くにさくロゴ
2005/02/21 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 国際問題に関する調査会 第3号
姉妹サイト
 
2005/02/21 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 国際問題に関する調査会 第3号

#1
第162回国会 国際問題に関する調査会 第3号
平成十七年二月二十一日(月曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月十六日
    辞任         補欠選任   
     尾立 源幸君     藤末 健三君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         松田 岩夫君
    理 事
                山東 昭子君
                世耕 弘成君
                野上浩太郎君
                直嶋 正行君
                山根 隆治君
                加藤 修一君
    委 員
                岸  信夫君
                小林  温君
                末松 信介君
                中川 雅治君
                二之湯 智君
                長谷川憲正君
                水落 敏栄君
                大石 正光君
                大久保 勉君
                工藤堅太郎君
                佐藤 雄平君
                田村 秀昭君
                藤末 健三君
                前田 武志君
                浮島とも子君
                澤  雄二君
                大門実紀史君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        三田 廣行君
   参考人
       慶應義塾大学法
       学部教授     小此木政夫君
       青山学院大学国
       際政治経済学部
       教授       高木誠一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際問題に関する調査
 (「多極化時代における新たな日本外交」のう
 ち、日本のアジア外交(東アジアにおける不安
 定要因の除去)について)
    ─────────────
#2
○会長(松田岩夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十六日、尾立源幸君が委員を辞任され、その補欠として藤末健三君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(松田岩夫君) 国際問題に関する調査を議題といたします。
 本日は、本調査会の調査テーマである「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本のアジア外交に関し、東アジアにおける不安定要因の除去について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、慶應義塾大学法学部教授小此木政夫参考人及び青山学院大学国際政治経済学部教授高木誠一郎参考人に御出席いただいております。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本調査会では、日本のアジア外交について重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、本日は、東アジアにおける不安定要因の除去についてお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず小此木参考人、高木参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでを目途といたしまして質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、小此木参考人から御意見をお述べいただきます。小此木参考人。
#4
○参考人(小此木政夫君) それでは、私の話を聞いていただきたく存じますが、ただ、我々大学の教員は教室で話すときは大体九十分で話すことになっておりまして、私のレジュメは九十分用のレジュメでございます。それを三分の一程度で要点だけをかいつまんでお話し申し上げたい、このように考えております。
 朝鮮半島の問題、特に北朝鮮の問題でございますが、最近何が一番変わったのかと、変化したのかというふうに言われますれば、という点からお話ししたいと思っておりますが、要するに問題がグローバル化したということでございます。
 北朝鮮の問題は、実はそれほどグローバルな問題ではございませんでした。ユーラシア大陸の東の端にある余り目立たない半島の北の部分の問題でございます。ですから、この地域の問題というのは、実は日本が第二次大戦に敗れた後、朝鮮独立問題として発生した問題でございます。当時、国連では、そのように朝鮮独立問題というふうに言われておりました。朝鮮戦争のような大きな、あるいはグローバルな事件というのはあったわけですが、しかし冷戦の期間中も、東西あるいは南北間の接点でありながら、しかし不安定な中でも安定してきたというのが実態ではないかと思います。ですから、ある意味では一つの典型的な地域紛争というふうに申し上げてもよろしいと思います。
 しかし、この地域紛争、冷戦が終わった段階でよりローカルになるだろうというふうに我々は予想していたんですが、残念ながらそうなりませんでした。そうなってくれれば良かったわけですが。
 ならなかった理由は二つありまして、一つは、北朝鮮が核ですとか、核兵器ですとかミサイルですとかという、そういった大量破壊兵器の開発に着手したということであります。この動機は実はローカルなんでありますが、つまり彼らにとっては、冷戦が終わるまでに南北の間の体制間競争というものに決着がほとんど付きましたから、体制の生き残りの問題であったというふうに言っていいと思います。生き残るために核とかミサイルとかというものの開発に着手したわけであります。しかし、いかにその動機がローカルであれ、兵器そのものが持っている性質というものがございます。これは半島の外に出てくる大量破壊兵器でありますから、したがって、問題自体がそれによってグローバル化していったというふうに申し上げることが可能だろうと思います。
 いま一つこの問題がグローバル化した理由は、これは二〇〇一年九月のあのニューヨーク、ワシントンの同時多発テロでございます。これ以後、特にアメリカは国際テロとの戦いということに戦略の中心を置くようになったわけでありまして、そういった視点から見ますと、ならず者国家が大量破壊兵器を開発している、イランもイラクも北朝鮮も同じではないかということになってくるわけであります。そのために、中東の問題と北朝鮮の問題というものが区別が付かなくなってきたというふうに申し上げてよろしいんじゃないかと思うんですね。これがグローバル化した第二でございます。
 そんなわけで、北朝鮮の問題がグローバル化されたことは事実なんですが、しかしこの問題特有の地政的な条件というのはいろいろございます。ですから、実は中東とは大きな違いというものがあるんだということも申し上げておかなければいけないと思います。
 例えば、朝鮮半島には石油はありません。イスラエルは近くにあるわけでもございません。半島での戦争というのは、イラクでの戦争ほど簡単ではございません。イラクの場合には砂漠からバグダッドに向かって地上軍が侵攻できたわけですが、朝鮮半島で戦争が起きればその日のうちにソウルが火の海になるわけでありまして、つまり分断国家である南北の戦争へと拡大していくことは避けられないわけです。また、そこでのアメリカ兵の犠牲というのも多大なものが予想されます。さらに、全面的な戦争になればミサイルが日本の方に向かって飛んでくるということも十分にあり得るわけですし、多分韓国経済が破綻して、改めて金融危機のようなものが発生するでしょう。戦後の復興というような問題もあるわけであります。
 そんなわけで、実は地政的に見た場合に中東と朝鮮半島とは相当に違った条件の下に置かれているんだということでございます。
 北朝鮮にどう対処するかという問題、これはアメリカ政府にとっても重要な問題でございました。しかし、ブッシュ政権になりましてからの最大の争点というのは何であったのかというと、実はそれほど細かい政策の内容に関するものではございません。北朝鮮と直接交渉するかしないかということでありました。
 クリントン時代には直接的な交渉が行われまして、枠組み合意というある種の米朝合意が達成されたわけであります。これは十年掛かりで北朝鮮の核施設を解体する、しかしその代わりに軽水炉を二基提供しなければならない、また、それと並行して政治的な関係も正常化に向かって進めていくという、こういう合意でございました。しかし、ブッシュ政権はこの枠組み合意に関して当初から批判的でありました。共和党そのものがそれに反対であったというふうに申し上げてもいいわけですが。したがいまして、ブッシュ大統領誕生ということになりましてから、このハードルが、米朝交渉のハードルが非常に高いところに設定されたわけですね。しかも、先ほど申し上げた九月十一日のテロ事件以後、事実上悪の枢軸の一員ということで交渉が不可能になってしまいました。
 今回のアメリカ大統領選挙におきましても、ケリー大統領候補とブッシュ大統領候補の間の北朝鮮問題に関する最大の争点は何だったのかと言われれば、やはり北と交渉するかしないかということであったわけであります。ですから、民主党と共和党の間にそういった交渉をするかしないかという対立が存在した、現在でも存在するというふうに申し上げていいかと思います。
 また、細かく見ますと、ブッシュ政権の内部にも実は濃淡の違いがあったんであります。今回国務省を去ったパウエル国務長官、前国務長官ということですね、国務長官に就任して当初、彼は、北朝鮮問題に関してはクリントン時代の交渉を引き継げばいいんだというふうに考えていた節がございます。当初、そのような発言をいたしまして大変内部的に反発を受けたわけでありまして、そしてこれが撤回されました。
 つまり、ブッシュ政権の中にあっても、パウエル、アーミテージという国務省中心の人たちが穏健派であって、彼らは北朝鮮との交渉を当初考えていた、それが不可能になってもある種の対話が必要であるというふうに考えていたわけであります。しかし、国防省の文官たちはそう考えていたわけではございません。ラムズフェルド長官にしましても、あるいはウォルフォビッツ副長官にいたしましても、その点では非常に強硬であったわけであります。
 私は実は、今問題になっている六か国協議というのは、アメリカ国内においても強硬派と穏健派の妥協の産物であったというふうに理解しております。つまり、イラクで戦端が開かれている間はいずれにしろ二正面で作戦ができないわけですから、その間は北朝鮮と六か国で協議するということが許容されたということであります。その辺りで強硬派と穏健派の妥協が成立したということであります。
 ですから、当初三者会談、それから六者会談という形でこの多国間会議がスタートしたときに、我々は、ここの会談はいつまで、この会議はいつまで続くんだろうかというふうに考えたんでありまして、イラクでの戦争が終結してしまえば次は北朝鮮というような声さえあったわけですから、六か国協議というものは終わってしまうだろう、それ以前に早くこの協議が妥結されれば、妥結しなければならないと、このようなことを当時考えていたわけでありますが、しかし、イラクでの占領が非常に混乱いたしまして、この六か国協議が、当初一回だけと言われていたものが、二回、三回と開かれ、そして四回目はむしろ北朝鮮以外の国が何とかこの六か国協議を開催したいということで現在北朝鮮を説得しているような、そういうことになっているわけであります。
 さて、グローバルな視点から朝鮮問題を長々と見てまいりましたけれども、ローカルな視点から見ますと、韓国も北朝鮮もやはり自分たちの都合というものを優先しているわけであります。これは当たり前の話といえば当たり前の話なんでありますが、つまり、グローバルな国というのは、世界史的な観点から、あるいは普遍的な政策という観点から問題に接近する傾向を持っています。ですから、大量破壊兵器の拡散を阻止するという目標のためであればイラクでの戦争もいとわなかったわけであります。しかし、ローカルな国の立場からいえば、サダム・フセインが除去されて良かったというふうに思う人もいれば、そうでない人もいるわけでありまして、特に朝鮮半島の場合、ここで軍事的な行動が行われるというようなことに関しては韓国も北朝鮮も大変警戒せざるを得ないわけであります。つまり、彼らにとっては戦場にならないということの方が重要な問題であって、その点でグローバルな国家とは立場が違うということなんですね。
 ついでに申し上げておきますと、リージョナルな国、日本や中国のような地域大国と言われる国はその中間にございまして、我々は朝鮮半島で戦争が起きることを願っているわけでもないし、それに鈍感でもございません。しかし、他方、北朝鮮が核開発を成功させるというようなことを黙って見ているわけにもいかないわけでありまして、アメリカの立場も韓国の立場も共有しているということが言えるわけであります。
 韓国、北朝鮮というふうに今申し上げましたけれども、しかし、取りあえず北朝鮮の立場からローカルな視点で物を見るということはどういうことかということですが、それは、例えばイラクの紛争を見た場合、戦争を見た場合、自分たちはそれから、そこからどういう教訓を引き出すかというようなことになってくるわけです。恐らく金正日が引き出した教訓というのは、サダム・フセインの逆をやらなきゃいけないんだ、あれと同じことをやってはいけないという教訓であったというふうに思うんであります。
 例えば、アメリカの地上軍がバグダッドへ侵攻することなしにはフセイン政権というものは打倒されなかっただろう、幾ら経済封鎖をしても爆弾を落としてもあの政権は倒れなかったわけでありまして、地上軍がバグダッドまで侵攻して初めて倒れたわけです。しかし、もし北朝鮮が核兵器を持って、そしてそれをミサイルに、あっ、北朝鮮がと言ったのは間違いですね、もしイラクが核兵器を持って、イスラエルに到達するミサイルを持っていたならば、アメリカはバグダッドに侵攻できただろうかということになりますと、そこからは否定的な答えが出てくるわけです。そのアナロジーで考えますと、北朝鮮は、自分たちも、自分たちは早く核ミサイルを完成させたいんだと、それを所持すれば、所有すればイラクのようなことにはならないだろうと、当然このように考えるはずであります。
 あるいは、イラクがあのようなことになった背景には国際的な査察というものに比較的寛容であったというような事情もあるでしょう。ですから、そのようなものを受け入れてはいけないということも彼らは考えたはずであります。そして、アメリカが要求しているような、CVIDと言いますが、後戻りできないような形での査察を伴った完全な核廃絶というものは到底認めることはできない、もしそれをやれば恐らく武装解除された後に自分たちの政権が転覆されるに違いない、彼らはそのように、そのような結論に到達していると思います。ですから、リビアで成功した方式というものを北朝鮮に押し付けるということはなかなか難しいだろうと思います。彼らは、それをむしろ反面教師として、そのようにならないように考えているはずであります。
 また、私は、北朝鮮の核兵器、核開発をやめさせるということは、中東の国にそれをやめさせるよりもっと難しいのではないかというふうに考えております。なぜならば、イラクやイランが核を、核兵器を開発している理由というのは、生存のためというよりは地域的な覇権の追求というところに大きな理由があるわけでして、つまり石油の獲得ですとかイスラエルと対抗するとかというようなことでございますが、ある意味でイラクもイランも中東の大国であります。これは歴史をひもとけばよく分かることでありますが、しかし北朝鮮はそんな大国ではありません。彼らは別に東アジアで覇権を唱えようと思って核兵器を開発しているわけではないんです。中国やロシア、あるいは海を越えてアメリカというような核大国が既に存在するわけでありますから、そうではないからこそ、むしろ彼らに核兵器を放棄させることは難しいかもしれないというふうに考えているわけであります。
