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2005/04/18 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 経済産業委員会 第11号
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2005/04/18 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 経済産業委員会 第11号

#1
第162回国会 経済産業委員会 第11号
平成十七年四月十八日(月曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         佐藤 昭郎君
    理 事
                泉  信也君
                加納 時男君
                小林  温君
                藤原 正司君
                渡辺 秀央君
    委 員
                魚住 汎英君
                沓掛 哲男君
                倉田 寛之君
                松田 岩夫君
                松村 祥史君
                加藤 敏幸君
                木俣 佳丈君
                直嶋 正行君
                藤末 健三君
                浜田 昌良君
                松 あきら君
                鈴木 陽悦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        世木 義之君
   参考人
       全国中小企業団
       体中央会商業専
       門委員長
       石川県中小企業
       団体中央会会長  五嶋耕太郎君
       神戸大学大学院
       法学研究科教授  根岸  哲君
       桐蔭横浜大学法
       科大学院教授   郷原 信郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
 律の一部を改正する法律案(第百六十一回国会
 内閣提出、第百六十二回国会衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(佐藤昭郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、参考人として全国中小企業団体中央会商業専門委員長・石川県中小企業団体中央会会長五嶋耕太郎君、神戸大学大学院法学研究科教授根岸哲君及び桐蔭横浜大学法科大学院教授郷原信郎君の御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様には、御多忙のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席したままで結構でございます。
 それでは、参考人の皆様から御意見を伺います。
 まず、五嶋参考人にお願いいたします。五嶋参考人。
#3
○参考人(五嶋耕太郎君) 私は、全国中小企業団体中央会の商業専門委員長を務めております石川県中小企業団体中央会会長の五嶋耕太郎でございます。
 経済産業委員会の先生方には、日ごろより中小企業の振興、発展に一方ならぬ御尽力を賜っておりまして、厚く御礼を申し上げます。また、本日は、独占禁止法改正の御審議に際し、当委員会にお招きをいただき、中小企業の立場から意見を述べる機会をいただきましたことに対し、厚くお礼を申し上げます。
 私は石川県の輪島において伝統工芸である輪島塗の製造、販売をいたしておる者でございます。本日は、最初に独占禁止法と中小企業の関係に関する基本認識について考え方を述べさせていただき、その上で、今回の改正法案の主要論点について意見を述べさせていただきたいと存じます。
 まず最初に、独占禁止法と中小企業の関係に関する基本認識についてであります。
 我が国企業の九九・七%は中小企業であります。しかも、製造業出荷額の五割、卸売業販売額の六割、雇用を、雇用の七割を支えるのが中小企業でございます。また、小売販売額では八割のウエートを占めているところでもあります。もって、中小企業、我が国の経済を支える底力ではないかと思っております。
 また、雇用の担い手である中小企業はいまだ景気回復を実感をしておりません。圧倒的多数がまだまだ経済の回復は感じていないわけでありまして、このような厳しい状況の中で、経営革新を目指し、あるいはコスト削減に努め、従業員の雇用を守るため日夜懸命に努力を続けているところでございます。
 その事業所数でございますが、四百七十万あると言われております。私ども全国中小企業団体中央会には、四十七都道府県中央会傘下の中小企業組合を通じまして三百万強の事業所、中小企業が結集しているところであります。すなわち、中小企業団体中央会は中小企業の約七割を組織している日本で最大の中小企業団体でございます。中央会は、中小企業が一社だけでは不足する経営資源を相互に補完するため、中小企業組合を設立し、力を合わせて新たな事業展開に取り組むことを指導、支援することが主な任務でございます。
 御高承のとおり、法律に基づく認可を受けて設立された中小企業の組合は、相互扶助を目的とし、加入、脱退が自由、議決権が平等、利益分配の限度が定められているといった要件を満たす場合、その行為については独占禁止法が適用されません。これは、中小企業者が大企業と相対して自由競争を行うためには、組織による力の結集を認めることにより中小企業者の公正な経済活動の機会を確保することが必要であるとの考え方から導かれたものであります。私もこのような組合の一つである輪島漆器商工業協同組合に所属する組合員の一人であり、組合事業である漆器の共同販売、原料の共同購入、共同製造、製品の共同加工、需要開拓などの事業を利用しながら歴史を重ねてまいりました。
 このように、圧倒的な多数の中小企業者は、大企業と対等に伍して競争し、生き抜いていかなければなりません。そのためには、公正で自由な競争を促進する独占禁止法の枠組みがしっかり守られ、大企業の横暴を許さない厳格な運用がなされることが極めて重要であります。
 以上が、私ども中小企業団体中央会の独占禁止法と中小企業の関係に関する基本認識でございます。
 このような基本認識の下、何点かにわたって今回の独占禁止法改正案について意見を述べさせていただきたいと存じます。
 まず第一に、課徴金算定率の引上げについてでございます。
 大企業による談合、カルテルは違法であり、これが中小企業にとって大きな経営圧迫の要因ともなるものであり、厳正に対処すべきであると思います。違法行為をもって利益を、利益を上げようとするたくらみ自体が大手を振ってまかり通ることは決してあってはならない、犯罪を犯すことで得をするということを許してはならないと思います。このため、制裁措置として抑止力を強くすることが必要であると考えるものであります。
 また、中小企業に対する課徴金の引上げ幅は大企業に対する引上げ幅よりも緩和されたものとするなどの配慮があり、その点は評価しております。違反行為を早期にやめた場合には算定率を軽減し、繰り返し違反行為を行った場合には算定率を加算することについても妥当であると考えております。ただし、公正取引委員会の摘発を受けた企業数を見ますと、公共工事の入札をめぐる談合事件が多いせいか中小企業が多くなっております。
 談合、カルテルで摘発を受けると、営業利益率が低下してきている体力のない中小建設業者にとってはこれが直ちに倒産につながりかねません。このため、公正取引委員会には厳正で公平公正な運用に努めていただくことはもちろんでありますが、中小企業者の中には、大企業が摘発を逃れているのではないか、弱いところばかりがねらい撃ちされているのではないかといった不満や不信も、そのような点についても十分配慮していただきたいと思います。
 第二には、課徴金減免制度の導入についてであります。
 課徴金減免制度、リニエンシー制度でございますが、これを導入することについては、日本において果たしてなじむものかという懸念はあるものの、談合は密室で行われることが常でありますから、非常に把握しにくいという実態があり、これに対応する手法として導入されることもやむを得ないのではないかと考えます。各企業の法令遵守、コンプライアンス体制を整備することは極めて重要な課題となってきており、これからは中小企業といえども正面から取り組んでいかなければならない課題であると考えております。
 第三に、犯則調査権限の導入、罰則規定の見直しについてであります。
 今回の改正によって、国税庁や証券取引等監視委員会のように、公正取引委員会が犯則調査権限を持ち、犯罪事実の立証に必要な証拠を収集することが可能となり、検察庁への引継ぎも可能となることによって刑事告発の手続が円滑に行われるようになると聞いており、刑事罰のある行為の禁止規定の実効性確保のために有効な措置ではないかと考えます。
 また、罰則規定の見直し、中小企業に不当な不利益を与える不公正な取引方法等の違反行為に対する確定排除措置命令違反罪に対する法人重科の導入、調査妨害等に対する罰則の引上げ、両罰規定の導入は厳しいとは思いますが、妥当な改正であると考えております。
 第四に、審判手続の迅速化、簡素化が進められることについても評価したいと考えております。
 現在は公正取引委員会からの勧告が出され、それに応諾しないときには審判という制度であります。今回はこの現行制度を廃止し、公正取引委員会が違反行為であると認めた時点で迅速に排除措置命令を出せることとなりますので、不当廉売、優越的な地位の濫用といった中小企業に不当な不利益を与える不公正な取引方法に対する迅速な対応が可能となるものと評価をしております。
 最後に、優越的地位の濫用、不当廉売の問題について申し上げます。
 平成十五年度に、不当廉売や優越的地位の濫用等の疑義があるとして公正取引委員会に寄せられた申告件数は二千三百九十五件で、前年に比較して百五件増加しており、景品表示法の事件処理件数も六百五十一件で、前年比で百十七件の増加となっております。
 このようなデータが示すように、不当廉売、優越的地位の濫用等の行為は激しさを増しているにもかかわらず、公正取引委員会が実施した排除勧告、警告、注意等は多くの中小企業が実際の商取引で直面している問題のほんのわずかな部分にすぎないと思います。
 とりわけ、不当廉売については、特定の業種、特定の大規模小売業者が常習的に繰り返す事例が後を絶たず、公正取引委員会の注意や勧告がかえって宣伝効果を持つなど、これら業者のいわゆるやり得になっているのが現状であります。
