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2005/02/24 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 厚生労働委員会 第1号
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2005/02/24 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 厚生労働委員会 第1号

#1
第162回国会 厚生労働委員会 第1号
平成十七年二月二十四日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員氏名
    委員長         岸  宏一君
    理 事         国井 正幸君
    理 事         武見 敬三君
    理 事         辻  泰弘君
    理 事         山本 孝史君
    理 事         遠山 清彦君
                坂本由紀子君
                清水嘉与子君
                田浦  直君
                中島 眞人君
                中原  爽君
                中村 博彦君
                西島 英利君
                藤井 基之君
                水落 敏栄君
                足立 信也君
                朝日 俊弘君
                家西  悟君
                小林 正夫君
                柳澤 光美君
                柳田  稔君
                蓮   舫君
                草川 昭三君
                小池  晃君
                福島みずほ君
    ─────────────
   委員の異動
 二月七日
    辞任         補欠選任
     水落 敏栄君     岡田  広君
 二月八日
    辞任         補欠選任
     岡田  広君     水落 敏栄君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         岸  宏一君
    理 事
                国井 正幸君
                武見 敬三君
                辻  泰弘君
                山本 孝史君
                遠山 清彦君
    委 員
                坂本由紀子君
                清水嘉与子君
                田浦  直君
                中島 眞人君
                中原  爽君
                中村 博彦君
                西島 英利君
                藤井 基之君
                水落 敏栄君
                足立 信也君
                朝日 俊弘君
                家西  悟君
                小林 正夫君
                柳澤 光美君
                柳田  稔君
                蓮   舫君
                草川 昭三君
                小池  晃君
                福島みずほ君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        川邊  新君
   参考人
       防衛医科大学校
       防衛医学研究セ
       ンター教授    高橋 祥友君
       産業医科大学精
       神医学教室教授  中村  純君
       秋田大学医学部
       教授       本橋  豊君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国政調査に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○社会保障及び労働問題等に関する調査
 (自殺予防対策に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(岸宏一君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 国政調査に関する件についてお諮りいたします。
 本委員会は、今期国会におきましても、社会保障及び労働問題等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(岸宏一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(岸宏一君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 社会保障及び労働問題等に関する調査のため、本日の委員会に参考人として防衛医科大学校防衛医学研究センター教授高橋祥友君、産業医科大学精神医学教室教授中村純君及び秋田大学医学部教授本橋豊君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(岸宏一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#6
○委員長(岸宏一君) 次に、社会保障及び労働問題等に関する調査のうち、自殺予防対策に関する件を議題とし、参考人の方々から意見を聴取いたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、調査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、参考人、質疑者ともに御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず高橋参考人から御意見をお述べいただきます。高橋参考人。
#7
○参考人(高橋祥友君) おはようございます。高橋と申します。
 私は、三人をまず代表しまして、日本の自殺の現状についてお話しいたします。(資料映写)
 これは、日本の年間の自殺者の総数を過去半世紀にわたって示したものです。
 最近の傾向を見ますと、一九八八年から九七年までの十年間、この辺りでは年間の平均自殺者数は二万二千四百十人でした。ところが、九八年になりますとこの数が一挙に一万人以上増加してしまいます。一九九八年には年間の自殺者が三万二千八百六十三人でした。そして、九八年以来、年間自殺者三万人台という極めて緊急な事態がずっと連続しております。特に男性の自殺者が増えてしまったことが全体の自殺を押し上げています。
 自殺者の数は、交通事故の死者の数が減ってきたということもありまして、現在四・五倍に上ります。自殺者の数は三万人以上ですね、年間。そして、自殺未遂者は少なく見積もってもその十倍と言われています。ですから、三十万人以上ですね。
 そして、だれか自殺してしまう、あるいは自殺未遂に及ぶ、こういうことが一件起きますと、その人と非常に強いつながりのあった方、最低五人から六人は非常に大きな心の痛手を受けるというふうにも言われています。といいますのは、ということは、自殺あるいは自殺未遂が起きると、それは死に行く三万人の人だけの問題ではなくて、日本だけでも年間百数十万人の人の心の健康を脅かす非常に深刻な問題であるということなんです。
 これは、自殺者の年齢分布を示したものですけれども、特に最近では四十代、五十代の男性、働き盛りの男性の自殺者数が増えていると、こういうことが非常に大きく取り上げられています。
 これも確かに深刻な問題なんですけれども、是非今日指摘しておきたい点は、高齢者の自殺の問題はこれまでも一貫して非常に深刻な問題であったということなんです。高齢者は人口比に比べまして自殺率が高いです。先進国共通してそういう傾向があります。現在、働き盛りの中年世代の自殺が問題ですけれども、これらの人たちが今後、近い将来高齢者層に入っていくわけですから、きちんとした手を打たないと今後も引き続き深刻な問題であり続けるということが考えられるんです。
 これは、WHOのホームページから世界の自殺率を示したものです。
 はっきりと分かることは、アフリカですとかアジアの幾つかの国、全く白くなっています。といいますのは、非常に多くの国、例えば飢饉ですとか単純な感染症で多くの人が死ぬ、そういうような国ではとても自殺予防にまでは目が行かないということなんですね。WHOに報告している、自殺率を報告している国の平均の自殺率を見ますと、現在大体人口十万当たり十二から十三です。ですから、この赤く塗った国は平均値よりも高い自殺率を示しております。ほとんどのヨーロッパの国、そして日本、オーストラリア、ニュージーランドですね。北米はどちらかというと中くらいの率です。南アメリカですとか中近東は低い率になっております。
 全世界で年間の自殺者の数は百万人です。この数は、仙台市とほぼ同じくらいの人口の人が毎年自殺でもって命を失って地球上から姿を消していると。これが現状でありまして、WHOも自殺の問題を非常に深刻なメンタルヘルスの課題ととらえております。
 これは、とても字が小さくて読みにくいと思うんですけれども、日本と欧米の自殺率を比較しました。
 日本の自殺率は、九八年に急に上がるまでは人口十万当たり十八前後でした。そのころまでは、日本の自殺率は、ドイツよりも少し高くてフランスよりも少し低いと。ヨーロッパの国々と比べますと大体真ん中の値でした。ところが、ここ近年どんどんこれが上昇してきてしまって、現在の自殺率は人口十万当たり二十七になってしまいます。ということは、ヨーロッパ諸国と比べても高率国の一群に食い入ってしまっている。もちろん、日本よりも高い国はあります。リトアニア、ロシア、ラトビア、ハンガリーといったような国々は日本よりも高い自殺率を示していますけれども、日本はそれらの国とかなり近いところまで自殺率が上がってしまっているというのが現状です。
 これは、WHO、世界保健機構が、自殺で亡くなってしまった人が最後の行動に及ぶ前にどのような心の病気にかかっていたのかということを調べたものなんです。
 大多数の方が、最後の行動に及ぶ前に何らかの心の病気にかかっています。例えばうつ病が三〇%ですね。薬物乱用、これはもうほとんどアルコール依存症です、一七・六%。この二つだけで約半数。統合失調症が一四・一%、パーソナリティー障害一三%、器質性精神障害六%といきますけれども、注目していただきたいのは、診断なしあるいは適応障害、要するに心の病気ではなかった、それで死に至ったという人はせいぜい四・三%なんです。といいますのは、ということは、九五%の方が亡くなる前に何らかの心の問題を抱えていたということです。ところが、こういうような人がきちんと治療を受けていたかというと、WHOの調査でも、やはりせいぜい一、二割の人しかきちんと治療を受けていないと。ですから、心の病気を早めに発見して、きちんと治療を受けることによってまだまだ自殺予防の余地があるんだということです。
 WHOはこういうふうに主張しております。うつ病、アルコール依存症、そして統合失調症ですね、これに関しては治療法が現在あります。こういった病気を早期に診断して適切に治療すること、それによって自殺率は最低三〇%は低下させることが可能だということをWHOは繰り返し主張しております。
 さて、うつ病と自殺が非常に密接な関係があるということを指摘しましたけれども、うつ病にはいろいろな症状が出ます。気分や感情の症状、あるいは思考面での症状、いろいろ出るんですけれども、体の症状もしばしば出てきます。眠れない、食欲がわかない、それ以外にもいろいろな症状が出てきます。
 そして、この、ここに挙げました調査は、うつ病の患者さんが一番最初にどの科に掛かるかということを示しているんです。驚くべきことに、日本の調査ですけれども、三分の二のうつ病の患者さんは初診の段階では内科に行っています。うつ病というと精神科の問題と思われるんですけれども、最初から精神科という人は本当に六%にすぎない。心療内科と比べても一割程度なんですね。
 ですから、私たちがいつも強調するのは、もちろん、体の病気が隠れていては困るんで是非検査を受けていただきたいと、ただ、検査を受けても異常が明らかにならない、でも不調が続くというような場合には是非うつ病の可能性を考えてくださいということを一般の人にも、そして精神科以外の医師にも繰り返し強調しております。
 今お話ししましたようなことを踏まえて、日本医師会が昨年「自殺予防マニュアル 一般医療機関におけるうつ状態・うつ病の早期発見とその対応」というマニュアルを出しております。西島議員が監修されて、今日の参考人の中村先生とか私も執筆者の一人なんですけれども、要するに、うつになった人が一番最初から精神科には来ないということなんですね。ですから、精神科以外の他の科の先生に、うつ病についてきちんとした知識を持ってもらう、こういったゲートキーパーの役割を果たしていただくというのは非常に大事だというふうに考えております。
