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2005/02/16 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第2号
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2005/02/16 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第2号

#1
第162回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第2号
平成十七年二月十六日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         広中和歌子君
    理 事
                加納 時男君
                椎名 一保君
                朝日 俊弘君
                辻  泰弘君
                松 あきら君
    委 員
                小野 清子君
                岡田  広君
                小池 正勝君
                小泉 昭男君
                西島 英利君
                野村 哲郎君
                松村 祥史君
                足立 信也君
                小林 正夫君
                谷  博之君
                広田  一君
                井上 哲士君
                渕上 貞雄君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        富山 哲雄君
   参考人
       内閣府経済社会
       総合研究所長   香西  泰君
       日本労働組合総
       連合会(連合)
       副事務局長    久保田泰雄君
       社団法人日本経
       済団体連合会専
       務理事      矢野 弘典君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○経済・産業・雇用に関する調査
 (「成熟社会における経済活性化と多様化する
 雇用への対応」のうち、成熟社会における経済
 活性化に向けた方策について)
    ─────────────
#2
○会長(広中和歌子君) ただいまから経済・産業・雇用に関する調査会を開会いたします。
 経済・産業・雇用に関する調査を議題とし、「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、成熟社会における経済活性化に向けた方策について参考人からの意見聴取を行います。
 本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、三名の方々から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、内閣府経済社会総合研究所長香西泰さん及び日本労働組合総連合会副事務局長久保田泰雄さんでございます。また、社団法人日本経済団体連合会専務理事矢野弘典さんには後ほど御出席いただく予定となっております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 御多用なところ本調査会に御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。
 本日は、本調査会が現在進めております「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、成熟社会における経済活性化に向けた方策について忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 それで、議事の進め方でございますが、まず香西参考人、久保田参考人、矢野参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、午後四時までの二時間程度、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず香西参考人からお願い申し上げます。
#3
○参考人(香西泰君) 着席したままでということでございますが……
#4
○会長(広中和歌子君) 結構でございます。
#5
○参考人(香西泰君) 委員長がお立ちになっているのに立たないのはどうも申し訳ないという気がいたしますが、本日、こういう席にお招きいただきまして意見を申し上げる機会が与えられましたことを大変光栄に考えております。
 私は、内閣府の経済社会総合研究所長で、常勤の公務員でございます。しかし、本日のテーマは非常に大きなテーマで、必ずしも役所の代表という形ではなくて、個人の意見でお話しさせていただくことを一応、参考人でもありますので許していただけるのではないかということで、そういう立場からお話をさせていただきたいと思います。
 一応お手元に「成熟社会の経済活性化」という簡単なハンドアウトが渡っていると思いますけれども、大体話したい、お話しする順序といたしましては、成熟社会というのをどういうふうに考えるかということが最初にありまして、そして現在の成熟社会、日本も当然でありますけれども、いわゆる先進国において非常に大きな問題となっている問題、少子高齢化の問題、グローバリゼーションへの対応の問題、この二つについて少しお話をしまして、そこから活性化への方策について何らかのサジェスチョンを得られれば大変有り難い、こういうふうに考えております。
 次のページになりますけれども、「成熟社会の特徴、強みと弱み」ということでございますが、成熟社会というのは、どう言っていいか分かりませんが、具体的に世界を見渡してまあ成熟している社会だというふうに考えるところを一応考えてみますと、共通点として、やはり民主主義が行き渡っている、市場経済がかなりよく機能している、市場、マーケットの経済だけではなくていろんな形で社会参加が活発に行われる、あるいはその可能性が高い、そして人権が守られている。まあ極めて基本的なことでありますけれども、こういうフレームワークを持っている社会が成熟社会の一つの共通点になっていると思います。そういう形の中で、生活水準や教育水準や健康、例えば長寿ですね、平均寿命、福祉の水準、こういったものもやはり高いというわけでありまして、これがやはり成熟社会が持っている一番の強みの基本にあることであろうというふうに考えるわけでございます。
 じゃ、弱みはないかというと、それは必ずしもそうではなくて、いろいろ問題に直面している。これだけ強みのある成熟社会でありますけれども、多くの問題に直面しております。
 具体的に成熟社会になっているということは、そこに至るまでに成功して、近代化あるいは工業化、産業発展、経済成長、いろんな形で成功した結果、成熟社会と言われるような立場に立ったわけでありますから、成功体験がある。これが自信である間は非常にいいことかもしれませんが、過信すると、自分の力を過信することもある、自己満足に陥ることもある、そのときの成功体験にとらわれてしまうこともある、制度疲労も行われる、あり得るということでございまして、これは成熟社会が持っている弱みではないかというふうに思うわけであります。
 しかし、こういう弱みというのは一般論として言えるわけでございますけれども、いわゆる成熟社会が持っている現在の問題点を考えると、これは時代によってかなり、その時々によって変わってきております。
 一九六〇年代、七〇年代には先進国病という言葉が一時はやったと思いますが、そういうことが盛んに問題にされた。具体的に何だったかというふうに考えてみますと、例えばスタグフレーション、インフレがあってしかも経済が成長しないところ、物価だけ上がって成長率はもたもたしていたというのが七〇年代のイギリスやアメリカでは特に顕著であったことであります。しかし、これは現在では、インフレーションというのは大体どこの先進国、成熟社会でほぼ終息しつつあって、中にはデフレという逆の現象にも懸念される、日本の場合は緩やかなデフレは現在もまだ続いているわけでございますけれども、そういうふうに問題が変わってきております。
 当時のインフレーションの一つの原因として、寡占体制で、企業の管理価格とかあるいは組織の力ですね、労使間の交渉によって非常に賃金が上がりやすかったというようなことがいろいろ問題になったわけでありますけれども、この点は現在では非常に競争が激しくなってきている。例えばAT&Tというような大会社が子会社に合併されるというようなことでありまして、寡占とか独占とか言っていたけれども、それはいつ何どきひっくり返るか分からないというぐらいの競争時代に入ってきております。
 その背景としては、また後で議論したいと思いますけれども、グローバリゼーションが急速に進んでいるとか技術革新が急速に進んでいる、こういったようなことも起こっておりまして、その中で、例えば所得分配が非常に不平等化してきているんじゃないかといったような批判も出ていると思います。
 それから、当時、七〇年代、八〇年代考えますと、従来の資本主義の体制の中でいえば、文化的な矛盾があるということもよく言われました。例えばヒッピーが非常に多くなったとか、あるいはそういうこともあって、ワークエシックス、勤労意欲といいますか、労働意欲が失われたんじゃないかとか、それから反乱、学生騒動、大学騒動が典型的でありましたけれども、とにかくそういうようなことで文化的にも非常に動揺があったというのが七〇年代、六〇年代の姿であったと思いますが、現在は、非常にやはり問題がいろいろあるわけでありますけれども、反乱するというよりはむしろ無気力、閉じこもりとか引きこもりとかニートといったような形で、かつてはヒッピーといえども自分ではだしでインドまで行って修行するというような意気があったわけでありますけれども、そういうこともできないというか、そういうことはしないという形になってきている。また、理由の分からない暴力といったようなものが世の中に非常にはびこっている。こういったようなこともございます。
 この延長線と言うのは問題があるかも分かりませんが、そういう中で、いわゆる成熟社会はおしなべて人口減少の方向に歩んでいると、こういったようなことが現在の問題なのではないだろうかと、そういうふうに考えております。
 そこで、本日、私としては、グローバリゼーションの問題とその人口減少の問題、それについてお話をさしていただいて、その中でどういうことが考えられるかということをお話しして、成熟社会の中で何をすべきか、日本に引き付けて考えていきたい、こういうふうに考えてまいりました。
 少子高齢化への対応という、次のページでございますけれども、これについてはもういろんなところで言われておりますから、改めて言うのも問題かもしれませんが、ここには幾つかの国について出生率というのが出ております。これは、二・一というのはいわゆる合計特殊出生率というものでありまして、女性が、女性の方が一生の間に何人子供を産んでいるだろうかと、こういうことであります。男性は子供を産みませんので、これが二・一以上ないと人口は減っていくということでありますが、これを見ていただきますと、インドは別といたしまして、少なくとも韓国のところまではどの国も、また、やや驚くべきことに米国を別としまして、いわゆる成熟社会、先進国はほとんど全部一台ということでありますから、このままいけば人口はかなり減ってくるということに言わば決め付けられている形になっております。現在でも人口爆発がまだ続いているのは、残っているとすれば低開発国、この人口爆発も思ったより早く終息しそうだというふうにだんだん予想が変わってきておりますけれども、インドやあるいはパキスタンとか、そういったところでは非常に高い。これは所得水準を見ていただきますと、アメリカを除けば、所得水準の高い国では大体どうも人口はかなり減りぎみであると、こういうことであります。
 しかし、だからといって高所得国も日本ほどひどいというのは余りない。ドイツと日本はやはりその中でも少し出生率の落ち方がもっと目立っている。更に言いますとイタリアでありまして、どうも過去の枢軸、日独伊三国同盟以来この三つの国はどうも同じ歩調で人口の減少が進んでいる。日本の場合もその特徴の一つが現れていると思います。
 したがって、考えてみますと、そういう点でいいますと、フランスやスウェーデンのような国ではむしろそれほど落ちていないと。二を割ってはおりますけれども、こんなにひどい落ち方ではないという点でいいますと、それは必ずしも所得水準だけで決まることではないだろうというふうに思います。
 一方、よく、就職というか、就業することによって、女性が就業するとどうしても子育てが手が回らないということが原因ではないかという議論がございましたけれども、この労働力率、女性の労働力に参加している人がどれくらいいるかという割合でありますが、これはむしろ高い国が結構あって、どちらかというとドイツ、日本、韓国といったところは女性の就労率は低い形になっております。この労働力の中に失業者も入っていますが、ほぼ同じであります。
 例えばフランスとかスウェーデンでは、これはアメリカもそうでありますけれども、女性が仕事がしやすいと、しやすいということが子供を産みやすいということとパラレルになって進んでいるのであって、女性の就業があるから子育てができないということではなくて、女性が就業して子育てができやすい国だから出生率がまだしも高いと、こういうふうに解釈するのがどうも正しい解釈ではないかという気がいたします。
 その意味では、成熟という点でいえばドイツや日本の方がむしろ後発国であって、例えば女性の社会参加といったようなことが十分行われていないという可能性もあるわけでありまして、必ずしも成熟しているから駄目ということでは決してございませんが、しかし、これ、いずれにいたしましても、成熟している国、社会においてはやっぱり所得も高いし余り子供は産んでないということは事実であります。
 この点につきまして一番ある意味で深刻なのは日本でございまして、次に、五ページの日本二十一世紀ビジョン調査、これは内閣府が行いまして、去年の十一月に公表しております。この結果が私にとってはやや衝撃的でありましたので、まあ分かり切ったことかもしれませんが、ちょっと御紹介さしていただきます。
 二〇三〇年の生活は今より良くなっているか悪くなるかと、こういう質問に対して、六三・二%の人が悪くなると答えております。その理由として、社会保障制度の崩壊、財政破綻、それから働き手世代の負担増、その結果としての活力喪失と、こういったことを言われた方が非常に多かったと。これは自由回答ですので、数字は公表されていないというか、ないんですけれども、そういう方が多かったというふうに記録されております。そのほかに、もちろん治安ですね、こういったことも指摘されている。あるいは、若い人が仕事をしなくなるんじゃないかというような心配をしている方もあったわけですが、しかし、メーンの流れとして、やっぱり将来、社会保障とか財政が非常に危ないということが懸念されております。
 その裏側として、人口減少で何が起こるかということに対する答え、これは答えから選ぶものですからパーセンテージがすぐ出ているわけでありますけれども、負担が増える、特に若い人の負担が増える、それから活力が低下する、成長が鈍化する、実はもう一つ、過疎地域が正に更にひどく過疎的になると、こういうことを言うのが多くの方の御意見であったわけであります。
 それに対して、少子化への社会的な取組という点を聞きましたものでは、これはほぼ常識といいますか、多くの方の御意見には反映しているのではないかと思いますが、出産、育児を経済的に支援する、職場の環境とか働き方を見直す、つまり就業と子育ての両立を図る、それから保育サービスを施設を充実する、それから地域の育児支援を高める、家庭内協力というのが残念ながら非常に低い数字になっておりますけれども、そういったことが現在問題になっていると思います。
 これを見まして言えることでございますが、次のページに一応私なりのメモになっておりますけれども、こういう予想、つまり人口が減ってくると経済も非常に負担が重くなって、財政や社会保障が危ないんじゃないか。そうなるということがますますこういう予想、悪い予想は一種の悪循環を起こしまして自己実現すると。悪くなると思ったから悪くなる、こういう懸念すら出ている。
 そういう意味で考えますと、この社会保障制度をどういう形で持続可能性のあるものにするのか。それから、財政のやはり破綻というようなことをある程度、何といいますか、それをどうやって避けていくという道筋を明らかにするのか、こういうことが非常に大事なことになってきていると、本当に緊急に大事なことなんだということをこの調査を見て改めて痛感したわけであります。
 その点で、ここから後はもう全く個人的な意見でございますので見当違いのことを言っているかも分かりませんが、世代共助ということが社会保障、例えば年金の場合の理想になっているわけでございますけれども、実は共助共助と言われると、若い世代はますます負担を感じるというのがどうも現象でありますし、それから上の方の世代では、若い人は働いてくれないんじゃないかというような非常な不信感も出ております。
 私が思いますには、やはり世代共助という前提として世代自立への努力があって、その上でお互いに助け合うということにしなければいけないのじゃないかと。いきなり共助共助ということではないのではないかというふうに考えております。例えば、そのためには同じ世代の中でやはり所得再分配をする。特に高齢者でありますけれども、高齢者の中にも条件の恵まれた人と恵まれていない人とがいるわけでありますから、そういったところをもう少し考えたらどうかというふうな印象を持たざるを得ません。
 全く個人的な見解ですが、例えば相続税というのがありますけれども、その相続税というのは、子供が、五十歳で子供がまだ若い、子供が子供のときに親が死ぬのならいいんですけれども、八十代になって、現在平均寿命は八十四歳まで行っておりますから、子供はもう五十、六十、自分で財産を持っているわけですね。それなら、そして介護というか、そういった形で結構お国のお世話にもなっているわけであります。世話もしないでいていきなり出てきて相続するというのをそんなに優遇する必要があるのか。むしろその財源を、例えば世代内の社会保障の財源にするということも考えられるし、それからまた、年金というのはある意味で、部長には部長の生活、平には平の年金と、こういう形の、言わば働くときの秩序を老後にも適用するという制度になりかねないわけでして、そういうことではなくて、もう少し所得再配分、世代内で再配分して次の世代には余り迷惑を掛けないようにするといったようなことも考えるべきではないかと思います。
