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2006/11/22 第165回国会 参議院 参議院会議録情報 第165回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第2号
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2006/11/22 第165回国会 参議院

参議院会議録情報 第165回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第2号

#1
第165回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第2号
平成十八年十一月二十二日(水曜日)
   午後一時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十一日
    辞任         補欠選任
     井上 哲士君     吉川 春子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         広中和歌子君
    理 事
                小池 正勝君
                南野知惠子君
                尾立 源幸君
                小林  元君
                澤  雄二君
    委 員
                岩井 國臣君
                神取  忍君
                佐藤 昭郎君
                西島 英利君
                野村 哲郎君
                松田 岩夫君
                伊藤 基隆君
                柳澤 光美君
                和田ひろ子君
                吉川 春子君
                渕上 貞雄君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        富山 哲雄君
   参考人
       株式会社ジョー
       ズ・ラボ代表取
       締役       城  繁幸君
       京都大学大学院
       経済学研究科教
       授        橘木 俊詔君
       慶應義塾大学商
       学部教授     樋口 美雄君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○経済・産業・雇用に関する調査
 (「成熟社会における経済活性化と多様化する
 雇用への対応」のうち、非正規雇用をめぐる現
 状と課題について)
    ─────────────
#2
○会長(広中和歌子君) ただいまから経済・産業・雇用に関する調査会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨日、井上哲士さんが委員を辞任され、その補欠として吉川春子さんが選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(広中和歌子君) 経済・産業・雇用に関する調査を議題とし、「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、非正規雇用をめぐる現状と課題について参考人からの意見聴取を行います。
 本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、株式会社ジョーズ・ラボ代表取締役城繁幸さん、京都大学大学院経済学研究科教授橘木俊詔さん及び慶應義塾大学商学部教授樋口美雄さんに御出席いただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 御多用のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、本調査会が現在調査を進めております「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、非正規雇用をめぐる現状と課題について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず城参考人、橘木参考人、樋口参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、午後四時ごろまで各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず城参考人からお願いいたします。よろしくお願いします。
#4
○参考人(城繁幸君) 城繁幸と申します。本日、このような場にお招きいただきましたことを深く感謝いたします。
 本日の私の話すテーマ、概要ですけれども、非正規雇用、現状と課題というふうに銘打ってはおりますけれども、非正規雇用はまず内実としてどういった存在なのかというところ、なぜ発生するのかというところを含めまして、それからその解決、これなかなか正社員への登用進んでおりません。その理由は何なのかといったところまで、時間に制約ございますけれども、踏み込んでまいりたいと思います。(資料映写)
 まず、現状の日本の給与システムについて簡単に説明をさせていただきたいと思います。
 いわゆる職能給と言われているものが、職能資格給と申しますけれども、これが一般的に取り入れられております。字のごとく本来は従業員の能力によって賃金に差を付けるというものでありますが、実質、勤続年数が長いほど能力は上がっていくであろうという一種の性善説に立ちまして勤続年数に応じてお給料を上げていくと、つまり年功序列制度のバックボーンとなっておる制度であります。
 こういった特徴がございまして、年齢とともに基本的には上昇していくと。それから、原則下がらないんですね、上がる一方です。これは判例でもそのように保護されておりまして、労働条件の不利益変更というものには非常に厳しい制限が付く、そういう現状がございます。
 日本は、こういった特徴がある職能給、ほとんど日本オリジナルと言ってしまって現状問題ないと思いますけれども、こういった体制で企業の側が人件費を抑えなければいけないという状況になった場合、どのように圧力が働くかと申しますと、これから上がるのを抑えようという方向で働くんですね、下げることできませんから、既に上がったものは。結果として、年が若ければ若いほど不利であるという方向でプレッシャーというのは働きます。
 昨今の日本の企業の成果主義、大失敗しておりますけれども、その原因というのは正にこれですね。過去上がった人間、例えば管理職、部長さん、非常に高給取りでいらっしゃいますけれども、そういった方のポストであるとかお給料を見直すことなしにこれから上がるのを抑えようとした結果、モチベーションダウンであるとか人材の流出が起きていると、そういった状況がございます。
 そしてなお、これだけでは問題解決しない場合、更に人件費を抑えなければいけない場合どうなるかと申しますと、こちらです。正社員としてではなくて、正社員としての待遇すら与えずに非正規雇用として若年層を取り込もうと、こういった傾向が起きるわけでございます。
 若年層の非正規雇用者の割合の推移につきましては、お手元の資料をごらんいただきたいと思います。こちらでは特に説明はいたしませんけれども、割合が非常に高まっておると。二十四歳以下の層に関しては、四五%非正規雇用者の割合がもう超えていると、そういった状況でございます。
 ちなみに、この非正規雇用者、例えば派遣社員であるとか請負労働者、典型ですけれども、こちらは職務給なんですね。欧米で一般的な賃金システムです。つまり、業務によって値段が決まっておるんですね。簡単に申しますと、時給千円、千二百円、そういった単価で労働をされるわけです。そして、職能給との違いですけれども、こちらは決して上がることは基本的にはありませんと。本人がスキルアップをしてそれが評価されない限り、時給というのは上がらないんですね。
 現状、つまりこのように、日本というのは年功序列の職能給、それからそうではない非正規労働者の職務給と、こういったダブルスタンダード構造というのが既にでき上がっておるということが言えると思います。
 もう少し内実を詳しく見てまいりたいと思いますけれども、こちら書きましたように、同一労働同一賃金の原則というのが欧米では一般的なんですね。確かに、非正規雇用者というのは国によってはございます。けれども、基本的には同じ労働をしていれば同じ同一賃金を払うという原則がありますので、日本における正規と非正規という明確な序列のようなものは基本的には存在しておりません。ただ、日本はこの同一労働同一賃金、この原則、認められておりませんから、法律でも、現状、判例においても。
 じゃ、企業内で何が起きているのかといいますと、こういうことですね。一例として、年功序列制度において今一番基本給の高い世代というのは大体五十代前半の方でいらっしゃいますけれども、この正社員の方であれば、定期昇給世代で定期昇給の恩恵受けられた方ですけれども、大体二十代の正社員の二倍から三倍はお受け取りになられておるんですね。二十代の方というのはもう入社以来成果主義で定期昇給ありませんから、二倍から三倍受け取っておられると。同じ労働をしていてもこれだけ違いがあるんです。まだこれはいい方ですね、二十代正社員。
 二十代の派遣社員はどうでしょうか。もし仮に同じ作業をしていたとしても、大体正社員の半分、六割ぐらいというふうに言われています。つまり、これだけ、同じ労働をしていたとしても、これだけもう明確なヒエラルキーというのはあるんですね。これ異常な搾取構造だと言えると思います。
 実例幾つか紹介させていただきたいんですけれども、例えば、私もよくお付き合いしておる出版社、大手出版社のケースなんですけれども、雑誌の編集部。取材にいらした記者の方というのが、名刺をいただくと、社員じゃないんですね、社員の方ではないんですよ。フリーライターの方なんですね。ちょっとその辺の話を伺いますと、こうおっしゃるんですね。社内で正社員の方いらっしゃいますと、デスク以上のいわゆるマネージャーの方なんですね。非常に大手出版社では高給取りでいらっしゃいます。ただ、現場で取材されているのは、若手の二十代の新入社員じゃないんですね。フリーライターなんですね。大体、原稿一本何万円の世界ですから、時給に直すと千円とか、下手すると八百円ぐらいになってしまわれると。正社員の方、雇われないんですかというふうに質問、編集長なんかにしますと、いや人件費がないんですよとおっしゃる、一千五百万ぐらいもらっていらっしゃる方が。これ、正に搾取構造ですね。
 これ、別に民だけの話ではございません。官の現場でもこういった現象は多々見られます。例えば、独立行政法人なんか仕事なんかで取材させていただくと、本体の方から天下って来られた方、管理職以上の方、たくさんいらっしゃるんですけれども、現場で実務を回していらっしゃる方、電話の応対をしてくださる方というのは、大体派遣社員若しくは契約社員なんですね。やっぱりこれ時給制です。むしろ逆ですね。そちら、そういう方の方が一生懸命仕事されている場合あるんだけれども、こういうヒエラルキーの一番下で搾取されておられると。これは本当に、まあ基本的には世代間の問題に私は帰結できると思うんですけれども、是正すべきゆがんだ構造だというふうに考えています。
 それから次に、年功序列制度自体が持っておる負の面についても簡単に説明をさせていただきたいと思います。
 これは、なぜここで取り上げましたかと申しますと、非正規雇用がなかなか減らないと、正社員の登用が進まないと。現政権もフリーターを最盛期の八割に減らすという目標を重点課題として掲げておられますので、私も非常にこの問題、関心はあるんですけれども、なぜ減らないのかというところを簡単に説明させていただきたいと思います。
 まず、年功序列制度においては、人の値段というのは年齢で決まるんですね。これは、現状、成果主義導入進みまして、若干上下に幅というのは出てきておりますけれども、基本的には、これ人の年齢で決まります。間違いがございません。
 どういうことが起きておるかといいますと、大体業種ごと、それから企業規模ごとに年代別の緩やかな相場というのが確立しておるんですね。大手電機であれば、三十五歳であれば大体七百万円から八百万円とか、そういう具合の相場が確立しておるんですね。ですので、例えば中高年の方、四十五歳の方、中途採用に応募しました方、新入社員になったつもりで頑張りますとおっしゃられても、まず年功序列企業は内定出しません。理由というのはコストが高いんですね、四十五歳ぐらいの方、非常に高いんですね。ですから、もう年齢である程度さばかれてしまうという現状ございます。そうはいっても、いざ企業の業績傾きましたら、早期退職であるとか配置転換の対象になるのはこういった中高年の方ですから、こういった非常に陰湿な面だと言えると思います。
 同様のことは若年層に対してもやはり言えるんですね。こちらのキャリアの、具体的な企業から見たキャリアの概念というものを示してみました。年功序列制度におけるキャリアの概念ですね。正社員としてのキャリアの積み上げというふうに企業はみなすんです。正社員として新入社員から二年間これだけの仕事をしました、主任としてこれだけの仕事をしました、そういうふうな積み重ねであるというふうにみなすんですね。ですので、例えば派遣社員として働いた期間、二年間ありましたよという場合、もうこういった方、非正規雇用の方というのは採用対象としない企業が非常に多いんですね。二年間キャリアが足りない、コスト的に釣り合わないというふうに考えてしまうんですね。
 非常に今問題とすべきは、九〇年代後半、九九年から、大体九八、九、それから二〇〇〇、二〇〇一年辺りというのは非常に就職氷河期と言われておりまして、特に二〇〇一年春卒業の学生というのは新卒求人倍率が一・〇を割っておったんですね。正社員の口が、もうどんな仕事でもいいといっても正社員の口のない若者というのが一定数発生しております。こういった方は当然派遣社員であるとかフリーターとして働かれておるわけですけれども、今、企業というのは大体業績が良くなってきて、業績というよりは来年から団塊が退職されるのが一番の理由なんですけれども、その中で採用を増やそうとしているときに、どうしてもやっぱり今の新人であるとか、あるいは他社で正社員として働いている人間だけに偏重してしまう傾向ってあるんですね。だから、こういった方というのをうまく取り入れていけるようなサポートというのは私は必要になるというふうに考えています。
 最後に、求められる対策の方向性というのを二点まとめてみました。
 まず一つは、正社員と非正規雇用者の待遇格差を一定の割合で是正していただくということですね。完全に、私の個人的な意見としましては、完全にイーブンにするというのはややナンセンスかなというふうに考えております。非正規雇用自体というのは時代的なニーズというのも非常に強いというふうに考えておりまして、完全に同一にするのは若干難しいかなというふうに考えております。そうはいっても、現在の例えば同じ二十代の非正規雇用者、五十代の正社員の六分の一ぐらいというような状況というのは是正されてしかるべきかなというふうに考えております。
 ただ、引き上げるだけでは徹底って非常に難しいと考えています。人件費、やっぱりパイが有限であるという状況がバックボーンとしてあるわけですから、ですからこれは強く提案したいんですけれども、引き下げる方向の緩和、こちらの規制緩和というのもお願いしたいと思います。労働条件の不利益変更に関するルールの策定ですね。現状、非常に厳しい制限付いておりますので、こちらのルール、そのルールさえ満たせば基本的には認めるというようなものというのも私は策定は必要であるというふうに考えております。
 一点御留意いただきたいんですけれども、本来、労働者の権利擁護というのは労働に対する適正な対価が支払われるように働き掛ける方向でなされるべきであるというふうに私は考えております。分不相応にもらわれている方の待遇を保障するというのは全く別次元の話であるというふうに考えています。まして、労働者の権利というのを標榜されるんであれば、同じ仕事をしていて二十代、五十代、二倍から三倍開きがありますよと、この状況を是認されるのは全く理解できないというふうに考えております。世界的に見てもそんな労働者制度ございませんから。ですので、こちらは是非前向きに検討をお願いしたいと思います。
 それからもう一点、先ほど申しましたけれども、就職氷河期を中心として、あるいは九〇年代の不況の間に卒業、非正規労働者としてずっと働かれている方、この方の正社員へのキャリアパスですね、こちらはまた別途対策を取る必要があると考えております。
 この構造的な問題の解決には、私はもう職務給の普及しかないというふうに考えていますけれども、これは行政の側で法律をつくって企業にどうこうする問題ではございません。自助努力に任せるしかないと考えております。企業の側もこれは認識していると思います。もう一部の企業で職務給への切替えって進んでおりますから。ただ、これがスタンダードになるのは、私は二十年掛かると考えています。
 ですから、この氷河期の若者たちを救済するには時限的な対策というのが必要になると考えておるわけであります。
 次に紹介したいのが、民間企業で、じゃそういった対策をどういうふうに考えて実践しているのかという一つのケースでございます。
 リクルート社が二〇〇〇年から導入を始めましたCV制度、キャリアビュー制度という制度がございまして、三年間の有期雇用契約なんですね。その後、三年間の延長があって、最長六年間なんですけれども、原則としてこの六年間だけであると、再々延長は原則ないと。
 これだけ話をさせていただきますと、それは単に派遣社員の代わりじゃないのか、使い捨てじゃないのかと危惧される方いらっしゃると思いますけれども、こういった特徴、以下にあるんですね。まず、学歴であるとか前職、年齢、これ一切不問です。これは理由がありまして、リクルートはもう年功序列、完全に撤廃していますから年齢は関係ないんですね。本人のやる気と能力さえあれば、年齢は重要じゃないと。実際、前職の方、企業の正社員から移られる、転職される方もいらっしゃいますけれども、フリーターの方たくさんいらっしゃいます。年齢も、三十代いらっしゃいますし、最長で四十代の方いらっしゃいますね。
 それから次ですけれども、これ非常に重要なんですけれども、正社員、つまり、リクルートは正社員、非正社員という区分けは特にございませんけれども、従来型の採用コースを経た社員と同等以上の教育研修制度を与えているんですね、提供しているんですね。
 これは理由ございまして、例えば、よく非正規雇用者というのはモチベーションが低いであるとか自己啓発の意欲が全くないというふうな課題、指摘される方がいらっしゃいますけれども、これは誤りですね。そういった業務しか与えないからです。ふたをしちゃっているんですね。ふたをしちゃったら人間伸びませんから、リクルートさんはその辺よく理解されて、しっかり研修制度の機会を提供しているんです。そのおかげで、六年の間に管理職クラスに上られる方もいらっしゃいます。
