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2005/06/07 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 内閣委員会 第12号
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2005/06/07 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 内閣委員会 第12号

#1
第162回国会 内閣委員会 第12号
平成十七年六月七日(火曜日)
   午後一時三十分開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十日
    辞任         補欠選任
     小川 敏夫君     松井 孝治君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         高嶋 良充君
    理 事
                市川 一朗君
                小野 清子君
                岡崎トミ子君
                森 ゆうこ君
    委 員
                秋元  司君
                鴻池 祥肇君
                佐藤 泰三君
                竹山  裕君
                中曽根弘文君
                西銘順志郎君
                神本美恵子君
                工藤堅太郎君
                松井 孝治君
                円 より子君
                風間  昶君
                白浜 一良君
                近藤 正道君
                黒岩 宇洋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        鴫谷  潤君
   参考人
       女子栄養大学学
       長        香川 芳子君
       東京農業大学客
       員教授
       農政ジャーナリ
       スト       中村 靖彦君
       生活協同組合あ
       いコープみやぎ
       理事長      吉武 洋子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○食育基本法案(衆議院提出)
    ─────────────
#2
○委員長(高嶋良充君) ただいまから内閣委員会を開会をいたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る五月二十日、小川敏夫君が委員を辞任され、その補欠として松井孝治君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(高嶋良充君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 去る五月十九日の委員会において、食育基本法案の審査のため、五月二十四日に参考人の出席を求めることを決定いたしましたが、都合によりこれを延期いたしました。
 ついては、同案の審査のため、本日、参考人として女子栄養大学学長香川芳子さん、東京農業大学客員教授・農政ジャーナリスト中村靖彦君及び生活協同組合あいコープみやぎ理事長吉武洋子さんの出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(高嶋良充君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(高嶋良充君) 食育基本法案を議題とし、参考人の方々から御意見を聴取いたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。
 まず、香川参考人、中村参考人、吉武参考人の順序で、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
 また、御発言は着席のままで、その都度、委員長の指名を受けてからお願いをいたします。
 それでは、まず香川参考人からお願いをいたします。香川参考人。
 座ったまま、着席のままで結構でございます。
#6
○参考人(香川芳子君) 女子栄養大学の香川でございます。
 本日は、食育基本法に関して発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。本法案に賛成でございます。私の立場は、公衆衛生分野の医師ということで今日は発言をさせていただこうと思っております。
 私は、個人的には日本の食の状況が非常に危険だと心配いたしまして、平成六年に食の教育推進協議会を立ち上げまして、そちらにいる小野議員も御一緒にずっと活動を続けてきたものでございます。
 我が国の食生活は、戦後豊かになるに従いまして大きく変化いたしました。参考資料というか、それの一番最後のところに、最後から二枚目のところにあります、もうよく御承知のことだと思いますけれども、こちらの、エネルギーの栄養素別摂取構成比というのがございますが、これでごらんになってもお分かりになるように、この真ん中の部分が全体でエネルギーのうちの脂肪が占める比率でございます。この脂肪が占める比率というのが非常に多くなってまいりました。
 その間、まあ大体、エネルギーの初め八%程度でございましたが、三倍以上になっております。その間、エネルギーばかりが多くて、たんぱく質やビタミン、ミネラルなど、ほかの栄養素が少ない食品が大変に増えてまいりました。これらの食品は、おいしくて安価で簡単に食べられますが、少ない容量でもエネルギーが高いので肥満しやすい一方、ほかの栄養は取れませんので栄養失調状態になりやすいです。
 このように食環境が変化してまいりましたのに、人々はむとんちゃくに手軽で口においしい食品に手を出しております。これは極めて危険でございます。
 人は生物として周囲の動植物を食物にしてまいりました。選択基準は恐らくエネルギーでございます。エネルギーを示す甘みだとかでん粉とか脂肪の食感などが選択の基準であったのではないか。エネルギーを満たせば、自然の食品では同時にたんぱく質やビタミン、ミネラルも取れたんでございますが、私たちの体は、自分が今たんぱく質不足であるとかビタミンCが足りないなどという判断はできないわけでございます。したがって、エネルギーが満ちれば、もうそれでいいと思い込んでしまうようになっております。
 その上、常に食料の不足状態にあって生き延びてまいりましたから、特に日本人は飢餓耐性が強いと申しますけれども、多少でも余裕があればエネルギーを取り込んで後日のために蓄えるようにできております。したがって、エネルギーばかり多くてほかの栄養素の少ない食品でもあれば満足して食べますし、しかも容量が少なくて高カロリーの食品というのも必要以上に取ってしまいますので、過食して肥満し、栄養バランスを失いがちでございます。
 私は、人は自らの食物を変えてしまった、食べ方を学習しなければ滅んでしまうと思うのでございます。しかし、昔からの食習慣を続けている人々は、今までと異なった食品に囲まれても本能だけで食べております。それが肥満や、最近決まりましたメタボリックシンドローム、それから糖尿病などを招きまして、今日の生活習慣病の増加、医療費の高騰を来していると考えられます。
 最近の食環境の変化は急速でございまして、先ほどの図の右側に少しメモしておきましたが、しかも核家族を始めとする社会とか家族の状況、それから家電や食品産業の発達にほとんどの人は十分に対応し切れておりません。で、先ほどの図の下にございますように、肥満児は急激に増えておりますし、男性も肥満が増加しております。これが実は非常に問題でございまして、肥満は糖尿病を、糖尿病は動脈硬化症、またその結果の心筋梗塞、脳卒中を招きます。
 平成十四年の調査によりますと、患者数は三年間に五十万人増加して七百四十万人に達しました。疑わしいものまで含めますと、五十歳代で人口の二〇%、七十歳以上でほぼ三〇%になります。最後の紙の左側の上の方に平成十四年のが書いてございます。
 我が国では、平成十二年、健康日本21を策定いたしましたときの糖尿病患者数の見込みは、二〇一〇年には千八十万人と考えられましたので、目標を一千万人以下にいたしました。現在よりも多い患者数が目標という設定はおかしなものですが、糖尿病の増加は極めて急速なためにそうなりました。ほとんどが肥満による発病と考えられております。
 糖尿病の大きな問題は、自覚症状がないうちに重大な合併症が進行することでございます。その下になりますが、糖尿病性網膜症というのが治療を受けている方の一三%になりますが、これは中途失明の現在最大の原因でございます。
 それから、上の方に腎症とございますけれども、これによる透析に入る人は、本人の負担はほとんどゼロですが、一生やめることができませんし、一人年間五ないし六百万円は掛かり、現在既に二十四万人を突破して、しかも毎年糖尿病患者から八千人が透析に入っております。糖尿病はこの六十年ほどにほとんど百倍近くに増加しております。その予防には、自ら食事を調節して肥満を予防し、運動を心掛ける以外にはございません。最近の研究では、日本人を含むアジア人は肥満からの生活習慣病の発症が極めて多いのです。体重を二回身長で割った肥満指数、BMIが三〇以上の白人に匹敵する生活習慣病がアジア人では二五以上で起こると言われて、肥満予防は我が国はもちろん、途上国でも喫緊の重要事になっております。
 そして御案内のとおり、最近の医療費が平成十四年度で一人当たり二十四万円、国民所得の八・五%以上になっており、うち四七%が生活習慣病で、主に食生活に起因しております。このままでは病人の多い活力のない国になってしまいます。人々が自ら適正な食事摂取を実行しない限り、今後ともこの傾向は進む一方だと思います。食に関して正しい知識が必要であること、健康を維持できる食べ方をみんなが心得ることが大切で、そのための国を挙げての努力をするべきであると考えております。
 このような食にかかわる健康障害の増加は、エネルギーばかり多くて安易な高カロリーが取れるエンプティーカロリー食品のほかに、生活の変化とか食の伝統の消失などにもよるものでございます。もちろん、食習慣を改善すれば成人でも生活習慣病は相当予防できますが、これは本学の栄養クリニックの三十七年以上の指導経験と追跡調査でも明らかでございます。最後の紙の右下のが、これだけ食事を改めるだけで成人でも良くなるということなのですが、一般的には若いときにつくられた食習慣を成人後にこのように変えることは困難でございますので、そのためには何といっても幼いときから良い食習慣を身に付ける全国的なシステムをつくることが不可欠でございます。
 環境が変わったのですから、国を挙げてどうすれば健康にいられるかを学ぶことが必要で、それには義務教育以外には考えられません。その点、我が国には世界的に誇れる学校給食があります。小学校児童の九九%が年間百七十日以上食べている学校給食は、その栄養学的な内容、栄養士が管理している点、また工夫して伝統的な食物を子供たちに提供している点など、食育の上で最も有効な場であります。戦後、十四歳の男児の身長が二十センチ近くも伸長したのは学校給食の影響であったことを疑う栄養学者はおりません。五歳から十五歳の子供の死亡率も世界でも最低レベルで、これも学校給食があったればこそでございます。
 幸い、従来は作って提供するだけであった栄養士に、昨年専門家として食育に携われる栄養教諭となる制度が創設されましたのは極めて時宜を得たものでございます。栄養教諭は、学校給食を提供し、教材として食の教育を担うほかに、児童生徒の食事指導、学校全体や家庭、地域の栄養改善活動のかなめとなる専門家でございます。ただ、現実には人件費の関係で自治体による配置の見込みが少ないことは残念でございます。この法律などを背景にいたしまして、各自治体で栄養教諭を多く採用するように進めたいと思っております。
 過食による肥満は、日本のみならず、欧米はもとより発展途上国にあっても見られております。
 アメリカでは一九〇〇年、ヘルシーピープル二〇〇〇を策定し、この問題に国を挙げて取り組み、ある程度生活習慣病を減少させることに成功しましたが、これは最後の紙の右上でございますが、肥満に関しては全く不成功で、十人のうち六人が肥満、うち三人は重症、十年間に倍になって、国の医療費は十二兆円に達し財政を圧迫し始めております。アメリカの保健省では、食べ方は個人の責任ではあるけれども、家族、地域、国への悪影響があるとして、国を挙げた様々な取組を始めております。
 例えば、お手持ちの資料に示しますように、前の方に外国のが少し紹介してございますが、学校を拠点とした政策です。販売してよい食品の基準を設け、飲料の自動販売機を健康的な飲料にするための資金援助など始めております。また、英国でも、昼食にヘルシーフードを販売し、水を飲めるように環境整備に努めております。肥満児がヨーロッパ一に多い三六%になってしまったイタリアでは、子供も動脈硬化症、高血糖、脂肪肝が増えまして、国家の将来が危ぶまれております。そこで、国を挙げて肥満対策を始めました。イタリア保健省は、国民が健康に暮らしたり、人生を楽しめるようにサポートすることこそ国家にとって本当の投資になる、国家は栄養の教育や運動を奨励することに投資を惜しんではならないと述べております。
 私が特に食育基本法の成立を願う理由は、日本には食事を軽視する風潮が強く、口においしいものを好きなだけ食べればよいとか、粗食がよいとか、根拠もなくいい加減な考え方で済ます傾向があり、また、食は家庭内のこと、親の責任と片付ける見方もあり、なおざりにされてしまうからです。また、食は個人的なことであるから、みだりに国からの働き掛けはしない方がよいという意見もあります。しかし、不適当な食生活で生活習慣病になると、自覚症状のないうちに慢性にどんどん変化が進行いたします。発病してからでは莫大な医療費が必要になるばかりか、本人も家族も社会もそのバイタリティーが失われることを考えなければなりません。
 このたびの食育基本法が成立いたしますと、我が国においても食の重要性、特に食について学ぶことの意義が広く理解され、今後の我が国での食に起因する健康障害を低減し、国民の福祉に貢献することになると期待しております。人々があり余る食物の中から自らに必要なものを要るだけ取れるようにならなければ、日本人の将来は暗くなってしまいます。肥満対策のための栄養教育は緊急の課題であります。国民の健康を守り、健やかで医療費の少ない社会の実現のためには、食の教育に国を挙げて取り組む姿勢を示していただきたいと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