 つまり、覇権を追求する国に覇権の追求をやめろと言うことは可能なわけですが、生き残るために核兵器を開発しているんだとすれば、生き残りをやめろと言うことは、これは不可能でありますから、なかなかその辺り難しいわけでありまして、つまり、生き残りを保障するような手だてがない限り彼らは納得しないだろうということなんですね。
 北朝鮮が、これまでクリントン政権との枠組み合意というものに合意しながら、ブッシュ政権に対しては厳しく反発しているその背景にある事情というのは、恐らくそういうものだろうと思います。クリントン大統領、クリントン政権が北朝鮮に与えたものというのは、十年掛かりで核を廃棄しなさい、生き残りのためにアメリカとの関係は正常化されますよ、その間に日本と国交正常化したければどうぞやりなさいというタイプの合意でありました。その辺りは、ブッシュ政権が追求しているものとクリントン政権が追求しているものとの間には大きな違いがあるということになるわけです。
 さて、日本は戦後長い間北朝鮮との関係を正常化しないまま、あるいはできないまま今日に至っているわけです。この間、当然外務省は戦後処理ということを考えたでしょう。つまり、北朝鮮以外のすべての国とは交渉によって関係の正常化がなされているわけでありますから、残された仕事というものは北朝鮮なんだという意識は外務官僚の間には当然あっただろうと思います。しかし同時に、そのような北朝鮮との関係の正常化がこの地域の紛争を解決する、あるいは少しでも秩序の形成に役立つ形でなされなければならないという意識もあったわけであります。この二つが同時に追求されなければいけないというのが、この間の日本の方針であったというふうに私は理解しております。
 ただし、冷戦の過程で日朝国交正常化は可能であったかと言われれば、それは不可能であったと言わざるを得ないわけであります。つまり、東西が対立し、南北が対立しているときに、日本が北朝鮮との関係を正常化するということは不可能でありましたし、それをやれば韓国との関係が断絶するだけでありましたし、アメリカとの関係も破綻しただろうと思います。ですから、それは不可能なことであったということであります。
 冷戦が終わった後、北朝鮮との関係が正常化されない理由というのは、これは言うまでもなく、核、ミサイルという大量破壊兵器の開発の問題、そして拉致問題から説明できるわけであります。金丸・田辺訪朝団が一九九〇年に北朝鮮を訪問しました。当時、最後に残された北朝鮮との関係の正常化というものが達成されていれば、それはその後の状況に大きな変化を及ぼしただろうと思います。しかし、それができなかった理由というのは十分な理由があったわけでありまして、それは核問題であり、やがてミサイルや拉致問題が表面化したということでございます。ですから、日本と北朝鮮との関係が戦後六十年間正常化されなかったことについては我々の側から見て十分な理由があったし、そのように説明することが可能であります。
 ただし、巷間言われていることの中で私は間違っているんじゃないかというふうに思っていることが一つございます。それは、日本は北朝鮮にあめだけ与えてむちは振るっていないんだというこの議論でありますが、そうではなくて、冷戦の期間も冷戦後の時期も、もう十五年になりますが、我々は大きなむちを振るってきた。その最大のむちというのは、関係を正常化しないというむちであります。これは北朝鮮の側から考えてみれば簡単に分かることでありますが、つまり植民地支配を受けた国が、被害者がですよ、加害者との関係を正常化したいと言っているのに、加害者の方が駄目だと、こう言っているわけでありまして、それには十分過ぎる理由はあるわけですが、にもかかわらず大きなむちを振るっていたという、振るってきたということは事実ではないかというふうに思うんであります。
 食糧支援を何万トンやったとかなんとかというのは、これは局部的な文脈で言えばあめでありましょう。しかし、六十年あるいは百年というタームで見れば彼らは、自分たちは、彼らは日本を宿敵だというふうに考えていると思います。植民地支配の経験があり、朝鮮戦争のときにはアメリカの側に付いて兵たん基地の役割を果たした、戦後は韓国との関係を正常化して、そして経済協力をやってきた、そのために韓国は経済的に発展し、自分たちは劣勢に立たされてしまったということですから、恨み骨髄というような観点から日本のことを見ているだろうと思います。
 にもかかわらず、生き残りのためには交渉しなければいけないということで金正日総書記は拉致問題を認定して謝罪したということでありますから、その後の処理に対して我々は大きな不満を持っていますが、彼らは彼らなりの考えを多分持っているだろうと思います。そのことを、つまり彼らが我々をどう見ているかということに関して鈍感であってはいけないだろうと思うんです。なぜならば、これから経済制裁とかなんとかということはいろいろ考えられるわけですから、その対象である北朝鮮が我々をどう見ているかということは十分に認識しておかなければいけないというふうに思うんであります。
 さて、ほかにもいろいろ申し上げることが、申し上げたいことはあるんですが、時間もなくなってまいりましたので、最近の北朝鮮の外務省声明について一言申し上げておきたいと思います。これに関してはまだ解釈が割れているだろうと思いますが、濃淡がございます。
 最初の解釈はやや穏当なものでして、まだこれは場外戦の段階である、六者会談を受け入れるだろう、しかし条件闘争を彼らはやっているんだ、様々な意味で我々を揺さぶってはいるけれども、六者会談自体を否定するわけではない。だから無期限の中断ということで、参加をやめているだけであって枠組み自体は否定していないんだと、このような理解も一つ可能であろうかと思います。これはやや穏当な方の解釈ではないかと思うんです。
 もう一つの解釈はもうちょっと厳しい解釈でありまして、北朝鮮側は第二次ブッシュ政権の政策が強硬化することを予想しているはずである。穏健派と言われたパウエル、アーミテージ氏が去っているわけでありますから、より厳しい政策が出てくるだろう。大統領は確かに抑制された演説を行っていたけれども、ライス国務長官は圧制の拠点と言っていたではないか、あるいはグリーンNSC上級部長が日本、中国、韓国を歴訪しているけれども、ブッシュ大統領の親書を持って首脳と会談している、これは非常に異例のことである。そこから漏れてくるのは、北朝鮮がリビアにウラン化合物を輸出していたんではないかとか、ウラン濃縮の証拠がきちっとした証拠があるとかいうような厳しい内容のものであって、これはきっと北朝鮮政策が強硬化する前提である。そういった意向を受けて、王家瑞共産党対外連絡部部長が北朝鮮を訪問するわけだから、事前に先手を打って、先手を打って、北朝鮮側の外交攻勢というものが始まったのかもしれない、だとするとこれはそう簡単な話ではないだろうと、こういうようなやや厳しい情勢分析と、二通りの分析がございます。
 多分、今のところはそういった二つの分析にいずれにも可能性があるというふうに私は見ております。やがて時間がたつにつれてどちらか一つに収れんされていくわけでありますが、しかし両者の見解から見て共通している部分がございまして、それはどういうことかといえば、先ほど私強調しましたように、結局アメリカが北朝鮮と交渉するかしないかという辺りに焦点が合わされているということです。
 つまり、北朝鮮はアメリカに対して直接交渉を要求している。そして、恐らくクリントン時代のような枠組み合意のパートツーというようなものをねらっているんだろうということであります。交渉しないということになれば、多分そうだろうと思いますが、北朝鮮としては、それならば六か国協議には参加しないという方針を示して、そして使用済核燃料の再処理を継続する、あるいは加速するという方向でいくのではないかと、こういうことなんですね。ここの辺りは多分、厳しい見方をするにしてもやや穏当な見方をするにしても共通した部分ではないかと思うんです。
 そして、核兵器製造という部分に関しましてはこれまで以上に踏み込んだ表現になっているわけですが、既に八千本の使用済核燃料が再処理されてしまったわけですから、アメリカや中国、ロシアのような核大国にとっては大きな問題ではございません。ただし、八千本が再処理された後、もう既に二年たっておりますから、したがってもう一度原子炉、五メガワットの原子炉を止めて更に八千本を再処理するというようなことになれば、日本のような国にとっては大変な脅威であります。つまり、一ダース分の使用済核、一ダース分のウラニウム、失礼、プルトニウムが獲得されるということになるわけでありますから、そこのところは日米の間には若干国益のギャップがあるというふうにお考えいただいた方がいいのではないかというふうに思うんです。我々にとっては、プルトニウムが蓄積されていくこと自体大変重要な問題でありまして、アメリカのようにこれが国外に持ち出されなければ結構だというようなことにはならないということであります。
 ほかにもいろいろお話ししたいことはございますが、どうやら与えられた時間になってしまったようでございますので、そのほかの点に関しましては質問に答えるような形でお答えしたいというふうに思います。
 どうもありがとうございました。
#5
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 次に、高木参考人から御意見をお述べいただきます。高木参考人。
#6
○参考人(高木誠一郎君) ありがとうございます。青山学院大学の高木でございます。
 本日は、このような機会を与えていただきまして大変光栄に存じております。私も小此木先生と同様に大学の教員でございますので、一時間半の話に慣れておりまして、どううまく三十分に収めるか、多少工夫はしてまいりましたけれども、何とか収めたいと思います。時間も限られておりますので、私は今日、二点お話しさせていただこうと思っております。
 私は中国を専門に研究しておる人間でございますので、中国絡みの話を期待されて今日こういう機会を与えていただいたと思っておるんですが、中国をこの地域の不安定要因と考える場合、しばしば驚異的な経済成長に伴う軍事支出の急増、そしてそれに伴う軍の近代化の進展という観点から、軍事的な脅威になるという懸念がしばしばいろんなところから表明されておるわけですが、そういう話は皆さんもかなり御存じのことと思いますし、そういう問題が現実化するとしてもかなり将来のことになると思いますので、軍事的脅威の話は今日はおきまして、むしろ中国の国内が政治経済的に混乱して、それがこの地域の不安定要因になるという可能性はどのようなものかと、そういう可能性があるかないかについてどういうふうに考えたらいいかということを一点、お話ししたいと思います。
 それからもう一点は、中国の軍事的脅威が具体化するのはかなり将来のことだというふうに申しましたけれども、ただ、今申し上げたことにすぐ訂正を入れなくてはならないのは、申し上げるまでもなく、台湾海峡の状況でありまして、台湾において中国が武力行使をするということになれば、もう現在既に十分なる、ある意味では十分な軍事力を備えておりますので、それによるこの地域の不安定化ということは当然懸念されるわけであります。
 ただ、私の理解するところによりますと、中国と台湾の関係につきましてはもう既に専門の方のお話があったようでございますので、私はこの問題にアメリカがどういうふうに関与してくるであろうかということを第二点としてお話ししたいと思います。
 それで、第一点の中国の政治的な安定性あるいは不安定化の可能性ということについてなんですが、学生にするような話で誠に恐縮なんですが、これにつきましては、私は、ハンティントン、ハーバード大学のハンティントン教授の理論が非常に有効であるのではないかというふうに考えておりますので、まずこのハンティントンの理論というものを簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 ハンティントン教授は、九〇年代の初めに、冷戦後の世界が冷戦のようなイデオロギーの対立から文明の衝突の時代に入ったという見解を提示されて非常に話題を呼んだ方でございますので、皆さんも御存じのことと思いますが、今日私が取り上げますのは、六〇年代の末から七〇年代の初めにかけてハンティントン教授が出した考え方でありまして、アメリカがラテンアメリカを中心に発展途上国の近代化に関与してきた経験を踏まえて、近代化がなかなか政治の安定につながらないということをどう説明したらいいかということを考えて提示された理論でございます。
 ハンティントン教授によりますと、近代化が政治的な安定性にかかわる場合、二つの側面が重要であるというふうにおっしゃっています。第一点は経済成長であります。それから第二点なんですが、これは、経済成長は特に御説明の必要はないと思いますが、第二点はそこに書きました社会的動員という言葉でありまして、この概念は実はハンティントン教授の発明ではなくて、カール・ドイッチュという国際政治学者が提起した概念なんですが、カール・ドイッチュの定義は、そこに書いておりますように、旧来の社会的、経済的、心理的コミットメントが侵食されるか破壊されて、人々が新しい型の社会化や行動を受け入れられるようになるプロセスだということなんですが、簡単に申しますと、人々がその新しい物の考え方とか新しい行動様式を受け入れるようになるということであります。
 こういうプロセスはどういうふうにして起こるかというと、そこに書いてございますように、都市化であるとか、それからメディアの接触の拡大とか、コミュニケーションの増大とか、教育水準の上昇とか、それから、ハンティントン教授は挙げておりませんけれども、対外開放、それまで鎖国状態にあった国が外に向かって開かれてくるようになったりするとこういうことが起こるだろうと思われるわけです。
 ハンティントン教授は、この社会的動員とか経済成長の関係がどういうふうに政治的な不安定性につながっていくかということについて非常に興味深い公式を出しております。それが1の2)に書いたことでございますけれども、彼の説によりますと、社会的動員が急速に進んでいて、それにもかかわらず経済が十分に発展しないというようなときには、当然社会に不満が起こると。不満が高まってくる。そして、この社会的不満が高まってきても、人々に移動の機会があれば問題はないと。つまり、農村の人たちが都市に行くとか、それから同じところにいてもだんだんだんだん社会的な階層が上がってくるというような機会があれば問題ないけれども、移動の機会に比して不満の増大が激しいと、これは政治的な行動を通じて自分たちの欲求を満たそうという行動が出てくると。それが政治参加でございます。この政治参加が急速に拡大していても、その政治行動を制度的に受け入れるメカニズムができていれば問題ないけれども、政治の制度化が進んでいなくて、個人独裁体制のような、人々の政治行動が制度として認知されてないようなそういうシステムの中で政治参加が急速に拡大すると、それが政治的な不安定になるという考え方でございます。
 それからもう一つ、ちょっと二つ前のところに戻るわけですが、この社会的不満が増大する過程については期待上昇革命という考え方がございます。これは三ページの第一図を見ていただきたいんですが、縦軸には生活水準、横軸には時間を取ってございます。この直線の方は期待で、ちょっとあんまり上手に書けていないんですが、この曲がっている線は実績だというふうに考えますと、この図の左下の辺りのころのように経済が急速に伸びていると、それに従って人々の期待も上がっていくと。ところが、もちろん経済がマイナス成長になったりすれば不満が高まるというのは容易に想像付くことなんですが、マイナスにならなくても、その成長の速度がぐっと落ちると、期待はそのまま今までどおりのパターンで伸びていって、その期待と実績の間に大きなギャップができると。このギャップが社会的不満をもたらすんだという考え方であります。
 時間も限られておりますので、ごく簡単に申しますけれども、私はこの考え方が天安門事件のころの中国の状況に非常によく当てはまるというふうに考えております。もちろん、今日のお話の中心は現在のことですので、この天安門事件にどういうふうに当てはまるかということはごく大ざっぱにしか申し上げられませんけれども、社会的動員がどのように進展していったかということにつきましては、三ページ以降の幾つかの統計表をごらんになっていただきたいと思いますが、明らかに社会的、一九七八年の末に中国は改革・開放に踏み出して経済成長を国家の最重要課題とするようになったわけですが、それ以降、八九年までの動きを見ていきますと、明らかにその社会的動員をもたらすような条件が形成されてきております。
