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2009/07/10 第171回国会 参議院 参議院会議録情報 第171回国会 本会議 第37号
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2009/07/10 第171回国会 参議院

参議院会議録情報 第171回国会 本会議 第37号

#1
第171回国会 本会議 第37号
平成二十一年七月十日(金曜日)
   午前十時二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三十七号
  平成二十一年七月十日
   午前十時開議
 第一 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ
  ・ダルサラーム国との間の協定の締結につい
  て承認を求めるの件(衆議院送付)
 第二 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避及び脱税の防止のための日本国とカザフス
  タン共和国との間の条約の締結について承認
  を求めるの件(衆議院送付)
 第三 クラスター弾等の製造の禁止及び所持の
  規制等に関する法律案(内閣提出、衆議院送
  付)
 第四 経済連携協定に基づく特定原産地証明書
  の発給等に関する法律の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一より第四まで
 一、厚生労働委員会において審査中の臓器の移
  植に関する法律の一部を改正する法律案及び
  子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検
  討等その他適正な移植医療の確保のための検
  討及び検証等に関する法律案について、速や
  かに厚生労働委員長の中間報告を求めること
  の動議(小川勝也君外二名提出)
 一、臓器の移植に関する法律の一部を改正する
  法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植
  に関する検討等その他適正な移植医療の確保
  のための検討及び検証等に関する法律案の中
  間報告
 一、中間報告があった臓器の移植に関する法律
  の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳
  死及び臓器の移植に関する検討等その他適正
  な移植医療の確保のための検討及び検証等に
  関する法律案は、議院の会議において直ちに
  審議することの動議(小川勝也君外二名提出
  )
 一、臓器の移植に関する法律の一部を改正する
  法律案(衆議院提出)
 一、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する
  検討等その他適正な移植医療の確保のための
  検討及び検証等に関する法律案(千葉景子君
  外八名発議)
     ─────・─────
#3
○議長(江田五月君) これより会議を開きます。
 日程第一 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件
 日程第二 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件
  (いずれも衆議院送付)
 以上両件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。外交防衛委員長榛葉賀津也君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔榛葉賀津也君登壇、拍手〕
#4
○榛葉賀津也君 ただいま議題となりました条約二件につきまして、外交防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 ブルネイとの租税協定及びカザフスタンとの租税条約は、いずれも我が国と両国との間で課税権を調整するものであり、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止について定めるとともに、配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等について定めるものであります。
 委員会におきましては、両件を一括して議題とし、我が国との経済交流の現状と租税条約締結の経済効果、カザフスタンとの間における使用料の源泉地国課税軽減の是非、対カザフスタン経済支援の体制強化等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終え、討論に入りましたところ、日本共産党の井上委員より、両件に反対する旨の意見が述べられました。
 次いで、順次採決の結果、条約二件はいずれも多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(江田五月君) これより両件を一括して採決いたします。
 両件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#6
○議長(江田五月君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#7
○議長(江田五月君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十二  
  賛成            二百十五  
  反対               七  
 よって、両件は承認することに決しました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#8
○議長(江田五月君) 日程第三 クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案
 日程第四 経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。経済産業委員長櫻井充君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔櫻井充君登壇、拍手〕
#9
○櫻井充君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律案は、一般市民が不発弾などにより甚大な被害を受けてきたクラスター弾を規制するため、平成二十年五月に採択されたクラスター弾に関する条約の適確な実施を担保するため、クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、我が国が非締約国の条約への参加を積極的に働きかける必要性、クラスター弾の所持の状況及び廃棄過程を公開する必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律の一部を改正する法律案は、日本国とスイス連邦との間の自由な貿易及び経済上の連携に関する協定の適確な実施を確保するため、経済産業大臣の認定を受けた輸出者が自ら原産地証明書を作成することのできる制度を創設する等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、貿易自由化の度合いが高い経済連携協定の締結を二国間、多国間で推進していくための今後の方針、特定原産地証明書の円滑な発給に向けての支援策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対して附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#10
