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1947/04/13 第2回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第002回国会 本会議 第41号
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1947/04/13 第2回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第002回国会 本会議 第41号

#1
第002回国会 本会議 第41号
昭和二十三年四月十三日(火曜日)
    午後二時二十五分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第三十八号
  昭和二十三年四月十三日(火曜日)
    午後一時開議
 第一 行政代執行法案(内閣提出)
 第二 行政事件訴訟特例法案(内閣提出)
 第三 石炭廳設置法案(内閣提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(松岡駒吉君) この際、新たに議席につかれました議員を紹介いたします。
 第九番、廣島懸第三区選出平川篤雄君。
    〔平川篤雄君起立〕
    〔拍手〕
#4
○議長(松岡駒吉君) 第四十九番、廣島懸第三区選出高橋禎一君。
    〔高橋禎一君起立〕
    〔拍手〕
     ――――◇―――――
 浜松市の治安問題に関する緊急質問
    〔川合彰武君外一名提出〕
#5
○森三樹二君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、浜松市の治安問題に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
#6
○議長(松岡駒吉君) 森君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 浜松市の治安問題に関する緊急質問を許可いたします。川合彰武君。
    〔川合彰武君登壇〕
#8
○川合彰武君 一世の視聴を集めた極悪犯罪の帝銀事件が迷宮に入り、まだ未解決の間に、列車強盗が各地頻発し、わけて最近東海道線にも列車強盗が起つておるというように、われわれは治安問題に重大なる関心を拂わざるを得ないときに、たまさか静岡懸浜松市におきまして、前後三日間を通じ、さながら市街戰同様の暴力國の腕力ざたが展開されたのであります。さきに芦田総理大臣は、施政演説におきまして、国内治安が漸次改善しつつあることを強調されたのでありますが、今回の浜松事件は、国内の治安事件としましては、実にわれわれは重視せざるを得ない大きな問題であります。まず私は、事件の経過を述べつつ、かかる問題に対する政府当局の所信を伺いたいと思う次第であります。
 すなわち本月の四日、浜松地方におけるところの旧小野組と称する一つの封建的な組織、この旧封建的組織の頭領と目される小野晴義君、静岡懸の懸会議員であり、同時にまた懸議会議員であり、同時にまた懸議会の警察委員長をされておるその小野晴義君の宅に、午後四時ごろ十数名の暴漢が闖入した。それから間もなく、その日の七時ごろに、朝鮮人によつて経営されておる國際マーケツトに対しまして、旧小野組の一團が襲撃し、そして戸障子を破壊し、あまつさえピストルが乱射されて、若干の死傷者を出した。ところが、またその翌る日も同じようなことが各所に繰返されまして、浜松市は、そのために中央部は燈火管制を布いた。そして市民はまつたく通行を禁止して、戰々競々として不安な生活を送つた。その翌る日の六日にも若干の事件が繰返されたのでありますが、ときたまたま岐阜のアメリカ第八軍の二十四連隊よりは、ジープ十台並びに特別列車によりまして百七十五名のアメリカ軍隊の出動を見、さらに第二十四連隊長は飛行機によつて浜松市に急遽來飛されたというような事件であります。
 これに対しまして、当初浜松市の警察署は全力をあげてこの時件の解決に当つたのであります。二百名近くの人員ではとうてい解決が困難なために、公安委員の勧告に基きまして、そうして静岡縣下の國家地方警察署並びに自治体警察の協力を仰いで、どうにか一應事件は落着を見ておるのであります。私は昨日まで浜松におつたのでありますが、その情報によりまするならば、依然として事件は未解決のまま、表面は平常化の状態にあるけれども、実際は相当に底流にまだ動いておるというような情報であります。
 私は、日本人並びに朝鮮人の民族的な対立によつて、かかる不祥事が起きたとは思いません。しかしながら、旧小野組という一つの、いわゆる暴力團的な機構が存在し、しかも、その有力な分子の号令一下、遠くは三重縣あるいはまた愛知縣から應援者が來るというようなことは、すなわちまだ旧封建的な組織あるいはまた集團的な組織が存在しておるということである。政府は、かかることに対しまして、從來より徹底的な取締りということに対しまして非常な努力を拂われておるけれども、依然としてまだこういうような組織が現存しておるということはいかがなものであろうか。かかる問題に対して、政府はどういうような方針を持つて今後臨むかどういかという点を、まず第一点としてお聽きしたいのであります。
 第二点といたしましては、凶器の取締りということに対しては、特に連合軍の関係もありますので、政府におかれましても、この取締りは嚴重なる方針をもつて臨まれておるとは思うのでありまするが、とにかく今回の事件によりまして、ピストルによる死傷者、あるいはまた猟銃による死傷者が数多く出ておる。すなわち死者が三名、重傷者が十一名、軽傷者が多数出ておるというような事実、しかも警察の押収した物件の中には、ピストルが数挺、猟銃が数挺、あるいは日本刀がたくさんあつたというようなことから見ますならば、凶器の取締りにまだ不十分な点があるのではないかという点に関して、今後政府は凶器の取締りについてどういうような方針をもつて臨まれるか。
