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2005/04/06 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 少子高齢社会に関する調査会 第5号
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2005/04/06 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 少子高齢社会に関する調査会 第5号

#1
第162回国会 少子高齢社会に関する調査会 第5号
平成十七年四月六日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         清水嘉与子君
    理 事
                中島 啓雄君
                中原  爽君
                山谷えり子君
                神本美恵子君
                羽田雄一郎君
                山本 香苗君
    委 員
                荒井 広幸君
                岩城 光英君
                荻原 健司君
                狩野  安君
                後藤 博子君
                坂本由紀子君
                関口 昌一君
                中村 博彦君
                小川 勝也君
                岡崎トミ子君
                加藤 敏幸君
                島田智哉子君
                柳澤 光美君
                山本 孝史君
                蓮   舫君
                山本  保君
                鰐淵 洋子君
                小林美恵子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        岩波 成行君
   参考人
       社団法人日本経
       済研究センター
       理事長      八代 尚宏君
       神奈川大学経済
       学部教授     森泉 陽子君
       株式会社ニッセ
       イ基礎研究所社
       会研究部門上席
       主任研究員    篠原二三夫君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○少子高齢社会に関する調査
 (「少子高齢社会への対応の在り方について」
 のうち少子化の要因及び社会・経済への影響に
 関する件)
    ─────────────
#2
○会長(清水嘉与子君) ただいまから少子高齢社会に関する調査会を開会いたします。
 少子高齢社会に関する調査のうち、「少子高齢社会への対応の在り方について」を議題といたします。
 本日は、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件について参考人から御意見を聴取いたします。
 本日は、社団法人日本経済研究センター理事長八代尚宏さん、神奈川大学経済学部教授森泉陽子さん、株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門上席主任研究員篠原二三夫さんに参考人として御出席をお願いしております。
 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方からは、「少子高齢社会への対応の在り方について」のうち、少子化の要因及び社会・経済への影響に関する件につきまして忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございますけれども、まず、参考人の皆様方からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただくという方法で進めたいと存じます。
 なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていきたいと思います。
 また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございます。
 それでは、八代参考人からお願いいたします。八代参考人。
#3
○参考人(八代尚宏君) ただいま御紹介いただきました日本経済研究センターの八代でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。(資料映写)
 少子化の問題を考えるときには、何が一番大きな要因なのかということをやっぱり考えなければいけないわけで、あらゆる問題が関係しているわけですけれども、余りにも間口を広げ過ぎますと、また対策もぼけてしまうというふうに考えております。
 最初に、出生率の低下については、これまで様々な参考人の方からお話をお聞きになったかと思いますが、一つ大事な点は、戦後からの出生率の低下につきまして、六〇年ぐらいまでの急速な低下の要因とそれ以降の七〇年以降の緩やかな低下の要因というのは、実は区別して考えないと対策が混乱してしまうんじゃないかということでございます。前者の要因はやはり就業構造の大幅な変化、自営業からサラリーマン化、あるいは幼児死亡率の低下とか、そういうような要因でございますが、七〇年以降の低下要因というのは、後から申しますような働き方の変化でありますとか、労働市場の関係がかなり強く効いているかと思われます。
 それで、少子化白書等でも出生率の低下についてはいろんな要因が指摘されているわけで、例えば生活不安の問題だとか晩婚化の問題あるいは価値観の変化、子育て費用の高まり、そういうことが言われているわけでございますが、このうち特に私がやや問題かと思っておりますのは、生活が不安だから子供が生まれなくなるという考え方は一見もっとものように思えますけれども、この数字を見ていただければ、例えば八〇年代の後半であるとか、つまり日本がもう言わばバブル期の絶頂期にあって将来が非常にバラ色に見えていた時代でも、実は出生率の低下というのは今と同じペースで着実に進んでいたわけでありまして、その意味で、不安だから子供が生まれないということで考えていくと、実は出生率低下の大きな要因を見逃してしまうんじゃないかということでございます。
 私は、その意味で、こうした要因の中で一番大事なのは、やはり仕事と子育てを両立できるような環境が不十分であるという日本の社会状況、その中で女性の高学歴化、就業率が高まってきているという変化、この二つがやはり一番大事ではないだろうか。これはもちろん女性が働くから子供が生まれないというふうに短絡的に考えるべきではないわけで、女性が働くことに対応しない過去の社会制度が実は問題なんで、それを変えていかなければいけない。逆に言いますと、少子化問題というのはほかの問題と同じような構造問題であって、構造改革なくしてはこの問題は解決できない、単に既存の制度を若干手直しする程度では到底対応できないんだということを認識する必要があるんじゃないかということであります。
 七〇年代の半ばから女性の就業率は急速に高まってき、しかも高学歴化、専門的職種への拡大というのが広がっているわけでございます。
 そこで、よく問題になりますのは、政府の出生率の見通しが常に狂っている、しかも一方方向に狂っているという点が実は大きなポイントでございます。よくこれを申しますと、経済学者だってしょっちゅう間違うじゃないか、来年の景気さえ当てられないじゃないかというふうに批判されるわけでありますが、我々は経済成長率を高過ぎたり低過ぎたり満遍なく間違うわけでありますけれども、この出生率の見通しというのは常に一方方向に間違っている、常に過大評価しているというのが実は大きなポイントであって、これはやはり推計方法に問題があるんじゃないか。
 具体的に言いますと、先ほどのグラフで見ていただきましたように、女性の就業率が一貫して上がっている、それに伴って、子育ての機会費用という言い方はやや専門的でございますが、子供を持つことによって女性が働き続けられなくなっていると、これが実は一番大きな要因であって、こういう要因を人口推計に実は入れられていないわけなんですね。これは私が人口問題審議会の委員のときには強く言っていたわけですが、そういうあいまいな経済的要因を精緻な人口推計に入れることはできないというふうに人口学の専門家の方が言っておられたわけですけれども、そういう出生率に一番大きな影響を与える要因を入れなければ、やはりこういう言わばシステマティックに誤るということは今後とも続くんじゃないだろうかということでございます。
 この黄色い線が正に今人口研が出している低位推計でありますけれども、ある意味でこれを本当は前提にして年金制度なんかも考える必要があるわけで、この赤い言わば一・四に自動的に戻っていくという中位推計というのは、過去の経験から見れば当たる確率は低いんじゃないかというふうに考えております。なぜならば、先ほどから申し上げましたような女性の雇用比率の高まりと出生率の低下、七〇年代の半ばからの出生率の低下というのは見事に相関しているわけで、この要因というのは今後とも制度改革がなければ続くんじゃないだろうかということであります。その意味で、働き方というのが非常に重要である。
 もちろん、女性が働くことと子育てが両立しないということは多くの方が言っておられることですが、それがどの程度深刻なものなのかということのニュアンスについてはかなり差があるんじゃないか。私はこれはかなり根本的な問題であって、つまり現在の日本の長期雇用保障とか年齢とともに高まる世帯給、この背後には、男性が働き女性が家事、子育てに専念するということが暗黙の契約として企業と労働者の間にあるわけであります。企業は言わば労働者一人分の賃金を払うんじゃなくて、その労働者の背後にきちっと家事、子育てでサポートしてくれる家族も含めて家族ぐるみで言わば雇っているという考え方であるわけですから、今の世帯給というのは実は男女の固定的な役割分担を暗黙の前提とした働き方である。そうした中で高学歴女性が継続的に働こうとすると当然ながら矛盾が起こるわけで、だれが子供を育てるのかという問題が出てくるわけであります。
 それから、現在の働き方というのは、企業でもそうでありますし社会保険でもそうでありますが、基本的に専業主婦付きの言わば世帯主ということを前提にしているわけで、共働き世帯にとっては不利な仕組みになっているかと思います。具体的に何が不利かと申しますと、企業の中では慢性的な残業がある、頻繁な配置転換とか転勤がある。これは結局、世帯主が転勤すれば奥さんは勝手に付いてくるということが暗黙の契約条件になっているわけでありますが、当然ながら共働き夫婦ではそういうことはできないわけでありまして、そういう日本的雇用慣行といいますか、長期雇用保障、年齢とともに高まる世帯給、その代わり労働者は企業に対して残業とか配置転換については文句は言わないという、こういうパッケージの契約ですね、これが正に共働き世帯に変わろうとしている日本の社会と基本的に矛盾するということが大事ではないかと思います。
 そういう世帯給の恩恵を受けている正社員と市場賃金で働く非正社員との間では、就業、賃金状況に大幅な格差が起こっているわけであります。その結果、いったん正社員になった女性が出産して退職して再び戻ろうとすると、大幅な損失が起こるわけであります。
 これは国民生活白書で以前に試算したわけでございますが、年功賃金を前提といたしますと、二十六歳まで働いて、その間出産等でしばらく休む、休むというか企業から退職する、その後再び労働市場に復帰しようとするとパートタイマーの仕事しかない、すると生涯賃金は非常に低いものになるわけであります。これが、仮に出産を終えた後、子供が小学校に入った後、再び正社員として働けるような仕組みになれば生涯の賃金のロスというのはかなり少なくなるわけでありまして、やはり今の問題というのは、雇用保障は非常に優れているわけですが、それは逆に言えば中途採用機会が非常に少ない、出産退職後になかなか職場復帰できないという問題と裏腹の関係にあるということでございます。
 その意味では、今後の少子化社会といいますか、新しい労働市場というのは、多様な働き方に中立的な雇用制度でなければいけないんじゃないか。今、もちろん少子化対策ということで、男性の取得も含めた育児休業の推進ということをやっているわけでございます。また、子育て後に再就職の支援とか短時間就業ということもやっているわけでありますが、これは基本的に企業の努力だけでは限界があるわけでありまして、やはり働き方自体が変わっていかなければいけない。今の集団的な働き方ではなくて個人単位の働き方でやる。これは逆に言えば成果主義に近い考え方になるわけですし、同時に、企業別の労働市場だけじゃなくて流動的な欧米のような職種別労働市場、職種別賃金であれば、ある意味で出産退職後再び戻ってきても賃金は変わりませんから、別に年功賃金の場合と違ってハンディキャップはないわけであります。
 こういう職種別労働市場に一番近いのが派遣労働であるわけでして、その意味で派遣労働というのは正にこういう子育てと仕事を両立するための一つの働き方であるわけですけども、残念ながら今の日本では、この派遣労働というのは悪い働き方である、雇用が不安定である、したがって常用代替を防止するための規制というのがなされていると。これが実は大きな問題ではないかと思います。
 もちろん、派遣労働がいいか終身雇用がいいかというふうに一方的に決めるんじゃなくて、私はこれは中立的であるべきであると。労使がお互いに自由に決めればいいわけで、制度として政府がそのどっちかに肩入れするということをすべきではないんじゃないかと。あくまでも多様な働き方に中立的な雇用制度であるということが、私は働きながら子育てをする女性あるいは男性にとって、そういう仕組みの方が望ましいんじゃないかということであります。
 その意味では、政府ができる第一のことは、やはりこの派遣労働というものを社会的に認知する、一方的にこれを悪い働き方というふうに決め付けるんじゃなくて、派遣労働の条件を良くするために努力する。
 今の派遣労働法というのは実は二兎を追っているわけでして、派遣労働者の言わば利害を守るということと常用代替の防止という二つを、目的を追っているわけですが、これは実は矛盾している。私は、これをすっきりと派遣労働者のためだけの法律というふうに再構築する必要があるんじゃないかということであります。
 同時に、共働き世帯を標準とした賃金とか年金制度ということで、これは年金改革でも大きな課題になっております。
 時間もありませんので先を急ぎますが、少子化対策の二つの大きな柱というのは、一つはこの働き方の多様化ということと家族の在り方をどう考えるかということではないかと思います。
 家族ということを考えたときに、これまでの制度は暗黙のうちに古い家族、伝統的な家族を制度で守ろうという考え方が強いわけでありますけども、これを働き方と同じように多様な家族の在り方をも言わば認める、家族が選択することに対して中立的な社会制度にしていく必要があるんじゃないかということでございます。
 具体的に言えば、税制とか社会保険における世帯主保護の規定、第三号被保険者とか配偶者控除というのはその一つの例でありますが、専業主婦を持つことに対して政府が税制面あるいは社会保険面でサポートするわけでありまして、なぜそういう特定の働き方に対してだけ政府がサポートしなければいけないのかと。家庭の中でどういう働き方をするかは正に個人の自由であるわけで、政府がそのどちらかに肩入れする必要は全くないわけで、そういう意味で多様な働き方に対して中立的な政策をということになろうかと思います。
 それから、現在の社会というのは、結婚とか子育てに対して男女の間で非対称性があると。具体的に言いますと、男性は結婚すると社会的に言わば認知される、社会的地位が上がるということでありますが、女性は逆に結婚すると足を引っ張られるという、言わば非対称的な関係にあるんじゃないか。つまり、結婚することが男性にとっては有利であるけど、女性にとってはむしろ不利な面が大きいんじゃないかと。こういう非対称性を放置しておくとなかなか結婚が進まないということも当然ではないかと思われます。その意味では、働き方もそれから家族制度も、結婚するかしないか、あるいは共働きか片働きかに中立的な仕組みということが大事ではないかと思っております。
 それから、自営業については家族経営協定というのは昔から言われているわけですが、なかなか、こういうことをやれば水臭いということで進展していないわけであります。
 それから、これは昔から問題になっておりますが、選択的夫婦の別姓というのも一つの象徴的な仕組みでありまして、この程度のことがなぜできないのかということであります。これも正に夫婦が、同姓か別姓かは夫婦が選べばいいんで、国がそれに干渉する必要はないんじゃないかということで、戸籍法の規制緩和ということが必要ではないかと思います。
 これが規制されている一つの理由は、そういうことを許せば、今の家族の結び付きが弱まるんじゃないかという考え方によるわけですけども、それが冒頭で言っております伝統的な家族を守るという制度になるわけで、そういうものが本当に守らなければいけないものなのか、なぜ個人が自発的に選択することが今の自由な社会あるいは選択の社会で認められないのかどうかということでございます。
 ですから、この少子化時代の家族の考え方というのは、やはり個人を経済単位とした精神的な結び付きが家族の一つの在り方であって、言わば専業主婦世帯というものを一つのモデルにした社会形態からむしろ共働き世帯を一つのモデルにし、その一つの特殊な形が専業主婦世帯であるというふうに考えるのが一つの考え方ではないかと思います。
 この一つの例として、男女で大きく異なる国際結婚の相手国ということでありまして、これは男性と女性で国際結婚した場合の相手の国が非常に違う。女性の場合はいわゆる欧米とかあるいはラテンアメリカの方が半分ぐらい、男性の場合はほとんどがアジアの国である。これは私はこういうふうに解釈しておりまして、日本の男性は過去の日本の女性のイメージをアジアの女性に求めており、日本の女性は将来の男性のイメージを言わば欧米の男性に求めている。これぐらいのやっぱり意識のギャップがあるんじゃないだろうかということであります。
 そういうことを考えても、家族というものもやっぱり変化していかなければいけないんで、ひたすらに過去の家族の在り方を守ろうという政策はむしろ新しい家族の形成を損なう面が大きいんじゃないかということであります。
 それからもう一つは、やはり子育てに対する財政支援というのも大事なわけでありまして、子供の社会的扶養ということをきちっと認知する必要があるんじゃないか。これは、正に高齢者介護でできたように、高齢者の介護を家族の責任だけにするんじゃなくて、広く社会的に負担するという形での介護保険の成立、これと基本的に同じことを考える必要があるんじゃないかということであります。
