か傍聴したり、それから後で検証させていただいたものの中には、幾つかまだ問題があるように思います。
 その一つは、裁判官の発言が多いケースもある。特に、評議の冒頭で陪席裁判官がたくさん発言をされますと、一つの方向性というようなものも見えてきてしまうおそれがないだろうかということであります。それから、裁判官の発言はやはり非常に重みがあります。裁判官の発言は、また国民から見れば、法律家としてルールを示しているのではないかと受け取られるおそれもあります。ルールを示しているのか、あるいは一判断者として意見を述べているのか、そこら辺の区別も私は大事ではないかというふうに思います。
 どのようにやっていくべきかについては、この裁判所の報告書が言っているとおりであります。これまでの法律家が行ってきた専門的思考が裁判員の思考よりも正しいと考えることはできない、裁判員に裁判官と同じ思考回路を求めるのは相当でない、このテーマについて本当に意味するところの理解を共有することに留意しなければならない、このとおりだと思います。これは、要するに、裁判官に対してやはり姿勢、思考の枠組みの変革、意識変革を求めているのだと思います。裁判員は裁判官と違う考えを持っているからこそ来ていただく意味があるわけです。裁判員制度は、まさに裁判官とは違う考えを聞きたい、それがより良い裁判になるのだという考え方でできていると思います。その辺の裁判官の意識改革あるいは評議の運営の仕方については、なお一層の御尽力をいただきたいというふうに考えております。
 それから、検証の在り方です。裁判員法は附則の九条で、施行後三年をめどに政府の検証を求めております。その検証も、司法制度の基盤としての役割をこの制度が十分に果たせるような方向で行うように求めております。
 この検証は大変重要だと思います。何しろ、戦後初めて我が国が経験する国民参加の制度です。実は、何が一番良薬か、より良い制度にするための良い薬かといいますと、間違いなく裁判員を経験した人たちの意見であろうと思います。問題は、そういう意見をどのようにくみ上げ、どのように反映させるかということだと思います。この五年間の間の六百回に及ぶ模擬裁判について、法律専門家のいろいろな技術については私たち共有してきたつもりでございますけれども、模擬裁判員の声がどのくらい国民に届いていただろうか、これはやはり十分なものがあっただろうかという点については反省をする必要があると思います。もしその六百件の模擬裁判員の意見が国民に伝わっていたら、国民の不安も大分解消されていた部分もあるのではないかと思います。
 その意味でも、これから実際に始まりましたらば、実際に経験した裁判員の皆さんの声を率直に聞く姿勢が法律専門家に求められていると思います。守秘義務が支障になるかもしれません。だとしたら、立法的な手当て等もお考えいただいて、守秘義務を、一番極端に言えば守秘義務を解除してでも制度のより良い定着のために国民の声を聞くという方向を考えていただければと思います。
 じゃ、締めくくらせていただきますけれども、先ほど、この裁判員制度は国民主権の考えから生まれたのだと私なりの考えを申し上げました。だれでもより自由でフェアでそして責任ある社会を目指す、これについては異論がないのではないかと思います。問題は、こういう社会をどうやって手に入れるかだと思います。
 裁判員制度は、だれかにつくってもらうのではなくて、自分たちでつくっていこう、できる範囲で、自分たちで、専門家と協力して、より自由でフェアでそして責任ある社会をつくろうという制度だと思います。裁判員制度がこのようなことを国民に呼びかけているのだと思います。
 では、そのために何が今一番必要か。それは予定どおり施行していただくことです。法律と政令によって決められた予定どおりこの制度をスタートさせていただく、そのことがより自由でフェアで責任ある社会のための第一歩だと信じております。
 どうもありがとうございました。
#9
○委員長(澤雄二君) ありがとうございました。
 次に、竹田参考人にお願いをいたします。竹田参考人。
#10
○参考人(竹田昌弘君) いつもお世話になっております。本日はお招きいただき、ありがとうございました。慣れないものですから至らない点が多々あると存じますが、御容赦のほどをお願いいたします。事件や司法の取材を続けてきた記者の一人として意見を述べさせてもらいたいと思います。
 お手元に資料をお配りしました。まず最初に見ていただきたいのは、レジュメの三ページ目にあります古い新聞記事であります。これは一九二八年、昭和三年十月一日の東京朝日新聞の朝刊であります。「民意司法に反映して 立憲政治初めて整ふ」、「官僚の裁判から 国民参与の裁判へ」と、こういう見出しになっております。これは日本で陪審制度が始まった日の新聞であります。
 民意司法に反映とか官僚の裁判からといった制度の意義に関する辺りは、実は来月二十一日の朝刊の見出しにも使われるかもしれません。実に八十一年前と同じ見出しの新聞を作らなきゃいけないわけで、それに対して非常に深く考えております。
 それでは、その制度の意義ということを考える意味で、レジュメの一ページに戻りまして、釈迦に説法ではございますが、立法府は有権者が選挙で皆さんの、議員の方を選ばれています。行政に対しては情報公開制度あるいは不服申立て制度などがあります。有権者がチェックすることができます。司法には最高裁判事の国民審査といったものがありますけれども、実質的にはほとんど専門家に任せきりでやってきたわけです。それが裁判員制度によって有権者が直接司法に参加するということを考えますと、やはり日本の民主主義を高めるという大きな意義が裁判員制度にはあるのではないかと考えております。
 問題点多々あります。これからるる制度の問題点申し上げますけれども、ともかくは制度をスタートさせ運用していく中で問題点を逐一直しながら有権者にとっていい制度にしていくことが必要ではないかと思っております。そして、裁判員制度が刑事裁判で軌道に乗れば、行政訴訟であるとか民事訴訟の一部にも拡大していってこの国の民主主義をより高めていくという意義を実現されるのがいいのではないかと思っております。
 それでは、裁判員制度の問題点というか課題を挙げていきますが、お手元にお配りしたもう一つの冊子は、共同通信の社会部がおととしの十一月からほぼ原則毎月一回連載記事を出しております。目次御覧になっていただけばお分かりのように、「制度誕生の軌跡」から「参加への不安」、あるいは「制度異議あり」、「評議の行方」、「イタリアの知恵」、「日本人との相性」、「死刑の判断」、「情報の壁」、「変わるか取り調べ」、「弁護人の仕事」、「沖縄の経験」、「検察官の仕事」、「コリアンの挑戦」、「裁判官の仕事」などなど、それぞれ裁判員制度の持つ課題を探るという趣旨でやってきました。
 今日は、この取材結果などを基に少しお話をしたいと思います。取材したのは法曹三者の皆さん、現職、元職の方もとより、模擬裁判に参加された全国各地の有権者の方々、制度に反対されている方々、あるいは制度設計にかかわった方、起訴されたけれども無罪になった人、あるいは死刑執行に立ち会った人などにも取材をしております。
 目次にあるように、裁判員制度と似た参審制度を採用しているイタリアであるとか、昨年から陪審裁判を始めています韓国、あるいは復帰まで陪審裁判をやっていた沖縄でも取材をしております。
 第二部の「参加への不安」というのがあると思いますが、模擬裁判に参加された方の感想などを見てみますと、レジュメの一ページにあるように、重要な判断をする自信がないですとか、殺人など悲惨な事件の審理にかかわるのは嫌だとか、そういう心理的不安がいかに大きいかというのがよく分かりました。仕事に支障があるからなりたくないという人はさほど多くありません。そこにあるように、世論調査でも三〇%程度にとどまっております。問題は心理的不安ということになると思います。
 では、それはどうすれば和らげることができるかというと、私は情報公開しかないと思っています。司法の情報は余りにも公開されてきませんでした。法律家の皆さん、この委員会たくさんいらっしゃいますので、これは釈迦に説法でございますが、連載の第八部の「情報の壁」でも詳しく書きましたけれども、裁判を傍聴しても、専門用語が多かったり証拠も要旨を述べるだけで内容がよく分かりません。民事訴訟に至っては、訴状や準備書面は陳述しますというだけで要旨さえも告げられませんので、刑事裁判以上に傍聴しても何も分かりません。かつては法廷でメモを取ることさえ、傍聴人はメモを取ることさえ許されず、裁判の確定記録は今もなかなか見ることができないという状況にあります。
 また、模擬裁判に参加された方からは、とにかく量刑が難しい、懲役と言われても刑務所で何をやっているか僕らは分からないんだから判断できないよというような声も聞きました。刑事政策全体が有権者によく理解されていないということを感じたわけです。やはりもっと情報を公開していかないと、裁判員の方々、大変苦労なさるんではないかと思います。
 模擬裁判においては、リアリティーがないという理由で死刑の適否を本格的に論議するケースはありませんでした。模擬裁判参加者の中には、死刑をどうするか判断する事件をやらされたらつらいなとか、自分たちが死刑を言い渡した人が執行されたら後味が悪いなというような感想を漏らされた方もおられました。死刑についても、刑場を始め執行の手順をすべて公開していただいて、その上で有権者に死刑の判断をゆだねていただきたいと思います。また、判断される方の心理的不安を考えますと、死刑判決だけは裁判員と裁判官の全員一致を要件とすることも検討すべきではないでしょうか。
 そこに失業率と刑法犯認知件数、何か唐突に載せましたけれども、これは一九九〇年、失業率二・一%のころに刑法犯の認知件数が百六十三万件ですと。失業率が五・四%になった二〇〇三年には刑法犯の認知件数は二百八十五万件に達したと。要は、仕事に困って、仕事がなくなって金に困って犯罪に走るケースが実は犯罪のほとんどであります。
 特殊な犯罪者、もちろんいるでしょうけれども、大半は有権者が十分理解可能な、あるいは場合によっては明日は我が身の被告人であります。こうした社会の現実も、これは私たちどんどん報道しなきゃならないのですが、政府や裁判所におかれましても、もっと犯罪の現状というものを例えば経済状況と絡めながら分かりやすくお伝えいただければなと思います。
 先ほど四宮先生もおっしゃっておられましたけれども、これも心理的不安に関係しますが、守秘義務であります。
 最高裁のホームページには、裁判の公正やその信頼を確保するとともに、評議で裁判員や裁判官が自由な意見を言えるようにするためですと説明されております。確かに、だれが何を言ったか明らかになりますとだれも何か意見を言えなくなってしまいますので、この最高裁の説明の後段部分はよく分かります。ただ、その前段の、裁判の公正やその信頼を確保するというのであれば、アメリカの陪審制度のように、裁判終了後、個人情報などを除いて守秘義務を課さなければ、評議の内容を検証することは可能です。これこそが裁判の公正や信頼の確保につながると思っています。
 先日、中川財務大臣が辞任される原因となりましたもうろう会見というのがありました。その際、どうして記者は酔っ払っているのではないかと質問しないのかということで厳しく批判をされました。昔なら中継されるもの以外なかなか記者会見の詳細というのは読者には分からなかったんですけれども、最近はネットで会見は中継されておりますし、場合によると役所のホームページには詳報が載ったりしています。都合の悪いのはちょっと削っている役所も何かあるようですけれども、情報が公開されているわけです。そうすると、私たちも、なれ合うことなく読者、視聴者の目線できちんと質問をしないと、何だ報道機関、何やっているんだと、こういうふうに言われるわけです。民主社会においてはこうした情報公開こそが何よりも有権者の信頼を得る方策だと思います。
 また、守秘義務に関して最高で懲役六か月の罰則がありますけれども、裁判官には罰則がありません。先週の衆議院の法務委員会で政府参考人は、裁判官には高度の職業倫理に基づく行動が期待できるとおっしゃっておられました。ただ、最近でも、職場にいる女性にストーカー行為をやったり、バスで隣り合わせになった女子大生の体を触ったりする裁判官が少数ながらいるわけであります。ちょうどこの裁判員制度導入を議論しておりました二〇〇一年二月ごろには、福岡高裁判事の妻の事件というのがございました。その際、福岡地検の次席検事が捜査情報を判事に流し、その判事の妻の証拠となる携帯電話が破棄されております。もちろん少数ではありますけれども、高度な職業倫理に基づく行動が期待できない人もいるわけであります。
 それに、一回限りだからといって有権者には裁判員として高度な職業倫理が期待できないのでしょうか、上から目線で法律家の方々有権者を見下していないでしょうかということで、レジュメの一ページ、普通の人はばかか幼稚だというのが日本の司法制度の一種の前提となっているように思えると。イラストや漫画で制度を紹介し、無罪の推定さえ出てこない。刑事事件の容疑者になった人が自白調書を漫画でかかせてくださいと言い出したらどうなるか。ばかにするな、これは真剣な問題だ、まじめに仕事をしているんだと、こう検事に言われるだろうと。裁判員となる普通の人々は漫画や子供の絵本のような資料でないと理解できないと想定されているにもかかわらず、死刑とか無期懲役のような判断を強制されることの矛盾は大きいと。これは、コリン・P・A・ジョーンズさんという方が最近出された「アメリカ人弁護士が見た裁判員制度」という本に書かれております。
 それから、裁判員制度反対派の方ですけれども、西野喜一さんという方が書かれた「裁判員制度の正体」には、義務教育修了だけを資格要件としてくじで無作為に選ばれた人たちのその場一回限りの判断が、専門的な資格と訓練があって何年もそういう仕事をやってきている裁判官の判断より最終的に常識的である、信頼できると思う人はいないのではないでしょうかと、こうお書きになっています。
 結局は、法律家と有権者は違うんだという、これを上から目線とか私は呼んでいますけれども、あとこの冊子の中に、全国の弁護士会の会長さんに取材した結果を載せています。その中で、弁護士会長さんの中にははっきりと、市民の判断は信用できないからねとおっしゃる方もいらっしゃいました。こういう法律家の目線、上から目線ですが、これ本当に有権者がちゃんと判断できないのかといいますと、ここにちょっと書きましたけれども、昨年から始まった韓国の国民参与裁判。韓国は、日本国憲法と違って、憲法に裁判官による裁判を受ける権利というふうに明記されておりますので、裁判官と陪審員が別々に評議をやって結局は裁判官が判断するという制度になっておりますけれども、裁判官と陪審員の別々にやった評議の結果は実に五十九件のうち五十二件が一致しております。八八%、九〇%近くが一致しています。必ずしも専門家でなければ云々ということではないのではないかと思っています。
 それに、裁判員法に例えば候補者の呼出し状などという言葉がありますけれども、これも非常に上から目線ではないかと思います。呼出し状をもらう有権者のことを考えて名付けられた名称なのかどうか非常に首をかしげております。
 こういうことになりますと、評議に参加された裁判員の方が、どんなエリートか知らないけれども鼻持ちならない連中と評議なんかやってられるかと、こう思われる方も出てくるのではないかと心配しております。
 連載の「裁判官の仕事」、「検察官の仕事」では、官僚手法と批判されてきた法律家の姿とともに、裁判員制度に向けて大きく変わりつつある法律家の姿を対比して書いております。もっともっと目線を下げていただければ、冒頭申し上げた民主主義を高めるという制度の意義も実現できるのではないかと考えております。
 連載の「評議の行方」のところでは、模擬評議の様子をルポしておりますので、是非読んでいただければと思いますけれども、その際、罪に見合った刑を考えるべきで、犯罪被害者遺族の法廷証言に引きずられてはいけない、例えば天涯孤独の人が殺されたら遺族の法廷証言はないのだから不公平ではないかと言った裁判員役の方もいらっしゃいました。そこに載せました最高裁のアンケートでも、被害者の遺族が厳罰を求めて、裁判官は八〇%が考慮する、重くすると答えましたけれども、市民は実は半数の方がどちらでもないと。これはどういうことかと申しますと、生涯で一度、裁判員という公の立場で大事な仕事を果たそうとする有権者の真摯で冷静なお気持ちではないかと思っています。犯罪被害者の支援が非常に進みまして、裁判、公のはずの刑事裁判にやや私的な部分が持ち込まれているようなケースも散見されるのではないかと思っております。裁判員の方が公を意識して判断していただくことで、ここもまた少し影響があるのではないかと思っています。
 お時間がなくなりました。
 あと、少し載せましたのは、実は裁判官の方も予断を持っているよということで、三井昭さん、これ随分古い、一九八四年、死刑確定者の再審無罪が相次いでいたころに出た論文ですけれども、誤判が問題となった事件にはいわゆる重大事件が目立つ。どうしてなのかというと、裁判官も内心の圧力というものがあると。これは社会的に大きい重大な事件だ、軽々しく無罪にできないというように、普通の事件とは違った特別な意識が働く。それが内心の圧力となって証拠に対する判断に影響し、誤判を生み出すおそれがないとは言えないと、こう裁判官の方が書かれております。
 裁判員の方から見ると、そもそも裁判員を務めること自体が大きなプレッシャーで、内心の圧力を感じられるかもしれませんけれども、感じると思いますけれども、事件の大小によっての違いは裁判官ほどではないのかなとも思ったりしています。
 るる問題点を申し上げました。
 ここにも書きましたけれども、裁判員制度を提言した司法制度改革審議会、委員十三人のうち法律家は六人にとどまっていました。非法律家が七人です。しかし、この制度の骨格を設計した裁判員制度・刑事検討会、ここは委員十一人のうち法律家以外は二人しかいらっしゃいません。つまり裁判員になれるのはこの方だけです。うち一人は今自治体の首長さんになられておりますので、実際は一人しか裁判員になれない。だから、裁判員になれない人が決めた制度の詳細であります。ですから、有権者の皆さんから選ばれた議会におきまして有権者のために十分配慮したものに修正していただくことが何よりも大切なのではないかと思います。
 レジュメ最後に付けました。これは裁判員制度をめぐって事件報道による予断どうなのかということを言われまして、新聞協会の方で指針なども作って自主的な取組を続けています。これは共同通信の取組を、私たちの取組をまとめて書いたものです。今月号の「新聞研究」では朝毎読も含め各社の取組が紹介されていますので、是非お読みいただければと思っております。
 報道に携わる私たちも、上から目線になることなく庶民の視線で取材を続けていかないと、やはり読者、視聴者の支持は得られないと、こう思っています。
 私の申し上げたいことは以上であります。どうもありがとうございました。
#11
○委員長(澤雄二君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○千葉景子君 民主党・新緑風会・国民新・日本の千葉景子でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さんに大変、改めて裁判員制度の意義を私も思い起こさせていただくそんな参考意見をちょうだいをして、心から御礼を申し上げたいと思います。
 私も基本的には、この裁判員制度、あと一か月余りで施行されるということになりますけれども、基本的には賛成の立場で、是非実りあるものに育っていってほしいと、こう思っている一人でございます。
 ただ、今日話を改めて伺って、この裁判員制度、司法制度改革を含めて、議論をさせていただいたときから施行に至る今日までの間、私たちは多少やるべきことを怠ってきた部分もあったのではないかな、こんな気がいたします。これからそれをしっかりとまた積み重ねて、多くの皆さんが主権者としてしっかりと社会を支えていく、そういう大きな役割を果たしていただけるような、そういう方向にしていかなければいけないというふうに思っております。
 そこでなんですけれども、今、竹田参考人から私はお話を伺ったことが非常に印象深いんですけれども、上から目線というお話がございました。
 この間、この裁判員制度の意義、これは大澤参考人からも四宮参考人からもお話をいただいて、私はほぼそのとおりだろうというふうに思っております。ただ、この間、どうもその本当の意味の意義、これをきちっと国民の皆さんに伝えていたのだろうか、どうも上から目線で、国民にとって大変なことなんだから、なるべくこれは、負担が少ないことなんだとか、あるいは簡単なことなんだとか楽なことなんだ、こういうことを強調余りにもし過ぎてきたのではないかというふうに思うんです。
 むしろ、これは大変な国民として主権者として重いことなんだ、むしろそれをきちっと伝える、そして情報も、司法の情報というのを十分に伝えていく、こういうことによって、私は、この施行するまでの間で随分国民の皆さんの理解とかあるいは裁判員制度に対する思いというものがむしろもっと積極的な、変わってきたのではないかと、こんなふうに思うのですけれども。
 その辺について、当初からこの裁判員制度に携わってきた四宮参考人、そして竹田参考人にも改めてこの辺の、この間の本当に裁判員制度を国民の皆さんとどうやって共有をしていくかという辺りの問題点というのはなかったのだろうか。確かに、何か本当に漫画本みたいのばっかりが出回ったような、そういう感じもいたします。その辺について御意見がございますればお聞かせいただきたいと思います。
#13
○委員長(澤雄二君) それでは、四宮参考人、竹田参考人の順でお願いをいたします。
#14
○参考人(四宮啓君) 御質問ありがとうございました。
 私自身も、今までの広報、これはそれなりに一生懸命やってきてくれていたと思いますが、私の一番気になっていたのは、今、千葉先生御指摘の、いや、そんな難しいことじゃないんですよ、三日で終わるんですよというような部分です。必ずしもそういうものだと広報してきたわけではないとは思いますけれども、そこが大分強調されてきたというか独り歩きしてきた部分があったと思います。
 今御指摘のとおり、これは実は大変なことなんですね。特に国民に一つの刑事裁判に参加をしていただいて判断をしていただくと、これは大変なことなんです。だから、むしろ大変だから来てくださいと言うべきであろうと思います。
 なぜじゃ大変なのに来てもらうか。それは皆さんが主人公だからです。社会の主人公だからです。社会の一大事だから来てください、大変だけれどもやりがいのあるものにします、我々法律家はやりがいのある裁判をやりますから、来て御意見を下さいと言うべきだったと思います。
 実は、これは、じゃ例えばアメリカなどで陪審員たちは最初からやりがいを感じてきているかというと、実はそうではないんですね。やはり日本のこのアンケートが示すのと同じようにやりたくない人が圧倒的に多いです。ですから、陪審裁判で選ばれてしまうと、もう天を仰いだりするわけです。しかし、それで陪審員の仕事が終わる、終わったときにどうなるかというと、非常にやりがいのある仕事であった、私たちは社会に対して責任を負っているということがよく分かった、私の残りの人生に大きな影響を与えるだろうと語る方が多いです。
 そういう部分を、ですから、やってみないと分からない部分はあるのかもしれません。しかし、今、千葉先生御指摘のように、この制度の本当に重要な部分、そしてそれが私たち一人一人のこれからの人生にも私たちの社会にも大事なんだということをきっちり伝えていく必要があると私も思います。
#15
○参考人(竹田昌弘君) 今、四宮先生おっしゃったとおりだと思います。連載では、実は、大変ですよ、大変ですよ、本当に大変ですよと次から次へと実は書いてきたので、易しいものというふうには書いてきておりません。それは先ほどの世論調査のお話、そこレジュメの一ページ目にありますように、実は心理的不安というのは非常に大きくて、物理的な問題よりもはるかに心理的不安が大きいと。しかしながら、その裁判所も政府においても、とにかく参加してもらうことをまず第一に考えて、いろいろ漫画、イラストもそうですけれども、内容について余りきちっと紹介されてこなかった。
 例えば、今、四宮先生おっしゃったアメリカであろうが、私ども今イタリアと韓国の例を、あるいは沖縄の昔の例を記事にしましたけれども、アメリカ、イギリス、どこでもやっているわけです。かなりの国で市民は裁判に参加しているんですけれども、そういうことを紹介ほとんどしていないんですね。それはなぜかなと。分かりませんけれども、もしかすると裁判員制度の違いを余りに分かってもらうと困るからかどうか知りませんけれども、もっともっと海外の例も紹介しながら、今、四宮先生がおっしゃったように意義の部分を強調すれば、もう少し本当の意味での参加意識、意欲みたいなものも出てくるのではないかと。
 最高検察庁がつい先ごろか何かまとめた統計では、実際に裁判の傍聴に来られたり模擬裁判に来られた方に聞くと、かなりの方が裁判員裁判に参加したいとお話になっているようですので、実際に本当に体験されればまた参加意欲みたいなものは全然違うのではないかと思います。
#16
○千葉景子君 ありがとうございます。
 ところで、今のように大変なことでは私もあると思うんですね。ただ、そうはいっても、やっぱり普通に生活をしている皆さんに過大な負担を掛けてはならないということで、できるだけ負担の軽減ということは考えていかなければいけない。しかし、それは一方において、今指摘をされているように、被告人の権利とか防御権、こういうものとある意味では相矛盾する部分があるのではないかと、こういう指摘もされて、これもなるほどという、本当に難しい問題だというふうに私は思っております。
 そこで、大澤参考人、今日は大変分かりやすく整理をいただきまして、こういう問題について、例えば起訴前の国選弁護、こういうものが整備をされた、あるいは公判前整理手続の中で証拠の開示というのも大分進むようになったと、こういうお話がございました。私も随分変わってきたものだというふうには思います。
 ただ、本当にそれだけでこの矛盾というのは解消されるのかというと、なかなか難しいところで、例えば保釈の問題とか、それから証拠開示も先ほど御説明がありましたのでそこはそう受け止めさせていただきますけれども、例えば取調べ状況を録音、録画するとか、そういう問題などもやはり防御権を保障する、片方ではできるだけ負担を軽減をする、こういうものを、相矛盾するところを解消する意味では重要なポイントではないかというふうに思うんですけれども、その辺りについて大澤参考人はどのように評価をされておられるでしょうか。
#17
○参考人(大澤裕君) 御指摘のとおり、裁判が速くなるということによって、それが拙速になるということは非常に問題があるということだろうと思います。従来の刑事裁判の下、かつての刑事裁判では、やはり当事者の間の力関係というのが非常に大きく離れていたということで、その点なかなか難しく、現実にもその点で時間が掛かってきたという側面もあったのだろうと思います。そういう中でいろんな制度が整えられたということは先ほど申し上げたとおりです。
 保釈につきましても、いろいろこれは実務的には御努力がされているところだと思います。逃亡又は罪証隠滅のおそれがあるときに勾留をするということは、これはまた致し方ない側面もあるわけで、その中で、本来保釈が権利となっているというところとその勾留の目的を害さないようにいかにバランスを取りながらやっていくかというところだと思います。特に逃亡のおそれについてはいろいろなまた方法というのもひょっとしたら考え得るのかもしれませんが、なかなか罪証隠滅のおそれをうまくコントロールする方法というのは難しいところがあるようにも思うわけです。
 ただ、そういう中で、公判前整理手続というものが入って、主張と証拠の整理がされていくことによって罪証隠滅のおそれというものが従来よりもより具体的に判断しやすくなってきて、それが多少保釈が増える方向の判断につながっているのかなという認識はございます。その辺りは、更にそういう公判前整理手続等の実績も踏まえながら御努力をいただくのが望ましいのかというふうに思います。