 そして、実際、その新しい考え方が出てきたということにつきましては、そこに書いております三信危機とか、それからドキュメンタリーの、これはカショウと読みますけれども、「河殤」というドキュメンタリーなんかに現れておりまして、この三信危機というのは、社会主義体制、それから毛沢東思想、共産党の指導といったものに対する人々の信頼あるいは確信が揺らいでいるということを、これは中国の人が問題視し始めて使った言葉でございます。それから、この「河殤」というのは、もう中国の伝統は駄目だと、外へ出て西欧のものをどんどん取り入れないと中国はますます衰退をしていくという、非常に危機感にあふれたテレビドキュメンタリーでございまして、一九八六年に放映されたものですが、当時かなり問題になりました。
 こういうものが出てきたということで社会的動員が進んでいるということが分かるわけですが、経済発展について見ますと、一九八八年から九年にかけて急速に経済発展のスピードが落ちております。明らかに期待と実績のギャップが急速に拡大して不満が高まってきたということが統計的にも実証できるわけです。そして、特に都市においては物価の上昇率が非常に高くて、実質的な生活水準が低下しているというような状況が出てきたようであります。
 次に、移動の機会なんですが、このころ、いわゆる盲流人口というのが非常に問題になっておりまして、安徽省とか湖南省のような非常に貧しい省から、北京、上海、広州等の大都市に大量の人口移動がありまして、その都市で建設業等に従事しようということで人々が一気にその都市に押し掛けたという状況があったわけです。
 こういうことから、当時、農村にはいろいろ問題があったにしても、農村で不満がたまるということはなくて、不満はむしろ都市に蓄積していたと。そして、都市で、今申し上げましたように、その生活水準が実質的に下がってくるというような状況がありまして、それが天安門事件の前のあの、あるときには百万の民衆のデモが行われたというその大政治参加の拡大といった状況が出てきたわけでございます。
 じゃ、そういうものを受け入れるような政治システムがあったかというと、なかったことは皆さん御存じのとおりでありまして、先ごろ逝去された趙紫陽という人が一九八七年に共産党の総書記として政治改革のプログラムを打ち出します。特に、この問題との関係で申しますと、国民の政治参加の道を開くために、例えば大衆団体等の自立性を高めて共産党がコントロールするような状況をだんだん変えていこうというようなことを試みたんですが、ほとんど保守派の反対に遭いましてうまくいっておりませんで、基本的に政治の制度化ということも起きていない。起きていないところでその政治参加の爆発があったわけですから、非常に不安定な状況が現出しまして、結局は人民解放軍を投入してこれを鎮圧をするといったことになったわけであります。
 こういうことから、私は、中国の政治的安定性を見ていく上で、そのハンティントンの理論というのはなかなか役に立つというふうに考えております。
 このハンティントンの理論の観点からしますと、現在の状況はどうかということが一番肝心なことだと思うわけですが、その点について更にお話を進めさしていただきたいと思います。
 まず、社会的動員ということなんですが、これは五ページの4表の2というところを見ていただきますと、コミュニケーションの拡大ということについての新しいデータなんですが、これはいわゆる携帯電話が中国で急速に利用が広まっているということを表しておるわけでありまして、中国は一時、特に八〇年代は、経済が成長しつつあるにもかかわらずコミュニケーションが非常に悪くて電話がなかなかつながらないといった問題があったわけです。当時は、もちろんそれは固定電話を前提にしての話だったわけですが、中国は明らかにもう固定電話の段階を一挙に飛び越えて携帯電話の世界に入っておりまして、今やどんな山の中に行っても携帯の中継局がありまして携帯で話ができるという状況ができております。
 明らかにコミュニケーションは急速に拡大しておりますし、インターネットの利用も拡大しておりますし、テレビ、ラジオも非常に急速に、もう農村の隅々まで普及しているという状況でありますので、社会的動員の新しい状況が出てきていると言ってよろしいかと思います。
 新しい考え方に人々の心が開かれているということを最も端的に示したのは、一九九九年の四月に起きました、あの法輪功の人たちによる、中南海という、中国共産党の幹部の住まいと、それから主要な機関が存在している北京の一角がありますが、その周りを一万人の法輪功の人たちが取り囲んで法輪功の弾圧に抗議するという事件がありました。
 この法輪功の事件は、特に彼らがインターネットを使って相互にコミュニケーションを取りながら、一九九九年四月のある日に、中国の当局の全くあずかり知らないうちにぱっとそこに集まったといったことで、非常に大きな衝撃を中国の指導者にもたらしたわけでありますが、こういうことからも、中国の人たちが、今や新しい考え方、行動様式に非常にオープンになってきているということは見て取れると思います。
 ただ、その八八、九年との違いの非常に重要なものの一つは、経済は一九九二年以降、数年にわたって二けたの経済成長を示すという、非常に驚異的な発展を遂げてきたわけですが、その後まあこれは減速しておりますけれども、八八年から八九年のような十数%から一挙に三%に落ちるという、そういう急激な低下はないわけです。一時だらだらと一二、三%から八%ぐらいまで落ちて、最近はまたちょっと九%ぐらいまで上がってきているという状況なものですから、経済の成長の問題というのは八九年のような状況ではございません。
 それから、移動の機会につきましては、都市の人口収容力が限界に達しているということで、中国は人口移動を厳しく抑制しておりまして、その点からいいますと八九年のように都市に不満が集中するという状況はないと思うんですが、むしろ今度は逆に農村で、まあ後で時間をいただければ多少詳しくお話ししたいと思いますが、状況が深刻化しておりまして、農村に不満が蓄積するという状況が出てきております。
 それから、失業問題も深刻化しております。それから、これはよく日本でも報道されていることですが、沿海地方と内陸とか、都市と農村、あるいは同じ都市の中でも所得の格差がだんだんだんだん開いていると、大きくなっていると。それから、政府関係者あるいは党関係者の汚職、腐敗もあるということであります。
 で、政治的制度化につきましては、これもよく報じられていると思うんですが、八〇年代の末ぐらいから農村で実験的に村長とか村会議員の選挙を行うということが行われておりましたが、これが九〇年代に入ってかなり広範に行われておりまして、農村で農村の運営に農民を参加させてそういう形で不満を解消していこうという試みはあるんですが、これがまだ一番下層の、しかも行政、正式の行政機関に至らないところで止まっておりまして、これが十分に、一気に政治参加が爆発したときにそれを吸収するメカニズムとして機能し得るレベルに達していないことは事実否定できないと思います。
 それにもかかわらず、最近の新聞報道等を見てみますと、あちこちで農民の反乱が起きているという報道がございます。ただ現在、見てみますと、その反乱の対象はほとんど地方の当局でありまして、共産党の支配体制に対して不満を表明するとか、これをぶち壊そうというような動きにはなっていないようであります。それで、農村ですから当然それぞれの地域に孤立しておりまして、全国的な連携を持って農村で反乱が起きるという状況にはまだ至っておりません。
 しかし、経済の成長率の面では八九年のような状況はないとはいえ、特に農村地域で不満が蓄積しているということはやはり現在の指導者にとっては非常に不安なことでありまして、彼らもそのことはよく理解していると思います。
 その例の一つは、私のレジュメの二ページ目の初めに書いておきました中央組織部の報告書というものがございます。これは二〇〇〇年から二〇〇二年の中国の情勢を分析したもので、曽慶紅という、今国家副主席をしていらっしゃる方が当時中央組織部の部長だったんですが、彼の指揮の下に調査をしてその結果をまとめた報告書なんですが、あちこちで農民の不満が高まって暴動が起きているということをきちんと報告しているものであります。
 それから、現在の胡錦濤・温家宝体制になりまして、しきりに自分たちは国民に親しい、国民のための、あるいは国民を基本に置いた政策を遂行するんだということをアピールしております。ついこの間、中国は旧暦の正月でいわゆる春節であったわけですが、この春節のときも、例えば温家宝首相は、報道によりますと、エイズの被害者の人たちとこのお正月を過ごしたというようなことが報道されていまして、自分たちは困っている人たちのことをよく理解してそれを何とかしようとして奮励努力しているんだということを一生懸命国民に説得しているところがございます。
 そういうことで、現在は八八年から九年にかけてのような非常に不安定がすぐ顕現しそうな状況にはないとは思いますけれども、相変わらずその不安要因は抱えておりまして、これが今後どうなっていくかということはやはりこの地域にとっても非常に重要なことですので、その問題をこれからもウオッチしていく上で、冒頭に申しましたようにハンティントン教授の理論というのがかなり私は有効ではないかというふうに考えております。
 それから、ちょっとそこに番外なこれ余計なことを書きましたが、もちろん北朝鮮の問題は小此木先生が御専門でいらっしゃるので私が特に申し上げるべきではないんですが、今までのお話との関連で二点だけ申し上げさせてもらいたいと思うんですが、北朝鮮もやはり非常に内部が不安定化するかどうかということが、よく我々のといいますかマスコミの話題になっておるわけですが、北朝鮮は、やはりこの今の中国の状況と比べてみますと、社会的動員というのはほとんど進んでおらない。つまり、鎖国体制を取って情報コントロールも非常に利いておりますので、まず社会的動員が進んでいないとそう簡単には不安定化しにくいだろうということが言えるのではないかと思います。まあ、これにつきましては、ただ最近の話によりますと、外部、中国の方からビデオだとか、それから特に携帯電話が急速に入ってきているということですので、今後は変わってくるかもしれません。
 それから、よく北朝鮮の場合、非常に経済が困窮しているので国民の不満が爆発するんではないかということが言われるわけですが、このハンティントンの理論に即して申しますと、生活が非常に困窮しているというよりも、生活が一時非常に良くなってきて、それが、その改善のスピードががたんと落ちた、そういうときの方が危ないのであって、ずうっと悪い状況というのはそんなに不安定化につながる状況ではないのではないかということでございます。まあ、この判断が正しいかどうかは後で小此木先生に御質問なさってください。
 それでは、続きまして台湾問題の方に参りたいと思いますが、冒頭に申しましたように、この点につきましては、私はアメリカがどうこれにかかわってくるかということだけを申し上げたいと思います。
 アメリカの台湾に対する、あるいは台湾問題に対する基本的な姿勢は、そこに書いておきました戦略的あいまい性ということでございます。
 これはどういうことかといいますと、中国に対しては、台湾に対して武力行使をすれば我々は必ず介入すると、そうすると戦争になるんだからそういう武力行使をするというようなことを絶対に考えてはいけないと言いながら、今度は台湾に対しては、あなた方が無謀な行動を取って例えば独立を宣言して中国が台湾を攻撃しても、我々は君たちを助けてあげるかどうか、そんなこと分からないよと、それはそのときになってみないと分からないから決して無謀な行動を取ってはいけないと。じゃ、一体アメリカはどうするんだというと、そこはあいまいに、わざとあいまいにしていると。これを戦略的あいまい性と申します。つまり、中国の武力行使と台湾の挑発的な行動を同時に抑えようというのがアメリカの基本的スタンスでございます。
 ただ、それが基本的なスタンスではありますけれども、この枠はなかなか超えないと思うんですが、結構その枠の中で台湾の方にちょっと近づいてみたり中国の方に近づいてみたり、揺らぎがございます。
 その揺らぎをちょっとだらだらと書いてございますが、全部申し上げている時間はないと思いますけれども、まずクリントン大統領が一九九八年に三つのノーということを申しまして、これは、台湾の独立、それから二つの中国、あるいは一つの中国、一つの台湾、それから国家をメンバーとする国際機関への台湾の加盟というものは支持しないということを言ったわけです。まあ、これはかなり中国側に近寄った発言なもんですから、当然台湾には大きな不安をもたらしましたし、また、アメリカで親台湾の立場を取る人たちからは激しく批判されまして、九八年の後半ぐらいから、この三つのノーということよりも、問題は平和的に解決されなきゃいけないんだから、まず両岸が対話すべきであるとか、あるいは、どちらから見ても完璧ではないけれども、とにかく武力、戦争が防げるような何らかの中間的な解決というのを模索しようということで、元政権にいた人とか政権の一部の人がそういう発言を、具体的な案を提示したりしたことがございます。
 しかし、それによっても不安は解消されなくて、結局、台湾の李登輝総統が台湾と大陸の関係は特殊な国と国との関係であるというようなことを言って、中国がこれにかっとなったということがございます。そのせいもありまして、クリントンはアメリカの中国、台湾に対する政策というのは柱が三つあると。一つの中国、それから両岸の対話の促進、それから平和的解決の主張ということだというふうにちょっと後退してまいります。
 これが二〇〇〇年の選挙のときには一つの争点になりまして、当時は野党側であったブッシュ陣営が、クリントンは、やっているのは戦略的あいまい性であって、けしからぬと。我々が主張するのは戦略的明確性であると。明確性というのは、台湾は絶対防衛するということをはっきりさせることだというようなことを言ったことがございます。そして、ブッシュ政権の初期には、台湾に向けて大量の兵器輸出を認めるとか、それからブッシュ大統領が、我々はどんなことをしてでも台湾が自分たちの国を守ろうという努力を支援するというような発言をして、中国側を非常に不安に陥れたことがございます。
 しかし、九・一一のテロ以降、米中の協力関係が非常に進んできたこともあって、二〇〇三年の九月に陳水扁総統が憲法を改正するというようなことを言ったときには、ブッシュは今度はかじを切り替えまして、台湾の指導者たちが取っている言動というのは一方的に現状を変更しようとすることだと、それで、これはけしからぬと、これは支持しないというようなことを言っております。
 昨年の十月には、パウエル国務長官が平和的統一というのを支持するというようなこと、平和的統一に向けた両岸の交渉を促進すべきであるというようなことを言ったり、台湾というのは独立してもいないし、主権を享受している国ではないというような発言をして、今度は台湾を非常に不安に陥れると。しかし、その後でまたすぐ、要するに言いたいのは平和解決であるというようなことを言ってちょっと後退したりして、基本的には戦略的あいまい性の枠は私は出ていないと思うんですが、その中で中国側に寄ったり台湾側に寄ったり、結構こうふらふら動いております。
 台湾問題についてあと二点だけ、時間が参りましたので簡単に申し上げたいんですが、アメリカは基本的に中国に対してやはり警戒心を捨てていない。
 と申しますのは、例えば二〇〇一年の十二月に出た核態勢報告という報告書では、アメリカが核兵器を使う必要があるようなケースはどういうケースかということが列挙してありまして、その中に、台湾で武力衝突があった場合というふうなことがここは書いておりますし、それから、二〇〇〇年から毎年出ております中国の軍事力に関する年次報告書、国防省が出しておる報告書がございますが、ここでは常に、中国が台湾海峡の中国側にどんどんどんどん短距離ミサイルを配備していて、台湾にいつでもミサイル攻撃ができる態勢をますます強化しているということが毎年のように書かれております。
 しかし、だからといって、じゃ台湾側に完全に寄っているかというと、そうではございませんで、やはり台湾については台湾関係法で基本的に台湾の防衛にコミットしているということがありながら、しかしそれで台湾がいい気になって独立の方向に突っ走るということは米中の協力関係に対する攪乱要因になるということで、アメリカの対中政策を邪魔する要因としての台湾に対するいら立ちというものがしばしばアメリカの指導者からは表明されるというのが現状だと思います。