○議長(江田五月君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#11
○議長(江田五月君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#12
○議長(江田五月君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十二  
  賛成           二百二十二  
  反対               〇  
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#13
○議長(江田五月君) 小川勝也君外二名から、賛成者を得て、
 厚生労働委員会において審査中の臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案について、速やかに厚生労働委員長の中間報告を求めることの動議が提出されました。
 この際、日程に追加して、本動議を議題とすることについてお諮りいたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#14
○議長(江田五月君) 過半数と認めます。
 よって、本動議を議題といたします。
    ─────────────
#15
○議長(江田五月君) これより本動議の採決をいたします。
 本動議の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#16
○議長(江田五月君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#17
○議長(江田五月君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百二十  
  賛成             二百七  
  反対              十三  
 よって、本動議は可決されました。
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#18
○議長(江田五月君) これより、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案について、厚生労働委員長の中間報告を求めます。厚生労働委員長辻泰弘君。
   〔辻泰弘君登壇、拍手〕
#19
○辻泰弘君 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案に関し、厚生労働委員長として、委員会における現在までの審査状況につきまして、中間報告を申し上げます。
 現行の臓器の移植に関する法律は、内閣総理大臣の諮問機関として総理府に設置されたいわゆる脳死臨調の平成四年一月の答申を踏まえ、平成八年十二月に衆議院に提出されたいわゆる中山案を基にしております。
 このいわゆる中山案は、脳死を人の死であることを前提とするもので、平成九年四月二十四日に衆議院で可決され、参議院に送付されましたが、参議院においては、脳死に関する様々な意見があることに配慮し、現行法の第六条第二項において、脳死した者の身体を死体に含めて臓器の摘出ができるのは、臓器提供の意思に基づいて臓器が摘出されることとなる者が脳死に至ったと判定された場合のその身体に限定すること、第三項において、脳死の判定は、本人が脳死の判定に従う意思を書面により表示している場合に限ること、第四項において、脳死の判定は、摘出医及び移植医以外の二人以上の医師の判断の一致によって行われるものとすること、第五項及び第六項において、判定医は判定の証明書を作成し、臓器の摘出には、事前に証明書の交付を受けなければならないことなどの修正等を加えて、平成九年六月十七日に参議院本会議において修正議決され、衆議院に回付の後、同日、六月十七日の衆議院本会議において同意を経て成立し、同年十月十六日に施行されたものであります。
 また、現行法では、附則において、法施行後三年を目途として、その全般について検討が加えられ、必要な措置が講ぜられるべきとされておりますが、法改正に至らないまま、施行後十一年以上を経て今日を迎えているところであります。
 次に、両案の主な内容について御説明申し上げます。
 まず、衆議院から提出された臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案は、移植のための臓器摘出等に係る要件について、本人の生前の臓器の提供等の意思が不明の場合に、遺族等が書面により承諾した場合を加える等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、第一に、現在は、本人が書面により臓器の提供意思を表示している場合に行うことができるとされている移植のための臓器摘出の要件について、新たに、本人が臓器の提供を拒否している場合を除き、遺族が書面により承諾している場合を加えること、第二に、脳死した者の身体の定義から、「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言を削除すること、第三に、本人が臓器提供の意思を表示する場合において、親族に対し優先的に臓器を提供する意思を書面により表示することができること、第四に、国及び地方公共団体は、移植医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずるものとすること、第五に、政府は、虐待を受けた児童から臓器が提供されることのないよう、適切な方策を検討し、必要な措置を講ずるものとすること等であり、一部を除き、公布日の一年後から施行されることとなっております。
 次に、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案は、臓器の移植及びこれに使用されるための臓器の摘出が人間の尊厳の保持及び人権の保障に重大な影響を与える可能性があること等にかんがみ、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討並びに当該検討に係る臨時子ども脳死・臓器移植調査会の設置について定めるとともに、適正な移植医療の確保のための検討及び検証等について定めようとするもので、その主な内容は、第一に、脳死した子どもの身体からの移植術に使用されるための臓器の摘出その他子どもに係る臓器の移植に関する制度については、子どもに係る脳死の判定基準、臓器の提供に関する子どもの自己決定と親の関与、虐待を受けた子どもの身体からの臓器の摘出を防止するための有効な仕組み等に関し検討が加えられ、必要があると認められるときは所要の措置が講ぜられるものとすること、第二に、この検討を行うに当たっては、法律施行から一年間、内閣府に臨時子ども脳死・臓器移植調査会を設置し、子どもに係る脳死及び臓器の移植について優れた識見を有する学識経験者による専門的な調査審議を行うとともに、広く国民の意見が反映されるよう配慮されなければならないこと、第三に、死亡した者の身体からの組織の摘出及び移植に関する制度、生体からの臓器・組織の摘出及び移植に関する制度等について、法律施行後一年を目途に検討を加えること、第四に、国は、臓器を提供する意思表示の有効性、脳死判定の適正性等の調査、分析を通じて、移植医療の適正な実施を図るための検証を遅滞なく行い、その結果を個人情報の保護に留意しつつ公表すること等であります。
