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2007/03/29 第166回国会 参議院 参議院会議録情報 第166回国会 総務委員会 第7号
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2007/03/29 第166回国会 参議院

参議院会議録情報 第166回国会 総務委員会 第7号

#1
第166回国会 総務委員会 第7号
平成十九年三月二十九日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十八日
    辞任         補欠選任
     後藤 博子君     長谷川憲正君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         山内 俊夫君
    理 事
                景山俊太郎君
                二之湯 智君
                伊藤 基隆君
                那谷屋正義君
    委 員
                小野 清子君
                尾辻 秀久君
                河合 常則君
                木村  仁君
                世耕 弘成君
                山崎  力君
                山本 順三君
                吉村剛太郎君
                芝  博一君
                高嶋 良充君
                高橋 千秋君
                内藤 正光君
                澤  雄二君
                遠山 清彦君
                吉川 春子君
                又市 征治君
                長谷川憲正君
   国務大臣
       総務大臣     菅  義偉君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        高山 達郎君
   政府参考人
       総務省人事・恩
       給局長      戸谷 好秀君
       外務大臣官房審
       議官       本田 悦朗君
       厚生労働大臣官
       房審議官     荒井 和夫君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(山内俊夫君) ただいまから総務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、後藤博子君が委員を辞任され、その補欠として長谷川憲正君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(山内俊夫君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 恩給法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に総務省人事・恩給局長戸谷好秀君、外務大臣官房審議官本田悦朗君及び厚生労働大臣官房審議官荒井和夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(山内俊夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(山内俊夫君) 恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○伊藤基隆君 今回、政府提出の恩給法等の一部を改正する法律案について、民主党・新緑風会は賛成の立場であることを明らかにして質問いたします。
 過去には、恩給法の改正は、関係する多くの人々の注目を集め、社会的にも政治的にも大きな課題であった時期が長く続いたわけでありますが、終戦から六十年を超える時間を経て、恩給受給者の高齢化が一層進み、恩給受給者数の減少が顕著となってまいりました。今日、恩給が果たしてきた社会的役割は最終局面に入ったとも言える時期を迎えています。また、制度的にも、今回の恩給法の改正に、恩給受給者から懸案として是正が要望されてきた扶助料制度間の不均衡是正や、年額改定方式を公的年金の引上げ率により自動的な改定を行う方式に改めることが盛り込まれたため、これが最後の改正になるのではないかとも伝えられております。
 まず恩給の実態についてお聞きして、次に法案の内容について質問を進めたいと思います。
 全恩給の恩給受給者の数は現在百五万六千人、旧軍人はこのうち九七・五%に当たる百三万人、恩給受給者の平均年齢は八十四・九歳、平均年額は八十五万一千円と理解しております。
 現状についてもう少し詳しく、本人に対する給付である恩給と、遺族となった配偶者等に給付される扶助料の給付者数と比率、それぞれの平均年額等について御説明いただきたいと思います。また、近年の恩給受給者の高齢化に伴い、従来と比較して扶助料の比率に変化が生じているか、お答えください。さらに、公務で死亡された方々、あるいは公務で傷病者となった方々の恩給や扶助料の現状についてお聞きいたします。
#7
○政府参考人(戸谷好秀君) 私の方から御報告申します。
 まず、平成十九年度予算における恩給の受給者数、先ほど百五万六千人という数字が出ており、九七・五%に当たる百三万人が旧軍人でございます。この旧軍人恩給の本人、遺族別の受給者数等について見てみますと、本人が二十四万四千人、二三・七%、四分の一弱でございます。これに対しまして、遺族が七十八万六千人、約七六・三%という数字になっております。受給者の高齢化とともに、当然でございますが、遺族扶助料受給者の方々の比率が高くなってきております。ここ五年で六六・七%から七六・三%、約一割が高くなってきているという状況でございます。
 また、本人に対する給付の平均年額でございます。この平均年額は約七十九万円というふうに算定をいたしております。一方、遺族に対します給付の平均年額は約八十五万円と、本人に対する給付より少し高い額となっております。やや意外な数字とも見えますが、これは、本人受給者の大部分の方が実在職年が十二年に満たないということで、短期在職の普通恩給受給者であることからこういう数字になっておるというふうに考えております。
 次に、旧軍人恩給の現状について、恩給の種類別というふうに考えてみますと、まず第一に、戦没者の遺族でございます公務扶助料受給者、約十万人いらっしゃいます。平均年額が約百九十七万円というふうになっております。次に、戦争で傷病を負われた方々、この方々に対します恩給でございます。比較的重症の方でございますと増加恩給という形で受給いたしております。この方々が約一万人、平均年額は約三百三十四万円でございます。この方々が平病死されますと、遺族であります方に増加非公死扶助料という形の扶助料が受給されます。この方々が約二万人、平均年額は約百五十六万円となっております。それから、比較的軽症の方には傷病年金という名前で受給しておりますが、この方々が約二万人、平均年額は約百三十一万円。その遺族に支給されます傷病者遺族特別年金、この受給者が約二万人で、平均年額は約五十万円となっております。