 ちなみに、人数の割合で申しますと、今、同社の大体半分がこのCV制度を経て入社された方なんですね。この半分の従業員の、使い捨ててモチベーションを下げるというのは非常にマイナスなんですね。どんどん頑張って成長してもらいたいと、つまりウイン・ウインの関係なんですね。企業の側もサポートする、それでそれによって利益を得ると。お互いしっかりそういった依存して利益を得ようと、そういう関係でございます。
 その三年若しくは六年間期間を過ごされた後、これ非常に重要なんですけれども、ほとんどの方は転職をされるんですね、立派に。同業他社であるとか、あるいはリクルートのグループ企業さんに転職をされると。これを可能としておるのが、結局はここですね、履歴に正社員としての職歴が残るんですね。これが非常に重要なポイントになると考えています。正社員としてのキャリアの積み上げ、これが現状求められるという話は先ほどいたしましたけれども、これをサポートする結果になるんですね。
 これ、下の方に書いておりますけれども、同社がこれ導入したコンセプトというのが幾つかございまして、通常のほかの企業であればなかなかここまで踏み込めない点もございます。例えば、同社はもう完全に職務給に移行していますから、年齢は関係ないんですね。ただ、現状、その他の日本企業というのは職能給の年功序列ベースですから、なかなかここまで踏み込むのは難しいかと考えております。
 ただ、試用期間の延長、通常、現在ですと最長一年というような判例がございますけれども、これ例えば三年に延ばすことで、非正規雇用者限定で三年に延ばすことで私は同様のメリットというのは通常の企業においても得られるのかなというふうに考えております。
 では、私からの話は以上になります。御清聴ありがとうございました。
#5
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 では次に、橘木参考人にお願いいたします。
#6
○参考人(橘木俊詔君) 私、京都大学経済学部の橘木と申します。
 こういう機会を与えていただいて、日ごろ私が主張していることの一端をお示しする機会を与えていただき、厚く御礼申し上げます。
 今日は、非正規社員をどう考えたらいいかというテーマでございますので、二つほどテーマを絞りましてお話ししたいと思います。一つは、非正規労働者が増加した理由、それと二つは、じゃ、正規、非正規の格差を縮小する政策としてはどういうものがあるかというこの二点に絞りまして話させていただきます。
 まず一点目、なぜ日本の企業において非正規労働者が増えてきたかといいますと、御存じのように、以前は一〇%以下の非正規労働者だったんですが、現在は労働者の三分の一が非正規労働者であると、パートタイマーだとか契約社員だとか、もういろんな形で正社員でない人たちの数が日本の労働市場で約三分の一いるというのはなぜかということを考えた場合に、いろんな理由があるんでしょうが、まず一番大事なのは、やっぱり企業が非常に不況に巻き込まれて労働費用の節約を図りたいというような政策を取りましたので、どうしても正規労働者ではなくて非正規労働者を雇った方が労働費用の節約になるというわけで、そういう手段に至ったというのはもう皆様すぐ分かる話でございます。
 そのほかにもいろいろ理由はございまして、そこに四つか五つほど書いてございますが、まず一時間当たりの賃金が違うと。もう正社員の五割とか六割ぐらいの賃金しかもらえないのが非正規労働者でございますし、もっと大事なのは、ボーナスの支払がほとんどない。正規社員には年に二回のボーナスがございますが非正規にはほとんどないというわけで、ボーナスまで含めたらもっと年収差は広がるということでございますので、企業から見たらそういう非正規の人を多く雇うことはいわゆる賃金費用の節約につながるというのは明らかでございますのでこういう政策を取ったと。
 それから二番目は、そういう非正規の人は非常に雇用調整がやりやすい。すぐ雇えるけどすぐ首にもできるというような形で、企業にとって欲しいときに雇うけど、欲しくないときはもう辞めてもらうというようなことがすぐできるというわけですから、正社員の場合は、日本の解雇というのはいろんな解雇四原則とかいろいろございましてなかなか簡単に解雇はできないんですが、非正規の場合は、例えば雇用契約期間が一年あるいは半年であれば、もうそのときにその企業がその人を必要でないと思ったら法律どおり契約解除できるということがございますので、どうしてもそういうような非正規の人たちを雇うということは企業にとっては雇用の調整がしやすいというのが大きな第二番目の理由かなというふうに思います。
 第三番目の理由は、これは結構重要でございまして、正規の労働者はいろんな社会保険制度に、もう半分義務的にといいますか、法律で定められた規定に従い社会保険制度に入るようになっていますが、非正規労働者はそういう社会保険制度から排除されているというのが実態でございます。
 具体的に御紹介したいと思いますが、失業保険、日本では雇用保険と言われておりますが、失業する人が生活に困るんで働いている期間に保険料を払ってやるのが雇用保険制度と言われるものでございますが、これに加入するには、週労働時間が二十時間以上ないといかぬという条件、あるいは雇用契約が一年以上でないといかぬという条件がございますので、そういうような条件から外れる人はそういう雇用保険に入れないという状況がございます。
 二番目の厚生年金、これは年金制度でございますが、これも週の労働時間がフルタイムの四分の三以上働いていないと厚生年金制度に加入できないというのがございますので、これも、もし四分の三の労働時間に満たない人であれば、そういう厚生年金に入らない、入れないという現状がございます。
 それから医療保険、いわゆる組合健保だとか政府管掌とか言われる保険においても、例えばだんなさんがフルタイムで働いていて奥さんがパートでいれば、年収百三十万円の以下であればだんなさんの医療保険に加入できるというようなことがありまして、百三十万円の壁というのがございます。
 そういう意味で、今御紹介した失業保険、厚生年金、医療保険等に関して、非正規労働者は社会保険制度に入れない、入らない。医療保険の場合は入らないという人もいます。自分の医療保険を、保険料を節約するために、意図的に百三十万円以下で年収を抑える人もいますから、そういう人は入らないというんですが、大半は入れないという状況で社会保険に入っていないという現状がございます。
 そうすると、企業にとっては社会保険料の事業主負担分の節約に大きくつながります。御存じのように、日本の社会保険制度というのは事業主と本人の保険料の折半、半々でございますので、そういう人たちが社会保険に入っていないということは企業にとっては事業主負担、労働費用の節約につながりますから、競って非正規の社員を雇って社会保険料の事業主負担の節約を図ろうという行動を取ります。これが結構重要でございますので、後で政策のところで申し上げたいと思います。
 それから四番目は、非正規労働者というけれども、自分で進んで非正規労働者になる人もいるということを我々は認めざるを得ない。本当は正規で働きたいんだけれども職がない、あるいはだれも雇ってくれぬから非正規になる人が多いですが、中には自分で労働時間を抑えたいと、週の労働時間は自分は二十時間に抑えたいとか三十時間に抑えたい、いろんな事情がございます。高齢者だとか家庭の奥さんだとか、あるいは若者は自分で進んでパートタイマーだとか契約社員だとかそういうのを願う人もいますから、そういう人は自分の意図でそういうことを選択しているのであれば、周りがそう心配する必要もない。
 しかしながら、企業にとってはそういう人を雇うということは、これ繰り返しになりますが、社会保険料の事業主負担の節約につながるというようなところがございますので、企業は、もし意図的に非正規労働を望む人がいればそういう人を喜んで採用しようというのは当然言えるかというふうに思います。
 そういう意味で、非正規労働者が日本で増えてきた理由というのは、一にも二にも不景気が第一の理由でございますが、じゃそれ以外にどういう理由があるかといえば、そのような四つの理由にほぼ要約できるんではないでしょうかという感じがします。
 じゃ、正規労働者と非正規労働者の格差がこれだけ大きい時代になって、これを縮小する案というふうに書いておりますが、縮小しなくてもいいという意見も当然あり得ます。これは、企業はそう思うかもしれないし、労働者だって中にはそういうことを思う人もいるかもしれませんし、格差拡大何が悪いという大上段の議論もございますので、一概には格差があることが駄目だとは言えませんが、私の個人的な意見を申しますと、できればそういう格差は小さい方がいいというような意見を持っておりますので、私の立場からは格差を縮小する案を考えてみたいというふうに思います。
 そのことに関しては三つか四つ御紹介したいと思いますが、まず一つは、一番目に書いてございますが、これは先ほどお話しされた城さんと全く同じなのでもう詳しくは申しません。同一労働同一賃金の方向へと。同じ仕事をしている人は時間当たり賃金をなるべく格差は小さくするという方策を取っていただきたいと。
 これはもう成功した例がございます。オランダのワークシェアリングというのは、これを法律で導入しました。同じ仕事をしている人は一時間当たり賃金を一緒にせいと。これは政労使が合意して、有名なワッセナー合意という合意があった後、同一労働同一賃金は後で成立した法律なわけですが、オランダはワークシェアリングを成功するためにこういうことをやったと。したがって、労働者の賃金格差は、何時間働いているかということだけに依存するというような国もございますので、オランダは参考になるかなというふうに思います。
 ただし、城さんが御指摘になったように、日本の社会において同一労働同一賃金、全く一緒にするというのはまだそういう時期はなかなか難しいであろうと。正社員から見たら、上役に今日は忙しいから残業をやれと言われて、嫌ですと断れる雰囲気はないですよね。正社員はそれだけのやっぱり会社への対応を問われていると。それからパートタイマーは、五時になったら、はい、私は帰りますというような、自分の都合のいい時間を働いているというわけで、正社員から見たら何か働き方違うなということもございますので、そういう働き方の違いのある人たちをすべて同一労働同一賃金というふうに持っていくのは難しい。しかし、その方向に行ってほしいというのが私の希望でございます。
 そのための手段は、職務給の導入というのが私も城さんと同じ意見でございまして、労使関係の歴史をたどりますと、実は戦後、労使は職務給制度を入れようとした時期がございました。日本の今後の賃金体系あるいは処遇体系には職務給というのがいいということを真剣に議論した時期がございました。しかし、実際には入りませんでした。
 それはなぜかといいますと、理由は、当時、戦後十年とか十五年、日本は貧乏でございました。非常に貧乏なので、労働者の生活ないしは賃金を決めるときには、中年や高年がもっとお金が掛かるだろうと、住宅があるとか子供の教育費だとか、そんなことで中高年は高い賃金をもらわないとやっていけぬだろうという配慮がございました。それを我々のタームで生活給制度というわけなんですが、若者は余り、単身だったらそんなにお金も要らぬだろうというわけで、当時大変な賃金、労使関係の議論において生活給制度の方が望ましいというようなのが大勢になりまして、日本は年功序列制度ということを基本にしました。それを電産型というふうに我々は称しております。
 そういう意味で中高年の方がお金が掛かるから、そういう人たちに高い賃金を払おうという制度が今までずっと続いてきた。ここ十年、二十年、年功賃金制度の見直しが叫ばれ、いわゆる能率給あるいは成果主義というのも入ってまいりましたし、もう一つ議論すべきは、職務給制度の復活というか、一度日本でそういうことを議論されたわけですから、一度労使でもって職務給制度、これを定着させるためには、その人がどういう仕事をしていてどういう能力が必要であるということをちゃんと労使で合意の下で、同じ仕事をしている人には同じ賃金を与えられるという制度に持っていくのがまず一番目に重要な方向かなというふうに思います。
 二番目は、もうこれが私の理由で申しました三番目の理由に対する対処でございます。非正規労働者は、先ほど具体的に申しましたように、いろんな形で社会保険制度に入っておりません。できるだけ非正規労働者も社会保険制度に加入できるようにするというような方策が是非とも必要であると。これは労働条件の格差の是正にもつながりますし、非正規労働者のセーフティーネットを確保する意味においても非常に重要な制度であるかなというふうに思います。
 これはもう政府もそのような方向であるし、実は前回の厚生年金制度の改革においてもこういうことを政府は意図しました。ところが、実業界から猛反対がございました。もう産業を言ってもいいでしょう。流通業と飲食業でございます。非常にたくさんの非正規労働者を抱えている産業から、そんな人、社会保険に入ったら、自分たちの社会保険料の事業主負担が増えて困るというんで猛反対をしまして、結局成立しませんでした。
 そういうような事情がございますので、次の改正のとき、あるいはもう今からでもいいですが、是非とも国会議員の先生方が先頭に立っていただいて、経営者を説得するぐらいの気力でもって、こういうことが重要であるというようなことを是非ともやっていただきたい。これはもう法律で決定できることですから、産業界の、一部の産業界の強い反対があっても私はできる話ではないかなというふうに思います。それは厚生年金のみならず、失業保険、介護保険、医療保険、全部を含めての話でございます。
 それから三番目、これやっぱり非正規労働者、パートだとかいわゆる派遣社員だとか、そういう人たち、やっぱり最低賃金以下で働いている人が結構多うございます。そういうような事情がはっきりしておりますので、最低賃金制度以下の労働で働いている労働者の数をできるだけ少なくするというような方策が必要でございますし、できれば最低賃金制度をもう少し上げるという政策も私は必要かなと思います。
 日本の最低賃金額というのは欧米と比べて低うございますので、そういう意味でもやっぱり国際スタンダードにするには最低賃金の額を上げるという案も私はあり得るかなと思います。
 最後、そこには書いてございませんが、四番目の理由として、労働分配率が下げ続けておりますので、労働分配率を上げる。これは自由経済の社会でございますので労使の交渉に任せなければなりませんが、法律でもって労働分配率上げろなんという政策はとても無理でございますが、これは過去五、六年、労働分配率が下がっておりますので、労働者の分け前を増やすというような策を取っていただきたい、これはもう労使関係でやるしかないわけですが。
 そこで、あえて大胆なことを言いますと、労使関係でもって労働者の分け前、賃金、総支払分を増やすというような政策が導入されたとしても、だれがどれだけ持っていくかという配分の問題になります。その問題を、正規労働者と非正規労働者、一体どっちの取り分を多くするかというようなことになりますと、私は非正規労働者の取り分を多くしてほしい。ということは、実は正規労働者の賃金、犠牲になることもあり得るということをいわゆる正規の労働者は覚悟しないと格差の是正はできないということでございます。
 要するに、格差の是正というのは、下を上げて、下を上げるだけというのはなかなか困難でございますので、上にいるフルタイムの男性の賃金も犠牲にならざるを得ないことがあると。先ほど城さんの見事な表で五十代のフルタイムの男性はもらい過ぎであるというようなことまで言われましたが、そういう状況であれば、それは五十代のフルタイムの男性の賃金カットして非正規の人たちに回すということだって私は進められるかなという気がいたします。
 そういう意味で、四番目の方策としては労働分配率を上げる、労働者への賃金還元をもっと増やすと。その賃金還元額を増やしたときに正規と非正規どっちに配分を多くするかというと、非正規に配分を多くしてほしいということがございます。
 そのようなことが私は日本における正規・非正規労働者の格差の是正につながるんではないかなという気がいたしております。
 以上が私の話でございます。
 どうもありがとうございました。
#7
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 では、次に樋口参考人、お願いいたします。
#8
○参考人(樋口美雄君) 慶応大学の樋口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 このような調査会で私の意見を述べる機会を与えてくださったことに対し、心より感謝申し上げます。
 私の話はパワーポイントを使ってお話ししますが、お手元に同じものが配付されていると思いますので、そちらをごらんいただいてもよろしいかというふうに思います。(資料映写)
 話の流れは三本から成っておりまして、現在何が起こっているのかというようなこと、そして二番目に、その問題の背景に何があるんだろうか、そして三番目としまして、ではその問題を解消するためにはどのような対策といったものが求められているんだろうかということについて私見を述べさせていただきたいというふうに思います。
 まず、問題意識でありますが、こちらの調査会のタイトルからしましても、私も全く同感するところでありますが、経済を活性化するための雇用の多様化の在り方あるいは働き方の多様化の在り方というものについて考えてみたいということを申し上げたいというふうに思います。
 日本におけるそのタイトルとしまして、非正規雇用をめぐるというタイトルちょうだいしているわけでありますが、まず非正規社員というのは一体どういうものであるのか。それをパートタイム労働者を例に取りながら考えてみたいというふうに思います。
 日本でもこのパート労働者についての統計調査というのはたくさんございますが、調査によって定義が異なっている。主に二つの定義によっているのかなというふうに思いますが、一つは、労働時間の違いに着目して、一般労働者に比べて労働時間の短い労働者、これをパートタイム労働者と言います、それについて賃金を調べますといったような統計がございます。
 そこにおいては、これは国際的にもこの定義が使われているわけでございますが、その対立用語として出てくるのはフルタイム、一般労働者ということでありまして、その一般労働者に比べて労働時間が短いというのが通常、あるいは中には三十五時間以下の労働者をパート労働者というふうに言いますというふうになっております。この定義に基づきまして日本におけるパート労働法はつくられているわけでございます。
 もう一つの定義は、企業における呼称、呼び名としてのパートさんというようなことでありまして、こちらは対立用語というのはおそらく正社員というような言葉で使われるわけでありまして、ある意味では身分を示す、あるいは中には資格を示すというような言葉で使われていることがございます。労働時間は一般労働者と同じなんだけれど、会社でパート労働者、非正規社員だというようなことで呼ばれている人もいるわけでございまして、よく言われるのは、偽装パートという言葉で示されている人も存在するということになるかというふうに思います。
 特に後者、二番目の定義に従いますと、正社員とそれとパート労働者、あるいは非正社員労働者というのは何が違うんだろうかということを考えてみますと、パート労働者に対して正社員というのは、いわゆる保障の対象になってきたということでありまして、先ほど橘木さんからお話ありましたような、生活給をそこにおいては支給するんだと。しかし非正社員に対してはこれは出しませんよというようなことで、ある意味で給与の決め方について線引きを行ってきたということがあるかと思います。
