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2005/03/08 第162回国会 参議院 参議院会議録情報 第162回国会 法務委員会 第1号
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2005/03/08 第162回国会 参議院

参議院会議録情報 第162回国会 法務委員会 第1号

#1
第162回国会 法務委員会 第1号
平成十七年三月八日(火曜日)
   午後零時十分開会
    ─────────────
   委員氏名
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事         松村 龍二君
    理 事         吉田 博美君
    理 事         千葉 景子君
    理 事         木庭健太郎君
                青木 幹雄君
                荒井 正吾君
                尾辻 秀久君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
                扇  千景君
                角田 義一君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                荒井 正吾君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     南野知惠子君
   副大臣
       法務副大臣    滝   実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  富田 茂之君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局経理局長   大谷 剛彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田中 英明君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国政調査に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
 (平成十七年度法務省及び裁判所関係予算に関
 する件)
 (派遣委員の報告)
    ─────────────
#2
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 国政調査に関する件についてお諮りいたします。
 本委員会は、今期国会におきましても、法務及び司法行政等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(渡辺孝男君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題といたします。
 まず、法務行政の基本方針に関する件について、南野法務大臣から所信を聴取いたします。南野法務大臣。
#5
○国務大臣(南野知惠子君) 委員長を始め皆様方には、平素から法務行政の運営について格別の御尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 私は、法務大臣を拝命以来、人権の擁護など、その職責の重大さに改めて思いを致し、より良き法務行政の実現に向け、国民の目線に立った、真に国民に信頼される法務行政の推進に取り組んでまいりました。これからも法秩序の維持と国民の権利の保全という法務行政の目的実現に向け全力を尽くす所存ですので、皆様の一層の御理解と御指導を賜りたく存じます。
 それでは、この機会に、私の法務行政に対する思いの一端を述べさせていただきます。
 司法制度改革につきましては、今や、定められた改革の様々なプログラムを着実に実施に移す段階に至りました。特に、国民の司法参加を実現する裁判員制度の円滑な導入、法的紛争解決に必要な情報とサービスを提供する総合法律支援制度の円滑な実施に向け、その準備に遺漏なきよう努めてまいります。
 裁判所の体制については、今後ともその充実強化を図る必要があります。そこで、判事等の一層の増員を図るため、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を今国会に提出しているほか、市町村合併がなされた場合においても、住民が従前どおりその地にある裁判所を利用できるようにすることなどを目的として、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を提出させていただきました。いずれも速やかに成立させていただきますようお願い申し上げます。
 国民の生活及び経済の基盤を成す民事、刑事の基本法制については、その適切な運用を図るとともに、時代の要請と犯罪の動向に即応したものとするため、不断の見直しが求められています。
 このため、今国会においては、民事法制の見直しとして、土地の筆界を特定する新たな制度を導入するとともに、司法書士及び土地家屋調査士の業務について所要の規定を整備するため、不動産登記法等の一部を改正する法律案を提出しました。さらに、内容を現代化するとともに利用者の視点に立った会社法制の整備を図るための会社法案、船舶事故についての船舶所有者等の責任限度額を引き上げ、被害者の適切な保護を図るための船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案の提出を予定しています。
