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2007/06/13 第166回国会 参議院 参議院会議録情報 第166回国会 法務委員会 第20号
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2007/06/13 第166回国会 参議院

参議院会議録情報 第166回国会 法務委員会 第20号

#1
第166回国会 法務委員会 第20号
平成十九年六月十三日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十二日
    辞任         補欠選任
     山東 昭子君     二之湯 智君
     若林 正俊君     荻原 健司君
     近藤 正道君     福島みずほ君
 六月十三日
    辞任         補欠選任
     岸  信夫君     関谷 勝嗣君
     木庭健太郎君     弘友 和夫君
     福島みずほ君     近藤 正道君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         山下 栄一君
    理 事
                岡田  広君
                簗瀬  進君
                木庭健太郎君
    委 員
                荻原 健司君
                陣内 孝雄君
                谷川 秀善君
                二之湯 智君
                江田 五月君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                浜四津敏子君
                弘友 和夫君
                仁比 聡平君
                近藤 正道君
                福島みずほ君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田中 英明君
   参考人
       東京大学法学部
       教授       大澤  裕君
       千葉大学大学院
       専門法務研究科
       教授       後藤 弘子君
       地下鉄サリン事
       件被害者の会代
       表世話人     高橋シズヱ君
       日本弁護士連合
       会副会長     細田 初男君
       同志社大学大学
       院司法研究科教
       授        奥村 正雄君
       日本弁護士連合
       会副会長     氏家 和男君
       弁護士      番  敦子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑
 事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出
 、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(山下栄一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、山東昭子さん、若林正俊君及び近藤正道君が委員を辞任され、その補欠として二之湯智君、荻原健司君及び福島みずほさんが選任されました。
 また、本日、岸信夫君が委員を辞任され、その補欠として関谷勝嗣君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(山下栄一君) 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、訴訟参加制度及び損害賠償命令制度に関し、七名の参考人から順次御意見を伺います。
 まず、訴訟参加制度について御出席いただいております参考人は、東京大学法学部教授大澤裕君、千葉大学大学院専門法務研究科教授後藤弘子さん、地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人高橋シズヱさん及び日本弁護士連合会副会長細田初男君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。まず、大澤参考人、後藤参考人、高橋参考人、細田参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 それでは、大澤参考人からお願いいたします。大澤参考人。
#4
○参考人(大澤裕君) 東京大学法学部で刑事訴訟法を担当しております大澤でございます。
 私は、現在御審議の法案、その基となる法整備の要綱骨子について審議いたしました法制審議会刑事法部会に幹事として参加をしておりました。本日は、法案に盛り込まれております犯罪被害者等の訴訟参加制度につきまして、部会における議論も踏まえ、基本的にこれに賛成する立場から意見を述べさせていただきます。
 法案に盛り込まれました被害者参加制度を考える上で出発点とされなければならない一つは、これは、犯罪被害者の方々からの声にこたえ立法府が平成十六年にまとめられた犯罪被害者基本法であろうと思います。同法は、御案内のとおり、基本理念として、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」とうたい、そのような理念を実現するための基本的施策として、刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備というものを掲げております。
 これを受けて政府において策定されました犯罪被害者等基本計画では、公訴参加制度を含め、犯罪被害者等が刑事裁判手続に直接関与することのできる我が国にふさわしい制度を新たに導入する方向で検討し、実施すべきものとしております。ここでは、犯罪被害者等の尊厳にふさわしい処遇というものが刑事裁判においても求められることが明らかにされていると言えるかと思います。
 これに対し、いま一つ忘れてはならないのは、刑事裁判固有のその本来的な目的です。刑事訴訟法は、この点につきまして、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現すると言っております。
 法案の被害者参加制度の特色を部会における議論の過程も踏まえつつ私なりに申し上げますと、刑事裁判の目的とするところとそして犯罪被害者等基本法の趣旨とするところとをきめ細かく突き合わせ、刑事裁判の目的ないし構造を保持しつつ、犯罪被害者等の方々の尊厳にも配慮し、適切な訴訟参加の機会を開こうとしたものと言うことができるかと思います。
 以下、この点をいま少し具体的に述べさせていただくことといたします。
 犯罪被害者の訴訟参加制度と申しますと、例えばドイツにおける私人訴追制度や公訴参加制度などを念頭に、被害者が訴追権や証拠調べ請求権、上訴権などを持つ制度が思い浮かべられがちです。しかし、法案の被害者参加制度には、刑事裁判における審判の対象であります訴因の設定権や、あるいは被害者独自の証拠調べの請求権、あるいは上訴権といったものは含まれておりません。この点は法案の被害者参加制度の具体的な特色の一つと言ってよいかと思います。
 それはなぜかと考えてみますと、まず刑事裁判によって実現されるべき刑罰は、御案内のとおり、これは私的復讐ということではなく、国家が公益の見地から、犯人の責任の範囲内で将来の犯罪の予防等を目的として科するものでありまして、そのような刑罰の公的な性格のゆえに、それを実現するための公訴権の遂行は国家機関である検察官の手にゆだねられています。仮に被害者が訴因設定権や上訴権を持って刑事裁判の中に加わるといたしますと、このような刑事訴追の制度を修正し、ひいては刑罰の性格に変容をもたらすおそれも生じかねません。
 また、刑事裁判は、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用するものでなければなりません。その一つの具体化として、我が国の刑事裁判は、刑罰権を追求する立場にある検察官が被告人の犯罪事実を主張、立証し、これに対し被告人、弁護人が防御をし、その結果を公平中立な立場から裁判所が判断して判決を下す、こういういわゆる当事者主義の構造というものを取っております。
 ここに被害者が検察官とは異なる審判対象、つまり訴因の設定権、そしてそれを認めるということになりますと、当然その立証のための証拠調べ請求権も伴うということになるかと思いますが、そういうものを持って加わるということになりますと、審理の対象も被告人側の防御の対象も広がり、刑罰法令の適正かつ迅速な実現に反する事態が生じるおそれもなしとはいたしません。
 そして、被害者に検察官とは異なる訴因の設定権を認める場合には、先ほど申しましたように、その立証のための証拠調べの請求権というのも恐らくセットで認めなければならないこととなるかと思いますが、今述べましたような理由により、被害者独自の訴因設定権というようなものを認めることが困難だといたしますと、被害者独自の証拠調べ請求権を認める必要性というのは減じることになります。むしろ、それを認めることは審理の迅速性を損ねたり、場合によっては検察官の立証との間で矛盾を来し、その結果、事案の真相解明が害される、そういうおそれも生じてまいります。
 法案の被害者参加制度が、訴因設定権、証拠調べ請求権、上訴権といったものの採用を見送ったのは、以上のような点を慎重に考慮した結果と思われます。
 被害者参加制度は、公判期日への出席、すなわち法廷のさくの中に在廷できることを基本とし、さらに一定の要件の下で、証人の尋問、被告人に対する質問、事実及び法律の適用に関する意見の陳述、こういうことを許しております。これらについても刑事裁判の目的を害するおそれがあるとの見方があることは、これは御承知のとおりであります。しかし、この点では、現在既に存在している制度とその運用も踏まえつつ、新たな制度によって果たして言われるところのような危険が本当に高まるのか、冷静な見極めが必要であるとともに、手続的な手当て等で対処が可能ではないか、きめ細かな検討の余地があると言えます。
 例えば、被害者が公判期日に出席するということに対しましては、被告人の防御活動を萎縮させるおそれがあると言われることがありますが、現行の制度においても被害者が傍聴人として傍聴席に在廷する場合は当然あるわけでありまして、それとの比較で考えたときに、新たな制度の弊害としてどこまで重視すべきかは、これは疑問なしとはいたしません。
 証人尋問については、先ほどの証拠調べ請求の場合と同じく、検察官と矛盾する尋問がなされ、結果的に事案の真相解明が害されるおそれといったことも考えられなくはありませんが、尋問事項を限定する等の方法によって対処することができないものか、この点は検討の余地があるように思われます。
 法案の被害者参加制度は、このような検討を遂げた結果と考えられます。被害者参加人は、原則として公判期日に立ち会うことができますが、裁判所が相当でないと認めるときは公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができるとされております。証人の尋問は、情状に関する事項に限られ、あらかじめ尋問事項を明らかにして申出をし、裁判所が相当と認めるときに許すこととされております。被告人に対する質問も、あらかじめ質問事項を明らかにして申出をし、相当と認めるときに許す、このような枠組みが取られているわけです。
 法案の被害者参加制度において見落とすことができないもう一つの特色は、検察官とのコミュニケーションを重視している点です。参加、証人尋問、被告人質問、意見陳述、これらはいずれも検察官に対して申出をし、検察官から意見を付して裁判所に通知する、そのようなこととされております。また、被害者参加人は、検察官の権限行使に関し意見を述べることができ、検察官は必要に応じ権限の行使又は不行使の理由を説明しなければならないこととされております。これは、検察官との理解、協力を図ることにより、当事者主義という刑事裁判の枠組みの中で被害者参加制度の円滑な運用を図るための工夫と言えます。
 加えて、刑事裁判の推移、結果に重大な関心を抱く被害者にとりましては、刑事裁判において公訴権を遂行する検察官と十分な相互了解を図るということは、それ自体被害者の尊厳にふさわしい処遇としての側面を持っていると言えるかもしれません。
 なお、被害者参加制度に対しては、仮に刑事裁判の目的を害しないとしても、それに積極的に資するところは乏しく、それゆえ刑事裁判の制度としてはそれを導入する理由にはやはり欠けているのではないかとの疑問が呈されることも、これはあるかもしれません。しかし、被害者が検察官の近くに席を占め、必要に応じ検察官とコミュニケーションが取れることは、事案の真相解明に資する面がないとは言えません。
 また、その点をおくといたしましても、最初に触れましたように、犯罪被害者等基本法は、犯罪被害者等が刑事裁判においてもその尊厳にふさわしい処遇を保障されるということを求めております。被害者にとって、刑事裁判の推移、結果に関心を抱くということは、これは極めて自然なことでありますし、そこに一定の関与をしたいとの心情も一概に退け得ないものであるといたしますならば、それにこたえるべく、刑事裁判がその目的に反しない範囲で門戸を開くということは、決して不合理なこととは言えないように思われます。
 法案の被害者参加制度は、このような刑事裁判における被害者の尊厳確保の要請を言わばてんびんの一方に、そして刑事裁判の目的、構造保持の要請をてんびんの他方にそれぞれ乗せ、バランスの取れた制度を模索した結果と言えるのではないかと思っております。
 最後に、やや視点を変えて何点か触れておきたいことがございます。
 第一は、被害者は感情的かという問題です。
 一般的にそのような傾向があるかどうかは、それ自体議論の余地がありますけれども、少なくとも法案の被害者参加制度では、参加に至る過程あるいは個々の訴訟活動に至る過程において、検察官との十分な意思疎通、コミュニケーションの機会が置かれております。感情的な訴訟活動による混乱の危険というのは、この点で制度的にもスクリーンをされているというふうに思われます。
 第二は、裁判員制度との関係です。
 裁判員制度の円滑な導入は、被害者参加制度の設計においても、これは忘れることのできない問題であったように思います。とりわけ、裁判員制度の下では、裁判員にとって分かりやすく負担の少ない審理が求められ、そのための争点の絞り込みや証拠の厳選が求められます。この点で、法案の被害者参加制度において訴因設定権や証拠調べ請求権というものが取られなかったことは、争点、証拠の過度の複雑化を防止するという点で裁判員制度にとってもこれは賢明な選択であったと思われます。
 他方、裁判員制度との関係では、法律の適用に関する意見の一環として刑についての意見を述べることができる点で裁判員への過度の心理的影響を危惧する意見というものがあることは、これも御承知のとおりです。しかし、少なくとも刑についての意見は、現行の被害感情等に関する意見陳述でも処罰感情の表現方法として述べること、これは可能です。それとの比較において、この点を過度に懸念することには疑問もあるように思います。
 最後の最後になりましたけれども、被害者参加制度の位置付けということについても一言しておきたいと思います。
 犯罪被害者が刑事裁判の推移、結果に関心を持つことは、先ほども申しましたように自然なことであり、そこに一定の参加を求める被害者が少なくないこともこれは間違いないように思います。そして、それが被害者の名誉回復や立ち直りに資することも少なくないと思われます。それゆえ、法案のような被害者参加制度を設けることは十分意義のあることと言えると思います。しかし、それは同時に、被害者の尊厳を守る方策として決して万能なものではなく、むしろ一つのメニューにすぎないということも忘れられてはならないように思います。
 ちょっと声がかれておりまして、大変お聞き苦しかったと思います。お許しください。これで終わります。
#5
○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
 次に、後藤参考人にお願いいたします。後藤参考人。
#6
○参考人(後藤弘子君) 千葉大学大学院専門法務研究科で少年法、ジェンダーと法を教えております後藤と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、この十年ほど様々な犯罪被害者の方とお話をさせていただいたり、長年にわたり少年法や刑政策を研究してまいりました立場から、現在審議中の法律案における犯罪被害者の刑事裁判参加には問題があるという立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
 具体的な問題点に入ります前に、被害者参加制度を導入するに当たりまして前提とすべきこと五点と、今回それが十分に検討されていないという問題点について、まずお話ししたいと思います。
 改めて指摘するまでもないことですが、被害者参加制度は、犯罪被害者等基本法及び同基本計画の要請を満足する必要がございます。基本計画は、犯罪被害者の尊厳が尊重され尊厳にふさわしい処遇が行われること、被害者の多様性にかんがみて個々の事情に応じて適切に行われること、連続性を持った途切れることのない支援が行われること、国民の理解を得た総意の形成の四つを基本方針として掲げております。今回の制度は、被害者の意思決定を尊重する形にはなっておりますが、意思決定の際の支援制度は十分とは言えず、また、被害者にかなりの負担を強いる点で、被害者の尊厳にふさわしい処遇とは必ずしも言えないと考えます。
 第二に、刑事裁判は犯罪被害者にとってとても重要な意味を持つということは言うまでもございません。刑事裁判において事件の真相が明らかになり、加害者に対して適正な処罰が行われることで被害者の正義が実現するだけではなく、犯罪被害者として社会に適切に認知されることで、被害者はこれからの気の遠くなるような長い回復のプロセスを歩んでいくことができるのです。そのため、刑事裁判において被害者の正義を実現できる機会はすべての犯罪被害者に認められなければなりません。今回の制度は、一部の被害者のみが刑事裁判において正義を実現できる制度になっている点で問題があります。
 第三に、刑事裁判は多くの場合、事件からそう間もない時期に行われます。そのため、被害者の方がまだ事件について受け止めることができず、回復の道を歩み始める前に刑事裁判が行われるということになります。このことは、刑事裁判への参加が被害者の今後の回復に役立つようなものでなければならないということを意味します。回復に役立つためには、被害者にとって過度な負担にならないような制度設計が行われる必要がございます。しかしながら、今回の制度は被害者に大きな負担を負わせる制度となっています。にもかかわらず、裁判中やその前後の支援が十分に制度に組み込まれていないという点で問題があります。
 第四に、制度をつくる際には、その制度が必要であること、効果的であること等についての科学的な裏付けが必要となります。残念ながら、日本の刑事立法においては、必要性、有効性についての科学的な調査が行われることがなく制度がつくられることが少なくありません。今回も同様です。少なくとも、これまでの被害者参加形態である意見陳述制度について、被害者にとっての意味や被害者に与える心理的負担の程度、裁判に与える影響等を広く調査した上で制度をつくるべきだったというふうに考えます。
 五番目に、基本計画は、現在の刑事裁判が歴史の所産であることなどを前提として、時として衝突し、考量困難な種々の要請にこたえるものでなければならないというふうにしています。今回の制度は、これまでの刑事裁判の基本的な枠組みを変更するものではないというふうに言われていますが、被害者が被害者参加人として刑事裁判に参加することで、これまでより刑事裁判に応報的な要素が入り込むことになります。このことが被害者の正義の実現にとって重要であるとするならば、その際のバランスの取り方として、被告人の権利保障が従来の形で十分であるかについての検討がなされる必要があります。しかしながら、今回の制度設計に当たっては、そのような考慮はなされていません。
 次に、この制度が導入された場合の被害者への影響について考えてみたいと思います。ここでも五点ほど指摘いたしたいと思います。
 まず初めは、犯罪被害者支援の連続性が欠けているということでございます。
 被害者に関する支援は途切れることなく行われなければなりません。法律案は、一定の犯罪類型に属する人たちのみを被害者参加人となれる人としております。それ自体にも問題はございますが、被害者参加人として参加する可能性がある被害者は少なくともそのような存在として被害直後から刑事司法の中で扱われなければなりません。今回の法律案は裁判の場面のみが対象となっておりますが、事件発生の直後から裁判に至るまでの捜査段階における十分な支援こそが必要なことは各種調査から明らかです。
 今回の制度が刑事司法制度における一連の被害者支援とどのような関係にあるのか、被害者参加人になれる被害者に対して特別な支援が行われることが予定されているのかなど、被害者支援の全体像の中での位置付けが私にははっきりいたしません。今回の制度が刑事裁判の前後に予定されている被害者支援とどのように関連しているのか明確でないということは、継続的な支援という点からも被害者の尊厳との関係でも問題と言わざるを得ません。
 第二に、犯罪被害者間の不平等についてでございます。
 今回の制度は刑事裁判に限定されております。そのために、刑事裁判に至らない事件の被害者の方たち、具体的には事件性はないとされた被害者の方、犯人が特定されていない被害者の方、犯人が特定できていても犯人の身柄が確保できていない被害者の方、不起訴になった被害者の方、公判請求されない被害者の方などがそれに該当しますが、このような被害者の方々にとっては今回の制度は関係のないものでしかありません。多くの公判請求されない被害者の刑事裁判への参加について全く考慮されていない制度は、被害者支援制度としてあるべき姿から懸け離れているように私には思えます。
 一部の被害者について手厚い支援を行う制度をつくる場合には、それだけの合理性が認められなければなりません。一部の被害者が望んでいるから、被害者がバーの中に入ることで被害者の地位を高めるという象徴的な意味があるということだけでは、そのほかの多くの被害者の刑事裁判参加をより困難とする理由としては不十分だと言わざるを得ません。
 第三に、犯罪被害者の負担の増大が挙げられます。
 今回の制度は、被害者があらゆる段階で一人で意思決定を行うことを前提として制度がつくられております。弁護士強制もなく心理的な支援者が必ず付き添うわけでもありません。このことは、今回の制度が、制度が予定している負担に独力で耐えることができる強い被害者を想定して制度設計されていることを意味しております。
 このような制度設計によって、余りのハードルの高さに多くの被害者がこの制度に参加することを断念するだけではなく、参加できた被害者においても過度な負担を負うということになりかねません。このような制度が被害者の尊厳に配慮した制度とは、少なくとも私には思えません。
