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2007/04/10 第166回国会 参議院 参議院会議録情報 第166回国会 法務委員会 第5号
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2007/04/10 第166回国会 参議院

参議院会議録情報 第166回国会 法務委員会 第5号

#1
第166回国会 法務委員会 第5号
平成十九年四月十日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十八日
    辞任         補欠選任
     松岡  徹君     喜納 昌吉君
 三月二十九日
    辞任         補欠選任
     岡田  広君     藤井 基之君
     喜納 昌吉君     松岡  徹君
 四月二日
    辞任         補欠選任
     藤井 基之君     岡田  広君
 四月十日
    辞任         補欠選任
     青木 幹雄君     愛知 治郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         山下 栄一君
    理 事
                岡田  広君
                松村 龍二君
                簗瀬  進君
                木庭健太郎君
    委 員
                愛知 治郎君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                谷川 秀善君
                江田 五月君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                浜四津敏子君
                仁比 聡平君
                近藤 正道君
   国務大臣
       法務大臣     長勢 甚遠君
   副大臣
       法務副大臣    水野 賢一君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  奥野 信亮君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   小川 正持君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田中 英明君
   政府参考人
       法務大臣官房司
       法法制部長    菊池 洋一君
       法務省民事局長  寺田 逸郎君
       法務省刑事局長  小津 博司君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一
 部を改正する法律案(内閣提出)
    ─────────────
#2
○委員長(山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に岡田広君を指名いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(山下栄一君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房司法法制部長菊池洋一君、法務省民事局長寺田逸郎君及び法務省刑事局長小津博司君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#6
○委員長(山下栄一君) 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○谷川秀善君 皆さん、おはようございます。自由民主党の谷川秀善でございます。
 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 長年の懸案でございました裁判員制度も二年先の平成二十一年五月から実施されることになりました。今までの裁判は、皆さん方も御存じのように、司法の専門家である裁判官が専門家としてこれに当たってきたわけでありますが、この裁判員制度になりますと、素人の国民がこれに参加するということで、非常に画期的なものであろうというふうに考えます。
 国民が裁判に参加するということは世界各国でも方法はいろいろ違っているようでございますが、行われているようであります。日本でもかつて戦前から戦中にかけて陪審員制度が行われたことがありましたが、余り定着をしなくてそのまま停止されてしまったような状況でございます。このような状況でありますのに、なぜ今この裁判員制度を採用するようになったのか、その点につきまして、その理由と意義についてまず初めにお伺いをいたしておきたいと思います。
#8
○政府参考人(小津博司君) お答え申し上げます。
 裁判員制度は、広く国民が裁判の過程に参加し、その感覚が裁判の内容に反映されることによりまして、司法に対する国民の理解や支持が深まり、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという意味で重要な制度であると考えております。
 加えまして、裁判員制度が導入されますと、職業や家庭を持つ国民の方々に裁判に参加していただくことができるようにするため、裁判がこれまでよりも一層迅速に行われるようにすることとなりますし、また、裁判の手続や判決の内容を裁判員の方々にとって分かりやすいものとする必要がありますから、国民にとって分かりやすい裁判が実現されることにもなるわけでございます。さらに、国民の皆様に刑事裁判の過程に直接参加していただくということは、社会秩序や治安あるいは犯罪の被害や人権といった問題について一人一人にもかかわりのある問題としてお考えいただく契機にもなるものと考えているところでございます。
#9
○谷川秀善君 ただいま御説明をいただきましたように、裁判が国民に身近になるといいますか、そういうことだろうというふうに思いますけれども、今までの裁判に対する国民の感想といいますか感じ方というのは、まず第一に裁判というのは非常に分かりにくい、そして時間が非常に掛かり過ぎるということと、我々一般の国民にとっては余り裁判というのは関係がないと、何か特に刑事裁判なんかですと、犯罪者を裁くものであって我々国民には余り直接関係がないんじゃないかというようなことであったんではないかというふうに思っているわけです。それをちょっとでも国民に裁判を近づけるということは大変必要だし大事なことではないかなというふうに思いますが。
 内閣府が平成十八年十二月十四日から十二月二十四日までに、全国二十歳以上の人を対象で三千人を対象にして裁判員制度に関する世論調査というのを行ったようでございますが、回収率は千七百九十五人、大体まあざっと六〇%ぐらいのようでございますが。裁判員制度について知っている、知らないというのが、これずっといろいろあるわけですが、知っているというのが、まあ私もちょっとこれ見てびっくりしたんですけど八〇・七%と。えらいこれ非常にもう大分普及、知られてきたのかなというふうに思いますが、それで知らないというのはまあざっと二〇%ぐらいですね。そうすると、裁判員制度というものがこれからできるんですよというのは大分知られてきたのかなと思いますけれども、もうちょっとやっぱりPRもしていただく必要があるかなと思いますが、参加するかしないかという項がございまして、参加するというのは、まあいろいろあるんですが、大体六五%ぐらいが参加すると。これもちょっと驚いたんですけれども、それぐらい本当に参加するというふうに思うのかなと思うんですけれども、そんな程度。それで義務であっても参加したくないというのは、やっぱり三三・六%というのが参加したくないということでありますが、この義務であるから参加しなければならないと、それで参加してもええということが大体半分ぐらいあるということは、非常に私はまあ大分皆さん方のPRが効いてきたのかなと思いますけれどもね。やっぱり本心は、できたら参加したくないと、もう専門家に今までどおり任しておきたいというふうに思っているのではないかなと思うんですよ、正直のところ。
 その点について、どういうふうにお考えになっておられますか。
#10
○政府参考人(小津博司君) ただいま御指摘のございました世論調査におきましても、御指摘のとおり、余り参加したくないけれども義務であるなら参加せざるを得ないというところにそうだと答えられた方が四四%ほどおられるということでございますので、私どもといたしましては、国民の皆様がより積極的にこの裁判員裁判に参加していただけますように十分と広報啓発活動に力を引き続き入れていかなければいけないと考えているところでございます。
#11
○谷川秀善君 まあやっぱりそういうことだろうと思いますし、その刑事裁判に参加する場合に不安に感じる点の中で一番不安に感じる点はどういうことでしょうかと、こういう項目があるわけですけれども、それにはやっぱり、その自分たちの判決で被告人の運命が決まると、で、責任を非常に重く感じるというのが六五%ぐらいあるわけですね。それと同時に、冷静に判断をする自信がないというのが、これも四五%ぐらいあるわけです。それと同時に、一番私がこれ心配しているのは、裁判の仕組みが分からないというのが、これも四二%ぐらいあると、こういっておられるわけです。まあ本当にそうだろうなというふうに思いますがね。
 まず第一にやらなきゃいかぬことは、この不安を払拭させるということではないかなというふうに思いますが、その払拭してもらう方便としてどういうふうなことをお考えになっておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
#12
○政府参考人(小津博司君) 御指摘のとおり、今後、国民の皆様方が抱いておられる裁判員になることへの不安を解消するということに重点を置いた広報啓発活動を実施してまいりたいと思っているわけでございますが、具体的にどのようなことをしていて、今後する予定かということにつきまして少し御説明させていただきますと、法務省といたしましては、最高裁判所、日本弁護士連合会などと連携協力いたしまして広報活動を行っているところでございますが、具体的には、広報用のパンフレットやリーフレットを配布いたしましたり、有名な俳優の方を起用したドラマ仕立ての広報用ビデオを制作、上映するなど、いろいろな工夫をしておるわけでございます。
 特に、全国の検察庁では、その組織力を活用いたしまして、検事正を始め多くの職員が地域の集まりや企業に説明に出向きます、言わば草の根的な広報活動を展開しておりまして、これまでにその説明会の回数は七千回を超えているところでございます。
 さらに、将来裁判員制度を支えることになります若い世代の方々への啓発にも取り組んでおりまして、学校への説明に出向きますほか、教え手でございます教員の方を対象にいたしまして、裁判員制度を題材とした教育教材を作成いたしましたり、法教育の進め方や裁判員制度についての説明を盛り込んだ研修なども実施しているところでございますので、今後とも鋭意取り組んでまいりたいと考えております。
#13
○谷川秀善君 どうぞ大いにやっぱりそういう啓蒙を十分やっていただきたいとお願いをしておくところであります。
 やっぱり、今まで裁判というと、国民はせいぜいよくかかわっても裁判を傍聴するぐらいの程度で、余りそれ以上今までは踏み込んで裁判を考えたということはないと思うんですよ。しかし、今回はこの制度が実施されますと、専門の裁判官と一緒になって裁判に参加をするといいますか、当事者になるということでございますので、なかなかそれがうまくいくのかどうかというのは、私も本当にちょっと先行きどうなるのかなということは心配なところでございますが、これはやっぱりこういう制度にするということになったわけですから、是非国民の皆さん方にも司法に対する関心と、やっぱり参加意識というものを十分持ってもらいたいというふうに思っておるわけです。
 そこで、こういう制度が諸外国にもいろいろあるようでございますけれども、アメリカの陪審制度又はフランスやイタリアやドイツの参審制度というのがあるようでございますけれども、この制度はどういう制度なのか、ちょっと簡単に説明していただきたいのと、日本の裁判員制度とはどう違うのかということも含めて御説明をいただきたいと思います。
#14
○政府参考人(小津博司君) まず、アメリカでございますけれども、アメリカは地域によって実際の制度が若干異なる面がございますけれども、陪審制度を採用しているわけでございまして、一般に有罪無罪については陪審員だけで評議をして決定しているというところが大きな特徴でございます。量刑につきましても地域によって若干異なりますが、裁判官が量刑については行うというものが多いと承知しております。また、被告人は一般に陪審裁判を受ける権利を放棄することができるとされておりまして、また陪審員は事件ごとに選任されております。連邦裁判所におきましては、その陪審員の人数は十二名でございます。
 それから、フランス、イタリア、ドイツの制度が参審制度であるというように分類されておりますけれども、裁判官と参審員が一つの合議体を形成してともに評議いたしまして有罪無罪の決定と量刑を行うという点で共通しております。
 ただ、参審裁判の対象事件は、フランスやイタリアでは一定の重大犯罪に限られておりますのに対して、ドイツでは軽微な犯罪を除いて原則としてすべての事件とされている点において異なっております。参審員の数もそれぞれの国で違うわけでございます。
 さて、日本の裁判員制度でございますけれども、このように国によっていろいろと異なりますので、どれと似ている、違うということはなかなか一口では難しいんでございますが、典型的なもので申しますと、アメリカの陪審制度とドイツの参審制度というものを念頭に置いて考えますと、アメリカでは有罪無罪についてだけ、しかも、その裁判員でない方と申しますか、陪審員の方だけで決めるというところが大きな特徴でございまして、この点は、裁判官とその裁判員が一緒になって、しかも有罪無罪と量刑についても決めるというところが日本の裁判員と大きく違うところだろうと思っております。
 それから、ドイツの参審制度につきましては、参審員の方と裁判官の方が一緒になって有罪無罪と量刑を行うという点では日本の裁判員に似ておりますけれども、この方々は純粋な抽せんということではなく、しかも、参審員になりますと一定期間その参審員として仕事を行うという点が日本の裁判員制度とは違うのかなというように理解しているところでございます。
#15
○谷川秀善君 ありがとうございます。
 日本の場合はちょっと特殊だと思いますが、参加をし、量刑もすると。有罪無罪と同時に量刑もするということですから、大分、何といいますか、負担といいますかね、がちょっと重いんではないかなという感じがいたしますが、その辺のところは十分また、何といいますか、PRなり教育が必要だろうというふうに思いますし。
 それで、この最高裁の調査では、それにもかかわらず、大体、参加するとしてもどれぐらい参加していただけますかと聞きますと、大体三日ぐらいだと、こう言っておるんですね、この日数は。せいぜい三日ぐらいで、もう四日も五日も一週間もというようなことは大変だと、参加するとしても。
 そうすると、三日で裁判終わって量刑までしてしまうということは非常に、我々、今までの感覚からしますと大変な、ハードといいますかね、非常に大変なことじゃないかなというふうに思うんですけれども、これは今までの裁判は大体どれぐらいで結審をしているんでしょうか。三日で結審しているとすれば、そんなに裁判長く掛かるというような批判が一般国民の間にあるとは思えないんでね。大体平均して、それは案件によっては全部違うんだろうと思いますけれども、平均して大体どれぐらいで結審を今、一審ですね、結審しているのか、その辺のところをちょっと説明いただけませんでしょうか。
#16
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 平成十八年の統計で申し上げますと、裁判員対象事件の平均審理期間は八・〇か月でございます。