 刑事に関しては、今、国民が最も強く望んでいることは、安心、安全な国日本を回復することです。子供を安心して学校に通わせたり、女性や老人が夜道を不安なく歩くことができるといった、その昔どこにでもあった風景を取り戻してほしいという国民の願いには切実なものがあります。
 犯罪被害者等のための施策については、さきの国会で成立した犯罪被害者等基本法において定められたところに従い、より一層の充実に努めてまいりますが、それとともに、犯罪の被害に遭う国民を一人でも減らす施策を講じることが求められています。
 このためには、犯人を検挙して訴追し、迅速適正な裁判を行った上、適切な科刑を実現し、また、これらの者の再犯を防ぐための効果的な矯正処遇と社会内処遇を行うという刑事に関する諸制度が全体として十全にその機能を発揮することが必要です。
 そこで、これにかかわる検察、矯正、更生保護についてその体制の充実を図るとともに、より効果的な矯正処遇と社会内処遇の実現に取り組んでまいります。特に、幼い子供が被害に遭うような痛ましい事件を少しでも減らすことができるよう、法務省においては緊急に取り得る対策を取りまとめました。これは、性犯罪者の実態、再犯の状況等に関する多角的研究のほか、犯罪者処遇の充実強化、犯罪者の更生を可能とする社会の支援体制の強化、関係機関における犯罪の予防のための情報共有の三つの柱から成る具体策を総合的に推進するものであり、省を挙げて早急にこれに取り組んでまいります。
 また、国際社会と協調して最近の犯罪の動向に的確に対処するためには、刑事法制に関しても所要の整備を図る必要がありますので、昨年の通常国会に提出し、現在継続審議とされている犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案につきましても、速やかに成立させていただくようお願い申し上げます。
 矯正につきましては、本年は、これまで取り組んできた行刑改革の集大成となるべき年であろうと考えております。国民に理解され、支えられる刑務所を実現するために順次改革を実施してまいりましたが、より抜本的な措置として、受刑者の適切な処遇等を行うことを目的とする刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案を提出します。また、これと並び、刑務所における過剰収容を緩和するために、いわゆるPFI手法を活用した刑務所等の新設など、必要な対策を継続して行ってまいります。
 少年非行も深刻な状況にあります。事案を解明し適切な保護処分を行うことは、当該少年にとっても社会にとっても強く要請されているところです。そこで、一昨年策定された青少年育成施策大綱の内容等を踏まえ、少年非行の現状に適切に対処するため、少年法等の一部を改正する法律案を提出しました。
 続いて、人権についてであります。
 人権の擁護は、法秩序の維持と国民の権利の保全の任に当たる法務大臣固有の職責でありますが、すべての者がひとしく人権を享有するとの理念は、分野を問わず、社会の隅々まで行き渡るべきものと考えております。その具体的実現のために、新たに独立の行政委員会としての人権委員会及びこれを担い手とする新しい人権救済制度を創設する人権擁護法案の提出及びその成立に向けて精力的な取組を進めてまいりたいと考えております。
 特に、人身取引について申し上げます。
 人身取引は重大な人権侵害であり、その根絶と被害者保護を図る等の措置を講じるため、国際協調してこれに取り組む必要があります。このため、今国会に刑法等の一部を改正する法律案を提出しました。
 世界に目を移せば、国際テロの脅威は依然深刻です。我が国が国際テロ組織の攻撃対象とされる可能性も否定できません。また、アジア・極東地域における不安定要因も見られます。こうした状況を踏まえ、国内外の情報の収集・分析に努めるとともに、一層厳格な入国審査に努めたいと思います。一方で、観光立国の推進の観点を含め、健全な人的交流が一層活発に行われるべきことは当然であります。人権・人道、国際協調の視点にも配慮しつつ、調和の取れた出入国管理行政を進めたいと思っております。
 このほか、登記所備付地図の全国的な整備、心神喪失者等医療観察法の円滑な施行、オウム真理教に対する団体規制法の厳格な運用、さらには、刑事司法に関する国際協力及び民事商事分野におけるアジアの国々に対する法整備支援の推進など、法務行政の抱える課題は少なくありませんが、誠心誠意取り組んでまいりたいと考えています。
 委員長を始め委員の皆様の御理解と御指導の下、法務大臣として、強い指導力を発揮し、滝副大臣及び富田大臣政務官とともに、国民のために積極的に諸課題に取り組む決意でありますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
#6
○委員長(渡辺孝男君) 次に、平成十七年度法務省及び裁判所関係予算について順次説明を聴取いたします。
 滝法務副大臣。
#7
○副大臣(滝実君) 平成十七年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、法務省所管の一般会計予算額は六千二百三億六千四百万円であり、登記特別会計予算額は一千七百三十三億八千六百万円でありまして、そのうち一般会計からの繰入額が七百十七億八千五百万円でありますので、その純計額は七千二百十九億六千五百万円となっております。