 殊に私の強調いたしたい点は、自治体警察になつてからというものは、ともすれば地方の顔役、あるいはまた地方の有力者によつて自治体警察の運用が阻まれるのではないかというような感じが強いのであります。今回の浜松事件のごときは、まさにその現われではないかということを私は強調せざるを得ないのであります。從つて新警察法に基いて自治の精神による地方警察がその運用を全うすることによつてその精神が生かせるのでありまするが、それが逆に、地方の有力な者によつて地方警察が歪曲された運用を見ておるのではないかという点をおそれるのであります。これに関しまして、当局の所信を伺いたいと思うのであります。
 それと同時に、これは新警察制度の今後における運用あるいは改善として考えねばならぬ点でありまするが、こういうような非常事態の発生した場合に、地方警察は、地方警察單独の力をもつてはこれが事件の解決ができないということで、他の方面の協力を仰がねばならぬ。その場合におきまして、公安委員会を開いて、公安委員会の勧告に基いて、他の地方警察あるいはまた國家地方警察の協力を仰がねばならぬということは、機宜の処置をとる場合においてはなはだ問題となるべき点があるのではないかと思うのであります。殊に現在の制度のもとにおいては、地方警察が協力を仰ぐ場合におきまして、國家地方警察に協力を仰ぎ得るけれども、地方警察に対して地方警察が協力を仰ぎ得ないというようなことが、警察法の第五十四條、あるいは第五十五條に明記されておるのであります。從つて私は、地方警察が他の地方警察に協力を仰ぎ得るようなことの考え方はないかどうかという点をも、この機会に質問したいと思うのであります。
 それと同時に、現在國内における警察力は、國家地方警察が三万五千、地方警察が九万となつておるのでありまするが、この配置の方法に関しまして、私はすこぶる疑問とせざるを得ない点を発見するのでありまするが、その点はさしおきまして、今回の浜松事件からいたしまして、地方警察あるいは國家地方警察に遊撃隊あるいは予備隊というようなものを置いて、非常事態にただちに出動するというような態勢をとることが考えられないかどうかということを併せて質問したいと思うのであります。
 私は軍隊のない日本の現状におきましては、現在は連合軍の駐屯によりまして國内治安は多分に維持されておるわけでありまするが、連合軍の撤退後において、はたして現在の警察力をもつて國内治安が維持できるかどうかという点に危慎なきを得ないのであります。現在の連合軍の駐屯下におきましわても、私は警察官のもつておる武器がはたして十分であるかどうかという点を疑わざるを得ないのであります。浜松市警察の場合を例にとつて申し上げますならば、二百人の警察官に與えられたピストルは、わずか十九挺しかないのだそうであります。私は、かようなことが治安をきわめて不安に陷れる原因の一つをなしておるということを指摘せざるを得ないのであります。從いまして私は、現在の状況のもとにおいても、なおかつ警察官の武器の装備という点において充実を期する考え方が政府にあるかどうかという点をお聽きしたいのであります。今回の浜松事件を通して見まして、私は警察官の装備の不十分から事件を未然に防止することができなかつたという点に思いをいたすときにおきまして、警察官の武器に対する今後の政府の方針をお伺いしたい。
 それと同時に、現在の制度のもとにおいては、殊に新憲法下におきましては、現行犯でなければ、裁判官の令状が発行されない以上は犯人を逮捕することができないというようなことからいたしまして、事件を未然に防ぐということができないのであります。從いまして私は、今後相当に治安維持の観点からいたしまして、事件が発生するとか、あるいはまた拡大するとかいうような見透しが得られる場合においては、これを未然に防止するような方法、すなわち、たとえばそういうような暴徒が、あるいは集團が集合して、対峙の状態にあるというようなときに対しては、あらかじめこれに対して解散を命ずるとかいうことができないものだろうか。また政府はそういうようなことを考えていないかどうか。しかしながら、かかる事前防止に関する措置は、労働運輸の彈圧とかいうような方向に向かわれるということは、もちろん避けねばならぬのであります。どこまでも國内の治安を維持するという建前のもとにおいてこの制度ができ、また運用されねばならぬことは、申すまでもないのであります。そういう観点から、事前に防止するような立法的措置を政府は考えているかどうかということを、私は特に政府にお聽きしたいと思うのであります。
 私は、冒頭に申し上げましたように、七千万の國民の非常な関心を集めておるところの帝銀事件が未解決の間に、まだぼやの中に、浜松市において市街戰さながらの発砲事件が起り、そうして当事者以外に善良なる市民にも死者を出しておるというような事件の性質に鑑みて、政府は責任を痛感し、同時にまた今後におけるところの國内治安の維持のために、どういうような立法的な、あるいはまた行政的な措置を考えておるかということに関しまして、関係大臣の明快なる答弁を要求する次第であります。
 これをもつて私の質問といたします。(拍手)
#9
○議長(松岡駒吉君) 安東義良君。
    〔安東義良君登壇〕
#10
○安東義良君 ただいま川合君より、浜松事件につきまして、治安問題に対する関心を表明せられたのでありまするが、私も、本件について同様なる関心をもつものであります。單に四月四、五日の両日に行われたこの浜松事件のみならず、四月八日には愛知縣の犬山におきまして、花見の最中に二百余名の鮮人が乱闘騒ぎをやつておるのであります。