 また、優越的地位の濫用についても、依然として大規模小売業者から中小の納入業者に対して種々の要請が行われており、納入業者は要請が自己に不利益なものであっても、要請に応じないと取引上不利になることを懸念して受け入れざるを得ないのが実態であります。最近では、不当廉売や優越的地位の濫用等の不公正な取引方法が小売業だけでなく他の業種においても多く見られるようになってきております。
 私ども傘下会員から、不公正な取引方法が一向になくならない現状に対し、違反行為による被害が著しく競争秩序を侵害するものについては文書提出命令を導入するなど制裁措置を強化すべきだという意見も上がってきております。
 このような状況や取引実態があるにもかかわらず、公正取引委員会が行った不当廉売の注意件数は六百五十三件と、前年の千七件から減少してきており、優越的地位の濫用等の不公正な取引方法の法的措置件数も七件と、前年の三件と併せ少ない状況が続いております。これは、複雑化し、かつ巧妙化している独占禁止法違反行為に公正取引委員会やガイドラインが的確に対応できていない表れであり、早急に体制の整備、ガイドラインの改正等を行う必要があると考えております。
 また、景品表示法違反行為についても複雑化かつ巧妙化し、一件当たりに要する処理時間が長期化する傾向にあることから、早急に体制の整備を図る必要があると考えております。
 これらの問題は我々中小企業団体の悲願であって、毎年、中小企業団体全国大会で決議し、要請するものの、その声はなかなか届かず、改善は遅々として進んでいないのが実態でありました。
 中小企業者に不当な不利益を与える不当廉売、優越的地位の濫用等の不公正な取引方法に対し、国は監視・監督体制を強化するとともに、厳正かつ迅速に対処すべきであると強く訴えるものであります。
 今回の改正案については、不公正な取引方法の違反行為に対しては確定排除措置命令違反罪に係る法人の刑事罰の罰金額を引き上げることとされており、これを評価するものでありますが、さらに、一、不公正な取引方法等に対する課徴金制度の導入などの制裁規定の強化など、独占禁止法の措置体系の抜本的な見直し、二として、中小企業者等に不当な不利益を与える不当廉売、優越的地位の濫用等の不公正な取引方法を厳しく規制する効果的な措置の導入について早急に検討を開始し、実施に移していくことが必要であると考えます。
 いずれにしましても、四百七十万事業所の中小企業者が我が国経済の中で活力ある事業主体として活動できる公正で自由な競争環境を実現していただきますようお願いをいたしまして、私の発言を終わらさせていただきます。
 御清聴誠にありがとうございました。
#4
○委員長(佐藤昭郎君) ありがとうございました。
 次に、根岸参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(根岸哲君) それでは意見を申し述べます。
 我が国が採用いたしております市場経済体制の基本ルールであります競争のルールを定めております独禁法は、これまでに相当整備されてきていると思いますけれども、なお執行力、抑止力が十分でないと、こういう問題を抱えていると考えております。この問題に適正手続を保障しつつ対応しようとするのが今回の政府案であると、こういうふうに理解しております。
 独禁法の執行力、抑止力が十分でない理由は大きく言って三つあると思いますけれども、第一番目は、カルテル、入札談合等の違反行為が後を絶たず、同一事業者が違反行為を繰り返すなどといった現実があるということが一番目でございます。二番目は、違反行為に対する公正取引委員会の摘発能力に限りがあり、違反行為摘発が不十分であると、これが二番目でございます。三番目は、公正取引委員会が違反行為を摘発したといたしましても、違反行為に対する措置の迅速適切な執行が十分でない、三番目でございます。
 一番目の問題対応が課徴金算定率引上げであり、二番目の問題対応が減免制度と犯則調査権限の導入であり、三番目の問題対応が審判手続の見直しであると、こういうふうに思います。
 私は、課徴金算定率引上げにつきまして、今回の案では不足であると、あるいは本来不要な課徴金と罰金との調整規定の導入も不要であると、こういうふうに考えておりますけれども、全体としてこの内容は先ほどの問題に対応いたしましてかなりの前進を示した案になっていると私は考えておりますので、基本的に賛成いたしております。
 独禁法の執行力、抑止力は排除措置命令、課徴金納付命令という行政上の措置を中心といたしまして、特に悪質、重大事案について更に刑罰を科すと、こういう基本的な制度設計によって確保されるべきであると、こういうふうに考えております。
 そこで、まず課徴金算定率引上げでございますが、課徴金は違反行為防止という行政目的を達成するための行政上の措置であり、違反行為防止という行政目的に照らしまして合理的水準にまで引き上げる必要があると、こういうふうに考えております。しかし、これまでのカルテル、入札談合等による不当利得推計の調査や、あるいは他法令との比較、あるいは欧米との比較、そして今回導入されます減免制度を有効に機能させることなどに照らしましても、原則一〇%ではまだ引上げが不十分であるというふうに思いますけれども、しかしながら、従来と比べますとかなりの前進であると、こういうふうに考えております。
 課徴金につきまして、不当利得相当額以上の金銭徴収とすることに伴いまして、課徴金と罰金との併科の場合に、課徴金から罰金相当額の二分の一を控除するとされております。これは、憲法三十九条の二重処罰禁止原則、あるいは憲法三十一条から導き出されます罪刑均衡原則との関係に配慮したものと聞いております。しかし、憲法三十九条は同一の犯罪について、「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」と、こういうふうに規定しておりまして、二重訴追を禁止しているのであります。したがって、趣旨、性質、手続などが基本的に異なります行政上の措置である課徴金と、刑罰としての罰金との併科が憲法三十九条に反するとは私は考えておりません。
 また、前に述べましたように、原則一〇%の引上げではまだ合理的な水準までの引上げまで至っていないと、したがってこれが過大な負担になるということはないと、したがって罪刑均衡原則に反するとも考えられません。したがいまして、本来調整規定は不要であると、こういうふうに考えております。しかし、憲法上の懸念を表明する意見も存在しておりまして、これらの意見を反映してより控え目な制度設計がなされると、そういう政策判断として今回の提案を理解しております。
 次に、減免制度でございますけれども、カルテル、入札談合は特に密室性が強いものでありまして、どこの国でもその解明や摘発は極めて困難であります。そこで、今回、諸外国の経験に照らしまして、あらかじめ要件を明確にし、裁量性を極力排除して事業者の予測可能性を高める内容となっている政府案の減免制度に賛成いたします。この制度は、公正取引委員会によるカルテル、入札談合の解明、摘発への調査協力をしたことに対して発動されるものであります。したがいまして、この意味では企業のコンプライアンス体制整備を後押しする効果があると、こういうふうに考えております。
 なお、この減免制度を有効に機能させるためには、少なくとも、一番目に情報提供し課徴金全額免除される事業者につきましては公正取引委員会として刑事告発しない、また検察庁におきましてもこの公正取引委員会の判断を尊重し、刑事訴追をしないと、こういうことの方針をあらかじめ明確に公表しておくということがどうしても必要だと、こういうふうに考えております。
 次に、犯則調査権限の導入でございますが、現行の行政調査権限のみでは悪質、重大事案につき、刑事告発まで持っていくことが困難であります。また、現行の行政調査権限のみにより刑事告発まで持っていこうといたしますと、適正手続保障の観点から批判もございます。つまり、現行の四十六条、独禁法四十六条四項では行政調査権限は犯罪捜査のために用いてはならないと、このように規定しておりますけれども、しかしながら公正取引委員会には独禁法違反の犯罪について告発義務がありますし、専属告発制度も採用されているわけでありまして、この規定との関係で問題が出てくる可能性がございますし、また行政調査権限で調べたものによって刑事告発するということになりますと令状主義を潜脱していると、このような批判も出てくるわけでございまして、こういう観点から、つまり適正手続保障という観点からもこの犯則調査権限の導入は必要であるということでございますので、犯則調査権限の導入につきまして賛成いたします。
 次に、審判手続の見直しでございます。
 この現在提案されている政府案でございますと、迅速で効率的な事件処理の要請というものと他方では適正手続保障の要請と、この二つの要請がございますけれども、この要請を適切にバランスを取ったものであると、こういうふうに考えますので賛成しております。勧告制度を廃止し、排除措置命令手続と課徴金納付命令手続との同時化を可能にし、二つの手続に共通あるいは密接な関係のある事実につきまして一括して同時に解明することができるわけでございます。このことによって迅速、効率的な事案の処理が可能になるということでございますし、あるいは被疑事業者にとりましても調査負担が減少し、また今回導入されようといたしております加算制度とか減免制度の導入によりまして課徴金額がどうなるのかということを早期に知りたいと、こういう要請もありますけれども、このような被疑事業者の要請にもプラスになるんではないかと思います。
 また、この排除措置命令につきましても、課徴金納付命令につきましても、事前の通知、それから意見の陳述、証拠提出の機会という事前手続の保障をいたしております。そして、その命令に不服のある場合には準司法手続としての審判手続という事後手続の保障もあり、このことによって現行の勧告制度の不意打ち性というものが解消され、また現行制度では争えないと考えられております排除措置命令自体の内容についても争えるということになると。このように、事前手続の保障と事後手続の保障とを全体としてこの審判手続を見た場合に適正手続の保障は十分確保されていると、こういうふうに私は考えております。
 最後に、同調的価格引上げの理由報告徴収制度を廃止すると、こういう提案がございますけれども、この点についてもやむを得ないものと、こういうふうに考えて賛成いたします。
 その理由は、この制度はいわゆる高度寡占において安易な値上げ抑制という効果をねらったものでありますし、あるいは場合によればそのような同調的価格引上げにカルテルが紛れ込んでいるかもしれないと、このようなカルテルの抑制、こういう効果もねらったかもしれません。しかし、現行の制度の下では必ずしもその当初意図したような値上げ抑制の効果は上がっていないと思われます。それに対して、公正取引委員会の運用にかかわるコストは極めて大きいということでありまして、その点からこの制度自体に問題がある、こういうふうに考えます。