#17
○谷川秀善君 八・〇か月ですか。三日とえらい違いますな、これ。とんでもない話じゃないですか、これ。本当にこれ三日でできるんでしょうか。その辺どうなんですか。
#18
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判員対象事件についての平均審理期間は先ほど申し上げたとおりでございますが、国民の方々に裁判員として参加していただく場合に、このような審理期間のままですととても最後までお付き合いはいただけないと考えております。委員御指摘のとおりだと思います。
 この点、平成十六年の刑事訴訟法改正によりまして、充実した公判の審理を継続的、それから計画的かつ迅速に行うため、公判前整理手続が新設されて、実際の裁判でもその制度を活用するなどしてまいりました。その結果、公判前整理手続を実施した場合はそうでない場合と比べまして、自白事件の第一回公判以後の審理期間が三分の一程度までに、否認事件の第一回公判以後の審理期間が五分の一程度までに短縮されております。
 また、裁判所としては、国民の方々に無理なく裁判員として参加していただけるよう、法務省や日本弁護士連合会などと協力しながら、模擬裁判を繰り返し実施するなどして実証的な検討を重ねてきております。その結果、現実の裁判員裁判においても、事実に争いのない事件や標準的な否認事件につきましては三日以内で審理を終えることができるのではないかと考えております。
#19
○谷川秀善君 今の説明をお伺いしてもちょっと納得がいきませんが、この辺、幾ら今まで、まだ実施まで二年ぐらいあるわけですけれども、ちょっと今の説明を聞いておりますと、むちゃくちゃ乖離し過ぎていますよ、八か月と三日ですからね。まあ八か月というのは、審理しているのはずっと、実質審理が何日掛かっているのかということもあるんだろうと思いますけれどもね、ちょっと乖離し過ぎていますから、その辺よく、また後日お伺いいたしたいと思いますけれども、ちょっと慎重によく検討してもらいたいというふうに思います。
 それと、この事件、大体、裁判員が裁判に携わる対象となる案件ですけれども、聞いていますと、何といいますか、強盗致傷だとか殺人だとか、非常に重大な事件のようでございますけれども、これで対象となる件数は三千六百二十九件ぐらいだと、こう言われていますね。そうすると、これでどれぐらいの裁判員が必要になるんでしょうか。
#20
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、平成十七年度の裁判員対象事件の新受事件数は三千六百二十九件でございますが、一つの事件で六人の裁判員の方が選ばれるといたしますと、年間二万一千七百七十四人の方が裁判員として裁判員裁判の手続に御参加いただくということになると思います。
#21
○谷川秀善君 そうすると、ざっと計算すると、裁判員になるといいますか裁判員に当たるという確率が大体三千五百人ぐらいじゃないかなというふうに思いますが、これは割に案外な確率ですね。そんなにめったに当たらないのではないかなと思っておりましたが、三千五百人に一人というと、まあこれは大変な確率じゃないかと思いますよ。そういたしますと、国民に非常にある意味では負担といいますかそういうものも、これは国民の義務ですからやむを得ないとしても、大変な負担になる場合もあるのではないかと思いますが。
 そうすると、例えば仕事がもう忙しくてどうにもなりませんということで辞退することができるのかどうか、その辺のところはどうなんでしょうか。
#22
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判員の辞退事由については、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律十六条が規定をしておりますが、単に仕事が忙しいというだけでは辞退事由には該当しないと考えられますが、例えば、会社に勤務している従業員がその会社における重要な仕事を担当していて、自らがその仕事を処理しなければ会社に著しい損害が生じるような場合には辞退をすることが認められることがあると思います。
#23
○谷川秀善君 そうすると、辞退するためにはどういう手続が要るんでしょうか。
 例えばだれが証明するのか。仕事が忙しいといったって、それは、みんな仕事は忙しいでしょう。忙しくない人はいないと思いますよ。そうすると、どういうことで辞退ができるのか、だれがそれを証明するのかという点はいかがでございましょうか。
#24
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判員の選任の手続の段階では、その御本人の方から、こういう事情で仕事が忙しいんだと、その時期にはとても裁判員としては参加できないんだという事情を申出していただいて、それを裁判所がそのとおりだというふうに認める場合には辞退を認めるということになると思います。
#25
○谷川秀善君 そうすると、いろいろと、その人が辞退するとまた次の人と、こういうことになるんでしょうけれども、それが全部次々とこう全部辞退していったとしたら結局どうなるんでしょうか。裁判をずっとずらすんですか、例えば。その辺は強制的にもうこれじゃどうしようもないからくじでも引かすとか何かするのか、その辺のところはどうなんでしょうか。
#26
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判員の選任手続につきましては、事前に質問票等をお送りしたり調査票をお送りしたりしまして、そういうところにいろいろと申出の内容などを書いていただく。それで、これでもうあらかじめこの方はとても忙しくて裁判員に参加できないというふうに判断しました場合は、そういう方は除きまして、そして実際の裁判員選任の当日にはそれ以外の方々を何十人かお呼びして、その中で質問手続を行って、最終的に必要な方々を裁判員として選任するということになると思います。
#27
○谷川秀善君 それは事前にいろんな書類にいろんなことを書いていただいて選任をするんだと、こうおっしゃいますが、これは一般の人対象ですから、その書類が非常に難しいとしたら、書き込める人は、必ずしも全員が書き込めるとは限りませんよね、本当に。だから、むしろ、私はやっぱり、一般の人というのは大体あれですよ、あなた方の感覚で考えておられるような人と違いますよ。義務教育修了程度を対象にしてちゃんと辞退するとかなんとかも考えておいてもらいませんと、書き込むこともできないという間に時間がたっていくということは当然考えられますよ。その辺のところは簡単なものにしてもらわないと非常に困ると思うんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
#28
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、そういった質問票等にお書きいただくことについては簡単なものにさせていただきたいと思っております。また、その辞退事由につきましては、今最高裁ではアンケート等もやりながら、どういう業種あるいはどういう方々がどういうような時期で辞退、とても裁判員に参加できないかというようなところを事前に詳細に把握した上で、それも参考にさせていただいて、お申出について的確に判断をしてまいりたいというふうに考えております。
#29
○谷川秀善君 その辺のところはどうぞよろしくお願いをいたしたいと思いますが、よろしくお願いします。
 それと、これはまだ決まっていないんだろうと思いますけれども、一日どれぐらい拘束といいますか、時間的に拘束があって、それで日当どれぐらいお支払いになるのか。これも相当影響すると思いますよ、これ。だから、その辺どういうふうにお考えになっておられるのか、お伺いしておきたいと思います。
#30
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判員に対する日当につきましては、裁判法上、裁判員及び補充裁判員には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給するとされているところでございまして、最高裁判所規則で定めることとされておりますが、具体的な金額につきましては裁判員の方の果たしていただく職責を十分に踏まえ、国の公的事務へ参加する方への保障、あるいは諸外国における陪審員、参審員に支払われる日当額の実情、それから拘束される時間等、総合的に勘案した上で適切な額を定めてまいりたいと考えております。
#31
○谷川秀善君 今具体的に日当どれぐらいだと言えというのは非常に酷だろうと思いますけれども、それ相応な額に是非お定めをいただきたいというふうに思います。
 いろいろお伺いをいたしたいことたくさんございますんですが、もう時間が来てしまいましたので、最後に、この裁判員制度のキャッチフレーズ見ていますと、私の視点で、私の感覚で、私の言葉で参加しますと、こうなっているんですよね。これ一つもぴんときませんね。私の言葉、だれも参加したい言うてないんですから、正直言うて。どうもこれ大分このキャッチフレーズから懸け離れているんではないかというふうな気もしないわけではございませんが、これは裁判員制度は二年先に実施するわけですから、是非これはしっかりこのキャッチフレーズに合うように、国民の皆さんが思うようなことをやっぱり是非今から準備をしていただきたいということで、その決意を最高裁と法務大臣、それぞれからお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
#32
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判所としては、裁判員裁判が国民の皆様にとって参加しやすいものとなり、円滑に実施を迎えることができるよう、引き続き法務省や日本弁護士連合会などと連携を取って実施に向けて万全の準備を行っていく所存でございます。
#33
○国務大臣(長勢甚遠君) 裁判員制度施行まであと二年になりまして、いろいろ体制あるいは裁判手続、今御指摘になったようなことも含めて整備をしなければならないことがまだまだございます。それを鋭意やると同時に、御指摘がありましたように、裁判員に選任された場合に参加をしてもらうという意識を国民の皆さんにたくさん持ってもらうようにすることが最も大事だと思っております。
 お話しのように、仕事の関係その他都合の悪いという事情についても配慮しなきゃなりませんが、何よりも難しい仕事で責任が重い仕事だという不安感が非常に強いというふうに私は感じておりまして、やはり皆さんが、国民の皆さんが別にそんなに気を張って、肩ひじ張らして裁判官と同じことしなきゃならないんだと思い過ぎられると、かえって裁判員制度の趣旨にも合いませんので、そういう心理的な不安感を、負担感を軽減するように広報等を通じて努力をしていきたい、その体制強化をしていきたいと思っておりまして、是非また先生方にも御協力をいただきたいものだと思っております。一生懸命やりたいと思います。
#34
○谷川秀善君 ありがとうございました。
 終わります。
#35
○前川清成君 おはようございます。民主党の前川清成でございます。
 谷川先生の和やかな質問の後でちょっとやりにくいんですけれども、一つだけ和やかな話題を御報告させていただきますと、先生方、本当に統一地方選挙お疲れさまでございました。私たちの法務委員会にいらっしゃった荒井正吾さんですけれども、奈良県で三十七万二千七百四十七票取って知事に当選されましたこと、皆様方にも御報告をさせていただこうと思います。
 それで、最初ですけれども、前回、木庭理事の質問に答えて法務大臣官房司法法制部長の菊池さんが、木庭理事の、司法試験の合格者を増やせば増やすほど落第者も増えるという現実だと聞いているけれども、この辺はどういうふうに考えていますかという質問に対して、菊池さんは、数が増えたことが原因で今の御指摘のその修習生の落第者が増えたという因果関係があるかどうかということは、確かな証拠があるとは聞いておりませんと、こういうふうに答弁をしておられます。
 そこで、菊池さんに、ここで言う確かな証拠というのは何のことか、お答えいただきたいと思います。
#36
○政府参考人(菊池洋一君) 司法試験の合格者数とそれから司法修習の不合格者あるいは合格留保者との関係でございますけれども……
#37
○前川清成君 違う、証拠の意味。
#38
○政府参考人(菊池洋一君) 五十八期と五十九期を比べますと、合格者数が、おおよそでございますが千二百から千五百に増えて、不合格者及び合格留保者の数もそれに応じて増えているわけでございますので、司法試験の合格者が増えたことが原因で合格留保者等も増えたという可能性はあるというふうに思っておりますけれども……
#39
○前川清成君 委員長。
#40
○委員長(山下栄一君) まだ途中。
#41
○政府参考人(菊池洋一君) 他方で、過去の例を見ますと、五十三期、五十四期のときに司法試験の合格者数がおおよそ八百から千に増えたときは合格留保者の数がかえって減っているという関係にございますので、司法試験の合格者数とそれから合格留保者等の数との関係が原因と結果の関係にあるというふうに断定することは難しいと、そういうふうに考えているところでございます。
#42
○前川清成君 委員長、ちょっと注意していただきたいんですけれども、私の聞いていないことに答えているんです。私は今、分析してくれという話をしたんじゃなくて、答弁の中で証拠というふうにおっしゃっているので、その証拠の意味について答えろと、こう言っているわけです。こういう答弁だったら質問続けられません。ちょっと厳しく注意した上で、証拠というのがどういう意味なのかを答えさせてください。
#43
○委員長(山下栄一君) 質問者の意図をよく踏まえて答弁してください。菊池部長。
#44
○政府参考人(菊池洋一君) お尋ねの点の因果関係について、証拠というのは、何と申しましょうか、裁判で言うようなはっきりした証拠というものがあるわけではございません。ただ……
#45
○前川清成君 違う、証拠の意味を答えろと言ってんのや。
#46
○政府参考人(菊池洋一君) 因果関係があることを示す事情というようなはっきりしたものがないという趣旨でお答え申し上げたわけでございます。
#47
○前川清成君 僕は今証拠の意味を答えてくださいと言っているんです。どういう意味で前回木庭理事の質問に対して証拠という言葉を使ったのか。ここで言う証拠という日本語が指す意味を平易に答えてください。もう分析はしなくていいです。
#48
○政府参考人(菊池洋一君) 証拠という言葉を裁判のような厳密な意味での証拠というふうに……
#49
○前川清成君 あなたが使った日本語だからね。
#50
○政府参考人(菊池洋一君) お答え申し上げたわけではなくて、両者の関係を示す確実な事情というものがないという趣旨で証拠という言葉を使ったわけでございます。
#51
○前川清成君 証拠というのは、あなたのようなエリートの官僚には分からないかもしれないけれども、降ってわいてくるもんですか。
#52
○政府参考人(菊池洋一君) 降ってわいてくるというようなそういうものではなくて、一定の事実があればおのずと証拠というものはあるものではなかろうかというふうに思っております。
#53
○前川清成君 証拠というのはだれかが集めないと手元に来ないものではないですかという質問。
#54
○政府参考人(菊池洋一君) 今の点は御指摘のとおりだと思います。
#55
○前川清成君 それでは、法務省は、例えば司法試験の合格者と二回試験の落第者との関係について証拠を収集しているんですか。
#56
○政府参考人(菊池洋一君) 特に証拠を収集いたしてはおりません。
#57
○前川清成君 証拠を集めていないのに証拠がありませんというのはどういう了見なんですか。
#58
○政府参考人(菊池洋一君) 先ほど申し上げましたとおり、両者の関係を示す事情というのが浮かび上がっていないという趣旨でございます。
#59
○前川清成君 それでは、前回の発言を陳謝した上で訂正されたらどうですか。
#60
