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2006/11/08 第165回国会 参議院 参議院会議録情報 第165回国会 少子高齢社会に関する調査会 第2号
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2006/11/08 第165回国会 参議院

参議院会議録情報 第165回国会 少子高齢社会に関する調査会 第2号

#1
第165回国会 少子高齢社会に関する調査会 第2号
平成十八年十一月八日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十月二十五日
    辞任         補欠選任
     下田 敦子君     森 ゆうこ君
     前川 清成君     林 久美子君
 十一月七日
    辞任         補欠選任
     蓮   舫君 ツルネン マルテイ君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         清水嘉与子君
    理 事
                荻原 健司君
                川口 順子君
                中原  爽君
                足立 信也君
                島田智哉子君
                鰐淵 洋子君
    委 員
                岡田  広君
                沓掛 哲男君
                坂本由紀子君
                山崎  力君
                神本美恵子君
                主濱  了君
            ツルネン マルテイ君
                羽田雄一郎君
                林 久美子君
                松下 新平君
                森 ゆうこ君
                山本 香苗君
                山本  保君
                小林美恵子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        岩波 成行君
   参考人
       法政大学大学院
       政策科学研究科
       教授       諏訪 康雄君
       株式会社日本総
       合研究所主任研
       究員       池本 美香君
       日本女子大学人
       間社会学部教授  大澤真知子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○少子高齢社会に関する調査
 (「少子高齢社会への対応の在り方について」
 のうち仕事と生活の調和)
    ─────────────
#2
○会長(清水嘉与子君) ただいまから少子高齢社会に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、下田敦子さん、前川清成さん及び蓮舫さんが委員を辞任され、その補欠として森ゆうこさん、林久美子さん及びツルネンマルテイさんが選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(清水嘉与子君) 少子高齢社会に関する調査のうち、「少子高齢社会への対応の在り方について」を議題といたします。
 本日は、仕事と生活の調和について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、法政大学大学院政策科学研究科教授諏訪康雄さん、株式会社日本総合研究所主任研究員池本美香さん、日本女子大学人間社会学部教授大澤真知子さんに参考人として御出席いただいております。
 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございました。
 参考人の皆様方から、「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、仕事と生活の調和について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございますけれども、まず、参考人の皆様方から二十分程度それぞれ御意見をお述べいただき、その後、各委員から質疑をさせていただきたいと存じます。
 なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていきたいと存じます。
 また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、諏訪参考人からお願いいたします。どうぞ。
#4
○参考人(諏訪康雄君) 御紹介にあずかりました法政大学の諏訪でございます。この後、パソコンの操作上、座って御報告をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。(資料映写)
 仕事と生活の調和あるいは両立という、こういう言葉が、日本だけでなくて国際的にも議論され始めましたのは、恐らくこの二十年ばかりのことではないかと思います。その背景には、今どこの先進の諸国におきましても一番多い家庭というのは実は夫婦ともに働いている家庭でございまして、夫だけが働き、妻は専業主婦であるという、こういう伝統的なパターンが大きく変わってきますと、それだけに仕事と生活の間のバランスをどのように取るかということは、家庭生活あるいは子供の育児あるいは地域社会などとのかかわりで大変重要な問題になってきたわけでございます。
 さてそこで、最初に人材の重要性ということでございますが、これは大澤参考人の方が専門家である経済の方々は、社会の幸福は社会の富の価値で測られ、そして社会の富を生むのは人材である、そこで人材の価値をどのように上げていくかということが非常に重要だというふうに言われているわけでございますが、この点で、最近の日本は少子化ということで、若い新たな社会を支える人材の量が減っていくだけではなくして、その質が維持されるのかどうかということについて懸念を持たれているわけでございます。
 国際比較で大変有名なことでございますが、OECDがPISAと呼ばれる学習到達度の調査をしてみますと、日本はとりわけ読解力という点において、もはや先進国中のトップクラスではなくなってしまいました。真ん中より下のところへ来ておりまして、日本がこれまで目標としてきた国の一つであるドイツなどは大変悲惨な状況になってきております。
 そのように考えてみますと、人材の確保ということも今までのような漫然とした考え方だけではいけないということが多くの人たちに共通の理解となり、また、今現在、教育問題を大変熱心に各方面が議論しているところなんだろうと思います。
 国民が学習しなくなった、若い子が学力低下だと言いますが、実は読書量の調査を文化庁がやったところ、月に一冊も本を読まないという人が全国平均で三八%、三人に一人以上おりまして、地域によっては六割にも達するという大変懸念される事態になってきておりまして、親の世代も本を読まなければ、次の次世代が本を読むなんというわけにはなかなかいかない。このようなわけで、教育という点で大変懸念がされております。
 では、社会に出た人たちはどのように自分の仕事と向き合いながら勉強しているのかということなんですが、実は調査をしてみますと、日本の中高年はどうも余り勉強しない、国際的に見ても余り勉強していないんではないかとしばしば指摘されております。
 自己啓発という、自分なりに仕事のために勉強したというこの比率を調べてみますと、実は三人に一人だけぐらいでございまして、三人に二人は自己啓発をしておりません。つまり、職場を離れ、あるいは職場で訓練されているとき以外は、自分で何らか将来に向けて勉強するということをしていない。
 一体なぜ、日本は勤勉で勉強家の国だったはずだったのがこんなふうになってしまったんでしょうか。その一つのポイントがワーク・ライフ・バランス、仕事と生活のこのバランスがうまく取れなくなってきてしまっているんではないか。目先の仕事だけに追われてしまって、将来へ向けての自己投資ですとか、あるいは地域でのボランティア活動ですとか、このような様々な人間としての広がりを保障するもの、あるいは長い目で見て日本社会の維持発展に重要な要素、こうした部分についての投資がおざなりになっているんではないかということが懸念されるわけでございます。
 少子高齢化の進む国、これは先進諸国どこもほぼ同様にこうした問題を抱えているわけでございますが、男女を問わない人材の育成競争が起きており、とりわけ育成した人材を持続的に活用していく。いったん能力を付けた後途中でエンジンを止めてしまいますとなかなかその先にキャリアがつながらない。そこで、持続的な活用。また、年齢とかかわりのない働き方。それから、働き方を柔軟化していって仕事と生活の間のバランスを取りやすくしていく。それから、多様な人材が多様なライフプラン、キャリアプランで行動するようになってきて、そういう人たちが同じ職場に混在していくようになりますと、こうした多様性に応じた管理の在り方。さらには、こうしたもの全体をつなぐ仕事と生活の調和あるいは両立という問題がそれぞれ議論されてきたわけでございます。
 そこで、この場におけます課題である仕事と生活の調和あるいは仕事と生活の両立という問題は、なぜ改めて問題にされるんでありましょうか。
 ここに一人の人間の、丸で描いた部分が活動領域だとしますと、それぞれの人は仕事の領域と生活の領域を持っております。そして、この仕事の領域が生活の領域に、真ん中の分けている線が寄っていきますと生活面が圧迫されていく。他方、生活の領域が仕事の方へどんどんどんどん入ってきて仕事の領域が十分に展開されないと、社会経済の活力が失われかねない。そういうわけで、マクロで見てもワークとライフのバランスは必要である。しかし、ミクロで見れば、更に個々人にとってこれがうまくいくかどうかが幸せの総量を測る非常に重要な指標になるわけでございます。
 この点、まだ学校を出る前の学生たちにアンケート調査をしたことがあります。東京周辺の十大学の学生たちにアンケート調査をしたことがありますが、仕事と生活をどれぐらいの比率であることが理想なのかということと、それから社会へ出たら現実にどれぐらいになりそうかということを問うてみましたところ、男女計で仕事は半分よりちょっと少ない方がいいという、さすがに学生ですから若干たるんだ意見を言っているんですが、しかしながら、現実にどうなるかというふうに問うてみますと六割を超えて、つまりほぼ一人の人の持つ時間あるいはエネルギーの三分の二ぐらいを仕事が占めていくんではないかと予想をしているわけでございます。
 皆様、注目していただきたいことは、男女の差がほとんどないということでございます。男女の差が本当になくなっていって、そして覚悟を決めて女子学生も社会へ出ていくわけでございますが、では、その先、出ていった後どうなるかといいますと、ワークとライフ、仕事と生活の間のバランス意識を国際比較で見てみたいと思います。
 そうしますと、日本の数字は、これは電通が定期的に行っている調査でございますが、これによりますと、ちょうど仕事重視派と両方を同等に考えるというタイプと、それから余暇がむしろ重視、余暇、まあ生活というふうに見ていいと思いますが、こうしたものが三分の一ぐらいの比率で存在するのが日本のようでございます。
 この仕事重視派は、ごらんになれば分かるように、中国は非常に多くて、日本、米国、ドイツ、スウェーデンと、いわゆる我々がイメージ持つ社会の成熟度みたいなものと関係しながら減っていくようでございますが、日本の場合に一つ特色が見られるのは、三分の一ずつでバランスが取れているように見られるんですが、実は一番いいのはやっぱり仕事も余暇も同等にというんですか、それなりにバランスを取りたいという意識の人たちが多いことだろうと思いますと、ドイツとかスウェーデンなどは大変それが多い。スウェーデンの場合は、余暇重視と、仕事、余暇を同等にというのを両方足しますと九割になろうとしておりまして、こういう意識を持ちながら、なお先進国として高い経済社会の水準を保つということはやはりそれなりの工夫がなされてきているんだろうと。我々もこうした工夫をどういうふうにやっていくのかが問われているのかなというふうに思われるわけでございます。
 さて、先ほど女子学生と男子学生を比較してみても、仕事と生活のバランスに関して意識に大きな差がない、認識に大きな差がないということを見ましたが、しかしながら、現実には男女で仕事の世界でかなりの差があることは皆様御存じのとおりでございまして、女性の労働市場参加では、いわゆるM字型カーブと呼ばれる、若いころは高い比率で仕事に参加するけれども、結婚して育児をするころになると落ち込んで、そしてそれが終わるとまた社会に復帰する。しかし、この落ち込んだ段階のところでキャリアが切れてしまって次につながらない。前半はいわゆる正社員型で働く、しかしながら後半は非正規、あるいは非典型と呼ばれるような非正社員型で働くという、こうしたパターンが女性の場合にはかなり広く見られるのであって、同じように、労働力率が回復するといっても、その中身にはかなりの違いがある。そして、それは仕事と生活のバランスという点でもいろいろな影を投げ掛けると同時に、逆にいえば、仕事と生活を考えると、なかなか女性の場合は正社員型の働き方を選びづらいという状況にあるとよく指摘されているところでございます。
 労働力率を国際比較してみますと、これは大澤参考人の正に専門でございますが、日本はこうした女性の労働力率で見てみますと、アジアの中でもシンガポール、香港、韓国などより低い状況になってきておりまして、やはりM字型カーブのMの落ち込んでいる部分、あれを他の欧米の先進諸国のように台形型にするというんでしょうか、ほとんど落ち込まない形にするという、こうした重要な課題を担っているのではないか、こんなことを予測させるわけでございます。
 というわけで、ワーク・ライフ・バランスというのを考える場合には、二度とない人生を自分なりに、より悔いなく生きるという理念を再確認することが非常に重要なんだろうというふうに思っています。仕事の張りだけでなく、家庭を充実させていく、あるいは個人生活を充実させていくということがワーク・ライフ・バランスを考える際の非常に重要なポイントでございますと同時に、これがうまく取れていきますと地域コミュニティーの活性化にもかかわっていくだろう。
 地域コミュニティーがなぜ最近これほど急速に、存在感を薄くしていくというんでしょうか、崩壊状態になってきたかというと、幾つかの大きな原因があろうかと思いますが、一つは、ついこの間までの日本社会においては自営業の方々が大変多くて、昭和の三十年、一九五五年でも五六%は自営業型で働いていました。雇用されて働く人は四四%しかいなかったんですが、現在はほぼ八五%が雇用されて働き、自営業型で働く人は一五%ぐらいです。自営業は多くの場合地域に密着しておりまして、コミュニティーの支え手でありました。
 そして平日でも、地域に自営業の方々がたくさんいるときには地域にこういう大人の目があったわけでございますが、しかしながら、勤め人はほとんど職と住が分離されてしまいまして、地域にはいなくなってしまう、平日に地域に人がいない。これをついこの間までは専業主婦の方々がかなり担って、補っていたんですが、この方々も今パートタイマーに出たりなんかする。そうしますと、地域に平日それを担う人たちが量として、客観的に見て大きく減っていってしまった。こうした問題を地域の活性化ということを考えるときにも改めて考えてみないといけない。その意味では、ワーク・ライフ・バランスというものは地域の再生という意味でも重要な課題でございます。
 また、メンタルヘルス問題を考えるときにも当然これは落としてはならない問題でありまして、メンタルヘルスで様々な問題が起きるときは、調べてみますと、やはり仕事と生活の間にかなりの不調和といいますか、問題が抱えていることがあるわけでございます。
 このように考えていきますと、持続的な社会経済の発展のためには、総体的に見て、こうしたワーク・ライフ・バランスが取れることが社会や企業の生産性を上げることにもつながっていくんではないかと思われるわけでございます。
 ワーク・ライフ・バランスをではどのように実現していくかということでございますが、持続的で無理のない業務体制だけが中長期的に見て日本社会の生産性を維持し、経済の発展を支えることができるというふうに考えていったときに、しかしながら、すべての既存の仕事の中身を見直すことないままこれから減っていく労働力人口で支えていこうとしますと、そこには必ず無理が来まして、現在二十代後半から三十代前半層が非常に長い時間働いているというところに見られるように、減っていく人口に対して同じように仕事の負荷を掛けていったならば、これはワーク・ライフ・バランス以前でございます。
 そのような意味では、やはり先進国化していく中で、付加価値の低い、将来性の薄い業務を思い切って削減して、こうして付加価値の高い、将来性のある分野に特化していく、それに沿って労働時間の合理的な見直しをするということを不可欠のように思われるわけでございます。
 仕事の仕組みの見直しという点では、特定の性や年齢、家族スタイルなどを前提とした働かせ方、働き方というのが様々多様にこれから展開していくわけでございますので、そうした多様性に無理なく即応していくような工夫が必要なのではないかと思われます。