 その純計額を前年度当初予算額七千九十九億八千二百万円と比較しますと、百十九億八千三百万円の増額となっております。
 次に、重点事項別に予算の内容について御説明申し上げます。
 まず、定員の関係でありますが、平成十七年度の増員は一千五十四人となっております。
 その主な内容を申し上げますと、一、刑務所等保安業務体制等の充実強化のため五百六十七人、二、出入国管理体制の充実強化のため百七十四人、三、検察体制の充実強化のため、検事四十三人を含め百八十五人、四、仮釈放審理体制等の充実強化のため二十三人、五、公安調査体制の充実強化のため三十六人、六、訟務事件処理体制の充実強化のため十五人等となっております。
 他方、平成十二年七月十八日の閣議決定に基づく平成十七年度定員削減及び減量効率化等に伴う合理化減分等として七百七十五人を削減することとなっており、増員との差引きにより、前年度定員と比較いたしますと純増二百七十九人となります。
 次に、主要事項の経費について御説明申し上げます。
 第一に、法秩序の維持・確保につきましては三千九百二十八億五千六百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと七十二億九千万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず検察関係では、検察活動の充実を図る経費として一千四十二億一千四百万円を計上しており、この中には特捜・財政経済事犯対策経費等が含まれております。
 矯正関係では、刑務所等矯正機能の充実を図る経費として二千百六十八億六千二百万円を計上しており、この中には、過剰収容緊急対策経費として、収容増に伴う諸経費が含まれております。
 更生保護関係では、保護観察活動の充実を図る経費として百九十四億九千二百万円を計上しており、この中には、保護司活動の充実等社会内処遇機能の強化経費、心神喪失者等医療観察法対策経費等が含まれております。
 入国管理関係では、出入国管理機能の充実を図る経費として三百五十二億四千二百万円を計上しており、この中には、出入国・在留資格審査体制の充実強化経費、不法滞在者特別対策経費等が含まれております。
 第二に、司法制度改革の推進の関係では、主要事項について五十五億五千百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと十三億七千五百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず、裁判員啓発活動の推進を図るための経費として三億二千百万円を計上しております。
 また、総合法律支援体制の整備経費として五億三千万円を計上しております。
 法律扶助事業関係では、法律扶助事業費補助金等の拡充を図るための経費として四十五億五百万円を計上しております。
 さらに、新司法試験を実施する経費として一億九千五百万円を計上しております。
 第三に、国民の権利保全の充実につきましては、登記特別会計を含め一千九百三十三億一千二百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと十四億五千三百万円の減額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず登記関係では、登記事務処理の適正迅速化のための経費として、登記事務のコンピューター化経費、表示登記事務処理体制の充実経費等を中心に一千七百三十三億八千六百万円を計上いたしております。
 さらに、人権擁護活動の充実を図るための経費として、人権啓発活動の充実強化経費を含め四十一億七千万円を計上しております。
 第四に、施設の整備につきましては、過剰収容の解消に向けた刑務所等矯正施設の拡充整備等のための施設費として二百十億五千七百万円を計上しております。
 以上、平成十七年度法務省所管の予算の概要を御説明申し上げました。
#8
○委員長(渡辺孝男君) 次に、大谷最高裁判所事務総局経理局長。
#9
○最高裁判所長官代理者(大谷剛彦君) 平成十七年度裁判所所管歳出予算について御説明申し上げます。
 平成十七年度裁判所所管歳出予算の総額は三千二百五十九億四千九百万円でありまして、これを前年度当初予算額三千百五十六億二千七百万円と比較いたしますと、差引き百三億二千二百万円の増加となっております。
 次に、平成十七年度歳出予算のうち、主な事項について御説明申し上げます。
 まず人的機構の充実、すなわち裁判官及び書記官の増員等であります。
 司法制度改革が進展し、裁判所の体制の充実強化が求められている中、特に、増加し、かつ、複雑困難化している民事事件等の適正迅速な処理を図り、また、裁判員制度導入のための態勢を整備するため、裁判官七十五人、書記官六十五人、合計百四十人の増員並びに振替による書記官百二十五人及び家裁調査官五人の増加をすることとしております。
 他方、平成十七年度には五十五人の定員を削減することとしておりますので、差引き八十五人の純増となります。
 次は、司法の体制の充実強化に必要な経費であります。
 まず、裁判事務処理態勢の充実を図るため三百六億四千九百万円を計上しております。
 その内容について申し上げますと、第一に、設立される知財高裁の態勢整備及び知財事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として一億五千二百万円を計上しております。この中には、IT化等のための経費、外部への情報発信のための経費、専門研究経費等が含まれております。
