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2005/02/23 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 国際問題に関する調査会 第4号
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2005/02/23 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 国際問題に関する調査会 第4号

#1
第162回国会 国際問題に関する調査会 第4号
平成十七年二月二十三日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         松田 岩夫君
    理 事
                山東 昭子君
                野上浩太郎君
                直嶋 正行君
                山根 隆治君
                加藤 修一君
    委 員
                大仁田 厚君
                岸  信夫君
                小林  温君
                末松 信介君
                中川 雅治君
                二之湯 智君
                長谷川憲正君
                水落 敏栄君
                大石 正光君
                大久保 勉君
                工藤堅太郎君
                佐藤 雄平君
                田村 秀昭君
                藤末 健三君
                前田 武志君
                浮島とも子君
                澤  雄二君
                大門実紀史君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        三田 廣行君
   参考人
       神戸大学大学院
       法学研究科教授  五百旗頭真君
       朝日新聞社コラ
       ムニスト
       同編集委員    船橋 洋一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際問題に関する調査
 (「多極化時代における新たな日本外交」のう
 ち、日本の対米外交(二十一世紀における日米
 関係)について)
    ─────────────
#2
○会長(松田岩夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。
 国際問題に関する調査を議題といたします。
 本日は、本調査会の調査テーマである「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本の対米外交に関し、二十一世紀における日米関係について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、神戸大学大学院法学研究科教授五百旗頭真参考人及び朝日新聞社コラムニスト・同編集委員船橋洋一参考人に御出席いただいております。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 本調査会では、日本の対米外交について重点的かつ多角的な調査を進める予定でおり、本日はその第一回目として、二十一世紀における日米関係についてお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず五百旗頭参考人、船橋参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、五百旗頭参考人から御意見をお述べいただきます。五百旗頭参考人。
#3
○参考人(五百旗頭真君) それでは、失礼して座らせていただきます。
 このような大事な皆さんの集まりにお招きいただいたことを大変光栄に思っております。
 一緒に参上しました船橋さんと共通するのは、二人ともアメリカとの関係を非常に重視しております。それでいて、イラクの戦争については深く憂慮しているという点で、そういう中で同盟の在り方というのを考えているという点で共通かと思います。他方、船橋さんは第一線のジャーナリスト、コラムニストとして現在の問題をカバーしていらっしゃる。私は基本的に歴史家であります。役割分担を全く相談しておりませんが、私の方はやや歴史的な文脈というものに基づいて、船橋さんの方がきっと現在、今後のことをシャープに切りさばいてくださるんだろうと思っております。
 お手元にレジュメが届いているかと思います。日米両国とも十九世紀後半に急成長して、二十世紀の国際政治の主要アクターに躍り出た国である点で同じであります。日本は百年前の日露戦争の勝利によって国際政治のメーンアクターの一つとなりました。アメリカは、第一次大戦、第二次大戦という二つの総力戦の勝利を確定した存在として、二十世紀はアメリカの世紀と言われるほどの主要な役割を果たすことになったわけであります。日本の方は、第二次大戦でその太平洋戦争の敗者となりましたが、奇跡の経済成長を遂げて、一九七五年にG7サミットが創設されたときに、米欧日で三極を構成するという二十世紀の重要なアクターとなったということは御承知のとおりであります。
 日米関係、振り返ってみますと、戦前も戦後も三段階にわたって、大きく見ますと三段階にわたって日米関係が進展していると観察することができます。
 初めは、「初期友好(先生と生徒)」と書いておりますが、黒船の後の西洋近代国家の一つであるアメリカに、日本は岩倉使節団をアメリカ、ヨーロッパへ繰り出しましたように、近代国家の何たるかというモデルの一つとして見ると、猛然とその西洋文明の力の秘密を学び取って自立性を守り、そして条約を改正して平準化する努力をしたわけであります。その際に、アメリカは民間を中心に社会事業、教育などの面で温かく日本をリードし、励ますというところがございました。クラーク博士のボーイズ・ビー・アンビシャスというふうな言葉はそれを象徴するものだと言えるかと思います。
 注目すべきことは、生徒である日本が非常にいい生徒でありまして、学習能力が抜群に高いということなんですね。近代西洋文明を学習した非西洋社会の中で断トツの成績を示す。物すごいスピードで学習いたしますので、百年前の一九〇五年のポーツマス講和がその初期友好の頂点にして転機ということになります。一日にしてバルチック艦隊を沈めた日本の艦隊がもし世紀転換期にアメリカが領有することになったフィリピンに向かった場合にどうなるのか。アメリカ海軍はそれに対する答えとして防衛不可能と、少なくとも半年間はあきらめるほかないという答えをセオドア・ルーズベルトにしております。
 というわけで、勝利した日本はパートナーにしてライバル、協調と対抗の入り交じった日米関係というふうに日露戦争後進みます。これは別段、何でもお手々つないで仲良くとか、何でもけんか腰というのはいずれも異常でありまして、協調と対抗の入り交じった関係というのは普通の国家関係であります。個人間もそうかと思いますが、そういう関係が日露戦争から満州事変の時期まで続くと。
 問題は三〇年代でありますが、下の三のところに「岐路の第三段階」というふうに書いております。戦前は破局への、日米関係は破局へと向かう。二〇年代はワシントン体制と呼ばれる第一次大戦後の協調システムがありまして、日米はパートナーでありました。しかし、他方、日本側から見ますと、ワシントン体制下なのに一九二四年に排日移民法をアメリカが通したということで大変侮辱を受けたという思いがうずきます。
 他方、アメリカの方からしますと、日本がアジア支配、独占的にアジア支配をするということに非常に神経質になります。世紀転換期のジョン・ヘイのオープンドアポリシーに示されますように、アジア大陸はみんなのものでなきゃいけない、機会均等でなきゃいけないと。某一国、それがロシアであれ日本であれ排他的独占をすることは許せないと。アメリカを排除してはならない、他の国を排除してはならないと、そういう原理が非常に根深いんですね。いまだに自由貿易ということをアメリカは言い続けますね。それを日本が侵そうとする。第一次大戦期の対華二十一か条とか満州事変以後の動きは、そのような行動をアメリカは許せない。
 特に、一九二九年に経済破綻、世界大恐慌を迎えて、各国は内向きのナショナリズムが強くなります。外国の挑戦から我が国の経済を守らなきゃいけない、それが国民に対する責務であると、どこの政府も内向きになってまいります。そういうときには、他国との間で落ち着いて共同利益を再定義するということが難しくなって、対抗関係に傾きやすいというのが三〇年代以後の流れでありました。
 満州事変以後、中国問題に、満州事変以上に上海事変、日本の排他的支配の拡大にアメリカは不満を強めて、日本はその中国での戦争をやることによってもちろん中国人の恨みを買いますけれども、アメリカがそれに、その際に元々パートナーだったからといって味方をしてくれるわけではない、アメリカにとっても某一国が排他的に支配することは面白くないんですね。
 そういうので、中国と戦っているつもりがやがてアメリカとも、主要な国々と、枢軸国以外の主要な国と対抗しているというところへ落ち込んでいったのが戦前の破局への道というストーリーであります。
 戦後、敗戦の後、改めてアメリカの科学技術、民主主義、経済力、仰ぎ見ることになりました。日本はJISマークを学んで、安かろう悪かろうではなくて、進んだ最先端の工業製品の水準を身に付けようとアメリカの指導を得ながら強めます。そういう意味で、戦後は再び初期友好、先生と生徒の関係でありましたが、例によって日本の発展力は目覚ましいものがあって、七〇年代を迎えるころには経済摩擦、日本の経済にアメリカがたじろぐという側面が出てまいります。
 そういうわけで、第二段階、ニクソン・ショック以降は、安保、政治の面で日米の緊密な協力関係がありながら、経済摩擦がまるで春闘のように繰り返されると、そういう関係が続きました。九五年に、これが九〇年代入って、日本はバブルはじけて経済的挑戦者としての迫力を失い、アメリカの方はIT革命によって再浮上するという中で相対化されまして、九五年の自動車摩擦を最後に経済摩擦の季節は終わります。
 そして、北朝鮮の核危機が九四年にあり、九六年三月には台湾海峡のミサイル危機があるという中で、日米は安保再定義というのを、共同宣言によって日米関係を緊密化し、かつ二十一世紀にまで延長するということになります。その日米安保再定義に中国は激しく非難、批判、抗議、これは中国封じ込めじゃないかというふうに抗議はしましたけれども、一段落しますと、これを前提にして、むしろアメリカとの関係、日本との関係の改善に乗り出してまいります。そういうわけで、第三段階は戦前の破局に向かってではなくて、日米関係は強化され、そしてそれが安定、成熟していくというのが基本的な流れであると言えようかと思います。
 驚くべきことは、日米同盟が半世紀を超えてなお元気である。あの懐かしい日英同盟、あれもわずか二十年だったんですね。一九〇二年から一九二二年までの、二三年までたった二十年しかもたなかった。それを思えば、この動きの激しい現代において半世紀を超えて日米同盟がなお元気であって、更に半世紀続くかと見られるのは驚嘆すべきことかと思われます。なぜかと。基本的に相互利益を成していると。日本の安全にとってアメリカの存在は決定的でありました。そして、アメリカにとって日本を活動の拠点にできると。狭く軍事基地とだけ申したくはありません。
 例えば、冷戦戦略の絵をかきましたジョージ・ケナンの議論などでは、アメリカはソ連との冷戦をどう戦うかと。世界じゅう出掛けていって、問題のあるところで絶えず戦争する必要はないと。向こうがむちゃを、差し過ぎをしてきたときには食い止める必要がある。それ以上に大事なのは、アメリカ自身が健全な、自由な経済活力、民主主義を、健全さを、社会の健全さを保つことだ。そのようなものがアメリカだけであっては困るけれども、西ヨーロッパと日本、これだけがしっかり健全な社会として協力できるならば、冷戦は大丈夫だというふうな議論をしていますね。つまり、日本はアメリカにとって西ヨーロッパとともにグローバルな、自由な経済活動、民主主義の重要な拠点であって、そういうものとして重視するということであります。
 日本は敗者から出発いたしましたので、日本国民の間では、アメリカの占領後も軍事基地があり、支配を受けることはやむを得ないという被害者意識で物事を見がちでありますが、日本は確かに歴代内閣、アメリカに対して協力的でありました。協力的な日本にアメリカがよく報いていると、日本を大事にしている、ただ食いをしていないということを意外に見落としがちだと私は思います。
 例えば、吉田茂は講和条約を結ぶときに、何しろお隣で朝鮮戦争が起こっている、冷戦が熱戦化するさなかですから、ダレスの再軍備要求は甘いものではなかった。吉田は、しかし経済復興を優先したいと、再軍備はちょっとずつゆっくりやりたいというわがままを言って押し通していますね。アメリカはそれを許したわけですね。岸首相は、この日米安保は不平等条約だと、対等化したいということを持ち出したところ、マッカーサー二世大使のとりなしで、ワシントンはそれを受けて六〇年安保をやった。池田首相はもっと経済主義者でありまして、彼は、グローバルな国際経済の、先進国クラブの一員になるんだという夢を持っておりましたが、ガット、IMFの留保なしのフルメンバーになる、あるいはOECDのメンバーになるという池田の希望を、ヨーロッパが渋るのをアメリカがもううるさく言って実現させているわけですね。もちろん日本自身の努力ですけれども、それを応援してくれた。佐藤首相に至っては、戦で失った沖縄の領土を平和的に返還を得るということに成功したわけですね。
 というわけで、よく強者であるアメリカは日本を食い物にしているかのようなイメージでおっしゃる人がいますけれども、アメリカは極めて日本を大事にしていると。それがあったからこそ半世紀続くんだと。相互利益はかなり具体的に絶えず再定義されていると言えようかと思います。
 今日の、最近のことで言いますと、橋本首相の普天間返還の要求に対しても、一たびイエスと言いながら、しかしなかなか後詰められないという問題ありますけれども、近年のイラク戦争に際して、自衛隊を小泉首相が断固としてイラクに派遣すると。そういう日本の協力姿勢、日本にとってはイラク自体の問題をどうしようという認識よりも対米関係を重視するという要素が大きかったと思いますが、首脳レベルに加えて、アミテージ副長官が非常に注意深く日本との関係の再定義をやっている。
 二つの発言、注目したいと思います。
 一つは、民主党の前原議員に対してワシントンで言ったと、先ほど船橋さんに確認したんですが、北朝鮮による日本へのいかなる攻撃もアメリカへの攻撃と同然であるという発言をしたと。これは正に核抑止、拡大抑止の原理を大事な瞬間に言うと。非常に大事なことなんですね。同盟があっても、信頼性があるかどうか。それを、こういうふうに北朝鮮が日本に二百発余りのミサイルを、銃口を向けているという中で、アメリカの高官がそれを明言するということは非常に大事なことであります。
 それからもう一つ、尖閣列島の領土問題についてクリントン時代は中立であると、領土問題は知らないというふうな言いぐさがありましたですけれども、アミテージは記者会見において、日米安保の第五条の適用を受けると。つまり、アメリカは、日中間の紛争で中立で知らないよではなくて、日米安保の領域下にあるということを明言されたわけですね。こういうことは、非常に注意深く日本との協力関係、同盟関係を運営しているということを示すものだと言えようかと思います。
