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2007/04/16 第166回国会 参議院 参議院会議録情報 第166回国会 本会議 第17号
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2007/04/16 第166回国会 参議院

参議院会議録情報 第166回国会 本会議 第17号

#1
第166回国会 本会議 第17号
平成十九年四月十六日(月曜日)
   午前十一時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十七号
    ─────────────
  平成十九年四月十六日
   午前十一時 本会議
    ─────────────
 第一 日本国憲法の改正手続に関する法律案(
  趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
 日程第一 日本国憲法の改正手続に関する法律案(趣旨説明)
 本案について発議者の趣旨説明を求めます。衆議院議員保岡興治君。
   〔衆議院議員保岡興治君登壇、拍手〕
#4
○衆議院議員(保岡興治君) 日本国憲法の改正手続に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 日本国憲法は、その第九十六条において改正のための手続を定めているにもかかわらず、そのための具体的な国民投票法制につきましては、日本国憲法が施行されてから六十年近くを経過しようとしている今日に至るまで、整備されてまいりませんでした。このような基本的な憲法附属法の整備は、国権の最高機関、国の唯一の立法機関としての国民の負託を受けている私ども国会議員の基本的な責務であります。憲法改正国民投票法制の整備は、憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を整備することであり、憲法改正に対する国民の主権を回復し、憲法それ自体が基本的理念とする国民主権を確立することにほかならないのであります。
 本法律案は、平成十二年一月に衆議院に設置された憲法調査会における日本国憲法に関する広範かつ総合的な調査、そして、一昨年九月に衆議院に設置された日本国憲法に関する調査特別委員会における論議の成果を法律案として取りまとめ、昨年五月二十六日に提出し、その後の法案審査を踏まえ、これをより良いものにするために去る三月二十七日に修正案を提出し、更に審査を行った後、今月十二日に特別委員会において修正議決すべきものとされ、翌十三日の衆議院本会議において委員長報告のとおり修正議決されたものでございます。
 以下、本法律案の要点を申し上げます。
 第一は、国民投票の対象であります。本法律案は、あくまでも日本国憲法第九十六条の実施法であり、憲法改正の国民投票のみを対象としております。ただ、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票に関しては、言わば憲法第九十六条の周辺に位置するものと考えられることから、修正により、その意義及び必要性の有無について、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な措置を講ずるものとする旨の規定を附則に設けたところであります。
 第二に、国民投票の期日は、国会が憲法改正を発議した日から起算して六十日以後百八十日以内において国会自身が議決した期日に行うこととしております。
 第三に、国民投票の投票権者は、日本国民で年齢満十八年以上の者とし、この要件に合致する限り、成年被後見人以外のすべての日本国民に投票権を与えることといたしております。なお、この法律が施行されるまでの三年間に、公職選挙法、民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする旨の規定を附則に設けております。
 第四に、憲法改正の発議があったときは、国会に両議院の議員各十名で構成する国民投票広報協議会を設置することといたしております。この広報協議会は、憲法改正案やその要旨、新旧対照表その他参考となるべき事項に関する分かりやすい説明を客観的かつ中立的に記載するとともに、その憲法改正案に対する賛否両方の意見を公正かつ平等に記載した国民投票公報の原稿の作成など、憲法改正案の内容を国民に周知広報する活動を行う機関でありますが、このような周知広報活動は、憲法改正案の内容を熟知している国会議員でもって組織する国会の機関が自ら行うことがふさわしいとの考えから、このようにいたしているところであります。
 なお、委員の選任に当たっては、原則、各会派の所属議員数の比率による割当てということになりますが、しかし、この原則により委員を割り当てた場合に憲法改正の発議に係る議決において反対の表決を行った議員の所属する会派から委員が一人も選任されないこととなるときは、各議院において、当該会派にも委員を割り当て選任するよう、できる限り配慮することといたしております。
 第五に、投票の方式については、賛成するときは投票用紙に印刷された賛成の文字を、反対するときは投票用紙に印刷された反対の文字をマルの記号で囲むこととしております。また、投票人の意思を最大限酌み取るため、賛成又は反対の文字をバツの記号、二重線等で抹消した投票も有効とすることとし、無効票の数が少なくなるよう、最大限の配慮をいたしております。そして、憲法改正案に対する賛成票の数が、賛成票の数及び反対票の数の合計の二分の一を超えた場合は、当該憲法改正について国民の承認があったものとしております。
 第六に、国民投票運動についてでありますが、多くの国民の皆さんがこれにかかわるであろうことを前提に、国民投票運動は基本的に自由とし、投票の公正さを確保するための必要最小限度の規制のみを設けることといたしております。具体的には、表現の自由その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないよう留意しなければならない旨の適用上の注意規定を設けること、国民投票運動が禁止される特定公務員は選管職員等に限定していること、公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動は、その範囲を明確にした上で禁止するものの違反に対する罰則は設けないこと、公務員法制上の公務員の政治的行為の制限については、この法律が施行されるまでの間に、公務員による憲法改正に関する賛否の勧誘その他の意見の表明が制限されることとならないよう、必要な法制上の措置を講ずるものとしていること、テレビ、ラジオにおける有料広告については、投票日前二週間に限って禁止すること、政党等は、テレビ、ラジオや新聞において、賛否平等に無料で広告をすることができることとすること、買収罪は対象を極めて悪質な行為に限定するよう、七重の縛りを掛けていることなどがその内容であります。
 第七に、国民投票に関し異議がある場合の訴訟制度を設けておりますが、この訴訟の提起があっても、原則として、国民投票の効力は停止しないものとしております。
 第八は、憲法改正発議のための国会法の一部改正に関する事項でありますが、まず、個々の議員が憲法改正原案を提案するには、衆議院において議員百人以上、参議院において議員五十人以上の賛成を要するものとすること、次に、その憲法改正原案の提案は、内容において関連する事項ごとに区分して行うものといたしております。さらに、日本国憲法等について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案や日本国憲法に係る改正の発議あるいは国民投票に関する法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を設けることといたしております。
 最後に、この法律の規定のうち国民投票の実施に関する部分は、公布の日から起算して三年を経過した日から、また、国会法の一部改正の部分は、公布の日以後初めて召集される国会の召集の日から、それぞれ施行することといたしております。なお、憲法改正原案の提出及び審査に係る国会法の規定は、この法律が施行されるまでの間は、適用しないものとしております。
 以上が本法律案の趣旨であります。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。岡田直樹君。
   〔岡田直樹君登壇、拍手〕
#6
○岡田直樹君 自由民主党の岡田直樹でございます。
 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました日本国憲法の改正手続に関する法律案について、発議者に質問をいたします。
 日本国憲法には多くの国民の権利が規定されておりますが、その中に一つ、極めて重要でありながら、ないがしろにされてきた権利がございます。それは、国の基本法である憲法を改正すべきか否か、主権者たる国民自らが投票して決定する権利であります。
 趣旨説明のとおり、日本国憲法九十六条には憲法改正の規定があり、その不可欠の手続として国民投票が明記されています。にもかかわらず、憲法施行から六十年間、国民投票の具体的なルールが一切なかったことは大きな矛盾であり、欠陥であります。この結果、憲法九十六条は絵にかいたもちとなり、より良い憲法を選び取ろうとする国民の権利は奪われ続けてきました。また、裏を返せば、憲法を変えないのだという方々の権利も奪われてきたわけであります。
 このように憲法改正手続法、すなわち国民投票法が欠けていたことは、立法不作為による憲法違反と言っても過言ではありません。今こそ国会は、改憲派、護憲派などという立場を超えて、この欠陥を補うことにより、立法府の責任を果たすべきものと信じます。