○政府参考人(菊池洋一君) 証拠という言葉を使ったことは不適切だったかもしれません。そこは訂正をさせていただきたいと存じますが、申し上げたかった趣旨は、先ほど来申し上げていますとおり、両者の原因と結果の関係を示す事情というものが必ずしも明確になっていないという趣旨でございます。
#61
○前川清成君 最高裁からいただいた資料ですけれども、昭和六十二年から平成二年までの四年間、司法試験の合格者数が合わせて二千六人です。これに対して合格留保者数は五名、率にしますと〇・二%になります。菊池さんが証拠がないと言い切る五十九期も含めて、平成十三年から十六年の合格者の総数は四千八百二十六名、うち合格留保者数は百八十一名、率にして三・七五%です。こういうのを動かぬ証拠とは言わないんですか。
#62
○政府参考人(菊池洋一君) 毎年の合格者数と合格留保者数等の関係を見てまいりますと、平成十二年の五十三期の方と翌年の五十四期の方を比べますと、五十三期の合格留保者数が十九名、五十四期の合格留保者の数が十六名。ただ、五十四期の場合には不合格者が三名いますけれども、そういう関係になっておりまして、ほぼ同様の二回試験の結果になっております。他方で、司法試験の合格者といいますか二回試験の受験者数は、五十三期がおおよそ八百人、翌年の五十四期がおおよそでございますが一千人と増えていると。
 こういった関係を見ますと、司法試験の合格者と合格留保者等の数の相関関係といいますか、があるというふうに断言するということにはためらいを感じると、そういうことでございます。
#63
○前川清成君 大臣、今の議論を聞いていただいていますかね。
 要するに、今極端な例外だけを挙げて言い逃れをしようとしているんですけれども、大きなトレンドとして申し上げれば、最高裁からもらった一番古い時期の合格者の四年分と最高裁からもらった一番最近の四年間、これを比較すると十五倍合格留保者が増えているわけです。〇・二%から三・七五%。この間に普通は因果関係があると。因果関係という言葉が適当でなければ蓋然性があるわけです。その一つの理由が、司法試験の合格者が増えているということもあるでしょうし、もう一つは司法修習の期間を短縮したということもあるわけです。
 私が申し上げたいのは、我が国の法曹養成に対して一体だれが責任を取るのかということです。合格者を増やすという国の政策がある。じゃ、それに裏付けるような手当てをしなければならない。一般論で言うと、これはだれにも分かる常識ですけれども、どんな試験であろうと合格者を増やせば合格レベルは下がります。合格レベルが下がった以上、法律家として世の中に送り出す前に今まで以上の教育なり、具体的に言いますと法律家であれば司法修習を充実させなければならない、これが普通の考え方、常識的な考え方。
 ところが、今、国は司法試験は法務省、合格者をどんどん増やしている。最高裁の修習期間を逆に減らしている。こうなると、世の中に送り出される法律家のレベルは下がるわけです。法律家のレベルが下がってその人たちが損をするんだったら自業自得かもしれません、表現が適当でないかもしれませんけれども。しかし、それによって迷惑を被るのは一般国民の方です。
 今の菊池さんのお役人根性丸出しの話を聞いていると、我が国の法曹養成に対して一体だれが最終的な責任を取るのかということが大変疑問に思ってくるわけです。大臣、いかがお考えでしょうか。
#64
○国務大臣(長勢甚遠君) 司法試験の内容また運営等々、最高裁において司法試験のレベルが下がらないように大変御苦労いただいておるものと思っております。
 今先生、一般論としておっしゃったことは懸念をされるべきことだろうと思いますし、そういうことも配慮しながらこれから進めなければならないと思いますので、またよく事情も聞いて検討させたいと思います。
#65
○前川清成君 今、僕は別に法務省の役人の皆さんの揚げ足を取るためにこういう話をしているんじゃなくて、前回の木庭理事に対する菊池さんの答弁というのが余りにも責任感がない。証拠がありませんとおっしゃって、じゃ証拠は集めていない。そんな全く他人事のような答弁をするというのが、我が国の十年先、二十年先、あるいは五十年先の法曹あるいは裁判所あるいは司法に対してどういう深刻な影響を与えるのかというのは十分御検討いただいた上で対応していただかなければならないと、こういうふうに思っています。
 今大臣から、大臣は突然のお尋ねでしたので、これに対する続きはまた別の機会にさせていただいて、法案の方に入らせていただきたいと思います。
 それで、今回、法案の提出者はこれは法務省ですけれども、成立したら法務省の手を離れて最高裁の方で解釈、運用されるわけですので、法文の意味についてもある程度は最高裁にお尋ねしたいと思います。
 区分審理決定や部分判決、さらには裁判員制度をどう運用していくのか、これは最高裁の責任ではないかと私は思っています。
 それで、最初にまず法文の七十一条について法務省にお尋ねします。七十一条一項に特に必要があると認められるときに区分審理決定すると書いていますが、この特に必要があるときとはどういう意味でしょうか。
#66
○政府参考人(小津博司君) お答え申し上げます。
 裁判員制度の下におきましても、複数の事件はできる限り一括した審理を行うことによって、事実認定のみならず、量刑判断に関しても同一の裁判員が判断できるようにすることが望ましく、また一括して審理することが訴訟経済の観点からしても合理的であると思われます。
 そこで、部分判決制度は、裁判員の負担を考慮し、やむを得ない場合に行う例外的な制度と考えておりまして、その趣旨を明確にするために、七十一条に書いてございますように、一括して審判することにより要すると見込まれる審判の期間その他の裁判員の負担に関する事情を考慮して、円滑な選任又は職務の遂行を確保するために特に必要があるというふうに規定したものでございます。
#67
○前川清成君 今ちょっとはっきり申し上げておきますけど、聞かれていないことをお答えになるのであれば、もう質問通告しませんよ。質問通告しているから事前にカンニングペーパーを用意して、聞かれていないことだらだら答えるんでしょう。今のは厳重に抗議しますし、これ以降の答弁で今のような余計なことべらべらおしゃべりになるんなら、今後一切質問通告はしません、法務省に対して。
 それでは最高裁にお尋ねしますけれども、七十一条一項で特に必要があるときとこう書いてありますので、区分審理決定をするというのは例外的な場合と、こういうことですね、最高裁。
#68
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 個別の事案ごとに裁判体が判断すべき事項だと思いますが、委員御指摘のとおり、例外的な場合であると思います。
#69
○前川清成君 そうであれば、併合事件であっても区分しない、こういうことになります。それで、区分審理決定する際勘案する事情としては、審理の期間が挙げられています。
 そこで最高裁にお尋ねしますけれども、この七十一条の一項に言う審理の期間、どの程度お考えでしょうか。
#70
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 その点は、実際にどのぐらいの日数というところは、現実にちょっと運用してみませんと一概にはちょっと今お答えするのは難しいかと思います。
#71
○前川清成君 それは、今、谷川委員の質問にもありましたけれども、正に制度の根幹にかかわることで、あなた方はこれを仕事にやっているからいいけれども、素人の方は、三日だったら我慢できるけれども、例えば一月と言われたら我慢できませんよ。だから、審理の期間というのは、裁判員が拘束を受ける審理の期間というのはこの裁判員制度の正に根幹にかかわる部分です。やってみないと分かりませんて、そんな無責任な答えありません。最高裁。
#72
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 私どもの考えておりますのは、審理に要する期間が著しく長くなる場合だというふうに考えているんですが、それが何日というふうに今数字で具体的にきちっと言えるかどうかは事案の内容にもよりますし、なかなか一概にはちょっと言いにくいというふうに申し上げます。
#73
○前川清成君 事案の内容なんて裁判員の皆さんには関係ないですよ。裁判員の皆さんにとっては、自分が仕事を何日休まなあかんのか、子育てを何日おじいちゃん、おばあちゃんに頼まなあかんのかと、その点ですよ。そんな、それは裁判所の理屈、裁判官の理屈。裁判員の側に立ったら今のは答えになっていません。
 もう一度、じゃ法務省、じゃ、もうこの条文は意味がないと、こういうことですか、今の最高裁のあれだったら。
#74
○政府参考人(小津博司君) 意味がないとは考えておりません。
 先ほど最高裁のお答えになった点も含めまして、具体的にそのような事情があるかどうかを個別の裁判所において御判断されるというように理解しております。
#75
○前川清成君 いいですか、これはもう時間もありますからあれですけれども、裁判官はそれが商売だから、別に十年掛かろうと五十年掛かろうと、五十年たったら定年になっちゃうけれども、十年掛かろうと困らへんわけですよ。国民は困りますよ。特に多くの先生のように、ビジネスの社会で第一線でやってこられた方は三日でもかなわぬと違います。
 そうしたら、ここ、今最高裁がおっしゃった著しい長期間というのはどれぐらいを指すのか。感覚で結構ですよ。例えば十日は、例えば実際の社会において働いている方は著しく長期です。しかし裁判所は違いますよね、裁判所は。そうしたら、例えば最高裁規則で何日程度と決めておくとか、あるいは最高裁の中の個別の裁判官に対する会同等で何日と決めておくとか、こんなのが必要だと私は思いますけれども、最高裁はきっとそんなのは必要ないと、こういうふうにお考えになっているんだろうと思います。
 併せて聞きます。
 七十一条は、期間だけではなくて、その他裁判員の負担に関する事情とあります。このその他裁判員の負担に関する事情として最高裁はどのようなことをしんしゃくしようとされているのか、最高裁にお尋ねします。
#76
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 事案が非常に複雑困難で公判開廷数なども多数に上るような場合で、非常に裁判員にとって負担が大きいというようなことも一つの事情として考えられるのではないかと思っております。
#77
○前川清成君 今おっしゃった多数というのは何回を指すんですか。
#78
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 先ほども申し上げましたが、これは裁判員の円滑な選任に支障を来すような場合のことを考えておりますので、何回というふうに言われましても、それが何十回とかそういうふうにすぐにちょっとお答えするのはちょっと難しいかと思います。
#79
○前川清成君 結局、この七十一条一項の条文というのは、裁判所に丸投げしてくださいと、そういう意味なんです。表向き、条文の字面だけを連ねますと、あたかも裁判員に親切なように、裁判員になる国民の皆さんの負担を軽減する、そういう趣旨で作りましたと、こうなっているけれども、今の最高裁の御答弁にすると、何十回であってももしかしたら呼び出され続けるかもしれないということなので、結局は裁判官への丸投げを認めろと、こういう条文にすぎないのではないかと私は今思います。
 七十一条一項ただし書で、被告人の防御に不利を生ずるおそれがあるときは、仮に多数回、何十回に及んでも区分審理決定しないと、こういうふうに書いています。七十一条ただし書に言う被告人の防御に不利を生ずるおそれがあるとき、これはどういう場合を指すのか、法務省にお尋ねをいたします。
#80
○政府参考人(小津博司君) お答え申し上げます。
 例えば一つの例といたしまして、被告人が各事件について共通の主張をしていて、そのためにそれぞれの事件を一括して審理しないと被告人の防御にとって不利益になるというような場合が一つの例として想定されると考えております。
#81
○前川清成君 そういう場合は、何十回掛かろうと裁判員の皆さんに御苦労をいただくと、こういうことですね。
#82
○政府参考人(小津博司君) 御指摘のとおりでございまして、その場合には、その全体の審理期間をできるだけ短くできるように公判前整理手続等でやっていくと、こういう考えでございます。
#83
○前川清成君 それで、例えばこの七十一条の一項で、主語は裁判所と、こうなっています。しかし、この区分審理決定するかどうかというのは訴訟手続に関する判断ですから、ここに言う、七十一条一項に言う裁判所には裁判官だけを指して裁判員を含まない。七十二条一項に言う裁判所も同様だろう、七十三条も同様だろうと、こう思います。
 七十八条、これは主語がないんですが、いずれも主語は裁判所だろう、こういうふうに思います。
 八十六条には主語で裁判所はと出てきますが、これはきっと裁判員を含む趣旨で使っておられると。
 そこで、お尋ねしたいんですが、法務省に。どうして一見して分かるような書き方をしなかったのでしょうか。
#84
○政府参考人(小津博司君) 区分審理決定が行われますときにはまだ裁判員が選任されていない段階でございますので、このような表現をしたわけでございます。
#85
○前川清成君 今のお答えは間違っていますよね。七十二条の一項においては既に裁判員が選任されているわけです。はい、法務省。
#86
○委員長(山下栄一君) 小津局長。
#87
○前川清成君 時間。
#88
○委員長(山下栄一君) 小津局長、どうぞ。
#89
○政府参考人(小津博司君) 条文上は、裁判員法の六条によりまして、それは裁判官だけの決定であるという規定がございます。
#90
○前川清成君 じゃ、もう僕、これから通告しませんよ。裁判員法の六条は僕、今言ったじゃないですか。僕の質問はそうじゃなくて、例えば同じ裁判所という日本語を使っていながら、七十二条と八十六条とでは明らかに違うでしょうと、裁判員を含むかどうかに。なぜ区別した書き方をしなかったんですかと法務省にお聞きします。
#91
○政府参考人(小津博司君) それぞれのところに書く方法もあろうかとは思いますが、申し上げましたように、この法律では第六条にまとめて書いたと、こういうことでございます。
#92
○前川清成君 裁判員法の六条に八十六条の裁判所は裁判員を含まないと書いてあるんですか、書いてないでしょう。もういいです。
 それで次、七十二条一項に言う被告人の主張、これはどういう意味ですか。
#93
○政府参考人(小津博司君) 七十二条における被告人の主張ということで一つ念頭に置いておりますのは、被告人が当初幾つかの事件について事実を認めていなかったけれども、それが変わって例えば全部を認めるようになった場合に区分審理が必要でないとか、区分審理の区分の仕方を変えた方が相当であるという場合があるということでございまして、被告人の主張というのはそういう意味でございます。
#94
○前川清成君 七十一条は審判と書いてあって、七十二条は今おっしゃったように審理になっているんですね。どうして七十一条は審判で、審判の期間、審判するという審判で、七十二条は審理なんでしょうか。
#95
○政府参考人(小津博司君) 審判という用語は判決、つまり裁判という形で判断をするということも含んでおりまして、審理はそれに至るまでの審理でございます。
#96
○前川清成君 七十三条は審理という日本語を使っています。ですから、七十三条例えば一項は審理と書いてあります。今の御説明であれば、この場合には判決する場合を含まないということになるのかもしれないけれども、七十三条一項はただの審理だけではなくて判決する順番、区分判決する順番も含めて決めると、こういうことであるから、今のお答えが矛盾しているのではないかと思うんですが、違うんですか。
#97
○政府参考人(小津博司君) 七十三条に区分事件を審理する順序と書いてございますけれども、これは区分審理を行っていく順序を定めると、こういう意味でございます。
#98
○前川清成君 だから、七十三条の一項は、審理する順番だけ決めて、もう部分判決はしない、部分判決する順番は決めないと、こういう意味なんですね、今のお答えはね。だったら、もう結構です。