 最後に、必要在職年を満たした後退職いただきました普通恩給受給者の方が約二十二万人、平均年額が六十五万円。その遺族でございます普通扶助料の受給者が約六十三万人で、平均年額は約六十一万円と、こんな数字になっております。
#8
○伊藤基隆君 一口に恩給と言っても、大変多岐にわたっているわけでありますね。
 次に、恩給受給者の平均年齢八十五歳に達しようとしておりますが、国会図書館の立法考査局に人口統計の技術を使って試算を行ってもらったところ、この年齢の場合は、六年から七年後には半減、十年から十一年後には四分の一に減少するという推定が成り立つそうであります。恩給受給者数が最も多かったのは一九六九年、昭和四十四年の二百八十二万人ということだそうですが、これと比較すると、これから最後の十年を迎えることになるとの印象を強くするわけであります。
 まず、今後の恩給受給者の数や恩給の総額についてどのような見通しを持っているか、お聞きいたします。
#9
○政府参考人(戸谷好秀君) まず、恩給受給者数の長期的推計でございます。受給者の平均余命の延び等をどのように見込むかというようないろんな点があって、推計は難しいところでございます。仮に、平成十九年度予算において見込んだ人員等に対しまして、厚生労働省大臣官房統計情報部作成の平成十七年簡易生命表の年齢別死亡率等を用いて機械的に計算すれば、恩給受給者は平均年齢の周りに当然年齢が散らばっておりますので、そういう形のものにつきまして機械的な試算をするわけでございますが、五年後の平成二十四年度で七十万人ということでございます。今年百万人余でございますので、五年後は七割ぐらいという形の数字が出ております。
 それから、恩給費でございます。今回の制度改正に基づきまして、制度、枠組み、公的年金と同率で引き上げていくという自動スライド改定方式を前提としても、いろいろ経済情勢等々をどう考えるかについてはなかなか私どもとしてできるものではございません。ただ、仮に受給者数につきまして、先ほどの説明いたしました方法により機械的に試算いたします、それから公的年金の上昇率はゼロという形で考えてみますと、五年後の平成二十四年度には約六千億円程度という金額が試算されてくるところでございます。
#10
○伊藤基隆君 この全体の流れを象徴するかのように、総務省人事・恩給局が監修する政府刊行物「恩給」という定期刊行誌が昨年八月に終刊されました。恩給誌は一九六一年に創刊され、この四十五年余の間、恩給にかかわる様々な情報を提供し続けまして関係者に愛読されてきたそうですが、二百六十七号をもってその役割に一つの区切りを迎えたということだと思います。
 この恩給誌の終刊号の中で戸谷人事・恩給局長自身が、「終刊に当たって」と題した一文の中で、今後も、恩給をめぐる情勢は、率直に申し上げて、公的年金の制度改革、被用者年金の一元化などもあって相当に厳しいものになると思われますとの認識を述べておられます。
 政府が推進しようとしている公的年金の制度改革、被用者年金の一元化と将来の恩給制度との関係について、現時点ではどのような検討課題があるとお考えなのか、御見解を伺います。
#11
○政府参考人(戸谷好秀君) 私の雑文で申し訳ございません。昨年の八月段階ということで、いろんな私が考えておりましたことを書かさせていただきました。その上で、今回のいろんな法改正の提案というふうに受け取っていただければと思います。
 御案内のとおり、恩給制度でございます。国家補償の性格を有する制度ということで、相互扶助の精神に基づき、保険数理の原則というものがございます公的年金制度とは基本的な性格は異にしているというふうに考えているところでございます。ただ、一方では、同じく年金でございますし、受給者の老後の生活を支えるという部分においては共通の機能を有しているところでございます。やはり年額水準やその改定の在り方等につきましては、公的年金との均衡というものを常に考えていかなければならないということも事実だろうというふうに思っています。
 少子高齢化の一層の進展とか、あるいは公的年金と恩給という一つの官と民の年金のバランスのある問題、さらには恩給につきまして、相当に高齢化をするという中で、やはりさきの大戦のいろんな御労苦について国民の方からもいろんな考え方も出てくるということでございまして、そういう意味で、これらの均衡の中でいろんな改善ということを考えるには相当に厳しいものがあるのではないかということで書かさせていただいたところでございます。
 ちょっと敷衍して申し上げますと、今回の恩給の年額水準の改定方式見直しでございます。平成十六年の公的年金制度の改革をも踏まえ、また被用者年金の一元化に伴いまして共済年金におけるいわゆる追加費用減額等のための措置が講じられるということになれば、同種同様の勤務をした文官の恩給についてもいろんな措置が必要という議論が出てまいるところでございます。いろんな意味で、幾つかの観点から私どもとしても考えていかなければならないという論点がございまして、そういう時期にそういう文章で書かさせていただいたという状況でございます。
#12
○伊藤基隆君 恩給制度と公的年金というのは根本的な性格は違うというふうに私も思っておりますけれども。
 旧軍人遺族等の恩給が一九五三年に復活して、現在まで五十五年間にわたって給付が継続されておりますが、これまで毎年支払われてきた恩給費の総額は幾らになるんでしょうか。
#13
○政府参考人(戸谷好秀君) 旧軍人遺族等に支払われる恩給費という予算の項目がございます。昭和二十八年から計上させていただいておりまして、現在まで至っているということでございます。昭和二十八年から現在までの予算、そのまま積み上げさせていただきますと、約四十七兆円という数字が計算上出てまいります。
#14
○伊藤基隆君 四十七兆円、この金額を年度ごとに消費者物価指数を使って現在の物価に当てはめると六十兆五千億円という計算になるそうであります。来年度の一般会計予算が八十三兆円弱ですから、一年間の国の予算の七割から八割に相当する金額が一九五三年から今日までの五十五年間に支払われてきたことになります。
 この数字を見て、戦争というものは後々までも大変な金が掛かるものだというのが私の率直な感想でありますが、これは戦争の苦労に報いようとした国民の意思と、奇跡とも言われる経済発展を遂げる中で賄うことができたことを忘れてはならないと思います。
 今年は終戦から数えて六十三年目を迎えるわけですが、来年度予算における恩給費の総額は八千七百十五億円で、一般会計予算の一・一%を占める金額となります。現役世代のほとんどが戦後生まれとなった今日では、戦争体験のない後世の人々が決して少なくない負担を負っているのが実情です。平和であることが当たり前となった現在の日本人の感覚からは、一世代も二世代も前の戦争の後始末に当たることに違和感を覚える若い人が出てくることも決して不思議とは言えません。