 第四に、犯罪被害者の被害の増大が挙げられます。
 制度が前提としている被害者の過度な負担は、被害者に多大な二次被害を与える可能性を秘めております。もちろん、このような過度な負担に耐えてもなお参加したい被害者がいらっしゃることを否定するものではありません。その場合でも、その過度な負担に耐えることによる二次被害の増大について何の手当てもない制度設計は、被害者の尊厳に配慮した制度とは言えません。
 さらに、今回の制度では、直接、証人や被告人とのやり取りがなされることが予定されております。その場合、証人や被告人から配慮ない言葉を投げ掛けられたり満足のいく回答が返ってこない場合には、自ら質問をしたこととの関係で被害者の傷付きも更に大きくなります。
 刑事裁判は被害者の回復の場として位置付けられなければなりません。被害者の回復の場が二次被害を受ける場となることへの配慮が全くない制度設計は、基本計画の趣旨を没却したものであると言わざるを得ません。また、被害者が今回のような形で刑事裁判に参加することでどのような影響があるのかについて調査が行われていないことも問題です。
 五番目に、犯罪被害者が知りたい事実が分からない可能性について指摘したいと思います。
 被害者は刑事裁判で事件の真相が明らかになることを期待しております。そして、今回、自らが被告人等に質問をすることで事件の真相がより明らかになると考えていると思います。けれども、刑事裁判においては、被告人が話したいことではなく被害者が話してほしいことを被告人に話してもらうためには、それなりの技術と経験が必要です。そのため、今回の制度では、被害者が質問をした場合、質問したというその事実しか獲得できない、そういう場合も少なくないのではないかと思います。それよりは、被害直後から検察官との密なやり取りを行うことで、犯罪事実の立証には必ずしも必要ではないことでも被害者のために検察官が質問をする、若しくはその事実が分かるような形で主張、立証を行うことの方が刑事裁判における被害者の正義の実現には役立つように思います。
 最後に、今回の被害者参加制度がもたらす他の制度への影響について簡単に触れておきたいと思います。
 第一に、先ほども御指摘がありましたけれども、裁判員制度への影響でございます。
 裁判員制度の制度設計に当たっては今回の制度が前提とされてはおりません。そのため、どのような影響があるのかは全く未知数です。さらに、今回の制度のように応報的な要素が強く取り込まれる刑事裁判においては、プロの裁判官でさえもその影響を受けないとは言い切れません。両方の制度への相互の影響を科学的に調査した上で制度設計や制度の導入を行う必要があります。
 第二に、少年事件への影響です。
 少年事件の場合には、刑事裁判においても少年法の理念である少年の健全育成が指導理念として存在しております。そのため、成人の被告人と同様な制度を適用することには慎重でなければなりません。さらには、少年の脆弱性への配慮も必要です。その配慮がなければ、被害者の方の多くが望んでいらっしゃる再犯の予防を阻害する結果ともなりかねません。
 第三に、量刑への影響です。
 今回の制度のように、被害者がバーの中に在廷し、自ら質問し求刑するといったあたかも訴訟当事者であるかのような外形を呈することで、刑事裁判には応報的な要素をこれまで以上に取り込む効果があることは否定し難い事実だと思われます。それが被害者の正義の実現の望ましい形であるとするならば、それを前提とした制度の修正を行う必要がございます。かねてから指摘されているように、被害者参加制度が導入されている国々には死刑制度はありません。死刑制度がないことで応報的な要素を刑事裁判にある程度まで取り込むことが可能であるという点については十分に考慮する必要があると考えます。
 第四に、犯罪者処遇への影響でございます。
 応報的要素が量刑に反映されることにより刑期が長くなり、したがって刑務所は現在以上に過剰収容となります。刑務所では、御案内のとおり、新法の施行によって受刑者に対して様々な教育的処遇が実施可能となりました。しかし、収容者の増加に比べて職員の増加はごくわずかで、慢性的な過剰収容の中、十分な教育が行える状況にはありません。受刑者に対する教育の充実のための思い切った職員の増加なしに被害者参加制度を導入することで、刑務所の中での教育が不十分となり、ひいては再犯の危険性を高めることにもなりかねません。刑事司法過程を総合的にとらえた制度設計が不可欠です。
 このように、今回の被害者参加制度には多くの解決の必要な問題が残されています。このような多くの問題点を残したまま制度が導入されることは、被害者にとっても国民にとっても望ましいことではありません。この点を踏まえた慎重な御審議をお願いしたいと思います。
 以上で私の意見陳述とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
#7
○委員長(山下栄一君) どうもありがとうございました。
 次に、高橋参考人にお願いいたします。高橋参考人。
#8
○参考人(高橋シズヱ君) 地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人の高橋シズヱです。今日は意見陳述の機会をありがとうございます。済みません。ちょっと体調が悪くて呼吸がしにくい状態なので、お聞き苦しい点があるかと思いますが、御容赦ください。
 私は、この被害者訴訟参加制度が実現するよう要望しています。
 まず最初に、一九九五年三月二十日朝に起きた地下鉄サリン事件の被害者の状況について少し説明させていただきます。
 病院に搬送された被害者は五千五百人以上で、死亡者は十二人です。被害者はその年の十月に損害賠償の民事提訴をしました。十五人のオウム信者に対しては二〇〇〇年三月に勝訴判決を得ましたが、もとより一円の賠償金も支払われていません。被告のうちオウム真理教に対しては、事件の翌年、九六年三月に破産宣告が下り、最初の配当率は一四%程度と犯罪被害者の経済的被害回復にはほど遠いものでした。その後、管財人と被害対策弁護団の御尽力、そして被害者自身の自助努力の結果、現在は約三四%になっております。これは二つの議員立法による法律、すなわち、オウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律と特定破産法人の破産財団に属すべき財産の回復に関する特別措置法の恩恵によるもので、立法に御尽力いただいたことを感謝しております。しかし、経済的被害回復は遅れており、テロ事件の被害者救済を引き続きお願いしているところです。今日は関連資料を配付させていただいております。
 このような状況から、被害者は刑事裁判にかかわることもままなりませんでした。これは地下鉄サリン事件に限ったことではありません。犯罪被害者が置かれている状況は大差がないものと思っています。したがって、犯罪被害者等基本計画の経済的支援に関する検討会では、現在の犯罪被害給付金支給制度より手厚い給付になるよう、私も構成員の一人として発言させていただいております。
 一方の刑事裁判については、昨年九月に松本智津夫の死刑が確定しましたが、何ともふがいない終わり方でした。地下鉄サリン事件では十五人が起訴され、三人が無期懲役で服役していますが、十一人の裁判は初公判から十二年になろうとしている現在でも係属中で、残る一人は逃亡中です。
 これまで、私は、オウム裁判を四百回近く傍聴してきました。何人かの法廷で証言し、意見陳述もしてきました。その経験から、被害者の訴訟参加を要望する幾つかのエピソードをお話ししたいと思います。
 主人が亡くなることになった千代田線でサリン散布の実行をした林郁夫受刑者が九八年五月に無期懲役が確定するまで二年五か月という、オウム裁判では異例の早さでした。私は刑事裁判がどのようなものかもよく分からない上、オウム真理教独自の教義や教団内での利害関係も十分に理解できない状態で林受刑者の判決を聞いたという状態でした。はっきり言えば、傍聴席には座ったものの、何が何だか分からないうちに終わってしまったというのが実感です。
 林受刑者の法廷では、証人出廷することを拒否しました。感情に任せて死刑にしてくださいと言うことは簡単です。確かに、主人を殺された家族の怒りはありますが、私は、事件の実態もよく分からないまま無責任な証言をしたくなかったのです。だからといって、死刑にしないでくださいとも言えませんでした。
 林受刑者は、逮捕されると間もなく、事件を起こしたことを自供し、反省したということでした。どうしてサリンをまく前に気付いてくれなかったのかと恨みました。初審理の法廷では、被害者に謝罪し、被告人質問では、私は生きていちゃいけないと号泣しました。林受刑者が心を翻したその早さに驚き、死ぬ覚悟があるという言葉を傍聴席で聞き、果たして法廷での出来事が真実なのかどうか見極めが付かなかったのです。
 私は、今になってはどうすることもできませんが、傍聴席からでは分からなかったこと、つまり、審理の進行についてや証拠採用されたものについて説明を受けていれば、法廷で何が行われているのか、その内容をもっと理解することができたのではないかと思っています。そして、証人に対して、あるいは被告人本人に対して、疑問に思っていることを質問できていたとしたら、証言が真実なのか、本心なのかを直接問うことができたと思います。刑罰という社会的責任を取るだけではなく、被害者に対して倫理的な責任をも法廷という公開の場で確約させることができたのにと思います。
 また、地下鉄サリン事件の指揮役を務めた井上嘉浩という被告人がいます。一審で無期懲役、控訴審で死刑になり、現在上告中ですが、一審では数々の事実を証言し、オウム真理教の実態を明らかにしてきました。しかし、私には、それまで井上被告が信奉していた教組の存在が裁判所や検察官に取って代わっただけにしか見えませんでした。
 そんな井上被告の法廷で私が証言したときのことですが、証言前に私は井上被告の弁護人から、高橋さん、被告人に死刑にしてくださいとはっきり言ってやってくださいと言われました。被害者の調書に書かれている文章では、被害の悲惨さが現実のものとして被告人の心に十分には伝わりません。ましてや、調書が証拠採用されただけでは、検察官が要旨を早口で読み上げるだけです。目の前の被害者の生の声を聴いてこそ、被告人の心に響くし、その声は服役してからでも耳に焼き付いているのではないかと思います。
 被害者には証言や意見陳述という機会もありますが、証言というのは、検察官の質問に答えるという制限されたものであり、必ずしも被害者が言いたいことと一致しているとは限りません。意見陳述は、被害者が審理の内容を十分に理解していないことも少なくなく、被告人が起訴事実を否認している場合でも被告人を犯人と決め付けた陳述がなきにしもあらずです。そういう偏向を避けるためにも、公判の最初からかかわり、公判を通して許される限りの機会を与えられるべきだと思います。
 また、同じく井上被告の公判で、丸ノ内線で亡くなった被害者の長女が証言したことがありました。そのとき、被告人席から泣き声が聞こえてきました。証言台の長女は、井上被告の顔を見て、形だけの反省や謝罪を非難しました。それはかなり激しいものでした。証言が終わると、裁判長は被告人に異例の発言を許し、反省や謝罪の気持ちをただしたのです。こういう被告人と被害者とのやり取りこそ、正に今議論されている被害者参加制度ではないでしょうか。被告人が直接被害者と向き合うことは被告人を自己保身から目覚めさせるものがあると思います。
 このときの様子は、コピーを配付させていただいております朝日新聞の降幡賢一さんが書いた傍聴記「オウム法廷H」の百二十二ページから記載されていますが、著者も、このことがきっかけで井上が変わっていったと書いています。
 松本死刑囚の法廷では、検察官はほとんど異議を唱えませんでした。異議を唱えると弁護団の反論により多くの時間を費やすことになったからでしょう。実際に異議を唱えても事実に変わりはなかったのでしょうか。傍聴席からでは知るよしもありませんでしたが、これは、私としては当然知りたいことでした。
 また、解剖医がサリンが人を死に至らしめるという科学的根拠を証言したとき、主人の臓器が解剖医の手元に保存されていることを知りました。それまで私は、主人の臓器の何が、どこに、どの程度、いつまで保存されているのか全く聞かされておりませんでした。被害者が訴訟にかかわっていれば当然証拠として知ることができたものを傍聴席で初めて聞いたことがショックでした。松本死刑囚の裁判が終わった現在でも遺族に断りなく保存されている臓器について、私はおととい、法務大臣に、遺族への配慮と死体取扱い見直しの要望書を提出したところです。
 このように、これまで慣例として行われてきたことが被害者の目を通すことによって問題点が浮き彫りになることがあります。
 オウム裁判では裁判の迅速化が叫ばれ、大きな訴因変更が二回も行われました。その結果、多くの被害者が証言や意見陳述の機会を奪われました。こういうことも、検察官の審理の進め方に関与できれば、ある程度被害者の納得が得られたのではないかと思っています。
 被害者は冷静に刑の判断ができないのではないかという意見がありますが、量刑については今までも証人尋問の中で発言してきたことです。訴訟参加制度では被害者の論告求刑は証拠にならないということですから、考えようによっては残念な向きもありますが、被害者に与えられた意思表示の機会として大いに利用できると思います。そもそも、検察官は被告人を有罪にするために起訴するのですから、審理の進展状況によっては、極端に言えば検察官と違う刑が求められることもあり得ると思っています。
 被害者が感情的になって冷静に裁判に臨むことができないのではないかという懸念があるようですが、果たしてそうでしょうか。
 少なくともオウム裁判では、被告人の証言妨害、居眠り、泣きわめきなどで法廷が中断することが何度かありました。法廷を乱す行為をした場合は退廷が命じられますが、松本死刑囚は何度も退廷させられましたし、あるまじき態度で傍聴していたオウム信者が退廷させられたこともあります。もし被害者が訴訟参加することになっても例外ではないと思います。
 被害者が二次被害を受けるおそれがあるということもあるかもしれません。
 被害者は何の落ち度もない被害者ばかりではなく、事件の背景はいろいろあるでしょう。しかし、被害者の在席いかんにかかわらず被告人からの攻撃はありましたし、むしろ処罰逃れの虚偽発言もあったと思います。被害者はどんなことを聞かされても傍聴席で何の反論の機会も与えられていなかったのです。これも、被害者参加制度では被害者自らあるいは検察官を通して問いただすことができるのですから、審理はより真実に迫るものと考えます。また、代理人でも訴訟参加できるのですから、被害者本人が参加する必要はないと思います。
 そして、その代理人についてですが、法的サービスの最適任者は何といっても弁護士です。被害者には、事件に遭って初めて刑事と民事があることを知る人もいます。被告人に弁護の専門家がいるように、被害者も法律の専門家の支援を受けられるようにし、不安のある被害者には法廷にも付き添えるようにする必要があります。そして、先ほども申し上げたとおり、犯罪被害者は十分な経済的被害回復がなされていませんので、是非とも公的な弁護人制度の導入が望まれます。
 殺人事件など重大事件は、社会生活を営む上で最大の悲劇であり、被害者が単独で被害回復することは困難です。そのために犯罪被害者等基本計画による施策が徐々に具体化されて、喜ばしい限りです。様々な支援が適切に継続的に同時進行することによって、被害者が訴訟参加できるためのより良い環境設定がなされることと期待しています。
 以上です。ありがとうございました。
#9
○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
 次に、細田参考人にお願いいたします。細田参考人。
#10
○参考人(細田初男君) 日本弁護士連合会副会長の細田初男と申します。
 本日は、刑事裁判の現場からの声をお伝えする機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私ども日弁連は、これまで数次にわたり、犯罪被害者等に対する経済的補償や医療・福祉サービスの充実等の総合的支援が必要だとの意見書を公表し、また所属会員が被害者のための法的サービスを提供してまいりましたが、近時、関係各位の尽力により、一定の前進は見られるものの、支援策はまだまだ不十分であると考えます。
 今なお多くの被害者等が刑事裁判に抱いている不満は、捜査機関による被害者への対応や事件処理への不満のほか、捜査結果や事件内容、手続について十分な情報提供がされていないため、なぜ自分がこうした事態に巻き込まれているのか知りたいという願いが満たされないことや、検察官の訴訟活動に自らの思いが十分に反映されないことなどに起因していると思われます。
 そこで日弁連としては、まず被害者等の検察官に対する質問・意見表明制度、被害者等に対する公費による弁護士支援制度の導入により、検察官と十分なコミュニケーションを図り、また、公費による公的弁護人によって捜査段階から裁判終了まで手厚い法的支援を行うことにより、その成果や限界を検証することが必要だと考え、具体的提言を行ってまいりました。
 今年の五月一日に日弁連が反対決議をしておりますので、その内容などを御報告します。
 日弁連の意見は、五十二の各県の単位会会長らで構成する理事会で決議されて初めて公式見解となります。今年の五月一日の理事会では、本被害者参加制度の導入には慎重であるべきであり、直ちに導入することには反対するとの意見書が、賛成七十八、反対一、棄権三で採択されました。全国各地で刑事裁判の現場を担い、また被害者支援委員会をも擁する単位会の選挙による責任ある会長たちがこれだけ懸念を表明しているということは、重たいことであると思います。
 私自身は埼玉県川越市で弁護士業務に従事しており、これまで被害者の皆さんのためには相談や告訴、損害賠償請求の交渉、法廷傍聴の同行等の支援活動をしてまいりましたし、今、埼玉弁護士会に被害者支援委員会というのがございますが、私が平成十年の会長当時に必要性を認めて指示して立ち上げたものであります。地方では、刑事弁護も被害者支援もと、人権擁護のための多面的な役割を担わざるを得ず、余りどちらかというふうに専門分化していないのが実情でございます。
 私自身の担当した刑事弁護事件、一つ御紹介したいと思いますが、これは三年前のある業務上過失致死事件でございます。
 大きな国道の坂の上の変則V字形交差点を左折中の大型トラックに、自転車で横断しようとした小学校三年生の男子が、死角に近かったためか、巻き込まれてしまい、運転手に気付かれぬまま約一キロも引きずられて、死体から顔がなくなってしまったというような悲惨な事故が発生しました。
 遺族は意見陳述で極刑を求めましたが、検察官の求刑は禁錮二年、判決は禁錮一年八月でありました。
 私は弁護人として、この不幸な事故により尊い一命を落とされた被害者と御遺族に心よりの哀悼の意をささげますと弁論を始めましたが、しかしながら、結果の重大さのみに目を奪われてはならないのであって、過失の程度も十分しんしゃくする必要があります、厳罰化のみでは再犯は防止できませんとの弁論をいたしました。
 しばらく後に、再び同一場所で子供が犠牲になる死亡事故が発生し、地元民からは魔の交差点と恐れられるようになり、安全対策を求める住民の声が高まりましたが、まだ抜本的な改善には至っておりません。
 この事件から学ぶべきことは幾つもあると思いますが、遺族の処罰意見と現実の量刑との隔絶は甚だしいものがあります。子供を失った母親の嘆きから、法定刑を超えて極刑を求めるのは無理もありませんが、果たしてそれが適正と言えるでしょうか。遺族にとってもいやしではなく、法廷で述べた思いと懸け離れた判決が下されることがかえって二次被害となってはいないでしょうか。
 日弁連決議の内容を少し御報告いたしたいと思いますが、まず、本法案は真実の発見に支障を来すと考えます。
 被害者の訴訟行為は、やはり被告人を萎縮させ、自由な発言を困難にして、刑事裁判の事案の真相を明らかにする目的を阻害するおそれがあります。
 衆議院では、傍聴席から参加人席へ被害者が移ったからといって、言いたいことも言えなくなるそういうしおらしい被告人はいないとの参考人意見も述べられておりますが、実際の刑事弁護の現場では、現実に被害者を前に被告人が物を言えなくなる事態は枚挙にいとまがありません。
 二番目に、刑事訴訟の構造を根底から覆すという点であります。
 被害者参加人は実質的な訴訟当事者であり、検察官対被告人、弁護人という二当事者の現行構造を変容させます。そのことは法制審議会の刑事法犯罪被害者関係部会で、一時、補助参加人という用語が提案されましたが、検察を補助するものではないとの意見により変更され、現在の被害者参加人となった経緯からも明らかであります。
 また、検察官や裁判長の訴訟指揮などのチェックに期待できるから法廷が混乱するおそれはないとの説明がありますが、私どもは被害者の方とのお付き合いの極意は寄り添うことであるという研修を受けております。寄り添うこととチェックをすることは相矛盾することでございまして、法曹三者も、被害者の方をこれ以上傷付けないようにという配慮からチェックに消極的になりがちとなることが予想されます。
 三番目に、被告人の防御に困難を来すおそれがあるという点であります。
 被告人には、強大な組織力と強制捜査権を背景とする検察官と対峙せざるを得ない厳しい立場に置かれるので、無罪推定の原則や黙秘権が保障されておりますが、新たに被害者参加人の訴訟行為が加われば防御の負担が増えます。この点で、国連コングレス、犯罪防止・刑事司法会議といいますが、でも被害者参加の在り方についてはいまだ国際的な合意がなく、被告人に不利益を与えることなく、また各国の刑事司法制度の枠内で実施することを求めているにすぎないことが想起されるべきであります。犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言を被害者参加を求めるものとして引用することは誤りであります。
 四番目に、少年の刑事裁判では更に深刻な問題があることであります。
 近時、逆送されて刑事裁判を受ける少年が増加しておりますが、少年は精神的に未熟であり、社会的経験にも乏しいので、被害者参加人から極めて強い萎縮効果を及ぼされ、健全な育成や懇切を旨とした少年の刑事裁判の適正手続を害するおそれが強いのであります。
 五番目に、裁判員裁判が円滑に機能しなくなるおそれがあります。
 裁判員裁判の施行まで二年を切り、何としても円滑にスタートさせなければならないと考えておりますが、本件被害者参加制度はその半年前に施行する予定であると言われております。しかし、元々裁判員裁判を制度設計した当時には、本件被害者参加制度は全く考慮されておりませんでした。怒りや悲しみなどの応報感情に基づく被害者参加人の質問、弁論、求刑等の訴訟行為が、一回限り、しかも初めて裁判に関与する裁判員の情緒に働き、冷静であるべき事実認定や公平な量刑に大きな影響を与えることが強く懸念されます。
 今、全国各地で裁判員の模擬裁判が行われております。私もその主任弁護人を務めたことがございますが、公開されたその評議に参加した市民の多くが、量刑の相場観が一番難しかったと感想を述べておられます。現行の被害者意見陳述が始まりまして量刑が明らかに重罰化したというのが私ども現場の弁護人たちの実感であります。裁判官でさえ影響を受けるのでありますので、裁判員がそれ以上であることは見やすい道理であります。この懸念に対しては、国民は健全な判断ができるという制度趣旨と矛盾するからと思考停止してしまう向きもありますが、事実をありのまま見詰め、なるべく弊害を避けるような制度設計をすることが肝要であると思います。