 今の子育てあるいは保育に対する社会的支援ということは政府も非常に力を入れておられますけども、問題はその程度であるわけでして、これまでの厚生労働省の考え方というのは専ら待機児童を政策のターゲットにしているわけであります。待機児童の解消ということが言わば保育対策であるという考え方、これはもう根本的に間違っていると思います。これは、あたかも高齢者介護について特養への待ち行列の人たちだけを対象にするという考え方と同じであって、それはもうナンセンスではないか。つまり、介護保険では潜在的な要介護者ということを前提に置いて、その人たちにどういうふうにして介護サービスを提供するかということからスタートしているわけで、同じように保育についても潜在的な保育ニーズということを想定しなければいけないんじゃないか。その意味で、実は介護保険に対応した育児保険というのを検討する時期に来ているんじゃないかということであります。
 もちろん、子育てが保険になじむかという御批判はあるわけですけども、社会的扶養ということからすれば介護と保育に別に違いはないわけであるわけで、その意味では単に現在の制度の延長として、つまりあくまでも保育園というのは福祉であって、言わば保育に欠ける子を守るための児童福祉法の枠内で考えるということではなくて、あくまで保育を必要とする子供、すなわちどんな働き方をする人でも、場合によっては専業主婦でも応分の負担をすれば保育サービスを利用できるというようなことに変えていかなければ、到底今の保育ニーズには、潜在的な保育ニーズには対応できないんじゃないかということでございます。
 待機児童ゼロ作戦の問題点というのは、申し上げましたが、わずか五万とか六万の、あるいは大目に見ても十五万程度の児童を想定していては駄目なわけで、例えば子育て期の女性の就業希望者は二百万人、このうち明確に子供のために働けないと言っている人も百二十万人ぐらいいるわけでありまして、こういう人たちが本当は保育サービスのターゲットにならなければいけないんじゃないかということであります。そのときに、設置主体によって保育所のコストが大きく異なるという問題も当然あるわけです。
 それから、人口が減少するとどうなるかということですが、このまま放置しておくと一億人の、元に、四十年前と同じ状況に戻ってしまう。ただ、その下でも実は安定成長は可能であるわけでして、人口減少社会でも成長率じゃなくて労働生産性をターゲットにすればいいんではないか。そのためには、人口の稼働率を上昇する、高齢者とか既婚女性のうち働きたい人が働けるような仕組みにしていく、それから産業間の円滑な労働移動を促進すると、そういう形で労働生産性を上げていくということは十分可能ではないかと思われます。
 最後にですが、少子化対策にはやっぱり構造改革が必要であると。つまり、これまでの日本社会というのは、女性は少なくとも結婚した後は働かないということが前提となっていた制度で企業も国も動いていたわけでありますが、それを男女にかかわりなく、働くことが当たり前の社会に持っていくと。これはかなり大きな改革であるわけです。
 そのためには、個人単位の賃金とか税制とか社会保険制度が必要であるわけですし、正社員だけでなく、いわゆる非正社員も含めた多様な働き方をきちっと社会的に容認する、家族形態についても多様性を認知する、介護や子育てを家族だけの負担ではなくて社会的扶養にしていく。それから、これは介護でも既に実現しておりますが、子育てや保育も福祉ではなくて、もちろん福祉も大事でありますけれども、そういうふうに利用者を選別するんじゃなくて、消費者主体のサービス産業に変えていくと。これで初めて人々が潜在的に必要としている保育ニーズにこたえたサービス供給というのが実現するんじゃないかと、そういうことでございます。
 以上でございます。
#4
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 次に、森泉参考人にお願いいたします。森泉参考人。
#5
○参考人(森泉陽子君) 本日は、このような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございました。
 私は、今日は少子化社会と住宅ということで少し述べさせていただきたいと思います。(資料映写)
 既にお配りしてあります私のペーパーにおいて「少子高齢社会における住宅と経済」ということを書かせていただいたわけですが、今日はそれをベースといたしまして、その中の幾つかを取り上げてみたいと思います。
 私がお配りいたしましたペーパーの骨子をちょっとここで一、二回、簡単にもう一度述べさせていただきたいと思います。
 基本になっておりますのは、ここにありますように、豊かな高齢者と少ない子供の数ということがベースになっておりまして、そこで書きましたことは、まず豊かな高齢者の、親の行動が子供の行動に影響を与えるということなんです。そこでは、特に親が自分の持っている財産、住宅も含めまして、その財産を戦略的に用いて子供に、子供の行動を縛るというか、子供に老後の介護を、老後の世話を頼んで、それで子供の方は、それはそれで財産がもらえる、住宅がもらえるということで非常にいいという、お互いの利益が一致したということで親の行動が子供の行動と非常にリンクすると。そのリンクの核となっているのが住宅を中心とする財産であるというようなことが書かれております。
 そのような、親がどのような行動を取るか、子供に財産を残そうとしているのか、全く残さないとしているのかと、そういうことによって住宅市場のマーケットも変化する。すなわち、賃貸市場が違ってくる、それから持家市場の動向も異なってくる、それからさらには中古住宅市場の変化もあると。
 それで、ひいてはマクロ経済、マクロ経済といいますと、今、八代先生がお話しになったような労働面もありますが、いろんな面があるんですが、特に昨今問題になっております貯蓄率の非常な低下ですね、そういった貯蓄率の低下及び貯蓄率の違いもこういった親子の経済行動、住生活によって変化してくるだろうということが述べてあるわけです。
 さらに、それをもうちょっと詳しくリビューいたしますと、親子の住まい方が住宅市場、マクロ経済にどのような影響を及ぼすかということで、まず住宅市場にどのような影響を及ぼすかということですが、今申しましたように、親はかなり利己的に、自分は、遺産動機と言うんですけれども、自分は戦略的に老後の世話を頼みたいから子供に遺産を残してやると。ですから、同居したり隣居したり近居したりするわけです。そうしますと、子供の方はやはり早く自分の家が持ちたいから、買いたいんですが、そういうときには資金繰りが楽になります。生活も楽になって、何度でも海外旅行に行けるというようなことになるわけです。住宅購入は、若い時期から住宅を買うことができる。しかし、介護負担もしなくてはいけない。だけれども、もしかして親が元気なうちは子育て支援を受けられるかもしれない。
 住宅市場においてはどういうことが言えるかといいますと、建て替えであるとか、あるいはリフォームというものが親子一緒に住んだりする場合には活発になります。若年の世帯が住宅購入を活発に行うという、そういう持家市場が活発になるということです。
 それからもう一つは、親は全く子供になんか遺産残したくなかったんだけれども、うまく使い切れないで結果として残ってしまったと。こう意図せざる遺産というのも日本では多いわけなんですが、そういった場合には子供は非常に得するわけで、こういうケース多いと思うんです。資金繰りが楽になると。親から結局、財産をもらったり、住宅をもらったりするわけですが、その親がくれるまで待っているということですね。言葉が悪ければ、親が死ぬのを待っているというような感じがあるわけですね。介護負担はしなくてもいいし、親は高齢化が進んでいますから、購入する時期は遅れるであろう。
 それまでは、住宅市場における影響としましては、それまでは賃貸住宅市場で住んでいるわけです。ですから、賃貸住宅市場は活発化する、住宅購入時期は遅れると。しかし、親の住宅をもらったり、あるいは親の財産をそっくりもらえるとなると住宅の規模は大きくなるだろうと。こういうような住宅市場は変化をいたします。
 最後にペーパーに書きましたのは、遺産を残さないで、贈与もしないで、これからの、今まで蓄積してきた住宅なり財産を全部自分で使ってしまう。私は、そのペーパーではアクティブシニアというふうに書いたわけですが、それは、これからの団塊の世代のシニアはそういう形態を取るのではないかと思うんですが、子供に頼らずに自分でさっさと施設に入ると。そのときに、自分が自宅を売却する場合もあるし、リバースモーゲージで月々収入を得たり、自分の家を貸して自分で収入を得たりという自分の人生を自分で完結するというケースです。そのような場合には、子供世帯としましては、やっぱり同じように、今までと同じように貯蓄をしていかなければならない。まあ海外旅行何度も行くというようなことはできないかもしれない、だけど介護の負担もなくて済むということです。
 住宅市場はどういう変化になるかといいますと、自分で建てなくちゃならないので、住宅の規模は上二つのケースよりも小さい。敷地も細分化していくことになるだろう。しかし、若い世代が家を買うということは、中古住宅市場からスタートするということもあるわけですね。中古住宅市場であると新築よりも安いわけですから、中古住宅市場に、中古住宅を買って、それから買い換えていくということもありますから、これ中古住宅市場が活性化するであろうというわけです。
 ですから、住宅政策としましては、これらの一番目は、若年世帯の購入を活発化する、あるいはリフォーム住宅、こういうものに対応したもの。それから二番目のケースとしては、賃貸住宅市場に対応するような、こういったニーズに対応するようなもの。三番目としては、中古住宅に対応するような住宅政策が必要であろうということです。どの場合も、少子化の場合は、住宅市場において住宅価格が下がっていくということは言えます。
 マクロ経済の影響ですが、一番目と二番目に関しては、住宅を購入するときにはせっせと頭金をためて、ある程度たまって、銀行から借りて住宅を買うわけですけれども、そういうものは要らなくなるわけですから、ためる必要はなくなるわけです。これが貯蓄率を低下させている。私は、これが近年の貯蓄率の低下の非常に重要な要因ではないかと思います。三番目に関しては、貯蓄率を下げる下支えになっていくのではないかというふうに考えております。
 それで、このような、今見たような親子のリンケージということはペーパーで書かせていただいたわけですが、今日はその中で、特に今言ったこの二番目の「意図せざる遺産」、要するに待っていれば自然に入るということ。少子化であり高齢化であるから、子供は貯蓄もせず待っていると、そうすると独りでに財産なり住宅が入ってくるという、少子化と若年持家率が低下していると、この傾向に注目して、この部分についてお話しさせていただきたいと思います。
 まず、三つのことがありまして、日本の持家率は六一・二%であり、これは先進各国に比べて低くはないんです。高齢者の持家率は八〇%を超えていますから、これは高いんです。それに比べて、日本の若年持家率というのは、二十九歳までの三十歳未満ですが、それは非常に低いわけです。これらのことが、これらの非常に日本の特徴的なこの三つのこと、特に若年持家率が非常に低いというこの特徴が、日本の住宅市場、マクロ経済にどのような影響を与えるかについて述べさしていただきたいと思います。
 まず、事実の認識なんですが、先進各国の持家率というのはこういう具合になっております。
 一番端が日本ですが、日本の持家率は六一・一%以上ですから、これは世界各国、先進各国と比べて決して低くはありません。一番低いのがドイツです。それに比べて、若年の持家率はドイツの次に低いわけです。ドイツは全体の持家率が低いわけですから、持家率、若年も低いのはうなずけますが、例えばオランダは、日本よりも平均的な全体の持家率は低いにもかかわらず、若年の持家率はこんなに高いということです。
 それから、日本の持家率の時系列の変化を見てみますと、二十五歳以下はこう徐々に減ってきています。それから、二十九歳未満においても減ってきています。最近ちょっとこう、上がると言えるかどうかこれはよく分かりませんが、いずれにしても低いわけです。
 それをさらにコーホートというもので見てみますと、このコーホートというのはどういうものかといいますと、昭和十四年から十八年に生まれた人が二十五歳未満のときにこれだけ住宅を持っていて、その人たちが五年後に三十歳未満になったときにこれだけの人が持家を持っていてと、こういうのをプロットしたのがコーホートというものです。ですから、これは昭和十四年から十八年生まれの人たちです。
 徐々にこう、これを曲線を見ていただくと分かるように、最近の昭和四十四年―四十八年生まれの人たちはこんなに下がっているわけです。ですから、このギャップというのが、若年の人たちが、若い人たちが家をなかなか買わなくなってきた。しかしいずれは、こういう傾向にありますから、日本の世帯はやはり持家を持つと、最終的には八〇%ぐらいの持家を持つということには変わりないわけです。
 若年持家率がどういう理由で低下したかという原因を考えてみますと、これは一つ、デモグラフィック要因なわけです。先ほどのお話にもありましたように、晩婚化、未婚化というようなことで、家族形成の後れというのが一つありますが、これは世界各国でも同じようなことが見られるので、これを中心に考えるわけにはいかないわけです。その次には、家をいずれは持ちたいわけですが、家を持とうと若い人が思っても、これは住宅ローン市場の信用力が低いわけですから、若い人は借入れが困難であるからその頭金が蓄積されないうちは買えないということ。
 それから、先ほどもちょっと申しましたが、中古住宅市場からスタートして買い換えていこうかと思いますが、中古住宅市場は非常に日本の場合はまだ未整備です。非常に質が悪くてよく分からない。しかも、売手と買手の間にその情報の非対称性というか、売る方は自分の住宅の欠陥を分かっていますが買う方には分からないという、そういうことですね。住宅性能制度が最近は徐々にスタートいたしましたので、まあ少しはいいかと思いますが、そういったいろいろな要因で中古住宅市場が未発達です。
 そういったことも持家率低下の大きな要因であろうと思いますが、今回は相続という点に注目したいと思います。
 相続で少子化ですから、一人っ子あるいはせいぜい二人だとしましても、住宅、家が入る、あるいは資産が一杯もらえる。下手をすれば一人っ子同士が結婚すれば両方の親から家をもらえるというようなことになるわけです。ですから、若い人たちは待っているわけですね。高齢化でもって、年寄りの方も高齢化ですからこの時期が長く続くということになっている。これが若年持家率が低下している大きな要因ではないかというふうに思います。
 今日新たにお配りしたところでも見ていただくと分かりますが、若年持家率というのは、昭和四十三年から平成十五年まで調べてみたんですが、昔は二七・九%ほどあったわけですね。それでも、先進各国から比べるとそれでも低い方なわけです。しかし、その低い方でも昔は二八%弱の世帯が家を若年が持っていたと、それが徐々に、最近は非常に落ちてきているということでございます。
 それでは、そういった若年持家率の低下というのはどのような意味を持つのかということですね。いずれは家を持つということは先ほどから申し上げているとおりです。若年持家率が、それではインプリケーションどういうものかといいますと、若年世帯の資産形成の意識が後れていると。すなわち、若いうちから自分の経済的なプラン、ライフステージに従って経済的自立をしていくということですね。先ほども言いましたように、頭金を、そのためには頭金を一生懸命ためると、これも生活の設計の一つです。初めは中古の小さい家に住んで、それから買い換えて、世帯が増えていくにつれて大規模な家、中規模な家に移っていくと、こういうようなことを考えるということが資産形成の意識なわけです。頭金を貯蓄したときにはどういったものでポートフォリオを組もうかとか、そういうことにも資産形成の意識があるわけですけれども、そういったことが非常に意識が低くなったのではないかと。これはちょっと話が飛ぶかもしれませんけれども、私は、パラサイトシングルというようなことが今言われていますけれども、大人としての意識の後れというのも、そういう経済面の意識の後れ、自立の後れというところに非常にリンクしているのではないかというふうに思います。これが一つです。
 もう一つは、賃貸住宅に住むのが非常に長くなりますと、賃貸住宅に住むということはある種のモラルハザードを起こすわけです。要するに、貸家に住んでいるんだから丁寧に住むのをよそうとか、もちろん周りの住環境への気配りは全くないわけですから、住宅の質がそういう限りでは少しも良くならないというような問題点も持つわけです。
 それから、中古住宅市場の発達も遅れてきます。若年の世帯が家を持つようになれば中古住宅市場も発達が、中古住宅市場が整備され、それに対するニーズが高まるということは中古住宅市場を発達させるということで、良い中古住宅市場が形成されるというふうに思われます。
 それから、マクロの影響としては貯蓄率の低下があります。これは、要するに自分で、ここで言ったように頭金をためなくてもよろしいということですね。そういうことから、貯蓄率を低下させている昨今の大きな理由の一つであるというふうに思います。
 まず、それではどうしたらよろしいのかといいますと、非常に、若年世帯の持家率をすごく高めるということは別に必要ないと思うんですね。若年世帯の持家率を先進国並みに、あるいは昔のように、今のように一〇%ちょっとということではなくて、先進国並みに持ち上げるということが一つの政策のポイントとして考えてもよろしいのではないかと。
 実は、調べてみましたら、富山県というのは持家率全体が八〇%でしたけれども、若年の持家率は過半数を超えておりました。ですから、日本でもそういう地域はあるわけです。そうしますと、その地域に根差したような若者の活動があるのではないかというふうには思います。
 先進国並みにするためにはどうすればいいかといいますと、主に中古市場を整備していくということがあります。
 それから次に、これが非常に大きなことだと思うんですが、税制、買換え税制の緩和をするということを私は強調したいと思います。
 アメリカにおいては、年齢制限なしに、しかも何回住宅が移ってもそれは住宅のキャピタルゲインに課税をされない、所得に不算入になっているわけですね。よく持家を持つと、持家を持つという、住宅を持つということはロックイン効果を持ってしまう。要するに、そこから動かないわけですね。
 ですから、それは、そのモビリティーもそうなんですが、就職、労働のモビリティーも低いというのは、要するに持家を持ってしまうからそこから動けない。ということは、例えば単身赴任もそうですし、そのほか、東京に住んでいる人が北海道で勤めるということは余りないわけですね。それは、その住宅保有に問題があるのではなくて、税制に問題があるわけです。
 引っ越すたんびに売れば、それにそのたんびに掛かってくるわけですね、税制、キャピタルゲインに掛かると。ということがある限りは絶対そのモビリティーは高まらないわけです。アメリカであのようにモビリティーが高いというのは、一つは税制の緩和ということも大きくあるわけで、ですから、持家がロックインじゃなくて税制の問題であるということです。
 これは、今後、ちょっと高齢者の話で、ペーパーには書いたんですが、高齢者が自宅を売って介護施設に入ると、そこでまず税金が掛かるということでは高齢者は自宅を売って入るというインセンティブも低くなってくるわけですね。ですから、そこの税制を是非緩和していくということを提案したいと思います。
 それから、もう一つはローン市場の発達、要するに若年者の信用力は低いということですから、そこのローン市場の発達をさせる。これは、今証券化が行われて、だんだんだんだん住宅金融公庫を始めいろんなところで証券化がスタートしているので、この辺のところがもっともっと進展していけば、証券化することによって若年者も住宅ローン、民間住宅ローンを借りることができるということは言えるかと思います。
