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2007/06/11 第166回国会 参議院 参議院会議録情報 第166回国会 本会議 第35号
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2007/06/11 第166回国会 参議院

参議院会議録情報 第166回国会 本会議 第35号

#1
第166回国会 本会議 第35号
平成十九年六月十一日(月曜日)
   午前十一時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三十五号
  平成十九年六月十一日
   午前十一時開議
 第一 公職選挙法の一部を改正する法律案(衆
  議院提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、国家公務員法等の一部を改正する法律案(
  趣旨説明)
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 国家公務員法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。渡辺国務大臣。
   〔国務大臣渡辺喜美君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(渡辺喜美君) 国家公務員法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 これまで公務員は、戦後レジームの中で国家運営の担い手として、国民と国家の繁栄のために積極的な役割を果たしてまいりました。しかしながら、今日、本来優秀な人材が集まっているにもかかわらず、その能力が十分に発揮されているとは言えない状況にあります。経済社会の変化に対応し、政策企画能力を高めるため、民間の専門能力を取り入れる必要も指摘されており、一方で、予算や権限を背景とした押し付け的なあっせんや相次ぐ官製談合に対しては国民の強い批判があります。
 このため、国家公務員に係る制度の改革を進める観点から、人事評価制度の導入等により能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図るとともに、離職後の就職に関する規制の導入、再就職等監視委員会の設置等により退職管理の適正化を図るほか、官民人材交流センターの設置により官民の人材交流の円滑な実施のための支援を行う等の所要の改正を行う本法律案を提出する次第であります。
 次に、本法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、国家公務員の人事管理の原則として、職員の採用後の任用、給与その他の人事管理は、職員の採用年次及び合格した採用試験の種類にとらわれてはならず、人事評価に基づいて適切に行われなければならないこと、人事評価は公正に行うこととし、その基準及び方法等を定めることを明確にしております。
 第二に、能力本位の任用制度を確立させるため、内閣総理大臣が、職制上の段階の標準的な官職の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力として標準職務遂行能力を定めるとともに、標準職務遂行能力及び適性を昇任又は転任の判断基準とするとしております。また、内閣総理大臣は、採用昇任等基本方針の案を作成して閣議の決定を求めることとしております。
 第三に、退職管理に関し、離職後の就職に関する規制として、各府省等職員が職員又は職員であった者について、営利企業等に対し離職後の就職のあっせんを行うことを禁止しております。また、職員が自らの職務と利害関係を有する一定の営利企業等に対し求職活動を行うことを規制をしております。さらに、離職後に営利企業等の地位に就いた職員が、一定の国の機関の職員に対し、当該営利企業等が関係する契約又は処分であって離職前に関係していた職務に属するもの等に関して働き掛けを行うことを規制をいたしております。
 第四に、職員の離職に際しての離職後の就職の援助を行うとともに、官民の人材交流の円滑な実施のための支援を行うため、内閣府に官民人材交流センターを置くこととしております。また、離職後の就職に関する規制の実効性を確保するため、厳格な監視を行う体制を整備する必要があることから、同規制の適用除外の承認、任命権者への勧告等を実施する再就職等監視委員会を内閣府に置くとともに、同委員会に再就職等監察官を設置し、離職後の就職に関する規制違反の調査等を実施することとしております。
 第五に、国家公務員である特定独立行政法人の役員について、国家公務員法と同様の規定を適用することといたしております。