 あるいは能力開発につきましても、正社員については企業内訓練の対象者だということで考えていくのに対して、パート労働者あるいは非正社員労働者というのはその対象にならない、自己啓発でやれというようなことになってきたかというふうに思います。
 正社員、私はよく使う言葉でありまして、それは保障と拘束の関係といったものが会社との間にあったんではないか。保障というのは、今申し上げました生活給、あるいは能力開発というところで、会社の方がそういうことについては保障していきますよということがある一方において、この正社員に対しては拘束を掛けますということが行われてきました。労働時間を考えますと、残業は正社員は断れないとか、あるいは辞令一本で転勤するというようなことで、その保障の代償としてこういった拘束が掛けられていた。ところが、非正社員、例えばパート労働者についてはそういう拘束は掛けられないというようなことがこれまではあったんではないかというふうに思います。
 ところが、ここのところ増えてきている非正社員については、給与については保障の対象じゃないわけでありますが、その一方で拘束は掛けるよというようなところも起こってきているというようなことがあるんではないかというふうに思います。
 日本全体で労働市場で今何が起こっているのかというようなところから少しレビューをしてみたいと思いますが、こちらの図におきましては、男女別に見たときに、雇用者数、会社で働いている人たちの数がどう推移してきているのかということを示しておりまして、男性と女性で非常に対照的な動きを示しているかと思います。
 男性につきましては、このブルーの線、九七年がピークでありまして、その後、減少し続けるというようなことがありました。景気の影響もあるかと思いますが、やはり産業構造の転換といったものも大きく影響してきたかと思います。その一方、女性については右肩上がりというようなことで、依然として増加を続けているというような違いが見られます。
 なぜこうした違いがあるんだろうかということを考えますと、やはり一つは、産業構造が、従来男性をたくさん雇っていた産業の構成比が高かった。例えば建設業でありますとか、あるいは重厚長大産業というようなところが多かった。ところが、そこら辺が九七、八年から、企業のリストラもありますし、同時にそういう産業構造の転換が急ピッチで、例えば建設業が雇用を減らしますというようなことが起こって、男性の雇用といったものが減少を続けているんだろう。
 その一方、女性について見ますと、例えば介護ですとかあるいは病院、医療ですとか、そういうサービス業のところで雇用が増えていく。こういうところは女性の比率が元々高いというようなことで、そういうものを反映していることではないかと思います。
 その影響も受けまして、失業率にも男性と女性では大きな差がありまして、九七年以前については、この図を見ましても、図の二を見ますと、点線、女性の失業率の方が男性よりも高かったということであります。ところが、その後、先ほどの雇用の変化の影響を受けまして男性の失業率の方が上昇するというようなことです。
 このことは何を考えればいいのかということでありますが、やはり企業だけではなくそれぞれの世帯、家計においても、従来の男が外で働いて女は家庭を守っていくんだというような性別役割分担についての見直しというものを求めているんではないかというふうに思います。従来のような産業構造であれば、男性が外で働いて所得を稼いでくる、女性は専業主婦でもということであってもまあリスクはそれほど高くなかったわけでありますが、男性も雇用が減らされる、給与が減らされるというような時代になっては、ともに働き、ともに家庭を守っていくんだというような男女共同参画ということがこれいや応なしに求められていくというようなことではないかというふうに思います。
 その背景、ここには公共事業費の推移というものを見ておりますが、日本では公共事業が、九五年、六・四%ということで、GDPの六・四%あったわけで、今までは景気対策という形で雇用の受皿をつくるために公共事業というものが取られてきたというようなことがあります。ところが、その後、財政再建というようなことで、現在は、六・四%であったものが三・七%まで削減される。これは私はやむを得ないことだろうというふうに思いますが、それに代わって産業がなかなか興ってこないというようなところにその経済産業の活性化を求めるという動きがいろんなところで起こってきたんではないか。で、ここのところに至って景気の回復がやっと本格化したというような背景があるんではないかというふうに思います。
 これ、橘木さんがおっしゃった労働分配率との関係でありますが、企業における経常利益、それと労働者に対する雇用者報酬、給与総額の動き、これを見ますと、従来は景気が低迷して経常利益が下がると雇用者報酬も下がりました。逆に景気が回復してくると雇用者報酬も上がるというようなことであったわけでありますが、二十一世紀になってからはこの動きがどうも逆転してきている。給与の方は抑制される一方において経常利益の方が拡大していくというような動きがありまして、これが先ほど問題提起のあったところかというふうに思います。ただ、これを法律とか政策でどうこうしろといっても私はどうにもならない面があるわけでありまして、これについては正にそれぞれの労使で考えていくべきことであって政府が介入するべきことではないんではないかというふうに思っております。
 ただ、その中で気になりますのは、雇用者報酬が低迷している背景として、実は一人当たりの給与総額、これを計算しましても、ここ何年来ずっと下がってきているかというふうに思います。例えば、九八年当時に比べて一人当たりの人件費、給与といったものは大体八%ほど下がってきています。しかし、では正社員の給与が下がったのか、あるいはパート労働者の給与が下がったのかということを見ますと、必ずしもそうではない。正に構成比が変わったということで、賃金の低いパート労働者、非正社員の数が増えたことが全体の一人当たりの給与を抑制してきたということで八%のうち大体七%ぐらいはこれで説明してしまうというようなところでありまして、こういったところにも実は非正社員の増加ということが非常に敏感に反映しているというふうに思います。
 ここら辺は簡単に飛ばしたいと思いますが、図五というのは男女別に見たときに非正規雇用者の比率がどう推移してきたのかということでありまして、男女ともに増加してきているということがあります。
 では、その内訳はどうなのかということでありまして、非正社員というふうに言われてもいろんな呼称があります。企業において、パートというふうに呼ばれている人、あるいはアルバイトというふうに呼ばれている人、さらには嘱託というふうに呼ばれている人、さらには派遣労働者ということでありますが、パート、アルバイト、嘱託の特徴というのは、これは雇用主に直接雇われて、その職場において働いているというような特徴があります。それに対して、派遣は、これは雇用主は派遣会社だということでありまして、そこから派遣されて別の会社で働いているというような間接雇用というようなことがある。実は、これと関連して請負というような問題があるわけでありますが、請負については、この雇用形態ということには入っておりません。むしろ、例えば請負労働者の中でも正社員がいたり、あるいは有期雇用者がいるということで、非常に有期雇用者、期限の定めのある契約に基づく労働者が多いわけでありますが、この中では別掲されていないというようなことがあります。そういう人たちを含まなくても、九三年の二〇・七%だったものが二〇〇六年には三四・三%まで増えましたということがあります。
 しかも、もう一つ注目しなければいけないのは、従来非正社員というのはやはり既婚女性が多かった。特にパート労働者という人たちが多かったわけでありますが、その層が若い人たちにも広がりを見せてきたというようなことがあるんじゃないかというふうに思います。
 そうしますと、従来の非正社員というのは、例えば、会社においても仕事上補助的な存在であるのと同時に、それぞれの家庭においても世帯主の稼いできた所得で足りない部分を補償していくんだというような、そういった受け止め方をされていた。その結果として、職場においても、また家庭においても、ある意味では同じような存在だったということであったわけであります。これがいいかどうかは別の問題として、そういう存在として受け止められてきた面がある。
 ところが、男性の方でもそれが増えていく。世帯主にもこの非正社員が増えていくということになったところにおいて問題が日本ではクローズアップされて、その世帯主、世帯の中心的な稼得者であるにもかかわらず会社から給与がたくさん払われないというような、そういった意見の食い違いというものが起こってきているんじゃないかというふうに思います。
 若者にこういった非正社員の層が拡大していくというようなことにおいて、私は少子化の要因にもなってきているということでありまして、こちらに掲げましたのは、慶応大学で調査しているパネル調査というような、同一の個人をずっと追跡する、その結果何が起こっているのかというようなものを見たものであります。フリーターとして例えば学校を卒業して一年目に働いていた人と、今度は正社員として働いていた人が、その後結婚がどうなっていったんだろうかというようなものを見ております。
 九一年以前につきましてはこのブルーの線になっておりますが、正社員であろうとフリーターであった人であろうと結婚する年齢には大きな差がなかった。ここでは未婚率を示していますが、その後だんだん未婚の人たちが減っていくというようなことになっています。タイトル、婚姻率って書いてありますが、これは未婚率の間違いであります。ところが、九二年以降の赤い線になりますと、フリーターだった人と正社員だった人で大きな差が生まれてくる。
 要は、九〇年代に入っての非正社員というのは、ある意味でそれが長期間続くということで、なかなか正社員に登用されないというような事態が起こっていて、ある意味では、一時的な所得格差の問題と同時に、所得の階層化、固定化といったものが進展してきているというようなところに私は大きな問題を感じるということであります。
 これはパート労働者の正社員、一般労働者に対する時間当たりの賃金の格差を示したものでありますが、これを見ましても、かつての七六年のころは七〇・一%ということでありますから、差が三〇%、三割程度だということであったのが、二〇〇五年になりますと五六・三%というようなことで差が四四%ほどに拡大しましたというようなことを示しております。
 その一方、原因は何かということを考えてみますと、やはり基本的に経済の好調さがどうであったかというようなことが私は影響してきたなというふうに思っておりまして、長期的な九〇年代に入っての景気の低迷といったものがこういう非正社員を増やしていったということに大いに影響していたんではないかというふうに思います。
 さらには、競争が激化してくるというようなことで、お二人の先生からお話ありましたような、人件費をなるべく抑制して、そして人件費の固定費化を回避したいというようなことがあったんではないか。
 同時に、労働法制において私は不備があったんではないかというふうに思っております。例えば、規制緩和を進めてきたわけでありますが、その中心的な対象というのは、やはり非正社員という人たちを対象の法律についての規制緩和を進めてきた。例えば労働者派遣法もありますし、あるいは労働基準法における有期労働者の扱いというようなところがあって、その一方で、正社員についてはほとんど手が付けられないまま現在に至ってきている。その法律における二極化といった問題がやはり全体的に影響しているんじゃないかというふうに思います。
 また、職業教育等々において性別役割といったものがどうも存在するんではないかというふうに思っております。
 そして、四番目の要因は、これは先ほどから出てきております税、社会保障制度、あるいは企業の配偶者手当において、この制度が存在することによって、この有期労働者あるいはパート労働者が年収を調整して何とか手取りの所得を増やしたいというような行動があったんではないか。そしてさらに、社外における日本では職業能力開発の機会といったものが欠如しているというような問題があったんではないかというふうに思います。
 では、政策を見直す上で何が目標になるんだろうかということでありまして、大きく二つここでは掲げさせていただいています。
 一番目は、労働市場やあるいは生活のゆがみといったものが今起こってきているわけでありまして、それが現れているのが所得格差の問題。そして、その一方において今度は労働時間、正社員については長時間労働者が増えていくというようなことで、労働時間については長時間労働者が増える一方でパート労働者が増えるというような、要するに三十五時間から四十八時間程度の労働者が逆に減っていくというような二極化が進展してきている。そしてまた、地域格差というようなことで、従来、公共事業を中心として地方の雇用の受皿をつくっていたものが、それがつくれなくなってきている。にもかかわらず、それに代わって地域分権化に対するその具体的な施策というものがそれぞれの自治体、地域から上がってこないというようなところがあって、それが特に固定化してきているんじゃないかというような懸念が持たれるということであります。
 そして、二番目としては、これは長期的に見た場合、一番目が現在起こっている問題に対する問題提起であったのに対して、二番目としましては、もう少し長期的に見てもやはり人口減少社会になっていく、そういった中において個人が意欲と能力を発揮できるような社会をどうつくっていくのか、それの結果として完全雇用を量、質両面において達成するというためにはどういうものが必要なんだろうか。例えば、失業率の引下げというものが従来は雇用政策のターゲットであったわけでありますが、最近はこれを余り言わなく、むしろ就業率の引上げという言葉を使うようになってきました。これは妥当だというふうに思います。
 例えば、失業者を減らすという場合に、働く人を増やすというのももちろんその一つでありますが、もう一つの方法は、職探しをあきらめてもらう、引退してもらう、あるいは専業主婦になってもらう、中にはニートとして自宅に引きこもってもらうというようなことになれば、この人たちは求職活動、職探しをしないわけですから、失業者としてもカウントされない、非労働力ですというふうになってしまう。これでは少子高齢化の社会において労働力、人々の個人の意欲、能力を発揮できるような社会としてはとても達成することができないわけでありまして、そこでは就業者の拡大というような、働くことのできる人たち、自立できる人たちをつくっていくというような、そのためには単に短時間雇用がまずいですねというようなことではなく、正に個人が選択できるような雇用形態の多様化といったものを促進していくというようなことも必要ではないかというふうに思っております。
 こちらは、図表の7というのは、厚生労働省の雇用政策審議会の中で二〇一五年の労働力についての見通しをつくったものでありますが、現状のままが進行しますと二〇一五年で四百十万人ほど労働者が減りそうだと。その一方、企業の雇用慣行の見直し、あるいは雇用対策、さらには法律改正等々によって、この右側の労働市場への参加が進むとするならば百十万人の減少で済みますよと。三百万人ほど企業とかあるいは政府の対応によってこの労働力人口というのは増加させ得るんだというようなことで、そこでは正に働き方の柔軟性とか、あるいは労働時間についての柔軟性というようなものを促進することの重要性ということがいろんな世代にわたって共通して言えるんではないかというふうに思っております。
 具体的な対策としまして、幾つかここでは掲げさせていただきました。まずは何よりも、やはり景気の回復というようなものと経済成長の維持というようなことが必要でしょうと。これがなければ、企業としてはどんなに雇用の拡大を願ったとしても、あるいは雇用の保障というものを願ったとしても実現することができない。企業が倒産してしまうというような状況では、なかなか均等という問題は進まないというふうに思っておりますので、これを進める必要があるだろう。
 その上で、これもうお二人の先生から出てきております均衡処遇についての法律の強化というものが必要ではないかというふうに思っております。
 その場合に、問題は、非正社員というものが、先ほども言いましたように多岐にわたっているということでありまして、パート労働法における均衡処遇の強化、現在審議会の方でも検討しているテーマでございますが、ここではやはり短時間労働者が対象というようなことになります。その一方、有期契約の労働者については、これは労働基準法の方で考えていかなければいけないというようなこと、また、派遣労働者についての均衡問題というのは労働者派遣法で取り扱わなければいけないということでありまして、法律が多岐にわたっているというようなことが一つ問題かというふうに私は思っております。
 この点、それぞれの部署、まあ官僚の人たちも考えているというふうに思いますが、議会として、国会としてやるべきことというのは、それぞれ細かい個別法についてはこれはそれぞれの個別法に任せればいいということでありまして、全体の日本の労働市場をどういうふうなビジョンで持っていくのか、それについての基本法が必要なんではないかというふうに思っております。これについてはまた後で申し上げます。
 三番目は、これは税、社会保障制度の改革ということで、ここではあえて働くことが損にならないような制度にしてほしいということであります。長く働いてしまうと、これ所得税払わなくちゃいけないとかというようなことが起こったり、あるいは年金についても同じようなことがあったりする。そして、ましてや、先ほどもお話がありましたように、事業主のスタンスから見れば、この社会保険料を払うというのが人件費の増加ということで、その人たちをなるべく回避したいというような問題が起こっているんじゃないかと思います。
 四番目は、これは学校教育も含めた職業意識の向上。
 そして五番目は、これはヨーロッパでも取られておりますし、私も今、社会保障制度、セーフティーネットの見直しというようなところで、この社会による自立支援、能力開発といったものが必要なんではないかというふうに思います。事後的にそこに弱者が現れてしまう、だからその人たちを守る、シェルターを保護するんだというようなことをやると。そのシェルターに入っていれば安心ですよというようなことになると、いつになっても自立することができないというような問題が起こってくるわけでありまして、シェルターの保護よりも、殻の保護よりもむしろ翼をいかに補強していくか。そのためには職業カウンセラーと、それと能力開発バウチャーの適切な組合せというものを考えていくということが必要ではないか。
 さらには、地域の問題を考える上では、地域提案による地域のための雇用戦略というものをそれぞれの自治体が既に幾つかもうつくり上げてきているかと思います。そういったものを広げていくということが必要じゃないかと思います。