#7
○委員長(高嶋良充君) ありがとうございました。
 次に、中村参考人にお願いをいたします。中村参考人。
#8
○参考人(中村靖彦君) 中村でございます。
 今日は、私がこのごろ考えております食育についてこのような場で発言をする機会を与えてくださいましてありがとうございました。
 私は、三十年以上農政ジャーナリストとして食料問題あるいは農業問題を取材し、しゃべったりしてまいりました。そのジャーナリスト活動の最初のかなり長い期間は、私たちは一体何を食べるかと。そのころはまだ食料事情が必ずしも十分ではないという時代でもありまして、とにかく量的にどういった食料を日本は確保して、私たちはそれを摂取していくかというようなことを頭の中に置いて取材をしていたような気がします。
 ところが、最近は、何を食べるかということももちろん大事なんですけれども、それだけではなくて、どう食べるかということが非常に大事なテーマになってきたというふうに実は非常に強く考えております。そのどう食べるかという中に、実は食育とかそのほかのいろんなその周辺の事柄が入っているというふうに私は理解をしています。で、どう食べるかということについては、やはりいろんな形でその情報を発信をしていかなければいけない、それは、私がまだジャーナリストの仕事を続けておりますので、私自身の務めではないかというふうに思っています。
 じゃ、どう食べるかというその問題意識の中に、やはり最近の子供たち、それからその若い親御さんあるいは若い先生方、そういう方が食材とかあるいは農業とか農村についての知識が非常に少ない、希薄であるということが私の気持ちの中にございます。
 このごろ、時々あちこちに出掛けていって話をしているときに、ふと出てくる皆さん方の言葉で、牛乳というのはもちろんみんな知っているわけですけれども、牛乳というのは牛のおっぱいを搾りさえすればいつでも出るというふうに思っている人が結構いる。それは、子供も知らないし、子供も知らないということは実は先生も知らないということなんですね。
 独り暮らしを始めた若い女性がタマネギを手に取って、タマネギの皮をむき始める。いつまでむけばしんが出てくるのか、どんどんどんどんむいていったら結局何にもなくなっちゃったと。結局それはばらばらになって終わっちゃった。その人にとっては、タマネギというのはサラダの中に輪切りになって乗っかっている、それがタマネギの姿である。どういうものがその原形であるかということについても知らない。こういうお話は幾らでもございます。
 一方では、肥満も心配、それから若い女性のやせ過ぎも心配というようなことで、今私が申し上げたようなことは、こういった問題意識はある程度多くの人が今共有していると思うんですね。私はその心配と同時に、もう少し先を見て、こういったことがこのままずっと続いていくとすれば、日本の農業とかあるいは農村とか、そういうものに対する関心とか理解がやっぱりもうどんどん薄れていってしまうのではないかというふうに、これは私三十年以上農業あるいは水産の畑で仕事をしてきた人間としての非常に強い心配でございます。
 これをやっぱり少しでも将来的に日本の農業あるいは農村についての関心を強くしていくために、一体どういうことを考えたらいいのか。正直言いまして、現在、メディアも、私も長いことメディアで仕事をしてきましたけれども、メディアも最近、この農業農村問題についての理解は必ずしも高くありません。そういう中で一体どういうふうに私たちは考えていったらいいのか。これは非常に個人的にも悩ましいテーマなんですね。
 簡単に言えば、非常に抽象的に言ってしまえば、どうやって食べるものを供給する人、つまり食の供給者とそれから食べる側の距離をどうやって短くしていったらいいんだろうか。これがひいては食の安全とか安心ということにも結び付く非常に大事なテーマなのではないかというふうに思っています。食の提供者と食べる側の距離を短くする、つまり理解するため、お互いに理解をするための情報交流ということがこの場合必要になると思うんですけれども、これが食育の一つの役割なのではないかというふうに思っています。
 私は、そういうふうに今の食を取り巻く現状とかあるいは将来の農業農村などについての私個人としても悩みを持ち、いろいろ考えているわけですけれども、考えているだけでは仕方がないということで、ささやかな実践を始めました。そのささやかな実践といいますのは、もう既に十年来続けておりますNPO法人の良い食材を伝える会の活動でございまして、最初はもちろん任意団体で出発をしたんですけれども、その後、NPO法人の資格を得まして、この良い食材を伝える会の活動を続けています。
 一体どんな活動かといいますと、言ってみれば、今、日本にある非常に優れた食材を次の世代に伝えていこうと、そういうのが良い食材を伝える会のコンセプトでございまして、そのコンセプトに基づいていろいろな活動をしてまいりました。地域食材の年鑑を既に三冊出しておりますし、それから千葉県の有機栽培の農家と協力をして、提携をして、こだわり農場の運営などをしております。
 この良い食材を伝える会、会員、今五百三十人ほどおりますけれども、その会員が折に触れてその千葉県の農場に出掛けていって、もちろん日常的な管理はその有機栽培の農家がしてくださるわけですけれども、農作業を手伝って、秋には収穫祭をやるというようなことで、実際に土に触れて、しかも、最近は余り栽培されていない品種、生産者が作りにくいということでどうしても敬遠してしまうような品種を選んで栽培をして、そういう勉強をしています。それから、去年の秋には、世田谷区にある東京農業大学の「食と農」の博物館を借りまして、大根フェスタという大根のフェスティバルを一か月間行いました。
 そんな活動を実はしてきたんですけれども、今年から食材の寺小屋という活動を始めました。これは皆さんのところに資料をお配りさせていただいておりますが、寺小屋というのは、広辞苑を引きますと子供の子と小さいという字、両方出てまいりますが、私どもは子供の方ではなくて小さい方の寺小屋を使いました。
 これは、特徴は、東京の世田谷区にできた廃校、東京もあちこちに廃校ができておりまして、その廃校の一室、池尻中学校の一室を借りて、一枚めくっていただきますとどんな活動をするのかというのがごく簡単に書いてございますが、講演会、座談会、あるいは展示、それから料理教室、それから食談会、フォーラム、展示即売会。もちろんフォーラム、シンポジウムというのは一部屋だけではできません。私どもが借りていますのは六十三平米の教室一室ですけれども、何しろ廃校ですから、三階建ての廃校が全部使わなくなっているわけですね。ほかの借主がいろいろありまして、私は本当にごくわずかの一室だけを借りているわけですが、当然体育館もございます。その体育館なんかでフォーラムも可能です。
 ここを実は拠点にして、私どもの食育の活動をしていきたいと実は思っております。その対象はもちろん子供だけではなくて、その子供たちの親御さん、あるいは先生方、そして、これは元々は世田谷区が使っていた施設ですから、区民に対する還元といいますか、区民に対しても周知をして、そういった活動を展開をしていきたいというふうに思っております。まだ夢の夢ですけれども、この活動が少し知られるようになって、全国のあちこちで、うちも、じゃ、こういった寺小屋をつくってみたいというような形で手を挙げてくださる方がいれば、これは大変に楽しみなことだなというふうに思っています。
 そこでの食育活動の私のキーワードは実は命とそれから旬だというふうに思っています。
 最近、切れる子供という言葉がありまして、その切れる言葉とそれからいわゆる乱れた食生活というものが結び付けられて論じられます。確かに非行に走ったりするような子供たちの食生活を点検してみますと、これは確かに非常にその食生活は乱れている、それから栄養的にもバランスの取れた食事をしていない、そういうことはございます。ところが、じゃ、食生活が乱れていれば、バランスの悪い食べ物を食べていれば全部それは非行に走るのかというと、それは必ずしもそうではないと私は思っています。振り返ってみても、私が小さいときにそんな大したものを食べた記憶もないし、考えてみれば食糧難のときにろくなものを食っていなかったというような記憶もあるんですけれども、しかしそれで非行に走ったということはない。
 実は、その食べるものの内容もさることながら、私はやっぱり食卓というのが大切なのではないかと。食材はもちろん大事ですけれども、食卓が大事なんではないか。家族が一つの食卓を囲んで食事をするということが切れる子供を少なくする、なくす方策ではないかと思います。
 最後に、この寺小屋などを中心にして伝えたいことの一つは、先ほど申し上げた実は命でございまして、最近小さい子供の非行、しかも非常に目を覆うような凶悪な犯罪がございます。その原因についていろんな識者がテレビとか新聞で話をしておられます。それはそれで私はもっともなことばかりだと思いますけれども、私は、それに加えて、やっぱり今の子供たちは、その子供の時代にほかの命に接する機会が余りにも少ないのではないかと。
 私は宮城県の仙台というところで学生時代を過ごしましたけれども、学生といいますか、小学生から中学生の時代を過ごしましたが、もう学校の裏には田んぼがあって、バッタがいたり、それから春にはカエルが、オタマジャクシになってそれでかえる、そういうような風景はもうどこにもありました。カマキリを捕まえてきて、あるいは時に殺してしまったりする。そのときに、生き物というのはいったんその命を奪ってしまえばもう絶対に元へ戻らないんだというようなことを知らず知らず感じていたのではないかというふうに実は思っているんですね。
 今の子供たち、特に都会の子供たちは、校庭もコンクリ張りですし、そういった生き物に接する機会が非常に少ない。核家族ですから、おじいさん、おばあさんがお亡くなりになって、その亡きがらに接するということさえない。そういうことがやっぱり、少し考えは飛躍するかもしれませんが、人の命を大事にしない、これは決してもう奪ってしまったものは元に戻らないというようなことを知らず知らず体得するチャンスがない。こういうことを実は教える。非常に凶悪な事件が起きると、多くの方々、教育委員会の方なんかは命の大切さを教えたい、学校の先生もおっしゃいます。それはそのとおりなんですけれども、それはできれば命のあるところでそういうことを伝えてほしい。で、まあ私のそういったささやかな活動がそういった一助になればというふうに最近思っております。
 どうもありがとうございました。
#9
○委員長(高嶋良充君) ありがとうございました。
 次に、吉武参考人にお願いをいたします。吉武参考人。
#10
○参考人(吉武洋子君) 吉武でございます。
 今日はお呼びいただいて、ありがとうございます。
 私の所属しております生活協同組合あいコープみやぎというのは、宮城県仙台市を中心に活動しております生活協同組合で、お店を持たない無店舗共同購入の生協でございます。そして、組合員一万二千人ほどが今そこに参画しております。私たちは設立以来、二十六年間になりますけれども、いろいろな形で生産者との交流、そして日本の農業の問題、食料問題に取り組んできた、そういう経験を踏まえて今日発言させていただきたいというふうに思います。
 私の立場は、食育というものはとても大事で必要なものだということは全くこの食育基本法に書かれているとおりで、賛同でございます。ただし、今現在この法律を急いで作る必要があるのか、そしてこの内容でいいのかということに関しては非常に疑問を持っております。
 それはなぜかというと、せんだって東北地方を中心に市民の食に対する意識調査が行われました。これは民間の団体が行ったわけですけれども、その結果によりますと、市民の七割が今の自分たちの食生活、食の安全について不安を持っている。そして、表示の問題、トレーサビリティーの問題、いろいろ定められましたが、それを信頼できるかということに対しては、五割が信用できないという回答になっております。これは、せんだって明るみに出ました肉牛のトレーサビリティーの不正行為が明るみに出る前ですので、その後でしたらばこの数字はもっと高く上がったはずだというふうに私は思っております。
 今、食というのは、言うまでもなく人間にとって必要不可欠なもので、これがなければ生きていかれないわけです。それでは今、日本の現状として果たして国民の食が満たされているのかどうなのか。それを満たされていないというふうに私は思っています。
 それはなぜかというと、食物というのは単に食物が入手できるだけではなくて、安定して安心して入手できるということが食物は必要不可欠です。果たして今の日本の状況がそういうふうになっているかどうか。後継者がいない。そして専業農家ほど厳しい。大規模な専業農家は別として、宮城県のような平均一・二ヘクタールぐらいの水田を有し複合経営をしている農家では非常に厳しい。兼業農家でなければ生きていかれないような状況の中で、日本の食というのが今後どうなっていくのか。食料輸入がどんどん増えていて自給率が低いというのは、議員の方たちもよく御存じのことだというふうに思います。そういう問題を解決しないでおいて、食がなくして育を先にしていいのかというふうに私は思っています。そういう立場から発言させていただきます。
 先ほど中村さんもおっしゃいましたけれども、現場を知らない人たちが一杯います、増えています。牛乳の話、中村さんもおっしゃいました。牛が妊娠して出産して初めて牛乳が搾れるんだということを子供たちは知らない。親も知らない人がいます。極端な例ですけれども、知らない人がやっぱりいるんですね。自分が妊娠して出産して母乳で子育てをしているにもかかわらず、牛も同じ生理を持っていると、牛の母乳が牛乳なんだということすら分からない。そこまで想像力が及ばないんですね。そういう組合員もいます。三本足、四本足の鶏の絵、魚の絵をかいてごらんと言って、いつも食べている切り身の絵をかく子供たちもいます。
 そういう状況の中で、食育を本当にしようと、進めていこうと思うのならば、まず日本の農業の問題、食料自給率の問題、そして私たちが一番何よりも大事にしなければいけない自然環境の問題。食という問題は本当に幅広く、小手先だけの食育では私はいけないというように思っているんですね。
 昔から、はしの上げ下ろしに口を挟むという言い方をします。私は、この食育基本法の中身として、残念ながら、はしの上げ下ろしに口は挟むけれども、根本的な、じゃ何をどういうふうにやって食べていくんだと、日本の国のこれから将来の食料問題をどうするんだと、そういうところが根本的に欠けているというふうに思います。私はそちらの方を最優先していただけたらというふうに思います。