 それから、取調べ状況任意性の立証につきましては、これはなかなか従来からやはり経緯があって動かなかった問題でありますけれども、裁判員が一つの起爆剤となって、一部という形ではありますが、録画というものが運用されるようになるということでございます。
 それは一部ということで、否認から自白に転じるという一番ポイントの部分がないというのは、これはおっしゃるとおりかもしれません。ただし、運用されているもので最後の調書を取るところが録画され、かつなぜ自白をしたのか、そのときの状況等も、これは不利益が出てもすべて録画するということになっておりますので、そういう意味では、取調べ過程の適正について手掛かりを残すという意味では大きな意味を持っていると思います。
 もちろん、それだけでは弱いかもしれませんが、被疑者の国選弁護もあり、また取調べ状況の記録ということもあります。その辺りは弁護人の着実な御努力と併せていくと相当なところまでやれるのではないかという気もいたしております。
#18
○千葉景子君 もう余り時間がございませんので、あと一点聞かせていただきます。
 皆さんにと思うんですけれども、改めてちょっと四宮参考人にお聞かせをいただきたいと思います。
 先ほどもお話がありましたように、やっぱりこの裁判員制度、経験をした人がそれをいろんな形で社会に還元をし共有をしていくということが大変大事だというふうに思うので、それとの関連で守秘義務、この扱いについてはどんなふうにお考えなのか。そして、この制度はいずれにしても長い目で考えていく問題なんだろうと。どんなやっぱりこれが社会を変容させていくのだろうかな、そんなことも併せてお考えを聞かせていただければというふうに思っております。
#19
○参考人(四宮啓君) ありがとうございます。
 御指摘のとおり、先ほど私も述べさせていただきましたが、裁判員の経験、これを社会で共有していくことが最もこの制度を良くしていくためにも必要だし、また一番の広報になると思います。いろいろ苦労して務めたけれどもすごくやりがいがあったよと言ってくれれば、まあ有名な女優さんを使うのも効果はあるかもしれませんけれども、そういった経験者の声が最もいい広報になるんだと思っています。
 そのために考えなきゃいけないのは御指摘の守秘義務ですけれども、この守秘義務を導入することは、この制度を新たにつくる上では一つの通るべきところであったと私は思います。ただ、その本来の趣旨、つまりプライバシーですとかそれから自由な評議を確保するという点でいくと少し範囲が広いように私はずっと思っておりました。
 例えば、アメリカの陪審員たちは守秘義務が先ほど御紹介ありましたように一切ないわけですけれども、じゃ、彼らはべらべらべらべらしゃべっているかというと、実はそうではないんですね。評議の中でだれが何を言ったかと、今回は日本の裁判員にも守秘義務のコアの部分ですけれども、そこは裁判員たちもしゃべらないです。なぜかというと、これをしゃべってしまうと、後から陪審員を務める国民が二の足を踏むからです。
 裁判官の中からもそういう要請をする人もいることはいますけれども、そうだとすると、義務があろうとなかろうと、共に一つの目的に向かって仕事をした人たちの中で言っていいことと悪いことというのはおのずと分かる範囲があると思います。その範囲を破ったときには私は守秘義務に対して責任を問うのもやむを得ないと思いますけれども、それ以外の部分であれば、なるべく運用としては、守秘義務違反ということを問う運用は制限的に、謙抑的にしていく必要があると思います。
 しかし、先ほど申し上げたように、評議の中の部分というのは、これはだれも検証ができませんので、スタートの時点ではそこもやはり検証対象に、いろいろな皆様のお知恵を絞っていただいて、その上で、法的なクリアをした上で検証の対象に是非してほしいというふうに思っております。
#20
○千葉景子君 ありがとうございました。
#21
○丸山和也君 自由民主党の丸山和也です。よろしくお願いします。
 基本的に三名の参考人に同じようにお聞きしたいと思っていますけれども、先ほど竹田さんからの昭和三年のですか、新聞記事を見せられて、驚いたというか面白いなと思ったんですけれども。時代は違いますけれども、ほとんど今の裁判員制度を評価するというか、その意義を言っていることと全く同じことを言っているんですね、これ、八十年ぐらい前ですか。それで、いわゆる、眼目は従来の官僚裁判から革新して国民をして司法に参与せしめて民意を司法に反映すると、これが、ここでは立憲政治といいましたけれども、今では民主政治の発展につながるんだと、ほとんどうり二つと言って間違いないと思うんですね。
 ところが、これは、しばらくやったけれども余り芳しくなくて、あるいは自然に衰退していって、事実上これ終わってしまったわけなんですけれども、この失敗というか、これが続かなかったこの歴史と、今回、裁判員制度が導入されてどう歩んでいくんだろうかということは非常に関心があるわけですね。やっぱり歴史はある意味で繰り返すということもありますし、それと、弁護士会あるいは法曹界の中でも、この裁判員制度は阻止しなきゃならないというかなりの意見の方もおられまして、ただもう制度としてはスタートしてしまうからこれは仕方ないけれども、スタートした後、それを検証する過程で廃止の方向に持っていくべきだという意見もかなりあるんですけれども、こういうことについて、裁判員制度はそもそも適用が刑事裁判の一部ですね、をスタートして、その後、全体に広げるのか、あるいは民事裁判にも適用するのか、こういうこともまだはっきりしないんですけれども、取りあえず一部分的にスタートするという、こういう非常にテスト的なスタートになっているんですけれども、こういうことと、戦前の歴史を踏まえて、かつてのやつがどうしてじゃ成功しなかったのか、今回はどういう希望があるのか、ここら辺、大澤参考人、四宮参考人、竹田参考人から簡潔にいただいたら、どういう感想を持っておられるかということで結構なんですけれども、御意見を伺いたいと思います。
#22
○参考人(大澤裕君) かつての陪審法でございますけれども、これについてはいろいろな研究等もございますが、なぜうまくいかなかったのかという点については、制度的にもいろいろな問題があったということが指摘をされておるところでございます。
 一つは、これは放棄が認められるあるいは選択制になっているというようなところがございました。そういう状況の下で、放棄をしないあるいは選択をするということは、職業裁判官の裁判に対するある種の不信を意味するように取られかねない、被告人・弁護人側からはなかなか選びにくいというところがあったということが言われております。また、更新という制度がございまして、陪審の判断について問題があるというふうに考えた場合には、裁判官は、自分の判断をそのまますることはできませんが、陪審を改めてもう一度やり直すということができておりました。さらに、あと控訴審等がなくなるということもあったわけでございます。
 そういう中で、陪審を選択するということが非常に難しいというか、心理的に選びにくいということがあった。それがもう一つ戦争の時期と重なったというようなこともあって、次第に振るわなくなった制度的な理由として一つ考えられるのではないかということが言われております。
 したがって、この例というのが、今後国民参加がうまくいくかどうかということについて、直ちに何かここからうまくいかないのではないかというようなことはやや短絡的ではないかというふうに考えておる次第でございます。
#23
○参考人(四宮啓君) ありがとうございます。
 実はこの陪審制、今一つ大澤参考人から制度の問題が指摘されましたけれども、私がもう一つ大きな原因と考えていますのは、社会の在り方、国の在り方です。
 陪審法が施行された昭和三年、一九二八年ですけれども、それ以降、もうこれは皆様御案内のとおり、日本は軍国主義、戦争への道を走っていった。陪審法の誕生がその後の日本のあの軍国主義の時代と全く重なってしまったということが大変不幸なことだったと私は思っております。
 今度の制度ですけれども、私が決定的に違うと思うのはやっぱり国民の意識です。
 実は陪審法は戦後、戦争が終わったら復活するということが陪審法ノ停止ニ関スル法律という法律の附則に明記をされておりましたけれども、実は戦後六十年間、復活が果たされなかったわけですね。しかし、じゃ国会で全く議論がなかったかというと、実は、ここに市川房枝先生の肖像画がありますけれども、市川房枝先生が質問されるなど、年に一回ぐらいずつ国会で審議をされてきた経過があります。しかし、残念ながら、国民の関心を呼ぶところとはなりませんでした。また、それはまた無理もなかった面もあったかもしれません。しかし、今は、この時代は国民がやっぱり社会に参加していこうという意識が大変強くなってきていると思います。
 ちょっと一つ戻りまして、陪審法の、さっきの、が停止になった理由ですけれども、実は陪審法だけが停止になったわけではありません。もうこれは先生方御案内のとおり、民主的な制度すべてが窒息をしたわけでして、陪審制だけが国民に向かないから、日本国民に向かないから停止をされたというのではないと私は思っております。
 それで、日本の今の社会状況、国民の意識を考えますと、当時とは全く質が違っているというふうに思います。むしろ、今こそ日本の民主主義に最後埋まっていなかった民主主義のピース、立法、行政は埋められていました、しかし司法のだけは民主主義のピースが落ちていたわけで、そこにこれがはめ込まれることによって日本の民主主義は完成するというふうに思います。
#24
○参考人(竹田昌弘君) 大澤先生、四宮先生おっしゃらなかったことで申し上げますと、まず、陪審制度はどうしてできたのかというのは、原敬さんという総理大臣もやられた方ですけれども、政友会のリーダーを務められていたときに日糖事件という、明治四十二年だったと思いますけれども、日糖事件というのがありました。その際、政友会の議員の方々は検察の厳しい取調べを受けて、贈収賄事件なんですけれども、厳しい取調べを受けました。その取調べを受けた議員の方から原敬さんが聞いて、検察というのは軍部に匹敵するぐらい怖いところだと、検察権力を放置していくと大変なことになるというふうに「原敬日記」などにその片りんが書かれております。
 それから、翌年に大逆事件というのがありました。その際は、証拠調べもなく、皇室に対する罪ということでみんな有罪になっていきました。これに対しても原さんは非常に疑念を感じられました。その司法権力、検察権力あるいは裁判所、こういうものをチェックするというか、そういう権力が政治権力に上回らないようにするためには陪審制しかないということで陪審制を推進されたというふうに研究書などには書かれておりまして、私も読みかじっております。
 その点、今回の裁判員制度は、四宮先生のこのチャートなんか分かりやすいと思いますけれども、実際のところはやはり法律家を増やして、自由主義、新自由主義がいいかどうかはともかくとしても、こういう非常に大きく変わる経済社会に対応していくことがまず、十年前、九八年ですかね、言われたころ、審議会をつくろうといったころに言っていた議論はそうだったかと思います。そのために法律家をとにかく増やすんだと、五万人にするんだと。
 そのために、弁護士会、じゃ納得してもらうために何がいいのかといえば、長年日弁連の方で訴えられておられました法曹一元あるいは陪審・参審制度の導入というものも併せて検討しないと、やはり法曹の増員というのはなかなか実現しないのではないかという、この辺は政府・自民党のお知恵だったんではないかと思いますけれども、そういう経緯で成り立った制度であります。
 ですから、その戦前の陪審とはおのずと制度の意義は違う。実際、有権者からの声というのが立法事実にあるかないかというのは先週の衆議院の法務委員会でも議論されておりましたけれども、そういう面ではないのかもしれませんけれども、成り立ちがちょっと陪審制とは違うというふうに考えております。
#25
○丸山和也君 それでは、もう一点、いわゆる評議ということについて、先ほども参考人の何名かがおっしゃっていましたけど、これなかなか検証も難しいでしょうけど、実際、評議というのはかなり難しいと思うんですね。それで、私がその中で特にちょっと注目して、どうなるのかなと思う点があるんですけれども。
 いわゆる職業裁判官と一般の陪審員との意見で、裁判官の意見にリードされるんじゃないかとか、あるいは、この制度はそもそも一般の陪審員を入れているんだからそちらの意見を立てるようにというと変ですけれども、もっと配慮しながらやらなきゃいかぬとか、それではしかしまともな裁判はできないんではないかとか、いろんなことが言われているんですけど、ここの、やはり法律の専門家として、そういう長年、知識、経験、まあ能力、これはいろいろであるでしょうけど、そういうのを持っている裁判官が評議の中でむしろそういうことを遠慮せずに積極的にどんどん発言した方がいいんじゃないかという気もするんですね。
 それで、そこら辺の兼ね合いなんですけど、例えばこれ、あれですけれども、うちの中でも、もちろん戦前はそうでしょうし、戦後も、かつては主人というのは、お父さんが大体ここに住むと言えばこうで、こういう家を建てると言えばこうだとか、どういう仕事をする、どこに引っ越す、お父さんがどこの学校へ行けというと子供が行くとか、こういうおやじが全部決めていた。今は全くそれが決まらないというか、そうじゃなくて、子供は子供の意見を言う、奥さんは奥さん言う、みんなで話し合って決めていくんだみたいな家庭が多くなっているんじゃないかと思いますけれども。
 しかし、やっぱり議論は真剣にしなきゃならぬと思うんですね、評議は。その中で裁判官が、どうなんですかね、余りリードしてはいけないみたいなことを言われる節もあるんですよね。そこら辺についてどういう姿勢で裁判官は、やっぱりおかしいと思ったらがんがん意見を言うべきであるという考えについてはどうでしょうか。とりわけ四宮参考人と竹田参考人にちょっとお聞きしたいんですけれども。
#26
○参考人(四宮啓君) ありがとうございます。
 今度の制度は専門家と非専門家、専門家でない人がそれぞれの知恵を出し合っていいものにしようという制度ですので、今、丸山先生御指摘のとおり、裁判官がずっと沈黙していたのではこの制度の意味がないと思います。ですから、裁判官に期待されている役割は、まさに今も御指摘のとおり、法律専門家として法律の知識と裁判の経験があるということからの意見をやっぱり言うべきだと思います。しかし、そのこととは別に、裁判員はもうそれだけで裁判官を尊敬してしまっているわけです。やっぱり自分とは違う、裁判は、裁判官がやることは正しいのだというふうにどうしても思ってしまいます。ですから、兼ね合いが難しいですね。
 だから、私、さっき申し上げたように、裁判官は、しかし裁判官の法律の知識と裁判の経験だけで正しい判断ができるわけではないということを自覚していただかなきゃいけない。また裁判員も、法律の知識と裁判の経験があればいい判断ができるのではないということを考えてもらわなきゃいけない。これは、最初からそういうつもりで来てくださいというのは私は無理だと思います。
 じゃ、どうするかというと、これは法律家の役割、つまり検察官や弁護士、特に弁護士の役割が私、大事だと思いますけれども。裁判員の皆さんは選ばれてからいきなり評議室で評議をするわけじゃありません。法廷で証拠を見聞きするわけですね。弁論を見聞きする。その中で弁護士が繰り返し繰り返し何が一番大事なのか、ルールは何なのか、そして皆さんに期待されている役割は何なのか、皆さんの使命は何なのか、何をしたときに胸を張って裁判所を後にできるのかということを法廷で伝えることが一番大事だと思うんです。そうすれば多くの方々は、特に一回だけですので、正しいことをしようと思って来ていらっしゃると思います。そこが、そうして裁判官が評議では自分の役割をきちんとわきまえていただける、そうなればいい議論ができていくと私は思います。
#27
○参考人(竹田昌弘君) お配りしました冊子の十四ページ辺りから「評議の行方」というところで評議のルポを六回にわたってやっております。
 その中で、実はこのとき裁判官の方はできるだけ殺意と正当防衛とか、これを、まあテーマの模擬裁判、評議ですけれども、説明せずにやられたわけです。そうすると、裁判員役の方の一人がどうしても殺意を認定するのを拒否するんですね。それはどうしてかというと、正当防衛とこれは両立しないと思っていて、殺意を認めてもそれからまた正当防衛の議論をするんですけれども、それがやっぱり、あえて裁判所の方は説明しなかったんで分からなかったんですね。そのためにかなり議論が続いたりしていました。
 ですから、せっかくの争点を判断するために必要な説明はやはり裁判官の方からしないと、もしかするとちょっと時間も無駄があったり、ちょっと効率的じゃない評議になってしまうのかなと思いました。
 それともう一つ、先ほどちょっと申しましたけれども、被害者、被害感情ですね、被害感情に対する考え方はやはり違います。裁判官と多分裁判員役やられた方は全然違っています。プロですので裁判官の方はたくさんのケースも御存じで、まあ相場観みたいなものはあるわけで、一方で報道がどんどんされるような事件だと何となく、さっきのあの元裁判官の論文ではありませんけれども、ちょっと意識されたりもされているんじゃないかなと思いますけれども。一方で、市民の方は非常に何というか冷静というかクールというか、いつも彼らはプライベートな世界に生きていて、その瞬間、公の世界に入っていったときに、やはりすごく冷静になられているのかなと。逆に裁判官の方というのはいつも公の席にいらっしゃって、法廷で非常に被害感情を強く訴えられたときに、実はそれは比較的私的なものなんですけれども、どの程度それを裁判で入れるかというのはかなり難しいところはあると思いますけれども、まあ受け入れられていると。公私の判断の思考回路が逆転しているのかなと思います。
 ですから、そういう方々がお話しになっていい結論を出していくということでは、どちらかがリードするというのではなく、うまく相手を見て裁判官の方も話していかなきゃいけない。かなりの能力を裁判官の方は必要とされるのではないかなと思います。
#28
○丸山和也君 ありがとうございました。大変難しいと思いますけれども。ありがとうございました。
#29
○木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎と申します。
 三人の参考人の方々に、裁判員制度、五月から始まるわけであって、その前に貴重な御意見をいただきまして、改めて感謝を申し上げる次第でもございます。
 いろんなお話がありましたが、まず一点は、守秘義務の在り方について参考人三名の方からそれぞれ御意見をもう一度整理して伺っておきたいなと思うわけです。
 この守秘義務を課したことに関しては、その裁判員となる方の国民の負担という点とともに、やはりこれから裁判員を検証していくときの在り方の中でこの守秘義務という在り方がちょっと関連して少し、守秘義務を掛けているがゆえになかなか伝わりにくいというような意味があったり、いろんな意味があると思うんです。
 したがって、様々な意見の中には、例えば守秘義務は公判期間中に限定して、公判終了後は解除すべきというような意見もあってみたり、また罰則もありますから、この罰則の問題については悪質な場合に限って適用すべきとか、様々な意見があります。
 そこで、それぞれの参考人の方々に、この守秘義務の必要性、当然あるんですけれども、その必要性とともに範囲をどう考えるべきなのか、範囲の限定の問題を含めてお伺いしたいし、また罰則適用の在り方についてもそれぞれ御意見を伺いたい。
 そしてもう一点は、これ裁判員制度を検証していくことになっていくわけでございますけれども、その制度検証に当たっては、せめて制度検証する場においては例えばこの守秘義務を外して忌憚のない意見を伺うことがこういう制度を今後も信頼し維持する上で大事ではないかという意見もあるわけであって、この辺も含めてそれぞれの参考人から御意見をいただければと思います。
#30
○委員長(澤雄二君) じゃ、竹田参考人から。
#31
○参考人(竹田昌弘君) 先ほどお話ししましたとおり、私は非常に限定したものにした方がいいと思っています。だれそれが何を言ったとかいうのは、確かにそういうことを言われると評議で自由にお話しできなくなりますので、個人情報を公にしないというもう既に法律ありますので、それにかかわっていくので。
 あと、例えば死刑か無期かが争われた事件でじゃ何対何でどっちになったかとか、それぐらいは僕、お話しいただいても、多分裁判の公正や信頼を確保するためにはそちらお話しいただいて多少議論の経過も聞いた方が多分有権者の方々は信頼するんじゃないかなと。全くブラックボックスの中でやったときに、やるのと、どちらがいいかといえば、その方がいいんじゃないかと。
 四宮先生もいらっしゃった司法制度改革推進本部の裁判員制度・刑事検討会の中でも、例えば三年で守秘義務を解除するとか五年で解除するとか、いろんなお話があったんですけれども、結局は今の法案のような形になった。衆議院でたしか罰則を、懲役一年が懲役六月に下げられたと思いますけれども。
 ただ、もう少し今委員お話しになったように検証ということも考えますと、始まって何回かやっていく中を見ながらどんどん法律を変えていただくのが僕はいいんじゃないかなと思っています。
#32
○参考人(四宮啓君) どうもありがとうございます。
 守秘義務の必要性ですけれども、これは外国の例を見ると様々でございます。先ほど申し上げましたように、アメリカでは守秘義務は原則ありませんし、他方ヨーロッパでは裁判官と同じような守秘義務がございます。ですので、これはまさに立法政策でありますけれども、後から裁判員が来る、その人たちがためらいなく来てもらうためには、守秘義務の制度の意義はあるとは思います。
 その範囲は、今回はもう既に法律ができておりますので法律にはっきりしているわけですけれども、立法論としては少し広過ぎるかなというのが私のさっき申し上げましたような意見であります。
 また罰則も、今までどうもこの国会の御審議を拝見しますと、例えば検察審査員にも同じような守秘義務はあるけれども、あるいは調停委員にもあるけれども、そういったものが実際に問題になったことはなさそうだということですので、国民は割合こういったものをきちんと受け止めるんだと思います。ですので、できるだけ罰則は謙抑的にしていただきたいというふうに思っております。
 検証のときには、まさに御指摘のとおり、私は、特にスタートのときには相当この守秘義務に配慮した検証の運用をすべきではないかと思います。そのためには立法府の御協力をいただくことも多分必要になってくる場合があると思いますけれども、それをしないと、例えば今、仄聞すると模擬裁判を施行後も繰り返していくという案もあるようですけれども、やはり本番と模擬裁判とでは違いますので、そういった意味のある検証をしていただくためにまたいろいろと御尽力を賜れたらと思っております。
#33
○参考人(大澤裕君) 守秘義務の意義につきましては、今、四宮参考人からもお話ありましたように、やはり自由な議論を確保するというためには必要であろうというふうに思っております。
 それから、今、四宮参考人からも御紹介ありましたように、検察審査会あるいは調停委員、あるいは国家公務員もそうでありますけれども、その種のものについて皆守秘義務が課せられている、罰則で担保された守秘義務が課せられているということとの並びで見ますと、法制度として置くときには同じような罰則の付いたものを置くというのも、これは一つの整理だろうというふうに思います。
 その上で、刑罰については、これはあくまでも検察官が起訴して処罰するかどうかを決めていく、刑事裁判にのせていくということでありますので、そこのところの運用については、やはりおのずと悪質さ等も考慮して運用をしていくということが大切であろうし、またそういう運用に仮にあったとすればなるのだろうというふうに思います。
 検証のところは、法廷で行われたこと、それから判決理由に書かれていること、それから一般的な感想等については、これは守秘義務の問題ではなかろうということはよく言われているところで、その範囲でできることというのはもちろん問題がないということだろうと思います。更にそこから踏み込んで検証のために何か必要なのかどうかというところは、具体的に考えながら今後工夫をされていくところではないかというふうに思います。
#34
○木庭健太郎君 もう一つ、評議の在り方とかいろんな点もあるんですけれども、一つ指摘されているのが、やはり裁判員制度になって、例えば証拠の開示の在り方についても、裁判でビジュアル立証というんですか、という形で、例えば今大型ディスプレーで、模擬裁判でやりましたけれども、そういったある意味では裁判員にとってみれば初めての人が見れば非常に精神的ショックを受けるようなものも開示してきちんと裁判の中でやっていこうということもあり、ところがそれが余りに残酷過ぎるということで、どうなったかというと、その代わりにイラストを使ってみたらどうだとかコンピューターグラフィックではどうかというようなことも検討されている。
 まあ裁判員制度を導入することで変わってきているんですけれども、こういった点についてそれぞれ参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、例えば、大澤参考人にお伺いしたいのは、じゃ、そういった写真に代えてイラストやコンピューターグラフィックみたいなものを証拠として開示するということが本当にこれ正しいのかどうか、可否の問題も含めて、これはちょっと御意見を伺っておきたいと思うし、四宮参考人、竹田参考人には、それとともに、そういったもの、裁判員制度が始まる、じかにそういったものに携わることによって受ける裁判員の方々の精神的ケア、心のケアの問題についてどんなふうに実際これは取組をしていけばいいのか、その辺について御意見があれば、これは四宮参考人、竹田参考人にお伺いしたいと思います。
#35
○参考人(大澤裕君) 写真等非常にセンセーショナルな性質を持つような証拠の取調べの仕方という御質問だったかと思いますけれども、一方で、証拠はきちっと証拠価値のあるものを取り調べなければいけない、そうしないとこれは証拠による裁判ということではなくなってしまうだろうと思います。それと同時に、裁判員の精神的な負担ということも言われましたが、センセーショナルにならずに冷静に評議ができる、冷静に考えられるということの配慮も必要だろうと思います。
 そういうことの兼ね合いの中でどのようなものを使うかということを決めるという話だと思いますが、例えばイラストのようなものを使うというときにも、恐らく法廷で使うイラストのほかに基になるような証拠というのは弁護人の側には開示されるはずだろうと思います。そういう中できちっとチェックをされて、これでいいのだということであれば、先ほど言ったような証拠を、冷静な議論をし、あるいは精神的な負担を軽減するといったようなことも考えながら扱うことがあり得るということではないかと思います。
#36
○参考人(四宮啓君) 精神的なケアの問題ですけれども、今私が聞いているところでは、裁判所が電話によるカウンセリングですとか、それから場合によっては面接のカウンセリングもして費用の負担もするというようなことを聞いております。これは必要なことだと思います。
 アメリカなどの例を見ますと、陪審員たちに対して、評決の後にグループでカウンセリングを受ける、それには一緒にやってきた裁判官も一緒になって、つまり陪審員が十二人ですと十三人になりますけれども、そしてグループカウンセリングを受けるというようなことが始まっている州もございます。
 私も、大澤参考人のおっしゃっているとおり、実際の社会に、私たちの社会で起こったことですので、原則としては証拠を見ていただくということが正しい判断をしていくためには必要だと思います。しかし、そのためには、御指摘のとおり、十分な精神的なケアの体制をつくっていくのは、仕組みとそれから費用も含めてですけれども、必要なことだと思います。