 それで、七十二条の一項で区分審理決定が取り消されると、今まで例えばA、B、Cという起訴事実があって、Aについてだけ、ああ自分は、裁判員の皆さんにとってはですね、Aという起訴事実についてだけ自分は担当したらいいなと、だからそれに備えて三日会社を休もうとか予定しておられる。ところが、七十二条の一項で、今お答えになったように、裁判員法の六条があって、裁判員の知らないところで、あずかり知らないところで裁判官だけが取消しをしてしまうと。すると、AだけではなくてBもCもDも携わることになって負担がまた何倍にもなってしまう。この負担についてはどうお考えになっているんですか。
#99
○政府参考人(小津博司君) まず、恐縮でございますが、冒頭に、先ほど申し上げました区分事件の審理をする順番というのは、審理をすれば区分事件の判断を示すわけでございますので、それも含めた意味としてこの法律は使っております。
 次に、ただいま御指摘の点につきましては、被告人の主張がそのように変わったということを考慮するわけでございますけれども、果たして、その場合に非常に長く掛かってしまうということと併せて考えたときに、区分審理決定を取り消すことがいいのか変更することがいいのかということを裁判所が御判断になると考えております。
#100
○前川清成君 すると、今七十三条の一項でどさくさに紛れてごまかそうとなさいましたけれども、区分判決も含むのであれば、先ほどのお答えに従えば、ここは審理ではなくて、七十三条一項は審判と書くべきだったんですよね。これは、じゃどうされるんですか、修正されるんですか。
#101
○政府参考人(小津博司君) これは、七十一条におきまして審判の期間というように言っております。これは、最後の判断に至るまでの期間ということをはっきりさせるために審判という言葉を使ったわけでございます。
 順序ということでございますので、どのような順番でやるかという手続面に特に着目いたしましたので、ここは審理という言葉を使ったと、このようなことでございます。
#102
○前川清成君 もういいです。これは議事録に残って、五十年先、百年先の研究者の皆さんも見ていただけると思います。
 七十三条の一項は、今法務省お答えになったように、区分判決の順序も含んで書いてあるのであれば、審理という書き方ではなくて審判と書くべきであったということを私は申し上げておこうと思います。
 それで、このいわゆる裁判員法は平成十六年の五月に成立をしました。まだ施行されていません。それにもかかわらず、どうして今回改正されるのかという点について法務省にお尋ねしたいと思います。
#103
○政府参考人(小津博司君) この問題につきましては、司法制度改革推進本部の下に設置されました裁判員制度・刑事検討会において議論されたわけでございましたが、成案を得るに至らず、その検討会がまとめました骨格案におきましても更に検討することとされておりました。また、国会におきましても、当時この問題が取り上げられまして、政府としては、更に検討を続け、必要があれば裁判員法の施行の前に法改正したいという旨の答弁をさしていただいたところでございます。
 これを受けまして法務省として鋭意検討を進めてまいりまして、このたび成案を得るに至りましたので、裁判員制度が始まるのに先立ちまして法整備をお願いしたいと考えているところでございます。
#104
○前川清成君 この参議院法務委員会の附帯決議もあったんですけど、今の御答弁には一言もお触れになりませんでした。附帯決議を法務省はその程度に考えているんだなということがよく分かりました。
 それで、最高裁と法務省にお尋ねしたいんですが、この改正で裁判員に対する準備は大体終わって、もうこのまま、法制度としてはこのまま施行されるということでよろしいですか。
#105
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 法制度につきましては、最高裁としてはお答えする立場にはございませんので。
#106
○政府参考人(小津博司君) 法律としては、現在私どもで考えているのはこの法律だけでございますけれども、この後、政令を作る必要があると考えております。
#107
○前川清成君 最高裁の刑事局長という、正に私からしたら雲の上の人に対して言うのは失礼ですけれども、法律を運用されるのは最高裁なんですから、法律については言う立場にありませんなんということを国民の皆さんが聞くとがっかりすると思いますよ。皆さん方がベストと思う制度を積極的に法務省あるいは国会に私は提案すべきだし、もっとはっきりと意見をおっしゃって、このままだったら、例えばですよ、このままだったらやっていけませんとか、このままだったら国民の負担が大き過ぎますというようなことを言うべきだと思います。あるいは、いつも予算あるいは裁判所の裁判官の定員のときにも問題になりますけれども、もっと裁判官を増やしてくれとか予算を増やしてくれというような話も最高裁は積極的に私はなさるべきだと思っています。
 それで、最高裁の方から「裁判員制度」というブックレットをいただきました。この中で、島田仁郎さん、最高裁長官がごあいさつをされています。この中には、裁判員制度の導入によって、刑事裁判はより分かりやすく、迅速なものになりますと、こう書いてあるんです。
 そこでお尋ねするんですが、裁判員制度を導入したら、その結果として当然に、すなわち他の手だて等何もなしで迅速な裁判が実現される、そんなもんなんですか。
#108
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 裁判員法五十一条は、裁判官、検察官及び弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものに努めなければならないと規定しております。
 そこで、裁判員裁判においては、裁判を職業としない一般の国民の方々に参加していただくことから、審理に長時間を掛けることはできません。そして、そこで、公判前整理手続等の新たな制度を活用して、開廷前に争点及び証拠を整理して、証拠調べを効率的に行うための審理計画を立てて、その上で、連日的開廷により集中審理を行うということにされております。そうしますので、私どもとしては、その集中審理を行うように今後も検討し、運用を考えてまいりたいと思います。
 また、法律の専門家でない一般の方々、国民の方々に証拠書類を詳細に読み込んでいただくということは期待できませんので、公判廷で心証を取れるような証拠調べに変えていかなければいけないと考えております。そうすると分かりやすい審理になるというふうに考えておりますので、その点については十分努力をしていきたいと思っております。
#109
○前川清成君 そうであれば、最高裁の長官に対して言うのはおこがましいんですが、裁判員制度の導入により、分かりやすく、迅速なものになりますでなくて、裁判員制度が導入されるので、分かりやすく迅速なものになりますよ、一生懸命頑張りますと、こう書くのが正直な日本語で、ちょっとこの最高裁の長官のごあいさつはうそが入っているように私は思います。
 それで、先ほど谷川委員の御質問に対して、裁判員対象事件の平均審理期間は八・〇か月とお答えになりましたけれども、このブックレットによると八・三か月になっています。年度が違うのかなと、こういうふうに思ったんですが、対象事件の数については谷川委員の方から三千六百二十九件と、正にこの十七年度の統計がありますので、どうなっているのかなというのはまず指摘だけしておきます。
 それで、ちょっと谷川委員の方からもありました。平均審理期間が八・三か月ですが、否認事件であれば十三・一か月で、平均開廷は九・四回になります。連日開廷をするというふうに法律で定められましたけれども、文字どおり毎日毎日やるというわけにはいかぬと思います。それで、今最高裁が準備のためにしておられるイメージをお尋ねしたいんですが、例えば否認事件であれば裁判員はどの程度の期間、何日置きに、何回裁判所に行かにゃならぬのか、一回行ったらどれぐらいの時間拘束されるのか、この辺どういうふうにイメージしておられるのか、お尋ねしたいと思います。
#110
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 否認事件と申しましても、非常に複雑で証拠資料も多くて長時間掛かるものもございますし、あるいは、例えば殺意を否認している、それ以外のところは全部争いがないとかいうような事案もございまして、一概にはなかなか申し上げることはできませんが、先ほど多くの事件は三日、否認事件等でも五日以内に終わるものが多いというふうに申し上げた、三日以内に終わるものが多いというふうに申し上げました。これは、実は今までの実際の審理の審理時間を重ねて申し上げたんですが、例えば否認事件で五日というような見込みがあった場合に、五日連続しておいでいただくという場合もあるかもしれませんし、あるいはある週、最初の週は二日間、次の週は三日間と、これは逆の場合もあるかもしれませんし、場合によっては一日置きというような場合もあるかもしれませんので、それはその事案に応じて検討してまいりたいと思っております。
#111
○前川清成君 審理期間が十三・一か月とか開廷回数が九・四と、実はこれは平均です。裁判員にとって困るのは、異様に長い裁判に、言葉適切でもありませんが、巻き込まれてしまったとき、三年あるいは五年、十年という裁判がいろいろあります。その裁判員に選ばれたばっかりに商売が傾いてしまいましたとか、人生が狂ってしまいましたとなったら実は困る。しかし、真実は明らかにしなければならないし、無辜の被告人を処罰することもできません。
 お尋ねしたいのは、結論だけで結構ですけれども、どのようにして裁判員の負担を極小化し、かつ真実を明らかにするというこの裁判、刑事裁判の目的を達成するのか、ここをお尋ねします。
#112
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 議員御指摘のように、どうしても事案が複雑な事件はある程度の期間が掛かることになろうかと思います。ただ、その場合でも、とにかく公判前整理手続を十分に充実させて、争点と証拠を絞って、厳選して、できる限り裁判員の方に負担の掛からないような審理を検討してまいりたいと思っております。
#113
○前川清成君 何か心構えばっかりで、ちょっと何かあれですよね、法律家の議論なのかなという気がしませんか。道徳の時間じゃないんですからね。
 それで、例えば長期裁判の例を一つ挙げたいと思うんですが、宮崎勤、連続幼女誘拐殺人事件がありました。これは一九九〇年三月三十日に東京地裁で第一回の公判が開かれまして、一九九七年の四月十四日、三十八回の公判で死刑の判決が言い渡されました。七年ぐらい掛かったわけです。この裁判の長期化した理由は、私なりに、中身知りませんが、報道等で見ると、三通の鑑定書が出ています、その責任能力に。これは、裁判員制度になりますと、三通鑑定書が出て、どの鑑定書が正しいのか、だから責任能力についてどう判断するのか、ここを裁判員も判断しなければならないのかと。そうであると、一体どんな基準でこの鑑定書を見ていったらいいのか、裁判員の方々にどう説明していくのか。
 そういう、何というんですかね、専門的な知見を要する事実認定に対してはどう対応するおつもりなのか、最高裁にお尋ねします。
#114
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 委員御指摘の点は、今、責任能力に関する鑑定書を例にお出しになられたと思います。確かにこれは非常に難しい問題でございまして、我々裁判官でも判断は相当大変なんでございますが、一般的には、鑑定の手法とか鑑定の内容が合理的かどうか、それから鑑定が前提とした事実関係に誤りがないかどうか、そうしたものを、あるいは鑑定人の資質や能力や経験など、そういったものを総合して判断することになろうかと思います。
 それで、一般の国民の方から裁判員になっていただきますと、その鑑定の内容を御理解いただき、しかも判断をしていただくためには、非常に今までのような膨大な例えば鑑定書をお読みいただくというわけにもまいりません。それは、やはり専門家の方に例えば法廷に来ていただいて分かりやすく御説明をいただくとか、あるいは鑑定書の作り方ももっと端的に分かりやすいものにしていただくとか、こういったことを今私どもいろいろと検討しているところでございます。
#115
○前川清成君 刑事裁判の進め方自体も考えていかなければならないのかなと私は思っています。
 精密司法という言葉があって、法務省の皆さんはそれは自分たちに対する褒め言葉というふうにお考えになっているのかもしれませんが、例えば覚せい剤取締法違反も営利を目的として輸入した場合であればこれは裁判員裁判の対象になります。そんなときに、例えば今までのような、被告人がどこで生まれて、勲章をもらったとか、収入が幾らで資産にどんなものがあるのか、そんな調書まで取って法廷に出す必要があるのかどうか。だから、ちょうど今日の法務省の御答弁のように、民事裁判でいう要件事実だけじゃなくて事情ばかりべらべらしゃべる、そういう刑事裁判の在り方自体ももう少し見詰め直して、要するに民事事件でいう要件事実に絞った審理という形に変えていかないと、裁判員の皆さん方の御負担はどうしようもなくなってしまうのではないかと私は考えています。
 そこの点について最高裁にお尋ねしたいんですが、いかがですか。
#116
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 議員御指摘のとおり、今までは精密司法というふうに言われたこともございます。今後は核心司法に変わっていかなければ、核心的なところです。具体的に申し上げますと、例えば有罪無罪、ある公訴事実について有罪か無罪かという判断、そして量刑に重要な影響を与えるような事情についての判断、そうした判断に中心的な審理運営になっていきませんと、なかなか今後、裁判員裁判の運営というのは大変かなというふうに思っております。
#117
○前川清成君 その点について、ただ、裁判所は出されると、こんなもの要らぬというわけにもいかぬでしょう。訴訟指揮で、例えば調書の内容についてもうこんなの出すなというふうに、そこまで検察庁に言うのか。あるいは法務省は今の最高裁の話を聞いて、これまでどおりの精密司法を続けていくのか、核心司法、今初めて私も聞きましたけれども、こっちに方向転換していくのか、この点法務省にお尋ねしたいと思います。
#118
○政府参考人(小津博司君) ただいま最高裁からお話がございました点につきましては、検察当局としても基本的に同じ問題意識を持って今後の検察活動の在り方を考えていかなければいけないと考えているものと承知しております。
 もちろん、その犯情は、適正な量刑ということがございますし、あるいはこれから犯罪被害者の皆様方がその事案の真相を知りたいと言われるときのその真相ということが厳密な意味での構成要件事実だけではないということもあろうかと思います。そこの辺りは、率直なところ検察の方も悩みながらではございますけれども、できる限り裁判員の御負担を少なくして適正な科刑が得られるような検察活動を目指していると承知しております。
#119
○前川清成君 刑事訴訟法の三百十九条に、言うまでもありませんが、任意性の問題があります。あるいは自白調書の信用性の問題もあります。この任意性なり信用性が争われるというのも、志布志事件のように裁判が長期化する典型的な例ではないかと思うんですけれども、この調書の任意性あるいは信用性については裁判員裁判が始まったときにはどのようにしていくんでしょうか、最高裁は。
#120
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 任意性の判断の基準は、裁判員裁判であってもそれからこれまでの裁判であっても同じであると思いますけれども、その立証は、立証責任を負う検察官の方でおやりになることです。その立証方法が裁判員の方にしっかり理解できるようなものになるのかどうか、そして、そこで裁判員が法廷で心証を取って、任意性の、判断は最終的には裁判官が行うわけでございますけれども、実際は信用性の判断とも絡みますものですから、裁判員とともに意見を聴きながらやるということになると思いますけれどもね。そういったところを分かりやすい立証がされるかどうか、そういうところを考えてまいりたいと思っております。