 私どもが田舎に参りますと、地方民はしばしば私どもに訴える。われわれは鮮人に対して何ら反感を持つていないにもかかわらず、彼らに対しては、課税の方面においても、経済事犯の点においても、はたまた暴力行為に対しても、警察権の発動はきわめて緩漫であつて、その間に大なる差別があることを認めざるを得ない、これは今日の日本において許すべきことであるかどうか、こういう質問を受けるのであります。かくの如き不祥事が今なお跡を絶たないということは、まことに遺憾千万であります。
 今日の日本は、昔日の帝國主義的日本ではありません。平和と自由と正義とを理想として、暴力を排して進みつつあるのであります。浜松事件が單なる偶発事件でありますならば、それまででありまするが、その奥底に、あるいは戰後日本人、朝鮮人の間にわだかまつておる一部の惡感情が爆発したものではなかろうかということを、私はひそかに憂うるのであります。かかるがゆえに、私は本件の真相について政府当局の明瞭なる御説明を承りたいのであります。私どもは、もしこの両事件の裏にかくのごとき惡感情があり、またその惡感情を誘致すべき原因があるといたしましたならば、かくのごとき惡感情を除去し、またかくのごとき惡感情を誘発する原因を根本的に除くように努力いたさなければならないのであります。
 元來在留朝鮮人は、マツカーサー元帥の指令にもある通り、日本の課税権、警察権、司法権のもとに服することになつておるのであります。現に多数の善良なる朝鮮人は、この精神において日本人の法権に服し、日本人と共に平和にその生業を営んでおるのであります。しかるに、不幸にして一部鮮人がこの点を弁えずして、ときに集團的な行動に出て警察を脅かし、また良民を脅かすがごとき事態が起るということは、まことに新日本の恥辱であります。(拍手)このゆえに私は、今回の事件を契機として、再びかくのごときことが繰返されないように、特に政府並びに日本國民にも要望すると同時に、われわれとしても、その責任を果したいと思うのであります。つきましては、この際政府において、一部鮮人の非行等に対する、殊に暴力行為に対する取締りの徹底について、いかなる方策を持つておられるのであるかということをお伺いいたしたいのであります。
 私の申し上げんとするところは、きわめて簡單でありまするけれども、これをもつて質問の要旨といたします。(拍手)
    〔國務大臣鈴木義男君登壇〕
#11
○國務大臣(鈴木義男君) 警察を代表する者が國会にただいま出ておりませんので、國務大臣として私からお答えをいたします。
 川合君の御質問は、浜松における乱闘事件でありまして、まことに不祥事でありまして、政府といたしましても遺憾に存ずるところであります。原因はまことにつまらないことから端を発したのでありまするが、しかし、ああいう乱闘が今なお行われるということは、たしかに御指摘のごとく封建的な存在が残つておるためでありまして、そういうものを絶滅することが政府の根本方針でありまして、昨年來着々進めておるのでありますが、なおその跡を絶たずして、ときどきかくのごときことが起ることにつきましては、深く遺憾に存ずるところであります。引続いて、この壊滅に努力するつもりであります。
 なお、かくのごとく民間に凶器を携えておる者があるということがすでに不思議なのでありますが、遺憾ながら凶器の取締りが十分に徹底をいたしませんで、なおひそかに隠して藏しておる者があるのであります。これは連合軍の占領目的にも反することでありますし、嚴重なる命令に服しておるのでありまするが、今回の事件に鑑みまして、さらに凶器の取締り並びにその取上げを徹底させる方針を新たに樹立することにいたしまして、これによつて十分に凶器を取上げ、かくのごときことが頻発しないように努力いたすつもりであります。
 また警察の武器をもつと殖やさなければならぬということも、政府といたしましては十分に考えておるところでありまして、ただ連合軍が駐在をいたしております間は、多少その点について考慮する余地があるであろうということから、ただいまのような状況に相なつておるのでありますが、この点につきましては、十分に政府としても考えておるということを申し上げておきます。
 なお、自治体警察がボスの占領するところとなつておるようなところがなきにしもあらずということは非常に遺憾なことでありまして、最初から、この制度を立てますときに、できるだけかくのごときこと防止に努力いたしたのでありますが、なお國民の自覚が十分でないために、御指導のごとき事実を生ずるのであります。これはぜひ民主的な監督権を発動しまして、そしてボス的な存在は排除し、新たに民主的な人物が警察の幹部となるように、國民諸君の自覚を促したいのであります。そういう途は開けておるのであります。
 なお、自治体警察と國家警察との協力関係は、できるだけ円滑に、かつ強力に推進できるように制度の上ではなつておるのでありますが、御承知のごとく、まだ出発日浅くして十分に連絡が敏活にとれないということについきましては遺憾に存するのでありますが、この点につきましては、十分に國家公安委員並びに地方の警察委員会の自覚を喚起するつもりであります。
 なお、集団犯罪あるいは暴力行為、騒擾行為等に出ます場合に、機動的に大量の樹立しなければならないということにつきましても、新制度樹立の当初から問題になつておるのでありまして、関係方面とも協議いたしまして、この制度を樹立すべきではないかということを政府も考慮いたしておるのであります。そのうち案を具して御協議を仰ぐことができるのではないかと考えておる次第であります。
 なお、かくのごとき暴動が起きるということは予備的な鎭圧手段がないからではないかというお尋ねでありますが、これは必ずしも善良なる市民に対してみだりに予備的な檢索をするというようなことはできないのでありますが、凶器を携えておるとか、みだりに人の家に侵入するとかいうものは、今の警察犯罪処罰令によつて拘束を加えることができるのでありますし、協賛を仰いでおりまする軽犯罪法等が近く成立いたしますれば、これによつて取締ることができるのでありまして、必ずしもその途なきにあらずということを御了承願いたいのであります。
