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2006/12/06 第165回国会 参議院 参議院会議録情報 第165回国会 少子高齢社会に関する調査会 第4号
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2006/12/06 第165回国会 参議院

参議院会議録情報 第165回国会 少子高齢社会に関する調査会 第4号

#1
第165回国会 少子高齢社会に関する調査会 第4号
平成十八年十二月六日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十四日
    辞任         補欠選任
     岩本  司君     蓮   舫君
 十二月五日
    辞任         補欠選任
     蓮   舫君     和田ひろ子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         清水嘉与子君
    理 事
                荻原 健司君
                川口 順子君
                中原  爽君
                足立 信也君
                島田智哉子君
                鰐淵 洋子君
    委 員
                有村 治子君
                狩野  安君
                田浦  直君
                山崎  力君
                神本美恵子君
                主濱  了君
                羽田雄一郎君
                松下 新平君
                森 ゆうこ君
                和田ひろ子君
                山本 香苗君
                山本  保君
                小林美恵子君
                後藤 博子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        岩波 成行君
   参考人
       医療法人登誠会
       諏訪マタニティ
       ークリニック院
       長・理事長    根津 八紘君
       社団法人日本産
       科婦人科学会倫
       理委員会主務幹
       事
       慶應義塾大学医
       学部産婦人科   阪埜 浩司君
       医療法人セント
       ・ルカ産婦人科
       院長
       セント・ルカ生
       殖医療研究所所
       長        宇津宮隆史君
       日本弁護士連合
       会副会長     伊藤 誠一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○少子高齢社会に関する調査
 (「少子高齢社会への対応の在り方について」
 のうち不妊治療及び生殖補助医療)
    ─────────────
#2
○会長(清水嘉与子君) ただいまから少子高齢社会に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、岩本司さんが委員を辞任され、その補欠として和田ひろ子さんが選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(清水嘉与子君) 少子高齢社会に関する調査のうち、「少子高齢社会への対応の在り方について」を議題とし、不妊治療及び生殖補助医療について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、医療法人登誠会諏訪マタニティークリニック院長・理事長根津八紘さん、社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会主務幹事・慶應義塾大学医学部産婦人科阪埜浩司さん、医療法人セント・ルカ産婦人科院長・セント・ルカ生殖医療研究所所長宇津宮隆史さん、日本弁護士連合会副会長伊藤誠一さんに参考人として御出席いただいております。
 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、大変御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして本当にありがとうございました。
 参考人の皆様方から、「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、不妊治療及び生殖補助医療について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、議事の進め方でございますけれども、参考人の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑に答えていただくような方法で進めたいと存じます。
 なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていきたいと存じます。
 また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますので、よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、根津参考人の方からよろしくお願い申し上げます。どうぞ。
#4
○参考人(根津八紘君) 皆さん、こんにちは。本日はこういう機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、様々なことの中で問題提起をしてまいりまして、アウトローの根津とかおきて破りの根津とかという、そういう名誉あるタイトルをいただいておるんですが、一度も日本の法律を破ったことはございませんし、また私を育ててくれた様々な方たちに恥をかかせるようなことは何一つしてきておりません。それだけはお断りさせていただきます。
 本日は、不妊治療に関しましてオーソリティーであられます宇津宮先生がおいでいただいておりますので、その分野に関しましては宇津宮先生にお任せいたしまして、かかわってまいりました私の関連の生殖医療について私見を述べさせていただこうというふうに思っております。
 まず、産婦人科界の問題点に関して話をさせていただこうと思います。
 まず、私たちの産婦人科医に任されました人工妊娠中絶に関する問題でございますが、実は私が産婦人科医になりまして夜も昼も関係なく救急医療にかかわってきているにもかかわらず、何となく後ろめたい思いで仕事をしてまいりました中に、この人工妊娠中絶の問題がございました。絶対的倫理観に反するこの人工妊娠中絶をその人のためにしなければ、例えばレイプをされた女性とか健康のため妊娠継続ができないようなその女性のために、絶対的倫理観に反することであっても人工妊娠中絶をしなければいけないという立場に立たされておるわけであります。すなわち、この人助けの倫理観と人工妊娠中絶の反倫理観は、未来永劫矛盾として私どもに付きまとっていく問題ではないかと考えております。
 ここまで至るまで、産婦人科学会における教育の中にこの矛盾に関する教育がなかったことが私をかくも悩ましてきておるということを、まず最初に述べさせていただきます。
 次に、私の行ってきた生殖医療の中で減胎手術の問題がございます。不妊治療の中で、又は不妊治療じゃなくても多胎が起こってくることがございます。母体の健康、また胎児側の健康を考えたときに、やむなくその胎児の数を減らして安全に妊娠し出産するという、そういう命題を私たちは何とかしなければいけないという中で、たまたま二十年前にこの減胎手術を行いました。しかし、これに関して、旧日母、現在の日本産婦人科医会は、人工妊娠中絶の条文の中の胎児又は胎児附属物を母体外に排出すると、そういうところに反している、いわゆる胎児を一部残してあるからこれは堕胎罪に値するんではないかということで、大変なバッシングを浴びたわけでございます。
 このときに、私は産婦人科界の上層部の方たちに対する畏敬の念を払拭するような内容であることが理解できたわけであります。なぜかといえば、四胎全部を中絶することは許しても、二人助けることはまかりならぬという、この一般社会においては通用しないこの論理が現存し、今もそれが公の形の中で存在しておるわけでありますが、水面下ではほとんどの施設で減胎手術が行われている状況にあります。
 私事でございますが、私が二十年前に始めて以来、全国から減胎手術を求めて来ている患者さんたちは六百例を超えまして、助けた赤ちゃんは千人を超えているわけでございます。
 次に、問題提起となりましたのが非配偶者間体外受精でございました。これは、私が日本産科婦人科学会の会告に反する、すなわち採卵した卵は採卵した本人に戻しなさいという、そういう一項があるわけですが、それを行っていないということで学会を除名されまして、その後法廷闘争を行い、現在は産婦人科学会に戻っておるわけでございます。
 なぜ私が会告に反して行動を取ったかといえば、AIDという人工授精、ほかの人の精子を借りて妊娠していくという方法が許されていて、かつてはしたくてもできなかった状況にありました。すなわち、ほかの人の卵を取ってほかの人に提供するということは不可能な時期がございましたが、体外受精が行われ、そして現在のように外来レベルで採卵が行われ、私どもの施設でも年間千二、三百例の採卵が行われ、それも安全に行われているこの現状下において、精子の提供が許されていて卵子の提供が許されないというこの論理は、産婦人科学会の中では認められても一般社会の中では認められる論理ではないというのが私の意図するところでございました。現在、十年前から始めまして、精子提供による体外受精も含めまして、六十八例、九十四人の赤ちゃんが既に誕生しております。
 次に、代理出産でございます。
 これは、生まれながらにして子宮のないロキタンスキー症候群というそういう女性又は子宮がん等で子宮をなくしてしまった女性に、ほかの人が代わって出産してくれるという、すなわちホストマザーという方法でありますが、現在までに当施設では、五人の方たちが七人の子供さんをほかの方たちの子宮を借りてもうけております。
 これに関しましても、最近になって正式な形で代理出産、代理懐胎禁止という会告を産婦人科学会がつくりました。代理出産を悪用する人たちを排除をするような法律は私は是非作ってほしいと思いますが、こういう気の毒な女性を相互扶助の下に代わりに産んであげようという尊い方がおられたら、その方たちにそれをお任せして子供を産む方法も検討してしかるべきではないかと思うわけであります。
 次に、卵子セルフバンクの件でございます。
 これは、今までは精子の凍結は可能であったんですが、卵子の凍結というのは不可能でございました。この数年の間に卵子の凍結もガラス化法という方法で凍結保存できるようになりまして、当院でも白血病やもろもろのがんのために前もって卵を採卵し、それを凍結保存し、必要なときに使うという方法で、現在も一人の方が出産し子供をもうけておるわけであります。セキュリティーを完備した形でこの卵子セルフバンクの中で白血病も含む延命可能な患者さんや担当医の方々から依頼があり、現在それを中心としながら活用しているところでございます。
 次に、着床前診断の問題でございます。
 習慣性流産等の中で染色体異常のために何回妊娠してもなかなか生まれる赤ちゃんができないというそういう患者さんのために、採卵した卵を培養する過程の中で分割していく割球という細胞を取り出しまして、その染色体を調べまして、この赤ちゃんは染色体異常の子になるのかならないのかをセレクトしてお母さんに戻して、妊娠そして出産することが可能になるケースでございますが、当施設では三例が出産し、現在四例が妊娠中であります。
 最初に試行したケースは、七回の流産後、着床前診断に踏み切ったものの、子宮内膜の状態が悪く二回流産、そして、やっとここで妊娠できまして、今月の末に双子の赤ちゃんを出産することになっております。
 以上述べました私の問題を、これから問題にしていかなきゃいけない新しいカテゴリーとして考える高齢不妊の方たちに適用していく必要があるんではないかというふうに思うわけであります。
 懐古的になるわけではございませんが、昔は女性が十七、八歳で結婚し、子供を四、五人産んでいた時期がございました。その時期にはもろもろの問題がなく子供が産めていたと思いますが、加齢とともに様々な問題が出てまいりまして、例えば子宮筋腫とか子宮腺筋症とか子宮がんとか、そういうものの中で子宮を取らざるを得ない、そういう方たちが出てくる。そういう方たちを何とかしなければいけないという立場に私たちは毎日立たされておるわけであります。
 時間の関係ですべてを網羅できませんが、そこに書いてあるもろもろは加齢とともに起こってくる様々な点でございまして、現在は私どもの施設にも、加齢がゆえに、いわゆる高齢であるがゆえに子供ができない、この方たちが若いうちに結婚し、子供をつくっていたら、きっとこういう治療をしなくても済んだんではないかという人たちが一杯出てきております。そして、その方たちは、社会進出の中で仕事を続けていかなきゃいけないという中で、子育てもたとえできてもままならないという状況の中で、どうやって子供をつくるのかというふうに思うわけでございます。
 いずれにしても、いろいろな、アウトローとかおきて破りと言われながらも、目の前の患者さんのことを考え、その方たちに子供を持ってもらう方法として様々なことをやってまいりましたが、千人以上の方たちをこの世に送り出し、その方たちが一人、一生のうちに一億の功績を残したとするならば、一千億以上の功績を社会に投じてくれているんではないかと思いますし、投ずることになるんじゃないかと思いますし、それ以上に、家族という構成を構築させ、社会に貢献してきた誇りは、私は何と言われようとも持ち続けたいというふうに考えております。
 以上、割愛させていただきましたが、私の意図するところを述べさせていただきました。ありがとうございました。
#5
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 次に、阪埜参考人にお願いいたします。阪埜参考人、どうぞ。
#6
○参考人(阪埜浩司君) 日本産科婦人科学会倫理委員会の主務幹事をさせていただいております慶應大学の阪埜でございます。
 今日は、先ほど根津先生の方からもお話ありましたけれども、日本産科婦人科学会の会告というものが一体どういうものかということと、それから、代理懐胎、代理出産ですね、そういうものに対して現時点で学会がどのような立場を取っているかということを中心にお話をさせていただきたいと思います。
 最初に、既にお手元にお配りしてあると思いますが、この本会が出しております「倫理的に注意すべき事項に関する見解」という小冊子がございます。これが一般的に言われております生殖補助医療関係の学会が決めた見解というものでございます。
 これはどのような形でこういうものが作られてくるかと申しますと、様々な会員からの要望若しくは社会的な問題が起きた段階で、倫理委員会という、本会の倫理委員会の中で協議をして、あるいは問題の内容によっては会員以外の専門家の先生方にも入ってもらった審議会等の答申書を踏まえて、最終的に倫理委員会がこういう原案を作ると、それを広く会員にさらしまして御意見をいただいて、最終的に総会で決定するというような手続を取っております。やはり、内容によっては非常に時代に合わないもの等の御意見も多々寄せられておりまして、なるべく本会といたしましては現在の状況に合うような形で、今年も三月の総会で六種類の会告を大幅に改定しております。ですから、一回決まったものがずっと未来永劫このままというわけではなくて、状況に応じてなるべく対応できるような形にしているということであります。