 終わりに、ほとんど裁判長が尋問する職権主義のドイツ、フランスや、陪審員が基本的には事実認定するだけで量刑には関与しない陪審制を取る当事者主義のイギリス、アメリカの訴訟制度に比べまして、事実認定と量刑の手続が分離しておらず、双方の役割を同時に担う裁判員制度と死刑制度及び弁護士強制ではない本件被害者参加制度が相乗する我が国の刑事裁判はかなり特異な形態となります。
 被害感情を法廷にむやみに持ち込むものではないとの意見もありますが、被害者参加人にもいろんな個性があります。意に沿わない回答がされた際など感情が制御できなくなることはむしろ予想されるところであり、それがさらに被害者参加人自身を傷付けることになるとも思います。厳罰を求め法廷に人間的対決を持ち込むことによる混乱の懸念はやはり払拭し難く、刑事裁判の本質に照らし将来に取り返しの付かない禍根を残すことになると思います。
 議員の皆様の賢明な判断をお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
#11
○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○岡田広君 自由民主党の岡田広です。
 今日は、四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 時間が限られた時間でありますので、何点かその中でお尋ねをしたいと思います。
 まず初めに、高橋参考人にお尋ねをいたします。
 高橋参考人は、御自身が犯罪被害者の御遺族であるとともに、オウム真理教の事件の被害者や御遺族の方々を始めとして様々な方とお話しする機会が多かったのではないかと思います。
 先ほどのお話の中でも、オウム裁判についても四百回傍聴されて、傍聴席では分からないことでも法廷で質問できていれば真実がもっと明らかになるというお話もありましたけれども、今回の被害者参加の制度を導入することに反対する意見の中には、被害者の方々が感情的になって法廷が復讐の場になるのではないかという意見もあるわけであります。
 そこで、高橋参考人のこれまでの御経験も踏まえて、被害者の方々が感情的になって法廷が復讐の場になるのではないかという反対の意見につきまして高橋参考人がどのようにお考えか、お尋ねをしたいと思います。
#13
○参考人(高橋シズヱ君) 私が傍聴したオウム裁判と、幾つかほかの裁判もありますけれども、ほかの事件の裁判もありますけれども、そういう中で、被害者が感情的になっているということは、被告人が感情的になっていることに比べたらほとんどゼロに近いと思います。
 私が少し感じた中では、意見陳述の場のときにかなり激しく被告人に対して非難の言葉を浴びせたということがあります。それは松本死刑囚の裁判でありまして、これはもう本当に、これだけの事件で、しかも被告人もたくさんいた中で、そして最後の最後に、松本智津夫の法廷での意見陳述ということで、もうこの被告に対しては是非言ってやりたいという御遺族の方もいらっしゃったので、それはそういうこともあるというふうに思っています。
 しかし、感情的になるということはある程度これは許されることであって、先ほども申し上げましたけれども、大事な家族を殺された、もう人生最大の悲しいことであり、つらいことであり、怒りを爆発させることでありますから、その感情が伝わらないような法廷でどうして被告人が裁けるのかという気持ちでおります。
#14
○岡田広君 ありがとうございました。
 本制度は、被害者の方々が希望する場合には刑事裁判に参加することができることとするものでありますけれども、これについては一部に、被害者が直接参加するのではなく間接的な関与とすべきであるとの意見もあります。被害者の方々の意思を十分に酌んだ検察官が訴訟活動を行えば足りるのであって、被害者の方々が直接裁判に参加することまでは認めるべきではないとの意見もありますけれども、この点につきまして、高橋参考人そして細田参考人の御意見をお尋ねしたいと思います。
#15
○参考人(高橋シズヱ君) 私が法廷に出廷したときというのは、検察官の証言に答えるときでした。そのときに、検察官の質問に応じて私は裁判所に対して言いたいこと、述べたいことを言ったわけですけれども、そのときの検察官の質問というのが、これはもう刑事裁判では仕方がないことなのかもしれませんけれども、検察官の被害者への質問の仕方が何とまあ被害者を知らない質問なんだというふうにすごく感じました。
 というのが、その質問の一つに、あなたは被害に遭って体重が何キロ減りましたかということがあります。被害者は体重が減るばかりではないんですね、ストレスのために太るということもあります。ですから、何も被害者が体重が減ったことが被害の大きさのバロメーターではないと考えております。
 それからもう一つは、どうしてこんなことを聴かれるのかと思ったことが、あなたは家計が苦しくなりましたかということがありました。つまり、主人が亡くなって、収入が減って家計が苦しくなって、今収入はどうやって、幾らもらっているのかということでした。私は、そういうことを言いたくはなかったです。
 私が言いたかったのは、例えば、主人を亡くしてどれだけ悲しいかということであって、具体的に言いますと、うちには猫がいます。猫をだっこする主人の姿を見て、私は、子供たちに、つまり私たちの孫ができたら恐らくこんなふうに孫のことをかわいがるんだろうなと、主人の姿を眺めていたことがあります。そういうことが実現できなかったその悔しさというのを、私はむしろそっちの方を法廷で言いたかったんですけれども、残念なことに、検察官の質問というのはそういうパターン化した、被害者を一律化した、そういう質問でしかなかったということです。ですから、被害者が自分の心から、自分の被害、悲しみを自分の口から言うことに意義があると思っております。
#16
○参考人(細田初男君) 怒りや悲しみを法廷に持ち込むことはないという御意見もありますが、私はむしろ逆に、それを抑えろと言う方が不自然だろうというふうに思います。怒り、悲しみがあって当然だろうと思うんですね。無理なことを強いる方が制度設計としてはいかがかと。そういう問題がありますので、諸外国では大体弁護士強制主義を取っておりますし、それから今度、我が国が加盟することになった国際刑事裁判所、ICC、ここのローマ規程六十八条三項というところでも、やはり間接参加にすることができたり、あるいは代理人を通じての書面陳述に制限するとか、いろんなやっぱり配慮がされているようでございます。
 ですから、やっぱりそういう間接参加は大いに考慮する、そのことによって参加という意義が満たされることで、大いに考えてみる必要はあるだろうと考えております。
#17
○岡田広君 被害者参加の制度について、一部に被害者の方々に求刑まで認めることは行き過ぎではないかとの意見がありますけれども、これについて大澤参考人にお尋ねしたいと思います。
#18
○参考人(大澤裕君) まず、求刑という言い方をされておりますけれども、あくまでもこれは法律の適用に関する意見の一環ということでございまして、何か求刑という特別なものがあるということではこれはないはずでございます。それは、検察官が慣行上、論告の最後に求刑といって刑を一応申しますけれども、これも同じことであるわけです。
 そして、検察官の場合には、全国一律の組織の中でいろいろな事件の重み等も考慮して求刑ということを申し上げていて、それなりにそれには、何と申しますか、刑の平等性を確保する等の点で一定の基準となるところもあるかもしれませんけれども、被害者が刑を述べるということについては、これはその事件限りの被害者の自らの処罰感情を表す方法としてそういう手段を用いられるということで、また意味合いは検察官がなされる求刑とはかなり違ってくるでしょうし、また、それは当然受け止めとしても違ってくるというふうに考えております。
 それで、私、意見の中でも述べましたけれども、現在の被害感情についての意見陳述でも、処罰感情を表す方法としては刑を述べることもできます。新しい意見陳述の中でそれができるとしても、私はさほど異とするには足りないというふうに考えております。
#19
○岡田広君 分かりました。ありがとうございました。
 次に、大澤参考人、引き続き後藤参考人にお尋ねします。
 この被害者参加の制度が導入されますと、被告人が加害者であるとの前提で被害者が被告人質問などの訴訟活動を行うことになるわけですけれども、いわゆるお話に出ました無罪推定の原則に抵触するおそれがあるとの意見もありますけれども、この意見につきましてはそれぞれどうお考えでしょうか。
#20
○参考人(大澤裕君) 御指摘のとおり、刑事裁判といいますか、訴訟というものは言わば最後まで行って結果が出てみないと、一体シロなのかクロなのかというのは分からない世界であります。そういう意味では、常に仮定の中で訴訟というものは進んでいく、これは致し方ないことでございます。
 そういう中で、しかし検察官が一定の嫌疑を持って起訴をし、そしてそこで被害者とされた方が、その人の刑事責任を判断する裁判の中で被害者としての役割を果たす、これはもう訴訟上そういうことにならざるを得ない。同じように、常に訴訟というのは最後まで行ってみないと分からないわけですから、被害者について刑事訴訟上ほかにも権限が与えられている場合というのはありますけれども、それもすべて同じことということかと思います。
#21
○参考人(後藤弘子君) 私も今の点に関しましては、そもそも被告人も仮定的な地位におりますし、それに対して被害者も仮定的な地位にいるということで、その無罪の推定の原則を害するとまでは言えないというふうに思います。
 ただ、気を付けなければいけないのは、被害者が参加するということになりますと、万が一その仮定的な被告人が犯人ではないといったような場合というのも予想されます。その場合に、専門家であればある程度納得がいくという場合もあるでしょうけれども、その仮定が覆されたことに対して被害者がどのように思うかということについては配慮する必要があるかと思います。
#22
○岡田広君 ありがとうございました。
 それでは、時間ですので、最後に、もう一度高橋参考人にお尋ねしたいと思います。
 この被害者参加の制度から少し離れてしまいますけれども、被害者の方々のための施策は、本法律案により実施しようとしているものだけではなくして、犯罪被害者等基本計画には、御承知のように二百五十八もの施策が掲げられています。今回の法律案はその中の一つでありますし、今後、被害者の方々のためにやるべき施策というのはまだまだたくさんあるんだろうと思いますけれども、被害者の方々のための施策としてどのようなものが必要であるのか、そういう点、もしお答えいただければお尋ねして終わりたいと思います。
#23
○参考人(高橋シズヱ君) 犯罪被害者等基本法ができる前に、千六十幾つですかね、要望が出されましたし、基本計画の前後にもヒアリングとかでいろいろ被害者の意見が出されました。そういうものすべてが実現されるということが、私たちも、もちろん地下鉄サリン事件被害者の会でも出しましたし、多くの被害者団体が要望を出していますので、そのすべてが実現されることを望んでおります。
 それで、先ほど来の御意見の中に、やはり差別になるのではないか、一部の被害者だけになるのではないかというような御意見もありましたけれども、大澤参考人がおっしゃいましたように、被害者の尊厳を守るこれは一つのメニューにすぎないのであって、私もすべての被害者支援が本当に適切に同時進行されて初めてこういうことが実現するんだと思っていますので、いろいろな被害者支援がすべてが実現されるように望んでおります。
#24
○岡田広君 ありがとうございました。終わります。
#25
○前川清成君 民主党の前川清成でございます。
 高橋参考人におかれましては、大変悲しい、重い経験に基づいて御意見を賜りまして本当にありがとうございました。
 林郁夫の裁判が何が何だか分からないうちに終わってしまいましたと、こういうふうにおっしゃいました。また、御主人の臓器が知らないうちに知らないところで保存されていました、それを法廷で初めて聞いて驚きましたというような御発言もありました。
 そこでお伺いしたいんですが、この事件が発生してから、被害者や被害者の御遺族に対して、警察あるいは検察庁から、どのような形で、どのような対応で、事件の内容あるいは捜査の状況等々について説明があったんでしょうか。
#26
○参考人(高橋シズヱ君) とにかくもう十二年以上前のことですから、被害者通知制度もそんなに徹底、まあ制度としてはあったと思いますけれども、徹底してあったわけではありません。当然、私は自分自身の恐怖もありましたから、加害者側がどうなっているのか、オウム真理教が今どうなっているのかということは当然知りたかったことです。
 そして、私は警察官に聞きました。その得た情報というか、警察官の方がわざわざ自宅までいらしておっしゃったことが、新聞のコピーを持ってきた状況です、今こうなっています。ですから、私は、むしろいろいろなその状況に関してはメディアからの情報が圧倒的に多かったです。要するに、取材をたくさん受けていましたので、そういう中でのやり取りの中で、今、上九一色村ではこうなっているとか、だれだれが逮捕されて今こんなことになっているとかということを聞きました。
 それから、公判予定についても、検察、東京地検からの連絡というのはありませんで、その後何年かたってから、五、六年たったころでしょうか、そのころに被害対策弁護団の方にファクスが送られてきて、そしてそういう公判予定も知ることができたということで、本当に徐々にそういうことが充実してきたというふうに思っています。
#27
○前川清成君 このサリン事件のように、マスコミの注目を集める事件だから警察の方が新聞記事のコピーを示して御説明することもできたのかもしれませんが、ほとんどの事件では、それじゃ被害者に対して捜査状況等々は一切報告をされていないんだろうなというふうに私は思います。その点で私は、細田参考人がおっしゃいました、表現が違うかもしれませんが、検察官の説明義務を法定するというのは方向として大賛成でございます。
 それで、続いて高橋参考人にお伺いしたいんですが、高橋参考人の方から、直接自分で尋ねることができたならば被告人の供述が真実かどうか分かったはずだと、こういうふうにおっしゃいました。あるいは、岡田委員の質問に答えて、検察官の質問というのはパターン化した一律の質問しかなかったと、こういうふうにもおっしゃいました。当事者のお立場で率直な意見をお伺いしたいんですが、検察官の尋問は被害者にとって知りたいこと、あるいは聴きたいことを尋ねていたのでしょうか。
#28
○参考人(高橋シズヱ君) 私はパーセンテージでいったら一〇%ぐらいじゃなかったかなというふうに思っています。
 ただ、私は何回も証人出廷しておりますので、そのうちの一回だけは検察官の方が全部私の話を聴いてくださいまして、そこから逆に尋問を作ってくださった検察官もいらっしゃいました。ですから、やはりこういうことは被害者のいろいろな状況が理解されれば少しずつ変わってくることだとは思いますけれども、やはり先ほども申し上げましたように、検察官の法廷における職務と被害者の法廷における存在の意味とは私は違うと思っています。
#29
○前川清成君 今度は大澤参考人にお伺いをしたいと思うんですが、現行法も二百九十二条の二の一項で被害に関する心情その他意見を述べることができます。このその他意見というのは、高橋参考人のお話にもありましたけれども、求刑的なものも含めることができます。それにもかかわらず、今回提案されております三百十六条の三十八における意見陳述制度、これはどのような意義があるのでしょうか。
#30
○参考人(大澤裕君) 現在認められております意見陳述は、今御紹介のありましたとおり、被害の心情等について述べるということになっております。あくまでも心情等を中心とするものでありまして、それを述べる説明のために必要な範囲では、例えば事実についても言及する可能性というのはあるかもしれませんけれども、しかし、そういうところを述べることが本来の目的ではないわけでございます。
 今回、被害者の参加という制度ができまして、参加人として認められた被害者は法廷に参加することができます。場合によっては証人尋問や被告人質問ということもできるわけですが、そのような法廷における訴訟に参加したものを踏まえて、最後に事実についても、また法律の適用についても意見が述べられるようになる、そこは従来よりも述べられる範囲が拡大をしているということではないかと思います。
#31
○前川清成君 大澤参考人は法律学者でいらっしゃいますので、少し失礼な表現になればおわびをしたいと思うんですが、二百九十二条の二というのは、今おっしゃったように、被害に関する心情その他、被告事件に関する意見を陳述することができます。心情しか述べてはならないという表現ではありません。今回提案されております三百十六条の三十八、これは事実又は法律の適用についての意見です。事実についての意見ですから、御本人の被害感情あるいは被害状況等々も述べることができます。大澤参考人の今のお答えは、雰囲気としてはそうなのかもしれないけれども、法律の解釈としては私は正確ではないと、そう思うんです。条文に応じて今、大澤参考人がおっしゃったような区別というか、すみ分けが本当に可能なのかどうか、解釈論としてお伺いをいたしたいと思います。
#32
○参考人(大澤裕君) 二百九十二条の二というのは、これは従来であれば被害者が何か述べたいことがあれば、恐らく証人尋問という形を取って証人として述べなければいけなかったわけでありますけれども、これに対して、証人尋問という形ではなく、そして自らが申し出て、そして尋問に答えるという形式ではなく意見を述べられる、その意味では証人尋問とは違った、何らか述べたいことを述べる枠組みができたという制度でございます。
 そして、被害者というのは、このときには言わば証人として出てくれば証人ですが、そうでなければ格別の地位を持たない被害者であるわけで、そういう方々が出てきてこの枠組みで述べる事柄は何であるかというと、これはここに書かれている例示の部分が非常に強く掛かってくる、心情を中心とした意見ということで整理をされているというふうに私は了解をしております。
 それに対して、今度の導入されるものというのは、訴訟の参加という事実を踏まえて、それまでの訴訟にずっと立ち会ってきたりしたことを踏まえて、事実あるいは法律の適用について意見が述べられるという仕切りになっているということで、そこは私は違うというふうに考えております。
#33
○前川清成君 大変失礼ながら、それは大澤参考人のイメージであったり思い込みであったり雰囲気であったりして、私は今もお願いしたのは、条文に基づいてどうなのかという解釈を是非お聞きしたいと、そう思ったんです。
 じゃ、もう今度は後藤参考人にお伺いしますが、今の御議論聞いていただいていたと思います。
 三百十六条の三十八、新しい制度ができました。でありながら、まだ二百九十二条の二という制度が残ります。新しい制度ができても従前の二百九十二条の二が残るのはどうしてなんでしょうか。
 私が法律作ったわけじゃありませんと言われるとつらいんですが、要するに私の問題意識としては、今申し上げていたように、大澤参考人には理解してもらえなかったようですが、二百九十二条の二という制度があって、被害者は意見を述べることができます。法律の文言上制約もありません。心情だけ述べてほかは述べてはあかんとは書いていません。現に高橋参考人は求刑に関することもお述べになりました。それにもかかわらず、なぜ三百十六条の三十八が必要なのかというところが解釈論として合点がいかないというところでございます。
 よろしくお願いいたします。
#34
○参考人(後藤弘子君) 私は法制審議会のメンバーでもございませんでしたので、私が理解するところで述べさせていただきます。
 二百九十二条の二の場合は、基本的には、先ほど言いました証人という立場ではなくて自由に心情を述べるということに多分主眼があって、この制度ができたときにはこの条文でしか意見を陳述することができなかったというふうに考えます。
 三百十六条の三十八に関しましては、多分、これは想像でしかございませんけれども、この条文を理解すれば、多分この条文の解釈からすれば、プラスアルファの部分というのはやっぱり事実についてもう少し意見を述べたりそういうことが条文上は想定されていると。
 ただ、二百九十二条の二は、今現在はそれしかありませんので、その機会に実際問題として被害者がすべての意見を述べるということを認めているにすぎないわけですから、私もこの二つが必要かどうかは個人的にはかなり問題があるという前提の中でお答えしているのでかなり苦しい部分ではございますけれども、多分今後はすみ分けて意見を言うということと、もう少し感情的な部分、先ほど高橋参考人もおっしゃったような猫を抱いている御主人の姿とか、そういうことを二百九十二条の二でおっしゃって、そのもう一つの新しい制度については、もう少し法的な解釈も含めて事実についてどのように考えるかというような形のすみ分けを念頭に置かれているのではないかというふうに思います。
#35
○前川清成君 私もすみ分けをして制度として分けるのならよく分かるんですが、解釈論として大澤参考人に聞きたかったのは、法律の文言を比べるとそのすみ分けができてないのではないかというところでございまして、その点では後藤参考人と意見は同じであります。
 後藤参考人が先ほど、この新しい被害者参加制度、参加しても被害者が知りたい事実が直ちに分かるわけではないというふうにおっしゃいました。私もそうだろうと思います。密室の取調べ室で行われた調書、それを読ませてももらえぬとどんな供述をやっているか、これは分からないと思うんです。
 ところが、大澤参考人は、この新しい参加制度というのは検察官と被害者のコミュニケーションを重視していて、検察官のそばに被害者が座っていることが真実の発見に資する面もあると、こういうふうにおっしゃいました。ちょっと私は大澤参考人の御意見がよく分からなかったんですが、どうして真実の発見に、被害者の横に座っていることが真実の発見に資するのか。また、検察官の横に座っていることによって、本当に今の捜査の現状に照らして被害者の知りたいことを知ることができるのだろうか。この点、疑問に思うんですが、参考人、いかがでしょうか。
#36
○参考人(大澤裕君) 真相解明に資する場合があるかもしれないということを申し上げたのは、いや、そう申し上げましたのは、出席をして検察官の横にいて法廷の活動をずっと見ていれば、場合によっては、ここはこういうことを聴いたらいいということを即時に検察官に例えば言うというような可能性もあるということだからであります。
 その上で、分かるのかどうかということですけれども、例えば被告人質問という局面をとらえれば、もちろん被告人には包括的な黙秘権がありますから、何を聴かれても答えないという権利はあるわけですから、それは常に知りたいことが分かるかどうかといえば、それは保証はない。それはそのとおりだろうと思います。
#37
○前川清成君 与えられた時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