 この点では、労働時間が硬直的ではなく柔軟になるということは私は重要な点だろうというふうに思っております。例えば、夫婦ともに共働きで大変厳しい労働時間を働かなければいけないという場合でも、片一方が朝早く出掛けていってその代わり夕方は早めに切り上げる、もう片っ方は朝遅めに出掛けていってその代わり夕方は遅くまで働くという、こういう組合せをしますと、それが柔軟にできるようになっていきますと、夫婦が仕事を継続していくことが可能になっていきます。
 この点では、労働時間の柔軟化あるいは働き方の柔軟化というのは非常に重要な課題だろうというふうに思っておりまして、女性だけの問題と考えますとこれは非常に無理がありまして、男性を含めて考える必要があるということは今更指摘するまでもないわけでございます。
 いずれにいたしましても、節度のある労働時間、適切な休日と休暇の確保というのはワーク・ライフ・バランスに向けた決め手の重要なポイントでございまして、この点で日本型の従来の働き方、その中にはかなり無駄が多いというふうにかつての労働時間短縮の際も言われましたし、今現在も指摘できる部分があろうかと思いますので、そうした部分を見直していくということが一つの課題だろうと思います。
 それから、働く場所の柔軟化も重要でございます。時間だけじゃなくして場所の柔軟化ということが、例えばパートタイム労働の場合にはそれが魅力だというふうに女性には言われております。つまり、雨が降ったら布団をしまいに行ける距離で働きたい。こうしたしかし労働場所だけを望みますと、今度は仕事内容でキャリアがなかなかつながらないということになっていきます。その点では、部分的、短期的な在宅勤務、テレワークを取り入れるということも、いざというときの仕事と生活の調和、両立の維持には非常に重要であろうというふうに考えております。
 在宅勤務を入れますと生産性が落ちるんじゃないかというのが一つの経営側の懸念でございますが、最近、私も関係した調査で、実証実験をかなりの期間にわたって、十何社の会社、百何十人の方に参加していただきまして行いましたところ、当然、在宅勤務で家族との時間は増えるかというと、増えるというふうに答えた人が圧倒的であっただけじゃなくして、実は生産性も、当人は上がるというのが多いんですが、職場に出ているのと変わりないというのと足しますと、重要なのは一番下にあります上司の認識でございます、上司は、両方足すと向上したか変わらないというのがほぼ九割でございますので、つまり、仕事の設計あるいは工夫次第では十分こうしたテレワーク、在宅勤務というものも仕事と生活の調和の一手法として組み込むことが可能なんだろうというふうに思われるわけでございます。
 また、仕事と生活の調和という点では、キャリア形成の視点も非常に重要でございまして、忘れてはならない点でございます。ワーク・ライフ・バランスを取っていくときに、キャリアの問題を脇に置いてしまいますと、なかなか、キャリアがこれからは財産となっていく、すなわち、どのようなキャリア展開をしていってどのような仕事能力を高めていったかというのが、エンプロイアビリティー、いわゆる雇用される能力、あるいは市場におけるその人の労働力の評価というものに非常にかかわっていく。
 それを支えるのが生涯学習だというふうに国際的にも言われておりますが、日々の仕事へ前向きに取り組むと同時に、折節に持続的に能力開発をしていく、このような観点からも、仕事と生活の間のバランスが取れておりませんと非常に難しい。国際的に見ても、日本は既に高学歴社会ではなくなっている。今国際的に見た高学歴というのは、大学院卒業生、修了者の、これが社会人の中にどれぐらいいるかというわけでございますが、日本では社会人大学院生、増えたといっても国際的に見ると大変少ない。そこには、仕事と生活のバランスがうまく取れないので、現代版の勤労学生であるところの社会人大学院生がなかなか行きたくても勉強の機会を持てないなどといった、こうした課題があるわけでございます。
 いずれにいたしましても、これからは働き方として選んでもらう時代になっていきます。少子化で、わずか十年ほどの間で三百万から四百万の労働力がいなくなる。これから二十年ちょっとぐらいを取りますと、一千万人ぐらいがいなくなっていくというふうに考えられるわけでございまして、その意味では、企業の側から見ても選び取ってもらう。
 NHKが五年ごとに行っている大変いい「日本人の意識」という調査の中でも、働き方の理想の中に、仲間と楽しく働けて、専門知識や特性を生かせる仕事、こうしたものが一、二位になってきています。今から三十年ちょっと前には、実は安全な職場というのが一位だったんです。その意味では、日本も成熟の次のステップに掛かってきているんではないか。ワーク・ライフ・バランスは、その点では非常に重要なポイントではないかというふうに思っております。
 以上で私の御説明を終わらせていただきます。
#5
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 次に、池本参考人にお願いいたします。池本参考人。
#6
○参考人(池本美香君) 日本総合研究所の池本と申します。
 私の方からは、皆さんにお配りしております二枚のレジュメに沿って話をさせていただきたいと思います。
 まず、本日のテーマはワーク・ライフ・バランスということで、仕事と生活全般の調和ということでございますが、私が研究テーマとしておりますのは少子化にかかわる政策ということですので、本日は子育てと仕事の両立、調和という部分に限ってお話をまずさせていただきたいと思っております。
 それから、研究の視点としましては、少子化に関しましては、出生率が上がったか下がったかですとか、また少子化が経済成長にどういうインパクトをもたらすのかといった、そういうマクロの話が多いかと思うんですけれども、私はむしろ、この少子化の問題を引き起こしている当事者の世代の一人として、今の出産、子育てをするべきなのにしていない世代が置かれている状況、また余り視点に入ってこない子供が置かれている状況というものからいろいろ物を考えておりまして、今日もその辺りから政策を見ていきたいというふうに思っております。
 それでは、早速レジュメに沿ってお話しさせていただきますが、まず最初に、出産・子育て世代から見た少子化対策ということでして、少子化対策の流れについては皆さん既に御存じのことかと思うんですが、大ざっぱに流れをさらっておきますと、少子化が問題になってきましたのは、一九八六年の男女雇用機会均等法が施行され、そのすぐ後の九〇年に八九年の出生率が過去最低になったという出生率一・五七ショックが起こり、その辺りから子育てが問題になってきたわけです。そして、その後、女性が男性並みに働くために子育てを何とかしなければいけないという発想の下に、この九四年のエンゼルプランですとか九九年の新エンゼルプランなどでは、保育サービスの充実が中心になって進められてきたと言えると思います。二〇〇一年には、さらに保育所の待機児童ゼロ作戦という新たな対策も打ち出されまして、女性がとにかく男性並みに働く権利を保障するという考え方から、保育サービスの量的な拡充が目指されてきたということだと思います。
 しかし、御存じのとおり、出生率はその後も低下を続けまして、そのために政府も、二〇〇二年になりまして、このままの対策では効果がないということから、少子化対策プラスワンを出しまして、そこでは、女性が男性並みにということではなくて、男性の働き方そのものを見直すということ、また、働くという方向から議論するばかりではなく、子育てが行われている現場、地域で子育てがうまくいっていない子育ての現状からも問題を解決していこうという、その二点が打ち出されまして、二〇〇三年にはそれが具体化した次世代育成支援対策推進法が施行されたところでございます。ここでは、企業に対して子育て支援のための行動計画の策定を義務付けたということと、自治体に対して地域のそういう子育て支援の状況などについての行動計画の策定を義務付けたということです。
 そういった流れの中で、出産、子育てをしている世代はどういった状況にあったのかということなんですけれども、まず一つには、この時期は労働環境の悪化があったと考えています。一つは、先ほどもお話あったかと思うんですが、やはりパートタイマーなどの非正規職員が増えてきているということでして、これは、企業の経営環境は厳しいために、正社員を減らしてそういった形でパートなどで補っていこうということが九〇年代進められてきまして、そのために、今、正社員は過重な労働になって労働時間が増え、また非正規の職員につきましても収入が多く得られないために長時間働かなければならないということで、ともに長時間労働が促進されていったという時期にあり、そしてそのことがストレスの増大につながっていったと思います。
 一方、親ではなく、その親に育てられる子供の環境はどうだったのかということなんですけれども、ここでは保育環境も悪化しているということがあったかと思います。これは、親が長時間労働になれば子供が預けられる時間も増えていくということで、保育時間が長くなったということ、そしてまた、その長く預けられる保育の環境なんですけれども、ここにやはり企業同様自治体ですとか国も財政難の時期にありましたので、保育に関して十分な予算を投じることがなされてこなかったということで、保育の質が低下し、例えば園庭がなくても済む保育園ですとか人数を超過して預かれるようにするですとか、そういった形で保育の質がこの時期低下したことがあると思います。そしてまた、家庭においても親がそういったことでストレスを抱えているといったことも背景にあって、児童虐待の増加というものも今社会問題となっているところです。
 ですので、こうして見ますと、少子化対策は九〇年代からいろいろと保育サービス中心に行われてきたわけですが、それがむしろ長時間労働をサポートするような形で保育サービスが使われてしまい、子供も、またその出産・子育て世代にとってもその少子化対策が幸せになる方向には作用しなかったということが言えると思っておりまして、このために私は、女性が働く権利ということだけを重視するのではなくて、あわせて、男女ともに子育てをする権利を保障していくという考え方が必要ではないかと考えています。
 子育てをする権利というと非常に堅苦しい言葉なんですけれども、要は男女ともに子育ての時間をきちんと確保でき、かつその子育ての時間が人生を豊かにするというものであるという環境をつくっていく必要があるかと思います。そして、そういった観点から、私はいろいろ諸外国の政策でどのようなものがあるのかということで、子育てをする権利を保障する政策という観点から様々な政策を拾ってまいりました。
 次に、二のところでその紹介をさせていただいておりますけれども、まず労働政策の分野では、代表的なものには育児休業制度があります。日本でも育児休業制度が最近では一歳六か月まで延長できることになりましたし、休業中の所得保障も四〇%ということで、それなりに充実されてきているわけですけれども、それでも中小企業などに行って話を聞きますと、四〇%の補てん率ではとてもじゃないけど休めないということで、制度はあってもそれが必ずしも利用されていないという現状があります。これに対して、スウェーデンやノルウェーなどでは所得保障が八〇%から一〇〇%ということでして、このために経済的な理由から育児休業が取れないというような状況が解消されておりまして、その結果ゼロ歳児保育もほとんど必要ないという状況になっています。
 それから、全体的に所得保障の割合を高めるという国以外に、ドイツやフィンランドなどでは、むしろ休みにくいのは低所得の人であるわけでして、低所得者に手厚くなるような所得保障のやり方を考えているところもあります。ドイツなどでは定額の手当となっていまして、そしてむしろ高所得者にはその手当は支給されないというふうな仕組みにもなっているわけです。
 そのほか、父親専用の育児休業期間を設けることで男性の子育てにかかわる権利を保障しようという考え方もあります。これはスウェーデンで六十日、ノルウェーで四週間ということで、この期間は母親にその期間を譲ることができないわけでして、その期間は父親が休んでも八〇%から一〇〇%の給付があるわけでして、むしろ休まない方が損だというような感覚もあって、男性の育児休業取得率が急速にこの制度導入で高まったということがあります。
 それから、短時間、休みではなくて短時間勤務の保障ということも子育てをする上で重要なわけですが、日本の場合も育児休業制度の中に企業に対して短時間勤務等の措置を講じるということを義務付けているわけですが、等となっていますので、企業に短時間勤務をやらなければいけない義務はなく、このために、実際に労働者の側が時間を短縮したいと思ってもできない場合も存在するということです。
 これに対して、スウェーデン、ノルウェーでは育児休業の期間をまず、全日というか、一日単位で取るんではなくて、半日ずつ育児休暇を取っていくというような形で時短に利用することもできますし、またその育児休業の期間以外に子供がいる人には労働時間短縮の権利を保障し、もちろんこの場合にはその減らした分賃金も減るということにはなっていますけれども、そういった権利も保障されているということです。
 また、有名なところではオランダがフルタイムとパートタイムという、まあ日本でいえば正社員と非正規職員の格差を解消していくという政策を取っていまして、そのために労働時間を短くしやすくなっており、それが子育てにもプラスになっているということです。
 それから、子供が病気のときの看護休暇について、日本でもようやく育児休業制度によって労働者一人当たり年五日というものが保障されたわけですけれども、極端な例で言えば、スウェーデンなどでは子供一人につき六十日の看護休暇を認めるというような国もありまして、それだけ諸外国では、この労働政策の中で子供と親が一緒に過ごす時間を保障しようという考え方が政策にも反映されているということです。
 次に、二番目に経済的支援策なんですが、この辺りは余りこのワーク・ライフ・バランスの中では言われていないことだと思うんですが、そもそも親が働くのはお金が足りないから働くということもあるわけでして、もしも教育費に、日本などはお金が掛かっていて、それにお金が掛からなくて済むならば親が労働時間を短くでき、その分子供と一緒に過ごすということも可能になってくるわけですが、その点で日本の教育費については諸外国と比べても親の負担感が強いことが言われています。
 例ですと、このスウェーデンやオランダなどでは、私立学校を選んだとしても、そこには公立並みの公的補助があるために親は授業料負担をする必要がないという国もありまして、そこまでしますと、教育費のために子供が多い人は長く親が働かなければいけないというような状況も緩和されるのではないかと思っています。
 それから、二つ目の在宅育児手当ですけれども、これはノルウェーで九八年に導入された比較的新しい制度ですが、これは育児休業が終わった一、二歳児の親に対して、保育所を利用しないで自分で育てている人に対しては、保育所へ出している公的な補助金を現金で親に給付するというようなことが行われ、そしてこの制度が導入されたのは、親がもっと子供と一緒に過ごせるようにしようということを掲げて、そういった政策を掲げた政党が政権を獲得してこの制度が導入され、現在に至っているという状況があります。
 ですから、手当は、児童手当などもそういう時間との関連では余り議論されていないわけですが、子供と親が一緒に過ごす時間を増やすという目的で経済的支援を行うという考え方も諸外国ではあるということです。
 それから、三つ目の保育政策ですけれども、保育政策で、私も海外に行って、日本のように延長保育があるのかとか、病気のときの保育はどうやっているかというようなことをいろいろ聞いて回ったんですけれども、むしろそういったことを進めるというよりは、親が保育活動に参加できることに力を入れていることに気付きました。
 極端というか、非常にユニークな例ではニュージーランドのプレイセンターというものがありまして、これは保育所と幼稚園と対等な公的な認可と補助を受けた幼児教育施設なんですが、その施設はすべてその参加する親によって運営されていて、そしてその親たちが、そのネットワークを築きながら、また自分たちで、そのプレイセンターの場所で親も学習をしながら、親子で成長していくというようなことを理念に掲げて活動していく場です。
 また、スウェーデンの親組合保育所というのは、親が組合をつくって保育士を雇い、自分たちの運営のやり方で保育所を運営していくということで、ここにも公的な補助金が投入されています。また、イギリスのアーリー・エクセレンス・センターというのは、モデル事業なんですけれども、これも保育政策を単に保育サービスを増やしていくということではなくて、そこに親ですとか地域住民の学習の場を設け、そのことによって親や地域をレベルアップすることで保育をより良いものにしていこうという考え方がなされているわけです。
 そのような諸外国の事例を見ながら、日本の少子化対策への期待ということなんですけれども、まずそういった諸外国の子育てをする権利を保障する政策を日本に入れる必要があると考えているわけですが、その効果についても意識する必要があるだろうと思います。
 日本ですと、子育てに親をかかわらせると、まず子供がよく育たないのではないかということを言われたりですとか、親にとってはキャリアの形成にマイナスになるということから保育サービスの整備が進められてきたところがあるわけですが、逆に親子が一緒に過ごす時間を保障することによって親も子もより良い成長ということで、それは健康といったメンタルなヘルスのこともありますし、また子供も親が見ている環境の方が能力が引き出されるですとか、親も子育てを通じてコミュニケーション能力や忍耐力が身に付くといったようなこともあって、そのこと自体は、親子の福祉向上に加え企業の生産性の向上、また経済成長にもつながると言えます。