#37
○参考人(竹田昌弘君) お配りした冊子の六十六ページにちょうど東京地裁八王子支部と、あと新聞にも大きく載りましたこの間の江東区の女性を殺害して遺体を切断した事件の際に、肉片の写真とか、これは八王子の場合は無差別通り魔事件、本屋さんでの通り魔事件ですけれども、そのとき、防犯ビデオ、実際に当時逃げ惑う、店員さんが逃げ惑っているような様子を映した防犯ビデオを法廷で再生しました。この記事にありますように、傍聴人の方から見ると、非常にきゃあという叫び声がずっと公判が終わっても頭に残っていたりしたというお話もされていました。それから、江東区の事件でいえば、遺族の方が途中で見かねて退廷されたことは報道されたとおりであります。
 そういう人たちのケア、今、四宮先生がおっしゃったように裁判所の方で何とかやっていただければと思いますが、立証そのものは、例えば死刑か無期かみたいな事件で、その判断を、じゃ実際の写真とかじゃなくてイラストでやりました、コンピューターグラフィックでやりましたということで果たしていいのかなと。
 刑事裁判って、多分、十分ではないにしろ、被告人も一定の納得というか、納得させるものでなきゃいけないとすれば、完全に納得する人は余りいないと思いますけれども、もしかするとやはり証拠調べもきちっとした証拠調べというのがないといけないのかなと思いますので、何か非常に個人的な感想ですけれども、やはり証拠そのものを裁判員の方に見ていただく必要はあるのではないかと思っています。
#38
○木庭健太郎君 ありがとうございました。
#39
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。今日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
 まず、大澤参考人に我が国の捜査の構造の改革をどんなふうに考えるかについてお尋ねをしたいと思うんですけれども、この裁判員制度は、もちろん重大刑事事件について導入されたということとの関係で、かつて平野故教授が絶望的であるとおっしゃったその捜査の現実が一体どうなっているのかという点について、私は決して大きく改まったわけではないのではないかという問題意識を持っております。
 この法務委員会でも、ありもしなかった事実がさもあったかのように自白によって収れんをしていったという志布志事件の問題や、代用監獄を濫用して同房者への犯行告白を勝ち取るという違法な捜査手法が行われた北九州の引野口事件といった件を取り上げて議論もしてきたわけです。これは、四大死刑事件などの時代にさかのぼるまでもなく、ついこの近年行われていることであって、富山の氷見事件もそうした中で大変残念な結果が起こっているのではないかと思うわけですね。
 先ほど大澤参考人の方から、人権保障を果たすための捜査段階での手だてとして起訴前の国選弁護という、これが導入をされたというお話があるわけです。もちろん、全国で弁護士の皆さんが大変頑張っておられることは私も承知をしているんですが、しかし、取調べへの立会い権があるわけでもない、今なお検察庁も警察庁も取調べ全過程の可視化に対してはこれは背を向けているという下で、この捜査構造というのをどう変えていくのかということは私大変重要ではないかと思うんですが、その辺り、大澤参考人、いかがでしょうか。
#40
○参考人(大澤裕君) 御指摘のとおり、我が国の捜査の特色というのは、被疑者の取調べを中心にしてかなり詳細濃密な捜査が行われるということであろうかと思います。御指摘のように、これまでにいろいろ取調べの過程で問題が起こってきた例というのも報告をされております。そのようなことがあってはならないというのは、これはもう異論のないところであろうと思われます。
 その取調べでありますけれども、非常に濃密な取調べがなされるというのが我が国の特色であり、しかし、それが一面において様々な事案の解明、それからもう一方で反省を促し、更生を促すというような機能を果たしてきた側面というのもこれは否定できないだろうと思います。ただ、そのような濃密さの中で、しかも捜査機関と一対一、被疑者が犯罪を行ったと疑っている捜査機関と一対一の中でそういう濃密なものが行われる過程の中で行き過ぎが起こるというのもまた幾つかの例が示しているところでございます。現在の取調べというのは、そういう両側面を持っているということをこれは正面から認めてどうしていくのかということを考えるしかないのだろうと思います。
 平野先生は絶望的だと言われました。平野先生は、捜査はあっさりと、起訴もあっさりと、そして公判をうんと充実させるというモデルを考えておられました。ただ、現在のような社会状況の下で捜査をあっさりと、起訴もあっさりとというふうに言うところが果たして本当に国民に支持を受けるのかというところもございます。ある程度の捜査の力も保持しながら、どのようにしてそれをチェックしていけるのかというところが私は大事だろうというふうに考えております。
 そういう中で、今回の裁判員制度の導入を契機として、取調べの一部という形ではありますが録画が入った、また被疑者の国選弁護が入ったということは、そういうチェックの機会を増やすという意味で重要な意味を持っているというふうに認識しておるところでございます。
 非常に評価の分かれる問題でございます。今後、自白の任意性あるいは信用性が争われる場合に、それが国民の前で問われるということになります。任意性の判断そのものは裁判員が加わらないということでございますが、十分に取調べ過程の適正が示されないということになれば、国民は信用性を疑うかもしれません。まさに、従来プロがやってきた世界において、国民がどう見るのかということが裁判員制度を通じて示されるところもあるだろうと思います。そういうものを見ながら、現在のもので果たして不十分なのかどうか検証しながら少しずつ進めていくというのが私は現実的だというふうに考えております。
#41
○仁比聡平君 四宮参考人に、今の点にもかかわってくるわけですけれども、そうした状況の中で被告人の防御権、中でも弁護権が本当に果たされるということ、それから市民の常識が本当にその一人一人の裁判員の良心に基づいて発揮されるということは大変大事なことかと思います。
 先ほど四宮先生の方から証拠開示の問題について、最高裁が証拠開示の新たな決定で広げていっているという御紹介もありましたが、一方で、その最高裁の決定の後も、志布志事件においては問題になっている取調べ小票についてはあくまで捜査官の個人的メモだとこの委員会でも警察庁は答弁をし続けているわけです。そういう状況の下で、御感想もいただいて結構なんですけれども、特にアメリカで、先生お詳しいわけですが、アメリカでの証拠開示というのがどういうものなのか、それから実際の公判が始まってからの弁護側の立証制限というのがあるのかというこの点、御紹介をいただければと思うんですが、いかがでしょうか。
#42
○参考人(四宮啓君) ありがとうございます。
 私は学者ではありませんので、限られた知識ですので、もし大澤参考人の方で補っていただければと思いますが。
 アメリカでも証拠開示制度、もちろんあります。原則、もちろん検察官が取調べを請求するもの以外についても開示請求をすることができますし、特に注目されるのは、被疑者、被告人にプラスになる証拠、これは開示する義務が検察官にあるというふうに最高裁の決定を受けた。恐らくは、今ほとんどの州では州法になっていると思いますけれども、そういったものがあります。その意味では、日本とは少し仕組みが違いますけれども、開示が行われております。
 立証制限ですけれども、実は、弁護側も充実した陪審公判を行うためにあらかじめ言っておかなければいけないことというのがあります。例えば、アリバイを主張する場合ですとか被告人の責任能力を公判で問題にするというふうな場合には、あらかじめ主張をし、また証拠を開示することが必要になります。
 なぜかと申しますと、それがいきなり陪審公判で出てしまいますと、検察側が、いや、それ聞いていなかった、ちょっと待ってくれと、こちらでも捜査をしなきゃいけないという形になって公判がストップしてしまうおそれがあるからなんですね。でも、事前にそういうことがあるからといって、もちろん、それはですからこのケース、そういう場合であれば事前に言っておかなければいけないということになります。
 ただ、いずれにしろ、日本の場合でも主張制限ということがありますけれども、私が経験したところでは、今までの、まあ証拠開示は私はもうちょっと前進させてほしいとは思っておりますが、それでも、私たちが法廷でどのような主張の組立てをするかということについてはかなりできるようになってまいりました。
 その上で、なお、我々がその主張をする段階で知らなかったこと、被告人のためにプラスになる方向での証拠などが後から出てきたりした場合には、今の仕組みでもそれは証拠調べはできる形にはなっておりますので、その点の手当てはできているとは思います。
#43
○仁比聡平君 今の点、もう少し深めたいところですけど、時間がございませんので、竹田参考人に、ちょっとこれまで話題になっていない点で御意見を伺いたいんですけれども。
 参考人の「知る、考える 裁判員制度」、私も読ませていただいておりまして、その中のタイトルでいいますと、冤罪救済を阻む証拠のコピー利用禁止という、その開示された証拠の利用の問題についてお書きになっている部分があるわけです。
 これまでよく知られていることだと思いますが、死刑、重大事件などにおいて、裁判上の証拠をメディアやあるいは作家の皆さんが入手をされて批判的に分析をされるなどの活動、それが国民的に広がって冤罪からの救済が図られると、そういった歴史が我が国にはあるわけですが、この辺り、竹田参考人、どんなふうにお考えか、あと四分ほどございますので、よろしくお願いいたします。
#44
○参考人(竹田昌弘君) 裁判員制度に伴う刑訴法の改正で入ってきた条文で、公判前整理手続で証拠開示が拡充されたことに伴って入れられたとも言えるのかもしれません。
 お配りしたこの「裁判員司法」という連載を、これ随分、一年半以上やっているんですけれども、この条文を基に弁護士さんから取材を拒否されたこともあります。弁護士さんが、だから怖いので、これは駄目だよとか、そういうことも現場で実際ありました。
 この改正刑訴法の二百八十一条でしたか、これは相当我々にとっては大変な条文です。私、初任地静岡で、あの島田事件の再審公判というのを実は少しだけ経験しましたけれども、やはり赤堀政夫さんの調書とかを見ると、法廷で見ている赤堀さんがこんなこと言うわけないなんて普通一発で分かるわけですね。やっぱり調書を読むこと、非常に我々考えるときに良かったんですが、こういうことで、どの程度、本当に立件されるかどうかというのもあるとは思いますけれども、心理的な何か圧力になっていて、弁護士さん、ちょっと取材に協力したがらないケースが出てきているのは大変残念ですね。
 実際は、営利目的がないと、弁護士さん、多分これ、利益目的というのがないと罰則は科されないとかなってはいるんですけれども、相当我々にとっては、何というか、良くないというか、何とかしてほしい条文ではあります。
#45
○仁比聡平君 今の点、メディアにとってというだけではなくて、メディアにとってというのは、つまり国民の知る権利、報道の自由にとってという御趣旨だと思うんですけれども、個別事件の被告人の人権保障ということを考えたときにも、その事件についての国民的な感覚、常識というものが裁判に反映されていくということはあっていいと私は思いますから、そういう意味では大変重要なものではないかと思うんですが、今後どういうふうにした方がいいかと、立法的な問題も含めてですね、お考えがもしあれば御紹介ください。
#46
○参考人(竹田昌弘君) 昔の八海事件なんかで、法廷外で非常に盛り上がって、いろんな証拠を基に著名な作家の方であるとか皆さんがおっしゃって、あれは裁判、判決が二転三転して結局は無実が確定しますけれども、要は、この発想というのが例によってまた専門家の発想で、法務省の説明されていることも満更、確かにネット時代で調書のコピーがネットに載ったりプライバシー侵害とかいう弊害は確かにこれはないとは申しませんけれども、法律はできてしまっているので直していただければ一番うれしいんですけど、国会の答弁で運用をもう少しきちっとやっていただいて、冤罪を指摘するような活動でありますとか人権にかかわる活動については悪質なケースではないので立件対象にならないみたいな答弁を積み重ねていくなりしていただければ、多少、我々というか、例えば冤罪を訴えている方々にとってもよいのではないかと思います。
#47
○仁比聡平君 ありがとうございました。
#48
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見いただきまして、ありがとうございました。お三方にそれぞれお聞きをさせていただきたいというふうに思っています。
 まず最初に、大澤参考人にお尋ねしたいというふうに思いますが、今日、裁判員の守秘義務の点がかなり質問がございました。それぞれお三方ともこの守秘義務の必要性とか意義というものを認めた上で、とりわけ四宮参考人、竹田参考人、この守秘義務の範囲が少し広過ぎるかなと、こういう御見解を述べられて、より謙抑的に運用していただきたいと、こういうお話がございました。大澤参考人もこの守秘義務のことについて言及がございましたけれども、運用の在り方等についての言及がなかったかなというふうに思いますし、また、言わば三年後の検証の在り方について、私ども、やっぱり検証の際には実際に裁判を担った裁判員の方の生の声を聞くというのが何よりもやっぱり重要なことではないかなと、こういうふうに思っておりまして、せめて検証の際には守秘義務を解除をして、そういう制約のない中で率直にお話をしていただいて、そして裁判員制度の在り方をやっぱり議論をしていただくということが非常に意味があるんではないかと私自身は思っておるんですが、そういう先ほど来の守秘義務に更に付加して、今言った運用の在り方だとか、あるいは検証の際の守秘義務の問題等について御意見聞かせていただければ大変有り難いと思うんですが、いかがでしょうか。
#49
○参考人(大澤裕君) 守秘義務と特に刑罰との関係については、それは守秘義務違反で、しかし、刑事訴追をして刑罰を科すという場合にはそれはおのずとその刑罰で処罰しなければいけないような場合ということになるだろうと。そこは当然、捜査をし検察官が訴追をしないと刑事裁判にはならないわけで、その過程の中で悪質なものにある程度ターゲットを置いた運用がなされることになるだろうし、それが望ましいだろうということは先ほど申し上げたつもりでございました。
 それから、検証の部分でございますけれども、法廷で出てきたこと、それから、法廷で出てきて証拠もオープンに調べますから、そういうものは公になっております。それから、判決理由に書かれていることもございます。そういう中で、更に守秘義務でカバーされている中で必要なことというのはどういうことなんだろうか、だれがどういう意見を述べて、どういう経過で、どんなふうに進んで結局こういう結論になりましたというところまで検証という中で必要なのか、検証としてどこまでやるのかということとの関係でその辺りは考えていかなければいけないということだろうと思います。
 そして、検証ということがどうしても必要だった場合に、その裁判の独立性とかいうことを害さないということであって、それが正当だということなら、あるいはそれは正当理由ということになる場合というのもあるのかもしれませんけれども、まずは検証ということの中でどこまでのことが必要なのか、本当に守秘義務を外さないと検証ということができないのかということも、少し具体的にそれはその段階で考える必要があると思います。
#50
○近藤正道君 じゃ、四宮参考人にお尋ねをいたします。
 先ほどスライドといいましょうか、なぜ裁判員制度が必要なのか、これを基にお話をいただきまして大変ありがとうございました。とりわけ刑事手続の改革のところで、立法化されているところといまだ立法化されていないところがございまして、ここは課題であるということが非常に分かりやすく御説明をいただきました。
 私などは、裁判員制度を導入するに当たっては、とりわけ国民の理解、信頼を得るためにも冤罪を生み出す構造みたいなものはやっぱり極力なくしていくと、そういう配慮がやっぱり必要だというふうに思っておりまして、言わば密室での取調べだとか、あるいはいわゆる人質司法的なところ、あるいは証拠開示のようなところ、ここは非常にやっぱり問題だなと、こういうふうに思っておりまして、四宮参考人もそういう点では問題意識全く共有をされているんだろうと思うんですね。ここをやっぱりただしていかなきゃならぬということなんですが、裁判員制度目前に至って、いまだここの言わば展望が切り開かれていないという現実がございます。
 そういう中で、四宮参考人はとにかく予定どおりに実施ということは大事だということなんですが、しかし、もう一つのやっぱり考え方として、課題の中でもやっぱり強弱はあるけれども、せめて積年の日本の司法の弊害である密室の取調べだとか、あるいは人質司法的なところはやっぱり根本的に解決まずされるべきだと、それができるまではやっぱり待つべきだという、そういう考え方も十分私はあり得るというふうに思うんですが、そういう弊害を認めつつ、なおかつスムーズな予定どおりの実施が必要だというふうに強調される四宮参考人の御意見をもう少し掘り下げて聞かせていただけますか。
#51
○参考人(四宮啓君) どうもありがとうございます。
 私、取調べの問題点、それから証拠開示の問題点、先生と多分問題認識は共通だと思います。そして、なぜ私が、にもかかわらず予定どおり施行すべきだと申し上げるかというと、この取調べや証拠開示の問題あるいは刑事司法の問題すべてがどういう公判が行われるかによって決まるものだと考えているからです。
 先ほどもスライドでお示ししましたように、立法化がなされていないのにここでお示ししたような変化が生まれていると。それはなぜかというと、公判に裁判員が来るということをみんなが想定をして今実務の運用に携わっているからだと思うんですね。
 つまり、例えば取調べの状況、なぜあんなに長い期間勾留して、なぜあんなに厚い調書を作ったのか。それは司法制度改革審議会で、警察庁の、当時、佐藤さんという次長さんがお見えになって、二十年前の同じような窃盗事件で紙がどのぐらい増えているかというお話をなさったことがあります。同じような事件で、二十年前と比べて三倍になっていると、記録が。それは私たちが好きで作っているんじゃありませんと、裁判所で使われるからですとおっしゃっていました。それは裁判で裁判官だけが判断していた場合に、やはりその記録というものは大変に効率的ですし、たくさん利用されてくるわけですね。だから捜査もそれを作るための捜査になってくると。
 今度はそういうことが、裁判員は法廷に参りますと目で見て耳で聞いて分かる裁判をしなきゃいけない、これは関係者の全員の一致しているところです。そうなると、今までの捜査も変わらざるを得ないと思います。それだけ厚い調書を長い期間勾留させて作っても、裁判所で使われなければ意味はないわけですね。と同時に、じゃ取調べは何もやらなくていいかと。そうじゃなくて、取調べ室で何があったかも裁判員は知りたがる、だから録画してほしいと。だから法律も変えないのに録画に踏み切ったんだと私は思います。
 つまり、法廷がどうなるかによって我々がずっと問題にしてきた捜査も変わると。今変えるために、まず変えてからということになると、これを、その流れを私は止めることになると思います。むしろ裁判員に実際に来ていただいて、そこでなお課題があればそれを国民に直接見てもらう、そのことが捜査を変えていく一番の原動力になると思っているからです。
#52
○近藤正道君 もう一つ四宮参考人にお尋ねしたいと思うんですが、これ出てこなかった話なんですが、四宮参考人の著書、発言等の中に、裁判員制度の下では事実の審理の過程と量刑の審理の過程を分けるべきであると、こういう主張があったというふうに思うんですね。そして、当初その裁判員制度ではやっぱり分けるべきだという議論があったんだけれども、結局それが実現しなかったと。このことについて、四宮参考人、どういうふうにお考えなのか。もう一つ、実現はしないけれども、運用面でどういう配慮をすべきなのか。御意見がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
#53
○参考人(四宮啓君) どうもありがとうございます。
 有罪、無罪が争われている場合に、その事実の審理をすると、そして有罪の場合の量刑の審理を分けるべきではないかと。取り上げていただいて、どうもありがとうございます。手続の二分、二つに分けるという考え方です。
 これは外国などでは行われているところですけれども、なぜこのような手続にする必要があるかと私が申し上げてきたかといえば、争いのある事件で評議をして有罪、無罪の結論を出す前に、裁判員たちは、一つの可能性としては、例えば前科の記録を見る、あるいは遺族の意見を聞くなどなど、どのような刑罰を決めるかについて必要な証拠にも事前に接することになります。そこで、事実に争いのある事件、つまり有罪、無罪を争っている事件ではまず有罪か無罪かの審理を先行させたらどうかというふうに申し上げてまいりましたが、今の手続ではそうなっておりません。
 ただし、今規則で新しく設けられましたのは、そういう有罪、無罪の関係の証拠調べと量刑を決める証拠調べとはなるべく分けなさいという規則が設けられました。今御指摘のとおり、それを運用で私は活用していくことが十分できるだろうと思います。現に、最近、大阪地裁で責任能力が争われているケースで、裁判長の訴訟指揮でまず責任能力に関する弁論をしてくれという形で手続を運用で分けていくやり方が行われておりました。
 このように、私としては、実はそこから更に踏み込んで、有罪、無罪が争われる場合には、それぞれの法律家が有罪、無罪に関する弁論を行い、中間評議というものを行って、そこで有罪、無罪について裁判官と裁判員にまず評議してもらうと。その後、また法廷に戻っていただいて量刑に関する証拠調べに入ると。もし無罪という結論になれば、訴訟指揮でいろいろな証拠の整理をした上でその後の手続をやらないということも可能だと思っているんですけれども。そのような形で、運用でなるべく裁判員がいろいろな課題を同時に与えられて予断を持ったりしないような、混乱しないような運用にしていただけたらと思っております。
#54
○近藤正道君 竹田参考人にお尋ねをいたします。
 目的外の使用禁止、検察官の開示証拠については今ほど質問がございまして、お話をいただきました。私も同じ考えでございますが、お聞きしたいのは、模擬裁判ではないことなんですが、実際の裁判で起こることだと思うんですが、とにかくこれは重罪のみが裁判員裁判の対象になると。そうすると、その地域ではまさにマスコミが猛烈に、言わば、やっているやっていないは別として、かなり犯人視的な報道を先行させて一定の雰囲気ができてしまっている中で、その犯罪の行われた地域で言わば裁判が始まるわけですよね。だから、いかにいわゆる市民、素人の裁判員に対して予断排除といいましょうか、あるいは疑わしきは被告人の利益、合理的な疑いを超える範囲に立証しなきゃ駄目なんだよと、立証責任は検察官にあるんだよということをやっぱりしっかりとそれはやっぱり説明、説示、裁判官がしないと、もちろんこれは弁護人の大きな責務なんだけれども、かなりやっぱり心配なところがあるんですが、記事を書かれているマスコミの立場から見て、公正な裁判をまさに実現するための裁判所の説示の在り方等について御意見ありましたら、もう時間過ぎておりますけれども、申し訳ない、聞かせてください。
#55
○参考人(竹田昌弘君) レジュメの後ろに付けました事件報道のガイドラインとかいうのは、今、近藤さんがおっしゃったそういう予断を与えないために、犯人視報道をしないためにどういう取組をするかというところをまとめてみました。
 今説示のお話ありましたけれども、どうも今最高裁なんかの公開資料に出ている説示案などを見ますと非常に簡単なものになっていて、ただ、例えば今年、今週、新人記者研修というのを私やったんですけれども、例えば刑事裁判って有罪、無罪を判断すると、こう思っている人がいるんですけれども、実は有罪か有罪でないかを判断するんだと思うんですね、僕は、正確に申し上げると。ギルティー・オア・ノット・ギルティーでしょうから。そこをどう考えるかでやっぱりまず根っこの部分が違っていて、有罪か無罪か決めるんだか、有罪なのかそうでないのかを決めるんだ、それは大分違うわけです。新人記者諸君にはその話をしまして、要するに有罪が証明されなければ、仮にその人が、実際どうかは知らないけれども、無罪判決が出るわけで、その辺刑事裁判というものを基本的なところを理解してもらいたいというお話をしましたけれども、なかなか理解していない人も多いわけで、裁判員の方にも裁判所においてそういうところからまず詳しくお話ししていただかないといけないのかなと。
 それから、合理的疑いなどというのは法律家の言葉で、一般の人にはまず到底理解不能なので、最高裁の判例なんかで通常の人が絶対、何でしたっけ、普通の感覚で確からしい確信を得たものとか何かありますけれども、そういうものをもう少し分かりやすい言葉で裁判員の方に説明していただいて、もっと今考えられている以上に詳しく説示をされるべきだと思っています。
 ただ、一点だけ付け加えますと、私どもこのガイドラインを作成する際に読者のグループインタビューというのを実施いたしました。少数ですけれども、二時間以上にわたって事件の記事というのはどう読まれているかというのを非常に詳しく聞きました。その際いただいた御意見では、予断を受けるとかいうよりは非常にクールに新聞報道を御覧になっていることがよく分かりまして、言われているほど読者の方、予断を受ける、僕、逆に裁判官の方がよく受けているのかなと逆に思ったりも実はするんですね。実際法廷に行って本当の証拠を見られた方が、それが新聞記事が頭の中にあるからといって、その生の証拠を、一生に一回あるかどうか分からない刑事裁判の証拠を見たときのインパクト、その衝撃に比べて、日常接している新聞報道で仮にいろんなことがあったとしても、その証拠を見てやはり判断されるんじゃないかなと思っています。
#56
○近藤正道君 終わります。
#57
○委員長(澤雄二君) 以上で参考人に対する質疑は終了をいたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)
 午後二時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十分休憩
     ─────・─────
   午後二時開会
#58
○委員長(澤雄二君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 本日、外山斎君が委員を辞任され、その補欠として大島九州男君が選任をされました。
    ─────────────
#59
○委員長(澤雄二君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に警察庁刑事局長米田壯君、法務大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省刑事局長大野恒太郎君及び法務省入国管理局長西川克行君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#60
○委員長(澤雄二君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ─────────────
#61
○委員長(澤雄二君) 休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#62
○松野信夫君 民主党の松野信夫です。
 今日は裁判員制度についての集中審議ということで、この問題について取り上げたいと思います。