 この規定がなくなるということになりましても、一つは、今回導入されるといたしておりますカルテルへの抑制効果を期待することができるわけでありますし、また、この同調的価格引上げ理由報告徴収制度がなくなりましても、公正取引委員会の一般的な調査権限に基づきまして同調的価格引上げについて調査をすることは可能であると、こういうふうに考えますので、この制度の廃止についてもやむを得ないものと考えております。
 以上でございます。
#6
○委員長(佐藤昭郎君) ありがとうございました。
 次に、郷原参考人にお願いいたします。郷原参考人。
#7
○参考人(郷原信郎君) それでは意見を申し述べさせていただきます。
 まず結論といたしましては、私は、今回の独占禁止法改正案を早期に成立させ、施行すべきであると考えております。
 ただ、現行の独禁法の制裁措置体系には課徴金と刑事罰との関係等をめぐる大きなゆがみがございまして、そのゆがみの是正が本来先決であると考えております。今回の改正案は、そのゆがみの是正という面で必ずしも十分とは言い難いものでありますが、その点に関しては、今回の法改正をめぐる公取委と経済界との議論、そして今回の国会の審議等で十分に議論され、既に論点は出尽くしているものと思われます。我が国の現在の法体系や独禁法がたどってきた歴史的な経過、公取委の法執行体制など様々な問題から、少なくとも現時点においては、独禁法の制裁措置体系のゆがみの抜本的な是正は困難であるということで改正案はこのような内容になったものと思われます。
 一方で、我が国経済社会には、公共調達をめぐる談合に見られるような不公正で不透明な競争制限行為による害悪が蔓延しております。このような状況を改めていく上で、現行の独禁法の制裁措置が十分な機能を果たしていないことは否定し難いところでありまして、違反行為に対する抑止力強化は早急に図る必要があると思われます。
 今回の改正案は、制裁体系のゆがみの是正という面では、半歩前進というより、まあせいぜい〇・二歩前進という程度だと思われますが、このまま法改正について議論を続けていくより、早急に今回の改正法を成立させて、これまで議論されてきた問題点を意識しつつ改正法の運用を行うこと、そしてそれを、改正法の附則にも規定されております二年後の見直しによって、一層適正で効果的な制裁体系の実現に結び付けていくことが有益ではないかと考えております。
 そういう意味で、改正法を早期に成立、施行することは、抜本改正に向けての起爆剤としての意味があるものと考えております。
 次に、改正法の問題点を申し述べます。
 まず、今申し上げた制裁措置体系のゆがみの問題ですが、課徴金は、初の本格的な独禁法の刑事罰の適用となりました昭和四十年代後半の石油カルテル事件において様々な問題が生じたことから、刑事罰によらずに違反事業者に経済的不利益を与えて、カルテルのやり得をなくすための措置として導入されました。罰則自体は廃止することが困難であったということから、刑事罰と両立させるために制裁ではないとの説明が必要となり、カルテルによる経済的利得を徴収するための制度と説明されたものです。
 元々ある程度の制裁効果を意図してつくられた制度であるにもかかわらず、その法的性格が制裁ではないと説明されるという極めてあいまいな性格の制度ができ上がっているわけです。私は、このような課徴金の性格をぬえ的性格と呼んでおります。
 ところが、九〇年代に入って、日米構造協議を受けての独占禁止法の運用強化によって、それまで課徴金導入以降行われていなかった刑事罰を積極的に適用するという方針が明らかにされて、制裁であるかないかあいまいな課徴金と制裁そのものである刑事罰を法人に対して併用するという二階建て構造ができ上がりました。しかも、課徴金は事業者に対して不利益を課す制度ですが、悪質な、悪質、重大な事案に対して上乗せして科す刑事罰は個人処罰が中心に行われるというゆがんだ二階建て構造になったものです。そして、違反行為の内容にかかわらず、画一的、機械的に算定して課徴金を課すという制度が日本の課徴金では取られているわけですが、これは諸外国の独禁法違反に対する制裁制度においては類を見ないものです。このような硬直的な課徴金の制度は、平成三年、独禁法改正で課徴金が大幅に引き上げられた後も維持されたものです。
 制度の枠組みとしては今申し上げたとおりですが、これに加えて、これまでの独占禁止法の運用の指導、啓蒙的性格という点に言及する必要があるものと思います。
 独占禁止法は、戦後の高度経済成長の中で長らく経済社会において軽視され続けた存在でした。そうした中での公取委の法運用は、専ら独禁法の存在とその趣旨、目的を理解してもらうという指導、啓蒙が中心で、その執行力は甚だ弱いものでありました。しかし、九〇年代以降、独禁法が実現しようとする自由競争の徹底というのが経済社会における中心的な規範となりつつありまして、それに伴って、違反行為に対する制裁もその実質的なレベルは大幅に強化されてまいりました。
 同じ違反行為の摘発といっても、実質的に指導、啓蒙にすぎないようなものであれば表面的には頭を下げただけで終わってしまいますが、制裁を科すということであれば、違反行為者に現実的な不利益、痛みを与えて本当に違反行為をやめさせることになります。そういうことになると、やはり違反行為が行われた事情とか動機とか背景などを評価し、さらに適正な手続を確保するということが必要になるわけです。そこに制裁的な法運用と指導、啓蒙的法運用との根本的な違いがあるものと考えます。
 ところが、現行の独禁法では、制裁を適正に効果的に科すという制度的な枠組みが極めて不十分であります。それが端的に現れているのが、制裁のようであって制裁ではないという課徴金のぬえ的性格であります。また、そういう制度の下での公取委の法運用にもいまだに指導、啓蒙的な性格が色濃く残って、その一方で、近年、違反行為に対する制裁のレベルが大幅に引き上げられてきたことの中で矛盾点が生じているものと思われます。
 そういう現行法の基本的な問題が今回の改正法で是正できているかというと、疑問な点が多々あります。
 まず、課徴金と刑事罰の二階建て構造は基本的に維持されております。法人に対して罰金を科す場合には罰金額の半額を控除するということとされておりますが、なぜ半額なのかという根拠が薄弱でありまして、結局のところ、課徴金と法人に対する罰金は、半分は重なるが半分は重ならないという中途半端なものになってしまっております。
 課徴金の法的性格についても、法改正の検討の当初は、不当利得の徴収という説明を放棄しながら、社会的損失の負担という概念を根拠に制裁ではないという説明が維持されておりました。しかし、最終的には、違反行為の抑止というのを全面的に打ち出したわけです。しかし、その一方で、制裁なのか制裁ではないのかというところは依然としてあいまいなままにとどまっております。しかも、課徴金額を画一的、機械的に算定するという枠組み自体は維持されておりまして、悪質性、重大性に応じて課徴金を課すという制度は実現されておりません。課徴金の硬直性は改まっておりません。
 一方、犯則調査権限の導入によって刑事事件の証拠収集のための権限の整備が図られておりますが、そもそも刑事罰適用を法人中心に、事業者中心に行っていくのか、行為者中心に、個人中心に行っていくのかというところがいまだにはっきりしておりません。その上、令状による捜索など制裁のための権限の行使と、従来のような指導、啓蒙的な性格を残した課徴金賦課のための行政調査とがうまく折り合っていくのかという点にまだまだ問題がある上に、両者の権限行使に関しては当然ファイアウオールを作る必要がありますが、それが限られた公取委の組織体制の中でうまく機能していくのかという点についても実務上大きな問題があります。
 そして、違反事実の申告者に対する減免制度というのが正に今回の法改正の目玉とされて、これが独禁法違反に対する抑止力強化の特効薬のように扱われてまいりましたが、これは必ずしもそんな単純なものではないと思われます。
 いわゆるリニエンシープログラムが、特にアメリカでカルテル摘発に大きな効果を上げておりますが、それは主として国際カルテルなどのような一過性のもの、違反事業者間の結束が単発的な関係にすぎない場合に効果を上げてきたものです。日本では、独禁法違反の摘発のかなりの部分が公共調達をめぐる談合でありまして、社会的に見ても談合の抑止が独禁法の最大の課題と考えられているものと思われます。
 事業者間の恒常的な協調関係を背景として行われている建設談合というのは、国際カルテルとは全く性格を異にしておりまして、そういう行為について、リニエンシープログラムが直ちに効果を発揮するとは考えにくいところであります。そういう舶来の武器に過大な期待を掛けることは適切ではないものと思われます。
 なお、審判前の処分を可能にするという審判手続の大幅な改正が本法案の内容とされておりますが、これについても、課徴金の引上げなどによって制裁性を強化するという改正の中で、こういう事前の告知、聴聞のみで一方的に執行力を生じさせる手続が適正と言えるかという点について大きな問題があると考えております。
 最後に、競争の実情と違反行為の摘発について、今後の抜本改正において考慮すべき点について申し述べます。
 カルテル、談合などは、商品、役務の特性、市場の構造、取引の相手方などの業界の構造に影響されるという点において、泥棒のような単純な犯罪とは大きな違いがあります。競争のレベルが全体的にフラットな状態であれば市場原理は適正に機能しますが、凸凹があると一部分で極端な過当競争が生じる場合があります。競争制限が恒常化しているような市場構造の下で、たまたま発見されたカルテル、談合だけを摘発してたたくことが過当競争の引き金になることもあります。
 例えば、A業界から製品を仕入れてC業界に売っているB業界が無防備な談合をやっていて摘発されたというような場合、このA業界とB業界はそのまま鉄の結束を保っているということだと、談合をやめて価格競争を徹底せざるを得ないB業界は買いたたかれて、生き残りのための泥沼の競争を強いられることになります。
 これは、建設業界における中小企業の談合にも共通する問題でありまして、入札制度の問題、そして取引先の発注官庁の問題などが解消されないまま、供給者の建設業界側だけが価格競争を強いられると熾烈なダンピングが生ずると。だから、それを防止するために談合は自衛上やむを得ないというような理屈が出てくることになります。