 また、ソーシャルキャピタル、社会関係資本の蓄積ということで、今、親が雇用の側に時間を割いているために、先ほどもありました地域のつながりがなくなってしまっているわけで、そこをつないでいくことによって治安ですとか教育にプラスの効果があり、そのことは公的投資の節約にもつながると言えると思います。
 それから、子育てに親がかかわれるようにするということはその分新たな雇用機会が創出できるということで、それを若者の就労支援などにも充てることによって全体として雇用をいい形で配分するということにもつながると思います。なかなか目に見えにくいところですが、それでトータルで持続可能な社会づくりにつながるのではないかということです。
 そういった観点から、労働政策、経済的支援策、保育政策については先ほどの諸外国の例に倣って日本も改正していく必要があるだろうということで、育児休業ですと、もっと取得の柔軟性を高めるですとか所得保障をどうしていくかという議論。また、正規職員と非正規職員の格差というものも見直す必要があります。また、労働時間の短縮を請求する権利というものが今後非常に重要になってくるのではないかと思っています。
 それから、経済的支援策については、先ほども申し上げました、親子が一緒に過ごすための経済的支援という発想も今後いろいろな議論の中で必要になってくるのではないかということで、中でも重要だと考えておりますのが、その図表にも挙げましたけれども、日本では教育への公的投資が少なく、その分、親の負担も増えているということで、私立学校への助成の在り方、また、あるいは公立学校の質をどうしていくかというようなことについても議論が必要なんではないかと思っています。
 それから、保育政策につきましては、これまで量的な拡大ばっかりが議論されていたわけですが、そこに置かれている子供の福祉ということを考え、保育の質の向上をするということと、あとは、その保育政策の中で親を取り込み、親の育児不安を解消する学びと集いの場などを増やしていく必要があり、十月から認定こども園という新しい制度もスタートしましたけれども、そういったところでは正に親をもっと育てていく、また親同士をつないでいくということも保育政策の中でやっていく必要があるだろうと思っています。
 最後に、もう時間もなくなってきておりますけれども、以上が政策的なことなんですが、こういった政策が、逆になぜ日本ではこういう政策が導入されないのかということですとか、あるいはこういった政策が導入されても本当に労働時間を短くして人々は子育てをするようになるのかということを考えた場合に、やはりこの(1)、(2)、(3)と挙げました三つぐらいがもっと根本的な問題としてあるのではないかなということを感じておりますので、そこも若干付け加えさせていただきたいと思います。
 一つは、仕事をするといった場合に賃金を得る仕事だけが重要だというような感覚が広がってしまっていて、そのために子育てというものがなかなか人々を引き付けなくなっているのではないかということです。女性は昔は子育て自体に価値があると思って子育てをやっていたわけですけれども、均等法後、やはり外で働くとお金がもらえるという世界が広がったことで、それと比べて子育ては損だというような感覚がこの世代には広がっていて、そしてまた働いている人が何か立派なように見えてしまって、専業主婦たちは子育てという大切な仕事をしているにもかかわらず居心地の悪さというものがあるように思っており、仕事の質というものを、その賃金があるかないかではなく、仕事の質をきちんと考えていくという、そういう議論も必要ではないかと思っています。
 それからもう一つは、この世代の特徴として競争だとか効率だとかスピードというものが非常になじみがあって、逆に協力だとか効率的でないものに対する抵抗感が強いために、子育てだとか地域だとかそういうものが苦手だということもあると思います。私も現在一歳三か月の子供を育てているんですけれども、周りのお母さん仲間の話を聞きますと、そういう子育ての何かこう、うまく効率的にいかないことに耐えられないので仕事をしたいというような人も多くおりまして、その辺の協力の大切さ、非効率の重要性というようなものも少し考えていく必要があるだろうということです。
 それから、最後ですけれども、もう一つは、なぜみんなが仕事の方に向かってしまうのかといったときに、やはり職場がむしろ地域や家庭よりも居心地がいい場所になってしまっているんではないかということで、ある男性の方で、なぜ会社にそんなに長く働くのかと聞くと、会社以外に行く場所がない、居場所がないということをやはり率直におっしゃっていて、子育てをしていても、やはり子育てをしながら行きたくなるような魅力的な場所がなかなかないために会社に行きたいというようなことも起こってきている中で、職場以外の居心地の良い空間というものを家庭、まあ住環境も含め町づくりから考えていく必要があり、そうしたことが進めば自然とそういったライフの方に人々が向かい、仕事の方を減らしていこうという政策なども動きが出てくるのではないかというふうに思っています。
 済みません、時間を超過しましたが、以上です。
#7
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 次に、大澤参考人にお願いいたします。大澤参考人。
#8
○参考人(大澤真知子君) では、座って説明させていただきます。
 日本女子大学の大澤でございます。
 私は経済学を勉強しておりまして、一か月ほど前でしょうか、二か月前ですか、韓国で国際会議がありまして、韓国も出生率の低下の問題と社会保障制度の問題で同じような悩みを抱えているということで、そこの会議でいろいろなことについて話をしてまいりましたので、その会議の内容も含めてワーク・ライフ・バランスについてお話をしたいと思います。(資料映写)
 最初の二つの図は、もう皆さん御存じだと思いますが、人口構造が二〇〇〇年から二〇五〇年にかけて非常に大きく変化して、若者の減少が著しい、こういったことから、子育てや生活と仕事の両立ができる働き方、生き方をしていくことがより重要な課題になっていくということがここから分かるのではないかと思います。
 次に、これが、少子高齢社会でどんな問題があり、どういう問題を解決するのかということで韓国の国際会議の中で先進国の参加者がコメントした点なんですが、まあ少子化というのは個人の問題ではありますが、同時に産みたい女性たちが産めないような状況というのは望ましくないということで合意がありまして、出生率が、高い出生率というのはちょっと語弊がありますが、産みたい女性たちが産める社会、それからハイエンプロイメントというのは、良質な雇用がたくさん生み出されて失業率が少ない、そういう社会が望ましく、かつ維持可能な社会保障、まあここでは述べませんが、医療制度があるという、こういった三つの課題に直面して、現在多くの先進国は、出生率は低く、失業率は高く、かつ社会保障の維持が難しく、年金の支給を、開始年齢を遅らせるか、あるいは支給額を下げるというようなことをせざるを得ない共通の課題にあるわけですが、そういった課題を解決していくためにも、そういった今述べました、ここのスライドに書きました、出生率を維持し雇用を維持し維持可能な社会保障制度をどうやってつくっていったらいいのかということについて、私たちは共通の課題を抱え解決策を考えていかなきゃいけないということではないかと思います。
 次に、もう一つ、一週間ほど前にちょうどロンドンでは今度は経済のグローバル化についての影響に関する会議がありまして、ここでは経済のグローバル化にどう対応すべきかという、これも先進国が共通に抱えている問題でございまして、これについて二つの可能性がある解決策について、グローバル化というのはどういうことかというと、より不確実な将来に対して柔軟で変化に迅速に対応できる仕組みを導入することが不可欠ということですが、それに対して一つのやり方というのは、正社員に対して非正社員、臨時社員ですとか派遣労働者ですとか、不安定な雇用形態の労働者を増やすことでその柔軟性を獲得することもできますが、他方で、正社員の働き方を変える、保障がある雇用形態の人たちの働き方を変えるということで対応することも可能なのであるということで。
 じゃ、実際にどのような国でうまくいっているのか。経済成長率もある程度維持し、失業率も低く、かつ出生率も九〇年代になって回復しているような国はどこなのかというと、四つぐらいの国が浮かび上がってきております。アイルランドも非常に今パフォーマンスがいいということで注目されておりますが、そのように同じような課題に直面しているということでは先進国が共通なんですが、それに対する対応策をうまく取っている国もあれば、日本や韓国のように大きな問題をもたらしている国もあるということです。
 一つ、じゃ、どんな形でうまくいって、うまくいっている国はどういう解決策を模索したのかということですが、基本的にはやはり労働時間を短縮したり、これはデンマーク、それから働き方を変えた国、これはオランダです。それから、アメリカやイギリスも比較的うまくいって、非正規労働者の増加が少ないという点ですが、うまくいっているのは、移動がしやすい、正社員から非正社員、非正社員から正社員という形で柔軟に労働移動ができる。それから、正社員と非正社員との間の均等待遇などの法制度が整っていると、そういうところでうまくいっているということが分かってきております。
 次に、日本が抱えている課題、より具体的に見てみますと、先ほど池本参考人の方からもありましたように、育児休業制度が導入されてもちろんメリットはあったんですが、実際には七割の女性が仕事を辞めているということで、継続就業が増えているわけではない。
 それから次に、働き方の希望と現実、これも諏訪参考人の方からお話がありました。これは学生ですか、実際に子育てをしているお母さんとお父さんに仕事と家事、育児、どちらを優先しているのかというふうに聞きますと、希望はどちらも優先したいという人が女性で六割、男性で五割。先ほどの話もありましたように、男性でも仕事と家庭と両立させたいという希望が多いのに対して、実際にそれを実現しているお母さんが全体の一二・四%、お父さんが二五・九%ということで、やはり現実問題としてそれが実現できないような、そういった状況になっているということです。
 これは私の研究テーマであります女性労働の日米比較の中で出産前後の就業形態の変化を見たものですが、簡単に結論だけ申しますと、アメリカの場合は非常に正社員での継続が多く、出産が余り継続就業に影響を与えていないのに対して、日本では非常に大きな影響を与えているだけでなく、ちょっと戻りますが──ちょっと済みません、言いたかったのは、正社員の短時間勤務を組み合わせることによって継続している人がアメリカでは一割ほどいるんですが、日本にはいないということです。
 結果として、日本は何が欠けていたかというと、正社員で労働時間を柔軟に選べるという制度がなく、九〇年代に労働時間が非常に長くなって、継続就業が難しくなったということが現実であり、日本の制度は、総じて見ると、専業主婦かキャリアウーマンかどちらか、仕事を優先するかあるいは生活を優先するか。その両方を優先するという選択肢を提供してこなかったわけですが、六割の女性は専業主婦、両立を目指していて、その可能性さえ提供できればこの人たちは両立し、かつ子育てをするということで、ここにターゲットを絞るしかないということです。
 もう一つ申し上げたかったのは、ワーク・ライフ・バランス、この中でも女性の仕事と育児の両立ということが問題になりがちですが、実は、これは女性だけの問題ではなくて、男性でも、正社員、短時間でしょうか、少し労働時間を短くしたいと。その中で特に、時間を短くして学習活動をしたいという人が男性でも七三・一%。ですから、育児をしたいから労働時間を短くしたいという希望もありますが、それだけではなくて、むしろもう少し学習をしたいと。先ほど人材が命だと、その自己啓発をする人が少なくなっているということが指摘されましたが、実際に希望を取ると、自分で学習したいというふうに思っている人が多い。ですから、特に技術系ですか、若い男性、非常に勉強したいと思いながら仕事が過重でできないという、そういった問題を抱えているということを御理解いただきたいと思います。
 これはちょっとアメリカのケースですが、今アメリカでもワーク・ライフ・バランスの導入ということに非常に熱心に取り組んでおりまして、女性の問題だけではないということで申し上げますと、二〇一二年までにアメリカでも六百万人の高スキルの労働者が労働市場から退出すると。そういった人たちの働き方、どういう働き方を望んでいるのか、これも柔軟な働き方が望まれているということで、日本だけではなく、各国で柔軟な働き方を導入する取組が行われています。
 これは、詳細は申し上げませんが、大体十ぐらい、かなり働き手の希望に合わせて、フレックスタイムですとか在宅勤務ですとか期間限定労働時間短縮、これは子供のいろいろな教育の必要に合わせて労働時間が短縮できるような、そういう働き方を提供しているという、これはイギリスの例ですが、かなりいろいろな形で労働時間の選択肢を広げているということです。
 じゃ、実際にワーク・ライフ・バランス導入するとコストが掛かるのか。七割が最小限掛かる程度でほとんど重要ではない、あるいは全く掛からないということを言っております。また、次にワーク・ライフ・バランスの効果について聞きますと、従業員がハッピーになったというところが一番大きくて、あと、パフォーマンスが向上した、定着率が高まったという、これイギリスの例ですが、定着率を高めるということは盛んに私がヒアリングをした弁護士事務所などでも強調しておりまして、日本でも銀行を中心に今ワーク・ライフ・バランスの導入を進めておりますが、やっぱりリーダーがそういった視野で人事管理をしていることが重要で、なぜそれが必要なのかというふうに聞きますと、人材確保、つまり、これからいい人材が確保できないと業績が上がらないということで、いい人材というのは、自分でもよく勉強しているし、ワーク・ライフ・バランスに非常に関心が高いと。そういう人を確保するために自分たちは積極的に働き方を変えて、いい人材を確保していきたいということで、ワーク・ライフ・バランスが積極的に取り入れられるようになっておりました。
 実際にそういったことで、私は今年、去年辺りから、イギリスやオランダやデンマークで、実際に働き方を変えたり、共働き世帯に対応をしていろいろと制度を変えた国を訪ねてまいりましたが、そういった国の制度と日本の制度を比較してみますと、やはり日本の制度においては、ワーク・ライフ・バランスを積極的に導入するような環境よりは、むしろ正社員の数を減らして非正社員の数を増やそうというようなインセンティブが強く働く制度が存在しているということが言えると思います。
 労働法制、今日それにお詳しい諏訪先生もいらっしゃいますし、社会保障制度、それから雇用保険制度を見てみましても、やはり正社員中心になっておりまして、正社員に手厚く非正社員には手薄ということで、それは働く側の保障がないという問題もありますが、同時にそれがメリットとなって、経営側が非正社員を増やすというインセンティブを社会が与えていることになります。
 そういった制度をほかの国でも持っているのかどうかということを研究いたしましたが、多少パートタイマーについて、労働時間が短い労働者に対して適用を除外する制度があります。例えばドイツですとか、それからデンマークにもそういった制度がありますが、日本の場合は適用除外の要件が非常に高い。それから、要件の条件に配偶者がいるかどうかというようなことが大きく利いておりまして、制度全体としてやはり男性が働いて女性が補助的に働く、あるいは家で育児をするということが前提となった制度になっておりますので、これを変えていくことも非常に重要なのではないかと考えます。
 改革の方向性としては、様々な医療保険、社会保障制度の適用に雇用形態間の差を設けないと。例えば、支払総賃金を基準として保険料を納めるというようなことをいたしますと、税収、社会保険料も増えていきますので、今のように正社員だけに負担を強いるようなこともなく、社会保障制度などもより安定的に維持できるのではないかと思っております。
 それから、今議論になっておりますが、既婚女性の非課税限度額百三万円、それから先ほど申し上げました社会保険加入義務年収の百三十万円と、こういった要件も日本特有の制度になっておりまして、これがパートの低賃金化をもたらしているというのが労働経済学の結論になっております。
 非正規を増やす制度があり、かつ非正規の人たちの賃金が安いということは、結局は、景気が回復しても所得が増えずに消費が増えないということで、日本の経済全体にとってマイナスの影響が非常に強いということを考えまして、今後の在り方を考えるときに、ワーク・ライフ・バランスの導入とともに、社会保障制度、税制度あるいは雇用保険の見直しというのも非常に重要になってくるのではないかと思います。
 以上です。
#9
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取を終わります。
 これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後四時をめどとさせていただきます。
 なお、質疑者及び各参考人にお願い申し上げます。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。
 また、多くの方が御発言できますように、一回の御発言はおおむね三分程度とさせていただきます。
 なお、質疑の際は、最初にどなたに対する質問であるかをお述べいただきたいと存じます。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
