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2005/03/08 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 農林水産委員会 第1号
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2005/03/08 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 農林水産委員会 第1号

#1
第162回国会 農林水産委員会 第1号
平成十七年三月八日(火曜日)
   午後零時十分開会
    ─────────────
   委員氏名
    委員長         中川 義雄君
    理 事         岩永 浩美君
    理 事         田中 直紀君
    理 事         羽田雄一郎君
    理 事         和田ひろ子君
                加治屋義人君
                岸  信夫君
                小泉 昭男君
                小斉平敏文君
                常田 享詳君
                野村 哲郎君
                松山 政司君
                小川 勝也君
                小川 敏夫君
                主濱  了君
            ツルネン マルテイ君
                松下 新平君
                谷合 正明君
                福本 潤一君
                紙  智子君
    ─────────────
   委員の異動
 二月七日
    辞任         補欠選任
     主濱  了君     尾立 源幸君
 二月八日
    辞任         補欠選任
     尾立 源幸君     主濱  了君
     谷合 正明君     西田 実仁君
 二月九日
    辞任         補欠選任
     西田 実仁君     谷合 正明君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         中川 義雄君
    理 事
                岩永 浩美君
                田中 直紀君
                羽田雄一郎君
                和田ひろ子君
    委 員
                加治屋義人君
                岸  信夫君
                小泉 昭男君
                小斉平敏文君
                常田 享詳君
                野村 哲郎君
                松山 政司君
                小川 勝也君
                小川 敏夫君
                主濱  了君
                松下 新平君
                谷合 正明君
                福本 潤一君
                紙  智子君
   国務大臣
       農林水産大臣   島村 宜伸君
   副大臣
       農林水産副大臣  常田 享詳君
   大臣政務官
       農林水産大臣政
       務官       加治屋義人君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        高野 浩臣君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国政調査に関する件
○農林水産に関する調査
 (平成十七年度の農林水産行政の基本施策に関
 する件)
 (派遣委員の報告)
    ─────────────
#2
○委員長(中川義雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 国政調査に関する件についてお諮りいたします。
 本委員会は、今期国会におきましても、農林水産に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(中川義雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(中川義雄君) 農林水産に関する調査を議題といたします。
 平成十七年度の農林水産行政の基本施策について農林水産大臣から所信を聴取いたします。島村農林水産大臣。
#5
○国務大臣(島村宜伸君) 農林水産委員会の開催に当たりまして、私の所信の一端を申し上げます。
 昨年は、地震、台風、大雪など、多くの自然災害が発生しました。農林水産業が自然を相手にして営まれ、自然の力から大きな影響を受ける産業であることを改めて痛感させられました。被災された関係者の皆様に、心からお見舞い申し上げますとともに、本年が、自然災害がなく、実りの多い年となることを心から祈念いたしております。