 本日、憲法改正手続法案の審議が本院で開始されたことは歴史的、画期的であり、私たちは、実りある審議を経て本法案を成立させるよう、最善を尽くす決意であります。
 参議院での審議に入るに当たり、衆議院における審議経過も踏まえ、改めて発議者から本法案の重要性を国民の皆様に分かりやすい言葉で御説明をいただきたいと存じます。
 さて、衆議院において与党と民主党の唯一と言っていい違いは、国民投票の対象でありました。つまり、憲法改正国民投票に絞るのか、あるいは一般的な国政の重要課題にまで対象を広げるかであります。
 本法案では憲法改正国民投票に限定しておりますが、私はこれを妥当なものと考えます。我が国政の大原則は代議制、すなわち国会を唯一の立法機関とする間接民主制であります。国政レベルの直接民主制は、この憲法改正国民投票のほかには最高裁判所裁判官の国民審査など極めて例外的であり、日本国憲法の起草者が一般的な国民投票制度を想定していたとは思えません。
 たとえ諮問的な国民投票とはいえ、その結果は国会の意思を左右し、我が国政の根幹を変えることになります。かかる重大な変更は、それ自体、憲法改正を必要とするものと考えます。もし、一般的な国民投票制度を求めるならば、まず憲法改正手続法を整備した後、それにのっとって一般的な国民投票制度を憲法に盛り込む改正が必要であります。一足飛びに一般的国民投票制度を導入することには憲法上も疑問が残ります。
 なお、本法案の附則には、憲法審査会における予備的国民投票が今後の検討課題となっております。予備的国民投票とはいかなるものを考えておられるかも含めて、発議者の国民投票制度に関する御見解をお伺いします。
 次に、投票権者の年齢要件についてお伺いします。
 衆議院における併合修正により、投票年齢は、与党原案の満二十歳以上から、原則十八歳以上となりました。
 なお、附則において、この法律が施行されるまでの三年の間に、公選法、民法等の関連法令について必要な法制上の措置を講ずるものとの規定が置かれております。
 私は、成年年齢を定める民法や選挙権年齢を定める公職選挙法を十八歳に引き下げるのであれば、刑法や少年法なども併せて改正すべきと考えます。権利には義務が伴い、自由には責任が伴うのが道理であり、また、法律上の整合性から考えても、できるだけ十八歳なら十八歳にそろえることが妥当と思います。
 そこで、まず投票権者の年齢を十八歳に引き下げた根本的な理由を伺い、あわせて、刑法や少年法などの十八歳への引下げについてどのように考えておられるか、お尋ねをいたします。
 次に、国民投票の運動規制について伺います。
 憲法改正国民投票は、個人や政党を選ぶ選挙と異なり、極力運動規制はなくし、意見表明が最大限発揮されるよう、自由に投票運動をさせるべきとの意見があります。しかし、国民投票運動の公正中立性及び公序良俗を守るためには、やはり最小限度の規制を設けることは必要であろうと考えます。
 本法案では、公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動の禁止規定については存置されておりますが、罰則は設けられておりません。例えば、教育者が学生に対して恣意的な指導を行い、多大な影響を与える事態も考えられます。また、公務員が組織的運動を展開する事態も想定され、国民投票運動の公正さを保てるのかという危惧もあります。
 確かに、公務員の政治的行為の制限規定は適用除外とされず、また行政処分を科することにより、こうした懸念はある程度解消できるとは思います。しかし、本法案の附則において、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、必要な法制上の措置を講ずる旨が定められております。この点で、全体の奉仕者である公務員の政治活動にはおのずから一定の限界があり、節度が求められるべきであり、慎重な検討を要請したいと思います。
 以上の点を踏まえて、公務員の国民投票運動の在り方についてどのように考えておられるか、お伺いをいたします。
 次に、スポットコマーシャルの規制等についてお伺いをいたします。
 テレビ等の有料意見広告であるスポットCMの規制については、与党原案の投票期日一週間前からの禁止を二週間前からの禁止と改めました。この規制に関しては、放送事業者の自主的な判断やルールに任せるべきであり、表現の自由に規制を加えるべきではないという主張がある一方で、資金力に物を言わせて有料のスポットCMを大量に流す場合の影響力を考慮し、スポットCMを全面禁止すべきではないかとの意見も見られます。
 そこで、スポットCMを二週間前から禁止とした理由についてお伺いします。
 あわせて、今日、国民に対するテレビの影響力は極めて大きなものがあります。本法案は、放送事業者などに対して国民投票にかかわる放送についてどのような留意点を求めておりますか、お伺いをしたいと存じます。
 終わりに申し上げます。
 私は、日本国憲法の国民主権、基本的人権の尊重、そして平和主義を人類普遍の原理として堅持をしながら、しかし、時代に即した改正を必要と考えるものであります。憲法改正そのものには熟慮を要し、三年の凍結期間もやむなしと考えますが、しかし、その手続法の成立をこれ以上先送りすることは許されないと存じます。冒頭に述べましたとおり、国民主権、参政権の侵害とも言うべき事態が六十年も続いております。どうせ六十年なかった法律だから、もうしばらくなくてもよかろうとは到底言えないのであります。
 衆議院では、自民、公明、民主各党関係者の真剣な御努力により、ほとんど合意の寸前に至りながら、最終の段階で政争の具とされた感が否めません。
 本院におきましては、党利党略を離れ、与野党ともに質の高い議論が展開されることを期待し、それこそは本院が良識の府であることを国民に示すゆえんである、こう確信をし、申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔衆議院議員赤松正雄君登壇、拍手〕
#7
○衆議院議員(赤松正雄君) 本法律案の提出者を代表いたしまして、ただいまの岡田直樹議員の御質問についてお答え申し上げます。
 まず、衆議院における審議経過を踏まえた本法律案の重要性についてのお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、日本国憲法は第九十六条において改正のための手続を定めているにもかかわらず、そのための具体的な国民投票法制につきましては、日本国憲法施行後の六十年を経過しようとしている今日に至るまで整備されてきませんでした。
 憲法改正国民投票法制の整備は、憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を整備することであり、憲法改正に対する国民の主権を回復し、憲法それ自体が基本理念とする国民主権を確立することにほかならず、その重要性は極めて大きいものがあります。このことは、衆議院における審議経過におきましても常に認識されてきたことであります。すなわち、憲法改正の基盤となるルールに関する法律は、政権交代があった場合でも共通するものであり、三分の二条項の下で、幅広い真摯な合意形成の下で制定されることが望ましい、真に政権を担う気持ちがある政党はこのような認識を持つべきだとの与野党共通の認識の下、真摯な議論がなされてきたものであります。
 その上で、私たちは、対案を提出された民主党のみならず、共産党、社民党、国民新党の皆さんの御主張にも十分耳を傾けながら真摯に対応し、より良い御意見はそれらを踏まえて思い切って修正するという姿勢で臨んでまいりました。本法律案の併合修正という修正の形は、その議論の対象となった与党原案、民主党原案の良いところを統合したものであるという基本的な姿勢が表れたものであります。
 今般、そのような審議経過を経た本法律案が衆議院において採決をされ、参議院において審議されるに至ったことは、国民主権の観点から歴史的な意義を持つものだ、そんなふうに考えております。
 次に、国民投票の対象に関するお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、現行憲法は国会を国の唯一の立法機関であると規定し、基本的に議会制民主主義を採用し、これを補完するものとしての直接民主主義の制度はわずかに憲法改正国民投票の場合などに限定をされております。
 一般的国民投票制度は、その効果が諮問的なものであるとしたとしても、事実上の拘束力があり得ることは否定できず、憲法の定める議会制民主主義の根幹にかかわる重大な問題であり、むしろ憲法改正事項そのものではないのかとの懸念を払拭し切れません。
 また、そもそも国民投票が必要的な要件とされており、かつ、その結果に法的拘束力がある憲法改正国民投票と、任意で諮問的な効果が想定される一般的な国民投票とでは、その本質を全く異にするものであることなどにかんがみると、今回は憲法改正国民投票法制に限定して制度設計するのが適当であると考えております。
 もっとも、一般的国民投票制度といいましても、個別の憲法問題に限定し、憲法改正国民投票の前にあらかじめ国民に憲法改正の要否、また、どういうものを求めているのかという内容の方向性について問うといった諮問的、予備的国民投票制度につきましては、憲法九十六条の周辺に位置するものと考えられますので、その是非につきましては、本法施行後に憲法審査会において検討されるべき旨を附則に明記いたしております。
 次に、投票権者の年齢を十八歳に引き下げた理由及び刑法や少年法などの年齢要件の十八歳への引下げについてのお尋ねがございました。
 諸外国では十八歳以上の国民に投票権を与える例が非常に多いことなどから、本法案では、本則におきまして投票権者の年齢要件を満十八歳以上と定め、附則で、この法律が施行されるまでの三年間に選挙権年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法そのほかの法律に所要の検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることといたしております。