 一方で、最近、競争制限が暴力団等の反社会的勢力と結託して行われるような悪質なケースもあるという話をよく聞きます。しかし、こういう事件の摘発は公取委の組織の性格上極めて困難です。その結果、談合が摘発されて極端なまでの競争が強いられる業界がある一方、悪質で露骨な競争制限が野放しにされるということにもなりかねないわけであります。
 もちろん、独禁法の建前からいうと、すべての市場において競争が徹底されていくのが理想でありまして、そのために、違反行為の端緒が得られれば摘発して課徴金を課して、事案によっては告発を行っていくのがある意味では当然であります。しかし、アメリカのように自由競争のベースが確立している市場であれば、カルテル、談合はすべて個人ないし個別企業の責任の問題であって、それをたたくことですべてが解決しますが、日本のように複雑な構造の下で、恒常的な競争制限が根強く残っている市場でのカルテル、談合の場合、個別の違反行為を厳しくたたくというだけでは根本的な問題は解決されません。そこに我が国の独禁法のエンフォースメントがアメリカなどとは異なった難しい問題を抱えているということも言えると思います。
 私は、このアメリカと日本における企業の違法行為の違いを虫とカビの違いに例えて説明することがあります。虫、すなわち害虫というのは自分の意思で飛んでいるだけですから、強力な殺虫剤で退治すれば済みます。しかし、カビの方は汚れや湿気が原因です。単に払っても落としても、その原因となっている汚れや湿気を除去しないとカビはまた生えてきます。アメリカでの違法行為は虫、日本の違法行為はカビと言っていいのではないかと思います。
 そうであるからこそ、企業側の自浄能力、コンプライアンスを活用できるような柔軟な法運用を行っていくことが不可欠なのでありまして、制裁措置制度に関しても、課徴金と法人処罰との関係を整理し、課徴金を明確に制裁として位置付けて、公取委にある程度の裁量権を認めて、事案の実態に即した柔軟な運用ができるようにすること。その一方で、刑事罰はむしろ個人の犯罪行為として悪質なものに限定していくということの方が合理的だと思われます。
 しかし、結局今回の法改正では、公取委の裁量の余地は極力排除され、結局課徴金減免制度という舶来の武器のほかは、せいぜい早期の取りやめの権限ぐらいしか公取委には与えられなかったわけであります。これは、準司法機関と言われる公取委に対して、行政機関が制裁という性格を帯びた法運用を行うのはふさわしくないという固定観念がそのまま当てはめられた結果だと言えます。こういう余り使い勝手の良くない武器しか与えられないまま、一方で課徴金の算定率の方は引き上げられるということになりますと、改正法の施行後の違反行為の摘発に当たる公取委の方々の御苦労も非常に大変なものだと思われます。
 しかし、そういう困難を抱えた改正法施行後の法運用において、恒常的な競争制限の是正に向けての地道で真摯な努力が行われて、公取委への信頼が一層高まっていけば、本法案の附則にも書かれております二年後の法律の見直しにおいて制度の抜本改正を行って、改めて課徴金についての公取委の裁量の余地を拡大させていくという道も開けてくるのではないかと、そういう面でも今後の公取委の法運用を組織の量的質的両面の大幅な拡充などを通して全面的に支援していくことが必要ではないかと考えております。
 以上でございます。
#8
○委員長(佐藤昭郎君) ありがとうございました。
 以上で参考人各位の御意見の陳述は終了いたしました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#9
○沓掛哲男君 自由民主党の沓掛でございます。よろしくお願いします。
 持ち時間十五分ということなので、大変私も簡潔に質問しますが、お答えも簡潔にお願いします。
 最初に五嶋さんにお願いします。
 今お話しの中で、不当廉売とか優越的地位の濫用のそういう問題というのは二千三百九十五も提案されているけれども、実際排除措置されたものはほんのわずかでしかないというようなことでございますが、そのことを、私、一つは、やっぱりこの不当廉売というのは何なのか、そういうことについて五嶋さんの定義というか考え方を教えていただきたいというふうに思います。
 そこでまた、確かに今これは特殊な業種について特定の大規模小売業者がやるということなんですけれども、目玉商品だけでやるということなんでしょうか。かなりのものをそういうふうに持続していけるということは一体どういうことでやっていけるのか。安く、ダンピングしていけばつぶれてしまうことになるんだけれども、その辺の裏というのは、実際、中小企業を経営され、市長もやられた五嶋さんの目から見てどういうふうにお考えなのか。
 それから三点目、やっぱりそういうものをなくしていくためには、独禁法を中心にして、その他どういうことが必要なんでしょうか。確かに、御説明あったように、せいぜい排除措置をやってしまうというのが精一杯で、それに従わなかったら初めて罰則が来るという、そういう弱さにあるというふうにお考えでしょうか。あるいは、何かこういうふうにしたらそういうものがなくなるんだということであれば教えていただきたいと思います。
 これ、一つずつでいいんですかな。じゃ、簡潔にお願いします。
#10
○参考人(五嶋耕太郎君) それじゃ……
#11
○委員長(佐藤昭郎君) 参考人は座ったままでお願いいたします。
#12
○参考人(五嶋耕太郎君) 申し訳ありません。
 まず最初のいわゆる定義の問題なんですけれども、これは基本的に明らかにコストが割れているんじゃないかとか、あるいは不当に安過ぎるとかということがもう明らかなようなものについて、いわゆる、これが不当廉売のいわゆる定義になるのかなというふうに、常識的にそういうふうに思っております。
 それから、二つ目、三つ目についてでございますけれども、やはり中小企業者に不当な不利益を与える不当廉売あるいは優越的地位の濫用などの不公正な取引方法に対しては、やはり公正取引委員会による厳正な、そしてまた迅速な対処がなされなけりゃならないなと思っております。実際にはなかなかそういうわけにはいかないようなんでございますけれども、是非それはしっかりと体制を整備して対処していただきたいなというふうに思っております。
 また、現行の不公正な取引方法に対する措置でございますけれども、やはりルール破りの行為をやめさせないと、いわゆるそういったこと、排除措置がどうしても限られておるというようなことで中途半端なことばかりになっておる、そういったことだけで済まされるのならやはりルール破りはなくならないのではないかなというふうに思っております。やはり速やかに実態をよく踏まえて課徴金等の制裁規定を導入しなきゃならないのかなと、前向きに検討しなければならないのではないかなというふうに思うのでございます。
 不公正な取引方法に対しては今回の改正法案で公正取引委員会の命令に違反した場合の罰が大幅に強化されたということで、それはそれなりに評価しなきゃならないんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
 やはり、例えば一般的なスーパーやそれから大型小売店、ここではやはりどれだけ努力しても努力のしようがないというほど不当廉売があるわけでございまして、どうしてもそういったことに対してはやはり強力な法規制をせざるを得ないということではないかと思っております。どうしても強者がその地位を濫用して、まじめに事業をしている弱者を不当に排除するような行為も目に付くわけでありますし、また、こうしたルール破りによって強い者が更に強くなるというか、こういったことは絶対に許すべきではないというふうに思うわけであります。これは、公正取引委員会によって厳正で迅速に対処してほしいというふうに考えているところであります。
 お答えになるかどうかはちょっと分かりませんけれども、よろしくお願いいたします。
#13
○沓掛哲男君 大変貴重な御意見、ありがとうございました。
 次に、根岸参考人にお尋ねしたいんですが、根岸参考人、今回の課徴金の値上げ等も不十分だということなんですけれども、例えば、いわゆる公共調達の場合の入札談合の場合は、今、政令指定都市、県、国、ほとんどはいわゆる入札をして、そしてその業者と発注者が契約する段階でいわゆるこういう入札談合ということが分かった場合には、その価格の、入札した価格の一〇%をいわゆる損害賠償金として発注者が取り上げると、回収するという、そういうのも実は二年前からほとんど出てきたんです。
 そういたしますと、今度の一〇%と合わせると二〇%という実は回収金になるわけで、実際、全産業を見ても営業利益率は二・五%です。建設関係は一・四%しかないんですが、それが三年分のうちでそういう該当したものについて二〇%のお金を取り上げるということはすごい大きなことになるんで、その辺、公取にすればいわゆる公権力の行使なんだと言うし、発注者にすれば損害賠償金で法律も違うし、監督する官庁も違うんだからそれでいいんだと言われるんですけれどもね、やっぱり払う方は一人なんですよ。そういう点について参考人はどのようにお考えになられるでしょうか。
#14
○参考人(根岸哲君) 今先生がお話しになったとおりでありますけれども、やはり課徴金制度というのと、今お話しになりました違約金条項といいますか、そういうものは基本的にやはり趣旨、目的、あるいは手続等が違いますので、それを一緒にして議論することはちょっと難しいんではないかというふうに思います。
 現実問題として、確かに負担をそれだけ受けるということはそのとおりでありますけれども、しかし、今申しましたように、課徴金制度が違反行為の防止という行政上の目的を達成すると、これは国が法律に基づいて権力的な行使をやるということでありますし、その違約金の方は、これは別に国や自治体でなくても民間の場合であっても同じことでありますので、民事上の制度でありますので、この制度はやはり別個独立のものとして考えるべきではないかというふうに考えております。
#15
○沓掛哲男君 今のに対して私、非常に意見があるんですけれども、ここでもう時間がないので、郷原さんにも是非聞きたいことがあるんでお願いしたいと思います。
 それは公共調達の入札談合問題です。今、いろいろな人を、こういう正式なところでこれだけはっきり今の制度上問題があるということをおっしゃられたのは郷原参考人初めてで、さすがにやっぱりいろいろ検事として、また公取とも関係ある、実態をよく分かっておられるなという気がいたしました。
 そこで、当然、公取委の独禁法だけじゃなくて、いわゆる入札等、調達制度そのものにもいろいろ検討していかなきゃいけないというお話で、虫とカビという本当に、大変面白いと言ったら失礼ですけれども、有益な分かりやすい例を挙げていただいたんです。
 よく郷原参考人言っておられるんですけれども、今の調達制度の中で例えばこうしたらいいんじゃないかというような御意見として、競争的交渉方式なんかをその入札制度に入れてみたらどうだとかというような御意見もいただいているんですが、この競争的入札制交渉方式というのはどういうことを考えておられるのか。そのほかにも、いわゆる公共入札でもっとこういうことを考えてやるべきだという御意見があったら教えていただきたいと思います。
