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2005/04/06 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 国際問題に関する調査会 第7号
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2005/04/06 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 国際問題に関する調査会 第7号

#1
第162回国会 国際問題に関する調査会 第7号
平成十七年四月六日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二日
    辞任         補欠選任   
     尾立 源幸君     大久保 勉君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         松田 岩夫君
    理 事
                山東 昭子君
                世耕 弘成君
                野上浩太郎君
                直嶋 正行君
                山根 隆治君
    委 員
                岸  信夫君
                小林  温君
                末松 信介君
                中川 雅治君
                二之湯 智君
                水落 敏栄君
                大石 正光君
                大久保 勉君
                工藤堅太郎君
                佐藤 雄平君
                田村 秀昭君
                藤末 健三君
                前田 武志君
                浮島とも子君
                澤  雄二君
                大門実紀史君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        三田 廣行君
   参考人
       政策研究大学院
       大学教授     白石  隆君
       21世紀政策研究
       所理事長     田中 直毅君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際問題に関する調査
 (「多極化時代における新たな日本外交」のう
 ち、日本のアジア外交(東アジア共同体構築に
 向けての課題)について)
    ─────────────
#2
○会長(松田岩夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る三月二日、尾立源幸君が委員を辞任され、その補欠として大久保勉君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(松田岩夫君) 国際問題に関する調査を議題といたします。
 本日は、本調査会の調査テーマである「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本のアジア外交に関し、東アジア共同体構築に向けての課題について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、政策研究大学院大学教授白石隆参考人及び21世紀政策研究所理事長田中直毅参考人に御出席いただいております。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本調査会では、日本のアジア外交について重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、本日は、東アジア共同体構築に向けての課題についてお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず白石参考人、田中参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、白石参考人から御意見をお述べいただきます。白石参考人。
#4
○参考人(白石隆君) 今御紹介いただきました政策研究大学院大学の白石でございます。
 三十分ぐらい、東アジア共同体という、この三年くらい非常に頻繁に使われるようになりました言葉がありますけれども、その言わば前提になります東アジアという地域というのがどうやって形成されてきたのかと、その中で東アジア共同体というのはどういう意味があると考えられるのかということについてお話ししたいと思います。
 現在、我々は、東アジアという言葉でほとんど何の恐らく疑問もなく、日本、朝鮮半島から中国、台湾、東南アジア、この地域を指して東アジアという言葉を使っておりますけれども、つい一昔前には、東アジアと申しますと、これは例えば中国文明圏のことであったり、あるいはもっと狭く、韓国それから中国、場合によったらあと日本、台湾それからベトナム、この辺を指して言われた言葉でございます。
 その意味で、現在我々が使っているような意味で東アジアという言葉が使われるようになったのは実はそれほど古いことではございませんで、私自身の印象では、恐らく一九八〇年代の後半、まだ二十年にはならないくらいしか、この東アジアという言葉は現在我々が使うような意味では使われておりません。
 恐らく日本で、特に政府の方で最初にこれを使ったのは、竹下総理が東アジアという言葉を使ったのが多分最初だと思いますし、例えば世界銀行では「東アジアの奇跡」という本がかつて報告書として出ましたけれども、そのころが東アジアという言葉が現在我々が使うような意味で使われるようになった初めて、最初の例だと思います。
 それでは、どうして一九八〇年代の後半くらいになって東アジアという言葉が今我々が使うような意味で使われるようになったのかと。非常に単純な理由でして、そのころになって、つまり一九八〇年代の後半くらいになって初めてこの地域がそれなりに地域としてのまとまりを持つようになってきたからであります。
 それじゃ、どうしてそういうふうな地域的まとまりができたのかと。これは、恐らく一般的な説明としましては、一九八五年にプラザ合意がございまして、その結果、円がドルに対して非常に高くなると。その結果、日本の企業が国際的な競争力を維持するために直接投資の形でこの東アジアの地域のいろんな国に進出していくと。同じことが少し時間をずらして台湾についても起こり韓国についても起こるということで、日本だけではなくて、韓国の企業、あるいは中国系というか華僑の企業、こういう企業が直接投資の形で国境を越えて地域的な企業展開を行うようになると。
 そういう企業のネットワークの拡大と深化という形で事実上の経済統合が進展していくということが、このころ、東アジアという言葉が決してフォーマルには、公式的な意味では何の共同体的な、あるいは経済統合の制度も持っていなかったにもかかわらず、それなりに地域的なまとまりを持つように受け止められるようになった大きな理由ではないだろうかと思います。
 ただ、そのときには、あくまで地域統合というのはこれはインフォーマルな事実上の統合でございまして、これについて何か政府がリーダーシップを取って制度整備をやるというふうなことはほとんどございませんでした。実際、私の理解では、一九九七年、九八年の経済危機以前には、日本政府としても、日本政府の政策として統合を推進するということは恐らく余り考えていなかったんではないだろうかと推察しております。
 と申しますのは、やはり一九九〇年前後に、かつてEAEC、イースト・エイシア・エコノミック・コーカスというふうなことが言われました。これはマハティール・マレーシア首相が提唱したことでありますけれども、それに対してアメリカが非常に警戒して、それで日本政府としても苦慮したという、そういうこともございまして、むしろマーケットの力によって事実上の統合をどんどん進めればいいと。政府が何かするとむしろアメリカが警戒するんで、そういうことはしない方がいいというのが、どうも経済危機以前の日本政府のスタンスであったように理解しております。
 ただ、それではやっぱり駄目なんだということが分かったのが一九九七年、九八年の経済危機でして、やはりマーケットが失敗したときには、政府がやはり制度をつくっておいてそれでマーケットの失敗に対応できるようにしておかなきゃいけないということがはっきり認識されたんだろうと思います。
 その結果、まだ皆さん御記憶だと思いますけれども、例えばアジア通貨基金構想、これはアメリカ政府とIMFと中国の反対によってできませんでしたけれども、ともかく画期的な私は提案だと思っていますが、そういうAMFの構想であるとか、それが形を変えて実現されたチェンマイ・イニシアティブだとか、あるいは日本とシンガポールの経済連携協定だとかということは、これはすべて一九九七年、九八年の経済危機の後に始まったことであります。
 ですから、その意味で、東アジア共同体というのはまあ二十年ぐらいの歴史の中でだんだんと形を成してきたんだと。そこでの大きな節目というのは、一つはやはりプラザ合意の後の企業ネットワークの拡大であり、もう一つは東アジア経済危機の教訓であるというのがまず最初にともかく申し上げておきたいことでございます。
 それから二番目は、中国の台頭ということがやはり経済危機の後、大きな意味を持つものとして、日本人にとっても、あるいは東アジアのほかの国にとっても受け止められるようになりました。その結果、現在では、ともすると日本のジャーナリズムでも世界のあるいは英語圏のジャーナリズムでも、地域統合について、日本と中国のリーダーシップ争いのようなことが語られるようになっております。確かに、日本と中国の政府のこういう東アジア共同体についての対応を見ますと、拙速とは申しませんけれども、非常に速度はあるけれども決して質の高い経済連携あるいはFTAを目指しているのではない中国と、非常に質の高い経済連携を目指すけれども速度感には欠ける日本ということもありまして、これはジャーナリストの観点からいうとなかなか面白いポイントなんだろうと思います。ただ、実は、後でまた申し上げますが、それが一番重要なことではございません。
 それからもう一つ、ここに来てやはり、経済共同体をつくるということではいいかもしれないけれども、政治的な共同体をつくるということになると、やはり中国の台頭というのは、相互信頼の欠如ということもあってなかなか大変な問題があるということも分かってきておるというのが現在のところかと思います。
 そこで、今日の私の報告について、まず最初に結論を先取りした形で申し上げますと、五点、申し上げたいことがあります。
 一つは、先ほど既に少し歴史の概観のような形で申し上げましたが、東アジアにおける経済連携あるいは地域統合の基本的な特徴というのはあくまでマーケット主導型の地域統合にあるんだと。決して政府が先頭に立って政府の共通の政策として地域統合を進めようとしているのが特徴じゃない。企業がそれぞれ非常にミクロな決定の結果として企業展開をやる、それがデファクトに経済統合を進めているんだと、それが第一点。
 二番目に、したがって、よく言われますように、東アジア共同体の構築において、日本と中国、どちらがリーダーシップを取るかということも実はそれほど重要な問題ではない。そういう、どこがリーダーシップを取るか、あるいは取っているように見えるかというのは、これは例えば外交官にとっては大変な問題かもしれません。ただ、実際にここで問われておりますことは、いかにして現にマーケット主導で進展しているような地域統合を推進してあげるかと、そのためのマーケットフレンドリーな制度というのをどうやってつくるのかということが実ははるかに重要な問題であるというのが、これが第二点でございます。
 そこで、そういう観点から日本が今やっておりますことを見ますと、日本・ASEANの経済連携あるいは日韓の経済連携で一番重要なことは、やはり質の高いマーケットフレンドリーな制度というのをどうつくるかということなんだと、それが課題なんだというのが、これが申し上げたい第二点でございます。
 経済連携といいますと、よくすぐに農業の問題というのが日本政府が国内調整で直面する問題というふうに言われます。それは確かに決して誤りではございませんが、かなり長期の大きな絵を見ますと、実は農業の問題よりもむしろ制度整備、マーケットフレンドリーな制度をどうやってつくっていって、それによって既にこの地域に展開している日本の企業あるいは他の国々の企業が経済活動あるいは企業活動をもっと円滑にやれるようにするかということの方が重要でありまして、そのためには、制度の整備の中には関税制度だとか何かのほかに、例えば人の移動にかかわる制度のような問題も非常に重要な問題として出てまいります。
 第三番目に申し上げたいことは、中国の台頭との関連ですが、中国をどうやって東アジアの共通の規則、規範に引っ張り込んでくるかというのが実は中国の台頭ということで東アジアというのが重要なことだろうと思います。日本とASEAN、日本と韓国は経済連携を現在交渉中でございます。ここで、先ほど申しましたけれども、問われている一つの大きな課題は、制度をどうやって整備するかということでございます。中国はASEANとのFTAをやりましたけれども、ここでは関税の引下げということが大きなポイントで、制度の整備というのはほとんどやっておりません。
 ですから、仮に日本がASEAN、韓国と制度の標準化、制度の整備ということをやって、その後、韓国が中国とやり、あるいは日本が中国と経済連携をやるときに、もう既に今我々がつくり上げつつある制度を中国が受け入れるような形でこの共同体づくりが進展すれば、そのときには非常に質の高い制度整備ができる。それが中国を余り唯我独尊的に行動させない、決してそれでもって中国が責任ある大国としての行動を取るかどうか、これは分かりませんけれども、大国に少しでも、どんなに細くてもいいから糸を掛けてその行動をうまく縛るようにするには、そういう言わば共通の規範、規則のようなものを作っていくというのが三番目に東アジア共同体として考えるべきことだろうと思います。
 それから四番目に、今まで申し上げましたように、私はあくまで経済共同体、東アジア共同体と言ったときには経済共同体ということを考えております。なぜそれじゃ経済共同体かというと、経済共同体というのは共通の利益、つまりプラスサムゲームをやるようなその意思さえあればできるのが経済共同体の構築であるからでありまして、仮にそれを更に進めて政治共同体、ましてや安全保障共同体のようなものをこの地域につくろうということになるときには二つ大きい問題が出てくる。その一つは、現在の日本の国策の基本にあります日米同盟との整合性をどう取るかという問題ありますし、もう一つの問題は、日本と中国、それから韓国との間の相互信頼というのをどういう形でつくっていくのかという問題であります。この問題について、やはり日本の国論の相当程度の合意がないとなかなか政治共同体というのは難しいだろうと。だから、取りあえず経済共同体で考える方がよろしいんじゃないだろうかというのが私が申し上げたい点、四番目の点でありまして、そこでは、ですから何としてもやはり日米同盟と整合的な共同体、これはやはり経済共同体だろうと。
 それから五番目に、もし仮に政治共同体まで進むんであれば、そのときには本当に本腰を入れて相互信頼の構築ということを日本はやらなきゃいけなくなるだろうというのが今日申し上げたいことの要点でございます。
 そこで、長々とイントロダクションのようなものがほとんど十五分続きましたが、あと十五分でその趣旨をごく簡単にレジュメに沿ってお話ししたいと思います。
 まず最初に、歴史的にこの東アジアの地域というのがどうやって統合されてきたのかということを考えますと、先ほど申しましたように、その基本は、特に一九八〇年代の半ば、プラザ合意以降の直接投資を媒介とした企業のネットワークの拡大と深化にあると言っていいと思いますけれども、ただ、そういう企業展開の前提になった三つのポイントがございます。これは非常に重要な点ですので忘れてはならないと思いますが、まず最初の一つは、やはりアメリカの戦略ということがあるんだと。じゃ、どういうことかと申しますと、実は一九五〇年前後、ですから冷戦の初期にアメリカ政府は東アジアの地域にどういう秩序をつくるのかということでかなりきちっと考えたということがございます。