 また、実際に公職選挙法等が改正され、十八歳選挙権等が実現するまでの経過期間においては、国民投票の投票権者の年齢要件についても二十歳以上とすることといたしております。
 刑法及び少年法の年齢要件の引下げにつきましては、一方で、刑事司法全般において、心身の発育を考慮し、成長過程にある若年層をいかに取り扱うべきかという問題にかかわるもので、国民投票の年齢要件と必然的に連動するものではないという考え方があります。他方で、公職選挙法における十八歳以上二十歳未満の者と二十歳以上の者との間の制裁の均衡を図る必要があるという考え方もあります。そのような観点から、引下げの要否を含めて、今後、検討が行われるものと思われます。
 次に、公務員等、教育者の国民投票運動の在り方についてのお尋ねがございました。
 公務員につきましても、国民の国民投票運動は原則として自由に行われるべきものであります。ただ、他方で、公務員等につきましては、全体の奉仕者として、その身分に応じ、国民投票運動の公正を図るため最小限の規制を設ける必要もあります。
 このような観点から、まず公務員等及び教育者に対して、地位利用の意味を、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用することと明確にした上で、これを禁止しております。
 この禁止に違反した場合にも罰則は設けないこととしております。これは、国民の国民投票運動への萎縮効果をでき得る限り排するためであります。悪質な行為については、信用失墜行為等の公務員法制上の懲戒処分により適切に対処されると考えております。
 また、附則に公務員の政治的行為の制限規定の検討条項を規定しております。
 公務員であっても国民として他人に対する賛否の勧誘を行うことは広く認められるべきではありますが、他方、特定の公職の候補者を支持するなどの政治的目的を持った組織的な署名運動などは、全体の奉仕者たる公務員にふさわしくありません。
 この両者の切り分けについて、本法律が施行されるまでの三年間に、公務員の政治的行為の制限について定める国家公務員法、地方公務員法等の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることといたしております。
 最後に、スポットCM規制などについてお尋ねがございました。
 報道内容の適正化につきましては、不適当な言論に対しては言論をもって対抗するのが本筋であり、我が国の言論市場はそれだけの自浄作用を持っており、原則として規制を設ける必要はないとの考えに立っております。
 ただ、時として国民の感情に訴え扇情的なものとなる可能性もある放送メディアにおける有料の広告、いわゆるスポットCMについては、国民が放送メディアの影響から離れて冷静に判断するための言わば冷却期間として、投票日前の一定期間禁止することが必要だと考えております。
 そこで、一方では広告主の表現の自由をできる限り尊重すること、他方では財力の多寡による不平等が生じるおそれがあること等を総合勘案し、かつ期日前投票の期間が投票日の二週間前から始まっていることも踏まえ、スポットCMの禁止期間を投票日前二週間としたところであります。
 また、国民の賛否の判断に与える影響の大きさ等にかんがみ、国民投票に関する放送については、放送事業者は、政治的公平性などを定めた放送法第三条の二第一項の規定の趣旨に留意する旨の規定を設けたところでございます。
 以上で岡田議員に対する答弁を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
    ─────────────
#8
○議長(扇千景君) 簗瀬進君。
   〔簗瀬進君登壇、拍手〕
#9
○簗瀬進君 民主党・新緑風会を代表して、衆議院送付の国民投票法案及び国会法改正案の趣旨説明に対し、質問いたします。
 まず、発議者に質問いたします。なぜそんなに急ぐのですか。国民の理解の深まりをなぜ待てないのですか。余りにも性急な国民不在の審議強行は、憲法改正権者としての国民に対する重大な背信行為です。まずは、主権者としての国民の権威を踏みにじる暴挙に対し深く謝罪すべきではありませんか。発議者の所見をお聞かせください。
 そして、このような暴挙を導いた張本人の安倍総理に断固として抗議いたします。憲法改正の論議を党利党略で行ってはならない、参議院の憲法調査会にあってもこのことは党派を超えた共通認識でした。このような与野党の信頼関係を破ったのは、正に憲法改正を参議院の争点とするとした総理の妄言であります。総理のこの一言ですべてが変わってしまいました。さらに、国民投票法が議員立法でもあるにもかかわらず、総理として再三にわたって国会の審議に容喙してきました。これは三権分立の基本を侵すものであり、憲法違反の暴挙でもあります。
 以上の総理の対応について、発議者の認識を聞かせていただきたいと思います。
 二〇〇〇年一月二十日、衆参ともに憲法調査会が設置されました。以来七年間の年月が経過しましたが、注意すべきは、そのうち五年間は憲法本体の論議に費やされたということであります。手続法としての議論が衆議院でスタートしたのは昨年の五月からでしかありません。また、参議院においては手続法の論議はほぼ白紙状態であります。
 言うまでもなく、この国民投票法案はすべての法律の中でも最も憲法に近い存在であります。憲法に準ずる高い規範性を持たなければなりません。戦後、我が国の国会が定めた法律の中での最重要法案であります。それにもかかわらず、衆議院における法案提出後の審議時間、これ特別委員会でありますが、五十八時間であります。小選挙区制の導入を決めた政治改革法案でも特別委員会では百二十二時間、郵政民営化法案は百二十時間、教育基本法は百六時間、これらと比較しても審議時間は余りにも少な過ぎます。発議者の所見をお聞かせください。
 次にお尋ねしたいのは、法案の審議に国民の参加を求める姿勢が全く欠落していることであります。主権者としての国民の権利の発動の手続を決める法案の審議でありながら、主役の国民は無視されています。こんなことを許してはならないと思います。国民を完全に無視した審議の進め方に私は大変激しい怒りを覚えます。
 国会の外に出て国民の声を直接聴こうとした公聴会が開かれたのは三月二十八日のたった一日だけ、しかも新潟と大阪のたった二か所を慌ただしく飛行機で移動して行ったにすぎません。正に、一応は国民の声を聴きましたというアリバイづくりのための公聴会であります。さらに、この日の前日に与党の修正案が提出されたばかりであります。正に、修正案の中身など国民に知らせる必要もないとの姿勢が露骨に表れた公聴会でありました。こんないい加減な対応を良識の府としての参議院は絶対に認めるわけにはまいりません。
 憲法の力の源泉は、主権者としての国民の憲法に寄せる思いであります。国民そっちのけの憲法を幾ら作っても、しょせんそれは張り子のトラでしかありません。与党の皆さんは、たかが手続法と考えるかもしれません。しかし、手続こそ民主主義の命なのです。手続を知らなければ参加の意欲も生まれません。
 そこで、発議者の皆さんに質問したいと思います。参議院では、国民の意見を各地で聴くための地方公聴会を徹底して開催すべきでありましょう。本来であるならば、四十六都道府県のすべてで行うべきであります。それが無理であるなら、最低でも、北海道から始まって四国、九州の各ブロックごとに行うべきではないでしょうか。発議者の意見を求めます。
 さて、衆議院の議論で最大の対立点となったのは国民投票の対象の問題でした。与党案は最後までこの手続を憲法改正手続に限定されました。しかし、民主党は一貫して重要な国政問題についての国民投票制度の創設を求めてまいりました。四月十日提出の我が党の修正案は、この姿勢を一層明確にするために、重要な国政問題の内容を更に具体化して四つのパターンを提案したものであります。すなわち、第一は憲法改正の対象となり得る問題、第二は統治機構に関する問題、第三は生命倫理に関する問題、第四はその他の別に法律で定める問題としました。
 私は、この投票対象の議論こそ今回の法案審議の最大の対立点であり、それは実は自公案と民主案の本質的な違いに直結する極めて重要な論点だと思っております。
 この民主党案に対しては、間接民主主義を基本とする憲法の趣旨に違反する疑いがあるといった批判、あるいは投票効果の違う二つの国民投票を一つの法律に盛り込むべきではない等の批判が寄せられております。
 この批判を十分に認識しつつも私たちはこの考え方を貫いたことには実は幾つかの理由があります。それは、間接民主主義の限界を強く意識しているからであります。
 民意と議会の乖離、そして議会制民主主義の限界は正に現代政治の基本的な問題となりつつあります。その背景にあるものは、冷戦構造の崩壊とイノベーションによる世界の急激な変貌であります。グローバリズム、テロ、環境問題、格差問題、これらの問題に共通するのは、十九世紀的な国家、国境、国民、経済などの基本的な概念が正に大きく崩れつつあるということであります。
 EUの出現、通貨主権や領土主権の大胆な変更、EU憲法、そしてマーストリヒト条約の承認についての国民投票、ヨーロッパの新しい状況は衆参の憲法調査会の議論も大きく刺激されました。今我々が行わなければならない憲法論議は、もはや戦後レジームの脱却などではありません。復古主義的な憲法論議の残滓に取りつかれている安倍総理の憲法論議に対し、民主党案は正に二十一世紀レジームの創造を目指したものであります。だからこそ、これら新しい事態に対処するためにも、間接民主主義を補完する直接民主主義の積極的な活用を求めているのであります。
 少なくとも発議者の皆さんは、私たちのこの主張をそれなりに受け止めていただいたように感じております。その痕跡は、先ほども御説明あった与党の附則十二条であります。