 そして、私たちの生協は、年間一千万ほどの予算を使って、食育ですね、食育という言葉は使っておりませんでしたが、活動を行っております。これは生産者との交流、あるいは子供のおやつや老人食など食生活の問題、あるいは食品添加物や遺伝子組換え、BSEなど食品の安全に関すること、日本の農業や食料問題の今の現状、世界の問題とか、たくさんの活動をしております。昨年度は年間四十数回、役職員の研修まで入れると六十回近いこういう活動を行ってきます。これが毎年続いております。そういう中から、じゃ、私たちは生活協同組合ですから、そういう活動が事業の成果にも反映されますから、これを経費として頑張って活動してまいりました。
 しかし、この法案が通りまして、十一条、十二条、十三条にあるように、責務、努めなければならないということになったときに、この経費の負担というのはどこがどういうふうにするのか。もちろん、十四条でしたでしょうか、財政的措置を講ずるという一項目が入っておりますが、これが本当に実効性を持ってやれるのかどうなのか、私は非常に疑問に思っております。
 消費者基本法というのがあります。この中に、国は消費者教育にきちっと措置をしなければいけない、施策を講じなければならないという一項目が十七条に入っております。これが実行されているのかどうなのか。宮城県は財政難です。その結果、これに対する補助金が削られました。ある市では年間三万円の予算しか付かないんですね。年間三万円で消費者教育の何ができるのか。一回講師を呼んだらそれで終わり。そういう状況の中で、この食育基本法の財政的措置の担保がどういう形でされるのか、私は非常に不安に思っております。そういう担保がされない中でこれが事業者だとか生産者だとかの責務になっていったらば、いかに基本法で努力目標であるとはいえ、これは大変な負担になってくるというふうに思います。
 私たちの活動ですら生産者にとっては負担です。一人の生産者のところに一度に組合員が何十人も行くことはできません。ですから、何回かに分けて行くことになります。組合員はそれぞれ初めてです。でも、生産者は何回も同じことを繰り返さなければならない。そして、生協の組合員というのは、特に仙台のようなところは転勤族が多いので、三年たつと三分の一の組合員が入れ替わります。そうしますと、また新しいことを一からしなければいけないんですね。そういう繰り返しの中で、生協の方はいいです、何とかなります。でも、生産者の負担はとても大きいものになります。
 特に今、後継者がいない、高齢化している、働き手が少ない。そういう中でいろんな形での交流を図るということに対して、もう少しこの法律をつくる段階でどれだけの負担なのかということを考えていただければというふうに思います。
 そして今、昔、三ちゃん農業と言われました、じいちゃん、ばあちゃん、母ちゃんと。今は、じいちゃん、ばあちゃんがもう介護をされる時代になっています、世代になっているんですね。私たちの生産者でも、若いといいながら四十代半ば。そうすると、御両親はもう七十代半ばになるんです。そういう中で、これからは御両親の介護を考えながらも労働をしていかなければいけない。そして、今いろんな形で農業の問題というのが大きくクローズアップはされながらも、実質問題として解決する手段がなかなかないわけですね。
 例えば、輸入が一杯増えているという中で、私たちが、例えば消費者が欲しいサヤインゲンだとかサヤエンドウだとか、これから旬になりますけれども、そういうものは人手が掛かります。摘むのに物すごく人手掛かるんですね、生産ではなくて。そういうものが今日本では作れなくなっています。なぜかというと、労働力がないからですね。
 そういう中で、農村を集落単位で考えて、その中で、集団的ということは農水省の方でも進められていますけれども、そういうものをきちっともっともっと進めていくような施策だとか、高齢者が意欲を持って働けるような仕組みとかをきちっと位置付けて、日本の農村が元気になるということ、そういうものが大前提にあって初めて、この法律の中でもさらっと触れられてはおりますが、ここにどれほどの実効性があるのかということについては私は非常に疑問に思っています。
 そして、やはり先ほど中村さんもおっしゃったように、命です。命の問題をどれだけ教えるのか。最初に教えなければ食育というのは成り立たないというふうに思っています。
 私たちはキッズスクールという活動をしております。これは子供たちを生産現場に連れていく活動なんですね。これは人数を制限して、年間二十人というのを限度として、これは毎月一度何らかの形で生産現場に行って学習するという活動をしております。そのときに初めて牛を見る子供たちがいる。この牛を食べるんだよということをまず教えます。この生きている、今あなたたちをなめてくれているこのかわいい目をした牛を私たちは殺して食べるんだと。そして、牛というのは自動的におっぱいを出すんじゃないよと。お母さんが赤ちゃんを産んで、そして初めておっぱいが出るんだよと、そういうことから教えます。自分たちが命をいただいているんだということを一番最初に教えなければ食育というのは成り立たないというふうに思うんですね。
 今、日本というのは本当にお金に飽かせていろんな国からいろんなものを買っています。本当に飽食をしているわけですね。そういう中で、この法案に触れられているような、日本固有の優しい食文化、日本の優れた食文化ということについて随分簡単に言われているなということを私は率直に感じました。いつの時代を指して言っているのか。多分、野菜とお米と、そしてお魚とというのをイメージされてここに書かれているというふうに思います。私も、大事な食文化だし、大事にしていきたい、当然だというふうに、そう思います。
 じゃ、現実に今の日本でこの優しい優れた食文化が、体にいい食文化ができるのか。
 日本は海をつぶしました。近海でお魚は捕れません。捕れてもとても庶民が手の出るようなお金ではありません。私は神奈川県の平塚というところで育ちました。大磯とか二宮とかいい漁場があって、子供のころは地引き網をすればアジとかサバとかが山ほど捕れたんですね。新鮮なお魚が食べられた。でも、今、平塚で地アジを買おうと思えば、養殖ではなくて、地アジを買おうと思えば一匹五百円します、こんなのが。とても私たちの口には入らないんですね。
 じゃ、遠洋漁業なのか。日本での遠洋漁業というのはよその国にとっては近海漁業です。だから摩擦が起きるわけですね。この間の韓国の漁船の例もありました。日本はアフリカまで行ってお魚を捕ってきているわけですね。そういう魚を持ってきて日本の優れた食文化というふうに言えるのかどうなのか。そういうことも併せて考える必要があるというふうに私は思っております。
 いろんなことを、この食という、食育ということを考えるということは、簡単に食育と言いますけれども、日本の社会の在り方を変えるような大変なことなんだということを私は是非考えていただきたいというふうに思います。私たちの暮らしを変えなければ、ここの食育基本法に言われているような食生活というのは私は不可能だというふうに思います。
 もうここまで日本は来ました。であるならば、今の現状をどういうふうにしていくのか、日本の食料問題をどういうふうに考えていくのか、トータルで考えなければ、私は、食育という問題だけではいけないというふうに思うんですね。大事な問題だからこそもっときちっと考えて、日本の国民の食生活をどうするんだというところを考えなければ、小手先で食育、食について教育をしていくということだけでは何にも問題は解決しないというふうに思っています。
 私たちは、今後も自分たちはきちっと、いろいろな今まで続けてきたような活動を生産者と一緒に続けてまいります。しかし、あえて言わせていただけるならば、今まで一生懸命やってきた人間として、これを簡単に法律で国民の責務だとか事業者の責務だとか言ってほしくないなというふうに思います。今の日本の食料の状況をこういうふうにしてしまったことに対してもっともっと責任を感じて、その上で初めて国民や事業者や生産者に責務だというふうに要求してほしいというふうに思います。
 以上です。ありがとうございました。
#11
○委員長(高嶋良充君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。着席のままで結構です。
#12
○秋元司君 自由民主党の秋元司でございます。
 今日は本当に現場で御活躍の皆様に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。せっかくの機会でございますから、何点か御質問させていただきたいと思います。
 まず、私自身はちょうど団塊の世代ジュニアでございまして、ちょうど私が小学生のころ、インスタントラーメンとかスナック菓子、こういうのは食べちゃいけないよということが盛んに言われる中で、しかしそれを当然取り続ける我々の世代がどんどん肥満児になってきていろんな問題が出てきた、ちょうどスタートの世代でありまして、そういったことの中で、今日皆さんのお話を聞きながら、何か父親と母親に怒られているのかなと、そんな気がいたしたわけでありますけれども。
 自分自身のことを過去を顧みながら思ってみましたら、食に対する自分の習慣云々はどこで育ったのかなといいますと、やっぱり小学生とか中学生、そういった幼年期だったのかなと、そんな気がいたしております。
 私自身は実はかぎっ子で育ちましたもので、やっぱり両親が共働きしておりましたから、なかなか、母親も頑張って極力家庭料理ということで努力してもらったと思うんですけれども、そんなに食に対するいろんな知識を教えてもらったという記憶はないわけでありますが、しかし、今自分でこの食に対して考えるときに、やっぱりバランス良く食べるとか野菜を食べるとか、そういったことは自然と自分の知識の中に入っている。じゃ、そういうのはどこで養ったのかなと思うと、先ほどの香川参考人のお話にもありましたとおり、やっぱり学校教育の一環としてやった給食ですね。ここでしっかりバランス良く炭水化物とそして普通の野菜、肉、魚、そういったものを食べるということを覚えたんじゃないかと思うんですが、香川参考人からは、今給食に対する思いとかそういったことをお聞かせいただいたんですけれども、それぞれ中村参考人と吉武参考人、給食に対してどのようなお考えを持っていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
#13
○参考人(中村靖彦君) 学校給食は、一日の子供の食事の中で、極端なことを言いますと、唯一栄養的にもバランスが取れていて、しかも大勢で一緒に食べるという極めて大事な食事の場だというふうに思っています。
 もう大分前になりますが、学校給食不要論という主張がある町の町長さんから出されまして、結局住民の方の猛反対でその主張は撤回されたわけですけれども、今となってみると、これはもう学校給食不要論どころか、もうこれが言ってみれば子供たちの体を支えている非常に大事な場である。
 私の、さらにちょっと申し上げれば、学校給食にその地域の食材を使ってほしい。栄養士さんは前から地域の食材を使いたいという気持ちを強く持っていたんですけれども、なかなか供給側がうまく対応できなくて、必ずしも全部が満足できる結果になっていなかったんですけれども、最近はようやく供給側、特にJAなどが、これはやっぱりきちんと供給することが将来的に日本の農業農村への理解を深めるんだということで積極的になってまいりました。
 その食材を中心にして私は食育、立派な食育ができると思うんですね。つまり、その食材が一体その地域で何年ぐらい前から作られていたのか、それからどのぐらいの量を今作られているのか、ほかの地域に比べて特徴はどうなんだろうかと。それから、その地域特徴のある食材というのは、実はその種をよそへ持っていってもその性能といいますか効果がきちんと発現いたしません。つまり、そういう理由は何なんだろうかと。ですから、社会科の勉強もできるし、それから理科の勉強もできる、歴史の勉強もできると。そういう学校給食を軸にして非常に大事な食育が展開できるのではないかというふうに思っています。
#14
○参考人(吉武洋子君) 多分私は秋元議員の親世代で団塊の世代で、一九四九年、昭和二十四年の生まれでございます。そして、多分給食を食べ始めたのが昭和三十一年、一九五五年ぐらいだと思うんですが、私は非常に給食についてはいい思い出を持っていないんですね。
 それはなぜかというと、多分一番給食がまだ始まってそんなにたっていない時期でもあったし、食料もまだまだだったと多分思うのですが、鯨が嫌いになりました。本当に硬い鯨を食べさせられて、いまだ、今捕鯨をという話とかうちの生協にも来るんですけれども、おいしい鯨をその後は食べたことがあるんですけれども、なかなか賛成できないような、それぐらい子供たちにとっては大きな影響を与えるものだというふうに思っております。そして、あの時代に脱脂粉乳を飲まされた大人たちは、多分牛乳を嫌いになっている人たちも結構いると思うんですね。今の子供たちはそれに比べるとすごく恵まれたいい給食を食べているというふうに思います。
 私の生協でも、仙台は給食センターが基本ですけれども、何校か単独校があるんですね。単独校から食材を入れてほしいというお話が、栄養士さんがとても理解のある方で、お話がありました。そのときに、私たちも頑張って入れようとしたんですけれども、どうしても価格と規格がネックになって入りませんでした。やはり学校給食は予算があります。そして、規格がそろってないということが大きいんですね、予算以上に。なぜかというと、子供たちに不公平になっちゃいけない。だから、ミカンは全部同じ大きさじゃなきゃいけないし、リンゴも同じ大きさじゃなきゃいけないと言われると、私たちのようなところでは対応できません。込み玉で全部やっておりますので。そういうところの発想も少し変えていただくとかすれば、いろんな子供たちにいい食材を与えられるというふうに思っております。
 ただ、やっぱり学校の給食センターの食材は、私も十何年前、十数年前に小学校の教員をしたことがありますけれども、そのときの焼きそばとかめん類ですね、バケツに入ってくるときに本当に、御存じだと思いますが、二センチ、三センチにぶつぶつぶつぶつ切られてくるわけですね。それはそうですよね。大量に作ってそれをバケツにみんな分けていくわけですから。そうすると本当に、言葉は悪いですけど豚のえさですね、見掛けが。そういうものを食べさせられて育った子供たちは食育もへったくれもないというふうに思います。
 ただ、もう改善はされているということを期待はしております。学校給食がとても大事だということは、私もそれは痛感しております。