#121
○前川清成君 裁判員法の六条があるんで、任意性と信用性と裁判員が関与するかどうか違いはあるというのは分かるんですが、お話しになったように、任意性と信用性というのは絡んでくるんで、例えば公判期日を分離して、今日は任意性だから任意性のことだけ聞いて裁判員は来なくていい、今日は信用性やるから裁判員来てくださいなんていうような厳密に区分した裁判はできないでしょう。ですからお尋ねをしたんです。だから、その辺、任意性だから長くなってもいいというわけには実はいかないんじゃないかと私は思っています。
 それと、もう一つ大事なことは、きっと否認されると思いますけれども、日本の刑事裁判においては自白しないと保釈されません、実際の問題として。そんなことはないとおっしゃるかもしれません。しかし、否認事件ですと身柄事件になります。身柄事件になって、手錠、腰縄付きで被告人が法廷にやってきて、自殺を防止するためにネクタイもないし、ベルトもありません。ひげも伸びているかもしれない。そういう人が裁判員の前に連れてこられて、そういう姿形で私はやっていませんと、警察では厳しい取調べを受けましたと、こう言っても、これから被害者の皆さんも裁判にかかわってくるようになります。一方で、被害者の皆さん方お気の毒だなというような裁判員の方々もあるから、自白調書の任意性、信用性をどのように判断していくかというのもありますし、もっと大きく言うと、無罪推定の原則をどのように裁判員の皆さんに御理解いただくかというのも非常に難しいんだと私は思っているんです。
 最高裁、その点についての問題意識はおありでしょうか。
#122
○委員長(山下栄一君) 小川局長、簡潔にお願いします。
#123
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 身柄拘束をされている被告人が裁判員の前に現れますと、これは有罪ではないかというふうに思わせるのではないかと、そういう御指摘だろうと思います。
 この点につきましては、保釈の運用は、必ずしも先ほど委員御指摘のあったように自白しないと保釈しないというような運用はあってはいけませんし、否認だということで保釈しないということはあってはならないと思います。そういうことはないと思っておりますけれども、今のその身柄の拘束というのはまた別途、被告人の出頭の確保だとか、あるいはそういう勾留を継続する必要性の判断で身柄を拘束しているわけでございますので、あとは法廷でどのように被告人がそういう裁判員に、ひげ面とか今おっしゃいましたけれども、そういうような弊害といいますか、そういうことのないようにすることはちょっと今後検討してまいりたいと思っております。
#124
○委員長(山下栄一君) 前川君、時間が来ております。
#125
○前川清成君 裁判員制度をやっていくということは非常に裁判所にとっても、そして国民にとっても負担の大きいことではないかと思います。
 その中で、裁判員制度を取ったばっかりに無辜の者が処罰されるということが起こってはなりませんし、裁判員の皆さんの御負担が大きくなってもいけませんし、その点で最高裁の御苦労は多いと思いますけれども、もうあと時間がありませんので、十分御研究いただいて、御尽力いただくようお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
#126
○木庭健太郎君 法案の審議に入る前に、一問だけ法務大臣にお伺いしておきたいと思います。いわゆる三百日規定、民法七百七十二条二項の問題でございます。
 離婚後三百日以内に生まれた子供が前夫の子として扱われるこの民法規定、様々な論議もありまして、実態とともかく合っていないということで国民から見直しを求める強い声がある。法務省として一定程度のいろんな検討をしていただいた結果、法務省としては、離婚後に妊娠したことを示す医師の証明書があれば、現夫の子あるいは非嫡出子としての出生届を受理する、そういう通達の方向性も示していらっしゃるようでございますが、私どもの党そして私も、やはりこれだけで本当に今まで悩みを抱えていらっしゃったこうした人たちの救済ができるのかどうかということになると、一歩前進ではあるけれども、やはり少し幅が狭過ぎるのではないか。
 今、与党としてこれについて特例新法の提出、つまり、離婚後の妊娠だけでなく離婚前の妊娠の問題についても、ある一定要件がきちんとできればそれを認めるべきではないかというような特例新法の検討もいたしております。今、最終調整の段階で、大臣も御苦労いただいている点も重々承知ではございますが、やはりこういった問題は、そういったことで悩みを抱え困っていらっしゃる人たちにまず私たち政治家は立脚した上で、どれだけ改善ができるのかというのに取り組むべきではないかと私は考えております。
 大臣としてこの点どのようにお考えか、まず冒頭、これだけは伺っておきたいと思います。
#127
○国務大臣(長勢甚遠君) 今、与党におかれましては、今おっしゃいましたような特例規定を設けるということで御努力をいただいておると聞いておりますし、私は、この委員会におきましても立法ということではなくて運用で裁判による負担を軽減する方法を考えたいということを申し上げてまいりました。法務省として今対応したいと思っておるのは、御存じのとおりの内容でやりたいと思っております。
 もちろん、今後、党ともいろんな議論をしなきゃならぬことになるのかなとは思っておりますが、今先生も、実態に合わないというお言葉がございましたが、婚姻中に懐胎をした子は婚姻の相手の子というのが一項の原則でございまして、もちろんいろんな事情がそれぞれのことであるわけで、それを覆す手続としては裁判を通ずるということが今の制度の仕組みでございます。
 それについて負担が不合理に重いということは、その法の趣旨の範囲内で変えられるものは変えたいというのが私どもの考えておることでございまして、しかしこれを、裁判ということの手続を安易な形で必要なしということでやるということになれば、いろいろこの七百七十二条一項そのものの趣旨に反するということも想定されなきゃなりませんし、それに伴う社会的影響ということも考えなきゃいけない。また、やり方によっては窓口の混乱ということも考えなきゃならぬということをやっぱり心配はせざるを得ないわけでありまして、そのことは少し、私としてはそういうことを慎重に検討すべきだと思っておりますが、これから党でも、与党の中でもいろんな議論があるというふうに承知をしておりますので、いい結果が出るように議論が進めばいいなと思っております。
#128
○木庭健太郎君 大臣の基本的考え方お聞きをいたしました。
 ただ、今大臣も御指摘があったように、与党は与党として、この問題今自民党さんと公明党、私どもで検討させていただいておりますが、なお一層詰めた議論もさせていただきたいし、その議論を経た上で出たものについては真正面から受け止めていただきたい点も起きるかもしれません。
 ここは是非、真摯な形で我々の議論も見守っていただきたいし、野党も御議論なさっているそうでございますから、この辺も踏まえて是非いい形を、どうせ一つの新たな形を作るんであればそれを仕上げていきたいと、このように思っておることをお伝えをし、是非今後、様々な意味で御助言、御指導もいただきたいということも申し上げておきたいと思います。
 さて、裁判員制度一般の問題、また今回の法改正の問題、今様々な議論が行われたわけでございますが、私の方からも、まず冒頭、裁判員制度一般の問題について、やっぱりこの裁判員制度で今一番、二年後に始まるわけでございますが、国民の皆さんがなかなかこの裁判員制度について、あるということは認識はしていただくけれども、どうしても参加という問題について極めて強い不安感というか、参加したくないというような思いを持っていらっしゃる方もいらっしゃるというのは、これ各種世論調査を見ても事実でございまして、例えば、昨年の内閣府の世論調査見ますと、義務であっても参加したくないというのが確かに三三%もいらっしゃる。つまり、参加についてかなり不安感を持っていらっしゃる方が多いということでございまして、この国民の不安というものを当局として、法務省としてはどう認識をしているのか、まず伺っておきたいと思います。
#129
○政府参考人(小津博司君) 御指摘の世論調査等によりますと、皆様の不安といたしまして、自分たちの判決で被告人の運命が決まるために責任を重く感じるとか、冷静に判断できるか自信がないというような、言わば心理的なことを挙げられる方が比較的多うございますけれども、また、そのほかにも仕事に対する支障や、あるいは養育や介護に対する支障などを挙げられる方もいるわけでございます。
 制度の実施につきましては八〇%以上の方が知っていると言われますけれども、その具体的な内容について、もちろんまだ我々の周知徹底が不十分だという点が一つ、その心理的な不安が多い要因であろうとは思います。また、他方で、仕事に対する支障や養育や介護に対する支障などにつきましても、安心して参加していただけるような努力を全力でやってまいりたいと考えているところでございます。
#130
○木庭健太郎君 今局長がおっしゃった中で、特に女性の方になるんでしょうが、育児とか介護、これによって参加の懸念を持つというケースが事実あるのはそのとおりでございまして、じゃ具体的に今これについても取り組まなければならないと局長おっしゃいましたが、具体的にこういった、個別の課題ではありますが、育児や介護といったような問題によって懸念を持つ方々に対して具体的にどのような方向性、また、環境整備をなさるというんであれば、具体的にどのような環境整備をなさろうと考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。
#131
○政府参考人(小津博司君) まず、この裁判員法で、介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族等がおられる場合には辞退事由となっているわけでございますので、そのこと自体は我々がもっと周知しなければいけないと思っております。
 ただ、これは一般的に介護や養育をしておられる方がすべて辞退事由に該当するわけではございません。そこで、政府全体といたしまして、例えば、裁判員制度関係省庁等連絡会議というのがございますので、その枠組みの下で関係省庁等が連携してそのような問題を持っておられる方々が参加しやすいような環境整備に努めているところでございまして、またそういう内容につきまして法務省も、これらの保育や介護などのサービス、これからますますはっきりしてまいると思いますので、この内容について周知啓発にこれまでも努めてまいりましたが、これからも更に努めてまいりたいと考えているところでございます。
#132
○木庭健太郎君 先ほど仕事との懸念という話がございました。そんな中で、これをできる企業というのはそう多くはないんでしょうけども、最近は大企業、報道によりますとトヨタ自動車さんとかキヤノンさんですか、そういった大手の企業が裁判員の特別休暇制度の導入を検討してみようかというような話があっております。これはその仕事の面、先ほど御指摘がありましたが、そういった不安に対しては一つの新たな取組ではないかと思うし、そういう制度はつくっていただいて、徹底できるんであればより裁判員として参加しやすい形になるわけですから、これはやれるんであれば進めるのが当然であろうとも思うんですけども、法務省として、今も連携会議の話がありましたが、こういう民間の企業ですよね、実際裁判員を出していくのはそういうところになっていくわけですから、そういったところに対して働き掛けを行ってらっしゃるのか、また、今後どのように、ある意味じゃ今やってないんであれば働き掛けをやる必要があると思うんですが、どうなさるおつもりなのかお尋ねしたいと思います。
#133
○政府参考人(小津博司君) 御指摘のように、特別休暇という形でやっていただきますと最も有り難いわけでございますけれども、これにつきましては、政府全体でもそうでございますが、法務省といたしましても、広報活動等の中で企業団体や個別企業に対しまして制度への理解を求めると同時に、できればそういう休暇制度をつくっていただきたいということをお願いしております。これにつきましては、最高裁判所あるいは日本弁護士連合会と連携しながらやらしていただいているところでございます。
 また、検察庁独自のことといたしまして言わば草の根的な広報活動を全国で展開しておりますので、各地の企業の団体や個別企業にいろいろ説明会などをお願いしているわけでございます。その中でできるだけ企業の御理解をいただきまして、言わば企業の側が喜んで送り出していただくような機運づくりに更にこれから積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
#134
○木庭健太郎君 今回の法案、つまりこの部分判決制度の導入、一番の目的は何かといえば、今お話のあっている裁判員の負担軽減をどれだけ図っていくかと、そのためにもこういった仕組みが必要でないかということで今回の法案提出になったわけでございます。
 これも従前から議論をされておりますが、一番裁判員の負担軽減のためには、審理期間の短縮、これをある意味じゃ確定的にしろという御意見もありましたが、ある意味じゃこの短縮が最重要な課題。現状、先ほどからお話あっておりましたが、実際に現状のこの審理期間というものが特に、私どもも本委員会で通しましたが、刑事訴訟の充実、迅速化のための刑事訴訟法の改正、これ施行を既にされているわけですけれども、実際にそれによって本当に短縮をどれだけどのように行われているのかということと同時に、やはりその裁判員の負担軽減のためには、迅速化の問題とともに分かりやすい訴訟の進行の問題、つまり、これもここで議論して法案を通したんですが、公判前整理手続、こういった問題も整理をさせていただいたんですけど、そういう努力もしておると思うんですけども、つまり、分かりやすい訴訟の進行への改善の問題も含めて、期間の現状、さらにそういった進行への改善といった問題についてお尋ねしたいと思います。
#135
○政府参考人(小津博司君) 私どもで把握しておる数字で申しますと、平成十八年の一月から十二月までの間に、全国の裁判所におきます、一審でございますが、裁判員対象事件の公判回数ということで言わせていただきますと、全体の平均開廷回数は約五・六回でございました。そのうち、一部の事件につきまして既に公判前整理手続をやっていただいております。この手続に付されました事件の平均開廷回数は約三・三回でございました。そのうち、否認事件につきましては全体の開廷回数が八・八回でございましたが、公判前整理手続に付されました事件につきましては四・二回であったというふうに承知しておるわけでございます。もちろん、これで十分だということでもございませんし、また開廷回数と審理期間というものがございます。これをどのようにして期間自体も短くしていくのかということが大変大きな課題であるというふうに考えているところでございます。
 次に、分かりやすい訴訟ということでございます。関係者すべてが取り組まなければいけない課題でございますけれども、なかんずく、立証責任を負っております検察は分かりやすい立証ができるかどうかということがその使命を果たせるかどうかというかぎになるわけでございます。一つは、もちろん公判前整理手続によって争いの点を明らかにするということが基本的に大事なことであろうと思いますけれども、検察庁サイドといたしまして、最高検を中心にして証拠の厳選、冒頭陳述、論告等々から証人尋問の実施、各般にわたりましてできるだけポイントに絞った分かりやすいものにするための様々な取組を積極的に今各地でやっているところでございますので、残り二年近くこの取組を検察当局としては全力でやっていくものと承知しております。
#136