 そこで考えたことというのは何かというと、一つは、当時は何しろ冷戦の時代が始まるころですので、国際共産主義の脅威というのをどうやって封じ込めるかということでありますし、それからもう一つは、まだ一九五〇年といいますと日本はアメリカの占領下にありましたけれども、遠からず日本を独立させなきゃいけないと。そのときに、日本がやはり経済的に発展してアメリカの同盟国になるというのは非常にこれは望ましいんだけれども、同時に日本がアメリカに二度と脅威にならないようにするにはどうしたらいいだろうかという、そういう二つの問題を立てるわけですね。そこで出した答えというのが、一つは日米安保条約、あるいは米韓安保条約、あるいは米比安保条約といったそういうバイの安全保障条約、基地協定の言わば束としてアメリカがあって、ちょうど扇のように開くような形でこの地域の安全保障体制をつくると。これは現在でも基本的に残っております。
 それからもう一つは、日本の経済復興ということで、中国をまだ封じ込める時代ですんで、中国と日本の経済関係が強まっては困ると。じゃ、代わりに、中国の代わりにどこを日本の貿易相手にするかと、東南アジアがいいと。ということで、アメリカと日本と東南アジアの三角貿易のシステムをつくって、そこで日本の戦後の経済復興ということをやっていこうという、そういう絵をかきます。だから、その意味で、現在の経済関係というのは、やはり日、米、東南アジアというここで始まった三角貿易が、六十年近くたってみると、そこに中国が入ってきて、それでアジア、パシフィックの中で東アジアというのが一つの大きな重みを持ってきた、そういうものとして考えていいんじゃないだろうかと思います。
 二番目の大きなポイントは、モデル選択ということとそれから日本の経済協力の重要性でございます。
 実は、戦後五十年以上にわたり、アジアについては私は日本とアメリカの間に非常に大きな言わば分業体制があったというふうに考えております。それはどういう分業体制かといいますと、アメリカがこの地域の安全保障秩序というのを確保する、あるいはもっと普通の言い方しますとアメリカの平和というものをこの地域に維持する。その下で、だけれども、多くの国がこの地域では独立したと。独立したからには、当然のことながら国づくり、つまり国家建設、経済建設ということをやるようになると。それを日本が経済協力の形で支援するというのが二番目に行われたことであって、その意味で私は、日本のODA、あるいはもっと広く経済協力というのは非常に重要な意義をこの地域に持ったと思います。
 そこでの基本というのは何か、そこでそれじゃ何が日本モデルとしてこれらの国々に受け入れられたかといいますと、これは日本で高度成長の政治というふうに言われておりますように、経済成長によって国民みんなが豊かになっていって、その結果政治も安定するという、そういう高度成長あるいは経済成長の政治ということを日本がこの地域でやったというのが二番目に大きなポイントであります。
 三番目に、そういう中でそれを非常にポジティブに受け入れて、これを開発主義という形でやったのが、例えば韓国であり台湾であり、それからタイでありインドネシアでありマレーシアであると。そういう国々では、したがって日本モデルの応用ということで、まず最初に政治的な安定を確保し、その上で外資主導型の経済発展をやり、経済発展をやりますと国民の生活水準が上がりますんで、そうすると政治はますます安定すると。だから、そういう独裁型の開発主義体制というのがひところ東アジアの国々で非常に盛んになりまして、これが実は東アジアの奇跡ということをもたらすことにもなったと。
 こういう大きく三つぐらいの条件の中でネットワーク型の地域統合というのは進展したというのがポイントでございます。
 ですから、それを少しヨーロッパとの比較で申しますと、なぜそれじゃヨーロッパと比較するかと申しますと、よく東アジア共同体と言うと、ヨーロッパ共同体が向こうにあって、このモデルと比較すると東アジアの方はまだこれだけ後れているみたいな議論がありますんで、ヨーロッパと比較しますと、実はヨーロッパとは非常に性格が違うんだということであります。
 ヨーロッパの統合には大きくやはり二つの理由があります。一つはアメリカの戦略です。かつてアメリカは東アジアにおいては国際共産主義と日本を、国際共産主義をどうやって封じ込めるか、日本を経済的に復興させるけれども、二度と脅威にならないようにはどうするかと。この二つで、安保条約の束としての安全保障体制と、日、米、東南アジアの三角貿易のシステムというのをつくりました。
 ヨーロッパにおいては、アメリカは同じような問題にぶつかります。国際共産主義の脅威をどうやって封じ込めるかと。西ドイツを復興させるけども、西ドイツが二度と脅威にならないようにはどうするか。同じ問題にぶつかりまして違う答えを出します。答えはNATO。安全保障については集団安全保障体制としてのNATOをつくる。それから、経済復興については、EECからEC、それからEUと発展するような経済共同体をつくる。この二つによってドイツを集団的な安全保障と集団的な経済協力機構の中に埋め込んでしまうというのが実はヨーロッパで行ったアメリカの戦略であります。
 なぜそういうふうな違いになったのかというのは、これはいろんな説明が可能ですが、ともかく一つ、一番重要な点はやはりナショナリズムの評価の違いだろうと。東アジアの場合には、ナショナリズムというのは現在まで基本的にいいものです。中国、韓国あるいは東南アジアの国々というのはみんなナショナリズムによって現在がある。だから、ナショナリズムというのは怖いものだという、そういう意識というのはほとんどございません。ヨーロッパの場合には、ナショナリズムでもって二度戦争を引き起こして、こういうことをもっとやると本当にヨーロッパは駄目になる、そういうふうな教訓を引き出しました。ですから、そのために、ヨーロッパの場合には何としてもナショナリズムを押さえ付けて、で、ドイツとフランスの協力、もう二度と戦争はしないっていう、そういう共通の政治的な意思の上にヨーロッパ統合ということが起こるようになります。
 東アジアにおいてはそういうふうな政治的な意思っていうのはごく最近までございませんでした。現在でも、どこまで政治共同体をつくろうという意思があるかということになると、私は非常に疑問に思っております。ですから、その意味で、東アジアっていうのはネットワーク型の、マーケット主導型の統合なんだと。それに対してヨーロッパっていうのは、もちろんマーケットも大事だけれども、基本的にはドイツとフランスの共通の政治的意思によって共同体をつくっているんだと。だから、ヨーロッパをモデルにして東アジア共同体の構築ということを考えると間違える可能性が非常に大きい。むしろ、現にこれまでの大きな地域統合の力というのがマーケット主導であるならば、そういうマーケットの力っていうのをもっと円滑にもっと強く働かせるようにするのが政府の役割であろうというふうに考えております。
 それじゃ、現在、もうあと三分ぐらいになりましたんで、現在どういう課題があるのか、三点だけ申し上げたいことがあります。それは、九七年、九八年の経済危機以降、経済危機からどういう教訓を引き出し、中国の台頭からどういう教訓を引き出し、それからもう一つは、東アジアの国々で日本人と同じようなライフスタイルを持った中産階級というのが今マスとして登場しておりますけれども、そういう人たちの登場を踏まえてどういうことを考えるかということでありますが、大きく三点申し上げたいと思います。
 一つは、これはもう既に先ほども申し上げたことですけれども、東アジア共同体ということで一番重要なことは、マーケットフレンドリーな制度をつくって、マーケットだけに任せておいたらひょっとしたら失敗することがある、そういうときにそれに対応できるようなそういう体制をつくるというのが一番重要なことなんだということです。それは具体的に言いますと、通貨の安定のための制度づくりであり、貿易の自由化あるいは投資の予測可能性を高めるための制度整備であり、人の移動を円滑にするための制度整備であり、あるいはエネルギー協力、環境協力のような問題についての制度整備であります。そういう制度整備というのは、これは国がやらないとできません。ですから、その意味で、これこそがやはり国に期待されている一番重要な役割だろうと。
 二番目は、日米同盟との整合性ということで申しますと、これは経済共同体である限りは全く心配ないだろうと。政治共同体に進むということになると、そのときには、特に今台頭しつつある中産階級の人たち、この人たちの信頼をどうやってこれから得ていくのかという、そういう政治的リーダーシップが日本には求められることになる。これは非常に大きなこれからの日本外交の課題であると思います。
 それから三番目に、中国の問題について申し上げますと、やはり我々にとって一番重要なことは、中国が将来責任あるパートナーとしてどうやって東アジア共同体に入ってくるかということでありまして、そこでの責任あるパートナーというのは、やはり我々がつくり上げる東アジア共同体の様々の規範、規則を中国も受け入れて、それを守るというのがポイントだと。だから、その意味で、繰り返しになりますが、制度整備こそが一番重要なんだということが第三番目のポイントであります。
 もう最後になりましたが、東アジア共同体というのは、これはあくまで政策の手段でございまして、目的ではございません。目的は、あくまで東アジアにおいてこの地域が安定し繁栄した地域になり、で、同時に日本が安定し繁栄するというのが、これが東アジア共同体の目的であります。ですから、その意味で、東アジア共同体ということを言うときには、平和で繁栄した日本と平和で繁栄したアジアというのはこれはつながっていて切り離せないものだと、そういう判断の上に東アジア共同体構想というのは据えられているんだと。私はこの判断そのものは非常に間違いないものだと思っております。
 私は、これから二十年ぐらいのスパンで考えますと、東アジアというのは明らかに世界の成長センターになって、日本の社会はあるいは日本の経済は、そういう成長センターとしての東アジアからいろんな形で活力を得ることによって現在の生活水準を維持し、平和で安定し繁栄した日本というのを維持することができるんだろうと。そういう観点から、今、先ほど申し上げましたような形で経済共同体としての東アジア構築ということをやるというのが、恐らくこれから五年くらいにおいては一番重要な課題ではないだろうかと考えております。
 ちょうど時間になりましたんで、私の報告はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
#5
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 次に、田中参考人から御意見をお述べいただきます。田中参考人。
#6
○参考人(田中直毅君) 日本では東アジア共同体がファッションだということは、中国や韓国の人もどうもそう認識しているようであります。
 最近、私が、韓国のある経済グループで企業戦略を担当している人たちと議論したときに、彼が言ったことは非常に興味深い指摘であります。彼はこのように言いました。
 ソウルにいて、東アジア共同体ができるかどうかについてビジネスのサイドからデータを集めて研究してみた、自分の結論は、東アジア共同体は時期尚早、とてもその姿は出てこないと思うと言うんです。それで最大の理由は、日本と中国との間においてとても経済が自由に議論できるような仕組みにはなっていないと言うんです。それは、普通はそういうときに政治あるいはメディアの側からいきますと小泉総理の靖国参拝だろうと、こういうふうになるんですけれども、ソウルから見ると、当然彼らの集めたデータベースはそういう話ではありません。日本と中国との間にとても相互浸透という形にはならない二つのデータがあるって彼は言うんですね。
 第一は、日本と中国がかみしもを着てというか非常に重武装で、何が何でも対等でなければならないという、言わば建前のところで一歩も出ていない。それは日本と中国との間の航空機の便数で分かると言うんですね。韓国と中国との間では、飛行機を飛ばすのは事実上自由に飛ばせる。韓国の各地から中国の各地に週百数十便出ているけれども、中国の各地からソウルに入ってくるのは一週間に十数便だと言うんですね。十対一の差があるけれども、それは別に二国間協定において何ら問題ではないと。
 で、現在、韓国のビジネスマンは中国の全土で三十万人ぐらい行っておりまして、日本が大体五万人ぐらいですから数も違うんですが、ここに常駐で三十万ですね。そこに出張ベースで物すごく多くの人が韓国から出掛けてまた韓国に戻ってきますから、それは中国がエアラインで飛ばしてみてもお客はとても乗ってくれないと。韓国のエアラインが中国に人を運ぶのは当たり前だろうという、ごくごくお互いのそろばんずくでできている話だと。ところが、日中間を見てみると、もうどうにもならないと。一つ増やしたら片っ方をまた一つ増やすという、相互主義と言えば聞こえはいいけれども、それは経済ベースでエアラインが何か採算が合うからとか、そういう仕組みで決まっているわけでないと。そのことをしかも是正するような力は全く日中間に働いてないと。日本と中国は建前でやっているだけだからどうにもならないねと。これはもう動かないと。日中は動かないというのが彼の第一のデータベースであります。
 第二のデータベースは、日本の五万人と言われるビジネスマンが一体どこにいるのかを調べてみると、沿海部を中心とした生活条件のいいところにほとんどであると。中国の奥地、奥地といっても、重慶とか成都とかそういうところでさえ非常に少ないと。ところが、韓国の場合は、彼の言い方をすると、まだ生活条件が厳しかった時代の人が多いもんですから、ハングリー精神にあふれていて、中国の内部にもネットワークを築いてきていると。
 しかも、もう一つ彼は言ったんですが、韓国系中国人というのは御存じのように三百万人ぐらいいるんですが、この人たちはもちろん中国語もできますしハングルもできるもんですから、韓国のビジネスが中国全土で展開するときに、東北三省を中心にしておられる韓国系中国人の人を、非常に彼らはいいチャンスだということでどこにでも行ってくれるわけですね、もちろん所得が上がるから当たり前の話なんですが。ですから、もうコストは極めて安いと。ところが、日本が行く場合はもう重武装でどうにもならないと。日本語の研修から始まって、中国語ができるビジネスの最前線の人は決して多くはないし、技術者となればましていないと。言葉の上での補助が要るんだけれども、韓国のビジネスと日本のビジネスとでは機動力からして全く違うと。
 これはどういうことかというと、東アジア共同体で経済ネットワークが十重二十重に日中間においてできるというのはもうこれっぽっちも思ってないというのが彼の分析であります。私はその分析は一体韓国の中でどの程度広がっているんだと聞きましたら、韓国の主要ビジネスグループにはこの見解は全部伝えてある、彼らは皆、うん、そうだと、日中間は動かないと。東アジア共同体構想というのはこれはもう話で、ペットスィームと言っていますけれども、これが好きな人がいて、こういう話題が好きな人がいて、このペットになっていると。実態は遠いと、こう言っております。
 今日お話しすることは、実はその彼が言ったこととほぼ等しいことをまた別の面から言おうとしていることであります。
 今日は六点ポイントを挙げています。第一に、APECの枠組みが成立した背景というものが重要ではないかと思います。日本が主導権を取ったらこれができたのかというと、御存じのように、できませんでした。元々は、小島清さんを始めとして、このアジア地域に共同決済システムがあったらいいなと、それは外貨の使用を節約することになるし、お互いにお互いを仲間とする関係があるからいいなという御主張を小島さんがされていまして、これはもう四十年以上前から小島清さんがやっておられまして、だんだん賛同者が増えました、学会のレベルでは。しかし、学会のレベルにとどまっていたわけであります。
 日本がアジアとの間で本格的な仕組みをつくるというふうに言ったのは恐らく、人によって評価違うと思いますが、私は多分、福田ドクトリンと言われた一九七〇年代後半のこの設定だろうと思います。日本はアジアとやるんだというのをドクトリンとして取りまとめられました。その後、大平総理が、じゃ、もう少し主導権を発揮しようかというふうに動かれたところ、隣国、それぞれアジアの諸国は腰が引けた。そんな日本が主導する仕組みに乗ったってろくな話はない、各国内においてもとても賛同は得られないという、こういう姿でありました。
