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2006/11/22 第165回国会 参議院 参議院会議録情報 第165回国会 本会議 第13号
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2006/11/22 第165回国会 参議院

参議院会議録情報 第165回国会 本会議 第13号

#1
第165回国会 本会議 第13号
平成十八年十一月二十二日(水曜日)
   午後零時二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十三号
    ─────────────
  平成十八年十一月二十二日
   正午 本会議
    ─────────────
 第一 信託法案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
 日程第一 信託法案(趣旨説明)
 本案について提出者の趣旨説明を求めます。長勢法務大臣。
   〔国務大臣長勢甚遠君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(長勢甚遠君) 信託法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、最近の社会経済の発展に的確に対応した信託法制を整備する観点から、受託者の義務、受益者の権利等に関する規定を整備するほか、多様な信託の利用形態に対応するための新たな諸制度を導入するとともに、表記を現代用語化し、国民に理解しやすい法制とするものであります。
 第一に、この法律案は、信託制度について受託者の義務、受益者の権利等に関する規定を整備することとしており、その要点は次のとおりであります。
 まず、受託者の義務に関しては、形式的には受託者と受益者との利益が相反する行為であっても、信託行為において許容する旨の定めがあるときなど実質的に受益者の利益を害しないときはこれを許容することとし、また、信託事務の処理を第三者に委託することができる範囲を拡大するなど、その規律の合理化を図ることとしております。
 次に、受益者の権利に関しては、帳簿その他の書類及び信託財産等の状況に関する書類の作成、保存、閲覧等の規定を整備し、受託者に対する損失てん補等の請求に加えて違法行為の差止め請求の制度を創設するとともに、受益者の意思決定について多数決によることを許容するほか、新たに受益者に代わって受託者を監督する信託監督人制度等を創設するなど、その行使の実効性及び機動性を高めるための規律を整備することとしております。
 第二に、この法律案は、信託制度について多様な信託の利用形態に対応するための新たな諸制度を導入することとしており、その要点は次のとおりであります。
 まず、状況の変化に即応して信託の形態を再編できるように信託の併合及び分割の制度を設けるとともに、信託を利用した資金調達の要請にこたえる観点から、受益権の有価証券化が可能となる受益証券発行信託の制度を設けることとしております。
 次に、受託者の履行責任の範囲が信託財産に限定される限定責任信託の制度を創設し、公益信託でなくても受益者の定めのない信託を一定の要件の下に許容し、委託者が自ら受託者となる信託についてその要件、方式等を一般の信託より厳格なものとした上でこれを許容するなど、信託の類型の多様化を図ることとしております。
 第三に、この法律案は、信託法の表記を現代用語化しようとするものであります。
 信託法は、大正十一年に制定された法律であり、片仮名の文語体で表記されていることから、利用者に分かりやすい法制とするため、これを平仮名の口語体の表記に改めることとしております。
 政府といたしましては以上を内容とする法律案を提出した次第でございますが、この法律案につき衆議院におきまして一部修正が行われております。
 その第一は、受益者の定めのない信託のうち、いわゆる公益信託を除くものについては、別に法律で定める日までの間、信託事務を適正に処理するに足りる財産的基礎及び人的構成を有する者として政令で定める法人以外の者を受託者としてすることができないとしたものであります。
 第二は、今申し上げた別に法律で定める日については、公益信託に関する見直しの状況その他の事情を踏まえて検討するものとし、その結果に基づいて定めるものとすることとしたものであります。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。前川清成君。
