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2005/02/08 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号
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2005/02/08 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号

#1
第162回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号
平成十七年二月八日(火曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         木俣 佳丈君
    理 事
                橋本 聖子君
                脇  雅史君
                榛葉賀津也君
            ツルネン マルテイ君
    委 員
                秋元  司君
                泉  信也君
                魚住 汎英君
                佐藤 泰三君
                中島 啓雄君
                水落 敏栄君
                池口 修次君
                喜納 昌吉君
                藤本 祐司君
                峰崎 直樹君
                渡辺 孝男君
                紙  智子君
                大田 昌秀君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        三田 廣行君
   参考人
       根室市長     藤原  弘君
       社団法人千島歯
       舞諸島居住者連
       盟理事長     小泉 敏夫君
       青山学院大学教
       授        袴田 茂樹君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する
 調査
 (北方領土問題に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(木俣佳丈君) ただいまから沖縄及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査のため、本日の委員会に根室市長藤原弘君、社団法人千島歯舞諸島居住者連盟理事長小泉敏夫君及び青山学院大学教授袴田茂樹君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(木俣佳丈君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(木俣佳丈君) 沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査のうち、北方領土問題に関する件を議題といたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 皆さんから忌憚のない御意見を賜り、今後の本委員会の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず参考人の方々からそれぞれ十五分以内で御意見を述べていただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、参考人及び質疑者のお発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず藤原参考人からお願いいたします。藤原参考人。
#5
○参考人(藤原弘君) ただいま御紹介いただきました根室市長の藤原でございます。
 木俣委員長始め委員の皆様の御高配によりまして、意見陳述の機会を得ましたことをお礼申し上げます。また、日ごろ、北方領土返還運動原点の地であります当市へ御支援、御協力を賜っておりますことに対しまして深く感謝申し上げます。
 初めに、北方領土返還運動への取組についてでございますが、北方領土返還運動は、戦後の混乱の中、当時の安藤石典根室町長がマッカーサー元帥に対しまして北方四島を米軍の占領管轄下に置いてほしいと陳情したのがその始まりであります。この叫びは多くの人々によって連綿と受け継がれ、根室から各地に大きな広がりを見せ、昭和五十年代には全国の都道府県において北方領土返還を求める県民会議が結成されるとともに、それぞれの議会でも返還促進の決議がなされるなど、今日の運動へと広がったところであります。
 これまで根室市民は、冷戦構造の時代にあっても、領土問題が進展しない中、一貫して、半世紀以上にわたり全国民の先頭に立って、不安と希望が交錯する思いを抱きながら運動を推進してまいりました。
 特に、九七年のクラスノヤルスク合意では二十世紀中の解決という目標が打ち出され、日ロ平和条約締結に大きく期待したところでありますが、残念ながら領土返還は実現されることなく、市民の中には失望、落胆の声があったところであります。
 二〇〇一年三月のイルクーツクでの日ロ首脳会談では、五六年の日ソ共同宣言が法的文書として確認され、九三年の東京宣言に基づき、四島の帰属の問題を解決し、条約を締結することが再確認されました。二〇〇三年一月には、今後の日ロ間の幅広い環境整備の推進を目的とした日ロ行動計画が署名され、この中で平和条約締結問題は最重要な柱と位置付けられたと私は認識しております。
 このことからも、地元としては、本年前半のプーチン大統領の訪日による日ロ首脳会談において、これまで積み上げられました諸合意を基に領土問題解決についての具体的前進が図られることを大きく期待しているところであります。当市といたしましても、政府の外交方針を強力に後押しする世論形成のため、より一層返還運動に邁進していく決意であります。
 次に、当市における元島民の状況についてでありますが、終戦時には北方四島には一万七千二百九十一人の日本人が住んでおりましたが、これらの人々は、旧ソ連軍の侵攻により、島からの脱出や強制的な送還などによって、最終的には全員が島を追われました。このうち、当市には、速やかな四島への返還と地理的、歴史的な関係から、約八千人の元島民が居住いたしました。
 元島民は、現在、平均年齢も七十二歳を超えており、島にもう一度帰りたいとの望郷の念を抱きつつ、無念の思いとともに多くの方々が他界され、現在当市に居住する元島民は千九百三十人となっております。また、後継者であります二世から四世まで合わせて五千六百六十三人を加えますと七千五百九十三人となり、市民四人に一人は元島民関係者であります。
 私は、外交交渉のたびに期待と失望を繰り返しながらも返還運動に情熱を燃やしている姿に接するとき、二十一世紀に持ち越されました領土問題の解決を一日も早く実現しなければならないと思っております。今日まで常に返還運動の中心的役割を果たしてこられた元島民は、年々高齢化する中で、今後の返還運動の主眼をより若い世代に継承することが重要であると認識しております。特に、学校教育現場での領土学習の充実強化などの様々な後継者育成対策事業の推進は、今後の返還運動を展開する上で大切なことと考えております。
 当市におきましては、領土問題の正しい理解と認識を深めるため、昭和五十年から三十年間継続して少年弁論大会、北方少年少女塾の開催、さらには少年少女の派遣などの各種の後継者育成事業を実施しておりますが、今後は学校教育関係者との連携をより深め、各種事業を実施してまいるものであります。
 次に、北方領土と当市のかかわりについてでありますが、昭和十四年、当時の北方領土における漁業、農業、林業などの産業の総生産額を見ますと、その九四%が水産業にかかわる生産額となっております。その水産物の漁獲状況は約二十六万トンを記録しております。近年、当市の漁獲量が約十万トン前後で推移している現状に比べますと、北方領土での生産額そのものの経済損失は極めて大きいものがあります。
 また、根室市は、北方領土の島々を結ぶ六つの航路の玄関口として、北方四島から生産された水産物製品が集荷されるとともに、島々での生産資材を始め日常生活必需品等を送り出すなど、物流の拠点として古くから北方領土と一体の社会経済圏を形成し、言わば親子の関係にありました。
 昭和二十年八月、終戦後に、北方領土がソ連邦に不法に占拠、占領され、当市はその水産基盤を根底から一挙に失うこととなりました。加えまして、終戦一か月前の戦災により町の八割が焼失し、硝煙立ち込める混乱の中にあって、戦災者の救助、町の復興、そして元島民の受入れを同時にしなければなりませんでした。このことから、復興も一時は危ぶまれる状況にありましたが、その後、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと北洋漁業の開拓によりまして、国内有数の水産都市としてその基盤を築いたところであります。
 次に、北方領土問題未解決による影響についてでありますが、一九七七年、昭和五十二年の漁業専管水域二百海里の設定によりまして漁場が縮減され、先人が正に命を懸けて切り開いてきました北洋漁場からの撤退を余儀なくされました。
 さらに、一九八六年には、好漁場でありました歯舞、色丹、国後、択捉に取り囲まれた水域、通称三角水域での操業の全面禁漁、また一九九二年のサケ・マスの沖取り禁止や公海流し網漁業の禁漁によりまして、根室港が不夜城として栄えました全盛期では四百十五隻ありましたサケ・マス漁船が、その二割に満たない八十隻にまで激減しております。
 加えまして、一昨年末の日ロ地先沖合漁業交渉で、資源減少を一方的な理由としてマダラ漁獲割当て量が前年の約八割も削減され、さらに、昨年の交渉ではその四割が再度削減されるなど、当市の漁民にとって、明日を信じて生きていく希望を打ち砕かれるほどの幾重の打撃を受けたわけでございます。
 こうした当市の基幹産業であります漁業環境の変貌は、地域漁業者はもとより、水産加工業者、運輸、製函、燃油、造船のほか、地域商業まで、すべての経済活動の経営安定、雇用確保に大きな影響を及ぼしておりまして、市中経済は壊滅的な打撃を受け、危機的な状況になっております。また、これらの状況から、水産加工製品生産高はピーク時に比べまして五三%の減少となっております。これらの要因から、市税は、十年前と比較いたしまして、北海道平均で二・一%の減少に対しまして二一・一%の減少と、大きく落ち込んでいる状況にあります。これら経済状況の悪化とともに、当市の人口は、ピーク時約五万人おりましたが、現在は三万二千人台と、約一万八千人、三六%も減少しております。