 多少時間オーバーしまして、失礼いたしました。
 以上で終わらしていただきます。
#7
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 これより質疑を行います。
 本日も、あらかじめ質疑者を定めず、質疑応答を行います。
 質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。
 できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。
 また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
 なお、理事会協議の結果ではございますが、まず大会派順に各会派一人一巡するよう指名したいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 長谷川憲正君。
#8
○長谷川憲正君 自由民主党の長谷川憲正でございます。
 今日は、小此木先生、高木先生、大変興味深いお話をお伺いさしていただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
 幾つか御質問申し上げたいんですが、最初に小此木先生に御質問をさしていただきますが、北朝鮮、私どもにとりまして非常に厄介な存在になっていることは事実であります。対話と圧力というようなことで政府としてもいろいろ努力をしているわけでありますけれども、北朝鮮の側から見たときに、日本というのは大変な扱いやすい国になっているのかなという気がして仕方がないわけであります。
 というのは、北朝鮮にとって最も恐るべき相手はアメリカと、北朝鮮をたたきつぶすだけの軍事力を持っているという意味でアメリカということになるんだと思いますが、そのアメリカとの対比で見ますと、日本は軍事力を持っているわけではない。したがって、大変北朝鮮から見ればくみしやすい相手だと。お金は持っているし、北朝鮮の人たちもたくさん日本の中で暮らしているということでありますから、くみしやすい相手だということになると思うんであります。
 そうなると、対話と圧力とは言っているものの、その対話の場で十分な妥協を引き出すだけのあめを日本が持っているわけでもありませんし、経済支援ということはあるかもしれませんが、また、圧力といいましてもアメリカのような強い圧力が掛けられるわけでもない。結局のところ、日本としてはアメリカの力に頼らざるを得ないのかなという情けない気持ちがするわけでありますが。
 一方、北朝鮮からすると、そういうくみしやすい日本であるとするならば、国際的な政治情勢を緩和するためにも、日本を味方に引き付けておくという選択は当然あるわけでありまして、今、日本人のこの拉致の問題というのが非常に深みに入ってしまっておりますけれども、どうして日本人の拉致被害者というのをもっと誠意を持って返すとか、あるいは調査をするとかいうことで日本に対していい印象を作ろうとしないのか。せっかく総理が二度にわたって北朝鮮まで出かけていかれて対話の機運を作られたにもかかわらず、それに今日まできちんと乗ってこないというのはどういうことであろうかというのが質問の第一であります。
 それから二つ目は、北朝鮮の国内事情でございますが、食糧問題が非常に良くないとか、長年にわたる圧制に耐えかねていろいろと不満分子が出てきているとかいう話をちらちらと聞くわけでございますけれども、外からなかなか有効な手が打てないとすると、そういう国内の動きというのも十分注目をし、利用できるときには利用しなければいけないというふうに思うわけでありまして、先生御承知の最近の国内事情等をお分かりであればお教えをいただきたいと思う次第でございます。
 それから、次に高木先生にお伺いをしたいんですが、中国、著しい成長を遂げておりまして、いい部分と、それから、日本がかつて高度成長の中で味わってきたような大きな幾つもの問題にこれから直面をするという難しい時期もこれから迎えるわけでありましょうけれども、そういった中で一つ私たちが大変気になりますのは、中国は民族がたくさん中にいるわけでありまして、経済成長をし、そして一方で富める人と貧しい人の格差がどんどん出てくると、期待に対しての実績値が非常に下がってくるというような状況の中で、こういった国内にいるたくさんの民族の不満というのがこれからの中国の政治にどういう影響を与えるのか、その点についての御見解を伺えれば幸いでございます。
 以上です。
#9
○会長(松田岩夫君) それでは、小此木参考人からお願いします。
#10
○参考人(小此木政夫君) 北朝鮮がなぜこれほど不誠実な態度で拉致問題等に臨んでいるんだろうかという御質問からでございますが、私は、大きく言って二通りの理由があるんじゃないかというふうに考えているんですね。
 一つの理由は、彼らにとってはやはり国交正常化、国交正常化を達成して、そして日本からそれなりの経済協力をかち取るということが一番重要でありまして、それが体制の生き残りにつながっているわけですね。つまり、体制が生き残るという場合に我々は安全保障の面だけを注目しがちでありますが、そうではなくて、何とか破綻した経済を再建しなきゃいけないという側面がございますから、そうなると、日本との関係正常化というのが生き残りのためにも大変重要なカードだということが言えるだろうと思うんです。
 ただ、例えば拉致問題がなかったら日本がどれだけまじめに、彼らの方から見てですよ、国交正常化に取り組んでくれるだろうかというような疑問が当然あるわけでして、したがって、今となってみると、核兵器、核問題、それから拉致問題と、こういったものが解決しないと日本との国交正常化は非常に難しいということになってくるわけですね。
 つまり、生き残りが最終的な目標であるんですが、それを達成するためには日本との国交正常化が必要であろう。しかし、この国交正常化ということを考えると、日本は核問題だとか拉致問題というものを掲げてこれまでこれに応じてこなかったわけでありますから、したがって、彼らとしては、今直ちにそういったものが可能でない限り、できるだけ外交のカードというものを温存しようとするだろうというふうに思うんですね。核問題が解決されなければ国交正常化をしないというんであれば、拉致問題を例えば今直ちに解決してみたところで日本が国交正常化してくれるんですかという観点から見るだろうと思うんですね。ですから、余り適切な表現ではないかもしれませんが、国交正常化のための、まあ何といいましょうか、ある意味での人質的なカードにされてしまっているというふうに申し上げていいんではないかと思うんです。
 それからもう一つ、遺骨の問題等に関しても言えるわけですが、なぜ彼らがそれほど不誠実かということになると、そういう構造的な脈絡以外に、彼らにとってどこまで実際にできるのかという現実の問題、あるいは技術的な問題があるのかもしれないという気が私はしております。
 つまり、八人の方が亡くなっていると向こうは主張しているわけで、しかし我々はその証拠がない以上それを認めるわけにはいかないと主張しているわけです。そうしますと、亡くなっているという証拠を彼らは示さなければいけないわけですが、そのことは多分彼らにとってそれほど簡単なことじゃないんじゃないかという気が私はしておりますが。
 これは大事な問題でございますからなかなか表現が難しいんでありますが、何と言ったらいいでしょうか、つまり、日本から拉致してきた人たちを北朝鮮の公安当局がそんなに大事にしてきたとは到底思えませんし、それぞれの方がもし仮に亡くなっているとしても、もし仮に亡くなっているとしても、そのためのお墓をきちっと整えて今日まで来ているというふうには考えにくいんですね。ですから、非常に不自然な形で、水害で墓がなくなったとかなんとかというようなそういう説明になってきて、結局何も証拠らしい証拠は出てこないわけですね。それは、先ほど申し上げたような事情と、もう一つそういう技術的な問題というものが彼らにとってはあって、証明したいと思っても証明できないのかもしれないというようなことも同時に考えております。
 次に、その北朝鮮の国内の事情がどうなっているのかということなんですが、これは非常に難しい問題ですが、最近の日本のメディア、特に週刊誌、テレビメディアが報道しているようなことというのは、かなり私は無責任じゃないかと思っています。つまり、それだけ見ていますと、半年ぐらいであの国はもう崩壊するかのような印象を受けるわけでして、それは本当なのかという疑問を当然お持ちだろうと思うんですね。
 この間、幾つものものが出てきましたが、例えば金正日総書記を誹謗するような落書きが北朝鮮の中で広範に行われているんだと、そういうビラがばらまかれているとか、あるいは北朝鮮の国境の会寧という町での映像として彼の写真の上に落書きがあるようなものも出ておりますが、その他いろいろなものがありましたが、しかし私はその種のものというのは余り信憑性があるというふうには思っていません。
 それはどういうことかと申しますと、北朝鮮と中国の国境に関しては、NGOのグループがそういう情報を持ってくることからも分かりますように、ある程度の往来というのが可能なわけですね。それは不法な往来であるかもしれませんが、それはある程度可能ですから。したがって、北朝鮮で収集したと言って持ってきて、日本のメディアに持ってくるそのビラとか写真というものが本当に鴨緑江の向こう側で書かれたものであるのか、それともこちら側で作られたものであるのかというようなことはなかなか判断しかねるというのが実情であります。あるいは、会寧の町の落書きを撮ってきたその映像というのは、たまたま、じゃそのテレビカメラが行ったときに、テレビカメラじゃないかもしれませんが、カメラがそれを写したときに、たまたまそのものを、そういったビラを目にして写したのか、あるいは自分たちがビラを張ってそれを写して持ってきたのかというようなことは、これは我々は判断しかねるんですね。となりますと、国境地帯で行われているものに関しては相当留保して考えた方がいいと思うんです。
 そこにはNGOが絡みますし、脱北者が絡みますし、それからお金が絡みますから、当然そういうものが日本のテレビ局に渡ったときにはそれなりの謝礼が払われるというふうに私は理解しておりますけれども。だから、その辺りのことは相当慎重に考えた方がいいんじゃないかと思うんですね。
 そういうことを離れて、それでは北朝鮮の経済がどれほど悪化しているのかということでいえば、やっぱり最悪の時期というのはやっぱり過ぎているんですよ、実のところはですね。
 一番ひどかったのはやっぱり九六、七、八年ぐらいでして、食糧危機で本当に餓死者が出たというふうに思います。どの程度かということは人によって推計が違いますが、私は何百万とは思いませんが、何十万かの餓死者が出たかもしれないというふうに見ております。しかし、その時期を基準にして考えてみますと、それより悪くなっているのか良くなっているのかというと、多分、北朝鮮経済を分析している人たちは皆さん、あのときよりは良くなっているというふうに考えていると思います。その辺りは一般に受け取られているイメージとはやはり相当違いがあるんじゃないかと思うんですね。
 あるいは、金正日の絵、写真が飾られていない、父親の写真だけになってしまった、何か異変があったんではないかというようなものもございましたが、しかし、その推測というのはある意味では論理的にはちょっとおかしいんでありまして、もし金正日の指示によって父親と自分の二つの写真が並んでいるもののうち一方を下ろすということが実現したんだとすれば、それは体制の混乱を示すものなのか、あるいは体制が余裕を持ってきたということを意味しているのかという、どちらなのかということを改めて考えてみなきゃいけないわけでありまして、写真がなくなったからといって体制が揺らいでいるというふうに簡単に結論するわけにはいかないのではないかというふうに私は思います。
 そのほかに幾つか当然合理性のある、何というんですか、不安定な兆候というようなものももちろんあるんです。例えば、後継者の問題をどうするかというような問題。これは大変深刻な問題でして、つまり、あのような体制において一番重要なものというのは、その一元的な体制をどれだけ、どういうふうな形で継続していくかということでありまして、特に代が替わるときにどうなるかという問題は大変深刻な問題です。
 ですから、今後五年とか十年とかという長いタームで見た場合、あるいはもうちょっと長い目で見た方がいいのかもしれませんが、北朝鮮の今の体制というものが安定したまま推移するかと言われれば、そこのことに関してはちょっと留保したいと思うんですね。長い目で見れば、あの体制はやはり崩壊の過程に入っているんではないかというふうに思います。ただし、半年とか一年で崩壊するような報道というのは、ような印象を与える報道というのは私はちょっと注意した方がよろしいんではないかというふうに思うんですね。
#11
○参考人(高木誠一郎君) ありがとうございます。私にいただいた問題は、中国の民族問題が中国の政治体制あるいは政治、社会状況の不安定化にどうつながっているかということであったと思いますが。
 中国は少数民族が大変たくさんおりますが、特に今日お話ししたこととの関連で申しますと、少数民族が集中的に住んでいるところというのは当然内陸部で、しかも国境近くでございます。特に、彼らの問題が深刻なのはチベットそれから新彊ウイグル自治区でございます。そのほかにも雲南省には多数の少数民族がおりますが、それぞれの民族の数が非常に少ないものですから、これが大きな政治的な問題になるとは思われません。
 それから、モンゴル、内モンゴル自治区にもモンゴル族がおりますが、ここはこの自治区の中では漢族がもう圧倒的な多数になっております。しかも、モンゴル人は外モンゴルの、いわゆるモンゴル共和国の人たちよりも高い生活水準を享受しているということで、必ずしも不安定の要因にはなりにくいだろう、ならないだろうと思います。
 チベットと新彊ですが、しばらく前までは、この両者のうち、より深刻なのは多分新彊だろうと。と申しますのは、新彊にはトルコ系のウイグル人という人たちが住んでおりまして、彼らはイスラム教徒でありますので、中国の西の方のイスラム世界にずっとつながっているわけですね。そして、イスラム世界から様々な影響を受ける、資金提供も受けるという形で分離独立運動というのがございました。
 しかし、しかも彼らは時々は、中にはテロリズムに訴えるグループとか個人もおりまして、中国にとっては非常に頭の痛い問題であったんですが、御存じのように、九・一一テロの後は、中国が彼らの分離独立運動を弾圧することに際して国際的な非難というのが非常に少なくなってきております。そして、彼らを通じて得た情報というのも、アメリカの例えばアフガニスタンにおける対テロ戦争にある程度は貢献しているということも言われておりますので、この新彊の分離独立運動を処理する上で特に中国が国際的に困難な状況に陥るということは非常にありにくくなっております。
 それから、チベットの方は、一九五九年の反乱でチベットを逃れてきた人たちがインドのダルムサラというところに多数居住しておりまして、そこのリーダーとしてダライ・ラマも今や国外にいると、ダルムサラにいるということで、そして、彼らはそこで彼らの自治政府というのを作っているわけです。
 しかし、チベット人が国外で集中しているのはそこだけでありますし、しかも国内的には非常に孤立した地域におりますので、彼らが中国の政治体制を揺るがすような大きな運動を起こすというのは非常に難しいだろうと思います。
 チベットの場合は、やはりこれに対しても国際的な広がりというのがございまして、特にダライ・ラマの説くチベット仏教に対する信奉者というのがアメリカのハリウッド等にかなりおりまして、特にアメリカではチベットに対するシンパシーを感ずる一つの一定の政治勢力がございます。しかし、彼らはチベットの分離独立を支援するというよりも、チベットにおける中国の宗教弾圧に抗議すると。要するに、チベット問題は人権問題であるというとらえ方が強いものですから、それについては中国も頭を悩ませているところではございますけれども、チベットの問題が中国の政治体制を揺るがすようなところにまでは発展していかないだろうという判断が可能であると思います。
 問題は、むしろ中国がほかの理由で、さっきお話ししたようなことで政治的に非常に不安定な状況に陥って、その状況が長く続いてくると、新彊だとかあるいはチベットの少数民族の分離独立運動がそれを更に加速するとか、あるいは激化させるという形で作用するということはあると思いますけれども、それ自体でということは比較的少ないのではないかと思っております。
#12
○会長(松田岩夫君) 直嶋正行君。
#13