 恩給制度は様々な経過をたどり、恩給法は度重なる改正を経て今日に至っております。国家が戦争に直接動員した人々、そのことで犠牲を受けた人々に対して国家補償的な性格を持つ現在の恩給制度を最後まで全うさせる、過去の経緯からもこのことが大切だと考えますが、総務大臣に恩給制度について基本的な見解を伺います。
 将来に向かってこの制度を維持していくためには、国民の理解を得るため、より一層の努力が必要となってきますが、特にこの点についての御意見をお聞かせください。
#15
○国務大臣(菅義偉君) 恩給は、元々明治初期に軍人を対象とする年金制度として発足したものであって、公務のために死亡したとき、公務のために傷病を負ったとき、また長年忠実に勤務した後退職したときに、公務員の国に対する貢献、奉仕に報いるため、国が公務員及びその遺族に対し給付を行う年金制度であります。こうした点から、恩給は基本的性格として国家補償の性格を持っているものと考えています。
 また、現在、ほとんどの受給者は、さきの大戦で生命をささげて国のために尽くされた旧軍人とその遺族であります。国としては、これらの受給者の方々に対し、国家補償の考え方により誠意を持って処遇すること、このことが極めて重要であると私は認識をいたしております。今日の日本の平和や安定、これがこうした先輩の皆さんの犠牲の上に成り立っていることを私どもは決して忘れることはできないというふうに思います。
 恩給が、生命をささげて国に尽くされた方々に対し誠意を持って処遇に当たるものであることについて、若い世代も含め国民の理解を一層深めてもらうように、私ども総務省としても広報に努めてまいりたいと考えているところであります。
#16
○伊藤基隆君 私自身、父親が戦争で死にました。公務扶助料を私の一家はもらっていたわけでありますが、非常に重要な生活の糧となりました。それがなかったら大変な状況だったというふうに思います。
 そういう国民は一杯いたわけで、今日まだそれが続いていると。生活全般は変化があったと思いますけれども、そういう状況下で、今の大臣の認識については私もそのようなことだろうというふうに思いますし、その重要性については変わることがないというふうに思っています。
 次に、今回の改正内容について質問いたします。
 今回の改正の一つの柱は、以下の四点について扶助料制度間の不均衡是正を図るものです。すなわち、一つに、公務扶助料、増加非公死扶助料、特別扶助料の遺族加算を普通扶助料の寡婦加算と同額にする。二つに、特例扶助料の最低保障額を公務扶助料の最低保障額の八割にする。三つに、傷病者遺族特別年金の遺族加算を普通扶助料の寡婦加算と同額にする。四つに、普通扶助料の最低保障額を傷病者遺族特別年金の年額と同額にする。
 これらは本年十月一日の施行日以降五年以内に段階的に実施されるというものですが、これをもって受給者から是正要望が強く寄せられてきた懸案事項をすべて解決することができたと言えるんでしょうか。恩給制度は再三の改正を積み重ねてまいりましたが、これが最後の是正ということで理解していいのか、この点について御説明いただきたいと思います。
#17
○政府参考人(戸谷好秀君) 公務関係扶助料の遺族加算を普通扶助料の寡婦加算と同額にする等の、今先生がおっしゃいました幾つかの制度改善要望につきましては、受給者から寄せられた要望を踏まえ、これまで、逐次でございますが、可能な改善を図ってきたところでございます。
 ただ、近年は厳しい財政事情ということで、なかなか個別的な制度改善というところまで着手するには至らなかったという状況がございます。ただ、この間に受給者の平均年齢、全体で平均八十四・九歳、公務扶助料八十八・三歳と、こういう高い数字になっております。
 私どもとして、受給者から、残された懸案事項である不均衡是正の問題について早急に解決してほしいと切実な要望をいただいてきたところでございます。そのような要望も踏まえて今回の措置を講ずるということをいたしたものでございます。
 今回の改正による不均衡是正ということでございますが、これらのいろいろいただいております懸案事項を解決することをねらいとするということでございます。受給者の要望を受けて、我々としてはできる限り盛り込ませていただいたというふうに考えております。そういう意味で、今回の措置が最終的と言えるのではないかというふうに考えております。
#18
○伊藤基隆君 次に、恩給年額の改定方式の見直しを行って、従来の毎年度公務員給与、物価等を総合勘案して検討する総合勘案方式から、公的年金の引上げ率により自動的な改定を行う方式へ変更することが今回の改正の二つ目の柱となっております。
 今回、改定方式を変更する理由をお聞かせいただきたいと思います。
 私は、今回の改正案の二つの柱、すなわち不均衡是正と年金スライドという課題はもっと早くやるべきであったと思っております。今までどうして実現できなかったのか、大いに疑問を持つところですが、この間の事情についての説明をお願いいたします。
#19
○政府参考人(戸谷好秀君) まず、私の方から事務的な経緯等について申し上げます。
 恩給でございます。御案内のとおり、従来、毎年度、翌年度の年額水準について検討し、あわせて、受給者からのいろいろな個別的な制度改善要望も併せて逐次改善を図って措置をする、法改正をしていただくという形でまいりました。
 近年でございます。御案内のとおり、社会経済情勢、財政事情、大変厳しいという中で、個別的な制度改善には至らなかったわけでございますが、年額水準の据置きを確保することには私どもとして全力を傾けて、いろいろ法律も出させていただいたところでございます。
 ただ、この間に受給者の方々、先ほど申し上げましたように、平均年齢八十四・九歳、著しく高齢化ということが進展いたしまして、私どもとして、残された不均衡是正の問題を早急に解決してほしいと、こういう強い要望が寄せられております。また、この受給者の方々、ある意味、毎年、翌年度の年額水準をめぐりましていろんな形で私どものところにもおいでになる、あるいはいろんな方面に改善を働き掛けるというようなこともあったわけですが、相当にそういうものも負担になってきているというような声も伺っております。
 こうした受給者の高齢化の状況、あるいはその切実な要望というのを踏まえまして、不均衡の是正とともに、自動的な年額水準の改定を行うスライド方式に転換した上で、これを法律上にも明記していただくということにいたしまして、今後、受給者の方々に御心配をお掛けしない安定的な制度としたいということで今回の御提案をしているところでございます。
 もっと早くというお話でございました。私どもとしては、もうそれは謙虚に受け止めさせていただく以外ないわけでございますが、これまでの経緯を踏まえた措置ということにつきましては御理解をいただきたいというふうに考えております。
#20
○国務大臣(菅義偉君) 受給者の立場に立って考えるならば、やはり早期に実現をするべきであった、このことは、私、委員の御指摘のとおりであるというふうに考えています。
 しかし、今局長から事実関係についてお話をさせていただきました。大変厳しい財政状況、あるいは公務員給与や物価の水準が下落する状況の中で、この恩給の年額水準を確保する、このことについて私ども精一杯だったということも是非御理解をいただきたいというふうに思います。