 次に、北特法の現状と北方領土隣接地域への財政支援についてでありますが、これまでお話しいたしましたとおり、昭和五十五年十一月の閣議におきまして、政府として根室地域に対する国の支援の姿勢を明確に示すことが重要であるとの総理発言と、根室市を始め関係者の強い要請を受けまして、北方地域元居住者及び北方領土隣接地域が置かれております特殊な事情にかんがみまして、国民世論の啓発、元居住者に対する援護、北方領土隣接地域の振興と住民の生活安定のこの三つを柱といたしまして、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律、いわゆる北特法が議員立法として昭和五十七年八月に制定されまして、翌年四月一日より施行されたところであります。
 法施行後、同法に規定されておりますもろもろの優遇措置は十分に生かされていないというふうに私たちは受け止めております。特に、本法律の第十条に北方領土隣接地域等振興基金、いわゆる北方基金につきましては、平成三年度までに百億円が造成されたところでありますが、その運用益は、市場金利の低下などによりまして、平成十三年度では設置当初見込みの約三割程度となっております。このことから、根室管内一市四町で構成いたします北隣協といたしまして、平成十四年から、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律、いわゆる北特法を改正し、真に効果のあるものにしていただきますよう要望してきたところであります。本趣旨を理解の上、その実現につきましてよろしくお願い申し上げます。
 次に、四島交流事業に関する専用船舶の建造についてでありますが、ビザなし交流あるいは北方墓参に使用する船舶が、大変老朽化した民間船舶を借り上げて実施しております。元島民は御承知のとおり高齢化している現状から、狭隘な急勾配の階段の利用や上陸時の困難性、危険性から、その改善が求められております。来年度予算におきましては基本構想検討経費が盛り込まれましたが、調査検討に終わることなく、早期の建造をお願いいたします。また、今後そうしたことを検討いたします検討委員会を設置した場合は、当市始め島民関係団体がこの委員会に参加できますよう、お願い申し上げます。
 また、次に四島交流事業と四島住民支援についてでありますが、北方領土問題解決の環境整備のために始まりましたビザなし交流は本年で十四年目を迎えておりまして、一万二千人の相互交流が行われております。当市の重要港湾、花咲港区、根室港区がその交流の拠点となっております。この交流の積み重ねによりまして領土問題に対する認識の広がりを見せていることも事実でございまして、生活習慣や文化などの相互理解の進展にも着実に寄与しているものと認識しております。
 また、新たな人道支援の動きとして一つ取り上げられますのは、一昨年から四島の緊急患者の受入れを行っているところであります。緊急患者の受入れにつきましては、まず四島での治療が困難な重い病症にあること、適切な治療と診断とによって症状の改善が見込まれるもの、四島側の強い要請があること、これらの受入れ基準に適合した患者を受け入れているわけでありますが、これまで根室市立病院では六名の患者を受け入れ、治療し、その症状が顕著に回復し、帰島しているところであります。今後は、その受入れに当たっては、症状の改善が目に見えて分かるものに限定して患者の選定をすべきであるというふうにお願い申し上げたいと思います。
 最後に、北方領土返還促進についてでありますが、北方領土と一体となった当市にとりまして、領土問題の解決なくして戦後はあり得ないということでありまして、経済的にも社会的にも領土が返って初めて正常になるというような、言わば宿命の地域であります。領土問題は、単に私たち根室地域一地域の問題ではなく、北海道の問題でもなく、国家の主権と民族の尊厳を懸けた問題であるというふうに考えております。しかし、残念ながら、現実的な返還の見通しはいまだ立っておらず、全国の北方領土返還を求める声はもとより、当市に多く居住します高齢化した元島民や後継者の心情、あるいは疲弊した地域の経済状況を考えますと、政府におかれましてはこれまで以上に強力な外交交渉の推進をお願い申し上げます。
 終わりに当たりまして、委員長始め委員各位の皆様におかれましては、今後とも絶大なる御支援、御協力をお願い申し上げたいと思います。
 以上で終わります。
 ありがとうございました。
#6
○委員長(木俣佳丈君) ありがとうございました。
 次に、小泉参考人にお願いいたします。小泉参考人。
#7
○参考人(小泉敏夫君) 本日、木俣委員長始め委員各位と関係する皆様の御高配により、北方領土に居住していた者を代表して意見陳述の機会をお与えいただきましたことについて、厚く御礼申し上げます。また、日ごろ私ども元島民に御厚情、御支援を賜っておりますことに、まずもって心から感謝申し上げます。
 私は、社団法人千島歯舞諸島居住者連盟の理事長を務める身でありますが、元島民の一人でもございます。本日は、主として当連盟の長としての立場から発言させていただきたいと存じますが、私も元島民でありますので、元島民としての心情が随所に出てくることもあるかと思っておりますので、あらかじめ御容赦を賜りたいと存じます。
 最初に、千島連盟の発足の経緯などについて簡単に説明をさせていただき、その後、意見、要望を述べさせていただきたいと存じておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
 私たち北方四島の元島民の多くは、さきの第二次大戦が終結して間もなくソ連軍が北方領土に侵攻してきたため、直面する危険をも顧みず、女性、子供、老人を連れながら悲壮な決意の下に正に命からがら脱出してきたのであります。その一方、祖先により開拓された墳墓の地を去り難く、残留した者もおりますが、その多くは、ソ連の軍政下で食糧難や過酷な強制労働により心身ともに苦難に満ちた生活を強いられた後、昭和二十三年十月を最後として、すべて日本本土に強制送還されたのであります。北方四島から脱出した者、また強制送還された者も、長年にわたって島で築き上げた生活の基盤や財産のすべてを島に残し、裸同然に引き揚げざるを得なかったところであり、その後の生活は、戦後の混乱が続く中で縁故などを頼りにその定住の地を求めながら住む家や職探しに奔走するなど、その日限りの生活を余儀なくされ、正に苦難の道を歩まざるを得なかったのであります。
 こうした状況にありながら、元島民たちは月日の経過とともに開拓者精神をよみがえらせ、厳しい生活環境の中、元島民同士が出身別の島の会などを組織し、互いに励まし合いながら再び故郷の地に戻る日を誓い合うようになったのであります。
 昭和二十五年ころからサンフランシスコ平和条約締結という機運の盛り上がりを背景に、根室市や札幌市を中心に北方領土返還要求運動を主たる目的とする任意団体が次々と結成されたのであります。その後、こうした元居住者団体の大同団結が図られ、昭和三十三年七月に全国唯一の元島民による団体として内閣総理大臣の許可を受け、社団法人千島歯舞諸島居住者連盟が設立を見たのであります。
 以来、当千島連盟は、父祖伝来の地であり、懐かしいふるさとへの帰島を熱望する会員の総意を結集し、北方領土の早期一括返還を旗印に掲げ、領土返還運動の先頭に立って活動を続け、現在に至っております。
 当連盟の主な事業としては、北方領土返還要求運動の推進、元島民の援護対策の推進、後継者育成対策の推進、北方四島自由訪問事業の実施のほか、十五年度からは政府からの強い要請を受け、元島民の心情としては受け入れ難いものがありましたが、北方四島住民支援事業の実施にも当たっているところであります。
 さて、前段が長くなりましたが、このたびは本委員会において意見陳述の機会を与えていただきましたので、私たち元島民の切なる思いを含め、要望事項について何点か申し述べさしていただきます。
 初めに、北方領土の早期一括返還についてであります。
 私たち元島民は、苦難の道を歩みながら、既に六十年にならんとする長い年月、ふるさとの一日も早い祖国復帰を一心に念じ、国の外交交渉を支援する立場から北方領土返還要求運動に邁進してまいりました。この間、日ロ間の外交交渉のたびに私たちは大きな期待を抱き、そして失望を味わうということを繰り返し、そのたびごとに自らを奮い立たせ、領土返還に向け精一杯頑張ってまいりましたが、今日においてもなお先行きが不透明な状況にあることに疲労と焦燥の感は募り、憤りすら覚える毎日を送っているのが現状であります。
 御承知のとおり、私たち元島民も逐年高齢化が進み、現在では平均年齢が七十二歳を超え、ふるさとの祖国復帰に思いをはせながら再びその地を踏むことなく他界する同胞も近年ますます増加し、終戦時には一万七千余名いた元島民も現在は半減している状況にあります。
 どうか元島民の置かれている現状と心情を御理解いただき、北方領土の早期一括返還のため、国民世論の啓発と国際世論の喚起に更に御尽力を賜るとともに、強力な外交交渉が展開されるようお力添えを強くお願い申し上げる次第であります。
 次に、北方四島への自由訪問やビザなし交流に使用する船舶についてであります。
 自由訪問を始めとする北方四島への訪問に当たりましては、その都度民間船舶を借り上げているところでありますが、高齢化が進んでいる元島民にとっては、乗下船時の安全性の面で心配があるほか、船内の行動や居住の面でも不便さを伴っているのが現状であります。
 幸いにも、このたび提案されている平成十七年度予算に専用船舶の調査費が計上されていると承知しておりますが、是非とも、元島民の高齢化に配慮した居住性、安全性に優れた専用船舶の導入が図られるよう特段の御配慮をお願い申し上げます。
 次に、元島民の財産権の不行使に対する補償措置についてであります。
 私たち元島民は、半世紀を超える長い年月、それぞれの島に残した財産を自らが利活用できないという特殊な立場に置かれてきました。この不動産の所有権や賃貸権などの不行使に伴う損失は計り知れないものがあります。
 当連盟としては、元島民には残された時間が少ないという現状の下で、財産権の不行使に対する補償の問題を最重点課題として位置付け、長年にわたり政府、関係省庁に要望してまいりましたが、全く進展がなく今日に至っております。
 どうか、本委員会におかれましては、元居住者が置かれてきた特殊な立場と事情を十分しんしゃくいただき、元居住者の要望に沿った直接的支援措置を一刻も早く実現されるよう特段の御支援を賜りたく、強くお願いを申し上げる次第であります。
 次に、北対協融資制度の改善にかかわる要望でございます。
 元居住者の事業の経営とその生活の安定を図ることを目的とした融資制度が法律によって設けられていることは御承知のとおりであります。この融資制度については、各会派の諸先生の格別な御配慮により平成八年に法改正が行われ、高齢化が進行している元居住者の実情を踏まえ、いわゆる生前承継が認められたのでありますが、現行制度においてもなお不十分な面があり、中でも死後承継への拡大につきましては後継者からも強い期待が寄せられているところでありますので、是非とも実現していただきますようお願いを申し上げます。