 そういうわけで、半世紀を超えてなお相互利益は続くというわけですが、波乱要因はないではないと。
 一つは、どういうときに戦後の日米関係が大変つらいものになったかといいますと、アメリカが過度な軍事行動に走るときと。冷戦下の反共軍事戦略というのは日本の戦後の知識人にとって大変いら立つものでありましたが、政府は断固としてこれを、アメリカの軍事戦略を支持すると。
 ベトナム戦争にまでアメリカが踏み込んでいったとき、日本の対米世論が初めて大きく動きました。世論調査で、USライクと、アメリカ好きですか嫌いですかというのの、いつも圧倒的に好きが高く、嫌いというのはほとんど下に寝ているというものだったのが、USライクがだあっと逆落としのように六〇年代後半落ちてくるんですね。アメリカがアジアの小国を超大国の軍事力で痛め付けていると、その戦争に正当性があるのかという疑念を持つ人が少なくないと。ほとんどUSライクとディスライクが交差しそうになる勢いであったんですが、それを食い止めたのが先ほどの沖縄返還と。日本に対して格別な配慮をもって沖縄を返還するということが六九年にUSライクの転落を一度食い止めております。
 その後、またニクソン・ショック等で下がったりしますが、結局交差せずに、七〇年代後半の保守回帰と言われる流れの中で再びUSライクが復活していくということになりましたが、ベトナム戦争は非常に日本国民にとってつらいもので、共産主義を悪魔と決め付けて、そういう認識の粗さと使命感、課題が軍事力と結び付いたときに、これは日本ではおごる平氏は久しからずとか、たけきものはついには滅びぬというふうな言葉がありましたが、アメリカがそのようなイメージで見られ得ると。イラク戦争にもそうした嫌いがあって、悪の枢軸と。二分法で正邪に分けて世界を見るという強引な決め付けとアメリカの力が結び付くところに大変危惧されるところがある。そういうブッシュ政権が再選されたと。それがどういう方向性を第二期政権において持つのかということが大きな関心であります。
 強気一辺倒のブッシュ政権でありますが、実は学習していると。ベトナム戦争のようにはならないということは割とはっきり見て取れます。二〇〇三年の十一月でしたでしょうか、一か月で百人以上の犠牲が出る事態になった後、ブッシュ政権はイラクに主権を返すという方針を打ち出しましたし、四月にまた大きな混乱状態になったときに国連中心の復興ということを改めて言いましたですし、刑務所の不祥事等についても、ともあれ処罰するという姿勢を示しております。ベトナム戦争が五十万を投入して、五万五千の犠牲を出してほうほうのていになってというのとは違って、今度の方はもう方向はかなり二度、三度修正していると。
 第二期政権でこのたび一月に選挙で勝利したと、ともあれ勝利したという、成功したと、まともと言えるかどうか分かりませんが、ともあれ選挙が行われて、ある種の正統性を築いたというところでブッシュ政権はヨーロッパへ出掛けまして、ヨーロッパとの協力関係を取り戻そうという努力をしているわけで、それは簡単ではありませんけれども、しかし、そのような姿勢を取るようになったのは、第一任期において古いヨーロッパ、新しいヨーロッパとか、もうけんもほろろに反対するものはまるでテロリストの味方だと言わんばかりであったのとは全然違ったアプローチを取っている。
 そういう意味で、第二期政権はアメリカらしい復元力。アメリカ、こう言っちゃなんですが、アメリカという国は対外関係でしばしば間違いを犯します。そのとき思い詰めるとかなり思い切って試行錯誤をやっちゃうところがあるんですね。それは、ある人の比喩で言えば、巨大な象が宝石店に入ってきてお愛想をして体を揺するものだから宝石が全部つぶれちゃうというふうな迷惑でもあるわけですけれども。
 しかし、自由で多様なアメリカ社会には、みんながブッシュに賛成しているわけでは、みんながイラクに賛成しているわけではない。むしろ真っ二つだと言ってもいい。そういう中で復元力が働いてくるんですね。プラグマティックな観点からこの路線はまずいんじゃないかというふうに思われる事態に反応して多様性のある自由な社会が復元力を働かす、ある時間幅を取ってみればアメリカは立ち直ることができる、その点で私はアメリカを深く信頼しております。その流れに、簡単にはいきませんが、動きつつあるというふうに見ております。
 もう一つ、日米関係で注意しなきゃいけないのは、戦前の経験で申しましたとおり、日中が対立するときにどうなるのか。アメリカにとって日本はもちろんアジアで最重要の同盟国でありますが、中国における利益もまた大変巨大なものがあります。日本と中国が対決関係になって、どっちを取るのというふうに迫られるということがアメリカの重荷になってくるということは十分考えられる。日本は、日米同盟をしっかりと拡充し、それ以上に日米関係そのものを強化して、その上で中国と協力関係を結んでいくと。それが非常に大事な点で、そんなことできるのかと思われるかもしれませんが、例えば九六年の日米安保再定義に対して中国は、中国封じ込めじゃないかと言って激しく批判いたしました。しかし、それを前提にしてクリントン、江沢民はお互いに訪問して関係改善に向かいましたし、日本との間でも関係改善の努力を行うようになりました。不幸にして、江沢民の訪日で過去の問題を説教しまくったために、反中的な立場がそれによって日本国内で活性化するということはありましたけれども、対日政策としては対日関係重視というふうに動いております。
 まとめてみますと、日本の生存、安全、繁栄は自己完結的ではありません。日本は世界第二の経済大国でありますが、そうであっても決して自己完結的ではないと。むしろ、世界との相互依存、相互関係の中でそのようなたぐいまれな地位を得ているわけであります。いかなる国も、この世界の一体化、相互依存の深化する時代において自己完結的であり得なくなっております。日本の場合とりわけそうでありまして、日本は自己完結的な軍事力、安全保障力を用意しておりません。
 いかなる国も持ち難くなっておりますが、その努力は日本の場合、極めて控え目なものである。冷戦期の超大国ソ連に対して、日本は自ら国防を全うするということは全く不可能であって、安保条約に依存する。今後の中国に対して自前の軍事力をもって自己完結的に安全保障力を持つということも困難でありますし、賢明なこととは思われない。現在、通常兵器に限れば日本の近代化、レベルが進んでおりますけれども、北朝鮮に対してすら日本は抑止力を持っておりません。いささか自助努力を強化しなきゃいけないというのは理由のあるところでありまして、なすべきことは少なくありません。
 しかし、大きく見ますと、米国との安全保障関係は日本の生存、安全、繁栄にとって不可欠であり、ますます重要であると。その上で諸国との友好協力関係を広げていくという努力が必要であります。アメリカの軍事力と日本の経済力、そしてそれがODAあるいは平和構築等で世界の安定、繁栄というのを支える。そうした努力は相互補完関係を成している。日米関係を強く持ちながら、日本はそれと補完関係を成して国際的な役割を進めていくと。アジア諸国との関係緊密化は、日本の言わば地元でありまして、地元において信頼感がある、仕事ができる、やりやすい状況を持っているということは非常に大事であります。
 アメリカとの関係と中国との関係が両立しないんじゃないかという見方も一部にはあるかもしれませんが、確かにアメリカの一部、中国の一部には、米中お互いを不倶戴天の脅威、敵というふうにみなしがちな人もおります。しかしながら、ニクソン、キッシンジャー以来、米中関係は結局協調と対抗のゲームであって、対抗はあっても協調の枠組みを崩さないという形を取っております。
 冷戦下において、イギリスがアメリカとの特殊関係というのを重視しながらソ連との間でもデタントを求めた、そしてヨーロッパ大陸との協力、西ヨーロッパの強化ということを努めた。日本もこのアジアにおいて、二者択一ではなくて、アメリカとの強い関係を持ちながらアジアとの協力関係を築いていかなければならないだろうと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。
#4
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 次に、船橋参考人から御意見をお述べいただきます。船橋参考人。
#5
○参考人(船橋洋一君) 船橋でございます。着席したままで御報告をいたしたいと思います。
 ちょっと声が風邪ぎみで、申し訳ございません。
 時間を三十分いただきましたので、お手元に一枚、二枚、簡単な目次みたいなものをお配りしておきました。同時に、先週末のワシントンでの2プラス2、これを受けての共同声明、共同発表、英文それから和文、両方お配りしております。
 今日はせっかくの機会でございますので、日米関係、これからどこがポイントで何が課題かということをお伝えしたいと思いますけれども、やや長期的に見ますと、世界の大きな潮流の変化といいますか、やはりそれがグローバルな大きなインパクトを持って日本あるいは日米関係に新たな挑戦を迫ってくる。大きく分けて、それを三つにとらえてよいのではないかと。
 一つが、アメリカの「一極化、一国主義化」というふうに書きましたけれども、これは運命的にアメリカが今後も引き続き一国主義化をずっとそういう傾向を持っていくだろうということではなくて、アメリカに伍するような、ライバルになるようなパワーが向こう二十年間多分生まれないとした場合に、大国ゲームにおいてはこのアメリカの一極構造というのが続いていくだろうと。そうしたときに、やはり内政面も含めて、アメリカが一国主義的な傾向、これを引き続き傾向として持ち続けるという、その趨勢をとらえている話です。
 そのもう一つの背景に、アメリカの内政の変化が多分あるのではないかと。外で他より隔絶したパワーを持っているということに加えて、内政面も、二〇〇〇年、二〇〇四年の選挙などを見ていますと、「文化価値志向」というふうに書きましたけれども、ゲイの問題であるとか、そういう文化・社会イシューズというのが非常に大きな政治争点になる。選挙の争点になる。そこへ九・一一がかぶさってきたものですから、パーソナルセキュリティー、個人の安全に対する脅威、これがそのまま国家のセキュリティーという形で、あるいはそのまた逆も真なりと。
 特に、テロとか大量破壊兵器とか新しい脅威の場合に、実存的な、生物的な、生理的なものも含めた脅威感というものが非常に増大、あるいは脅威感が増すと。そうしますと、人間というのは、アメリカだけではなくて、アメリカ人だけでなくてどこでもそうだと思いますけれども、より確かなものに確かめたいといいますかね、それが民族であるとか伝統であるとかアイデンティティーであるとかいうことになりがちなんですね。それが今回の、特に二〇〇四年選挙で非常によく出たのではないかと思いますね。あれほどたくさんの人がブッシュ大統領再選、投票したと。みんながみんな跳んだり跳ねたりするエバンジェリカルな宗教右翼であるはずはないですし。ですから、メーンストリームのアメリカの人たち、そう保守ではない、そう過激ではない人も非常な不安感をやはり持ち始めている。
 アメリカはグローバリゼーションのある意味じゃ震源地ですけれども、また、グローバリゼーションに最も大きな衝撃を受けているのもまたアメリカだと思いますね。開かれていますから、アメリカは、世界のどの国よりも。それが九・一一というトラウマになっていますけれども、このトラウマは、五年、十年ということでどこかへ消えてなくなるということではないと思います。テロの根源であるとか大量破壊兵器の拡散であるとかいう脅威は、これは現実脅威ですから、リアルな脅威ですから、アメリカが、ブッシュが政治的にそれを脅威だ脅威だと言っているだけじゃないわけですよね。アメリカの国民がそういう脅威感を持っている。
 それは要するに、アメリカ人は自分たちだけのことしか考えないと、自分のサファリング、苦痛だけを考えていて世界のことどうでもいいと。まあ確かにそういうところないわけじゃありませんけれども、しかし、単にアメリカがアロガンスで、傲慢だから、アメリカの現在取っているような行動、政策を取っているだけではないと思いますね。国民の恐怖感、その恐怖感に政治指導者としてこれはアドレスしなければいけない責任があるわけですから、セキュリティー、そういうことからもやはり今のブッシュ政権のような政策あるいは対応というものを取りがちだと思いますね。
 そして、これは、じゃポストブッシュになったからどうかと。ブッシュのやり方をいろいろ批判するでしょう。共和党からも批判が出てくると思います。しかし、長期的な趨勢として、九・一一のトラウマ、それからグローバリゼーションの中でのアメリカのこのむき出しの、裸の状態の、そこから出てくる新しい脅威感というものは、これは内政に必然的に跳ね返ってきますし、それがさらには外交にも投影されてくると。そういうアメリカだということですね。世界の国際情勢・環境の変化というときに、日本にとって掛け替えのない同盟国のアメリカ自体が最も激しく揺さぶられていると、あるいは揺らいでいるというところが大きなこれからの課題だろうと思います。
 もう一つは、中国の台頭ですね。これはインドの躍進がもう一つ、一波、二波と来ますけれども、まあこれ「変更」と書きましたけれども、既存のステータスクオを変更というよりは変質ということになるかもしれないと思います。国連のシステムであるとか今のWTOであるとか、大枠のところでこの両、将来のスーパーパワーが、インド、中国という、これを破壊しようということではないと思います。やはりこの枠組みの中でゲームを自分に最も利益のあるようにしていこうということだろうと思います。
 それは多分、国際政治の文脈あるいは面では、多極化という趨勢が強まってくると思います。インドと中国は最近ストラテジックパートナーシップと言い合う、インドとロシアと中国が首脳会談を開催するとかいうようなことを見ても、明らかにアメリカ一極をにらんだ多極化ゲームというのが始まってきておりますし、日本の外交政策、対米政策もそのような新たなゲームの影響を受けざるを得ない、あるいはそういう要素を織り込んでいかざるを得ないというところですね。
 三つ目がグローバリゼーションですけれども、これはむしろ構造というか、構造というより、プロセス面での大きな変化が生まれている。トランスナショナルなインターフェースが経済、社会、それがさらには政治にも噴き出してくるということです。ですから、多極化時代における日本外交というこの一連のシリーズというふうに伺いましたけれども、単なる多極化ということだけでなくて、もう少し多層的な変革が、パワーバランスにおいても、それから関係論においても内政面においても、物事の決め方、例えばスピードとかですね。
 あるいは、この間までインドとそれからフランスとイギリスとアメリカとロシアと、この五か国の首脳の補佐官、外交補佐官は四六時中、Eメールと電話でつながっているわけですね。インドは別にG6、G7でも何でも、G8でもないわけですけれども、そういうたまたまの偶然の要素もあるんですけれども、目に見えないG5というのが、そういうことで補佐官レベルでは毎日連絡を取り合える関係というのができてしまっている。日本はそこに入ってない。中国もなかなかうまくまだそこに入れないと。
 そうしますと、そういう政策決定過程というのは、別にこれはフォーマルなものでもありませんし、何らの表に出るものでもないんですけれども、多分世界で我々の見えないところで様々なそのようなループ、つまり輪ができているわけですね。これは外交でもそうですし、いろいろの分野でもそうでしょうけれども。そういうことも含めて日本の外交政策上、対米外交も含めて、政策決定プロセスであるとか外交体制というのが今までのままでいいのかどうかという実は非常に大きい問題がここに生まれているわけです。
 日米関係そのものに即して、それではどのような環境変化が生まれているのかというふうに少し分け入りたいと思いますけれども、やや言葉が過ぎるかもしれませんけれども、同盟経営、同盟管理維持上のリスクが今までより高まってくるということを覚悟しなければいけないんではないか。