 それではなぜAPECという枠組みができたのかといいますと、これはNAFTAの結成とか、それからもうヨーロッパが、ソ連、東欧が大変疲弊しておりましたので、大欧州圏がどうやら成立しそうだというそういう予感が広がる中で、アジアでも共通の枠組み要るのではないかという議論がASEANの中でも出てくるようになりました。そのときに、オーストラリアもまたこの枠組みの中で、世界の枠組みの中でどうもどこにも入れないと。拡大するEUにはもちろん入れませんし、NAFTAという枠組みの外にもいますし、いや困ったなと。隣国との関係があるというので、やっぱりASEANとの間にもう少し関係を密接にしないと、安全保障の問題もあるということで、オーストラリアもまた一つの枠組みが欲しいということを明示するようになりまして、オーストラリアとASEANが根っこのところで合意すればAPECという枠組みはできたということであります。これが、世界の流れの中でAPECがとにもかくにも生まれて動き出したということであります。これはしかし、統合とかいうこととはちょっと距離を置いた、取りあえずの共同体形成の前さばきという性格であったと思います。
 この時期と相前後いたしまして、EAEG、最初はイースト・エイシア・エコノミック・コーカスと呼んでいましたけれども、マハティール首相による東アジア経済共同体構想があります。これがそれなりの仲間意識といいましょうか、ある種、結集核を用意できたのは、当時、アメリカの貿易赤字が大変大きくて、日本を始めとしてアジア諸国にやいのやいのと催促する。通貨を切り上げろ、これは日本、台湾、韓国だったわけですが。あと、貿易摩擦という形で、おまえのところの対米黒字は余りにも大き過ぎる、何か買うものあるだろうという随分乱暴な議論がアメリカから出てくるようになりまして、これに対して何か東アジアでもグループを結成しないと具合悪いと考えている人たちがいました。また、そういう交渉者の中には自分たちの対米不信感、それからある種嫌米意識というんでしょうか、アメリカが嫌だなという気持ちをこのEAEGの結成で何とか、それに取って代わるものをつくろうと、こういう議論でありました。
 結構盛り上がっていた人もいたわけですが、最大の問題点は安全保障でございます。マハティールに会う機会が九〇年代に入ってすぐでありますがあったものですから、彼に、あなたの言うEAEG構想は安全保障のことをどう考えているんだと。当時、既に北朝鮮の核兵器開発疑惑というのが本格的なものになっていましたから、マハティールさんに、あなたは北朝鮮の核兵器の問題一体考えたことがありますかと言ったら、彼はううんと言いまして、いや、正直考えていないなと、EAEGの中に北朝鮮の核開発の話、入っていないと、正直言うんですね。そう言うものですから、いや、だから日本が乗れないんですよと。北朝鮮の核兵器を封じ込めるに当たって日本は何のカードもない、何のてこもない、アメリカに依存する以外ないと。EAEGつくってみたって北朝鮮の核兵器一つ封じ込められないようでは何の意味もないと。これがもう日本の代表的な見解であると言ったんですね。
 そうしたら、マハティールさんは何と言ったかというと、日本人で、大使、外務省、日本の外務省も含めてそのことを言ったのはだれもいないぞ、おまえが来て初めてだと。北朝鮮の核兵器を封じ込めるのにEAEGは何の役にも立たないし、アメリカに依存しなければいけないからこんな枠組みなんか何の足しにもならない、アメリカが猜疑心を持ったんじゃ日本の安全保障だれが保障してくれるんだと。あなた自身、北朝鮮の核については関心ないと言っているわけですから、マハティールはもう余り考えていないんだと言うんですから、それはしょせん無理だと言ったら、彼は分かったと言ったんですね、おまえの言いたいこと分かったって。それ以降、これは私のひが目かもしれませんが、彼はEAEG言わなくなったんです。これはもう売れない構想だと思ったんだと思うんですが、これはとても日本に売れない話だからもう言うのやめだというふうになったんじゃないかと思うんですが。
 ただ、そんなことはどうでもいいんですが、一番重要なのは、マハティールにそう言った日本の代表者がいないということなんですね。おれは聞いたことないと言うんですから、マハティールは自分で。ですから、これはやっぱり相当、日本の、東南アジアとの関係はいいと言っているんですけれども、だれがどういうレベルで率直な話合いをしているのかというのは相当問題があるということだと思います。
 しかし、このEAEC構想は何らの成果も上げなかったわけではなくて、ASEANがASEANプラス3という形で日中韓を入れて一応その時々のテーマが議論できる場を用意しましたので、何の成果も生まなかったというわけではありませんが、しかしそれが現実ではないかと思います。
 一九九七年にアジア通貨危機が起きたんですが、これはその後の世界と日本にとって大きな意味を持ちました。
 まず第一にIMFなんですが、IMFは処方せんを完全に書き間違えました。これはアジアの諸国が短期的な国際資金への依存という流動性問題で問題を抱えたものを、サステイナビリティー、持続的成長の問題と混同したわけであります。言うならば、銀行、流動性の問題ですから、ファイナンスが続くかどうかという手元資金繰りの話と、それから持続的に成長可能性があるかどうかというのは分けて考えるべきテーマであります。ところが、IMFはあたかも持続的な成長に問題があるという前提で緊縮政策を次々に打ち出させました。このことによって、IMFは、要するにマクロ屋さんがマクロのデータ並べて処方せんを書くと、メキシコやアルゼンチンにやった処方せんをそのまま東アジアに適用しただけで、結果として東アジアの診断は誤ったと。東アジアの診断は言わば銀行問題であって、銀行間決済の流動性供与にかかわる問題を体質、成長にかかわる体質問題としてとらえたと。誤り、もうやぶだということになりまして、それ以後IMFという組織は、専務理事がだれになるかというのに時々新聞載ることはありますが、あれはマクロのデータを集めていて、我々がインターネットでIMF引きますと、メキシコの話もアルゼンチンの話もデータベースが手に入ると。しかし、その程度の役割やっているにしちゃ金が掛かり過ぎているなという組織になりました。これはもう決定打であります。
 それから、日本にとっての意味ですが、アジア通貨危機が起きたときに日本政府は全く相談にあずかっていませんでしたけれども、相談にあずかっていた民間人というのが私が知る限りで二人います。バンコクに駐在していた、当時は今よりも銀行の数が随分多かったわけですけれども、御存じのように、ある非常にタイのビジネスあるいは政権の人々と仲の良かった人がいまして、その人がタイ中央銀行の総裁からバーツを切り下げざるを得ないところまで来ていると。しかし日本が、もしその銀行がシンジケートローンを組んでくれて一時のしのぎをやってくれればバーツは切り下げなくても済むと。何とかシンジケーションやってくれないかと彼は相談を受けているわけです。
 で、九七年のこれが五月から六月にかけてですから、一番最初に話があったのは五月だそうで、なぜそれは彼が言ったことを覚えているかというと、五月の株主総会の前に、彼はまあ役員だったんですが、株主総会の前のそんなややっこしいときに、そんなもうシンジケーションやれと言ったって無理だぜ、ちょっと待ってくれ、とてもそれに対応できないと言ったので、株主総会前、五月にもうその話を聞いているわけですね。
 ところが、日本政府は、七月一日にバーツの切下げが生じたことは新聞とかテレビで知ったわけでありまして、日本政府にそのデータはなかったわけです。要するに、タイ中央銀行、タイ大蔵省は、日本政府のだれにも相談していない。しかし、日本の民間人にはその二か月前から相談しているというのが実際であります。
 これで泡を食った日本政府はどうしたかというと、ダメージコントロールに入ります。これはえらいことだと。これだけODAを使い、バンコクは、もう御存じのように大使館というのは大館でございまして、何人いるんですかね、百人以上いるんじゃないかと思うんですけれども。何も取れていないという様ですから、これはえらいことだと。とりわけODAの供与に大きな役割を果たした大蔵省にしてみますと、もう赤っ恥をかかされたということですので、ダメージコントロールで、突如、エーシアン・マネタリー・ファンドというとにかく格好付けをやった。格好付けですから、そんな話はもちろんアジアの人はだれも聞いていませんし、アメリカも聞いていない、北京も聞いていない、だれも聞いていないという話で、何だ何だと。何だ何だというので、大体そういう話は、ダメージコントロールですから、だれも本気でやる気もないし、ただ言ってみたと。大失点を、その横っちょに架空玉を飛ばしましてダメージコントロールしたというのが現実です。
 その後チェンマイ・イニシアチブはできたではないかという議論がありますが、これは、まあないよりはあった方がいいんですが、その後の各国の経済のガバナンスが回復したのは、チェンマイ・イニシアチブ、イニシアチブでできたわけではなくて、各国がそれぞれにガバナンスを改善させた、マネジメントの改善策を積み重ねてきたということで、チェンマイ・イニシアチブがどの程度いざというときに使えるのか、あるいはそんなもの使うような状況に行くことがいいのかどうかということからいくと、床の間の天井というやつで、掛け軸はいろいろ褒めても天井に目をやる人はいないという程度のものではないかというのが私のチェンマイ・イニシアチブに関する評価でございます。
 東アジア共同体を考えるときに中国は極めて重要でありますが、中国、日本では江沢民の評判が非常に悪くて朱鎔基さんの評判が高いというのが常ですが、WTO加盟とその後の中国経済に対するうねりを引き起こしたのは江沢民であって朱鎔基ではなかったということだけは記憶しておいた方がいいと思います。
 一九九九年に朱鎔基がアメリカに行きます。WTO加盟に当たって中国の立場を理解してくれるのではないかと。要するに、簡単にはすぐ、日本のガット交渉と同じで、経済発展の途上において、いろいろ日本には特殊な条件が、状況があるのでお目こぼしをお願いしますということをやりながら条件をつくっていったんですが、中国も途上国で、大きいけれども途上国ですから、WTOは加盟したい、しかしいろんな案件について条件を、ハードルを低くしてほしいということで朱鎔基さんはアメリカに行きます。
 若干のインフォーマルな前さばきはあったようでありますが、何の確信も持たずに朱鎔基さんは出掛けますが、結局何も取れなくて、九九年の五月、北京に戻ります。これで朱鎔基さんは事実上失脚ですね。何だと、西側に評判がいいというから譲歩案でも引き出してくるかと思ったら何にもできないのかという話で、朱鎔基を孤立化させたら中国の保守派が強くなるから朱鎔基を手ぶらで帰しちゃいけないという意見もあるみたいな話が出ていたけれども、全然実現できないじゃないかというので、彼は事実上力をなくします。
 そのときに、江沢民が朱鎔基をかばっただけではなくて、朱鎔基はできなかったけれどもおれはやると。おれはやるというのは、国内に対してやる、とにかくWTO加盟の枠組みをつくるんだと。農業と金融という二つの中国にとって本当に難しいテーマがあるんですが、この二つをのみ込んでもWTO加盟を決めました。それが九九年の暮れなんですが、これはちょうど中国の建国五十周年の年と重なりまして、彼は、江沢民は相当、そういう意味で五十一年目以降の、あと五十年の中国にとってWTOという枠組みは極めて重要と理解した上で、国内の難しい話は全部おれが調整するとのみ込んだ。これは何といっても大きかったと思います。
 それ以来、中国向け直接投資は御存じのように急拡大をいたしまして、このことがASEANのひが目といいましょうか、これはもう参ったと、もう勝負あったというふうになりまして、西暦二〇〇〇年、二〇〇一年になりますと、リー・クアンユーから始まって東南アジアの指導者たちは、いやもう中国には、中国の所得が高くなるからパイナップルやバナナを買ってもらうかと、熱帯産品を中国に売るんだなと、おれたちのところの製造業は勝てないんじゃないかというぐらいもう落ち込みます。
 そこで、中国は、ASEANを落とし込んじゃ駄目だというんで、WTOの枠組み決めた後に、FTAというのを対ASEAN提唱しまして、しかも前倒しで、農産品については前倒しで受け入れますと。パイナップルもバナナも、その他熱帯産品、亜熱帯産品何でも入れると。関税ゼロですぐ持ってきなさいという枠組みをやります。これはASEANの焦燥感を救うに非常に力があったと思います。
 中国に行きまして、何でそんなことできるんだと。日本じゃ、もうミカンを保護するためにも季節を付けて、亜熱帯産品の果実だっていつでも入れるわけじゃなくて、日本のミカンを保護するためには季節で関税変えるくらい気を遣ってやっているよと。これは日本の政治の現状だと。何で中国は、一党独裁だからそういう、農村封じ込められるからこんなことできるのかと聞きましたら、いや、そんなもんじゃないと。しょせん中国の農村は、もはや農産品だけじゃ農業はもたないと。工業製品でいかざるを得ないし、自分のところに工場を引っ張ってこれなければ、人を移動させて移転所得で農村所得を補強する以外にないと、もう中国は決まっているんだと。そんな少しばかり果実、果物ができるからといって果物を入れないようにするみたいな話はもう一切取らないという、そこまで言うならば対象化したといいますか、逆に言えば出稼ぎはどんどん出ていってくれと、どんどん仕送りしてくれと、中国の中でですけれども。そういう割り切りの中でこの話はできています。日本の政治の仕組みではとてもそこまで割り切ってサクランボやミカンはできなかったと思いますけれども、中国ではそういう割り切りでやっておりました。
 韓国は、先ほども言いましたように大変興味深い動向でありまして、中国が輸出市場として既にナンバーワンになったのみならず、物すごい勢いでこのナンバーワンの地位が上がっていますね、韓国にとって。
 日本と韓国となりますと、やっぱりFTA結ぶというと、韓国の中小製造業がやられちゃうという気持ちが非常に強くて嫌だなと。日本とのFTAはどうも賛成できないなということだもんですから、日本がノリの輸入に数量割当てを、数量制限をしているとか、日韓で議論をするときに何でノリになるのかなといって韓国の人に言いますと、日本というのはノリだって簡単にいかない国だから、ソウルからノリのことでも言っていれば話は止められると、金額が幾らなんか、そんなこと分かっていますよ、我々だってと。だけれども、ノリを言っていれば取りあえず止められるという。日本は民主主義ですから、それは別にノリの養殖をされている人が少数だとか、その出荷額が小さいとかということが取りあえず問題ではなくて、それだって数量制限、輸入数量制限の対象にしている。そうすると、それをやっていると取りあえずうまくいかないわけですね。
 それで、今、日韓FTAの前にアメリカとのFTAをやろうというのが今ソウルの動きでして、このことは今に始まった話ではありません。金泳三政権のときに、やっぱり米韓FTAというのをやったんですね、交渉を。で、最後の最後のところでやっぱり難しかったのは韓国の農産品です。当時、ピーマンだって何だって、もう消費し切れないくらいできちゃって値が下がっちゃって、青瓦台の周りにトラックでピーマンを山積みにしまして農業者がデモンストレーションやっていたことを見たことがありますけれども、ともかく農産品があるものですから、結局米韓FTA交渉はうまくいきませんでした。
 これも金泳三政権のときですが、私はソウルへ行って、そのときの大統領補佐官親しかったものですから、いや、もうFTAやめたんだと言うので、え、何のFTAだと言うと、いや、米韓だと。米韓FTAって、そんな交渉してたのと。いや、してたよと。最後はしかし農業でのめなかったと言うからもう驚いちゃいまして、それで日本に帰ってきて、当時の外務省の官房長に米韓FTAの話知ってますと言ったら、知らないよ、そんな電報なんか読んだことないと。でも、もう一遍読んでみると言って彼は読んで、ないよと。米韓FTAの交渉しているなんというのはソウルから一本もないと言っていましたので、田中さん、何でそんなことを知っているんだと言うから、いや、補佐官から聞いたよ、大統領補佐官からと、間違いないと言ったら、どうもまずいなと、民間人が知っていて外務省が知らないのはまずいなと言っていましたけれども。今、いずれにしろ、米韓、今米韓FTAの方がやっぱり先やるという雰囲気ですね。
 ですから、東アジア共同体というのは、これ今日申し上げているのは、特に中国、韓国、日本との関係ですが、これもやっぱりそう簡単な話ではありません。最終的には、これはやっぱり民主主義のテーマにかかわるわけですし、もちろん我々はこのアジアにおいて不戦の誓いを立てております。不戦の誓いは間違いなく我々にとって揺るぐことのない原則でありますけれども、共同体がつくれるのかどうかという話は、これまたちょっと別の話でありまして、大変つらいことなんですが、我々の不戦の決意と共同体結成とは重ならないというふうに理解すべきではないかと思っています。