   〔前川清成君登壇、拍手〕
#6
○前川清成君 民主党・新緑風会の前川清成です。
 まず冒頭、私たち参議院で教育基本法の特別委員会での審議が始まったこの日に当たり、私たちの国の教育が抱える問題に関して文部科学大臣にお尋ねをいたします。
 現行教育基本法は、新憲法の制定を受けて昭和二十二年に成立しました。前文における凜とした決意だけでなく、人格の完成や個人の尊重等、教育の目的を規定した第一条、国民だれにも平等に能力に応じた教育を受ける機会を保障した第三条第一項などなど、教育基本法の理念そのものは、時代が移っても変わることのない普遍的な価値だと私は思います。むしろ、教育基本法制定後やがて六十年が経過しようとしているのに、これら理念が実現できていない現実こそ変えていかなければならないのではないでしょうか。
 子供たちがいじめに悩み、春秋に富むその命を自ら絶つことが相次いでいます。自殺の連鎖をどうやって食い止めるのか、緊急の課題です。
 また、いい悪いは別にして、幼いときから塾に通わないと中高一貫の受験に特化した私立学校への進学が困難であるという現実があります。受験に特化した中高一貫校の方が、偏差値の高いいわゆるいい大学への進学が有利だという現実があり、結局、塾や私立の中高一貫校の高額な学費などを負担することが可能な家庭に生まれた子供たちとそうではない家庭に生まれた子供たちの間では、人生のスタートラインが異なっています。親の財布の重さによって子供たちの未来に違いがあってはなりません。
 これら教育の現実、現場を見据えた議論を良識の府、参議院では尽くさなければならないと考えますが、まずは喫緊の課題であるいじめと未履修についてどのように対応するのか、格差が拡大していく中で教育の機会均等をいかにしてこの国に育つすべての子供たちに保障するのか、政府の基本方針をお尋ねしたいと思います。
 さて、信託においても、他の事業者、消費者間の契約と同様に、信託を利用する委託者や受益者すなわち消費者と、受託者すなわち事業者との情報、知識、経験、交渉力、資金力の格差は極めて大きく、加えて、実際、信託銀行が受託者となる信託にあっては、すべての契約関係があらかじめ信託銀行において十分な検討を経た定型の約款によって規律され、個々の委託者の希望や要望が信託行為に反映されることはありません。
 私は、定型的、大量取引に約款が便利であることまでも否定するつもりはありませんが、事業者の一方的な約款を放置することは相当ではなく、信託を利用する消費者の立場が不当に不利にならないよう法律上十分な手当てが必要だと考えます。
 ついては、まずこの点、法務大臣、金融担当大臣に基本認識を伺います。
 あわせて、約款の自由を合理的な範囲で規制する必要があるとお考えならば、いかなる方法で、いかなる範囲の規制を講じるつもりか。また、ある時点では合理的であった規制も、時代や社会の変化に伴い不断の見直しが必要になるはずですが、規制の検討や見直しはどのような体制で、どこが責任主体となって行うのか、法務大臣、金融担当大臣にお尋ねをします。事業者間の信託ではなく、かつ消費者契約法や信託業法などの一般論ではなく、消費者が利用する信託に焦点を当てた具体論を是非お聞かせいただくようお願いします。
 約款の自由に対する合理的な規制の必要性は今申し上げたとおりですが、さらに、今回の法案では、受託者の義務の合理化という名目で、実務上は信託の大半を受託する信託銀行が自らの義務を自ら作成する約款によって幾らでも軽減できるようになっています。
 例えば、委託者は、受託者の事務処理能力を信用するゆえに受託者と信託契約を締結します。よって、受託者は、本来、自ら信託事務を執行しなければならず、法案第二十八条第一号のとおり、信託行為が第三者への委託を許諾する場合などに限定して受託者の第三者に対する信託事務再委託を許容すべきです。ところが、同条第三号においては、仮に信託行為において禁止していても、受託者のやむを得ないとの言い訳だけで受託者の再委託が許容されてしまいます。
 さらには、法案第三十五条第一項及び同条第二項によって、第三者への委託に当たっては、受託者は適切な者を選任し、かつ必要な監督を尽くす義務を負うべきところ、同条第三項第一号に基づいて受託者があらかじめ再委託をする第三者を指名していたときは、受託者は適切な選任、必要な監督を行う義務を免れ、さらに、同条第四項によって、約款の定めさえあれば、受託者は自らが指名した当該第三者が不適任あるいは不誠実な事務執行者であったとしてもその旨を受益者に通知せずに済み、かつ不適切、不誠実な第三者への再委託を継続することさえ許されてしまいます。