 次に、審査経過の概要について申し上げます。
 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案は、平成十八年三月三十一日に衆議院に提出され、今国会まで継続審議されてきたものであり、本年六月十八日に衆議院から送付されました。子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案は、六月二十三日に千葉景子君外八名より本院に提出されました。両法律案については、六月二十六日の本会議において趣旨説明が行われ、同日、厚生労働委員会に付託されました。
 委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、六月三十日に、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案について発議者衆議院議員山内康一君、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案について発議者岡崎トミ子君から趣旨説明を聴取した後、我が国における臓器移植の経緯、現状等について、政府参考人からの説明聴取及び質疑を行いました。
 また、脳死判定から臓器移植に至る医学的プロセス及び脳死下での臓器提供事例に係る検証会議における検証結果について、同検証会議座長の藤原参考人からの説明聴取及び質疑を行いました。
 次いで、七月二日、六日及び七日には、参考人として、日本弁護士連合会、日本医師会、日本救急医学会、臓器移植患者団体連絡会、日本移植学会、日本小児科学会、日本移植コーディネーター協議会、日本宗教連盟、全国腎臓病協議会、全国交通事故遺族の会、日本移植支援協会の各団体の関係者、また、作家・評論家の柳田参考人、自治医科大学の小林参考人、兵庫医科大学の谷澤参考人、杏林大学の島崎参考人、東京財団のぬで島参考人、上智大学の町野参考人、大阪大学の高原参考人、大阪府立大学の森岡参考人、東京大学の米本参考人の延べ二十名の様々な立場で臓器移植にかかわる方々を招いて意見を聴取し、質疑を行いました。
 参考人からは、脳死を人の死とすることの是非、救急医療の現状と体制整備の必要性、本人の意思が不明な場合に家族の承諾による臓器移植を認めることの妥当性、小児の長期脳死の実態及び脳死判定の困難さ、被虐待児に対する対応、ドナー家族等に対するケアの必要性、移植コーディネーターの在り方、海外における移植医療の動向、組織移植・生体移植の規制の必要性、親族への優先提供に関する問題点等に関して、様々な立場、観点からの大変貴重な御意見を伺うことができました。
 さらに、八日には、両案の審査に資するため、東京女子医科大学病院及び東邦大学医療センター大森病院を視察し、移植医療の現場に従事する方々から説明を受け、意見交換を行ってまいりました。
 これら専門家からいただいた御意見も踏まえまして、七月七日及び九日には、提出者及び政府に対して質疑を行いました。
 次に、両法律案に関する質疑の概要について申し上げます。
 まず、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案に関し、第六条第二項の脳死した者の身体の定義において、「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言を削除したのはなぜかとの質疑に対しては、脳死は人の死であることについておおむね社会的に受容されているとする脳死臨調の最終答申や近年のアンケート調査の結果を踏まえ、脳死は一般に人の死であるとの考え方を前提に、この考え方によりふさわしい表現となるよう文言を削除したとの答弁がありました。
 また、本人の意思が不明の場合に遺族の承諾による臓器提供を認めるのはなぜかとの質疑に対しては、臓器提供数が少ない状況で海外渡航移植や生体間移植が行われているという現状がある一方で、最近の世論調査の結果等から、家族の承諾で脳死判定、臓器移植ができるということについて国民の理解が広がっていると考えられるとの答弁がありました。
 そのほか、第六条第二項の脳死した者の身体の定義の変更が実際に臓器移植にかかわる家族に与える影響、子どもの意思表示と親の代諾について子どもの年齢に応じたきめ細やかな対応が図られる必要性、被虐待児からの臓器提供を防止する方策、長期脳死事例に対する認識、親族への優先提供を明記することの妥当性、臓器提供者の家族に対する心のケアの重要性、臓器移植に関して知的障害者等の権利が侵害されないようにすることの重要性、生体移植に関する法整備の必要性等について質疑が行われました。
 次に、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案に関し、臨時子ども脳死・臓器移植調査会について、一年という期間で結論を得られるのかとの質疑に対しては、法律案は子ども脳死臨調の設置期間を施行日から一年間とすることを明記しており、一年以内に結論が出されることとなる、並行して国会においてもしっかりと検討し、立法府として責任を持って結論を出していくことになるとの答弁がありました。
 また、この法律案には成人の臓器提供を増やす道筋がないのではないかとの質疑に対しては、臓器提供の増加のためには国民の理解が深まることが何よりも必要であり、子ども脳死臨調での国民的議論、移植医療の適正な実施を図るための検証等により国民の理解が深まることとなるとともに、臓器摘出・移植を行う医療機関について厚生労働省令で基準を定めることにより医療機関の体制が整備されるとの答弁がありました。
 そのほか、脳死を一律に人の死とすることの問題性、意思表示ができない子どもたちに臓器提供を求めることについての見解、現行の移植医療、脳死判定基準に対する評価、児童の脳死判定基準を厳格化する必要性、尊厳死に対する見解、日本人の死生観やみとりに対する受け止め方等について質疑が行われました。
 このほか、政府に対しては、国民の臓器移植に関する普及啓発の取組状況、イスタンブール宣言以降の諸外国における渡航移植希望者への対応、臓器移植に係る費用の保険適用状況、移植コーディネーター等の現状等について質疑が行われました。
 さらに、七月九日、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案に対して、谷博之委員外五名より修正案が提出されました。