 以上、種々御要望申し上げましたが、これらの切実な願いを真摯に受け止めていただき、元島民が一人でも多く生存しているうちに結論を出していただきたく、木俣委員長始め委員各位には特段の御高配を賜りますよう、元島民を代表して心からお願いを申し上げる次第であります。
 さて、私たち元島民はここ数年、日ロ間の外交交渉が停滞ぎみであることに落胆しておりましたが、最近、ロシアのプーチン大統領やラブロフ外相などによる領土問題に関する様々な発言が報じられており、にわかに動き始めたとの感を強くいたしております。その発信が日本向けであるとかロシア国内に向けたものであるとか、いろいろに取りざたされておりますが、本年三月にはラブロフ外相が訪日され、その後プーチン大統領も訪日されるやに伺っております。
 私たち元島民は、大統領訪日のときが正に正念場であり、領土問題の解決の千載一遇の機会となるのではないかと思っております。こうした山場の時期を迎えるに当たり、本委員会の皆様におかれましては、国家主権にもかかわる領土問題の解決に向け、更なる御尽力を賜りますようよろしくお願いを申し上げます。
 終わりに当たり、私たち元島民は残された時間が少ないという状況にありますが、引き続き全力で領土返還要求運動に邁進することをお誓い申し上げます。
 最後に、木俣委員長始め委員各位のますますの御健勝と御繁栄を御祈念申し上げまして、私の陳述とさせていただきます。
 本日は誠にありがとうございました。
#8
○委員長(木俣佳丈君) ありがとうございました。
 次に、袴田参考人にお願いいたします。袴田参考人。
#9
○参考人(袴田茂樹君) 袴田でございます。
 衆議院だけでなくて、参議院でもこのような会が持たれていることを大変高く評価したいと思います。また、こういう機会が、発言の機会が与えられたことを大変うれしく思っております。
 私自身は、現在、私が座長をしております安保研のメンバーとして一九七三年からロシアとこの平和条約問題の解決のための民間レベルでの話合いをする、その努力を積み重ねてまいりました。昨年も、ロシアの上下院の有力議員たちと何回か意見交換をしました。マルゲロフ上院外交問題委員長はこういうことを言っておりました。是非とも日本を訪問して平和条約問題について徹底的に日本の専門家や国会議員と議論をしたいと、この問題について本当の本音のところを知りたいんだということを言っておりまして、それで、近いうちに彼は訪問したいという意向を持っております、国会議員何人かを引き連れて。そういう国会議員に皆さんの方もお会いして、彼らがなるほどそうだったのかという形で納得するような、そういう理論武装を是非ともしっかりしていただきたいと願っております。
 さて、皆様のお手元にお配りしております意見陳述の概要に従いまして私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、一番目ですが、日ロの平和条約問題に対するロシアの姿勢をどう理解すべきかということでございます。
 今、小泉さんの発言にもありましたけれども、昨年の十一月から今年の一月にかけましてロシアのラブロフ外務大臣、それからプーチン大統領が何回か日ロの平和条約問題に言及しております。ロシアの首脳は、この問題を解決しなければならないという認識は持っております。それから、昨年の十月に中国との間で領土問題を最終的に解決いたしました。日本との間でも、この日ロ間の関係をぎくしゃくするものにさせているこの問題を何とか解決したいという、その意欲は持っていると私は見ております。
 では、二番目に、ロシアの対応に対してどう日本は評価すべきか、またそれに対して日本はどう対応すべきかという問題であります。
 ロシアは、一九五六年の日ソ共同宣言にのみ触れまして、最近の首脳の発言ですけれども、東京宣言は無視する形の発言に終わっております。日ソ共同宣言では、平和条約を締結して歯舞、色丹の二島を引き渡すという合意ができているわけですが、東京宣言で初めて四島の帰属問題を解決して平和条約を締結すると合意したわけですから、当然この両方の宣言が有効であるということを両国が認めている以上、一方のみに触れるのはこれは不誠実であると、また合意に対する違反であるとはっきり指摘する必要があると思います。
 しかし、ロシアの首脳が日本との間で平和条約を締結することの必要性をテレビを通じて国民に説いたということ、つまりこの問題を何とかしようという姿勢を見せたということ、このことは私は肯定的に評価してもいいのではないかと。
 したがいまして、ロシアの首脳の発言は確かにこれまでと変わったことを言っているわけではない、日本の政府代表も公式的には検討に値しないという発言もいたしましたけれども、しかしこのアプローチだけでは不十分、つまりこのロシアの首脳の発言に日本政府や議会も関心を示し、その一定の意義は認めているんだということをロシア側に認識させる必要があると私は考えております。このことに関連して、実は今日こちらに来る前に谷内外務次官とじっくり話をいたしました。外務省の首脳も今私が述べたことは十分理解されていると今は考えております。
 それから三番目に、ロシア側の最近の発言の中には、歯舞、色丹の二島のみを引き渡す、それが嫌なら一島も返還しないという、そういう意味の発言をしておりますが、これをいかに評価すべきかという問題であります。
 これから交渉を始めようというときに、ロシア側がこういう、どういいますか、ある意味で固い姿勢を示す、これは私は当然だと思っているんですね。交渉を始めるとき、ロシア人のメンタリティーとしてバザール的な取引の、そういう感覚の強い国民であります。最初から落としどころを言うはずがないわけですよ。そういう意味では、この発言は交渉の始めとしては当然であって、したがって、この発言を額面どおりに受け取って、これをロシアの最終的な態度だと、もうこれはお話にならないという、そういう対応をすべきではないのではないかと考えるわけであります。
 それから、ロシアが五六年宣言を認めるというのであれば、じゃ取りあえずこの二島を返還してもらって、残りは継続協議とか、あるいは様々な形で暫定的な措置を取ったらいいじゃないかという意見が考えられますし、既にそういう意見は国会議員の方々も含めて発言をされております。
 この問題について、私は、取りあえず二島論は実は論理的にあり得ないんだということを是非とも皆さんにしっかり理解しておいていただきたいと思います。
 といいますのは、このロシア側の五六年宣言の理解、これは日本も共通の理解をしている点は、平和条約を締結後に歯舞、色丹の二島を引き渡すということであります。したがいまして、たとえ、取りあえずといいましても、平和条約なしにロシアが歯舞、色丹を日本に引き渡すということはあり得ない。じゃ、いったん、それだったら、それでは平和条約を締結して、その後、国後、択捉問題は継続協議にしたらどうかという意見もあるわけです。歯舞、色丹は返還させて、国後、択捉は暫定的に共同開発とか共同管理とか、そういう考え方も出るかもしれません。
 しかし、すべてそれが終わったときに平和条約というのがあり得ないのであれば、つまり二島をまず返還させて、それからその後暫定的な措置を取って、すべてが終わったときに平和条約というのが論理的にあり得ないのであれば、平和条約締結後に国後、択捉の継続協議をするということになるわけですけれども、平和条約というのが戦後処理が最終的に終わったということを意味する以上、平和条約締結後にロシアが本気で国後、択捉の返還交渉を行うということは、これも考えられないことなわけですね。
 そういう意味で、論理的に考えて、どう考えてみても取りあえず二島を返還してもらうということはあり得ないんだということ、このことをしっかり理解していただきたいと思います。
 では、その解決のために日本はどうすべきかということですけれども、当然のことながら東京宣言というもの、これは、ただ細川さんとエリツィン大統領が、細川首相とエリツィン大統領が合意しただけではなくて、その後、プーチン大統領も含めましてロシア側の首脳及び政府レベルで何回もこれは確認していることで、宣言であります。したがいまして、この東京宣言に従って四島の帰属問題を本気で真剣に交渉するということ、このことを始めるということが基本的に重要なことであります。ロシアは、これまで東京宣言を認めながら、国後、択捉の帰属問題について本気で話し合ったことは一度もありません。したがいまして、これをまずするということですね、合意に従ってということ、このことがまず重要なことだと思います。
 それから、四島の帰属問題を真剣にといいましても、日ソ共同宣言に従いますと、平和条約締結後、歯舞、色丹は日本に引き渡すということになっているわけですから、実質的には四島の帰属問題の交渉ということは、国後、択捉の主権問題、帰属問題の交渉ということになります。この交渉に当たりまして、日本側も川奈提案をいったん引く必要があると私は考えております。もちろん、川奈提案というのは、皆さんも御存じのように、この四島の北に国境線を認めるならば返還の時期とか様態は柔軟に考えてもいいということでありまして、四島の主権をまず認めるということを述べているわけですが、この川奈提案を認めることを条件にするという立場を日本が取るならば、主権の問題を、四島の帰属問題を交渉しようというときに、その前に四島が日本に帰属することを認めよと、それが条件だということになると、論理的にこれはこの交渉成り立たないわけですから、私は、国民運動として、また日本の国家の目標としてその四島の主権は日本のものであるというのは、これは当然だと思うんですね。しかし、交渉の論理としては、いったんその川奈提案は白紙にすると、交渉の論理としてはね。でないと交渉にならないということであります。それについては今日の産経新聞の「正論」をごらんください。
 最後に、では平和条約問題解決の諸条件は何かということでありますけれども、最終的にはこれは政治的な、両首脳の政治的な決断が必要であると私は考えております。つまり、歴史的な議論とかあるいは法的な、国際法的な議論を積み重ねれば、自動的にじゃどちらが正しい、こうしましょうという結論が出るわけではないということですね。
 この政治的な決断を行うためには三つの条件が必要だと考えております。一つは、両国に安定した政権が存在する。といいますのは、これは一方だけが完全に勝ったという形の解決があり得ないとしますと、双方が何らかの譲歩を迫られる。当然、両国に不満、批判も起きます。それを抑えるだけの安定した政権が必要だということ。二つ目に、この政治的な決断を行うためには両首脳間に信頼関係が成立するということですね。それから最後に、この領土問題の解決、平和条約の締結は単に日本だけではなくてロシアにとってもメリットなんだと、メリットということをロシア側にしっかりと理解させるということ。この三つの条件が必要だと私は考えております。
 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
#10