 最後に、少子化時代の住宅政策のポイントということで、ペーパーに書いたことも含めてちょっと幾つか羅列させていただきたいと思います。
 まず、一番初めのリンケージでも述べましたが、少子化の時代というのは住宅価格は下がるわけなんです。とにかく住宅が余ってくるような時代です。ですから、住宅マーケットはタイトではなくなるわけですね。そういう時代において、先ほど申しましたように、アクティブシニアというのがこれからの団塊世代のシニアであろうというふうに私は想像、予想するわけですから、そのアクティブシニアとの混住地域、要するに介護施設及び独立した高齢者を含む非常に広い範囲の地域というのを再開発すると。再開発は、六本木ヒルズとか、ああいうビジネスとかマンションのみではなく、高齢者とのそういった地域が幾つか出てきてもよろしいのではないかという、そういう再開発の後押しをするようなことを政策として行えればというふうに思います。
 それは、ちょっとここの三番目ですけれども、空き家・空き地対策ということと非常に、ペーパーには書きましたけれども、密接に結び付くわけで、これからは住宅市場がタイトでないですから、空き地とか空き家が幾つか出てくるわけです。ですから、それらをマージするというようなことで何らかの再開発の後押しをできればいいのではないかというふうに思います。
 それから、新しい親子世代に対応した住生活を送るための政策というのは、先ほど申しましたように、アクティブシニアのような、あるいは介護施設も含んだそういった施設に親世代が入ろうと思ったときに、税制を緩和しないと資産を使い尽くしてしまう。資産が、老後の生活が足りないというようなことになります。ですから、それをアメリカのように引っ越しのたんびに取られないような税制の緩和が是非とも必要であるということでございます。
 それから、若年世帯の持家率を欧米並みにというのは先ほど来申し上げたことです。
 あと、中古住宅市場の整備であるとか、当然、賃貸住宅市場の整備というのは、これはペーパーに書いてありますが、多分いろんなことで言われてきたことではないかというふうに思います。
 以上、簡単でございますが、私の報告とさせていただきます。
#6
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 次に、篠原参考人にお願いいたします。篠原参考人、どうぞ。
#7
○参考人(篠原二三夫君) ニッセイの篠原でございます。
 私の方は、少子化と町づくりということで、都市という軸で少子化をどう見るのかということをお話ししたいと思います。
 私の方は、パワーポイントはございませんが、お手元にある三枚のメモでお話しさせていただきたいと思います。
 まず、少子化と町づくりということで考えていきますと、私ちょっと困ってしまったんですが、少子化だから町づくりをどうするかということはなかなか難しい話でして、私ども町づくりをしている者から見ると、少子化であろうが高齢化だろうが、何だろうが町づくりは町づくり。要するに、皆さんが住んで本当にいいという町づくりをつくっておけば何の支障はないというのが私の立場でありまして、ただ問題は、このメモの、話す前にちょっと言ってしまうとあれですが、そういったことができていないこと自体が少子化に対しても備えを作っていないということでございます。
 私は、そこに書いてありますように、町づくりの基本的なアプローチというのは、これは私が言ったことで有名な先生が言ったことでも何でもないんですが、いろいろな経験からまとめるとこんな形になりました。
 だれでも安全で豊かな生活と就業・就学、憩いの場を確保でき、美しく快適な環境と空間、容易な移動性とをコミュニティーの合意の下に市場原理による持続性を重視しながら計画的に実現すること。ここに経済学の先生がお二人いらっしゃいまして、計画性、計画と市場原理がどう働くのか、矛盾するんじゃないかというようなお小言をいただきそうな感じがしますが、まあこういうことで私は考えております。したがって、この基本的なアプローチをどうかみ砕いていくかということになります。
 だれもが対象ということですから、先ほど申し上げたように、いかなる社会経済環境の変化があっても町づくりはそれに耐えなきゃならないし、それにマッチしていかなきゃなりません。すなわち少子高齢化だからこそ考慮すべき町づくりということは本来はないはずというのが私の考えです。年齢だとか強い弱いとか、障害者の方、健常者も含めて、あるいは男女、それから人種という問題がこれから出てくるかもしれませんが、それから文化、宗教、こういったあらゆる区分を乗り越えて、すべての人々が、時には緑とかペットも含めて、動物なんかも含めて目標実現に向けた計画を作成していくということが町づくりの基本だと私は思っています。
 その中で、昨今問われているのが、そこにちょっと一つキーワードとして挙げました持続性という言葉です。持続性という言葉は非常に怪しげな言葉でして、いろんな意味で使われると思うんですが、余りにも抽象的過ぎてよく分からないというお話も聞きます。最近よく使われるのは、環境の世界だとか省エネの世界なんていうのが割合分かりやすいかと思います。じゃ、本当に町づくりで持続性というのはどういうふうに確保できるのかということにつきましては、ちょっと後でまたお話し申し上げます。
 そういった全般的なアプローチ、それを一言でどう言うかということはなかなか言いにくいんですが、ユニバーサルデザインという言葉が最近あちこちに出てきます。この広義的な解釈というのがこういった町づくりの基本的なアプローチの一つのキーワードであろうと私は考えております。
 ところが、そんなものあるのかと皆さんお思いになるかもしれませんけれども、残念ながら日本ではなかなかこんなアプローチは実際にはできませんでした。特に、そこにありますコミュニティーの合意の下に計画的に実現する、計画を作って、それが実現性がある計画であって、かつその計画が予算にも担保されて、やったことが評価されて、それで見直しして、また新しい行動を取るなんていうようなことは今までは日本ではなかなかやってこられませんでした。
 で、何が行われてきたといいますと、ほとんどの場合、国とか地方公共団体の優秀な方々がたたき台の計画を作る、それを提示して、皆さんこれでやりますよと言ってやってしまったというところです。それは、確かにその人たちはプランナーであったかもしれませんが、果たして本当に計画的だったかどうかということは私も非常に疑問に思っています。計画というのはいろんな方々に一応サポートされて形にならなきゃいけないものというふうに考えておりますので、なかなかこれまでそういう形が取れなかった。必然的にそういう形で取られた計画を実現したとしても、そこにいる人たちは何でこんなことをしたのかな、自分たちはこんなものを望んでいなかったんだなというふうな話が出てきてしまいます。これでは大変まずいということです。したがって、そういったことはちゃんとかみ砕いていかなきゃいかぬということであります。
 最たるものが、計画的ということでは全総、国土総合開発計画という最上位計画があるわけですけれども。それから、最近、割合市民の立場を出すということで都市マスタープランという制度ができましたが、これが今のところ、一番下位と言っていいのか分かりませんが、下の方にある話であります。この上から下までが、本当は上でいいのか下でいいのか分かりませんが、ちゃんと一気通貫でつながっていなきゃいけないと。そこに議論のやり取りがなきゃいけないわけですが、もうそれがないということが現状でございます。そういう計画ですから、実に計画を最初作った人も、本当にできるか分からないからコミットできない、約束できないわけです。これをやりますよと堂々と言えない、やれたかどうかも検証する力もない、したくもないということが起こっております。
 それから、持続性という言葉が、先ほど申し上げたように環境保全、省エネルギーという話がありますけれども、これをどう市場原理を通じて実現するかということに非常に疑問があるかと思います。
 私は、イギリスの地方都市、リバプールだとかバーミンガムとかマンチェスターとか、もっと地方の方もありますが、そういったところでどういう町づくりを実際にやってきたかということを見てきましたし、勉強してきました。そこでは明らかに市場原理が働いていました。そういったやり方を日本でも使えるんではないかと思っております。現実にそういう方法を提案してきまして、そういう方法は取られつつあります。
 もう一つはNPO。こういった仕組みを支えていくNPOが日本にはまだまだないと。それらを、NPOというのはもう勘違いされて使われていまして、要するに公共団体の予算がない、財政難の折にいろいろやってくれると有り難いという形で、人件費節約のために使っているような感じも最近見受けられます。それでは困るということです。
 そういうことから、今度は、それが町づくりの基本的なアプローチの中身なんですが、そこにいろいろ実際にはやられていないことがあったということであります。そういう中で、少子化が進んでいったらどういうふうになるか、それが町づくりにどういう課題を生むかということを二ページ以降お話しします。
 まずは、少子化、高齢化に対応したユニバーサルデザインに向けた早急な対処が必要だと。皆さんが作られたバリアフリー法というものがありますが、駅にエレベーターができてエスカレーターができて、どんなに便利になったと皆さんも思ったかと思います。まあ若い方はあんなもの要らぬと言う方もいらっしゃるかもしれませんけれども、私はそろそろそれが必要になってきたという年であります。それをもっと拡大して、もう障害者の方も元気な方もみんなが使えるものにしなきゃいけないと。町の中の仕組みをそういうふうに変えていかなきゃいかぬということです。それは子供の視点から見た、例えば券売機で切符を買うだとかそういったことも含めてすべて配慮をされなきゃいけないことなんですが、残念ながらそこまではなかなか行っていないということです。
 それから、やがて少子化の延長線の中で、トヨタの幹部の方なんかもいろいろおっしゃっていますが、要するにいろんな人、できる方を日本に連れてこいということを言っております。かつて私はこういうことを言ったら、まだまだそんなこと言わぬでくれと。国交省辺りの委員会で、人が足りないんだったらよそから持ってくればいいじゃないかと言ったら大変なことになりました。絶対書かせてくれませんでしたが、今はそういうことが言えるような時代になりました。もう足下でそういう変化が起こっているというのは皆様お感じになっていると思います。
 当然ながら、言葉の問題、サインボード一つ取っても、これからいろんな形で書き換えなきゃいけないと。もうそろそろ皆さんこれ分かってきて、韓国語で書いたり英語で書いたり、そういったサインボードが出てきていますけれども、それをやらなきゃいけないという状況がもう目の前にあります。
 さらに、もっと進みますと、日本はこういったものにコストを掛けてきませんでしたけれども、これからいろんな海外の方が来られて、例えば一体市役所へ行って何をやるのかと、そういったことまで訳の分からぬ状況が続いています。それから、家を買いたいんだけれどもどうしたらいいのかとか、住民登録手続をしたいのだけれどもと、いろんなことが出てきますが、そういったことに対して日本ではコストを払ってきませんでした。
 ところが、アメリカとかイギリスの社会ではマイノリティーの人々を受け入れて、そういう人たちを新たな活力にいくように持っていっています。そういった努力が我々はないし、今までコストも払う必要もなかったということで、新たにこういったことに直面せざるを得ないということです。そういう方が来られれば、子供がまた生まれることもあるでしょうし、非常に元気な方がどんどんどんどんいろんな活動に従事することになるかと思います。
 それから、最近、都心居住、地価が下がってマンションが安くなって、大分都心にマンションを買う方が増えてきました。横浜の山の手にいたお年寄りが、もうあの辺は坂があるととても動けないということで、都心にマンションを買って随分便利になったという方もいらっしゃいます。
 そういうことで、実は、かつて私が八〇年、九〇年のときの国勢調査とかをいろいろ見ていましたら、何と非常に高齢者の方の通勤が非常に増えていると、普通の人よりも通勤が増えているという状況がありました。当然、高齢化が進んでいったんですから当然そうなんですが、そういった状況の中で、いわゆる非常に通勤難の中で、ラッシュの中で押されてぐちゃぐちゃにされて通わなきゃいかぬ、そんなのがいいわけはないということでした。ところが、やっとその状況が変わってきたということで、この機会にもう少しコンパクトな、「コンパクト・シティ」と書いていますけれども、コンパクトな都市圏だとかコミュニティー圏の実現というものも図っていく必要があると思います。
 それから、SOHOなんか、実は私も典型的なSOHO、テレワーカーでして、今会社に行くのは三日ぐらいで、あと三日ぐらい家でやっていればいいというような状況です。ところが、やっていって分かったんですが、自分で言うのもあれなんですが、働き過ぎています、これじゃまた子づくりもできないなというぐらいに。効率は高まるんですけれども、仕事の方の効率が高まっちゃってなかなか仕事ができないということもありますので、単純にSOHOとかテレワーカーが増えればいいというわけじゃなくて、自分の意識が必要になるとは思っています。
 それから、先ほど申し上げた市場による持続性の確保ですけれども、そういった、これは市場が成立しないようなところ、例えば日本生命はずっと地方の田舎の駅前のところにビルを持っているわけですが、なぜ持てるかといいますと、資金が安いからです。調達コストが安くて、それで造ったビルだから、利回りがある程度、皆さんが耐えられないような利回りでも日本生命だったら耐えられるという違いがあるからです。
 リバプールとかそういうところではだれも来ないので、例えばジャガーを誘致したときには、ジャガーの工場を建てるために、彼らが実際にそこに工場を建てたとき、そこでは見掛けの賃料になるんですけれども、自分で工場を建てるのに見掛けの自分の賃料になるんですが、その賃料が稼げないと。いわゆる家賃が低過ぎて、そこに進出できないということを計算しまして、逆算しまして、低い家賃だったら一体幾らあれば本当に簿価を下げて投資ができるんだというふうに計算しまして、その差額を補助を出して、その結果、ジャガーはリバプールに出ていったということがあります。それから、富士通だとかそういったところも結構そういった援助を受けながら実は現地に出ていっています。
 そういったことは、いったん出ていくと、賃料が安くても簿価は低いためにずっと同じ利回りが将来も期待できるということです。かなりもう下がったところでやっていますので、今ちょうどバブルの崩壊の後で、不動産の簿価を切り捨てて、それで新しいまた動きが出てきたのと同じことが実はあります。そういったことが実際に制度として、例えばアメリカでもやっていますし、イギリスでもやっていました。そういったのは非常に簡単ですけれども、最初からそういうふうに思い切ってやれば、訳の分からないところに多額の金をまき散らして何もできなかったということにならなかったなということであります。
 そういったゲインを、低いところでも、ゲインをずっと持続的に確保できれば、やがて周辺の環境が良くなってきまして価値が上がってきます。そうすると、徐々に賃料も高くしていくことができるわけです。もちろん、そんなところで一体何をやるのかということは疑問かと思いますけれども、そういう需要をつくるということを実は真剣にやらなきゃいけません。
 そういったところにいろいろ動き回る人たち、能力のある人たちはどこにいるのかということですが、それを、これから出てくる高齢者とか女性の社会参画ということ、言わばその専門家が集まるNPOというところに期待したいと思っています。
 私は、自分のことですけれども、武蔵野市で町づくりのNPOを自分でつくりまして、実は昨日認証が下りて、これから登記するんですが、実に、私、ニッセイ基礎研究所の人間ですけれども、三菱総研からも来ています、それから野村からも来ています、そうした専門家。それから、アーキテクトが来ています、プランナーが来ています。そういう人間たちでそういうNPO組織をつくってしまいました。武蔵野市にいるいろんなネットワークでもって、町づくりで困っていることがあったら言ってくれというふうに言ってあります。どんどんどんどん問い合わせが来て、それに対してまた我々は人を派遣して、手弁当ですが、お手伝いをしています。
 そういうことで、随分今まで町づくりなんかをやろうとしてくじけていた人たちがまた立ち上がってくるというのが私ども感触として得ていまして、非常に面白いなと思っています。そういったところに、実は我々も高齢者なわけですね。そこでまた女性の、町づくりやっているおばさんたちもいます。非常にアクティブで元気にやっております。そういう人たちを見ていくと、本当にそういう機会をちゃんとつくってあげるということが本当にいいんだなと、これが新たな力になっていくなということであります。
 そういう人たちは何をしているかというと、今度実は小学校に行って、校庭開放だとか、ああいうところで子供たちの面倒も見ています。それから、まだ本当に若いお母さんたちで子供の育て方を知らないお母さんたちに、あなたね、子供はこう扱うのよというようなことをぽんぽんぽんぽん教えています。そういった関係が、結局はどこかで少子化ということに対してもいい解決の方向に、解決するべきものかどうかもちょっと分からないんですけれども、そういった少子化の状況、あるいは相対的な高齢化社会という中で、日本がどういうふうに進んでいけばいいかということは、実はそんな細かいところにあるんだろうなというふうに思っています。
 ちょっと訳の分からぬ話で申し訳ございませんでしたけれども、私のお話を終わりにさせていただきます。
#8
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取を終わります。
 これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後四時をめどにさせていただきます。
 なお、質疑者及び各参考人にお願い申し上げます。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようにお願いいたします。
 また、多くの方が御発言できますよう、一回の発言はおおむね三分程度とさせていただきます。
 なお、質疑の際は、最初にどなたに対する質問であるかをお述べいただきますようにお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方、挙手をお願いします。
 中原爽さん。
#9
○中原爽君 自民党の中原でございます。
 八代先生にお尋ねしようと思います。
 先生にいただきましたレジュメの五ページでありますけれども、下の方の箱書きの部分で、「多様な働き方に中立的な雇用制度」という表題で、これの下から三つ目の黒丸のところでありますけれども、「派遣労働の社会的認知(常用代替防止削除)」と、こういうふうになっております。
 実は、この常用代替の防止という部分は、参議院の厚生労働委員会で、平成十五年の労働基準法改正のときに附帯決議を付けております。
 と申しますのは、従来は有期、すなわち期間を定めて雇用するのは一年ということだったんですが、これを上限三年まで延長しまして、さらに特殊な能力のある人、すなわち弁護士さんであるとか公認会計士、医者、これは五年まで雇用ができるというふうに法改正をいたしました。そのときに、この三年とか五年の雇用者を増やすという形で従来の終身雇用の人たちを減らしていくというのはよくないんだという意味で、常用の終身雇用者の代替の目的で三年とか五年の雇用者を増やしていくというのはやめてくれという決議をいたしました。