○直嶋正行君 民主党の直嶋でございます。
 今日は、お二人の先生、大変ありがとうございました。
 正に、先日、北朝鮮の六か国協議への無期限中断が発表されまして、折しも昨日はアメリカで日米2プラス2の会合が持たれるという、この種の問題で大変マスコミ等に情報がはんらんをしておりまして、その中でお二人にお伺いしたい点というのは実は随分たくさんあるんですが、私の方から数点、お二人の先生にお伺いしたいと思うんですが。
 まず一つは、六か国協議の枠組みと絡んでということなんですが、台湾問題と北朝鮮問題の相互の関連性といいますか、私は何かそういうものが底流にあるような気がしまして、実は北朝鮮が六か国協議に参加しないよという声明を出した後のアメリカ政府の首脳の発言を聞いていますと、北朝鮮に対する発言は非常に冷静なんですが、中国に対しては、中国がもっと努力をしなきゃいけないとか中国の努力いかんにかかわっているとか、伝えられる発言を断片的に見ますと、相当中国を意識してプレッシャーを掛けているように思うんですね。
 それで、アメリカにしろ、アメリカの場合は、特に台湾海峡において言いますと、先ほどお話があったとおり、いわゆる現状維持というのがアメリカの国益に沿うというふうに思っていると思うんですが、そんな中で、昨年、総統選挙を前に陳水扁の発言がありまして、憲法問題の発言があったりしまして、中国もかなりセンシティブになったわけですが、それに対してアメリカは、現状維持につながるような、むしろ独立の方向に行くような発言は好ましくないというふうな形で陳水扁の発言を封じるような、否定するような発言をしました。
 ですから、打合わせがあるのか、あうんの呼吸なのか分かりませんが、アメリカは台湾について跳ね上がるようなことはさせないと。そのために台湾を抑えるといいますか、表現は好ましくないかもしれませんが、そういうことがあって、もう一方で、しかし、六か国協議を中心にして、北朝鮮の問題についてはやはり中国がきちっと北朝鮮を国際会議の場に引き出す、あるいはそこにおいて後退をさせないという、何となく両者のそういうものがうかがえないこともないんですが、それだけじゃなくて、この台湾の問題と北の問題というのが我々のこの東アジアにとって相互にかなり重要な関連性を持っているんじゃないかという気がしますので、この点について、まずお二人の先生に御見解をお伺いしたいと思います。
 それから小此木先生に、今も北朝鮮の話があったんですが、これからの展開次第でありますし、まだ六か国協議が駄目になったというわけではないと思うんですが、ひょっとすると北は、ブッシュ政権の考え方といいますか、これも含めて、まあ四年たちゃブッシュ替わるだろうと、次は民主党政権じゃないのかと、それぐらい、その間まあ何とか引っ張っていけばクリントンのときのようなこともあり得るかもしれない。ですから、この六か国協議を、出るのか出ないのか、ぐずぐず言いながら先に引っ張っていこうとするんではないかというような感じもするんですが、逆にアメリカは若干安保理へ持っていくようなニュアンスのことも言っていますので、ここら辺の北の、何といいますか、どういう考えでどういう行動を起こしそうなのかという点をもうちょっとお聞かせいただければというふうに思います。
 それから、高木先生にお伺いしたいのは、もう一点、中国が日中のいわゆる戦略会議といいますか、次官級会議で、戦略会議と言いましたかね、戦略交渉と言いましたかね、そういう提案をしてきて、日本もそういう話合いの場に乗ってもいいよみたいなことが若干新聞で報道されていました。
 それで、私がちょっと聞いたところによりますと、中国は今の六か国協議の枠組みで北の問題を協議しながら、いずれそういう六か国協議を戦略対話の場に持っていきたいと。それで、この東アジアの一つの安全保障に関する合意作りの場にしていきたいという意思があるというようなことをちょっと私、耳にしたことがあるんですが、こういった考え方というのは成り立ち得るのか、あるいは、それはいいことなのか悪いことなのか、ちょっとその辺の見解をお聞かせいただければというふうに思います。
 以上でございます。
#14
○会長(松田岩夫君) それじゃ、小此木参考人。
#15
○参考人(小此木政夫君) まず、その中国の立場に関してでありますが、特に台湾問題との関連につきまして少し御意見を述べたいと思いますが、しかし、これは多分高木先生の方が更に専門家であろうと思いますので、大きな部分は高木さんにお譲りしたいと思います。ただ、我々が見ておりましても、関連がないということはもちろんないというふうに思います。
 イラクやイランの情勢が関連しているんだろうということはだれでも分かるわけですが、しかし、それと同時に台湾問題というのが関連している。特に、何というんでしょうか、米中の関係というものが良好であることが望ましいと。そのように中国が考えているとすれば、北朝鮮問題でどれだけ協力するかというようなことは、当然台湾問題とも絡んでくるわけであります。台湾の選挙の前には特にそういうものが強く感じられたような気もいたします。
 で、ある種の迂回戦略なのかもしれませんが、今回もアメリカは、第二期ブッシュ政権になって、六か国協議問題で相当強く中国に圧力を掛けたと申しましょうか、中国に大きな期待を掛けているように思うんですね。中国こそが北朝鮮の説得役なんだということであります。中国がそれにこたえることができればそれでいいわけですが、ただ私は、これまで長い間見てきた印象から申し上げますと、中国にどこまでそれができるだろうかということに関しては疑問を持っております。アメリカから強く言われたから、それじゃということで本当にそれができるのかというとそうではなくて、その逆の現象が今起きているんだというふうに見ております。
 つまり、マイケル・グリーンNSC上級部長がブッシュ大統領の親書を持って日本や韓国や中国を訪問したと。その内容について我々はうかがい知ることはできませんが、にもかかわらず北朝鮮問題に関して中国に掛けている期待というものはそこで表明されていたはずであります。これまで以上に中国が大きな役割を果たさなければいけない。特に六か国協議の受入れに関してはその問題が強調されていたと考えるのが当然だろうと思うんですよね。
 そうしますと、そういったアメリカの指示を受けて我々に圧力を掛けようとしているんだというイメージが多分北朝鮮側に生じただろうと思います。ですから、中国から圧力を掛けられる以前に彼らはこの外務省の声明を出したわけであって、そういった圧力があっても、それは我々には通用しませんよというかなり厳しい北朝鮮側のシグナルであったというふうにも考えられるのであります。
 北朝鮮の問題に関して中国の立場がそれほど強くないということはいろんな観点から言えるんですが、ともかく朝鮮半島で軍事的な緊張が高まったり戦争が起きたりするというようなことは中国にとってはどうしても避けたいことであって、そのことが北朝鮮の立場を強くしているんじゃないかというふうに思います。例えば、今のような毎年一〇%の経済成長というのが持続できますか、外資はちゃんと入ってくるんですかというようなことから始まって、北朝鮮の体制が崩壊した場合に中国はどうするのかと。それは中国にとっては望ましいことなのかどうかというようなこともございます。結局、アメリカの影響力が北朝鮮まで及んでくるだけじゃないかというような観点もあり得ますし、あるいは難民がわっと鴨緑江を越えてくれば新しい民族問題が発生するではないかというようなこともあるでしょう。
 ですから、我々は留意しなければいけないのは、北朝鮮の体制崩壊というようなものというのは中国にとってはかなり厄介な問題であって、彼らはそれを多分望んでいないだろう、それよりは、北朝鮮という社会主義国が存続して、それがもうちょっとましな国になってくれて、中国的な社会主義といったらいいでしょうか、そういうものが採用されて開放された国になってくれればその方が有り難いぐらいのことなんじゃないかというふうに思うんですね。だとすると、我々が中国に期待していることというのはかなり無理な期待なのかもしれないということも考えるわけです。
 さて、もう一点ございましたが、最終的には北朝鮮は、先生御指摘のとおり、四年間頑張ろうということを考えているだろうと思います。まあ、それが本当にできるかどうかというのは、それは我々が、我々ほかの五か国がどこまで団結して行動を統一できるかということに懸かっているように思うんです。
 つまり、彼らは六か国協議に参加しないと言っているわけですから、参加しないのは結構な話で、じゃ五か国で会合をしたらいいわけですね。五か国で会合をして、北にどう対応するかということを協議するべきなんですね。そして、もちろんそれは六か国協議への復帰を呼び掛けるでしょうが、呼び掛けられてもなお帰ってこないんであれば、それは国連に持っていくしかないというような順序というものは当然あり得るわけですし、その段階で経済制裁というものを当然検討されるでしょう。これは、私は国連で検討され、五か国が協力して行われるということであれば絶大な影響があるというふうに思っております。
 例えば、韓国は今南北の肥料会談というものをやっています。肥料を毎年春に何十万トンか送るわけですが。それから、ケソン、京城の北側にある開城、開く城と書くんですが、開城では工業団地が造成されています。こういったものが止まるだけで、これは甚大な影響が北朝鮮には出てくると思います。肥料が入らなかったら今年の秋収穫できないですよ。農業第一で今年はやるんだというのが新年のメッセージでありまして、それができないような状況が出てくるわけですし。
 ですから、そういった周辺の国の協調した行動というものが、協調した圧力、調整された圧力というものは非常に重要な意味を持ってくるだろうと思うんです。
 確かに韓国の太陽政策というのは韓国以外では余り評判が良くないんですが、しかし、あの太陽政策があればこそ我々はそういう圧力のカードというものを手にしているわけですし、あれだけの脱北者が北朝鮮から出てくるというのは太陽政策の大きな成果だというふうにも考えるべきだろうと思っています。
 ですから、その辺りの協力、中国や韓国の協力をどういうふうにかち取るかというのが外交的に大変重要なポイントではないかというふうに考えております。
#16
○参考人(高木誠一郎君) 今、直嶋先生から提起された問題は二つございまして、一つは台湾問題と朝鮮半島問題との関連ですが、もちろんこれは非常にありまして、歴史的には朝鮮戦争が勃発したからこそ今の台湾問題があると言っても言い過ぎではないくらいでありまして、朝鮮戦争が勃発してアメリカがこれに介入を決めたのと同時にアメリカは第七艦隊を台湾海峡に派遣しまして中国のいわゆる台湾解放にブレーキを掛けたわけですから、その状態が現在の中台の分離を生み出したわけですから、この二つは歴史的に見ても非常に関連しておるわけでございますが。
 現在の目先の状況で見ましても、やはり中国は、先ほど先生がおっしゃいましたように、台湾の状況には非常な危機感を抱いております。二〇〇三年の九月に陳水扁総統が二〇〇八年までに改正した憲法を実施するというようなことを言っておりますし、二〇〇八年にはオリンピックを中国は開催しなければなりませんので、それで中国の手は縛られているだろうというふうに読んで、台湾はかなり冒険の余地があるというようなことを考える人も台湾にはいるわけでありますから、中国としては非常に心配な状況でありまして、それだけに、特にアメリカを使って台湾に圧力を掛ける、あるいはアメリカを中国側に取り込んで台湾を孤立化させるということを様々な方法で考えていることは明らかでありまして、この六者協議についても、やはり台湾問題についてアメリカから譲歩を引き出す、あるいはアメリカを自分の国の方に引っ張ってくる一つのてことしてそれを、朝鮮半島問題を使おうという考えは当然中国にあると思います。
 ただ、朝鮮半島問題については、先ほど小此木先生のおっしゃったことに内包されていて、必ずしもはっきりおっしゃらなかったんですが、中国の立場というのは基本的にアメリカとは非常に違うと思います。確かに中国も朝鮮半島の非核化ということは言っておりますし、その言葉に私は別にうそはないと思うんですが、問題はあの朝鮮半島を非核化することの優先順位なんですね。中国にとってはそれは決してトップではないと思います。アメリカにとってはもう優先順位のトップにあることだろうと思いますけれども、中国はやはり北朝鮮の政治体制が不安定化して、先ほど小此木先生がおっしゃいましたように、中国に大量の難民がなだれ込んでくるとか、あるいは北朝鮮が韓国に吸収合併されてしまうというような状況になるのを防止するということの方が北朝鮮の非核化を、北朝鮮の核兵器保有を防止するというよりも優先順位が高いと思うんです。
 ですから、北朝鮮の体制の安定性が保障された上で北を非核化する方法があれば、それは当然取るだろうと思いますが、その点に関しては中国も多分手詰まりなんだろうと思います。
 そこで、六者協議を開いても結局何も事態は改善しないということになって、アメリカ側にいら立ちといいますか忍耐心がだんだん欠けてくるような状況になってくれば、中国はまたそれで非常に心配になってくるだろうと思うんですね。何とか北を説得することを通じてアメリカからも台湾問題で譲歩をかち取りたいという計算はあると思うんですが、先ほど小此木先生がおっしゃいましたように、そう打つ手はない、特に北を不安定化させないということを第一優先順位に置いてしまうと打つ手はないというのが多分中国の、非常に中国の立場からすると困った状況だろうと思います。
 ただ、朝鮮半島問題と台湾問題とのこの微妙な関連を通じて、米中というのはやはり非常に微妙な政治的な駆け引きをやっているだろうと思います。これは今の御質問を伺ってふっと思い付いただけで、もしかしたら深く考えたら私は考えが変わるかもしれないんですが、昨日今日の報道にありました、日米の2プラス2の会談で台湾問題が言及されたということが非常に大きなニュースの一つになっておりますけれども、これも、中国が北朝鮮に対して何らかのその有効な手を打たないと、台湾問題に対して自分たちはどうするか分からぬということを言う、そういうメッセージを込めたアメリカ側の動きであったんではないかというふうに感じております。
 それから、先生の御質問の第二点ですね。これは日中戦略対話というものだと思いますが、中国はいろんな国と戦略対話をやろうと話し掛けておりまして、アメリカとも最近行いましたし、それからインドとやっております。これを日本に呼び掛けて、日本も積極的に応じるという姿勢だというふうに報道されておりますけれども、私はそれは基本的に正しい対応だろうと思います。
 やはりこの地域の安全の問題について、安全保障の問題について、日中が緊密にその意見交換をする、そしてお互いについて間違った認識を持たないようにするということは非常に重要なことでありますので、特にその安全保障の責任を負った部局の人たちの間で、あるいはそのトップの政治家の方たちまでも含めても、日中の間では緊密な意見交換をしておくべきだろうと思います。
 そして、先ほどおっしゃった六者協議をこの地域の安全保障メカニズムにしていこうという考え方なんですが、まだそれが中国の政府の正式の政策になったかどうかは分かりませんけれども、そういう考え方が中国にあることは事実でございます。そういう考え方は我々の立場から見てどうかということなんですが、六者協議はアメリカも入っておりますし、日本も入っておりますし、韓国も入っておるというわけで、この地域の安全保障を追求する一つのメカニズムとして成長していくということになれば、それは非常に歓迎すべきことだろうと思います。
 今、日中韓、それから東南アジアを含めて東アジア共同体という構想がしきりに語られておりますが、私から申しますと、ちょっとこれの気になるところは、アメリカを排除しているというところで、アメリカの側にも非常にこれに対して懸念を表明する人がおります。
 ただ、この地域の協力は進めていくべきだと思いますので、そのアメリカの懸念等にこたえる一番有効な方法は、これが唯一のメカニズムでないという状況を作ることだろうと思うんですね。ですから、東アジア共同体は東アジア共同体で、この地域の経済を中心に、環境問題も含まれるでしょうが、様々な問題を協議し政策調整をする場としていくと。安全保障についてはこの六者協議が発展した北東アジアの安全保障のメカニズムを作る。それから中央アジアについては、中国は上海協力機構というようなものを積極的に進めておりますが、そういうところには日本もオブザーバーとして臨席するというようなふうにしていったらいいと思いますし、東南アジアについてはASEAN地域フォーラムがございますので、多様なメカニズムを重層的に作っていくということの一環としてこれを推進していくというのがよろしいのではないかと思います。