 中原爽さん。
#10
○中原爽君 自由民主党の中原でございます。
 大澤先生にお尋ねしようと思います。
 労働時間の件でございますが、私どもこの調査会は、前回、関係省庁から意見を聴取いたしました。その際、厚生労働省からいろいろなデータが出されまして、法的なというか労働基準法上の週四十時間ということを所定の時間というふうに見て、それよりも短い三十五時間未満のいわゆるパートタイマーというか非正規の社員であると、こういう人がこの十年間に増え続けている。大体六%ぐらい増えている。それと、逆に週六十時間以上労働、いわゆる正規の社員に当たると思うんですが、これも増え続けていると。したがって、その三十五時間から六十時間の間の労働者数が激減しているということですね。ですから、パートタイマーと正規の社員というのがもう完全に二極化しているというデータでございました。この差がこの十年間一向減らない、埋まらないということなんですね。
 そうしますと、先生おっしゃっておられるように、この正規の社員の働き方を変えたオランダと、正規の社員の労働時間数を減らすというのか、あるいはもう少し自由性を持った働き方をその正規の社員にさせることができるのかどうか。
 それともう一つ、デンマークのように労働時間を短縮すると。これは現在の厚生労働省の考えだと思うんですけれども、その四十時間を減らすと。減らしたからといってこの二極化が収まるとは私は思いませんけれども、そういう方法がある。
 それから、正規の社員とパートタイマーの格差をなくしていくと。これは先生方皆さんおっしゃったことでございますけれども、これを実際に日本で実行することが可能なのかどうか。これは先生のレジュメですとアメリカ、イギリスということで御説明いただいたんですけれども。
 この三つの方法があるようにお見受けいたしますけれども、実際にこれから日本はどうしたらいいのか、この二極化になっている状況を解消するのにはどうしたらいいのかということの概略のお話を説明していただければと思うんですが。
#11
○会長(清水嘉与子君) 大澤参考人、どうぞ。
#12
○参考人(大澤真知子君) 大変難しい御質問を投げ掛けられてしまいましたが、私、最初はパートタイム労働研究会の委員でございまして、均等待遇か均衡待遇か、パート労働法の改正をめぐって議論いたしました。
 私、理想としては均等待遇というのをやはり原則とすべきであって、最初から格差を設けてしまえば、より安い賃金の労働者が増え続けることを避けることができないというふうには考えて、どうしても均等待遇を維持してほしいというふうには思ったわけですが、しかしなかなか話合いが付かずに難しい状況になりました。
 そこから、次の発想は、そこが無理だとしたら次は正社員の働き方を変えることで、第一ステージとしてはやっぱり正社員の方に働き方を変える重点をシフトすべきではないかというふうに考えたわけです。ここがうまくいくと、じゃなぜパートタイマーで安い賃金の人とパートタイマーでちゃんとした賃金をもらっている人がいるのかということで整合性が取れなくなりますから、いずれはそういった人たちが正規の方に行くという形で、その正社員の働き方に柔軟度を入れることに日本が成功できれば、均等待遇ということが私たちにもう少しイメージしやすくなるのではないかというふうに考えた次第です。
 ですから、日本でオランダ型が果たして機能するのかということは、もう何度も質問を受けましたが、難しいと思います。やはり正社員の、まずアメリカやイギリスのように正社員の労働時間の柔軟化が可能になるということが重要なステップなのではないかと思います。
 それによって労働生産性が上がりますから、そういったところでやるべきだというふうに思いますのと、あと、労働時間の規制についてですが、三十五時間、所定内労働時間を短くするということもございますが、ほかの先生で、日本の場合には休息時間の制限がないと、例えばイギリスとかアメリカでは、ほかの先進国に比べて労働時間が非常に長いわけですが、それでも最低一日十二時間は休まなければならないという休息時間の制限があるというようなことを聞いております。
 何らかの形でその労働時間を、今のような形である個人に過重に負担が行くような労働時間の在り方に歯止めを掛けることは必要ではないかというふうには思っております。
#13
○中原爽君 ありがとうございました。
#14
○会長(清水嘉与子君) ほかにいかがでしょうか。
 小林美恵子さん。
#15
○小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。
 参考人の皆さん、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。
 私は、まず、大澤参考人と池本参考人にお伺いしたいと思います。
 まず、ワーク・ライフ・バランスの基本的考え方についてお聞きしたいんですね。
 私は、その基本といいますのは、やっぱり人間らしい労働であり、人間らしい生活、労働者や国民からの要望とか権利、そして、子育ての生活からいきますと、最善のものを与えられなくてはならない子供の視点に立った見地からやっぱりワーク・ライフ・バランスというのは考えられなくてはならないんじゃないかなと思うんですね。
 そこで、お二人にちょっとお聞きしたいんですけれども、二〇〇六年の経団連の労働政策委員会報告を拝見しますと、ワーク・ライフ・バランスは柔軟な働き方の実現だというふうに書いてありまして、例えば読み上げますと、「労働時間や就労場所、休暇などについて多様な選択肢を提供・整備し、個人の能力を十分発揮することができる人材の多様化を活かす経営を進めていくことである。」というふうにありまして、この「考え方を企業戦略の一環として組み入れていくことが、長期的にみて、高い創造力を持つ人材を育成し、競争力の高い企業の基盤をつくる」というふうにあるわけですね。
 私は、ワーク・ライフ・バランスということを、そのことを使って柔軟な働き方をして、それが更なる、何といいますか、更なる非正規を生むんではないかというような懸念もあるわけでございますけれども、この点からいきますと、やっぱり基本は労働者、国民の要望、権利に沿った考え方になるべきじゃないかという点になるんですけど、この点での御意見をお聞きしたいと思うんです。
#16
○会長(清水嘉与子君) それでは、池本参考人からでよろしいですか。どうぞ。
#17
○参考人(池本美香君) 私自身も、先ほども申し上げたとおり、現在の労働環境が親の立場あるいは子供の立場から見て問題だということからワーク・ライフ・バランスを進めることがあるということは考えています。
 ですから、ただ、今おっしゃった企業の側がそれによってメリットが得られるということも、それは二次的に非常に重要であって、単に個人の権利だけでやって、それで社会や企業が倒れてしまうということも問題だと思っていますが、でも私自身は、子供のことや親のことをしっかり考えれば、自然と企業のこと、また経済のことも良くなるんだということ、そういう論理で考えることが必要ではないかと思っています。
 そういうふうに思いましたのも、私自身もどちらかというと企業側の発想で、いろんな外国の保育所に行って延長保育は何時までやっていますかとか聞いたんですけれども、向こうでもうみんなにヨーロッパで言われたのは、子供にとってそんなに遅くまで預けることは良くないと思いますとか、病気のときにはやっぱり親が休めるようにするようにこの国では勧めていますということを九〇年代の初めごろに言われまして、そういった発想がその当時日本ではほとんどなくて、女性がいかに長く働けるかということばっかりだったので、そこはヨーロッパ、私の主に調査しているニュージーランドなども含めてですけれども、子供がとても大切にされているということは実感して、あとデンマークで、これは人から聞いた話ですけれども、私は子育てする権利という話をしていますが、子供にも権利があって、子供は親に子育てしてもらう権利があるんじゃないかというような発想があって、そういった子供や親の生活をより豊かにしていくという発想がまずやはりあってワーク・ライフ・バランスということになるべきではないかなと思います。
 今は少子化対策だとか企業の更なる生産性の向上ということで注目されていて、ただ、それ自身も重要なのですけれども、根本的なところでは、子育てされる子供の置かれている環境なり、親が子供を育てる場合の環境整備ということでワーク・ライフ・バランスを考えていく必要があると思っております。
#18
○会長(清水嘉与子君) 大澤参考人、どうぞ。
#19
○参考人(大澤真知子君) 御質問に正確にお答えしているか分からないんですが、御質問の趣旨は、やはり日本人の会社での価値観というんでしょうか、例えば柔軟に働くということは仕事を優先して働くよりも価値が低いとか、会社においてはやはり昇進するためには残業したりとか長い時間働いた方が評価が高い仕組みというのがあるわけですよね。そういったワーク・ライフ・バランスというのは、そういった価値観を見直そうということなんですね。むしろ長くいる方が生産性が低くて仕事もしていないんじゃないか。つまり、子育てをしたり、それから社会活動をしたり、様々な経験をすることが逆に仕事での生産性にもプラスに働くにもかかわらず、それが本当に評価されている社会なのか、企業なのかということが今問われていて、ワーク・ライフ・バランスというのはその価値観を見直して、長く働いたからというわけではなくて仕事をしたことに対して報酬として評価すると。ですから、パートタイマーであれ、どういう雇用形態であれ、その仕事をした分に対して評価が支払われるわけですから、別に労働時間が長くなくても早く仕事が終われば残業せずに帰れるわけですね。
 ですから、今までの日本の制度はどちらかというと物づくりでの価値観が非常に強くて、一生懸命頑張るとか上司がいるとなかなか早く帰れないとか、そういう価値観があったわけですが、そういうことにかかわらず自分がやった仕事に対して評価されるような仕組みであれば、仕事の場所、それからどこで働いているか、何時間働いているかということを問わないという発想に変えてしまうと、いろいろなことをやりたい人ほど早く仕事を終えて会社から退社するという、社会全体でそういう仕組みをつくり、発想していくとワーク・ライフ・バランスというのは会社にとっても良くて、個人の生活も充実するんだと思うんですね。
 経団連の発想の背後にはそういった基本的な理念があるのではないかなというふうに私は考えておりまして、ですから、両方ともにとって良いような仕組み、つまり、私たちにとっても与えられた仕事はちゃんとやって、より効率的にやって早く帰れて、企業側もそういうふうに早く帰ってもらって生産性が上がって有り難い、そういうことを実現するためには、今のようなリジッドな雇用制度とか労働時間の在り方は問題であって、もう少し柔軟に労働時間や働ける場所を選べるようにしようと、それがワーク・ライフ・バランスのスピリットであるというふうに、うまくお答えできなかったと思いますけれども、考えておりまして、そこがまだ実現できていないので、なかなか私たちはイメージできにくいわけですけれども。
 例えば、長くなって済みません、オリンパス、具体的な名前を言っていいのか分かりませんけど、昨日ちょっと話を、若い子育て中の男女と話をしていて、御主人の方が三十分会社に行けば一日出勤したとみなされる勤務形態なんだそうです。この場合ですと、彼はその後、家に子供が病気になって熱を出したという場合でも行けるわけですね。そして、子供の様子を見ながら家で仕事をして、評価としては一日仕事をしたということになりますから、ペナルティーは課されずに、かつ、お子さんも安心して育てられるということです。
 例えば具体的な例としては、そういう形で、取りあえず、仕組みとかそういったものを導入することによって少し仕事を減らして仕事のやり方を変えてみるという工夫を日本全国でやったらどうだろうかということです。
#20
○会長(清水嘉与子君) 小林さん、よろしいですか。
#21
○小林美恵子君 詳しい御説明ありがとうございました。
 ワーク・ライフ・バランスそのものはそのとおりになればいいんだろうと思うんですけれども、ただ、私はそのことで新たな労務政策、労務管理がされることを少し懸念をしましてお聞きをした次第でございます。
#22
○参考人(大澤真知子君) 分かりました、はい。
#23
○小林美恵子君 あと一点よろしいでしょうか。
#24
○会長(清水嘉与子君) はい、どうぞ。
#25
○小林美恵子君 済みません。
 これは池本参考人にお伺いしたいと思いますけれども、池本参考人は、いわゆる働く権利とともに、男性も女性も子育てをする権利を保障するということをおっしゃっておられまして、それは私、大変賛同するところなんですね。
 先ほどのお話の中にも、労働政策の話とか保育政策の話もございましたけれども、改めてその労働政策ですね。あと、保育の質の向上に向けての現状の保育を更に質を良くするためにどういうふうに改善していくかといいますか、そういう点で御意見をいただければ有り難いなと思います。
#26
○参考人(池本美香君) まず、保育の具体的な改善の方向ということですけれども、私は、子育てをする権利には、まず親に子育てに掛かる時間を与える必要があるというのがあるんですけれども、今は専業主婦で子育ての時間がたっぷりある人が最も育児不安が強いというふうな状況もあるわけで、それは、まずネットワークがないし、子供と向き合ってどうしたらいいかという、その技術や知識が昔のような三世代同居で伝わってこないということから不安で、そこでみんな働きたいというふうなことになって、質が悪くても預けて働くというふうなことになっているんだと思いますので、それを、私は考えているのは、まず時間を与えて、プラス親がつながることでそれぞれ悩みを解消したり、お互いで協力し合いながら子育てをしていく関係をつくるということと、あとは親自身が技術を学ぶ学習の場をつくる必要があるだろうと思っています。
 それは、一つ私の具体的な例としては、ニュージーランドのプレイセンターという施設が、正に親たちが自分たちで集まって協力するということをベースに、そしてまたいろいろな専門的な技術などもそこの場で学びながら、親も成長し、地域をつくり子育てをしていくという保育活動になっていまして、それを日本でもやりたいと思って私は日本プレイセンター協会というふうに名のってボランティアのようなこともやっているわけなんですけれども、そういう発想が今の日本の保育政策の中に余りないので、それを、ニュージーランドもそういうものを幼稚園、保育所に入れていこうとやっていますが、日本でも、保育所も単に親が便利なように駅前で預かるだとか、そういうことではなくて、親自身がもっと保育に参加して、そこでいろんなことを学んだり、またそこで人とつながり合うことで安心して子育ての質も高まっていくというようなことをやっていく必要があるだろうと思います。
 今、政策的にも、つどいの広場のようなことで、そういう子連れで集まる場所というのがあちこちにできているんですけれども、それが単にそこで過ごしておしゃべりして終わってしまうというような形になっているのが私自身はすごく今子供を育てながらもったいないなと思っていまして、児童館などでも、おもちゃはあるんだけれども、おもちゃはともかく子供が時間を過ごすだけのものになっていたり、またそれが、おもちゃが壊れていてもそのままになっていたりですとか、子供がそこでどういった教育を受けるかということまでの配慮がされていないなということを感じています。
 ですので、保育も便利かどうかじゃなくて、そこが子供の教育にとって質がいいか悪いかということをもっと考える必要があると思いますし、また、そこに親が行って、親自身が子育てを通じて成長できる場に変えていく必要があるんではないかと思います。その場合には、今そういった広場などは、予算もなかなかそこには回ってこなくて結局預かる方の保育所に回ってしまう傾向もあるようなんですけれども、もっとそこで学ぶということを、要するに教育とそういう福祉の統合のようなことをやっていく必要があるんではないかと思っています。
 ちょっとまた長くなっていますけれども、その親が学ぶというときのプレイセンターのやり方なんですけれども、何も先生が、高い講師料を払って先生を付けてみんなでレクチャーを聴くとかそういうことではなくて、親というのはそれぞれいろんな能力や技術を持っているので、それをお互い提供し合いながらみんなで学び合っていくということで、お金が基本的に掛からないような仕組みになっているわけなんです。
 だから、そういう協働でお互いさまで学び合うという、そういう協力のスタイルを築けば行政的にもコストがそれほど掛からずに、そして親の学びや参加というものも引き出すことができるのではないかと思っておりまして、非常にプレイセンター、目に見えにくい活動ではあるんですけれども、そういう保育を、単に子供をいつでも預けられるというようなことではなくて、もっと教育の場、それは子供だけではなくて親にとっても教育の場、さらには地域がつながる拠点として変えていく必要があるんではないかなと思っております。
 それから、もう一つの質問を、済みません、もう一回確認させてください。労働政策の……
#27
○小林美恵子君 何か長くなって、よろしいですか。
#28
○会長(清水嘉与子君) じゃ、もう一度ちょっと簡単におっしゃってください。
#29
○小林美恵子君 済みません。
 労働政策で御説明があったと思うんですけど、育児休業の問題とか正規、非正規の格差是正とかございましたけれども、それをもう少し突っ込んでお話しいただければなと思ってお聞きしました。
#30
○参考人(池本美香君) 私も簡単にしかあれなんですが、具体的に、そうですね、あともう一点言い忘れていました。