○委員長(木俣佳丈君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 なお、参考人の方々にお願いを申し上げます。
 御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 それでは質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○中島啓雄君 自由民主党の中島啓雄でございます。
 本日は、三人の先生方から大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、特に藤原参考人、小泉参考人から正に今までの経過を踏まえた切実な御意見を賜りましたし、袴田先生からは理論的な意味でも御意見を賜ったということで、正に昨日は日露通好条約の百五十年ということで大会も行われましたし、間もなくプーチン大統領も来日をされるということで正に正念場だと、こういう思いでございますし、いろいろな御要望にもこたえていかなくてはならないということで、思いを新たにしておるところでございます。
 ところで、日本というのは周りを全部海に囲まれておりますんで、どうも国境というのが目に見えないと。そういう意味では、国民の関心も領土問題ということにどうも関心が薄いんじゃないかというような気がいたします。私も平成九年に納沙布岬を訪れたことがございまして、そのときは正にその歯舞諸島を身近に見て、やっぱりこれは領土問題というのは大変な問題なんだというふうに感じましたし、たまたま私はドイツにもおりましたんで、東ベルリンとの間のベルリンの壁の外れる前の状況の厳しい状況というのを身をもって体験したわけでございます。
 そのように、領土というのは国家主権を懸けた非常に厳しい問題でありますし、特にロシアという国は常にやっぱり南下をしたいという希望を持っておって、ロシアとポーランドの間というのは、ちょっと歴史を調べてみると、何か十八世紀から今日までの間に五百キロ以上西に移動しているんですね、ポーランドの国境が。
 そういうような事実からいうと、非常に厳しい決意を持って交渉に臨んでいかないとなかなかうまくいかないと。その中でどうやって政治的な決断をしていくかということだと思いますが、その一つのプッシュをする手だてとして、これは藤原参考人、小泉参考人、御両人に同じ質問をさせていただきたいと存じますが、やっぱり北海道あるいは根室市だけでなくて、全国的にこの北方領土の問題というのは大変重要な問題で国民運動がなきゃいけないんだということを国民に知らせて、一致した世論の下にロシアと交渉をする必要があると、こう思っておりますし、高齢化に伴ってその運動を引き継いでいくということも必要なんで、具体的にもう少し国民世論を喚起する手だてについて何かお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
#12
○参考人(藤原弘君) 私は、今日の北方領土返還運動を国民運動としてとらえた場合、昭和四十七年、日本本土に復帰を果たしました沖縄返還に燃えた熱い国民世論に比べまして一致した世論形成に至っていないということが現状であり、残念ではありますけれども、必ずしも北方領土問題への認識が国民に浸透しているとは言えない状況にあるというふうに感じております。
 特に、昭和五十年代に全国の各都道府県に県民会議、北方領土返還促進県民会議が設置されましたが、その運動は大変温度差があるというふうに感じております。県内での啓蒙啓発や研究会、北方領土現地視察研修会等の活動は、一言で言いますと停滞傾向にあるのではないかというような感じであります。
 この県民会議の活動を活発化するにはそれじゃどうしたらいいのかといいますと、やはり国による十分な財政支援、若年者層の加入促進が必要と思っております。
 そうした中で、近年、元島民の二世、三世、あるいはこの元島民以外の人たちが、若い人たちが参画しまして、当市には千島連盟の青年部が設立、平成十三年に設立されました。これを全国に拡大するということも大切ではないかというふうに思っております。
 また、学校教育における北方領土学習の時間を十分取るということ、また教科書へこの北方領土問題を記述していただくと、記述の充実、そしてまた教育現場における先生たちの、指導者の育成強化、これなどの取組が必要ではないかというふうに感じております。
 以上です。
#13
○参考人(小泉敏夫君) お答えを申し上げます。
 確かに、私どもも、一般国民に対する啓発といいますか、私ども元島民の高齢化等もございまして、若い方々への浸透というものが非常に重要だというふうに考えてございます。
 一般国民の方々の領土問題への関心については、私ども、署名活動を通じていろいろお考えをお聞きしたり、程度を見ておりますけれども、やはり以前に比べると非常に格段の違いがあって、領土問題への関心は高いというふうには思います。ただ、若い世代といいますか、二十代、三十代の方々には若干温度差があるのかな。なぜか。これはやはり、生業を持ち、あるいは自分たちの活動が活発だと、領土問題に絞ってなかなか活動できないと、そういう状況もあろうかと思います。
 今お話ありましたように、やはり学校教育、社会教育、そういったもの、それから私どもも二世についてこういったことを浸透すべく努力しておりますけれども、やはり、元島民の島での生活状況というのは肌身に付いているわけですが、後継者、二世、三世については一般の若者とそう変わりはない。親の背中を見て、背を見て育ったわけでもない。そういうことで、こういった問題をいかに若い世代に受け継いでいくか、これは非常に大事な問題だというふうに考えております。
 以上、終わります。
#14
○中島啓雄君 ありがとうございました。
 学校教育でもう少ししっかりやるべきだというのは誠にそのとおりだと思いまして、世論を引き継いでいくという意味でも大変貴重な御提案だと思っております。
 じゃ、次に袴田参考人にお尋ねいたしますが、東京宣言に従って四島の帰属問題を真剣に交渉するんだと。私もそのとおりだと思いますが、東京宣言の前段にあるのが五六年の日ソ共同宣言ということで、最近の動きを見ていると、どうもプーチン大統領、ラブロフ外相は、日ソ共同宣言の方を掲げて、何か二島の返還だけで決着をさせようというような意図が見え見えというか、そんな感じがいたしておりますが。
 五六年の日ソ共同宣言というのは、いろいろな経緯があったんだと思いますが、残念ながら、歯舞諸島、色丹島を日本国に引き渡すということで、国後、択捉については何ら触れられていないと。九三年になって東京宣言で四島というような感じが出てきたと。そこがちょっと日本側にすれば弱点かと思いますが、その五六年の日ソ共同宣言でなぜ触れられていなかったのか。九三年になって初めてということはないんでしょうが、やっと四島の問題を持ち出してきたというその辺の経緯についてと、今後のこの日ソ共同宣言と東京宣言を併せた交渉の仕方というようなことについて、お考えがあればお聞かせいただければと。
#15
○参考人(袴田茂樹君) 五六年宣言に署名するとき、フルシチョフ、当時フルシチョフ氏は河野農相と議論しておりまして、いろいろ、領土問題を含む平和条約交渉を継続するという、この日本側の提案の文言から領土問題を含むということを断固削ってほしいと。この文言が残ると、歯舞、色丹以外に国後、択捉島の問題があたかもまだ残っているかのごとく誤解されると、この誤解をソ連としては許すことはできない、そこまではっきり述べまして、領土問題を含む平和条約問題を継続協議するという文言から領土問題を引かせるということをしたわけです。これは実は九六年にロシア側が発表した当時の議事録で明快になったわけなんですけれども。
 しかし、日本側は、その一月前に、この宣言の一月前に松本・グロムイコ書簡というのが取り交わされておりまして、そこでははっきりと領土問題を含む平和条約交渉を継続するということをソ連側も認めておりまして、この日ソ共同宣言はこの松本・グロムイコ書簡と発表したのも同時に発表いたしましたから一セットになっているんだという理解の下に、したがって、国後、択捉の継続協議ということは日ソ共同宣言に含まれていたんだという、そういう立場を日本側はずっと述べてきたわけです。
 ただ、おっしゃるように、確かに弱点があるのは事実なんですね。今言ったフルシチョフのそういう抗議に対しまして引いたということも、その文言を取り下げたということもある意味で弱点と見られる。これを克服したのが長年の粘り強い領土問題交渉でたどり着いた東京宣言です。
 ロシア側は、日ソ共同宣言は両国で国会で批准された条約だから、一種の条約と同じ宣言だから格が高いんだと。共同宣言は、そうではないという言い方をしますけれども、しかし、先ほども言いましたように、東京宣言はただエリツィン大統領が酒の勢いで調印したというのではなくて、その後も両国の首脳が何回も、今の小泉さんとプーチンの間でも、それから森さんとプーチンの間でも、それから両国の外務省、政府レベルでも何回もこれは確認していることですので、これはもうロシア側が無視するということは絶対にできない。無視するのであれば、じゃ、なぜこれまで何回も文書の上でも確認したんですかということを言えばいいわけで、その意味ではこれはもう共同宣言、五六年の共同宣言と東京宣言は同じように重要な宣言という形で日本側ははっきりとロシア側に言えばいいと思うんですよ。
 この東京宣言を今ロシア側が述べていないというのは、先ほど言いましたように、これは交渉の第一段階として、向こうは最初からすべてを出すはずはない。だから、これを余り額面どおりに取って、ロシアがこれは最終的な態度なんだというふうに私は考えて、こちら側が逆に弱気になる、引くというのは、これはまずいと思います。
#16
○峰崎直樹君 今日は、藤原参考人、小泉参考人、そして袴田参考人、ありがとうございました。
 実は私も、私の連れ合いの母が国後の出身でございますので、広い意味では私もある意味では関係者かな、一人かなと、こう思っております。また、北海道の国会議員でもありますので、絶えず関心を持って先ほど来のお話を聞いておりました。
 そこで、最初に、今の中島委員のお話に引き続いて袴田参考人の方にちょっとお尋ねしたいんですが、私が一九九二年に参議院議員になって以来ずっと、ある意味ではソ連邦からロシアに変わって、非常に北方領土問題というか、対ロシアの関係で非常に進展した時期がありました。そのきっかけをなしたと言われているのが、たしか一九九七年の、当時の橋本龍太郎総理大臣が経済同友会の講演の中でユーラシア外交ということを提起されました。
 先ほどの三項目の平和条約問題の解決の条件は何かということで、もちろん両首脳における決断だとかリーダーシップとか、そういうことも非常に重要だと思うんですが、そこで安定した政権が存在する。首脳間の信頼関係を打ち立てられる。ロシアにとっても利益だという観点で、その三つの条件というのは、この、何か私ユーラシア外交の基本原則に非常に近いものかと思うんですが、袴田参考人はそういう点で、この過去十年近いその交渉の中で、橋本龍太郎総理大臣が出されたこの外交と今おっしゃった点の関係、あるいはユーラシア外交というものをどのように評価されているのか、まずその点をちょっとお聞きしたいんですが。
