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2006/10/03 第165回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第165回国会 本会議 第5号
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2006/10/03 第165回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第165回国会 本会議 第5号

#1
第165回国会 本会議 第5号
平成十八年十月三日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  平成十八年十月三日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
 竹本直一君の故議員西田猛君に対する追悼演説
    午後二時三分開議
#2
○議長(河野洋平君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
#3
○議長(河野洋平君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。太田昭宏君。
    〔太田昭宏君登壇〕
#4
○太田昭宏君 このたび、公明党の代表に就任いたしました太田昭宏です。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
 公明党を代表し、安倍総理の所信表明に関連し、当面する重要政策課題に対して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 まずは、安倍新総理の御就任を心よりお喜び申し上げたいと思います。(拍手)
 自由民主党と公明党が連立政権を組んで七年が経過いたしました。政治の安定と改革のリーダーシップを掲げた我が党は、自由民主党との確固たる信頼と協力関係を踏まえ、危機的であった経済を再建させ、あわせて、旧来の政治では優先度の低かった教育、環境、人権、文化、芸術などのテーマを表舞台にのせ、政治の質を変えることに力を注いでまいりました。
 今ここに、連立第二期のスタートというべき段階を迎えました。九〇年代からの負の遺産を解消し、いよいよ、少子高齢化、グローバリゼーション、地球規模の環境保全、安心・安全社会の構築などの大きな課題に真正面から挑戦していくときを迎えております。九月二十五日の連立政権合意は国民のための改革宣言であり、その実現に全力を挙げる決意であります。(拍手)
 「日の出を見よ」、国木田独歩の短編「日の出」において、一人の老人が人生に絶望した青年に語った言葉であります。神々しい日の出を見た青年は、その盛んなる力を見て、大いに働き、世に尽くす仕事をするに至ったという話であります。
 私は、二十一世紀日本の未来に向けて発進する政権は、人間の胸中に日の出を、旭日を上らせ行く人間主義に立脚しなければならない。たれ人も、すばらしい個性、能力、創造性等の大いなる可能性、人間力を秘めております。国民一人一人の人間力の十全なる開発と発揮こそ、我が国の次への飛躍の源泉であり、イノベーションや文化創造の根本であります。
 私は、今、日本の直面する課題を見るときに、どこまでも人間から出発する社会、人が輝く社会を基本にすべきだと考えます。人が輝く人間主義の社会づくり、国づくりについて、まず、総理のビジョンと決意をお伺いしたいと思います。(拍手)
 教育改革について伺います。
 公明党は、闘う人間主義、生活現場主義を掲げております。私は、教育の深さこそが日本の未来を決定づけると考えております。公明党は、教育の党であります。子供一人一人の可能性を最大限に開花させるため、今後の教育改革の柱として、人間のための教育、現場からの教育改革が重要であると考えます。
 これらの視点に立ち、継続審議となっている教育基本法案の成立を期すとともに、以下の具体的な教育改革の提案をしたいと思います。
 第一に、社会の教育力の復権です。
 深刻化する青少年問題の背景には、社会全体が本来持っている教育力の低下と欠如という問題がございます。教育力を取り戻すためには、学校、家庭、地域が一体となることが大切です。そのために、学校運営協議会の充実や、既に始まっている「早寝早起き朝ごはん」運動など、家庭や地域に密着した教育活動の展開が重要です。また、いじめや不登校問題等への対応として、スクールカウンセラー等の配置を推進してきましたが、一人一人の子供の置かれた状況に応じたきめ細かな対応が必要だと思います。
 第二に、教員へのバックアップであります。
 教育において重要なのは触発力であり、教員こそ、子供にとって最大の教育環境であります。私は、教員の資質向上のための研修制度のさらなる充実や、教員を支援するために地域の人材を活用する教育サポーター制の導入など、熱心な教員が意欲を持ち続け、教育に専念できるような環境を整備すべきだと思います。
 第三に、大学改革です。
 大学が知の拠点として、また、より広く、いつでも学べる生涯学習の拠点として、社会人が最先端の知識を求めて学び直すことのできる機会の確立や、大学間の単位互換制や編入・転入枠の拡充等を進めることを提案します。
 以上、三つの提案について、総理並びに文部科学大臣の御見解を承ります。
 さて、幼稚園から大学卒業までにかかる教育費は、すべて公立の場合でも約八百万円を超え、小学校を除くすべての学校を私立学校で通った場合は何と千六百万円にも上ります。このような多額の教育費を負担できる家庭とそうではない家庭との間で、いわゆる教育格差を生むことが懸念されます。
 公明党は、保育所、幼稚園の無償化を目指すとともに、児童手当や奨学金制度の抜本的拡充を強く主張しています。特に、奨学金制度については、奨学金貸与額の引き上げ、また返還時の税制の優遇制度の創設など、具体的な提案をしております。教育費の負担軽減策について、総理の答弁を求めます。
 さて、安倍総理は、小泉改革を継承する、改革の炎は消さないと強調されています。
 社会の激しい変化を直視し、時代の要請に合わなくなった制度や慣行を改革していくことは、政治の本来的な役割であります。国民の福祉を守り、豊かな生活を確保するためには、経済成長が不可欠であり、構造改革を継続することが重要であります。我が党は、構造改革をとめるなとの国民の声を受け、政府と一体となって取り組んでいく決意であります。(拍手)
 その中で、昨年来、格差問題が指摘されています。一億総中流と言われ、比較的格差の少なかった我が国において、バブル経済の崩壊とその脱却の過程の中で、地域間格差、世代間格差、あるいは若年層の世代内格差の問題が生じてきていることを真摯に受けとめなければなりません。格差の原因を小泉構造改革に押しつけるような指摘がありますが、これは明らかに誤りであります。
 大切なことは、こうした格差が拡大していく危険性がある現実を直視し、いわゆる勝ち組と負け組が固定化しないようにすることであります。このため、教育や社会保障、雇用対策の重要性をしっかり認識した上で、中間層の厚みを増す社会をつくるために、そこに力を注ぎ、さまざまな政策を総動員する必要があると考えます。
 そこで二点、御提案申し上げたいと思います。
 第一は、フリーター二百万人、ニート六十万人とも言われている若年層の雇用問題です。
 政府を挙げて、若者の自立、挑戦を促すための施策をさらに拡大し、正規雇用の拡大など、働き方の改革もあわせて講じていくべきであります。とりわけ、バブル崩壊後の就職氷河期に不本意な職業についた年長フリーターと言われる方々の処遇は、放置できない問題であります。長い不況期を脱した今こそ、凍りついた人々に対し、大企業、中小企業を問わず温かく迎え入れるべきだと思います。総理御自身が先頭に立って、若年雇用の問題に取り組み、そして企業等への協力要請も行っていただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。
 第二には、格差を固定化しないための所得再分配機能の強化です。
 社会保障や教育への予算の手厚い配分や、税制における累進課税制度や相続税のあり方の見直しも含めた所得再分配機能の強化によって、過度な格差を是正し、また、格差がそのまま固定化しない社会を目指すべきだと思います。総理の見解を伺います。
 我が国経済を取り巻く環境の変化の中で、持続可能な経済成長を実現するためには、新しい成長モデルが不可欠であります。
 公明党は、いわゆる骨太方針二〇〇六で示された、経済と財政は車の両輪であるという観点が重要だと思います。歳出歳入一体改革とあわせ、日本型経済成長モデルを実現するために、政府・与党で策定した新経済成長戦略大綱に沿って着実に施策を推進すべきであります。なかんずく、現存する格差を是正する観点から、この大綱を充実させ、新地域成長戦略並びに地域企業応援戦略を提案し、具体的な施策を強力に進めてまいりたいと決意しています。
 地域経済、地域産業の担い手は中小零細企業であり、とりわけ回復のおくれが目立つ地方においては、中小零細企業を地域の成長の原動力として支援体制をとるべきだと考えますが、総理の御所見を伺います。
 公明党は、中小零細企業を応援するための三本柱として、企業の応援、地域の応援、人の応援の視点が重要だと考えます。
 第一には、企業の応援、その中心は金融対策です。
 不動産担保や保証人に過度に依存することなく資金を調達できる環境が必要です。まずは、流動資産である売り掛け債権や在庫等を活用した新しい保証制度を創設することを強く主張します。
 第二には、地域の応援。地域の強みである地域資源を積極活用すべきであります。
 すべての地域に、その土地特有の強みを持った産地の技術や農林水産品、伝統文化などがございます。これを地域の中小企業が掘り起こし、磨き上げ、都市部の消費者ニーズに合った新商品を開発し販路を確保すべきであり、地域資源活用企業化プログラムの強力な推進が必要です。
 第三には、人の応援として、再挑戦支援融資・保証制度の創設です。
 残念ながら道半ばで経営不振に陥った中小企業の事業再生のため、必要な資金を供給する環境を整備するとともに、中小企業再生支援協議会の拡充を図りたい。中でも、中小公庫、国民公庫、商工中金において再挑戦支援融資制度の創設や、信用保証協会での再挑戦支援保証制度の創設を強く求めるものであります。
 第四に、現場から最も要望の多いのは事業承継税制の拡充であります。力を入れなくてはなりません。
 中小企業にとって、事業を子や孫などの後継者に承継していくことは一番の大事なことです。その抜本的解決は、中小零細企業の存続、経済の活性化の観点からも極めて重要であり、特に税制面での支援が求められています。我が党は、事業承継税制を抜本的に見直し、拡充することを主張します。
 以上、四点の提案に対し、総理の見解を承りたいと存じます。(拍手)
 次に、歳出歳入一体改革に関し、お伺いいたします。