○木庭健太郎君 そういったことも含めて、それだけではなかなかすべて裁判員の方たちの負担軽減、もちろんつながっている部分もあれば、まだ進めなければならない部分もある。そういった中で、この部分判決という一つの手法、これ途中段階でも導入の問題について審議会で付された問題ですが、そういった形の中で導入されたわけですが、お聞きしますと、この司法制度改革推進本部の下に設置された裁判員制度・刑事検討会の中で、弁論を併合せずに個別の裁判体が事件ごとに通常の終局的な裁判をした上で、更に別の裁判体がこの複数の裁判結果を前提として刑を調整するというような案があったと私は記憶しておるんですが、今回提出された法案はこれとは別途の内容になっております。この案を採用しなかった理由、逆に言えば今の仕組みにした理由について当局に伺いたいと思います。
#137
○政府参考人(小津博司君) 御指摘のように、司法制度改革推進本部の下に設置されました検討会におきまして、この議論の中で一部の委員の方から御指摘のような案が考えられないかという御発言があったわけでございます。法務省といたしましても、今回の法整備に当たりましてその案についても検討いたしました。
 具体的には、この案によりますと、弁論を併合せずに個別の裁判体がそれぞれに刑の言渡しを含む終局的な裁判をするということになるわけでございますけれども、その場合、言い渡された複数の刑を具体的にいかなる基準でいかなる手続によって調整するのかという極めて難しい問題に直面するわけでございます。
 また、やや副次的なことでございますが、この案によりますと、各事実に共通する情状に関する立証と認定をその都度行わなければいけないということで、そういう意味では訴訟経済面、また証人の方々にも、また裁判員の方々にも負担をお掛けすると、こういう問題があるというふうに考えたわけでございます。
 そのような問題に直面しないようにするために、今回、区分審理を行いまして、部分判決で有罪無罪を決めて、最後のところで全体の裁判をしていただくという案が相当ではないかと考えたところでございます。
#138
○木庭健太郎君 それとともに、別の法制審議会の議論の中で、つまりこの部分判決というのは、この部分判決の宣告をすることによってすべての裁判員の任務は終了するわけですよね。ところが、一方の一緒にやってらっしゃる裁判官の方たちはこれは交代しないわけであって、これも議論の中で、多分、裁判員の任務が終了するのであれば、それと一緒にやった裁判官も交代するというようなのも一つの在り方として当然じゃないかというような意見があったと伺っておるんですが、これもなぜ今回提出のような仕組みになったのか、理由を伺っておきたいと思います。
#139
○政府参考人(小津博司君) 法制審議会の中でそのような議論がございました。
 しかしながら、裁判官も交代するという案が取られなかった理由の一つのポイントは、これは公判前整理手続によりまして争点整理、証拠調べ決定、審理計画等々の重要な判断がなされて、そしてこのような手続に入るわけでございますので、これらの手続を主宰した裁判官が審理を担当しなくなってしまうということで、手続面で責任ある公判運営という観点からの問題があるのではないかという御指摘があり、その案は取られなかったわけでございます。
#140
○木庭健太郎君 それはそれで一つの理由だと思うんですけれども、部分判決の宣告によって裁判官は交代しないで裁判員が交代する制度というふうになると、何か、裁判官はそのままきちんと続けるわけですよね。裁判員は何かお客さんみたいに、この部分だけ来て、こっちはまた違う。何か、本来、趣旨は、これは一般の方と裁判官が一緒になって一つのそういう裁判に臨むというのがいわゆる裁判員制度の趣旨であるのに、それをやることによって何かお客様扱いというか、つまり裁判官と裁判員の間に、情報の格差の問題もそうなんですけれども、対等の立場で審理できなくなるという、そういう心配の声というのは当然上がってくると思うんですよね。つまり、本来の裁判員制度の趣旨が損なわれないかというような疑問が寄せられるのであって、これについてどう認識されているかだけは伺っておきたいと思います。
#141
○政府参考人(小津博司君) 委員御指摘のような裁判員制度の趣旨が損なわれることがあってはいけないということは、私どもも含めまして、これを議論をした方々の共通の認識でございます。
 もちろん一つ一つの区分審理の中、それから最後の審理の中ではすべて裁判員と裁判官が対等でございますけれども、その部分判決で行われたその手続が次にどのように引き継がれるかということでこの法案がどうなっているかということのポイントだけ簡単に申しますと、部分判決におきまして有罪、無罪を決めるわけでございますが、要は犯情に関する事柄についても記載することができて、それを最後の量刑のときに使うことができるというのが一つ。それから、既に区分審理の中で使われた情状に関する手続、つまり証言等々につきまして、必要であれば最後の手続で公判手続の更新という形で直接調べることができます。これはもちろん裁判員の方にも分かりやすい、できるだけいい形で更新手続きをする必要があります。
 そこで、今回の法整備におきましても、記録媒体への記録という制度をお願いしているわけでございまして、これらも活用しながら、言わばそのような情報の格差と申しますか、いうことが生じないように、できるだけの工夫をさせていただいているつもりでございます。
#142
○木庭健太郎君 八十八条関係ちょっと聞きたかったんですけれども、その中で一点だけ刑事局長に聞いておきます。
 今回、審理又は評議における裁判員の職務の的確な遂行を確保するために、訴訟関係人の尋問及び供述等を今おっしゃった記録媒体へ記録する制度を導入するということにしておりますが、証言する姿を記録されることに抵抗を覚える犯罪被害者の方々もいらっしゃると思うんですけれども、こういった点について今回の法整備でどのような配慮をしているのか、この点だけちょっと伺っておきたいと思います。
#143
○政府参考人(小津博司君) ただいまの御指摘に対応する条文といたしましては、六十五条の第一項にただし書を設けまして、犯罪の被害に遭われた方々などが証言する場合に心理的な負担などを考えて、記録媒体に記録することが相当でないと認めるときはこれを記録することができないといたしましたし、また、いわゆるビデオリンク方式によりまして証人尋問をいたしました場合には、その証人の同意があった場合にそのような記録媒体への記録ができると、このような規定を設けたわけでございます。
#144
○木庭健太郎君 最後に、大臣に伺っておきたいと思います。
 大臣は、自由民主党の政務調査会の司法制度調査会のときもこの裁判員制度の小委員長として、この制度設計の問題のときは随分自民党の中の論議をきちんとまとめていただいたり、いろんなことをやったわけでございますが、先ほども議論があったように、この裁判員制度、二年後に導入されると。制度設計という意味でいけば、今回の法改正がその制度設計の最後の部分になる、あとはこれから実行ということになっていくわけでございますが、そういった意味で、この制度設計にある意味では携わった大臣として、今後の円滑な実施に責任を負うまた大臣とされて、今回の法整備、提案されたことも含めて大臣の所感を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#145
○国務大臣(長勢甚遠君) 当時、そういう仕事をさしていただいておりまして、先ほど来当委員会でいろんな議論がされておりますが、当時もそういうことが大きな議論でありました。被告人の立場、あるいは真相解明をする、あるいは裁判員になられる方々の御負担等々たくさんの問題がございまして、そういうことを踏まえると、本当に裁判員の方々がなってもらえるかということも大きな論点で、そこら辺に十分な時間を取って施行すべきではないかという意見があったことも覚えております。国会での議論を踏まえて今法案ができまして、あと二年後には施行という時期に大臣を拝命したというのも、何か巡り合わせかなと思っております。
 先ほど申し上げましたが、特に裁判所あるいは検察あるいは日弁連等々、当事者として考えなきゃならぬことも、至急詰めなきゃならぬことも多いと思いますし、やはり国民の皆さんに、選任された場合に、じゃ行こうという気持ちになってもらわないと、とにかくそこがないとうまく始まらないと。始まった上で国民の皆さんが参加して、ああこういうことだなということが分かることによって裁判員制度の意義が深まっていくんだろうと思いますので、そのことに全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
#146
○木庭健太郎君 終わります。
#147
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日は区分審理と部分判決の問題について特にお伺いをしていきたいと思いますけれども、裁判員制度の実施を二年後に控えて、最高裁刑事局長にまずお尋ねをしたいと思うんですが、私もこの国会、当委員会で志布志事件あるいは富山の冤罪事件、この点をせんだって質疑もさしていただいたんですけれども、こういった冤罪事件が後を絶たない。あるいは、冤罪という形ではなくても、国民の皆さんの社会常識に必ずしもかなっていない裁判あるいは刑事司法、こういった現状が私は現実にあると思います。
 その現状に対して、事実認定の面でもそれから量刑判断の面でも、国民の皆さんの常識をきちんと反映し、国民常識に支えられた刑事裁判を受ける権利を確立しようと、それが裁判員制度を導入する大きな意義なのではないかと私思っているんですが、最高裁、いかがでしょうか。
#148
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 事実認定という点につきましては、これまでも専門家の裁判官でも誤りのないように適正な審理と認定をしてきたというふうに心掛けてまいったことは間違いないと思いますが、ただ、中には、おっしゃられたように、結果的に無罪となって確定したというような事件もあることはそのとおりでございますので、その点については真摯に受け止めてまいらないといけません。
 それで、裁判員裁判になりますと、議員御指摘のように、裁判員の方の多様な経験や感覚が評議の中で反映されまして、今までの裁判よりももっと深みのあるような裁判になるのかなというふうに思っております。
#149
○仁比聡平君 裁判員の方々に、国民の皆さんに裁判手続、刑事裁判の手続に参加をしていただく、そこには国民の皆さんの大変な負担と責任が、重いものがあるんだということが今日これまで幾つも議論となってきたんだと思うんですが、そういった重い負担と責任を国民の皆さんに負っていただいても参加を是非実現をしなければならないというのは、今最高裁、局長お話のあったような職業裁判官による事実認定と量刑というのが国民の常識にかなわない現実がある、そこはやっぱり私は否定はできないと思うんですよね。
 そこの議論はさておいてですが、裁判員制度がそういった意義を持つものである以上、確かにその国民の皆さんの負担や責任の重みというのがあるんですけれども、その運用の都合によって、間違っても被告人の権利やあるいは適正な量刑判断、こういった適正な刑事司法をつくっていくためにこれまで人類の歴史の上で積み重ねられて、憲法に支えられて今私たちの国で運用されているこの刑事訴訟の基本原則が脅かされてはならないと思うんですが、いかがでしょうか。
#150
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 その点につきましては議員御指摘のとおりだと考えております。裁判員制度の導入によりまして被告人の権利が脅かされたり、あるいは適正な量刑判断が行われなくなるといったような事態にならないようにしなければいけないということは当然のことだと考えております。
#151
○仁比聡平君 そこで、この区分審理という仕組み、部分判決というこの仕組みにかかわる問題なんですけれども、先ほど来お話がありましたように、アメリカの陪審制においても、あるいはドイツの参審制においても、言わば調べ得る限り外国の刑事司法の手続の中でこの部分判決制度、今回提案をされているような、こういった例はないと、見当たらないというふうにお伺いをしているわけです。
 それで、具体的な問題として、複数の事件が一人の同一の被告人が犯したということを理由に、一回の手続で審理、判決をされると、これは刑罰でいえば併合罪の関係にあるというような趣旨かと思うんですけれども、この同一被告人についての複数の事件を一回の手続で審理しそして判決をするというのは、どういう意義があるからということでこれまで確立をされてきたのか。
 最高裁でよろしいですか。お伺いします。
#152
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 事件を併合するかどうかということにつきましては刑事訴訟法の三百十三条で裁判所の裁量にゆだねられているわけでございますけれども、同一被告人に対して複数の事件が起訴をされました場合には、今委員御指摘のとおり、基本的にはすべての事件を併合して一個の刑を言い渡すことが多いというふうに承知しております。
 これは、刑法四十五条等の併合罪に関する規定からすれば、同一被告人に対して複数の事件が起訴された場合には一個の刑を言い渡すのが一般的には、これは訴訟経済に資することもございますし、それから被告人にとって有利と考えられることが多いからであると考えております。
 しかしながら、現在でも追起訴が著しく遅れた場合とか、複数の事件のうちの一つの事件について多数の共犯者がいてその証拠調べに著しく時間を要するというような場合には、併合審判によることとの利害得失を考量いたした上で、併合しないで審理することもあるものと承知しております。
 いずれにせよ、事件を併合して審理するかどうかにつきましては、個別の事案の事情に応じて個々の裁判体が適切に判断すべき事柄であろうと思いまして、これは裁判員制度導入後も基本的には変わらないというふうに考えております。
#153
○仁比聡平君 今御答弁の中でありました訴訟経済の問題というのは、これは複数の事件であっても証拠が共通をしていたり、あるいは証人が共通をしていて別々の手続で審理をするということになると何度も何度も同じ証人尋問をしなければならないとか、そういう意味合いになろうかと思うんですね。
 被告人の利益というふうにおっしゃった点、これ先ほども刑事裁判の仕組みが国民にはよく分かりにくいという話がありましたけれども、今私が申し上げた併合罪という言葉も、国民的にはほぼ理解はそんなに広くはないだろうと思うわけです。
 そこで、一回の審理で一つの判決、これが仮に有罪判決であれば、これに刑の執行というものも加わってくるんだろうと思うんですけれども、この被告人の利益というのは、もう少し具体的に言っていただくとどういうことになりますか。
#154
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 被告人の利益と申しますと、刑法の四十七条で、「併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。」というふうに本文に書いてございます。ほかの例もありますけれども、そういうところが被告人に利益になるというふうに考えられます。
#155
○仁比聡平君 御案内のように、アメリカなどでは懲役百五十年とか、累積というんでしょうか、していくものですから、生物的にはあり得ないような刑罰が科されたりもするわけですけれども、日本ではそういう在り方は取らないと、そういう刑罰の在り方は取らないということで、それが今御紹介のあった条文などで、いわゆる加重主義、併科主義、吸収主義というような形で確立をしているということかと思うわけです。
 つまり、犯罪を犯したのではないかということで起訴をされている被告人に対して、その被告人に対する公訴事実についての認定と、それから、仮にそれが有罪であるということになれば、どういう量刑がふさわしいのかということを一回の手続で審理をしていくというのが確立をされている大原則だと思うんですね。その中で、事実の認定と量刑の判断というのが、私は、言わば不可分に行われてきたのがこれまでの実態であるし、恐らくこれからもそれがほぼすべてに近いことになるんではないかと思うんです。