 そして最後に、この個別対策の限界を痛感しておりまして、仕事と生活の調和のための推進基本法というものを制定するべきではないかというふうに思っております。こういうことを進めると、企業にとってはコストが増加するだけで産業の活性化につながらないんじゃないかというふうな御意見があります。私は全く逆の考え方をしておりまして、ワーク・ライフ・バランスという言葉がしばしば誤解されて使われている場合がある。私どもが考えておりますワーク・ライフ・バランスというのは、まず、仕事のやり方を改革する、あるいは働き方を見直すことにおいて職場における時間当たりの生産性を向上させるというようなことが必要であり、同時に、個人が私的生活を充実させるということが必要なんじゃないかと思います。
 これまで、生産性というと、労働生産性、一人当たりの生産性というようなこと、これが議論されてきた。そうしますと、労働時間を延ばせば、残業をたくさんやれば一人当たりの生産性が上がるじゃないかというようなことであったわけでありますが、その結果として、逆に個人の私的な生活がバランスを失っていくというようなことが起こっているんじゃないか。だとすれば、やはり処遇についても、あるいはこの仕事の生産性についても、時間当たりということについて考えていく必要があるんじゃないか。
 そういうことを全体としていろんな問題抱えているわけでありまして、省庁の枠を超えたような、あるいはそれぞれの担当部署の枠を超えたような基本法を国会で提起していただきますと役人もやりやすいんじゃないか、どちらの方向に向かっていくのかというようなことが明記されることの重要性というのがあるんではないかというふうに思います。そこでは、国と地方自治体とNPO、企業、国民の連携というものを明記させるということが必要じゃないかと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。
#9
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださるようお願いいたします。
 なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁及び追加質問を含めた時間がお一人十分程度となるよう御協力をお願いいたします。
 それでは、質疑のある方の挙手をお願いいたします。
 小池正勝さん。
#10
○小池正勝君 参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。貴重な御意見ありがとうございました。私、自由民主党の小池正勝です。
 私の方から、まず橘木先生に御質問をさせていただきます。それから、城先生にも御質問させていただきます。
 先ほど橘木先生のお話をお聞きしまして、正規と非正規の格差を縮小する策として労働分配率のお話を取り上げておられて、非正規雇用の方に分配を手厚くするということがいいんじゃないかという大変傾聴に値する御意見を賜ったんです。
 そこで御質問させていただこうと思うんですが、その際にまず一つ、労働組合の中で正に組合員自らが非正規雇用に対して自分たちとは違うんだと、排除しようと、自分たちが上なんだという意識を持っている組合員が非常に多いんだという話を聞くんで、まず労働組合自体の意識改革が必要だという御意見があるんですが、それについてまずどうお考えになるかということが一つ、もう一つはオランダ型のワークシェアリングをどのようにお考えになるのかという、この二つについてまず橘木先生にお伺いしたいと思います。
 城先生にお伺いしたいのは、城先生の書いたものを読ましていただくと、例えば中央公論の本を読ましてもらいましたら、非正規雇用というのは年功序列システム自体が自らの延命のために生み出したものだということで、年功序列というのを大変攻撃的にお書きになって非常に厳しい評価をしておられるんですが、一時期までは日本型の雇用慣行として高く評価された時期もあったわけですけれども、年功序列制度自体をどのようにお考えになっているのか、もっと言うと、非正規雇用と両立するという余地はないのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
#11
○会長(広中和歌子君) それでは、まず橘木参考人、よろしくお願いします。
#12
○参考人(橘木俊詔君) 二つ質問がございましたので、お答えします。
 第一の労働組合の対処のやり方、今、日本の労働市場というのは労働組合に加盟している人は二〇%弱でございます。どういう人が労働組合に入っているかといいますと、大企業、男性、フルタイムというのが基本的に労働組合に加入しております。こういう人たちは、ちょっと言葉はきついかもしれませんが、労働者の中ではエリートであります。労働者の中のエリートが労働組合員であり、残り八割が労働者の中では非エリートであるというような、やや誇張して言えば対立関係があることも事実でございます。
 そういう意味で、連合会長さんなんかと私、話しする機会もあるんですが、やはりエリートの人たちも、やっぱり自分たちも犠牲を覚悟しないかぬというようなことを申したことがございますが、連合の会長さんも、それはよく分かっておると、おれたちの権益だけを守るということによって格差の是正はできないと、やっぱり上も多少の犠牲は覚悟しないかぬと、下を上げるには、財源に限度があるわけですから、そういう意味で私はもう今日のお話のときにそのことを大胆に申し上げました。
 そういう意味で二つのプロセスがございます。一つは、もう繰り返しになりますが、労働分配率を上げる。これは、もう正規、非正規、全員がもらう割合を増やすという意味で労働者全体にベネフィットが及ぶことなんですが、その配分をどうするかというと、繰り返しになりますが、非正規の配分を多くしてほしいと、だったら正規の人の犠牲は多少はやむを得ないということを私も主張をしておりますので、今の御質問の方と似た御意見かなと思います。
 二番目のワークシェアリング、オランダのワークシェアリングでございますが、実は私は五、六年前に日本でもオランダ的ワークシェアリングを導入する必要があると、失業率が五・五%に達してもうどうしようもない時期に来たときに、ワークシェアリングを日本も考えたらいいというようなことを私始め何人かの労働経済学者が言ったんですが、結局日本では定着しなかった。
 なぜかというと、これはやっぱり先ほどのお話と多少関係してきます。やっぱりワークシェアリングというのは上が犠牲を覚悟しなきゃいかぬ。オランダの場合は正規の人たちが非正規の人たちに仕事を譲ると。ワークシェアですから、譲るというような概念で説明される限りにおいては、上も多少の犠牲を覚悟しなきゃいかぬわけですが、日本では残念ながら上の方にその気が余りなかったというふうに言っていいかもしれません。ちょっとやや酷になりますが。
 そういう意味で、日本ではワークシェアリングが成立しなかった一つの理由というのはそこにあるかなというふうに思います。
 以上でございます。
#13
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 それでは、城参考人、お願いいたします。
#14
○参考人(城繁幸君) 年功序列制度と非正規と両立しないのか、できるかどうかという御質問でしたけれども、まず、年功序列制度自体がもはや維持が限界に来ておると、限界を超えておるというのは一つ言えると思います。
 年功序列制度自体は非常に優れた制度であると私も考えております。従業員の勤続年数が長くなる、つまり技術の蓄積が可能なんですね。日本の製造業が世界一になったのはこれが理由です。別に日本人が器用であったとか物づくりに才能があったわけではありません。職人が、欧米では一世紀以上前に姿を消した職人というのが日本企業の製造現場にたくさん残っていらっしゃるんですね。これが理由です。
 ただ、いろんな事情があってこれ維持できなくなってきていまして、まあ業種にもよりますけれども、あらかたの製造業でもう職人が必要なくなってきていると。技術の蓄積より革新の方が必要なんですね。ですから、もう年齢が高いというだけで必ずしもお給料を上げるのは合理的じゃなくなっているというのがまず一点ございます。
 それから二点目は、もう物理的に維持ができないと。年功序列制度の本質は、若いころの稼ぎためた成果に対する報酬というものを将来の出世で受け取るという面があるんですね。将来、例えば四十五歳超えた辺りで部長さんなりのポストに就かれて高い報酬を安定して受け取れると、六十歳まで。そういう形で報酬を受け取るという点があったんです。ですから、若いうちというのは自分の成果に比べると報酬というのは若干少なくなっているんですね。まあトータルのバランスで報酬、プラスになるという面があるんですけれども、これがもう組織の成長がしないと、あるいはもう定期昇給どんどん、人件費上げていくには売上げどんどんプラスしていかなきゃいけないんですね。ただ、これもう今デフレですからそれができないと。こうなってしまうともう制度として維持ができないんですね。じゃどうなるかというと、将来の出世ではなくて、働いた成果に応じてタイムリーにキャッシュで払っていくと、もうこういうシステムにシフトせざるを得ないんですね。これはもう職務給の発想ですけれども。ですので、まあ基本的にはもう維持不可能な方向に来ているというのは一つ言えると思います。
 御質問の、非正規と年功序列は両立する余地はないのかという御指摘ですけれども、基本的には私はこれ両立しないと考えています。
 いったん非正規の道へ進まれた方というのは、年齢が若ければそこは企業努力であるとか行政側の何か努力、採用数に例えば若年層非正規雇用者を含ませるであるとか、そういった形で対策というのはある程度は可能だと思いますけれども、基本的には私は両立しないと思います。三年四年非正規で経験された方、あるいはもう三十を超えられた方を年功序列型の企業が採用する可能性というのは限りなくゼロに近いと、個人的な経験も含めて申し上げますけれども、そういうふうに考えています。
 その理由としては、やはり人の年齢は値段で決まると。そういう文化ですね、年功序列の。その中で、やはり年を取ってしまった人間、それから年齢にふさわしいキャリアを経験していない人間というのは、どうしても排除される傾向というのはあるんですね。ですから、これは私は両立としては非常に難しいものがあるというふうに考えています。
 以上です。
#15
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 では次の方、伊藤基隆さん、お願いします。
#16
○伊藤基隆君 今日はどうもありがとうございます。
 民主党・新緑風会の伊藤でございます。
 私は、この臨時国会の冒頭で安倍新総理の所信表明演説に対する代表質問を行いました。安倍総理の所信表明演説は、美しい国や片仮名が多いことが話題となりましたが、その経済政策は、小泉前内閣の構造改革を引き継ぎ、規制緩和や市場の競争原理を活用して成長を目指すとしています。一方、この間に生じた改革の痛みについては、勝ち組、負け組が固定化しないよう、再チャレンジが可能な社会を目指すというふうに述べています。
 私は、代表質問で格差問題を取り上げましたが、焼け野原から復興した戦後の日本の社会で、今日ほど所得の格差、大都市と地方の格差、持てる者と持たざる者の格差拡大を経験したことはありません。ワーキングプアや偽装請負にも触れましたが、雇用の面での格差拡大が将来日本の社会の中に階層の分化を生み出すのではないかと心配しています。
 しばらく前から、有名大学ほど学生の親の高収入がある傾向が指摘されています。最近では教育投資という言葉が使われますが、高収入と高学歴が結び付いて更に資産をも保有する階層が形成されつつあるように感じられます。一方で、ニートやフリーターと呼ばれる人々は、不安定な雇用形態から離脱できずに一生を送る可能性さえ出てきています。
 先週、アメリカの経済学者のミルトン・フリードマンが亡くなりました。国の関与を薄めた規制緩和と市場主義に重点を置くフリードマンの経済思想は、サッチャーやレーガンに採用されて、当時の英国や米国の経済・財政再建を成功させました。日本では、バブルの崩壊後、小渕内閣までの伝統的な景気対策が行き詰まった中で、小泉内閣の構造改革に影響を与えたわけであります。そういう一般新聞紙上での評価があるわけであります。
 しかし、構造改革、雇用における規制緩和は、格差拡大に伴う大きな社会問題を生み出してきています。一部では労働ビッグバンが叫ばれているようですが、経済成長の果実を一部の人だけに配分し、格差に泣く人々が増加する傾向は、今後、より強まるのではないでしょうか。
 安倍総理は、再チャレンジ支援策を推進し、ニートやフリーターの積極的な雇用を促進すると述べていますが、とても問題解決に至るとは思えません。セーフティーネットがあればとか、結果の公平ではなく機会の公平があればとする言い方は、市場主義の出口が弱肉強食の社会につながっていることをごまかしているだけなんだと、私は思うんです。
 こういうことをまず申し上げた上で、三人の参考人の皆さんに御質問いたします。
 まず、第一の質問でありますが、全国の総労働人口は約五千万人ですが、内訳は、正社員として働いている者は、正規雇用は約三千三百四十万人、パート、アルバイト、派遣等の非正規雇用は千六百六十万人です。労働者派遣法が制定された一九八五年は、総労働人口は約四千万人で、この間に約一千万人増加、正規雇用は三千三百四十万人でほぼ同数、非正規雇用は六百五十五万人で、この間に一千万人増加してきました。この二十年間で、ちょうど一千万人の総労働人口が増加しましたが、増加分はすべて非正規雇用ということになります。バブルがはじけた直後の一九九四年は、正規雇用が最も多いピークの年ですが、正規雇用は三千八百五万人、非正規雇用は九百七十一万人、現在と比べると、この十二年間で正規雇用が五百万人減り、非正規雇用が七百万人増加しています。
 終身雇用、年功序列賃金は、もう完全に過去のものです。バブル崩壊後、特に中高年層がリストラと直面する中で、労働市場の規制緩和が進んで、従来は正規雇用が担っていた職域が非正規雇用に置き換えられてきました。労働者派遣法の制定当時は、常用雇用の代替とならないよう、業務の専門性が考慮されて適用する業務を限定していましたが、三度の改正を経て、現在では偽装請負の隠れみのとしての役割さえ果たすような状況になっています。労働者派遣法の改正理由は、働き方の多様性に対応するため、ミスマッチの解消などと掲げられてきましたが、結局は、本音である安く雇用することだけを考えて、派遣労働導入時の理念など消え去ったと言えるのではないかと思っています。
 この状態では、少なくともGDPの六割程度を占める個人消費が伸びる可能性は低く、景気に与える影響も大きいはずです。私は、一体社会はだれのためにあるかという視点に立ったときに、働く者を大切にしないのでは政治に値しないと危機感を持つものです。三参考人の皆さんには、非正規雇用の現状についてどのような認識をお持ちになっているか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 先ほど樋口参考人が、非正規雇用の未婚率の問題と職業技術の向上のチャンスが少ないということが挙げられています。私は、製造業の総合的な技術力の低下、正規雇用の労働者が少ないことから起こるのではないかと想定している不良製品とか製造物の危険性の発生など、日本の経済力の根幹が崩れ、また社会的な力といいますか、そういうものの弱体化が起こっているんじゃないかというふうに思いますが、御認識をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、第二の質問ですが、バブル崩壊後の景気低迷期、一九九〇年代の後半期から数年間は企業の新卒者採用を極端に絞った就職氷河期と呼ばれたものがありました。たまたまこの不景気と新卒就業年齢が重なった人々にとっては大変な就職難が待ち受けて、そのままフリーターとなったケースも多いと聞いています。フリーターの数は二〇〇三年の二百十七万人をピークに漸減傾向にありますが、現在の二十五歳から三十四歳までの就職氷河期世代のフリーターには今更正規雇用への機会がほとんどないのが実態です。このままでは、男性は請負で、女性は登録型派遣として未熟練労働者として固定化される可能性が強まります。キャリア形成の面からは、均等処遇がままならないまま、勤続を重ねても賃金が上がらず、技能も評価されず、将来の見通しが立たないのが現実ではないでしょうか。この就職氷河期世代には特段の対策が必要なのではないかと考えますが、三人の参考人の方々の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 そこで城参考人にお伺いいたしますが、政府は、再チャレンジ推進会議で本年五月三十日に中間取りまとめを行って、その中で具体的なフリーター等の関連する対策について、一に、フリーターの経験を企業の採用評価に反映させる仕組みの整備、二に、就職氷河期にあったフリーター等を国家公務員に中途採用する、三に、非正規労働者の正規労働者への転換制度導入、四に、年長フリーターに対しキャリアコンサルティングの実施、能力評価等を行う再チャレンジ機会拡大プランなどが挙げられていますが、現実問題として果たして効果が見込まれるのかどうか、どのようにお考えか評価をお聞かせいただきたいと思います。
 先ほど城参考人は、リクルートCVについて説明されまして、なるほどリクルートなるがゆえの制度だなというふうに私も大変感じたところでございます。しかし、これらの制度を企業が取り入れるとすれば、その意思があるか、長期的な企業戦略又は安定的な発展への意欲と実行力が伴うのか、多くの障害があってなかなか実現しないんじゃないかと思います。
 私は、城さんに聞きたいのは、企業外の職業訓練は実践に役立つのか、非正規を正規雇用にすることは可能なのか、現実に中途で採用できるのか、その際の賃金体系はどのような問題があるかについてお聞かせいただきたいと思いますが、城さんは、非正規雇用を正規雇用にすること又は中途採用の問題について、正社員としてのキャリアの積み上げが求められること、それに対するサポートが必要というふうにおっしゃっていました。果たしてどんなサポートが可能なのかと思います。さらに、職務給の問題と将来的には同一労働同一賃金との一体性というものが述べられたと思いますが、職務給の定着、一般化は二十年ぐらい掛かるということでありました。
 しかし、私は、その職務給の問題、労働に対する適正単価が払われるべきだと。労働条件の不利益変更に関するルールを変更すべきだということも述べられましたが、世の中の賃金体系というのは、私は労働組合をずっとやってきたんですが、善意のというか発展的な対応というのは企業から起こってきません、なかなか。リクルートの例というのは、私は驚くべきことだと思っています。ということからすれば、当面、就職氷河期世代に対するもの、また現状の当面の対応というものをどう取りながら、将来的には、やはり私は職務給、同一労働同一賃金が進むべき道だというふうには思っておりますが、当面の対策が非常に重要じゃないかというふうに今考えています。
 さらに、樋口先生にお伺いします。
 日本の議会としては日本の雇用制度にかかわる基本法の制定ということをおっしゃられました。しかし、今、労働基準法も労働組合法もほとんど守られていません。こういう日本の法治国家としての非常に重大なところが守られていないことについて大変苦労しました。例えば、労働基準法は、前にも言いましたが、労働組合の正に異常な努力と一人一人の労働者の勇気によって辛うじて守られるというようなことになっておりまして、これが実は、労働組合の結集率も弱くなってきておる現状の中で大変なもう格差を生んでくる、交渉力の低下、まず相手にされないような感じということになってきているんじゃないかと。