 財政健全化は、我が国の持続的な発展にとって重要課題であります。基本方針二〇〇六に具体的な工程表が示されたものの、生易しいものではなく、歳出改革に当たっては、徹底して事業そのものの仕分け、見直しということが大事であります。
 私は、これまでの従来型ではない、総理の、まさに総理のリーダーシップをもって、行政の仕事を見直す新たな仕組みを構築していく必要があると思いますが、いかがでありましょうか。
 次に、少子化対策について総理に伺います。
 我が国の合計特殊出生率は、昨年、一・二五と過去最低を記録しました。少子化対策に特効薬はありませんが、フランスのように、一九八〇年代初頭より積極策を講じ、近年、出生率が一・九四まで回復した国もあります。国と地方の連携のもと、官民を挙げて積極的な対策を講ずることにより、私は、必ず活路が見出せる、このように思います。
 公明党は、本年四月、少子化に歯どめをかける総合的な施策として、その目標を明確にした少子社会トータルプランを取りまとめましたが、その取り組みの柱は二つあります。
 第一に、働き方の見直しです。
 結婚や出産を機に女性の七割近くが退職している現状は、早急に改善する必要があります。また、非正規雇用から正規雇用への転換支援や、女性の再就職支援策の充実も急務です。とりわけ、フリーターや派遣労働など不安定な就労形態による生活基盤の脆弱化や若年労働者の長時間労働は、晩婚・晩産化につながり、少子化に一層拍車をかけるおそれがあります。公明党は、その意味でも、仕事と生活の調和推進基本法、仮称でありますけれども、これを制定し、そしてこれを実現しなくてはならないと考えます。総理の見解を伺いたいと思います。
 第二は、子育て負担の軽減です。
 本年六月、政府・与党がまとめた新たな少子化対策を踏まえ、児童手当のさらなる拡充や就学前教育の負担軽減など、妊娠、出産から高校、大学に至るまで、子供の成長に応じた総合的な経済支援を進めていきたいと思います。
 また、子育ての悩み、相談に対応できる体制や、母親の通院や急用の際、非常にこれが困るわけなんですが、一時的に子供を預けられる利用券を配付する、こういうようなきめ細かなサービスが私は大事だというふうに思います。
 さらには、結婚・子育て世帯向けの住宅支援、いわゆる巣づくり支援を充実させるなど、安心して子供を生み育てられる環境整備に全力で取り組むべきだと考えます。
 抜本的な少子化対策と子育て負担の軽減策について、総理の御決意を承りたいと思います。(拍手)
 次に、人口減少と厳しい財政状況の中で、生活の安心のよりどころである社会保障制度を維持していくには、自助、共助、公助の適切なバランスのもと、世代間の公平性を確保しつつ、制度全般における一体的な見直しが必要であります。少子高齢化の進展に伴って、社会保障給付費の増大は避けられませんが、給付と負担のあり方、加えて安定的な財源の確保について、国民的に真摯な議論を積み重ね、方向性を定めていくべきと考えます。
 総理は、政権公約の中で、日本型社会保障モデル、これを築くんだ、こうしたことを掲げられておりました。国民が安心、信頼できる社会保障制度の構築へ向けて、どのような手順で年金、介護、医療、社会福祉等の一体的な見直しを継続されようとしているのか、国民にわかりやすく御提示いただきたいと思います。
 なお、社会保障制度改革の前提として、社会保険庁のあり方を根本的に見直さなければなりません。不祥事続きの社保庁で、国民年金保険料の不正免除問題が発覚しましたが、このような規律の緩んだ組織をどう立て直していくのか。国民の信頼を取り戻せるような、まさに抜本改革を断行しなければなりません。総理のお考えを伺います。(拍手)
 次に、がん対策についてお伺いします。
 さきの通常国会で、議員立法でがん対策基本法が成立しましたが、放射線治療専門医を初め医療従事者の育成やがん診療連携拠点病院の整備など、その環境整備はまさにこれからどうするかということになります。私は、今こそ、がん対策を国家戦略と位置づけ、総理がリーダーシップをとって取り組むべきだと考えますが、決意をぜひとも伺いたいと思います。
 また、肝炎対策が問題になっておりますが、我が国のウイルス性肝炎感染者は、B型、C型合わせて何と三百万人を超えると推計されています。感染者の早期発見・早期治療システムの確立が急務です。検査体制の強化や適切な治療支援など、厚生労働大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
 今月より障害者自立支援法が施行されましたが、障害者の方がより利用しやすくするため、地域の実情に合わせたサービス基盤の整備や工賃水準の引き上げなど、自治体独自の取り組みを財政的措置も含めて支援する必要があります。総理並びに厚生労働大臣の見解を承りたいと存じます。
 将来にわたって国民の安全を確保していくことは国の重要な使命でありますが、我が国が誇ってきた安全大国日本、これが大きく揺らいでいるように思います。もう一度その復活に向けて、安全、安心の国づくりを進めなければなりません。耐震化を初めとする地震対策、津波・風水害対策、そして雪害対策など、災害に強い国土の形成に対し、国土交通大臣の決意と具体策について伺いたいと思います。
 また、子供の安全確保であります。
 子供を犯罪から守るには、地域の力を総合的に生かしたまちづくりを進めることが大事です。その際、子供の居場所を把握できるGPSやICタグを活用したシステムや、防犯ボランティア等を支援する地域安全安心ステーション、私はこれが有効だと思います。
 また、昨今、ガス瞬間湯沸かし器やシュレッダーの事故を初めとして、国民生活に身近な生活用品の事故が相次いでおります。製品全般の安全性について国民の不安がございます。これらに対する政府の対応策を伺います。
 もう一つ、飲酒運転の防止対策です。
 飲酒運転による交通事故が続発し、大きな社会問題です。具体的な取り組みとして、酒気帯び運転の処分点数の引き上げ、同乗者や飲食店等、飲酒運転を幇助した者への摘発強化も行うべきであります。今後、飲酒運転防止対策として、その具体策を御提示いただければと存じます。
 三位一体改革を初めとする地方分権は、小泉内閣において一定の成果を得ることができましたが、今後もさらに進める必要があります。地方に対する国の関与を極力減らし、地域の主体性を強化するためにも、地方行革の徹底を前提としつつ、新たな地方分権推進法の制定に速やかに取り組むべきであります。
 また、中長期的な課題として、道州制への移行についても議論を促進していく必要があります。公明党はこれまで地方分権の旗振り役を担ってきましたが、今後一層、地方分権を推進するための施策について、総理の見解を伺いたいと思います。
 アジア外交、国連改革について伺います。
 総理は、日本外交の基軸を日米同盟、国際協調の二本柱に据え取り組むとの見解を示されましたが、アジアに位置する我が国のアジア外交の重要性については十分認識されていると思います。ここ数年のアジア外交は、決して望ましい姿にはなっておりません。今こそ、日中、日韓関係の信頼回復、首脳間の対話、アジア外交の再構築に力を注がなければなりません。アジア外交を安倍内閣がどのように転換することができるのか、安倍内閣の出発に当たって大いに期待するところでありますが、総理の見解を求めます。(拍手)
 国連改革を唱える我が国は、本年十二月、安保理非常任理事国の役割を終えようとしていますが、今後はどのように国連にかかわり、その改革をしていくつもりなのか。特に、北朝鮮のミサイル発射にかかわる安保理決議にしましても、日本が安保理のメンバーであったからこそ外交努力が実った面が強いというふうに私は感じられるわけですが、日本の常任理事国入りを含む安保理改革にどのように再び取り組まれるお考えか、戦略を伺いたいと思います。
 また、我が国の国際社会における貢献の一つに人間の安全保障への取り組みがあり、人間の尊厳に光を当てた取り組みとして大変高い評価を得ています。今後も、人間の安全保障基金やODAを活用し、貧困対策を初め感染症、エイズ対策、環境保護などで貢献することが国際社会での地位を築く礎になると考えますが、いかがでしょうか。総理の御所見を伺います。
 最後に、憲法問題について一言申し上げます。
 我が党は、未来志向の憲法論議をうたっております。そして、現憲法はすぐれており、国民の中に定着しているとの認識に立ち、憲法三原則を堅持し、平和主義の象徴である第九条一項、二項を堅持した上で、時代の進展とともに提起されてきた環境権やプライバシー権などを現憲法に加えて補強する、加憲という立場に立っております。そして、国民主権をより明確化する視点、人権を確立する視点、国際貢献を進める視点、環境を重視する視点、地方分権を確立する視点を提示し、加憲論議の対象となるテーマも示しているところであります。加憲方式は、憲法の専門家からも具体的、現実的であると評価をされております。
 一方、国民投票法案については、憲法改正の中身の論議とは別に、公平中立なルールをつくるものであり、多数の賛成を得て成立させたいと思っております。憲法論議の方向と国民投票法案についての総理の御見解を承りたいと存じます。
 以上、内外にわたる政治課題を中心に言及してまいりましたが、九〇年代の負の遺産の処理は終わりました。これからは、さらに未来に向かって、新しい二十一世紀日本というものを射程に置き、まさに前向きの改革論議、攻めの改革が強く求められております。
 著名な文明史家アーノルド・トインビーは、「さあ、働こう。さあ、仕事を続けよう。」この言葉を座右の銘としたそうであります。みずから決めた目標に向かい、一歩また一歩と着実に進み行く意思を沸き立たせ、みずからを鼓舞する言葉であったようであります。
 人が輝く社会の構築を目指し、我が党は全力を挙げてまいることをお誓いして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 太田昭宏議員にお答えをいたします。
 まず、お答えをする前に、このたび新代表に就任をされましたことを心からお喜び申し上げます。(拍手)
 人間主義の社会づくり、国づくりについてのお尋ねがありました。
 私は、額に汗して勤勉に働き、家族を愛し、自分の暮らす地域やふるさとをよくしたいと思い、日本の未来を信じたいと願っている普通の人々、その方々のための政治を行っていきたいと考えています。このような人々が活力を持って暮らすことができるような美しい国の実現に向けて、全力を尽くしてまいる所存でございます。どうか、御理解と御協力のほどをよろしくお願い申し上げます。(拍手)
 学校、家庭や地域の連携による教育についてお尋ねがございました。
 学校、家庭、地域は、教育においてそれぞれ重要な役割と責任を担っており、相互の連携協力は極めて重要な課題と認識しております。このため、御指摘の学校運営協議会の設置促進や「早寝早起き朝ごはん」運動の展開など、家庭や地域の教育力の向上を図るための施策を今後とも拡充強化し、これらの施策を通じて、社会全体で教育再生に取り組む環境を整えてまいります。
 いじめや不登校等への対応についてお尋ねがございました。