 これは、二〇〇一年に厚生労働省がまとめた「職場における自殺の予防と対応」という小冊子ですね。これも、職場における人事担当者に向けて書いたもので、現実にこの小冊子を使って、二〇〇一年以来、全国各地で人事担当者向けの講習会が開かれています。
 こういったゲートキーパーに向けたいろいろな活動が起きているということが現実にあります。ごく一部の紹介をいたしました。
 さて、海外では、幾つもいろいろな、国のレベルでの自殺予防活動が起きております。その中で一つ、先進的な例としてフィンランドの自殺予防戦略についてごく簡単に御説明いたします。
 フィンランドは北欧の国で五百万ぐらいの人口の国ですけれども、ヨーロッパの中でもかなり歴史的に自殺率が高い国として有名でした。一九七〇年代に国会が自殺予防対策についての勧告を出しているんですけれども、当時は専門家からの一連の提言があっただけで、具体的には、幾つかはいろいろなことをしているんですけれども、実質的には効果の上がる具体策が実施されずに、自殺率が高いままであったというのが現状なんですね。
 そこで、一九八〇年代になって、これは国家的な問題だと、きちんとした対策を立てなければいけないんだということが認識され始めました。フィンランドの研究者に話を聞くと、外圧と内圧があったということをよく言うんですね。外圧というのは、WHOがフィンランドの自殺率が高いということに一貫して警告を発し続けていたんです。もう一つは、これは内圧と言っていいのかどうか分かりませんけれども、厚生大臣ですね。当時の厚生大臣、エーバ・クースコスキーという方ですけれども、女性の厚生大臣ですが、十年ほど前に内科医であった御主人を自殺で亡くしているんですね。そういうこともありまして、厚生大臣が非常に自殺予防に関して関心が高かったと。イニシアチブを取って自殺予防対策に乗り出したということがあるそうです。
 ちなみに、一九九〇年の自殺率、フィンランドの自殺率は人口十万当たり三十・四です。これは現在の日本の自殺率よりも一割以上高い自殺率でした。
 まず、ヘルシンキ大学の精神科のレンクビスト教授を自殺予防対策の総責任者として指名します。最初は、精神科医、精神保健の専門家の間でも、自殺予防なんかやっても何も役に立たないんじゃないかというふうに非常に懐疑的な態度が強かったそうです。八六年に予備調査を実施しまして、翌年、八七年の四月から一年間、フィンランドで起きた全自殺、約千四百例、そのうちの九六%に関して非常に詳細な調査を実施して実態を把握したんですね。ベースラインのデータをここで把握しております。
 当初、目標値として二〇%の減少だったんですけれども、結果として三〇%を減少させることに成功しております。九〇年には人口十万当たり三十・四だった自殺率が、二〇〇二年の段階では二十一・一に下がっています。
 最初、フィンランドの自殺予防計画が三年計画で始まっています。ところが、三年ではとても終わらないというので、二年延ばしたんですね。合計五年。五年終わった時点で、まだそれでも足りないということで、更に五年延ばしています。これで十年ですね。その十年が終わった段階で外部評価に二年間使っていまして、全体として十二年間使っております。さらに、今でも続いています。フィンランドの専門家と話をしますと必ず出てくることは、自殺予防は長期的な展望が必要であると、数年で効果が出るものではない、じっくり取り組む必要があるということを繰り返し言っております。
 フィンランドの自殺予防戦略でうまくいったことはこういったことがあると思うんですけれども、非常に組織的な自殺予防の方針を元々立てたと。十分練り上げて、真の意味での自殺予防の専門家が積極的に関与した。特に二つの機関ですね、国立公衆衛生院が、これは自殺者の実態の調査と研究ですね。そしてもう一つ、国立福祉健康開発研究センター、これが具体的な予防活動を行っていた。この二つの機関が車の両輪のようにして緊密な連携を取ったと、これが成功のかぎであったと思います。また、長期的な取組ということも大事だと思います。
 先ほど二つの機関と言いましたけれども、これはKTLですね、国立公衆衛生院。この写真の方はヨーコ・レンクビスト博士ですね。精神科医です。自殺をメディカルモデルとしてとらえていまして、フィンランドの自殺の問題は、うつ病、アルコール依存症、そして男性だと。これが一番のターゲットだったわけですね。自殺者の約八割はうつ病、アルコール依存症、あるいはうつ病とアルコール依存症の合併であったと。そしてまた、自殺者の四分の三は男性であったと。こういうようなハイリスク群に対して積極的に働き掛けるべきだと。うつ病であってもきちんとした治療を受けないままで終わっている。うつ病をスクリーニングして適切な治療をするということが非常に大きな太い柱になっています。
 もう一つの機関ですね、これはSTAKESですね、国立福祉健康研究開発センター。マイラ・ウパンネさんですね。この人たちは、研究結果を基に、具体的に自殺予防対策を全国レベルで広げていくという非常に重要な役割を果たしました。必ず強調している点は二つです。自殺はたった一つの原因で起きるわけではない、非常に複雑な原因が絡み合って起きていると、それも突然起きるわけではなくて、長い過程を経て自殺が生じているということです。ここで、自殺の危険はだれにでも起こり得るんだと、人ごとではないんだということを言っております。ですから、困ったときには助けを求めるということは決して恥ずかしいことではないんだというふうなことを、息の長いパブリックキャンペーンをしているわけです。
 このように、フィンランドの自殺率は、九〇年に三十だったのが今では二十ぐらいに下がっています。特に、男性の自殺率が下がったことが非常に大きく寄与しているわけです。
 まとめに入ります。
 日本の自殺予防の提言ですけれども、是非、WHOが国のレベルでの自殺予防のガイドラインを九〇年代の初めに出しております。国としての自殺予防方針をWHOの提言に基づいて組織化していただきたいということ。また、現在、日本でも自殺予防の対策が始まっていますけれども、どちらかというと研究費をいろいろのところに配賦して年度末に報告書を集めるというようなだけに終わっているような気がしてならないんですけれども、調査と研究と予防対策、それに緊密な連携が必要であると思います。
 何度も繰り返しましたが、自殺予防には長期的な取組が大事です。さらに、ゲートキーパーに対する教育、一般医療ではプライマリーケア医、学校では教師、職場では人事担当者に向けた自殺予防の教育も重要です。
 今日お話しできなかったんですけれども、最後に是非言っておきたいことは、ポストベンションです。三万人を超える自殺者を直ちにゼロにすることは不可能です。ですから、もしも不幸にして自殺が起きてしまったときに、残された人に対して心のケアをすると、そういったことも是非今後真剣に考えていかなければいけないと思います。
 御清聴ありがとうございました。
#8
○委員長(岸宏一君) ありがとうございました。
 次に、中村参考人にお願いいたします。中村参考人。
#9
○参考人(中村純君) それでは始めさせていただきます。中村です。(資料映写)
 一枚目のスライドは、私が奉職しています産業医科大学ですけれども、産業医科大学というのは、産業医を養成するために作られた産業医学振興財団が経営している大学です。そういう立場で少しお話しさせていただきます。
 高橋先生とは少しオーバーラップしているスライドも、偶然ですけれども、打ち合わせておりませんでしたので入っていますので、その部分は割愛させていただきます。
 私の資料には入れていませんでしたけれども、実はこれは、WHOが各疾病による負担という概念を出しまして、いわゆる生産年齢の方に対してどういう疾患が今非常に重要であるかという概念を出しています。各年齢ごとの生命の価値ということで、あるいは障害を考慮に入れた平均余命とその損失ということで出しているわけです。
 そうしますと、いわゆる働き盛りの方に今一番大事であると言われているのは、世界的に言いますと、エイズの問題、そして二番目にうつ病の問題があります。そして交通事故、結核、世界的に見ますとやはり感染症も重要な問題ですし、五位にアルコール関連の問題、そして自殺、自傷の問題、そして統合失調症、躁うつ病など、合わせますと七割近くが実は精神疾患であると。確かに、精神疾患にかかりますといわゆる生活年齢の方は働けなくなるという意味では非常に重要な問題ではないかと。
 先ほどからアルコールの問題とうつ病は非常に関連しているということが言われていますけれども、これも実は非常に生物学的に、アルコールをたくさん飲んだ翌日というのは実は早く目が覚めるということを経験されると思いますけれども、実は深い眠りを減らすという作用がアルコールにはありますので、過飲あるいは大量飲酒になると、実はうつ病を作るという病態、うつ病と同じような病態を実はアルコールは作っていくということが言われています。
 二〇二〇年には、生活に支障を来す疾患として、いわゆる心筋梗塞に代表されるような虚血性心臓病に次いでうつ病が第二位になる可能性というのが言われています。
 産業医学のことに関して言えば、先ほどから自殺者が三万四千人ということを言われていますし、働いている人が三六・八%、自殺者の七割はうつ病であろうということが言われていますし、重症のうつ病では八人に一人が自殺で亡くなられているということで、産業医学におけるうつ病の早期発見、早期治療の必要性というのが言われているわけです。
 そして、これも繰り返すことになりますけれども、七割が実は男性であるということ、しかも五十歳代の方がその四分の一を占めておりますし、三十歳から五十歳までをいいますと、もう半分以上ですね、しかも、もうリストラに遭って無職、仕事をしていない人が四七%であると。働いている人だけでも八千人を超えるということは、先ほど交通事故死のことを言われましたけれども、実は交通事故で亡くなる人と働いている人の自殺がほぼ同じ数です。毎日の新聞で交通事故のことはよく話題になりますけれども、自殺も実は大変な問題であろうというふうに思います。しかも、最近の傾向は、やはり経済・生活問題による自殺というのが非常に増えてきているというふうに思います。それが特徴だろうと思います。
 警察庁がずっとこの統計を出していますけれども、実は、健康の問題によって自殺するというのが第一位であるというのはこの三十年間ほとんど変わっていません。しかしながら、実はそれは、いろんな病気に、やはり長期の療養、あるいはがんであるとか、いわゆる難治性の疾患にかかった人、あるいは長期療養の果てに自殺をされているというような健康の問題で亡くなられている人が一位であるということは変わりないんですけれども、いわゆる経済・生活問題による自殺が増えているというのが特徴であろうと思います。これも繰り返すことになりますけれども、それをグラフにしますと、このようにパラレルに動いていると。
 それから、私のレジュメの中に失業率と自殺者の動きを図にしていますけれども、それもパラレルに当然動いているわけです。実は一九九八、平成十年に三万人を超えたときに、失業率が四・二%から四・九%に上がったんですね。そのことだけで八千人自殺が増えていることは、やはり経済の問題が非常に大きいだろうというふうに理解しています。五十歳代の自殺者の人数と失業率も非常にパラレルに動いています。
 これはもう繰り返しません。
 それと、過労の問題ですけれども、過労死、あるいは過労というのは蓄積疲労が進んで健康障害まで起こした状態を過労というふうにいいますけれども、一九九六年の労働安全衛生法の改正によって、必ずしも業務に起因して直接引き起こされた疾患でなくても、業務が非常に濃厚に関連した精神疾患でも認定されるという、労災として認定される、いわゆる過労自殺が認定されるということになりまして、やはり企業側でも、いわゆる企業のリスクマネジメントとしても、自殺に対する対応というのは非常に重要になってきているというふうに思います。
 ただ、うつ病も含めたいわゆるメンタルヘルスの問題に関して言いますと、ちょうど三十歳から五十歳、あるいは特に五十歳ぐらいになりますと、やはり家庭の問題、あるいは親の扶養とか子供の教育の問題とか、様々な家庭上の問題も抱えていますので、必ずしも職業のストレスだけで自殺に追い込まれるということを判別するのが非常に難しいというのが実際の問題ではないかというふうに思います。
 さっき、これも繰り返すことになりますけれども、自殺者の九割ぐらいが、先ほどは九五%以上とおっしゃいましたけれども、何らかの精神障害に罹患しているだろう、で、自殺の既遂者では精神障害がやはり大きな要因であろうということで、精神障害者の自殺防止が重要であろうということで、我々は精神科に受診して亡くなられた自殺症例についてまとめてみました。
 これは、全国の大学病院の精神科、労災病院の精神科、福岡県内の精神科病院、精神科診療所、総合病院精神科に受診中の患者さんで、一九九八年一月から二〇〇一年十二月の四年間に自殺した症例についてアンケートを調査しました。
 そうしましたら、実はこの精神科病院六十八というのは大部分が福岡県内の精神科病院及び精神科診療所の先生方に協力していただきましたので、この結果というのは主に、大学病院は全国散らばっていますけれども、おおむね福岡県内の把握ということで、結果ということで御理解いただきたいと思います。そうしますと、どこの大学病院でも大体一・六人、毎年一・六人、あるいは労災病院でも一・五人、おおむね毎年一人ぐらいの精神科で自殺をしている人、受診中でも自殺している人がいるということです。