 昨年九月に農林水産大臣に就任して以来、農林水産分野において、消費者、生活者の視点を重視した構造改革や、WTO、EPAを始めとする国際交渉などに全力で取り組んでまいりました。
 農林水産業と農山漁村は、人間の生命の維持に欠くことができない食料の安定供給のほか、国土・自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承といった多面的な機能を有しております。このような農林水産業、農山漁村の健全な発展を図ることが、真に豊かな国民生活と我が国経済社会の繁栄の基盤になるとの信念に基づき、今後とも内外にわたる諸課題の解決に果敢に取り組んでまいる所存であります。
 まず、今後の農政推進の基本方向を定める新たな食料・農業・農村基本計画の策定についてであります。
 現在我が国は、少子高齢化が進行し、間もなく人口が減少局面に入るなど、今まで経験したことのない社会構造の変化に直面しております。また、国際化、情報化の進展が経済活動に大きな変革をもたらしております。さらに、安全、安心、ゆとりや安らぎ、健康等を求める声が高まるなど、国民の意識や価値観にも変化が見られます。
 食料・農業・農村政策は、国民生活や経済社会の在り方と深く結び付いているものであります。したがいまして、こうした変化に的確に対応した新たな食料・農業・農村基本計画を策定し、今後の政策展開の方向を明確にします。この計画に基づいて、我が国農業、農村の持続的発展を図るとともに、これを通じ、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮が実現されるよう、スピード感を持って各般の政策改革を推進してまいります。
 次に、個別の政策課題について申し上げます。
 第一に、望ましい農業構造の確立についてであります。
 我が国の農業が今後とも健全に発展していくためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成確保し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造を確立することが急務であります。このため、地域の話合いと合意に基づき、将来にわたって地域農業を担う、やる気と能力のある経営の育成運動を強力に展開します。地域における担い手の明確化に当たっては、認定農業者制度を活用するとともに、小規模な農家や兼業農家等も参画し得る集落営農の組織化、法人化を促進します。
 また、こうした担い手に対しては、経営の発展や安定を図るための各種の施策を集中的、重点的に実施します。その一環として、現在、幅広い農業者を対象に、品目別に講じている対策につき、担い手の経営に着目して、その安定を図る対策に転換することとし、対策の具体化を進めます。
 農地制度に関しては、担い手の育成確保等を通じた農地の効率的利用と構造改革の加速化を促進するため、特に土地利用型農業を中心に、集落営農の組織化、法人化や、担い手への農地の面的な利用集積を促進してまいります。さらに、リース特区制度の全国展開を含め、耕作放棄地の発生防止、解消に向けた施策の充実強化や、農業への新規参入の促進を図るとともに、優良農地を確保するための計画的な土地利用に資する措置を講じてまいる所存です。
 第二に、消費者の需要に応じた農業生産の推進と食品産業の振興についてであります。
 近年、環境問題に対する国民の関心がますます高まる中で、農業に対する国民の信頼を得ていくためには、我が国農業生産全体の在り方を環境保全を重視したものに転換していく必要があります。このため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき規範を設定して、その実践を促します。さらに、農業生産活動に伴う環境への負荷の大幅な低減を図る先進的な取組に対する支援を具体化するために必要な調査を実施します。
 また、昨年から実施している米政策改革を着実に推進し、需要に応じた売れる米作りを徹底します。
 さらに、農業生産基盤の整備を推進するとともに、現場に密着した新技術や新品種の開発普及を推進してまいります。
 食品産業は、国民への食料の安定供給や食生活の多様化、高度化を支えるとともに、地域経済の活性化や地域の農林水産業の発展にも重要な役割を果たしております。このため、国内農林水産業との連携を強化するとともに、その競争力強化を図ることとし、機能性食品の開発や鮮度保持等に関する新技術の開発、導入等の促進、卸売市場の再編合理化や最新技術を活用した集出荷・流通システムの高度化等を推進します。また、事業者による食品廃棄物等の発生抑制やリサイクルの推進等の取組を促進してまいります。
 第三に、食の安全と消費者の信頼の確保、食育の推進についてであります。
 国民に対し、良質で安全な食料を安定的に供給することは、国の最も基本的な責務であります。とりわけ、BSE等を契機に食の安全に対する国民の関心が高まっている中で、食の安全と消費者の信頼を確保することが急務となっております。
 国民の健康保護を最優先とし、リスク分析に基づき食の安全確保を推進するとともに、トレーサビリティーの導入の促進、生産・流通情報等に係るJAS規格や食品表示の充実などを通じて、食に対する消費者の信頼の確保に努めてまいります。