 細田参考人にお尋ねすることができなくて本当に申し訳ないんですが、今日の議論を通じて、やはり現場における経験あるいは知恵、これが刑訴法の制度設計や法律を作るに当たっても大変重要だなというふうに私は今思います。そのことだけお伝えをいたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#38
○木庭健太郎君 今日は四人の参考人の方、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。
 まず、四人の参考人にお伺いをしたいと思っているんですけれども、私どもも今回、刑事裁判への被害者参加を道を開いた今回の制度につきましては、いい形というか、被害者の尊厳を考え、正義を実現するという意味では正に画期的な一つの制度が始まる、こういうふうに私どもは理解をしているわけでございます。
 そういう意味では、後藤参考人、細田参考人、まだ今は時期尚早ではないかという御意見なんだろうと思うんですが、今回、この制度を導入することの意義、メリットを一言で言うとどんなふうにお考えになるか。
 これは大澤参考人も含め、高橋参考人も含めて、この制度の導入の意義、メリットを一言でとらえるならどうおとらえになっていらっしゃるかということをお聞きをいたしたいし、さらに、先ほどから御議論があっているように、今回の制度が、たまたま裁判員制度というものが新たなものが発足するときに始まるわけであって、これとの絡みでいいますと、先ほどこれはもう細田参考人は御意見を述べられたようでございますが、やはり裁判員制度の下では、証拠に基づかない被害者参加人の感情的な発言や態度、また感情に基づく意見表明について、法律の専門家でない裁判員は特に戸惑うんではないか、またその影響を過度に受けて、量刑において重罰化に傾くおそれがあるという指摘が、さっきこれは細田参考人がおっしゃったわけでございまして、これについて残りの御三名の参考人の方、重罰化の傾くおそれがあるんじゃないかというような、こういう指摘に対してどうお考えになっているか。
 以上二点を大澤参考人からそれぞれお伺いしたいと思います。
#39
○参考人(大澤裕君) 今回の被害者参加制度というのは、先ほど来申し上げておりますように、刑事裁判において被害者の尊厳に配慮した扱いをする、そういう扱いを一歩進めるものというふうに考えております。
 それから、重罰化の点でございますけれども、刑罰というのはある程度、平等性ということが必要なものでありまして、これまでの実務の積み重ねの中で一定の基準のようなものも形成されてきているところでございます。それが被害者が参加することによって直ちに大きく崩れていくのかというと、私はそのようには考えておりません。
#40
○参考人(後藤弘子君) まず第一点のメリットという点でございますが、私は正直申し上げて余りメリットを感じておりません。
 ただ、一言申し上げれば、例えば被害者がこれまで刑事裁判から排除されていて、その被害者が象徴的な意味で例えばバーの中に入るというようなことで、かなり象徴的に国の制度が被害者に対して配慮しているという点に関しては、メリットといえばメリットと言えると思います。ただ、象徴的な意味で、果たしてそれで被害者の支援になるのかということについては、先ほど申し上げましたように疑問に感じております。
 二点目の裁判員制度との関係で量刑が重くなる可能性があるというふうな点でございますが、意見陳述の中で申し上げましたように、私は量刑は重くなるというふうに思っております。被害者の方の存在、そして生の声というのは、やはり刑事裁判、プロの裁判官でさえも揺り動かされる、そのようなものだと思います。そういう意味では、量刑は重くなる可能性が限りなく高いというふうに思っております。
 ただ、それが被害者の正義であるという言い方も一方では可能なわけで、もしそうであれば、それに対する対応をすべきだというふうに先ほど申し上げたとおりでございます。
#41
○参考人(高橋シズヱ君) 意義、メリットということであれば、まず何が起こったのか知りたいということが被害者、遺族にはあります。
 それと、地下鉄サリン事件の場合にはそういうことはほとんどないんですけれども、ほかの事件の被害者、遺族の御意見を聞いたりしていますと、やはり亡くなった被害者の名誉回復をしたいということがあります。
 それと、その被害者、遺族の被害回復ですね。被害者、遺族の被害というのは一生続くものです。それが、刑事訴訟に参加することによって即被害回復が行われるものとは思っておりません。それは長い間、被害回復のプロセスの中で、あのときに参加してよかったということがあるわけです。そういう被害回復にプラスになるというふうに思っています。
 それから、裁判員制度との関係ですけれども、先ほど来、被害者が感情的になるという言葉が随分使われておりますけれども、これはもう本当に私に言わせればメディア被害というふうに思っております。私もいろいろな人に会って、高橋さんって明るい人なのねと言われるようなことがあります。つまり、私という人間は、怒っている、泣いている、そういう悲しい被害者像で多くの人に受け取られています。私は決してそれだけで生きているわけではありません。
 そして、裁判に出るときにも、私は、被告人に真摯にこの裁判を受けてくださいと証言したこともあるくらいですから、冷静に裁判に向かっていたつもりです。それは、ほかの被害者、遺族が法廷、バーの中に入るときにでもそんなに感情的になっているとは思っていません。
 そして、これが、被害者の訴訟参加が始まることになった場合でも、今はどのように刑事訴訟制度が、プロセスがあるのかという説明を聞いておりませんが、始まれば、参加することになれば、きちんとそのプロセスの説明も受けてバーの中に入るということですから、決して悪害ということはないと思います。
#42
○参考人(細田初男君) この制度導入のメリットとして、真相の解明ということがよく言われておりますね。しかし、私ども、民事訴訟なんかでも当事者本人に尋問をしてもらうことがあるんですよ。でも、大体成功しません。大体押し問答になっちゃいます。わあっとやり合って押し問答で、適切な答えが返ってこないということはよくやりますし、弁護士でも、現実には反対尋問とかとても難しいんですよね。下手な尋問はしない方がいいというふうに私ども考えております。
#43
○木庭健太郎君 高橋参考人にお尋ねをしたいんですけれども、意見としてよくあるのは、犯罪被害者が被害者参加人として刑事裁判に参加しないというふうになってしまうと、加害者への処罰感情が逆に薄いというふうに、例えば裁判員制度始まった場合、判断されるような、こういう問題があるんじゃないかと。逆に、被害者参加人として訴訟に参加することが被害者にとって過重な負担にはなりはしないかという両面のいろんなお話がございますね。
 この辺についてどうお考えになるかということとともに、もう一つ、先ほどもこれ議論になっていましたけど、被害者参加人として法廷に出席した場合に、逆に被告人から、加害者側へ、落ち度を指摘するような話があってみたり、その場限りで、質問した途端に謝罪を受けたりとか、逆に言えば、被害者側の精神的ダメージが増幅されるんじゃないかというような御意見をおっしゃる方もいらっしゃいます。これらについてどうお考えになるのか。
 私は、こういう意見もあるんですけど、私は参加するということの方がある意味では大きな、これらを乗り越えた大きな意味があると私自身は思っているんですけど、被害者の立場から、今指摘されたような意見に対してどのようにお考えか、お聞きをしておきたいと思います。
#44
○参考人(高橋シズヱ君) 被害者が、今の段階での刑事訴訟制度の中では証言、意見陳述という機会があるわけですけれども、それも、被害者が証言するか意見陳述するかということは被害者の裁量にゆだねられていると思っております。過料ということがあるかもしれませんけれども、実際に罰金を取られたことはありません。現に私は、林郁夫被告で拒否しました。そういうことがありますので、これが裁判、被害者の訴訟参加が制度が導入されるされないにかかわらず、これは変わらないものというふうに思っております。
 それともう一つ、質問は何でしたっけ。
#45
○木庭健太郎君 もう一度御質問いたします。
 犯罪被害者が参加人として法廷に出席した場合に、被告人側から、例えば何か言われたり、逆にその場で謝罪されたり、参加することで被害者側、精神的ダメージの問題をある意味では今回この制度が導入されることで増幅されてしまうんじゃないかというような御意見、これ結構ございます。この点について、被害者の立場から御意見があればということでございます。
#46
○参考人(高橋シズヱ君) それは、先ほど私の意見陳述の中で言いましたように、むしろその機会がない方がストレスがたまるというふうに思っております。
#47
○木庭健太郎君 それでは、大澤参考人と後藤参考人に、これも少しお答えはいただいているんですけれども、今回、一つの焦点になっている問題が、事実又は法律の適用について意見を陳述することができるとして、言わば求刑という問題に対して被害者参加人も参加できるという問題が一つの大きな争点にはなっております。
 つまり、検察官の論告求刑とは別に、被害者参加人も自主的に論告求刑をすることになるわけですが、この検察官と被害者参加人、この二つの論告求刑が行われると。これどのような関係に立つのか、どう考えればいいのか、それぞれ、後藤参考人、大澤参考人から一言ずつ伺って、質問を終わりたいと思います。後藤参考人から。
#48
○参考人(後藤弘子君) 多分、検察官の論告求刑というのは、御自分で設定された訴因に基づいて意見を述べられるということになると思います。被害者の場合はある程度そこから自由に離れて意見を述べられるという、そのような制度を想定されているのではないかというふうに解釈できます。
 ただ、それがいいのかどうか、それを例えば裁判官が聴いてどのように考えるかという観点からいたしますと、やはり裁判の枠組みというのは、先ほど細田参考人もありましたように法定刑等の縛りが当然ございますので、そういう点から考えますと、言いたいことを気持ちを表すという効果しか実際上はないというふうなおそれがあるのではないかというふうに思います。
#49
○参考人(大澤裕君) 検察官の論告求刑と被害者の論告求刑と申しますか、被害者の論告求刑という言い方をしてしまったからですが、事実及び法律についての意見とがあるということですけれども、検察官は、今、後藤参考人が言われましたとおり、自ら訴訟を遂行してきた立場として、これまでの立証の成果をまとめ、そして適当な刑を求刑するということでございます。そして、被害者参加人の方は、それまで参加してきたということに基づいて自分なりの事実についての意見、それから法律の適用についての意見を述べるということでございます。そこは、そういうことの整理ではないかと思います。
#50
○木庭健太郎君 終わります。
#51
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 最初に後藤参考人にお尋ねをしたいのですが、高橋参考人から、先ほど来、検察官やあるいは捜査機関、そして裁判の中で被害者がどれほどひどい扱いを受けてきたか、繰り返しませんけれども、本当に大変に残酷な扱い、尊厳を踏みにじる扱いがなされてきたと私も思います。
 後藤参考人が「犯罪被害者と少年法」という御本をお書きになっていらっしゃいまして、私も精読をさせていただきました。その中で、後藤参考人が数々の事件の被害者の方々のインタビューを重ねた上で、被害者が何を望んでいるのかというテーマを深めておられるのを大変敬意を表しております。
 今日、意見陳述の中で捜査過程での支援こそというお話もございましたけれども、この被害者が刑事司法、特にテーマは裁判ということですので、ここに何を望んでいるとお考えか、少し整理できるならしてお話しいただければと思います。
#52
○参考人(後藤弘子君) 被害者の方も多様でいらっしゃいます。私が主に聴いた被害者というのは少年事件の被害者で、多くの被害者は少年審判で事件が終わっている被害者が多うございました。
 ただ、その中で、先ほど高橋参考人もおっしゃっていたように、やはり真実を知りたいということがまず一つあると思います。あともう一つは、先ほど意見の中でも申し上げましたが、やはり被害者として、急に被害者になるわけですから、急に被害者になったことについて、自らもそれに向き合って今後生きていかなければいけないわけです。そのためには、まずその被害者として承認されるということが必要だというふうに思っています。
 また、情報をきちんと与えてほしいと。先ほど来お話がありましたけれども、真実を知りたいということには、裁判のみで真実が分かるというふうには多くの方は考えていらっしゃらない。その裁判に至る過程の中で、様々検察官等とやり取りをする中で真実を知っていくと。また、その知りたい真実というのは、先ほど意見のときにも申し上げましたけれども、必ずしも訴訟に関係する事実以外にも知りたい真実はあり、その知りたい真実をいかに助けるかということが私は被害者に対して刑事裁判がこれまで怠ってきたことだというふうに思います。
 したがいまして、余りまとまらなくて申し訳ありませんけれども、まず第一には、真実を知りたいという要求にこたえる、そのような刑事裁判でなければいけないというふうに思いますし、第二には、被害者として承認されるということが私は一番重要な意味を持つのではないかというふうに思っております。
#53
○仁比聡平君 後藤参考人のお書きになられたものを拝見をしますと、今お話にあったこと、それから加えて、加害者、この御本でいえば少年ですけれども、に特に命が奪われたような重大事件で、その被害の重みを受け止めてもらいたいというお気持ちも幾つも随分書かれているんですが、いかがでしょうか。
#54
○参考人(後藤弘子君) 被害者にはいろんな方がいらっしゃいますので、必ずしもすべて命が奪われる場合ではありませんが、今お話しの命が奪われる場合、やはり亡くなった人の命を、この重さを受け止めてほしいと。例えば十人で一人の被害者に対してリンチ等をした場合には、その多くの場合、法的にはその一つの命を十分の一ずつの責任を認めるわけですけれども、そうではなくて一人一人が一〇〇%の命の重みを受け止めるということを期待をしていると。そういうようなことを裁判を通じて実現するということが果たしてどれだけできるかは問題といたしまして、それを目指す裁判というのが行われるということが必要ではないかというふうに思っております。
#55
○仁比聡平君 そこでといいますか、細田参考人に、これまでの刑事裁判においての被害者の扱いについてどのようにお考えかという大きなテーマで、少し現場の思いをお尋ねしたいと思うんですが、ここにこだわるわけではありませんけれども、例えば証人尋問ですね。これについて先ほど高橋参考人からお話ありました、体重がどれだけ減ったかとか、家計が苦しいかとか、こういう検察側の尋問、主尋問を私も現場で何度か体験をしたことがあります。余りにひどいと、その当時も思っておりましたけれども、例えばある裁判所判事が被害者の証人請求、検察官の、について書かれたものの中で、実刑か執行猶予かが微妙な事案や死刑、無期懲役など量刑が重い事案では証人申請をしてきたんだけれども、量刑が実刑確実だ、あるいは執行猶予確実だという事案では、被害者の調書が弁護側で同意をされれば、あえて被害者や遺族の証人尋問は請求しないのが通例であったという運用を書かれたりとかしていまして、これは現場の感覚としてもなるほどというふうに思うんです。
 そうすると、公判が始まってしまえば被害者は完全に置き去りにされる。その中で検察官とのコミュニケーションなんというのは恐らく全くなかったのではないか。その中で被害者の方々が置き去りにされている、疎外をされているというふうにお感じになるのはもう余りにも当然ではないかとも思うんですが、この点も含めて、細田参考人いかがでしょう。
#56
○参考人(細田初男君) これまで確かに刑事手続の中で被害者をどう位置付けるかという問題は置き去りにされてまいりまして、証拠にしかすぎないという、確かにそれは事実としてそういう事実だったと思います。蚊帳の外に置かれているという批判から、このような全体的な被害者の復権運動みたいな形で進んできていることは事実だろうと思います。問題は、どこまでそれを進めるかということではないかと思います。
#57
○仁比聡平君 そこで、この被害者の司法参加、訴訟参加について主体性という言葉が語られているわけですけれども、被害者が証拠扱いされるのではなくて、主体性を持つことが求められていると。その主体性ということを細田参考人がどうお考えになるかという点と、それから、恐らくそこにかかわるのではないかと思うんですけれども、公判期日への参加、あるいは質問、あるいは尋問、弁論、求刑ですね、これがそれぞれ今の刑事訴訟の構造や現場の実感からしてどこに問題があるとお考えか、もう一度お尋ねしたいと思います。
#58
○参考人(細田初男君) 主体性ということですが、この現在の法案の被害者参加人というのは法的には一体どういう立場なのかということについて、学者の間でもどうも定まらないみたいなんですね。事件の当事者であることは間違いないが、事件の当事者であるがゆえに当然に刑事訴訟の当事者になるのかという、そこではちょっと違うようなんですね。やっぱり現在の訴訟構造論でいうと、私どもは、私的復讐を公的刑罰に昇華させてきた人類の知恵というのはやっぱり重いものがあると。それと被害者参加人とがどうマッチングしていくのかというのがとても、私どもよく分からない。学者もよく分からないと言っています。
#59
○仁比聡平君 今、細田参考人がおっしゃられた問題意識というのは私も実は深く感じているところでございまして、そこで大澤参考人にお尋ねをしたいんです。
 法制審でも、当事者主義訴訟構造や無罪推定の原則との関係で、この被害者参加制度というのがどういう性格のものなのかというのが議論されたと伝えられているわけです。今、政府は、当事者主義構造と矛盾するものではないんだというふうに説明をされているんですけれども、では、参加人のその地位というのは何かと尋ねますと、特別の地位ですとおっしゃるだけで、侵してはならない本質的な権利というのは一体何なのかということははっきりしないんですね。当事者主義との関係でいえば、訴訟の当事者ではないんだというふうに政府も法制審も整理をされておられます。だったら、訴訟関係人ではあるんだが当事者ではない、何なのかという点について、大澤参考人はどのようにお考えですか。
#60
○参考人(大澤裕君) 当事者主義との関係で申し上げれば、訴因を設定してその枠内で主張、立証をし、それに対して被告人、弁護人側が防御をし、裁判所が公平な立場から審判をするということであり、この訴訟参加人については、審判対象の設定権も与えられていなければ証拠調べ請求権も与えられておりませんから、これは当事者としての地位ということではないというふうに私も理解をしております。
 ただ、犯罪被害者等基本法の中で、刑事裁判の中でも被害者については尊厳ある扱いをしなければならないということが要請をされている中で、刑事裁判の目的を害しない範囲で被害者の方々の御希望も酌み、その尊厳にこたえ得るような何らか参加の制度を設けるということは私は不可能ではないというふうに思っております。刑事訴訟を内在的に、果たしてこの人が当事者なのかどうなのかということは非常に難しいです。恐らく私は当事者ではないということだと思いますけれども、それはそういう、言わば刑事裁判における尊厳を認められるべき対象としてそこに入ってきているというふうに私は理解をしております。
#61
○仁比聡平君 今のお話では、私は結局分からないと思うんですよ。
 検察官や被告人、弁護人はそれぞれその権利、地位の本質というのがはっきりしています。だからこそ、その当事者が激しい争いをする刑事裁判の場で真実の発見ということにつながっていくんですね。逆に、被害者の皆さんも、主体性の言わば回復を願っておられるんだと思うので、刑事訴訟の舞台でどういう存在としてバーの中に入るのかということがはっきりしないということになると、裁判長から、あるいは被告人や弁護人の側から、あるいはもしかしたら検察官からも御自身の思いを否定されるような場面になったときに、納得がいかないということにならないでしょうか。そのような問題意識を私持つんですが。
 最後、高橋参考人に、ちょっと時間なくなって申し訳ありませんが、被害者として参加を求められる思いは私はよく分かります。どのような参加といいますか、これまで具体的なお話ありましたが、今主体性というお話ちょっと申し上げましたけれども、今後、刑事司法の場で被害者がどんな存在として認められるべきであると思われるか、お願いをしたいと思います。
#62
○参考人(高橋シズヱ君) 一番最初、私が疑問に思ったのは、自分が述べた供述調書であってもコピーをもらえないということがありました。私は何度か、被告人がたくさんいますから、そのうちに私も分かりまして、例えば検察官に読み上げているときに私は必死になって書きました。そんなことを被害者がするのはおかしいわけで。
 これは一般的に言えば、私は松本智津夫被告のところで意見陳述をするときに、最初の供述調書を持っていませんでしたから、でも欲しかったんですね、すごく。で、私も知恵を絞りまして、意見陳述をするときに、前の供述調書と同じことをダブらせて言いたくはないので、前に何て言ったかというのを知りたいからコピーを取るように申請を許可してくださいといって許可をもらって、一枚四十円でコピーを取りました。
 そういうふうに、本当に被害者はのけものなんですよ。司法解剖の写真も、それは私は見るかどうか分かりませんけれども、勝手にバーの向こう側で主人の脳がどうたらこうたらということを話しているわけです。傍聴席のこちら側で、本当に何なの、人の主人の臓器をもてあそんでんじゃないのというぐらいのいら立ちでバーのこちら側で聞きました。そういうことすべてに対して、いろいろな、例えばサリンの袋の置き場所を被告人が言うのにも、もっと大勢殺すためにはサリンは重たいものだから網棚の上に置けばよかったんだとか、そういう勝手な言い分を本当につらい思いをしながら傍聴席で聞いたんです。
 そういうことを尋問をするしないはその被害者の自由ですけれども、当然かかわっている人間としてバーの中に入りたいという気持ちはあります。一般の人と同じように申請をしてコピーを取るとか検察官に聞く。でも聞いてもほとんど教えてはくれないんですよね。それは、当然のこととして起訴状に書かれていることを知りたいということはあります。
#63
○仁比聡平君 ありがとうございました。
#64
○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。今日は四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 まず初めに、細田参考人にお聞きをいたします。
 攻撃、防御というか、訴訟の構成ということなんですが、例えば傷害致死が訴因で争われている。ただ、先ほど業務上過失致死傷の話でもありましたが、遺族の人はやっぱり殺されたという思いなどがあるので、交通事故でも殺した娘を返せというふうになるわけですね。
 そうしますと、訴因とすれば傷害致死、あるいは場合によっては業務上過失致死だったのが、最後に論告求刑で、娘を殺したな、なぜ殺したのかと言うと、訴因はそこでは殺人に変わってしまう。そうすると、何を対象物としてその公判廷で争っていたのかが変わっていってしまうのではないか。それは、本当は公訴事実の同一性の下に訴因変更をするとかいう手続を取らないと攻撃、防御というのはできないわけですけれども、でも普通の人は、子供がいなくなったり身内が死んで、あるいはいろんなことで悲しい、苦しい、自分も傷付いたと思っているので、傷害致死と業務上過失致死と殺人と、やっぱりその辺は厳密に何が訴因かというようなことではないと思うんですね。