 以上です。
#15
○秋元司君 ありがとうございました。
 次に、同じやっぱりこの食育、これは先ほど私も申し上げましたけれども、やっぱり幼年期、小さいうちの教育が非常に大事じゃないかと思うわけでありまして、特に今日、実は会う前に、宣伝の某代理店の方と話をする機会がありまして、彼らと話をしましたところ、何といいますか、例えばファストフード関係、これが、ファストフードというのが体にいいか悪いかということは別としまして、彼らが積極的にこの売上げを上げるためにねらう世代というのは、小学校の五年生か六年生向けにCMを打つらしいんですね。というのは、人間の習慣として、この年代に食べた味とか持ったイメージというのを、一生それが食の味覚、感覚、イメージのベースとなるというのが統計学的にあるらしいんですね。ですから、もうここに向けてターゲットを絞って、非常にCMを打って、いいイメージを持って、言ってみれば商品に、食べ物に景品を付けて、取りあえず味を覚えさせるというのを積極的にやっているという話を聞きますけれども。
 こういうことにつきまして、これは商売だから致し方がないという話もあるんですが、三参考人の皆さん、どのようなお考えをお持ちですか。
 香川参考人からお願いしたいと思います。
#16
○委員長(高嶋良充君) 香川参考人、よろしゅうございますか。
#17
○参考人(香川芳子君) 商売でたくさん売りたいという方々の場合には、どうも食べる人の健康ということはほとんど考えてないような気がするんですね。そうかといって、売るなというわけにはいきませんので、自分でそういうものを選択して、いいのか悪いのか、どれぐらいまでにとどめるべきかということを、たとえ幼児でも自覚していなければいけないと思うんですね。
 アメリカ辺りでは、割合にいい食物を、あちらでは学校でそういうものを売るわけでございますけれども、アメリカ辺りでございますと、そういうのではなくて、なるべく体に良い食品を売る、余り良くないものは売らないというふうにする場合に補助金を出すというようなこともして子供たちに間接的に教えるとか、そういう政策も取っているようでございますけれども。
 野放しにしておけば必ず子供たちはそういうものの方へ傾いていってしまうと思います。やはり教えないといけないと思います。
#18
○参考人(中村靖彦君) 確かに、私も以前取材をしたことがございまして、今おっしゃったように、子供のうちにとにかく味をすり込んでしまえば、大きくなったらもうその味から離れることはできない、だから小さいときは大事なんだと。
 これは、一番象徴的だったのは、某有名ハンバーガーチェーンの大社長さんが、もう今は退任されましたけど、私が取材をしたときにもういみじくもおっしゃいました。とにかく若いといいますか小さいうちに食わせてしまえば、その後は、もう米の消費拡大なんて言ったって、そんなものは全然話にならんと、問題にならんというようなことをまくし立てておられたことを実は思い出します。
 ただ最近は、私のこれは、あまねく調べているわけではありませんが、大分ファストフードとか食品企業も変わってきたと思います。それはやっぱり世の中の動きというのが、流れというのが、やっぱりもうそれだけでは済まない。つまり、栄養のバランスとかそういうことを考えていったときに、もうそれだけでは済まないんだということが少しずつ浸透してきたのではないかというふうに思います。
 先ほど例に挙げた某ハンバーガーチェーンは、そのチェーン自身が食育ということを訴えておりまして、しかし国産で賄っている食材は、まあ言ってみればレタスの葉っぱ一枚ぐらいの企業が何が食育なんだろうかと。私も最初は非常に半信半疑でありました。だけど、その企業自身が、やっぱりそのハンバーガーを使って栄養のバランスを子供たちに伝えたいと。つまり、当然そのときには、こういうものばっかり食べていたんでは健康に必ずしも良くないという内容も恐らく入るんだろうと思います。ですから、そういうふうに食品企業も変わってきた。これがやっぱり、食品企業そのものがそういう姿勢にならないと、やっぱり日本の食育という活動もうまく進まないのではないかというふうに思っています。
#19
○参考人(吉武洋子君) 私たちの生協でも一番困るのがそこの点です。
 うちの食材というのは加工食品に対してアミノ酸、グルタミン酸とか、一切そういう調味料、化学調味料を使っておりません。そうすると、やっぱり子供たちにとって口に合わないということが結構あるんですね。子供たちがまずいと言っているから買わないというような意見が来ます。そういうときに、本物の味を食べさしてほしいということは言いますけれども、なかなか難しい。今食材は売れません。今売れるのは、半調理品あるいは調理品、冷凍食品なんですね。今、食材をそのまま自分で買って一から料理する人の方が少なくなっています。
 そういう中で、本当に家庭の味だとか、ファストフード、ジャンクフードという言い方もしますけれども、そういうものじゃない味を子供たちに伝えていくというのは非常に難しいというふうに思います。逆に言えば、もう一度親たちが家庭できちんと調理できるということが大前提だろうなというふうに思います。買うなということは、今のこういうどこに行っても買えるような状況の中では無理だというふうに私は思っております。
#20
○秋元司君 さっき中村参考人の話の中に、農業生産者の皆さんが余り作るのを、最近、作りがちじゃないものを作っていらっしゃるというお話でありましたけれども、これ具体的にどういったものを作っていらっしゃるんですか。
#21
○参考人(中村靖彦君) 簡単に言えばスーパーで売れるもの、例えば大根であればアオクビダイコン一色になってしまいました。それから白菜にしてもそれからゴボウにしてもそれからホウレンソウにしても、あくの少ないそういうものを作る。それは、栽培しやすいということに加えて、やっぱり消費者のニーズといいますか、それがニーズと言っていいのか分かりませんが、消費者が好む、そういうものを作るという傾向になってきているということを先ほどちょっと申し上げたわけです。
 つまり、大根一つを取ってみても、昔は日本に百種類ぐらい、ちょっと以前まで、昔というか、ちょっと以前には百種類ぐらいの地大根というのが、地ビールじゃなくて地大根というのがあったわけです。今はそれがどんどんどんどん減りまして三十ぐらいになりました。その代わりに多くの品種はアオクビダイコンに替わった。ゴボウもあくが少ない、ホウレンソウもシュウ酸が少ない。それはどこのニーズかというのは、私はちょっと難しい点があるんじゃないかと思います。本当に消費者のニーズなのか、あるいは流通のニーズなのか、そこはちょっと一つ別の問題になると思いますけれども、私がちょっと、先ほど申し上げたかったのはそういう点でございます。
#22
○秋元司君 ありがとうございました。
 時間もだんだん迫ってまいりましたので、吉武参考人にお伺いしたいんですが、先ほど、今、日本が抱える食の輸入の問題、魚の問題、又は農業関係の生産者の問題、いろいろと御指摘いただきましたけれども、今回、ちょっと正式な法律名は忘れてしまいましたけれども、農業経営に対する法改正を、一部改正しました。こういうことに対する御評価をいただきたいのと、もう一つは、生協さんとして、食育に際して、今いろいろと御指摘もいただいた点も踏まえて、今後どういったことをされたい、具体的に何かものがあればちょっと教えていただきたいなと思います。
#23
○参考人(吉武洋子君) いろいろな形で変わってきたなということ、農業政策が変わってきたなということについては私は評価しております。ただ、それが本当に面倒な手続をしなければいけないということに対して、生産者が本当に大変だということを、もっと現場のことを理解していただきたいというふうに思います。
 例えば、私たち、大郷町といいまして、仙台から車で四十分ぐらいのところに生産者のグループがございます。その方たちが今度生産組合をつくって、四十ヘクタールほど農地をまとめて、そこで大規模という形で補助金もいただきながら継続的に農業を進めていくということを手続を取って今年から始めました。それに要した彼らの時間と手間と、そして慣れない書類ということなど、物すごく大変な思いがあります。そういうところを踏まえながら、もっともっと現場で働いている人間たちが手続しやすい、そういう集団の農業のやり方、経営のものをきちっと進めていただきたいということが一つ。
 それから、生協として今後一番やっていきたいことは、こういう生産組合を生産者と一緒につくることです。生産者が三分の二でしょうか、今。生産者が三分の二参加していれば生産組合に民間のNPOも参画できるということになっておりますので、私たちは農地を生産者と一緒に何らかの形で購入するなり借りるなりして農地を確保したいということをまず第一に思っております。今、三割以上の減反で、宮城県、特にこれから宮城、岩手を通って車でちょっと奥に入っていただくと一目瞭然ですけれども、農地が荒れ果てています。そういう農地をやっぱり私たちは消費者としてきちっとカバーしていくということを積極的にやりたいというふうに思っております。そういうことを国としても積極的に認めて応援していただければというふうに私は願っております。
 以上です。
#24
○秋元司君 最後になりますけれども、香川参考人にお伺いしたいんですが、栄養士さんという立場からもお願いしたいんですが、最近、どこの国に行っても日本食ブームというのが非常にはやっておりまして、日本食というのはヘルシーであるということの中で、欧米の人たちでも日本食を積極的に取り入れるという傾向があるようでありますが、この折についてどのような御見識を持っていらっしゃるか、ましてや本当に日本食というのはそんなにヘルシーなのでしょうか、お伺いしたいと思います。
#25
○参考人(香川芳子君) 実は、日本食というのは、確かに今の太りやすいという食事から比べますと、非常にエネルギーが少なくて、そして味もいいですし、今実は内閣府の方で御一緒に日本食について検討しているところでございますけれども、本当に外の人はあこがれを持って日本食を見ていてくださるようです。
 日本食といっても本当に幅が広いわけでございまして、何がということは言えませんけれども、少なくとも比較的油が少ない、そして太りにくい、ただ地域によって、場合によってはちょっと食塩が多過ぎるということ、そういうところが特徴かと思いますけれども、素材の味を生かしておりますし、私は外国の方も日本食のきちんとしたものを少しずつ理解して取り入れてくださるとよろしいのではないかというふうに思っております。
#26
○秋元司君 ありがとうございました。
 以上です。
#27
○岡崎トミ子君 今日は参考人の皆様、いろいろ専門家のお立場から、実践家のお立場からお話を伺うことができまして、感謝を申し上げたいと思います。
 食育については、ほとんどの人が総論賛成だと思っております。基本法という形で出てきたときに、実は食育のことについて一生懸命なさってきた方々の中からちょっと疑問の声が出てきました。食育に真剣にかかわってきた人こそというのは一体どういうことなのかなということを今参考人の皆さんのお話を伺いながら私なりに思ったことがございますけれども、民主党も実は懐疑的でありまして、衆議院の方では反対をいたしました。
 この基本法が成立して良かったというふうに思えるようになるためには、今まで皆さんが具体的にいろんなことを実践されてきて、これはこう変わってほしい、ここだけはこうしていただかなければならないというふうに思われること、たくさんあるんだと思いますけれども、せめてこれだけはという思う点があったらお聞かせいただきたいと思います。
 三人の方にお伺いします。
#28
○委員長(高嶋良充君) じゃ、どうでしょう、香川参考人から順番によろしゅうございますか。
#29
○参考人(香川芳子君) 先ほど意見の中で申し述べましたように、日本の国というのは非常に食べることに対して冷たいというか、そんなことなんかというような姿勢がかなり強うございます。
 それで、今このまま好きなように食べていると、先ほど申し上げましたように大変危険でございますので、ちゃんとした食育をしなければいけないということがございますので、細部についてはとにかくとして、食育ということを国を挙げてしなければいけないんだという姿勢をはっきり打ち出すということがこの際やっぱり大事だと思いますので、この基本法が成立していただきたいと。そうすることによって、食べることなんて男の考えることじゃないとか、ぜいたく言うなとか、たくさん食べればいいんだとか、好きなもの食えばいいさとか、それから、そんなことは個人の自由でしょうとか、そんなことを言っている間に大変なことになりそうなんです。
 ですから、そうではない、食べることを、今本当に私たちは食べるものを変えてしまったわけです。例えば、動物を食べる、植物を食べるというふうにしていたのが、精製してしまった油で、精製したでん粉を揚げて、塩を振りまいて、それを食べておなか一杯になったからいいというような、そういう状況になってきているわけですね。それで、それに対して、好きなものを腹一杯食べたのにどこが悪いと。それから、幼児がソフトドリンク、これはもう砂糖でしかないわけですけれども、ソフトドリンクを飲んでお菓子を食べて食事をしないのに、それで母親が、だって好きなものを食べさせてどこが悪いのと言って、子供の成長が悪くなってしまって、肥満児になってしまってというようなことがもう現に起こり始めているわけでございます。
 ですから、そうではない、食というのは体をつくり支えるものなんだから、きちんと食べなきゃいけないんだということをみんなが認めるようにするのには、とにかくこういう法律が出ることで、みんなに注目してもらう、食べるということに対して注目してもらうということがどうしても必要だと思いますので、私は、細部は何かあるかもしれませんけれども、実は余り法律のことは詳しくないので弱いのですけれども、しかしそういう法律があるということでみんなが気を付けてくれないと、もう外国では、先ほどアメリカでも、肥満を駆除することはまだできませんけれども、ほかの病気はどんどん減っております。それから、スウェーデンでも医療費がどんどん下がっております。日本はもうウナギ登りに上がっているんですね。そして、介護の必要な人がやたらに増えてくるとか、医療費が上がってくるとか、これではもう売るものを持たない日本としては本当につぶれてしまうと思うんです。
 ですから、食のことを大事だとみんなが思うようになるために、この法律、是非成立していただきたい、そう思っています。
#30