#7
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 これより質疑を行います。
 質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。
 できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。
 また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。
 まず、大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 水落敏栄君。
#8
○水落敏栄君 自由民主党の水落敏栄でございます。
 白石先生、田中先生から大変有意義なお話を承りまして参考になりました。
 私のこれからの質問の内容でございますけれども、先ほどの先生のお話をお聞きいたしましてある程度理解ができましたけれども、私の思うところを更にお聞きをしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 いわゆる東アジア共同体というのは、ASEANに日本、中国、韓国を加えた東アジア各国をメンバーにして、経済統合をベースに文化的、外交的一体化を進めよう、そういう戦略といいますか、構想だということが理解できるわけであります。そして日本にとっては、日本の国益というものを考えた場合に、近隣であります東アジアでマーケットを拡大して人と物の流れを拡大する、こういうことが大切だということであります。そのいい例がEUでもあるわけであります。
 そこで、共同体構想の中で大変気になりますのが、ASEANの国々よりも、先生お話しの中国、韓国であると思っております。果たして中国、韓国とうまくやっていけるのかという疑念がわいてまいります。
 一つの例でございますけれども、対中ODAにいたしましても、日本と中国が国交正常化を実現した際に調印された日中共同声明におきまして、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償請求を放棄する、こういうふうに明記されているわけですけれども、これに対して、ラオスのビエンチャンでの日中首脳会談で温家宝首相は、あの戦争で何人の中国人が死んだのかと、我々は戦争の賠償を一銭も日本に求めていない、ODA中断については日中友好の大局から慎重に対処すべきだ、こう言っておりまして、このことは対中ODAイコール戦争賠償金だと、こう言っているわけであります。
 また、韓国は、対日外交政策として過去の歴史問題を取り上げて、さらに日本の固有の領土であります竹島を不法占拠して、現在問題化しておるわけであります。また、北朝鮮に対しましては、太陽政策を続けてソフトランディングを考えているようでありますけれども、日本は、北朝鮮との拉致問題を解決しなければ経済援助もやってはいけない、こういう人々が多いわけであります。そして、北朝鮮は、日本人を拉致したばかりか、核とミサイルを開発してテポドンを日本に向けて発射している。こうしたことから、北朝鮮はけしからぬという、こうした声が日本は大変多いわけであります。
 このように、こうした中国、韓国との問題が横たわっている以上、ASEAN諸国に日中韓をプラスした東アジア共同体構想は議論の中ですぐ行き詰まってしまうんではないか、こういうふうに私は疑念を持っております。
 そうして、今年末にマレーシアで東アジア・サミット、首脳会議が開かれますけれども、日本はリーダーシップを取るべき立場から、どのような解決策といいますか、構想をまとめる中でどうしていったらいいのか、これが第一点でございます。
 もう一点は、東アジア共同体構想の中で、中国についてといいますか、中国の考え方についてお聞きしたいと思っております。
 去る三月三十一日の朝日新聞には、今年末に開かれる、申し上げた東アジア・サミットに向けて、我が国政府が参加国を域外にまで広げよう、ASEANプラス3にオーストラリアとかニュージーランドとかインドを加えてやったらどうだと、こういうふうに提唱したところ、中国やマレーシアは反対だと、中国はこう言っております。これは、もうサミットのその日中が主導権争いをしているんじゃないかな、こんなことも論評で書いているわけですけれども。
 そこで、私思いますのは、中国は二〇一五年には経済的にも日本を抜いてアメリカと肩を並べるんだ、アジアのトップリーダーになるんだ、こうした考えの下に、軍事力を増強して、政治戦略を構築する、こうした考えの上に立って東アジア共同体構想を主導している、私はこのように思っております。もう一歩進んで考えますと、日本とアメリカ、日米関係に中国がくさびを入れたいんじゃないかな、これ以上日本とアメリカの関係強化を図ってもらいたくない、こうした考えがあるんではないかなというふうに私は思っております。
 日本に対しては歴史問題とか尖閣諸島の領有の主張だとか、あるいは潜水艦による日本海域の調査、台湾を見据えた国家分裂法、こうしたものがございまして、したがいまして、我が国が東アジア共同体構想においてリーダーシップを取るのであれば、現在の日米関係をより密接に、より強固なものにしなければならないのじゃないかなと、こう私は思っておりますけれども、その辺はどうなるのか。
 また、東アジア共同体構想における中国の動きに対して、あるいは東アジア共同体構想そのものに対するアメリカの考え方はどうなのか、このことについて両先生の御見解をお聞きしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
#9
○会長(松田岩夫君) 両参考人ですね。
#10
○水落敏栄君 はい。
#11
○会長(松田岩夫君) それじゃ、白石参考人からお願いいたします。
#12
○参考人(白石隆君) ありがとうございます。
 私が、実は東アジア共同体の構築ということを考えるときに日米同盟との整合性というのが大事だというふうに申し上げましたのは、正に今先生が言われたことを念頭に置いて申し上げていることでございまして、先ほどの繰り返しになりますけれども、そこでのポイントというのは、少なくとも現状では、東アジア共同体と言ったときの共同体はこれは経済共同体であって、決して政治共同体であるとか、ましてや安全保障共同体ではないと。むしろ安全保障については、現に日米同盟をその中心としますアメリカの平和というのがこの地域の安定を保障しておるわけですから、これを日米同盟の形で支えるというのが日本がやるべき一番重要な政策であろうというふうに考えております。
 ですから、東アジア共同体は、その意味で日米同盟と両立する整合的なものでないといけないというのが、これが申し上げたい第一点でございます。
 それから二番目に、中国の問題でございますが、私も先ほど先生がおっしゃられました朝日新聞の記事は読んでおりますけれども、こういう会議の場で日本政府の代表と中国政府の代表がつばぜり合いをすると。それが外交官にとってどれほど大切なことかということは、これはもちろん私は非常によく分かっておるつもりですが、共同体の構築ということからして、それがそれじゃ一番重要な問題かというと、私はそうではないだろうと。もっと重要なことは、一見中国がそういう場では圧倒的に影響力を持っているように見えても、実さえ取れれば別に気にすることはないんじゃないだろうかというのが実は私の考えでありまして、その場合のそれじゃ実というのは何かというと、これはやはり制度整備だろうと。
 私は、その意味で、実は日韓の経済連携の交渉が、竹島の問題を始めとするこういう信頼関係の欠如によって今行き詰まっているというのは非常に困ったことだと思っております。やっぱり重要なことは、日韓が一緒になって質の高い経済共同体づくりのための制度づくりを一緒にやると。で、それを言わば既定の事実として中国に向かうというのが私はやっぱり取るべき態度ではないだろうかというふうに考えております。
 三番目に、じゃ先生がおっしゃったとおり、中国、韓国と果たしてやっていけるのかと。これはもうおっしゃるとおり、現在のようにお互いに信頼関係にもう一つ足らないところがあるところでは、政治共同体というのは非常に難しいというふうに言わざるを得ない。だけれども、同時に私、是非申し上げておきたいことは、例えば中国というのは、現在の体制というのは少なくとも一九八九年の天安門事件以来、正統性を非常に大きく失っておりまして、そういう中で、確かに経済発展は目覚ましいものがありますが、同時に社会的な危機も進行している。そういう中でどうやって体制を維持するかというと、内向きのナショナリズムしかやっぱりないという、そういうお国の事情があります。
 それから、韓国の場合には、この二十年、民主化が進展し、今韓国の政治を言わば主導している人たちというのは、一九六〇年代に生まれて八〇年代に民主化の時代に政治的な洗礼を受けた、これもある意味で非常に鼻っ柱の強い人たちがやっぱり韓国の政治を領導しておる。
 ですから、そういうお国柄の中国、韓国に対して、彼らが非常に内向きのナショナリズムでもって日本を論難するから、私はこれは相当程度実は難癖だと思っていますが、にもかかわらず、それじゃ日本人で我々が同じレベルまで下りていって、それでつまらぬことで言い合いをすることが、じゃ日本と韓国、日本と中国の将来にとっていいことかというと、ここはやっぱり私は、もう少し日本は、はるかに成熟した民主主義の国として、彼らよりもずっと豊かな生活を享有している国民として、もう少し大人として振る舞ってもいいんじゃないだろうかというふうに考えております。
#13
○参考人(田中直毅君) 水落先生の御質問で答えられるのと答えられないのがあるんですが、比較的答えやすいのからいきますと、日本とアメリカとの同盟が、中国との間でどういう関係を持つのかというのに一つの方式が出てきているように思います。
 それは、中国の経済が振幅が激しいといいますか、中国でもうけること、非常に難しいんですよね。御存じのように、中国で上場した企業の株価はずっと落ち込んできていまして、それで中国投資をしたと、チャイナ・ファンドを組んでやったのは全部この二年大失敗しているわけです。何で勃興する中国なのに中国株に投資するとうまくいかないのかというので、彼らは考えたわけで、もっとうまい方法があると。それは日本株を組み込むことだと。日本株で、要するに中国との間で中国からいい影響が出ている日本企業の株を買うのが一番いいと。
 なぜそうかというと、日本の上場企業のディスクロージャーはもうどんどん整備されてきていると、疑わしい点はどんどん少なくなっている。それから、日米新租税協定の下で、株式取得そしてその配当にかかわる税は下がってきています。それから、知的所有権その他、日本がアジアの中において、まあ当たり前の話ですが、最も優れた、アメリカからいけば全く同等の内容を備えているので、日本の企業を買うという手もあるし、日本企業の株に投資する、こういう形を通じて中国、勃興する中国の便益を取る。それが建設機械株であったり、鉄鋼であったり、非鉄であったり、海運であったり、それはいろんな組合せはありますけれども、中国がうまくいくということを通じて、うまくいくというか、高い成長率になるということを通じて、中国株買ったって損する、あるいはもう訳分からぬ、だけれども、これをスクリーニング一度して、日本というのをかませるともうけられるんですよね。で、大変な実績がこの二年上がっているわけです。
 そうすると、彼らはやっぱり日米同盟って実質があると、これは大変いいと。日米同盟のゆえに、世界で初めて日米新租税協定で五〇%を超える出資比率のものは一国と同等とみなすということになったわけですね。ですから、配当についても課税しませんし、それから、例えば特許等についても、特許等の支払についても全く一国と同じ扱いになっていますから、出資比率が五〇%を超えておればですよ。
 そういう意味では、日米同盟、日米連帯というのは、どうやって魅力的なプロジェクトを発掘するのか、そこでもうけるのにどれだけいいのか、知的所有権という枠組みがいかに重要なのかということをアジアの他の人々にも知らせるためにもこれはいいということで、日米共同の利益というのが確認されていまして、中国そのものと付き合うと、ディスクロージャーは悪いし、何が起きているか分からない、ともかくもう利益が上がらない、でも日本をかますと利益になるという形でありまして、私は恐らくそういう意味では、経済的に言うと、日米同盟というのは今そういう果実を取るまでに至っているというふうに思います。
 それから、東アジア・サミットの話なんですが、これASEANに視点を置いてみるともうちょっと分かりやすいような気がしますが、ASEANの有力な指導者に会いますと、僕たちはASEANプラス3だけが選択じゃないと言っていますね。ASEANプラス1もありますよ、ASEANプラス2もありますよ、3もありますけれどもねと言うんですよね。ASEANプラス1って何ですかというと、いやインドですよと。インドとうまくやると。それは中国とのバランスもありますからねと。確かに、シンガポールとインドを結ぶ航空路線は、二度乗ったことありますけれども、超満員ですよね。本当にインドとの間の行き来がすごいというのはよく分かりますし、補完的な関係もあります、IT等々。ASEANプラス1はそういうようにインドを考えている。
 じゃ、ASEANプラス2というのは何かというと、オーストラリア、ニュージーランドでして、オーストラリア、ニュージーランドもASEANとの関係を強化するのに本気ですから。ASEANとしては別にそれもあると、これもなかなか得難い。特にオーストラリアのように、コモディティーカントリーといいましょうか、天然資源が一杯あって、しかもその値段がどんどん上がる状況ですから、ASEAN諸国にとってみますとオーストラリアとの組合せも非常に魅力的なものであります。
 で、そのほかに歴史のあるASEANプラス3があるということですから。
 東アジア共同体って、東京で議論していると、いや、インドも入れたらいいんじゃないかとか、そういう議論が出てくるんだけれども、ASEANの人たちにとってみると、何か寝ぼけたこと言っているな、東京の人は。というのは、そんなこと日常的にやっているよと、我々は。そういう幾つかの呼び掛けの一つにこういうのがあるだけで、我々は日常的に他ともやっていて、そんな寝ぼけた話には乗れないねというのが私は率直なASEANの人々の感じではないかというふうに思っていまして。
 やっぱり我々、少し物事の目線、物事に対する目線の置き方が、やっぱり少し豊かになっちゃったから、自分たちに、何でもかんでも自分たちの目線に取り込んじゃっているという面があって、まあちょっとそんな気がいたします。
 それから、冒頭先生が言われました、どうやって打開するんだと、日本に何か手はあるのかということですが、もう一言で言えば、経済ですね、経済力。しかも、経済力というのは、もうODAだって減らしていますから、御存じのようにこの経済力という意味は企業の持っている力ですね。日本の企業に蓄積された力量をどうしてもやっぱり欲しいんですね、中国の人も韓国の人も。それはもう本気です。
 ですから、我が国の財政がこの十数年の間に大変悪化いたしまして、納税者の金をアジアに回すということはかなり難しくなっております。これからの援助の重点が、アフリカとか中東とかそういうところにもう少し重点的に回るような時代になってきていますので、東アジアに納税者の金が直接回るという可能性はむしろ下がってきている。しかし、企業が企業の内部に蓄積した力量について言うと、これはもう彼らが、彼らというのは中国や韓国の人が分かってきたことですが、もう並々ならぬものだと、組みたいものだ、何とかしてうまく組めないものかというのが現実だと思います。
 例えば、中国において今どこに問題点が起きているのか。中国経済の問題点っていろいろありますけれども、停電がこの二年相次いでいまして、今年の夏も来年の夏も停電は止まらないと言っていますね、現在の発電所の整備状況だと。で、その過程で、停電といいますか、電力問題克服するときに、石炭の山元には増産を指示して、まあ事故を一杯出しながらでも石炭は出たんですが、鉄道輸送のネックで必要なところに輸送できないというのがあります。それから電力も、水力でいいますと、内陸部門でできた電力を沿岸部に運ぶんですが、送電にかかわるネックがあるんですね、うまく運べない、ロスが多い。