 その主な内容は、第一に、第六条第二項の規定から「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言を削除する改正を行わないこと、第二に、被虐待児が死亡した場合に当該児童から臓器が提供されないようにするための検討規定は、公布の日から施行すること、第三に、児童の脳死判定については、児童の身体の特性に関する医学的知見を十分に踏まえること、第四に、法律の運用に当たって、脳死判定・臓器摘出に関する児童等の思いを尊重する家族の心情などが十分に配慮されるようにすること、第五に、臓器の摘出が遺族に及ぼす心理的影響の緩和のための支援について検討すること、第六に、脳死の判定、臓器の摘出の適正性等について事後的な検証等を行うこと、第七に、法施行三年後を目途に、新法の全般について検討を加えること等であります。
 修正案に対し、修正案によって改正案の何が変わるのかとの質疑に対しては、臓器移植に関する修正案の考え方の基本は改正案と共通しているが、脳死を一般に人の死とすることについては、国民的コンセンサスが得られていない状況の下で、文言の削除により、誤解が生じないようにするものであるとの答弁がありました。
 修正案においても本人の意思表示がない場合に家族の承諾のみで臓器を摘出することを認めているが、その理由は何かとの質疑に対しては、最近の世論調査によれば、本人の意思が不明な場合に家族の承諾で臓器提供を行うことについては六二%が賛成していること、子どもの渡航移植に多くの支援金が集まっていることから、国民的合意が形成されつつあると考えているとの答弁がありました。
 そのほか、対案ではなく修正案としたことについての見解、第六条第二項の文言を削除しないことがドナーの家族に及ぼす影響、被虐待児からの臓器提供を防ぐ具体的方策を施行日までに確立する必要性、小児の脳死判定基準の検討の見通し等について質疑が行われ、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案、同修正案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案に対する質疑を終局いたしました。
 以上が、厚生労働委員会における昨日までの審査の経過、審議の概要でございます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
     ─────・─────
#20
○議長(江田五月君) 小川勝也君外二名から、賛成者を得て、
 中間報告があった臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案は、議院の会議において直ちに審議することの動議が提出されました。
 よって、本動議を議題といたします。
 これより本動議の採決をいたします。
 本動議の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#21
○議長(江田五月君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#22
○議長(江田五月君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百十一  
  賛成            百八十八  
  反対             二十三  
 よって、本動議は可決されました。
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
#23
○議長(江田五月君) 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)
 子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案(千葉景子君外八名発議)
 以上両案を一括して議題といたします。
    ─────────────
   〔議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#24
○議長(江田五月君) 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案に対し、南野知惠子君から、成規の賛成者を得て、修正案が提出されております。
 案文を配付いたしますので、しばらくお待ちください。
 この際、修正案の趣旨説明を求めます。南野知惠子君。
    ─────────────
   〔議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔南野知惠子君登壇、拍手〕
#25
○南野知惠子君 私は、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。
 その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
 これより、その趣旨について御説明いたします。
 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案では、第六条第二項の脳死した者の身体の定義について、「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言を削除することとしております。
 この文言は、平成九年の法制定時に参議院において、脳死は人の死かについて国民の議論が分かれる中で、脳死を一律に人の死とせず、臓器提供を行う場合についてのみ脳死を人の死とするという結論を導き出し、修正議決に至った経緯がございます。その文言が削除されることで、一般的に脳死は人の死とされるのではないかとの懸念が国民の間に広がっております。
 ある世論調査においては、半数以上の国民が、臓器提供の場合に限り脳死を人の死とするという現在の枠組みを肯定しております。委員会審査においても、医療や法曹の関係者や有識者の方々から、この問題については現行法を踏襲すべきとの意見が多く述べられております。
 日本人の死生観、人の生や死に対する様々な価値観や考え方は尊重される必要があります。国民的合意がいまだ形成されていない脳死は人の死を前提として改正を行うことは、適切ではありません。
 また、改正案では、被虐待児からの臓器摘出を防止するための検討は、公布から一年後に施行することとなっております。しかし、被虐待児については、改正法施行までの間に検討を行うことが必要です。同時に、児童の脳死判定については、成人とは異なる児童の特性に十分配慮した適正な脳死判定基準を定めることが不可欠です。
 さらに、臓器の提供に当たっては、ドナーをみとる家族や遺族への視点も重要であります。愛する者を失った悲しみに加え、臓器提供という重い決断を迫られる家族の心情は察するに余りあります。脳死という事実を受容し、納得するためには時間を要します。我が子の思いを尊重したいとの心情や故人に寄り添う時間を求める心情等について、十分配慮することが必要であります。また、遺族の心の葛藤はその後の生活においても続く場合があり、遺族の苦悩を緩和するための支援について検討を行い、対策を講ずることが必要です。
 また、脳死下での移植医療についての国民的理解を進めるため、脳死判定及び臓器摘出の状況に関し検証等を遅滞なく行うことが移植医療に関する透明性を確保する観点からも重要であります。
 加えて、臓器移植の実施状況、医学、医療技術の進歩、国民意識の推移などを踏まえ、施行後三年を目途として法律の全般的見直しを行う必要があります。