 その文章を引用いたしますと、国は、この規定の施行後速やかに、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関し、その意義及び必要性の有無について、日本国憲法の採用する間接民主制の確保その他の観点から検討を加え、必要な措置を講ずるものとする、これは与党の附則でございます。
 これは、先ほど紹介した民主党の修正案のうちの最初のものだけを認めたようにも読むことができますが、実はもっと広げて解釈することも可能でございます。例えば、憲法改正の対象となり得る問題の中には、道州制の可否とかあるいは通貨主権等の統治機構関連の問題も含めることができますし、さらに、基本的人権に関連する問題、例えば脳死もそれであります。これは生命倫理に関する問題として、この与党の附則の中にも含めて解釈できそうであります。
 したがって、発議者にお聞きしたい。附則という形式ではあるものの、「検討を加え、必要な措置を講ずるもの」の中には、民主党修正案として先ほど御説明申し上げました第一から第三までのほぼすべてが含まれていると解釈できるのではないかと私は思いますが、この点、発議者の見解を求めます。
 しかし、附則十二条には少し気になる文言もあります。それは、必要性の有無について検討するとして、必要性がない場合も含めているところであります。ところが、最後の部分では、「必要な措置を講ずる」となって締められております。この矛盾する箇所の解釈をどうしたらいいのか、発議者に伺いたいと思います。
 次に、投票権の年齢の問題についてお尋ねいたします。
 与党案の第三条では国民投票権の年齢を満十八歳以上と規定しながら、附則三条の第一項では、公職選挙法、民法などのその他の法令の規定について必要な措置を講ずるといたしております。さらに、附則三条の第二項においては、これらの措置が講ぜられるまでの間は満二十年以上のままとなっております。結局、措置が講じられなかったら二十歳のままなのでしょうか。
 まず、附則三条一項のその他の法令とは具体的に何を言うのか、さらに、全部の成人規定の引下げ措置が終わらない限り、依然として二十歳のままに据え置かれるのか、それぞれ明らかにしていただきたいと思います。
 民主党の修正案は、このようなあいまいさをなくすために、二項の規定は削除、他の関連する法律の成人規定の措置が終わらなくても、国民投票の投票権の年齢は十八歳とすることを明らかにいたしております。与党の年齢規定は、正に羊頭を懸けて狗肉を売るたぐいのものではありませんか。マスコミは一斉に十八歳に引下げと大見出しで報道しています。しかし、公選法や民法の改正が終わらない限り二十歳のままとするのであるならば、これは国民をペテンに掛けるようなものであります。発議者の明快な答弁をお願いをいたします。
 次に、公務員の国民投票運動への制限規定についても発議者に質問いたします。
 この分野での与党方針の極めて節操を欠いた変身ぶりはあきれるばかりであります。
 与党は、先月二十七日の与党修正案提出の直前に、公務員等の地位を利用した投票運動への罰則規定は撤回されました。しかし、他方で国家公務員法、地方公務員法等の政治的行為の制限を適用しないといった従前の方針もあっさりと転換をし、適用除外の項目を削除してしまいました。刑罰はないものの、懲戒免職などの行政罰によって公務員の国民投票運動についてはしっかりと監視していこうということなのでしょうか。
 衆参の論議の基調に流れていた考え方は、憲法改正手続は、人を選ぶ選挙とは違う、できるだけ自由濶達に、そして、できるだけ多くの人に参加してもらおうといった考え方でした。しかし、修正合意がまとまらないと見切りを付けたら、あっさりと基本方針を簡単に転換してしまう。正に衣の下のよろいを露骨に見せ付けられた瞬間でもありました。
 発議者の船田衆議院議員は、先月二十二日の公聴会で、「国民投票運動における公務員の政治的行為の制限規定を適用除外する、こういう方向で話をまとめようとしている」と明言なさっております。公聴会でのこの発言は一体何だったのでしょうか。この発言の真意とともに、与党の基本姿勢がなぜ変わったのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
 さらに、附則十一条の意義についても御質問させていただきます。
 同条によると、公務員が国民投票に際して行う賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、国公法、地公法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとすると附則に与党案が規定いたしております。
 この規定に言う、その他の法令とは何なのか、その数はどれくらいあるのか。また、意見表明が制限されることのないような必要な法制上の措置とは具体的にどんなものを考えられているのか、明快にお答えいただきたいと思います。
 さらに、その上で、公務員の政治的行為の制限規定を適用除外としなかったことと、この附則十一条との整合性、あるいは優先、劣後の関係について明瞭に答弁していただきたいと思います。
 さて、自公案と民主案の双方で触れられていない新たな問題点について質問したいと思います。
 まず初めは、憲法改正について両院に置かれる憲法審査会とその合同審査会の在り方についてであります。
 結論から言えば、私としては、憲法改正原案の論議の手順は法律と同様に考えるよりも両院の合同審査会を積極的に活用した国会全体としての発議を目指すべきではないかと考えております。
 もし、憲法改正の発議を法律案の審議と同じように考えると、結果的にどんなことが起こるでしょう。私が心配するのは、改正論議においてかなり参議院の存在感が失われてしまうということであります。
 具体的に言えば、憲法改正原案に賛成する議員の数が衆参の両院で三分の二を超えていれば、先議の憲法審査会での議論であらかた決着が付いてしまいます。後議の議院の議論は限りなく不要となります。他方、両院ともに三分の二をクリアできそうでなければ、そもそも発議すら行われないということになる。正に、法律案と同様の審議の仕方によれば、後議の議院は限りなくその存在感を失っていきます。これでよいのでしょうか。
 そこで、改めて憲法九十六条の規定を読んでみると、国会の立法権を規定した五十九条一項とはその書きぶりがかなり違っております。九十六条は、「総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、」となっておりますが、五十九条一項は「両議院で可決したとき法律となる。」と、このように書いてある。
 もし、憲法改正の発議を全く法律と同様に考えているとするならば、九十六条の規定でも、憲法改正案は、三分の二以上の多数で両院で可決したとき国会が発議するといった文言となるはずであります。しかし、九十六条は両院の可決とは言わずに、両院を合わせて国会の発議としています。
 衆議院の公聴会で公述人となった憲法学者の江橋先生もこの違いを指摘いたしました。すなわち、九十六条は、両院が一体となって発議する姿を原則に考えているようにも解釈できるわけであります。
 そのように考えると、国会法改正案の百二条の八の両院の合同審査会をむしろ原則的に開催を求めるように変更すべきではないかと考えますが、発議者の見解を求めます。
 次に、最低投票率についての発議者の見解を伺います。
 例えば、お隣の韓国でも、有権者の五〇%以上の投票となっている。したがって、改正案が承認されるのはその過半数ですから、全有権者の二五%以上の賛成がなければ憲法改正案は成立できません。このように、承認要件や最低投票率を定めている国は多数あります。
 今回の投票法案についても各党においてこの議論はありました。しかし、今や……
#10
○議長(扇千景君) 簗瀬君、時間が超過しております。簡単に願います。
#11
○簗瀬進君(続) はい。
 国民はこの最低投票率について意見を、疑問を集中させております。
 このような規定を置くことに反対する多数説の論拠は、ネガティブキャンペーンによって国民の自由な意思形成が妨げられるんではないかとか、あるいは憲法の上乗せ基準を法律で作ることは憲法違反だとか、そのような考えがあるわけでありますけれども、このような問題こそ国民を巻き込んで議論するにふさわしい問題だと思います。
 最低投票率の問題の重要性に問題を絞って、改めて国民の意見を聴いてみる必要があるのではないかと考えますが、発議者のお考えを聞かせていただきたいと思います。
 正に、しっかりとした……
#12
○議長(扇千景君) 簗瀬君、簡単に願います。
#13
○簗瀬進君(続) 議論をすべきであります。
 私は、最悪の事態を想定しなければなりません。もし、国民を巻き込まずに憲法改正の議論が進んで、最終的に国会は発議はした、しかし国民がそれを否決したとしたら、一体この国はどうなるでしょうか。
#14
○議長(扇千景君) 簗瀬君、簡単に願います。
#15
○簗瀬進君(続) 正に国民が国会の意思を否定したことになります。このようなアナーキーな存在を、状況をつくってはなりません。そのためにも、是非とも心底参議院における慎重審議を求めて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔衆議院議員保岡興治君登壇、拍手〕
#16
○衆議院議員(保岡興治君) 本法律案の提出者を代表して、簗瀬議員にお答えいたします。
 なぜ急ぐかと言われましたが、これについては先ほど私が趣旨説明で述べたことに尽きております。
 まず、憲法改正権者に謝罪すべきとのお尋ねもございましたが、主権者、憲法改正権者が国民であることはまあ当然のことでありまして、この制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を整備することが今回の法案の目的でありまして、国民の主権を回復し、憲法それ自体が基本理念とする国民主権主義を確立することにほかならない国民の重大な権利を確立するための本法律案の整備は、主権者国民が十分受け入れておるものだと考えております。国民に謝罪すべきはむしろ憲法改正国民投票法の早期制定を党利党略で阻止しようとしている者ではないでしょうか。