 このほか、国家公務員の職階制に関する法律を廃止するとともに、罰則等について所要の規定を設けることといたしております。
 以上が本法律案の趣旨であります。(拍手)
    ─────────────
#6
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。秋元司君。
   〔秋元司君登壇、拍手〕
#7
○秋元司君 自由民主党の秋元司でございます。
 私は、自由民主党及び公明党を代表して、国家公務員法等改正案について総理並びに担当大臣に質問いたします。
 総理、サミットの御出席、お疲れさまでございました。温暖化問題に米国と欧州との間で隔たりがある中、総理は両者をブリッジし、温暖化ガス半減に向けての合意を導く重要な役割を果たされました。これは、次回我が国で開催される洞爺湖サミットにもつながる大きな仕事であったと評価するものであります。
 さて、国会も最終盤を迎えた中、総理の御帰国を待って公務員制度改革に向けた公務員法改正案がいよいよ本院で審議入りいたしましたことに大変意を強くいたしております。
 この公務員制度改革は、二十一世紀我が国の形を決める極めて重大な課題と認識しています。総理が提唱される美しい国づくりのためにはグッドシェイプの筋肉質の政府が必要であり、その手法として公務員制度改革を欠くことができません。参議院選挙も間近に迫っている中、本法案の審議を通じて、総理のうたわれる美しい国、あるべき国の姿が国民の目に鮮明になることを願って質問に入らせていただきます。
 私は、公務員制度改革の目指すところは、我が国が永続しつつ発展をしていく中において官僚機構が寄与するよう、公務員一人一人が使命感や責任感をしっかりと持てる仕組みを再構築することにあると考えております。そのため、こうした認識を基礎として、能力・実績主義の導入や、国民の関心が高い天下りに対する規制等を柱とする本法案が取りまとめられたと受け止めております。しかしながら、今回の改正案を与党による公務員たたきの構図としてとらえるマスコミ報道も見られるところであります。
 そこで、まず安倍総理に、現行の公務員制度の何が問題であると御認識されているか、また、公務員制度改革の目的については何かについて改めて御披瀝願いたいと存じます。
 次に、天下り規制について伺います。
 相次ぐ公務員不祥事を契機に、天下りの弊害を除去すべくその見直しに向けての機運が高まり、ここ数年来、政府・与党で検討が行われてまいりました。その際、天下りや役所のあっせん自体を禁止するのではなく、早期退職慣行の是正や、厳しい罰則を伴った行為規制等を掛ける方向で天下り是正へのアプローチがなされてきたことは御案内のとおりであります。
 総理はここから更に一歩進め、各省庁による再就職あっせんを禁止して新人材バンクへ一元化することで押し付け的あっせんを根絶するとの方針を示し、天下り見直しへの決意を明らかにされました。そして、これを受け、政府、与党間で精力的な協議が行われた結果、内閣府に官民人材交流センターを設置し、三年間で各省の再就職あっせんを禁止することが打ち出されたのであります。
 しかし、この官民人材交流センターが所期の目的どおりに機能するか、懸念もあります。毎年約四千名にも上る早期勧奨退職者がおり、そのうち各省であっせんしているのが約半分の二千名程度と推計されております。新たに設けられる新組織でこれだけの再就職を円滑に進め、適正なマッチングを行うことは、かなりの困難が伴うのではないかと考えます。
 そのため、政府・与党合意では、センター職員は人事当局と必要に応じて協力することが盛り込まれました。これを骨抜きと指摘する声もありますが、私は、制度発足に当たって、センター側に十分なノウハウがない状態時に各省の人事当局の協力を得るのはむしろ当然のことと思います。
 官民交流センターの制度設計は、具体的には有識者懇談会の意見を踏まえて検討することとされておりますが、発足に向けていかに実効の上がる制度としていくのか、総理に御所見を伺います。
 また、事後チェックを担うこととなる再就職等監視委員会の機能も重要です。罰則を伴う行為規制の実効性のためには、人員面も含め、しっかりとした監視体制の構築が必要ですが、この点、渡辺大臣にお伺いします。
 次に、能力・実績主義の導入について伺います。
 今回の改正案では、天下り規制の強化が強調された嫌いがあります。私は、公務員制度改革を進める上で、能力・実績主義の導入こそ重要であると考えています。入省年次や採用試験をベースとする人事管理を改め、民間的な手法を導入する今回の改革は、これまでの行政に欠けていた機動的、戦略的な人事マネジメントを可能にするものと高く評価いたしております。