 ですから、この問題なんかも、日本の送電、力量というものははっきりしていますから、そういうものが入れば随分うまくいく。それから鉄道輸送のネックの解消にも、日本で確立した幾つかのものがあれば本当にすぐにでも役に立つということは彼らは分かってきまして、そういうことについて言えば、どこの国よりも日本に相対的にでありますけれども優位性があると、何とか組みたいという気持ちは非常に強くなっていると思います。
 胡錦濤、温家宝政権になって日本に対するアプローチの基本のところで変化が起きていると私は思っていますけれども、それは今申し上げたような、中国が具体的にボトルネックとして何とか克服しないと経済調整がうまくいかないと思っているそのかぎになるところで、どこから、世界のどこからどういう形で協力を得られるかは彼らなりにやっぱり調べたんだと思うんですが、やっぱりこれ日本だというところにありまして、できることなら何とか協力の形を取りたいというのは中国側の相当強い願望だというふうに私は理解いたしております。
 そういう意味では、打開する手はあるのかと言われれば、私は、あるんだけれども、それが顕在化というか、表になかなか出られないというか、出したくないというのか、まあいろんなほかの条件ありますのでそれが出てない。でも、そのことに対する例えば中国側の評価は相当明確なものだというふうに思っております。
#14
○水落敏栄君 ありがとうございました。
#15
○会長(松田岩夫君) 田村秀昭君。
#16
○田村秀昭君 両先生の大変貴重なブリーフィング、ありがとうございました。
 両先生に、今日お話しになったことじゃないんですが、一問だけお伺いさせていただきます。
 古今東西、軍隊というのを出すのは非常に易しいんですが、引くのが非常に難しい、古今東西そういう先例がございますが。今、イラクに自衛隊派遣されております。それからインド洋には、護衛艦、補給艦を含む三隻が交代でインド洋で燃料補給をやっておりますけれども、いつまでやるのか、両先生、ずっと続けるべきだとお考えなのか、御見識をお伺いしたいと思います。
 それから田中先生に、一番最後におっしゃいました不戦の決意と共同体とは重なるのかという内容をちょっと、もうちょっとよく分かるように、田中先生にお尋ねします。
 以上です。
#17
○会長(松田岩夫君) 最初の御質問は御両人に。
#18
○田村秀昭君 はい。
#19
○会長(松田岩夫君) それでは、恐縮です、白石参考人から、じゃ。
#20
○参考人(白石隆君) この質問は、東アジア共同体の構築の問題とは直接につながらない、むしろ日米同盟というのをどういうふうに考えればいいのかという、こちらの方の問題だと思いますけれども、私は、日本の戦後の安定と繁栄を支えた非常に大きな要因というのはやはり日米同盟であるというふうに考えております。
 その意味で、日米同盟、で、しかもこういう同盟関係というのは、これは外交、常に言われることですけれども、ガーデニングに例えますと、やっぱり日ごろからちゃんと草は、雑草は抜き、肥料は与え、水はやりという、そういうケアをしておりませんとやはり同盟関係というのは維持できない。その意味で私は、日米同盟の観点から考えますと、やはりかなり長期にわたって日本の支援ということは要るんじゃないかと。それじゃ、その場合の一番の判断は何かということになりますと、やはりイラクにおけるアメリカ、あるいはアメリカを中心とする同盟国の戦争目的がかなりの程度達成されるというのが一つの目安になるんではないだろうかというふうに考えております。
 それじゃ、現に戦争目的というのは所期のとおりに進んでいるかということになりますと、残念ながら初期の見通しというのは非常に甘かったと。だから、その意味で予想されたようには進んでいないと。だから、その意味で言いますと、逆に、予想と、初期に予想されたよりももっと長い協力関係というのが要ることになるのかなというふうに考えております。
#21
○参考人(田中直毅君) イラクに対する自衛隊の派遣は、イラクの復興支援のためであります。このことは、自衛隊員が戦闘に行ったわけではないということが、日本はもちろん分かっていますけれども、今やアジアのみならず世界じゅうの人々が、日本の自衛隊は復興支援に出掛けているのであって戦闘を想定しているわけではないということがここまで理解されたがゆえに、オランダ軍が引いた後、イギリス軍、そして相次いでオーストラリア軍がこの自衛隊の周辺の軍事的な機能を担ってくれるというところまで理解されるようになりました。
 そういう意味では、日本の第二次世界大戦後の選択の一つであります、日本の軍人が外に出ていって戦争行為を行うわけではないということについてここまで理解してもらっただけでも、このサマーワに対する派遣は大変な意味があったと思います。
 しかし、もちろんこれは、復興支援のために出掛けたわけですから、イラクにおける治安回復のテンポにもよりますが、もしまだまだ民間人がイラクで、復興支援に出掛けるのにまだまだ時間が掛かるということになりますと、この六百人前後の自衛隊員の位置付けというのがこれだけでは済まないというふうに私は思っています。
 そういう意味では、もう少し広く、中東和平全般の中で、最初の段階ではイラクの復興支援に自衛隊員を派遣したけれども、次の段階では広く中東和平のために軍事的ではない貢献をすると。例えば、パレスチナ国家の創設について相当大きな盛り上がりがありますし、ここでは国連とアメリカとEUとロシアという四者で協議するということになっていますが、これは歴史的な関係がありますから、まあそれはそれでいいんですけれども、パレスチナ国家の創設という形でパレスチナとイスラエルの和平が持続する条件を日本としてどうやってつくり上げられるか、そこにまで外交的努力を通じてつなげることによって自衛隊派遣の意味が、日本全体としてですね、の自衛隊の役割、それから外交的なパレスチナにおける努力というような形で完結すると、この意味が我々にとって明確なものになるというふうに思います。
 そういう意味では、そういう外交的な出口といいましょうか、意味のあることを積み重ねながら、そこに抜けていくというか、そこに貫徹できたという姿を取るまで何とか頑張るべきだろうというふうに思います。
 インド洋における補給について言えば、アフガニスタンに対してどういう我々が貢献ができるかと。これもまあ治安維持の問題がありますので、シビルエンジニアリングといいましょうか、普通に言う民間土木とか、国の枠組み、フェールドステートと言われる、国家の形成原理にやっぱり問題が多過ぎて非常に不安定な状況がいまだ続いているアフガニスタンで何らかの形で日本が明確な関与ができるまでは、インド洋における補給を続けざるを得ないのではないかというのが私の考えです。
 おっしゃいましたように、兵は、確かにどういう条件が満たされれば引くのかという心積もりもなしに兵を出すなんということはあってはならないことでありまして、御指摘の点は重々理解しているつもりですけれども、少なくともこの二点について言うと、外交上、日本国民にとって意味があったというところに着地する姿をやっぱり早急につくるということが重要ではないかと思います。
 それから、レジュメの一番最後に書いた不戦の決意と共同体という話なんですが、不戦の決意は、これはもう揺るがない。ただ、東アジアに共同体をつくらないと不戦の決意が反映していないのではないかと考える必要はないと。不戦の決意はもう明らかだ。これはもう日本国民、これはもう、何度確認してもこれは明らかなんだろうと思いますが、じゃ、だからといって東アジア共同体を早急につくらねばならないということなのかといえば、それは違うだろうと。これは長い時間を掛けて近隣との関係で問題のある点を一つ一つほぐしていくという努力が重要なのであって、準備不足のまま共同体構築なんということは軽々に言うべきではないと、そういう意味でございます。
#22
○会長(松田岩夫君) よろしいですか。
#23
○田村秀昭君 はい。
#24
○会長(松田岩夫君) 浮島とも子君。
#25
○浮島とも子君 公明党の浮島とも子でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。
 まず、白石参考人に、東アジアの様々な文化や思想と経済的な連携の関係についてお伺いをさしていただきたいと思います。
 ヨーロッパについて見ますと、一つのヨーロッパという考え方には長い歴史があるようでございますけれども、研究者の方によってはその淵源を遠く古代ローマ帝国の時代に見られる方もいらっしゃいます。十九世紀半ばには、フランスのビクトル・ユゴーがヨーロッパ合衆国という言葉を初めて用いたとも言われております。また、二十世紀に入りますと、オーストリアのクーデンホフ・カレルギー伯爵が一つの偉大な欧州国家の建設を訴えた歴史があるようです。このように一つのヨーロッパという考え方には長い歴史があると言えると思います。
 それに対し、東アジアを一つの、一つのまとまりとしてとらえるという考え方は比較的最近なものだと思います。東アジアをヨーロッパの対比で考えますと文化的な多様性があろうかと思うんですけれども、東アジアには社会主義、儒教、キリスト教、イスラム教など、代表的な思想だけでも四つあります。現在までのEUにおける状況と比較すると、思想的、文化的多様性が極めて高いと考えられます。
 現在、我が国は経済連携協定の交渉を東アジアの各国と進めております。今後、我が国は東アジアの国々と経済的なつながりを深めていくべきであると言われておりますけれども、相手となる諸国の思想的、文化的背景の多様性を我が国がどのような方法で生かしていくことができるのでしょうか、また、生かしていくべきなのでしょうか、白石参考人に御見解をお伺いさしていただきたいと思います。
 あと、また、田中参考人の方にお伺いさしていただきたいのは日中関係についてなんですけれども、いただきましたこの資料の中央公論四月号の論文に、「中国に迫る「成長の挫折」」の論文を読ましていただいたんですけれども、その最後の部分で、「日本経済をベースとした中国の市場メカニズムの規律付けという課題を掲げるべきであろう。」と提言をされております。
 そこで、具体的に我が国がどのような形で中国の市場メカニズムの規律付けにかかわっていくべきなのか、お伺いをさしていただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
#26
○会長(松田岩夫君) それでは、白石参考人。
#27
○参考人(白石隆君) どうもありがとうございます。
 おっしゃるとおり、歴史をさかのぼろうと考えれば、あるいは試みれば、歴史的な先例というのは幾らでも見付かるものでございまして、ですから、その意味でヨーロッパ統合の文明的基礎をローマ帝国までさかのぼるというのも決してむちゃなことではございません。
 ただ同時に、例えば一九五〇年前後、つまり今から五十年とか五十五年くらい前に、例えば当時の西ドイツの人たちが、あなた方はどの程度ヨーロッパ人だというふうに聞かれたら、彼らはやっぱり、自分たちはそれはヨーロッパ人と言われればヨーロッパ人だけれども、やっぱりドイツ人だということで、それほどヨーロッパ人意識、ましてや、自分のドイツ・マルクのようなものを放棄してユーロをつくるような、そういう意味で、国家の主権を制限してまでヨーロッパということの未来に自分たちを懸けるという意識があったかというと、これは恐らくなかったと思うんです。それをやっぱりやったのがヨーロッパ統合五十年の歴史であろうと。
 ですから、その意味で、私はまず最初に申し上げたいことは、確かに御指摘のとおり、文化的にも、経済的な水準からいっても、社会的にも、宗教的にも、言語的にも、東アジアに住んでいるいろんな人たちというのは極めて多様でございますが、その多様性そのもののために統合ということはできない、あるいは共同体というのはできないんだというふうには考えておりません。むしろ、共同体というのはこれは一つのプロジェクトでございまして、みんながそういうプロジェクトに合意すれば、それは時間は掛かるだろうけれどもできるだろうというのがこれ第一点。
 それからもう一つは、それに関連しまして、先ほど実は私は時間の制約もあってもう一つ御説明できなかったんですが、二十年前に比べますと、実は東アジアの地域には日本人と同じような生活の水準と生活のスタイルを持った人たちが今急速に拡大しております。実際に、この数年、この十年ちょっとでしょうか、日本の漫画だとかアニメだとか音楽だとか、いろんなものが東アジアの地域で特によく売れている。
 例えば、実は私の学生の一人が過去十五年くらいの音楽、これポップのヒットチャートでどういうふうに日本の音楽が現れるのかというのを調べているんですけれども、これを見ますと、明らかに地域的に日本のポップミュージックの現れる頻度、トップテンに現れる頻度というのは増えているんですね。
 ということはどういうことかといいますと、地域的に同じような文化的な好みを持った人たち、私はこれはもう明らかに中産階級だと思いますが、そういう人たちがかなりマスとして成立していて、そういう中で日本のアニメも売れれば、あるいは韓流ということで言われるように、「冬のソナタ」のようなものが日本でも人気があるだけではなくて、マニラでも香港でもシンガポールでも日本と同じぐらい実は人気があるという、そういう世界が今出てきているんだろうと思います。ですから、徐々に言わば生活のレベルでは共通のライフスタイルをある程度持った人たちが出てきているんで、それを踏まえてこれから先プロジェクトとしてどういう交流を進めていくのかと。
 それで、東アジア共同体の構築、そこでの私は一番実は重要なことは、特に政治にまで踏み込もうとすると、信頼をどうやって構築するかだと思いますけれども、それをやっていくのかというのがこれからの一つの課題で、一つ参考になりますのは、例えばヨーロッパの場合にはエラスムス計画ということで、大学生が、例えばドイツの大学生は一年間はヨーロッパのほかの国で勉強をすると、その単位は自分の大学で単位として認定されると。そういうプログラムがありますけれども、同じようなプログラムをやっていく。そのための言わば制度を整備すると。
 そういう、幾つもやり方はあると思いますけれども、ここはやはりかなり政策的にプロジェクトとしてやっていく価値があるんじゃないだろうかということでございます。
#28
○参考人(田中直毅君) 中国経済は、日本経済を分析している者が中国経済そのままデータもらって分析できるかというと、そうはなってないんですね。
 私は、現在の中国の経済調整をふろで説明するんですけれども、中国のふろというのは、外は確かに一つのふろなんですが、中に隔壁というか目に見えない膜があって、こちら側はもうちんちん、こちら側はぬるいと。たき方は一つしかありませんので、ちんちんの方に入っている人は、熱くてもうとてもじゃないけれどもゆだっちゃうよと飛び出す。ぬるい方に入っている人は、もっとまきくべてくれと、これじゃ風邪引いちゃうと言っているのが二つあるんですね。
 なぜそんなことになったのかというと、じゃ、それは混ぜ合わせ、隔壁を外して全体をうまくできるかという、これが市場メカニズムの問題なんですが、まず、なぜ二つできたのかということなんですが、これは中国において、お金を借りても、返さなくてもいいということではないんですが、社会主義時代は財政と金融は同じだと思っていましたから、当事者たちは。予算もらうというのと国有銀行から融資をもらうというのは同じだったわけですね。融資を受けて、その融資は事実上自己資本として機能しているわけで、返すものだとは思ってなかったというのが実態のようです。
 そういう意味では、返済計画はないということで、あるとき払いの催促なしと。日本の金融庁銀行検査マニュアルによれば、これは破綻懸念先ということになるんですけれども、そういう先が非常に多いものですから、止まらない、ある種の建設計画というのは止まらないんですね。
 建設計画というのは、なぜビルディングを建てたり、次から次、たな子も入りそうにないのを、上海ばかりじゃありません、全中国で増えていますし、それから工場団地整備も、これもあらゆるところで行われています。しかし工場来ません。ペンペン草が生えています。しかし、工場団地を造るにしろ、商業用ビルディングを建てるにしろ、建てても建てても、別に返済してないものですから困らないと。じゃ何で建てるんだと聞くと、いや、中国の潜在的成長率は高いから、やがてたな子は来るだろうと、工場が来て、労働集約的な製品から始まって作るだろうと、だから今からやっていくんだというので、そういうところにどんどんお金と資材が回ります。
 しかし、これは収益も何も生んでいませんから、ビルディングを建ててもたな子が入らなければ家賃が入らない、家賃が入らなければ借りた金は返せないということなんですが、それでも倒産システム、手形ありませんから、何といいますか、倒産の要件を満たさない。銀行に返そうったって返せないよ、そんなの、金がないからと言っていればそれで済んじゃうという面がいまだに残っていまして、これがある種の投機といいましょうか、先行き大丈夫だよとなると、とにかく何が何でも建てちゃうと。