 それから、家族生活でありますが、これはフランスとスウェーデンで一応成功したと言われております。例えば、先ほどの指標でスウェーデンの女性の労働力率が非常に高い。八割。これはもう驚くべきことだったわけでありますが、何でそんなに高いのかということで、内閣府で実地調査を委託して行っていろいろ調べてみますと、これは結局、休業なんですね。育児休業をしている人は労働力の中に数えられているわけですから、その育児休業をしている人を除くとそんなに高い数字ではないということで、そういう意味でフランスやスウェーデンはこういった家族生活に対してある程度国費も導入している。これは四ページの表に数字が出ておりますけれども、三%近い、GDPの三%近くを家族対策に使っております。それに比べてアメリカ、日本、韓国は非常に少ないと。
 それで、少ないアメリカでもちゃんと二・一に行っているじゃないかという議論もあるわけですし、またこの政策費というのは出す方だけで、扶養家族手当というか、減税についての扶養家族の話が本当はあるべき、税制の方も問題があるわけでございますけれども、そういったこともありますが、日本としてもやはり、世代自立の意味でもっても、高齢者給付とこの育児、出産、子育てとのバランス、リバランスということをもう一度検討する必要があるんじゃないかと思います。
 それからもう一つは、やはりアメリカのように余り政策はやらなかったけれども回復したと。アメリカも一時一台に落ちておったわけでありますけれども、回復した。この理由についてはいろいろ議論がございますけれども、かなり有名なイースタリン仮説というのがございますけれども、この仮説では、やはり生産性が上がって七〇年代のアメリカと違ってきたということに大きな原因があるというふうに考えているようです。そのほか、アメリカでは移民がある、あるいはいろんな形でまだ出生率の高いグループもたくさんあるというようなこととか、企業が意外と託児所をたくさん作っているといったようなことも言われておりますが、そういったことが問題になるのではないか。
 したがって、日本としてはやはり、一方でフランス、スウェーデンの政策にももちろん学ぶ、少し考えた方がいいと思いますし、同時にこの生産性の向上、つまり将来を明るくするような経済の再建ということについて出生率の回復にもいい影響を与えていくという方向でいかなければならないのではないかという気がいたします。
 ちょっと時間が過ぎつつありますので少し急がざるを得ませんが、グローバリゼーションになりましたことについては、次のページでありますけれども、市場経済へ移行して世界で一つの市場になったというわけであります。従来は壁の向こう、カーテンの向こうは知らぬ、違う国だったというわけでありますが、それが破れまして世界的に市場経済の繁栄が広がりました。そして、新しく市場経済に移った国ではかなり成長が高まっております。中国、インド、まあ社会主義だったかどうかは別として、国家計画が非常に強かったインド、ポーランド等についてはプラスになっていると、こういうことが一つ言えます。
 と同時に、このグローバリゼーションによりまして、次のページにキャッチアップする国の例が出ておりますが、中国、インドを見ていただきますと人口というのは大変な数ですね。つまり、世界的に見て労働力が急激に増えた。世界で、従来は分割されていたので余り問題にならなかったわけですけれども、労働力が急激に供給増加があったということがグローバリゼーションの一つの問題だということであります。
 それと同時に、技術革新が起こりまして、世界の技術が大きく変わった。これは先進国には本当は有利なはずでありまして、このIT技術が発展しましたときにデジタルデバイドが起こるということが言われたわけであります。しかし、実際にはこれは同時に追い付く方にとっての非常なチャンスを与えたわけでありまして、それは中国やインドがこのITを使って非常に躍進をしているということにも現れております。
 ちょっと時間的にあれになりましたので少し急ぎますが、次の次のページの、例えば、見ていただきますと、九ページにHT輸出というのが右から三つ目にございます。ハイテクですね。これを見ていただきますと、例えば中国のハイテク輸出というのは相当なものであるということが言えます。これは、日本の企業が出ていって作って、日本へ持って帰ってきているものもたくさんあると思います。しかし、相当の規模であると、既にですね。それから、インドは非常に輸出、物の輸出は少ないんですけれども、ソフトウエアの開発についてインドのヒューマンリソースというものを非常に活用しているというのが現状でございます。つまり、IT革新というのは、実はこういった国が大きく伸びてくる上に非常に大きなプラスになっております。
 次のところをちょっと見ていただきますと、数字だけ少し申しますと、こういった後れてキャッチアップする国というのは、概して言えばこういう労働力が余っていて、したがって賃金が低くて、生活費が安いという特徴があります。これは八ページの物価水準というところを見ていただきますと、例えば中国は、ドルで換算すると千ドルぐらいですね、一人当たり千ドルぐらいですが、生活水準ではもう五千ドルに行っていると。つまり、生活費がいかに安いかということですね。その比重を比べますと、為替レートよりも五分の一で生活していると。日本もかつて三百六十円のときに我々アメリカへ行って暮らしてみたら、百円か百五十円か二百円でいいんじゃないかと思うのが一ドルだったわけですが、そういったふうに国内の費用が非常に安い国、そういう国が技術が追い付いてきたという場合には非常な強い競争力を発揮します。
 したがって、脅威論というのが出てくるんですが、脅威論は明らかに間違っておりまして、大体世界の四割を占める、二つ足すと中国とインドだけで四割ぐらいになりますから、その国が発展するということはもう非常に、四割切りましたか、三割ぐらいにはなりますから、大変な、歴史的な本当に長い間の貧困というのを克服するということで大変すばらしいことであるし、現に日本はそれによって大いに利益を得ているわけですが、一方では競争していかなければいけない、こういうことになると思います。その点が、例えばHTのハイテクでもう既に競争になっておりますし、労働力を使う産業においてはもっと競争が激しくなってくる、こういう形になっているわけであります。
 この点、日本と中国のやり方をちょっと見ていただきますと、八ページの数字だけ、ちょっとだけ見ていただきたいと思いますが、ここでは物価水準がいかに、追い付く国の物価水準が低くて、それが非常な競争力になっているということ。それから、経済構造を見ますと、実は現在の中国の経済の発展の仕方というのは非常にもう例外中の例外のようなことが多いわけでありまして、例えば中国の現在の統計が正しいとしますと、GDPに占める二次産業のウエートは五割を超えております。日本は、これは一番高いところでもまだ三割台だったと思いますね。四割になったことはないと思うんですね。しかも、雇用者は二次産業で二割しかおりません。ということは、中国において製造業の、二次産業の生産性が非常に高いということを逆に言い換えると、その他の産業の生産性も低いし、その他の産業では非常にたくさんの人を使っていて、恐らくその収入も低いと、こういう形になっているわけであります。
 これがどんどん成長が進んで完全雇用に近づいてくると、こういった価格体系というのは維持できなくなってくる。そのことは、逆に言えば競争という面をだんだん緩和していくことになるわけでありまして、現に日本の場合も、三百六十円でいつまでもやっていたわけではなくて、それを使って成長をすることによって完全雇用になって、そして物価や賃金が上昇した。したがって、そういうふうに成長して物価や賃金が上がってくると、日本の場合は高度成長期に所得分配は平等化していったわけでありますけれども、中国の場合は、現在までのところ、成長すればするほど都市と農村、あるいは一部のお金持ちとそうでない人たちの所得格差は拡大しているわけであります。
 こういう状況というのはある意味で、例えば日米摩擦がなぜ落ち着いたかというと、一つは、日本の物価が上がって、消費者物価が特に上がって、賃金が上がって、競争力がだんだん平等になる。そこへ三百六十円を百円台にしたわけですから、為替の調整と物価、賃金の調整とでかなり落ち着いたところへ、更に言えば、アメリカはIT産業という日本ではまだ十分ではなかったところへ乗り出していったと。新しい産業をつくった。為替調整と物価・賃金調整と産業調整の三つでバランスが大体取れ始めたと、こういうことであろうと思いますが、中国の場合はまだ、沿海部は別としまして、奥地部を考えると、まだ労働力過剰、歴史的な人口過剰の影響が残っておりますので、そういう調整過程というのはかなり長引く可能性もあるのではないかと、こういうことを考えているわけであります。
 そういったようなことを考えますと、十一ページ、最後のページでございますが、大分時間を過ぎて申し訳ありませんが、それに対応していくのは、やはり日本においてもアメリカのように新しい産業をつくっていって、競合するばかりではなくて別の次元に移っていくということも非常に大事なこと、あるいは広く言えば生産性向上が大事なことであります。日米摩擦は、日本の物価、賃金、為替に加えて、米国が新しい産業へ移っていったということで随分緩和されたというわけであります。
 生産性上昇には何があるかということですが、これは、やはり規制緩和をしていく、人材育成をしていく、研究開発ということが正道であろうというふうに考えるわけでありまして、例えば人口問題の解決も、生産性上昇で日本の経済、生活に将来もっと自信を持てば形が変わってくる可能性があるのではないかというふうに考えております。
 なお、最後に、雇用の問題について少しだけ申しますと、非常に難しい問題がそこにあります。変化の激しい時代はやはり安定する、雇用の安定は非常に大事なことなんですが、それは労働を固定することだけではなかなか守れないというジレンマがあります。現在、そのジレンマに一番悩んでいるのは恐らくドイツでありまして、ドイツの失業率は五百万人、一二%という高さに達しております。ヒットラー以来の失業率というふうに言われているわけでありますが、ただ、労働を固定して守るということではやっていけない。しかし、例えばフリーターやニートと言われるような人たちばかりですとなかなか子育てもできない、熟練もできない、生産性も上がらない、こういう二つのその固定的過ぎる労働体制と余りにも不安定な労働慣行というものの間に何らかの道を労使でつくっていただくということが是非必要でありますし、その場合、政策としてはむしろその選択に任せて中立的な形で、例えば社会保障を、職場を変わっても社会保障がポータブルになっている、あるいは税制によって人を配置をするというようなことにしないということがむしろ大事なことではないだろうかというふうに私は考えております。
 大変長い時間を費やしましたが、以上、取りあえず説明させていただきました。
#6
○会長(広中和歌子君) 香西先生、ありがとうございました。
 それでは次に、久保田参考人にお願いいたします。
#7
○参考人(久保田泰雄君) はい。ありがとうございます。
 連合副事務局長をやっております久保田と申します。今日は、お呼びいただきましてありがとうございます。労働組合の連合として、今本当に悩みつつ何とかしなきゃならないという危機感を含めて、是非聞いていただきたいというふうに思います。
 テーマは成熟社会における経済活性化ということなんですが、連合といたしましては、過去は変えることはできませんが、未来はやはり選択することができるというふうに思っています。経済の成熟化という意味では、日本の戦後の経済社会システム全体が二十世紀末に大変大きな大変革期に来ているということについては、労働組合も共通の認識でございます。経済のグローバル化あるいは少子高齢化、それは人口減少社会を呼び起こしますし、また高度情報化社会、地球環境問題、あらゆる現象が二十世紀型文明とは違うものを突き付けていると。
 それをどう乗り切っていくかということでございますが、連合としては、やはり働く者の立場でこういう社会を目指すべきではないかと。少子高齢化あるいは成熟化になっていくから自動的にこうなるではなくて、その弱みをむしろ逆手に取って強みに変えて、日本のいわゆる国の政策としても、そして国民一人一人の統一的な意思としても、やっぱり前向きに挑戦をしていくと、そしてこういう目指すべき社会をつくろうではないかと。そういう合意をどうやって取っていくのかということが実は非常に大事ではないかというふうに思いまして、今日、お手元の資料では、ちょっと見にくい冊子を持ってきたんですが、二つ持ってまいりました。「二十一世紀を切り開く連合運動」というコピーのものと、これは組合員がパパ、ママをかいた連合白書という冊子でございますが、主にこちらの「二十一世紀を切り開く連合運動」というところに乗っかってポイントを御説明をしたいと思いますが、これは四年前でございますのでちょっと古いものです。
 世紀の変わり目に日本の連合、労働運動が非常に大きな壁に突き当たっている、このまま行けばひょっとしたら労働運動そのものももう要らないということになってしまうのかもしれないという強い危機感の下で、労働組合の運動も変えていかなきゃならない、そのためには新しい時代を予見して、しかもどういう社会を目指していくべきなのかということについて様々な議論をした上で確立したものでございます。
 このコピーの冊子の、開いていただきまして、三ページ目に「連合は、これからの社会のあるべき姿として、」という文章がございますが、キーワードは一言で言いますと労働を中心とした福祉型社会であるというふうに規定をいたしました。今、全就業者に占める雇用労働者の割合は八割です。また、全人口に占めるサラリーマン世帯の人口の比率も八割を超えます。このように、国民の圧倒的多数を占める勤労者が生き生きと働ける社会、そして安心して生涯にわたって生活できる社会、そういう社会こそ我々が目指すべき社会だというふうに位置付けました。
 そして、この労働を中心とした福祉型社会とはということを言い換えますと、この三ページ目のこの段落のところに書いているとおり、働くことに最も重要な価値を置くと。単に福祉社会で福祉の恩恵を受けるというよりは、一人一人がみんな働いて支える側に回る、ワークフェアという言葉がございますが、雇用こそ最大のセーフティーネット、福祉だという考え方で、働くことに最も重要な価値を置いてすべての人に働く機会と公正な労働条件を保障する社会、そしてもう一つは、安心して自己実現に挑戦できるようなセーフティーネットがはめ込まれた社会づくりを目指そうということを確立をいたしました。こういう社会は、違う角度から見れば男女平等参画型社会であり、エージレス社会であり、地球環境と調和する循環型社会であり、そして市民参加の地方分権型社会であるというふうに規定をいたしたわけでございます。
 ちょっとこちらの連合白書の方の十八ページを開いていただきたいと思います。ちょっと理念めいた話で申し訳ないんですが、また先生方よく御存じのとおりの、またこの話かということになるのかもしれませんが、十八ページをごらんになってください。
 ここにチャートがございますが、これまで戦後六十年近く日本が欧米にキャッチアップを目指してやってきた社会は、ここに書いている、まあ誤解を恐れずに言えば、企業中心の社会、滅私奉公型、そして福祉も家族と企業に任せて、そして政官財の中央集権型の構造、そういうことではなかったかと。この日本型経済社会システムそのものが実は壁にぶち当たっているとすれば、このこと自体は変えていかなきゃならないというふうに思っております。
 ただ、問題はどう変えるか、どちらの方向に行くかということでございまして、一つは社会連帯・個人尊重の社会、こういう方向で行くべきであると連合は位置付けたのですが、もう一つの道は市場万能・自己責任の社会でございます。我々が未来に向かってどの道を選択するのかと、今大変重要な岐路に立っているのではないかと思います。現在の小泉政権が目指している社会は、取りも直さず私は市場万能型自己責任主義の社会、後れてきたレーガン、サッチャー革命とでも申しましょうか、そういうことが色濃く出た政権ではないかと思っています。
 セーフティーネットは結果としてできるだけ縮小、そして市場原理と効率性を優先して小さな政府を目指そうという考え方にほかならないと思っています。こういう政策は、雇用不安や所得格差、産業間、企業間格差あるいは地域格差というものを拡大をして、あらゆる分野で二極化が進行しています。こういう市場万能主義、アメリカンスタンダードを無条件に取り入れようという考え方に我々は賛同することはできません。経済の効率と社会の公正さをしっかりと両立させる道を選ぶべきであるというふうに考えております。
 そういう意味では、我々はこの個人尊重、社会連帯型の社会でありますし、ちなみに、過日、一月でございますか、世界経済フォーラム、いわゆるダボス会議で国際競争力ランキングというのが発表されていますが、国際競争力の世界第一位はフィンランドです。また、スウェーデンが三位、デンマークが五位、ノルウェーが六位というふうに、北欧諸国が上位を占めているというふうに聞いております。
 これらの国家は、効率化のみを追求して福祉を切り捨てるような国家社会ではありません。国民負担率が極めて高い一方で、福祉、社会保障基盤や、とりわけ人に対する投資、教育投資ということに対して国家が積極的に関与をして、そして一方でIT分野などトップレベルの先端産業育成をしている国々でございます。政府に対する国民の信頼も厚く、負担は重いけれども、しかしその見返りはしっかり自分の生活に返ってくると、そういう確信の下で、結果として国際競争力も高水準を維持しているのではないかと。社会連帯と競争力というものは決して両立不可能なものではないというふうに考えたいと思っているわけでございます。
 では、それは、連合は一体どういう具体的な政策をそういう社会を目指すために展開しようとしているのかということにつきまして、時間もございませんのでさっと触れた上で、しかし一方で足下、現実は今何が起こっているのか、連合は今そのことに対してどういう危機感を持っているのかということで申し上げたいと思います。
 お手元のこれに、コピーに戻りますけれども、二十四ページをお開けいただきたいと思います。
 この社会連帯型、目指すべき社会というものに向けて、我々の理想でございますが、政策的には完全雇用政策の再構築、いわゆる全員就業型社会を実現をしたいということでございます。先ほども申しました、働く意思と能力を持つすべての人に雇用が保障されるような、そういう社会を目指したい、完全雇用こそ最大のセーフティーネットだろうというふうに考えています。そして、そのためには教育投資や人材育成投資、そういうことにやはり相当な力を入れてやらなきゃならないんじゃないかと、頭の、ここで発想の転換が要るのではないかと考えています。
 時間もありません。次、行きます。
 二つ目、二十五ページ、新しいワークルールの確立が必要だと思っています。