#16
○参考人(郷原信郎君) 現在の公共調達制度にはいろいろな問題があると考えております。その最大の問題は、価格競争一辺倒に偏った硬直的な調達制度、入札制度にあるということを考えております。そういう面で、今委員がおっしゃった競争的交渉方式というのも導入が考えられていいと思いますし、いずれにしても、透明な手続でどういう基準で受注者を選んでいくのかということをきちんと開示しながら、その基準を明らかにして価格のみならず品質、技術も含めて選んでいくことが必要だろうと思います。
#17
○沓掛哲男君 私はこういうふうに思っているんですよ。このいわゆる入札、建設関係の入札の問題というのはほかのものと非常に違う。一番違う点は、ほかの入札であれば、物品であれば、そこでもう物ができているんです。ですから、コストは決まっているんです。その物を幾らで買うか売るかという話になるんです。ところが、このいわゆる建設関係の入札というのは、そこに物がまだないんです。これから造るわけなんです。その造るときに当たって極端にダンピングして、必要なコストとかいろいろなことが余り分からないところでもともかく取れということでダンピングして取ると。後は、それに合わせにゃいけない。合わせるためには何をするかというと、やっぱり品質の問題というのが一つあります。品質を悪くすると。形状はなかなかすぐばれますからやりませんけれども、品質問題。そしてまた、今度は使ういわゆる下請とか資材業者をたたいて、どこまでたたくかというような、そしてまたそういう流動性のいろんなことがあるものですから、ある程度のことをやってしまうと思うんです。
 ですから、私はこう思っているんです。もし本当にできることならば、やっぱり目的物に要請される質とか形状のものを造る、そういう施工方法とかコストが分かる人、そういう人だけが入札できる、いわゆる国家資格者だけが入札、札を入れられるというふうにすればこの辺は随分変わるんじゃないか。そして、受注したらその人が現場責任者になるとなればそんなにむちゃなダンピングもできないでしょうし、その入札の中で自分が一番詳しくて、自分の会社なら実行予算こうしてできるとかいろんなことが考えられるんで、やっぱりそういうふうな制度ともう一つ運用という、そういうことも一つ研究に値するんじゃないかなと思いますが、参考人の御意見いただければ有り難いと思います。
#18
○委員長(佐藤昭郎君) 沓掛哲男さん、どなたに。
#19
○沓掛哲男君 郷原参考人に。
#20
○委員長(佐藤昭郎君) じゃ、郷原参考人。
#21
○参考人(郷原信郎君) 需要者の元に供給した時点ですべて供給者としての責務が終わってしまうという商品よりも、むしろ供給した後あるいは一定期間内ずっとその供給者としての義務が生じるという商品、役務というのは、建設工事に限らずいろいろあるんじゃないかと思います。そういう様々な商品、役務の形態に合わせた競争の在り方、競争制限行為の違反の摘発の在り方というのを考えていかないといけないと思うんですが、確かに委員の御指摘のように、今までの違反行為の摘発がそこをちょっと、非常にその一場面だけで切り取ってしまって柔軟なものになっていないということは言えるんじゃないかと思います。とりわけ、建設工事の入札に関する談合などについては、そのいろんな問題がそこに凝縮して出てきているということが言えると思います。
 今、委員のおっしゃった、資格要件を定めて、そういうような資格要件に該当する者だけで工事を施工させていくべきだという御意見ですけれども、基本的には、確かに何らかの技術面、そういう価値、品質という面での限定を行っていく必要があると思いますけれども、どういう基準でどのようにして絞っていくのかということが非常に難しい問題でありまして、これ運用を間違えると、それによっておかしな参入制限が行われる、あるいはそれによって発注する側と業者側との癒着が生じてしまうというようなおそれもあるわけでありまして、そこが正に今後研究していかないといけない難しい問題ではないかと考えております。
#22
○沓掛哲男君 ありがとうございました。これで終わります。
#23
○藤原正司君 民主党の藤原でございます。参考人の先生方、どうも御苦労さまでございます。
 まず、根岸先生にお尋ねしたいわけでありますが、根岸先生と郷原先生のお話を聞いておりまして、非常に対照的な物の考え方としてお聞きすることができました。
 その根本のところは、結局のところ、課徴金とそして刑事罰の二重構造を今後とも併存していくのかどうかと。それによって課徴金のいろんな在り方も変わってくるでしょうし、そこに収れんされていくんではないかというふうに思うわけですが、お聞きする範囲においては、併存していくというのが好ましいんだという前提に立っておられるようであります。それは二年後の見直しも含めて視野に入れたことなのかどうかということでございますが、その点につきましてお考えをお聞きしたいと思います。
#24
○参考人(根岸哲君) 今、先生のお話しになりましたように、私自身は二年後というか現時点でですね、現時点で考えまして、このように、基本的には独禁法の抑止力あるいは執行力というのは公正取引委員会の行政上の措置によるべきというふうに考えます。しかし、やはりその独禁法違反のカルテルとか入札談合というのは、やはりこれは、悪質重大な場合にはこれは犯罪であると、こういうふうにやっぱり烙印を押すという、単にお金の問題ではないと、そういうことが非常に重要だと思います。したがって、やはり通常の事案では行政上の措置で足りると思いますけれども、しかし悪質重大なものについてはやはり刑罰を科すという、併存というか、そういうことが必要であり、その役割分担をもちろん検討していかなきゃなりませんけれども、基本的にはそのように考えております。
 刑罰は、先ほど郷原先生もおっしゃいましたが、日本の法人処罰の在り方について基本的に考えていかないと、今の段階で違った考え方を私は述べるところには至っていないということでございます。
#25
○藤原正司君 郷原先生にお尋ねしたいと思います。
 郷原先生のお考えをお聞きする範囲においては、今回の見直しにおいてもこれまでの基本的な枠組みは変更されていないと。こういう中で、二重構造の見直しを含めて相当将来的に抜本的に見直ししていく必要があるんだと。
 ただ、さはさりながら、今回の問題については〇・二歩前進ですか、少なくとも前進するのであれば認めていけばいいのではないかというふうに言われているわけですが、先生の本来あるべきといいますか、今後あるべき方向というものに対して、今回の見直しがそのベクトルの延長線上に、ベクトルの過程にあるものかどうか。すなわち、その方向性を踏まえたものであるのか。先生がよしと、少なくともやむを得ないとされる今回の改正の内容というのは将来方向に対してどういう格好となるのか、お聞かせ願いたいと思います。
#26
○参考人(郷原信郎君) まず、刑事罰と課徴金の関係の問題に関して言いますと、課徴金、刑事罰、罰金を法人に科した場合に罰金額の半額を控除するというのは、もうある意味で調整を図るという点において前進のようにも見えますけれども、その課徴金の性格論が非常にあいまいになったという点において問題も非常に大きいと思います。そういう面で、やはり二年後の抜本改正においては見直しが不可欠ではないかと思います。
 それからもう一つの大きな問題である課徴金自身の問題。課徴金の賦課を、どのようにして金額を算定して賦課していくかという問題。今回の改正では、違反事実の申告者に対する減免制度は導入されました。しかし、それだけではなかなか効率的、効果的な運用が期待できないということは先ほど申し述べたとおりです。それ以外に、もっとやはり柔軟に課徴金の金額を上下に算定できるというような制度の導入を二年後、抜本改正の段階では考えるべきではないかと思います。
 そういう面で、現行制度よりも問題意識を持って改正に取り組んだという面で何歩かの前進だとは思いますけれども、大きな問題も残されていると言わざるを得ないと思います。
#27
○藤原正司君 ちょっと余り時間がないので、一杯お聞きしたいんですけれども。
 そこで、私ども民主党も昨年の段階で、昨年といいますか、対案を出させていただきました。その中で、最終的に衆議院で否決されましたので、この参議院においては対案をもって論議するということにならないわけでございますが、この考え方から二つほど根岸先生と郷原先生にお尋ねをしたいわけでありますが。
 一つは、課徴金に係る減免措置についてですね。根岸先生は必要ないんだと、本来……
#28
○参考人(根岸哲君) いや。
#29
○藤原正司君 あっ、ごめんなさい、ごめんなさい。ペナルティーの方ですね。済みません。二分の一という考え方を是とされると。
#30
○参考人(根岸哲君) あっ、ごめんなさい。ちょっと今のは調整規定の話ですね。課徴金等……
#31
○委員長(佐藤昭郎君) ちょっと参考人、ちょっとお待ちください。
#32
○参考人(根岸哲君) あっ、ごめんなさい。
#33
○藤原正司君 調整規定について二分の一を是とされるということについて、これ全額調整してもいいのではないかという考え方もある。この辺のところをどうするかということでございます。
 もう一つは、審判手続について今回相当公取が大きなやいばを身に付けることになったと。そういうことについて、私どもとしては根本的に、現在の制裁金、罰金の制度というものについて根本的に見直さない中で大きなやいばを振り与えることだけが本当にいいのかどうかという考え方を持っているわけでございまして、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
#34
○参考人(根岸哲君) 一番最初の問題でございますけれども、それは課徴金と罰金との関係について、罰金の二分の一を課徴金から調整すると、こういう案でございますね。私自身は、そのような調整は本来不要だというふうに考えています。それは、今回、課徴金は以前のというか、現行の課徴金は金銭不当利得相当額の金銭徴収と、こういうふうに説明していましたので、したがってそれを超える額ということになりますと、今回の改正案の課徴金は不当利得相当額以上の金銭徴収と、こうならざるを得ないわけでありまして、それを行政上の制裁というふうに言えるかもしれません。