 そういうことになっておりまして、そうなると、それを削除しろということにおっしゃっておられる格好になるんですけれども、その点が前文の方は「派遣労働の社会的認知」となっていますから、派遣労働といえばこれはまあパートタイマーという意味になるわけであります。しかし、三年雇用であろうと五年雇用であろうと、常勤で三年雇うという場合もあるし、非常勤、すなわちパートタイマーで三年雇うという場合もありまして、その考えがきちっと整理をされないと、ここで言っておられる「派遣労働の社会的認知」というのは、要するに有期労働の中の三年雇用で雇ったパートタイマーをまた別のところへ、別の会社へ出向させるとか、いろいろな意味に取れるわけでございますので、その辺のところのはっきりした御説明をいただきたいと思います。
#10
○参考人(八代尚宏君) ありがとうございました。
 そこは、まさしく非常に大きな議論を呼んでいるところだと思われます。
 まず、附帯決議の考え方でございますけれども、その附帯決議の前提には、いわゆる終身雇用と有期雇用との間が代替的な関係がある、したがって、そういう有期雇用を減らせばその人たちは終身雇用として雇われるという前提があろうかと思いますが、経済学的な考え方をすると、その前提は必ずしも成り立たないんじゃないか。
 つまり、それは労働、雇用、何というか、雇用量が一定であって、その中で終身雇用と有期雇用との代替が起こるということですが、労働者に対する需要というのは、例えば資本との代替関係もありますし、あるいは外国人労働との代替関係もある、あるいは一年未満のパートの人と三年とか五年の有期雇用との代替関係もあるわけでありまして、基本的にはそれぞれはやはり企業の言わば合理的な行動、あるいは組合との交渉によって決まるものであって、それを法律で介入することによって、いい面もあるでしょうが、逆にマイナス面も大きいんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
 極端なことを言えば、それで雇用機会自体が減ってしまう可能性がある。特に今後の不確実な時代では、かつての高い経済成長の時代と同じように終身雇用を前提とした労働者に対する需要というのは非常に小さくなっているわけでありまして、その意味で、有期雇用でなければ雇用自体が生まれない可能性もある、あるいはもっと不安定な一年未満のパートに代替されるおそれもあると。
 そういうことでありますので、そういう雇用契約について、言わば、対する規制というのが本当に労働者のためになっているかどうかというのが一つのポイントであろうかと思います。
 それから、御質問の派遣労働と言ったときにいろんな派遣があるわけで、その派遣元で言わば常用労働の人たちが派遣先を転々とするという形態もあるわけでして、これは元々派遣元で常用労働でやってその人の雇用は保障されているわけですから、それには何の問題もないんじゃないか。むしろ、それが今若干規制されているんですけど、そういう規制というのはある意味で全く意味がないんじゃないかというふうに思っております。
 問題は、登録型派遣ということでありまして、派遣契約があって初めて雇われるという人たち、これは非常にパートに近いわけでありますが、この人たちが余り増えると問題があるんじゃないかという御指摘は当然あろうかと思います。
 ただ、この派遣労働者というのは、規模からいえばパートタイマーの人よりはるかに小さいわけでありまして、その意味で、企業に直接雇われるパートタイムの人と派遣会社に雇われる派遣労働者の人というのもまた代替関係にあるわけであります。
 私は、こういう言わば一年未満のパートの人たちよりは、派遣労働者の方がより恵まれているんじゃないか。つまり、それは、派遣元が一種のマネージャーとして派遣先の企業と交渉もするわけですし、あるいは訓練もしてくれると。そういうことで、派遣労働を言わば常用代替に替わる、常用代替から見れば劣っている働き方であるという考え方から規制することによって、もっとより望ましくないことが起こる可能性があるんじゃないかという視点でございます。
 それから、何よりも、派遣労働者が何を望んでいるかということについて、これは大阪府とかあるいは厚生労働省の調査もありますが、派遣労働者が望んでいることは、確かに常用雇用の機会がないからやむを得ず派遣で働いているという人もおられますが、同時に、最初から派遣労働で働きたいと思っている人も同じぐらいいるわけなんですね。
 これはなぜかと申しますと、先ほど申し上げましたように、派遣労働というのは一つの職種別労働市場の在り方でありまして、確かに雇用の保障はないけれども、職種の保障はあるわけなんですね。つまり、派遣労働者が自分でこの仕事に働きたい、あるいはここで働きたい、これは常用労働者にはない特権であるわけであります。
 ですから、例えば共働きの一方が正規の労働者である場合、他方も正規であるという組合せも当然あるわけですけれども、他方が派遣であって雇用の保障はないけれども、その代わり家の近くであるとか、あるいは自分が働きたいと思っている職種に限定して働くというようなことが派遣労働者はできるけれども、常用労働者は必ずしもできないわけで、そこはいろんな働き方についてメリット、デメリットがあるわけですね。
 ですから、一方的にすべての労働者が世帯主であるという前提から、雇用保障がすべてであって、その雇用保障のある終身雇用が一番いい働き方であって、それ以外の働き方から守らなければいけないという考え方が多様な働き方を妨げているんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
#11
○会長(清水嘉与子君) 中原さん、よろしいですか。──はい、どうぞ。
#12
○中原爽君 今、御説明がありましたけれども、参議院での附帯決議は、純粋に終身雇用者の数を減らすために有期の三年なり五年なりの期間を定めた雇用者を増やしていくというのがよくないというだけの附帯決議でありました。ですから、おっしゃっておられるように、この派遣労働や何かについては、その附帯決議ではほとんど触れていなかったというふうに思います。
 しかし、この三年なりあるいは五年なりの有期の契約を結ぶときの労働契約の仕方がやっぱり問題でありまして、企業側と労働者との契約上の問題で、三年後あるいは五年後の雇い止めがどうなるかということが非常に問題であります。ですから、三年なり五年なりを過ぎれば、これはもう常用の労働者という形に移行するという考えで附帯決議も出発していたというふうに思います。
#13
○会長(清水嘉与子君) 八代参考人、何か御発言ございますか、よろしいですか。
#14
○参考人(八代尚宏君) いや、もしよろしければ。
 ですから、正に先生のおっしゃるとおり、三年とか五年たった後、その人が雇い止めされる、言わば解雇に近い状況になる、これをどうするのかということでございますが、逆に言うと、そういう条件で初めて企業が雇ってくれるのであって、もしそれを、三年とか五年たった後必ず終身雇用の働き方に変えなければいけないとなると、逆にそれは、その人の雇用機会を狭めてしまうという危険性があるんじゃないか。
 例えば、今、例えば有期雇用の場合は三年の雇用契約を繰り返すことがたしかできないわけなんですよね。そうすると、せっかく労働者がこの企業で働きたい、この企業もこの労働者をもう一度有期で雇いたいと思ってもそれが言わばできないことになってしまう、別の会社に行かざるを得ない状況になってしまうんじゃないか。
 もちろん、先生のおっしゃるように、その会社で終身雇用で雇われればそれが一番いいわけですけれども、そういうことが会社ができないと判断したときは、言わば相思相愛の関係にあるところを言わば法律で、言わば別の会社に転職を強いるという結果にもなってしまうわけで、これはあらゆる労働法がそうなんですが、労働者のために良かれと思ってする規制が逆に労働者にとってマイナスになってしまう面もあるんじゃないか、その両面をやはり考えなければいけないんじゃないかと考えております。
#15
○山本保君 八代先生、森泉先生、篠原先生、本当にありがとうございました。
 たくさんお聞きしたいんですが、時間のこともありますので、一点ぐらいずつ三人の先生にお聞きしたいと思います。
 今、まず最初に八代先生、私もちょうどお聞きしたかったところだったんで、今の議論で大変よく分かりましたといいますか、大変難しいな、やっぱり大変だなという気がします。私は先生の話賛成なんですが、しかし、どのようにこれを持っていくのかなと。教育制度とか様々な改革しないと難しいと思っています。
 そこで、これはもし研究なりされておられるということであればお聞きしたいんですが、そういう大きなダイナミックな変革の前に、やはり例えば、今日は保育制度についてお話があり、その財源なども、というか子育て支援全体の財源も、保険制度という非常に魅力的な提案をされましたけれども。
 例えば育児休業制度とか、先ほど篠原先生のところからもSOHOという話が出ましたし、私どももこの前、一月に神戸の方に外資系の会社のところへ行きましたら、フレックスタイムとかいろんな女性の生き方について配慮したものがやっておられました。こういうようなものについては、今日、保育については大体ちょっとお話伺ったんですが、何か経済学的な分析をされておられれば、少し糸口だけでもお聞きしたいと思っておりました。
 それから次に、森泉先生には、ちょっと、全く私、初めてのこういう体験なんで、お話なんで非常に興味を持ちましたので、基本的なところをちょっとお聞きしますが、今日のお話の中で、持家というのはいわゆる一戸建てを言っておられるんでしょうか、それともマンションとか高層集合住宅というものを言っておられるんでしょうか。
 つまり、いわゆるお金の価値というものは、余り大小ぐらいで量的な変化ぐらいしかないのかもしれませんが、今日、たしか、いわゆるモラルハザードが出るとか、いろいろ住民間の問題というふうなことをおっしゃいました。そうなりますと、この二つの家の形というのは何か大きな影響があるんじゃないかしらんと。また、先ほど各国との比較も出られましたけれども、フィンランドとかスウェーデン、数字が出ていますが、これはいわゆる一戸建て住宅じゃないんじゃないかなという気もしまして、この辺の文化的な違いみたいなものは考えていくときに何か影響があるのではないかなという素朴な疑問がありますので、ちょっとお教えいただければと思います。
 最後に、篠原先生には、これもできれば、もう時間が短いですから簡単で結構ですが、三ページ目にありました、低い簿価で投資ができればという、最後に魅力的なお話があったんですが、私、素人で、どういう仕組みでそんなことができるんだろうかと、もう少し易しく教えていただければと思います。
#16
○会長(清水嘉与子君) それでは、八代参考人からどうぞ。
#17
○参考人(八代尚宏君) ちょっと御質問の趣旨がよく分からないんですが、育児休業制度というのは現在あるわけでございまして、これについては、各国もこういうのは持っておりますし、当然ながら、子育てのために一年間無給で休業するという仕組みを維持するというのは当然のことだと思います。
 企業は無給ですけれども、現在、雇用保険で失業に準ずる扱いという形で一定の給付はされているわけでございますが、先生の御質問は、それを更に延長とか、そういうことでございましょうか。
#18
○会長(清水嘉与子君) じゃ、山本さん、どうぞ。
#19
○山本保君 つまり、私の前に中原先生から、雇用形態の大きな変更というものが一つ重要だという指摘があり、私も理論的にはそのとおりだと思うんですが、しかし、なかなか大変だと。そうなったときに、まず今進められている育児休業ですとかそういうSOHOですとかいろんな柔軟な雇用体制とか、こういうものについてもっと進めていく方がいいのではないかなと私は思っておるものですから、その辺の経済的に分析をされるとどうであろうかということです。
#20
○参考人(八代尚宏君) 理解できました。つまり、雇用の多様化を進める、代替的に、終身雇用のままでももっと弾力的な働き方を進められるかどうかという御質問だと理解いたしております。
 もちろん、育児休業というものをきちっと取得させる、あるいは男性にも取得させるという形で夫婦で終身雇用のままで子育てと就業の両立を図るというのは当然ながらいいやり方であるわけですけれども、ただその場合は、今の一年間の育児休業ではやっぱり限界があるわけでして、子供というのは、御承知のように、しょっちゅう病気するわけでありまして、ある意味で、小さいうちはかなりある意味で手間が掛かるわけで、両親がともにフルタイムで、フルタイムというのは、日本の働き方では基本的に専業主婦が付いている、専業主婦が子育てをするという前提で、厳しいフルタイム、長時間労働を前提とした、あるいは配置転換、転勤を前提とした、諸外国から見ればはるかに厳しいフルタイムの働き方を言わば強いられているわけでありますから、夫婦がともにそういう形であれば、幾ら育児休業が充実しても到底難しいんじゃないだろうか。
 その意味では、安心して子育てができるためには、一つは、より責任の低いパートタイムあるいは派遣労働的な働き方、あるいは完全に退職して、子育てが終わった後また正社員と同じような条件で再就職できるという余地も残しておかないと、終身雇用プラス育児休業的なものだけでこの少子化問題を解決するというのはやっぱり限界があるんじゃないかと、そういうふうに考えております。
#21
○会長(清水嘉与子君) 森泉参考人、どうぞ。
#22
○参考人(森泉陽子君) 御質問ありがとうございました。
 持家の中には、当然、一戸建てのみじゃなくて共同マンションも含むわけなんですね。ですから、各国と同じデータを使っておるわけですけれども。
 日本においては、外国なんかのは中古住宅をすごく大事に使うと。アメリカではこの住宅は百年たっているとか、オランダでもむしろそういう古いものを自慢にするようなそういうプリファレンスがあるわけです。それはどうしてかというと、資産として家を見ているわけですね。ですから、自分が住んでいて自分がメンテナンスを非常によくするということが、次、自分がもうちょっと別の家に住む、替わるときに高く売れるということで、一生懸命自分の家のメンテナンスをしていくというところですね。
 諸外国と違うのは、日本は住宅の価値というのが、評価がすごく低くて、一戸建ての場合はもうほとんど土地ですね。マンションでももう非常に低くなっていくと。一戸建ての場合は、外国と違うのは、非常に、一生に一度だからと変な家を、変な家と言っては変ですけれども、ピンクだのクリーム色だのというすごい、そういった非常に個性の強いような家を造ってしまうがために、むしろ流通性が低いというような問題もあるわけですけれども。
 私がここで述べたかったのは、資産価値としての住宅ということなんですね。最近、住宅は利用するもので余り保有するものではないという意見があるので、それはもちろんそうですが、さっき申し上げたロックインエフェクトというのは実は違うところから来ているというところなんですね。
 それから、モラルハザードに関しても、今申し上げたのは、賃貸住宅はどうしても、どうせ引っ越しちゃって自分の資産ではないわけで、大事にしようという気がないということでモラルハザードというふうな言葉を使わせていただいたわけです。
#23
○会長(清水嘉与子君) 篠原参考人、どうぞ。
#24
○参考人(篠原二三夫君) 簡単に申し上げますと、実際に私がリバプール辺りに行って教わったことはこういうことです。実に簡単に申し上げます。
 例えば、リバプールでは賃料が五円しかもらえないとします、年間。ところが、オフィスを建てるときには百要ると。ということは、そこで利回りを見ますと五%の利回りしか出ません。とてもこんなところで五%の利回りではできないからオフィスが建たないということです。逆に、そういった状況下でイギリスの政府が考えたことは単純なことであります。じゃ、五十だけ持ってくりゃいいじゃないかと、五十あなたが出資して五返ってくれば利回り一〇%になるじゃないかということです。そして、何をやるかというと、その五十をだから補助金でカバーしちゃうわけです。これをギャップファンドといいます。
 ただし、皆さん五〇%というと驚くかもしれませんが、そんなことはございません。例えば、日本の地方都市で行われているいろんな再開発で実際に投じられる資金というのは、実際の開発コストの五割を超えるものもあります。ところが、現実にうまくいっていないものもあります。違いは、イギリスの場合は全部これ評価して査定しています。そのために大分差が付いているということで、要するに資金の効率的な使い方が図れるということであります。それから、戦略的にどうしても必要なところに対しては思い切ったことができるということはあります。
#25
○山本保君 ありがとうございました。
#26
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 山本孝史さん。
#27
○山本孝史君 お三方、ありがとうございました。大変興味深く聞かしていただきました。
 森泉さんと篠原さんとにお聞きをしたいと思っています。
 森泉さんの、この若年世帯の持家率の推移というのは、大変興味深いグラフを見せていただいているのですが、これは「若年世帯」と書いてありますので、二十代で結婚をした人たちがその家をどう持っているかという図だというふうに考えれば、二十代で結婚した人が家を持っている確率というのは日本の場合に非常に少ないんじゃないかなと、私などは直観的にこう思うわけです。
 実は、今なかなか若い人が家を持ちにくくなっているのは、やはり団塊の世代の親がまだ生きていて自分で家を持っているというのもあるかもしれませんけれども、賃金上昇が見込めないとか、あるいは定職に就けない、あるいは大変に先行きの高いローンの支払等を考えると、そのリスクを冒してまで持家を持とうという気になかなかなりにくいという心理的状況があるのではないだろうかと思います。
 それともう一つは、大学を卒業してからふるさとで生活をするのか、あるいは都会へ出てくるのかというところで、篠原さんがおっしゃっている、私はふるさとというか地域をどう考えるかといったときに、そこで持家を持っているのか、あるいは賃貸住宅に住んでいるのかということで意識の違いが出てくるのかどうかというところが大変興味深いところで、UターンとかIターンとかができて早い時期に地元に戻れれば恐らく持家率は高くなるんだろうけれども、都会で生活しないと賃金の収入は得れない、仕事が都会にしかないとなってくると、なかなかこの持家率ということでは言えないのではないかと私などは思います。
 そういう意味で、これは私が今日お聞きしていて誤解をしていると思いますのであえてお聞きをするのですが、持家に住んでいる人の方が賃貸住宅に住んでいる人よりも何らかのモチベーションが高いというような感じでは言えないのではないだろうか。むしろやるべきことは、優良な賃貸住宅というものの整備も日本の住宅政策の中では必要なんではないだろうかという、住宅政策全体の見直しが必要なのではないかと私は思うのですが、その点について、前段申し上げた点も含めて御感想をお聞かせをいただければと思います。
 それから、篠原さんにお伺いをしたいのは、私も多民族社会との共生というのは大変重要なテーマだと思っておりますが、在日外国人の地方参政権の問題、あるいは管理職への登用の問題、あるいは中国からの観光客に対するビザの発給が極めて厳しいというような問題等々の法的な、外国人に対する法的な日本の社会の壁の高さというのは日本社会を反映しているものだとは思いますけれども、これから先、本当に先生がおっしゃっているような意味で多民族社会の実現あるいは多文化共生というものを進めていくために、政治として何をすべきなのか、あるいは社会としてどういうふうに考えていくべきなのかということについて、お考えがあったら是非お聞かせをください。