 とすると、ちょっと長くなって済みませんが、その訴訟物、訴因が動いてしまうということが、今までの公判廷の訴因を対象にこれが立証できるかできないかとしていたことが変わってきて、攻撃、防御が変わってくるんじゃないか、崩れるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#65
○参考人(細田初男君) そういう弊害があると思われたのだと思うんですが、訴因設定権までは、今回の法案で設定権までは認めておりませんので、検察官が設定した範囲の中で被害者の方が参加していく、意見を述べるということなんですが、その枠が被害者の方だと意見を述べる際にどこまでなんだというのがはっきりしないということがあると思うんですね。仮に、公的支援の弁護士で私どもが付いたとして、そこで上手にアドバイスできるかどうか。いや、しかし先生、やっぱり業務上過失致死も死刑を求刑してくれと言われた代理人が、そこで被害者の方と意見の衝突によって解任されるとか、あるいは懲戒問題になっちゃうとか、ちょっと悩むところはあります。
#66
○福島みずほ君 法廷はやっぱりライブというか生き物なので、裁判をやれば民事でも刑事でも打合せどおりに証人がしゃべらないということは弁護人としてはやっぱりあるわけで、何が飛び出すか実は分からない。そうすると、論告求刑の際に、やはり法定刑はここまでだし、訴因はこうなのでここまでしか言えませんよと言われても、それはやっぱり気持ちというのが出てくるかもしれない。
 例えば私自身も、セクシュアルハラスメントや強姦やドメスティック・バイオレンスの被害者の女性の実は弁護や代理人を多く務めてきたので、そうすると、彼を一生刑務所に閉じ込めてくれと言う人が多いわけですよね。気持ちはもう三〇〇%分かる。しかし、それは全員を無期懲役にはできないわけですし、難しいというところでどうやって裁判をやるかという問題で、そうだとすると、論告求刑でやっぱり法定刑は、だって気持ちはやっぱり幾らこう言われていてもそれを超えることだってあるわけですから、その辺についてはどうお考えでしょうか。
#67
○参考人(細田初男君) 現在の法案には、被害者の方の意見を述べるということで、求刑というふうに、これは検察官の論告求刑と同じような条文ですのでやっぱり求刑なんですよね。求刑はいかがなものかという意見、結構あります。それで、今の意見の中では求刑にこだわられる意見というのは、その求刑が象徴的意味を持つ、つまり応報の象徴的意味を持つ、そういうのでこだわられているのではないかなというふうには思っておりますが、求刑まではどうかなというのが率直な御意見でございますが。
#68
○福島みずほ君 後藤弘子参考人にお聞きをいたします。
 書いていらっしゃることの中に、法案を読むと、被害者参加人は最後に検察官の求刑のときに意見を言えるけれど、それは証拠として扱わないと書いてあると、感情面だけ裁判員にアピールをということでしょうかという部分があるんですが、そこについてちょっと話をしていただけますか。
#69
○参考人(後藤弘子君) 先ほどから求刑の話が出てきておりますが、基本的にはやっぱりそこの最後に、参加された方に対して何か言っていただくということがこの制度の主眼だというふうに思っております。
 そうしますと、大変失礼な言い方になるかもしれませんけれども、そこまで参加されたということに対してある意味尊重するということで御意見を伺って、ただ、御意見は伺うけれども、やはりあくまでも訴因を設定した検察官が行った論告求刑を前提として判断するということで、意見は言えたけれどもそれが反映するという形にならないような制度になっているおそれもあるのではないかという意味でそういうことを書きました。
#70
○福島みずほ君 細田参考人が先ほど、日本の裁判員制度は量刑まで決めるという点、それから死刑制度が日本にあるという点について言及をされ、後藤参考人も死刑制度のことを言及をされました。もう一つ、私は、この間、拷問禁止委員会が日本政府に勧告を出した代用監獄の制度など、量刑の点まで判断する、死刑制度がある、代用監獄の制度がある、この三つが日本の中の特色としてこの制度を動かしていくだろう、変えていろんな影響を及ぼすだろうというふうに思っています。
 ヨーロッパは御存じ、死刑が廃止をしていますので、私もヨーロッパ評議会で死刑についてのことで意見を述べる機会がありましたけれども、死刑制度がある日本で論告求刑はやはり、遺族の気持ちはもう本当にやはり極刑にしてほしいというふうにすごく思うんではないか。そうするとヨーロッパで、死刑がない国のヨーロッパでの被害者や遺族の参加と日本の参加は違ってくるんではないかという点について、後藤参考人、いかがでしょうか。
#71
○参考人(後藤弘子君) その点につきましては先ほど述べさせていただきましたように、やはり参加して応報的な感情を十分に述べたとしてもそれが死刑には結び付かないという、そういうヨーロッパ型の参加と、日本のように事実認定手続と量刑の手続が明確に二分されていない、そういう制度の中で行われる場合とでは、おのずから差があるというふうに思います。
 ですから、日本の方がより、先ほどから問題になっていますように、重い刑へとシフトしていく可能性を秘めている、そういう制度になるおそれが高いというふうに思います。
#72
○福島みずほ君 富山の冤罪事件や様々な冤罪事件が今問題になっておりますが、例えば性犯罪などだと、怖くてやっぱり顔をよく見ていなくて、あの人らしいとか、面通しであの人だと言って、結果的に極めて残念ながら冤罪だったということがあるわけです。それはそれだけが理由ではもちろんないわけですけれども、そうだとすると、今回の論告求刑も含めて、被害者がある種検察官と、一体ではないけれども一部を担って論告求刑をやって、結果的にそれは最終的に冤罪だったとなると、真実の発見とかということに一体これはどうなるのかという点ついて細田参考人、いかがでしょうか。
#73
○参考人(細田初男君) ありがとうございます。
 二点ほどちょっとお話ししたいんですが、一つは、刑事裁判が始まる前の捜査過程、可視化の問題が今言われておりますが、実は拷問禁止条約の審査で日弁連なんかも行きまして、周防監督の「それでもボクはやってない」という映画を上映したんです。あれは割とリアルなんですが、本当にこれで先進国なのかという、審査に当たった委員たちからの声が出まして、見直すべきだ、例えば二十三日間代用監獄における取調べ時間とか期間とか、一年以内に是正すべきだと強い意見が出ました。
 そういう結果、今度は刑事裁判に入ってくるわけですが、おっしゃるように、痴漢冤罪というのが割と無罪率高いですよね。痴漢は普通は軽犯罪法なんですがちょっと度が過ぎると痴漢でも強制わいせつになるんですね。被害に遭ったという被害者が法廷でやり合って無罪になったときに、その人はどういう責任を取るのかという大変悩ましい問題があるというふうに考えています。
#74
○福島みずほ君 細田参考人に、先ほど弁護士会の意見書の話がありましたが、正直、裁判官、検察官、弁護士の人たちは今のような制度でいいと言っているのでしょうか。
#75
○参考人(細田初男君) この法案ですか。
#76
○福島みずほ君 はい。
#77
○参考人(細田初男君) 弁護士会はやっぱりこういう意見書のとおりでございます。
 公式見解はともかく、あちこちでプライベートな会話をしますと、大変だという、何とかならないのという、そういう会話を私の知り合いとはよく交わしております。
#78
○福島みずほ君 それは弁護士以外の方ででしょうか。
#79
○参考人(細田初男君) 法曹三者の間の会話です。
#80
○福島みずほ君 具体的にどういうものか、差し支えなければ教えてください。
#81
○参考人(細田初男君) ちょっと、申し訳ありません。
#82
○福島みずほ君 分かりました。はい、分かりました。失礼しました。
 今日は、高橋参考人にお聞きをいたします。
 なかなか、まだまだ法律ができても被害者の人たちのケアやいろんな情報提供が極めて不十分だということを改めてまた今日証言してくだすってありがとうございます。先ほど後藤参考人も途切れのない援助が必要だとおっしゃったわけですが、それが、いろんな場面で援助も不十分だし、切れているということなどもとても実感をいたしました。
 今度、裁判員制度になれば、一日で例えば法廷が終わってしまうとか、争いがない場合。そこで論告求刑までやるとしても、なかなか手続が理解できないまま意見だけ言わなくちゃいけないとか、よく中身を知らないで遺族や被害者の人が言わなくちゃいけない、準備不足のまま、先ほども苦労して資料入手されたとおっしゃったんですが。
 やっぱり、被害に遭った時点からずっといろんな形での情報の提供やケアやいろんなことがなければ非常に不十分というか、被害者のサポートとしてもまだまだ問題があると思いますが、その点についてお聞かせください。
#83
○参考人(高橋シズヱ君) もちろん、これはもう既にスタートした犯罪被害者等基本法、基本計画の中の一つとして行われるのであって、ほかの支援も同時に同時進行するという、充実していかなければいけないものだというふうに思っています。
#84
○福島みずほ君 ありがとうございます。
 細田参考人に、被害者の方たちの例えば求刑やそういう問題についてどうお考えか教えてください。
#85
○参考人(細田初男君) 求刑はやっぱり行き過ぎだというふうに思います。
#86
○委員長(山下栄一君) もう一度おっしゃってください。
#87
○参考人(細田初男君) 求刑はやっぱり行き過ぎだというふうに思います。
#88
○福島みずほ君 後藤参考人に、あるべき被害者救済制度について、かなり教えていただいたんですが、こういうことをもっとやるべきだということについて御教示をください。
#89
○参考人(後藤弘子君) やるべきことは数多くあると思います。
 刑事裁判の参加という点に絞ってお話しさせていただけば、やはりそれは先ほどから出ていますように、検察官との密な、密なだけではなく、裁判に参加するすべての専門家たちが被害者というのはどういう存在なのか、そして被害者が必ずステレオタイプではないというようなことをきちんと理解した上で対応していくと、そのことがとても重要だと思います。
 そういう意味では、今回の参加制度に関しましては、検察官が被害者参加に対してはかなり手厚い対応をされるということが予定されていますが、それと同じ程度の手厚い対応をすべての犯罪被害者に行う、それが私は理想的な被害者参加の制度であるというふうに思っております。
#90
○福島みずほ君 あと一分ありますので、後藤参考人に、死刑制度のことについて先ほどおっしゃいましたが、あと、刑務所が満杯になるんじゃないかということをおっしゃいましたが、その懸念について一言教えてください。
#91
○参考人(後藤弘子君) 死刑を例えば求刑したいと、それは被害者のお気持ちとしては当然だというふうに思います。ただ、現実的に、すべての事件について死刑ということが言い渡すことができない以上はそれ以外の刑罰を科さざるを得ない。そうしますと、勢い刑務所にその人たちを収監せざるを得ない。そこで教育を充実させることが、被害者の方が多く望んでいらっしゃるのが、やはり二度と自分と同じような被害者を出してほしくないというお気持ちは皆さん共通にお持ちだと思います。そういう意味では、更生に対する期待というのは真実発見に対する期待と同様に被害者の方がお持ちだというふうに理解をしております。そういう意味では、刑務所での処遇の充実というのが図られなければ被害者の方のお気持ちにこたえることはできないというふうに考えております。
#92
○福島みずほ君 ありがとうございました。
#93
○委員長(山下栄一君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#94
○委員長(山下栄一君) 速記を起こしてください。
    ─────────────
#95
○委員長(山下栄一君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、木庭健太郎君及び福島みずほさんが委員を辞任され、その補欠として弘友和夫君及び近藤正道君が選任されました。
    ─────────────
#96
○委員長(山下栄一君) 引き続き、参考人の方々から御意見を伺います。
 損害賠償命令制度について御出席いただいております参考人は、同志社大学大学院司法研究科教授奥村正雄君、日本弁護士連合会副会長氏家和男君及び弁護士番敦子さんでございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。まず、奥村参考人、氏家参考人、番参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 それでは、奥村参考人からお願いいたします。奥村参考人。
#97
○参考人(奥村正雄君) ただいま御紹介いただきました同志社の奥村でございます。参議院の法務委員会の参考人となる機会を与えていただきまして、大変光栄に存じます。
 私の役目は、このたびの犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に関連しまして、いわゆる犯罪被害者保護法の改正により、刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例、すなわち損害賠償命令制度の創設につきまして、基本的に法案に賛成の立場から意見を申し上げたいと思います。
 なお、私の専門は刑法学と被害者学でありまして、手続法の専門家ではありませんので、新制度の手続面での問題につきましてはお話しできません。主として、損害回復の観点から申し述べることをお許し願いたいと思います。
 それでは、お手元の簡単なレジュメに従いまして報告を進めたいと思います。
 それでは、犯罪により被りましたその損害の回復は、不法行為責任に基づく民事賠償制度によるのが原則であります。しかし、犯罪の被害を受け、身体的、精神的に苦痛を負っていること、民事訴訟を提起するには新たな証拠調べが必要になること、裁判に日時を要すること、訴訟費用の負担が大きいことなどから、損害回復が遅延し困難になるという現状があります。
 そこで、犯罪被害者等ができるだけ簡易迅速かつ廉価に損害回復ができるようにし、少しでも早期に立ち直れるようにするのは国家の責務であると考えます。
 このような観点から、欧米では、後に述べますように、かなり以前から刑事手続を利用した損害回復制度を採用してきましたし、我が国におきましても旧刑事訴訟法下で附帯私訴制度が取られていました。もっとも、我が国の附帯私訴制度は、刑事裁判官が刑事手続の中でそれと著しく異なる民事手続を行う煩雑さなどの理由によりまして、アメリカ型の当事者主義に基づく現行刑事訴訟法への改正に伴い廃止されましたが、復活論も少なくなかったわけであります。
 ところで、一九九〇年代以降に我が国においても犯罪被害者対策が本格化しますが、損害回復につきまして、二〇〇〇年に犯罪被害者保護法が制定され、その中で、被告人と犯罪被害者等の間で被告事件に関する民事上の争いについての合意が成立した場合には、当該刑事被告事件が係属している裁判所に対し両者が共同して和解の申立てを行い、裁判所がその内容を公判調書に記録したときは裁判上の和解と同一の効力を生ずるという、いわゆる刑事和解制度が創設されました。確かにこれは簡易迅速な損害回復の制度として優れていますが、否認事件の場合や被告人との和解を望まない場合には機能しない欠点があります。
 一方、犯罪被害者等基本法の制定に基づいて犯罪被害者等基本計画が策定され、我が国にふさわしい損害回復制度の創設として、第一に刑事手続の成果を利用すること、第二に犯罪被害者等の労力を軽減すること、第三に簡易迅速な手続とすることの三点を掲げ、その一環として、二〇〇六年に、組織的犯罪処罰法の一部改正法と被害回復給付金支給法が成立して、いわゆる被害回復給付制度が創設されました。これは、いわゆるやみ金融や振り込め詐欺等の組織的犯罪の財産的被害について没収、追徴した犯罪被害財産を被害回復の給付金の支給に充てる道を開くものでありますが、あくまで組織的犯罪の財産被害の損害回復に限定されております。このように、その他の財産犯や生命・身体犯の損害回復については別途の法整備が必要であります。
 今回の損害賠償命令制度によりすべてが解決するわけではありませんが、特に生命・身体犯のような、身体的、精神的に大きなダメージを受け、民事訴訟の提起がなかなか容易ではない被害者等の損害回復制度の一つとして重要な意味を持っているように思われます。
 新制度は、諸外国の制度とどの点が類似し、どの点が異なるのかを簡単に見ておきたいと思います。
 まず、フランスやドイツなどで取られている附帯私訴でありますが、新制度の原案の下敷きとなりましたこの附帯私訴につきましては、フランスやドイツなどの主として大陸法の諸国で採用されております。
 フランスの制度では、被害者は損害賠償を求める私訴の権利を有し、刑事裁判所で公訴に附帯して行使できますし、民事裁判所でも行使もできます。検察官が公訴提起をしない場合でも、被害者は犯罪を原因として生じた民事上の請求権である私訴権を行使することにより、公訴権を発動できます。被害者が私訴原告人となった場合、当事者として刑事裁判に出席し、弁護人の補佐を受け、証拠を提出し、証人に質問し、意見書を提出し、上訴を申し立てる権利を持ちます。このように、フランスの附帯私訴は私人訴追と公訴参加の要素を含むもので、我が国の制度とは全く異なっております。
 一方、ドイツの附帯私訴制度は、我が国の旧制度と類似している面がありまして、被害者とその相続人は公訴提起後に事件が係属している刑事裁判所に対して行うか、又は捜査段階で検察官に対して行うことができ、民事裁判所への訴えの提起と同じ効果が生じます。附帯私訴申立人は公判への立会い権、訴訟結果等の通知、記録の閲覧等が認められますが、それは公訴参加人としての地位を得るわけではなく、あくまでも民事上の請求を行う地位しかありません。
 裁判所では、附帯私訴の申立ての審理は、刑事手続における公判の中で刑事事件の審理と併せて行われ、申立てが正当と認められるときはその請求を認容する裁判を行い、刑事判決の中で民事上の請求についても判断を下します。この認容判決は債務名義となるほか、原因判決として刑事判決で賠償義務のみの認定をし、具体的な賠償額は民事裁判にゆだねることも可能となります。認容判決に対しては、被告人の上訴が可能であります。ただし、附帯私訴に係る犯罪行為について被告人が無罪となり、かつ改善・保安処分も命じられないような場合、申立てに理由がないと判断される場合、附帯私訴の審理が刑事裁判の審理を著しく遅延させるおそれがある場合などには、裁判所は手続の打切りができます。
 なお、ドイツでは、実務家に民事と刑事の分離の考え方が、いわゆる民刑分離の考え方が根強かったり、因果関係とか過失の認定など、刑事と民事の判断が異なることにより審理が困難であったりしまして、附帯私訴が余り利用されていないのが現状のようであります。
 これらの制度に対して、我が国の損害賠償命令は、なるほど民事上の請求自体は刑事裁判の中で申立ては行いますが、損害賠償命令の申立てに関する審理、裁判は、刑事被告事件について終局裁判の告知があるまではこれを行わないとして、刑事事件の審理後に民事の審理を行うものでありまして、両者を完全に分断していること、それから、刑事判決に法的拘束力を認めず、民事上の争いについてはその後の四回の審理の中で主張、立証を行うことになります。このように、民事手続の複雑な問題が刑事手続に持ち込まれるおそれは新制度ではありません。
 他方、新制度は、損害賠償命令の申立てがなされた場合に、裁判所が有罪被告人に対して決定により損害賠償命令を言い渡す点で、アメリカやイギリスなど英米法系の国で採用されている損害賠償命令と若干類似している面があります。しかし、英米法系の損害賠償命令は、被告人の資力を考慮し、その範囲内で刑事裁判として罰金刑より優先して言い渡す制度でありまして、民事賠償額を考慮したものではない点で、我が国の新制度と名称は同じでありましても似て非なる内容であります。
 次に、三のところに移りたいと思いますが、基本計画は、我が国にふさわしい損害回復制度の創設に必要な条件として、第一に、刑事手続の成果を利用すること、第二に、犯罪被害者等の労力を軽減すること、第三に、簡易迅速な手続とすることの三点を掲げております。
 新制度は果たしてこれらの条件を満たしているのでしょうか。
 既に述べましたように、新制度は、民事訴訟を一審の刑事裁判終了後に行うことにより刑事手続と独立させています。それゆえ、刑事判決の法的拘束力がなく、刑事裁判で有罪判決を言い渡した裁判官は、刑事裁判で得られた心証を民事の審理を行う際に事実上反映させることになるにすぎません。
 また、第二の被害者の労力の軽減の点ですけれども、新制度は、犯罪被害者等が当該被告事件の刑事裁判所に損害賠償命令の申立てを行うことができるようになり、従来のように民事訴訟を新たに起こす負担が大幅に軽減されるほか、申立て手数料が二千円の印紙代で足りる点でも被害者側の負担が軽くなっていると言えます。さらに、損害賠償命令に異議の申立てがあり、民事裁判手続に移行する場合でも、当該刑事事件の記録が民事裁判所へ送付されますので、被害者側が別途民事訴訟を起こす場合より負担が軽減されているように思います。
 第三の簡易迅速性の点ですが、新制度による審理は口頭弁論が任意であり審尋でもよいこと、それから原則として四回以内で終結することにより、簡易迅速性があるように思われます。また、過失相殺等の認定の困難な過失犯や多数の詐欺事犯等捜査の容易ではない財産犯を除外しており、対象犯罪を故意の生命、身体等の重大な法益に対する罪に限定することにより、身体的、精神的ダメージの大きい被害者救済や、刑事裁判所で認定された証拠が民事賠償における損害の判断に必要な証拠とずれが余り生じないような事例について、刑事裁判官の負担を軽減し、簡易迅速に判断することが可能になっているように思われます。
 以上のように、損害賠償命令制度は、刑事手続の成果を利用した我が国独自の損害回復の方法であると言えます。
 しかし、新制度の創設により犯罪被害者等の損害回復が飛躍的に促進されるとは考えられません。事実について徹底的に争う否認事件については制度の適用は困難なように思われます。あくまでも一定の対象犯罪について、刑事和解になじまないが不法行為の訴因として特定された事実に特段の争いのない事件の損害回復制度の選択肢の一つにすぎないように思われます。
 ただ、犯罪被害者等が新制度を利用して損害賠償請求にかかわることにより人としての尊厳の回復にも役立つものになれば、それは歓迎すべき副次効果になるものと思われます。
 以上、御報告を終わります。
#98
○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
 次に、氏家参考人にお願いいたします。氏家参考人。
#99
○参考人(氏家和男君) 日本弁護士連合会副会長の氏家和男でございます。