 また、水産防疫については、輸入防疫の対象や措置を拡充するとともに、重大な疾病が発生した際に届出を義務付けるなど、蔓延防止のための措置を強化することとしております。
 BSEに関する国内措置の見直しについては、現在、食品安全委員会において審議が行われているところであります。一方、米国産牛肉の輸入再開問題については、今後とも、米国に対して、我が国と同等の措置を求めるという基本方針に基づき対応してまいります。こうしたBSE対策については、科学的知見に基づき、食の安全と安心の確保を大前提として、消費者を始めとした関係者との意見交換を十分に行いながら対応してまいります。
 国民一人一人が自らの食について考える習慣を身に付け、生涯を通じて健全な食生活を実現することができるようにするため、文部科学省、厚生労働省を始めとする関係府省と連携して、食育を力強い国民運動として展開してまいります。また、地域の農業に対する消費者の信頼を深めるため、地域で生産された農産物を地域内で消費する地産地消の取組を推進します。
 第四に、農山漁村の振興についてであります。
 国民がゆとり、安らぎ、心の豊かさなどの価値観を重視するようになってきている中で、多面的な機能が発揮され、豊かな自然環境や美しい景観、伝統文化に触れ合うことのできる個性的、特徴的な農山漁村空間に対する国民の理解と期待が高まっております。このため、都市と農山漁村の共生・対流に向けた国民的な運動を推進するとともに、国民共有の財産とも言える農山漁村の振興に当たっては、これまでのように都市との格差を是正するという画一的な考え方から、地域の個性、多様性を重視する形に転換し、各種取組についても、地域住民だけでなく、価値観を共有する都市住民等の参画を得て進めてまいります。
 また、農山漁村における地域資源を活用した先駆的事例を全国に発信、奨励することなどを通じ、地域自ら考え行動する、意欲あふれた農山漁村づくりを推進してまいります。
 集落機能の低下により、その適切な保全管理が困難になりつつある農地、農業用水等の資源については、地域住民等の共同の取組により、将来にわたって適切に保全できるように施策を具体化してまいります。
 第五に、攻めの農政への転換についてであります。
 以上のような農林水産政策の実施に当たっては、いかに国内農業を保護するか、どのように輸入を抑制していくかといった、これまでのような守りの姿勢から、生産者や地域の創意工夫に基づく意欲的な取組をいかに後押ししていくかといった攻めの政策へ転換することが重要であります。
 世界的な日本食ブームやアジア諸国の経済発展等が見られる中で、高品質で安全な我が国の農林水産物や食品の輸出、バイオマスの有効利用による農林水産業の活性化、農産物の産地直販の成功など、今までにはなかったような意欲的な取組が一層促進されるよう、積極的な政策展開を図ってまいります。
 また、こうした意欲的な取組を側面から支えるためにも、知的財産権の活用を促進することとし、植物の新品種の育成者権の適切な保護を図ってまいります。
 次に、森林・林業政策についてであります。
 森林は、林産物を供給するだけでなく、雨水を一時蓄えることにより洪水などの災害を防止したり、栄養分に富む良質な水の供給を通じて豊かな海をはぐくむなど、多様な役割を果たしております。緑の募金を始めとする国民参加の森林づくりの機運も高まっており、最近は漁業者が山づくりを行う取組も各地で見られます。
 また、本年二月十六日に発効した地球温暖化防止のための京都議定書における国際約束を達成するためには、森林による二酸化炭素の吸収量を確保することが不可欠であります。このため、森林・林業政策については、新たな間伐対策の推進等による多様で健全な森林の整備保全、木材や木質バイオマスの利用促進、緑の雇用等の担い手の定着促進と山村の再生、命と水を守る緑の緊急保全対策の推進などを図るとともに、安定的な財源が確保されるよう、環境税の実現に向け取り組んでまいります。
 さらに、森林組合の、森林施業の促進を始めとする機能強化等に向けた所要の制度改正を進めてまいります。
 次に、水産政策についてであります。
 我が国水産業は、国民に対する安全で多様な水産物の安定供給を通じ、健康で豊かな日本型食生活の一翼を担うとともに、地域経済の振興に大きな役割を果たしております。このような役割を果たしている水産業の健全な発展を図るため、経営改善を図る漁業者への支援を行い、元気が出る水産業づくりに取り組んでまいります。
 また、水産物は米と並んで日本人の食生活の根幹を成すものであります。こうした食生活を将来にわたって維持していくため、資源回復計画の着実な実施等による資源管理を徹底するとともに、良質で安全な水産物の生産、供給に取り組んでまいります。
 さらに、水産業、漁村の有する多面的機能が適切かつ十分に発揮されるよう、離島漁業の再生への支援や水産基盤の整備を実施してまいります。
 次に、WTO、EPA交渉への対応についてであります。
 農林水産物をめぐる国際ルールを策定するに当たっては、各国が有する自然条件等の違いを踏まえることが重要であります。