 次に、内閣総理大臣による国会への容喙についてお尋ねがございました。
 確かに安倍総理からは改憲についての発言が何度かありましたが、これは政治家としての姿勢を示したもので、私たちはこれに影響を受けることなく、これに影響を受けることなく、一貫して憲法改正の手続については、改憲、護憲の立場を超えて、公正中立なルールが幅広い合意形成の下に成立されるべきものであるとの考えの下に慎重に公正に審議を行ってまいりましたことに自負心を持っております。
 次に、審議時間についてお尋ねがございました。
 国民投票法制については、中山委員長の公平円満な委員会運営の下、衆議院憲法調査特別委員会において濃密な調査、論点整理を五十時間行っております。さらに、その上に、その後の法案審査で御指摘のとおり五十八時間費やしており、合計百時間を超える十分な調査、審査を行っております。また、二回にわたる海外調査では、二十七日間、午前、午後綿密に関係者と論議し、それもしっかりと議事録に載って、残してあるところでございます。
 参議院におかれましては、正に良識の府として、それにふさわしい時間が掛けられるものと思料するところであります。
 次に、公聴会の開催についてお尋ねがございました。
 衆議院の特別委員会においては、二度の中央公聴会のみならず、二か所の地方公聴会を開催し、広く国民の意見を聴いてきたところでございます。また、これにとどまらず、この間、小委員会におけるものも含めて三十八人の参考人を招いており、合計五十九人の有識者等の意見を聴いたところであります。特に、小委員会において、参考人側からの委員、提出者への質問を懇談会形式で認めるなど双方向の濃密な論議をしており、国民の参加が不十分であるとの御批判は当たらないと考えております。
 次に、一般国民投票制度についてのお尋ねがございました。
 枝野議員は、衆議院に提出された民主党の修正案の一条の読み方について、一般的国民投票の対象は、憲法関連問題、統治機構、生命倫理の三類型であり、これを別に定める法律で具体化するところであると述べております。質問者は、御自身たちの提出した修正案の内容を正確に御理解できないのではないかと一瞬耳を疑ったものでございます。
 一般的に、国民投票法制は、この憲法の定める議会制民主主義の根幹にかかわる重大な問題であり、むしろ、おっしゃるように、憲法改正事項そのものではないかとの懸念も払拭し切れないため、本法案は憲法改正の場合に限った国民投票制度といたしております。
 もっとも、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関しましては、憲法九十六条の周辺に位置するものと考えられますので、その意義及び必要性の有無について、本法施行後に創設される憲法審査会において、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保、その他の観点から検討を加え、必要な措置を講ずることといたしております。
 お尋ねの民主党の御提案の対象の範囲とは、重なっている部分もあるかにも見えますが、重ならない部分もあるかと思います。こういったことを、御関心あるところを具体的なテーマに即して、これから憲法審査会においてその必要性の有無も含めて審査していこうと考えているところであります。
 次に、投票権者の年齢についてのお尋ねがございました。
 本法律案では、本則におきまして投票権者の年齢要件を満十八歳以上と定め、附則で、この法律が施行されるまでの三年間に選挙権年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法律に所要の検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることとしております。
 ここで、附則三条第一項のその他の法令は、刑法、少年法、その他様々な法律が想定されておりますが、少なくとも選挙年齢を定める公選法、そしてその基礎となる成年年齢を定める民法は必要な措置をとった上で、国民投票法の年齢も十八歳にすべきだと考えているところであります。
 さらに、実際に公職選挙法が改正され、十八歳選挙権等が実現するまでの経過期間においては、国民投票の投票権者の年齢要件についても二十歳以上とすることとしておりますが、これは関連法令の整備を先送りするという意図では全くございません。
 三年以内に法制上の措置を講ずるわけでございますが、三年間という一律の期間において立法府としてできるのはこのような法律の制定、改正までであり、その施行や適用がいつからとなるかは、公選法、民法その他、個別の関連法令ごとに必要な周知期間、準備期間を考慮して定めるべきことであると考えております。
 次に、公務員の国民投票運動の制限についてのお尋ねがございました。
 公務員であっても、国民としての資格で他人に対する賛否の勧誘、意見の表明を行うことは広く認められるべきでありますが、他方、特定の公職の候補者を支持するなどの政治目的を持った組織的な署名運動などは、全体の奉仕者たる公務員にふさわしくございません。これが公務員の政治的行為の制限に関する規定に一律に適用を除外するような規定を設けていない理由でございます。
 そこで、この両者の切り分けについて、本法律案が施行されるまでの間、三年間に公務員の政治的行為の制限について定める国公法、地公法等の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることといたしております。
 その他の法令の規定としては、特別職の公務員の政治的行為の制限を定める法令の規定を想定しております。この検討を施行までに行うこととしているのでありまして、決して先延ばしすることは考えておりません。公務員に関するいろいろな規定の見直しは約三十五、六本の法律が検討を要するものと思います。
 次に、合同審査会に関するお尋ねがございました。
 まず、合同審査会を開くことができることとしたのは、憲法改正案の発議が最終的に衆参両院の三分の二以上の賛成を必要とする重要な議案の調査、審査であることにかんがみ、あらかじめ両院の憲法審査会が共通の土俵で憲法改正原案に関して議論ができるようにするためであります。そして、その成果としての衆参両院の共通の認識、大枠のイメージを実効的に各議院の憲法審査会に反映できるよう勧告の仕組みを設けたところであります。
 もとより、各議院は独立して活動するものであり、お尋ねのように、合同審査会での審議が原則化することは必ずしも適切であるとは言えないと思いますが、いずれにいたしましても、憲法改正の発議要件にかんがみれば、各議院の憲法審査会において適切に判断され、合同審査における審議というものが行われることになると考えております。
 最後に、最低投票率についてのお尋ねがございました。
 国民投票の結果が主権者たる国民の意思をできる限り正確に反映したものとなるようにすることは必要であり、投票率が低いことは望ましいことではございません。しかし、最低投票率制度を設けると投票をボイコットさせる運動を誘発させるおそれがあり、かえって国民の意思を正確に反映することができない可能性がございます。なお、専門的、技術的な国民の関心の薄い憲法改正など、憲法改正が難しくなる可能性もございます。しかも、憲法九十六条が規定する以上の加重要件としての最低投票率を設けることは憲法上も疑義があると言わざるを得ません。
 このような理由から、本法案におきましては最低投票率について規定しておりません。
 なお、この最低投票率の点も含めて、本法案につきましてはこれまで参考人や公述人から広く意見を聴取してきたところでございます。
 以上で答弁を終わります。(発言する者あり)
 ありがとうございました。(拍手)
    ─────────────
#17
○議長(扇千景君) 荒木清寛君。
 静粛に願います。
   〔荒木清寛君登壇、拍手〕
#18
○荒木清寛君 私は、公明党を代表して、日本国憲法の改正手続に関する法律案に関して質疑をいたします。
 まず、憲法改正に対する我が党の基本的な考え方を述べさせていただきます。
 公明党は、日本国憲法は優れた憲法であり、国民に広く支持されていると認識しています。そこで、国民主権主義、基本的人権の保障、恒久平和主義の原則を今後も堅持した上で、新たに必要とされる理念を加えて現行憲法を補強する加憲という立場を示しています。
 恒久平和主義の象徴である第九条については、戦争放棄を定めた第一項、戦力不保持を定めた第二項はともに堅持した上で、自衛隊の存在を明記することや国際協力の在り方について加憲を論議しています。(発言する者あり)
#19
○議長(扇千景君) 静粛に願います。
#20
○荒木清寛君(続) したがって、仮に自衛隊の存在を記述するとしても、自衛隊を軍隊として位置付けるのではなく、自衛のための必要最小限の実力組織の保持を明記するということです。
 国際協力については、自衛隊は国連安全保障理事会の決議に基づく活動には参加するが、この場合も武力行使は認められず、集団的自衛権の行使についてはこれを認めないとの立場が議論の大勢です。
 続いて、具体的な質疑に入ります。
 このたび、日本国憲法の改正手続に関する法律案が修正を経て衆議院を通過しました。
 憲法第九十六条で憲法改正手続が規定されているにもかかわらず、それを具体化する法律は憲法施行から六十年がたとうとする現在まで定められていません。そこで、まず、この時期に国民投票法を制定することの意義をお述べ願います。
 また、この手続法は憲法改正審議の枠組みを設定するものであり、憲法改正の中身をどうするかの議論は、広く国民の理解を得ながらこれから国会がじっくりと腰を据えて取り組むべきものであります。