 それと、大変興味深いことは、警察庁の発表によりますと男性が七割ということでしたけれども、私たちが集積できた、精神科を受診して亡くなられた自殺者を集積しますと、一対一、ほとんど性差がなかったんですね。それで、やはり男性では精神障害があっても精神科を受診しないまま自殺している可能性があるんではないか、そういうふうに思います。
 死亡時に仕事を持っていた人の診断をまとめますと、やはりうつ病を中心とした気分障害が五二%、四分の一が統合失調症、そして、次いで一〇%ぐらいが神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害などの疾患が付けられていました。実は、精神科病院というのは大体六割から七割ぐらいの入院患者さんは統合失調症の患者さんですので、精神科で診ていて、私たちが診ていて、それでも亡くなられた人が半分以上はやはり気分障害だったということは、やはり気分障害への介入というのが非常に重要ではないかというふうに思います。
 職場の誘因が明らかになったというのは、実は余り多くないんですけれども、それでもやはり仕事の失敗、過重な責任、あるいは経営の悪化、休職、復職に関連した問題、失業、就業困難、対人関係のトラブル、仕事上の質の変化、身分の変化など、主にうつ病、うつ状態が起こったために自殺をしてしまったというような人が、こういう誘因が明らかになっているというふうに理解しています。
 それと、これはナンバー・ニーデッド・ツー・トリートという概念がありまして、元々は治療効果が現れるまで必要人数をいうんですけれども、例えばAというお薬を投与して効果が認められるのに何人投与すればよいかという人数なんですけれども、そういう形で統計をしますと、自殺の危険因子が持つ人が何人いれば、そのうち一人が自殺するという評価なんですけれども、そういうものを行いますと、例えば精神科を受診中に亡くなった方というのは、やはり精神科の入院歴を持つ人、アルコール依存を含めた薬物依存の人、あるいは自殺企図歴あるいは絶望感を持った人、こういう項目がある人はやはり非常に自殺しやすいと。極端に言えば、例えば精神科入院歴で言えば七・七二四という数字が出ていますので、非常に幅があるんですけれども、七人に一人は亡くなる、七・七ですから八人に一人は自殺する可能性があるということになります。
 そういうことで、気分障害がやはり、もし介入するとすれば、職場のメンタルヘルス対策としてはやはり大事ではないかというふうに思っています。
 それから、精神科に受診している患者さんでは、今言ったように、薬物依存あるいは自殺企図歴、絶望感、これは特にうつと関連していると思います。精神科の入院歴というのが危険因子になるというふうに理解しています。
 これも先ほど高橋先生が示されましたけれども、これは先ほどの高橋先生より前に日比谷クリニックの三木先生が出されているんですけれども、精神科を受診した人が一三・二%でしたから、先ほどのは二〇〇二年のデータだったと思いますけれども、それで一〇%ということ、ますますこれは精神科に対する敷居がまだまだ高いということ。ひょっとしたら、一般診療科でかなりうつ病の患者さんが治療されているのかもしれないというふうにも思います。
 それで、自殺予防というのは医療従事者全体の問題として私たちはとらえていきたいと思います。それで、やはり自殺した人の半数以上は自殺の一か月以内に何らかの身体症状を訴えて、精神科以外の医療機関を受診していると。そういうことで、やはり、先ほど高橋先生がおっしゃいましたように、一般診療科の先生にも自殺、うつ病は診ていただきたいと思いますし、我が国の過労自殺に関する民事訴訟、あるいは大多数の例でうつ病であった、あるいは約半数は何らかの身体的な問題を訴えているということで、やはり産業医の役目が非常に重要になってきているんではないかというふうに思います。
 今企業で起こっていることを考えますと、いろんな調査がありますけれども、厚生労働省が五年ごとに行っているいろんな調査の中で、ストレスを感じている人がいつも大体今六割ぐらいを超えているんですね。それと、繰り返すことになりますけれども、三十歳から五十歳代の男性の自殺者が増えているということで、企業のリスクマネジメント、労働損失の低減、ミスや防止などを含めて非常に重要になってきていると思います。
 しかし、やはり心の悩みを打ち明ける場が少ないということで、我々のところに来られるのは初めて、休職の診断書が出て初めて企業側に分かるということが多いような気がします。したがって、現状は予防よりは復職支援と再発防止の段階ではないかというふうに思っています。ですから、信頼できる産業医あるいは精神科医の確保というのが非常に重要ではないかというふうに思います。
 うつ病というのは、実は、うつ病ということで言いますと、三対一ぐらいで女性の方が多いんですね。特に、更年期、高齢期、老年期のうつ病が増えていると。一方で、職場不適応あるいは軽症の頻回欠勤者、逃避型の抑うつというような人もうつ病としては増えているように思います。最近、企業に対する従属意識というのは実は少しずつ減ってきているのか、消耗性うつとかあるいは昇進うつ病というのは少し減ってきているのではないかというふうにも言われています。
 ただ一方では、今年四月から施行される個人情報の保護に関する法律などを盾に情報の交換がなかなかうまくいかないというようなことがあって、非常に企業の中での状況がよく分からない、あるいは精神科医側の方も守秘義務を守らなければならないということで、その連携がうまくいかないまま患者さんが不幸なことになっている可能性もあるというふうに思います。
 うつ病のことで言いますと、非常に最近は高齢者が多くなっていること、それから女性が多いということ、それから心気的な訴え、いろんな体の病気があるんではないかということで、長引く病気だというふうに思っています。そして、先ほども言われましたけれども、自殺に対する影響をよく考えないといけないというふうに思います。特に、残された人々についてのフォローというのも大事ではないかというふうに思います。
 それで、事業場内では、当然心の健康も体の健康と同じように自分自身が守るというセルフケアの問題と、あるいは企業内での管理監督者が労働者の心の健康保持のためにいろんな啓蒙活動を行うということ、それと事業場内の健康スタッフ、特に産業医の問題ですけれども、産業医が心の健康に対して非常に関心を持っていただくということと、あとは事業場外のいろんな機関との連携が非常に具体的には大事になっているんではないかと思います。
 ただ、うつ病を早期に診断する評価尺度の問題あるいはストレス評価尺度の開発というのが十分ではないこと、それと専門家に対する敷居が高いということで、なじみの専門医を確保するということ、これは復職の支援にもなりますし、再発予防にもなると思います。ただ、大企業はいいんですけれども、中小企業での対応が非常に遅れているんではないかということを危惧しています。
 それで、メンタルヘルス対策に対するネットワーク作りということでいろんなことを考えていますけれども、実際は、地域産業保健センター、医師会に実はあるんですけれども、そのセンターの働きぶりの温度差あるいは嘱託産業医の心の健康の問題に対する理解というようなことがまだまだ不十分ではないかというふうに思います。
 ちょっと時間をオーバーしましたけれども、終わらせていただきます。
#10
○委員長(岸宏一君) ありがとうございました。
 次に、本橋参考人にお願いいたします。本橋参考人。
#11
○参考人(本橋豊君) 秋田大学の本橋と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、自殺予防対策の中で、特に秋田県の取組を中心にお話をいたしますが、言いたいことは一つだけでございます。地域における自殺予防対策を推進することで自殺率は確実に低下するということ、言い換えれば、社会の努力で自殺は予防できるというようなお話をしたいというふうに思います。(資料映写)
 お手元の資料を見ながらお話を聞いていただきたいと思いますが、この資料は、自殺率の都道府県別の分布を示しておりますが、秋田、青森、岩手の北東北の三県で特に自殺率が高いということが分かります。これは平成十四年のデータでございます。それはどうしてなのかということを考えてみますと、高齢化の進んだ地域であるからとか、雪が多い地域である、日照時間が少ない、それから医療施設が充実していない地域だからといったいろいろなことが考えられるわけです。
 しかし、これらの地域は、かつては必ずしも自殺率が高かったわけではなくて、一九六〇年代を見てみると秋田県の自殺率は全国で二十七番目でございました。したがって、単に雪が多いからとか、それからよく県民性のことを言われることがあるんですけれども、県民性の問題とはそういう事実から考えると関係ないというふうに私は考えております。一九七〇年ごろからこれらの地域の自殺率は高くなるんですけれども、経済成長の時期を経て農村の地域が少子高齢化が進展したというようなことがやはり大きな理由ではないかと私自身は考えております。
 次のこのスライドは、私が仮にいろんなところで考えた仮説を話しているわけですけれども、この図で、細かいことは申しませんけれども、一つ重要なことは、うつ病であるとか自殺に関連する要因というのはたくさんあると。複合的なものである、何か一つの原因で一つの結果が起きているということではないということです。様々な要因がうつ病や自殺に影響を及ぼしていると考えるのが妥当だということです。
 それで、秋田県の対策もそうですが、世界の対策すべてですけれども、やはりうつ病対策を中心に組み立てられているということも事実でございまして、地域におけるうつ病対策ということを柱に据えるということは極めて妥当なことだというふうに考えています。
 ただし、それだけではなくて、さらに、農村の過疎地域ですと、家族的な要因であるとか個人特性要因、この場合特にストレス対処行動というふうなものを我々考えておりますけれども、こういうものもいろいろ影響しているんだということを複合的に考えていく必要があるということでございます。
 私ども秋田県、私も少しかかわらさせていただきまして、その自殺予防対策を進めているわけですけれども、私自身は、新しい公衆衛生学と言われているこのヘルスプロモーションのアプローチによる自殺予防対策というのを進めていくのが大切だというふうに考えておりまして、その概念を簡単にここでお示しをしているんですけれども、三つぐらいの段階に分けた場合、まず自殺予防に取り組む姿勢を明確にすることです。
 これは、特に農村地域などでは、都会でもそうかもしれませんけれども、まだまだうつ病であるとか自殺予防に関する社会的偏見が強いと。まずその辺を除去していくということが第一ステップですけれども、この問題が重要な問題であること、それから自殺は予防できるというようなことを社会全体で認識することが大切だと思います。
 それから、このような問題を実際に対策として進めていくんだというような社会的合意を形成していくこと、これが大切です。これがまず第一段階だと思います。
 第二段階としては、これらの第一段階を踏まえて具体的な自殺予防行動計画を策定し、実施していくわけでございますけれども、ここにおいては、新しい公衆衛生学の戦略であるいろいろなエンパワーメントであるとかアドボカシーであるとかメディエーションというようなことを考えながら進めていくべきであろうと。
 それから、うつ病の治療、予防と早期発見、早期治療というような二次予防的アプローチもとても大切ですけれども、病気になる前にうつ病にならないようにするためにはどうしたらいいのかというような一次予防の考え方ですね。
 それから、場の設定のアプローチという考え方ありますけれども、病気というよりは、どこの場で対策を進めていったらいいのかということを中心に実際の場面では考えていく。これはWHOやなんかが言っていることでございます。
 それから、いろいろな国のレベル、地方自治体のレベルの対策の中でも、健康政策だけではなくて、いろいろな政策、公共政策の中にうつ病の問題であるとか健康という考え方を取り入れていくということ、これをヘルシー・パブリック・ポリシーというふうに言っていますけれども、健康的公共政策というふうに訳させていただいていますけれども、こういうことを考えていただきたいと。
 そして、第三段階としては、高橋先生からも御指摘ありましたけれども、息の長い対策が必要ですけれども、最終的には、自殺が予防できたのかどうなのかということを評価することが必要でございます。これは秋田県でもまだ最終評価の段階ではございませんで、中間的評価ということで私どもが行った評価を最後にお話をいたします。
 これからその秋田県の具体的な取組についてお話をしていきますけれども、国のレベルでは健康日本21という健康増進対策がありますけれども、都道府県では、ここに書いてあるような健康秋田21であるとか県の名前を冠したいろいろな行動計画がございます。秋田県の場合には健康秋田21計画ということで、まずやはりその自殺予防対策を推進するための体制を整備することが一番最初は大切でございます。
 秋田県の場合には、秋田県心の健康づくり推進協議会、これは現在は秋田県健康づくり審議会心の健康づくり部会というふうに名前は変わっていますけれども、基本的にはこの協議会なり部会が秋田県全体の自殺予防対策のモニタリングとそれから適切なアドバイスをするというような役割を持っておりまして、年二回、平成十三年度から開催されております。