 その根本は、様々なギャップが日本、アメリカ両国の間で生まれつつあるということですね。これは日米だけでなくて、アメリカの冷戦期の同盟諸国、同盟体系、同盟関係との間でほぼ一様に生まれているギャップなんですが、一つは軍事変革、トランスフォーメーションで明らかになってきていますけれども、能力ギャップですね。インターオペラビリティーが非常に難しくなってくる。アメリカだけが突出して、3CIであるとか、軍事の、特に軍事革命、RMAと言いますけれども、ソフトウエアも含めて、インテリジェンスも含めて圧倒的に強い立場に立ってしまうと。アフガニスタンの侵攻のときにラムズフェルドが、イギリスなんか来てもらっても来てもらわなくてもいいというふうに口を滑らしましたけれども、イギリスでさえ相手にされないようなこの同盟というのは一体何だろうかということを、深刻な疑問を投げ掛けたときだったと思いますね。
 NATOが九・一一後、初めてその六条、これに基づいて、つまりアメリカへの攻撃を我々の攻撃であるということでコミットをしたところ、アメリカは、サンキュー・バット・ノーサンキューと言わんばかりの対応でしたよね。つまり、お荷物だと言わんばかりなんですね。純粋に軍事オペレーション上はそうかもしれません。しかし、同盟というのは純粋に軍事オペレーションではないはずなので、それは政治的な信頼関係であるとか、あるいはプレゼンスであるとか、安定力であるとか、非常に様々な目に見えないコンポジットであるはずであって、非常に不幸な出来事だったと思います。まあ、今アメリカは少しは反省期に入っていると思いますけれども、先ほど五百旗頭先生おっしゃったようなところに少し戻りつつあると思います。
 脅威ギャップ、脅威ギャップは、先ほども触れましたけれども、アメリカだけが九・一一テロ、大量破壊兵器、少し大げさに騒ぎ過ぎているんじゃないかと。インテリジェンスまで動員して、あるいはねじ曲げてでも、大変だ大変だと、危機だ危機だとあおっているんではないかというような疑いを西欧あるいはアメリカの同盟国の一部が持ち始めるほどこのギャップが広がっている。
 大ゲーム・新ゲームギャップというふうに言えるかもしれませんけれども、新しい脅威、テロとか大量破壊兵器とかそういうものと、伝統的な大国パワーにおける、例えば中国の台頭、さらには将来における覇権に行くかもしれないリスクとかそのようなもの、あるいは朝鮮半島の冷戦がまだ完全にはここは終わっていない、そういうレジデューとして残存の脅威というのがやはりあると。そこに、さらに核保有という全くもう一つ新しい脅威がかぶさってくるという非常に屈折した複合的な脅威が生まれてきているわけですけれども、そういう地域の脅威。それと世界の平和協力というようなグローバルな脅威と、どのようにそれぞれに優先順位であるとかいうのを測定し、それから決めるのかと。これは地理的な要因もありますし、これが例えばアメリカと日本でも必ずしも同じではない。
 今度の2プラス2では、非常に特徴的なことは、最初のこの二番目の、第二ですけれども、世界、地域、ここでの脅威というのに一緒に取り組みましょうということで、もう日米安保は初めからもう世界というふうに何かすとんと入っちゃっていますね。それから、この例えば十三のところでは、そういう新しい脅威も含めた課題が生まれているので、安全保障上のですね、自衛隊の役割とか任務とか能力とか、そういうことについても、アメリカの、米軍も含めてそれぞれ検討する、エグザミンという表現ですけれども、しましょうという、ある意味では安保条約、安保体制の全く新しい段階に向かおうというような、そういう今局面だと思いますね。
 そのときに、やはりこの能力、脅威、それから世界の主要な安全保障上の課題、優先順位、これをどうするのかというようなところにおいて、実はギャップが非常にあるんだというその現実を見ておかなきゃいけないと思いますね。
 日米関係は、先ほども五百旗頭先生が御指摘になりましたけれども、ある意味では非常に恵まれたところがあって、日本の政治リーダーも日米関係はこれは命懸けでやってこられたと思いますね、自民党政権も。アメリカも、歴代の駐日大使を見ても分かりますけれども、やはり非常に意を尽くして、日本に最大限の配慮を払った人事、シンボルとしてやってきていると思います。
 これは、担い手ということでいいますと、国務省の菊クラブ、クリサンセマムクラブ、ジョセフ・グルーがこの典型といいますか、この源流の一人だと思いますけれども、それが脈々と続いてきている。天皇制の維持とかいうのを体を張ってやってくれた人ですよね。それから、それが大体もう終わりになって、ここでアーミテージさんを頂点とする山脈、トーケル・パターソン、マイク・グリーン、ジム・ケリーという、一期目の小泉・ブッシュ関係の強固なものを下支えしてくれた、これを私はマッチョクラブと呼びたいんですけれども、ムキムキマンですから。アーミテージさん、二、三日で来ますけれども。そういう人たちの流れ、これも多分アーミテージ退場とともに消え去っていくだろうと。次にどのような担い手群像というのが、日本との関係、日米関係をライフワークとしてやると、そういう人たちがどこにいるか、ちょっと見えないんですよね、ここは。多分ヨーロッパの人たちも同じようなことを感じているかもしれませんね。ですから、日本だけが特別ではない。しかし、そういうことも考えておかなきゃいけない。
 中国リスク。これは先ほど五百旗頭先生触れられましたんで余りあれしませんけれども、アメリカのこの、まあ中国はアメリカの二面性と言います。
 私は、長期的には米中関係やっぱり相当険しくなるんではないかと。アメリカはやはり中国を、アメリカにそれを挑んでくる相手と。ライスがフォーリン・アフェアーズの論文で、中国はアジア太平洋におけるアメリカのこの今の役割に対してリゼントしていると、つまり恨みに思っていると、ですからそれを、現状を変革したいんだと、つまりステータスクオを変えようという国だと、今のステータスクオにサティスファイドしてないと、こう言っていますね。多分、まだ今の段階ではそうだと思いますね。それが東アジア共同体構想であるとか六者協議であるとか、様々なところで中国の影響力あるいはパワー投影という外交につながっていると思いますけれども。しかし、ブッシュ政権、向こう四年ぐらいで考えたときは、やはり中国との関係、安定させておくという方が優勢だろうと思います。
 日中関係が非常に難しくなると日米同盟もなかなか難しいというのはおっしゃるとおりだと思いますけれども、米中関係が難しくなったときの日米同盟というのも実は非常に難しいんだということを同時に考えておく必要がある。そこでは台湾の問題が決定的に重要であって、ここは予防外交、予防安全保障という概念でもって、言ってみれば現状維持、独立させないと、中国にも武力行使させないということでいく以外ないと思います。日本もアメリカも、台湾の独立でそれぞれの同盟の強度、強靱さをテストされるということに関心はないわけです。それを許さないということを台湾にも言わなきゃいけないし、中国には、今回の2プラス2のことで台湾初めて言及しました。中国怒っていますけれども、私は良かったと思いますね。こういうふうにはっきり、あいまい戦略はもう効かないというふうに思います。
 時間がなくなってきましたから少し飛ばしまして、日米同盟の経営といいますか、管理上の問題ということを少し申し上げたいんですけれども、このような大きな大変革の中での日米同盟、三つの考え方で多層的に組み立てていくべきじゃないか。
 一つは、自立の思想といいますか、精神の領域でいいんですが、独立しろということじゃないんですね。日米同盟破棄して日本が自分でやれということを言っているわけじゃありません。私はそれには反対ですけれども、やはり日米同盟を中心に考えていくべきだと思いますが、やはり、日本が自分の国を守る、特に南西諸島、沖縄、領土問題も含めて、尖閣の。自らが自らを守るというこの意志、精神、それをもう少し強く持たないことには、実は日米同盟も難しくなるというふうに思います。
 五十年、アメリカは相当日本は甘くやってきたところありますね。勝者、敗者という同盟というのは日本とアメリカだけですから、二国間同盟は。ドイツもイタリアもNATOの中で、枠組みの中でやったわけで。非常に珍しい同盟ですよね。やっぱり歴史のそういう遺制といいますか、非常に機微なところ。広島、長崎とか、そういうこともありますし。しかし、これから日本がアメリカに対して戦略的な価値を高めて同盟を維持していくと。経済力はかつてほどではないと、中国はアメリカと戦略的パートナーシップを組みたがっているという中で、やはり、日本はこれだけのことを自分でやれると、やるんだということを常にアメリカに示しておくということがやはり重要になってくると思います。
 沖縄の基地の問題の解決も、沖縄をやはり日本が自分の安全保障上の課題だということでやって初めて、米軍の海兵隊も含めたそのフットプリントの削減ということもあり得るわけですね。単に面積だとかそういう平面的な解決ではなくて、もっと立体的に、つまり日本の役割というもう一つ心棒を入れた形で立体的に解決していかざるを得ない。これが一つ。
 もう一つは、相互補完ということですね。これは、今NATOの新しい構想の理論的な検討が進んでいますけれども、そこでの一つのキーワードがコンプリメンタリティーと。これからの同盟というのは相互補完を旨とするべきである、みんな同じようにやる必要はないんだと、それぞれの得意芸で、役割分担で総和として一番いい結果をもたらせばいいと、こういう言い方ですね。これは日米同盟についても言えるんではないかと思います。
 例えばアチェ。アメリカも今日本も、軍隊それから自衛隊を送って支援活動やっていますけれども、インドネシアはやはりアメリカには早く引いてもらいたいと、日本にはもうちょっといてもらっても構わないということをもうかなりはっきり出してきていますね。モスレムの国であるとか、アメリカが動きにくいところというのもたくさんあると思います。ですから、そういうことも含めた相互補完という新しい文脈、分野というのが出てきている。
 それから地域協力。これは、先ほどの東アジア共同体づくりの過程で、現在、ASEANプラス3を中心にこれを築き上げていこうということなんですけれども、アメリカの中にはいろいろな意見があります。まだきっちり、きっかりと定まってないようですけれども、反対論もあります。御承知のように、十数年前には、ベーカー国務長官がマハティール・マレーシア首相のEAECをつぶすと、太平洋を分断させないと。日本もそういうことで、EAEC、マハティールにはもうこれ以上やるなということだったんですが、今回は私は、この東アジア共同体を日本も一緒になって、あるいはある意味では先頭に立って育て上げてアジアの地域主義をしっかり固めていくべきだと思いますね。
 そのロジックと、アメリカと日本にとってのメリット、それから日米同盟にとってのメリットもアメリカにしっかりと語り掛けていく強靱な論理構成、これが必要だと思いますね、戦略対話が。日米同盟と東アジアの共同体形成というのは矛盾しないということなんです。先ほど五百旗頭先生もおっしゃった。私も全く同感です。
 よしんば、アメリカが圧力掛けてまた同じように入るなと言ったとき、これは、日本は多分アジアの国であることをやめなきゃいけないですね。最もアジアから日本が自ら孤立することになる。そもそも地域の安定というのは、グローバルな平和安定、世界平和協力と、そのために日米同盟やりましょうというんですから、地域の安定というのは世界の安定の一つの足場として非常に役立つと。これ、NAFTAについてもEUについても言えると思います。東アジアだけなぜそうではないのかと。この説明しなきゃいけませんね、アメリカは。できないんではないかと思います。
 中国をインゲージさせるために様々な手を使わなきゃいけないですね、これから。アメリカの力はもちろん使わなきゃ、日本の力も使わなきゃいけない、国連も使わなきゃいけない、アジアの地域主義も使わなきゃいけない。そのために中国をみんなでまたこの中に入れていくと。これインゲージャーですね、インゲージングでもあるわけです。今はAPECがありますから、かつてのように単に東アジアだけで突っ走るというわけじゃないわけです。APECもまた強化しながら、再構築しながら、そこと東アジアの共同体をつなげて考えればいいということも言えますよね。
 ですから、様々な形でこの東アジア共同体と日米同盟の共存、両立、これは可能であると。それを論理構成も含めてやるのは日本だろうと思います。また日本しかできないんではないかと思います、アメリカにそういう説得力を持って言えるのはですね。ですから、これは歴史的な大変大きな機会であると。で、アジアの国々に対しては、日米同盟がアジアにとっての大変なステーバライザーである。日米同盟だけでなくて、日本そのものもまた大変なステーバライザーであるということを示していく必要があるというふうに思います。
 時間が来ましたけれども、最後に一言だけ。
 この今まで申し上げたような政策的課題、日米同盟維持の、管理の、プロセス上の問題というのを一番最後にちょっと書いておきましたので、お目通しいただければと思います。
 二つだけ申し上げておきますと、官邸の外交の強化。日本が独立して一九五二年以降、日本の総理がアメリカの上下両院で演説した人は一人もいないんです。イギリスは四人います。アトレー、チャーチル、それからサッチャー、ブレア。池田勇人首相があいさつというのをしました、アメリカの下院で。六一年です。そこで、これから日本は二年で倍増してみせるということを言っていますね。立派なものだったと思いますけれども、しかし、これはあいさつです、あくまでも。グリーティングです。本当にスピーチをしていただきたいと思いますね、日本の首相に。
 最後は、オックスフォード大学が二十一世紀のこの一番最初の年の二〇〇一年の五月に、七百万ポンドを投入してアメリカ研究所を作った。ラザミアという、このロード・ラザミアというデーリー・メールを持っている人ですけれども、まあ亡くなりましたけれども、この間。これだけ深い米英同盟の国のこの一方のイギリスが、二十一世紀の門出に当たってもう一度アメリカとの関係をとことん我々はやるんだというんで、グローバルにおけるアメリカというのと、それからアメリカの文化、これのコンストラクションと、この二つの大きな講座を作って始めました。
 私は、日本も本当のアメリカ研究所というのが多分必要になってきているんではないかと。アメリカの大きなその大変化がこれから予測される中で、アメリカを空気のように、知的な対象と見ない傾向がありますけれども、それは良くない。良くないだけでなくて、やはりそれが日米関係の担い手をいろいろ育てていく、そういう温床と、知的な温床という、そういう意味合いからも必要になってきているというふうに思います。つまり、認識とか経験を共有して蓄積するその場、そういう、そのインスティチューションが必要なんですね、日米同盟、これから。アメリカ研究所はその一つの枠組みになり得るのではないかというふうに思っております。
 以上でございます。
#6
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 これより質疑を行います。
 質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。
 できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いします。
 また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
 まず、大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
 岸信夫君。
#7