 改正案では、採用、昇任等に関する制度の基本方針を総理が作成をすることが明記されております。これまでの数十年にも及ぶ慣行で、現在の姿に構築されてきた年功序列型制度等を改めるのは大変困難な課題と存じますが、総理の強い指導力によって、硬直化した人事制度を変革していただきたい。そして、志を持ち、高い能力と有用性を発揮した公務員を適切に処遇できるような官僚機構が実現されることを要望いたします。
 また、分限免職の処分はこれまでほとんど行われておりませんが、本法案では分限規定の明確化が図られていることから、今後、十分に活用していただきたいと存じます。
 そこで、能力・実績主義の導入は、公務員制度にどのような変化をもたらすのか、昨年から試行されている人事評価の状況も含め、総理に御説明を願います。
 また一方で、この能力・実績主義については、本来、利益の追求から離れて存する公務員に成果主義はなじまないとの指摘も見られるところです。これは公務の本質とは何かという基本的な問題でもありますので、総理の御所見をお伺いします。
 今回は天下り規制や能力・実績主義が盛り込まれましたが、スタッフ職や公募制の導入、官民交流の拡大等、重要な課題はまだ残されております。これらの諸課題は、来年の通常国会に基本方針を盛り込んだ法案として提出予定と伺っております。これ以外にも、労働基本権等の課題もありますが、抜本的な公務員制度改革に向け、いかに取り組まれるか、総理に方針を伺います。
 また、私は、官民交流の一環として、政治任用制を推進すべきではないかと考えるものであります。
 米国では、政権交代に伴い、幹部職員がほとんど総入替えとなり、約三千人もの人員が交代することがあります。そして、これにより、民間企業やシンクタンクとホワイトハウスとの間における交流が行われております。我が国においても、その規模はともかく、我が国独自の政治任用制の採用により、より一層の官民交流の拡大を図り、省益よりも国益を優先する行政への転換が期待できると考えます。
 以上、伺ってまいりましたが、今回の公務員制度の眼目は、結局のところ、国益は省益を優越するという当たり前のことを公務員の皆さんにしっかりと心に留めていただき、公務に専念できる制度を構築することに存すると考えております。本法案はそのための方策の一つであり、今国会での成立を図り、抜本的な公務員制度改革の流れを確実なものとしていくことが政治の責任であるということを最後に申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#8
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 秋元司議員にお答えをいたします。
 現行の公務員制度の問題点と、今回の公務員制度改革の目的についてお尋ねがありました。
 現行公務員制度の問題点として、経済社会の変化に対応して、公務員の政策企画能力を高める必要などが指摘され、また押し付け的あっせんや官製談合に対する強い批判があります。
 このため、今回の公務員制度改革においては、改革の第一歩として、年功序列を打破し、天下り問題を根絶することとしております。これは、公務員に対する信頼を回復し、公務の世界に国益を真に追求する優秀な人材が集まり、公務員が誇りを持って仕事に邁進し、責任を果たせる仕組みをつくるとともに、公務員の能力を多様に生かせる仕組みをつくることを目的としており、極めて重要な政策課題と認識しております。
 官民人材交流センターの制度設計についてのお尋ねがありました。
 官民人材交流センターについては、再就職ニーズに十分対応した積極的な求人開拓営業、キャリアコンサルティングの実施等により、センターの再就職支援機能の重点的強化を図ること、また、各府省等からの中立性を徹底し、実効性のある効率的な組織運営とすることなどの原則を平成十九年四月二十四日、「公務員制度改革について」において閣議決定いたしております。これらの原則に従い、官房長官の下に置く有識者懇談会の意見を踏まえ制度設計の詳細を検討していくことにより、実効の上がる制度としてまいりたいと考えております。
 能力・実績主義の導入による公務員制度の変化及び評価の試行の状況についてのお尋ねがありました。
 今回の公務員制度の改革では、採用試験の種類や年次にとらわれず、能力と実績の評価に基づいて人事を行うことを明確にしております。このような能力・実績主義の導入により、公務員がその能力を生かして国民の負託に生き生きとこたえていく、そのような公務員制度に変化していくものと確信をいたしております。
 なお、人事管理の基礎となる新たな人事評価については、評価基準の検証等、評価に係る検討課題を実証的に確認するための試行を重ねております。この試行により得られる知見も踏まえ、実効性のある人事評価制度を構築し、これを基に能力・実績主義の人事管理を徹底してまいります。