 これまでは、どちらかというと、雇用の安定とか公正な労働条件というのを日本型労使関係の中の暗黙の労使関係に頼るといいますか、そういうことがあったのではないか。しかし、これからはオープン、フェアで、そういうしっかりとしたまずルールをしっかり作って、それを社会の中でみんなが公平にやっていくと。そういう時代が来ているのではないかという意味では、二十一世紀型のワークルールをしっかり作っていくべきだと。そのときに、この長期安定雇用というのをやはりあくまで核にすべきだと労働組合は考えていますが、しかし労働力の固定化だけでは済まないと思っています。流動化や雇用の多様化ということはある意味では避けられない。しかし、その場合でも、パートや派遣など多様な働き方に対して、キーワードは均等待遇だと考えておりますが、あくまで、それは経営側の都合だけではなくて、働く側のライフスタイルや自らのライフサイクルということの中で、働く側の選択肢の中でお互いにマッチングができる、そういう働き方、公正な働き方というものをどうやって確立することができるかというのは非常に大事だというふうに思っています。
 また、この二十五ページには、C、企業横断的な評価基準の確立や、様々なことをやっぱり整備をしなければ、そういう条件が整備されること抜きに、自立だ、もう長期安定雇用はもう時代が過ぎたということだけでは済まないのではないかというふうに思っております。
 二十六ページ、そのためには、ソーシャルパートナーシップの確立としての、企業レベルだけではなくて産業レベルや国、社会レベルでの社会合意や社会契約的発想が必要だと思いますし、(3)人生八十年時代の雇用・就業システム、すなわちエージレス社会、我々の理想は年齢による雇用差別の禁止というのが究極の目標ではないかと思っていますが、当面は年金と雇用の接続ということを考えまして、働く意思と能力のある高齢者の方々にせめて年金と接続するように様々な雇用の道を確保すべきではないか。しかも、それは企業としての雇用だけではなくて、地域の中でNPOやボランティアと、自助と公助の間をつなぐ共助の領域というものを、もっと元気で中高年の方々をそういう場で社会のお役に立っていただくといいますか、そういう道を探っていくべきではないかと思っています。
 同時に、(4)は男女共同参画社会です。仕事と家庭の両立、ファミリーフレンドリーな職場と社会をどうつくっていくかということは、極めてある意味では日本は後れている分野ではないかというふうに思います。また、このことは少子高齢化と最も密接に関連していることだと思います。
 その意味での戦略的課題としての労働時間短縮、すなわち新しい発想でのワークシェアリング的発想での労働時間の短縮、そして働き方を変えて、暮らし方を変えて、男性も女性も高齢者も若者もともに働く社会をどうやってつくり上げるのかということは、理想論ではあるかもしれませんけれども、非常に大事だと思います。
 そして、賃金制度や賃金闘争も労働組合は過去のものに固執しているわけではありません。年功序列型賃金というのはむしろ変えるべきだと思っています。しかし、その方向は、労働者の銘柄ごと、熟練度ごとに企業の枠を超えた社会的水準を追求する、評価基準をつくっていく、そういうことは不可欠じゃないかと思いますし、またミニマムとしての最低賃金や初任給や地域最賃や、そういうことはしっかりと保障すると。そういうルールをしっかり確立することは大前提ではないかというふうに考えております。要は、開かれた明確な賃金制度を労使共同の下でつくっていくという方向性を打ち出しています。
 そして、CSR等々が話題になっておりますけれども、産業民主主義の深化、特に株主資本主義が強く出過ぎたのではないかという問題意識は持っております。もっと従業員主権主義といいますか、従業員のことだけ考えていればいいということではございません、ステークホルダーは多様です、しかし肝心なところを忘れてやしませんかということは強く訴えたいと思います。
 もう一つの大きな柱が二十八ページから二十九ページに書いています社会保障の問題です。今日は時間がございません。持続可能な福祉社会の構築。
 年金、介護、医療を含めて、税制を含めて将来不安に対応、将来不安を解消できるような、あるいは将来への安心を担保できるような持続型福祉社会というものをどう構築できるかということは、本当にここ数年間の残された最後の勝負ではないかと思っています。残された時間は少ない。子供の世代が自分たちの世代よりも不幸になると考えている人が日本の七割いるそうですが、極めて不自然なことです。また、最近の若い人たちの大変悲惨な事件やそういうことを考えるときに、本当にこれでいいのかということをもう一度考え直さなきゃならないと思います。
 そして最後、二十九ページの下にありますが、地域を軸にした地域の再生軸です。中央集権型国家から、市民が参加をして、遠いところで自分たちの税金や社会保険料がいつの間にか取られてということではなくて、自分たちの生活の身近なところで払った税金や社会保険料がこういう形で自分たちの福祉に戻ってくるということがちゃんと見える世界をつくって、納得ずくでそういうことについて払っていく、負担をお互いにしていくと。そういう社会をつくるためにはどうしても徹底した地方分権と住民の参加ということが不可欠じゃないかと思っています。
 済みません、時間が参りましたので、最後の項目に行きますが、これが我々の四年前に立てたビジョンでございます。この一方の対極にはアメリカ型社会というものがありまして、そちらではなくてこの道を選択すべきではないかというのが労働組合のビジョンでございました。九〇年代の後半から、しかし現実に今足下で進んでいることは、残念ながら、小泉構造改革といいますか、違う道であったのではないかと思います。
 足下で起こっていることへの危機感を申し上げます。
 雇用システムが大きく変質をしてきたということです。今、経済や雇用情勢は回復基調にあるというふうに言われていますけれども、現実に進行しているのは、地域間、企業規模間、そして雇用形態間、いわゆる正社員と非正規社員、この違いなど、様々な分野における二極化だというふうに理解をしています。国民の所得格差も拡大する一方です。一部では、生まれが物を言う社会が日本で進行しつつあるのではないかということも言われております。日本の若年雇用問題に端的にそのことが表れているのではないかという危機感を持っています。
 日本の雇用システムは九七年を転機として大きく変化をしたというふうに理解をしています。この年を境に正社員数は減少し続け、非正規雇用が急増をしています。九八年から五年間で、典型労働者、いわゆる正規社員は三百七十二万人減少し、いわゆる非典型、非正規社員は四百十万人増加をしています。フリーターも今や二百十七万人と、ニートも五十二万人というような数字が発表されています。この九〇年代から進んでいるのは、学卒の新入社員の採用抑制、企業内教育の実施割合の減少、中高年労働者の人員削減であって、それに代わって非正規雇用が増え続けていると、これが実態だと思います。そして、若者の、働いているからハッピーということではございません。過大なノルマを課せられて、長時間残業が常態化しています。週六十時間以上働く若者の割合は男女ともに急増をしています。違法な不払残業も後を絶ちません。
 いわゆる、この単なる所得の格差にとどまらず、希望格差社会という指摘もあるような、将来の希望が持てるか持てないかの格差の問題までなっているのではないか。そして、このフリーターやニートやこういう若者たちが、将来において独り立ちして家庭を持つころになったら一体どうなるのか。少子化の傾向はますます強まっていくんではないか。また、その事態を放置すれば、社会保障制度そのものの維持可能性がもはや危機を迎える、そういうことになっていくんではないかと思います。
 この背景の一つには、今日、矢野専務もおられますので後で反論もあるかもしれませんが、企業の経営姿勢と人事政策の変化が私は確実にあったと思っています。長期的利益重視の経営から短期利益重視の経営へのシフト。もちろん、このアメリカと東アジア、中国を中心とする東アジアの勃興の間に挟まれて経営者も今大変です。そのことはよく分かるんですが、しかし雇用政策あるいは日本型雇用政策ということの、やはりどこかの転機が九〇年代後半で一つあったのではないかというふうに率直に感じます。
 そのことが非常にやっぱり影響として出てきているということと、もう一つは、こうした経営の動きを後押しする政府の政策です。九〇年代末期に三つの過剰論、いわゆる雇用の過剰、債務の過剰、そして設備の過剰、これをサプライサイド中心で、需要を伸ばすというよりはむしろ供給サイドを調整するというやり方で政策が展開をされました。
 失業なき労働移動というのをスローガンにしていたはずですが、実際に起きたのは雇用の吐き出しだけだったと。だけというのは言い過ぎかもしれませんが、そのことが強くあったのではないかと。結局、雇用の受皿がない、成長する分野が十分見いだせなかったという部分があるのではないかと。幾らエンプロイアビリティーを高めても、企業の雇う力、ハイアビリティーといいますか、そういうものがなければ仕事はやっぱり就けないということはだんだんはっきりしているんじゃないかというふうに思います。
 特に問題は、今政府が一息ついているんじゃないかということを強く懸念をいたします。失業率も改善したと、労働時間も短縮していると。しかし、本当にそれでいいのかと。その多くは、既に指摘した非正規雇用の拡大と短時間労働者の増大によるものじゃないのかと。実態を本当に直視してもらいたい。そして、雇用の量だけではなくて質にも着目をし、本当に、次の社会を持続可能な社会にするためには本当にこのままの延長線上を続けていいのかどうかということについてもう一度、勇気を持って踏みとどまって、一遍総括をして、そして徹底的に、過剰でなり過ぎた、あるいは行き過ぎた面は元に戻す、そういう政策もやっぱり必要ではないかと。
 現場力が落ちているということは経営者の方も言われています。様々な事故や現場の問題や、落ちています。団塊の世代が大量に退職をしていく二〇〇七年前後までに、一体本当にどうなのかということを考えていく時代が来ているのではないかと思います。
 最後に、外国人労働者の問題についても懸念を申し上げておきたいと思います。
 私どもは、いたずらに少子高齢化対策の一つとして外国人労働者の導入ということについては反対です。安易な外国人労働者の導入は、問題の解決にならないばかりか、必要とされる社会改革に逆行するんじゃないかという懸念を持っております。
 国境を越える人の移動の問題は、対等、公正の原則に基づいて、出す国の方も納得性があり、あるいは受け入れる方もそれで納得性があり、そして日本に来ている外国人労働者は、就業、就労資格があろうがなかろうが、日本人と同じように、同じ仕事に就いているのであればしっかりとしたイコールの労働条件をしっかり保障すると、そういう社会をしっかりつくりながら、まず日本の雇用政策のひずみ、そういう問題をしっかり直しながら、少し時間を掛けて本当の、移民を含めたグローバル化の問題ということは慎重に対応すべきではないかというふうに思います。
 単なる目先の労働力不足対策として位置付けて外国人労働者問題に対して対応することについては、非常に禍根を残すのではないかという問題意識を持っております。
 時間を少し超過して申し訳ございません。一応連合としての問題意識を御披露させていただきました。ありがとうございました。
#8
○会長(広中和歌子君) 久保田参考人、どうもありがとうございました。
 それでは次に、矢野参考人、よろしくお願いいたします。
#9
○参考人(矢野弘典君) 日本経団連の矢野でございます。今日は、こうした説明の機会を与えていただきまして誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。
#10
○会長(広中和歌子君) よろしければ、どうぞ座って御説明くださいませ。
#11
○参考人(矢野弘典君) はい。(資料映写)
 パワーポイントを使わせていただいておりますが、同じものをハードコピーでお配りしております。もしかすると遠くの方は画面が少し小さいかもしれませんが。
 お手元にお配りいたしました経営労働政策委員会報告というのがございますが、その中身をかいつまんで御説明させていただきたいと、こう思っております。
 今回、この表紙にもありますとおり、「労使はいまこそさらなる改革を進めよう」というものを副題といたしました。その理由は、経済が回復基調にあること、多少足踏み状態になっておりますが、そういう状況の中で、今までの守りのリストラから攻めのリストラに変えようということであります。そのためには労使の協力が欠かせない要件だと、このように考えましてこうした副題を作ったわけでございます。
 この報告書は毎年出しておりまして、人と経営についての基本姿勢を発表しております。今回で三十一冊目になります。第一回は昭和四十九年、例の第一次石油危機の直後に大変すさまじいインフレ下の不況というのを経験したわけですが、何とかそれを克服したいということで出したのが第一号です。当時は春の労使交渉に向けてのガイドラインとして出したわけであります。しばらくそういう状況が続きましたが、現在は政策白書のような色彩を持つようになっております。委員、多くの委員とアドバイザーをもって構成される会合でございますけれども、地方の意見を十分取り入れてこの報告書を作っております。
 御承知のとおり、日本経団連は経団連と日経連が合併した組織ですが、経団連というのは経済産業政策をやって、大企業を会員とする組織でございまして、日経連はその大企業会員の七割ぐらいが共通性があるんですが、そのほかに全国の地方組織を持っておりまして、そこに三万社を超える中小企業がいるということでありますので、そして社会労働政策を担当する組織として戦後来たわけであります。そういう意味で、全国の意見を聞いてやっていこうということであります。特に、景気回復といっても地方差があるということを強く認識しまして、それをこの報告書に反映させたということでございます。
 攻めの改革をやるには人材力の強化が一番大事なんだという主張をしておりまして、今回の報告書の中では少子化対策と若年者雇用対策に特に雇用問題としては強調した記述になっております。それから、この春の交渉が始まっているわけでありますが、横並び的なベアはもう終わったということを述べております。そして、自らへの心構えとして経営者の高い志ということを訴えておるわけでございます。
 まず、事業構造改革による競争力の強化という観点からいいますと、冒頭申し上げましたように、有望分野に資源を投下する攻めの経営、交易立国と科学技術創造立国の推進ということでありまして、この交易立国についてはかなりページを割いて書いておりますが、EPAとかFTAの推進、それから東アジア経済圏づくりのための努力、それから日中間の相互連携といったようなことをうたっております。京都議定書も本日発効になるわけでありますが、日本がこれから進むべき道、これは科学技術創造立国であると、こういうふうに考えております。まあ何遍も出てきましたが、そういうことを進める条件として人材力を高める必要があるということであります。
 それから、行政改革の断行についてもうたっております。今後、税制改革、社会保障改革などを進める上でも行政コストというのを下げるということでなければ、例えば消費税のアップというようなことも実現しないだろうということであります。
 それから、安全、安心な社会づくりでありますが、新潟中越地震とか今度のスマトラ沖の津波でございますけれども、これについては各企業に金銭的な支援や、それから物的な支援をお願いしましたが、物的支援は金額換算しますと、中越地震では四十二億円集まりました。それから、スマトラ沖地震、津波では、まだ昨日段階ですけれども、六十一億円集まりまして、これを現地に送っております。
 それから、行政改革の中では公務員の数が多過ぎる、公務員のコストが高過ぎる、こういう指摘をしておるわけでございますけれども、安全、治安が悪化しているという状況の中で警察官の増員ということは必要だというふうに述べております。
 それから、人口減少時代の経済運営ということでありますが、人口減少は国の存亡の問題だというふうに述べております。人口が減るということ、とりわけ働き盛りの人口が減るということは労働力や需要や社会保障の支え手が減るということであります。この際、少子化対策の優先順位を高めて、思い切った財政投入と税制改革をやる必要があると、こう考えます。これまで高齢化対策の方は相当進んできたと思いますが、少子化対策にもっと力を入れるべきだというふうに考えております。それは、国にだけお願いするのではなくて、企業としても多様な働き方の実現によってこれを支えていくという考え方であります。
 このページは、もう有名な絵をグラフにしたものでございますが、省略いたします。労働力人口の推移を示しております。
 次に、国全体の問題としては社会保障制度改革が何といっても大きな課題でございます。
 私どもが社会保障制度改革で考えることは、一つは年金、医療、介護など、これをばらばらに部分最適を求める形で検討するのではなくて、一体的に改革する必要があるということです。それからもう一つは、社会保障と税制、財政を一体的に改革するという考えです。そして、あるべき社会像としては、自助努力を基礎とする社会を実現すること、潜在的国民負担率を五〇%程度に抑えるという考え方が大枠としてあると思います。また、基盤整備として社会保障番号と社会保障個人会計の整備を進める必要があると思います。それから、給付に、負担だけでなしに給付についても見直していく必要があるということでございます。
 次のページは、ちょっと小さい字で一杯書いておりますが、今申し上げたことをまとめた絵でございますので、後ほどごらんいただきたいと思いますが、私どもが社会保障制度と言う場合には、年金、医療、介護、それから雇用、労災、社会福祉という、などでございます。
 今後、消費税を上げるという問題が大きな課題になってまいります。そのためにも財政支出の抑制ということが必要でありまして、こうしたことがみんな一緒になって改革が実現するものだというふうに思います。
 次のページは、今御説明しました社会保障制度の一体改革の基になる私どものシミュレーションの結果なんでございますが、何にもしないというと、ちょっとここに書きませんでしたが、GDPの比の政府債務残高はほとんど五〇〇%近くになるということでありまして、これはもう財政破綻です。
 改革ケース@の場合は、増税しないでやるとどうなるかと。そうすると、歳出を大体半分に減らさないと駄目なんです。そうすると、消費税を上げるというのと歳出を二二%下げるという組合せによって何とかプライマリーバランスが維持できる。AとBの違いは、改革ケースAは三段跳びで一六%まで上げると、Bの方は毎年一%ずつ上げる、こういうシミュレーションになっているわけです。これは非常に要約した絵でございまして、もう一枚大きい紙をお配りしましたので後ほどごらんいただきたいと思います。
 次に、次のページ、人材力ということを何遍も書いておりますけれども、イノベーションの担い手である高度の人材の育成が不可欠である。IT化というのは物すごい進んでいる一方で、人間同士の直接対話の必要性ということが社会的にも企業のマネジメントの中でも重要視されていくと思います。それから、多様性を生かす経営戦略、労使自治の精神で環境を改善をしようと、こうした考え方であります。