 なお安東君の御質問の、朝鮮人に対して遺憾な点があるということは、政府においても認めるところであります。これは國際関係が、敗戰後かくのごとき状況に相なりましたるために、不必要に摩擦を生ずる面もあるように考えるのでありますが、政府といたしましては、國法に従い、司法権、警察権、あるいは課税権等に服しております限り、善良なる朝鮮人に対しては、日本國民と亳末も差別することなく取扱うつおりあるのであります。しかし、不幸にして國法に従わず、またわが國に滞在して、わが國の治安を害するがごとき行為に出ずる者につきましては、亳も假借するところなくこれを取締まり、同時に、われわれと共同生活を営む上において円満な生活を営み得るような態勢をとらせるべく努力いたしますとともに、どうしてもそれに應じない場合には、差別することなく刑罰権、警察権を発動させることになつているのであります。ただ実際上、自治体警察等が発足いたしまして、まだ日が浅いために、組織が十分でなく、機動が十分でないために、ご期待に副い得ない点があることは遺憾でありますが、これまたできるだけ御期待に副うように、治安の維持に対しましては、万全の努力を盡すつもりであることを申上げまして、お答えといたしたいと存じます。(拍手)
     ――――◇―――――
 第一 行政代執行案(内閣提出)
 第二 行政事件訴訟特例法案(内閣提出)
#12
○議長(松岡駒吉君) 日程第一、行政代執行法案、日程第二、行政事件訴訟特例法案、右兩案は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。司法委員会委員井伊誠一君。
        ―――――
    〔井伊誠一君登壇〕
#13
○井伊誠一君 ただいま議題と相なりました行政代執行法案及び行政事件訴訟特例法案の両案について、司法委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申上げます。
 まず、行政代執行法案について御報告いたします。
 本案は、現行行政執行法の内容が、たとえば行政検東の規定のごとく過去に暗い歴史をもつものがあり、二本国憲法の趣旨に照らし調整を要するところが少なくないので、この際これを全面的に廃止して、將來における濫用の余地をなくし、必要な限度において、新たなる制度のもとに出発する考えに立脚し、さらに執行罰及び直接強制の途も一般法に存置する理由を認めないという見地から、これを特に行政目的遂行上必要とする場合に限つて他のそれぞれの法律に委ねることとし、従來の行政執行法に規定されていた代執行に関する手続のみを捕捉整備し、單独法案として提出せられたものであります。
 その内容は、法令に基く行政上の義務を義務者が履行しない場合、他の手続によつてその履行を確保することが困難であり、かつその不履行を放置することが著しく公益に反すると認めるときは、当該行政廳はみずから義務者のなすべき行為をなし、または第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる旨を定め、これに必要な手続を規定したものであります。
 従前の代執行手続との主要な差異としてあげられます点は、発令機関が行政官廳から行政廳一般にまで拡張せられたこと、代執行の手続をとるために二つの条件をはめ、濫用を防いだこと、及び代執行に関し不服のある場合、訴願あるいは異議の申立の途を開き、不服の申立について十分の機会を設けたこと等があげられるのであります。以上が本案の要旨であります。
 委員会は、本月六日政府の説明を聴き、引き続き質疑をいたしましたところ、次のような質疑応答が交わされたのであります。そのおもなる点について簡單に御紹介申上げます。
 第一に、本法案により適用を予想せられる具体的事例いかんとの質疑に対し、従來、市街地建築物法あるいは臨時建築物取締規則による統制違反建築物に対し行政廳の命ずる除去処分を義務者が履行しないで放置するため非常に困るというような場合、やむを得ず行政廳が建物の取壊しをやり、義務者から費用を取立てるとくような事例が比較的多く、その他交通取締り、廣告物取締り等による場合もあげられるが、今後本案による適用についても、以上のやうな事例が予想せられる旨の答弁でありました。
 次に、義務者が執行責任者の行為に対して反対するような場合における執行責任者の権限いかんとの問いに対し、これは過去における公務施行妨害の場合と同様、その措置も同じでよいと考える旨の答弁でありました。
 次に、行政執行法廃止に基く影響についての考慮いかんとの問いに対し、政府としては十分検討した結果、憲法に照らし何らか調整を要する法條はすべてこれを抹殺し、新しい措置のもとに必要な点について立法をするという結論を得たのであるが、廃止される行政執行法の規定について現在それぞれ問題となる点は、すでに他の法律によつて賄い得る事項が多く、いずれも存置の必要がないと考えるという見解でありました。
 以上が質疑應答のおもなる点でありますが、従來の行政執行法は人権躊躇の法規として存在したという非難があり、その全国的調整はまつたく趣旨として賛成であり、また代執行についても、ほぼ妥当なる構想のもとに改正せられておるとの一致した意見に達しましたので、翌八日、ただちに討論に移つたのであります。討論におきましては、民主自由党の委員より、代執行の手続きをとるに必要な條件はこれを厳格に守り、人権躊躇の先轍を踏まざるよう、その運用にあたつては慎重を望むという附言がなされ、各党委員いずれも原案に賛成の意見を述べられたのであります。次いで同日採決の結果、本案は全会一致をもつて原案の通り可決いたした次第であります。