 私は、日弁連の内部におきまして民事裁判手続に関する委員会を担当している関係で、今回、参考人として出席をさせていただきました。日弁連として意見を申し上げる機会をお与えいただきましたことについて、まずもって御礼を申し上げたいと思います。同時に、私は日弁連におきまして環境保全の委員会も担当しておりまして、今はクールビズの実施中でございまして、ノーネクタイで意見を申し上げることをお許し願いたいというふうに思います。
 それで、まず最初に、犯罪被害者等に対する経済的支援の必要性について申し上げたいと思います。
 日弁連は、これまで数次にわたりまして、犯罪被害者等に対する経済的支援の必要性を指摘する意見書を公表し、また、昨年四月の日本司法支援センター発足後、被害者支援に精通した弁護士を全国に確保し、被害者のために法的サービスを提供している状況にあります。
 しかし、犯罪被害者等に対する経済的支援については、その後一定の前進は見られるものの、まだまだ不十分な状況にあるものと考えております。
   〔委員長退席、理事岡田広君着席〕
 私は、昭和五十五年四月に弁護士登録をしまして仙台弁護士会に入会しておりますが、ちょうどその年に犯罪被害者等給付金支給法が制定されております。私は、殺人で死亡した犯罪被害者、未成年の被害者でありましたが、その遺族から依頼を受けまして、昭和六十一年一月三十一日付けで遺族給付金支給裁定申請書を宮城県公安委員会に提出して、当時の金額で四百五十万円ほどの給付金を受領したという経験がございます。
 私は、この手続を被害者のために担当して遺族から感謝されたことを今改めて思い起こしておりますけれども、突然犯罪被害者となった方や遺族となった方については、正にこうした経済的支援の充実や公費による弁護士支援制度の確立こそ最も大事なことではないかというふうに考えております。
 それでは次に、本法案にて提案をされております刑事裁判における損害賠償命令の制度についての意見を申し上げたいと思います。
   〔理事岡田広君退席、委員長着席〕
 犯罪被害者等のために、時間や費用の負担を軽減できる簡易迅速な被害回復制度が存在することは望ましいものと私も考えております。
 しかし、現在審議されている、公訴提起後犯罪被害者が刑事裁判所に損害賠償を求める申立てをし、刑事裁判所が刑事の有罪判決を言い渡した後、原則四回の審理により損害賠償を命ずる制度につきましては、これから述べますような幾つかの問題点があることを指摘せざるを得ないのでございます。
 その第一は、刑事訴訟手続が長期化するおそれがあるということでございます。
 この制度においては、損害賠償の請求についての審理は刑事訴訟記録を利用して行うこととされています。したがって、刑事訴訟記録に表れていない事情については、損害賠償の請求についての審理において参酌されないおそれがあると思います。そのため、被告人及び弁護人としては、損害賠償の額に影響する可能性のある事項を強く意識して審理に対応せざるを得ないものと考えます。殊に、民事上被害者の過失に関する過失相殺の割合が大きな争点となることが予想される場合、犯罪被害者等を証人として尋問する際に、刑事訴訟の争点ではなくとも、被害者の過失割合等について詳細な尋問をせざるを得なくなり、その分、刑事訴訟が長期化する可能性があるものと考えております。
 第二点として、被告人や弁護人の防御活動に影響を及ぼすおそれがあるということでございます。
 被告人及び弁護人が、民事上の不利益を回避するために必ずしも刑事訴訟の争点ではない事項についても事実関係を争うこととした場合、審理が長期化したり、争うこと自体が量刑上は不利な情状として考慮されたりする不利益を被るおそれがあります。そして、弁護人としてはこのような利害得失を考慮しつつ防御方針を検討する必要に迫られるわけでございまして、刑事手続における被告人や弁護人の防御活動に重大な影響を及ぼすことにならざるを得ないものと考えております。
 第三点として、刑事訴訟を担当する裁判官に対し予断を与えたり裁判員裁判が混乱するおそれがあるということを申し上げたいと思います。
 損害賠償の申立ては刑事事件の審理終結前になされることになっておりますが、それによって刑事裁判の予断排除の原則の趣旨に反することのないような配慮がなされるべきであります。また、この制度で対象とされる事件は殺人等の重大事件であることが予想されますが、これらの事件はそのほとんどが裁判員対象事件でございます。裁判員裁判の下では、損害賠償を求める申立てがなされている事実は初めて刑事訴訟に関与する市民である裁判員の心証に大きく影響を与えるおそれがあり、裁判員裁判の適正円滑な実施に支障が生じないような配慮が是非とも必要であるものと考えます。と同時に、裁判員裁判を念頭に導入された公判前整理手続が、民事の争点を持ち込むことによって混乱したり整理が無駄になったりすることのないような配慮が求められるものと考えております。
 第四点として、民事の損害賠償の請求についての審理における被告人の防御権が十分に保障をされないおそれがあるということを申し上げたいと思います。
 まず、全般的な問題として、被告人の心情面を配慮した場合、有罪判決が言い渡された直後は控訴を申し立てるか否かという判断にも直面しており、損害賠償請求手続に十分に対応できるか疑問なところがあろうかと思います。また、自らに有罪判決を言い渡した刑事裁判官による民事の審理に対し、殊に無罪を主張している場合などにおいては、これを公正なものとして冷静に受け入れることができるかどうかという問題も存在するのではないかというふうに考えられます。
 このことを前提にしながら、具体的に二点を指摘したいと思います。
 一つは、訴訟代理人を依頼できず、被告人自身の出席がないまま審理が行われ、賠償が命じられるおそれがあるということでございます。
 この制度では、刑事事件の有罪判決が言い渡された後に損害賠償の請求についての審理を行うことが予定されております。その時点では刑事事件の弁護人の職務は終了していることになりますから、被告人は新たに民事事件の訴訟代理人を依頼しなければならないことになります。私選弁護人が選任されていた場合には引き続き同一の弁護士を損害賠償の請求の審理についての代理人に選任することは容易であるかと思いますが、国選弁護人が選任されていた場合には、経済的に困窮しているような場合には損害賠償の請求の審理についての代理人を選任することが極めて困難であろうかと思われます。
 しかも、現在、刑事施設に収容されている被告人は、民事訴訟のすべての審理に出頭することは認められていない状況にあります。すなわち、刑事施設の現在の運用からすると、被告人は刑事事件の有罪判決が言い渡された後の損害賠償の請求についての審理の全部又は一部に出頭できない可能性が高いものと考えられます。特に、審尋に被告人が出頭することが認められる可能性はかなり少ないのではないかと考えられます。
 その結果、経済的に困窮している被告人は、損害賠償の請求の審理については、そのために代理人を選任することができないだけでなく、自ら出頭することもできないまま原則四回の審理により判断が下されることになるわけであります。それでは、被告人は損害賠償の請求について防御権を実質的に保障されていないことにもなりかねないのであります。公費で弁護士を代理人に選任することができるような制度的な手当てが求められるものと考えております。
 第二点目として、被告人に通常訴訟への移行申立て権が認められず、賠償を命ずる決定に仮執行宣言が付されることにより、取り返しの付かないことになるおそれがあるということでございます。
 被告人には通常民事訴訟への移行申立て権が認められず、さらに賠償を命ずる決定に仮執行宣言が付されることになりますと、執行停止を得るためには多額の保証金を積む必要がありますが、そのような資力に欠ける被告人にとっては異議申立てやその後の通常民事訴訟手続が画餅に帰するおそれがあるものと考えられます。無罪を争っていても先に強制執行がされてしまうことになりますので、控訴審で無罪となっても既に家は競売されているというようなことも起こり得るのではないかと。あるいは、給料債権を差押えされたりすることによって失職するというようなこともあり得るのではないかと思います。無罪を争うような事件でなくとも、損害額や因果関係を争っている事案でも同様なことが起こり得るわけであります。損害賠償命令には仮執行宣言を付さないこととするか、仮執行を付しても、不服申立てにより仮執行宣言が当然に効力を失うものとすることを検討すべきであるというふうに考えます。
 今、民事の関係で申し上げた二点は、刑事訴訟と別に民事訴訟が起こされる場合でも生ずる問題であるかもしれませんが、今回、損害賠償命令制度という形で被害の簡易迅速な回復を図るために、刑事裁判に接続して同じ裁判官が民事損害賠償も審理して裁判する制度を導入するのでありますから、このような制度をつくる以上は、相手方となる、被告となる者の防御権を実のあるものにしていただくことが必要なものと考えております。この点も是非慎重に御審議いただきたいというふうに思います。
 以上で私の陳述を終わらせていただきます。
#100
○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
 次に、番参考人にお願いいたします。番参考人。
#101
○参考人(番敦子君) 第二東京弁護士会に所属しております弁護士の番敦子と申します。本日は、このような場で発言する機会をいただきましたこと、本当に光栄に存じております。
 私は、犯罪被害者の支援活動を多く行っている弁護士でして、二〇〇二年から日本弁護士連合会の犯罪被害者支援委員会の副委員長を務めております。また、現在所属する第二東京弁護士会の犯罪被害者支援センター運営委員会の委員長も務めております。
 私は、このたびの犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に賛成の立場から、損害賠償命令制度を中心に意見を申し上げます。日ごろから犯罪被害者支援活動において被害者と接している弁護士の意見、現場の実務家としての意見としてお聞きいただければ幸いです。
 犯罪被害者にとって、経済的被害の回復は大変重要なことです。刑事手続における示談、あるいは二〇〇〇年の犯罪被害者保護法によって新たに設けられました民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解、いわゆる刑事和解によって被害回復が図られることもありますが、そうでない場合には自ら損害賠償請求をしなければなりません。被害者は民事と刑事との違いも分からず、戸惑うことが大変多いものです。自分だけで民事裁判を行うことはなかなか難しく、弁護士が代理人となって行うということになります。
 民事の損害賠償請求事件を提起する場合、その前に刑事裁判における公判記録の閲覧、謄写の申請をして記録を入手します。そして、主張を訴状にまとめ、記録などを証拠としてコピーをし、裁判所用の正本と被告用の副本を作成します。大部の記録の場合には、この証拠作成も大変な作業となります。そして、訴状に訴額に応じた印紙を張り、切手を添えて裁判所に提出することになります。東京などで記録の謄写を扱っている司法協会は、被害者からの記録の謄写申請の場合には通常の料金の半額である一枚二十円の謄写料ということになっておりますが、それでも記録が膨大な場合には謄写料負担も被害者にはとても重いものです。また、司法協会以外では被害者に対するこのような配慮はほとんどなされておりませんので、更に被害者の費用負担は重いということになります。
 刑事記録は現在は原則非公開という前提ですから、被害者にすべて開示されるわけではありませんし、刑事事件が確定した後の確定記録についても同様です。この意味で、このたびの法案中、被害者に対する公判記録の閲覧、謄写が拡充されることが盛り込まれたことは、大変評価しております。
 このように、民事訴訟を提起することが被害者にとって大きな負担となる場合は多いのですが、被害者が示談というものをあえて拒むという場合もあります。刑事和解の制度は実際は余り利用されていないというような事実があるようですが、この第一の理由は、被害者側に代理人である弁護士が付いていないことが多いということではないかと私は考えていますが、そのほか、和解というものそのものを拒否する被害者の感情があるということも、その理由の一つではないかと思います。
 示談や和解などを拒否して、被害者は負担が大きくても新たに民事訴訟を提起することになる場合もあります。しかし、手間暇掛け、負担を負っても加害者に資力がなく実効性がないような場合には、被害者は民事訴訟を提起することをちゅうちょします。判決だけでも欲しいと思っても、それを得るための民事裁判は被害者にとって余りにも負担が大きいからです。
 このたびの損害賠償命令制度は、刑事と民事は別としている現行の日本の司法制度の枠組みを崩さずに、被害者の負担を軽減し、簡易迅速な被害回復を目的とした制度です。ヨーロッパの附帯私訴制度、特にフランスの私訴原告制度などは刑事と民事の判断の矛盾回避という原則の下、時に実質は被害者の刑事手続参加であるのと比べると全く異なる制度であり、日本独自の制度であると考えます。附帯私訴制度については裁判の長期化という欠点が常に指摘されていますが、刑事と民事を峻別し、民事の審理の迅速化も規定されたこのたびの損害賠償命令制度にはそのような批判は当たりません。
 そこで、このたびの損害賠償命令制度における注目すべき点を挙げていきたいと思います。
 まず、手続が簡易で、煩雑な準備が不要であるということです。
 起訴後、訴因と内訳を示した損害額を記載した申立て書を刑事裁判の担当裁判所に提出しておけば、有罪判決の言渡し後、民事の損害賠償の審理を行うことになります。第一回期日において必要な刑事記録はすべて取り調べたこととなり、現在のように公判記録を閲覧、謄写し、証拠作成をして提出する必要はありません。刑事記録が簡単にすべて利用できることは被害者にとって極めて重要なことです。
 次に、費用負担が軽減されること、このことが注目されます。
 印紙は一律二千円とするとのことですが、現在の損害賠償請求の印紙代に比べ非常に低額で、被害者が利用しやすくなります。費用倒れ、実効性がないなどと言われ、民事の損害賠償請求事件を提起することをあきらめていた被害者のうち、この制度であれば利用する方もあると思います。
 また、迅速な審理が行われることも注目されます。
 審理は、口頭弁論か審尋、つまり任意的口頭弁論によって行われますが、四回以内の期日で行うとされています。通常の民事裁判の第一審が早くても数か月から一年、あるいはそれ以上掛かるのと比較して、極めて迅速な審理が予定されていると思います。
 そして、被害者の立場からいえば、これがとても重要なことなのですが、刑事裁判で有罪判決を下した裁判官が民事裁判を担当するということにこの制度の大きな意義があります。刑事記録の扱いとともに、この点が犯罪被害者等基本法十二条が要請した点にかなうものだと思います。基本法十二条の後半には、当該損害賠償の請求についてその被害に係る刑事に関する手続との有機的連携を図るための制度の拡充等必要な施策を講ずるとあります。刑事裁判での心証を有する裁判官が民事裁判も担当し、民事裁判において刑事記録を取り調べるとされたことが、刑事と民事とのまさしく有機的連携であろうと思います。
 この点を考えるとき、私は自分が代理人として付いたあるストーカー事件について思い出します。
 私は刑事事件の終盤に代理人を依頼され、民事訴訟を提起することの依頼を受けました。その刑事被告人は、被害者が示談金の受領を拒否したとして、示談金を供託していました。刑事裁判の裁判官は、被告人質問と判決言渡しの際、損害賠償については今後誠意を持って対応するよう求め、その意向を確認しました。被告人もこれを受け入れ、反省しているように思われました。保釈は全く認められませんでしたが、判決では執行猶予が付きました。
 しかし、民事裁判になると、被告は刑事裁判のときの弁護人ではない弁護士を代理人とし、供託金以上は支払えないと言い、事実関係について刑事事件では述べなかった弁解などを述べました。被害者は被告の主張に更に傷付きました。結局、裁判は控訴審まで掛かりました。仮に当時、損害賠償命令制度があり、この事件にも適用になれば、被告はこのような弁解をせず、民事裁判も早く終わったと思います。
 日本の司法制度では、刑事と民事は異なります。本法案においても、刑事裁判の判決の拘束力は事実上にすぎません。しかし、事実は一つなのであって、刑事裁判を担当した裁判官が民事裁判を担当する場合、被告人は事実上、別の事実を主張することはできず、何ら意味のない弁解をすることによって被害者が二次被害を受けることもなくなります。
 この点、後の損害賠償の審理をにらんで、刑事裁判において被害者の落ち度などを主張し、被害者が更に傷付くという意見もありますが、実態はさきにお話ししたとおり、逆だと思います。刑事責任を左右する事実であれば、被告人は刑事裁判においても既に主張しているはずです。民事裁判で刑事裁判の際の主張と異なる主張をしたり、追加的に被害者の落ち度などを主張する場合は、通常は刑事裁判は確定している場合が多く、そのうちでも執行猶予を得ているような場合であろうと思います。特に故意犯の場合には、民事裁判でそのような主張をしても有効な場合は考えられず、損害賠償額に影響しないことがほとんどで、単なる身勝手な自己弁護にすぎないことが多いと思われます。今申し上げた観点から、後の民事裁判の審理のために民事裁判を前提にしての主張などが行われることによって刑事裁判が長期化するとの批判も的外れということになります。
 刑事と民事の審理が峻別されているので、損害賠償命令の申立てをすることによって刑事裁判に何らかの悪影響を与えることはないと考えます。刑事の裁判所が申立て書を受領するわけですが、申立て書には訴因と損害額の記載のみ許され、余事記載は排除されていますから、このような申立て書の受領をもって予断排除の原則に反するというのは、余りにも形式的なとらえ方だと思います。
 なお、このたびの損害賠償命令制度は、過失割合などが争いになる業務上過失致死傷罪などは対象とならず、四回の審理で終わらない複雑な事案などは通常の民事裁判に移行されます。
 私自身は、法制審の部会での審議の際、対象犯罪を限定すべきではないのではないかという意見を申しましたが、対象を一定の故意犯に限定することによって本制度が更にスムーズに展開されるというメリットがあると今は思っております。
 損害賠償命令制度においては、決定が出ても異議を述べれば通常の民事訴訟に移行してしまうので余り意味がないとの意見もあります。しかし、その場合でも、刑事記録は民事裁判所に送付され、証拠についてはその刑事記録中特定する方法でよいという特例が規定されていることなど、通常の民事訴訟を提起するよりも被害者の負担はずっと軽減されています。また、時効の中断効が維持され、仮執行宣言も維持されるので、通常の民事訴訟に移行されても、被害者にとっての利点は大いにあります。
 また、刑事裁判で無罪判決が出て損害賠償請求が却下された場合でも、六か月以内に通常訴訟を提起すれば、時効中断は損害賠償命令申立て時にさかのぼるとされているので、この場合でも利点はあります。
 被害者にとっては支援のための施策のメニューは多ければ多いほどよいのです。経済的被害回復の手段に損害賠償命令制度という新たなメニューが付け加えられることは被害者による選択の幅を広げるものであり、重要な意義を持っています。
 最後に、日弁連犯罪被害者支援委員会は各地で被害者支援活動を行っている弁護士が集まっていますが、被害者支援委員会としては、被害者参加人制度を含むこのたびの法案に賛成しています。また、各地の弁護士会の被害者支援関係の委員会もおおむね法案に賛成しています。
 日弁連の意見は、日弁連の手続にのっとって決定し、公表されたものではありますが、会員である弁護士全員の総意というわけではないということは申し上げなければなりません。実際に日ごろから犯罪被害者と接し、支援活動を担っている弁護士がこのたびの法案に賛成しているという意味をどうぞ十分にお考えいただきたいと思います。
 私の意見は以上です。
#102
○委員長(山下栄一君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#103
○岡田広君 自由民主党の岡田広です。
 今日は、三人の参考人の皆さん、本当にお忙しい中、御出席いただき、貴重な御意見をありがとうございました。
 限られた時間の中ではありますが、損害賠償命令につきまして何点かお尋ねをしたいと思います。
 初めに奥村参考人と番参考人にお尋ねをしたいと思います。
 今回の損害賠償命令制度が犯罪被害者等基本法及び犯罪被害者等基本計画を受けて刑事手続の成果を利用して簡易迅速に紛争を解決する制度として設けられたということだと思っていますが、ただいま両先生の御意見を伺いまして、被害者の方々にとって本制度が大変重要な制度であることを改めて認識をいたしました。
 奥村先生は犯罪被害者の損害の回復を始めとする被害者学を研究対象の一つとされておられ、また、番先生は長年にわたって弁護士として被害者の方々の支援をされてこられたと承りました。そこで、このような研究や経験を踏まえた視点から光を当てれば、今回の損害賠償命令制度の意義がどのような点にあるのか、まずお尋ねしたいと思っております。
#104
○参考人(奥村正雄君) それでは、今の御質問でありますけれども、私は、従来日本では民事賠償が、日本だけじゃありませんが、民事賠償請求が基本でありますけれども、それがなかなか実効性がないということで、御案内のように一九八〇年、例の犯罪被害者等給付金ですね、給付制度ができました。いわゆる犯給制度ができて、いわれなき被害を受けた人たちに対して国が補償していくという給付制度、補償していくという制度ができました。
 それがありましたですけれども、それ以降、その給付制度でも不十分、これは今内閣の方でも改正が進んでいるわけで、何回か改正がありましたけれども、そういうことで、日本も犯罪被害者に対する経済的支援というのは従来からあったわけでありますけれども、これあくまでも給付でありまして、本来はやはり被害者が加害者から損害賠償を請求できるはずなんで、それをもっと速やかに実行していくにはどうしたらいいかということが問題になると思うんですけれども、そういうことで、先ほども報告の中で申し上げましたように、例の追徴とか没収を通じたいわゆるやみ金の被害者の救済とかいうのがございました。
 それから、刑事和解の制度が二〇〇〇年の改正で被害回復給付制度ができました。それによって刑事和解でかなり被害救済ができるようになったとは思うんですけれども、しかし、これはあくまでも和解を望んでいる人か、あるいは否認事件でないもの、こういったものしかできないと。言わば、そういった形で一部の人たちしか救済されないということでありました。
 そういうことから、特に今回、特に生命・身体犯の被害者で刑事和解望む人は別ですし、それから被告人の方もそれを望む場合はまた話は別ですけれども、そうでない場合、それから、今回でも、ただ、徹底的に否認する事件にはなじまないと思うんですけれども、割と故意の生命、身体等に対する罪で比較的否認がないということで、そういう事件の被害者については、従来の制度から比べますと、今までそれが被害の救済の対象になっていなかったと、今回の損害賠償命令制度によって、そういった人たちに光が当たったということだと思うんですね。
 ですから、ある意味では、先ほど申し上げたやみ金の被害者の問題とか刑事和解とか、言わばパッチワーク的に救済制度ができてきているわけですけれども、今回、今報告でも申し上げたこの一定の対象犯罪の被害者の財産、被害回復にこれはもう不可欠の制度であると。しかし、これだけで解決するわけではないというふうにとらえております。