 それから、秋田県の場合、非常に特徴的なことは、国のレベルでは健康増進法という法律ができておりますけれども、それを受けまして、この健康秋田21計画を具体的に推進していくための法的な根拠ということで、昨年の四月から秋田県健康づくり推進条例というのを制定いたしましたが、ここの中で、第十八条で、県は、心の健康の保持及び、保持増進ですね、それから自殺予防の対策を行うことというふうに明記したわけでございますけれども、これは非常に極めて重要な根拠であるというふうに考えております。
 具体的に申しますと、大変単純化いたしましたけれども、秋田県の自殺予防対策、五つぐらいの柱から成っておりまして、まず最初は情報提供と啓発、これはうつ病の予防あるいは自殺予防に関する情報提供と啓発ということでございます。
 二番目は、悩んでいる住民の方々に対して相談体制のネットワークを構築をして充実させていくということです。
 それから三番目といたしましては、予防事業の推進ということで、後でお話をいたしますいろいろな秋田県の自殺予防モデル事業というのを行いまして、それに基づいて全県的な取組を進めていこうというような、そういうような予防事業を行っているということです。
 それから四番目としては、うつ病対策ですけれども、これは県の医師会などと協力をして、一般医の方々に対するうつ病の研修、それから一般の住民の方々に対するいろいろな啓発のための講演会などを行っております。
 最後の予防研究というのは、主として私ども大学が委託をされた形で、モデル事業の地域でうつ病のリスク要因は何かということを定量的に評価すると、そういう研究をさせていただきました。
 以下、具体的に少し、対策の柱というのをもう少し具体的にお話をしていきますと、この情報提供と啓発普及、これはヘルスコミュニケーションというふうに私ども言っていますけれども、全県のレベルでこのうつ病であるとか自殺予防に対するシンポジウムのようなものを、これは毎年秋田県では開催しております。一番最初は二〇〇〇年に行われました。このシンポジウムを受けて、実は藤里町というところでは具体的な対策が進んだというようなことがありまして、そういう意味では非常に重要であったというふうに考えております。
 それから、全戸配布の自殺予防に関するリーフレット等を作ったというふうなことがあります。ここにはその具体的なリーフレットの表紙を示しています。それから、市町村の方々、特に保健の職員ですね、この方たちが実際にうつ病対策を進めていくためのガイドみたいなものを作成したということです。
 相談体制の充実というところでは、秋田県は「ふきのとう」というのをキャラクターにいたしまして相談窓口のネットワーク化をしたということで、ふきのとうホットラインというふうに書いてあります。ちょっと見にくいかもしれませんが、ここでは、病気のことだけではなくて、経済の問題であるとか、それから子供の問題、女性の問題、どういうところに相談窓口があるのかということを一覧表にしまして、これは全戸配布ですね、全県民に配布したというような対策を取っております。
 うつ病対策といたしましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、秋田県医師会と協力いたしまして、臨床医のためのうつ病の手引きというようなものを作成してあります。これは開業医の先生であるとか一般医の方が日常診療の中ですぐ手元に置けるマニュアルで、具体的にどういう薬を幾ら処方したらよいかというような具体的なことが書かれています。それから、この一般医を対象としたうつ病の研修を年三回ぐらい実施しております。さらに、住民を対象としたうつの講座というのも頻回に行われています。というような、こういうようないろいろな対策が行われているわけでございます。
 予防事業の一つとして、このモデル事業というのを秋田県では二〇〇一年から開始したのですが、ここでは県の方から市町村にこういうような基本パッケージを自分のところに合うような形でやってくださいというようなメニューを出しておりますが、ここに書いてあるようなメニューでございます。心の健康づくり巡回健康相談事業、これは同じ町の中でも更に地区をかなり限定した形で巡回していくというような形で、きめ細かい健康相談事業を行うというようなことですね。そのほか、講演会の実施であるとか、それから生きがいづくり事業などがその町の実情に合わせて行われています。
 それから、地域診断研究と連携したモデル事業の推進ということで、実は秋田県では六つの町でモデル事業を行いましたけれども、モデル事業の最初の年に住民を対象としたうつ病のスクリーニングを実施いたしまして、うつ状態であるというふうに思われる方々に対して医師が直接個別に面接をして指導をするというような事後追跡体制を整えています。こういうような対策ですね。それから、メンタルヘルスマップというようなものを作成したりとか様々なことをやっております。
 具体的な市町村レベルの活動ということで、モデル地域、モデル町の実際の活動事例をまず簡単に御紹介したいと思います。この秋田県藤里町という白神山地のふもとにある過疎の進んだ町でございますが、ここの事例は非常に参考になる事例だということであえて御紹介いたします。
 この藤里町の対策というのは、ここの一番冒頭に書いたように、住民の主体的な活動を生かした自殺予防活動を行って効果を上げた地域であります。先ほどもちょっと触れましたように、二〇〇〇年に県が開催いたしました「命の尊さを考えるシンポジウム」という、これに参加をした住民たちが、自分の町でもこういう対策を行わなければいけないということを理解して、実際にはNPO法人の「心といのちを考える会」という会を発足させまして、このNPO法人が中心になって、県の行政とも連携をして、いろいろ具体的な自殺予防対策と、実際にそれを実践する場でもこの法人が活躍をしているということでございます。
 そして、具体的な調査も行っているわけですが、で、細かいことは時間がないので余りお話しできないのですが、例えばこの「藤里物語」というパンフレットのようなものを全戸配布していますけれども、これは単にうつ病の症状を羅列したということではなくて、ドラマ仕立てで、住民の方たちが関心を持てるような形でリーフレットを作って、うつ病であるとか自殺予防に対してどう考えてもらったらいいかということを書いている。そういう工夫を凝らした健康情報の提供を行っております。
 それから、大学の専門家も支援を行いまして、いろいろな地区に出前で講演をするというようなことですね。それから個別の相談事業も行っております。それから仲間づくりのいろいろな支援も行っているということです。
 最後に、こういうようなモデル町で事業を行っていったわけですけれども、具体的にこのモデル事業により自殺死亡者は低下するんだということをお示ししたいというふうに思います。
 このモデル事業、先ほどもお話をいたしましたように、二〇〇一年から開始されまして、事業期間、三年間でございますが、二つの町で一年ずつずれて事業が開始されています。初年度に私どもの大学のチームが入っていろいろ基礎的な調査をやるということで、今年はその最後の大森町、千畑町というのが事業終了年度でございまして、最終的に事業が終わります。
 この黄色で示したところが実は事業を行ったところで、県の北部と県の南部、いずれも農村部で、過疎化と高齢化が進んだ町でございます。ここに、抑うつ尺度得点の高得点者割合というので、大体一〇%から一五%ぐらいの方が抑うつ的であるというような結果になります。この抑うつ的であるところが高い地域では、実は自殺率が高いということも分かっております。実施した対策、具体的にそこに書きました。こういうようなアプローチをいたしましたということでございます。
 さて、これがエッセンシャルな結果ですけれども、事業を開始したことによって、このモデルの四町です、六つのあるうち評価可能であった四町についてだけのデータをお示ししていますけれども、秋田県全体の自殺率は増加傾向にあるんですけれども、この四つの町の自殺率は明らかに低下をいたしました。二〇〇三年の時点で、開始前と比べまして統計学的に有意な減少傾向を示したということを認めました。
 それでは、こういうような減少がもう開始後、介入後一、二年で認められたというのが非常に私どもの、驚いたんですけれども、どうしてなんだろう、どうしてこういうことが効果があったのだろうかということについて、確実なことはまだ言えないんですけれども、一応現時点で私どもが考えているということは、積極的な自殺予防活動を地域で行いますと、一年後ぐらいから確実に自殺率の減少傾向が認められます。そして、活動を継続することによってこの減少傾向は持続いたします。ここの青い字で示したように、この積極的な自殺予防であるとかうつ病予防の啓発普及活動をこの地域でかなり重点的に行ったこと、それから、うつ病のハイリスク者への事後追跡体制を整備したというようなことがありまして、こういうことがなるべく早い時期から自殺予防の効果が現れてきた要因ではないかというふうに私どもは考えております。
 以上でございます。
 御清聴ありがとうございました。
#12
○委員長(岸宏一君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の進め方でございますが、まず、各会派一名ずつ、大会派順に質疑をしていただき、その後は自由質疑としたいと思います。
 なお、質疑の時間が限られておりますので、参考人の方々には簡潔な御答弁をお願い申し上げます。
 また、委員長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
#13
○西島英利君 本日は三名の参考人の方々に……
#14
○委員長(岸宏一君) 先生、座ったままで結構です。
#15
○西島英利君 はい。
 三名の参考人の方々にお話しいただきまして、ありがとうございました。
 この自殺の問題について、私自身が平成十一年に、精神保健法が改正のときに衆議院で、委員会で参考人として呼ばれたときにこの問題を強く指摘したところでございますが、ようやくこの問題に取り組もうという姿勢が国に出てきたように思います。その結果が今日のこういう集中的な審議になったんだろうというふうに考えております。
 そこで御質問させていただきたいんですが、まず高橋参考人に、先ほどから出ています、精神科になかなか掛からないということも、やっぱり自殺が増えてきている一つの原因かもしれないというようなことも三人の方からも大体出てきたように思うんですが、この偏見という問題でございますね。特に、マスコミの報道によってこの偏見が助長されているのではないかと。例えば精神障害者が何か事件を起こしますと、それそのものが、例えば精神病院入院歴があるとか、そういうことがよく書かれているわけでございますけれども、これがなかなか精神科の受診を遠ざけているのではないかというふうに思うんですが、この点についてちょっとお聞かせいただきたいと思いますが。
#16
○参考人(高橋祥友君) お答えします。
 今のお話に関して、統合失調症に関してはかなり問題が多いと思います。また、自殺に関しては大変問題の報道の仕方はあると思います。例えば、先ほど言いましたように、自殺は非常に複合的な原因で起きるにもかかわらず、たった一つの原因で自殺を説明しようとする。また、手段を極めて詳細に報道する。また、自殺の悲劇的な側面ばかり報道して、こういうような人にはどういうような問題があって、どういうところに助けを求めれば自殺に至らなくて済んだんではないかと、そういった自殺予防につながるような建設的な情報がなかなか伝わらないで、自殺が起きたということに関してばかり光が当たってしまう。そういうようなことが、なかなか自殺に対する偏見が減らない原因としていまだに認められると思います。
#17
○西島英利君 次、中村参考人に質問させていただきますけれども、お三人の話の中でこの整理をしますと、うつ病対策が自殺の防止にかなり大きな効果を来すのではないかというふうに私自身考えたわけでございますが、例えば職場の中でのうつ病という、まあ精神障害というものに対する偏見があって、なかなかうつ病になって精神科に掛かると職場復帰が非常に難しいというようなことも、私自身もその臨床医でございましたので、そういうことを感じてきたわけでございますけれども、そういう問題をやっぱり解決しない限りなかなか精神科医の受診につながらないのではないかというふうに思うんですけれども。
 それからもう一つは、うつ病は、その本人の問題でなくて、周囲がこのうつ病をどう理解するのか、例えば対応の仕方等、励ましてはいけない云々の一つのマニュアルがあるわけでございますけれども、そういうことを含めて、この対策を練らないとなかなか難しいのではないかというふうに思うんですが、いかがでございますでしょうか。
#18
○参考人(中村純君) お答えいたします。
 御指摘のとおり難しい問題だと思います。それで、やはりすべての自殺の、先ほどからお示ししましたように、精神疾患の中でもうつ病がすべてではないわけですけれども、やはり介入のしやすさからすると統合失調症よりは可能ではないかというスタンスがあって、やはりうつ病対策が重要ではないかと思います。
 それに、産業医の問題ですけれども、例えば産業保健スタッフが、やはり大部分の方は実は精神科医でないという、あるいは心療内科ではないという専門医が産業医をしているということが現状だろうと思います。ですから、やはりその産業医の先生と産業保健スタッフの先生方と専門医との連携を何らかの形で作るしか、現状では難しいんではないかと。ただ、先ほど本橋先生がおっしゃいましたように、企業の中でうつ病を啓蒙するようないろんなことをするということがやはり一次予防として非常に重要であろうというふうに思います。よろしいでしょうか。