#17
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 加藤修一君。
#18
○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。
 本日は、小此木そして高木参考人の陳述を聞かしていただきまして、非常に参考になりました。大変ありがとうございます。
 私は、今日の朝刊に実はアーミテージ報告なるものが若干、概要でありますけれども出ていましたので、お二人のお話を伺ったことも踏まえつつ、見解をお聞きしたいと思っております。
 「アジアで「能動的」日本に」というそういう見出しが書かれておりまして、たしか二〇〇〇年にはアーミテージ報告が発表されて、今回は二〇二〇年までの日米両国の共通の戦略目標にかかわる点、外交、軍事、エネルギー戦略などに関する第二のアーミテージ報告というふうに概要にはなっております。
 私は、手元にもう一つの二〇二〇年の関係の資料がありまして、それはアメリカの中央情報局、CIAにあります国家情報評議会、そこが出したものでありますけれども、国家情報評議会は過去に二〇一〇年のグローバル・トレンド、二〇一五年のグローバル・トレンド、そして最近出したのが世界の未来を見る、これは二〇二〇年の世界のマクロ的な分析を行った資料なわけでありますけれども、まず最初に、アーミテージが言っている点で非常に今日のお二人のお話を伺いつつ気になった点について、どのように考えたらいいかという点について御見解をお願いしたいなと思っております。
 今世紀の大国になる中国やインドにいかに我々がその影響力を及ぼすかということが焦点であると、そんなふうに報告書の中には書かれてありまして、まず小此木参考人にお願いしたいわけでありますけれども、その中には、日本はアジア太平洋地域でより能動的な取組を示し、世界での出来事にもより活発に関与をすべきだと、こんなふうに書いてございます。能動的な取組、あるいはさらに、世界での出来事にもより活発に関与すべきだと。非常にグローバルな展開の意味合いが強いかなというふうにとらえざるを得ないわけなんですけれども、この辺について小此木参考人はどのように、アーミテージがどう考えているかは別にいたしまして、参考人の御見解をお伺いしたいということです。
 それから二番目の質問は、高木参考人、小此木参考人両人にお願いしたいわけでありますけれども、中国の現状について、将来、二〇二〇年、そういう射程の中で物事を考えていく件についての話だと思うんですけれども、中国が資源とエネルギーへの渇望、渇望ですか、非常に強く求め抜くということがいわゆる今後の中国の軍事・財政・外交政策を形成していくであろうと、中国はアジアでの覇権を目指していると、しかし日中関係が対等でなければ安定はあり得ないと。対等でなければ安定はあり得ないというふうに言っておりまして、じゃ、対等であるためにはいかなる要件あるいは環境整備が必要と考えていくべきなのか。日本が持つべき対中国外交とかあるいはアジア戦略というものをどのように考えていくべきなのかなということなんですけれども、非常に抽象的な質問で申し訳ないんですけれども、その辺についてのお考えを教えていただきたいなと思います。
 それと、そのCIAの国家情報評議会でプロジェクションした二〇二〇年の世界のマクロ的な分析の関係でありますけれども、経済成長はずっと続いていくであろうと、ただ不安定要素は多いと、未来の世界は楽観できないと、アメリカの位置は二〇二〇年の時点でも経済、技術、政治、軍事の分野でけた外れの優位を保っていると、そういう予測を示しているわけでありまして、さらに、アメリカの軍事力に太刀打ちできる国家は出てこないが、アメリカの軍事行動にダメージを与える国が増えてくると予測しているわけでありまして、アメリカは、環境、気候変動、プライバシーの保護、クローン技術、バイオテクノロジー、人権、国際法、あるいは国際機関の役割などをめぐって国際世論に立ち向かう機会が多くなると、京都議定書なんかはそのうちの直近の話題ではないかなと思いますけれども、そういう国際世論に立ち向かう機会が多くなってくると、それに伴ってアメリカと世界が分断される可能性があると、そういうふうにアメリカ自身に対して警告を出している内容になっているわけなんですね。
 分断される可能性というのは、これは不安定要素が多くなって、それが増大されるというふうに理解することができると思うんですけれども、これは、自ら出した政策についてアメリカは十分説明責任といいますか、諸国に向かって説明をしなければいけないというふうに私なんかは強く思うんですけれども、唯我独尊であってはいけないと。京都議定書を批准しなかったことについても、説明はしましたけれども、説明になっていない説明だったんで私は理解に苦しんでおりますけれども、そういうことに対してどのようにお考えされているか。
 最後の質問でありますけれども、これは高木参考人に質問でありますけれども、先ほどの日中関係の中で対等でなければいけないというそのことと関係するわけなんですけれども、このCIAのレポートの中では、日本政府は中国と均衡状態を保っていくケースか、そういう場合か、中国という勝ち馬に乗っていくケースのいずれかを選択しなければならないだろうと、そういう指摘をされているわけなんですね。日本の行く末が非常に、どっちにするかということで、極めて重要な指摘だと思いますけれども、中国をライバル視していかに競争に打ちかつかというそういう側面と、ある意味で、中国になびくという表現は良くないかもしれませんが、その力にあやかっていくというそういう在り方、どっちがどうなるかという、ちょっとなかなか難しい話かもしれませんが、こういった面についてどのようにお考えか、よろしくお願いしたいと思います。
#19
○会長(松田岩夫君) それでは、先ほどと同じ小此木参考人から。
#20
○参考人(小此木政夫君) 大変大きな質問をいただきまして簡単には答えられないんでありますが、つまり、これは日本がこれからどういう戦略的な立場で二十一世紀を生きていくかというようなことと直接関係しているわけであります。それは、日本が能動的であることは望ましいに違いないわけですが、その能動的というのはやはり日本的な価値観、価値の体系の上に立った上で能動的でなければ困るわけであります。アメリカの要求するトランスフォーメーションというものをそのまま受け入れて、ヨーロッパにおけるイギリスと同じような役割を極東において演じるということが能動的だというのであれば、それはちょっと、そこまでは本当に付き合い切れるかという気もしないではありません。
 我々、確かに安全保障とか民主主義とか市場経済というような体制を共有しているわけですから、中国とアメリカとどちらを選ぶかといえば、アメリカを選ばざるを得ないわけでありますが、しかし、だからといってあらゆる分野でアメリカとイギリスのように行動をともにすることができるかと言われれば、そこまでは付き合い切れないわけでありまして、中国との関係というものもある程度良好な関係というものを維持していかなければいけないわけでありますから、そうなりますと、日本の立場というのはそれほど極端な選択であっては私はいけないというふうに思っております。
 我々が例えば直面しているイラクでの自衛隊の活動のようなもの、これなんかは今御指摘の質問なんかと相当密接に絡んでいるのではないかと思うんですね。我々、戦闘部隊を派遣したわけではありません。しかし、国際的な貢献をしたいということを考えていることは当然のことでありますが、そんなに極端な選択ができるような状況というのは、当分の間、私は出てこないだろうと思うんです。
 どうやってアメリカと中国の間でバランスを取りながら、しかし自分のポジションというものを固めていくかということで、これはそう簡単に答えの出る問題ではないのではないかと思うんですね。私は、できるだけ日本は海洋的なアジアの代表として、そして自由と民主主義、そして市場経済というようなものを共有する、そういう国々と行動をともにして、やがて中国もそのような形で体制が共有できるような国になってほしい。あきらめてしまうんではなくて、中国自身の体制変化というものを促していきながら、促しながら長い時間を掛けていくべきではないかというふうに考えております。
#21
○参考人(高木誠一郎君) ありがとうございます。
 非常に気宇壮大な問題提起をしていただきまして、私もどういうふうに考えたら、お答えしたらいいのか考えを巡らしておったんですが、先ほどの御質問のベースは、アーミテージ報告とかそれからアメリカの国家情報評議会の報告で、両者ともその二〇二〇年を一応、大体視野の限界として出されたようなもののようなんですが、正直申しまして、アーミテージの報告の方は私まだ見ておりません。それから、国家情報評議会の報告書も積んであるんですけれども、エグゼクティブサマリーにさっと目を通しただけで、まだきちんと読んではおらないんですが、新聞でも報道されておりますので、その限りの知識で申し上げたいと思います。
 この二つの報告書が二〇二〇年に視界を設定したというのは非常に興味深いことでありまして、と申しますのも、中国も二〇〇二年の第十六回党大会で江沢民総書記が政治報告を行いまして、その二〇二〇年をターゲットに据えまして、これまでの機会が我々にとっての戦略的なチャンスであると、このチャンスを利用して中国は小康社会、つまり、まずまずの生活水準が国民全体に保障されたような社会を作るのだと、そしてその段階で中国は中程度の、中程度に発達した国になるという、そういうビジョンを出しておりまして、これもやはり二〇二〇年を視野に置いているということで、非常に、アメリカも同じような考え方をしているということを今知りまして、大変興味を感じたわけでございます。
 能動的な日本というのをアメリカの方から言い出されているというのは非常に興味深いと思うんですが、要するに、アメリカの言うことをただ聞いているだけの日本というのは、アメリカにとっても必ずしも好ましい存在ではないと。そういう状態になれば当然国内でも、日本国内でもいろいろ反発もあって、かえってアメリカにとって望ましくないような行動が日本から出てくるということまで読んだ上での多分提言だろうという気がしております。そして、能動的な日本であっても、先ほどの小此木先生のお話にもありましたように、基本的な価値観、政治・社会制度を共有している国同士ですから、どこかに違いがあっても、それはオープンな討論を通じてすり合わせが可能であるというふうに考えているんだろうと思います。
 そういうことを考えると、私もやはり、日本は日本の立場をベースに置いて世界に目を開いて、様々な問題について自分の国の立場を積極的に世界にアピールしていくと。何か言われたときに答えるだけではなくて、こちらからも問題提起をしていくと。ですから、例えば京都議定書のようなことというのは、ある意味ではアーミテージ報告に、その趣旨に沿った報道であるということで、どんどんアメリカに私は語り掛けていくべきであろうと思います。
 このとき、心に留めておかなくてはいけないのは、日本が何か発言すると、そのとおりにならないと意味がないとか、あるいはアメリカから何か言われたら、それについてはそのまま言うことを聞くか全くはね付けるかという二者択一しかないという、そういう構えで行動していますと非常に不毛なことになると思うんですね。やはり討論の過程とかやり取りを通じてより深い問題の理解とかより良い解決策を追求していくという、プロセスの一環としてそういうことがあるというふうに考えるようにしないと、自主性といっても、日本の意見だけが通らなきゃ意味がないというふうに考えると非常に私は危険であろうと思います。
 先ほど加藤先生の御質問の中で、日本がどういうアジア戦略を持つべきであろうかということがありましたが、これはとても今ここで数分間で申し上げることは私にもできないんですが、ただ、日本がよく独自の戦略、独自の戦略ということを聞くんですが、そういうものを持てるようになる条件が日本の、今の日本の社会にあるだろうかというと、私はないと思うんです。やはり独自の戦略を打ち立てるためには戦略的な研究活動、戦略的な政策研究というのが行われなくてはならないと思うんですが、そういうことをやる場所がないんですね。
 私の現職の前の所属のことでちょっと恐縮なんですが、防衛研究所というのが防衛庁にございます。これは国際問題をやっている人たちの間ではよく知られているんですが、それほど知られていないと思うんですが、この研究所の研究部には非常に優秀な研究者がたくさん雇用されているんですが、この研究所の運営の仕方を見てみますと、とても戦略研究をやっている、戦略的に研究活動をやっているというふうには思えないところがございます。非常に役所的に運営されていまして、非常に資源の浪費が行われているというふうに私は感じておりまして、あれだけの人材の集積がありながら、どうしてそれこそこういうアーミテージ・レポートみたいなものがああいうところから出てこないのかということを、先生方も是非実態をお調べになってお考えになっていただきたいと思います。
 それから最後の、日中対等ということなんですが、私は、日本と中国が競争的な関係にあることは必ずしも悪いことではないと思っております。問題は、どう建設的な競争をするかということであって、お互いがより良いアイデアを出し合うとか、より世界に貢献する度合いを高め合うというような競争ならどんどんやるべきだと思いまして、別に日本が常にトップでなきゃいけないとか、中国が大国になってきたんだからそちらにすり寄るんだとか、そういう不毛な二者択一は避けるべきだと思います。お互いに節度と理性を持った上でどんどんどんどんいろんな分野で競争していくべきじゃないでしょうか。中国が現在急速に伸びて、日本が失われた十年とかで元気をなくしているというのは、非常に、何といいますか、知恵のないことだというふうに考えております。
#22
○会長(松田岩夫君) 大門実紀史君。
#23
○大門実紀史君 今日はお忙しいところありがとうございます。日本共産党の大門実紀史でございます。
 小此木先生に二点お伺いいたします。
   〔会長退席、理事山東昭子君着席〕
 一つは、中国が北朝鮮にどういうふうにあってもらいたいかというのは、先ほどもお話ございましたけれども、基本的には中国的な開放路線といいますか、そういうものに転換してもらいたいと思っているでしょうし、対外的には協調路線で行ってほしいというふうに中国は北朝鮮のことを思っているんじゃないかと。特に、朝鮮半島で有事が起こった場合、中国も特に経済的にも大きな打撃を受けるというようなことも想定しているんではないかと思います。その点で、中国が北朝鮮にどのように働き掛けるかというのが一つの、六か国協議含めてかぎを握っている面があるというふうに思いますけれども、この点で、先生のレジュメに、最後の方にあったんですけれども、お聞きする時間なくて、多分この辺でお話しされようと思ったと思うんですが、中国が北朝鮮に働き掛け得るだけの影響力といいますか、圧力ということにはならないかも分かりませんが、そういう有効性といいますか、中国と北朝鮮との関係が特に経済的にどういうインパクトを、中国が物を言えば北朝鮮が言って、はいと言わざるを得ないというような、今のどういう関係にあるのか、少しさっきのレジュメの中身含めて解説お願いできればと思います。
 もう一点は、そういう文脈の中にあるのかも分かりませんけれども、北朝鮮の、二年前ですか、経済管理改善措置ですか、一つの開放路線というような言い方もされておりますけれども、特区を開発したり、工業団地の建設でしたかね、そういう北朝鮮自身の、経済改革までいかないと思いますが、そのはしりだと思いますが、そういう路線もある意味では中国のアドバイスがあったのかななんて思ったりもしますが、それは今現在どうなっているのか、あるいは成功しようとしているのかどうか、分かる範囲でお願いできればと思います。
 高木先生には一つお聞きしたいのは、ハンティントンの理論というのは大変興味深く聞かせていただきました。これで思ったんですけれども、この調査会でも中国の民主化がどうなっていくかというのが一つの焦点で質疑が進められてきたんですけれども、ポイントは、中国共産党そのものが崩壊するかどうかというよりも、もう少しリアルに物を考えますと、中国共産党の一党体制が続くのかどうか、続けられるのかどうかというようなことが、中国共産党もなかなかしたたかでございますんで、そういう点があるんではないかなというふうに私なんかは感じております。
 私どもはもちろんどんな体制でも複数政党制であるべきだと思っておりますけれども、その中国の共産党も一党体制から複数政党制になるというようなことをどっかでは考えているような気がちょっとしたのが、去年、ODAで中国行ったときに、調査で行ったときに、ある高級官僚が日本の自民党が戦後長い間にわたって政権を維持してきたというその統治システムは非常に興味がありますということを言っておりました。