 主に考えていますのは、育児休業制度を使ってどういうふうに短時間勤務などを進めていくかというようなことでレポートなども書いていますけれども、まずは労働、何ですか、一日単位とか一か月とか一年とかで固めて取るんではなくて、その時間数を使って時短をできるようにするということで、そうすれば、今、男性の育児休業取得率は一%未満ですけれども、男性もそういったちょっとずつであれば育児に参加するきっかけがつかめるんではないかなということで、そういう柔軟性を高める必要があるなと思っています。
 それから、あとは、所得保障については、非常にこれは財源の問題がありますので厳しいとは思っていますけれども、低所得の方の人たちの保障率を上げるというようなことは少し考えてもいいんではないかなと思っています。今、育児休業が取得できているのは、結局その期間収入がなくても済む高収入な、高学歴の女性に多いというような結果も出ていまして、そこに公費が投入されるということはどうなのかなというところです。
 あと、一番進めたいと思っているのは、やはり先ほど大澤先生もお話ありましたように、正社員が労働時間を短縮する権利というものをきちんと保障していくことが一番重要で、そのことは恐らくそれほど企業にとってマイナスではないし、マイナスではというか、負担ではないはずなんですが、そこがないために非常に正社員が続けられないということで多くの女性が辞めてしまっているというのは損失ではないかと思います。
 あと、ちょっとここに書き忘れたことを今思い出したんですけれども、これは政策ということではないんですが、どうやって労働環境を変えていくかといった場合に、今企業の社会的責任という、CSRの考え方で変えていこうという動きもありまして、これまでCSRは環境問題への企業の取組を引き出すために手法として多く使われてきたことですが、それを労働の分野にまで広げてはどうかということです。
 次世代育成支援対策推進法によって、企業は今、子育て支援のための行動計画を策定することを義務付けましたが、それを公表する義務が課されていないということで、そういうものを従業員なり、またこれからそういう会社に就職しようという人、あるいは消費者などが全部チェックできるような仕組みをつくることで、企業がそうした問題に取り組むインセンティブを高めるということもやってはどうなのかなと思っています。
 なかなか、法律でやるということももちろん重要なんですけれども、できるところはどんどんやってもらうという意味では、先ほどのその三十分働いたら一日出社とみなされるなんというのは非常に先進的だと思いますが、そういった事例をどんどん公表していくことで、そういうものが企業の生産性にもつながるし、またそういった取組が知らない企業にとってもアイデアとして提供できるような、そういう情報の公開を進める必要があるんではないかなと思っています。
 済みません。長々と失礼いたしました。
#31
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 じゃ、足立信也さん、どうぞ。
#32
○足立信也君 民主党の足立信也です。どうも先生方、ありがとうございました。
 特に諏訪先生と大澤先生に質問になるかと思いますが、私も足掛け十五年大学におりまして、やっぱり大学にいる文系の方が一番ワークとライフのバランスが取れているんじゃないかなって、私はそう思っています。
 なぜそんなことを言うかといいますと、産業構造なんですね。お三方のお話伺っていて、失礼な言い方かもしれませんが、第二次産業のサラリーマンにかなり重点が置かれた御意見だったような気がして、今、日本はやはり第三次産業、特にサービス業にかかわる方が物すごく比率が高くなっているわけですね。
 もう一つは専門性ということなんですが、先ほど諏訪先生のプレゼンテーションの中で、理想の仕事で、専門知識や特技が生かせるということと仲間と楽しく働けると、これが理想で挙がりましたが、専門知識や特技が生かせるということは希少性ということですね。それと仲間で楽しくというのは相矛盾するところがあるんですね。
 その専門性を高く持った人やサービス業の人、それをよりよく提供しようと思ったら、人を増やしていくしかないわけですね。実際、今増えているわけですね。そうなってくると、これは人件費をどうしていくかという形になって、それを、人件費を絞っていけば、少ない人数でより良いサービスという形になってくると、当然時間のシェアの仕方が非常に難しくなってくるというのが、今の産業構造から見た場合に日本がそういう特徴に流れているんじゃないかと私は思っているんですが、その点の、第三次産業、サービス業にかかわる方、あるいは専門職で人数が限定される方のワーク・ライフ・バランスについてのお考えを、お二人の御意見を伺わしていただきたいと思います。
#33
○会長(清水嘉与子君) それでは、諏訪参考人、よろしいですか。
#34
○参考人(諏訪康雄君) 非常に重要な御指摘だと思います。
 最初に、サービス産業といいますか、第三次産業に従事する就業者の比率なんですが、日本は大体六五%ぐらいでございまして、これが全体の中で圧倒的に多い。また、製造業と呼ばれる分野でも、第二次産業と呼ばれる分野においても、実はそこで勤めるホワイトカラーの人たちは、現実には第三次産業型、サービス産業型で働いている。こう考えますと、大変これは重要な課題であり、またここに対してしっかりと対応できないならばワーク・ライフ・バランス論は絵にかいたもちになるという御指摘は全くそのとおりだろうと思います。
 ただ、欧米を見てみますと、アメリカですとかスウェーデンのような国々においては、この第三次産業の比率は大体七五%ぐらいで日本より一〇%ポイントぐらい高いわけでございます。その意味では、サービス産業化することが即労働時間が長くなるというわけではやはりないのではないか。そうすると、こうしたサービス産業化をしていったときに、確かにサービスというのは、対人、対個人のサービスでも対事業所サービスにおきましても結局は人が人に対するサービスをするわけでございますから、このようなサービス関係における中身をどのように考えていくかということが重要なんだろうと思います。
 電話一本でいつでも即応するという形ばかりがすべてではないわけでございまして、やはりこの点ではシステムを整えて、こういう中においてワーク・ライフ・バランスを中に組み込んだシステムとしてつくっていく必要があるんではないか。さもないと、一時的にはもちますが、中長期的に考えるともたない、これが非常に重要な面だろうというふうに思っております。
 それからもう一点、大変痛いところをつかれたわけでございますが、文科系の先生方は自分がワーク・ライフ・バランス取りやすいから人にもやれと言っているんじゃないかというようなふうに、私はちょっとひがみかもしれませんが聞こえたわけでございますが、それはそうだろうと思います。確かに、文科系の先生方は労働時間が決して短いわけじゃないんですね。多くの人たちは、恐らく年間三千時間以上研究やその他でやはり非常に一生懸命やっているわけですが、ただ、就業場所ですとか時間において裁量性が高いということが、その意味では、はたから見ると場所に拘束されている理科系の先生方、つまり通勤して研究室に行かないと仕事ができないという人との差が出てくるんではないか。あるいは、実験など始めれば本当に十時間も二十時間も付きっきりでなければどうしようもできないというようなこととはやはり違うというところがあろうかと思います。
 私は、専門職の非常に厳しい最前線にいる人たちのワーク・ライフ・バランスの取り方はやはりこれは柔軟化ということなんだろうと思います。いろいろな意味での裁量性と柔軟化とそれから成果で評価するという方向でこれはいくしかないんではないかというふうに考えておりますが、しかしながら、すべての人がそのような専門的な分野でやっているわけではございませんので、サービス産業の多くの場合には、先ほどから申し上げましたように、人が人に対するサービスをする関係の中で、顧客の側が無限定にサービスを要求していきますとワーク・ライフ・バランスは取れなくなっていきます。
 この点についてどのような方策を、システムを組んでいくかというのがこれからの重要な部分でありまして、日本においてサービス業がなかなか国際的な競争力を持てないとか、あるいは生産性が高くない、したがって収入などにおいてどうしても見劣りする部分があるなどと言われているのは、やはりシステムにおける問題点があるんではないかというふうに思っておりまして、今すぐ、ではこうすればいいという例はなかなかすぐには浮かんでまいりませんが、しかしながら、小さな事業所などにおいて、それぞれに工夫しながら高い生産性を上げている例は多々あるわけでございまして、そうしたものを、先ほど池本参考人もおっしゃられていましたけれども、もっと、こんなやり方もあるんだ、あんなやり方もあるんだということがうまく伝わっていくような仕組みも、仕掛けも重要ではないかと思っております。
#35
○会長(清水嘉与子君) それでは、大澤参考人、どうぞ。
#36
○参考人(大澤真知子君) 御質問ありがとうございます。
 サービス経済化になっていく中で日本がどう対応していくのかということだと思いますが、サービス経済化の中で非常に、二十四時間営業する事業所が増えてきましたり、人手が必要となっていく中でワーク・ライフ・バランスをどう獲得するのかということについてもう少しちゃんと答えろという質問だったんじゃないかなというふうに思います。
 確かに二十四時間のお店がたくさん増えていますし、それから日本が休んでいるときでも海外ではオフィスが開いておりますから、そういう中では本当に二十四時間体制になってきて労働時間が不規則になっていく、そういう問題に対してどう対応するのかということを考えることが非常に重要になってきたということだと思います。そういう点で、逆に柔軟性が必要になったから柔軟な働き方が、導入することのメリットが増えてきたという議論もできるわけでして、イギリスの例なんですが、これは図書館を日曜日も開けてほしいという要望があったという例です。
 ほとんどの人がやっぱり日曜日に図書館を使いたいと思っているが、日曜日に働きたいと思っている人はいないと。職員が反対しているので開館できなかったんだけれども、ここで、イギリスでワーク・ライフ・バランスになってから、じゃどうしようかということで、シフトを組んで、日曜日に働きたい人を募ってみたところ、実は家庭にいる奥さんで、日曜日には家に夫がいて子供を見てくれるから図書館で働きたいという女性が結構いたと。まあ地域にも近いし、社会活動もしたいという。
 そういったところで、実際に人々の希望を募って、どういう時間帯で働きたいのか、どういう形態で働きたいのかということを労働組合が中心になって人々の希望を聞いて組合せをして、一年ぐらい掛かったということなんですが、それによって、そうでなければ働かなかった専業主婦の人たちも家庭から図書館に働くことになり、結局、図書館が日曜日に開館するということは非常に良かったということで、かつ正規の職員の人たちも、別に自分たちの労働時間に問題がなかったということなんですね。
 要するに、柔軟性をどう導入するかというときに、日本は正社員の数を減らして、まあ店長さんとかそういう人は正社員ですが、それ以外の人はほとんどアルバイトという形で非常に安く使ってコストを削減しようというふうに考えてきたわけですが、もう一つのやり方は、正社員の短時間労働を組み合わせていくことによってより多くの保障がある仕事が増えて、かつサービスも充実すると。つまり、一人の人が疲弊してしまうわけじゃなくて、いろんな人が自分の都合に合わせて働けるわけですから、結局、仕事が生み出されて雇用も増え、かつ税収も増えていくという、で、より希望に沿った働き方が実現される可能性が高くなってくるんですね。
 これがいろいろな国でワーク・ライフ・バランスが求められてきたもう一つの理由で、今までの第二次産業中心の働き方の延長線上だとどうしても過重労働や労働時間が長くなってしまう、そういうことに対して新しい発想でいく。ですから、その分、労働時間が短い分、収入も少ないわけですが、雇用の保障があり、技能形成ができるということです。
 御質問、済みません。
#37
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
#38
○足立信也君 ありがとうございます。
 かつて、今もそうですけど、出雲市役所が三百六十五日オープンにした、しかし総人件費は上げなかった、そういう変化を職員ものみ込むかということだと私は思います。
#39
○参考人(大澤真知子君) そうですね、はい。
#40
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 それでは、山本香苗さん。
#41
○山本香苗君 公明党の山本香苗です。
 三人の参考人の先生方、今日は大変貴重な御意見をいろいろと面白く聞かせていただきました。
 本当に基本的なことで申し訳ないんですが、実は我が党内にもこのワーク・ライフ・バランスというものを進めていくに当たって、いろんなところにヒアリングはしてきたんですけれども、やっぱり自主的な取組に今アメリカやイギリス型のような形でいいところを広げていって、みんな頑張ってやってくれという形を取っていてもなかなか日本では進まないだろうなというところで、法的な整備が必要であろうという認識に立って今いろいろと勉強させていただいているところなんですが、樋口先生、慶応大学の樋口先生なんかもそういったお考えを持っていらっしゃるわけですけれども。
 今日、三人の先生方、それぞれ御専門をお持ちですので、そういった法整備が必要という中で、どういったものを期待されるのかということをコメントいただきたいのと、先ほど池本参考人の方から、実は昨日、保育所の方を見てまいりまして、そのときに非常に設備が整っていて、いろんな意味で、自分が働く身で預ける身だとこれは本当にいいなと思うんですけれども、ある意味、今日御説明いただいたように、親と子が一緒に過ごしていくというところを獲得していくということも、長い目というか、両方にとって、子供にとっても本当にいい視点であって、そういうところが自分自身ちょっと欠けていたかなというものを感じたわけなんですが。
 その中で、先ほどもちょっと御説明いただきましたけれども、プレイセンターとともに、この保育所で、保育施設の中で親とか地域の方々が学習するという、イギリスでのアーリー・エクセレンス・センターですか、これについてもうちょっと、どういう経緯で入って、どういう感じのもので、御説明をいただければなと思っております。
#42
○会長(清水嘉与子君) それでは、二つ問題があったんですが、法制化についての問題ということでお三人の先生方に。そして、池本先生には保育所の問題。ですので、じゃ、諏訪参考人、大澤参考人、そして池本参考人ということでよろしく。諏訪参考人、どうぞ。
#43
○参考人(諏訪康雄君) 私は、六千数百万人の就業者がいて、雇用されて働いている人だけでも五千数百万人もいる。北は北海道から南は沖縄まで、非常に広いところで多種多様な働き方が展開されているわけでございます。
 そう考えますと、ワーク・ライフ・バランスに関しましても、この働き方以外はいけないんだというふうに今度は逆に押し付けるようなことは余りよろしくはないんではないか。まず大事なことは、したがいまして、こうした理念を組み込んでいかないと日本という社会が持続的に長くもつんだろうか、我々が本当に幸せに豊かさを享受できるんだろうか、一体何のための豊かさだったんだろうかという、こうした部分を確認していくというのが私は何よりも大事だと思っています。
 それからもう一点は、さはさりながら、最低限幾つかの部分で押さえておかなければいけない部分はあるだろうと思いますので、そのような共通項、これは我々の報告の中から幾つか浮かび上がってきていると思いますが、そうした方向へ向けての施策、あるいは施策の基本になるような考え方を示していただければというふうに思っております。
 その点では、ワーク・ライフ・バランスを語りますと、しばしば家庭という問題に生活はすべて帰着するように見えるんですが、実は御存じのとおり、結婚しないという選択肢が広がってきており、少子化の委員会からすると大変けしからぬということになるかもしれませんが、しかし、人のそれぞれの幸福追求ということを考えますと、こうした選択肢は決して無視することもできません。個々人が、したがいまして、個人の生活の部分と、それからこういう家族みたいな生活の部分とがあるということを理解してお考えいただきたいと思っています。さもないと多くの独身層などからそっぽを向かれてしまいまして、大変本来考えていない形で反発を受けかねないという懸念を持っております。
 私は、キャリア権という、人々は自分の職業キャリアを展開する権利というものを憲法上持っているんではないかという考え方に賛成をするものでございますが、そうしたキャリア権というものを、企業が持っている人事権、経営権といったものと対比させながら仕事と生活というもののバランスを考えていく必要があるんだろうというふうに考えておりまして、その意味では余り仕事と生活と、仕事か家庭生活かというような、こういう二者択一ではない形でお考えいただければというふうに思っております。
#44
○参考人(大澤真知子君) ありがとうございます。
 私も同じように、それぞれの人がやっぱり多様な選択をしていく社会が望ましいと思いますし、だれでもがバランスが取れた働き方をすべきだというわけではなく、仕事に集中したい人ももちろんいるわけですし、そういう面でそれぞれの人生においていろんな局面で様々な選択をしていくということができる社会がやっぱり一番望ましいのではないかというふうに思います。