 第二に、裁判員制度導入のための態勢整備を図るための経費として十六億四千百万円を計上しております。この中には裁判員制度広報経費等が含まれております。
 第三に、民事関係事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として百十五億九千九百万円を計上しております。この中には、民事調停委員手当、専門委員経費等が含まれております。
 第四に、刑事訴訟事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として九十九億九千百万円を計上しております。この中には国選弁護人報酬等が含まれております。
 第五に、家庭事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として七十二億六千六百万円を計上しております。この中には家事調停委員手当等が含まれております。
 また、庁舎の老朽狭隘化に対応し、さらに、裁判員制度導入のために必要な施設を整備するための経費として百二十六億一千三百万円を計上しております。
 以上が平成十七年度裁判所所管歳出予算の概要であります。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
#10
○委員長(渡辺孝男君) 以上で法務大臣の所信並びに平成十七年度法務省及び裁判所関係予算の説明聴取は終了いたしました。
 法務大臣の所信に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 法務大臣は御退席いただいて結構です。
#11
○国務大臣(南野知惠子君) ありがとうございます。
    ─────────────
#12
○委員長(渡辺孝男君) 次に、去る一月十三日及び十四日の両日、本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。松村龍二君。
#13
○松村龍二君 先般行われました委員派遣につきまして、その概要を御報告申し上げます。
 去る一月十三日及び十四日の二日間、司法行政及び法務行政等に関する実情調査のため、福島県及び宮城県を訪れました。派遣委員は、渡辺委員長、吉田理事、千葉理事、木庭理事、井上委員及び、私、松村の六名でございます。
 一日目は、まず、福島刑務所を訪れました。本刑務所は、二十代から七十代の犯罪傾向の進んでいる者及び処遇上配慮を必要とする外国人を収容しております。受刑者の平均刑期は約二年九か月、平均入所回数は四・四回となっておりますが、暴力団員がその四四%を占めているとのことであります。受刑者の罪名別では覚せい剤と窃盗、年齢別では三十代と四十代の合計がそれぞれ過半を占めております。また、外国人受刑者は、現在六十八人で、その約六割が中国人であります。去年末の収容率は一〇七・五%となっておりますが、現在、刑務所内の農地跡を利用して、男子千名を収容定員とする施設の拡大整備及び女子五百名を収容定員とする刑務支所の新営工事が進行中であります。
 今回の視察では、刑務支所内部を含めた工事現場を見ることができましたが、新しい施設においてはスチーム暖房を整備するとともに、受刑者が希望を持てるよう、女子収容の刑務支所の鉄格子を「再び日は昇る」というコンセプトを反映して柔らかな曲線のデザインにするなどの工夫が凝らされておりました。
 いわゆる名古屋刑務所における受刑者の死傷事件を受け、国会でも刑務所に関する問題が集中的に審議されるとともに、一昨年の年末には行刑改革会議の提言がなされたことは委員御案内のとおりでございますが、所内視察後の質疑においては、同提言でもその廃止が提案された、受刑者の軍隊式行進につき現在は行っていないこと、従前使用されていた革手錠も新たな手錠に改められましたが、受刑者が暴れたような場合でもこれを使用しないで済む制圧の仕方などを研究していること、作業の一部をやめることで矯正教育の時間を確保していること、外国人受刑者は原則として日本語の話せる者が入所しているが、手紙の翻訳人の確保等が大きな問題となっていること及び収容定員の増加に対して職員数は不足していること等の説明がありました。
 次に、更生保護法人至道会を訪れました。同会では、刑務所から出所した人たちが社会に円滑に復帰できるための手助けを行っており、具体的には、あいさつや仕事の依頼の仕方を始めとする様々な訓練を中心としたSSTと呼ばれる集団処遇の実施などを行っております。
 同会の保護人員は、定員十六名のところ十六名と満杯状況であり、保護率も昨年四月から十二月末までで九一・三%と、刑務所の過剰収容の影響が感じられました。さらに、先ほどの福島刑務所の拡大整備に伴い、福島県内で唯一の更生保護施設である同会の役割も一層大きくなると考えられることから、施設を拡大するための土地や建物の確保及び被保護者のための仕事の確保等が喫緊の課題であるとのことでありました。
 次いで、仙台に移動し、仙台高等裁判所を訪問し、同裁判所のほか、仙台地方裁判所、仙台家庭裁判所、仙台高等検察庁及び仙台地方検察庁から、それぞれ管内の概況説明を聴取いたしました。