 これでは、受託者の義務の合理化という生易しい表現では済まされません。約款次第では受託者の義務を空っぽにすることも可能になります。
 そこで、法務大臣は、信託法における任意規定の意義、また広く典型契約の役割をどのように認識しておられるのか、お尋ねします。
 信託法がその性質上、強行法規とは言えない条項を含んでおり、よって、その範囲で信託行為の内容を当事者間の合意によって自由に決定し得ることは当然です。しかし、当事者間で自由に決定できることだけを大上段に掲げるならば、法文には、受託者の義務については当事者が自由に決定できると書き込むだけで足りるはずです。
 私法の一般法である民法においても典型契約に関して詳細な規定を用意しているのは、言わば契約のお手本を国が提示したことにほかならず、よって、そのお手本からの乖離に関しては、乖離によって利益を受ける者に社会的適合性の立証責任が課せられていると解されますが、法務大臣も同様にお考えでしょうか。
 今回、大きな改正点の一つに信託宣言、すなわち自己信託の創設があります。
 技術的な論点については委員会において十分な御議論もお願いしたいと存じておりますが、まず第一に、なぜ自己信託の施行が法律の施行から更に一年間先送りされたのか、法務大臣に伺います。
 自己信託に関しては、改正法成立後二年六か月の間に税制と会計原則を検討すると政府は説明していますが、自己信託に関して何をどのように検討し、どう整備する必要があるのか、法務大臣、お答えください。そして、その必要性を前提にして、どの部署が責任の主体となり、いつまでにどのような制度や体制を構築するのか、税制、会計原則等区別して、法務大臣、お答えください。
 税制はともかく、会計原則の整備については、政府ではなく財団法人財務会計基準機構の役割です。他人任せの仕事に一方的に期限を付することは適当ではありません。それゆえに、自己信託の施行については、法律の施行後一年という期限ではなく、税制や会計原則等整備を要する事項を法文に明記した上で、その整備を停止条件とすべきではないかと私は考えますが、法務大臣、いかがでしょうか。
 二番目は、法案第四条第三項が、自己信託の効力発生要件として公正証書の作成あるいは確定日付による通知と、いずれにせよ公証人あるいは公証人役場の関与を必須としている点です。
 平成三年の定期借地契約や平成十一年の任意後見契約等、近時、法務省所管の法律については、必須とは解されないにもかかわらず公証人の関与を要求することが多いように感じます。
 そこで、念のため取扱事件数を調べましたところ、ここ十年間だけでも、公証事件総数は平成八年の四百七十四万四千百二十件から平成十七年には二百九十七万三千五百三十五件と大きく減少しています。公証人一人当たりの年間取扱事件数に至っては、昭和四十三年の二万二千二百八十七件から平成十七年には五千七百四十件とピーク時の四分の一にまで減少しています。法務省にとって唯一の天下り先と言うべき公証人の業務を創出する意図はまさかないと信じますが、公証人関与の必要性を法務大臣にお尋ねします。
 また、公証人の資質に関してですが、判例タイムズ一千百六十三号によりますと、平成元年以降、裁判所において公正証書遺言が無効か否か争われたケースは法律専門誌に紹介されただけで二十四件あり、そのうち十一件について無効の判決が下されているそうです。言うまでもなく、遺言ですから効力が発生するのは遺言者の死後です。よって、もはややり直しが利かないにもかかわらず、およそ四五%の割合で遺言書が無効になっています。かかる現状をどう考えるのか、公証制度が正しく機能していると言えるでしょうか。法務大臣の御所見を承ります。
 また、法務大臣による公証人役場検閲結果報告の平成十五年度分には、全国五百五十二人の公証人のうち、約六割に相当する三百二十九人の公証人が何らかのミスを指摘されており、その中には委任状に記載のない事項に関して公正証書を作成するなど、看過し得ないミスが多数あります。
 公証人の資質に関しては、衆議院で審議中の貸金業法案には、貸金業者は、利息制限法の上限金利を超過する金利に関しては公証人に対して公正証書の作成を嘱託してはならない旨の規制が加えられましたが、そもそも公証人は民事上無効である利息制限法超過金利に関して公正証書を作成してはならないのであって、かかる規定の新設こそ、これまで公証人が違法、無効な公正証書を作成していたことの証左ではないでしょうか。