 ここの部分は、ですから鉄鋼は使う、アルミは使う、それから物すごく電力使いますから、電力は銅線、銅パイプをぐるぐる回して、お湯の回りに銅パイプを回したのが発電所の原理ですから、銅に対する需要が沸騰するとか、特定のところはもうちんちんになっちゃうわけですね、加熱する。ところが、労働集約的な製品を作っているところはもうどれだけでも出てきますから、製品価格ががんがん下がっています。ですから、インフレとデフレが隔壁を挟んで両側に出ているということです。これはマーケットの調整原理を全く欠いているわけです。
 ここに、じゃどうやったらマーケットメカニズムが入るのかというと、そこは何かつなぐ必要がある。つなぐというのは、需要側と供給側にどこに問題があるのか、新たな供給先はなぜ出ないのか、新たな需要先をつくり出すためにはどういう工夫が要るのかということを考えなければいけないんですが、これは一つの業界、例えば石油化学業界で幾ら組合をつくっていましても、お客様の方とは全く関係ない、つなぎの機能が全くないわけです。
 なぜないのかというのは、よくよく調べてみますと、一党支配のつらさがありますね。諸士横議と私は呼んでいるんですが、おいおい、一体これはどうなっているんだと、他業界の人、いろんな地域の人と話合いをしなければいけない。ところが、話合いをするといっても、何でこんなばかな経済運営してるんだと言うと政権批判になりますし、それはだれか見てる人もいると、公安もあるということで、一党支配というのは効率がいいと言う人もいます、いたわけですが、実際はそんなことはなくて、もうめちゃくちゃ効率が悪いと。批判、ボイスが拾われないと。今日、先生方議論されているような、こういう議会で自由に国民の声を拾って問題点を絞り込むという作業が私は中国においては全くできてない。これがインドと中国の差だと言う人もいますけれども、中国においてはこの市場メカニズムをつくるということに私は大きなところでは失敗していると。
 中国は商人の国、日本は職人の国ですね。商人だからみんなもうそろばん勘定強くて、資本主義なんかあっという間にこなすんじゃないかと言う人がいますが、マーケットメーク、必要なところに、新しいところにどんどん市場をつくり出していくためにはマーケットメークという行為が必要なんですが、マーケットメークのためには諸士横議が要る。諸士横議ができないという、これは中国の言葉で言うと政治改革、多党制容認という、まだそこまで言葉は使えませんので、それを政治改革と彼らは呼んでいますけれども、政治改革は言ってはいますけれども依然としてそこに踏み切れない。そうすると、横断的な議論ができない、国民の声が拾えないという中で、マーケットメカニズムが極めて不都合、マーケットメーク、新しい個々の市場をつくり込んでいくことに完全に失敗している。したがって、中国の経済調整は、一部の方は大変楽観的なんですが、私は簡単ではないだろうと。
 どうやら、中国の中のよく考えている人は、このことをどうもだんだん分かり始めているような気がします、議論をしていて。現在起きている中国の経済調整課題は長期化するなと。成長率がすぐ減速するとか大破綻になるという議論ではないんですが、事柄は簡単ではないと。新しい段階の中国経済に行くにはえらく時間が掛かるという気持ちを持っている中国の経済研究者は相当のペースで増えているように今観察しております。
 ここで、日本の、日本経済をベースとした、というのは、日本でどういう形でマーケットメークが行われたのか。もうもちろん日本も失敗の、幾多の失敗の歴史があるんですが、失敗を乗り越えるに当たって何が手掛かりとなったのかという事例集を取りあえず作ることが、中国の人々に経済調整の本質を御理解いただくのにいいのではないかと最近思っております。
#29
○会長(松田岩夫君) よろしいですか。
#30
○浮島とも子君 はい。
#31
○会長(松田岩夫君) 以上で各会派一人一巡いたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
 二之湯智君。
#32
○二之湯智君 自民党の二之湯智でございます。
 白石参考人と、そして田中参考人に一問ずつ御質問したいと思います。
 白石参考人には、東アジア共同体構想、EUの非常に進展に触発されたように東アジア共同体が最近非常にクローズアップされてきたわけでございますけれども、学者の人によってはこれは余り好ましいことではないという方もいらっしゃいますし、いや、これはもう時代の流れだと、これはむしろこういう方向に日本政府も、日本も進んでいくべきだと、こういう意見があるわけでございますけれども。
 先ほど、恐らく二十年後にはこの東アジアは世界の成長センターになるであろうと、このようにおっしゃって、もちろんそれは東アジアの諸国にとっても安定と繁栄をもたらす、あるいは日本にとっても平和と繁栄と安定をもたらすと、こういうことであったと思うんですが、そのかなめがやっぱり中国ということじゃないかと思うんですが、私たちからすると、この中国、日本の中国に対する依存度も非常に最近高まっておりますし、恐らく韓国もそうでありましょうし、台湾もそうでありましょうし、ほかの東南アジアの諸国も中国に対する依存度が非常に高うなってきた。
 そうすると、やっぱり中国の経済の成長によって、中国を中心にしてそういうのが、構想が生まれてくるんだと思うんですが、ただ一つ、私らから見ても、いま一つこの中国に対する警戒心というのがぬぐえないんですね。やはり共産党一党独裁の中国が果たして経済合理主義でこの経済が運営されるのかと。ある日突然それが変わってしまうというようなことの、そういう警戒感もあるわけでございます。
 そこで、先ほど先生は、中国との安定した、信頼した制度の構築が非常に大事だと。これは一体どういうことが考えられるのか。どういうことが、中国と他の諸国、また日本にとってこの安定した制度というのは何なのかということをひとつ教えていただきたいなと、このように思うわけでございます。
 一方、田中参考人には、私、今日初めて、韓国が中国との経済的な結び付きが非常に強いということを初めて知って誠に勉強不足を思い知らされたわけでございますけれども、まあ最近のこの韓国の日本に対する強気な発言の裏に、もう日本との経済関係よりむしろ中国との関係が非常に強いということの背景の中に非常に強気な発言があるのかどうかという、そういうことと、そしてまた、台湾は中国との間はもっと韓国以上に強くて、ビジネスマンが百万人ほどもう中国に滞在しているというようなことも聞くわけでございますけれども、幾ら反国家分裂法ができても、中国にとって台湾を武力で開放するというようなことは、中国自身にとっても中国経済を麻痺させてしまうというように思うわけでございますけれども、法律の持つ意味ですね、ただ法律を作ったというだけが意味があるのか、実際これを使って台湾を開放すると、そこまで中国は考えているのか、そんなことをひとつお聞かせ願いたいなと、このように思うわけで、以上でございます。
#33
○参考人(白石隆君) どうもありがとうございます。
 私が申し上げております制度というのはいろんな制度がございまして、例えば投資についてのルールであるだとか、あるいは関税についての制度だとか、あるいは知財の制度だとか、いろんなものがございます。で、やはり日本の企業だけではなくて、こういう非常に透明度の高いルールをつくるということは、これは韓国の企業にとっても台湾の企業にとっても、あるいはもう東南アジアの企業でも、あるいは中国でこれから恐らく急速に国際化していくであろう企業にとっても、これはお互いに非常に重要なルールなわけで、こういうものをつくることで、それで中国政府が自分の国内的な都合でルール破りがなかなかできなくなるという、そういうものをやることが実は東アジア共同体の構築ということで一番大事なことではないでしょうかというのが私のポイントでございます。
#34
○参考人(田中直毅君) 韓国の人は、と一緒に議論しますと、表の世界と、まあ一杯やりながらの世界、二つあるとですね、一杯やりながらの世界でいうと、韓国が中国とうまくやったら日本は困るでしょうという一杯話はいつも出ます。
 それから、例えば日本が北朝鮮をどう見るかというときの一つの例として、小泉総理が二度ピョンヤンに行かれた。最初にピョンヤンに行かれた直後に、韓国のある役所の次官で辞めたばっかりの人に会ったら、彼が、金大中政権の最後のところなんですが、ついに日本は朝鮮半島に再び手を突っ込みましたねという言い方をするんですね。これはソウルから見ている場合に、自分たちにとって連携の相手としてもちろん日本はあるんだけれども、中国もあるということを日本の人はどの程度意識しているんですかねと、意識していないみたいだから常に我々は注意喚起しますよという、そういう意識はありますよ、正直。
 ただ、現在起きている韓国と中国との関係は、特定のマーケットに絞り込めば中国で売れると。売れるというのは、中国の電化製品を作っているメーカーよりも、例えばサムソンとかLGの方がより高付加価値のものを出せますので、これはもう早く出て行ってマーケット取りに行くと。ですから、韓国の企業の戦略は、中国に出す商品は、彼らはハイエンドと呼んでいますけれども、世界じゅうでサムソンやLGが出している中の一番高いランクのやつを投入しているんです。それは、そうでないところの商品を投入するともう価格競争に巻き込まれちゃいますので、もうとても利益出ません。ですから、韓国製品で今、中国に行っているのは、彼らが作れる一番高い、一番、何といいますか、中国製品と差付けられるところで入っていっていまして、これが、中国の特定層の所得が物すごく上がりましたので、あのマーケットで非常にシェアを取ってきているというのが現実です。彼らは、そういう形ではしかし日本にはいまだ入れないと思っています。
 韓国のメーカーの人たちが言うのは、世界じゅうでマーケットをシェア取って、最後に日本に行くと。あらゆるところで評価を取って、日本のマーケットを攻めるのは一番最後だと言っていますので、そういう意味では、日本のマーケットが要らないわけじゃないんだけれども、どうだ文句あるかというところまで水準を上げて最後に日本に行くという、彼らが、一応戦略だそうですから、取りあえずは韓中の経済関係、私は強くなるだろうと思います。
 しかし、そうはいっても、ですから韓国の人は中国経済のことを物すごく調べに行っています。当然ですね。最大の輸出先になったわけですから当たり前ですけれども。現実の経済の問題で言うと、日本でも中国研究、中国経済研究をやっている人の数もまあまあ増えてきましたし、ほどほどですが、私の知る限り、韓国の研究者の方が中国に行く数も滞在日数ももう圧倒的に多い。物すごい勢いで中国のマーケットを調べていまして、マクロの経済運営も含めて、今ソウルでは相当の中国経済の分析力量が既に出てきています。そういう意味では、リスクマネジメントについても相当程度既に水準を、彼らの水準は上がってきていると思います。
 そういう意味では、そうですね、日本と韓国とのFTAで何か利益あるのかということを言う人が中小企業レベルで物すごく増えているんですね。これは韓国の研究者によると、いや、韓国の中小企業は日本とのFTAに反対しながら、本当は韓国政府から、だから補助金を取ろうと。ちょうどウルグアイ・ラウンドのときに当時の日本政府が、今から考えれば信じられないことですが、六兆円という金を付けたという話がありますけれども、話があるというか歴史があるわけですが、もちろんそんな巨額な金が韓国政府から韓国の中小企業取れるとは思っていませんけれども、日本の農業はウルグアイ・ラウンドのとき六兆円取りましたねと言う人がいますからね。
 要するに、どういうことかというと、日韓FTAのときに韓国の中小企業のために韓国政府はもっと競争的にできるように金を出してくれ、だったら賛成に回るという議論をやっていまして、どのくらい韓国政府が韓国の中小企業のために金使うつもりか分かりませんけれども、少なくとも、韓国政府が日韓FTAに踏み出すためには、そこは手当てしないと動けないという関係ですね。で、韓国と中国はもう実態的に進んでいると。マーケットも、サムソンやLGが売れるマーケットはもう確実にあるというのが現実かと思います。
 台湾海峡なんですが、この反国家分裂法についていろんな理解あります。まあ普通、普通といいますか、言っていることは、独立宣言なんかしたらただじゃおかないぞと、こういう話なんですが、一方で、彼らの説明を聞きますと、台湾海峡の現実は統一とみなすと言っていますので、現在は。現実は統一だと、だから現在、現状維持と言っています。ということは、統一という、あるいは現状維持である限りにおいて中国人民解放軍は台湾を攻撃しないと言ったことと同様であります。
 このことは、現在ただいまの状態において中国人民解放軍が軍事攻撃をしないということは今まで一度も言ったことがなかったんですが、事実上、今度の話は現状を統一とみなすと言っていますから、独立宣言をしない限りは軍事攻撃をしないということですから、状況をどう把握するかにもよりますが、台湾で独立宣言まで突っ込まないというんだったらという状況を想定すれば、台湾海峡の軍事的な緊張は低下したと、いや独立宣言はしないという前提ですよ。
 それじゃ、独立宣言に行くのかどうかという話で、もちろんそう言う人は常にいますし、数で言えば四割ぐらい、四割から五割近くまではいるといういろんなデータがあるわけですが、しかし、先ほど御指摘のように、上海や蘇州の周りに既に物すごい台湾の人たちがいまして、しかも一杯行っているということは我々前から知っていたんですが、最近いろんな調査によると、上海や蘇州の周辺にいる台湾の人たちは中国系企業に転籍しても、所得は下がるんですが、三分の一ぐらい下がるぐらいらしいんですね。台湾企業からもらっている報酬と、転籍して中国系企業に、下がっても七割ぐらいは取れると。それは足下でですね、現在ただいまで。長い目で見ると、台湾の企業の販路よりは中国系企業の販路の方が広いと見ますと、生涯所得でいうと、うまくキャリア形成をすると中国にいた方がいいという判定をする人たちが既に物すごい勢いで増えています。こういう状態は数年前には全く想定できなかったことなんですが。
 ですから、民進党にしても簡単に独立とは言えない。そんなことをしたら、そういう台湾の人たちが何ということをしてくれるんだというので、この拠点を更に中国大陸の方に移していくという可能性まで出てきていますので、総合勘案すれば、今回の、私は、反国家分裂法について台湾海峡の軍事緊張が高まる形にはならないんじゃないかと。これ、もちろん楽観、そんなことを言うと、おまえ楽観的だと言う人もいるんですが、我々の仲間で。私の判定は、多分これは台湾海峡の緊張激化にはつながらない。もちろん、とやかく言われるのは面白くないという台湾の人が五割近くいることも間違いないんです、それは。デモンストレーションやれば物すごい数になることも事実です。でも、結果的には緊張は激化しないのではないかというのが私の、私が持っている見通しです、それは。
#35
○会長(松田岩夫君) ありがとうございました。
 大久保勉君。
#36
○大久保勉君 民主党・新緑風会の大久保です。
 本日は、白石参考人、そして田中参考人に示唆に富むお話をしてもらいました。
 今回聞きまして、特に東アジア共同体構想とか、そういったことがありましたけれども、ここに関してどういう形なのかということで、すごく疑問に思いました。
 政治的には、教科書問題、竹島問題、尖閣諸島の問題と、いろんな意味で緊張はしておりますけれども、本当にいわゆる東アジアの共同体というのは実質的に進んでいるんじゃないかと思うんです。具体的には、例えば経済面ではもう日本にとって中国は重要なパートナーですし、例えば先日、トヨタ自動車が厚板、鉄鋼を輸入する場合に、日本の製鉄所だけではもう足りないと、場合によっては韓国若しくは中国の鉄工所、メーカーから輸入しますと。つまり、もう経済的には日本、中国、韓国が一体化していると。こういった現象は電機メーカーにも聞いておりますし、もう事実上は共同体になっているんじゃないかなという気がしているんです。
 また、文化的には、白石参考人がおっしゃいましたように、Jポップがかなり中国ではやっていると、若しくは韓流ブームと、こういうことで、もう十年前、二十年前に比べまして事実上の東アジア共同体ができているんじゃないかなと。むしろ、近くなり過ぎていろんな政治問題が出てきているんじゃないかなというふうな気がしているんです。