 最初に、質問通告には出しておりませんでしたが、私ども民主党もこの裁判員制度については昨年からずっと検討を加えてまいりました。その結果、今年の四月一日に裁判員制度実施に向けた環境整備等に関する意見書を作成いたしまして、これについては民主党もかなり力を入れて様々な角度で検討いたしました。ヒアリングも重ねてまいりました。その結果としては、この裁判員制度、様々な問題があるということも指摘しながら、しかし五月二十一日にはスタートする、こういうことでありますので、円滑なスタートを目指す、そのための様々な環境整備をやっぱり整えなければならない、とりわけ早急に法改正が必要だというふうに指摘しているものには、取調べの全過程の録音、録画、いわゆる可視化と、検察官手持ち全証拠のリスト開示を義務付ける、こういうのも今回の意見書には記載をさせていただきまして、去る四月一日には私も参りまして、森法務大臣にも提出をさせていただきました。大臣もしっかり検討したいというお話をお聞きしておりましたので、この意見書について、感想でも結構でございますので、お話お聞かせいただければと思います。
#63
○国務大臣(森英介君) 今、松野委員からお話のありましたとおり、四月一日に民主党さんのプロジェクトチームの意見書を法務省までお届けいただきました。今まさに精査中でございまして、結論めいたことを申し上げるのはいささか早急でございますけれども、今、感想でも申し述べよということでございましたので、私どもとはいささか意見を異にする部分もあって、なかなか難しいんじゃないかという点もありますし、また大変傾聴に値する御意見もあり、いずれにしても、結論にありますように、「裁判員制度の円滑なスタートにあたり懸念すべき点は残されているものの、それらの多くは制度への国民の理解と法曹三者の適切な運営と努力によって解決すべき」という結論は、誠に裁判員制度を目前にして心強い限りでございまして、民主党の裁判員制度に向けての御努力に対しまして心からの敬意を表したいと思います。
#64
○松野信夫君 それで、今もありましたように、裁判員制度は実は様々な問題を抱えた中でスタートするということでありますので、質問の中で幾つかの問題点等々を指摘したいと思います。
 まず最初に、裁判員裁判における審理期間の件ですけれども、これはもうかねてから、約七割の裁判は三日で終わる、あるいはさらに、九割は五日程度で終わる、こういうふうに言われているんですが、しかしそれはどういうような調査をやってそんなことが果たして言えるんだろうかと。
 それから、そうすると残り一割は、これはどの程度で大体審理が終了するというふうにお考えなのか、またその根拠などがありましたら、この点お聞きしたいと思います。
#65
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 議員御指摘のとおり、最高裁判所では、現段階における裁判員裁判の審理イメージによりますと、約七割の事件は三日以内程度、約二割の事件は三日を超えて五日以内に終えられるのではないかと考えております。これは、従前、裁判員裁判対象事件の実際の審理時間、これがどのぐらい掛かっているのだろうかということを調べて、これを足し合わせまして、それをまず基にしまして、裁判員裁判では裁判員の選任手続とかそれから評議などのための時間が新たに必要になるということ、それから、冒頭陳述や論告、弁論等のプレゼンテーションや、書証は朗読で調べるというのが原則になると思われますけれども、そうしたものにもこれまでよりも時間を要するというようなことも加味しまして推計をしたというものでございます。
 また、裁判員裁判では、公判前整理手続において事案の真相解明に必要な争点と証拠を整理しまして、事前に適切な審理計画を立てるということによって連日的に期日を開いて必要な審理を尽くすということが可能となりますので、先ほど申し上げた日数で裁判を終えることができるというふうに考えているところでございます。
 それから、二つ目の御質問でございますが、残りの一割、確かにそうは申しましても、残りの一割は五日を超えて、ある程度の時間掛かるというふうには思います。それはそのとおり、そう思っております。ただ、一体どのぐらい掛かるのかというのは、度々御質問もいただくのですが、やはりどのような事件がどのように係属するのかというところもございまして、なかなか複雑困難な事件が何日程度で終わるかということにつきましては、どうも一概にはちょっと申し上げられないというふうに思っております。
#66
○松野信夫君 今の御答弁ですと、具体的な事件、過去起こった事件を調査をして七割が三日だと、このようであります。
 それで、委員のお手元に著名刑事事件の第一審についてということで、これは法務省と最高裁の方に調査をお願いして、それを私の方でまとめさせていただいたものであります。私の方で最近の著名な刑事事件、しかもこれは全部殺人でありますので、間違いなく裁判員裁判になる事件をリストアップして、それで、いつ起訴されたのか、開廷数がどのくらいだったのか、一審の判決はいつだったのか、この辺りを調査したところでございます。
 そうすると、このように例えば私が挙げた、これは十件の著名なケースですが、こういうような著名な刑事事件も調査をした上で七割が三日だと、そういうふうにお考えになっているんでしょうか。
#67
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 これは、じゃ端的にお答え申し上げますと、今御指摘のこういう著名な事件自体を直接調査してそういうような推計をしたというものではございませんので、ある一定の時期のものを調査させていただいて、これは平成十四年に係属した事件を一定程度調査させていただいて、それで推計したものでございます。
#68
○松野信夫君 今の御答弁ですと平成十四年とか十六年とかで、そうするとサンプル数は全部で何件ぐらいのものを選んでやっているんでしょうか。
#69
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 この推計の根拠の件数は二千三百三十件でございます。
#70
○松野信夫君 そうですか。そうすると、それは全部裁判員裁判の対象事件、だから殺人だとか強盗だとか、そういうものだということでよろしいですか。
#71
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 御指摘のとおりでございます。
#72
○松野信夫君 そうすると、その問題の残りの一割については何らかのデータというのは取られたんでしょうか。
#73
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) データは取っておりまして、大体この二千三百三十件のうち、実審理時間が二時間以下のものと、それから実審理時間が二時間を超えて五時間以下のもので、これ辺りが三日以内に終わるだろうという推計をしまして、それ以外に五時間を超えて十五時間以下のものが五百七件、それから実審理時間が十六時間超のもの等が百六十九件、こういうデータは取っております。
#74
○松野信夫君 皆さんのお手元にあります著名事件、これは殺人事件ですので、これを御覧いただいてもお分かりのとおり、無罪というふうになっている、例えば甲山事件、あるいは東電OL強盗殺人事件、それから九番の引野口事件、これらは無罪になりましたので徹底して恐らく争われた事件だろうと。それでも六十九回とか三十三回の公判が開かれているわけでありまして、例えばそういうふうに無罪が争われたケースは大体これくらいで終わるだろうと、たとえ無罪が主張されて争われたとしても大体これくらいで終わるだろうというような統計はあるんですか。あるいは、そういう調査はされましたか。
#75
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 今委員御指摘のような観点では調査はしておりません。
#76
○松野信夫君 ここにありますように、私が調べた殺人事件で一番から九番にかけてはこれはいわゆる公判前整理手続は採用されていない事件であり、十番の、これも有名な秋田連続児童殺人、畠山鈴香被告人の事件、これは公判前整理手続が採用された事件であります。
 それで、その一番から九番の事件見ましても、恐らく何十回という法廷が開かれることはこれは十分に予想できるところであります。この十番目の秋田連続児童殺人事件、これは一年一か月にわたって公判前整理手続が徹底して行われました。ですから、争点が絞られ、証拠も絞られ、徹底してある意味ではそういう準備がなされた結果、十四回、時間に直すと約八十時間。それでも八十時間の審理時間が掛かったのがこの秋田連続児童殺人事件であります。
 私も検討してみましたが、かなりこれは公判前整理手続で争点、証拠が絞られ、証人もかなり絞られ、やっている事件です。それでもやっぱり八十時間掛かっておるわけです。それで、これはプロの裁判官、検察官、弁護人がやっていますので、一々素人向けに説明するところはないわけです。
 しかし、裁判員裁判ということで、多少素人向けにいろいろ説明をしなきゃいけないところも出てきますから、私は、恐らく、公判前整理手続でかなり争点など絞ったとしても、例えば、この秋田連続児童殺人事件について、裁判員裁判になれば、到底十四回あるいは八十時間の審理では終わらないのではないかと。
 つまり、裁判員向けにいろいろ説明等々分かりやすくしなきゃいけないわけですから、多分、プロがやるより、プロだけがやるよりは余計に時間が掛かると思いますが、そのような御認識はありますか。
#77
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) プロだけがやった場合と、それから裁判員裁判になった場合で、どちらが時間が掛かるかというのは一概には言えないと思いますが、ただ、先ほど申し上げたように、分かりやすい審理をしなければいけませんし、それから口頭主義、公判中心主義ということになりますから、それに見合った時間というのは、それは掛かると思います。
#78
○松野信夫君 それで、実は昨日の新聞にも出ていて私もちょっとびっくりしましたが、四月八日の新聞記事によりますと、京都府の舞鶴市で昨年五月に府立高校生が殺害された事件で容疑者が、逮捕に踏み切ったということで、新聞の大見出しに「裁判員裁判回避か」という記事が出ているわけです。
 直接証拠も自供もない中での急展開は五月に導入される裁判員裁判を意識したとの指摘も出ているということで、具体的には、元最高検検事の土本武司筑波大名誉教授がこのように言っておられます。これまで京都府警が示したのは防犯カメラの映像ぐらいで、有力な証拠がないと。状況証拠のみで、和歌山のカレー事件よりも質、量共に劣っているのではないかということで、この時期の逮捕は五月から始まる裁判員裁判の対象にしたくないとの考えがあったのではないかと、こういうような元最高検検事の御指摘もある。
 私は、まあ、まさかと思いますが、要するに状況証拠だけという大変厳しい裁判が予想される。今のところ自白もない、確たる物証もない、そういうような大変厳しい、状況証拠だけでというような裁判について、この新聞記事ですと、裁判員裁判を回避したいというがために慌てて逮捕したんじゃないかというような推測すらあるわけで、これはまあ、私もいかがなものかと思います。
 こういうような、裁判員裁判を回避するために慌てて逮捕するとは私も考えにくいですが、こういうようなことが起こるというのは大変私は遺憾なことだと思いますが、大臣は、これについてはどのようにお考えでしょうか。
#79
○国務大臣(森英介君) 個別の事件における具体的な捜査内容に関する事柄については、お答えを差し控えさせていただきます。
 一般論として申し上げれば、捜査当局においては、捜査に当たっては法と証拠に基づいて、またそういう様々な思惑などはなく、適切に対処しているものと承知をいたしているところです。
#80
○松野信夫君 それで、今後、裁判員裁判が始まるとすれば、いわゆる公判前整理手続というものが、これは大変重要な役割を示すということはもう言うまでもないことだろうと思います。以前に比べると、より重要度が高まっていると思います。
 そうしますと、できるだけ裁判は短くということであるならば、この公判前整理手続において、検察官がどういうような証拠を持っているのか、私は、やっぱり手持ち証拠をきちんと開示をする、そういうことが大変重要なことで、そうでないと、後からまた余計な証拠が出てきた、いや、それについてはまたどうだこうだというようなことで、余計な審理時間、余計な争点がまた生まれるということにもなりかねないので、私は、民主党がかねてから主張しているように、検察官は手持ち証拠リスト開示をするということを是非法務当局も御検討いただきたいと率直に思っております。
 最近、特に若手の検事がどうもこの刑事裁判というのをややゲーム感覚のようなことでやっていやしないか。そうすると、とにかく勝負に勝てばいい、事実をねじ曲げても有罪に持ち込んで裁判に勝てばいいんだと、ちょっとそういうような感覚が見受けられなくもないんです。
 ですから、やっぱり検察官というのは、これは検察庁法第四条にもあるように公益の代表者でありますから、私は、たとえ検察側にとって不利だろうとも、有利不利問わず、やっぱり正しい事実認定を行うのに必要な証拠、これはせめてリストを作ってちゃんと開示をする、それがやっぱり公益の代表者として問われる検察官の責務ではないかと、このように思いますが、この点、大臣はどのようにお考えでしょうか。
#81
○政府参考人(大野恒太郎君) 検察の現場の取組にもかかわる問題ですので、事務当局の方から答弁をさせていただきたいと思います。
 証拠開示の仕組みにつきましては、御案内のとおり、改正刑事訴訟法によりまして、公判整理手続の中で、争点の整理等あるいは主張の明示等と組み合わせた形で制度が導入されております。
 また、それについての検察側、弁護側の意見の食い違いにつきましては裁判所が裁定を行うというような制度が導入されておりまして、実際にこの制度を活用することによりまして、制度導入前に比べまして弁護側に開示される証拠の量が飛躍的に増えているというようなお話も承っているところでございます。
 ただいま、それでは、そうした証拠開示に臨む検察官の姿勢にやや当事者に偏したといいましょうか、公益の代表者としていささか欠ける点があるのではないかというような御指摘がございました。
 この点につきましては、最高検察庁が、先般、裁判員裁判における検察の基本方針というものを明らかにしているところでございます。その中で、検察官請求証拠につきましては、できる限り速やかに開示するように努める。また、いわゆる類型証拠あるいは主張関連証拠の開示請求に対しましても、制度の趣旨にのっとりまして、審理の見通し、被告人側の応訴態度等、諸般の事情を勘案して、誠実かつ適切に対応することが望まれるというように述べているところでございます。
 したがいまして、検察当局といたしましては、今後ともこのお尋ねの証拠開示につきましては適切、そして特に誠実に対応していくという姿勢でございます。
#82
○松野信夫君 関連証拠辺りは当然開示してもらわなきゃいけないわけで、それは誠実、適切にしていただくことは当然のことでありますが、私はやはり公益の代表者としての矜持をしっかり持ってもらいたいなという気がしております。
 それからもう一つ、この裁判の長期化を避ける、裁判の長期化を避けるという意味では、やっぱり取調べにおける全面的な録画、録音、これが必要だ、このように思っています。
 というのも、例えばお手元にお渡ししてある事件の中で、十番の秋田連続児童殺人事件については、やっぱりこれは警察、検察の供述調書の任意性が争われました。それで、この事件では、警察官も検察官も、取調べの状況がどうだったかということで法廷で証人尋問を受けると、こういうこともあったんですね。そういうのもあって、結局、絞りに絞っても八十時間掛かったと、こういうことであります。
 ですから、そういうのを避ける意味でも、我々が主張している取調べの録画、録音、こういうのがあれば、一々警察官、検察官を法廷に呼んで裁判員の前で、あなたはどんな取調べしたんですかということもやらなくて済むわけでありますので、大臣、是非そういう点も御認識いただいて、スムーズな裁判員制度になりますようにお願いしたいと思います。
 それで、私は、この殺人事件見ても、何十回も結局やっぱり法廷開かなきゃいけない、何十時間も絞ったとしてもやっぱり審理に時間掛かる。そうすると、やっぱり争点が多数ある、あるいは無罪が争われて長期間の審理がもう最初から予想されると、こういうような事件は裁判員裁判には適当ではないということで、これは裁判所の裁量辺りで最初から除外をするということは私は大いに検討すべきだろうと思います。
 残念ながら現行法はそのような仕組みになっておりませんので、とにかく対象事件は全部裁判員でやるということになっているんですが、これは、例えば非常に長期化する、争点もたくさんある、裁判員の負担も相当なものが予想される、そういう事件については現行法、何らかの対応、対処というのは考えているんでしょうか。
#83
○政府参考人(大野恒太郎君) 今委員が御指摘になりましたのは、裁判員対象事件からの除外というような点についても言及がございましたけれども、現行法上、争点が多数にわたり審理が長期間に及ぶというような事件、それを理由に除外することは認められておらないわけでございます。
 それでは、そういう事態にどのように現行法上対応することが予定されているかと申しますと、これは迅速で充実した裁判を実現するために、先ほど来御指摘のあります公判前整理手続の活用、それから、できる限りの連日的な開廷、さらに、訴訟当事者、法曹三者に課せられました審理を迅速で分かりやすいものとするよう努めるというような制度的手当てがこれに当たるわけでございます。また、同一被告人に対して複数の事件が係属した場合には、部分判決制度というような対応の仕方も設けられているところでございます。
 こうした工夫を講じても、どうしても審理にある程度の期間を要する場合が出てくるわけでございます。しかし、そうした事案におきましては、裁判所におきまして、予想される審理期間も踏まえ、個別の裁判員候補者の事情もお伺いして、辞退事由が認められる場合には適切に辞退を認めるということによりまして、そうした期間の審理にも無理なく対応できるような方に裁判員となることをお願いするということになるというふうに考えております。
#84
○松野信夫君 今御答弁の中にありました部分判決、これを活用して、一人の被告人に対して多数の犯罪があるときには、言うならば細切れにして審理するということかと思いますが、私はこの部分判決というのは本当におかしな仕組みだと言わざるを得ないと思います。最初の事件について裁判員は有罪か無罪かだけを決めておく、一番最後の事件の裁判員がその当該事件の有罪か無罪プラス量刑まで、全体の量刑まで決めると、こういう仕組みになっているんです。
 そうすると、自分が直接関与しなかった最初の方の事件についての量刑も含めて考えなきゃいけないということですから、私はこれはおかしな話だし、例えば、何度も取り上げますが、この秋田連続児童殺人事件は、これは被害者が二名でありまして、彩香ちゃんと豪憲君、この二人が殺害されたのではないかというふうに言われているんですね。
 だけど、そうすると、じゃ部分判決で、彩香ちゃん事件と豪憲君事件とを分けてやるんですかと。これは非常に密接に関連があるわけなんです。弁護人もそのような主張もされているし、これは非常に関連があることは検察側だって恐らく認めているだろうと思いますので、そういう事件を、長期化するから分けて審理すればいいんだという考えは、私は賛成できないというふうに思います。何かあれば。
#85
○政府参考人(大野恒太郎君) 先ほど私、部分判決に言及いたしましたけれども、もちろん部分判決を活用できる場面というのは限られておるわけでございます。
 ただいま委員が御指摘になりましたような案件がこれに直接当たるかどうかはともかくといたしまして、部分判決制度を適用できる場合についての規定の中に、ただし、犯罪の証明に支障を生ずるおそれがあるとき、あるいは被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるとき、その他相当でないと認められるときには部分判決制度が活用できないわけでございまして、仮に二つの殺人事件があっても、動機そのほかの関係で一体的に立証しなければ真実を解明できないというような場合には、これは確かに部分判決は適用できないということになるわけでございます。
#86
○松野信夫君 そうすると、一人の被告人が多数の犯罪を犯したという場合は大体関連しているのが通例ではないかな。ですから、私は、部分判決というのは極めて極めて例外的な場合にしか使われないのではないか、また、部分判決が濫用されるようなことがあってはならない、このように指摘をしておきたいと思います。
 いずれにしろ、私は、先ほど申し上げたように、争点が多数だ、無罪争われて長期化するというようなことで、実際に五月からスタートする裁判員裁判が混乱をする、あるいは非常に裁判員に負担が大き過ぎるというようなことがもし発生してくるということであれば、速やかに法改正も検討に入れてもらいたい。法律では三年で一応見直しという規定がありますが、もしそういうようなやや混乱のような状況が出てくるのであれば、三年問わず、速やかに見直しを是非大臣御検討いただきたいと思いますが、ちょっと後ろを向いておられますが、いかがでしょうか。
#87
○国務大臣(森英介君) そういった見直しについては、今委員も御指摘になられましたように、三年後の見直しということが決められておりまして、それで、いつからというのはちょっとはっきりまだ申し上げられませんけれども、法務省においてそういう、法曹三者はもとより、広く国民の皆様の声も伺うような機関を設けまして、その見直しについての検討をいたしたいと思っておるところでございます。
#88
○松野信夫君 それから次に、裁判員裁判における供述調書をどういうふうに取り扱うかという問題についてお尋ねしたいと思います。
 多くの刑事事件は大体余り争いがないということで、通常は刑訴法の三百二十六条の同意書面、同意書証が扱われるのが多いわけですが、ただ、裁判員裁判ではこれまでのようないわゆる調書裁判というのは改めるということでありますので、従来のように検察官がどんと山のような供述調書を積み上げて、弁護側が全部同意いたしますというようなことは恐らく余り出てこないのではないかなというふうに思いますが、しかし、全くそういう供述調書が同意で全然出てこないということもないのだろうと思いますが、今後の裁判員裁判で、いわゆる同意書証、これはどのように扱うというふうにお考えでしょうか。
#89
○政府参考人(大野恒太郎君) 今、書証の取調べについて御指摘がございました。
 確かに、裁判員に裁判官と同じようにこの書証を持ち帰っていただいてじっくり後で読むということは期待できないわけでございます。したがいまして、同意書証の取調べにつきまして、裁判所からその書証の全文の朗読を求められることが多いんじゃないかというふうに思われますけれども、これはもう当然そのようにすることになります。
 したがいまして、検察当局におきましては、朗読により証拠調べが行われるということも念頭に置きまして、簡にして要を得た供述調書を作成するというようなことを、先ほど申し上げました裁判員裁判における検察の基本方針の中でうたっているところでございます。それによって、裁判員が法廷において心証を形成できるように適切に対処していくということでございます。
 また、書証につきましては従来から要旨の告知というやり方も認められているわけでありますけれども、裁判員の入っている法廷におきましては、とりわけこの要旨の告知に当たりましても、書証に含まれるすべての項目について重点を漏らさず実質的な内容がすべて公判廷で明らかになり、裁判員がそれを聞いて書証の内容をきちっと理解していただけるような、朗読に代替し得る要旨の告知を行うということにしているところでございます。
#90
○松野信夫君 それからもう一つ、これは実務的には大きな問題だと思いますが、いわゆる刑訴法の三百二十一条の二号書面、検面調書ですね。証人が出てきて裁判員の前で証言をした、そうすると、検察官から見ると検察官の面前調書と違うことを法廷で言っている、そうすると、異なる証言をしたということでいわゆる二号書面、検面調書を取り調べてくれということが実務的には十分あり得るわけですが、しかし、そういうのが次から次に乱発をされると証人の生の証言というのは一体どういうことになってしまうのかということにもなりかねないので、私はやっぱり、証人の法廷における生の証言を重視するということであれば、この検面調書を次々に提出するというのはこれは控えるべきだと、このように考えるんですが、この点は法務当局はどうでしょうか。
#91
○政府参考人(大野恒太郎君) 裁判員裁判の下におきましては、口頭による証言というのが従来にも増して重視されることになるわけであります。
 ただ、そうした公判廷における証言が、捜査段階における供述あるいは供述調書の内容と食い違う場合もあり得るわけでございます。
 検察官といたしましては、そのように食い違う内容の証言が出た場合にどうするかということになるわけでありますけれども、これも安易にいわゆる二号書面を出すということにすぐ流れるのではなくて、やはり公判廷にいる裁判官、裁判員に心証を取っていただく必要がありますので、相反する供述があった場合にも、粘り強く記憶喚起のための誘導尋問を行う、あるいは的確な弾劾尋問を行うということで、できる限り公判廷で真実の証言が引き出せるように努力することを考えております。
 ただ、それでもどうしてもそうしたところで適正な証言が得られなかったという場合には、これはやむを得ざるところということでございまして、二号書面の請求をする場合もあると思いますけれども、今委員が指摘されましたように、極めて安易に、あるいは大量のいわゆる二号書面が取り調べられるというような事態はないだろうというふうに考えているところでございます。
#92
○松野信夫君 是非検面調書が乱発されないように、その点はお願いをしたいと思います。
 時間が余りありませんので、一問だけ、残り、させていただきたいと思いますが。
 裁判員に対する説示、これは私はやっぱり徹底して裁判員に対しては裁判官の方から、例えば疑わしきは被告人に有利とか、あるいは少しでもやっぱり疑念があれば有罪にすべきではない、合理的な疑いを超える程度の立証が検察官にはちゃんと課せられているんだと、そういう点を何度もしていただきたい。特に、やっぱり評議に入る前にもそういう点を指摘していただきたいと思いますので、その点についてどのようにお考えか。
 それからもう一つ、ついでにお聞きしておきますと、先日、模擬裁判をちょっと傍聴しておりましたら、裁判官が裁判員の人たちに対して公判のときにメモを取らないようにというふうに言っている例があったものですから、裁判員がメモを取るというのは余りよろしくないというふうに裁判所はお考えになってそういうような説示をしているのか、それはどういう根拠に基づくものなのか、もし分かったら教えてください。
#93
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 最初の説示でございますね、この説示は、まず裁判員等の選任手続において、裁判員それから補充裁判員に権限と義務、それから事実の認定は証拠によること、証拠裁判主義ですが、それから犯罪を証明すべき者、立証責任は検察官にある、それから証明の程度ですね、これについて説明をするということになっておりますし、それから、やっぱり法廷で見て聞いて分かる審理なものですから、その過程で順次裁判員の方は徐々に心証を形成していかれるんだと思うんですね。ですから、休廷を取りながらもやっていきますので、その過程、過程においてやはりそういう証拠裁判主義という点等については裁判官からも説明はするということになると思います。評議の段階でもそうだと思います。随時必要に応じてされると思いますし、当事者もその点を念頭に置いたやっぱり立証方法を工夫されるんだろうというふうに思っております。