 ついては、金融担当大臣に対し、貸金業法における禁止規定新設の趣旨をお尋ねし、法務大臣に対しては、なぜかかる禁止条項が必要なのか、公証人の資質に関してお尋ねをいたします。
 そもそも、司法制度改革になぜか漏れてしまった公証人と公証制度について、私は任用システムを始め全般的な改革、改善が必要だと考えます。法務大臣の御見解はいかがでしょうか。
 最後になりますが、私が初めてこの演壇に立たせていただいたのは当選直後の二〇〇四年十一月十日でした。その際、当時の南野法務大臣にサラ金金利の引下げを強くお願いをいたしました。あれから二年が経過し、今、出資法の上限金利年二九・二%については年二〇%に引き下げられようとしていることをうれしく思い、一日も早く貸金業法が成立することを期待しています。
 ただ、さきの質問の際、法務大臣からは、出資法だけではなく、出資法及び利息制限法の上限金利の引下げの当否について必要な検討を行うと御答弁をいただいたにもかかわらず、今回の政府案においては利息制限法の上限金利は全く引き下げられておりません。二〇〇四年十一月にも述べましたとおり、利息制限法が制定された昭和二十九年末当時の公定歩合は年五・八四%、翌昭和三十年末時点においては七・三%でした。しかし、今日時点の公定歩合はわずか〇・四%です。市場金利との均衡や貸金業者の調達利率等を考慮すれば、金額刻みではなく、利息制限法の上限金利を引き下げることこそ早急に着手すべき課題であるはずです。
 今後の利息制限法の取扱いについて、法務大臣、金融担当大臣にお尋ねをいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣長勢甚遠君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(長勢甚遠君) 前川議員にお答え申し上げます。
 まず、約款の自由の規制に関する基本的認識についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、消費者等が委託者又は受益者となって信託を利用する場合には、これらの者と受託者となる事業者との間の情報量の格差等によって、約款等に基づいて締結される契約の内容が、合理的な限度を超えて受託者にとって一方的に有利となる場合があり得ることも否定できません。そこで、このような場合につき、消費者等の利益を保護する観点から、法律上の合理的な規制を加える必要性が生ずることはあると考えております。
 次に、約款の自由はいかなる方法で、いかなる範囲の規制を講ずるつもりかについてお尋ねがありました。
 先ほど申し上げたとおり、約款等に基づいて締結される契約の内容について規制をする必要が生ずるのは、消費者等が委託者又は受益者となり、事業者が受託者となる場合などであります。そこで、このような類型の信託契約については、一定の範囲で自由を制限し、例えば一定の内容の契約の定めの効力を法律によって否定するといった方法で規制を講ずることがあり得ることであり、現に信託業法等においてこのような規制が設けられているものと承知をいたしております。
 次に、規制の検討や見直しの体制や責任主体についてお尋ねがありました。
 消費者が利用者となる信託に限らず、信託一般に適用される信託法につきましても、その規制の在り方は時代や社会の変化に応じ検討、見直しがされるべきであると考えております。法務省は信託法を所管しておりますので、その見直しが必要か否かを注視し、必要に応じて適切な措置を講じてまいる所存でございます。また、これにとどまらず、基本法たる信託法を所管する立場から、その特別法に当たる諸法令に関しましても関係省庁との間で必要な連携を適宜図っていくべきものと考えております。
 次に、信託法案における任意規定の意義、典型契約の役割についてお尋ねがありました。
 私法上の法律関係については、個人が自由な意思によって自律的に形成することができるという私的自治の原則が妥当いたします。信託法は信託に関する私法上の法律関係を定める基本法であり、基本的にはこの私的自治の原則が広く妥当いたすと考えております。
 そこで信託法案では、標準的に合理的と考えられる規範を規定した上で、不合理でない範囲内でその内容を当事者の合意によって変更することができることといたしております。