 能力・実績主義の導入と公務の本質との関係についてのお尋ねがありました。
 営利の追求を目的としない公務の世界においても職員の能力と実績を評価することは可能であり、公務の世界にもその実績に根差した能力・実績主義は導入し得るものと考えています。そのような能力・実績主義を導入することは、公務員が公のため、国益のためという使命感と誇りを持って仕事に邁進しつつ、能力を高め、その能力を多様に生かせる仕組みをつくることとなり、二十一世紀にふさわしい行政システムを支える公務員像の実現につながるものと考えております。
 公務員制度改革の進め方についてのお尋ねがありました。
 公務員制度改革については、第一歩として、能力・実績主義や再就職規制を内容とする法案を提出しており、まずは本法案を成立させることが重要と考えています。さらに、本改革は人事管理制度全体に変革をもたらしていくものであり、パッケージとして改革を進めていくことが必要であります。
 このため、公務員制度の総合的な改革を推進するための基本方針を盛り込んだ法案を次期通常国会に提出いたします。また、この立案に向けて、私の下に有識者から成る検討の場を設け、採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について、総合的、整合的な検討を進めてまいります。労働基本権を含む公務員の労使関係の問題についても、改革の方向で見直すべきものと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺喜美君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(渡辺喜美君) 再就職等監視委員会の機能及び体制についてのお尋ねがございました。
 再就職等監視委員会については、公務員OBを除く外部の有識者の中から両議院の同意を得て任命される委員で構成されます。その下に置かれる再就職等監察官とともに、各府省等から独立した監視機関として、再就職等規制違反行為、すなわちあっせん規制、求職活動規制及び働き掛け規制に違反する行為の調査等の権限を行使することになります。
 再就職等監視委員会については、委員長及び四人の委員で組織することとしております。また、再就職等監察官については、再就職に関する規制の実効性を確保するための体制について検討していくこととしております。
 いずれにしても、国民の目線で厳格な監視のできる体制を構築するため、平成二十年度予算編成に向けて検討してまいります。(拍手)
    ─────────────
#10
○議長(扇千景君) 工藤堅太郎君。
   〔工藤堅太郎君登壇、拍手〕
#11
○工藤堅太郎君 民主党・新緑風会の工藤堅太郎でございます。
 ただいま議題となりました国家公務員法等の一部を改正する法律案について、会派を代表して安倍総理に質問をいたします。
 衆議院で与党は、本法案を当初、年金関連二法案と同じ日に同じように強行採決をするというむちゃくちゃな国会運営に対する国民の反発が強く、自民党出身の河野衆議院議長でさえ、その日のうちに強行採決に難色を示したため、結局、採決は週明けに持ち越されました。それにしても、報道によりますと、参議院の自民党幹部は、残されたわずかな会期にこの法案を成立させることは困難であると判断し、そもそも参議院送付に反対したにもかかわらず、安倍総理が強引に押し通したとのことであります。
 参議院は、再考の府として、重要広範議案は最低でも二十日を掛けて審議する慣行を与野党が遵守してきました。成立の可能性が少ないこの法案をあえてこの時期に参議院に送ることにしたのは、明らかに現在国民が極めて強い関心を示している消えた年金問題以外に目を向けさせようという、明らかな選挙目当ての争点隠しに思えてなりません。御見解を伺います。
 さて、この新人材バンク法案の背景には、明らかに公務員の天下りによる談合事件の続発があります。消えた年金問題の社会保険庁、及び亡くなられた松岡前農水大臣が献金を受けていた緑資源機構などの問題も正に天下りの弊害の一環であり、自民党もその中で大きな役割を果たしてまいりました。民主党としては、長年、天下り問題の解決に取り組んできましたが、政府はその声にほとんどこたえてきませんでした。今までほったらかしにしておいて、ここに来て急に天下りの問題に積極姿勢を見せ、一体どんな法案を出してくるのかと見ていたら、これがとんでもない欠陥法案であります。
 以下、具体的にお伺いをいたします。
 この国家公務員法改正案は、これまで各省庁が人事の一環として行ってきた公務員の再就職、つまり天下りのあっせんを禁止し、再就職のあっせんは新設する官民人材交流センター、いわゆる新人材バンクに一元化するというのがその柱であります。
