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2005/05/11 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第7号
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2005/05/11 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第7号

#1
第162回国会 経済・産業・雇用に関する調査会 第7号
平成十七年五月十一日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         広中和歌子君
    理 事
                加納 時男君
                北岡 秀二君
                椎名 一保君
                朝日 俊弘君
                辻  泰弘君
                松 あきら君
    委 員
                小野 清子君
                岡田  広君
                小池 正勝君
                小泉 昭男君
                中島 眞人君
                西島 英利君
                野村 哲郎君
                松村 祥史君
                足立 信也君
                小林 正夫君
                谷  博之君
                広田  一君
                和田ひろ子君
                浜田 昌良君
                井上 哲士君
                渕上 貞雄君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        富山 哲雄君
   参考人
       早稲田大学ビジ
       ネススクール経
       営専門職大学院
       教授       梅津 祐良君
       ジャーナリスト  多賀 幹子君
       お茶の水女子大
       学文教育学部教
       授        耳塚 寛明君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○経済・産業・雇用に関する調査
 (「成熟社会における経済活性化と多様化する
 雇用への対応」のうち、経済社会の変化に対応
 した人材育成の在り方について)
    ─────────────
#2
○会長(広中和歌子君) ただいまから経済・産業・雇用に関する調査会を開会いたします。
 経済・産業・雇用に関する調査を議題とし、「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、経済社会の変化に対応した人材育成の在り方について参考人からの意見聴取を行います。
 本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、早稲田大学ビジネススクール経営専門職大学院教授梅津祐良さん、ジャーナリスト多賀幹子さん及びお茶の水女子大学文教育学部教授耳塚寛明さんに御出席をいただいております。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。
 御多用中のところ本調査会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 本日は、本調査会が現在調査を進めております「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」のうち、経済社会の変化に対応した人材育成の在り方について忌憚のない御意見を述べていただき、調査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず梅津参考人、多賀参考人、耳塚参考人の順にお一人二十分程度で御意見を述べていただきました後、午後四時ごろまで各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず梅津参考人からお願い申し上げます。
#3
○参考人(梅津祐良君) 私は梅津でございます。よろしくお願いいたします。
 私は今日お招きを受けた理由を二つ考えておりまして、一つは、現在早稲田ビジネススクールのMBA、経営専門職大学院で教えておりますので、その観点からの人材育成ということをお話しすることと、それから私はキャリアでずっと人材マネジメントをやっておりまして、その中で企業内での人材育成に取り組んできました。その経験も通して、今、日本の企業内でどのような人材育成、研修教育が行われているかということと併せてお話を申し上げたい、二つの点でお話をいたしたいと思います。一応レジュメを用意いたしましたので、このレジュメに沿ってお話をしたいと思います。
 まず第一点のMBA教育、要するに経営専門職大学院なんでございますけれども、実は早稲田大学はちょうど丸七年になります。まだ新しい大学でございますけれども、大学院ですね。それで、例えば慶応ビジネススクールはもう三十年以上の歴史がありますし、それから筑波大学、一橋大学、それから最近はほとんど、東京六大学というんですかね、中央、法政、明治もビジネススクールを始めておられますし、それから関西では同志社大学が昨年始められております。古くは神戸大学ですね。というように、日本でも大分MBA教育がちょうどスタートしたというふうに申し上げていいかと思います。
 MBAというのは、ロースクールと並んで実務的な教育をするということが目的になっております。私は、私自身の一応目標として、何でMBA教育をやっているかという目標についてでございますけれども、様々なビジネス上の問題、状況にぶつかったときに適切な意思決定ができるように訓練すると、これを第一点目にしております。これはいろいろなケースがございますですね、日常のビジネスの中で、それに対して適切な意思決定ができるということですね。いろいろな問題にぶつかります。それからあとは、将来経営リーダーシップを担うことができる若手の人材を育てると。大体この二つを私は目標にして今教えておりますけれども、現在私どものMBAに来ていらっしゃる方々を見ると、そうですね、平均年齢二十八歳ぐらいでマネジャーの前ぐらいの方ですね、そういう方たちに今非常にその実践的な教育をしております。
 その方法ですけれども、ケースでありますとか、あるいは実例を使って意思決定力を鍛えていただくと。その場合にも、ビジネスの取り組む分野としてはいろいろございまして、戦略、それから状況分析、環境分析ですね、それから財務、会計、人事、組織、セールス、マーケティング、バリューチェーンあるいはロジスティックス、起業、新しいビジネスを起こす、それから倫理、ガバナンス、それからビジネス関係の法律、このような分野、広く取り上げまして、それぞれ専門の先生が実務的な面で教育をしているというふうにまとめることができるかと思います。
 ケースというのは、ハーバードで開発されましたメソッドでありまして、ハーバードビジネススクールではもう完全にケースだけという、徹底しておりますけれども、必ずしもケースだけではなくて、いろいろ実例を使って、この場合にはどういうデシジョンをしますかという訓練ができますから、ケースのみということではございません。私ども早稲田ビジネススクールも、ケースも使いますし、ケース以外のいろいろな事例を挙げて討論をしながら意思決定をしつつ問題解決を図っていく、そういうことでございます。
 それから、私自身も、本当に経営学というのは学問としてあるのかどうかというのは大変疑問に感じておりまして、結局我々が問題にしているのは、ベストプラクティスといいますかね、最も最適のプラクティスを一緒に勉強しているということになるかと思うんですね。ピーター・ドラッカー先生とか大変優れた学者がおられます。むしろ哲学者ですかね、経営学というふうに体系付けて本も書いていらっしゃいますけれども、私自身、どうもまだ経営学というのはどういうものかなというのが、理論あるいは学問として成り立っていないか、あるいは確立していないかというふうに考えています。ということで、各分野で実務的な面を重視して教えるという教育になっているかと思います。
 それから、今日いただいたテーマの経済社会の変化に対応する人材育成とございますが、確かに一九九〇年以降、大変世の中の変化は激しいわけで、ビジネスについてもこの変化は大変急速に変化しておりますので、じゃMBA教育はその対応をしていかなきゃいけないわけですね。ここは教授にとっても大変な課題でありまして、新しいビジネスモデルはたくさん出てきますし、それから考え方もたくさん出てきますし、やはり教授としてもその自分の知識をアップデートして、その上で学生さんと一緒に勉強するという、そういうことが大変必要になっておりまして、やはり経済社会の変化というのは常に注目していかないといけないことかと思っております。
 それから、MBA教育の日米比較ということでございますが、これも簡単に触れたいと思いますけれども、やはりMBA教育についてはアメリカがもう本当に先進国ということですね。質、量ともにやはり日本はこれから追い付くという段階にあるかと思います。
 と申しますのは、ウォートン・スクールというのが一番古いビジネススクールなんですが、これは一八五〇年代に、要するに早稲田、慶応の歴史より更に前にビジネススクールができているということで、それから現在、全米で六百校ぐらい一応MBAと称しているところが、学校があるわけですね。この中では、そうですね、信頼ができるというのは百五十校から二百校ぐらいの間かと思います。本当に、夜だけビジネスマンに開いてMBAと称している小さな学校もありますから、そこを除いて百五十から二百ぐらいの間かと思います。それでも大変な数のMBAホルダーが卒業してビジネス界で活躍しているわけですね。
 私、キャリアの中でモービル石油というところで働きましたが、約十人ぐらいアメリカからエリートが派遣されてきますと、七名は大体一流のMBAを持っていた。そういうところで、その人たちはもう広くビジネスについては意思決定ができる。財務上の問題であれ組織上の問題であれ、非常に高い意思決定力を備えていたというふうに私は考えております。
 ということで、やっと日本でもMBA教育、各学校で始まりまして、大体ここ十年以降かと思います、十年以内ですね、に始まっておりますが、これはかなり長いというか、キャッチアップするについて相当に時間が掛かりそうだという感じはいたします。やはりアメリカのMBA教育のモデルというのはとても我々にとっても参考になりますし、これから非常に参考にしていかなきゃいけないかなというふうに考えております。
 それからあと、企業内教育の人材育成についてちょっとコメントを申し上げたいと思います。
 ここに、入社後研修、それから階層別経営研修、それから技術伝承訓練、そしてキャリア開発ですね、訓練よりもうちょっとロングタームのキャリアをどういうふうに形成するかというところでございますけれども、一応四つの分野を挙げてみました。
 それで、入社後研修について申し上げますと、私、日本の企業というのは非常にしっかりした教育をされているというふうに考えています。
 それで一つ、これはアメリカの例ですけれども、プロクター・アンド・ギャンブルという企業が大変しっかりした入社後二、三年の教育を進めておりまして、この前、日経にリポートがございましたんですけれども、現在、アメリカで超一流の経営者と呼ばれるGEのジェフリー・イメルトさん、それからマイクロソフトのスティーブ・バルマーさん、それからスリーエムのジェームズ・マックナーニさん、それからイーベイのメグ・ホイットマン、これは女性だと思いますが、もう大変な重要な役割を果たしている経営者ですね。この方たちは、大学あるいは大学院を卒業した後、P&G、プロクター・アンド・ギャンブルへ入っているんですね。それで、そこで三、四年修行されている。このときに大変厳しい教育が行われた。一日四時間しか眠れないほど頑張った。それから、顧客志向についてここですべてを学んだ、で、その後のキャリアではずっと役立っている。みんなそのコメントを残しているわけですね。
 ということは、そのプロクター・アンド・ギャンブルというところのこの入社後教育の効果性を表しているわけですね。
 日本企業でもかなりの高い教育が行われているふうに私は観察しています。例えば、私の今隣の研究室で寺本義也先生がいらっしゃるわけですが、寺本先生は富士通に入られて、企画部で最初過ごされた。そのときに、やはり先輩から大変刺激を受けたし鍛えられたと、そういうことをおっしゃっています。
 ということを考えても、やはり日本の企業でも相当しっかりした入社後教育が行われているという。しかも、アメリカよりも多部門を経験する、最初ですね。いろんな部分ローテーションをしながら企業について学ぶということでは大変優れた教育が行われているというふうに思います。
 それから、階層別教育でございますけれども、ここも概して日本企業は非常にしっかりした教育が行われているふうに思いますが、若干問題点は、いわゆる階層別に、例えば係長、課長、部長、その昇進した後すぐその研修を、プログラムを受けるという。ちょっと本当のニーズ、要するにトレーニングニーズという、その訓練すべきことをしっかりつかんでいらっしゃるかどうかというのはちょっと疑問があります。非常に、まあ一般的に課長としてはこういうことが分かっていなければいけない、こういう心得で。まあちょっとその内容というよりは心得ですね、その辺りが重視されているという感じがいたしますが、それにしても、例えばNECではNECユニバーシティという別組織をつくられて、経営研修を一手に遂行されているとか、いろいろな模範例はございます。
 アメリカで、GE、ゼネラル・エレクトリックのクロトンビル研修所というのがある。これは大変有名ですけれども、ジャック・ウェルチの時代、ジャック・ウェルチというのは大変忙しい人なんだけれども、月に一度は必ずその研修所へ行って中堅マネジャーと討論しているんですね。それで、あなたがGEの会長、CEOになったとしたらどういうことをやりますかという非常に生徒にチャレンジするといいますかね、そういう形の研修をやっておりまして、そのジャック・ウェルチにとってはファーストプライオリティーなんですね、ビジネスも大事ですけれども、そこの後継者と話し合うというのが大変重要だという。
 日本の企業でもこれと同じような例がございまして、松下の政経塾に代表されるように、いろいろな企業で、あるいは社長塾って、HOYAは社長塾と呼んでいる。
 だから、こういうトップマネジメントとそれから管理者、マネジャーとのせめぎ合いといいますか、相互で磨くといいますか、この辺はとてもいい研修かと思います。
 それからあと、技術伝承の問題なんですけれども、これは二〇〇七年問題というのがやっと取り上げられて、第一次団塊世代がいよいよあと二年もしたら定年退職を始めると。これについて、どうも技術の伝承がうまくいっていない。定年退職をされた後、技術がなくなっちゃうというその心配ですね。まあ、二〇〇七年問題の一つの問題だと思うんですけれども、これは定年延長を図って何とか体系的につなげていく、若い人たちに伝承していくという課題が各企業とも抱えていらっしゃる。これはただ、体系的にやればできない相談ではないというふうに考えております。
 それからもう一点だけ。キャリア開発なんですけれども、これも、日本の企業のキャリア開発というのはよく機能していると思いますが、一つだけ弱点といいますか問題点を申し上げますと、やはりもっと若いところからリーダーシップのポジションに付けていくということが、正に変化の激しいこの世の中で必要になってくるかと思います。トップ層に、例えばアメリカなんかは四十代、五十代、もう普通ですし、それから最近の中国企業を見ても、CEOには四十代ぐらいの人が就いて、それで、あと六十代近い方々はそれをサポートしているという、非常にうまくトップのチームをつくられているんですね。やはり、日本もこれから、日本企業ももうひとつ、かなり若いところから大胆にリーダーを登用していく、活用していくということが大変重要な課題かと思います。
#4
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、次に多賀参考人、お願いいたします。
#5
○参考人(多賀幹子君) 多賀でございます。
 今日は、お招きいただきまして大変光栄に思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 早速ですけれども、私の話は、アメリカに一九八三年から八八年までおりましたことと、イギリスに九五年から二〇〇一年までおりましたということを基に、そこで取材をしたり、あるいは自分が実際に経験したというようなことを基にお話ししてみたいと思います。
 まず、イギリスなんですけれども、これは九五年から二〇〇一年までロンドンに暮らしたわけですけれども、そこで知ったことで、女性の学力上位ということが盛んに言われておりまして、大変興味があると考えました。
 三十六ページの、この緑の関連資料の三十六ページの方に書いておりますけれども、イギリスの義務教育といいますのは五歳から十六歳までで、少し日本より長いんですね。そうすると、その十六歳が義務教育終わりますので、この十六歳でGCSEという義務教育修了試験というのがございます。これは全十六歳がやらなくてはいけない全国共通の試験なわけですね。これは、その結果が男女別、学校別や科目別ということで、全部ガラス張りになっておりまして、親の学校選択に役に立つというようなことでずっと行われているんですけれども、これを見ますと、女性が圧倒的にお勉強ができるんですね。一般的に男性の方が得意だと言われている算数、数学と理科ですね、化学とか物理といったようなものは、ちょっと前までは、確かに男子生徒の方が成績は上だったのですけれども、これにおいても女子生徒が抜き去りまして、全科目において女子学生のお勉強が上と、成績が上ということが出たわけですね。