 これに関連して、附則において、施行期日が公布から三年を経過した日と衆議院で修正されました。この修正を行った理由について説明を求めます。
 次に、国民投票の対象についてであります。
 憲法改正のみを対象とするか、重要な国政問題を対象とするかは衆議院での与党案と民主党案で最も対立した点であります。現行憲法は間接民主制を原則としていることから、これは統治機構の根本にもかかわる問題であります。この点をどのように考えておられるのか、お尋ねします。
 また、衆議院での併合修正案により、予備的国民投票についての検討条項が附則に盛り込まれました。予備的投票とはどのような仕方でどのようなタイミングで行うことを想定しているのか、お尋ねします。
 次に、投票権者の範囲についてであります。
 公明党は、公職選挙法の対象として十八歳選挙権を主張しております。当初、与党案は国民投票の投票権を有する者を満二十歳以上としていましたが、衆議院での併合修正案により、原則、満十八歳以上となりました。憲法改正国民投票はできる限り多くの国民が参加することが望ましいだけに、妥当であると考えます。
 ただし、二十歳を成人年齢とする諸法律との調整もしなければならず、特に刑法、少年法との兼ね合いは刑事司法そのものにかかわる大きな問題となる可能性があり、慎重な検討が必要です。どのように今後調整していくのか、見解を求めます。
 次に、個別発議についてお尋ねします。
 憲法改正原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする個別発議が規定をされており、極めて正当です。例えば、安全保障の問題と環境権やプライバシー権などの人権の問題はそれぞれ異なる内容の問題であり、それぞれの内容ごとに国民の意思を的確に酌み取る必要があります。
 他方、条文ごとに投票する方法を主張する見解もあるところ、なぜこれを採用しなかったのか、また個別発議において関連する条文を一つの項目にまとめる区分けの適切さをどう担保するのか、見解を求めます。
 次に、投票運動の規制について尋ねます。
 憲法改正を行うか否かは、国の最高法規についての主権者たる国民の意思を問うものであるので、投票運動の自由は最大限尊重すべきと考えられます。そこで、まず、公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動は禁止はするが罰則を設けないとした理由を御説明願います。
 また、公務員の政治的行為の制限規定については現行法を適用するものの、附則で、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他の意見の表明が制限されることとならないよう検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるとしています。具体的にはどのような措置を念頭に置いているのか、お尋ねします。
 さらに、有料広告放送については、その影響力の大きさにかんがみ、諸外国でも禁止する例があるところ、本法案でも投票期日前十四日間は禁止をしています。資金力を持つ者が有利になるとして、有料広告の規制を更に強化すべきとの意見があることについて見解を求めます。
 次に、憲法審査会における手続のうち、合同審査会についてお尋ねします。
 憲法審査会は、他の議院の憲法審査会と協議して合同審査会を開くことができ、この合同審査会は各議院の憲法審査会に対して勧告を出せることとなっています。しかしながら、憲法第九十六条は、憲法改正は各議院の議員の三分の二以上の賛成で発議するとされており、両院協議会を開くことを認める規定も存在しません。
 そこで、合同審査会を開いて調整することは、各議院の独立性を尊重しようとする憲法の趣旨に反することにならないかをお尋ねいたします。
 国民投票法案は、憲法改正のための公正中立な手続を定めるものであって、国民主権を具体化するものと言えます。自民党、民主党、公明党の考え方に歩み寄ることのできないほどの大きな相違があるわけではありません。本法案を政争の具とすることなく真摯に議論し、できるだけ多くの賛成を得た上で今国会でこれを成立させるべきであると主張して、私の質疑を終わります。(拍手)
   〔衆議院議員船田元君登壇、拍手〕
#21
○衆議院議員(船田元君) 荒木議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、国民投票法制定の意義と、附則について施行期日が公布から三年を経過した日と衆議院で修正された理由についてのお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、日本国憲法は、第九十六条において改正のための手続を定めているにもかかわらず、そのための具体的な国民投票法制について、日本国憲法施行後六十年を経過しようとしている今日に至るまで整備されてきませんでした。憲法改正国民投票法制の整備は、憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を整備することでありまして、憲法改正に対する国民の主権を回復し、国民主権を確立することにほかならない、この重要性は極めて大きなものがあると思います。
 また、本法律案の附則において、施行期日を原則として公布の日から二年から三年というふうに修正をした最大の理由は、御指摘のとおり、三年間は憲法改正原案の提出及び審査を凍結し、憲法改正の要否とその具体的な改正のイメージ等について詰めた調査を行うための期間として、三年という期間を設けることが妥当であると、こう考えるに至ったためであります。
 次に、国民投票の対象と、附則において検討条項とされた予備的国民投票の実施方法及び時期についてお尋ねがございました。
 日本国憲法は、国会を国の唯一の立法機関であると規定し、基本的に議会制民主主義を採用しており、これを補完するものとしての直接民主主義の制度は、憲法改正国民投票の場合などに限られております。
 一般的国民投票制度は、この憲法の定める議会制民主主義の根幹にかかわる大変重要な問題であって、むしろ憲法改正事項そのものにかかわる、こういった懸念が払拭し切れないために、本法案は憲法改正の場合に限った国民投票制度といたしました。
 もっとも、一般的国民投票制度といいましても、個別の憲法問題に限定をした諮問的、予備的国民投票制度においては憲法九十六条の周辺に位置するものとも考えられますので、その是非については、本法施行後に憲法審査会において検討されるべき旨を附則に明記をいたしました。したがって、お尋ねの予備的国民投票の実施方法及び実施時期の具体的な制度設計につきましては、正に今後の重要な検討課題となるものと思っております。
 次に、投票権者の年齢要件についてのお尋ねがございました。
 本法案では、本則におきまして投票権者の年齢要件を満十八歳以上と定め、附則で、この法律が施行されるまでの三年間に選挙権年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法律に所要の検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることとしております。
 また、刑法及び少年法の年齢要件の引下げについては、一方では、刑事司法全般において心身の発育を考慮し、成長過程にある若年層をいかに取り扱うべきかという問題にかかわるものでありまして、国民投票の年齢要件と必然的に連動するものではないという考え方もあります。
 他方で、公職選挙法における十八歳以上二十歳未満の者と二十歳以上の者との間の制裁の均衡を図る必要があるという考え方もあります。
 このような二つの観点から、引下げの要否も含めて今後慎重に検討が行われるものと考えられます。
 次に、個別発議についてのお尋ねがございました。
 まず、条文ごとに国民投票で賛否を問うことの可否についてですが、条文ごとに国民投票で賛否を問うこととなりますと、相互に密接に関連し合うため複数の条文を同時に改正しないと意味を成さない、そういう改正を行う場合、一部の条文のみが承認されてしまうことで全体としての改正の意味を成さないような結果になってしまう、いわゆる虫食い状態という危険性がございます。そこで、本法案においては、内容において関連する事項ごとに区分して賛否を問うことといたしました。
 次に、何が内容ごとに関連するまとまりのある事項かというお尋ねでありますが、一方では個別の憲法政策ごとに民意を問うという要請から、他方では、先ほど言いましたように、相互に矛盾のない憲法体系を構築するという要請から決定されるべきものと考えています。そして、そのような何が関連する事項かの判断は、憲法上、国民に対する憲法改正の発議権を有する唯一の機関である国会のみが行うことができると考えられますので、衆参両院の国会議員による議論を通しまして判断されることが正に憲法の要請であろう、このように理解をしております。
 次に、国民投票運動の規制に関する幾つかのお尋ねがございました。
 まず、公務員等、教育者の地位利用の禁止に違反した場合にも罰則を設けないこととしておりますのは、国民の国民投票運動への萎縮効果をできるだけ排するためであります。悪質な行為についてはもちろん、信用失墜行為等の公務員法制上の懲戒処分によって適切に対処されると考えております。
 次に、附則における公務員の政治的行為の制限規定の検討条項の意義でございますが、公務員であっても、この国民の資格で他人に対する賛否の勧誘を行うということは広く認められるべきではありますが、他方で、特定の公職の候補者を支持するなどの政治的目的を持った組織的な署名運動などは、やはり公務員の職務の公平性、中立性を大変損なうことになりかねません。