○参考人(中村靖彦君) お尋ねの、基本法ができたときに、成立したときに、こうなればよかったと思うその条件って何かということですけれども、私は日本のあちこちでいろんな試みが行われていると思うんですね。それは法律のあるなしにかかわらず、いろんな努力が行われていると思うんですが、その方々が、ああ、これで法律、法律というのは確かにかなり重たいものだと思いますので、ああ、これで我々のやってきたことも必ずしも間違いではなかったというその自信といいますか気持ちといいますか、それを持つようになることが私は一番の、何といいますか、プラスではないかと思うんですね。
 ただ、そのためには、やっぱり基本法はあくまで理念法ですから、読んでみても非常に抽象的な理念が幾つか書いてありまして、それから先ほど吉武参考人もおっしゃったように、責務とかそういうことがあって、そういう意味で言いますと、私も民主党さんが言われるような、上から、国の方からそういうことに介入するといいますか口を出すといいますか、そういうことが必ずしも適当ではない、これはあくまで個人の自由といいますか、そういう考え方も私は分からないことはないんですね。
 私があるいは現役のジャーナリストであればそんなふうなことを思ったかもしれませんが、実践をある程度やってみている人間として見れば、やっぱりこの法律というかなり重たい裏付けができて、しかもそれに付随して関連法律がやっぱりできなければ私は駄目だと思います。その関連法がいろいろ整備されて、で初めてやっぱりこの食育基本法というのが生かされることになるのではないかというふうに思っています。
#31
○参考人(吉武洋子君) 二点ございます。
 一点は、自分の国で食べるものは自分の国で作るのが当たり前だということを大前提に食育を進めるということ、それが法律の中にきちんと担保されて、命の有り難さというものもそこできちっと教えられるということが明確に提起されるということ。それからもう一点は、この活動、食育に関して明確に財政的な裏付けを付けることです。この法律の中でも財政的な措置をということは十四条でしたでしょうかで触れられておりますけれども、こういうあいまいな、基本法だからあいまいになるのかよく分かりませんが、こういうあいまいな形ではなくて、明確に、市民団体も含めてそういう活動に取り組んでいるところに積極的に国が財政措置を保障する、自治体に任せるのではなくて国がきちっとお金を付けるということが担保されるということが最低条件だろうというふうに思います。
 以上です。
#32
○岡崎トミ子君 ありがとうございました。
 食育というのは手間暇の掛かるものだというふうに思うんですね。これまで国も厚生省あるいは文科省の時代から食育というものは言われてきたわけなんですけれども、実はその必要な手間暇を省いてきたのではないかというふうに思っております。この基本法に問われておりますのは、その手間暇を十分に考えたものになっているのかどうなのかというふうに私は疑問に感じているわけなんですけれども、やはり実際学校給食の現場で栄養士として働いている方がこんなふうに言っているんですね。今の食の実態、それから効率化が進む給食運営の問題点を理由にして食教育の難しさを訴えておられるんです。つまり、調査結果の中で、栄養士さんたちがとてもじゃないけれども食教育なんかできないよというふうに、もう現場からそういうことを言っているわけなんですね。
 やはり食育というのは手間暇の掛かるものだというふうに私は思うわけなんですけれども、香川参考人にそのことについてお伺いしたいのと、それから調理というのが学校給食で民間の委託になっているんですね。民間の委託になるということは、いろんなガイドラインを作って、こうやっちゃいけない、ああやっちゃいけないということを、いろんなことをガイドラインとして持っている区などもあるようなんですけれども、私は、その民間委託の現場の人が実は給食は教育じゃないというふうに、調理は教育じゃないということを言っているんです。先ほどちょっとバケツの中に切ったものがあってちょっと何かえさみたいな感じの表現をされましたけれども、実は調理というのは別なところでやっていて、調理というのは教育じゃないということを教育委員会の方が既に言ってしまっているようなことを伺いまして、これは非常にまずいことだなというふうに、私はこれでは食育はおぼつかないというふうに思ったんですけれども、香川参考人にそのことについてお伺いしておきたいと思います。
#33
○参考人(香川芳子君) 学校給食がセンター化して非常に普通のお料理らしくなくなってしまってということは確かにございます。このことは決して父母も、それから、文科省で私もずっとかかわってたんですけれども、委員たちも望んでいたことではございません。はっきり申しまして、それを進めなければ予算のときにというようなことを大蔵省から言われて泣く泣くというようなところがございました。
 それから、教育ではないと言いますけれども、給食はもう初めから教育の一環ということに位置付けられておりますので、ただ食事を出すだけではありません。そこで出たものによって、子供たちは生まれて初めてヒジキを食べるとか、それから生まれて初めてゴボウを食べるとか、そういったような子供が決して少なくないんでございますね。そういう意味でも、子供たちの食のレパートリーを広げる。でも、やはりかなり厳しいわけでございまして、財政的な厳しさのために人手も減らされる、材料費も制約されるということがございますので、その中で私は栄養士たちはよく頑張っていると思うんです。
 それで、しかもその内容につきましては、栄養的には本当に、先ほど中村さんがおっしゃってくださいましたように、あれがなかったら日本の子供は今のようには育たなかったと思います。二十センチは伸びているんです、男の子の身長が。これはもう明らかに給食のおかげと思いますし、それからそのほかに病気で亡くなる率が世界的に見ても非常に低いのは、ちょうどその年齢はですね、そのおかげだというふうに考えておりますし、そういう意味では、健康にはもちろん非常にプラスしていますが、例えば今何か、いただきます、ごちそうさまを言うのは給食だけだなんて、家庭では言わなくなってしまったなんていうような話も聞きますし、それから後片付けをしたり配ぜんをしたり、みんなのためにサービスをすることをそこで訓練をしているとか、そういう意味で本当に先生方も一緒になってよくやっていると思いますが。
 ただ、栄養士については、栄養職員という名前で、教師ではないというふうに言われておりましたものですから、それで教えたくても、実は栄養士という職業は栄養を指導するのを業とするというふうにちゃんと書かれているんですけれども、学校ではそれを正式にはさせてもらえない。校長先生や何かから特別にお声が掛かったときだけさせていただけるというような状況でありましたが、本当は教えたかったんですね。それを、今日の食事に出ているお魚はこれなのよって見せたり、それから、これはだれそれさんの家で取ったもので、これが今日の給食に入っているのよとか、そういうふうなことも教えたいと思ってはいるけれども、そんなことは断りもなくやらせていただけなかったというようなことがありましたので、今度栄養教諭という制度ができて、本当は栄養士は今まで以上に負担は重くなりますけれども、みんな子供たちに教えるということについては喜んでやっていると思います。
 委託の問題も、やはり財政的な問題かと思っております。
#34
○岡崎トミ子君 吉武参考人に伺いたいと思います。
 それこそ、手間暇掛ける食育というものをこれまで生協の活動の中でなさってきたと思いますけれども、国内のものを国内で食べること、それが日本でできる大きな国際貢献だともおっしゃっておりますけれども、その点に関して詳しく伺いたいと思います。
#35
○参考人(吉武洋子君) 日本人は世界一エビを食べる国民だということは皆さん御存じだと思うんですけれども、そのエビをどういうふうに今、日本が輸入しているかということも御存じだと思いますが、あえて申し上げさせていただきます。
 日本は、一番最初、ブラックタイガーを台湾で養殖しました。台湾の海が汚れて、あと人件費も上がって、台湾では、台湾から輸入したのではペイしなくなって、今度はフィリピンに行って、それからインドネシアに行って、それからベトナムというふうにアジア各国のマングローブの海を切り開いてエビの養殖をしております。私がインドネシアの生産者に話を聞いたところ、自分たちがエビを食べられなくなったと。自分たちの日常の食品のエビだったのが、今はみんな日本が高く買うから自分たちは頭としっぽしか食べられなくなったというようなことも聞いております。環境汚染も、マングローブをみんな切り開いてしまいましたから、大変な問題を起こしております。
 カボチャの例もあります。日本のカボチャというのはもうほとんど輸入になっております。そして、トンガという、お相撲さんも来ておりましたから御存じだと思いますが、トンガという国で日本のある商社がカボチャを作らせました。トンガという国の主食はタロイモだったんですね。土地の私有制というのが余りなくて、好きなところにタロイモの苗を植えて、それは入会地みたいで、そこは自由に使えるような形のところの土地を日本の商社がカボチャ畑として囲い込んだ。その結果、トンガではタロイモが食べられなくなって、小麦を輸入せざるを得なくなったという状況があります。日本の食文化が外国の食文化を破壊した。そして、トンガでも経済的にペイをしなくなって、日本の商社はさっさと撤退して、メキシコに行き、ニュージーランドに行き、そしてカボチャを作っております。
 そして、タマネギなんかもそうですね。タイに行ってタマネギを作って、規格品にしか合わない、同じ大きさの外食産業で使われるタマネギしか輸入させない。その結果、現地では規格外のタマネギが腐っている。で、現地の人たちの農地を奪っているというような例は幾つもございます。
 そういうものを何で日本はするのかと。日本の方がよほど生産条件はいいんですね。豊かな土壌があって、水資源も豊かだし、何よりも農家の方たちは熱心で勤勉なんですね。そういうところで農業を放棄する、コストに合わないからといって農業を放棄するということは、私は、極端に言えば、飢えている人たちに対する犯罪だというふうに思います。
 日本は今お金がある、だんだんなくなってきていますけれども。そういうときに、今後こういうようなことが続けられるのか。私は、もっともっと日本の農業を大事にしなくてはいけないというふうに思います。それが食育の大前提だというふうに思います。
 以上です。
#36
○岡崎トミ子君 最後に、中村参考人にお聞きしたいと思います。
 仙台の御出身だということで、御本でも政治とBSEの問題について詳しく書かれていらっしゃいますけれども、仙台の牛タンがBSE以来大変影響を受けて苦況にあるわけでございますよね。政府の対応はリスクコミュニケーションの観点から大きな問題があると私は思っておりますけれども、そのことについての御意見と、仙台の牛タン、どうしたらいいでしょう。
#37
○参考人(中村靖彦君) ちょっと、仙台の牛タンをどうするかというのは、急に今対応が多分難しいだろうと思います。私が承知している範囲では、国産の牛のタンは少し脂身が多過ぎる、一方オーストラリアの牛タンは、やっぱりあそこはグラスフェッドですから少し脂身がなさ過ぎる。そういう点でいうとやっぱりアメリカのが一番良かったらしいんですけれども、それが今止まりました。
 ただし、それは、大変業界の方を、私も牛タンを好きですし、業界の方のその苦衷はもちろんお察しいたしますけれども、やっぱりここは一定の科学的な検証を行った上で輸入を解禁するならば輸入を解禁するという方策がやっぱり今ベストではないかと思います。
 そういう、何とか早めに解禁をしてほしいというその声は、そういった業界の方はもちろんですし、それからアメリカ側にもございます。その声は私たちの耳にも当然入ってきておりますけれども、その声に対して、それは言ってみれば政治的な動きでございまして、その政治的な動きというのを科学がどうやって説得して抑えることができるのか、ここが今実は問われているのではないかというふうに思います。
 これは牛タンに限りませんが、いろんなアメリカ産の輸入牛肉についてのスタンスは私自身はそういうふうに思っておりまして、そういったその声に対しては、やっぱり私は、もちろんその苦労はお察ししますけれども、ここはやっぱり科学的な検証というのをまず第一、優先して考えていくのが筋ではないかというふうに考えております。
#38
○岡崎トミ子君 ありがとうございました。
#39
○風間昶君 今日はありがとうございます。
 公明党の風間ですが、香川先生に、学校の中での給食、問題は、僕は、おいしい給食にならないと、幾ら管理栄養士の方やあるいは栄養教諭の方が頑張っても駄目じゃないかというふうに思うんですね。おいしい給食というのはどういうことかというふうにしていく議論が大事じゃないかと思うので、そこが一つお聞きしたいのと、それからもう一つは、その専門集団の方々、確かに大事なんですけれども、給食センターとの関係で、今はうまくいっているのかどうかということが一つあるのかなというふうに私は思うものですから、そこでの何か弊害なり、給食センターと学校の栄養教諭の連携といいましょうか連関、ここをどうするのかということをお聞きしたいと思います。
 それから、済みません、中村参考人には、旬と命というのがキーワードということで、そういう意味では吉武さんの自給と命ということとつながっていると思うんですけれども、学校給食に地域の食材といってもなかなかこれは、うまくいっているところと、利用しようにも結果的にコストの問題とかいろんなことであれなんで、ここをどう障害をなくしていくかということについて、お知恵あれば教えていただきたいと思います。
 それから、吉武参考人に、済みません、今すぐこの食育基本法を云々する必要はないのではないかということでいろいろ問題提起をしていただきました。それはそれで結構な御意見なんですが、じゃ、食料基本法や今のいろんな法律あるわけです、食品安全基本法とか、そういうことがある中で、じゃ、食育をそっちに入れ込むなり位置付けるということはなかなか今現時点では難しいわけですから、今ある法律の中でできないとするならば、やはり食育基本法の中で、自分の国の食べ物は自分たちで作り、しかも安全、安心の食べ物を作るという、そのことを学んでいただく、あるいはともに大人も学ぶ食育基本法というのが大事だと思うんですけれども、それについての御意見をいただきたいと思います。
#40
○参考人(香川芳子君) 学校給食がおいしくないというようなことをおっしゃいましたけれども、これは、それぞれの栄養士の腕だとか、それぞれの場所でのいろいろな条件があって、一概にまずいと言うことはできないと思います。私どものところに学生が入ってまいりまして、学校給食どうだったと言うと、最近は、あれ、おいしかったのよねなんて言ってお互いに話しているので、あら、このごろはすっかり様子変わったのかなと思います。それから、手作りのお料理を食べる機会は学校給食以外にはないという子供が最近は非常に増えておりまして、ちょっとそういう点からいっても学校給食は大事な役目をしているんだなというふうに思っております。