 しかし、この人材バンクが具体的にどのように再就職をあっせんするのかがさっぱり分かりません。というのも、その具体的な内容については、今後、官房長官の下に置く有識者会議の意見を踏まえ、政府として検討すると先送りしているからであります。最も重要な部分を先送りするような法律が果たして許されるのでしょうか。
 まず、この新人材バンクは具体的にどうやって民間から求人情報を集めるのか。もしハローワークと同じようなことをするのであれば、わざわざ新人材バンクなどつくらず、退職した公務員にはハローワークに行ってもらうのではなぜいけないのでしょうか。
 もっと難しい問題は、新人材バンクがどのように退職する公務員の求職情報を集めるかという問題であります。政府の方針では、癒着防止のため、各省庁から新人材バンクに出向してきた職員が元の省庁の職員の再就職のあっせんを行うことを禁じています。しかし、これは新人材バンクの職員が同じチームで働きながら職員同士が協力することができないということを意味しており、組織運営上、非常に不自然で、実際上不可能な要請と言えます。
 しかも、この法案をめぐる与党との協議の中で、政府は初め各省庁が人材バンクに関与することを一切禁止することを目指していたのに、結局、人事上の情報については必要に応じて協力するという合意がなされました。何ということでしょうか。あっせんされる職員のことをほとんど知らない人材バンクの職員が、彼のことを非常によく知っている出身官庁の職員の協力を求めれば、その言いなりになるのは目に見えています。結局、新人材バンクは、これまで省庁が個別に部内でやってきたことを一つの場所に集め、大っぴらに行うだけのことであります。これを新天下りバンクと呼ばずに何と呼べばよいのでしょう。
 実は、政府は、既に同じような人材バンクを七年前に設け、公務員の再就職のあっせんをしているにもかかわらず、成立したのはこの七年間にたった一件だけといいます。これが看板を掛け替えたからといって急に有効に働くようになろうとは到底思えません。御意見を伺います。
 ところで、本法案は、能力・実績主義の新しい人事管理など美辞麗句を並べながらも、なぜ天下りがなくならないのかという天下りの本質について全く踏み込んでいません。
 現在、中央省庁の公務員の天下りを言わば必要悪としているのは、いわゆる早期退職勧奨であります。ピラミッド型の組織を維持するために、エリートの公務員は、早ければ五十歳前後から肩たたき退職を余儀なくされています。こうした早期退職勧奨を残したままで天下りを全廃することは、こうした人たちを路頭に迷わせることになり、到底不可能であります。
 しかし、今回の法案では、こうした公務員制度全体の仕組みをどうするかについて、無責任にも完全に先送りされております。今回の法案が全く不完全なものになっているのもそのためであります。今焦眉の年金法案と同じく、正に易しいところだけのつまみ食いであり、正に木を見て森を見ずの法案となっているのであります。なぜ、早期退職勧奨を廃止するための直接的規定を盛り込まないのですか、お答えください。
 さて、この法案の最大の問題点は、これまで不完全ながらも天下りの歯止めの柱となっていた天下りの事前規制を完全に撤廃してしまうことであります。新人材バンクを通せば、退職後直ちに関連のどのような企業や団体にも就職することができるようになります。それに対して、私たちは、事前の天下り規制は是非とも必要であり、就職できない期間を今の二年から五年にするべきだと主張していますが、一顧だにされていません。正に天下り推進法案以外の何物でもありません。見解を伺います。
 法案では、新人材バンク以外の省庁職員の個人によるあっせんについて罰則を設け禁止しています。しかし、天下りの本質は役所対企業という組織同士の癒着であり、個人の能力や人間関係ではありません。先日、東京証券取引所の理事長に、政府の強い反対の表明にもかかわらず、財務省のOBが就任したように、天下りは通常あうんの呼吸で行われるものであります。本当は権限による押し付け以外の何物でもないとしても、役人側がそれを明言せず、企業側の自由であるといえばそれまでであります。この規定はないよりはましとはいえ、新人材バンクによって天下りを事実上解禁する限り、今までと何かが変わるとはとても思えません。いかがでしょうか。
 次に、民主党が議員立法として衆議院に提出した天下り根絶法案について総理に質問いたします。
 この法案と政府案との違いは、一言で言えば、天下りを促進する新人材バンクのような余計なものはつくらず、政府案では撤廃されている天下りの事前規制を一層強化しているということであります。
 民主党案では、天下りを原則禁止する期間を現在の離職後二年から離職後五年に拡大するとともに、天下りの規制対象を営利企業に加えて非営利企業にまで拡大しています。また、民主党案では、退職職員は離職後十年間は、離職前の在職機関の職員に対して、また離職前五年間に担当していた職務に属するものに関する働き掛けを禁止するなど、古巣の官庁に対する退職職員の働き掛けを様々な角度から禁止しています。