#19
○西島英利君 はい。
 本橋参考人に御質問させていただきますけれども、高齢者の問題で一番大きいストレスというのは喪失体験だと思うんですね。先ほど生きがいという言葉を使われましたけれども、生きがいというのが何なのかよくお分かりにならない方がたくさんいらっしゃると私自身は思っているんですが、やはりその役割を高齢者の方々にどう作ってあげるのか、これもやっぱりうつ病を予防する一つの大きな要因ではないかというふうに考えるんですけれども、いかがでございますでしょうか。
#20
○参考人(本橋豊君) ただいま御指摘のとおりでございまして、高齢者、特にこういう農村地域の高齢者では、やはり寂しさですね、私どもの質問の中でも寂しさを感じますかということが一番あるんですね。やはり、御指摘のように、地域の中でそれぞれの方がきちんとした役割を果たせるようなことをうまく作ってあげることというんでしょうかね、そういうことがやはりこの地域の生きがい対策の中で一番重要なことだと私ども考えております。
#21
○西島英利君 高橋参考人に教えていただきたいんですけれども、最近、インターネットを通じての集団自殺、それから小中学校での子供の自殺等々がよく大きく報道されるわけでございますけれども、よく、人格的欲求という中で、集団の中で尊敬され認められたいという、そういう気持ちを人間は持っていると、これはよく心理学的には言われるわけでございますが、この、集団の中で尊敬され認められたいという、こういう状況がなかなか、例えば学校でも地域でもないがゆえに孤立化して、こういう集団的なものとか、本当はいじめはないんだけれども、本人がいじめられたと思って自殺するというようなことにもつながるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでございますでしょうか。
#22
○参考人(高橋祥友君) やはり今先生がおっしゃったとおりだと思います。
 今日、精神障害が自殺に関連する問題ですとか、あるいは社会の中で孤立する問題というようなことが再三取り上げられてきましたけれども、アイゼンバークという精神科医が、自殺というのは一言で定義すると孤立の病であるということを言っております。
 やはり、自殺して亡くなってしまった人を詳しく調べると、もちろんうつ病であったりアルコール依存症であったりということがあるんですけれども、必ず共通項としてほぼ全例に認められるのが孤立ですね。社会の中で生きていて、周りに家族もいる、友人もいる、同僚もいる、しかしその中で自分はたった一人だと、だれも助けてもらえる人がいないと、こういうような状態になってしまったときにこそ自殺の危険が非常に大きく迫るものではないかと考えております。
#23
○西島英利君 ありがとうございました。
#24
○山本孝史君 民主党の山本孝史でございます。
 参考人の先生方には、大変お忙しいところ、また遠いところお越しをいただきまして、本当にありがとうございます。また、本委員会の委員の先生方にも、この今日の開催について御理解また御協力をいただきまして、本当にありがとうございます。
 今日、三人の先生方の話をお伺いをしておりまして、最終局面では心の健康、うつの問題だというふうに私も思っておりますけれども、そこが余り強調されてしまいますと、うつ対策だけをやればいいんだという形になってしまうのではないかと。厚生労働省もそこしかできないものですから、そこばかりやっているという感じがしております。やはり個人的な問題ではありませんし、社会的な問題ですし、総合的、複合的な要因が絡み合っている問題ですので、そういった視点で対応を考えていかなければいけないんだと思います。
 本橋先生の秋田のお話、前から興味を持って聞いておりまして、今日詳しくお話をお伺いして、大変皆さん方、住民の方々も含めてすごいお取組をしておられるなと思うんですが、お伺いをしたいのは、どういう形でほかの町にも、あるいは日本全国に広めていけばいいのか。そのときに、御苦労ですとか、あるいはどういうことに気を付けていけばいいのか。あるいは国として何らかの取組を考えるとすれば、どういうことが考えられるのか。そういったことについてお考えをお聞かせをいただければと思います。
#25
○参考人(本橋豊君) 実は、秋田県の取組は元々自殺率が高いということもあって始まったわけですけれども、始めている段階の中では、先ほど私がちょっと御指摘いたしましたように、なかなかこの社会的な偏見を取り除いていくという辺りでかなり苦労を、初めの段階では苦労しております。ただ、二年、三年と続けてまいりますと、初めはいろいろ疑問を持っておられた方もだんだん理解が深まっていくという形になってまいります。そういう意味で、一番最初は啓発活動というのがやはり一番重要であるなということをまず最初に考えております。
 十年例えばやる段階で最初何を重視すべきかというと、まずそういうような、この問題に対する理解を深めていくこと。今、山本先生がお話いただいたように、確かにうつ病対策だけではないんですね。私自身、うつ病対策というのはかなり重視をしているんですけれども、一次予防重視型、それから地域で全体のこの問題を取り組んでいくというようなスタンスでやっていかないと、うつ病の治療をしても、その背景要因をうまくコントロールできないと、それは、問題が解決しないということはいろんな例で私見ております。
 さてそこで、じゃどうやって広げていったらいいかということは、実は私どもも非常に悩んでいるところでございますし、県も多分悩んでおられると思います。
 ただ、このモデル事業の取組等、いろんな形で紹介されると、いろんな町でやってみたいということが秋田県の中で出てまいりました。それから全国的にも、やはりその秋田県の取組を参考にしながらもう少しいろいろな形でやっていきたいということでございますので、取りあえず今の段階私どもができることとしては、私どもがこれまでやってきた取組をいろいろ情報提供を積極的に行って、やればできるんだということをまず理解していただくということが、そこからしかまず始められないのかなというふうに思っております。実際には北東北でもいろいろ広がりが出てきているところで、それを何とか全国に広げたいと思っております。
 国としてやるべき事柄は何かと。これは非常に重要なことでございますけれども、御指摘のように、省庁ごとにいろいろ分かれておりますので、うつ病対策は厚生労働省であるとか、あるいは失業問題は別の経済産業省であるとか、いろいろあると思うんですけれども、是非、そういう省庁の枠を超えた形で総合的な取組の方策というのを是非取っていただきたいというのが私が考えているところです。
 具体的に、じゃ国は何ができるのかというと、国はやはり法制度の整備であるとか対策の基本的な要綱みたいなものをきちんと取っていただいて、特にその対策の法的な根拠であるとかシステムの整備ですね、これはやはり都道府県のレベルではなかなかできないことですので、その辺をきちんとやっていただきたいと。そして、具体的な対策そのものについてはむしろ市町村で、市町村というか都道府県のレベルに落としていただいて、むしろ国は側面から都道府県がやりやすいようにいろいろな形で財政面それから制度面で支援していただくという役割ではないかなというふうに感じております。
 以上でございます。
#26
○山本孝史君 高橋先生にお伺いをしたいんですが、先ほどお話の中にも、自殺というものについてかなり知見は集まってきているとは思うんですけれども、その個々のケースの心の軌跡というものについて、皆さん方の御協力をいただきながら、分析といいましょうか、よく解明がされているわけではないというお話もお伺いしまして、こういったやはり対策を考える上でも、心の軌跡を、もっとケーススタディーをたくさん集めるということも必要なんだと思うんですが、先生にもお伺いしたいんですが、国としてどういう形が取れるのか、フィンランドのお話も今日いただきましたけれども、お考えがありましたら、是非お聞かせをいただきたいと思います。
#27
○参考人(高橋祥友君) 確かにそのとおりなんですね。今、日本で得られるデータは病院のデータベースがほとんどなんですね。というのは、受診している人に関してはかなりデータがそろうんですけれども、欧米でやられているような心理学的剖検といったような調査がほとんどできていません。
 心理学的剖検というのは、フィンランドなんかは、一番最初に一年間のベースラインのデータをそろえたときに、一千四百名ですね、一年間にフィンランドで起きた全自殺について調査しているんですけれども、そのときに何をしているかというと、家族に面接しています。最後に会った人に面接しています。あと、医療関係者に面接して、その人がなぜ亡くなったのか、もちろんその全員が病院受診しているわけではありませんから、そういった非常に詳しい調査をしているわけです。ところが、日本ではなかなかこの心理学的剖検というような調査ができていません。ごく一部でしておりますけれども、できていないんで、こういうものも大変大事であると思います。
 私は大変驚いたんですけれども、アメリカなどで心理学的剖検をしようとすると、協力してくれる人が八割ぐらいなんだそうです。ところが、フィンランドでもっと驚いたのは、九六%の方が、自殺した人に関連する九六%の方が面接に応じてくれたと。今、日本でそれをしようと思ったらどのくらいになるのかなと思うと、私はその数に大変驚きました。
 抵抗はあるかもしれないんですけれども、これは私はやるべきだと思います。そしてまた、これは調査のための調査では決してなくて、残された人に対する治療的な意味合いもあって行うということなんですね。残された人に対してどうやってケアをするのか、その過程でもって背景もだんだん浮かび上がってくると、こういうことは今後日本もしなければいけない方向であると思います。
#28
○山本孝史君 先生方もおっしゃいましたように、やはり残された方たちへのケアというのがなかなか難しくて、今日、甚だ勝手でしたけれども、委員の先生方に「自殺って言えなかった。」という、自らお父さんを自殺で亡くされた子供たちが書いた作文集をお配りをさせていただいたんですが、彼らも非常に悩んでいるんですね。国として、あるいは地域、やはりどうしても偏見が強いというところがありますので、何とかこういう対策、それも長期にわたる、しかも今すぐ何かが、効果が出るわけではない、しかし、やっぱり国民全体が自殺という問題を自分たちの社会の問題だと受け止めて考えていくということは非常に重要だと思っていまして、そういう意味でも、済みません、もう時間がなくなってしまったんで中村先生申し訳ありませんけれども、今国会、労働安全衛生法の審議もありますので、先生のお話、またそういった中にも是非参考にさせていただきながら、こういった問題についてのお取り組みを今後とも考えていきたいというふうに思っております。
 ありがとうございました。済みません。
#29
○遠山清彦君 公明党の遠山でございます。今日は本当にありがとうございます。
 私は、一つ、高橋先生の方にお伺いをしたいことがございます。
 それは、今自殺の問題は大変複雑な要因があって、当然、解決の方法も当然複雑にならざるを得ないということで、それは今日のプレゼンテーションでもよく理解ができたわけでございますけれども、先日、実は私の友人で自殺予防のためにNPOを作ってやって活動しておられる方とお話をする機会がございました。
 そこで、いろいろと心理学的分析とか社会学的分析もいいんだけれども、具体的に、自殺を促進するような要因になっている事象が社会の、日本の中で今あるんじゃないかという指摘がございまして、例えば、具体的に申し上げますと、先生よく御存じだと思うんですが、こういった議論はですね、例えば、日本では自殺をしても生命保険が下りると。それで、経済的に苦境に立たされた、特に、以前そういう事件が実際あったかと思うんですけれども、中高年の方が自ら命を絶つことでその保険金を家族なりあるいは自分が経営していた会社の返済に充ててくれと、そういう遺書をもう明確に残して亡くなるというケースもあるわけでございます。私が話した友人は、生命保険会社に対して、自殺をした際には保険金が下りないようにしてほしいということを呼び掛けて回っているそうなんですが、様々な理由で基本的には門前払いをされているということを言っておりました。
 こういった問題について、どういうふうに我々考えていったらいいのかということをお聞きをしたいと思います。
 それからあわせて、自殺をまた促進している要因として、今日は西島先生の「自殺予防マニュアル」というのが出ておりますが、我々周知のとおり、一般の書店で売られている本の中に、自殺完全マニュアルとか、いわゆる自殺を促進するようなことが明らかな書籍というものが売っている。あるいは、私もちょっと調べてみましたけれども、インターネットが今ございますので、集団ネット自殺というのが最近多くなってきているわけですけれども、こういうメディア等で、自殺を促進する、あるいはその方法を詳細に教えるようなこともあるわけでございまして、当然、これは表現の自由の問題等とかかわってくるので非常に憲法上も難しい問題にならざるを得ないわけでありますけれども、しかし事は人の生命にかかわることでございますので、ここもはっきり言うと厚生労働委員会以外の委員会も含めて真剣に考えていかなきゃいけないところだと思っておりますが。
 ちょっといろいろ申し上げちゃいましたけれども、これらの諸問題についてどういうお考えか、お聞かせ願えればと思います。
#30