#28
○会長(清水嘉与子君) では、森泉参考人、どうぞ。
#29
○参考人(森泉陽子君) それではお答えいたします。
 三つほど御質問があったかと思います。
 一番目の、確かに不確実の時代ですから、将来に対する賃金の上昇が少ないとかローンの支払が不安であるという、これはすべての世代にとってあり得る話なわけですね。それが特に若年に前倒しで来ているということはそのとおりだというふうには思いますが、いずれにしても日本の場合は、じゃほかの国は非常にバラ色の経済状況かっていうとそういうわけでもなくて、いつの時代においても日本の若年者というのは先進各国に比べれば低いということが言えるわけですね。
 イギリスなんかも、ある種特殊の事情があるかもしれませんけど、やはり先ほど申し上げたように資産形成ということの点が大きいわけです。もし賃金の支払とかローンの心配があれば中古住宅で、非常に小さなところからイギリスの人なんかは、若い人はまず会社に勤めたらそこで自分がアパートに住むか、それともそういうアパートを買おうかということを考えるわけですね。だから、そういうことを考えると、やはりそのリスクの面も確かにございますが、そればかり、それだからやっぱり低いということではないというふうに私は思います。
 それから二番目の、大学を卒業してふるさとに戻るかどうかっていうのは、確かに先生のおっしゃる点だと思って、私は実は余り気が付かなかったところなんですが、先ほど申し上げましたように、確かに先生がおっしゃるとおりに、富山県は五〇%の若い人がということは、じゃ、ちょっとここは私、分からないんですけど、富山県っていうのは労働、雇用機会が多いのかどうかっていうのはちょっと、そこのところ調べてみないと分からないんですが、そういった側面はあるのかもしれませんし、ちょっとそこは確かにおっしゃるとおりで、ふるさとで働くということと関係があるのかなという気がちょっとしないではないですね。
 で、三番目ですけども、もちろん私も優良な賃貸住宅を造るということは最後にもう述べましたし、要するに賃貸住宅に住む時間が長くなっているわけですから、それはもう当然中堅所得者層の、あるいは中年のための賃貸住宅っていうのはもちろん必要なんでございますけども、いずれは八〇%が持家を持ちたいという、そういう意識が日本人の中には強いと思うんですよね。どの時代でもやっぱり八〇近く行っているわけですから、そこを無理やりに無視する必要もないのではないかと。
 最近、申し上げたように、賃貸住宅、賃貸住宅っていうんで、非常に日本は税制も持家の方に有利になっておりまして、賃貸住宅の方というのは非常にお粗末であったということはもちろん事実なんで、そちらの方も当然これからは住宅政策としては転換していかなきゃならないんですが、同時に中古住宅の方も同じようにやっていかなければならないというのが私の考えでございます。
#30
○会長(清水嘉与子君) 篠原参考人、どうぞ。
#31
○参考人(篠原二三夫君) 今のちょっと森泉先生の話ともちょっと関連してくるんですけど、私、コミュニティーとか多民族とかいろいろ考えているときに、持家政策とも絡んでくるんですが、実はよくアメリカの例を見ています。
 今、何が例えばアメリカで起こっているかといいますと、驚くほどの持家政策の推進です。何をやっているかというと、マイノリティー、白人の方の持家率はいいと、今度は黒人だとか、まあ中国人も入っている、韓国人も入っている、日本人もあるかもしれませんけど、そういった人たちのための今度低所得レベル、そんなに低い人だけじゃないんですけど、中もいるんですけど、そういう人たちの持家率を見てみたら相対的にかなり低いということが分かって、そこを何とかしようという話になっています。
 なぜそれをするかということは、これちょっとはっきり、間違っていたら済みませんけど、たしかファニーメイ財団におられるのか、パスクエルという経済学者が、持家、コミュニティーの中で定着した人たちがどれだけ社会的に貢献するかという調査をやって計量的にその実証を行っています。その結果出た結果は、借家コミュニティーよりも持家コミュニティーの方が社会に積極的に参加してくるという結果でした。それを実現しようとしているわけですね。
 そこで、そういったマイノリティー用に、アメリカに入ってくるんだけれども、彼らをそこに定着させて、そして家を持たせて、それで社会に参画させて社会的義務を果たせてということをやらせようとしています。その過程で活躍しているのが実はNPOでして、ほとんどそこにもう依存しています。政府の役人とかそういう人たちは、市の人たち、それは全部できません。そこにもう本当に補助を与えて、そういったところをうまく専門的にやらせています。そういったことを日本も用意しなきゃいけないというふうに私は内々思っています。
 現実に、ある地方都市に行きますと、そういう方々がもうたまってしまっているというところもあって、市の方々が自ら考えて、どう対応するかを考えているというふうにお聞きします。残念ながら、そういった現場をまだ歩き回っていないんで生々しい話は分かりませんけれども、ただそういうことを、もう既に起こっていることであれば、そこまで、アメリカだとかイギリスがやっていることも見ながら、じゃ日本は何をすべきかをもう考えるときにあるんだと私は思っています。
#32
○会長(清水嘉与子君) 山本さん、よろしいですか。
 ほかに。
 中島啓雄さん。
#33
○中島啓雄君 自由民主党の中島啓雄でございます。今日はありがとうございます。
 まず、八代参考人にお伺いしたいんですが、働く女性の、子育てのために就業を中断したり、子育てそのもので機会費用が高いということが少子化の大きな原因ではないかと。誠にそのとおりだと思うんですが、現在の例えば児童手当のようなものは、子供の年齢なりあるいは親の所得水準程度の話で、なかなか女性の機会費用を補てんをするというような制度にはなっていないと思うんですが、何か制度的にある程度機会費用を削減するようなアイデアというのがあるのかどうか教えていただければ有り難いと思います。
 それからもう一つは、スライドの十七枚目に「人口減少下でも安定成長は可能」と書いてあって、特に二〇一〇年代からの成長率は、これは二・五%に近いような非常に高いものになっていますが、ちょっとその辺がどうやると高くなるのか、日経センターの予測だと思いますが、多少教えていただければ有り難いと思います。
 それから、篠原参考人にお伺いしたいんでございますが、一ページ目の1の(4)のところに「市場原理を通じて、まちづくりの着実な推進」と書いてございますが、これはイギリスなどに例があるそうでございますが、ちょっとその具体的な仕組みなどについて少し教えていただければと思います。
 以上です。
#34
○会長(清水嘉与子君) では、八代参考人。
#35
○参考人(八代尚宏君) ありがとうございました。
 まさしくそれがポイントでございまして、どうやったら子育てによる、働いていた女性の機会費用を減らすことができるのかということでございますが、先ほどのここの、私のレジュメの五ページ目の上のスライドを見ていただきたいと思うわけですが、この機会費用は実は膨大なものでありまして、児童手当はもちろん、財政的にこれを補てんするというのはもうほとんど非現実的であるわけです。
 いろんな試算がございますが、短大卒の女性の場合でも、二十歳から働いて六十歳まで働き続ける場合と、このように子育ての後パートタイムで六十まで働く場合だと、ある意味でもう一億円に近いぐらいの生涯所得の差があるわけで、これを財政的に補てんするというのは不可能ですし、やるべきでもないかと思います。ですから、大事なのは、そういう雇用機会が、いったん企業から退職するとよい雇用機会が失われてしまうという働き方の硬直性自体が最大の問題点であって、これが欧米の職種別労働市場のように年齢にかかわりなく同じ能力を持っている人であれば同じ仕事が、同じ条件で仕事が与えられると。これは、日本のような雇用保障、年功賃金の企業別労働市場と一番違う点であるわけで、流動性があれば男女を問わず再就職機会というのはやっぱりそれだけチャンスが大きいわけで、こういう雇用制度の改革で初めて機会費用を下げることができるんじゃないかというふうに考えております。
 それから、もちろん先ほど山本先生から御質問がありましたように、終身雇用のままでも何とか保育サービスを活用することで辞めずに済ませるというやり方も当然一つの考え方としてあるわけですが、私はやはりそれができるのは、よほど家族にかなりの犠牲を背負ってやることで、それができる人たちばっかりでもないんじゃないかと思っておりますので、やはり多様な働き方を充実することによってこの機会費用をできるだけ小さくするというのが究極の少子化対策ではないかと考えております。
 それから、御質問の経済成長率のグラフ、九ページ目の上の段でございますが、これは二・五というより下にマイナスの部分がございますので二%ぐらいでありますけれども、これはそれほど大変なことではないわけでして、今後は人口が減少しますし労働力も減少しますから、経済成長自体は過去のように高くはならないわけでありますけれども、労働生産性がある意味で二・五%ぐらい維持できれば、成長率の二%というのは労働力の減少分を差し引いても十分可能ではないだろうかと。そのためには、今のままではなくて、ここに書いてございますように、もっと例えば労働力が産業間、企業間で自由に動ける、つまり衰退産業から成長産業に大きなコストなしに動けるという状況が不可欠ではないかと思います。
 日本の雇用保障というのは、過去の高い成長期ではメリット面が非常に大きくデメリット面は小さかったわけですが、今後の低成長時代ではかつてのようなメリット面は非常に小さくなって、むしろ貴重な労働力をある意味で衰退部門に閉じ込めるような役割も果たしているんじゃないかと。その意味で、経済環境、社会環境が変われば、新しい形で新しい労働市場が、これは経済の活力のためにもあるいは少子化のためにも必要になっていくんじゃないかという考え方でございます。
#36
○参考人(篠原二三夫君) 市場原理というとお金の話が必ず出てくるんですが、先ほど申し上げたような、大きな何十億という単位のそういったギャップファンドみたいな話もあると思えば、もう一つあるのは、例えばNPO法人をつくったときに、例えば寄附金の所得控除ができるかと、いわゆるそういう控除項目になり得るかということは前も議論されたと思いますけれども、日本ではそういうふうになっていません。
 実は、アメリカだとかイギリスのほとんどのボランティア、NPO活動の源泉はそこにあるということですね、その上に大きな財団がいたりもするんですが。そういったところは本当に、二つの面ですね、節税したいということと、それからどうせ節税するんならいいこともしたいというインセンティブを持ってそういったところに資金を投じていきます。そういう受皿が今日本には、残念ながら、検討はされたけれどもまだできていないということです。
#37
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 ほかにいかがでしょうか。
 小林美恵子さん。
#38
○小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。今日は貴重な御意見ありがとうございました。
 私は、まず初めに八代参考人に二点ほどお聞きしたいと思います。
 参考人、先ほどからも就業継続を希望する女性が結婚することで不利になるようなことではやっぱり婚姻率は高まらないといいますか、そこを是正しないと少子化を防ぐことにはならないというふうにお話があったというふうに思います。
 私も、やっぱり仕事を続けたい女性が結婚しても不利にならないということ、結婚することによってなお一層パワーアップする職場といいますか社会というのは本当に重要だというふうに思います。それを進める上では、雇用の例えば不安でありますとか、社会保障に対する不安でありますとか、そういう不安というのをしっかり男女の区別なく、差別なく解消し整備するということがやっぱり重要じゃないかなというふうに思うんですけれども、その点、参考人の御意見をひとつお聞きしたいのが一点です。
 二点目の問題は、参考人はこの間、共働き家族を基準にした政策が必要というタイトルで働き方の見直しとか保育所の待機児ゼロ作戦についても、ほかの論文もお書きになっているかと思いますけれども、その特に保育所の問題なんですけれども、公立保育所は民間と比べて、これは参考人の文書から拝見しているんですけれども、人件費を中心とした高コスト構造の公立保育所では、保育サービスの供給が著しく制約されるということで休日保育所とか病児保育所などのサービスの提供が困難だというふうに指摘がございました。民間に保育予算ももっと重視をして民間でサービスの向上をというふうに述べられているくだりもあったかなというふうに思うんですけれども、私はやっぱり、子育て中の若い世帯が、例えば深夜勤務も余儀なくされるような働き方であるとか病気の子供を預けても仕事をしなくてはならないという働き方そのものを見直すことの方が重要だというふうに思うんですね。
 一方で、休日保育とか病児保育のニーズも高いですから、本来はもっと保育予算を増額して職員も増員をして、公立保育所がそういうニーズにこたえられる、公的責任を果たすということが本当は求められるというふうに思うんですけれども、この点は参考人はどのようにお考えかというのをお聞きしたいと思います。
#39
○参考人(八代尚宏君) どうもありがとうございました。
 今、小林委員からおっしゃった点がまさしく少子化対策を考えるときの大きなポイントになろうかと思います。
 まず、働き方の方でございますが、現在の働き方というのは、やはり世帯主を中心とした働き方になるために、結婚することによって女性が不利な立場になる場合が多いんじゃないかと。その意味で、仕事か結婚かというのが言わば二者択一の、女性にとってですね、関係になる。男性にとっては全然これは二者択一じゃないわけでして、そういう非対称性が問題であるという点では同じ意見だと思います。
 問題は、そのときに、それだけではなくて雇用不安があっては駄目なんだということでございますが、その雇用不安ということの意味なんですけれども、もちろん終身雇用という意味で雇用が保障されるということは望ましいことではございますが、企業がただでそういう雇用保障を与えるわけではないわけで、当然ながら企業は、終身雇用という雇用保障を与える見返りに労働者にやはり非常に大きな要求をするわけでありまして、それが先ほどから申し上げていますような長時間労働であったり頻繁な配置転換であったり転勤であると。これはもうパッケージの契約であるわけですから、企業から見ればそうせざるを得ない。ただ、そういう働き方は、専業主婦を持った男性はそういう働き方に対応できるわけですけれども、共働き世帯はそれはできないんじゃないか、だからその意味で別の働き方が必要なんではないだろうかということであります。
 雇用保障という点についても、特定の企業からだけの雇用保障がすべてなんだろうか。今後の少子化社会ではむしろ労働力は長期的に減るわけですから、むしろ労働者にとって有利な状況になる。その意味では、一定の技能を持っていれば、別に特定の企業の雇用保障に依存しなくても、きちっとした職種別労働市場では十分な仕事を得る機会があるという状況もある意味では別の雇用保障ではないだろうか、これは市場を通じた雇用保障というふうに言っておりますが。その意味で、企業を通じた雇用保障というものと今の世帯主を中心とした働き方というのが、私は密接不可分だと考えております。
 もちろん、公務員のようであればそれは可能であるわけですけれども、国際競争にさらされている日本の企業では、それはどちらかを選択せざるを得ない。雇用保障であってかつ世帯主型の働き方、あるいは雇用保障はないけれども言わば職種の保障があるという、そういう働き方のどっちを選ぶかということにならざるを得ないんではないかと思っております。
 それから、保育所についても、委員のおっしゃったように保育所だけで対応するということは不可能であって、深夜労働が慢性的な働き方であれば、幾ら保育所が対応したとしてもそれは限界があるので、やっぱりそれは働き方自体を見直さなければいけないというのは全くそのとおりだと思います。
 ただ、どういう保育所が必要かといったときに、やはり保育予算には限りがあるというふうに考えますと、限られた保育士さんを最大限効率的に使うためにはどうしたらいいかといいますと、こちらのスライドの十五番、八ページの上にありますように、現にやはり公立保育所とそれから社会福祉法人が経営している保育所等の間ではかなりのコスト格差があると。このコスト格差のかなりの部分が人件費であって、年功賃金の公務員を使っている公立保育所と、言わば職種別賃金の保育士を使っている民間の保育所との間に明らかなコスト格差があるわけであります。
 ですから、安全な保育サービスを提供するということが公務員にしかできないことなのかどうかということが実はポイントであるわけでして、かつてのように政府の財源が豊かであればもう基本的に公務員で全部やればいいという考え方もあり得るかと思いますが、これからは、やはり公務員というのは真に公務員でなければできない仕事に特化すると。民間人で十分できる仕事は民間にゆだねるという公私の役割分担の適正化ということを考えなければいけないんじゃないかというふうに考えているわけであります。
 私は、保育サービスというのは十分民間でもできるんじゃないかと。ただ、今公立保育所で働いている公務員の保母さんというのは、単にじゃもう要らないから首を切るというんじゃなくて、むしろ公務員の保母さんにしかできない仕事に変わっていただければどうかというふうに考えております。
 これは全く私見でございますが、今保育所というのは認可外というのに非常に大きな問題がありまして、非常に劣悪な環境で子供を預かっているような保育所も一杯あるわけであって、私はそれにはもっと規制を掛けるべきだというふうに言っているわけであります。しかし、政府は、そういう認可外保育所というのがあたかも存在しないかのような考え方でいる。つまり、今の認可保育所の基準が最低基準なんであって、それ以外の基準はないんだというようなことを言っておられるわけですけれども、これはおかしいんじゃないか。
 その意味で、お金を預かる銀行には厳しい規制があるわけですから、お金よりも大事な子供を預かる保育所にはもっと銀行並みの規制があっていいんじゃないか。その意味では、私は、一種の例えば食品衛生法のような観点から抜き打ち検査に入る言わば保育検査と言うと大げさなんですが、保育所の安全基準をきちっと管理するための言わば規制というものをきちっと設ける必要があるんじゃないか。保健所が言わばそういう食品を扱っているところを検査するように、認可外の保育所、もちろん認可保育所も含めてですけれども、そういう立入検査をするような仕事が、公務員がもっと必要である。それこそ今の公立保育所の保母さんにふさわしい仕事じゃないだろうかというふうに考えているわけであります。
 ですから、大事なのは、そういういかにして子供を守るかというときに、公務員が自ら保育サービスを、民間でもできるようなことに貴重な公務員を使うのか、それとも公務員にしかできないような児童を守るための仕事に公務員を使うかというような一つの考え方があるんじゃないかというふうに考えております。
#40
○会長(清水嘉与子君) 小林さん、よろしいですか。
 ほかにいかがでしょうか。
 島田智哉子さん。
#41
○島田智哉子君 民主党・新緑風会の島田智哉子でございます。
 本日はありがとうございます。