#17
○参考人(袴田茂樹君) 確かに、ユーラシアから見た、太平洋から見たユーラシア政策でしたか、これが非常に前向きだったということで、ロシア側も高く評価し、九七年のクラスノヤルスク合意、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう努力するという、そういう合意もできて、それは実現しなかったんですが、ただ、私が述べた三つの条件のうち、完全に欠けていたのと、かなり欠けていた要素があります。
 それは、完全に欠けていたのは、当時エリツィン大統領は、国会は共産党とか民族派など野党が大部分を占めておりまして、国内的には政権基盤は極めて脆弱でした。したがって、先日プーチン大統領が中国との間で国境線を画定しましたが、ロシアの前外務次官は、エリツィン時代だったらこれは絶対にできなかっただろうということを述べております。その前のゴルバチョフ大統領のときも、九一年の四月、四月来日いたしましたけれども、あのときも実は五六年宣言を公式に認めることさえできなかった。それは、ゴルバチョフ政権の末期で、ゴルバチョフ政権が非常に脆弱だったからなんですね。
 その意味では、今のプーチン大統領は、この国民、今回の中国との国境線画定については、世論調査を見ますとその七八%がそれに反対しているんです。批判的なんです。その世論を押し切って、また地方のリーダーの、これはハバロフスク地域が管轄しているんですが、その地域のイシャエフ知事の意向なども無視した形で決断ができた。これは非常にエリツィン時代、あるいはその前のゴルバチョフ時代と比べても大統領の地位は強くなっている。
 ただ、まだまだ不十分な点があります。それは、この問題を解決したら日本だけじゃなくてロシアにとってもメリットなんだということをロシア側が必ずしも十分理解していない。ただ一方的に日本に取られる、ロシア側が損をするというそういう認識が余りにも多い。その意味では、もっと日本側が、この問題の解決がなぜロシアにとってメリットなのかということをきちんと理解させる努力が必要だと思います。
#18
○峰崎直樹君 ということは、先ほど中島委員の質問されたときにお答えになった、私も一九五六年の共同宣言は両国で批准をしていると、いわゆる上院、下院で、当時のソ連邦で。ところが、九三年には、東京宣言は結んだけれども、それがいわゆるエリツィンさんの政治基盤の弱さで、それはやはり五六年宣言よりはちょっとやはり欠けているのかなと。
 ただし、もちろん首脳間同士の間の宣言ですから、東京宣言ということにもちろん我々が言及していくという、交渉はもちろんそうなんですが、どうもそこのところが、先日、前ロシアの駐日大使であったパノフさんが、「雷のち晴れ」という本を私も読ませていただいて、やはりそこのところはやはり我々が考えていくときに、もちろん東京宣言でそこまで持っていったという、そういうものを大いに進まなきゃいけないんですけれども、そこのところはやはり、何らかやはりちょっと気になっている点なわけでございます。これは私の意見だと思うんですが。
 そこで、実は私がそのパノフさんの本を読みながらもつくづく感じたことは、我々はロシアのことを、じゃどの程度理解しているかなと。例えば、経済の面でロシアは非常に日本を必要としているだろうと。そうすると、政経不可分と、こういうような原則でいくと、いつの間にか実はそのロシアの経済発展というのはかなり進んできていまして、ほとんど日本の技術とか経済力を当てにしなくてももういいような時代に来るのではないかと。
 その意味で、私自身はそういう今までのその交渉の姿勢の在り方というものに何らかの改革がしかるべきかなというふうに思うんですが、この点どう思われるかということと、実は昨年九月だったでしょうか、北方領土に小泉首相が海上から視察をされたわけであります。そのことが、じゃロシア側にどのような影響を与えるのかということが、本当に十分両国の信頼感を与えられるような形でこれが企画をされたものなのかどうなのかと。私は、相当やはりここは我々の側が、もちろん北方領土返せという気持ちは物すごく分かるんですが、そこのところが本当に十分なその信頼感をかち得るような形の外交あるいは対応であったのかということについて、大変ちょっと疑問に思っているんですが、この最後の点は、もし市長さん、あるいは小泉参考人も後でお聞かせ願えればなと思います。先に袴田さん。
#19
○参考人(袴田茂樹君) じゃ、三点について意見を述べさせていただきます。
 五六年宣言と九三年の宣言でありますが、おっしゃること、つまりロシア側は九三年宣言をできるだけ無視したいという態度を取っておりますが、しかし、先ほど言いましたように、両国の首脳及び政府レベルで何回も確認しているのに、例えば先日のラブロフ発言、それからプーチン発言にもこれに一言も言及しないというのは、これはあり得ないことですよと。それからもう一つ、見方によっては五六年宣言よりも九三年宣言の方がずっと後の合意であって、その後に、それでその方がより現実的なんだという見方もあるわけですから、その意味では、決して向こうの論理だけであれする必要はないと思います。第一点。
 第二点ですが、確かにソ連邦崩壊直後は日本の経済支援ということを非常に求めていた。しかし、最近、オイル価格が非常に高値に張り付いておりまして、ロシアがそういうオイルマネーで潤っている面もあって、日本の資金等を余り必要としなくなってきているのではないかという見解がありますが、しかし、ロシアの資金はこの七割から八割はモスクワに集中していると言われておりまして、このオイル資金、かなり潤っていると言いながら、ロシア極東地域は依然として大変経済的には、どういいますか、困難な状況にあり、人口もますます減っているという状況であります。
 昨年の秋、私はウラジオストクに行きましたけれども、向こうのウラジオストクの人たちは、今中国の経済的な影響が非常に強まっていると。確かに、向こうの商店を見ますと中国商品が満ちていると、あふれていると。今後、中国が経済力を強化するだけでなくて、軍事力も強化し、更に人口、はち切れんばかりの人口を抱えていて、移民という形でいろんな形で浸透する。そういうことを考えると、是非とも日本のプレゼンスをもっと強めてほしいんだと、我々は真剣にそのことを考え、そういう気持ちを持っているんだということを何人もの人たちが言っておりました。そういう意味では、もう経済的な日本のプレゼンスは必要ないというのではなくて、今言った諸条件、諸状況の下で日本の経済的なプレゼンスを本気で望んでいると、特にシベリア、極東地域の人たちは。それは事実であります。
 三番目、小泉首相の海上視察でありますけれども、ちょうどあの直後に私はサハリンに行きまして、先ほども申しました安保研とサハリン行政府の間でサハリン・フォーラムというのを開きました。そのときにこういう批判を受けたわけです。あの小泉さんの行動は、他人の家の窓からのぞき込むような卑しい行為ではないかと。一国の首相たる者がこんな、そんな他人の家の窓から中をのぞき見を、こっそりのぞくようなそんな行為をしていいものかという、そういう批判を向こうから受けたわけです。
 それに対して私が述べたことは、日本はこの北方領土が日本の領土であるということを一貫して主張し、上院、下院でも二十九回もほぼすべての党がそれを決議していると。この北方領土を、つまり日本の領土であるということを国が、全体が、国会が挙げて主張している。それを視察するのはむしろ日本の首相としてもこれは義務でもあると。これからまた、日本に対して言うことは、相手が不快感を抱くからということで、それをすべて避けるいわゆる気配り外交、日本人のそういう外交は逆に相手に間違ったシグナルを送ることになる。日本は北方四島を決して棚上げしてパイプラインとか経済関係の協力だけを進めるんじゃありませんよと、これは並行して両方をきちんとやるんだという、その意思表示をする必要があるし、しかも、今言いましたように、他人の家をのぞくんじゃなくて、それは向こうの論理であって、日本の論理から言えば、自国の領土をその首相が視察するのはもうこれは義務でもあるという、そこまで言いまして、向こうはそれに対して反論はできませんでした。
 以上です。
#20
○参考人(藤原弘君) 小泉総理の洋上視察がロシア側にどのような影響を与えたかということについては私はよく分かりませんけれども、ただ一つ事実関係をお話ししますと、九月二日の日に巡視船「えりも」で小泉総理と私も中間ラインぎりぎりに行きましたけれども、そうしたところ、国境警備隊の船体、黒い国境警備隊が向こうから来たんですね。そして、行き違うときに旗を向こうで掲げたわけですね。こういう小さい旗なんですが、二枚の旗なんですが。海上保安部長、私のこちらに、ここに総理がいて、こちらに海上保安部長いたんですけれども、何の旗だと総理が聞いたところ、貴船の航行安全を祈ると、そういうような旗だということで、すぐ総理が、それじゃ我が方も答礼の旗を揚げなさいということですぐまた旗揚げたんですけれども。そういうところを見ますと、総理がこの時間にこういった海域に来るということをロシア側も承知しておって、そしてそういうような行為をしたんじゃないかなと、こういうふうに思っております。
 以上です。
#21
○参考人(小泉敏夫君) 同じ小泉で、小泉総理が、国境線といいますか、向こうで言う国境線の視察をされた。これは私も別に問題はないと考えておりましたし、またその節、私も船に乗りたかったんですが、乗るわけにいかなかった。で、私どもの仲間でもございます別海の佐野町長あるいは羅臼の脇町長が乗られたので、元島民の立場でいろいろ島の状況を目の当たりに見ながら説明ができたということについては大変良かったなということを感じております。私ども、根室へ総理が来られてから直接いろいろお話しする機会がございまして、これも大変有意義だったというふうに思います。
 この視察についてロシア側でどういうふうに考え、特に北方四島側でどう考えているかなということを私も気になったんですが、実は、ちょっと長くなって申し訳ないんですが、十二月の二十一日から二十四日にかけて国後、択捉、色丹に行ってまいりました、支援事業の物資を持ちまして。そのときにそれとなく日本の今の政権のことなんかもちらっと話してみたんですが、別に問題がないし、非常に友好関係がいいというふうに私自身はとらえてまいりました。
 以上であります。
#22
○峰崎直樹君 ありがとうございます。
#23
○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。
 今日は貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 まず最初に、藤原参考人にお伺いをしたいと思うんですが、先ほども、北方領土が未解決なために市の経済も大変厳しくなっていると、十年前から比べると市税も二一%減っているというようなお話もありました。また、水産業もあるいは物流関係でも大変な打撃を受けていると。