○参考人(高橋祥友君) 生命保険に関しては大変難しいと思うんですね。あくまでも生命保険を得るために自殺するという人も確かにいると思うんですけれども、もう本当に追い詰められてしまって、ほかの選択手段がなくて、うつ病で心理的視野狭窄のような状態で自殺してしまうという方もいるわけですから、そういうような方に関しても生命保険を下ろさないようにしようというふうになってしまうと、これもまた別種の問題が起きるのではないのかなというふうにちょっと心配をしております。
 あと、メディアの問題なんですけれども、いつもこれ私出すんですけれども、八六年に岡田有希子さんが自殺したということがありました。このときに、かなりメディアの報道の仕方が問題だったということがあるんですね。いろいろなもう大きなメディアでトップニュースで放送しました。もっとひどかったのはワイドショーですよね。このように現場のシーンを流すと、もう本当に血の流れた死体を流すとか、こうやってファンが集まっているようなシーンをもうどんどん流すと。そうしたところ、非常に心配なことが起こるというふうに私は懸念していたんですけれども、数日後から若い人が続々と亡くなるということが起きてしまいました。二週間の間に三十数名もの若い人が亡くなっているんです。この年は、未成年の自殺の数を示したんですけれども、前後の年に比べますと若者の自殺が四割も増えてしまっているんですね。
 ですから、我々は、これ群発自殺という現象なんですが、もちろん自由社会に我々は生きています。マスメディアには報道の自由があります。我々にも知る権利があります。ただし、報道の仕方によってはこういった群発自殺、後追い自殺を誘発してしまう危険もあるんですね。インターネットに関しても、インターネットだけの問題ではなくて、一般メディアの問題も私はあると思います。
 ですから、是非、マスメディアはやり方によってはとっても自殺予防に関して大きな役割を果たすことができるんで、メディア自身も、どういうようなことが危険でどういうようなことが予防につながるのかということを是非検討していただきたいと。フィンランドなんかも、勝手に例えば専門家だとか政府がガイドラインを作っても、マスメディアはそれを拒否してしまう、自分たちには報道の自由があるんだというふうに必ず主張すると。ですから、フィンランドなんかの例では、最初から委員会にマスメディアの代表者も来てもらってお互いに検討し合ったというふうな前例があるようです。
 済みません、長くなりました。
#31
○遠山清彦君 いえいえ。まだちょっと時間がありますので。ありがとうございました。
 私もちょうど岡田有希子さん自殺のときに高校生でありまして、高校生の間では非常にセンセーショナルに報道されたことを覚えております。もうほとんど全高校生が話題にしていたような気がしておりまして、メディアのやはり影響というのは大きいんだなというふうに思っています。
 それで、ちょっと似たような質問なんですけれども、中村参考人にちょっとお伺いしたいと思うんですが、昨今やや頻発しておりますこの集団ネット自殺なんかで、その手法でよく使われるのは練炭による一酸化炭素中毒ですか、という自殺の手法のようでありますけれども、これも自殺予防の関係で動いている方から聞いたんですが、米国などでは、例えば殺人とか自殺の凶器に使われる可能性のある製品を作っている会社は、その製品の保証書等の文書の中に一文、例えば、我が社の製品を使って他人に危害を及ぼしたり殺害をするということをしてはいけませんと。あるいは、もっと違うところになりますと、我が社の製品を使って人をあやめた場合は名誉毀損で訴えますというようなことが明確に書かれているそうであります。
 他方、日本でそういうことを製品の説明書なり保証書に書いてあるところというのはほとんどない。これは恐らく文化の違いがあって、欧米ですと、ある製品、日本でいうと例えば包丁とかバットとか練炭等を使って自殺あるいは他殺等に使った場合に、米国だとやっぱり訴えられる、それを作った会社も一緒に訴えられてしまうと、遺族からですね。そういう事情があって、日本はそこまでなかなかいかないわけなんですけれども、まあ日本でも一部で、例えば練炭なんかが頻繁に使われているといったときに、練炭作っている会社にも何かそういう意識を持っていただいて、講ずるべきじゃないかとかという意見もあるんですが、どうお考えですか。
#32
○参考人(中村純君) 今のお話、僕は初めてお聞きしましたので、全く知りませんでしたけれども、危険性があるというのは明らかだと思いますので、そういうところまで踏み込んだ対応がひょっとしたらできるのかもしれませんけれども、ふだんはそれそのものがどこに売っているのかよく私自身が知らないものですから、どうでしょうかね、だから非常に限定されたところで売られているとすればそういう選択肢もあるんではないかというふうに思います。
#33
○遠山清彦君 ありがとうございました。
 以上で結構です。
#34
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 長時間労働と自殺の問題について中村参考人にお聞きをしたいと思うんですが、厚生労働省の通達、過重労働による健康障害を防ぐためにでは、残業時間月四十五時間超えた場合は産業医による助言や指導、それから、月八十時間超える残業が長期間続いた場合は面接による医師の指導、必要あれば健康診断となっております。一方で、総務省の労働力調査では、十五歳から三十四歳の正社員で六十時間働く人が九五年から二〇〇一年にかけて四十九万人も増えていると。非常に過酷な労働実態あるわけですけれども、これ、過労死の問題はもちろんなんですが、長時間労働と過労自殺、この関係でもこの厚生労働省の通達がきちっと守られるべきだというふうに考えているんですが、その点についての御見解をお聞かせ願いたいと思います。
#35
○参考人(中村純君) もちろんそれはきちっと守るべきだろうというふうに私自身は思いますけれども。それでよろしいでしょうか。どういうふうに。具体的な制度化するという意味でしょうか。
#36
○小池晃君 いや、そういうことじゃなくて、まあ、これについての御見解をお聞かせ願えればと思ってお聞きしたんですが。
 ちょっとそれと絡んで、今労働現場で起こっている問題でいうと、成果主義賃金が拡大される、成果主義賃金あるいは裁量労働制の拡大という問題があります。社会経済生産性本部の産業人メンタルヘルス白書などを見ますと、成果主義賃金の下でうつ病が増えているという実態が報告をされていたり、あるいは裁量労働制の下で、神奈川県では裁量労働制で働いていた労働者の過労自殺が労災認定されるという、そういうことも起こっているんですけれども、長時間労働については先ほどお話あったように厚生労働省の通達きちっと守っていくことが大事だということはあると思うんですが、今、更に、労働時間の管理そのものも労働者個人に任せる、あるいは成果や結果のみを求めるような、こういう働き方、働かせ方、これが広がっていることについて、こういうメンタルヘルスの問題あるいは自殺の問題から見て参考人はどのような見解をお持ちか、お聞きしたいと思うんですが。
#37
○参考人(中村純君) やはり、今産業構造の変革というのは非常に大きい問題があると思います。というのは、やはり数十年前の第一次産業が多い時代から、今三次産業がかなりの部分を占めるようになりまして、仕事の量もですけれども、質も変化していますし、それを行うためのいわゆる成果主義が出てきますと、仕事そのものに対する評価が企業経営者側も難しい状況になってきていると思うんですね。
 ですから、そういう点で、自由にやりなさいと言われたときに、元々非常にきちょうめんな方で、人から仕事を命令されればきちっとやれる人が自由にやりなさいと言われたときになかなか対応できないと、そういう人がやっぱり破綻を来している例は多いんではないかというふうに思います。
 ですから、先生がおっしゃるように、成果主義が助長されますとこういう方はやっぱり増えて、少なくともうつ病の方は増えてくる可能性は十分あるというふうに思います。
#38
○小池晃君 今の問題、高橋参考人にもちょっと御意見をお聞かせ願えればというふうに思うんですが、こういう働き方の変化が労働者のメンタルヘルスやあるいは自殺ということにどのような影響を与えるかということについてお聞かせ願いたいと思います。
#39
○参考人(高橋祥友君) 今の中村先生の御意見に付け加えることは余りないんですけれども、例えば私たちが見聞きしている点では、裁量労働であっても、例えばコンピューターのシステムエンジニアなどで一つのプロジェクトが終わったら強制的に何か月間か休ませるとか、そういうような方法を使ったり、幾つかいろいろな工夫が出てきていると思うんですね。ですから、単純に時間だけの問題ではなくて、労働時間の質というものもやはり考えていかなければいけないというのは今後の問題だと思います。
#40
○小池晃君 それで、最後に高橋参考人にお伺いしたいんですけれども、ちょっと今日参考人がお話しされたことと直接関係があるわけではないんですが、自衛官の自殺の問題で、この間、過去を見てみますと、最近、防衛庁からいただいた数字では二〇〇三年で七十五名と。陸自で四十八名、海自で十七名、空自で十名と。これ、九三年の数字見ますと四十四名ということで、大分増えてきております。まあ自殺全体が増えているということもありますので、特異な現象かどうかというのは議論があると思うんですが、増えていること間違いないし、非常に痛ましい数字であることは間違いない。三十代前半の一般男性と比べても若干率として高くなっているという実態がございます。
 このことについて、高橋参考人、どのように見ていらっしゃるのかということと、自衛隊の中でこういう自殺を防ぐということについてプロジェクトなども行われているというふうに聞いておりますので、どのような取組がなされているか、お聞かせ願えればというふうに思います。
#41
○参考人(高橋祥友君) 私は防衛医科大学校に所属していますんで、自衛隊全体の衛生に関しては統括していませんし、分からない部分もあります。ですから、私が知っている限りについて御説明いたします。
 今御質問がありましたように、確かに自衛官の自殺は増えております。マスメディアでは自衛官の自殺急増みたいになっているんですけれども、これはちょっとミスリーディングなんですね。確かにこうやって増えているんですけれども、やはり今日お話ししましたように、日本全体の自殺が増えているのとほぼ並行して自殺が増えているというふうに考えていただきたいと思います。
 で、自衛官というとほとんどが男性で、十五歳から五十五歳までの年齢ですね。ですから、この性別と年齢を組み合わせて比べてみますと、一般の人と自衛官の自殺率、十五歳から五十五歳までの男性で見るとほとんど同じかちょっと低いぐらいなんですね。イメージとすると、最近になって自衛官がめちゃめちゃ増えているというふうにイメージがあるんですけれども、必ずしもそうではないということです。
 ただし、今御質問がありましたように、自衛官の自殺が増えていることは現実ですんで、かなり早い時期から対応をしております。平成十二年度ですから、そのときに自衛隊員のためのメンタルヘルスに関する検討会というようなのが開かれていまして、この提言がもう出ています。これはホームページに、防衛庁のホームページにも詳しく全部載っているはずです。そこでもうかなりいろいろな提言を行っています。
 これはメンタルヘルス全般に関してなんですけれども、その中でも直ちに行い得る具体的な対策として、実際の自殺予防もあれば、あと、残された隊員ですね、非常につながりの強かった隊員で自殺が起きると同僚に対して大変心理的な動揺が起きますので、そういった人たちのケアをしようというような動きがあるわけなんですね。メンタルヘルス月間ですとか、惨事ストレス対策の、惨事ストレスというのは要するに、こういった痛ましい事故が起きたときの対応の教育などもしております。
 自殺予防はこういった三段階あります。プリベンション、インターベンション、ポストベンションですね。プリベンションというのは、元々、原因ですとかを取り除いて自殺を起こさなくすると。インターベンションというのは、今起こりつつある自殺の危険を防ぐ。ポストベンションというのは、残された人ですね、非常に大変な思いをする残された人へのケアをしようということなんですけれども、今、日本で実際に行われているのはこのインターベンションがほとんどなんですね。医療を中心としたインターベンションです。今自衛隊でいろいろやっていることはこの三段階のことを行っております。
 例えば、部隊で自殺が起きたなんということがあれば専門家チームを送ります。これは調査ではないんです。残された人に対してどうやってケアをするかということなんです。それでまた、残された人と面接することによって、自殺の背景も浮かび上がってきます。最後には、もう影響を受けた、非常に強い影響を受けた人に関しては、治療が必要ならば治療にのせると。また同僚たちに対しては、最終日には、自殺予防の教育ですね、そういうようなこともすると、こういうようなことをしております。
 ごく簡単に私の知る範囲でお話ししました。
#42
○小池晃君 ありがとうございました。
#43
○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。
 今日は専門的な立場からどうも有益なお話ありがとうございます。また、現場で頑張っていらっしゃることに心から敬意を表します。