 このような認識の下、本修正案を提出するものであります。
 以下、提出する修正案の骨子を御説明いたします。
 第一に、原案では、脳死した者の身体について定める第六条第二項の規定から、「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言を削除することとしておりますが、このような改正を行わず、現行どおりとすることとしております。
 第二に、検討等に関する修正であります。
 まず、虐待を受けた児童が死亡した場合に当該児童から臓器が提供されることのないようにするための検討に関する規定につきまして、公布の日から施行することとしております。
 また、検討等に関し、次の五項目を追加しております。
 一項目めとして、臓器の摘出に係る脳死の判定についての厚生労働省令は、児童についての臓器の摘出に係る脳死の判定に関しては、児童の身体の特性に関する医学的知見を十分に踏まえて定められるものとしております。
 二項目めとして、政府は、新法の運用に当たっては、臓器の摘出に係る脳死の判定及び臓器の摘出に関する当該者、特に当該児童の思いをその者の家族又は遺族が尊重する等のこれらに関するその者の家族又は遺族の心情が十分に配慮されるとともに、遺族が臓器が摘出されることとなる者に寄り添う時間を求める等の遺族の心情が十分に配慮されるようにするものとしております。
 三項目めとして、政府は、臓器の摘出が遺族に心理的影響を及ぼした場合においてこれが緩和されるよう、当該遺族に対する適切な支援について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしております。
 四項目めとして、政府は、当分の間、新法による脳死の判定の状況及び新法による臓器の摘出の状況に関し検証を行い、その結果を遺族の同意を得た上で公表するものとしております。
 五項目めといたしまして、新法による臓器の移植については、この法律の施行後三年を目途として、その全般について検討が加えられるべきものとしております。
 なお、一項目めから三項目めまでは公布の日から、四項目め及び五項目めは公布の日から起算して一年を経過した日から施行することとしております。
 以上が修正案の趣旨説明であります。
 何とぞ議員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
#26
○議長(江田五月君) 子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案は、予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。舛添厚生労働大臣。
   〔国務大臣舛添要一君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(舛添要一君) 参議院議員千葉景子君外八名提出の子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案につきましては、政府としては、意見を述べることは差し控えさせていただきます。(拍手)
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#28
○議長(江田五月君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。石井みどり君。
   〔石井みどり君登壇、拍手〕
#29
○石井みどり君 自由民主党の石井みどりでございます。
 本日は、党派を超えて、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案、いわゆるA案の賛成討論をさせていただきます。
 日本で初の脳死判定をされたのが十年前、一九九九年二月二十八日、そして三月一日朝までに心臓、肝臓、腎臓の移植手術がすべて終了しました。この十年間、臓器移植は八十一件が実施され、多くの命が救われるという実績を上げることができました。
 今回、本案においては、臓器移植法における本人の生前の意思を尊重する理念を生かしつつ、臓器の提供が認められる要件について、新たに、本人の意思が不明の場合にも、年齢を問わず家族が書面により臓器の提供を承諾した場合を加え、諸外国と同様に臓器移植が認められる要件をそろえようとするものであります。
 昨年五月に開かれた国際移植学会では、イスタンブール宣言として、臓器売買、渡航移植の原則禁止を決定しました。この宣言では、自国民の移植は自国内で行うべきとし、移植ツーリズムを防止すべく、自国内での臓器提供を推進するよう各国に要請しています。
 現行法では、本人の書面による意思表示が臓器移植に必要であるため、十二年にわたり意思表示カードの普及に努めてきましたが、内閣府の世論調査で示されるとおり、提供意思を記入したカードを常時所持していると答えた人は数%にとどまっており、臓器提供をしたい意思が反映されていないのが現状であります。
 他方、一日千秋の思いで臓器の提供を待たれている多くの患者さんがおられます。これらの患者さんは、臓器を移植する機会があれば普通の生活が送れるほどの回復が可能となります。にもかかわらず、我が国の臓器移植に係る要件によって、諸外国のような臓器の提供を受ける機会が奪われ、命を失う患者さんが多く存在しているのは真に国会における不作為の結果と言わざるを得ません。
 脳死の議論の際、小児には長期脳死という問題が度々指摘をされています。脳死状態であっても、髪の毛が伸びる、つめが伸びる、歯が生え替わる、そして成長を続けていくと言われています。
 テレビ等で報道されている小児の長期脳死事例は、いわゆる臨床的脳死と診断されているにすぎず、臓器移植法において求められる厳格な法的脳死判定にかかわる検査、すなわち無呼吸テストや時間を置いての二回の検査が実施されているわけではありません。この意味においては、このような状態にあるものは法的に死とされているわけではありません。小児の脳死判定に慎重さが必要であるということは当然でありますが、単なる臨床的脳死と法的脳死判定により脳死とされていることは区別して議論する必要があるということをまず述べさせていただきます。
 本案ですが、脳死を人の死とするということが社会的におおむね受容されているということを六条二項の文言を削除する根拠としていますが、この説明だけでは納得されない方々がいらっしゃることは承知しております。しかし、大多数の方々が脳死とは何かを実際に理解しておられるか、いま一度確認をさせていただきたいと存じます。
 現在、人はどのようにして、どのような場面で脳死に直面し、認識し、理解するのかといえば、臓器移植という医療行為を通じてではないでしょうか。なぜならば、法律上、日本における脳死は臓器移植の場面でしか存在し得ないからです。
 一般的に、脳死判定には、頭部外傷などの重症脳障害の患者の予後不良を診断するための脳波計などを用いて行う臨床的脳死判定と臓器移植を行う際のみに行われる法的脳死判定がありますが、これらを明確に区別する必要があります。臓器提供に係る法的脳死判定では、脳幹反射の消失や無呼吸テストなどの法的脳死判定基準に従い、主治医とは異なる二名の専門医が一度判定を行い、六時間後に二度目の法的脳死判定を下した場合のみを脳死を人の死としています。すなわち、脳死が人の死であるのは、本案の場合も現行法と同じく、臓器移植に関する場合だけに適用されるものであり、一般の医療現場で一律に脳死を人の死にするものではありません。