 しかし、現行のものもそうですけれども、今回の提案されたのもそうですけれども、現実の個々の具体的事件においては、不当利得相当額を超えるか超えないかというのは、これは必ずしも分からないわけであります。したがって、今回の案でありましても、個別具体的な事件では不当利得を下回っているという例も結構多いんじゃないかと私は予想したりしておりまして、必ずしも今回の改正によって何か性格が大きく変わったというふうに私は考えておりません。基本的には、やはり違反行為防止目的という行政目的を達成するための行政上の措置であるという点では基本的に変わっていないと、こういうふうに考えておりますので、それとその刑罰である罰金とを併科しても、厳し過ぎるというか、余りにも過大な二つを科すということは問題かもしれませんけれども、今回の程度であれば問題はないと、こういうふうに考えているということが第一点目でございます。
 それから、二番目の審判手続の見直しの点ですけれども、確かにそのような懸念があるということも十分私も理解しておりますけれども、しかしこの公正取引委員会の行う事件処理手続を全体、トータルとしてやはり評価しなければならないと、こういうふうに思います。そして、通常の他の分野の行政処分の手続と比べますと、公正取引委員会のこの事件処理の手続はやはり大幅にその手続、公正な手続というか、適正な手続の保障がかなり厚いものだと、こういうふうに思います。
 今回のものも、先ほども申しましたけれども、やはり一方では事案の迅速、効率的な処理という要請が一方であり、今日のやり方ではなかなかそれが長期化してしまって、なかなかその迅速、効率的な処理ができない部分があると。しかし、他方、適正手続の保障がありまして、そのバランスをどう取るかと、そういう問題でありまして、今回の場合にはその事前手続というものを保障し、かつ不服があれば審判手続という事後手続も十分保障しておりますので、全体として見るとその適正手続の保障には問題はないと、こういうふうに私は考えております。
#35
○委員長(佐藤昭郎君) 郷原参考人の方に伺いますか。いいですか。
#36
○藤原正司君 お願いします。
#37
○参考人(郷原信郎君) 恐らくこの点が私、根岸参考人というよりも、独禁法学者の多くの方々と意見が違うところではないかと思います。
 私は、課徴金の性格論が当初から一貫して明確なものであれば、こんな二分の一控除などというような話は出てこなかったんじゃないかと思います。
 今回の改正に当たって、当初、根岸先生が座長を務められた検討部会というのが開かれたわけですけれども、その段階では社会的損失を負担させるという概念で課徴金の性格が説明されていたわけです。それがいつの間にかその概念もなくなってしまって、違反行為の抑止ということだけで最終的に説明されるに至ったと。そうすると、ますますその性格の説明が揺れ動いている中で、課徴金というのは何なのかということがあいまいになってしまって、率的にもなぜか分からない五〇%の軽減というような話が出てきたと。やはり、そこに首尾一貫したものが欠けている点に問題があるんじゃないかと。改めて、課徴金は制裁なら制裁ということで明確に位置付けて、課徴金を最も有効に賦課していく制度を模索していく必要があるんじゃないかと考えております。
 それから、審判手続の問題ですが、確かに一般の行政手続と比較してこの公取での今度の改正法の審判手続が慎重なものであるということは言えると思います。しかし、この独禁法違反に対する措置、特に排除措置命令のような事業活動に対して非常に重大な影響を与える措置についてどのような手続を取られているかということを諸外国と比較して考えますと、このように審判手続の前に執行力を生じさせてしまう制度というのは私が知る限りございません。ですから、これは一般の行政手続との比較ではなくて、独禁法違反に対する判断がいかに重大で重要なものなのかと。それがさらに今回課徴金が相当程度引き上げられて制裁的な性格が強まっているということも含めて、手続の適正さを考える必要があるのではないかと考えております。
 以上です。
#38
○藤原正司君 次に、五嶋参考人と郷原参考人にお尋ねしたいんですが、今国会で公共工事の品質確保の促進に関する法律、議員立法が成立をいたしました。いわゆる品確法という法律でありますが、これは、現在の入札方法が、公共入札方法が価格偏重であるということから、品質と価格のバランスの取れた入札の在り方というものを目指していって、結果として価値の高い公共調達を実現しようとするものでありますが、これには様々な危険性が内蔵していることも事実でございます。
 この上で、五嶋参考人の場合は、中小企業を代表されると同時に、かつて輪島市長を三期やられて発注者側の立場におられたこともあるわけでして、今回のこの品確法の成立というものをどう評価されるかどうか、お聞きしたいと思います。
 それから、郷原参考人には、郷原参考人の場合は二段階法改正論というのを取られておりまして、最終的に変えていくという中でこの公共調達の在り方についても検討すべきだという論をされておるわけでありますが、今回の議員立法による法律の成立が独禁法の運用に関してどういう影響を与えるというふうに考えられるのか、また、先ほど言いました二段階改正論という中の延長線上でとらえていいものかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
 以上です。
#39
○参考人(五嶋耕太郎君) 先生御指摘のとおり、品質確保法の趣旨が発注業者、発注者、機関に徹底されればダンピングの防止あるいは不良・不適格業者の排除等に役立つというふうに期待をしております。
 品質確保法でございますが、今、工事量の減少、それからダンピング受注の横行で大変荒廃しつつある市場であります。これまでまじめにいわゆる仕事をしてきた業者、そういった業者が危機的状況に今陥っているわけでございまして、特に地方の建設業者にとりましては、工事量の減少、そしてまたダンピング受注に歯止めがこういったことで掛かるのではないかなということを、そういった期待感が大きいのではないかというふうに見ております。
 それから、品質確保法でございますが、四月一日から施行されたところでございますが、今後、国土交通省等において今年の夏ごろを目途として基本方針が策定されるというふうに伺っております。その際には、大手建設会社の団体である全国建設業協会等の意見だけではなくて、例えば私ども中央会や、あるいは全国の建設業協同組合連合会、あるいは社団法人全国中小建設業協会などの中小企業団体からも意見とか要望などを聞いていただくように御配慮いただければ有り難いと思っております。
 また、本法律の施行を契機として、中小建設業者の切捨てを招くことのないようにセーフティーネット対策についても御配慮いただければ大変有り難いと思います。ありがとうございます。
#40
○参考人(郷原信郎君) まず、品質確保法の問題ですが、私は、先ほど申しましたように、品質確保法によって、価格のみならず品質、技術なども考慮した入札・発注手続が行われるというのは好ましい方向だと思っております。ただ、価格というのが非常に客観的で明確なファクターであるのに比べて、品質とか技術というのは非常にあいまいなものです。ですから、そこをどのようにして透明性を確保し、選定を客観化していくかということを考えていかないと、かえって不透明な癒着、腐敗を引き起こすことにもなりかねないと思います。諸外国ではその点について様々な法的な枠組みがつくられておりますので、その辺りも参考にしながら、更に良い制度をつくるべく、今後その品質確保法の基本方針がつくられる中でもいろんな研究が行われていくものと思います。
 それから、その独禁法の運用に与える影響ですが、これは重大な影響があるのではないかと思っております。現在の公共調達をめぐる談合問題というのはかなりの部分この価格競争一辺倒の入札制度が実情に合わない点があると。そのために、非公式なシステムとして談合が恒常化しているということがあります。そうなりますと、品質確保法によって価格以外の要素も評価されるようになると、談合が相当減少していくということも十分考えられます。
 ただ、その場合の競争の在り方はどうなのか、どのような談合行為あるいは競争制限行為が考えられ、どのようにしてそれを摘発していかないといけないのかという新たな問題が生じるわけでありまして、本来であれば、そういった問題もベースにして参考にしながら独禁法の改正、運用の在り方も考えていかなくちゃいけなかったんじゃないかと思います。そういう意味では、私が前から主張しております二段階の法改正、むしろ二年目の抜本改正に重点があるのだということは、この公共調達制度の大幅な見直しが行われつつあるということからも一層妥当するのじゃないかと考えております。
#41
○藤原正司君 ありがとうございました。
#42
○松あきら君 今日は三人の参考人の先生方、お忙しい中お出ましいただきまして、ありがとうございます。公明党の松あきらでございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 まず初めに、根岸先生に二点お伺いをさせていただきたいと思います。
 根岸先生は公正取引委員会の下で開催をされました独占禁止法研究会におきまして、座長として正にこの十五年十月の報告書の取りまとめに尽力をされたというふうに伺っております。今回の政府案はその報告書をベースとして練り上げられたものだというふうに思っておりますけれども、与党といたしましても、今回の政府案の提出に至るまで政府とともにおよそ一年近く議論をしてまいりました。私どもの党におきましても、今回の独禁法改正案につきまして独禁法改正問題プロジェクトチーム作りまして、二十数回にわたりまして開催をして検討を行っているところであります。その結果は政府の方で十分に酌み取っていただけたものというふうに思っておりますけれども、カルテルやあるいは入札談合に対する抑止力は相当程度強化をされたのではないかなというふうに思っております。
 先ほど先生は、今回この改正したのはなぜかという、三点簡単にとおっしゃいまして、不正が後を絶たない、繰り返すという、まずこれが一点、これで課徴金の引上げをするんだと。二点目は、摘発能力にも限りがあると、不十分なこともある、それで減免措置をするというふうにおっしゃいました。また三番目は、措置の迅速あるいは適切でない場合、あるいは不足のある場合、これは審判手続の見直し、こういうことでしっかりと進めてきたというふうにお伺いしたというふうに思っております。
 ところで、今回の報告書では、課徴金の算定率、何%にするかということまでは実は触れられておりませんでした。今回の改正案では原則六%から原則一〇%に引き上げられたというわけでございます。この一〇%という算定率、現在と比べましてはかなり強化であることは間違いないとは思っておりますけれども、しかしながら、欧米に目を転じますと、例えばEUのように企業の総売上げに対して一〇%の制裁金。そうしますと、平均どれぐらいになるかというと、申し上げるまでもないんですけれども、約二十七・八億円になっているんですね。アメリカにおきましてもやはり高額の罰金が科されているわけでございます。そうしますと、今回の改正案で一〇%に引き上げても、単純計算しますと六千三百二十二万円ということになって、欧米と比べるとまだまだ開きがあるのではないかという、こういう意見もあるところでございます。