 国民の学校教育に対する信頼を確保するためにも、いじめや不登校等の問題の解決は教育上の大きな課題であります。このため、学校の教育相談体制の充実、とりわけスクールカウンセラー等の配置の推進や、家庭、地域と連携した取り組みを進めることなどにより、一人一人の児童生徒の状況に応じた、よりきめ細かい対応を図ってまいります。
 教員の環境整備についてお尋ねがございました。
 やる気と能力のある教員が教育に専念できる環境を整備することや、多様な人材が学校教育に参画できるようにすることは、我が国の教育の発展に重要なことであります。
 引き続き、研修等により教員の資質向上に努めるとともに、優秀教員の表彰や、能力、実績に見合っためり張りをつけた教員給与体系の検討、団塊世代や住民などを活用した各地方における教育サポーター制度の導入に向けた検討など、さらなる環境整備に努めてまいります。
 大学の、知の拠点としての、また生涯学習の拠点としての役割についてお尋ねがございました。
 人材を眠らせない、人材を活用する社会、だれもが再チャレンジできる社会を構築するため、社会人の学び直しを推進する場である大学等の教育体制の強化は重要な課題であります。このため、社会人のキャリアアップ等に資するよう、履修形態の弾力化など大学における学び直しのための仕組みの確立に向けた支援を行うとともに、大学間の単位互換、編入、転入等の取り組みを促進してまいります。
 教育費の負担軽減策についてお尋ねがございました。
 家庭の経済的状況により就学の機会が奪われないよう、教育の機会均等を図っていくことは極めて重要であると考えています。このため、政府としては、幼稚園、保育所の教育機能を強化するとともに、幼児教育の将来の無償化等について、歳入改革にあわせて財源、制度等の問題を総合的に検討しつつ、健全性を確保した奨学金制度の充実等を推進し、教育費負担の軽減に努めてまいります。
 格差問題について、政府を挙げて若者の自立、挑戦を促すための施策を拡大すべきとのお尋ねがございました。
 いわゆるニート、フリーターと言われる若者が自立し、また安定した収入を得られるようにすることは、格差を固定化させない社会を構築する上で非常に重要な課題であり、目下、関係省庁一体となって若者の自立・挑戦のためのアクションプラン等の取り組みを進めているところです。
 現在、検討を進めている再チャレンジ支援策においても、若者のチャレンジは極めて重要な柱の一つであります。若者の正規雇用の拡大に向け、二〇一〇年までにフリーターをピーク時の八割に減らすほか、正規、非正規労働者間の均衡処遇など、引き続き施策の拡充に努めてまいります。
 若者の雇用問題についてお尋ねがありました。
 就職氷河期に正社員となれずにフリーターにとどまっている若者を初めとして、若者の雇用を促進していくためには、フリーター二十五万人常用雇用化プラン等の政府の取り組みのみならず、経済界における取り組みが大変重要であると考えております。
 政府としては、企業において新卒者以外にも門戸を広げていただくなど、若者の応募機会の拡大が図られるよう、経済団体等への働きかけや法的整備を含めた検討を進めるなど、一人でも多くの若者が再チャレンジできる社会の実現を目指して、私も先頭に立って頑張ってまいる決意でございます。(拍手)
 格差を固定しないための所得再配分機能の強化についてお尋ねがございました。
 新たな日本が目指すべきは、努力した人が報われ、いわゆる勝ち組、負け組が固定化せず、働き方、学び方、暮らし方が多様で複線化している社会、すなわち、チャンスにあふれ、だれでも再チャレンジが可能な社会であります。このため、私は、内閣の重要課題として総合的な再チャレンジ支援策を推進してまいります。
 税制の再配分機能のあり方については、今後の抜本的、一体的な改革の議論の中で検討していきたいと考えております。また、社会保障制度等を通じた再配分機能は引き続き重要な役割を果たしており、健全で安心できる社会の実現に向けて、これらの制度が持続可能なものであるよう改革を進めてまいります。
 中小企業対策についてのお尋ねがありました。
 活力あふれる地域経済の実現には、全国四百三十万の中小零細企業の元気が不可欠です。中小零細企業が地域の成長の原動力であることを認識し、中小企業の知恵とやる気を生かすため、地域資源を活用した新事業への展開支援などに全力で取り組んでいく考えであります。
 中小企業金融対策についてのお尋ねがございました。
 日本経済を支える中小企業、とりわけ新事業や事業再生への挑戦を図る中小企業への資金供給を円滑化するため、政府としては、不動産担保や個人保証に過度に依存しない融資を推進いたします。そのため、中小企業が持つ売り掛け債権や在庫等を担保とした融資に係る保証の活用を推進してまいります。
 地域資源活用企業化プログラムについてのお尋ねがありました。
 本プログラムは、地域の中小企業の手によって産地の技術や農林水産品などの地域資源を掘り起こし、新たな商品、サービスに発展させる取り組みを支援するものであります。このような取り組みに対し専門家によるきめ細かな助言や指導を行うことによって、新商品等の開発や販売を促進し、地域における新事業の創出を目指します。
 地域資源活用企業化プログラムは、さきに発表された経済成長戦略大綱においても重要な施策の柱に位置づけられており、政府といたしましても全力を挙げて取り組んでまいります。
 中小企業の事業再生についてお尋ねがありました。
 中小企業再生支援協議会は、地域の総力を結集して中小企業の再生を支援することを目的としており、平成十五年以降、これまでに約一万件の企業から相談を受け、約一千五百件の再生計画策定支援を行い、約七万人の雇用が確保されるなど、着実に成果が上がっております。
 今後とも、事業再生支援のための金融の拡充、中小企業再生支援協議会の対応能力の向上を図り、中小企業の事業再生に全力を挙げて取り組んでまいります。(拍手)
 再挑戦支援策についてのお尋ねがありました。
 我が国経済社会の活力を高めるためには、勝ち組と負け組が固定化せず、だれでも再チャレンジが可能な社会を構築することが重要であります。再チャレンジする起業家の資金調達を支援するため、政府系金融機関や信用保証協会による融資、保証の枠組みの創設、拡充を検討してまいります。
 事業承継税制の拡充についてのお尋ねがありました。
 中小企業の事業継承を円滑化することは重要な課題と認識しており、事業継承を税制面から支援するため、これまでもさまざまな特例措置を講じてきたところであります。今後の税制改革の議論の中で、事業承継税制のあり方についても、事業承継の実態を把握し、また、課税の公平にも留意しながら検討していきたいと考えております。
 歳出歳入一体改革に関し、事業の仕分け、見直しについてのお尋ねがありました。
 さきの通常国会で成立した行政改革推進法では、政府及び地方公共団体の事務事業の必要性等について、内容及び性質に応じた分類、整理等の仕分けを踏まえた検討を行う旨、規定しております。また、その後策定された基本方針二〇〇六においては、同法に基づき、事業の仕分け、見直しを行いつつ、行政のスリム化、効率化を一層徹底することとされており、今後、こうした考え方をしっかりと踏まえ、歳出改革に取り組んでまいります。
 歳出歳入一体改革に関し、行政改革についてのお尋ねがありました。
 国や地方の無駄や非効率を放置したまま国民に負担増を求めることはできません。抜本的な行政改革を強力に推進し、簡素で効率的な筋肉質の政府を実現することは重要な課題です。
 さきに成立した行政改革推進法においては、国や地方の事務事業について、その内容、性質に応じた分類、整理等の仕分けを踏まえた検討を行った上で必要な措置を講ずることとされ、このような考え方に基づき、総人件費改革や市場化テストなどを進めているところであります。今後とも、私自身がリーダーシップを発揮し、改革の一層の推進を図ってまいります。(拍手)
 仕事と生活の調和推進基本法の制定についてのお尋ねがありました。
 少子化が進む我が国において、だれもが仕事と生活の調和がとれた働き方ができる社会を実現することは重要な課題であります。このため、政府としては、出産や子育てしながら安心して働き続けることができる職場環境の整備、非正規雇用から正規雇用への転換支援、女性の再就職支援の充実、フリーターや派遣労働者などの安定的な雇用への移行の促進、労働時間等設定改善法に基づく長時間労働の是正などに取り組んでいるところであります。
 御提案の趣旨を重く受けとめ、今後さらに、子育てを応援する観点から働き方の改革を進め、子育てフレンドリーな社会の実現を図ってまいります。
 子供の成長に応じた総合的な子育て支援策の必要性についてのお尋ねがありました。
 少子化対策については、子育てのすばらしさ、家族の価値を社会全体で共有できるような意識改革を進めるとともに、こうした価値観に立って、出産前後や乳幼児期における経済的負担の軽減を含め、子供の成長に応じた総合的な子育て支援を進めることにより、子育てフレンドリーな社会の構築を目指してまいる決意であります。
 きめ細やかな子育て支援についてのお尋ねがございました。
 子育て支援については、これまでも、地域のきずなを大切にしながら、親子が気軽に相談、交流できる地域の子育て支援の拠点の整備、一時保育を初めとする多様な保育サービスや放課後対策の充実などに努めてきたところであります。御提案の内容も踏まえ、今後とも引き続き、さまざまな子育て家庭のニーズに対応できる、きめ細かな地域子育て支援策を進めてまいります。
 結婚・子育て世帯向けの住宅支援についてのお尋ねがありました。
 いわゆる巣づくり支援は、子育てフレンドリーな社会を構築する上で重要な課題であります。さきの通常国会で成立した住生活基本法においても、子育て世帯の居住の安定確保を基本理念として位置づけたところであり、安心して子供を生み育てられる環境整備に取り組んでまいります。
 社会保障制度の一体的見直しについてのお尋ねがありました。
 社会保障制度は、安心の社会を築く基盤となる、人生のリスクに対するセーフティーネットであり、制度の持続可能性を高めるため、年金、介護、医療等の一連の改革が進められてまいりました。引き続き、急速な少子高齢化の進行に伴い給付の増大が見込まれる中で、その伸びを抑制することが必要であります。
 今後、これまでの制度改革の効果を検証しながら、中長期的な展望に立って、安定的な財源確保の問題や、国、地方の財政事情なども視野に入れた検討が必要であります。また、その際には、自助、共助、公助の役割分担、世代間、世代内の公平性等に留意しながら、わかりやすく、親切で信頼できる社会保障制度とする必要があります。制度全般にわたり不断の見直しを行い、給付と負担を一体的にとらえた改革を継続してまいります。
 社会保険庁改革についてのお尋ねがありました。
 社会保険庁については、業務改革、職員の意識改革及び組織改革を強力に推進し、国民の信頼回復を一日も早く図ることができるよう徹底した改革を行い、解体的出直しを実現しなければならないと考えております。(拍手)