 ただ、給食センターも随分苦労をして改善はしておりますけれども、しょせん運ばなければいけませんので、随分献立にも制約がございます。それから、栄養士も、給食センターの栄養士が学校に行って説明をしたりはしているようですけれども、非常に人数の少ない小規模な学校があっちこちらに点在しちゃっているときにはある程度給食センターもやむを得ないかもしれないのですけれども、かなりまとまった数の子供がいるところでは、やっぱり単独校で持ってやっている方が、例えば調理を作っているところに子供がしょっちゅうのぞきに来て、そしてどういうふうに作っているか、その話を聞いたり、実際に子供の様子を見たり、いろんな点で交流がございますし、それから、こういうものがおいしいと思うかどうかというような点でのやり取りもございますので、その方がいいんですけれども、現実には栄養士が配置されていない学校の方が多いんでございます。
 そこいら辺のところが問題でございまして、栄養教諭としてちゃんと教えることのできるような、栄養士が学校給食を作って、子供たちに本当の物のおいしさを教えながら教育をしてちゃんとおいしい食べ物を出していったらいいと思うのでございますけれども、なかなかそこいら辺、もうこれは市町村が決めることでございますので、国で決められない。その点で、この基本法でもできればもうちょっと推進できるんじゃないかなというふうに期待しております。
#41
○参考人(中村靖彦君) 地域食材と学校給食の関係でございますけれども、確かにおっしゃるようにいろいろな障害があって、一時に比べればかなり増えてまいりましたけれども、まだまだ努力しなければいけない地域はたくさんあると思います。
 この場合に、じゃその障害をどういうふうにして改善していったらいいかというお尋ねですけれども、その学校の栄養士さんなり先生が地域食材を使いたいという意思を持っていることが大前提ですけれども、その上で、やっぱり一つはJAが、その地域のJAがどのくらいそれに積極的に関心を持つかということ、それからもう一つはその地域の自治体がどんなふうにそのことについて関心を持つかと、大きく言えば二点だと思います。
 特に、JAは、ずっと昔からそうだったわけです、今でもかなりそうですが、やっぱりどうしても系統を通して出荷をして市場に出すという方がいい値段で売れる可能性が高い。どうしてもそっちを選んでしまう。きめ細かく学校にそういうものを提供してというような、そういったことよりは、むしろ一括して出荷する方が得だという気持ちがあります。それから、学校に対してもちろん協力する気持ちがあっても、学校はやっぱり休みがございますから、夏休みとかそれから春休み、結構長い休みがあって、そういうきめ細かなことも必要なわけですから。ただし、それは最近少しずつやっぱり変わってきて、そのことによって日本の農業とかあるいは地域の農業に関心を持ってもらう一つの重要な手だてだというふうに気付いてきているところが随分増えてきました。
 それからもう一つ、自治体の関心ということは、今財政難で大変なんですけれども、例えば地元のお米を、コシヒカリなんかを使ったときに、もう今は食管法はありませんからそれを使うことはできますけれども、やっぱりネックは値段なんですよね。値段を、じゃどういうふうにして援助してくれるか、それが自治体の私は役割なのではないか。それは金額的には、私は、もう全体から見ればそんな大したあれではないわけですから、将来のその地域の農業に関心を引き付けるためのコスト負担としてはやっぱりそのくらいのことは私はやってしかるべきではないか。
 障害を取り除くという点からいえば、私はその二点かなというふうに思っております。
#42
○参考人(吉武洋子君) 私が今あるもので十分だというふうに思う根拠は、食料・農業・農村基本法なんですね。私はあれを読みまして、そして今年の三月に出されました食料・農業・農村基本計画、ここの中に食育についてもきちっと触れられています。私は、いろいろなものをつくるよりは、こういう大事なものをきちっとやっていただくということが私はベストだというふうに思っております。これをきちっと、この農村基本計画を、問題はありますけれども、きちっとやっていただくことで随分変わるんじゃないかと。私はこれに全力を注いでいただきたいなというふうに思っております。
 以上です。
#43
○風間昶君 ありがとうございます。
 香川先生、もう一つ。学校給食といっても、もっと低学年といいましょうか乳幼児、保育所、幼稚園での実は、学校給食というふうな言葉がいいのかどうか分かりませんが、おやつも含めたお食事時間、これが物すごく実は今家庭の中で、母親が食べない人が多いから子供が結果的に食べないでいるというのも多いわけですけれども、幼児教育の中で給食をどういうふうにしていったらいいのか、ちょっと私今すぐ思い付かないんですけれども、これについて、あるべき姿というよりも、いい方向性のことでお話しいただければ有り難いというふうに思います。
#44
○参考人(香川芳子君) 私どもから卒業した者が相当数保育園等には就職させていただいて、そこの子供たちに教えながら食べさせると。ちゃんと子供たちの好きなようなものを、好きにならせるように、食のレパートリーが広くなるように教えていると思います。
 私としては、すべての保育所に栄養士を配置していただきたい。保育所こそ子供の一生を決めるような味のすり込みをする場所でございますから、そこで、小学校に入ったときに肉がかんで食べられない、プリンしか食べたことがないなんというような子供が出現するのでございますね、家庭だけにいた子では。でも、保育園では、場所によりますけれども、栄養士が一生懸命そういうことを考えて保育しているところは割合にいいので、これから、私は、もうそこにどうして栄養士を配置してくれないのかなと、厚生労働省の方にもお願いをしているわけでございます。
#45
○風間昶君 それは恐らく、地方自治体、教育関係者の責務という条項ありますよね、十三条か十四条。これは中村参考人のさっきの御意見でもそうですけれども、そこのところで担保すれば結構進むと思うんですよね。
 中村参考人にもう一つ。要は、食育だけ一生懸命やっても、もう一方で、日本の農業あるいは水産業をどうするかということの基盤整備の中で目標設定がすごく大事だと。これはこれで、ですから食料・農業基本法の中に目標設定はされているんですけれども実際に魂がまだ入っていないという状態ですけれども、そことラップしていくと結構この食育基本法も食料・農業・農村基本法のフォローになるかなというふうに思っていまして、その辺のところをちょっとどういうふうに持っていったらいいか、教えてください。
#46
○参考人(中村靖彦君) 確かにおっしゃるように、これは食と農というふうに言われますけれども、言ってみれば車の両輪というか一体のものでございまして、食育だけ一生懸命主張しても、これは一方で、その基盤である、供給する農業そのものが今もう崩壊に瀕しているわけですから、非常にそれはおっしゃるとおりでございます。だから、これをいかに組み合わせて展開していくかということが課題だろうと思います。
 その場合、やっぱり何といいますか、非常に自給率のことが強くいろんな場で唱えられておりますけれども、もちろん自給率というのは大事なことですけれども、私は、これは数値目標が先にありきということではないというふうに思っているんですね。
 その数値目標をそもそも決めた現在の食料・農業・農村基本法の議論をしていたときに、基本問題調査会というところで議論をしていたんですが、私はその自給率の数値目標を設定するということについては反対でありました。これは数値が先にありきではなくて、例えば担い手の問題をどうするか、むしろそういう方に、あるいはその数値目標を作るならば、むしろそういう方に数値目標を作るべきことであって、それから、例えば農地をこれ以上減らさないと、そういうことに例えば数値目標を作るということが私は筋としてはあって、それで自給率そのものは後から付いてくる、結果として付いてくるという形でなければいけないのではないかと、実はそういうふうに思っておりました。
 ですから、余り、率というのは非常に分かりやすいもんですから、四〇を四五に上げるというようなことは何となくもう多くの人に非常に分かりやすいんですけれども、そうではなくて、これはあくまでいろんなことを積み上げていった後の結果であるというふうな意識を持つことが必要なのではないかというふうに思っています。
 それから、いずれにしても、その根幹には、さっき私、旬というようなことを言いましたけれども、やっぱり今の一般社会が、本当はオピニオンリーダーたるべきメディアも含めて、農業とか農村の姿というものについてやっぱり余りにも関心が薄い、その意識をまずどうやって高めていくか、それが本当は実は一番根本的なことであって、それがまず基盤にあって、農地の問題にしても、あるいは担い手の問題にしてもいい方向に動いていくんではないかというふうに思います。
#47
○風間昶君 ありがとうございました。
 吉武参考人、済みません。意識を変えるための基本、信念、理念法で今この食育基本法というのは動いているわけです、位置付けがですね。先ほど、食料・農業・農村基本法の中で言われている食育ということがきちっと推進されればいいと、そのことが大前提だというふうにおっしゃいました。それがもしきちっと動いていくようになれば今のこの議論させていただく食育基本法はあってもなくてもいいというふうになるんでしょうか。私はあってもおかしくはないと思っているんですけれども、一言御意見ください。
#48
○参考人(吉武洋子君) 否定しているわけじゃ全然ないんです。
#49
○風間昶君 ああ、そうですか。ありがとうございます。
 終わります。
#50
○近藤正道君 社民党の近藤正道です。
 三人の参考人の先生方、本当に有益な問題提起、御説明いただきまして、本当にありがとうございました。
 多少私がお聞きしたかったことを先に聞かれたところもありますので、一部もしかすると部分的に重複するかもしれませんが、より先生方の方から明確にお話をいただいて私の頭の整理をもっと明確にしたいと、こういう立場でお尋ねをしたいと思います。
 最初に香川参考人にお尋ねをしたいと思いますが、この食育基本法について積極的に賛成である、進めたいと、こういうお話でありまして、冒頭、非常にこういう食育についての国民運動をやっぱり本格的にやらなきゃならぬと、そういう論旨を非常に明確にお話ししていただいたというふうに思っておりまして、その場合の柱がやっぱり学校給食、こういうお話がありました。先ほど、学校給食にとどまらず、さらに幼い子供に対してもこういう給食を行うのが更に望ましいと、多分先生の立場だとそういうふうに論理が進むんだろうなと、こういうふうに思って聞いておりました。
 大前提として学校給食の位置というものが、ウエートというのが非常に大きいわけでありますが、先ほど来、栄養教諭の話はございましたけれども、それ以外に、例えば先ほど来少し出ておりましたけれども、センター方式、自校方式の伝統的な議論がありますし、民間委託の問題等もありました。
 従来、先生の立場からいくと、いずれも自校、そして自飯、これが望ましいんだけれども、財政的な理由でそれができなかったんだ、残念だと、こういうお話がありました。この食育基本法ができますと、こういうものがどの程度解消されて、先生のおっしゃる自校方式、あるいは民間委託等は極力抑えると、こういう方向に進むのか、先生はどういうふうにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
#51
○参考人(香川芳子君) 例えば学校給食に栄養士を配置するとか、それから単独校方式を増やすとかということにつきましては、これはそれぞれの自治体が決めることでございますので、自治体の方がそれこそ責務があると自覚していただきますと非常にうまくいくんじゃないかと思うのでございますけれども、なかなか政府で旗を振ったからそのとおりになるとは限らない。
 ただ、そういう食育基本法のようなものができてくれば、私どもも一生懸命呼び掛けているんですけれども、はっきり言って、元々関心のある人しかこちらの話聞いてくれないんです。元々関心のない大多数の人が次々に食べ方の誤りで病気になって、さあ、医療費だ、看護師だ、介護だという騒ぎになるんです。ですから、そういうところにも、食の教育をすることは大事なんだと。そんなこと親がやればいいじゃないのなんて言っていた人が、そうではないんだ、これはみんなの責任なんだというふうに自覚してもらうという意味でやっぱり食育基本法ができる方がいいと思うのですけれども。
 それから、センターと民間委託とか自校給食のことにつきましても、これはそれぞれの自治体の長というか、そちらで考えることでございますので、廃止なんかにつきましては大体住民が大反対いたしますからほとんど不可能なんですけれども、やり方についてはやっぱり予算が苦しいとここを節約する。でも、私に言わせれば、ちゃんとした食事を教えることでもって、そこを基礎にして家庭にも地域にも食事をちゃんと食べてもらえるようにすることでもって実は自治体が負担している医療費などもずっと軽くなると思うんです。私が行っております西会津町なんかも、伺って五年しましたら病人がうんと減りまして国民健康保険が余っちゃいまして、どうするといっては町民で山分けにしていたんですね。
 そういうふうに本気でやってくれればいいんですけれども、地域保健法ができるときにも、私、公衆衛生審議会のメンバーでございましたけれども、そのときに栄養士を必ず各地域に置いてくださいと申し上げましたら、そんな食べることなんか文句言われたくないよと、それよりも、病人が大勢出て看護師が足りないから、一人でもいいから看護師よこせと、こういうことをおっしゃる首長さんがいて、そうだそうだとおっしゃる方がいるんで非常に情けなかったんですけれども。
 そういう意味で、あらかじめきちっとした食事をすればみんなが健康で幸せになれるんだということを、こういうものでもって、少しでも今まで耳を傾けなかった人にも傾けていただいて前向きにしていただければと願っております。
#52
○近藤正道君 学校給食は当面やっぱりこの食育を進める一つのポイントだろうと、私もそう思いますし、食べるということを最初にきちっと習慣付けて考える場もまた学校給食だというふうに思いますが、しかし一方で、やっぱり食べる場というのは圧倒的にやっぱり家庭だということもまた現実だというふうに思うんですね。