 森泉参考人と、そして八代参考人にお聞きしたいんですが、まず森泉参考人の方に、リバースモーゲージの制度がございますけれども、これがなかなか民間、国において研究、検討がなされて久しい中、なかなか定着、促進に結び付いていかないようですけれども、今後どのような取組が必要であるとお考えでしょうか、それをお聞かせください。
 また、八代参考人には、介護保険に対応した育児保険の設立を御提案なさいましたけれども、具体的にはどのようなお考えをお持ちでしょうか、お聞かせいただければ有り難いです。お願いいたします。
#42
○参考人(森泉陽子君) リバースモーゲージに関してですけれども、これ有用であるとは思うんですけれども、確かにおっしゃるとおり、なかなか日本においては進んでいないということですね。幾つか言われることがあると思うんですが、まず一番、難しいんだかシンプルなんだか分からないんですけれども、子供が余り賛成しないというところが一つあるようで、それは、先ほどのように、当てにしている子供がバックに一杯いるのでそれはそういうことがあるかなというふうに思うんです。
 それはまあ、そういったところに関しては、プライベートな情報というか、プライベートな話なので非常に難しいんですが、これから少子化となると、意外と住宅以外にも高齢者がお金をためているということがある可能性があるので、そういう場合にはそのリバースモーゲージも使いやすいかもしれませんね。調整というのが、子供がたくさんいると調整ということが非常に難しくなってくるわけですけれども、子供が少ないということで、その点に関しては調整ということが少子化においては案外やりやすくなってくるかもしれませんというのが第一点ですね。
 もう一つは、地価がどんどん下がってきちゃうということのリスクと、それから高齢者が予想以上に長生きをしてしまうというリスクがあると思うんですね。これが今私は一番難しい話だと思うんで、最近のそのリバースモーゲージで、年限を区切って、例えば二十年とか十五年というリバースモーゲージも最近あるようですが、それでは高齢者は少しも安心しないので、やはり額は少なくなってもずっと一生というのが大事だと思うんですね。
 その場合は、最終的には金融機関の問題、それを買い取ったときの金融機関の問題なんですが、それを、やはり木造住宅ではなかなか難しいかもしれませんけれども、発想としては証券化的な考え方ですね。その一つだけを見ているからいけないんであって、これは束にしてその地域のマーケットとして考えれば、さっき言ったように、再開発の問題もあるし、そこでもう一つグループホームズみたいなものも建てられるし、あるいは介護のあれも建てられるということで、そのマーケットとしてとらえるということが大事なのではないかと思うんですね。
 だから、これはなかなか民間の金融機関一個だけではできないので、それを束ねる役として、何か行政的なものができればというふうには思いますが。
#43
○参考人(八代尚宏君) ちょっと先ほど時間がなくて十分説明できませんでしたので、御質問、どうもありがとうございました。
 この育児保険という考え方は、一部の社会保障の専門家から何年も前から出ていることでありまして、要するに高齢者介護の問題について、二〇〇〇年に措置制度ではなく契約制度に変えていくということで介護保険ができて、これが非常に大きな成功を収めているというふうに考えているから、全くこれと同じような仕組みを保育の方にも適用したらどうだろうかということでございます。
 介護保険のメリットというのは、今まで、それ以前は正に行政処分であって、政府が一方的に要介護者に対してこれだけのサービスを提供するんだということを決めて、それを言わば公務員あるいは社協等で対応してきたわけでありますけれども、それを言わば契約制度に変えることによって利用者が企業も含めた多様な言わば事業者を選ぶことができた、それで事業者の中で競争が発生してサービスの質も上がったんじゃないかということであります。
 それからもう一つは、お金の使い方であるわけですけれども、かつての措置制度の下では一般財源というものが施設補助に専ら向けられていたと。国公立あるいは社会福祉法人がつくっている介護施設とかそういうところにお金が流れて、そこがサービスを安く提供すると。安く、まあただで提供するという仕組みになってきたわけなんですが、それを言わば保険ということを通じて利用者補助に移したわけですね。ですから、その二つによって消費者が選択できる介護サービスが実現し、しかもそのおかげで介護保険分野では非常に多くの雇用機会も膨らんだわけであるわけです。
 ですから、それと同じことがなぜ保育でできないんであろうかということであります。これについては、もちろんいろんな反対がありまして、子供を持つというのは言わばリスクではないんだ、事故ではないんだと、したがって事故に対応する保険というのはなじまないんだという考え方があるわけであります。ただ、これはある意味で要介護になるというのも似たようなものでありまして、どこまでがリスクと言えるのかどうか、年を取ればみんなある程度介護が必要になるという意味では、これはもうかなり、元々介護についても言われたことであるわけです。大事なことは、介護と同じように子育てを特定の家族だけの負担にするんじゃなくて、社会的に扶養するという考え方であれば、介護保険も育児保険も基本的に同じものであるわけです。
 御質問の趣旨は、例えばどれくらい財源が要るかということであろうかと思いますが、これはもうきちっと専門家が検討をしていただくことだと思いますけれども、私が簡単に考えますと、現在、国とか自治体が既に四・七兆円近い額を児童のために使っているわけでありまして、これに例えば月千円ぐらいの保険料を二十歳以上の方から受け取って、それを今の介護保険に例えば上乗せするような形、これで一・二兆円ぐらいが出るわけですけれども、この二つを合わせて給付に回すと、現在の保育所の児童数を例えば大幅に増やすことができる。それから、専業主婦の人に対する一時保育みたいなものにも使うことができるんじゃないか。
 ただ、そのときには、同時に保育費の利用者負担というのも、今大体平均すれば一割ぐらいというのを二割、場合によっては三割ぐらい、医療保険並みに上げる必要があるんじゃないかということでありまして、そういうような形にすることによって、介護とか医療保険みたいな形で、言わば利用者が保育サービスを使いやすくするということが大きなポイントであるわけです。
 保険の最大の問題点は、先ほどもありましたモラルハザードであるわけなんですが、この育児保険についてはモラルハザード大歓迎であるわけです。つまり、育児保険ができたから子供を産もうかというのがこの保険におけるモラルハザードである。正にこれが少子化対策であるわけですから、モラルハザードが全く心配のない保険という意味では、実は非常にいい保険ではないだろうかということでございます。
 ただ、この一・二兆円分だけ保険料で、国、自治体の負担四・七兆円をそのままにしますと、実は八〇%の国庫負担という恐るべき社会保険になってしまって、そんなことが認められるのかという御批判もあろうかと思いますが、これに近いものは例えば議員年金でありまして、そういう例もありますので、全く二〇%の保険料で駄目だということにもならないんじゃないだろうかというふうに思っております。
#44
○会長(清水嘉与子君) 島田さん、よろしいですか。
 それでは、ほかにございませんでしょうか。
 それじゃ、加藤敏幸さん、どうぞ。
#45
○加藤敏幸君 民主党の加藤です。だれもいないんなら手挙げたんですけれども、どうも本当にありがとうございました。
 八代先生にお伺いをしたいんですけれども、パワーポイントの番号で九番ですか、私どもいただいたのでは五ページ、「子育ての最大の費用は良い就業機会の喪失」と、それからその下に「職場復帰できない雇用慣行」ということで、確かにこのことについていろいろ議論がされてきたし、今もされているわけですけれども、例示されているこのグラフは比較的年功型の賃金カーブで、あるステージで少し職務レベル上がっていくという典型的なものを出されていると思うんです。
 ただ、最近の現実の賃金カーブというのは相当フラット化が現実に進んでいるということもございますし、そういうふうなことを含めて、じゃ逆に言えば賃金カーブを更に下げるなり工夫すれば、就業機会の喪失というところでメリットが少なくなるということになるわけですけれども、この問題と、現実に賃金カーブの現状との関係で言ってみると、良い就業機会ということのおいしい部分を保障するということは、その分、企業負担として現実にカバーをしていくということが発生すると思うんで、そこのところをどう考えるかという問題点が一つ出てくると思うんです。
 それともう一つは、レジュメでいきますと何ページでしたか、十八番目のシートですけれども、九ページになります。「個人単位の賃金・税制・社会保険制度」と。これも実は二十年ぐらい前からずっと、私も連合におって大議論をずっとしてきたんですけれども、これもまあ現実にこのことを真剣に具体的にどうしようかという、考えていく立場からいきますと、正直言って、これ男性の賃金を下げると、もうずばりそのことをやっていくということ、それから税制、社会保険はもう大変な改革をやらないかぬという、基本的なベースを考えないかぬわけですけれども。
 ちょっと意地悪な言い方なんですけれども、そういうふうな、多くの男性にとっては賃下げだと、で、パートあるいは派遣、特に女性の皆さん方については恐らく賃率倍ぐらいで返していくという、こういうふうな大賃金構造改革を果たしてどういう状況でやり得るのか。そのことを大きく推進するための国民全体のモチベーションなり、そういうふうなことについて思えばある意味で途方に暮れる面もあるんですけれども、ややちょっと意地悪な質問になっちゃうんですけれども、その辺であえて更にお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
#46
○参考人(八代尚宏君) どうもありがとうございました。
 まず最初の点でございますが、御指摘のように、このスライド九番の機会費用というのは年功賃金カーブがフラットになればなるほど小さくなるということでありまして、それは全くそのとおりでございます。もっと正確に言いますと、これは連合の方も当然御賛成であると思いますが、同一労働同一賃金といいますか、同じ仕事をしてれば同じ賃金になる、パートタイマーと正規社員との間の賃金格差が少なくとも同じ仕事をしてれば基本的にないんだという形に持っていけば、ある意味でパートタイマーであったとしてもこの機会費用は非常に小さくなるわけであると思います。
 ただ、それをパートタイマーに年功賃金を適用することで解決しようとしたら、御指摘のように、企業にとって非常に大きな負担になって、それはある意味ではそんなことをした企業はつぶれてしまうだろうと。それはどっちを変えるかといえば、やはりそれは職種別賃金という方向に変えていくわけで、ただし、経験豊かな正社員はどんどん上の職種に移ることによって結果的に過去のような年功賃金を維持できるという方向に持っていくべきで、漫然と働いていても自然に賃金が上がっていくという夢のような時代は今後の厳しい競争社会ではもう無理だということを認識しなければいけないんじゃないかと思っております。
 それで、個人単位の賃金、税制をどうやっていくかということでありますが、別にこれは男性の賃金を下げるということじゃなくて、世帯主の賃金を下げるということで、まあ実質的に同じだというのは正に男性が世帯主になっているという今の状況からそうなんですけれども、賃金というのはもちろん労使の交渉で決めるものでありますから、外部からああしろこうしろと言うことはできないわけで、その意味では自然に市場の需給によってそう変わっていかざるを得ないと思いますが、税制とか社会保険というのは正に議会が決められるわけでありまして、そこをどうするかという議論は現に行われているわけです。
 で、所得税制におきましては特別配偶者控除というのはなくなったわけですが、依然として配偶者控除というのは残っていると。この配偶者控除というのはなぜ必要なのかという点をやっぱりもっと詰めなければいけないわけで、これはよく無償労働に対する報酬だという御議論がありますが、それははっきり言って誤っているわけですね。
 なぜならば、税調の答申をきちっと読めばそんなことは一切書いてないわけで、税調の答申によれば、配偶者控除の根拠というのは、無業の妻を持っている男性の言わばコストが大きいから、それを補てんするためだと書いてあるんですよね。これはある意味で専業主婦に対して非常に失礼な表現であって、専業主婦を抱えている男性は貧しいんだと。なぜならば、専業主婦は何も働かずに言わば食費を使うだけだから、専業主婦を抱えている世帯主はそれだけ貧しいから、それを税制上補てんしなければいけないという非常に失礼なことが書いてあるわけで、むしろこれは逆であって、専業主婦が非常に大きな貢献をしてればしてるほどむしろ課税すべきなんですね、専業主婦の働きに対して。それは、なぜならば、専業主婦を持っている世帯主というのは、持ってない人よりもはるかにそれだけ能力が高いし、稼げるわけですから、当然ながら本当は専業主婦の無償労働に対して課税するということがむしろ税制の公平性に沿うものであって、減税するというのは逆方向であるわけです。
 現にアメリカでは、共働き控除の拡大というのが税制改革の一つの焦点になっているわけで、むしろ必要なのは、配偶者控除よりも共働き控除の方が本来の税制上の公平性からすれば必要なんじゃないか。これは、結局、共働きの方が家事に使う時間とか、そういうものが少ないわけですからそれだけコストが掛かるというふうに、これは家事労働を、専業主婦の家事労働を評価すれば当然そういう帰結になるわけで、今の配偶者控除という考え方は本来の公平性には沿わないんじゃないだろうか、専業主婦の無償労働を評価すればするほどですね。
 そういう意味で実はかなり考え方がゆがんでいるんじゃないかと思いますし、社会保険の方では、例の国民年金の第三号被保険者のように被扶養者であるというだけで言わば基礎年金が丸々受け取れるという制度というのはやはり公平性の面からおかしいんじゃないだろうかということで、長い間年金審議会でも議論されていますが、今回の年金改革でもまたもや棚上げされたわけでありまして、そういう議論をきちっとして、男性も女性もともに働き、ともに家事、子育てを行うと。そういうような社会を標準として、その中で特に稼ぎの高い世帯主の方は言わば特権として専業主婦を持てると。言わば、専業主婦というのはエリートサラリーマンの一つの言わばステータスシンボルであるというふうに本当は考え方を変えた方がいいんじゃないかということであります。
 それが、共働き世帯が標準であって、専業主婦世帯というのは特殊な人たちであるんだということで、専業主婦世帯を守るということは逆に共働き世帯に対して課税をするということと同じわけでありまして、それが少子化が進む今後の日本社会にとって本当に望ましい政策なんでしょうかと。少子化が進む日本社会では働く意欲と能力を持つ人は少しでも働いてもらわなければいけないのに、女性が働くと損をするような仕組みというのは、やはりこれは制度的になくしていかなければいけないわけで、その意味でも、賃金は労使の自由な交渉で決めていただくわけですが、税制とか社会保険制度というのはやはりそういう働き方に中立な個人単位に変える必要があるんじゃないかと。
 さらには、公務員の配偶者手当はやはり政府が操作できることですからなくして、例えば子育ての手当に振り替えるとか、そういうような形で考えるということが是非必要なんじゃないかなというふうに考えている次第でございます。
#47
○会長(清水嘉与子君) 加藤さん、よろしいですか。
#48
○加藤敏幸君 まあ、よろしくないんですけれども、時間が掛かるので、時間が残れば。
#49
○会長(清水嘉与子君) それじゃ、神本美恵子さん。
#50
○神本美恵子君 今日は、参考人の方、ありがとうございました。
 八代参考人にお伺いしたいんですけれども、一点は今のことにもちょっとかかわるところなので後に回しますが、「少子化時代の家族の考え方」ということでパワーポイント十一ページでお示しいただいたんですが、私も全くこれと同じような考え方を持っているんですが、今様々な、多様な、結婚観なり家族観なり、実態としても多様な家族形態があるんですけれども、それに対して中立的な社会制度をということで、象徴的な例として選択的夫婦別姓の問題をお話聞かしていただいたんですが、今日、新聞、テレビ等で言われてます中学校の教科書の検定結果が公表されておりましたが、その中に、政府の意見、まあ文部科学省の意見として書き換えさせられたところにこの夫婦別姓のところがあるらしいんですね。新聞報道ですけれども、一人親の子供か親のコメントがコラム的に教科書に記述してあったところを、文部科学省、まあ検定官の意見で差し替えになって、これは標準的な家庭ではないので、標準的な家庭の、家族のコメントを載せるようにというような書換えがあったとか、あと幾つかそういった事例があったんですけれども、まあこれは単に検定官の頭が古かったということには片付けられない、政府の政策誘導的な、教科書ってそういう意味がありますので、お考え示していただいたこの多様な家族、家庭観といったようなものをもっと社会的に広げていく、あるいは実態としてあるものを制度的に保障していく。まあこの夫婦別姓の法案もそうなんですけれども、非嫡出子の財産の問題とか、北欧の方で少子化対策といいますか、少子化に歯止めが掛かったところの取組として、そういう多様な家族、結婚を認めることによって子供を産むことをちゅうちょしなくなったというようなお話も聞いたんですけれども。
 ここで一点、もう少しそういう日本の今の現状の中でお知恵があればお聞かせいただきたいのと、その前の、パワーポイントの九、十のところで、先ほどのこの就業を継続した場合の賃金カーブと中断した場合、これは出産、育児によって退職って書いてありますので、当然こっちが女性というふうに、書いていないけれどもそう読んでしまいますが、私はこれ、出産をちょっとどければ、育児によって中断してまた再び働き始めるという、これ男性が自分の身にここを置いてみたら、本当に真剣に個人単位の税制なり雇用制度なりという考え方でいかない、さっきの加藤委員と私はちょっとまた違う考えになるかもしれませんけれども、それ、そういうふうに見ていくこれからの考え方が必要ではないかなと思います。
 そういう意味で、その下の「派遣労働の社会的認知」、この派遣労働も、八代参考人の頭の中にはもしかしたら、今の現実で女性がほとんどですから、多くは女性ですので、その女性の働き方という意味でおっしゃったんではないかと思いますが、これも女性だけではなくて、これがもし男性であれば、結婚して子供を育てながら生きていくという意味で、今の派遣労働の在り方でいいのかというところで、是非これから、さっきおっしゃったことをもっと前に進めるために参考になる御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
#51
○参考人(八代尚宏君) どうもありがとうございました。
 私はできる限り、女性がというんじゃなくて、例えば世帯主と被扶養者とか、そういう言い方をしているわけでありますが、御指摘のように、出産を除けば育児というのは別に男女どちらでもできるわけでありますから、両方の場合に適用できるかと思います。
 それから、こういうふうに女性にとって働きやすい社会というのは、実は男性にとっても働きやすいんですよね。決して男性と女性の利害が対立するということではないわけで、例えば若年者で、ある企業に入った、しかしなかなか仕事が十分満足できない、そういうときに、例えばいったん資格を取るために二年間、三年間ほど大学に行って、大学院に行って、また復帰しようというときに、今の仕組みだと辞めざるを得ないわけですね。