 現在、社会保険庁改革の関連法案を国会に提出し、御審議をいただいているところであり、これが解体的出直しにふさわしいかどうか、また、すべて公務員でやらなければならないかどうかということも含めて国会で十分に御議論をいただいた上で、国民の信頼を得ることができる新組織を早期に実現してまいります。
 がん対策についてお尋ねがありました。
 がんは日本人の死因の第一位であり、その対策の一層の充実は、速やかに取り組むべき重要課題と認識しております。
 政府としては、今後、さきの通常国会で成立したがん対策基本法に基づき、専門家や患者の方々の御意見も得ながら、対策を総合的、計画的に推進するため、がん対策推進基本計画を閣議決定することといたしております。
 また、その一環として、御指摘の、放射線治療専門医等のがん医療従事者の育成や、がん診療連携拠点病院の整備等に取り組み、地域において質の高いがん医療を受けることができる体制を拡充するとともに、所信表明において掲げた新健康フロンティア戦略により予防対策の充実を図るなど、がん対策全般についてより一層推進をしてまいります。
 障害者自立支援法についてのお尋ねがありました。
 本制度は、障害者の方々に対するサービスの計画的な整備、就労支援の強化などを目指しスタートしたものであります。今年度においては、障害福祉サービスの予算を一〇%以上拡充し、御指摘のように、地域独自のサービス基盤整備の取り組みや、福祉施設で働く障害者の工賃を引き上げていくための自治体の取り組みに対して支援を行っているところであります。引き続き、こうした取り組みを進め、障害者の方々が安心して暮らすことができる地域社会の実現に最善を尽くしてまいります。
 子供の安全確保についてのお尋ねがありました。
 次代を背負って立つ子供を犯罪から守ることは、政府の基本的な責務であると認識をしております。政府としては、地域の力を総合的に生かしたまちづくりを進めるとともに、地域安全ステーションモデル事業を拡充するなどして、子供を犯罪から守るための施策を一層充実させ、世界一安全な国日本の確立に向けて全力を尽くしてまいります。
 製品全般の安全性についてのお尋ねがありました。
 国民の安全を確保することは、政府の基本的な責務であります。政府としては、国民生活に身近な製品における事故の再発防止に向けて取り組んでまいります。このため、事故リスク情報の公開や安全規制の強化のための所要の法改正案を本臨時国会にも提出するよう、経済産業省に準備させているところであります。
 飲酒運転防止対策についてのお尋ねがありました。
 飲酒運転による悲惨な事故は根絶しなければなりません。政府としては、飲酒運転の根絶を図るため、広報啓発活動の強化、取り締まりの徹底、飲酒運転に対する制裁の強化を含む制度改正に向けた取り組みに全力を尽くしてまいります。
 地方分権の推進についてお尋ねがありました。
 地方の活力なくして国の活力はありません。やる気のある地方が自由に独自の施策を展開し、魅力ある地方に生まれ変わるよう、必要となる体制の整備を含め、地方分権を進めます。政府では、そのための推進法案を今国会に提出するべく準備をしております。そして、地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与、国庫補助負担金の廃止、縮小等を図ります。また、道州制の本格的導入に向けた道州制ビジョンの策定を進めてまいります。
 アジア外交についてお尋ねがありました。
 アジアが自由で活力ある地域となるよう、アジア諸国との外交に主導力を発揮いたします。大事な隣国である中国、韓国とは、あらゆるレベルと分野で対話と協力を積み重ね、双方の努力を通じて未来志向の関係を築いていきます。両国との首脳会談については、常に扉をオープンにしてきており、その実現に向けて双方で努力をしてまいります。同時に、インドや豪州等の基本的価値を共有する民主主義国、さらにはASEAN諸国との連携を一層強化します。こうした取り組みを通じて、アジア全域の連帯を強めてまいります。
 国連改革及び我が国の安保理常任理事国入りについてのお尋ねがありました。
 我が国は、世界の平和と繁栄のために国連が果たす役割を重視し、安全保障、開発、人権等、さまざまな面における改革の議論に引き続き積極的に貢献していきます。
 特に、私は、日本が安全保障理事会の常任理事国となって、しっかりとその責任を果たしていかなければならないと考えています。戦後つくられた国連を二十一世紀にふさわしい国連に変えていくため、我が国の常任理事国入りを目指し、国連改革に引き続き取り組んでまいります。(拍手)
 人間の安全保障への取り組みについてお尋ねがありました。
 我が国は、グローバル化の中で多様化する脅威に対処するため、国際社会の中で、人間一人一人の保護と能力強化を重視する人間の安全保障の考え方を推進しています。また、人間の安全保障は、政府開発援助大綱にも明記され、我が国のODA実施に当たっても重要な視点になっています。
 政府としては、今後とも、人間の安全保障基金やその他のODAを活用し、貧困、感染症、環境等の課題に取り組むことにより、人間の安全保障の実践に努めてまいります。
 憲法論議の方向と国民投票法案についてのお尋ねがありました。
 国の理想、形を物語るのは憲法であります。現行の憲法は、日本が占領されている時代に制定され、また、六十年近くを経て現実にそぐわないものとなっています。私は、今こそ、私たち自身の手で、二十一世紀にふさわしい日本の未来の姿あるいは理想を憲法として書き上げていくことが必要と考えています。
 今後、与野党において議論が深められ、方向性がしっかりと出てくることを願っております。まずは、日本国憲法の改正手続に関する法律案の早期成立を期待します。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣伊吹文明君登壇〕
#6
○国務大臣(伊吹文明君) 太田代表からは、四点の御質問がございました。三点は、義務教育、初等中等教育に関するものであります。一点は、大学教育に関するものであります。既に総理から基本的なことはお答えをいたしておりますので、私から若干の補足をさせていただきます。
 まず義務教育は、基本的に、日本人として生きていく基礎学力、そして日本社会の一員として生きていくための社会規範をしっかりと教えてもらうことであって、これは、学校、それから家族、家庭、そして何よりも地域社会、この三つの連携の中から行われるものであります。今は、社会状況の変化等がありまして、若干、地域あるいは家庭、また学校の教育力の低下が言われております。総理が答弁をいたしましたように、学校協議会等、学校と地域の結びつきの成功例を地方自治体に発信いたしまして、きめ細かに対応をしていきたいと思います。
 第二点は、いじめ、不登校の問題でございます。
 北海道の滝川市からは、いじめを苦にして自殺をするというまことに悲しいニュースがございます。学校、家庭、そして地域社会で子供の異変を的確に把握をして、そしてこれに対応できる臨床心理士等のケースワーカーの充実を図らねばならないというのは、太田代表の御指摘のとおりであります。教育の党公明党を標榜しておられる太田代表には、予算その他において一段の御協力をお願いする次第であります。(拍手)
 三番目は、よき教師のあるところ、やはりよき学生生徒ができるわけでありますから、教師の資質向上というのは何より大切で、おっしゃるとおりの研修その他は、初任あるいは十年の現在の研修をさらに充実していかねばならないと思いますが、加えて、中教審から既に御提言をいただいております教員免許の更新のあり方、あるいは人確法の運用によって、よくやってくれた教師への傾斜配分その他について、いずれ立法府に御相談をしなければならないときがあると思っております。
 それから四番目は、高等教育であります。
 独立の国立大学法人であれ私学であれ、国民の血税によって助成をしているということは何ら変わりはありませんので、これは全国民のために使わねばなりません。研究の拠点あるいは将来の技術開発のシードをつくるという役割に加えて、もう一度やり直そうという人たちの学びの場でなければなりませんし、同時に、実社会をリタイアされて年金生活に入られた方が真理をきわめたいという生きがいの場でもなければなりません。
 したがって、学校、大学相互間の講座の公開であるとか、あるいはまた単位の互換制であるとか、そういうことについて、御指摘があったことを踏まえてさらに一層充実をさせてまいりたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕
#7
○国務大臣(柳澤伯夫君) 太田代表からは、肝炎対策と障害者自立支援法の施行状況についてお尋ねがございました。
 まず、ウイルス性肝炎につきましてですけれども、かつて予防注射が行われておりましたが、それの針が連続使用された、お互い経験のあるところですが、そういうことであるとか、あるいは出産時等の異常出血をとめる薬剤に起因するというようなことが言われておりまして、患者の方々から一部訴訟が提起されておることは皆さん御承知のとおりでございます。
 感染後、発症しておられる方と無症候の方がいらっしゃるわけですが、こうした肝炎につきましては、何よりも早期発見、早期治療の促進並びに治療水準そのものの向上によって、感染者の健康の保持、増進及び不安の解消を図ることが最も重要なことだと考えております。
 こうした観点から、厚生労働省といたしましては、委託による検査機関の拡充など受診者の利便性に配慮した検査体制の強化を進める、また、各地の専門医療機関とかかりつけのお医者さんの連携体制をより的確に構築するなど、総合的な肝炎対策の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。
 次に、障害者自立支援法について申し上げます。
 本年施行された障害者自立支援法は、支援の必要度に応じて客観的な尺度を導入するとともに、生活や就業など障害者のニーズに即応した支援体制の整備を図るなどの改革を行い、他方、利用者にサービス費用の一部を負担していただくことといたしたところであります。
 御指摘の自治体への助成につきましては、施設やヘルパーの計画的整備をお願いいたしておりますので、これに対して財源の確保に努めますとともに、障害者の就業の際の工賃の引き上げのためには、企業のOBの指導をいただくなど、作業レベルの向上を図るための工賃ステップアップ事業というものを目下行っているところでございます。
 こうした取り組みを進めて、障害者の方々が安心して暮らすことのできる地域社会の実現を引き続いて求めてまいりたい、このように考えております。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇〕
#8
○国務大臣(冬柴鐵三君) 災害に強い国土づくりについてお尋ねがありました。
 災害に強い国土の形成は、我が国土交通省の最も重要な責務であり、御指摘のように、厳かな使命であると認識をいたしております。
 我が国は今、いつ、どこででも地震が発生し得る状況にあり、特に、首都直下地震、東海地震、東南海・南海地震等の大震災発生の切迫性が指摘されているわけであります。これらのどれが発生しても、被害は極めて膨大となることが予想されています。