 まず、WTO農業交渉については、本年十二月の香港閣僚会議に向け、今後、交渉の本格化が見込まれます。このため、食料輸入国グループとの連携を更に強化しながら、多様な農業の共存を基本理念とする我が国の主張を反映した、柔軟性があり、輸出国と輸入国のバランスの取れた現実的な貿易ルールの確立を目指して交渉に取り組む所存です。あわせて、林野・水産分野につきましても、地球規模の環境問題や有限天然資源の持続的利用の重要性を踏まえた貿易の推進を目指し、交渉に全力を尽くしてまいります。
 また、EPA交渉については、フィリピンとの間では、昨年十一月に大筋合意に至りましたが、残るタイ、マレーシア、韓国との交渉が行われるほか、本年四月からはASEAN全体との交渉が始まります。各国との交渉に当たっては、昨年十一月に策定したみどりのアジアEPA推進戦略に沿って、戦略的かつ前向きに交渉に取り組むとともに、我が国の基幹品目、地域の農林水産業における重要品目など守るべきものを守り、譲れるものは譲るとの考え方で粘り強く交渉に臨んでまいります。
 以上のような農林水産政策を展開するため、平成十七年度の農林水産予算の編成に当たりましては、十分に意を用いたところであります。その際、地方分権の理念に沿って国の関与を縮小するという三位一体改革の趣旨にのっとり、骨太な目的ごとに補助金を統合・交付金化するとともに、公共事業について省庁連携を強化することなどにより、地域の実情に応じて地域の自主性、裁量性が発揮できる仕組みに改革することとしております。
 また、施策の展開に必要な法整備につきましては、今後、御審議をよろしくお願いいたします。
 以上、私の所信の一端を申し上げました。
 農林水産行政は、現場に密着した政策課題であると同時に、毎日の国民生活に深くかかわっているものであります。このため、地域の実情や現場の取組を積極的に政策に反映させながら、透明性の高い政策運営により、国民の信頼と支持が得られる政策を推進する所存であります。
 委員各位におかれましては、農林水産行政の推進のため、今後とも一層の御支援、御協力を賜りますよう、切にお願い申し上げます。
#6
○委員長(中川義雄君) 以上で所信の聴取は終わりました。
 本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ─────────────
#7
○委員長(中川義雄君) 次に、去る一月十八日から二十日に行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。岩永浩美君。
#8
○岩永浩美君 委員派遣の御報告をいたします。
 去る一月十八日から二十日までの三日間にわたり、北海道における畑作、畜産、食品加工等の実情を調査してまいりました。派遣委員は、中川委員長、田中理事、羽田理事、和田理事、岸委員、野村委員、小川勝也委員、福本委員、紙委員と私、岩永の十名でございました。
 今回の委員派遣は、本年三月に新たな食料・農業・農村基本計画が策定されることを踏まえ、今後の我が国農業の在り方を考える上で、早くから構造改革に取り組み、規模拡大を果たすとともに、加工など高付加価値の付与に力を入れている十勝の農業が一つの参考になるものと考え、実施したものであります。
 以下、その概要について申し上げます。
 まず、北海道農業の概要について申し上げます。
 北海道は、全国の約四分の一の耕地面積を活かし、稲作、畑作、酪農などの土地利用型農業を中心とした生産性の高い農業を展開しております。農業産出額は約一兆六百億円で全国の一割強を占め、また、カロリーベースで国産の約二割の食料を供給するなど我が国における食料の安定供給に重要な役割を果たしております。
 農家一戸当たりの経営耕地面積は、十七・二ヘクタールで都府県の約十四倍、EU並みの広さであります。また、販売農家に占める主業農家の割合は、都府県の一九%に対して七三%となっており、大規模で専業的な経営が展開されております。
 平成十五年の農家戸数は約六万七千戸であり、平成二年と比較して、約三割減少しております。一方、農業労働力の高齢化が進行しており、農業就業人口の三割強が六十五歳以上、後継者補充率は三割程度となっております。
 こうした中、水田については、圃場の大区画化と転作のための汎用化の推進、畑地及び草地については、排水条件の整備や客土等の実施、基幹的水利施設については、施設の長寿命化や計画的な更新整備が農業農村整備の基本方向であるとのことでありました。
 なお、道では、昨年三月、農業、農村の将来像とその実現に向けた取組の基本方向を明示した「北海道農業・農村ビジョン21」を策定し、「食」、「環境」、「人」、「地域」の四つの視点を重視した取組を促進しており、この三月の道議会に、「食の安全・安心条例」と、「遺伝子組換え作物の栽培等に関する条例」を提案する予定とのことであります。
 また、農業団体から、WTO・FTA交渉への慎重な対応、地域の実情に応じた持続経営が可能な経営安定対策の樹立等について要望がございました。
 続いて、十勝の農業について申し上げます。
 十勝の気候は、昼夜の気温差が大きく、また、五月から九月の農耕期間は日照時間が少なく降水量が多いため、しばしば冷湿害に見舞われます。
 また、十勝の総面積は北海道全体の一三%にすぎませんが、耕地面積は約二十五万七千ヘクタールで二一・九%を占め、麦類、豆類、バレイショ、てん菜を主体とした畑作と畜産が農業の中心であります。一戸当たりの耕地面積は約三十五ヘクタールで、全道平均の約二倍、全国平均の二十倍強であります。また、主業農家率は八八%となっており、北海道の中でも特に大規模な専業農家地帯であります。畜産の規模としては、乳用牛頭数が二十一万二千七百頭で北海道全体の二四%、肉用牛頭数が十七万四千二百頭で三八%であります。