 競争力を強化する人事戦略といたしましては、二十一世紀の人事戦略の課題は多様性を持った適応力の高い組織の形成にあると。企業としては雇用、働き方の多様化を進める。同時に、雇用機会と選択肢の拡大をすると、こういうことによって経営の効率化と創造的な組織風土づくりができる。男女とか国籍とかそういう異なる属性を皆持つわけでありますが、その違いをむしろ戦略として活用していくということであります。仕事と生活の調和、あるいは自社に適した雇用ポートフォリオ、それからその異なる雇用形態の間の公正処遇という考え方もこれからの大事な課題になってまいります。
 次、お願いします。
 これは、私が今申し上げました雇用の最適編成、ポートフォリオについての考えで、こうした長期雇用の従業員が今後とも企業の核になっていくことは変わらないと思います。が、それに高度専門能力の持ち主、あるいはパートと言われるような雇用柔軟型の従業員、これが雇用の多様化という形の中で企業で働いていくようになるわけであります。
 大事なことは、これを固定的に考えないで、お互いの間の相互乗り入れがあると、こういうことが大事ではないかと思っております。ですから、有期従業員で入って、それがいわゆる長期従業員に変わるとか、それぞれのライフスタイルに応じていろいろな働き方も選ぶことができると、こういうことではないかと思います。こうした新しいポートフォリオというのは、企業にとってもプラスだし、働く側にとってもニーズに合っているというふうに考えております。
 それから、多様な人材の活用でありますが、やはり流動性ある労働市場をつくっていく必要がある。そういう意味では、大分先生方のおかげで労働法制の改革が進んでまいりましたけれども、年々それをもっと促進していく必要があると思っております。
 そして、雇用の維持というものも社会全体で考えるということが必要だと思います。
 これはワークシェアリングの考え方にもなるんですが、昭和四十年不況のころは、同じ会社の中でも一工場の中、塀の中の雇用維持でありました。石油危機の昭和四十九年以降の雇用維持というのは、同じ会社の中で工場の塀を越えた雇用維持でありまして、応援が行われました。あるいは、資本系列の中での雇用維持だったわけです。しかし、今こうした時代に、今のような時代になってまいりますと、これはやはり社会全体としての雇用というものを考えていくことが大事でありまして、そのための条件整備をするということが政策的に大事であると思います。
 次に、個別でございますが、若年層の問題それからフリーター、ニートの増加は国全体の問題だと思います。
 家庭、学校、企業がそれぞれの役割を果たしていくということが欠かせないことだと思います。産官学の連携といったことも大事でありますし、省庁の縦割りの弊害というものもなくしていく必要があるだろうと思っております。経済界は、インターンシップということで、高校生、大学生を受け入れておりますが、もう相当の数、一万六千人を超える子供たちを、青少年を受け入れているわけであります。
 次に、高齢者でございますが、この世代は最も個人差の大きい世代であります。
 幅広い経済・社会活動や社会活動の担い手として活躍していただくことと、それから新しい需要の創造ということが今後期待できると思います。
 是非、この高齢者に社会参画の機会を提供する環境整備を進めていく必要があると思っています。企業は雇用継続という形で、再雇用という形でこれを実現しますし、人によってはこの会社じゃもういいと、もう自分の力を生かして開発途上国に行こうという人がいるでしょう。あるいは学校での生活指導ですね、もうこれをうんとやったらいいと思います。孫のいる人は孫の面倒を見るでしょうけれども、その孫の世代の育成をおじいちゃん、おばあちゃんがやったらいいと私ども思っています。両親は共働きがこれからどんどん増えていきますから、おじいちゃん、おばあちゃんが増えるということは社会が安定するということでもありまして、そういう人たちの力を全体としてかりる必要があるだろうと思っております。
 次は、女性の能力の活用ですが、男女共同参画社会づくり、仕事と生活の調和。
 やはり能力とやる気のある人材に生き生きと働いてもらえるような職場づくりが必要でありまして、ポジティブアクションと言われるものもだんだん進んできていると思います。企業労使で協力していろいろな環境づくりを進めていったらいいと思っております。
 それから、外国人の問題ですが、やはりまだまだ足下の失業率が四・四%という、大分改善はしてきましたけれども、まだ高い状況にある。やはり、まず我々は、女性と高齢者の活用に注力すべきだと思っております。そして、技術革新も同時に進めていくと。その上で、次に来るのが外国人。これは中長期視点で外国人の問題を考えると。もう今から議論をしておく、始める、本格的な議論をする必要があると思います。
 日本人だけでは不足する分野というのが明らかに出ておりまして、例えばEPA交渉だと看護師とか介護ですね。それから、実際に日系人が全国各地で直接業務に従事しているわけでありまして、これはやはり本当だったら日本人の若者でも年齢にかかわりなく雇いたいと皆思っていると思いますけれども、なかなか実態としてはそうなっていないということだと思っております。
 それから、この外国人の問題は、単なると書くべきでしたが、単なる人口減少の補完ではなく、多様性のダイナミズムの発現を促す観点が大事だと思っております。
 そして、受入れ三原則というのを私ども考えたんですが、一つは、質、量の両面で十分な秩序ある受入れ。これはもう欧米のいろんな事例がありますから、成功例、失敗例をよく勉強して考えていったらいいと思います。それから、外国人の人権や尊厳の擁護ですね。これ、不当に労働条件が低いなんということはあり得ないことであります。双方の国にとってメリットのある受入れということを考える必要があると、このように思います。
 それから、これからの人事・賃金制度でございますけれども、複線的な制度、雇用が多様化してまいりますので、それに応じて複線的な制度の設計をする必要がある。かつての、従来型の人事処遇制度というのは長期雇用の従業員だけに的を絞った制度でありますが、そうでなくて複線的な制度の設計ですね。
 それから、能力、成果、貢献の重視。これには適切な評価基準による運営が不可欠であります。労使でよく話し合って制度づくりをしていく必要があると。ここ二、三年掛けてこれがどんどん進んできていると思います。決して現実離れした制度ではなくて、よく話し合って決まっているということが大事な点だと思います。
 それから、現場力の向上ということを去年から言い出しているんですが、やっぱり何といってもトップ垂範で現場・現物主義を徹底すること、それから従業員に対しては雇用の安定とその貢献に報いる姿勢というのが必要だと思います。そして従業員の熟練の向上を図っていくとともに、やはり暗黙知ですね、そういうものを重要視していく必要があります。それから中間管理・監督職の育成、それからコミュニケーションと自己解決能力の向上が必要だと思っております。
 労働法への対応という点でいいますと、産業、企業の競争力強化の視点からの一層の規制改革。これは労働市場の流動化にもつながっていくわけで、労働時間法制の抜本的改正とか派遣法の更なる規制緩和とかいうようなことでございます。
 それから、この春の労使交渉につきましては、もう既に世界のトップレベルの賃金水準になっておりますので、支払能力による企業ごとの対応で、まあここのところ個別企業では相当改善しているところありますから、支払能力のあるところは従業員に報いてやったらいいと思います。しかし、一方で大変苦しんでいるところもありますから、まあ現実論としては賃上げも賃下げもあるだろうというのが今年の春だと思います。
 それから、総額人件費の観点。それから、定期昇給制度の廃止を含む抜本的改革。それから、ベアの役割の終えんですね。これは、先ほど申し上げました。短期的な業績の改善はやっぱり賞与、一時金に反映させたらいいだろうということです。
 労働組合は春の闘いの春闘という言葉を使っていますが、春の討論で何でも話し合うという、労使協議を充実したらいいんじゃないかと、まあごろ合わせみたいなんですが。春の闘いの方は俳句の季語になっているんですが、春の討論はまだそこまでは至っておりません。
 次のページは、総額人件費と申し上げたものの内訳なんですが、毎月の所定内給与を一〇〇としますと、総額人件費が一六九なんですね。これが実態でございます。
 ごらんいただきたいのは右側のこの法定福利です、社会保険料。これがもう年々増えておりまして、こっちを一〇〇としますと、一五・八になっているんですね。これは経営側の、雇主側の負担でありますから、従業員はこっちの一〇〇の中からそれを払っているわけであります。あるいは、現金収入の中から払っているわけでありまして、この法定福利費がいつまでも増えていくということでは、従業員にとっても企業にとっても耐えられない状況が来るというふうに思うわけであります。
 それから、中小企業と地域経済の問題につきましては、地域間格差の存在ということはこれは否定できないことであります。しかし、私どもの傘下のいろいろな多くの企業を見ておりますと、やはりその需要構造変化に対応する攻めの経営が必要だと。消費が引っ張っていく経済にこれからなっていくわけでありますから、地方でやれることが多いということであります。
 それから、人材と資金の問題。とりわけ産官学の連携が必要だと思っております。
 最後に、「企業倫理と高い志」ということを書きましたが、企業は社会の公器であると思っております。いろいろ不祥事やら何やら起こりましたが、事故が起こりましたが、企業倫理の確立とCSRの推進、企業の社会的責任の推進が必要です。それから、それを前提にした幅広い利害関係者、ステークホルダーへの企業統治ということをやっていくことであります。良きものを継承し、急速な環境変化への対応をしていく、これが今後の経営の在り方だと思います。その大前提は高い志に基づく経営者のリーダーシップであるというふうに思います。
 この本は経営者のために書いた本でありますので、ほかの各界の方のことは何も言及しておりませんが、私どもといたしましては、各界のリーダーとなる方々に高い志を持っていただいて、そしてその新しい経済社会づくりというものにみんなで取り組んでいくことによっていろんな問題解決ができるのではないかと、このように思っております。
 以上でございます。
#12
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより参考人に対する質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いますので、質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださいますようお願い申し上げます。
 なお、質疑時間が午後四時までの二時間程度に限られておりますので、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう御協力をお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方、挙手を願います。
#13
○加納時男君 ありがとうございます。
 自由民主党の加納時男です。
 お約束どおり、一回の質問は三分以内ということで、時間は絶対に守ります。お一人の方に絞って質問させていただきます。
 香西参考人にお願いいたしたいと思います。
 先ほど資料をお配りいただいて、三ページのところ、成熟社会の強みと弱み、いわゆる光と影といったことについて絞って御質問したいと思います。
 お話の中にるる出てまいりました中国でございますが、この二十五年間、市場経済化が進み、大きな成果を上げてきたと思います。改革・開放、そしてマーケット、資本市場への外資の導入、そして豊富な農村労働力等を背景として急成長を遂げてきたわけでありますが、ここに書いてあります成熟社会のキーワード、だあっと見まして、この中であるのはどれかといったら市場経済だけなんですね。ということは、市場経済が進んでいった場合に、まだ未達なほかの分野がどのような制約要因になってくるのか。例えば、所得が上がってくる、その結果、所得、教育が上がってきた結果、人権に対する要求、それから政治的民主主義への要求というのがどのようなことになってくるのか。中国における成熟社会へのロードマップは何か、そしてその課題は何かと。加えて、日本の、この調査会のテーマでもあります経済、産業、雇用に対して、このような中国の発展がどのような意味合いを持つのか。よく、脅威だ、制約要因だと言いますが、私はそう思っておりませんで、これ成長の機会、持続的成長へのオポチュニティーを提供するものでもあると思っていますが、そういったところについての香西先生の御意見を伺いたいと思っております。また、経営者の立場からもしこれに御意見があれば、矢野さんにも伺いたいと思っております。
 ありがとうございました。今ちょうど二分ちょっとでございます。
#14
○会長(広中和歌子君) それでは、香西参考人、よろしくお願いいたします。
#15
○参考人(香西泰君) 中国につきましては、先生が御指摘になりましたように、政治体制と経済システムの間にかなりの緊張関係があるということは否定できないところであろうと思います。これがどうなるかということは、経済だけでも決まらないし、政治だけでも決まらないということでありますけれども、私たちとしては、よその国のことでもありますからどうすることもできない面も多いわけでありますけれども、できるだけ平和な方向で平穏のうちにうまく適応して、政治的にも経済的にも成熟化が進んでいくであろうということを期待しているしかないというのが現状であります。実際だろうと思います。日本としては、それをできるだけ側面から支援していくということしかやることはないというわけであります。
 事実、中国におきましては、例えば企業家を党員に加えるとか、政治の面でもいろいろ改革も行われておりますし、御指摘ありましたように、経済が発展していく、これはしばらくは発展するだろうというふうに思いますが、そのこと自体が人権や民主主義的な動きを促進していくというそのプラス効果もあるわけでありますから、できればそれがうまく成功していくことを期待している。仮にもしそれが非常にまずい形で破綻するというようなことになりますと、これは非常に世界全体にとって非常に不幸なことになるということでありますので、私どもとしては中国がうまくやっていただくことを期待するしかないわけでありますし、事実、これまでのところはかなりそれなりに適応していただいているんではないかというふうに考えております。
 先ほどちょっと時間もなかったので言いませんでしたから、少しこの機会に言わしていただきますと、やっぱり中国の今の成長というのは非常に、例えばGDPの半分が鉱工業生産というか第二次産業であるとか、GDPの四二%を将来の設備投資に使っているとか、あれだけ大きな国で貿易比率が例えばインドの二倍以上、三倍近くあるといったような形になっていますが、こういったところは、やはり将来完全雇用に近づいていくにつれて所得の分布が平等になっていけば、もう少し一次産業、二次産業の生産性も上がってきて、もっとバランスの取れた形になっていくだろうと。
 そういうことも、例えば所得分配が、そういう形で完全雇用になって、ちょうど日本でいわゆる二重構造が完全雇用になって縮小して、高い成長の中で所得が分配が平等になっていった時期に入ってくれば、政治的にも安定してくる可能性が更に強まってくるんじゃないかと思いますが、ただ歴史的な過剰人口というのは中国の場合非常に大きいと。大きいから今、こういうやや、従来のどの国も経験したことのないような形で急速な成長が進んでいるということではないかというふうに考えているわけであります。
#16
○会長(広中和歌子君) よろしいですか。
#17
○加納時男君 ありがとうございました。
#18
○会長(広中和歌子君) それでは、松あきら君。
#19
○松あきら君 本日はお忙しい中、お三人の先生方、大変にありがとうございます。こういうやり方は今日が初めてなので、なるべく時間内に終わりたいというふうに思いますけれども。
 好むと好まざるとにかかわらず、少子高齢化は進み、また終身雇用が崩れてきているというのも本当であると、これは雇用の多様化とも言えるわけでございますけれども。また、日本は賃金が世界的に見ても高いと、これが日本の国際競争力をそいでいるという、こういう考え方もあるというふうに思います。
 それが関係しているのでしょうか。今、製造分野にも派遣ができるようになった、これが関係しているんだと思いますけれども、実は請負で働く人々というのが、今、請負業者というのが一万社くらいあるそうで、そこで働く若者が百万人以上いると、こう言われているんですけれども、この請負で働く若者は派遣業法でも守られないんですね。つまり、派遣業法にも適用しないわけで、例えば一か月の間に何回、三回も四回も職場、働くところが企業内で変わるとか、いろいろな、昔の女工哀史ではないですけれども、そういうふうな状況もあるというこの現実は、これ、お三人の先生方にお伺いしたいんですけれども、どういうふうに把握していらっしゃるのか。ちなみに、厚生労働省を呼んで聞きましたら全然、何万社あるかも把握していない、何人働いているかも把握していないという現状がございました。これをどういうふうに把握していらっしゃるのか。また、それに対する、こういう人たちは必要なのかという考え方なのか、あるいはまたその対策はこれからどうしていったらいいのかと、その辺をまずお伺いしたいと思います、お三人の先生方に。
#20
○会長(広中和歌子君) それでは、どなたからでも結構でございますが、今の御質問に対してお答えいただければと思います。どうぞ、矢野参考人、よろしくお願いします。
#21
○参考人(矢野弘典君) この経営労働政策委員会報告の三十三ページをちょっとごらんいただきたいと思うんですが、雇用ポートフォリオの概念ということで、先ほどこちらの画面にも映しましたけれども、私どもが十年前に想定した絵は左側の絵でございまして、その後、やはり雇用の多様化といいますか、企業間の関係も随分多様化が進みまして、右側の箱にありますように、労働者派遣とか、これはもう前からあったにいたしましても、非常に大きな成長をしている分野だと思いますし、業務請負あるいはアウトソーシングと、これまあ一種の請負だと思いますけれどもね、アウトソーシングという形で丸ごと仕事を受け止めるというようなことで、新しい形での仕事の仕方が増えてきていると思うんですね。これもやっぱり一つの多様化の私は現象だと思っております。
 問題は、その多様化がいい悪いというのではなしに、その中で行われている実態がどうであるかということだと私は思います。そこに合理性とか公正性を欠いた不平等があるということであれば、それはやはり改めるべきだというふうに思います。しかし、やっぱり、一体じゃ公正性とは何かということでありましてね、これはやっぱりよく実態を分析し、観察して判断していかなくちゃならないだろうというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、こうした形での仕事の仕方の変化、これは傾向としてこれからも増えていくんじゃないかというふうに思っております。
 以上です。
#22