 御存じのように、我が国においては、この生殖補助医療を規制するような法律というのは一切ございません。そこで、産婦人科医が一万六千人所属する本会がこのような一つの考え方を示して、各会員に自主的に守っていただくようにお願いしているという、そういう状況でございます。
 この会告は、中身いろいろ書いてあるんですが、全部で一応現時点で十三種類ございます。大きく分けますと、通常の夫婦間の体外受精、胚移植等生殖補助医療に関するものと、それからいわゆる研究に関するもの、それと最近、昨今新しい技術として注目されてきて社会的に問題になっている、いわゆる夫婦間がお子さんを欲しい場合に、第三者の精子やあるいは胚、それからあるいは子宮を貸していただいてお子さんをつくるという、そういう夫婦間、もう一つの配偶子若しくは子宮、そういうものをお借りしてお子さんをつくるという、そういう技術に関する会告があります。
 その夫婦間以外に何らかの第三者の手をかりてお子さんをつくるということに関しては、一つがいわゆるAIDと言われます非配偶者間の人工授精ですね、これがこの会告集の千二百十六ページに書いてあります。これは、歴史的に日本においても長らく行われてきて、これを認めているという会告がございます。それと、第三者の子宮あるいは胚をお借りするものとして千二百四十九ページ、それから補足して紙で付けてありますけれども、代理懐胎に関する見解、それから胚提供に関する生殖補助医療に関する見解ということで、この二つのものに関しては一応現時点では認められないという、そのような立場を取っているということでございます。
 この小さい紙、皆さんにお配りしておりますけれども、この2)のところに本会の見解に基づく諸登録というのがございまして、これが一応現在日本産科婦人科学会が把握している研究あるいはそのようなARTに関する施設数でございます。@として、ヒトの精子、卵子、受精卵を取り扱う研究、これは六十二研究把握しているということなんですが、その二番目、いわゆる体外受精、胚移植の登録施設が今年の十月三十一日の時点では六百五十八施設という、非常に数としては多い施設数が登録されているということでございます。D番目として、今お話ししたAID、非配偶者間人工授精の臨床実施に関しては全国で二十二施設が登録していると。今、根津先生の方からもお話ししました着床前に関する臨床研究に関しては現時点で七例認可しておりまして、年内には更に十例近く認可されるという状況になっているというふうに思います。
 話を戻しまして、この代理懐胎に関する問題に関して、会告集千二百四十九ページをごらんいただきたいと思っているんですが、この会告は平成十五年の四月ですね、今から約三年前に制定をいたしました。当時、一番社会的問題として取り上げられたのは、根津先生のところで姉妹間による代理懐胎、代理出産というのが行われたということを契機といたしまして、本会、それからそれ以外の日弁連、それから厚生科学審議会の生殖補助医療部会、そういうところで様々審議がなされたという経緯があります。厚生科学審議会の方でも、結論といたしましては代理懐胎は認められないと、その施術、あっせんに関してはたしか法律をもって規制するというか、罰則を適用するというような、そういうような報告書が出るような経緯がありました。我々はそれとは別に、独自に本会として、有識者も含めた会議を経て、一応このような考え方を最終的に確認をしたということになっています。
 やはり、代理懐胎に関しては、我々の立場としてはやはり、お子さんの欲しい患者さん、それからそれを何とかしてあげたいというお医者さん、もう一つやはり非常に重要なのは、生まれてくる子供がいると。その子供がきちんとその後、社会的にも、それから精神的な面を含めた、環境的に十分そのお子さんをサポートできる今社会的環境があるかと言われれば、残念ながらそこはまだないだろうと。このような状況でこのようなお子さんがどんどんどんどん誕生していくということは、そのお子さんにとってやはり想像の範疇を超えたようないろんな出来事が将来的に起こるかもしれないと。そんな点が一番大きなポイントになって、やはり生まれてくるお子さんのことを最大限に配慮すると現時点ではなかなか難しいのではないかという、そういう立場を取ったということであります。
 先ほど来、根津先生の話もありましたし、あるいは海外でこういう代理出産をされてくる方というのもいるのが現実であります。この「代理懐胎について」に書いてありますように、今代理懐胎については幾つかのポイントというか分類がありまして、一つは夫婦間で、今回根津先生のところがやられたみたいに、子宮のないようなお母さんがどなたかの子宮を借りてお子さんを産むというような、いわゆる昔は借り腹と言いましたけれども、いわゆるホストマザーと言われるようなものと、それから、依頼者夫婦の夫の精子を妻以外の女性に人工授精する、サロゲートマザーと言われるものがあります。
 実際にはほとんどサロゲートマザーは行われてなくて、基本的には先ほどの根津先生のところで行われたようなホストマザーが中心だと思うんですが、一応代理出産といっても二通りあるということが一つ。
 それから、実際に代理出産をしていただく方が、今回根津先生のところで行われたようないわゆる肉親の方、兄弟であったりお母さんであったりという場合と、それから海外に行って行われるような全くの第三者、それに関してはある程度の費用というか金銭の授受の中で契約として行われるというものと、そういうボランタリーなものと金銭授受を介する第三者のものとがあるということがあります。
 あともう一つは、やはり、このようなものがもし行われるとすればどのような患者さんに対してこういうようなことを行っていいのかと。この方法以外ではお子さんが持てない状況というのが、子宮がないような方、あるいは子宮を病気で取られた方、これは非常に分かりやすいと思うんですが、子宮はあるけれどもその子宮が使われないような、使えないというか、妊娠できないような方、あるいは、何かしら疾患があって妊娠自体がその人にとって命にかかわるような場合、そういう非常に様々なケースが考えられるというところがあると思います。
 実際、海外では代理懐胎はそんなに広くではないんですが実際には行われていて、ただ、逆にお子さんが欲しいカップルがどなたかの手をかりて生まれて非常に幸せになっている方もいるんでしょうが、一方で、アメリカではいわゆる生まれた赤ちゃんに何か障害があったような場合に、そのお子さんをどちらも引き取らないという、そういう形で要するに押し付け合うというような訴訟が起きていたり、あるいは生まれたお子さんが例えばエイズウイルスに感染をしていた場合、そういうような場合にもやはり引き取りを拒否するというような場合。
 それからもう一つは、逆に、代理出産を契約して産んだお母さんが、やっぱり十か月間おなかの中にいたことによって非常に愛着があって引渡しを拒否すると、そういうような事例も起きているということなので、確かに根津先生のところで行われているような親族間であれば、そういうような第三者間とは違って倫理的に許容されるレベルが高いというような意見を言われる先生方も多くいるんですけれども、逆に言うと、家族間であれば家族間でのまた何か新しい問題、例えば今回のように非常に年齢が高齢の方、五十を超えたような方が妊娠、出産をするということに対する身体的なリスク、通常自然な状態では妊娠しないような状態で妊娠、出産をされた方が、普通のお産に比べてどの程度リスクが高くて安全性が確保できるかというデータは、これやはり世の中どこにもないわけでございます。ですから、そういうようなものを踏まえてこの問題というのは考えていかなければいけないと。
 実際に、この最後の「付帯事項」にも書いてありますけれども、当然、根津先生のように患者さんのためにこういうことをするんだという意見は、非常に重々、同じ医療者としては理解できる部分もあります。本会といたしましても、当然、そのような形でこの代理出産を、唯一の挙児の方法である場合にはある一定の条件下でこれを認めてもいいんじゃないかという意見も、当然その時点からありました。ですから、当然、世の中の状況が変わって社会的な制度ができてくればこのような状況も変わってくる可能性はあるというふうには考えております。
 ただ、しかしながらその時点でもやはりこの患者さんにはこういうことをしてよい、あるいはしていけないということは、これはもう一学会が決める範疇を超えている。やってくれという患者さんとやってあげようというお医者さんと、あるいは私の子宮を使ってくださいという、そういう小さい、小さいというか、その小さいコミュニティーの中での同意が取れれば果たしてそれだけでいいのかという部分もあるのではないかというふうに思います。
 ですから、やはり何らかの一学会を超えたもっと上の段階でそういうようなものと、それから生まれてきたお子さんをしっかり守るような制度を是非早急につくっていただいた上で、やるとすればこういうことをやっていくべきではないかというふうに考えているという状況でございます。
 以上です。
#7
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 次に、宇津宮参考人にお願いいたします。宇津宮参考人、どうぞ。
#8
○参考人(宇津宮隆史君) それでは、手元に資料が行っておると思いますので、それに加えてプロジェクターで説明していきたいと思います。(資料映写)
 本日は、国政を担当されている先生方に不妊治療についてお話しできる機会を与えられまして本当に心から感謝しております。
 医者になって三十三年間、不妊治療を中心に産婦人科医療を行ってきましたが、不妊診療に関しては、この疾患は他の病気とは異なる面があると思っておりました。それは、通常の疾患は原因が一つ、二つで治療して治れば良いのですが、不妊の治療には三つの側面があると考えます。その第一は医学的、技術的な側面でありますが、これはともかくといたしまして、二番目に心のケア、そこら辺のことと、第三番目に社会的な問題、そういう側面の三つがあると思います。
 心のケアに関していいますと、有名なフレーズで、嫁して三年、子なきは去るという言葉に象徴されていますように、不妊は日本では恥という感覚がありまして、隠すべき、隠されるべき状態でありました。その空気が現代でも存在し、不妊患者さんはいわれのない苦しみ、悩みの中におります。この心の問題をケアするために私たちは生殖医療心理カウンセリング学会を設立し、当院にも臨床心理士がカウンセリングを行っております。
 第三の社会的な側面についても重要と思います。不妊治療はややもすると話題性の高い根津先生の前のようなケースがクローズアップされがちですが、現実では全国で現在百二十万組くらいの不妊のカップルが様々な問題に取り組んでいるということが実態と思います。
 不妊治療には人工授精や体外受精のように保険適用されてなく、不妊患者さんは多額の治療費を支払っております。この点について十年前から私は署名運動を行い、日本産婦人科学会のお偉い先生方に直接手紙を出したりいたしましたが、何も変わりませんでした。
 ところが、二〇〇一年に現在の大分市長で当時は民主党衆議院議員でおられた釘宮磐先生が私たちの署名活動にお手伝いしましょうと言ってくださって二〇〇二年に第一回の国会請願を果たすことができました。また、釘宮先生も厚生労働委員会で質問を合計五回行ってくださり、現在の不妊治療への助成金交付につながっております。その後三回私たちは国会請願を行い、その際にお世話になった先生方もここにいらっしゃると思いますが、本当にありがとうございました。
 本日は、ここで国政で携わっておられる先生方に不妊治療の実態をお話しし、御理解いただき、今後の政策運営に役立たせていただければ有り難いと思います。
 当院の概要です。
 胚培養士というのは精子や卵子や胚を取り扱うテクニシャンです。また、すべてのデータは情報処理室でコンピューター処理され分析されております。カウンセラーとして臨床心理士もチームに加わっております。全国で生殖補助医療施設として六百施設以上が登録されておりますが、治療実績から見ると、当院は上から二十番目ぐらいに当たるものと考えます。
 ここで、定義ですけれども、不妊という状態というのは、結婚して赤ちゃんが欲しくて正常な夫婦生活をしていても二年以上赤ちゃんができない場合のことを言っております。現在、全国に百二十万組ぐらいがいると推定され、約三十万組が治療中です。これは実に一五%の罹患率を示す病気と言っていいと思います。
 妊娠するためにはポイントが五つあります。関門と言ってもいいかと思います。これらの関門、ポイントがすべて、一つ一つがすべて完璧に行われた場合にのみ妊娠が成立いたします。
 不妊の原因は、これはうちのデータですけれども、男の人は六割がWHOの基準に到達しておりません。ですから、男の人が悪いというのが六割。女性のことに関していいますと、卵巣機能が悪い場合が五割、子宮内膜症がある場合が五割、卵管の障害がある場合が四分の一などで、これらの原因が複合している場合がほとんどです。不妊はこれらの病気に基づく二次的な疾患と言っていいと思います。
 治療の流れを示しております。当院ではステップアップ方式で行っております。それですので、体外受精は最後の段階で、これでしか妊娠が望めないという場合のみ行っております。
 ここで、よく混同される人工授精と体外受精の違いを簡単に説明いたしたいと思います。人工授精は、精子を授けること、通常、夫の精子を選別し、濃縮し、子宮内に注入するというだけのことです。その妊娠率をグラフに示しております。人工授精の妊娠率はそれほど高くはなくて、一〇%程度で、それも半年以内に妊娠することが多く、それ以後には増加することはありません。よって、次のステップ、体外受精に進むことになります。
 体外受精は、一九七八年、イギリスで第一号が生まれました。卵管内で起こることを体外で行う。要するに、図にありますように、卵子を採取し、精子と混ぜ合わせ、培養し、さらに三日ないし五日目に子宮に移植するという非常に手間暇の掛かる方法です。
 その手順を具体的に示します。大きく二つに分けられます。たくさん卵を採るために多量の排卵誘発剤を用い、そして採卵し、受精、培養、移植いたします。すべてが保険適用されておりませんので、採卵までの排卵誘発剤関係で大体十万円ぐらい、採卵以後移植までに大体三十万円ぐらいと、最低三十万円から四十万円が私費になって支払われております。
 精子が少なくて受精ができないことが予想される場合には、顕微鏡下に卵子内に精子を注入して受精させる顕微授精を行います。この技術は非常にテクニックを要し、きちんとできるまでには約二年掛かります。
 累積妊娠率を見ます。大体五回から六回目ぐらいまでに八ないし九割となって、それ以後は頭打ちになってしまいます。体外受精は一回で成功しないことが多いので、それで二回目、三回目とチャレンジいたしますけれども、これはその回数別の妊娠率を表しております。一回目、二回目ぐらいは妊娠率が高く、その後は一定に推移しております。よって、十回目ぐらいまでは希望が持てると思います。それ以後は行う人は少なくなってしまいます。
 そのように、体外受精は妊娠率は低い、非常に低いという印象がありますけれども、今までのデータはすべての症例で、高齢者も、卵が一個しか採れなかった例も、精子が極端に少なかった例も、また何度も何度もチャレンジをした人たちもすべて入っております。そこで、条件を三十五歳未満で初めてのチャレンジで、卵が四個以上採れた人と限定してみますと、一回で六割近くが妊娠しております。がんの治療成績と同じで、進行がんと初期がんを一緒にして分析すれば治癒率は低く、初期がんのみの治癒率が高いのと同じ理屈です。