 農家戸数は約七千戸となり、この三十年余りの間に半減しております。一方、農業粗生産額は、同じく五倍強の約二千五百億円に増加し、全道の二四%を占めるに至っております。これに伴い、農家一戸当たり所得も約九倍の約千三百万円となっており、生産性の向上とともに構造改革も大変進んでおります。
 なお、十勝圏活性化推進期成会から、やる気のある農林水産業が報われる政策の構築、農協組合長会から、食料自給率が四〇%であるにもかかわらず、生産を増やすと、すぐに過剰生産となってしまう現状への対応、森林組合長会から、将来に向けて活力ある担い手を育てるための環境税の創設、漁業組合長会から、密漁に対する罰則強化、各国からのIQ撤廃要求の阻止、漁業所得補てん制度の創設についての要望がありました。
 続いて、視察先の概要について申し上げます。
 まず、鹿追町の神田日勝記念館であります。神田日勝は、終戦直前の集団疎開で鹿追町に入植し、中学卒業と同時に農業を継いで一家の担い手となる一方、独学で油絵を描くようになり、十勝の開拓の厳しい現実を絵画に遺しておりました。
 次に、士幌町の加納三司牧場であります。当牧場は、昭和四十六年から肉用牛の生産を開始しておられます。飼養牛は地元十勝で誕生したホルスタインの雄で哺育から肥育までの一貫経営を行っております。飼養頭数は実兄と共同経営している西上加納農場の牛と合わせて約四千四百頭であり、六人の従業員で管理しております。年間出荷頭数は約二千五百頭であり、七億円の年商を上げておられます。また、牛から排出される排せつ物は堆肥化し、同農場の畑に還元し、さらにその畑で生産したデントコーンを牛に給与するというように環境に配慮した循環型農業を実践されております。
 次に、士幌町農協が運営する食品加工工場を視察いたしました。
 農業の安定、発展のためには「農民の手による原料の生産と加工を重視しなければならない」という認識の下、農協は、生産物の付加価値を高めるための加工処理施設等を設立し、でん粉であれば日量千五百トン、ポテトチップであれば一時間に三トン、コロッケであれば一時間に二十万食の処理能力を持っております。また、自然と調和の取れた環境づくりに努め、消費者に評価される安全で高品質な農畜産物を安定的に供給できる農業を確立しております。
 次に、同じく士幌町の鈴木洋一牧場であります。当牧場は、昭和四十五年から酪農を営んでおられます。飼養頭数は約四百頭であり、一頭当たりの泌乳量増加にも努め、昨年一年間の生乳出荷量は二千七十五トンでありました。また、早くから放し飼い式牛舎と自動搾乳機の導入による省力化や近代化を図られてきたほか、農場内の入口の用途別専用化による安全性や効率化の確保、あるいは電線類の地中埋設化など牧場施設内の美化保全にも取り組まれております。また、家畜排せつ物対策として、牛のふん尿の液肥、電気エネルギー、熱エネルギーへの資源化にも取り組まれております。
 次に、音更町のよつ葉乳業株式会社の十勝主管工場であります。同社は、酪農生産者自らが安全、安心な牛乳・乳製品を消費者に届けたいとの想いから、十勝地区の八農協が中心となって設立されたものであり、道内はもとより全国に製品を届け、十勝ブランドの発展に貢献しております。昨年九月に生乳・人・環境への「やさしさ」をキーワードにした新市乳工場が建設され、年間生乳処理量は五十二万一千トンで東洋一の規模を誇っております。
 次に、日本甜菜製糖株式会社の芽室製糖所であります。同社は、「開拓者精神を貫き、社会に貢献しよう」との企業理念の下設立され、国内甘味資源の確保と北海道畑作農業の振興と同時に、地域の雇用という重要な役割を果たしております。芽室製糖所は日量八千百トンのてん菜処理能力を有しており、こちらも東洋一の規模を誇っております。
 次に、同じく芽室町の北海道立十勝農業試験場であります。頻繁に冷湿害が発生する十勝の厳しい自然の中で、これに対応するための品種改良や病害虫防除技術の開発等を行ってきております。また、他の研究機関や地元の農業改良普及センター、農業者等と連携して栽培技術の実証を行うなど研究成果の活用に努めております。なお、DNAによる品種判別技術を開発し、加工後の判別も可能になったことから、育成者権の効力を加工品まで拡大するよう規制強化の要望がありました。
 最後に、JICA帯広国際センターであります。自治体や大学等地域社会と連携し、研修員受入れ事業、草の根技術協力事業、ボランティア事業を行うほか、施設を地域住民に開放し、途上国の人々との交流の懸け橋としての役割も担っております。特に、研修員受入れ事業においては、十勝開拓百二十年の経験と技術を活かした農畜産分野を中心とした研修コースを充実させております。
 以上が調査の概要であります。
 最後に、今回の調査に当たって、御多忙の中、御協力いただきました関係者の方々に対し、厚く御礼を申し上げまして、報告を終わらせていただきます。
#9
○委員長(中川義雄君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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