 ですから、その意味で、これからどんどん流動性というのが高まる社会であるときに、これまでのように、いったん企業に入ったら定年退職までとにかくもう同じ会社にいることが良いことだと、それが良い働き方だと、それが雇用の保障なんだという考え方はどんどんやっぱり変わってくるんじゃないだろうかと思うわけです。何よりも、企業の寿命が短くなっているわけでして、かつての高い成長では大企業であればまず倒産することはないわけですけれども、今後の大競争時代ではどんな企業だって倒産のリスクはあるわけですから、企業が倒産したらもう路頭に迷うという労働者はなるべくつくらないようにして、ある意味でもっとたくましく生きられるようにはやはり、そういう雇用安定至上主義という考え方はやっぱり少し変えていく必要があるんじゃないか。それは女性にとっても男性にとっても一つの望ましい社会で、余りにもそういう雇用保障がある人とない人との格差が大き過ぎる労働市場というのを見直していくということが大事だろうと思われます。
 選択的な夫婦別姓の場合でも、これは今、その検定の話はちょっと私は存じませんでしたが、やはり何が典型的な家族なのかということを想定するということ自体がやっぱり問題があるわけで、働き方も多様であれば家族も多様であると、それをちゃんと中立的な立場からやはり対等に扱っていくと。それは一種の消費者主権であって、少なくとも日本人は、自分が例えば戸籍名を同姓にする方がいいか別姓にする方がいいかを自分の利益のために判断できるぐらいの能力はあるというふうに考えれば、あえて規制する必要は全然ないわけですね。
 今の夫婦が同姓でなければいけない規制というのは、その根拠は、別姓にすると家族の一体感が失われて、結果的に家族にとって不利になるというような考え方で、ある意味で非常に押し付けがましいというか、何が家族にとっていいことかを国が決めるという発想になるわけで、こういうことがやはり多様な働き方の社会を妨げる一番大きな要因になっているんじゃないだろうかということであります。
 何よりも、女性が働く社会というのはいろんな意味で、やはり戸籍名というのと仕事名が、資格等が結び付いている医師とか弁護士とか、そういう人たちがどんどん増えるわけですから、結婚したり離婚するたびに例えばそういうことを書き換えなければいけないというのは非常にやはり不利になるわけで、そういう制度があるということがどこまで少子化につながっているかというのは一概には言えないわけですけど、そういう考え方をまず改めていく。そのときに、最もある意味で簡単なものがこの戸籍法の緩和ではないだろうかという意味で、その象徴的な例として挙げさせていただいたわけでありまして、これが変えることができれば、もっと難しい働き方の規制の方にも同じことができるんじゃないかと、そういう趣旨でございます。
#52
○会長(清水嘉与子君) ありがとうございます。
 よろしいですか。
 中村さん、どうぞ。
#53
○中村博彦君 今もう大体三人の皆さんにお話を聞かせていただきましたが、もうすべてにやはりこの子育てコストが高くなっていると、だから出生率というのはなかなか再生でき得ないと、こういう基本だろうと思います。
 それで、八代先生、先生が政治家になられて早急に手を打たなくちゃいけないと。しかし、今の現状であれば、子育てコストも低くするには五年、十年単位の改革というものが必要でないか。来年、再来年に人口減少社会というものが変わるはずがないわけですよね。そして、これは政治の怠慢かも分かりませんけれども、なかなか出生率の低下というのはストップが掛けられない。しかし、このままであれば日本は本当に停滞した経済社会になってしまうと。それじゃ一体、生産人口の拡大、人口減ストップ、その打つ手というのはほかにあるでしょうか。移民政策もございましょうし、外国人労働者という問題もございますが、そういうものを含めてお答えいただけませんでしょうか。
#54
○参考人(八代尚宏君) どうもありがとうございました。
 私は、政治家になるよりは政治家にアドバイスをする方が何というか向いているかと思いますが、どちらにしても早急に簡単に変えられるものではないというのは全くおっしゃるとおりだと思います。これは出生率の低下といっても、今一・三を切っているわけで、人口の減少を食い止めるためには六〇年代のような少なくとも二・一まで上げなければいけないわけで、それは非常に大きなハードルがあるわけですけれども、ただ、今傾向的に下がっている出生率を何とか、少なくともドイツとかイタリアのように下げ止まりにすると。それから、一・四でも一・六でも少しでも上げていくということは、政策をきちっとやれば、二・一までは無理にしてもある程度出生率の低下に歯止めを掛けるということは十分できるんじゃないかと思っております。
 それから、人口が減少するわけですから、それを防ぐために移民の活用というのは当然おっしゃるとおりでありますけれども、ただ、私はその移民を活用する前にすることがあるんじゃないか。これは出生率の低下というのはそれ自体大きな問題でございますが、実はより大きな構造問題がこういう形で表れているんじゃないだろうかということであります。
 つまり、日本の社会というのが依然として、男性が仕事に女性が家事、子育てにという固定的役割分担ということを基調にした社会であるわけで、それが今大きな矛盾を生んでいると。その一つの結果として少子化が起こっているわけでありますから、これを移民等外国人労働者を活用することで埋めれば、経済的な効果はある程度カバーされるかと思いますが、出生率低下の基本的な要因になっている問題は解決しないわけですね。ですから、そこはまず、その働き方、家族の在り方を少しでも早く変えていくことによってこの出生率の持続的低下にまず歯止めを打つという政策を考える必要があって、それは私は十分可能ではないだろうか。その保育所の改革もそうですし、働き方の改革も、少なくとも派遣労働法の改正みたいなものはそんなに、ある意味で合意さえ得れば時間が掛かることではないわけでありまして、そういうものを一つ一つ積み重ねていくというのが少なくとも歯止めを掛けるためには大事なんじゃないかと思っております。
#55
○会長(清水嘉与子君) 中村さん、続けてどうぞ。
#56
○中村博彦君 今の政府の動きを見ていますと、今一・三を二・一にするという子育て支援の部分についても、遅々としてシステムが変わっていくように思えれませんから、かなり五年、十年でしか出生率が上がってくるように思わないものですから申し上げたわけで、もう少しひとつ政府に八代先生がハッパを掛けて、御活躍を是非お願いいたしたいと。
#57
○会長(清水嘉与子君) それじゃ、山谷えり子さん。
#58
○山谷えり子君 どうも参考人の皆様、ありがとうございました。
 八代先生にお伺いしたいんですけれども、八代先生の、少子化時代の家族の考え方、古い家族の保護から新しい家族への支援へ、家族選択に中立的な社会制度、男女間の非対称性是正、家族経営協定の促進等々を聞いておりまして、実は私はむしろ、とんでもなく古いマルクスやエンゲルスやレーニンの家族観のことを思ったわけでございます。家族軽視はマルクス主義の思想でございましたし、マルクスは主婦の全滅を訴えました。また、エンゲルスは、「家族・私有財産・国家の起源」の中で、近代的個別家族は妻の家内奴隷制の上に築かれているとか、あるいはまた、女性の解放は全女性が公的産業に就くことということで、母親であることよりも、一人の労働者として外に出していく、そして育児や家事などを外注化していくという、こういう政策をよしとしたわけでございます。レーニンは、一九一八年、ソビエトで最初の家族法を制定いたしまして、中絶や離婚の自由、同棲の権利などを保障しました。そのために、従来の家族制度が否定されたために、少年非行やシングルマザーが増えまして、社会不安が大きな問題となりまして、ついにスターリンは一九三四年に家族をむしろ強化する政策に転換して、レーニンの多様な家族観、あるいは家族を弱体化させるような政策は誤りであったというふうな政策にかじを切ったわけでございます。
 スウェーデンは今非嫡出子が多いんですが、少年非行が増えて、大変スウェーデンも悩んでいるというふうに聞いております。ヨーロッパでは、家族を保護しようと、尊重されるべきだというような話合いが行われておりますし、本当に母性、父性、家族を守ろうと。アメリカも、ブッシュ大統領が勝った最大の原因は家族政策の充実ということであったと。二番目が雇用政策で、三番目がイラク戦争だったわけでございまして、家族政策の充実というのが実はブッシュの勝因であったというような分析もあるわけで、むしろ今は、本当に母性、父性、そして家族の保護というふうに新しい家族観は動いているのではないかというふうに私は考えております。
 母性は育つものでございます。母性に否定的なイデオロギーによって母性は壊れてしまいます。社会は、母、母性を大切にするというメッセージを与えることでこそ少子化というのは止まり、家族の中で子供は豊かにはぐくまれていくのではないかというふうに考えております。
 家族経営協定なんというと本当に妻と夫が労働者関係になって、それは労働市場ではあることでしょうけれども、それはもう家族ではないわけでございますし、また、個人を経済単位とした精神的な結び付きというのが家族であるという、私はそうは考えておりませんで、その辺はもう少し詳しく八代先生に聞きたいんですが、家族というのはつながりの中で個人が豊かに強められるものであり、そして精神的というよりも、むしろ男と女が御縁をいただいて命を、つながりをつないでいくという、もっと違う重さ、意味を、意義を持つものだというふうに私は考えております。
 先日いらっしゃいましたノーベル平和賞をお取りになったケニアのマータイさんが、もったいないというのはすばらしい日本の言葉だと、世界に広めたいとおっしゃいました。私は、もったいないというのは、ただ食べ物を無駄にしないとか、あるいは物を無駄にしないという意味ではなくて、生かされていて、命の連続の中で有り難く、もったいなく自分の命を、そして次につないでいくというその大きな日本の心みたいな、それを強めるような政策をした方が、むしろ新しい家族の中で良き母性が育ち、父性が育ち、そして子供が育ち行くのではないかと思うんですが、その辺ちょっと、私の考えがどうなのかというようなことを意見をお伺いしたいと思います。
 それから森泉先生には、新しい親子世代に対応した住生活を送るための政策、税制の緩和、それから中古住宅市場の整備って、これとても大事なことだと思うんですけれども、今のこの現在の日本において、この政策を実現していくプロセス、最も能率的でどこをブレークスルーすればいいかというようなアドバイスがあればお教えいただきたいと思います。
#59
○会長(清水嘉与子君) では、八代参考人、どうぞ。
#60
○参考人(八代尚宏君) どうもありがとうございました。
 ただ、私が言っていることは、決して理事が言っておられることとは矛盾しないわけで、私も家族を守る必要があるんだと。ただ、どの家族かというときに、必ずしも専業主婦型の家族だけというんじゃなくて、あらゆる家族に対して中立的な支援をする必要があるんじゃないかということでございます。これは、母性の問題、父性の問題は、別に共働きでも専業主婦世帯でも共通する点でありますし、子供を大事に思うような教育というのもひとしくやっぱりやる必要があるんじゃないかと。その意味では、過去の日本もある意味で自営業主体の社会でしたから、ほとんどが共働き世帯であったわけで、その意味では、夫婦がともに働くというのはむしろ日本古来の伝統であったわけで、ただ、高度成長期の日本では余りにも世帯主の賃金が、年々一〇%も増えたおかげで、先進国であれば一部のエリートサラリーマンしか持てない専業主婦をほとんどのサラリーマンが持てたという意味で、こちらの方がむしろ特殊な家族ではないだろうかというふうに考えております。
 それから、個人を経済単位とした精神的な結び付きでは不十分だとおっしゃるわけですけれども、それでは、今のように世帯主が被扶養者である奥さんを経済的に縛っていることで本当の家族の結び付きというのがあるんだろうかと。むしろ、そういう経済的な結び付きなしでも夫婦の仲のいい関係が維持されるという方がある意味で理想ではないだろうか。
 例えば厚生年金の分割の問題でも、一部の委員会では、そんな年金を分割したら離婚が増えるという反対論があったと思うんですが、その程度で増える離婚なら仕方ないんじゃないか、それは家庭内離婚が顕在化するだけであって、そういう年金があるかないかじゃなくて、本当に夫婦の結び付きが強いから一体となっているという方が、本来の精神的な結び付きに基づいた家族のあるべき姿ではないかというふうに考えているわけでございます。
 それから、理事のおっしゃっているような家族を決して私は否定するわけではないんで、あくまでもこれは選択なわけです。伝統的な家族を選択する方も、共働きの家族を選択する方も、自由に中立的な立場で選択できるようにするということが望ましいんじゃないかということで、むしろ現在の方がそういう被扶養者である専業主婦に対して手厚い政府の政策があるわけであるわけで、こういう形で専業主婦世帯を言わば無形文化財のような形で政府が保護する必要があるんだろうかどうか。専業主婦か共働きかというのは、家族が夫と妻の間で自由に決めればいいことで、政府が別に保護する必要はないんじゃないかと、どちらかの一方をですね。
 そういうふうに考えているので、この個人単位ということで、個人単位というのは誤解を受けたかもしれませんが、個人単位でなければいけないということではないわけで、個人単位とそういう世帯単位というのが中立的にある必要があるんじゃないかという意味でございます。
#61
○参考人(森泉陽子君) この新しい親子世代に対応した住生活を送るためにというのは、実は最後のパワーポイントのシートは私のペーパーのところからピックアップしたものなんですが、要するに、アクティブシニアというのを、ペーパーに書きましたけれども、これからの団塊世代は、シニアが今までのように子供に介護を頼むから、頼むよと言って一緒に同居したり、すぐそばに住んだり、そのために自分の財産を上げるというのではなくて、アクティブシニアが自分は自分の生活を完結すると、そういうことを私は新しい親子世代に対応した住生活というふうにここでは言っているわけなんですが。
 具体的には、その新しい親が子供にはもう頼らないと、自分たちは自分たちの生活で人生を終わろうとしているんで、例えば郊外の大きな家を持っていたのが都心に来て、便利な医療が、医療機関も一杯あるし、もうちょっとアメニティーも優れている都会に来て、マンション買って、ちょっと狭いけれども二人だけで住むマンションをしようと思っていても、そこでもしキャピタルゲインがあったら取られると、下がっていれば取られないわけですけれどもね、そういうことの税制の緩和というのを具体的に考えているわけです。
 特に介護施設などに入った場合には、せっかく、随分昔から持っている、例えば都心に住んでいて昔から持っている住宅というのはかなりキャピタルゲインが生じてくるわけですね。だから、それは単純に買換え以上の分が出ると。それから、施設に入ったりした場合には、住宅としてみなされるかどうかということですね。だから、そういう場合に、アメリカの場合はどんな年齢でもって申し上げましたけれども、どんな年齢でもその買換えに対しては税が付かないというそういう状況になっておるので、非常にそのモビリティーを高めているということがあるわけです。
 ですから、親がそういう新しい親ですから、子供も、先ほど申し上げましたように中古住宅からしこしこしこと進んでいこうと思っているにもかかわらず、地価が上がってくれば中古から次のちょっとした中古へって移ったときには、税金を取られて、まあ三千万の控除ありますけれども、それ以上出てきた場合には取られてしまうと、そういうようなことになるわけで、それを税制の緩和ということを具体的には申し上げているわけです。
#62
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 では、坂本由紀子さん。
#63
○坂本由紀子君 自由民主党、坂本由紀子です。二点お伺いいたします。
 まず一点は八代参考人にですが、最近は中高年のフリーターの問題も出ていますが、正社員の方がフリーターより早くに結婚できているというような話もございまして、このフリーターは少子化との関係で解決しなくてはいけない課題の一つではないかと思うんですが、その解決策について、参考人のお考えをお聞かせください。
 もう一点は篠原参考人です。コンパクトシティー、コミュニティー圏の実現、私は、少子化問題の解決には、保育園の問題だけではなくて、こういうコンパクトシティーをもっと実現するというようなことが大変大事ではないかと思っておるんですが、こういうことを実現するために最も有効な政策としてどういうことがあるだろうかということについてお教えください。
 以上です。
#64
○参考人(八代尚宏君) ありがとうございました。
 ちょっと今日のプレゼンテーションではフリーターの問題は抜けておりますが、まさしくこれは非常に大きな問題で、最近は、委員おっしゃるとおり、若年者だけじゃなくて中高年にまでフリーターが増えてきていると。こういう人たちはいったんフリーターになるとなかなか言わばきちっとした仕事に就けないために、とても子育てどころではない、あるいは子供を持つどころではないという問題が起こっているわけで、特に少子化対策ということだけではなくて、こういう貴重な労働力が仕事に就けないような状況というのは速やかに解消する必要があろうかと思います。
 そのときには、単なる例えばハローワークでやるような職業の紹介だけでは不十分であって、もっと積極的な就業支援、つまり、どうやったら職を見付けられるかということも政府がある程度支援する必要があろうかと思います。
 これは既に厚生労働省でも一部始めておられますけれども、そのときには私はもっと民間活用といいますか、今、民間の人材ビジネスもどんどん発展しているわけですので、それに対してむしろ支援するような形でこのフリーターの就業支援ということを進めることが間接的には少子化対策になるんじゃないかと思っております。
 具体的に申しますと、例えば、民間のこういう職業紹介等に対して言わば政府が委託するといいますか、そういうようなことをもっと積極的に進めるということで、間接的にハローワーク等の職業紹介あるいは民間の職業紹介と結び付ける、言わばそれをビジネスとして発展し、それを政府が言わば支援すると、それが結果的にフリーターのためになるというようなメカニズムをつくっていく必要があるんじゃないかと思います。
 これ自体が今後の非常にミスマッチの大きな労働市場では、中高年の問題も、それから既婚女性の問題もあらゆるところに共通する問題があるわけで、やはり貴重な人材というものを生かすときには多様な言わば支援のやり方があるわけでして、その意味ではもっと民間の活用ということを進めていくというのが大きなポイントではないかと思っております。
#65
○参考人(篠原二三夫君) このコミュニティー圏という圏のイメージですが、私なんかは実は武蔵野市にいて、コミセンというのが、コミュニティーセンターというのがあるんですね、古くから。その圏域は小学校区よりも少し小さいぐらいなんですが、必ずしも小学校区と重なっているわけではありません。その中で、今現在、もう学校も含めて、地域も含めて、よく、保護者と地域と先生と学校と合わさって地域優先でやっていきましょうなんという話よくありますが、現にそういうことをやってはいます。そこでいろいろ活動していると、実に多彩な人たちがたくさんおりまして、人材の宝庫と言ってもいいかなというふうな気がしています。