 なお、いわゆる典型契約においては、今申し上げたとおり、一般的に合理的と考えられる規範を法律で規定しておりますが、このようなことによって次のような役割を果たすものと考えられます。すなわち、第一に、契約に際してその規範と異なる内容の合意を行うかどうかを検討するに際して、契約当事者がその内容を参考にすることができます。第二に、契約内容に事細かに合意内容を盛り込まなくても一般的に一応合理的と考えられる規範が適用されることになるため、契約締結に係る労力を低減することができると考えられます。
 次に、任意規定からの乖離の社会的適合性の立証責任についてお尋ねがありました。
 御指摘の立証責任が訴訟法上のものであるとするならば、信託法案と異なる規律が信託行為で定められているという事実につきましては、このような信託行為の定めが置かれていることで利益を受ける者が主張、立証することになると考えます。これに対し、問題となる信託行為の定めが社会的適合性を有しないこと、すなわち信託行為の定めが公序良俗に反するとの事実については、その主張が認められ、信託行為の定めが無効となることによって利益を受ける者が主張、立証することになると考えられます。
 次に、自己信託に限ってその施行が一年間先送りされる理由についてお尋ねがありました。
 議員御指摘のとおり、信託法案においては、自己信託に関する規定は、信託法の公布後一年半以内の政令で定める日から更に一年間適用しないこととし、実質的にその施行を一年延期しております。これは、制度の趣旨や債権者保護のための措置等を国民に十分に周知し、さらに、会計上、税務上の取扱い、運用についても十分に検討し周知することが重要であるからであります。
 次に、自己信託に関して、改正法成立後、何をどのように検討し、どう整備する必要があるのか等についてお尋ねがありました。
 まず、税制についてですが、自己信託については、これを利用して税の潜脱が行われるおそれがあるのではないかといった指摘がされております。したがいまして、このような懸念を払拭する観点を踏まえ、税務上の取扱い、運用について必要な検討がされるものと承知をいたしております。
 また、会計に関しましても、例えば自己信託をした受託者の貸借対照表から信託された財産がオフバランスされるのはいつの時点と考えるべきかといった点を検討する必要があるとの指摘がございます。そこで、この点を含めて自己信託に関する会計処理の在り方が検討されるものと承知をいたしております。
 なお、税務上の取扱い等の検討は財務省等において行われ、他方、会計に関する検討は民間団体である企業会計基準委員会で行われるものと承知いたしております。
 そして、法務省といたしましては、信託法案を成立させていただいた後は、関係機関、関係当局とこれまで以上に密接に連携協力して、会計や税制等の関連諸制度の整備、さらにはその周知に努め、自己信託に関する規定が実際に適用されるまでの間に所要の措置を講じてまいる所存でございます。
 次に、自己信託の施行について、税制、会計原則等の整備を停止条件とする必要性についてお尋ねがありました。
 自己信託の施行までには税制上、会計上の取扱い等について検討を行う必要があるわけでありますが、まず、税制上の取扱い等の検討は、財務省において平成十九年度の税制改正に向けて、また信託税制全般の見直しの一環として検討が進められているものと承知をいたしております。また、会計上の取扱い等の検討については、企業会計基準委員会において自己信託を含めた信託に関する会計処理について検討を進めていくことが既に正式に決定されております。そして、法務省といたしましても、これらの関係当局、関係機関に対し信託法案の内容等について説明を行ってきております。
 そこで、法務省といたしましては、自己信託に関する規定が適用されることになるまでの期間があれば、十分に必要な検討等は行われるものと認識しております。したがって、信託法案においては、自己信託について整備を要する事項を明記した上で、その整備を自己信託に関する規定を適用するための停止条件とするといった方法を採用する必要はないと考えております。
 次に、自己信託についての公証人関与の必要性についてお尋ねがありました。
 自己信託に対しては、資産状態の悪化した債務者が債権者からの強制執行を逃れるために利用する懸念が指摘されております。具体的には、債権者から財産の差押えを受けたときに、その差押えの対象となった財産について、事後的に差押えがされる前から自己信託がされていたと虚偽の主張をして差押えを逃れようとするおそれ等がございます。そこで、このような目的での利用を防止するため、事後的に自己信託がされた時期をさかのぼらせることができないようにする必要がございます。