 今後、そうした御指摘を真摯に受け止めながら、私ども対応させていただきたいと思います。
#21
○伊藤基隆君 今回の改正案の内容から少し離れまして、恩給制度を振り返りながら、残りの質問時間で少し議論を進めたいと思います。
 今日から振り返ると、私は、現在の恩給制度に問題点がなかったわけではないと感じております。恩給制度の制定は、次のような経過であったと思います。一九四六年にGHQの指令で旧軍人軍属の恩給が廃止されます。しかし、戦没者の遺族にとっては国からの補償が断ち切られた生活は困窮を極めたため、早期の解決が深刻な国民的課題となって、サンフランシスコ平和条約締結による独立回復とともに、一九五三年に恩給制度が復活しました。この際、戦前の軍人恩給をベースとしたところに問題点が含まれたのではないかと考えられます。
 問題点の一つを指摘すると、恩給の受給額が軍隊の階級による格差を持ち込んだまま今日を迎えたことです。最新の旧軍人の仮定俸給年額は兵から大将までの十四階級別で、年額は兵と大将で五・七倍、兵と大尉で二・三倍となっています。戦死や負傷ならもちろん、長期間にわたる兵役あるいは激戦地を転戦して九死に一生を得たといった個々の事情を加算額で調整することは十分に理解できるところです。しかし、六十年以上前に除隊した軍隊の階級によって、恩給の年額や本人が亡くなった後に遺族が受給する扶助料の額に大きな格差があることを合理的に説明することは難しいのではないかと思います。
 文官の恩給や公務員の年金受給額が最終給与額を反映することについては、その時代で制度全体を受け止めてきた社会的な合意があったと思います。これと比較して、多くの人が徴兵制の下で強制的に動員されただけに、階級が金額に反映する戦前の軍人恩給の仕組みと今日の国民の意識との間には違和感が生じるのではないでしょうか。時間を経て社会が大きく変化した今日、恩給の在り方がこれでよかったと言えるのか、一つの問題として指摘せざるを得ないと思います。この点について、所管大臣の感想をお聞かせください。
#22
○国務大臣(菅義偉君) 委員も御承知のとおり、恩給は制度の沿革上、公務員の退職又は公務による死亡当時の俸給を基礎として算定をしてきたところであります。旧軍人の場合も基本的にはこの考え方に立っており、従来から、退職時の階級ごとに設けられた俸給額を基礎として年額を算定をしてきたところであります。
 しかしながら、大幅な格差というのは必ずしも望ましくないという観点から、これまでも年額改定において、階級ごとに設けられた俸給額表を上に薄く下に厚くする、いわゆる上薄下厚によって改善をしてきたところであります。
 また、最低保障制度の導入及びその保障額の改善の措置を通じ、階級ごとの俸給額表の格差より実際に支給される恩給の差は更に縮小されてきているというふうに思っております。例えば、戦没者の遺族で比較をしますと、中将だった者の遺族を対象とする扶助料と兵であった者の遺族を対象とする扶助料というのは、昭和二十八年の軍人恩給復活当時の四・九倍から現在は二・七倍まで縮小いたしているところであります。
 御指摘のように、退職時等の階級差とそれにふさわしい俸給額によって恩給額に差が生じない方がよいとの考え方もあろうかと思いますけれども、今申し上げましたように、恩給制度の沿革やこれまでの格差の縮小の経緯等を考慮しますと、可能な限りの是正というのは行われてきたのではないかなというふうに考えているところであります。
#23
○伊藤基隆君 私は、その可能な限りの是正を行ってきた経過については評価するところであります。
 ただ、基本的な問題として、階級がそのまま持ち込まれてきたということを考えますと、よく血税という言葉は重い税とか重要な税とかいう意味で使われますが、血税とは徴兵制度のことであります。血をもって国家に奉仕する、血税であります。強制的に、それも必ずしも平等でない選択によって戦地に送られていったと。ごく短期間は恩給が付かないということもありますが、短期であっても戦場は即、死と直面するところでありますから、その点についての考慮というものは非常に重要であろうかというふうに思っております。
 私は、質問をまとめるに当たって、国際関係、安全保障や防衛問題を問われたときは、戦争の最大の犠牲者は子供たちだということを言ってまいりました。これは私自身の体験に裏打ちされた政治家としての信念であります。戦後、日本人は戦争に対する痛烈な悔恨と反省の上に、国民の幸福を求めて全国民の努力の結果として今日の政治、経済、社会をつくり上げてまいりました。
 幸いに、日本の子供たちが戦争の犠牲者となることなくこの六十三年間を過ごすことができました。当面の差し迫った緊張を感じないでいられることを含めて、近代以降ではこれだけの長期間、戦争と無縁でいられることは世界史的にもむしろまれな例となるのかもしれません。この時代を担ってきた人間として誇りに思えることです。それだけに、この恩給法の審議を通じて、戦争の後始末は最後までやり遂げなくてはならないという思いを強くしております。
 このことを申し上げて、私の質問を終わります。
#24
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
 戦前の恩給制度がGHQの命令で廃止され、占領政策終了後に軍人恩給が復活しましたが、この下で今日まで支払われた恩給総額は四十七兆円、単純に積み上げた額で四十七兆円という報告が今ありました。第二次大戦、太平洋戦争で、東京など各都市の大空襲、原爆、満蒙開拓団、残留孤児、従軍看護婦、従軍慰安婦等、幾多の犠牲者を出しましたけれども、こちらの方はほとんど国家補償はされていません。
 この理由として政府は、戦争被害は国民ひとしく受容すべき損害であるというふうに言って戦後補償を拒んでまいりましたが、戦争犠牲者として、なぜ軍人恩給と同じような考えがこれらの戦争犠牲者に、被害者に対しても取れなかったのか、その点について、大臣、見解を伺います。
#25
○国務大臣(菅義偉君) さきの大戦においては、すべての国民が、程度の差はあれ、私は、何らかの戦争の犠牲を被って、一般市民の中にも筆舌に尽くし難い労苦を体験された方が多数あるということを私自身も承知をいたしております。政府としては可能な限りの措置を講じてきたところでありますけれども、戦争損害という事柄の性格上、対応にはおのずから限界があるものと考えております。
 一方、国の命令で軍務に服し、尊い命をささげ、あるいは生命の危険を冒して国のために尽くした者に対して、国として誠意を持って処遇するということは一定の理由があるものと考えており、国としての対応の面で違いが出るのはある意味ではやむを得ないものではないかなというふうに思っております。
 また、御指摘の一般戦災者の問題も含めて、いわゆる戦後処理の問題につきましては、もはやこれ以上国において措置をするものはないという方針によって対処してきたものと承知をいたしております。
 いずれにしろ、今日の我が国の平和と繁栄がさきの大戦における多くの犠牲と御労苦の上に築かれたものであることを私どもは忘れずに、国会の運営、また次の世代にしっかりと引き継いでいく必要があるというふうに考えております。
#26
○吉川春子君 満蒙開拓団、終戦とともに見捨てられた人々、そしてまた従軍看護婦、いろいろ考えますと、今の大臣の答弁では納得できません。