 今日お話が出ましたが、一九九八年を境目に自殺者が三万人を超え、それが下がらないということがあります。中村参考人の資料に、完全失業率と自殺者の推移ということで表が出ておりますけれども、今日は精神的な立場、うつ病という課題が多かったですけれども、やはりこの雇用の問題や産業構造の問題、なぜ一九九八年に急変したのかということについてどうお考えなのか、教えてください。
#44
○参考人(中村純君) 自殺の要因というのは非常に多角的だと思います。しかしやはり一番大きかったのは、僕はやはり失業率だろうと思っています。ですから、失業率が、繰り返すことになりますけれども、四・二%から四・九、そしてその後はずっと五・五、今年に入って少し下がりましたかね、五・四というふうに、私も新聞でしかよく見ませんけれども、その程度だろうと思います。五%以上をずっと持続しているということがやっぱり大きいと思います。
 よろしいでしょうか。
#45
○福島みずほ君 はい。
 今日の参考人それぞれの意見もありましたが、やっぱり無業者、職のない人たちの自殺率がほかに比べて高いことと、それから職業別自殺者数、警視庁のを見ますと、例えば自動車運転手の人がほかに比べて、職業に比べてとても高い。これは、例えば国土交通省相手取って最近タクシーの運転手さんと利用者が規制緩和の問題について裁判を起こしました。年収が沖縄だと百八十万円台、東京は四百万円台以上ですが、あとは年収が三百万円台。ですから、もちろん高収入で自殺をされる人もいるでしょうけれども、やっぱり二極分化の中で、年収が明らかに規制緩和や労働法制の規制緩和で下がっているところがあると。そこについてやはり矛盾の集約みたいなことも起きているんじゃないか。これについて中村参考人いかがでしょうか。
#46
○参考人(中村純君) 御指摘のとおり、可能性はあると思いますね。いろんな規制が緩和されたことによって自由に、それこそタクシーは認可されるようになりました。そうしますと、数が非常に増えていますし、乗客の数は変わらないわけです。しかも、経済が低下していますので、いわゆる社用族がタクシーを使うということも少なくなっている。やっぱり稼働率という面では非常に落ちているんでは、僕はタクシーのことよく分かりませんけれども、恐らくそういうふうに推測はできると思います。
#47
○福島みずほ君 秋田の地で頑張っていらっしゃる本橋参考人にお聞きをいたします。
 先ほど、自殺率の高い、どこも高いですけれども、地域がありましたが、東北とそれから九州の一部が多いようで、正直、今なかなか格差が生じて、全国の中で正直言うと年収の低い部分の県に自殺が割合からいうと高いように私自身は拝見をいたしました。
 秋田でチームを作って医学部教授という立場からやっていらっしゃるわけですが、やっぱり地域の雇用の問題も非常に大きいんではないかと思いますが、その辺のチームワークや、その県の中でどういうふうな形で総合的に動いていらっしゃるのか。あるいは、そういう中で、やはり地域の産業や雇用と密接不可分な場合もあるわけですから、その辺はどういう取組や議論があるのか教えてください。
#48
○参考人(本橋豊君) 大変重要な御指摘だというふうに考えております。先ほどの日本全体の地図で、御指摘のようにやはり農村県、過疎県ということは低所得県ということでございますので、小さな地域で見ていっても、やはり所得の低い方が自殺率が高い傾向があるということがありますので、根本的にはやはりいわゆる社会経済的問題というのが背景、バックに流れているというのは全く御指摘のとおりだと思います。
 そこで、じゃ、県の中で、秋田県の中でどういうふうにその辺が連携されているのかということについて、これは私自身が秋田県の職員じゃないので余りそういう立場から御発言はできないんですけれども、いわゆる大学の研究者という立場から秋田県の自殺予防対策にかかわっている立場ということで発言いたしますけれども。
 実際には、秋田県の自殺予防対策は、秋田県健康福祉部の健康対策課というところが所管しておりまして、一応その全県の、県庁内部の相互の連絡というのは取っておるんですけれども、その中で例えば経済産業関係の部署とどの程度連携を取っているかということについて、第三者的に見ますと、必ずしもまだ十分ではないんではないかと。そんなことを言うと怒られるかもしれませんけれども、私が見ている限りでは、やはりどうしてもその健康の面からということでございますので、その辺の連携が弱いというのは現実だと思います。私自身は、その辺はもう少し統合的な立場で対策が取れるとよろしいなというふうに思いますけれども、なかなかその辺の連携が難しいというのが現状です。
 ただ、秋田労働局と県が連携をしていろいろ地域の中での取組をやっているというところは特筆といいましょうか、やっぱり強調してよろしいのではないか。その辺は頑張っているという認識を持っております。
#49
○福島みずほ君 雇用の関係との何らかの連関性というのは、少し今日教えていただいて理解ができたんですが、例えば介護保険で非常に取り組んでいる自治体とそうでない自治体とか正直あると思うんですが、その福祉サービスやそういうものとの自殺との関係というのはあるのでしょうか。本橋参考人、お願いします。
#50
○参考人(本橋豊君) 御指摘のように、健康対策の一環としての役割が多いんですけれども、やはり現場でいろいろやっていくときには地元の社会福祉協議会の方々の支援というのをたくさん受けております。
 御指摘のように、生きがい対策というのは基本的には福祉領域の対策ですので、そういう意味で市町村レベルあるいは県のレベルではかなり福祉と医療が連携した、健康が連携した形で進められておりますということで、ただその温度差はあります、その地域によってですね。ただ基本的な考え方は、その辺は医療と福祉についてはかなり連携してやっているというのが実態だというふうに思います。
#51
○福島みずほ君 産業医というと変ですが、中村参考人にちょっとお聞きをしたいんですが、現場でやっていらして、正直、会社が例えばこういうことに気を付けていたら自殺がこういう形で予防できたかとか、何かこう実感として、例えばこういうことをもっと注意したらどうかということがもしあれば教えてください。
#52
○参考人(中村純君) 今の御質問なかなか難しいと思うんですね。
 というのは、患者さん、病気になられた方が実は、御本人の人事考査とか周囲の人とのかかわりの中で、やはり精神疾患に罹患されますと、むしろその産業医に相談に行くというよりは、地元の、あるいは地元よりは別の地域の例えば心療内科、精神科を訪ねられるというのがせいぜいなところであって、私たちが介入できるというのは、恐らく現状では、まだ周囲から気付かないまま、診断書が出て休職になって初めて気付くというのがせいぜいではないかと。ですから、仕事上のミスが少し増えているとか、最近朝の調子が非常に悪いとか、そういう症状などを踏まえて、ひょっとしたらうつ病ではないかということを周りが気付くというようなことがあれば分かるのかもしれませんけれども、実際に、先ほど高橋先生がおっしゃったように、インターベンションのところで初めて気付くという状況ではないか。
 だから、まだ予防・啓蒙活動を相当しないと、この今の御質問には答えられないんではないかというふうに思います。
#53
○福島みずほ君 会社員や公務員の人と話をしていると、持病があったり病気だったり、精神的に悩み、またうつ病だったり、例えばぜんそくだったり、いろんな疾患を抱えていても、弱みになるので、保険を使うとそれが会社に分かるので、そうではない形で薬を処方してもらうとか、絶対に自分が病気であることが企業などに分からないようにしているという人も多いわけですよね。政治家も病気が弱みになるかもしれませんが、もっとやっぱり、会社の中での出世や昇進や、そういうことを物すごくみんな気にしています。
 そうすると、今の会社と連携しての保険制度だと、逆に病気であることが隠されてしまう。十分な治療が受けられないとか、ましてや精神疾患だと会社には隠すということがあると思うんですが、ちょっと長い話になりますが、こういうことについて何か変更ができないかと思うんですが、中村参考人いかがでしょうか。
#54
○参考人(中村純君) 最初西島先生がおっしゃったように、偏見ということを考えますと、むしろそれを障害者としてとらえて雇用の中に数字的にでも組み込むというような積極的な方法でむしろ受け入れるぐらいのことがないとなかなか難しいのかもしれないと思います。
#55
○福島みずほ君 最後に、高橋参考人に一言聞きます。
 私は、自衛官の中で自殺をした人の遺族の方たちとお話を何人かして、つい先日も自殺をした自衛官の家族とお会いしたら、遺書があって、上官のだれだれは絶対に許さないとかやっぱり遺書があったり、いじめを理由に死んだんじゃないかと遺族が思っているケースなどありまして、是非、中での改善や研究、ケアを是非よろしくお願いしたいと思いますが、どうでしょうか。
#56
○参考人(高橋祥友君) その点についても非常に検討しています。先ほどのメンタルヘルス検討委員会でも、単純に精神疾患の問題だけじゃなくて、セクハラですとかいじめの問題も取り上げております。
 やはり我々が言っている中ではっきりとしていることは、やはり心の病があったのに治療も受けないままに亡くなっているという人が大多数なんで、自分が困ったときに助けを求めてもいいんだと、そういうような教育がその根底になければいけないんだというふうに思っています。
 これは心の病だけじゃないと思います。職場の人間関係であってもそうだと思いますし、様々なほかの問題であっても、だれかに相談に持っていってもいいし、こういうときにはどこに相談に持っていけばいいんだというような情報を流すということが大変重要であると思います。
#57
○福島みずほ君 以上です。どうもありがとうございました。
#58
○委員長(岸宏一君) 以上で各会派一巡いたしました。これより質疑を希望される方は、挙手をしていただき、委員長の指名の後、御発言いただきたいと存じます。
 なお、散会予定時刻は正午をめどとしておりますので、お一人の質問時間をできるだけ手短にしていただくようにお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方の挙手を願います。
 中原爽君。
#59
○中原爽君 自民党の中原でございます。高橋先生にお尋ねいたします。
 先生のレジュメの三ページ目、真ん中の左側の表、「フィンランドの自殺率の推移」でありますけれども、男性の自殺率が下がれば全体が下がっているということになりますけれども、女性の推移は全く平行線で変わっておりません。それから、同じく先生のレジュメの一番最後の表、図2でありますけれども、これは現在の日本の状況ですが、男性の自殺率が上がっておりますので全体の自殺率が上がるということですが、女性は全く平行線で変わっておりません。ということは、男性に対しての負荷が掛かっていると、その負荷が取れれば自殺率が上下できるということになるわけですよね。ですから、この女性のカーブが一向に変わらないということはこれどういう意味を持っているのか、御説明願いたい。
#60
○参考人(高橋祥友君) これはいつも聞かれることなんですね。で、世界の中でも一つ例外があるんですね。中国だけは女性の自殺率が高いというふうに言っているんですけれども、ほかの国々では圧倒的にやっぱり男性の自殺率が高いんです。日本でも男女比は二・五対一で、男性の自殺率の方が高いんですね。
 その背景としまして、先ほど中村先生からも御指摘ありましたけれども、自殺とうつ病は非常に密接に関連していると、ところがうつ病は女性の方がかかる率が高い、ところが自殺は男性の方が高い、これはなぜなのかということをよく聞かれます。
 これは私は二つ意味があると思います。一つは生物学的な意味ですね。男性の方が衝動性のコントロールが悪いと思います。自殺の危険が迫ったときに非常に危険な手段を取りがちであると。また、もう一方は社会的な側面ですね。やはりいまだに、男は強くなければいけない、困ったときに助けを求めていけない、こういうような風潮非常に強いです。
 例えば、私、いつかある新聞で中年の男性に対するメンタルヘルスのコラムを書いたことがあるんですけれども、十回シリーズぐらいでしたが、そのときに、そのコラムが載ると、もう電話がずっと鳴るんですね、オフィスの。で、びっくりしたことに、中年の男性編のメンタルヘルスにもかかわらず、圧倒的に女性からの電話なんです。百本あると九十九本までは女性からでした。ある人なんかは、奥さんに電話を掛けさせて、御主人が後ろにいてこの質問をしろみたいな人もいたぐらいで、本当に困ったときに男の人は助けを求められないというのはあるんですね。ですから、余りいい例えではないかもしれないですけれども、女性が柳の枝のように風が吹いても非常にしなやかに対応できるのに、男の方は、老大木のように、非常に強さと弱さを兼ね備えているというか、最後の最後まで頑張り通して突然ぼっきりと折れてしまうようなところがこれは現実としてあると思います。
 フィンランドの例でもそうですし、アメリカの空軍の自殺予防の活動でも成功した例があるんですね。そこでいつも強調している点は、困ったときには助けを求めるということが適切な問題解決行動なんだと、これをかなり強調します。フィンランドの場合も、先ほども申しましたように、アルコールとうつ病が非常に大きな問題だったと。性別から見ると、四分の三は男の人だったんですね。やっぱり介入をしたときに、そういった意味で効果が出るのは男性だったと思います。
 そして、社会変化が起きたときに一番率が変わるのはやはり男性なんですね。そういう意味で、フィンランドの例でもこういうふうなドラスティックな変化が起きたということが言えると思います。先ほど日本の自殺も急に九八年以降男性が上がっていると言いましたけれども、こういった社会的な背景も当然あると思います。