   〔理事山東昭子君退席、会長着席〕
 つまり、これからどうなるか分かりませんけれども、想定しているのは、一つの大きな政党と、プラス複数政党で小さな政党といいますか、そんなこともあり得るというようなことを、今の中国の指導部はかなり外国留学経験した若手の頭の柔軟な方多いですから、場合によってはそんなことも一つの選択肢といいますか、視野に入れたりしているんではないかと。もちろんこれからいろいろなこと起きて、そのときに体制がぎゅっと詰まったときにそんなことも考えているんじゃないかなというふうに個人的にはいろいろ感じてきているんですけれども、そんなことを、今もしお感じになることがあればお聞かせいただきたいと思います。
#24
○参考人(小此木政夫君) 最初の御質問でございますが、レジュメの中にも確かに書いておきまして、少しお話ししたいというふうには思っていたわけですが、中国ができることの最大限のものというのは、レジュメの中にあります例えば同盟条約を再検討するとか、あるいは食糧・エネルギーの援助を停止するとか、貿易管理、例えば国境貿易というものをもうちょっと厳格に統制していくとか、脱北者問題、例えば脱北者政策というものを変えて中国に入ってくる人たちを積極的に保護していくとかというような、これはいずれも圧力の政策になるわけですが、これみんなやったら必ず北朝鮮崩壊してしまいます。ですから、中国にとって難しいのは、崩壊させないで、しかし圧力を掛けながら北の政策の方を変えていきたいというふうに考えている。だから、彼ら中国というのは非常に難しいのだろうというふうに想像しております。
 この間、中国の専門家とか外交官とかいろんな人たちと会う機会があったわけですが、六か国協議が始まるときに彼らが言いましたのは、三原則と言っておりましたが、北朝鮮の非核化、北朝鮮の核を認めるわけにはいかない、これは同じなんですね。ただし、二番目は平和解決であって、必ず平和的に解決しなければいけないということを付け加えるわけです。そして、三番目は北朝鮮の安全と言うんです。北朝鮮の安全を脅かすようなことはやはりよろしくないんだと。
 ですから、確かに中国は非核化を追求しているんですが、しかし時間の流れというのは我々よりずっと緩やかでありまして、何年掛かってもともかく平和的に解決する方が優先されるということなんじゃないかと思うんですね。特効薬を使って、つまり先ほども申し上げたようなエネルギーを止めてしまうとか、エネルギー支援を止めてしまうとか、食糧援助をやめてしまうとかというような劇薬はなかなか使わない。周りの環境を整えて、漢方薬のようにじっくりと相手を変えていくというようなやり方でこれまで対応してきたように思うんです。
 ただし、中国も国際社会の中で生きているわけですから、もうちょっと影響力を行使させるということは不可能ではないと思いますし、その場合、もう少しというのが相当大きな意味を持ってくるかもしれないというふうにも考えております。
 私、先ほど五か国で会議をやったらいいじゃないかというふうに申し上げたんですが、それは北朝鮮がいなけりゃもっと意見は一致するわけですし、五か国会談というのは北朝鮮に対する対応を具体的にそこで細かく決めていくということ以上に、中国や韓国に対する何というんでしょうか、協力要請とか圧力、ともに圧力を掛けましょうとかというような意味で、つまり五か国の関係を調整していくという意味で非常に重要だと思うんですね。
 先ほど韓国の例を申し上げましたが、韓国だけでなくて中国でも何らかの圧力手段というようなものを考えていただくというようなことをあらかじめやっておきませんと、安保理事会へ持っていっても、そこで紛糾してしまっては意味がないわけです。中国が国際化しつつあるということの一つの意味合いは、安保理事会に持ち込まれたら彼らはやっぱり北朝鮮を支持するわけにはいかないんです、やっぱり。決議が通れば、賛成はしないかもしれません。棄権でしょう。だけれども、国連決議を正面から踏みにじるようなことはしません。やはり形だけでもそれを尊重しているような行動を取らざるを得なくなっていくという意味で、それはやっぱりかなり大きな意味を持ってくるんではないかというふうに考えているんです。
 二問目の七・一措置ですが、経済改革措置は必ずしも成功しているとは見ておりません。しかし、これまでも北朝鮮は、そういう言い方で言えば余り成功したことはないんです。一貫して失敗していると言ったらいいんでしょうか、経済政策に関してはですね。不思議なのは、失敗しても失敗してもやっぱり改革措置、開放措置を取ってくるということなんですね。それはやっぱり、後戻りできないということをよく知っているからなんだろうというふうに思います。ですから、成功していないからもうそういう措置は取らないだろうというふうに考えられると間違いでありまして、多分時期が来ればまた同じような、あるいはもっと積極的な開放措置というものを、開放・改革措置というものを取ってくるだろうと思います。これは経験的にそう考えているわけですから、考えているわけですけれども。
 我々は、それをできるだけエンカレッジすることが重要なんですね。経済体制というものが変わっていけば、それはやがて政治体制の変化というものにつながっていくわけですから、結局のところ、あの体制が崩壊するか云々と、しないかというよりも、どうやって長い目で我々はそれをマネージしていくかと、外からコントロールしていくかということが重要でして、できるだけ、何というんでしょうか、平和的に、段階的に、しかしきちっとあの体制を変えていくということが必要なんだろうと思うんです。
 アメリカの国内では、体制転覆か体制改革か、いや変革かというような、つまりレジームチェンジかレジームトランスフォーメーションかというような議論がございますけれども、どうやってトランスフォーメーション、変革していくか、それもできるだけ早くやっていくかということが重要であって、体制が変革されない限り核問題や拉致問題のようなものというのはなかなか解決しないという指摘は、私は正しいだろうというふうに思っていますね。つまり、ソ連の場合もそうですけれども、収容所列島がなくなってから体制が変わるわけではないんです。体制が変わるから収容所列島がなくなっていくわけでして、それをどうやったら一番効率的に、しかも平和的にできるかということに関して検討していくべきだろうというふうに思います。
#25
○参考人(高木誠一郎君) ありがとうございます。
 先ほど御質問の、中国共産党の一党体制が続くのかということで、そして自民党一党優位体制のような形に転換していくかということなんですが、先ほどおっしゃいましたように、中国人の中にそういうことを現実的な選択肢、オプションとして考えている人がいることは確かでございます。
 そのことで思い出しますのは、一九八〇年代から九〇年代にかけて台湾で、台湾も国民党一党独裁の体制であったのを民主化してきたわけですが、その過程で自民党を研究して、自民党がどうやって民主的なシステムの中で一党優位なその体制を維持できたか学んで、我々もそういう形で台湾で政権を維持していこうということを考えた人たちがいることを知っておりますが、もちろん御存じのようにその構想は見事につぶれたわけですね、台湾では。そして、そのことも中国の人はよく見ておりまして、自民党スタイルというのは台湾では結局駄目だったと、我々はそれができるだろうかというふうに言っている人もございます。
 それから、自民党との関係で申しますと、ほかの党との関係で優位にあったという面と、もう一つ、党内に派閥があるということから、中国の共産党も派閥の存在を認めて党内を民主化していこうというようなことを考えている人がやはりおります。
 共産党を中心とした多党体制ということですと、現在の体制は共産党指導下の多党協力体制というふうに言われておりまして、実は共産党以外にも政党あることはあるんですね。ただ、その政党の指導部は全部共産党員で、共産党に立ち向かうようなことができない仕組みになっております。そして、その彼らが主に発言権を得るのは政治協商会議という組織でありまして、ある人がこのシステムを説明するときに、要するに参議院みたいなものですと言った人がいるんですが、これは御臨席の先生方に非常に失礼な説明だろうと思いますが、要するに政治協商会議というのは諮問機関であって一切決定権はございませんので、多少発言の自由は拡大しておりますけれども、基本的に二院制ということではないんですね。
 ですから、中国が今後、共産党の一党支配体制が崩れていくとすると、これをもっと本格的な議会にしていって、現在存在する政党からも共産党員は全部引くと。あるいは、指導部の党籍を抜くというようなふうになってくるのかもしれませんし、中国民主党というのを作ろうとしてつぶされた例もありますので、新しい政党が出てくるということもあり得るのかもしれません。中国の民主化というのは長期的に見れば必ず起こると思いますが、その過程がどういうふうに進むかというのは現在からではとても予測が不可能だろうと思っております。
 中国の民主化の過程を将来に向けて考えていくときには、どういうふうになっていくかということも大事なんですが、先ほどの私の話に関連付けさせていただきますと、その過程がどれだけ安定的に推移するかということの方がある意味では我々にとって重大ではないかと思うんですね。安定した民主社会というのはあるんですけれども、安定的な民主化過程というのは、まあ皆無ではありませんけれども非常にまれでありますから、中国が民主化していく過程がどう平穏になってくれるかと、あるいは平穏に推移するために我々に何かできることがあるかということをむしろ考えるべきではないかと思います。
#26
○会長(松田岩夫君) 以上で各会派一人一巡いたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
 小林温君。
#27
○小林温君 自民党の小林温でございます。お二人の参考人には大変貴重なお話、ありがとうございました。
 もう既に論点として出ている部分で、重なるかもしれませんが、米英関係並みの日米関係という先ほど文脈がございました。その中で、我が国と北朝鮮との関係、中国との関係についてそれぞれお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
 まず小此木先生にでございますが、外交課題を解決する、その上で日本外交を推進する。まあ今その環境が特に対北朝鮮問題においてどうなっているかというところを考えてみますと、これは今回のシリーズで我々ずっと日中関係について議論させていただいているんですが、まあかなり日中関係は悪いと。それから、ロシアとの関係も領土問題をめぐって、本来であれば大統領が来る来ないという話も延期をされていると。それから、実は日韓関係は非常に良くなっているという見方があるわけですが、対北との関係においては韓国の政府あるいは国民の対北に対する感情が我が国よりも先に行ってしまっていて、我が国の北朝鮮政策について言うと決してプラスの方向では動いていないと。そういう状況があるだろう。
 九・一一あるいはイラクとの関係の中で日米間にはかつてないほどの信頼関係が生まれてきたというふうに言われております。そういう意味において、やはり日米の関係をこの対北朝鮮問題の解決でどうてこに使っていくかということが我々に一つ大事なことなんだろうというふうに思います。
 ただし、先ほど来、両先生からお話がありますように、必ずしも日本と米国はこの対北朝鮮政策については、まあ同じ環境を共有していない。それは、核問題と拉致問題というその二つの違った視点があると。それから、どうもやはりアメリカも、イラクがある、あるいは距離的な部分も、アメリカと朝鮮半島との距離的な部分も含めて、少しやはり長期的にこの問題を見ているんじゃないかというふうな気もするわけでございます。
 そんな中で、朝鮮、北朝鮮の核保有と六か国協議の不参加の表明を受けて、実は米中韓の三か国協議が先週行われたわけです。かつて日本側からすると、この六者協議の中で、日中韓のトライラテラルの関係をベースにこの問題を解決していこうということがあったわけでございますが、先ほど来申し上げているように、なかなか日中韓というのも、実はこの対北朝鮮については機能しなくなってきている部分があるのじゃないかというふうに思うわけでございまして、北朝鮮も実はそれを見越して、日本に対して遺骨問題に見られるような対応、あるいは強い態度で臨んでいるということもあるかもしれません。
 先生、お時間がなくて制裁の議論の部分については余り触れられなかったので、あえてそこについてお聞きをしたいと思うんですが、マスコミが多分にミスリードしているということを私も同意をさせていただきたいと思います。
 その中で、アメリカがむちの役割を果たして日本があめの役割を小泉外交の中で果たしてきたということが機能した部分もあるということを先生お書きになられていますけれども、私は、もう既にアメリカにもしかするとむちの役割を期待するのが限界に来ているんじゃないかと。だとすると、拉致という、これは日本固有といえば固有の問題であるわけですが、国民的に非常に大きなイシューになっているということを考えると、日本がむちの役割を果たし、それにアメリカに補完的な役割を果たしていただくという、正に主体性も問われているのが今の状況なんじゃないかと思います。
 私もかつて北朝鮮問題について少し学者的な立場から研究をさせていただいておりました。先生のここでの分析、全くそのとおりだと思うんですが、政治にかかわる立場の人間としては、経済制裁、決して一〇〇%の目的を達成できないにしても、国としての威信を示す必要というのもあるのかなということを立場が変わった中で今私感じているわけですが、そういうことも踏まえた上で、もう一度制裁について、今の制裁論議が日本の中で高まっているということについて、先生の御見解をお伺いできればというふうに思います。
 それから、高木先生でございますが、中国、日中関係について議論をさせていただいて、私、実は先日ある参考人の方に日米安保というものは中国はどういうふうに見ているんだという質問をさせていただきましたら、中国は今まで公式的に日米安保の存在を否定したり批判的な見解をしたことはないという実は答えが返ってきたんです。それはいろんなとらえ方あるかと思いますが、ただ、今回、2プラス2で初めて台湾海峡の問題に日米が一緒にコミットをするという、ある意味でいうと新しい一歩を踏み出したわけでございます。これは、最初に申し上げた米英関係並みの日米同盟という文脈からいくと、今の時期にこういうことが出てくるのは仕方がないことなのかなというふうに思うわけですが、この部分を含めて、この台湾海峡有事への言及がどういう影響を日中関係にもたらすのかと。
 それから、今日は議論の中でそれほどまだ出ていないかと思うんですが、今後、特に日米の同盟が、軍事的な同盟が日中関係の中でどういうふうに取り扱われていくのかということについて御見解を伺えればと思います。
#28
○参考人(小此木政夫君) 北朝鮮に対する政策というのは非常に難しいんですが、制裁論についてどう考えているかという御質問でございました。
 これは、何もしないということはあり得ないんですね。私は、先ほど申し上げたように、大きな枠で見た場合に日本は北朝鮮との関係を正常化しないというむちをずっと振るってきたんだというふうに申し上げましたけれども、しかし、それでは今回のような事件に関して何もしないということはあり得るのかといえば、それはやっぱりあり得ないと思うんです。
 小林先生御承知のように、通常こういう外交的な論議になりますと、最大取り得る措置というのは国交断絶なんですが、国交断絶するも何も、国交がないわけですから、それができない。となると、やはりやられたことに関してその程度のしっぺ返しをやっていくというやり方、ティット・フォー・タッツというふうに英語では言うんでありますが、しっぺ返しとか目には目をというような翻訳がされています。簡単に言えば、ある種の調教を行うわけですね。悪いことをしたらそれに対して同じぐらいのしっぺを返す。また悪いことしたら、また同じようなことを、しっぺを返していく。しかし、いいことをしたらそれに対しては褒美をやるということによって相手の行動をこちらに望ましい方向で変えていくという、そういうやり方であります。私は、今の事態、外交的ないろんな観点というものもございますが、それはやっぱりやらなきゃいけないだろうと思って見ております。