 それから、メモの点は、実は、それは私、ちょっとそれを見ていませんので分かりませんけれども、そういうことを言ったの、私、見ていたのかどうかちょっと記憶ありませんが、一時、模擬裁判で裁判員の方もずっと下を向いてずっとメモばかりを取っておられて、余りその証言自体に集中しておられないということが非常によく見られたことがございまして、それで、やはりまず証言の方を集中してくださいという趣旨で恐らく裁判官がそういうことを言ったのではないかなと推測いたします。
#94
○松野信夫君 終わります。
#95
○前川清成君 民主党の前川清成でございます。同僚議員の皆さん方の御配慮で、四週連続質問に立たせていただけますことを本当に感謝いたしております。ありがとうございます。
 さて、今日は裁判員裁判の集中審議ということで、私も本当に山のようにお尋ねしたいことがあるんですが、その前にどうしても一点だけ、前々から通告させていただいて、それでいてお尋ねできていないカルデロン・ノリコさんのことについてお伺いをしたいと思っています。
 日本で生まれ育った、昨日始業式で中学校二年生になった、その一人の女の子がただ一人で日本に残って、お父さん、お母さんはフィリピンに帰るという結論になったわけですけれども、その結論に至るまで大臣も様々にお考えになられたと思いますし、世論の中にもいろんなお考え方があったと思います。
 そこで、その判断に至ったプロセスをお尋ねするまず第一として、この出入国管理法の第五十条一項四号の法務大臣が特に在留を許可すべき事情があると認めるとき、この特別に在留を許可すべき事情というのはどのように御理解されているのか、まず大臣にお伺いしたいと思います。
#96
○国務大臣(森英介君) そこに至るまでの経緯についてはよろしゅうございますか。
#97
○前川清成君 特別に在留を許可すべき事情について。
#98
○国務大臣(森英介君) 事情ですね。
#99
○前川清成君 はい。
#100
○国務大臣(森英介君) それは、退去強制事由に該当する外国人は入管法に従い本国に退去していただくことが原則であります。
 これに該当する者であっても、個々の事案ごとに様々な事情を有しており、それらの事情を考慮して、法務大臣は特例として恩恵的に引き続き在留を認める場合があります。この場合の許可を在留特別許可といい、その許否判断に当たっては、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、生活状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、さらには我が国における不法滞在者に与える影響等、諸般の事情を総合的に勘案して、在留を認めるべき事情が存するか否かの判断をすることとしており、一義的に在留を許可すべき事情が定まっているものではありません。ただし、法務省においては、在留特別許可に係るガイドラインを作成しておりまして、その許否判断に当たって考慮する事項を公表しております。
 当該ガイドラインにおいては、積極要素として、日本人又は特別永住者の子である場合、日本人又は特別永住者との間に出生した実子を扶養している場合、日本人又は特別永住者との婚姻が法的に成立している場合、人道的配慮を必要とする特別な事情がある場合などを掲げております。他方、消極要素としては、刑罰法令違反又はこれに準ずる素行不良が認められる場合、出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしている場合、過去に退去強制手続を受けたことがある場合を掲げております。
#101
○前川清成君 大臣、そのガイドラインもちょうだいしておりますので十分承知した上でお尋ねしているんですが、今大臣がおっしゃったように、事案ごとに諸般の事情を勘案すると、こうおっしゃっていただいても、もちろん大臣が恣意的に御判断されているとは思いませんが、思いませんが、ある一定の広い裁量権があるとしても、その裁量の枠があるはずだと思うんです。ですから、どういうような考え方でこの特別に在留を許可すべき事情というのをお考えになっているのかをお伺いしたかったわけですが。
 それでは、このノリコさん、この方については特別に在留を許可すべき事情があるというふうに御判断されたわけですが、この中学校二年生についてはどのようなことで特別に在留を許可する事情があると、こういうふうな御結論になったのか、諸般の事情等々を教えていただきたいと思います。
#102
○国務大臣(森英介君) お子さんに先立ちまして、まず全体的な判断について申し上げたいと思います。
 カルデロン一家の父母は、両名共が他人名義の旅券を行使して不法に入国し、不法就労を続けた上、一家の不法滞在は、母の出入国管理及び難民認定法違反による逮捕により発覚したものであります。母は、刑事裁判により懲役二年六か月、執行猶予四年との有罪判決も受けているものであり、父母の在留形態は我が国の出入国管理の根幹を揺るがす極めて悪質なものであって、これを看過することはできないと考えております。
 これに加えて、同一家に対する退去強制令書発付処分の取消し訴訟において当局の判断が適法であることが認められ、これが確定していることなどで、同一家の父母については、というか同一家については、様々な事情を考慮した結果、在留を特別に許可すべき事情はないと判断いたしました。
 しかしながら、法務省といたしましては、司法判断においても処分の適法性が認められたことから、同一家に対して速やかに本国に帰国するべく求めていたところですが、両親の側から、長女については親族の適切な監督、保護、養育の下でこのまま学業を継続させたいとの申出があり、またあらゆる事情をしんしゃくする中で、監護者の適切な監護意思等が確認できたことから、長女の我が国での学業継続に係る強い希望を最大限に考慮し、長女については、裁決時とは事情が異なり在留を特別に認めてもよいとの結論に達したもので、さきの裁決を取り消して、在留を特別に許可するに至ったものでございます。
#103
○前川清成君 今大臣が結論に至るプロセスを御説明いただきましたけれども、そのお話を聞く限りでは、この法律の五十条一項四号の条文というのは、余り判断基準になっていないなというふうに思うんです。
 それで、当然、この判断に至る場合には、日本国の法務大臣でいらっしゃいますので、日本の国益をまず第一に考えて御判断されたと思うんですけれども、どうも私が分からないのは、分からないのは、中学校二年生の女の子をお父さん、お母さんと切り離さなければならない、要するにお父さん、お母さんをフィリピンに送り返す、それによって日本が得られる国益というのは何があるのかなと。あるいは、お父さん、お母さんを今までどおり、今までどおり日本で生活させることによって損なわれる国益というのは何かあるのかな。わざわざ親子を引き離してまで、今回のお父さん、お母さんをフィリピンに帰すと、どれだけの意味があるのだろうなと私は正直思っているんです。
 世論の中にも多少は情緒的な意見があるかと思いますが、私のある親しい方で、別に人権問題や外国人の問題について全然関心お持ちでないだろうなというような方からも、大変気の毒ですねと、あんな方だったら、まあ何かのあれかもしれませんが、私の養子にしてあげて日本で住んでもらってもいいですよねというようなお話を承ったことがあるんです。
 そこで、大臣、もう一度お聞きしたいんですが、中学校二年生の女の子を日本でたった一人暮らさせなければならない、それによって大臣が守ろうとした国益というのは一体何なんでしょうか。その点、ちょっとお伺いしたいと思います。
#104
○国務大臣(森英介君) ちょっとその前に、ちょっと事実誤認がありますので改めて説明を申し上げますと、決して私どもが親子を切り離したわけではありません。あくまでも私どもの判断は親子三人で本国に帰ってもらうということでありまして、しかもこの一家の場合は、日本で稼いで本国に送金して、つまり本国との関係は決して薄いわけじゃなくて、しっかりとした向こうにまだ根の残った一家であります。むしろ家族の方からの希望で、しかも叔父さん、叔母さんが近くにいるので、その叔父さん、叔母さんを頼って日本で学業を継続したいという希望がありましたから、むしろ温情的措置として特別に在留を許可したものであって、決して私どもが私どもの都合で親子別々に暮らすようにしたものではないということを、どうか御認識いただきたいと思います。
#105
○前川清成君 ただ、大臣、そうはおっしゃっても、日本で生まれ育って、フィリピンの言葉も話せない中学校二年生の女の子が一緒に帰るというのは事実上できないわけであって、例えば、今回の三月二十七日の東京地裁の判決がありまして、大臣も御存じかと思いますけれども、日本で前科前歴もなく平穏な社会生活を送って、日本社会にも生活の根を下ろして暮らしている、そういう外国人に対する対応をどうするのかというのは、この機会に、私もこういう問題について今まで深く考えたことはありませんでしたけれども、今回政府から法案も提出されることですし、この事件も踏まえて、もちろん日本の国益というのもあるでしょうし、あるいは外国人に対する、外国人の人権というのもあるでしょうし、あるいは国際社会、その多様性をどう受け入れるのか、様々な問題があると思いますので、是非この機会に大臣御自身もお考えをいただきたいと思いますし、もう一つ、この出入国管理法の条文自体が判断基準になっていないのであれば、すべて法務大臣に広範な裁量権が与えられていて、あとは官僚たちが作ったガイドラインでその都度その都度判断するということであれば、どうしても恣意的にやっているのかなというふうに疑われても仕方ありませんので、是非制度自体をこの機会に少しは見直したらどうかなと私は思っています。
 今日は裁判員の集中審議ですので、これぐらいにさせていただきたいと思いますが、さて、裁判員、私も、先ほど松野さんが丁寧にお尋ねしていましたが、この最高裁がお作りになった上戸彩さんのパンフレット、この中にも、三日以内に七割が終わりますと、こういうふうに書いてあります。およそ九割の事件が五日以内に終了するというふうに書いています。これ自体、私は前からも申し上げてきましたけれども、本当に大丈夫なのかな、どれだけの合理性があるのかなというふうに実は心配をしています。
 前も、いつかお話ししたことありますが、裁判員制度について私はある種の期待を持っています。かつてかなり絶望的とまで言われた日本の刑事裁判がこれによって少し良くなるのかなと思うわけですけれども、と同時に、やっぱりお仕事を抱えた皆さん方が、あるいは家庭において子育てやあるいは介護を担っておられる皆さん方が、ある日突然一枚の呼出し状で裁判所に行って、いつ終わるかも知れない裁判員裁判に従事しなければならないわけですから、その期間をどのように、御負担をどのように軽減していくのかというのは私は大変大事だろうと思っています。この点については松野委員が丁寧に議論されたので、私の方は前に進ませていただきたいと思うんですが。
 裁判員の負担は確かにあるんですけれども、と同時に、やはり一丁上がり式に裁判員裁判が冤罪を生み出す装置であっては何にもならないわけであります。
 そこで、最高裁がお作りになった裁判員制度ブックレットというのがありまして、この中に少し気になる表現があるんです。これは、この裁判員制度ブックレットの六十ページですが、これまでの刑事裁判は、ごく一部ではありますが審理の回数が多く、その間隔も開いているため裁判が長期化する事件もありました、それに対比する形で裁判員事件については、事前に審理の予定をきちんと定めておきます、審理の回数を限定しますと、こう書いてあるんです。
 もちろん、これは分かりやすいようにお書きになったんだろうとは思うんですけれども、裁判というのは生き物ですから、ましてや、犯人を捕まえて、そのとき警察が証拠を一切合財押収してきて、それを検察官が全部引き継いで、すなわち裁判が始まった段階で準備がすべて終わっている検察側と、裁判が始まってようやくその事件と接した弁護士の側とでは準備の差、これはもう隔絶しているわけですから、幾ら公判前整理手続を十分やるからといって、ここに書いてあるように、審理の予定をきちんと定める、回数を限定するというようなことは、まさかしゃくし定規にはされないとは思うんですけれども、最高裁にその点のところを確認しておきたいと思います。
#106
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 あらかじめ職務従事予定期間というものを定めまして、そして裁判員候補者においでいただいて選任手続をするということでございますので、それは何月何日の、何日から何日までという予定期間をこれは定めなければいけないということでございます。
 それで、しゃくし定規にとおっしゃいましたので、それはもちろんおっしゃったように生き物の面もありますので、ある程度の余裕は見込むとは思います。ただ、公判前整理手続でそうしたことも踏まえて争点を整理して、そして審理計画を立てるということになろうかと思います。
#107
○前川清成君 今のちょっとお答えがよく分からなかったんですが。
 それでは、公判前整理手続のことについてもお聞きしておきたいんですけれども、弁護側の準備として、これまでの書証中心の立証であれば、あらかじめ書証を閲覧しておくことによって何が書いてあるか分かりますので、反証を準備することも可能だったと思います。
 裁判員裁判は、先ほどお話もありましたけれども、書証ではなくて、調書ではなくて証人尋問が中心になる。そうなると、実際に法廷で何をしゃべるか、それをお聞きするまでは実は中身が分からないというか準備のしようがないというふうに思うんですが、じゃ、裁判員裁判において証人に対する準備として弁護側はどうしたらいいんでしょうか。
#108
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 これまでも、恐らく検察官側の証人のことを言っておられるんだと思いますが、通常、供述調書を検察官の方で作成しておられますですよね。それは事前に開示されていますので、それを御覧になっておられれば準備はできるというふうにも思いますけれども。
#109
○前川清成君 今の点で、警察庁、お越しをいただいていまして、何度か通告だけしてお尋ねできなくて申し訳ないと思っているんですが、裁判員裁判が始まっても、これまでの捜査体制といいますか、捜査の方法という、今までの調書を作ることが中心だった捜査のやり方は変わらない、こうお聞きしてよろしいんですか。
#110
○政府参考人(米田壯君) 質問の御趣旨にそのまま沿うかどうかちょっと分かりませんけれども、捜査の体制は、これは個々の事案ごとに変わりますので、必ずしも裁判員裁判が始まったからどうのこうのということは申し上げにくいと思います。
 それから、捜査の方法につきましては、警察の役割はあくまで事案の真相解明でございます。他方、裁判員が参加する裁判が行われると。その裁判員が参加する裁判での審理において迅速で分かりやすい審理にしなければならないと裁判員裁判法に定められておりますけれども、これは警察ではなくて検察とか裁判所、弁護人に懸かっているものでございます。
 しかしながら、裁判員裁判において、そういう法律の専門家でない裁判員が参加する審理の中で分かりやすい、検察官の分かりやすい立証に資するように警察としても捜査の過程でいろんな工夫はしなければならないだろうということで、平成十九年の八月に犯罪捜査規範を改正をいたしまして、調書の作り方とか、あるいは実況見分調書の作り方とか等々、工夫をするようにということは定めております。
#111
○前川清成君 体制というのは、捜査員が何人とかという意味でお聞きしているのではなくて、私が今お聞きしたかったのは、ちょっとお聞きになっていなかったかどうかあれですけれども、裁判員裁判になりますと、調書を、今までの裁判のように調書を山のようにぼおんと出して裁判官がそれを家に持ち帰って読むというやり方ではなくて、裁判中心、公判中心になっていくと。だから、調書の役割はもう小さく小さくなっていって、実際に法廷でやり取りされる証人尋問なりが中心になっていくでしょうと、こうなるんですが、それであっても、警察庁としては、捜査の段階では、今までどおり大量の調書を作るその捜査手法というか捜査のやり方、これは今までどおりなのですかと。あるいは、そうではなくて、裁判員裁判になったんだから調書の作り方についてはもっとコンパクトにしますとか冊数を減らしますとか、そういう工夫なりお考えがあるのかどうかをお尋ねしているんです。
#112
○政府参考人(米田壯君) 先ほど申し上げました平成十九年の犯罪捜査規範の改正におきまして、供述調書の作成に当たっては、これはもちろんその事案に応じてでございますけれども、例えば主題ごとあるいは場面ごとに供述調書を作成するなど、裁判員裁判で分かりやすい立証に資するように工夫をするということになっております。
#113
○前川清成君 またちょっと是非警察の中でも御検討をお願いしたいと思うんですが、何度も言いますが、裁判員裁判では調書は本当のわき役になります。今最高裁がお答えになったように、もしかしたら、調書の役割としては、あらかじめ弁護側が、この証人何言うねやろうという予告編みたいな形でしか利用されない場合も多いと思うんです。それにもかかわらず、今までどおり警察の主な力を取調べなり調書の作成に割くのは本当に合理的なのかなと。そうではなくて、違う面の捜査の方にこれからは力を注いでいかなければ、本当に真犯人、罰すべき真犯人を、まあ取り逃がすと言うのも良くないんですけれども、事案の真相を解明できないんじゃないかなと、私はそういう問題意識を持っていますので、その点ちょっと御検討をいただいたらと思っています。
 それで、ちょっと調書の点について不十分なんですが、残り時間が七分ほどになりましたので、量刑について少し最高裁にお尋ねしたいと思います。
 例えば殺人罪ですと、一番重かったら死刑ですし、軽かったら五年ですよね。酌量減軽したらその半分になるから二年半になる。非常に法定刑の幅が広いというか、改正される前は三年でしたっけ、三年で酌量減軽したら一年半、軽ければ一年半で重ければ死刑、しかも執行猶予が付く場合もある。非常に裁量の幅の広い日本の刑法典になっています。この中でどのようにしてこの人については死刑あるいは懲役何年と、こう下していくのか、量刑というのが大変難しいと思うんです。
 そこで、ちょっと最高裁にお尋ねしたいんですが、これまでは、これまでは個々の裁判官の全くのフリーハンドでこの量刑を決めていたんでしょうか。
#114
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 ほかの裁判官のことをちょっと私がお答えするわけにいきませんので、私は、もちろん、まず検察官、弁護人の立証があるわけですね。証拠に基づいた立証があって、その中ではもちろん罪体、罪体は当然量刑の最も基本的な資料にもなるわけですが、罪体の証拠とそれから量刑の資料等も踏まえて、それは双方の立証がありますから、それを踏まえて検討しますし、それから従前の同種類似事案の裁判例における量刑傾向等も参考にして検討してきたように思っておりますけれども、というふうにお答えしたいと思いますが。
#115
○前川清成君 前段は全く余計なことをおっしゃったんであって、どの事件でも立証はあるわけですから。後段のことをお聞きしたかったんです。その類似の事案というのは裁判所の中である程度サンプルというか資料としてストックされていて、それをそれぞれの裁判官が自分の判断材料の一つとして閲覧して参考にすることが可能な、そういうシステムがあるのかないのかをお聞きしたいんです。
#116
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 そういうことは可能な状況でございました。
#117
○前川清成君 今度、生まれて初めて裁く裁判員の方々が出てくるわけで、類似の事案と、こう言われても全然分かりません。そこで、そういう皆さん方に、言葉は悪いですが、同種の事案の相場的なもの、量刑の平均値的なものをどのような形でお示ししたりするんでしょうか。
#118
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 量刑検索システムというふうに呼んでおりますけれども、裁判員対象事件を中心にして、実際の裁判結果をシステムに各裁判官が入力して、それをデータベースとして集積しまして、一定の検索項目でそれを検索すれば、ある犯罪類型といいますか、そういったものが出てくると思います。それに基づいて大体どんな量刑の分布になるんだろうかと。これは、だから平均値とかそういうことではなくて分布ですね、分布は出せるようなシステムというものを用意しております。
#119
○前川清成君 その検索システムというのはいつごろから稼働しているんですか。
#120
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 昨年の四月から入力をしております。
#121
○前川清成君 先ほど私の質問に対して、裁判員が始まる前、現職の職業裁判官の皆さん方が類似の事案に対してその量刑がどの辺りに分布しているのだろうか、調べることができるんですか、参考資料とすることができるんですかというお尋ねに対して、できますとお答えになりました。今、できますというお答えと、この検索システム、これは別のものですよね。
#122
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) それは別のものでございます。
#123
○前川清成君 すると、職業裁判官のためだけのもの、これはどんなもので、それはどうなるんですか。
#124
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) どうなるというより、従前は、従前のそうした量刑のためのものを同様のように入力したりしてデータベース化しておりましたし、その前はいわゆる判決を全部ストックしていまして、分類してそれを見るというような形をやっておりまして、それが今度は、そういう裁判員裁判対象事件の方に移行をする形になると思いますけれども。
#125
○前川清成君 ちょっと時間がないので急ぎますけれども、私はその量刑のシステム自身、これは恐らく最高裁は公表することとかは予定しておられないだろうと思うんですけれども、それは公表する必要があるんじゃないかなと私は思っています。そうでなければ、第三者が、最高裁が、裁判官が裁判員の皆さん方に参考としてお示しする量刑の分布が客観的に正しいものなのかどうなのか、これをだれも検証することができないんじゃないかなと思っているんです。
 例えば、東京地裁やあるいは大阪地裁の交通部、大阪地裁であったら民事十五部なんかは損害賠償の算定基準等々を公表していますので、私は公表することに別に問題はないのではないかなと、こんなふうに思っています。この点、いかがですか。
#126
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) このシステムというのは、当該事件に関与される検察官、それから弁護人には当然見ていただいてその事件で使っていただくということになるわけです。それ以外に、これはあくまである意味での量刑分布でございますし、何といいますか、時の経過でも変わるということも当然あり得ますし、そういうものを一般に公開するというのは必ずしも適切ではないように思います。やっぱり法定刑というものはきちんと法律に定められてこれは厳密なものがありますので、そういうものはきちんと公開されているわけですが、そういった量刑の傾向的なものというのをあらかじめ公開するのは適切ではないと思っております。
#127
○前川清成君 ただ、それならばもう全く中身はブラックボックスで、最高裁が出した結果だけを信じてくださいねということになってしまうので、私は問題ではないかなと思います。
 それで、ちょっと時間がありません。大臣、最後になりますけれども、裁判員法の附則の第九条で、政府はこの法律の施行後三年を経過した場合においては、施行の状況について検討を加え、必要とあるときは所要の措置を講じますと、こういう見直し規定が置いてあるんです。この見直しに当たって、あるいは検証に当たって、先ほど大臣がおっしゃいました、広く国民の声も伺いながらと、こうおっしゃいましたので、私は同じように、せっかく当事者となっていただいた、貴重な体験をしていただいた裁判員の皆さん方、プロである裁判官や弁護士や検察官の意見を聞くだけではなくて、実際に裁判員として場合によっては御苦労いただいた皆さん方の意見にも十分耳を傾けなければならないと思っています。
 しかしながら、しかしながら、大臣、この裁判員法の百八条で、評議の秘密その他職務上知り得たことを漏らしたら六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金と、こうなっているんです。せっかく日本で初めて裁判員制度が始まって貴重な御経験をしていただいた、その皆さん方の御意見を伺いながら制度設計をする、あるいは制度の見直しをしようとしても、この守秘義務の規定によって御意見を承ることができなくなってしまう。これは大問題ではないかなと思うんですが、大臣、この守秘義務の規定と検証、見直しとの関係、どのようにお考えになっているのかお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
#128
○国務大臣(森英介君) 裁判員制度の施行から三年経過後に行う施行状況の検討に当たっては、実際に裁判員を経験された方々の御意見は貴重であると考えております。したがいまして、法務省としても可能な範囲でそのような方々の御意見を伺うことができるよう努めてまいりたいと考えております。
 例えば、公開の法廷での陳述や証拠調べ等の内容は守秘義務の対象となる評議の秘密その他の職務上知り得た秘密に該当しませんので、その点についての御意見をお聞きすることはできますし、また、秘密に及ばない範囲で裁判員の職務についての感想などをお聞きすることもできます。
 他方、裁判員の守秘義務が定められたのは、他人のプライバシーを保護するとともに裁判の公正さや裁判への信頼を確保し、評議における自由な意見表明を保障するためです。また、評議において述べたことが公表されないことによりまして、その後の追及や報復のおそれがなくなるという点で裁判員の心理的負担を軽減する意味もあると考えております。
 裁判員制度の施行から三年経過後に行う検討に当たり、守秘義務を解除することについては、ただいま申し上げたような守秘義務に重要な意義がある一方、その守秘義務の範囲内で御意見を伺うことができることも考え合わせますと、極めて慎重な検討が必要ではないかというふうに思っております。
#129
○前川清成君 時間ですので終わりますが、私は守秘義務の規定をなくせと言っているんじゃ全然ないんです。この検証に当たってだけその守秘義務を免除するとか、そういう制度、そういうシステムをお考えになったらどうでしょうかということを申し上げていますので、その点誤解のないようにお願いを申し上げまして、時間ですので終わります。
 ありがとうございました。
#130
○丸山和也君 自由民主党の丸山和也です。よろしくお願いします。
 裁判員制度の中で今まで余り集中的に質問されていない点なんですが、いわゆる一審じゃなくて控訴審の在り方ですね、これについて少し質問をしたいと思うんですけれども。
 一審は裁判員が参加する裁判員制度ということでがらっと様相は変わると、対象事件に関してはですね。そういうことで、それがいろんな国民の司法参加ということで大きな今注目されているわけですけれども。しかし、事件は一審で終わるとは限りません。双方から控訴された場合、控訴審で再度審理されるわけですけれども、そこで、とりわけ控訴審の在り方についての法改正とかいうのはなされていないですね。すると、これを全く、どのように考えるのかという素朴な疑問があります。