 これは私は、先ほど申し上げたような社会的力の低下ということにつながっていきつつあるというふうに思いますので、その基本法の考えについてもう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。
#17
○会長(広中和歌子君) 大変多岐にわたる重たい質問だったと思いますが、順番にお答えいただきます。
 それでは、城参考人、よろしくお願いいたします。
#18
○参考人(城繁幸君) 非正規雇用労働者の増加による影響というのは確かに出ています。彼らは結局職務給ですから、従来の企業内のいろんな制度、それから風土というのは新卒で入って定年まで勤めるということを前提としてできておったんですね。ですから、もう一心同体というか、船沈んだら君も沈むぞぐらいの覚悟で、愛社精神が非常に高いものだという前提でおったんですね。ところが、派遣社員て、一年とか、今派遣法変わりまして大体最長三年ぐらいですけれども、やっぱり有期雇用であると。実際には半年、一年で転職される方が非常に多いですし、彼らは結局一時間千円、その発想でしかされていない方が多いんですね。会社のためにという方は正直いらっしゃらないと思います。
 ですので、いろんな正社員前提のシステムというのは無理が来ていますね。例えばセキュリティー問題、情報漏えいであるとか、そういったいろんな幾つかの方、やっぱりそういった従来と違う雇用形態の方が関与しておられるケースというのは非常に多いです、これ表に出ないものも含めてですけれども。ですので、長期的に企業の体力であるとか技術の醸成というのはやっぱりそういう意味ではマイナスが出ると思います。
 ただ、残念ながら、経営者の方というのは、皆さんとは言いませんけれども、非常に短期的な数字にこだわられる方が多いんですね。ですので、十年先をにらんで正社員を育成されるという方は残念ながら多くはないと思います。その一例が二〇〇七年問題、来年から団塊世代が退職をされるということで、慌てて今年から新卒求人倍率増やしているんですね。みんな一斉にやりますから、一・八倍、一・九倍ぐらいです、今年。絶対無理ですよ。これ四年前にやっていれば、一・一ぐらいだから幾らでも採れたんですよ。今になって、その四年前の人間はフリーターだから駄目だと。これ非常に無駄ですね。これエゴだと思います私は、年功序列世代の。ですから、そこは絶対に対策は必要だというふうに言っています。
 正直言うと、私個人の意見ですけれども、新卒の人間、それから派遣社員あるいはフリーター三年やってきた人間、後者の方が立派ですよ、社会経験ありますから。ただ、要は、先ほど言いましたけれども、スタンスなんですよね。新卒の二十代、二十二歳の人間、君は正社員だから頑張ってね、これだけ研修やりますよ。二十五歳のフリーターの人間、おまえはフリーターだからこれやっておけよ。これじゃ伸びないですよ。同じ待遇を与えれば必ず伸びるんですよ。三や四年、五年ぐらいの差というのは、私はほとんど関係ないと思います。ただそこは、だから、企業の自助努力に任せていたら、私の経験からはなかなか変わらないと思うので、そこは例えば法律でプッシュをするであるとか、それからメリットも与えることが必要だと思うんですね。
 そこで、さっき私申し上げたような試用期間の延長です。これはCV制度と通じるんですけれども、例えば三年間、非正規雇用労働者に対しては、正社員登用、試用期間三年間認めますよとやるだけで企業にとっては非常にメリットがあると思うんですね。今インターンや何だといって、学生に対してはインターンシップなんかで適正があるかどうか見ていますけれども、大体二週間とか一か月ですから、それ三年間、試用期間、猶予があるとなれば、企業にとってはメリットは非常に大きいです。実際三年間試用される側に立って考えれば、三年間の間に自分のアピールをすればいいんですよ。三年後に自分はこの会社にとって必要な人間だと思わせれば、当然そこで正社員に登用されるでしょうし。中にはやはり派遣社員と同じような感覚で使われる企業はあると思います。ただ、その場合でも、職歴残るんですね、正社員としての三年間の。これは、今後の転職において一気に選択肢って広がりますから、私はこういった対策ってお金掛かりませんし、非常にいいのかなというふうに考えております。
 よろしいでしょうか。
#19
○会長(広中和歌子君) よろしいですか。
 それでは、橘木参考人、お願いいたします。
#20
○参考人(橘木俊詔君) 一番目の御質問は、非正規労働者と正規労働者の格差のことについては皆さん全員話しましたのでそれはパスしまして、二番目の就職氷河期にフリーターになった人をどうしたらいいかという対策に絞ってお話ししたいと思います。
 この人たちは生まれた年がたまたま不遇だったわけで、そういう人たちは機会の平等が阻害されていたと。学校出た年に就職氷河期でいい職がなくってフリーターに甘んじているわけですから、私は社会全体でやはりそういう人たちを助ける義務があるというふうに、それは機会の平等を担保するために義務があるというふうに考えております。
 じゃ、具体的にどんな政策が考えられるかといいますと、一つの例としてはイギリスのニューディール計画、ニューディール政策と言われるのが参考になるんではないかと思います。イギリスも大変な若者問題で非常に悩みまして、失業者が増えたとかホームレスが増えたとか、いろんなことで悩みまして、イギリスはどういう政策を取ったかというと、とにかく一人のそういう人たちに指導員、アドバイザーが一人付いて徹底的な面接をやって、この人はどういう技能が足りなくて、どういう訓練をしてどういう職業に就いたら一番その人の持っている人間力を生かせるかという政策をイギリスはやったんですよね。
 ほかの国も、北欧だとかオランダとか、そういうことをやったんですが、かのイギリスという、アングロサクソンで基本的には市場原理主義でいくような経済ですらそういうようなニューディール計画で若者支援を徹底的にやって非常に成功したという例がございますので、先ほど申しましたように、一人一人の若者に面接者を付けて、その人が就職できるまで面倒を見ると、そしてその人の必要な技能を形成するために公共部門が積極的に支援をやると。例えば、職業訓練校に送ったり、あるいは資格を取るような制度を持っていったり、いろんな形をイギリスがやりましたので、そういうような形で、非常に一人一人に立ち入って公共部門がそういうことをやらないと、私は日本では無理だなというふうに思います。
 なぜかといいますと、企業にそれを期待するのはもう無理な時代であると。昔は企業は真っ白な新卒者を自分のところで雇って訓練をして一人前の労働者にしたんですが、今の日本の企業においてはそこまでのもう余裕がない。となると、企業にそれが期待できないのであれば、これはだれかがやらにゃいかぬ。だれかがやらにゃいかぬとなると、私はもうそれは公共部門しかないかなというふうに考えております。
 日本においては、不幸なことに、そういう公共部門がそういうような求職だとか訓練だとかいろんな形で雇用対策をやる費用というのは、GDP比で見るとこれは世界の先進国の最低レベルでございますので、そういうような意味からも、そういうような分野の支出をもっと大胆に増やしてほしい。これは教育にも当てはまることなんですが、教育と訓練ということをやっぱり徹底的にやっていただきたいというのが私の希望でございます。
 以上でございます。
#21
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、樋口参考人、お願いいたします。
#22
○参考人(樋口美雄君) 私は三つほど御質問いただいたんじゃないかというふうに思います。
 まず一番目に、日本において、正社員と非正社員の違いにおいて、なぜそういったものが起こってきているのか。これ、先ほどから出てきます給与体系と、それと会社における役割、あるいは会社が何を期待しているのかというようなことに基本的にやはり違いがあるんじゃないかというふうに思っております。
 正社員の場合に、これまでの生活給とかあるいは先ほどから出てきます年功賃金、一体この制度はどのように考えればいい制度であるかということを思いますと、例えば、その人の仕事に給与を払うというよりも、むしろその人の背負っている生活に給与を払うというような側面が非常に強かった。言うならば企業が家父長的な役割、お父さんの役割というようなことで、社員の生活まで面倒見ていくんだというようなことがあった。その代わり、今度は代償という形で拘束を掛けるよということで先ほどのような残業の話ですとかあるいは転勤というようなものがあったんだろうというふうに思います。その一方で、非正社員というのはこれは保障の対象にならないというような扱いがなされてきた、そこが基本的な私は違いであったんだろうというふうに思います。
 これについての均衡化をどう図っていくかというようなことをいろいろ我々も検討してまいりました。
 まず最初は、やはり検討しなければならないのは、そういった給与の決め方が、もう入口の段階で、この人は正社員だから保障します、この人は非正社員だから保障しませんというような入口の段階における違い、こういったものを是正していく必要があるんだろうというふうに思います。そのためには、生活に給与を払うというよりも、やはり仕事に給与を払う、その人の行っている職務でありますとかあるいは職責、そういったものに対して身分の違いである雇用形態の違いを脱却して払っていくというようなことで、ともかく給与の決め方を一本化するというようなことが必要だろうというふうに思います。
 例えば、正社員について職能資格制度を取っているというようなことであれば、パートの人たちについても、パートだから時給八百円ねということじゃなく、その人のしている仕事に応じて、あるいはその人の能力に応じて決めていくというようなことがない限りフェアな競争が行われない。これでは正に企業の活性化というものも進まないわけですし、身分制度になってしまっているというのが現状の問題としてあるのではないだろうかというふうに思います。
 その点につきましては、今度は法律の中で、これまでもパート労働法の中では均衡処遇をするということが企業の努力義務ということで課せられてきました。問題は、何をもって均衡というふうに言うのかというようなところが明記されていない。それについては、指針において、大臣指針という形で給与の決め方の一本化というようなことはうたっているわけでありますが、それは一切企業に対して義務化していないというようなことがあります。
 現在議論しているところが正にそういったところでありまして、給与の決め方についての一本化ということを今度はパート労働法の中で法律として格上げするというようなことが考えられるんではないかというふうに私は思っております。そうでなければ、これは身分であって、どんなにパートの人が頑張ろうと登用されないと、給与は安いままですということになってしまえば、これはパートの人のやる気が起こってこないというようなことでありまして、企業にとっても損ではないか。こういうところを見て、例えば流通業界でも、ここのところ大手の流通業界を通じて給与体系の一本化というものを志向している企業が増えてきているということだろうというふうに思います。
 二番目の、基本法についての考え方ということで、御指摘の、現行法においても法律が守られていないようなところがあるじゃないかと。私はこれは論外だというふうに思っておりまして、やはりフェアな競争をする上では一定のルールというものが必要なんだと。その雇用のルールというものを決めた以上は、その中においてどこの企業であろうとそれを守ることによって初めて公正な競争というものがなされるわけでありまして、それを守らない方が得だなんというような社会というのはこれやはりおかしいんじゃないかというふうに思いますので、そこについては厳格に適用していくというようなことが必要ではないだろうかというふうに思います。
 そしてまた、それを今度はルールをちゃんと守るよというようなことを強化する上でも基本法といったものが必要ではないかというふうに思っておりまして、例えば、先ほどから出ております厚生年金の問題、労働時間、一般労働者の四分の三以上というのが加入要件でありますが、一九八六年にこれは第三号被保険者というような形で、夫が、相手が、配偶者の方が厚生年金へ入っていればその被配偶者の方については保険料を払わずに基礎年金が給付受けることができるというような制度をつくったわけであります。これは、ある意味では、女性が例えば四分の三以上働いてしまうと今度は年金も保険料払わなくちゃいけないよというようなことになりますし、企業としてもその分保険料を払わなくちゃいけないよということで、ある意味では女性が働くことに対してブレーキを踏んだんじゃないかというふうに思います。
 しかし、その一方では、同じ年に今度は労働省の方、旧労働省の方で男女雇用機会均等法ができる。こちらは女性の社会進出についてアクセルを踏むというようなことになります。アクセルとブレーキが同時に踏まれる。しかも、旧大蔵省においては配偶者特別控除がこの年にできておりまして、これは従来の配偶者控除の二倍を専業主婦に対しては控除を認めるというような方式で、これもブレーキを踏んだ。それぞれのその役所において、それぞれは最適だろうというふうに思う施策を取っているわけでありますが、全体としてアンバランスが生じてしまっているというようなことでありまして、やはり女性の社会参加をサポートするようなビジョンを出して、その下に各省庁それぞれの役割というものを担っていくということが私は必要なんではないかというふうに思っております。
 もう一つ、三番目の御質問が、これもう氷河期に卒業した人たちに対する対策はどう考えているのか。
 これは、景気が回復してくれば企業は正社員を増やそうと、あるいは正社員に転換しようというようなところが出てくるかというふうに思います。現に幾つかのところでもう既に出てきているというようなことでありますが、ただ、長い間フリーターでやってきた人たちに対して企業がその採用を積極的にするかというと、私は懐疑的であるというふうに申し上げておきます。企業のアンケート調査を見ても、フリーターという経験をどう評価するのかということになると、ネガティブに評価するというようなことで、それであれば就業経験のない新卒者の方がいいというような企業が多い。
 だとすれば、これについてはやはり社会的なサポートというものが必要だろうということでありまして、その方法として、キャリアカウンセラーとか、先ほどの能力開発を社会として応援していくというようなことを申し上げました。これまでその企業においてはやはり正社員が多かったということで、社内教育に全面的におんぶにだっこという形でしてきたところがあります。また、政策的にもそれをサポートするというような形で、その実施に費用が掛かるのであれば企業に対して助成金を出すというようなことを雇用保険からやってきたというようなことがあります。しかし、その対象にならない人たちというのが今非正社員という形で増えている以上は、社会としてその企業を通じないような能力開発の支援といったものも必要になってきているんじゃないか。
 それが具体的に何がいいのかというと、これは先ほどの橘木さんの御意見と全く一緒でありまして、私もイギリスにも行きまして、実際にニューディールどういうふうに進めているのか、職業紹介のところにも行きましたし、その教育訓練のところにも行きました。あるいはフランス、ドイツ、みんな回ってきました。何が有効であるかというと、やっぱりマンツーマンの支援。個人、それぞれの持っている問題点が違うわけでありまして、親身になって相談に乗ってくれるような人、そしてそのアドバイザー、いろいろ知識を持っているわけでありますから、その人のアドバイスを受けながら個人が自立していこうというような気持ちを強めていくというようなことが必要ではないかというふうに思います。
 試用期間の延長という話が先ほどちょっと出ましたが、日本ではトライアル雇用が既に実施されています。三年間の試用期間というのがフランスの例の暴動のところでも大きな問題というような形が提起されまして、私もその後、日本とEUのシンポジウム等々であの仕組みというものをどう考えるのかというようなことを何人かのEUの先生方に話を伺ったことがあります。
 例えば、ソルボンヌの先生、この人はかなりフランスの雇用政策について決定権を持っている先生でありますが、三年というのは長過ぎると。人を見極めるのに三年必要だというようなことは本当だろうか、三年になったらそこでまた使い捨てという問題が起こってくるんじゃないかということで、むしろ今トライアル雇用では半年ということを大体想定したような仕組み、有期雇用という形で採用して、半年たった段階で正社員に登用するのか、要するに直接雇用にするのか、それとも半年ということで契約期間が切れることによってお引き取りするのか、もらうのか。あるいは、今度は会社の中についても、半年働いてみると会社の様子というのが分かって、自分はこれはどうも適当ではないというような判断を下すのかというような、そこの仕組みをもっと活用していくというようなことが私は必要ではないかというふうに思っております。
#23
○会長(広中和歌子君) 私からちょっと質問させていただきたいんですけれども、今の関連でですが、城参考人は正社員になる前に三年間ほどの試用期間をというようなことをおっしゃいまして、今の樋口参考人の御意見についてどのように思われるか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。よろしくお願いします。
 フランスの場合はあれ、三年間でしたか。二年間じゃなかったですか。
#24
○参考人(樋口美雄君) 今度、期間延長が三年というふうになったというふうに私は了解しておりますが、そうではなかったでしょうか。
#25
○会長(広中和歌子君) いや、ちょっとあいまいだったものですから、何か二年間というような印象を持っていたんですが。
#26
○参考人(樋口美雄君) 済みません、ちょっと確認してみないとあれですが。
#27
○会長(広中和歌子君) ドビルパンさんがほとんどあれですよね、失脚しかねないほどの大きな暴動が起こったわけですので、城参考人にちょっとその点についてお伺いいたします。
#28
○参考人(城繁幸君) フランスの件なんですけれども、フランスは原則職務給の国ですから、非正規の、卒業して、やはり若年層の失業率二〇%ぐらい、通常の一般労働者の倍ぐらいの水準なんですね。ですので、卒業して一定期間非正規だとかインターンなんかを経験して、そこから正社員という経路は、これは珍しいものではないんですね。職務給の国ですから、正社員の積み重ねを要求されないんですね。マイナスにならないんですよ、非正規の期間というのは。ですから、半年でというのは、私はそうあるべきだと思います。現にそれを長くしてしまったからああいったことが起きてしまったんだというふうに考えています。その点は樋口先生と同意見なんですけれども。
 ただ、日本の場合は状況が違いまして、やっぱり正社員としての期間がどうしても必要なんですね。レールを、非正規社員、非正規労働者として働かれている方が年功序列の割と堅い企業に入るのであれば、どうしても正社員としてのキャリアを間に一枚かませる必要があると考えていまして、そのために私は試用期間と。実際には試用期間という名前を便宜上付けていますけれども、名前を変えてもいいと思います。キャリアビューでもいいですし。そうやって、確かに使い捨てにされる企業は出てくると思いますよ。皆さんがリクルートのように、企業は社会的責任、若年層の雇用と教育に対して社会的責任があるんだというような、そういう発想をお持ちじゃないと思いますから。