 シベリア抑留の問題について伺います。いわゆるシベリア抑留基金は廃止されたけれども、問題は解決しておりません。軍人恩給の職業軍人等の手厚い処遇の一方で、抑留者、恩給欠格者等は余りにも粗末に扱われているのではないか、全抑協の皆さんは新たな立法を求めて運動を展開されています。
 そこで、まず厚労省に伺いますけれども、シベリア抑留者の中には民間人が含まれています。それは何人ですか。それから、シベリア抑留者総数と、その中で軍人軍属は何人か、明らかにしていただきたいと思います。
#27
○政府参考人(荒井和夫君) 御質問にお答え申し上げます。
 厚生労働省においては、旧ソ連地域に抑留された方々は五十六万一千人というふうに推計しております。そのうち、軍人軍属とそれから一般邦人の内訳については、申し訳ございませんが、確たる数字は把握してございません。
 ただ、旧ソ連地域それからモンゴルから引き揚げてきた方に関しましては、その引揚げ手続の中で、その数を累計してその結果として出てきた記録がございます。それによりますと、その引揚げの手続の中では軍人軍属が四十五万三千八百人、それから一般邦人の方が一万九千二百人という記録が残ってございます。
#28
○吉川春子君 外務省に伺います。
 いわゆるシベリア抑留者の中で、軍人軍属に該当する人は捕虜としての待遇を受けますか。
#29
○政府参考人(本田悦朗君) 当時の国際法上、敵の権力下に入った軍人軍属は一般に捕虜として扱われ、捕虜としての待遇を受け得るものでございます。ポツダム宣言受諾後に旧ソ連邦の権力下に入った我が国軍人軍属も、捕虜としての正当な人道上の待遇を受ける権利を旧ソ連邦の権力下にある間有していたというふうに考えられます。
#30
○吉川春子君 ジュネーブ条約はまだ発効していなかったけれども、我が国はもちろん締結もしていないけれども、国際慣習法上捕虜として扱われるという答弁だったと思いますけれども、それに伴いまして、そのどこまでが国際慣習法として認められていたのかという点を伺いたいと思うんですけれども。
 今、人道的な扱いを受けるという答弁はありましたが、ジュネーブ条約等にも書かれているその俸給を支払う権利、これは慣習法として成立していたんでしょうか。
#31
○政府参考人(本田悦朗君) 当時、我が国とソ連邦の両国が当事国でございました関連の条約といたしまして、一九〇七年のハーグ陸戦法規及びその附属を成す陸戦規則がございます。
 この陸戦法規には、全交戦国が条約の締結国である場合にのみ適用される旨の条項、第二条でございますけれども、存在するため、当時、陸戦法規自体が両国間に適用されていたとは厳密に言い難いものとなっております。しかしながら、陸戦規則のうち、特に捕虜の取扱いにつきまして規定した第二章にあるような内容自体については、当時各国が、委員御指摘のとおり、慣習国際法として遵守すべきものととらえて実施していたとの慣行があったであろうというふうに考えております。
 この陸戦規則第二章には、捕虜が国家のために行う労務に対しまして支払をなすべき、あるいは捕虜となった将校が俸給を受けるべきとの内容が含まれておりますが、お尋ねのような詳細な内容について、当時、国際法規としては確立していなかったと考えております。
#32
○吉川春子君 重ねて伺いますけれども、そうすると、労働賃金を払わなくてはならない、この問題については国際慣習法として成立していたと考えてもいいと言えますか。
#33
○政府参考人(本田悦朗君) 陸戦規則第二章には、労働賃金補償に関する規定は含まれておりません。ただ、国際慣習法として、労働賃金を支払う権利というものは慣習法として存在したものと考えられます。
#34
○吉川春子君 私のコメント抜きに、時間の関係で次々伺いますけれども、捕虜と認定されると、国際法上、軍人軍属について、この間の日本政府の対応から見ても、強制労働の対価についてそうすると国が補償すべきではないのかと、今の答弁を前提に考えますとね、そういう結果になるのではないんですか。
#35
○政府参考人(本田悦朗君) 日ソ共同宣言第六項におきまして、戦争の結果として生じたすべての請求権を相互に放棄する旨規定をしております。シベリア抑留に係る請求権の問題も、日ソ、日ロ間において既に解決済みであるというふうに考えております。
#36
○吉川春子君 いや、ソ連の問題はちょっと今日聞く時間的余裕がないんですけれども、日本政府として、当時、国際慣習法上それが認められるとすれば、政府として理論的にはその補償を行う義務が生ずるのではないかと、その点はいかがでしょうか。
#37
○政府参考人(本田悦朗君) 戦争が終了したにもかかわらず多くの方がシベリアに強制抑留されまして、酷寒の地において過酷な強制労働に従事させられたことは誠に同情すべきものであるというふうに考えております。
 御指摘の賃金等の支払あるいは未払の問題につきましては、抑留者の属する国、すなわち我が国でありますけれども、いわゆるシベリア抑留者に対して労働賃金等の支払を行う法的義務を負うことはないというふうに考えております。
 また、先ほど申し上げました日ソ共同宣言第六項による請求権の放棄につきまして、国に法的な補償の責任はないというのが従来からの政府の見解でございます。なお、平成九年の最高裁判決も同様の見解を示しているところでございます。
#38
○吉川春子君 その答弁には納得できませんが、総務大臣、最後にお伺いしたいんです。
 大臣は御両親が満鉄からの引揚者であると御苦労話を当委員会でもされた記憶があるんですけれども、そしてそのシベリア抑留者の筆舌に尽くし難い御苦労に心を痛めるとさきの国会でも言われたと思います。
 他方、戦後処理懇談会の報告が、この問題については国において措置すべきものではないとしているにもかかわらず、衷心から慰藉の念を示してきたと昨年のシベリア基金廃止法審議の中で答弁しておりますけれども、国は九一年のゴルバチョフ来日までは犠牲者の数さえつかんでおらず、また、敗戦後に関東軍総司令部がソ連に対して、全満の傷病者、居留民、軍人の措置についてソ連軍の経営に協力せしめ、お願いしたいとするワシレフスキー元帥の報告なども国としては情報をつかんでおられません、裁判では証拠として出されたわけですけれども。
 私は、大臣、こういう非常に過酷な中でシベリア抑留あるいはモンゴルで御苦労をされた方々に対して、やっぱり非常に、国としては補償をしていない、賃金の支払もしていないというこの現状、被害者の方々、いわゆるシベリア抑留の方々は納得されていないわけです。ソ連の捕虜と認定された人についてロシア政府に責任を求める根拠があるのかどうか、そしてやっぱり国としてはこの問題についてきちっと誠意を持って国家補償していかなきゃならないと思うんですけれども、その点について大臣の答弁を伺いたいと思います。
#39
○国務大臣(菅義偉君) 今のことに直接お答えすることは、私にとって所管外になることでありますので、この点については控えさせていただきたいというふうに思います。
 ただ、私が、今委員から私の当委員会の答弁を引用していただきましたけれども、思いというのはそういう思いであります。
#40
○吉川春子君 終わります。
#41
○又市征治君 社民党の又市です。