○岸信夫君 五百旗頭参考人そして船橋参考人には、本当に今日は有意義な御意見を拝聴する機会をいただきまして本当にありがとうございました。御両名の日ごろの御研究そして御努力に深く敬意を表する次第でございます。
 日米関係ということでございますが、ペリーの来航以来この百五十年、世界を見ましても、最も我が国はやはりアメリカの影響を受けた、また受け続けている国の一つであると、このように思うわけでございますが、特に戦後六十年を考えますと、やはり日米同盟を基軸にここまで経済発展を遂げてきた、我が国の安全が確保できたのもこの日米の関係というものがあったからであると、このように思うわけであります。
 日米同盟が我が国の外交の基軸であるということに関しては、今後も当分基本的には変わらないんではないかと考えておりますけれども、ただ、我が国としての外交の舞台はやはり東アジア、特にやはりこの極東そして東南アジアも含めたこの地域ということになると思います。すなわち、やはり日米関係、日米同盟というのは我が国の太いバックボーンとして押さえておきながら、それぞれの隣国と対処をしていくということになるんだと思います。
 先ほど船橋さんからもお話ございましたけれども、この日米同盟と東アジア共同体は決して対立するコンセプトではなくて、やはり共存していかなければいけない。その意味でも、我が国というのは大きな役割を今後果たしていかなければいけないんだというふうに思います。
 ただ、現実問題として我が国を取り巻く諸環境を見てみますと、非常に不安定な要素を多くはらんでおるわけです。まず一つは北朝鮮でありまして、こことは拉致の問題がある、また核の問題を含んでいる。そして、中国でございますけれども、非常に大きな大国に対しては我が国はどういうふうに対処していったらいいか。また中国と台湾との関係、これについても我が国の安全保障の面からも非常に大きな課題となっていくわけであります。
 こうした課題の中で、まず北朝鮮のことを考えますと、まず拉致問題というのは非常に日朝の固有の問題で、非常にローカルな問題であるかもしれない。ただ、もちろん我が国はそこに主導的に積極的にこの解決に向けて努力していかなければいけないわけですけれども、残念ながらこの二国だけで解決できるような状態には今ないわけで、その中には、アメリカからの強い支持をいただきながら、また一方で中国等隣国の協力も得ながら進めていかなければいけない問題であるわけです。
 北を動かす、中国が特にこれからどういうふうにこれを動かしていくかということですけれども、中国が北朝鮮をお荷物と感じているかどうか。拉致の問題だけでいえば特にそういうことはないかもしれませんけれども、今核の問題が出てきている状況でございますから、この半島の核保有というのは、決して中国にとっても、あるいはロシアにとっても好ましい状況にはない、そしてアメリカにとってもほっておくことはできなくなりつつあるわけでありまして、こうしたことにアメリカの力を通じてまた中国等を動かしていく、こういうことも我が国として考えていかなければいけないのだというふうに思っております。
 今、そうしたことでアメリカの力をいろいろ必要としているわけでありますけれども、この百五十年を考えますと、今、日米関係というのは非常に最も良好な関係にあるというふうにも言われているわけであります。これは、一つは小泉総理そしてブッシュ大統領という二人の間の個人的な信頼関係、これが非常に大きなところにあるわけです。
 そして、さらに、テロに対する共通の認識の下で、アフガニスタンそしてイラクに対して我が国が積極的にできる限りの努力を続けてきたことがアメリカから非常に評価を得ている。そうしたことを通じてこの関係の強化というものが図られているんだと思いますけれども、一方で、アメリカはどういうふうに考えてくるだろうか、今後どういうふうに動くかということでございますけれども、やはり先ほどからもお話に出ていますが、アメリカもやはり振り子が振れるということが多くあるわけで、今非常に日本側にいい形で振り子が動いている、これがいつ逆に動いていく可能性があるのかということであります。
 そういう時期をできるだけ長く先になるように、また逆に動かないようにしていくのも我が国の努力であるとは思いますけれども、アメリカの国民も、その復元性ということに対してやはり微妙な、非常に優れたバランス感覚を持っている国民だと思いますので、ブッシュ政権の後、やはり少しその揺り戻しがある可能性もある。そうしたときに、我が国に対するアメリカの態度というのがどういうふうに変わってくる可能性があるか、そのタイミングというのがどういうふうになるのか、あるいはブッシュ政権の下でもその可能性というのがあるのかどうか。
 過去、我が国は何度かトラの尾を踏んだと言われるような事態があったわけですけれども、そうしたトラの尾というものは今のアメリカにも存在するのかどうか、こういったことに関してお二人より御意見をいただきたいというふうに思います。
 そしてもう一つは、国連の位置付けなんですけれども、ここに来てアメリカも、イラク戦争以来大変こじれていたヨーロッパ、フランスあるいはドイツの国との関係の修復というものを図っておるわけです。
 これは、一つはアメリカがこのイラク戦争開戦前に感じた国連安保理の機能の限界、そして今感じているであろう世界の平和確保のために、逆に国連の重要性、安保理の重要性というものを感じているんではないかと思います。アメリカは、今後、国連に対してどのように対処していくのか。また、我が国、常任理事国入りを目指している国としてどのように考えていったらいいのか、こうした国連の場を通じての外交というものについてまた御意見をいただければと、このように思っております。
#8
○参考人(五百旗頭真君) ありがとうございます。
 アメリカの対日姿勢、今は史上最良だけれども今後大丈夫かという第一のポイントですが、ブッシュ政権が第二期を迎えるに至って、先ほど来話題になっていますように、アミテージが、現場で対日関係を実際にマネージしたのはアミテージだった。ブッシュさんと小泉さんは高いレベルで非常に緊密な枠組みを強化している。それを背にしながらアミテージが中心になってやっていた。それが、先ほどの船橋さんのお言葉で言えばマッチョクラブですか、これは引いていく。
 じゃ、対日関係ぐらぐらするかというと、そうでもなくて、ブッシュ政権というのは型を割とはっきりさせている政権だと思うんですね。敵と味方とか、友好と良くないやつというふうなのを割とはっきりしていて、日本との関係は大事だ、同盟国であり良き協力者というのが割とはっきりしている。
 ですから、アミテージがいなくなったら駄目かというと、それはライスであろうと、ブッシュ政権の枠組みでやると。総退場ではなくて、NSCにいるマイク・グリーンは非常な知日派であって、彼はライス補佐官に第一任期の間非常に深い信任を受けて、東アジア担当、初めは日本・韓国担当の部長だったんですが、二年たったところで東アジア担当の上級部長になってやってきた。この人まで退陣してしまうと大変脆弱になるなと心配しておりましたが、マイク・グリーンが残って、そしてビクター・チャを日本・韓国担当の部長として強化してということになっておりますので、NSCの方はそういうので対日関係をしっかり見るという姿勢があって、六者会議もマイク・グリーンずっと出ているようです。それから、国務省の方はそういうのでブッシュ政権の方針、枠組みでライスがやるというので、そう簡単にぐらつくわけではないと。
 しかし、波乱要因は、小泉・ブッシュ関係というのは、来年九月に小泉政権の任期が来ると、その後どうなるか。任期一杯までなのかどうなのかは皆さん次第で私は存じませんけれども、小泉後の首相がどういうスタンスを取るか、これはもう明らかにブッシュ政権を変えますね。
 ブッシュ政権ははっきりしているというけれども、今度は、例えば金大中さんに対してブッシュさんがどんなにきつかったかということを思えば、次の政権がブッシュ好みのものであるかどうかというのは非常にばかにならない意味を持つ。それは、金大中さんの場合には、太陽政策で融和的な、リベラルだというので余り、やや違和感を感じたようですが、そういう問題は起こり得る。それは自民党内の後継者であるか民主党へ移るかというふうなことを含めて、小泉後が日米関係どうなるか、これは大きい。
 それに加えて、例えばイラク、サマワ自衛隊の問題、比較的自衛隊の人、大変良くやっていて、市民、地域での了解、協力関係を築いていらっしゃいます。それで大過なく進めばいいですが、悲劇的なことがあった場合に日本の対応がどうかと、それが小泉さんであるかそれ以後であるかによって扱いが違ってくると思います。そうしたことが波乱要因としてあると思いますけれども、ブッシュ政権としては意外に枠組みは簡単に崩れるものではない。
 もう一つの、国連をどう使うかと。各国とも国連はどう使うかというふうに、自分たちの外交政策を生かす、利用する場として考えておりますが、アメリカの場合、御承知のようにイラク戦争を始めるときに国連が決議をもってサポートしてくれなかったというので役立たずと、もうこんなものはなしにして有志連合でやった方がいいというふうな振り方をいたしましたが、その後のイラクでの困難という中で、ヨーロッパとの協調、国連との協調ということをやはり捨て切れないというわけで、非常に高いプライオリティーは置いておりませんが、これを有効利用しようというところへは戻ってきております。
 日本にとってアメリカという国が、日米関係は何であれ大事でありますけれども、しかし、アメリカがマッチョに振り過ぎて荒くなるということは、東アジアにとってもグローバルな政策にとっても決して望ましいものではない。日本は、アメリカが国連によって正当性付与機能を上手に生かすというふうに動くということを促し助言していく、それが望ましいことであろうと思っております。
#9
○参考人(船橋洋一君) アメリカのトラの尾を、しっぽを踏む危険という。
 今までの日米関係では、ここはよく分からないところありますけれども、田中角栄氏のソ連からのチューメン石油、それからウランの購入、それに対するアメリカの非常な不快感。第一次石油危機のときの、日本が一バレル二十二ドルとか、ナイジェリア原油とか、物すごい高値で買いあさって、キッシンジャーが乗り込んできて、これがもう一つ。それから、湾岸戦争のときの、海部内閣のときの、まあこれは御説明するまでもなく、アメリカの大変な失望感といら立ち。その前の東芝のココム違反と、こういうところでしょうかね、物すごく怒ったのはね、アメリカが。そういう段階といいますか、そういうのではないと思います。日米関係はもっと成熟していると思いますね。
 ですから、私は、むしろアメリカにかなり、アザデガンのイランなども下手やりますと日米関係非常に緊張させますので注意しなきゃいけないと思いますけれども、しかし、先ほどの相互補完ではありませんけれども、日本がやれること、やること、それからアメリカがやること、やれること、それをもう少しお互いに相互補完性というのを意識して、両方にそれはプラスになるんだという共通理解をつくる。ある意味ではブレーキを掛け合うところもあるわけですね、同盟というのは。同盟というのは、ここでも書きましたけれども、束縛というラテン語から来ている言葉だそうで、ややお互いに窮屈になる、それがまた重要だということですよね。
 二つ目の点、国連ですが、手短にいたしますけれども、今回のこの2プラス2でも十一項にこういうふうに書いていますね。「現在の機運を最大限に活用して日本の常任理事国入りへの希望を実現することにより、国連安全保障理事会の実効性を向上させるための努力を連携させる。」と。
 ですから、アメリカも日本の国連常任理事国、一肌二肌脱ぐということを、こういうことを言っているわけですけれども、しかし、現実はどっちの政党であろうが真剣にやったことは今まで一回もないですね。私はそれは良くないと思う。やはり、イラク後の国際システムの安定とか中東の安定とかいうことをいろいろ考えたときに、国連は物すごく重要なんだということを日本はアメリカに強く言って、それで日本はこうこうこういう貢献できると、あなたと同じように全部やるとは限りませんよと。日本が入ればアメリカ二票というふうに言われちゃう危険性もあるわけですから、相互補完性でいいんだと。日本は日本の強いところでやればという、そういうことも含めた、国連に入ったときに、じゃ一体何をするのか、何が日本はできるのかということをもう少し綿密に定義といいますか、明らかに、正確にする必要がありますね。アメリカとそこで政策協議をしていくということが必要じゃないかと思います。
#10
○会長(松田岩夫君) 藤末健三君。
#11
○藤末健三君 民主党・新緑風会の藤末健三でございます。
 本日は両参考人に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。
 実は私も、最後に船橋先生からお話ありましたように、東アジアの共同体というものをつくることによって地域が安定し、そして平和をつくるんじゃないかということを私も考えておりまして、今、中国、韓国とかいろんな国に直接伺いながらFTAをどう結んでいくかという議論をさせていただいております。
 そういう中で、私、三つのことを今日両先生にお聞きしたいと思っておりまして、一つは、私が中国に伺って日本と中国のFTAについて議論したときに言われましたのが、もう御存じのとおり、今、中国、日本の最大の貿易相手国でもございますし、また産業構造的にも非常に補完的な関係になっていると。日本の産業界なんかから見ますと、やはり中国とのFTAを結びたい。また、中国側も日本とのFTAを結ぶということをターゲットに入れているという議論ございました。
 ただ、向こうの研究者の方やあと政府の方がおっしゃいましたのが、日本と中国が経済的に接近することについてアメリカはよしとしないんじゃないかという話をおっしゃる方が多数おられまして、その点につきまして両先生のお考えをお聞きしたいと思います。
 そして、二点目にございますのが、FTAにつきまして、またアメリカとの関係。今、本日両参考人からお聞きしましたのは日米同盟みたいな形、安保条約に、軍事的な関係における日米関係ということがメーンだと思うんですが、一方で、フリー・トレード・アグリーメントをスーパー・フリー・トレード・アグリーメントという、もっと今のFTAよりも踏み出したものになるとは思うんですが、そういう日米間で次世代のフリー・トレード・アグリーメントを結ぶということは可能ではないかと私は思っています。
 実際、韓国に行って話をしていますと、ちょうどそのときに韓国とアメリカがFTAの議論を始めたんですよ。聞いていると、もう今のFTAの枠組みを超えた新しいFTAを議論を始めなきゃいけないということをおっしゃっていまして、日本はそういう、日本の今、役人の方、研究者の方と話すると、もうアメリカと日本は経済的に密接な関係にあるんでFTAは要らないよと言う人がほとんどなんですよ、実は。そこに韓国がアメリカとのFTAを議論始めたという状況。私は、是非とも日本、アメリカのFTAというのは議論しなきゃいけないとは思うんですが、お二人のお考えを是非お聞かせいただきたいと思います。
 そして最後に、三点目にございますのは、私も船橋先生の最後の御指摘、オックスフォードがアメリカの研究所を作ったということにつきましてすごく感銘を受けておりまして、私も、我が国、やはり外交の戦略という意味ではすごく後手後手に回っているんじゃないかなと思います。
 なぜ後手後手に回るかと申しますと、やはり戦略を研究する、外交戦略を研究する機関がはっきり言ってないんですよね、今、日本には。ですから、アメリカを研究する機関も当然ないですが、そういう研究機関を作るとともに、あと外交を研究する機関を何とか作らなきゃいけない。アメリカでしたら、例えばハドソンとかCISとかSAISとかいろいろございますけれども、日本でしたらやはり大学に外交を研究する機関を作ってはどうかなと、戦略を研究する機関を作ってはどうかということを考えていまして、是非お二人のお話を聞かせていただきたいと思います。