 次に、行政事件訴訟特例法案について御報告申上げます。
 まず、政府原案の報告を申上げます。従來の行政訴訟は、日本国憲法及び裁判書法の施行により、すべて裁判書の管轄するところとなり、その手続は民事訴訟法により審判、裁判されることになりました。しかし、この種の事件は公法上の権利関係に関する争いを内容とし、公共の福祉に重大関係がありますので、民事訴訟法に対し特例を設ける必要があります。これがこの法案を提出する趣旨であります。
 以下、この法案の内容を御説明申します。
 第一は、行政廳の違法な処分の取消または変更を求める訴えを提起するには、その前提として訴願を経なければならぬとしたのであります。その理由は、まず行政廳にその処分を匡正する機会を與えるとともに、それが迅速に行なわれる限り、国民の方でも便利であろうと考えたのであります。かくて原則としては、訴願の採決を経た後でなければ行政訴訟を提起することができないことといたしました。
 第二は、右の訴えの被告及び土地管轄を定めてあります。この訴えは行政処分の適法性を争うものでありますから、直接処分をした行政廳を被告とすることによつて裁判の適正と迅速を期することができると考えたのであります。
 第三は、行政廳の違法な処分の取消または変更を求める訴えについて、出訴期間を定めたことであります。行政処分は公共の利害にも関係することが深いから、これを長く、未確定の状態におくことは避けなければならないので、この期間を、原則として処分のあつたことを知つた日から六箇月と定めました。出訴期間は六箇月でありますが、原告が被告とすべき行政廳を誤つたときは、訴訟の係属中何どきでも被告を変更することができることといたしました。
 第四は、行政訴訟に併合し得る訴えの種類を定めたことであります。この訴えには、その請求と関連する原状回復、損害賠償その他の請求にかかる訴えに限り、これを併合することができるものをしました。これによつて当該行政処分に関連する紛争を一挙に解決することといたしました。
 第五は、行政処分は出訴によつてその執行を停止されないことを明かにし、併せてこれに対応して必要な規定を設けたことであります。すなわち裁判所は、処分の執行により生ずべき、償うことのできない損害を避けるための緊急の必要があると認めるときは、一時行政処分の執行の停止を命じ得ることとしました。しかし、行政処分の執行の停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき及び内閣総理大臣が異議を述べたときは、執行の停止ができないことといたしました。
 第六は、行政処分の取消または変更を求める訴えの提起があつた場合において、請求の理由があるときでも、裁判所は請求棄却の判決をし得ることとしたことであります。すなわち裁判所は、一切の事情を考慮し、行政処分を取消または変更することが、かえつて公共の福祉に適合しないと認めるときは、原稿の請求を破棄することができることとしたのであります。
 以上が、行政事件訴訟特例法案のおもなる内容であります。
 司法委員会は、四月五日政府の提案理由の説明を聴き、五日、六日と懇談会を開きました。懇談においては、まず訴願前置主義の可否については、訴願法の改正を期待して訴願の前置主義を可と認めたのであります。次に、廣議における訴願には異議の申立その他の不服の申立を含むものと了解したのであります。終りに、行政訴訟につき裁判所が請求棄却をなした場合にも、損害賠償の請求を排除するものでないと了解したのであります。
 かくて、四月八日委員会は本法案を採決する運びとなり、採決の結果、本法案は全会一致をもつて政府原案通り可決いたした次第であります。
 以上、両案についての御報告を終ります(拍手)
#14
○議長(松岡駒吉君) 両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 第三石炭廳設置法案(内閣提出)
#16
○議長(松岡駒吉君) 日程第三、石炭廳設置法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。鉱鉱業委員会理事生悦住貞太郎君。
        ―――――
    〔生悦住貞太郎君登壇〕
#17
○生悦住貞太郎君 ただいま議題となりました石炭廳設置法案につきまして、鉱工業委員会における経過ならびに結果を御報告申上げます。
 本法案の趣旨といたしますところは、第一に、臨時石炭鉱業管理法はいよいよ本年四月一日より施工になりましたが、同法の施行に関する事務は、すでに昨年御決定の通り、第一線業務は石炭局においてこれを行うのでありますが、中央機構として若干の整備をなさんとするものであります。すなわち、今日まで國管法施行準備のため國管準備室を石炭廳に設けておりましたが、同法の施行の機会に管理局に改め、従來の管理局を配炭局と改称せんとするものであります。第ニに、新坑開発の事務に関しましては、本年二月石炭廳生産局内に臨時に開発本部を設けて処理してまいつたのでありますが、これを独立して開発局に改組せんとするものであります。以上二つとも、從來の暫定組織を恒久的な組織に改組せんとするものでありますが、さらにこの機会におきまして、行政官庁廳法の趣旨に基いて、現在勅令をもつて定められております石炭廳官性を、全面的に法律の形式に改めんとするものであります。以上が政府原案の要旨であります。
 鉱工業委員会は、四月七日、商工大臣より提案理由の説明を聽き、翌八日審議に入りましたが、第ニ條第ニ項について質疑後、討論を省略、全会一致をもつて原案の通り可決した次第であります。
 右、本法案の御報告を申し上げます、(拍手)
#18
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長の報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 消防組織法の一部を改正する法律案 (内閣提出)