 もう少し、北方領土が戻らないための影響について市の状況をもうちょっとお話をお聞かせいただいて、またそれに対してどのような対応をすべきか、お聞かせいただければと思います。
#24
○参考人(藤原弘君) 今日はちょっとパネルを用意してきたんですけれども、こういうようなパネルなんですけれども。(資料提示)これが根室で、これが納沙布の先ですけれども、御承知のとおり、歯舞群島、これは根室市の行政区域ですけれども、そして色丹島、国後島、択捉島というようにあるんですが、今、ロシアとの関係においては三つの交渉に成り立っております。
 この海域ですね、まず、納沙布岬から三・七キロメーターの貝殻島コンブの漁場でありますけれども、ここが貝殻島コンブでございます。これは民間協定ですね。そして次が、日ロの地先沖合交渉によりまして、この青く塗った、これが地先沖合交渉のU―2区とかT―2区とか、こちらがオホーツク海域ですけれども、こちらが太平洋海域、その中ではサンマの主漁場あるいはマダラの主漁場とか、こちらではスケトウとかいろいろございますけれども。もう一点は、この四島の主権の問題を棚上げしまして、そして安全操業ということで、これはロシア側の申出によりましてこの民間協定の中で今やっている漁業なんですが、こちらのこのA海域、これはタコの空釣り縄漁業といって、これが八隻、現在やっております。また、この国後島のこちら側が、いわゆるここが羅臼ですけれども、今、世界遺産登録の関係で非常に努力中の羅臼、知床半島の羅臼なんですが、この前浜、これが安全操業の中のホッケ刺し網漁業、スケトウダラ刺し網漁業といって、各々二十隻ずつ操業しておるというような、そういった状況であります。
 この三角水域というのは、この四島に囲まれた三角水域、これは現在は操業できないというような状況にありますけれども、そういった中で、まずマダラ漁業を、これは平成十三年の地先沖合交渉によりまして、このマダラの主漁場、これが当時三千三百トンの漁獲割当て量、クオータだったんですけれども、その年に六百六十六トンということで、約八割のクオータの削減によりまして減船を余儀なくされたということです。そして、その影響は六十三億円の減少ということになっておりまして、当時私たちは市民の抗議大会等も開いたんですけれども、最終的には八割減船によって八割に相当する隻数を減船せざるを得なかったというようなことです。
 また、サケ・マス漁業は、ロシアの二百海里のサケ・マス漁業というのはもっとこちらの海域です。ここに千島列島ありますけれども、もっとこちらの海域がロシアの、ロシア二百海里内のサケ・マス漁業というようなことになりまして、これも平成十五年の交渉によりまして十四隻、中型小型合わせて十四隻出漁しないというようなことで、このときも約五十五億円の経済的影響があったというようなことでございます。また、そうした状況を受けまして、市税が大変減少しております。
 そうした中で、私の方としては今年、去年もそうですけれども、今年の予算編成に大変苦慮しておると、財源不足によりましてですね。そういった厳しい状況にあることを御認識願いたいと思います。
 以上です。
#25
○渡辺孝男君 このような厳しい状況があると。それは近隣の地域でも同じかなと思うんですね。
 そういう場合に、前の、先ほどの御説明でも北特法が効果があるということですが、それによって受けられた、北方基金の運用益が三割も減ってしまっているということなんですが、これに対してどういう御希望があるのか、改善するためにですね、何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
#26
○参考人(藤原弘君) 先ほど意見陳述でお話ししましたと思いますけれども、この北方基金というのは百億円今積んでいるわけですね。そして、この果実によりましていろいろの事業をやっているんですが、政府保証債等への預託をしておりまして、その運用益ですね、昭和五十八年から平成十五年度まで六十五億円となっておりますが、法律の制定時の考え方としては、百億円の基金があれば年間七億三千万ぐらいの運用益、果実を生み出すんじゃないかというふうに思っておりましたが、現在は約二億三千万程度。これを利用できない、活用できないということでありますから、当初想定の三割程度ということになっておりまして、私たちとしてはこの漸減対策を、目減り分といいますか、それを国に要望してきているところであります。
 以上です。
#27
○渡辺孝男君 また、それの関係と、北特法の改正案というのが時々皆様から要望をいただいているんですが、どのように北特法を改正していったらば皆さんのためになるのか、その点もちょっとお聞かせいただければと思うんですが。
#28
○参考人(藤原弘君) 北特法の第七条に国からの特別助成というのが位置付けられておりますが、この国からの特別助成につきましては、適用となるためには、特定事業であります公営住宅の建設する事業や公園事業等の国庫補助事業のうち、その該当する自治体の負担額が標準財政規模の一〇%を上回らなければならない条件や、かさ上げ率の上限は補助率の一・二五倍だという制約があります。
 これが昭和六十一年から平成十五年までの十八年間、非常に厳しい条件ですから、根室市と別海町については一度も適用をされておりません。ちなみに、根室管内全体では、昭和六十一年から平成十五年までの十八年間でこの適用を受けたのは五億八千万円助成されております。
 以上です。
#29
○渡辺孝男君 なかなか、せっかく特典を与えていただいているけれども、なかなか実際上使えないということで、改正が必要だというお話ですが、先ほどのお話にも、本当に多くの損失を被っていると、北方領土が戻らないということによってですね。やはりこれは何とかしなければいけないなという思いがございます。
 次に、小泉参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど専用船舶のお話がございました。具体的にどういう専用船舶を希望されるのかをちょっと具体的に教えていただければ、これからのいろんな計画を作るに当たっても参考になるんじゃないかなと思うんですが、何かお考えございますか。
#30
○参考人(小泉敏夫君) お答えになるかどうか分かりませんが、申し上げます。
 今回、来年度予算に調査費が盛られた。大変私どもは期待をいたしておりますし、またこれが、短期間に調査を終わって、本格的な建造あるいは利用できる船に移行していただきたいなというのが最初にお願いしたいことでございます。
 現在使っている私どもの民間船あるいは国の船でございますけれども、大体五百トンぐらいの船で、大変、その船で直接島へ着くようなわけにはいかないんで、途中で必ず次の小さい船に移乗する、さらには船外機の付いたボートに乗り移る、こういう段階を踏んでおりまして、非常に移乗する、乗り移るのに大変なことになりまして、今のところけががないからいいんですけれども、これは本当に大変なことなんです。
 それともう一つは、船の中での生活ですけれども、やはり、今の船は二段ベッドで、上の方に上がるにはこういうはしごで上がるんですが、これはなかなか女性あるいは老人には無理なことで、私どもは下の方になるべく入るようにするんですが、どうしても足りない場合には二階、上も使う、そういうことで、非常に危険性が、まして船が揺れたりなんかするとより危険だ。それから、体一つならいいんですけれども、皆さんそれぞれお荷物を持って、この荷物もやはり自分のベッドのところにある程度置かなきゃならない、そういう状況もございまして、これを何とか生活しやすいベッドにしていただきたいということもあります。
 調査の時期にいろいろ私どもの考え方も反映させたいなと思っておりまして、まだその事態が来ておりませんので、十分協議させていただければ有り難いというふうに考えております。
#31
○渡辺孝男君 じゃ、もう一つ。
 袴田参考人にお伺いをしたいんですが、先ほどいただいた資料でも、領土問題が、一番下のところですけれども、領土問題が、領土問題解決が日本だけではなくロシアにとっても利益だと理解させるということが大事だというお話もございました。この点、もしどういうことを私たち考えていったらいいのか、ロシアがどういうことを希望されているのか、その辺がちょっと私たちも現場をよく知らないんで分からないんですが、その点、何か参考になる資料とか御発言あればと思いますが。
#32
○参考人(袴田茂樹君) 二つの点を指摘できると思います。
 一つは、国際戦略的に、実はこれは公然と外には言いにくい側面もあるかもしれませんが、例えば日本にとって将来的に非常に難しい問題は、対ロ関係よりもむしろ対中関係だと思っております。ロシアは日本の国連常任理事国入りを支持しておりますが、中国はこれまで断固反対してきておりまして、またロシアは今、実務的な関係、中国と非常にいい関係を持っておりますけれども、というのは、最大の武器市場、それから将来的には大きなエネルギー市場でありますから。しかし、中国が経済的にロシアよりも速く、はるかに速いテンポで伸びているとか、軍事費が経済発展以上のテンポで伸びているということに関しまして、またシベリア・極東地域が人口の面である意味で真空地帯であるのに対しまして、国境という人為的なものを挟んで、一方で、はち切れんばかりの国民がいる、このことが浸透圧の原理からしても何を意味しているかということはロシア人は本能的に分かっておりまして、そういう対中国戦略の側面からも、これは日本カードをいかにうまく使うかというのはロシアにとって重要な意味を持っているということ、これが第一点です。
 それから第二点。これは、確かに経済的に最近良くなってきているという側面はありますけれども、先ほど言いましたように、その資金がシベリア・極東地域に潤沢に回っているわけではない、こういう誤解をロシア人はよく持っております。つまり、日本がロシアに経済、実業界が投資しないあるいは進出しないのは、日本政府があるいは外務省がこの北方領土問題ゆえにブレーキを掛けているんではないかと。それに対しまして、実はブレーキを掛けているどころか、日本政府はあるいは外務省はあるいは経産省は実業界のしりをたたいているのが実情ですよということを言いまして、日本の実業界がロシアに出ていかないというのは北方領土問題と関係ないですよということを言うんですよ。
 そうしますと、少し物を考える人は、じゃ領土問題が解決してもロシアとの経済関係が発展するということにはならないですねというふうに向こうは聞いてくるわけです。したがって、確かに実業界のベースだけで考えればそうであると、しかし大型の例えば石油パイプライン、その他大型のプロジェクトを推進しようというときには、もう実業界だけではとてもリスクをすべて負うわけにはいかない。政府が何らかの形でそのリスクをカバーするとか、あるいは、ロシアはODA対象国ではありませんけれども、疑似ODA的な形で日本の政府が本気で乗り出さないと大型のプロジェクトは動かない。その場合は、これは税金を使うわけですから、ロシアが北方領土問題で非常に後ろ向きの態度を示したままで大きな税金を国民が使うということはとても承知しないと。