 これは年齢別妊娠率です。妊娠成功は、患者さんの年齢によると言ってよいと思います。このグラフのように、妊娠率は三十五歳を境に下降し、四十歳以上は奇跡的になります。ところが、昨年度の当院の初診時年齢は三十二歳になっております。三十四歳までに産み上げてしまうというのは非常に難しいことになります。また、患者さんはこのグラフについての認識はほとんどありません。
 ここでちょっと心のケアのことについて少しお話ししたいと思います。
 患者さんに悩みを聞きますと、カウンセリング、コーディネーションが必要な場合、左側の方にあるバーですけれども。それともう一つ、右側の、真ん中辺にありますが、経済的な面があるということが分かります。
 これは、悩んで体調を壊したことがありますかということを聞きました。一番左に示しますように、半数ぐらいの人たちが悩んで体調を壊したと。一番右に書いてありますように、中には病院の治療が必要なぐらいの人もおりました。
 ここから経済面についてお話ししたいと思います。
 これは、当院に支払った金額についてお聞きしました。体外受精の段階に入りますと百万円以上になっているということが分かります。その支払を行った支出源は、お二人の収入からというのはまあよいと思いますけれども、上の方にありますように、親や金融機関から借りているという例もありました。このグラフを見て、釘宮磐先生は、国民がひとしく健康な生活を送る権利が侵されていると言われて、非常に印象深い言葉と僕はいまだに思っております。
 それでは、体外受精はなぜそんなにお金が掛かるのでしょうか。
 これは二〇〇三年に品川で日本受精着床学会が市民公開講座を開いたときの私の調査をしたデータです。体外受精ではいろいろな使い捨ての器具や試薬を用い、また無菌室レベルの清潔な培養室が必要で、高度で繊細な技術も要求されます。採卵以後に掛かる原価だけで十万円前後掛かっております。これに更に建物の設備費、ビル診ならばその賃貸料などは、さらにこの表では、スタッフの時給が千円、医師は二千円で計算しております。よって、一回の体外受精に四十万から五十万ぐらい掛かるというのは妥当とは思っております。
 今回の発表に当たって再度調査いたしました。これは全国の先生方にお聞きした結果ですけれども、三十万円から四十万円ぐらいが最も多くなっております。クリニックレベルで行う場合、二十万円と安いクリニックがありましたけれども、それは、手術や分娩料で補完して安く設定しているというコメントが幾つも入っておりました。
 当院で体外受精を行って妊娠しなかったにもかかわらず治療に来なくなった人にアンケート調査をしてみたところ、その理由は、経済的原因、経済的な問題であるということが一番でありました。
 この表は、今私の後ろに出席してくれている松本さんを中心にした、今現在治療を行っている患者さんの会、Fineの会のデータです。我々と同じように経済的な理由で治療の中断を考えた人が六割、実際に中断した人もいらっしゃいました。
 助成金の内容についての満足度も聞いております。これで見てお分かりのように、不満であるという人が四分の三を超えております。恐らく、理由は、金額が安い、地方で差がある、収入制限が六百五十万円というのがある、申し込めば不妊と分かってしまうなどが理由と思います。もちろん、保険適用の希望は大部分の患者さんが求めておりました。医師に対しても同様な設問を行いましたが、同じような傾向でした。その適用範囲とかいろいろ聞きましたけれども、いろんな意見がありました。
 これはEUの諸国でどういうふうになっているかということを、製薬会社の資料から見ましたけれども、ほとんど保険適用がされております。これは最初にお話ししたことです。
 不妊治療は、他の疾患と異なり、このようにいろいろなセクションの人たちとのチームワークで成立していると思います。またその目的は、その子が生まれた後に生まれてきて良かったと思われるような医療を行うことと思っております。
 これは、当院の全体の結果です。男の人の六割がWHOの基準に達していない。女性の初診年齢が三十歳を越えている。妊娠率は半分ぐらいある。ただし、ちゃんとうちで治療をした人で見ますと、九〇%以上の人が妊娠しています。
 ちょっと心配になるんですけれども、赤ちゃんの異常はどうなのかということですが、これは通常の、普通の妊娠で生まれた赤ちゃんに比べれば不妊の治療で生まれた赤ちゃんの異常率は低いということは、これは世界的にも認められております。
 これは、一般の疾患と不妊の違いを示しております。一般の疾患は分かりやすいし、理解しやすいけれども、不妊であるということは、この悩みは、このようなスライドに示すような理由で他人に非常に理解しにくいと言えます。
 これまで述べてきたように、罹患率一四、五%の疾患というのが不妊症です。これが他の疾患なら世の中はパニックに陥っているはずです。最近やっと助成金が出るようになりましたが、まだまだ不十分だと思います。
 不妊治療の保険適用に反対する意見がここに書いてありますように三つあります。まず成功率が低いということでありますけれども、先ほど言いましたように、条件をそろえればそうでもない、自然妊娠に匹敵すると。特殊技術ではないかという言い方がありますが、これはほかの心カテや人工腎臓などと同じような技術であるということ。倫理問題についてはどうだということで、後でまた討議があると思いますけれども、これは私が今日述べたように、通常の不妊治療とは別次元の問題であり、これは法律か国のレベルで決めていくようなことであり、一般の我々がいろいろ討議するようなことでは、もう超えているんじゃないかと思っております。
 一番下に書いてありますように、費用対効果。これは根津先生も書かれていたようですが、年間予算五百億円、これは高いじゃないかと言われますけれども、一人赤ちゃんが生まれればこの人が一生働いてくれますので数億円の、一人だけで数億円の価値が生じると信じております。
 これはデータにあります累積出生児数です。赤い字で書いてあります。今や生まれる赤ちゃんの六十一人に一人は体外受精で生まれているという時代に入っております。
 これが最後のスライドですけれども、今後の課題として、不妊症は増加するだろうと。しかし、治療によって赤ちゃんが生まれるけれども、ハイリスク妊娠が増えるだろうということで、これは分かっていますので、是非ここについて早めに早めに手を打っていただきたい。そして、こちらの方としても、四番目にありますように専門的ないろんな体制を整備する。それと、最後に書いてありますように、この不妊の治療の保険適用を是非していただきたい。
 謝辞はスライドに代えさしていただきます。本当にありがとうございました。
#9
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 次に、伊藤参考人にお願いいたします。伊藤参考人、どうぞ。
#10
○参考人(伊藤誠一君) 日本弁護士連合会の副会長伊藤誠一でございます。本日は、生殖補助医療の在り方について、法律実務家の立場から発言する機会を与えていただきまして、誠に感謝をいたしております。生殖補助医療技術の利用について、人権保障の見地から見た課題を中心に発言させていただきます。
 これは皆さん御確認いただけることだと思いますけれども、生殖補助医療技術は目覚ましい進歩を遂げております。不妊に悩むカップルにとって、遺伝子を引き継ぐ子供が持てるという恩恵を与えてくれることが期待されているからであります。
 生殖医療技術の利用は、改めて申し上げるまでもなく、これを利用するカップルだけの問題ではありません。この技術の利用によって生まれてくる子供、精子、卵子や胚を提供する人たち、あるいは妊娠、出産することになる女性、そして、それぞれの人の家族など実に多くの人々にかかわる関心事です。そして、生殖医療技術は、人の誕生という生命倫理上の高度な出来事、人権の出発点を左右する技術ですから、我が国の社会全体、文化や倫理に深くかかわる問題でもあると言うことができます。
 自分たちの遺伝子を引き継いだ子供が欲しいという願い、それを可能にする生殖医療技術があるのであるから利用したいという要求は、それは自然のものと言うことができますけれども、しかしただいま申し上げた諸要素を総合考慮しなければならないテーマである以上、それだけでその技術の利用が無前提的にあるいは無条件に認められてよいということにはなりません。その意味で、幸福追求権や自己決定権はその限度で制約を受ける場合があるということだと思います。
 日弁連は、基本的人権の擁護、法律制度の改善に努力しなければならないことを使命とする弁護士の専門職団体として、生まれてくる子供や利用者となる女性その他すべての人の人としての尊厳が保持され、人権が守られる社会を堅持させながら生殖医療技術の利用が図られるべきであると考えています。生殖医療技術の利用について、どの範囲の人がどのような条件で利用することが可能であるのかなどについて、法的拘束力のある基準を設けることが必要であると考えるのです。
 ところで、日本産科婦人科学会は、生殖医療技術の利用について自主的なルール、会告を定めています。生殖補助医療のための技術を肯定的に実施する側にあって、その濫用を禁止するという真摯な立場からなされているものであり、この対応努力に対して日弁連としても敬意を表しているところであります。
 あわせて、我が国においても法律による生殖医療技術の利用基準の定め、裏を返せば利用の法的規制が必要であると考えるものです。後にも述べますが、その緊急度は高まっていると考えます。フランス、ドイツ、イギリスなど諸外国では、既に一九九〇年代に、自国の歴史や文化などいわゆる国情に応じた法律を整備していることについては御承知のとおりでございます。
 さて、日弁連は、二〇〇〇年三月に、生殖医療技術の利用に対する法的規制に関する提言を行っております。生殖医療技術の濫用を防止し、生まれてくる子供など、これにかかわる人たちの人権を擁護するとともに、生殖医療法を制定し、関係する法の整備を求める提言であります。これを通じて、この生殖医療技術にかかわるすべての人たちの人権を擁護したいと考えております。
 本日、お手元にこの提言を資料として配付させていただいております。
 概要は次のとおりです。
 まず、行政的監督の下に生殖医療管理機関を設置して、この管理機関によって認可された医療機関と医師だけが生殖医療技術を実施できるというシステムを確立します。この管理機関に提言や答申をするための生殖医療審議会も設置します。これらは生殖医療技術の安全と質を保持し、利用する人々の権利を守るための言わば担保としての制度と言うことができます。
 そして、この管理機関に生殖医療技術利用の情報を一元的に管理させることによりまして、子供の出自を知る権利を保障するための仕組みを作ります。子供にとって生物学的な親がだれであるのかを知ることはアイデンティティーを確立する上で欠かせないことだからであります。なお、この情報の一元的な管理は、近親婚防止のためにも有用だと考えます。
 さらに、この管理機関が第三者から提供された精子、卵子、胚を一元的に保管し、管理します。
 有償の精子や卵子の提供を禁止します。
 また、生殖医療技術の利用の範囲は法律上又は事実上の夫婦に限ります。生殖医療技術は、現状では自然生殖によって自分の遺伝子を継いだ子を得られないカップルが自然生殖の補助を受ける限度で利用できるものとしてその対象が限定されるべきだからと考えます。
 精子の提供を受けて出生した子の父親は、その生殖医療技術を利用し出産した女性の夫とします。子と精子の提供者との間の親子関係は発生しないといたします。子供の法的な地位を確定するために不可欠な規範として確認されるべきだと思います。
 生殖医療技術を利用して生まれた子の母は出産した女性とします。すなわち、代理母、いわゆる借り腹、胚の提供はいずれも禁止いたします。
 生殖医療技術を利用するカップルのためにカウンセリング制度を確立し、インフォームド・コンセントの徹底を義務付けます。
 商業主義を禁止し、違反に対しては罰則を科します。人の道具化を防ぎ、人の尊厳を守るために商業主義の禁止は欠かせないからであります。
 日弁連のこの提言は、生殖医療技術の利用を進める上で当時必要と考えられた最小限の法的な規制についてまとめたものでした。しかし、その後の事態は、この提言が六年を経た今日もなお新鮮さを失っておらず、むしろ切実感を持って迎えられるべきことを示しているように思われます。
 二〇〇〇年の提言以降、生殖医療技術の開発が重ねられ、利用が進められてまいりました。近年、死後懐胎や代理懐胎が実施され、これによって生まれた子供の法的地位をめぐって紛争が生じています。昨年の五月には、いわゆる代理母についての高裁決定が出され、十一月にはその件の特別抗告に対する最高裁決定が出されましたし、本年九月にはいわゆる借り腹に関して高裁決定が出されています。
 また、同じ本年九月には、死後懐胎と死亡した父親との間の法律上の親子関係を否定する最高裁判決が出されました。この判決には補足意見が付いておりまして、そこでも法整備の緊急性について言及されております。もはや、法整備の必要は猶予を許さない状況にあると言えます。
 現在、問題となっております代理懐胎と最高裁判決が出されました死後懐胎について、日弁連の二〇〇〇年提言を敷衍して述べることによりまして、重ねて早急な法整備を求めたいと思います。
 まず、代理懐胎、代理母も借り腹も法律によって禁止されるべきだと考えます。財団法人母子衛生研究会の統計によりますと、平成十五年の妊産婦死亡は六十九名、平成十六年は四十九名でした。妊娠、出産は女性に重大な身体的負担と精神的な負荷を負わせるものであること、改めて申し上げるまでもありません。医学が進歩した現在もなお、妊娠、出産によって女性が死亡したり重篤な後遺症を残す可能性があるわけです。
 そうであるにもかかわらず、妊娠、出産が歓迎され肯定されるのは、それが自然で生理的な行為であるからです。懐胎と胎内での揺籃の経過を経て出産という事象を通じて、その女性がそしてそのパートナーが我が子を得、育てていくという幸せを得るからにほかなりません。
 ところが、代理懐胎はどうでしょうか。代理懐胎母となる女性には、妊娠、出産という生死にもかかわる重大な身体的、精神的な負担だけを負わせるということになります。
 代理懐胎母は、十か月間もの間、自分の胎内ではぐくみ、どんなに愛情を抱いても出産後直ちに他人である依頼した夫婦に引き渡さなければなりません。懐胎し生まれてくる子に対し愛情を抱いたり思い入れてはいけないと自ら言い聞かせながら妊娠中を過ごし、出産することを余儀なくされるわけであります。出産した女性の子を引き渡したときの喪失感は計り知れないほど大きいとも言われておりまして、それはむしろ生理的に見て自然なことだと言えます。
 このように、代理懐胎は本来の妊娠、出産の意味を大きく変容させることになります。代理懐胎は、女性が妊娠、出産行為だけ請け負い、あたかも生殖の道具となってしまう点で、有償の場合、無償の場合を問わず、人間の尊厳を害することになりかねないと考えます。
 懐胎の代行を依頼した夫婦が、子の出生時には既に子を望まない環境になっていることもあります。また、代理懐胎母が出産した子に強い愛情を抱き、離れ難い思いから子を引き渡せなくなることもあるでしょう。
 このように、代理懐胎によって出生した子をめぐって依頼した夫婦と代理懐胎母との間で子の奪い合いや逆に子の押し付け合いが生じ、紛争に発展し得ることは避けられないと思われます。このような事態が子の人権にとって、それを侵害し、その福祉に反するようなものであることは言うまでもありません。
 代理懐胎では、依頼するカップルと代理懐胎母との間で代理懐胎の合意、契約が締結されることになりますが、この代理懐胎契約は、有償無償を問わず、深刻な人権侵害を引き起こす可能性を含んでいます。健康な子を出産するために遵守すべき事項、制約事項が果たして代理懐胎母にあるのかどうか。妊娠、出産中に子や代理懐胎母に疾病、死亡、障害などが生じたときにどう考えるのか。容易に解決できない重大な問題がたくさんあるわけであります。