#20
○森三樹二君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、消防組織法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#21
○議長(松岡駒吉君) 森君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 消防組織法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。治安及び地方制度委員会理事中島茂喜君。
    〔中島茂喜君登壇〕
#23
○中島茂喜君 ただいま議題となりました消防組織法の一部を改正する法律案に関し、治安及び地方制度委員会における審議の経過並びに結果の概要を、委員長に代つて御報告申し上げます。
 まず改正法律案の内容及び提案理由を申し述べますと、第一に消防組織法第十條第一項に「消防本部の設置、名称及び組織は、市町村が」とありますしたのを、「市町村長が之を定める」と改正することにいたしました。市町村の消防は、同法第七條により、その市町村の條例に從つて管理せられ、また同法第八條により、消防に要する費用もまた市町村の議会の承認を得て当該市町村が負担することになつておりますから、消防本部の設置、名称及び組織に属する仕事は、市町村長が規則によつて定めるのが、より実情に即するものと考えられる次第であります。
 第ニに、同法第十條第三項に「消防署の設置、名称、組織及び管轄区域は、市町村がこれを定める。」とありましたのを「市町村長の承認を得て、消防長がこれを定める。」と改正することにいたしました。すでに消防本部の設置は、市町村長によつてこれが定められることになつたのでありますから、その内部組織である消防署の設置、名称、組織及び管轄区域は、消防的見地から消防長が発案をとり、市町村長の同意を得てこれを定めるのが、これまた消防強化の実情に副うものを考えられる次第であります。
 第三に、同法第十三條前段に「市町村の消防長は、市町村長の定める基準により」とありましたのを、「市町村長の承認を得て、当該市町村の消防職員を任命し、一定の事由に依り、罷免する。」と改正することにいたしました。消防組織法全般を通ずる市町村及び市町村長の地位に鑑み、人事については市町村長の承認を求めることとなり、より適当と考える次第であります。
 本法案は、去る四月九日治安及び地方制度委員会に付託せられ、本十三日審議を開始したものでありまして、新井消防廳長官から提案理由の説明を聽取いたしましたところ、本法案は地方自治の趣旨を徹底し、併せて消防の強化をはかる必要上当然のことでありまして、しかも至急実施をすべきものと認めましたので、満場一致をもつてこれを可決すべきものを議決いたした次第であります。
 右御報告いたします。(拍手)
#24
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
#26
○森三樹二君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、軽犯罪法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#27
○議長(松岡駒吉君) 森君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 軽犯罪法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。司法委員長松永義雄君。
    〔松永義雄君登壇〕
#29
○松永義雄君 ただいま議題と相なりました軽犯罪法案について、司法委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
 まず本案の要旨について御説明申し上げます。本案は警察犯処罰令に代るべき法律制定の必要から提出せられたものでありまして、いわば日常生活の道徳規律に違背するような軽い罪を拾うことを主眼とし、特殊な行政目的を遂行するための取締規定のごときはここに取入れることを適当としないという考え方に基き、從前の警察犯処罰令の規定を檢討整備するとともに、若干の新規定等を収めたものであります。
 すなわち、警察犯処罰令のうち、刑法に取入れられた入札妨害罪や、新憲法の趣旨に副わない流言浮説の罪、あるいは道路交通取締法、食品衛生法等によつて取締られるもの、賣淫罪のように他の立法に譲るもの、その他社会教育の普及及び個人の自覚にまつことを相当とするものや、実益に乏しい規定等を除き、新しい事態に適合するように、新たに危險な器具を携帶する罪、浴場等をひそかにのぞき見る罪など五つの規定、及び公共の娯樂場や乗物等の中で入場者や乗客に迷惑をかける罪、樂器等の音を異常に大きくして近隣に迷惑をかける罪、その他新設同様のニ、三の規定が収められているのであります。また本案においては、刑の裁量の範囲を廣くし裁判所の量刑に委ねる建前から、罪の種類による刑の差別を廃止するとともに、すべての罪について刑の免除が認められることとなつたのであります。以上が本案の要旨であります。
 委員会は、去る三月十八日政府の説明を聽き、次いで、同月二十三日本格的に審査に入り、本案について六日間にわたつて委員会を開き、また別途数次に及ぶ協議懇談を重ね、特に本月六日には労働委員会との連合打合会を開くなどいたしまして、熱心に審議を続けてまいつたのであります。本案の内容は國民の日常生活に深いゆかりをもつ関係上、院の内外を問わず、各方面とも非常な関心を示され、殊に労働運動との関係におきましては、つとに多大の反響を呼び、批判や改正意見が当委員会に寄せられたものも少くないのであります。各委員とも、これらの所論を考量研究し、各條号について具体的現実の場面に問題を展開し、かつ深く法理論の核心に触れて盛んな論議が交されたのでありますが、ここに特にその中心となりましたニ、三の点を、ごくかいつまんで御紹介申し上げることといたします。