#105
○参考人(番敦子君) 先ほど基本法の十二条を御紹介しましたけれども、これを受けて基本計画ができたわけですが、その中の柱では、刑事手続の成果の利用、そして被害者の労力、負担の軽減、簡易迅速な手続ということが言われたわけです。この三つを満たすもので、それで現行の刑事司法の枠組みを崩さない、刑事と民事が違うという今の日本の現行司法制度の枠組みを崩さないという制度で、非常にそれは画期的なものだと理解しております。
#106
○岡田広君 引き続き、奥村参考人にお尋ねします。
 本制度は、異議の申立てをすれば命令の効力が失われるなど、その効力は軽い制度になっているという意見もあります。実際にこの制度がどれほど使われるか疑問であるとの意見もありますけれども、このような意見に対しては、奥村参考人はどうお考えでしょうか。
#107
○参考人(奥村正雄君) 実際どうなるのかということについては動いてみないと分からない部分があるかと思うんですが、ただ、先ほども申し上げましたように、この新しい制度の対象となる犯罪というのは、徹底的に否認するような事件は入らないと思いますので、ある程度損害回復について異議申立てというのはできることになっていますけれども、そういった割と、言葉はあれですけれども、筋のいいといいますか、そういった事件に対象になってくると思いますので、余り問題は起こらないんじゃないかなというふうにとらえております。
#108
○岡田広君 ありがとうございました。
 次に、番参考人にお尋ねをいたします。
 法制審議会で議論の対象とされました、あすの会の附帯私訴制度の私案においては、刑事判決に民事上の請求に関する法的拘束力を認める仕組みを取っておられたようでありますけれども、今回の損害賠償命令制度についてはそのような仕組みとはなっていません。このような法的拘束力を認めることの賛否につきまして、番参考人の御意見がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
#109
○参考人(番敦子君) 刑事と民事を分ける、刑事と民事が別だというような現行の司法制度を考えますと、刑事の判決に法的拘束力を持たせるということは抵触する可能性があると考えます。ですから、刑事裁判を担当した裁判官が心証を持って、事実上の判決の拘束力を持って民事裁判を担当するということが現行の司法制度と合致して望ましいものと考えます。
#110
○岡田広君 ありがとうございました。
 次に、奥村参考人、氏家参考人にお尋ねをしたいと思います。
 今回の制度につきましては幾つかの懸念も示されております。例えば、被告人が被害者の損害賠償請求について争うこと自体が刑事事件の量刑上不利な情状として考慮されることとなったり、刑事裁判を担当して被告人や事件に一定の印象を抱いた裁判官がそのまま損害賠償命令という、いわゆる民事の裁判をすることになると、被告人の防御上、刑事、民事双方で不利益を与えるのではないかとの懸念も指摘をされております。
 先ほどの説明の中では、番参考人はここに意義があるというお話もありましたが、この点につきまして、奥村参考人と氏家参考人の御意見を賜りたいと思います。
#111
○参考人(奥村正雄君) 今回この制度ができますと、刑事と民事は完全に分離された形で審理が進められるわけですけれども、その後、同じ刑事の裁判官が民事の損害賠償命令の審理をするというところの御懸念だと思われますが、その際に、今回のは法的拘束力は全くなしということでありますが、事実上その心証に影響を与えるんではないかということでありますけれども、ただ刑事で、先ほどから申し上げていますように、刑事で認定された事実を基に、それを基に損害賠償の判断に証拠として影響を与えるわけなんで、それについて争うことが当然被告側もできるわけでありますので、それが裁判官の予断とか、そういうものに結び付くとは考えられないと。それは刑事の成果を利用して正に民事の損害賠償命令の判断を行うということの筋ではないかと思いますが。
#112
○参考人(氏家和男君) ただいま刑事と民事は完全に分断されているという御意見でございましたけれども、接続して手続が行われるということ、そして刑事訴訟手続を利用して民事の損害賠償命令制度の審理が行われるというわけですから、完全に分断されているというわけにはいかないだろうと思います。
 それで、やはり損害賠償のことを考える立場としては、刑事の事件の中においてその部分を取り込んでもらうようなやはり活動をせざるを得ないという、現実に弁護人を依頼された立場としては、やっぱりそういう場面は避けられないのではないかというふうに思います。実際に、今回、業務上過失致死傷の事件などは除外されたということではありますが、それは業務上過失傷害などの事件は、正にそうした部分が刑事の手続の中で大きな争点になるということが考えられるから除外されたというふうにも言えるんだろうと思います。
 かつて旧法では附帯私訴の制度というのがあったわけでございますけれども、その中でもほとんど実際はそれが利用されなかったという経過がありますが、それもやはり刑事裁判への影響があるということが結局は実際上そういう運用になったということになっているのではないかというふうに考えます。そういう意味において、私は刑事に関係ないという御意見は違うのではないかというふうに思っております。
#113
○岡田広君 ありがとうございました。いろいろ貴重な御意見をありがとうございました。今後の審議の参考にさせていただきたいと思います。
 時間ですので、終わります。
#114
○簗瀬進君 民主党の簗瀬進でございます。
 お三人の参考人の皆さん、本当にお忙しいところを大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。
 そこで、まず冒頭に番さんに質問させていただきたいんですけれども、この新しい損害賠償命令制度の手続では、刑事裁判の担当裁判官と、あるいはいわゆる裁判所ですね講学上の、それと、それから損害賠償命令を審査する裁判官は同一人が連続するというふうなことを前提にしてお考えになっているということでしょうか。
#115
○参考人(番敦子君) そのように理解しております。
#116
○簗瀬進君 氏家参考人はその点はどうでしょうか。
#117
○参考人(氏家和男君) 同じ裁判官が担当するという前提で理解をいたしております。
#118
○簗瀬進君 なるほど。
 心証形成が事実上反映をするという形で連続をするけれども分かれているんだというふうに奥村参考人はおっしゃっているんですが、何か奥村参考人のイメージだと、いわゆる刑事裁判を担当する裁判官とそれから損害賠償の方を担当する裁判官は別だというふうにお考えになっているんでしょうか。
#119
○参考人(奥村正雄君) いいえ、刑事裁判を担当した方が、裁判官がその損害賠償命令の判断をするというふうには考えております。
#120
○簗瀬進君 なるほど。ありがとうございました。
 質問を始める前提の考え方をまず聞かせていただいたんですが、まず奥村参考人にお尋ねをさせていただきたいんですけれども、旧法はいわゆる職権主義の時代でございました。そのときに、いわゆる附帯私訴的なものはあったというふうな御説明で、私ども不勉強でその辺のことはよく分からないんですけれども、やっぱり職権主義とそれから旧法時代の附帯私訴というようなものは、論理的にどこかくっ付いているところがあったんでしょうか。
#121
○参考人(奥村正雄君) 確かに職権主義の国、今の現在のドイツやフランスに附帯私訴制度がありますように、日本の場合にもかつては旧法の下では職権主義でありましたので附帯私訴制度でありました。これは、刑事の中で民事の審理が行えるということでありますので、職権主義の裁判官がそれを行えるということで、それはちょっと当事者主義には少し合わない部分があるんだろうということで思いましたが、親近性はあるかと思います。
#122
○簗瀬進君 それで、旧法時代に附帯私訴がそれほど使われずに、最終的には新しい刑事訴訟法が入ると同時に廃止されたと、こういうふうな御説明なんですけれども、その辺の背景になっていた事情というのは、どんなところなんでしょうか。
#123
○参考人(奥村正雄君) やはり刑事の裁判官が民事の判断をするという、民事の審理をするということの困難性ですね、煩雑性です。それから、先ほどもちょっとお話出ていますように、過失相殺の問題とかそういう、特にそういう認定が非常に難しいというところが裁判所にとっては負担になっていたと、そういうようなこともあって余り使われていなかったというふうに承知しておりますが。
#124
○簗瀬進君 今回、今お話の中で、ドイツ法、フランス法それからイギリス法等の比較があったわけなんですけれども、奥村参考人のイメージでは、今回のこの法律で新しくつくられる損害賠償命令制度というのは、どちらかといえば今のフランス、ドイツそれからイギリスと、この比較の中で言うとドイツの制度に近いというふうな御認識なんですか。
#125
○参考人(奥村正雄君) いえ。ベースとしては附帯私訴で、損害賠償命令という形の名前は付いていますけれども、全くイギリスやアメリカとは違って、これは刑罰ではありませんので、今度の新制度は。
 一部、最初のベースは附帯私訴ということでございますけれども、ただ、その附帯私訴の問題点があるわけで、これはドイツやフランスでも問題になるわけですけれども、特にドイツでも刑事の中で民事を審理するということの困難性ですね、これがあってなかなかドイツでも余り使われていないという事情があるわけなんですけれども。
 こういう問題点をクリアするために、先ほどから申し上げましたように、新制度は刑事と民事を分離していると、審理をですね。刑事の終局裁判後に民事の審理をすると、こういうシステム取っていますので、全く附帯私訴でもないということでありまして、全くこれは日本、我が国独自の制度になっていると、こういう理解でございます。
#126
○簗瀬進君 イギリスなんかの場合は、いわゆる被告人の資力が限度での賠償命令だというふうなお話でございましたけれども、それは具体的に言うとどんなことなんでしょうか。
#127
○参考人(奥村正雄君) 資力、要するに支払能力がなければ画餅になるわけですね、意味がないということになります。それで、イギリスでは被告人の、有罪被告人の資力で、しかも家族がいて、例えば奥さんがいて子供さんがいてということだと、例えば家がありますよね。そういったものを売ると奥さんや子供さんが困るということで、そういうところまでは、家を売ってまでということにはならないようでありまして、要するに本人が支払える範囲内でというふうに承知しております。その範囲内で資力調査を裁判所がして、そしてその範囲内で、罰金刑と併科もできるんですけれども、優先して言い渡すと、そういう制度になっております。
#128
○簗瀬進君 それで、ドイツ法の場合にいわゆる附帯私訴が余り使われていない、その原因として因果関係とか過失認定が問題になっているというふうな御指摘だったんですけれども、正にこれはドイツの場合は、今度の我が国の法律と、今議論しているこの法案とは違って、すべての犯罪を対象とした制度であるということなんでしょうか。
#129
○参考人(奥村正雄君) 原則としてそのように承知しております。
#130
○簗瀬進君 ということになると、今回の法律では、業務上過失致死傷等が除外をされているということで、先生が御心配なさっているような因果関係とか過失認定の話で長期化するということは避けられるよというふうな御認識なんでしょうか。
#131
○参考人(奥村正雄君) そういう制度設計になっていると理解しております。
#132
○簗瀬進君 氏家参考人にお尋ねをしたいんですけれども、いわゆる被告人とそれから被害者のバランスがかなり失してしまうというふうなことで、御指摘の部分をまとめると、第一点は、いわゆる損害賠償手続に移行した際の弁護人が保証されていないと、被告人の方には。それからまた、収監をされていて出廷できない可能性も高いと。そしてもう一つは、被害者には認められた民事訴訟に移行する申立てが被告人には認められていないと。この辺がバランスを失しているんじゃないのかという御指摘なんですけれども、こういう整理でよろしいんでしょうか。
#133
○参考人(氏家和男君) そういうことでよろしいです。
#134
○簗瀬進君 それに付け加えることは、付け加えるといったら何かございますか。
#135
○参考人(氏家和男君) 今申し上げたとおりのところでよろしいと思います。
#136
○簗瀬進君 私も氏家参考人の三つの指摘はかなり重いものがあるなというふうに感ずるんですけれども、この点について奥村さんとそれから番さん、お二人の御見解はどうなんでしょうか。
#137
○参考人(奥村正雄君) 済みません、どの点でございますか。
#138
○簗瀬進君 今の三つの点でございます。いわゆる刑事事件から損害賠償命令の手続に移行した際に、被告人の方には特に国選弁護で刑事をやったような場合には弁護人が付いてくる保証というのはないよと。代理人ですね、その場合は。それから、収監をされているので出廷をできない可能性が高いというふうなのが第二点目。それから第三点目で、被害者の方には例えば複雑だから民事訴訟に移行してほしいという、そういう申立て権は今回の法案で認められてはおるけれども、被告人の方にはこの民事に移行するという申立ては認められていないと。こういう点でのバランスが欠けていると、こういうような三つの御指摘があったんですけれども、それぞれについてお二人の参考人の御見解をいただきたいと。
#139
○参考人(奥村正雄君) 最初の二つは、これは確かに御指摘の点はあるかと思うんですが、ただ、これ、いわゆる通常の民事訴訟の場合も同じ問題が起こるんだろうと思うんです。ですから、その点については別途の手当てが必要ではないかなというふうには感じておりますが。
 それから、最後につきましては、異議申立ての点ですかね。
#140
○簗瀬進君 二番目が。
#141
○参考人(奥村正雄君) 収監されている場合ということですね。
#142
○簗瀬進君 ええ。収監されていて出廷できない可能性があるんではないか。
#143
○参考人(奥村正雄君) はい。それも通常の民事訴訟の場合も同じ問題が起こるだろうというふうに考えますが、その点は。
#144
○簗瀬進君 三点目、もう一点ございますので。民事訴訟に移行する申立て権が被告人には認められていないという点はどうでしょうかと。
#145
○参考人(奥村正雄君) はい。その点につきましては、あくまでも被害者の方が損害賠償命令の申立てをして、そしてその後、損害賠償命令の審理の中で判断してもらうと。その場合に、被告人の方に異議がない、命令という形で出してもらうというふうにする制度だということで理解しておりますが。
#146
○参考人(番敦子君) まず一点目ですけれども、これは、ある意味で、私から考えますと、ぎりぎりまで実際は国選弁護人か私選か付いているわけですね。ですから、相談はいつでも可能だということから考えますと、現行以上にマイナスになっているわけではないと思っております。
 それから、収監されていて出廷できないという問題ですが、これは今の制度設計では、有罪判決言渡し後、第一回の民事の期日を入れるということで、ここで出られるというのは今よりも格段に進みますよね。多分、有罪言渡し後に民事の裁判を開くというような話になっていると思います、制度設計としては。そうであれば、そこで出頭をすることは可能ではないかと。今は、本当に被告人が収監されているときには民事の裁判になかなか来られないのが現実で、その問題はすべての民事事件に関しての問題としてとらえるべきで、この制度との関係、特有の問題としてとらえるのはおかしいと思っています。
 それから、あと次は何でしたっけ。──申立て、あれは被害者だけが移行権を持つのは刑事の裁判の言渡しがあるまでだと理解しております。その後は、双方、職権の申立てをするとかあるいは同意を得て移行できるというふうになっていると思われますが。
#147
○簗瀬進君 ありがとうございます。
 大変専門的な話で、私も頭の体操しながら質問しているんですけれども、最後に番さんにお尋ねをしたいんですが、損害賠償命令の手続が、例えば不服がないという形になりますと、確定判決と同一の効力持つんですけれども、すなわち、執行力を持った債務名義になるわけなんだけれども、一番最初の申立ての段階で書面を提出する際に、いわゆる被害者の側で言うべきことというのは訴因として特定された事実とその他請求を特定するに足りる事実を記載した書面だけだという形なんです。
 そこで、その確定判決としての効力というのはどの部分に生じるのかなという、通常の民事の判決とちょっと違った考え方になるのかなと思うんですけど、その辺はどのように御理解なさっているんでしょうか。
#148
○委員長(山下栄一君) 時間が参っておりますので、簡潔にお願いします。番参考人。
#149
○参考人(番敦子君) これは、不法行為の事実というのが訴因に書かれた事実であり、執行力を持つのは、幾ら幾ら支払えというところが民事の執行力ですから、今と同じだと思います。
#150
○簗瀬進君 ありがとうございました。
#151
○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 お三方、本当にお忙しい中、国会にまで足をお運びいただきまして貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
 まず初めに、奥村参考人にお伺いいたします。
 今回の損害賠償命令制度は、一部マスコミ報道などでは附帯私訴という表現が使われておりまして、私どももちょっと頭が混乱していたんですが、先ほどの御説明で、今回の日本の制度、導入しようとしている制度はフランス、ドイツ等の附帯私訴とも違う、また、名前は同じだけれども、アメリカ、イギリスの損害賠償命令とも違うと、こういう御説明をいただきました。
 どちらとも異なるということなんですが、なぜどちらとも違って我が国独自の制度とすることにしたのか、また、それによるメリットあるいは長所というのがどこにあるのか、簡潔にお話しいただければと思います。
#152
○参考人(奥村正雄君) 今回の新制度は、先ほど申し上げましたように、英米風の刑罰としての言渡しではないわけですね、賠償命令というのは。あくまでも民事訴訟だというのが前提だと思います。
 先ほどからるるお話ししましたように、刑事の中で民事の審理を行うということの困難性は、これはもうドイツやフランスでも問題になっているところであります。この仕組みを取らないと。その問題をクリアするというシステムを取る必要があるということで基本、ベースとなったのが附帯私訴の考え方だったと思うんですけれども、それを、その問題点をクリアして我が国独自のシステムにしたと。それによって、一定の対象犯罪の被害者の人たちの救済に非常にスムーズにできるようなシステムになったと、こういうふうに理解しておりますが。
#153
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 次に、番参考人にお尋ねいたします。
 参考人は、被害者の方々を長く御支援されてこられた弁護士としてのお立場から、先ほどお話の中にも出てまいりましたけれども、今回の制度の一番の意義あるいはメリットにつきましてはどのようにお考えなのか。
 また、先ほどのお話の中で、被害者にとって支援のメニューというのは多ければ多いほどいいんだというお話がありました。今回の制度が導入されたとしても、更に不足の制度といいますか、更にこういう支援が必要ではないかとお考えになられる点がございましたら教えていただきたいと思います。
#154
○参考人(番敦子君) この制度ができまして、やはり被害者の負担が非常に軽減されるということを先ほどからも何回も申し上げておりますが、そういうところが大きいのですが、やはり犯罪被害を受けた方というのは、犯罪のその事実を立証するためには刑事記録にアクセスするしかないわけですね。不法行為の損害賠償請求というのは、立証責任はもちろん請求する側にあるわけで、しかし被害者の下には、被害者はその調査権もありませんし、本当に刑事記録が助けになるわけです。今回は、その刑事記録をすべて使えると。そして、先ほど言ったように、自分でコピーしたりしなくても済むということは非常に大きなことです。その意義は非常に大きいので、とにかく刑事記録を全部使えるということは大きいと思っています。
 それから、この制度ができても、先ほど奥村参考人もおっしゃっておりましたが、すべてこれで満たされるわけではないわけで、メニューの一つであると思います。これができましても、結局、資力のない加害者には、判決をもらったとしても、被害者はその判決は紙切れになるしかないということになります。
 ですから、それはもちろん犯罪を犯した者が賠償をするというのが原則ではありますが、そのほかにやはり国の支援制度とか経済的な回復の支援制度をきちっと充実させなければ、やはり経済的にも困窮して泣く被害者はやはり後を絶たないと思います。
#155
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 ただいまのお話に関連いたしまして奥村参考人にお教えいただきたいんですが、この制度が導入されましても、加害者である被告人が無資力の場合には損害賠償命令は絵にかいたもちになると、こういう危惧があります。むしろ、被害者の方々に対する公的な補償をより充実させるべきではないかと、こういう御意見がございます。また、内閣府でも給付金の拡充を検討しているということでございますけれども、この点に関しまして先生のお考えをお聞かせいただければと思います。
#156
○参考人(奥村正雄君) 私、先ほど申し上げましたけれども、日本の犯罪被害者等給付金支給法の制定以来のことを申し上げましたが、あの制度に従前から関心を持って研究をしてまいりました。
 その公的給付と、世界では多くの国々で、一九六四年ぐらいからニュージーランドを皮切りに、英米圏の先進国から始まってだんだん、日本は八〇年ということでありましたが、そういう犯罪被害者補償制度というものが、少しずつ国によって内容は違いますけれども進んでいます。
 特に、私が研究しておりますイギリスは、国の一般会計から、年間十名そこそこですけれども、もう相当な額の補償を社会連帯・共助の精神から給付しております。そういう制度は我が国においてももちろんあるわけですけれども、さらに、これを今内閣府で検討されていますように、より発展充実させていくと。特に、資力のない被告人からは、これはどの制度を取っても同じことでありますので、どの制度というふうに申しましても、この損害賠償命令だけじゃなくて民事訴訟もそうですし、すべてそうで、ほかの制度等そうですけれども、ともかく、そういう公的給付制度というのを充実をさせていくことは非常に大事なことだと思っております。
#157
○浜四津敏子君 次に、奥村参考人と番参考人にお尋ねいたします。
 被害者の方々の便宜を考えますと、この損害賠償命令の制度はできるだけ広く利用できる方がいいのだと思います。そういう意味からいたしますと、この損害賠償命令の対象犯罪というのはすべての犯罪とするべきではないかという御意見もあったかと思います。ただ、今回はその対象犯罪が一定の範囲に限定されております。