 つまり、ある意味で領土問題は日本の経済界が向こうへ出ていくということに関しては無関係であるというのも正しいんだけれども、しかしこの問題が解決しないと政府が関与した大型のプロジェクトは動かないし、逆にこの問題が解決すればそういう飛躍的に経済関係が発展する可能性も生まれるというのも事実ですよという説明をするんですね。そういう形でこの領土問題の解決はロシアにとっても実は大変なメリットなんだと。もう一つ言えば、ロシアはそういう国際的な正義を守る国という、そういう威信を保つことができますよということも言えると思います。
 以上です。
#33
○渡辺孝男君 ありがとうございました。
#34
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
 最初に、私、袴田参考人にお聞きしたいと思います。
   〔委員長退席、理事榛葉賀津也君着席〕
 実は、昨年、北方領土返還・四島交流促進議連ということで超党派の議員の皆さんと一緒にサハリンに行ってきたんです。それで、その現地での報道が、第二次世界大戦後の結果の見直しという自らの固定概念を表明するために訪問したのは明白だと、だが戦勝国がそれを認めないことは明白だということで報じていまして、やはり戦勝国だったら、戦争に勝ったんだから領土を奪っておいても当然だという意識が今もずっとあるのかなというふうに思ったわけです。
 それで、こういう意識状況ということでいえば、モスクワとサハリンというのは距離はありますけれども、何というんでしょう、そういう意識のままで来ているということは、裏を返せば日本の側からの交渉といいますか、これまで領土交渉の際にも、日本の側からも問題があったんじゃないのかなということを率直に思うわけです。
 例えば、サンフランシスコ条約で放棄した千島には国後、択捉は入っていないと、だから返還すべきだという論拠ということでいえば、これはロシアの国もそうですけれども、国際的に見ても説得力を持っているのかということを一つ思いますし、それから、大西洋憲章、カイロ宣言ですね、ここで表明された領土不拡大という、この戦後処理の原則の逸脱と、それからスターリンの誤りを正すという点でいうと、日本側からの言い分といいますか、主張するということが足りなかったんじゃないのだろうかというふうに思うんですけれども、その点についての先生の評価はいかがでしょう。
#35
○参考人(袴田茂樹君) まず、第二次世界大戦で決定された国境の見直し、それをいったん許すとドミノ現象が起きてしまう、つまりポーランドともフィンランドともあるいはドイツとも、いろんな国と国境問題が再燃してしまうと、だからこの第二次大戦後いったん決まった国境を変えるということはできないんだという議論はよくロシア側がします。
 それに対しまして我々が述べていることは、ポーランド、ドイツ、フィンランドその他の国々との間には既に国境はきちんと画定していると。日本は、いったん戦後画定した国境を変えろと言っているのではない、つまり日本とロシアの間には国境は画定していない、それはロシアも公式的に認めていることであって、その意味で質的に全く別次元の問題であるということを我々は述べるわけです。そこまで述べれば大抵の人は、あっ、この日本が言っている問題、それとポーランドその他の国とのそういう国境問題というのは全然別次元だということは大抵理解してもらえると思いますので、それはしっかり述べていただきたいと思います。
   〔理事榛葉賀津也君退席、委員長着席〕
 それから、戦勝国が領土を拡大するのは当然であると、これはよくこういう論理で向こうは言ってきます。日露戦争のときに日本が勝った、だから南樺太、南サハリンを日本が取ったじゃないか。第二次大戦で日本が負けた、ソ連が勝った、で領土を取る、これは日本がやったことと全く同じことをやっているんだと。しかも、日本は第二次大戦のときに、これは侵略国、軍事、軍国主義の国ではないかと、それが罰せられるのは当然であるというふうな論理でよく言われてきます。
 それに対して私がロシア人によく説明するのは、一九〇五年当時は、戦勝国が賠償要求をするあるいは領土の譲渡を求めるというのは、これは国際法的に違法なことではなく、当時の国際法では当たり前のことであった、しかもそれは勝手にやったのではなくて、ロシアとの間で講和条約、つまり平和条約で完全に合意の上で行ったことであって、これは当時の国際法に完全にのっとった行為であると。しかし、その後、無併合、無賠償といったのが次第に常識になり、今おっしゃったように四一年の大西洋憲章、またそれを確認したカイロ宣言などで、大西洋憲章はソ連も署名しております、戦勝国といえども領土を拡大してはならないというのが国際的な合意になっていると。
 じゃ、日本は侵略国だったじゃないかと。確かに大日本帝国といって、日本は、戦前の日本は帝国、帝国主義的な行為だったということをたとえ認めたとしても、しかし、その帝国あるいは侵略国であるということをたとえ認めたとしても、これは東京裁判の合法性についてはいろいろ議論がありますが、それは一応別にして、たとえ認めたとしても、放棄をさせられるのは、どん欲、武力によって、あるいは侵略的な行為によって占領した地域である。日本は一つの帝国的な、一つの、大日本帝国と言っていたわけですから、台湾とか満州とか朝鮮半島等を領有していたわけですが、それは放棄した。しかし、北方四島は一八五五年の日露通好条約によって平和裏に日本の領土となり、その後一度もロシア領となったことはない、決して日本が侵略によって拡大した領土でもない、したがってこれを放棄させられるいわれは全くないのであるという、そういう説明をするわけであります。
 その意味で、サンフランシスコ条約で日本が放棄をした、それがどこの国に帰属するかということは、まだ法的には国際法上は確定していないというのも事実であります。ただ、現実的には、南樺太、南サハリンは事実上ロシアのものとして日本は認めている、公的な機関を日本はそこに置いておりますからね。この問題に関しては、ただロシアは、先日の日ロの専門家対話でも、ロシアはサンフランシスコ条約に署名していない、その署名していないロシアがどういう権利でもってサンフランシスコ条約の条項によれば云々ということを述べるのですかということも我々は述べました。
 以上です。
#36
○紙智子君 ありがとうございます。
 それじゃ、藤原参考人にお聞きしたいと思います。
 先ほどの出されてもおりましたので、北特法についてちょっとその続きといいますか、更にちょっと突っ込んでお聞きしたいんですけれども、結局今までせっかくあっても一度も適用にならなかったと。それで、結局はその一〇%ですね、自治体の財政収入額の一〇%ということで、そうすると相当の事業をやらなきゃいけないと。その適用の条件として、市の予算状況ですね、それから財政が非常に大変なわけですけれども、そういう現実に照らしていかに大変なのかということだと思うんです。
 具体的にその対象事業の総額という場合、根室の場合どのくらいで、自治体の負担額がどれぐらいになるのか、要件に合致させるというふうになる場合はどれくらい事業を拡大しなきゃいけないのかというところについて、少しリアルに話してもらった方がよく分かるかなというふうに思うんですけれども。
#37
○参考人(藤原弘君) 根室市における北特法の対象事業の総額及び自治体負担額についてのお尋ねでありますが、この北特法第七条の特別の助成を受ける対象となることができます特定事業とは、住宅、下水道、都市公園、教育施設等であります。当市の平成十六年度予算で申し上げますと、住宅、下水道事業など事業費総額は六億五千万円であります。この地元負担額の総額は三億五千万円と、約半分程度ということです。
 当市の財政状況は、先ほどからお話ししているように、四度にわたる国際減船、さらには基幹産業である漁業が価格の低迷等によりまして大変不振を続けておるというようなことなどから、市税の収入額が大幅に落ち込んでおります。また、平成十一年に自主的な財政再建計画を策定し、投資的経費、いわゆる建設事業費を厳しく選択しておりますことから、平成十六年度の建設事業費の総額は約十九億円ということになっております。この十九億円というのは、建設事業費がピークでありました平成七年度の五十三億円と比較いたしますと、三十四億円の減少になっているというような状況でございます。
 そういった中で、先ほどからお話ししているように、この七条のかさ上げ措置の要件を該当させるためには事業を拡大しなければならぬということですけれども、簡単に言いますと、当市の場合は十六年度、北特法第七条の対象事業でございます六億五千万円の約三倍の事業拡大が必要になると。約十八億円の事業費が必要となるということから、当市の現在の財政状況では到底その拡大はできないというようなことになっております。
 以上です。
#38
○紙智子君 ありがとうございます。
 それじゃもう一点、漁業に対する支援の問題で、先ほども説明がありましたけれども、結局入漁料や協力金を払って操業しなきゃいけないと。それで、非常に漁場も年々狭まってきていて、経営難でやめる人も増えていると。それで、漁業協定について言えば、政府交渉もあれば民間交渉もあるわけですよね。それで、特に民間交渉ではこの相手側から足下を見られた厳しい条件を突き付けられると。多くは領土がなかなか返ってきていない中での困難なわけですけれども、やっぱり責任を国が持ってこの漁業の維持、振興を行うべきだというふうに思うわけですけれども、この交渉や操業条件、それから振興策への国の責任ある対応ということで言えばどのような対策を望まれるでしょうか。
#39
○参考人(藤原弘君) 先ほどもお話ししましたけれども、現在のところこの貝殻島昆布交渉、そして地先沖合交渉、また安全操業と、この三つが今政府間交渉、民間交渉の行われているわけでありますけれども、大変今、大きな問題といたしましては、ロシア側に払う採取料といいますか協力費、これが非常に漁業経営を圧迫しております。
 例えば貝殻島昆布ですね、これは一隻、二人乗りの小さい船外機の船なんですが、約ですね、二、三か月で水揚げは約百万円ぐらいですね。そのうち一隻当たり約五十万円ぐらいの採取料を払っておると。年間ですね、年間といいますか、一億二千二百万円を毎年ロシア側に払うわけですね。そしてそれを出漁隻数で割り返していくということなんですね。これ、取決めの隻数というのは三百七十五隻あるんですが、現在はその採取料が払えなくてその着漁をやめるというような人たちも出てきておるというようなこと等もございます。