 脳死臨調の最終答申において、脳死は人の死であるということについておおむね社会的に受容されていると報告されています。また、近年のアンケート調査においても、新聞社等によって多少数字は異なりますが、多くの方が脳死を人の死と認めてよいとする結果が出てきているのは、臓器移植そのものの認知度が高くなってきたことを表していると思われます。
 E案提出者の答弁でも明らかになりましたが、現行法下での臓器移植の必要性、妥当性については、ほぼ社会的に受け入れられているというのが現状です。
 十二年前の議論では、その時点では、日本国内で脳死判定ゼロ件、臓器移植もゼロ件と、脳死も臓器移植も国民の間で話題とされる機会は少なく、国民に脳死を理解してもらうことは、臓器移植がなかった以上、事実上困難な状況でありました。
 そのために、十二年前には、六条二項に「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。」の文言を入れざるを得なかったわけです。念のための確認にすぎなかったのです。
 しかし、この法律はあくまでも臓器の移植に関する法律であり、臓器移植の場面に限定されているわけであり、「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。」の文言を入れることに本質的な理由はありません。
 そして、この十年間に八十一例の脳死下移植が行われ、おおむね臓器移植は社会的に受け入れられてきたことを考えると、本質的な理由のない六条二項の文言は削除されて何ら問題がないばかりか、むしろ、臓器移植について国民の認知度、理解度が上がってきた現状をかんがみると六条二項の該当箇所を含まないA案が良いと考えます。
 冒頭申し上げました高知日赤病院で日本で初の脳死判定が行われたとき、極めて個人的なことになりますが、私も同じくも膜下出血で広島市民病院で脳動脈瘤遮断手術をして死のふちから生還したばかりでありました。私がドナーになっていたかもしれません。
 死に対する考え方は、多くの方の御意見を聴いても、死生観、倫理観、人生観、価値観、宗教観もあるかも分かりません、様々あるところでありますが、私が望みますのは、やはりドナーとして、もし御自分の御家族あるいはお子さんであっても、命をつなごうという意思がある方に関しては、やはり救える命を救っていただきたい、そのことは社会がより成長していく、成熟をしていく社会であろうかと思っています。一日も早い命のリレーがつながれること、これは子供だけでなく大人の方々にもそのことができることを望みます。そのためには、やはりどうしても救急医療体制、特に小児救急医療体制の整備が前提になるだろうと思っています。
 そして同時に、やはり最後の医療、終末期医療、これは特に交通事故の事故死の御家族の方がおっしゃいました、死を受容する時間、みとりの医療の重要さを随分と語られました。これはやはり、医療現場の方々だけでなく、国を挙げてその体制をつくっていく必要があろうかと思っております。
 この参議院で賢明なる議員の皆様に、いち早く命のリレーがつながれることを希望し、本案に御理解賜り、何とぞ御賛同いただきますことを心より、心よりお願い申し上げ、私からの賛成討論とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
#30
○議長(江田五月君) 津田弥太郎君。
   〔津田弥太郎君登壇、拍手〕
#31
○津田弥太郎君 参議院議員の津田弥太郎です。
 私は、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案、いわゆる南野案に対し、賛成の立場から応援の討論をさせていただきます。
 私は、日ごろ、党議拘束という枠組みの中で、自らが所属をする民主党の決定に従い、各議案に対する賛否の票を投じてまいりました。結果として、所属政党の賛否の決定過程に自ら直接にかかわらない議案も少なからず生じております。その際は、党内の同僚議員を信頼し、自らの判断をゆだねる形としております。しかし、今回の臓器移植法案に関しては、そうした党議拘束が外され、一人の国会議員として、一人の人間として、かけがえのない命に向き合い、厳粛な判断が求められることとなりました。
 御案内のとおり、私は医者でもなく看護師でもありません。今日まで、ドナーの親の立場にも、レシピエントの親の立場にもなることなく日々を重ねてまいりました。そのような自分が果たして本会議壇上で討論を行う資格があるのだろうか。私は非常に悩みました。しかし、今回の修正案が立案されなければ臓器移植法案への対応そのものにも苦慮したであろう私だからこそ、思いを共有できる方々に対し何かを伝えることができるのではないかと考えたのであります。
 私は、迷いながら、苦しみながら、改正案を修正議決することが参議院として最善の道ではないかと確信するに至りました。
 その第一の理由は、本修正案が脳死は一律に人の死とする考え方には立たない点であります。改正案提出者も、脳死が人の死であるのは臓器移植に関する場合だけに適用されるものであり、一般の医療現場で一律に脳死を人の死にするものではないと述べております。
 しかし、参考人からは、臓器移植に関する場合にのみ脳死が人の死であることを明示をしていた第六条第二項をわざわざ削除したことで、脳死を広く死と認め、今後、死の概念を定めるに当たっての有力な根拠となることが指摘をされました。同時に、改正案の成立後は、脳死が人の死であることを前提に医療現場も家族も決断を迫られるのではないか、そのような指摘もなされたところであります。
 何より、そうした指摘をまつまでもなく、私たちに届く脳死を人の死にしないでほしいという多くの方々の声が、そうした不安が現実のものであることを物語っているのです。このことは、決して見過ごすことのできない大きな問題と考えます。
 私は、以前から、子供の心臓移植を行うために日本から海外に出かけること自体に強い疑念を有してまいりました。もちろん、心臓移植以外に助かるすべのない子供を持つ家族は、アメリカであれどこであれ、必死でドナーを探されます。
 しかし、私は、日本の子供の心臓摘出は駄目で、アメリカの子供ならばよいという考えにはどうしても納得できません。日本の子供に駄目なことは他国の子供にも駄目なものであり、一方で、他国の子供からは認めていることは日本の子供からも認めるべきであります。筋を通すこと、そのことが何よりも大切ではないでしょうか。
 世界保健機関や諸外国の動向を踏まえると、海外へ渡航し臓器提供を受ける道を閉ざされつつあります。医学の進歩を考えたとき、やがて移植医療を超えた治療法が必ず実現すると確信しておりますが、それまでの間、救える命は救うべきと私は考えます。
 この点、衆議院は現状を打開するための大きな一歩を踏み出しました。そのことについて一定の評価をしたいと考えます。しかし、脳死は一律に人の死とする考え方が国民的な合意とは言い難い状況も事実であります。
 現在、子供の臓器移植を阻んでいるのは、言うまでもなく、十五歳未満の臓器移植を禁じたガイドラインであり、その背景には現行法の規定があります。