 また、近年、地球温暖化の進行が懸念される中、想定を大きく超える豪雨等が頻発し、ことしも鹿児島県川内川等で大災害が発生するなど、毎年大きな被害が出ています。
 このような中、災害に強い国土づくりのための施設整備を早急に進めるに当たって、限られた予算ではありますが、徹底した重点化を図り、また、省を挙げて知恵を絞ってまいりたい、このように思っております。
 また、減災の視点に立って、施設や建築物の耐震化の促進、発災時に重要業務を継続させるための事業継続計画、いわゆるBCPの策定や、耐震改修促進計画の策定の促進、ハザードマップづくり等の事前の予防措置を進めます。加えて、事後の応急対策の充実を図るなど、ハードとソフト両面から全力で推進をしてまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(河野洋平君) 志位和夫君。
    〔志位和夫君登壇〕
#10
○志位和夫君 日本共産党を代表して、安倍首相に質問します。(拍手)
 まず、歴史問題への態度についてです。
 小泉前首相は、靖国神社への連続参拝に固執するなど、日本の過去の戦争への無反省の行動を続けることで、アジア外交を八方ふさがりに追い込みました。安倍首相が、この誤りを継承せず、大もとからの転換を図ることを多くの日本国民が願い、アジアの諸国民も強く望んでいます。
 私は、首相の歴史認識について、端的に三つの点をただすものです。
 第一は、靖国神社が立っている歴史観、靖国史観にどういう態度をとるのかという問題です。
 靖国神社は、その境内にある軍事博物館、遊就館の展示が示すように、日清、日露戦争から中国侵略戦争、太平洋戦争に至る過去の戦争のすべてを、アジア解放、自存自衛の正しい戦争だとする歴史観、戦争観に立っています。首相は、この神社の戦争観を是とするのか非とするのか。私は、仮に首相が靖国史観を是とするならば、戦後世界秩序の土台を否定するものとして、首相の職責を担う資格がなくなると考えます。反対に、首相が靖国史観を非とする、神社の立場と自分の立場は違うというなら、この神社への参拝は中止すると言明すべきであります。
 昨年七月、民放テレビでの安倍さんとの一対一の対論で、私がこの問題をただしたのに対して、安倍さんの答えは、歴史が判断するだろうというものでした。しかし、日本の過去の戦争が領土拡張と他国支配を目指す侵略戦争であったことは、既に六十一年前に世界史の審判が下ったことではありませんか。首相という地位についた以上、日本が国家として犯した誤りについて、歴史が判断するだろうなどというごまかしを続けることは許されません。明確な答弁を求めます。(拍手)
 第二は、日本政府がこれまで公式に明らかにしてきた歴史認識に首相がどういう態度をとるかという問題です。
 日本政府は、戦後五十年に当たる一九九五年に村山談話を出しています。そこでは、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」として、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを述べています。
 この談話は、私たちから見ますと不十分な点もありますが、政府の歴史認識の重要な到達点でした。ところが、安倍首相は、これを継承すると明言せず、歴史的な談話と述べるにとどまっています。首相に伺いたい。首相は、村山談話を継承し、首相自身の歴史認識に据えるのかどうか。特に、村山談話で明記されている、国策を誤り、戦争への道を歩んだという認識を共有するのかどうか。明確に答弁していただきたい。(拍手)
 第三は、従軍慰安婦問題についての日本政府の公式見解に首相がどういう態度をとるのかという問題です。
 日本政府は、一九九三年の河野官房長官談話で、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については旧日本軍が直接、間接に関与したこと、慰安所における生活は強制的な状況のもとでの痛ましいものであったことを公式に認め、心からのおわびと反省を述べるとともに、歴史教育などを通じて、同じ過ちを決して繰り返さない決意を表明しました。ところが、首相は、一九九七年の国会質疑で、河野談話の根拠は崩れていると主張し、修正まで要求しています。今でも首相は、河野談話の根拠は崩れているという認識なのでしょうか。はっきりお答え願いたい。
 朝鮮半島などから本人たちの意思に反して集められた従軍慰安婦の問題が旧日本軍が関与した非人道的な犯罪行為だったことは、日本政府自身の調査で明らかになったことです。それを覆すことは絶対に許されません。
 私は、先月上旬、初めて韓国を訪問し、国会議長、与野党のリーダーなど韓国政界の方々と広く交流する機会を得ました。日本帝国主義によって三十五年間にわたり植民地とされた屈辱と怒りは、大変に深いものがあると痛感しました。同時に、韓国の方々が、日本との本当の友好を強く求めている、そのためにも日本政府が歴史の事実を歪曲することはやめてほしいと切実に願っていることも痛感いたしました。
 たとえそれが目を背けたくなるものであっても、日本は、過去に誠実に向き合い、誤りを真摯に認めてこそ、本当に心通う友人をアジアに得ることができます。安倍首相がその立場に立つことを、私は強く求めるものであります。(拍手)
 次に、憲法改定について伺います。
 首相は、所信表明演説で、現行憲法でも集団的自衛権が行使できるよう、個別具体的な例に即して研究していくと述べました。それはどういう内容なのでしょうか。
 首相は、ことし八月の講演で、イラクでの自衛隊の活動に触れ、一緒に活動している外国の軍隊に対して攻撃がなされたら、その状況に黙って見ていなければならないのか、真剣に考えなければならないと述べています。最近の著作では、軍事同盟というのは血の同盟です、しかし、今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないと述べています。そこで、憲法解釈を変え、イラク戦争などでアメリカが攻撃されたときに、ともに血を流す、文字どおりの血の同盟になる、これが首相の言う個別具体的な研究の内容なのですか。
 そもそも、集団的自衛権の行使とは、日本が武力攻撃を受けていなくても、アメリカが戦争状態に入ったら、ともに戦争を戦うということにほかなりません。首相は、五年をめどに憲法改定を実現したいと述べていますが、結局、首相が言う憲法改定の目的は、アメリカとともに海外で戦争をする国をつくることではないのですか。答弁を願いたい。
 日本共産党は、憲法を変え、日本を戦争する国につくりかえる動きに断固として反対し、世界に誇る憲法九条という宝を守り抜くために力を尽くすものです。(拍手)
 次に、教育基本法改定について質問します。
 政府の改定案は、愛国心を国民に強制し、憲法が保障した内心の自由を侵害するとともに、国家の教育への介入を無制限にし、憲法が保障した教育の自由と自主性をじゅうりんするという二重の問題点を持つものです。私は、きょうは、首相の教育観の根本について具体的に伺いたいと思います。
 一つは、九月二十一日、東京地裁が、東京都で行われている日の丸・君が代の強制について、違憲、違法であるとの判決を下したことについてであります。
 東京都では、卒業式や入学式などで常軌を逸した日の丸・君が代の強制が行われ、それに従わない教職員を処分するという異常な事態が起こっています。東京地裁判決では、国旗・国歌を尊重することは当然だとしつつも、日の丸・君が代はその歴史的経緯から反対する国民も少なからずいること、日本国憲法は相反する世界観、主義主張の相互の理解を求めており、一律に個々人に強制することは、思想、良心、内心の自由を保障した憲法十九条に反し、また、教育への国家権力の不当な支配を排除した教育基本法第十条に反するものだと断罪しました。これは、良識ある当然の判決だと思います。
 政府は、これまで、東京都で行われている日の丸・君が代の強制について、適切な判断と擁護してきましたが、この態度を改めるべきではありませんか。首相の答弁を求めます。
 いま一つは、首相の言う教育再生についてです。
 首相は、全国一斉学力テストを行いその結果を公表すること、学校選択制を全国に広げること、国が全国に監査官を配置して学校と教員を監視、評価すること、国がよい学校と評価した学校には予算を配分するが、悪い学校と評価した学校は廃校にするなどの方策を実行するとしています。ここに流れているのは、子供たちを一層激しい競争に追い立て、いわゆる、できる子とできない子にふるい分けをする。国が教育内容に無制限に介入し、教育を国家の統制のもとに置くという考えです。
 しかし、こうした考え方こそ、日本の教育を荒廃に追いやった元凶ではないでしょうか。国際的な学力調査で連続的に世界一となっているフィンランドでは、競争主義を教育から一掃したこと、学校と教師の自由と自律性を尊重していること、少人数学級など行政が本来なすべき分野で責任を果たしていることが教訓とされています。この教訓にこそ学ぶべきではありませんか。首相の教育についての見識を伺いたいと思います。(拍手)
 最後に、格差社会と貧困の深刻な広がりに政治がどう対応するかについて質問します。
 首相は、所信表明演説で、再チャレンジ可能な社会を強調しましたが、その中身は何も見えませんでした。
 先日、NHKスペシャルでも特集をしていましたが、今、ワーキングプア、まじめに働いているのに生活保護水準以下の暮らししかできない人たちが、日本の全世帯の十分の一、四百万世帯ともそれ以上とも言われるまでに広がっています。都会の若者の場合、二十代まではアルバイトなどで仕事が見つかっても、三十代になると働き口がなくなり、収入が途絶えた途端、家を失い、路上生活を始めざるを得ないという状況があります。ワーキングプアを取材したレポーターは、最後にこう言いました。こういう人たちに対して、努力が足らないと言う人がいます、しかし、取材に応じてくれた人の中に、努力をしない人、意欲がない人は一人もいませんでした。
 首相は、こういう深刻な事態を一体だれがつくったと認識しているんですか。派遣労働を自由化するなど、人間らしい労働のルールを破壊してしまった自民党政治の責任が問われていると考えませんか。その反省抜きに再チャレンジと言うのは、間違った政治の責任を国民の自己責任に転嫁する卑劣な議論ではありませんか。
 こんな小手先のごまかしでなく、経済政策の根本的な転換が必要です。人間らしい労働のルールをつくる。国民がだれでも安心して暮らせるよう社会保障の充実を図る。庶民への増税、消費税増税を中止し、空前のもうけを上げている大企業に、もうけ相応の負担を求めるべきであります。首相の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 志位和夫君にお答えいたします。
 靖国神社の戦争観、歴史観、私の靖国神社参拝についてお尋ねがありました。
 政治家の発言は政治的、外交的な意味を持つものであることから、特定の戦争観、歴史観の是非について政治家が語ることについては謙虚であるべきだと考えております。