○会長(広中和歌子君) それでは、今の点につきまして、久保田参考人、お願いします。
#23
○参考人(久保田泰雄君) 松先生の御指摘のところは非常に大きな問題だというふうに思っています。
 連合としても、正確に今数字ですべてを把握できているわけではございません。お手元のこの連合白書というところでは、五十五ページに非典型労働者の労働条件改善という題で連合が実施をしたアンケートの結果を出しておりますが、例えばこの左側の棒グラフでは、パート・短時間、それから派遣、契約となっていますが、実は、請負というか、請負は認められているんですが、疑似請負という極めて派遣に近い、しかも、私は違法だと思いますけれども、そういう労働力群が非常に増えているというのは実態でございます。
 とりわけ、大企業の本体というよりは、むしろ下請、孫請、そういうところに、特に地方を中心に非常にあって、そういうところをきっちりするためにも派遣労働者法をしっかり作り、しかも監視の目をちゃんとつくってコントローラビリティーに置くということが法改正の趣旨だったというふうに考えております。
 連合としては、いわゆる製造現場に派遣労働者を拡大をするということについては極めて慎重な姿勢で、むしろ反対に近い姿勢でずっと議論に臨んできましたが、いわゆる潜ってどんどんと悪化をしていくといいますか、バケツの底が抜けたような状態を防ぐためにも、できた、しっかりとした法律の下に、どうやってチェックをし、その法律の範囲内でやるかと。疑似請負なんというのはあってはならない働き方だというふうに思っておりますので、やはり実態をしっかり明らかにし、労働組合も自らの力で、そういう実態を今調査をしている産別は幾つかありますけれども、明らかにして、やっぱり自ら労使関係の中でしっかり整理をしていくということが基本でしょうが、やはり国の政策あるいは政治の責任としても、そういうことについてはちゃんとルールを守らせるということはどうしても必要ではないかと。
 日本の問題点は、大手の企業の方は私どもは信用しておりますし、そこそこなんですが、中小企業、そしてその中にいろんな経営者の方々がおられますし、ルールがあってなきがごとしのじゃじゃ漏れ状態というのは、やっぱりアメリカやヨーロッパ社会と比べてあるんじゃないでしょうか。ずぶずぶということで、もう何でもありというような状況は何としてもやっぱり歯止めを打っていくというのが非常な大きな関心事でございまして、そういう意味では、疑似請負といいますか、そういう状況の把握とそこに対する改善ということについては非常に強い問題意識は持っております。
 以上です。
#24
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 香西先生、付け加えるところ何かございますでしょうか。
#25
○参考人(香西泰君) 私は、実は労働問題を直接専攻しているわけではありませんが、こういった問題について話というか、いろいろ議論されていることは聞いております。担当省でしっかりやってくださっているはずだろうと今まで思っておりましたけれども、よく言われるのはこの請負と、それから例えばソフトウエアのコンテンツの開発ですね、これは私、本当に最先端の部門なんですけれども、労働条件は非常に劣悪だということが話題になったことは承知しております。
 これに対する考え方として二つの点だけ追加させていただきたいと思いますが、一つは、追加じゃなくて全く御意見、お二人の御意見と同じなんですけれども、これは労働法の問題であるとか派遣業法の問題でありますから、それはそれなりの法律に従ってしっかりとした必要な、何というか是正措置が必要な場合であればそれを行うということは当然であるということが第一点です。
 それから第二点に、先ほど矢野さんからもちょっとお話がありましたけれども、アウトソーシングの一形態ということで、これは国際的に広がっているということだと思います。アウトソーシングがいいか悪いかにつきましては、アメリカの大統領選挙に際しましてかなり論争が行われたことがございますけれども、アメリカ等におきましても最近はこういう請負業的な仕事というのが非常に膨らんで、しかも場合によってはそれは国境を越えているわけですね。例えば、設計なら設計、デザインならデザイン、ソフトウエアの開発をインドへ頼むとか、あるいは中国にその製造を依頼するというような形で言わば国際的にも広がっている動きである。そうなりますと、国際競争上、いろんなところでそれが広がっていく可能性があるということでありますので、国内だけの問題ではなく、そういったグローバリゼーションに伴う一種のハーモナイゼーションの一つの課題にもなってくるんではないかという展望を持っております。
#26
○松あきら君 ありがとうございました。
#27
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
#28
○松あきら君 また次、二巡目に。
#29
○会長(広中和歌子君) そうですね。
 大変いい問題提起をしていただいたと思います。
 それでは次に、谷博之さん、お願いいたします。
#30
○谷博之君 民主党・新緑風会の谷博之でございます。
 大変参考人の先生方には貴重なお話、ありがとうございました。我が会派からは全員質問をしたいということでございますが、年齢の高い順からやれということでございまして、私から具体的に二点だけお伺いしたいと思っています。
 先ほど、矢野参考人から、高齢者の活用とか、あるいは外国人の受入れという御指摘がございました。
 日本の今の企業なり雇用されている方々の動向を見ますと、特に大手の企業もそうですけれども、ある程度の一定の年齢が来ますと、普通であれば六十歳定年という定年制があるにもかかわらず、企業の動向によっては途中で退職をしていくという、こういう傾向も結構我々の身近に見ております。特に外国人の受入れということではなしに、逆に日本のいわゆるそういう、特に家電メーカーなんかそうですけれども、ある程度技術を持ったそういう技術者が海外に流出をするということがある意味では起きているような気がします。
 具体的には、まあ中国などのそういうふうな働くところに行って、そして中国の技術者の養成の役割も果たすと、こんなことも報道されているわけですけれども、こういう現象を、特に連合の久保田参考人はどのようにそういうことを見ておられるか。まあ人数的にも大したことがないというふうに見ておられるのか、あるいはそれがある意味じゃ中国のそういう経済力、企業の活動に相当やっぱり効果を上げているという状況を見たときに、そういうふうなものを国内で何とかできないものだろうかと。雇用を更に継続するとか、そういうことができないのだろうかというふうな、こんなようなことも考えておりますが、こういう意味の労働力のいわゆる国際的な流動化といいますかね、大げさに言えば。こういう点についての現状をどのように見ておられるかということをお伺いをしたいと思います。
 それからもう一点は、矢野参考人にお伺いしたいんですけれども、中小企業と地域経済ということがございました。これは具体的な話をさせていただいて恐縮なんですが、実はこれはどこの県でもそうでしょうし、私が今栃木県ですけれども、この県内でも非常に地域経済が非常に厳しくなっています。
 特に、一昨年の暮れに県全体の五四%を占めている金融機関が経営破綻をするということで、こんなようなことの中で、これは一つの例ですが、日光、藤原という地域で特に温泉地のホテルが相当影響を受けています。ここはもう働く場所が、そういうふうなサービス、第三次産業のそういうふうな職場しかない。百社以上あるホテルのうち、そのうち六社だけが産業再生機構でこの経営をバックアップするということで、これからその地域全体が、もちろん企業もそうですが、雇用されているそういう人たちももうそれ以外に働くところがないと、こんなような特殊的なそういう地域があります。
 これは温泉地に限らず、例えば昔で言えば銅山があって、その鉱山、そこが閉山になるともう完全にその働く場所がなくなる。こういうふうな地域一体型のようなそういうところ、結構あると思うんですが、こんなようなところの中でのいわゆるこれからの生き延び方、これは地域だけじゃなくて、私は、ある意味では産別に、産業別においてもそういうことがあると思うんですが、第二次産業が衰退することによって第三次産業にそういう人たちが移っていくという、こういうところが非常に傾向としてあるように思いますけれども、その全体としての産業構造のバランスですよね。そういう点について今の日本の状態というのはこれでいいんだろうかというふうな気がしているんですが、そこら辺の今後の全体的な問題と、それから地域経済にどう対応していった方がいいか、雇用も含めて。何かお考えがありましたら、矢野参考人からお伺いしたいと思います。
#31
○会長(広中和歌子君) 最初の国際的人材移動についてはどなたにお聞きになりますか。
#32
○谷博之君 久保田参考人。
#33
○会長(広中和歌子君) 久保田さん、はい分かりました。
 久保田参考人、よろしくお願いします。
#34
○参考人(久保田泰雄君) はい。ありがとうございます。
 済みません。先ほどの松先生の御質問でちょっと落としておりました。
 連合白書の三十四ページに請負労働の構図をちょっと示しております。そして連合は、請負であればいいんですが、請負の形をしながら派遣労働者に極めて近いものは違法派遣とむしろはっきり命名すべきだろうと思っていまして、取締りの対象にすべきということでございます。何が違うかというのはこの文章で一応やっていますし、労働組合の対応方針もここに書いているつもりでございます。
 谷先生の労働力の国際的流動化で、問題意識は特に、日本から中国とか例えば韓国へということでしょうか。
#35
○谷博之君 そうです。
#36
○参考人(久保田泰雄君) 私どもの問題意識としては、技術者を中心にノウハウだとかブラックボックス化ということがよく言われていますが、あのバブルのころには一部言われたのは、韓国ソウル便が、金曜は日本からソウル便は満杯であるとかよく言われたこともありますけれども、アルバイト的に雇われてみたいなことが現実にはあったのではないか。
 そういう意味では、知的所有権といいますか日本の国際競争力、あるいはそういうことをしっかり守って付加価値の付ける、世界一の賃金でも十分勝負できる価格で付加価値の付ける商品を作っているという意味では、その技術力とか知的所有権というのは非常に大事な戦略だと思いますので、そういうことを余り、何といいますか、飛び越していくような問題のあることについては、やはり労働組合としてもしっかりチェックをすべきではないかとは思いますが、言われたような、もっと中国に、例えば定年退職をして、まだまだ若いわけですから、自分の持てる技術が、例えば日本では水力発電のタービン設計はもういわゆる成熟産業かもしれない、しかし中国に行けば十分最先端技術として役に立つということであれば、人生二毛作で大いに飛躍をしてやっていくのはいいことではないかと。
 むしろ、国内だけでよりは、そういうことを少し地球儀を範囲を広げる中で労働組合としても大いにバックアップできることはバックアップしていってもいいのではないかと。ヨーロッパの中におけるオランダなんというのは、極めてそういうグローバル化した感覚の下で世界をまたに掛けて仕事をしているということではないかと思いますので、そういうふうに考えております。
#37
○会長(広中和歌子君) では、矢野参考人、地域経済についてよろしくお願いします。
#38
○参考人(矢野弘典君) 大変重要な課題でありますが、本当にこれぞという妙薬がまだ見いだし得ないという状況にあると思います。これが正直な感想なんでございますけれども、やはり従来型の景気回復とか地域振興ということとはこれは変わってきたんじゃないかというふうに思うんですね。
 これから私は、非常に総論的に申し上げますと、地方の時代が来てもおかしくないと思っています。それは、世界のいろいろな各地の状況を見ますと、例えばイギリスですとケンブリッジ、アメリカだったらボストンとかカリフォルニア、地方都市で、ヨーロッパの大陸の方でも地方都市でどんどん新しいビジネスが起こっているんですね。何で日本で起こらないのかと。これは実はよほどちょっと勉強し直す必要があると思っているんですね。
 私はその解答を自ら持っているわけじゃないんですが、私が外国暮らしもしながら出掛けていって観察したところによりますと、やっぱり産学協同なんです、産学協同。つまり、技術というものの芽があって、それに、何というんですか、企業家精神が加わってマネジメントが入れば、そこに新しいベンチャーと言わなくてもビジネスが起こり、そこに資金が集まってくるんですね。世界じゅうから今これだけ資金が自由に動き出す世の中になりましたから、本当に魅力あるものがそこで生まれれば資金が集まる仕組みになってきていると思います。
 その場合、日本はカリフォルニア一州ぐらいの大きさですから、都道府県の大学とのというふうに余り狭く考えないで、例えば関西地区であればもう京都、大阪を含めた大学、関東であればこの関東圏の大学と提携して、北海道の地域経済と東京の大学が一緒になったって構わないと思うんですね。そういうふうにして、新しいビジネスの芽を技術というものに焦点を当ててまず考えるということが大事ではないかと思っております。
 それから、やっぱり私は、需要ですね、需要構造が変わってきたと思うんですね。今までの大量生産一色のものではなくて、みんな多様化を求めるような世の中になってきて、多品種少量生産というのが行われるようになったし、むしろ、ハードの商品も、それも需要はもちろんありますが、いろんな優れたサービスですね、健康とか医療とか介護とか、いろんなことがあると思いますが、観光事業なんというもうすばらしい種が私、日本にあると思うんですけれども、これを開発し切っていないと私は思うんですね。これは一地方だけではできないかもしれませんけれども、それは国の政策も一緒になってもっと外国人に優しいいろいろな観光施策をつくればいいと思います。日本に来てもどこに行ったらいいか分からぬというのが実は実態なんじゃないでしょうか。それで、種は山ほど全国にある。そういうのをやっぱり見いださない法はないと思うんですね。
 それから、農業なんかの面でも、これ幾つかの具体的な事例を私は聞きますけれども、村おこしといいますか、新しい農業生産物を作って、それを流通まで担当して本当に元気になってきているという、たしか大分県のどこかの村だったと思いますが、そういう事例も聞くわけです。
 それから、先ほど申し上げました福祉サービスなんか、高齢化が進んでいきますから、まあなかなか、本当言いまして、私もビジネスの世界を見ておりまして、本業で強い部分の応用でないとなかなか進出してもうまくいかないんですね。それはあるんですけれども、まるっきりもう自分の携わっているその事業が消えちゃうというぐらいの危機的な状況であるなら、それはやっぱり考えなきゃいけないと思いますね。ですから、他に求めるという時代は、だんだん減ってきちゃって、例えば、地方にかつての高度成長時代のように大工場を誘致すればそれはいいかもしれないけれども、本当にそんなことができるかどうか、今はもう中国の方にどんどん工場移っておりますからね。そういう状況を考えますと、やはり日本の需要構造に合った、あるいは日本の高齢化とかそういう人口構成に合ったそういう新しい変化の中でビジネスを考えていくということが大事なんじゃないかと思います。
 先ほどどなたか、松先生でしたか、高コストのお話がございましたけれども、いや、外国の、本当は外国の企業が日本に入ってきたらそれはそれでとってもすばらしいことだとは思うんですけれども、高過ぎるんですね、日本は正直。それは人件費だけじゃないです。人件費はすごく高いんですけれども、それだけじゃなくてもうみんな高いんです。というような見方をされておりますと行けないと。
 観光でも、観光だけじゃありませんが、出る人が千六百万人で入る人が五百万人ですか、これは正確な数字は今持っておりませんけれども、そういうアンバランスをやっぱり直すということもこれは国としてやれることではないだろうかと思っております。
 足下の地域対策ということになると、やっぱりどうも私どもが地方経営者協会から聞いておりますと、やっぱり資金と人材だと言います。資金については、最近、何というんですか、リレーションシップバンキングというんですか、そういうのが大分普及し出して、小口で便利な資金供給がなされるようになってきているというのがありますが、それは新しい私はいいサインだと思います。
 人の問題についてはやはり、これはやっぱり、問いに問いをもって問いに答えるようなものですが、魅力的なやっぱり仕事、たとえ小ぶりであっても作っていくということではないだろうかと思っております。
 大変難しい問題で、お答えになっていないんですけど、いろいろごちゃ混ぜで恐縮でございましたが、以上でございます。
#39
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 それでは、井上哲士君。
#40
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 臨時国会からこのテーマでいろんな御報告を聞いている中で、日本経済の今後の活性化のために物づくりの日本の持つ優位性をどう今後生かしていくのかということが政府の説明からも提起がありまして、大変興味深く聞きました。
 そこで矢野参考人と香西参考人にお聞きをするわけですが、この日本の物づくりの優位性という場合に、製造現場でのコミュニケーションとか、それからチームワークとかというものが非常に発揮をされている。それがこの言わば安定した雇用を一つの土台としてきたという指摘がありました。この部分が非常に今落ちてきているということだと思うんですね。それは連合の久保田参考人からのお話もありましたし、このお配りいただいた経労委報告の中でも現場力が落ちていると、これは例えば労働災害が増えていることも含めて提起があったかと思うんです。
 昨年のこの会のときに政府参考人にお聞きしますと、やはり効率化の中でのいわゆる行き過ぎたリストラがこういう物づくりの力の低下ということを招いているんじゃないかと、こういう考え方が経営者の中でもかなり増えてきているというお話がありました。現に、例えば非常に企業内教育のための予算が、それぞれの企業の予算が減っていたり、採用自身が減っているということがあるということだったんですね。ただ、今のお話を聞いておりますと、現場力が落ちている、物づくりの優位性を失われつつあるということの認識は一致だと思うんですけれども、その原因や方向としては少しいろいろ食い違いがあるなということでお聞きをいたしました。
 それで、久保田参考人からは、例えばやはり働くルールというものが何度も強調されたわけですけれども、そういうことよりも守りの攻め、リストラから攻めのリストラというお言葉もあったわけでありますけれども、こういう日本の持ってきた優位性が落ちてきたということの原因と併せて、むしろそういう優位性を発揮をしていく上でのやはり雇う側のルールというものを私はやっぱり確立するということは非常に大事な提起だと思っております。