 例えば、韓国に行きますと、FTAの研究をするために大学にFTA研究センターというのを新たに作っているんですよ。そこでどんどんどんどん戦略を作って出しているにもかかわらず、日本は、やはり僕は混迷していて、チリと結ぼう、スイスと結ぼうと。じゃ、東アジア共同体って何なんですかということでございまして、やはりきちんとした外交の戦略を作り、それにのっとってきちんとした安定した外交、そして世界の平和、地域の平和をつくらなきゃいけないと思っていますので、是非ともこの三点を両先生からお話を伺いたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
#12
○参考人(五百旗頭真君) ありがとうございます。大変いい提言をされて、むしろいい意見を聞かせていただいたと思っております。
 日中のFTAというのは、私は経済専門ではありませんけれども、それが例えば中国がWTOに加盟して今だんだんと地ならししているという段階で、日本のような成熟した経済国というのとの間で調整すべきこと非常に多いだろうと思うんで、もし何かそういうことを模索するとしても、言わば、ちょうど中国とASEANとの間で十年掛けてとか、日本と中国の間では十年が長過ぎるのか短過ぎるのか、多分短過ぎるかもしれないですね、そういうふうなものとして協力を、接近を考えるということはいいと思うんですね。それを具体的に詰めていくという努力はしていいと。
 しかし、日本と中国がそういうふうにやると、その政治的インプリケーションというのが実質的内容以上に過不足を持って受け止められるということがあろうかと思うんですね。アメリカの方がそれについて心配すると。これ、東アジア共同体とかEAEC以来のずっと続いている問題ですけれども、しかし世界の中で地域的な協力をやらない地域は今やないですよね。皆さんも東京でこのように大活躍ですが、選挙区の方はほったらかしておいていいんだというほどの大物は余りおられない。日本もグローバルな経済国家として、アメリカとの関係、世界との場で頑張らなきゃいけませんけれども、しかし、地元選挙区では悪評ふんぷんであるということでは成り立たないわけですね、それを両立させるということが非常に大事であって。
 そのことをアメリカが、ベーカー国務長官はマハティールがたまたま非常に反西欧的なスタンスを取っていたこともあっていら立ちましたけれども、いつもそういうわけではない。例えば、一九五五年のバンドン会議のときも、実は日本がそこに参加することについてえらく心配したんですね。つまり、あそこにはネールが頑張っており、周恩来も行くと。そういうところへ日本がのこのこ行ったらすぐ食われちゃうんじゃないかと心配してくれたんですね。ところが、途中からだんだんと論調が変わってきて、日本のような国が入ってあれが過激化することを止めてもらわなきゃいかぬというふうになって、むしろしっかり頑張ってちょうだいねというふうになってきたんですね。
 東アジアで、これ非常に大事な世界の中での場ですね。その中で、日本はそこに入ると危ないから行くななんて言っていると、それこそ反米軸に偏ったりしかねないと。いろんなまともな国がたくさんあるんですから、やはりそれを信頼して、それが大変心配ならアメリカもオブザーバーでもどうぞというふうにしておけばいいということだと思います。
 アメリカとのFTA、これはなくてももう足りていると、随分蓄積がありますからという面もあるかと思いますが、日米間の安保条約という安全保障の軸があり、その中に経済、文化、その他の協力関係も定義されております。ですから、足りるといえば足りるわけですけれども、世界の中で友好的な同質性を持った国がそういうふうなものを持つというのが一つの時代潮流、ファッション、リージョナリズムの潮流にあるわけですね。そういう中で、新たな装いを持って日米間の緊密な関係を再定義するということも検討して悪いことではないと。
 三番目の外交戦略研究所というのは大変、船橋さんが言ってくださったのにエコーしていただいて、私も心から共鳴いたします。
 日本は科学技術立国ということを言って科学技術振興については物すごいお金出していますね。立派な、それはやるべきことです。だけれども、気を付けなきゃいけないのは、例えば日米関係が破綻した真珠湾のときですが、あのときにも山本五十六なんかの大変な努力によって科学技術面でブレークスルーをやって、世界の航空機水準、機動艦隊の水準を抜いたわけですね。あの瞬間、一九四一年末の瞬間ではアメリカを上回るような零戦とか何かをそろえて、その意味で、科学技術ではあのとき日本はもう革命的な成功を遂げたんですね。
 しかし、それが日本に幸せをもたらしたかといえば、結局の政策意思決定、あのときの意思決定は非常にお粗末であって、アメリカの認識、戦うならば敵を知り己を知りで、敵を知るということが十分できていたかというと、誠にお寒いものであって、今までの議論のプロセスからいってもう今更そんなことを言ってもらったら困るとか、何か細かいことを言って退路を断っていくみたいなところがあるわけですね。そういう政策決定では駄目なんです。
 その意味では、外交戦略研究所、社会科学的な意思決定というのを支えるそういう土台、情報と方式というものをやらなければ、どんなに科学技術を進めたって、それは絶対値を大きくしますが、マイナスを付けちゃったら何にもならない。プラスを付けるかマイナスを付けるかは正にお話のような外交戦略であって、政治的意思決定の問題だというので大いに賛同いたします。
#13
○参考人(船橋洋一君) 中国とのFTAは急ぐ必要ないと思いますね。東アジア共同体づくりをこれから始めようと、そこにもう一つ日中FTAを検討しようというようなことのやはり政治的な跳ね返り、意味合い、外交的な意味合い、やっぱりしっかり考えておく必要あると思いますね。
 まず、韓国とFTAを結ぶのが先決だと思います。中国は、あるいは韓国も日中韓でやりたいという意向強いですけれども、やはりまずは日韓先にありきだろうと思いますね。
 日中がもしやるのであれば、APECの二〇一〇年ボゴール宣言、あるいは二〇二〇年、その辺のところでAPECの市場自由化がどの程度進むかというのを見ながら、さらに付加価値プラスアルファでということでやるのが一つの手かもしれませんけれども、そのときは日米自由貿易協定を日中と同時に出す必要があると思いますね。
 日米は、デアリー、乳製品とか小麦とか、日本の国内政治的に非常にまだ抵抗が強いと思いますので、そう簡単じゃないと思いますけれども、ただ、戦略的に日中やるんなら日米を併せて一緒にやるぐらいの。まあ自由貿易協定、FTAというのはあくまでも手段ですから、それ自体が自己目的化した戦略的な大きい目標ではないんで、一体何のためのFTAかというのはやっぱり考えておく必要があると思いますね、そこはね。
 最後の点は、日本はシンクタンクも作らなきゃいけないんですけれども、やはりなかなか難しいと思いますね。財団とか弱いし、独立したものがなかなか作りにくい、役所がのこのこ入ってきたがるとか、いろいろありますから。大学にやはりそういう政策研究の拠点をもう少し重点的に、幾つか絞ってそれぞれ特色を持たせてやるのがいいんではないかと私も思います。
 イギリスの場合はケンブリッジ、MITが戦略ストラテジックアライアンスを組んで、オックスフォードのこれもプリンストンと組んでやっているんですけれども、ケンブリッジ、MITに対抗してというような感じがありますね。ですから、英米の大学の一番いいところは、そういう形でアイデアの段階から共同研究している、政策研究、アイデアの段階から。そこに日本が入れないというのが実は非常に問題なんですよね。
#14
○会長(松田岩夫君) 浮島とも子君。
#15
○浮島とも子君 公明党の浮島とも子でございます。
 先生方には大変深い識見に基づいたお話をいただき、ありがとうございました。本日は、両先生に御質問をさせていただきたいと思っております。
 一昨年及び昨年に日米で行われた各種の世論調査においても、各世論調査によってばらつきはあるものの、おおむねかなりの高い比率で、相互に相手の国を信頼できる、日米関係が良好であると両国民が考えている等の結果が出ていると報道されております。日米両国民がお互いに相手国に対して信頼感を持っているというこの結果自体、非常に喜ばしいことでございますけれども、私が一つ心配になるのは、この数字は一体どの程度の実態を伴ったものなのかということでございます。
 私も、議員になる前でございますけれども、バレリーナとしてアメリカにいたことがございます。そのときに、アメリカ人の方から、日本にはおとぎ話はないのとか、古い古典のいろいろなお話はないのということをたくさん質問を受けました。私が、いろいろあります、例えばかぐや姫とかすばらしいお話がありますと彼らにお話をさせていただきますと、このようなすばらしいお話をモチーフにしたバレエやオペラあるいはミュージカルを作って私たちに紹介してくれないのかということを言われたことがたくさんありました。
 また、アメリカに来る日本人の方々をいろんなところに御紹介、そして御案内させていただいたときも、アメリカ人の方と文化について話すときに話題に付いていけなくて困るので、今、アメリカ人が何に関心を持ってどんなミュージカルやオペラを見て、またどんなことを、どんなものを見たらいいか教えてほしい、また、今一番話題になっているのは何かという御相談をたくさん受けてまいりました。
 このような体験から、世論調査において数字の上で示されている良好な日米関係、相互の信頼感情というものが相手国の歴史的背景や文化的背景、国民性、地政学的利害状況などを含め、相手国に対する十分な理解を基礎とした実態を伴ったものなのか、それとも、単にイラクの問題を始めとする国際的な対応において日本国政府が米国と共同の歩調を取っているからというナショナリズム的な感覚の反映にすぎないのではないかという危惧を抱かざるを得ません。
 例えば、欧州諸国同士のように、互いの歴史や文化、国民性などについて市民レベルでの知識や理解がある国同士の場合であれば、今回のイラク問題のような場合に各国が違った路線を取って多少反目することがあったとしても、それが即国民レベルの相手国に対する信頼意識の急激な変化を招くことはないであろうと。例えばあったとしても、一時的なものにすぎないのであろうかと思われます。しかし、相手国について市民レベルで情報や理解が軍事面や経済面だけに偏っている場合には、軍事面や経済面での対立が即国民同士の、国民、民間同士の信頼関係崩壊という結果になってしまいがちではないか、そういう可能性が高いのではないかと思っております。
 もちろん、日米の交流関係は政治的、経済面のみならず、スポーツそして芸術、教育などあらゆる面で広がっておりますけれども、年間渡米する日本人が四百万人であるのに対し、来日する米国人が七十万人という大きな不均衡や、日米相互に関するテレビの放映時間などの格差等を見ると、やはり世論調査の数字が示すほどの市民レベルでの相互理解というのが本当にどこまで深いものなのか、判断しかねております。
 日米両国に限らず、市民レベル、民間レベルでお互いに相手国の歴史や文化、思考様式などを知り、理解しているということは、国家間の信頼関係を多少のことでは揺るがさない確かなものにしていくための基本的な条件であると思います。また、そうであってこそ両国の信頼関係が真に安定したものとなり、日本外交の選択肢も広がっていくのではないかと、このように思うわけでございます。そのためにも、教育や文化、経済面における人材の交流というものがもっともっと活発的になっていかなければならない、そう思っているところでございます。
 五百旗頭先生には、日米関係における世論調査について書籍もお書きになっておられますけれども、最近の世論調査に見られるような日米両国の市民レベルでの信頼意識について、実際のところ、どの程度相手国に対する深い理解に基づいたものであると思われるのか。また、今後さらに市民レベルでの信頼関係を強固なものとしていくためにはどのような条件が必要であると思われますか。また、そのために国のレベルでできることはどのようなことがあり得ると思われますか。両先生に御見解をお伺いしたいと思います。
 あともう一つお伺いしたいんですけれども、いただいた資料を拝見させていただいたんですけれども、両先生とも、外交におけるソフトパワーの果たす役割を重視されていらっしゃいます。ソフトパワーという言葉は最近よく耳にいたしますけれども、提唱者のジョセフ・ナイ氏は、これを分かりやすく、自国が望むものを他国も望むものにする力、無理やり従わせるのではなく味方にする力と述べていらっしゃいます。ナイ教授の主張は、あくまでも国益確保するために外交上どのような手段を重視すべきかという観点からのもので、このような外交観について私なりの意見はございますけれども、少なくとも二十一世紀を戦争のない世界にしていくためにこのようなソフトパワーに基づく外交政策というものを重視すべきということ自体については、私も全面的に賛同するものでございます。
 ところで、このソフトパワーの源泉として最も大きいのは価値観であるという指摘がございます。これは、魅力や普遍的な正当性のある価値観が国際社会において人々の自発的行動を促し、また、各国が取るべき行動についての規範を創造する力を有するという意味であろうと思われます。
 そこで、先生方は、二十一世紀における日本外交が、日米同盟という枠組みを前提としつつ国際社会に提示することのできる理念や価値観というものには一体どのようなものがあるとお考えでしょうか、御意見をお伺いしたいと思います。
 また、最後なんですけれども、私は、文化芸術という分野における民間交流が国際社会における相互理解のために不可欠であると考えております。文化芸術の国際的な民間交流が国際社会において果たす役割というものについて、もし御意見がございましたらお聞かせ願えればと思います。
#16
○参考人(五百旗頭真君) たくさんの御質問をありがとうございました。でも、御意見も多かったと思います。最後におっしゃった文化芸術の国際関係への貢献というのは非常に大事だと思っております。
 去る九月に、中東文明対話ミッションというので私も加えていただいて行ったんですが、柔道の山下八段が一緒で。テヘランなんかでやっていますと、もう私の話は、日本の近代化体験を語って、その近代化努力しながら、しかし、帝国主義時代ですからロシアと戦いアメリカと戦うことになったんだけれども、戦後はそういう経験を経て協力的な関係、ODAの関係なんかを重視しているというふうな話をするんですが、国によって共感してくれるところが違って、イランのように面魂の強いところというのは、ロシアの南下に対して戦ったというようになると目を輝かせて、勝ったんだな、偉いぞというふうな感じが出てきたりするんですね。非常に面白かったですけれども、私どものセミナー以上に、山下八段が道場へ行って、柔道の道場へ行って、そこで講演と模擬演技をやると。それが、我々のセミナーの十倍の人が、もう熱気むんむんで来るんですね。いや、すごいものだと思いましたですね。きっと浮島さんもそういうふうな貢献をされるんじゃないかと。是非とも頑張っていただきたいと思います。
 で、現在の日米関係、いろいろな波乱があって、その意味では、ベトナム戦争のときにUSライクが大きく下がったというのに対して、このたびも日本の国民の間で、イラクで強引にやるアメリカに対していささか批判、疑念は高まっていますけれども、ベトナム戦争のときほどではなく、そして、あのときも佐藤政権はよく協力したと。世論にある意味で批判を浴びながら、日米関係を大事にしたと。したがって、アメリカの方ではそれほど対日不信は強くはならなかったと。ですが、このたびは、むしろアメリカにおいては、余り細かいことが見えませんので、小泉政権が非常に協力しているという、全般イメージで受け止めていますので、アメリカにおける日本の信頼というのはむしろ強くなっていて、日本の方も損をしていないというので、全般に悪くない関係だと思います。