 それで、その差といいますか、勉強の格差というものがどんどんどんどん縮まるどころか開いていっているわけですので、当時の全盲のブランケットという教育相が、男性の、男子生徒の奮起をこれは何とか促したいということでやったことが二つあります。
 まず一つは、サッカー、フットボールが大変活発な国なんですけれども、男の子はとかくそういうものに関心があるだろうから勉強の教材にサッカーなどを取り入れたらどうだろうと、男の子の関心が集まるんじゃないかということで、そういうものをどんどん取り入れなさいということを言いました。
 それからもう一つは、小学校、中学校に男性の教師をもっと入れたらどうだろうと。というのは、日本もそうですけれども、イギリスは小学校の女性の教師が九〇%に達しておりまして、中学校は八〇ぐらいなんですけれども、小学校に行きますと圧倒的に女性の先生が教えてくださる。それで、またおうちに帰りますと、非常にイギリスという国は離婚が多い国でして、ヨーロッパで一番離婚率が高いんですね。四〇%を超えている。ロンドン辺りだと五〇は行っているんじゃないかと言われているんですけれども、そういったことで、お母さんに育てられている男の子というようなことが非常に多い。
 おうちに帰ってもお母さんですし、学校に行っても女の先生ということで、どうも男の子に対して男性の大人のロールモデルといいますか、非常に男の子に適切なアドバイスを与える、こんな大人の男になりたいと思わせる、何といいましょうか、お手本といいますか、そういった姿が男の子に見えてないのではないかということで、当時のブランケット教育相は特に小学校辺りに男の先生を投入するということをやりまして、その結果はどうだったかというと、全く成績は変わらなかったんですね。効果がなかったんですね。女の子はそのままもう突っ走るという感じでですね。
 そういうときに、十六歳という年齢が問題になりまして、とかく女の方が、何といいますか、成熟度が早いんじゃないかと、男の方がおくてじゃないかと。十六歳だからであって、その時期を過ぎればどうせ男の子の方が抜き去るに違いないというような、十六歳という年齢からくるものだろうというような意見が出てきたんですが。
 ではというと、大学の首席の数ですね、大学首席を、トップを取ったのはやはり女の子の方が多いことが分かりまして、医学部というものに注目いたしますと女子学生が六〇%を占めているわけですね。それから、弁護士ですけれども、二十代に限りますと女性の数の方が男子よりも多いと。二十代では弁護士の数は女性の方が多い。あるいは、大学の教授ですけれども、大学教授は大学の男の先生の方が多いんですけれども、助教授となりますと男女がほぼ同数というような数字が出ておりまして、これは十六歳だから女の子の方が先に行っているんじゃないかというようなことはどうも言えなくなりまして、じゃ、その男の子の意見はどうだといいますと、やっぱりよく勉強するのは女の子だよというような、もう男の子が認めているんですね。ノートをしっかり取るとか、何かこつこつこつこつ勉強をがりがりやっているのは女の子の方で、もうこれはガールズパワーといいますか、そういうものが、歌手もいたんですけれども、そういうようなものをもう認めようというようになってきたわけです。
 そこで大きく問題になったのが、なぜ女の子が勉強が、学力の成績が上だとこんなに騒がなくちゃいけないのかという意見だったんですね。これが、もし男の子がはるかに成績が良くて女の子の方ができないとこんなにみんな騒いだだろうかと、女の子が上だとどうしてこんなに問題になるんだろうというような意見が働く母親の方から出てきまして、むしろ男の子の方、そちらの方を底上げしてやるよりも、教育界の男女平等を、教育界というのは学校の成績で出てくるわけですから非常にはっきりするわけです。それがむしろ社会の中でも、それが生かされる社会であるべきだと、教育界の平等を社会にこそ持っていくべきだというような発想の転換をすべきだという意見が出てきまして、どうして男性と女性の賃金の差が、今女性は八四%なんですけれども、このように抑えられてなくちゃいけないのかと。
 考えてみれば、サッチャーという女性の首相は一九七九年に出ているわけなんですね。あるいは、エリザベス女王、女帝なんですけれども、もう半世紀、女帝を頂いているというような社会で、男の子の底上げよりも女子の平等をむしろ社会に持ってこようと、教育界の平等を社会にまで伸ばそうというようなことが今イギリスの最先端で言われております。
 次、ギャップイヤーなんですけれども、これは二十六ページの方に書かせていただいたんですけれども、ギャップイヤーというの、なかなか面白いなと思ったんですね。これは、高校を出まして大学に大変な入学試験頑張りまして合格したということが分かったときに、その入学資格を持ったまま一年間の猶予期間が与えられる。
 これで何やるかというと、三つありまして、一つはアルバイトするんですね。なかなかイギリスの大学も勉強が大変で落第させるものですから、アルバイトしているような時間は余りないと。こうなると、一生懸命に一年間で稼いでおいて、一気に集中するためにアルバイトしてお金をためるという人ですね。
 あるいはまた、旅行をする人も大変人気がありまして、主に発展途上国辺りに出掛けていって、日本の卒業旅行のような華やかさではなくて、発展途上国なんかに出掛けていきまして、そこら辺の人たちのお手伝いをする。
 三番目がボランティアでして、このボランティアは、奉仕活動ですね、津波のあの大変な被害がございました、ああいうところに行ってお手伝いするなりなんなり、ボランティアをすると。これを、旅行とボランティアを兼ねまして旅行先でボランティアをするとか、イギリスですので、そこの国のお子さんに英語を教えるというボランティアをしながらずっと世界を見て回るといったようなモラトリアム、猶予期間を一年間ばあんと与えてしまうというようなことがありまして、これはもちろん取らなくてもいいわけです、取ってもいいわけですね。
 それで、そのモラトリアム、ギャップイヤーを過ごして帰ってきた学生さんというのが非常に、大変成長していると。落第率は、イギリスは一二%ほど落第するというように言われているんですが、これが何と一%に下がるわけですね。入学試験の疲れをいやしまして、しっかりリフレッシュしてきまして、自分がなぜこれからお勉強するか、大学で何を勉強するか、何のために勉強するかということを非常にはっきりつかまえて戻ってくると。
 ほとんどのギャッパーたちが、私は成長したと、親離れもできたし、自分が何者かも、いわゆる自分探しとよく言われますけれども、自分探しをしてきたというようなことを言って大変好評で、六〇年代からあったんですけれども、どんどん、高校によっては八割の高校卒業生、これから大学に入るという人がそれを取っているというようなことがあります。
 非常にいきな計らいというか、何か道草の効用というか、真っすぐ直線で行くだけがいいとは限らない。一年間遊んでおいでと言いながら、その子供を信用して成長させて帰ってくると。何かこんな寿命が延びた今、日本もこんなことができたらなかなかいいんじゃないかと。自分探しをやってくるというようなことで、奉仕活動あるいは旅行するといったような、こういうような一年間のモラトリアムのギャップイヤーというのがイギリスはございます。
 それから、何か急ぎ足なんですけれども、またちょっとイギリスに行ったときに、先日行きましたときに面白いなと思ったものが、男性向けの、恐らく世界で初めてと言われております父親向けの育児雑誌というのが出版されました、創刊されました。その名前も「ダッド」という、「Dad」という、お父さんという、お父ちゃんという育児雑誌なんですけれども。
 なかなか、これを見ていますと、めくってもめくっても、おしめの替え方とか、いわゆる、何といいますか、離乳食の与え方とかそういったハウツーものが全然出てこない。全然、全く出てこないんですよ。普通、育児雑誌といいますと、離乳食で、ニンジン百グラムすり下ろして、まず煮沸してというのをこういうふうに教えているんですけれども、そういうのが全然なくて、何を教えているかというと、いわゆる父親哲学といいますか、父親とはどういう存在かというのをまず教えている。
 母親というのは、女性というのは、子供ができると何かすぐもう母親の顔になれるけれども、父親というのはなかなか、はい、お父さんとか言われてもぴんとこないというか、何だか、いいのかなというか、どうしたらいいのかなという戸惑いの方が大きくって、なかなかそんなに簡単に、はい、お父さんにはなれないものだというところを非常に上手につかんでおりまして、父親とは妻子をいかに守っていく存在なのかと、むしろ今まで自分を見ていてくれた妻がもう赤ちゃんに夢中で、何か僕のことを忘れている、忘れているんじゃないのって不安でしようがないというようなことを非常に率直に、そんなふうな気持ちになるんですということを率直に言っているんですね。もう妻と自分の二人の甘い生活というのもこれで終わりとか、もう夜もろくろく寝れないよとか、妻はあなたよりも子供に夢中なのは当然で、それを別に不安がったり、自分への愛情がなくなるんじゃないかと心配することはないんですよとか、そんなことを非常に率直に教えているんですね。
 こういう育児雑誌というのは今までなかったと。あなたができることは、おしめを替えること、おふろに入れること、それでももちろんいいわけですけれども、父親とはいかなる存在かというものがはっきり打ち立てることができれば、自然に手も出るし、足も出るし、いろんな行動ができてくるはずだと。まずそのハウツーからいって、こうやっておしめ替えますよ、こうやって離乳食与えますよというところからいかない。
 男、父親とは何かと、自分に対する新しい、人生の環境の新しい局面にどのように上手に適応していくかと、その辺にページを割いているこの「ダッド」という育児雑誌で、産後うつ病ですね、よく母親がなりがちなんですけれども、産後うつ病への理解とか、あるいは、赤ん坊が泣いてばっかりいるけれども、あれはどういう意味があるんだと、どうしてあんなにうるさいんだろうといった、赤ん坊が泣くことへの理解とか、あるいは一番あなたが大事なことは奥さんの言葉に耳を傾けることだと。休みたいと言えば休ませてあげればいいし、子供とちょっと離れて自分が何かしたいと言えばそれをさせてあげればいいわけで、まず二人目の母親をつくることではないというのがその「ダッド」の最も大事なポイントでして、第二の母親が横に、その母親のアシスタントとして、ごそごそ一緒に、おしめ替えましょう、はい、おふろ入れましょうといったようなことをするのが父親じゃないというわけですね。
 日本でも男性の育児休業の取得が大変促進されておりますけれども、じゃ、その父親が家に帰って一体何をするんだと。パチンコに行っちゃしようがないわけですよね。そこのところで何をするかと、どういうことをするのが父親の育児休業かということをしっかり是非言っていただいて、何だか仕事の職場に帰ってきたら何かほっと安心して、ああよかった、やっぱりこっちの方がずっと楽だとか、そんなふうになるんじゃないかと思うんですけれども、一体家で父親は、何か月かあるいは何週間の育児休業を取るということが多分強制になるというか、そんな気がするんですね、もうとても取る取得率が低いですから。これならもう強制にしようというふうに進んでいると思うんですけれども、じゃ、そのときに、第二の母親ではない、男性として、父親としての在り方という父親哲学を一回是非皆さんに打ち出すべきだというように考えております。その「ダッド」を読むとそういうことを考えたものですから、お知らせしました。
 それから、人材育成のことでニートという問題がイギリス発祥の言葉で是非お話ししたいんですけれども、もう時間がだんだんなくなってきておりますので、もう一つのアメリカの方の経験を話してみたいと思います。
 アメリカのニューヨークで暮らしたのは八三年から八八年までで、レーガン大統領もアルツハイマーで亡くなられましたけれども、レーガン大統領の時期で、大変アメリカとしても安定した時期でした。上の長男が八歳で下の長女が五歳という二人の子供を連れていって、五年間ほどニューヨークの経験をさせていただいたわけですけれども、本当にすばらしい体験だったと思っております。
 自分の実際の経験で恐縮なんですけれども、ニューヨークというのは日本でいうとちょうど青森辺りのとても寒いところで、兄弟げんかばっかり冬の時期とかするものですから水泳教室に行かせましたんですね。水泳教室に行かせまして、洋服を脱がせて水着に着替えさせるときに、ほかのアメリカ人のお母さんたちもやっぱりそういうふうにさせているんですけれども、そういうときに、送り出すときに、子供にはエンジョイと言っているんですね。エンジョイというのは、やっぱり泳いでくるときに楽しんでいらっしゃいねっていう言葉だと思うんですね。
 私は、周りの日本人のお母さんたち、やはりニューヨークの生活をしていらっしゃるお母さんたちいらっしゃったんですが、やはりみんなで一緒に、頑張るのよということを言っているわけですね。アメリカのお母さんは、もうただエンジョイ、エンジョイと言っているわけですね。ところが、日本人のお母さんは、しっかり頑張るのよと言って、私ももちろんそうだったんですけれども、払ったお金は元を取りたいという擦れっ枯らしの自分がすごく何か惨めに感じまして、アメリカ人のお母さんみたいにエンジョイって、こう言ってやって送り出させる余裕っていうのがすごくうらやましいと思ったことがありました。太平洋を越えちゃうとこんなに親から子への言葉掛けでも違うもんかなっていうふうに思ったんですけれども。
 あと、やっぱりサッカーですね、子供二人とも地区のサッカーチームに入れまして、コーチは大学時代にサッカーやっていたという銀行員のお父さんがボランティアでやっていてくださったんですけれども、長男はシュートを入れたんですけど物の見事に失敗するわけですね、入んなかったんですね。ああ、親は、もう何だみんなの前で恥かかしてとか、また駄目だったって思っているんですけど、そのときのコーチの方の声掛けが、ナイストライって、こう言ってくれたんですね。
 そのナイストライっていうのは、結果は駄目だったけれどもよく試みたというか、よくやってみたというか、うん、それでいいんだよっていうか、ちょっとしょぼんとこう、ああまた駄目だったって下を向いていた息子が、顔をちょっと上げましてまた走り出すというようなシーンがまだ非常に鮮明に覚えておりまして、何だかそういう先につなげる励ましというのがいいなというか、なかなか、アメリカもいろいろ問題のある国ではありますけれども、懐が深いというか度量が大きいというか、くじけることなくまたやってごらんという、ナイストライっていうのは何かうらやましいっていうふうに思いました。
 ちょっと時間が過ぎて恐縮なんですけれども、あと娘の方はやっぱりアメリカの幼稚園に、現地の幼稚園に入れたんですけれども、今のように英語を教えるということは全然なくって、ぽんと日本の保育園からあちらの現地の幼稚園に入れたんですが、三、四か月は全く言葉が出てきませんでした。何だかかわいそうなことをしたなっていうふうに思っていたんですけれども、ある日、黄色いスクールバスから出てきましたら、お母さん、あたしは英語頑張っちゃうって、こういうふうに言ったんですね。
 一体何が起きたかといいますと、三、四か月たって初めて娘の口からイエスとかノーとかっていう、どっちか言葉が出たらしいんですね。そうしましたら、それを聞いたお友達が、和夏子っていうんですけど、和夏子が英語話したっていって、先生のところに走っていって言ってくださって、すると、先生が、何か園児さんたちの絵か何か張るようなお仕事をなさっていたんですけれども、すぐ飛んできてくださって娘の肩を揺さぶり、ほおにほお擦りせんばかりにして、今日はあなたの英語記念日ねと、英語という手段が手に入ったらあなたはもうすばらしい世界をこれから手に入れるわよと、本当に先生はうれしいわと、もう娘を揺さぶって励ましてくださったんですね。
 それを機会に、娘は一言もそれまで英語が出なかったのが、堰を切ったように英語が出てくるようになったわけですね。それまでは口には出なかったけれども、多分単語か何かを頭にインプットして、それが先生の非常にタイミング良く褒めてくださった、励ましてくださった言葉でぱっと出てきたというわけで、なかなか先生はプロだなというんですけれども、このように英語のことで力を入れて、英語は手段だと、あなたの夢をかなえる手段ですよ、目的ではないと、ツールですよと、手段ですよということを励ましてくださったわけですね。
 これを考えてみると、エンジョイにしてもナイストライにしても、何だかアメリカの教育の基本はセルフエスティームといいますかね、自尊の心を養うと、自分を愛する心を養う、自分を大事にする心を養うものがアメリカの教育の根幹だと。幼稚園、その前からもうやっていると、家庭からやっていると。自分を愛せない子が他人を愛せるわけないし、自分を大事にできない子供がほかの子供を大事にできるわけがないわけです。これからどんどんどんどん大きくなってきたときに、いろいろな面でくじけることやら失敗することがあるけれども、あなたは本当にすてきな子供なのよと、こんないいところがあるのよ、本当にあなたはすばらしい子供なのよと、あなたのこと大好きよって、こう言われたのが基になるのではないかと、自分を信じることができる力というのを養うことができるのではないかというふうに思ったんですね。
 日本に帰ってくると何か全部減点法で、ちょっとあなたの息子さんは落ち着きがないとか、字が汚くて読めませんとか、何かあれが悪いこれが悪いってずっとこう言われ続けていて、ぷしゅんとなることがとても多いんですね。