 裁判所からは、仙台高等裁判所管内では、各種事件とも増加傾向にあり、特に破産事件及び簡裁の特定調停事件は平成十五年まで増加傾向が顕著であること、裁判員制度に関する一般市民の理解について力を入れていること、仙台地方裁判所では、民事第一審通常訴訟の件数は、新受件数、既済件数ともほぼ横ばいであること、刑事通常第一審事件数は増加傾向にあること、民事再生事件数と配偶者暴力事件数は大幅な増加傾向にあること、仙台家庭裁判所では、一般保護事件数及び道交保護事件数は減少傾向にあること、家事審判事件数は、一昨年四月からの人事訴訟事件の家庭裁判所への移管に伴い増加傾向にあること及び成年後見事件の審理期間が短縮傾向にあること等の説明を受けました。
 また、検察庁からは、仙台高等検察庁管内では、強盗殺人罪等の凶悪犯罪、不況下での経済関係犯罪等が増加傾向にあるとともに、外国人犯罪の増加も懸念されており、今後の犯罪動向には楽観を許さないものがあること、仙台地方検察庁管内では、首都圏での犯行が困難になった犯罪者による地方への犯罪の拡散傾向が見られること等の説明を受けました。
 質疑応答では、東北地方における犯罪の特徴として首都圏の後追いの傾向があること、いわゆるDV防止法の実効性確保のための処理体制の強化に努めていること、個人再生手続の活用のため弁護士会との連携を重視していること、いわゆる振り込め詐欺の防止手段に苦心していること及び外国人犯罪に対しては通訳の確保が重要な課題であることについて説明がありました。
 二日目は、まず、東北少年院を訪れました。同少年院には、心身に著しい故障のない、おおむね十六歳以上二十歳未満の少年が収容されております。昨今の矯正施設の過剰収容が大きな問題となっている中、同少年院の収容人員は、定員百名のところ七十九名と比較的恵まれているようではありましたが、昨年の一日平均収容人員は九十五名ということで、個々の少年の特性に応じた個別的処遇という見地からは、現在がおおむね適正な収容状態との印象を持ちました。
 同少年院は、東日本における唯一の職業訓練施設として、収容少年に対して各種技能、資格を取得させるための訓練を行っていることに特色があり、私どもが参りましたときも、電気工事科、建築科、配管科、溶接科、自動車整備科等の訓練に熱心に取り組んでおりました。
 同院長からは、少年たちの再非行を防ぐためには、社会に出て働くときの良好な職場環境と再度の非行に走らぬための友達関係の二点が重要であると考えていること、同時に、少年の保護者への働き掛けも重視していること、少年たちの改善の手段として彼らに反省文を書かせること等について力を入れていること、職業訓練に関しては、従来は調理師、自動車整備士等の希望が多かったが、最近では建築関係の技能を希望する者が多くなっていること等の説明を受けました。
 次に参りました青葉女子学園は、少年院送致の決定を受けた女子少年のための東北管内唯一の施設であります。収容人員は、定員五十五名のところ現在二十四名、一日平均収容人員も平成十三年の三十七名から昨年は二十一名と減少してきているものの、それと反比例して、人格障害や覚せい剤の使用など対応の難しい女子少年も増えているとのことでありました。
 同学園では、個別処遇の徹底、家族関係の調整指導、被害者の視点を取り入れた指導、全員による創作オペレッタの作成の四つを指導の柱としておりますが、特に最後の創作オペレッタは、脚本、衣装、大道具から音楽まですべて自分たちで創作し、上演を行うというものであり、上演のビデオを通じて、参加者全員が一つのことを達成していくことを通して成長していく様子をつぶさに実感することができました。
 次に、仙台入国管理局を訪れました。同管理局の管内の在留外国人は増加傾向にあり、中でも、中国人、フィリピン人の増加が著しいこと、入港外航船舶・航空機数や正規出入国者数は減少傾向にあるが、在留資格審査関係申請受理件数等は増加傾向にあること等の説明を受けた後、同管理局内を視察いたしました。
 視察後の質疑においては、いわゆる外国人の農村花嫁の実態に関して、韓国人については親戚等が多いためか比較的うまくいっているケースが多いこと、不法残留の摘発に当たっては警察との相互協力による連携体制を取っていること及び最近問題となっている人身売買が東北管内でも昨年三件あったこと等が説明されました。
 最後に、東北大学法科大学院に参りました。同大学院は、市内の交通至便なキャンパス内で、かつ、緑も豊かという恵まれた環境の中にあります。
 こちらでは、図書室や学生が二十四時間使用可能な自習室を拝見するとともに、民法の授業風景も視察いたしました。授業におきましては、約五十名の学生のクラスで、指名を受けた学生が教授の質問に対しその場で次々と答えていくという、いわゆるソクラテス・メソードの様子を目の当たりにすることができました。
 同大学総長、法学研究科長及び法科大学院長からの概要説明後、意見交換を行いましたところ、新司法試験の合格率については、法科大学院の教育内容を守るためにはある程度の合格定員を確保してほしいこと、学生への奨学金に関しては、学生の半数が奨学金を受けているのが現状であること、入学者の多様性の確保については、入学者の約四割が社会人等であること及び教育面では知的財産権について特に力を入れており、特許庁から教官を招いていること等の説明がありました。
 以上が調査の概要であります。
 最後に、今回の調査に当たり、御協力をいただきました関係各位に対し、この席をおかりして厚くお礼申し上げ、報告を終わります。
#14
○委員長(渡辺孝男君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十分散会
ソース: 国立国会図書館
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