 この両者の切り分けにつきまして、本法律が施行されるまでの三年間に、公務員の政治的行為の制限について定める国家公務員法、地方公務員法等の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる趣旨でございます。
 さらに、広告放送の規制について、御指摘のような資金力のある者が有利になるのではないかという点、また一方で、広告主の表現の自由ということにも十分に配慮する必要がある、この二つの要請があるわけでありまして、本法案においては、これらを総合勘案して、有料広告の禁止期間を投票日前二週間としたところであります。
 最後に、合同審査会と各議院の独立性に関するお尋ねがございました。
 まず、合同審査会を開くことができることとしたのは、憲法改正案の発議が最終的に衆参両院の三分の二以上の賛成を必要とする重要なものであることにかんがみ、あらかじめ両院の憲法審査会が共通の土俵の上で憲法改正原案に関して議論ができるようにするためであります。そして、その成果としての衆参両院の共通の認識を実効的に各議院の憲法審査会に反映できますように、勧告の仕組みを設けたところであります。
 合同審査会による勧告を各議院の憲法審査会が尊重すべきなのは言うまでもない、こういう制度設計でございますが、一方で、これは法的拘束力があるわけではございません。したがいまして、各議院の憲法審査会において慎重かつ実質的な議論がなされるものでありまして、各議院の独立性を損なうものでは毛頭ございません。
 憲法の国民投票法制につきまして、衆議院での議論も踏まえつつ、参議院においても、足らざるところだけではなくて、足るところも併せてしっかりと議論をしていただきたいと思っております。
 以上でございます。(拍手)
    ─────────────
#22
○議長(扇千景君) 市田忠義君。
   〔市田忠義君登壇、拍手〕
#23
○市田忠義君 私は、日本共産党を代表して、憲法改正手続法案について質問します。
 質問に入る前に、先ほどの発議者保岡議員の参議院の存在を事実上否定する答弁に厳しく抗議するとともに、その撤回を求めるものであります。
 改憲手続法案は、国の最高法規である憲法の改定にかかわる極めて重要な法案であります。その審議は慎重の上にも慎重でなければなりません。ところが、衆議院においては異常極まりないやり方でこの法案が押し切られました。特に、公聴会で、法案への賛否の違いを超えて圧倒的多数の公述人が、慎重に、拙速を避けよとの意見を表明されました。にもかかわらず、これらを無視して採決を強行したことは、衆議院における審議がいかに異常なものであったかを象徴的に示すものであります。公聴会は、国民の意見を聴取する制度として国会法に定められたものであります。その公聴会の場で明確に示された多数意見を踏みにじるなどというやり方は、議会政治、民主政治の基本ルールとは断じて両立しません。提案者は議論は尽くされたなどと言いますが、この一事をもってしても、到底審議が尽くされたなどと言えないことは明瞭であります。参議院の審議入りに当たって、再びこのような暴挙を繰り返さない、今国会成立を前提とすることは許されない、このことを厳しく要求するものであります。
 法案に関し幾つかお尋ねします。
 質問の第一は、なぜ今改憲手続法の成立を急ぐのかという点についてであります。
 端的に言って、本法案は、公正中立なルール作りなどではなく、安倍総理が目指す九条改憲の政治スケジュールに位置付けられているものだと言わなければなりません。安倍総理は、今年の年頭の記者会見で、私の内閣で改憲を目指す、参議院選挙の争点にもする、そのためにまずは手続法だと述べました。施政方針演説という国会の公式の場でも、改憲手続法案の成立を強く期待するとまで述べ、時代にそぐわない条文の典型は九条であると明言したのであります。正に安倍総理が目指す九条改憲、すなわち海外で戦争する国につくり変えるための条件整備にそのねらいがあることは明白ではありませんか。
 次に、本法案の仕組みそのものが改憲案を通しやすくするものとなっており、憲法の国民主権の原理に反する不公正かつ反民主的な法案だという問題であります。
 具体的に三点伺います。
 第一に、国の最高法規である憲法の改定において、主権者である国民の意思を正しく反映する仕組みになっているのかという問題であります。これは根本問題であります。法案には最低投票率などの定めがありません。これでは投票率がどんなに低くても国民投票は成立し、有権者の二割台、一割台の賛成でも改憲案が通ることになるではありませんか。
 第二に、国民の自由な意見表明や国民投票運動にかかわる問題であります。法案は、公務員や教育者の地位利用を理由にその国民投票運動を規制していますが、なぜですか。特定の政党や候補者を支持したり反対したりすることとは全く性格の異なる憲法改定問題で、公務員の政治活動を制限する国家公務員法や地方公務員法の規定を適用する理由は何もないではありませんか。明確な答弁を求めます。
 第三に、潤沢な資金力を持つ改憲推進勢力が投票日の二週間前までは有料の意見広告を買い占めてしまうことが可能な仕組みになっており、これらについての何の合理的な歯止めもないことであります。改憲の大キャンペーンが展開されるのではないか、この国民の不安にどう答えますか。
 最後に、今、全国津々浦々で、日本国憲法の平和、人権、民主主義の理念と原則を政治に生かそうとする運動が多様な形で広がり、前進しています。日本共産党は、こうした広範な国民の皆さんと力を合わせ、憲法改悪反対、九条守れの戦いに力を尽くすとともに、本法案の廃案のために全力を挙げることを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔衆議院議員葉梨康弘君登壇、拍手〕
#24
○衆議院議員(葉梨康弘君) 本法律案の提出者を代表いたしまして、市田議員の御質問について御答弁申し上げます。
 四問ちょうだいいたしました。
 まず、なぜ今、手続法の成立を急ぐのかというお尋ねがございました。国民投票法制については、中山太郎委員長の公平、円満な委員会運営の下、衆議院憲法調査特別委員会における五十時間に及ぶ調査、論点整理、六十時間に近い法案審査、二回の公聴会、二か所の地方公聴会、さらには九か国に及ぶ海外調査を実施しており、相当な審議を尽くしてきたものと考えております。
 安倍総理の発言についての御指摘もございました。我々は、改憲、護憲、いずれの発言にも影響を受けることなく、立場の違いを超えて公正中立なルールを作るよう誠心誠意議論を尽くしてきたものであり、このことは特別委員会での審議を踏まえて提出された本法案の内容からも明らかであると考えております。前向きの御議論をお願い申し上げたいと思います。
 次に、最低投票率についてのお尋ねがございました。
 国民投票の結果が主権者たる国民の意思をできる限り正確に反映したものになるようにすることは必要であり、投票率が低いことは望ましいことではございません。しかし、最低投票率制度を設けると、投票をボイコットさせる運動を誘発させるおそれがあり、かえって国民の意思を正確に反映することができない可能性がございます。しかも、憲法九十六条が規定する以上の加重要件として最低投票率制度を設けることにはそもそも憲法改正が必要ではないかと、そういうような疑義もあることは御指摘申し上げたいと思います。
 本法案におきまして、最低投票率について規定しなかったのはこのような理由によるものであります。
 次に、公務員等や教育者の国民投票運動についてのお尋ねがございました。
 公務員等につきましても、国民投票運動は原則として自由に行われるべきものであります。ただ、他方で、公務員等について、全体の奉仕者として、その身分に応じ国民投票運動の公正を図るための最小限の規制を設けることも必要であります。
 このような観点から、まず公務員等及び教育者に対して、地位利用の意味を、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用することと明確にした上で、これを禁止しております。
 また、公務員であっても、国民としての資格で他人に対する賛否の勧誘を行うことは広く認められるべきものであります。しかし他方、特定の公職の候補者を支持するなどの政治的目的を持った組織的な署名運動などは、全体の奉仕者たる公務員にふさわしくはございません。
 そこで、この両者の切り分けについては、この法案で一律に適用除外の規定を置くのではなく、本法律が施行されるまでの三年間に、公務員の政治的行為の制限について定める国公法、地公法等の世界においてその規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることとしております。
 最後に、有料の意見広告についてのお尋ねがございました。
 時として国民の感情に訴え扇情的なものとなる可能性もある放送メディアにおける有料の広告、いわゆるスポットCMについては、国民が放送メディアの影響から離れて冷静に判断するための言わば冷却期間として、投票日前の一定期間を禁止することが必要だと考えています。
 そこで、一方では広告主の表現の自由をできる限り尊重すること、他方では財力の多寡による不平等が生じるおそれがあること等を総合的に勘案し、かつ期日前投票の期間が投票日の二週間前から始まっていることも踏まえ、スポットCMの禁止期間を投票日前二週間としたところであり、議員の御懸念の趣旨にも十分配慮した内容になっているものと考えております。
 以上で私の答弁を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
    ─────────────
#25
○議長(扇千景君) 近藤正道君。
   〔近藤正道君登壇、拍手〕
#26
○近藤正道君 社会民主党・護憲連合の近藤正道です。
 私は、会派を代表し、日本国憲法の改正手続に関する法律案について発議者に質問をいたします。