 本修正案は、年齢の壁の撤廃を強く求め、一日千秋の思いで子供の臓器移植を望んでいる多くの方々の切なる声にこたえ、同時に、脳死は人の死とされることで必要な医療が提供されなくなってしまうのではないかと打ち震えている多くの方々にもこたえるものであります。言わば、それぞれの立場の方々に思いを致し、国民の願いを最も忠実に形にしたのが本修正案だと確信をしております。
 修正案に賛成する第二の理由は、本修正案では、児童に対する配慮が十分になされている点であります。
 まず、被虐待児の確認と対応方策の検討について、改正案では公布後一年たってから開始されることになっています。しかし、児童の臓器提供が可能となってから検討を始めるのでは遅過ぎます。防止策の検討を直ちに開始することが児童のために不可欠であります。
 また、児童の脳死判定について、長期脳死児などの存在を踏まえ、成人とは異なる特性に十分配慮した基準を定めることが強く求められております。
 児童の脳死判定の在り方について、今回提出されているいわゆる子どもの脳死臨調設置法案においても、子供に係る脳死の判定基準などについて検討することとされておりますが、本修正案はこれらの懸念にも十分こたえ得る内容であります。
 賛成の第三の理由は、本修正案は、臓器提供の際の家族の心情や遺族に対する精神的ケア、さらに、その後の家族への支援について十分に配慮している点であります。
 法律の運用に当たっては、医療的側面だけではなく、突然の事態に悲嘆する遺族、亡くなった我が子に寄り添い、みとりたいという遺族の心情を受け止め、これを支えるグリーフケアの視点が求められます。
 さらに、遺族の悩みや心の葛藤はこれに尽きるものではありません。年月を経てもトラウマやPTSDに苦しむ遺族もおられることから、こうした遺族への支援策を拡充する必要があります。
 本修正案は、改正案では法文上言及されなかったこれらの点について明確にしようというものであります。
 賛成の第四の理由は、本修正案は、臓器移植の適正な実施、透明性の確保のための検証を行うとともに、法律の施行後三年を目途とした全般的な検討を行っている点であります。
 脳死下での移植医療についての国民的理解を進めるためには、新法による脳死判定の状況や臓器の摘出状況に関する検証が求められます。さらに、移植医療に関する透明性を確保する観点から、個人のプライバシーに配慮した上で検証結果を公表することが望まれます。また、何よりも、普遍的な正解、正しい答え、これが存在しない命題であるからこそ、提出者が述べた様々な観点を踏まえた見直し規定を設けることが不可欠であります。
 以上が、私がこれらの修正を行った上で改正案を成立させる必要があると考える理由であります。
 私は、自らが国会議員である以上に、自らが参議院議員であることに誇りを持っております。脳死は臓器移植の場合に限ると明言している現行法は、法制定時にここ参議院における修正で設けられたものにほかなりません。国民の議論が分かれる中で導き出した一つの結論であり、良識の府である参議院の英知の結集であると言えるのではないでしょうか。
 参考人として来られた方が、このような思いをつづっています。脳死と心停止のいずれの段階で死を受け入れるのかということに関し、一人一人違う多様な死生観を受容すること自体を日本の死の文化として大切にしたいと。
 私は、この死の文化について、参議院がつくり出した文化などという不遜な物言いはいたしません。しかし、国民の声を参議院が形にした文化ではないでしょうか。そのことは事実であり、絶やすことなく、自信を持って、新たな国民的合意が形成されるまでつなげていきたいと願っているのであります。
 臓器移植法成立から十二年を経た今日、再び良識の府たる参議院が英知を結集するときであります。国民の負託にこたえ、現状をより良いものに改善するため、慎重でありながら、しかし着実な一歩を踏み出していただきたい。与党もなく野党もなく、参議院議員であること、その一点を何よりも重んじ、皆様の幅広い御理解、御協力をお願い申し上げ、私の応援討論を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
#32
○議長(江田五月君) 円より子君。
   〔円より子君登壇、拍手〕
#33
○円より子君 私は、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案、いわゆるE案、子どもの脳死臨調設置法案に対し、賛成の立場から討論いたします。
 以下、賛成の理由を申し上げます。
 同法案に賛成する第一の理由は、本人の臓器提供に向けた自己決定がある場合のみ脳死を人の死とする現行法の重大な枠組みを維持し、脳死は一律に人の死とする考え方には立たない点であります。
 衆議院で可決されたいわゆるA案に対しては、国民の間に、脳死が一律に人の死として扱われ、家族が望む医療措置が受けられなくなるのではないかという懸念が広がっております。脳死は人の死を前提とした法改正がなされることにより、医療の現場等にも波及的に混乱を招きかねず、さらには終末期の医療におけるみとりの在り方などに深刻な影響を及ぼす可能性があります。
 しかも、移植の先進国であるアメリカにおいてさえも、脳死が人の死であるという大前提が揺らいでおり、昨年十二月には大統領生命倫理評議会が、死の決定をめぐる論争という報告書を大統領に提出しております。また、脳死から心停止に至る期間についても、昭和六十年に現行の脳死判定基準をまとめられた竹内一夫杏林大学名誉教授御自身が、平成十六年の著書、「改訂新版 脳死とは何か」の中で、基準制定当時は心停止に至るまで十五日以上の例がわずかであったのに対し、最近は三十日以上の長期脳死例が明らかに多いという事実を指摘されています。
 今日、国際的に脳死そのものの概念に揺らぎが生じている中、国民に脳死の実態について正確な情報を与えないままに、あたかも脳死は人の死であることを肯定するかのごとき改正を行うことには、強い懸念を抱かざるを得ません。
 同案に賛成する第二の理由は、本人の自己決定を尊重するという現行法の重大な枠組みを維持し、本人による意思表示がある場合に限り法的脳死判定、臓器提供を認めるという点です。
 自らの意思で脳死が死であることを受け入れ臓器を提供するということは、究極の自己決定であり、その尊い意思を尊重するという点においてE案は優れた法制であります。
 A案もA案修正案でも、本人の意思が不明な場合に家族の承諾により臓器提供を行うことを認める一方で、拒否権が保証されていると繰り返し答弁されておりましたが、具体的に拒否権を担保する具体的な仕組みは示されることがありませんでした。その点、大きな不安が残ります。そもそも家族の範囲についても答弁はあいまいであります。A案もA案修正案も、本人の拒否を担保する仕組みを確保していない一方で、親族の優先規定を置いております。臓器提供を受けたいなどの利害関係のある家族が故意に本人の拒否の意思を隠ぺいする懸念もぬぐえず、運用に不安が残ります。この点、E案では、本人の積極的な意思表示がない限りは、意に反して脳死判定、臓器提供が行われる危惧はないという現行法の体制を堅持しております。
 賛成する第三の理由は、実は最大の理由でありますが、特に重要な争点となっております子供の脳死判定基準、被虐待児からの臓器提供を避ける方法と、これはA案でもA案修正案でも触れられていないのですが、子供の自己決定権などをどうすべきか、また親の関与が認められる範囲はどうなるのか、こういったことについてこのE案は、期間を区切り、責任を持って一定の方向性を出すことを明言している点であります。