 それこそ、漫画家から、漫画をかくのがうまい人から、グラフィックデザイナーから、それから、さっき言った、我々みたいな、これは専門家と言うのか何か分かりませんが、そういう専門家、それから絵本をかくのがうまい人とか、子供に対して墨絵を教えるのがうまい人とか、いろんな人が出ています。
 そういう地域の人材を、今現在何をやっているかというと、まとめ上げてデータベースにして、いつでもそういう人たちをいろんなところに派遣できるようにしたりしています。
 問題は、常に起こってくるのは、そういうところに働いている人たちはほとんどお年寄りが多いです。若い人でいくと、私なんかは最も若い方の部類に入ってしまうわけですね。そうすると、そういったところに若い人はどんどんどんどん参加してくるということが必要になってきます。
 そのインセンティブというのは、それなりにちゃんとした組織があって、ちゃんとその若い人たちが集まって来て、若い人たちなりに議論ができてという場所も提供しなきゃいけないということです。そうなってくると、本当にそこの費用も掛かってくるということになってきます。
 現在、私どもかなり手弁当でやっているところもありますけれども、そういう、先ほども、ここでなぜNPOという話を出したかというと、そういう活動をどうしても広げていくためには、そういったところに何らかの資金が入ってこなきゃならないというところがあります。それがなくしては、本当に限界があって、それこそ、市の方で随分カバーしてくれていますけれども、ちょっとしたものを印刷するにしてもお金が掛かると。それをどうやったら一番安くできるかまで考えてやっているということなんですが、本当にそれは効果的なことなんですが、そういったことが武蔵野市なんかにおいてもなかなか行政サイドから見て十分にカバーし切れない。
 そして、もっといくと、お年寄りたちは働いていて、彼らはこういうことを言うんです。アルバイト代があるとないと、随分インセンティブが違うねと言うんですね。それというのは、本当に、要するに暮らせるほどのアルバイト代じゃないわけですね。ちょっとお茶菓子が買える程度のアルバイト代が出るわけですけど、それで彼らはもう本当一生懸命働くという世界があります。そういうインセンティブをうまく使ってやれるような仕組みを僕らは自分たちでつくろうとしているんですけれども、それをどういうように評価するかというところが今十分じゃありません。
 NPOはたくさんできているんですけれども、自分たちがいいことをやっているというふうには言いませんが、本当に有効に働いているところをうまくモニターして選別していって、厳しくてもいいと思います、もっともっとNPOなんてこれから厳しくしちゃって、本当に有効なものだけ残していきゃいいと思うんですけれども、そういった仕組みがつくれたらなというふうに思います。
#66
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。どうぞ。
#67
○坂本由紀子君 先ほど八代参考人に伺いたかったのは、その就業支援のツールではなくて、どういう形の就業に今のフリーターがいけばこの少子化問題の解決になるだろうかと。つまり、派遣についてもそういう多様な働き方で認知するということで、そういうのを積極的に認めていくと、結局のところ、そのフリーターの問題というのはなかなかいつまでたっても解決しないというところに陥らないかという思いがちょっとしておるんですが、フリーターから卒業した若い人たちが一体どういう働き方をするんだろうというところのお考えを伺いたかったんですが。
#68
○参考人(八代尚宏君) ありがとうございました。ちょっと誤解しておりました。失礼します。
 フリーターから言わば正規の職業人になるときに、いきなりフルタイムの、残業もするフルタイムの働き方をするというのはかなり無理がある面もあるわけで、その意味で、今の坂本委員の御質問に関連して私がお答えできるのは、やはり多様な働き方であって、つまりフリーターから例えばパートタイム、あるいはパートタイムから派遣、派遣から正規社員というように順を追ってこうやっていくというのが一つのやり方ではないかと思います。
 それから、今いろんな形の新しい働き方の方に雇用政策も移っているわけですが、大事なのは、まあ学校教育もそうだと思いますが、こういう働き方でなければ駄目だという、規制というか枠を決めれば決めるほどそこから漏れる人はどんどん増えていくわけで、教育でも仕事でも多様性をつくることによって、できる限りいろんな方に対して網を広げることができるんじゃないかと。その意味では若年も中高年も同じような面があるんじゃないかというふうに考えておりますが。
#69
○会長(清水嘉与子君) 坂本さん、よろしいですか。ありがとうございます。
 ほかに御発言ございますでしょうか。
 後藤博子さん。
#70
○後藤博子君 ありがとうございます。途中抜けまして、大変失礼をいたしました。
 たくさんの質問が出たと思っております。私からは、こういう質問はどうか分かりませんけれども、今、日本の伝統文化ということが非常に気になっておりまして、いわゆる日本の伝統文化の中には、人をもてなす気持ちとか、豊かな日本人ならではの感情とか、相手を思いやる気持ちだとか、そういうものが私たちは家庭の中で育ち、またそれをつないでいくということで、伝統文化というものが日本人としての伝統文化、それがまたイコール日本人の美徳だということで世界的にも広まっておりまして、私もブラジルに住んでおりましたので、そういう点では非常にブラジルの社会の中でも日本人、日系人の方々は周囲から非常に受け入れられております。
 今のこの世の中で、私たちが思う日本人の美徳とかその良さというものがどんどん失われていってしまっておりまして、それは非常に私としても憂えております。これはやはり日本人としてつないでいかなければならないと思っておりますが、今おっしゃられるように、いろいろな多様な社会になってきたり、生き方も働き方も子育ての仕方も変わってきたというそういう中で、お三人さんは、日本の今言う、私が心配している日本の伝統文化という、凝縮された今日本人という、そういうものに対してどういうお気持ちでそれぞれのお三人の方々が取り組んでおられるのか。あるいは、こういう日本人の美徳とかそういうものはもう逆に古いんだよとおっしゃるのか。きちんとそれは大事にしなきゃいけないねとおっしゃって、これからお三人さんが取り組んでいこうとしていらっしゃるのか。その辺ちょっとお気持ち聞かせていただいてよろしいでしょうか。お三人さんにお願いいたします。
#71
○会長(清水嘉与子君) じゃ、お三人の参考人にということでございます。八代参考人からでよろしいでしょうか。
#72
○後藤博子君 はい。
#73
○参考人(八代尚宏君) 御指摘の点は非常に大事な点だと思います。日本の貴重な遺産というか文化、伝統というのを守っていくということは、あらゆる時代に今必要なことであって、今後ますます重要になってくるものだと思います。
 ただ、それは問題は、どういう形で守るのかというのがかなりポイントでありまして、例えば教育委員会が一方的に、これが日本の伝統文化だ、これを守れというふうに言うのか、それとも地域社会、NPO、そういうものも含めてそれぞれの地域のまた多様な伝統文化というのをそれぞれ守っていくと、そういうことに対して例えば税制上の支援をする、またNPOに対する寄附税制とか、そういうような形で地域主体でやっていくかというのはかなり幅があるんじゃないかと思っております。
 それから、かつてのように大家族の中で伝統文化、思いやりとか何かが学べる時代ではないわけで、そうであれば、別途そういうものを教えるサービス、これは言い方があれなんですが、NPOでも結構ですけれども、そういうサービスというものをやはり普及し、それに対して政府が支援するというような、伝統文化を学ぶサービスの言わば振興といいますか、そういう多様な形で日本の伝統文化を守っていくということは、私は非常に大事なことじゃないかと思っております。
#74
○参考人(森泉陽子君) ちょっと意外なあれだったんですが、私のことに関しては、住宅に関しては、伝統的な文化とか伝統的美徳というのは多分、このリンケージのところで言うと、同居、隣居・近居というところだと思うんですね。
 それで、これは経済学の方である程度実証研究があるんですが、親が遺産動機ありというのは、結構親が利己的だというような判断が下されているわけです。要するに、親は老後を介護してほしいがために、子供に、こういう住居を提供するよ、お金を上げるよって、だから早く家を一緒に建てようやとか、近くに建てなさいって、これなわけですね。子供は子供で、それが非常に自分の利害に合っているという、そういった合理性があってやっているということで、伝統的美徳と文化っていうようなふうに見えるんですけれども、経済学で一枚はがして見ると、それが結構利己的な動機で親も動いているし子供も動いているというような研究があるわけなんです。
 それはまあもう一度ふたをかぶせるとしまして、そういうふうに親と子がそういった介護とかそういうのを中心に助け合うというのは非常に美徳ではあるんですが、最近はそれが非常に大変だということで介護施設などができたわけですね。そうしますと、どういうことかというと、ここで私が先ほどから何度も言っていますように、アクティブなシニアは、自分は自分の人生を完結しようとする。そうすると、それじゃ親子が全く、子供は知らんぷりかということも情けないし冷たいなというので、私は、これからの住宅市場で住宅が余ってくる、空き地になるという、そういうことをマージして、その再開発の地域で、その地域で親が、高齢者の介護施設、それから独立した高齢者の家、それから若い世帯が少し安くなった住宅の地域に住むという社会全体での、親子ではないですけれども、社会、その地域全体での若い人と高齢者とのミックス、混住というのが、そういった意味では、今委員がおっしゃるような伝統的文化とか美徳、日本人の中に流れているとすれば、そういうところで受皿があるのかなという気がいたします。
#75
○会長(清水嘉与子君) 篠原参考人、どうぞ。
#76
○参考人(篠原二三夫君) 町づくりのお話からいきますと、実は、そういった伝統文化というとかなり高尚な感じがしますが、もう少しかみ砕いて言うと、懐かしさとか、先ほど一番最初にふるさとという言葉をいただきましたけれども、そういったものを本当にどういうふうに守っていくかというのが大きな課題です。
 ちなみに、私は中野区で生まれた者なんですが、今はその生まれた場所へ行ってももう何もありません。ところが、イギリスとかアメリカの片田舎に行くと、もう三十年も四十年も前のままに残っています。それがいいのか悪いのかという選択は何とも言い難いところがありますが、私はそれは非常にうらやましいと思っています。
 それで、逆に、ふるさとだとか伝統文化ということは、実は地域の町づくりを行うのに非常に重要なキーになっております。
 例えば、一番これで有名なのは、小布施辺りで、「セーラが町にやってきた」、アメリカ人の女性が来て酒蔵を生き返らせて、今も持続的にそこで仕事をされています。そういった軸になるのが実は伝統文化であり、ふるさとであり、そういう懐かしさといったものだろうと。
 それは何かというと、やっぱり人を引き寄せる魅力ですね。その魅力づくりというのをともかくやらにゃいかぬ。当たり前のような言葉で、あちこちで聞く言葉かと思いますが、本当に大変な努力が必要になることなんですが、それが今の町づくりには欠けていると。それを仕掛けるやっぱり人材をもっとばらまかなきゃいけないという課題がありまして、私どもも別途ボランティアベースでそういうことは今やっておりますが、それを何か枠組みをつくってやりたいなというふうに思っております。
#77
○後藤博子君 ありがとうございます。
#78
○会長(清水嘉与子君) 後藤さん、よろしいですか。
 ほかに御発言ございますか。
 岡崎トミ子さん。
#79
○岡崎トミ子君 済みません。
 八代参考人にお伺いしたいと思いますが、出たり入ったりで、もう質問されたのかもしれませんが、少子対策は企業の競争力において大変有効であるということでございますが、中小企業にとって大変余裕がないということですから、この政策はどのようにしていったらいいのかについてお伺いしたいと思います。
 それから、委員は構造改革特区推進本部の評価委員長でもいらっしゃいますので、創意工夫について自治体の中で大変積極的に取り組んでいるところで、そうした提案がございましたらお聞かせいただきたいと思います。もしお分かりでしたらお知らせください。
#80
○参考人(八代尚宏君) ありがとうございました。
 第一の点でございますが、こういう少子化対策というのは大企業は余裕があるけれども中小企業は余裕がないというお考えは、これは、何というか、財界もそういうことを言われる方も多いんですが、私はそれは基本的に間違っているんじゃないか。つまり、何か社会的貢献として少子化対策とか男女の共同参画をやるというのは長続きしないと思うんです、どっちにしても、特に企業の国際競争力というのが非常に今問題になっているときには。私は、はっきり言って、こういう少子化対策あるいは女性を活用するということが企業自身にとって利益にならなければ、ある意味で持続可能なものじゃないんじゃないか、その場合は大企業も中小企業も同じであると。
 どういう意味で企業にとって利益になるかというと、やはり今の、何というか、男性が働き女性が家事、子育てをするという考え方の下での社会では、非常に能力のある女性がうずもれているわけでありまして、逆に言うと、企業から見れば男性より能力のある女性を男性より安い賃金で雇えるわけですから、こういう人たちを雇えば当然利益は上がるわけですよね。それが今できていない。辛うじて日本でやっているのは外資系の企業でありまして、外資系の企業は女性をどんどん活用して高い利益を上げているわけであります。
 ですから、大事なことは、そういうことがもっと幅広く普及するためにもっと競争政策、そういうふうに女性より能力のない男性を雇っていてもつぶれないような企業というのがなくなるように、もっと厳しい競争政策をすることによって労働者の能力を最大限に男女にかかわりなく言わば引き出すと、そういう企業が栄えるような状況に持っていけば自然と共同参画も進むんじゃないか。それから、少子化対策をきちっとやるということは、それだけ言わば能力のある女性社員、まあ別に女性だけじゃなくて、そういうことを重視する男性社員を引き付ける一種のフリンジベネフィットになるわけですね。
 欧米の企業では、例えば子供の教育手当ということを非常に重視している企業が多いわけで、何でそんな企業の得にもならないことをやるのかといいますと、教育手当を重視することによってそれだけ教育に関心のある能力の高い社員を雇うことができると、それによって企業の競争力が付くんだという考え方であるわけで、同じように、やはりきちっと少子化対策をする、例えば育児休業をきちっと充実する、あるいはその後の子育て期間はきちっと配慮するというような企業がますます栄えるような形で持っていくというのが本来の少子化対策における企業の貢献であって、嫌々社会的な貢献という形でやる限りは余り効果がないんじゃないか。そういう意味では中小企業も大企業も同じではないかと思います。
 そういうやり方をいかにうまくするかということで、正に今委員が御指摘のような構造改革特区等を使って、自治体と企業が協力して、単なる一企業だけじゃなくて自治体のサポートもあってそういう少子化対策を進めていく、それによってより多くの企業がその地域に立地してくれれば自治体の利益にもなるわけですから、大事なのは、そういう創意と工夫をできるだけ発揮できるような規制緩和といいますか、あるいは地方分権といいますか、そういうことを進めていくということが大事ではないかと思っております。
#81
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
#82
○岡崎トミ子君 ありがとうございました。
#83
○会長(清水嘉与子君) じゃ、最後の御発言にさせていただきたいと思いますけれども、鰐淵洋子さん、どうぞ。
#84
○鰐淵洋子君 公明党の鰐淵洋子でございます。本日は大変にありがとうございました。
 篠原参考人にお聞きしたいと思いますが、町づくりにおきましてこのユニバーサルデザインの導入実現、私も大変に重要なことだと思っておりますが、その上で、この安心して子供を産んで育てることのできる環境づくり、社会づくりという点で、具体的にこれから結婚する方とか子育て世代への住宅支援政策、何か具体的なお考えがあればお聞かせ願えますでしょうか。
#85
○参考人(篠原二三夫君) 似たようなことを言ってしまうかもしれませんけど、実は、今の八代先生もおっしゃいましたけど、人材というのはあちこちにいるということです。
 それは、私もそういう地域の中ではかかわったことなかったんで発見できなかったわけですが、実際に自分の子供を三人育て上げて、その過程で小学校に行って、それで地域の人と嫌でも会わなきゃならないと。いろいろやっていると面白いようなことがたくさん起こってくると。これは面白いぞといってやっているうちに今度問題が出てくるんで大変なことになったと、片付けなきゃいかぬというんで自分が参加するようなことになりました。これからの枠組みの中でそういった人材をもっと生かす場をもっと出してあげれば、本当にこれから子育てをする人たちも助かるんだろうなと思う局面も多々あります。
 本当に子供の育て方を知りません。例えば、PTAの会長だとか副会長をもう三年、四年もやっていますけど、それをやっていても、本当に問題は親なんですね。親が大切なことを引き継いできてないということが現実にあるんで、当然子供を育てられません。本当に常識のないことが平気で起こります。これはまあ先生についてもそうなんですが。
 そういったところを実はだれがカバーできるかというと、かつては横町があって、そこで子供が遊んでいて、隣同士の会話があって教えられたものですけれども、それももう全然なくてバーチカルなマンションになってしまったということもあります。そういう場をもう一回つくってあげなきゃいかぬと思って、それを武蔵野市の中でも我々が企画してやっていますが、多分そういうようなことを、そういうディバイスをコミュニティーの中にも取り込まなきゃいけない時代が来ていると思います。もう完全にそういう横町というのは失われていて、本当に子供がかわいそうです。遊ぶ場所もない、親同士が話し合う場所もないというのが現実です。公園に行ったって、何ですか、何のためにここに公園があるのかよく分からないというような公園もたくさんあります。
 だから、本当にそういう地域の声をうまく拾い上げてそういう施策に役立たせるチャンスはたくさんあるわけなんで、それを先生方にも、一度自治体レベルでもよくお話を聞いていただくといいかなと思っています。
#86
○会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
 それでは、質疑も尽きないようでございますけれども、予定の時間も参りましたので、以上で参考人に対する質疑は終了したいと存じます。
 参考人の皆様方には、長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。ただいま皆様方からお述べいただきました御発言につきましては、今後の調査の参考にさせていただきます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 それでは、次回は来る四月二十日午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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