 戦争観、歴史観と離れ、なお私の靖国神社参拝について申し上げれば、国のために戦ってとうとい命を犠牲にした方々に対して、手を合わせ、御冥福をお祈りし、尊崇の念を表する気持ちは持ち続けていきたいと思っております。(拍手)
 歴史認識についてのお尋ねがありました。
 さきの大戦をめぐる政府としての認識については、御指摘の記述を含め、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話等において示されてきているとおりであります。
 一方、先ほど申し上げましたように、政治家の発言は政治的、外交的な意味を持つものであることから、歴史の分析について政治家が語ることについては、やはり謙虚であるべきだと考えております。
 いわゆる従軍慰安婦の問題についてお尋ねがありました。
 いわゆる従軍慰安婦の問題についての政府の基本的立場は、平成五年八月四日の河野官房長官談話を受け継いでおります。
 アジア諸国との関係についてお尋ねがありました。
 我が国は、さきの大戦後、一貫して民主的な平和国家として発展し、アジア及び世界の平和と繁栄に貢献してきました。我が国は、アジアの平和と繁栄を維持強化するため、今後とも、アジア全域の連帯の強化に主導力を発揮してまいります。
 そのために、大事な隣国である中国、韓国と、あらゆるレベルと分野で相互理解と率直な対話や協力を積み重ね、双方の努力を通じて未来志向の関係を築いていきます。同時に、インドや豪州等の基本的価値を共有する民主主義国、さらにASEAN諸国との連携を一層強化してまいります。
 集団的自衛権についてのお尋ねがありました。
 政府としては、これまでの憲法解釈や国会における議論の積み重ねを十分尊重しつつ、大量破壊兵器やミサイルの拡散、テロとの闘いといった国際情勢の変化や、武器技術の進歩、我が国の国際貢献に対する期待の高まりなどを踏まえ、日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究をしてまいります。
 研究に当たりましては、これまでの国会等における御議論も十分踏まえながら、整々と検討を進めてまいりたいと考えております。
 憲法改正については、新しい時代にふさわしい憲法のあり方についての議論が積極的に行われており、与野党において議論が深められ、方向性がしっかりと出てくることを願っているものであり、憲法改正の目的が海外で戦争をする国をつくることであるとの御批判は、全く当たらないと考えております。(拍手)
 日の丸・君が代についてのお尋ねがありました。
 学校教育において、国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てることは重要なことであります。
 学習指導要領では、入学式や卒業式などにおいて、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとされていることを踏まえ、東京都におかれては、適切に判断し、対処していただいているものと考えております。
 今後とも、全国の学校において国旗・国歌に関する指導が適切に行われるよう、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)
 教育再生についてお尋ねがありました。
 義務教育改革については、全国どの地域においても一定水準の教育を受けることができるようにし、また、その成果もしっかり把握、検証する仕組みが重要です。
 このため、すべての子供たちにより高い学力や規範意識を身につける機会を保障できるよう、教員の資質向上のための施策を行うとともに、学校同士が切磋琢磨して質の高い教育を実現できるよう、外部評価を導入することが必要であると考えています。その上で、問題がある学校や教員についてはその再生を図ることを考えており、御指摘は当たらないと考えております。
 ワーキングプア及び労働者派遣の規制緩和についてのお尋ねがありました。
 最近の非正規雇用の増加傾向は、経済産業構造の変化や価値観の多様化などにより、企業や労働者が多様な働き方を求めるようになってきていることが背景と認識しております。
 労働者派遣法など労働法制に関する規制改革は、労働者の保護にも留意しつつ、仕事の内容や日時を選ぶことができるという労働者のニーズにこたえた雇用機会の確保、紹介予定派遣制度を利用した派遣先での直接雇用の実現など、雇用面において一定の効果を上げていると考えています。
 他方で、将来の格差の固定化につながるおそれがあるフリーター、ニート等若年層の非正規化や未就業者の増加などを防止し、再チャレンジを支援するため、フリーター二十五万人常用雇用化プラン等を推進し、二〇一〇年までにフリーターの数をピーク時の八割に減らすとともに、ハローワークにおいて正社員としての就業の支援に積極的に取り組むほか、正規、非正規労働者間の均衡処遇の実現に向け、法的整備を含めた検討を進めるなど、正規雇用の拡大を初め、だれもが安心し、納得して働くことのできる働き方の改革にしっかりと取り組んでまいります。
 人間らしい労働ルール、安心して暮らせる社会保障及び税制についてお尋ねがありました。
 人間らしい労働ルールの整備については、就業形態の多様化が進む中、どのような働き方を選んでも安心、納得して働けるように、労働契約のルールの整備や、仕事と生活の調和のとれた働き方の推進等に努めてまいります。
 社会保障については、今後とも、人生のリスクに対するセーフティーネットとして重要な役割を果たしていくためには、制度の持続可能性を高めることが必要であり、歩みをとめることなく制度の改革を推進してまいります。
 税制の検討に当たっては、財政の健全化と同時に、経済活力の活性化を図り、成長を促進させていくことも重要と考えており、今後とも、企業に対する課税についてもこうした考え方を踏まえて対応してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(河野洋平君) 日森文尋君。
    〔日森文尋君登壇〕
#13
○日森文尋君 社民党・市民連合を代表して、安倍総理の所信表明演説に質問いたします。(拍手)
 総理、あなたは、美しい国について、凜とした国、活力にあふれ、自律の精神を大事にし、世界から尊敬される国とおっしゃいましたが、残念ながら具体性がありません。しかも、骨太方針の内容を随所にちりばめて、筋肉質の政府を目指すと言われると、生活や福祉を切り捨て、外交、安全保障のみを重視する強い国こそ美しい国という印象しか残りません。美しい国について、国民にもっとわかりやすく説明してください。
 総理は、都市と地方の不均衡や、勝ち組と負け組の固定化への懸念などを解決すべき重要な課題、こう位置づけていらっしゃいます。しかし、この五年半の小泉政治の影の部分、小泉改革の痛みについて一体どういう認識をお持ちなのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。また、総理も政府や党の要職にあって、この改革に直接携わってきた責任があると思いますが、いかがでしょうか。
 政策の柱である再チャレンジも、負け組の発生が大前提です。人生の各段階で多様な選択肢とおっしゃいますが、格差社会で強いられた選択を自己責任として受け入れよということなんでしょうか。一例を挙げると、障害も自己責任なんでしょうか。障害者の皆さんは、再チャレンジどころか、生きる機会すら奪われようとしています。自立支援法の応益負担は直ちに凍結すべきじゃないでしょうか。
 貝塚啓明東大名誉教授は、英米の八〇年代の貧困拡大や不平等化の進行について、背後にはある種のイデオロギー、つまり新保守主義が定着していると述べていますし、旧経済企画庁も九八年、日本は平等な国だから、格差を広げる市場重視型改革の余地があるという報告を出しています。格差はこの間の改革の帰結であり、総理の言う改革の加速と補強は問題を悪化させるだけです。本当に格差問題を解決する気があるのか、甚だ疑問です。改革の根本的な転換なしに問題の解決はありません。総理の御見解をお伺いいたします。
 教育においても、親の所得階層によって行ける学校が決まるという格差の固定化が進んでいます。あすもいいことがある、こう思って寝る小学生はわずか三割という結果が示しているように、希望の格差も広がっているんです。これをどう是正するのか、これもお聞かせください。
 総理は、教育の目的について、「志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくること」と強調していらっしゃいます。しかし、個々人一人一人の人格の完成や平和的な国家及び社会の形成者の育成、真理や真実の探求といった視点こそ戦後教育の出発点であったはずです。総理は、著書「美しい国へ」で、戦後のこの国の形について、決して変えるつもりはない、こう明言していらっしゃいますが、ならば、教育基本法は今のままで何が問題なのか、総理の御見解を改めて明らかにしていただきたいと思います。
 「美しい国へ」の中では、サッチャーに倣った教育改革の具体策が提案されています。イギリスでは、四十四年ぶりに教育法が改正され、国家による教育内容の決定、伝統的価値観の継承、公費維持学校の教育権は教育大臣にあることなどが盛り込まれました。特に、歴史教科書は植民地支配や奴隷貿易を正当化する内容に変わり、学校選択制とリンクをした全国共通試験によって、番付が低い学校は予算を削られ、最終的には廃校処分も生まれたと聞いています。子供も学校も教員も激しい競争を要求され、その結果、国際社会の批判を無視してまでイラク戦争を遂行できる強い国家、そしてそれを支える品質の高い国民、これが育成されたと言われているんです。このイギリスの教育改革について総理はどう認識されているのか、お伺いをいたします。
 九月二十一日の日の丸・君が代予防訴訟の東京地裁判決は、最高裁の学力テスト事件判決の論理に従い、学習指導要領に法的拘束力を認め、式典での国旗掲揚、国歌斉唱を有意義なものとした上で、都教委の対応には余りにも行き過ぎがあるとして違憲、違法の判断を下しました。改めて、総理はこの判決をどのように受けとめるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
 訪中、訪韓の日程調整中と聞いていますが、中国、韓国との信頼関係の強化を重視するとしながら、小泉前首相の靖国神社参拝問題で悪化した現状をどう打開するかについては、総理は具体的に示されていません。なぜ中国、韓国との関係が悪化したと考えていらっしゃるのか、今後関係改善をどう進めていくのか、改めて具体的な道筋を明らかにしていただきたいと思います。
 総理は、さきの戦争の評価は後世の歴史家に任せるべきとして、戦後五十年の村山談話についても態度はあいまいです。しかし、小泉前総理でさえ、アジアに対しては村山談話を持ち出さざるを得ませんでした。総理は学者ではなく政治家なんです。さきの戦争に対する認識と村山談話の評価をみずからの言葉で改めて明らかにしていただきたいと思います。