 確かに個々の企業はいろんな国際的競争力にさらされているということで目先の問題を追い求めたいと思うんですが、そういうときだからこそ、私は、経済団体が中長期的な経済ということからいって、こういうことをもっとやるべきだということを呼び掛けられることも大事ではないかと思うんですけれども、そういう点で矢野参考人とそれから香西参考人、それぞれから御意見をお聞きしたいと思います。
#41
○会長(広中和歌子君) それでは、香西参考人からでよろしいですか。
#42
○参考人(香西泰君) 日本産業というのが物づくりというのについて非常に世界的な貢献をしてきたし、現在でも、例えば自動車産業などを例に取りますと世界的にも大きな比重をますます占めようとしているというわけでありまして、それはそれなりに非常に立派なことであったと思いますし、できれば今後も続けてほしいということは私も考えております。全く同感であります。
 しかし、一方で、なぜ物づくりということについてそれだけでうまくいかないかということを考えてみますと、一つはやっぱり技術的な変化というのが絶えず起こっている世界でありまして、特にデジタル技術といいますか、IT技術といったようなものがかなり発達しまして、実は私、エンジニアリングの、技術のことよく分からないんですけれども、いろいろの人の意見等あるいはお話などは若干、実感的にも考えられますが、例えば従来でありますと非常に日本なら日本の中だけでチームワークを組んでいくことが非常によかったわけですけれども、今の情報技術をもってすれば、むしろ国際的に、世界じゅうから、どこへ、どこと手を結ぶか、戦略的提携というわけですね。ストラテジックアライアンスをどうするかとか、アウトソーシングをどうするかとか、そういったような形で技術協力ができるということが、まあアメリカのモデル等々、ある国のモデル、アメリカだけではありませんが、各国もいずれもそういうふうにしていると。つまり、技術革新の中で新しい形の技術というのも生まれてきている。
 また、途上国と思っておりました周辺近隣諸国でも、やはりこれは一つには、日本の技術そのものが資本財の形になりまして、つまり機械、日本の造った製造設備というのは非常に優秀なものがあるわけですから、それを輸入すればかなりの程度彼らのその周辺諸国でも日本の技術を具体的に消化ができていると、こういう形になっている。つまり、グローバリゼーションが進む中で日本だけが独占していくということが客観的に言っても難しい点もあるという、そういうことは客観的な事実として私はやはり認めざるを得ないだろうと思います。
 一方では、日本でむしろ少ないと言われていたのは、プロフェッショナルといったような本当の意味のプロフェッショナル、つまり新しい、デザイナーとかそういったような形の専門家といったものがむしろ日本では製造業分野もあるいはサービス分野についても問題、少なかったと、こういう弱点もあったということが世界的な流れの中では感じられているということだと思います。
 したがいまして、私は、効率化というか、つまり不況になって非常に経済が萎縮するときというのは何をやっても悪いということは全くそのとおりなわけですが、過去に良かったことを守ろうということだけではなくて、新しい世界、新しい技術にどうやって従来のいいものを残していくか、それを、新しい技術はやっぱりそれを認めてチャレンジしていくかと、こういうことがどうしても必要になっているのではないだろうか。
 そういう意味では、例えば教育、先ほどの人材力という言葉が、お話がございましたけれども、やっぱりそういう技術面でも本当の人材というものを育成していくところからスタートしないと、簡単に日本は民族的に何か物づくりが非常にうまいんだというような考えだけでは将来の物づくりというものを、これは伝統を守ることはもちろん必要なんですけれども、それを新しい環境の中でどうやっていくかというチャレンジを含んだものでないと維持することは難しいというふうに認めて再出発をすることが物づくりを日本に定着させていく一番のポイントになるのではないかと、そういうふうに素人ながら考えております。
#43
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 矢野参考人、よろしくお願いします。
#44
○参考人(矢野弘典君) 失われた十年とか失われた十五年ということが言われてまいりましたけれども、確かに低迷した経済としては、あるいは企業業績も低迷したそういう期間だったとは思います。一面では正しい指摘かもしれませんが、同時に、この間に物すごい勢いでビジネスモデルの作り替えが行われてきたと私は思っているんですね。
 つまり、三つの過剰と言われているものを整理する中で、やはりこれから伸びていく分野に対してどう力を付けていくかということをやってきたことだったと思います。その過程では、冒頭も言いましたように、守りのリストラ的なこともあって決して好ましいことではないことも行われたということは、企業存立上やむを得なかったにしてもあったわけであります。
 私は、じゃ、物づくり能力が落ちたと言われますけれども、それは見方だと私は思っておりまして、必ずしも私は落ちていないと思っているんですね。つまり、物づくり技術の一番の基本は何かと。私も民間企業におりまして見聞したわけでありますが、組み立てる、完成品を組み立てる能力というのは結構どこでもやれるんですね。問題は、部品、材料の技術なんです。これがまねできないんですね。ここをがっちり押さえておけば、物づくりというのは大丈夫なんですね。例えば、自動車でいえばエンジンとか、鉄鋼であれば特殊鋼ですね、そういったところの基本の技術、これが卓越していれば大丈夫なんですね。
 そういう点で、私は日本は優れたものを十分今も持っていると思います。ですから、これからやはり先端技術の面で日本が常に半歩、一歩前を歩くと、こういう気概でいけば、物づくり技術という、物づくりの力というのはこれもますます伸びていくだろうと思います。
 割とだれでもできるような仕事、技術的にいえば中程度以下のものについては、必ずしも日本でやるのがいいのかということになってきますとそうではないだろうと思うわけで、これは国際分業が進んでいくと思うんですね。そういうふうにして変わっていくんじゃないだろうかと思います。
 そうしたものを実現する上でも、やっぱり一番大事なのは人材力と私どもが呼んでいるものでありまして、本当は最初、人間力と書いたんですけれども、政府が使っている言葉なんですが、どうも民間企業では余りこなれていないなと。人材という言葉はどこの会社でも日常用語で使うんで人材力としたわけです。
 人材力の中身は何かというと、一つは経営のリーダーシップですね。これは先ほど申し上げました。それから、あと現場力と言われる、本当の職場の中での、中間管理層も含めた、それから一般従業員のやはり能力だというふうに思うんです。これをやっぱり高める努力をしなくちゃいけない。教育投資というのはやっぱりし続ける必要があるんですね。
 この不況の時代で人の採用ができなかったんですけれども、これまあおいおい良くなってくるだろうと思っております。何しろ日本の国は、これから労働力が減ってきて、少子化の時代になるわけですから、日本の経済が今のような調子でいけば必ず人手不足の時代になるんですね。ですから、魅力のある会社に優秀な人が集まるという構図を作らないと会社は生き伸びていけないと、こう思うんです。ですから、やっぱりこれから各社は私は賢明に教育をしていくだろうと思います。
 ただし、先ほど雇用の多様化という中で申し上げたわけでありますが、長期雇用の従業員の比率はやはり雇用の多様化の中で少しずつ減っていくかもしれませんけれども、それは核となる従業員でありまして、企業はそれを、それに教育投資をして、能力を上げて結果を出すということでないと先の発展がないわけですね。ですから、そういうコアの従業員はこれからもずっと中核の戦力として育っていくだろうというふうに思っております。
 それに加えて、専門能力を持った人たち、例えば三年とか五年とか、一つの会社にいるよりも、自分の能力を生かしていろんなところで頑張りたいというタイプの人がこれからますます増えてくるわけであります。そういう人はあるいは長期雇用の人よりも高い給料を取るかもしれないですね。それでいいと思います。
 そういうふうにして、既にもう高い能力を持っている人たちも入ってくる。学校あるいは修士、大学院を出て、これからという人たちが企業の中の切磋琢磨の中で成長していくということもあるでしょう。いずれにいたしましても、人材の育成ということがこれからの日本の企業の競争を左右する、結果を左右する私はかぎになるだろうと思っております。
 現場力を考えるときに大事なことがありまして、先ほどもちょっと申し上げたんですが、暗黙知という世界ですね。アナログ的な知識なんて言ったりしますが、要するに紙になかなか書けない能力、これが非常に大事なんですね。これはやはり職場で順番に伝承していかなくちゃいけない。
 まあ、割と定年、六十歳定年がこれからどっと出る時代になってきますと、本当に大丈夫かなというのがあります。この不況の中で本当にやむを得ず人減らしをしたところも、そういうところでダメージが出てきているかもしれない。そういう職場の中の暗黙知の伝承ですね。これが大事なことなんです。
 外国に行って工場を建てる場合には、暗黙知では伝わらないんですね。ですから、できるだけそれを形式知にしてマニュアル化して、こんなマニュアル化にして徹底的に教えるんです。そうすると、あっという間にみんな、特に中国なんかはすごい勉強しますからね、日本の工場に負けない能力が出るんです。
 しかし、物づくりの原点というのは常に進歩があって、書かれざる知識ですね、暗黙知が増えていくということが進歩なんですね。それをまたちょっと落ち着いたら形式知に変えるというふうなプロセスをこれから踏んでいくわけですが、そういうことをやるためにも、やはり現場力というのが大事だと。現場力は、一般従業員と中間管理層、監督層を含めた人材の能力ですね。そんなふうに思います。
#45
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、渕上貞雄君。
#46
○渕上貞雄君 参考人の方々、本当に御苦労さんでございます。今日はありがとうございました。
 それでは、香西参考人の方にお伺いいたしますけれども、少子高齢化社会の中のページ、四ページに書かれております米国二・一という数字がございます。私はかなりここも低いのかと思っていましたら、こういう数字を見させていただいて、アメリカは必ずしも出生率は低くないよという話はちまたに聞いておるんですけれども、先生はどのようにこの二・一という出生率のところについて分析をされておるのかお聞かせをいただきたい。どのようにまた評価されているのかお聞かせをいただきたい。
 二つ目は、ドイツの問題で、対策について政策上の失敗があったというふうに言われましたが、ここはやはり失敗に学ばなきゃならないと思うんですが、どこが失敗だったのか。もし具体的にお分かりになればというふうに思っているところでございます。
 次に、久保田参考人にお伺いいたしますけれども、今やはり連合として大変問題になってくるのは働き方の問題です。働き方の問題のときに労働の流動化ということが言われているわけですが、その労働の流動化という問題というのが社会的な問題となって、例えば終身雇用制度だとか年功序列型の社会体制というものが崩壊をしていく。極端に崩壊をして、しますと社会は混乱をするわけですけれども、そういう賃金や雇用や今の社会制度の在り方というのは、私はもう少し緩やかにいかなきゃならないというふうに考えているんですが、高度の福祉社会ということは分かりますけれども、その中間辺りのことは連合として雇用問題を含めてどのように考えられているのか。とりわけ、雇用不安に対してどのような対策を考えておられるのか。少し御説明をいただきたいと思います。
 次に、矢野参考人にお伺いしますけれども、やっぱり我が国の問題として考えなきゃならないのは、中央対地方という対立の構図。とりわけ、地方は一つ下みたいな感じで、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、人、物、金においても足りないというようなことを言われておるわけですが、私はそこのところをどのようにしてやはり縮小していくのかということはこれから先非常に大事なことではないかと思うんですが、先ほどお答えでは産学協同だとかというお話もございましたし、そのことはすぐ簡単に私いかないと思うんですね。ですから、やはりある程度、地方、中央の格差を縮めていくことというのは大変私は重要なことではないかと、このように思っているところでございます。
 それともう一つ、競争力を強化する人事戦略と、こういうふうに言われると、競争力を強化をする、結果としてその競争力に負ける人たちというのは必ず私は出てくると思うんですが、そこのところは先生どのようにお考えになっておるのか、お聞かせいただければと思います。
 以上でございます。
#47
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それじゃ、まず香西参考人からよろしく。
#48
○参考人(香西泰君) 先生から御指摘のありましたアメリカのことからでございますけれども、私、特別にそれを分析したというよりは文献等を読んで少し聞きかじったといったところが現状でございまして、自分で作業して研究してというほどの学はございませんが、やはり一つは、大きく言って有力な説として二つぐらい考えられているかと思います。
 その一つは、ちょっと書いてありますイースタリンという学者が言ったことで、やはりアメリカ経済が七〇年代は非常に苦しかったと。例えば、日本の方からどんどん入ってきて、多くの産業が、アメリカで発生した多くの産業が日本やその他の国からの輸入に負けていくというようなことで、スタグフレーションの時代でありましたからなかなか苦しかったんだと。ところが、最近になってやはり生産性向上が九〇年代は非常に大きくなったと。そのことによって、つまり自分たちの生まれたときというか、あるいは父親の時代よりやっぱり今の時代の方が明るいんだというような発想になってきたといいますか、そういうことが大きく関係しているのではないかという、これもどこまで実証されたかはちょっと問題でありますが、言われている、かなり有力な説として取り扱われております。
 それからもう一つの説は、未婚化、晩婚化という問題がございました。未婚といってもおかしいんですが、つまり、結婚しなくなったのか、結婚年齢が遅れたのかという問題がございます。結婚年齢が遅れていたのであれば、最近であれば高齢出産もかなり技術的に可能になっておりますので、遅れて子供を産むようになるということも考えられるわけで、アメリカではそれが起きているという話もございます。そういう研究もあるようであります。
 この二つとも、いずれも日本にとっては非常に参考になるというふうに評価しておりまして、やはり経済情勢を明るくしていく、構造改革を成功させて日本でこれでやっていくんだという明るい見通しが、展望が描ければ、やはりこの非常に不安定化していた将来展望が明るくなってくることでいい効果が現れる可能性がある。これは願望でありますけれども、日本としてはやっぱり出生率回復と経済回復とを好循環させるような仕組みを何とかつくりたいものだと、これは願望でございます。
 それからもう一つ、日本におきましても、結婚年齢が遅れまして出産年齢も遅れております。大体もう三十歳というのが常識になってきているわけであります、第一子を産むのがですね。そういう点でいきますと、実はあと数年といいますか、そのキャッチアップ、遅れていたのがキャッチアップして、遅れたけれども産むということが実現しますと、これは日本の人口問題にとっては非常にプラスになります。
 といいますのは、現在、第一次あったベビーブーム、第二次あったベビーブーム、本当は現在第三次ベビーブームが起きているはずなんですね、従来であれば。起きていない。もし、このまま不発のまま終わると、そこで女性の母親になる人の数が絶対的に減りますから、出生率が多少上向いてもすぐには人口には響いてこないということになりかねないわけでして、非常に厳しいことを言う方は、あと数年がかなり回復のためには大事な時期なんだと。そういう点でいえば、もしこういうキャッチアップ、つまり晩婚で遅れていた出生がここで回復すれば日本にとっては非常にプラスが出るということは明らかだと思います。
 それから、ほかの説としては、よく言われるのは、移民とかアメリカにいろいろなグループがありまして、出生率の高いグループというのがあるわけでございまして、そういうのがアメリカではかなり移民等で増えていっているというようなことで、それも影響しているのではないかという説もございますし、それから、これはたしか国会、予算委員会でも御質問があった、あるいは御指摘があったと思いますが、特に制度的にどうかということではないかもしれませんが、企業によっては託児所なんかを非常に作って従業員の子育てに協力しているという人もいると、こういう説もあるということであります。
 私としては、とにかくアメリカの実績でいいところを何とか日本も取っていきたいものだというふうに考えているということでございます。
 ただ、ドイツは失敗したというのはちょっと酷であろうかと思います。なぜかということは非常に難しいのですが、つまり、制度的にいいますと、ドイツの制度は必ずしもフランス、スウェーデンに、まあ勝ってはいないかもしれませんが、後れているというふうには思いません、家族政策に対する。例えば、児童手当なんか恐らく高いぐらいであります。ところが、財政負担の、財政がどれだけ出しているかという比率を見ますと非常に低いわけですね。スウェーデンやフランスに比べればちょっと低いわけです。
 その理由というのは、結局子供が生まれないから、制度はあるけれども、それを利用されないから使われていないという説になるわけでして、口の悪い批評家は、もしあの制度が成功していたらドイツは財政が破綻したんじゃないかというくらい手厚くやってもなかなか生まれてこない。出生が増えない。その理由というものについては、私の見聞するところでは余り明快な説明というのは実は伺っておりません。
 ただ、現在、ドイツは非常に経済的にも厳しい状況にありまして、先ほども申しましたが、失業率も非常に高いと。これはやっぱりヨーロッパの中で、一つは東ドイツを合併したときの負担というのがやっぱりまだ残っているということと、どうしてもEUの中に入ってきますと、東欧からの賃金競争といいますか、そういったものもやっぱりあるということが言われておりまして、そういう点では、ドイツのシュレーダー首相がやっている構造改革というのが成功するかどうかということもかぎを握っているのではないかと、こういうふうに考えております。
#49
○会長(広中和歌子君) では、久保田参考人、働き方について。
#50
○参考人(久保田泰雄君) 雇用の流動化への対応と今後どういうふうに考えているのかという御質問であったと思いますが、大変本質論ですし、難しい問題だと思っています。
 ただ、連合としては、お手元のこの連合二十一世紀ビジョンということでは、ちょうど二十ページから二十一ページにかけてと、先ほどもちょっと説明いたしましたけれども、二十五から二十七ぐらいにかけて具体的には記述をさせていただいているつもりです。