 例えば、何といいますか、裁判官、職業的自由のある裁判官が、極端なことを言えば、一審判決は要するに稚拙だと、話にならぬということで破棄して自判はどんどん自由にやっていいのかとか、いわゆる国民が参加した裁判員制度の、非常にやっぱり重んじるべきだというところから、基本的には差し戻すというような考え方を取るべきなのかとか、それから、そもそも事実誤認とか量刑不当という、こういう控訴理由が多くなると思う、今も多いんですけれども、そういう理由で控訴された場合に控訴審の裁判所というのはどこまで踏み込んで判断すべきなのか、それは少なくとも従来どおりの建前でいいのか、それともこの裁判員制度が導入されたことによってかなり変わると見るべきなのか、そこら辺は当局としてはどのようにとらえておられるのかということをお聞きしたいんです。
#131
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 控訴審につきましては、今委員御指摘のとおり、裁判員制度導入後も現行法どおりというふうにされておりますけれども、平成十九年度の司法研究におきまして、「第一審の判断は裁判員と職業裁判官とで協働して行われるものとなり、その判断には、国民の視点、感覚、知識、経験、健全な社会常識などが反映されることになる。そして、そのことによって司法への信頼が高まることなどが正に裁判員制度導入の意義であり、控訴審としては、こうした国民の視点、感覚等が反映された結果をできる限り尊重しつつ審査に当たる必要がある。」と。「また、控訴審の在り方に関しては、実際に制度の運用が開始され、第一審の裁判が国民にどのように受け止められるかによって影響を受けるのではないか、といった流動的側面があり得る」とされているところでございます。
 これは、もちろん最高裁としては何らかの指針を示したというものではございませんけれども、こうした研究内容も踏まえて裁判員裁判における控訴審の在り方について検討がされていくことになると考えております。
#132
○丸山和也君 抽象的にはそういうことかも分からないんですが、ちょっと分かりにくいからお聞きしているんですが、つまり制度上は変わっていない、しかし運用上影響が出るんじゃないかと。しかし、やっぱり裁判員が参加した裁判であっても、当事者、一方がこれはもうおかしいと、事実認定もおかしい、量刑もおかしいということでやっぱり争いになるケースはあると思うんですね。そういうときに、やっぱり当然控訴をする権利がありまして、それを控訴審として、いや、裁判員が参加したんだからということであれば、余り控訴審の意味がないですよね。かといって、控訴審が全く、いわゆる真相究明をやるんだということで自ら乗り出して全部、もう新たな証拠でも何でも来いというような感じで調べるわけにはいかないと思うんですよ、現在でもそこまでやられていませんから。
 したがって、だから、やっぱりとらえ方としては事後審としての性格を強めると。そして、やはり事実認定とか量刑不当ということについての判断は、基本的に自己抑制的になってくるのかなとも私は思うんですけれども、しかし実際争われるのはやっぱり量刑不当なんかで争われるケースが多いんですね。そこら辺でやはりかなり覚悟といいますか、をしておかないと、控訴審がふらふらふらふらするということが起こるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。同じ質問なんですけれども。
#133
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 今、特に真相解明とかそういうことをおっしゃられたと思うんですが、控訴審でも適正な手続の下で事案の真相を解明すると、こういう要請は当然満たさなければいけないというふうに考えられます。先ほど述べました司法研究におきましても、証人や被告人の供述の信用性の判断、これが客観的な証拠と明らかに矛盾するなど経験則や論理法則上明らかに不合理である、これが結論に重大な影響を及ぼすといったような場合、それから、間接事実を総合して立証するような事案において、客観的な証拠により認められる事実を見落とすなどして経験則、論理法則上あり得ない不合理な結論に至っている場合などには、事実誤認として第一審の判決を破棄できることになるというような見解が報告されております。量刑不当についてもいろいろな検討がされていると思います。
 裁判所といたしましては、こうした研究成果や実務の実情も踏まえまして、裁判員裁判における控訴審の在り方についても検討していくことになろうかと考えております。
#134
○丸山和也君 端的に聞きまして、私も刑事事件を時々やっていたんですけれども、なかなかやっぱり控訴審で新たな証拠の取調べとか、いろんな事実誤認、量刑不当を主張しても認められないことが基本的に多いんですけれども、これ裁判員制度になってその傾向は更に強まるのか、どうなんでしょうか。予測で結構ですけれども。
#135
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 事務当局として予測するということではございませんので、司法研究の中では、最初に御答弁申し上げましたように、事後審としての性格といいますか、それを十分わきまえてというか、考えて考えてやっていくべきだというような報告がされているということでございます。
#136
○丸山和也君 それでは、待望の法務大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、ちょっと古いんですけれども、二〇〇一年の五月一日に北朝鮮の金正男さんが偽造パスポートで成田に到着して、不法入国ですね、それで身柄を拘束されたという事件がございました。そう記憶に古いあれではないから御存じだと思うんですけれども。これが私も当時ニュースで見てびっくりしたんですけれども、更にびっくりしたのは、やすやすと入ってきたということより、そのたしか三日後ぐらいに退去強制処分でぽっと出ちゃったんですよね。これが、あれあれっと思う間に、どういう法的手続がきちっと取られて、違反調査とかいろいろやられて、いわゆる法的手続の問題ですよね、入管当局としてどういう法的手続が取られてこういう結果になったのかについて御説明いただきたいと。
#137
○委員長(澤雄二君) 法務省西川入国管理局長。
#138
○国務大臣(森英介君) 今お尋ねのありました件は、平成……
#139
○委員長(澤雄二君) 森法務大臣。
#140
○国務大臣(森英介君) 失礼。どうも、出過ぎました。
 平成十三年五月一日、成田空港から偽造のドミニカ共和国旅券を行使して不法入国しようとした事案のことと思われますが、同事案については、入管法二十四条に規定する退去強制事由に該当したことから、同法の規定に従って退去強制手続を進め、同月四日送還したものでございまして、なお、付け加えますと、当時刑事告発の要否を検討したものの、従来の処理例に照らし、告発相当事案でないものと判断したと聞き及んでおります。
#141
○丸山和也君 そういう表向きの理由になっているんですけど、あのときたしかマスコミで出たのはほとんど外務大臣だったんですよね、たしか田中眞紀子さんだったと思うんですが。それで、法務大臣の影が全くなかった。森法務大臣じゃないですよ、あの当時のですけれども。それで、私は異様に思ったんですね、日本というのは法治国家でありながら司法権というのがきちっと行われているのかなと。要するに、やや決め付けた言い方をすれば、司法権が、いわゆる司法が政治に屈服した瞬間というか、遠慮したというか、政治の御都合で司法が曲げられるということの、それを如実に見た感じがしたんですね。
 もちろん、調査もやられたでしょう、事情聴取も取られたと思いますよ。だけど、何回も過去にも入っているということも本人も言っていたと聞いています。すると、過去のことも調べてもいいし、それからその他の余罪が、余罪というか刑事犯的な、例えばお金の出し入れの問題があるかも分からないし、ほかの組織との接触があるかも分からないし、あるいは極端なことを言えば拉致問題があるわけですから、こういう問題とも関連があるかないかもやっぱり当然やる。まあ、こう言っては言葉は悪いけど、特別上等の玉が入ってきたわけですよ。最も重要な人物、ある意味で非常に注目すべき人物があったのに、三、四日でどうぞお帰りくださいという、要するに、もう何というのかな、手を触れるのを怖いような形で、どうぞお帰りください、何もいたしませんから帰ってくだされば結構ですよというまさに姿が如実になったんですね。
 非常に僕はあれを見ていまして、別に金正男さんを人質に取って拉致被害者と交換しろと言っておるわけじゃないんですよ。そういうことを言っておるわけじゃない。そう言う人もいたかもしれないけれども、そう言っておるんじゃなくて、きちっとした法的手続を取って、より慎重にやっぱり捜査なり調査もし、処分もし、やるべきだったと思うんですけれども、どう見てもあれは臭い物にふたをするような形で片付けたという印象が非常に強かったんですけれども、法務大臣としては、あの事件は過去の事件ですけれども、そういう印象は持たれませんでしたか、お聞きしたいと思います。
#142
○国務大臣(森英介君) 率直に申し上げまして、いささか違和感を、当時ですね、感じたのは事実でございますけれども、死児のよわいを数えるようなものですから今コメントするのは差し控えます。
#143
○丸山和也君 すると、また同じような、例えば同一人物でもいいし、それに類似するような人物が同じように入国したと、偽造パスポートとか、そういう場合はもう、いやあ大変だ、どうぞお帰りくださいということで二、三日に帰ってもらうということをするのか、あれを教訓にして今度はしっかりと調べるという、そういう態度を改められるのか、そこら辺についてはどのようにお考えでしょうか。
#144
○国務大臣(森英介君) 仮定の御質問でございますので答弁は差し控えさせていただきますが、一般論で申し上げれば、偽造旅券を行使して不法入国した者については入管法の規定に基づき強制退去手続を取ることになります。その際、場合によっては刑事告発についても、違反の態様等、諸般の事情を総合的に勘案した上で、その要否を適切に判断すべきものと考えております。
#145
○丸山和也君 このときに、たしか飛行機は全日空で二階を貸切りにして帰ったというように報道されているんですけど、この帰る、チャーター便ではないと思うんですけれども、ちょっと分かりませんが、この飛行機運賃とかそういうのは本人がちゃんと負担したんでしょうか。
#146
○政府参考人(西川克行君) その旅費の負担についてまでちょっと調べてまいりませんでしたので、ちょっと今答弁することができません。誠に申し訳ございません。
#147
○丸山和也君 決して貧乏な、お金のない人じゃないと思いますので、当時も、ぷらぷらいろいろなところで遊んでいたということですから、当然、日本政府の旅費で帰すということは、帰したとしたらとんでもないことではないかと思ったものでお聞きしました。
 それと、送還先がたしかこれ、中華人民共和国でしたね。これは北朝鮮と国交がないということでそういうことになったんでしょうか。そこら辺の事情をお聞かせください。
#148
○政府参考人(西川克行君) 委員御指摘のとおり、この者については北京向け、つまり中国向けに送還をしております。これは、北朝鮮と国交がないという事情がございまして、送還先としては原則国籍国あるいは市民権のある国に帰すということになっておりますが、それができない場合につきましては、本人の希望等を聞きまして本人の希望する国に送還するということでございまして、この場合はその希望に沿ったということでございます。
#149
○丸山和也君 北朝鮮に関しましては、つい先般、本参議院でも決議が通りましたけれども、北朝鮮によるミサイル発射に抗議する決議案というのが可決されました。多数で可決されたわけでありますけれども、この中で、法務大臣にお聞きしたいんですけれども、国連の方に安全保障理事会に申立てをしているんですが、ここでの何らかの決議というのはなかなか難しいと報道されております。議長声明に終わってしまうんじゃないかと言われているんですけれども、この決議案の中には、我が国独自の制裁を強めるべきであると、抗議の意思表示として、あるんですけれども、この我が国独自の制裁という中に、いわゆる人の交流ですね、入国管理行政に絡む、あるいは人との交流という面ではどのような点をお考えになっているんでしょうか、お聞きしたいと思います。
#150
○政府参考人(西川克行君) 先ほどお答えできませんでした、先ほどの案件の出国の方法ですが、これは自費出国ということで本人が航空券代を負担しているということが分かりましたので、まずお答えを申し上げます。
 それから、法務省関係の対北朝鮮措置につきましてでございますが、平成十八年の七月五日から人の移動に関する制限を実施していると。
#151
○丸山和也君 何年から。
#152
○政府参考人(西川克行君) 平成十八年七月五日からでございます。人の移動に関する制限を実施しておりまして、現在は同年十月十一日の官房長官発表に基づきまして何点か実施しておりますが、中身は、まず北朝鮮籍を有する者の入国の原則禁止、それから在日の北朝鮮当局職員による北朝鮮を渡航先とする再入国の原則禁止、それから北朝鮮船舶の乗組員等の上陸の原則禁止等を実施しているということでございます。
 先般のミサイル事件の後どうなるかというお尋ねでございますけれども、これは政府全体の措置ということで決定されるということでございますが、当然のことながら、制裁措置を継続するということになりますと、これらの措置も当然継続するということになろうかと思います。
 それから、新たな措置につきましては、これは諸状況を踏まえつつ今まさに政府全体として検討しなければならないものというふうに考えておりまして、現段階での答弁は差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
#153
○丸山和也君 分かりましたけど、補足質問ですが、原則禁止ということは、やっぱり例外が結構あるんでしょうか。本当にもうほとんど例外ない、一〇〇%禁止という状況なんでしょうか。それについてちょっと突っ込んだあれを。
#154
○政府参考人(西川克行君) 今把握しているのを申し上げますが、まず入国の現状ですが、平成十八年七月五日の措置以降、北朝鮮籍を有する者からの入国申込みが九件、四十二人分ございましたが、実際に入国した者はございません。ゼロでございます。
 それから、再入国の現状につきましてですが、在日の北朝鮮当局の職員による北朝鮮を渡航先とした再入国の許可申請、これ自体はゼロでございますので例がないと、こういうことでございます。
#155
○丸山和也君 いわゆる拉致事件という、これはそういうものは存在しないと言われていたんですけれども、北朝鮮の方もこれを認めて、存在していたということになって、それからはやもう何年もたっているんですけど、なかなか全面解決に至らない。これはもちろん国を挙げての、どの役所、一省の問題でないんでありますけれども、やはり日本が法治国家としてきっちりしているんだ、毅然としているんだというところをあらゆる局面で示さないと、やはり外交においては僕は成果が出てこないと思うんですよ、いろんな問題を。そういう意味で僕はこの金正男さんを取り上げたんだけど、やっぱりこのミサイルの件もそうですけれども、日本は非常に国内の法律問題についてはもう重箱の端つつくようにいろいろなことをやるけれども、いざ外交となると案外、まあ何というか、面倒なことは避けたいというかトラブルを避けたいみたいな、やっぱり国民性なのか、国際面でもありますね。
 そういう意味で、やはり今回こういうミサイル発射、ミサイルと思われますけれども、ミサイル発射の事件が起こって、再び北朝鮮とのある意味での関係を厳正に見直す時期に来ていますから、改めてこの拉致問題についても、どうですか、法務大臣、やっぱり北朝鮮との関係、今私、人的交流、物的交流のことを聞きましたけれども、やはり法治国家として北朝鮮に対して今後どのように接していくかということについて、もう最後のお答えでいいんですけど、覚悟をお聞かせ願いたいと思います。
#156
○国務大臣(森英介君) 北朝鮮による拉致は、我が国の国家主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であって、また人道上も到底容認することができないことであるというふうに思っております。
 北朝鮮による拉致行為が行われてから既に長い年月がたちました。拉致被害者や御家族の方々の一日も早い家族に会いたいというお気持ちはもう本当に切に理解できるところでありまして、平和の中で暮らす幸せ、家族であれば日常で普通にできることが拉致被害者やその御家族にはできないというその心情をそんたくいたしますと、誠に心が痛みます。拉致被害者や御家族の方々はお年を召され、拉致問題の解決に向け、今や一刻の猶予も許さない状況にあります。
 私はというか、今、先ほど委員が御指摘になったミサイルの問題につきましても、麻生総理がこの問題とも絡めて毅然とした態度を取っておられるところでございますので、麻生総理を支えて、全面的に我々の目的が成就するように努力をしたいというふうに思っております。
#157
○丸山和也君 いわゆる拉致は、法的に見ましたら、やっぱり日本の主権の侵害であり、それから個人の人権の最大限の侵害ですね。ですから、いわゆる日本の法治システム、統治システムすべてが外国の、まあ国家的犯罪と見ればですよ、国家的組織によってじゅうりんされたという事件なんですよね。だから、これは日本の法律を大事にするという姿勢と全く裏表の関係なんですよ。だから、向こうに対してはそういうことを、まあ何となく国際問題は大変だからという態度を取るということは、日本国民に対する法的なあれに対しても、日本国民の法的な地位を守るということにもいいかげんだということと裏腹なんですよ。
 私は弁護士三十五年ぐらい実務やっていましたけれども、やっぱり何件か外国で拉致というか事故に遭った、あるいは外国当局に逮捕されて、人間の救出に行ったこともあります、実際に幾つかの国に。だけど、本当のことを言って、なかなか日本政府というのは日本人を守らないんですよ、極端なことを言いますと。それは、もう外国の主権だからと、外国の警察が入っているから口は出せない、いや、もう裁判になっているから何も言えない、それで何年も何年も外国の留置所に置かれて、それで最後、本当の軽微な犯罪であってというような事件も結構あるんですね。
 ですから、私、やっぱり日本政府というのは日本の国民を本当に守る気があるのかなとずっと思っているんですよ。日本の国民を本当に守るという、パスポートに書いてありますよ、このパスポートの所持者に対しては各国は便宜を与えてくれともう書いてあるんだけど、外国行って本当に、僕はよく言うんですけど、外国へ出たら日本政府は一切日本の国民を守ってくれないよと。日本人が死んだら何人邦人死亡という報告はしてくれるけれども、身柄の安全は確保してくれないと私は思っているんですよ。
 かつて中東の方でしたかね、アフガンの方だったかな、日本人のボランティアの方が、女性の方でしたかね、武装勢力か何かに拉致されて、ありましたね。それで、命は助かって帰ってきたんですけれども、あんな危険なところへ行くなと言っているのに勝手に行ってと、飛行機賃は自分で払えみたいな議論が結構ありましたよ。とんでもないと思うんですよ、僕は。
 だから、日本政府というのはもっと日本国民を本当に大事にする姿勢がないんですよ。ないから、外国からこういうことがあっても、はい、どうぞお帰りください、ミサイルもまあ落ちないから一応まあ良かったわというぐらいですね。国連決議もありますよ、これ。断固たる抗議の意思を北朝鮮に伝えるとともに我が国独自の制裁を強めるべきであると、こんな決議案百回出したって何の役にも立たぬじゃないですかと私は思うんですよ。本気にやる気があるのかどうかということが本当に試されていると僕は、日本の国として、思うんですよ。
 そういう意味で、法務大臣、もう麻生総理のけつもたたいて、是非、陣頭指揮を執って日本の尊厳を守るために頑張っていただきたいと思います。
 終わります。
#158
○木庭健太郎君 裁判員制度の問題で、私、前回、障害者の皆さん方の裁判員として参加していくときの様々な要望も含めて質問もさせていただきましたが、今日はそれも踏まえた上で、模擬裁判等でいろんな取組もしていただいたんですけれども、聴覚障害者の皆さん含めて様々な要望が今裁判所にも法務省の方にも実施を前に当たってなされているわけでございますが、幾つかその点をまず冒頭お聞きしておきたいと思うんです。
 聴覚障害者の皆さんが要望されている第一点は、聴覚障害者の裁判員が参加した場合の、つまり聞き取るための手話通訳者の確保の問題でございました。いわゆる公的に認められた手話通訳者というのは、地域間にも随分ばらつきがありまして、例えばちょっと調べてみますと、厚生労働省が認定した通訳士というのが二千十五人いらっしゃるんですけれども、そのうち二割以上の四百五十二名は東京なんですよね。佐賀県になるとこれ一人しかいらっしゃらないというような地域のばらつきが随分あるわけです。実際、これ始まったときにどうなっていくかということがやはり聴覚障害者の皆さんにとってみると心配な点のようでございまして、例えば地域の管轄を超えてこういった通訳の問題についてはやれるような配慮とか、また法廷用語というのは、後で議論もしたいんですけれども、やはりなかなか難しい、手話で通訳しようにもしにくい部分もあるし、そういったことを、逆に言えばこの通訳士の皆さん方に養成というか、何というんですかね、訓練というか、そんな部分も必要になっていくと思うんですが。
 五月に始まれば、もう始まるわけでございますが、ともかくこういった聴覚障害者の裁判員の皆様方に対する要望、準備状況がどうなっているか、この手話通訳者の問題についてお尋ねをまずしたいと思います。
#159
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 手話通訳者の方については、現在、事件ごとに通訳人候補者名簿に登載された通訳人候補者の中から選任しておりますけれども、手話の通訳人候補者の登載がない庁では近隣の地裁や地方自治体と連携したり、あるいは手話通訳人協会等の団体の協力を得まして適任者を推薦していただくなどして手話通訳者を確保することになるものというふうに考えております。
 また、裁判員候補者の方の中に手話通訳等を必要とされる方がいらっしゃることをより早く把握できれば、それだけ手話通訳者の確保等の準備を円滑に進めることができますので、質問票に記載していただくなどの適宜の方法によってより早期に手話通訳等を必要とする事情をお知らせいただけるように工夫をしてまいりたいと考えております。
 なお、裁判員裁判では、一般の方々が理解しやすいよう平易な言葉を用いた分かりやすい審理が行われて、専門的な法律用語が殊更に用いられることはなくなりますので、現時点では手話通訳者が法律の専門的知識を持っている必要はないと考えておりますけれども、議員の御指摘も踏まえまして、今後とも必要性を見極めつつ適切に手話通訳者が確保できるよう努めてまいりたいと考えております。
#160
○木庭健太郎君 もう一つは、私も理解が少し足りなかったところがあったんですが、聴覚障害の場合はいろんな形でそういうものが中途で起きた方たちにとってみると、どちらかというと手話よりも今、一般的にとまでは言いませんが、使われるのが多くなったのがいわゆる要約筆記というものをやっている。つまり、通訳を使わずに、言ったことを聞き取って要約筆記して、それを見ていただいて、筆談といいますか、そういった形でのコミュニケーションのやり取りになっているということで、聴覚障害者の皆さん方から、是非、最高裁の方にも要望が多分行っていると思うんですが、こういった要約筆記者をどういうふうにして確保していくかという問題とともに、手話については模擬裁判というのが開かれたことがございます。ただ、この要約筆記に関する模擬裁判というのはまだ行われてないんではないかと思いますし、そういった意味では、一回そういったケースを実際にやっていただけないかというような要望があっております。
 私は、こういった課題、少数の方々ですが、やはりあらゆる方々がこの裁判員制度に参加するという趣旨からいうと、やはりこういった要望にもこたえていかなければならないんではないかなと思いますし、この辺に対する対応の問題、要約筆記の問題もそうですが、さらにもう一つあったのは、裁判員選任手続の質問手続のときに、じゃ、裁判官の方の方から、公平な裁判をするのに何か支障となる事情があるかと、障害を持つ方にそう尋ねているわけですよね。そうすると、それは、障害を持つ方にとってみるとそれがどういう言葉に入ってくるかというと、何か、障害を持っていると公平な裁判に自分は参加できないんじゃないかというふうな心理的な、ある意味じゃ非常に心が傷ついたというような結果を残したようなケースもあるようなんです。
 したがって、そういった方々が裁判に参加するときに、一緒にやられる裁判官の方々ですかね、この方々もそういった障害に対する理解というものがないと、変な形でのコミュニケーションギャップみたいなことが起きはしないかというような心配もあると思います。
 ともかく、五月に始まりますので、こういった方々へ対する、私は今手話通訳の問題そして要約筆記の問題を申し上げましたが、こういったことに対する対応、準備状況含めて、もう一度尋ねておきたいと思います。
#161
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判所といたしましても、聴覚障害者の方々の中には様々な障害の程度やニーズを抱えておられる方がいらっしゃることは十分認識しておりますし、御要望に応じて手話通訳や要約筆記の手配を考えているところでございます。
 委員御指摘のとおり、確かにこれまで要約筆記を用いた模擬裁判は行われておりませんけれども、裁判所では、これまでに要約筆記者の団体などから裁判員裁判において要約筆記をどのように運用していくかといった観点からの説明、それから複数の実演をしていただくなどしておりますので、そうした機会に得られた知見を裁判所の職員に広く伝えるなどして、裁判員裁判の実施に備えてまいりたいと考えております。
 裁判員裁判で、先ほど申し上げましたが、一般の方々が理解しやすいような分かりやすい審理が行われて、難解な法律用語が用いられることはなくなりますし、裁判の手続等につきましては、裁判所において依頼した要約筆記者の方にも適切に説明をいたしたいと思います。したがって、現時点においては要約筆記者を対象とした研修の必要は少ないと考えているところではございますが、今後とも必要性を判断しつつ検討してまいりたいと考えております。
 要約筆記者につきましては、地方公共団体や聴覚障害者情報提供施設などを通じて手配をすることを考えているところでございまして、場合によりましては、近隣の地裁と情報を交換するなどして、聴覚障害者の方が裁判員裁判に参加することに支障が生じないように要約筆記者を確保することになるものと考えております。
 それから、なかなか裁判官自身もそういう障害者に対するニーズあるいは程度、そういうものをよく理解しないといけないのではないかという御指摘でございまして、それはまさに委員の御指摘のとおりでございます。
 障害者の方への配慮の在り方については、障害者の方の御意見を踏まえながら検討していくことが必要と考えておりまして、これまでも障害者団体等の関係各位から御意見等をお聞かせいただいてきたところでございますが、これらの御意見等や、それから障害者の方が裁判員役として参加された模擬裁判で見られた問題点や工夫例等については、各地の裁判所、そしてこれを通じて弁護士会や検察庁にも情報提供するなどしているところでございます。今後とも、障害者の方への配慮の在り方について検討を進めてまいりたいと考えております。
#162
○木庭健太郎君 今裁判員の候補者に対して調査票が昨年末ぐらいから送られていきまして、三月でしたか、いわゆる名簿に登載する裁判員候補者の調査票の回答状況が発表されておりました。見させていただきましたら、二十九万五千人の候補者全体のうち辞退という方が二五%、七万四千八百人ですか、四人に一人は除外された形になっていると。