 そのような政治状況の中での起伏というのはあるわけですが、御指摘のように、市民レベルの相互理解というのが非常に大事で、これはある意味で、第二次大戦のあのひどい経験から人類社会が学んだことだと思うんですね。戦前の国家というのは小さな国家であって、ほとんど民間レベルのことには大きな注意は政府は払わなかった。ところが、そういうふうにしていたところ、大変な悲惨を招いたというので、戦後、心ある人たちがこれではいけないといって民間での努力を重視した。
 例えば、アメリカのフルブライト、若い議員が教育の交流ということを提案して、フルブライト計画というのをやった。それから、日本と、日米関係で言いますと、ロックフェラー、ジョン・ロックフェラーVという人が講和会議のダレスに連れられてきて、そして日米の民間の交流ということに財団のお金を使ってやろうというので、あの六本木の国際文化会館設立をサポートして、戦後の窓口に、国際的な窓口にするというようなサポートをしてくれたわけですね。
 民間で頑張っていたライシャワーというハーバード大学教授をケネディが日本の大使にして、そこで幅広い対話、単にその政権同士仲良くできる人じゃなくて、ある意味で反米の社会党系の人まで含めて幅広い国民的対話をしなければ安定しないんだというふうな努力をし、そういうアメリカ側が民間を中心に展開するのを政府がサポートするということをやってきて、アメリカの方が断然アイデアもお金も活動もリードしていましたが、一九七二年ですか、福田外務大臣の提唱で国際交流基金を作って、日本の方からもお金を出してやろうと。さらに、安倍基金というのを冷戦終結のころに作って、日米センターというのを作るというふうに、民間の交流、知的交流、草の根交流をサポートしていくということが広がってきたのが、戦前に対して戦後が随分改善されているところだと思うんですね。
 そのような特定財団や政府がバックアップするというのを超えて、何しろ今はチャンネルが非常に大きくなっている。そのことが支えになっていると思いますが、それを更に強化していかなきゃいけないだろう。日米関係が基本的に信頼関係が強いとすれば、その信頼性を生かして、日本は友人としてアメリカに助言を与える。さっき船橋さんから話があったように、アメリカはこんな超大国でありながらどこか恐怖感を持っているんですよね。不安定になって、九・一一でやられて、どこか情緒不安定になっているところがあると。そういうときはやっぱり友人の助言というのは大事なんですね。信頼されているのなら、それだけ友人をよく見ていて言ってあげるということが大事で、それがヨーロッパの国々はとおっしゃったことに通じると思うんですけれども。
 イラク戦争を始める段階では、実は二派どちらも成功しなかった。二派というのは、一方はフランス、ドイツ、ロシアのように、やっちゃ駄目だと言って、連携して食い止めようとした、対抗しようとした。これは失敗したわけですね。他方、イギリスだとか日本だとかオーストラリアとかいうふうな海洋派の国は、アメリカと一緒しながら、同行しながら助言をし、影響力を持って、糸の切れたたこにしないようにというふうに考えるわけですね。それも取りあえずは成功しなかった。
 しかし、どちらもイラク戦争を食い止めることは成功しなかったけれども、やって、悲惨な事態が見えてくる中で、もう一度その同行者を大事にしなきゃ、そして反対した人たちともやっていかなきゃというのがこのたびのブッシュの訪欧ですので、そういう流れが、簡単にはいきませんけれども、特にアジアにおいてアメリカが大きな間違いを犯しそうなときには、日本の大変な、かなえの軽重を問われると思うので、皆さんには是非頑張っていただきたいと思います。
#17
○参考人(船橋洋一君) 第二点のところだけお答えしたいと思いますけれども、何が日本の一番のソフトパワーになり得るパワーかという点ですけれども。
 戦争に負けて、あるいは占領から独立して、それからのこの経済の回復、社会の発展、それから国際社会への参画、それから開放と。その中で、その背の丈に合った役割、それも非常に覇権的な意図なしにインフラを作って、女性の地位を高めてとか、そういう環境とか、難民とか、そういう、まあ球拾いではありませんけれども、汗をかいてきたこの日本の外交の姿、日本のパワーのこの真価、それは一種の民生力というような言い方を言ってもいいと思うんですけれども。軍事的に何か大きく影響力を及ぼすとか仕切るということではないわけですが、日米同盟があって、また、そのような役割もまたうまくいったところもあると思いますけれども。
 例えば、アフリカで井戸を作る、そういう支援を九八年からですかね、日本はやっていますね。アフリカの女性の井戸掘り、井戸くみの時間、一日平均六時間だというんですけれども、それほど大変な仕事なんですよね、女性たちにとって。ですから、井戸を村で作ってあげると、あるいは、作ってあげるのではなくて自分たちが井戸を作るやり方を伝授しますと、支援しますということで物すごく変わってくるわけですね。これなどは戦後の日本のやはり農家の給水設備の、これが非常なヒントになってやってますけれどもね。とってもいいですよね。
 ですから、民生力で、負けも知った、屈辱もあった、しかしもう一度スタートオーバーでやり直したと、独り善がりにならずに相談掛けしながら一緒にやっていくというような、日本が多分最も相談掛けしやすい日本で、欧米の大国とはまた一味違った、二味違ったものかもしれませんよね。
 ほかにもいろいろあると思いますけれども、そういうのが多分我々が考えている以上に魅力なんじゃないでしょうか。ソフトパワーって結局魅力ですよね。ですから、JETで、あれも成功した部類だと思うんですね、安倍基金などとともに。ですから、JETでアメリカに帰られた方々、地方都市へ行くといつも日米関係のプログラムでは出てきてくれて、まめにいろいろ楽屋裏、舞台裏で働いてくれますよね。大体もう日本好きで好きでしようがないという人多いですよね。ほとんど間違いなく日本の地方に行った人ですね。ですから、そういうこの懐の深さみたいなものをね、日本の、それがあってのやはり民生力じゃないでしょうかね。
#18
○会長(松田岩夫君) 大門実紀史君。
#19
○大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。
 今日はお忙しい中ありがとうございます。二点お伺いいたします。
 一点目は、お二人に同じことをお伺いしたいと思いますけれども、先ほど東アジア共同体構想と日米同盟が共存し得るというお話ありましたけれども、経済のこの具体的な共同構想を、これからどうなるか分かりませんけれども、想定したときに、どういうふうになっていくのかなという点をお伺いしたいと思います。
 例えば通貨で東アジア共同体として何か共同的にやっていくと、基金という話とかいろんな構想がありますけれども、そういうことをやっていったときに、かつて日本が提案したやつを中国と一緒にアメリカがつぶしたという経過がありますよね。それがやっぱり、そういうものを進めていったときに本当にアメリカがどう思うだろうと。
 例えばエネルギーの問題も、東アジア共同体の中で特に中国と日本なんかがエネルギーを共同で開発していこうじゃないかと、そういう提案をしている人たちもいますけれども、そういうことをやっていったときにアメリカは何を言うだろうかと。あるいは農業なんかも、東アジア共同体の農民団体の中では、農業のアジアの中での分担生産を考えたらどうかということも今提案されたりしてますが、実際問題、東アジアの諸国にはアグリビジネスがかなり入っております、アメリカ系のですね。実際問題、そんな共同をやろうとしたらやっぱりアメリカが黙ってないんじゃないかとか、経済面で具体的に共同体構想を考えていくと、やっぱりアメリカとの関係に、今のままじゃなくて、やっぱりアメリカからアジアに若干シフトしないと進まないんじゃないかというふうな、そういうときが来るんではないかと。私は東アジア共同体構想、是非進めてもらいたいという立場でお話ししてるんですけれども。
 ですから、そう簡単にはいかないんじゃないかというふうなことを思います。もしそうなった場合、実際問題、アメリカが必ずしも全部つぶすとは限らないと思いますが、どう調整していくようなことがあり得るのかという点をお二人にお伺いしたいと思います。
 二点目は、船橋参考人だけにお伺いいたしますけれども、日米のこの経済面の結び付きのことなんですけれども、一つ危惧している問題がございます。
 これは米国債を日本が大量に買ってきているという問題でございます。アメリカがまた赤字が出てきましたけれども、アメリカが赤字を出す、それを米国債を発行して調達すると。そのファイナンスを日本がこの間ずっとやってきております。円高介入ということでドルを買って米国債にするということなんですけれども、実は調べてみますと、米国債の購入はヨーロッパはもう引き始めておりますし、中国もずっと買っていましたけれども、この間引き始めています。日本だけがずっと買い続けると。実際問題、売るに売れない。売れば円高になってしまいますんで、売るに売れないという、この米国債買いのくびきを付けられた状態でずっと来ているわけですね。その中でドルが下落したら為替差損を大きく生むということも指摘されています。この部分は非常に異常な、日米の経済面での異常な結び付き状態になってしまっていて、いずれ表面化したら大きな問題になるんではないかというふうに思っています。
 この点、いろんなところでも指摘され始めていますけれども、船橋参考人いかがお考えか、お伺いしたいと思います。
#20
○会長(松田岩夫君) それでは、五百旗頭参考人。
#21
○参考人(五百旗頭真君) ありがとうございます。
 日米同盟と東アジア共同体が両立するのは難しいのではないかと。確かに難しい局面もあろうと思います。どう調整するか、大変大きな外交課題だと思います。
 しかし、経済面の方を主としておっしゃいましたけれども、例えば環境についてだと、これは共同利益ということを割と見やすいですよね。この東アジア地域が環境の問題でうまくいくということはアメリカにも別に異存はないと。
 経済全般もやはり共同利益性の強い分野だと思いますが、領土問題となると、どっちかが取ったら他方は失うですけれども、それが必ずしもそうではないというのは、御指摘のように、九七年の東アジア金融危機のときに、日本は当時、大変自らも経済的、財政的に苦しい事態だったけれども、一肌も二肌も脱いでAMFを作ってサポートしようという姿勢を示したのに対して、アメリカ、中国は必ずしも歓迎しなかった。そこでは行き違いのようなことがあって、アメリカを排除してやろうとするということに対してアメリカ側がリアクションを起こしたというふうなこともありますが、しばらくしますと、中国もアメリカもむしろ反省したわけですよね、心ないことをしたと。
 その後、チェンマイ・プロセスというときにはだれも反対しないし、中国もむしろ、あの当時、中国はまだ十分、国際経済の中に組み入れられていなかったから相対的に自由だったですけれども、WTOに入って国際経済の中での度合いがますます高くなると、今度起こったときにはやっぱり支えがないと困るわけですね。だから、むしろ一緒に金融システムを作りましょうというふうになって、日本がやろうとしてあのとき条件反射的に挫折したことは、その後むしろ再評価されて、みんなでやろうという流れになっていると思います。それが本来の姿であり、今後の共同利益だと思います。
 エネルギーは、今のように中国がこれほど目覚ましく経済発展をしてがぶ飲みし始めて、東シナ海に対してもインド洋の方に対してももう石油エネルギーには目がないというふうに見える、そういう状況というのは大変いら立ちやすい状況です。
 しかし、やはり共同利益に立つことはできる。環境とも結び付きますけれども、中国が不効率なエネルギー利用を、日本が、環境あるいは排ガスあるいは効率化というふうな技術協力を行えば、中国はもちろん非常に助かりますし、それは結局世界のエネルギーを有効利用するということで環境面もいいというふうな協力は可能で、それをもう少し歴史的に大きく見ますと、ドイツ、フランスの終わることのない応酬という対抗関係が逆転し始めたのは、ジャン・モネの提案で鉄鋼・石炭を共有化したらどうかと、そうすればもう戦争できないというので、エネルギーを共有化するという一点を押した途端に、もはや戦争ではなくて、協力以外に道がないというふうにいったわけですね。
 我々日中関係はまだそのような段階に至っておりません。けれども、しかし、同じような論理は働き得るので、結局のところ、中国が必要として日本が必要とするエネルギー、取り合いっこをするんじゃなくて、成り立つような国際的な協力システムが大事で、もしロシアのものを開発しパイプラインを造るにしても、どちらかだけが取るというものではないと、協力関係を組み立てていく以外にないということだろうと思います。難しいんですけれども、実は外交というのはそれが見せ場であって、イギリス外交だってアメリカとの関係、ヨーロッパ大陸との関係、ソ連との関係というのに引き裂かれるような事態の中で、その間で緻密につなぎ合わせて共同利益を再定義していく、これが外交でありますので、その意味で難しいのはそのとおりですが、これから真価を問われる局面になるんだということだと思います。
#22
○参考人(船橋洋一君) おっしゃるような、アメリカの中にもそういう、何といいますかね、アメリカリアリズムといいますか、ありますから、注意しなきゃいけないと思います。
 ただ、エネルギーに関して言いますと、日中が、じゃ例えば東シナ海で中国は中間線を尊重する形で日中で共同で開発、アメリカはこれはむしろ歓迎するんじゃないでしょうかね。あそこで日中が非常に矛盾を、紛争になったときの、アメリカはある意味ではそれを見たくないでしょうから、台湾とか、それからアメリカ自身の安全保障の重荷にもなりますし。
 それから、サハリンなんかの場合は日中が組むとロシアがむしろ警戒するかもしれませんね、アメリカより。しかし、ここでもサハリン1、これは韓国、KOGASが東京ガスに加えて大口で買うことになったわけですし、サハリン2ですね、失礼。サハリン1の方も中国に売ろうかというような話で、結局、それぞれ欧米のメジャーが入っていますけれども、欧米のメジャーと日本と中国、韓国と、それとロシアというのが自然に連携が生まれつつありますね、少し萌芽的ですけれども。ですから、必ずしもアメリカと日中、あるいはアメリカと日本、アジアの対決構図という、そういうことだけではないと思いますね。
 それから、アジア・マネタリー・ファンドは、日本の出し方も裏でこちょこちょやるような形で、きちんとしたコンセプトペーパーもなしに大蔵の役人がこそこそやったからああいうことになったということもありますね。もう少しきちんとその理論もきっちり詰めてアメリカにも根回しするという通貨外交のイロハができてなかった。
 しかし、なおかつ、それはそれとして、今となってみるとむしろプラスだったんじゃないですか、日本が一回ああいう形で寄り切られてやられてみて。それで、アジアの中でいざというときアメリカは助けてくれないと、いざというとき助けてくれようとしたのは日本だったと。ですから、今度、東アジア共同体、アメリカが何か言うときもまた同じ間違いやるんですかと言えばいいわけですよね。
#23
○会長(松田岩夫君) 以上で各会派一人一巡いたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
 中川雅治君。
#24
○中川雅治君 自由民主党の中川雅治でございます。
 本日は、五百旗頭参考人、船橋参考人、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、長い間、財務省、旧大蔵省で仕事をしておりましたものですから、どうしても日米の経済関係あるいはアメリカのいろいろな動向が日本の経済に与える影響という、そういった面で大変気になるわけでございます。今のところ、日米の経済関係、極めて良好なわけですけれども、やはりアメリカの双子の赤字ですね、経常収支の赤字あるいは財政赤字、これがどうなるのかということによってドル安あるいはドル高というような状況が生じてきまして、それが即日本の輸出産業を中心とした経済全体に影響を与えると、こういう構図になっておりますし、今、大門議員がおっしゃいましたように、アメリカの国債の四〇%は外国が持っていると。日本も非常に巨額の米国債を保有しているということもございます。