 周囲に救いを求められないばかりか、精神科に受診するということに対して非常に恐怖感を覚えているというのも、やはり中年男性が一番強いようにも思います。
#61
○委員長(岸宏一君) よろしいですか。
 それでは、柳澤光美君。
#62
○柳澤光美君 ありがとうございます、質問したい人が一杯いる中で。
 実は、質問というよりはお願いがあります。
 実は私は、昨年の七月に参議院議員にならしていただいて、その大きなテーマがやはり自殺問題でした。特に私は、中小に働く仲間の代表で出てきまして、十一月の九日の初めての質問も触れさせてもらったんですが、今一番、今日参考人の皆さんのお話を聞いてうれしく思っていますのは、参議院というのは本当に、党利党略というか党派の問題ではなくて、非常にいい議論がされる。私は、政治家の皆さんは自殺の問題というのはいろんなところで言っていたんですが、一つも具体的に動いていない、もう九八年からずっと三万人以上、口で言うだけじゃないかというふうに思っていました。これは身びいきするわけじゃないんですが、なってみましたら、民主党の中では山本さんを中心に自殺総合対策のワーキングチームがあって、高橋先生の話も聞かせてもらいましたけれども、いのちの電話等のいろんな情報をいただきました。
 それがこういう形で、いよいよ厚生労働委員会でこういうテーマになって、私は、本当に日本の場合には、バブルはじけた後、確かに厳しい時代になりましたから何とか立て直さなきゃいけないということはあった、あったのは分かるんですが、余りにも、組織のために人がある、人のためには組織がなくて、法人というお化けみたいな人を生かすために本当の人間が死んでしまうという現象がずっと起きてきたというふうに思うんですね。
 もう一回日本を、元々国というのはやはり国民の命を守るというのは本当に大事な使命であって、ですから、その辺をもう一回、人に優しく、このことが実は、清水さんを会長に少子高齢化社会に関する調査会、勉強させてもらったり施設を訪問させてもらったりする中で、どちらにしても、女性も気持ちよく働ける、高齢者も気持ちよく働ける、あるいは障害者の皆さんもみんな気持ちよく働ける、そしてみんな伸び伸び生きれる、児童虐待とか高齢者虐待とか、そういうのを全部なくすという意味では、私は、この自殺というのをもう一回国を挙げてやるというのが、先ほど秋田の本橋先生のお話じゃないんですが、それが、波及効果があらゆるところに及んでいくというふうに感じています。
 ですから、三人の先生方に、これは私は絶対国でやるべきだというふうに思うんですが、その辺のところを一言ずつお伺いしたいと思います。
#63
○委員長(岸宏一君) どなたからお話しいたしましょうか。じゃ、本橋参考人から。
#64
○参考人(本橋豊君) 御指摘のように、私も実は昨年フィンランドに行ってきまして高橋先生と同じような状況を見てまいりました。やはりフィンランドが成功した大きな理由は、やはり国が国を挙げてきちんとやったということ。で、きちんとした成果が十年掛けて出ました。
 日本の場合も、やはり都道府県のレベルで私なんかも関与しておりますけれども、やはり国全体でこの問題に具体的に取り組むんだという姿勢とその方策を示していただければ、先進的な事例がやはり広がっていく、そして、それによって全体としての自殺率が低下してくるということが私は起こるというふうに確信しておりますので、是非、国としてこの問題を真剣に取り組んでいただく、具体的に取り組んでいただきたいというふうに考えております。
#65
○委員長(岸宏一君) それでは、中村参考人。
#66
○参考人(中村純君) 確かに御指摘のとおりで、昨年一月に厚生労働省は、保健医療従事者のため、あるいは都道府県職員のためのうつ病対策マニュアル、それは自殺防止の目的で作られたものだと思いますけれども、そういうものを具体的にやっていくというプロジェクトをやはり国全体で立ち上げていただくのは非常に有益なことだろうというふうに思います。
#67
○参考人(高橋祥友君) 例えば選挙のときなど、今の御質問、御意見と本当に同じ感想を私抱いたんですけれども、選挙の最中に、例えば野党が、不況が長く続いている、政府の無策のために自殺率がこんなに増えていると、また逆に与党の方は、ちゃんと対策をしていると、そういうふうな議論ばかりやって、実際には何をしているんだろうかな、とっても何か私は自殺予防の現場にいて大変悲しい気持ちで見ていました。ところが、現実にこういうような形で取り上げていただいて大変心強い思いをしております。
 山本議員とお話ししたときに、自殺防止センター構想などについて話されたんですけれども、私は、例えば国に主導して自殺予防センターなどを建てる場合にでも、かなり構成をきちんとしなければいけないと。例えば本当のリーダーシップを取れる人、本当の専門家が入って主導していかなければならない。先ほど、フィンランドのレンクビストみたいな人ですね。研究のための研究だけしてても何にもならないんで、研究と予防対策の具体的な実施ですね、それをどうリンクするか。
 そして、やはり長期的な取組です。これは二、三年だけでは済みません。特に、こちらには、参議院には自民党には西島先生、民主党には水島先生といった著名な日本を代表する精神科医がいらっしゃるわけですから、本当に超党派でこの問題を、数年の問題としないで、是非、最低十年、二十年の感じで取り上げていっていただきたいと思います。
#68
○委員長(岸宏一君) じゃ、小林正夫君。
#69
○小林正夫君 民主党の小林正夫です。
 高橋参考人にお聞きをしたいと思います。
 教育の関係ですけれども、私は、教育の中で、人間が死んでいくんだということ、この死というものに対してもっと私は教育を進めていく必要があるんじゃないかと思います。まあ、人間ですから一回は死ななきゃいけないという運命を背負っておりますけれども、この死というものに対する教育を私は小さいころからしっかりやっていく、このことが大変大事なことだと思いますけれども、今日先生の資料の三ページに、フィンランドの自殺予防戦略という中にも「息の長い一般教育が必要」というふうに書いてありますが、この教育に対してどのようにお考えを持っているか、お聞かせ願いたいというふうに思います。
#70
○参考人(高橋祥友君) 全く御意見に同感です。
 自殺予防に関しては、ハイリスクストラテジーといって、非常に自殺のもう最初から危険の高い人たち、例えば今日お話ししましたうつ病ですとかアルコール依存症だとか、そういうような人に対する対応ですね。
 もう一つは、もっと広い意味でのパブリックエデュケーションですね。一般の人たちに生と死の意味を考えるような教育、あるいはもっと具体的に、自殺に関しては欧米では自殺予防教育を生徒に対してやっているところもあります。例えば、自殺予防に限って言えば、アメリカの幾つかの州では生徒、教師、親を対象にした三本柱の教育をしているところがあります。というのは、子供が自殺の危険に襲われたときにだれに相談するかというと、やはり同世代の子供なんだと。そのときにどう対応するのかということを同じ世代の子供たちに教えなければいけないというようなところから始まっているんですね。自殺の実態ですとか、そういうふうに対応されたら、そういうふうに打ち明けられたらどう対応すべきか、どこに助けを求めるのか、具体的に教育しています。ただし、日本でこの話をすると、とても怖いと、そんな、寝てる子を起こすようなことになるんじゃないかといって、非常にその抵抗は強いです。
 もし、子供を対象にしたそういうような教育が難しいならば、私は、せめて学校の先生ですね、そういった問題を最初に気付く先生に教育をしてもらいたいと。えてして、青少年の自殺が起きるときに、子供の自殺はその後ろに親の問題もあったり、親の問題があって子供の自殺も起きているときもあるんで、親御さんが子供の危険のサインを見逃すだけの余裕がなくなっていることがあるんで、是非、学校の先生を対象にした教育をしてもらいたいと。
 それすらできないならば、せめて、もう最低限ですね、学校で自殺が起きてしまったときに、残された子供たちへの対応ですね、今ですと、犯罪が起きると専門家を学校に送ってケアをするということをしていますけれども、自殺の場合もやはりそうすべきだと思います。何にも知らないで、同級生の自殺を経験して、非常に強い心の痛手を受けている子供たちがたくさんいます。最悪の場合は、さっき岡田有希子さんの写真出しましたけれども、子供の中でも連鎖が起きることがあるんで、そういう意味でも対応していただきたいと。
 まあ、今は自殺予防のことに非常に限った話をしましたけれども、それよりももう少し後ろの段階で、生と死の教育というようなのは、私はほかの一般教育と同じようにすべきだと思います。
#71
○小林正夫君 どうもありがとうございました。
#72
○委員長(岸宏一君) 坂本由紀子さん。
#73
○坂本由紀子君 自由民主党、坂本由紀子です。
 高橋参考人に二点お伺いいたします。
 一点は、各国の自殺率についてなんですが、いただいた資料の中で、高い自殺率の国に東欧の諸国が多いんですが、これは、ソ連が崩壊した後にこういう国々の自殺率が非常に高く出たというような、そういう経済的な要因が影響しているかどうかということと、アメリカについては、厳しい競争社会だと言われていますけれども、このデータで見る限りは低い状況になっていますが、これはどういう理由なのかという点。
 それと、もう一点は、この問題については残された方々のケアの問題が大変大事なことだろうと思います。特に急いで取り組まなくてはいけないと思いますが、これまで公的な取組はほとんどなされてこなかったのではないかと思います。この点で、特に必要であると考えられる対策について先生のお考えをお聞かせください。
#74
○参考人(高橋祥友君) まず最初ですけれども、バルト三国が自殺率が高いというようなのは御指摘のとおりです。一時期、例えばソ連邦の崩壊があって将来的に希望が出たときに、やはり一時的には下がったところもあるんですね。ところが、やはり結果的には、ペレストロイカ以降もそれほど大きな変化がないというんで、また高い率に戻ってしまったところがあります。
 ただし、ここで、五番目のところにエストニアありますね。エストニアは、かなり自殺予防に関して、スウェーデンと協力して積極的な自殺予防対策をしました。そうしたところ、自殺率が下がったということはあるんですね。
 もう一つ、どうしてこれほど違いがあるのかと。一番高いところは五十ぐらいで、一番低いところは四ぐらいですよね。これに関しては幾つか説明があります。精神疾患だけで自殺を説明しようとすると、これだけのばらつきにはならないんですね。うつ病はほとんどどこの国でも同じような率で出ますから。
 幾つかの説明がありますけれども、例えばハンガリーなどを例に取りますと、文化、社会的に自殺を許容するような、ちょっと日本もそういうところあるかもしれないんですけれども、そういう国では、自殺が起きても、隠そうとするというより、むしろ正しい統計が出てしまうと、そういうようなことも関係して自殺率の差がこんなに国によってばらつきがあるんではないかなということが言われています。
 もう一つ、次にアメリカなんですけれども、アメリカの自殺率は日本の半分ですね。これは正しい解釈かどうかは知りません、これは私の勝手な憶測なんですけれども、自殺というのは攻撃性が自分に向かったもので、他殺というのは外に向かう、非常に単純に言いますとそういうふうに解釈できるんですけれども、殺人と自殺の率を合わせますと、日本とアメリカはほとんど同じになっちゃうんですね。要するに、自殺率が低い分だけ、アメリカの場合、日本に比べて圧倒的に他殺の率が高いですから、二つ足すと大体同じぐらいになるんですね。そういうようなことがあるかもしれません。
 さらに、残された人に関して、人々に対するケアですね、これはもう本当に大事な問題だと思います。
 今、三万人以上の自殺者がいると。幾ら頑張っても、もう本当にすぐにこれをゼロにするなんということは不可能です。今までですと、もう家族で自殺が起きても、本当に悲しいんだけれども、人にも何も言えない、周りの人も何もなかったかのようにそっとしておくのが一番だというふうなとらえ方が多かったと思うんですね。ここへ来て、本当にその自殺が隠せないほどに増えてしまっている。
 僕は、あしなが育英会の皆さんが自分の体験を話してくださったのが大変大きいと思うんですけれども、そういうふうな体験を話して、これだけ苦しい思いをしているんだということを社会も認識して、それで、同じような経験をし始めた方が同じように救いを求めるようになったということ、あると思います。
 例えば、NGOか何かで自殺で残された人たちのグループができていて、その関連が、ネットワークができつつありますし、これも大変大事だし、残された後の人が、私は、ほとんどの人は時間とともに立ち直るにしても、ある特定の人はうつ病になったり不安障害になったり、PTSD、心的外傷後ストレス障害になったりするという事実もあると、そういう人には治療が必要なんだと、そういうことも起こり得るんだということを幅広く知らしめるようなキャンペーンも必要かなと思います。
#75
○委員長(岸宏一君) 予定の時刻が参りましたので、参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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