 ただ、そうはいってもやっぱり三年間なら三年間の職歴って残るわけですよね。その期間ずっと継続雇用をしていただければ、基本的にはそれなりのスキルであるとか就業を通しての経験というのも得られるはずですから、その後、御自身でその労働者の方が転職活動をされる際に私は非常な武器になると。これは私、人事担当者として採用をやっているときの経験でもありますけれども、これは非常な魅力的な要素であるというふうに考えてこういう政策を提案しております。必ずしも本人の適性を見極めるためだけの制度であるとは考えておりません。
#29
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは次の質問者、澤雄二さん、お願いします。
#30
○澤雄二君 公明党の澤雄二でございます。
 お三方の参考人、大変貴重な意見どうもありがとうございました。
 それぞれにお伺いしたいと思います。
 城参考人、済みません、ちょっとくどくなりますけれども、今の問題なんですけれども、リクルートというのはやっぱり普通の企業と違うと思うんですよね。あそこは、何ていいますか、意欲とかアイデアとか能力のある人を一杯求めてて、おれはそうだと思う人があそこを受ける会社ですよね。ですから、特にいろんなビジネスをやっていて、固定したビジネスがあるわけではなくて、新しいアイデアがあればどんどんそのビジネスをやっていきなさいという企業内起業みたいなものをどんどん進めている会社。だから、そういう会社ではこのキャリアビュー制度というのは企業にとっても物すごくいい制度なんだろうなと思うけれども、多分、でも、これはどんな企業でも通用するかといったら難しいかなと。
 それと、試用期間の話ですけれども、やっぱりもろ刃の剣があって、普通の企業だと、試用期間中に何かの理由で採用取消しになるということは多分ほとんど例がないんだと思うんですよ、よっぽど何かあれば別ですけれども。ですから、日本での試用期間というのは余り実効力のない試用期間なんだろうと。
 でも、こういう制度が世の中に広まってくると、私も随分面接をしましたけれども、一回の面接で人を見極めることなんか絶対できません。ですから、城参考人が言われたように、三年間働かせて、こいつは使える使えないで首にできれば、逆に企業にとってはこんないい制度はないので、実はもろ刃の剣で、つまり、就職される方がそれでもいいのかという問題は一方で残るのかなというふうに思います。
 それからもう一つは、非正規社員の方たち、アルバイトとかパートだとか、そういう人たち、職歴が残らない。何とかならないかなって思うんですよね。例えば、ファミレスなんか行って、この人の笑顔とこの人のサービスがあればもう一回その店に行きたいなというような人もいると思うんですよ。だから、そういう仕事の内容でも、何か職歴として残す方法はないのかなと。
 例えば、カリキュラムなんかを各ファミレスが作って、ステップアップしていくというようなことを残すことはできないかとか、一対一で、一人の部下かもしれないけれども、一人の部下を育てる能力をこの人は築いてきたとか、そういう何かキャリアアップをしているんだよということを残す方法ってないのかなということをちょっと考えていて、もしお知恵があれば教えていただきたいなと思います。
 橘木先生にお尋ねをいたします。
 実は、これは昨日知ったんでありますけれども、NHKに地域スタッフっていらっしゃるんです。新しく契約をする人を見付けたりとか、それから既に契約をしている人の聴視料を集金する人たちなんですけれども、この人たちの契約の仕方というのは個人契約というんだそうですね。一人一人がオーナーなんだそうですよ。だから、オーナーとしてNHKと契約をしていると。だから、一万人ぐらいの地域を一か月で担当させられるわけですけれども、そういうノルマはあるんだけれども、働く時間は自分で自由ですよと。五十歳ぐらいの平均年齢なんですけれども、年収的には五百万、六百万、七百万をもらっていると。もし何か病気があったときには、半年間、これまでの平均給与みたいなもの、収入を保障されますよと、それから辞めるときには退職金も出ますよと。
 だけれども、基本的には僕は正規社員ではないと思うんですが、こういう契約の仕方というのは今後あり得るんだろうかというのが一つの質問であります。
 それからもう一つは、これは先日新聞出ておりましたけれども、キヤノンで請負労働者、契約者の請負労働者の方たちが組合をつくったという記事が載っていました。これは、請負労働者の方たちの待遇改善のためには一つはすごく効果があるのかなと思うんですが、同時に、これは格差を是認することになるとも思うんですよ。相反する二つの面があるわけですけれども、参考人はどうお考えになるかということでございます。
 それから、樋口参考人にお伺いをしたいのは、一つは橘木先生もおっしゃいましたけど、格差拡大何がいけないのかという議論はもちろんあります。それはそうだと思います。だけど、今の日本の格差というのはもうそういう視点の議論ではなくて、低所得者といいますか、貧乏人がどんどんどんどん増えている状況で、そんな議論はもうとっくに通り越しているんじゃないかというふうに思うんですが。
 求められる対策の中で、一番目に景気の回復、経済成長の維持とおっしゃいました。私もやっぱりこれが最高だろうというふうに思うんですね。で、一つ欲しいなと思うのは、例えば正規社員の数が増えていったというときに、それが景気回復、維持にこれだけの効果があるぞというような何か数値ですね、モデルとかシミュレーションとか、そういうものがあれば、そういうことをもっといろんな政策として反映できるかなって思うのが一つですね。
 それから、求められる対策の中の三番目の一つに、所得税における配偶者控除って、これ、済みません、ちょっと聞き漏らしたんですが、配偶者控除をなくせというお話でございましたですか。
#31
○参考人(樋口美雄君) 検討する余地があるだろうと。
#32
○澤雄二君 検討する余地があると。
#33
○参考人(樋口美雄君) はい。
#34
○澤雄二君 これ多分視点が違うんで、働くことが損にならない税、社会保障制度への改革ということですから、こういう視点では私はないんですが、これは公明党も一生懸命今考えておりますけど、やっぱり負担増問題というのはいろいろ数が増えてきて積み重なってきて大変だろうというふうに考えています。で、先生が考えている視点ではなくて、こういう時代に今配偶者控除をなくすということが議論の対象になるんだろうかということですね。
 それから、財務省はなくしたいということを言っています。なぜなくすんですかと言ったら、要するに配偶者控除をつくったときは、つまり女性というのは結婚したら働かないものだという価値観をこれで与えてしまったと。世の中は変わったんだからと言うと、そうするとそれは逆の価値観、つまり女性というのは働くものだという価値観を与えることになりませんかとなるんで、まあこれはどうでもいい話ですけれども、つまり、どちらにしても、型にはめるというのはどうだろうかと。
 だから、結婚しても働きたいという女性はいる。でも、結婚したら子供と家事に専念をしたいという女性もいる。そういう女性は今まで働いていた収入がなくなるわけですから、その収入を少しでも担保するために、この配偶者控除というのはそういう生き方の人のためにも大事なんじゃないか、しかも、これは少子対策にもなるんじゃないかというんで、その辺はちょっと考えていただけないかなということでございます。
 以上です。
#35
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございます。
 それじゃ、まず城参考人、よろしくお願いします。
#36
○参考人(城繁幸君) CV制度のようなものは、リクルートのようなもう元々年功序列というカルチャーを持っていないような企業でないと難しいんではないかという御指摘、おっしゃるとおりだと思います。非常に難しいと思います、このレベルで実践するのは。
 ただ、やっぱり、じゃ、ほかの企業が年功序列のままでいいかというと、やっぱりそれは無理だと思うんですね。リクルートのようにどんどん新しいビジネスモデルを取り入れていかなきゃいけないというのは、これは日本企業すべてに共通する問題だと思っています。グローバル化の影響がないとか規制によって守られているような、例えば新聞社みたいなああいう業種を除けば、ほとんどの企業というのは変わっていかなければいけないと思っております。
 例えば、ハードウエアの日本標準ってたくさんございます。自動車もそうですし、鉄鋼もそうですし、電機はかなり揺らいではきましたけれども、ずっとそういう地位を築いてまいりました、電化製品。ただ、じゃソフトウエアでそういった製品一つでもあるかといえば、ないんですね。これはソフトウエアってビジネスモデル、正に発想そのものを商品としたものでありますから、同じ製造業でもソフトウエアというのは日本は非常に弱いと言われております。
 一方で、アメリカはソフトウエア大国、IT大国という地位を確立してまいりました。ただ、日本も今後中国だとか韓国だとか台湾と同じ土俵で戦う以上は、そういうビジネスモデル型にシフトしていかなければいけないんではないかというのは、これは大体メーカーの経営者はほぼ共通の認識でおるわけです。
 ですので、私は、リクルートのような会社だけでやっていればいいんだというのは少し、もし同じような考えの経営者がいたとしたら、若干認識は甘いのかなというふうに考えています。やはりこの問題、取り組んでいかざるを得ないというふうに考えております。
 それから、試用期間の延長は非常にもろ刃の剣であるというお話でしたけど、こちらも私も同意見でありまして、確かに企業の採用担当としては三年というのは非常に魅力的なんですね。ただ、バランスを取るためにこれを現状の若年層の非正規雇用の労働者だけに限定することで、対象をですね、これで新卒の就職活動をする学生とバランスというのは若干取れてくるのかなというふうに考えております。
 それから、フリーターのキャリアを評価できないかというお話でしたけれども、評価するべきでしょうね。実際、評価できるというふうに私も考えています。ただ、問題は取っ掛かりだと思うんですね。どうしても、特に人事部なんというのは前例主義で動かれているカルチャー強いですから、なかなか前例がないというだけで踏み込まない方多いんですよね。ただ、実際に組織の中に入れてあげることでそういった偏見というか、そういったものは私は取り除けるというふうに考えていますので、ここもやっぱり最初に戻りますけれども、いかにして入れるきっかけをつくるかというところに特化すべきだと思います。
 繰り返しますけれども、もう厳然として職能給、年功序列の社風にはレールを順調に上がってきた人間以外入れないというのは、もうこれは厳としてあるわけです。ですから、そこをいかに突破口を開けるかというところに私は注力すべきだというふうに考えております。
#37
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、橘木参考人、よろしくお願いいたします。
#38
○参考人(橘木俊詔君) お二つ質問があったと思いますが、NHK地域スタッフの件、私、残念ながら知りませんでしたので、正式な答えにならないかもしれませんが、例えば年収が五百万保障されていて、社会保険制度に入るというのも担保されていて……
#39
○澤雄二君 それは担保されてないんです。
#40
○参考人(橘木俊詔君) されてないんですか。
 となると、オランダ流の正規と非正規の違いでは、非正規の人も社会保険制度に入れますからね。じゃ、社会保険制度に入れないんであれば、私はちょっと賛成しかねますが、年収は魅力ですよね。五百万円というのは、これは相当日本の社会においてはいい方に属しますので、雇用契約期間が何年あるかどうかは分かりませんが、少なくとも働き手もこういう条件でいいんだということ、合意があるんであればこういう制度というのはそう一概に駄目だと言う必要もないかなという感じがします。
 それから、二番目の偽装請負の話がここ半年ぐらい出ておりまして、多分これも大変な社会問題になっておりますが、キヤノンという名前が出てまいりましたので、たまたま経団連の会長の会社でございますので、これは会社自体も大変なプレッシャーを感じていると思うんですよね。
 そういう意味で、やっぱり偽装請負というのは、隠れたやっぱりいい風習ではないんで何とかなくなしてほしいと思います。労働組合をつくっても、どうせ第二経営者の団体かというようなふうに見られるんであれば、そんなのは要らないと、むしろいわゆる労働者の立場を経営者に要求して対等な立場で労使の交渉をできるような労働組合であれば私はそれはあってしかるべきだというふうに感じております。
 以上です。
#41
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、樋口参考人、お願いいたします。
#42
○参考人(樋口美雄君) 私も二点ほど御質問いただきました。この二点にお答えする前に、NHKの問題についてちょっと言及してみたいというふうに思います。
 これは、NHKが意図したかどうかは別としまして、雇用契約ではなく、事業契約、請負契約というようなこと、で、これが実施された場合の実は年金制度の問題が、あるいは税制の問題というのが、制度上の問題というのが私はあるだろうというふうに思います。申し上げるまでもなく、厚生年金というのはこれは雇用契約で働いている人たちに対する制度であるというようなことでありますから、これはNHKが入れたいというふうに思っても雇用契約でない以上は入れることができない、そこは国民年金というようなことになるかというふうに思います。
 実は、その線引き、雇用契約なのか、それとも請負事業契約なのかというような線引きがいろんなところで今問題として起こってきているんじゃないかというふうに思います。
 例えば、在職老齢年金の問題、六十歳を過ぎたときに所得が増えたならばそれに応じて年金給付額を削減するというようなこの問題のときに、その所得というのはこれは勤労所得、給与所得に限定するというようなことになっております。そうしますと、雇用契約を結ばずに請負契約を六十歳から結びますというようなことになりますと、同じ額が所得としてはあったとしてもカットの対象にならないというようなことが起こってきます。保険料負担についても、今度は同じようなところがありまして、請負であれば、先ほどの例のように社会保険といいますか厚生年金には加入できないというようなところがありまして、こういう職域といいますか、雇用形態の違いによって発生する制度間の問題というのが今起こっているんじゃないかというふうに思います。
 御質問いただきました二点についてお答えいたしますが、まず正社員が増えることによって景気にどういう影響を与えるだろうか。残念ながら数値として計算したものは持っておりませんが、考えられますのは、正社員であるからには雇用保障が発生するだろうと。それに対して、有期とかあるいは非正社員の場合にはその保障というのはないために、我々の言葉で言いますと恒常所得という考え方があります。
 例えば、二年間で合計一千万円ずつもらうとしても、一年目一千万円で二年目ゼロという場合と、五百万ずつコンスタントにもらいますということで消費がどちらが大きいだろうかというようなことがあります。そうしますと、それが安定している、保障があるということによって安心してお金が使えるというようなことになり、消費の拡大につながるだろうというようなことは論理的に考えられます。
 それが一種の、この解雇規制についてマクロの視点から景気との関連から見たときに主張されるようなところがありまして、それ恒常所得仮説というふうに呼んでおりますが、そういったものの影響というのはある可能性が私は強いんじゃないか。今まで実証分析でいろいろやっていっても、この恒常所得仮説といったものがどうも日本で成り立っているらしいというふうに思っておりますので、そういう面ではプラスがあるかなというふうに思います。
 それと同時に、今度はまた財政の問題になりますが、この非正社員の人たちが年金財政に与える影響、もちろん本人が将来国民年金にも入っていないとするならば、年金給付を受けることができない、その分だけリスクが高いというような問題がありますが、同時に制度上の問題としましても、財政収入が削減されていくと、それを将来的には生活保護というような形で別の財源から出していくというようなことがもし起こるとするならば、これはマイナスだというようなことが言えるんではないかというふうに思います。
 二番目のその配偶者控除のところをどう考えるかというところでありまして、これはいろんな議論があるかというふうに思います。
 御案内のとおり、配偶者控除が例の年収の壁という形で、従来これを超えた途端に、一切夫の方の所得に配偶者控除が認められないということで所得の逆転現象が起こっていた。これを改正するために配偶者特別控除というものができた。配偶者特別控除が、今でいうと百三万円以上のところについて段階的に減らすのと同時に、実は百三万円以下のところにも、二階部分に配偶者特別控除というようなものを認めることによって、専業主婦ですと配偶者控除と配偶者特別控除と両方受けることができた。七十六万円受けることができるという制度で、これはやはりおかしいんじゃないのと。従来から扶養控除と同じ額であったのに対して、二倍になったということでそれが手厚過ぎるんじゃないかということで、その二階部分の配偶者特別控除については前回これが廃止されたというようなことだろうと思います。
 今度はその残りの三十八万円のところをどうするかということでありまして、従来のやはり税制を設計する上での標準世帯というのは片働き世帯を想定して、夫が働いて妻が家にいてという世帯を標準世帯と考えて、それに応じての生活費を税金として考えていくということでこの配偶者控除制度というのもできたというふうに理解しております。御指摘のとおりでありまして、私は、これを廃止することによって逆に働く方が有利になるというようなことはまずいんじゃないか、むしろ働き方に影響はされないそのニュートラルな仕組みにしていくというようなことが重要ではないだろうかというふうに思っております。
 その点どうしたらいいのかということでありますが、その控除を、配偶者控除の場合には、もう実際に経費が幾ら掛かろうと、もう妻が百三万円以下であれば受けることができますよというような、まあ一種の外形標準課税じゃございませんが、そういったことになっている。むしろ、実際に幾ら経費が掛かったのかということによって実額控除制度を日本でも広げていくべきではないかというふうに思っております。
 それをしない限り、例えば少子化対策のところを考えましても、実際にたくさんお金が掛かっている人と掛かっていない人がいらっしゃる。にもかかわらず、一律幾らですというようなことを今扶養控除あるいは控除制度のところで設けているわけでありまして、そうではなく、今後の社会を考えたら長期的には実額控除制度にしていくべきじゃないか。
 そのことが実はサラリーマンについても言えるわけでありまして、サラリーマンだと一律幾らの控除という制度に現行なっているわけですが、例えば能力開発をしたいといった場合に、個人が自己啓発をやれというような社会になってきた以上は個人がその費用を負担しなければならないというようなことが起こってくる。だとすれば、それを税金として控除していくというようなことも必要になるわけでありまして、今のところ、そういう制度が形式的にはあるんですが、実際には非常に利用しにくいというような制度になっているかというふうに思います。それを変えていくことが必要ではないか。