 第一に、労働運動や農民運動のごとき國民的大衆運動の彈圧または阻止に本法が悪用されるおそれはないかという点でありますが、この懸念は、この法案の前身であつた警察犯処罰令が、今日すでに廃止せられている彼の違警罪即決令と相まつて、團体運動等の不当な彈圧の具に供せられた歴史的事情を顧みて、もつともの点であつたのであります。しかし、この点に関しましては、労働運動、組合運動については、労働團体の團結権、團体交渉権は、基本的人権として憲法並びに労働組合法に明認せられるところであり、本案の目標とするところではないということを、政府から強く言明せられたのであります。
 この問題に関し論議せられました條号は、第一條第十四号、第二十八号、第二十九号、第三十一号及び第三十三号等でありますが、たとえば第十四号について見るに、正当な政治行動や大衆運動のための示威運動は、刑法上明らかに正当な行為と見なければならないのであるから、この限りにおいて本案の適用はないとのことでありました。また、たとえば第二十八号について見ても、他人の進路に立ちふさがつて、その身辺に群がつて立ち去ろうとしないときとあるのは、不良が婦女子の行手に立ちふさがるようなたぐいであつて、決して労働爭議中の團体交渉の場合に適用する考えはないとの答弁であつたのであります。
 次に、本案の規定中に「正当な理由がなくて」とか「みだりに」という用語があつて、これが警察官の認定次第で、いかようにでも判定されることになれば、無制限に日常行為が犯罪となる結果を招き、また犯罪捜査その他の目的に悪用されるおそれがないかとの質疑があつたのであります。これに対して政府から、この用語を用いたのは、むしろ嚴格な解釈による運用を明らかにしたものである。また違法性を具備するか否かの解釈は、結局簡易裁判所で定まるから、警察官の独断的解釈で処罰されることはないと思うが、なお警察官の判断が独断に陥らないように、軽犯罪行為成立の基準をあらかじめ指示するように手配する考えである旨の答弁があつたのであります。
 さらに、これに関連いたしまして、捜査過程における人権の尊重については、刑事手続き上の観点から質疑が行われたのでありますが、この点に関する政府の見解を要約いたしますると、原則として現行刑事訴訟法においても、五百円以下の罰金については身柄は拘束されないことになつているのであり、本案の手続として、警察官が取調べを行う際、いわゆる強制手続きを用いないのが通常であるから、懸念の点は避け得られると考えられるが、來るべき刑事訴訟法改正の際には、さらに万全の考慮をめぐらす考えであるとのことでありました。
 最後に、軽犯罪の中には、いわば社会風教の向上や公徳心の涵養の面において取上げるような行為があるが、この種の行為は法律で強制しても実益がなく、かえつて行われない法律ができる結果にならぬかという質疑がありましたが、これに対し政府より、單に刑事政策的見地だけからでなく、教育、厚生、労働等の方面からも社会不安の解消に努力し、とりわけ社会政策的施設を拡充強化して、軽犯罪の生れる温床を解消するように一段と努力するという答弁があつたのであります。
 以上、中心問題と思われます点について簡単に御紹介申し上げました。
 かくして審議を重ねました結果、十三日、各党の共同提案になる修正案が提出せられましたが、その趣旨といたしまする点は、すでに違警罪即決令は廃止せられており、今日さらに警察犯処罰令が軽犯罪法としてその構想を一新しようとするのでありますが、本法の適用にあたつては、かりそめにも、せつかくの憲法に確定された國民の基本的人権を侵害するようなことがあつてはならないのでありまして、この点、嚴格な適用をここに宣明する趣旨から、この法律の適用にあたつては、國民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本來の目的を逸脱して、他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならないとの一條項を加え、また附則中の施行の期日を改めんとするものであります。なおまた佐瀬委員、鍛冶委員より單独修正案が提出せられたのであります。続いて討論の際、各党委員よりそれぞれ意見が延べられ、採決の結果、佐瀬委員、鍛冶委員提案の修正案は少数をもつて否決せられ、各派共同提案になる修正案については、全会一致をもつて提案のごとく修正に決し、結局本案は多数をもつて修正議決いたした次第であります。
 以上、御報告申し上げます(拍手)
#30
○議長(松岡駒吉君) 討論の通告があります。これを許します。林百郎君。
    〔林百郎君登壇〕
#31
○林百郎君 軽犯罪法につきましては、共産党といたしましては、本法の制定に対して全面的に反対するものであります。
 本法は、本年五月二日以降失効する警察犯処罰令の再生版であつて、警察犯処罰令が従來のわれわれの階級運動の抑圧のために、また労働運動の彈圧のために果してきた役割を見れば、理由は明らかだと思うのであります。
 まず第一に、現在労働組合が爭護手段としてとつておるところの生産管理はもちろんのこと、團体交渉をする場合におきましても、たとえば第一條の二十八号におきます、他人の進路に立ちふさがり、あるいは身辺に群がつて立ち退こうとせずと云ふようなことを理由にして彈圧を浮ける危險があるのであります。
 また隠退藏物資を摘発しようと思いましても、三十二号にありますとろこの、「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」というような條文が利用され得るのであります。