 この課徴金の引上げというものは欧米と比べて遜色のない内容となるものなのか、独禁法の専門家としての御意見をまず一点賜りたいと思います。これが一点でございます。
 二点目は、今回の執行力強化のために、この課徴金の引上げのほかにリニエンシー制度の導入、これが大きな柱の一つとなっております。先ほど来種々お話が出ておりますけれども、米国、EUなどの諸外国では既にこのリニエンシー制度というのが導入されておりまして、大きな効果を上げているというふうに聞いております。
 我が国におきましては、今までこれの制度がなかったと、こういう制度なく違反調査行ってきて、カルテル行為の密室性あるいは証拠収集の困難性といった問題に直面することも多かったんであろうというふうに理解をしております。しかし、さはさりながら、さきの委員会でも、これは密告制度であると、ですから我が国にはなじまない、あるいは郷原先生も、このリニエンシー制度に対しては過度の期待をしてはならないのではないかというお話もあったように承りました。
 我が国でもこの制度を導入したことで効果を期待できるのか、また、課徴金の引上げとともにリニエンシー制度の導入によって、私どもの国も独占禁止法も欧米並みに大規模な国際カルテル事件への対応が可能となるのか。この二点、まずお聞かせ願いたいと思います。
#43
○参考人(根岸哲君) まず第一点でございますけれども、私自身は今回の引上げ率ではまだ必ずしも十分でないというふうに理解しておりますけれども、しかし、どれぐらいがよいかというのはなかなかそれは正確な数字でもって表せるような問題ではございませんので、その国の様々な国民の、例えば競争に対する価値観の違いとか、あるいは公共調達の制度が違うとか、あるいは刑事手続など行政手続などに違いがございますので、一概にその率だけを比較して、欧米と比べて低過ぎる低過ぎるということも少し誤解を招くかもしれません。
 私といたしましては、日本の現実の中では、あの独禁法の研究会の議論では、現行の二倍というようなことが議論になったと思いますけれども、私といたしましても、そのような程度であるということであれば相当のものであったんではないかと思っておりまして、もう少しその点について今後検討していただきたいと、こういうふうに考えているということでございます。
 それから、二つ目の点でございますけれども、これは確かに今までなかった制度でございますので、うまくこの制度を動かさないと郷原先生のおっしゃったように効果が生むのかどうかというのは確かに問題があるかもしれません。その意味では、やはりこの制度につきまして、確かに、一番目に行けば確かに免除してもらえるというようなことを、あらかじめ明確な基準というか要件を定めまして、何といいますか、公正取引委員会とその企業側の例えば弁護士さんとの間の十分な意思疎通と信頼関係がないとうまくこれが進まないというおそれもあると思います。
 したがいまして、今回のこの減免制度導入に当たりましては、その点を十分考慮して、公正取引委員会としてはこの制度がうまく効果を上げるような仕組みというのを考えていただきたいというふうに考えております。
 それから、密告制度というお話がございましたけれども、それは私、私どもの国で確かにそのような批判があるということは承知いたしておりますけれども、しかし、例えばアメリカやヨーロッパのこのリーニエンシー制度を、我が国の大企業がそれを利用して減免を受けているというようなこともありまして、そこでは何も外国企業と一日本企業というんじゃなくて、日本企業が複数入っていてもそのようなことがありまして、やはりそれは、何といいますか、制度が次第に定着してくればそのような批判もなくなってくるんではないかと思います。そして、必ずしも他の人を陥れるという制度でなくて、自らの違反行為を申告することによって自らが減免を受けると、そして調査協力し、公正取引委員会のカルテルの難しかった解明が可能になると、こういう制度であるというふうに考えておりますので、密告制度と言われるところは理解できますけれども、しかし賛成するというわけにはいかないということでございます。
#44
○松あきら君 ありがとうございます。やはり犯罪を犯して得をするということは断じて許してはならないという、そういうことであろうというふうに思っております。
 次に、五嶋会長にお伺いをいたします。
 中小企業、大変厳しい経営環境の中でそれこそ血のにじむような御努力をされているというふうに思います。また、伝統産業を守り、先ほど会長のお話にもありましたけれども、またその中から新しい技術も生み出していっているのだというふうに承知をいたしております。まじめに日々の努力を重ねている中小企業の経営を圧迫するような大企業の横暴、あるいは不当廉売、優越的地位の濫用などの不公正な取引方法については断じて許すわけにはいかないのであります。
 先ほど来種々お話を伺いましたけれども、優越的地位の濫用など、中小企業に不当な不利益を与える不公正な取引方法について、今回、公正取引委員会が排除措置命令を行い、確定した場合には、再び同様の行為を繰り返した企業に対する罰則、大幅に引き上げられておりますが、直接的な強化策というところまでには残念ながら盛り込まれていないわけでございます。
 ただ、今回の改正案の附則では、法律の施行後二年以内の見直し、検討、これが規定をされております。不当廉売やあるいは優越的地位の濫用など、不公正な取引方法に対する制裁の在り方についても検討がなされるというふうに思っている次第でございます。中小企業を代表する方としてどのようなことを期待されているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
#45
○参考人(五嶋耕太郎君) 中小企業にとって大変不当といいますか、そういった不利益を与えるいわゆる不当廉売、それから優越的地位の濫用のそういった不公正な取引方法に対しては、公正取引委員会による厳正でそしてまた迅速な対処が十分になされていないのではないか、しっかりとした体制を整備して対処していただければというふうに思っておるところであります。
 また、現行の不公正な取引方法に対するいわゆるルール破りの行為をやめなさいというような排除措置に限られているわけであります。それだけではなかなか済まされないのですけれども、それで済まされるのならば、ルール破りはなくならないのではないかというふうに思っております。
 やはり、まずは速やかに実態をよく踏まえていただいて、課徴金の制裁規定の導入などについても前向きに検討していただければというふうに思っております。そしてまた、不公正な取引方法に対しては、今回の改正法案で、公正取引委員会の命令に違反した場合のいわゆる罰が大幅に強化されたということは大変評価をしているところであります。やはり、今後とも、不当廉売あるいは中小の納入業者いじめの事件などについては厳正に対処していっていただければというふうに考えております。
 ありがとうございます。
#46
○松あきら君 ありがとうございました。
 それでは、最後に郷原先生にお伺いをさせていただきます。
 郷原先生は、独禁法に最もお詳しい学者でいらっしゃるとともに検察官でもあられるというふうに伺っております。私は、検事というお仕事は不正を暴き、社会正義を実現するという、まじめに生きる人たちの味方であるというふうに理解をしているところでございます。
 先ほど来、先生のお話を伺っておりまして、今回、改正してもある意味では使い勝手の良くない武器しか与えられない中で公取は出発をすると、二年後の改めた抜本改革を求めるというお話もございましたし、ちょっと法人中心かあるいは個人中心か、いまだにはっきりしない問題があるということもお伺いをいたしましたけれども、その中で、例えば、中小企業に対しましては、強い者がその優越的地位を濫用して弱い者に不当な不利益を与えるような行為、これも禁じているわけでございます。
 ただ、その不当廉売や優越的地位の濫用行為など、その不公正な取引方法というのは課徴金や罰則の対象とはなっていないわけであります。政府は、今回の改正に当たって課徴金や罰則の対象とすることも一応検討したようでございますけれども、構成要件の明確化などが困難であり、結論が出なかったという答弁がなされております。
 そうした弱い者の味方でいらっしゃる先生、中小企業が活躍できて、一般消費者の利益につながるような公正かつ自由な競争が確保されることが非常に重要であり、不当廉売などの不公正な取引方法に対する執行力、抑止力の強化も必要となっていると考えますけれども、その課徴金、罰金の対象となることについてはどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
#47
○参考人(郷原信郎君) 弱い者の味方ということで期待していただくのは大変光栄なことなんですけれども、不公正な取引方法の中の不当廉売とか優越的地位の濫用に対してどのようなサンクションを科していくかということを、余り一方的に制裁を強化していけばいいというふうに考えるのはいかがなものかというふうに思っております。
 こういう問題の根底には、先ほども申しましたように、市場のゆがみというのがあると思います。制度のゆがみとか市場のゆがみというものが是正されないと、なかなかそういう行為はなくならないということでありまして、それはむしろ独禁法違反に対する摘発一般にも言えるんじゃないかと思います。
 私がほかの独禁法学者の先生たちと若干その見方が異なっている点があるとすれば、経済事件等のそういう捜査等を通してやっぱり現場でどのようなことが行われているかということを肌で感じてまいりました。その分本当に、企業単位で物を考えるだけじゃなくて、いろんなところで火花が散っている、その競争制限と競争の厳しい現実ですね、そういったものに対しての法適用というのはやっぱり血の通ったものでなければならないということを常日ごろから感じております。
 そういう意味で、血の通った独禁法の適用が行えるような、もっといろんな武器を公取に与えていくべきではないかと、そういうようなことの中で、優越的地位の濫用とか不当廉売に対する規制というのもバランス良く考えていくことが必要であって、余りそちらの方ばかりにそのウエートを置くのはどうかなという感じがいたしております。
 以上です。
#48
○松あきら君 ありがとうございました。
#49
○鈴木陽悦君 無所属の鈴木陽悦でございます。
 本日は、最速のルートを使ってまいったんでございますが、十分ほど遅れてしまいまして、大変委員会の皆さん、参考人の皆さん、申し訳ございません。改めておわびをさせていただきたいと存じます。