 このような観点から、信託法案では、自己信託がされた日時を確定するため、一定の様式に従った公正証書等の書面によってすることを要求することとし、自己信託の設定書面に確定日付を要求することとしたものであります。
 このように、自己信託の設定については公証人が関与することがありますが、これは債権者を害する目的での自己信託の利用を抑止するというために要求したものであり、必要な手当てであると認識をしております。
 次に、公証制度が十分に機能していると考えているかについてお尋ねがありました。
 年間六万件作成される遺言公正証書を含め、公証人の行う公証制度については全体としては必要な機能を果たしていると考えております。しかしながら、私法上の紛争を予防することを職務とする法律専門家である公証人にとっては、たとえ十一件とはいえあってはならない事態であり、極めて遺憾に思っております。これまでも遺言者の遺言意思や遺言能力の確認を十分に行うよう指導監督をしてきたところでありますが、今後とも公正証書遺言制度の信頼性を損なうことのないよう、適切な執務が行われるよう指導監督してまいります。
 次に、貸金業規制法案における貸金業を営む者による執行証書の作成嘱託を禁止する規定の趣旨についてお尋ねがありました。
 現在においても、利息制限法に違反する利息の約定がされた貸金契約に関しては、利息の約定について適法有効な利率の範囲に引き直さなければ執行証書を作成しない扱いとなっております。その上で、今回の規定は、利息制限法に違反する利息の約定が付された貸金契約については、貸金業を営む者に執行証書の利用をおよそ認めないこととするため、適法有効な約定部分も含めて嘱託を禁止するという趣旨の規定であると承知をいたしております。
 また、公証人の資質についても問題があるとの趣旨でのお尋ねであると理解いたしました。
 公証人は、法律事務の専門的知識及び経験を有する等の任命資格を有する者の中から適任者を任命しており、その資質については問題がないものと考えております。
 ただ、議員から御指摘があったように、公証人役場の検閲の結果、職務上の過誤があるとの指摘をしている件数も少なからずございます。このような事態は公証制度に対する国民の信頼を損なう原因となりかねないものでありますので、法務省としては、適正な公証事務が行われるよう、今後とも公証人に対して厳正な指導監督に努めてまいりたいと考えております。
 次に、公証人が司法制度改革から漏れているとの御指摘がございました。
 確かに、公証制度については司法制度改革において明示的に取り上げられておりません。しかしながら、民事司法の一翼を担う公証人がその役割を的確に果たしていくことにより、今回の自己信託制度のように適正な民事司法制度の維持発展に貢献していくことができるものと考えております。
 次に、公証人の任用についてのお尋ねですが、法務省といたしましては平成十四年度から公募制度を始めております。今後とも、公正中立性が求められる公証人にふさわしい有為な人材を広く民間から確保するよう努めてまいりたいと考えております。
 また、法的紛争を未然に防ぎ、法律関係の明確化、安定化を図るという公証制度の目的を達するため、公証制度の在り方については、今後とも注視を怠らないよう心掛けてまいりたいと考えております。
 最後に、利息制限法についてお尋ねがありました。
 今国会に提出しております貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案では、貸金業者に対する実効的な規制金利を、出資法上の年二九・二%から利息制限法上の年二〇%ないし年一五%にまで大幅に引き下げることとしているために、それに加えて利息制限法の上限金利自体を引き下げることとはしておりません。しかしながら、現行の利息制限法所定の上限金利自体が高いか低いかという点については様々な意見があるものと承知をいたしております。