 日本のお子さんと取材なんかでお話ししても、どうせ自分なんかっていう言葉が出るんですね。何か、どうせ自分なんか何やっても駄目ですからとか、何か、何やっても失敗するしとかっていうふうに言われて、もっと自分を信じたらどうなんだろうって、こういうふうに思ってしまうんですけれども、やはり日本は昔から子供は豚児とか妻は愚妻とかって言われてきた国なんですけれども、本当にこんなところがすばらしいのよと、あなたの英語、私大好きよって言われたりとか、そんな子供を肯定する教育、まあこれがすべてとは言わずに、これがアメリカのいろんな弊害を起こしているというような言い方もできるのかもしれませんけれども、取りあえず子供は前向きに何でもチャレンジしたり、勇気を持って挑戦していく力というのは、この辺の自尊の、セルフエスティームというようなところから生まれているのではないかと思いました。
 何かもう、済みません、時間が大幅に出てしまったので、ニートとか女性と仕事の両立の話は届きませんでしたけれども、ひとまずここまでにいたします。
 ありがとうございました。
#6
○会長(広中和歌子君) あとの興味あるお話は御質問の中で出てくると思いますので、よろしくお願いいたします。
#7
○参考人(多賀幹子君) ありがとうございます。
#8
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、次に耳塚参考人、お願いいたします。
#9
○参考人(耳塚寛明君) お茶の水女子大学の耳塚でございます。
 今日は、若者の職業社会への移行の揺らぎというテーマで意見発表をさしていただきます。「経済社会の変化に対応した人材育成の在り方」という大変に包括的な問題がテーマとなっておりますけれども、この問題にいわゆる高卒無業者問題を切り口としてアプローチしたいという意図であります。
 高卒無業者とは、簡単に言いますと、高校卒業後、就職も進学もしない者、いわゆるフリーターですとかニートと重なる若者たちのことであります。この高卒無業者を増加させている一つの、そして主要な要素が経済社会に生じたマクロな変動だということになります。彼らに注目をするということは、若者たちが学校から職業の世界へ、あるいは青少年期から成人期へという、いわゆる移行問題と申しますが、この移行の仕組みに注目することであります。
 従来、日本の若者は学校から職業世界へと間断なく移行するのが普通でありました。学校から職業世界への誠に円滑な移行が可能な社会、それが日本であったわけであります。ところが、九〇年代以降、この円滑な移行システムはほころびを見せることになりました。
 レジュメを配付させていただいております。そのレジュメをごらんください。
 初めに、Tとしまして、若者の職業社会への移行の揺らぎの実態をまず確認した後、次いで、なぜ高卒無業者が増えたのかを二ページで説明をいたします。次に、三つ目のセクションとしまして、だれが無業者になるのかという問題に答える、こういう順番に進め、最後に人材育成にかかわる幾つかの社会的インプリケーションを申し上げたいと思います。
 今日の意見発表では幾つかのデータを用いますが、私が今日使いますものは官庁データではありませんし、また全国的な標本調査の結果というわけでもございません。そのため、一介の研究者に可能なデータを使っております。即一般化できるものでないことをお断りしておきたいと思います。
 まず、表の一、一ページをごらんください。八〇年代までの高校卒業者の進路は、第一に上級学校への進学、第二に就職、まあおおよそこの二つでありました。これは青年期から成人期への移行という観点で見ると、八〇年代までの青年たちは高卒後、直接実社会へ入るか、それとも上級学校を経由して実社会へ入る、いずれかの移行パターンを取るものとして理解することができたわけです。
 ところが、この表の一を見ると分かりますように、九〇年代以降、事態に変化の兆しが表れるようになります。一番右が無業者率でございますが、高卒者に占める無業者の比率は九二年の四・七%、これがボトムですが、そこから漸増をいたしまして、二〇〇四年には十三万二千人余り、およそ一割強を占めるに至っております。といっても、この数値は全国の全高卒者でありまして、その下に書いておきましたけれども、都道府県による大きな差異があります。大ざっぱに言えば、大都市圏で突出して高い。既に大都市圏では進学に続く第二の進路として定着をしていると言ってもいい状況でございます。ただ、無業者が東京を始めとする大都市圏に固有の現象だというわけでもありません。特に、地方郡部でも二〇〇〇年代に入って以降、拡大していく傾向が見られます。
 表の二は東北地方のC高校の卒業生の進路を見たものでございます。一ページの中段の右でございます。平成三年度の時点では、このC高校は就職者が七割を超える普通科の就職校でありました。ところが、十三年度になると就職者が三割を切って、進路多様校と言われる性格の学校に変わります。さらに、平成十三年度になりますと注目すべき変化が表れます。それは、就職未定者が初めて表れたということと、もう一つ、縁故就職者欄に数字が記載されるようになったということであります。大きく言いますと、就職未定者というのは顕在的な高卒無業者、縁故者の中には相当程度の潜在的な無業者が含まれていると考えられます。ということは、かつての就職校が今日では無業者率が多く見積もって三割程度の学校に変化をしてしまったということを意味しています。
 もう一つ注目しておかなければなりませんのは、一ページの一番下に書きましたが、高等学校の学校格差と関係していて、中下位のランクで相対的に多くの高卒無業者が生まれているという事実であります。
 二ページに参ります。
 なぜ、では高卒無業者が増大してきたのかという点であります。見取図、二ページの上段の図をごらんください。左側が八〇年代まで、右側が九〇年代以降、大ざっぱに図にしたものでございます。プル要因とありますのは、職業社会から高校の卒業生を実社会へと引っ張る力であります。プッシュ要因というのは、学校から押し出す力、そのようにお考えください。
 八〇年代までは、職業社会からの強いプル、学校からの強いプッシュもあって、青少年は学校から職業社会へと直接入っていけた。ところが、九〇年代以降になるとこのメカニズムが作動しなくなって無業者空間が生まれる、そこに一定数の若者たちが吸い込まれていくという仕組みができ上がったことになります。
 まずは、プル要因から。プル要因については、既にこの調査会においてもここまでの段階で幾つか御審議がなされていることと思いますが、要するに、高卒労働市場が求人難から著しく小さなものとなってきたということであります。つまり、求人がないということであります。その背景には、もちろん非正規化、つまりパートやアルバイトとして労働力を調達しようとする傾向が強まってきたという背景がございます。もう一つ、求人が高学歴の方にシフトしたという事情もございます。これがプル要因の大きな変化であります。
 プッシュ要因についてはどうかといいますと、九〇年代以降、御承知のように、教育をめぐる理念やあるいはカリキュラム等が大きく日本の教育では変わることになりました。その契機となりましたのは臨時教育審議会であります。臨時教育審議会、八〇年代ですが、これ以降、個性重視の原則に基づく様々な改革が導入をされ、個を生かすだとか生きる力とか新しい学力観とかゆとり教育が強調されるようになりました。
 かかる教育政策のベクトル変換は、教育指導に対する教員の姿勢も変化をさせることになりました。進路指導も変わってきております。かつては入れる会社へ、入れる大学へ、つまりポシビリティーを重視した進路指導、要するに入れるところへ行かせるという進路指導が支配的でありましたけれども、バリュー、価値、主観的な価値、何がしたいのか、何をしたいのか、それを重視する方向へと進路指導は変わってきました。
 こうした帰結として、二ページの一番下に高校教員の進路指導理論を抽出して書いておきました。希望・自己選択重視あるいは非進路強制、進路の強制をしないということ、このような高校教員の進路指導理論が優勢となってまいりました。生徒の進路指導、進路保証、これが学校の至上価値であった時代は過去のものとなりつつあります。教育理念や進路指導理論の変化は、可能な選択肢へと生徒たちの志望を水路付けて、職業社会へと配分するという学校の機能を弱いものに変えてくることになりました。
 次いで、高校生文化の変化も高卒無業者の増加にかかわっております。一言で申しますと、九〇年代以降の高校生の変化というのは、学校生活の比重が小さくなってきたという点に求められると思います。
 三ページ、お開きください。その例は、まず第一に、基本的生徒役割からの離脱が見られるということであります。データの幾つかを挙げておきましたけれども、家での勉強の習慣、それから欠席しないで通学をするという基本的な生徒としての役割の遂行にすら問題が見られるようになってきております。担任の先生の姓と名前を知らない生徒も二八・三%に及ぶなどという学校がございます。
 その一方で、消費文化への接近が顕著であります。ここにもデータを掲げておきました。アルバイト経験が豊富であるということ。中には月に十五万円以上稼ぐような生徒たちもいます。彼らが稼いでいる金、お小遣い、アルバイトの費用を平均をいたしますと、バイト代の平均が七万四千円に上る。これが月平均七千五百円の洋服代、七千円の携帯電話代、五千五百円の食事代、四千円のCD代などに消費されていくわけであります。彼らが自由に使えるお金は、サラリーマンに匹敵するとまでは申しませんけれども、相当程度、経済的に見たら一人前の消費生活人であることは間違いのないところであります。彼らにとっては、この消費生活の水準を維持することが高等学校卒業後、最も重要なこととなります。
 私は、このような生徒たちの変化から、パートタイム生徒という言葉を思い付きました。というのは、時々生徒という役割を演じる、そのような意味でパートタイム生徒と呼んでおります。
 最後に、ここまでは、なぜ高卒無業者が増加をしてきたのかという理由について、労働市場の問題、それから教育制度の問題、青少年文化の問題から、プルとプッシュに分けて説明をしてまいりましたが、もう一つ問題が残ります。それは、どのような青年も等しい確率で無業者空間へと吸い込まれていっているわけではないという問題であります。ある特定の青少年層がここに吸い込まれていっている、その問題であります。言葉を換えれば、だれが無業者になるかという問題であります。
 まず、確認しておかなければなりませんのは、いわゆるフリーターであるとか無業者という進路の選択肢は、何とか食べていけるという家計の豊かさがあって初めて可能になる。この意味で、家計の一定程度の豊かさは最低条件であります。しかしながら、このことと豊かな階層から高卒無業者が生まれているということとは全く別のことであり、事実は逆であります。
 私どもの調査、幾つか調査データはございますけれども、調査によれば、いわゆるホワイトカラーの家庭の出身者でフリーターとなったのは一四%、それに対してブルーカラー家庭出身者のそれは三一%であるという結果が出ております。このことは、首都圏のフリーターを対象としたサンプリング調査でも確認をされておりまして、相対的に低い階層の出身者がより高い確率で高卒無業者あるいはフリーターになりやすいという結果が出ております。
 なぜか、なぜそういう結果が出るのか。二つのルートが考えられます。三ページ下段、三の二の一をごらんください。
 一つのルートは、社会階層が、学力や高校階層構造を媒介として職業社会への移行と関連しているというルートであります。言わば、選抜の帰結としての高卒無業者であります。いま一つのルートは、社会階層が、階層下位文化、この場合の下位というのはサブカルチャーの翻訳ですので優れているとか劣っているとかいう意味ではありません、これにより特定の進路選択を促す、言わば選択の結果としての高卒無業者という進路選択、こういう二つのルートが考えられます。
 ここでは、特に前者について御説明申し上げたいと思います。
 私どもが実施した学力調査の結果を紹介いたします。これは、関東地方十二都市の公立小学校の児童を対象とした算数の学力調査の結果でありますが、学力調査の結果は、第一に、三ページの下をごらんください、家庭での学習時間と結び付いていました。つまり、勉強量が多ければ学力は高い。第二に、その一方で、父親の学歴、これは父親が大卒であった方が学力が高いという結果が出ました。
 このことから、容易に次のようなことが考えられます。それは、家庭的な背景、つまり父が大卒の子供ほど家で学習量が多いので学力の差が生まれるのだという仮説が生み出されます。果たしてそれが正しいかどうか。
 次のグラフをごらんください。
 今の仮説は、つまり父親が大卒であるか否かということによる学力の差異は努力の差に起因するというのは、半分正しい仮説でありました。というのは、努力すればするほど学力は高い傾向があったからです。しかしながら、この図をごらんください。図には二つのグラフがあります。傾斜の急な方が、父が非大卒の場合の子供の家で勉強する時間と学力の関係です。縦軸が平均正答率学力です。横軸が家で勉強する時間です。傾斜が緩やかな方が、父親の大卒階層の場合の学力と家での学習時間の関連を示したものであります。
 これで注目すべき点は、一番左側の、何といいますか、Y軸をごらんください。父親が非大卒階層の場合、家で全く勉強しない子供の期待される得点は七〇%ぐらいであります。これに対して、家で全く勉強しない父親が大卒階層の場合の子供の平均学力は八〇・四%ポイントで、およそ一〇%ポイントの差があります。この大卒の父親の子供たちの八〇・四一の得点に追い付くためには、非大卒階層の子供たちはおよそ五十一・七分程度勉強しなければならないということになります。
 これは、同じ努力をすれば同じ学力が得られるということとは違うことであります。すなわち、家庭的な背景が独自に子供たちの学力を左右しているという結果であります。このことについて補足的にデータを五ページと六ページに準備をいたしましたが、時間が、もし後ほど御質問があれば補足的に説明をさせていただくことにしたいと思います。
 まとめをさせていただきたいと思います。
 四ページの「インプリケーション」というところをごらんください。
 ここまでのところでは、相対的に低い階層を出自とする子供たちが高卒労働市場逼迫の直撃を受け、さらに経済的理由や家庭的背景から学力と進学機会を奪われるという二重の機会の喪失の末に高卒無業者となって、学校と職業世界のはざまにさまよい出ていくということであります。教育理念や進路指導の変容も彼らの増加にプッシュ要因としてかかわることになりました。
 このことはどういうことを意味しているかというと、第一に、若者の個人的な問題だとか、あるいは家族の問題だけに起因、かかわらせてこの問題を解決はできないということであります。すなわち、社会的に対応を要する問題ではないかということであります。
 第二に、現代日本の社会は、確かに法的、制度的なレベルでいえば機会の均等が保障された社会でありますが、にもかかわらず高卒者の進路には社会階層間で差異があり、相対的に低い階層から高卒無業者が出現しています。すなわち、機会が均等である中での不平等な現象だというふうに考えられます。
 この意味で、日本の社会というのは、個人の努力が生まれの制約を超えて物を言うようなメリトクラティックな実力主義的な社会であるとは言えない側面を持ちます。機会を均等にするだけでは解決しません。解決しない。そうではなくて、学力形成や進路選択の過程に隠れている家庭の経済とか文化の持っている影響力をならさなければ、平準化しなければ問題は解決しません。
 そのためには教育的な支援が不可欠であります。その支援は、もちろんエリート層を伸ばすことも重要な機能を持ちますが、家庭的な背景ゆえに学力に低下を来し、あるいは特定の進路選択を強いられてしまうような層の子供たちに対して手厚くなされるべきだと私は考えます。
 ただし、それ以前に、日本の教育政策はそもそも社会階層の視点を持ちません。社会階層間の学力とか進学機会の格差が一体どの程度であるのかということについて今後は監視をしていく必要があるだろうと思います。今や日本社会においても社会階層間の格差は不可欠な視点ではないかと思います。
 最後は、就職支援問題でございます。
 レジュメにまとめておきましたが、私は、高卒者についていえば二つのタイプの質を高めてやる必要、すなわち職業的成熟とそれから即戦力としての職業的能力という二側面における質を高めてあげる必要があるのだと考えております。
 二十分をちょっと超過したと思われますが、以上で私の報告を終わりますが、駆け足のところがございました。もし御説明必要でありましたらば補足をさせていただきたいと思います。
 失礼いたしました。
#10
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いますので、質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださるようお願いいたします。
 なお、午後四時ごろに質疑を終了する予定となっておりますので、一回当たりの質問時間は三分以内でお願いしたいと思います。また、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう質疑、答弁とも簡潔に行っていただきますよう、皆様方の御協力をお願いいたします。
 それでは、質疑のある方。
 加納時男さん。
#11
○加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。
 三人の参考人の方、大変有意義なお話ありがとうございました。
 じゃ、三分以内で質問させていただきます。
 それでは、多賀さんに伺います。
 先ほどのお話で、十六歳のテストGCSEで非常に女子の方が男子よりも成績がいいというお話がございました。それは私は、何となく日本でも最近そういうのがありまして、某大学へこの間呼ばれて卒業式行ったら、全学部のうち一つを残して残りの七学部、全部首席は女性でございました。女子が非常に勉強すると、よく分かるんですが、一方で、先生の文献を読んでいますと、実際の社会に出て、イギリスでの話ですけれども、賃金が男性の方が女性より高い、格差が大体八四%になっていると、女性は。それから、大企業で女性の役員がいる会社はたくさんあるかというと、七%しかない。日本も増えてきてはいるんですけれども、ごくわずかなんですが。また、じゃ父親がよく育児休暇取っているのかというと、ブレアさんが取って大きな話題になった。大きな話題になったというのは、みんな取っていないということだろうと思うんですが。
 こういうことなんで、これ、両方をどういうふうに考えたらいいのかというのが一つ分からなかったところです。
 それからまた、ギャップイヤーなんですが、これ、私もロンドンに何回か行きまして、非常に、多賀さんにも教えていただいたし、興味を持って、日本でもこれを、こういうのを実行できないかなと思っているんですが。
 先ほどのお話、ギャップイヤー、非常にギャッパーがよくこれ利用しているというんですけど、実は利用率二〇%ですよね。ということは、利用してない人の方が多い。こんないい制度をなぜもっと利用しないのかなと。これはその後の人の生き方に大きな影響を与えるんで非常にいい制度だと思うんですが、その辺を教えてください。
 最後にもう一つ、セルフエスティーム。アメリカでの経験でおっしゃったんですが、先生の文献を読んでいますと、ロンドンでもセルフエスティームをやって成功した例が、カルバートン小学校のシャロン・ホローズ校長さんの例が前もって配られた文献にありました。その中で、特に信念を持った教師を採用するとか、風通しをよくするとかいうことに加えまして、生徒たちを褒める、いいところを見付けて褒めるというのがこの学校を、さっきの耳塚先生がおっしゃっているようなさえない学校ですね、これ、さえない学校をいい学校に変えたという、とってもこれ勇気の出る話だし、日本にとってヒントになるんで、その辺もう少しお話伺えたらと思います。
 ちょうど三分になりましたんで、質問を終わります。
#12
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 それでは、多賀参考人、お願いいたします。
#13
○参考人(多賀幹子君) 御質問をありがとうございました。三つほどあると思いました。
 一番初めの、女性のやはりあれですね、社会に出るとどうしてもうまくいかないと、両立が大変難しいというところはもうそのとおりです。特にイギリスは結構日本と似ているところがありまして、やっぱり育児というのは女性がするものだという考えもあったんですけれども。
 四十三歳で一九九七年に首相になりましたブレアさんですね、最近ちょっとつらそうなんですけれども、ブレア首相が四十三歳でなりまして、二〇〇〇年にレオ君という思い掛けず四番目のお子さんが生まれたものですからすごく喜ばれて、二週間の父親休暇というのをお取りになったんですね。これも多分世界で初めてというようなことなんですけれども、それで二週間頑張りまして、こんなに大変なのであれば是非皆さんにも手伝ってあげてほしいし、この育児の喜びをみんなに分けてもらいたいということで、それから本当にたたたっとお父さんの二週間の給付金の出る育児休暇というものがスタートしまして、それからは本当にあっという間でしてね、ライフワークバランスも来ましたし、「ダッド」の育児雑誌が出るし、男性の二人の、ちょっと日経の方に書いたんですけれども、ブラック兄弟の奇跡と言われたようなすばらしい育児に関する、四十四ページなんですけれども、こういう方も出て、ベビーシッターの時間、スピード感覚で、ビジネス感覚を入れてということで、見事に出生率も一・六四から一・七一まで、副産物として、何とか出生率回復しようといって頑張ったわけじゃないんですけれども、いつの間にか出生率も回復していたということです。
 完璧ではないけれどもできることはどんどんやっていこうというようなことで、もちろん今この体制が完璧ではないので、これからもどんなふうに両立が進んでいくか、私も是非注目して見ていきたいと思います。
 二番目のギャップイヤーですけれども、これを書いたのが、当時が、今からもう三、四年ぐらい前になるかと思うんですが、そのときはたしか二〇%だったんですけれども、今はもう少し増えて二五ぐらいに行っていると思います。
 これは高校によって物すごく違うんですね。豊かな、それこそパブリックスクールのイートンとかですね、ウィリアム王子、チャールズ皇太子と亡くなったダイアナさんの長男のウィリアム王子は一年間ギャップイヤーを取ったわけですけれども、とてもその余裕がないとか、それどころではないと、早く勉強して早く大学出て早く就職してほしいという家庭のお子さんは、そんなモラトリアムを取る余裕はないと。で、イートンとかそういうパブリックスクールのところなんかは、もう八割から九割取っている高校もあるわけで、やはりその辺はイギリスはまだ階級社会が色濃く残っていますので、やっぱり取れるところと取れないところがあるということなんだと思います。
 でも、とてもいいというような評判で増えておりますし、またこれを聞き付けまして、大学を出てから就職先を決めて、そこでギャップイヤーを取るというようなちょっと変則型の、高校と大学の間じゃなくて、大学卒業と就職の間にギャップイヤーを取るといったような形にも出てきていますし、また、働いて三年たったところでギャップイヤーを取って、ちょっと世間を見てきて、また会社に戻ってくるというような、なかなかギャップイヤーも広く意味が広がってきているような感じで、こういう点でも広がりを見せているということが言えるかと思います。
 それから三番目の、アメリカはセルフエスティームで自分を尊ぶ気持ちを植え付けるということがとても強調されていますけれども、確かにイギリスでもそれはそうだと思うんですね。なかなかアジアと違うといえば違うのかもしれませんけれども、やっぱりアメリカ、イギリスでは自分を大事にする気持ちをまず植え付けると。そうすれば他人も大事にするだろうし、他人も尊ぶだろうと。何かいろんなことが起きたときに、そのときに自分を尊ぶ心が物を言うことがあるだろうと。そういったことです。
 よろしいでしょうか。済みません。
#14
○加納時男君 ありがとうございました。
#15
○会長(広中和歌子君) それでは、次の御質問、和田ひろ子さん。
#16
○和田ひろ子君 民主党の和田ひろ子でございます。
 お三人の先生たち、今日はありがとうございます。とっても分かりやすいお三人の意見表明をしていただいて、本当にもっともっとお聞きしたいような感じがいたしました。
 それでは、まず梅津先生からお願いをいたします。
 今、日本の社会情勢、いろいろ企業の問題、本当に、もう何を取っても噴出してくるような事情であります。例えば、私は農林水産委員会に所属をしておりますが、雪印の問題から始まって、鳥インフルエンザのあの社長さんの話とか、いろいろもう本当にどこを取ってもあるんですね。
 それで、今、日本の国もそういう経営者の皆さんの教育というかMBA、そういうものが発達してきているとはいえ、日本はまだまだグローバル社会というか、そういう国際化に向けた社長さんたちが本当にいらっしゃるのかなという思いがして、とても残念なんですが。この間のライブドアの問題なんかでも、あの日枝さんの言うような、本当にあんなことでいいのかなという、国民はみんな思ったと思うんですね。これからの経営者の皆さんに是非言いたいことを言っていただきたいと思います。
 多賀先生、本当に面白い、大変おうらやましいというか、アメリカの生活をされ、ロンドンの生活をされて、お子様たちも本当にうらやましいなというふうに思いました。すばらしい御経験をされたお子様たち、すばらしいと思います。
 私は、サッチャーさんが日本においでになったときに、ちょっと選んでいただいて対談の機会がありました。そのとき、みんなお年寄りが多かったんですが、一様に、お子さんもたくさんいらっしゃるのによくそういうことができますねというふうにみんなおっしゃったんですね。そうしたら、もうサッチャーさんは驚いて、イギリスは、子供は国の子供だから、もし子供が風邪引いて私の会議が一時間遅れても男性はだれも文句を言わない。そのとき私もう本当に、あれ十何年も前の話なんですが、すばらしいなというふうに思いました。
 今、日本の国には男女共同参画社会というふうな法律ができて本当にだんだんよくなるのかなというふうに思っておりますが、実はバックラッシュがたくさんあって、とてもうまくいってないのが事実であります。そういうことに対してどういうふうに思われますか。
 耳塚先生、今年の三位一体改革の中で、教育に対して財政力のある県とそうでない県のもしかしたらギャップが出てくるんじゃないかと、みんな心配しています。それは絶対ないというふうには言っていますが、さっき多賀先生もおっしゃいましたように、豊かな家庭だったらギャップイヤーもできるんだというふうな、イギリスでさえそういうことであるとすれば、日本の教育のこれからの将来をどういうふうに考えていらっしゃるか。きついお言葉で言っていただきたいと思います。よろしくお願いします。
#17
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、まず梅津参考人からお願いします。
#18
○参考人(梅津祐良君) 日本の経営者のクオリティーということで、大変難しい御質問。
 私は、クオリティー、一般的には大変高いと思います。ただ、先生から御指摘のあったグローバル化という観点から見て、本当に国際ビジネスで、例えば英語の問題を取っても、西欧のあるいは中国のリーダーとちょうちょうはっし議論をしているかというと、ちょっとまだ足りないなということですね、語学力だけではないと思いますけれども。
 ただ、最近非常に明るい面と申しますか、が出てきていると思うんですけれども、最近成功している企業の経営者というのはアメリカとかヨーロッパの法人の社長さんをしてお帰りになっている方が多いんですね。トヨタの張社長もアメリカ・トヨタで非常に苦労されて帰ってきて、非常に国際的な感覚をお持ちですよね。例えば、ROEという、リターン・オン・エクイティー、もうけの率なんですけれども、それはアメリカにいた時代に、五%以内だったらトヨタはアメリカから帰りなさいとアメリカ人から助言をもらった。というのは、五%というのは、お金をそのまま銀行に積んでおきゃ、あるいは投資銀行に入れておけば、それ以上のリターンがあると。だから、ビジネスで五%取れないようなビジネスはやめなさいと言われたという、その辺が非常に勉強になったというふうにおっしゃっていますよね。
 それから、キヤノンの御手洗冨士夫社長もやはりアメリカで非常に苦労されて、やっぱり国際的な感覚をお持ちですね。しかも、日本経営の良さも発揮しましょうと、そういうことで新しい意味の何か成果主義というのが非常に言われていますけれども、日本的な成果主義をキヤノンでは導入されている。
 そういうところを見ると、大変優れた経営者が出てきているなと、やはり優れた経営者の下で優れた業績が生まれているんではないかなというふうに思います。
#19
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、多賀参考人、お願いします。
#20
○参考人(多賀幹子君) 先生、御質問ありがとうございました。
 バックラッシュについてですね、とても大きな問題で、もうあっちもこっちもバックラッシュだらけで、どれを言ったらいいかという感じがするんですけれども。
 イギリスのお話をいたしますと、ワーキングマザーへのバッシングまで今起きております。ワーキングマザーというのはいわゆるセイクリッドなすばらしい聖域で、もう皆さんが応援して支援すべきで、助けてあげるべきものだというふうになっていたんですが、このところの最先端を見ていますと、ワーキングマザーはどうもずうずうしいと。非常に高齢出産が増えていまして、もう三十代の出産が二十代の出産を超えているわけですね。三十代、四十代の出産となりますと、役職でもなかなかお偉い方が多くて、秘書なんか持っていらっしゃる方がいる。そうすると、子供を連れてきて、職場に、秘書さんにお願いねと言って、ベビーシッター代わりに秘書にちょっと熱出ているもので間に合わなかったものだからお願いしますなんて言っちゃう人がいて。ただ、クリスマスの休暇なんといいますと、イギリスでも皆さんお休みしたいわけですよね。そうしますと、ワーキングマザーがファミリータイムを持ちたいとか言うと、みんなしいんとなって、それはもっともだと、それはもうファミリータイムを持つ人が優先すべきだという感じで。
 どうもワーキングマザーというのはずうずうしいこと甚だしいという、そんなバッシングですね。子供を盾にすりゃ、みんなうんと言うと思っているというようなバッシングが起きていて、女性の社会進出と同時に、どうしてもバックラッシュというものは出てきているように思います。そこのところをやっぱり乗り越えるしかないというか、バックラッシュであるということは言葉に出していいかと思うんですね。
 それから、逆に助けてくれるところは、イギリスでスーパー保育所、行ったんですけれども、初めて、言ってみると霞が関のようなこういうところのど真ん中の、ロンドンのど真ん中に保育園ができたんですけれども、そこに行くと、もう食べ物は一人一人違うし、保母さんの、保育士さんの数はたくさん多くて、お子さん一人一人見てくださる。デザインはイタリアのデザインでオーガニックでと、もう本当にすばらしいんですけれども、月の保育料が三十万円ということで、これは高いなと思ったら、何のことはない、企業が全額払っていますということなんですね。
 だから、育児とか妊娠なんかで優秀な人材を失わないように、また新しい人を雇って、その人を雇うことを考えれば保育料を三十万円ぐらい出すぐらいどうってことないんでしょうかしらね。イギリスは今とても景気がいいということもあるんでしょうけれども、優秀な人材を妊娠、出産、育児で失わないように、三十万円の保育料を出してでも留まってほしい、そのまま働き続けてほしいという方向もありますので、バッシングやバックラッシュだけに、やっぱりくじけることなく進むしかないというか、それもあるということはもう分かっているんですけれども、だからといってやっぱりもうこの流れは止まるわけにもいかないということだと思います。
#21
○会長(広中和歌子君) それでは、耳塚参考人、お願いします。
#22
○参考人(耳塚寛明君) お答えいたします。
 御質問は、義務教育改革において財政力のある自治体とそうでない自治体の格差が今後開いていってしまうのではないか、そのような意見があるけれども、どう思われるかということだと理解をいたしました。
 この問題は、御承知のように、中央教育審議会の義務教育特別部会を舞台としてこの秋までに結論の基本的な方向を出すこととされておりますものですから、基本的にはそれを見守りたいという気持ちでございますが、この問題をもう少し広くとらえますと、分権化の中で地方の自立性を高めていくという方向と、それからもう一つ、自立性を高めていったときにこれをそのまま放置することはできないわけで、クオリティーを、質を維持する、担保する仕組みをどうやってつくっておくのかという問題の一部だというふうにとらえております。
 地方の自立性を高めていく、あるいは現場の自立性を高めていく方向というのは基本的には賛成でありますが、同時に、クオリティーを保持するという仕組みもきっちり押さえておかなければならないというのが私の意見であります。
 そこにおきましてはいろんな考え方がございまして、財務というのは最も重要な要素であるので、これは国がその権限を握って補助金の形でやはり配分すべきだという考えと、いや、財務は自由にしても大丈夫で、教育課程の基準さえ国が持っていれば大丈夫ではないかというような意見もあろうかと思います。私は、どちらかといえば、やはり財政力のある自治体間の格差は開いていってしまう、そのようなことが予測できるんではないかと思っております。
 教育の場合難しいのは、クオリティーを維持する仕組みという上で、教育の成果がなかなか数字として測定し難いものも含まれているということであります。クオリティーを維持するためには条件を整えてやる必要がある。だから、教育は事後評価のみならず、条件をきちんと整えてやることが必要な社会制度ではないかというふうに思っています。このようなことから、財政まで地方の自立性に任せるという方向は私は否定的にとらえております。
#23
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、浜田昌良さん。
#24
○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。
 本日は、三人の先生方、とても参考になりますお話、ありがとうございました。
   〔会長退席、理事辻泰弘君着席〕
 それでは最初に、梅津先生に御質問させていただきたいと思います。
 事前にお配りいただきました論文を読ませていただきますと、ヨーロッパではガバナンスといわゆるマネジメントの分離が進んでいるという、今後いわゆるボードのチェアマンといわゆる社長という、その分離が日本でも進み始めるんじゃないかという話が書かれているんですが、そういう変化の中で企業の人材開発、どういう点を注意していけばいいかについてお話をお伺いしたいと思います。
 続きまして、多賀先生にお聞きしたいと思いましたのは、ニートとギャップイヤーの関係でございまして、今、日本では非常にニートというのが、英国発でありますけれども、大きな関心を呼んでいるわけでございますが、英国ではギャップイヤーがありながらニートというのがあったわけですね。それがやっぱりそのギャップイヤーによってニートが減少し出しているのかそうではないのか、逆に言えば日本においてこのギャップイヤーを導入することによってニートの増大に歯止めが掛けられるのかどうかについて少し御意見を承りたいと思います。
 最後に、耳塚先生には、社会階層の視点を持った教育的支援が重要であるという御指摘、非常に私も重要だと思っております。その意味で、こういう教育的支援をする上で学校教育と家庭教育、また地域教育という三つの教育の連携が重要と考えているんですが、そういう連携をする上でどういう点を留意していけばいいかについて御指摘をいただければと思っております。
 以上でございます。
#25
○理事(辻泰弘君) では、まず梅津参考人からお願いいたします。
#26
○参考人(梅津祐良君) 御質問ありがとうございます。
 ガバナンスの問題というのは非常に大きな問題と考えておりますが、特にドイツ、フランス型というのはボードのチェアマンとそれからCEOですね、執行部隊の長と完全に分離して、イギリスではどうも時々同一人物が二つの役割をしてしまうことがある。それから、アメリカでは今分離しようとしていますけれども、やっぱり同一の人がCEOであってチェアマン、そういうことを両方やっている。その両方やっている場合に問題を起こす可能性が高いわけですね。エンロンとかワールドコムというスキャンダルがありましたけれども、自分の、何といいますか、私腹を肥やすために株価を操作したという、これは完全にガバナンス、要するにチェアマンの方から、あるいはボードの方からチェック機能が働かなかったということ。ですから、これは問題でありまして、アメリカでも今反省が起こっています。
 それから、日本についていいますと、実はオフィサー、要するに執行部門の責任者ですね、オフィサー、チーフ・エグゼクティブ・オフィサーとかチーフ・オペレーティング・オフィサーとか、これについてと、それからボードのチェアマンあるいはディレクターの役割がどうもまだ分離していない。オフィサーという言葉がはやり出したのもここ十年ばかりかと思います。何といいますか、概念としても定着していないし、実践としても定着していないということですね。
 私もちょっとこの間驚いたんですけれども、三洋電機という大変優れた会社で、女性の、チェアマンでありCEOという二つの役職をアポイントされたわけですね、ちょっと名前は申しませんけれども。あれはちょっと問題ではないかなと思っています。女性のあの方は大変立派な方だし、会長職は私はできると思うんですね。だけれども、CEOというのはビジネスの毎日のこと、あるいはどういう新製品を開発して、どういうふうにマーケティングをやってという、そういうディシジョンをする役割ですから、ちょっと素人の方で入ってすぐやれるという仕事ではないというふうに思います。
 ということで、オフィサーとそれからチェアマンシップというのはきちんと分けるということがこれから必要だと思います。育成についても、やはりどういう道でトップ層の教育をしていくかということはやはり方向付けをしてあげて育てていくべきだというふうに考えております。
#27
○理事(辻泰弘君) ありがとうございました。
 では、多賀参考人からお願い申し上げます。
#28
○参考人(多賀幹子君) 御質問ありがとうございました。
 ニートというのはイギリスが発祥の国でして、ブレアさんが言い始めた、もう御存じだと思いますけれども、教育も受けてないし、働いてもないしと。働くための準備にも入ってないと。何もしてない人たちということですね。イギリスで百十万人ということで、毎年八万五千人増えているということです。でも、始まりまして、ブレアさんがやりました、いろいろなものあるんですが、コネクションズというものを、まあコネクトしていくということでつくったんですけれども、全国に四十七ほどあるんですが、これを始めまして、二〇〇三年で一〇%ほどニートはもう既に減少しておりまして、そのニートということでいろいろなセンターをやって、そこにパーソナルアシスタントを置いて、いろいろ窓口を開きまして一人一人の若者とお話しするというようにしたんですけれども。
 そのときに、若年のホームレスの人と話すと、そこには親の離婚が絡んでいると。あるいはどうしても勉強したいのに御家庭が貧困で、貧乏で行けないというときには奨学金を教えるとか、非常にもう若者一人一人が、一口にニートとは言っても抱えている背景、問題はもう一つずつ違うということが分かってきまして、それぞれに一人一人に対応しようというようになっています。
 そのメンター制というのがかつてからあったんですが、メンターということで、地域の方がちょっとこう問題のある子供を一対一でお仕事の後に会うメンター制とか、アメリカはビッグブラザー、ビッグシスターというのがあるんですけれども、やはりこれも週末に恵まれないお子さんに一対一で会って健全な成長を促すと。ビッグブラザー、ビッグシスターというように、やっぱりニートと一口で言うよりも、それぞれの方の問題を一対一で対応していこうというようになって大変成功しているということが言えると思います。
 ニートというのは現に減ってきていますし、あるいはまた何をニートというかという、言葉も少しずれが出てきておりまして、ニートというのはもうやめて、エックスニートという、もう過去の、前のニートであって、今はイートでいこうと。ノット・イン・エデュケーションのNを取りまして、エデュケーション・エンプロイメント・トレーニングをくっ付けましてイートと。ニートからイートへということで、またブレアさん三回目になりましたのでこれを推し進めていくというふうに言っていますので、イートに向かって進んでいくんじゃないかと。個別に対応するということが大事なようですね。
   〔理事辻泰弘君退席、会長着席〕
 それから、そのギャップイヤーの関係ですけれども、ギャップイヤーというのが高校と大学の間のギャップということだけに狭まれていたのが、もう就職の前でもいい、就職三年後でもいいというふうに非常に広がりを見せていますので、そういった面ではエックスニートが働き出したときに、それが決まった時点で、そこでギャップイヤーを取ってもう一度自分の、どうして働くかというのを見直していくということは十分に可能だと思います。
 自分探しということでは、そのニートもパーソナルアシスタントとお話しして、いろんなことを聞いて自分の将来を決めていくわけですし、ギャップイヤーはそれをまた自分でボランティアなり旅行なり奉仕活動とかお仕事なんかで探していくわけですから、重なる部分は十分にあるんじゃないかと思います。
#29
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、耳塚参考人、お願いします。
#30
○参考人(耳塚寛明君) お答えします。
 階層の視点を持った教育的支援として学校、家庭、地域の連携というのが非常に大事になるんではないかという御指摘で、そのできれば具体的な実践的な方策について提案せよということかと思います。
 繰り返しになりますけれども、私が主張したかったのは、教育的な支援というのが不可欠で、その際にはエリート層を、エリートセクターを伸ばすということが重要であるのと同様に、家庭的な背景ゆえに学力に低下を来したりとか、特定の進路を選択せざるを得ないような子供たちに対して、彼らに対して手厚くなされる必要があるという、そういう主張であります。
 このことについて具体的に考える上で幾つかのレベルの方策が考えられると思います。
 第一は、御指摘のように学校、家庭、地域の連携という、言わばミクロレベルでの問題の解決を図っていくということで、これは不可欠なことと思います。
 具体的には、やはり現に存在する事例に学ぶということが一番手っ取り早いのではないかと考えます。すなわち、成功している事例であるとか失敗している事例に学ぶということが必要かと思います。私どもの研究仲間にはそのような事例のあるような地域を取り上げて研究をしている例もありまして、それは大変に参考になる実践の仕方、学校と家庭と地域が連携をした事例が既に示されております。
 ただし、この問題はミクロなレベルで解決するかというと、必ずしもそうではないであろうというのが私の見通しであります。
 御説明、時間がなくてできなかった部分のデータに、五ページから六ページにかけてのデータがございます。多少触れてしまってよろしいでしょうか。──はい。ありがとうございます。
 五ページ、これは先ほど申し上げました関東地方の小学生のデータではなくて、別の調査におきまして家庭的な背景と学力の関係を見たものであります。ここでは、家庭的な背景といいましても、一つは親の、父親の学歴を取りましたが、もう一つは受験塾に通塾させるような家庭であるかどうかという、言わば家庭の文化とか価値を問題にした観点からデータを示しました。
 五ページにございますように、これは、受験塾への通塾者と非通塾者とでは学力の分布が全く違ってきてしまっております。六ページの図は父親が大卒である場合と非大卒である場合の分布の違いですが、これも山が二つずれておりますことにお気付きかと思いますが、父大卒の方が全般に十数点分ぐらい右側にシフトしたような分布を示すわけであります。
 このように家庭の経済とか文化とか価値にかかわって子供の学力が形成されているとするならば、ここに、家庭という最も私的な領域に他者が介入するというのは大変困難なことでありまして、学校において手厚く指導するということは可能ではあっても、その家庭の環境自体を左右するということは大変に難しいことであります。したがって、私はこの問題はよりマクロな、例えば社会政策において社会的な格差をできるだけ小さくする政策だとか、あるいは教育政策上の何がしかの工夫が必要なのではないかというふうに考えております。
 教育政策上の施策というのはいろんなレベルがございますけれども、例えば学力というのを別の観点で定義してやる。例えば、これはイギリスにおいて既に行われたことがあるのですけれども、あるタイプの学力を重視すると階層差は小さくなるけれどもあるタイプの学力を重視すれば大きくなるといった具合に、どういう学力かによって家庭的な背景と学力の関係は違ってまいります。
 現在のようにアチーブメントテストを中心にして学力を測ってやると、例えば六ページの一番最後にシミュレーションの結果を示しましたけれども、大変に家庭の経済的、文化的な環境の影響が明確になって出てきてしまいます。この例で申しますと、受験塾の通塾者だとか父大卒者が圧倒的に有利なテストになってしまうわけであります。ところが、測り方を変えてやるとこの差は幾分小さくすることができるのではないか。これはミクロな実践の問題ではなくて、もっと国全体として学力というのをどう定義してあげるのか、そう考えるべきことではないかと考えます。
 長くなりましたが、失礼いたしました。
#31
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 それでは、井上哲士さん。
#32
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は参考人の皆さん、ありがとうございます。
 最初に、梅津参考人にお伺いをいたします。
 ここ最近は、JR西日本のあの事故の問題における経営者の在り方というのが大変大きな話題になっていると思います。目先の利益で安全を軽視をしたんではないかとか、それからリストラと一体となった職場の在り方の中でなかなか物が言えなかったんではないかとか、それから、非常に三十代が少なくて、二十代、四十代になっていて、技術の継承がうまくいっていなかったんじゃないかとかということが指摘をされております。
 先生が書かれたものを読みますと、EQという言葉を使われて、気働きですかね、一部、幾つかの企業も挙げられまして、安易なリストラを廃して雇用を守った企業が非常にやる気を高めている、高いEQを持っている会社だということで評価もされておられます。そこで、こういうJRの問題なども対比をされながら、社会的責任とか雇用の確保という点での経営者のリーダーシップの在り方について御意見をちょうだいをしたいと思います。
 それから、多賀参考人と耳塚参考人にお伺いをいたします。
 耳塚参考人から、夢や希望を捨てるなという進路指導が結果としては職業社会への分配機能を弱めているというお話がございました。一方、多賀参考人からは、アメリカなどで自分を大切にするという教育の良さというのが、お話があったと思うんです。これはやっぱり自分の夢を大切にするということなんだと思うんですね。
 実は、前回の参考人質疑のときにも、ニートの若者を支援をしている団体の方から、そのニートの若者というのがやりたいことが分からない、言わばやりたいこと探しをしていると。それに対して、そんなみんなやりたいことがあるわけじゃないんだとか、やりたい仕事をみんなしているわけじゃないんだよということを諭しているんだというお話がありまして、ちょっといろんな思いを持って聞いたんですね。我々政治家としては、やっぱり夢は捨てるなと、それが、夢が実現する社会を一緒につくろうじゃないかということを訴えたいわけでありますが、それとは少し違うお話だったのかなという気がして、今回も聞いたわけです。
 そこで、まず多賀参考人にお聞きしますのは、そういう自分を大切にする、夢を大切にするという教育と、言わば職業指導といいましょうか就職指導、それから就職への道というのが米英などではどういうふうに連携をしているのか、うまくいっているのかいっていないのかということが一つ。
 それから、耳塚参考人には、そういう今の進路指導というものについてはやっぱり変えるべきだという御意見なのか、むしろそれが生きるような方向に教育やいろんな社会環境を変えるべきだという御意見なのか、もう少し詳しくお話しいただければと思います。
 以上です。
#33
○会長(広中和歌子君) それでは、梅津参考人、お願いします。
#34
○参考人(梅津祐良君) 大変難しい御質問でございますが、できるだけはっきりした形で申し上げたいと思いますが。
 最近、経営者の責任って、バランススコアカード法というのがうたわれています。アメリカ企業では、利潤、利益を追求する、それで株主に対して高い配当を払い、そして株価を上げていくことが優れた経営者というふうに今まで評価されてきたわけですが、最近、ノートンさんとキャプランさんというのが、いやいや、そうじゃなくて、経営者というのは、もっと顧客に対する責任と、それから従業員に対する責任と、それから社内のシステムですね、継続的に成長するような社内のシステムをつくりましょうとか、財務的な目標だけではありませんよという、これは非常にいい指摘だと思うんですね。
 ですから、JR西日本について、まだ私は分析は済んでいないと思いますが、ちょっとやはり財務的な目標に目を向け過ぎたんではないかという気がします。というのは、効率経営ですね。効率を高めて利益を高めようという、そこがちょっと強調され過ぎている。
 そこで、今回ちょっと発表を伺っていたら、安全を重視する風土をつくりますということ、それから社内のコミュニケーションをどんどん濶達にするような改革をします、それから安全教育ですね。あのねらいというか方向性は全く間違っていないと思いますが、風土とか文化を改革するというのはとても骨が折れるというふうに思いました。ですから、それについて真剣に取り組んでいただきたいのと、それから、単に、何というんでしょう、井上先生のおっしゃった気働き、EQですね。これは役には立つと思いますが、その前に、やはりもう一つ、文化的な面あるいは風土的な面の改革を進めていかなければいけないというふうに思いました。その上で気働き、EQを導入されたらよろしいかなというふうな感じを受けております。
 それから、トップマネジメント、JR西日本のトップマネジメント下の行動といいますか、私は、単に記者会見の映像を見ながらの感想ですけれども、やはり非常に官僚的組織だなという感じがいたしました。やっぱりトップダウンですね。ボトムアップというか、例えば下から改善提案が来て、それをちゃんと新しい方向に結び付けていくというところまでまだちょっと行っていない。非常にトップダウンという感じがいたしまして、これは今のトップマネジメントが悪いということではないと思うんですけれども、伝統的な、あるいは今までそういう経営が続いてきたのかなと。
 まだ、大変、私、外部的な発言で申し訳ないんですが、私見を申し上げました。
#35
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、多賀参考人。
#36
○参考人(多賀幹子君) 御質問ありがとうございました。
 アメリカとイギリスの職業指導ということだと思うんですけれども、アメリカとイギリスとは、同じ英語をしゃべるんですけれども、ちょっと違っていまして、アメリカの方は、アメリカンドリームを追うというのがもう国是というか、大変これが重要なことだと言われているんですね。
 一番驚いたといいますか、それは、企業がファミリーデーというのをこしらえていまして、働いている人の子供とか、配偶者でもいいんですけれども、会社に連れてきて、お父さんが何をしているか、どういうところに座って何をしているか、あるいは、もちろんお母さんでもいいわけですね。お母さんがどこで、どういう会社で何をしているかというのを見せるというのがもう当然のように行われていまして、子供に、それで自分の同僚やら上司と会わせて、一体職業とは何かというものを、ごくごくもう小学生、幼稚園ぐらいからもう連れていって自分の会社を見せる、働くということは何かを見せると。
 あるいはアルバイトですね。ニューヨーク、とても雪がよく降りまして、よく雪が積もるんですけれども、すぐ男の子がシャベルを持ってきて、雪かきさせてくださいと言って来るんですよね。五ドル取られるものですから、もうちょちょちょっとやったぐらいで、すぐ、はい五ドルとか言われるもので、またすぐ積もると、また次の男の子が来てすぐ五ドルとか言われるもので、もう何とかして稼いでやろうというか、それをまた親が、小学生から金に汚いとか、何か妙に金にうるさい子だとかということを全然言わないで、何とおまえはアイデアがいいんだろうね、こうやって稼いできたのかということを非常に褒めるんですよね。
 あるいはカーターさん、大統領なんですけれども、一番下に女の子がいて、カーター大統領が大統領になったとき、南部から出たというので記者がわっと来たときに、そこにジュースを並べまして、やってきた全国の記者に一杯これで二ドルで売ったというので、大統領の娘が商売やっているという、驚いたんですけれども、いやいや、なかなかアイデアが良く、若いときから起業家精神がもうあふれているとかといって褒められて、さすがはカーターさんのお嬢さんだなんて、ファーストドーターだなんて言われていましたから。
 子供のときからアイデアで稼ぐというのがとても大事なことだというように言っていて、そういうことから、もう遠くからだんだん職業指導をしているといったような感じですね。稼ぐことに何のちゅうちょも恥ずかしさもないということが、起業家精神が豊富、ビル・ゲイツとかすぐ思い浮かぶんですけれども、ああいったことで、アイデアで勝負して、それでお金をもうけようというのが子供のときからどんどん進められているというような感じで、親も会社に連れていくし、学校にもコミュニティーの方が次々に、パン屋さんでも銀行の方でも呼ばれて、自分がどんな仕事をしているかお話しするといったようなことがありまして、それが職業訓練にだんだんつながっていくんじゃないかと思うんですね。
 イギリスの方はちょっとまた違っていまして、やっぱり階級がまだあるんですね。クラスレスの社会になったとかとブレアは言っているんですけれども、やっぱり新聞も違うし食べるものも違うし、もう英語の発音も違うというぐらいまだ階級がありまして、ここでどういうふうに職業訓練をするかというと、非常にあめとむちといいますか、非常にはっきりしているんですけれども、職業訓練学校、今とても力入れているんですけれども、その学校を退学したりサボらないで学校に行くとお小遣いくれるんですね。よく学校を休まなかったといってお小遣いくれるんです。それでみんなとても喜んで学校に行くといったよううなことが、ちょっと日本人から考えると、学校に行ってお金くれるなんて何か余りにもって感じがするんですが、学校を休まないと、よくやったと褒められるぐらいじゃなくてお金をくれる、お小遣いをくれるんですね。
 あるいは子どもに非常にボランティアをさせるんですね。それで職業訓練をさせるというか、ボランティアだとお金は入らないんですけれども、インターンシップといいますか、それぞれのいろんな会社がインターンシップを受け入れるように制度ができていますので、そこのインターンシップで夏休みに一か月とか何かを教育を受けるというか職場の体験をするというようなことが非常に重要視されていまして、今そのインターンシップをやったことが就職の重要な良い会社に合格する必須条件とまで言われていまして、働いた経験を全然持っていないで新しく自分の会社に働くというのは余り良くない、どこかで働いてもらったらコミュニケーションの能力はできるし、いろんな苦労もあるだろうし、忍耐力も養われるだろうし、いろんな人と付き合うすべも学ぶだろうということでインターンシップ、大学時代のインターンシップがもう良い就職のための必須のようなことになっていまして、イギリスは、階級を超えていかに労働者階級のお子さんも職業の自由を与えるかといったような感じで、お小遣いを上げてでも学校は真っ当に行くようにとか、あるいはあめとむちでして、悪いことをすると割と早めに刑務所に入れちゃうということをやるんですよね。あるいは足にタグを付けて夜間外出禁止令というのをやるとか、割と厳罰主義なんですね、イギリスは。その代わり、ちゃんと勉強したり頑張ったりしたりする子にはお小遣いをくれるといったような、割と実践的な実務的なところがイギリスでは非常によく見られました。
 以上です。
#37
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、耳塚参考人、お願いします。
#38
○参考人(耳塚寛明君) お答えしますと、私のレジュメの二ページの二の三の二というところに書かれたことについてのお尋ねだと思います。
 バリュー、価値、主観的な価値とポシビリティー、実現可能性、機会、この値を掛け算して最も大きな選択肢を人々は選ぶという、これは進路選択の合理的な理論とでも言ったらいいかと思いますけれども、これをここに示しました。そして、これを示しましたのは、かつてはポシビリティーの方が、つまり何が可能か、どこに入れるかというポシビリティーが重視された進路選択であり進路指導であったものが、今日はバリューの方にウエートが置かれるようになってきたということ、その変化を示すためにこれを出したわけであります。
 私の主張といたしましては、言ってみれば非常に月並み、凡庸なものでございます。要するに、両方ともの視点が重要じゃないかという点であります。
 第一に、バリューだけであっても実現可能性が考慮されないような選択というのは、実際には実現できないわけですので無意味であります。この意味で、人々の選択、青少年の選択は機会構造の中で、それに制約された範囲で行われるにすぎないということであります。しかし同時に、ポシビリティーだけが重視されていたら、人々はその職業に自負だとか誇りだとか熱意だとかを持つこともできません。継続することも不可能になるでしょう。そのためには、既存の機会に唯々諾々と従うというだけではなくて、できるだけ人々が意欲とか誇りを持てるような仕事を創出するという努力もまた同時に必要になるのではないかと考えます。
#39
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、渕上貞雄さん。
#40
○渕上貞雄君 参考人の方、大変御苦労さまでございます。社民党の渕上でございます。
 まず梅津参考人にお伺いしますけれども、最近のライブドア事件、それからJR西の問題などを考えてみますと、やはり企業文化というものが非常に大事なことではないかと。余りにもその二つの事件をテレビなどで見ていて利に走り過ぎているんじゃないか。そういう面から見たときに、経営者の倫理と責任というものをどのようにお考えになっておるのか、一つはお伺いをしたいと思います。
 それから多賀参考人の方には、ニートがイギリスではだんだん減ってきているというお話でございました。逆に日本ではそれが増えているという現象が現れていますけれども、イギリスと我が国と比べて条件も環境も違うから大変その対策は難しいと思うのでありますが、我が国の若者に対するといいましょうか、ニート対策というものをどのようにお考えになっているのか。
 それから耳塚参考人には、高卒無業者というのは、私どもの感覚でいけば働きたくない、それから学びたくない、こういう若者だと思うのでありますが、そこに職業的な成熟、職業的能力を高める、このように五ページのところで書かれているわけですけれども、その場合に、そういう高卒無業者に対する教育の在り方、どのような教育を施すことを通じて労働市場へ復帰させていくのか、就職活動へ向かわせるのかというようなことをお考えになっているのか、そこに@、A、Bと書いておられますけれども、そのことも理解できますけれども、具体的にはどのようなことをお考えなのか。
 以上でございます。
#41
○会長(広中和歌子君) まず、梅津参考人。
#42
○参考人(梅津祐良君) 倫理とそれから経営者の責任ということでの御質問かと思いますが、企業にはステークホルダー、企業を取り巻く利害関係を持つ人たちがいて、アメリカでは株主ですね、株主に対しての責任というのが非常に強調されています。だから、利益を高めて高い配当を差し上げて株価を高く保つという、そういう視点が非常に強調されているわけですね。
 私も企業へ企業研修の講師として伺ったときに、皆さんにとって、ステークホルダーの中でどういう順位を付けられますかというふうにいつも伺うんですけれども、かつては実は顧客か人材なんですね。顧客が一番、私にとっては顧客が一番、あるいは人材が一番、これどっちかどっちで。それから社会ですかね、地域社会というか社会。そして行政というのが出てくるんですね、やっぱり官庁、監督官庁。それから昔は銀行というのが出てきた。
 やっぱり順位がこのごろ変わってきているように思います。日本の経営者も、残念ながら利益利益というのが相当強調されるケースが出ておりますよね。これはグローバル競争に巻き込まれておりますから、日本の経営者も利益上げないとしようがないわけですね。大体、トヨタ、ソニーその他の大変優良会社というのは五〇%ぐらいは外国人株主ですから、その人たちの言うことを聞かないといけないというとてもつらい立場に日本の経営者も置かれているというふうに思います。でも、やはり従業員だとかそれから顧客とかをしっかりやっぱり優先順位を高めて経営していただきたいというふうに考えていますけれども。
#43
○会長(広中和歌子君) では、多賀参考人。
#44
○参考人(多賀幹子君) 日本のニート対策についてという御質問だったんですけれども、いろんなところを取材したりお話を聞いたりすると、何か子供が働く意欲がないというのは必ずしも当たっていないというふうに感じるんですね。子供というか青年というのは、非常にやっぱり意欲にあふれていて、何か自分が何かをしたいという気持ちは結構持っている人がいるんですよね。それが、その親がつぶしているというか、例えば何か、済みません、本当にあれなんですけれども、例えばですよ、大工さんになりたいとか、例えばですよ、八百屋さんになりたいとかあるいは、といった場合、親が何か格好悪いからやめてほしいとか、何か名前がちゃんと付いている何とかかんとかという会社に背広を着てサラリーマンとして通勤電車に乗ってちゃんと通ってほしいとか、すごく親が最近見えっ張りでというか、親が、あるいは片仮名の言葉ですよね、ライブドアというのはすっかりもう有名になりましたけれども、例えばそういったような名前で、若者の間ではよく知られているのに親が付いていけないような名前が最近とても多くて、こういうところに僕は働きたいんだけどっていった場合、親が周り囲んじゃって、そんな格好悪いと親戚に顔向けできないとか、もうそんなところはやめてくれとかというようなので、ついに子供がもう何かどうしていいか分からなくなっちゃったという話を結構聞くんですよね。だから、もう少し何か親に対する見識というか、親の意識を変えてもらわないと、親が子供をニートにしているんじゃないかというような感じがするんですね。
 イギリスのニートというのは非常に深刻で、妊娠している人が二十倍とか麻薬に取り囲まれちゃっている人が十倍とかという、ニートは深刻な問題で、ニートを解決すればいろんな問題も解決するんじゃないかといって取り掛かっているわけですけれども、日本のニートの場合は非常に親絡みで、私の見た限りでは、あるいは子供の数が少ないもんですから、親が、子供が引きこもっちゃって自分の部屋にいる場合に、そっと御飯を差し入れているという方が近所にいるんですけれども、何しているんだ、そういうのとかって言って余り怒らなくて、そっとそっとそっとはれものに触るように甘やかしているような面もあるんですね。かわいくて、何もそんな、うちは、親の世代が割と裕福になってきているもんですから、あんたが働かなくてもあんたぐらい食べさせてあげるからというような親がいたりして子供の自立を阻んでいると。親に対するペアレンティング教室みたいなものを、子供に対する就職支援というのは大学にもそれぞれ整ってきて、しっかりした支援をなさっているところがとても増えてきているんですけれども、親に対する意識の変換を迫るような、働くということに関して子供から相談があった場合にもう少し積極的にそれを肯定してあげるような、応援してあげるような、親の認識を変える必要があるんじゃないかって、いろんなところの話聞いて非常に思うんですよね。
 あるいは、また一方では、大学生の方はとてもプータローになっちゃいけないというか、ニートになっちゃいけないというか、ニート恐怖症が蔓延していて、一年生からもう英検に走りまくるとか、TOEICはもう何点、七百取ったとかと言って、大学時代が失われているというか、四年間の大事な自分探しの、元々ディズニーランドであったと言われりゃそうかもしれませんけれども、その自分探しの四年の間が就職のための四年間になりがちなところがとても多くなってしまって、資格に走っている方がとても多いんですね。もう一年生から英検あなたは何級取ったとか、いや一級取らなくちゃいけないとか、もっとしっかりした強い社労士を取りたいとか会計士を取りたいとか、そういったものになっていて、友達とわいわい騒ぐよりも夜一生懸命勉強する。それはまたいいことかもしれないんですけれども、また別な意味で何だか青春をしてないというような感じで、もっと日本のニートというのは抜本的な認識から変えてほしいと。
 イギリスのニートって、もう体が震えてしまうぐらいおっかないような例で、犯罪の二十倍なんというのは、もうニートタウンというところが出ていて、そこには郵便配達も行くのが怖いぐらい、若者の半分以上がニートで昼間からごろごろしていて、そんなニートタウンがあるというようなことなんですね。ロストジェネレーションとかポリティカルコレクトでニートなんて言っていますけど、実はもう社会の落後者でというような言い方されているんですね。
 それに比べたら日本の方はまだまだ親の認識で変えられるところがかなりあるのではないかというふうに思えるんです。大学生の親に対する何か認識改め講座みたいな、ペアレンティングクラスのようなものを大学なり何か地区に置いて、大学の単位で行われるといいなというふうに考えています。
#45
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 じゃ、耳塚先生、お願いします。
#46
○参考人(耳塚寛明君) 私のレジュメで申し上げますと、四ページの一番下、四の三の二、「なお必要な就職支援」という、この点についてのお尋ねだと思います。
 なお、十分に御説明できなかったところがありましたが、私の申し上げている高卒無業者というのは決して働きたくない青年を意味しているわけではありません。それを含みますが、働きたいけれども機会がないがために働けない若者も相当数含まれていて、それは労働市場の要因による無業者であるわけであります。
 その上でお答えをします。
 二つの質と申しますのは、質を高めることが必要、その二つの質とは、職業的成熟と、それから専門的な能力における、即戦力としての専門的な能力というその二つであります。
 ここに、ある中小企業の経営者の言葉を引いておきました。読んでみますと、「採るならね、三十歳くらいで、できれば小さな子どもが二人くらいいる男性がいいですね。子どもがいると養わなければいけないから、辞めないし、「お給料、これだけしか出せませんけど、これでやってください」って言っても、「はい」ってやってくれるし。」と。雇用者の方からいうと、新規高卒労働、新規の高卒者と競合するのは、大卒者というよりも中途採用の労働者であると。それとの比較で今こういう経営者が言葉を言っているわけであります。ここで欠けている新規高卒、書かれてはいませんけれども、新規高卒には、このような意味での職業的な成熟が欠けているということを指摘しているわけであります。
 翻って、では職業的な成熟とか未成熟というのは何を意味しているかといえば、それは例えば協調性とか会社への忠誠心とか勤続意欲の堅さとか、それから生活のために働く姿勢、こういったものが職業的な成熟であると思います。
 では、これをどうしたらいいのかという問題です。
 結論から言うと、先ほどの多賀さんの回答と非常に似た印象を私は持っております。この問題は、日本の社会の中で青年期をどう位置付けるか、とりわけ家族との関係をどう位置付けるかという問題であると思います。今日の日本社会では、なお青年期というのは家族に依存して生活してよい時期だとされております。それがために、実はこの無業者の問題とかニートの問題というのは日本では問題化するのが遅れた、つまり家族がその問題を自分の身の中に引き込んでしまって顕在的な社会問題となるのを防いできたという側面があるのではないかと思います。だとすれば、この保護者に経済的に依存した青年期の在り方を変えない限りは、生活のために働くという姿勢を若者が積極的に持ち得ることはないのではないかというふうに思います。
 じゃ、どうしたらいいのかと言われると大変に困るのですが、しかし問題の根っこは、このように青年期と家族の依存関係ではないかというふうに思っております。
#47
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、松村祥史さん。
#48
○松村祥史君 自由民主党の松村祥史でございます。
 今日は三人の参考人の皆様、貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。
 私は、今日はお一人だけ、梅津さんにちょっとお話をお伺いしたいんですけれども、私も一年前まで経営者をやっておりましたから非常に興味深くお話を聞かせていただきましたし、正にMBA教育というのはこれに一番時間を費やした、自分が経営をやっていたときに、思いがございます。その中でこういうものを体系化して、私は実学が先でしたから、後ほど勉強したときに、ああ、こういうものなんだなというのを体感した方ですけれども、正に必要なことだと思っております。経営というのは、やはり私の感覚からいいますと生き物だと、一番大事なのは判断、決断。覚悟を持った決断や判断だというふうに思ってやってまいりましたけれども、こういったものを体系化して学問としてやっていくというのは大事なことだと思っております。
 そこで、先生がいろいろ今まで教え子の皆さん育てられたと思いますが、どれぐらいのパーセントの数で、どれぐらいの割合で経営者になられたり、経営者のパートナーとして活躍して、実学、実践やっていらっしゃるか、これを少しお尋ねをしたいなと。
 それから、教育についても、日米比較をしたときにアメリカの方が先んじているよというようなお話を伺いました。じゃ、どの辺がどう優れているのかと。ただ、私が思いますに、日本とアメリカの経済を比較したときに、アメリカというのは経営と資本が分離されております。特に日本の場合は中小企業においては事業承継という形で同族の中でやられていることが多いですから、こういうナショナリズムの違いとか環境の違いも多々あるんじゃないかなというふうに思っておりますが、このことについてはどのような御意見をお持ちかと。
 それともう一つ、日本の場合は、例えば人材教育の場所がこういう大学院とかじゃなくて、例えば中小企業大学校というのがございます、政府系で。こういうところに安いお金で人材派遣をしながら社内の教育を外部でできるような仕組みができ上がっておりますけれども、先ほどの例えばアメリカのMBA教育が進んでいると、だったら、もしその中小企業大学校のカリキュラムを御存じであるならば、こういうのを比較してみるといいんじゃないかとか、もし御意見がございましたらば聞かしていただきたいなと思っております。
 以上、三点でございます。
#49
○会長(広中和歌子君) それでは、梅津参考人、お願いします。
#50
○参考人(梅津祐良君) 第一点目は、私どもが、MBAの出身者で経営陣になった人がどのぐらいかという比率ですね。
 第二点目はもう一度お願いできますか。
#51
○松村祥史君 第二点目は、アメリカのMBA教育がやはり日本に比べると進んでいると、どの点が進んでいるのかと。
#52
○参考人(梅津祐良君) そうですね、はい。
 それから三点目は、中小企業の経営者の教育は、例えばアメリカで行われているかどうかということですか。
#53
○松村祥史君 いや、中小企業といいますか、日本の中小企業のそういう教育機関というものが、実学でいいますと政府系で中小企業大学校というものがあるんですね。そのカリキュラム、例えばアメリカが日本より優れていると。それを比較したときに、例えばその中小企業大学校でこんなことをやられるといいですよとか、そういうものがありましたらば教えていただきたいなと。
#54
○参考人(梅津祐良君) 分かりました。
 第一点目の御質問に関して申し上げますと、ちょっと私どもの、先ほど申し上げたように早稲田のビジネススクールというのは七年間ちょうどやってきておりまして、まだ卒業生が若いので、どこまで経営陣に進んでいるかという点はちょっとお答えできない。ただ、企業の中堅として、要するにマネジャーとして活躍をし始めているということは言えると思います。もうちょっと時間を待っていただくと。
 それから、アメリカの優れている点、MBAですが、これは私はちょっとやっぱり日本の経営者とアメリカの経営者で非常に一般的に申し上げますと、アメリカの経営者あるいはトップマネジメントはリスクテーキングですね、リスクテーキングを日本の経営者よりもやるか、あるいはやりやすいのかもしれませんね。それから、少しそのリスクテーキングについては、かなり自らも一生懸命考えて新しいことをやるということで、あるいはそこでリスクがあるけれどもやろうという、そういうところがちょっと強いかなという気がいたします。
 あとは、MBAの中の教育の内容ですけれども、日本のMBAも一生懸命今追い付こうとしていますから、だんだんにこうギャップは埋まっていると思います。ただ、さっきの申し上げた点ですね、リスクテーキング面がちょっと欠けるかなと。
 それから、中小企業大学校に当たるような機関を私はちょっと存じ上げません、アメリカについて。ただ、MBAの中でアントレプレナーシップという、新しく企業を起こす、これはとても各MBAで一生懸命やっています。有名な学校で、ボブスンという学校なんかは起業家を養成するということを専門にしておりますから、そういう面は多少あるかなという感じがいたします。
 それからもう一つ、アメリカのMBA、ハーバード、スタンフォード、シカゴ、大変有名な超一流のところが今悩んでいる問題が一つあるんですね。それは、大体二年プログラム、二年間大体いて修業して出るわけですが、実は一年間の基礎的なところを終わると辞めちゃう人が多いらしいんですね、一五%ぐらい辞めると言っていましたけれども。
 じゃ何やるかというと、起業しちゃうんですね、自分で業を起こしちゃう。マイクロソフトのビル・ゲイツも中退、あれはMBAではありませんけれども、中退ですよね。それは、今のMBAで非常に優れたアメリカの若者で一年たつとどんどん辞めちゃうというか、それがちょっと今問題になっているようですが、これは、だから、やっぱり起業家として自分で事業を起こしちゃおうかといって、そっちの意欲が非常に強いというふうに感じます。
#55
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 次、広田一さんに御質問いただきますが、質問する方も、参考人の方々にもお願いしたいのですが、まだ多くの委員が質疑を希望しておりますので、質問、御答弁、簡単に行っていただきたいと。御協力をお願い申し上げます。
#56
○広田一君 民主党・新緑風会の広田一でございます。
 本日は、三人の参考人の先生方、誠にありがとうございます。お三方に御質問したいんですけれども、時間の都合上、梅津参考人の方に御質問したいと思います。
 先ほど来、JR西日本とかライブドアのお話が出ているわけなんですが、参考人のレジュメの方で、MBA教育の方法、その中でのビジネスで取り組む諸分野について、戦略、状況分析から倫理、ガバナンスまで挙げられております。それぞれ重要であり、それぞれ相互に関連性もあろうかと思いますけれども、特にこれから若い人材に求められていく資質の中で、これにあえて優先順位を付けるとすればどのようになっていくのか。逆に言えば、今のこの日本のこれからを引っ張っていく経営リーダーに今欠けているもの、必要とされるものは何なのか、お示しをいただければなというふうに思います。
 あわせて、リストラについてちょっとお伺いしたいんですが、先生の論文の中でもスタンフォード大学のビジネススクールの教授さんのお言葉を引用されて、リストラについて長期的に企業の成長力を高めることには貢献しにくいというふうな御指摘をされております。
 以前もこの調査会の参考人の先生の中で、リストラをする場合には、ただ単に定年退職とかリストラをして人件費を減らすだけでは長期的には駄目だと、しかしながら、全体として例えば五%ぐらい総人件費を圧縮しながらも、若い新規雇用を継続的に行う企業が成長しているんだと、このことによって、先生も指摘されている技術伝承といったものがなされているんだというふうな御主張があったんですけれども、これは学問的に実証されている理論なのかどうか、このことについてお聞かせ願いたいと思います。
 以上です。
#57
○会長(広中和歌子君) それでは、梅津参考人、お願いいたします。
#58
○参考人(梅津祐良君) まず、リストラについてというのは、前の参考人がおっしゃったこと、大変賛成です。コストだけ下げて、要するに自分のぜい肉を取って筋肉まで落としちゃうということは私はとてもやってはいけないことだと思います。
 それから、実証研究、リストラで効果があったかどうかということについては長期的に見ないといけないので、アメリカではやっぱりその検証をされていると思います。今、日本ではまだそこまで検証はされていませんが、私の印象からいうと、やはり、リストラだけやっていて新規事業を起こさないとか、あるいは適切な投資をしないところは、あるいは若い人材を採らないところは長期的にやはり衰退に向かうというふうに考えています。
 それから、MBAで何を最も、もう端的に申し上げますと、やっぱり戦略的思考だと思います。状況を読んで、どういう方向に自分たちは向かわなきゃいけないかということをやっぱりきちんとつかめる人材、それをつくりたいというふうに思います。
#59
○会長(広中和歌子君) よろしいですか。
#60
○広田一君 はい。
#61
○会長(広中和歌子君) それでは、松あきらさん。
#62
○松あきら君 本日は、お三人の参考人の先生方、大変にお忙しい中をお出ましいただきましてありがとうございました。
 それぞれすばらしいお話を伺いまして、伺いたかったこともいろいろ御質問に出ましたけれども、実は、私の娘も中学からイギリスへ行きまして、パブリックスクールを出まして弁護士を今イギリスでしておりますので、多賀先生の書かれたものは、ああ、そうだそうだという、読ませていただいて納得することばかりだったんですけれども、メンター制など私知りませんでして、ああ、これはとてもいい制度だなと。そしてまた、ワーキングリンクスは、日本もジョブカフェなんかやっているんですけれども、非常にこれは最も日本は参考にしなきゃいけないんじゃないかなと。ですから、多賀先生にはこのワーキングリンクスについてもう少し詳しいお話をしていただきたいなというふうに思っております。
 それから、梅津先生は、今、日本では博士号、ドクターを取っても、実は大学に残れるとか研究所に進めて研究できるという方が半分程度だそうでありまして、大学院を出たけれど、あるいはドクターを取ったけれどという状況になっているというふうに言われておりますけれども、例えばMBA、これは早稲田のビジネススクールは七年ということで、早稲田に限ったことではないんですけれども、MBAを取りますと、例えば日本にとって就職率がどういうふうになるのかななんということをちょっと思っております。これを教えていただきたいというふうに思います。
 それから、耳塚先生、私は日経新聞をずっと実は読ませていただいておりまして、ふむふむ、そうだそうだなんて思っておりまして、今日また更にお話をいただきましてありがとうございます。
 今の社会が高卒者を必要としていないのであれば、その高校教育に何か対策を講じなければいけないのかななんというふうにも考えているところでございますけれども、実は高等専門学校の卒業者はほとんど一〇〇%就職が決まるんですね。ところが、工業高校の卒業者、工業高校になりますと七〇から七五ということでちょっと低くなるんですね。そうしますと、例えば高等専門工業高校みたいに一緒にして四年制ぐらいにすると。そして、しっかり教える、つまり工業高校はちょっと中途半端だということなんで。こんなふうにすると、かなり、例えばこういうところを出た子供たちはその専門高校を出た子供たちのように就職率も上がるんじゃないかなと。こういうミクロの対策では仕方がないのかななんという思いもいたしまして、その辺のお考えも伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
#63
○会長(広中和歌子君) それでは、まず多賀参考人からお願いします。
#64
○参考人(多賀幹子君) 御質問ありがとうございました。
 メンター制ですけれども、これはこの配っていただいた中の「甦るロンドン教育」の中の後ろの方にメンターという、この方は病院の方で、働いていらっしゃる方で、教員免状は持っているという女性だったんですけれども、そのランベス地区というのはロンドンの東部なんですけれども、ちょっと荒れているところなんですね。地域の中の女生徒と組み合わせをうまく組み合わせてもらうところが、そういうところがありまして、それは教育委員会の方なんですけれども、組み合わせて、それである女の子と彼女が、毎週とかじゃないんですね、ほんの、負担にならないようにということで、月に一回とかぐらいに会って、何も聞き出すとかプライベートを探るとか全然そんなことはなくて、元気と、それこそお天気の話から入っていって、今どんなことを考えているのというような話、親でもない第三の場といいますか、第三者ということでなかなかうまくいっているようでしたね。女の子も自分の進路のことが決まらなくていらいらしているというようなことでしたが、このメンターの方にそういうことは話せると。親にも話せないことも、こういう、赤の他人でこういう方には逆に質問ができるというようなこともあるらしくて、このゴールドサックさんでしたか、彼女は、すごく明るくなったって言っていましたし、ボーイフレンドの話も出てくるし、親との関係も出てくると。親でもない、学校でもない、第三の場所を設けると。社会的な経験を持った大人の人と話し合うといったような感じで、アメリカでもビッグブラザーとかビッグシスターとかいうのがございますけれども、あれととても似ていると思います。
 メンターという方が非常にとてもできた方ではあるんですけれども、何か教え諭してやろうとか、何かうまいこと言ってやろうとか、全然そんなのはなくて、決まりはあるんですね、お金の貸し借りは絶対しない方がいいとか、ほかの人にあの生徒はこうなのよっていうプライバシーなんかはおしゃべりしないとか、あるいは自分の家には呼ばない方がいいとか、あるいはまた、虐待を受けているというような話が打ち明け話で出てくれば、そういった専門家に引き継ぐといったようなこともできますし、大きい意味で社会人も地域の子供の教育にかかわると、そういうことでやっていることだと思うんですね。なかなか、これが効果が上がったものですから、当時のブランケットさんもこれを全国的にやりたいということを話しておられました。メンターというのは、ギリシャ神話から出てくるメントールというのが語源なんだそうですけれども、地域の子供の成長にかかわる社会人のボランティア制度と、そんなことでした。
 イギリスでもアメリカでもそうですけど、何もボランティアをやっていない大人の人というのはほとんどいないんですよね、何かやっている、こういう子供の成長にかかわっている。あるいは、生まれたばかりの赤ちゃんで虐待しそうなお母さんに対してそのお母さんを訪問して助けるとか、何かいつも、職業も持っているし、もちろん家庭も持っているけれども、ボランティアもやっているといったような方がとても多かったように思いました。もう、私はメンターだとか大騒ぎすることもなく、さりげなく、そう、メンターやっているんですよって、そんな方でした。
#65
○松あきら君 ワーキングリンクスについてはいかがでしょうか。
#66
○参考人(多賀幹子君) はい、そうですね、済みません。
 ワーキングリンクスというのは、いわゆるニートという言葉の前のやり方で、ニート対策が、コネクションズというものが出てきたんですね。このコネクションズが出てくる前の、コネクションズというのは、パイロットのプロジェクトが出てきたのが二〇〇三年で、それで、その前にワーキングリンクスというのが出てきたんです。これは、コネクションズの方がGCSEを受ける前のもう十三歳の段階から相談に乗りますというのに対して、ワーキングリンクスの方はそれよりも年齢が上なんですね、これは二〇〇〇年にもう出ていますので。これは二十五歳からですから、ワーキングリンクスが上の年齢の方と、コネクションズが下の年齢の方というようになっているわけです。
 ワーキングリンクスはここに書かせていただいたとおりなんですけれども、いわゆる官民一体で、イギリス政府と民間のマンパワー社、キャプテン・ジェミニ・アーネスト・アンド・ヤング社という二社からできていまして、再就職問題、これにもう全面的に取り組んでいると。長い長い失業時代を持っている人というのは、なかなかもう一回働きたいという動機付けが難しいようで、十年後はあなたは何をしていると思うかとか、あなたの子供さんがお父さんは何をしていますかって聞かれたら何て答えますかというような、心理学者の方の質問から、動機付けから入っていっているようですね。
 政府からお金が出ますので、まず散髪に行ってもらうとか、ぱりっとした洋服ですね、スーツを買ってもらう、靴が大事だということで、靴を買うとか、携帯の電話を持ってもらうということから始めてもらって、面接の練習をすると。非常に手厚い感じがしました。このワーキングリンクスが非常に成功したので、もっと年齢を下げてコネクションズの方に行ったんだと思います。
#67
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、梅津参考人、お願いします。
#68
○参考人(梅津祐良君) 御質問の第一点のPhDとかドクターとかというディグリーの方はこれからは大変だと思います。特に大学の先生、高等教育の先生になろうとしたら、ポジションがどんどんどんどん減ります。少子化で大学生の数も減るし、それに先生の数も一緒に減りますので。ただ、私どもの拝見しているところ、PhD、ドクターでも私企業に大分進まれて、要するに学者ではなくて私企業に進むという方が増えてきています。
 それから、MBAの修了者はかなり就職については有利に進めておられるようです。かつては大体、慶応にしても早稲田にしても、企業派遣の方が多かったんですね。ひも付きで来られる。だけど、このごろもう二割ぐらいだと思います。あとは大体会社を辞めるか休職されて来られて、卒業されると大体ほとんど私企業にまた帰られますが、同じ会社の場合もあるし、ほかの会社もあるし、それからコンサルティング会社とか、あるいは国際機関へ就職する人もこのごろ増えてきています。
#69
○会長(広中和歌子君) それでは、耳塚参考人、お願いします。
#70
○参考人(耳塚寛明君) 高等専門学校の卒業生の就職はほぼ完璧であるのに対して工業高校になると未就職内定者が出る、とすれば工業高校という今の専門教育の形態というのはどこか中途半端で、もう少し延長した方が効果的なのではないかという御指摘かと思います。
 専門的能力等を高めて雇用可能性を高めることにつながるような新しいタイプの学校の創設であるならば、それは是非実現した方がいいであろうというふうに思います。ただ、いろいろ考えてみなければならないことがあるのではないでしょうか。
 一つは、これ以上、上級学校への進学にすべての者が堪え得るというわけではないという事実であります。それから第二に、教育年限を延長することによって果たして専門的能力が高まったり雇用可能性が高まるんだろうか、ひょっとすると問題が高校卒業の段階からその上の段階に移るだけで、同じ現象が起こってしまうのではないかといった辺りが問題になろうかと思います。もう少し慎重に考えてみたいと私自身は思います。
#71
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 次、野村哲郎さん。
#72
○野村哲郎君 自由民主党の野村哲郎です。
 今日はお三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 時間も押し迫っておりますので、簡単に御質問をさしていただきたいと思います。
 まず、梅津参考人でございますが、ガバナンスとマネジメントのことについて少しお伺いしたいと思うんですが、先生のお書きになった中で、ヨーロッパの企業とアメリカの企業が対比した形で出されております。ただ、日本でこういうガバナンスとマネジメントを最近明確に分けてきている企業も出ているんですが、ただ私は、このガバナンスの方が機能していないのではないのかと、こういう考えでおります。といいますのが、一番典型的なのがNHKだったんじゃないのかと、こういうふうに思います。ですから、なぜガバナンスの方がそういう機能を果たしていないのか、そこの問題についてひとつお聞かせいただきたい。
 それから、多賀参考人ですが、先ほど松先生がお話しになりましたワーキングリンクスなんですけれども、これは官と民、官の役割というのを是非どういう形でやっているのかというところを教えていただければ有り難いと思います。
 それから、耳塚参考人ですが、実は私ども、四月の二十日にもニートの問題で、多分先生も御存じだと思いますが、東大の玄田先生だとかNPOの工藤理事長、「育て上げ」ネットの工藤理事長にも来ていただいて、実際やっておられるところを実は聞いてみたわけであります。そのときに、工藤理事長がおっしゃるのは、非常に今ニートになっている人たちはコミュニケーションがまず取れないんだと。それから二つ目は、彼らは社会の入口で立ち止まっておると、ちょこっとした大人のおせっかいがあればすぐ社会に溶け込んでいくんだと、こういうお話でありまして、要は耳塚参考人がおっしゃいました教育システムの変容なり、あるいはその家庭の環境に加えて個人の性格の問題、非常にここを強く私どもは印象深く聞いたわけでありますが、その個人的な問題というのが、非常にコミュニケーションが取れないとか社会の入口で立ち止まっているとか、そういうものが教育の延長にあるのかもしれませんけれども、非常に個人的なお話として伺ったわけであります。
 そこで、これからのニート対策、これからニートを輩出していかない、そのためには先生お書きになっておられるようないろんなこれからの対策というのをやっぱり取っていかなきゃならぬと思いますが、じゃ、ニートになった人たちにどう手助けしていくのか、その視点でひとつお答えいただければ、御教授いただければ有り難いと思います。
 以上であります。
#73
○会長(広中和歌子君) それでは、梅津参考人、お願いします。
#74
○参考人(梅津祐良君) ガバナンスとマネジメントの関係ということで、私は、やっぱりガバナンスという考え方自体がまだ日本で非常に新しいということ、それからまだ機能をしていないんだというふうに思います。
 ガバナンスをどうやって働かせるかというのは、いろいろ方法があるかと思いますが、やはりボードの強化ですね。役員会、ボードの強化で、最近も先生がおっしゃるように社外重役を登用したり、そういう動きが出てきておりますから、一つボードの強化をされているふうに思いますが、アメリカで成功しているガバナンスでは、例えばボードがCEOをキックアウトするといいますか、そこまで権限があります。まだ日本の企業ではそこまでいっていないんじゃないかなという気がいたします。
 それから、あとは監査役ですね。これも商法の改正で監査役の役割を強化しようということでございましたが、やっぱり社外監査役は今でも入れなきゃいけないけれども、それがちょっと形式的でありますね。社内から監査役を選んでというのが、常任監査役は大体社内から選ばれているようですし、監査役機能もまだ弱いということですね。
 それから、私が一番問題と思っておりますのは、日本では会長と社長というのが人事権を持っているわけですね。で、取締役を任命するわけですね。そうすると、取締役、ボードですけれども、ボードメンバーですが、私を任命してくれた会長、社長には弓を引けないという、そういう関係になっているんですね。上下関係というのは、ちょっとこれはあってはいけない。やっぱりオフィサーとボードというのは、これは二分して、しっかり区分けしていかないといけないんで、これはやっぱり日本の企業がこれまで全く慣れていなかった分野ですから、学んでいただければしっかりした形が取れると思います。
#75
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 それでは、多賀参考人。
#76
○参考人(多賀幹子君) ワーキングリンクスにおける官の役目というような御質問だったと思います。このワーキングリンクスというのは、今コネクションズが出てきましたんでちょっと影が薄くなってはいるんですけれども、今でももちろんワークしております。
 九つですね、イギリス全国の九つに拠点を持っているということで、ワーキングリンクスはもちろん政府が絡んでいるわけですけれども、パートナーシップ、パートナーシップということが非常に言われておりまして、その九つの拠点の中の一つのブレントというところへ行ってみたんですけれども、政府の顔といいますか、これが政府だというのはほとんどもうどこにも、私の目からはこれにあるとか、あそこに人が来ているとかなんとかということはほとんどありませんでした。
 政府としては、成功した場合、会社が上手に失業者の方を再就職を成功させた場合に成功報酬を支払うと。このお金は、成功報酬は失業者に払うわけですね、失業手当、これよりは安いということで、それだけなんですね。どんなふうな、うまくいっているかというのは、もちろん見たりとか、その実績を調べたりとか、チェックしたりはするんでしょうけれども、私としては、任せているなと。NPOとかあるいは会社の方に任せているというような感じで、成功報酬を払っていると。それは失業手当よりも安いということで、もうどんどん民に任せているようなイメージがとても強かったです。
 以上です。
#77
○会長(広中和歌子君) どうも。
 耳塚参考人、お願いします。
#78
○参考人(耳塚寛明君) 御指摘は、ニートとは個人の性格とかパーソナリティーの問題であって、職業世界の入口でたたずんでいる若者たちの問題だ、彼らを肩をぽんと押してやれば自然に入っていける、そのような問題であるという御指摘だと思いますが、社会科学者、社会科学を専攻する者としては、そのようには認識しておりません。どういうふうに考えているかといいますと、若者の多様性と彼らを区分するときの仕方にもう少し慎重であらねばならないというふうに私自身は自分で考えております。
 我が国では、ニートという言葉が先ほどの解釈のように狭い意味でといいますか、ある種の者たちに限定して使われる傾向があって、それが誤解を招いているのではないかなと感じております。本来の意味は、雇用されてもいないし、教育機関にもいないし、訓練機関にもいないという意味でありまして、その中には、ニートの中には様々な人々が含まれているわけでありまして、その一部にパーソナリティーとか個人の問題で職業世界に入りにくいようなタイプの若者がいるというふうに理解すべきだというふうに思います。
 ですから、そのニートの中には個人的にそのように職業世界に入っていくのを支援することによって功を奏すタイプの若者もいるかもしれませんけれども、元々やる気は持っているけれども、構造、機会構造の問題として入っていけないんだという若者もいるわけであります。
 ですから、ニートという言葉をもう少し丁寧に使って、いろんなものがそこに含まれていて、それぞれ必要な支援が違うんだということを考える必要があろうかというふうに感じております。
#79
○会長(広中和歌子君) ありがとうございました。
 では、谷博之さん。
#80
○谷博之君 私は、民主党・新緑風会の谷博之でございます。
 時間も大分迫っていますので、簡潔にお伺いしますので、簡潔にお答えいただきたいと思っています。
 一つは、梅津参考人にお伺いしたいんですが、このいただいた緑色の資料の中の十五ページに出ておりますが、アメリカの優れた経営リーダーの一人ということでビル・ジョージの話が出ております。この中に、特にCに「社員に倫理的行動を求める。」というふうなことが出ていますが、最近、特に我が国でも中小企業とか個人商店の経営者の皆さん方も非常に社員の倫理教育、御自身の、経営者自身のそういうふうな自らを律するという、そういう行動を取っておられる方、随分増えております。
 先ほど井上委員の方からもちょっとありましたし、渕上委員からも質問ありましたが、最近の、特にJR西日本もそうですが、あるいは日本航空もそうですし、それからNHKもそうですが、いわゆる経営者、社会的な非常に影響力のあるそういうふうな企業や組織のトップに立つ人たちが、そういう意味では自らをどこまで律してそういういろんな社会的な問題に対応してきたかということになると、ある意味では身の処し方が非常にあいまいであったり、時間が掛かったり、そしてまた不十分であったり、こういうふうな感じがしてならないという声もあります。
 何か事故が起きたからすぐ腹を切るという、そういうことではないのかもしれませんけれども、問題を起こしたそういう経営者の皆さんが自分の手でそういう問題を責任を持って解決をするということについてどうしても一つの限界がやっぱりあるんではないかということを考えれば、できるだけ早くそういう意味では責任を取って、新たな形で新たな立場の人がそういうことに取り組んでいくということが私はやっぱりある意味じゃ必要な部分もあるんじゃないかなという気がしておりますが、そういう点について、今回のそういういろんな一連の事故を見ておりまして、こういう倫理観というか、経営者自身の倫理観ということも含めて、その辺は先ほどのお二方の質問に突っ込んでちょっとお伺いしたいと思っています。
 それから、多賀参考人の方には、四十四ページにこの資料が出ておりますが、イギリスの特に男性が育児業界にかなり積極的にかかわってきていると、「ダッド」の話も出ました。日本がもしこういう形でそのイギリスのような形がこれからできるようになるためにはどういう条件が必要なんだろうかなというふうなことをちょっと考えました。そういう意味で、何か参考的な意見があればお伺いしたいと思います。
 それから、最後に耳塚参考人の方には、この資料をいただきました二ページの一番上の方にプルとプッシュの話が出ております。職業社会と学校とのプルとプッシュの関係。そして、九〇年代以降、このプッシュが弱くなった理由というのは、先ほど臨時教育審議会の話も出てまいりました。そういうふうな問題が一つは要因としてあるということですが、このプルが弱くなった理由ですね、原因といいますか、そういうものがこの九〇年代以降、いろいろ考えられると思いますが、どういうふうなものが具体的に考えられるのか。そしてまた、この右側の四角に囲った枠外に、弱い、弱いというプル、プッシュの下に作動しない調整システムというのがありますが、この具体的に作動しない調整システムの中身をちょっと説明を補足していただければというふうに思っております。
 以上です。
#81
○会長(広中和歌子君) それでは、梅津参考人、お願いします。
#82
○参考人(梅津祐良君) 二つ申し上げたいと思いますが、このごろ、私の同僚の教授で遠藤さんという方がいらして、「現場力を鍛える」という本を書かれてベストセラーになって、トップマネジメントもやっぱり現場に下りて、その現場の問題あるいは現場の人たちの悩み、そういうことをきちんとつかむという努力で、アメリカでもいい経営者も悪い経営者もいまして、最近の動きを見てもビル・ジョージなんというのが、高齢ですけれども、現場に出るというのが、顧客に会う、人材に会うということをとても熱心にやっています。ということで、やはり日本の企業でもそうやっていらっしゃる方がいると思うんですね。今、先生のおっしゃったような企業では若干現場から離れ過ぎているというところが問題なんではないかなと一つ思います。
 それから、あとはバッドニューズ、耳障りな、要するに聞きたくない情報がどれだけトップに届くかということなんですけれども、官僚主義の高い組織では悪いニュースは全然届かないんですね。だから、NHKの会長も、一生懸命の人なんだけれども、悪い情報が全然届かない。それはなぜかというと、やっぱり官僚主義で上から下という命令系統が働いていて、下から上へということがつながっていないというふうに思います。
 倫理観というのは皆さんお持ちだと思うんですよね。ただ、そういうところでちょっと現場を離れ過ぎたというところの問題点と、それから下から悪いニュースが上がってこないという二つはちょっと問題かと思います。
#83
○会長(広中和歌子君) 多賀参考人。
#84
○参考人(多賀幹子君) 御質問ありがとうございました。
 日本で男性の育児休暇をどのように打ち立てるか、そのためにはどんな条件が必要なのかという御質問だと思いますけれども、企業にアドバイザーを置いたらいいんじゃないかと思うんですね。男性の育休が、パーセントが非常に取得率が低いということが、女性と比べて低いということが問題になっていますけれども、多分、恐らく私のただの勘ですけれども、何年か以内にはこれが強制になるのではないかと。必ず一週間とか、少なくとも半月、ブレアさんは半月だったわけですけれども、二週間取りなさいというようになってくるのではないかとにらんでいます。
 あるいは、もはやコンビという、これは育児の会社なんですけれども、コンビという会社では、奥さんが子供を産んだ場合、二週間ほどの父親休暇を強制で取らせるようになっていますけれども、そのときに自分の、コンビの会社の、自社のいろんな哺乳瓶やらの育児に関するものを使ったときのモニターをさせて、使い心地はどうだったというようなものを書かせている、あるいはまた父親としてどうだったという感想を書かせるような宿題を付けております。それはコンビですね。
 そういったことは無理なんでしょうから、一応強制にしていただきたいという私の気持ちと、あるいはそのときに代替要員をどうするかと。三十代の働き盛りの男性が突然一週間、二週間いなくなったときにどんなに職場が大変かということを考えると、代替要員のために、子供がいない人が補うためにとても忙しくなるというので不公平感が出ると思うんですね。そういうときに、もう辞めた退職者の方をそのときだけでも来ていただくとかっていうような、その地区の、というようなことをしてみるとか、あるいはそういったことをしたらどうですかというアドバイザーのような方を是非企業に置いていただいて、幾つかの会社でもいいですけれども、それを掛け持ちのような感じでアドバイザーを入れていただいて、代替要員はどうすると。
 で、不公平感が高まってくるでしょうから、子供のいない方も一か月ぐらいの休みは取りたいという声が出てきているんですね、イギリス辺りは。どうして子供のいる人だけ半月、半年休めるのかと。自分も休みたいと。留学したいとか自分だってリフレッシュ欲しいとか。あるいは介護の問題ですね。介護を兼ねて自分も半年休みたいという声が出て、子供だけいる人だけでは不公平だという声が非常に出ているので、そういうことを考えると、ある種のアドバイザーみたいなのを入れていただいて、育児でも休めるし、お父さんも休めるし、あるいは介護のために、親のために介護も休めるといったような柔軟な働き方が全般に及んでいくんじゃないかと。それを私としては期待しています。
 以上です。
#85
○会長(広中和歌子君) 耳塚参考人、お願いします。
#86
○参考人(耳塚寛明君) 二点お尋ねいただきました。
 第一点は、私が示した図におけるプル要因の変化とは具体的にどんなことかというお尋ねかと思います。
 これについて説明、時間の関係でかなり簡略化いたしましたけれども、一つは、バブル経済崩壊などの景気の問題が一つ。それから二つ目は、求人が徐々に高学歴へとシフトしていった。この背景には、高等教育への進学率の上昇があると思われます。三つ目は、非正規労働市場の拡大。つまり、これまででしたら正社員として雇用していたのに、それをパートやアルバイトによって便利な労働力の調達を取るようになってきている。この三つでございます。
 第二点目の御質問は、同じくこの図において作動しない調整システムというのはどういうことかということであります。これについても、時間の関係上、説明を割愛させていただいた部分であります。
 具体的には、図の下の注釈に書いておきましたけれども、この調整システムと呼んでいるものは、学校の中でいえば進路指導、就職あっせんの仕組みであり、学校の外といいますか、もう少し広くとらえれば就職慣行と言われているものであります。
 新規高卒者の場合、独特の慣行があります。例えば、指定校制とか校内選考の仕組みとか一人一社制といった仕組みであります。これらは、求人が大量にあって、また求職者も大量にあって、そのマッチングをうまくするときには大変うまく機能していた。その意味で調整システムとしてはよくできたものだったと考えますが、求人数自体が著しく小さくなってくると、このような就職慣行があること自体がむしろ逆の問題を起こしてしまうということになります。このように、調整システムもうまく作動しなくなるような時代になってしまったということを申し上げたかったわけでございます。
#87
○会長(広中和歌子君) どうもありがとうございました。
 予定の時刻が参りましたので、本日の参考人に対する質疑はこの程度にとどめさせていただきます。
 梅津参考人、多賀参考人、耳塚参考人には、御多用の中、本調査会に御出席いただき、本当にありがとうございました。
 本日お述べいただきました御意見は今後の調査の参考にさせていただきたく存じます。本調査会を代表いたしまして心から御礼申し上げます。(拍手)
 次回は来る五月十八日午後一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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