 そこで、このように対象犯罪が限定されたこと、そしてとりわけ財産犯や業務上過失致死傷罪が除かれているという点につきまして、重なりますが、御意見をお伺いしたいと思います。
#158
○参考人(奥村正雄君) 一言で申し上げるなら、過失犯については、先ほどから議論が出ていますように、認定の困難性だと思います。刑事と民事の判断の違いもありますけど、過失相殺の問題とか非常に過失は難しいところがあると思います。
 それから、財産犯もその対象にすべきではないかという御意見もあるかと思うんですが、財産犯につきましても、いろんな重大な詐欺事犯などありますと、これは中には、起訴されない起訴されるというような、いろいろまちまちでありますので、そういったものを、これを損害賠償命令でくくるというのは難しいですし、また盗品等につきましてはこれは還付制度もありますし、ただ、残るところは事実で、それから、先ほども報告で申し上げましたように追徴、没収での被害もございますですね。そういったものを利用、活用していける部分があります。ただ、残るところは確かにあると思いますので、今後の課題だと考えております。
#159
○参考人(番敦子君) 私は、法制審では対象犯罪限らない方がいいという意見を出しました。移行権がありますので、難しい事件は移行するということであればあらゆる事件が対象になってもいいとは思いますけれども、確かに、今交通事故などは東京地裁などは特別部を置いて審理をしているくらいですから、そういう意味からいきますと、やはり現実的ではないということと、それから後遺症の問題などがあって、刑事事件が終わってすぐという話には普通はならない。
 それから、先ほど言われたとおり、財産犯の場合は、起訴状に被害者と書かれている人以外の被害者がたくさんいる場合があるというようなこともありまして一定の犯罪に限定したわけですが、将来的には、今言いましたような移行権を使えば、この対象の犯罪以外でも、先ほど申し上げたストーカー事件とかそういうものもこの制度にふさわしい事件はあると思いますので、運用を見ながら広げていっていただければ有り難いと考えております。
#160
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 最後に、氏家参考人にお尋ねいたします。
 先ほどのお話の中で、本制度の問題点の一つとして、被告人に通常訴訟への移行申立て権が認められない、また仮執行宣言が付されるということによって取り返しの付かないことになるおそれがあるという点を挙げられました。ただ、現行制度でも、仮執行宣言、民事訴訟で一審で負けて仮執行宣言が付くということがありますよね。現行制度でも、刑事裁判と民事裁判と結論が異なることがある、そういうケースもあるわけで、それとの関係で、現行制度に比べてこれが非常に問題なんだというのはもう少し御説明いただけますか。
#161
○参考人(氏家和男君) 確かに、民事の訴訟で財産上の損害賠償を請求するような場合は仮執行宣言が付くことがほとんどだと思います。ただ、民事の一般的な通常訴訟手続の場合には、被告について当然手続保障が厚いわけです。ところが、今回の損害賠償命令制度は簡易迅速だという関係で、これは手続保障が十分じゃないところもある。それは先ほど申し上げたように、出頭が確保されるかどうか分からない、短い時間の中で代理人に果たして依頼できるのかどうか分からないと。そういう手続の中で、しかも仮執行という重い結果が付く、それが問題だということを私は申し上げているわけであります。
#162
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 終わります。
#163
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。ありがとうございます。
 手続的なところを少しお尋ねしたいので、番参考人からお尋ねをしたいと思うんですけれども、今度の制度のつくり方、制度設計の仕方について、公訴提起後、弁論の終結までに申立て権の時期、申立ての時期ですね、これが公訴提起後というところになっていると。これが公訴提起後でなければならない。つまり、弁論の終結をするぎりぎりの時期だったり、あるいはその判決の言渡しと連続する形とかいう形での申立てでは駄目なのかどうか、そこをまずちょっとお尋ねをしたいんですが。
#164
○参考人(番敦子君) 理論からいきますと、弁論終結前であれば可能なわけですよね。弁論といいますか、刑事事件が結審する前であればいいと思いますけれども、終わった後というのはあり得ない、制度設計からいってあり得ないと思います。
#165
○仁比聡平君 そうすると、番参考人がずっと経験をしてこられて、先ほど来お話のあっています被害者の権利を充実させるための要請からすると、公訴提起直後からの申立てが認められなくても可能であるということなんでしょうかね。
#166
○参考人(番敦子君) いえ、逆でして、どこまで認められるのかという御質問だと理解しましたので申し上げました。
#167
○仁比聡平君 そうしますと、もう一度お尋ねしたいんですが、この損害賠償命令の申立てはどの時期から行われなければ、先ほど来おっしゃっていらっしゃるような刑事裁判と民事の有効な連携、有機的な連携、これが図られないということになるんでしょうか。
#168
○参考人(番敦子君) それは刑事裁判が動いている間に申し立てなければこれが使えないと思いますので、それで考えておりますけれども。
#169
○仁比聡平君 そこがちょっと私まだ胸に落ちていませんで、申立ての要件との関係でちょっとお尋ねをしますと、損害賠償、民事上の不法行為の要件事実、特に被害者にとっての被害、損害ですね、これ刑事上の訴因に限定される被害とはこれは実際違うという場合が多いと思うんですね。
 実際に、先ほどお話のありました例えばドメスティック・バイオレンス的な場合に、被害女性、被害に遭った女性の損害を主張するというときに、刑事上の訴因に出てきている結果とはこれは違う、もっと広い事実を主張するのではないかなと思うんです。そのような社会的な事実というのは申立てはできないということになるんですか。
#170
○参考人(番敦子君) この制度はできないということになっておりまして、そういうような主張をするのであれば、通常の民事訴訟を提起するということになっております。
#171
○仁比聡平君 そうしますと、法案の、お手元にお持ちのようですけれど、九条の二項に、請求の趣旨及び訴因として特定された事実その他請求を特定に足りる事実というふうにあるんですが、ここにいう請求の趣旨なり、あるいはそれを特定するに足りる事実というのは、訴因に限られているという御理解なんですね。
#172
○参考人(番敦子君) ええ、訴因に限られるという理解をしております。
#173
○仁比聡平君 また別の点ですが、民事の、民事のといいますか、審理の開始される時期の問題なんですが、法案では、お話のとおり有罪判決の言渡し後直ちにというふうになっているわけです。これを有罪判決の確定後というふうにすると、番参考人の感じられているような要請にはこたえられないということになるんでしょうか。
#174
○参考人(番敦子君) 基本的に民事と刑事は別なので、刑事事件の確定とかに引っ張られるという制度ではないと理解しています。
#175
○仁比聡平君 制度上の理論的な問題としてそのようにお考えということなんだと思うんですが、有罪判決が確定をする前にこのような審理が始まるということになると被告人側に混乱があるのではないか、あるいは防御権にも支障があるのではないかという指摘もありますので、だったら、有罪判決の確定後ということでは要請は満たされないのかなというお尋ねなんですけど。
#176
○参考人(番敦子君) 刑事事件を担当した裁判官がそのまま民事事件を担当するということにこの制度の意義があると思います。ですから、刑事事件の確定を待ってとか、そういうことは全く私の頭にはありませんでしたし、今の刑事と民事が別という制度は、いつ民事を提起してもいいわけです。現実に刑事事件が長引いて、その途中でもう民事は別に申立てをする、提起するということもあり得るので、そのような時期的なものを確定まで待つというようなことはこの制度設計するときに私の頭にはなかったです。
#177
○仁比聡平君 実際に刑事事件を担当した裁判体が民事事件を担当するとしても、有罪判決の言渡しから確定まで数週間、通常、その期間を置いて、確定後、同じ裁判体が引き続き審理をするという制度設計もあり得るように思うんですけれども、どうでしょう。
#178
○参考人(番敦子君) 被害者が損害賠償請求をするために刑事事件の確定というものを待つ必要がどうしてあるのか、ちょっと分かりません。つまり、民事事件は刑事と連動してないんですね、今の日本の司法制度は。ですから、例えば刑事と民事の判断が違う場合もあり得るわけです。それを考えますと、この制度だけが刑事の確定を待ってなどということで民事が引っ張られるというのは、逆に言うと今の司法制度に抵触します。
#179
○仁比聡平君 ちょっとよく私もまだ胸に落ちないので、またよく考えてみたいと思います。
 それで、被告人側の移行申立て権の点について先ほどお話がございました。これは条文でいいますと、二十四条の解釈に触れていらっしゃることなのかなと思って伺っていたんですが、つまり二十四条の一項で、裁判体が申立てにより、あるいは職権でこの命令事件を終了させる旨の決定をすることができると。この職権なりあるいはこのような、つまり要件としては、原則四回の審理では審理を終結することが困難であると認めるときということなんですけれども、これに当たるというようなお話なんですか。
#180
○参考人(番敦子君) そうです。
#181
○仁比聡平君 この二十四条は裁判体がそのような決定をすることができるというふうになっていて、二項にあるような終了しなければならないという事由ではないですよね。
#182
○参考人(番敦子君) 先ほど私が言ったのは二つの点がありまして、二十四条の一項ですね、それと二項の二号です。相手方の同意があるときということ、この二つで、被告側からもそういう移行を求めることができるということで二つ、これ、できています。
#183
○仁比聡平君 二項の二号は、これはもちろん相手方の同意、被害者の同意が得なければならないということだと思います。
 それで、ちょっと制度の関係で奥村参考人に。
 先ほど来、お話の中で印象的だったのが、徹底して否認されている事件にはなじまないのではないかというお話がありました。この感覚自体といいますか、それは私も共有できるものがあるんですけれども、この法律の仕組みの中でどこで徹底して否認されている事件が損害賠償命令制度から外れていくのかという、その条文的な根拠みたいなものがもしお分かりになればと思って。
#184
○参考人(奥村正雄君) 条文上の根拠というのは特にございませんが、ただ、四回で審理を終えるような比較的、要するに証拠にずれがないものに限定されてくるだろうと思うんですね、その対象犯罪の部分から見て。ですから、それで少しの否認なら問題ないと思うんですけれども、徹底的に否認しているような事件については、やっぱり通常の民事訴訟に行かないとなかなか難しいのではないかという認識であります。
#185
○仁比聡平君 今、番参考人、奥村参考人にお尋ねしたような点がどのように政府が考えているのか、また改めてよく政府には聞いてみたいと思うんですけれど。
 氏家参考人に、先ほども意見陳述の中で、時間や費用の負担を軽減できる簡易迅速な被害回復制度が存在することが望ましいというふうにおっしゃられたわけです。今回の法案が提案をしている仕組みはちょっと別といたしまして、通常の民事訴訟を提訴するということとは別に、簡易迅速な制度を望まれているという点は、ここは先ほど番参考人がおっしゃられたようなニーズと同じようなお考えなんでしょうか。
#186
○参考人(氏家和男君) 簡易迅速な手続が望ましいというふうには私は思います。それで、今回の被害者保護の関連立法の中で、刑事事件の記録の閲覧、謄写の権限とか何かが認められました。そういう形になりますと、やはり今までと違った、損害賠償命令の部分についても迅速性が高まると思いますし、簡易性も当然あるだろうと思いますので、そういった形を利用する形であれば、ほかにももっといろんな組立ての仕組みが、制度設計の方法があり得るんじゃないかなというふうに思っております。
#187
○仁比聡平君 この法案でいいますと、公訴提起後、その損害賠償命令の申立てが行われるということで、こうなりますと、これまでであれば民事上の争点になっていたものが刑事裁判の証拠調べの中で争点になってしまうのではないかという御指摘がありました。
 これは、刑事訴訟の方の観点からいいますと関連性があるのか、つまり訴因で主張されている事実の立証との関係で関連性はあるのかというような異議が出されるような性格のものにまでなってしまうのかな、どうなんだろうかと思うんですけど、その辺りはいかがでしょうか。
#188
○参考人(氏家和男君) それはあり得るとは思います。でも、ただ、現実に被告人の立場で活動をする場合に、当然やはり量刑上に影響する過失相殺等の主張は、それは民事にも影響しますし、当然これは主張することにならざるを得ないのではないか。現実に損害の範囲とか何かということも問題になりますので、それはやっぱり量刑に影響することですから、それはやっぱり実際に被害者の損害の程度とかについても聴くことにやっぱりならざるを得ないんではないかと。
 それが、場合によっては、裁判体の判断によっては関連性ということではねられる場合もあり得るかもしれませんが、実際にやはり弁護人としてはそういう活動を考えざるを得ない場面は多々あるだろうというふうに思います。
#189
○仁比聡平君 そうしますと、例えば国選弁護人の場合に、国選弁護人はその辺りの立証といいますか反証といいますか、主張責任も含めて、やっぱり活動として追っていくということになるんだということでしょうか。
#190
○参考人(氏家和男君) この制度の利用のされ方、これはもう予測の範囲になりますけれども、実際に私選弁護人が付いている方の場合には恐らく経済的な資力がそれなりにある方だと思うんですね。そして、国選弁護人の方は当然資力がない方ですよね。そういう方の場合には、その後、保証があるかどうか分からない中で、国選弁護人としてはやはりその後のことも考えて行動することになるんではないかというふうに思うわけで、そういう観点からいうならば、やはり国選弁護人というのは触れたいというふうなことになるだろうというふうに思っております。
#191
○仁比聡平君 最後に、刑事裁判の記録ないし事実上の心証、これが民事の損害賠償のこのような制度に活用されるべきではないかという点については、氏家参考人はどうお考えでしょう。
#192
○参考人(氏家和男君) 実際、刑事と民事が別々の制度であれば、心証の上で配慮することはあるだろうと思います。ただ、やっぱりここのところは余り刑事では影響ないんだけれども、民事でやっぱりどうしても将来問題になるということで触れざるを得ない部分があって、そういった部分についてはやはり本当は触れたくないというふうに思うところですので、それはやはり弁護人としては悩むところだろうと思います。
#193
○仁比聡平君 終わります。
#194
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道ですが、今日はありがとうございました。私は、氏家参考人と番参考人にお尋ねをしたいというふうに思っています。
 最初に、氏家参考人にお尋ねをしたいというふうに思いますが、お話を聞いておりますと、日弁連としては、この損害賠償命令制度について、時間や費用を軽減できる簡易迅速な被害回復制度であるということを基本的に認めた上で何点か問題点がありますよと、ここのところは更に慎重に論議を尽くしていただけないでしょうかと、こういう基本的なスタンスというふうに承ってよろしいんでしょうか。
#195
○参考人(氏家和男君) 簡易迅速な制度であるということは言えるかと思いますけれども、ただ私が申し上げたようないろんな問題点はやっぱり指摘せざるを得ないわけで、そういった問題点が解消される必要があるということでございます。
#196
○近藤正道君 そうすると、今現在はいろいろ問題点があって、まだこの制度を全面的に支持できるというそういう立場ではないということなんですか。
#197
○参考人(氏家和男君) 端的に言うと、そういうことになります。
#198
○近藤正道君 ああ、そうですか。
 それは分かりました。今ほど来聞いていて、そのようなスタンスがちょっといまいちよく分からなかったんでお聞きをしたんですが、ただ、裁判員制度との関係で、いろいろ先ほどの冒頭のお話の中に、配慮をしていただきたいということが三か所ほど出てくるわけですよね。ですから、具体的な、言わば、ここのところはこういうふうにした方がいいんではないかという、何か案みたいなものがおありなのかなというふうに思ったんですけれども。
#199
○参考人(氏家和男君) 配慮していただきたいということの意見を申し上げてはおりますけれども、具体的にこういう形で手当てをしてほしいということで申し上げられる内容を持ち合わせているわけではないわけでございます。
#200
○近藤正道君 そうですか。
 それと、私は、この損害賠償命令制度がやっぱり刑事訴訟手続の長期化、混乱化、それをある程度引き起こすことは避けられないんではないかと基本的に思っているんですが、先ほど番参考人の話の中に大変衝撃的な少し体験談の披瀝がございましたよね。番参考人がストーカー事件の被害者の弁護をして、そして刑事事件ではある主張をし、そしてそれが決着をした後、今度は民事訴訟になったら一転代理人を変えて、刑事事件で主張していなかった事実を指摘をして抗戦をしたと。ひどい人がいるものだなと思って私は聞いたんですけれども、従来の原則的な立場、伝統的な立場からいけば、こういうことは制度的にあり得るわけなんですね。
 そういうことを許さない意味でも、番参考人が先ほど真実は一つというふうに強調をされておったと。一つの裁判官の下で決着させるんだと、この意味があるんだというようなことを非常に強調されておりましたけれども、これについてはどういうふうに思われますか。
#201
○参考人(氏家和男君) 刑事上の公訴された事実、訴因について、それは刑事裁判所としては認定をされたわけで、それで、ただ民事の場合はそれから出てきて、いろんな損害であったり過失相殺であったり、いろんな主張があり得るわけですから、民事と刑事は違ったシステムになっているわけですから、それは事実は一つというものの意味は、不法行為という意味での認定された事実はそれは一つかもしれませんけれども、ただ、民事ということになると、それをベースにしていろんな損害の主張があったり、そして、こちらの被告の立場からすれば因果関係を争う場合もあるでしょうし、損害の範囲を争う場合もあるでしょうし、いろいろなバリエーションがあり得るわけですから、それは必ずしも矛盾することではないのではないかというふうに思います。
#202
○近藤正道君 理論的にはよく私も分かりますけれども、しかし、先ほどの番参考人のような話を、非常にショッキングな典型的なケースで話をされますと、もう少し何か説明、反論が必要なんではないかなと思ってお聞きするんですが。
#203
○参考人(氏家和男君) じゃ、補足ということになりますけれども、それはやはりそういう争い方をしたということ自体が、やはり私は民事において、もしそれが事実であるとすれば、やはりそれは余りいい形の心証にはならない。要するに、慰謝料とか何かの部分に反映される可能性はあり得るんじゃないかなと、必ずしも望ましい活動とは言い難いのではないかなというふうには思います。
#204
○近藤正道君 番参考人にお尋ねをいたします。
 先ほどの番参考人の体験の話は一つの極端なケースだというふうに思っておりますが、私、体験してないから分かりませんけれども。
 しかし、一般論として、やっぱり刑事と民事が同一裁判官で直結をしていて、刑事事件の決着の後、民事訴訟ということになれば、これはやっぱり民事の争点を意識をして、そして可能最大限、詳細なやっぱり論点を指摘をすると。それがとりわけ過失相殺などの場合にはあらわになってくるんだろうというふうに思っておりまして、裁判の長期化とか、そういうところにやっぱり影響を及ぼすということは避けられないのではないかと私は思うんですが、先ほど強烈に、そんなことはあり得ないというふうに主張されておりましたので、もう少し敷衍をして、この長期化とか争点が多発するということに対する、懸念に対する番参考人の言わば反論があったらお聞かせをいただきたいと、こういうふうに思います。
#205
○参考人(番敦子君) 皆さん、民事を眺めて民事の争点を刑事の中に入れるとおっしゃいましたけれども、この制度は訴因に限定して、不法行為の事実は訴因に限定されるという制度なんです。抽象的に民事の争点がとかとおっしゃるんですが、一般的に故意犯の場合、例えば生命・身体犯、それから強姦とか性犯罪、そのときに、被害者の過失とか落ち度を言うことが今民事事件でも争点になるのかということですね。
 ですから、この対象、今回の故意犯の対象犯罪の場合は、この訴因が刑事事件の訴因に限定した場合には、民事で更にいろんなことを言いたい場合は通常訴訟に行かざるを得ないんですが、そこに限定した場合には比較的すんなりと損害賠償額が認定できるような、そういうものを念頭に置いて制度設計されているわけです。
 だから、私はよく分からないのは、過失、過失とおっしゃるんだけれども、一番大きな交通事故も外れていますし、過失犯はないわけで、具体的にどんな争点が民事で新たに出てくるのか、つまり損害の場合は民事でやればいいんですよね。この訴因に基づいて、例えば損害、こういう損害ができました、これは民事訴訟であって、これは刑事では一切遮断されます。ですから、そんなに御心配要らないと思いますけれども。
#206
○近藤正道君 それと、先ほど氏家参考人の冒頭発言の中に、裁判員制度との整合といいましょうか、新たにこういう制度ができるわけですけれども、裁判員制度の下でこの損害賠償命令制度がスムーズにちゃんとフィットしていくのかと、いろんな点で配慮をする必要があるという話をされておりまして、聞いておられたと思うんですけれども、番参考人のお話の中に裁判員制度との関連での御発言がございませんでしたので、この点についての御発言がありましたらお聞かせいただきたいというふうに思います。
#207
○参考人(番敦子君) この制度は、例えば申立て書は担当の刑事裁判所に届くわけですが、その申立て書が裁判員に届くことはありません。ですから、この制度と裁判員の制度は、ある意味で全く関係ないです。つまり、裁判員がいて、刑事裁判が開かれ、それで終わりますね。そうしたら裁判員は退場です。それで民事です。
 ですから、この制度と裁判員との接触する点はなくて、唯一こういう制度も使っているという事実が分かるかもしれませんが、それだけのことで、もう被害者はいるわけですから、だれが被害者と分かっていて、その人が損害賠償を請求したというだけで裁判員に影響を与えるとは私は思いませんので、全くこの制度に関しては裁判員との関係は余り念頭に置く必要はないものだと考えております。
#208
○近藤正道君 時間はありますけれども、これで終わります。
#209
○委員長(山下栄一君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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