 また、民主党案では、天下りの最も根本的な原因と言われる国家公務員のいわゆる早期退職勧奨について、任命権者が職員に対して定年前の退職を勧奨することを直接禁止しています。さらに、地方公務員や政府と関係が近い特殊法人、独立行政法人について、民主党案では規制を設けています。
 結果として天下りを促進する与党案よりも、私たちの民主党案の方がずっと国民の立場に立った法案で、今からでも私たちの提案を政府・与党は受け入れるべきだと考えますが、総理の御見解を伺います。
 ところで、天下り問題は、今正に国民の怒りが沸騰している消えた年金の問題とも深い関係があります。年金が湯水のごとくつぎ込まれて消えたグリーンピア事業を行った年金福祉事業団など、歴代の社会保険庁の長官らは次々と関連団体に天下り、幾つもの団体を渡り歩き、中には三億円を超える退職金を手にした人もいました。
 こうした中で、総理がサミットに出掛けている間に、新たに千四百万件を超える年金記録の統合漏れが明らかになりました。古いデータなので関係者は高齢に達している人がほとんどだと思われ、一刻の猶予も許されません。この対策をどうするのか、総理の口からお聞きしておきたいと思います。
 総理、あなたの今回の国会審議での乱暴なやり方を見ていると、恵まれた環境で育ったわがままの地が出たように思えてなりません。与党が衆議院で三分の二を超える議席を持っているので、何でもできるとばかりに、赤いあめも欲しい、白いあめも黒いあめも青いあめも欲しいと、周りを見ずに刀をやみくもに振り回しているように見えて仕方がありません。たとえ自民党内でそのようなわがままを押し通せたとしても、ここ参議院では私たち民主党が許しません。
 あなたが審議を強引に進めようとすればするほど、国民の不信感はますます強まります。急速な支持率の低下にうろたえた自民党内には、何と参議院選挙の日程を後にずらす案まで出ているとのことですが、こうした動きについて総理はどうお考えですか。小細工すればするほど、国民の心は総理から離れていくと思いませんか。小細工せずに、長期的な観点から、天下りが根絶されるような抜本的な公務員改革を行うべきだと強く申し上げて、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#12
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 工藤堅太郎議員にお答えをいたします。
 今回の法案を参議院に送付したことについてお尋ねがございました。
 国民には、談合を根絶せよ、その温床となっている押し付け的天下りをやめさせてほしいという強い声があります。政府は、国民からの声にこたえるため、天下りに伴う官製談合あるいは押し付け的天下りは根絶するという決意を持って今国会に今回の法案を提出いたしました。
 なお、法案の審議日程は国会でお決めいただくことであり、コメントを控えますが、今申し上げました政府の考えを何とぞお酌み取りいただき、是非とも成立をよろしくお願いをいたします。
 官民人材交流センターの行うあっせんについてお尋ねがありました。
 官民人材交流センターについては、本法案においてセンター長以下の内部の組織体制等を定めております。また、再就職ニーズに十分対応した積極的な求人開拓営業、キャリアコンサルティングの実施や、センター職員は出身府省職員の再就職あっせんを行わないなど、あっせんの在り方を含めた原則を平成十九年四月二十四日、「公務員制度改革について」において閣議決定いたしております。これらの原則に従い、官房長官の下に置く有識者会議の意見を踏まえ制度設計の詳細を検討していくこととしており、最も重要な部分を先送りしているとの御指摘は全く当たらないものと考えております。
 官民人材交流センターとハローワークの違いについてお尋ねがありました。
 官民人材交流センターは、公務員である求職者の能力、特性を踏まえながら、再就職ニーズに十分対応した積極的な求人開拓営業により民間企業等から求人情報を集めることとしております。また、今般、各省庁による天下りあっせんを全面禁止するとともに、在職中の求職活動も制限し、罰則も含めた厳しい制約を課すこととしたところであります。
 このような制約の下で、再就職に当たり何らの支援も行わずハローワークを使えばいいとした場合、公務員には身分保障が存在するため、役所に残ろうとし、行政の減量や効率化を妨げる要因にもなりかねないものと考えております。このため、官民人材交流センターが透明な仕組みにより再就職の支援を行うこととしたものであります。
 新人材バンクによる求職情報の集め方についてお尋ねがありました。