 そこで、国民の責務というものが規定されておりまして、これがいろいろ論議を呼んでおるんですけれども、この法案ができることによって、日本の食卓、家庭というのはどういうふうになるというふうに推進の立場の香川参考人はイメージされておられますか。
#53
○参考人(香川芳子君) 一つは、前にも学校給食課と言ったころの課長さんと話をしたんですが、お母さんを何とかしなきゃいけないという話はあるのですけど、一体どうやって今忙しく働いていて家庭ではいろんなものを押し付けられている母親に教えられるかと。結局、今の中学生にしっかり教え込んでおけば、あと十四、五年たったらば母親がちゃんとするだろうと。それには、学校で食べているときにきちっと教え込むよりほかないでしょうと。全部の国民にあまねくするのにはそれが一番いいだろうということで、一生どういうふうに食べるかということを学校給食の中で教えていくということがあれば、かなり将来は救われるんじゃないかというふうに考えておりますが。
#54
○近藤正道君 学校給食におけるしっかりとした言わばしつけというか、それが家庭に伝わっていく、伝播していくという、こういう論理なんでしょうか。
#55
○参考人(香川芳子君) 子供が親になったときというのと、それからもう一つは、栄養教諭の一つの仕事として、親とか地域を組織して、その地域での栄養教育、食の教育をする、勉強会をする、親たちを呼ぶ、子供たちを通じて親たちに働き掛ける、そういうことが栄養教諭の職務に入っておりますので、ある程度は効果があるかと思っております。
#56
○近藤正道君 中村参考人にお尋ねをいたします。
 冒頭この食育基本法に対する中村参考人の立場がよく分からなかったんですが、先ほどの御答弁である程度分かりました。つまり、関連法をどれだけ、どんなものを関連法として備えるかによってこの法の中身がやっぱり変わってくると、だから、やっぱりいい関連法を早期に作っていくならばこの食育基本法は意味があるだろうと、こういう立場だろうというふうに思っております。
 私は、中村参考人のお話から、中村参考人は反対の立場なのかなと、上からこの種のやつは言うべきではないと、やっぱり下から地道に作り上げていくのがこの種のあるべき姿ではないかという、こういう御答弁があるのかなと、こう思っておりましたので、今の点で改めてもっと敷衍する点があったらお聞かせをいただきたいということが一つと。
 それと、長年ジャーナリストとして食品関連業者についてもいろいろ取材等をされているというふうに思いますけれども、今回の食育基本法の中にも食品関連業者の責務というものが盛り込まれております。イメージが私には全く伝わってこないんですが、中村参考人はこの食品関連業者の責務というものにどんなものを期待されるのか、この二つについてお聞かせをください。
#57
○参考人(中村靖彦君) まず前段の方ですけども、私はこの食育基本法には反対ではございません。
 さっき申し上げたように、ただ、これはあくまで理念法でございますので、どうやってその関連法を整備するか、そのことによってこの基本法は生きてくる。そして、その関連法を作ったり、それから地方で自治体がいろんな条例を作ったりなんかするときに、この基本法があればそれは推進する役割になるというふうに思っています。私の立場は基本的にそういうことでございます。
 それから食品企業ですけども、これも大変難しい点がございます。特にこの二、三年、食品企業は様々な食の安全、安心を脅かす事件を起こしてまいりまして、その行動は決してこの食育基本法に盛られた理念とは相入れないものであったというふうに私は感じております。
 今ここで求められていることは、この責務というのもまあいろんなことが書いてございますけれども、やっぱり一番のしんになるべきものは、コンプライアンスといいますか、つまり法令をとにかく守る、自分の利益よりは消費者の利益を考えるという、そこがやっぱり基本的なスタンスになって初めて食品企業の責務というのは生かされる。
 今はまだ、正直言いまして、そういう点で十分な意識の、まあ何といいますか、これだけのいろんな事件を起こしたにもかかわらず、まだ十分にそこのその点について意識が変わっているというふうには正直言って申せませんと私は思います。それができて初めて食育についても取組ができると、そういう段階なんじゃないかなというふうに思っていますが。
#58
○近藤正道君 今の点と関連しまして、私もここのところは非常にポイントだというふうに思っているんですね。この間の食の安全とかということを考えれば、食品関連企業に対する責務というのはもう少し具体性を持った、ある程度の方向を示したものでなければ少しおかしいんではないか、余りにも抽象的過ぎるんではないかと、こういうふうに思っておりまして、中村参考人としては、そういう立場に立つならば、どんな点を盛り込むべき、当面、早急に整えるべきというふうにお考えでしょうか。
#59
○参考人(中村靖彦君) ちょっとそれはなかなか難しくて、どういう文言をとか、どういう項目をというのは、大変私自身、今急に思い付きませんが、基本的にはやっぱり食品企業も消費者のことをまず第一に考えるということではないのかなと。それが基本理念で、そしてそれを、とにかくいろんなルールを守ると、ルールを守るということがまず大前提にならなければいけないんではないかなというふうに思います。
#60
○近藤正道君 最後に、吉武参考人にお尋ねをいたします。
 冒頭の御発言、大変私は共鳴するところがたくさんあります。しかも、実際に生協の言わばトップとして実践を伴ってそういう問題提起をされたことに大変敬意を表したいというふうに思っております。
 こういう食育を言うならば、まず食料の自給率あるいは財政的な裏付け、このぐらいはせめてきちっとはっきりさせた上で物を言うべきだということも本当に私はそのとおりだというふうに思っておりますが、しかし、残念ながら今のこの国の法体系はなかなかそうなっていない。自給率の問題は自給率の問題で議論する、食育の問題は食育で、安全性の問題は安全性で、まあばらばら。
 こういう現実がある中で、吉武参考人の御意見は大変私は共鳴するわけでございますが、まあそれを待っているといつまでたったって事態が打開されていかないんではないかという、そういう素朴な一方で思いもしないわけではない。ましてや食料自給率の問題につきましては、今回、基本法の中で、基本計画の中でまた数年先送りになりました。その理由として、やっぱり今の食の乱れ、ここに介入できない、そのことがやっぱり食料自給率をなかなか改善できない一つの理由なんだということを政府が言っております。
 そういうふうに考えたときに、吉武参考人の御指摘は御指摘でよく分かるんだけれども、まずここから少し変えなけりゃならぬということで、その第一歩として食育基本法も意味があるんではないかという、そういう意見は素朴にあると思うんですが、どんなふうにお思いですか。
#61
○参考人(吉武洋子君) この法案を初めて読んだときに、だれも反対できないなというふうに率直に思ったんですね。こういうことを言われて、今の日本でこの法案に反対ですと言うのはとても難しいことだというふうに私は思いました。ただ、中身についてはいろいろいろいろ言いたいことはあるけれども、この法案そのものが不必要だというふうに言うということは非常に難しい。だけれども、あえて反対だと言わなければ、この中身でこういうふうにやられたらば、国民は責任だけ押し付けられて何も権利が言えないなというのが私の率直な思いなんですね。
 過去、生協設立以来、地道に活動してきた人間にとって、何で今さらこんなこと言われなきゃいけないのというのは先ほども申し上げました。そういう中で、やはり生活協同組合というのは、今、日本で二千万人ぐらいの組合員がいるわけですね。その生協の全部が、程度の差こそあれ、食育にしっかり取り組んできているわけです。そういう中で、あえてここで、こういう流通事業者、私たちは事業者、流通事業者になるんだと思うんですが、そういうところにこういう責務としてあると。まして国民の責務としてあるというようなことはいかがなものかというところであえて言わせていただいているわけで、これが、どうしても食育というのがおまえは必要じゃないと思うのかといえば、今まで二十六年間やってきたことを自分で否定することになるわけですから、そういうことではないんです。
 ただ、やっぱり優先順位が違いませんかと。優先順位があくまでも、日本の農業を何とかする、日本の食料を何とかする。私も中村さんと同じように自給率にこだわるものではありません。まして、価格を自給率のパーセントにみなすなんというのはとんでもない話で、数字にこだわるものではありませんけれども、だからといって自給率を高めるという活動をしなくていいということには全然ならないわけですし、優先順位があくまでも違いませんかと。あっちにもあってもいい、こっちにもあってもいいということではないというふうに思うんですね。
 これは自治体に多分、消費者基本法と同じように多分丸投げされるんではないかというふうに非常に不安に思っています。そうしたときに、特に私は宮城県の人間ですから、財政難だということもよく分かっていますし、そういう中でこういうものをぽんと丸投げされた自治体がどんなに困るかということも分かります。そういう中で、やっぱりこういうものを安易に出す以前にやることがあるんじゃないかというのが私の立場で、おまえは賛成か反対かと言われると非常に困ります。
 以上です。
#62
○近藤正道君 ありがとうございました。
 終わります。
#63
○黒岩宇洋君 無所属の黒岩宇洋でございます。
 今日は本当に、三人の参考人の先生から有意義でかつ貴重なお話を聞かせていただきまして本当にありがとうございます。
 今日の意見もそうでございましたし、先生方のお書きになったものも読ませていただきまして、大変納得する点が多うございます。加えて、私自身も、この食育というものに対して大変重要なものであるという認識は皆様といささかも変わりませんが、ただ、この食育基本法案に関しては若干の疑問があると、その疑問を解いていきたいという、そういう思いで何点か参考人の先生にお聞きしたいと思います。
 まず、この法案に対して幾つかの批判というのがございまして、大ざっぱな言い方をしますと、何を食べるか、これはもう本当にプライバシーの問題であると、個人の自由な選択であると、そこまで果たして国が法律で踏み込んでいいのかどうかという、こういった議論があるわけでございます。
 私は、この議論の根拠となるのは、端的に申し上げて、このやっぱり十三条の国民の責務、ここの文章の中に、法文の中に健全な食生活の実現に自ら努めるとともにという、こういう文言が国民の責務として規定されておるわけでございます。健全なという、こういう概念が入っているわけでございますね。これは、前回の委員会質疑でもこれは一体どういうものかということで議論したんですけれども、やはり端的に言えば、健康を害するものでないとか健康を増進するものが健全な食品であると。
 そうなりますと、ある程度健全、不健全という選別が行われ、そして不健全なものはなるべく食べないでくださいと、こういうことを国民に義務付けていると、そうとらえるのが私は自然だと思っておるんです。先ほど香川先生のお話の中で、個人の選択にゆだねているだけではいけないんだと。これは私は、あくまでも食育というものを進めていく上で、個人一人一人では駄目だという、私、こういう観点だととらえておるんです。
 それで、例えば食生活、本当に悪い意味でも多様化し過ぎて、それこそ中村参考人が日経の方に書かれていましたけれども、熱い御飯にチョコレートを掛けて食べるチョコラーとか、何でもマヨネーズを掛けるマヨラーだと、こういう人が増えるというのは、舌は一体いかがなものかと。私もそこまでは同じ感覚なんです。私自身も、例えばやっぱり御飯にマヨネーズというのはかなり抵抗感がございまして、シーチキンマヨネーズのおにぎりすら私はちょっと食べないんですね。でも、片やこのシーチキンマヨネーズのおにぎりというのは多分今コンビニで最も売れているおにぎりだと聞いております。そうなりますと、私がそんなもの食べるなよと言う権利はもちろんございませんし、法律で食べるなという規定もできないわけでございます。
 その点で、私は、食育というのはあくまでも、何を食べたらこうなるんだというきちんとした事実を正確に伝えると。ただ、最終的には、仮に不健全であっても、私はこれが好きだと、おいしいんだということに関してまではやはり踏み込めないものではないかという、私はそういう意見を持っておるんですが、この点について、香川参考人、中村参考人の御意見をお聞かせいただければ助かります。
#64
○参考人(香川芳子君) 私どもも、絶対にこれは食べてはいけないなんていうものは世の中にないと思っております。ただ、組合せとして全体の食事の中で、例えばたんぱく質を絶対に食べないというようなことはするべきではない、なぜかというと生きていることができなくなりますから、というような意味で、必要なものは必ず取ると。チョコレートが好きならチョコレートを召し上がったって、御飯に掛けたって、それは私の知ったことではありませんということでございまして、ちゃんとバランスを取って、全体としてどう取るか、自分の命をちゃんと保っていけるようにするという方法というか方針が分かって、それを実行してくれるということが私としては最低限必要だろうと。そのことはやっぱりみんなが心得ていなきゃいけないだろうというふうに思っておりますけれども、それではいけませんでしょうか。
#65
○黒岩宇洋君 結構でございます。ありがとうございました。
#66
○参考人(中村靖彦君) 日本は計画経済の国ではありませんから、国が個人個人に対して何を食えとか何を食うなとかいうようなことはとても言えるものではありません。これは私はもう自由だと思います。基本的に自由だと思います。ただし、その自由の結果、著しく健康を損なうような心配があるというときに、これを一体どういうふうに是正するかという情報を私はやっぱり国が積極的に流す、これは国だけではないかもしれませんけれども、そういう情報を提供するということが必要なのではないかと思うんですね。
 それが実は私は食生活指針だったと思うんですが、必ずしも今知られている率がそんなに今高くないというのは非常に残念なんですけれども、あれは十項目読んでみると、何か当たり前のようなことばかり書いてあって面白くも何ともないと、そんなことだれだって知ってるわというふうに言う人が多いんですが、実はその裏っ側にある基礎的な、言ってみれば科学的な、あるいは栄養的な情報は私は非常に価値があるものだと思うんですね。それをやっぱり提供する。それがもし国民の責務ということにこだわるとすれば、健全な食生活の実現に自ら努めるための情報を周りから提供するということではないかと思います。
 その上で、なおかつ、おれはそんなことは知らぬと、勝手に健康が悪いとかなんとかと言うやつは言わせておけと、おれはとにかく太く短く生きるんだという人は、それはそれで私はしようがないと思いますよ。