 例えば、よく司法修習なんかで引き合いに出されます殺意、殺人事件の殺意の認定において、被告側は殺意はなく傷害致死であると言うけれども、検察側は殺意があると主張をしている。例えばそれが、凶器がナイフであったときに、その刃渡りがどれほどのものか、それをどのような角度でどのような強さで被害者のどこを目掛けて何度突き刺したのか、それどうやって準備をしてきたのかなどなどの事実認定が、それが実際にその量刑として反映をしていくという、その心証形成にももちろん当然一緒になっていると思うんですよね。
 そうやって、心証がこれまでは事実認定も量刑事情も不可分に形成をされていくというのは、これは職業裁判官であってもそうなわけですから、そうではない国民の皆さん、言わば裁判でいえば素人の方々にとっては、これはもうなおそうなのではないかと思うわけです。こういうひどいことをしたという明々白々の証拠がある、だからこの被告人はやっぱり厳しく処断をしなければならないのではないかというような、逆にこういう処断につながるような事実なのであれば、これの有無については本当に証拠に照らして、実際にあったのかなかったのかを徹底して調べなければならないのではないかというような心持ちを持ちながら、私たち刑事裁判にかかわってきているのではないかと思うんですよ。
 そういう意味で、先ほども木庭理事からお話がありましたけれども、情報格差といいますか、例えば区分審理決定がされて、事実認定のみにかかわる裁判員が、他の事実認定とそれから量刑にすべてかかわるそういう裁判官に対して、自分はその裁判官が心証を形成し判断をするそういう方向に単にお付き合いをしているだけであって、自分自身がその事実認定とそして量刑の判断、こういうところに本当に主体として、判断主体として参加をするんだという自覚を持っていただけるかどうかというのは、これは本当に大切な問題になるのではないかと思うんですけれども、事実認定のみにかかわる裁判員が、つまり争点の重みをしっかり理解をした上で、量刑、直接かかわるわけではないけれども、そのような刑事裁判の判断者として役割を果たすことができるようにするためには、一体どうしたらいいんでしょうか。法務省から。
#156
○政府参考人(小津博司君) まず、この法案のそれに関連する部分につきまして御説明申し上げます。
 七十八条の二項と三項で、部分判決でどのような事柄について認定をするのかということでございまして、これは、罪となるべき事実等々は必ずなんでございますけれども、その場合に、犯行の動機、態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する情状に関する事実につきましても判断をすることができるというようにされておりまして、そのように判断をいたしますと、その判断が最後に全体の量刑を決める裁判体を拘束するわけでございます。
 すなわち、区分審理をして部分判決をする裁判官と裁判員の皆さんが確かに絶対にやらなければいけないのは有罪無罪ということでございますけれども、当然それに伴って、我々犯情と言っておりますけれども、これについての事実も出てまいりますので、ここはやっぱりきちんと認定を示すべきだという場合には、この条項によりましてその認定を示すことになると、まずその点だけ御説明申し上げます。
#157
○仁比聡平君 最高裁どうですか。
#158
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、自分は例えば事実認定のところだけの裁判員だということになって、最終的な量刑までは自分のところでは決めないんだというと、果たして真剣に取り組んでいただけるのかどうかという危惧をお持ちになるのかもしれません。そこの点はそうではなくて、有罪無罪が争いになっていれば、それ自体非常に大事なことでございますし、それから、そうじゃなくても、犯情等も含めて重要な量刑に影響を及ぼすような事実関係、犯罪事実の認定に密接に関連するような事情についても判断を示すことができるわけでございますので、そうした非常に重要な立場にあるんだということを十分に御理解いただけるように訴訟の手続の運営をしていくように心掛けたいと思っております。
#159
○仁比聡平君 まず、法務省の方から御説明のあった法案の七十八条三項一号の部分判決の中で犯情に関する事実、情状に関する事実ですね、ここを書くことができるというお話なんですけれども、これちょっといろいろ読ませていただきますと、判決を宣告をした後に裁判官が判決を書かれると。つまり、裁判員の方々が自ら筆を取って書くというものとは必ずしも違うということでしょうかね。
 いずれにしても、もちろん国民の方々が裁判員として参加をされるわけですから、部分判決の中にそれを書き込むなんというようなことも含めて、心証を引き継いでいく手だてはそれは打っていかれるんでしょうけれども、御自身が実際にすべての事実審理と量刑判断をされるのとは、これはもちろん違うと。これはいろいろ手だてを打っても違うというのは、これはもう動かし難いと思うわけですね。
 そういう意味では、この区分審理、そして部分判決というのは、私は、あくまで本当に例外であって、王道といいますかね、迅速な裁判、そして、その中での裁判員の方々の負担を軽減しながら、本当に適正な裁判を実現をしていく王道というのは、この区分審理ではなくてもっと別のところにあるんじゃないのかと思いますが、小津局長、いかがですか。
#160
○政府参考人(小津博司君) 御指摘の点は、この法案の第七十一条におきまして、特に必要があると認められるときという文言によりまして、端的に申しますと、例外的なものであるということを私どもとしては表現しようとしているつもりでございます。
 それからもう一点は、ただし書を設けておりまして、そのような観点から特に必要がある場合でありましても、犯罪の証明に支障があるとか、それから、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがあるときその他相当でないと認められるときはこの手続を取ることができないということで、そのような考え方を書き表しているつもりでございます。
#161
○仁比聡平君 その七十一条の区分審理決定の要件の問題については、先ほど前川委員から詳しくお話がございまして、前川委員への答弁以上に今日御答弁なされ得るものはないのだろうと私先ほど伺っていて思いましたので、私からあえてお聞きはしないでおこうかなと思っているわけですけれども。
 つまり、特に必要があるというのはかなり重たい意味をここでは持っているんだというふうに私受け止めておきたいと思うわけです。原則は、迅速な裁判をできるだけ実現をするために、これまでの御答弁でいいますと、公判前整理手続をしっかりと充実をさせて集中審理をどれだけ裁判員の負担にならないようにできるのか。私は、それを実現していくためには、捜査過程の可視化の問題や、証拠上精密司法とあるいは人質司法と言われてきたこれまでの裁判制度そのものを大きく変えていく必要も私はあると思います。ここは局長と認識がもしかしたら違うかもしれませんけれど、その王道はそういうところにある。
 この区分審理決定というのは本当にまれな、例外だというふうに言いたいぐらいだと私は思っているんですけれども、いかがですか、もう一度。
#162
○政府参考人(小津博司君) 先ほど申し上げましたことにもう一点だけ付け加えさせていただきますと、特に必要があるという文言をもっと強く書いたらどうだという議論もあったわけでございますけれども、ただ、ここを、絶対にどうしても必要だという一〇〇%という意味で書いてしまいますと、ただし書以下で、こういう事情がある場合にはやっちゃいけないんだということと矛盾をしてくるということもございましたので、そのようなことも考えながら、委員御指摘のような気持ちをこのような表現をさせていただいたと、こういうつもりでございます。
#163
○仁比聡平君 それで、その運用に実際にかかわっていかれる裁判所にもう少しお尋ねをしたいと思うんですけれども、先ほど適正な訴訟運営をしていかなければならないというお話がございました。そのときに、ちょっと戻りますけれども、事実審理のみにかかわる裁判員に、そこでそもそも何が争点となっているのか、それから、その争点が、事実認定というのは、つまり有罪無罪という最終的な判断と、それから、それが全体の併合されている事件の量刑判断においてどんな意味合いを持っているのかということを伝えていくというのは、これはなかなか大変なことでもあるけれども、絶対にやっていかなければならないことだろうと思うんです。そういう意味では、評議の運営の在り方ということにかかわるのかと思うわけです。
 もう一点、幾つかの区分をされたときに、最後の事件にかかわる裁判員は量刑にかかわるわけですね。これは当然、その生い立ちやあるいは今の被告人の境遇のような、いわゆる一般情状と言われている情状事実以外に、事実認定にかかわる情状、犯情がたくさんあるわけですけれども、これを最終的に量刑判断をする裁判員が実際の審理を見ずに量刑を決めるということは、これは不安じゃないかと。例えば、被害者の声を聞かずに量刑判断をするということがあっていいのかというような声もあるわけです。
 そういった中で、評議の運営や、それから裁判員に対する更新ですね、先ほどDVDやビデオのお話もありました。このDVDやビデオなんかも、必要のあるときだったですかね、そういうような要件になっているわけですね。その必要のあるときという要件は、これもまた本当に重たいものとして私たち受け止めておきたいと思うんですけれども、これが仮に、弁護側あるいは検察側にとってこれは必要があると主張したのに、裁判所の判断は間違っているということになると、引き継がれる裁判員に対する心証形成に影響を与えてしまうということになっては絶対にならないし、仮にそういうことがあるなら争い得るものでなければならないと思うわけです。
 その評議やあるいは更新の際の裁判の運営について最高裁の御認識を伺って、恐らくこれがもう質問終わりになると思いますが。
#164
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 併合事件、最後の量刑まで判断をする裁判員の方にそれまでの区分された事件の量刑事情等をどのように御理解いただくかということでございますが、これは、一番、今委員も御指摘ございましたけれども、DVDに録画して、そしてそれを更新の際に見ていただくということも考えているわけですが、これは原則として全件録画したいというふうに考えております。
#165
○仁比聡平君 ちょっと、聞いちゃったので。評議の運営についてはいかがですか、何か心掛けようということはありますか。
#166
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 評議の運営につきましても、これまでの事件の内容等については適切に御理解いただくように心掛けたいと思っております。
#167
○仁比聡平君 終わります。
#168
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 私も今日、部分判決制度にポイントを絞って質問をしようと思っております。
 いずれにいたしましても、今ほど来の議論がございまして、この制度、区分審理判決、これが極めて例外的なものである、特に必要のある場合であり、かつ、こういうものを審理する際に、相当でないというふうな判断の場合にはこれを取らないということで、極めて限定的な扱いをするという話がこれまでも繰り返し審議をされておりましたので、私もここに今大きな関心を持っておりましたが、皆さんの方もこれだけおっしゃっておられますんで、これ以上の踏み込みは今日はもう多分できないだろうというふうに思っておりますんで、そういう方向で是非この運用をやっていただきたいということを要望申し上げまして、多少落ち穂拾い的、あるいは重なりがあるかもしれませんが、何点かお聞かせをいただきたいというふうに思っています。
 この部分判決制度でありますが、国民の過剰な負担を軽減するために導入されたものでございます。これだけを強調いたしますと、それによって失われる利益も考えられるわけでありますし、裁判員の参加する訴訟手続の場面だけをとらえて、その部分の訴訟経済だけを追求いたしますと、全体として被告人の起訴から判決までの手続がかえって長期化をしたり、あるいは裁判員の参加する審理手続が拙速となって、結果として適正な裁判が行われなくなるおそれも出てまいるんではないかと、こういうふうに思っております。
 そこで、このようなことが起こらないよういかにバランス良く運用をするか、これが肝要だというふうに思っておりますが、そのためにどのような方策を考えておられるのか、最高裁の小川局長からお聞かせをいただきたいと思います。
#169
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) 今委員の御指摘の点、区分審理決定をしたがためにかえって全体的に長くなってしまうんではないだろうかとか、それから、先ほども御質問がありましたけれども、最後の量刑まで判断しない裁判員の方にどのように御理解をいただくのかとか、そういったいろいろな問題も確かに委員御指摘のとおりあるようにも考えられないわけではないんでございますが、結局、今委員の御指摘のようにバランスの良い運用を心掛けなければならないわけですが、この点、個々の裁判体が実際の事件の処理に当たって個別的に判断することになると思います。
 ただ、その事案に応じて委員御指摘のようなバランスの良い運用を何とか心掛けたいというふうには考えております。具体的にといいましても、これは事案ごとというふうになろうかと思います。
#170
○近藤正道君 法務省の小津局長に部分判決制度について何点かお尋ねをしたいと思いますが、まず、いったん併合した事件を区分して審理することになるわけでありますね、部分判決制度というのは。それぞれの審理に加わる裁判員はすべて異なることになっているわけでありますが、構成裁判官三人は最初から最後まで同じ人が行うというふうになっているわけであります。
 そこで、この制度における裁判体というものをどういうふうに考えるのか。最初から最後まで一つの裁判体、これを前提として考えているのか、それともこれは異なっている裁判体というふうに見るのか。これは前提の話でありますが、お答えいただきたいと思います。
#171
○政府参考人(小津博司君) ただいまの点は、複数の事件が起訴されて、その弁論が併合されたということが前提になっておる制度でございまして、それを受けている裁判体、すなわち受訴裁判所が一つあるわけでございますが、その受訴裁判所はその後も一つの受訴裁判所としてその中でその構成員である裁判員が交代するんだと、このように考えているところでございます。
#172
○近藤正道君 刑事訴訟手続におきましては、判断権者である裁判官が代わった場合、公判手続の更新をしなければならないことになっております。これは刑訴法三百十五条に規定がありますが、公判手続の更新をしなければならない。また、裁判員制度の下において裁判員が代わった場合においても公判手続の更新が必要であるということになっております。
 しかしながら、区分事件の審理におきましては、裁判員が代わるのに公判手続の更新をしないこととされております。しかし、反対に、併合事件審判手続においては、必要な範囲で公判手続の更新をするということになっております。これらはどのようなことに基づいてこのようにやるのか、運用のやり方なんだろうというふうに思いますが、原則と運用の基本的な考え方について整理をしてお答えいただけますでしょうか。
#173
○政府参考人(小津博司君) まず、刑事訴訟法の更新の原則がございまして、裁判員法におきましても、その裁判体の構成員がその裁判体としての必要な判断を示す前に交代した場合には、当然新しい人に引き継がなければいけないということで更新手続をするということになっておるわけでございます。まず、それがございます。
 次に、この法案の八十五条でございますけれども、これは、区分審理をしている場合に、その区分審理に係る裁判員の任務が終了したと、つまり、それはもうそこでやるべき判断はしたということでございます。そうすると、次にやっぱり二つ目の区分審理をしますという場合に、裁判員は変わるわけです。そこで更新手続をしなければいけないかと申しますと、二つ目の区分審理をする裁判員はそこでの事件についてだけ判断を示すわけでございますので、ここでのものを引き継がなければいけないという関係にはないわけでございます。そこで、八十五条では公判手続の更新は行わないというふうにしたわけでございます。