 官民人材交流センターにおいては、退職する公務員の能力、適性等を把握するため、キャリアコンサルティングの実施や人事当局等の協力による対象職員のキャリアや人的情報の把握等を行うこととしております。このような方法により、出身省庁職員でなくても再就職支援に必要な情報を把握することは十分可能であると考えています。
 出身官庁職員の協力を求めれば、新人材バンクの職員がその言いなりになるとの御指摘がありました。
 官民人材交流センターは、関係行政機関に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができることとされております。これらはいずれもあっせんの対象職員に関する必要なキャリア及び人的情報の把握のために行うものであり、再就職のあっせん自体は予算や権限を背景としない中立的な立場で対象職員本人の能力、経験に基づいて行うことから、御指摘は当たらないと考えております。
 試行人材バンクと比べた官民人材交流センターの機能についてお尋ねがありました。
 現在、人材バンクについては、人材バンクへの求人登録件数が伸び悩んでいたこと、求人が各府省等に直接行われる例が多いことなどから実績が十分に上がっていなかったものと承知しております。今回の法案では、各省が人事の一環として行っていた再就職あっせんを禁止し、官民人材交流センターに一元化するとともに、再就職ニーズに十分対応した積極的な求人開拓営業、キャリアコンサルティングの実施等により、センターによる再就職支援機能の重点的強化を図ることとしており、現行の人材バンクから飛躍的な改善が図られると考えています。
 早期退職勧奨についてお尋ねがありました。
 今回の法案において、能力・実績主義を導入し、年功序列を打破することにより、同期や後輩も上位の官職に就くことが普通になります。したがって、同期も横並びで昇進し、幹部クラスでポストがなくなると退職を勧奨するという、いわゆる早期退職慣行はなくなっていくものと考えています。他方、公務以外の世界に転出した方が望ましい職員などに対し退職を勧奨することは今後ともあり得るものと考えております。また、長期間在職可能な専門スタッフ職の俸給表の新設について、既に昨年十月に閣議決定し、人事院に対してその具体化を進めるよう要請しております。
 なお、スタッフ職制の導入、定年の延長などを含む採用から退職までの人事制度全般の課題については、四月二十四日に閣議決定された「公務員制度改革について」において、私の下に有識者から成る公務員制度に関する検討の場において検討を進めることとされており、今後、パッケージとしての改革として総合的、整合的な検討を行うこととしております。
 政府案は天下り推進法案ではないかとのお尋ねがありました。
 政府案においては、押し付け的なあっせんによる再就職を根絶するため、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止することとしております。これに加え、民間に就職した職員の出身府省庁への働き掛け等も規制し、これに関する不正行為に対しては刑罰を導入しています。また、外部監視機関による厳格な監視体制も構築することとしております。このため、政府案は天下り規制を抜本的に強化するものであります。政府案は天下り推進法案だという御指摘は当たりません。
 また、政府としては、公務の中立性、公正性を確保しつつ、官と民との垣根を低くすることが望ましいことであると考えており、官民の人材の濶達な交流を損なうこととなる事前承認制度の抜本的強化には賛同できないところであります。
 政府案の天下り規制では今までと何も変わらないのではないかとのお尋ねがありました。
 政府案は、正に押し付け的あっせんによる再就職を根絶する法案であります。具体的には、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止し、官民人材交流センターに一元化するなど、非常に強い規制を設けます。仮に役人側が明言せずとも、あっせんの行為があれば規制の対象となります。さらに、これらの規制の実効性を厳正に確保するために、新たに外部監視機関を設置し、厳格な監視を行うことといたしております。
 また、官民人材交流センターは、内閣府に設置され、各府省等からの中立性を徹底されていること、センター職員は出身府省職員の再就職あっせんを行わないこととし、府省等の人事当局と企業等の直接交渉も禁止すること、あっせんによる就職実績の公表も含め、業務の透明性を確保し、そして外部監視機関による厳格な事後チェックを行うこととしていることなどを原則とし、その行う支援はいわゆる天下りとは異なるものであります。
 民主党の提案についてお尋ねがありました。