 一応、最高裁の方は、これは予想された範囲の数字だというようなことをおっしゃっているとお聞きはしている、運用に支障はないとおっしゃっているようですけれども、ただ、例えば候補者の中には、返した人はいいですけれども、本当は辞退のケースであったとしても調査票を返していないというようなことも実際あり得ることもあるんだろうと思うし、そういった意味で本当にこれ大丈夫なのかなと実際心配になってくるし、さらにその回答の中で、例えば気付いた点でまず第一点申し上げると、いわゆる仕事の都合で裁判員になるのが難しいというので、月でばらつきがあるんですね。見ましたら、十二月が一番仕事で参加できないという人たちが物すごく多くて、次いで八月、七月というふうに、月によってもばらつきがあってみたり、こういうこともあっていると。
 実際に、裁判をやろう、裁判員の制度を運用しようとしていけば、当然職種とか年齢の偏りみたいなことも考えながらやっていかなくちゃいけない。そう考えていくと、本当にこの結果どうなのかなと。今日、裁判員制度のこういう審議ですから、是非、この調査結果ですか、回答結果、どのように分析して、本当にきちんと大丈夫なのか、大丈夫じゃないと考えているならどういう対策をしようとしているのかと、まずちょっと聞いておきたいと思います。
#163
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、調査票の回答を返送されなかった候補者の方の中にも、個別事件で候補者に選ばれた段階で新たに辞退を申し立てる方もいらっしゃるというふうには、それは予想はされます。
 本年は制度実施初年度ということでもございまして、個別事件で候補者に選ばれた段階で新たに辞退を申し立てる方がいらっしゃるのか、また出頭率はどれくらいかなどといった点を、これは初年度ですので正確に予測するというのは困難なところございますけれども、今のところ最終的に必要な裁判員を確実に選べるような、適切な人数の候補者を選定するというようなことになりますので、個別事件における裁判員の選任に支障を来すようなことはないものというふうに考えております。
 また、委員御指摘のとおり、調査票の回答を見ますと、十二月、八月、七月が他の月に比べて参加が困難な月に当たると回答された方が多くなっておりますけれども、国民の負担に配慮して辞退事由を定めている裁判員法の趣旨に照らしまして、裁判所といたしましては、個別事情に応じて国民の社会経済生活の実態に沿う適切かつ柔軟な辞退事由の判断を行うことが重要だと考えております。
#164
○木庭健太郎君 それと、回答が少なかったというかそういった理由の一つに、私も見させてもらいましたけれども、いわゆる辞退希望欄というのがあるんですよね。そこに記入するんですけれども、記入項目がすごく限られているんですよね。だから、それぞれ自分の実情を調査票にこうやりたいけれども、じゃ、伝えられるのかというと、あれではちょっと、これ、なかなかやりにくい。
 実際にそんな意見もあったようですし、そして、その辞退事由の記載についてコールセンターに問い合わせたら、いやいや、それは今後呼び出されたときに裁判所で直接説明してくださいとか、そんな答えをコールセンターは返している。これはちょっとどうなのかなということを本当に思いましたし、そういったのが一つ、四割しか返っていないというような背景になっていないかという危惧をちょっとするところはございます。
 そういった意味では、やはりこういった調査票をお配りになられるのであれば、今の回答欄の在り方、この記入欄の在り方ですよね、これ少し御検討された方がいいんじゃないかというふうに私は思いますが、その点、どんなふうにお考えでしょうか。
#165
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 調査票は、候補者の方の事情を早期に把握して、無用な呼出しを避ける、そのことによって候補者の方の負担をできるだけ軽減するということを目的としたものでございますので、その目的の観点から考えますと、約四割の方から返送いただいたというのは、その目的を相当程度は果たせたのかなというふうには考えているところではございます。ただ一方で、委員御指摘のように、確かに裁判員候補者専用コールセンター等を通じて、調査票の書式とか回答方法などについて様々な御意見をちょうだいしたのも事実でございます。
 裁判所といたしましては、候補者の方々からいただいた御意見も踏まえて、今年の秋以降にもまた調査票を送付することになると思いますが、その調査票につきましては、委員御指摘の調査票の趣旨、目的を十分に実現することができるよう、分かりやすさとか回答のしやすさなどについても配慮しつつ改善してまいりたいというふうに考えております。
#166
○木庭健太郎君 それから、これから始めるわけですから、集まりが悪いというような話はなかなか今からは言いにくい話ではあるとは思うんですけれども、実際にこういう制度を導入している国を見る限りどうなるかというと、やはりこの選任手続の段階で出頭していただける方が各国の実例を見るとなかなか厳しいと。
 例えば、韓国では実際に裁判所に出頭した者が全体の三割だというようなデータもある。アメリカでは四割、州によってはこれが二割を切るということで、逆に言えば、どう確保するかと、人間を。それが共通の課題になっているようなところもあるわけで、これは報道をされておりましたが、アメリカでしたか、警察官が陪審員の召喚状を手渡すとか、何かそういう無理やり止めて見付けてくるというようなことまでせざるを得なかったというようなことが報道されていたり、そういった意味では、こういう記事を見るとちょっと心配になるんですけれどもね。
 これ、実際に本当に裁判所に出頭する候補者が少ない場合というのは、もしそんなことが起きた場合は何か方法を考えていらっしゃいますか。
#167
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 確かに、今の段階で出頭率をこれ正確に予測するというのは難しいものですから、その点も十分念頭に置いた呼出しといいますか選定ですね、裁判員候補者の選定をさせていただいて、「選任手続期日のお知らせ(呼出状)」としていますけれども、これをお送りしたいと思っておりますし、仮に出頭率が悪くて足りないということになりますと、これはまた追加で選定しておいでいただくということになろうかと思います。
#168
○木庭健太郎君 それと、もう一つ。これ、実際に裁判員になるかどうかというところで、いわゆる裁判員の選任手続、幅広い層から裁判員を選んでいく形になるわけですが、そういう意味では、集まった方たちに対してどう最終的に決めていくかというときに、いわゆる裁判長の質問手続ということがあるわけですね。これは、アメリカの陪審員制度みたいに、検察、それから弁護士の側からも、除外した人はこうやる、実際に質問しながら。まさにそこが、逆に言えば裁判の中身よりも、まずどういう人を陪審員にするかということでいろんなことが行われているのがアメリカだと。
 ところが、日本の場合は、除外するという規定はあるんですが、これはどんなふうな規定になっているかというと、実は直接そういうことを弁護士側、さらに検察側が質問できるわけじゃなくて、日本の制度の場合は、検察官、そして弁護士の側が、もし質問したいことがあれば、これ裁判長を通じて質問をするというような質問システムになっているわけですけれども、これも実際にどんなふうになるのかなということがなかなかちょっと思い浮かばないところもあるんですけれども、この質問手続において、検察官、弁護人からの質問の求めがあった場合、実際、具体的にはどんなふうな取扱いをして質問内容を決定していくのかということを、今の範囲で言えることがあれば是非ちょっと教えておいていただきたいと思います。
#169
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判員法によりますと、裁判員候補者に対する質問というのは、質問票の記載を前提にしまして、欠格事由とそれから就職禁止事由等のほかに、不公平な裁判をするおそれがあるか、それから辞退事由が認められるかを判断するために行われるものとされておりますので、質問手続における質問事項の範囲もこれに関するものに限定されるということになります。
 質問手続における質問事項につきましては、公判前整理手続や質問手続の際に検察官や弁護人の意向を聞いた上で最終的に裁判長が決定することになりますけれども、例えばアメリカで行われている、州で行われているような人柄とか能力だとか、あるいは評議への向き不向きを探るためだけの質問とか、あるいは候補者が検察官や弁護人に不利かどうかを見極めるための質問とか、こうしたものは、仮に検察官、弁護人から質問をしてほしいという求めがありましても、どうもそういうことは質問の事項の範囲を超えておりますので、そういった追加質問は認めるということにはならないだろうと考えております。
#170
○木庭健太郎君 ちょっとそんなこともお聞きしたのは、これ結局、その選任手続、結構長い時間が模擬裁判のときも実際掛かったようで、実際にそれに携わった方たちの話によれば、やっぱりその待ち時間というのはえらい長くて、よくその間どうなっているのかということも分からないというようなこともあるし、じゃ、その待つときどこで待てばいいのかというような問題いろいろあったり、そんなところもあったようです。
 したがって、実際始まるまでには、やっぱりそういった決定されるまでの間、候補者に対するいろんな配慮も必要だろうし、もっと言うと、ある意味では、終わってみると、分からないまま会社休んでせっかく行ったのに、候補者のままで裁判員になれなかったというケースも実際に起こるわけですよね。そういった裁判員候補者に対する配慮等について、もう実際に始まるわけですが、どんなことを裁判所としてお考えか、これもちょっと今聞いておきたいと思います。
#171
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 待ち時間が長いという感想につきましては、模擬選任手続でもそういう感想が聞かれたこともございまして、委員御指摘のとおり、選任手続を迅速化をしないといけないというふうに思っております。それから、お越しいただいた候補者の方への配慮とかサービスを、これを充実させることが必要だというふうに考えております。従前の、これまでの模擬選任手続の経験あるいは各種協議会における議論の結果を踏まえて、選任手続そのものの合理化と迅速化を図るとともに、委員御指摘のような候補者への十分な説明、これを十分徹底するということ、それから、例えば待機室に雑誌等を整備したりとか、いろいろリラックスしていただけるような配慮を検討しているところでございます。
 それから、裁判員に選ばれなくて御不満をお持ちになるという方に対しても、やはりおいでいただいたということが、候補者としておいでいただいたということがいかにこの裁判員裁判における重要なことをやっていただいたのかということは裁判所の方から十分御説明して、お礼を申し上げたいというふうに考えております。
#172
○木庭健太郎君 始まりますので、そういった細かい配慮といえば配慮なんですけど、いろんな面をきちんと是非していただいてスタートを切れるようなということの思いがいたしておりますし、そして実際に始まったときに、私はやっぱり難しいというか、なかなか困難になるんだろうなと思うのは、一つは、いろんな裁判、裁判員が担当する裁判の中でも、一回議論をしたことあるんですけれども、少年にかかわる問題、こういったやつは少年法の規定というのがどういったことで規定されて、保護という観点がもちろんあるんですけれども、それが刑法で、裁判で裁くということとどう仕組みの問題があるのかという、そういう基本が分かっていないと、例えば少年院に行くということと、返して懲役になるという問題とかいろんな問題、そういうところをどういうふうにしていくのかなというところが私は非常に、事実をどう裁くかということとともにその前の部分を裁判員が理解していないと、これはある意味ではきちんとした判断ができないという結果になりはしないかという心配もちょっとしているんですけれども。
 例えば、そういった今私が申し上げた少年法の問題、少年事件にかかわるような問題について、実際に裁判員裁判では具体的にどのような対応になるのか、ちょっとこれを伺っておきたいと思います。
#173
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 一般論で申し上げますと、委員御指摘の少年法五十五条の保護処分相当性の判断が求められるような事件につきましては、まず、その当事者である検察官や弁護人によって保護処分相当性に関する事情の有無について、これは法の趣旨を踏まえた分かりやすい主張、立証が行われることになるものと考えております。また、保護処分の種類や処遇の中身等につきましても、裁判員の方が判断を示す前提として疑問が残らないよう、審理や評議の場で当事者や裁判所から説明がなされることになるものと考えられます。
 司法研修所において、裁判官や学者のチームによって、難解な法律概念が問題となる事案の審理、評議の在り方等について研究が行われて、その中で、裁判員裁判における少年法五十五条の保護処分相当性に関する主張、立証の在り方についても触れられております。こうした研究も踏まえて、少年法の趣旨を尊重しつつ、裁判員の方に分かりやすい審理の在り方について更に検討を深めてまいりたいと考えております。
#174
○木庭健太郎君 それともう一つは、これは松野先生からもさっき御指摘をいただいておりましたが、責任能力というような問題が起きた場合、これはどんなふうにしてこれをやっていくかと、この裁判員裁判をですね。これもなかなか、責任能力の有無とか程度を争点とするような裁判になってきた場合は、これはなかなかやっぱり難しいところが出てくると思いますし、その意味で大阪地裁で二段階審理みたいな問題が出てきたのかなというような思いもするんですけれども、実際にこういう言わばどう量刑をするかとか事実をどう認定するかという以前の、これもそういう問題なんですけど、責任能力の有無みたいな問題が起きた場合、これもどんなふうに裁判員裁判が長期化しないように取り組むつもりなのか伺っておきたいと思います。
#175
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) この点も先ほど申し上げました司法研究では、公判段階になって精神鑑定が必要になるということになると、確かに今委員が御指摘になられましたように公判が長期化するということがございますので、法でも事前の鑑定の実施命令が設けられておりますし、それから司法研究では、捜査段階の鑑定は弁護側の主張も十分踏まえたもので鑑定をするというようなことも十分に考慮すべきじゃないかといったことも考えられていることでございますし、あと、やはり責任能力というのはこれは非常に難しい、難解な法律概念でございますので、その本当に意味するところに立ち返って分かりやすく説明する必要があるだろうというようなことも司法研究では触れられております。
#176
○木庭健太郎君 最後に大臣にお尋ねをしておきたいと思うんですけど、つまり日本の法体系というか、どういう形で日本というのはこういう犯罪なりそういった問題に対して取り組んでいるのかというような、ある意味では基本の部分というのが実は本当は法教育とかそういうところでできていれば、今私が指摘したようなところの最初の部分というのはかなりクリアできる部分もあるんですよね。
 そういった意味で、これは単に裁判員制度を始めるときというのはどういうことが起きるのかというと、裁判員制度のところだけでやるんじゃなくて、やはり社会における教育の問題、子供の教育の問題含めて、そういったところまでやっぱり私は法教育を始めいろんな問題が跳ね返ってくる問題じゃないかなと。そういったこともこの裁判員制度が始まることをきっかけとして、そういった基本、そんなものの取組というのを、これはやっぱり法務大臣、是非認識をしていただいて取組を強めていただきたいと思いますが、最後にこれを伺って質問を終わりたいと思います。
#177
○国務大臣(森英介君) 今日の午前中の参考人質疑でも、やっぱり国民の司法参加、また司法に対する義務というようなことが意見陳述されたと聞き及んでおりますけれども、やっぱりそういったことを今まさにこれから国民の皆様が主体的に担っていただこうというのが一つの裁判員制度の意義だと思いますけれども、それをスタートするに当たって、これは一朝一夕に成ることではありませんけれども、今、木庭委員から御指摘のあった法教育ですとか、そういう基本的な、何といいましょうか、認識、知識の問題というのは極めて重要であるというふうに思っております。
 でも、恥ずかしながら、私も法務大臣になるまで、まあ恥ずかしくもないけど、裁判というのがどうやって、裁判の現場って見たことありませんでした。そういうようなことがやっぱり今の教育、初等中等教育でやっぱりどこか、どこかというか全く欠落しているんじゃないかというふうに認識した次第でございまして、やはり法教育の重要性とか、そういった国民の基礎的知識の充実というのは極めて重要なことであると思いますので、関係の諸機関とも連携してそういったことの改善に努めてまいりたいというふうに思っております。
#178
○木庭健太郎君 終わります。
#179
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日、この裁判員制度の集中的な質疑ということが実現をしたということを改めて良かったなと思っております。(発言する者あり)午前中の参考人質疑も含めまして、大変多様なテーマでの議論が今日は実現をしているわけですけれども、今も声がありましたように、今後も時期を見計らってこうした集中的な質疑を実現をしていただきたいと思いますし、加えて、この制度の問題については大変多様な意見が私たちの社会の中にあるわけでございますから、そうした意見を十分伺える参考人の質疑も引き続き検討をしていただきたいというふうに委員各位にお願いを申し上げておきたいと思います。
   〔委員長退席、理事松村龍二君着席〕
 裁判員制度は、死刑求刑事件を含む重大刑事事件について行われるわけです。こうした事件によって発生した被害が重大なものであるとともに、一方で我が国では、四大死刑再審冤罪事件を始めとして、戦後の憲法、刑事訴訟法の下でも、虚偽の自白や違法な取調べによって警察、検察が獲得した供述証拠が裁判を誤らせ、重大な人権侵害を繰り返してきたという痛苦の経験がございます。
 午前中の参考人質疑でも、怖くないから来てくださいといったたぐいの宣伝は、裁判員となる国民の皆さんを誤らせるのではないかといった認識が共通に語られたと私は思っております。裁判員として参加する国民の常識あるいは多様な経験が、その良心に基づいて発揮されるためには、とりわけ虚偽の自白や違法な取調べが真摯に争われる重大事案で、捜査機関の提出する証拠、中でも供述証拠には危険が潜んでいるということを十分認識した上で裁判員が審理、評議に臨まなければ、良心を生かした判断はできないという問題があると思うんですね。これは大変重要な課題の一つだと思います。
 そこで、この点についてお尋ねをしていきたいんですけれども、まず最高裁にお尋ねをいたします。
 被告人の自白、あるいは共犯者の供述、目撃証言、こういった危険な証拠というふうに言われてきた供述というのがあるわけですけれども、こうした供述証拠の証拠能力や信用性を判断するに当たって、どこに危険が潜んでいるのかを吟味していく上での注意則ないし準則について、裁判所はこれまでどんな問題意識でどんな研究をなされてこられたんでしょうか。
#180
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 今委員御指摘の自白の信用性、任意性を含めますね、あと例えば共犯者の供述の信用性と、それから、目撃証言というのは犯人識別供述ともいいますけれども、の信用性、あとよく問題になるのが状況証拠の観点から見た事実認定、こういったものが事実認定に関して実務上これまでいろいろな裁判例の中で特に問題となることが多かったということがございまして、司法研修所で裁判官が過去の裁判例を整理、分析しているというものがございます。これは、その整理、分析の結果を一つの手掛かりとして、より良い審理、判断の参考にされることを目的にしたものであろうというふうに認識しております。
#181
○仁比聡平君 今御紹介があった司法研修所の研究というものは、それをそろえただけでこんなに積み上がるぐらい大部なものがございまして、研修所以外の裁判官だとか研究者が研究したものも含めれば大変膨大な事実認定についての分析というのがあるわけですよね。それだけ事実に迫るというのは、いろんな積み重ねがこれまで行われてまいりました。
 その中で一つ、自白の問題について、司法研修所の自白の信用性という研究の報告をこちらに持ってまいりましたけれども、この自白について、人はやってもいないことをさもやったかのように供述する、正確には供述させられるわけですけれども、これがあり得るからこそ虚偽の自白というのが問題になるわけですよね。あるいは、あってもないことをさもあったかのように供述する、供述させられるということがあり得るんだという、この危険性を裁判所はどういうふうに認識して供述証拠の吟味に臨んでこられたわけですか。
#182
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 委員御指摘の点ですけれども、裁判所がどのように認識してと、こう言われまして、いろいろな多くの裁判官がどのように認識してということになろうかと思います。それは、各裁判官がどのように認識しているかというのを今ちょっと私が一概に申し上げられるということではないんでございますが、委員が先ほど御指摘になった司法研究、これなども参考にしながら各裁判官は審理に臨んでいるものと考えております。
#183
○仁比聡平君 この自白の信用性の研究報告だけ見たって、これはもう膨大な角度、テーマでの研究があるわけです。実際にそれは具体的な生きた裁判の事件において争点になっているわけですね。
 この司法研修所の自白の信用性についてという研究報告の中で、裁判官の共著によるものですけれども、こうしたくだりがあります。適正かつ妥当な事実認定をしたいということは、我々実務家の永遠の願望であり、終生の目標であると。この職業裁判官、あるいはこれは検察官や弁護士も同様かと思うんですけれども、こうした今日プロという言葉で表現されている実務法曹は、この証拠からどう事実に迫るのかという、ここについて大変な、言わば生涯を懸けた研究を続けているわけですね。
   〔理事松村龍二君退席、委員長着席〕
 一方で、裁判員は、生涯に一度だけだとしても、多様な経験と市民としての常識を持って裁判に参加いたします。これは、これまでもこの委員会で刑事局長とも議論してきたように、職業裁判官と裁判員は全く対等にこの事実に迫るという、その活動をするのであります。そのときに、裁判員がその良心を発揮して事実に迫れる審理や評議にならなければ、裁判員制度はその根幹を失ってしまうことになるわけですけれども、一方で、供述証拠の危険性というのは、これまで人類の中で、あるいは我が国の刑事訴訟の中で積み重ねられてきた基本的な認識だとかその評価に当たっての注意則というのがあるわけですが、これはどういうふうに今後生かされるようになるわけでしょうか。
#184
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 裁判員裁判になれば、職業裁判官とそれから一般の国民から選ばれた裁判官、それは裁判についてはこれまでになじみがない方ではありますけれども、そのそれぞれの協働、双方の協働で審理に臨むわけでございます。
 それは、裁判官は裁判官の経験に基づいた、今注意則とおっしゃいましたけれども、いろんな物の見方や視点というものを議論の中で当然話すことにもなると思いますし、それから裁判員は裁判員で、それは様々な社会経験を持っておられますから、そこから出てきた見方だとか視点だとか感覚も述べられまして、それらがうまく議論の中に入って、そしていい結果が出てくるだろうというふうには思っております。
 ただ、その前提としてよく分かる充実した審理が行われなければいけませんので、そこはまず検察官、弁護人においてきちんとしたかみ合った的確な立証が行われないといけないと思うわけですね。
 そういう中で、検察官に立証責任があるわけでございますから、検察官の主張、立証を、弁護側の反証、反論を踏まえて評価していくという形で、そういう今おっしゃった事実認定にしても、そういういい結論に到達できるのではないかというふうに考えているわけです。
#185
○仁比聡平君 申し上げている供述の持つ危険性や、それを吟味する上での注意則というのは、今の刑事局長の答弁で伺いますと、まず当事者である検察官、そして弁護人、被告人による争点の設定と、主張、立証によって明らかにされるということなのかなと受け止めたわけですけれども。
 公判審理はそうした争点が十分裁判員に理解され、心証形成ができるように組み立てられなければその役割を果たせないということになろうかと思うんですね。具体的にはどういう運用が考えられるわけでしょうか。
#186
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 まず、公判前整理手続の段階で争点が適切に整理されなければいけませんし、それから提出される証拠も、これは適切に選ばれなければいけないんだろうと思います。
 もちろん、これはあくまでも当事者がイニシアチブを取るといいますか、当事者がまず、当事者追行主義でございますから、当事者の主張、立証を尊重してやっていくことになると思いますけれども、そこできちんと、つまり真相の解明に十分必要な主張、立証ができるような整理、そして審理計画が立てられないといけないと思います。まずそれが第一だと思います。
#187
○仁比聡平君 確認になりますけれども、そうしますと、検察官がどういう形で有罪を立証しようとするのか、その証拠がどうなのかと。一方で、弁護人が被告人の防御権を体してこういう形で防御をするというような形の争点ということになると思うんですが、それは供述証拠の何らかの問題点が争われるということになれば、その法曹はこれまで過去積み重ねられてきた注意則に沿った争点の設定をしようとすると思うんです。そういう意味では、そういったこれまでの経験を踏まえた公判審理が組み立てられるんだということなんでしょうか。
#188
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) おっしゃるとおりだと思います。
#189
○仁比聡平君 加えて、個別の裁判で、これは必要かどうかというのは、それはもちろん個別の裁判の判断だと思うんですけれども、ですから法務省の刑事局長にお尋ねした方がいいのかもしれませんが、当事者が請求をして、その裁判で必要だとされた場合、一定の条件の下での供述の危険性だとか信用性、これを判断する上での注意則について、専門的な証人、専門家証人、例えば供述心理の分野の方、そういった方を採用して意見を聞くということも、この裁判員制度の制度上はあり得ると思いますけれども、いかがですか。
#190
○政府参考人(大野恒太郎君) 今、特に自白供述の評価等についてなかなか難しい問題があるという御指摘がありまして、それはもう誠におっしゃるとおりであります。
 検察官といたしましては、公判に至る前に、捜査段階でまずそこを正しく評価しなければいけないということで、大変その点については今後も強い、何といいましょうか、関心といいましょうか、問題意識を持って臨んでいこうというふうに考えておるわけであります。