 有償の代理懐胎契約は子の公然とした売買に通じかねず、子どもの権利条約に反する事態を招きかねません。営利的あっせん機関が介在すればなおさらその危険性が高くなり、女性の商品化を招くでしょう。
 代理懐胎を利用しようとする者相互の経済的な格差が解消されないまま代理懐胎が進められればどうなるでしょうか。依頼する層と代理懐胎を引き受ける層の間に深刻な差別状態が生じる危険性もあります。
 無償の場合に限定して許容するといたしましても、多くの場合、近親者がその代理懐胎母になることが想定されます。そのことをめぐる家族関係の変質は避けられません。この近親者の場合は、女性の側に立ってみますと、近親者ゆえに自分の本意を貫くことは極めて難しい状況に置かれてしまい、代理懐胎母を依頼することも代理懐胎母を引き受けることも拒否し難いものになる可能性があります。我が国においては、夫婦にとって後継ぎを産むことが何よりも重要という風潮がなお残っており、これが不妊に苦しむ女性やその近親者の女性の自由意思をゆがめている現状も否定できないからでございます。
 次に、最高裁判決が出されました凍結保存精子による死後懐胎について申し上げたいと思います。
 この点につきましては、日弁連内でなお意思形成中でございますけれども、今日までの論議状況を踏まえて、私の個人的な見解として述べさせていただきます。
 結論から申しますと、死後懐胎は法律によって禁止されるべきであります。生殖医療技術は、さきにも述べましたとおり、自然生殖によっては自分の遺伝子を継いだ子を持てないカップルが自然生殖過程の一部を補うために利用できる技術であるべきです。そもそも、子は生存中の父母の配偶子によって生まれるというのが自然の摂理でございます。死後はだれしも懐胎に至ることはできません。死後懐胎は著しく自然の摂理に反する行為であり、不妊治療としての生殖医療技術の本来の範囲を大きく逸脱するものであります。親の意思で死後懐胎子を産むということはどういうことなのか、法律上の親子関係はどのようなものであるべきかについて真摯に考える必要があると思います。
 私たちは、生殖医療技術の利用によって生まれてくる子供の権利や福祉を最大限考えなければいけません。生殖医療技術を利用して子供をもうけることを許す制度を設計するのであれば、生まれてくる子供にとってより望ましい環境を準備すべきであり、その意味で死後懐胎は子供の福祉に反していると言わなければなりません。
 子どもの権利条約七条は、子供はできる限りその父母を知り、その父母によって養育される権利を有すると定めております。我が民法も、特別養子縁組制度の下では、養親となる者は夫婦であることが必要であると定めています。ところが、死後懐胎の場合は懐胎時に既に夫が死亡しているため、母親が懐胎するときには子には父親が存在しません。懐胎時に既に質的に、心理的に、あるいは物質的に安定した成育環境が約束されていないのであります。
 子供をもうけるということは、夫婦のそれぞれが生まれてくる子に対して大きな責任を負うことであります。改めて言うまでもないことかと存じます。子をもうけるについては、懐胎時に夫婦それぞれが子をもうけ育てていくという意思を持っていることが必要であり、出生した子が思春期を経て成長していく過程を想像しながら愛情を注ぐことを含む夫婦の意思、心理的な状態に支えられた出産である必要があります。こうした出産であることが子の福祉の原点であると言うことができるでありましょう。
 凍結保存精子を利用した生殖の場合には、精子が妻の体内に移される時点で、子をもうけることについての妻と夫の意思が改めて確認されなければなりません。子をもうけ育てるという意思は、時を経て様々な状況の変化に伴い変わることも少ないからであります。夫の凍結保存精子を利用するについて、預託者である夫が死亡しているときにはその意思を確認することは不能です。死亡した夫に子供に、育てる意思があったと認めることは不可能だと考えます。
 以上、代理懐胎、死後懐胎を中心に、日弁連が考えている生殖医療技術の利用と人権の問題について発言させていただきました。ありがとうございました。
#11
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取を終わります。
 これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後四時をめどとさせていただきます。
 なお、質疑者及び各参考人にお願い申し上げます。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。
 また、多くの方が御発言できますように、一回の発言はおおむね三分程度とさせていただきます。
 なお、質疑の際は、最初にどなたに御質問であるかをお述べいただきたいと存じます。
 それでは、質疑のある方、挙手をお願いいたします。
 中原爽さん。
#12
○中原爽君 自由民主党の中原でございます。
 根津参考人にお尋ねしようと思いますが、出産といいますか、妊娠適齢の年齢からいいますと高年齢、四十歳近い、あるいは前後、多分排卵の誘発剤を多用するという症例も多いと思うんですが、そうしますと、先生御説明のように多胎妊娠が起こると。私が承知しております御夫婦は、この誘発剤によります多胎妊娠で双子の男の子を出産しましたが、一卵性という意味で二人ともダウン症だったということでございました。
 そういう意味で、着床前の診断ということと、それから染色体を調べるということが、特に四十歳前後の方についてどういうふうに考えたらいいだろうかということをちょっとお尋ねしたいんですけれども。それが一つ。
 それから、提供精子による人工授精とそれから提供卵子による体外受精について、特に卵子の方については学会では認められない。先生の文章ですと、生物学的に異なるという論理というふうに書いてございますけれども、元々精子と卵子が生物学的に異なるのは当たり前の話だと思うんで、こういうことが今まで言われてきたのかというふうに思います。
 それと同時に、卵子の方は凍結保存が可能になりましたけれども、このことについても学会の方はまだ安全性が確立してないと、こういうふうに言っておられるようですが、この安全性の確立という範囲内は今どの程度に考えたらいいでしょうか。その二点でございます。
 卵子保存の、凍結保存の安全性という範囲内、それと高齢出産に伴います染色体を調べるかどうかという問題、この二点、お尋ねしたいと思います。
#13
○会長(清水嘉与子君) 根津参考人、どうぞ。
#14
○参考人(根津八紘君) ただいまの御質問の中で、高齢出産に関する染色体検査ということだと思いますが、これはあくまでも、こういう高齢になれば染色体異常の子供が生まれてくるというデータを当然患者さんたちに説明するわけでありますし、それを、着床前診断をするかしないかというのは患者さんのやはり自由選択ではないかというふうに思っております。いろいろな技術が出てきて、そしてそれを禁止するんではなくて、どういう点に利用できるのか、それをしっかりととらえた中で、大人の判断として行動を取っていく余地だけは残しておくべきだと私は考えております。ですから、患者さんに必要性と、その人が選択するかどうかはその人に任せて、あくまでも情報を提供し、そして最終的な判断は患者さんに任せるという形でいくべきではないかというふうに考えております。
 それから、二番目の御質問ですが、卵子セルフバンクに関する安全性ということでありますが、医療における安全性というのは常にこれは付きまとっていることでありまして、新しい技術が出てまいりましてその安全性を問うていくときには、どういう問題点があるのか、そしてどういう利点があるのかということを当然患者さんに説明し、そしてそれも患者さんが選ぶ中で新しい技術は行われ、そしてその積み重ねの結果、これが安全であるか否かということが最終的に言えていけるんではないかと思います。宇津宮先生から説明がありましたICSIという顕微授精に関しましては、この安全性ということが余り論じられないまま生殖医療の中に利用されましたが、しかしそれは当然、新たな技術でありますから、それに対する問題点、利点というものを患者さんに話しながら現在のレベルになっているというふうに考えております。
#15
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 ほかにいかがでしょうか。
 じゃ、小林美恵子さん。
#16
○小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。
 参考人の皆さん、大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。
 私、日弁連の伊藤先生にまずお伺いをしたいというふうに思います。
 先ほど先生は、夫婦にとっては後継ぎを産むべきであるというそういう風潮がまだ今の日本の中には随分あるというお話がございました。その点につきまして、例えば諸外国ではそういう風潮はどうなのかという点をお分かりでしたら教えていただきたいというのが一点です。
 もう一つは、先生がお書きになった文書の中で欧州のことをお書きになっているんですけれども、その中に、生物学、医学のヒトへの応用における人権と人間の尊厳の保護に関する条約で、そうした欧州は、具体的に人間の尊厳の確保の必要性を指摘をしているというふうにございました。日本の場合はそういった点がほとんど議論されていないということがございましたけれども、こうした点を欧州から日本が学ぶというふうになりますと、どうした点が学ぶべき点になるかということについてお聞かせをいただきたいというふうに思います。
#17
○会長(清水嘉与子君) それでは、伊藤参考人、よろしいでしょうか。
#18
○参考人(伊藤誠一君) 伊藤です。
 まず、先ほどお話しいたしましたように、諸外国では一九九〇年代に既にこの生殖医療を利用する場合の要件について法律で定めて、それに従って行動しているということでありますけれども、我が国では二〇〇三年、一度法制審議会等で議論が深まったのですけれども、その後、十分な立法作業が進んでいなくて、立ち後れているという状況にあるわけです。
 まず、先ほど申しましたように、この問題が自分たちの子供を望むというカップルだけの問題ではなくて、それぞれの国、社会の文化、ありように深くかかわる問題であるということを申し上げましたけれども、我が国においては、依然としてやはり、先ほどのどなたかの参考人のお話にもありましたとおり、結婚して、あるいは結婚した以上子供を産まなければいけないという、そうした周りからの強迫的な環境というものが目に見えない形で残っているということについては、十分考えた上で、考慮した上で、いわゆるこの自己決定の在り方などについても考えていかなければいけないのではないかと、そういう趣旨のことを申し上げました。
 それがヨーロッパではどうかということについて申しますと、その点についての深い調査を行っているわけではありませんけれども、先ほど申し上げましたように、この問題について立法が必要である、立法的な規制、基準を作ることが必要である。皆さんがおっしゃっている。学界もおっしゃるし、医療の現場にいらっしゃる方も述べておられるし、法律実務家が繰り返し述べている。しかしながら、それが遅々として進んでいかないというそこの状況とヨーロッパにおけるその在り方を対比して見たときに、一つは、この日本におけるその特性というものを理解できるように思いますし、また、後段の御質問のヨーロッパから何を学ぶのかということについての回答も得られるように私は思います。
#19
○会長(清水嘉与子君) 小林さん、よろしいですか。
 ほかにいかがでしょうか。
 山本保さん。
#20
○山本保君 公明党の山本保です。
 それでは、最初にまず、細かなことですが、伊藤参考人にお伺いします。
 いわゆる死後懐胎ですか、死後出産というんですか、これについてちょっと理屈を少し教えていただきたいんです。つまり、亡くなっているから駄目だということですが、これちょっと私、理解しづらいところありまして、夫が亡くなってしまう例というのはよくありますし、片親で生まれることもあります。それから、特に最近といいますか、臓器移植などでは、亡くなった方の遺志というものが、自分の体の一部について、ある程度というか、相当強い責任といいますか、発言権というか、当然のものとして認められておりますよね。
 そうしますと、これ、御主人が当然何らかの形で死後についてもよろしいと、こう言っておれば、これは何も問題はないのではないかと、それに関してですよ。そのほか挙げられた理由というのは、どうもそれ以外に余り駄目だという理由はないような気がしたので、ちょっとこの辺を教えていただきたいのが第一点です。
 それからもう一つ、宇津宮先生のお話の中から、いわゆる保険適用という問題です。本当にこうすべきではないかという御主張はよく分かります。
 そこで、具体的にといいますか、今、このまま数年、一回十万円とかという制度をつくりました。この制度自体に対して、まだまだもちろん不十分だとおっしゃると思うんですけれども、その辺の不十分であるというその理由でありますとか、若しくはここをこうすべきだと。
 また、この制度をつくるときにいろいろ検討していて、やはり、この生殖医療についてどの程度きちんとパターン化されたといいますか、標準化された、そして効果的な技法がどの程度までを保障すべきかということが大分大きな問題だったと思っておるわけですけれども、その辺をどういうふうにこれからクリアをしていけばいいのかについてお聞きしたいと思っております。
#21
○会長(清水嘉与子君) それでは、まず伊藤参考人からどうぞ。
#22
○参考人(伊藤誠一君) 伊藤です。
 先ほども申し上げたんですけれども、そもそも子供は生存中の父母の配偶子によって生まれるものであるというのが自然の摂理だと思うのですね。これを前提にいろいろ考えていく。自然生殖の過程の不具合を改善していくということは必要なことだというふうに思うんですけれども、この自然の摂理を超えたところで、生前に精子を提供する際の意思がそのようなことであるからということで、本来、自然の摂理ではあり得ないような、そのような事態を生じさせるということはいかがなものか。これは、先ほど御紹介いたしました最高裁の判決も述べているところであります。
 その限度で、自己決定といいますか、自らの意思で自らの行為を規律していくという点は、生まれてくる子供の福祉あるいは権利との関係で制約されると見ていいのではないかと、そう見るべきではないのかということについて、そのように日弁連は考えております。
 ですから、死後懐胎の場合は、懐胎の時点でもう父親がこの世に存在しないというそういう意味で、生まれてくる子供の福祉とか権利が保障される、その前提的な両親の心理的な支えというものが欠いた状態ではないかと思います。
 それから、父親となりたいというふうに考えた方の意思についても、やはり懐胎のそのときになお、子供を妻ないしカップルの相手に出産してもらって、そして将来自分が父親になっていくんだというような明確な意思というものが確認される必要があるのではないか、こういうことなんですね。
#23
○山本保君 ちょっと今の。
#24
○会長(清水嘉与子君) じゃ、ちょっと追加で山本さん、どうぞ。
#25
○山本保君 一つだけ。
 先生のお話、分かりました。ただ一つだけ、先ほど例の中にも挙げられました特別養子縁組のことについて、普通の夫婦、親子であると言われました。私、あれ作るときの担当をやっておりまして、まあ最初ですので日本の状況としてそういう法律にしましたけれども、これから別に夫婦若しくはその子供との年齢差というものはだんだん撤廃していく方向であるという形で制度をつくったようなそういう記憶でございます、まだ変わっておりませんけれどもね。
 ですから、自然の摂理というのは非常に重い言葉ではありますけれども、この辺は新しいこれから制度をつくるわけですから、私ももう少し勉強してみたいと思っておりますので、ありがとうございます。
#26
○参考人(伊藤誠一君) 会長、一言よろしいですか。
 死後懐胎を認めるということになると、理屈でいうと生殖年齢を超えたそういう状態で、生きていればとても生殖によって子供をこの世に送り出すことができないような状態でも、凍結した精子を解かして懐胎させることができると、こういう話になってまいりまして、本当に人の命の倫理であるだとか生命に関する摂理というものをどう考えるかという大問題にぶつかるというふうに思います。
 そういう問題と人間の意思による法律効果との調整、さらに生まれてくる子供の福祉ということを考えるときに、やはり懐胎のときに夫が亡くなっているような状態で妻の胎内にそれを移植するということを認めてはいけないのではないかと、こういう考え方でございます。
#27
○会長(清水嘉与子君) それでは、宇津宮参考人、どうぞ。
#28
○参考人(宇津宮隆史君) まず、患者さんにどういう援助をしたらいいか、どういうふうなシステムで持っていったらいいか。
 まず、僕たちが認識しなければいけないのは、現在三十万組が不妊の治療を受けているという現実、さらに、それから推計されて百二十万組が不妊であろうと思われていると、これを是非国会議員の先生方に認識していただきたい。罹患率一五%の病気が今蔓延していたら、もう大騒ぎに先ほど言いましたようになるはず。それでなっていないというのは、理由は幾つもあったわけですけれども、それを現実に受け止めていただいたら、このシステムはかなり速い足で進んでいい状況になるだろうと期待しております。
 それで、次に、生殖医療の現実ですけれども、日本は一億三千万人の人口の中で六百施設以上が登録されております。アメリカが恐らく今三百施設ぐらいだろうと思います。オーストラリアは百以下です。日本はやたらに多いんです。やたら多くて登録はしているんだけれども、実際にしていないところも百ぐらいあるようです。
 そして、うちの体外受精の数が年間六百ぐらいで、上の方から数えて二十番目ぐらいと言いましたけれども、八割の施設が年間体外受精を百以下ぐらいしかしておりません。それは何を意味するかというと、百以下というと、月に十、一週間にまあ一人か二人ぐらいしか体外受精の治療をしていない。とすると、今日御説明したように、物すごく複雑な、物すごくデリケートな治療をしますので、それでは満足いける体外受精の成績は上げられない、これは患者さんにとっては不幸なことと思います。
 ここについて、やはり公的な機関ないし日本産婦人科学会辺り、日本生殖医療学会辺りが施設の審査をきちっとして、そしてそういったことをしてよろしいという、そういうふうな行動が必要とは思いますけれども、それがなかなか進んでおりません。そして、なぜかというと、以前は大学の教授、産婦人科の教授は不妊症とかが専門の方がほとんど、半分ぐらいがそうやったんですけれども、今は遺伝子とかがん治療とか、そういうふうな専門の先生方がほとんどで、生殖医療に対して余り関心を持っていない、そういうふうなことがありますので、それで、僕たちはクリニックレベルではありますけれども、日本生殖医療標準化機構というのをつくりまして、最初十四施設で、グループで開始いたしまして、今現在二十、今度の春で二十四施設になります。この二十四施設は全国の体外受精の数のほぼ三割から四割を占めるぐらいの構成になっております。
 この施設、グループが、オーストラリアの生殖医療の施設審査の基準を利用いたしまして、それで施設認定をしてまいりました。一日掛けてその施設を審査して回るわけですね。そして、ある一定のレベル以上の施設はそれを、認可を出したわけで、そういうふうにしてオーストラリアを参考にしながらやってきたんですけれども、実を言いますと、これは僕たちのプライベートなグループがやっただけであって、実はこれは本当は大きな公的な日本産婦人科学会か生殖医療学会が行うべきことじゃないかなと思います。
 そういったことを行って、そして保険適用していただきたいんですが、保険適用をしていただくときに、先ほど説明しましたように、物すごくこれは手間暇と経費が掛かる治療法です。これが安く設定されると、これまた物すごく手を抜けば幾らでもできるようなものですから、そういうことになったらいけませんので、やはり必要なだけの保険の金額は設定していただきたいと思いますし、そして更に難しいことは、例えば先ほど顕微授精というのを出しましたけれども、ああいう技術というのはかなり難しい。そして、さらにこれに、子宮に着床するのを助けるアシステッドハッチングという方法がありますけれども、これもそれをするかしないか。特に、凍結した受精卵を融解して移植するときには、固くなっていますから、アシステッドハッチングで少し傷を入れてやらないと妊娠率が上がらないということがある。
 だから、そういうふうな一つ一つの細かいテクニックが出てきますので、それを一つ一つやはりきちっと保険適用ということに関しては、そのときに一つ一つ審査しながらやっていかなければいけない問題だと思っております。
 患者さんの団体、松本さんたちのFineの会の人たちの意見の中には、例えば全部が全部保険適用されてしまうと、周りから保険適用されたんだから不妊の治療に行きなさいと言って強制されることは嫌だという、そういう意見もあるようです。
 とはいいましても、やはりそれは少数意見でありまして、ほとんどの方々は非常に悩んでいらっしゃるので、是非この百二十万組のカップルが今現実にいるのだということで、これをどうにかしなければいけないという、まずそこの雰囲気づくりから是非お願いしたいと思っております。
#29
○会長(清水嘉与子君) 山本さん、よろしいですか。
 それでは、島田智哉子さん。
#30
○島田智哉子君 先生方、ありがとうございます。
 民主党・新緑風会の島田智哉子でございます。
 私から、ヒト胚の取扱いについて御質問させていただきます。阪埜参考人と伊藤参考人、お願いいたします。
 総合科学技術会議の生命倫理専門調査会の最終報告では、今すぐ強制力を有する法制度としての包括的整備をするのは容易ではないということで、ヒト受精胚の作成、利用にかかわる国のガイドラインを策定し、ガイドラインの遵守状況を見守りつつ法整備に向けて引き続き検討するということになっているわけですけれども、この問題は専門家の方々による検討だけではなくて国民的議論が求められているんだと思います。
 しかし、そうはいいつつも、なかなか現状はそうなっていないように思います。今後も、法整備の必要性も含めて現状の課題をどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。お願いいたします。
#31
○会長(清水嘉与子君) それでは、阪埜参考人からよろしいでしょうか。どうぞ。
#32
○参考人(阪埜浩司君) 非常に重要な御指摘でございまして、いわゆるヒトの胚は果たして生命なのか否かということで、あるいは生命とは一体どこからスタートするかということで、その根本が今の日本では規定がございません。おっしゃるように、総合科学技術会議でかなり議論をしていただいたと思うんですが、結論的には生命の萌芽という非常に抽象的な表現に帰着したというような印象がございます。
 ですから、当然ながら、我々としても、胚をどう定義するかということは、これはもう今委員の先生お話しになったように、国民的な議論の末にある程度のコンセンサスを得ていただかないと、学会としてある程度、研究に使う胚の期間とか、そういうことに関しての規定はございます。ただ、やはり先ほど来もお話あったように、いろんな技術において、例えば近年話が出ている着床前診断がなぜこれだけ大きな問題かといえば、あれはいわゆる病気の診断ができる技術だと。でも、逆に言えば、そのいわゆる疾患胚を破棄するということになります。それがいろいろな患者さんの団体の方、あるいは障害を持っている患者さんの方からすれば、それはその生命の源を殺しているのと等しいという議論をおっしゃる方もいるわけですね。
 ですから、そういった意味で、その胚は果たして物なのか命なのか何なのかというところが非常に大きな問題になってきていることは事実でございまして、これに関しては学会としても明確な規定を設けておりません。ですから、やはり学会を超えた更に上位の機関において、生命は一体どこから始まるのか、胚とは一体何なのか。胚がヒトであれば、いろいろな通常の体外受精、胚移植等で胚を凍結したり、あるいは、それこそよく話に出てくるんですが、シャーレの胚をこぼしてしまったら、これは一体どういうことなんだと。
 ですから、いわゆる通常のヒトではないけれども、命の萌芽であることは間違いないと、そういうものをどう取り扱うかという根本的な規定がないと、なかなかいろいろな、その先を決めていく上でやはり非常に難しい部分があるというふうに実感しております。海外においては、ある程度その胚をどう定義するかということも、法律である程度決まっている国はあるというふうに認識しております。
#33
○参考人(伊藤誠一君) 日弁連は、この問題について意見書を平成十六年の七月に提出しております。それから、それに先立つ人権擁護大会で決議などをしております。その一部についてはお手元に資料としてお配りさせていただいておりますけれども、御質問は、法律によるこの基準設定、規制というものを前提にして、それに向けてどのようなことを考えたらいいのかという御質問だったと思います。
 日弁連のこの意見は、やはり生殖医療の実施状況だとか、卵あるいは余剰胚の提供のされ方について、一体それがどうなっているのかということについて実態調査を是非行うべきではないかと。その実態調査に基づいて、市民参加型の独立した行政機関を設置して、そこで、そういう形で社会合意を形成するように努めるべきではないかと。
 市民参加型の行政機関ではどんなことをするのかということでございますけれども、受精卵、胚を利用する先端技術、医科学研究現場の研究の意義、有用性、危険性についての科学的、倫理的評価の内容、当該評価の患者、被験者への説明、理解状況等について調査して、その調査の結果を市民に対して分かりやすく情報として提供していくと、そういうことをこの行政機関でやったらいいのではないか。
 さらには、不妊治療を実施する医療機関に対して、患者の権利の保障や胚の管理状況について調査して、問題が認められた医療機関に対して適切な措置を講じること、そういう権限を持った行政機関を設置して国民的な合意をつくっていく、そのようにしたらいいんではないかというふうに考えています。
 最終的には、委員の御質問にありましたように、ガイドラインというようなことではなくて、法律によって基準を定め、規制をしていくべきであるというふうに考えております。
#34
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか、島田さん。
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、お二人、手が挙がっていますので、川口順子さんからどうぞ。
#35
○川口順子君 大変に興味深く伺わせていただきました。
 それで、二つの質問、関連をしているんですが、がございまして、ちょっとどなたにかというのは、最初の質問は一般的にお考えをお持ちの方にお伺いをしたいと思いますけれども。
 よく生殖医療技術に関連して、人間を道具にしないという言葉が使われて、道具化するから何かは反対だとか、してはいけないという言葉があるんですけれども、広く考えてみますと、例えば肺の移植ですとか腎臓の移植ですとか、いろいろな移植が行われていて、それは人間を道具化しているということであると思うんですね。それが許容される状況にあって、生殖医療に関連して道具化をするということはいけないというふうに考えを分けるそもそもの理由は何なんだろうかということについて、私ちょっと考えあぐんでいるところがありまして、一つは、生まれていない生命を世の中に生み出すということと、現在存在する生命を助けるということの違いはあるのかもしれませんが、その中でいっても、例えば精子を提供するということはいいと、それは認められているわけですから。それとても、言ってみたら道具化にほかならないではないかという言い方もできるわけで、そこをどういうふうに考え方を整理するかということが、ちょっと頭の整理ができませんので、それぞれのお考えをお聞かせいただけたら有り難いと思います。
 それが一点で、二点目は、より具体的な、今の点に関連しての具体的な質問で、先ほど山本議員が御質問をなさった死後の懐胎の話と似ている話なんですが、伊藤先生からお出しいただいた資料の中で代理懐胎は禁止すべきことというふうになっているわけでして、これは今のと非常に関連するんですが、例えば道具化というのは、今の議論で本当に、卵を借りてきてということはよくて、そしておなかを借りるということは問題があるだろうということになるというのはどういうことなのかということが、違いがあると、よく分からないところがあると思うんですね。
 生まれてくる子供の権利、福祉、これは基本的に決めの問題であろうかなと。精子を借りてきた場合にはその精子を製造した男性は関係がないとされるわけですから、決めの問題じゃないか。
 それから、人権侵害の可能性あるいは代理懐胎を利用する女性たちの自由意思を損なうおそれ、これは確かにあると思うんですけれども、今の臓器移植ということとの関連で考えますと、実際にこういった人権を損なっている可能性というのはたくさんもう既にあるわけでして、これもいかなる規定を設けるかということで整理ができるんじゃないかなという気がしまして、基本的にはどこまで認められて、どこまで認められないかということの線引きの根拠、理由というのは一体どう考えるべきなんだろうかというのが質問です。
#36
○会長(清水嘉与子君) それでは、どなたにでもということなんですが、皆さんにお答えいただきますか。
#37
○川口順子君 御意見がおありの方に。
#38
○会長(清水嘉与子君) 御意見おありの方ということでございますが、じゃ、根津参考人、どうぞ。
#39
○参考人(根津八紘君) 最初の、人間を道具化するかしないかという問題ですけれども、抽象的な話になってしまうかと思うんですけれども、やはりそこに人間としての愛情があるかないかによって道具になるのか、温かみを持った臓器であるのかということだと僕は思うんですね。だから、例えば代理懐胎の問題も、あなたに子宮がないんだったら私の子宮を貸してあげますという、これ本当に相互扶助の中の人間愛によって成り立つ問題だと思うんですね。
 それから、臓器移植の問題にしても、確かにあれはパーツであります。いわゆる心臓は血液を送り出すポンプでありますし、肝臓は解毒作用を持った臓器であります。だから、そういうパーツの移植だけで私たちはやっているわけじゃないと思うんですね。一人の人の心があって、愛があって、その人の臓器のところに移植されているんだろうと思うんです。だから、その人間愛というものを損なわないような規定というものをしっかり設ける中で、パーツとして扱うのか、心を持った人の体の一部であるのかという、その辺のところに変わっていくんじゃないかというふうに思っております。
#40
○会長(清水嘉与子君) ほかの参考人の方で。
 それでは、阪埜参考人からどうぞ。
#41
○参考人(阪埜浩司君) 先ほど川口先生おっしゃられたように、よく代理懐胎、それから第三者からの配偶子提供は移植医療に例えられる部分もあると思います。そのような中で、そういう理由付けで説明をされている方もいらっしゃると思います。
 ただ一方で、やはり通常の移植医療と明らかに違う点は、何かしらの例えば臓器あるいは人体の一部の提供の果てに一人の子供が生まれてくると。つまり、例えば肝臓が悪い人が肝臓をいただいて病気が治ったということだけではなくて、そこに新たな人権と人格を持ったお子さんが生まれてくるという。ですから、そこも含めてどうするかという部分を整理しておかないといけないということなので、個人的な意見としては、通常の移植医療よりも更にもう一段階一つの問題点というか、その視点が絶対的に必要だというふうに考えております。
 それから、確かに非配偶者間人工授精で精子の提供だけは許されていると、これも確かに事実でございます。ですから、そういった意味では、現時点では確かにおっしゃるように、人様からいろんなものをいただいてお子さんをつくる技術というのが、すべてが駄目というわけではなくて、一部分だけが許容されていて、それ以外が認められてないといういびつな構造になっていることも事実であります。
 ただ、しかしながら、精子はいいから卵子もいいという考え方をおっしゃる方も十分いらっしゃいますし、ただ一方で、やはり提供精子の採取のリスクと卵子の提供する場合のリスク、例えば御自分が使う理由で採る場合であれば別ですけれども、いわゆるボランタリーなり、あるいは海外で行われているような商業主義的な卵子提供の場合というのは、若い、例えば海外であれば学生さんがいわゆるアルバイトのためにお金で卵子を提供すると、その場合には当然誘発したりして採卵といって針を刺して採ってくるわけですね。ですから、そういうような人体に対する負担というのは精子提供とは大分違う。
 確かに、配偶子という点では精子だけ認められて卵子は認められないのはおかしいという、これも十分意見としては理解できる意見だと思いますけれども、実際にそれを行うとなった場合に、その提供者に掛かる負担というのは、これはもうかなり違うという部分もあることも事実だというふうに思っております。
#42
○参考人(宇津宮隆史君) 私はかなり保守的な人間かと思いますけれども、AIDとかは立場上、してもいいんですけれども、しません。それは、今日のスライドでお示ししましたように、不妊治療というのは生まれてくる子供のためにあると思っております。それで、例えば代理母であり、またAIDでありで生まれてきた子供が生まれてきて本当によかったと思ってくれるような、そういう医療じゃないと、してはいけないと思っております。
 AIDの問題で、二年か三年ぐらい前からAIDで生まれてきた子供さんが名のり出ております。今三人ぐらいいらっしゃるんですけれども、一番上の人が今三十一歳ぐらいになりました。二番目の人は二十六歳ぐらい。もう一人は三十歳ぐらいの人がいらっしゃるんですけれども、その方たちが三年ぐらい前にその事実を偶然に知ったわけです。それで、すぐその子供さんたちの声を聞く会が開かれまして、私は出席いたしましたけれども、そのときにその子供さんたち、子供さんというか、もう大人ですけれども、自分のアイデンティティーがどこに行ったか分からないと、もう非常に混乱してしまっているという、そういう状態にありました。
 ですので、AIDをやろうと思えば簡単にすぐできますけれども、そこまで考えたときには、今のところすべきではないと思っております。
 それで、代理母の問題についても、同じように、これは更にそれに他人の生命の危険も一応考慮しなければいけないことになるわけですので、それは例えば分娩や婦人科疾患によって子宮がなくなった人の場合は、その人が代理母を求めるとすれば自分と同じような危険をその代理母に求めることと同じになりますので、それもやはりすべきではないと思っております。
#43
○参考人(伊藤誠一君) 川口委員の御質問の中に既に私は手掛かりが最初の問題については含まれていたと思うんですけれども、やはり生まれてくる子供についてどう考えるか。それから、既にこの世に生を受けて様々な活動をしていく上での制約を取り払うための治療を受ける、そのこととどこが違うのかといいますか、その差異に着目しながら考えていかなきゃいけないんじゃないかということだと思うんですけれども。
 先ほども申し上げたのですが、やはりこの生殖医療というのは、人の誕生という、生命の誕生という、我々が持っていかなければいけない倫理の最も高度な出来事にかかわる技術であるということ。しかも、生まれてくる子供がどのような状態になって生まれてくるか。それは生物学的にという意味のみならず、親がいるかいないかということを含んでいるわけです。あるいはその出生が歓迎されるかどうかということを含んでいるわけですけれども、いずれにしても、生まれてくる子供の権利がそこから、人権がそこから出発するということに深くかかわる技術であるという点から、やはり通常の医療と質的に異なる、そういう基準で物を考えるということがなされるべきではないのかというふうに思います。道具化の問題は、言わばその当てはめとしてどこまで許されるかという議論だと思います。
 それから、生まれてくる子供についてどう考えるかということですが、もちろん日弁連もそうですし、皆さん同じだと思うんですけれども、どのような形であれ、生まれてきた子供は人間として尊厳を保たれなければいけないと思いますし、一人の人間として尊重されなければいけないということがあると思うんですね。問題は、そのことのゆえに、その子の法律的な地位、父親と母親の関係、親子関係あるいは肉親との法律的な関係というものがどうなってもいいという話にはならないわけでして、我が法律が取っている親子法の原理というものがあって、これは長い間それが社会的に説得力があるものとして守られてきたと思うんですけれども、それらをどの限度で修正を許すものとして我々は受け入れるかと、そういう議論ではないかと思うんです。
 そういう点で申しますと、やはり生殖医療によって生まれてくる子供の母親は出産した女性であるというこの大原則から出発する、それから、生殖医療技術を受けて生まれてくる子の父親はその生殖医療技術を利用するということについて承諾し、子供を出産したその女性のカップルと規定するという原則を守りながら関係を整理していく必要があるんではないかというふうに思うわけです。
 生まれてきた子供を一人の人間としてどう尊重するか、大事にするかという点では恐らく共通の基盤に立ちながら、その法的な地位をどのように考えていったらいいかという点で日弁連は先ほど申し上げた理解をしておりまして、そういう法のあるべき姿と現実の乖離がこれ以上進まないうちに立法的な解決をすべきであるというふうに考えております。
#44
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 では、有村治子さん、どうぞ。
#45
○有村治子君 自由民主党の有村治子でございます。
 今日は、先生方、本当に貴重な、またそれぞれのクリニックの貴重なデータもお出しいただいて、ありがとうございました。
 産科の三人の先生方の中で臨床をしていらっしゃる先生にお伺いしたいんですけれども、私は、この生殖医療ということを伺えば伺うほど、命を貴ぶという意味で人工中絶ということも先ほど根津先生もおっしゃいましたけれども、なぜこれだけ豊かに、国としては豊かになっている中で人工中絶が三十万前後も毎年起こらなきゃいけないのかなと。人工中絶で苦しむ母子の数をできるだけ、嫌な思いを、つらい思いをする母子の数をできるだけ少なくしたいという意味で私は人工中絶に慎重な思いというか祈りを持っているんですけれども、今実際に臨床をしていらっしゃって、本当にその母体保護法の言う経済的とか、母体を著しく、その健康を著しく害するような、そんなおそれのある方々というのは本当に多いんでしょうかどうか、その辺はなかなか当事者の方々に伺える機会がないものですから、もし教えていただければ有り難いと思います。
 時々テレビの報道で見るのは、人工中絶が実際経験した女性が、おできを取るような感覚で簡単に取られてしまって、もう少し命ということを考える機会が私自身にあったらよかったというような、そんなコメントも時々耳にしたり目にしたりするんですが、本当にその中絶する必要が健康的にも経済的にもある人々が主流なのかどうか、先生方が現場で感じられる忌憚のないお考えをまず一点教えていただきたいと思います。
 その後、一点、もう一つお伺いさせていただければと思います。
#46
○会長(清水嘉与子君) それでは、今の件でいかがでしょうか。
 じゃ、根津先生の方からどうぞ。
#47
○参考人(根津八紘君) 私は、開業しましてから三十年ちょうど、三十一年目に入りましたけれども、三十年前のときには中絶を受けていく女性は涙していく人たちがかなりの数ございました。現在は涙する女性はほとんどおりません。私のところで中絶をしているケースで、本当の意味で医学的な適用又は経済的な適用で中絶するケースは皆無に近いというか、私のところで中絶しなければほかへ行って中絶してしまう患者さんたちばかりであります。
 最近は、私はことごとくいろいろ言うものですから、私のところに中絶に来る患者さんはほとんどなくなりました。というのは、やっぱり安易に中絶を行っている人たちがほとんどであると同時に、女性にその負担だけを課してしまって男が口ふいて知らぬ顔しているというケースが多いということ、これをやっぱり何とかしていかなければ、女性だけに、手術台に上げる、お金を払って手術台に上げるということで解決してはならないんじゃないかというふうに思っております。
 ですから、じゃそれをどうしていったらいいのかということは、もう教育以外の何物でもないと最近は思っておりまして、私が患者さんを教育するとそういう患者さんは来なくなると、そういう状況になっております。
#48
○会長(清水嘉与子君) では、阪埜参考人、いかがでしょうか。
#49
○参考人(阪埜浩司君) 私、今大学病院に勤務しておりまして、母体保護法指定医ではございませんので、人工妊娠中絶をやる立場にございません。
#50
○会長(清水嘉与子君) それでは、宇津宮参考人。
#51
○参考人(宇津宮隆史君) 根津先生とほとんど同じなんですが、うちも不妊治療専門ということが行き渡りまして、余りそういう希望を持ってくる人はおりませんが、ただ統計的に見ましても、前のこの委員会のときにお話があったようですけれども、あのとおりと思います。
 特に気になっているのは、中絶の数は全体が減っているんだけれども、未成年者というか二十以下の人たちが物すごく今増えてきております。そして、不妊の治療でも同じですけれども、不妊の治療をずっとやってみますと、以前に中絶してこれを御主人に秘密にしているという人が非常に多いですね。
 ですので、今、根津先生が言われたように、これは本当に教育じゃないかなという気がしています。今日、たまたま教育基本法についてのデモ行進か何かあっていますけれども、あの時代、小学校から中学校、もう高校になったら遅いと思うんです。そこら辺の、特に中学生を中心にした教育が重要、解決するには一番いいんじゃないかなという、そういう気がしております。
#52
○会長(清水嘉与子君) では、続いて有村さん、どうぞ。
#53
○有村治子君 二点目の質問をさせていただきます。
 今、両先生からいみじくも教育というお言葉が出ました。例えば中学生、高校生にどのような教育をすれば、この生殖医療に関して不本意につらい思いをする母子を少なくできるとお考えでしょうか。
 これが一点と、ちょっと付随してなんですが、前回のこの委員会で私は、やはり自分の思いを、意を強くしたんですけれども、やはり中学校、高校の保健体育の教科書に、加齢、高齢が原因での不妊というのが非常に多いという生物学的な事実にかんがみて、やはり三十五、具体的に三十五という数を入れるかどうかは別ですけれども、女性の妊娠できる期間というのは私たちが思っているほどそう長くはないという冷徹な現実があることを事実としてやはり告知した上で、その上で、キャリアとそれから自分の女性としての幸せというのは御自身がそれぞれ皆さん判断すればいいと思いますけど、やはり不妊の多くの方々が、もっと若いときにこの事実を知っておけばもっと私も選択肢を考えたのにというお声が余りにも多い現実の中では、淡々と、政治が何とか言うと産めよ増やせよには反対だというようなちょっと理解し難いレッテルを張られるリスクがありますものですから、医学的な見地からもそのようなことを教科書に載せるということが大事じゃないかと思ってきました。そして、この委員会でその意を強くいたしました、前回。
 それに対して、特に阪埜先生、産婦人科学会ですし、伊藤先生、弁護士、日弁連でございますから、そちらの方でそのような、教育に関して、女性の妊娠の加齢による不妊のリスクというのもあるんだということを教科書にも書いていくということを検討すべきじゃないかというような、そんな陳情なり提言を専門的な第一線に立たれる先生方から出していただくということはできないでしょうか。私も文部科学省におりまして、そのことは、民間が書かれる教科書なんですが、やはりこれが家庭や女性、男性、家庭や地域、日本の繁栄や幸せにつながるんであれば、信念を持ってそういう行動もしていくべきだと私は思うんですが、その辺、どうお考えになられるでしょうか。
#54
○会長(清水嘉与子君) 有村さん、阪埜参考人と伊藤参考人でよろしいですか。
#55
○有村治子君 特に、組織としての阪埜先生と伊藤先生、そのほかのお二人も御意見があれば伺います。
#56
○会長(清水嘉与子君) それでは、まず阪埜参考人、どうぞ。
#57
○参考人(阪埜浩司君) 学会をさほど代表する立場でもないので余り強気なことは言えないんですが、非常に重要な御提言だと思います。
 ただ、先ほど来、実際、現場の先生方がおっしゃったように、若年者の中絶の問題とか、それから性病の問題とか、若年者を取り巻く部分での産婦人科の問題点というのが非常に重要な問題であることは間違いないというふうに思います。
 それに対して、実際、学会としてもそういう学校教育等に今まで関与していたということは余り僕の知る限りでは記憶にはないので、実際に学校で教育をされている方が、やはりどのような内容のことをどのような立場の方がされているのかということはちょっと僕らもなかなか実際のところ分かってない部分もありますし、一般的には医師でも日本産婦人科医会とか、あるいは看護師、助産師会の方でそういうような教育をしているというような話は間々聞くんですけど、地域レベルでですね、ただ、やはりそういった意味で、いわゆる若い方あるいは若いお子さんを持つ親御さんを含めて、そういうような今の現実あるいは今の現状の新しく若い方に起きてきているような産婦人科の問題をどのように広めていくか、あるいは伝えていくかということは、ちょっと真剣に考えなければいけないのではないかというふうに思っています。
 ですから、今日この場でどのような提言をするとかいうことはちょっとあれなんですが、いずれにしても、そのような発言があったということを学会の方に持ち帰ってお話をさせていただきたいというふうに思っておりますが、非常に重要な問題だというふうに認識しております。
#58
○会長(清水嘉与子君) では、伊藤参考人、どうぞ。
#59
○参考人(伊藤誠一君) 日弁連には現在、市民のための法教育委員会という委員会がございまして、これは日弁連が十年来進めてまいりました司法制度改革の中で、やはりこれからの日本社会を担い、司法あるいは法というものを主体的に担い使っていく、そういう市民を育てなければいけないという観点から作られた組織です。例えば、今年も文科省の力をかりまして、あるいは法務省と共同しまして、全国の教員の皆さんと意見交換をするという機会を持ちました。
 今御指摘の点でございますけれども、やはりこの問題について、あるいは関係するテーマについての正しい情報を子供の発達段階に応じてやはり提供していくということが大事だと思うんですね。事実をただそのままストレートに伝えることが教育的価値のあることなのかというと、それはむしろ否定されるべきで、子供の年代、発達段階に合わせて加工しながら、正しい情報を伝えていく必要があると思います。
 その場合に、副読本を作りながらやっていくのがよろしいのか、あるいは教科書に書き込むのがよろしいのかという非常に難しい問題もあると思います。事は、今申し上げましたように、子供を教育するに当たって、最も子供たちが理解を深めるそういう教材なり情報としてどういうふうにしたらいいかということだと思います。
 したがいまして、ここでにわかに結論を出すことはできませんけれども、先ほども申しましたそういう委員会がございますので、これらの問題についても含み検討しつつ、必要な協力といいますか、必要な呼び掛けといいますか運動といいますか、そういうことも日弁連としてはやっていきたいと、このように思います。
#60
○会長(清水嘉与子君) ほかにコメントをいただける方ありませんか。
 根津参考人からどうぞ。
#61
○参考人(根津八紘君) こう言ってしまえば漠然とした形になってしまうかも分かりませんが、学校教育以前に家庭教育ができてないということをつくづく感ずるわけであります。ですから、今の親から教育していかなきゃいけないし、それから親になっていく方たちへの教育。
 だから、もう一度、価値観、人間としての価値観というものをしっかりと教えながら、そして、その現実は、確かに中学辺りで、僕は高齢不妊という問題を防ぐ意味では中学辺りでそういうことは教えなきゃいけないと思いますけれども、中絶だ云々だという問題は、中学辺りでといえばどうやって避妊したらいいかという避妊のテクニックを教えるぐらいになっちゃうんで、そうじゃなくて、人を大切にしていくということがどういうことなのかということを家庭教育の中からしっかりしていくような、そういう方向性というものをやっぱり国としてちゃんととらえていく必要があるんじゃないかと。だから学校の先生ばかりに責任を負わしてはならないと思います。
#62
○参考人(宇津宮隆史君) 私も高校の性教育に何度か出席したことがありますけれども、やはりその後に高校生から感想文を送ってもらっております。そして、それを読んでみると、物すごく素直に受け止めてくれています。それで、これは何か所もそうです。ですので、あの高校生たち、特にかなり不良っぽいような感じの人たちでもそういうふうに思って、ああいうふうにちゃんと受け止めてくれるんだなという気がしますので、やはりこれ教育する方の、特に学校の先生がそこら辺に何か腰が引けているような、そういう感じがするんですよね。
 ですので、いわゆる性教育というのは、一つ、根津先生が言われたように、相手を大切にするというそういうふうな基本的な面がありますけれども、医学的な方面からは私たちを大いに利用していただいて、いろんなケースとかいろいろありますので、それでもって僕たちも協力していきたいと思います。子供たちは本当に思っているより素直に吸収してくれるという印象を持っております。
#63
○会長(清水嘉与子君) それでは、狩野安さん、どうぞ。
#64
○狩野安君 どなたの先生方でもいいんですけれども、今教育の問題が、教育が大事だというお話しされました。別な観点からいいますと、特にもう低年齢から教育が必要だという話ですけれども、最近の私、新聞で拝見しますと、アメリカでは公立学校は男女共学をやめるというような記事が出ていましたけれども、私自身もそれを見て、ああ男女共学が今のいろんな弊害を生んでいるのかなと思って、それすごくいい考えじゃないかと思いますけれども、専門家の皆さん方がごらんになって、教育という問題、もちろん家庭教育とかいろんな学校の教育、性教育等いろんなことも大事だと思いますけれども、その男女共学について、教育論で何か御意見がございますれば、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#65
○会長(清水嘉与子君) これは御発言のある方、いかがでしょうか。どなたか御意見のある方。
 それでは、根津参考人、どうぞ。
#66
○参考人(根津八紘君) 私は、高校はほとんど男性ばかりで、女性が一クラスに四、五人ぐらいの高校で授業を受けてまいりました。やっぱり振り返ってみますと、女性がいたことがかえっていろいろな煩わしさを持ってしまったという、そういう点も多々ございます。
 というのは、やはり黙っていてもそばにそういう異性というものを感じながら生きていかなきゃいけない。それは異性を感じていかなきゃいけないのは、これはもう男女同権の中で当然なんですけれども、しかし、もうちょっと何かお互いに知らない部分があってもいいかなと。そうしていくことが、結局早く結婚したいという思いを私に感じさせたという面があると思うんですが、そばに常に女性がいて、まあ女ってこんなものかというふうに思って男が考えれば、女性に対するあこがれとか、そういうものもうせてしまうんじゃないかなという、これは私の独断と偏見でございますけれども。
 私もあの新聞読ませていただいて、もうちょっと何か夢を女性に持たせておくようなことも必要じゃないかなということをちょっと感じました。これは全く私見でございます。
#67
○会長(清水嘉与子君) 狩野さん、よろしいですか。
#68
○狩野安君 性教育の面から考えて、男女共学のことに対しても先生方は教育が大事だとおっしゃっていますけれども、今の子、大変セックスのいろんなものが情報がはんらんしています。子供たちにもそういう情報がすごい手に入りやすくなってきていますので、もう異常な異性に対する関心が持ち始めているんですね。中学生辺り、もう一緒に隣が男の子ということで、もう話題というのは、今けんかとかいじめとかというのは、全部異性に対する感情で子供たち同士でいじめたりけんかしているんですね。
 そういうことを考えると、やっぱりもう一度原点に返って男女共学というのをもう一度見直した方が、いろんなセックスのはんらんしている中で異常に常識的というかいわゆる人間的な考え、異常に早くセックスに関心を持ち、それが身近に異性がいるということが私は何か今の世の中をおかしくしているのかなというふうに感じていまして、アメリカが男女共学を見直すというのは、やっぱり日本ももう一度、アメリカから来た民主主義ということで男女共学になったわけですから、私ももう年齢言うとあれですけれども、一番最初の男女共学の中学生なんです。
 そういうことを考えますと、もう一度原点に返って男女共学って見直すことが、いわゆるいろんな弊害というか、若いときの妊娠とかいろんなそういうセックスのあれが、消えるわけではありませんけれども、もうちょっと素直な子供たちが育つような環境づくりには見直す方がいいんじゃないかなと私個人で思っております。
 そういう意味で、教育ということをもう一度別な面で先生方もお考えになっていろんなところで発言していただければいいなと、私はそう思って発言させていただきました。
#69
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 参考人からの御意見というよりも、議員同士でもう少しこの問題、議論しなきゃいけない問題かもしれません。
 ほかに、いかがでしょうか。
 山本香苗さん。
#70
○山本香苗君 四人の参考人の先生方、どうもありがとうございました。
 ちょっと、一番最初に御説明をいただきました根津参考人の方からの御資料を見せていただく中で、幾分か割愛をされながら御説明をしていただいたと思うんですが、その中で子宮の不妊原因疾患というところで、子宮がん含め、筋腫、子宮腺筋症等々いろいろお書きになっていただいているんですが、ここのところの御説明がちょっと飛ばされたところがあると思いますので、そこをもうちょっと重点的に御説明願えないかなと思っております。
 といいますのが、最近、子宮がん、子宮にかかわる様々なことにつきまして、若い方々はなかなか検診に行かないと。子供を産む段階になって初めて、あっ、自分がこういうことにかかっているんだということを知るという話がありまして、もっと早い段階でそういうものをきちんと受けれるような体制があったらいいという声を最近現場からいただきまして、まあどうすべきかなという話を最近いろいろと御議論をしていたところなんです。
 二年前に乳がんの検診の年齢引下げとともに子宮がんも二十歳以上という形で引き下げたわけなんですけれども、実態としては検診を受けていらっしゃるのが大体一七%ぐらいしかないと。ここをどういう形で、教育という話も先ほどありましたけれども、よくこういう実態を知らしめて検診をしっかり受けていかなくちゃいけないんだという啓発のやり方ですね、何かいいお知恵がございましたら、根津参考人のところに書いてありましたけれども、ほかの先生方からももし御意見がいただければお伺いしたいと思います。
#71
○会長(清水嘉与子君) それでは、根津参考人、どうぞ。
#72
○参考人(根津八紘君) 最近、若年の方たちが子宮がんになる、子宮頸がんになるケースが増えてきております。それは性感染症の一つのビールスによってそれが多くなる傾向になってきているということと、それから体がんに関しましても、今まで私どもが教育を受けたときの体がんというのはいわゆる更年期以降ぐらいに体がんになるのが多かったんですが、二十歳代でも体がんで見付かりまして、そしてそれが子宮摘、そして代理出産という形に私どものところをたたくようになってきておるんですね。
 そういう点から考えると、もっともっとこの子宮がんの検診を増やしていく必要があろうかと思いますし、子宮筋腫なんかも、結婚したときには既に子宮筋腫があって手に負えないような状況であるというようなケースなんかもありますから、女性が早いうちから子宮がんとともにそういう子宮、卵巣のチェックを受ける、そういう方向に変わっていくべきじゃないかなと思うんです。
 私どものところにブラジルの方たちが結構来ておるんですが、彼女たちはすぐもうパパニコローと言ってくるんですね。パパニコローというのは人の名前なんですけれども、子宮がん検診の代名詞になっておりまして、若い人がもういわゆる二十歳近辺からがん検診に来ておられるので、ブラジル辺りはそういう点が非常に徹底しているんじゃないかなということを感ずるんですね。
 だから、日本ももっと女性が子宮がん検診を受けるというようなところを高校辺りから、二十歳以降になったら子宮がん検診を受けるようにというふうな、そういうことも高齢不妊を防ぐという意味も含めて教育現場の中に取り入れていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。
#73
○会長(清水嘉与子君) ほかに。
 阪埜参考人、どうぞ。
#74
○参考人(阪埜浩司君) 今、根津先生がおっしゃったように、私、専門、婦人科腫瘍の方ですので、若年の頸がん、それから体がんというのは非常に大きな問題になっています。それに限らず、やはり女性の初産の年齢がだんだん上がってきたということで、いわゆる乳がんを含めて、いわゆるがんの合併された妊娠という方が非常に大きくなってきている。これも非常に大きな問題になっています。
 でき得る限り、当然、我々婦人科としては、早く見付けて、なおかつ子宮を取らずに治すことができれば、先ほど来問題になっているような代理出産、代理懐胎ということも回避できるわけですから、そういうような方向の医療も進んでいることは確かです。それから、最近では、今、根津先生がおっしゃったウイルスのワクチンの開発が欧米でされていまして、そういうものでいわゆるがんを予防するという動きになっています。
 ただ、いずれにしても、欧米に比べてアジアは特に頸がん、大変多うございますから、年齢を下げていただいたということは大変有り難いことなんですが、残念ながら間隔が二年に一遍になった。これは自治体によって援助できるお金の問題もあって、二年に一遍、それこそ誕生日が奇数の人だけ受けてくださいとか、そういうようなことになっていると、恐らく現場の感覚からいえば、二年に一遍では、若い方は非常に進行が早いですから、見付かったときにはかなり進むというか、非常に子宮を残すことができないような状態で見付かる方が多くなっているということは印象としてございます。
 ですから、やはり先ほど根津先生が言われたように、教育、これも大事ですし、あと、やはり検診率を上げるための何らかの方策、多分アメリカでは非常に検診率高いと思うんですね。それは多分、検診を受けたあるいは検診をした医療施設がその検診に対して何らかのインセンティブが与えられる。ですから、施設によっては患者さんに電話して、家の前まで車で迎えに行って検診を受けさせると。そういうようなことをたしかNHKで放送されていたと思うんですが、そうすることによってその検診をやったクリニックに保険会社の方からお金が入る。これは医療経済的にいえば、がんにならずに生きていただいた方が、国としてGNPで換算すると裕福になると。つまり、がんになって亡くなられるよりは、検診を受けていただいた方が国としてプラスになるという、そういうアメリカ的な発想だと思うんですが、そういう形で国を挙げてそういうシステムをつくっている。
 ですから、今ではやはり受ける方は受けていただいているんですが、受けていない方は全く受けていないという状況なので、やはり何らかの受けた方がインセンティブを与えられるような、あるいは受けるように、患者さんを一杯来ていただいた施設が何らかのインセンティブを受けるというか、そういう何らかの新しい方策がないとなかなか検診率は上がらないのじゃないかというふうに思います。
#75
○会長(清水嘉与子君) 山本さん、よろしいですか。
 それでは、和田ひろ子さん、どうぞ。
#76
○和田ひろ子君 今日は大変貴重ないろいろのお話をありがとうございます。
 教育の話が出ました。私はやっぱり、女性、この中絶とかいうのは本当に女性にとってはもう屈辱的なことなので、やっぱり学校、また家庭で、きちっと母性を大切に思うとか、そういうことをきちんと教えていかなくちゃいけないなという思いが、私、皆さん同じだと思いますが、思いがしました。そういうことを思えば、私たちも家庭での教育、私も自分の子供たちにそんなことしていなかったなという思いがしますので、そういうことはしていかなければいけないなという思いがしました。
 そして、伊藤先生にお伺いします。
 いろいろこんなやり方をした結果、生まれたお子さんにとってとっても残念なことがあったり、夫婦が別れたりしたらどうなるんだという、いろんな事例が出たんですけれども、子供が本当に産めない、産みたくても産めない人ってたくさんいらっしゃいますよね。そういう人たちに対して、どういうふうに思っていらっしゃるのかなという思いがしました。慈悲の心というか、そういう心が一致すればこういう代理母とかそういうことはあってもいいんじゃないかなと私なんかは素朴に思うんですけれども、産んだら産んだ人がお母さんだと言われたら、なかなかこういうことが進んでいけなくなってしまって、本当に子供が産みたいけど産めないお母さんたち、子供を育てられなくなっちゃうんじゃないかなという思いがします。そういうことをどう考えていらっしゃるか、お伺いします。
#77
○参考人(伊藤誠一君) おっしゃることは気持ちとしてはよく分かります。やはり自分の遺伝子といいますか、血のつながった子をもうけたいと、そういう思いは自然だと思いますし、自然生殖によってそのことがかなえられないのであれば、生殖医療の補助によって実現することが望ましいことだというふうに思うんですね。
 しかし、我々、同時に考えなきゃいけないのは、それはこちらが子供をつくりたい、産みたいという要求、まあ自然の感情だと思うんですけれども、じゃ、生まれてくる子の福祉ですね、先ほど出自の権利の話がありましたけれども、やはり子供は一人の人間として自己同一性を確立し、そして、社会的に調和しながら社会を形成していく人間に育っていくためには、一体自分はどこから生まれてきたのか、自分の父親はだれで、あるいは父親や母親というのは法律的な意味と生物学的な意味があるわけなんですけれども、これを知りたいということで悩むわけですよね。
 そういう方のレポートなども最近は公になるようになってきていますけれども、それらを拝見しますと、本当に、そうして生まれた方の多くの人たちが、親は自分に対して何かを隠している、秘密がある。だけど、それが解き明かされて自分で出自をたどり、出自についてたどり着かなければ、自分というものが一人前でない、確立できないという思いにさいなまされながら生活をしている。当然その子は、生まれたまま大きくなるんじゃなくて、思春期をくぐり抜け、恋愛をし、再びカップルで子供をつくろうかと、こんな話になっていくわけでして、そうした生まれてくる子供の人間としての生活展開といいますか、そういうことも含んで我々は制度をつくる、そういう子供たちの権利ないし福祉をどうするかということを含んで制度設計する必要があるのではないかと。