 今回の恩給法改正は、受給者の主な団体が合意されているということでございますので、私どもも基本的に賛成をしたいと思います。
 ただ、この改定方式を国民年金制度に準じてマクロスライド方式に変えるということですけれども、我が党はそもそも一昨年の年金のマクロスライド方式なるものへの転換には反対をいたしました。それは、マクロ経済への準拠という言葉の下に人工的に作り出す数式になってしまって、政府による恣意的な数値操作を可能にするものだという考え方からであります。例えば、出生率が予想より下がれば年金の賦課を値上げして給付は下げなきゃならぬ、こんなことになりますし、そういう意味では当時、百年安心プランと言われた改正がありましたけれども、しかしこれはもう崩れたということは今やもう明らかでありまして、そういう意味で政府は今の制度のままなら大幅な再改定を余儀なくされているんだろうと思うんですね。
 この点は留保しつつ、幾つか質問をしておきたいと、こう思うんです。
 改定のたびに申し上げていることですが、恩給を考えるとき、文官と比べて軍人の階級ほど上下の差が冷酷なものはないということでありまして、職業軍人は戦争準備、すなわち軍備拡張とともにとんとん拍子で階級を駆け上がり、一兵卒とは比べ物にならない高給と、被服であるとか食料の配分から行軍や作業の労苦あるいは戦場での居場所に至るまで特別待遇を受けておるということはもう明らかなわけでありますが、その分だけ兵卒は前線での戦死だけではなく病死や負傷、そして日本軍に顕著な飢え死にの度合いも高級将校よりもはるかに高い、こういう実態がありました。こうした処遇の差は、戦場や内務班における兵士の生活を描いた体験記や小説などで赤裸々に多く出されているわけですが、厚生労働省、この点について幾らか御説明を、御紹介をいただきたいと思います。
#42
○政府参考人(荒井和夫君) 戦時中の兵士の生活実態についての御紹介をという御質問でございますが、私ども厚生労働省においては、引揚げ援護、それから戦傷病者、戦没者遺族等に対する援護、旧軍人軍属の復員業務など、戦後に関係した、戦後の問題について所掌してございます。そういう意味で、戦時中の兵士の生活実態について私どもは、どういう状況であったかということを、そういう意味では十分に担当としてそういう問題についての取扱いをしていなかったことを御理解いただければ非常に有り難いと思います。
#43
○又市征治君 大体そういう、戦後のことをやっておるのでありまして戦前のことは知りませんみたいなそんな格好で、よくだけど援護事業ができますね。少なくとも、やっぱり今のことをやるためにも過去のことをしっかり知ってなきゃいかぬのじゃないですか。(発言する者あり)それはそのとおりだと、与党からもそういう話出ている。
 やっぱり本当にあのひどい実態というのは、まあここでそんなことをやってたらあっという間に時間なくなりますから言いませんが、やっぱり私はそういうところの厚生労働省の姿勢が問題だというふうに思うんですよ、その他の問題を扱う場合でも。その原因、その実態というものをやっぱり把握をして、今現在の対処をどうするのかということが常に大事だということを率直に申し上げておきたいと思う。
 いずれにしても、恩給は一般には勤続年数と最後の給与額などによるということが普通なんだろうと思うんですけれども、軍人の場合、私はもう本当は大幅な修正が必要なんだろうと思うんですね。現役のときの階級はもう明らかな身分差別でありまして、軍隊ほどこの差別がはっきりしているところはないわけですけれども、命の価値すら階級に比例をしている、こういう状況ですね。しかも、高級将校たちは自ら進んで戦争を指導し、たくさんの兵士を死に至らしめた責任があるわけです。それに対して、赤紙一枚で召集をされて使い捨てにされた一兵卒は完全な犠牲者だと、こう言わなきゃならぬと思うんです。
 勤続年数も、そういう意味では戦死や傷病による退役によって当然これは短いということに相なります。その差はどのぐらいあるか。大将、中将といった階級の人はもう亡くなってしまったわけでありまして、前々回は最高位が少将だったわけで、兵士との差は五・九倍だと、年金の差はね、こういうことでした。昨年の改定のときは、その少将も亡くなって、最高位である大佐と最下位の短期の兵士を比べて四・八倍も差があったという答弁だったわけですが、この点については現在はどういう格好になっていますか。
#44
○政府参考人(戸谷好秀君) そんなに数字が一年で変わるわけではございません。
 普通恩給の年額計算の基礎となる兵と大佐との仮定俸給年額の差ということでございます。終戦時の年額で、この仮定俸給年額では十・二倍の開きが、現在三・八倍に縮小しております。また、この方々の普通恩給の平均年額でございますが、昭和三十四年には十一・三倍という開きがございましたが、平成六年に五・一倍、現在は先生おっしゃいました四・八倍ということでございます。四・八倍の差が生じる背景として、これは普通恩給でございますので、勤務年数の平均が大佐の場合、兵の四・四倍というふうな数が出てくるということも挙げられるかと思います。
 さらに、戦没者の遺族という形で比較をさせていただきますと、中将であった者の遺族を対象とする公務扶助料と兵であった者の遺族を対象とする公務扶助料でございます。昭和二十八年の軍人恩給復活当時約四・九倍ございましたが、これは現在約二・七倍という形になっております。
 もう一つ、最低保障という形の方で恩給は措置しております。普通恩給の最低保障の適用率が約八割、普通扶助料の最低保障適用率は約九五%という状況になっております。
#45
○又市征治君 本当は、平和憲法になった下での恩給制度というのは、むしろそうした旧憲法下につくられた階級によるこうした差別というものを是正するように、生活保障型のフラットな体系でつくられるべきだったということを私たちはずっと主張をしてきました。
 政府はよく、戦争の損害は国民が平等に受けるべきだと、こう言うわけですが、恩給は全くそうじゃない、全く逆なんですね。依然として、さっきおっしゃったように、ひどいときは十・二倍、こんなえらい格差があった。それも、先ほど少し申し上げたような本当に、むしろ犠牲者、一般の犠牲者の方が逆に期間が短い、そして戦死する率が高い、こういう人々が大変な格差、差別を受けてきた、こういう状況だったわけですね。そういう点からいって、本当にこの点はむしろ悔やまれる問題というふうに私はとらえるべきじゃないか、こんなふうに思うわけです。
 そこで、次に、大臣にお伺いをいたしますが、さらに、この戦争で犠牲になったのは恩給を受けている軍人だけではないわけでありますね。大臣もそういう御経験だということでございますが、一般国民、植民地だった朝鮮などの人々など、多数の人々が犠牲になったわけです。これは私事ですが、私の父も実は軍用トラックにひかれて障害者になりましたが、もちろんこれは軍人恩給どころの騒ぎじゃないわけでありまして、補償も何もない、こういう状況で、そのショックで私はこの世の中に誕生したわけでありますけれども。そのために、父親が軍用トラックにはねられる前の生活とその後の生活というのはもう一変、大変な事態の中で私も大変貧乏な生活を余儀なくされてまいったわけですけれども。