 そのためには、源泉徴収方式でサラリーマンの場合には会社の人事部、給与部が全部計算して、ほとんど、二月の確定申告の時期に申告するサラリーマンというのは特定の人たちを除いていないわけであります。この制度というのは、ある意味では非常によく考えた制度だなというふうに思う面がありまして、何しろ税務署がやるべき仕事を企業の方が、人事部の方がやってくれるというようなことで、徴税コストが安くて済むというようなことがあります。
 同時に、例えば、サラリーマンにあなたは昨年税金を幾ら払いましたかというようなことを質問すると、たくさん払ったと言うんですが、正確に幾ら払ったというふうに言うことができる人が非常に少ない。その結果として、その税金が何に使われているのかということに対して意識が非常に薄いという感じがします。もっと国民の納税意識、そして、それが何に使われていくのかというような、それに対して関心を高めるためには、やはり確定申告の方式のようなものを広げていくというようなことが私は必要な時代になってきているんではないかというふうに思います。
#43
○会長(広中和歌子君) ありがとうございます。
#44
○澤雄二君 一言。
#45
○会長(広中和歌子君) 関連で、澤さん。
#46
○澤雄二君 城参考人、私、永年勤続雇用と年功序列を是認したんではなくて、この三年間の有期雇用契約のことについて質問をさせていただいたんで、その点だけちょっと誤解があったようで、話をさせていただきました。
 以上です。
#47
○会長(広中和歌子君) それでは、次の方、吉川春子さん。
#48
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
 今日は大変有意義な御見解を承らせていただきまして、本当にありがとうございました。
 まず、私、橘木参考人にお伺いしたいんですけれども、その正規、非正規の格差を縮小する策の三番目に最低賃金制度の充実策が必要だというふうに書かれておりまして、私もこの最賃制というものが非常にもっと重要な役割を果たさなくてはいけないと考えております。
 それで、先ほど先生は欧米と比べて低い日本の最賃という表現を使われましたけれども、私も実は国会で質問するときに、賃金ですと購買力平価で比較するという、為替レートだけじゃなくて、方法があって分かりやすいんですけれども、最賃の制度というのが実はいろいろな仕組みがヨーロッパ諸国なども入り組んでいまして、なかなか比較が難しいんですけれども、どういう比較方法で日本の最賃制度が低いというふうに、私も低いとは思うんですけれども、その証拠がつかめないといいますか、そこがありますので、お教えいただきたいと思うんです。
 それと、もう一つは、今最低賃金の議論をする場合に生活保護との関係が言われるわけです。私もかつて、生活保護は世帯単位ですけれども、個人単位で、十八歳単身ということで最賃と生活保護基準、これは生計費と住居費だけなんですけれども、比べてみましたら、やっぱり一か月で五万程度の差があるんですね。つまり、生活保護基準の方が高いんですね。
 そうしましたら、生活保護を下げるべきではないかなんという議論も行われているやに聞くんですけれども、そうじゃなくて、生活保護そのものは非常に低いわけです。それよりも更に最賃の方が低いという驚くべき結果で、昭和二十年代から七〇年代の終わりぐらいまでは最賃の方が高かったんですね。これはもう労働力の再生産を含むから当然なんですけれども、逆転しているんですね。
 私は、この問題について、生活保護との関係というのは変ですけれども、それとの関係で今されているような議論について参考人はどうお考えなのか。
 それで、埼玉県で教師を国から補助金が来る場合と県で雇ったり市町村で雇ったりしているんですけれども、ある市で雇用している非正規の教師が実は同時に生活保護基準の認定も受けられたと。つまり、生活できないぐらいの賃金しか払われてないということが白日の下にさらされたんですけれども、こういう問題もあるわけで、この最賃制度というものをどういうふうに持っていったらいいのかということをお考えをお伺いしたいと思います。
 また、この問題で樋口参考人は中央最賃審議会の会長代理というふうにも伺っているんですけれども、私は、最賃というのは都道府県ごとに今四十七段階あるわけですよね、そうではなくて、全国一律にすべきなのではないかと思うんですけれども、そういう見通しについてどうお考えなのか、伺いたいと思います。
 また、樋口参考人にもう一つ伺いたいのは、正規、非正規の格差の原因は労働法制の不備であるというふうに言われたんですけれども、不備といえば不備ではあるんですけれども、やっぱり非常に一九八五年に合法化された派遣労働法ですね、それで二〇〇二年に全部の産業に広がっちゃったというような問題とか、あるいは従来ですと、以前ですと一年で期間の定めのない雇用であったものがまあ三年、五年というふうになって、有期雇用というものが非常に広がってしまったという問題とか、これは労働法制の不備ということよりは、政府がやっぱり意識的にそういう規制緩和をしてきた、本来行うべきではない規制緩和をしてきた、その結果ではないかというふうに私は思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
 また、城参考人は同一労働同一賃金を具体化すべきだと、もう全く賛成でございます。そういうふうにしなくてはならないと思うんです。
 それで、丸子警報器がパート労働者が裁判で争ったときに、上田支部が正規の労働者とパート労働者の賃金の格差は八割までと、ここまでしか認められないという判決を下して注目を集めましたけれども、同一労働同一賃金を具体化するためにはいかなる方法を取るべきなのか。やっぱりこれ法律の改正ということを伴いませんと、労使間でというわけにはとてもいきませんし、判例の積み上げというのも難しいと思います。やっぱり法的に強制するという方法が一番いいのではないかと思いますが、その点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
 以上です。
#49
○会長(広中和歌子君) ありがとうございます。
 質問を希望する方が一杯いらっしゃいます。時間が限られておりますので、御質問また御答弁は簡潔にお願い申し上げます。
 それでは、橘木参考人からよろしくお願いいたします。
#50
○参考人(橘木俊詔君) 最低賃金の問題、これ格差を語る上で私も重要だというふうに思っております。
 手前みそになって申し訳ないですが、最近、私、「格差社会 何が問題なのか」という岩波新書を一か月半ぐらい前に書かしていただきまして、その中で国際比較の数字を出しております。これは日本人が推計したやつじゃなくて、ロンドンスクール・エコノミックスのデービッド・メトカフという労働経済学者が世界の先進国の最賃の額を比較した数字が出ておりますので、それは今日皆さんに準備してきませんでしたので、関心のある方はそれを是非とも見ていただきたい。
 その数字によりますと、もう日本は最低賃金の額が欧米よりも低いし、それと最低賃金以下の賃金しかもらっていない人が約一〇%いるという数字が出ておりますし、そういう意味で、最賃の水準は日本においては低いというのは国際的にも認められているというふうに私も感じております。
 二番目の生活保護と最賃の関係でございますが、これも私、自分で計算しました。実際に最賃で働いている人と生活保護をもらっている人とでどのぐらいの年収差があるかというと、最低賃金で働いている人の方が所得が低いという結果が出ました。
 これ、私もショックでございまして、働いている人の方が、生活保護というのは働いていない人が多いですから、働いていない人よりも所得が低いというのは、これはどう見てもおかしいなというふうに私は思いました。
 ここで、じゃ、どっちをどうしたらいいのか、生活保護を下げるのか、最賃を上げるのかという二者選択を迫られるわけなんですが、私は最賃を上げる方がより重要だと考えますが、生活保護も場合によっては高いことがある。
 どういうことかといいますと、日本の生活保護制度というのは、ずっと歴史をたどりますと、認定が結構面倒であると。いろんな条件をクリアしないといけない。で、認定されたときはとことんサポートしましょうというのが生活保護の精神であります。認定は非常に難しい、困難な道をクリアしにゃいかぬけど、一度認定したらかなりの額を支給しているなというのが私の解釈でございますので、逆に言えば、もうちょっと認定を緩くして、その代わり額はもうちょっと生活保護を下げるという案だって私はあり得るかなと。その場合は、やっぱり生活保護をもらう人も、働ける人はとことん働けるような体制を担保できれば生活保護の支給の額を減らせますから、そういう意味で、私は、最低賃金を上げる策と生活保護を下げる策、両方採用すべきだと思いますが、主流は最賃の方がアップのウエートが高いというのが私の判断でございます。
 以上でございます。
#51
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、樋口参考人、お願いいたします。
#52
○参考人(樋口美雄君) 今御指摘いただきましたように、今、中央最低審議会の会長代理しておりますが、今から話すのは、会長代理としての話ではなく、個人としてどう考えているかということについてお話をさせていただきたい。
 まず、日本の最低賃金が低いかどうかというようなことでありますが、それについては橘木さんはイギリスのロンドンスクールですか、の数字を持ってきているんですが、御指摘のとおり、いろんな比較の仕方というのはございます。幾らというふうに、例えばドル換算を一ドル幾らでするのかとかいうような、その購買力平価のときにもいろんな計算の仕方があるんで、すべて低いというふうに断定できるかというと、そこは疑問があるというふうに思います。
 例えば、フランスの最低賃金は高めに設定されているというふうに言いますが、例えば年齢によって、若者に対してはそれの適用を例えば何%まで引き下げてもいいというようなものを設けていたり、特例を設けているような国が多々ございます。でありますので、比較することはまず難しいなというのが実感であります。
 その上で、生活保護との問題を考えますと、確かに現実として最賃の方が低いというような問題が起こっておりまして、これについては役所の中でやはりバランスを取ったことを考えていかなければいけないだろう。ただし、そこで問題になりますのは、最賃を引き上げたときにすべてハッピーで終わるかどうかというような問題であります。
 これは、経済学の中でよく議論されているような、賃金が例えば制度的に強制的に引き上げられた場合に、雇用主が従業員の数、雇用者の数を減らしてしまうというような可能性はないだろうかという問題であります。そういった、たとえ最低賃金が、まあ千円に引き上げられましたと、で、今までと同じ数の労働者を雇ってくれるというようなことであれば問題はないわけでありますが、給与が上がった分だけ逆に今度は人数を減らそうというような企業が出てくる可能性があるわけでありまして、その、弾力性というふうに我々は言いますが、労働需要の弾力性をどう見込むのかということによってかなり意見が違ってきますし、そこら辺については検討を進めてきているというようなことでございます。
 もう一つ、生活保護については、やはり自立していく道を進めるべきだろうということでありまして、それについては、給付期間についての限定というものも考えられるんじゃないだろうかというようなことがあります。例えば、何年までは生活給付受けることができますよと、ただしその間にやっぱり自立する道を探してくださいというような方向、そういった制度というものも考えられるんではないかというふうに思います。
 その上で、今度は全国一律のやり方にしていったらどうかというようなことがありますが、これはかなり意見が分かれるところでありまして、といいますのも、御案内のとおり、地域間の雇用情勢の差といったものが非常に大きくなってきている。
 例えば、愛知県では有効求人倍率一・八だというふうにいいながら青森県では〇・四とかというような数字が出てくる。そうなってきたところに一律の最低賃金を決めたときに、片方では非常にそれが割高だというふうに受け止められ、また雇用情勢を悪化させるということが懸念されるようなところもあるわけでありまして、労働市場の一つの固まりというものをどう考えるのか。日本の場合には多分地域別にかなり労働市場が形成されているというようなところがあるわけでありまして、そこに全国一律というものを持ち込むことに対する抵抗というのは強いんではないかというふうに思います。
 アメリカ辺りを考えましても、アメリカでも連邦の最低賃金がある一方において、州による最低賃金がまた一方で制定されていくというような二段構えになっているわけでありまして、地域別労働市場というようなものの在り方というものを考えていかなければいけないという問題があるんではないかというふうに思います。
 もう一つの御質問でありました労働法の不備の問題でありますが、私は不備という言葉がいいのかどうか分かりませんが、例えば労働者派遣法を改正する、そういったときに多くの国で雇用拡大を考えるとやはり規制の緩和というものが必要だというふうに主張されてきましたし、いろんなところでそういった実証データ、実証結果というのは出ているんだろうというふうに思います。ヨーロッパ考えましても、そういった緩和といったものを進めてきたわけでありますが、その一方で強化しなければいけないところもあったんではないかというふうに思っておりまして、それは均衡の問題、均衡処遇についての規制というものは強化すべきだったんではないかというふうに思っております。
 例えば、二〇〇四年のOECDのエンプロイメントアウトルックというようなものがありますが、その中で、全体の雇用を拡大するためにはやはり規制の緩和というものも、規制改革といったものも必要であるわけですが、その進め方を間違うと労働市場をゆがめてしまうというような可能性が指摘されています。
 例えば、テンポラリーワーカーという言葉を使っていますが、有期雇用のところだけが規制緩和が進んでいくというようなことになってくると、そこでの、企業としては使い勝手がいいというふうに有期雇用の方を考え、そればかりを増やしていくという問題があるんではないか。要は、その進め方をバランス良く進めていくという必要があるということでありまして、私はそのために今主張しておりますのは、均衡の処遇といったところをもっと強化するべきだというふうに思っているということでございます。
#53
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、城参考人、お願いいたします。
#54
○参考人(城繁幸君) 同一労働同一賃金の法制化の方向性というお話なんですけれども、非正規と正社員との格差の関係で話をさせていただきますけれども、私も全国一律の、格差の例えば認める範囲、許容範囲であるとか、それをつくるのはどちらかといえば私も反対でして、一つはやはり地域差が非常に大きいという問題と、それから実態として企業規模によってかなり温度差が異なるんですね、このテーマというのは。
 中小企業なんかを見ますと、特に従業員数五十人未満の企業さんなんかで見ますと、正社員と派遣社員、契約社員なんかの待遇差がほとんどないという企業、これ結構あるんですね。純粋に人がいないので派遣会社から派遣をしてきていただいていると。そういうところを一律で待遇を上げてしまうと逆に雇用を奪うような結果になってしまう可能性がありますから、私は、基準つくるとすれば、法制化するんであれば、その契約先の企業の正社員との比例する方式で、例えば管理職を除く正社員の賃金が時給換算で三千円であればその六割が最低ラインですよと、そういった形で私は基準をつくるべきかなというふうに考えております。よろしいでしょうか。
#55
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 では、次、渕上貞雄さん、お願いいたします。
#56
○渕上貞雄君 社民党の渕上でございます。
 参考人の方々、御苦労さんでございます。
 まず、城参考人にお伺いいたしますけれども、私は、終身雇用、年功序列というのはそう悪い制度ではないというふうに思っています。しかし、現代の社会に合うかどうかというようなところで修正はすべきだとは考えますが、この制度の根幹は私は大事なことではないかというふうに思っているんですが、城参考人はいかがお考えかと。
 それから、同一労働同一賃金と言っていく場合に、そのことも大事なことですが、もう少し労働時間と賃金との関係、私は、時間制の賃金にすることによって、労働時間の長短によって区別をしていければいいのではないかと思っているんですが、そうすれば正規、非正規という問題は起こらないし、労働時間の長短によって賃金の支払が違うというだけのことになっていくのではないかと思うんですが、その点についてお伺いをいたします。
 それから、職務給を入れる場合においてもやはりこの考え方は私は大事なことではないかと。二十年掛かると言いますが、私は二十年ぐらい掛かってもいいんじゃないかと、今のようなスピードでいけば大体半分ぐらいで終わるのではないかというふうにも思っているんですが、その点いかがかと。
 以上でございます。
 それから、橘木参考人にお伺いをいたしますが、我が国社会が不公平社会と言われた時代、そして今格差時代、そして格差時代を超えて貧困の時代と言われるようになってきているところです。そこには、やはり一つの大きな流れとして規制緩和、需給調整の撤廃等々からくる政策上の問題から私は表れてきているんじゃないかと思うんですが、果たしてその政策上からくる市場経済優先の社会というものが人間社会にとって幸せなことかどうかということを考えると、格差が生まれることによって苦労していることを考えると、私はやはり経済政策というものをもう少しもう見直していくべきではないかというふうに考えているわけでございますが、その点、先生いかがお考えなのでございましょうか。いわゆる、私は、やはり格差社会というものが社会を不安定にしていることは事実ですから、その不安定にしているもとというのは経済政策にあるとすれば、そこを変えていくべきではないかと思うんですが、その点いかがかお伺いいたします。
 それから、樋口参考人にお伺いいたしますが、政策の目標の中で、私がお話を聞きながら思ったことは、雇用と労働力の移動と地域問題というのは非常に密接不可分の問題ではないかと考えるんですが、やはり今の我が国の社会生活を考えてみた場合、持家制度なんかは、この雇用問題と労働力の移動問題というのは大きな制約があると思うんですね。そういうことを考えてみますと、どこにでも就職できるようなことを考えると、地域移動をしていくのかということがあるんですが、その点どのようにお考えなのかと。
 それから、法整備の中で、法律の二極化が言われましたけれども、この二極化のところはやはり今後是正していくべきではないかというふうに思っているところですが、先生はどうお考えなのか。