 初めに、衆議院憲法調査特別委員会での質疑打切りと強行採決に断固抗議をいたします。それに関連をいたしまして、先ほどの保岡発議者の、参議院は衆議院の足りないところを審議すればいい、正に参議院の存在を無視するかのような暴言に強く抗議をし、保岡発議者より答弁の撤回と謝罪をこの場で求めたいと思います。
 言うまでもなく、この法案は憲法改正の手続を定めたものであります。拙速を避け、慎重の上にも慎重を期すのが当然であります。私は今、この国の将来に大いなる危惧と懸念を抱いております。
 私たちは、この法案を改憲準備法だと指摘をしてまいりました。この象徴が憲法審査会の存在であります。安倍総理が登場し、参議院選挙の争点に憲法改正を掲げ、法案の早期成立を繰り返し明言し、立法府に介入をいたしました。憲法上許されない行為であります。
 この法案が成立すると、次の国会から、九条を始めとする憲法の基本原理を破壊し、立憲主義を否定する、あの自民党の新憲法草案をベースに公然と改憲の論議が始まるのです。どうしてこれが公正中立な手続法と言えるのでしょうか。改憲と地続きの法案ではないですか。国民は改憲を、とりわけ九条改憲を決して望んでおりません。私たちは本法案に強く反対をいたします。
 また、衆議院段階で行われた公聴会では、慎重審議を求める声や法案に反対する声が圧倒的多数でありました。国民に正しい情報が伝えられ、自由な投票運動が保障され、国民の意思が正しく表明できる投票方法、そして国民の総意に支えられた投票制度であることが必要であります。法案はこの原則を否定する欠陥法との指摘がたくさんなされました。国民主権主義の否定、国民不在の国民投票法案と言われても当然ではないですか。発議者は、公聴会におけるこの多数意見をどのように受け止めておられるんでしょうか。
 次に、公務員、教育者の地位利用による投票運動の禁止及び政治的行為の制限について伺います。
 公務員や教育者が職務上中立であるのは当然でありますが、同時に、表現の自由を有する主権者でもあります。五百万人以上にも及ぶこの人たち、すなわち主権者を一律に萎縮させるおそれの強い二重の規制は、憲法上許されないのではないでしょうか。しかも、どのような行為が許され、どのような行為が許されないのか不明確であります。これから必要な法制上の措置を講ずるというのもおかしい。こんな規制の仕方は許されないのであります。
 テレビ、ラジオの有料広告についてお伺いいたします。
 投票期日前二週間の禁止で足りるとしておりますが、これでは有料広告が資金力のある個人、団体に独占され、自由で公正な国民の意思形成が妨げられることになるのではないでしょうか。業界の自主規制は不十分であります。公正なルールが見付からない以上、全面禁止にすべきではないでしょうか。
 投票率に関してお伺いいたします。
 最近は、投票率が二〇%台といった低い投票率となることも少なくありません。低投票率の結果、その過半数が国民の十数%などと、ごく一部になることも考えられます。これで国民の承認を経たと言えるんでしょうか。硬性憲法の本質を貫き、国民の総意に基づいたものと言えるのでしょうか。なぜ最低投票率を設けないのか、明快にお答えください。
 投票方法についてお伺いいたします。
 法案では、「内容において関連する事項」としか定めておりません。内容において関連する事項とはどういうことでしょうか。個別投票が基本であるべきであります。人権規定のすべてを内容において関連するとして、一括して投票することも可能にしてしまいませんか。
 また、憲法九条に九条の二を加え、前の項で自衛軍を創設するとし、後の項で自衛軍の海外派兵・活動を定めた場合、両者は内容において関連すると言えるのでしょうか。専守防衛の自衛軍には賛成できるけれども、海外派兵・活動には反対という国民の意思は正しく表明できるのでしょうか。
#27
○議長(扇千景君) 近藤君、時間が超過しております。簡単に願います。
#28
○近藤正道君(続) 法案は、憲法改正について、公正、慎重に国民の判断を仰ごうという姿勢がみじんも見られません。憲法の改正権者は国民であり、国会は改正案を提案するにすぎません。このような国民不在の法案を作成し、改憲のプロセスだけを推し進めることは断じて許すことができません。
#29
○議長(扇千景君) 近藤君、簡単に願います。
#30
○近藤正道君(続) 法案を撤回し、憲法理念の実現に向けた努力を強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔衆議院議員葉梨康弘君登壇、拍手〕
#31
○衆議院議員(葉梨康弘君) 良識の府であるこの参議院において答弁をさせていただくこと、大変光栄に存じております。
 本法律案の提出者を代表いたしまして、近藤議員の御質問に御答弁申し上げます。
 まず、改憲と地続きの法案ではないかとのお尋ねがございました。
 現行憲法制定以来六十年を経た今日、時代の要請により、世論調査等において示されるように、憲法改正の議論の必要性について関心が高まっていることを近藤議員も十分御理解のことと思います。
 そうした中、憲法改正について議論をし、その結果、憲法改正が必要とされた場合にこれを実現するための手続であり、しかも、現行憲法制定当初から憲法九十六条が規定する国民投票について具体的な手続を制度化することは、国民の関心にこたえ、国民主権を確立するために必要なことと認識しております。
 また、憲法改正案が具体的に国会に提出されていない現段階において、憲法改正国民投票法制について、憲法改正の中身と切り離して冷静に議論をすることは、公正かつ中立な憲法改正国民投票法制を目指すという点からも適当と考えております。
 次に、公聴会についてお尋ねがございました。
 衆議院段階では、二回の公聴会において十三人の公述人、二か所の地方公聴会において八人の意見陳述者から意見を聴いたところであります。また、これとは別に、有識者として三十八人の参考人から意見を聴いております。
 これらの意見には様々なものがあったと承知しておりますが、本法律案の早期成立を求める意見陳述もなされております。本法律案は、公聴会で伺った意見も踏まえて修正を行っており、サイレントマジョリティーを踏まえつつも、正に公正中立な国民投票制度を整備するものとなっているものと考えております。
 次に、公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動の禁止及び政治的行為の制限についてお尋ねがございました。
 まず、公務員等、教育者の地位利用による国民投票の禁止については、対象となる行為が明確となるよう、地位利用の概念について、その地位にあるため特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用することであると具体的かつ明確に規定しております。また、違反に対する罰則も設けておりません。したがって、公務員等や教育者の国民投票運動に対して萎縮させるおそれが強いとの批判は当たらないものと考えております。
 また、附則に、公務員の政治的行為の制限規定の検討条項を規定をしております。公務員であっても、国民として他人に対する賛否の勧誘を行うことは広く認められるべきものと考えておりますが、他方、特定の公職の候補者を支持するなどの政治的目的を持った組織的な署名運動などは、全体の奉仕者たる公務員にふさわしくありません。
 このような観点から、両者の切り分けについては、この法律で一律に適用除外とするのではなく、本法律が施行するまでの三年間に、公務員の政治的行為の制限について定める国公法、地公法等の世界においてその規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることとしております。
 次に、テレビ、ラジオの有料広告についてお尋ねがありました。
 時に国民の感情に訴え扇情的なものとなる可能性もある放送メディアにおける有料の広告、いわゆるスポットCMについては、国民が放送メディアの影響から離れた、冷静に判断するための言わば冷却期間として、投票日前の一定期間禁止することが必要だと考えます。
 そこで、一方では広告主の表現の自由をできる限り尊重すること、他方で財力の多寡による不平等が生じるおそれがあること等を総合的に勘案し、かつ期日前投票の期間が投票日の二週間前から始まっていることも踏まえ、スポットCMの禁止期間を投票日前二週間としたところでございます。
 次に、最低投票率についてお尋ねがございました。
 国民投票の結果が主権者たる国民の意思をできる限り正確に反映したものとなるようにすることは必要であり、投票率が低いことは望ましいことではございません。しかし、最低投票率制度を設けると投票をボイコットさせる運動を誘発させるおそれがあり、かえって国民の意思を正確に反映することができない可能性もございます。しかも、憲法九十六条が規定する以上の加重要件として最低投票率制度を設けることは憲法上も疑義があると言わざるを得ません。
 これが本法案におきまして、最低投票率について規定しない理由でございます。
 最後に、個別投票についてのお尋ねがございました。
 何が内容ごとに関連するまとまりの事項かということにつきましては、一方で個別の憲法政策ごとに民意を問うという要請から、他方で相互に矛盾のない憲法体系を構築するという要請から決定されるべきものであると考えております。そして、そのような何が内容において関連する事項かの判断は、憲法上、国民に対する憲法改正の発議権を有する唯一の機関である国会のみが行うことができると考えられ、衆参両院の国会議員による議論を通じ判断されることが正に憲法の要請であると考えております。
 以上で私の答弁を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
#32
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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