 それはともかくとして、そういう人がたくさんいる。私は、その中で最も無防備だったのが中国残留孤児ではないのかというふうに思います。中国残留孤児については、昨年十二月に神戸地裁で画期的な判決がありました。国が北朝鮮拉致被害者並みに補償せよ、こういう中身でありました。他方、今年の三月、徳島での徳島地裁の判決は国の責任を軽く見た内容になっているわけですが、その徳島判決でさえも、政府が孤児を生み出す原因に関与しており、自立した生活を送ることができるよう、できる限り配慮すべき政治的責務を負っている、こういうふうに認めています。
 要するに、今、残留孤児の方々がお帰りになった、なったけれども、年齢は高い、言葉の習熟もできない、仕事にまともに就けない、だから生活保護だ。その生活保護を受けているのも、何のことはない、中国の養父母の見舞いに行ったら生活保護を打ち切られる。この問題について私、前に、あれは決算委員会だったと思いますが、尾辻さんとやって、尾辻さんの方は運用改善ということでこれは改善をされましたけれども、しかし依然としてこの実態というのは、本当に日本に帰ってきてよかったのかどうか、自分のやっぱり祖国だから帰りたい、帰ってきたけれども、この日本の政府のとっている措置は何だと、こう言って、たくさんの人が裁判に訴えているわけですね。
 そこで、残留孤児は乳幼児でしたから恩給も何ももちろんあるわけじゃありませんし、しかし軍人と同じく戦争政策、植民地政策の結果として外地で育たれたわけでありますが、ところが、保護されるはずの日本軍からも土壇場で置き去りにされた。幼いときから、日本政府の保護もなく、引揚げ軍人よりも二十年も四十年も長い間苦しんでみえた。帰国後も、今申し上げたように、年金の復元についても、これ三分の一ですか、本当にひどい話ですね。そういう状況になっている。
 日本政府もそろそろ戦争に対する個人補償の原則を取り入れて、残留孤児を国家補償の対象にすべきではないか、私はそんなことを思います。とりわけ、いろんな、さっき出しましたけれども、拉致された方々は当然大変な苦痛を味わっておられた、この人々や、あれはたしか十七万円ぐらいだったと思いますが、五年間にわたってずっと支給される、こうなっている。しかし、この残留孤児の方々は、十七万ぐらい、帰ってきたときに一回きりで終わり、こういう格好になっているわけですね。こういうやっぱり扱いがおかしい。さっきから申し上げているこの軍人恩給の場合であっても、その軍人の中が本当に格差が大きい、こういう問題などあります。
 本当にもう少し、そういう意味ではここらは省庁横断的にもうしっかり考えるべきではないかと、こんなふうに思うんですね。ずっと私はそのことを言い続けてまいりました。残留孤児にとって戦後は終わっていない。政府は、安倍さんは戦後レジームからの脱却と、こう言うわけですが、その前に、平和憲法にのっとって最低限の私は戦後処理をしなけりゃ、片一方で戦後レジームからの脱却といっても成り立たぬのではないのか、こう思うんです。
 そこで、これは責めているという意味じゃなくて、大臣に、総務省の所管外とは言わないで、政治家としてこうした今の状況について、今申し上げたような拉致の、あの中国残留孤児の皆さんの問題などを含めて本当にこのままでいいというふうにお思いなのかどうか、やはりここらのところは改善をする余地がたくさんあるんではないかと。本当に政治家として私は生の声をお聞かせをいただきたい、このことを御質問をいたします。
#46
○国務大臣(菅義偉君) 私、前にも申し上げたかもしれませんが、私の親父は満州鉄道に勤めていまして、姉二人、実は満州で生まれています。そして、引き揚げてきました。小さいころから引揚げ当時のいろんな話を聞かされました。
 そこで、この残留孤児の問題でありますけれども、私にとっては人ごとではないような感じを実はしております。特に、当時日本人というのは優秀だということで、日本人の子供を是非欲しいと、うちの姉もずっと付きまとわれていたというんですね、中国の方に。もしかしてそうなったんではないかと、そういうことも実は家族でも話しました。そうした人たちが、やはり日本に帰ってきて安心をして安定的な生活をできないというのは、やっぱりここはおかしいというふうに私自身も考えています。
 ただ、処遇については私の所管外でありますけれども、私の基本的な考え方は御理解いただけたものと思います。
#47
○又市征治君 終わります。
#48
○長谷川憲正君 国民新党の長谷川憲正でございます。
 ただいま議題になっております恩給法の改正案には私どもも賛成でございます。
 その上で、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。先ほど来お話に出ておりますように、恩給の本質というのは国家補償だと。お国のために命をささげ、あるいは多大の労苦をなさった皆さんに対しての国が補償をするということが本質だということでございますので、仕組みをしっかりつくるということももちろん大事でございますけれども、同時に、受給者の皆さんが確実に年金をお受け取りになるということも大事なわけでございます。そういう意味で、この受給者の皆様が年金を受け取られるという局面に絞って、ひとつ御質問をさせていただきたいと思います。
 恩給を受け取る窓口というのはどういうふうに決まっているでしょうか。
#49
○政府参考人(戸谷好秀君) 現在、恩給の支払でございます、恩給法に第八十二条ノ三という規定がございまして、「国庫ノ支弁ニ係ル恩給ノ支払ニ関スル事務ハ日本郵政公社ニ於テ取扱フモノトス」とされております。この規定に基づきまして、日本郵政公社、郵便局を窓口として支払を実施しているところでございます。
#50
○長谷川憲正君 今御説明をいただきましたように、恩給法では郵便局を恩給の受取場所ということで指定をしてきたわけであります。これは、もう全国各地にたくさんの受給者が従来からおられたわけでありますから、なるべく近くで便利に受け取っていただくという趣旨でこうなったんだろうというふうに思いますが。
 十月一日から民営化ということになるわけでございます。それで、この郵政民営化に伴います関係法律の整備ということで、私の承知しているところでは、恩給法の今読み上げていただきました八十二条ノ三、郵政公社において取り扱うものとするという条文は削除をされたというふうに認識をしております。それでよろしいのかどうか。そして、その場合、今後、十月以降の受取窓口というのはどういうふうにするつもりでおられるのか、御説明をいただきたいと思います。
#51
○政府参考人(戸谷好秀君) 先生お話しのとおり、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律によりまして、恩給法第八十二条ノ三は削除ということになります。したがいまして、郵政民営化後ということになりますと、他の国庫金と同様に、郵便局のみならず民間金融機関も窓口として支払を実施するという形になろうかと思っております。
#52
○長谷川憲正君 具体的な作業はどんな具合に進んでいるんですか。
#53
○政府参考人(戸谷好秀君) 現在、郵便局あるいは新たにそういうものを、民間金融機関について受取を希望される方というようなものが十月以降出てまいるというようなことも想定して、今準備の作業は一生懸命やっておるところでございます。