 そういうことを考えますと、アメリカの金利が上がるというようなことになりますと、資本市場はずっと世界につながっておりますので、日本の国債、日本国債の金利にも影響してくる可能性もある。日本は今非常に低金利で国債の発行ができているわけでございますけれども、何しろ五百兆円というもう巨額の国債を保有していて、私も大蔵省の理財局で国債発行の仕事をしておりましたけれども、もう本当にちょっとしたことで金利が動くというようなことも経験をいたしまして、やはりこの国債が非常に安定的に消化されるということが、日本経済を安定的にこれから持っていくという面からいいましても極めて重要なことだと思っているわけです。
 そういう意味で一つ最近注目すべきことは、アメリカの大統領の一般教書の中でも、財政赤字をブッシュさんが在任中に二分の一にする、あるいは年金改革でも非常に思い切った、個人勘定といいますか、結局自分で払ったものを年取ってからもらうんだというような制度に改めるというような、もう本当にこういった思い切った改革というものが本当にできるんだろうかと。日本の場合に照らし合わせましても、財政赤字が二分の一にできる、あるいは年金のこういった抜本的な改革ができるということになると、もう本当にうらやましい限りなんですが、アメリカというのは本当にそういう、大統領制ということもございますが、何か本当にそういった政治のリーダーシップで思い切ったことができて、そしてそれを国民が受け入れるような土壌が本当にあるのかなと、日本と大分違うなと、その辺の感じをひとつお伺いしたいというふうに思います。こういったことが実現しますと、日本の経済にも非常にいい影響を及ぼすという関係にあると思います。
 それからもう一つ気になりますのは、軍事費の動向だと思うんですが、これはアメリカはイラクへの武力行使、成功したというふうに思っているんだろうと思うんですが、次なるいろんな地域に対しまして、イランとかシリアとか、アメリカがこれからどういうふうに軍事面で進んでいくのか、どういうふうに見といたらいいのかですね。これは、もちろんそういう財政の面だけではなく、私自身も大変関心があるところでございまして、その辺のことについて何か、おっしゃれる範囲で結構でございますので、コメントがあればというふうに思います。両参考人にお伺いしたいと思います。
#25
○会長(松田岩夫君) それでは、五百旗頭参考人。
#26
○参考人(五百旗頭真君) 経済の素人の私が物を言っても、釈迦に説法という感じがいたします。
 減税原理主義というんでしょうか、アメリカの共和党は非常に減税、つまり個人の自由を基礎にするという点を重視して、このたびの大統領選挙でも、先ほどの同性婚の問題とか堕胎の問題とか、そういう価値、倫理の問題、これがばかにならない。その宗教保守層の票を掘り起こすことになったと。おやじさんのブッシュのときにはその支持を割と軽く見て失敗した。現在のブッシュ大統領はそれを大いにモービライズして選挙に勝利した面がありますので裏切れない。裏切れないのは、そういう道徳、倫理問題と、それから銃規制しないという問題、それとともに減税というのが割とその保守層に受けている内政のものですね。
 しかし、こればかりはいかに大統領のリーダーシップがあろうとも、経済のメカニズムの中でうまくいかなければ決して成り立たないお話だと思うんですね。アメリカの場合、国内通貨が世界通貨ですので、ほかの国とはちょっとクッションの在り方が違うと思いますけれども、この戦争、対外戦争をして多大の出費をやりながら財政赤字を改善し、なお減税を続けてということはこれはもう成り立たないお話なんで、これをどういうふうに調整するかというのは割とブッシュ政権第二期の大きな問題だと思うんですね。戦争がなくて、過大な出費がなくて、そして景気がいいというときには減税をやり、財政事情も良くしてということはできますけれども、ちょっと成り立たないお話かと。
 アメリカの場合、世界通貨、ドルが世界通貨なのでといいますけれども、ユーロという新しいライバルが出てまいりましたので、国際的な受皿も出てきたというので、今までよりは容易ではないんだろうというふうに思っております。素人ですが、そのように思っております。
#27
○参考人(船橋洋一君) 中川さんのような御専門、専門家の方からの御質問なので答えにくいんですけれども、続かないと思います、これは、軍事費も減税も両方。ブッシュ、イラク、成功成功と今政治的に言っていますけれども、まだ分かりませんね、これは。ブッシュ政権、あとこの二期目、多分イラクから引けないと思いますし、さすがに幾ら何でも次のイランとかシリアとは戦争はしないと思いますけれども。ですから、いずれこのツケは回ってくるということだろうと思います。
 そう言われながらも、金融政策の妙を得ていたり、ミクロの、やっぱり企業の収益力強かったり、技術革新も強かったり、ネットのバストも一応回復過程とかいうことで、そこそこもっているんじゃないでしょうかね。ですから、日本もまあまあの円・ドルレンジで来れていると。
 先ほどの御質問に、せっかく言ってくださったのにもきちんと答えなくて申し訳なかったんですけれども、つい失念いたしました。
 ですから、そのようなドル債買い続けると。ただ、日本が一方的に、かつての日本のある首相のようにもうやめたというようなこと言ったときの衝撃というのはすごいですから、長期金利跳ね上がったり、債券相場暴落するということにもなりかねませんし、ドル急落と。だから、どっちのリスク、どっちのコストをより重視するかということになったときに、やはり今のような買い増していくということ以外なかなか今通貨当局としてもないんじゃないでしょうかね。ただ、そのことと長期的な日本の、世界の通貨レジームをどう作るかというのはまた別に考えていかなきゃいけないと思いますね。
 円を準備通貨として、そのリザーブとして各国の中央銀行にもうちょっと持ってもらおうという、その円の国際化というのがとんざしてしまっているわけですけれども、私はやはり、金融のようやくこの危機が去って、そろそろもう一度円の国際通貨としての新しい戦略、これを日本単独でなくて、アジアの国々とそろそろそういう形で作っていく必要があるんじゃないかと思います。多分、アジア共同体の、東アジア共同体の将来の一つの大きなそのエグジットビジョンといいますかね、ビジョンは共通通貨だと思いますね。それはやはり真っ正面から理論的にも、政策的にも詰めて、長い道のりですけれども、いく必要があるだろうと。貿易のインテグレーションでいいますと、日本はもうNAFTAより上ですし、ヨーロッパよりちょっともう上ぐらいじゃないでしょうかね、東アジアは。ですから、もう貿易統合ということに関して言えば、共通通貨に踏み出してもおかしくはないところへ来ていると思いますね。
#28
○会長(松田岩夫君) 直嶋正行君。
#29
○直嶋正行君 民主党の直嶋でございます。
 今日はどうもありがとうございました。
 私から二つお二人に質問させていただきたいんですが、私も基本的に日米関係が最も重要で大事だということはお二人の先生と同じ、共有の認識でございます。ただ、一つあえてお伺いしたいんですが、今回のこの2プラス2の話合いの後の発表の中に、世界の中の日米同盟と、さっき船橋先生がちょっとおっしゃったような気するんですが、という言葉が入っています。この世界の中の日米同盟というのに、正直言いましてちょっと違和感があったんですが。
 大分前ですかね、十年ぐらい前に、世界の中の日本とか、いろいろそういう言葉が使われた時期があって、日本は経済もグローバル化する中で国際社会でしっかり貢献していくんだと、こういうことが言われてきたわけですが、基本的にこの日米同盟関係というのはもちろん日米安全保障条約のことだというふうに思うんでありますが、それを世界の中の日米同盟と、こういう表現をしたことによっていろんな、逆に言うと心配な面も出てくるというような感じを持っていまして、これからいろいろ議論になるんでしょうが、このとらえ方について、共同声明では、これ拝見しますと、必ずしも軍事的な話ばかりではありませんが、いろんな相互協力のようなことも含めて、世界の安全保障に資するというようなことになるんでしょうが、これからの日米関係を緊密に、大事にしていくという視点に立って見たときに、日米同盟関係というのが世界的に何となく拡大をしていくといいますか、そういう危惧の念を率直に言って持つんですが、この点についての理解の仕方といいますか、見方についてお二人の先生から是非御教示をいただきたいというふうに思います。
 それからもう一点は、先ほどの中川さんのお話ともやや重なる部分はあるんですが、今ブッシュ政権なんですが、今度の大統領選挙ですね、大統領選挙のブッシュさんの支持基盤なんかを見ますと、かなり宗教右派といいますか、あるいは伝統的アメリカ保守主義者というんですかね、そういう方々の支持が相当やはり大きくなっているというふうに思います。どちらかいうと、こういう人たちというのは物の考え方として、いわゆる内向き志向といいますか、もうアメリカが世界へ出ていってあれこれする必要ないんだと、むしろアメリカはしっかり、アメリカ国民に余り負担も掛けないように、程度に、自らの安全は守れればいいんだと、こういう考え方の人が伝統的に強いというふうに思うんですが。
 先ほどございました財政の問題とか、あるいは私自身、アメリカの経済そのものがやはり八〇年代の後半から二〇〇〇年ぐらいまで大変な伸びを示したわけですが、こういう経済の成長というのがそんなにずっと永久に続くわけじゃないと思いますので、過去のケース見ると、ここら辺でそろそろ踊り場が来て、アメリカ経済そのものが、まあマイナスになるかどうかは別にして、少し踊り場的に低成長時代に入るんではないかというような感も持っているんですが。
 そのことは別にしまして、いずれにしても、政治的なこういう支持層の動きなんかから見ると、これからのアメリカというのはやや国内に目が向いていくんではないかと、こういう危惧の念もやや持つんですけれども、この点と今日のテーマの日米関係について御見解を賜ればというふうに思います。
 以上でございます。
#30
○参考人(五百旗頭真君) 船橋さんはオールマイティーですから、私は一番だけに返事をさせていただいて、あと、お任せしようと思います。
 日米安保条約は元々日本の安全ということをアメリカにお願いすると、その代わり日本の基地をある程度柔軟にお使いいただいて結構ですというふうなので成り立っているものですね。日本の安全というのはコアであって、周辺事態、これもやはり無視できないと、周辺から事が始まります。というふうなものであったのが、冷戦が終わりましてソ連の脅威というものでなくなって、様々な不安定要因に対応せざるを得ないという世界の流動化が見えてきたわけですね。
 その瞬間に、九六年の日米安保再定義ではこの日米安保をアジア太平洋の安定装置として活用すると。地域限定がやや緩くなって広がりを持って、しかしその安定装置という意味は、この地域でいかなる国も力をもって現状を変えていただいては困りますと、日米同盟がそれに反対すると。したがって、このアジア太平洋地域の人たちはみんな平和的に問題を解決して、経済の活発な交流、文化交流、そういうので大いに新しい文明をつくってもらいたいという筋だと思うんですね。そういうものとして日米同盟を二十一世紀にまで拡張すると、それは悪くない展開だと思います。
 今問題になってきたのは、九・一一テロなどによって世界の安全保障がかつてなく一体化したと。地球の反対側、アフガンを策源地とするのがいきなりニューヨーク、ワシントンに攻撃を加えるという信じられないようなことが起こる、限定性を失った事態ですね。こういう時代にどういうふうにやればいいのか。いろいろな意見が今咲き乱れているというか、ジレンマの中で、世界の安全保障の一体化というのは非常に大きなジレンマを課している。
 この瞬間にアメリカが非常に慎重な力の行使をする姿勢であれば、日本も割と安心してアメリカさんが提案されることならば何でも一緒してもいいのかなというふうに感じやすいかもしれませんが、ブッシュ・ドクトリンというのは抑止力の効かない相手に対しては先制攻撃もよろしいと、地球上どこでもテロリストをかくまうものは許さないというので追い掛け回すという、それに日本は世界の安全保障は一体化しましたから何でも御一緒しますと言えるかと、それはできないお話ですね。集団的自衛権を認めろ、はっきりさせようというのはありますけれども、自衛権であって集団的共同攻撃権ではないわけですね。
 そういうことを考えますと、限定的な、何というか、条約に反する反しないよりも、私が問題にするのは政治的な英知とか聡明さの問題なんですね。イラクに対してかなり無理な論拠で戦争を始めると。そういうのは結局のところ政治的に支え切れない認識だということになるわけで、日本はそういうときに何でも同意して一緒にというわけにはいかないと。そうすると、限定性が必要であると。
 そういう中で、二つの側面があるわけで、安全保障はかつてなく一体化した。それに対して、一般論的に2プラス2のところで一緒に対処しましょうということを言っているわけですが、私、これ精読したわけじゃないので、ならばどこの国に対して、かつては不安定の弧と言っていましたが、ここでは余りそれは出てこないようですね。どこに対しても一緒するとか言っているわけではなくて、今までの日本の法制上の枠組みの中、それを超えるのであればまた特措法を作ったりということなんだろうと思っておりますが。
 もう一つ、先ほどから出ております補完関係という面から、日本がやはり努力すべきことは社会の再建、安定ですね。ODAやPKOを使って地域社会の安定化に貢献するということが非常に大事で、日米で同盟軍を作って、あるいは多国籍軍に加わって世界の安全保障により積極的な貢献をするという考えもありますけれども、日本が得意芸として、日本にしかできないというのはやはり平和構築をしっかりやっていくと。経済的に国づくりを支えるという手段をあらゆるツールを持っているのは日本だけですね。
 ヨーロッパの国々は、人道援助とか社会ソフトだとか、きれいな方へずっといってしまって、経済インフラからつくるのを支えるということを軽べつしてしまったところがありますね。アメリカは、冷戦期には途上国、共産主義に取られたら嫌だからすごく熱心に助けましたが、冷戦終わるとともにやんぴみたいになって、これもきれいな部分だけになったんですね。そういう中で、冷戦後も日本だけは自分自身が近代化を遂げ、工業化を遂げた近い過去のことを覚えていますから、どんなに途上国にとってそれが大事か分かるものですから、冷戦終わった後も日本だけが愚直に続けていたんですね。世界でほかはもう世銀とかアジア開銀とか、そういう多国籍機関以外はほとんど日本が圧倒的だと、それは僕は立派なことだと思うんですね。誇るべきことだと思うんです。日本、よく頑張ったと。
 ところが、日本は九七年ごろから財政、経済危機の中で聖域なしのリストラだというふうな声の下、むしろもう切る、切る、切ると。切ることが正義だみたいに思って、最近切り癖が付いてきた。そうしたら面白いことに、九・一一以後、アメリカもヨーロッパもODAの再評価が始まったんですね。どうしてこんなテロが起こるのか。それは、直接にはとんでもない組織、誤った考えの人があるからでしょうけれども、しかし、ある破産国家の社会が、子供が十代になったときに職が欲しいというのに職が与えられず銃を渡すような社会ではやっぱりこういうふうになっちゃいますね。
 だから、まともな人々がそこで生活が成り立っていく社会をつくるのを支えることが、迂遠だけれども大事だという認識にアメリカ、ヨーロッパは戻ってきたんですね。そのときに、日本が胸を張って、だろう、日本が言ったとおりだろう、ついてこいと言えばいいんですが、日本は何かやめましょうかというふうになってきたのは非常に残念で、余りそれを深みに入る前に、やはりこの点しっかりやっていただきたいと思います。
#31
○参考人(船橋洋一君) 直嶋さんが二つ問題提起されましたけれども、世界の中の日米同盟、私もこれちょっと読んで、余りに何といいますかね、すとんと世界の中の日米同盟というのが前面に出てきているんで、やや辛口になるかもしれませんけれども、やや政治的な、ややじゃなくてかなり政治的ドキュメントといいますか、文言ですね。
 イラクで選挙やりましたと、大成功でしたと、日米一緒にやって良かったですねと、やっぱり世界で日米がやると違いますねと、こう見せたいわけでしょうね。たまたまそうなったかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたようにまだ結論出すのは早過ぎる。そもそもイラクに出た出方、それからイラクの戦争そのものが今問題がたくさんある。そういうものを、世界の中の日米同盟という形でイラクのケースを敷衍して一般化されてもらっては困るわけで、これはまだこれからのところだと思いますね。ですから、えいやあと打ち出したけれども、実際これからとことん、できることできないこと、それぞれすり合わせていく過程でなきゃいけないと思いますし、まあ多分そうでしょう、ここは。また、そうすべきだと思います。
 それから、日本にとっては、アメリカにとってもそうですけれども、北朝鮮の様々な脅威、核の脅威、あるいは崩落、崩壊する脅威もありますし、そういうときのコンティンジェンシー、それから九七年のガイドライン、九九年の周辺事態法、こう積み上げてきた周辺事態をめぐる安全保障の体制、これもやはり引き続きミサイル防衛をも含めてオプションとして持っていく必要があると思いますし、それも重要な視点ですから、やることはたくさんあると思いますね。
 二点目は、先ほどの浮島さんの御質問ともかかわるんですけれども、宗教右翼、あるいはそういうような非常に宗教的な情念で政治にこれが包含されてくると、転化されてくるようなアメリカの外交政策、世界観なり、どうなるんだろうかという御趣旨ですけれども、私も内向きになる可能性というか、危険性があると思うんですね、ここは。そこは注意しておかなきゃいけない。注意するだけでなくて、そういうアメリカ人ともやはりもう少し日本が意見交換をしていくとか、交流していくとかいうことも必要だと思いますね。サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンだけでない、ロサンゼルスだけでなくて、真ん中も南もというところでのアメリカに気付かされているわけでしょう、我々は今ね。
 ですから、そこが、ただ同時に、例えば北朝鮮人権法なんか見ていますと、いわゆる宗教右翼というふうにくくられるその人たちの世界の人権に対する、クリスチャンでいろいろ人道支援している人たちも、グループも多いですから、それをまたバックにしていますよね。ですから、彼らは全部が全部内向きのカントリーバンプキンといいますか、要するに田舎者だと、そういうことじゃないと思いますよ、決して。やはり人間の譲ることのできない権利というものが非常に抑圧されているものに対する憤りと、それを正したいというパッションというのがあって、それを行動に移したいというのもまたあって、それはやはり世界に出ていくということもありますね。中東に対する関心もそうですし。ですから、そちらもまたもう一つのアメリカだというふうに思いますね。
#32
○会長(松田岩夫君) 小林温君。
#33
○小林温君 自民党の小林温でございます。
 お二人の参考人には大変貴重なお話ありがとうございました。
 もう既に論点として出ているわけですが、少し日米関係の担い手について御質問させていただきたいと思います。
 私、八八年から八九年と、九二年から九四年、二回ワシントンに滞在をさせていただきました。今と比べると日本人あるいは日本のプレゼンスも、特に八八年なんかは非常に大きかったわけでございますが、今ワシントンに行って、だれか日米関係で新しいニューフェースはいないかと、いろんな人に問い掛けをして面会をさせていただこうと思うんですが、余り新しい人間が出てこないんですね。勢い、日本の政治家、みんなマイク・グリーンに会って、あるいはアミテージに会って帰ってくるということなんですが、そこでアミテージとケリーが抜けて、一つは、私、マイケル・グリーンというのは、本当に日米関係全般を一人で担えるぐらい、まあ年齢的にもまだ若うございますし、大丈夫なのかなというふうに思うところもあるんですが、一方、例えば朝鮮半島の専門家に会わせてくれ、あるいは中国の専門家に会わせてくれと言うと結構数が豊富でございまして、どういうところに表れているかというと、例えば、軒並み大手のシンクタンクのアジア関係の責任者がかつては日本の専門家だったのが、今は例えば中国の専門家だったりするということが見られるわけでございます。
 ですから、先ほど来の話の中で日米関係は成熟してきたと、安定期に入ったということがあるんですが、どうもその層の厚さということを、あるいは昔の名前で出ています的な日本の専門家、いまだいらっしゃるということを考えると、仮に何かが起きたときに、リスクを吸収できるショックアブゾーバーとしての役割をアメリカの日本専門家が質量ともに果たしていただけるのかなという危惧を実は持っているわけでございます。
 逆に、日本の方から見ますと、アメリカに留学をしたり、あるいはアメリカで仕事をしたことがあるという方は政界の中にも増えていまして、英語も堪能な方が多いわけですが、しかし、アメリカというのは余りにも対象として意識が希薄でございまして、じゃ、日本の中でアメリカの専門家ってだれだというと、結構答えが出てこなかったりするわけでございまして、余りにもみんながアメリカについてはプチ専門家になってしまっているという状況もあるんじゃないかというふうに思って、こういう問題意識からあえてちょっとうがった質問をさせていただきますと、例えば、先ほど申しました米中関係もいろんな意味で進んでいると思います。
 例えば、よく言われるのは、アメリカでディグリーを取ったいろんな分野の人が中国に戻って要職に就いていると。あるいはアメリカンチャイニーズが二世代ぐらい経て中国に戻って外資系の企業のトップになったりということ。船橋先生がおっしゃったような、ある意味でいうと東アジア共同体とアメリカとをつなぐバランサーとかつなぎ役としての日本としての役割が本当にこれからも期待されるのかどうかということでございます。三十数年前にキッシンジャー・ショックということがありましたが、どうも日本なんて必要ないという米中関係がいずれ近いうちに訪れてしまうんじゃないかという危惧を私は持っているわけでございますが、この点についてお二方から御意見をいただきたいと思います。
 それからもう一つ、先ほど来お話に出ております2プラス2でのステートメントでございますが、台湾海峡について初めて現実的に触れたわけでございます。私、これは実は少し唐突じゃないかという気もしながらこの共同声明を見させていただいたんですが、例えば、北朝鮮に対して表面的ではなくてしっかりとしたコミットメントをアメリカが約束して、その見返りとして台湾海峡についてこの日米の共同声明で触れたというような例えば取引でもあれば別だと思いますが、今の日中関係の置かれている状況を考えると、果たしてここで本当に台湾海峡について日米の共同コミットメントということを宣言する必要があったのかどうか、少し私は疑問に思うわけでございまして、この点についてお二人の先生の御意見もちょうだいしたいと思います。
#34
○参考人(五百旗頭真君) 大変立派な議論であり、指摘であろうと思います。
 アメリカで学位を取った中国人が帰って活躍しております。私は、二年ほど前、一年間ハーバード大学におりましたけれども、そこでハーバード大学の教授なんかと話をしていると、中国人のプレゼンスが大学でも、留学生のレベルでも、数も多いし、それから意欲と馬力が違うと。韓国人もなかなか大変なものだと。韓国はアメリカでPhD取らなきゃ大学のポストを得られませんし、最近はレフリー付きの国際的な雑誌に毎日、二つか三つ載せないと何かプロモートできないとかなんかいうふうなルールまで入れているようで、まあ大変なものです。
 それに対して、日本からの留学生はどうも数も減ってきたし迫力がないということをハーバードの先生なんかはおっしゃいますね。もうエリート官庁から来ましたとか、一流企業から来ましたと。二年掛けずに一年でマスターディグリーぐらいもらって、大体分かって帰りますというふうな、もう余裕の感じが多いんですね。それに対して、ハングリーに、目をらんらんとして、アメリカ社会をつかみ、何かを持ってという、そういうのがなくなってきていると。確かにそういうふうに思います。そういう人材の競争力をどうやって回復するのかというのは非常に長期的な、二十一世紀の日本、国家百年の計にかかわる問題だと思うんですね。
 私、帰国してから、日本は物見遊山的な留学じゃなくて、PhDを取るまで血を吐くような、もうアサインメントすごいですよね、大学院のコースに入ると三時まで眠れないと。気が狂いそうになりながら頑張る。それをPhDまで取るところまでやると、非常にそれぞれの分野で進んだインスティチューションにおいて、アメリカの人だけじゃなく世界じゅうの人が集まってきていますね。それはヨーロッパの主要インスティチューションもそうですけれども。そういうところへ日本人も若いときに飛び込んで、ディグリー取るまで頑張ると。そうすると、その先端レベルのコミュニティーの一員になり、その共通のものを持ちながら、あとは国際機関で活躍されても、日本へすぐ帰ってきて活躍されてもいいと。そういう人材をつくらなきゃいけないんじゃないかというふうに思いまして提案したところ、小泉さん、首相、賛成してくださって、実は今年から、百人、文系五十人、理系五十人、ディグリーを取るまで長期にわたって日本の若者を留学させるという制度が発足いたしました。これ是非皆さん励ましていただいて、志のある若者が若いとき安穏としているんじゃなくて、世界の最先端と競争してブレークスルーを遂げるという機運をつくっていって、もしそういうのが毎年十人、二十人、いや五十人、百人生まれてくるのならば、意外に早くその種の人材が生きてくることがあるだろうと思います。
 そういう中で、米中が難しいことを起こすときにも日本がバランサーを務めるという、高い水準をこなした上で調整をすると、非常に重要なことだと思います。
 それから、台湾海峡の記述が2プラス2であったということですけれども、中国の人とも毎年のようにかなり合宿状態で議論いたしますけれども、以前は我々が台湾海峡問題で何か口を出すと怖かったですね。中国の人はよく怒りました。中国の国内問題にどの面下げておまえは口を出すのかと言わんばかりの、はね付けるような。
 ところが、近年変わってきたんですね、何とかしてくださいよと。これは、九六年のあの李登輝さんが台湾で選挙をするあのときに、中国は大変危機感を持ってミサイルをぶっ放したりしたわけですね。それが結構逆効果もあって、李登輝の勝利に逆に貢献してしまったかもしれないし、国際的イメージをがた落ちにしたわけですね。その反省に立って、無理に台湾を力でやろうとすると逆効果だから、アメリカと日本を使って独立などさせないようにするというのが最近の中国の手法なんですね。自分でもいろいろ努力するけれども、決め手がないと。そうすると、アメリカと日本を使うのがいい。そこで、我々に対しても、何とかしてくださいよとまで露骨に言わないですが、かつてのはね付けるようなのと違って、日本も台湾海峡の安定に貢献できるのではないかというふうに水を向けてきたりするわけですね。
 そういうふうにして、実は昨年十二月に、台湾で陳水扁さんが台湾独立的なこの問題提起をしながら、それは勝たなかったというので、効果を、アメリカ、日本に抑えてもらったという面はあったと思うんですね。それなりに成功した。それに対して、今度日米が平和的解決ですよと出したのがこの2プラス2だと思うんですが、僕はこれは正しいことだと思うんですね。絶対に力をもって現状を変えないということをやはりアジア太平洋のドクトリンにすべきだと。
 そのことは、実は一九七二年のニクソン訪中のときの上海コミュニケの了解でもあるわけですね。中国は一つだと中国側は主張しました。台湾も中国も両方が一つだと言うのなら一つでしょうというので、ニクソン政権はそれを了承して、しかしながら、平和的解決をお願いしたいと言ったわけですね。そのときの首脳会談が今やワシントンで公開されていて読むことができますが、周恩来はそれに対して、アメリカは台湾から撤兵するんだね、ならば自信があると、平和的に解決する自信があると言って了承しているんですね。その了承に、実はその後、九六年のミサイル実験を発射してみたり、いろんなことで行き来しましたが、結局戻ってくるところは、中国は一つというのは崩せない、しかし平和的解決というのも飛び越えることは許されない、絶えずその二つの合意、パッケージに帰ってくる。これを今度日米の共同声明としてはっきりさせたということは、私は支持したいと思います。
#35
○参考人(船橋洋一君) 担い手は、先ほども私も最初に触れましたけれども、一番これからの日米関係の重要な点だと思いますね。
 それで、おっしゃるように、あちらもこちらも、特にアメリカの方で、この日米関係の担い手の層が一巡、二巡して、次はでも見えてこないと。私も同じように見ております。それを日本も入って一緒にこれからつくっていくという、その工夫がとても必要になると思いますね。日本の研究者だけでということじゃなくていいと思うんです、これも重要ですけれども。アーミテージさんも別に、いわゆる日本語やって日本で学位を取ったという人じゃありませんよね。実務の中で、日本の実務者とこの政策をともに進めていく中で、信頼関係だとかワーキングハビットだとか、やっぱり日本人はできると、やれると、組めると、こういう確信を持ってここまで来られたわけでしょう。
 ですから、そういう多分潜在的な人々、いろんなところにいると思いますね。中国が国策的にもやっておりますし、抜てきもできるし、ということもやはり我々も、別にまねする必要はありませんけれども、常に頭の中に入れておく必要がありますね。
 ブルッキングス研究所は、去年の九月に中国研究所を設立しましたけれども、多分アメリカで最も強大な米中関係の担い手をつくっていく、あるいは共同研究の基盤になるんじゃないかと思いますね。ブルッキングスのチェアマン・オブ・ザ・ボードのジョン・ソーントン、彼はこの中国研究所を作った人ですけれども、今、中国のチンフォア、清華大学の教授で、客員教授で行って、オフィスも置いて、行ったり来たりの生活ですよね。ですから、それほどのコミットメントを一生仕事でやろうという人がアメリカ人の中からも出てきているという、中国の方にも出てきているということですね。
 台湾は、先ほども申し上げました、私は良かったと思います、この2プラス2は。あいまいな、あいまい戦略というのはもう効かなくなってきていると。陳水扁がもうあそこまで、何といいますか、ぎりぎりのところまで今迫っていますので、これ以上は認めないということをはっきり言った方がいいし、日米が共同で言ったわけですね、おととしの十二月ですか。ですから、そのときは中国はよくやってくれたということで、中国の方にも我々のぎりぎりの線は伝えておくというようなプロセスが始まっているんじゃないでしょうかね。
#36
○会長(松田岩夫君) 予定の時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。
 お二方のますますの御活躍、御発展を心からお祈りいたしまして、お礼のごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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