 先ほど小林議員の方からも少し、こういったワーク・ライフ・バランスの声が高まったとしても本当に実効性があるのかということを多分御質問になったのではないかと思います。つまり、動きとしてやはり非正社員が非常に増えやすいような状況というのがそのままになっている中で正社員を雇うメリットというのもある面で限られてしまう、そういうところに対して法的な整備がもっと必要なのじゃないかということだと思いますが、私も実は二〇〇〇年に非典型労働の日米欧比較ということで十か国比較をいたしました。先進国の比較ですが、その中で、どういう国で非典型労働が増えていてどういう国で増えていないのかという、そういうところを見ますと、やはり法的な枠組みを整えていくということは非常に重要になってきているというふうに思います。
 私が重要だと考えている点の一つは、社会保険の適用における雇用形態間の差をなくしていくということ、それから有期契約についてですが、様々な国で派遣労働者の非常に不安定な就業形態の人が増えているということに対して、それそのものを制限することは非常に難しいと。つまり、そういう就業形態が必要であり、それによって仕事の経験を積むわけですが、その人がいつまでもその就業形態でいるということのマイナス面、つまり格差がそれによって生涯にわたって生じてしまうということについては問題であるということは共通認識としてその会議の中で出てまいりました。
 ですから、やっぱり一番日本が今心配しなければいけないのは、やはりその非正規の人たちが九〇年代非常に多く生み出されてきたわけですが、その要因というのが必ずしも個人の要因ではなくて、やはり企業側のコスト削減の要請が非常に強かったと。その中でコストが削減できる方法として正社員の採用を抑制し非正社員を増やすというストラテジーというのが取られたわけでして、その結果、現在に至って非正規の人が非常に増えているということで。
 それからまた、正社員の世帯と非正社員の世帯での所得格差というのも非常に大きいものがあります。これはだんだん二十代、三十代と年を経ていくに従って格差が大きくなってくる。これを温存しておくのは非常によくないというふうに考えておりまして、この問題に、つまりフレキシビリティーという問題、フレキシビリティーが必要なんだけれども、それを個人の責任に負わせるのか、それともフレキシビリティーというのを社会全体の仕組みの中に整えておくことで、もう少し非正規の場合にはやはりトレーニングをして正規に行くという、有期雇用の仕事にいつまでも就かないというための政府の支援というのはもう不可欠になってきていると思います。
 先ほど専門性の話もありましたけれども、やはりこれから必要になっていくのが専門的な仕事であったら、そこに優秀なフリーターもかなりおりますので、やはり失業対策あるいは人材育成の一環としてそういった人たちに機会を与えていくと。保障された雇用の仕事を増やしていって、そこに彼らが移動していくというような道をもっとつくっていく必要があると思います。そういう面で、有期雇用の契約の制限を設けている国も、例えばオランダのような国ではありますし、そういった点について日本でそういった制度がどう機能するかは分かりませんが、少なくとも雇用保障がある、人材育成の道がある雇用の場をもう少し増やすということが不可欠であると思います。
 それともう一つは、雇用形態間の差をなくし、社会保険のコストを一律にする、特に経営側に非正規を雇うメリットを制度上つくっていかないということが非常に重要になってきていると思いますし、それから解雇規制の問題についても今後は議論されていく必要があるのではないかというふうに思っております。
#45
○参考人(池本美香君) まず、法制度の面で力を入れたいと思っていることでは、先ほど大澤先生からもお話ありましたように、正社員の時短を進めるということで、そのために正社員が一時的にこの期間は労働時間を短縮してまた労働時間を増やすというような、そういう道筋を法制度として保障すべきではないかということで、全員に無理だとしても育児休業制度の中で正社員が時短を、短時間勤務を選択する権利を保障していくということは一つあり得るんではないかなと思っています。
 そうやって正社員が短くなってそれなりの賃金をもらっているとパートの人たちとの賃金格差があからさまになるというか明らかになって、やっぱりおかしいんだという議論がそこでようやくできてくると思うので、今はそこを明らかにしたくないために正社員の時短が進まないというようなところもあるように思うのですけれども、ここは大いに議論になるような仕掛けが必要かなと思っています。
 あとは、余り詳しくないんですけれども、以前ちょっと調べたときに、残業の割増し賃金率の問題があって、要するに人を新たに雇うよりも一人の人を長く使った方が、長い時間働かせた方が企業にとって得だという何か仕組みもあるということで、そのこともできるだけ多くの人を労働時間短く雇った方が企業にとってもメリットになるような仕組みを考える必要があるんではないかと思います。
 一人より二人雇った方がいいというのは、先ほど専門職のワーク・ライフ・バランスの話も出ましたが、日本だと例えば医者の仕事を二人では分けられないというような感覚がすごく強いんですけれども、イギリスだとかではワークシェアリングというかジョブシェアリングで二人で一つの仕事をやるというようなことも、これはむしろ専門職において行われているということも聞いておりまして、それは、そうやって二人の専門職が入ることでよりアイデアが、要するに同じ労働時間でより多くのアイデアや話合いとか啓発があってその仕事の質が高まるという発想がありますので、そこも専門職だから一人しかできないというんじゃなくて、チームでやるということがより仕事の質を高めるという考え方もできるのであって、ジョブシェアリングについてもちょっと、余り詳しくないですが、法制度なども何かあり得るんではないかなと思っています。
 あとは法制度のことでは、先ほどの社会保険の適用を広げていく、雇用保険制度を見直すということもあると思うんですけれども、私もやはり育児休業の所得保障をどうするかといった場合に、今は正社員の加入している雇用保険のみでカバーしているために非正規のところにまでそういう給付が行き渡らないという問題もありますので、そこはそういう雇用形態に区別せず、子供で休んだ労働者に対する共通の何か保険制度のようなものを設けて、そしてさらに、先ほどの親が子供にかかわることもセットで進めていく必要があるという観点からいえば、ノルウェーのその在宅育児手当のような形で、保育所に預ければ保育所に補助金が出るけれども、保育所に預けない場合には現金が親に給付されるというような、そういう仕組みも検討してみることが必要ではないかなというふうに思っています。
 それから、先ほどの保育の方でのアーリー・エクセレンス・センターについてですが、これは私も現地に行ったわけではなくて、文献からだけなので余り詳しいことは申し上げられないんですけれども、要はニュージーランドと同様イギリスでも、子供のまず教育の質を高めるためにはどうするかといったときに、保育所の専門職の質を高めるということももちろん重要なわけですけれども、そのほかに、やはり親のレベルと言うのもちょっと言葉が難しいんですが、親の能力というか自信を付けさせるということだとか、また、親がそこでいろんな人たちとつながっていて、何か困ったときに相談できる人がいるかどうかという、そういうネットワークをつくっていくことが子供の教育の質を高めるのに非常に重要だという考え方があります。
 そのために、イギリスの場合は保育施設に親が学ぶ、また地域の人たちも一緒に学びに来るような場所があることで、そこで一つのコミュニティーをつくり、また親の自信や能力を高めるというようなことをやろうとしているわけです。
 また、イギリスのアーリー・エクセレンス・センターは、もう一つ、その財政的にコスト削減ということも一つありまして、今、日本でも子育て支援のために、例えば保健所があったり、お母さんの就労のためのマザーズハローワークがあったりという、そういうものがばらばらにあって、親は独りで子供を抱えた場合に、いろんなところに何があるかを探して子連れであちこち行くのがとても負担で、情報も一括して得られないし、そのことによって取りこぼしがあるというか、そういうことがあるので、そういう親が必要なサービス、例えば次に再就職するための就労支援であったり、子供の医療のことだとかそういうものと、あと、親がもっとリフレッシュしたいというレクリエーションということで、何かヨガ教室なんかをやっているそういうセンターもあるということなんですが、そういう親が必要なサービスを一括して提供することで、ダイレクトに親がそういうサービスを受けやすくなるということと、ばらばらでやっているよりも提供する側のコストも削減できるということで、具体的にちょっと数字はないんですけれども、ばらばらにつくるより何%ぐらいコストが削減できるみたいなこともあって、こういう拠点整備を行っていったというふうに聞いています。
 要は、どちらも基本は、子供が要するに健全に育つためにはどうするかという発想で、日本も、私も以前、文部科学省の幼児教育部会に入って、幼児教育が今問題だということで議論したんですが、行きがちなのは、保育園、幼稚園の先生の専門性を高めるに行くんですけれども、でも、それだけでは、やっぱりその時間だけやっても、家庭に帰って子供がどういう環境にいるかが、むしろそちらの方が子供に大きな影響を及ぼすということで、そこも一緒に高めていくために保育所なり幼稚園なりもアプローチするということが必要で、そういった取組がニュージーランドやイギリスなどでは注目されているということだと思います。
 以上です。
#46
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 それでは、川口順子さん、どうぞ。
#47
○川口順子君 短時間勤務を、これちょっとどなたでも結構なんですが、お教えいただける方にと思いますけれども、短時間勤務を選択する権利を保障するというお話が先ほど来ありますけれども、具体的にその法制度、今、日本にある、からいって、何を変えれば、変えることが必要になるんだろうかという質問なんですね。
 例えば、法定労働時間四十時間というのを撤廃しなければいけないとか、何がそれに伴って、その雇用保険を受給する権利とかいろんなことがかかわってくると思うんですが、何が変わらないとそういうふうにならないのかということなんですが。
#48
○会長(清水嘉与子君) どなたにお答えいただけますでしょうか。
 それじゃ、諏訪参考人、どうぞ。
#49
○参考人(諏訪康雄君) 非常に重要なポイントでございます。
 短時間勤務を現在ある一定の範囲で認めようというときは、やはり家庭責任などとの関係で、育児ですとか一定のときに短時間勤務を進めるという方向が議論されておりますが、他方、オランダなどの場合ですとそうではなくして、一般的に短時間勤務を選択できる権利を与える。ただし、労働者が全員そんなことを、取ってしまいますと企業経営が成り立たなくなる可能性もありますんで、ちょうど従業員が年休をその時季指定をいたしますと、使用者が今のこの時季はちょっと困るよと、三人までは欠けていいけど五人も欠けられたら困るから二人は時季変更だ。これと同じように、短時間勤務に関しても業務の正常な運営を損なうというようなことがあれば、ある一定の範囲であなたにはやっぱり無理ですよというような、こういうことが言えるような仕組みがオランダ型だろうというふうに考えられます。
 それで、オランダの場合には、それを入れる際には非常に前提になりましたのは、やはり処遇の均衡みたいな、時間が短い、長いで賃金に大きな差が出るということはない。つまり、時間当たりの賃金ということでございますが、この点がやはり非常に重要でありまして、先にこれをしないままに入れるということは非常に難しいだろうというふうに思います。
 したがいまして、日本の場合は処遇の均衡という部分で大論争をやって、にっちもさっちもいかないままにもう二十年ぐらい経過をしておりますから、ここが一つのネックなんだろうというふうに思われます。
 それからもう一点ありますことは、やはり仕事の仕組みだろうというふうに思います。このように、ある人の労働時間が短くなっても全体として仕事がうまく回っていくためには、先ほど池本参考人もおっしゃっていましたけれども、大澤参考人でしたか、お医者さんなんかの場合でも、一人の患者を一人だけのお医者さんが診るわけじゃなくて、二人とか三人が診てもうまく伝わっていくような仕組みがないと、これはサービス経済化の進む中で、なぜあの人はいないんですかと顧客から来られてしまうとなかなか難しいという問題があります。
 それからもう一点、これも日本の場合入れるのに非常に難しい問題は、やはり職種的な考え方でございます。ある仕事の範囲に関してはある一定の社会的な相場があって、ある一定の世間相場的な評価がなされるというところにおいてはオランダみたいなやり方は入れようと思ったらやれなくはないんですが、日本のように、年齢ですとかいろんなそういう別の属人的要素で処遇が決まっているような部分ではなかなかこの仕組みを入れることが難しくなるというふうに指摘されておりまして、そういうふうに考えますと、先ほどから大澤参考人もおっしゃられていましたように、日本の場合には入れたいと思っても非常に難しいなということで、オランダ型の柔軟な働き方のブームが一時期起きました。私も現地に行って調査などいたしましたが、なかなかそれが難しいということで、今は下火になってしまったんではないかと思っております。
#50
○会長(清水嘉与子君) ほかに御追加の参考人おられますか。
 それじゃ、池本参考人、どうぞ。
#51
○参考人(池本美香君) 今の御質問で、ダイレクトに私も余り労働の詳しい法制度については分からないんですが、育児休業制度の範囲であれば、現に会社によって、短時間勤務をしてそれによって給料は何%削減するというルールを決めて、それにのっとってやっているところがありますので、そういったやり方を育児休業制度の中に盛り込むことは可能で、それを、今は選択ですけれども、それを労働者の側は請求できるということを明記すればいいんではないかなと思っていますが。
 一つは、今短時間勤務の問題として、育児休業の範囲で申し上げますと、時間を短くして給料も減らされているのに業務量が減らないという不満が育児休業で復帰した人の間に非常に強くて、時間も、大忙しでやって早く帰ろうとしているのに評価はされないし業務量は多いしということで、ばかばかしくてやってられないという感じで辞めてしまったりというようなことが出てきていますが、その辺り、個別に今任せている段階では業務量と時間と賃金のその折り合いを付けることは非常に難しい状況で、それをもう少し交渉するなりある程度の基準を示すというようなことでやっていくことも非常に重要ではないかなと思っております。
#52
○会長(清水嘉与子君) 川口さん、よろしいですか。ありがとうございます。
 ほかにございませんでしょうか。
 それじゃ、岡田広さん。
#53
○岡田広君 三人の参考人の先生方、大変勉強になりました。
 二点お尋ねしたいんですが、一点は、三人の先生にお尋ねしたいと思いますが、今イギリスの図書館の日曜開館の例がありましたけれども、なかなか、図書館とかあるいは博物館とかレストランとか、そういうところは外国でも日曜日はやっています。しかし、ほとんどのお店は休み。先月、ジュネーブ行ってきましたけれども、国際機関があれだけたくさんあっても日曜日は休み、そしてまた夜はお店が閉まってしまうというそういう中で、日本の場合は二十四時間営業という先ほどそのお話がありましたけれども、二十四時間営業、例えば、コンビニとかあるいは外食レストランとか、そういう中で、多分もう世界各国回っても二十四時間やっている、そういうお店というのはないんだろうと思います。世界は動いているから、国際化の中で二十四時間必要だという考え方分かるんですけれども。ILOのソマビア事務局長さんとも、このワーク・ライフ・バランスでいろいろ三十分時間取っていただいてお話をさしていただきました。やっぱり、これはもう世界共通の問題なんですが、特に日本ではこの二十四時間営業、ですから、例えばフリーター、ニートの人たちにしても夜型になっていると。だから、いろいろ電話相談しても、五時で終わるんじゃなくて二十四時間やらないとなかなか乗ってこないという、そういうあれがあるんですが、考え方として日本の今の今日のこのワーク・ライフ・バランスから考える現在の日本の社会環境、二十四時間型という、これについてどう考えるか、これが第一点。
 それから、衣食足りて礼節を知るという言葉がありますが、着ること、食べること、そして住まいのこと、住は全部満たされたとは考えていませんけれども、衣食住ほぼ満たされてきたと思います。
 私、最近、新医職充という言葉言っていますが、医というのは医療、医学、健康ということです。そして、職は、職業の職。正に団塊の世代は来年どっと退職をする。これから職業、六十の手習いから八十の手習いということで職業技術訓練、こういうのとても大事だと思うんですが。そして、もう一つは、充というのは充実の充という言葉、健康で技術力を持って働く場所があれば充実した人生送れるという、そういうことになるんだろうと思いますけれども。
 三種の神器、五十年間の歴史の中で三種の神器という言葉ありました。電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビ、昭和三十年にはやった言葉です。三十九年に三C、カー、クーラー、カラーテレビ、これも満たされました。四十七年に新三Cという、セントラルヒーティング、コテージ、クッカー、これ全部満たされていませんけれども、現代の三種の神器、新々三Cと言われているそうです。一つ目はカルチャー、二つ目、コミュニケーション、三つ目、クリエーティブですけれども、その中のカルチャーという、正に生涯学ぶというのをとても私は大事なことなんだろうと思います。
 そこで、これは諏訪参考人にお尋ねしたいんですが、ワーク・ライフ・バランス意識という、このデータは大変興味を持って見ていたんですけれども、スウェーデンは仕事重視一一・六%という、こういうデータが出ているんですけれども、日本は、ちょうど余暇重視、仕事も余暇も同等、仕事重視で、大体バランス、三分の一ずつ、こうできているような気がするんですけれども。アメリカはまた自己責任の国ですから、ちょっとデータ違いますけれども。ただ、スウェーデンの一一・六というのは、例えば、高福祉高負担の国と言われていますけれども、そういう中で、国民負担率というのは一番高い国が多分スウェーデンだと思うんですよ、七一%ぐらい、税金とか社会保険料。日本は三六%ですけれども。考えてみると、スウェーデンの人たちは、もう働いても国民負担率で取られるんじゃないかという意識も根底にあるのかどうか分かりませんけれども、日本が目指すこのワーク・ライフ・バランス意識というのはどういう方に行くのがいいのかということを一つお尋ねしたいと思います。
 以上です。
#54
○会長(清水嘉与子君) それでは、また二つの問題がございました。二十四時間営業、この長時間労働の話と、それから、諏訪参考人にはワーク・ライフ・バランスの日本人の意識の問題が出ました。
 それでは、大澤参考人から、池本参考人、諏訪参考人というふうにお願いします。大澤参考人、どうぞ。
#55
○参考人(大澤真知子君) 御質問ありがとうございました。
 二十四時間営業のお店というのは確かにヨーロッパに行きますと少ないですし、ある一定時間になるとお店が閉まるとか、そういう労働時間規制が非常に厳しい地区、かつ労働者の権利が保障されていた国だと思います。
 そういう意味で、ただ九〇年代になりまして、経済のグローバル化ということで、そこら辺も少し規制緩和をせざるを得なくなって各国が規制緩和をしたという流れがあるというふうに聞いております。その観点からワーク・ライフ・バランスの導入がまた出てきたということで、二十四時間、夜型になってしまうと、もうとてもじゃないけど健康を害してしまうということから、シフトを組んだり短時間勤務をする働き方、働き方の柔軟化によって対応するという、そういう動きができたというふうに聞いております。
 以上です。
#56
○参考人(池本美香君) 二十四時間化については、私はやはり今の日本の価値観が便利になることだとかもうかることにどんどん向かっているからではないかなと思っていて、そういう価値観が変わらないといけないんではないかと思っています。
 二十四時間化の問題は、働く側の健康への負担ということもありますし、やはり子供の教育というか、やはり子供も今、夜遅くまで起きていて、健康だとか学力とかにも影響があるなどという議論もされていますけれども、本当にめり張りがあるというか、あとみんなで共通の体験をするというんですか、朝みんな起きてというような、そういう、日曜日はみんな休むとか夜はみんな家にいるとかっていう、そういう何か標準のパターンがあることがむしろ今は必要なんではないかなと思っています。
 これまではとにかく多様化ということで、自由ということでどんどんやってきましたけれども、それが必ずしもそのことで、まあ便利になったりとかもうかることはあるんですけれども、それ以外にいろいろな悪影響を及ぼしているところがあって、そういった全体のことを配慮して物事を決めていくことが必要かなと思います。
 例えば残業をするとかについても、これはちょっと話がそれてしまうんですけれども、日本だと個人がもうかるために残業をするということは別にだれも否定をしないわけですけれども、どこかの、どこの国だったか忘れてしまいましたけれども、それはだれかが長く働けば、その分雇用機会に就けない人がいるんだという発想で、そういう長く働く人が生まれないようにしようというふうに組合で話し合ってやっている工場の話なんかも聞いたことがあるんですけれども、そういうふうに全体がどうなるかということまでもう少し配慮して政策なりまた個人の行動などが取れるようなことが今は非常に必要かなと。本当に個人個人で考えて、個人が便利かもうかるかということばっかりに日本がどんどん向かっていってしまっていることがあって、そのこともこのワーク・ライフ・バランスの中では考えなければいけないことなのかなと。非常に抽象的な話ですけれども、そんなことを思っています。
#57
○参考人(諏訪康雄君) まず最初に、二十四時間文化とでも呼ぶべき社会環境の問題でございますが、これはなかなか個々人の意識とか人々の行動形態を直ちに規制をしたり変えるということは困難でございますが、しかしながら社会的に、あるいは経済的に様々なインセンティブやディスインセンティブを組み合わせることによって変えていくことはある一定範囲では可能だろうというふうに思っております。その点では、ただ注意しておかなければいけないことは、これから人口が高齢化していきますから、高齢者は余り夜徘回するわけでは、まあ一部の人を除けばそういうことはないだろうと思いますので、そういう意味では若者文化的な二十四時間というのはちょっと変わっていって、早朝文化的なものに変わっていくのかもしれないなというふうに思っています。
 それからもう一つは、やっぱりこの後急速に、四半世紀ほどの間に一千万人ほど労働力人口が減っていくという見通しの中で労働市場は逼迫ぎみでいきますから、その意味ではやはり無理な働かせ方、働き方というのは続かなくなっていくだろう、これはもう間違いないだろうというふうに思っておりまして、流れとしましては。したがいまして、そういうことを考えていきますと、ある一定のところでやはり持続可能なパターンに移っていくんではないだろうかというふうに思っております。
 その点で、御質問の中で非常に重要なポイントがあったと思うんですが、それは、ワーク・ライフ・バランスみたいなものは入れ物を整えたらそれでいいというわけじゃございませんで、中身をどのように当の働く人々が充実させていくかという、ここの部分への配慮が非常に重要でございます。
 国際比較をした家族社会学者の文献を読んでみますと、自分が海外に生活しても同じ印象を持ちましたが、それは土曜日とか祝祭日といったようなときに、家族ぐるみでホームパーティーを開いたりピクニックに行ったりバーベキューをしたり、あるいはちょっと公園で付き合ったりという、こういう家族ぐるみというのが日本の場合非常に少ないんですね。これが子育てにおける非常に閉塞的な、一つの家庭の中に閉じこもってしまう、また、更に見ると、個室に家族のメンバーが分散して閉じこもってしまうという、こういう形で幾ら休日ですとか何かが増えても、実は本当に充実しているかどうか、社会政策的に見るといろんな疑問があるわけでございまして、こうした面が今後どのように変わっていくかということについては是非御配慮をいただければと思っております。
 その点とのかかわりで、スウェーデンでございますが、スウェーデンには何度か行かせていただいてお付き合いをしている研究者などもおりますが、誠に、何というんでしょうか、やはり生活をきちんとエンジョイするというんでしょうか、充実させるというものに対していたくどん欲というんでしょうか、熱心でございまして、日本のように、仕事の方には非常にエネルギーを割くことは立派だけど、こういう生活を充実させることに関して、あるいは家庭を充実させることに関してエネルギー割くことは余り社会的に評価しないという国とはすごく違うという印象を持っておりまして、ごく普通の中産階級でも田舎や山とそれから海辺に小さなコテージですが別荘を持っていたりという、こんなようなことは非常に感心するわけでございまして、こうした私生活も含めて充実させることによって、様々なアイデアですとかあるいは社会的な連帯ですとか、いろんな部分でスウェーデン型と言われるような工夫がなされているんではないかなというふうに思っております。
 その意味では、今、日本は長い間、木を見て森を見ないという言い方をよくして、全体を考えないのはけしからぬというふうに見てきたわけですが、どうもここへ来てひっくり返した格言も大事なんじゃないかと。つまり、森を見て木を見ない、つまり、森全体は何となく繁茂しているように見えるけれども、個々の木を見たらすごくやせ細ってしまったり、変なふうにねじ曲がってしまっていたり、こうしたような植生におけるそのバランスが取れていない、環境バランスが取れていない、エコロジーが整っていないというようなことがいろんな意味で問題になっているんではないか。ワーク・ライフ・バランスというのは、そういう個々の木を元気にさせていくための非常に重要なポイントの一つではないかと私は考えております。
#58
○岡田広君 終わります。
#59
○坂本由紀子君 自由民主党、坂本由紀子でございます。
 今日は、三人の参考人の皆様、貴重な意見をありがとうございました。
 まず、大澤参考人に伺います。
 先ほど御説明いただきました働き方の希望と現実の中で、これは父親も大分その理想と現実が違っておりまして、この父親の現実が希望に近づくことがワーク・ライフ・バランスの実現のためには不可欠だと思うのですが、これがかなり違っているところの原因と、それから、その解決のために必要と考えられるその対策としてどのようなものがあるかということを伺います。
 それから、諏訪参考人にお伺いいたします。
 キャリア形成の重要性は御指摘のとおりだと思います。少子高齢社会の中で日本が成長を続けていくためには、個々の働く人のキャリア形成というのが不可欠だと思いますし、適切なワーク・ライフ・バランスなしには難しいというのもそうだと思います。ただ、ワーク・ライフ・バランスの実現だけで今の日本社会でこのキャリア形成が進むかということについて、まだそれ以外にも必要なもので欠けているもの等があるとすればどのようなものがあるかというのを一点伺いたい。
 それからもう一点は、ワーク・ライフ・バランスを実現するために労働時間の柔軟化が有効と、これもそのとおりだと思います。労働時間を考えたときに、正規、非正規の問題だけではなくて、個々の労働者が労働時間の管理をするというか、個人の裁量にゆだねるということがこの問題についてどのように作用するかということについてお考えを教えていただきたいと思います。
 以上です。
#60
○参考人(大澤真知子君) 確かに男性の、お父さんの方も仕事と生活、自分の生活を重視したいというふうに思っていると思います。
 御存じかもしれませんが、先ほど六十時間以上働いている労働者が増えているということですが、特に二十代、三十代のお父さんにそういう人たちが増えているという現実があります。ですから、そういうニーズと、それから現実には彼らに、仕事の比重が彼らの肩に乗っているというところなんだと思います。日本の場合、どうしても若手の方に仕事が行ってしまうことが多いですし、その負担が、九〇年代、正社員の採用が抑制する中でそういう人たちの労働時間が長くなってきているというのが現実です。
 いろんな地方に行って講演をして、講演の後に話を聞くと、お父さんから労働時間を何とか短くしたいという希望が出ているということを聞きましたので、その両立させたいということだけではなく、非常に労働が過重になっているということがあると思います。この問題も解決する必要があるのではないかなというふうに思っておりますが。
#61
○参考人(諏訪康雄君) まず、キャリア形成重視でワーク・ライフ・バランスだけで十分かといったら、当然これは必要条件の一つにすぎませんので、様々な他の配慮が必要だというふうに思っております。そういう中でも恐らく政策的な大きな課題は、能力開発をめぐる支援策というのが日本の場合大変いろんな形で不十分でございます。また、それに対して公的支出あるいは私的支出も含めましても、OECDの諸国の中で対GDPの比率が半分とか三分の一ぐらいでございます。
 先ほど池本参考人に公教育に対する支出が少ないということが出ていましたが、実はその後の社会人に対する能力開発への支援も非常に限られております。とりわけ、現在は雇用保険の三事業と呼ばれる形で特別会計で処理をされていて、一般会計で対応することがほとんどなされておりません。そうなっていきますと、先ほどから何度も出ておりますような非正規型で働く非典型の方々の能力開発、これを進めようとするときにその原資をどこに求めるかという問題ですとか、あるいはいったん労働市場から引いてしまった後の再就職のために訓練をしていくそのコスト、こうしたものをどこに求めるかというところですとか、あるいは企業や職場をいったん離れて社会人大学院などで再び勉強していこうというときのここに対する支援。スウェーデンなんかでは幾つになっても奨学金を出すという、ちょうど失業給付と見合うような額のこうしたときに支援をするというような仕組みをつくったりしておりまして、スウェーデン型が直ちに日本に取れるかといったら難しいのは言うまでもないんですが。いずれにしましても、どうも能力開発の問題とその環境づくりが重要じゃないかと思っております。
 私は、現在の苦学生はどこにいるかというと、自分が教えております社会人大学院生にたくさんいるというふうに思っております。それはもう三十代が主流なんですが、家庭を持ったり子育てをしたり、あるいはローンを抱えたりしながら自分の学費を払い、かつ奨学金というのはほとんどこういう世代には回ってこない。そして、職場においては厳しく成果を問われていて、授業へ来ようと思ってもなかなかそれを理由に仕事の場を離れることが困難である。しかも、実は調べてみましたら、半分以上が職場に黙って来ているんです。言うといじめられるというふうに多くの人が言っておりまして、必ずしも転職を考えているわけではないんですがね、つまり職場ではそんな暇あったらもっと仕事やれ、目先の仕事やれと、こういうようなプレッシャーを受けるんだと。
 こんなふうに考えていきますと、実はそのキャリアをしっかりと形成して個々人がより一本の木としてしっかりした木に育っていくことが日本社会全体の森を豊かにするというふうに考えますと、このような環境条件を整えていくというのが非常に重要じゃないか。
 かつて苦学生というのは中学あるいは高校を出て夜間の学校へ進む、定時制の学校へ進むという人たちでしたが、そういう人たちに対しては労使がよく話し合って、残業を課さないようにするとか、それから夕方の仕事を少し早めに終わるようにして、そして職場の先輩格が少し勉強を見てあげたりして、しっかりといい点取れるようにしてあげる、あるいは試験の前には年休なんかを取れるようにしてあげたりとか、こんなようなことをしたことがあるんですね、もう四十年も五十年も前なんですが。
 こうした状況は今大きく変わりましたが、同じような配慮をしなきゃいけないのはだれかというと実は社会人大学院生みたいな人たちでありまして、こうしたものを支えようという発想、恐らく多くの人にほとんどないんではないかと思いますが、こうした環境をどう整えていくかというのが重要かなという気がいたしております。
 それから二点目に、労働時間を個人の裁量で柔軟化していくというのは、私はある一定のタイプの働く人々にとっては不可欠だろうというふうに考えております。自分自身の研究スタイルを考えてみましても、もしこれを他人から強制されたら、とってももたなかっただろうと思います。自分で選択して自分である部分柔軟にやるから、恐らく若いころだと年間四千時間以上研究していたと思いますが、それは乗り越えることができるのは、やはり自分でそういう選択できるからであります。
 しかしながら、すべての人がこういうような形で働けるかというと、そうではないことは先ほど申し上げたとおりでございまして、一方では、先ほど池本参考人もおっしゃられたように、日本の時間外労働が非常に長い、しかも、さらには残業代がしっかりと払われていないような、いわゆるサービス残業みたいなものがあるということが重要な問題点でございます。
 もし一人の人を雇う、もう一人雇う方がいいのか、それとも長時間働かせた方がいいのかという分岐点は、計算を、仕事と生活の調和の検討会議というのをやったときにしてみたことがありますが、五〇%ちょっとの割増し率でちょうど均衡いたします。したがいまして、今の二五というのはインセンティブ、つまり残業させるというインセンティブを企業の側に選択さしてしまっているわけでございまして、これもそう簡単にすぐ変わるかということは難しいんですが、しかしながら、少なくともかなり長い長時間になっている部分に関しては割増し率を上げないといけないだろうというふうに私は個人的に考えております。
#62
○会長(清水嘉与子君) 坂本さん、よろしいですか。
 ほかにございますか。
 それでは、山崎力さん。
#63
○山崎力君 今日いろいろお話しいただいたわけですけれども、一番私が聞いていてもどかしいというか、自分の頭のせいだと思うんですが、一応、少子化・高齢化社会に関してといったときに、仕事と生活の調和、こういうものと、これがいわゆる少子高齢化社会とどう関連するか、その辺の位置付けでお話をされた部分もあったには思うんですが、ほかのところのいろいろなお話を聞いていると、そこから、そことは直接結び付かない、いかにこの時代に生きるべきか、あるいは今の人たちが不満に思っているところをどういうふうに修正していったらいいのかという議論になったような気がしまして。と申しますのは、生活と仕事、その調和ができれば、いい社会になるんだから出生率も上がるであろうと、北欧なんかではそういうふうなことによって上がった実績もあるのだというのが丸括弧の中に入っているとは思うんですが、そこのところが非常に見えづらいといいますか、分かりづらいところがございました。
 日本の社会において、調和したからといって出生率が上がるのかどうか分からないというのが一つ。多少はいいところもあるかもしれないけど、ほかの要因で出生率が上がらなくなるとすれば出生率は今のまんま、日本はあと二百年か三百年たちゃ日本民族は消えるであろうというような形のものになりかねないということでございまして。
 そこで、一番私がお話の中で感じたのは、諏訪先生のお話でしたでしょうか、自分の責任でという部分と、それから、社会制度、法律なら法律で枠を決めると。だから、自分のやりたいことをやるという、自由に研究なりするというところと、それを放置しておくと一人の人あるいは少数の人たちに仕事の時間等が、押し付けられるか自分かは分かりませんが、結果的にそこに集約されて、ワークシェアリング、ジョブシェアリングとか、そういった形の広がりもなくなっていくであろうと。そこのあんばいですね。例えば自己責任、みんな自分が一人だとなれば、端的に言えば、自分の子供に育てるだけの自己負担投資を考えた場合、子供のいない方が自分で使える可処分所得は圧倒的に増えるわけです。これは男女ともですね。そういうふうな方向にもし大勢の方が行ったら、これはもう明らかに子供さん出なくなるわけです。
 その辺と、いわゆる生活と仕事との調和というところがどういうふうな連関が今あるのかという、その辺のところを、どなたでも結構ですのでお話し願えれば参考になるんではないかなと思いますが、よろしくお願いいたします。
#64
○会長(清水嘉与子君) それでは、今の問題につきましてどなたかお答えいただけますでしょうか。
 大澤参考人、どうぞ。
#65
○参考人(大澤真知子君) お答えいたします。
 私、内閣府の方でも少子化の委員をやっておりまして、それで三十か国、OECD三十か国を対象に、女性の労働参加と出生率の間にプラスの関係が見られる、三十年間の間に変化しているんですが、どのような国かというのを調べましたところ、アメリカ、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、オランダ、ルクセンブルグという、この六か国で九〇年代に出生率が上がっております。同時に、グローバル化にどううまく対応したかという、非正規がそれほど増えなかった国、あるいは比率が低い国というのが、このうちのアメリカ、デンマーク、オランダです。ですから、すべてに絡んでいるわけではないんですが、非正規がたくさん増えるよりも、むしろ雇用がうまく増えていった国の方が出生率も上がっている。
 それで、私はデンマーク、イギリスも景気も回復して出生率も今、二〇〇〇年、二〇〇二年ぐらいからちょっと上がってきているので、イギリス、オランダ、デンマークという国を訪ねて、そこら辺の関連についていろいろと聞いたわけです。その結果、非常に、今日、池本参考人からもお話があったように、やはり、働き方というのが無理ないというところがかぎであって、やっぱり夫婦で子育てをしていて楽しそうだというところが、次の世代も自然に家族を持って仕事をしていくというイメージを生み出していっているらしいんですね。
 ですから、イデオロギーとか何かそういうものではなくて、何か身近にそういう人たちがいて、私たちが取材したのが四時ぐらいなんですが、四時ぐらいから子供たちが保育所から家に帰り始めて、アパートでちょっと小さな庭がありますけれども、子供たちが遊んでいて、お父さんかお母さんどちらかが食事を作っているような風景なんですが、これが当たり前というようなところですと、子供を産まない方がお金がたまるかなというよりも、むしろこういう生活は非常にバランスが取れていていいなというふうに思うのだろうなという、そういうイメージが、そういうことが可能になってくるとそういう人たちが増えていって、それが自分もそういう生き方がしたいという人生設計を若い人たちがするようになるというふうに思いました。
 ちょっとデンマーク、オランダ、それぞれに違いますが、そういう面でもう一つ、池本参考人の方から教育費の問題が出ましたけれども、イギリスと比べてオランダで出生率の回復が早いんですが、その理由としてはやはり教育費にお金が掛からないということも非常に重要でございまして、両立支援策のみに視点が置かれがちですが、やはり教育費負担が少ないと、つまり、住居ですとか教育費ですとか、お母さんたちが働く理由というのはやっぱりそういった子供のために働くということも多いわけですけれども、オランダの場合ですと公立校が中心で大学の授業料がほとんど負担なしだということもワーク・ライフ・バランスが選択しやすい環境というのを整えている一つの理由ではないかと思います。
 ですから、個人に対して国が何ができるのかということで、仕事をやりやすくするということもありますが、同時に、個人の教育費の支援ですとか、それから社会人入学者に対する支援ですとか、そういうところで、もう少し少子化対策でもなぜ子供が産みにくいのかということを見ていきますと、やはり一番大きな理由が教育費にお金が掛かるということです。これは韓国と日本共通していますし、私も臨時雇用者が生み出された国とそれから出生率との相関関係ちょっと調べてみましたが、やはりマイナスの関係がありますので、不安定な雇用形態が多く生み出された国で出生率が下がっている。今日ちょっとそのグラフを持ってきませんでしたけれども。
 そういうことから、九〇年代の出生率の低下というのは、個人主義が徹底したというよりは、むしろ不安定な就労が生み出されて、子供は欲しいけれどもなかなか教育費のことまで考えるとお金が掛かって産めないと。で、女性がそのためにキャリアを形成するとますます晩婚化、晩産化になるという、そういった理由の方が多いと思うんですね。
 ですから、ワーク・ライフ・バランスを導入するということは出生率にとってもプラスの関係があるということは韓国の国際会議の中でも指摘されてきたことでございまして、日本においても有効ではないかというふうに考えております。
#66
○会長(清水嘉与子君) 山崎さん、よろしいですか。
#67
○山崎力君 今おっしゃられたことは、大体教養としては、細かいところは別として、我々の頭の中にも入っていることでございましてね。
 九〇年代の一・五七ショックって、一九九〇年というのは日本の雇用状況は万々歳の、今から考えれば万々歳のときだったわけですよ。それが気が付いてみたら一・五七だったと。その後でこれだけ景気が悪くなって、それで正社員からいわゆるパート労働者に切り替わってきた、産業の人口構成の変化が出てきた。その背景にはやはりグローバル化というのがどうしてもあったわけで、大企業の経営者から見たら、別に我々だって正社員そのままやってられるんだったら、それで企業が経営できるんだったらやっていましたよと。ところが、生き残るためにはそうしないとうちの企業はできなかったというのが前提にあって、それに輪掛けて、成績のいいところでも、あそこの似た会社が正社員をパートにしてこれだけ労働コスト下げているんだからうちの社だってやっていいじゃないかって、ますますもうけるというような形態で来ているわけです。
 ですから、今おっしゃられたのは議論の前提でございまして、そんなことを言うんだったら、出生率上げるんだったら、それこそ一人の、これ暴論として聞いていただければいいんですが、男性でも女性でも働いて、その一人の働きが今の給料の倍以上の給料があれば共稼ぎしなくたっていいわけですよ。そんなことは全然考えられない時代になってしまった。
 その中で、シェアリングをどうするかというのは一つの議論かもしれませんけれども、それ以上に今我々が考えなければいけないのは、そういうのを組み合わせしながら出生率を上げなければ日本の将来はないだろうと。特に、年金制度、その他医療制度も含めて、若手の方々の人数がある程度確保されて払っていただかなければ、老後はもう惨たんたるものになるというのはシミュレーションできているわけでございまして、そこのところでどういうふうに皆さんに働いてもらえばいいか、生活してもらえばいいか、その結果としてお子さん方の数が増えたらいいかという政策をどうしたらいいのかというのが我々立法府における問題意識でございますんで、その辺のところに資する、そういう考え方で何かヒントがなければなと、こういう意味で質問させていただいているわけでございます。
#68
○会長(清水嘉与子君) 今、山崎さんの御意見と思いますが、諏訪参考人、どうぞ。
#69
○参考人(諏訪康雄君) 非常に鋭い御指摘だろうと思います。
 それで、ワーク・ライフ・バランス論をするということになりますと、ワーク・ライフ・バランスは少子化対策としてというわけでは必ずしもございませんから、話が広がっていきます。しかし、他の国でも、ではワーク・ライフ・バランスは少子化という問題とかかわっていないかといったら、どこの国もかかわっている対応策の一つでございます。したがいまして、これがスペードのエースのような切り札かといったら、私もそう言えるかどうかは余り確信はありません。大澤参考人がおっしゃるとおりで、やはり自然にいかなければ、自然なこういう人類の生活の営みというのはできないじゃないかという意味ではそのとおりなんですが、これがすべてかといったらそうではないだろう。様々な他の政策と結び付かなきゃいけないだろう。
 出生率の多少とも回復が見られる先進国においては、三つぐらいの要素がかなり見られるとよく指摘されているわけでございます。
 それは、第一番目が、男女雇用機会均等が進んでいって、女性が活躍する場がある。それも若いときだけじゃなくて、ある一定年齢から先でも大学院等に入り直して力を付けてまたやっていくという、こういうような言わば、今はやりの言葉で言えば再チャレンジの機会みたいな、再挑戦の機会、敗者復活の機会、あるいはやり直しの機会というのがある。そして、それによってかなり先まで行ける。これがゆとりのある子育て等にかかわることができる。
 それから、育児等をめぐっては、やっぱり社会と企業の支援策が整っていない国は難しい。この点で、保育園の問題もそうでしょうし、保育所ですとかあるいは企業の様々な対応が必要だと。
 それから三つ目には、やっぱり夫の協力があるところとないところは違う。いろんな調査をしてみますと、三人目を産むかどうかはもう圧倒的に夫の協力があるかどうかなんですね。夫の協力がなくして、三人目を産もう、つまり出生率の二・〇七を回復しようなんというふうに思ったら、何人かに一人は三人ずつ産まなきゃいけないということになるわけですが、そのように考えたときに夫の協力なんかが必要になる。
 こういう文脈の中で考えていきますと、恐らくワーク・ライフ・バランスというのは、こうした夫の協力みたいなもの、あるいは女性の再挑戦の可能性がある中での働き方のパターン、あるいは社会や企業の支援策の基本理念みたいな部分、こういうもので緩やかにつながってくるのかなと思います。ワーク・ライフ・バランスが直ちに決め手というわけでは恐らくないのではないかと私は個人的には思っております。
#70
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 ほかにございますか。
 神本美恵子さん。
#71
○神本美恵子君 民主党の神本美恵子でございます。今日はありがとうございました。
 今日のお話からちょっとそれるかもしれませんけれども、私、学校の教員を前していたんですが、八〇年代の女子差別撤廃条約批准前後の国際的な女性運動の高まりの中で、それまで日本社会もそれから国際的にも、いわゆる男、男性が社会的な仕事をし、賃金を得て、女性は家庭で子育てなり家庭生活の中心的な担い手としてやるという性別役割分業というのが一般的、当たり前だったんですけれども、そうではなくて、女性も男性も、仕事も家庭生活、地域生活も含めてですが、どちらも、何といいますか、担いながら人生を生きていけるようにしようという意味で、女子差別撤廃条約では、特に働くことは、人間にとって性別にかかわりなく何人にも奪えない、奪い得ない権利であるという、これは非常に、戦前からずっと働いてきた女性たち、余儀なく働かされたとか自分の自己実現で働いたとか様々な状況があったと思いますけれども、そういう人たちにとっても福音のように聞こえた条約だったというふうに私も先輩から聞いてきましたし、じゃ、これからを生きる子供たちに、また国際社会の中でも活躍する子供たちに、女性であれ男性であれ、家庭生活も仕事も自己実現、そこでできるようにするにはどういう教育をしたらいいかということをずっと研究してまいりました。
 そうすると、課題としては、性別で役割が分業になっているところで、男の子には、地域生活、家庭生活における自立の力といいますか、そういう力を育てる、そこがへこんでいるからそれを付ける必要がある。女の子には、社会的な仕事で自己実現できるということを特に強調して教える必要があるというふうにやってきたんですが、今や、今日のお話のように、仕事と生活の両方をすることによって、より豊かに生きていくこと、精神的にも経済的にも人間的にも豊かに生きることができるんだということを、なかなか現実そうなっていませんので、教育の中で、机上で理屈を教える、教えたって全然それは子供の心に届かないので難しいとは思うんですが、やはり教育の中で、こういう方向でいくことがいいのではないかというふうなことを教えるとすれば、その幾つか課題、教育課題として、子供へのメッセージといいますか、もし、今日は議論になっていませんので難しいかもしれませんけれども、言っていただければいいなと思います。
 特に、今、国会では教育基本法の議論があっていますが、その中でも、政府提案の中で職業観とかそういうものを育てるというふうなのが入っていますけれども、どのような職業観を育てようとするのか。基本法に書くのがいいか悪いかは私は別の意見を持っていますけれども、ここは議論の場ではありませんから。ただ、特に高校の世界史の未履修問題が今出ていますけれども、中学、高校の社会科や家庭科という教科は非常に今カリキュラム的に軽視されています。これは非常に問題だと思いますが、そういったことも含めて御意見をいただければと思います。
#72
○会長(清水嘉与子君) 神本さん、どなたに御質問ですか。
#73
○神本美恵子君 どなたでも結構です。
#74
○会長(清水嘉与子君) それじゃ、どなたでもということでございます。
 池本参考人、どうぞ。
#75
○参考人(池本美香君) 済みません、教育のことは私も今ちょうど最後に言っておきたいなと思っていたところだったんですけれども。
 先ほど、男性がなぜ育児に参加しないか、長時間労働で六十時間以上働いているのかといったときに、男性はやはりそういう教育を受けてきている。要するに、競争に勝つことだとか、そういうことが立派だという教育を受けてきて、それが今の時代にやっぱり合わなくなっているということが多いと思います。男性自身も今子育てにかかわりたくて、今売れているのは男性向けの育児雑誌がいろいろ出ているわけですが、男性もそういう知識を求めていて、上の、自分の父親にはそういうモデルがないわけですから、そういう教育を、今は育児雑誌になっていると思いますけれども、そういう教育の機会は非常に重要だというふうに思っています。
 あともう一つ、次の世代の教育ということでいいますと、今、次世代育成のそういう計画の中でも、まず、先ほど大澤先生おっしゃったように、子育てがどういうものかとか、楽しいものだとかいう体験が全くない世代が今親になろうとしていて、今、私なんかもそうでしたけれども、ずっと職場で聞く話では、職場との両立が大変だという話ばかりが女性の耳に届いていて、そんな猛烈なというか、何といいますか、ハードなものはとてもできないというようなことで、どんどん先延ばしになってしまっているということがあると思いますし、そもそも子供がかわいいとか、そう思う体験もなく、学校の中で勉強だけをしてきた世代というのが今、少子化をもたらしている、私も含めてですけれども。
 私がなぜ子供を産みたくなったかというと、やはりそういう子育て、すごく楽しくやってきたという人で、それがまたうまく生活と仕事をバランス取ってきたという、そういう先輩の女性と出会ったことで、ああ、すごい、自分もできそうかなってちょっと思って、そういう方向に向かったという、それは個人的体験ですけれども、だから、そういうきっかけを教育の中にもっとたくさん広げていく必要がありますし、またそういう教育は学校だけではなくて、地域でボランティアだとか、お父さんが地域にいて何かをやっている姿が自然にあるようにすることが一番重要なんではないかなと思います。
 私も、なぜスウェーデンがそういうふうに家庭生活を大切にするかというと、それは教育の成果が大きくて、何も仕事でやるだけではなくて、どういうふうに、例えば地域の環境を良くしていくかとか、子供の教育を良くしていくためにはどうするかということを思考する能力をきめ細かくスウェーデンなどでは学校教育の中で重視していたわけで、そういう単に経済活動に役立つという教育だけではなくて、もっと生活に密着した、そういう家庭科とか社会科というものを私ももっと重視していく必要があるなというふうに感じております。
 以上です。
#76
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 ほかの参考人の方もよろしいですか。ありがとうございます。
 ほかに、よろしいでしょうか、皆様方。
 それでは、質疑も尽きないようでございますけれども、大体予定の時間も参りました。以上で参考人に対する質疑は終了したいと存じます。
 参考人の皆様方には、長時間にわたりまして貴重で有意義な御意見を賜りました。本当にありがとうございました。いただきました御意見につきましては、今後の調査の参考にさせていただきます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 次回は来る十一月二十二日午後一時から開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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