 そこで、じゃ日本は今後東アジア共同体をもっと政治的に進めた方がいいのか、それとも経済的な自由貿易という段階でいいのかと、こういった判断に分かれると思うんです。僕自身は、むしろ今、日本にとって、中国に投資をしました、それがちゃんと回収できるのか、知的所有権が守れるのか、若しくは通貨が安定するのか、この場合はむしろアメリカの利害と日本の利害は非常に近いということで、必ずしも東アジア共同体という形よりもこのままでいいんじゃないかなという気がしておりまして、両参考人に対して御意見を聞きたく思っております。
 よろしくお願いします。
#37
○会長(松田岩夫君) 御両人ですね。白石参考人から、じゃ。
#38
○参考人(白石隆君) どうもありがとうございます。
 恐らくこの問題を考えるときに一番重要なことは、共同体ということで何を意味するのかということだろうと思います。
 それで、私は、共同体ということで大きく三つのレベルのことを考えております。
 その一つは、もう先ほどから何度も使っておる言葉ですけれども、経済共同体、つまり経済的な統合を制度の面で支えるようなそういう仕組みですね、これを経済共同体というふうに言っておりまして、これは具体的にはFTAあるいは経済連携の促進ということでございます。
 それから二番目は、政治共同体ということで、ここでは、どの程度機構をつくり、制度化を進めるかは別にしまして、例えば東アジア政治共同体ということになれば、そこで何らかの共通の政治的な意思を生み出すような、そういう様々のルールづくりあるいは事務局体制の整備ということが問われるようになるだろうと。
 更に進みますと、安全保障共同体ということになりまして、このときには信頼の醸成、さらには国防についての情報公開、透明性の強化、その先にはもちろん不戦の誓いをこの地域の共通の意思にし、戦争なんということはもう外交の手段て考えられないような、そういう国同士の関係をつくっていくという、そういうレベルに進むというふうに考えております。
 私が東アジア共同体ということで申し上げていますのは、この第一のレベル、経済共同体でございます。
 先生既に御指摘になられましたとおり、デファクトの経済的な統合というのはこの二十年大いに進みました。ただ、それと同時に明らかになったことは、やはりマーケットだけに任せておくと、やっぱりたまに失敗したときには大変なことになると。
 例えば、通貨の安定ということはこれから将来のこの地域の経済的な発展にとって非常に大事だろうと。そうすると、そのためにチェンマイ・イニシアティブを拡大発展させて、ここの地域にあるいは債券市場を育成して、この地域にもっと安定的な通貨の安定圏をどうやってつくるかということはこれは大事であろうし、それから先ほどからもう何度も申しておりますけれども、関税だとか知財だとか、そういう様々の制度づくりということも大事だろうと。これを私は東アジア共同体の構築ということで言っております。
 その先、政治的共同体まで進むかどうか。そのためには何をすればいいのかというのは、これは恐らく日本にとっては非常に大きな決断でありまして、その決断というのは、私のような大学の研究者がすべきものではもちろんなくて、正に政府と国会がすべきことであるというふうに私は理解しております。
#39
○参考人(田中直毅君) 日本が安保理常任理事国入りしたいと言ったときに、中国で何ということを言うんだといって若い人が騒いでいるという話があります。我々日本人にとってはなかなか理解できないことなんですが、しかし、もし歴史を、日本と中国との歴史を一九三〇年代から四〇年代のところに止めて考えてみると、というか、中国で今反日暴動と言われる、立っている人たちは、彼らの図式に何が映っているかというと、日本は南京の汪兆銘政権とそれから満州国という形で中国に介入したと。それに対して重慶に蒋介石政権があり、そしてある時期からは延安に共産党のレジームがあったと。そういう中で、結果として日本は敗戦に追い込まれ、残った蒋介石と共産党の間で共産党が勝ったと。こういう図式ですから、日本というのは満州と南京でどういう図式を取っていたんだという、このことについてどう考えるんだというのが彼らの絵なわけですね。
 我々は、いや、それを言われても今は違うだろうというふうにいつも議論するときには言うんですが、彼らはやっぱりそのときの絵柄というものに対してどう考えるんだというのから議論を始めるということになっていますから、共同体といっても、一々そこで議論やっているとなかなか共同体の議論にならないわけですね、当たり前の話で。
 それで、じゃ共同体というのは、WTOにお互い加盟しているわけだから、WTOの加盟国同士で享受できる、あるいはお互い条件付ける話が、その範囲でいいじゃないかと、それ以上に何か要るのかというふうにやっぱり一度引いてみなきゃいけないときもあるんだと思います。
 共同体と言う以上は、例えば仕上がりイメージなんですが、ヨーロッパの場合ですと、例えば銀行の場合、特定の国で金融商品を出し、そしてそこの国においてその銀行の資産の内容がある認定を受けた場合に、その金融活動、銀行活動は全EUに及ぶということになるわけですが、現在の中国のディスクロージャーとそれから金融システム全般に対するチェックの度合いを考えてみますと、いやいいですよと、御自由に金融活動、銀行活動をやってくださいというふうに、いや、今すぐではもちろんないことははっきりしているんですが、どういう行程表の中でそれがイメージできるかと考えると、それはもうちょっと相当先の話だろうということですから、共同体を議論する前の話で、WTOで金融自由化を言っているわけですから、それが二〇〇六年末ですか、二〇〇一年十二月に決めて五年後と言ったわけですから、二〇〇六年十二月までのWTO加盟に伴う約束事が金融についてできるのかどうかと、中国が達成できるのかどうかというのをまず、それも皆大丈夫かなと、多分そんなスケジュールじゃいかないんじゃないかと、延期要請が出るんじゃないかと。
 要するに、WTOの枠組みでも今そういう具体的なイシューになろうとしているわけですから、それを共同体なんて一足飛びに行って、実務の感覚からいくと、実務の話全部吹っ飛ばして共同体ってできるのと。ヨーロッパでは共同体というのは実務の積み重ねで起きているんですよと、会計士だって弁護士だってどこの国でも営業できると、まあやるかどうかはともかくとして、そういうのが典型的な話なんですが、そこまで行けるんですかと、どうやって行程表を作るんですかと。とても行程表作る前の段階だと思いますから、夢は夢として語るべき、語っていいと思いますけれども、足下はごく初歩的な話で、まだチェックがお互いできていないという現状ですから、これは実務の世界にとても乗らない話だというふうに思います。
#40
○会長(松田岩夫君) 藤末健三君。
#41
○藤末健三君 田中先生に御質問を申し上げたいと思っていますが、私が今韓国とか中国でFTAをやっている方にお会いしますと、それぞれの国が目的が違うんじゃないかなということを感じます。例えば中国ですと、オーストラリアとか例えば南米の国々と結ぼうとしていると。そういう話を聞くと、やはり食料の安全保障、食料確保ということをおっしゃるんですよ。また、中東なんかとも話をし始めている、これはエネルギーの確保と。韓国の方と話をしてみますと、韓国はやはり北朝鮮をある程度考えていて、中国、日本、アメリカと結ぶことによってということをおっしゃる方が、これは研究者の方ですけれどもおっしゃっていまして、それぞれそのFTAの使い方というのは国の環境によって目標がある程度変わってくるんじゃないかなというのが私個人の考えでございます。
 翻って日本はどうかというと、私自身、FTAをうまく使うことによって、例えば私は一番頭にあるのは、リスクだと思うのは実は中国の経済だと先生がおっしゃるように思っていまして、中国が安定化するため、アジアが安定化するためにFTAを使えるんじゃないかなというのが私の個人的な考えでございます。
 ですから、中国と日本、すごく産業構造がうまく補完関係にあるので経済効果も大きいということもありますが、中国が経済が崩壊しないように、日本が例えばエネルギー面で協調して何かをやりましょうとか、食料安全保障、あとは通貨の支えを一緒にやろうとか、そういうアジアの経済を安定させるためのFTAという構想はあるんじゃないかなと思うんですが、その点について是非ちょっと御意見伺えないでしょうか。
#42
○会長(松田岩夫君) どちらに。両方に。
#43
○藤末健三君 田中先生です。
#44
○参考人(田中直毅君) オーストラリアのハワード首相が来ますね、日本に。それで、日本とオーストラリアのFTA勉強会なのかな、始めようというふうに言うんですが、すぐ北京に行きまして、北京では、今言われているのは、もうFTA交渉を始めて一年で妥結するという宣言するらしいんですね。
 おっしゃるように、じゃ、オーストラリアと中国って何で簡単にそんなFTAいくんだということになるんですが、それは中国が、さっき言いましたちんちんの熱になっちゃって、足りない足りないと言っているのは、オーストラリアから天然ガスとか鉄鉱石とか原料炭とかですね。で、オーストラリアの方はもううはうはなんですよね、値段も上がるし。ですから、コモディティーカントリーって、要するにそういう天然資源の国として有名なカナダとかオーストラリアにとってみますと、中国のこのちんちんの方ですね、ふろの中でもうにっちもさっちも、もう煮詰まっちゃったようなものの一番いい影響を受けているわけですね。自分たちは煮詰まらなくて発注ばっかり来るといういい話で、こちらの方はもういても立ってもいられない、もう飛び出るような状態なんだけれども。
 そういう意味じゃ、この際だから組んじゃえ、組んじゃえというのは、もう要するに簡単に。中国からしても、オーストラリアから来るのはそういう必要な原料炭だけで、工業製品来るわけじゃありませんから、まあいいわけですね。ですから、FTAというのはそういう使われ方しているということは先生御指摘のとおりだと思うんです。
 じゃ、日本が日中FTAという枠組みで中国の安定化まで持っていけるかといっても、まだ中国の場合は、その主権概念といったら、金融だって財政だって、幾つかの、それから銀行に対する秩序付けだって主権という概念を中心にしてやっているところで、主権侵害だって一々出てくるわけで、問題をサーベイランスとマクロ政策でこれはもう少し抑制した方がいいんじゃないのと言ってみても、何ちゅうこと言うんだと。今までの経緯からいくと、もう主権国に対して何ちゅうことを言うんだというのが反応ですから、そう言われるなら、じゃ、でもまあ助言させてもらいますと、いろいろ我々苦労してきましたから、というぐらいでできているわけですよね。
 だから、その範囲を超えるのはお互いに簡単にできることだとは当事者は思っていないと思うんですよ、それはお互い。というのが私の理解なんですが。
#45
○藤末健三君 いいですか、質問させていただいて。
#46
○会長(松田岩夫君) どうぞ、じゃ。
#47
○藤末健三君 お願いします。
 先生、私が中国の人と話していると、やっぱり言われるのは、中国でかいでかいと思われているけれど、やはり日本の方がはるかにでかいんだよということをもうおっしゃっている方がいるんですよ。
 私は、二つありまして、一つが例えば鉄鉱石の問題、どんどん値段が上がりますと。結局何が起きているかというと、中国の企業と日本の企業がもう買い争いしているんですよ。それで値段が上がりますと。僕はそういう意味で、購買サイドから、中国、日本、まあ韓国も含めて組むことがそういう原料価格の安定化につながるんじゃないかというのが一つございます。
 そして、もう一つあるのは、中国の方はやっぱり強気なことをおっしゃりますけれども、やっぱり裏ではすごい弱気なことをおっしゃっているんですよ、本当にこのまま行って大丈夫だろうかと。そのときに、やはりアジアで一番この資金力がまだ余裕がある、経済力が余裕があるのは日本ではないかと。やっぱり日本との関係というのは、表じゃ、おれたち主権国家だからもうがんがんやるんだと、日本も目じゃないということをおっしゃっているんですけれども、裏では、ですから長期的なことを考えた場合、やはり日本が何らかのことをやる準備というのをやっておかなきゃいけないんじゃないかということを私は思っているんですが、いかがですか、先生。
#48
○参考人(田中直毅君) 例えば、鉄鋼メーカーでのジョイントベンチャーで、日本の鉄鋼メーカーで中国での製鉄所をつくるという交渉をされているところありますが、それは物すごく慎重ですよね。知的所有権の話から始まりまして、契約で相手が守らなかったときに中国の裁判所じゃ駄目だと。で、それはアメリカだと言ったら、アメリカはさすがに堪忍してくれと言ったそうで、じゃ国際司法裁判所にするとか、もうとにかくいろんな形で、もう十重二十重にして一つ一つ詰めてやる話で、これはもう個々の民間企業がそういう形で必要なことはもうやっておられますので、それをFTAという何か額縁に入れる理由は何にもないんじゃない、必要なことはみんなお互いにやっておられるんですよね。
 だから、FTAというのは、じゃそういうときにFTAって何やることなんですかと、政府は何かむんですかというと、政府が出てくると主権侵害になっちゃいますから、中国の裁判所なんか使いたくないと、そんなだったら契約もしないと突っぱねていて、いや、それじゃもう第三者に行くというところまで、民間企業同士でやっているわけですから、もうお任せすればいいと、それは、というのが私は実態だと思います。
#49
○会長(松田岩夫君) 次は、じゃ、野上浩太郎君。
#50
○野上浩太郎君 両参考人、本当に今日は大変貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 もう、ちょっと今までのお話と大分重なる部分も出てきますので大変恐縮ではございますけれども、同じ質問を二点、両参考人にお聞かせいただきたいと思うんですけれども。
 先ほど田中参考人が言われたように、私も全く同感なんですけれども、東アジア共同体という言葉を使った瞬間に、その共同体という言葉に何か夢のあるような、響きのいいようなこれイメージがあるものですから、これはもうバラ色のすばらしいことだというようなイメージが先行する部分があるんですけれども、やはり先ほど白石参考人も言われましたように、共同体には幾つかの段階があって、経済、政治、安全保障と、これも正にそのとおりだと思いますし、もう大体大筋としては経済の共同体をまずは進めていくというのも、これは大体の共通認識ではないのかなというふうに思うんですね。
 しかし、その経済共同体というのも、実はいろんなイメージとかいろんな段階で語られているものがあって、例えば貿易の自由化ですとか金融協力とか、そういう実現可能なものからまずはやっていって、その集大成としてそういう共同体をつくっていけばいいんじゃないかというような意見もあると思うんですね。
 例えばそれは、じゃ逆に言うと、その協定、それぞれを実施する協定だけでは駄目なのかというようなとらえ方もあると思いますし、また段階としては、そのFTAをどんどんどんどん進めていっていわゆる東アジア自由貿易圏みたいなものをつくるとか、さらにはその交流をもっと進めて東アジア経済地域統合みたいなものまで行くと。
 いろんな段階があると思うんですけれども、白石参考人からは先ほど大分言及はいただいたんですけれども、日本が現実的にも実現可能な部分で目指すべきその経済共同体の姿と、それに至る手順というものをどういうふうに考えていけばいいのか、その御所見をひとつお聞かせいただきたいと思いますのと、もう一つは、年末にその東アジア・サミットが開かれるということで、当初はASEANプラス3という枠組みだったのが、今、日本はオーストラリアですとかニュージーランドあるいはインド、ロシアと、こう参加国を広げていくというような呼び掛けもしているわけなんですけれども、この東アジア・サミット、これを日本の外交戦略上どういうふうにとらえていって、そして参加国も含めてどういう枠組みで進めていくのが日本の外交戦略上いいのかということもお聞かせいただきたいと。
 この二点、お聞かせいただきたいというふうに思います。
#51
○会長(松田岩夫君) それでは、白石参考人から。
#52
○参考人(白石隆君) どうもありがとうございます。
 まず最初に、経済共同体ということで具体的にどういう手順でどういうものを考えるのかということですけれども、戦略的に申しますと、一番重要なのは、私は取りあえずは日韓の経済連携だと考えております。