 私たちが今要望いたしたいのは、各種のGGベース、いわゆる政府間交渉、地先沖合交渉等は、これは政府間交渉ですから政府の責任でやるんですが、サケ・マス、ロシア二百海里内のサケ・マス交渉、あるいはこの安全操業、そして貝殻島昆布交渉は、これは民間がやるわけですね。したがって私たちは、そこに外務省なり水産庁なりの人たちが後ろに控えておって、ロシア側が前に言ったことと違うようなまた要求をしてきた場合は、違うでしょうということで、的確にその交渉を支えていただく、そういったオブザーバー的な出席を必ずお願いいたしますということを言っていることと、先ほどから申し上げましているように、協力費あるいは採取料、これをこの安全操業の場合はかなり、かなりというか国の方で面倒見ていただいているんですが、こういった貝殻島等の問題等について、この当該海域でやる漁業生産活動の伴うロシア側への協力費、採取料については、私どもの要望としては国で全額支援していただきたいと。いろいろの、この四島が返ってきて、返ってこらないために、きていないためにいろいろな不利益を被っていると。したがって、その返ってくるまでそういった全額国で支援していただきたいというようなことでございます。
 以上です。
#40
○紙智子君 ありがとうございます。
#41
○大田昌秀君 まず、藤原参考人にお伺いします。
 これまで御説明がありましたように、政府に対して様々な要望事項をお持ちでございますけれども、今、差し当たって一番優先順位をもって何を取り上げるかという点になりますと、今一番お困りな問題で緊急に解決を要する問題というのは何とお考えですか。
#42
○参考人(藤原弘君) これは申すまでもなく、北方領土返還交渉を的確に進めていただきまして、そして具体的な進展を図っていただきたいということでございます。あと、内政措置の問題等については北特法の改正とかいろいろございますけれども、それは内政措置として積極的に取り運んでいただきたいということでございます。
#43
○大田昌秀君 返還交渉を進められるに当たっていろいろな障害があると思いますが、市長さんからごらんになって何が一番障害になっているとお考えでしょうか。──例えばロシア側の態度とか、政府の交渉の仕方とか、そのいろいろあると思いますけれども。
#44
○委員長(木俣佳丈君) 御指名してから御発言いただきますように。
#45
○大田昌秀君 はい、失礼しました。
#46
○参考人(藤原弘君) これは国対国との外交交渉ですから、私がこの発言するのはどうかとも一面は思いますけれども、やはり私たちが一番期待しておるのは、いわゆる水面下といいますか、いろいろの交渉ですから、あると思いますけれども、そこいら辺はやはり日本も、分かりやすい言葉で言うと、押したり引いたりいろいろのそういった外交交渉を多方面からやっていただきたいなというようなことでございます。
#47
○大田昌秀君 小泉参考人にお伺いします。
 問題が余りにも複雑で解決困難ですので大変お困りと思いますが、私、この北方問題を考える場合に、常に沖縄の返還問題とこう重ね合わして考えるわけですが、いろいろ条件が違うので必ずしも沖縄みたいにはいかないと思いますけれども、沖縄がアメリカ統治下にあったときに、二十七年間、アメリカの憲法も適用されなければ日本の憲法も適用されないということで、人権侵害の問題が非常に表面化してきたわけですね。今、北方、皆さんの場合には元島民の方々いろいろ苦労をなさっていると思いますが、例えば人権侵害の問題なんかについてどのように解決しておられるんですか。
#48
○参考人(小泉敏夫君) 沖縄の場合の、私ども非常に参考にしたいと思うんですけれども、沖縄の場合はアメリカが相手です、北方領土の場合は現在のロシアだと、その違いがこのような状況にあるというふうに思います。また、領土問題というのは二国間の問題とはいいながら、この敗戦当時の状況、連合国と日本の形を見ればこれは二国間だけの問題ではないというふうに広く思うわけです。
 じゃ、なぜ北方領土がこのような状態に今あるかといいますと、やはり外交交渉もちろんでございますけれども、やはり冷戦時代の四十五年間と、非常に長かった、そしてその長い間に領土問題が存在しないとやら、あるいは認めても今のような状態である。非常にこれは私どもにしてみると、先ほど袴田先生もおっしゃっておりましたけれども、これは元々日本の領土であり、しかも他国の人が住んだことのない、純然たる日本の領土であるということになれば、私どもはこの要求というのは一〇〇%ですね、あるいはそれ以上に正しいものだというふうに踏まえております。
 で、返還運動についても本当に手弁当で、そしてまた私ども命を懸けてやっているわけなんですけれども、もっとやはり国民世論を高める方法として一つ考えられるのは、北の方からの発信だけではなくて、やはり中央、そして全国的な発信がなければ、やはり国民世論としては温度差があってはいけないというふうに一つは考えます。
 それからもう一つは、私ども、先ほどもちょっと申し上げましたが、教育問題については、やはり社会教育も必要なんですが、やはりあらゆるこの教育、学校教育、これは小中高大学あるいは各先生方のこの認識の関係、こういうものも更に強めていく方法があるだろうというふうに考えまして、私どもとしては今の状態というのは決して満足はしておりません。
 ただ、今回たまたまといいますか、ロシアが二国間でも返すということを出てきたことは、これは非常に期待を持てるんではないかということで、一つきっかけを作っていただいて、その中で私たち民間も力になれるものがあれば大いに努力してみたい。
 端的な例を申し上げますと、四島側の住民と我々との、元島民と現島民の間というのは非常にいい関係にございます。それはなぜか。やっぱり話をしなくても通じるものがございます。この元島民側あるいは今の島民側とで、やはりこの人権問題等新たに出てくると思いますし、それからまた返ってきた場合のことも考えますと、まず今の状況はどんなになっているか、もっともっと国の方においても我々個人のレベルでも調査できるものがあれば進めていきたいなと、そういう感じを持ってございます。
 お答えになったかどうか分かりませんけど、以上であります。
#49
○大田昌秀君 袴田参考人にお願いいたします。
 先生は、二〇〇四年六月号の「国際問題」の「第二期プーチン政権の内外政策と日ロ関係」という論文の中で、第二期プーチン政権は権威主義体制を強めざるを得ないこと、また、現在のロシアはソ連邦崩壊後の自信喪失の状態から抜け出して大国としての自信を再び強めつつあると指摘なさっておられます。北方領土問題での最近のロシア側の、どちらかといいますとかたくなな、かたくなと思えるような態度は、このようなプーチン二期政権やロシアの社会状況を反映しているとお考えでしょうか。
#50
○参考人(袴田茂樹君) プーチン政権の性格と北方領土問題の関係ですが、最近プーチン政権がかたくなな態度を示しているとおっしゃいましたが、私はこれ二つの側面があると思うんです。
 先ほど言いましたように、交渉の初めとしては確かに五六年宣言だと、二島だけだという言い方をしていますが、しかし、これまでは国民に向かって大統領がこういうその五六年宣言をソ連の継承国としてロシアは批准したんだから守らなきゃ駄目だという、そこまで言っていないんですね、これまでは。その意味、そういうことを公然と外相も大統領も、その国民や記者会見で述べたということは、これは必ずしも固いというだけの態度ではないと思います。
 で、今のプーチン政権の性格ですが、確かに権威主義的な側面が強まっております。昨年九月一日の北オセチアのこの人質事件、悲惨な事件でしたが、その後、九月十三日にこのプーチン政権は更にこの中央集権を強化するようなそういう措置を発表いたしました。地方の首長も大統領が任命するといったですね、このそういうアプローチに対しまして各国は、日本も含めまして、民主主義の後退ではないかという批判をしましたが、ただ皮肉なことに、北方領土問題に関しましては、このプーチンの中央集権的な権力が強化されることはマイナスではなくてプラスの側面が大いにあるんですね。それは、先ほども述べましたが、中国との関係で、地方の、ハバロフスク地方の見解とかその首長の意見あるいは世論、そういったものを無視してプーチン大統領は決定をできたということですね。それは、だから私、皮肉なことにというのは、総合的に判断して中央集権的な、あるいは権威主義的な側面が強化されるのはいいか悪いかという判断は別としてということなんですが、領土問題に関しましては決してマイナスとは言えないと。
 で、大国としての自信の問題ですが、最近は経済が少し良くなってきている、それで大国としての自信も強めているわけですが、それは中国との関係を見ますと、マイナスに働かないで、むしろその余裕が、そのどういいますか、中国等に対してこの領土問題でも譲歩するという措置を取れた、これが先ほど言いましたように、エリツィン時代であれば、とてもそれだけのことはできなかったと思うんです。その意味では、この両方の側面があって、この日本との関係においてもかなり複雑な問題だと思います。
#51
○大田昌秀君 あと一点だけ短い質問をお願いします。
 沖縄返還の場合ですね、沖縄側は、アメリカの大学人とかあるいはシンクタンクとかアメリカの政府とか、そういうところにじかに訴えたんですね、何度も何度も。そういうのが今回どうなっているかちょっと疑問ですが、ロシア側の大学人やインテリたちのこの北方問題、領土問題についての一般的な認識といいますか、考え方というのをお聞かせください。
#52
○参考人(袴田茂樹君) 沖縄問題ではアメリカの知識人、大学人などに訴えたと。実は、それに直接かかわられた末次一郎氏が安保研を、活動を継続されて、ロシアのシンクタンクあるいは知識人や政界の人たちとのコミュニケーションを一九七三年以来続け、亡くなられた後も我々がそれを引き継いでやっております。その意味では、そういう向こうのオピニオンリーダーたちに訴える、理解してもらうという活動は、我々は民間のレベルでやっております。
 彼らの意識ですけれども、多くの人たちが当初は北方領土問題の存在そのものさえ否定しておりましたけれども、今は、多くの人が北方領土問題の存在を認めるだけでなくて、そのトップでさえも五六年宣言を認めるというところまでやってきました。それから、知識人の多くは、五六年宣言だけではなくて、この国後、択捉に関してもロシアの領有権に疑問を持つ、それがすぐ、だから日本にすぐ渡せという、そこまでは今の政治状況からすぐにはならないとしても、国後、択捉のロシア領有は決してこれは国際的にも認められたものではないという、その認識は多くの知識人たちは持つようになってきております。
 これは、我々が努力したことは決して無駄ではなかったと考えております。
#53
○大田昌秀君 終わります。ありがとうございました。
#54
○委員長(木俣佳丈君) 以上で参考人に対する質疑を終了いたしました。
 参考人の皆様方に御礼のごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、長時間にわたり御出席を願い、大変貴重な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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