 基本的には、やはり日本の場合は長期安定雇用というものを核にすべきだと、どんな時代になってもというふうに考えております。もう全くそのことを抜きにして、いつでもカジュアルな、それで組合せでやるんだといっても、私は企業はやっていけないのではないかと思いますし、本当に大変なことになってしまうというふうに思います。必ずしもそのことは、矢野専務を始め日本経団連の皆さんも否定はしていないんだろうというふうに思います。
 ただ、雇用のポートフォリオということが、あれは日本経団連で、矢野専務、九五年ぐらいでしたよね、初めて出て、先ほど言いましたように九七年ぐらいからやっぱり劇的な数字の変化が起こっているというふうに私は感じます。
 それは、東アジアを中心に競争条件が非常に変化してきた、あるいは本当に企業がもうからなくなったといいますか、赤字転落とか。九七年は金融危機のときでしたから、もう本当に生き抜くためにはということがあったんだろうと思いますが、そのこととその波長を合わせるように、やはり日本型経営はすばらしいというのが、八〇年代、あのバブルの前までは日本型経営礼賛論だったのが一夜にして変わって、バブル崩壊後はこの日本型経営そのものがこの社会のむしろ日本の低迷のもとになっているというふうな、まあ学者先生方ももうちょっと何か中庸なことを言ってよというのが労働組合の率直なところですが、これほど変わるかというぐらい一種のはやり、あるいはムードとしてその方向にだっと流れたというのは私は事実だと思います。
 真実は一つでありまして、やっぱりそのことに対する揺り戻しや問題点もあるということに今なっているんだと思いますし、ここでやっぱり労使が冷静に、先ほども言いましたけれども、踏みとどまって、本当に大事なことは何か、日本の競争力はどこにあれがあるのかと。もちろん、負けているところをどう伸ばし、先ほどの現場力の問題等々につきましては、連合のこの賃金白書の中の七十一ページから二、三ページにかけて、連合で取ったアンケートなんかも含めて問題指摘をしていますけれども、やはりそのためには核となる中核的な長期安定雇用をベースにしながら、しかしそのことだけで済むとは思いません。
 一方で、この二十一世紀ビジョンの二十一ページにも書いているとおり、働く側も新たな欲求として、仕事の自由とか尊厳を高めたいとか、一生滅私奉公で企業にくびきを付けられることよりはむしろ自分の自己実現をしたい、自分の好きな仕事をしたいとか、多様な選択ややり直しの利く労働生活をしたいとかいうことも、アンケートなんかで取ると若い組合員がそう答えることも事実。これ、職種によって随分違うんですが、そういうことも事実です。ただし、それが行き過ぎて、本当にフリーターになってみたけれども、実際に自分が結婚年齢とかなってきて、これは大変なことだということになっていることも事実ではないかというふうに思いますので。
 私どもが、一番肝心なことは、過去に戻ると、あるいは過去を守るということだけでは済まないと思っていますので、積極的な労働市場政策。要は、企業を替わっても、それほど恐怖感なく、あるいは極端に損をしなくてそういうことができるような仕組みや、そういうことをどう社会的に制度をしていくのか。職業能力開発の訓練の問題もあるでしょうし、企業を超えた横断的な評価システムやそういうことを、企業内だけで通用する賃金体系ではなくて、もう少し企業横断的な、同じ業種の中では通用するような資格制度やそういうことができないのかとか、様々なそういうことについての積極的労働市場政策が余りにも日本はできていない。そういうことをちゃんと準備をしながら、最後は個人個人が選択をしていくという仕組みにしていくべきではないかと。その部分がやっぱり圧倒的に日本は抜け落ちたまま、自立、自分の人生は自分でと、いざとなったら食っていくためにはみたいなことがやっぱりなっていると。
 今、恐怖政治と、もうぷっつんくるようなところをずっと長く続けてもやっぱり、香西先生も言われていましたけれども、やっぱり前向きにみんな考えることが大事なので、今最も大事なことは、もう安心して仕事に打ち込めと。安心と、信頼して仕事に打ち込めと。その自分で高めた仕事は別の企業へ行ってもちゃんと通用することになるんじゃないかというようなことで、むしろ労働者を、背中を押して積極的にこの仕事に打ち込めるような条件整備を是非してほしいということと、今言ったような仕組み、システムをしっかりつくって、神野東大教授は、セーフティーネットではなくてトランポリンが大事だと、一遍落ちてもすぐ上ってこれると、長期滞留の失業者は余りいないというふうなことにしないといけないんじゃないかということを言われていますけれども、そのとおりだというふうに思います。
 それと同時に、そういうところには時間も掛かりますし、日本の教育を含めて、生涯学習の仕組みとか、特に若者のやっぱりそういうことに対する職業観とか我慢をするとか、そういうことが本当に今抜け落ちてきて、家でも個室、大学でも個室。昔、企業に入れば、一遍、寮で集団生活でたたき直していたところもあるんですが、そういうのもみんな個室になっちゃって、本当にそういうところを学ぶというところがなくなってきているような部分もあるんじゃないかと。日本のチームワークと。
 私、「プロジェクトX」という番組が好きでしたけれども、やっぱりあれが日本をもたしたところはやっぱりあるわけでして、そういう部分をしっかり鍛え込むには、政府とか国がやはり職業能力開発とか人材投資とかいうことに対してもう少しお金を使うと。国策としてそういうことを準備するということも必要ではないかと。
 北欧諸国に比べたら、圧倒的に日本の国のこの分野におけるお金の使い方は少ないのではないかというふうに思っていますので、労働組合自身、組合員自身が変化し、努力をすること、そして企業として努力をしてもらうこと、あるいは世論を突き詰めていくことと同時に、政府、政治の役割ということもあるんではないかというふうに思っております。
 以上です。
#51
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 では、矢野参考人、お願いします。
#52
○参考人(矢野弘典君) 地方経済の活性化の問題につきましてはなかなか妙薬がないと申し上げたのは、もう本当に実感でございます。
 先ほどいろいろるる申し上げた点に加えますと、やはり地方でやれることは地方でやる、民でやれることは民でやるという考え方がもっと徹底していく必要があるんじゃないだろうかということを付け加えておきたいと思います。
 それから、新しい人事戦略によってどういう問題が起こるかということでございますけれども、私はこれからの、何というんでしょうか、企業の人事戦略というのを考えていきますと、雇用、まあ人間尊重といいますか雇用を尊重すると。雇用を大事にするというのがあって、しかし年功処遇というのでは企業は成り立ちませんから、どうしてもその中で処遇格差が生じるということが今までより以上に大きくなっていくと、こういう状態になっていくんじゃないかと思います。
 一昔前は終身雇用で、しかも、成果・実力主義も導入されてはいますが、年とともに賃金が上がる、処遇も上がっていくというようなことであったわけですけれども、それが両方は成り立たなくなってきているんじゃないかと思うんですね。そうすると、どういう現象が起きてくるかといいますと、同期生でも大分差ができちゃうということですね。これはもうある程度やむを得ないんじゃないかと思っております。
 成果を重視した賃金ということが進みますと、言わば社会的に横断性のある職種別賃金のようなものがだんだんこれから成長していくんじゃないかと思うんですね。ある職種については、全部年功処遇でやっておりますとどんどん、年配の人ほど給与が高いわけですから、いわゆる社会で評価される職務価値というものよりも随分高くなっちゃっている。一方では、若い人は、本当は能力があるのに低く評価されているということになるわけですが、だんだんその成果とか役割とか仕事、業務の内容によって賃金を決めていくということになると、そこに、ある職種についてはまあこのぐらいかなと、狭い幅じゃなくて、恐らく幅広い横断性のある職種別賃金というのが育ってくるんじゃないかと思うんですね。
 そうしますと、今度は、例えば途中で会社を辞めるといったときに、再就職するときにやりやすくなるんじゃないかと思うんですね。それは、ずっと会社にいたいという人はもうそういう過ごし方をするわけですが、いや、自分はちょっと転機を求めたいといったときに再就職がしやすいという状況になっていくと。
 世の中で求められている職種はすごく高くなるんです、これは、賃金というのは。そうでないものは、やっぱりこれは低く決まっていくということになってくるわけなんですが、相当時間が掛かるとは思いますけれども、そういうふうにして労働市場の、何というんでしょうか、流動性を高めていくということになるんじゃないだろうかというふうに思っております。
#53
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 それでは、小野清子君。
#54
○小野清子君 ありがとうございます。自由民主党の小野清子でございます。
 まず最初に、香西参考人にお伺いさせていただきます。
 ページ、六ページに、社会保障改革、財政再建が緊急の課題であると、まあ現在、少子高齢化社会にあってということを考えますときに、その世代共助の理想がかえって負担の、負担感を増大させて世代不信を招く傾向にあると。それで、世代共助の前提として世代自立、そのための世代内の所得再配分強化も必要ではないかという言葉がございます。強化も必要ではないかということは、既にこの再配分ということが行われているのかどうかということの確認と、これは具体的に何かお考えがあるのか、その辺を一つお伺いしたいと思います。
#55
○会長(広中和歌子君) それから、済みません。ちょっと。
 参考人の方々にお願い申し上げます。
 まだ多くの方が、委員が質問を希望されておりますので、御答弁はなるべく短くということでよろしくお願いします。
#56
○小野清子君 じゃ、続けて。
#57
○会長(広中和歌子君) そうですね。
#58
○小野清子君 矢野参考人の方には、人材力の育成というところで、ITと人間相互の直接コミュニケーション、これは重要視されていかなければならないということでございますけれども、先ほど暗黙知という言葉をそこの項目の中にございまして、私も、人は人にもまれて人になるという、その暗黙知というのが、ITと朝から晩まで一緒になっていて隣の人との会話も機械を使ってという時代になってきたときに、どうやって具体的に改良されていかれるのか、その名案があるのかどうか。
 で、その下にあります「多様性を活かす経営戦略」とありますけれども、多様性という言葉の中には、男性もあれば女性もあり、若年層もあればいろいろな多様性もありますし、時間の使い方の多様性もあろうかと思います。特に、女性の場合には経営の決定権の場に立つ女性が非常にまだ少のうございます。
 そういった意味における、十六ページの方にあります女性の能力の活用の問題、これは、子供を産み育てながら仕事にも参加をしていくというと育児サービスの問題等々も出てきまして、ちょっと口早で恐縮ですけれども、そういった問題や、日本の社会というのはあらゆる面で意見の取り入れに対してどちらかというと閉鎖的な部分があるのではないか。極端な例申し上げますと、ライブドアの堀江さんの発言などを聞いておりますと、私などもちょっとびっくりしちゃうところがありますし、そういうものが現実に日本社会においてどれくらい受け入れられていくのかどうかということも非常に興味を持って拝見しているわけですけれども。
 そういった意味から、「多様性を活かす経営戦略」というものは非常に、言葉にすればやすいんですけれども、難しい点がある。そして、ITは欠くことができない存在でありながら、人間相互の直接コミュニケーションをどうやって具体的に大事にされて暗黙知というものを生み出していかれるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
 お答え、短くて結構でございます。
#59
○会長(広中和歌子君) じゃ、まず香西先生から。
#60
○参考人(香西泰君) 世代自立というのを完全に自立することはできないから共助が必要であることは言うまでもないわけですが、自立を各世代が努力するということは必要である。つまり、負担を後送り後送りにしないことが、先送りしないことが必要であるという意味で社会保障も改革しなければいけないし、財政再建も急がなければいけないと、こういうことがまず前提ですが、そのほかに、同じ世代の中で所得を再配分すれば次の世代への負担が少し軽くなるということは考えられるんじゃないか。ここは全く個人的な意見で、思い付きということでありまして、必ずしも皆の意見になっている、政府の意見になっているというわけではございませんけれども、私はそういうふうに考えているということで御了解いただきたいと思います。
#61
○会長(広中和歌子君) じゃ、矢野参考人。
#62
○参考人(矢野弘典君) ITとそのフェース・ツー・フェースのコミュニケーションの問題というのは、全く御指摘のとおり私も同感でございまして、やっぱりこれは中間管理層、監督層の人ですね、職場でいいますと。この役割がこれから大きくなるだろうと思います。やっぱりちゃんと面と向かって教える必要があると思うんですね。
 それから、家庭の役割ですね。芥川賞の作家が「インストール」というのを書きましたけれども、随分ませた少年が出てくるんですが、あんなことでこれからの世の中、大丈夫かなっていう心配はしますね。それから、職場でも、おっしゃるように、コンピューターで連絡したからもう用は済んだというようなことじゃ話にならないわけで、これは本気で考えていくと、直接コミュニケーションがどんなに大事であるかと、機械がやれないことがもっと大事なんだということを教えていかなくちゃいかぬだろうと思っております。それがまた、暗黙知を伝えることでもあるだろうと思っております。
 それから、「多様性を活かす経営戦略」というのは、これはまあこれから人事制度をそういう方向で構築していこうということなんですが、私どもはダイバーシティーマネジメントと言っているんですけれども、男女、国籍、年齢ですね、そういうものにとらわれずに人の多様性を生かすと、これが経営戦略の基本に置くべきだという主張をしているわけです。それを具体的にどうするかというのは、各社の私これからの設計になってくるだろうと思うんですね。
 女性の問題も、いろいろな考え方、枠組みというのは進みましたが、やはり社会的な習慣とかいうようなものはそう簡単に変わるものでもないというのも事実であります。しかし、これはやっぱり進んで変えていこうと、今言ったダイバーシティーマネジメントの考え方ですね、という努力をやっぱりすることが大事だと思っております。
#63
○小野清子君 ありがとうございました。
#64
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 それでは、小林正夫君。
#65
○小林正夫君 民主党・新緑風会の小林正夫です。
 久保田参考人にお聞きをしたいと思います。
 六十五歳までの雇用の確保、これはもう大変重要な課題だと思います。昨年の国会で改正高齢者雇用安定法というのもできまして、いよいよ企業は、事業者は来年の四月には三つの方策の中から、どう六十五歳まで雇用していくのか、こういう選択を明らかにしていく、こういう時代に入っているわけですが、まだまだその環境整備が整っていなくて、三〇%ぐらいしか話合いが終わっていない、あるいはそういう制度の提案がないというふうにお聞きをしているんですが、これを進めていっている現状の課題、進みにくい理由は何かあるのかどうか。
 それと、労働組合がない事業所で働いている人たちへこの六十五歳まで働ける環境づくりをしていくという、こういう環境づくりをどのようにしていくのか、連合として指導していくのか、この辺についてお考えを教えていただきたいと思います。
#66
○会長(広中和歌子君) それでは、久保田参考人。
#67
○参考人(久保田泰雄君) ありがとうございます。大変重要な課題だと思っております。
 御存じのとおり、高齢者雇用安定法が改正をされました。先ほどもちょっと御紹介したように、連合としては、究極的にはやっぱり年齢のエージレスが究極の姿ではないかと考えておりますが、当面はやはり現在の六十歳定年を六十五歳定年というわけにはなかなかいかないところも多いと思います。また、その道を労使で選択している企業もあるというふうに聞いていますが、再雇用とかそういう形態も含めて、やっぱり希望すればだれもが働けるというのを非常に我々の一番のテーマにしております。一応そういう枠組みでこの法改正はできたのではないかというふうに思っていますけれども、実効性、その法の実効性をどう高めるかということでは、まだもう一つこれからの努力も要るのではないかというふうに思っています。
 そこで、進んでいる現状については、私はこれは比較的古いといったらおかしいんですけれども、今年、去年とかいうレベルではなくて、もう少し長い取組で労働界としてはやってきたつもりです。産別によって随分差がございますが、比較的先行しているところ、そうでもないところとありますが、連合全体でいきますと、徐々にこれは広がっております。
 ただ問題は、その後、いわゆるこの長期不況がまいりまして、率直に言ってリストラ、雇用をどう守るか、要は現役の雇用をどう守るかということの中でその進み方、あるいは現実に今年これだけの六十歳の定年の皆さんが出るけれども、それをどうするかというときに、やはり優先順位の問題として、これはどちらが悪いということではないのかもしれませんけれども、逡巡しているようなケースも含めて、実態として進行ペースが遅くなっていたりあるいは実効が余り上がらなかったりということになっていないかという懸念を持っております。
 それともう一つは、相当前ですが、十年ほど前は職場でアンケートを取ると、高齢者の方々は非常に個人差が大きいものですから、それから比較的、十年ほど前でしたらまだ恵まれていると、率直に言いまして。退職金も、それを含めて比較的恵まれた層であると。特に現場に行けば、仕事がきついと、だからもういいということで、手を挙げる人も必ずしも一〇〇%ではないということとか、職場の中で適職開発をどう開発するかと。具体的に仕事をしてもらわなきゃ駄目ですから、そういうことも労使の悩みであったことも事実ですが、一歩一歩これは進んでいるんだろうというふうに思います。
 この法改正を機に、もっとやはり労使で力を入れていくと。高齢者も若者もということで、これあれなんですが、両方やっぱりやっていく、やっていかなきゃならないんじゃないかと、また障害者雇用も含めて、やっぱりそういう時代に来ているんではないかというふうに思います。
 以上です。
#68
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、岡田広君。
#69
○岡田広君 自民党の岡田広です。
 今日は、いろいろ大変勉強になりましてありがとうございました。簡潔に二点、お尋ねをしたいと思います。