 公務員制度改革においては、公務の世界に国益を真に追求する優秀な人材が集まり、国民の信頼を背景に、公務員が責任と誇りを持って仕事に邁進できる仕組みをつくるとともに、公務員の能力を多様に生かせる仕組みをつくることが重要と考えております。このような考えに立ち、政府案においては、国家公務員について能力・実績主義の導入と天下り規制を主な内容としており、公務員制度改革の第一弾となるものであります。また、地方公務員についても同様の法案を提出しております。
 民主党案については、政府案と異なり、官と民との人材移動を遮断するとの問題があること、退職勧奨を全面禁止している点については、本来公務の外に転出する方が望ましい職員まで政府内に抱え込まざるを得ないとの問題があること、特殊法人の職員等、公務員以外の世界における人の行き来について規制を課すということはまた別の議論と考えることなどから、適切ではないと考えております。
 年金記録についてお尋ねがありました。
 御指摘の千四百万件の年金記録は、昭和二十九年以前の一定の厚生年金の記録をマイクロフィルムに収録し管理しており、この中には、既にオンラインの記録に収録されているものと受給資格を満たさないものを含め、収録されていないものがあると聞いております。既に、今回の一連の対策において、マイクロフィルムや市町村にある記録とオンライン記録とのチェックも行うことを明らかにしているところであり、千四百万件の記録のうち収録すべきものについても、その一環として優先して実施し、早期解決を図ってまいります。
 国会審議の進め方が強引ではないかとのお尋ねがありました。
 官製談合を許してはならない、そしてその温床となっている押し付け的な天下りを根絶しなければならないというのは、これは国民の強い声であります。度重なる官製談合に、国民は辟易をしているところであります。こうした国民の声に一刻も早くこたえていくために全力を挙げるのが、私たち政治家の使命ではないでしょうか。現在御審議いただいている国家公務員法等の改正案は、まさしくこうした国民の声にこたえるものであります。先送りするわけにはいきません。国会審議の進め方は国会がお決めになることでありますが、政府といたしましては、是非とも建設的な御議論をいただき、今国会において成立させていただきたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
#13
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
#14
○議長(扇千景君) 日程第一 公職選挙法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員長谷川秀善君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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   〔谷川秀善君登壇、拍手〕
#15
○谷川秀善君 ただいま議題となりました法律案につきまして、政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、衆議院及び参議院の比例代表選出議員選挙において、街頭演説を行うことができる場所を増加しようとするものであり、これにより、いわゆるマニフェストを頒布することができる場所が増えることとなるものであります。
 委員会におきましては、衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員長今井宏君から趣旨説明を聴取した後、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#16
○議長(扇千景君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
#17
○議長(扇千景君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
#18
○議長(扇千景君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          百七十九  
  賛成            百七十九  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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#19
○議長(扇千景君) 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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