#54
○長谷川憲正君 窓口が増えることは結構なことだと思うんですよね、より一層便利になるということでございますから。
 しかしながら、現実に金融機関の窓口の置かれている状況というものを見ますと、過疎地にはなかなか従来からの民間の金融機関の窓口というのはそうはないわけでございますから、今後とも圧倒的に郵便局の窓口というものが役割を果たすことになるだろうというふうに思うわけでございます。
 そういうふうに考えたときに心配なのは、現在の郵政公社が、過疎地を中心にして郵便局のお金の出し入れをしますATMと言われている機械をどんどんと撤去を進めているというようなこと、あるいはかなりの数の簡易郵便局が閉鎖状態になっているということなわけです。
 今日は公社をお呼びしておりません。時間が限られているということと、年度末でございますので公社の幹部を呼びますと業務妨害になるだろうということもありまして、今日はお呼びをしていないわけでございますけれども。
 私はもうこの点大変に心配をしておりまして、私が公社の方からいただいた資料に基づいて勝手に数字だけ御説明をいたしますと、過去二年間、平成十七年、十八年では郵便局のATM、主として郵便局の外に置いてある、役場だとか学校だとか病院だとか、人の集まりやすいようなところに置いてありましたATMが二年間で七百二十八か所撤去と。これは現実にはまだ進行中のものもございますけれども、計画によりますと七百二十八か所撤去ということになっておりますし、簡易局では、この二月時点で一時閉鎖になっている簡易局が全国で三百二十三局あるというデータをちょうだいをしております。
 両方を足しますと千か所を上回る数字になっておりまして、これは恩給を受け取られる方々、大変高齢化しているわけでもございますし、住んでいらっしゃるところはどちらかというと全国の過疎地にも依然としておられる。都市部に移転をするというのはなかなか難しいという状況にある方が多いと思うわけです。そうしますと、非常に恩給の受取自身が不便になるんじゃないかというふうに私思っているわけです。
 そこで、郵政民営化のときの議論を思い起こしてみますと、郵便局がもっと便利になると、郵便局はなくさないということを政府も、また時の総理大臣御自身もお約束になったわけでございますし、サービス水準も下げないということも繰り返し答弁の中で述べられたわけでございます。しかし、それが現実に守られていない。千か所も恩給の受け取る場所が減っていると、こういう状況はやっぱり放置しておくわけにいかないと思うんですね。このままほっておきますと、十月以降はもっともっと私は不便な状態が起きるんじゃないかというふうに思っておりまして、これは監督官庁であります総務大臣として是非関心を持っていただいて、こういうことが進まないように私は御指導をお願いを申し上げたいというふうに思うわけであります。
 そういう意味で、ちょっとこれはまだ私の思い付きなんですけれども、例えば、現在でも郵便局には電信為替という制度がございまして、自宅にいても、為替で送っていただいたものを現金で自宅で受け取るというようなことが可能になる仕組みもあるわけでございまして、現金書留という制度も日本にはありますけれども、何か実際に、高齢になられてなかなか外に出にくい受給者の皆さんにも確実に恩給を受け取っていただくための工夫というようなものがあっていいのじゃないかというようなことを思うわけでございますが。
 郵政公社に対するサービスを低下しないということについての御指導とともに、大臣の御所見を承りたいと思います。
#55
○国務大臣(菅義偉君) 郵政民営化に対しての国会の様々な議論の中で、そうしたことが附帯決議なりあるいは意見あるいは大臣答弁などで行われてきているということは私も承知いたしておりまして、そのことをしっかり担保して民営化を進めるのが私の役割だというふうに思っております。
 例えば、恩給を支給をしている郵便局では、高齢だとかあるいは病弱のために郵便局に出向いて恩給を受け取ることができない方については、支払期ごとに自宅まで実は届けるサービスを今行っているところであります。こうしたことも含めて、私はしっかりと対応できるように、私自身も十分考えて対応していきたいというふうに思います。
#56
○長谷川憲正君 是非、大臣の格別の御指導をお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
 私は、特に、今御説明しましたATMの撤去、それから簡易郵便局の一時閉鎖、このうちの簡易郵便局の問題、大変心配をしております。と申しますのは、十月一日から郵便貯金事業が一般の銀行になるということになっておりますものですから、郵便局の中の作業もいわゆる金融庁のマニュアルに従った、一般の金融機関と同じようなチェックをすることになっているわけです。
 ところが、チェックそのものは大きな銀行で多数の人間がいることを前提にしてつくられておるものですから、現実の状況を見ますと、郵便局のように一人とか二人とかいうような少人数の者しかいないようなところでは、とてもではありませんけれども同じような作業をすることができないということで、例えば特定郵便局では、職員をいつまでも残して作業をさせるわけにいきませんので、局長自らが夜の八時になっても九時になってもまだ作業をしていると、土曜も日曜も出勤をしてチェックをしているというようなことがたくさん見られておりまして、これは私、自分自身でチェックをしておりませんので、うわさ話ですから本当かどうか確認ができていないんですけれども、特定局長の心筋梗塞が非常に増えているというような話も聞いておりますし、ましてや、この簡易郵便局につきましてはこれ民間の受託者でございますので、ここが一般の銀行と同じような手続なんかできるわけがないわけでございまして、この今三百二十三局も一時的に閉鎖になっているというんですが、これはやる人がもうやめたということで、後やる人がいない、それを一時閉鎖と言っているだけのことでございまして、無理を強いたら必ず私はもっともっとこの簡易郵便局の受託者の数が減ってしまうんでないかと、近くにあった簡易郵便局が利用できないようなことになるのではないかということを心配をしているわけでございまして、この点につきましても、是非大臣の厳しい監督をお願いを申し上げたいし、また事態を改善するための工夫もお願い申し上げたいと思う次第でございます。
 この点につきましては御要望だけ申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
#57
○委員長(山内俊夫君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 恩給法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#58
○委員長(山内俊夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#59
○委員長(山内俊夫君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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