 また農民運動をなさつた経験のある方はおわかりだと思いますが、たとえば地主の不法土地取上げ等に対抗するために、農民組合が共同耕作しようと思いましても、他人の田畑に正当な理由なくしてはいる者というような理由が濫用されて、これが抑圧される危險が多分にあるのであります。
 また配給物資の適性たる監視をしようと思いましても、たとえば十三号にあります通り、配給物を待つている列を乱した者は処罰するというような理由で、この十三号で処罰される危險があるのであります。
 また街頭演説をしようと思いますと、五号で、公共の会堂またはその他の場所において粗野または乱暴な言動で迷惑をかけた者というようなことを理由にして、街頭演説を禁止される危險が多分にあるのであります。
 政府の言明や、いろいろな附帶の決議はありましたけれども、立法するときは政府は非常に民主的なことを言いますけれども、具体的な法案の適用になりますと、この立法の際の精神が忘れられるのであります。そうして、政府の行政的な要求に基いて濫用される危險が多分にあるのであります。
 殊に本法は、第ニ條におきまして、たらいまわしをどんどん適法にする拘置と科料と二つを併科することができるのであります。従前ですと拘置だけで三十日であつたのが、科科が併科されまして六十日検束されることが可能になつているのであります。政府の弁明によりますと、各外國の立法にもこういう例があるのだということを説明されておりますが、たとえば政府提出の資料を見ますと、フランスの刑法を調べて見ましても、非常に具体的な例が示してあるのであります。客観的にして、具体的な例が示されておるのであります。
 たとえば、本軽犯罪法におきますところの三十二号、はいることを禁じた場所または他人の田畑に正当な理由なくしてはいつた者をいうふうに「正当な理由」というような非常に抽象的な言葉が使われておるのに対しまして、フランス刑法の例を調べて見ますと、非常に客観的に具体的になつておるのであります。たとえば、フランス刑法第四百七十一條の八号、九号、十号、十四号にわたつて、この三十二号が説明されておるのでありますが、その例を見ますと、八号の、法律また規則によつて田畑または庭園の毛虫の駆除を規定したる場合においてこれを怠つた者、九号の、その他に法律の定むる格別な状況なくして他人に属する果実をその場所において摘取しまたはこれを食いたる者、第十号の、他に格別の状況なくして未だ全部の収穫を了せざる田畑において、日出前または日没後に落穂を拾い集め、または取残した葡萄を摘取した者、第十四号の、収穫前に他人の地所に自己の家畜または車あるいは乗馬等に用いる獣類を通過せしめたものというように、非常に客観的に具体的な例示がされておるのであります。
 ところが本軽法犯罪法によりますと、單に正当な理由なくして他人の田畑にはいつた者は、すぐ拘留三十日ということになつて、非常に乱暴な、濫用される危険のある法律のきめ方になつておるのであります。たとえば、この第二号を見ましても、正当な理由なくして刃物、鉄棒その他の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯している者は、三十日の拘留というのであります。隠して携帯しているということになると、隠しておる危険のある者に対しては、いくらでも手を触れ、取調官が調べるということになるのであります。これは明らかに不当な人権蹂躪の危険を冒すことになるのであります。
 この点につきまして、フランス刑法の四百七十一條の七号を見ますと、街路、道路、廣場、公の場所または田野に、すき、はさみ、鉄棒、鉄柵またはどろぼうその他の凶徒の使用し得るその他の器具、機械、武器を放置した者というように、非常に具体的に詳しく説明してあつて、こういう場合には処罰することになつております。ところが本軽犯罪法によりますと、凶器を隠し持つた危険のある者は、もうこれが取調べの対象になるのであります。こういう点から見ましても、この軽犯罪法が非常に人権蹂躪の危険をもつておるということは言い得ると思うのであります。
 要するに、本法の各本條の規定は、それぞれ刑法だとか、道路交通取締法だとか、その他の各單行法規ですでに規定してあるものでありまして、あらためて軽犯罪法のごときものを立法する必要はないと思うのであります。結局そのねらいは、一に政府の政治力の貧困を、法律の力でもつて、立法形式によつて合法化しようとする魂膽の露骨な表現だと思います。これによつて大衆行動を抑圧し、あるいは人権を蹂躙しようとするものだと思うのであります。
 こういう意味におきまして、われわれは、新憲法によりましてわれわれの人権が確保された際、かかる軽犯罪法というがごとき人権蹂躪の危険が多分にあり、またその運用いかんによつては多分に労働運動、農民運動、われわれの正当な権利が抑圧される危険のある法律に対しては、全面的に反対するものであります。これらの規定の條項は、それぞれの單行法によつて取締ることによつて十分なのであります。あえてこういう法律を新しくつくる必要は絶対にないと思うのであります。こういう意味で、わが党としては、本軽犯罪法には全面的に反対するものであります。簡單に意見を申し上げます。
#32
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案の委員長報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#33
○議長(松岡駒吉君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時三十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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