 また、憲法前文について、総理は、わび証文などという信じがたい評価を下していますが、その理由は一体何ですか。この認識は政府の公式見解に沿うものなのかどうなのか、これについても明らかにしていただきたいと思います。
 アメリカの原子力潜水艦ホノルルの艦尾付近で採取した海水から、放射性物質のコバルト58あるいはコバルト60が検出されました。米海軍の原子炉は安全であり放射能漏れはないという主張が誤りであったことが明らかになりました。総理は、主張する外交を掲げるのですから、アメリカに対しても厳しく抗議し、原因の徹底究明と再発防止、それまでの間はアメリカ原子力艦船の入港中止を毅然と申し入れるべきです。総理の見解を伺いたいと思います。
 総理は、「美しい国へ」の中で、特攻隊員の死に触れて、自分の命をなげうっても守るべき価値ということを強調されました。若者を特攻に追い込んださきの大戦を始めた政治指導者の一人に祖父の岸信介氏がおられますが、総理は、みずからの著書で触れているこのはかない死を迫られた若者の苦悩と、それを強制した政治・軍部指導者の罪を一体どのように理解しているのでしょうか。
 フランスの詩人フランシス・ポンジュは、人間は人間の未来であるとうたっています。これについて、神野直彦東大大学院教授は、人間が人間社会をつくり出そうとする不断の努力、それが人間の歴史にほかならない、こうした人間の歴史から目を背け、暗き冬の訪れにおびえながら、夏時間から冬時間に時計の針を戻すように、歴史の時計の針を逆転させてはならないと言っています。
 最後に、再び若者に、総理自身がおっしゃっている、はかない死を強いてはならないという総理のかたい決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 日森文尋議員にお答えをいたします。
 美しい国の具体像についてお尋ねがありました。
 私が目指す美しい国とは、活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大切にする、世界に開かれた国であります。
 常に新たな活力を生み出せるオープンな経済社会、努力した人が報われ、だれでも再チャレンジが可能な社会、助け合いの精神に支えられた安心できる社会、そして、世界からも信頼され、尊敬される、リーダーシップのある国、そうした国が美しい国の具体像であると考えます。
 小泉構造改革への認識と、改革に携わった私の責任についてお尋ねがございました。
 この五年半にわたる構造改革と国民の自助努力の相乗効果により、我が国は長い停滞のトンネルを抜け出し、未来への明るい展望が開けてきたと認識をしております。今後も、この改革の炎を燃やし続けていきたいと考えております。
 一方、都市と地方の間における不均衡や、いわゆる勝ち組、負け組が固定化することへの懸念など、解決すべき課題も存在しております。このため、内閣の重要課題として、前向きに取り組む地方のための頑張る地方応援プログラムや総合的な再チャレンジ支援策を推進してまいります。
 このように、小泉総理が進めてきた構造改革をしっかりと引き継ぎ、改革を加速させ、補強してまいります。
 再チャレンジについてお尋ねがありました。
 再チャレンジ支援策の目指すものは、努力をした人が報われる社会の構築であります。努力の過程では失敗することもありますが、一度の失敗で人生が決まってしまったり、勝ち組、負け組として固定化されないことが重要であります。
 このため、人生の各段階で多様な選択肢が用意され、それを自由に選択することを通じ、だれでも何度でも再チャレンジできる社会を実現すべく、必要な施策をしっかり実行してまいります。
 改革の加速と補強は問題を悪化させるのではないかとのお尋ねがありました。
 経済、社会全般にわたる構造改革と国民の自助努力の相乗効果により、我が国においては、未来への明るい展望が開けてきたところであります。このため、私は、五年半小泉総理が進めてきた構造改革をしっかりと引き継ぎ、改革を加速させ、改革を補強していきたいと考えております。
 私が目指すべきは、努力した人が報われ、いわゆる勝ち組と負け組が固定化しない社会、チャンスにあふれ、だれでも再チャレンジが可能な社会だと考えております。内閣の重要課題として、総合的な再チャレンジ支援策を推進してまいります。
 教育格差についてお尋ねがありました。
 私は、格差の固定化はあってはならないと考えており、親の所得など家庭の経済状況によって就学の機会が奪われないよう、しっかりと手を差し伸べることが必要であると考えます。このため、従来からの施策に加え、すべての子供たちにより高い学力や規範意識を身につけるよう、公教育の再生に直ちに取り組んでまいります。
 教育基本法についてお尋ねがございました。
 戦後、教育基本法の理念のもとで構築された教育諸制度は、国民の教育水準を向上させ、我が国の社会発展の原動力となってきました。
 しかし、教育基本法は、昭和二十二年の制定以来半世紀以上が経過しており、この間、科学技術の進歩や少子高齢化など、教育をめぐる状況は大きく変化するとともに、子供たちの道徳心、自律心や学ぶ意欲の低下、家庭や地域の教育力の低下など、さまざまな課題が生じており、教育の根本にさかのぼった改革が求められております。
 このため、教育基本法を改正し、新しい時代の教育理念を明確に提示し、国民の共通理解を図りつつ、社会全体による教育改革を着実に進め、我が国の未来を切り開く教育の実現を目指すものであります。政府としては、今国会における政府提出法案の早期成立を期し、しっかりと取り組んでまいります。
 イギリスの教育改革についての認識についてお尋ねがございました。
 サッチャー政権では、国定のカリキュラムの策定や全国学力調査の導入、学校監査制度による学校評価の充実といった施策を通じ、教育水準の向上を目指す教育改革を行いました。また、ブレア政権では、これらの政策を引き継ぐとともに、他者への思いやりや、権利だけでなく責任を担う意識などを再構築することを掲げたリスペクトプランを発表しました。
 このように、近年のイギリスの教育改革は、国民としての誇りと自信の回復、しっかりとした学力の形成をねらいとして実施されたものではないかと認識しております。
 九月二十一日の東京地裁判決についてのお尋ねがありました。
 学校教育において、国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てることは重要なことです。入学式や卒業式などの儀式の場における国歌斉唱や国旗掲揚は、各学校において適切に行われる必要があると考えています。
 なお、御指摘の裁判については、現在、東京都が東京高裁に控訴中であると承知をしております。
 中国、韓国との外交についてお尋ねがありました。
 大事な隣国である中国、韓国とは、あらゆるレベルと分野で対話と協力を積み重ね、双方の努力を通じて未来志向の関係を築いていきます。両国との首脳会談については、常に扉をオープンにしてきており、その実現に向けて双方で努力をしています。
 国が違えば認識が違うこともあります。そういうときこそ、首脳同士が会い、胸襟を開いて対話をしていくことが大切であると考えています。
 歴史認識についてのお尋ねがありました。
 さきの大戦をめぐる政府としての認識については、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話等において示されてきているとおりであります。
 これらのうち、いわゆる村山談話については、戦後五十年という節目において、閣議決定した上で内外に示された歴史的な談話であると考えています。
 憲法前文についてのお尋ねがありました。
 政府としては、御指摘の憲法前文の第二段の文理は、我が国が平和主義及び国際協調主義の立場に立つことを宣明したものであるとしてきたところであります。
 現行憲法は、その前文も含め、日本が占領されていた時代に制定されたものであります。それが二十一世紀の我が国にふさわしいものなのか否かという議論が各方面において積極的になされているとの認識は有しております。
 米国原子力潜水艦の寄港時の放射能調査の結果を受けた対応についてお尋ねがありました。
 先般、米国原子力潜水艦ホノルル号が横須賀港を出港した際に採取された海水を詳細に分析した結果、ごく微量の放射性物質が検出されましたが、人体及び環境に何ら影響を与えるものではなかったと承知をしております。また、現時点では、この潜水艦に起因するものかどうかも含め、原因は特定されていないと承知をしております。
 本件調査を受けて、政府としては、米側に対し事実関係の調査を求めています。以上の状況を踏まえれば、現時点では、我が国及び地域の平和と安定に重要な役割を果たす米国原子力艦船の運用が中断されるべきとは考えておりません。
 私が著書で紹介した特攻隊員の死に関連したお尋ねがありました。
 さきの大戦を始めた原因がだれにあったかといった歴史の分析について政治家が語ることについては謙虚であるべきと考えております。一方で、さきの大戦で国内外に大きな被害を与えたという事実については、率直に反省すべきであると考えています。
 この反省の上に立って、我が国は、半世紀以上にわたって、自由と民主主義、そして基本的人権を守り、国際平和にも貢献してまいりましたが、私たちは、こうしてつくり上げたこの国の形を誇るべきであり、今後もこうした大切な価値や理想を私たちの手で守り続けていかなければならないと考えています。
 私は、著書の中で、当時の一人の若者の日記を紹介いたしておりますが、そうした若者たちの思いに対して真剣に向き合うことが、現在の私たちの自由と平和を守り続けなければならないという強い意思につながるものと信じております。(拍手)
#15
○議長(河野洋平君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#16
○議長(河野洋平君) 御報告することがあります。
 議員西田猛君は、去る六月八日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 西田猛君に対する弔詞は、議長において去る七月十日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は 議員正五位旭日中綬章 西田猛君の 長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員西田猛君に対する追悼演説
#17
○議長(河野洋平君) この際、弔意を表するため、竹本直一君から発言を求められております。これを許します。竹本直一君。
    〔竹本直一君登壇〕
#18
○竹本直一君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、本院議員西田猛先生は、去る六月八日、逝去されました。