#67
○黒岩宇洋君 ありがとうございます。
 あくまでも個人の嗜好であるとか、そういった選択に国が公権力で介入するという、そんなことではないという、そういう意味では各先生方とも私も意識は共有できたと、そう思っております。
 それで、今、中村参考人の方からお話に出ました食生活指針ございます。吉武参考人にお聞きしたいんですけれども、今から五年前に出ました要は食生活指針、食料・農業・農村基本法を受けてこの食生活指針というのができたと。これ確かに、調べますとその存在を知っているという方が二割と。私率直に申し上げますと二割もいるのかなというぐらいなんですね。ここ数年、その調査も本当に横ばいです。ただ、先ほど中村参考人がおっしゃったとおり、内容について言えば、もう本当に首を縦に振ることばかり。
 ですから、私の視点とすれば、やはり基本法というものを作って食生活指針を作った限りは、私はこれはやっぱり浸透していくというのがある意味一つの手順ではないかと。逆に、これが浸透できなかったということで、これは実は二十一条に健全な食生活に関する指針の策定及びという、全くこれ、健全な食生活に関する指針の策定というものが規定されて、これが一体どういうものかというのは今つまびらかにはなっていないんですけれども、数年前にできた基本法で作った指針が駄目ならまたすぐ基本法でという、ちょっと私は不信感を抱く国民がいらっしゃると聞いております。この点について、吉武参考人、この食生活指針の今後の在り方とか徹底とか、そういうことについて御意見ございましたらお聞かせください。
#68
○参考人(吉武洋子君) 私は、不勉強で、この食生活指針というものをよく存じ上げないのですけれども、私は、先ほど秋元議員の御質問のときに、給食が嫌いだったということを申し上げました。何が一番嫌だったかというと、好き嫌いをしてはいけないと、それから残してはいけないと、その二つというのが物すごく一年生の私には苦痛だったんですね。そういう形で食育が行われるとしたら、そして健全な食生活というのがそこに求められるとしたら、私はもう自分の子供たちはとうに成人しておりますけれども、到底耐えられないのではないかと、そういうことを率直に危惧したんですね。そういう意味では、あくまでもどういう食生活をしようと個人の自由だというところが最低限押さえられる形でこういう問題が進められたらというふうに思っております。食生活の指針というのがどういう形で出されるのかというのはそこら辺の問題だというふうに私は思うんです。
 ただ、やっぱりだれでも健康に生きたいわけです。私もそろそろ自分が老人になったときのことを考え食生活を切り替えなきゃいけないというのは本当に本気で思っております。そういうことも踏まえて、一人一人の国民がきちっと考えていかれるような食育であってほしいという、そしてそういう意味での食生活の指針であってほしいというふうに思います。
#69
○黒岩宇洋君 ありがとうございます。
 私は、しっかり練り上げて作ったものがあの十項目の食生活指針だと思っておりますんで、こういったものを貫徹していく中で、やはり健康な国民生活というものを維持していければと、そう願っております。
 話をちょっと進めますけれども、私、これも委員会質疑で取り上げたんですけれども、これ二十五条に、国及び地方公共団体に食に関する正確な情報を迅速に提供する云々の政策を講ずると、この食に関する正確な情報という、これ私大変難しいことだと思っておるんです。いろんな、この食に関しては、例えば学説であるとか様々な御意見が非常に多くあるわけです。国民一般の方々も何を信じていいかというのは大変悩まれているわけです。ですから、私は、この正確な情報というものを一体じゃどうやって国や公共団体が権威付けできるんだろうということをいつも頭に描いておるんです。
 今日、香川参考人のお話の中に、やはり太り過ぎはいけないと、私もそれは当然科学的にも証明されていると思うんですけれども、先ほどのBMIの指数で、実は太り過ぎと言われる二五から二七の方の方が標準の体重よりも死亡率が低いという研究結果が厚生労働省が三年前に出しました。十年間掛けて四万人の方の死亡率を調べたところ、一番死亡率が低いのは二三から二四・九、太りぎみの方。その次が二五から二七の太っている方。その次に標準体重で、一番死亡率が高いのがやせている方という、こういうようなことも出ているわけでございますね。
 私、申し上げたいのは、様々な観点から様々なデータに基づいていろんな情報というものがあるわけで、それを権威付けするのは大変なことだと、そう思っておるわけです。
 これ、香川先生の御本の中でも、例えば香川先生は、絶食とか朝を抜いたりすることはよろしくないと、こうお書きになっております。片や、これは甲田光雄先生というお医者様ですけれども、朝御飯を抜いて少ない食事、少食にすれば健康になれると、ないしは断食を勧めるとか、そういう本当に全く逆からの御意見というのがあるわけですよ。
 一九八五年に出されました、これも食生活の指針で三十品目運動というのが、これはもう本当にいっときすごく浸透をしました。ですが、実は三十品目も食べると脂質とか取り過ぎてむしろ不健康になるということで、この二〇〇〇年の食生活指針からは削除されているわけです。
 だから、こうなりますと、本当にどうやれば正しい食に関する情報を流すことができるんでしょうか、権威付けできるんでしょうかという、この点について、香川参考人と中村参考人の方から御意見あればお聞かせください。
#70
○参考人(香川芳子君) 今のようにBMI、どこがよいかというようなことにつきましてはいろいろな話があるわけでございまして、例えば、遺伝的な体質によって、例えばモンゴロイドはそうでない白人に比べまして非常に低いところでもってほかの病気を発病する頻度が高いということが最近あっちこっちの人について調べて分かってきているわけですね。それで、そのことを言い出した。
 それから、女の人の方が太っていても割合に病気にはなりにくくて、ウエストについて、今度提案されましたメタボリックシンドロームでは、男性はウエストが八十五以上は危ないと、それから女性は九十以上が危ないと、こういうようなのが出ているんですが、これは男女の性別の差で、これもたくさんの検討をした結果で出てくるわけです。
 それと、あとは遺伝子でございますね。私どもの方の栄養クリニックでは、本人の了解を得て遺伝子を見まして、それに合わせて指導をするようにしているわけでございまして、全部が全部、みんなが同じというわけではないわけでございます。
 ですから、それに、新しい学説というのは次々に出てくるわけですけれども、例えば、朝食は必ず食べた方がよいというのは、子供たちの成績なんかについてはもうはっきりアメリカなんかではたくさんの資料で出ているわけです。もう大学でもって実験をして、子供たちの成績が非常に良くなるというようなことをやっているわけですね。ですから、そういったようなものは流せばいいと思ってはいるわけです。
 むしろ、私は、正確な情報というようなことについては、これは豚肉であると言って鳥の肉を売るようなのは不正確だと思うので、そういうことかなと思ったんですけれども、どうなんでしょうか。
#71
○参考人(中村靖彦君) 私は栄養学とかそういう分野の専門ではございませんので、香川先生なんかの方がはるかに御専門なわけですけれども、そういう人間から見ましても、やっぱり今の栄養学とか何かというのは本当に、歴史が浅いのか何か分かりませんが、非常におっしゃるように変わりますね、考え方が。
 例えば、ごく最近でも、一時はずっと食物繊維が大腸がんを防ぐというようなことをもうみんな信用して、これもう野菜食べなきゃいけない、繊維を取らなきゃいけないというふうに言っていたのが、ごく最近の知見では、非常に広範囲な疫学調査の結果、それは必ずしも大腸がんを防ぐことにならないんだというような発表を聞きますと、本当に愕然としますね。
 それは、やっぱりこの分野が、これはもう本当に素人の独断的な考えで言うと、この分野はやっぱり非常に歴史も浅くて、まだいろいろ研究しなければいけない要素がたくさんあるということではないかというふうに思います。
 ただ、一つ、食生活指針にしても、いろんなガイドラインを出すときに私が考えますのは、やっぱりいろんな行政的な思惑があってそういうものが出されるということはやっぱり避けなければいけないと思うんですね。これが一番適当な例かどうかというのは必ずしもそうは言えませんが、三十品目のあの例の考え方が出されたときに、一方では、農林水産省は日本型食生活というのを提唱しました。三十品目も食べた日には御飯なんかとても食べられないわけですから、幾らも。ですから、また一方では、恐らく多少の思惑があって日本型食生活ということを打ち出したんだと思うんです。それを一概に私は否定もしません。やはりそれは先ほどどなたか御意見があったように、国際的に見てもこれは非常に優れた食生活だということは、まあそれ疑いないわけですから。
 ただし、これはだから適当な例かどうかは別として、いろんな思惑があってそういうものが出てくるということはやっぱり避けなければいけないんではないかなというふうに思います。
#72
○黒岩宇洋君 いや、やっぱりお聞きしますと、なかなか本当に食というものに対する情報といいますか、学説の権威付けというのは難しいと、私、そのことをやっぱり皆さんで共有認識を持ちながら、食育というものは実は結構難しいものだということを改めて私は提唱させていただきたいと思います。
 最後になりました。時間ないんで、中村先生にお聞きしたいんですが、実は私の新潟県の上越市で遺伝子組換え稲の屋外実験というものが、実は先月種がもうまかれたんです。種がまかれました。このイネゲノムの解析について中村先生はいろいろとお書きになっていて、私も興味深く読んでおるんですけれども、私の実感ですと、これは農水省の独立行政法人が行ったんですが、まだまだ現地の人々や近くの生産者からも、コシヒカリの産地ですから、やっぱり風評被害等に対しての非常に不安がある中で、私から見ればちょっと足早に実験までたどり着いてしまったと。それについては、私はやはり日本のこのイネゲノムの解析に対する非常に研究の焦りを感じざるを得ないんです。というのは、先生が御指摘されているように、以前は日本が一番進んでおりましたけれども、九九年の段階でアメリカのベンチャー企業が二年間ですべてを解析すると発表したと。その後、二〇〇二年にはスイスの会社と北京の研究所が解析は終了したと。
 だから、これは私、一体、今状況はどうなっているかということを一つお聞きしたいのと、もう一つは、こういった先端技術を進めていく、これは大変重要なことです。私も決して否定しません。遺伝子組換えのこと自体も私は否定する気はないんですけれども、ただ、今言った、安心、安全という国民に対するいわゆるリスクコミュニケーション、先生は食品安全委員会のリスクコミュニケーションの専門家でございますから、今言った先端技術の開発というものと、国民に安心、安全を与えるというこの二つを両立させるにはどういったことが図られるべきなのか、これを最後に中村参考人にお聞きしたいと思います。
#73
○参考人(中村靖彦君) 遺伝子組換えのお話をしますととても長くなってしまうと思いますので、どういうふうに短くお話をすればいいかと思っておりますが、イネゲノムの解析の競争につきましては、日本は若干遅れましたが、日本も全部これは終わりました。それから、今おっしゃった北京の非常に優れた技術者が、これはアメリカへ行って勉強してきて北京でやったわけですけれども、精度からいいますと、日本は若干遅れましたけれども、日本のその解析の仕方の方が私は優れているというふうに思っています。
 それで、さらに、それは一つ先ほどもお尋ねですから申し上げたんですけれども、いわゆる遺伝子組換え食品、特に稲の実験などについて申し上げますと、この実験の指針というのは、私もこの指針を作るときにちょっとお手伝いをした経緯がありますが、非常に慎重にできております。例えば稲の花粉が飛んでいくその距離なんかについても極めて長めに、恐らく世界の先進国の実験指針の中では一番厳しいのではないかというふうに思います。ですから、実験指針を、もちろん野外ですけれども、それをちゃんと守って実験をするということであれば、私はそれは決して心配なことではないというふうに思います。
 ただ、遺伝子組換え食品についてどうしても私が気になりますのは、非常に急速に先端企業が種子を開発してきたものですから、普及が猛烈な速さで進んだわけですね。つまり、遺伝子組換えの大豆で、特に除草剤耐性の大豆というのは一九九六年に商品化されました。今まで、まだ十年ですよ、十年でもうアメリカの大豆畑の八〇%以上がもうこの遺伝子組換えの大豆になった。
 この猛烈な速さの中で、私は、企業が途中で一体自分たちがやってきたことは本当はどうだったのかという検証の機会が非常に少なかったと思うんです。それで、今余りにも急速な普及に対して、一般の消費者の人とか、そういう方々から懸念の声が上がっています。それは当然のことであって、こんな例はほかの技術ではまずあり得ないわけですから。今は、実はその先端企業の人たちにとっては、これをもう一回、一体自分たちのやってきたことはどうだったのか、これは本当に人類の福祉になっているのかどうか、人類の福祉にするためにはどういうことが必要なのかということを検証する一番いいタイミングではないかというふうに思っています。
 本当にこれが人類の食料不安、将来の食料不安を解消する道になるのかどうか。なるとすればどういう条件が要るのかということはいろいろございます。それは私は本に書きましたけれども、もう余り時間もありませんから詳しくは申し上げませんが、そういう検証をやっぱりすることによって先ほどおっしゃったその稲の問題についても解決の道が出てくるのではないか。
 実験そのものについては、もう一度申し上げますけれども、非常に厳密な指針ができておりますから、それに基づいて実験をする限りにおいては、私は心配はないというふうに思っています。
#74
○黒岩宇洋君 ありがとうございました。
 終わります。
#75
○委員長(高嶋良充君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、長時間にわたりまして御出席を願い、大変貴重な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 どうもありがとうございました。(拍手)
 次回は来る九日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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