 次に、八十七条でございますけれども、これは新たに二条一項の合議体に併合事件審判に係る職務を行う裁判員が加わった、つまり最後のことをやる、当然新しい裁判員が加わるわけでございます。そこの裁判員はそれまでの区分審理でやった結果を引き継ぐわけでございます。特に、有罪無罪等々、そこで示されたものはそれをそのまま受け継ぐわけでございますが、情状に関する事柄についてはそこでの審理を引き継いで全体としての量刑をするわけでございます。そこで、この場合にはそれを引き継ぐということで更新手続が必要になるわけでございます。
 ただ、これは普通の更新とは趣を異にしまして、前にやったのをごっそりと引き継ぐのではなくて、前の判断で拘束されるのではない事柄、基本的には情状について、その審理で前の区分審理手続でやったものを引き継ぐと。そして、それはどの程度引き継ぐか、つまりどの証人の分を引き継ぐかということは、正にその判断をするために、等で必要かという判断をしてその部分だけ引き継ぐということでございます。そういう意味で、必要な範囲で公判手続を更新すると、このような規定にしたわけでございます。
#174
○近藤正道君 局長、今のその必要な範囲で公判手続の更新をする、必要な範囲でありますのでそれ以上なかなか言い得ないところもあるかと思いますけれども、ポイントは何ですか。
#175
○政府参考人(小津博司君) これは、それまでの部分判決で幾つかの事項について判断が示されます。判断を示す事項は七十八条に書いてございます。基本は犯罪の成否でございます。ただ、情状に関する事柄についても、いわゆる犯情と申しますか、これについてなどは判断を示すことができるわけでございます。この事柄については別の判断ができないわけでございます。
 それから、最後の裁判体は量刑をするわけでございます。つまり、量刑判断をするのに必要な範囲内で、しかも既に行われた判断をひっくり返すのではないと、そういう範囲内でその必要性を判断すると、こういうことでございます。
#176
○近藤正道君 いささかかなり技術的なところに入って申し訳ございません。
 次に、もう一つ部分判決制度について小津局長にお尋ねをいたしますが、部分判決制度におきましては最後に併合事件審理手続が予定されております。この審判手続におきましては、区分されなかった事件の審理と、その結果及び先行して行われる各区分事件の審理の結果を併せた併合事件全体としての量刑判断手続が行われることになるというシステムになっております。
 併合事件審理手続におきましては、先行する区分審理の有罪無罪という結果等に拘束されることになるわけでありますが、そういたしますと、併合事件審判手続における公判手続の内容はどのようなものになっていくのか、その辺の手続の明確性というのはどういうふうにきちっと分かるようになっていくのか、ちょっとイメージがいま一つよく分かりませんので、お聞かせをいただきたいと思います。
#177
○政府参考人(小津博司君) まず、最後の手続、これを併合事件審判手続と申しますけれども、ここでやらなければいけないことははっきりしております。
 それまでに部分判決が出ていない、つまり残された事実について審理をして有罪無罪かを判断するという判断をすることが一つ必要になります。それから、当然、残されたその事実についての情状はどうであろうかということも考えなければいけません。それから、それまでの部分判決で判断が示されたそれぞれの事実についての情状がどうであろうかということについても考え、そして全体としてこの人間についてはどういう量刑をするべきかと、ここまでのことをするわけでございます。
 御質問は恐らく、それをどういう順番でやっていくのか、やっていくべきかということであろうと思うんですけれども、これはこの法案では何も書いてございませんし、実際どういう順番でやるべきかというのは、結局はその裁判体でお決めいただくしかないだろうと思っております。と申しますのは、これは普通の事件をやっておりますときに確かに有罪か無罪かということを割合に先行してやりまして、そしてある段階からは一般情状だということは普通だとは思いますが、しかし、有罪か無罪かをやっている証人の話の中で情状に関することも出てまいりますので、そういう意味でははっきりと分けることが今でもできないでいるわけでございます。
 この手続も同じでありまして、さらにもう一つ特別な、複雑な事情が絡みますのは、これまでの部分判決で出た情状に関する事柄、これを自分のところでもう一遍調べる、これは更新手続ということで調べるのをどの段階でやったらいいかというのは、やっぱり事件ごとによって違うんじゃなかろうかと思うわけでございます。
 そういう意味で、誠に委員の御質問に十分お答えできていないと思いますけれども、法の仕組みとしてはそのようになっているということでございます。
#178
○近藤正道君 分かりました。
 刑事訴訟法では弁論の分離という制度がございます。部分判決制度におきましてはこの弁論の分離という既存の制度を使わずに、区分審理決定という制度を新たに設けたわけでございます。この趣旨、目的はどのようなことからそういうふうに行ったのか、弁論の分離と区分審理決定の違いについて御質問したいと思います。
#179
○政府参考人(小津博司君) 実は刑事訴訟法の弁論という言葉も、一般の方からすると非常にお分かりになりづらいんじゃないかと思います。つまり、こうやって話をしていることが弁論だというふうに普通の方はお思いになると思いますけれども、刑事訴訟法では弁論というのはその手続の全体のことを弁論といっておりまして、したがいまして、弁論を分離いたしますと全く別の事件としてといいますか、別の公判手続として別の裁判体がやるということになるわけでございます。
 そうしますと、途中で別々にやって最後に刑の調整をしたらいいじゃないかという案があったというときに申し上げましたように、別々の裁判体がさあ判断をすると、そのときに、じゃその別々の裁判体がやったところをどこでどうやって合体したらいいんだという非常に難しい、解決が非常に困難な問題に直面します。そこで、先ほど御説明いたしましたように、裁判体は一つでございますという前提の中で区分していこうと。そういうことで、この弁論の分離という仕組みを使わずに区分審理という新しい仕組みを導入したと、こういうことでございます。
#180
○近藤正道君 分かりました。
 これもまた手続的なことで恐縮でありますが、区分審理決定につきましては取消しあるいは変更の制度が設けられることになっております。これらの意義と違いについて説明してください。
#181
○政府参考人(小津博司君) 取消しと変更につきましては、いろいろなことを考えて、例外的だけれどもこれをやろうということを一度決めたけれども、その後の事情、例えば被告人の認める、認めないのことが変わったとか、あるいは逆に、別々にやると被告人にとってもう決定的に不利益だというふうな事情が明らかになったというような場合には、そもそも区分審理をするのをやめようという、これが取消しでございます。区分審理はするけれども、例えばA、B、Cという三つの、三つばらばらにやるということで一応決定したけれども、AとBはくっ付けてやってもいいじゃないかということになりますと、これはそこの変更ということになりますので、そこで取消しと変更ということを二つこの法案に書き込んだということでございます。
#182
○近藤正道君 部分判決制度におきましては、最初から最後まで構成裁判官三人は同一でございます。裁判員は区分事件ごとに及び併合事件審理とでは異なってくると、先ほど来繰り返し出てきている問題でありますが。となりますと、裁判官と裁判員との間で接している情報、知り得る情報についてどうしても格差という問題が出てまいります。
 先ほど来議論がありました。最高裁、法務省それぞれからいろいろお話を聞きましたけれども、やっぱりここは大きなポイントではないかな、こういうふうに思っております。事件についての情報格差、これの解消に向けてどのようなお考えでいくのか、方策等について大臣から御答弁いただくと有り難いと思います。
#183
○国務大臣(長勢甚遠君) この区分事件の審理及び裁判に関与した裁判官が別の区分事件の審理及び裁判をする場合における裁判員との間の情報の格差の問題というお尋ねでございますが、区分事件はそれぞれ別個の事件でありますので、各審理においてそれぞれの証拠に基づいて判断されるということになりますので、そもそも御指摘のような情報格差の問題は生じないんではないかというふうにまず考えております。
 次に、区分事件の審理及び裁判に関与した裁判官が併合事件審判をする場合も、部分判決において有罪の言渡しをする場合は、犯行の動機、態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する情状に関する事実についても記載することになっておりますので、併合事件審判の裁判員は、刑の量定を判断するに際しては、それぞれの部分判決の記載を参考とすることができることになっておりますし、また併合事件審判の裁判員は、部分判決の対象となった事件の公判手続の更新において、刑の量定判断に必要な証拠については自ら直接取り調べることとなっております。
 さらに、今回の法整備において新設する訴訟関係人の尋問及び供述等の記録媒体への記録制度によりまして、裁判員裁判の審理を記録媒体へ記録することが可能となるわけでありまして、この記録媒体を公判手続の更新に用いることによって、区分事件の審理において行われた証人尋問等についてもその内容を裁判員が容易に理解することが可能となります。こういうことの活用によって情報の格差が問題となるような場面は生じないようにしたいと考えております。
#184
○近藤正道君 最後に、最高裁の小川局長にお尋ねをしたいと思います。
 部分判決制度の導入によりまして連日開廷の要請がますます強くなるだろうと。実際のところ、そのようにして迅速な裁判運営がされていくのであろうと期待をするところでございますが、これに伴って書記官の作成する調書が間に合うのかどうか。このような懸念から刑事訴訟法の四十八条が今般改正されることになったわけでございます。しかし一方で、被告人においては、控訴する場合には告知のときから十四日以内といった制限もあることになっております。そこで、この制度導入によって被告人側の不利益が生じないためにどのような配慮をなされているのか、このことを聞いて質問を終わりたいと思います。
#185
○最高裁判所長官代理者(小川正持君) お答え申し上げます。
 議員御指摘のとおり、今般の改正法案は連日的開廷が法定されましたことや裁判員制度下では審理の終結後すぐに判決が宣告されることが予想されるということを踏まえまして公判調書の整理期限を伸長しようとするものでございます。
 上訴の関係では上訴期間が議員御指摘のとおり十四日というふうに法定されておりますことから、上訴期間内に上訴の要否を判断しなければならない被告人らの当事者の便宜を考慮して、遅くとも判決を宣告する公判期日から七日以内に整理しなければならないというふうに定めているところでございます。
 裁判所としましては、この伸長された期限を厳格に遵守した運用がされて、そして被告人の防御等に支障の来すことのないように改正法案の趣旨の周知徹底に努めてまいりたいと考えております。
#186
○近藤正道君 終わります。
    ─────────────
#187
○委員長(山下栄一君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、青木幹雄君が委員を辞任され、その補欠として愛知治郎君が選任されました。
    ─────────────
#188
○委員長(山下栄一君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#189
○委員長(山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。
#190
○簗瀬進君 私は、ただいま可決されました裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 裁判員制度の意義、内容、具体的裁判手続等について、国民や企業等に対する周知徹底が十分なされるよう一層努力するとともに、裁判員が刑事裁判に参加しやすくなるよう刑事裁判の更なる迅速化とともに有給休暇制度や保育・介護施設等の環境整備の拡充・促進に一層努めること。
 二 部分判決制度が、裁判員の負担軽減を図る一方、犯罪の証明又は被告人の防御に支障を生じさせるおそれがあることにかんがみ、その実施に当たっては、裁判員の負担をでき得る限り軽減することを考慮しつつ、個々の区分事件や全体の事件について、被告人の利益が保障され、迅速に真相究明が実現し適正な結論が得られるよう、公正で的確な運用がなされるよう司法関係者に対して周知徹底に努めること。
 三 広く国民が刑事裁判の過程に参加し、その感覚を裁判内容により反映させることが裁判員制度の根幹であることを踏まえ、性別、年齢、職種等に偏りのない幅広い層の国民から裁判員が選任されるとともに、裁判員の裁判への関与が形骸化することのないよう、的確な運用がなされるよう司法関係者に対して周知徹底に努めること。
 四 併合事件審判においては、裁判員の感覚が十分反映された適正な量刑判断が確保されるよう、区分事件の公判手続の更新が的確に行われるとともに、部分判決の判決書が具体的かつ平易な表現内容で、新たに選任される併合事件審判の裁判員にも理解しやすいものとなるよう、司法関係者に対して周知徹底に努めること。
 五 証人尋問等の記録媒体への記録及びその活用については、評議等の充実を確保しつつ、証人等のプライバシーの保護、被害者感情の尊重などを十分勘案した上、適切な運用を行うこと。
 六 公判調書の整理期限の伸長については、被告人の防御等に支障を生じさせることのないよう厳格な運用に配慮すること。
 七 裁判員制度の円滑な実施のため、国民が主体的かつ積極的に裁判員裁判に参加できるよう、国民の生活実態や参加の障害事由等の精確な把握に努めるとともに、裁判員制度の施行後の状況等を勘案し、必要があれば迅速に適切な措置を講ずること。
 八 裁判員制度を円滑に実施するため、学校における法教育に加え、職場、地域等を通じて、幅広い層の国民に対する一層の法教育の充実を図るとともに、地方公共団体、日本弁護士連合会等の法律関連職種の諸団体、企業などとの協力体制の充実強化や法教育に関する人的・物的体制の拡充について、引き続き調査・研究を行い、必要に応じ適切な措置を講ずること。
 九 検察審査員等の選定等に際しては、欠格事由等に係る資格の有無について適正な判断を行うとともに、選定手続の遅滞による事件処理の停滞等を招来することのないよう遺漏なきを期すること。
 十 裁判員の負担が過大となれば、裁判員制度自体を維持することが不可能になるので、その拘束期間、時間をより短くするような工夫を更に研究すること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#191
○委員長(山下栄一君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#192
○委員長(山下栄一君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、長勢法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長勢法務大臣。
#193
○国務大臣(長勢甚遠君) ただいま可決されました裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。
#194
○委員長(山下栄一君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#195
○委員長(山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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