 特に、五嶋参考人、五嶋さんの意見陳述の途中で入室をさせていただきました。しかし、要旨の方はしっかりと読まさせていただきましたので、こう言ってはなんですが、初めに五嶋さんに質問をさせていただきたいと思います。
 中小企業の課徴金が緩和されているということを大変評価されているようでございますが、抑止力という点から見ますと、緩和は果たして妥当なのかどうか、現状の課徴金と比較してのお考えをまず聞かせていただきたいんですが。
#50
○参考人(五嶋耕太郎君) 課徴金、この算定率が引き上げられている、これはどういうふうに評価するかということでございますが、そもそも、違反行為を行わなければいわゆるこういった問題は起きないわけでございまして、逆に問題のある企業にはやはり課徴金を掛けなきゃならないと、そうしなければやむを得ないのではないかなというふうに考えるわけですね。
 ただし、我々経営者としては、十分に目配りをしておるつもりであっても、現場がいつの間にか談合に引き込まれているというようなこともありますので、課徴金の大幅な引上げはかなりきついのですけれども、そういうふうに思うんですけれども、今回の改正案でそれについては、中小企業に対する課徴金算定率について大企業に対するよりも上げ幅が小さいというか、そういったことで緩和していることなども配慮、いわゆる配慮がなされているのかなということで評価をしておるというふうに思っておるところです。
#51
○鈴木陽悦君 どうもありがとうございました。
 もう一つ、五嶋さんの要旨に基づいて質問させていただきたいんですが、優越的地位の濫用と不当廉売の問題を大変強調されておりましたけれども、お話しできる範囲で結構なんですが、この問題についての現状というのはどうなんでしょうか、お聞かせください。
#52
○参考人(五嶋耕太郎君) 現在のいわゆるスーパーあるいは量販店というのは、特に日々の消費される豆腐とか、それから納豆とかというようなものについては大変シビアな状況でございまして、そういったものを納入している業者については、非常に呻吟しているというのが現状なんでございます。
 そういったことで、日ごろ新聞報道でも見ていただいてお分かりのように、公正取引委員会が中小の納入業者をいじめるスーパーや、そして量販店などにきちんと摘発を行っているのを見ることができるわけですけれども、それでもまだまだ不十分かなというふうな感じをしているわけでございます。
 どうしても小売、納入業者、小売業者間の契約関係、それから経済に与える影響など、これは専門的な知識をかなり要するのではないかなと。実質本当は大したことはない、もうこれは見れば中身ははっきりするということなんだけれども、実質はなかなか不透明な部分がたくさんあるというのが現状なのではないかなというふうに思っております。
 そしてまた、なかなか、優越的地位を、実際にその立場に立たれると実際の中小業者はやはり縮み上がってしまいまして、なかなか難しい。強者がその地位をどうしても濫用してしまう、まじめに事業をしている弱者はやはり不当に排除されるような、そんな行為も目に付くわけでありますね。現実はそういったことで非常に厳しいものですから、やはり公正取引委員会によって厳正かつ迅速に対処してほしいなというふうに思うのが現実でございます。
#53
○鈴木陽悦君 ありがとうございました。
 それでは、私の最後の質問として、お三方にそれぞれのお立場で伺ってまいりたいと思います。
 先ほど来何度も二年後の見直し、二年以内の見直しという発言が出ております。そちらのお話もいただきましたけれども、先日の委員会でも、公取委の委員長の方から、今回のこの改正案は延長上にあるのか二年後は抜本なのかと言うと、委員長は大きな声で抜本改革であるという宣言をいたしましたけれども、皆さんは二年後の見直し、二年以内の見直し、検討、今回の改正案の附帯されている部分なんですけれども、何を見直して何を検討すべきか、それぞれのお立場でここぞというポイントを重点的にお話しいただければ、お聞かせいただければ幸いでございます。三人の皆さんに伺います。
#54
○委員長(佐藤昭郎君) どちらの参考人から、鈴木先生。
#55
○鈴木陽悦君 どなたか、御発言、順番、じゃ、根岸先生からお願いします。
#56
○参考人(根岸哲君) はい、分かりました。
 二年後の再検討というお話でございますけれども、再検討されるテーマといたしましては、やはり先ほど郷原先生もお話がございましたけれども、私と郷原先生とは意見が違いますけれども、しかし、その問題について十分検討していただきたいと、こういうふうに思います。
 私としましては、現時点というか、現在の日本のあるいは公正取引委員会の現状の下では、先ほども言いましたように、独禁法のこの執行力、抑止力は排除措置命令と課徴金納付命令という行政上の措置がこれが中心であると、そして特に悪質、重大なものについてはやはり刑罰を科して、やはり犯罪なんだということをしっかり社会に認識していただくと、こういうことであると私は考えております。
 それから、郷原先生がお話しございましたが、この課徴金の性格につきましては、制裁的要素があることは、それはあり得るということは私も当然だと思います。それは現行の制度でも制裁的機能がある、あり得ることは当然でありまして、先ほども私もお話ししました。しかし、個別事件では不当利得相当額をずっと下回る課徴金ということもあり得て、すべてが制裁というわけでは必ずしもないわけであります。しかし、制裁という機能があり得るということは当然であります。
 そのときに、制裁だから公正取引委員会に個別の事件ごとに裁量権を与えて、個別の事件ごとにその悪質性とか重大性とかによってその課徴金を変えていくというような柔軟性といいますか、そういうことを郷原先生がおっしゃいまして、現在は硬直的だとおっしゃいました。そこのところも議論していただきたいというふうに思います。
 私としては、現在の公正取引委員会の陣容といいますか、あるいはそのような裁量的柔軟なやり方をいたしますとそのコストが非常に掛かるとか時間が掛かるとか、そういうことになるとかえって抑止力や執行力を落としてしまうんじゃないかという、そういう懸念をいたしておりまして、むしろ画一的、一律、できるだけですね、そういう方法でやはり課徴金もやっていく、あるいは減免制度もそのような仕組みの下でやっていくのが日本の現状の下ではより良いといいますか、より適切ではないかと、こういうふうに思います。
 しかし、私のような見方がもちろん絶対的だというふうに思っておりませんので、こういう点も全体を含めまして議論をしていただければ大変有り難いと、こういうふうに思っております。
#57
○鈴木陽悦君 郷原先生に。
#58
○参考人(郷原信郎君) 二年後の見直しにおいて検討すべき点として、まず第一に課徴金と刑事罰との関係を抜本的に見直す必要があると考えております。この見直しに関しては、法人処罰の在り方という課徴金とは別の問題も十分に検討しなければいけないのではないかと考えております。と申しますのも、やはり行政処分にどの程度の制裁性を与えられるかという根本的な問題があって、その問題は刑事罰と行政処分の言ってみれば役割分担のような話にもなってまいります。もし法人処罰の方がもっともっと機動的に企業に対する制裁として活用し得るものであれば、そちらの方を志向していくことも考えられるんじゃないかと思います。
 それから、課徴金の減免の在り方とその上限をどのように設定するかということも根本的に見直す必要があるんじゃないかと思います。先ほど来ヨーロッパなどと比較して日本の課徴金が非常に低いというふうに言われておりますが、この比較は、ヨーロッパの場合はあくまで上限であると、上限が年間総売上げの一〇%であるというところを見過ごしてはならないと思います。上限が高く設定され、その中で適切な水準が算定されているというところに特徴があります。それから、日本の独禁法のように三年ではなくて、一年です、一年間の総売上高の何%ということですから、その辺の違いを明確に、正確に認識する必要があろうかと思います。
 それから、先ほどもちょっと申しましたけれども、実は独禁法違反の中で反社会的勢力が中に介在してくるような悪質な競争制限事案というのが最近は目立ってきているんじゃないかと思います。そういったものに対して公正取引委員会は行政機関として限界がある。しかし、なかなか今まで捜査機関は、警察等の捜査機関はそういった競争制限そのものには手を付けなかったということで間隙が生じてしまっている可能性があります。これはもう社会的に見ても放置できない問題になっていく可能性があります。そういう悪質な競争制限をどうやってきちんとたたいていくのか、処罰していくのかという問題も二年後の見直しにおいて不可欠の検討事項になろうかと思います。
 それから、先ほど申しました審判手続の見直し、これも、果たして今のような制裁性を強めた制度の下で適正手続の点で問題がないかどうか検証が必要であろうと考えております。
 以上です。
#59
○鈴木陽悦君 ありがとうございました。
#60
○参考人(五嶋耕太郎君) 今ほどの御指摘のことについて申し上げますと、これらの問題については我々中小企業団体中央会、常に全国大会でこの問題についてお願いをしているというか、公正取引委員会を中心にお願いをしているところです。やはり、要請はしているんですけれども、なかなかその声は届きにくく、改善は遅々として進んでいないというのが現状でございます。
 そんなわけで、今回の改正案においては、不公正な取引方法の違反行為に対しては確定排除措置命令違反罪に係る法人の刑事罰の罰金額を引き上げることとされておりまして、これを私ども高く評価しているところであります。
 さらに、先ほども申し上げたんですけれども、不公正な取引方法に対する課徴金制度の導入などの制裁規定の強化など、独禁法のこういう措置体系の抜本的な見直しを行っていただきたい。
 それから、中小企業等に不当な不利益を与える不当廉売や優越的地位の濫用などの不公正な取引方法を厳しく規制する効果的な措置の導入について早急に検討を開始して実施に移していく必要があるのではないかというふうに考えております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
#61
○鈴木陽悦君 参考人のお三方には、本当に貴重な御意見、誠にありがとうございました。明日開かれます委員会の中で、皆様の貴重な御意見、各委員参考にさせていただくと思います。
 本日は本当にお忙しい中の御参会、御出席、ありがとうございました。
 終わります。
#62
○委員長(佐藤昭郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して御礼申し上げます。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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