 それから、核問題に関して北朝鮮が六か国協議に出てこない、あるいは出てきても問題は一向に解決されないということになれば、やはり制裁は必要だというふうに思います。その真ん中の、いわゆる拉致問題に関して経済制裁をすべきだという議論は、これは気持ちとしては非常によく分かるんですが、技術的にかなり難しい部分があって、余り僕は積極的に賛成していないんであります。
 つまり、周りの国が六か国協議をやろうといってまだ頑張っているときに、日本が制裁を始めちゃっていいものだろうか。最も重要な中国や韓国との関係も、結局そこで破綻してしまったら肝心なときにどうするのかとか、あるいはやっぱりそのカード、経済制裁というカードはやっぱりもうちょっと重要な局面で使うべきであって、こんなに早い段階でやっちゃったら日本のカードはなくなっちゃうんじゃないかとか、いろんなくだらないことをやっぱり考えてしまうわけです。あるいは、巷間言われていることは、十人の人をともかく奪回するために経済制裁をやるんだと、全面的な制裁をやるんだということになると、そうすると、やった後、目的が達成されなかったらどうするのかというようなこともやっぱり考えてしまう。さらに、日本と北朝鮮が一対一でそういう形で向かい合うというようなことは我々にとって賢明なのかどうかというようなことも考えますから、どうも単独で今直ちにということを拉致問題に関して行うことに関しては、私はちょっと消極的だというふうに申し上げたいと思うんです。
 ただ、先ほど申し上げたようなしっぺ返しとか核問題での経済制裁というものと併せて我々は三つぐらいのカテゴリーを持っていて、それにめり張りを付けてやっていかなきゃいけないんだということは常に意識していなければいけないというふうに思います。
#29
○参考人(高木誠一郎君) ありがとうございます。
 日米安保を中国がどう見ているかということなんですが、ここ公式に非難したことがないというのはどういう意味でおっしゃったのかちょっと私は首をかしげざるを得ません。と申しますのは、一九七二年に日中国交正常化するまでは公式に非難したことしかないんで、問題ないなんて言ったこと一度もないわけで、国交正常化後は、あからさまに日米安保条約そのものを全否定するという発言はさすがに影を潜めましたけれども、しかし折に触れてこれに対する警戒感は示しておりますし、特に冷戦終えん後、一九九六年に日米安保共同宣言で安保体制というのが冷戦後も重要なんだということを日米双方で確認したわけですけれども、これについては中国はやはり、冷戦が終わって敵がなくなった、ソ連という敵が消滅したにもかかわらず日米が安保体制を維持しているということは、自分たちを標的にしているんだろうということで非常に警戒感を表明しておりました。
 それから、日米防衛協力の指針、ガイドラインが改定されたときも、皆さん当然御存じだと思いますけれども、あの周辺事態の周辺の中に台湾が入るのか入らないのかということで、日本政府の立場というのは、周辺というのは地理的な概念ではないという説明だったものですから、中国としては全然それでは不安は収まらないわけでありまして、非常に懸念を表明していたわけであります。
 最近の2プラス2の、あれは何ていいますかね、コミュニケなんでしょうか、記者発表なんでしょうか、これも、原文をきちんとまだ私は読んでおりませんけれども、新聞報道による限り、中国はやはり非常に懸念を表明しておりますし、中国の新聞の論評、特に人民日報のような新聞の論評を見ても非常にけしからぬことだということを言っておりまして、問題がないということはないだろうと思います。
 ただ、全体的に見まして非常に興味深いのは、私、昨年の一月に、二人ばかり、韓国と日本の若手の専門家と中国のシンクタンクずっと回って、アメリカのこの地域におけるプレゼンスについて中国はどう考えているかということを聞いて回ったんですが、そこで一様に聞かれたのは、中国にとってはアメリカとの、米中関係が良好である限り、アメリカの存在とか日米安保体制というのは基本的に問題にならないというのが答えでした。
 考えてみれば当然といえば当然だと思うんですが、米中関係が非常に緊張してくると、当然、この日米安保体制というのは、アメリカが中国に圧力を掛ける非常に重要なメカニズムの一つになるわけですから、中国としてはこれに対して批判的にならざるを得ないと思うんですね。ただ、中国も、何のかんの言っても結局はアメリカと良好な関係を持たざるを得ない。つまり、アメリカとの関係を壊して今の経済建設路線を歩むことはできないわけですから、徹底的にこれを排除するという立場はどう批判的になっても取りにくいだろうと思います。
 それからもう一つ、中国では、これは中国に限られたことではないんですが、日米安保体制があるために日本の軍事力の増大というのがチェックされていると。つまり、瓶のふた論ですね。これはアメリカの人が言い出したことですが、中国もかなりこういう考え方をしておりまして、そういう意味からも日米安保体制というのを全否定はなかなかできないということがございます。
 ただ、これにつきましては、先ほどのアーミテージのレポート等でアメリカの方からも日本により積極的な役割を果たすようにという要請があって、それに日本もこたえているところもありますので、中国からすると余り瓶のふたとしても利いてないのかなという疑念がだんだん出てきているというのも現在の状況だと思います。
#30
○会長(松田岩夫君) 前田武志君。
#31
○前田武志君 小此木先生、高木先生、ありがとうございます。
 今、今日の課題は北東アジアの不安定要因ということで、北朝鮮あるいは台湾をめぐってのお話でありました。これと中国をどう結び付けるかということをちょっと私なりに構造的にずっとイメージをしていたわけですが。
 北朝鮮の周りは、シベリアであり、それから中国北東部であり、民族的には遊牧民の多かったところなんだろうと思うんですね。そして、いよいよシベリアの開発というのが現実の問題になってきましたし、中国でも沿海部の開発に対して東北地方の開発というものが大きなテーマになってきて、何かそこに一つの、北朝鮮も含めて将来の絵面がかけるのではないか。
 これはまあそういうことを言う識者もおるように聞いておるんですが、そういったことが実態としてあり得るかどうかといったようなことをまず両先生にお聞きしたいのと、それからもう一つは、前回の参考人、孔さんという中国のジャーナリスト、日本で唯一日本字新聞を発行しているこの孔さんがいわく、北京のエリートが結婚相手に北京の女性を選びなさいと、農村戸籍の女性と結婚すると大変なことになりますよと。要するに、都市で定住できないというような話があったわけですね。
 実は、この都市と農村、沿海部、その辺のことで私がずっと気になっているのは、実は、中国の幹部の方に、共産党の幹部の方にたまたま打ち解けたところで聞いたときに、我々のイメージでは、これはもう沿岸部と内陸部の格差が大変になる、都市と農村との格差が大変になる、そのうちに破綻を来すというふうに言われていた。それをまともに受け取るところがあったんですが、この都市戸籍と農村戸籍というのは、その中国の方がいわく、春秋戦国時代からあったんだと、中国の、あるんだと。
 中国というのは、漢民族主体の農耕をして、そしてそこを統治するところが城塞を造って、そこが都市であって、都市住民というのは支配層であって、夕刻何時かになると城門は閉められると、そしてその統治している側がその周辺の農村、農民にちゃんとした幸せを保障してないときに革命が起こって城門を攻め立てて政権が替わるんだと、非常に分かりやすい説明だなと思ったことがあったんですが。
 要するに、そういう話を聞きながら、確かに共産党一党支配の中でこういうずっと歴史的に重なった社会構造みたいなものを非常にうまく使っているんだろうと、こう思うんですが、逆に言うと、歴史的、文化的な制度、構造であるだけに、ある種の安定性があるのではないかというような感じがするんです。
 この点についても、小此木先生、どうもお詳しいようなんで、どうも日本の専門家はここを実証的に示してくれた例を余り知らないんですね。だから、どうもぴんとこないというところがあるんですが、これが一点です。
 それからもう一つは、高木先生のこの統計見ておりますと非常に面白いなと思うのは、中国の大学卒業生あるいは就学人数、そして海外の留学生数というのが載っておりますが、大体今のところ七、八千人ぐらいでここ数年続いているのかなと思うんですが、思っていたほど急激に増えているという感じではないですね、ここのところを見ると。
 そして、量的に言って七千人とかその辺の数字がどういうような意味を持つのかなという感じがありまして、これはもう全く事実を私分からずに言うんですが、台湾というのは、これはまあ自由化していますからどんどん行っていますね。台湾の人口に対する留学生の比率に対して中国のこの統治支配層、エリート層に対するこの留学生の比率というのがどの程度のものかというのがよく分からないんですが、余り多くないんではないのかなという感じもするんですね。物作りから、あるいは第三次産業からまあいろんな、教育からいろんな方面まで人材というのを考えると、恐らくそんな率ではないと。中国独自の大学の中ではなかなかそういう先端のものは知識が得られないとすれば、留学生を通じてということになるんでしょうから。
 そして、更に言えば、この台湾、沿岸部、アメリカで教育を受けた華僑、一つの大きな人材の供給の元というのがアメリカのそういう教育を通じて、そしてしかもグローバルなマーケット、金融、いろんなことを考えると、そこはひとつその海峡を越えて、沿岸部、台湾、あるいは東南アジア、その辺の人脈のつながりというものが形成されていて、むしろ日本よりも何か一体感を持ったそんな層が出てきつつあるのではないか。これはやっぱり東アジアの外交戦略というような中では大きな要素を占めるのではないかという気持ちを持つんです。
 最後に、ちょっと私見を申しますと、国民党蒋介石が毛沢東中国人民軍に負けて台湾に行くわけですけれども、多分、あの蒋介石というのは都市住民主体の支配層を持った、そこに根拠を置いた軍であって、毛沢東共産軍というのは農村戸籍の方に頼ってということだったのかなと思ったりもするわけでございます。
 多少漠然とした話で恐縮でございますが、御見解をお聞きいたします。
#32
○参考人(小此木政夫君) 今お伺いしたのは、多分経済的なアプローチでということなんだろうと思いますが、これまでも幾つものプロジェクトと申しましょうか構想と申しましょうかございまして、それが一つでも成功していればこんなひどいことにはなっていないというのが私の見方であります。
 結局彼らも、残念ながら、核やミサイルに頼らなければ生きていけないような、あるいは拉致問題に関してもそれを外交のカードとして使うような、使わざるを得ないような、そういうような状況というのが、いつごろからなったのか、発生したんだろうかというようなことを考えてみますと、やっぱりもう少し早い段階で我々何とかならなかったものかというようなことは、まあ今考えても遅いわけですが、そう思うんであります。
 例えば金丸、田辺さんのお二人が行かれたのは一九九〇年ですから、もう十五年たっているわけですから、十五年の間我々は何をしてきたんだろうかというようなことを考えてしまうんですね。その間に、今おっしゃられたようなプロジェクト、それこそ豆満江の開発プロジェクトであれ、鉄道を連結していくプロジェクトであれ、あるいは最近の中国の東北開発のプロジェクトであれ、そういうものと何か連結させて北朝鮮の体制の変化というものを誘導できなかったものかということをやっぱり考えます。
 結局、あそこに労働集約型の産業を興してやればいいわけでして、かつて台湾や韓国がやったように、それこそ経済特区を作ってでも構いませんが、そこに労働集約型の産業を興してやれば、労働力だけはあるわけですから、そうすれば彼らも食糧を自分で買えばいいわけですから、輸出をして買えばいいわけでして、そういうような形で動いていけば、周りの国との経済的な交流も活発化して物の見方も少し変わっていったんじゃないかというふうに考えるわけです。
 特に、日本との関係が正常化するというようなことになって何十億ドルもの資金が入っていくというようなことになれば、それはあんな小さな国が変わらないはずがなかったんでありまして、巷間言われているような百億ドルの経済協力なんというものがあの国に入っていったら、どうやって彼らはそれを使いこなすんだろうか、結局外部の力をかりなければいけないわけですし、国を開かざるを得なくなっていったんだろうというふうに思うんです。
 そんなような観点からいうと、今東北で行われている開発、中国の東北開発なんというのも一つの、何というかチャンスなのかもしれないというふうには思います。
 ただし、いかにもやっぱり今環境がそういう方向には向かっておりませんで、やっぱりもう核、ミサイル、そして拉致問題と、このこれらの問題が解決に向かって動いていかないことには、もう世論的にも何もできないという状況ではないかと思うんですね。
 私、実は私の基本的な考え方というのは、余りこういう場で言うのはよろしくないのかもしれないんですが、毒リンゴといって、英語で言いますとポイズン・アップル・セオリーと言われまして、やっぱり相手の体制が変わらざるを得ないようなものを体内に入れてしまえばこちらの勝ちなんであります。そのチャンスをどうも逸した、逸してしまったような気がしております。
 何かもっと具体的な質問があったみたいなんですが、私はちょっと付いていけなかったものですから、多分高木先生からお答えがいただけると思います。
#33
○参考人(高木誠一郎君) 非常に歴史的、壮大な視野を持った御質問だったんですが、確かに農村と都市を分けるというやり方は、現代に始まったことではなくて歴史的な根があって安定性はあるとは思うんですが、お話の中にもありましたように、農民反乱によって王朝が倒れるというのも一つのパターンでありまして、この分裂が政治的な体制の安定性を保障しているというよりも、このパターンが安定しているんだと思うんですね。だからこそ、現在の政権も、先ほど十分にお話しする時間はなかったんですが、中国は今や農村問題を非常に深刻に考えておりまして、三農問題と言っておりますが、農民、農村、農業、このそれぞれが問題を抱えていると、これを何とかしないと大変なことになるという危機感を今の指導層は持っております。それはやはり、歴史的に王朝が農民反乱によって倒れてきたという歴史を想起せざるを得ないからということが当然一つの要因としてあると思うんですね。
 先ほどのお話にあった蒋介石です。蒋介石は、都市住民だけではなくて、あと地主層がパワーベースでしたから、当然農民が立ち上がったときは敵になるわけで、その農民を組織したのが共産党という、非常に単純化したお話ですけれども、そういう関係になるだろうと思います。
 それから、留学生のお話ですが、このお配りした表に示しましたのは帰ってきた人だけなんですが、出て行っている人というのはもっとはるかに多いんです、そして帰ってこないというのが問題なんですが。
 中国の人の行動パターンを見ていますと、やはり留学先として最も人気が高いのはアメリカでありまして、今大体六万人ぐらいいると言われておりますけれども、ただいろんな人を見ていますと、子供を留学させる親というのはかなり多国籍展開するんですね。一国に集中しないで、日本に、何人か子供がいるような、今の人は一人っ子ですからいませんが、その上の世代の人はアメリカに一人、日本に一人、ヨーロッパに一人というような形で、多分まだ中国には多国籍企業と呼べるようなものは存在しないと思いますけれども、中国の家族とファミリーというのはかなり多国籍展開していまして、それが一つのネットワークとして様々な形でこれからも作用してくるだろうと思います。御指摘のとおりだと思います。
 ただ、それが中国の外交とか対外戦略とどう絡まってくるかというのは、その時々のトップエリートたちの人脈によるんだろうと思うんですね。彼らは必ずしも、今のように中国があって台湾があって香港があって、そして海外に華僑がいるというような状況の中で中華人民共和国の国益に沿って動くとは限りませんので、むしろ、まあ多国籍企業はよく国益を無視して行動するといったことが八〇年代以降問題にされてきておりましたけれども、中国のファミリーもそういうふうに動くことは十分あると思いますので、そのこと自体がすぐ中国の外交にとってのパワーの源泉になるというふうには私は思えませんです。
#34
○会長(松田岩夫君) 予定の時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。
 お二方のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日のお礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト