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2005/02/28 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 国際問題に関する調査会 第5号
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2005/02/28 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 国際問題に関する調査会 第5号

#1
第162回国会 国際問題に関する調査会 第5号
平成十七年二月二十八日(月曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十五日
    辞任         補欠選任   
     大久保 勉君     松下 新平君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         松田 岩夫君
    理 事
                山東 昭子君
                世耕 弘成君
                野上浩太郎君
                山根 隆治君
                加藤 修一君
    委 員
                大仁田 厚君
                岸  信夫君
                末松 信介君
                中川 雅治君
                二之湯 智君
                水落 敏栄君
                大石 正光君
                工藤堅太郎君
                佐藤 雄平君
                田村 秀昭君
                藤末 健三君
                前田 武志君
                松下 新平君
                浮島とも子君
                澤  雄二君
                大門実紀史君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        三田 廣行君
   参考人
       法政大学社会学
       部教授     羽場久シ尾子君
       東京外国語大学
       外国語学部教授  渡邊 啓貴君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際問題に関する調査
 (「多極化時代における新たな日本外交」のう
 ち、日本の対EU外交等(拡大するEUの現状
 と今後の方向)について)
    ─────────────
#2
○会長(松田岩夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十五日、大久保勉君が委員を辞任され、その補欠として松下新平君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(松田岩夫君) 国際問題に関する調査を議題といたします。
 本日は、本調査会の調査テーマである「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本の対EU外交等に関し、拡大するEUの現状と今後の方向について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、法政大学社会学部教授羽場久シ尾子参考人及び東京外国語大学外国語学部教授渡邊啓貴参考人に御出席いただいております。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本調査会では、日本の対EU外交等について重点的かつ多角的な調査を進める予定でおり、本日はその第一回目としまして、拡大するEUの現状と今後の方向についてお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず羽場参考人、渡邊参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、羽場参考人から御意見をお述べいただきます。羽場参考人。
#4
○参考人(羽場久シ尾子君) 法政大学教授の羽場でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 このたびは、非常に重要な、このような国際問題に関する調査会の場にお招きいただきまして、誠に光栄でございます。ありがとうございます。
 私は、現在、ここ十年間、拡大EUについて研究を行っておりますので、そのような観点から、拡大するEUの現状と課題ということで、特に最近EUが非常に力を入れ始めています世界秩序の構築とそれから内なる相克の問題についてお話をさせていただきたいと思います。
 お手元にレジュメとそれから地図ないし資料がございますので、それをごらんになりながら聞いていただければ有り難く存じます。
 まず最初に、この二〇〇四年、昨年の五月の一日にEUは第五次の拡大を遂げました。これによって二十五か国の大欧州が実現したわけでございます。これは、地図で御確認いただけますと、かつての十五か国が左の黒い地域、それから新しい十か国が右側の斜めのラインで書いてございます。このうち、ルーマニアとブルガリアだけは二〇〇七年に加盟するということになってございます。これによって、中・東欧の五か国、それから旧ソ連のバルト三国、地中海の二か国が参加いたしまして、現在二十五か国ということでございます。
 新しくジョゼ・バローゾという欧州委員長が昨年の十一月一日にプローディに替わって欧州委員長になりました。彼は弱冠四十八歳の若手の委員長でございまして、また、独仏派でもなく、軍をイラクに派兵したポルトガルの元首相ということもあり、アメリカにも配慮し、そして新加盟国にも配慮した小国の代表ということが言えます。
 新加盟国を含む新しい欧州委員会は次の三点を大きな目標としながら船出を始めております。
 一つは、二〇一〇年までに世界で最も競争力のある経済圏になるというかなり野心的な試みでございまして、これはリスボン戦略というポルトガル・リスボンで今後の方針を定めました最大の課題となっております。
 二つ目は外交でございますが、外交政策を強化していく。特に、欧州憲法条約が採択され批准されますと、その後はEU外相が誕生することになり、これによって積極的に世界で新たな主導権を取っていくEUの方向性が定められていくことになります。
 三番目は、もう一つは市民の問題でございますが、市民への広報戦略を活発化する。これは後でも触れますように、欧州議会選挙の投票率が思ったよりも随分低かったということもあって、外に向けては世界のEU、内側に向けては市民と連帯したEUということで、積極的に国内の人々たちと連携するEUということも念頭に置いてございます。
 こうした中、ルーマニア、ブルガリアは、先ほども申しましたように、二〇〇七年加盟がほぼ確実になっております。それに加えて、旧ユーゴの五か国、これはプローディ元委員長がバルカンを安定させなければEUの発展はないと言ったように、EUの死活の目標でもございますが、このバルカン、西バルカンの五か国が二〇一〇年から二〇一五年ごろに加盟を予定しております。そして、トルコが今年から交渉が、この秋から交渉が開始されます。さらに、国民投票では繰り返しノーを言っておりますノルウェー、スイスなどがこれに続くということで考えますと、あと十年ほどで三十か国を超える欧州も夢ではないという状況になっております。
 こうした中、拡大欧州がアメリカに並ぶ新しい世界秩序のリーダーとなるかどうか、そして、そうしたEUと日本はどう向き合っていくのかということはとても重要な課題であると思います。
 まず最初に、なぜ今拡大ヨーロッパなのかということについて五、六点触れておきたいと思います。
 一つは国際政治の分野ですが、三つの大きな変化がございます。一つはコールドウオー、冷戦の終えん、二つ目は九・一一のテロ、三つ目はイラク戦争という問題でございます。
 冷戦の終えんによって、分断されていた欧州が統一するという前提が作られ、昨年の二十五か国拡大欧州が生み出されました。二つ目の九・一一の流れの中で、欧州は当初、国際対テロということでアメリカと強力に結んでおりましたけれども、その後のアメリカのユニラテラリズムに対して、多国協調で対応していくという方針を取っていくことになります。これは、三点目のイラク戦争を経て、単にヨーロッパの一つの地域機構というだけではなくて、昨年の十月から十二月にかけて新たな世界秩序、ニューワールドオーダーズというものを打ち出して、そのリーダーシップを取るんだという方向を目指しつつあります。その意味では、拡大ヨーロッパは地域の統合から世界のEUへという変化を遂げつつあります。
 二つ目は、国際経済でございます。
 先ほどリスボン戦略でも述べましたように、二〇一〇年、世界で最も競争力ある経済圏という野心を目標としたEUは、アメリカ、アジアの大きな経済圏に対抗してヨーロッパの統合を進めようとしております。一九九〇年代、このころ欧米アの三極構造ということが言われました。これは表の五ページ目をごらんになっていただきたいと思うのですけれども、これはちょうど九〇年代の半ばでございますが、このころは欧州、アメリカ、そして日本とASEAN諸国がほぼ同じくらいの、表の五ページ目でございますね、申し訳ございません、地図がございますページの五枚目に円柱が三つ並んであるものがございますけれども、それをごらんになりながら聞いていただければと思います。
 これが一九九〇年代の三極構造でございましたが、その後、アジアは経済危機が九七年に起こり、その一年後にロシアの経済危機が起こる中で、さらに、イラクでの戦争による世界経済の停滞というような状況の中で、現在このアジアが少し落ち込んでいる状況がございます。
 そうした中で、この一、二年、ユーロはドルをしのいで成長というような強含みのユーロ成長がございまして、また、アジア諸国で、そうした中で弱まるドルに対してユーロ買いが始まっているということもございまして、欧米二極時代へというようなことが最近言われています。それは下の表を、レジュメの下にある表をごらんになっていただくと分かるかと思うのですけれども、アメリカがGDPで、世界のGDPで三四・一%、欧州が二九・五%に対して、なかなか地域統合の進まないアジアでは日本が一三%、急速に成長しつつある中国が現状では四・一%ということで、三五、三〇、一七というような比率になっております。
 そうした中で、中国は二〇二〇年には世界のトップに躍り立つというようなことを目標にしておりますが、その前に、二〇一〇年にEUは世界の中でアメリカに並び、しのぐことを目標としているという、正にグローバル時代の経済競争に入っております。これは中・東欧への拡大効果もございまして、ヨーロッパ全体の経済が活性化しているということがございます。
 これは詳しく説明している暇はございませんが、表の三ページ目、四ページ目を見ていただきますと、一人当たりのGDP、世界各国のGDPの上位五十から六十が並んでおりますけれども、大体一人当たりでいいますと、上位三十位ぐらいまでに元EU十五か国が並び、それを急速に追い上げる形で三十から五十の間に新加盟国が並んでございます。驚くべきことに、一人当たりでは、キプロスやスロベニアは三十三位の韓国や二十九位の台湾に追い付き追い越しつつあるということで、かなり急速な経済成長が近年見込まれているということでございます。
 こうした中で、ヨーロッパには現在三つの経済圏が現れてきております。一つはドイツ経済圏、二つ目は地中海経済圏、三つ目はバルトと北欧の北欧経済圏という形で、この三つの経済圏がお互いに相乗効果をもって経済発展をしのぎ合うというような状況になってきてございます。
 次に、三点目はアイデンティティーの問題でございます。
 ヨーロッパとは何かということでございますが、九〇年代、ヨーロッパとはキリスト教、自由主義、市場経済ないしは民主主義ということでございました。今回の十か国加盟も、基本的にはキリスト教、カトリック、プロテスタントの国々が加盟したと言われています。ところが、新加盟国、中・東欧やあるいはトルコなどが入ってくる中で、もはやこれでは収まらないような状況になってきている。ヨーロッパとは何か、何がヨーロッパではないのかが問われてきている状況でございます。
 こうした中で、新加盟国が加盟するに当たり、アキ・コミュノテールと呼ばれます八万ページに及ぶ法体系をすべて国内法に導入して実行していくというような大改革が行われ、また、今回トルコの加盟交渉に当たっては、必ずしもキリスト教ないしイスラムという宗教がそのアイデンティティーのよりどころにはならないような変更も起こってこざるを得ない状況になっております。
 ところが、こうした中で、二〇〇〇年前後より、ヨーロッパ・エスノセントリズムと言われるようなある意味でおまえたちはヨーロッパではないではないかという、何がヨーロッパかというときに他者の排除に結び付くような問題が急速に起こってまいりました。これは、特に移民の増大、失業の増大という問題と絡んで、イスラム系の移民やアジア系の移民あるいはユダヤ人に対する排斥や虐殺などが行われるようになってまいります。
 こうした中で、でもこれではいけないということで、イラク戦争前後から、多元的価値ということを欧州は積極的に打ち出し、対話と多様性、ダイヤローグとダイバーシティーということで、他者をも寛容に受け入れていくという、ヨーロッパというものを大きくアイデンティティーを変えていく作業を現在進行させつつあります。
 これは四番目の安全保障の問題とも直接かかわってくる問題でございますが、九・一一テロ以降、欧州は大きく安全保障観を変容させ、旧来の安全保障政策の見直しを始めましたけれども、そうした中で、軍事化かそれともソフトパワーかという二者択一ではなく、ソフトパワーをメーンにしながら紛争防止、終結には積極的にかかわっていくという、欧州の安全保障の見直しと軍事力の再編を行っております。
 それが、ヨーロッパ全体に網を掛け、信頼醸成を行っていき、その中にNATOとEUの核を作るという構想でございまして、それは地図の二枚目のところに欧州安全保障構造図ということで載せさせていただきました。一番外側の四角は、ほとんどの欧州の国々が参加したOSCEと言われる安全保障の話合いの機構でございます。その内側にNATOとEUという核がございまして、新たに加盟したのが右側のちょっと楕円形ですけれども、新NATO、新EUの七か国、五か国でございますが、このように、欧州全体に網を掛けながらヨーロッパの問題だけではなくて世界の紛争防止、終結にも積極的に関与をしていくという方針が、二〇〇三年の末、ソラナ・ペーパーという形で出されました。
 このような流れの中に、五番目の中・東欧も大きく関与していくことになります。ヨーロッパの東半分はこれまでソ連の影響下にありました。それが、ヨーロッパ回帰という流れの中で欧州に大きく回帰をしていく流れがございますが、二〇〇一年のイラク戦争の中では世界が驚くような選択をいたしました。つまり、ラムズフェルド国防長官、アメリカの国防長官が新しいヨーロッパと呼び、独仏を古いヨーロッパと呼んだように、アメリカのイラク攻撃を支持して積極的にイラクに軍を派兵するということを選択したわけでございます。こうした中で、新加盟国はトロイの木馬なのかという議論も現在出てきておりますが、欧州内部で積極的な自己主張を行いつつあります。
 最後は、日本、アジアにとっての拡大EUの意味でございます。
 東アジアの地域協力ということが最近日程にも上ってきている中で、我々はEUから何が学べるかということがございます。
 この夏、私、ソルボンヌ大学、パリ大学に行きましたときに、そこの国際関係研究所の所長でありますロベール・フランク教授が次のような話をしました。ドイツとフランスという歴史的な敵対者の協調と発展こそがヨーロッパの発展と世界的な役割の増大につながるんだ、そして、日中の首脳は南京でなぜ抱き合えないのかというふうに聞かれて私は驚いてしまったんですが、我々はそれをやってきたんだ、アウシュビッツで、ないしはツィッタウでそれをやることによってヨーロッパの繁栄が現在あるんだというようなことを言われました。その意味で、アジアはアメリカ、欧州に対応する地域協力が作れるのか、新しい極を形成し、新たな時代を切り開けるのかということはとても大きな問題であるかと思います。
 これが大体の大枠でございますので、今申しましたことがお話のメーンなのでございますが、あと五分少しございますので、それぞれについてもう少し詳しく話させていただきたいと思います。
 EUというのは、先ほども申しましたように、二十世紀の第二次世界大戦までヨーロッパは血みどろの戦争の歴史を繰り返してまいりました。そうした中で繰り返し理念に上せられたのが、十九世紀のビクトール・ユゴー、それから戦間期のクーデンホーフ・カレルギー、あるいはチャーチルなどが申しましたヨーロッパ合衆国の構想でございます。
 御存じのように、カレルギーの母は青山光子という、日本人の母親から生まれたハプスブルグの伯爵でございますが、そうした方がパン・ヨーロッパ構想を打ち出して欧州共同体の礎を築きました。これは、その戦争の悲劇を二度と繰り返さないということに加えて、フランスのシューマン外相がアルザス・ロレーヌのロレーヌから立候補して、資源の共同管理こそが平和の前提であったというふうに言いましたように、戦争の根源は資源の共同管理の問題であるということで、石炭、鉄鋼の共同管理から始まった構想でございます。
 そうした流れの中で、地図の一番上にありますように、欧州は五回にわたる拡大を繰り返してまいりまして、今回、ローマ帝国をもしのぐと言われる最大の拡大が達成できたわけでございます。それも、戦争によらず、平和裏にかち取ったということで、彼らの喜びはひとしおのものであるわけですけれども、そうした中でどのような方向を作っていくのかというときに、拡大欧州の世界戦略ということが昨年の末に打ち出されました。
 これは、二ページ目の五のところを見ていただければと思うんですけれども、先ほども触れましたように、イラク戦争でアメリカと欧州が対立したばかりでなく、欧州内部がイラク戦争に反対と賛成で真っ二つに分かれたという苦い経験を踏まえて、どのような統合欧州を作っていくか、なおかつどのように世界で力を持つEUを作っていくかというときに出てきたのが五番目のワイダー・ヨーロッパというものと、それから欧州安全保障戦略でございます。
 ワイダー・ヨーロッパというのは広域欧州圏でございまして、EUに加盟しない国々と我々は共同戦略を取っていくんだということでございます。これは、東はロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバなど加盟しない旧ソ連諸国、南は北アフリカや中東、パレスチナ、イスラエルなどの紛争地帯に対して、東のロシアとは、天然ガス、石油を中心とした経済関係を強力に行っていく中で友好協力を作っていく、南に対しては、人権や経済発展や貧困からの脱出というような支援を行うことによって協力関係を作っていくというのがワイダー・ヨーロッパでございます。EUに加盟するか加盟しないかで壁を作るのではなく、加盟する国の外にある国々とも協力関係を作っていくというのがワイダー・ヨーロッパになります。
 もう一つは、ソラナ・ペーパーと通称で呼ばれます欧州安全保障戦略でございます。これも二〇〇三年の十二月に出された、二〇〇三年ですね、一昨年の十二月に出されたものでございますが、ここでEUは、自分たちはグローバルプレーヤーである、世界の安全に責任を持つんだということをはっきりと打ち出しました。その上で、アメリカとは異なる形で世界の安全に関与していくということを言っております。それが一番、二番、三番なんですけれども、一番目は、テロルを含む安全保障の様々な脅威は、多くは経済的な失敗ないしは貧困からくるものであるということで、経済の発展こそがそうした脅威を解決する前提条件であると位置付けたことでございます。ですから、世界で経済発展をやっていくことによって脅威を減らそうというのが一番の単純な筋でございます。
 それに加えて、二番目、三番目で防衛の戦略目標を立て直しまして、防衛の最前線は外国である、域外でも安全保障にかかわっていくということと、そして紛争に対して幾つかのオペレーションを同時に展開する戦力を持つということを明白に打ち出しながら、アメリカ、日本、中国、インド、カナダなどとパートナーシップを結ぶ。ここにアジアが三つ入っていることに御注目いただきたいと思います。日本、中国、インドとアジアを並べたのは初めてでございますが、これらのアジア、アメリカ、ヨーロッパ、そして国連と強く結びながら、我々は世界の安全に関与していくということでございます。
 このような中での東アジアの地域協力、そしてEUとの協力関係を最後に触れておしまいにしたいと思いますけれども、東アジアの地域協力は実現するのだろうか。
 東アジアというのは、正に冷戦構造が最後まで残った地域でございます。なおかつ、現在においても北朝鮮の核、ミサイル、拉致問題、あるいは中国の急速な経済成長、ナショナリズムの成長というところでは、むしろ緊張は強まっているこそすれ、なかなか地域協力のできるような状況ではないかもしれません。しかし、先ほど歴史的な敵対国との共存こそが経済発展を実現するんだというロベール・フランクの言葉にもあったように、東アジアの緊張の中でこそ、やはり欧州、アメリカに次ぐ第三の極として結束し得る可能性もあるのではないかと思います。既にARFやAPEC、ASEANプラス3などの流れもございます。また、六者協議などの動きも活発化しております。そのような中で、EUに学びながら日本がEUと結び、東アジアの国々と友好関係を作り、ともに経済発展を重ねていくということは極めて重要なのではないかと思います。
 今年、日本とEUの市民交流年ということが始められています、EUは日本に対してアクションプランやビジネスダイアローグなども含めて、政治、経済、市民レベルでの交流を活発化しております。そうした中で、EUが目指しているアメリカに並ぶパワーへ、そしてアジアの国々と共同しながら、国連と共同しながら世界の大きな一極へという考え方は、日本も提携し得るのではないかと思います。欧州は、危機の中から新しい解決を発見してまいりました。欧州のプラグマティズムと理想主義の結合というのは日本にとっても学ぶところが極めて大きいのではないかと思います。
 今日は、このような場でお話をさせていただきまして誠にありがとうございました。以上で御報告を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
#5
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 次に、渡邊参考人から御意見をお述べいただきます。渡邊参考人。
#6
○参考人(渡邊啓貴君) 東京外国語大学の渡邊でございます。本日は、このような席にお招きいただきまして大変ありがとうございます。
 私も、私は特にフランスを中心にしながら研究してきておりまして、そういった立場から、EUということでございますけれども、米欧関係あるいは世界の全体の構図を考えながら少しお話しさせていただきたいと思います。何かの皆さんの今後のお仕事の点でのお役に立てれば幸いかと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、実は今、羽場先生のお話をお聞きしながら、羽場先生のお話ししていないところをどうやって話そうかというふうに考えておりました。誠に全体的に広範にわたる、構造的な話まで含めまして遺漏のないお話であったと思います。
 そこで、私は、ちょっとレジュメをごらんになられて、一目見られるとお分かりかと存じますけれども、極めて、余り行儀の良くないレジュメを書いてございまして、その点から、そのレジュメをちょっと触れるような形で、世界の構図の中での現在の在り方ですね、そうした中でのEU、そして焦点はもう一つ、日本が今後、今、羽場先生はEUから学ぶとおっしゃられましたけれども、私の場合はむしろ、主体的に日本がどうしていくのかということに焦点をもう少し傾けながらお話しさせていただきたいと思います。
 最初に、EUの話、よくヨーロッパを学んでますと何か話してほしいとか質問をされるんですけれども、いかんせん地球の裏側のお話ですから、どこからお話ししたらどこまで理解していただけるのかいつも考えるところですけれども、そのときに、やはり我々は日本人ですから、どういうことを学び取るか、あるいはどういうことのインプリケーションがあるかということを考えるわけでございまして、そのときに日本がどういう、そのときに日本がどういう国になっていくのか、あるいはいきたいのかという、そういったビジョンをそれぞれ持って、持ち方が違うと思うんですね。そのことによってヨーロッパの理解の仕方というのはまた違ってくるだろうと思います。
 そういった意味から、私の基本的な姿勢というのは、まあ日本が外交的に中級国家でいいとか、あるいは政治的貢献をそんなにしなくても後追いしていればいいとか、いろんな意見はございますでしょうけれども、まあ一応夢といいますか、日本が常任理事国入りをするということであれば、政治的な意味での、あるいは、これはアグレッシブな意味ではございませんけれども、やはり戦略的な思考を持った、あるいはそういったレベルでの世界との交流ができる、よりできる国になっていけるようにと、そういう視点からこのヨーロッパのことを考えてみたいなというふうに日ごろから考えております。これは、もちろんそれぞれのお聞きになられる方によって観点が違われようかと思いますけれども、そういうふうな立場をちょっと頭に入れていただければ、少し私のお話、お分かりいただけやすいんではないかと思います。
 ところで、レジュメの最初のところから申し上げますと、具体的にお話しするとかなり内容的に重なるところございますので、少しはしょったような形でお話ししていきたいと思います。
 ヨーロッパ統合といいますといいことであるという、単純に言いましてですね、国がまとまって、異なる国が、あるいは戦争で戦ってきたヨーロッパの国々がまとまって平和になっていく、いいことじゃないか。まあそのとおりでございますけれども、じゃそれを日本やアジアに持ってきて考えたりするときに、すぐ、じゃ状況が違うということにすぐなるわけでございまして、そうなりますと話が進まないわけでございますので、一つ、ここに統合についてのいろんな解釈がありますけれども、平和だからいい、まあ人によっては勧善懲悪型の統合論という見方もございます。それから、相互依存によって自己育成をヨーロッパはしていっているんですから、当然、緊密になっていくのは当然であろうということであります。
 私自身は、国民国家の救済という言葉をそこに挙げておきましたけれども、1のAのところに書きましたように、これは国境を越えたリストラなんだというふうに考えるようにしております。てらった表現のつもりはないんですけれども、この十年来、こういうお話のときに私はこの言葉を使わさせていただいております。
 ちょっと卑近な話になりますけれども、私自身が今から二十年ほど前、先ほどちょっと羽場先生がメンションされたパリ大学のフランク先生のところで、そのフランク先生の先生に当たる方のところで私、大学院で勉強しておりまして、ちょうど一九八五年というのは今のヨーロッパの統合、拡大が進んでいく一つの発端になります域内市場統合と。つまり、関税統合はもうとっくに過ぎて、成功しているわけですから、非関税障壁ですね、非関税障壁の面での市場統合を進めていこうという動きが活発になった時期であります。フランスのドロールという次期大統領候補と言われていた方が欧州委員長になりまして旗振りを始めると。
 当然、私、当時フランスにおりまして、ヨーロッパにおりましたもので、EU統合、拡大、拡大って、まあ当時は域内市場統合ですけれども、うまくいくのかね、それから何を一体これは意味しているんだ、実際、ヨーロッパ人も疑心暗鬼であります。そんなに、今までだってうまくいってなくてぎくしゃくしているのにという、今後そんなに簡単にうまくいくものでもない、一体これは何を目指しているんだ。
 ただ、私の周りにいる大学の関係、まあ言うなればインテリの人たちですけれども、あるいはエリートと言っていいかもしれませんけれども、こういう方たちはこれはいいことだから進めていくんだと言うわけですね。しかし、統合をして、今でも苦しい事情にある人たちは安い労働力入ってきたらどうするんですか、ある企業がある地域に集中した場合どうなるんだろうと、そういうふうな話がありまして、エリートでない人たちは反対という声も随分あります。今日でも、右寄りの極右政党なんか、あるいは共産党の左、フランス、例えばフランスですけれども、そういう勢力は今でもこのEU統合については非常に慎重でございます、あるいは反対であります。
 つらつら私も何年間かその後考えておりまして、やはりこれは我々日本人にはちょっと分かりにくい時期のスタートだったんだと思います。というのは、八〇年代のこの後半から九〇年代の初めにかけて我が国は御承知のように大変な世界的な経済の発展を示すわけでありまして、ヨーロッパでソニーの盛田会長の翻訳が出ると、本の翻訳が出るとかという時期でございます。振り返ってヨーロッパを考えてみますと、七〇年代の石油危機からうまく回復していない。そうした中で、御承知のように、御記憶であろうかと思いますけれども、サッチャーの小さな政府とか、一方でミッテランの社会主義政権の大きな政府とか、そういう話が出て、試行錯誤を繰り返しておりました。にもかかわらず、八〇年代の半ばまでユーロ・ペシミスムというように非常に悲観的な雰囲気が強い、そういった中でのドロールの域内市場統合という旗振りなものですから、みんな、何だ、こんなことできるのかねという不安感も非常にあったわけであります。
 気は心と申しますが、目標を立てて頑張れ頑張れと言っているうちにうまくいくようになったというのが現在の状況でございますけれども、そのような意味で私は改めて、この国境を越えて、各国が一国経済あるいは一国社会経済ではうまくいかないと、こういった状況に直面しまして苦肉の策として、もちろん過去の歴史はございますけれども、苦肉の策として、もう一度みんなで協力しよう、そのことは良いことであるというふうに認識したのが八〇年代半ば以降の欧州の統合、そしてまた拡大ではなかったかと思います。ちょっとレトリカルな言い方ですけれども、そういう意味でリストラであると、各国のリストラであると。
 このことは、今日に至る、憲法条約ですね、昨年、一応合意いたしまして、今後、調印いたしまして批准のプロセスが待っておりますけれども、そういった流れというのはそういったリストラの、リストラは当然各国の制度の改革に結び付いていきますので、そういった制度改革、そしてその制度の改革をプッシュするようなドライビングフォース、精神的なドライビングフォース、これはヨーロッパのアイデンティティーというようなことになろうかと思いますけれども、そういったものを精神面でも制度面でも確認していこう、あるいは新たに自分たちでコンセンサスを作っていこうというのがこの欧州憲法条約、EU憲法条約のお話であろうかと思います。
 さて、そういった私は考え方を持つようになったもう一つの背景というのは、先ほどクーデンホーフ・カレルギーのお話を羽場先生おっしゃられましたけれども、実は一九二〇年代、二九年に国際連盟で、フランスのブリアンという政治家がおりますけれども、後に首相になりまして、ケロッグ・ブリアン不戦条約で有名な方ですけれども、彼が一九二五年あるいは三〇年に入りまして欧州統合の提案を国際連盟でもう既にしております。そのときには詳しい計画が立てられておりまして、今日いう人の移動の自由は入っておりませんけれども、資本の移動の自由とか、あっ、人の移動は入って、あっ、資本の移動の自由だとかサービスの移動の自由だとか、そういうことは入っております。かなり、それから社会契約、労働、労使関係の社会契約、こういった問題についてはもう既に触れております。今、これを読みますと、ローマ条約、そしてその後の、戦後のEUの、EECの拡大の動きというのが非常にそのときの、あとそれを実現しようとしているんだなというのがよく分かります。
 これが今から七十年、八十年前のお話でございますけれども、そのときにフランスのエリオという急進社会党、当時の首相が、やはりヨーロッパ合衆国論というのを書いております。その中に出てくる言葉にこういう言葉がございます。ヨーロッパは世界で最も優れた国だ、地域だというふうに自分たちも考えていた。ところが、御承知のように、第一次世界大戦でアメリカが世界一の国になりまして、そして妹であると思っていたアメリカが世界で一番になって、自分たちは追い越されている。そして、つらつら地球の裏側といいますかユーラシアの東の端を見ますと、日本が一生懸命勤勉に頑張ってアジアで勢力を伸ばしていると書いてあります。これ一九二五年のお話であります。二三年ですね、この本が出たのは。二三年のお話で、今から八十年前です。一九八五年に私が留学をして、ドロールが旗を振り始めたときに出てくる言葉が全く同じようなことです。アメリカと、それから日本、そして将来の市場として中国ということを言い始めます。
 こういったことから、私はどうしてもまだこの拡大等の動きというのが国境を越えたリストラであるというふうなその流れにあるのではないかと。その流れにあるいい点と、それからまた限界というのがあろうかと思います。もちろん、先ほど最初に申し上げましたように、ヨーロッパの統合、様々な解釈がございまして、ヨーロッパ・アイデンティティーでみんな親しいから当然進むんだとか、あるいはいろんな考え方がございますけれども、取りあえず一つの考え方としてそういったことを考えておる、御指摘させていただきたいと思います。
 その上で、実は二番目になりますけれども、西欧型国民国家とか、ちょっとまた大学の講義のようなことをちょっと書いてしまったんですけれども、その中身は簡単でございます。要するに、形の上での中規模の、帝国ではございませんし、小国ではない、中規模の非常にバランスのいい政治機構としてのヨーロッパでのフランスやドイツとかという国々の国家ができる、ステートができる。その一方で、そこに住んでいる人たちの間で一体感が出てくる。それを共属意識というふうに書いておきましたけれども、ちょっと小難しい学者的な表現になりましたけれども、そういった状況ができる。
 じゃ、この国民国家の中身は何か。統合というのは、さかのぼればローマ帝国から統合といえば統合と言えますけれども、私はそういう意味では、今日我々が語っている統合は、あえて理屈っぽく言えば近代的な統合だと考えております。帝国ではないという意味でございます。つまり、そこに込められているのは、身分差がない、格差がないということが前提でございます。つまり、近代的な社会の延長にある統合でございますから、これは民主主義、平等、社会契約、こういったものが埋め込まれた意味で我々は統合という言葉を今日使っているんだろうと私は考えます。その意味で、統合というのはやはり善なる概念、だれが見ても否定できない概念であろうかと思います。
 同時にまた、これを物理的に推進しているのはやはり資本主義であろうかと思います。これはいずれも近代的な市民革命等産業革命以降の一つの必然的な流れであろうかと思います。そして、この資本主義は、統合していくことが同時に拡大という論理でございます。市場が拡大ということは、そのまま市場の統合、システムの収れん化、一元化ということになるわけですから、資本主義が持っている拡大と統合あるいは深化とよく言われますけれども、拡大と統合、深化という二つの大きな特徴がそのままEUの拡大と統合の、これすべてではございませんけれども、かなりの部分を占めているんではないかと思います。これが私の意見でございますけれども、そうした近代的な民主主義、市民社会と、それから資本主義が持っている拡大、深化、この二つのものがずっと統合の核になっていると私は今でも考えております。もちろん細かく言いますと、そこにテクノロジーとかどういう資本主義の拡大かと、様々な局面がございます。
 ここでは詳しく述べられませんけれども、そういう二つの両輪を考えてみますと、実は四番目の冷戦終結以降の拡大によるヨーロッパ統合の変容というところでございますけれども、これはどう考えても、本来、十全な意味で、あるいは第一次、二次世界大戦が終わって、六か国、ベネルクス三国と独仏伊でスタートしたときのEU統合、あるいはヨーロッパ統合ですね、あるいは第一次世界大戦のときにフランスのエリオなどが言い出したEU統合とは当然違うわけでございます。そこには、ちょっとこれは羽場先生、ハンガリー御専門なので、私はフランス専門なものですから見方が逆になっているかもしれませんけれども、それはそれで見方の違いとしていいところだと思いますけれども。ちょっと極論ですけれども、あるいは語弊のある言い方ですけれども、統合というのは、中心と周辺という二重構造になっていかざるを得ないと思います。拡大が進んでいけば、当然キャッチアップされる国とキャッチアップしようという国の、あるいは地域との格差というのは否定できないと思います、物理的に。先ほど羽場先生がおっしゃられたのは、それを乗り越えようという意味での対話ということをおっしゃっておりました。
 さて、そこででございますけれども、そこでお書きしたのが、多段階統合論とか柔軟性というふうな言葉でよく言われていることであります。できる分野でできる国が加盟して、あとの国は追い付いていけばいいじゃないかというふうに考えれば、統合が拡大していくということには、拡大という言葉自体は肯定していけるわけでありまして、つまり格差を認めながら、時間という流れ、時間の流れの中で仲間が増えていけばいいというふうなことになっていっているんではないかと思います。
 実は、こういった議論というのは、九〇年代の後半、特にアムステルダム条約辺りからかなり言われ始めているんですけれども、ニース条約、二〇〇〇年の十二月のニース条約ですね、ニース欧州理事会のときにこれがはっきりと確認されたんだと私は解釈しております。そのときに今日のEU憲法条約の元々の素案であるニース条約の案が出されるわけでございます。ちょうど私、この二〇〇〇年の十二月、ニース条約の直後にブラッセルでEUの世界大会というのがありましたときに、EUの拡大というパネルで報告する機会がありまして、日本とASEMというようなことで報告したことがございます。
 全体の大会のテーマが拡大なんですけれども、言うまでもなく拡大、ポーランド、ハンガリーとか中・東欧諸国がまずその範囲に入っております。それからその周辺諸国、EUの周辺諸国、だんだん同心円から広がっていくような形でパネルが幾つもできているわけですね。
 私が所属したパネルというのは、その中の一番外の、ヨーロッパを中心とした一番外の同心円の国々が参加しているパネルでございました。私と一緒に発表した人は、チュニジアの人でありますし、アルゼンチンの人でありますし、ロシアの人でありますし、アメリカの人でありますし、ブルキナファソの人でありました。つまり、ここまで拡大しますと、これは、先ほどワイダー・ヨーロッパと言いましたけれども、これはワールドヨーロッパでありまして、世界じゅう全部拡大でございます。ちょっと皮肉な感じで、ヨーロッパはまたヨーロッパ帝国主義なのかなと一瞬思ったような次第でありますけれども。一つ世界を視野に入れ、拡大というのが世界を視野に入れたものであるということ、その意味では、従来我々が考えてきたEUの統合というものとは違っておりまして、中心と周辺という格差を元々認めたような形での拡大、統合が進んでいっているのだと思います。
 その意味で、最近欧州委員会などの首脳部の方が言われる発言の中に、4のBに書きましたけれども、繁栄と平和のプロジェクト、繁栄と平和という言葉を使っております。その背景には、民主主義や市場主義経済の発展ということになろうかと思いますけれども、そこにはヨーロッパでなきゃいけない、ヨーロッパならではのものでなきゃいけないというふうなところがだんだん落ちてきているように思います。もっと緩い統合だといえ、あるいは繁栄、経済的なプロスペリティー、あるいは平和、社会的な秩序の安定、こういったところに焦点が絞られてきている、取りあえずのですね、統合の焦点が絞られてきているんではないかと思います。そういう意味では緩い統合の形態であろうかと思います。
 そして、そういう意味では、国際政治理論なんかでよく言われる言葉で言えば、不戦共同体、あるいは価値とか文化とか行動規範なんかの最大公約数の集まりである安全保障共同体、これは説明が必要な言葉ではありますけれども、そういった中には新たな政体ができようとしているというふうに言う人もいますけれども、そういった、私はこういう言葉がいいんじゃないかと思いますけれども、ある意味での国際的なパブリックスペースが作られようとしているのがEUの拡大ではないかと思います。
 その上で今後のことを考えますと、先ほど羽場先生がおっしゃられましたソラナ・ペーパーというのは、私はイラク戦争をめぐる米欧対立が非常に反映されたものであったかと思います。ヨーロッパ自身は、それを本気でどこまでやれるかどうかということは確信はそれほどない部分はあると思います。はっきりと確信していたり、コンセンサスが取れているとは必ずしも思えませんけれども、米欧対立の中で出てきた問題がそこに網羅されております。先ほど御紹介されましたように、マルチラテラリズムあるいは国連ということ。
 そしてその中で、ちょっと補足になりますけれども、昨年の九月に、このソラナ・ペーパー、欧州の新安全保障、新しい戦略の延長としまして、EUが人間の安全保障ドクトリンというふうなことを言い始めております。人間の安全保障ドクトリンですね。ここでは、もちろん国連なんかで言ういわゆる草の根的な、あるいはハードではなくてソフトな部分での協力ということでありますけれども、それからソラナ・ペーパーの継続でいえば信頼醸成だとか予防外交ということなどでございますけれども、一つ注目したいのは、いわゆる軍隊と、軍事力を持った軍隊ですね、兵力と、それから同時に民間部門のNGOだとか法律家だとかそれから医者、そういった人たちも一緒になった、そして人数的に半々になった混成部隊を作っていこうというふうなことを言っております。新しい一つの試みであろうかと思いますけれども、それを人間の安全保障ドクトリンの中での一つのそういった新しい形の部隊ということを言い出しております。
 これは、イラク戦争のあの前後一年間、私ちょうどワシントンで、アメリカで、戦争になっていき、そして戦争終結にどれだけ彼らが悩み、それから希望を持っていたかというのを日々ウオッチしていた時期が二〇〇二年から二〇〇三年ございますけれども、そのときの経験から考えてみますと、実はアメリカとは違うやり方、アメリカにハードパワーでは勝てない、これはアメリカの、ワシントンのシンクタンクも、それから政府、国務省の人もずっと言っておりましたけれども、戦争、バトルはおれたちが勝てるけれども、しかし後のケアというのはおれたちだけではできないと。それがどのくらい掛かるのか分からない。ネオコン政府はそれは楽観的な見通しでやっていったんだと思いますけれども、そのことについては今度、逆にヨーロッパ側はずっと、それはできない、おれたちが必要なはずだと。
 私、幾つかの雑誌や何かで書かせていただきましたけれども、どうしてもフランスをやっていると言いますので、シラクのことを書けというオファーがございますので書きましたけれども、そのときに、シラクはちょっとずるいから、最後に何かおれたちがいなきゃやっぱり駄目じゃないかというふうなところを待っているんじゃないかというふうなことを書きましたけれども、必ずしもそういうふうに、両者思惑どおりにはいきませんでしたけれども。先般も、シラク大統領のところにブッシュが親しく会見する、それからまたシラク大統領が近々日本に来るかもしれないというふうな話になっておりますけれども。
 そこで、これは我々が一つ日本とEUということを考えるときにどう考えたらいいのかということに最後数分でまとめさせていただきたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、日本がどういうふうな将来の国の形成の在り方を我々は考えているかということによって全然アプローチが違うと思います。日・EUの直接的な緊密化ということであれば日々努力する以外にないし、できるだけのことをやっていく、それがいいと思います。先ほど羽場先生も御紹介されましたように、日・EUのアクションプランなんというのはかなり細かいところまでやっておりますし、それから両者のいろんなレベルでの、次官、それから審議官レベルでの日・EUのいろんな協議会あるようでございます。これは外務省のホームページ出してみますと主なところさっと出てきまして、それだけでも大したものでございますし、うたってあるカバーする範囲も非常に広範なものになっております。九一年以降の、日・EU共同宣言以降の流れはあろうかと思います。
 ただ、私、ここで御提案させていただきたいのは、それはそれでどんどんやっていくべきでありますけれども、これが日米あるいは日・EUというふうに別個のものである以上、やはりこれは日・EUの緊密化というのは世界的な、あるいは日本の世界的な私が思う将来のあるべき姿としてのより大きなプレゼンスを広める、外交的なプレゼンスを高める、強めるという意味ではやはり狭いんではないか、あるいは細かく分け過ぎ、狭いんではないかと思います。米欧がかかわって、直接かかわってくるイシュー、そして米欧が時には協調だけではなくて対立する場合もあると思いますけれども、そういう中に我々が一つのアクターとして入っていけるような協力の仕方あるいはビジョンの提示の仕方というのが日本外交のプレゼンスを高めるという意味ではやはり重要なことであろうかと思います。
 抽象的なお話を、申し上げ方をしましたけれども、つまり日・EU、日米、そして米欧が別々にありまして、日本と米欧との関係はまた別にあるということではございませんで、米欧との関係の中に日本がビルトインされているというふうな、その中での、どう発言していくかと。あるいはまた、そういうことで、場合によっては逃げてはならないというふうに私は、ちょっと理想論かもしれませんけれども考えます。
 抽象的過ぎますけれども、少し私なりの例を最後に一言、ちょっと一分ぐらいおかりして。
 イラク戦争のときに、国連か、そしてマルチラテラリズムか、ヨーロッパか、古いヨーロッパか、それともアメリカか。対立した場合には、我々はアメリカ、日米安保重視、これはそのとおりでありますけれども、日米安保を外してアンチ・アメリカなんていった、私はフランスですから、そういうことでちょっと話してくれと言われますけれども、そういうことでは、それは現実的ではない、日米が軸でありますけれども、そういった中で我々はどういうふうなタイミングでヨーロッパをサポートしたり、あるいは米欧との協調に手をかしていったり、そのタイミングというのが実に重要であろうかと思います。そのタイミングは単なる技術的なものではなくて、我々日本の世界における見識を示していくものであろうかと思います。
 細かいことは省略しますけれども、イラク戦争の前後に我が外交、いろんな形でコミットする姿勢は示しました。これは私、高く評価したいとは思いますけれども、もっといろんなやり方があったのではないかなということを最後に個人的な意見として述べさせていただきまして、御報告に代えさせていただきたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。
#7
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 これより質疑を行います。
 質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。
 できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。
 また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
 まず、大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 二之湯智君。
#8
○二之湯智君 自民党の二之湯智でございます。
 今日は、お二人の先生方、貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。三点か四点について御質問をさしていただきますので、どの先生というんじゃなくて、私の質問の内容に合った御答弁をどちらかの先生がしていただいたらいいかと思います。
 EUは、もちろん私たち政治家にとっても非常に遠い存在の国でございますけれども、しかしながら、経済的に見れば、今や輸出入、そういう数字だけ見てもアメリカと日本との関係と比肩するほどの関係があるわけでございます。しかも、日本が国連の常任理事国入りということを果たしておけば、いわゆる二つの常任理事国を持っておるEUの存在というのは日本外交にとって欠かすことのできない大きな存在であると思います。
 ところで、このイラク戦争の対応をめぐって、アメリカとEUとの対立、とりわけまたEU内部でのイギリス、スペインと、またフランス、ドイツとのその対応の違いというものが非常に露呈されたわけでございます。したがって、ブッシュ大統領も二期目早々の外国訪問にEUを訪問すると、こういうふうになったんでございますけれども、この各国首脳との会談でアメリカとEUとの関係の修復というのは成ったのか、そしてEU内部もこの対応をめぐって大きな亀裂が入ったんじゃないかと、こう思われますけれども、この現状についてどうなっておるのか、ひとつその一点をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、このEUの存在とロシアの関係についてお伺いしたいんですが、昨今ロシアが非常に中央集権的になってきた、強権政治の復活だと、かつてのロシアに変わってきたんじゃないかと、いわゆる冷戦時代に逆戻りしたという、アメリカ側からすると非常にそういう強い心配があり、せんだってのプーチン大統領との会談でも、ロシアはロシアの民主主義の原則に基づいて国家を運営していくという、非常にこれは余り成果のないような首脳会談であったように伺うわけでございますけれども、EUは、ソ連はいわゆる領土が接している、そういう間柄でございますし、またEUの持っている非常に多元的な外交政策によって、アメリカとは違った対ロシア外交が展開できるんじゃないかな、それはひいては世界平和に大きく貢献するんじゃないかと、このように思うわけですけれども、EUとロシアとの関係についてお伺いしたいと思います。
 もう一点は、EUにとって経済力の拡大とともに、国際政治的においても、いわゆる第二次世界大戦のあの大きな犠牲を払ったということ、さらに戦後ずっと冷戦時代が続いて非常に厳しい緊張の中で生存してきたということになりますと、欧州は非常に平和に対して非常に敏感だと、私はそう思うんでございますけれども、ところが、その先ほどのEUのいろんなお話を伺っておりまして、アメリカのその単独行動主義じゃなくてマルチラテラリズムの、そういう非常に多面的な多元的な外交方針を展開していくと、特に世界の安全に責任を持つと、これがEUの外交方針だと、このように思うわけでございますけれども。
 ところが、最近、ドイツとかフランスが中国にいわゆる武器を輸出解禁の動きがあると、こういうことでございまして、これはアメリカだけではなくて日本にとっても無関心ではいられないわけでございます。
 EUはなぜそういう中国に武器輸出を急ぐのか。昨年、両国の首脳が中国に行って大型の商談を成立した。意外と中国は大きい市場だという再認識をされたかも分かりませんけれども、この東南アジアの軍事的なバランス、安全保障と考えると、こういうことについての配慮がもう少しEU側からなされないものかと、こういうことでございます。
 最後に、EUのこの大きな経済ブロックが誕生したことによって、昨今言われておりますように、東アジアの共同体構想、これにつきましては、EUのような場合はキリスト教、自由主義、市場経済という一つの共通の価値観を持つ国々の統合ですが、東南アジアは、非常に宗教的にもばらつきがあるし、それから貧富の差も非常に激しいということ、しかも中国の国家目標がいま一つ明確でないという、そういう非常に強い懸念があるわけなんでございます。
 日本としては、そういう東アジア共同体構想を推進する立場に立つべきか、それとももう少しじっくりとこの中国の動き等を見ながら対処すべきかと、こういうことについてお伺いしたいと。
 以上でございます。
#9
○参考人(羽場久シ尾子君) 非常に貴重な御質問をどうもありがとうございました。
 一点目から何点か私の方からお答えさせていただきたいと存じます。
 イラク戦争と拡大EU、特に新加盟国ないしは加盟する前の中・東欧の動きについて時間の関係ではしょらせていただきましたが、これは国際政治においても、あるいは安全保障においても非常に大きな問題となりました。とりわけ、御存じのように、ポーランドを中心として中・東欧の各国はイラクに兵を送り、中でもポーランドは二十一か国、一万人を超える軍を率いて最も危険な地域に現在も駐留しておりますが、それの最大の背景には、先ほど渡邊先生も御指摘になったようなそのヨーロッパの格差の問題ということが一つ挙げられると思います。
 特に、そのポーランドは、EUの中で議論になりました移民の問題や農業の補助金の問題においても思ったほどの成果が得られないということで、EUのエリートないしは大国に対して大きな不満を抱いておりました。その結果、最初の欧州議会選挙で、史上最低と言われたあの欧州議会選挙だったんですけれども、それが四八%が平均だったんですが、ポーランドでは二〇%しか選挙に行かなかったというような問題を引き起こしてしまいました。
 その意味で、今回のイラク戦争への派兵ということは、単にアメリカを支持するかどうかということだけではなくて、EU拡大に際して内部に幾つかの問題を抱えているということが明らかとなったと言えます。とりわけ、ポーランドが口を極めて批判したのが西ヨーロッパの保護主義やダブルスタンダードへの問題でございました。それに加えて、やはり中・東欧とアメリカとの歴史的な関係も無視するわけにはいきません。
 御存じのように、数百万人に及ぶ移民がアメリカに存在しておりまして、ポーランド人移民、ウクライナ人移民、ハンガリー人移民がブッシュやクリントンのロビーを支えているというようなことがございます。その意味で、先ほどトロイの木馬という言葉を使いましたけれども、EUに加盟する国々が親アメリカの影を引きずって入っているということも、今後のEUの外交や内政に大きな影響を与えるのではないか。
 今回は話になりませんでしたけれども、欧州の中での米軍をどうするかということが非常に大問題になっておりますが、むしろ新加盟国を中心に、あるいは主要国を中心に、アメリカの軍隊をヨーロッパに残すという方向で検討している国々が多くございます。その意味で、新しい国々が加盟したことによって、欧州とアメリカの関係をどうするかというのは、表面に見えている独仏対米以上に非常に微妙な問題になっているということが言えると思います。
 二点目、ロシアとの関係でございますけれども、これも先ほど触れましたように、EUはロシアないし中国に非常に現在強力な共同関係を作っていこうとしております。
 第一義的には石油や天然ガスのエネルギー問題であり、これは、不安定化する中東の石油にすべてを負うのではなくて、リスクを分散化させるためにも、欧州の石油をロシアに依存するというような大きな戦略に出ております。加えて、ロシアの先に中国があるということでは、安全保障も含めてのロシア、中国とEU。これは、独自で軍事的にアメリカに対抗できないけれども、これらの国と結ぶことによって、やはり世界の中で一つの大きな外交戦略あるいは安全保障戦略を打ち出せるという点でも意味があることなのではないかと思います。
 最後に、フランスのお話は渡邊先生にお任せしますので、最後に東南アジアの共同体の問題ですけれども、これは中期的な戦略と長期的な戦略は違うと思いますが、長期的な戦略としては、やはりグローバリゼーションの流れの中で、日本が一国で経済面、安全保障面、政治面をやっていく時期はもはや過ぎつつあるのではないかと思います。アメリカでさえEUの共同体によってしのがれようとする現在、やはり、どこと結ぶかはおいておくにしても、日本が周辺の地域とともに一つの大きな経済圏ないし安全保障圏を作っていくということは避けられないのではないか。
 中期的に見た場合に、それは韓国であったり東南アジアであったりするかもしれませんけれども、やはりEUあるいは世界がこれだけ中国に対して関心を持っているとき、現在EUは、中国は一国であっても既に地域共同体なんだという言い方をしております。十三億の民があり、そしてEUをしのぐ経済力を持つかもしれない中国に対して、中国単独でも地域協力をともにやっていくという姿勢を見せているとき、何らかの形で中国と日本が歩み寄り主導権をともに持つことができるならば、場合によってはEUをもしのぐほどの世界的な力を持つことになるかもしれません。
 その意味では、やはり長期的な展望として中国をどうするかということは、是非EUの政策にも学びながら、歴史的な対立国とどう結ぶかというところにも学びながら、共同歩調を探していっていただきたいと思います。
 以上でございます。
#10
○参考人(渡邊啓貴君) 御質問ありがとうございました。
 最初の、イラク戦争に見られた米欧関係の修復は果たして今後うまくいくのかどうかということでございますけども、私は、離婚できないあしき結婚生活と申しますか、運命共同体とか安全保障共同体というふうなことを申し上げましたけれども、そういった状況はしばらく続くんではないかと思います。何を言っているのか意味が分からないわけですけども、具体的に言いますと、復興とか、それからやむを得ないところではやっぱり協力せざるを得ない。
 ただし、もう一つポイントですけれども、アメリカのユニラテラリズムがそう簡単になくなるとは私は思いません。これは実は、ブッシュとネオコンばかり言われておりますけども、冷戦が終わってからの一つのトレンドです。クリントンはEUでシャルルマーニュ勲章というのをもらった、EUに貢献した人だと一応されていますけれども、たしかそうですね。しかし、クリントン時代に、このアメリカの空爆や何か、ボスニアのときはそうでしたよね、それからコソボのときもそうですよね、一連の動きがあります。ちょっと私、今、本をその辺まとめておりますけれども、これは一つのトレンドであることは避けられない。
 なぜならば、経済、技術、軍事面で、冷戦が終わったということはアメリカの勝利ですから。歴史の終えんとかいろいろ言われておりますけれども、あれはアメリカ人にとっては自分たちの価値観と自分たちの世界観の勝利ですから。ただし、一番親分が、何かあったら社長が一番上階の社長室から飛んできて課長がいる部屋に行ってどなり上げたら社会はどうなるの、会社はどうなるんだろうという話でもありますので、そこを自制しながら。あるいは、冷戦が終わった直後にまだアメリカ自身もビジョンが分からなかった、だから湾岸戦争のときにバグダッドまで行かなかったというのがあると思いますね。で、ビジョンがだんだんわいてきて自信が付いてきた、大丈夫だというのが今度のイラクだと思います。
 その意味からすると、じゃほかの国はどう動くかというと、これはアメリカのリアリストと称される人たちの行動パターンですけど、一番コストが掛からなくて社会が安定しているのは、勝ち馬に乗ってみんな強い者に付くことであります。これがみんな、やられた人だけが痛みますけれども、そこは改悛してみんなに倣うようにするようにしむけてあげまして、あとはみんな倣った方がコストも掛からないし犠牲も掛からないし、立場も悪くならない。議論をする必要はないことです。これはバンドワゴンセオリーと言われますけれども。
 しかし、そうならないのが社会でありまして、それがコアリションであったり、EUで、ヨーロッパの反発であったりするわけですね。そこにはそれなりのものもありますし、アメリカ自身が自分たちの思っているほど本当に、これは私、そういう意味ではユニラテラリズムというよりもアメリカのプライマシー、アメリカの一等の力ですね、一番強い力、優位というふうなことで考えた方がいいと思いますけれども、それにどう我々が対応していくのかという選択だと思うんです。米欧というよりも、一番強くてちょっと乱暴な人間、やつが前を走っておりまして、これをどう我々は付き合っていくのか、止まるときには何とかしなくちゃいけないし、いいと思ったらやっぱり付いてサポートすると、この辺のさじ加減というところでヨーロッパも逡巡していくんだと思います。これはまだ続くと思います。
 で、日本は一難去ってという状況ではなくて、イランが目の前に来ておりますので。ただし、イラクでちょっとアメリカが思惑どおりにならなかったんで。これ、ちょうど私がアメリカにおりますときに、イラク戦争の前にアメリカのシンクタンクや大学で相当シミュレーションが行われておりまして、バグダッドはいいけどもテヘランはやっぱり遠いと、そう簡単ではないということを随分結論でシミュレーション出ておりましたけども、それを考えますと、今回のブッシュ大統領の緩和、外交重視というのは一つうなずけると同時に、それを全部一〇〇%額面どおりでは受けられないと思います。
 それから、ロシアのことは私は専門ではございませんので、最近ちょっとロシアに行くことがございまして、ロシアのEU研究とNATO研究者及び外交官とお会いしたときに、やっぱり思った以上にロシアはヨーロッパを向いているなというのはつくづく感じました。そのことぐらいでございます。
 それから、ヨーロッパ、欧州は平和に対して敏感であるんですけれども、実はイラク戦争のときの米欧対立のもう一つのポイントというのは、余り触れられませんけども、実はアメリカはそうはっきり言っているんですけど、そう我々が読み取れないだけなんですけども、実はヨーロッパに対しておまえはやる気あるのかと言っているわけですよね。ヨーロッパ、世界のセキュリティーに責任を持っていると言っているけれども、実際それだったら、戦略輸送機持っているのかというと持っていない。それから、緊急に対応できる部隊を持っているのか。戦後、これは日本の緊急展開部隊、自衛隊の問題とも重なってくる大きな問題なんですが、そこは注目していただきたいんですけれども、緊急展開部隊、危機管理ということを盛んに言っていますよね。これは、人数要らない、兵器のレベルも低くてもいい。
 私は、よく言うのは予防外交とか復興というのは火消しみたいなもんで、火事場の火消しで先に水まいて火が飛び火しないようにするには、そんなに兵力要らないわけですから、そういう意味では日本の貢献の余地も私はあると思いますけれども、そういった意味での自分の周辺の関心は非常に高まっていますけれども、グローバルな戦略という関心は、私はヨーロッパは弱いと思います。それをアメリカがイラクのときに言ったんだと思います。そこを我々は見逃していけないことだと思います。
 それからもう一つは、そういう意味でいえば、ちょっとレジュメにはしょりましたけれども、三の二のところの「「拡大」の競争」という変な言葉を使いましたけれども、これはNATOの拡大とEUの拡大が、先ほど羽場先生おっしゃられたようにダブっているわけですね。ちょっと長くなりますが、あと二分ほどいただいて。
 EUの拡大というのは冷戦終わった直後にすぐに話題になります。これを拒否したのがフランスのミッテランでありまして、それで経済的な面からうまくいかないだろうということでたなざらしになりました。NATOの拡大の方が先に進んでいきまして、アメリカはこのNATOの拡大に中・東欧諸国のインフラの支援も頭に入れていた、単に軍事的な協力だけではなくてですね。そういう意味から、アメリカにすればNATOの拡大というのは単に軍事戦略上だけの問題では実はなかった。だとすれば、地図、先ほどの羽場先生の地図にもございましたように、NATOのアメリカの影響というのが中・東欧から中央アジア、コーカサス来ているわけですよね。ロシアのところまで来ているわけです。こういった状況で、ヨーロッパはEU拡大をほうっておくわけにはいかないですね。そういう意味では、EU拡大というのはやはりNATOとの、NATO拡大とカップルで組んで考えなくてはいけない問題だと思います。それが今日の、なぜ今EU拡大が今の時期に早急に進められているかという一つの理由だと思います。そんなことをちょっと考えておりました。
 そういう意味では、東アジア共同体というのは、もう一つ、私は、違いは言い出したら切りがない時代になっていると思います。そして、冷戦ですから、極端に言えば何でもガラガラポンみたいな時代にもうこの十年、実はなっていると思います。
 ただ、アジアはヨーロッパとは違う。これは確かでございます、朝鮮半島の問題、中国の問題。ただし、違いを挙げるよりも協力できるところ、あるいは共通の点をむしろ挙げていく姿勢の方が重要であろうかと思いますし、それから結論を申しますと、私はやはり日本は東アジア共同体、積極的に取り組んでいくべきだと思います。そのときに重要なのは、これは我々にとってアジアの問題、そして、狭めていけば対中の問題であるけれども、同時にこれは対米の問題であるということをもう一つ切り離して、この辺がない交ぜになった議論になっているんだと思います。これは、かなり大きな部分は対米外交の問題だと思います。このことを我々はしっかり位置付けた上でないと、やはり提案はしにくい、しなくていいのかという状況でもないと思います。
 その意味では、最後に、私の友人で有名な、民主党政権になったらホワイトハウス入りする可能性のある日系の学者ですけれども、ある日二〇〇三年、私がアメリカから日本に帰る前の日に会って話しておりましたら、急に彼の方から、大東亜共栄圏とは言わないけどね渡邊さん、と話し始めまして、ちゃんと提案した方がいいよ、僕は日本政府にも言っているんだということを言われました。でも、そうなったらいつかの東アジア通貨圏とかなんとかみたいにすぐ言われるじゃないですか、我々はと言ったら、いや、言われてもほっておいたらいいんじゃないのと。何ができる、アメリカにすぐできるわけでもない。まあそれは彼はアメリカ人ですからそう言いますけれども、為替の問題が十円でも動けば日本はパニックになりかねないようなアメリカとの関係ですね。それほど親しいといえば親しいし、我々が敏感な、影響力のある国でありますから。
 しかし同時に、アメリカにもその東アジア共同体の中で利益があると。それを我々がアジアにおいて代表してやるというふうな姿勢もある意味ではあった方がいいのではないか、あるいはそのことによってアメリカを説得できるんではないかというふうなこともつらつら考えたりしているこのごろでございます。結論は出ておりませんけれども。
#11
○会長(松田岩夫君) 藤末健三君。
#12
○藤末健三君 本当に今日は両先生、貴重な話をありがとうございました。私、民主党・新緑風会の藤末健三と申します。
 私、今現在、党の方におきまして、経済外交ということでFTAをうまく利用してこのアジア太平洋地域にどうやって経済的に発展そして安定した地域をつくるかということを議論させていただいています。その中で、関連しまして三つのことをお聞きしたいと思います。
 一つは、今FTAの議論なんかをしていますと、既にシンガポール、メキシコでも進みましたが、今一番大きい議論はやはり農業の問題、農業の補助をどうするかということと、もう一つはやはり人の移動ということだと思います。
 実際、EU、順調に拡大しているようにこう説明いただいたと思うんですが、私がいろいろ調べている範囲では、やはり人の移動、貧しい国から豊かな国の人の移動というものについては様々な問題がありますし、また農業の生産性の格差、それに伴います補助をどうするかという議論がございまして、やはりFTAの初期的な問題がずっと引きずって、まだEUでさえも残っているなということを感じておりまして、その人の移動と農業の問題、これからどういうふうに解決しようとしているかということを教えていただきたいのが一つ。
 そして二つ目に、先ほどロシアについて御質問いただきましたが、これはもう本当にちょっと空想みたいな話ですけれど、もしロシアがEUに入りますと、何と日本の隣国がEUになっちゃうんですよね。そうしますと、もう東アジアというよりも、もう極端な話ヨーロピアンユニオン、もう多分そのときはヨーロピアンじゃなくてユーラシアンユニオンだと思うんですけど、ユーラシアンユニオンに入った方が早いんじゃないかという議論もあり得るんじゃないかと。可能性は低いとは思うんですが、そういうロシア、日本そして中国を含めたEUの考え方みたいなものをちょっと教えていただきたいというのが二つ目でございます。
 そして三つ目は、特に羽場先生にお聞きしたいんですが、なぜ南京で日本と中国の政治家は抱き合えないのかという話伺いましたが、私もやはり中国と韓国伺っていて議論をすると、最後にやはり歴史の問題が出てくる。もうどんなに盛り上がって最後に酒飲んでいると、歴史の問題を言い始めて何か酔いがさめちゃうということが何回かあるんですよ。やはり思いますのは、その歴史問題を解決しなければアジアのそういう連携みたいなのは難しいんじゃないかなと。
 私がちょっと調べたところでは、例えばEUですと各地域の大学にヨーロッパの歴史を研究する研究機関を作ったり部を作ったり、またドイツとフランスが歴史認識でこうもめたときに、国際司法裁判所か何かに調整をお願いしたことがあるらしいんですよね、これはまだ人聞きなんですけど。そういう歴史問題の解決の手法について、是非羽場先生にいろいろサジェスチョンをいただきたいと思います。
 以上、三つでございます。お願いいたします。
#13
○参考人(羽場久シ尾子君) 非常に貴重な御質問をありがとうございました。答えられる限りで答えていきたいと思います。
 まず第一点目、FTAの問題で、とりわけ人の移動と農業の問題でございますが、私もこの間ずっとEUの東と西の移民の問題と農業の問題を取り組んでまいりまして、結局解決ができないまま入ってきていて、農業問題も人の移動の問題もゼロサムゲームでございますので、どこかが損をしてしまうんですね。ですから一番解決が難しい問題だと思います。
 ちなみに、現在、ポーランドからではなくてその東のウクライナ、ベラルーシ、ロシアから非合法を含めて百万人近い人々がポーランドの国境に入り、そこから更にEUに入ろうとしていると言われます。それに対してどのようにしていくのかというのは大問題でございますけれども、現実の政策としては、EUは移民に対して二プラス三プラス二、合計で七年間の移民制限を東に対して掛けることで取りあえずの解決を図ろうとしています。つまり、二年、三年、二年ずつ移民の、余り大量に入ってくるようであればそこまでは入れないということを新加盟国に対して行っていると。これは実は、でも新加盟国の側からは、そもそもEUというのは人の移動、資本の移動が大前提になっているのに、EUの前提を崩すものではないかという強い反発を招いています。
 現状ではこの七年を直接に入れているのはドイツとオーストリアでありますが、それのみならず、北欧諸国やイギリスも、一部はこれを適用するという形で段階的な解決を図ろうとしています。
 農業問題につきましても、これは競争力と補助金の問題、逆の形であるのですけれども、競争力は、安い労働力と安い農産品であるがゆえに東の方があるんですね。それに対して、西の農業を守るという点で、西側は農業補助金を本来渡すべき金額の二五%にとどめる、そして十年間掛けて五%ずつアップして、十年後、二〇一三年に一〇〇%にするということで、補助金の額を下げることで西側と東側の農産物の競争力をタイにさせるというような形を取っております。
 これに対しても、最大の農業国でありますポーランドは非常に怒って、その結果、欧州議会選挙では、家族同盟とか自衛と言われるいずれも強硬なEU反対の農民党で、若者がかなり組織されているんですが、非常に急進的な若者による農民政党が第二党、第三党などを取ってしまうというような状況が起こってしまいました。
 ただし、これは笑い話になるんですけれども、十月に補助金の前渡しが開始されるようになりますと、実際ポーランドとドイツの賃金格差は大体五倍から六倍ぐらいあるんですが、その結果、思ったよりたくさん補助が下りるということで、農民政党は現在批判の旗を下げてしまっています。そのような状況です。
 ロシアについてですけれども、セントペテルブルグのような西側は、現在、北欧、ドイツとも非常に強い経済関係を結んでおりまして、冗談では、ロシアがモスクワの西に線を引くんであれば入ってもいいのにっていうようなことはよくEUからも言われます。
 ですから、今回西ウクライナが問題を起こしましたけれども、場合によっては、ひょっとしたらロシアも一部が分裂してEUに入るというようなことも考えられなくはないので、逆にプーチンは非常に強力で強いロシアということを言っているんだと思うんですね。
 だから、ロシアを始めベラルーシ、ウクライナは、EUの境界線に住む人々と、それから東に住む人々では意識が変わってきていて、EU境界線のすぐ外にいる人たちは、自分たちはEUに入りたい、あるいはそこだけでも分離して入れないものだろうかというような気持ちが非常に強まってきているところがございます。
 他方で、EUの側からいいますと、トルコが加盟すると多分ヨーロピアンユニオンと言ってられなくなってしまうわけですから、おっしゃるようにユーラシアユニオンのような形で、ワイダー・ヨーロッパや、あるいは日本も含み込むようなより広範な地域統合の第二段階、第三段階を考える可能性は、長期的には極めてあるのではないかと思います。
 それが、先ほども言いましたヨーロッパとは何かというのを、当初はキリスト教とか民主主義とか非常に狭く解釈しておりましたが、それではヨーロッパはアメリカにもアジアにも太刀打ちできない時代がやってくる。EUは今拡大どんどんしているにもかかわらず、GDPはずっと三〇%止まりなんですね。だから、これは逆に言えば増やしていかないとどんどん比率は下がっていくということになりますから、その意味でも、今後EUが起死回生を図る際に、そのヨーロッパという言葉を下げて周辺諸国と結ぶ可能性は出てくるかもしれません。
 第三点目の、なぜ南京で抱き合えないのかというというのは、私も聞いたときに非常にこう、そうか、彼らがアウシュビッツで抱き合うということは、日本、中国にとっては南京で抱き合うということなんだなと、EU研究者でありながら初めてアウシュビッツの意味を理解したわけでございますが、ただ、ここで言っておくべきなのは、ロベール・フランクもその後言いましたけれども、セレモニーでもいいからやるべきなんだと。自分たちは、ドイツとフランス、本当に愛し合っているわけではないし、憎しみは消えたわけではない。だけれども、事あるごとに抱き合うあるいは握手し合うということを確認することが極めてその後の様々な経済関係、政治関係を発展させていく上で重要なんだと。
 だから、EUの会議場でも、今でもドイツ語が話され始めると皆さん一斉に同時通訳機を耳に当てるんですね。ドイツ語は分からない、聞きたくないという意思表示なんですけれども。にもかかわらず、表面的にはうまくやっているということで考えれば、やはり日本も中国ももう少しEU並みの度量の大きさというか、あるいは外交のうまさというか、お互いにたとえ嫌いであっても取りあえず抱き合うというような、あるいは握手し合うというようなセレモニーが次に進ませるというところを学んでもいいのではないかなという気がいたします。
 そのほかに歴史教科書の共同などもありますが、やはりパフォーマンスが重要なんだということを言いたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。
#14
○参考人(渡邊啓貴君) 私は、いずれも今日、今の御質問、詳しいところではございませんので、簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。
 農業補助金云々ということは、今、羽場先生、詳しく述べられまして、人の移動、農業補助金と、これは、実は先ほど申し上げましたフランスのミッテランが最初に、冷戦終わった直後に、EUの拡大が出たときに反対した理由なんですね。それがどうしたら解決するんだろうと、私、ずっとこの十年来、何かの折にこの話が出るたびに考えているんですけれども、多分、それを具体的にどうするかというのはちょっとまだ私もあれなんですけれども、一つは、規模が拡大することによって周辺の位置付けというのはどんどん流れていくじゃないですか、本当に真ん中で重要な部分、ここはその周辺部分。
 ところが、拡大することによってこの周辺は真ん中に近くなるわけですよね、同心円が拡大することによって。そして、その最初に周辺部分だった国の格上げが行われる。例えば、労働力の格差というのは、拡大したことによって更に真ん中の部分に近寄るわけですから、質も、格も良く、値段も良くなるわけですよね。そういうふうに、中心部分を拡大する一つの方法としてその拡大というのが位置付けられているんではないか、よく言われる言葉ですが、規模の拡大による解決ですよね。
 恐らく、先般も、私、ちょっと南コーカサスの国での会議があったので、EUの話出ていましたら、エストニア、ラトビアとか、それらの国々というのは、もうEUに加盟したということにおいて物すごく地位が上がっているわけですよね。そうすると、それに追い付け追い越せということで、それらの国が逆に周辺化していくわけですから、規模の拡大による解決というのが、ちょっと時間の掛かる話ですけれども、あるのではないかと思います。
 そのことが、例えば、人の移動の自由ということはたしか二〇〇七年まで据え置かれるんですよね。取りあえず拡大した国々、今度拡大した、加盟した国々も、すぐには適用されなくて……
#15
○参考人(羽場久シ尾子君) 一一年ですね。
#16
○参考人(渡邊啓貴君) ですよね。従来どおりで、七年先だから一一年ですね。失礼。二〇〇七年じゃない、七年先まで延ばされるわけですね、失礼しました。それまでは従来どおりです。
 だから、そこに十年とか、五年から十年ぐらい時間を掛けた中で何か模索して、周りの動きに合わせてということになろうかと思います。そのことは、もう一つ、時間の流れの中で技術革新の進歩というのがあろうかと思います。これがもう一つかぎであろうかと思います。これは私の意見ですけれども。
 そのような意味で、簡単で、一言に申し上げますと、拡大というのはそのような格差、正におっしゃられるように困難な状況を迎えますけれども、実はEUの中心から見ますと、拡大を一応やることによって、もうやることはなくなったと、決めることによってね。あとは時の流れによって事態の推移を見守っていくと、これが拡大と。最近のEU憲法、それからトルコの問題も先送りでしょう、実際は。加盟のあれは十年ぐらい先を見越して、そして各国批准をすると。フランスでも国民投票をするとか、幾つかの国は国民投票をすると言っております。だから、要するに、十年先は分からないと、ある意味では。あるいはまた、楽観的に考えれば、十年先には外的要因が変わっているかもしれないということがあろうかと思いますが、そういう意味では非常にオプティミスティックなやり方であろうかと思います。
 それからユーロ・アジア・ユニオンは、私はちょっと、ベクトルの方向が、やっぱりユーラシアから日本に向かうより、アジアから向かってどこかでぶつかるという方が、数年、五年、十年ぐらいのタイムスパンで見たときに、五十年ぐらいになると分かりませんけれども、五年、十年ぐらいの間ではどこかでぶつかろうかと。そういう意味では、中央アジア、コーカサスというのをにらんだ世界の動きというのは盛んですよね、今。特にアメリカはそこいらで影響力とか資本を掛けていると思います。ちょっと我が国もその辺はもう少しあった方がいいかなと、最近ちょっとその近くに行ったときに思いました。
 それから、最後の問題は、羽場先生も最後におっしゃられましたけれども、私は共通の歴史教科書というのを作るというのはこれは非常に大きなあれかと思います。ただ、外務省の方々などにお聞きしましても、そういう提案はされているんですよね。実際問題としてなかなか進んでいないということで、ただ一つ、中国に行きましたりすると、このような時期ですから集中攻撃を受けたりしたこともあるんですけれども、交渉のための、先ほど羽場先生が雅量ということを言いましたけれども、交渉のための交渉じゃなくて、交渉のためのルール化といいますか、そういうことを取りあえず話してみたらどうかなというふうには考えます。もちろん外務レベルでは行われているのかもしれませんけれども。そんな次第でございます。
 ちょっと専門から親しくないものですから。
#17
○会長(松田岩夫君) 加藤修一君。
#18
○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。
 啓発的で示唆的で、論文を含めて極めて有益な意見の開陳をいただき、誠にありがとうございます。
 羽場参考人に質問なんですけれども、EUの拡大過程で市民への広報宣伝を活発化するとか市民との連帯等ありました。また、市民相互の連帯ということも重要であるというような趣旨の御発言があったようにとらえておりますけれども、あと渡邊参考人から相互依存による自己育成などという、そういう言葉が出てきたわけでありますが、このようなことと関係すると思っております。
 それは、EUの拡大過程におけるカトリックという宗教の影響度合いをどうとらえているかということなんですけれども、つまり同一の精神的土壌があることによるプラスマイナスの役割ということです。これが一番目の質問でありまして、例えばEU全体の統合化において、精神的支柱として、あるいは精神的土壌が共通していることによる安心感、そういったものを生み、機運や意識を醸成したことを促進したことになるのだろうかと。
 また、最後には分かり合えるということもあったのかどうか。もしそうだとしたら、ヨーロッパを襲った第一、二次世界大戦の二つの大戦の勃発はどう考えるのか。いや、その結果としての悲惨さを骨の随まで分からざるを得なかったと。そういった意味では大いなる反省、悔恨、これに根差すところが大きいと。そのある部分は宗教的心情への回帰につながったのかもしれないと。そして何らかの形で統合を後押ししたのではないだろうかというふうに思っておりますが、どうとらえていらっしゃるかということです。
 さらに、ポーランドの加盟におけるカトリックの影響、その役割はどうであったか。またさらに、トルコの加盟問題においてどのようにそういう問題についてはとらえられるのか。地理的にはヨーロッパに属していませんが、宗教的違和感は拡大に向けて課題になるのかどうか。先ほどの意見の中に一部の回答があったように思いますが、付け加えることがあればお願いしたいと思います。
 次の質問でありますけれども、これはお二人に対しての質問でございます。かなり物事を単純化し、想像力をたくましくして質問したいと思いますけれども、一九七〇年の秋ですが、私が大学生のときにクーデンホーフ・カレルギー伯が来日いたしまして、その提唱した内容に衝撃を受けた記憶がございます。今議論しているEUの世界秩序は、それはワールドオーダーズと複数でありますけれども、このことだけでも相当のエネルギーを要する取組であると。想像力をたくましくして、そのはるかな延長上の壮大な世界秩序、これは単数であります。ワールドオーダー、ワンワールドという展望についてということになるわけでありますけれども、その展望が不可能でなければそこへ促す力というのは何かと。
 そこには言うまでもなく共通利益が大きく深く関与していると考えられるわけでありますけれども、単純化してお聞きしますと、大きなインセンティブになる要素、促進要因は何かということになるわけでありますけれども、単なる普通の共通利益では済まされないだろうと思っております。より大きな共通利益とは何かと。
 先ほど渡邊参考人からはEUの人間の安全保障ドクトリン、そういう話がありましたが、そういったものの更なる拡大かもしれませんし、あるいは世界平和ということになるのか、あるいは持続可能な発展による公平で安定した世界ということになるのか、これが実は二問目の質問でございます。
 非常に抽象的な質問でありますので、少し質問の意図を明確にしたいと思います。
 EUの世界秩序の再構築に向けての戦略は、アメリカの軍事力主導の秩序とは異なり、多様性と寛容、対話に基づく多国協調主義を基軸とするものであると、そういうふうに羽場論文にありました。もし行動の原理を心底そこに置いているとするならば、これは非常に重要な戦略でありますし、ある意味で、二度まで悲惨な戦争という自らの文明において発生した文明的な挑戦、人間の獣性、それに翻弄されたと。しかし、新しい世界秩序の構築はこれに対する文明的応戦ではないか、そういうふうにとらえることができるのではないかと考えております。
 先ほど多様性という言葉が出てきましたが、多様性といえば、ガンジーは、多様性の中の統一に到達する能力は我々の文明の美点となり、検証、試しということですけれども、検証となるだろうと、そういうふうに述べているわけでありますけれども、統一に到達すれば我々の文明が勝利したようなことを述べていると。少なくとも私はそのようにとらえております。したがって、EUが挑戦している統合、統一にはいろいろな面がありますけれども、期待をしている一人であります。もちろん日本の応戦もこれは非常に大事なことだと私は考えております。
 EUの世界秩序の戦略は、大きな共感を集めることができると思っておりますが、まあ物事はそう単純ではないということは重々分かっているつもりでありますが、魅了する何かがあるからこそやはり進んでいると思っております。EUの世界秩序への再構築が不戦と平和に基づく理念であるとともに、何よりも国連とともに各国と再生を図り得る世界秩序構築を目指そうとしているようであるわけでありますけれども、先ほど来から出ております拡大EU、それからワイダー・ヨーロッパなど続きますが、そういった、それは頭の中でこう考えていきますと、非常に広々とした地平を思い浮かべるわけでありまして、鳥瞰的に感じますし、ある意味で壮大な光景であるなという、そういった意味では間断なく光彩を放つ統合化への、あのクーデンホーフ・カレルギーの魂がここに至っても息づいているようにさえ感じているところでございます。
 それは論文を読んでいる中でそういう感じ方をしたわけでありますけれども、ただ、その先はどうなるのかと。誠にせっかちな話でありますけれども、行き着く先はすなわち広域の欧州、欧州圏から世界秩序、これはオーダーズという複数でありますけれども、大胆に言いますと、更に大きく止揚されて複数形が取れ掛かり、単数に近づく秩序、あるいは単数になった超世界秩序への展望が広がる可能性はあると、可能性はある。そういうふうに読むことも可能かもしれません。
 この辺についてどう思っていらっしゃるかということなんですけれども、非常にそのことはかなり超長期でありますが、そういったことを内包している、あるいは内包させなければならないと。この質問はやはりかなり現時点の質問としては現実的でないかもしれませんが、ただ、二〇〇一年のとき、第二の千年に入るとき、人類のミレニアムと、第二の千年間ということでそのプロジェクションを叫んだ経緯があるわけでありますから、必ずしも私は飛躍しているとは考えておりません。EUの拡大戦略が基本形の一つになるんではないかと思っているところもそれを支えているわけであります。
 それで、EUの拡大過程で……
#19
○会長(松田岩夫君) 質問、取りまとめていただけますか。
#20
○加藤修一君 はい。
 EUの基本戦略は国連の行動に着目しておりまして、かつてアナン事務総長は国連の目指すべきゴールとして、脅威が生じにくい世界の創造という予防的な役割と、それでもなお起こる脅威に立ち向かい得るより大きな能力の構築という問題解決能力の強化の二点を挙げているわけでありますけれども、やはり国連の本質は対話や国際協力といったソフトパワーにあると。ソフトパワーが最も発揮される本質的な問題は、やはり地球的な問題に取り組むための規範作りと予防のための協力体制作りにあるんではないかなと、そんなふうに考えております。
 そういった意味では、この世界秩序の構築力というのは、ワールドオーダーズと複数の対象を考えた場合にも、地球社会の共通利益そのものに帰着するんではないかなと。例えば共通の環境上の脅威、あるいは非伝統的な脅威であるし、さらに経済的な不平等に立ち向かう、そういう取組、方向に転換させる人間の力であるというふうに考えなければいけない。そういった意味では非常に難しい局面もありますけれども、やはり私は、先ほど申し上げました質問ということに帰着するように考えておりますので、その点含めてよろしくお願いしたいと思います。
#21
○参考人(羽場久シ尾子君) どうもありがとうございました。
 二点御質問がございました。
 その前にちょっと一点だけ補足させていただきたいんですけれども、中心と周辺ということが繰り返し出されましたけれども、EUの考える中心、周辺と、NATOの考える中心、周辺がずれてきている、あるいは経済面での中心、周辺と、安全保障の中心、周辺がずれてきているということを一点だけ補足したいと思います。
 経済面ないしはEUが通常考えるときの中心と周辺というのは先進国と後発国でございまして、元加盟国と新加盟国というふうにも一般には言えると思うんですけれども、安全保障面ないしは軍事面での中心は、現在、中東や中央アジアやロシアにございます。その意味でアメリカがイラク戦争において新しいヨーロッパというふうに呼んだ背景があると思うんですけれども、そのアメリカから見たとき、あるいは安全保障面から見たとき、ドイツやフランスはもはや中心ではなくなっている。中心はイラクやイランや、あるいは場合によっては北朝鮮やというふうに、安全保障のセンターとペリフェリーが異なってきているというところに今のEUの戦略の変化というのがあるのだと思います。その意味で、やはりロシアや中・東欧や中央アジアが非常に重要な問題になっているということを念頭に置いていただければと思います。
 御質問へのお答えなんですけれども、市民との連帯の問題は今EUが最も重視している一つでございます。先ほどの欧州委員会の三本の柱の三つ目にも入っていましたように、欧州議会選挙で非常に投票率が低かったのも、EUエリートと一般市民の間に非常に大きな溝ができまして、EU全体が発展することが必ずしもEU市民が豊かになることや自分たちが幸せになることではないというふうに現在考えているところが問題でございます。
 EUは繰り返し、ユーロバロメーターというような形でアンケートをEU市民に取っているんですけれども、この間、EU拡大は余り自分たちの利益にならないというのが西も東も増え続けています。驚くべきことに、東の国々で、EUに加盟したら経済的にマイナスになるというような意見が加盟直前に膨れ上がりました。そのような意味で、やはり市民層に関心を高め、市民層の利益を拡大するということは極めて重要な問題でございます。
 ところが、その宗教の問題になったときに、じゃ、EUは今カトリックで一体なのかということで言いますと、先ほども申しましたように、ヨーロッパとは何かということが揺らぎ始めている。むしろ、今一千万人を超えるイスラム市民がEUの中にいます。アラブ系やイスラム系、アジア系の人々は増え続けているという状況がございます。
 それに関してとても象徴的だったことは、今回、欧州憲法の前文に神、ゴッドという言葉を入れるか入れないかで大論争がございました。ポーランドやイタリアは入れるということでかなり押したんですけれども、最終的には神という言葉は入れないことになりました。これは、イスラム系市民や新たに入ってくる人々に配慮した結果、ヨーロッパはキリスト教ということではない、ゴッドではないということで排除された経緯がございます。
 そういう点で考えますと、今後、宗教がヨーロッパのアイデンティティーになる可能性はむしろ低まっていって、ヨーロッパそのものがイスラムやアジアの一部も組み込むような形で多様になってくると思います。
 これが二番目の答えに関連してきますが、ワールドオーダーズ、複数になったと言いましたのは、むしろその順番は逆で、ニューワールドオーダーという単数形を主張したのは九〇年代のお父さんブッシュでございます。父ブッシュが政権に就いていたときに、我々は、冷戦が終結して、ここからニューワールドオーダーを作っていくんだということを言いました。このニューワールドオーダーズの複数にしたのは、父ブッシュのワールドオーダー、単一的な世界秩序に対するアンチテーゼでございます。だからこそ、多様性であり多極であり価値の様々な、一部イスラムやアジアや、そしてアフリカをも含み込むようなワールドオーダーズということを申しているわけでございます。
 ですから、ここには、全体を統合するものとしては、おっしゃられたように安定と発展、平和と発展ということがあると思いますけれども、その発展の行き末は、必ずしもアメリカが指し示すものでもないしヨーロッパが指し示すものでもない。それぞれの様々な、そのマルチポール、多極ですね、様々な地域のオーダーズが一緒になってこそ初めて発展があるんだということだと思います。
 EUは、もはやヨーロッパには戦争はないというふうに言いました。二十五か国拡大欧州を作ったときに、ヨーロッパで戦争が起こることは二度とないだろうと。これを世界に広げたい。つまり、一九九〇年代にパックス・デモクラツィアという本が出て大ベストセラーになりました。民主主義による平和、これはパックス・ロマーナ、パックス・ブリタニカ、パックス・アメリカーナに次いで、二十一世紀はパックス・デモクラツィアの時代であるということであり、そして、その民主主義による平和の序章のところに書いてあることは、民主主義国同士は戦争をしないということです。
 正にブッシュがイラクに戦争を仕掛けるときのスローガンはパックス・デモクラツィアなんですけれども、民主主義にするための戦争、ウオー・フォー・デモクラシーですね。ウオー・フォー・ピース、平和のための戦争と言ったのはウィルソンでありますが、ブッシュはウオー・フォー・デモクラシーと言いました。その民主主義のための戦争がイラク戦争であったわけですけど、EUは民主主義のためには戦争は必要ないと。つまり、民主主義というのは様々な、正にオーダーズなんですね。それぞれの地域にそれぞれの民主主義というのがあり得ていいだろう。それに対して、我々は援助はするけれども干渉はしないというのがEUの姿勢なんだと思います。それが多様性であり多極であり、寛容であり対話である。寛容と対話というのは相手を想定しています。つまり、他者、自分たちとは異質の他者に対して寛容であり対話を行っていくということです。
 その意味で、彼らの言うワールドオーダーズの中のSの中には、アジアのワールドオーダー、アフリカのワールドオーダーというもの、あるいはアメリカのワールドオーダーと共存していく新しい多様な世界ということがその中に含まれているのではないかと思います。
 ありがとうございました。
#22
○参考人(渡邊啓貴君) 多岐にわたる御質問だったかと思いますけれども、一言で私なりに問題の焦点を絞らせていただくと、今日御説明はできなかったんですけれども、余り詳しくはできなかったんですが、ヨーロッパ統合に含まれている民主主義の矛盾といいますか、これの克服のための実験というふうに言ってしまうことができるんではないかと私は思っております。
 民主主義ですから平等だけれども、現実には平等ではない。でも、平等じゃないから、先ほど私は中心、周辺という言葉を使いましたけれども、じゃ、それでいいのかと。それはそういうわけにはいかないということです。
 例えば、これは羽場先生は東欧が御専門だから見方が違うかもしれませんけれども、EUの拡大が最初九〇年代、冷戦が終わって拒否されたときには、何かといいますと、要するに経済格差がある。すなわち、どういうことかといいますと、旧中・東欧諸国にとっては、EU、EECの市場に入ることによって、加わることによって自らの国民経済を活性化させたい。つまり、域内市場統合に入ることによって自分の国民経済、自国の経済を活性化するという、極めて自国の利益を重視する発想ですね。これを先進国側から見ますと、統合の拡大ということは国民経済の壁を取り払うことですから、元々同床異夢なわけです。
 つまり、先進国からすれば、国民経済の壁があるからこそ自分たちはばらばらで苦労している。だとすれば、これを取り払ってもっとスムースな動きにしてコストダウンを図り、全体として良くなりたい。ところが、旧中・東欧、新しい加盟国は、加わることによって自分の国民経済を豊かにしていきたい、あるいはインフラを作っていきたい。元々発想が違う方向にあるわけです。
 逆に言えば、そのレベル、ある程度の均等なレベルにならない限り拡大は成立しないということになりますけれども、それも言っていられない。統合というのは民主主義ですから、反民主主義的なことになるようなことは言いたくない、言えないということになります。そのまま十年、十五年延ばされてきたわけです。
 それからもう一つは、クーデンホーフ・カレルギー自身の中にも、彼の書いたものに実は、幾つかの圏に分けますよね、アフリカ圏とかいろいろ。あそこのところに、私の読んだ感想では、ヨーロッパ中心主義というのがやっぱり見え隠れしているような気がします。で、幾つかの圏に分ける。
 それから、私なりに、今、加藤議員のお言葉のワールドオーダーズと読み替えますと、今回のイラク戦争なんかに見られたようにある種の多極化を認めると。EU自身が一つの極となることによって自分の安定を欲しているんだというふうに考えますと、EUの統合というのはリストラとかという言葉で言っておりますけれども、結局は、私は非常に、第一はディフェンシブなものだと思っています。いろんな国際政治や何かのいきさつの上からワールドという言葉を使ったりしますけれども、まだまだディフェンシブなものだと思います。その意味で、アメリカの方がやっぱり安全保障、世界経済に対する責任感の強さは大きい。こういったアメリカからしますと、ヨーロッパはまだ意識が低いというふうなのが私の見方でございます。
 その意味で、拡大というのは、ある種の精神的な意味でのヨーロッパの統合のこれまでの礎となってきた宗教を含むヨーロッパ概念のある種棚上げであろうかと思います。ただし、ほうっておくということではなくて、時間がたつのを待つということであろうかと思います。
 一つ最後に、加藤議員の最初の質問にありましたカトリック、宗教の問題でございますけれども、実は昨年の一月、EUが推進してバックアップしながら、ミグレーション、移民、ユダヤ人会議、あるいはキリスト教でない人たちのアラブ・ユダヤ人の会議が行われております、ブラッセルで。これたくさんの人が集まりまして、そういった宗教的な問題を話し合っております。
 フランス語ではよくライシテという言葉を使います。世俗化という言葉を使いますけれども、このことは、私は、多様性とよく言われますけれども、私が思うには共存だと思います。共存をまずは認めるという段階にあるんではないかと思います。お互いの中身に立ち入る前に共存を認める。取りあえず一緒に生活する、あるいは一緒に、殺し合わないといいますか対抗し合わない、それをまず認めようというのが今回の憲法の話であれ、いろんな動きであると思います。
 したがって、キリスト教とか神だとかヨーロッパという概念は、取りあえずたなざらしではなくて一時的に棚上げにしているんだと思います。ただし、これがなくなるわけではないと思います。私は、これは強く残っていくと思います。ここのところの克服はやっぱり時間が掛かる。克服しないままであるかもしれませんけれども、で進むかもしれませんけれども、そういうところに今の問題があろうかと思います。ちょっと漠然としたお答えでしたけれども。
 それから、新しいヨーロッパの場合には、私の意見では、これは実はアメリカ自身も言っていますけれども、急に出たものではなくて、実は冷戦のときから戦略的にはずっとアメリカはやってきたわけで、冷戦が終わって親米派の人間が、エリートが戻ってくるわけですね、あの旧東欧諸国にですね。それはアメリカは意識してやっておりまして。アメリカから言わせますと、ちょうど冷戦の終わる直前にあの例の中・東欧を支援したPHAREとか、あの辺はブッシュ大統領は八九年に参りまして、ヨーロッパを回りまして約束したりぶち上げてきたことですね。正にブッシュ自身が冷戦のきっかけを東欧についての対応で作ったとアメリカは言っております。かなり戦略的なものだと思いますし、歴史的には十九世紀の地政学的なセンターの地域でありますので、これは今後注目すべきことだと私は思っております。中・東欧のあるいはコーカサスに至る流れでですけれども。
 以上でございます。
#23
○会長(松田岩夫君) 大門実紀史君。
#24
○大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。今日はお忙しいところ、ありがとうございます。
 最初に羽場先生にお伺いいたします。
 先生のレジュメの二ページの6)のところ辺りをもう少し詳しくお聞きしたいということでありますけれども、ドイツとフランスが歴史的敵対者であったのが協調と発展してきたというところに、特に日中も、東アジアの地域協力進めていく上で日中も学ぶべきではないかというようなことの部分であります。南京で抱き合えるかどうかは別として、このドイツとフランスの歴史というのをどう学ぶのかということですけれども。
 以前読んだ本に、その下の方にも書いていますが、フランスのシューマン外相が提案した石炭と鉄の共同管理ですね。つまり、これはドイツとフランスが、何といいますか、それでお互い経済的効率性を高めるとか、経済的利益を生むというよりも、むしろ長い歴史で戦争ばっかりやってきた二つの国を、経済的利益というよりも、もう二度とけんかしないようにといいますか、けんかができないようにするためのというような、政治的な共同といいますか、そういうものを目的としてこの石炭と鉄の共同管理がやられたと。ジャン・モネさんですかね、なんかが頑張ったという、そういう非常に感動的な部分の本を読んだことがありますけれども。
 つまり、EUの歴史の出発点、ドイツとフランスの共同が決定的だと思うんですが、経済効率性よりももっと違う価値をやはり求めようというものがあったんではないかと思います。そういう点では、社会憲章にしろリスボン宣言にしろ、ただ経済効率を追求するんじゃなくて、何といいますか、人間を資産として位置付けて人間を大事にするような経済発展ということが、アメリカなんかの経済効率一辺倒とは少し違うところがあるということだと思います。
 そういう点を踏まえて、日中問題でも、今はお互い金もうけにわあっと走っているというのがありますが、こういう歴史的な共同を果たすときに、やはりそれ以外の価値で日中も踏み越えて違うもので考えていくということが求められているのかなと思いますので、このレジュメのこの部分をもう少し詳しくお聞かせいただければというふうに思います。
 渡邊先生には二点端的にお伺いいたしますけれども、アメリカとEUの安全保障観、外交の方向性の違いで、特にテロリズムに対する問題で、ヨーロッパの方はよくテロリズムの根底にあるのはパレスチナ問題だということを度々言及しているのをいろいろなもので読みます。つまり、イスラエルの占領地域のパレスチナ人居住地でこの何年間で千人以上が死ぬとか、死亡するとかいろいろなことが起きて、要するに、イスラエルのパレスチナに対するこの仕打ちといいますか、そういうものが問題であるというヨーロッパの意識があるのではないかと。それに対して、ブッシュ大統領の方はイスラエルにちょっと肩入れをし過ぎじゃないかと。この辺がEUとアメリカとのテロ問題解決に向けたスタンスの違いかなというふうに私は思っているんですが、その辺、先生の御意見、あるいは、今そのパレスチナ問題をめぐってアメリカとEUがどういうふうなやり取りをしているか、御存じのことあれば教えていただきたいと思います。
 二つ目には、アメリカのミサイル防衛構想でありますけれども、これは具体的には、EUの中のグリーンランドですからデンマーク領ですか、とイギリスに支援基地を今のところの構想だと置かなければ成り立たないという構想になっていますが、EU全体としてはアメリカのミサイル防衛構想に冷ややかな反応をしているんじゃないかと思います。そういう点で、そのミサイル防衛構想等に対するEUの今現在どういうやり取りがされているのか。私専門家ではないものですから、いろいろ聞きかじっているだけですので、分かる範囲で教えていただければと思います。
 以上です。
#25
○参考人(羽場久シ尾子君) ありがとうございました。
 一点目の、独仏の和解に日中も学ぶべきである、そして何を学ぶかということなんですけれども、そうですね、経済効率ではない側面があるのではないかということなんですけれども、面白いのは、ヨーロッパというのはとてもプラグマティックな部分と理想主義とが両方結び付いているのではないかと思うんですね。ですから、単に平和というだけではなくて、平和と経済発展を結び付けようというところで、平和主義者だけではなくて経済発展を望む企業家やあるいは市民や投資家もこれに連動して入っていくという部分があるように思います。
 その意味では、やはり石炭と鉄、当時にとって戦争の最大の根源であり、現在であれば石油であったりあるいは核であったりするものを、すべて共同で管理することによってともに発展しようというプラグマティズムは非常に面白いと思うんですね。正にアルザス・ロレーヌというのはその石炭、鉄鋼の地域を取り合うことによって長年戦争を続けてきたわけですから、これをむしろ日中と言わず現在中東に応用して、石油というものを共同管理することで地域統合がつくれないかというのは物すごく面白い提案であると思いますし、また、アジアの地域において現在EUはKEDOなんかにも非常に積極的にかかわっていますけれども、北朝鮮の核をむしろ平和利用するというところで日本も中国もかかわっていくというような、非常にプラグマティズムと理想主義を結び付けて関与することによって自分にも利益が返ってくるというような部分というのは、正に学ぶべきかなというふうに今回思いました。
 先ほども言いましたように、南京で抱き合うということは完全に許し合うことではなくて、むしろそこで手をつなぐことによって、そこから第二段階の問題として靖国の話合いがあったりあるいは北方領土の話合いがあったりというところでのディプロマシーの巧みさというような部分は、日本でも学んでいい部分ではないかと思います。
 それから二点目に、一言だけですけれども、現在EUは多極の世界秩序を言う中で、今回、EU会議にも大量のアラブ人、パレスチナからの人々とイスラエルからの人々も呼んでいましたけれども、EUのスタンスは、やはりイスラエルの国際法無視に対してきちんと国際司法裁判所で対応していくべきだということは言っています。それをヨーロッパ内やあるいはイスラエルのユダヤ人がEUは反ユダヤ主義だというような言い方もしたりはしているんですけれども、この点は多分、理念を超えて、歴史的にパレスチナ問題はEU、ヨーロッパの人々の政策によって始まったというその原罪認識みたいなものをかなりヨーロッパ人は意識しているのかなというふうに思っております。
 以上でございます。
#26
○参考人(渡邊啓貴君) 御質問ありがとうございました。
 最初の羽場先生の、主に羽場先生に対する御質問であったかと思いますけれども、日中と独仏をアナロジーで考えるときに、やっぱり戦後の復興、独仏の歩み寄りというのは戦後の復興だと思うんですね。マーシャル・プランの一環と言うこともできますし。それは、アメリカが自分の将来競争相手になりそうなヨーロッパの統一というのをアメリカでは議論して、それを承知の上で援助した。まあそれは当時のアメリカの度量の大きさあるいは自信だったんだと思いますけれども。
 そういう状況をやっぱり日中はつくれないですね。違いを強調するのは良くないと言いながら、こういう言い方をするのはあれですけれども。だとすれば、そういうふうな共通目標をどうやってつくっていくかという作業になるのかもしれません。そういう意味では、先ほどの東アジア共同体というのを、日本が先か中国が先かとか、特に東アジア安全保障共同体のときですね、そういう忠誠心競争みたいなようなことにはならない方がいいなと思います。
 それから、米欧の安全保障観で、おっしゃられるとおりだと思います。特にパレスチナの問題あるいはテロの問題というときに、これはもうずっと常々言われていることですけれども、貧困との闘いということを言われますね。必ずしも人間、物質的に豊かになれば戦闘能力が減じる、それでいいのかということにもなりますけれども、基本的にはやはり、必ずしも民族の伝統とか主義主張だけでは収まらないこういったテロ活動、反米活動あるいは反秩序活動というのはあろうかと思います。
 そういう意味では、先ほど人間の安全保障という言葉を使いましたけれども、EUはこの安全保障問題のときによく言われる、彼らが強調するのは自分たちはヒューマンなヒューマンなと、ある意味ではきれい事で、また始まったと私なんか思いますけれども、同時に、やっぱり言い続けることはやはり重要なんだなというふうにも思います。せんだって、あるEUのフィンランドの職員と話していましたら、スローで、ゆっくりで堅実なやり方を自分たちは取っているんだ、目には見えにくいけれども、アメリカの方がすぐ分かるやり方を取るけれどもというふうなことを言っておりました。これは、この冷戦以降の流れでかなり根強い彼らの了解事項だと思います。
 それからもう一つ、EUの場合に、すぐEU、EUと言いますけれども、実はアメリカが先に来て軍隊を派遣していてもう対応していた、EUは後から来た。確かに形の上ではそうなんですけれども、じゃ、EUの各国は、二か国でそれぞれ自分の親しい国とか地域があるわけですから、EUの代表団が来たり職員が来る前に、もうそこに親しい国がもう既に来ている。例えばフランスとアルジェリアとか、この間のアフリカでの問題なんかでもありますように、そういう単にEUとしてだけ扱えないような個別の国の対応が実はある。これが複雑に入り交じっていると思います。同時にまた、これがEUのそういった平和的で堅実な動きをある意味で二国間レベルでサポートしているようなところもあると。ただし、これは非常に見えにくいところでありますけれども。
 それから最後の、MDの、ミサイルディフェンスの話。申し訳ございません、私勉強不足で最近の事情を追っておりませんけれども、ただ、EUとかNATOの会議なんかに出るときにはこのプライオリティーは随分減っているようには思います、話題に余り出ないと思います。特に最初に、ブッシュ政権の第一期政権のときにはこれがすごく出ましたよね。ブッシュ政権が単にミサイル防衛じゃなくて、ナショナル・シアター・ディフェンスって、国防ということを言い出したものですから、それに巻き込まれるということで。
 そういう意味では、イラク戦争を挟んで、少しミサイル、ただし、これは基本にあるのは脅威認識の違いだと思います。もちろん、旧中東等からミサイルがヨーロッパに飛んでくるとかそういうことも考えられないわけですし、そういう脅威認識が基本的に地理的な意味でも違いますし、また、これは最初の問題にくっ付きますけれども、その対応が当然違ってくるわけで、冷ややかで反対の底流はずっと残っておりますけれども、ちょっと私最近フォローしておりませんけれども、余り耳に聞かないことだなと思います。
 そういう意味では、例えば象徴的なのは独仏がそうですけれども、イラクの治安にフランス、ドイツは直接に貢献はしないけれども、イラク人の警察の養成を国外で行うと。イラクの中でやるのではなくて、イラクの外で自分たちはそういう訓練をすることには大いに積極的になろうというふうなことを言っておりまして、もう進んでいると思いますけれども、というようなことでございます。
#27
○会長(松田岩夫君) 羽場参考人、もう一度、じゃ。
#28
○参考人(羽場久シ尾子君) 済みません。
 ロシアの核ミサイルないしは核弾頭の問題で追加の発言なんですけれども、御存じのように、カリーニングラードというロシアの領土で、現在ポーランドとリトアニアに挟まれている地域、地図上でも確認できますけれども、ポーランドとリトアニアの間に挟まれている白い部分がカリーニングラードという地域で、これはヨーロッパの北方領土とも言われまして、第二次世界大戦のときまでドイツの領土であった東プロイセンの元々の領土です。
 これが現在ロシア領として、バルト三国が独立したときにEUの中のロシアとして残されているんですけれども、ここで、二〇〇一年の一月にカリーニングラードに核配備がなされたというのをフォーリン・アフェアーズがすっぱ抜いて一時大問題になりました。これはやはりロシアが、EUの拡大はいいけれどもNATOの拡大は我々の領土を脅かすものだということで、現在でも非常にNATOの拡大には反発しておりますけれども、それに対する一つの行動の出方だったとも言われます。
 実際に核を配備したか配備しなかったかというのはうやむやなまま報道は終わってしまいましたけれども、この地域、元々、冷戦期には二十万人のバルチック艦隊が駐留していたところでもありまして、この地域をどう今後処遇するかというのは極めて重要な問題になっています。
 ここでもNATOとEUはかなり違うスタンスを取っておりまして、EUはカリーニングラードをEUの経済圏の中に包摂すると。これは一時、ロシアのノブゴロド州の市長からも、カリーニングラードだけEUに入ってもいいんじゃないかという話がロシア側から出て、いやいや、それは待ってくれとEU側はとりなしましたけれども、そう言われるほどに、現在EU側からの投資やフォルクスワーゲンの合同の工場ができたりというような形で経済的には進んでおります。
 他方で、ロシアにとっては最も最西端の軍事基地ということでもございまして、現在この地域はもちろんNATOも触れられないロシア領土として核を含む様々のロシア艦隊が駐留しているということもあり、アメリカのミサイルの防衛構想と直接ではありませんけれども、NATOにとってのど元に刺さった骨のような形でカリーニングラード問題が現在でも存在することがございます。
 以上でございます。
#29
○会長(松田岩夫君) 以上で各会派一人一巡いたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いします。
 山東昭子君。
#30
○山東昭子君 自民党の山東昭子でございます。
 まず、羽場教授に、二〇一〇年までに世界で最も競争力のある経済圏へということなんでございますけれども、相変わらず言語も通貨もばらばらのEUの加盟国の中において、一〇年までの間に連帯をして本当にやっていけるのかというような疑問を感じるんでございますけれども、具体的にどのような形で行われていくのかお伺いしたいということ。
 それから、渡邊教授には、EUの中で、特に英仏の中の社会主義体制の動向についてお伺いしたいと思います。
 例えば、ブレア首相のイラク戦争のときの動向を見ておりますと、とても労働党とは思えないブッシュべったりの状況でございましたし、それから、シラク大統領は相変わらずドライな御都合主義者というような感が否めないわけなんでございますけれども、相変わらずフランスにおいては労働者のストライキはやみません。そんな状況から見まして、ドイツは東西統合されて経済力が落ちたというような状況を見ておりますと、どんなふうになっていくのかということ。
 それから、お二人の先生方にお伺いしたいのは、今、我が国において社会保障の在り方が議論されておりますけれども、EUにおいては消費税一五%以下は加盟させないというような状況の中で、スウェーデン、デンマークの消費税二五%、とても我が国においてはそんなことは想像も付かない状況なんでございますけれども、EUのいろいろな国々の社会保障の在り方ということも絡めた上で、日本とEUの国民たちのそうした高額の消費税を受け入れている国民の意識というものをどのような形で見ておられるのか。これは両先生にお伺いしたいと思います。
#31
○参考人(羽場久シ尾子君) ありがとうございました。
 大変難しい御質問ですぐに答えられそうもないかもしれませんけれども、おっしゃるように、二〇一〇年、世界最大の、最も競争力のある経済圏というのはかなりアンビシャスな方針でございまして、これは先ほど時間がなくて余り御説明する時間はなかったんですけれども、むしろEUというのは、この間、六〇年代からずっとヨーロッパの経済停滞が続いておりまして、アメリカに追い抜かれ、そして九〇年代にアジアに追い抜かれて危機感が非常に高まっていたのが冷戦後でございました。
 ですから、最後に、危機からの起死回生としてEU統合はあったんだという話をしましたように、統合というのは正にきれい事ではなくて、統合しなければ、アメリカに追い付けないどころか、日本にも、それから東南アジアにも負けてしまうというぎりぎりのところで始まったのがヨーロッパ統合であったと言えます。九〇年代の頭に東ヨーロッパの国々が入れてくれ入れてくれと言いながら拒否していたのを、九五、六年から急に入れ始める背景にも東南アジアの経済の急成長というものがございました。ですから、その意味で、EUがやろうとしているのは、常に世界のトップから引きずり降ろされることに対する対抗としての対処であるんですね。
 それで考えてみますと、この二〇一〇年までに最大の経済圏というのも、ある意味で中国が今急速に追い上げて、幾ら統合しても今度アジアに抜かれるかもしれないという危機感の中で、いや、それはさせまい、そのためにはどうするかという、やはり後ろがないがけっ縁のところでの今後の展望なんだと思います。だからこそ、あれだけジスカールデスタンも反対していたトルコに対して今年から交渉を開始するんだと言わざるを得なかったその背景もあるのではないかと。だから、今はヨーロッパとは何かという、先ほど来議論になっているような民主主義とかキリスト教ということを言っていられない、だからこそ多様性と言っているわけですけれども、その多様性もやはりきれい事ではない、ヨーロッパだけと言っていてはアジアに勝てない、アメリカに勝てないというところからくる多様性なんだと思うんですね。
 そこで考えると、やはり一〇年までにまずバルカン諸国を入れるというのがありますが、バルカンを入れても経済発展の基礎にはならないわけですから、何らかの形で、ひょっとしたらその民主化したトルコ、ヨーロッパの一員と考えるトルコを入れざるを得ない様相になってくるかもしれない。
 そこで、むしろ両刃の剣でありまして、トルコを入れることによって最も貧しい、貧困を抱えた地域を入れ、そしてイスラムであり、ドイツを勝るかもしれない人口の地域を入れるということで、ヨーロッパ統合はユーラシアないしはヨーロッパ・中東統合にならざるを得ないというような側面もございますわけで、今の御質問というのは、多分ヨーロッパにとっても一番痛い質問。で、正に経済大国になる、経済大地域になるためにヨーロッパを捨てざるを得ないぎりぎりの瀬戸際に今後EUは立たされてくるかもしれないというふうに思います。
 それから、三点目の社会保障の問題もこれも極めて重要な問題で、EU統合そのものがグローバリゼーションの中でいかにアメリカやアジアに太刀打ちしていくかということと重なってきますけれども、ヨーロッパはこれまで高度な経済成長と高度な社会保障というものを両立させてまいりました。
 ところが、現在、もはやそれだけではやっていけないというところで、ドイツもイギリスも第三の道であるとか新しい中道のような形で、社会民主党ないし労働党政権そのものが社会保障を幾つか切り捨てていかざるを得ないところに来ています。
 それは本当に難しい問題なんですけれども、社会保障を維持することに財源を使うのか、それとも経済発展に財源を使うのかというところで、勝つか負けるかが突き詰められている、問い詰められているところで欧州がどうやっていくかというところなんですけれども、少なくとも現状では税金が高くても社会保障を維持する。だから、国民から取りながら社会保障の高度な状況を維持し続けるというところが多分消費税を上げざるを得ないということになっているんだと思いますが、これが、先ほども言いましたように、ユーロバロメーターや様々の世論調査のアンケートで、EUはいいことばっかり言っているけれども、結局は自分たちの懐は狭くなっていくというところにもつながっている部分で、痛しかゆしなんだと思います。
 にもかかわらず、やはりEUはアメリカやアジアと差異化をしていく上でも、高い経済発展と高い社会保障をいかに維持するかというようなところでこの税金の問題が出てこざるを得ないことになっていると思います。
 どうも御質問ありがとうございました。
#32
○参考人(渡邊啓貴君) どうも質問ありがとうございました。
 その前に、先ほどカリーニングラードの話、少し出ましたので。最近、これEUとロシアとの間で特にパイロット地域計画、実験的な計画として、両方相互乗り入れでですね、EUからお金を出して支援だとか援助だとか協力関係を作っていく、まだこれよく分かりにくいところが多いみたいですけれども、はっきりしていないみたいですけれども、そういう方向はEUの側から積極的にアプローチしているようでございます。
 それから、山東議員の御質問ですけれども、一つは、英仏の社会主義体制の違い、社会主義といっても社会党ですね、の違いのようなことだったと思います。
 今、羽場先生がおっしゃられたように、第三の道ということではちょうど十年ぐらい前に盛んに、十年、正確には一九九七年ですか、八年ぐらい前に第三の道ということ、特にブレアとシュレーダーの間での綱領がまとまります。ただし、これに対して当時のフランスの首相であった、社会党の党首であったジョスパンはこれを拒否します。いろんな理由がありますけれども、一つ私が考えるには、社会党の考えといっても、元々イギリスのように旧態依然たる階級構造を残したままの階級代表だった労働党が大きく新しくなると。このプロセスは実はフランスに関していえば、一九七〇年代の初めにミッテランの社会党が成立したときに私は変わったんだと思います。
 私は、あえてそういった大きな意味での変化ということを第三の道と言うんだったら、フランスの場合には一九七〇年代にその実験といいますか、方針は出ていたんだと思います。その意味で、時代が変わって、フランスの社会党としては対応しにくかったんだろうと思います。同じような形で対応はできなかったんだろうというのが全体的な私の見方です。
 その意味で、フランスの場合には、実は元々ネオコーポラティズム的な、びしっと対立しているんじゃなくて、労使間の交渉、労使政、政府も含む三者協議というのが実は五〇年代ぐらいからありまして、これは一方で労働組合が強いという特徴と、それが単に対立じゃなくて労使政というふうにくっ付いた賃金交渉のような協議会の時代が五〇年代ありまして、それから六〇年代、バールの時代にかけてありますけれども、そういった伝統があったので、少し社会自体の政策形成とか、そういう面でのフレキシビリティーが早くあったんだと思います。で、出てきたんだと思います、社会党の対応として。それが七〇年代にあった、今の社会党ですね。
 そういう意味で、歴史的背景が一つ違うのと、それから、リベラリズムを社会党が入れていくのがミッテランが大統領になった一九八一年、このときには大きな政府で、例えば三十五時間の労働時間法にする、生産効率が国有化によって上がって、その上でパイの分配が大きくなってみんな豊かになるんだと、そういうことをやりますけれども、一年でまず物価凍結、それから八三年になりまして徐々に変わってきまして、八四年にはっきりと、その後首相になりますファビウス首相は、リベラリズムということをはっきり言い出します。
 つまり、社会党も経済論争の上ではリベラリズムを認めていきながら、次第にそれが政争の論点にならなくなっていくんですね。社会党と、保守のシラクでありながら、政争の論争として、政策論争としてリベラリズムか社会主義かということを特に経済論争の中で社会党が出しにくくなるんですね。その延長に今の社会党はありますので、先ごろも、もちろん今保守政権で、ラファランという保守政権ですけれども、そこで三十五時間法、一生懸命、前のオブリという雇用大臣が作った三十五時間法がまた延長に、長くなるということになって、それが一応通っていますけれども、そのように社会党の在り方そのものが歴史的にも違うし、それから、リベラリズムを入れていくというプロセスが非常に早い段階にあるんだと思います。その辺が私は英仏の社会党の在り方の違いに出ているんだと思います。
 それから、先ほどちょっと、イラク戦争に関してはブレアは親米でしっかりちゃんと一貫しているけれども、シラクは何だか分からないという、それに対して社会党はどう対応したかということになります。
 それに対する、これはフランスは一丸となって反米であったというふうなイメージもありますし、最終的には国会で正に議論したんですね。そうしたときに、保守の方がむしろ、親米的な力はもちろん強いわけですが、それを説得を国会でしていった。社会党の中でも実は割れていまして、それからまた官僚になりますと、今でも会いますと、あれは失敗だったと言っている人がまだおりますので、あのシラクの政策がですね。必ずしも表向きの一枚岩では政党関係ではないと思います。ただ、大きな流れと世論は御承知のように反米ということで動いております。その辺、社会党の立場というのはやはり微妙ではあるかと思います。
 それから社会保障制度については、もう大分言い古された言葉ですけれども、直間比率の問題とかがございますので、日本とEUということで単純に比べにくいところがあるんだと思います。ただし、伝統的に消費税の問題については、先ほど羽場さんがおっしゃられましたように、年金だとか老後の問題全般等を考えて、高いことに余り抵抗がないように私は見受けられます。
 それからもう一つ、それをバックアップするためにリベラリズムの考え方がそうなると思いますけれども、生産効率の方に議論はむしろ向き加減ではないかなと。特にフランスなんかを見ているとそう思いますけれども。
 以上のようなことでございます。ちょっと、一部詳しくないところで恐縮でございますけれども。
#33
○会長(松田岩夫君) 前田武志君。
#34
○前田武志君 前田武志でございます。両先生、ありがとうございます。それぞれ、一問ずつ御質問したいと思います。
 まず、羽場先生には、EUのビューロクラシーといいますか、ここまで発展してきているわけですから、その事務局というものはうまく機能してきたんだろうと思うんですが、その構造であるとか運用であるとか、そういったもののイメージが余りよく分かりませんもんですからお聞きをいたします。
 例えば、EUのビューロクラットを採用する共通の何か簡明な、オープンなそういう採用試験があるのかないのか。あるいは、例えば各国から、構成する各国からどういうふうに採用している、制限があるのかないのか、例えばの話ですよ。それから、その各国のビューロクラシーとの交流で、人事交流といいますか、そんなものがあるのか、あるいは遮断しているのかだとか、そんなことも含めて、どうせこれだけ長いこと掛かると、やっぱりお役所の弊害だとか、その組織、人事争いなんというのは随分あるはずでございますから、その辺が先生から見て、総合評価、かなりうまくいっているのかどうかだとか、そんなことを含めてひとつお聞かせをください。
 渡邊先生には、多少それと関連するわけですが、多分フランス、外交巧者のフランスですから、このEUを使って非常に大きな戦略に基づいてやっているんだろうと思うんですね。だから、我々が表面から受ける以上にフランスはうまく世界における存在感だとか、リーダーシップみたいなものをEUなんかをうまく使いながらやっているんだろうと思うんですね。
 よく知りませんけれども、当然、国連とEUとの関係ということになって、代表部もあるんでしょうけれども、多分フランスなんかから見ると、安保理におけるフランスの存在からして、余りEUの代表部が国連なんかで大きな力を持つよりも、そこはフランスに任せておけと、こういうふうに思っているのかも分かりませんね。
 そんなことも含めて、フランスから見てこの拡大するEUというものはどういうふうな位置付け、あるいはうまくこれを利用しようとしているのか、あるいはどう対処しているのか、それぞれについての御見解をお聞かせください。
 以上です。
#35
○参考人(羽場久シ尾子君) ありがとうございました。
 EUは機構的には幾つかの段階から成っているわけですけれども、一番そのEUを動かしていくものとして、現在十五か国の代表から成ってきたヨーロピアンコミッション、内閣に当たるような部分ですけれども、それと、そういう欧州委員会と、それから閣僚会議と、そして毎年、年二回開かれる首脳会議、それからこの間の六月に選挙がありました欧州議会や司法裁判所から成っているわけですけれども、旧EUのビューロクラシーと新の、ビューロクラシーの新しいものが今度欧州憲法で決められる際に大議論になりました。
 これは時間がなくてお話しできませんでしたけれども、レジュメには「欧州憲法条約草案をめぐる相克」というところに書いてございますけれども、元々、今言いましたように、その内閣に当たるヨーロッパ、欧州委員会のメンバーというのは一国一名で、十二か国、十五か国と増えてきたんですね。ですから、今回ニース条約を踏まえて二十五か国になったんですけれども、欧州憲法は、そのように大きくなったヨーロッパを多くの人数で運営すると非常に複雑でややこしくてなかなか決まらないということで、憲法条約としては効率化とそれから合理化を目指して新たに組み替えられたんですが、そこで新加盟国が非常に不満を持つことになります。
 というのは、今後三十か国、三十五か国とEUが拡大していく中で、欧州委員会のメンバーは全員ではなくて三分の二しか、最大で三分の二しかそのメンバーになれない。ですから、これまではハンガリーでもキプロスでもマルタでも、どんな小さな国でも欧州委員会のメンバーに入っていましたから自国の利益が反映できたわけ、まあその自国とEU益というのは必ずしもEU委員が代表するものではありませんけれども、それでも何らかの形でかかわることができたわけですけれども、今後欧州憲法条約が批准されて発効され始めると、EU、ヨーロッパコミッションの中に入れない委員が出てくる。
 これが大問題になって、元々昨年、決まるはずであった欧州条約は締結されないまま紛糾して、昨年の六月まで延びてしまいました。一昨年決まる予定が昨年の六月まで延びてしまったんですけれども。ですから、今後、より統合された強力なEUをつくっていくというような方針の中で、現在、EUのビューロクラシーそのものが改革され、その中で、その小国の意見ないしはマイノリティーの意見が十分反映されないのではないかという危惧が、現在、EUの中で出てきております。それがこの間の最大の対立点であって、その大国と小国、ないしは先進国と後発国、あるいはEUビューロクラットと市民との間の対抗関係として出てきました。
 それをできるだけ、これも先ほどの山東議員の質問と同じように、いかにその両方をすり合わせていくかというのはとても難しい問題なんですけれども、数が増えても統合して行動を取っていけるぎりぎりのライン、なおかつ様々の国の、小国の小さな意見も反映されるような制度ということで、二重多数決の問題でありますとか、あるいは、その人口の六五%と加盟国の過半数による決定を行っていくとか、あるいはその旧来の輪番制は廃止するけれども、できるだけ小国の意見が反映するように欧州議会の役割を拡大するとかということを、今回、非常にその分厚い欧州憲法条約の中で取り決められて入れられていくことになります。
 ですから、旧来の六か国から始まったEUからしますと、もう四倍以上の大領域になってきている中で、いかにその民主主義的な決定と、それから統一した方向性を出していくかというところで、今最もEUが逡巡している問題を御質問いただいたと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。
#36
○参考人(渡邊啓貴君) 御質問ありがとうございました。
 前田先生のお話は、恐らく全体として決定プロセスをめぐる話であろうかと思います、EUの中でのですね、私なりに解釈しまして。
 まず、フランスの側からいけば、私は、フランスはやはり単独では大きな力をもう発揮できなくなっていることは、もうドゴールがあれほど頑張ってやった後はもう明らかになっていると。その中で、私なりの言葉で言えば、ちょっと分かりにくい言葉ですけれども、フランス外交の地場といいますか、自分の活動のテリトリーとしてEUというものを、あるいはヨーロッパ統合というのを位置付けているということを常々言っております。特にミッテランになりましてその辺がはっきりしてきていると思います。
 これは必ずしもドイツとの関係は、ミッテランというよりもむしろドゴールとアデナウアー、それからまた独仏枢軸ということで言えばミッテランとコールがよく言われますけれども、シュミットとジスカールデスタン、ジスカールデスタンなんかは言い出したのは自分が最初だというふうなことを言ったりしますけれども。
 そのときに、地場とするときにパートナーとしてドイツそして独仏連帯というのがまず必要条件になると思います。単独で幾らフランスがヨーロッパで旗を振るということになっても、なかなか全部が全部うまくいかない。やっぱりドイツがいてのことだと思います。
 そのことはまたドイツにとっても同じことが言えるんではないかと思います。特に、ユーロといいますか、その以前のEMSのときには経済通貨的にはドイツが中心でございますからマルク圏だとかって言われて、そういうふうな形でドイツが中心に動いていた。フランスはもうとっくに、一九八〇年代の前半ですけれども、その共通圏、通貨の共通圏から離脱しておりました。
 そういった中で、やはりドイツにとってもフランスにとっても、相互に連帯することが相互の外交あるいはヨーロッパにおけるプレゼンス、そして世界への発信ということを大変しやすいところであるという了解、相互認識、相互了解があったんだと思います。問題は、実は、そのレベルで実はずっと動いているんだと思いますし、イラク戦争のときもそうですし、それに更に乗っかっているのは、二〇〇三年、イラク戦争があって一段落しそうになったときに、四月ですけれども、二〇〇三年の四月ですけれども、ドイツとフランスに混じってベルギーやルクセンブルクという、ドイツとフランスの近辺諸国が一緒になってミニサミットを開いたりしております。で、EUの中がミニサミットの牽引車の幾つかの国と、それは独仏だけではなくてベルギーやルクセンブルクも加わったような状況でそういうことが行われたということが一つ大きな象徴的な事件であろうかと思います。
 そこで、もう一つそれをもう一歩踏み込んで考えたときに、ドイツはフランスをある種隠れみのにするような形、あるいは政治的にはげたを預けるような形で進んできたんですけれども、イラク戦争のときに見られた独仏の反米姿勢、これは、私の友人のアメリカの国務省のドイツ専門家が非常に怒っていましたけれども、あれだけ面倒見たのにということで怒っていましたけれども、私は、ドイツの自立外交というのが模索されているんではないかと。別な言い方をすれば、ドイツの冷戦後の外交が、ドイツ人が意識をし始めているんではないか。そういう意味では、フランスが独仏枢軸によってというよりも、ドイツがフランスとくっ付くことによって自らの外交の思惑を実現しようというふうな力が働き始めているんではないかと最近思っております。
 その意味からすれば、独仏万歳というのはフランスが言っているだけではなくて、ドイツの方から非常に強いインセンティブがあり、そしてまた、フランスからすれば今度はドイツに引っ張られていくと、外交がですね。経済はドイツで、政治、外交はフランスだと言っていたような認識が、外交や政治もドイツに引っ張られていくんじゃないかというふうな考えをフランスの側から少し持つようになってきているんではないか。まあこれは、かなり人間同士のかかわりにもかかわってきます、首脳同士のキャラクターなんかにもかかわってきますけれども、そういう局面がまた少しずつ来る可能性もある、まあ急にではないとは思いますけれども。こうしたときに、独仏が中心としたフランスの外交の場所としてのEUというものの在り方は、必ずしもフランスだけではなくて、もっと多様化していくかもしれないしと思います。
 ただ、先ほど申し上げました、中心、周辺とか申しましたけれども、その中でもまた、西欧の現加盟国の中でもイニシアチブ争いというふうなことがあろうかと思います。これはパワーポリティックスの視点ですけれども、ちょっと羽場先生になされたビューロクラシーの問題とも関係しますと、最近よく言われるのは、マルチラテラルガバナンスということを言われます。ユーロクラットで大変強い官僚主導で、それがエリートと庶民との格差を開いてきたというのがEUの統合であり拡大であったわけですけれども、これを克服するために、マルチラテラルですから、いろんな次元での企業や民間、それからNGOとかを含むですね、いろんなレベルでのフォーラムのようなものができて、それを単に水平的だけじゃなくて垂直的にも包括していこうというふうな、そういう動きをかなりEUが打ち出しておりまして、私も友人が専門なんで聞くんですけれども、複雑でなかなか理解がしにくいんですけれども。それはひとつ、ユーロビューロクラシー、ユーロクラットですね、ヨーロッパ官僚の主導をひとつ克服しようというこの数年の大きな動きであろうかと思います。
#37
○会長(松田岩夫君) 澤雄二君。
#38
○澤雄二君 ありがとうございます。
 それでは、渡邊参考人に一つだけお尋ねをいたします。
 今日のお話の中で、日本とアメリカ、それから欧州との関係の話の中で、日欧を先行させるというか、深化、日欧だけで深化させるんではなくて、米欧の中にアクターとして日本が介在をする、むしろ日本がビルトインされる、そのことの方が日本のプレゼンスを高めますよねというお話と、それから東アジア共同体のところでは、東アジア共同体なんだけれども、この共同体はまあ賛成である。だけれども、大事なことは、日米関係が大事で、米国の説得が非常に大事であるというお話をされて、多分この二つの考え方の底流には、日米関係が日本にとってのすべての基軸である、これは大変よく分かるんですが、もう少しこの関係について御説明をしていただけますか。
#39
○参考人(渡邊啓貴君) 私、フランスやヨーロッパをやっていると、もう顔を見るなり質問が、大体、おまえ反米だろうという質問が来るものですから、私は親欧でありながら親米ですよということにしているんですけれども。というか、現実的に反米という軸は私はないと思っておりますので、日本の外交選択に。
 それで、両方ともにアメリカが非常に重要なことであるということで、これニュアンスの問題として、単にアメリカに了解を取るのか、アメリカに政策提言をしてアメリカの政策まで動かすことができるのか、どのレベルで言っているのかということでうんと意味が違ってくると思いますけれども、なかなか後者のレベルというのは難しいかと思いますけれども。私の真意は、すぐに日米対等のパートナーシップでグローバルパートナーシップというふうに言われますけれども、事実はジュニアパートナーでリージョナルパートナーであるということ。グローバルなアメリカの戦略はあるけれども、その中でのジュニアな役、リージョナルな役割がまず第一である。必要に応じてグローバルな役割を仰せ付かることはあるけれどもというのが実態ではないかと思います。
 ただ、これは、戦後の日本外交をこう見ておりますと、もちろんフランスやなんかと、ヨーロッパとは比ぶべくもないけれども、敗戦のところから比べると我々は随分進歩したものでありまして、宮沢先生のアメリカ密使ですか、あの本なんか読みますと、一国の大臣が、池田、当時の蔵相ですよね、あの本なんか読みますと、一国の大蔵大臣が行くのに、今の僕らからの感覚からすれば、アメリカのビジネスホテルのようなところに泊まって、課長級の人にようやく会っていると、これが日米外交の出発点ですから、それからしますと、もう対等な関係で、対等なランクでは一応会っているわけですし、そういうことからしますと、はるかに、私はそういう歴史的な流れを無視して言っているわけでは決してない、次のステップということで申し上げている。
 そういうふうに考えますと、例えば国際的なこういう一番問題なのは、恐らく、米欧が意見が一致しているときは割と素直にすんなり入っていけるでしょうけれども、対立していたり次元が違っていたりすると我々はどうスタンスを取っていいか分からない、もちろん日米第一だけれども。しかし、それだけでいいのかというふうなことになると思います。
 そのときに、分かりやすく言えば、ヨーロッパからの、ヨーロッパあるいはその他の国際社会からのサポートが得られるような、つまり結局は日米のバイの関係じゃないかとよく批判派の人は言いますけれども、それで終わらないようにはどうするのか。例えば今回のイラク戦争の話というのも、我々は、私はちょっと括弧付きですけれども、今日我々、自衛隊が傷むこともなく、国際的な評価も悪くなく、ちょっと皮肉的な言い方ですけれども、無難な対応をしてきたある種成功の例であるかなとも思いますけれども、ただ、ロングタームで考えたときに、日本の見識というものがヨーロッパやなんかにどこまで通じたのか。例えば、ヨーロッパは反米というふうに今回なっちゃったからそのように見られていますけれども、実は一番アメリカに近い同盟国は、歴史上ヨーロッパですから。それを始めとして、ほとんどの多くの国が、世界じゅう、やっぱり親米か反米かで悩んだと思います。これは日本だけではないと思います。程度の問題は、それぞれ条件で違うと思います。その中で、我々は、みんな悩んだ人たちにどれだけ自分の苦衷や発想を説明し得たのかというふうな気がします。日米関係の中ではアメリカとの説得はできたと思いますけれども。そういう点で、例えば発言のタイミングだとか、例えば対米支援のタイミングだとかは、いろんなタイミングのオプションがあったと思います。
 それからまた、私自身は、イラク戦争の問題が、三月、年明けて、非常にヨーロッパとの関係で高まりますけれども、実は、二〇〇二年の秋ごろ、例えば査察の問題が非常に問題になっていた。日本では新聞でちょっと上げられただけで、私もアメリカにおりまして、日本の雑誌に注目したらどうですかと言ったけど、なかなか、北朝鮮問題の方に話が移転しておりまして、ならなかったけど、あの時点で日本がそういう発言をすることによって、何かを言えば、あとリアクションが返ってきますから、あなたこう言ったじゃないかということも言われるかもしれないけれども、早めに査察の問題で我々は発言ができたんじゃないか。あるいは、強制査察とかという話が出ましたけれども、あのときに、PKOの準ずるような形で、自衛隊が何らかの形で協力して出せたか、これは提案の段階ですけれども。そういったところは、やはり一つの、私の今の提案が正しいかどうか分かりませんけれども、見識だと思います。
 で、見識とタイミングというのが我々に大きな、新しいことをできるような立場にありませんけれども、そういうことを積み重ねていく一つの時期に来て、まあもちろん今までも積み重ねていますけれども、これまでとは違った形で積み重ねていく必要があるのではないかというのが提案でございます。
#40
○会長(松田岩夫君) 羽場参考人からも発言を求められています。羽場参考人。
#41
○参考人(羽場久シ尾子君) ありがとうございます。
 一言だけ。そのEU、拡大EUというのが我々日本人にとっては非常に、一番知っているのがドイツとフランスだけなので、独仏をつい集中して考えるかもしれませんけれども、やはり十五か国になり二十五か国になったときに、そうではない国々が何を考えているかということも、大変日本にとっては難しいことなのですけれども、見ていかなければならないということだと思います。
 それの象徴的なのがイラク戦争で、イラク戦争では、独仏が反対してEUが反対したように言われていますけれども、実際に当時十五か国の中でアメリカの参戦に反対したのは四か国でした。で、残りの四か国が中立の立場を取り、七か国が兵を派兵したわけでございます。ですから、全体の中では、EUとしては派兵した人数の方が多かった。それから、新しいヨーロッパと言われた十か国の国々が兵を送ったというところでは、二〇〇一年の九・一一を経て、二〇〇三年のイラク戦争の段階では十七か国がヨーロッパからイラクに兵を派兵しています。
 その意味で、このイラク戦争が一つの象徴でもありますけれども、我々が拡大EUないしは拡大ヨーロッパと言うときに、できるだけ、これまで知らなかった国々がどのような行動を取っているのかということを、対アメリカの問題についても一つ一つ見ていかないと、EUを間違えて解釈してしまうかもしれないというふうに思います。
 それからもう一つの点は、日本は今後東アジアやヨーロッパとの関係でアメリカとのスタンスをどう取るかというときに、一つのお手本はイギリスのようなあの立場があるかと思われます。やはり、イギリスはEUの大国の中では若干離れた島国でありますから、常にEUの主流派とは異なった独自の動きを自国の国益と重ねて考えてやっておりますけれども、やはり東アジアでもコンチネント、大陸としての東アジアの位置と、それから、そこから離れた島国としての日本の位置というのはインタレストが違ってくる場合があるかと存じます。
 その意味で、東アジアとの距離、それから欧州との距離、アメリカとの距離というのを日本の独自の判断で、中国や韓国のような大陸とは一歩違った、日本のその国益ないしは国民の意識を踏まえた上での政策決定ということも極めて重要になってくるのではないかと思います。
 以上、ありがとうございました。
#42
○会長(松田岩夫君) 予定の時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、本当に長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。
 お二方の今後ますますの御活躍を御祈念申し上げまして、本日のお礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時六分散会
ソース: 国立国会図書館
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