 だから、決して一方的に、子供の権利が尊重されるべきだからこれは駄目だと、こう言っているんではなくて、そういう社会的な制度をつくるときには、様々な利益ですね、最初の御質問にきちっと答え切れなかったんですけど、諸外国に比べて日本の特徴は何なんだという、そこのところなど、我が国のそうした生殖あるいは出生にかかわる文化、そういうものをよく考えて定めていく必要があるんじゃないかと、こういう見地なんですね。そういう見地に立ったときに、現時点では、やはり代理出産、代理懐胎ということについては禁止すべきであるという見地なんですね。
 じゃ、禁止した、このたびも報道されていますように、それが許されている外国で出産して日本に帰ってきたそのお子さんをどうするかということについては、先ほど申し上げましたとおり、やはり一人の人間としてみんなで大事にしていかなきゃいけないし、そうすると、日弁連の見解からしますと、法律的には出産した母親との関係でないと親子関係認めませんから、じゃ、ほかの子供たちとの関係での環境の差異、あるいはその差別的なところはどうしていくのかと。これは考える必要があるというふうに思っています。
 日本の場合、親子関係、法律的な親子関係とは別に、戸籍の問題というのが非常に大事な制度としてあるわけですね。戸籍を見たら出生についてのその情報があるとかないとかということを含めて大事だと思うんですけれども、この問題はまた別に手当てをする必要があるというふうに思っております。
 それから、日弁連が言っているのは、親子でも、実親子ですね、実際の親子関係をそこに設定するかどうかということでいうと、実際に出産した人と生まれた子の間にしか認められないというふうに申し上げておりまして、しかし、法律上の子供、親子の関係というのはもう一つあるわけですね。つまり、養子という制度があるわけですので、例えばそれなどを応用的に使うことによって生まれてきた子供の福祉に後れることがないようにしていくと、そういう努力はしなきゃいけないというふうに考えていますけれども、しかし、だからといって代理懐胎、死後懐胎というのを、必要だから、あるいは自然の気持ちだから認めていいんじゃないかという結論にはならないということなんですね。
 済みません、お答えになったかどうか分かりませんけれども。
#78
○会長(清水嘉与子君) 和田さん、よろしいですか。
#79
○和田ひろ子君 いいです。きっとこれは平行だと思いますから。
#80
○会長(清水嘉与子君) ほかにございますか。
 じゃ、足立信也さん、どうぞ。
#81
○足立信也君 民主党の足立信也でございます。
 本日はテーマが生殖補助医療の現場からということでしたので、先生方、ありがとうございます。特に、宇津宮先生は遠方からはるばる、どうもありがとうございました。
 私は、三点あるんですが、まずは阪埜先生、そして宇津宮先生、そして根津先生にお聞きしたいと思います。
 私は、やはり立法府の立場として法整備は必要だと、それは思っております。そこで、私たちの手元にある資料というか、私たちが考えるのは、二〇〇三年の厚生科学審議会の生殖補助医療部会、そこでの認められること、そうではないことというのをやっぱり考えるんですけれども、先ほどの阪埜先生の発言は産婦人科学会の会告に基づいて今これが許されているとか認められていないということで発言されていたので、そこをちょっと整理したいと私は思いまして。
 医療部会では精子も卵も胚も提供はオーケー、認められておりますね。代理母、借り腹も含めて代理懐胎は認めないと。それに対して産婦人科学会としてはここを認めているということを、ちょっとその四つに関しておっしゃっていただきたいというのが一点です。
 それから、宇津宮先生には、私も、それから私たちの党も保険適用にしていこうという方向性でずっと主張しております。これは、先ほど先生のお話の中で、昔は恥であるということがありました。これは周りのみんなが子供が多いからできないことが恥であって、ところが、今は少子高齢社会でどうしてつくらないのと、恥よりもむしろ罪のような意識を覚えられる方もいらっしゃると、また、そういう周りの視線を感じられる方もいらっしゃるわけですね。
 そこで、保険適用にした場合に、これは疾病である、あるいは病的状態であるという認識になるわけですけれども、先ほどの意識の変化とその病的状態であるという認識をどのように考えられるか。ちょっと具体的にいえば、先生のところは不妊治療の専門医療機関で分娩は扱っていませんよね。これはやはり分娩をされる方が一緒にいることは不妊のカップルにとっては非常につらいからだと私は思っているんですが、それが受け入れられるような形になれば保険もずっと平気に受けられるんだろうと私は思うんですね。多分、そこの辺の認識が今はできていないということがあると思うんです。そこら辺の感想をいただきたいなということですね。
 その中で、私たちが考えている、この前、先日ちょっとお話ししましたが、年齢制限を設けるとか、あるいは十年間という区切りを設ける、保険適用についてですね。となると、余り高齢の方が、具体的に言うとあれですけれども、五十歳になってもまだ子供できないかと、不妊治療に頼ってということはあるべきじゃないと、母体から考えても、そう思いますので、その年齢的な区分、あるいは年数の制限を設ける、この考え方についてどう思われるかという、この二点です。
 それから、根津先生には、法整備が必要だという御意見も多いし、私もそう思いますが、そうなった場合、医療部会でも産婦人科でも代理懐胎は認めないと、そうなった場合に、先生は、今ある医学的技術を享受したいという方がいらして、それを提供してもいいんだ、それが幸せにつながるという強い信念の方にとって法整備することが、今の流れで行きますと、やはり代理懐胎は認められないという流れになる可能性高いんじゃないかという判断の下に、今度、犯罪を犯すことになる。そうなった場合に、先生の信念がどういう形になっていくだろうかということが一つです。
 それから、先ほど山本委員の質問に関連するんですが、ヒューマンパピローマバイラスが原因であると言われている子宮頸がんですね、このワクチンの開発の問題がある。私は、これだけ低い日本の検診受診率、一四、五%から一七%、アメリカは八〇%ですね。このワクチンを性行為を始める前に接種するということで検診率が更に下がるんじゃないかと私は危惧するんです。その予防のため、頸がん予防のためのワクチンを早期に開発することと検診を更に広めることとどちらが大事だと思われるか、その二点をお伺いしたいと思います。
#82
○会長(清水嘉与子君) それでは、まず阪埜参考人からどうぞ。
#83
○参考人(阪埜浩司君) 先ほどの足立理事からの質問ですけれども、我々日本産科婦人科学会は文部科学省の管轄の社団法人になっておりまして、当然、我々の学会からも、当時、生殖補助医療部会には委員を出していたということで、その意見はなるべく尊重するというスタンスでずっと決めてまいりました。
 精子に関して言えば、これは同じですね。精子提供に関しては認めているということがございます。会告の中に落とし込まれていないもの、すべての生殖補助医療技術が落とし込まれているわけではないので、卵子に関しては認めるという委員会提案ぐらいまでは行ったんですが、会告にはならずにとんざしているという状況があります。ですから、卵子の提供に関しては規定していないというところですね、今現在。
 胚に関しては、これは生殖補助医療部会は認めたんですが、本会としてはこれは生殖補助医療部会においても強く反対の立場を述べたんですが、そこは生殖補助医療部会の報告書とはずれています。胚提供に関しては禁止、認めないという立場を取っております。
 代理懐胎に関してはやはり同じように認めないという立場ですが、当時、本会の倫理審議会の意見の中でも罰則をもってという、それが果たしてふさわしいのかどうか。つまり、それをやった人に対して刑事罰を処するという、それはちょっといかがなものかという議論があったことは確かでございます。本会としては認めないという点では一致していますが、刑事罰をもって対処するということに関してはどうかという、そういう意見があったということは事実でございます。ですから、卵子に関しては今のところ会告の中には規定していません。
#84
○参考人(宇津宮隆史君) 足立先生、先生方が保険適用に対して熱意持って活動されているということはこの前からお話を聞いていて非常に心強く思っております。
 今先生が言われたお話、正にそういうところに大きな問題が存在している、そこを言われたと思うんですけれども、まず昔は恥であったのが今はもう罪みたいになってしまっていると言います。実にそういう状況は全然変わってないようです。どこに日本はこういうふうにあるのかなと思いまして、日本人でない人に話す機会があるときにいつも聞くんですけれども、特に欧米系の人たちはそういう意識は余りないようですね。
 それで、やはりこれは日本の農業という、昔からの村の構成員の一人として子供が生まれてこないとこれは恥だというふうな、そういうふうな何か文化がそのまま残っているんじゃないかなという気がしております。
 それで、最近でもそうだと思えるものは、今日お見せした、うちで治療して赤ちゃんができなかったにもかかわらずうちで治療をやめた人たちがいらっしゃって、その人たちにアンケート用紙を配りました。結果はああいうふうな状態ではあったんですけれども、実はこれ、もっと深い意味がありまして、百七十通送りました。そして、返事が返ってきたのが約七十通でした。そして、あて先が分からなくて返ってきたのが三十通ありました。ところが、残りの七十通は、行っているはずなんですけれども、返事がありませんでした。ですから、患者さんはいまだにうちの病院で赤ちゃんができたということ、若しくはうちの病院、赤ちゃんがその方たちできてないもんだから、だからもっと傷付いた状態でいらっしゃるのかなという、それを表していると思います。そして、さらに今、幸いにも赤ちゃんができても、うちでできたということを隠したがるということ、そういうふうなあれでありますので。
 ですから、大分という地域、田舎の方ですので特にそういう傾向が強いのかなとは思いますけれども、嫁して三年子なきは去れという、そういう状況というのはそんなに変わっていないんじゃないかなという気がしております。
 そこで、分娩施設と一緒にやれないかということのお話もありましたけれども、そういうふうな状況でありますので、よそで治療していた患者さんがうちに来られると、妊婦さんがいないので、それで、ここに来てほっとしたという、そういうふうなことを言っていますので、恐らく不妊の治療というのは日本の場合は分娩施設とは切り離して運営しなければずっと恐らく無理じゃないかなという気がしております。
 それで、保険適用の意見ですけれども、先生がおっしゃるように、年齢制限であるとか回数制限であるとか、そういうふうなことは十分考慮しなければいけないと思います。というのは、うちの経験で、患者さんが大体いつも本当は三十万円、四十万円払わなければいけないんですけれども、五回以上とか十回以上チャレンジする方々には、やはり経済的に無理だろうということで、割引というか、そういう制度でやっていたんです。最終的には十何回やっている人たちは一回につき五万円ぐらいでやっていたんですけれども、ところが、それはかえって悪いということが分かりまして、やはり患者さんは、自分はそういうふうに妊娠しにくいということを安い料金でやっているものだから余り認識しなくなってしまうんです。ですので、これ実はあなたはこれぐらいに一回の治療に掛かっているんですよということを認識してもらうためにも割引をしない方がいいんじゃないかと思ってやったところ、患者さんがそこで自分の立場を本当に分かって、そして治療をやめていく。
 これやめるのが本当にいいのか悪いのか。ずるずるずるずる引っ張って何百万円もこれに費やしていって、最終的には赤ちゃんできない状態で打ちひしがれて終わってしまうという、そういうふうな状態に行く方が悪いんじゃないかなという気もしておりますので、ですので、体外受精のこの妊娠率というのはこういうふうに統計できちんと出ていますので、私は、一けた台、十回ぐらいまでなら保険を一〇〇%通してよろしい、それ以上になったら半分になるとか、四十歳までは一〇〇%でいいけれども四十歳以上は半分しか通らないよとか、そういうふうな制限を設けていいんじゃないかと、そういうふうに思っております。
 それが、その患者さんが最終的に子供のいない生活を選ぶという決心もしなければいけないわけですから、いたずらに妙な希望を抱かせて、そしてお金を浪費するようなことにならないようにしたいなと思ってうちでは取り組んでおります。
#85
○参考人(根津八紘君) 今、法で禁止されるというふうに予測までしていただいちゃったんですけれども、私は幾らか光が見えてきたというふうにとらえてここへ出席さしていただいたわけでございます。
 というのは、本当に代理出産をしなきゃいけない人たちというのは、本当に不妊症の中のごくごく一部の方なんですね。そういう人たちが選ぶその選択肢を僕はやれと言っているわけじゃないんですよ、選択肢だけは残しておいていただきたい。なぜかといえば、私のところへ来る患者さんは、産婦人科学会で禁止しているものですから、そこのドクターは、代理出産という方法はあるよと言って子宮を取っておきながら、じゃ、先生紹介してくださいと言うと、僕は反対だし産婦人科学会じゃやっちゃいけないと言っているからといって、それでその患者さんほうり出しちゃっているんです。だから、言うんだったらやっぱりそれをちゃんと責任持たなきゃいけないと思う。
 それから、外国へ行くのは許す、さっきの話ですけれども、伊藤さんからも話がありました、生まれてしまったのでしようがないという感じなんですが、僕は、日本の国はアメリカの属国じゃないわけですから、日本人として日本人の責任を持たなきゃいけない。アメリカの女性の子宮を借りて子供を産んできた人を、それを認めてあげる、それはいいですよ、もうどこでもいいから助けを求めていくというのは、これはいいと思うんですが、そうじゃなくて、国内で、海外行って認めるんだったら、国内でやっぱり認めてあげるような、そういう立場をつくってあげないと、じゃ、その患者さんたちはどうするのかと、僕はね。どうして説得しないのかと僕に言われますよ。僕は説得しますよ。もう赤ちゃんのないことも人生じゃないかと説得するけれども、それは先生、お子さんがおられるからいいでしょうけれども、私は五人の娘を持っておりますけれども、その人間が、持っていない人にあきらめろということを僕は言えない。
 だから、僕は、作った人たちは私の患者さんのところへ来て是非説得していただきたい。その責任を持つならば、禁止の法律を作っていただいて結構だと思います。
 それから、ビールスのワクチンを開発する。僕はそれは、開発するのと並行して検診率を上げるという両方の方向でいくべきであるんじゃないかというふうに思っております。
#86
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 ほかにございますか。
 それでは、ほかに御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑は終了いたします。
 参考人の皆様方には、本当に長時間にわたりまして貴重で有意義な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。今いただきました御意見につきましては、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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