 ことしの春先より体調を崩され、五月に東京都内の病院に転院されたと伺いましたときには、一日も早い御回復と議員活動の再開をお祈りいたしておりましたが、その願いもむなしく、今はこの議場に先生の元気なお姿を拝見することはできません。齢いまだ五十、政治家として一層の御活躍が期待されていたやさきに突然の訃報に接しましたことは、世の無常を覚えさせるとともに、まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 私は、ここに、皆様の御同意を得て、議員一同を代表して、先生の御遺徳を偲び、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。
 西田先生は、昭和三十年八月、大阪市において、父礎氏と母スミ子さんの次男としてお生まれになりました。そして、御両親や御兄弟を初めとした周囲の人々の温かい愛情に包まれて、その幼少期を過ごされました。
 殊に、お兄様誠さんのことを慕われて、幼いころからよく一緒に遊び、また、困難に直面したときには第一の相談相手とされるなど、互いに信頼する、仲のよい御兄弟でありました。また、先生は、少年時代から、学業にすぐれていたのみならず、常に多くの友人に囲まれ、何事にもリーダーシップをとられる積極的な性格で、小中学校では生徒会長にも立候補されたとのことであります。その際には、御家族を前にして、立会演説会のための練習を何度も何度も繰り返されたと伺っております。
 そのようなほほ笑ましい思い出に接し、改めて、御家族の愛情の深さ、きずなの強さを感じますとともに、先生が既に将来の政治家としての素養を発揮されていたと拝察した次第でございます。
 長じて、先生は、昭和四十九年、近畿圏有数の名門進学校、私立灘高等学校を卒業されて東京大学法学部へと進まれ、昭和五十三年、自治省に入省されました。
 自治省においては、特に防災対策に取り組まれ、震災対策指導室の担当官として、地震対策の実際的指導に当たられました。先生の入省間もない昭和五十三年六月に、日本で初めての都市直下型地震と言われた宮城県沖地震が発生したのでありますが、先生は「地震で最も危惧すべきは、同時多発火災であり、その場合には消防の手が回らないことも予想されるため、自分たちの街は自分たちで守るという意識が最も重要である」、こう主張されまして、全国の自治体をくまなく回り、地域ごとに自主防災組織を設置するよう呼びかけられ、その全国的な普及に尽力されたのであります。
 この経験から、先生は、平成七年一月に発生した阪神・淡路大震災の際には、東京から折り畳み式の自転車やたくさんの救援物資を抱えて、真っ先に被災した地元大阪へ駆けつけ、被災者の救援や復旧に精力的に当たられたのであります。(拍手)
 また、先生は、こうした地方行政に手腕を発揮しただけではありませんでした。自治省入省後に、フルブライト留学生としてハーバード大学のロースクールに学び、昭和五十七年には法学修士号を取得されるなど、国際派としてのグローバルな見識も具えられていたことから、我が国の国際社会に対する平和的貢献の取り組みにおいても、特筆すべき御活躍をされたのであります。
 戦後長く続いた東西冷戦が、一九八〇年代末から九〇年代初頭にかけて終結すると、我が国は、国際社会からさまざまな貢献を求められるようになりました。
 当時の竹下内閣が外交政策として推進いたしました「平和のための協力」の一環として、我が国は、国連ナミビア独立支援グループによるナミビア制憲議会議員選挙の監視団に、平成元年十月から十一月にかけて、二十七名の要員を派遣いたしました。当時、自治省の課長補佐であった先生は、本選挙監視団に参加され、現地では派遣隊のリーダーとして、その能力を遺憾なく発揮されたのでございます。
 この西田先生を初めとする日本隊の活躍に対しては、当時のアーティサリー国連事務総長特別代表から「日本は財政支援のみならず、すばらしい選挙監視団を派遣してくれた」と謝意を表されたほか、「我が国が、国連平和維持活動に対して、文民分野での人的協力を行う十分な能力があることが証明された」ものとして、内外から高く評価されたのであります。(拍手)
 このことから、そのすぐ後に控えていたカンボジアPKOへの大いなる期待が寄せられることになったのは、言うまでもありません。
 先生は、さらに、平成三年十月から十一月にかけ、そのカンボジアPKO実施のための事前調査として派遣されました国連カンボジア選挙問題調査団にただ一人の日本人として参加され、選挙担当責任者として、調査団の任務遂行に貢献されました。
 平成四年、我が国はPKO協力法を制定し、同法に基づき、同年九月から翌年九月にかけ、国連カンボジア暫定統治機構に自衛隊員を含む大規模な派遣を行いました。そして、平成五年五月には、同機構の監視のもと、カンボジア憲法制定議会選挙が成功裏に行われ、平和の進展の基礎が築かれることになりましたが、こうしたPKO活動の成功の背景には、西田先生の流された汗があったことを忘れてはなりません。(拍手)
 人の役に立ちたいという少年時代からの夢は、十数年にわたる行政官としての経験やPKO活動への参加などを通じて、次第に具体的な目標となっていったのであります。平成四年に自治省を退官し地元で地道な政治活動を続けていた先生は、バブル崩壊以来低迷している日本経済を再生させるためには、明治以来の官僚支配の行政を廃して、国民の意思を国家の運営に十分反映させる政治主導の政策立案と実行が、今こそ不可欠であると考えるに至ったのでありました。
 かくて、平成八年十月、第四十一回衆議院議員総選挙に、「改革と挑戦」「官僚依存からの脱却」を旗印に、地元大阪府から勇躍立候補され、見事、初挑戦で当選の栄冠に輝いたのであります。(拍手)
 本院議員として議席を得てからの先生は、選挙公約として掲げた「脱官僚、政治主導の実現」へ向け、終始一貫した姿勢をとり、与党内プロジェクトチームの中心的メンバーの一人として、政府委員制度の廃止、副大臣及び大臣政務官の設置等のための議員立法の取りまとめに邁進されました。その成果は、平成十一年の第百四十五回国会において国会審議活性化法として結実し、今日の政治主導体制の礎が築かれたのでございます。(拍手)
 時に、西田猛四十三歳、当選一回の若武者の、まさに面目躍如たるものがございました。
 先生は、本院においては、主に大蔵委員会、逓信委員会、財務金融委員会、総務委員会に所属されたほか、テロ防止・イラク支援特別委員会においては、理事として、よく委員長の補佐に当たられるとともに、積極的に質疑に立ち、みずからの経験に裏打ちされた、我が国の国際社会に対する一層の貢献を訴えられたのでございます。
 こうして平成十七年九月、第四十四回総選挙で三回目の当選を果たされた先生は、同年十一月、周囲の期待を一身に受けて、財務大臣政務官に任命されたのであります。大臣政務官は、かつて、みずからが心血を注いでその成立に尽力された国会審議活性化法によって設けられることとなったものであることを思うと、その就任に当たっての感慨はどれほどのものであったかと想像にかたくありません。
 先生は、常々、「政務官には個室など要らない。政務官の使命は、政治主導の政策決定を具現化するため、役所の外に飛び出して、みずからの言葉で政策を語り、その実現を図ることにある。」と述べておられました。さきの通常国会では、その言葉どおり、予算編成、税制改正等に当たり、財務省と与党のかけ橋として精力的に活動され、また、予算、法案の国会審議に当たっては、財務大臣を全面的に補佐し、その成立に大きく貢献されたのであります。(拍手)
 私どもは、西田先生が、国際派、行動派の大臣政務官として、財政構造改革等の難しい政策課題を解決するため、さらに東奔西走の御活躍をされるであろうことを期待しておりました。それだけに、就任からわずか半年余りで突然の訃報に接しましたことは、返す返すも残念でなりません。先生も、さぞ無念であったことでありましょう。
 先生のような有為の人材を失いましたことは、本院はもとより、我が国にとりましても、まことに大きな損失と申さねばなりません。
 思い返してみれば、私と西田先生とは、ともに大阪に生まれ、青雲の志を抱いて国家公務員となり、その後、アメリカ留学を経て、平成八年の第四十一回総選挙で初当選という、くしくも同じ道を歩んでまいりました。また、平成十七年十一月からは、私が財務副大臣、西田先生が財務大臣政務官という間柄で、ともに小泉内閣の財政政策を支える同志であったのでございます。
 西田先生は、「先憂後楽」を座右の銘としておられました。「憂うることは人に先立って憂い、楽しむことは人に遅れて楽しむ」というこの言葉を、政治家としての心構えとされたのであります。初当選以来、この初心を貫いて、我が身のことより国家国民のこと、そして世界平和への貢献を第一に考え、行動されていたのであります。
 しかし、そうした先生を、病魔は数年前から少しずつむしばんでおりました。先生は、病室においても一切の弱音を吐くことはなく、いよいよ食べ物がのどを通らなくなってからも、「まだ飲み物があるから大丈夫だ」と言われて、逆に周囲の者を勇気づけるほどの強い意志と前向きな生きざまを示されたのでありました。(拍手)
 意識の薄らいでいく中にあっても、なお、国会のこと、後援会への出席のことなど、夢に見続けていたとのことでございます。
 今はただ、永遠の眠りの安らかならんことを祈るばかりであります。
 内外の直面している諸課題に取り組むに当たり、西田先生のような偉大な政治家が志半ばにして倒れられたことは、日本のみならず、世界のためにも大きな損失であり、残念至極であります。
 せめて我々議員一同は、西田先生の御遺志を継ぎ、先生の死を乗り越えて、我が国の経済社会の安定、発展、そして世界平和の実現のために働いていくことをお誓い申し上げます。
 ここに、西田先生の御生前の多大な御功績をたたえ、その人となりを偲び、御冥福を衷心よりお祈りするとともに、御遺族の皆様への揺るぎない御加護を祈念し、追悼の言葉とさせていただきます。(拍手)
     ――――◇―――――
#19
○議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
       内閣総理大臣  安倍 晋三君
       総務大臣  菅  義偉君
       法務大臣  長勢 甚遠君
       外務大臣  麻生 太郎君
       財務大臣  尾身 幸次君
       文部科学大臣  伊吹 文明君
       厚生労働大臣  柳澤 伯夫君
       農林水産大臣  松岡 利勝君
       経済産業大臣  甘利  明君
       国土交通大臣  冬柴 鐵三君
       環境大臣  若林 正俊君
       国務大臣  大田 弘子君
       国務大臣  久間 章生君
       国務大臣  佐田玄一郎君
       国務大臣  塩崎 恭久君
       国務大臣  高市 早苗君
       国務大臣  溝手 顕正君
       国務大臣  山本 有二君
 出席内閣官房副長官
       内閣官房副長官  下村 博文君
 出席政府特別補佐人
       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君
ソース: 国立国会図書館
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