 本法律案は、五十二人もの同僚議員の賛同により、実効性が担保される予算関連法案として提出されました。この法律が成立すれば、三か月後には、国会の同意により選ばれた十五人の各界の有識者による臨時子ども脳死・臓器移植調査会が設置され、移植先進国及びドナー不足に悩む国における現地調査を実施し、国民の声を反映するためのアンケートや地方公聴会を行うなど、精力的な活動を開始いたします。そして、一年後には結論が提出されることが法律の明文と予算をもって確実に保証されております。
 特筆すべきは、議論のある子供の脳死・臓器等移植についての症例研究について、調査の経費が一千六百万円盛り込まれている点です。現在、臨床的脳死判断でも参考とされている小児脳死判定基準は、厚生労働省の委託研究によるものですが、実質的にわずか十一の症例に基づく基準であり、日本小児科学会が二〇〇七年に実施したアンケートでは、そもそも新生児を含む小児の脳死診断は医学的に可能と思うかとの問いに対して、はいと答えた小児専門医はわずか三一・八%にすぎず、約半数は分からないと答え、不可能であると答えた方も一五・八%との結果となっております。少なくとも外部の独立した中立的な研究機関に委託することが必要であり、E案は外部に委託できるよう予算を取って確実なものとしております。
 さらに、発議者は、国会でも並行して検討を行うと答弁しております。一年後には責任ある立法府の結論が出されるものと確信いたします。
 賛成する第四の理由は、大人の移植についても生体間移植を含む現行法の問題点を検証、検討するとしている点であります。
 これまでの委員会における質疑でも明らかになったように、移植医療は、臓器を提供するドナー、提供に協力する医療機関により支えられているものです。国民が臓器提供について正確な知識を得て理解を深めること、医療機関への人的、物的支援を充実させることこそが現在の運用において最も欠落していることであり、この点を無視して法改正をしたところで臓器提供が増えることはあり得ないと考えます。
 この点、本案では、指定病院の基準の見直しも視野に入れて省令事項とするなど、現行の自己決定を尊重する法制の下で可能な方策について明文で規定しております。
 また、健康な身体にメスを入れることになる生体間移植については、特にドナーの人権を侵害しないように諸外国では法律に規定され、WHOでも規制がより強化される方向にあります。我が国では、臓器の多くを生体間移植に依存しているにもかかわらず、厚生労働省のガイドラインレベルの規制が置かれているのみであり、違反した場合の罰則もなく、実効性が担保されておりません。また、ドナーのその後の健康管理など、国際的に問題となっている点についても対応がなされておりません。
 なお、A案発議者においても、生体移植への依存に問題があるとの出発点に立っているにもかかわらず、A案でもA案修正案でも何らこの点について規定を置いておりません。これらの問題に対応しているのはE案のみであります。
 臓器移植を待ち望みつつ長年にわたる闘病生活を続けておられる方々やお亡くなりになる患者さんが多いことには大変胸が痛みます。私も何とか手を差し伸べたい、この国会で一つの結論を出すことが私どもの責務であるということは折に触れ痛感しております。しかしながら、厚生労働委員会では、臓器不足、臓器の自給自足、あるいは臓器は社会資源といった発言がなされ、臓器が人格を離れた、あたかも一つの物質として扱われていたことに私はいささか違和感がございました。特に、不幸にして脳死状態となられた方の御家族にとっては耐え難いのではないでしょうか。
 脳死臨調を経て、その後の脳死下での臓器提供検証委員会にも設立以来献身的に携わってこられた柳田邦男参考人もおっしゃいましたように、五百個の臓器の一つ一つに人生の悲しみ、人々の悲しみ、家族の悲しみ、つらさというものがこもっているという視点がいつの間にか欠けてしまっているのではないでしょうか。
 患者さんに目を向けることはもちろん大切でございますが、一つの人格を持っていたドナーの存在、そしてそのようなドナーの尊い意思を尊重したドナーの家族の存在が忘れられていたことは、今回の参議院厚生労働委員会の審議を経て改めて気付かされました。
 特に、みとりの過程において、煩雑な臓器提供手続に追われ、その後も、決断が正しかったのかと悩み、いわれない中傷を受けたり、PTSDに苦しまれるという御家族の苦衷は、法改正にかかわらずグリーフケアとして取り入れていくべき非常に重要な視点であるかと思います。
 さて、現行法制下ではなぜ臓器提供が進まなかったのでしょうか。医療機関への支援体制という問題もありますが、やはり脳死や臓器提供に対する一般の理解が進んでいなかったからではないでしょうか。進んでドナーになろうという意思を持つ方が増えない限りは、いかに法制を変えようとも、家族も提供を拒否する可能性が高く、結局提供は増えないのではないでしょうか。
 この法案をめぐっては、国民的関心が高まる中、国会内外で様々な運動、働きかけがございました。衆議院の採決時には、WHOが推奨する基準との誤解を招きかねないチラシが配付され、参議院の本会議においては、摘出手術をする際に筋弛緩剤などを投与することがありますが、生きている方の痛みを取るための麻酔とは異なりますとの説明がありましたが、事実に反するとの指摘に対して、委員会では答弁者から修正がございました。
 さらに、長期脳死は法的脳死判定を経ていない等の発言が何度も繰り返されましたが、実際には、無呼吸テストを含め法的脳死判定と同等の内容の脳死判定基準をクリアした状態でも、三十日以上心停止しないいわゆる長期脳死と呼ばれる例があることが多くの学会誌で公表されており、発言者御自身がその存在をお認めになりました。
 そして、いま一度、議員の皆様にお考えいただきたいのです。脳死に関する議論、新たな科学的知見などについて正確な情報を提供しないまま、国民に誤った理解の下に提供を迫り、迷っているうちに臓器提供に導かれてしまうという状態は、本当に臓器移植を待ち望む患者さんたちの意思にかなうことなのでしょうか。
 自分の生を長らえさせたいという思いと、他人の死を待たざるを得ないという思いの葛藤に揺れ動く患者さんは、ドナーがすべてを正確に知った上で、自己決定により善意で提供してくれる臓器であるからこそ喜んで受け取れるのではないでしょうか。ドナーに感謝してその後の新たな人生への一歩を踏み出せるのではないでしょうか。
 これらの点について、現行の枠組みの中で積極的に問題点を検討、検証し、一年間と期限を区切って責任を持った解決策を提示しているE案こそが、一見迂遠なようでありながら、結局は社会すべてに受け入れられる案だと確信を持って、私の賛成討論を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
    ─────────────
#34
○議長(江田五月君) 残余の議事は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○議長(江田五月君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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