 それはなぜかといいますと、日本・ASEANの場合には、確かに日本・シンガポールは非常に質の高い経済連携協定をつくりましたが、それをモデルにほかのASEANの国々及び日本・ASEAN全体との経済連携をやっていくと。ただ、これはやっぱり自由貿易地域の形成、そこまで行かないときには、非常にいろんな意味での日本の支援ということに重きが置かれて、とてもじゃないですけれども関税同盟までは行かない。だけれども、日韓の場合には私は関税同盟を目指してもいいんじゃないだろうかというふうに考えております。仮に、そういう形で日・ASEANの方で自由貿易地域結成への第一歩が踏み出せ、日韓で関税同盟への展望が開ければ、そこで実は様々の制度的な取決め、ルールができるわけですね。それを既定の事実として日中に臨むと。というのが私としては一番マーケットフレンドリーな制度をつくるということからいって順当なやり方ではないだろうかというふうに考えております。
 私自身、日中の例えば経済連携というのが来年、再来年できるとは思いません。むしろ、もう少し長期のプロジェクトになるとは思いますが、その前にともかく戦略的な意味で日韓というのが非常に重要、その次に日・ASEANが重要なんだというふうに考えております。
 それからもう一つ、この十二月の東アジア・サミットについて、インド、ニュージーランド、オーストラリアを巻き込むということについては、私は正直言って余りにパワーポリティックスの発想が強過ぎるんではないだろうかというふうに考えております。別にASEANプラス3を東アジア共同体という形にしたところで、実際にはやはりASEANがあって、それとその東アジアの残りの三国ということで日本、中国、韓国がそこに入ってくるという、そういうその中のダイナミズムは私そんなに変わらないと思うんですね。
 ASEANという組織は、これを組織というか、体制は非常に面白い組織でして、このグループが過去ほとんど三十年以上にわたってやってきたことというのは、総論賛成で、各論で異議のあるときには黙っているというそういう組織でして、じゃASEANとは何かというと、実はこれは年に三百から五百ぐらい会議をする組織というのがASEANです。そういう組織を言わば基本にして、これを膨らませてASEANプラス3をつくり、これが名前を変えて東アジア共同体になってここでお話ししましょうという、そういう話ですので、これをわざわざ、そんなに慌ててインド、ニュージーランド、オーストラリアを入れる必要は恐らくないんだろうと私は思います。
 むしろ日本が目指すことは、こういう協議体を使って信頼醸成をやり、同時に、私先ほど実を取るというふうに申しましたが、この実というのはあくまで制度の整備ですので、そういう実を取ることに精力を傾注すると。だけれども、そのことは逆に申しますと、日本の国内の調整ということは当然必要ですので、それはやっぱりやるというのがやはり一番大きな課題ではないだろうかと思います。
#53
○参考人(田中直毅君) 国連は田舎の信用組合と一緒だと言って閣僚の地位を棒に振った方が昔おられましたけれども、参加者にそれぞれ拒否権があるというような形で参加者数を増やすということは、東アジア・サミットといっても、まあ議論、わあわあ言って会合がある、まあ会合がないよりあった方がいいという位置付けにするためには信用組合の総会にした方がいいんですよね。そういうことで言っておられる人もいるのかなというのが私の理解です。
 東アジア共同体といっても、明確なのはアメリカの市場に依存しているんですよね。経済統合が進んだといったって、最大の問題点はアメリカのマーケットに依存しているということなんです。完結しないんですよ、東アジアだけで閉じてみても。しりが残っちゃって、しりはどこに行っているんですかというと、アメリカのマーケットですから、アメリカにしてみれば、じゃ何だったら、アブソープションというんですが、そんなに物持ち込まずに自分たちだけでちゃんと回るようにしたらどうだと、部品と原料と何とかがお互い結び合っているなんというデータ出して、それで喜んでいるというのはどうかしているんじゃないのと、経済で一番重要なのはマーケットだろうというふうに言われたときに、だれも答えられないんですよ、その東アジアで集まっている人たちが。だから、それなあにということですから。
 しかし、まあ我々の地域でいろんな問題があるから議論しましょうよと、議論するのは悪いことじゃないねと、メディアの中には不勉強な人もいるから、メディアの人にも勉強してもらおうという、そういう会議だと思えば、やらないよりやった方がいいということではないかというふうに、私は何となく今の流れをそういうことなのかなと思って見ているんですが。
#54
○会長(松田岩夫君) それでは、直嶋正行君。
#55
○直嶋正行君 民主党の直嶋でございます。
 今日は、お二人の先生、本当にありがとうございます。
 それで、これまでの委員と先生お二人とのやり取り聞いていまして、東アジア共同体ということでいろいろ議論しているわけなんですが、日本の国益をその議論とどういうふうにマッチングをさせていくといいますか、あるいは国益を念頭に置いてどこまでやるのかということになってくるのかなと。それで、一足飛びにこの共同体という議論も大事かもしれませんが、そこまで行く前に、そういう視点で考えますと、私は一つはエネルギーの問題があるんじゃないかなと。
 石油資源が先厳しいといいますか、かなり供給は、もう新たな供給量の拡大というのがなかなか見込まれない中で、やはり需要が拡大して、特にアジアがその中心になるということでありますから、当然、今、日中間でもありますが、このエネルギーをどう確保していくか。特に中国は多分それで必死なんじゃないかなと、先ほど停電の話もございましたけれども。
 そうすると、一つの世界の成長センターのアジアの中で日本がリーダーシップを取ってやれることとして考えますと、例えば石油の共同備蓄であるとか、アジア全体の石油需要をにらんだ上での、先ほど中国の送電の話もありましたが、例えば日本の様々な環境を含めた技術をそういうものとうまく織り交ぜて使っていくとか。
 私、聞いた話ですと、例えばもうマラッカ海峡は既に飽和状態で、これ以上アジア、まあ中国や韓国や日本へ、石油の需要が増えるともうタンカーを通せないと。通せないといいますか、とてもじゃないけれどもキャパシティー的に見てもう運べない。何か今タイの方で、例えばマレー半島ですね、石油パイプラインを造るとかそういう構想も言われているようでありますけれども、そういうこと含めて。
 まあ考えてみますと、日本の製造業というのはかなり東南アジア含めて、中国にも出ていまして、日本経済と、こう言っても、実際にはアジアや中国の動向と随分つながりが深いといいますか、ちょっと誤解を恐れずに言っちゃいますと、中国やタイで停電が起きるというのは日本国内で停電が起きるのとだんだん同じ状況になりつつあるんじゃないかと。タイ辺りで作ったものを日本へ持ってくるとか、あるいは日本で作ったものをタイへ持っていって製品化するとか、こういうことはもう頻繁にやられていますから、どちらで停電が起きても困るというのは多分民間企業の状況ではないかと思うんですが。
 そういう状況も含めて考えますと、総合的にそういうアジアの需要供給動向を含めて日本のエネルギー戦略というのを私は考えていくべきじゃないかなというふうに思っているんですが、そういう視点に立って考えたときに、取りあえずそのエネルギーの問題というのは大きな材料になるんじゃないかと思うんですが、両先生の御見解をお伺いしたいと思うんですが。
 それからもう一つは、二月の終わりごろでしたか、中国の王毅大使が日経新聞に日中FTA協定の勧めといいますか、提言のような形でかなりのボリュームの論文を掲載をされまして、その中に、日中間のいろんな今政治的な課題で、靖国始めいろんな問題があって行き詰まっているけれども、正にその両国の関係を打開していく上で一つの突破口になるのがFTAの話合いではないかと、だから日中のFTAの話合いに入りましょうよと。簡単に言いますとこういう内容だったと思うんですが、その中で言っていたのは、日本が中国がということではなくて、やはりASEANを軸にして、ASEANを尊重しながら話合いを進めればより円滑にいくんではないかというようなことをたしかおっしゃっていたと思うんですが、ここら辺の、まあ私も、今、日中関係非常に厳しい状況ですから、何か打開する手だてはないのかなということを考えているんですが、さっき経済問題というのは一つの打開の材料になり得るというようなお話もございましたけれども、そういうやや長期で見て、日中間でいろんな問題はあるにしても、そういう話合いを始めてみるといいますか、そういうことについてはどのように思っておられるか、お伺いしたいと思うんですが。
#56
○会長(松田岩夫君) それでは、白石参考人。
#57
○参考人(白石隆君) どうもありがとうございます。
 日本の国益との関係でどう考えるかということですけれども、日本の国益というのをどういうふうに考えればいいのかと。
 非常に一般的に言いますと、もちろん平和で安定して繁栄して、日本の国民が現在享受しているような生活水準あるいはそれ以上のものをこれから享受できるようになるというのが恐らく一番一般的な国益の定義だろうと思いますけれども、そういう日本をこれからも維持していくために何が必要かといいますと、やはりグローバルに非常に安定して開かれた世界が維持されるということと、同時に、そういう中で東アジアの地域が恐らく世界で一番重要な成長センターとしてこれからも安定し発展するという、こういう二つの条件が、少なくとも国際的に言えば日本にとって国益に資する環境ということになると思います。
 ですから、それをどういう形で日本として確保するのかということがかぎでございまして、東アジア共同体ということで先ほどから私が申し上げておりますことは、基本的には経済共同体で考えて、これを手段として、地域的に、成長センターとして東アジアの地域がこれまでマーケット主導で伸びてきた、そういうマーケット主導の統合ということをもっと後押しするような、そういういろんな手はずということをやることがやはり日本の利益になるんだという、そういうことでございます。
 じゃ、その上で、ちょっと日中との関係でどういう協力の可能性があるかということでございますが、例えばエネルギーについては、これは中国のこれからの経済発展を考えると、エネルギーあるいはそれ以外の資源の確保ということが中国の国益にとって焦眉の課題であることは間違いございません。ただ、そうだからといって、日本が中国といがみ合って競争する必要はない。
 例えば資源の問題では、必要であれば共同開発という形だって、これは私は十分にあり得るというふうに思いますし、それから、シーレーンの確保ということからいいますと、つい先ごろマラッカ海峡で海賊の問題がございましたけれども、こういう問題については、実は、最近はそうでもありませんが、五年くらい前までは海賊に襲われた船がそのままペンキだけ塗り替えられて中国から出てくるというふうなこともございました。ですから、その意味で、マラッカ海峡を通じた海上交通の安全確保ということは、これは中国のコミットメントがあると相当にやり得ることもある、そういう争点ですし、ですから、これについて日本と中国とアメリカと、それからこの域内の国々ですね、例えばインドネシア、シンガポール、マレーシア、この協力というのは、これは随分意味のあることだろうと思います。
 そのほかに、環境だとか様々の実は協力できる可能性、つまりお互い得になる可能性というのは私は十分あるんじゃないだろうかと。そこはやはり政治的なリーダーシップをどのくらい発揮してそういう協力関係をつくっていくかということにかかわってくるんだろうと思います。
 ついでに、ASEANというのが日中が協力していく上で一つのかぎになるんじゃないだろうかということですけれども、これは、例えばマラッカ海峡についてはそういうことが言えると思いますが、同時に、ちょっと一点付け加えさせていただきたいことは、ASEANというのは必ずしも、対中国政策についても、あるいは対日の経済連携についても一枚岩ではないということでございます。
 非常に大ざっぱに申しますと、大陸の国々、つまり、特にタイ、それからラオス、それからミャンマー、この三つはかなりの程度中国のもうオービットに入っているというふうに言っていいと思いますが、タイの場合には、中国の台頭ということをもう既定の事実として、その中で言ってみれば国としての選択と集中を決めたと。その結果、ツーリズムと自動車産業とそれからアグリビジネス、この三つはタイが国際競争力を持っているから、この三つでもってタイの経済運営をやるというのが今の政権のスタンスで、これは私は、非常にうまくいっていますけれども、同時に、それは逆に言いますと、それ以外の分野はもう中国に譲ってもいいと、そういう発想にもなっているんだと。
 それに対して、島嶼部の国々、これはフィリピンであり、インドネシアであり、マレーシアであり、ある程度シンガポールですけれども、ここはやはり中国に対する警戒心というのが非常に強い。中国に対する警戒心が強いと、その分、逆に日本に対する期待が大きくなると、そういう構図になっておりまして、ASEANというのはなかなか微妙なんで、その中をやはり常に注意してきめ細かく対応していく必要があると思います。
#58
○参考人(田中直毅君) 中国の経済調整がどういう形を取るのかによって、石油とかそれから天然資源に対する需要がどう出てくるか全く見当も付かない状態で、協力の基盤というのは現実にはないと思います。
 現在、中国で高炉とか発電所がもうやたら建っているんですが、普通の言葉で言えば無許可というのか、がんがんやっていまして、これはまあうまくいかなきゃもういいよと、全部投げ出しちゃうからということでやっている。そこから来る石油需要とか原料炭、鉄鉱石需要というのが、これがベースのあるものなのかどうなのかというのはもう皆目見当が付かないわけですね。先ほどの私が挙げた例でいいますと、ちんちんになっているところが一体どういう形で収れんするのか、だれにも分からないわけですから、今出ているエネルギーや原料に対する需要の伸び率というのは一体どの程度信頼性のあるものかどうか。
 中国のGDPを引き上げるのに使っているエネルギーや原料というのは、物すごく今粗大、粗大といいますか、一杯原料投入してほんのちょっぴりしたアウトプットを出すという経済構造です。それは先ほど言いましたように、借り手のないビルディング建てていれば、物すごい投入してアウトプットの方はもう何も出てこないというのが端的な例ですけれども、一体何が恒常的なのか、いまだによくつかめないので、そんなところでエネルギー需要をどうかという議論なんかは全くできないと。
 エネルギーも、例えばLNGなんかは海のパイプラインというふうに呼ばれていまして、液化するところと受け入れるところは一対一対応している話ですから、一般的なマーケットが何かあってどこへでも付けられるというような話でも既になくなっております。今後、石油に比べて天然ガスの比重は、天然ガスの開発の伸びは物すごく加速するというふうに言われておりまして、それは産油国に対するある種懲罰を考えている人たちもいるということでもあるんですが、もっと言えば、天然ガスの分布の方が原油の分布よりは広くなっているし、あるいは西側との調整がうまくいくところに天然ガスが分布しているということもありまして、そういう分野で行われている調整方式見ますと、これはもうワン・ツー・ワンです。一対一のまあパイプラインを引くような形で行われておりまして、一般的なエネルギー何か協力とかという話にはならないと思います。
 それから、日本は京都議定書の基準をもう歯を食いしばって守るということですから、日本の原油輸入量はむしろ、今でも少しずつ減っている感じはありますが、更に減らすということでありますし、これはもう日本が国としてコミットした路線でございますから、そういう意味では、エネルギーでも、非常に非効率にやっためたらいろんな分野で高炉を建てたり発電所建てたり、それが持続するかどうか分からないところと組むということはあり得ないと思いますね。現実はそういうベースにはなっていないと。中国経済の調整の図式がはっきりするまでは、とにかくそういう基礎的なデータさえよく分からぬというのが現状ではないかというふうに思います。
#59
○会長(松田岩夫君) 予定の時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 両参考人におかれましては、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、おかげさまで大変有意義な調査を進めさせていただくことができました。調査会を代表して心から厚く御礼を申し上げます。
 お二人の今後ますますの御活躍を心から祈念申し上げまして、本日のお礼とさせていただきます。本当にありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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