 それから、基本的にはこれから先の労働法制の中で、今までは世帯的な考え方で法律が組み立てられていたり賃金が支払われたりしていたものをやはり個人単位に変えていくべきではないかと。そうすることによって、比較的、男女間の格差だとか均等待遇の問題等々も基本的に解決をしていく問題になっていくのではないかと。これは簡単にはできない話だとは思いますけれども、やはり個人の方に重点を置いて法律を変えていくようなことということが大事ではないかと考えますが、その点いかがでございましょうか。
 以上でございます。
#57
○会長(広中和歌子君) それでは、城参考人、よろしくお願いいたします。
#58
○参考人(城繁幸君) 私、別に終身雇用自体は否定しているわけではないんですけれども、まあちょっと端的に申しますと、組織の中でもういったん上がったら上がったもん勝ちだという、それがもうおかしいという話を私はしておりまして、これはもう最後の三番目の質問の、職務給への転換二十年ぐらい掛かってもいい、でも問題ないじゃないですかというあれと絡むんですけれども、結局、世代間、世代的な問題というのはどうしても出てくるんですね。例えば、じゃ二十年掛かったとして、今例えば二十代後半から三十代前半の人間というのは、ちょうど報酬を受け取るときに例えば変わってしまうわけですね。
#59
○渕上貞雄君 緩やかに変わるんじゃないんですか、極端に変わるんですか。
#60
○参考人(城繁幸君) 例えば、今社内でバブル世代、四十歳前後の人間って正に今その過渡期で、制度が突然切り替わった世代なんですね。通常であれば、彼ら、課長であるとかそういうポストに就き始める、就いている年代なんですけれども、企業内で今就いているかというと、ほとんどが飼い殺しになっているわけですよ。就いている人間ってごく一部で、ちょうど九〇年代後半から成果主義に切り替わったんですね、どんどん若い人間が先に就いていくと、三十五、六の人間が先に課長に就くと。四十ぐらいの人間というのは、そのままずっと、ある意味空手形をつかまされた結果になっているんですね。もうこれ現実に起きているんですよ。
 二十年ぐらい掛かってしまうと、今の例えば二十代、三十代というのは正に同じような現象になるのかなと個人的には私は思っていて、もちろん最終的には私はゆっくり掛かると思いますよ。だから、そうならないためには個人の努力で、個人のキャリアデザインでそれはカバーするしかないと思っていますけれども、だからといって、じゃ二十年ぐらい掛かっていいかというのは、私は個人的にはそれは良くないと思っていて、意識の早い企業さんなんかというのはもう今、キヤノンさんなんかもそうですけれども、職務給に切り替えてらっしゃるんですよね、どんどん。だから、そういったふうに変わってほしいというふうに私は願っています。
#61
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 橘木参考人、お願いします。
#62
○参考人(橘木俊詔君) 今の御質問は本質を突いた質問でございまして、経済政策の目標には二つございます。一つは、経済効率を高める、経済活性化を図る。易しい言葉で言えば、経済成長率を高くするというのが国民生活の向上に寄与しますから、経済効率を高めるというのは重要な目標でございます。一方、公平性というのも非常に大事な目標でございます。いわゆる、余り格差はあったらいけない、なるべく人は平等であるべきだというのも重要な経済政策の目標でございます。まあ人によっては、いや、幾ら格差が広がってもいいという人も中にはいますが、いろんな意見はございますが、大まかに言って二つの目標がある。一つは、繰り返しになりますが、経済効率性を高める、もう一つは経済公平性を高める。
 この二つの関係というのは、経済学の世界ではトレードオフの関係にある、一方を重視すれば一方が犠牲になるというようなトレードオフの関係にあるというふうにみなすのが一般的でございますが、私の個人的な意見は、非常に厳しい道だけど、その両者を達成する道はあるというふうに私はみなしておりまして、そのための制度的な改革だとか、どういう社会経済に日本を持っていったらいいかということは、また手前みそになって申し訳ありませんが、この本の中で書いてございますので読んでいただいたら分かると思いますが、一つの例を挙げて皆様に直観的に分かっていただきたい。
 それは、現在の北欧でございます。現在の北欧は経済効率も非常に高い、非常に最強の経済を誇っておりますし、一方、平等性も非常に高い、福祉国家の代表として所得分配の平等性も高いというのがございますので、モデルはあり得る。
 しかし、そういう意見を言うと、必ずこういう反論が出てまいります。北欧は小国だと。小国だと国民の連帯感も強いからそういうのは何とか持っていけるけど、日本のような一億三千万人の大国ではそれは無理だという反論が必ず出てまいります。だったら、大胆な意見になるかもしれませんが、日本を道州制にして、北海道は北海道でやれと、九州は九州でやれと、関西は関西でやれというような、ちっちゃな国にしたら可能かもしれぬなと、連邦制みたいなのもあり得るかなという大胆な意見を述べさせていただいて、私のお答えとさしていただきます。
 以上でございます。
#63
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 樋口参考人、お願いいたします。
#64
○参考人(樋口美雄君) ありがとうございます。
 今の橘木さんの御意見で、多くの経済学者はというふうにおっしゃったんですが、それは新古典派というふうに言われている人たちだろう。そこにおいては、いわゆる悪平等の議論というようなことで、同じ賃金が払われるんだったら、それは働かないで楽した方がいいよねと、その結果経済が活力を失ってしまうというふうに思っている、そういう面があるわけですね。
 ただ、その一方で、それ以外のところにおいては、むしろこの効率と公平というのは補完関係にあるというようなことを主張している立場がありまして、私もそちらの立場に立っています。
 それにつきましては、むしろ例えば階層化が進展して公平性が失われてしまうとすれば、それは差別される人たちあるいは下位層の人たち、下層の人たちがやる気を失ってしまうじゃないかと。差が付けばやる気が出てくるわけじゃなくて、やっぱりやったらそれなりに報われるというようなことが必要なんじゃないか。そのためには公平性と効率性というのは補完関係にあるんじゃないかというふうな見方もできるわけでありまして、そのために、ここでの調査会において、経済の活力と多様化というようなことが実は差の固定化じゃまずい、それを逆に、やる人たち、やる気を持っている人たちが元気を出せるような仕組みにしていくのにはどうしたらいいかというような視点からお話をさせていただいているということであります。
 もう一つ御質問いただきました人口移動と地域雇用の問題ということで、持家促進について。
 これもいろいろな国際的な議論がありまして、例えばスペインとポルトガルで持家制度についてその促進の施策が大きく違っている。スペインの方はどちらかというとこれを促進してきたと。むしろポルトガルの方は、借家であってもいい住宅に住めるというようなことで、移動の大切さというようなものを強調してきた。これが失業率の違いに表れているんじゃないかというような議論があります。
 ありますが、実態として、今、日本で何が起こっているのかということを見ますと、長男長女社会の中で地元への定着率というのが非常に高まってきているというふうに思います。子供の方も親の近くでパラサイトシングルしたいということはありますし、親の方としても長男長女、子供たちを近くに置いておきたいというようなことで、県の、県域ですね、県の境を越えた労働移動、人口移動といったものが非常に低下してきている。この低下してきている以上は、それぞれの地域に雇用をつくっていかないと、例えば都市部だけが雇用ができて地方から人が移動してくればいいじゃないかというような議論は非常に成り立ちにくいというような状況になってきているんではないか。
 同じような問題というのは実はヨーロッパでもずっと経験しておりまして、例えばヨーロッパにおきましても、七〇年代の雇用対策、雇用の受皿づくりというのは財政政策でやってきたところがあります。公共事業でやってきたと。ところが、これは一過性の雇用はつくれても恒常的な雇用につながらないんだと。財政支出がカットされてしまうとすぐに雇用が減ってしまうというようなことから、むしろ地域による雇用戦略というものの必要性というものが主張されるようになってきたかというふうに思います。ですから、そこでは、中央の方で政策立案をしていろんなプロジェクトを考えていくのではなく、むしろそれぞれの地域によって発想を自らつくってプロジェクトを立ち上げていく、そういう立案をしていくというようなことが必要ではないかというような時代になってきたかというふうに思います。
 実は私も、本の宣伝で申し訳ないんですが、そのような本を書いておりまして、「地域の雇用戦略」、七か国の経験というようなことで、何が財政支出のカットに伴って代わりの政策としてそれぞれ雇用をつくるような施策が取られるようになってきたのかというようなものであります。
 その中で、最近の日本の動きとしては、数年前に、多分二年ぐらい前は大都市圏対地方圏という図式が成り立っていたんだろうというふうに思います。ところが、ここのところ、地方の中でも元気のある地方と元気のない地方というようなことが出てきた。元気のある地方というのは、私、ちょっと独断なんですが、首長さんを始め地元で何とかしなければいけないというような危機感を持って立ち上がっているようなところ。そこで、幾つかの県では、例えば兵庫県もそうですが、地域の主体として政労使で政策立案をしていくんだと、そのためにワーク・ライフ・バランスの合意をしていくんだというようなことを進めるようになってきまして、自らの地域を立ち上げるための施策というものが取られるところは元気になってきているなという感じがします。それだけ国と地方の関係が大きく変わったと。その中で、地方分権なりの問題をどう考えていくかということが重要な時代になっていると。
 あとは、法の二極化については簡単に申し上げますが、やはり均衡の強化といったものが必要ではないかというふうに思っております。
 三番目の、世帯単位から個人単位へ移行するということでありますが、ここにつきましても、例えば自営業が中心、あるいは農業が中心でありますと、ともに夫婦が働いて、そして農作物を作って売る。そうしますと、これ夫の方の貢献なのか妻の方の貢献なのかというのが分からない。そういった時代においては配偶者控除ということで夫婦で課税がされるというようなことがある意味では必要であったかというふうに思います。
 たまたまコロンビア大学へ、アメリカに行っていたときに、シャウプ勧告を作ったときの先生、当時大学院生だったというんですが、日本でなぜ配偶者控除という制度を導入したかというような経緯を聞きましたら、そのときにやはり農業とか自営業が中心だと、そうすると妻に対して、妻も働いているわけですから、その貢献に対して報いるためには配偶者控除という制度が必要だったんだというような説明を受けたことがございますが、そういうことがある。
 ところが、雇用社会、勤労社会と、会社に勤めるというのが一般化してきた以上はそこのところがはっきりするようになってきているわけでありますから、やはり個人単位というようなことが中心になってくる。ですから、年金の給付につきましても離婚した後どうするかというような、正に個人を保護するというような視点が必要になってきているんではないかというふうに思います。
#65
○会長(広中和歌子君) 終わりの時間が迫ってきているわけでございますが、最後になるかもしれません。西島英利さん。
#66
○西島英利君 時間がないということです。簡単に質問します。簡単にお答えいただいて結構でございますが。
 先ほど橘木さんがニート、フリーターの就業について英国の政策をお話をなさったわけでございますが、日本のニート、フリーターのレベルという、質というのがちょっとやっぱりヨーロッパのニート、フリーターと言われる人たちと違うんじゃないかなという気がするんですが、これ印象で結構でございますので、まずお聞かせいただければと思います。
 それから、樋口さんにでございますけれども、社員の質の担保を、それをどうするのかと。某製造大手の会社が、昔はもう技術立国日本と言われていたわけでございますけれども、まあやっぱり質が担保できないということで正社員にもう切り替え始めているということもございますし、また銀行も様々なトラブルが起きてやはりこれも正社員に切り替えてきたということがございまして、事務系、技術系も含めて何かそういう変化が起きてき始めたのかなというふうに思うんですが、その二つをお教えいただければと思います。
#67
○会長(広中和歌子君) この調査会は三年目に入るわけでございますけれども、その締めくくりに当たりまして、非正規雇用をめぐる現状を変えるためにどのような施策が必要であるかということでいろいろ御意見を伺ったわけですが、もし法改正をするとしたらどこに焦点を当ててするべきかということも最後にお答えの中に含みながら今の御質問に対してお答えいただければ大変に有り難いと思います。
 それでは、城先生からでよろしいですか。
#68
○西島英利君 橘木先生から。
#69
○会長(広中和歌子君) 橘木先生、まず最初によろしくお願いいたします。
#70
○参考人(橘木俊詔君) ヨーロッパと日本の若者、違うかという御質問、私もそれ感じています。
 フランスの若者が騒ぎましたよね。二年間の試用期間ですぐ首切るのはけしからぬと。やっぱり頑張ったと思うんですよ。日本の若者、そこまでの元気がやっぱり、フリーター、ニートで社会で何か排除されていながら余り騒がぬというのは、我々の世代は大学で騒いだ世代が結構いまして、昔の若者は元気があったと。それで今の若者の元気がなくなったのは、やっぱり子供の数が少なくなって親から大事に育てられて、というようなのがあるかもしれないんで、まあ我々教育者の立場なんですが、若者もっと元気持てと、フランスを見ろというようなやっぱり教育も必要かなという感じもしました。
 それから、じゃ法律のことに関して言えば、やはりもうオランダに見習って同一労働同一賃金の方向を、労使でワッセナー合意で法律を作りましたので、日本もそういうような方向に、是非とも国会議員の先生方に頑張っていただいて、まあ完全に同一労働同一賃金は無理でしょうけど、それに近いようなやっぱり法律を制定していただくように努力していただきたいというのが私の希望でございます。
#71
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 では、樋口先生、お願いいたします。その後、城先生、よろしくお願いいたします。
#72
○参考人(樋口美雄君) 社員の質の担保というようなところで、やはり九〇年代になって、バブル崩壊後、企業は、今日倒産するのか明日倒産するのかというようなことを気にする以上、その中においてやっぱり長期的な視点というものを失ってしまったというようなことが私はあったんではないかというふうに思います。
 そういう環境ですと、どうしてもリストラクチャリングのようなものが必要だろうということになると思いますが、これは長期的にはサステーナビリティーを維持していないというふうに思いまして、やはり長期的に考えれば、人材をどう企業の中で育て、そしてまた、その人たち、能力発揮できるような状況というものをつくっていくのかというようなことが重要であって、その結果として正社員が増えてくるというようなことは今後も続いていくのかなというふうに思います。
 しかし、問題は、法制度との関連でありますが、じゃ非正社員のところが今問題になっていますが、正社員についてはこれまでと同じでいいのかということを考えてみますと、そこにもいろんな問題があるんじゃないかな。例えば長時間労働の問題というようなこともあるわけでありまして、非常に働き方がゆがんでしまったという基本的な問題があるかというふうに思います。均衡を維持するということは、私も全く橘木さんと同じでありますが、それだけでは問題解決しないんじゃないかというふうに実は深刻に受け止めています。
 なぜ結婚する人たちが減っているんだろうか。八〇年代はパラサイトシングルのように、結婚したくないからしないという人たちが増えたわけですが、九〇年代はそれプラス結婚できないという人たちが増えたんじゃないか。一つは、先ほどデータでお示ししましたように、非正社員、フリーターの人たちが将来を見通せないと、したがって結婚できないという人たちが増えながら、正社員についても、労働時間が延びていっている、結局、非正社員が増えた分だけ正社員の一人当たりの仕事量が増えていくというようなことで、その結果として残業というのが起こっているというふうに思います。
 である以上、やはり一つはゆがみを正すということ、もう一つは、人口減少社会に対応して、長期的にやはり活力を高めていく法制度とはいかにあるかというようなことを考えなければいけないんじゃないか。そのためには、個別法はそれぞれに任せて、先ほど提案しましたようなワーク・ライフ・バランスの推進基本法を是非通していただきたいというのが私の考えでございます。
#73
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、最後になりますが、城参考人、お願いいたします、もし御意見ございましたら。
#74
○参考人(城繁幸君) 基本的には、お配りした資料の方に方向性が書いてありますので、そちらをごらんいただきたいと思いますけれども、基本的には方向性としては、申し上げたとおりなんですけれども、八〇年代のアメリカがたどった道と実は基本的には今の日本の状況似ているんだなと思っておりまして、元々はアメリカは職務給の国でしたけれども、特に製造業なんかというのは比較的階層組織で、日本企業に近いものだったんですね。そこで、ただ、不況で組織の改革をしなきゃいけないと、不況の原因は日本企業の台頭なんですけれども。そこで、彼らは何をしたかというと、組織の再構成、見直しをしたと。人事的にいえば、中間管理職のリストラですね。それで生まれ変わったわけです。
 ただ、日本企業は、ところがそれ逆のことをやってしまったんですね、この十五年、入ってくる人間をリストラしたと。私、この十五年、一番失われたものというのはそれだと思います。人材育成の機会、それから組織体質改善の機会を失ってしまったと思います。今二十年たって日本、相手は中国ですけれども、全く同じ状況になってきていると。今変わらないとグローバル企業というのは、私、生き残れないと思っています。
 そのためにも、今まではいかに引き上げるかという観点だけで政策、十分議論はされてきたと思いますけれども、もう場合によっては逆もあるんだと。上の方を引き下げるというのも手段としてはあるんだというのを私は一つ方向性として探っていただきたいなと考えています。
#75
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 予定の時間が参りましたので、本日の参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
 城参考人、そして橘木参考人及び樋口参考人におかれましては、御多用の中、本会議に御出席いただき、誠にありがとうございました。貴重な御意見でございました。
 本日お述べいただきました御意見は今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時散会
ソース: 国立国会図書館
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