 じゃ、実際に公判でそれがどういう形で問題になってくるのかという点につきましては、検察官が自白調書を証拠請求する場合には、当然、その任意性、信用性を前提とするわけでありましょうから、そういう場合に、これに対してそこに問題があるという問題点の指摘、これは基本的に公判前整理手続においてまず弁護側から具体的に主張していただくことになるんだろうというふうに考えております。それに応じて必要な立証を、どういう立証をしていくのかということを計画していくことになると思うわけであります。
 専門家、心理についての専門家を例えば証人として調べる余地はないのかと、こういうことでございますが、学識経験のある者が供述心理等について鑑定を命ぜられるような場合が法律上全くないわけではないだろうというふうに思うんでありますけれども、しかし、実際に何をその要証事実にしてどういう証言を求めるのかというのは個別事件あるいはその際の主張によっても変わってくるわけでありまして、一律になかなかどうかというふうには言いにくいように思います。
 また、自白を含めまして、その任意性あるいは信用性の判断、これは、裁判員を含みます裁判側、裁判官等の自由な判断にゆだねられているわけであります。今特別な法則というようなお話もありましたけれども、これも最終的にはしかし常識といいましょうか、に照らして納得できるかどうかというような辺りにもなるように思うわけでございます。
#191
○仁比聡平君 今、大野局長、大分長く御答弁をいただきましたけれども、制度上、私が申し上げたような専門家証人の採用というのはあり得ないわけじゃないと、あり得ることと。それが必要かどうかは、それはもちろん個別の裁判の話ですからそれは結構なんですけれども、これまで職業裁判官が判断権者であった事件、しかも重大な事件、ここについて真摯に供述証拠の信用性、任意性が争われたときに裁判員がどういうふうに考えるべきなのかということをしっかりはっきりさせながら臨んでいくというのは重要なことだと私は申し上げたいわけです。
 模擬裁判を振り返ってみましても、六百回ほど行われたというんですが、昨日勉強でお尋ねしましたけれども、その中で、四大死刑再審事件で問題となったような別件逮捕下での自白だとか、拷問による自白だとか、あるいは鑑定書が偽造ではないかというような争点が争われた模擬裁判というのはないわけですね。事件においてそういう争点が争われたときに、しかも結果は重大な事態が起こっているわけですから、そこで市民の裁判員が争点を理解して判断していく上でどのような問題点があるのかというのは、これは模擬裁判においては検証されていないことなんです。
 今日、松野委員からも関連した御質問がありましたけれども、私は、こうした問題が争われる重大事件でこそ国民の皆さんの常識と経験に基づく事実認定というのが期待もされていると思いますし、審理期間の問題はもちろんのことですが、公判廷での十分な審理、そして裁判員が裁判官と対等に臨む評議、ここの重要性というのは幾ら語っても語り過ぎることはないというふうに思っております。
 そこで、ちょっと検証という問題について少し聞いておきたいと思うんです。
 この委員会の三月二十四日の質疑の際に、木庭理事の方から、最高裁そして法務省がどのような検証に向けた取組をしているのかということが詳しく聞かれておりますので、会議録としてはそちらを参照していただきたいんですが、端的、そういう意味では短く、最高裁が設置された有識者懇談会の役割というのは何ですか。
#192
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判員制度の実施に当たりましては、実施前に十分な準備を進めるとともに、実施後もその実施状況を不断に検証して、社会に根差した制度になるよう育てていく必要があるというふうに思っています。裁判員法百三条が裁判所に毎年実施状況に関する資料の公表を義務付けているのも、このような趣旨に基づくものと認識しているところです。こうした趣旨を全うするためには、制度実施状況を実証的なデータに基づき分析し、幅広く国民的な視点から裁判員裁判の運用の在り方を検討することが不可欠です。
 そこで、裁判所がこのような分析、検討を行う際に適切な助言、御意見をいただくための機関として、裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会を設置したところでございます。
#193
○仁比聡平君 今もお話がありますように、実施後も実施状況を不断に検証することが必要だと。不断にというのは、つまり五月に実施されるとすれば公判前整理手続始まるでしょうし、七月には公判も始まるのではないかというふうな見方もあるわけで、そうした経過に沿って不断に検証するということだと思うんですね。それも実証的データに基づいて分析する、幅広く国民的な視点から在り方を検討するというふうにおっしゃっておりまして、これをどうやって、どういうデータ、実証的なデータとは何ですかということが問題になろうかと思います。
 これは、どういうふうにしようとしているんですか。
#194
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 選任手続の状況とか、それから審理、評議、判決の状況などを始めとする裁判員裁判の実施状況を示す各種の統計データ、これございます。これはもちろんですが、数値的な要素のみでは十分に把握できない国民の負担感とか裁判員制度に対する認識の状況等については、裁判員等を経験した国民を対象とするアンケートを実施するなどして把握、分析していくことを予定しておりまして、そのようなデータを基に議論を進めることになると思われます。
#195
○仁比聡平君 今日も朝の参考人質疑からずっと問題になっています。共通認識に恐らくなっていると思うんですが、裁判員を経験した方のその事件とのかかわりでの意見、これ極めて重要だということだと思います。懇談会でもある委員から、アンケートの結果はどのような事件に参加したかによって異なってくるのではないか、事件の内容などを抜きにして単純にアンケートを取っても有意義な結果が得られない可能性があると、こういう指摘がされているとおりだと思うんですね。
 私、前の質疑でも想定いたしましたケースですけれども、そこで問題になるのが守秘義務ということで、今日もずっと議論があっているわけですが、評議の在り方について、これ不断に検討する、あるいは、こちらは法務省の所管ということになると思いますが、三年後の見直しについてどうするのかということを議論するときに、評議の在り方についての検証というのは、裁判員がそこでどのような体験をし、意見を持っているのかということ抜きにはこれは語れないと思うんですよ。
 評議の秘密にかかわる部分がその裁判員にとって最も重大な問題意識であるというときに、いや、そこはアンケートにも書いちゃいけませんよとか、どういう場でも話してはいけませんよということになったら、その人の意見というのは聞きようがないでしょう。どうするんですかね。最高裁、どうですか。
#196
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 守秘義務は、その守秘義務にかかわるところを聞かなければ目的を達しないのではないかという委員の御指摘でございます。その点についてちょっと私、コメントは控えたいと思いますが、守秘義務は法律上の義務でございますので、裁判所としてはそれを尊重して行うことになろうと、それは思っておりますけれども。
#197
○仁比聡平君 私は、守秘義務を解除することなしにその評議の在り方も含めた検討というのを検証、これをするというのは、これはやっぱり現実問題として不可能なのではないかなというふうに思います。これ、守秘義務を解除するべきではないのか、少なくとも検証するに当たってはそうすべきではないのかという今日議論があっておりまして、大野局長からも答弁がありましたから、今日それ以上の御答弁されないんでしょうから、時間もありませんので答弁はもう求めませんけれども、私は、これ大臣にも強く申し上げておきたいんですが、守秘義務の規定を削除するということも含めて三年後の見直しに向けて真剣に検討するべきだし、裁判員を経験する方々の意見を率直に文字どおり聞いていくべきだというふうに思っております。
 最後に、これは最高裁。
 昨日、勉強の中で、今お話のあったアンケートの分析なんですけれども、これ民間の業者に委託するかのようなお話が耳に入りました。地裁が取りまとめて業者に分析を依頼すると。こんなことあり得るんですかね。守秘義務がというふうにおっしゃりながら、民間の業者にその自由記載欄の取りまとめなんかをさせるなんというのは、こんな変な話はないと思いますが、この点についての答弁を伺って、終わります。
#198
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 アンケートの実質的な作業については、業者に委託することを予定はしております。アンケート項目の設定とか結果の分析等に当たって専門的な知見を活用すべき部分も多く、またアンケートを中立的に実施するためにも業者に委託するのが相当というふうに考えているからでございます。
#199
○仁比聡平君 だったら守秘義務の削除をするべきですよ。
 終わります。
#200
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 午前中から大変御苦労さまでございます。最後の質問になりますので、もう少しお付き合いをいただきたいというふうに思っています。
 いよいよ来月から裁判員制度がスタートいたします。しかし、今日も、まさに集中審議でありますので当然でありますけれども、この裁判員制度、密室での取り調べ、人質司法など誤判を生み出す構造はそのまま温存されているということ、そして裁判員の負担がいろんな意味で大変重いということ、そして被告人の防御権が制約を随分されるということ、こういう批判、懸念があるということがいろいろ出てきておるわけでございます。法曹はこれにこたえるべきでありますけれども、国会としてもこれを解消する、そういう責務があるだろうというふうに思っております。
 そこで、最初にお尋ねをしたいというふうに思いますが、午前中も、なぜこの裁判員制度を導入するのか、制度目的についていろいろ議論がございました。制度目的につきましては、裁判員法の第一条で、国民の司法に対する理解、信頼、これを獲得すること、これを向上させることというふうに書いてあるということは承知の上でお尋ねをするわけでございますが、私などはずっと、そういうところもあるけれども、同時に日本の刑事裁判最悪だという話も先ほどちょっと、以前、大法学者がお話しになったという話もございましたけれども、誤判だとかあるいは冤罪の防止あるいは無辜の民を処罰しないと、こういう観点も少しはこの中に入っている、こういうものが全くみじんもないんだということは私はないというふうに今でも思っておるんですが、この冤罪の防止だとか無辜の民の処罰はしないんだと、こういうものは多少なりとも入っているんでしょうか。
 とにかく、国民に多大なやっぱり負担を掛けて、先ほども裁判員を呼び出すという言葉が時々最高裁の刑事局長の言葉から出てくるわけでございますが、負担を掛けて、なおかつこういう冤罪の防止という観点は多少なりともこれはあるんでしょうかどうか、法務省からお答えいただきたいというふうに思います。
#201
○国務大臣(森英介君) 今委員の御説明にもありましたとおり、御指摘にもありましたとおり、裁判員制度には広く国民が裁判の過程に参加し……
#202
○近藤正道君 一条は分かっているんですよ。
#203
○国務大臣(森英介君) じゃ、はしょりまして、刑事訴訟手続の目的は、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することであります。その中には、いわゆる無辜の不処罰も当然含まれていると考えておりますが、この点は裁判員制度による裁判であるか否かにより変わるところではございません。
#204
○近藤正道君 分かりました。
 いずれにいたしましても、裁判員制度の中でも無辜の不処罰、これはやっぱり貫かれているということは当然だろうというふうに思っているわけでございます。
 裁判員の負担の問題もいろいろ議論になっております。裁判員裁判への参加は労基法上の公休ではありますけれども、全就業者の七割以上を占める中小企業、ここでは従業員も含めて、今の、現下の経済危機の中で実際どの程度参加が得られるのか、あるいは、本当に安心して出頭できる環境整備が整っているのか。実態を見ますと、大変やっぱり不安の点がございます。大きな企業ではいろんなことがそれなりにされているということは分かるけれども、日本の大宗を占める中小あるいは小規模の自営業者のところで一体どうなっているのか大変懸念がありまして、ここら辺のところがやっぱりしっかりされないと、多様な人を集めなきゃならぬにもかかわらず、結果として余裕のある人だとかあるいは大企業の正社員しか集まらない、こういうことになっては大変困るわけでございます。
 そのことが本当に大丈夫なのかということを懸念しているということと、もう一つは被告人のやっぱり防御権、これがやっぱり脅かされるのではないかという、そういう危険、心配を大変持っておるわけでございます。
 今日も、公判前の整理手続、これが義務化されるということの問題がいろいろ議論になりました。予断排除原則はこれで少し骨抜きになるのではないかと、こういう心配を私この間、一、二度質問をさせてもらっておるわけでございますが、せめて手続を主宰する裁判官と受訴裁判所とは分離すべきだ、このことを本当にやっぱり私は考えていただきたいというふうに思っておりますし、また公判前整理手続を義務化するということであるならば、少なくとも検察官手持ち証拠のリストは全面開示すべきだというふうに思います。手続終了後の弁護側の新証拠提出の制限を削除するか、あるいは柔軟な運用を行うべきだというふうに思います。そもそも被告人・弁護側が証明予定事実、これを明らかにする義務、こういうものを負うこと自身がやっぱり黙秘権だとかあるいは検察官の立証責任を否定する、そういう懸念だってあるわけでございます。
 しかも、証明予定事実、その明示後であろうと、検察官は訴因の変更ができるわけですよね。公判前の整理手続をやって、そして弁護活動を一方ではその後一定制約するわけですよね。そういうふうに制約しておきながら検察官の訴因変更が許されるというのはバランス欠くのではないかと、私は率直にそういうふうな思いがあるわけでございますが、つまり、公判前の整理手続後でありますが、弁護に制約を課するなら訴因の変更も一定やっぱり制約をすべきなのではないかというふうに思いますが、そこはどういうふうにお考えでしょうか。
#205
○政府参考人(大野恒太郎君) お尋ねの趣旨ですけれども、公判前整理手続後、つまり公判が始まった後の訴因変更というように絞って理解してよろしいでしょうか。
 じゃ、そのような前提で申し上げますと、公判前整理手続におきまして必要な証拠の取調べ請求が行われて実質的な、実効的な争点整理が行われるわけでありますけれども、その後充実した迅速な審理の実現が担保されますように、確かに今委員御指摘のとおり、公判前整理手続終了後の新たな証拠調べ請求は制限されるということになるわけです。
 ただ、申すまでもなく訴訟は生き物でありまして、実際に公判で証拠調べを進めていきますといろいろな事態が、当初予定していなかったような事情の変更というのはあり得るわけです。
 ただ、原則といたしましては、やはり公判前整理手続で整理され、枠が決められるわけですから、検察官は特段の事情もないのに新しい証拠の取調べ請求を行うことはできないわけであります。先ほど、委員は専ら弁護側についておっしゃいましたけれども、それは全く検察側にも同じように当てはまるわけでありまして、特段の事情もないのに検察官が新たな証拠調べの請求を行うことはできず、したがってそれを前提とする訴因変更もできないということになるわけです。
 ただ、先ほど申し上げたように、当初予想していなかったような訴訟展開、その後の審理の経過から訴因変更を行う必要が生じる場合、これもやはり否定できません。ただ、先ほどの委員の御懸念は、そうなった場合に弁護側の手が縛られているんじゃ、これはひどい話じゃないかと、こういうことでありましたけれども、そうではないということを申し上げたいというふうに思うわけであります。
 検察官が訴因変更を行うというようなことになりますと、その場合に、弁護側にまたやむを得ない事由があると認められることはかなりあるんじゃないだろうかと思うわけであります。もちろん、それは個別の事件によって異なるわけでありますけれども、やむを得ない事由があると認められれば、当然、弁護側がそれに応じて新たな証拠調べ請求をすることは許されることになります。また、裁判所が必要と認めて職権の証拠調べを行うこともございます。さらに、大きく事態が動くと、むしろここで一回期日間整理手続に付して、もう一回その争点と証拠を整理し直す必要が出てくる場合もあるだろうということでございまして、私が申し上げたいのは、公判前整理手続終了後に訴因変更がなされた場合であっても、当然、被告人側にはその新たな訴因に対する防御の機会が与えられることになりますので、防御権が害されることはないということを申し上げたいと思います。
#206
○近藤正道君 次に、検察官の開示証拠の目的外使用禁止の問題でございますが、午前中にも議論になりましたけれども、多くの冤罪事件では、市民や有識者が証拠に触れて、一般常識や専門的知見から裁判を批判する中で世論を動かす、そして裁判所を動かして無罪というものを実現する、これは松川事件がまさに代表的なケースでありますが、再審の無罪事件などもやっぱりそういう状況の中で実現された、そういう経過があるわけでございます。
 検察官開示証拠の目的外使用禁止は、そういう意味では、こうしたことを許さない、こういう危険があるのではないか、そういう批判がたくさん今出されているわけでございます。私もそういう立場で、この目的外使用禁止の規定はやっぱり削除するか、あるいは商業目的だとかあるいはプライバシー侵害だとか、そういう重大かつ悪質な場合に限定する、そういう柔軟な運用を行うべきではないかというふうに思うわけでございますが、いかがでしょうか。
#207
○政府参考人(大野恒太郎君) 目的外使用禁止の規定につきまして削除をすべきではないかというような御意見を承ったわけでありますけれども、やはり規定の意義に照らしますと、削除することは適当でないんじゃないかというふうに考えております。
 それが私どもの結論でございますが、何のために目的外使用禁止の規定が置かれたかといいますと、これはやはり証拠開示をなるべく拡充して、防御上、有益な証拠が弁護側にきちっと開示され、それによってその争点が整理され、円滑、迅速な公判が実現されるようにすると同時に、証拠開示によって生じ得る罪証隠滅、証人威迫あるいは関係者の名誉、プライバシーの侵害、国民一般の捜査への協力確保の困難化等を防止するという、そういう趣旨に基づいているわけであります。
 したがって、開示された証拠は、やはりあくまでも被告事件の審理の準備等、本来の目的にのみ使用されるべきであり、そのことをこの目的外使用禁止の規定は担保し、明らかにしているということでございます。
 先ほど、無罪事件のいわゆる救援活動等において、従来そうした開示証拠等の活用が大きな意味を持っていたという御指摘がございました。ただ、法律が禁止しておりますのは、開示証拠の複製等を示したり、用いたりということでありまして、証拠の概要を明らかにすることは直接禁止がまず掛かっていないわけであります。やはり、捜査機関はもとよりでありますけれども、裁判制度を考えましても、調書の写しがそのまま外に出てしまうというような事態はやはり問題があるだろうというふうに考えるわけでございます。
#208
○近藤正道君 次に、裁判員の審理の在り方なんですが、事実審理と量刑審理がございます。いずれも多数決で評決が決まるという形になっております。とりわけ、裁判員が死刑判決にかかわるケースがいろいろ取りざたをされているわけであります。職業裁判官であっても、大変な重い問題である中で、この死刑判決にかかわる裁判員の精神的な負担の面がいろいろ議論をされているわけでございます。
 司法への国民参加、こういうものが実施されておって、かつ死刑を存置しているというのは、アメリカの一部の州というふうに聞いております。その中で、多数決で死刑を評決するというのはフロリダ州、ここだけで、あとはすべて全員一致を要求をしている。つまり、国民参加、そして死刑、そして多数決、この言わば三点セットを備えているのは、裁判員制度実施後は私は世界でフロリダ州と日本だけではないかと。私のもし理解が間違っていたら訂正をしていただきたいんですが、国民参加の制度があって、死刑の制度があって、そしてその死刑の評決を多数決で行うと、この三点セットを備えているのはフロリダ州と日本だけだ、私はそういうふうに思っております。
 これ、もし間違ったなんということになると大変なことなんですけれども、つまり、裁判員は事実審理で無罪の心証を持ったとしても、この事実審理のところで多数決で負けてしまうと、今度は有罪を前提に量刑の審理に参加をしなければならない、一番極端なケースは死刑という、そういうところに行くわけであります。無罪だと思っても、場合によっては死刑のところで一定の量刑に加わらなきゃならぬと。これはもう大変な私は精神的な苦痛ではないかというふうに思っておりまして、今、死刑判決についてはいろいろ議論がある中で、さっき言ったように、三点セットを備えているのはフロリダと日本だけだというふうに考えたときに、この死刑判決については、せめて全員一致かあるいは少なくとも特別多数、こういう要件を言わば加重すべきだ、こういうことが検討できないんだろうか、本当にそういうふうに思えてならないわけでございます。
 守秘義務の議論がこの間いろいろありますけれども、守秘義務については、裁判員にのみ刑事罰を科して、職業裁判官より、より重く言わば加重、締め付けているわけでございますが、一方評議については、職業裁判官が単純多数決なんだから裁判員も単純多数決だと、平等なんだと、こういう言い方は私はバランスを欠くのではないかと。守秘義務で裁判官よりも重い規定を掛けるのなら、量刑のところでも私は違いを認めてもいいんではないかと、あるいは守秘義務を外すのならそれは分かるけれども。
 一方で職業裁判官よりも加重させておいて、一方で職業裁判官と平等だと、こういう言い方は私はバランスを欠くのではないかと素朴に思うんですが、いかがでしょうか。
#209
○政府参考人(大野恒太郎君) 守秘義務と評議の際の決定方法とは、必ずしも私は結び付くものではないんじゃないだろうかというふうに考えております。
 守秘義務について、裁判官にいわゆる刑事罰則がないのに対して裁判員に刑事罰則が定められているのは、裁判官については弾劾等の特別な手続があってそれがサンクションになっているのに対して、一回限り裁判員を務めるという、裁判員についてはそれに代わる手続がない、結局担保手段としては罰則しかないということで、これが置かれていることにそれなりの合理性があるのではないかというふうに考えております。
 一方、評決でありますけれども、現行の裁判所法では、裁判は、裁判官の過半数の意見で決まるというふうにされております。この点は、今まさに委員が御指摘になりました裁判員が評決に加わった場合でも同じではないだろうか。裁判官と裁判員は同じようにやはり評決においては位置付けるという、基本的にそのように位置付けるということからいたしますと、裁判官裁判の場合と異なる評決要件を定める合理的な理由はないのではないかということで、死刑判決も含めまして、裁判員裁判におきましては特別の評議の要件を定めなかったものというように理解しております。
#210
○近藤正道君 ここはちょっと見解を異にするんですが、さっきも言いましたように、国民参加の制度を持っていて、そして死刑の制度を持っていて、そして多数決で量刑を決める、死刑も多数決で決める、この三点セットをそろえているのは私は日本とアメリカのフロリダ州だけだと。だから、私は、本当に過酷なことを国民に要求をしようとしているんだということを是非やっぱり重く受け止めていただきたいというふうに思っております。
 そういう中で、私はやっぱり守秘義務の問題、最後に言及せざるを得ないわけでございます。アメリカでも、確定後は陪審員の守秘義務は免除されております。韓国の国民参与制度でも、法改正の調査においては参与員の守秘義務を一部解除している。ですから、日本においても刑の確定後は守秘義務を免除すべきだと。せめて、これはもう皆さんもおっしゃっておるけれども、法改正のための国民的な議論、国会等の公の検討会あるいは最高裁の有識者懇談会等が、三年後の見直し、それを行うために貴重な経験者である裁判員から意見を聞きたい、こういうときには部分的に守秘義務を解除したっていいではないかと、そういうことを本当に私は強く思います。ここまで縛りを掛ける必要が本当にあるんだろうかというふうに思っております。
 今日、午前中に三人の参考人の方、それぞれ貴重なお話をされておりましたけれども、やはり皆さんとも、裁判員に守秘義務、それも刑事罰を科せるということについてはやっぱり謙抑的であるべきだということを言っておられまして、私はそういうふうに聞いているんですけれども、お三方とも、少なくとも刑事罰については悪質なものに限るべきだとお三方ともそういうふうに言っておられました、取りあえず運用でですね。
 そこで、最後に法務大臣にお尋ねをいたしますが、今日私どもがお呼びをした参考人の皆さん、三人ともおっしゃっておられたわけだけれども、守秘義務については当面悪質なものに、刑事罰でもって摘発する場合、これはもう悪質、重大な場合に限る、こういうふうに明言していただけませんか。どうですか。
#211
○国務大臣(森英介君) 先ほど来、この裁判員の守秘義務の問題について再々御指摘、御質問ございますけれども、やはりそこの評議に参加する他の裁判員のことも考えていただきたいと思うんですね。やっぱりいろんな人を裁く、裁判に参加して評議に参加する以上、後のことも当然、やっぱり不安もありましょうし、やはりそれは、そういった参加する裁判員みんなのことを考えればやはり守秘義務というのは一つの安全弁になっているわけでございまして、それが大目に見るということであれば、最初からゆるふんになってしまったら、これは全くもうじゃじゃ漏れになっちゃうわけでございますから、そこのところはやっぱり少なくともそれなりのきちっとした姿勢で臨まないと円滑に裁判員制度が行われないと私は思います。
#212
○委員長(澤雄二君) 近藤正道君、おまとめください。
#213
○近藤正道君 時間ですのでもうやめますけれども、いずれにしても、三名の参考人の方がいずれも、法律がある以上はある程度やむを得ないんだけれども、運用については悪質重大なものにやっぱり限るべきだと、こういうふうにお三方ともおっしゃっているということを是非重く受け止めていただきたいというふうに思っています。
 私は、やっぱり国民参加という観点で裁判員制度というものを評価する側面を持っております。ですから、素人に裁判になんかかかわらせるべきではないという、そういう立場にはくみしないんですけれども、いろいろ問題はやっぱりありますよ。しかも、あと、冤罪を生み出す構造も温存されておりますし、問題点たくさんある。もっと謙虚に現実を見据え、国民の意見もやっぱり聴きながら、改めるべき点はやっぱり改める、そういうことを是非私は考えていただきたい。
 さらに、現実問題として、もう少し時間がありますので、これからもこういう集中的な審議を続けていただきたいということを要望を申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
#214
○委員長(澤雄二君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会をいたします。
   午後五時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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