 一点は、少子化対策であります。正に一昨年、後ればせながらという言葉を使いたいと思いますが、総理を本部長として少子化対策本部が全閣僚入れて設置をされました。そういう中で少子化対策基本法、次世代育成支援の二本の法案が通りまして、企業にも少子化行動計画作るということ義務付けられましたけれども、そういう中でこの高齢者と少子化の子供たちの予算の配分の問題、いろいろ問題あろうと思いますけれども、いずれにしても、本格的に少子化対策に取り組んでいこうという意気込みの下でスタートしたわけですけれども、この少子化対策について何かそれぞれ皆さんに簡潔に、こういう方法があるんじゃないかという、非常にこれ難しい問題、ありましたら、これ一点お尋ねをしたいと思います。
 それから、連合の久保田さんにお尋ねをしたいと思います。二点目です。経済状況は良くなっているのに生活改善は進まないという、資料に書かれてあります。やはり先行き不安なんだろうということだろうと思いますけれども、そのほかにもいろいろ事情はあるんだろうと思います。
 しかし、国民一人当たりの資産残高というのは毎年毎年増えている。今、多分、預貯金とか株とかあるいは保険とか入れまして、一人一千百万ぐらい、超えているんじゃないかと思っていますが、そういう中で、例えば自動車の販売台数一つ取りましても、去年の新車販売の中で軽自動車の販売が過去最高だったと。前年より三〇%以上増えているというそういう中で、しかも特徴は三人に二人が女性だとか、高齢者の比率が高まっているというそういう中で、とにかく自動車産業とかは非常に若い人たちから人気があるという中で、やはり消費者マインドを広げていくためにはどうしたらいいのかというのは最大の課題なんだろうと思うんですけれども、自動車一つ取りましても、五十年前に比べたら多分百何万台、前後百七十万ぐらいだと思いますが、今は八千万台近い車が走っている。正に、物は豊かになっているわけであります。
 食育一つ取っても、朝食べない人とか偏食とか肥満とかどんどん増えていますけれども、一日のカロリー二千六百という中でも七百カロリー残しているという、正に飽食の時代だと、豊かになっている。そういう中で、物差しの考え方、豊かさ指数、そういうものも全く、それぞれ人によって全く違うんだろうと思いますが、正に三種の神器、これも話すと長くなりますから言いませんけれども、この三種の神器、歴史一つ取っても、もうどんどんどんどん物が満たされてきて、今新3Cというのは、心、カルチャーとかコミュニケーションとかクリエーティブとかいうこういう形になる。それより前は全部物でありました。
 そういう中で、先ほど久保田参考人が、滅私奉公ということだけではなくして、自己実現をするということもありましたけれども、そういう中で生涯学習というお話もありました。それで今、この経営労働政策委員会と連合の白書をさらっと全部読んだわけではありませんけれども、この経団連の出版している中には、正に教育、学校の教育の重要性というのは書かれてありますけれども、この「人間が幸せになれる公正な社会へ」という連合の白書の中では余りこの教育の重要性というのは言葉としては書かれていないような気がするんですけれども、その点についてもちょっとこの考え方をお尋ねするとともに、この生活改善を進むためには何か一つという、考え方、得策があるのかどうか。この点についてお尋ねしたいと思います。
#70
○会長(広中和歌子君) じゃ、まず久保田参考人、手短によろしくお願いいたします。
#71
○参考人(久保田泰雄君) 少子化対策は決め手はなかなか難しいんではないかと思っていますが、今政府がいろいろ出そうとしていることについては、様々な対策を総花的に並べていますけれども、本当に実効性が上がるだろうかということを、そういう目で見ております。
 では、労働組合、働く者の立場からすれば、やっぱり本道は仕事と生活の両立、安心して産み、育て、そして仕事をしながらそういうことができる社会をどう実現するか。これは会社がやるべきことと、地域でやるべきこと、国でやるべきこと、それぞれ労働組合員自身がとか組合自身がとかいういろんなことがありますけれども、やっぱりそこが本道ではないかと。様々な実験をやられているヨーロッパ諸国の例なんか見ても、やっぱりそこにかなり本気でどうやって取り組んでいくかということに精力を集中すべきじゃないかと思っています。
 それから、生活の質の問題や豊かさの尺度の中身、教育の重要性ということがありましたけれども、一つは、確かに日本全体が豊かになったことは事実だと思います。そのことは否定いたしませんが、この連合白書の十九ページ、見てください。物すごく二極化が起こっているということの中で、例えばパート労働者の二百万円未満が七割なんですね。ですから、もちろんこれは共稼ぎということもあるのかもしれませんけれども、一時期と比べると、非常にその辺の部分は、物の豊かさというか、所得という点でも非常に大きな格差がある。ですから、平均で見てても間違うというふうに思っております。是非、所得階層の中身に焦点を当てて、今これが十年後になったらどうなるのかということを是非見定めていただきたい。それで、的確に手を打たなければ、フリーターで、はっと気付いて、もう三十になって、四十になってももう遅いということがどんどん増えているということに対して極めて強い危機感を持っております。
 それから同時に、豊かさの問題については、環境問題まで含めて考えますと、いずれはやっぱり無限の欲望をどう充足を制御するかみたいなところも含めてやっぱり問い直されることはあるのではないかというふうに考えています。
 労働組合はかなり早い段階から、石油ショックの後ぐらいからですけど、物の豊かさから心の豊かさの時代に入ったんだと、だから物取りだけの春闘やそういうことから、もうちょっと労働時間を大事にしようと、家族との生活大事にしようとか、様々な労働組合の要求や内容を広げてきたというふうに思っておりますけれども、やっぱりまだまだ魂が入っていないのではないかという感じが率直にするところがございます。生きがいとか働きがいとか、世の中の役に立つことが自分の喜びであるとか、何かもうちょっとその本質的なところでやっていく必要があるんじゃないかと。しかも、それを何か抹香臭いお説教でやるんではなくて、恐らく二十一世紀はこういう生き方やこういうライフスタイルが格好いいと、こういう方向を目指そうじゃないかと。自分の尊敬するあのタレントが、あの人がこういう生活でやっているというところに、自分もまねようとか、そういうことになっていくんじゃないかと。誘因型で、むしろしかめ面をしてやっていくんじゃなくて、そういう時代が来ているんではないかと。
 意外と若い人たちは、いろいろありますけれども、新潟地震やそういうところはボランティアが自発的に集まるという、捨てたもんじゃないなと思うところも随分あるわけでございまして、そういう部分を含めて、やっぱりもう一度労働組合も、豊かさの中身とは何か、真の豊かさとは何か、そしてワークシェアリング的に付加価値を、雇用と労働条件とそして時間短縮と、適正な配分をしながら、ダブルインカムで、そして子供をちゃんと育ててお互いにハッピーという世界をどうつくるかということについては変えるべきところは変えていく必要もあるのではないかというふうに思っています。
#72
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それじゃ、少子化について何かコメントがございましたらば、矢野参考人、お願いします。
#73
○参考人(矢野弘典君) この経労委報告の二十二ページ以降にこの少子化対策の問題は書いておきました。私どもとしても、本当に妙薬というのを今これぞというのを見いだしたわけではなくて、これからも続けて考えていかなくちゃならぬことだというふうに思っております。各界の人がこの少子化の問題に本気で取り組むということがまず大事なんじゃないかと思っております。
 それから、企業としては、これは労使でよく相談し合って仕事と家庭の両立支援のための仕組みをつくっていったらいいと思うんですね。例えば、フレックスタイムとか短時間勤務とか在宅勤務とか、いろんな休業制度ですね。これは去年の春の交渉辺りで相当進みました、再雇用制度とか。そういうような仕組みづくりをやっていく必要があると思います。
 それから、国全体としては、やはり私どもの調査では公的保育、保育所の整備というものに対するニーズが一番高いように思っております。長時間とか休みの日とか、そういう自由度のある保育所の運営というのが大事です。そのためには今の設置基準というものを見直す必要があると思っておりますし、あるいは地方公共団体で独自にやっているようなものもありまして、いわゆる認可ではないんですが、東京なんかもその例ですけれども、そういうものとか、あるいは企業間でお互いにネットワークを張ってやるとかいうようないろんな仕組みを考えてやっていったらいいんじゃないかというふうに思っております。
#74
○会長(広中和歌子君) 長時間労働ですよね。それに対して何か経団連の方で見直すとかというようなことは討議なさったことございますか。
#75
○参考人(矢野弘典君) これは各社で話し合う個別のテーマになってくると思っております。
 それで、何というんでしょうかね、けじめのない長時間労働というのは、これはもう良くないということが大前提でありまして、しかし実際にその企業の実態を見てみますと、時間で計れない仕事がもうどんどん増えてきているんですね。もう経済とかビジネスの活動がサービス化し、ソフト化し、情報化しているという状況の中で、時間で律することのできない仕事が増えているということでございますから、そういう意味での私は新しい労働基準法の見直しというのが必要だと思います。ホワイトカラー全部にそういうのを適用するべきだとは申しておりませんが、例えば研究開発とか営業とかあるいは企画業務とか、そういったものについては今の裁量労働制をもっと拡張し、その先にあるわけですけれども、ホワイトカラーの労働時間適用除外ということを考えるべきだと思っております。これは立法論でありましてね。
 一方、何か先ほどもお話ありましたが、不払残業の問題があるということで、これはもう私どもは、コンプライアンスが基本ですから、残業をやってもらったら必ず払えと、もうあらゆる機会にそれは言っています。誠にそういう実態があるということを残念に思います。
 しかし、先生方に是非お願いしたいのは、時間で計れない仕事が物すごく増えているんです。これがビジネスの世界の実態なんですね。ですから、それに合わせるように労働基準法を変えるということについて、是非いろいろとお考えいただければと思っております。
#76
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、足立信也君。
#77
○足立信也君 民主党の足立信也です。香西参考人にお聞きいたします。
 資料の六ページ、アスタリスクの三番目、四番目、五番目ですが、フランス、スウェーデンの成功というふうに書かれておりますけれども、これは財政再建と景気対策を両立させた、あるいは財政再建と少子化対策を両立させたと、そういう意味でとらえられているんでしょうかということなんですね。
 根本にあるのは、あそこは明らかに世代自立で、高齢者が若い人の扶養にならないという発想から来ているわけですね。それが婚外子の五〇%以上という状態、それから親は面倒見なくても大丈夫なんだという社会になってきているわけですね。これが日本人の感情として、また過去、現在への反省から、もっと老人と触れ合う機会、お孫さんと触れ合う機会を増やさなきゃいけないじゃないかという国民感情と、それが両立できるものなのかということが一点ですね。
 四番目の終末医療に関することなんですが、社会的合意というふうに言われておりますけれども、私は、終末期の医療にとって一番大事なのは、やはり患者さんの権利だと思うんですね。そこを、そのことと社会的合意ということをどういうふうに考えられているのか。
 それから五番目は、先ほどイースタリン仮説というのを簡単に御説明なさいましたが、どうも結果の解釈だけのような気がして、今の時代の方が親の時代よりも明るいんだというふうな解釈、とてもそうは思えない人が多くてこうなっているということで、ちょっと私、不勉強で申し訳ないんですが、その仮説をもう少し説明していただきたいと思いました。
#78
○会長(広中和歌子君) 香西参考人、よろしくお願いいたします。
#79
○参考人(香西泰君) フランス、スウェーデンが成功したと言いましたのは、私、ごく簡単なことでございまして、前のページに、その後のページかな、数字が出ておりまして、フランスとスウェーデンは比較的高い出生率を維持しているということですね。つまり、家族政策について、財政負担も大きいけれども出生率も先進国の中では比較的高いと、ドイツや日本に比べて高いと、そういう意味で成功したということを申したわけでございます。
 それから、スウェーデンにつきましては、何といいますか、例のサンボ制度といいますか、いわゆる婚外子がちゃんと法律で権利も守られておりますし、それから両親保険といったような形で、例えば休暇を取ることについても非常に手厚いことが行われております。確かに高福祉高負担を実現しているということは事実であると思います。その点は国民的合意があってやっていることだろうというふうに思います。
 それから、世代自立ということは、完全に自立するということは、先ほども申しましたようにこれはできないことで、助け合うのは当然のことですが、べったりという形になりますと非常に高齢化というのが若い方々に重くのし掛かるということになるわけでして、できるだけ世代で自立していこうとお互いに努力しながら、何といいますか、助けていただくところはお互いに助け合う。まあ高齢者の場合は助けてもらう場合が多いんでしょうけれども、それにしても、やはり世代ごとにできることはやっていった方がいいんじゃないか、そういう程度の発想でございます。これは私の考えですから、そういうことで御了解いただきたいと、そういう意見もあっていいんじゃないかと思って提案しているところであります。
 それから、イースタリン仮説につきましては、細かくはあれですが、何といいますか、相対経済地位仮説というのが正式な名前でありまして、経済的な地位といいますか、その水準が過去と比べて相対的にどうなったかということによって出生率がかなり影響されると。これはある程度実証していることだと思いますが、それですべてアメリカのことが説明できるかどうかはもちろんいろいろな議論があるというふうに理解しております。
#80
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、最後の質問になると思いますが、広田一君。
#81
○広田一君 民主党・新緑風会の広田一でございます。本日は誠にありがとうございました。
 最後の質問です。香西参考人の方に、中期的な経済財政の見通しについてお伺いをしたいと思います。
 この前の一月二十日に「改革と展望」の方が発表をされました。素人なりに見させていただいた率直な感想は、大変強気かつ楽観的であるというふうな印象を受けたわけでございます。
 具体的には、二〇〇六年度にはGDPデフレーターで見ましてデフレが脱却をすると。さらには、危機的な状況にある公債等の対GDP比につきましても安定化すると。しかも、その理由が、名目経済成長が名目長期金利を上回るからであるというふうなことを述べられた上で、プライマリーバランスについても当初の予定より一年も前倒しで、二〇一二年には達成するだろうというふうなことでございます。特に香西参考人の場合はデフレ脱却についての見通しについていろいろな御意見をこれまでも述べられているというふうに思いますので、特にこの「改革と展望」についての御見解とデフレの脱却の見通しについてお伺いしたいと思います。
#82
○参考人(香西泰君) 私、直接その担当者ではございませんので、政府の見解を代表してお答えする立場ではないと思うのでございますけれども、現在置かれている日本の状況から考えると、財政再建を何とか早く軌道に乗せないと、先送りしておくとこれは非常に見通しが暗くなるということは明らかでありまして、そのために何ができるかと、どうしたらいいかということが一番大事なことになってくるということで、そのためにはこういう形があるのではないかということを「改革と展望」の中で示したんだというふうに私は理解しております。
 例えば金利の問題などございますが、まずデフレについて申しますと、デフレというのはまだ現在も続いていることではございますけれども、幾つかの点で条件が良くなっている面もあるということは事実でございまして、例えば二〇〇〇年当時ですと、九%成長している中国ですら物価がマイナスになっていたというようなことで、それが例えば中国だけではありませんで、韓国もマイナス、台湾もマイナス、香港はもっとマイナスというふうに、東アジア全体が大きなデフレにあふられていた。韓国は通貨危機の後の切下げの影響がありましたからデフレは脱却しておりましたけれども、なかったわけですが、そういったようなことに対して、中国の物価情勢も随分変わってきておりますから、いろんな形で曙光は差してきているんではないか、こういうふうに考えてよろしいのではないかと思います。
 それから、金利の問題でございますけれども、長期的に考えると、成長率と金利というのを考えると、そう簡単に成長率を上回る金利というのは難しいというのは、これはどこの国を見てもそういうことではあるわけでございますけれども、恐らく今問題になっているのは、デフレから脱却するその段階において、正常なときの成長と金利の関係ではなくて、デフレから脱却していくその過程においては金利をある程度低く抑えながら成長を高めていくということが可能な面もあるんだろう。これは、例えば非常に短い足下のことについて言えば、金利はなるべく低い形でいきたいということは日本銀行さんも大体その方向でいらっしゃるわけでありまして、それを抑えながら成長率の方が上がっていくということも、そういうデフレ脱却の局面に限ればそういうこともあってもいいんではないかということは一応言えるのではないか。
 実はこの点、いずれ議事録等も発表になると思いますが、いろいろ御議論があった、経済財政諮問会議等でも御議論がいろいろあったと聞いております。
#83
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 まだ多くの委員が質疑を希望しておられるのでございますが、大変申し訳ございません、予定の時間が参りましたので、本日の参考人に対する質疑はこの程度にとどめたいと思います。
 香西参考人、久保田参考人及び矢野参考人におかれましては、御多用の中、本調査会に御出席いただき、本当にありがとうございました。本日お述べいただきました御意見は、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じております。本調査会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。
 本当にありがとうございました。(拍手)
 次回は来る二十三日午後一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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