 このような金利規制の在り方については、御指摘の市場金利との均衡や貸金業者の調達利率のみならず、資金需給の状況その他の経済金融情勢や貸付けの実情等の推移をも踏まえて、引き続き検討してまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣伊吹文明君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(伊吹文明君) まず、未履修といじめについてのお尋ねでございますが、精神的にも非常に未熟な子供へのいじめは、できるだけ早くいじめられている子供のサイン、兆候を見付けて、いじめられている側、いじめる側への対応をすることが大切であります。このため、先週、この趣旨に基づいた私のアピールを種々のメディアを通じて全国に発信をし、各教育委員会を通じて全児童生徒に伝えていただくようお願いをしてございます。
 高校での未履修問題につきましては、民主党も含めた与野党政調会の担当者と打合せをし、当面の取扱いについては全国の教育委員会に既にその扱いについて通知済みであります。将来的には高等学校の必修科目の習熟度をどう判定するか、大学の入試の在り方等も含めて検討したいと思います。
 それから、教育における機会均等の扱いでございますが、これはもう義務教育において機会均等は憲法上大切な権利であります。このため、義務教育費国庫負担制度等による教員の必要数の確保、習熟度別の少人数指導など、各々状況に応じた指導の充実、奨学事業の拡充、就学援助の拡充等を通じて対処してまいりたいと存じております。(拍手)
   〔国務大臣山本有二君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(山本有二君) 前川議員にお答えいたします。
 信託契約に当たって、事業者の契約の自由を法律で規制する必要についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、信託銀行や信託会社のような事業者と消費者の間では情報力、交渉力に格差が生じ得ることにかんがみ、事業者の義務の軽減を信託契約により自由に認めることは消費者保護の観点から問題があると認識しております。このため、信託業法におきましては、業として信託の引受けを行う事業者について受託者としての義務の自由な軽減を原則として認めないこととしております。
 次に、信託契約の自由を規制する方法及び範囲についてお尋ねがありました。
 信託業法におきましては、信託会社に善管注意義務、忠実義務等の義務を課しておりまして、これらの義務を顧客との間で合意で軽減することは原則として認めないこととしております。また、信託会社が信託の引受けを行う際には、信託契約の内容の委託者への説明を義務付けるとともに、信託契約の内容を記載した書面の委託者への交付も義務付けるなど、消費者の保護に十分に配慮した規制を事業者に課すこととしております。
 次に、信託契約の自由に対する規制の検討体制及び検討の責任主体についてお尋ねがありました。
 信託の引受けを業として行う信託業につきましては、平成十六年の信託業法改正の附則の中では、政府は、施行後三年以内に施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときはその結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするとされております。政府といたしましては、こうした点も踏まえ、信託業に係る規制につきまして、社会経済の変化、要請に応じ適時適切に見直しを行ってまいりたいと考えております。
 公正証書作成の嘱託を禁止する規定の趣旨についてお尋ねがありました。
 御指摘の規定は、最近の判例で貸金業法第四十三条のみなし弁済の要件が非常に厳格に解釈されていること、近年、公正証書による強制執行をめぐるトラブルが多発していることなどを踏まえまして、利息制限法の上限金利を超過する金利の貸付けにつきまして、貸金業を営む者が公正証書の作成を嘱託することを禁止しようとするものでございます。
 最後に、利息制限法上の上限金利の今後の取扱いについてお尋ねがありました。
 今回の改正は、貸金業者の実質的な上限金利を、現行出資法の上限金利である二九・二%から、利息制限法の上限金利である一五から二〇%まで大幅に引き下げるものでございます。そこで、今回の改正では、利息制限法の上限金利の水準自体は現行のまま据え置くこととしております。今後の取扱いにつきましては、まずは今回の出資法の上限金利引下げの効果を見守りたいと考えている次第でございます。(拍手)
#10
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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